ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 新型インフルエンザ等対策有識者会議 医療・公衆衛生に関する分科会> 新型インフルエンザ等対策有識者会議医療・公衆衛生に関する分科会(第4回)議事録




2012年11月12日 新型インフルエンザ等対策有識者会議 医療・公衆衛生に関する分科会(第4回)議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

○日時

平成24年11月12日(月)10:00~13:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議題

(1)予防接種体制等について(供給体制、接種体制、その他)
(2)インフルエンザサーベイランスについて
(3)社会的弱者への対応について
(4)水際対策について(停留を行うための施設の使用)
(5)新型インフルエンザ発生時の被害想定について
(6)その他(新型インフルエンザ等発生時の埋葬及び火葬について)

○議事

○佐々木室長 定刻より少し早いですが、委員の先生方、皆様お揃いですので、第4回医療・公衆衛生に関する分科会を開催いたします。委員の皆様方には御多忙の折、お集まりいただきまして御礼を申し上げます。初めに委員の皆様方の出欠状況を確認いたします。本日は大橋委員、古木委員、丸井委員から御欠席されるとの御連絡を頂いております。井戸委員の代理として兵庫県疾病対策課田所課長に御出席いただいております。今日の会議では、被害想定のエビデンスと数理モデルについて、香港大学公衆衛生大学院西浦助理教授から専門的な知見について御説明いただきます。また、社団法人日本医薬品卸業連合会流通近代化検討委員会吉田流通専門委員にオブザーバーとして御出席いただいております。以降の議事進行を岡部分科会長にお願いいたします。カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
○岡部分科会長 おはようございます。お忙しい中お集まりいただいてありがとうございました。特に西浦先生、遠い所からわざわざ来ていただいてありがとうございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。今日は3時間で少し長めの会議ですが、御協力いただいて要領よく進めたいと思いますのでよろしくお願いいたします。資料の確認からお願いします。
○佐々木室長 資料です。議事次第、配付資料一覧が付いております。資料1「予防接種体制等について」、資料2「インフルエンザサーベイランスについて」、資料3「社会的弱者への対応について」、資料4「水際対策について」、資料5「新型インフルエンザ発生時の被害想定について」です。資料6「被害想定のエビデンスと数理モデル」は西浦先生の資料です。資料7「新型インフルエンザ等発生時の埋葬及び火葬について」。別添1は坂元委員の提供資料です。別添2は押谷委員の資料です。参考資料1は、前回の主な御意見です。参考資料2「予防接種体制等について」、参考資料3「新型インフルエンザワクチンの流通改善に関する検討会報告書」、参考資料4「サーベイランスに関するガイドライン(新設)について」です。資料の不足等ありましたら事務局にお申し付けください。
○岡部分科会長 議事に入ります。議題1、予防接種体制からいきたいと思います。オブザーバーでお出でになっている先生方も、もし御意見がありましたらおっしゃっていただいて結構です。よろしくお願いいたします。資料の説明をお願いします。
○佐々木室長 資料1、参考資料2、参考資料3を用いて予防接種体制等について御説明させていただきます。
 資料1です。本日、予防接種体制について三つ議論をしていただきたいのですが、まず供給体制です。2ページですが、供給体制は、政省令・告示事項ではありません。行動計画、ガイドライン事項です。ガイドラインに関しては、既に専門家会議による意見書が出ております。その中で、3ページで四角く囲っておりますところが2箇所ありますが、不要在庫を発生させないための流通上の工夫、ワクチンが平等に供給されるための方策が、必要であるという御意見を頂いております。
 4ページです。意見書を受け、新型インフルエンザワクチンの流通改善に関する検討会を開催しております。参考資料3が、その報告書です。今年7月30日に出したものです。この中でも不要在庫を発生させない対応として、五つ書いてあります。都道府県ごとの配分量の調整の改善、一元的な予約の受付、ワクチン供給先への配分調整の改善、卸売販売業者の役割の分担の明確化、ワクチン供給先からの発注の適正化といった対応として考えられるという御指摘を頂いています。ですので、供給体制に関する論点としては、今回、特別措置法が制定され、計画とガイドラインについて特措法を踏まえたものに見直すということと、意見書の内容を踏まえてはどうかということです。それに加えまして、今、御紹介した流通改善の検討会の報告書の御指摘を踏まえた対応もガイドラインの中に組み入れてはどうかというのが論点の1です。
 6、7ページです。6ページは、2009年に予防接種を実施したときの流通体制です。当時は各医療機関において予防接種を実施していただいておりますので、卸売販売業者から医療機関に直接納入していただいております。先ほどご説明した内容を踏まえた案が7ページです。7各供給先への納入可能量の調整、通知など、都道府県の関与を増やすことなどにより、適正にワクチンの配分をやっていこうということになっております。
 次に接種体制です。接種体制に関しても、政省令・告示事項ではありません。行動計画とガイドラインに関する事項です。10ページをお開きください。10ページは、新型インフルエンザワクチンの接種体制に関する比較表です。「パンデミックワクチン」で、緊急事態宣言が行われている場合と行われていない場合で分けております。住民接種のうち、特措法で実施するものについては、緊急事態宣言が行われる場合としてはどうかと考えております。その場合は、接種費用が公費負担でありますが、そうでない場合は自己負担となります。
 11ページです。計画、ガイドラインに特措法に基づく予防接種は緊急事態宣言が行われている場合だということを明記することについて、議論いただきたいというのが論点2です。12ページは全体像の図です。参考までに付けております。
 13ページです。先ほど申し上げたガイドラインの見直しに関する意見書で検討課題とされていた事項がございます。それが四角で枠囲いをしております4つです。円滑な接種を実現するための対象者の設定が一つあります。費用負担に関する事項。迅速に接種を実施するための接種方法に関する基準の検討。迅速な集団的接種を実施するための接種場所の設定。こういうことが課題という指摘を頂いております。
 それに関して14ページです。実施場所に関しての御議論いただくための資料です。法律上の実施主体は市町村となっております。対象者に関しては、政府対策本部が基本的対処方針を変更して、対象者及び期間を設定することになっておりますが、実施主体が市町村であることから、幾つか検討する必要のある事項があると理解しております。それが14ページの下段です。
 まず、供給体制に関していうと、住民の方が居住地以外で接種を希望されても、ワクチンの供給先が居住地の市町村のままですと、困難ですので、接種を希望する市町村にワクチンが供給されるような仕組みが必要になります。接種体制に関して、ほぼ同様の話ですが、居住地以外では接種対象者ではないことや、対象者であることが確認できない、健康被害の問題をどうするか、費用負担をどうするかなど様々課題がありますが、例えば広域的な協定の締結や事前に登録しておくことなどによって、ある程度対応できる可能性があるのではないかと想定しております。これについても御議論いただきたいと思っております。
 また、そういったことを踏まえ、15ページにありますとおり、見直し意見書で提言されていた医療機関や保健センター、学校等の公的な施設等に、今回新たに追加してはどうかと思っているのが表の一番右側の列です。例えば、基礎疾患を有するハイリスク者については、医療機関での実施も場合によっては認めてはどうか。在宅療養中の患者さんに関しては、場合によっては患者御自身の御自宅ということも念頭に入れてはどうか。施設入所者の方については入所施設。事業所に従事する方についても事業所ということも考えてはどうかということです。
 以上のようなことを踏まえ、16ページが論点です。円滑な接種を実施するための対象等の設定ということで、原則は「当該市町村の区域内に居住する者」ですが、広域的な協定を締結しておいたり、あらかじめ接種を希望する市町村を登録しておくことにより、接種の対象者等の設定を考えてはどうかというのが論点です。
 17ページについては、既措法に位置付けられております費用負担の分担です。特措法に基づく住民接種の場合は市町村が4分の1、都道府県が4分の1、国が2分の1となっております。国負担のかさ上げ規定もあります。
 18、19ページは迅速に接種を実施するための基準に関してです。18ページ実施例は、天然痘対応指針を一部改編したものです。集団的に実施する場合、事務エリアや説明エリア、接種エリアなどに分けて受けていただくような指針を既に出しております。この指針を参考に、どのぐらいの医療従事者が必要かの想定が19ページです。1時間に40名ぐらい接種すると考えますと、医師一人当たり61時間、看護師一人当たり14時間、接種に従事していただくことになります。全国の医療従事者数で単純に割り返しただけのデータですが、このぐらいの業務量になってくるというものです。3か月程度で終えることを一つの計画とした場合、天然痘対応指針と同じような厳密な接種方法でやると、全国民に接種することが難しい可能性があるのではないかという資料です。
 20ページは論点です。費用負担に関しては特措法で費用負担が明記されましたので、見直し意見書を修正し、ガイドラインにそれを反映させるということでどうかということ。もう一つの論点が、迅速に接種を実施するための接種方法に係る基準に関しては、新型インフルエンザワクチン接種に係る実施要領等を別途制定して、迅速な接種が可能になるようなものが必要ではないかと思っております。この点についても御議論いただきたいと思っています。迅速な集団的接種を実施するための接種場所の設定に関しては、見直し意見書に人口一万人に1か所程度の接種場所の確保や保健所、保健センターなどを活用する、医療機関に委託するという御提言をいただいております。これを参考にガイドラインを見直してはどうかということです。
 22ページです。予防接種体制等に関連して、ワクチン関係でまだ御議論いただいていないことが残っておりましたので、お願いしたいと思います。ワクチンの接種回数、有効性に関する調査、安全性の確保については、行動計画、ガイドライン事項です。資料1の24ページと参考資料2の17ページからです。見直し意見書には、ワクチンの接種回数については原則2回で、その時点での最新の知見等々を踏まえて、回数を議論することを記載しています。18ページの有効性に関する調査については、大規模に接種することですので、先行して接種していただいている方の御協力も得ながら抗体価等を測定して、有効性も見ていくことなどが書いてあります。19ページの安全性の確保に関しては副反応報告や接種者の数の把握などに関して意見書を頂いておりますので、これをガイドラインに記載すると共に、参考資料2の20ページからにありますが、現在、予防接種の副反応報告に関して、薬事制度上の副作用等報告を一元化することを検討中ですので、その内容も踏まえて、ガイドラインに記載してはどうかという点について御議論いただければと思います。議題1に関しての事務局からの説明は以上です。
○岡部分科会長 ありがとうございました。議論はもう少し後でやっていただくことにして、坂元委員から別添1の御説明をお願いします。
○坂元委員 川崎市の坂元です。一般住民への予防接種は、第46条での緊急事態宣言がなされたことを想定して、143万人、市民全員に予防接種をするためにはどのようなシミュレーションを考えたらいいかという、たたき台を出させていただきました。1ページにありますように、あくまでもまだ部局内で検討したものですので、関係団体との調整も行われておりません。最初に申し上げますが、このような予防接種業務は過去、自治体が一度も経験したことがない、正に、もしこれが実際に発動されたとなると自治体としても未曾有の業務になるかと思います。
 資料のスライドの3ページに大体の概念図が書かれております。スライド2と3では、143万の市民をこのように分類し、集団接種になじまないもの、集団接種の中においても若年者、高齢者等は優先せざるを得ないという観点から計画を立てました。2009年の経験を踏まえ、2009年に海外で発生して、1か月以内で国内に入っているということで、特に基礎疾患がある者や妊婦は1か月以内に終了させるという計画を立てましたが、ワクチンの供給や接種間隔等の医学的な問題とも関係するので、また後で見直すことも必要だと思います。
 3ページにありますように、この優先者は前回の2009年のときの優先者を参考にしました。小学校3年から大学生、事業所等は法で定められた健康診断を行っておりますので、基礎疾患の有無は正確に把握されているということなどから、学校、事業所、福祉施設は、その施設内での集団接種を基本とすることにいたしました。特に事業所に関しては、いろいろ意見を聞きますと、事業所で働いている人は自治体が勝手に地区で行う集団接種に呼び出すことは事業所のBCPや事業計画に差し障りがあるので、ある程度の事業所は事業所内でやらせてほしいという意見もありました。
 今後、事業所との調整を行って、どの事業所が事業所内での集団接種を希望するかという調整を行っていく必要があるのではないかと思っています。特に妊産婦、基礎疾患がある者は健康状態や重症度を把握しているかかりつけ医での接種を基本として、福祉施設や病院などの入所者は、その施設の集団接種、外出が難しい在宅での療養者の要介護者や障害者などは、個別に訪問して接種することを原則にいたしました。ワクチンの1バイアル当たりの容量が多いことから、個別接種に際して、個別の医療機関で日にち等を設定して1日で多くの方をやっていただく等の調整も必要かなと思っております。
 川崎は大体143万人ですので、市内の全小学校に相当する113小学校、1小学校区で一万人以上を体育館、教室などを利用して集団接種を行います。対象は1歳から小学校3年生、65歳以上、障害者を優先対象として、これを一般住民に先がけて、1か月以内に終了させることといたしました。詳しくはスライド4から16まで、細かくその計算等を記載しておりますので、後ほどお読みください。
 スライド16をご覧ください。このスライドは、15のスライドの優先接種対象者40万人を1か月で終了させた後、一般住民の50万人を2か月で終了させる計画に基づいております。逆算しますと、113の小学校会場全部合わせて毎日3万4,000人の接種を行い、医師、看護師、事務職のそれぞれ2名のチームで300人を行うこととしております。問診、検温等を入れると大体8時間程度続けて行う作業ということになるので、現実に安全性の観点から可能かどうかということの議論も必要かと思います。そうすると226人の医師、看護師、事務職等が必要になるかと思います。もちろん会場の外には、それ以外の警備等の人員も必要になるのではないかと思っております。
 方式としては、住民基本台帳から、混乱の起きないように、113小学校地区内から順次呼び出す方式を考えております。金曜日は事情・発熱等で受けられなかった人のための予備日として考えていきたいと思います。なお、ワクチンの供給に関しては、集団接種会場等々は、川崎市で一括してワクチン業者から納入し、配付するという方式も検討しております。
 20ページには、この接種に要する医師、看護師等の概算を出させていただきました。スライド20をご覧になっていただくと、最初の1か月は医師に関しては1,013人が毎日接種に従事しないと終了しない計算となります。これは、川崎市内2,877人の在勤医師、実際勤めている医師の数のおおよそ35%を毎日導入する計算です。看護師に至っては10%。その後の2か月3か月においても34.5%ですので、市内のお医者さん、看護師さん等にはものすごい負担になるのではないかと考えております。もちろん重複等がありまして、例えば午前中に開業されている先生が自分の基礎疾患の患者の接種が終わって午後から体育館に駆けつけて、一般住民の接種をすることもあるかと思います。
 先ほど地域間協定という話もありましたが、費用が現在のところ国が2分の1、都道府県4分の1、市町村が4分の1という設定がされている中で、一般住民の接種が自治事務という形になると思いますので、市町村によってバラバラの価格設定になると、非常に乗換え等の調整等が難しくなるのではないかと思います。したがって、全国共通の統一単価や、住民基本台帳に基づく全国共通のデータベースがないと非常に難しいと思われます。というのは、川崎市で母子手帳を発行しているのが毎年1万6,000人です。市内での出産が1万件です。おおよそ6,000件が市外で出産し、かつ里帰り分娩、いろいろな地方の方が川崎市内に来て、親御さんの元で出産するという、この辺が地域協定といっても、一体どれだけの自治体と地域協定を結べばいいのかということで、非常に広範囲の自治体との協定は現実的には難しいことが考えられるかと思います。
 また、例えばこれが4月の異動期にぶつかった場合、川崎市の場合は平均毎月8,000人が転出入をしております。恐らく4月の場合は二万人とか、そういう数の接種間隔中に転出・転入が起こる可能性があって、この辺もどこの自治体からそしてどこへ転入・転出があるかがはっきりしないので、何か全国統一的なシステムを作らないと非常に難しいのではないかということです。
 費用の付け替え等を自治体ごとにやった場合には、それに伴う膨大な事務量が発生することから考えると、余り現実的ではないのではないかと思います。ちなみに、2009年のときに、川崎市で予防接種が始まったときに予防接種の問合せだけで1日1,300件ありました。これに膨大な事務員が割かれる上に、この上費用付け替えの事務を行うことは余り現実的ではないかと思っておりますので、是非その辺を御検討いただければと思います。また、市町村にとって費用負担が4分の1とはいえ、全住民となると膨大な額になるということで、この辺の財政負担も大きいものではないかと思います。
 いずれにしても、医師会、学校、事業所、福祉施設などの関係団体と入念な事前調整が必要であり、特に医療従事者などをお願いする医師会など医療機関との調整が最も重要であると思います。そのため、かなりの準備期間や訓練などを行う必要があると思います。新型インフルエンザが発生して基本対処方針を策定し、接種計画を立てるのでは絶対に間に合わないと思うので、政府行動計画の中に接種計画の早期立案の必要性等々を明記していただければ有り難いと思います。
 最後に25ページにも触れましたが、自治体にとっては最大の懸念だと思いますが、致死性の高いインフルエンザと判明した場合、住民が粛々と自治体の順番呼出しに応じるかどうか、予定外の人が会場に来て打ってほしいという大混乱が起きるのではないか、その辺の事前広報や住民への周知をどのようにやっていけばいいかというところが自治体にとって最大の懸案ではないかと思っています。以上です。
○岡部分科会長 どうもありがとうございました。実際に当たって幾つかの懸案事項であるとか、解決しておかなければいけないこと、御指摘いただいていると思います。全体から見ての議論、論点を一つひとつ整理していかなければいけないと思います。最初の供給体制のところから論点を持ってきたいと思いますが、それとも先に全体として何か御意見があればおっしゃっていただければと思います。
 それでは議論をまとめるためにも、論点についての御意見をまず頂きたいと思うのですが、この資料1で言えば、スライドの3枚目、ワクチンの供給体制について、不要在庫を発生させないための流通上の工夫と、4ページにワクチンが平等に供給されるための方策があるのですが、これについて何か御意見があればお願いします。
 これは流通改善に関する検討会で、一応これだけの結論が出ていますが、よろしいですか。そうすると議論は進められましたので、これに基づいて行うことで、問題点が生じなければ、これでいいことになります。
○吉田参考人 供給体制になりますと、私ども医薬品卸が、末端の供給は中心になると思います。前回のときにもありましたように、正にここに書かれているように、無駄をなくすという方向性で少し見直しをして取り組んでいただきたい。前回のときも返品であるとか、致し方ない部分もあるのですけれども、そのようなことがないように、卸連と連携して取り組んでいただきたい。多分、私どももこの流通改善に関する検討会のほうにも出席させていただいていると思いますので、その中で都道府県と私ども卸連で密なやり取り、現場に行くまでの具体的なところを詰めていただきながら、流通が滞ることがないような対応を考えていますので、よろしくお願いしたいと思います。
○岡部分科会長 ありがとうございました。先ほど坂元委員からもありましたが、緊急事態になればなるほど、不要な在庫を考えている余裕はなくなってくるわけで、余り在庫のことを中心に置くよりは、きちんとした生産体制の確保のほうが重要ではないかと思います。結果的に余ると、これも問題になりますが。
○庵原委員 実を言いますと、この新型インフルエンザワクチンの流通改善に関する検討会報告書の座長をしています。そのときに問題になりましたのは、初期はいいのですが、大体真ん中から後になるにつれて、2009年のときもワクチンの熱が冷めてきたところへ今度はメーカーから供給が増えてきたなど、その辺のずれがあったことが一つありました。それから窓口業務が一本化されていなくて、2、3箇所に予約を入れた人がいたこと、医療関係者の側も卸のほうに2、3箇所に発注を掛けたということで、実際の数字の2、3倍のカウントがされていたのが現状でした。ですから、窓口をどこかに一本化する必要があるだろうと思います。長野県の某市で、市が窓口を一本化すると不要な在庫が減って、在庫管理が容易であったという情報がありましたので、そういうことを参考にして、このような報告書の形でまとめました。以上です。
○岡部分科会長 実際に、定期接種のワクチンでも導入のときには一遍に入ってくるわけではないので、量が足りない、あるいは注文に応じられないことがしばしば生じるのですけれども、これはリスクコミュニケーションの部分だと思いますが、どのようになっていくのかということを相当あらかじめにきちんと事実を言っておかないと、一気に全ての方に満足できる量が直ちにできて、一二の三で全部数日間でできるというものではないので、その辺も大きく理解をしていただくことが必要だろうと思います。
○小森委員 私も流通改善に関する検討会の委員をしておりました。この際にいろいろなことを議論したわけですけれども、今回は2009年のときと違って、基本的には集団接種であるということから一元的な予約という、そういう結論になりましたが、今ほど坂元委員が御提示なさいましたように、事業所、それから基礎疾患を持っていらっしゃる方等々、診療所、事業所あるいは在宅の方にはそこに出向いて接種をする方々も相当数いらっしゃることがあるので、市町村で、ということにしてありますが、市町村が果たしてそこまでできるのかということもありますので、この辺りも相当綿密な計画を立てる必要があるだろうと思っています。補足です。
○永井委員 7ページのところのスキームなのですが、お話を聞いていますと、供給体制を都道府県がして、接種の実施体制は市町村がする、そういうことだと思います。先ほど小森委員が言われたことと同じ意味なのですが、いろいろな状況があって、例えば7は、都道府県から保健センター等、学校、医療機関等、各供給先の納入量決定、可能量の調整通知が行って、それに基づいて市町村が住民から予約を受けるという形になっており、市町村と都道府県の供給先と接種体制との整合性や関連性というところがちょっと見えてこない気がするのです。例えば7の情報が、保健センター等に行くというのは、同時に都道府県から市町村にも情報が行くのでしょうか。
○岡部分科会長 事務局、この辺はいかがでしょうか。
○佐々木室長 市町村が、接種場所を指定して住民に連絡しておりますので、当然どのくらい供給されるかという情報は市町村に行きます。図では、矢印の位置が接種場所にだけ付いておりますが。
○永井委員 この図の矢印ではすごく誤解を招くような気がします。
○佐々木室長 図については工夫いたしますが、市町村に情報は行きます。
○坂元委員 私どもはそれほどまだ医師会の先生方と深く話しているわけではないのですけれども、病院、診療所にかかられている基礎疾患のある患者さんのリストを出してもらって、それによって配付、納入量を決めなければ動かないのではないかということと、出してもらったリストから集団接種分に移行する分を引いて、そうすると集団接種にどれぐらい来るかということが推察がつきます。それから希望の事業所、学校という形でしっかりそこは市町村が一元管理をしなければいけないと考えています。
 基礎疾患の場合に非常に難しいのは、市内の医療機関であっても市外から来られている方が結構いる場合、その方は他の市で受けてくださいと言ったときに、その医療機関はその患者さんの情報は全く持っていないのでできませんといわれることもあるかと思います。やはりその医院でかかっている方は、その医院で面倒を見ていただいて、費用の付け替えは何かコンピューターのデータベースで自治体間で調整できるシステムを作れば行けるのではないかと、粗々ですが、今の段階で考えています。
○岡部分科会長 特に基礎疾患のある方は、やはり主治医が一番よく分かっているので、その辺と調整ができるようにというのは、この中に是非入れておいていただきたいところだと思うので、よろしくお願いします。
○田代委員 今の7ページの図ですけれども、先ほどお話があったように、これは市町村がどういう役割をそこで果たすのかが抜けているのが一つ大きい問題で、それは明らかにしていただきたいと思います。それから、この矢印で販売、搬入などと書いてあるのですけれども、これのロジスティックについてはどういうような準備を考えているのですか。もしここでトラックの運転手が罹患して休むと、流通が滞るというようなことが当然考えられると思います。絵に描いた餅にならないようにするためには、どういう方策をするべきか、十分に検討する必要がありますけれども、今の段階で事務局はどういうことを考えておられるのですか。
○佐々木室長 先ほど、図が分かりにくいという永井委員の御指摘もありましたので、7ページの図については、工夫したいと思います。それから全体的なやり方については、坂元委員の御指摘もありましたが、例えば卸との調整もありますし、各地域の医師会を始めとする関係機関との調整もあると思います。実際に各市町村に具体的な検討をしてもらい、それを通じていろいろな問題点や、課題が、地域ごとに出てくると思います。できるだけ早く供給に関する検討を行ってもらうというのが大事だと考えています。
○岡部分科会長 それによって、ガイドラインのやり方や実際のやり方が多少違ってくる可能性もあるわけで、その辺は最初の基本方針を立ててからということになると思うのです。医師も30%が予防接種に行っている間に、一方では新型インフル等の患者さんを診なければいけないというのがあると思うので、その辺のことも含めて調整あるいは話合いをしていただかなければいけないところだと思います。
 それではもう一つ、予防接種体制のところで、特に論点としては緊急事態宣言が行われている場合と、行われていない場合で分けるということについて、御意見があればお願いします。
○押谷委員 これは、この親会議で前回議論があったところだと思うのですけれども、緊急事態宣言を地域ごとに都道府県単位で原則的に出していくと、出ている所と出ていない所が出てくることになると思うのですが、その場合のワクチンの費用負担はどのように考えられているのでしょうか。
○杉本参事官 特措法上の46条ですね。住民に対する予防接種ですけれども、これを御覧いただくと、新型インフルエンザ等の緊急事態においての条件下はありますが、それを実施する市町村は、全国一斉と条文上は仕組んであります。緊急事態宣言が発せられている場所だけという限定はしていません。
○押谷委員 ただ緊急事態宣言は、行動制限などを想定して考えているという説明だったと思うのです。そうすると、ある時期で緊急事態宣言を解除することも考えている。解除すると費用負担のところも変わってくるということになるのでしょうか。
○杉本参事官 緊急事態宣言は、別に行動制限だけを想定したものではありません。病原性が非常に強くて社会が混乱するおそれがあるというときにやるもので、いろいろな措置というものは想定していますけれども、その一つの想定として病原性が非常に強いということであれば、住民に対する予防接種もやらなければならないだろう。緊急事態宣言の対象となる区域は、いずれ遠からず全国に広がって行くだろうということを想定して、緊急事態宣言の対象区域に限定しないという選択を、46条についてはしたところです。
 事態が進んでいって、緊急事態宣言を解除しても大丈夫だということもある。46条に基づく予防接種が続いている限りは、解除されたらいきなり住民接種でなくなるということでは困るので、解除された後にどこまで46条の予防接種と見なすかということについては、そのときに状況を都道府県全体で相談をして決めていくのかと思います。
○岡部分科会長 一旦スタートした場合には、特措法に基づく接種が行われているけれども、非常事態宣言を解除してもいいとなっても、予防接種自体はもう動いてしまっているのです。そこで、ある一定のところで決めるのではなくて、もうちょっと柔軟に対応してもらっていいのではないかという考えでよろしいですか。
○杉本参事官 はい、そうだと思っています。
○岡部分科会長 今の体制のところはどうでしょうか。
○押谷委員 もう1点、ワクチンの供給が流行前になされるというのが理想型なのですが、実際には2009年もそうだったように、流行が起きている最中にワクチン接種されるというシナリオが、今、最も考えられます。そのときに、緊急事態宣言が出て行動制限、外出の自粛などを一方で言いながら、集団接種で1箇所に多くの人を集める。そのときの感染対策をどうするかということは、今日示された資料には書かれていないのです。特に基礎疾患のある人などハイリスクの人たちに対する配慮というのが、接種に行くことによって感染してしまう可能性をどう考えているかということが、ほとんど資料の中に反映されていないのですけれども、その辺りをどうお考えなのでしょうか。
○佐々木室長 迅速に接種を実施するための接種方法に係る基準の検討という論点で、実施要領等を、今後新しく作る必要があるのではないかということについて、御議論いただきたいと思っております。その中にご指摘の配慮について、具体的にこういう形でというものを、盛り込んで、市町村に示すことになると思います。
○岡部分科会長 なかなか両者を全部うまくやるのは難しいと思うのですけれども、罹患していない人については、早くワクチン接種を受けていただくことが、その場合は優先的になると思うのです。そこで感染が広がってはいけないので、感染症予防についても後で触れていただくようにしたいと思います。
 ちょっと議事進行をスピードアップしているのですけれども、その他費用負担、接種方法、接種場所、特にこの場合は集団接種を前提にしているということはよろしいですか。
○櫻井委員 ちょっと戻るかもしれませんが、対象者と場所の話です。スライドですと16ページになりますが、ちょっと議論が錯綜しているので、話が余りシンプルではないのですね。何かごたごたしていますけれども。16ページですと、市町村の区域内に居住する者を対象にすることを原則とするのです。その次の○ですと、市町村間で広域的な協定を締結するというのですが、人間の移動というのは市町村をはるかに超えていて、これは一都道府県内に留まっているということであれば市町村間というのは想定しているのかと見えますが、余り意味がない。
 協定自体ですと多国間協定というものがありますけれども、多市町村間協定のようにしないと、人間の移動をどこまで把握しているのかというのが、多様性に富んでいるので、協定なんかではとても対応できないし、ちょっとアナログだと思うのですね。なので事務の付け替えや費用負担の話もありましたけれども、そこはもうちょっと一元的なポケットを作っておかないと多分駄目で、最終的に国でやるのか県に落とすのかというのがあると思うのですが、市町村レベルでの調整で済むような話では全くないのではないかと理解します。
 事業所を接種場所にするということになりますと、川崎の話もありましたが、昼間人口と言いますか人口は移動しているので、事業所でやるということは当該事業所で働いている人を念頭に置いているわけですけれども、その人がそこに住所を持っているという必然性は全くないので、その場合はむしろ住民ではない人が多数を占めてもおかしくないということがあるので、その辺りのことがどこまで現実的にいっているのかよく分からない感じがします。
 全体に非常に緊急性の高い所で、なるべく多い人を確率良く捕まえて接種しないと余り意味がない。きめ細かく対応していくというのはもちろんあるのですけれども、多分日本人の悪い癖だと思うのですけれども、きめ細かくやるといっぱいやることができて、肝腎の一番大事なところが押さえられないことがありがちで、敢えて切っていくと言いますか、余りきめ細かく作らないということが大事なのではないかと、私は思うのです。ごたごたやっていても現実には動かないのではないかと思います。
 先ほどのワクチンの流通スキームも似たような感じがあって、6~7ページですけれども、緊急事態だということになると、間に挟むものが減っているほうがいいのですね。そうすると6~7ページだとかえって増えるので、調整自体が非常に増えるということになりますと、調整自体に時間がかかるので、その辺りをどういうふうにお考えになっているのか。
 販売業者から市町村で対応させるというのであれば、本当は卸売りの人を飛ばしてやったほうがいいのではないかと思わないでもなく、あるいは実際には卸の人がいないと動かないということであれば、それをどう組み込むかということになるのですけれども、間に都道府県や市町村が入って、かえって事務が停滞するのではないかという気がするので、民間を使うのだったら民間の方にむしろ動いてもらったほうがいいのではないかという気がしています。哲学に関わるところかもしれませんけれども、動かないと意味がないので、その辺をよろしく御検討いただきたいと思います。
○坂元委員 今の意見、ごもっともです。川崎市の転出入を調べても全国の自治体に散らばっておりまして、そうすると原則的に1,700近い自治体と協定を結ばなければいけないという、非現実的な話が起こるということと、入院患者や妊産婦、基礎疾患のある方は自治体を超えてあちらこちらの病院に行ったりしますので、これも非常に把握が難しいということを考えますと、多くの自治体もそう考えると思いますが、住民基本台帳等を使った総合管理システムを用いないと、現実に難しいということです。
 例えば川崎市の場合でも、毎日40万人が川崎市外に働きに出て、20万人が市内に入ってくるという現状、それから学校も市外の学校に通って市外の人が入ってくるという、こういう流入・流出を考えると、やはり単なる隣接だけの自治体間の協定では動かないと思います。やはり総合的なシステムを用いないと動かないと、私は思っています。
○佐々木室長 櫻井委員の御質問のうち、一つは広域的な協定の部分ですが、これは個別の協定もありますが、複数の市町村が相手の協定という形で、現状の予防接種法に基づく接種についても、締結して実施しているという実例もあります。単独の都道府県に留まっているケースが多いのですが、これは可能性があるのではないかと思っており、具体的なやり方については市町村、関係省庁とも協議しながら検討していくことを考えています。
 もう一つの流通の部分については、これは流通検討会の報告を踏まえて図を作っています。検討に当たっては卸連や様々な団体の方も入っていただいて報告書をまとめていただいております。御指摘のとおり、できるだけシンプルな方が良いという場合もありますが、現場の実情を踏まえた配慮も必要と思います。今日の御指摘を踏まえてより改善することができるかどうかを含めて、関係者と協議をしたいと思っています。
○岡部分科会長 特に人の動きに関しては、相当包括的にやらなければいけなさそうなので、それぞれの所がやるということではなく、全体的で決めていただきたいという希望が強いのではないかと思いますので、今後作る中で入れておいていただきたいと思います。
 予防接種体制の所で何かありますか。
○田代委員 15ページの図で、これは学校などの公的な施設と書かれていますけれども、これについては以前も何回かいろいろな会議でディスカッションがありました。その中で、学校でやることについては、かなり批判的な、否定的な意見があったと記憶しています。一つはそこの接種場所、学校の体育館やそういう所で、例えば接種後にアナフィラキシーなどが起こったときに、対応するような医療器材がないときにどうするかという話で、当時は文部科学省の担当者でしたが、校医もかなり後ろ向きな意見だったと思いました。医師会の方も、そこに行って接種することについては、責任を持ちかねるという話だったのですが、これについては解決しているのでしょうか。
○佐々木室長 その点については、この分科会で御議論いただきたいと思っています。基本的に見直し意見書の内容を踏まえて論点を提示しておりまして、現実的でないということであれば削除することもありうると思っています。
○岡部分科会長 今までの議論の中では、行動計画の中にも書いてあるように、確か集団接種でやらないと全部個別でやるのは不可能であると。ただ、それに対する安全性の確保というのも確か議論されていたと思います。集団接種だからといって、昔の集団接種みたいにばーっと一気にやっておしまいではなくて、そこには一定程度の救急医療体制や、特にアナフィラキシーへの備えはあり得ると思うので、それに対する準備はしておかなければいけないと思うのです。これは継続していると思います。ただ、この中にはそこまで具体的には入っていないということですね。
○坂元委員 私どもは113小学校を指定した場合に、そこにはAEDやアナフィラキシーショックに対応できるような簡単な医療器材は準備して、それからもちろん113小学校区とタイアップする医療機関等との連携などは十分していかざるを得ないと思います。ただ、だからといって143万人を全ての医療機関でやってくださいというのは、これはちょっと現実的ではないのではないか思います。だから、でき得る限り設定場所の固定化と器材準備等の仕組みが必要だと考えております。
○岡部分科会長 ガイドラインのほうになってくると思うのですけれども、できるだけ安全性の確保に関する準備をしておく。ただ、全員一斉にやっていると、通常の予防接種体制とは違うというような意識であったり、リスクコミュニケーションとしての説明も必要ではないかと思います。しかし、そこはできるだけのことを配慮していくようにお願いしたいと思います。その他の方はいかがでしょうか。その他についての論点、接種回数や有効性・安全性、これもガイドラインに当然ながら記載をしておいていただきたいと思います。ただ、やりながらもきちんとしたデータを得ていくという体制を取っていくことが必要だと思います。そこには情報の収集やモニタリングに関する総合評価というような言葉も出ています。
○永井委員 19ページのスライドの医療従事者は、先ほど坂元委員が川崎市の例を出して大変な業務量だという話になるわけですけれども、一万人に1箇所ぐらいの接種場所を作って云々とあるわけです。私は茨城県の出身なのですが、御存じのように茨城県は全国で二番目に十万人当たりの医師数が少ない所で、なおかつ私の医療圏も全国で二番目に医師数が少ない二次医療圏なのですが、勤務医と開業医の先生方の比が1:1ぐらいなのです。通常は勤務医が2、開業医の先生が1ぐらいの所が多いのです。そういう状況の所で、こういう形の医師、看護師も含めての配置の点ですが、先ほど来議論されているように、いろいろなガイドライン、行動計画の中で、地域の行動計画でどれぐらい行政と医療機関がタイアップしてやっていくかというところが問題です。個々の地域で人口あたりの医師の数が2倍から4倍ぐらい違うわけですので、一概に人口一万人当たりというところは難しいような気がするのが一つです。
 2番目は予防接種業務に関して、看護師が一人当たり14時間で、医師が一人61時間相当の業務量とあるわけですけれども、私も元小児科医ですので予防接種はやりますけれども、この辺りは全て医師がやる必要があるのかどうか。法令上の問題もあると思うのですけれども、その辺りはいかがなのでしょうか。
○佐々木室長 予防接種の問診に関しては、医師でなければならないという縛りが掛かるのですが、接種の実施自体は医師の監督下であれば看護師が実施することが、現行法上できると関係局で解釈していると聞いております。
○岡部分科会長 そこをどの範囲までやるかというのが、結局、実際の場に当たると議論になってくると思います。
○永井委員 今の看護師業務の話は非常に大事な話なのです。
○岡部分科会長 それでは、また後で議論いただきたいと思います。幾つか他の議題もあるので少し移していきたいと思います。それではサーベイランス体制のほうをお願いします。
○中嶋室長 資料2に従って、インフルエンザのサーベイランスについて御説明いたします。1ページですが、新型インフルエンザ特措法に基づき、行動計画に記載すべき内容として、新型に変異するおそれの高い動物のインフルエンザの状況の情報収集等の記述が法律に記載されました。これは特に政省令・告示にはねるところではありませんが、これを基に行動計画について加筆するところがあります。また、併せてサーベイランスのガイドラインについても加筆等が必要となります。サーベイランスのガイドラインについては、今まで新型対策としてはまとまっておらず、一昨年「意見書」という形でまとめていただいたものがあります。これについても、動物のところをもう少し記載したく考えております。併せて、意見書で一つ、集団発生のサーベイランスの課題の指摘がありました。今回、これについても御議論いただきたいと思います。
 2ページは本日のインフルエンザサーベイランスに関する議題ですが、3点あります。一つ目は、サーベイランスのガイドラインを意見書に従って新設してはどうか。二つ目は、その中で動物のサーベイランスについて記載してはどうか。三つ目として、意見書で検討課題となっていた集団発生の把握について、ガイドラインの中で体制整備等について記載してはどうか。以上の三つについて御議論いただきたいと思います。
 まず、1点目のサーベイランスのガイドラインの新設についてですが、4ページを御覧ください。こちらはサーベイランスのガイドラインの意見書を要約したものですが、○が二つありまして、一つ目は平時からのサーベイランス体制の確立、二つ目は発生時に追加・強化するサーベイランスの実施方法等の明示です。6ページのスライドを御覧いただきますと、参考1「季節性インフルエンザに対する主なサーベイランス」とあります。これら四つのサーベイランスが季節性インフルエンザ、今シーズンもそうですけれども、平時から行っているものです。定点のサーベイランス、ウイルスのサーベイランス、文部科学省等の協力を得て、学校のサーベイランス、また、昨シーズンより導入した、重症度を見ていくインフルエンザ入院サーベイランスです。4ページに戻り、これらを基に平時から実施するサーベイランスを行い、さらに二つ目の○の、追加するサーベイランスの明示のところで、ガイドラインが意見書でまとまった次第です。
 5ページの色付で書いてあるものを御覧ください。黄色が平時からやっているインフルエンザへのサーベイランスです。先ほど説明したものがここに入っております。緊急事態となる新型インフルエンザ発生時も、黄色のところは何としても続けて、継続的に全国一律にやっていく必要があるところです。加えるところとして紫色ですが、早期については患者の全数把握、つまり1例1例を把握していき、全国の数が数百例になったら、暫時、都道府県ごとの対応に切り替えていく。また、学校でのサーベイランス、社会福祉施設でのサーベイランスは集団発生を捉えるのに適しているのではないかということで、これを強化し、毎週報告を毎日報告として、対象も短大・大学等に拡大し、ウイルス検査との結び付きもここを徹底していく。これは期間限定ですが、このような強化によって集団発生を抑えていってはどうかという意見でまとめていただいたところです。こうしたサーベイランスのガイドラインの新設でいいか、ここが一つの論点となります。
 二つ目として、動物のサーベイランスですが、9ページを御覧ください。特措法におけるサーベイランスについて、先ほど述べたように、動物のインフルエンザウイルスの発生動向も情報収集するようにということがありました。これを基に、10ページにあるように、行動計画への追記を検討いたしました。厚生労働省のほか農林水産省、環境省とこれまで議論を重ねてきまして、現行の記述に加え、追記として10ページにあるように、「鳥類、豚が保有するインフルエンザウイルスの情報収集に努め、各省連携の下、得られた情報の共有・集約化を図り、もってインフルエンザウイルスの出現を監視する」を行動計画に明示してはどうか。
 また、ガイドラインにも再度追記というところで、総論では同様の追記をした上で、各論では、12ページの(キ)「鳥類、豚が保有するインフルエンザウイルスのサーベイランス」として、「各省庁連携の下、鳥類、豚が保有するインフルエンザウイルスに関してそれぞれが得た情報を共有・集約化し、新型インフルエンザの出現の監視に活用するために、国立感染症研究所において分析評価を実施する。また、鳥類、豚インフルエンザウイルスサーベイランスに関する関係省庁連絡会を適宜、開催し、情報共有並びに意見交換を実施する」をサーベイランスのガイドラインに明示してはどうか。その際、各省庁が今行っている主な取組みについて、12ページのような記述をしてはどうか。これが2点目の論点です。
 3点目の論点として集団発生の探知ですが、14ページを御覧ください。こちらは「新型インフルエンザ対策ガイドラインの見直しに係る意見書」ですが、四角の中のことが今後の検討課題としてまとめられました。「集団発生に対するサーベイランスについては、発生の早期探知等を行う上で有効ではあるが、実施に当たっては現場において集団発生を把握する方法や報告の体制など、整理すべき問題点が残されていることから、今後の検討課題とする」となっております。集団発生のサーベイランスは2009にも実施いたしましたが、追加が度々重なったり、平時からやっていない方法であったりしたので、情報収集とともに、確かに現場に混乱も残してしまったというのが、総括会議でも出た反省材料でした。
 このようなことから、矢印のところですけれども、「集団発生の把握のため、季節性インフルエンザに対しては、学級閉鎖等を対象とした全国の全ての幼保、小中高等に報告を求める学校サーベイランスを行っている。新型インフルエンザ発生時には、この取組みを強化・徹底して、早期対応のための探知に役立てることが重要である。そのためには、平時から感染症発生動向について、地域ごとに異常を探知できる情報収集及び分析体制を整備し、早期対応に役立てられるよう準備しておくことが不可欠であり、その重要性をガイドラインに記載してはどうか」ということです。平時からやっているところを、緊急事態のときに活用して徹底強化していくが、それをするためには平時からの体制を立てていかないとできないといったところをガイドラインに入れてはどうかということです。追記(案)としては15ページの下線部のところで、今のことを文言化いたしました。総論、各論に、平時よりの情報分析体制の整備、早期対応といったところを加筆いたしました。
 16ページは、集団発生の早期探知に関するサーベイランスについてです。季節性インフルエンザの平時の対応と、それから右の、新型インフルエンザ発生時の強化・徹底といったところで強化してはどうかというのがガイドラインの意見書です。繰り返しになりますが、学校等で行うところ、即日報告化、短大・大学の追加、できる限りウイルス検査を実施、社会福祉施設等、医療機関についても、そのような対応を一時的に強化したいということです。説明は以上です。
○岡部分科会長 先回の2009年のときは、突然いろいろなサーベイランスの方法が現れてきたり、二元化したサーベイランスであったりと反省点は幾つかあったので、それを踏まえた上での改善の提案ですが、最初の対策ガイドラインの見直しについてのサーベイランスに関するガイドラインを新設していくということについては、いかがでしょうか。特に、現行のものをきちんと強化していくことが一番大切なところですので、是非よろしくお願いします。
○永井委員 ちょっと外れるかもしれませんが、「外国及び国内における発生の状況」というのが一応特措法にあるわけですけれども、議論されている内容が豚、鳥にしても、人にしても、国内のサーベイランスということが多いのです。例えば、WHOでは鳥とか豚とかいろいろとやっていますが、その辺りのことはこのスキームの中に入る必要はないのですか、別なのかもしれませんけれども。
○岡部分科会長 それは国内情報としてこれを取るという意味であって、情報としてのものは。
○永井委員 また別に感染症研辺りで少しやるという話ですか。
○岡部分科会長 感染研ないし農水もそうだと思いますし、環境省も入ると思うのですが、事務局から何かあればお願いいたします。
○中嶋室長 今、岡部先生に補足していただいたとおりです。例えば、今年の夏、アメリカではH3N2vのような豚のインフルエンザが流行しましたが、こういったものについては国立感染症研究所やWHOからの情報収集を基に検討しております。新型インフルエンザ発生に備えて、こういった平時からの対応が必要と考えております。
○岡部分科会長 この仕組みではないけれども、その情報収集は非常に重要であって、特に初期の段階にどのように動いていくかということが非常に重要になると思います。田代先生のところでも、現状が十分かどうかは別にして、おやりいただいておりますし、大石先生のところでもやっていただくということがあると思います。
○佐々木委員 学校サーベイランスというのは非常に役に立つのですけれども、例えばここに「保育所」と書いてありますが、私どもの管内でも、保育所についてのデータは、学校保健法にも属していないので集めにくいのです。また、私立の学校についても、データは集めにくいところがありますので、そういったところも少し配慮していただけると、ガイドラインにはいいかなと思います。
○中嶋室長 6ページの参考1「季節性インフルエンザに対する主なサーベイランス」の上から三つ目が学校サーベイランス(インフルエンザ様疾患報告)で、現在、毎週金曜日に厚生労働省から公表しているところですが、現行でも保育所、幼稚園、小中高、これには外国人学校も含めた形で情報の発信をしております。ただ、これが今まできちんとワークしていたかといえば、新型インフルエンザ2009が起きるまでは、確かに虫食い状態があったのも事実です。それ以降は、今、全ての自治体から報告を頂ける形になりました。
○佐々木委員 私立も含めて出ているわけですね。
○中嶋室長 そうです。
○岡部分科会長 次に大石委員、川名委員からお願いいたします。
○大石委員 国立感染症研究所・感染症情報センターの大日主任研究官は厚生労働科学研究費「健康危機事象の早期探知システムの実用化に関する研究」において学校欠席者情報収集システムを構築し、迅速な学校サーベイランスを行っています。この研究班では現在、全国の40%ぐらいの地域で保育所、小学校、中学校、高校までをカバーしてインフルエンザサーベイランスを行っております。非常にタイムリーに情報収集ができる点が利点ですが、現在は研究班活動であり未だ国のレベルのサーベイランスにはなっておりません。しかしながら、今後の新型インフルエンザの発生等にはこの迅速学校サーベイランスが有用になってくる可能性はあると思います。
○川名委員 5ページに緑色で「積極的疫学調査」と書いてあって、「臨床情報の把握を含む」とあります。特に新型インフルエンザが出現したときの初期というのは、恐らく現場では臨床情報に関するデータのニーズが非常に高まると思います。例えば、肺炎が多いのか、脳症が多いのか、あるいはどういった年齢の人に多く発生しているのか、抗インフルエンザウイルス薬が効くのか、効かないのかなど、現場では非常に細かい臨床データが必要になってくると思うのです。例えば2009年のときには、国内から出てくるよりも、外国からいろいろな医学雑誌を通して入ってくる情報のほうが、むしろ速いぐらいだったという記憶がありますので、是非、日本国内で細かい臨床情報も含めた解析を行って、速く臨床現場にフィードバックするような体制を充実させていただきたいと思います。特に、これについては患者さんのプライバシーなどもあると思いますので、倫理的な問題もクリアしつつ、是非そのような体制を整えていただきたいと思います。
○河岡委員 同じく5ページの一番下の左に、「新型インフルエンザウイルス株を入手後、国民の抗体の調査」とありますが、どの程度ウイルスが流行するか、あるいはワクチンがどの程度効くかというのは重要ですけれども、現実問題として、2009年のパンデミックのときに大変だったのが、倫理の許可がなかなか下りず、すぐに結果が出てこなかったということなのです。現在、イギリスやオーストラリアでどのようなことが行われているかと言うと、基本的なものは今のうちにある程度倫理を通しておこう、そして、もしパンデミックが起きたときには、すぐ対応できるようにしようという動きがあるのです。そういうことを考えてもいいのではないかと思います。
○岡部分科会長 今の三人の先生方のコメントを含めて、全体的に中嶋室長からお願いいたします。
○中嶋室長 川名先生からあった臨床情報の収集、その分析、そして全国の医療従事者への提供についてですが、非常に重要な対応だと考えております。2009のときにはできない部分も多かったのではないかと理解しております。これについても、新型インフルエンザのガイドラインの意見書のところで、その重要性等を書き込んでおりまして、正に幾つかの研究班でも少しやっていただいているところですが、備えた形としてまとまるように考えていきたいと思っております。また、河岡先生から頂いた事前の対応ということは、いざとなったらなかなかできないところですので、少し検討させていただきたいと考えております。
○岡部分科会長 今のところで、最後に朝野先生からお願いいたします。
○朝野委員 5ページでは、緑色のところが一番重要だと思うのです。地域での疫学的リンクが切れたときに感染期となるわけですが、疫学的リンクが切れたかどうかを、先ほどのお話にもあったように、非常に広域に人が行き交っている状況で、自治体がこのような判断をするのか、あるいは国がスーパーバイザー的な働きかけをしてくれるのかということについてはいかがでしょうか。
○岡部分科会長 事務局からお願いいたします。
○中嶋室長 やはり、当初の事例については国も積極的に関与していかなくてはいけないのではないかと考えているところです。ただ、流行が進展をして、あちこちの自治体で発生するような段階になってからは、国が全部をハンドリングというのはなかなかできないと考えます。そのようなところから、この疫学調査もどのようにやっていくか、そういったことも今後の課題になろうかと思います。
○岡部分科会長 特に、最初の段階でリンクが切れるか、切れないかというのは大きな対策に結び付いていくので、その辺は国の関与だろうとは思っておりますが、自治体での把握は、その地域でのことになっていくと思うのです。今のことも含めて、ガイドラインに盛り込んでいくというか、そのアイディアを入れていく形でお願いいたします。動物のサーベイランスに移っていきたいと思うのですが、まず田代委員からお願いいたします。
○田代委員 動物のサーベイランスというのは、パンデミックのウイルスが出現する前のサーベイランスとリスク評価、それに関連して、その成績によって事前にプレパンデミックワクチンを準備するなど様々なことがあって必要なわけですけれども、国内で現在行われているサーベイランスというのは非常にパッチーで、全体がコーディネーションされていないと思います。厚生労働省にしても、流行予測事業というのを細々とやっていますけれども、ここで言っていいかどうか分かりませんが、農林水産省からかなりの圧力があって、地方自治体、都道府県はどんどん撤退している状況なわけです。この辺の全体のスキームを国としてどう考えるか、各省庁の省益ではなく、国全体としてどう考えるかという根本的なことを、まずどこかにきちっと書いてもらう必要があると思います。これは特措法第6条にきちっと書かれているわけですから、具体的にどのようなことをやるのかということを補完する記載がどこかに必要だと思います。
○岡部分科会長 ここが厚生労働省の会議ではなくて、内閣官房の会議であるというところの重要性だと思いますが、事務局はいかがですか。
○中嶋室長 田代先生のおっしゃるとおりだと思います。そのようなところで三省が打合せを重ねまして、12ページの新型インフルエンザ対策ガイドラインの意見書で、行動計画に明示をした上で、さらに各省庁連携の下、ウイルスに関する情報の共有・集約化、そして国立感染症研究所での分析、それから関係する省庁が集まっての連絡会を開催することで、まずはワンインフルといったところで検討できる体制を整えていくことが現在すべきところではないか、そのようなことで事務局案としてまとめさせていただきました。行動計画については10ページ等で少し追記をして、省の名前も明示いたしました。
○岡部分科会長 あらかじめサーベイランスをやっていくということが非常に重要なところになるので、既に省庁間での話合いが行われていると聞いておりますけれども、委員会としてもそこは監視を続けていく必要があるということで、是非お願いいたします。最後に、河岡先生からお願いいたします。
○河岡委員 田代先生の御意見に全く賛成です。12ページを見ると、豚のサーベイランスというか、これは屠場でのサンプリングで、屠場でしかサンプリングができないから、屠場のサンプリングなのです。農林水産省との利害関係からいろいろあるというのは分かるのですけれども、豚に関しては、本来出てくるべき農水省のところに記載がないのは非常に問題だと思います。家きんについて記載がある理由は何となく分かるのですけれども、田代先生が言われたように、やはりこれは基本的に重要です。なぜ重要かと言うと、家きんの場合は病気が出るので分かるのですが、豚の場合はインフルエンザに関して症状として出てこないことが結構あるからです。ですから、サーベイランスが非常に重要なのです。
○岡部分科会長 「家きん及び豚の飼養農場におけるサーベイランス(農林水産省)」と書いてあるので、私は農林水産省と読んだのですけれども、読み切れないですか。
○河岡委員 もっと具体的なことが豚についてもあってもいいかなと思うのです。
○中嶋室長 12ページの(キ)鳥類、豚というところで、情報共有の対象も豚については明示しております。現在の各省庁の取組みで、鳥については農林水産省と環境省がやっておりますが、豚については厚生労働省が屠畜場で咽頭ぬぐい液等を集めたサンプリング、それから真ん中の○ですけれども、農林水産省は都道府県が行う病勢鑑定の中でA型インフルエンザウイルスの検査を実施しております。この意見書どおりに認めていただければ、今後は連絡会等を開催し、こういった情報の共有化を進めて、対応を一歩前進させたいと考えております。
○岡部分科会長 委員会としては省庁のところを取り除いたというか、インフルエンザ対策としての動物のサーベイランスが重要であることを、是非強調しておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○田代委員 今のまとめですと、現在アベイラブルな情報を共有するということだと思うのですが、それでは足りない、大事な情報が入っていないわけです。その情報をきちっと把握できるようなサーベイランス体制を新たに構築するというような強い意見を、是非入れていただきたいと思います。
○岡部分科会長 豚のインフルエンザに関するサーベイランスを強化すべきであるということでは、是非やっていただきたいところだと思うのですが、いかがでしょうか。
○中嶋室長 そのような御意見を頂いたということで、三省の連絡会等で対応については検討させていただきたいと思います。
○岡部分科会長 この委員会では、その意見は非常に強く出たことを改めて強調しておきたいと思います。三番目の集団発生の探知については、いかがでしょうか。
○井戸委員(代理田所課長) 兵庫県です。先ほど学校サーベイランスの話が出たのですが、兵庫県では2009年から学校サーベイランスの即時、デイリーな報告を求めているところです。他のところは週単位にというところで、即時の報告から平時、平時からしていると使えるとは思うのですけれども、強化時に他の府県、即時の報告化が物理的にもノウハウ的にもできるのか、疑問に思ってしまうところがあります。それから、大石先生が言われたのですが、兵庫県においても学校サーベイランスのシステムを、国立感染症研究所の症候群サーベイランスのシステムに導入させていただいたのですけれども、この非常にいいシステムについては研究班のレベルでやっていると。日々の報告については、既に全国の学校の40%近くが導入しているということは、非常にいいシステムではないかと思いますので、是非、国としてもこのシステムについて支援していただければと思います。平時から休業情報を一定集約しておくことは、新型インフルエンザをはじめ、他の感染症も含めて重要ではないかと思いますので、是非、検討していただきたいと思います。
○中嶋室長 平時から即日の対応をされているとのことですが、大変な準備だと思います。敬意を表します。どのぐらいのところが即日、学校サーベイランスに対応できるか、少し調べたところがあります。やはりネックになっているのは、インターネットアクセスなどといったものに限定されてしまうことで、学校、地域の教育委員会によっては、どうしても対応できないというところも多いと聞いております。即日の報告のシステムについては、インターネット等に限らず、ファックス等でもできるような形で、発生時に備えていくことができればと考えております。ただ、症候群サーベイランスのようなところで、平時からインターネットに扱われているところは、発生時にもこれが有効に活用できるのではないかと考えております。
○川名委員 もしかすると、これも研究ベースのことかもしれませんが、国立感染症研究所のホームページでやっている「薬局サーベイランス」というのがありますけれども、情報が非常に速いものですから、私はよく利用しております。そのようなものなども含めて今後継続するのかどうか、教えていただければと思います。
○岡部分科会長 それについては大石先生からお願いいたします。
○大石委員 国立感染症研究所・感染症情報センターの大日班の研究として実施しているのが薬局サーベイランスです。これは現在、全国の薬局の約20%ぐらいをカバーしております。薬局サーベイランスにより、インフルエンザに限らず、それ以外の抗ウイルス薬の使用などで感染症の早期探知ということにも、寄与できると考えられます。今後、研究班として大日先生を中心にできるだけ実施していきたいと考えております。
○岡部分科会長 ここで出ている早期探知のサーベイランスがあるから、研究班レベルの調査がなくなるということではなくて、それぞれのところで相当ユニークで、かつ実用的なものが出ているので、研究班レベルでやっていることを、是非推進していただきたい。先ほど川名先生からも、利用勝手があるという話がありましたから、逆にそこが伸びていくような形での方策をお願いしたいと思います。これも委員会としてお願いしたいところです。最後に、櫻井委員からお願いいたします。
○櫻井委員 1点、これは賛否ということではなくて、スライド16ページで、サーベイランスの対象について、大学・短大を入れることになっております。これは人数ベースですと結構いる感じはするのですが、高校以下と大学は仕組みが違っていて、そもそも出席者を管理しているとは限らないということがあります。学生がいつも来るとは限らないし、そもそも先生も管理できていないのに、学生など全く管理ができていないというのが実態だと思いますから、これはどうするつもりか、どのような趣旨かということです。それはそうだけれども、なるべく広く掛けておいたほうがいいので、どこそこ大学で一人、二人把握した患者さんがいらっしゃいましたという、そのようなベースで分かればいいということですか。あるいは、もう少し体系的にやっていくということだとすると、これはかなり大きな話になりますが、その辺りはどういうおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
○中嶋室長 2009のときに、夏休みの合宿においても、あちこちで新型インフルエンザのウイルスによる集団発生というのが探知されました。ただ、私どもに来た情報、来ない情報といろいろありましたので、学校が新型インフルエンザの流行を探知した場合は、その報告をお願いしたいということです。これで何らかの義務を課することは、お話のとおりできませんし、同様に、保育所から高校についても義務を課しているわけではなくて、通知等に基づく平時からの対応としてやっていただいております。実は2009のときも大学、短大にお願いしていたのですが、そこのところをもう一度お願いしてやっていきたいと考えております。
○櫻井委員 アドホックに分かればという程度ですね。全体としての対策に意味があるということではないと理解しますが、いいでしょうか。また、義務ではないですけれども、通知が来るとそれなりに対応しなければと思うので、それはそれでちょっとフィクションだなという感じがします。
○田代委員 16ページには学校、社会福祉施設、医療機関と全て、最後の※に「できる限りウイルス検査を実施」と書いてあるのですが、どのようなルートで検体が移送されて、どこで、どのような検査ができて、その成績がどのようにシェアされるのか、何か具体的なことはあるのでしょうか。それとも、現行のサーベイランスシステムに則って定点でやるということですか。
○中嶋室長 これは定点ではなく、実際に発生した自治体において、保健所等が集団発生が起きた所の検体を集めるということです。今も季節の初めにおいては、学校等のサーベイランスの中でやっていただいているのですが、季節に限らず、やっていただきたいということで、「できる限り」と書いたわけです。今やっている定点のウイルスサーベイランスとは違って、もう少し細かに、ただ期日限定と一定期間のみというところでお願いしたく考えております。
○田代委員 関連してですが、2009年のときもこういうことをやったわけですけれども、これは地方衛生研究所に検体が送られて、そこで検査が行われると考えていいのですか。
○中嶋室長 そうです。ただ、最初の段階で地方衛生研究所だけか、国立感染症研究所もお願いすることになるかというところですが、地方衛生研究所が主体となってやっていただくことを考えております。
○田代委員 3年前の反省として、あのときにH1N1の新しいウイルスだということが分かったわけですけれども、地衛研では、まずH1だけをPCRで遺伝子学的に検査して、NAの遺伝子については感染研に送ってコンファームしてもらう、このように全くナンセンスなことをしたわけです。なぜ、そのように時間がかかって面倒なことを考えられたか分かりませんけれども、3年前、そういったことがあちこちで実施されて、現場は非常に疲弊したわけです。このことを※で「できる限り」などといったいい加減なことでごまかさないで、事前に体制をきちっと確立していただきたいと思います。これはどこに書いたらいいのですか。
○中嶋室長 どのようなウイルスが出現するか、それがどのぐらいの速さで全国の地方衛生研究所にお願いできるようになるかといったことは、恐らくいろいろなところになるかと思います。明示するのはなかなか難しいのですが、やはり平時から地方衛生研究所の方々を集めてウイルスの検査の講習、訓練等ができるように努めていきたいと考えております。
○岡部分科会長 基本的に、アウトブレイクには地方衛生研究所に検体が集められて、そこでチェックをするということだと思うのです。ただ、2009年のときには、いつまでもダブルチェックが行われたので、両方とも非常に混乱したということだったと思うのです。田代先生、そういうことでいいですね。
○田代委員 結構です。
○岡部分科会長 最初のうちはダブルチェックが必要だと思うのですが、いつまでもやっていないで、ある時点ではそれぞれのところでやれることを明示することが必要ではないかと思うのです。
○田代委員 ここには参考となっていますが、早期検知に関するサーベイランスとありますけれども、早期検知というのは最初に見つけた段階では、なるべく広く網を張って、速く情報を得ることが大事なのですが、これについて「できる限りウイルス検査を実施」といった曖昧な、実際に何をやっていいのか全く分からない、そして、読んだ人それぞれの解釈でいろいろな可能性があるような書きぶりでは駄目だと言っているわけです。
○岡部分科会長 ガイドラインのほうにそこのところをもう少しきちんと、どこがやって、どういう結果を得るか。最初から分からないものについて全部書くのは難しいと思いますが、基本的なラインというのはもう少し書いておいていただきたいと思います。それでは、また話を少し進めていきたいと思いますが、全体としてやや遅れ気味なので、よろしくお願いいたします。社会的弱者への対応について、事務局から説明をお願いいたします。
○佐々木室長 資料3の「社会的弱者への対応」は政省令・告示事項ではありませんが、特別措置法の国会の審議の中で在宅の一人暮らしの高齢者、障害者など社会的弱者に対しては適切な支援を図ることを付帯決議として頂いておりますので、御議論いただくということです。現状の行動計画とガイドラインにおいても一定の記載はありますが、今回御提示する資料等を踏まえて、更なる見直し等に関して御意見を頂きたいと思っております。
 2ページを御覧ください。新型インフルエンザ等発生時の要援護者に関してですが、要援護者という用語で言いますと、災害時の要援護者というものがあります。参考2にあるように、被害の対象、地理的な影響範囲、被害の期間等違いがあります。今回、御議論していただくにあたり、御紹介しようと思っておりますのは、平成21年1月に特別区保健所長会がまとめた「新型インフルエンザ対策 パンデミック時の自宅住民支援」です。
 3ページですが、新型インフルエンザと災害時の要援護者の範囲を同じにする場合、リストなどの作成は容易であるけれども、新型インフルエンザ対策としての観点が不足している。ただ、新型インフルエンザ対策を別途検討することになると、対象者の把握が大変である等の課題があるとなっています。
 4ページですが、例示にあるとおり、新型インフルエンザ発生時の要援護者として、一人暮らしで日常生活が非常に困難な方など特別区の保健所長会のまとめを参考にしながら、ガイドラインのに記載してはどうかというのが検討事項1です。
 5ページから、災害時の要援護者の支援ガイドラインについて紹介しておりますが、どのような形で要援護者を特定というかリストアップするかについて書いてあり、関係機関の情報を共有するとか、手上げ方式や同意方式といったいろいろな方式あります。
 関係機関の情報共有方式については、個人情報保護法でも、本人に利益があるときは、情報提供できる場合があるとされています。7ページに、インターネット上に公開されている個人情報保護条例で、例えば東京都であれば、個人の生命、身体、財産の安全を守るために緊急、かつやむを得ない場合には、個人情報の目的外利用、提供ができるという規定になっております。また、横浜市についてもほぼ同様の規定がありまして、新型インフルエンザ対策の要援護者をリストアップするに当たっては、条例の規定などを踏まえて実施できるのではないかということです。
 8ページは、検討事項です。災害時の要援護者など、関係機関がそれぞれ保有している情報に関して要援護者リストを作り、リスト掲載への同意を得ることを含めて、要援護者の把握方法についてはガイドラインを見直して記載してはどうかというのが検討事項2です。
 9ページには、特別区の保健所長会のとりまとめに支援内容として、安否確認や食料・生活必需品の配達等々、協力者を得て実施するということが書いてありますが、このようなことについてガイドラインに記載してはどうかというのが検討事項3です。
 11ページは附帯決議の中で、在宅の患者へのサポートといった内容も含まれておりましたので、検討事項4として提示しております。現状でも計画、ガイドラインに一定の記載はありますが、12ページにあるように、訪問看護、訪問診療といったものも需要の増加がある一方で、欠勤者も増えてくることが予想されております。そのような中で在宅医療等を継続していくことが必要ですので、医療体制に関するガイドラインの中に在宅を担っている訪問診療、訪問看護について関係機関同士が協力できる体制について事前に検討する必要がある、ということを記載してはどうかということです。
 また、在宅で療養する場合、支援が必要な患者さんの情報については、市町村等とも共有することに努めるということもガイドラインに記載してはどうか。また、慢性疾患等の患者とその家族については、まん延してきたときに、長期処方やファクシミリ処方等について事前にかかりつけ医等と相談しておくことが必要ですから、その点についてもガイドラインに記載してはどうかということです。以上の4点について、御議論いただければと思っております。
○岡部分科会長 幾つか出ておりますが、社会的弱者と言われる方々への支援、医療体制です。特に、保健所あるいは医療の現場の先生方からの御意見が多いかもしれませんが、いかがでしょうか。余り異論のないところかもしれませんが、どうでしょうか。
○佐々木委員 この内容で大体いいと思いますが、視点として二つあります。災害弱者の自助というか、自分でも少し準備してもらうようなことを情報提供するとか、ここに書くべきことかどうか分かりませんけれども、そのような視点があってもいいのかなというのが一つあります。それから要支援者、要援護者の定義の中に、議会で言われたのとは若干違いますが、外国人というのも視野に入れて、情報がどのようにしたら届くのか。例えば国民に出すときに、外国人用の情報を幾つか用意しておくとか、ここに書くことではないと思いますけれども、そういったことをもう少しお考えいただくといいかなと思いました。
○佐々木室長 二つ御指摘いただきましたが、まず自助という点に関してですが、現状の計画、ガイドラインにも少し触れられております。事前の準備も含めて、やっておいていただくことは重要と考えております。これはリスクコミュニケーションの観点においても重要な御指摘だと思っております。また、外国人等の対応に関しては、専門家会議の見直し意見書の中にも情報提供・共有ということでご指摘頂いておりまして、外国人ができるだけ速やかに情報を得られるように、各国大使館や海外メディアに情報を提供するということもガイドラインに書いて、対応できるようにしていくということだと思っております。
○坂元委員 この「社会的弱者」というのは、先ほどの一般住民へのインフルエンザの予防接種とは裏と表だと思うのです。当然、あの中でも社会的弱者、病弱者、障害者等を割り出して、どうするかということを自治体は考えなければいけないわけです。私どもは当然、全戸に個別通知、予防接種の案内等をしなければならないわけで、個別通知の中に、いわゆる援助が必要か、どういう状況か、災害対策基本法とは別に書き込む項目を設けて、一応全戸配布することも検討する必要があると思いますから、それを集計して考えていくという方法を、今、一つ考えております。
○櫻井委員 個人情報の件については、これはもう常識の話だと思うのですが、個人情報と命とどちらが大事かという話で、形式的な法適合性の問題というのは技術的な話なので、個人情報保護の問題は、取り分け要援護者の問題を議論するときに、そこはもう価値判断として悩む余地は本来ないところだと思いますから、そうした価値判断がどこかに出るといいと思います。東京都も内々の検討の段階で、成果物にはまだなっていないと思いますけれども、ここで言う関係機関共有方式のところで紹介がありますが、個人から同意がなくても、一種の包括同意のようなことを正当化できる仕組みがあればいいわけで、そのような仕組みを入れようという動きは、確か別の自治体ではあったかと思いますし、東京都もそれをまねして作ろうかといった議論が現実にありました。正に、それが重要なことなので、そのような方向を後押しするといいと思うのです。
 要援護者の範囲については、これは当たり前のことで、新型インフルエンザ特有の特徴を踏まえた上で範囲を決定することは当然のことであって、それを前提にした上で、個人情報保護的な形式的なコンプライアンスをどのように克服するかということですけれども、できれば条例を改正すればいいことですし、現行の条例でも弾力運用をするといった方向性を出していただけると、本当はいいと思うのです。8ページのスライドや13ページの検討事項にも出てきますが、様々な情報共有をするときに、結局はそこが重要なのであって、後は法をどのように整えていくかだけの問題だろうと思うので、そのような方向を是非出していただきたいと思います。
 個人情報保護審議会の意見を聞いてクリアしてしまうというのも一つの例ですけれども、特別の理由となると、ハードルがちょっと高くなってしまいますので、そこを少し緩和するとか、それは自治体がきちんと考えないといけないことだと思います。厚生労働省としては、国の取組みについての提言的なものがありますけれども、特に厚労行政の場合は、もっとはっきりした形で出てくる問題で、これは一般的なガイドラインかと思いますから、もっと強く押し出してもいいのではないかと思います。
○岡部分科会長 異論のないところだと思いますので、貴重な意見として、よろしくお願いいたします。
○坂元委員 櫻井先生にお伺いいたします。我々が検討しようと思っているのが、例えば返信用はがきで送って、予防接種の案内と援護が必要かどうか、どのような援助が必要か等々を書いてもらって、サインして送り返してもらうということなのですが、それを自治体として同意したとみなして運用しても構わないのかどうか、教えていただきたいと思います。
○櫻井委員 厳密に言うと難しい話になってしまいますけれども、同意を得るときに、例えばそのはがきに、他のところにも使うことについてみなすと言うときついですけれども、そのように理解していいかという一文を入れておけば、運用上は問題はないと思います。仮に、条例違反のような話が出てきたとしても、個人情報保護条例違反だと言って、どうして私の命を救ったのかと怒る人はいないはずです。そこが主客転倒しているので、行政の運用としてはリスクは取れないにしても、そのぐらいのリスクはちょっと取っていただいて、重要な仕事のほうをやっていただくことが大事ではないかなと思っております。
○岡部分科会長 その辺もノートしておいてください。それでは水際対策、これは停留施設の部分だと思いますが、説明をお願いいたします。
○佐々木室長 資料4です。特措法28条の、検疫で使用する停留施設の確保の考え方についてです。行動計画においては、特措法の制定された内容を踏まえて修文ということになります。
 水際対策に関するガイドラインについては、既に第2回で検討いただいています。裏面の2ページです。感染国から入国者を全員停留する場合の停留対象者の想定ですが、致死率が極めて高い場合、国にはよりますが、最大約十万人ということを考えております。通常の新型インフルエンザ検疫はパターン2から開始しますが、この場合は、停留対象者数は、数十人程度ということで、停留施設が不測する事態にはならないと思われます。
 今回御議論いただくのは、3ページ目のところで、非常に大規模なパターン1のような場合の想定です。停留に使用する宿泊施設についてですが、宿泊施設というのは様々な形態があるわけですが、やはり、停留者間の接触を最小限に抑えるということからも、部屋の中に一定の設備が設置されていて、一人一室ということが望ましいということですし、結婚式や会議等のイベントを行わない、宿泊に特化した施設であることが望ましいと思いますので、そういう考え方でやらせていただきたいと思いますが、どうでしょうかというのが1点目です。
 2点目が、宿泊施設を含む区域について、どの範囲の宿泊施設で停留等を行っていただくかということです。特定検疫港のある自治体が、基本は考えられるのですが、その中で対応できる場合と、やはり宿泊施設が少ない地域もありますので、隣接する市区町村も含めて、宿泊施設を有する地域を選定して、市区町村単位で指定をしていくということでどうかということです。以上2点について御議論いただければと思っております。
○岡部分科会長 ありがとうございました。それでは御意見をお願いします。ただ、この停留の部分は、準備としては重要なのですが、ずっといつまでもこういうことをやっているということではないというのが、水際作戦を議論した時の一つの論点だったと思いますので、そこも踏まえて御意見がありましたらお願いします。
 ここはよろしいですね。余り異論のないところだと思います。今言った運用の部分が非常に重要だと思うので、そこを含めてよろしくお願いします。
 それでは、もう一つの本日の一番重要な部分でもあると思うのですが、この場合は新型インフルエンザになるのですかね、新型インフルエンザ等発生時の被害想定ということです。最初、事務局から説明を頂いた後で、西浦先生から、先生は今までもいろいろな分析をされていて、それに基づいていろいろな提言もされていますが、それを伺いたいと思います。最初は事務局からお願いします。
○佐々木室長 資料5「被害想定について」です。これは、政省令・告示事項ではありません。これも、特別措置法の国会審議の中で政府行動計画を策定する際の根拠となる被害想定については、「最新の科学的知見を踏まえ、いたずらに過大なものとすることのないようにすること」という附帯決議を頂いています。現状の行動計画でも、記載されておりますが、その内容について御議論いただければと思っています。
 2ページは、現状の行動計画における被害想定の前提です。これは、行動計画策定に当たっては、対策を考える上で、患者数等の流行規模に関する数値を置くということですが、これは、この想定を超える事態もあり得ることを念頭に置いて対策を検討すると行動計画の中で書いております。なお、これらの推計については、ワクチンや抗インフルエンザウイルス薬等の介入の影響を推計の前提としていないことに留意する必要があるとなっています。
 現状の行動計画の中では、罹患率を全人口の25%が罹患すると想定し、致死率については、「中程度」を0.53%、これはアジアインフルエンザ等並み、「重度」の場合2.0%、スペインインフルエンザ並みと想定しており、これらの前提の下、医療機関を受診する患者数、入院患者数等を推計しているところです。
 現在の推計の方法については3ページです。第7回ヨーロッパインフルエンザ会議で、全人口の25%が罹患すると想定するということが勧告されており、それを踏まえ、罹患者数について、約3,200万人と推計しています。これを基に、CDCモデルのフルエイド(FluAid)を用いて、「中等度」のシナリオということで、医療機関を受診する患者数を約1,300万~2,500万人と推計しています。この「中等度」の場合に、入院患者が53万人、死亡者が17万人ということになっています。この場合、致死率が0.53で、これを「重度」と見る場合にはスペインインフルエンザ並の重度の致死率2.0%を加味して、入院患者数を200万人、死者数を64万人と推計しています。さらに、CDCモデルのフルサージ(FluSurge)を用いて、入院患者数が「中等度」で10.1万人、「重度」が39.9万人としています。
 論点ですが、この附帯決議で頂いている、「最新の科学的知見を踏まえ、いたずらに過大なものとすることのないようにすること」ということに対して、現状を含めて専門的な観点も含めて御議論いただければと思います。
 なお、5ページは、罹患率や致死率等に関しての用語の計算式などについて付けさせていただいております。
 また、6、7ページは2009年のインフルエンザの場合に、死亡率は、死亡数は定義が異なるため、単純比較は困難でありますが、各国医療制度等も違うため、同じウイルスであっても、死亡率は違った結果に出てくるということや、患者数、致死率は、年齢によって違ってくるということも参考までに付けさせていただいております。以上でございます。
○岡部分科会長 ありがとうございました。それでは続いて、西浦先生に説明をしていただいてから、コメントや議論を頂きたいと思います。西浦先生、よろしくお願いします。
○西浦参考人 香港大学から参りました西浦と申します。私は、感染症の数理モデルを利用した理論疫学を専門にしているのですが、この被害想定に関しても、数理モデルを利用して、新型インフルエンザの流行が発生したときに、それぞれの流行の時点でどれくらいの入院患者が発生して、どれくらいの被害規模が生じるのかということを、今までシミュレーションしてきました。まず、数理モデルの利用の仕方から始まって、どのような根拠で今の被害想定を考えているのかについて説明させていただきます。
 1ページは「数理モデル」というスライドです。簡単に、数理モデルがどんなものか説明させていただきます。現実を論理的に数式で表したものです。何らかの感染症の流行があったときに、それについて人間が認識できるレベルで、数式を利用して描写することによって、本来は全てを描写できない流行というものを、理論の中で、そして、私たちが認識できるレベルの範囲内で数値化してしまうという試みをする道具が、数理モデルです。数理モデルは、ある与えられたシステムの本質を捉えているべきものであって、中味が批判あるいは理解できるように、十分に単純でなければならない。しかし、解が明確でない特異的な疑問に対して、往々にして少量でない計算が必要とされるというようなことをいろいろ書いていますが、右側のピカソの図があるので、これはいつも分かりやすくて利用しています。ある新型インフルエンザの流行が起こったときの、私がモデル化したいものが、3列あるうちの左端の列の真ん中のバッファローの図です。これが新型インフルエンザの真の流行だとしたときに、私たち数理モデラーが考えるものは、ある流行を描写する目的に応じて、その問題の本質をどれぐらい単純化することによって、骨格を捉えて、そして、現実問題に役立てていくかということです。必ずしも、大規模なシミュレーションがいいわけでもありませんし、必ずしも、簡単な数式で全て書けてしまう数理モデルがいいわけではありません。目的に応じて、どこまでのレベルの骨格を捉えてこの問題を描写して、現実問題に役立てていくかというときに、私たちがどの辺りの骨格を数式で捉えて、流行対策に役立てようかとするときに、この判断が求められていくことになります。
 具体的な応用事例は、1枚目の右下に書いていますが、疫学的趨勢を説明したり、あるいは、何らかの流行が起こったときに、流行データを後ろ向きに分析することによって、特定の流行対策がどれくらい有効であったかということを振り返ることにも、数理モデルが使われています。
 2ページのスライドです。特に2009年のインフルエンザのときに、数理モデルの使用が世界中でとても広く行われました。感染性の推定や重症度の評価、あるいは流行状況を解釈したり、Now-Castingといって、今現在、私たちの社会が、どのような流行状況にあるのか。そして、少し先の未来を短期予測することや、流行対策がどれくらい有効だったかを評価すること、あるいはそれらの反省点を踏まえて、今後、研究デザインをどのようにしていくべきだなど、広い目的用途において、数理モデルが使われてきました。そして、政策決定においても、対策の戦略、道筋を立てることや、具体的な提案をする一助として、国家レベルや国連機関のレベルでも、今、数理モデルが広く使われています。ただし、専門家以外にも広く情報を共有されている一方で、用途と目的というものが十分に共有されていません。
 具体的な問題を挙げると、公衆衛生機関や地方の自治体一つひとつのレベルにおいて、ある特定の数理モデルを利用した研究や分析結果が出たときに、それをそれぞれの機関の独自のレベルで批判的に吟味をして、具体的な解釈を加えるというようなキャパシティが、今、まだない状況です。国の中心的な機関で、やっと何とか論文が読めているというのが、今のレベルの状況です。2009年には、数理モデルを利用した分析以外にも、様々な、使用における現実的な実用上の問題がたくさんありました。数理モデルが、何らかの流行のシミュレーションをしたり、何らかの統計学的推定値を与えるときに、95%信頼区間や、あるいは、何らかの想定に関する不確実性を検討するのですが、不確実性と95%信頼区間というものを議論することによって、その推定値は外れても、95%信頼区間に真の値が入っていたとしても、推定値の一番の最尤推定値、期待値から実測値が外れていると、必ずモデルが失敗したというような批判の対象になります。また、リアルタイム予測は、イギリスを中心にたくさん、数理モデルの一番の活用例として、2009年に利用されましたが、大いに予測が外れたのです。一般の方々、特に非専門家の方々から「数理モデルが使えない」というような、コミュニケーションの問題が、今までたくさん見られてきました。
 3ページのスライドです。その数理モデルなのですが、今まで起こったことがない流行に関して、ある一定のサイエンティフィックエビデンスを踏まえて、被害想定を描写するために一番有効なツールですので、今、日本の人口の年齢分布を踏まえた上で、その流行を描写すべく、数理モデルを利用して、シミュレーションができるモデルを作成しているところです。
 そういうシミュレーションをする場合には、被害想定のベースラインが必要になるのですが、その根拠としてとても使いやすいものが、左側のフォレストプロットと呼ばれる箱ひげ図にあるものです。これは、血清学的な調査によって、世界中の各年齢群の人口において、どれくらいの割合の人が2009年から2010年の第1波と呼ばれる新型インフルエンザの流行を通じて感染を経験したかというものを実測した結果の系統的なレビューです。右側に、その具体的な数値を書いていますが、乳幼児で、大体16~28%、学童で半分近くです。高齢者になると数パーセントぐらいですが、全人口で重み付けで平均を取ると10~21%ぐらいというのが、今までの系統的レビューで分かっている全人口当たりの感染者数の割合です。そこで、被害想定のガイドラインのほうにもある25%というものを累積感染者割合とすると、大体、リーズナブルな値になるということが分かります。全人口で、大体25%が感染したという観察値は実際にあります。年齢構造化モデル、つまり年齢別の流行状況が異なりますので、それを加味したモデルによって、この25%というものを具体的な感染性の指標にした場合は、基本再生産数という感染性の指標を使いますが、大体1.44に当たります。基本再生産数というのは、一人の感染者数が平均で生み出す二次感染者数の平均値のことを言います。それは、一つの流行を通じて、人口全体で何パーセントの人が感染するかということを決定するのですが、この同じスライドの右上にある図が、基本再生産数の関数として、人口全体でどれぐらいの割合の方が感染するのかを示したものです。基本再生産数が、大体1.3~1.4辺りというのが、2009年のときの推定値なのですが、御覧いただければ分かるとおり、全感染者数の割合として見ると、この赤い線が全人口の重み付け平均ですが、大体20~25%の方が感染するという結果が、理論と大体一致しているということです。
 4ページのスライドです。ただし、ガイドラインにあるベースラインというのは、皆さん御覧いただければすぐ分かりますように、罹患率が25%と描写されています。先ほどの議論は、全人口の値で、感染する人の割合が25%としたときに、基本再生産数が1.44となるということです。感染する人の割合と、全人口の中で感染して発病する人の割合は少し違うということが、今までの研究で分かっているのですが、左側の図が、英語のままですみませんが、私どもの系統的レビューに基づく、家庭内伝播の調査に基づく、それぞれの個々の感染者がどのような症状を呈したかという調査結果です。インフルエンザというウイルス感染症は、感染した人が全て発病するわけではなくて、実験感染に基づくと、大体感染者の3分の2が有熱発病者になることが分かっています。そのハウスホールドスタディに基づいた結果でも、おおよそ全感染者の6割が有熱発病者になることが分かっています。有熱発病者が全人口の25%になるようなシナリオを考えた場合が、次の右に示した図ですが、赤い線が、先ほどのスライドの中にある、全人口の中の感染者の割合で取ったときの基本再生産数と累積感染者割合の対応の表です。その下にある曲線「発病者」というものが、もし累積発病者が25%とした場合の基本再生産数と累積割合の対応ですが、全人口の中で25%が発病するというシナリオの下では、基本再生産数が大体2.0になります。これはスペイン風邪のときの基本再生産数の統計学的推定値と大体コンシステントな結果です。
 5ページのスライドです。そういうことを基に、基本再生産数が大体1.4~2.0の間にあるという想定をした下で、シナリオ分析ができることになるのですが、実際の数理モデルでシミュレーションをした結果が左側の図にあります。再生産数が大きいほど流行ピークが高くて、流行ピークまでに要する時間が短くなります。これは、入院患者の社会的負荷などを決める上で、かなり大きなファクターになってくるということです。
 右側の図は、それぞれの再生産数において、各年齢群で流行の第1波が終わるまでに発病を経験する者の割合です。再生産数が大きいほど、各年齢群での累積感染率及び累積発病率が高いことが分かっています。
 6ページのスライドです。これらの感染と発病のデータを基に、感染時あるいは発病時の重症化の確率や死亡の確率を掛けることによって、時点の入院患者数や流行ひとつを通じて、死亡する方の数を計算することになるのですが、致死率というのは簡単に議論できる問題ではありません。2009年のとき、確定診断者数を利用して、致死率を計算すると、大体0.1~0.5%ぐらいに分布した推定値が、全感染者数の死亡リスクとしてそのまま適用できないぐらい大きな推定値だったことから分かるように、どの値を分母を取って、どの分子を使って、この感染時の死亡確率、あるいは発病時の死亡確率を推定するかによって、大きなぶれが生じるのです。この確率を推定するときに、私たちの香港の研究結果を利用していますが、全感染者数を血清学的調査に基づいて、全人口で推定した上で、分子にPCRの確定死亡者数か、いわゆる超過死亡と呼ばれるエクセスモータリティの数を利用して、全感染者の感染時の致命確率を使うというのが、私たちが今、こういう被害の規模を議論するときにやっている最新の方法です。感染時致命確率と呼んでいますが、それが年齢群別で香港で推定したものが、御覧のとおりです。一つだけ、見て顕著なのが分かると思いますが、60歳以上の方で、エクセスモータリティを取ったときに、右側のIFReと書いてあるものが、感染時致命確率の超過死亡を使った推定値です。ほとんどの死亡者が高齢者の間で出るというシナリオの結果が出てくるわけです。
 7ページのスライドです。実際の再生産数が1.44ぐらいで、25%は感染するというシナリオにおける累積死亡者数を具体的な数値で、日本全国に関して単純計算した結果がこの数字です。各年齢群別で書いています。赤字でハイライトしている辺りが2009年をベースラインにしたときの死亡者数の推定値です。ほとんどの死亡者が高齢者の方で出るということになっています。大体の最大値として、致死率で想定されている2.0%というものを想定の範囲内で最大値として出していますが、御覧いただければ分かるとおり、全感染者数を母数にとってこの計算をしたときは、かなり大きい被害規模になります。高齢者の方で死亡者数だけで実数を見ると、130万人以上の方が死亡するというシナリオになっています。今まで、これぐらいの死亡者を出したパンデミックはありませんでした。
 8ページのスライドです。どの辺りの範囲にベストゲスを置いて、シナリオ別の被害規模を分析していくかということで、横軸を感染時致命確率で、縦軸を基本再生産数にして、日本全国の死亡者数の実数をプロットした表がこの表です。黄色の枠で囲んでいる辺りが、2009年の新型インフルエンザのときの被害規模です。特に超過死亡などを使って、年齢別でのリスクの違いを精緻に推定したときの被害規模が、左上の辺りが一番確率が高くて、それ以降が少しずつ致命確率と再生産数が上がっていくに従って、累積死亡者数の推定値が上がっていくというシナリオができています。これに基づいて大体ベースラインを決めるのですが、観察データは2009年しか、こういう感染時の致命確率が計算できる資料が残念ながらないわけなのですが、そういうときの事後分布を利用して今、大体この表で示している範囲で被害規模の想定を考えているところです。今回は、死亡者数のシナリオしかお見せしていませんが、入院患者の具体的な入院時の経過や挿管までに要する期間などを統計学的分布をきちんと整理して定量化することによって、より精緻な入院患者数の時点の推定値を、これから提供していければと考えています。以上です。

○岡部分科会長 どうもありがとうございました。それでは、事務局の説明されたものと、特に西浦先生にデータを示していただいたのですが、それについて御質問あるいはコメントがあれば、どうぞお願いします。
○佐々木委員 西浦先生の推計の最後の数字はすごいなと思うのですが、このベースは香港のデータですよね。日本の2009年のものを当てはめて、こういう計算はできるのですか。それとも、ほとんど変わりはないと考えてもいいのですか。
○西浦参考人 計算の想定は、変わりないという考えの下でやっているのですが、その基礎疾患の構造の違いなどが、日本と香港の間でありますので、少し過大評価になっている可能性があると思います。日本での具体的な推定は、まだやったことがありません。
○河岡委員 西浦先生に教えていただきたいのですが、資料の後ろから2枚目の黄色のものですが、これは年齢別の累積死亡者数というのがこの数字ですよね。これは、年齢ごとというか、そのグループごとに感染する程度は考慮されているのですか。つまり、例えば、2009年のときには、年齢層によって感染した割合がかなり違いますよね。それは考慮されているのですか。
○西浦参考人 2009年の流行の年齢別感染者数の頻度を基に、年齢群間と年齢群内でどのような伝播が起こっているかということを行列を使って描写するのがこの数理モデルなのですが、そのときに、各年齢群において、ばく露を1回受けたときに感染が成立する確率が違うというのを、2009年のデータをベースに計算しています。
○坂元委員 香港のデータということなのですが、例えば香港での保険ですね、日本は皆保険という制度になっているのと、例えば当時処方されたタミフルの処方数が、どの程度比較できて、仮に、先生が日本を考えた場合、これより小さくなるのか大きくなるのか、推計で結構なのですが、その辺りを教えていただければと思います。
○西浦参考人 入院患者数に関してですが、皆保険制度の下での入院患者数は、明らかに日本のほうが香港よりも大きくなると思います。その受療行動として、香港よりも日本のほうが、皆さん、病院を受診しやすいですし、入院のディシジョンもしやすいからだと思います。ですから、入院患者数を見積る上では、香港よりも日本のほうが入院患者数は高くなります。一方で、死亡に関しては、抗ウイルス薬の消費量は日本と香港で、それほど大きく変わりません。ただ、投与のタイミングがどれくらい早いのかということで、有効性が変わってくることになると思うのですが、その点に関するデータは、今、まだ整理されていないところだと思います。特に日本でのタイミングのデータを、今まで拝見したことがないので、研究されていないのではないかなと思います。
○河岡委員 西浦先生が言われたのですが、2009年のパンデミックのときには、ファーガソンなどが『ネイチャー』に論文を出して、それが我々素人からすると、大きく外れると思うのです。そういう感覚なわけです。お聞きしたいのは、私個人的には数理モデルは非常に重要だと思っていて、研究にも使うのですが、こういう公衆衛生対策をするときに、どのデータが重要だというか、我々が考慮すべきかというのを、数理モデルの研究者から教えていただきたいのです。この数字は実際に使っていいんだよと。
○西浦参考人 2009年のときのレッスンから申し上げますが、私たちは、現実問題の失敗を通じて、インフルエンザの観察問題というものを痛いほど学んできたのですが、インフルエンザというのは、感染をしても発病しない方がたくさんいて、発病しても受診しない方がたくさんいるので、アイスバーグのトップを取ってくるような観察では、流行の全状況をリアルタイムで把握することが、とても難しいのです。ですので、香港の研究を通じて、とても勉強しましたが、血清学的な調査を流行途中にリアルタイムで何度も繰り返すことによって、各年齢群でどれくらいの割合の人が、何月までに何パーセント感染したかというものが、具体的な数値で示せるのです。ですので、全人口レベルでの血清学的調査をしなければいけないというのが1点。
 そして、ただ単にアイスバーグのトップを取ってくるだけの問題ではなくて、その死亡者数も全数が観察されないというのが、インフルエンザの重要な問題ですので、これを今の時点の技術で解決できる手段の一つが超過死亡者数です。血清学的調査に加えて、超過死亡者数が分かっていると、リアルタイムで、できるだけ早い時点で、観察問題のエラーがなく、インフルエンザの重症度や感染性が評価できるようになると思います。
○小森委員 素人っぽい話をお聞きして恐縮ですが、資料5と、今の問題だけ、新型インフルエンザ等の「等」が抜けているのですが、どういう議論をしたほうがいいのかということがあります。先生がおっしゃるように、超過死亡者数ということは大事だと思いますが、御承知のように、インフルエンザに限っての話になりますが、抗ウイルス薬、そして日本では、やはり48時間以内の投与というのが極めて効果的であって、アメリカでも投与されたけれども、48時間以降の投与が極めて多いということで、こういうことは、かなり明確に分かってきているわけです。私は基本的にこういう中で先生に教えていただきたいのは、2009については結果としてH1N1で比較的低病原性でしたが、H5N1であるかどうか分かりませんが、かなりの高病原性のインフルエンザが侵入してきて、なおかつ医療介入があったとき、現在の我が国の医療のレベルで、つまり、2009においては死亡者数は結果として199名であって、世界の先進諸国の中でも3分の1、5分の1、アメリカに至っては数十分の1という結果であって、世界から賞賛をされている、この医療体制と、早期介入がされるという中で、超過死亡者数は分かりましたが、その程度の介入があったときの死亡者数は、一体どの程度であると推定されるかということを結果としてお聞きをして、やはりその上で対策を立てるということは重要だと思いますので、是非お願いします。
○西浦参考人 質問の御趣旨がわからなかったのでお伺いします。抗インフルエンザウイルス薬の投与の下で、死亡のリスクがどれだけ減るかということに関してでしょうか。
○小森委員 つまり、我が国の全般、2009においては、抗体保有等において超過死亡者数も、おおよそ推定されていますし、この介入によって199名になったということで、結果は出ているわけです。つまり、H5N1が、どの程度の高病原性であるかという議論はさておいて、2009のH1N1の状況ではなくて、更に高病原性のウイルスであった場合に、現在と同程度の医療介入が行われて、どのような幅で死亡者数を想定したらいいかということです。
○西浦参考人 病原性が異なる場合なのですが、まず一つ言えることは、2009年以外に、感染者数のベースラインがあるデータが、残念ながらないのです。ですので、ある程度の恣意性を持った上で、どこまでを私たちの想定と考える中で、何を想定内にするかということは、一回議論しておかないといけないことだと思います。
 その中で、シナリオ分析を幾つかすることによって、死亡者数が、抗インフルエンザウイルス薬の、特に集団的な投与によって、どれぐらい死亡を防ぐことができるかという議論は可能になるとは思いますが。
○庵原委員 すみません、教えてほしいのですが、素人で申し訳ないのですが。後ろから2枚目の、黄色の表のところで、0.005というパーセントは、2009年の日本の死亡率を入れられたということでよろしいですね。
○西浦参考人 いえ、香港での全感染者数中の死亡者数の割合です。
○庵原委員 香港のデータですか。
○西浦参考人 はい。
○庵原委員 そうすると、これが実際に先生が出されたその数字と、香港の実数の数字との誤差は、ほとんどなかったということですか。先生が出されたのは、数理モデルから出された数字ですよね。
○西浦参考人 香港での推定死亡者数と観察死亡者数の両方を基に、この0.005というのを計算しています。0.005は、超過死亡者数を使った場合なのですが、香港の実際の観察値を基に計算した数が、この0.005です。
○庵原委員 0.005ですね。そして、今、実際に出された赤の数字のところが、年齢群ごとに出ていますが、この数字は、実際の香港の数字とほとんど誤差がない数字で、計算式で出てきたということで解釈してよろしいですか。
○西浦参考人 香港の数値は、香港の年齢構成などがあって、また違う数理モデルの結果なのですが、これは、香港で推定した感染時の死亡のリスクを日本の年齢群のある人口構成に外挿することによって得た推定値です。
○庵原委員 分かりました。そうすると、この数字が、日本の死亡者数の実数の数字と、どこまで一致しているわけですか。実際に、2009年のパンデミックのときに、日本が何人死んだとか、死亡者数は分かっていますよね。
○西浦参考人 はい。
○庵原委員 しかも、年齢構成も分かっていますよね。その数字と、先生が出された数字は、どこまで一致していて、どこまでずれているかという、そこの検証なのですが。
○西浦参考人 確定死亡者数の分布は得られているのですが、それは、子供で少し過少評価をしているのですが、成人では、それほど変わらないです。一つ大きな違いは、高齢者でのたくさんの死亡です。これは、香港のデータは超過死亡を使って計算をしているので、こういう結果が得られています。
○押谷委員 私の意見書も添付されているのですが、簡単に説明すると、そもそも何のために被害想定を出すのかというところの議論が必要なのだと思います。決して我々はピンポイントで、占い屋のように、何パーセント死ぬということを予測することが目的ではなくて、対策を立てるために被害想定をどう考えるかということなのだと思うのです。そのためにどういう被害想定を考えていく必要があるのか。
 もう一方で、過去のパンデミックを見ても非常にバリエーションがある。2009年のものから1918年のものまで、非常にバリエーションがある。この辺りを予測することは不可能なのです。実質上不可能なことで、ただ、何も予測値を出さずに、何も考えずに、何も想定せずに対策をしろというのは無理なので、そういう意味での被害想定というものがあるのだと。どんなものが来るかということは、我々には全く現時点では分からないという前提の下に、被害想定は考える必要がある。対策を立てるためにどういうことを考えるのか。
 もう一方で、これが非常に大きな問題なのですが、我々が持っているデータというのは、西浦先生が言われたように、かなり確実なデータがあるのは2009年しかなくて、ある程度のデータがあるのは1918年までしかないと。それ以前のものは全く我々は知らないというのが、我々の最大のリミテーションなのです。そういう中で、どういうふうに考えていくかというと、この被害想定をめぐっては、いろいろな意見があって、いろいろなことが言われているわけですが、非常に重篤なものを想定することは、もちろん必要だし、1918年を超えるようなものが起こり得ることは考えなければいけないのですが、一方で、そこの部分は、我々がデータを持っていない。10%になるのか20%になるのかと言われると、どこまでいくのかというデータは全く存在しない中で考えていかなければいけない。そうすると、2%などと言っている致死率は、少なくとも1918年、あの致死率も正確に分かっているわけではありませんが、ある程度想定されている。ただ、過去の歴史の中にあるもので、そう言うと、逆に、特に臨床の先生方に、今の日本ではそんなことは起こらないと言われるのですが、こういうことが起こると言っているわけではなくて、このくらいの致死率を持つパンデミックが起こり得るということを言っているのです。その対策をする上で考えなければいけないことは、これをどこまで下げられるか。抗インフルエンザ薬や、それ以外の対策、いろいろなことをやって、2%や、もっと高い可能性もある致死率をどこまで下げられるかということを考えるのが、対策を考える上での被害想定なのだと思うのです。実際に起きたら、そんなこと起こるはずがないじゃないかという意見を臨床の先生たちはよく言われるのですが、そうではなくて、いろいろなことをやっても、決して致死率はゼロにはならないし、死亡はゼロにはならない。2009年のときにも、日本でも200人近くの人が実際に亡くなっているわけです。そういう事実を踏まえた上で対策を考えなければいけないと、基本的なところとして私は思っています。
 事務局が作られた資料の3にある、現在の行動計画などに使われている致死率ですが、ここで問題なのは、致死率などの問題ではなくて、実際に対策を考える上で必要な被害想定が、ここに書いてあるように、非常に曖昧なというか、これまでバラバラな計算方法で計算されてきたということが問題なのだと思います。特に、都道府県の人たちなどと話をしていると、やはり、ベッド数をどのくらい確保したらいいのかなどということを質問されるのですが、ここに出されている入院患者数は、アメリカのCDCが作ったフルサージ、フルエイドに基づいていて、これはアメリカの医療データ、アメリカは何箇所かの場所で血清インフルエンザの、かなり詳細なデータを取って出してきたデータに基づいているのですが、先ほど西浦先生が言ったように、日本の受療行動は全く違いますので、それに基づくものではないということが大きな問題になってくるのだと思うのです。その辺りの、被害想定はあくまでも対策を考える上で必要なもので、そのために何が必要なのかを考えていく必要があるのだと思います。
○岡部分科会長 ありがとうございました。他には何かありますか。
○田代委員 この問題は、もう10年ぐらい前から新型インフルエンザ対策のいろいろな会議で出てきているわけですが、今、押谷さんが言われたように、我々は1918年のスペイン風邪を最悪と考えていること自身が、そもそも一つの大きな問題だと思います。前回のガイドラインの意見書についても、最悪の場合は、一応現時点では、H5N1だと言っているわけです。そういうことを最初のイントロに書きながら、この致死率2%でどうのこうのという数字は、岡部さんもよく覚えていると思いますが、10年くらい前に、仮にこういう数字をフルエイドに入れた場合にこうなるということで、その後に、フルエイドそのものはかなり批判されているわけです。そういうことで、「仮に」というのがどんどん飛ばされていって、これが最悪だというふうにして独り歩きしているというのは、非常に問題があると思っています。
○岡部分科会長 他に御意見はないでしょうか。
 西浦先生に最後にお尋ねしたいのですが、本日お聞きになったような、日本の今の対策をやっているところに、先生のモデルを使ってどう反映していけばいいか、あるいは、こういう今までの日本の対策について、どういう御意見を持っているか、よろしければ少しおっしゃっていただきたいのですが。
○西浦参考人 被害想定というような、いわゆるシナリオ分析なのですが、シナリオ分析がある意義は、押谷先生がおっしゃったとおりで、何らかの強いコミットメントのある目的があるのです。こういうものが、特に英国と欧州を中心として頻繁に使われている用途は、医療体制を整備するということが、その一つです。入院患者数がどれくらいになるという問題だけではなくて、例えば全身管理の要る患者さんが全国でどれくらいの数になって、それは、どこで管理されないといけないのかだとか、呼吸器の管理が必要になるときに、どれくらいのハードなバックアップがあるかというときに使えるものが、シナリオ分析だと理解しています。それに関して、ある程度精緻な議論ができるように、観察データを使って、これからもっと具体的に、本当に流行途中に観察されるようなデータに近い分析がやられないといけないなと思います。また、シナリオ分析をする上での想定で、こういうシナリオ分析のときは被害規模の決め打ちをするのですが、そのときの最大値の問題を何度かこの場で議論いただきましたが、それも、目的に応じて、例えば入院患者数に関して、あるいは、重症患者の全国の数に関して、実際に観察された値に、あるいは、その目的としてレスピレーターがどれくらい必要かという目的を考える上で、現実的な値をこれから議論していかなければならないとは考えます。
○岡部分科会長 ありがとうございました。そろそろこれも議論を止めておきたいと思います。どなたか御意見がありますか。どうもありがとうございました。後で総合的な議論ということでやりますが、最後に残されているのが、「その他」のところで、埋葬・火葬があります。これについて御説明ください。
○佐々木室長 資料7をお願いします。資料7は「新型インフルエンザ発生時の埋葬及び火葬」です。これに関しては政令・告示、行動計画、ガイドラインにも関係がある事項です。
 資料2ページで、現状の墓地、埋葬法の流れ図です。埋葬・火葬を行うには、区市町村長の許可が必要で、これは死亡届の届出地の市町村長に対して行うということになっております。資料3ページで、特別措置法で、埋葬・火葬を円滑に行うことが困難なとき、緊急の必要があるときに、例えば遺族が死亡届を提出した後、遺体を死亡届の届出先でない市町村に運んで埋葬・火葬する場合の特例です。
 4ページで、こちらは埋火葬許可の特例です。通常であれば、市町村長の発行する許可証が要るわけですが、やむを得ない、困難な場合に、市町村長の発行する許可証がなくても、例えば図にも書いてありますが、死亡診断書等によりまして、埋葬・火葬をすることができるという特例です。
 最後、5ページで、非常に大規模な感染で死者が多数発生したという場合です。なかなか埋火葬が進まないというような場合に、都道府県知事が埋火葬を行うということで、その場合に市町村長に委任をすることができるとしています。以上の場合の取扱いについて特別措置法の関係で対応が必要になっています。以上です。
○岡部分科会長 ありがとうございました。ここのところは何か御意見はありますか。
○坂元委員 大量に死者が出た場合、例えば自治体、市町村を超えていわゆる火葬等が行われた場合、御存じだと思いますが、火葬料金というのは各市町村ごとに設定されていて、市町村以外の場合、比較的高額になるように設定されている自治体もありますので、例えばこういう政省令の中にそういうものが書き込めるかどうかというのが私の素人的な質問ですが、その辺の問題に関しても配慮していただかないと、恐らく各市町村の料金条例の中にそういう項目がない所もあるのではないかと思われるので、是非御配慮いただければと思います。
○岡部分科会長 よろしいですか、事務局。宿題となりますか、今すぐに答えるのではなく。
○伊藤課長補佐 今御指摘いただいた火葬場の料金の件は、政省令に書くことは、法律上は想定はしていませんが、そのあり方については検討させていただきたいと思います。
○岡部分科会長 実際の混乱を避ける意味では、そういったようなことも必要なので、ガイドラインの辺りまでは、考えておいていただければと思います。どうぞ、田代委員。
○田代委員 この火葬・埋葬の話で、基本的には火葬にするという前提で、今の話があったと思います。東京都のパンデミック対策では、死体を袋に入れて仮埋葬するというようなことも計画されているわけです。これはいろいろな数字から火葬のキャパシティを超える可能性があるとのことで考えています。そういうようなことも全国的には検討されていますか。
○伊藤課長補佐 東日本大震災のときは、火葬場の能力が追い付かずに一時土葬をし、その後にまた掘り起こして火葬を行っております。今回の特例法では、56条2項で、火葬場の能力が追い付かなくなったようなときは、都道府県知事が一時埋葬を行うというような措置も講じているところです。
○櫻井委員 56条の2項は、ちゃんと詳細を検討してきたわけではないですが、一種の警察規制かつ即時強制ということになりますか。死体は財物扱いになりますか。法律的なところで法的性格を教えていただきたいのですが。都道府県知事が正に公衆衛生の観点等から埋葬ないし火葬を自分で行うという制度でいいのですか。
○伊藤課長補佐 都道府県知事が埋葬ないし火葬を自分で行うことについては、先生がおっしゃるとおりです。そのまま放置しておくと公衆衛生上の問題が発生するような場合に、都道府県知事が行うことができるというものです。
○岡部分科会長 他に御意見はありますか。今のこの論点はこれでいいということでよろしいですか。更に自治体のほうではシミュレーションを重ねていかないといけないところだと思います。
 では、少し時間を残してありますので、総合的な討論で、今までのことを踏まえて、御意見を頂ければと思います。小森委員。
○小森委員 そもそも論で恐縮ですが、今日も予防接種体制、サーベイランス、弱者対策、水際、被害想定等、火葬に至るまで、いろんな角度で一応縦割で話をしたわけです。しかし起こることは全部一緒にやってくるわけです。特に予防接種は重要でありますが、当然そこに想定される、例えば坂元委員は、川崎市全員の方が予防接種をされるという想定で一応されたわけです。そこにもいくつかの前提条件があって、医療者が全て健康であるという状況、様々な仮定で、あり得ない状況・条件でされて、しかも35%程度3か月働きづめ。しかし実際には、どんなに高病原性であっても、更に重篤な患者さんがいらっしゃるわけです。
 一方で、医療関係者は比較的先に先行接種されるとしても、例えばBCPは最大40%欠勤されるというようなことを想定しながら作られていて、何よりも、接種よりも治療が大切ですから治療に専念をする。他の疾患を除いてでもです。新型インフルエンザ等疾患に対する治療のほうが優先されるわけですから、現実に予防接種体制においても全員接種をする、しかも3か月以内ということは、想定して考えて数字を出すのはいいですが、結果としてはこれはできないという結論しかないわけですよね。超過死亡数で議論をするのはもちろん大切なことだと思いますが、SARSのように現時点では治療薬が全くない、あるいはそれ以外の疾患に対するようなことを踏まえて、あるレベルではこうしましょうと。
 先ほど坂元委員も心配されていたように、政府がある程度行動計画、ガイドラインを決定しますと、このような大規模な問題は、市町村、行政、医療関係者その他様々な形でシミュレーションを行ってトレーニングをする、訓練をすることがないと、現実にはできない。となると、その時点では全員接種だけれども、それができればそうですが、現在の医療レベル、現在の医療の介入において、更に西浦先生のような方にシミュレーションも様々行っていただいた上で、このレベルの訓練をやってくださいということをやらないと、やりようがない。恐らく全員に接種ということは、あり得ないわけですし。ここはリスクマネージメントしているわけで、訓練をすることになると、やはりクライシスマネージメント観点で、実際起こったときにどうするかということで訓練をするわけです。そこのギャップが、一方で仮想、一方で縦割でやると、それなりに結論が出たかのように思われるけれども、実際には全部のことを一緒に行っていくという中での議論をしておかないといけないなと強く感じていますので、是非、またよろしくお願いします。
○岡部分科会長 他にありますか、今の関連で坂元先生、その後に河岡先生。
○坂元委員 今、小森先生のおっしゃったように、実際に一部の医師会の先生に見ていただいたら、これ本当にできるのといわれました。非常に大変なものだと思います。当然、予防接種を打ちつつ、患者さんも発生してくるので、先生方が本当に診療所を開けられるかどうかという問題点と、先生方を長時間集団接種に拘束した場合に、そこで発生する通常診療ができないことからくる医師の損失があります。先生方は診療所で患者さんを診ないわけですから、かなりの減益が生じると思います。その場合はどうするか。いろいろな問題があって、本当にこれは単なるたたき台であって、恐らく市町村によっても、かなり状況が様々であると思います。真剣に143万人全員に接種をやったらこうなりますというかなり極論的なデータであることは承知しておりますので是非、たたき台に使っていただき、それぞれの市町村で工夫していただければと思います。解決しなければならない課題が多いことは十分に承知しております。
○河岡委員 2点あるのです。一つは水際対策です。意見です。私個人的には、水際対策が有効な本物のインフルエンザパンデミックはないと思っていて、水際対策が効くのは、多分パンデミックもどきしかあり得ないと思うのです。1点目の意見です。
 2点目は、先ほどの被害想定です。これは田代先生が言われたように、スペイン風邪が最大の被害だと思い込んでしまうのは、結構危険かなと思います。西浦先生に分かりやすく説明していただいたので、数理モデルの限界と有用性というのが分かりました。それで思いましたのは、結局パンデミックが起きたときに、いかにリアルタイムにデータが取れるか。それがパンデミック中に使える対策というか、使えるのかなと思いました。そのためには、いかにリアルタイムに情報が把握できるか。2009年のときは大変でした。当然、現場が大変だから、なかなかそういうデータが来ないわけです。いかにそれを手に入れるかと思いました。
○岡部分科会長 他には。
○押谷委員 今のリアルタイムの話です。これはWHOでもずっと議論してきていて、西浦先生も参加されているかもしれませんが、2009年以降、モデルをやっている人たちがずっと、どうやってリアルタイムにそういう推計をしていくのかを議論してはいるのですが、なかなか解決策が見つかっていないというのが現実のところだと私は理解しています。こういうことは日本でもやっていかないといけないし、先ほど話が出ていましたが、結局、2009年のときにやはり我々はきちんとした日本のデータを解析することができなかったと。十分に解析できなかった反省に立って、サーベイランスはデータを集めることが目的ではなく、データをいかに解析して、それを対策に活かしていくかなので、そういう意味でのサーベイランスというものを、やはり構築していく必要があると思います。
 もう1点、今日の議論の中で、サーベイランスもそうですし、弱者への対応とかもそうですが、やはり現場、特に市町村の人たちがやらなければいけないことというのは非常にたくさんあると思います。市町村といっても様々というか、きちんとできる所は非常に例外的だと思います。岡部先生と坂元先生がいらっしゃる川崎市のような所は、もう例外中の例外で、ほとんどが何もできない所です。政令市はある程度はできるかもしれませんが。政令市でもきちんとできない所も多分あります。政令市以外の市町村になると、もうほとんど何のキャパシティもないと。こういう所をどうやっていくのか。いくらこういうガイドラインを書いても、結局絵に書いた餅になってしまう。実施する体制がなければ、絵に書いた餅になってしまう。
 それをやるのは地域の人だと思います。その体制作りに全然国も取り組んでいません。プレパンデミックワクチンとか抗インフルエンザ薬の備蓄にはたくさんのお金が使われていますが、その地域のキャパシティビルディングというか、キャパシティをアップしていくような、そういう対応というのは、私が知る限り全くやられていないと。この辺をどうするかということが、2009年のパンデミックの後の提言の一番最初にも、そういう体制を構築することが書いてあります。一番最初に書いてあることが全く実施されていないのが現状でないかと思います。
○岡部分科会長 ありがとうございました。そろそろ時間ですので、今日の議論はおしまいにしたいと思います。私にも一言、言わせてください。実際にどういうような状態が最もおき得るのかは全く分からないところで、特に西浦先生も死亡ということを一つの目安のキーワードにしていますが、実際は入院数がものすごく多くなり、その対処で恐らく現場は非常に混乱するだろうとも思います。そのときに大切なのは、私は情報だと思います。2009年のときのサーベイランスがきちんと情報提供していなかったと言うと、私は感染症情報センターにいたので非常に残念である力不足であったと思うところでもあるのですが。そういう情報のシステムがきちんとできていなかった。あるいはかなり努力はしていたものの、そういうことを十分に分析する力と人もなかった、お金もなかったといったようなことがありました。そういうようなところをきちんとやって、特措法というのは、あるものに対するモデルであって、これをきっかけにして感染症対策であるとか、サーベイランスであるとか、治療であるとかのバックアップに使えるものにしていただきたい、というのが私の願いです。感想めいたことを申し上げました。
 今日いろいろ議論いただき、課題もまだまだ残り、しかし全て解決できるわけではないので、毎回言っていますが、今回、例えばあるガイドラインか何かができたらそれでおしまいではなく、それからステップアップしていく必要があると思います。
 恐らく今日の議論を参考にして、ガイドラインの中間報告といったような形になっていくと思います。今日のところはそこに留めておき、次に議論をもっていきたいと思います。今後の予定等を事務局、お願いします。
○佐々木室長 次回の分科会は、これまで様々御議論いただいたことを踏まえ、取りまとめたような形で資料を提出し、御議論いただきたいと思います。次回の日程等については、後日また事務局から御連絡をさせていただきます。本日は長時間にわたりありがとうございました。
○岡部分科会長 どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 新型インフルエンザ等対策有識者会議 医療・公衆衛生に関する分科会> 新型インフルエンザ等対策有識者会議医療・公衆衛生に関する分科会(第4回)議事録

ページの先頭へ戻る