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2012年8月2日 独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第15回)議事録

○日時

平成24年8月2日(木)9:00~12:51


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

永井部会長、猿田部会長代理、内山委員、花井委員、三好委員、和田委員

○議事

(以下、議事録)

○永井部会長
 それでは時間になりましたので、ただいまから第15回厚生労働省独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会を始めさせていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しいところお集りいただきましてありがとうございます。本日は、祖父江委員、本田委員がご欠席とのことです。本日の議題は、お手元の議事次第にありますように、国立国際医療研究センターと国立循環器病研究センターの個別評価を行います。
 それでは、国立国際医療研究センターの個別評価に入ります。最初に春日理事長からご挨拶と平成23年度における業務実績概要の説明をお願いいたします。

○国際医療研究センター理事長
 国立国際医療研究センター理事長を務めております春日でございます。本日、私どもの平成23年度の業務実績についてご審議いただけるということで、非常にありがたく思っております。本日のご審議の結果、あるいはご意見を踏まえまして、当センターのさらなる発展に努力するつもりでございますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料1-1「業務実績の概要」をご覧ください。1頁に概要がありますが、次の組織概要に沿ってご説明いたします。1に書いてあります当センターの理念を実現すべく、当センターには以下の組織があります。すなわち、7つの研究部と糖尿病研究センター、肝炎・免疫研究センターを有する研究所、4部門を有する臨床研究センター、771床のセンター病院、353床の国府台病院、国際医療協力局、国立看護大学校、それらをサポートする事務部で、常勤職員約1,580名の組織で、幅広い分野において業務を行っております。
 臨床研究センターについて少しご説明します。この臨床研究センターは名前のとおり臨床研究の活性化のために、法人化後病院と研究所の間に設置されたものです。疫学部門、医療情報部門、臨床研究支援部門、そして、平成23年度に開発医療部門が新しく設置されました。平成23年度は臨床研究支援部門と開発医療部門の2つの部門に関しまして重点的に強化に努めたところです。
 臨床研究支援部門には、治験管理室、利益相反マネジメント室、知財管理室に加え、臨床研究相談室、臨床研究支援室、臨床研究推進室という合計6つの室があります。臨床研究相談室はプロトコールの作成の支援、臨床研究支援室は倫理委員会、あるいは臨床研究認定制度の実施、臨床研究推進室は臨床研究のモニタリングを行っております。
 このような臨床研究支援部門に加え開発医療部門ですが、これも6つの室からできております。探索的臨床試験支援室、知財開発室、バイオバンク推進室、バイオバンク管理室、細胞調整管理室、細胞治療開発室を置いております。
 次に、基本構造についてご説明します。基本構造のいちばん下は高度先駆・総合医療となっておりますけれども、私どものセンターは1993年に総合病院を基礎としてナショナルセンターとなりました。そして、40余の診療科を持つセンター病院と肝炎・児童精神・精神科救急を特徴としております国府台病院の2つの病院を中心として、高度で総合的な医療を行っております。図にありますように、国際医療協力局、研究所と臨床研究センター、センター病院、国府台病院が連携しまして、臨床研究・橋渡し研究をするという機能を基軸的なミッションとしております。疾患としては、感染症、糖尿病・代謝性疾患、肝炎・免疫疾患を当センターのミッションとしております。感染症と関連しては、ACC、エイズクリニカルセンター、エイズ治療・研究開発センター、並びにDCC、ディディーズ・コントロール・アンド・プリベンションセンター、国際感染症センターがあります。また、糖尿病代謝性疾患と関連しては、糖尿病研究センターが、肝炎・免疫疾患と関連しては、肝炎・免疫研究センターがあって、センターという構造で、臨床と研究を一体化して行うように努力をしております。
 このような三層構造は、最初から描かれたものではなく、その時代の社会の要請というか社会の変化に基づいてできてきたもので、1996年のHIV・エイズ裁判の和解、あるいは2002年のSARSの勃発、その後の糖尿病の国内外での非常な増加、あるいは肝炎の各種の問題に応じて、このようなものができてまいりました。
 この中にはありませんが、運営について簡単に申しますと、私どもの法人には理事会の下に運営会議がありまして、2週間に1回、理事・監事の出席のもとに運営会議、理事会を開催しております。そして、企画戦略室、総長特任補佐などのスタッフが理事長をサポートしながら、理事会で全体の運営方針を決定するという運営形態を取っております。
 3頁で、「各部門の主な特色」ということで簡単に紹介いたします。研究所は人種を超えて最も重要な2型糖尿病関連遺伝子を同定したり、また、C型肝炎の治療に使われるインターフェロンの有効性を遺伝子診断により治療前に判定する方法、あるいは海外拠点との共同研究により、鳥インフルエンザ迅速診断キットの開発等を行ってまいりました。
 センター病院ですが、40余の診療科を有する総合医療を提供してまいりましたけれども、平成22年の9月にできました救命救急センターが非常に活躍しており、平成23年の救急車の搬送人数は1万人を超え、その数は日本でいちばん多いということになっております。また、研修医、レジデント、フェローからも非常に人気のある病院になっており、実際、医学部の6年生が最も研修したい病院として挙げる市中病院としては2年連続日本一の病院になっております。ACCは、我が国のエイズ治療・研究開発のトップ機関で、DCCは、特定感染症病棟を持つ国際感染症対策等の国家危機管理機関としての役割を果たしております。国府台病院は、肝炎・免疫研究センター、あるいは児童精神科医療の提供、精神科救急を特徴としております。
 4頁で、国際医療協力局です。国際医療協力局は国際機関/JICAなどとともに、国際保健医療協力事業を推進するために、毎年100名を超えるスタッフを海外に派遣するとともに、開発途上国から200名を超える研修生を受け入れております。国立看護大学校ですが、高い臨床看護研究能力を備えた看護師の育成に尽力しております。
 最後に、平成23年度の業務実績のポイントとして2点だけお話します。まず第1は開発医療部の設置です。6つの室を持つ開発医療部ですが、今後はこの開発医療部を中心に、1つは、エイズ、B型肝炎の創薬、2番目として、セルプロセッシングセンター、CPCを稼働して、例えば膵島移植等の細胞治療を行いたいと考えております。3番目は、6つのナショナルセンターが協同歩調を取りながら行うバイオバンク事業の推進を開発医療部を中心に行いたいと考えております。
 11頁で、経営の問題について触れたいと思います。私どもの経常収支は中期計画期間累計で収支相償を目指しておりますけれども、平成22年度に0.5億円、平成23年度に18.5億円、合計19億円もの経常損失を計上しております。平成23年度でなぜそのような大幅な赤字が出たかというのが、11頁の7のところをご覧いただけばお分かりいただけると思いますが、収益関係では、医療収益としては約14億円の増がありました。また、その他の収益の増もありましたけれども、運営費交付金が約10億円の減ということもあり、最終的には収益として6億円の増ということでした。しかしながら、費用関係で減価償却費の増。これは、平成22年の8月に新しい病棟が開かれ、その時に新しい高額機器も買い入れました。これの減価償却費の増が10億円、臨床研究診療体制強化などに伴う給与費が7億6,000万円、さらに材料費の増、医業外費用の増ということで、仕様の見直しや契約努力による委託費の減が約1億円ありましたけれども、結局は約24億円の増ということで、多額の経常損失を計上したわけです。
 もちろん、この問題は非常にシリアスな問題だと考えております。この問題については、我々役職員全員が危機意識を共有し、センター挙げて現在取り組んでおります。例えば、この4月からDPCが導入されたわけですけれども、DPCにかかる請求体制の確立、あるいはICU、HCUの強化、手術部門の強化、あるいは個別案件について、経営改善チームをそれぞれ立ち上げて取り組んでおります。
 以上が、平成23年度の業務実績の概要です。具体的な取組みに関しましては、担当の方から、それぞれご報告を申し上げます。以上でございます。  
   
○永井部会長
 本日の評価の進め方について、最初にご説明します。評価シートの個別項目を4つのグループに分けて、各グループごとに評価を行ってまいります。評価の指標となる「A」「B」「S」ですが、計画どおりが「B」評価である。つまり、「B」は計画どおりにうまくいったという評価です。中期計画を上回っていれば「A」評価、想定外の要因があって、かつ計画を大幅に上回っていた場合のみが「S」評価となりますので、ご了承いただきたいと思います。最初に項目1~3についての説明を10分間でお願いします。

○国立国際医療研究センター統括事務部長
 資料1-2の評価シートに沿ってご説明します。まず最初に、研究・開発に関する事項です。その中に3つの評価項目があります。その第1項目は1頁から3頁までに、臨床を志向した研究・開発の推進です。左側に平成23年度の計画、右にその実態を記載しています。
 4頁です。総合的な評定があって、臨床を志向した研究・開発の推進に向けて、その中で、シーズ発掘と臨床応用の推進に取り組むため、知財管理を含む開発医療部の設置と国府台病院の臨床研究体制の充実強化の実施を重点的に取り組んだところです。また、当センターのミッションに沿った研究・開発の推進基盤の充実や体制の整備などによる積極的な研究・開発の取組みは、中期計画を大幅に上回るものと言えると思います。それは数値目標のところに出てくるかと思います。
 共同研究を毎年10件以上の実施という目標に対して、共同研究17件の実施。また、開発初期の臨床研究の外部機関等との共同研究を毎年10件以上の実施という目標に対して、20件という状況です。また、研究・開発の基盤整備、研究所と病院の連携強化、さらには臨床研究推進のための基盤整備です。これは先ほど総長がお話になったように、基礎医学の成果を持ち込む「開発医療」の推進のため、開発医療部を平成24年1月に新設しました。これは早期・探索型臨床試験、バイオバンクの設置やその機能の充実、CPCを用いた治療法の開発を目指しています。
 その中で医療開発部の知財開発室が、研究所各所にヒアリングを行い、臨床応用が見込まれるシーズの洗い出しを行いました。また、一連の取組みとして、幅広い臨床研究を対象に多施設共同研究のデータマネジメントを行うJCRACデータセンターの充実強化を図りました。また、臨床研究の支援を行う体制として、患者レジストリーとして、Date Warehouseを活用する体制を整えました。さらに、国府台病院においては「臨床研究・治験センター」を設立。国府台病院が中心に行う臨床研究や治験を私撰する体制を整えました。
 これと関連して5頁は、医療クラスターの形成です。これは体制整備の一環として、肝炎ウイルス研究に必要な各種研究機器の整備、治療法の開発に向けた取組みを進めております。
 産官学等の連携強化の関係です。これは記載のとおり、早稲田大学理工学部との間で、研究者同士の交流会合の継続。平成23年度においては、さらに若手研究者の研究発表会の実施。産業界にも声かけして、「医療化学懇談会」を3回実施しています。さらに、平成22年度に行った理化学研究所との間で、研究シーズに関する意見交換会の結果、平成23年に新たに共同研究プロジェクトが1つ立ち上がったところです。
 研究・開発の企画及び評価体制の整備ですが、それぞれ5つの項目が並んでおります。その中でも評価に当たり、それぞれの専門家を外部委員として、国の研究・開発評価に関する大綱的指針に準拠するよう評価運営を行っているなど、それぞれの体制の充実を図りました。
 また、知的財産の管理強化及び活用の推進ですが、知財管理体制の整備とともに、外部リソースを活用した知財関連の体制整備を構築しました。具体的には、知財管理室長、知財の事務担当者を専属配置し、弁理士との契約をしました。それによって知財や各種契約に関するコンサルタント業務を依頼しています。
 6頁は、法人の保有する知的財産の必要性の検討や評価などの体制整備による取組みを4項目ほど述べています。こうした幅広い対応をとったこと。それから、先ほど実績が多大なる数値目標として、大きな項目を示している関係で、自己評価を「S」としました。
 評価項目2です。これについては7頁からですが、「病院における研究・開発の促進」の問題です。8頁は、国際臨床研究センターの体制強化として、開発医療部門や臨床研究支援部門の整備。倫理面審査体制や臨床研究を行う者の資質の向上に資する体制の整備で充実強化を図り、臨床研究の着実な進展に取り組んだところです。また、病院における研究・開発の促進で、数値目標を中期計画に沿って着実に進める一方で、臨床研究体制の整備を確立。さらにデータマネジメント機能で、中期計画を上回っているという状況です。これは具体的な数字が次のところに出てきます。
 中期目標の期間中に、治験申請から症例登録までの期間を平均60日以内という目標ですが、平成24年3月時点で、センター病院93日、国府台病院86.3日となり、合計で平均90.5日となっています。これは平成23年度目標値である100日を達成しています。
 臨床研究機能の観点から、病院内で円滑に実施するための基盤整備です。これは先ほどから申し上げている開発医療部の設置、さらにはJCRACデータマネジメント機能の充実など、体制を整えたところです。
 倫理性・透明性の確保の観点から、倫理審査委員会など、適正運営です。これは国の定める各種指針に必要とされる外部専門家を加えた審査を行い、記載してあるとおりの回数を開催しているという状況です。
 臨床研究を行うには、臨床研究認定制度に基づく認定です。これは講習会の受講を条件としていますが、これを受けることを必須としています。これに基づき、研究倫理に関する知識の向上を図るという点、実施している治験の情報公開等については、臨床研究認定制度を維持し、臨床研究に携わる者の資質向上に努めています。延べ1,216名が講義に出席しました。情報公開はホームページを通じて実施しています。これら取組みの目標を上回る観点から、我々は自己評価を「A」としました。
 評価項目3で、9~17頁にかけて記載しています。担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進です。18頁です。総合的な評定として、主要疾患などの感染症、糖尿病・代謝性疾患、肝炎・免疫疾患、国際医療協力などの各分野における研究・開発が着実に実施され、一部の研究は企業との共同研究に進展しました。特に、HIV/AIDSの分野では、臨床との綿密な連携による研究で、今後の治療法や新薬の開発に資する研究に取り組んでいるところです。
 これを数値的な観点から申しますと、平成21年度に比して、中期目標の期間中に論文誌での掲載論文数はセンター全体で10%以上の目標増加ですが、Wed of Scienceで検索される研究論文のうち、平成23年に出版されたものは199編です。これは平成22年度に比して24%の増加です。
 中期目標期間中に、臨床研究の実施件数並びに治験の実施件数の合計数が10%以上の増加という目標に対して、平成23年度に実施された治験を含む臨床研究は212件で、これは平成21年度に比して0.9%の減少です。しかし、臨床開発センター長に満屋先生をお迎えして、治験を含み臨床研究の充実を図る計画で、これから進めていくところです。
 以下の点については、主な項目だけを説明します。19頁の「疾患に着目した研究としての取組み」については、左に書かれている、発生機序や病態の解明につながる研究、これらの取組みについて2つ書かれています。インフルエンザ呼吸器感染症の重症化のメカニズムと治療法の解明、それから、免疫に関する疾患の病因解明の基礎となる自己免疫性貧血の新規治療標的の解明などの取組みを進めています。
 次に、疾患の疫学研究、実態把握。それに基づく研究を大きな項目で並べていますが、内容はご覧のとおりで、説明は省略させていただきます。
 20頁は、高度先駆的及び標準的な予防、診断、治療法の開発の推進として、4項目ほど並べています。3つ目の慢性肝炎の診断法として、宿主側因子としての測定法の確立、ウイルス側要因としての測定法の確立し、その両者を実際の患者で測定を行うなどのさまざまな取組みを進めています。
 次に書かれているバイオリソースや臨床情報を収集し、解析を行う研究を実施するなど、その有効な活用という形で書かれています。6つのナショナルセンターのバイオバンク運営協議会を設置して、収集・管理に当たる仕組みを検討しております。協議会の事務局を当センターが引き受けております。また、当センターとしては、生活習慣病や感染症を中心としたバイオバンクを構想しております。これに向けた体制を整備しているところを記載しています。
 21頁は、医薬品や医療機器の開発の推進ということで、治験の実態について5つ項目を並べています。その中で4つ目の、C型慢性肝炎の治療効果の簡易な判定手法に関する研究として、インターフェロン治療の効果予測などを進めているところがあります。続いていますが、その状況は省略させていただきます。
 22頁は、国際保健医療協力に関する研究、国際医療協力の効果的な推進に必要な研究として8項目並べています。こうした取組みを進めているということで、内容は省略させていただきます。
 最後に、国際保健のネットワークの強化に必要な研究ですが、これはベトナム・バクマイ病院との間で協定を締結して、共同研究を進めるなど、構築されたネットワークを活用した研究が進展しているという状況です。また、WHO協力センターとしての活動で、ネパールのマラリア対策と保健システムの関わりについて、調査を実施し、報告書をWHOに提出しているという対応です。これも目標を上回る状況がある関係で、自己評価を「A」としました。説明は以上です。

○永井部会長
 それでは、ご質問、ご意見をお願いします。

○内山委員
 論文数も多いですし、インパクトファクターの高い論文も出ておりまして、大変素晴らしい業績を上げておられると思います。一方で、救急車が1万台を超えており、日本一救急患者が多いということで、病院の中でたぶん苦労されていると思いますが、この辺の棲み分けについて、貴病院の中での工夫などがあったら教えていただきたいのです。

○国立国際医療研究センター理事長
 救急部に関しては、いろいろな臨床研究もかなり活発にやっていただいております。ですから、そういう意味では中である程度の棲み分けがあるかもしれませんが、かなりエネルギーのあるグループなので、両方頑張ってやっていただいているというところです。

○猿田部会長代理
 いまのに関連しますが、非常に臨床研究に力を入れられて、これだけやっていきますと、それをサポートする、例えばデータマネージャーとかといった方の体制というか、人数的にはどうなのですか。十分足りているのですか。

○国立国際医療研究センター理事長
 現状で100%足りているかどうかというのは難しい所ですが、今後は例えば治験ももっと活性化したいと考えており、先ほどお話した臨床研究センターの中の臨床研究支援部と開発医療部の人的なスタッフを今後さらに充実する予定にしております。

○猿田部会長代理
 CPCの管理とか、そのほかでも大変になりますものね。

○国立国際医療研究センター理事長
 そうですね。

○花井委員
 重なると思いますが、さまざま広い分野で、大きな病院の中でいろいろ研究がやられているということで、この臨床研究センターが開発医療という形で開始されたということは非常に重要だと思います。何名体制かというのが1つと、研究所と病院との橋渡しですが、例えば研究所のポストと病院のポストが兼任とか、人的な風通しの良さというか、そういうものは何か工夫されていますか。

○国立国際医療研究センター理事長
 具体的な話として、例えば臨床研究支援部という所がありますが、先ほどお話したように6つの室があって、室長とそれ以下に何人かいらっしゃるわけですが、例えば治験管理室長は病院のドクターが兼任しています。臨床研究相談室も、どちらに重きを置くかは別にして兼任、支援室の室長も兼任しています。推進室の室長は専任、利益相反マネジメント室も兼任。知財管理室は兼任ですが、1名専任の弁理士がおります。そのような感じです。
 開発医療部に関しては、探索的臨床支援室はまだ室長が決まっておりません。知財開発室は専任、バイオバンク推進室も専任、バイオバンク管理室も専任、細胞調整管理室は兼任、細胞治療研究・開発室も兼任という感じです。

○花井委員
 研究者の人数ですが、規模からいうと、もう少し研究スタッフがいてもいいような気もします。もちろんお金との関係があります。たぶん医療に従事する方々は医療収入でお金を生む。研究に関しては運営費交付金ということだと思いますが、研究スタッフなどは数としてはもう少しいてもいいような気がするのですが、今後の展望はありますか。

○国立国際医療研究センター理事長
 現在、常勤の研究者は78人です。これも独法化したあと、随分増やすことができて、上級研究員という5年任期の常勤の研究員を雇うことができるようになりましたので、そういう意味では、だいぶ改善されつつあると思います。大学などと違って若い研究者が非常にたくさんいて、ワンワンした熱気があるようなところがちょっとないので、そういう点がもう少し改善できれば、さらにいろいろな研究成果が出るのではないかと思っています。

○永井部会長
 ほかにいかがですか。それでは、次の4~6の項目についてのご説明をお願いします。

○国立国際医療研究センター統括事務部長
 次の項目は、医療の提供に関する事項になります。その中には3つの評価項目があります。評価項目4「高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供」ですが、資料は23~24頁にかけて、平成23年の計画並びにその実施状況が記載されています。
 25頁は、総合的な評定として、医療の標準化は、医療の品質改善という観点からの取組み。研究所と連携しつつ最新の知見を活用し、個々の病態に即する高度先駆的な医療の提供、併せて標準的医療の開発を実施しています。先進・高度医療は、先進既存技術の2件の実施のほか、新たに6件、これの申請に向けた取組みを実施しました。
 数値的な状況を申しますと、HIV・エイズ患者に対して、薬剤耐性や薬剤血中濃度のモニターに基づき、総合医療をベースに個々人の病態に即した医療を年間150例以上提供という目標に対して、年間682例を提供しました。
 高度先駆的な医療の提供という観点で申しますと、最新の知見を活用した個々の病態に即する高度先駆的医療の提供を行っております。具体的には、HIV・エイズに対する医療、新興感染症に対する治療法開発の推進などに対して、新型インフルエンザの入院患者を対象に重症例の検討を通じた新規治療法の検討などです。肝炎に対する治療法の開発はインターフェロン治療の効果予測などが含まれており、そういった取組みを進めています。
 「医療の標準化を推進するための、最新の科学的根拠に基づいた医療の提供」ですが、これについては、エビデンスに基づいた標準的治療が可能となるよう、図書館の電子ジャーナルの整備を進め、診療の合間に電子カルテのシステム上からジャーナル参照ができるようにシステムを実装して、医師の適切な診療実施を支援しています。また、医療の質の均質化を目指して、各診療科におけるカンファレンスの積極的な取組み、研究所の各種カンファレンスの開催において、病院医師の積極的な参加を促し、それによって研究成果などを吸収することに努めています。診療などの各分野において、標準的医療の開発に努めて、マニュアル化を進めている状況にあります。
 こうした取組みは数字的にもかなり高いという状況で、目標を大きく上回る観点から、私どもは自己評価を「S」としました。
 続いて評価項目5、26~30頁について、患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供です。32頁は、総合的な評定です。患者の療養環境の向上に向けて、患者の声を聞き、アメニティ改善に取り組み、安心で安全な医療の提供のため、医療安全確保、院内感染管理の制御を重点的に確実に取り組み、安全な医療の提供を実施しています。
 また、センター病院の総合医療相談室におけるMSW、看護師の増員など「医療連携ネットワーク」体制整備の充実強化、国府台病院においては、地域医療連携体制の充実により、医療相談及び医療連携機能を強化。それぞれ患者サービスの向上に積極的に取り組んでいるところです。それが数字的に現れているのが次に書かれています。セカンドオピニオンは年間180件以上を目標としており、平成23年度は231件と目標を大きく上回っています。
 また、医療安全研修会や感染症対策研修会を年3回以上開催。これについてはそれぞれ5回、6回ということで、前年の2倍となる延べ1,900名を超える参加があった。これらも計画を大きく上回る状況を示しています。また、医療安全に関するマニュアルを年1回改訂ということに関しては、平成24年3月ですが、ポケットマニュアルを改訂し、全職員に配布しております。
 患者の自己決定の支援という観点は、厚生労働省の通知に基づいて、カルテ開示請求があった場合には適切に開示を行っております。センター病院においては49件、国府台病院においては18件の開示を行っています。また、個人情報保護に関する委員会は、個人情報保護の研修会の開催、個人情報管理体制の強化などについて審議したところです。個人情報保護研修会については、記載のとおりの状況で周知を図ったところです。
 33頁は、相談支援を行うための窓口設置です。相談などを一体的に行う総合医療相談室の充実強化を図りました。これは平成22年度から専属の職員を配置しているのですが、それを常勤7名体制として、患者に対する相談支援の充実を図ったところです。
 患者参加型の医療の推進は、患者の視点に立った医療の提供を行う観点で、右のほうに書かれている患者満足度調査、これは患者の目線に立ち、病院におけるサービスの向上を図ることを目的として実施しています。患者からの意見を定期的に回収し、それによって「患者サービス推進委員会」において改善などの検討を行い、院内掲示並びに職員にはその周知、ならびに具体的な対応を行うことを実施しております。そういった中で取り組んだ内容として、クレジットカードの種類を増やしたり、入退院時のオリエンテーションを病棟クラークに行わせるなど、患者ニーズに基づき具体的なサービス改善に努めてまいりました。
 ボランティア活動については、記載されているとおりで、活動内容については[1]~[4]に書かれている状況のとおりです。
 多職種連携及び診療科横断によるチーム医療の推進については、チーム医療をHIV・エイズの90%以上の患者に提供する計画に対して、90.9%の患者に提供したという状況です。また、糖尿病分野及び肝炎とHIVの重複感染患者の医療においてチーム医療は、100%の患者に対して実施しました。また、国府台地区においては、各診療科の入院患者で「こころ」の問題を示した患者に対して、各科が対応した件数は、年間254例を数えました。
 34頁は「入院時から地域ケアを見通した医療の提供」ということで、切れ目なく適切な医療を提供できる取組みという観点ですが、これについては地域医療機関との医療連携の強化を図るため、幹部による近隣医療機関訪問、案内送付を精力的に行うことにより、紹介率、逆紹介率の向上に努めたところです。平成23年6月に、連携登録医428名に対してアンケートを実施しました。それによって外来診療医の問合せ一覧や放射線画像審査案内などを見直しました。
 地域に開かれた研修会や協議会の開催、情報の共有という観点で申しますと、院内研修会について、地域の連携医の参加を可能として、年1回連携医を対象とした研修会を開催しているところです。また、医療安全管理体制の充実の観点から申しますと、医療安全委員会を月1回開催し、これで事例の検証と対策の協議を行っているという状況です。その結果は、管理職が参加して毎月開催されるセンター管理会議で報告され、情報の共有に努めており、院内にもホームページを利用して掲載しています。
 院内感染対策のための院内サーベランスの充実などについて、積極的な取組みはどうなのかという観点ですが、院内サーベランスを実施し、院内感染対策委員会において報告するとともに、毎週1回、病棟などのラウンドを通じて改善を図ってきました。また、院内ホームページにマニュアル改訂情報、サーベランス結果などを掲載して、情報共有と職員教育を実施しています。
 医療安全に対する取組みの推進は、医療安全委員会が安全確保のための体制の核となって活動し、各種会議を通じて情報の共有を図っています。また、客観的資料などを用いた医療の質の評価という観点ですが、医療の質の評価に必要な基礎データを取り出すための必要な医療情報システム環境を整備して、試行的な利用が始まりました。センター病院は、平成23年4月25日から27日に病院機能評価Ver6を受審して合格しました。こうした取組状況について、目標を大きく上回る点もあった観点で、我々は自己評価を「S」としました。
 次に、評価項目6、35~36頁に「その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供」という観点で記載してあります。37頁は、総合的な評定です。当センターの特色の1つである総合医療を基盤に、全科的総合救急医療及び精神科救急医療の提供を積極的に実施しました。また、国際感染症である黄熱病予防接種の実施など、感染症に係る機能を十分に活用した医療の提供を引き続き実施したものです。さらに、総合感染症後期研修プログラムでレジデントなどの医師を受け入れ、院内感染症コンサルテーションに関する研修を実施し、医療提供体制の整備を図りました。
 また、数字的な観点で申しますと、国府台地区において、精神科救急病棟入院患者における重症身体合併症率を5%以上という目標に対して、実績は10~64%となり、平成23年度計では34.7%となりました。
 救急医療の提供ですが、三次を含む全科的総合救急医療については、センター病院においては、平成22年9月から救命救急センターを許可され、三次救急搬送患者は、平成21年の30~40%増、月100件を超えるようになりました。また、全救急搬送患者も前年度に比して7.6%の増加、月約1,000件の搬送を受け入れている状況です。平成23年度全体では1万1,695件の救急搬送を受け入れ、平成22年度を大きく上回る状況です。
 次に、国際化に伴う必要となる医療の提供は、国際疾病センターにおいて、海外渡航前健診とワクチン接種などの渡航相談及び帰国後の疾患治療を実施しております。具体的には黄熱ワクチン接種の実施医療機関として指定され、渡航者に対して黄熱ワクチン接種の取組みで、1,404名に対して接種を実施しました。加えて、他のワクチンの同時接種やマラリア予防薬の処方などを開始しました。
 こうしたことで先ほどの救急も含めて、取組みが目標を大きく上回るという状況があった関係で、自己評価を「S」としました。説明は以上です。

○永井部会長
 それでは、ご質問、ご意見をお願いします。

○三好委員
 32頁の数値目標でセカンドオピニオンが年間231件と。私は病院の事情に疎いのでよくわからないのですが、セカンドオピニオンという限りは、患者から要望があって、それに対応するということで、アクションとしては具体的にはどういうことになるのですか。いままでは断っていたが、積極的に受け入れたという意味合いなのか、何か特別に知らしめることによって増えたとか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 セカンドオピニオンというのは規定があって、通常の保険医療とは別に予約を取って相談のために来るというコーナーが設けてあって、そこに例えば遠い所から自分の資料を持って意見を聞きたいという予定で入ってくる患者ですから、普通の診療とは全く別枠でやっています。そういう形で決められた、その数が231件あったということです。それがその後、当センターでの治療につながるかどうかは全く別問題で、基本はそのままお帰りいただくということです。

○三好委員
 予約が増えるということに対して、病院側がとったアクションというのは特にあるのですか。数値目標に入っているものですから、評価をする上でそこが理解できていないと評価できないと思ったのです。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 部屋の割振りを増やしたとか、対応する事務担当を増やしたということで、特にそのために大きく宣伝しているというわけではなく、徐々に増えてきたということです。

○永井部会長
 ほかにいかがですか。

○内山委員
 医療安全体制について伺いたいのですが、院内、院外でこれだけ医療活動が活発に行われている病院ですので、平成23年度の計画で研修会を3回以上開催するという目標は小さいと思うのです。実際に参加者が、平成21年度、22年度はそれぞれ倍以上に飛躍的に増えている。これは全職員が対象だと思うのですが、医師は1人につき、平均何回出席しているかわかりますか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 正確な数字は、いま持ち合わせていません。それ以前がかなり悪くて反省をして、それぞれ3、4回と書いてありますが、その1回を同じものを、参加しやすいように2回あるいは3回やっております。それと、入口のチェックをIC付きのネームカードで行うようになり、確実に誰が参加したかをチェックして、3回やっても漏れた医師、要従事者に対しては、あとからDVDでそれを見るようにということで、なるべくたくさんの職員に行き渡るように努力をして、飛躍的に上がったということです。医師のパーセントとしては、正確ではありませんが、最終的には8割ぐらいまで行っていると思います。

○内山委員
 来年でもいいですが、医師の平均参加回数、ゼロの医師がどのぐらいいるかということ、それから、インシデントレポート数、そこにおける医師の割合もお示しいただければと思います。これだけ活発に救急車を受け入れて、活躍されている病院ですので、さまざまな問題は当然起こり得ると思います。このように業績を上げているのは素晴らしいことだと思いますが、さらに高く目指すところとして、医療安全体制の整備も是非お願いしたいと考えております。

○永井部会長
 いまのことに関係して、研修をするというのがまず第1段階で、次に研修に出ていない人をどのように管理するかという課題がくると思います。それは医療安全、あるいは院内のいろいろな研修もそうですし、研究費の問題があります。研究のいろいろな研修、この辺は必修になっているのですか、それとも講習会だけして、出席をとるという形ですか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 臨床研修に関しては、認定制度を設けて、講習会に2度出て、初めて認定証が交付されます。それを持っていないと臨床研究として申請することができないという形になっています。

○永井部会長
 医療安全などはどうなのでしょうか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 医療安全に関しては、いまお話したような形で、最終的にはDVD等で漏れがないようにするという努力をしています。そこに関しては、出ないとペナルティーを課するというところまでは行っていません。

○国立国際医療研究センター理事長
 臨床研究に関しては、モニタリング機能を今年度からかなり強めて、現在行っている臨床研究に関するレポートは7月ぐらいが締切りですが、何回か督促をして4~5カ月レポートが出ないと、以後は倫理委員会に申請できない。そういう意味のパニッシメントを今年度から始めました。

○永井部会長
 もう1つは外来の予約のことをお聞きしたいと思います。患者にいろいろなアンケートをとると、待ち時間ということを言われると思います。ほとんど予約制になっているわけでしょうか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 基本的には全部予約制です。その中で新患を診ているわけですが、新患担当の医師が新患の専門外来をやるとなると、なかなか全科にわたってできないものですから、通常の予約診療を行う間に新患がどうしても入ってきてしまいます。そういう中で、ちょっと待せる時間がありますが、今度、予約の時間を10分刻みに切り換えて、全体としてはだいぶ短くなってきていると思います。

○永井部会長
 10分に1人か2人しか入れないということですか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 はい、そうです。

○永井部会長
 そこは前よりも改善されているわけですね。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 はい。前のお話を聞いて、いろいろ話合いをしまして、小刻みにし大体10分だと1人が多いですが、2人入れている所もあります。

○永井部会長
 これがほとんど日本ではできていなくて、30分に10人入れたり、午前中の枠で夕方まで診察したりというのが、日本の現状なのです。是非、改善していただきたいと思います。あとはいかがでしょうか。

○猿田部会長代理
 これだけ救急が多いと、研修医は非常に満足しているのですか、どうなのですか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 2年間が終わったときに、いろいろな評価を与え、それからアンケートをとったりしていますが、初期臨床研修に関しては、一言でいうと、かなり満足しています。

○猿田部会長代理
 いちばん希望が多いですものね。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 特に救急に関しては、これだけたくさん救急車が来ますと、一晩に1例ぐらいは心肺停止が搬入され経験ができますので、すごい刺激になっていると思います。

○永井部会長
 ほかにいかがですか。

○花井委員
 エイズセンターですが、患者はどんどん増えています。そうすると、設立当時のスタッフから、スタッフの人数自体は増えていますが、患者の増加に比べると、頭打ちになっていて、それに対して患者はいま3,000人ぐらいですか、増えています。そういったところでスタッフの人的状況などは、不足しているとか。いまチーム医療が90%以上とご報告いただいているのですが、いかがですか。

○国立国際医療研究センターエイズ治療・開発研究センター長
 いま登録患者は3,000人を少し超えていますが、実際には、例えば年に250人ぐらい新患が来られると、100人ぐらいは地域連携と一緒に行って、安定した人には地域のクリニック等に行っていただくという連携を進めています。3,000人という数全部が毎回来ているわけではなくて、常時来ている方は2,000人弱という数字だろうと思います。もちろん患者数が増えてもスタッフはそのまま増えるわけにはいきませんので、少しずつ待ち時間等の問題はありますが、いま4診で行っています。外来が新設されるときに、また外来ブースを増やす予定ですので、いまは何とか凌いでいるという状況です。

○和田委員
 評価シートの29頁に、連携病院への挨拶回りについてということで、平成23年8月から10月にかけて44施設を訪問したと。紹介率がこうこう、逆紹介率がこうという数字が上がっていますが、これがどうして評価に関わってくるのかがよくわからないものですから、ご説明いただきたいのです。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 挨拶回りに行って伝えたことは、「当センターがたくさんの診療科を抱えているので、複雑な合併症をたくさん持っている方、つまり小さな病院、クリニック等で困っている患者さんに対し、こういうこともできます」というお話をしました。最近では感染症に関する連携をとると加算が取れるという制度が出来ましたので、感染症の管理に関して連携を取って、こちらから人的資源を提供し、講習会を開いたり、一緒に勉強会をするということで、一緒にやりましょうという新しいインフォメーションを持って挨拶に行きました。
 その結果、感染症絡みで連携をとりましょうと。それから相談に乗りたいとか、複雑な合併症を持った患者、高齢者がちょっと手に余ると、わりと早めに紹介してくれる患者もいて、そういうことで少し影響が出てきたかと思います。基本は日常の連携室、各医師個人のやり取りで成り立っているのがベースにありますので、挨拶に行ったから急にどうというわけではありません。新しくやったこととしてはそういう話をしてきました。

○国立国際医療研究センター理事長
 基本的に私どもは急性期の病院ですので、慢性期は地域のほかの病院あるいは診療所にお願いするということで、また患者が悪くなったら入っていただくし、良くなったら戻っていただく。地域の医療という意味では、そういう分担をしながら、お互いの環境を良くしたほうが皆さんにとっていいのではないかということでやっています。

○花井委員
 最後の収支のところで聞こうかと思ったのですが、HIVに関しては、全体の紹介率、逆紹介率で、実態としては高めの目標設定になっていると思いますが、病院全体とすると、29.82%が逆紹介率で、紹介率は69.41となると、もう少しあってもいいかなということです。医業収入の面では、急性期病院ですと、外来が多いことは悪いことではないと思いますが、最初の新患でそれほど急性期に馴染まない患者を受け入れていると、その分、収益にも影響してくると思いますが、病院全体としては、紹介率、逆紹介率の評価はどうなのですか。個人的にはもう少し高くてもいいかなという気はするのですが、院長のお考えとしてはどうでしょうか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 例えば、がんセンターとか循環器病センターとか、専門性の非常に高い病院ですと、どうしても紹介率が非常に高くなると思いますが、我々の所では40を超える科が外来を持っていますので、そこに紹介ではない患者、初診の患者も含めて来るというのは、どうしてもこのぐらいの数になってしまいます。
 そういうところで紹介を受け、実際に来られると、高齢者だったり、合併症が多かったりで、いろいろな検査を次々にやっていき、結局最初の紹介の疾患だけではなく、いろいろなことを診たりするケースがかなり多いものですから、こういう数字になるのかと思っています。当然紹介率をきちんと上げる、逆紹介も上げようということで、いま連携室も整備してきました。電子カルテも整備し、返事をちゃんと出さないと完了しない形になっていますので、逆紹介はだんだん増えてくると期待しています。

○永井部会長
 いまの外来患者数の問題ですが、ある方から説明を受けたのは、どんどん手術の患者が入ってくるような場合には、外来は減らしたほうがいい。ところが、科によってはまだまだそういうところまで行かない、知名度やそういう評価がまだ得られない所は、一緒に外来を減らしてしまうと、病棟とか手術が動かなくなってしまう。科によってその辺は随分違うようです。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 おっしゃるとおりだと思います。それぞれの専門家が外から見て、こういう医師がいるというのがパッと見えるような診療科が全部揃っているわけではなく、手術の数、外来の数にしても、紹介だけに絞ってしまうと、もっと少なくなるのではないかという科が、残念ながらまだあります。
 例えば、先ほどのセカンドオピニオンにしても、血液内科の多発性骨髄腫は、うちでは日本一の症例数を受けていますが、そこには非常にセカンドオピニオンが多いのです。全体では分散していますが、そういう特徴のある所があちこちに飛び出ているという形で、全体の平均値を上げているということと、そうではない科が平均値を少し下げているという要素はどうしてもあると思います。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは、項目7~11のご説明をお願いいたします。

○国立国際医療研究センター財務経理部長
 それでは評価項目7「人材育成に関する事項」についてをご説明申し上げます。評価シートは38~40頁、「評価の視点」は41頁です。
 41頁をお開きください。まずは、この項目について臨床研修医を105名、レジデントを144名、フェローを41名と、数多く受け入れました。実地に臨床医学を学ばせ、臨床研究に必要な知識の修得に取り組みました。初期臨床研修のマッチングでは、引き続き市中病院中全国トップでした。
 次に数値目標です。研修会を毎年20回以上開催することについては、延べ35回開催しました。具体的にはHIV・エイズで、エイズ拠点病院の医師・看護師を対象にした研修や出張研修を19回実施しました。糖尿病については、糖尿病診療の最新の動向を全国3カ所で5回実施をしました。肝炎については、拠点病院の医師・看護師、さらには相談員向けの研修を4回実施しました。精神疾患については、児童思春期精神保健研修などを7回実施しました。これらに加えて、輸入感染症講習会や国際感染症セミナーを実施するとともに、ワクチン教育の一環としてトラベラーズワクチン講習会を開催しました。数値目標を大きく上回りました。
 次に、高度先駆的な医療を実施できる、あるいは世界的な視野を持った人材育成といったことです。臨床医学と基礎研究を繋ぐ取組みとして、初期研修カリキュラムに6週間の「疫学・医学統計基礎講座」を義務付けました。さらに、後期研修カリキュラムに、研究所における3カ月の研修コースを設置し、若手医師が医学研究の基礎的な方法論を実地に体験できる機会を設けました。さらに、国際医療協力と感染症に軸足を置いた国際保健医療協力レジデント研修を提供し、3名が参加しました。さらに、世界的視野を持つ若手医師を育成するといった観点から、海外留学制度を整備し、平成23年度には1名を海外留学させました。
 以上により、評価項目7については、数多くの臨床研修医を受け入れたこと、多様なプログラムを提供していること、指導体制を強化していることなどから、自己評価を「S」としました。
 続いて、45頁の評価項目8「医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項」です。この項目の数値目標は、ホームページアクセス数を年間1,000万PV以上とすることです。これに対して、前年度の10%増の1,430万PVということで、計画を大きく上回りました。評価の視点としては、中核的な医療機関とのネットワークの構築についてです。ACC、DCC、糖尿病情報センター、肝炎情報センター、国府台病院精神科において、医療従事者向けの研修会や拠点病院との協議会の開催を通じて、ネットワークを構築し、高度先駆的医療あるいは標準医療の普及に努めました。さらに、児童精神科地域連絡会議を通じて、地域の医療・福祉・教育の専門機関が情報協力の事例を120症例蓄積しました。ホームページによる情報提供については、ACC198万件、DCC30万件、糖尿病情報センター19万件、肝炎情報センター67万件のアクセスがあり、国民、医療従事者に必要な情報を提供しました。
 以上により、評価項目8については、数値目標を大幅に上回っていること、医療機関としっかりしたネットワークを構築していることなどから、自己評価を「S」としました。
 49頁の評価項目9、国への政策提言、我が国の医療政策の推進等に関する事項です。この項目の数値目標が3点あります。まず、新感染症発生に向けた訓練を毎年1回実施すること。これについては2回実施しました。次に、技術協力のため、400人以上の専門家を派遣することについては、昨年は115名の専門家を派遣しました。2年目の累計では、227名となり、計画の56.8%という状況です。次に、開発途上国から研修生を800人以上受け入れることについては、研修生を202名受け入れました。2年目の累計は454名で、これも先ほどと同様、2年目で56.8%を達成しました。
 評価の視点です。公衆衛生上重大な危害への対応といったことについては、戸山地区の全職員を対象にした災害訓練を実施するとともに、災害マニュアルはNBCの災害対応マニュアルを見直しています。特に昨年度については、東日本大震災に関して、発災当日の午後9時にDMATを仙台医療センターに派遣し、その後、1隊を追加し、合計2隊を派遣しました。その後、3次派遣より生存者の保健医療支援派遣に変更して、内科医や薬剤師等の派遣人数を増やした医療チームを宮城県東松島市において展開し、引き続き平成23年度も派遣を実施しました。さらにこの過程の中で、在宅被災者に対する全戸訪問による健康支援調査なども行い、保健衛生対策や復興計画策定に寄与しました。また、東松島市との間で、復興支援プロジェクトに関する協定を結び、避難所支援に加えて、仮設住宅入居者の支援、在宅者支援、心のケア、災害マニュアル策定、保健従事者人材育成事業、これらについて支援をするということにして、現在も継続しています。一方、国府台病院からも引き続き石巻地区に心のケアチームを派遣し、被災者の心の諸問題を解決するため支援をしました。さらに、教育委員会との協力により、被災した児童の前向きコホート調査を今年度から、向こう10年間行うことにしています。
 次に、国際保健医療協力の人材養成です。これについては、ホームページを通じた情報提供62万件、ニュースレターの発行、年4回といったことで広報活動に努めています。また、国際保健医療協力を目指す若手人材に対して、週末を活用して、国際保健基礎講座を昨年度は10回開催し、253名の参加を得ました。さらに、開発途上国に対する支援については、ベトナム・バックマイ病院と締結している合意書に基づき、共同研究などを実施し、平成23年3月に年次報告書を作成し、ベトナム保健省に提出しました。さらに、ラオス・バスツール研究所、マダガスカル・保健省と新規にMOUを締結しました。一方、国内では長崎大学と連携大学院に関する協定を結びました。
 以上により、評価項目9については、数値目標を大幅に上回っていること、東日本大震災への継続的、重層的な支援を行ったことから「S」評価としました。
 続いて、52頁の評価項目10、HIV・エイズに関する事項です。ACCの業務については診療実績が入院患者数で8,000名、外来患者数で1万1,031名でした。さらに、外部から診療等に関する相談は、年間で2,446件に達しました。均てん化のための医療従事者に対する研修については、院内で7回、外部に出向いて8回を実施しています。さらに、患者に対する情報提供をまとめた患者ノートを8,000冊以上配付するとともに、研修で使用した資料についてもE-learningの形で自己研修ができるように情報提供に努めました。ブロック拠点病院との関係については、全国8ブロックのブロック拠点病院と厚労省の疾病対策課と合同でブロック拠点協議会を行い、ネットワークを構築しています。ブロック拠点病院の支援としては、医師が不足している北陸ブロックの石川県立病院に、月1回ACCの医師を派遣しています。さらに、名古屋医療センターと名古屋大学の連携を図るため、ACC/東海ブロックの合同カンファにも参加しています。
 以上により、評価項目10については、目標を上回るということで、自己評価を「A」としました。
 次に、55頁の評価項目11、看護に関する教育・研修です。数値目標はオープンキャンパスや公開講座を年3回以上開催するということです。これについて、看護学部オープンキャンパスを2回、研究課程部オープンキャンパスを3回実施しました。さらに、近隣医療施設に勤務する看護職員を対象とした公開講座、市民を対象とした公開講座をそれぞれ開催し、中期計画を上回る状況です。教育の充実といった観点では、昨年度の看護学部卒業生の国家試験合格率は、看護師が100%、助産師は1名不合格で85.7%でした。研究課程部においては、社会人に対する教育機会の拡大を図り、働きながら看護研究活動を継続できるよう長期履修制度を創設し、昨年度5名が初めて活用しました。研修部では、がん化学療法看護の認定看護教育課程を開催し、15名が修了しました。質の高い学生の確保といったことでは、看護学校においては、オープンキャンパスの開催、進学相談会への参加、ホームページの充実といったことで、定員100名に対して529名の受験生を確保することができました。
 研究活動です。臨床看護研究推進センターにおいて、研究相談、臨床看護研究19件の継続指導を行いました。その結果、1件が学会誌、2件が大学の研究紀要、6件が国内学会において研究成果を発表することができました。これらにより、評価項目11については目標を上回っており、自己評価を「A」としました。以上でございます。

○永井部会長
 ありがとうございました。何かご質問はいかがでしょうか。

○内山委員
 どれもすばらしい成果を上げておられると思うのですが、項目によっては、中期目標、中期計画の内容は順調にクリアしているものの、年度別にみると昨年より実績が落ちている項目もあります。今回の評価は、あくまで中期目標、中期計画の評価でなくて年度評価ですので、本当によくやっておられることは非常に認識しているのですが、この辺の仕組みだけご理解いただきたいと思います。ただ、よくやっておられると思います。

○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。いま、チーム医療で看護師の職務拡大が議論されているのですが、これに対しては、今後どう取り組まれるのか、何か議論されていらっしゃいますか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 チーム医療は、いろいろな場所でやられているわけですが、ACCなどもコーディネーターがいますし、そうでないところでも、感染管理、医療安全というところでは、まさにチーム医療の効果は出ていると思います。通常の診療においては、看護師の役割がだんだん広がってきて、例えば、退院の調整をするとか、入ってきたところのオリエンテーションなどは医師との分担がどんどん進んでいますので、そういう形で今後も進んでいくだろうと思います。そういう場所で大きく、全体としてチーム医療をどんどんやっていこうというキャンペーンはまだやっていませんが、各場所において、確実にそういうものが進んできています。医師のほうも、ここから先は看護師に任せようというのが、ずいぶん増えてきたり、カルテを記載する上でもお互いの役割分担がだいぶ出てきたり、それを併せて相談したりということになっています。
 あとは、病棟のスタッフステーションの中でルーチンにやることが、すぐに画面で規則が出てきたりするようになっていますので、そういうものをお互いに一緒になって見て、これから何を準備するとか、施行するということが、だんだんルーチンになってきているので、各場所においては確実にそういうことが、やらざるを得ない状況と言ってもいいのかもしれませんが、進んでいると言えると思います。

○国立国際医療研究センター(国府台病院長)
 ナショナルセンターの国府台病院として、肝炎・免疫センターがありますが精神科もあって、一般診療科もあります。チーム医療に関しては、いま先生がおっしゃるチーム医療というのは、センター病院の急性期病院と、いわゆる田舎の病院、国府台病院は全く違う形が必要になると思いました。いままで取り組んでいることは、いま木村病院長がセンター病院で行っているようなことをやっていますが、今後どう考えておられるかというご質問に対しては、いま国府台病院では組織編成というか、部門を変えようとしています。その中で結局、チーム医療の診療部門といったものが今後必要だと思います。
 医師、看護師、コ・メディカル、すべてが集合した形で、患者中心にしたチーム医療を国府台病院のような田舎の病院と新宿のセンター病院では、また違った形が必要です。それはナショナルセンターのミッションとして言えるかどうか私にはわかりません。病院部でそういうことを行うことは、先ほど花井委員がおっしゃったように、運営費交付金が入っていませんから、お金の問題などで非常にいろいろな制約がありますが、それを提言するという形ができればと考えております。

○永井部会長
 ほかに、よろしいでしょうか。

○国立国際医療研究センター理事長
 いまの先生のご質問は、非常に重要な点だと思うので、それを推進するなり、いろいろな実験的な試みをする場合に、ナショナルセンターでは私どもは唯一、総合診療と言いますか、非常に多くの科がありますので、そういう意味ではいろいろ先進的な、そういう意味でのモデルを作ったり、いろいろなトライアルはできるのではないかと思いますし、そういうものを行うには非常に適切な施設ではないかと思っています。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。では、残りの12~16の説明をお願いします。

○国立国際医療研究センター財務経理部長
 評価項目12です。58頁をご覧ください。「効率的な業務運営体制に関する事項」です。「評価の視点」に沿って説明します。ガバナンス強化を目指した組織体制の構築につきましては、センターの使命を果たすため、事務部門全体の効果的連携や総合調整を行う体制を検討し、本年4月から統括事務部を設置しました。さらに、病院内で臨床研究を円滑に推進するため、先ほどから話があります「研究支援部」の室長を新たに3名任命し、臨床研究センターの体制整備を図りました。部門の再編につきましては、本年4月からDPCを開始しています。これに向けて本年1月にDPC室を設置し、DPCのコーディングチェック、医師・看護師からのQ&A対応などによりDPC業務を強化しました。
 総人件費の改革について説明します。人件費については、人事院勧告に準じた基本給月額、業績手当の引下げを実施するとともに、技能職の退職後不補充などの効率化を行いました。これによって4,500万円強を削減しました。一方、平成23年度の総人件費は115.9億円で、これは平成22年度比で3.8%増となりました。これは、新興・再興感染症、糖尿病、肝炎等高度先駆的医療の開発・普及・提供などのための人材確保に必要なもので、当センターの使命を着実に果たすために、医師・看護師等の配置を行ったことによります。この機能により、糖尿病の病態解明や感染症対策を目的に治験、臨床研究の体制が強化されました。さらに、医療収益の面では242.6億円、前年度比6.2%増となりました。なお、この中で医療職以外の事務・技能職の人件費は平成21年度比で4.3%減と、効率化にも取り組んでいます。今後も技能職の退職後不補充、また、事務・技能職の人件費のさらなる縮減に努め、病院収支の赤字幅の縮減、外部研究員の獲得に努めて、説明責任を果たしたいと考えています。
 この項目については以上申し上げたとおり、目標を上回っているとして、自己評価を「A」としました。
 次に、評価項目13です。66頁をご覧ください。「効率化による収支の改善に関する事項」です。まず、当期総損失と繰越総損失について説明します。当センターの運営については、業務の特性を考慮した職員の適正配置、外部資金の受入れ、診療報酬基準の新規取得などによる収益増、また、材料費、人件費、委託費などのコストの縮減に努め、収支の改善を推進しています。しかしながら、昨年度においては、特に東日本大震災の影響等が考えられる受診抑制によりまして、患者確保は相当厳しい状況がありました。こういった状況を受けて、センター病院では患者層の分析を行いまして、個室料金や個室率の引下げを行いました。また、地域連携の強化に取り組み、入院患者の確保に努力をしました。国府台病院においては、入院基本料7対1を確保し、病院における医業収益は243億円です。医業収支率は98.2%で、計画の97.6%を上回り、14億円増といった状況でした。
 一方で、運営費交付金の減のほか、冒頭に総長からも話がありました、新棟の完成に伴う減価償却費の平年度化、診療機能の充実強化等に伴う人件費増といった費用増があり、経常収支率は94.6%で、計画を下回る状況になりました。欠損金は27億円を計上しています。今後は、診療報酬施設基準の新規取得、医業未収金の発生防止、医業収益の増加などに取り組むとともに経費の縮減に取り組みたいと考えています。
 さらなる収支の改善においては、センター病院における診療科別の経営分析を昨年度行い、それを踏まえて、外科系手術部門の強化、DPCの請求体制の確立、今年度からのICU・HCUの施設基準の取得に取り組んでいます。平成24年度は、それらの取組みに加えて、医師、看護師、コ・メディカル、事務といった総力を挙げて、運営体制、投資計画、診療報酬適正化など、経営改善に有効な事項に焦点を当てて、現在35のグループから成る経営改善チームを立ち上げ、センター一丸となって経営改善に取り組んでいます。以上が収支の状況です。
 次に、運営費交付金の執行状況です。これについては、退職者が少ない、研究課題が未了のところがあるなどで、89.3%になっています。
 給与水準・諸手当についてです。独法移行を機に、民間の給与水準、国病機構との均衡を考慮した給与カーブを採用するとともに、医長・室長以上の職員に対して、業績を反映した年俸制を導入しています。手当は、民間医療機関の給与実態を踏まえた手当、医師等の確保を図るための手当、独法に求められる能力実績主義を踏まえた手当としています。
 材料費の抑制の面です。医薬品等については、6NCでの共同入札により5,800万円の削減、落札者を交渉権者として価格交渉を行う入札方法へ変更したことにより2億3,000万円の削減。SPDによる在庫管理、在庫定数の見直しにより500万円の減。さらに、後発医薬品の利用促進等に取り組んでいます。これに関連する数値目標では、一般管理費の削減については、委託費の見直しなどによる費用削減など、経費の縮減・見直しを図り、平成21年度に比べて1億5,000万円、19.1%減少させ、中期計画に掲げる目標を達成しています。
 そのほか関連する数値目標として、医業未収金の比率の削減があります。医業未収金比率は0.090%で、平成21年度比0.038ポイント縮減で中期計画を達成しています。医業未収金対策としては、債務者の個別管理を徹底し、債務者の状況に応じた支払案内・督促方法の見直し、あとは関係者間での滞納者情報の共有、貸付制度等の対象者への案内の徹底、また、不良債権となり得る債権の特定、その解消、防止策の検討、法的な検討などに取り組んでいます。
 以上諸々の取組みにより、評価項目13については、経常収支率は目標をやや下回るものの収支改善に向けて考え得る対策を確実に講じているとして、評価を「A」としました。
 次に、評価項目14です。74頁をご覧ください。法令遵守の関係です。コンプライアンス室、監査室の設置、監事による業務監査、外部監査人による会計監査を行い、効率的・効果的な内部統制体制の構築に努めています。さらに、コンプライアンスの推進として、法令違反行為に係る内部通報、職員の苦情相談等の対応のために相談窓口を設置するなどに取り組んでいます。また、ハラスメントの防止の観点では、委員会の設置、窓口相談員の指定に加え、昨年度は職員の責務や教育・研修を規定した「コンプライアンス推進規程」を新たに施行しました。
 次に、契約関係です。契約事務手続に係る執行体制や審査体制については、契約方法等の適正性に関して、監事・外部有識者、あるいは契約に関与しない職員で構成する契約審査委員会を月1回開催しています。さらに、競争性のない随意契約、一者応札・一者応募に関しても、監事・外部有識者で構成される契約監視委員会を設置し、審査・評価体制の強化を図っています。契約監視委員会では、競争性のない随意契約42件、前回一者応札・一者応募となった契約37件についての点検も実施しました。
 評価項目14については計画を上回るとして、自己評価を「A」としました。
 次に、評価項目15です。79頁をご覧ください。外部資金の獲得については、寄附受入規程を制定して、寄附金の獲得を可能とする体制を構築しました。また、受託研究についても規程を見直しまして、前金払いから出来高払いとし、寄附しやすい環境に配慮した制度にしています。
 計画的な投資や固定負債の償還については、平成23年度は外部から新たな借入を行わず必要な整備を行いました。固定負債は確実に返済を行い、債務残高を減少させています。短期借入金、固定資産に係る計画は、平成23年度はありませんでした。
 施設・設備に関する計画では、戸山地区において平成23年度に前年度に引き続き旧中央棟の解体を行い、引き続き解体跡地に新外来棟を新築するなど、「新棟整備第2期その他工事」を本年1月に発注しました。教育研修棟整備工事も昨年9月に発注しています。国府台地区では、平成23年度に、肝炎・免疫研究センター及び病棟を前年度に引き続き施工し、本年3月に完成しました。引き続き、今年度に外来管理棟の準備工事に着手する予定です。
 以上により、評価項目15については自己評価を「A」としました。
 最後に、評価項目16です。85頁をご覧ください。その他主務省令で定める事項についてです。業績評価制度は平成22年度から導入しています。年俸制については先ほど説明したとおりです。あとは、ワーク・ライフ・バランスを図るとして、二交替制の導入に取り組んでいます。
 「評価の視点」です。魅力的で働きやすい職場環境の整備については、育児短時間勤務の導入、育児休業等の整備・周知により、女性が働きやすいよう支援を行っています。また、医師が本来の役割に集中できるよう、看護師や検査技師による採血の実施、薬剤師による処方の患者への説明、医師事務作業補助者の配置等による役割分担を進めています。
 アクション・プランについては、平成26年度までの中期計画達成において、「進化を目指して」と題し、新たな体制整備、基盤整備、さらなる努力、の3つの視点から中期計画等の具体化に重要な項目を重点アクションとして示し、すべての職員が主体的に業務に取り組み、当センターがさらなる進化を遂げ、より発展するよう、全職員に向け意識の高揚を図っています。職員からの意見聴取については、「提案箱」を設置し、広く有意義な意見を聴取しています。
 業務改善への患者さんの声の反映では、患者満足調査の実施、院内における意見箱の設置などにより、いただいた意見、指摘を参考として、アメニティの向上、診療時間の改善、処遇の向上など業務改善に取り組んでいます。
 以上により、評価項目16については自己評価を「A」としました。以上です。

○永井部会長
 それでは、ご質問をお願いします。

○猿田部会長代理
 最初のほうです。評価項目12、59頁の下のほうです。医療の安全について徹底されているようですが、病院長に伺いたいのです。医師から上がってくるインシデントリポートの数ですね、医師からはどのぐらい上がっているのでしょうか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 ほかの施設と同じようにやはり看護師からがいちばん多くて、医師から上がってくるのは、全体の5%位にとどまっています。

○猿田部会長代理
 いまそれが非常に問題になっています。各病院において、この頃、インシデントリポート、アクシデントリポートの、医師からの報告が少ないということでだいぶ問題になっているのです。その辺りは大体何件ぐらい月に出てきていますか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 正確な数は。月ですか。

○猿田部会長代理
 月です。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 月だと、おそらく100はいっていないのではないかと思います。

○猿田部会長代理
 医師としてですね。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 はい。

○猿田部会長代理
 100あればいいのですけれど、大きい病院は、4件とか5件しか出ていないのです。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 ちょっと、正確な数字は、申し訳ないのですが。

○猿田部会長代理
 非常に重要な問題なのです。看護師のほうは。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 圧倒的に多いです。

○猿田部会長代理
看護師のほうは自覚していても、医師のほうが、この頃だんだん無視しているということがあるのです。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 毎月やっております医療安全委員会では、結果において1~5段階に分かれて、それが全部出てきます。特に3以上に関しては徹底的に調査しています。それぐらいになってくると、医師も看護師も両方から出てきたりということもあります。けれども、医師のほうはやはり圧倒的に少ない。ほかの病院とそれほど違いはない。

○猿田部会長代理
 特にそちらは非常に忙しいですから、救急患者も多いし、大変な病院なのでどうかなと思ったのです。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 問題点に関してはおっしゃるとおりだと思います。今後も努めたいと思います。

○国立国際医療研究センター理事(国府台病院長)
 追加します。国府台病院では、先生のおっしゃるように、1カ月間に5~10ぐらいしか医師からは出ていませんでした。そこで対策として取ったのが、オーダリングから起こった時点ですぐに入れる。医者はペーパーを使っているとやはり難しいのです。この4月から、それをやり出しました。それはいい方法ではないかと思っています。

○内山委員
 看護師の勤務の二交替制を昨年の1月から一般病棟にも拡大したということでした。かなりお忙しい病院のようですが、二交替制で、特に夜間の問題などはないのでしょうか、教えて頂ければと思います。
 さらに、「二交替制を一般病棟へ拡大導入するなど勤務の多様性を」と書いてあります。その前の文章には、全部の部署が二交替制に入ったとあります。「勤務の多様性」が読み取れないのですが。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 センター病院のほうは、ほぼ二交替制です。ほぼというのは基本的に二交替制に移行しました。ただ、ある部分においては三交替制も残っています。それから、三交替を希望したり、短時間の勤務を希望したりということがありますので、かなり複雑な勤務態形を組んでいるのが実情で、私もどうやって決めているのかちょっとわからないぐらい複雑な式に基づいて采配しているようです。基本は二交替で、夜間、休み時間を置いて見ているということで、忙しい所もそれでカバーしています。

○永井部会長
 夜勤専属の看護師さんという希望者はいないのですか。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 非常に少ないです。やはり、出産後も子どもを保育所に預けて続けたいというのが非常に増えてきまして、日勤帯で、朝から午後3時、4時ぐらいまでがパターンとしてはいちばん多いのです。午後だけではいないのかと言っていますが、そちらも非常に少なく、特に夜勤だけというのは、ごくごく僅かになっています。

○国立国際医療研究センター理事(国府台病院長)
 うちのセンターは夜勤手当が非常に安かったのです。看護師を全国から集めなくてはいけないと、夜勤手当を上げる措置を今年から行いました。夜勤専属の看護師さんが来てくれないともたないような状況に、新宿のセンター病院も市川の国府台病院もなっています。もちろん、宿舎を新築したりいろいろな方策を考えてやっています。夜勤専属看護師を募集するというか、それを命名して募集はしていませんが、そういう方をどのように集めればいいかを考えて、どのような方法がいいか、いま対策中です。

○内山委員
 いずれも保育所は整備されているのですか。

○国立国際医療研究センター理事(国府台病院長)
 国府台病院にはあります。

○国立国際医療研究センター理事(センター病院長)
 私どもの所にもありますが、区の保育所の指定と同じになっていますので、全員が希望どおり、あるいは病院の都合で動かせるわけではありません。その辺は非常に問題です。

○和田委員
 いまお聞きして、また報告書を拝見して、当法人の主たる目的と言いますか、本来の目的については十分に努力されてきたことだと、それは素晴らしいことだと思います。しかし、評価項目13の数値目標は、「5年間を累計した損益計算において経常収支率が100%以上」という中期計画があります。読み方にもよりますが、5年間を累計した損益計算において経常収支率が100%、収支相償でなければいけないということに対して、既にもう27億円の繰越損失が発生してしまっている。平成24、25、26の3年間でこれを解消しなければならない。単純に割り算しても毎年9億円ずつ消していかないといけません。平成23年度は18億円のマイナスでしたから、9億円の利益を出すためには27億円改善しないと出てこない。それを向こう3年間続けないといけないぐらい大変な数字になっています。当然のことながら、総務省の独法評価の視点でも、繰越欠損がある場合にはその解消の計画を確認するようにということになっています。一体、当センターとしては、この中期計画を達成するための計画をきちんと持って、達成しますということを明らかにしなければならない。いまの段階では中期計画を達成できないという評価になってしまうと、先ほどの「S」「A」「B」「C」「D」のうち、どう見ても「B」以下という評価になってしまいます。この辺は、「医業費用の縮減に努めるなどの経営改善を推進し収支相償を目指す」という書き方をされていますが、これはやはり数値を持って説得性のある計画をしっかりお出しいただきたい。それによって中期計画が達成できる範囲のものかどうかを判断したいと思います。それをお願いしたいと思います。
 それから、さらに詳しく申し上げます。本日の資料1-6「財務諸表等」の中の26頁、「12.開示すべきセグメント情報」についてです。この箱の下から7行目か8行目に、「事業損益(損失)」という数字があります。左から、研究事業、臨床研究事業、診療事業と並んで、法人共通合計まで、いちばん右に全体が出てきています。この研究事業で5,400万円のマイナス、臨床研究で2億500万円のマイナス、診療事業は4億5,700万円のマイナス、教育研修事業で6億8,800万円のマイナス、情報発信で2,700万円のマイナス、国際協力事業で967万5,000円のマイナス、国立看護大学校だけは2,700万円のプラス、右から2つ目の法人共通は4億3,000万円のマイナス、これらを合わせて18億4,600万円のマイナスになったということです。6NCを拝見していますと、NCのあり方として、診療事業についてはほとんど運営費交付金が出ませんけれども、皆さんこの診療事業で効率化を達成して利益を出して、研究事業や臨床研究事業や教育研修事業など、本来は運営費交付金収益の中で賄われていればよいのですが、なかなかそうもいかないので、病院の診療収益の中からそれを賄っている形の所が多いのです。当センターでは診療事業も大きなマイナスになっていて、とても他のセグメントの事業を見られるような状況になっていません。このようなことも踏まえて、これを一体どのようにして中期目標を達成するのか、数値をもってお示しいただきたいと思います。

○国立国際医療研究センター財務経理部長
 先ほど資料説明でも申し上げたとおり、経常収支率の100%達成の状況についてです。経常収支は平成22年度の決算は5,400万円のマイナス、平成23年度決算においては18億4,700万円のマイナスで、経常収支のマイナスとしては2カ年の累計で19億円のマイナスです。当然、これについて我々はきちんと対応することは必要だと考えています。平成24年度については、先ほども申し上げましたが、センター病院でDPC算定病院への移行に取り組んでいます。さらに、外科系の手術件数増に昨年度から検討し今年度から取り組んでいます。また、国府台病院では新棟が10月から開設するなど、平成24年度はこれらを加味した年度計画にしています。先ほども申しましたが、2カ年の累積を踏まえまして経営改善チームを発足させています。平成24年度の計画に留まらず中期計画期間中の平成26年度までを見据えた長いトーンで経営改善に取り組むとして、病院の基本的な部分、診療報酬の部分など、諸々の収益、費用の関係から効果があると思われるものについて、医師、看護師、事務で総力を挙げて35の経営改善チームを作り、これを動かしています。この状況を踏まえて、平成25、26年度、中期計画中の収支相償を目指したいというのが、私どもの基本的な考えです。これについては、平成23、24年度の予算で中期計画等を上回った運営費交付金の削減もあり、これも含めて経営改善をきちんと進めることで、中期計画期間中で収支相償を目指す取組みをしています。

○和田委員
 そうしますと、平成24年度の年度計画の経常収支率は何パーセントになっているのですか。

○国立国際医療研究センター財務経理部長
 経常収支としてはプラス300万円で計画しています。プラス300万円ですから、3年間で対応することになると、平成24年度の計画も年度途中での変更なども含めてやらないと困難ではないかというご指摘だと思います。そのようなこともありまして、経営改善のチームをまずは立ち上げまして、実効の上がる経営改善をまず確認します。その結果、例えば今年度の上方への修正や、次年度以降の計画に盛り込むものが明らかになってくるのではないかということです。現在は経営改善チームを精力的に動かしている状況です。

○和田委員
 そうしますと、評価の現在の段階では、計画の変更、5年間で達成しますという計画を改定したものはまだ出てこない。それに向かって、いまその経営改善チームを作って努力しているところですという回答になるのでしょうか。

○国立国際医療研究センター財務経理部長
 当然ながら、厚生労働大臣から5年間これでこうやってくれと言われた計画に対して、こちらはこうやりますとお約束しています。いま2年間過ぎたところなので、我々としてはそれを達成すべく最大限の努力をすることが求められていると思いますので、それに向けてきちんと対応するという状況です。

○猿田部会長代理
 いまの和田先生の指摘は非常に大切なところです。要するに、中期目標に向かってのものがそのままいくのか、もう1回、例えば交付金のことも考えて中期目標を変えるかどうかなのです。そこは非常に重要な点ですから、どうお考えになっているのでしょうか。

○国立国際医療研究センター財務経理部長
 基本的には、私どもは中期目標を厚生労働大臣から示されまして、それを踏まえて、中期計画として5年間はこれでやりますという約束をしています。したがって、私どもからは、この約束をきちんと守りますとは言えましても、目標についてはなかなか言いにくいと考えています。いま我々が言えることは、中期計画で定めたことをきちんとやっていくということです。

○猿田部会長代理
 この点については、国としてはどうですか。というのは、最終的な総括をしなければいけないので、そこで問題になるのです。

○大臣官房参事官
 病院課長が国会対応中なので私からお答えします。いま、先生からご指摘いただいたのは、国際医療センターとして年度計画をどうするのかという問題があると思います。3年間で収支相償を図るためには、お示しいただいた数字を稼ぎ上げなければいけないのですから、それに向かって、平成24年度の300万円という数字をいじるのかいじらないのかということだと思います。その辺をしっかり回答いただかないと評価できない、というのがご指摘だと思います。

○国立国際医療研究センター理事(国府台病院長)
 これは、前総長の桐野総長が2月か3月に言われたと思いますが、運営費交付金をこれだけ下げるなどという約束は全くなかったのです。運営費交付金は1%ずつの減だということで、最初に目標が与えられたのです。それがこれだけの削減というか、このような形であれば、当然ながら、今後計画を変えなくてはいけないのではないか。普通に考えればそう思います。
 それから、先ほど和田先生が言われたことについてです。確かに、がんセンターやほかのところよりNCGMは医療の実績は悪いのです。それは、国府台病院などは精神科が入ったりなどいろいろな形がある。しかし、平成22年度に比べて平成23年度は人件費が増えても、それ以上、倍以上に医業収益が上がっています。そういった形で見るといいのです。しかしながら、運営費交付金の額が10億円落ちている、また、建物の減価償却がどんと大きくなったことがものすごく大きいのです。私は経営の素人ですが、そういったものを考えると、計画に甘さがあった。これだけの運営費交付金の減額はもちろん予想していなかったし、建物は国立時代に計画を立てていたことなどがずれ込んだというようなことがだいぶあるのです。それから、医療機器費が莫大になった。もう1つは人件費で、教育のところに出ていますが、全く予想外だったのは、研修医、レジデントの時間外手当に労基が入るということです。これも同じ厚生労働省なのに、労基からの指導はものすごく厳しいですから、当然ながら正確に時間外手当を出さなくてはいけない。これは特に、新宿の病院で莫大な費用になってしまった。このような予想外のこともありまして、300万円というのは見直さなければいけないのではないかと個人的には考えています。それはまだ理事会ではっきり決定していません。

○国立国際医療研究センター理事長
 先ほどの和田先生のご指摘は全くごもっともで、我々も非常に深刻に受け止めています。今年度に関しては先ほど説明がありましたように、まず、今年度として収支相償ができるかどうか、いま最大限の努力をしているところです。これは今後もっと具体的な数として、どのような方法でどのようになるから5年間で収支相償になるかという数字をお示ししないといけないと思いますが、我々の感覚としては、まだ伸び代があると言いますか、センター病院の入院患者さんの数を増やす、あるいは外科系の手術数を増やすことで、かなりの部分はできる可能性があって、全く無理だとは思っていません。もちろんこれは今後2年間どのぐらい我々が頑張れるかによると思います。それに加えて、先ほどの話のように、運営費交付金の問題がありまして、既に今年も国家公務員の給与削減の問題があり、実際に我々の職員の給与を下げるか下げないかにかかわらず、2億円程度は運営費交付金が減額されてしまうのです。いま我々は多くの先生にお願いして、どうにか初期の目標を達成しようと思っていますが、やはり給与の削減はかなりディスカレッジングな要因なので、問題がなければいいと思っています。運営費交付金の削減があまりにも大きいと、やはり最初の中期目標という契約自体に、本心としては、かなり問題が生じるのではないかと考えています。

○永井部会長
 国立大学のときは病院側も運営費交付金の削減は初めからわかっていて、それは変更されずにいっているのですが、ナショナルセンターの場合には、削減の程度は年によって違うのですか。それでは計画が立たないのではないですか。

○大臣官房参事官
 一定のラインでは規定がありますが、毎年度の財源の問題がありまして、あくまでも毎年度、予算要求で決定することになります。

○永井部会長
 そうすると、例えば、5億円交付金が減れば10億円増収しないと元が取れないのですね。10億円増収するというのは、もう奇跡的なことをしないとできません。10億円も減ったら20億円を700床で増収しないといけない。これはもう初めから不可能だと思うのです。

○大臣官房参事官
 昨日も話がありましたが、実は、削減される交付金の代わりに別枠の交付金で戻しはしているのです。ただし、戻す部分は新しい事業に使えということになっていますので、結果的に、下げられた部分に充てることは理屈的にはできません。

○猿田部会長代理
 私たちは評価委員会なので、そのようなことまでを含めて、評価として、これだけの交付金の削減はおかしいと言わなければいけないのです。ですから、いちばん聞きたいのです。それでなければこの評価委員会をやっている意味がありません。やはり、これだけの事業を一生懸命やったのだと、それに対してお金のほうはと言うと、一生懸命やっても交付金がぼんと下げられたことによってどうしても赤字になったのであれば、評価委員会としては、それはおかしいのだろうという意見は言わせていただいてもよいのですね。

○大臣官房参事官
 それは、委員会としては、全然、構いません。

○花井委員
 いまのお話は私にもよくわかる話です。参考までに教えてください。300万円という話がありましたが、26頁のセグメント別で、診療事業は平成24年度は大体どのぐらいの黒字を見込んでいるのですか。DPCが導入されて報酬も改定しているので、平成24年度がどのぐらいで計画されているのか知りたいのです。

○国立国際医療研究センター財務経理部長
 診療事業のみではトータルで12億円のプラスです。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。以上で、国立国際医療研究センターの評価を終わります。
 事務局から連絡事項をお願いします。

○室長補佐
 評価シートをお持ち帰りになって評価を記入される場合には、8月9日(木)までに事務局に評定記入用紙をご提出くださるようお願いします。電子媒体での評定記入用紙は本日お送りします。よろしくお願いします。

○永井部会長
 国立国際医療研究センターの皆様、本日はどうもありがとうございました。
 次は、11時10分から開始します。
(法人及び所管課入替)

○永井部会長
 それでは、国立循環器病研究センターの個別評価に入ります。最初に、橋本理事長からご挨拶及び平成23年度の業務実績概要の説明をお願いいたします。

○国立循環器病研究センター理事長
 昨年に引き続きまた本年もご評価、どうぞよろしくお願いいたします。昨年ご指摘いただいた、評価をする上で可能な限り客観的な事実をということでございましたので、本年度はなるべくそういうご指摘に沿えるような形で努力をしたつもりでございます。簡単にこの1年のことを申し上げます。
 まず資料2-1「業務実績概要資料」の5頁をご覧ください。独法初年度は、国立循環器病研究センターのミッション遂行のための組織改革、基盤整備、業務運営の効率化とか財務状況を改善することを心がけました。こういう中で、同時に意識改革をやってまいりました。結果的に縦割りの排除、それまでの長い国立の時代の縦割りのメカニズムが排除できて、意思決定プロセスの明確化・迅速化がなされたと思っております。そういう実績を踏まえて、平成23年度は、このミッション遂行のための基盤を強化する。一言で申し上げると、そういうことをしたつもりでございます。
 これは、職員の質の確保ということがございます。具体的なことについては、それぞれの項で担当者がご説明いたしますが、例えば看護師確保というのは、病院のアクティビティの上でボトルネックになる大変難しい部分であります。ここにありますように平成22年度、これは平成21年度にやったことで、平成22年度からの採用ということでありますが74人、平成23年度は118人、そして平成24年度、つまり平成23年度にやったことは121人の採用ができたということです。これで見ますと、平成22年度については数の確保ができなかった。ところが、平成23年度、独法初年度に当たっては、とりあえず数は確保できたけれども、質については我々としては少しもの足りないということがありましたが、平成24年度、昨年のことから申しますと、数を確保できて、なおかつ30人近くの応募者をイジェクトしたということで、数だけではなくて質の確保もできるようになったと思っております。
 また、業務の効率化ということで、これは電子カルテあるいは今後バイオバンクを含めていろんな情報を集約していく上で、是非とも必要なIT化ということに大きな力を注ぎまして、3つあったネットを1つにグループウェア化して情報のフラット化を図りました。また、研究開発、そして臨床の上で必要となることについて、かなり重点的に力を入れたつもりでございます。これは、例えば人工心臓の埋め込みのためのトレーニングセンターを作る。そこで、かなり投資もしておりますし、単年度で見ますと、センター全体での経営についてはいかがなものかというご批判もあるかもしれませんが、平成24年度以後のセンターのアクティビティにどうしても必要なことは、単年度の財政的なことをある程度無視をしても、極端に言えば先行投資というような形で次年度に向けてのアクティビティを上げられるようにやったつもりです。これが簡単な平成23年度の概略でございます。個々については、担当者がご説明申し上げます。

○永井部会長
 ありがとうございます。それでは、評価の進め方をご説明申し上げます。評価シートの個別項目4つのグループに分けまして、グループごとに評価を行います。評価の指標としては、計画どおりであれば「B」評価、中期計画を上回っていれば「A」評価、想定外の要因があり、かつ、計画を大幅に上回っていれば「S」評価ということでございます。
 では、第1グループ項目1から2について最初にご説明をお願いいたします。10分間でお願いいたします。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 まず、評価項目1、2についてお話します。評価項目1「臨床を志向した研究・開発の推進」に関してですが、早期・探索的臨床試験拠点の整備事業が昨年度、平成23年度に始まっております。これは、厚労省が中心となって、未承認薬品あるいは医療機器を早期に探索的に臨床試験をする拠点を整備していく。そういう研究の進歩とともに将来の日本を担う産業化の育成という視点で建てられた施設です。これは、1施設当たり年間5億円、5年にわたっての支援ということで、循環器病研究センターが獲得できれば、重要な今後の展開に繋がっていくということで、我々、医療機器を中心としたプロジェクトということで、早期・探索的臨床試験拠点に応募いたしました。全国で41施設の応募がありまして、12件まで書類審査等で絞られ、最終的には5件が採択されたわけですが、我々、その5件のうちの1つにありがたいことに選んでいただきました。これはナショナルセンターとしては2つ、我々とがんセンターでありますけれども、全国唯一の医療機器担当の施設として選ばれたということで、これは非常に重要な、我々にとったらアチーブメントであったと考えております。
 具体的には、次の頁の図1に書かれておりますけれども、これは病院で出てきたニーズ、それを何とか解決しようという研究所側との連携、研究所でもっておられるシーズ、それを集めることで研究開発基盤センターがそこにリンクするという形。さらには、外部の企業との連携も含めて研究開発基盤センターが担当するという三位一体という形で応募することが評価されたのではないかなと考えております。具体的には、心臓移植等の重症の心不全の患者を次の治療にどうやって繋いでいくかというところを担当できるような補助循環システム、人工心臓等、それからカニューレを組み合わせたようなシステムが1つ、これは医師主導の治験にもっていくべく非常に迅速にその研究を進めております。
 さらにもう1つは、循環器病研究センターならではということになると思うのですが、脳と心臓と両方に使えるようなステント、そういうものの臨床応用への進行ということでも、この早期・探索型の試験拠点に整備されたことで進めております。またさらに、外部に向けていろんなシーズを拠点で評価することができるように、外部委員会も設けてこれを推進しております。こういうことができるようになったのも下に書いてあります、産官学連携の強化ということの1つの大きな成果であったと思っております。
 7頁の図で「企業との共同研究」のところをご覧ください。平成22年度に比べて約1.5倍の共同研究の数。ほとんど100に近づくような数が出てきております。この中でいまお話したような医療機器だけではなくてペプチドホルモンとか分子生物学的な研究をされているものが臨床応用への取組みに繋がっていっていると考えております。これを実現していくに当たって創造的産官学連携事業というのが書いてありますが、これは経済産業省の事業で、ほとんどのところが工学部が中心になったような一般的な機器、あるいは制約もあるわけですけれども、我々のところが全国5つの事業のうちのただ1つ医療機関として採択されているということです。研究開発がこのような産官学連携を含めて病院と研究所が一体となって進んでいっているというのが1つの我々の成果だったと思っております。
 さらに、そういうことをやるに当たって、どのように国民の皆さんが評価しているのかということに関して評価を調査する。我々、昨年度は医療機器に特化して国民の意識調査をさせていただきました。全国5,000名、これはかなりのボリュームの調査になると思うのです。我々が医療機器に取り組んでいることがどう評価されるのかということを調査させていただきました。その結果、94%が医療機器の必要性がどんどん高まると。83%の国民が国産品が増えることを望んでいる。さらに、99%が医療機器産業を何とか支援したい。このような意識を表明していただきました。まさにそういうことに向かって進んでいこうと。評価を国民目線でもしていただくということはすごく重要だというふうに思っていまして、そういうことも実現しつつあります。さらに知的財産の管理強化等につきましては、国内だけではなくて国外も含めて米国のミネソタ州とも連携しながら新しい評価指標を作っていく。さらには、単純な研究開発だけではなくて、病院がもっている減塩の病院食なども産業化に向かって活発に活動しました。
 次に、評価項目2「病院における研究・開発の推進」についてです。これは先ほどのお話にもありましたけれども、臨床研究機能の強化ということで、早期・探索的臨床試験拠点の整備事業のための人員整備をして、常勤換算で20.55人の人員を配置しました。最終的には、この倍まで増やしていく予定です。
 さらに臨床研究の支援に関しては、研究者へのCRC支援。それからデータマネジメント支援が12件。生物統計家による総合的支援が50件。それ以外にもセミナーの開催等もしております。
 それから倫理性・透明性の確保に関しては、前の頁で少し説明を飛ばしましたが、バイオバンクを作ったということで、そのバイオバンク事業に関しても倫理委員会でしっかり審査をしています。病院では人がたくさん集まっておられる、患者さんが集まっている所に、しっかりそういうことを掲示して、説明用のブースも患者さんのプライバシーを尊重しながら、一般の方々に、こういう事業が進んでいるところで、そういう場所に設けさせていただいて、しっかりと透明性・倫理性も確保しつつ研究開発もさらに進行するということで取り組んでおります。
 それから、一般市民への啓発活動に関してはウェブ等を使ってさせていただいております。さらに、昨年度ご質問にありましたが、治験依頼から契約締結までの期間をもう少し短縮できないかということでやりましたけれども、努力した結果、去年の49日から今年は37.4日ということで、10日以上も短縮することができております。さらに、治験収納額に関しては、その下のグラフで、前年度より1億4,000万円ぐらい治験収納額が増加しています。臨床研究、病院における研究開発の推進についてもかなりの努力あるいは目標達成ができたのではないかと思っております。以上です。

○永井部会長
 はい、ありがとうございます。ご質問いかがでしょうか。

○猿田部会長代理
 早期・探索のほうの拠点の準備としては大体出来上がったのでしょうか。

○国立循環器病研究センター
 そうですね。建物等とか人員の入るところとか、そういうのはできておるのですけど、やはり人を確保していくというところが重要で。

○猿田部会長代理
 それと、お願いしたいのは、国立循環器病研究センター以外の他の施設と連携も取ってやっていただきたい。幅広く、日本の医療機器の開発の中心としてやられて、日本として大きく発展していただきたいと思います。

○国立循環器病研究センター
 それに関して言いますと、大阪大学であったり、京都大学であったりとか、そういうことの連携は既に始まっております。

○猿田部会長代理
 特に医療機器はおたくしかないものですから。

○国立循環器病研究センター
 頑張りたいと思います。

○永井部会長
 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは次の項目3について、ご説明をお願いいたします。

○国立循環器病研究センター研究所長
 評価項目3「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」ということで説明させていただきます。この中で循環器疾患の解明と医療推進に大きく貢献する成果については、評価シートの20頁から45頁に記載されていますが、概要資料の9頁をご覧ください。その成果として昨年も求められた英文論文について、23年度は論文数は283篇で、前年度に比べると数自体は少し減少していますが、表にありますようにIF4.5以上の論文ということで見ると、22年度は35件に対し、昨年度は62件と大幅に増えています。4.5がどういうのかというと難しいところがあるのですが、例えば循環器系でいくと、永井先生が理事長をされている『Circulation Journal』は3.8ですので、4.5というとある程度評価できる数値ではないかと思っています。
 主な研究成果については、いろいろありますけれども、特筆したいのは[6]の放射光によるマウス微小血管造影法の開発です。循環器病のいろいろ基礎研究あるいは疾患との関連を調べる上で、モデル動物になるマウスやラットの血管は非常に細く、それを造影するのは非常に難しいということ。いわゆる組織として見る場合は十分出るのですが、生きたままでいろいろな病態、あるいは薬剤に対する反応を見る上では非常に重要なことです。
 我々の所は関西ということで、近くにSPring-8がありますから、その立地の利点を活かしてSPring-8を利用した研究を進めています。その結果、マウスの心臓や肺の微小血管は、大体50μm程度でも生きたままで観察できる技術を確立し、それを用いて我々の行っている生理活性ペプチドといった薬剤に対する反応など、そういったものを進めています。これは今後の循環器病研究を進める上でも非常に重要で特筆すべきことだと思っています。
 その下の主立った研究・開発です。心臓弁膜症などでは弁置換が行われるわけですが、これまで扱っていた弁に比べさらに良いものにするため、いわゆる生体吸収性の鋳型を作っておき、それを皮下などに埋め込みます。そこで自己の組織で弁を作るという形です。それが十分できた段階で手術に用いるということで、現在、動物での検証を行っていて、実用化に向けた形の研究も進んでいます。これも出来上がると、いろいろな再生医療がありますけれども、自己組織で作ったものを自分の体内にまた戻すということでは、非常に画期的な方法になると思っています。下にある数値目標ですが、臨床研究及び治験実施件数の合計が23年度は337件で、対21年度に比べると31%と大幅に増加しています。
 右側にいって、循環器疾患の本体解明に関してもいろいろありますが、特に我々が行っていたナトリウム利尿ペプチドあるいはグレリン等が、これまでにない新しい機能を持つということもわかってきました。詳しいことは省略しますが、グレリンなどの場合、GHの成長ホルモン分泌あるいは食欲といったものの制御以外に、循環器系も密接に関係していて、心筋梗塞で起こる致死的な不整脈を抑制します。これはマウスの研究ですが、死亡率をかなり低下させるということで、その大きな要因として交感神経系の抑制が重要な機能であると考えられています。
 1つ飛ばして、高度先駆的及び標準的な予防、診断、治療法の開発の推進ですが、23年度に我々の小児科で乳児の死亡原因の全国調査をしたところ、ここに挙げている乳児特発性僧帽弁腱索断裂というのがあります。これは乳児期にしばしば起こるということで、疾患個々にあることは報告されていましたが、こういった疾患は教科書にも記載されていません。今回、ここに示したように、「乳児特発性僧帽弁腱索断裂症」という疾患名を付けることができたという形での成果を上げています。
 医薬品及び医療機器の開発の推進についても、いろいろな薬剤の開発、医療機器がありますが、いちばん最後に書いている脳動脈瘤治療目的のカバードステントの臨床開発の推進は、先ほどセンター長からありましたように早期・探索でも推進していて、当初、脳動脈瘤の治療で出していますけれども、心臓のほうにも使えるということです。1つのステントで脳にも心臓にもということで、現在、前臨床の段階で動物における安全性や効果をやっていますが、こういったものが開発されれば、脳あるいは心疾患の治療に大きく寄与できるものと考えています。
 全体的にいうと、我々の所は、ここに述べたような形で、もちろん循環器の基礎研究も進めないといけない。同時に臨床につながる研究ですね、その両方を進めるということで、大学とは少し違ったスタンスで研究を行う必要があります。そういうことで最初に述べたように論文の数自体は減っていますが、質の高い形でできているのではないかと思っています。特に論文の場合、臨床につながるような応用研究になると、なかなかインパクトファクターの高い雑誌には採択されにくいところもあり、我々、研究所の所長としてもインパクトファクターの数値だけ言われると、なかなか難しいところがあります。基礎研究で根本的なメカニズム、機序といったものが解明されなければ応用にはつながりませんので、そのバランスを取って今後も進めていきたいと思っています。そういうことで今回、一応、自己評価的には、研究の成果あるいはインパクトファクターの高い、4.5以上の論文が大幅に増加したということで「S」評価をしています。以上です。

○永井部会長
 ありがとうございます。それではご質問、ご意見をお願いいたします。23年度の論文数は283ですね。こっちで集計したのが238となっています。

○国立循環器病研究センター研究所長
 それは間違いです。

○永井部会長
 283が正しい。

○国立循環器病研究センター研究所長
 はい。

○永井部会長
 いかがでしょうか。

○内山委員
 非常によく活躍しておられて感心することが多いのですが、特に循環器は臨床の現場から、インパクトファクターの高い論文が出にくいという話がありました。そうは言いながら英文論文数が多くて、常勤の研究者の数も結構多いのですが、現場と研究所の相互の交流や大学との人事交流を、どのようにされていますか。

○国立循環器病研究センター研究所長
 人事交流というか、研究面で、例えば我々の所は連携大学院ということで、全国10いくつの大学と連携し大学院生等を受け入れています。それと同時に、研究者自身も交流するということで非常に密接にしています。研究所と病院の場合、我々の所は渡り廊下でつながっているということで、両方が共同研究をしやすい非常にいい環境にあります。そういう面で密接な形で研究を行っています。ただ、臨床の場合に難しいのは、医療のほうで採算といった面を要求されると、臨床に割ける時間が限られてくるということで、病院の経営面と研究の両方を同時に上げるのは難しいのではないかと、私は研究所の立場で思っています。それをどういうふうにうまくやるかが課題になっています。

○国立循環器病研究センター理事長
 追加させていただきます。センター内での研究開発費についてはジョイントプロジェクトということで、お見合いをしたらみんな成功するというわけではありませんが、なるべく一緒にやるような提案に対しては、優先的に研究費を配分したり、ジョイント・ミーティングということで、研究所が何をしているか、研究者が何をしているか、病院が何に困っているか、どんな課題があるかということで、プレゼンテーションの場を作っています。そういうことでかなり往き来ができるのではないかと思います。
 例えば、9頁のいちばん下にある動圧浮上方式の高耐久性ディスポ遠心ポンプは、実は心臓外科で心臓移植をしなければ助からないときに、人工心臓の埋込型を入れると1個だけで1,800万円もします。ところが、そこにはちょっとギャップがあるので、それをbridge to decision、決定するまでの橋渡しという意味で、普段、センターでやっている臨床の中で持っている技術と、研究所の持っているノウハウを合わせて、その途中を取り持つ機器を作る。
 もう1つ、脳動脈瘤のステントは循環器病研究センターの研究所で、もう20年、30年やっている人工血管を作る技術の中で、レーザーを使って穴を空ける技術があります。そもそもは人工血管を作る技術から始まったのですが、レーザーを使って穴を空けると、脳は細い血管で穿通枝というのがありますので、もしそれが詰まってしまうと麻痺が出てしまう。ところが、穴を空けてやることによって、そういう穿通枝は温存できるけれども、その隣にある動脈瘤は穴が空いていることによって血栓化が進みやすい。こういう臨床と研究所の持っているノウハウが融合できるようなシーズとニーズがありますので、それを積極的に進めてきたつもりですし、また進めていきたいと思っています。

○永井部会長
 ほかに、いかがですか。論文はほぼ順調だと思いますが、ひとつ気になるのは、IF10点以上が、この3年で19、13、11と落ちてきているのですが、ここはどうですか。

○国立循環器病研究センター研究所長
 それは先ほど言いましたように、領域の、どちらかというと基礎的なところは高いのがいきやすい。もちろん、研究所でそういったものをもう少し増やす必要はあると思いますが、ただ、インパクトファクターが高いのに出せ出せと、所長室で尻を叩くわけにいかないところがありますので、今後、そういったものも、年にいくらか出る形は目指して戦略を考えていきたいと思います。

○永井部会長
 ほかに、いかがでしょうか。非常に多彩な臨床研究をされて、臨床的なコンセプトを作っていくと。これは疫学もそうですし観察的な試みはいいと思いますが、それはかなり達成できていると考えているわけですね。

○国立循環器病研究センター研究所長
 はい。

○猿田部会長代理
 全体的に拝見していると、臨床研究のほうへの体制がずいぶん出来上がってきたと思います。もう1つ、これから治験をさらに広げるためには、どういうふうに連携を組んでいくかということです。例えば阪大などはAct Westという形で、西日本が全部組んで臨床治験がパッとできるような形を取っています。循環器病研究センターとしても、そういう連携をできるだけ組んで、進めていってもらいたいと思います。

○国立循環器病研究センター研究所長
 ここに一部書いてありますが、昨年からバイオバンクという形でやっています。特に循環器の場合は、これまでいろいろな疫学研究の集約化があまりできていないところがありますので、そういったところを基盤として、センター内での臨床データあるいは検体を集めるだけでなく、できれば全国的、コホート的に集約できるようなセンター化にしたいと考えています。

○猿田部会長代理
 薬剤と違って、医療機器の場合はなかなかそれが難しいと思うのですが、そこのところもうまくモデルとしてやっていってください。

○国立循環器病研究センター研究所長
 そうですね。バイオバンクのほうではそういう形で進めて、治療や治験ということになると早期・探索は医療機器ですけれども、こういう医療機器にとどまらず、そういうシステムを薬剤の開発のほうの体制、システムを整備する必要はあると思っています。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 機器に関しては早期・探索で整備をしているところですが、実は医療機器メーカーで薬事を担当しておられたバリバリの方を1人、ヘッドハンティングして雇いました。ご存じのようにPMDAとの人材交流の事業も選択していただいて、あれはすごく重要なポイントだと思っています。我々のほうからも既に人材はPMDAに出していますし、来年はもう1人、新たに出す形にしています。反対にPMDAのほうから、もう少し来てほしいというのはあるのですが、PMDAの内部の問題もいろいろあるようで、だけどそれはすごく大事なポイントだと思っています。もちろん阪大や京大との連携だけでなく、地方との連携、基盤研との連携もすごく大事で、研究開発と臨床応用、製品化を含めて、多段階での交流が大事だと思っています。

○猿田部会長代理
 特にPMDAのほうにお願いして、戦略的研究相談をしていただけるようになっていますので、あそこへ、皆様方の最先端研究の相談に行っていただくことがよいのではと願っております。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 既に薬事戦略相談、やらせていただいていますので。

○国立循環器病研究センター研究所長
 永井先生、先ほどの論文数のことですが、238というのは23年1月から12月という、いわゆる論文の年数で集計したのと、年度の4月から次の年の3月までと、その違いでそういう数値が出てきているようです。

○永井部会長
 もう1つ、2010年も、こっちの表では342で、集計が286なのです。そんなに違ってしまうのですか。それから先生方の表だけで見ると340から280、60本減っていますが、これは大丈夫なのですか。

○国立循環器病研究センター研究所長
 同じ基準でした場合には、そういうふうになると思います。

○永井部会長
 でも60減るというのは、何か問題ないですか。インパクトファクターの高いジャーナルは増えているのかもしれませんが。

○国立循環器病研究センター研究所長
 その内容を見てみると、研究所の論文はほとんど減っていないのですが、病院のほうは、病院の中での体制の変革という関係もあって、病院での論文数が減っているのが現状です。論文が出るのは、数年前の状況を反映して論文数になりますので、おそらく今後、それが整えば病院のほうも順次増えてくると思っています。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは第3グループ、項目4~9までご説明をお願いいたします。

○国立循環器病研究センター病院長
 第3グループ、4~9に入る前に、病院事業として平成23年度の大きな取組みをまとめました、概要資料の10頁をご覧ください。病院診療の基本的な事項としてセンターの理念が循環器病の究明と制圧です。これに向かってのスタンスというのは、高度な医療の提供、それを普遍化、標準化するだけでなく、我々の病院にはさらにその一歩上、次世代の医療を患者さんとともに作るものもあるミッションとして求められていると思っています。その上で現在のターゲットとなるものとして最重要課題は、肥満、高血圧等の狭義の生活習慣病から動脈硬化症を起こし、そして心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中に至るという一連の流れですが、次世代のターゲットとして心不全、不整脈、成人先天性心疾患、脳動脈瘤等が重要と考えています。
 これらの疾患を制圧するために、基盤と体制の整備をしたことを3点報告します。1つは組織改編で、昨年の6月以降、右側の図に橙色で示していますが、中央部門の中に中央診療部門に加えて中央支援と中央管理という部門を作りました。それと総合入院センターというものも併せて作っています。超重症、超急性期の医療体制については、ハイケアユニット、小児のICU、SCUに対しての体制の整備と、昨年度末に超高性能のドクターカーを導入しました。3点目が電子カルテの導入で、これは昨年9月に中央管理部門内に医療情報部を作って、本年1月から大望の電子カルテをケアユニットも含めてスタートしましたが、驚くほど順調に稼働しています。これらを踏まえ、評価項目の4から9につき説明します。
 評価項目4は資料の11頁です。承認された先進医療に関しては6件で、平成22年度と同じです。23年度は13例行われています。移植と補助人工心臓に関することは評価項目6でまとめて報告したいと思います。ここでは患者にやさしい(低侵襲的)医療、予防・予測的医療について説明します。患者にやさしい(低侵襲的)医療については、ハイブリッド手術室の整備です。このハイブリッド手術室は手術のできるX線血管撮影装置のことで、特に本格的な手術台を組み込んだアジア初のものが、我々の施設に導入されています。これが昨年初めより稼働して月に30~40件の稼働が続いています。特に普通のカテーテル台、手術台ではなかなか難しい大動脈瘤のステントグラフト治療、カテーテルによる大動脈弁のTAVIと呼ばれる置換術、レーザーシース抜去術等を行っています。ロボット手術の機械のダヴィンチについては、治験として僧帽弁、ASD、冠動脈の手術等に用いました。
 予防・予測的医療ですが、がんと違い循環器病では予防が可能です。予測的医療、先制医療もまた可能です。心臓のリハビリは機能回復というよりも予防をメインとしたもので、これに関して循環器病のリハビリテーション部を中央部門内に作るとともに、虚血性心疾患のあとだけでなく、心不全、左室補助人工心臓の装着者など幅広く実施しています。これが平成22年度には月1,500件の実施でしたが、23年度には1,600件と確実に上昇しています。一方、不安定プラークの問題ですが、心筋梗塞や脳梗塞が狭窄があまり強くない支配動脈の動脈硬化プラークの破綻により、それに伴った血栓形成で血管が閉塞して起きるというのが最近の学説です。この破綻しやすいプラークが不安定プラークですが、これを前もって診断する術を我々の施設でも検討しています。その中の1つで、従来の冠動脈造影に代わり、最近、広く用いられるようになった冠動脈のCTアンジオグラフィーのデータを定量的に取り扱い、冠動脈の壁の厚み、壁の中の脂質の蓄積状況等を把握する方法を完成し、これを使い始めています。これは例が写真2に出ています。
 以上、承認された先制医療、先進医療、あるいは心臓移植(後述)等に加え、最新の高度先駆的医療である低侵襲的、予防・予測的医療の推進は、計画を上回っていると判断して「A」評価とさせていただきました。
 次に評価項目5に移ります。これは資料の12頁です。ここでは患者支援、医療安全、チーム医療・職種連携、医療連携の4点につき報告します。患者支援については、総合入院センターのことを紹介します。これは中央支援部門内の病床運用統轄室と専門医療連携室を中心に、入院患者の手続、説明、オリエンテーション、必須の諸検査を、病棟に上がる前に一括して行うシステムで、本年1月より稼働しています。これにより患者の待ち時間解消やムラのないサービス提供が生まれていて、たぶん、このシステムは他病院ではないものではないかと自負しています。一方、待ち時間対策ですが、これは電カルの導入により、患者のオーダー等で患者の移動のないワンストップ化ができたこと。昨年、永井先生からご指摘いただいた予約時間の設定について、10分、15分、30分という設定枠を作ったこと等で対応を進めています。
 医療安全については、中央管理部門内に医療安全室・感染対策室のほか、医療の質、危機紛争管理室等を含む7つの部屋を統合した部局を作りました。それが医療安全管理部と言われるものです。全職員を対象とする研修会は、グラフ1に示していますように74回実施されていて、計画を大きく上回っていますし、22年度からも大幅増となっています。
 チーム医療・職種連携については、多職種による回診が461回あります。これはグラフ2に示していますが、これも計画以上に進んでいます。このうち273回は重症回診と呼ばれる我々の施設に特徴的な回診で、この重症回診は副院長をトップに約10名で行う多職種回診です。医療倫理問題の議論も臨床現場で行われるということで非常に特徴的だと思っています。そのほか全国的に認知度が向上してきている医療メディエータの研修、チームステップスの研修を病院内で行っています。前者は27名、後者は41名の研修がそれぞれ行われています。
 医療連携に関しては、連携医の登録が238件、これはグラフ3に示していますが、中期目標の達成となりました。数値目標の全職員対象研修会は中期目標を大きく上回ること。多職種回診も計画以上であること。連携登録医数は2年目で計画を達成したこと。また他に類のない総合入院センターの新設や、電子カルテの導入等による外来診療手順や患者動線の簡略化、これは大きな患者支援となっていると考えて「S」評価とさせていただきました。
 次は評価項目6に移ります。資料13頁です。ここでは今後の循環器医療の大きなターゲットであり、その推進はセンターのミッションでもある重症心不全の医療について報告します。というのも、重症心不全医療の変貌が予知されるからです。心臓の代替医療である移植、補助人工心臓ですが、移植については最近の非常な進み具合と、補助人工心臓については、植込型が出て在宅管理ができるようになってきたことから、この2つのものは、重症心不全医療のツールとみなせるようになってきたと考えられます。
 まず移植ですが、心臓移植は平成23年度に9例行われています。1999年に始まった心臓移植は、現在、7月までに国内で132例行われています。そのうち49例(37%)を我々の施設が行っています。臓器移植法改正後は年に10例のペースとなっていますし、今年に入ってからはさらに15例ペースになっています。補助人工心臓は平成23年度に16例装着しましたが、このうち植込型が9例、そのうち4例は在宅療養になりました。これは在宅医療の可能性を強く示すものと考えています。そのほか補助人工心臓の開発から植え込みの手術のトレーニング、小児の対応、周辺対応としてドクターカーによる搬送、大阪市立大学との医療連携等が進行しています。
 ここでドクターカーについて簡単に触れますが、これはマイクロバスサイズの大きなもので、複数人が立ち仕事ができる車です。補助人工心臓等の補助循環装置が付いていても患者さんが運べる。乳幼児や小児はベッドを変えれば運べるということで、多目的かつ有効な走るICUとも言えるものです。これを何に使うかは現在模索中ですが、現状でいちばんいいのは重症の心不全患者さんを受け渡しする、ここがいちばん有効ではないかと考えています。
 我々の施設の周産期医療というのが、また少し特別なところがありますので、これについても報告させていただきます。というのも、我々の施設で平成23年度に340ほどの分娩のうち、周産期の心疾患、心臓病の合併妊娠について約100の分娩を扱っていて、これは国内最多です。世界的に見ても屈指のものと聞いています。その心臓病合併妊娠のみならず、最近、新しい概念として周産期の心筋症という概念が出てきています。拡張型心筋症との異同はいま検討中ですが、それの登録の全国拠点も我々の施設が行っています。
 一方、そのような心臓病の合併妊娠のときには大部分が帝王切開となりますが、その帝王切開のプロセスが我々の施設は非常によくできていて、帝王切開の方針決定から20分以内で終了するという手順が確定しています。これは周産期科と手術室、麻酔科の連携が非常にいい例だと思います。
 臓器移植法の改正に伴う、心臓移植の増加に十分に対応していること。国内移植医療の先端を走っていること。補助人工心臓についても開発から植込型機器の新規応用、トレーニング実施等、主導的な役割を果たしていること。加えて、今後の本邦での重症心不全医療のシステム構築にも取り組む姿勢を示すことから、これも自己評価は「S」とさせていただきました。
 引き続き評価項目7、これは14頁です。ここではレジデントの教育を中心に報告させていただきます。レジデントというのは1978年から始まった制度で、全国の各県からレジデント・専門修練医が合わせて1,000数百人、我々の施設に来ています。このうち大学の教授になっている者が111名います。ということで、指導的なリーダーを養う非常に重要なポイントなのですが、それを担当する教育研修部の機能を拡大しました。これは教室の拡大、看護部教育との統合、医師以外の医療者教育との統轄ということで機能を拡大し、その結果、教育研修プログラムのダイナミックな推進が行われました。グラフ1に示しているようにプログラム数が45と目標を達成しました。レジデントに関しては、特徴的なコースの増設、レジデント室の改修による環境改善、レジデント・デー等のインセンティブ向上の試み等があり、人員は安定して確保できています。特にレジデントは適正数と思われる100名前後が最近続いているのですが、1つ最近の傾向としては、より専門性の高い専門修練医のほうに少し増加の傾向が見られます。
 モデル的研修・講習の実施については、センター外の医療従事者等に対する各種の研修が36回、内容は冊子の資料34のところにありますが、これも大きく中期目標を上回っています。教育研修プログラム数は2年目に中期目標を達成したこと。センター外の医療従事者等に対する研修も中期計画を大きく上回ること。教育研修部の機能拡大により、多職種の研修の統轄管理が進んだこと。アワードの設置や大学院の入学など、レジデントの士気向上が著しいことを合わせて、これも自己評価は「S」とさせていだきました。
 次に評価項目8です。15頁をご覧ください。ここでは情報の収集・発信について報告します。ホームページのリニューアルを行った結果、平成22月年度に対して23年度は月当たり10万件のアクセス数の増加を見ています。これがグラフ1です。同時にコンテンツの改修も行い、心不全と不整脈に関するものが、月に6,000以上のヒットがある人気コンテンツとなっています。これらを受けて103独法を対象にした公共機関ウェブクオリティ調査で、センターのホームページが平成22年度の「D」評価から、23年度には「A-e」評価に変わっています。市民公開講座の第1回を今年の3月に行いました。この市民公開講座を本年は4回計画していて、既に3月と6月の2回まで済んでいますが、第1回は生活習慣病をターゲットとし、地域密着型で健康のチェック、プラス講義という形で行いました。非常に好評で、前もっての登録制でしたが、あっという間に登録がいっぱいになるということでした。情報の収集・発信ついては、ホームページのリニューアルに伴う改善が著しく、予想以上に魅力のあるサイトに変貌したこと。市民公開講座も大成功であったこと。連携ネットワーク構築も順調に進んでいることを合わせて、自己評価は「A」とさせていただきました。
 最後、評価項目9については16頁です。公衆衛生上の重大な危機への対応ということで、東日本大震災の対応のことをお話します。対策本部を3月11日の地震の翌週月曜の14日に立ち上げて、医療支援、就職支援、調査チームの派遣、提言の提出、被災地での市民公開講座、1年の活動の書籍集約等を行いました。併せて、循環器病研究開発費による単年研究として、大規模災害時の対策に関する研究も行っています。
 ここで減塩プロジェクトについて説明します。これは対策本部の会議の中で、センターのおいしい減塩食を、被災地へ何とか持ち込めないかというところから始まったもので、そこから減塩プロジェクトが立ち上がっています。被災地、岩手県での栄養士会と連携した2回の市民公開講座は、この目的に沿うもので非常に好評でしたし、調理実習も兼ねていました。震災後1年を経て対策本部は解散するとともに、このプロジェクトチームは独立して、国民全体としてのセンターのミッションとして活躍していくことになっています。
 国際貢献ですが、米国CDC認定の血清脂質測定標準化事業は、米国の国際脂質標準化ネットワークによる権威のあるもので、世界に10施設、日本では唯一の施設としてこれを引き受けることになりました。国際貢献の人数ですが、2年目で数値目標を達成しているのがグラフに示されています。東日本大震災の支援活動の中から発生し、活動が開始されている減塩プロジェクトは、日本国民のためのセンターのミッションであり、中期計画の想定を上回る展開です。またCDCの施設認定についても中期計画外のもので、国際貢献人数は中期計画目標も達成しているところから、自己評価は「A」とさせていただきました。以上です。

○永井部会長
 ありがとうございます。では質問をお願いいたします。

○内山委員
 全職員対象の研修会の数が74回という多さに、びっくりしているのですが、皆さん、お忙しい中で、開催時刻など、どのような工夫をされているのか。この中には例えばDVD上映会等が含まれていますか。

○国立循環器病研究センター病院長
 DVD上映会は含んでいません。

○内山委員
 含んでいないで74回ですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 工夫は、特に医療安全と感染対策がメインなのですが、感染対策のほうでいくつかのテーマで小さな講演会を多数開催しています。

○内山委員
 大体、何時ごろに開いておられるのですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 今回は、時間帯としては夕方の勤務時間内と勤務時間を超えたあたりと、2回設けました。

○内山委員
 全職員の平均受講回数というのは、2を超えていますか。

○国立循環器病研究センター病院長
 全職員に2を超えるように指導しましたので、3以上の方はあまりいないかもしれませんが、2は確保されています。

○内山委員
 ありがとうございます。感心いたしました。

○永井部会長
 ほかに、いかがでしょうか。予約システム、今までは医師が予約していなかったわけですが、別の中央部門で診察が終わった後、予約されていたわけですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 今までは、大体ここのあたりに予約を取ってくれという依頼を医師が出して、事務が取るという形でした。

○永井部会長
 いまは診察室で、次はいつですねと予約を取る。

○国立循環器病研究センター病院長
 はい。

○永井部会長
 そうしたほうが、きめ細かい対応が取れますね。

○国立循環器病研究センター病院長
 それは、そうだと思います。

○永井部会長
 まだ30分枠というのもあるわけですか。30分に何人入れるのですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 たぶん、30分枠を単独で使う先生は少ないだろうと思います。

○永井部会長
 そこに患者さんをたくさん入れてしまうと、みんなが早く来なければいけなくて待ち時間が長くなるわけですね。先ほど国際医療センターにお聞きしたら、全部10分枠にして1人か2人までにしているということでした。ですから長くかかる方は2枠取ればいいわけです。3枠取れば30分ですから、そういうことをドクターが診察室できめ細かく、次はいつにして、どのくらいの枠を取るか。飛込みがあるならブランクを置くとか、そういう診察体系にしないと、どうしても待ち時間が長くなってくると思います。ちょっとまたご検討いただければと思います。

○国立循環器病研究センター病院長
 わかりました。

○永井部会長
 東大でも、ひどい場合は午前中に30分ずつ取っていて診察が終わるのが5時とか、そういうことをやっていたのです。だから5時までかかるなら5時まで枠を取ればいいのです。いろいろな問題が現場にありますので、検討いただければと思います。いかがでしょうか。

○花井委員
 個人的な興味と期待ですが、この減塩プロジェクトというのは非常にいいなと思います。今後、これはもっと広げていく予定とかあるのですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 そもそもは震災の対応の中から生まれてきたものですが、よくよく考えると、これはセンターのミッションとして進めていく話であろうということから、プロジェクトチームを独立させて、独自に予算も付ける。それと高血圧学会の減塩チームとも連携してやるというところで、今後の展開を考えています。

○花井委員
 コンビニで国循の減塩弁当が買えたらいいと思いますが、私も東北出身だからよくわかるのですが、特に東北は塩分が多い。そういったこともエビデンスとして出てきているのに、それが実際の生活になかなか活きないので、是非、やっていただけたらと思います。

○猿田部会長代理
 この弁当は非常に評判がよかったです。

○内山委員
 おいしかった。

○猿田部会長代理
 おいしかったですね。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 この減塩プロジェクトそのものは、研究開発基盤センターの中に知的資産部というのを作って、循環器病研究センターの調理師さんたちの持っておられるノウハウがスタートなのです。おいしい病院食を作り続けていたというのがありました。そこからスタートしてプロジェクトが3つあり、1つは料理教室プロジェクト、これは大阪の北千里辺りで大阪ガスなどと連携してやっているのです。弁当には弁当の業者さんがあって、いま、毎月1,000食ぐらい出ているのです。国循でもそうですし、ほかの所でも売っていただいています。東北地方に関しては、東北に持って行く前に岩手県など東北地方出身の国循の職員に食べてもらい、これで大丈夫かという話からやって現場調査もやっています。さらに全国的に広げるため、デジタルレシピとしてスマートフォンやタブレット端末で出すと同時に、食の事業者さんにそのレシピを買ってもらう。そうすると全国どこででもこれが作れて食べてもらえる。そういう広がりを持って、いま住友商事さんとちょっとやっているのですが、そういう広がりを持った事業として、我々研究開発基盤センターとしては、料理のノウハウを社会に広げるということで取り組んでいます。その一環として東北地方の被災された方々の食事を改善することで、循環器病を予防していく取組みにつなげていこうと考えています。

○国立循環器病研究センター理事長
 これは減塩ということが前面に出ていますが、もちろん日本人の食塩の接取量を1日2g減らしたら、脳卒中の発症が年間2万人ぐらい減るというのがありますので、戦略的にやらなければいけないということです。現地に行って調査をして、現地の人たちとコミュニケーションを取って進めているところの大きなポイントは、東北地方のお年寄りに減塩ということで出しても、その時点で拒否されてしまいますから、おいしいということ。それから他の栄養素についても十分考慮されています。減塩というのが前面に出てしまうと、その時点でリジェクトされたり、あるいは減塩弁当を買ってきて、そこに醤油をじゃぶじゃぶかけて食べることになってしまいますから、そこに非常にきめ細かな配慮がされているし、実際、現地の人たちとコネクションを持ってやっているところから出てきていると思います。ですから、これは高血圧、そして脳卒中、心筋梗塞を戦略的に減らしていくために、循環器病研究センターがやるべき大きな手段になると思っています。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 別添資料の新聞記事が、195頁と229頁に載っていますので、また後で見ていただけたらと思います。

○永井部会長
 あと産褥性心筋症のレジストリーをなさっていますね。それは過去の症例も含めて前向きに集めておられるのですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 いま、登録を始めたのは前向きです。

○永井部会長
 実は私、内科学会と日本循環器学会の地方会の症例報告を全部オンライン化して、「症例くん」というので症例検索できるようにしていますが、クリックすると発表した人の電子メールまで飛ぶようになっていますから、そうしたシステムも過去の症例の登録にも使っていただけるとありがたいと思います。

○国立循環器病研究センター病院長
 前向きで30何例登録できた状況です。

○永井部会長
 その後、どういう経過になっているかです。

○国立循環器病研究センター病院長
 そうですね。

○永井部会長
 軽快してしまう人と、DCMになる人といますからね。

○内山委員
 麻酔科医の活躍する場が多いと思いますが、麻酔科医の確保等はうまくいっているのかどうか。それから、循環器病センターだと循環器の患者さんがメインで、合併症やほかの疾患を持っている人も多いと思いますが、そのような患者さんに対する病院内での取組み、対策は、どのようなことを行っていますか。

○国立循環器病研究センター病院長
 麻酔科に関しては、循環器の麻酔というのは麻酔科の中でも特殊領域ですので、いろいろな施設のキャリアアップというか、いろいろな大学から研修プログラムとしてやって来るということで、大学とのつながりが非常に強いです。ですから、人集めにはそんなに苦労していないように感じます。

○内山委員
 合併症対策は。

○国立循環器病研究センター病院長
 これは高度な専門医療をやっている所は、どこでも大問題だと思います。我々の施設では特に消化管系、マリグナンシーに関して診療が弱いので、近隣の市民病院等と連携しながら何とかこなしている状況です。

○猿田部会長代理
 総合診療科というのは、あるのですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 総合診療科というのは、ないです。

○猿田部会長代理
 ナショナルセンターでも、そういうのを作り始めたりしている。例えば、がんセンターも始めました。

○国立循環器病研究センター病院長
 総合診療という意味は、一般診療という意味ですか。

○猿田部会長代理
 がんの患者さんでも、特殊な糖尿病や透析でそういうのをしなければいけないという形で、そういう所が1つのセクションを作って、手術の前にコントロールしたり、手術後のコントロールといった形になって、循環器の場合もそういうことがあるかどうかですね。

○国立循環器病研究センター病院長
 1つは生活習慣病部門というのがあって、その中で腎蔵、高血圧など一般的に多い病気に関しては扱っていますし、透析もあります。

○永井部会長
 糖尿の治療も、大体そちらで対応できるわけですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 そうですね。

○永井部会長
 前の研究体制の話に戻るのですが、これから他の施設へのサポートが非常に重要になると思います。国循だけが発展するのでなく、いろいろな大学や病院への支援など、その辺はいま体制はできてきているのでしょうか。早期・探索にしても、あるいは橋渡し的な研究支援とか。

○国立循環器病研究センター病院長
 我々の施設の基本的なスタンスとして、高度の医療を提供するだけでなく、次の医療をつくるという役目があると思っています。それに関しては患者さんの協力がどうしても必要なことから、来られた患者さんが、もし次の医療をつくることを手伝っていただけそうであれば。

○永井部会長
 山本先生に、むしろお聞きしたほうがよいかもしれません。拠点というので、これから国循が拠点になっていく。これは誰も疑わないのですが、拠点だけ栄えるのではなくて、周りとか、あるいは遠隔でそういう研究を推進しようと思っても、簡単にはできない病院を支援することが大切と思いますが。

○国立循環器病研究センター治験推進室
 治験推進室の山本です。研究相談は近隣の他施設の研究者からも受けています。特に統計家が少ないので、統計に対する相談、それからもう少し全般的な医薬品開発の相談なども受けています。最近は阪大の薬学部の先生方とのコラボレーションとか、大阪市立大学の先生方とのコラボレーションなども少しずつやっています。こちらもマンパワーが十分ではないのですが、できる範囲で、できるだけ受けるということです。ほかにも他施設の臨床研究でデータマネジメントをこちらで受けるとか、あと患者の登録や患者の割付けだけを他施設でやってほしいという要望にも、できるだけお応えするようにしています。

○永井部会長
 そういうのも数で記録を残しておかれれば、実績としてわかる。

○国立循環器病研究センター治験推進室
 内部では少しずつ取っているのです。まだ10とか20にはなっていませんが、数件ずつにはなってきています。

○永井部会長
 ありがとうございました。それでは最後の10~14の項目について説明お願いします。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 私からご説明します。17頁をご覧ください。まず全体的な経営状況について説明します。右側に病院の様々な指標を一覧にしております。平均在院日数が22年度から23年度にかけて0.7日短縮しました。急性期の病院の中で、18.4は必ずしも短くないという見方もあると思いますが、私どもセンターの場合には、心臓移植の患者、小児の先天性疾患の患者、そういう長期入院を余儀なくされる患者が一定数いるので、その中での尽力ということで認識いただければと思います。新入院患者数、救急入院患者数、紹介患者数とも前年度から比べて増えています。その結果、入院単価9,504点で390点以上増加しました。医業収益で見ても4億円の増です。病院の経営状況を示す指標から見ても、概ね順調に推移していると考えています。
 左側に記載していますが、こういった成果はいくつかの取組みの結果でして、病床運用統括室の設置、専門医療連携室の体制強化による紹介患者数の増、後方病院の開拓、地域連携パスは昨年6月に基準を取得しておりますが、この脳卒中の地域連携パス、クリティカルパスの見直し等による在院日数の短縮、救急医療体制の強化にも取り組んできました。センターの理念である超急性期・超重症患者の積極的受入れと同時に、診療収入面でも増を実現したということです。
 他方、センター全体の経常収支については、23年度計画100.10%のところが、実績は97.95%に留まりました。これを独法後の2カ年で見ますと、計画99.58%、実績100.12%で、依然計画は上回っておりますが、23年度だけで見るとマイナスということになっております。
 以下評価項目の5項目について、個別に申し上げます。評価項目10は、業務の運営体制です。すでに申しました「病床運用統括室」、これは効率化だけではなく、ベッドは患者のためにというのをモットーに待機患者を極力なくすことを目的にしたもので、診療科の壁を超えて、一元的なベッドコントロールを実現しております。専門医療連携室、総合入院センターも23年度に実現しました。
 次の頁、評価項目11「効率化による収支改善、電子化の推進」ですが、経常収支率で見ると、計画に対し実績100.12%で、やや上回った。ただ、これはナショナルセンター、どこもそうだと思いますが、基盤的なあるいは裁量的な運営費交付金、私どもの場合でいいますと、10.5億円の削減がありました。それにもかかわらず、ここまで盛り返したとご理解いただければと思います。一般管理費は、対21年度でマイナスの10.8%。医業未収金比率も、23年度0.04%で、21年度から向上している。これら3つは中期計画の中に数値目標があります。下のところに赤で書いてありますが、いずれも上回っております。そのほかに、材料費の抑制、調達コストの削減にも取り組んでいます。電子カルテのほうは、先ほど病院長から説明がありましたが、とりわけ患者が持ち込んできたカルテ、画像はすべて診療記録ということで完全電子化を実現しました。これは国のe-文書法というものに準拠しており、電子情報ではありませんが正本として扱えます。
 評価項目12、コンプライアンスです。契約全般について、とりわけ「随意契約」「一社応札」「落札率100%」の案件に焦点を当て、事前、事後にチェックしております。1つ目は、外部専門家を委員とする契約監視委員会を立ち上げ、そこで1つひとつチェックをしております。23年度は年3回行いました。2つ目は、契約審査委員会の対象拡大。これはほぼ毎月行われておりますが、従来は1,000万円以上のものをかけるということでしたが、先ほど申し上げました随意契約とかそういった3項目については、金額の大小にかかわらずすべてかけるという取扱いにしています。
 評価項目13、予算、収支計画・資金計画ですが、寄付金、共同研究、ライセンス新規契約、こういった自己収入の増加、いずれも前年度を上回っております。とりわけ寄付金の増は、2.5倍以上の増になっておりますが、このうちには、大学でいう寄付講座に当たるものがあり、私どものセンターでは、寄付プロジェクト、プロジェクト研究という言い方をしていますが、こういったものも1つ立ち上げております。計画的な設備投資の実施ということで、循環器病としての場合には、どうしても機器の経費がかかりますので、減価償却総額に着目した厳正な管理を行っているところです。
 評価項目14、その他の重要事項ですが、ここでは特に、女性の働きやすい環境整備に力を入れ、かつ女性の登用を実現していることを申し上げたいと思います。幹部医療職・研究職への女性の登用は、23年4月に1名でしたが、現在は3名です。女性研究職・医療職の働きやすい環境ということで、院内保育所を開設しました。これは多機能の保育所で、一時保育、週1回の24時間保育、そういったものも対応しております。フルフレックス制や短時間雇用制の導入も実現しています。また、看護師確保ですが、奨学金の貸与、宿舎用のマンションの借上げで大幅な増を実現しています。その他学閥・年功序列の廃止による組織活性化の推進等々を行ってきた。評価としては、13、14について「S」、それ以外は「A」です。以上です。

○永井部会長
 ありがとうございました。ご質問お願いします。

○三好委員
 一般管理費、対21年度10%減で削減されています。22年度はどの程度削減されているか。前年度に対してどのぐらい削減されているかをお聞きします。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 22年度から見ますと23年度の一般管理費は増えました。主なものは、これまで派遣職員であった、主に女性の補助員を常勤雇用にしました。これは本人たちのモチベーションの向上の意味でも効果がありますし、派遣会社が変わると、入札で切り替わっていくとメンバーが替わっていくという、そういう弊害の指摘も、特に研究サイドからありました。それはまずいので、全部私どもで非常勤という形で直接雇用しましたので、その分が人件費ということで、今年度は一般管理費に入りましたので、昨年度と比べて増えております。昨年度は、21年度と比べて10数%の減だったのですが、23年度の場合それを差し引いても、私ども23年度で10.0%で、5年で15%ですから年3%と考えれば、その水準は上回っていると考えています。

○和田委員
 いまのと同じような図式で、22年度は収支の状況で大変いい数値が上がっていましたが、23年度だけで見ると、大変良くない数値になっていると。一般管理費もまさにそういう感じで、22年度は非常に削減率が高かったので、それと比べると23年度は一般管理費の額が上がってきたというような状況です。ただ5年間あるから、5年間の中期計画の中では、中期計画を達成することは、いまのところはできるであろう。つまり5分の2までは行っているという数字ではありますが、果たしてそれだけで説明がつけられるかどうか。
 当期利益のところで見ると、22年度は10億7,400万円の利益が出ていたのが、23年度は5億9,100万円の損失になりました。でも、差引きすればまだ4億円利益が出ているから、5年後は大丈夫ですという見方になるかもしれません。そういう言い方ができるかもしれませんが、逆にいうと、23年度どおりにやっていったら、24、25、26で、中期計画終了時には10億円以上の赤字になってしまうのではないかという見方も。その辺のところをもう少し24、25、26の計画を見直して、当然その中には一般管理費も、いまは10%でもちゃんと15%削減のところまでいくと、そういう簡単な計画を示していただきたいと思います。
 その中で特に私が心配しているのは、セグメント情報で、診療事業が前年度、22年度は、11億7,600万円の事業収支差額がありました。ところが23年度は2億200万円になりましたということで、9億7,300万円事業収支が悪化してしまった。たぶん国立循環器病研究センターの経営からすれば、医療部門でもう少し収支差額が増え、それである程度研究、臨床研究、他部門を支えていかないといけないと思うので、その辺も含めて24、25、26の計画を、今日でなくても結構ですので、示していただきたいと思います。見方によって中期目標、中期計画を達成するような状況であるのか、これでは難しいのではないのかという見方もできるような数値になっていますから、その辺をお願いします。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 了解いたしました。いくつかコメントをすると、最初に、一般管理費の増の話を補足的に申しますと、確かに22年度よりも、23年度は先ほど申し上げた事情で増えていますが、これは一方で委託費という形の費用がその分、派遣の職員を非常勤に切り替えたことで言うと、委託費の減で、そこは相殺です。
 確かに23年度はマイナスですが、これは23年度とりわけ新規投資的な費用が増大したと理解をしています。冒頭の総長の説明にもありましたが、バイオバンク、医療クラスター、教育研修施設である医療クラスターへの初期投資、そういったものがかかり、その辺は私ども昨年度の経常利益があったので、ある程度は覚悟のうえというか全体を管理している中で出せると。ここは企業マインドを発揮して、むしろ投資をしようということで、費用に計上しました。
 もう1つ、病院の経営のご指摘はそのとおりです。私どもも病院の経営はセンター全体のエンジンだと思っていますので、そこの改善は重要だと思います。来年度以降、今年度も4月から6月まで4分の1経っていますが、患者数も、1人当たりの点数も好調で1万点を超えています。おそらく、昨年度の大幅な組織改正と病床運用の統括室、これは去年の年度の途中から動き始めたものですから、それが平年度化すればより効果が出てくるということで、収入面の増というのは相当見込めるだろうと思っております。
 もう一方、費用面です。これは私どもできるだけ急性期の患者を取ろうとやっていますが、材料費が高騰して、それはおそらく比率で見てもどうしても高くなっていかざる得ないような状況なので、そこは例えばSPDという言い方をしますが、業者に一括して調達業務を任せ、その物品の管理と一括した調達で価格を下げていく、そういうものも24年度からは契約をし、近々入る予定ですので、経費を削減する中で、なんとかしていきたい。診療収入の増と経費削減とで何とかエンジンである病院のほうをいい方向にもっていきたいと思っております。いずれにしても資料をまた後日出すようにいたします。

○三好委員
 評価シート92頁に、24年度101.14%、計画と書いてありますが、それは達成する。今年度、現在走っているところは達成する見通しなのか、今年も難しいというのか。そこだけ教えてください。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 24年度の計画100.14%ですが、これは私どもとしては、達成可能な数字だと理解しています。

○三好委員
 24年度ですか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 はい。

○三好委員
 もう1点、同じ頁の所で、「給与制度の適正化」の真ん中辺りで、「23年度の役員報酬については、22年度の業務実績評価結果(A評価)を反映させて増額することなく」という表現がありますが、この基準は他の一般の方もこういうやり方なのですか。というのは、私の認識のここでの「A」というのは、成果がもっと計画より高かったという認識があります。私も企業で何回もやっております。普通ですと、「B」評価だと、成績もプラマイゼロかなと。そういう認識があるので、この役員の方はどのようにされるかわかりませんが、これも一般の研究者、職員の方もこういう評価でやられているのですか。すると評価自体がそもそも「A」が多くなるのは当然のことです。要は「A」を標準にしているのか、「B」を標準にしているのかをお聞きしています。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 「B」を標準にしております。

○三好委員
 一般職員の方は、「B」であれば評価項目についてはアップはないが、「A」評価だとあるという理解でいいですか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 そのとおりです。また、相対評価ではないので、絶対評価という方法なので、「A」の比率が高いといったこともあります。ただし、役員については、22年度非常に経営状況もよかったわけですが、ボーナスアップは自主的に見送りました。

○三好委員
 わかりました。

○内山委員
 院内保育所が去年から開設された。しかも病児、病後も入っており、多機能ということで感心して拝聴しました。ただ、24時間保育が週1回というのは、病院の特殊性なのか、あるいは何か工夫があるのか参考までにお聞かせください。

○国立循環器病研究センター病院長
 週1回というのは、24時間保育はどこかに作らなければならないだろうという認識でした。ただそれは、週1回曜日を決めてとなったのは、逆に曜日を決めたところに合わせる。例えば看護師さんの活動を合わせていただくという意図です。本当はもっと複数の日が、24時間になればいいのですが、スタート段階ではまず1日としようと。その1日は、みんなの都合を聞いてというのではなく、こちらで日を決めて、そこに勤務を合わせるという使い方をお願いしました。

○内山委員
 これは評価ではなく、感想です。業務実績概要資料が文章とグラフがうまく配置されていて理解しやすく、評価する側としては、よくできている資料だと感心しました。

○国立循環器病研究センター理事長
 先ほどの和田委員のご質問・ご指摘ですが、これは理事長は監事とインタビューの機会を設け、適宜監事からインタビューを受ける形でやりました。そこで指摘があったのは、基本的に赤字体質のものがたまたま22年度はラッキーでよかったのではないか。本来は赤字体質なのに、これならいけるだろうとイージーな考え方でいくと大変なことになるという指摘は受けました。監事とディスカッションをして、こちらで説明し、納得もしていただきました。結論としては、23年度の特殊事情があって、基本的に赤字体質が隠蔽されているわけではない、と監事は理解されたと思っています。その中には、最初にも申し上げた、分割してやらないで、なるべく早くスタートしたい事業については、年度を超えて早く着手する形でやりましたので、その影響が私は大きいと理解しています。

○永井部会長
 ちなみに病棟の稼働率は何パーセントぐらいですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 93から4。

○永井部会長
 そしたらもう100%ですね。これは限界ですね。

○国立循環器病研究センター病院長
 救急の多い病院としては、驚異的な数字ではないかと思っているのですが。その面での改善はなかなか難しい。

○永井部会長
 在院日数、これも小児科、脳卒中は長いでしょうが、循環器プロパーだとどのくらいですか、心臓関係では。全国で循環器系だけで10日ぐらいですかね。DPCで見る限り。

○国立循環器病研究センター理事長
 特殊なケースですが、心臓移植の待機患者ですね。

○永井部会長
 そういうのは普通平均在院日数に入ってこないのです。

○国立循環器病研究センター理事長
 これは移植法が改正され手術件数か増えました。しかし待機患者はもっと増えているのです。希望者というか増えて、待機の日数あるいは補助人工心臓を着ける、待ち時間はむしろ法改正後長くなっています。

○永井部会長
 DPCで見ている平均在院日数、長いのは除かれますので、その辺を見て全国平均と国循との間でどう違うか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 それは私どもフォローをしており、長めだとは理解しております。そこは努力するべき点です。

○永井部会長
 全国は大変短いのです。10日ぐらいだったと思います。東大病院が14日で1.4倍、循環器、心臓血管系だけで。その辺がどういう要因なのか私もいろいろ疑問には思っていましたが、そういうことも気にされたほうがよいと思います。全国がどんどん短かくなっていますから。

○国立循環器病研究センター病院長
 今年6月、たまたま各科ごとの在院日数のデータがありますが、これで見ると全体の平均が16.3日、病院全体としてですが。循環器科は科によって、例えば不整脈のグループは12.6日。肺循環は25.2日。心不全は20.9日。冠疾患は10.5日。血管は11日。CCUは9.6日です。病気によってかなりバラエティーある状況です。

○永井部会長
 その辺を今後どう考えるか。共通病床はあるわけですね。全部割り振っているのですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 おおよその割振りだけです。

○永井部会長
 100%、つまり各科の担当ベッドを足すと100%になりますが、共通病床を増やすと、本当に必要なところだけがベッドを使いますから、無理に稼働率を上げようとしなくなりますので、在院日数が短くなっていきます。

○国立循環器病研究センター病院長
 病棟で、例えば主として心不全側を入れるという約束はあります。自由枠はいろいろなところにありますので、結局各病棟に各科をぼんと当てる形にはなっておりません。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。以上で評価を終わります。事務局から今後の取扱いの説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 本日お配りしている資料の送付を希望される場合は、事務局宛に部会終了後にお申し付けください。評価の記入が終わっていない場合は、8月9日木曜日までに事務局まで評定記入用紙を提出するようにお願いします。

○永井部会長
 ありがとうございました。国立循環器病研究センターの先生方、ありがとうございました。これで終わります。次回の案内をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 次回は8月20日月曜日13時から、場所は省内18階の専用第22会議室になります。議題は、国立循環器病研究センター及び国立国際医療センターの総合評価となっております。次回以降の開催案内を机上に配付しておりますので、ご記入いただき机に置いておくか、8月10日までに事務局宛メールまたはFAXで回答いただければと思います。以上でございます。

○永井部会長
 本日の議事は以上で終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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