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2012年7月18日 独立行政法人評価委員会調査研究部会(第59回)議事録

○日時

平成24年7月18日(水)13:00~15:00


○場所

専用第22会議室


○出席者

田村部会長、清水委員、金倉委員、岩渕委員、中村委員、酒井委員、馬場委員

○議事

(以下、議事録)

○田村部会長
 定刻になりましたので、ただいまから第59回厚生労働省独立行政法人評価委員会調査研究部会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集りいただき、誠にありがとうございました。本日は武見委員、政安委員がご欠席となっております。なお、田宮委員はまだお見えではありませんが、たぶん間もなくお見えになるのではないかと思います。
 本日の議題は、お手元の議事次第のとおり、医薬基盤研究所の平成23年度業務実績に関する個別評価についての意見聴取を行いたいと思います。早速ですが、医薬基盤研究所の個別評価に入らせていただきます。最初に、山西理事長からご挨拶と平成23年度における業務実績の概要のご説明をお願いします。

○医薬基盤研究所理事長
 医薬基盤研の山西です。どうぞよろしくお願いします。本日は、非常にお忙しいところ、ご参集いただきまして、医薬基盤研究所のこの1年の活動の成果等について、ご議論いただくことに非常に感謝を申し上げます。
 我々の研究所も平成23年度は2期目の2年目ということで、新しい研究も着実に進んでおります。また、2期目は昨年申し上げましたが、自らの研究に関しては、次世代ワクチンの研究、iPSを用いた安全性評価の研究、それから難病治療のための研究と3つの大きな分野に重点化して、この研究所を挙げて全力でテーマに取り組んでおります。我々はいつも申すのですが、あまり大きい研究所ではありませんが、オンリーワンで、小さいけれどもピカリと光る研究所を目指して努力しております。
 平成23年度の主な成果を2つほど紹介させていただき、詳しくはまた後で説明します。薬用植物資源研究センターですが、ここは企業と大学との共同研究が進んでおり、まず本年度は鹿島建設(株)と千葉大学との共同研究で、漢方薬に使われているウラル甘草(カンゾウ)に関して、水耕栽培のシステムを構築することに成功し、産学官連携功労者表彰(厚生労働大臣賞)を受賞することができました。ちなみに平成22年度もトキシコゲノミクスのデータベースを活用した安全性バイオマーカーの開発ということで、日本学術会議会長賞を受賞し、2年連続で受賞することになりました。
 また、新聞等で報道されましたように、ヒトのiPS細胞の分化の研究も進んでおり、肝臓の分化に成功しました。これは将来、毒性評価に使えるものと思っております。これはベンチャー企業との共同研究した結果、昨年12月に製品化に成功して、サンプル出荷を行うことができました。これについては先々月の5月からこのベンチャー企業からの販売を開始しました。
 また、平成23年度は独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針が閣議決定され、独立行政法人の国立健康栄養研究所との統合、創薬支援ネットワークの構築と基盤研の組織の在り方が大きく変化するような方針も示されております。特に創薬支援ネットワークについては、平成24年度に政府がまとめた「医療イノベーション5カ年戦略」において、優れた技術シーズを持ちながら、実用化につながらず、欧米に遅れをとっているという医薬品、医療機器分野の実用化をつなげるために、当医薬基盤研究所を中心とした応用研究の段階を中心に支援を行う「創薬支援ネットワーク」の構築を位置づけていただいたところです。この中では、医薬研究所が司令塔機能を担うということで、各省、関係の行政機関、さらに産学官の連携を図ることに重要な役目を持つということで、創薬支援戦略室(仮称)を新設し、ここに専門委員を置いて、このネットワークの機能を発揮する所存です。
 今後は内閣官房の医療イノベーション推進室をはじめ、関連各省で構成され、先日第1回があった「創薬支援ネットワーク協議会」の議論を踏まえながら、本格化する創薬支援ネットワークの構築に当研究所は全力を尽くしていく所存です。
 これらの研究等をさらに進めて、これからの組織の在り方を、より良いものにするために独法評価委員会におかれましては、委員の皆様から積極的なご助言とご支援、ご協力をいただければと思っております。本日はさまざまな観点からご議論、ご審議いただきますように、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○田村部会長
 ありがとうございました。これからの進め方ですが、医薬基盤研究所の個別評価については、評価シートの個別項目を4つのグループに分けて、グループごとに評価を行いたいと思います。
 まず、グループ1は全体的な事項関係で、評価項目の1~4に該当しますが、これについての評価を行いたいと思います。所要時間は法人からのご説明を10分、委員の評定と質疑を15分ということで、合計25分で進めて参りたいと思います。それでは、法人からのご説明をよろしくお願いします。

○医薬基盤研究所戦略企画部長
 それでは、医薬基盤研究所の平成23年度業務実績について、ご報告いたします。資料1-1が平成23年度業務実績評価シートです。主要な内容について説明用資料として資料1-5を用意しておりますので、同資料により業務実績をご説明します。なお、資料は大部のため、ところどころ割愛しながらご説明いたします。
 業務実績報告は5つの部分に分かれております。まず、医薬基盤研究所の事業体系図、次に業務運営に関する全体的事項のPart1、さらに基盤的技術研究、生物資源研究の個別的事項についてのPart2、基盤研以外の外部の研究機関に対する研究開発振興に関する個別的事項についてのPart3、財務・業務運営に関するPart4です。
 1頁の医薬基盤研究所の事業体系図について説明します。まず基盤研のミッションについてですが、基盤研は大学等の基礎研究と企業の新薬開発等の間を結ぶ橋渡し研究を推進することをミッションとしております。この橋渡し研究を実施するに当たっては複数の製品で活用できる共通の基盤的な技術の開発を目指しており、安全性を確保しながら、難病患者等の切実な要望に応え、画期的な創薬等に向けた基盤的研究を実施しております。
 創薬等を巡る現状と課題としては、ほかの産業分野とは全く異なり、新薬開発には20年程度の期間と巨額の投資が必要です。しかも成功率は0.003%と極めて低いことが挙げられます。このように創薬は最先端の知識と技術の結晶であり、先進国にしか実現できません。このような現状に鑑み、創薬に特化した公的研究機関としての医薬基盤研究所の存在意義があるわけです。このため、基盤研では中段に掲げている3つの業務を実施するとともに、これらの業務を適切に運営するための組織等に関する事項を事業体系図に載せております。
 1番目の業務は、研究所自らが、創薬に向けた基盤的研究を実施する基盤的技術研究業務です。この研究概要についてはPart2でご説明いたします。
 2番目の業務は、創薬研究に不可欠な生物資源の資源化と提供を行う生物資源研究業務です。この研究概要についてもPart2でご説明します。
 3番目の業務は大学やベンチャー企業等に対して研究・開発資金を提供するとともに、研究の進捗について指導、助言を行う研究開発振興業務です。この業務概要については、Part3でご説明いたします。
 最後の事項である適切な業務運営のための組織・予算の項目については、効率化係数による削減と業務改善の取組状況などのご説明です。Part1とPart4でご説明します。それでは、Part1のご説明に移りたいと思います。
 2頁です。Part1は大きく分けて2つの事項からなっています。まず1.戦略的な事業の展開の項についてです。このうち評価項目(1)社会的なニーズ及び厚生労働省の政策課題を踏まえた戦略的事業展開等の項については3頁です。本項の自己評定は「S」としております。これは研究成果の公表・普及について講演会やシンポジウム、一般公開、生物資源利用講習会、特許出願数のいずれも中期計画における目標を大幅に上回る成果を達成したこと。また、国の政策課題の解決と製薬企業等の活性化を図るために、各研究プロジェクトのこれまでの研究成果についてモニタリングを実施し、各研究プロジェクトの継続の必要について検討を行い、その結果、免疫応答制御プロジェクトの組織体制の見直しを図るとともに、外部評価等で相対的に評価が高かったプロジェクトについて、研究資金の追加交付を実施する等、効率的な組織の再編を推進したこと。さらに産学官連携により、世界に先駆けて、ヒトiPS細胞由来肝臓細胞の製品化に成功したこと。世界で初めて薬用植物、甘草(ウラルカンゾウ)の人工水耕栽培システムの開発に成功したこと等により、基盤技術研究で得られた成果を広く世界に還元するとともに、オーファンドラッグ及びオーファンデバイスの中で本研究所が開発を助成している品目の治験情報を希少疾病(オーファン)治験ウェブとして公開したことなど、中期計画を大幅に上回る成果を達成したことによるものです。
 4頁です。本研究所の特徴は、トランスレーショナルリサーチに重点を置いた産学官連携による研究推進であり、その1例として平成22年に開始した石井健プロジェクトリーダーが率いるアジュバント開発プロジェクトについてご紹介いたします。
 日本発の次世代ワクチンのアジュバント(免疫増強剤)の研究促進のため、「次世代アジュバント研究会」を設立し、アカデミア並びに製薬企業20社と連携して、現在、世界初のアジュバント安全性データベースの構築に向けて議論を深めております。また、マラリア、インフルエンザなどのワクチンの新規核酸アジュバントの開発研究につき、国内ベンチャーと共同で日本初の核酸アジュバントの開発・GMP基準での製造に成功し、全ての非臨床試験並びにPMDAの治験開始前相談を終了し、平成24年度中の治験開始を目指しております。なお、本プロジェクトでは、国内大手製薬企業3社から研究者5名が常時共同研究を本研究所で行っております。
 5頁です。トキシコゲノミクスプロジェクトでは、主要製薬企業13社との産学官共同研究として開発した10億件以上の世界最大規模の高品質毒性データベースであるトキシコゲノミクスデータベースが、平成22年度の内閣府の産学官連携功労者表彰(日本学術会議会長賞)を受賞し、平成23年度で最終年度を迎えたため、その研究成果の今後の応用と期待についてご紹介します。
 本プロジェクトでは、肝臓及び腎臓障害を引き起こすことが知られている約170種の化合物をラット個体及びヒト初代肝細胞に曝露した際の遺伝子発現変化を解析し、非臨床レベルでの応用が期待できるマーカーを36種同定することに成功したことから、現在アジュバント開発プロジェクトと共同でアジュバントの毒性又は安全性を評価するための指標の絞り込みを目指しております。
 さらに本研究所が、産学官連携により世界に先駆けて製品化に成功した、ヒトiPS細胞由来肝臓細胞を用いた新規in vitro毒性評価系の構築及び毒性試験ガイドライン案の作成を目指しております。これによりin vivoでの肝臓毒性を回避するための新薬候補化合物の最適化への応用が期待されます。なお、同定したバイオマーカーの非臨床レベルでの応用並びに新規in vitro毒性評価系の構築に向けて、PMDAと現在までに既に2回意見交換会を実施しております。
 6頁及び7頁です。平成21年度にはスーパー特区、先端医療開発特区の採択課題の次世代感染症ワクチンイノベーションプロジェクトとヒトiPS細胞を用いた新規in vitro毒性評価系の構築について研究の推進に取り組んだところです。
 8頁には特に、ヒトiPS細胞を用いた新規in vitro毒性評価系の構築において、ヒトiPS細胞の分化の中でも、創薬応用に最も重要と言われている肝臓細胞への分化誘導に成功した成果を記載しました。実用化に向けてバイオベンチャーである株式会社リプロセルと共同開発を行った結果、世界初のヒトiPS細胞由来の肝臓細胞として出荷されることが決まりました。
 9頁です。研究業務の外部評価の実施については、業務運営全般についての提言を行う観点、研究所が自ら行う研究評価の観点、ほかの研究機関に対する資金配分機関としての評価の観点から、各種委員会を設置し、それぞれの立場から評価をいただいております。
 所内の共同研究の例については10頁です。年々、所内の共同研究は活発化されており、平成23年度はさらに10件増加しています。
 11頁です。所内における研究情報の交換・共有を促進するため、各プロジェクトの研究成果の発表会や研究者ごとに研究発表する所内研究発表会を実施し、研究連携に役立てています。また新たに導入したテレビ会議システムの積極的な活用により、所内における研究情報の交換・共有をより一層促進しました。12頁の(2)は「研究成果の普及及びその促進」についての概況です。
 13頁は、平成23年度には内閣府の第9回産学官連携功労者表彰(厚生労働大臣賞)を受賞した薬用植物甘草(カンゾウ)の人工水耕栽培システムの開発について、受賞の際の表彰式及び同時に開催された第10回産学官連携推進会議において、甘草の水耕栽培ユニットを展示して、当研究所の研究成果の普及およびその促進を図りました。
 14頁です。一般公開・講演会の開催等について、大阪本所の一般公開では雨天にもかかわらず、過去最高水準の919名が来場されており、大阪北部バイオクラスターの中核機関である当研究所のイベントとして定着しております。
 15頁です。論文投稿、学会・シンポジウムでの発表。特許出願状況については、査読付論文は中期計画を上回る115報。うち論文の質の高さを表すインパクトファクター2以上の論文80報。学会発表384回、特許出願10件となっております。
 16頁は先ほどお見せした図ですが、本研究については特許権の実用化を推進した事例としても挙げさせていただきました。
 評価項目2「外部との交流と共同研究の推進」についてです。17頁は、本項の自己評定は「S」としています。これは研究交流について、連携大学院の推進や研究分野の重点化、若手研究者の積極的な採用など、研究環境の整備を行ったこと。また、鹿島建設、千葉大学との産学官連携の共同研究によって、世界に先駆けて開発に成功した甘草(カンゾウ)の人工水耕栽培システムにより、良質で均一な甘草の短期間、かつ安定的な確保・供給が可能になったことが高く評価され、内閣府の第9回産学官連携功労者表彰において厚生労働大臣賞を受賞したこと。またiPS細胞から分化誘導した肝臓細胞について、産学官連携による世界に先駆けて、ヒトiPS細胞由来肝臓細胞の製品化に成功し、製薬産業の国際競争力の向上へ大きく貢献したことなど、中期計画を大幅に上回る成果を達成したことによるものです。
 18頁は共同研究、受託研究、奨励寄附金の件数、金額等について示しております。19頁は(4)研究基盤・研究環境の整備と研究者の育成についての概況です。
 次に2.適切な事業運営に向けた取り組みの項についてです。このうち評価項目3「コンプライアンス、倫理の保持等」の項についてです。20頁を見ますと、本項の自己評定は「A」としています。これは適切な事業運営を図るため、「パワーハラスメントの防止に関する規程」を策定するとともに、コンプライアンス研修を実施するなど、研究活動に関連する不正行為の防止に取り組んだこと。アイディアボックスの設置、人事評価の活用等を通じて業務改善、無駄削減についての取り組みを進めたこと。支出点検プロジェクトチームを開催し、業務経費に関する不適切な支出が行われていないか点検を行ったこと。費用対効果の小さい事務事業についても検証を行い、免疫応答制御プロジェクトの組織体制の見直しを行ったこと。事務職員に対する人事評価において部門ごとに目標を設定し、職員ごとに目標達成に向けた具体的な取り組みを求めたことにより、中期計画を上回る成果を達成したことによるものです。
 21頁です。研究活動の不正行為に対する対応やパワーハラスメントの防止に関する規程の制定など、コンプライアンスや倫理の保持に向けた取り組みを進めて参りました。また、無駄な支出の削減や業務効率化の体制整備も進めて参りました。
 評価項目4「外部有識者による評価の実施・反映」の項についてです。22頁は本項の自己評定は「A」としております。これは高久史麿 前自治医科大学大学長ほか、16名による「医薬基盤研究所運営評議会」を公開で開催し、前年度の業務実績、研究テーマの重点化等について、さまざまなご意見をいただき研究所の運営に反映させたこと。また研究成果の外部評価を行うため、基盤的研究等外部評価委員会を設置しており、松澤佑次 住友病院院長ほか、8名による基盤的研究等分科会及び高坂新一 国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長ほか、8名による生物質源研究分科会において専門性の高い外部評価を実施し、評価点数に基づき相対的に評価の高いプロジェクトに対して研究資金の追加交付を行い、また評価の低い1プロジェクトについて廃止をしたこと。
 基礎研究推進事業の評価及び実用化研究支援事業の終了時評価については、外部有識者による書面評価と面接評価を行い、承継事業については外部有識者による成果管理会社に対する面接評価を実施する等、創薬等の実現に向けた専門性の高い外部評価を実施したこと。
 昨年度公開した創薬ターゲットの絞り込みを支援する統合データウェアハウス、「Target Mine」を汎用的なツールに拡張し、また本研究所独自の生命科学データベース横断検索システム「Sagace」を開発、公開したこと。希少疾病用医薬品等の臨床試験に関する患者様向け治験情報ウェブサイト、「希少疾病用(オーファン)治験ウェブ」の運用を開始したこと。
 さらに内部監査、外部監査のホームページでの公開や情報公開、研究費の適正使用に関する照会などに適切に対応できる体制の維持・向上を行っており、中期計画を上回る成果を達成したことによるものです。Part1については以上です。

○田村部会長
 ありがとうございました。委員の皆様におかれましては評価シートへ評定等の記入をお願いします。質問等がありましたら、適宜ご発言をいただきたいと思います。

○金倉委員
 アジュバントは優れた研究だと思いますが、今後の方向性としては医師主導型治験を目指すと書いてありますが、それ以外の、例えば企業等の治験というスタイルはなかなか難しいということになりますか。

○医薬基盤研究所理事長
 医師主導型の治験というのは、そのうちの一部で、新たな企業との共同で、例えば、がんワクチンとか、そういうところは企業の方が共同研究した後の成果は、企業の方が治験を行うと思っております。

○田村部会長
 ほかにご質問はありますか。

○馬場委員
 大変活発な活動をされているので敬意を表したいと思います。細かいことをお聞きしたいのですが、まずiPSから肝細胞を作られたのは非常に素晴らしい成果ということで、応用性も高いと思います。基盤研がこれまでトキシコゲノミクスで、ラットか前認証レベルでのデータベースをかなりやられ、昨年は表彰されたぐらいです。あれを使ってヒトと動物での安全性の差異は避けられないものがありますので、今後iPS肝細胞を使って、これまでの動物での肝毒性のトキシコゲノミクスに、さらにiPSのヒト肝細胞を加えて、コンプリートなものにしていくという方向性はあるのでしょうか。

○医薬基盤研究所理事長
 前期までは実はヒトからの肝臓細胞、培養細胞を使ってやっていたのです。それと比較してどのように変わるかということをやっていました。これは外国からの輸入品で、なかなかそのもの自身の均一性とかが大変なのです。それでiPSに変えて、iPSは完全に肝臓細胞にまだ行っていないと思います。マーカーはまだまだ未熟だと思いますが、なるべくヒトそのものの肝臓細胞に近いようなマーカーができるまでにして、これを毒性評価につないでin vitroで評価したいと思っています。

○馬場委員
 それから、スライドの6番目で、スーパー特区のワクチンのところでインフルエンザワクチンの今後の非臨床、臨床でのガイドラインの作成等々はかなり重要かと思いますが、これは厚労省なり、基盤研がそのガイドラインの作成に具体的にコミットするということを意味しているのでしょうか。

○医薬基盤研究所理事長
 最終的にガイドラインを作るのは厚生労働省なので、我々は班を組んでガイドラインの案を作らせていただくということです。これは企業等にもご意見を伺いますし、それを厚生労働省に上げて、厚生労働省がガイドラインとして昨年も一昨年もですが、一般に公開したというところです。

○田村部会長
 ほかにご質問、コメント等がありますか。

○金倉委員
 iPSから肝臓細胞ができた、トキシコゲノミクス研究が大きく進歩したということは素晴らしいと思います。薬物の評価としては、例えば肝毒性、腎毒性、神経毒性はiPSを使えばいろいろな評価システムが可能だと思いますが、将来構想としてはどのようにお考えでしょうか。

○医薬基盤研究所理事長
 先生が言われるように、腎臓とか心臓も含めて、いろいろな所に分化させて、それが本当にヒトのマーカーになればいいのですが、このグループがやろうとしているのは肝細胞のあとは血液毒性と考えていまして、毒性だけではなく、血液の分化、例えばマクロファージを分化させるとか、DCに分化させるとか、現在そのような血液系の細胞に分化させて、それが将来毒性の評価につなげられるようにしているところです。次々といろいろな分化をさせていこうと思っていいます。

○医薬基盤研究所戦略企画部長
 補足ですが、スーパー特区の毒性評価系の構築のグループとしては基盤研だけではなく、ナショナルセンターとか、ほかの健康づくり21とか、一緒に共同研究をする中では肝臓だけではなく、神経細胞とか心筋細胞も含めた毒性評価系の構築を最終目標にしているところです。

○田村部会長
 ほかにご質問なり、コメントはありますか。

○清水委員
 評価項目3の監査の言葉が出てくるところについてですが、資料1-1の16頁にいろいろ監査という言葉が出てきて、外部監査は独法の独立会計監査人の監査だと思いますが、それ以外に内部業務監査とか、会計監査という言葉が出てくるのですが、ざっくり整理すると、どういう形に監査体制はなっているのでしょうか。

○医薬基盤研究所総務部長
 資料1-5の154頁に内部監査チーム、コンプライアンス委員会ということで、どういう形で監査を行っているかというポンチ絵があります。この中で、例えば内部監査チームであれば、業務プロセスの確認とか、統一的な規程やマニュアル等の確認、業務運営全般についての監査といった形で内部監査チームが組まれています。そのほかに監事、外部監査人ということで外部の方から監査を別に受けているという形をとっています。

○清水委員
 資料1-1で「個人情報管理に関して内部監査」という言葉が出てきたのですが、それは内部監査チームのいまおっしゃった3つの中に入っているということですね。

○医薬基盤研究所総務部長
 そのような解釈でよろしいかと思います。

○清水委員
 これらは情報共有、重複を避けるような形での調整というのは、連携体制をとれていますか。

○医薬基盤研究所総務部長
 そういう体制をとっております。

○清水委員
 どのようにとっておられるのですか。

○医薬基盤研究所総務部長
 うちは監事とか外部監査人というのがおりますので、うちで内部監査を受けた場合には報告をしますし、その報告についてのアドバイスをいただくという形で、第三者的なそういったチェックも行っていただいています。

○清水委員
 あとでも出てくると思いますが、内部統制の整備、運用に当たっては監事監査の意見をよく踏まえてということがあったと思います。監事監査の結果、プラスいまおっしゃった外部監査人の監査の結果あるいは内部監査の結果について、いま連携関係にあると言われたのですが、どういう意見があったのかということについて、ほかの法人にもお願いしているのですが、財務ヒアリングの際に具体的に教えていただきたく思いますので。

○医薬基盤研究所総務部長
 わかりました。では、来週の月曜日の財務諸表の監査のときに。

○清水委員
 よろしくお願いします。

○田村部会長
 その件はよろしくお願いします。ほかにはいかがですか。

○酒井委員
 2つあります。1つはスライドの13頁で甘草の人工水耕栽培は大変素晴らしいと思いますが、基盤研と千葉大と鹿島建設(株)という固有名詞はどういう出会いで、こういう組織がうまくできるようになったのでしょうか。
 もう1つは、10番目のスライドで所内連携が非常に進展しているということですが、これも大変素晴らしいことだと思います。理事長の最初の言葉にあったように、例えば健栄研が今後合併するとか、新しい組織が出てきたときの1つの戦略として、内部の連携を進めることと、外部のいろいろな、最初の質問もそうですが、こういう所のバランスというか戦略をどのようにお考えになって、進展がどんどん増えてきているのでしょうか。

○薬用植物資源研究センター長
 薬用植物資源研究センターの川原と申します。今回、甘草の人工水耕栽培システムですが、まず我々が優良種苗、水耕栽培に非常に効率的に作れる優良種苗をまず開発したというところから始まり、それに着目した鹿島建設(株)が、いわゆる箱物を是非作りたいということと、千葉大がそれをさらに増殖するようなシステムを以前から研究されておりましたので、その辺を含めて、では産学官で共同研究をやったらいかがでしょうか、というところで始まったという経緯を聞いております。

○酒井委員
 そういう情報は基盤研を中心に既に情報共有されているものですか、それとも学会等の情報等で、それぞれがこのようにやっているということが分かってきたことによって、こういう組み合わせができたのでしょうか。

○薬用植物資源研究センター長
 まず我々が種苗を開発するというところがあって、初めて関連の企業あるいは大学の方に興味を持っていただいて進んでいるということで、形的には鹿島建設が大きい会社ですので中心に動いておりますが、そのコアになる部分は種苗が、ある意味ではすべてというか、非常に大きな割合を占めて、我々が開発に成功したことが1つのきっかけになっていると理解しています。

○医薬基盤研究所理事長
 2つ目にお答えします。内部の連携ですが、私は最初からこの職をやっています。最初は本当に内部でなかなか連携しにくかったのです。例えば、つくばの研究センターと大阪の研究部門となかなか連携しにくかったのですが、先ほど言ったいろいろな研究会を通じて、例えばある開発をすると、サルに持っていって、サルで毒性評価とか効能を見ていくというのが進みましたし、大阪の研究のグループの中でも、例えばあるアジュバントを開発しているグループもあるし、片方は感染症のインフルエンザの研究をしているグループがあって、なかなかリンクしなかったのですが、ワクチンに関してはリンクする。月に2つのグループが皆さんの前で発表会をして、それを皆さんが聞きますので、一緒にやろうということになってきて、内部の連携も非常に強くなったというのが現実です。

○酒井委員
 外部との連携とのバランスというか関係については何かあります。

○医薬基盤研究所理事長
 バランスと言われるとなかなか難しくて、外部の連携も私は非常に奨励していまして、いろいろな所で発表させたり、研究会を設けておりますので、難しいのですが、両方とも頑張ってやるようにということで、特にバランスを取っているということはありません。

○田村部会長
 ほかにはありませんか。

○馬場委員
 共同研究、受託研究は件数が非常に高くて、6億を少し超えるぐらいの資金を得ておられると思いますが、ほかの厚労科研とか、そういう競争的資金はどのぐらいですか。どこかにデータがありましたか、気づかなかったのですが。

○医薬基盤研究所総務部長
 お手元の資料の161頁をご覧ください。ここに厚生労働科学研究費補助金とか。これはまたあとで私のほうから説明します。

○田村部会長
 それではよろしいでしょうか。記入のほうはよろしいでしょうか。
 それでは次にグループ2の基盤的技術研究、生物資源研究関係、これは評価項目の5~10に該当しますが、これについての評価を行いたいと思います。所要時間は、法人からのご説明15分、委員の評定と質疑15分の合計30分で進めて参りたいと思います。
 それでは法人からのご説明をよろしくお願いいたします。

○医薬基盤研究所戦略企画部長
 続きまして、Part2につきまして本研究所で行っている基盤的技術研究と生物資源研究のご報告です。
 まず、資料の24頁をご覧ください。基盤的技術研究、生物資源研究ともに、それぞれ、(1)から(3)までの3つの事項から成り立ちます。
 続いて26頁をご覧ください。まず、基盤的技術研究の評価項目5の(1)次世代ワクチンの研究開発の項についてです。本項の自己評定は「S」としております。これは、将来どのようなインフルエンザが出現しても直ちに対応できる次世代インフルエンザワクチンの研究開発や免疫増強剤であるアジュバントの安全性の向上に寄与する研究等を行っており、平成22年度は、まだ初年度であったアジュバント開発プロジェクトの研究が大幅に進む等、中期計画を大幅に上回る成果を達成したことによるものです。
 はじめに感染制御プロジェクトの成果をご報告いたします。このプロジェクトでは、27及び28頁にお示ししておりますように、予測できないインフルエンザパンデミックに即応できる新たなワクチンなどの開発を目指しております。
 29及び30頁をご覧ください。北海道大学の喜田教授らが公開いたしましたインフルエンザライブラリーから作製いたしましたワクチンのマウスへの経鼻免疫により同じ亜型の変異ウイルス株に対する交叉防御効果を確認することができ、本ワクチンが新たなパンデミックに即応し得ることが高く示唆されました。
 31頁をご覧ください。ここからはアジュバント開発プロジェクトの成果です。このプロジェクトでは、自然免疫及び獲得免疫機構の解明及び新規アジュバントの開発を目指しております。32頁では、マラリアワクチンの新規核酸アジュバントの開発研究につき、国内ベンチャーと共同で日本初の核酸アジュバントの開発、GMP基準での製造に成功し、すべての非臨床試験並びにPMDA治験開始前相談を終了したことを報告しております。
 33頁では、古くから認可され、ワクチンアジュバントとして汎用されているアラムアジュバントの作用機序の世界に先駆けた解明に関する論文発表、34頁では、新規アジュバント開発研究における有効性・安全性向上のためのアカデミア並びに製薬企業20社との産官学共同として設立された「次世代アジュバント研究会」を、平成23年度は2回開催し、平成24年度から開始する世界初のアジュバント安全性データベースの構築に向けて議論を深めました。
 次に、36頁をご覧ください。基盤的技術研究の評価項目6の(2)医薬品等の毒性等評価系構築に向けた基盤的研究の項についてです。本項の自己評定は「S」としております。これは、iPS細胞を利用した医薬品の毒性評価系を構築するための橋渡し研究として、iPS細胞由来肝臓細胞を効率よく分化誘導する極めて画期的な独自技術の開発により、世界に先駆けて「ヒトiPS細胞由来肝臓細胞」の製品化に成功したこと、10億件以上の世界最大規模の高品質毒性データベースであるトキシコゲノミクスデータベースの公開完了、あるいは、5カ年研究成果として非臨床レベルでの応用が期待できるマーカーを36種同定することに成功したことなど、中期計画を大幅に上回る成果を達成したことによるものです。
 はじめにバイオインフォマティクスプロジェクトの成果をご報告いたします。このプロジェクトでは、37頁にお示ししておりますように、疾患の分子機構の解明と新規の医薬品標的候補タンパク質の同定を目指して、バイオインフォマティクスの手法を用いたタンパク質の構造・機能や相互作用の予測研究を進めております。
 40頁をご覧ください。ここからは幹細胞制御プロジェクトの成果です。このプロジェクトでは、iPS細胞をはじめとする各種幹細胞を分化誘導し、医薬品等の毒性評価系を構築することにより、創薬研究を加速化することを目的とした基盤的研究を実施しております。41頁では、マウスiPS細胞から分化誘導したマスト細胞が、マスト細胞の形態学的特徴並びに免疫グロブリンE依存性脱顆粒応答能及び免疫グロブリンE非依存性のバンコマイシンに対する脱顆粒応答能を有していることを確認し、薬物アレルギー評価系への応用を目指しております。
 42頁では、スーパー特区として採択された研究課題の中の主要な研究として、産学官の連携により世界で初めて「ヒトiPS細胞由来肝臓細胞」の製品化に成功したことを報告しております。これにより製薬企業が行う新薬開発における肝臓毒性試験が大幅に効率化されることが期待されており、昨年12月に研究成果の記者会見を行い、テレビ、一般紙、薬業専門紙等、約20件に繰返し放映又は掲載されました。
 43頁をご覧ください。ここからはトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトの成果です。このプロジェクトでは、製薬企業13社が参加している産学官共同研究事業として進めて参りました。
 44頁をご覧ください。5カ年の研究成果として非臨床レベルでの応用が期待できるマーカーを36種同定することに成功し、うち2種はヒトでの臨床レベルでの応用が期待できます。45頁では平成23年度に特定に成功した21種の非臨床バイオマーカーを記載しております。
 46及び47頁をご覧ください。第1期及び第2期プロジェクトで取得した公開対象の化合物に係るデータについて本研究所及びバイオサイエンスデータベースセンターからの公開を完了いたしました。
 次に、49及び50頁をご覧ください。基盤的技術研究の評価項目7の(3)難病治療等に関する基盤的研究の項についてです。本項の自己評定は「S」としております。これは、企業との共同研究により画期的な成果を出し、研究成果を積極的に公表し、本研究所の研究のみならず、企業等の研究にも貢献しており、難病の有力なバイオマーカー候補や治療法の研究が進む等、中期計画を大幅に上回る成果を達成したことによるものです。
 はじめに免疫シグナルプロジェクトの成果をご報告いたします。このプロジェクトでは、51頁にお示ししておりますように、独自に同定いたしました関節リウマチ、クローン病等の新規炎症タンパク質であるLRGの生理作用を解明し、抗体薬品のコンパニオン診断薬としての検討及びサイトカインシグナル伝達制御因子SOCSを用いた抗がん剤、難病治療薬等の開発につながる基盤的研究を実施しております。
 52頁では、関節リウマチにおいて抗IL-6R抗体を投与中に関節症状が再燃した患者血清中において、CRPが陰性であるにも関わらずLRGが上昇しているということを世界で初めて明らかにしております。53頁では、悪性胸膜中皮腫を移植したマウスにアデノウイルスベクターを用いてSOCS3を導入することにより生命予後が改善することを確認しております。
 55頁をご覧ください。ここからはバイオ創薬プロジェクトの成果です。このプロジェクトでは、タンパク質工学やプロテオミクスを駆使した創薬基盤技術を開発し、有用な創薬ターゲットの探索と、それらターゲットに対するバイオ医薬のシーズ開発を推進しております。
 57頁では、当プロジェクトの過去の研究等によって、TNFR2の選択的な活性化が可能であれば、自己免疫疾患に対する治療戦略になり得ることが期待されております。TNFR2、指向性アゴニスト変異体の作製を試みてTNFR1及び2に対する生物活性評価を実施し、TNFR2に選択的なアゴニストが得られたことを確認できました。また、本研究成果により、昨年度に引き続き、国際サイトカイン学会において「Milstein Award」を受賞いたしました。
 58頁をご覧ください。ここからは代謝疾患関連タンパク探索プロジェクトの成果です。このプロジェクトでは、難病を中心に糖・脂質代謝異常の機構を解明し、新たな創薬の基盤技術の構築を目指して研究を進めております。
 59頁では、神経変性の病態度に相関する因子であるタンパク質リン酸化酵素SIK2の阻害剤を投与したマウスを用いて、大脳皮質で神経栄養因子が誘導され脳梗塞後の神経変性におけるSIK2阻害の重要性が初めて示唆されました。
 61頁をご覧ください。ここからはプロテオームリサーチプロジェクトの成果です。このプロジェクトでは、産学官共同で新規の難病疾患関連バイオマーカーの探索を進めております。62頁では、プロテオミクスを用いたバイオマーカー探索で同定された数千個の大腸がんバイオマーカー候補タンパク質の中から、超高感度質量分析法により最大118個のタンパク質の検証を行いました。次に、検証ができた大腸がん組織膜タンパク質で発現が亢進していた2種類のバイオマーカー候補タンパク質について、1,000症例を超えるがん組織アレイを用いてがん種特異性の検証を行い、各々、胃がん・乳がん、あるいは、前立腺がん・乳がんのバイオマーカーになることが示唆されました。また、本研究成果により、「日本プロテオーム学会ベストポスター賞」を受賞いたしました。
 次に、66頁をご覧ください。生物資源研究事業の概要をお示ししております。当研究所では高水準の生物資源供給による研究開発支援策として、霊長類、難病疾患試料、実験用小動物、培養細胞、薬用植物の収集、品質管理提供を行っております。
 まず、67及び68頁をご覧ください。生物資源研究の評価項目8の(1)難病・疾患資源研究の項についてです。本項の自己評定は「A」としております。これは、難病研究資源数、培養細胞の収集数、細胞バンクの供給数、疾患モデル動物の開発数、マウス系統の分譲数、いずれも目標を上回る成果を達成したこと等によるものです。
 はじめに、難病研究資源バンクと、政策・倫理研究の成果をご報告いたします。難治性疾患克服研究の推進を図ることを目指し、このプロジェクトでは、69頁にお示ししておりますとおり、難病の研究班から提供された資源を中心としまして、血液や遺伝子などの収集・保管、品質管理、情報公開を行うとともに、治療法開発や創薬研究のための分譲を行っております。70頁にお示ししておりますように、ヒト試料の取扱いと利用においては、資源の所在情報のデータベース構築に加えまして、政策・倫理面の体制整備は不可欠で、資源の流通を円滑にするために、1.疾患研究関連バイオリソースデータベースの整備、2.政策・倫理研究、及び、3.広く社会と関係者への情報発信を行っております。
 71頁では難病資源バンクの収集実績を記載しております。平成22年度と比較して平成23年度の収集は大幅に増加し、13疾患409症例分の729試料を収集しました。また、政策・倫理研究として、国内外の調査研究とその情報公開や国立高度専門医療研究センター6機関との連携を促進しております。
 72頁をご覧ください。ここからは培養資源研究室の成果です。このプロジェクトでは、ヒト疾患由来である細胞資源などの収集・供給、高度な品質管理、情報管理を実施しております。平成23年度の培養細胞の提供実績は、総計3,608アンプルでした。
 73頁をご覧ください。iPS細胞等の培養環境の整備を目指し、安全、高品質な細胞培養法を標準化し、ヒトiPS細胞培養講習会やヒトES/iPS細胞培養法に関する相談対応等を積極的に行いました。
 74頁では、昨年度開発に成功いたしました、既知の組成から成り、動物由来成分を含有しないヒトiPS細胞用の無血清培地の実施契約・販売に向けて、長期継代後も未分化性並びに多分化能を維持していることが確認できました。
 75及び76頁をご覧ください。ここからは疾患モデル小動物研究室の成果です。このプロジェクトでは、政策的に重要な難病などに特化した疾患モデル動物の開発や、疾患・創薬研究用の疾患モデルに特化した実験小動物バンク事業を実施しております。77頁では、平成23年度の分譲可能系統数は157系統、マウス分譲件数は38件、実験動物サポートサービスは375件でした。78頁では、心筋症モデルマウスにおける心臓小胞体タンパク質を介した心筋症の発症機序を解明したことを報告しております。79頁では、ヒト前立腺がん及び希少疾病である消化管間質性腫瘍の臨床腫瘍移植モデルマウスの開発に世界で初めて成功したことを報告しております。
 次に、81及び82頁をご覧ください。生物資源研究の評価項目9の(2)薬用植物の項についてです。本項の自己評定は「S」としております。これは、産学官連携の共同研究によって、世界に先駆けて開発に成功した甘草(カンゾウ)の人工水耕栽培システムにより良質で均質な甘草の短期間かつ安定的な確保・供給が可能になったことが高く評価され、内閣府の第9回産学官連携功労者表彰において厚生労働大臣賞を受賞したこと、薬用植物の保存、特許の出願状況等においても、中期計画を大幅に上回る成果を達成したことによるものです。当センターでは、83頁にお示ししておりますように、我が国唯一のナショナルレファレンスセンターとしての役割を担っており、薬用植物遺伝資源の収集・保存・供給・品質管理に加え、それらに必要な技術や評価の研究を行い、学界、産業界等からも高く評価されております。
 84頁をご覧ください。「植物目録」を刊行し、平成23年度用「種子交換目録」を62カ国、397機関に配布し、1,351点の種子を送付いたしました。85頁では、漢方薬に使用される薬用植物総合データベースの公開を行いました。86頁では、「第2のレアアース」と呼ばれ、現在海外からの輸入に100%依存しております甘草の人工水耕栽培システムの開発により、良質で均質な甘草の短期間かつ安定的な確保・供給が可能になり、内閣府の第9回産学官連携功労者表彰において厚生労働大臣賞を受賞いたしました。
 87頁では、薬用植物資源の新品種育成について、北海道の地域農業に根付きつつあるハトムギ新品種「北のはと」を原料とした製品の商品化が進み、医薬品原料の生産とともに、産業や地域振興にも貢献しております。88頁では、社会問題になっております違法ケシの意図的・非意図的な拡散を防止するための遺伝子識別に関する研究を推進しております。
 次に、90及び91頁をご覧ください。生物資源研究の評価項目10の(3)霊長類の項についてです。本項の自己評定は「A」としております。これは、我が国唯一の医学実験用霊長類センターとして、医科学研究用霊長類リソースの開発、収集、維持、品質管理、供給、及びそれらに必要な技術や評価に関する研究を行い、中期計画を上回る成果を達成したことによるものです。当センターでは、92頁にお示ししておりますように、我が国唯一の医学実験用霊長類センターとしまして霊長類を用いた個体レベルから遺伝子レベルまでの医科学研究を推進しております。
 93頁では、高品質カニクイザルの繁殖、育成、品質管理、供給を実施しており、国際的にも貴重なSPF固体の生産推移等のデータについてお示ししております。
 94頁では、Traffic Jam仮説に基づき、アルツハイマー病の病態機序の解明を実施しております。平成23年度にはアルツハイマー病カニクイザルモデルの脳組織を用いて、軸索輸送モーター蛋白の機能低下が引き起こすエンドサイトーシス障害は、神経伝達物質の放出・取り込みそのものを阻害することを世界で初めて明らかにしました。さらに、このエンドサイトーシス障害は、アミロイドベータの蓄積あるいはダイニンの機能低下よりずっと早期に認められることがカニクイザルの試験から判明いたしました。今後は、エンドサイトーシス障害の予防・改善をターゲットとする新規アルツハイマー病予防薬の開発を目指します。
 95頁では、当センターで作製した自己免疫性心筋炎マウスモデルにサイトカイン抑制シグナル1のDNAワクチンを投与したところ、心筋炎が抑えられ、拡張型心筋症への進展が抑制されました。今後、拡張型心筋症につながる自己免疫性心筋炎の新たな遺伝子療法としての可能性をカニクイザルモデルを用いて検討する予定です。
 96頁では、ヒトにほとんど病原性を示さないヒトパラインフルエンザ2型ウイルスの「遺伝子導入用ウイルスベクター」を用いて呼吸器粘膜に細胞性免疫を誘導することにより、安全性及び有効性が高い新規経鼻噴霧型結核ワクチンの開発を現在行っております。Part2については以上です。

○田村部会長
 ありがとうございました。委員の皆様におかれましては、評価シートへの評定等の記入をよろしくお願いいたします。質問等がございましたら、適宜ご発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○清水委員
 研究内容については全く素人なので、ご説明があまりにも盛りだくさんで、早口でお喋りになるのでよくわからないところが結構あるのです。
 まず、評価する立場としましては、計画に対してどうだったのかという観点で評価させていただきます。「S」が多いのですが、どの点が大幅に上回ったのかということをもう少し重点的にご説明いただければよかったかなと思うのです。そこはいま、ご説明いただけるのですか。例えば何項目かありましたが、「S」は特にどこが。評価シートを見ても、大体中期計画、それから、年度計画にも類似のことは書いてありますので。でも、それ以上のことをやられたというわけですから、そこのポイントをもう少し絞って教えていただけないのでしょうか。

○田村部会長
 では、Part2で結構ですので、S評価については、計画に対して特に優れた成果が得られたという内容についてポイントをご説明いただきたいと思います。

○清水委員
 例えば評価項目5、次世代ワクチンの研究開発、「S」ですよね。それから、6もそう、7もそうということだと思うのですが、具体的にどこが優れているのですか。いま、難しい、ということであれば結構なのですが。

○医薬基盤研究所戦略企画部長
 評価項目5について先程ご説明申し上げたのは、将来、どのようなインフルエンザが出現しても直ちに対応できるような次世代のインフルエンザワクチンの研究開発を行っており、インフルエンザのライブラリーから作製したワクチンを用いて交叉防御効果がマウスで確認できたので、パンデミックに対して迅速な対応ができるという話、あるいは、ワクチンに加える免疫増強剤のアジュバントに関する研究が進んだことや、それについては産学官の連携で非常に研究会での議論が進められたというようなことを申し上げました。

○清水委員
 では、今後のご説明は是非そのような形で、計画に対してどうだったかということもわかるような形でお願いしたいと思います。それで、私は計画に対してどうだったかが知りたかったので資料1-1を追いながら見ていたわけですが、例えば、いまご説明いただいた次世代ワクチンの研究開発などは18頁辺りに載っていると思うのです。ところが、実際の評定になると、評価項目5というのが出てくるのは20頁なのです。評価項目5の年度計画との対比がどこに出てくるのかがすごくわかりづらいです、評価項目5というのがあとから出てきますので。これは計画に照らしてどこに実績があるのかが、評価項目5が18頁に関係するというのがすごくわかりづらいのです。だから、来年以降になるのでしょうけれども、書き方をわかりやすくしていただきたいと思います。これはお願いです。

○田村部会長
 では、この件は事務局でもご検討いただいて、できるだけ見てすぐ、計画に対してどの程度進んだかというところがわかるような形に、フォーマットをお願いしたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。

○清水委員
 はい。

○田村部会長
 ほかに何かご質問はございますか。

○馬場委員
 2点質問があるのです。1つは、バイオマーカーをいろいろな視点から同定されていっているということで、それを5年間の成果としてかなり出されているのですが、例えば、製薬メーカー等にとって前臨床のPMDAの申請のときのデータに、今回、この5年間で明らかになったものについて、これが少なくとも安全性あるいは毒性の指標のマーカーとして使用に耐えるという、そういったところまでブラッシュアップしていく、今後、出てきたものをどのように、1つの成果として「出ましたよ」というだけではなくて、一応そういうエビデンスとしてブラッシュアップするような、そういう方向性を持っておられるのかどうかを1点お聞きしたいのです。

○田村部会長
 いかがでしょうか。

○医薬基盤研究所理事長
 バイオマーカーの研究で随分いろいろなバイオマーカーが見つかって、私は、そのうちの1つでも2つでも、将来、創薬につながるバイオマーカーになればいいと思っています。
 それで、例えばの話ですが、先程コンパニオンバイオマーカーのお話をしましたが、今リウマチの抗体薬がたくさん作られていますが、本当に効いているかどうかもわからない。例えば、先程CEPという専門用語が出てきましたが、実は感染症等で上がらないということがわかって。見つけたバイオマーカーの1つ(LRG)を使うと感染症に感染しているということがわかって、それをコンパニオンバイオマーカーと言っております。この前、実は厚労省の審査管理課から公募があったので、それをバイオマーカーとして使って、将来、それを評価できるようなものにするという研究で、実は応募したのですが、うまくいかなかったのです。そのようにして、これから、地道にPMDA、国立医薬品食品衛生研究所と共同で本当に使えるバイオマーカーにするために、これは1つの例ですが、次々とやっていく段階です。

○馬場委員
 もう1点はインフルエンザパンデミックのワクチンの件です。これは非常に面白い基盤研究だと思うのですが、これを例えば、実際にタイムラインに乗せて実用化まで基盤研が検討してかかわっていくというように理解していいのですか。

○医薬基盤研究所理事長
 これは、別に基盤研が作るのではありません。我々がやったところは何かと言いますと、まず、今の注射法から鼻に変えたほうがいいと、経鼻接種にしたほうがいいというのが1つです。経鼻接種をすると、毎年毎年、型が変わってもそれに対して対応できるということが動物レベルでわかっておりますから、それを今感染研などと一緒になってサルのレベルでやっている。将来、これを使ったものをメーカーがヒトのレベルでするという前の段階の研究をしているということです。

○馬場委員
 あくまで基盤技術を確立するという、そういうレベルですか。

○医薬基盤研究所理事長
 そうです、最終的に我々が開発するということではありません。最終的にはメーカーがやるということになります。

○田村部会長
 ほかにはいかがでしょうか。

○中村委員
 6番の「医薬品等の毒性等評価系構築に向けた基盤的研究」に関する説明がよく理解できなかったのですが、質問させて下さい。たくさんのバイオマーカーを見つけたという成果は認めますが、それが毒性等評価系構築というものとどういう関係にあるのでしょうか。補足していただきたいのです。

○田村部会長
 いかがでしょうか。

○医薬基盤研究所戦略企画部長
 すみません、今のはトキシコゲノミクスのお話ですか。

○中村委員
 見つけたというのは素晴らしいことだと思うのですが、もともとの毒性等評価系構築というものを目指していることと、見つけたこととの関係が説明の中から理解できなかったということです。

○医薬基盤研究所戦略企画部長
 もちろんヒトiPS細胞から誘導した例えば肝臓細胞などであれば、化学物質を暴露したら、ヒトの肝臓に毒性があればその細胞が死んでしまうとか、直接的に評価ができる。それから、トキシコゲノミクスなど、膨大なデータベースが入っておりますので、どのような化学構造であると、例えば肝臓とか腎臓に毒性が現れるとか現れないとか、そういう膨大なデータベースがありますので、それを用いると、新規の化合物に対しても、実際に動物を使わなくても、いろいろな予測ができるというような。それは、バイオインフォマティクスのほうもいろいろな情報とつながっていますので、そういう分析がコンピューター上でできるということになっていると思います。

○中村委員
 個々に説明された、例えば肝細胞の効率的分化、培養環境の整備、その成果があると思います。そのことがもともとの評価項目6から見たときに、どういう関係にあるのかがよく理解できないのです。

○医薬基盤研究所理事長
 今言われているのは、先程のヒト肝臓細胞の分化にどのように使えるかというご質問ですか。

○中村委員
 いいえ、そういうことではなくて。評価項目6では、医薬品等の毒性等評価系構築に向けた基盤的研究というような大きな目標があるわけですね。それに対して自己評定「S」を付けていますが、ここで研究所が評価しているのはそれぞれの研究ではないでしょうか。もともとの「評価系構築に向けた」という本題との関係が読めないということです。「毒性等評価系構築」というのはどのような意味を持っているのですか。

○医薬基盤研究所理事長
 一般的に、薬を作るときには、ラット、動物に投与したりして毒性を評価していって、それで、毒性が出たものはドロップしていくのですが、いわゆる動物実験から試験管の中で遺伝子レベルでどのように上がったり下がったりするかというデータベースを作ることがこの研究です。次々といろいろなデータベースが出来てきまして、それが将来は、これは基盤研ではなくて、たぶんPMDA等がこれを使って、製薬メーカーが使えばということで、そういうところにまで至っていると理解していただいたらいいのではないかと思います。そういうご質問なのでしょうか。

○中村委員
 結構です。

○医薬基盤研究所戦略企画部長
 おっしゃるのが、例えば動物実験が終わって、例えばヒトの実験をする前の段階で本当に動物の実験とヒトの実験細胞では。ではなくて。

○中村委員
 医薬品の毒性等評価系構築に向けたという、これは何をやろうとしているのかというのが、私は門外漢なのでよくわからないのです。それと、ここで述べられている目的に対し、これもやりました、これもやりました、バイオマーカー同定に成功とか、世界に先駆けて云々と説明されています。これが毒性等評価系構築という本来の目的とどのように関係するのかという辺りを、もうちょっとわかりやすくに説明していただきたいということです。そもそも6番の評価項目というのは何をやろうとしたのですか。

○医薬基盤研究所理事
 今理事長からお話がありましたが、動物や細胞などを使ってヒトで最終的に安全性にどのような問題があるかを調べるわけです。その際に、先程iPS細胞を用いた肝細胞が出来たという話がありました。薬は肝毒性や腎毒性などのおそれがあるわけですので、通常は、医薬品として開発される前に肝細胞などの毒性を事前に調べるわけです。その時にその評価系でヒトの細胞を用いるわけですが、入手も非常に難しい状況にありますので、いつも一定の品質のヒト肝臓細胞などがiPS細胞を用いて作れば基盤的な技術になる、というのが1つあります。
 もう1つはトキシコゲノミクスのようなものです。これは、170ぐらいの化学物質、これはある程度一定の安全性の問題がわかっているようなものですが、これをラットに投与した時に肝臓や腎臓などにどういう影響があるかについて、細胞には3万ぐらいの遺伝子があるわけですが、ラットを調べることでこの化学物質についてはどういう遺伝子が影響しているかがわかります。そういうことをいろいろ調べていけば、遺伝子レベルでの、どの遺伝子がどのようになるのかがわかれば、これから新しく開発しようとする化学物質について、それを投与した時に同じように調べていくことによって、こういう構造を持っている化学物質は安全であるか安全でないか、こういうことがわかるということです。通常であれば、たくさんのラットとかマウスを使って1年も2年も調べなければいけないことが、そういったことを調べることで迅速な医薬品の開発にもつながりますし、より正確な安全性の評価にもつながってくるというようなことです。
 あと、iPS細胞については、いろいろな評価系の中で、病気になっている患者さん由来のiPS細胞で増やして、それがどういう原因であるか。あるいは、例えば血液についてのいろいろな問題がある場合には、それについてiPS細胞を使ってたくさん増殖させることができれば、そういった安全性の評価もできる。そのような基盤的な部分を構築していきたいということです。

○中村委員
 評価系とありますね。系というのはシステムですので、個々の成果がシステムとしてどうつながるのかその辺のところが見えなかったという質問です。今のご説明で、評価するときの標準細胞みたいなものが必要だと、いうことですね。そして、それがiPS細胞であるということですね。それから、本当にどの程度かというマーカーみたいなものがまた必要であり、それをやったというわけですね。説目の中で、それをどのような形でやろうとしているかという辺りが、ストーリーとして見えなかったということです。どうもありがとうございました。

○田村部会長
 いずれにしても、かなり専門的な面もありますので、できるだけわかりやすい、ポイントを突いたご説明をいただけると、皆さん、わかりやすいかと思います。

○岩渕委員
 評価項目8の関連で。原発事故に絡んで白血病の研究、共同研究で何かやっていらっしゃるようですが、この関係について言えば、国民にとってみると、かなり気がかりというか、気になっているところではありますので、今後もさらにどういう研究テーマがあるのか、素人でわかりませんが、できるだけ、無駄になってもいいというと何ですが、結果を求めずに、鋭意努力してもらいたい。もし研究テーマとして何か考えられるようなものがあれば、教えていただきたいと思います。

○医薬基盤研究所理事長
 先程言われた、原発の事故のどの程度影響があるかということですが。このうち、共同研究をしているグループに放射線の専門家がいます。この先生は、実は動物の自然発症マウスを開発しているのが主たる業務ですが、それプラス、今までの研究もやっておられます。特に原発などがありましたから、そういう、例えばヒトからの細胞、ヒトからの臓器を今マウスに植えることができるのです。それで増やすことができるのです。それに対してどのような影響があるかとか、そういうのを試験管なり動物レベルで、今やっているということです。それも、今時期が時期ですから、研究を進めていこうと。その先生の得意なところなので、やっていくように今お願いしているところです。

○田村部会長
 ありがとうございました。記載はよろしいでしょうか。
 次に、Part3「研究開発振興」関係で、評価項目の11~13について評価を行います。所用時間は、法人からのご説明15分、委員の評定と質疑15分の合計30分ということで進めます。それでは、法人からのご説明をお願いします。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 研究開発振興業務について、資料97頁からのPart3をご説明します。研究開発振興業務では4つの事業を実施していますが、平成23年度は進捗管理に当たるプログラムオフィサーを1名増員し、7名体制とし、これらの事業の進捗管理を強化しました。
 各事業別に説明します。「基礎研究推進事業」について、98頁をご覧ください。この事業は、大学や国立試験研究機関等の創薬等研究プロジェクトを支援対象としており、外部有識者からなる評価委員会による厳正な評価と、医薬品開発に関し専門的知識を持ち、医学、薬学、生物工学等多彩な分野の研究経歴を持つ常勤のプログラムオフィサーを有する強力な事務局機能を活用した丁寧な進捗管理や指導・助言を大きな特徴としています。
 103頁は、平成23年度継続研究プロジェクトの分野ごとの数を記載しています。平成23年度は、合計56プロジェクトに約45.8億円を交付しています。なお、厳正な課題評価を実施することで、研究費の効率的な配分及び活用に努めています。
 104頁からは、研究プロジェクトの進捗状況と成果についてご説明します。まず、研究プロジェクトの進捗状況の例について、4つの研究課題を105~108頁で紹介していますので、ご覧ください。なお、109~110頁では、京都大学iPS細胞研究所の山中所長によるヒトiPS細胞の樹立の成功など、現在までの主な成果を挙げています。
 112頁をご覧ください。主要な学術論文への掲載やプレスリリース等研究プロジェクトにおける成果については、当研究所のホームページで公表しています。平成23年度には、国立がん研究センターの柴田分野長による肝臓がんのゲノムシーケンスの結果など、多様な研究成果を公表しています。
 次に、治験の段階まで進んだ研究課題について、113頁をご覧ください。平成17年4月の基盤研設立以降、128件の研究プロジェクトを支援してきました。そのうち若手研究を除く103件の中で、当事業の成果を踏まえ、治験の段階まで進んだ研究プロジェクトは合計7件あり、その確率は14分の1です。日本製薬産業のデータでは、医薬品候補化合物が医薬品として承認を取得する確率は約3万分の1、治験まで到達する確率は約3,000分の1とされており、比べる対象が異なるため正確な比較ではありませんが、この14分の1というのは非常に高い確率であると言えます。
 また、114頁のとおり、初めて特許使用許諾に関する成果報告があり、3研究プロジェクトから総額33万円余の納付がありました。これは、質の高い研究課題の採択とプログラムオフィサー等による長期間にわたる丁寧な進捗管理、指導・助言の成果であると分析しています。
 115頁をご覧ください。基礎研究で生まれたシーズの実用化が加速されるように、製薬企業等との産学交流セミナーなど、シーズ導出のための取組を実施しました。また、国際がんゲノムコンソーシアムワークショップを国立がん研究センター、理化学研究所とともに開催したほか、創薬研究の橋渡しとして、研究者向けのパンフレットを作成するなど、研究開発プロジェクトに対する多様な支援活動を行ってきました。
 117頁は、東日本大震災における対応について記載しています。震災被害があった東北大学等の研究機関において研究費を柔軟に使用できるように、繰越しの扱いを簡素化した特例通知を緊急発出しました。また、震災により甚大な被害を受け、研究の進捗に影響が懸念された研究プロジェクトに対しては、追加で委託研究費の支援を行っています。
 118~119頁は、研究費の適正使用の推進と柔軟かつ弾力的な交付についてです。委託研究費については、毎年会計の実地調査を行っており、研究機関における委託研究費の執行状況を把握するとともに、研究費の適正執行や不正防止に必要な措置の実施状況を確認しています。平成23年度は委託研究契約先65カ所、これは全体のおおむね3分の1に当たりますが、これらを対象に会計実地調査を行いました。また、研究費の費目間での流用枠を直接経費総額の2割から3割に拡大したほか、支出基準の明確化など、利用しやすい制度への見直しを図っています。
 以上のことから、基礎研究推進事業については、プログラムオフィサー等による丁寧な進捗管理や指導及び外部評価委員会による厳正な2段階評価(書面評価及び面接評価)などを行うことにより、実用化が見込める研究プロジェクトの割合が4割を超していること、1件当たりの査読付論文の発表数は4.82件に達し、昨年に比べて20%増の高い伸びを示していること、さらに治験の段階にまで進んだ研究が7件に達したことや、初めて特許使用許諾に関連して基盤研への納付があったことなど、研究成果が着実にみられています。また、研究費の繰越手続の簡素化や直接経費総額の30%未満の項目間流用を認めるなど、利便性を高めると同時に適正使用の徹底を行ったことから、総合的に「A」評価としております。
 次に、「希少疾病用医薬品等開発振興事業」について、120頁をご覧ください。この事業は、厚生労働大臣から指定を受けたオーファンドラッグ・オーファンデバイス、すなわち医療上の必要性は高いにもかかわらず、患者数が5万人未満と少ないため、開発が滞るおそれのある医薬品や医療機器の研究開発を促進するために、121頁の事業の仕組みのとおり、指定を受けてから助成金交付申請のあった開発企業を対象として助成金交付等を行うものです。
 また、122頁のとおり、年2回の交付申請を受け付けるなど、厚生労働省が随時行う指定に対応できるよう努めております。126頁のとおり、平成23年度は12品目に対して約6億5,000万円を交付しました。このほか、127頁のとおり、開発にかかる指導・助言と税額控除に係る試験研究費の認定事業を実施しております。
 129~130頁では、極めて患者数が少ない疾患、例えば患者数1,000人未満のいわゆるウルトラオーファンに対する助成強化について示しています。平成24年度は、日本再生重点化措置として2億円の予算の増額を認めていただきました。このことについては、厚生科学審議会の部会においても支援の強化が認められており、関係各方面のご協力を得て予算の獲得ができたということです。オーファンドラッグ・オーファンデバイスの指定品目一覧表やその他の情報については、パンフレットを作成して公表したほか、ホームページ上でも公表しております。131頁に、ホームページ上のコンテンツを示しています。
 132~133頁は、平成24年3月26日から新たに開設した「希少疾病治験ウェブ」についてお示ししています。これは、患者の団体にも協力いただき、3回の研究会の検討結果を踏まえ開設しました。医薬基盤研究所が助成をしているオーファンドラッグ・オーファンデバイスの治験情報をネット上で公開し、治験情報を探している患者や主治医の先生方に情報提供することによって、患者が集まりにくいオーファンドラッグの治験の迅速化を図るために開設したものです。開設1週間で約2,500件、3カ月間で約4,500件のアクセスがあるなど、患者の団体からも一定の評価を得ております。
 134頁のとおり、平成23年度までに助成金を交付した品目数は151品目で、これまでに承認された品目は93品目となっています。
 135頁は、当事業で助成金を交付した医薬品や医療機器で平成22年度及び平成23年度の薬事法の承認を取得した品目を挙げています。平成23年度は、成人T細胞白血病リンパ腫の治療薬等が承認され、医療現場に届けられています。これらの実績は、直接的に国民保健の向上に寄与したと評価できるものと考えています。
 136~137頁は、実例とともに報道発表資料を掲載しております。138頁のとおり、臨床現場に届けられたオーファンドラッグ・オーファンデバイスからは、承認取得、上市後に売上げに応じた納付金を徴収し、オーファンドラッグ開発振興業務に当てています。平成23年度には約2億円の納付金を徴収しました。
 以上のことから、「希少疾病用医薬品等開発振興事業」については、評価の視点についてすべて満たしており、特に助成金の交付期間外においても、開発の着手から製造販売承認に至るまで、開発企業のみならず開発企業の委託を受ける臨床開発業務受託機関、いわゆるCROの試験研究にかかる事務手続についての相談に至るまで手厚く指導・助言を行ったこと、これまでの成果の結晶として平成23年度は製造販売承認の取得が2件あったこと、さらに治験情報ウェブサイトの運用を開始したこと、及び極めて患者数の少ない疾患、いわゆるウルトラオーファンに対する助成強化についての予算措置を行ったことから、「S」評価としました。
 次に、「実用化研究支援事業」について、139頁をご覧ください。この事業は、財政投融資特別会計から出資金を受け、平成16年度からベンチャー企業の創薬等開発を支援対象として実施しているもので、事業の成果により得られた収益の一部を納付していただく仕組みとなっています。事業開始当初は委託費の交付が先行するため、売上納付金が入るまでの間、繰越欠損金が増加することとなり、平成22年度末で約65億円の繰越欠損金が計上されています。このため、平成21年度からは繰越欠損金の増加を抑えるため新規募集を休止し、継続案件への委託費の交付も平成22年で終了しました。売上納付金は、平成21年度に初めて750万円を計上しており、平成23年度には事業者において収益が得られたものが3件あることから、今後事業者と調整の上、売上納付が行われる予定です。近日中に、第2例目の納付実績が発生する予定となっております。さらに、昨年度から今年度にかけてライセンス契約等の成立が期待できるプロジェクトが複数あることから、今後も売上納付金収入が見込めるものと考えています。現在は新規採択は行っておりませんが、140頁に実用化研究支援事業の流れを示しております。
 142~145頁に、プロジェクトの進捗状況を図示しています。採択した19プロジェクトのうち、14プロジェクトが臨床試験(治験)の段階に進んでいます。いまだ承認が得られたものはありませんが、昨年6月には欧州で承認申請を行った品目があったほか、承認申請が視野に入ってきた品目も認められます。
 146頁に、実用化研究支援事業の平成23年度の動きとして、研究プロジェクトに関連した報道について紹介しています。
 147頁をご覧ください。昨年6月に、当事業の研究プロジェクトで最初の承認申請事例が欧州であり、企業の報道発表資料を掲載した株式会社セルシードの角膜再生上皮シートです。
 承継事業については148頁をご覧ください。承継事業とは、出融資事業にかかる資金の回収業務です。本体の出融資事業は、平成15年度に廃止されております。承継事業のうち出資事業については、平成23年度末で約256億円の繰越欠損金が計上されております。この繰越欠損金は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(旧医薬品機構)が実施していた出資事業により生じたものです。平成23年度は、プログラムオフィサー等による法人の実地調査を行い、現況を確認するとともに事業化、収益化を図るよう指導を実施しました。また、出資法人から研究成果報告書や収益予測等の資料提出を求め、その妥当性の評価を行うとともに、成果管理委員による面接評価を行いました。148頁に示すように、平成23年度当初は2法人が存続しておりましたが、その後1社について清算手続が完了し、残り1社においては同出資先において製品化に向けた開発が進行中です。
 承継事業に関する進捗状況管理については、149頁に示すとおり実地調査等を実施したほか、当研究所内においても繰越欠損金に関する計画策定委員会を開催し、現時点で存続している1社の収益予測を確認しました。融資事業については、償還計画に沿った貸付金の回収を着実に実施しております。32件の融資のうち30件については回収が終了しており、平成23年度は残り2件について回収を行いました。この2件については、平成25年9月に回収が終わる予定です。融資事業の成果としては、我が国最初の再生医療品目である自家培養表皮、及び我が国のシーズを国内で実用化することに成功した植込み型補助人工心臓が薬事法の承認を取得するなど、一定の成果を上げたと評価しております。
 以上のことから、実用化研究支援事業については、早期実用化に向けてプログラムオフィサー等による研究開発の進捗状況の把握、外部有識者の意見も踏まえた研究開発計画や研究体制の見直しについて助言・指導を行った結果、事業者が収益を得たと当所で把握したもの、収益が見込まれるものが合わせて3件あること、また、承継事業についても同様に進捗状況を把握し、収益最大化のための指導・助言を行った結果、出資事業で収益が得られていること、さらに東北3県が実施する革新的医療機器創出開発促進事業の準備にあたり、実用化研究支援事業の経験を活かして医薬基盤研究所が支援を行うなど、中期目標を上回る成果が得られたことから、「A」評価としました。以上です。

○田村部会長
 委員の皆様には、評価シートへ評定等の記入をお願いします。質問等ありましたら、適宜ご発言をお願いします。

○清水委員
 基本的なことを確認します。基礎研究推進事業、希少疾病用医薬品等開発振興事業は、平成23年度で国に移管ということでよろしいのですね。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 基礎研究推進事業については、平成23年度より国で新規募集を行っており、平成23年度は医薬基盤研究所で新規募集は行っておりません。希少疾病用医薬品等開発振興事業については、国で実施することとされ、平成24年6月に策定された「医療イノベーション5カ年戦略」を踏まえつつ、引き続き検討を進めるとされております。

○清水委員
 後者に関しては、平成22年12月の独法の事務事業の見直しで平成23年度から国でやると決まったかと思いますが、それが変更になったということですか。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 希少疾病用医薬品等開発振興事業については、当初、政府における研究開発独法の在り方の論議等も踏まえ、今後の事業の実施体制を引き続き検討することとされており、検討中途であるために、引き続き医薬基盤研究所で実施しているということです。

○清水委員
 いただいている独法資料集の312頁に、平成22年12月の閣議決定が載っているのですが、それには平成23年度から国に移管と書いてあるのです。ですから、それが変わったのかどうかということなのです。そういう大きな流れを最初にご説明いただかないと、わからないのです。例えば、もうすでに終わってしまいましたが、基礎的研究や生物資源研究も重複を避けて事業規模の縮小を図ると書いてあるのですが、これをやりました、あれをやりましたというご説明だと、全体で何を集中的にされようとしているのかがよくわからないところがあって、全体の流れを最初に説明していただいたほうがいいと思うのです。それを是非お願いしたいということです。
 続けて、実用化研究支援事業の繰越欠損金の話ですが、計画策定委員会で検討を行うということで、検討を行ったという実績になっていますが、毎年同じようなお答えで、進展がみられたのかどうか、何とも評価しがたい状況です。いくつか成果もみられているということですが、数値的に繰越欠損金の解消計画は具体化しつつあるのですか。全部ゼロにするのは難しくても、10年や20年の近い将来への見通しが出てこないと、進んだのかどうかが全然見えないので、その点をご説明願います。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 先ほどご説明したように、欧州で承認申請を行ったものがありますので、これが製品化すれば納付収入が見込まれると考えております。また3件において、ライセンスアウト等に伴う収入が見込まれておりますので、先生がご指摘のように一挙にゼロにはできませんが、少しずつ納付金収入が得られております。

○清水委員
 製品化ができれば、いくらか入ってくるだろうということですが、その数値的な見通しは立っているのですか。10年、20年で結構ですが、その辺はあるのですね。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 策定しております。ただ、昨年も申し上げたように、医薬品・医療機器の開発ですので、開発できるかできないかで大きく数値が変わってくるということはありますが、毎年数値をいただいて、それを吟味して策定しております。

○清水委員
 それをご提出いただくということで、よろしくお願いします。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 23日の財務諸表ヒアリングの時に提出させていただきます。

○金倉委員
 いまお話があった希少疾病用医薬品の開発振興事業は極めて重要な事業だと思いますが、あまりブランクがないようにお願いしたいと思います。患者の数は少ないですが、臨床的には極めて有用な薬剤が並んでいるように思いますが、これはどれぐらい申請があって、どれぐらい助成金の交付事業の対象になっているのか、その割合はどれぐらいなのでしょうか。これはほぼ認められているのでしょうか。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 オーファンドラッグ、医薬品では2012年3月31日現在で、269の指定があって、このうち139について助成の申請がありました。ですから、約半数について助成をしているということです。医療機器は23件の指定があって、このうち12件について助成をしておりますので、こちらも約半数について助成をしているということです。

○金倉委員 
 半数が申請しているというのは、どういう意味合いがあるのかを教えていただければありがたいのですが、それはメーカーの考え方ということでしょうか。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 そのとおりです。メガファーマですと、例えばいろいろな事務手続にかかる人件費やこちらが助成する助成金額に限りがありますので、助成なくしても開発するというお考えの所もあると承知しています。

○馬場委員
 スライドの113頁ですが、ご説明があったように、基盤研の基礎研究推進事業の委託研究は、私が知る限りでも非常に大きな学術基盤研究に貢献していて、大変高く評価していました。これが実際治験にトータル103件のうち7件いっているということで、高い確率というのはそのとおりですが、このスライドの最初の製薬協が出している3万分の1の創薬確率は化合物ベースで、プロジェクトベースではないので、この14分の1というのはプロジェクトベースの話であって、化合物ベースでは全然数値が違ってくると思うので、資料としてはこの表現は適切さに欠けるのではないかと思います。創薬の3万分の1ということを引用しなくても、プロジェクト103件のうち7件が治験にいったというのは非常に評価できることなので、そこは書き直されたほうがいいと思います。
 それと関連して、同じ事項が98頁の灰色の括弧にわざわざ書いてあるのですが、ここでは約18分の1とあって、先ほどは14分の1だったのが、同じ数値なのだけれども、18分の1とどちらかが間違っているので、それも訂正されたほうがいいと思います。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 ありがとうございます。18分の1と14分の1の違いは、若手研究を除いたか除かないかということです。若手研究は、これから研究歴を重ねていく若手に対してチャレンジングなファンディングをしているので、除いたら18分の1、除かなければ14分の1ということで、非常に紛らわしい表現で申し訳ありません。来年度から訂正させていただきます。

○馬場委員
 3万分の1との比較は、化合物だと思いますので。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 3万分の1というのは、化合物だとしても臨床試験に到達するまでですので、3,000分の1と。

○馬場委員
 3,000ぐらいですが、あくまで化合物ベースでの数値ですから。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 中には再生医療とか医療機器もありますので。

○馬場委員
 それを比較するのは、同じ土壌ではありませんから。

○医薬基盤研究所研究振興部長
 先生のご指摘のとおり、紛らわしくないような表現をしたいと思います。

○田村部会長
 それでは、評定の記入等をよろしくお願いします。
 次に、Part4「予算収支計画その他運営業務関係」、評価項目14~17の評価を行います。時間が予定より遅れておりますので、法人からの説明は7、8分ぐらいでお願いします。委員の評定と質疑は10分ぐらいということで進めます。よろしくお願いします。

○医薬基盤研究所総務部長
 総務部長の渡部と申します。よろしくお願いいたします。
 評価項目14「機動的かつ効率的な業務運営」です。自己評価「A」です。
 152頁をご覧ください。トップマネジメントということで、理事長をトップとして理事、監事、各部長、センター長等で構成する幹部会を毎月1回開催し、業務の状況把握、業務運営の重要課題について議論を行っております。また、理事長及び創薬研究部、難病資源研究部の各プロジェクトリーダーから構成するリーダー連絡会を開催し、研究所の運営、研究環境などに関する理事長の指導・助言に対する意見交換を行い、基盤研全体の業務運営に的確に反映をさせております。各プロジェクト研究については、内部研究評価委員会、人事委員会などにおいて内部評価を行い、さらに外部有識者で構成される運営評議会、基盤的研究等外部評価委員会、研究振興業務関連委員会などを定期的に開催しており、公正な判断、透明性の確保に努めております。
 153頁をご覧ください。全体の組織図です。第2期中期計画の実施に向けて、国の政策課題の解決と製薬産業等の活性化を図ることに特化した研究分野を推進するため、基盤的技術研究については次世代ワクチンの研究開発、医薬品等の毒性評価系構築の基盤的研究、難病治療等の基盤的研究の3分野に重点化することとし、プロジェクトチームの再編・創設・廃止を実施しました。その下の生物資源についても、難病疾患資源研究分野の重点化を図るため、効率的な組織の再編等を行っております。
 154頁をご覧ください。内部統制の強化ということで、理事長を最高責任者として監事、外部監査人、コンプライアンス委員会などの連携の下、全職員へ法令等の遵守の推進を図っております。なお、平成23年度においては、新たにパワーハラスメントの防止に関する規定を制定し、大阪本所において服務関係を中心とした基本的知識の習得、及びパワーハラスメントに関する知識の啓発を目的とした研修会を全職員を対象に実施しております。
 以上、「機動的かつ効率的な業務運営」については、理事長のトップマネジメントによる迅速な業務運営、研究プロジェクト制による機動的な研究体制、また、全職員参加型の研修の実施による内部統制、ガバナンスのさらなる強化などにより、中期目標を上回る成果を達成していることから、「A」評価としました。
 155頁をご覧ください。評価項目15「業務運営の効率化に伴う経費節減等」です。自己評価「A」です。
 156~157頁をご覧ください。「一般管理費」「事業費」の節減目標ですが、平成22年度予算を基準に一定割合を削減し、各年度予算を策定するということで、計画では最終年度(平成26年度)までに一般管理費について5年間で15%、事業費について5年間で6.2%削減することとしております。その中で、平成23年度予算に対しての決算実績ですが、経費節減に努めた結果、一般管理費は2.9%、事業費は3.3%削減となっております。
 158頁をご覧ください。「総人件費改革への取組状況」です。数値目標ですが、平成17年度基準額と比較して、平成22年度実績において5%以上の削減、平成23年度においても対前年度比1%以上の削減を継続することになっております。平成23年度の実績ですが、人件費の支給総額は基準年度である平成17年度と比較して、6年目ですので6%以上の目標のところ、16.6%の減少となっていることから、人件費の削減については相当大幅に進展しております。
 159頁をご覧ください。「給与水準」についてです。当研究所の研究職員の平均給与は91.5%、事務職員の平均給与は110.2%となっております。また、他法人と比較した場合は、研究職員で91.4%、事務職員で105,0%となっております。
 事務職員の平均給与ですが、対国家公務員での数値110.2%の要因についてご説明します。要因の1つ目として、ほとんどの職員が国、それも東京からの出向者であるため、異動保障である地域手当受給者割合が高いこと、2つ目として人件費を抑制するため、定型的な業務について非常勤職員を積極的に採用している関係で、管理職の割合が高くなっていること、3つ目として医学、薬学、法律といった職務の専門性により大卒者の割合が高くなっております。こういったことからラスパイレス指数が高くなっているということです。しかし、当研究所としては、引き続き国家公務員の給与改正に準じた見直しを実施していく所存です。
 以上、業務運営の効率化に伴う経費節減策については、一般管理費、事業費、人件費について中期目標を上回る成果を達成していることから、「A」評価としております。
 160頁をご覧ください。評価項目16「財務内容の改善」に関する事項です。自己評定「A」です。先ほども述べましたが、平成23年度決算実績については一般管理費、事業費とも経費節減策が功を奏し、予算に対して一般管理費2.9%、事業費3.3%、それぞれ削減となっております。
 161頁をご覧ください。運営費交付金以外の自己収入として、競争的研究資金、受託研究費、共同研究費などの獲得状況を表している一覧です。表のいちばん右、平成23年度ですが、対平成22年度に対して、全体として件数も金額も若干減っております。要因としては、表のいちばん上、国費である厚生労働科学研究費補助金で約1億5,000万円減額となっておりますが、逆に民間企業等からの受託研究費が1億2,000万円増額となっております。
 162頁をご覧ください。開発振興勘定にかかる未処分利益積立金についてです。平成23年は未処分利益は約1億6,000万円となっておりますが、これは自己収入で購入した資産の期末評価額であり、会計処理上発生するもの、希少疾病用医薬品等開発助成事業の企業の売上納付額から当該事業に係る経費を除いた額などに相当します。積立金の2億6,000万円ですが、前年度未処分利益を厚生労働大臣の承認により振り替えたもので、中期計画終了後には厚生労働大臣の承認を受けた額を除いた額をすべて国庫納付することとなります。なお、これら財務内容について監事監査及び監査法人からは、監査報告書に適正に処理をされているとの報告をいただいております。
 以上、財務内容の改善に関する事項については、中期目標を上回る成果を達成していることから「A」評価としております。
 163頁をご覧ください。評価項目17「その他業務運営」に関する事項です。自己評価「A」です。
 「研修の実施」です。国内外の専門家を招いてのセミナーの開催、各プロジェクトの当番制による「定例研究発表会」の開催、他機関開催の共同セミナーへの参加、全職員を対象としたコンプライアンス啓発のための研修の実施等、各種研修会、講習会を開催したことにより、所内の情報交換を深めるとともに、研究職員の連携がより一層大きく図れました。
 「人事評価制度の実施」です。業務評価シート、人事評価マニュアルを策定、全職員に説明の上、本格実施をしました。なお、評価結果については平成23年12月の賞与に反映をしております。
 164頁をご覧ください。「職員の採用状況」です。平成23年度は、研究者2名について広く公募を行い、公正を期するため内部職員による人事委員会を開催し、3年の任期付き研究員として採用しました。また、テニュア制度の導入に向け、資格の要件等について整理・検討を行い、平成24年度から運用を開始することとしました。
 165頁をご覧ください。「平成23年度末常勤職員数」ですが、79名となっております。
 166頁をご覧ください。「セキュリティの確保」です。当研究所は、IDカードによる入室管理システムを導入しているので、新任職員へ指導するなど周知徹底を図っております。併せて、RI区域、ES細胞室の入室管理の強化も行っております。また、出入口等に監視カメラ30台を設置し、本研究所の立入りを随時把握することによってセキュリティの向上を図っております。
 情報セキュリティ・個人情報保護等に関しては、職員への周知徹底を図り、所内共用LANシステムの活用と情報セキュリティの維持を図っております。
 施設及び設備に関する事項ですが、筑波にある霊長類医科学研究センター高度実験棟建設工事に着手をしております。この工事は、平成23年から平成25年度までの3年計画で実施することとしております。
 以上、「その他業務運営」に関する事項については、セミナーへの積極的参加、各プロジェクトの当番制による定例研究発表会の積極的な開催、全職員参加のコンプライアンス啓発のための研修の実施、人事評価の制度の充実といったことで中期目標を上回る成果を達成していることから、「A」評価としました。以上です。

○田村部会長
 委員の皆様方には、評価シートへ評定等の記入をお願いします。質問等がありましたらご発言をお願いします。

○清水委員
 資料161頁の自己収入のところで、あまり明示的には触れられていないのですが、何度かこの評価委員会でも話題になった細胞培養分譲事業の自己収入拡大、バンク事業の自己収入拡大は出てきていないのですが、どういう状況でしょうか。

○医薬基盤研究所総務部長
 細胞培養事業、細胞バンクで、ヒューマンサイエンスからこちらに一元化するということで、昨年度と今年度で鋭意いま行っております。来年度以降については、そういったバンクで売り上げたものがすべてこちらに入るということで、たぶんそこは収入的には相当大きくなると考えております。

○清水委員
 細胞培養分譲事業とバンク事業はイコールですか。違いますね。いずれにしても、平成22年12月の閣議決定で、細胞培養分譲事業と細胞バンクと2項目あるのです。去年もバンク事業については一元化するという話をお伺いしたと思うのですが、資料1-1の31頁を見ると財団のほうが分譲数が多いということが書いてあるので、平成22年度から実施の進捗がまだ十分ではないように思うのです。両方の事業のスキームがいまどういう状況かということを、23日でも結構ですので、どのように自己収入が伸びていっているか、伸びる見込みかをご説明いただけますか。

○医薬基盤研究所総務部長
 歳入としてどう伸びるかという、自己収入ですね。そのときにお持ちします。

○中村委員
 164頁ですが、テニュア・トラック制度の導入について、人材育成の観点から狙い等をご説明いただきたいと思います。

○医薬基盤研究所理事長
 テニュア・トラックですが、我々の所は任期制の研究員の制度を取っていて、プロジェクトリーダーは5年、研究員は3年で、再任はありなのですが、そういう制度を継続していくと、なかなか優秀な方が集まりにくいと。また、我々はセンターを持って業務も持っておりますが、業務の長に任期制を付けると統括しにくいということで、プロジェクトリーダーに限ってはテニュア制を導入すると。これも評価をしますが、評価の結果導入するということです。平成23年度の評価なので書いておりませんが、平成24年度には3名のプロジェクトリーダーをパーマネント・ポジションにすることにしており、2人は辞令を下ろしました。

○田村部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。評定等の評価シートへの記入はよろしいでしょうか。評定等の評価シートへの記入について、事務局からご説明ください。

○政策評価官室長補佐
 記入が終わっていない委員の方がいらっしゃいましたら、本部会終了後に会場にお残りになって記入をいただく、もしくは評価シートと評定記入用紙をお持ち帰りになって記入をいただくことが可能ですので、本部会終了後に事務局にお声かけください。すでにメールでもお送りしていると思いますが、電子媒体でも提出が可能ですので、その場合は今週中を目途にご提出いただければと思います。よろしくお願いします。

○田村部会長
 それでは、医薬基盤研究所の個別評価に関する審議は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
 次に、「役員給与規程の変更について」です。まず事務局からご説明をいただき、続いて法人からご説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 医薬基盤研究所の理事長から厚生労働大臣に対して、役員の給与規程の変更について届出がありました。独立行政法人の通則法第53条において「厚生労働大臣は、届出にかかる報酬等の支給基準を評価委員会に通知すること」とされております。また、同条第2項において「評価委員会は、その通知にかかる報酬等の基準が社会一般の情勢に適合したものであるかどうかについて意見を申し出ることができる」こととされております。以上をもって、このたびの役員給与規程の変更が社会一般の情勢に適合したものであるかどうかについてご意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

○田村部会長
法人から変更の内容のご説明をお願いします。

○医薬基盤研究所総務部長
 資料2-1、資料2-2をご覧ください。
 資料2-1です。改正内容ですが、委員の皆様方におかれましてはすでにご承知のことと思いますが、東日本大震災の復興支援に対処するための臨時特令法案が、平成24年2月29日に国会で成立をしております。併せて、平成23年度人事院勧告の完全実施も行うということで、基盤研においても国家公務員給与に準じた運用を図るといったことから、基盤研役職員の給与規程の一部改正を実施しております。ここでお諮りするのは、そのうちの役員の給与規程です。
 主な改正点ですが、1点目として、平成24年4月1日から2年間、本給月額、地域手当、期末手当、勤勉手当について9.77%を減じて支給する。これは特令法案部分です。2点目として、平成24年6月の期末手当において、本給月額等の合計額に0.37%に平成23年4月から平成24年3月までの12カ月を乗じた額及び平成23年6月及び12月にすでに支給された期末手当、勤勉手当の合計額に0.37%を乗じた額を減じて支給する。これは平成23年度の人事院勧告分です。この両方について、施行日は平成24年4月1日付です。
 資料2-2「新旧対照表」の説明は省略します。以上です。

○田村部会長
 ただいまの内容についてご質問等はありますか。それでは、本部会としては、この変更について意見なしということでよろしいですか。
 本日の議事は以上です。事務局から連絡事項等があればお願いします。

○政策評価官室長補佐
 次回の開催は、8月2日(木)15時から、場所は厚生労働省専用第21会議室となっております。議題は「労働安全衛生総合研究所の個別評価及び役員給与規程等の改定」となっております。以上です。

○田村部会長
 それでは、本日は以上とさせていただきます。長時間にわたり熱心なご審議をいただきましてありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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