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2010年6月30日 第18回感染症分科会結核部会 議事録

厚生労働省健康局結核感染症課

○日時

平成22年6月30日(水)
10時~12時


○場所

経済産業省別館 11回1111号室


○議題

1 結核に関する特定感染症予防指針について[1]
2 その他

○議事

○水野補佐 定刻ですので、これより第18回厚生科学審議会感染症分科会結核部会
を開会します。委員の皆さま、また参考人の皆さま方には、ご多忙中のところご出席
いただきまして誠にありがとうございます。本部会の開催にあたりまして、上田健康
局長より一言ご挨拶を申し上げます。
○上田健康局長 本当にご多忙の中、また非常に蒸し暑い中お集まりいただきまして
誠にありがとうございます。ご挨拶に先がけて、先頃、青木正和先生がお亡くなりに
なりました。先生は、日本の結核の行政を含めて、結核対策に多大な功績をなされま
したことに対して、謹んで哀悼の意を捧げたいと思っています。私も若い頃ずいぶん、
厚生労働省に入る前からご指導をいただきまして、非常に大事な人を亡くしたと思っ
ています。
 さて、結核の状況ですけれども、これまで何度も申し上げていますように、我が国
のまだ主要な感染症であるということで、決して対策の手を緩めることはできないわ
けです。また、近年の新しい状況として、患者さんが減少する一方で、高齢化、ある
いは多剤耐性菌の出現、都市部における住所のない方々や特定の方々で、この結核の
問題が非常に重要になっているということ。そして、結核病床とか結核を診療できる
医療従事者が偏在をしているという問題。また、結核医療を行っていく場合の不採算
の問題など、非常にさまざまな問題が出てきているところです。こういう観点からは、
今日はさまざまな資料もありますけれども、これを踏まえて新たな予防指針を作る必
要があるのだろうということで、いわゆる「結核に関する特定感染症予防指針」を今
年度中に見直したいと考えているところでして、これまで皆さん方に既に議論をいた
だいているところです。今日の議論は、引き続き前回の議論を受けて、さらにそれを
発展させていただくということですので、何とぞよろしくお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○水野補佐 開会に先立ちまして、委員の出欠状況の報告をさせていただきます。本
日の出欠状況につきましては、青木委員、菅沼委員、保坂委員、丹野委員からご欠席
のご連絡をいただいています。現在の部会委員総数12名のうち8名の出席をいただ
いており、出席委員が過半数に達していますので、本日の部会は成立いたしますこと
をご報告します。また、本日の参考人の皆さま方の紹介をさせていただきます。国の
結核対策において中心的に研究・事業に取り組んでいただいています結核研究所より
大森参考人です。同じく結核研究所より御手洗参考人です。また、地域の結核対策に
おいて積極的に研究に取り組んでいただいております山形衛生研究所より阿彦参考
人です。ここで、カメラ撮りは終了とさせていただきますので、ご協力のほどよろし
くお願いいたします。
 資料の確認をさせていただきます。最初に議事次第がありまして、次に座席図、資
料1、資料2、資料3とありまして、その後ろは参考資料が1から6までありますの
で、ご確認をお願いします。不足等ありましたら事務局までお知らせください。後の
進行を坂谷部会長、よろしくお願いします。
○坂谷部会長 冒頭に上田局長から一言言及していただきましたけれども、予防会の
青木正和先生がお亡くなりになりました。日本の結核対策に多大な貢献をいただきま
したことをかんがみて、この結核部会を代表して私からも一言哀悼の意を表したいと
思います。
 さて、本日の会議の進行ですが、議事次第に沿って進めてまいります。資料の解説
がずいぶん時間を取ると思います。予定では、12時ちょうどに終わることになってい
ますが、20分ほど延長しますことをお許しをお願いします。本日の議題「結核に関す
る特定感染症予防指針について」、前回に引き続き議論を深めてまいりたいと思いま
す。まず、事務局より説明をお願いします。
○水野補佐 「結核に関する特定感染症予防指針に関する議論の進め方」について説
明をさせていただきます。資料1をご覧ください。前回の第17回結核部会では、結
核対策上の課題、現在の取組み等に関して都道府県のヒアリングを実施しました。ヒ
アリングのまとめについては参考資料1にあります。適宜ご覧ください。
 今回以降の部会におきましては、第17回部会での自治体ヒアリングの内容や、第
16回部会でのご指摘を踏まえて実施されました、「結核に関する特定感染症予防指針」
に関する関係自治体に対するアンケート調査の中間報告が参考資料2にあります。こ
の中間報告、その他資料を踏まえまして、現行の予防指針の項目に沿って、下記のス
ケジュール案を目安として議論を進めていきたいと思います。
 今回は、前文、第1「原因の究明」、第2「発生の予防及びまん延の防止(定期健康
診断)」までについて議論を行う予定としています。ただし、前文につきましては、
指針全体について一通り議論をしたあとに最後に戻って議論を行うことにしたいと
思いますので、本日においては前文については詳しく議論は行わないということにさ
せていただきます。
 本日は、第1「原因の究明」と第2「発生の予防及びまん延の防止」と大きく2つ
のセッションに分けて議論を行う予定です。それぞれのセッションについては、資料
をまとめて準備しています。第1「原因の究明」につきましては資料2、第2「発生の
予防及びまん延の防止(定期健康診断)」については資料3となっています。各資料
につきましては、構造として、「議論の視点」があります予防指針(抜粋)、そあとに
関連資料が付いている構造になっています。各セッションにおいては、資料説明を行
ったあとに議論を行う方向で進めてまいりたいと思います。また、予防指針改定の議
論全体を通しまして、議論の視点に沿って議論を進めるということですが、各視点に
ついて結論を出すというよりは、委員の皆さまに活発に議論をしていただきまして、
さらなる課題や必要な調査研究等、ご意見をいただくというように進めていきたいと
思います。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。最後に水野さんがおっしゃいましたように、
本日のこの会議も予防指針改定に向けての議論をいたすということであります。何か
結論を出すということよりは、委員の各皆さま方から活発に議論をしていただきまし
て、さらなる、書いてありますこと以外の課題や必要な調査研究等、ないかどうかに
ついてご意見を求めるということです。この議論の進め方、すなわち、第1「原因の
究明」、第2「発生の予防及びまん延の防止」、これは、定期健康診断を含みますが、
そういうふうな順番でもって議論を進めていくということに関しまして、皆さま方か
ら何か事務局にご質問、あるいはご意見ありますか。
 それでは、予定通りの議論の進め方でまいりたいと思います。早速、第1の「原因
の究明」についての議論を進めたいと思います。「原因の究明」に関する資料の説明
を事務局のほうからお願いいたします。
○水野補佐 資料2をご覧ください。1頁目に「議論の視点」があります「結核に関
する特定感染症予防指針」(抜粋)があります。「原因の究明」につきましては、3つ
の議論の視点があります。
 まず、都道府県等において地方結核・感染症サーベイランス委員会の定期的な開催
や発生動向調査データ処理に従事する職員の研修等、確実な情報の把握及び処理その
他の精度の向上を図られているかという現状についての視点が1点目。発生動向調査
について入力率が低い項目がある等の課題を踏まえて、質の向上、効率的活用のため
入力項目の見直しが必要かという、発生動向調査に関する視点が2点目です。耐性結
核対策の強化、リスクグループの洗い出し等を目的として、病原体サーベイランス(薬
剤耐性及び分子疫学的調査)の体制構築について検討することが必要かという、病原
体サーベイランスについての視点が3点目、これらの3つの視点があります。
 続いて、感染症サーベイランスシステムについての説明に移らせていただきます。
2頁目です。感染症の発生動向調査(サーベイランス)についてですが、感染症法第
12条、第14条に基づいて、診断医療機関から保健所へ届出があった情報について、
保健所から都道府県庁、厚生労働省を結ぶオンラインシステムを活用しまして収集し、
専門家による解析を行い、国民、医療関係者へ還元することで感染症に対する有効か
つ的確な予防対策を図り、多様な感染症の発生・拡大を防止するものです。患者発生
サーベイランスにつきまして、第12条に基づく医師の届出の全数調査が結核で行わ
れていますが、詳しくは下の第12条及び第14条に基づく感染症情報の流れという図
において、「二類感染症(結核を含む)」とあります。結核につきましては、医師から
届出を出されまして保健所を通して、また都道府県庁を通して国立感染症研究所、厚
生労働省に届出というようになっています。
 3頁は参考ですが、病原体サーベイランスについての制度です。患者発生サーベイ
ランスで報告された患者に由来する検体から病原体を分離・同定し、病原体の動向を
監視するものです。結核については、制度上、全数把握の疾病として、対象となって
います。ただし、現状については後ほど御手洗参考人より説明があります。
 4頁は、感染症サーベイランスシステムの概要です。通称「NESID」と呼ばれている
ものですが、いま説明させていただきました第12条に基づく患者発生サーベイラン
スについては、「患者発生動向調査システム(結核を含む)」というところにあたりま
す。結核に関しては、もう1つサーベイランスシステムがありまして、結核登録者情
報システムがあります。こちらは、参考資料4に付いています「通知」が元になって
いるものですが、こちらの結核登録者情報システムについては、結核研究所でシステ
ムの構築・運用の支援、情報の集計・解析等を行っていただいています。
 もう少し詳しく感染症サーベイランスシステムのフロー図をご説明します。4頁の
下の絵ですが、感染症発生動向調査システムにつきましては、保健所へ届出があった
感染症情報について、絵を見ていただきますと、都道府県を通して感染症データ、感
染症発生動向調査システムに報告がされ、国立感染症研究所で解析等されまして、還
元されることになっています。結核登録者情報システムは、保健所における結核登録
者の管理、患者の治療支援に必要な情報を管理するものでして、保健所のほうでデー
タが登録され、そのうち部分的報告が中央のほうにされるというものです。これを結
核研究所ので集計・解析等していただいておりまして、還元ということになっていま
す。感染症サーベイランスのシステムにつきましては以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。ご質問につきましては、この後感染症サー
ベイランスシステムにつきまして具体的なことに関しまして、参考人の大森さんと御
手洗さんから説明をいただきますが、その後に、質問等を受けたいと思います。まず、
大森参考人に5頁から資料の説明をお願いしたいと思います。
○大森参考人 結核登録者情報システムについてご説明させていただきます。5頁で
すが、下にあります感染症サーベイランスシステムと結核システムの関係図をフロー
チャートで出させていただいています。感染症システムの二類のほうに結核の発生に
ついて届出システムがありますが、これとは別に結核登録者情報システムというのが
独立しています。
 6頁の上ですが、感染症2類からの入力画面はこのように届出用紙の通りの画面構
築になっています。結核登録者情報システムの場合には、これよりも非常に複雑な構
造になっていまして、全体的な構造は6頁の下にありますような関係になっています。
このシステムの構築は2005年結核予防法のもとで開発が計画されてなされています
ので、少しほかの感染症とは異なった構造になっています。
 まず、いちばん大きなところは、情報量が多いということもありまして、全体のデ
ータについて保健所にデータベースが置いてあるということです。保健所のローカル
データベースから国の中央のセントラルデータベースに、評価に用いるデータだけを
評価情報という形で転送してくるという形になっています。国と保健所の間にありま
す都道府県・政令指定都市レベルでは保健所のローカルデータベースにアクセスする
ことはできませんが、国のセントラルデータベースにアクセスしまして、そこで状況
を閲覧したり、データをダウンロードしたりということができるようになっています。
 7頁です。結核登録者情報システムの特徴ですが、先ほどから申していますように
サーベイランスシステムの中で独立した存在であるということ。全体の感染症システ
ムが発生に関する情報のみを入力するのに対しまして、結核システムでは治療中、ま
たは治療終了後の情報も入力しています。登録を除外するまでずっとこのシステムの
中で情報を管理していくというモニタリングシステムになっています。このシステム
の場合、いろいろな機能がありまして、転出入処理、つまりAという保健所からBと
いう保健所に移った情報を転送するシステムとか、保健所で、ある対象者を検索した
いとか、コホートの出力の帳票を出してみたりとか、そういったような保健所での結
核対策の機能を補完するような、さまざまなシステムが構築されています。月報と年
報に関しましては、自動的にセントラルデータベースのほうから出力されるというこ
とになっています。出力するデータについては、検索データも含めてなのですが、CSV、
つまりExcelに変換する形でデータを取ることが可能にしてあります。
 7頁の下のほうが、登録者情報システムのメイン画面なのですが、ここから入って
いきまして、8頁の上の画面がデータを入力するところの実際の画面構築になってい
ます。上のほうに「登録までの状況(1)」から「備考」までありますが、これはタブ
のような形になっていまして、ここをクリックしますと頁が開く形で画面が変わって
いきます。白黒なのでわかりにくいのですけれども、真ん中の「病状(1)」から「治
療(2)」までが履歴情報となっていまして、その個人個人の患者さんにおいて1番目
の履歴、2番目の履歴というように、履歴の数が人によって違っています。それは、
治療が当初4剤から3剤になって2剤になってというように、いろいろなふうに変わ
っていきます、薬の内容も変わっていきます。そういったところを履歴情報という形
で、個人個人ごとに記録していくという構造になっているからです。
 9頁の上の画面は日本版DOTSやコホート法による治療成績に関する情報を管理す
る画面です。このように左から1月目、2月目というような形でデータを入力するよ
うになっていますが、これは先ほどご説明しました履歴から入れた情報が自動的にこ
こに転記されるようになっています。その間を補完することがこの画面では可能にな
っています。
 ここで、コホート法による治療成績を自動的に判定するということを行っています。
下にはDOTSタイプを入れるような項目もありますし、支援の1とか支援の7という
ところは保健所で独自に自分たちの必要な項目を設定して使えるようになっていま
す。かなり保健所の方たちが自分たちの特徴に合わせて、このシステムを活用できる
というようなシステムになっています。
 項目なのですが、結核システムの場合には、保健所ではかなりたくさんの項目が入
れられるようになっています。ここで示すLDBというのが保健所にあるデータで、CDB
というのが中央に送られるデータです。保健所では、300を超えるデータがあります
が、それはすべて入れなければいけないというものではありません。必ず入れなけれ
ばいけない必須項目と入れなくてもいい項目があります。色分けが難しいのですけれ
ども、自動的に処理することで、入力する必要がないというものがあります。例えば、
名前、漢字を入れますと自動的に仮名が変換されます。仮名の読み方が違うときだけ
修正するので、これは条件つき入力になっています。国籍についても、外国籍を入れ
たときのみ国名を入れることになっていまして、それも条件つき入力になっています。
コホートの観察等については、先ほども言いましたように自動的に判定して自動入力
になっていますので、入力の必要はありません。
 10頁ですが、このようにして、コホートの治療成績を出したグラフが上のグラフで
す。全体的に日本の結核患者さんの平均年齢は、中央値で取りますと、69歳ぐらいで
高齢なので、全体的に死亡の割合が18%と高くなっていますけれども、このように年
齢によって治療成績がすごく違っています。この大きな要因は、年齢と関連してくる
死亡の割合です。
 10頁の下のほうですが、年報情報の使用と活用なのですが、感染者サーベイランス
の二類からも発生届については入力することになっていますが、これまでこの結核の
システムは、昭和62年から作られていまして、これによって結核の統計を作ってき
ていますこともありまして、日本の公式な結核の統計は結核システムから作られ、WHO
にもこの情報を使って報告しています。
 ただし、結核の死亡率に関しては、ここからではなくて、人口動態統計を公式統計
として使っています。情報の信頼性が高いもの、年齢とか公費負担の区分とか登録削
除理由は、これは国の統計として年齢階級別の罹患率とか重要な統計になっています。
このほかに、10頁の上のほうに出させていただいているコホートによる治療成績も非
常に重要な情報なのですが、まだ情報の精度というところに問題がある都道府県もあ
りまして、全体的な問題を含めて解説しないとなかなか使えないものもあります。
 11頁ですけれども、結核登録者情報システムは2007年から運用が開始されました。
この中には、さまざまなチェック機能を入れ込んでいまして、年報を確定するには、
年報集計時にエラーリストが打ち出されます。そのエラーを全部修正しない限り、年
報が作られない状況になっています。2009年の年報は最終段階、確定の直前まできて
いますが、いちばん当初は4,000件ものエラーリストがありました。それがすべてい
ま、ゼロになっています。ただし、これまでの経験から想定されたエラーとは別に、
想定できないものがありまして、それがHIV陽性の確認とか、矛盾する職業とか、薬
剤の組み合わせの矛盾とかです。このような、その後新たに問題がわかりましたもの
については、逐一確認しつつ、データの精度を上げつつ年報を作ってきている状況で
す。その結果、まだ2009年は確定していないのですけれども、ほぼ確定する前のと
ころで集計しましたところ、肺結核中の培養検査把握率が75%までに上がりました。
それから、培養陽性中薬剤感受性把握率も40%台だったのですが、2009年は60%を
超えることがわかっています。
 12頁の入力率なのですけれども、自動で入れるものについては100%入力となって
います。必須項目については入力率が高くなっています。必須項目については必ず不
明を準備していますので、必須項目で100%に達していないものについては、そのよ
うなことで不明と入れられたものです。
 13頁ですが、この中で真ん中の69番目の合併症HIV陽性というものが、HIVに関
する情報に関しましてはWHOからかなり情報を求められることがあるものなのですけ
れども、まだこのように入力率56%という状況です。95番目の総合患者分類コード
に必須項目の丸をつけるのが漏れていますが、これは自動です。自動的に分類されま
す。これは、活動性分類のことなのですけれども、システムの中ではいろいろな組合
せで行っていますので、総合患者分類コードという名前を使わせていただいています。
 14頁ですが、この中で入力率の低い141番目の項目に「コホート1か月目DOTS」
が15%というのがあります。本当のオプションという形で作られていますので、いま
のところこのような低いものになっていますが、日本版DOTSを進めるに当たって、
DOTSのタイプがどのようなタイプでなされているのかということを知りたいという
ことで、これはかなり求められている情報かと思います。このように低いものについ
ては、昨年9月に研究会を開きまして、システムの中にどのような形で組み替えるこ
とによって、低い入力率を高くできないかということを話し合い、システムをこのよ
うに変えたら高くなるという提案をまとめさせていただき、昨年、厚生労働省の感染
症課へご提示した次第です。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。引き続いて、御手洗参考人から、18頁以降
の資料の説明を、同じく10分間でお願いします。
○御手洗参考人 結核研究所の御手洗です。私からは、病原体サーベイランスの現状
ということで、資料を提供させていただきます。18頁の下ですが、病原体サーベイラ
ンスの必要性の点で何が知りたいかですが、薬剤耐性の現状把握です。現状、正確に
どの程度の耐性が発生しているのか、それからもう1つは耐性状況がどのように推移
していくのかです。それから、最近、分子疫学調査の手法がよくなってまいりまして、
こういったもので未解明感染ルートの発見といったようなことも目指して、病原体サ
ーベイランスは必要だろうと考えています。
 19頁は、その薬剤耐性あるいは病原体を集めるという意味で、分子疫学的なサーベ
イランスも含むわけですが、私どもが新興・再興感染症の研究事業等でやってまいり
ました研究のデータから、こういうことを一応考えてまいりました。薬剤耐性サーベ
イランスの方法としては、耐性状況の推移の流れをリアルタイムで計時的に適時的に
見ていくと考えますと、病院あるいは検査センター、衛生検査所等が持っている耐性
の薬剤感受性に関するデータは既にそこにあるわけですので、集積してまとめて解析
すると。あるいは、先ほど大森先生からありました結核登録者情報システムにもデー
タがありますので、そういったものを見ていくことが、適時的に耐性状況の推移を見
ていくという意味では有用かと思います。
 それに対して、耐性状況を正確に把握する、本当の数字のリアルさですね。現状を
正確に把握しているかどうかを見るという目的では、間歇的病原体サーベイとして結
核療法研究協議会が5年に1回全国調査を実施しています。これは、結核菌を全国か
ら人口に合わせて収集しまして、中央で検査して精度保証した上で調べるということ
ですので、現状を正確に把握した耐性状況が得られると考えられます。いずれにして
も、前提条件としては、地域・年齢・性別等の結核罹患集団を正確に反映しているこ
と、それから薬剤感受性検査、これはデリケートな検査ですので、その精度が正しく
保証されているということがありませんと、正しく、しかも適切にデータを得ること
はできないと考えます。
 その1例になるかと思いますが、19頁の下のデータを見ていただきますと、多少お
わかりいただけるかと思います。これは、左側が主要な結核診療施設に2007年にア
ンケート調査を行ったデータです。左側の病院アンケートと書いてあるほうです。右
側の療研調査は、これが2007年から同時期に実施しています全国調査のほぼ90%ぐ
らい終了した時点でのデータです。この2つを並べたのは、このデータがかなり違う
のを目で見ていただくためです。例えばイソニアジドを見てみますと、病院アンケー
トではこの低いほうの値が未治療耐性、高いほうの値が既治療、既に治療歴のある方
の耐性ですが、イソニアジドについては療研調査では2.6%であるのに対して、病院
アンケートは4%。療研調査で既治療耐性が8.3%であるのに対して、病院アンケー
トでは32.1%と非常に高い値が出ています。しかし、この病院アンケートは、それぞ
れの病院で既に実施されたデータを集積するということで、適時性、リアルタイムで
あることについては、確保ができるということです。それから、継続的に見ていくと
いう点では有用性が高いのですが、療研調査のほうを精度が高いと考えますと、正確
性という点では少し問題があるのかもしれません。
 次の頁です。ただ、その療研調査ですが、2007年に感染症法が改正されたあと、多
剤耐性結核菌が三種病原体に分類をされたあと実施をしたものです。そこに示したデ
ータは暫定的なデータですが、それぞれの2002年のデータと2007年の場合の耐性状
況のデータを示したものです。見ていただきたいのは、上から5行目のリファンピシ
ン、それから下から2番目のブロックにありますマルチドラッグレジスタンス、多剤
耐性結核菌のデータです。ほかの薬剤について耐性率は低下していないのに対して、
リファンピシンに関するデータだけが低下していると、有意に統計的に低下したとい
うデータになっています。リファンピシンは元から耐性率が低いのに対して、急にリ
ファンピシン関連のデータだけが低下するというのは少し理論的に考えづらいとこ
ろがあろうかと思います。それは、多剤耐性結核菌が事実上保管あるいは輸送が困難
になったことの影響によって、そういった人為的な影響がサーベイランスに出た可能
性を示唆しているものと考えています。療研調査、ゴールドスタンダードとしての正
確性もどうかというところが、いま危ぶまれているところです。
 さらに、データの適時性という点で、先ほど病院のデータあるいは検査センターの
データを収集するということを申し上げましたが、20頁の下のデータを見ていただき
ますと、私どもで薬剤感受性検査の外部精度評価を精度保証の一貫で実施をしていま
す。これは、耐性既知の株をそれぞれの検査室にお送りして実際に検査をしていただ
き、その結果を標準的な判断と比較して精度を見るという方法です。2004年から実施
を続けていますが、世界保健機関が合格基準としていますイソニアジド、リファンピ
シンに対して感度、特異度95%、それからイソニアジド、リファンピシン、ストレプ
トマイシン、エタンブトール4剤に対して一律90%というスタンダードを適用します
と、日本の検査施設は全体として50~70%程度の合格率です。ということは、ただ単
純にデータを集めたとしても、その精度が正確に保証されているとはいえない状況か
と思います。
 21頁は、各国、その他の先進国の病原体のサーベイランス体制がどうなっているか
を一覧表にしたものです。薬剤耐性と遺伝子タイピングを含む分子疫学データですが、
オランダなどについてはこれはもう1箇所で全株を集約する体制ができ上がっていま
す。それからイギリスなどでは、地域リファレンスラボをいくつか設定をしまして、
そこに株をすべて集約するシステムができ上がっています。それによって、薬剤耐性
あるいは遺伝子タイピングの調査が適時的に実施できることになっています。アメリ
カ、ドイツ、ノルウェー等については、そこに示したとおりです。
 まとめですが、薬剤耐性に関してモニタリング、推移を見ていくという目的を主体
としますと、先ほど示したように耐性精度が確保された状況ではありません。さらに、
耐性精度を希求してまいりますと、今度は適時性が確保できない状況です。感染症法
の影響で、多剤耐性結核菌の保管と輸送が困難であることが、先ほど示したとおりに
療研の感受性データ、耐性データに影響している可能性が高うございます。それから、
先進国では分子疫学調査を含めて、病原体サーベイランス体制が整備されつつあると
いうことです。精度保証を前提とした継続的モニタリングのためのシステムを構築す
るべきであり、何らかの「異常」が検知された際には、緊急サーベイを実施する体制
も必要であろうと考えています。
 22頁をご覧ください。これから先は、そういった現状に鑑みて、どういったサーベ
イランス体制が考えられるかをいくつかまとめてまいりました。22頁上のスライドは、
現在の臨床情報と病原体、その流れを考えてみたものです。まず、結核患者はクリニ
ック、検査室等のない病院、あるいは直接結核菌の検査施設等を持っている病院に受
診をされると思います。それから、クリニックからまた別の病院にリファーされるこ
ともあるかと思いますが、クリニックから直接検体が検査センターにいって、そこの
情報を基にその他の病院にはリファーされないままそこで治療されて終了すること
も考えられると。こういったものの流れがあるかと思います。しかしながら、一般に
クリニックや検査室のない所には、検査情報、臨床情報はあるけれども、病原体はな
いと。検査センターは一部限定的な臨床情報を持っていて、病原体は持っていない。
検査室を持っている病院には、臨床情報も病原体もあると。このようなことがあると
思います。これに対して、保健所あるいは地方衛生研究所については、臨床情報はあ
るけれども病原体がない。地方衛生研究所については、これは臨床情報もなければ病
原体もないということです。
 22頁下のサーベイランスA案と書かせていただきましたが、これは現状あるシステ
ムを組み合わせて考えたものです。検査室等を持っている、病原体を有している病院
からは、この病原体を地方衛生研究所等に移動する、あるいは検査センターから病原
体を移動することによって、そこで分子疫学的な解析等が可能であろうと。それに対
して情報については、クリニックあるいは検査センター等も検査室を持っている病院
から情報を集めて、そこに集約することができる。しかしながら、地方衛生研究所に
ついては患者情報が十分に流れるシステムがない。それから保健所については、病原
体を残念ながら集約することができないということです。さらにこの場合には、検査
センター、病院検査室、地方衛生研究所のすべてに対して、薬剤感受性検査あるいは
分子疫学的な手法に対して精度保証を行う必要があると考えられます。
 23頁ですが、これはイギリスなどで実際に導入されているPublic Health
Laboratoryの考え方を導入した形です。結核患者は、クリニックあるいは一般病院を
受診はしますが、診断されてもそこで治療されることはありません。すべては、結核
を治療する治療施設に集約をされ、そこではいくつかの検査が行われますが、基本的
に塗抹・培養だけといったような限定的な検査に集約し、高度な検査については地域
のリファレンスセンターに患者情報ともどもすべて病原体を集約するということで
す。こうしますと、その地域リファレンス検査室に対して精度保証を行うだけで済み
ますし、病原体も患者情報もすべてそのリファレンスセンターに最初から集約されて
いることが、理想的には考えられます。
○坂谷部会長 ありがとうございます。議論は、次の実態アンケートの結果を踏まえ
て行いたいと思いますが、この時点でお二人の参考人からの説明の内容についての質
問だけを受けたいと思います。どなたかありませんでしょうか。では私から。一部ご
報告がありましたが、先般感染症法に統合されて影響を受けた部分で何か変更のあっ
た部分について、もう一度お二人の参考人から項目的に挙げていただけましたらあり
がたいです。
○大森参考人 2007年の運用を開始しまして、感染症法システムに統合されたという
ことで、数カ月後に感染症法の文言の中に公費負担の条項などが入っていましたので、
そういったところを感染症法に合わせて修正するシステムを作り替えました。そのと
き、多少ほかのところに関しても修正しましたが、基本的には法律上の項目が変わっ
た所のみの修正になっています。
○坂谷部会長 それでは、御手洗参考人からもお願いします。
○御手洗参考人 20頁の上のデータを再度ご覧いただければと思います。療研調査と
いうのは全国調査で、しかも人口あるいは発生率等を勘案したうえでバランスを取っ
て実施をしています。基本的には唯一WHO等にも報告されている耐性情報となってい
ますが、もともと先ほど説明しましたように、リファンピシン耐性は低いはずなので
すが、この低いものだけがほかの耐性とは平行せずに単純にこれだけが低下している
と。それから、多剤耐性結核菌の耐性率だけが下がっているというのは、一般的に考
えても少しおかしいのではないかと思っています。これが、多剤耐性結核菌が運搬さ
れなかった、あるいは分離されても廃棄されていた影響ではないかと考えています。
 それから、これは別の事例ですが、MDRの患者が発生して二次患者が発病した際に、
その二次患者が元株と同じであるかどうかを分子疫学的に解析しようとした際に、そ
の元の株を分離した施設が三種病原体の届出を行っていなかったので、もう既に廃棄
されていて、元株と一致するかどうかの検査ができなかったという事例があります。
それから、これは運搬に非常にコストがかかり、手間がかかったことによって起こっ
た事例です。乳幼児でMDRが分離されたというので、その確定検査を依頼されました
が、MDRの移動が非常に困難であるということでギブアップしたことがあります。こ
ういった事例があろうかと思います。
○坂谷部会長 ありがとうございます。それでは予防指針(抜粋)の資料に戻ってい
ただきまして、各視点について議論に入っていきたいと思います。1点目の議論の視
点ですが、「都道府県において、地方結核・感染症サーベイランス委員会の定期的な
開催や、発生動向調査のデータ処理に従事する職員の研修等、確実な情報の把握及び
処理その他精度の向上が図られているか」について、ここに述べられている発生動向
調査は、実質、登録の患者の情報システムによるサーベイランスを指しています。こ
の視点に立ちまして評価をするために行いました自治体へのアンケートの結果があ
りますので、これについて事務局から説明をお願いします。
○水野補佐 それでは自治体アンケートの結果の説明にまいりたいと思います。資料
の15頁をご覧ください。これは自治体アンケートの結果の関連する所の抜粋になり
ますが、原因の究明、発生動向調査についての速報値です。まず、3「サーベイラン
ス委員会の設置状況」をご覧ください。都道府県、各自治体、その他自治体のサーベ
イランス委員会を設置しているかどうかのアンケートですが、107自治体から回答が
ありまして、32自治体では設置しているということでした。開催頻度については、年
1回が16箇所で最も多かったということです。またサーベイランス委員会では、関係
自治体職員以外が参加しているところが31自治体ありまして、参加者としては医師
が多いというようでした。内訳については、ご覧のとおり、医師会、病院、大学等で
す。
 次の5-1をご覧ください。結核発生動向調査の質の評価を実施しているかどうかと
いう質問です。これについては、登録者情報システムを指しています。こちらの質の
評価を実施しているかどうかについては、107自治体中21自治体がしているという回
答でした。内容については、表5-2のとおりです。サーベイランス委員会で検討・評
価を実施しているというようなご覧のような回答がありました。
 6-1は、発生動向調査の質を確保するための研修の実施の有無についてですが、107
自治体中17自治体で研修を行っているという回答でした。内訳については、6-2にあ
ります。結核行政担当者等短期研修等、これは結核研究所で行われているものですが、
受講しているというような回答、その他結核担当者会議を開いているという回答でし
た。関連する自治体アンケートの結果の説明については、以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございます。それでは、議論に入ります。1点目の議論で
すが、資料2の1頁をご覧ください。予防指針(抜粋)の左側に、「予防指針」「基本
的考え方」及び「結核発生動向調査の体制等の充実強化」と書かれていますが、この
部分についての議論です。それに資する資料の提供を、ただいま3人から受けたわけ
です。「都道府県において、地方結核・感染症サーベイランス委員会の定期的な開催
や、発生動向調査のデータ処理に従事する職員の研修等、確実な情報の把握及び処理
その他制度の向上が図られているか」に関する議論です。先生方からご質疑、ご議論
をお願いしたいと思います。
○高橋委員 ちょっと先ほど聞き漏らしたところがあってお聞きしたいのです。前提
としてこの結核発生動向のいわゆる結核登録情報システムなのですが、やはり感染症
の情報とかなり違って、継続的であるし、かなり踏み込んだところに情報があります。
これについては何か独自に個人情報の保護の指針などはお持ちなのでしょうか。
○水野補佐 登録者情報の個人情報については、保健所止まりということになってい
ます。保健所が管理していることになっていまして、特に指針等はこちらでは設けて
はいません。
○高橋委員 ちょっと気になるのは6頁です。例えば転出してしまった場合の転出の
取扱いなどについてお聞きしたいのです。A保健所ではもう保管しておく必要がない
わけだと思うのですが、そういう場合の削除の仕方など、その辺りのある種の作法の
ようなものは、きちんとしておいたほうが私はいいと思っています。その辺りについ
ては、何か厚労省として、指針などはお持ちではないでしょうか。
○水野補佐 指針に関しては、こちらではありません。
○高橋委員 ありませんか。
○水野補佐 はい。
○高橋委員 転出された場合どうなるのですか。基本的にこのデータは、転出先に引
き継がれるとか、いろいろなことがあると思うのですが。
○水野補佐 保健所から国に転出される情報については、個人情報の部分は全く個人
名や個人を特定できる情報は出てきていないです。保健所間の情報のやりとりはござ
いますが。
○高橋委員 新しく、B保健所が把握することになるのですか。
○水野補佐 はい、そういうことになります。
○高橋委員 その場合は、A保健所の情報の取扱いはどうなるのですか。
○水野補佐 その保健所においての取扱いはどうなっているかですか。
○高橋委員 はい。
○水野補佐 基本的には、保健所において一律に同じレベルで扱われているかと思う
のですが、こちらでは把握しておりません。
○高橋委員 できれば、かなり踏み込んだ個人情報がありますので、取扱いはきちん
と共通化しておいたほうがいいのではないかという気がしました。
○坂谷部会長 ありがとうございました。高橋委員から人権、情報管理について、結
核特有の問題があるのではないかという話です。大森参考人から、結核の分野ではほ
かの感染症に比べて精緻なデータが手に入っているという話、それから今日は阿彦参
考人が保健所におられた方として出ておられますが、いまの高橋委員のご意見に対し
て、何か情報やお考えやデータはありますか。
○阿彦参考人 転出の場合、保健所では電算化された情報システムのほかに、法律に
基づいた登録票を作っています。転出の場合は、法律に基づいて転出先の保健所に登
録票が送付されるようになっています。これは、法律に基づいて行うことになってい
ます。転出した場合に、情報システムはここで転出削除という対応をすることになっ
ています。
○坂谷部会長 いまの高橋委員のお話では、転出された場合、元の保健所にその個人
情報が残っていて、それが漏れることがあるのではないかと。
○高橋委員 必要以上の情報は載せないという話になっていましたので、削除のルー
ルなどはきちんとしているのかなと思ってお聞きしました。いまの話ですと、基本的
に削除されているということで、結構だと思います。
○坂谷部会長 全く消されてしまうということでいいのですか。
○大森参考人 全く消してしまうわけではないのですが、登録を削除するという機能
で削除をしています。6頁のA保健所からB保健所にいっているところでは、個人情
報の名前、生年月日、住所については送りません。送信時国をスルーするのですが、
国にも留めることをしないで、そのままB保健所にデータがいってしまうというよう
なシステムの構造になっています。A保健所からB保健所に連絡があって、B保健所
はそのシステムを開けますと、そういう人がきています。名前と住所と生年月日はあ
りませんので、そこで新たに名前と住所と生年月日を入れて自分の保健所にそのデー
タを入れるという手続のシステムになっています。
○坂谷部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
○川城委員 資料2の5、6頁辺りの大森先生の話なのですが、結核の診療情報が全
国的な意味で集約されて、2007年4月からスタートしてすごくご苦労されていること
に、敬意を表したいと思います。質問なのですが、5頁の感染症システムと結核シス
テムとありますね。これは両方に入れるのですか、それとも結核の場合は結核だけに
入れればいいのですか。
○大森参考人 両方に入れます。
○川城委員 同じ、このような患者がいた場合は、2回入力するのですか。
○大森参考人 そうです。それで、登録者情報システムは、結核予防法ではなくて感
染症法になりましたので、結核の情報もセントラルデータベースに置く。ウェブ化し
てはという考えがでてきました。そうなりますと、国にすべてのデータがありますの
で、二類に入れられた情報を同じものについてはこちらに自動的にコピーするという
ことが可能になります。
○川城委員 コピーするのは人間の手でしているのですか。自動的にコピーされるの
ですか。
○大森参考人 機械です。そうなると、登録者情報システムは、もう既に二類で入力
されたものを発生届けとしてコピーし、あとは、それ以外の情報で結核のシステムの
中で必要な情報を入力するということになります。
○川城委員 同じ線の質問ですが、このシステムで、日本全体の患者の何パーセント
ぐらいを把握しているのでしょうか。この情報源というのは、保健所に集まった審査
会のペーパーが、オリジナルデータになるわけですか。
○大森参考人 診査会の情報もありますが、保健師さんたちが直接面接に行って得た
情報とか、治療中のものについては、DOTSの管理をしていますから、DOTSノートを
使ったり、保健師が訪ねて行ったり、患者さんが保健所に来たり、いろいろなところ
からの情報を集約しています。
○川城委員 そうすると、日本全体の視野で、ほとんどの患者が把握されているので
すか。
○大森参考人 全数登録なので。はい。
○川城委員 もう1つですが、資料2の13頁の92項目の感受性検査のことです。こ
れは審査会に出てくるペーパーの感受性の結果が入ってきて、御手洗先生のところと
はリンクはしていないわけですよね。
○大森参考人 リンクしていません。
○坂谷部会長 ほかにいかがですか。新しい予防指針を策定するために、必要なデー
タを吸い上げるシステムになっているかどうか、システムがちゃんと組まれているか
どうかということだと思います。もちろん精緻なデータを取りますと、それに対して
の副反応が出るわけで、その点については高橋委員から質問がありましたが、参考人
のお二人から、予防指針を適切なものに作り替えていくために必要なサーベイランス
のシステムになっているかについて、この辺を改善したらいいのではないかというこ
とがありましたら、委員の方々、参考人の方々からご意見を聞きたいと思います。シ
ステムの問題について、いまの現状でよろしいかどうかということです。
                 (特になし)
○坂谷部会長 次に進みます。いま出た議論については、事務局で取りまとめをして
いただきたいと思います。2点目は、「発生動向調査については、入力率が低い項目が
ある等の課題を踏まえて、質の向上、効率的活用のため入力項目の見直しが必要か」
について、すなわち精度です。役に立つデータが集まっているかどうか、その精度は
いかがかということです。この点についての議論をお願いします。システムではなく
て、項目的なことです。いかがでしょうか。見直しの具体的内容の検討、入力率の向
上・維持についての検討について、研究班等でお願いしたいということになろうかと
思いますが、こういう点について、もっと明らかにしていただきたいという議論があ
って然るべきかと思います。こういう項目について調べてはどうかと、このようなこ
との議論でありましょうか。何かご意見はありませんでしょうか。重藤先生からはい
かがですか。
○重藤委員 私は検討会にも出席させていただきましたので、改めてということはあ
りません。
○坂谷部会長 ほかの委員の方々はいかがでしょうか。
○加藤委員 このシステムを組むときには、全国から先生方に集まっていただいて、
検討していただいたわけですが、WHOなどでも、今年も世界的なデータ収集のフォー
ムを変えたり、時に応じて入力フォーム等の検討をしていますので、そういった意味
では、本当に必要な項目は何かという検討は、随時し続ける必要があると思います。
 特に、今回の特定感染症予防指針の検討自体が、日本は罹患率は20を切ったとこ
ろですが、何が必要か、本当に必要なことは何かということで、これから5年の方向
を作るわけですが、そういった全体の日本の対策のあり方も考えた上で、本当にどう
いう情報が必要かということは随時確認しながら進める必要があると思っています。
 情報としては、研究班では、先ほど水野補佐からお話しいただいた全国調査にかか
わっている吉山先生に中心になっていただいて、都道府県の対策評価でこのような検
討もしていまして、そういうことも反映しながら、本当にどのようなデータが最も役
立つかについては、随時検討を続けながらいく必要があるという理解でいます。
○坂谷部会長 南委員、いかがでしょうか。国民からみて、日本の結核についてこの
ようなことが知りたいけれども、データはあるかというようなことからの視点で、こ
のような調査をしてはどうかというご意見はないでしょうか。
○南委員 いまご説明いただいた限りは、かなり詳細に患者情報が管理されていると
いう印象でしたので、いま取り立てて何かというのは急なので思いつかないのですが、
部会長が確認された2007年に法律が改正されて、結核が特別扱いされなくなってか
ら抜け落ちているのではないかと思われることなど、その辺は丁寧にフォローする必
要があると思います。御手洗参考人の言われた問題ですとか、丁寧に精査する必要が
ある気がします。
 あとは、外国人の問題です。ビザが緩和されるなど、アジアの結核流行地からの人
口の流入が予測されているので、どのような管理ができるのか考えておく必要があり
ます。中には、当然菌保有者が含まれるでしょうから。増加の一途の中国人に関して
言えば、いままでは超富裕層の人が来ていましたが、ある経済学者の指摘では、ビザ
の緩和をしたことによって、中間層、アッパーミドルぐらいの方がたくさん入ってく
る可能性があるということです。この問題は富裕とか貧困という問題とも密接ですの
で、そういうことも注意深くフォローしていただきたいと思います。
○坂谷部会長 南委員から、外国人結核の問題について、スポットを当ててはという
話がありました。中央のサーベイランスのシステムとして、大森参考人から現状でど
のような調査がされているか、加藤先生から、班会議レベルでどのような調査がされ
ているか、その点についておっしゃりたいことがありましたらお願いします。
○大森参考人 サーベイランスのほうのシステムでは、いまのところは国籍というこ
とで取っているのですが、これについては国籍ではなくて、出生国というのがいいの
ではないかという考えも出ています。いまのところはそういうことで、国名までは取
っているのですが、国名まで取るようになったのは、感染症法になってからです。結
核予防法のときは、そのような取り方はしていませんでした。
 2008年で、外国人は945名いまして、全体の結核患者の3.8%です。それが20歳
ですと468名いまして、25.7%ということで、4人に1人が外国人の結核患者になっ
ています。
 都市部ですと、日本語学校、大学などに、就学生として来ている方が多いのですが、
全体的には就労目的で、就労されている外国人の方が多くて、日本各地に散らばって
いまして、外国人イコール都市問題ということではないです。サーベイランスのほう
ではその程度です。
○坂谷部会長 加藤先生からはどうでしょうか。
○加藤委員 ご指摘のとおりです。今後の日本の大事な問題になると思います。欧米
の国々では、その国の外国人の受入の方針によって違っていますが、結核患者の40%
から60%、多い国では80%は外国人といった状況になっています。当然、今後の日
本の国際化との大きなかかわりになってきますので、そういったデータはますます大
事になってくると思います。岡田先生の研究班でも、いま調査をまとめられていると
ころですので、そういったデータもだんだん出てくると思います。
○坂谷部会長 3点目の「耐性結核対策の強化、リスクグループの洗い出し等を目的
として、病原体サーベイランスの体制の構築について検討することが必要か」につい
てです。御手洗参考人から詳細な報告がありましたが、この点についてのご議論をお
願いします。
○高橋委員 23頁のB案ですが、この地域リファレンス検査室というのは、どの単位
で想定しているのでしょうか。保健所単位か、もうちょっと小さいのか。
○御手洗参考人 イメージとしてはブロック単位です。例えば中・四国あるいは近畿
といった形で、かなり大きなエリアで考えています。大体、人口500万人から1,000
万人について、1施設ぐらいという形で、WHOがリコメンドするところでは、そのぐ
らいの規模と考えています。
 ○加藤委員 イギリスは、菌に関する情報は、Health Protection Agencyで、国の
機関がトップにあります。そのブランチとして、全国に7カ所の地域リファレンスセ
ンターがあります。人口から考えると、御手洗参考人からあったように、1,000万人
程度かなと思います。そこにすべて集約されている形で、国の機関がそのままここに
かかわっているシステムです。
○坂谷部会長 23頁の上半分に書かれていますね。
○高橋委員 そうすると、イギリスのものを想定されているということですか。
○御手洗参考人 そうです。1つ参考としています。ただ、イギリスはプライベート
のラボは全く結核の検査はやらないという特殊な条件がありますが、Public Health
Laboですべてを集約できれば、情報も株もすべて集約できるという考え方です。
○坂谷部会長 御手洗先生、A案とB案の特質はどうなのでしょうか。
○御手洗参考人 A案については、現状すでに存在しているシステムをどう組み合わ
せて、活用するかを考えています。A案については、病原体を検査センターと、病院
の検査室から移動させなければならないという点で、バイオセーフティ上の問題が1
つあると思います。
 それから、検査センター、すべての検査を行っている病院施設に対して、精度保証
を行わなければなりませんので、これもかなり大きな負担になる可能性があると考え
ています。
 それと、例えば保健所で把握している患者情報が、地方衛生研究所でVNTR等の解
析を行った場合に、どうやってリンクするのかの点がはっきりわからない点が、1つ
の問題だと考えています。
 B案については、いまご説明したとおりで、その辺のところで、株と情報が1カ所
に集約されていて、しかも流れが1本ですので、B案はシンプルであると考えていま
す。
○高橋委員 B案については、輸送の問題というのがあるのではないかと思います。
○御手洗参考人 当然その問題はあります。ただ、現行イギリスではどのような形に
しているかということで、例えば多剤耐性結核菌であるから特別扱いで、輸送に公安
の許可を得るといったような規定は全くありません。民間の会社が1年間一括して輸
送を請け負うシステムになっています。
 もし日本の現状でこれを適用したとしても、例えば病院等で、限定的に培養まで実
施したとしても、現行の法律は、多剤耐性結核菌であると同定されない限りは、一般
の結核菌と同じ扱いですので、輸送に関しては大きな問題は発生しないと思います。
○川城委員 このB案は、十分に検討に値する気がします。精度管理がきっちりでき
るでしょうし、データの一元化もできるでしょうし素晴らしいと思いますが、病院の
立場で、結核菌培養検査室の中で塗抹・培養までにして、感受性の検査をしないよう
にした場合、病院は経済的にどうなのかということです。というのは、そういうこと
を旗振りをすると、病院が抵抗する可能性があるのではないかと思って、それを心配
しています。
 もう1つは、そこで働いている医者が、そこの検査室の薬剤感受性の部門を使って
研究をしている先生がいると、その機能がその病院からなくなると、そこから医者が
いなくなることも考えておかないといけないと思います。薬剤感受性をやっている病
院は、その辺はどうなのかなと。あるいは論文の発表の場合にどうなのかとか、その
辺まで考えて推し進めていかないといけないかと思っています。
○坂谷部会長 重藤先生から何かありますか。
○重藤委員 そういう問題は頭に浮かびます。私も聞いていて、保険処理はどうする
のかとか。いまでも患者がいなければ、その病院で改めてオーダーすることはできな
いわけです。するとすれば病院の負担でしています。非常に細かいいろいろな問題が
出てくると思います。
 ただ、精度保証ということで言えば、ここに今日示された外部精度評価での合格が、
50ないし70%しかない。参加している施設でそうであって、していない施設のほう
が多いぐらいだと思うのです。そうしますと、全体の精度からすれば、いかなるもの
かということになりますので、精度というのは非常に重要な問題で、B案も十分に検
討すべきだと思います。
○坂谷部会長 高橋先生、VNTR、分子疫学的調査も最近はどんどんされているわけな
のですが、これは菌の遺伝子情報ですが、特定の患者から得られた菌体を使って、菌
の遺伝子情報を得るわけですが、これについては法律的なことに何かサジェスチョン
をいただけることはありますか。
○高橋委員 初めて拝見したのですが、ブロック単位ということになると、患者情報
まで含めて、ここが持つという話だと思います。それが想定されているのか、素朴な
疑問がありますが。イギリスには、法令上はそのような明確な位置づけがあるという
ことでしょうか。
○加藤委員 このサーベイランスと倫理問題というのは、WHOのヨーロッパで、いま
議論が始まったところで、6月にオランダでWHOのヨーロッパリージョンの会議があ
ったのですが、そこでもこの問題は出てきました。
 国によって処理の仕方が違って、イギリスの場合はHPAの段階で、全体として倫理
委員会のようなものを通っているらしいのです。詳しくはわかりません。ですから、
その国々の規定によって、実施しているようです。
 日本の場合は、感染症法第15条の積極的な調査をどのくらい適用していくかとい
う部分と、逆に個人情報をどうやって守っていくかという、両方のバランスを取った
上で、進める必要があります。
 特に議論になっているのは、検査の同意の問題です。法律を適用した場合は必ずし
も必要ではないのですが、これと研究との関係になると、非常にややこしい問題が出
てきます。
 WHOの会議でもそういった議論がなされましたが、グループの議論の中では、対策
上必要なものはきちんとしたデータを取ることが大事ではないか、という意見が多か
ったです。
○坂谷部会長 菌の情報は匿名化して菌の情報だけにすることはできますが、どこか
でリンクさせて、その菌がどの患者から出たものかを特定しないと、有力な情報には
ならないというのはたしかなのです。体制の構築についての議論というのはまだまだ
深めていく必要があろうかと思います。研究班を立ち上げることが必要かもしれませ
ん。
 続いて第2の問題点に移ります。「発生の予防及びまん延の防止」について、今回
は定期健康診断のところです。この議論を進めます。
 このような流れでいきたいと思いますが、特定感染症予防指針の資料の中の議論の
視点について、すでに記載されていること以外に、何かお気づきの視点がありました
ら、議論の中でおっしゃっていただければよろしいかと思います。定期健康診断の資
料について、事務局からご説明をお願いします。
○水野補佐 資料3「『発生の予防及びまん延の防止』に関する資料」の1頁の「結核
に関する特定感染症予防指針(抜粋)」をご覧ください。10点ほど議論の視点がござ
いますが、これは定期健康診断については、視点が大まかに3つの対象に分かれてい
ます。高齢者、地域の実情に即した疫学的な解析により結核発病の危険が高いとされ
る住民層(ハイリスクグループ)、発病すると二次感染を起こしやすい職業に就労し
ている者(デインジャーグループ)、この3つの対象に行われる健康診断についての
議論の視点となっています。
 ?の「定期健康診断の制度概要」について説明させていただきます。13頁です。「結
核に関する定期健康診断見直しの経緯」とあります。 結核予防法においては、対象
者等は、監獄、少年院、婦人補導院、社会福祉施設の従事者、入所者を対象に施設の
長が実施するものと、学校、病院等の、こちらも施設の長が実施するもの、それ以外
のものに関しては、市町村長が実施ということになっていまして、実施時期について
は、年の節目と、19歳以降の大人が全部と、幅広いところを対象としていました。こ
れに対し、平成17年4月に改正がありました。改正の概要は、患者発見率及び集団
感染の防止という観点から、健診の必要性・有効性を再評価したということで、65
歳以上の高齢者と、先ほどお話ししましたデインジャーグループ、ハイリスク、集団
感染防止の観点からのグループというように絞られた経緯があります。
 現行の感染症法の規定になったわけですが、現行の感染症法については、「結核に
関する定期健康診断の現状」をご覧ください。これは健康診断実施者ごとに規定され
ています。現行の感染症法では、施設長が行うものが2つあります。1つ目は、刑事
施設に収容されている20歳以上の者で、ハイリスクであり、集団感染防止の観点か
ら行われているものです。もう1つは、施設長が、社会福祉施設に入所している65
歳以上の者に対して行うもので、これは高齢者という意味合いで行っております。3
つ目は、事業者は、学校、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設及び特定の社会
福祉施設の従事者に対して行うということで、これはデインジャーグループとなって
います。こちらは労働安全衛生法にも規定されています。
 4つ目で、学校長は、大学、高等学校、高等専門学校、専修学校又は各種学校の生
徒に対して行うとなっていて、これは集団感染防止の観点から行われているものです。
市町村長の行っているものは、65歳以上の高齢者と、市町村が特に必要と認める住民
層であるハイリスクということになります。また、学校の生徒に対して行われている
もの、また学校の従事者に対して行われているものに関しては、学校保健法にも規定
はあります。参考として、65歳以上を対象とするエックス線検査については、肺がん
検診のためにも活用されているということがあります。
 15頁からは、各種労働安全衛生法関係、学校保健法、また肺がん検診の通知集です。
こちらは適宜ご参照いただければと思います。
 25頁「健康診断による患者発見について」です。こちらは健康診断による患者発見
の内訳があります。定期健診のほうをご覧ください。事業者行う定期健診というのは、
デインジャーグループというものになります。学校長の行う定期健診に関しては生徒
を対象としているので、集団感染防止のために行われている健康診断となります。施
設の長の行う定期健診に関しては、65歳以上とハイリスクグループが混じったデータ
になります。市町村長の行う定期健診に関しても、65歳以上とハイリスクグループが
混じったデータになります。
 患者発見率については、平成20年については、いちばん下の行にありますので、
適宜ご参照ください。65歳以上とハイリスクの患者発見率のデータについては、こち
らでは不明ですので、26頁からの自治体アンケートの結果のほうをご参照いただきた
いと思います。
 7.定期の健康診断の表については、定期健康診断の自治体が行っているもので、
65歳以上のデータです。全国で、受診率は25.2%ですが、これは0.07%から93.1%
とバラつきが見られているものです。患者発見率は、10万人のうち6.4で、0.006%
ということになります。これはほとんどの自治体で、10万人当たり20の0.02%以下
でした。0.02%というのは、65歳以上で定期健診を行う基準とした根拠になったもの
です。
 8の表です。これは全患者中、発病の危険の高い人の割合で、つまりハイリスクグ
ループの割合になります。これはご覧のような数字になります。外国人、住所不定者、
飯場、じん肺患者に関しては、ハイリスクグループということで扱われますが、精神
科病院、老人保健施設の病院等については、これは特に制度上は規定されていません
が、予防指針の中ではハイリスクとして触れられています。
 9の表で、発病の危険の高い人への検診結果です。外国人が患者発見率0.211%、
老人保健施設、デイケアは0.091%、住所不定者に関しては0.414%、生活保護対象
者は0.469%です。実施数にバラつきがありますが、ハイリスクグループは、その他
の定期健診と比べてある程度高い発見率となっています。
 10-1は「発病の危険の高い人への啓発活動」です。自治体においては、老人保健施
設、デイケア等に対し行っている自治体が32と、比較的多いということでした。10-2
は「外国人及び住所不定者への啓発内容」です。ご覧のような内容です。
 11は、「発病すると他者への感染の危険の高いグループ」の健診実施率になります。
健診実施率は、健診を行っている機関全体で見た場合、実施している機関はどのくら
いかというような意味合いです。これは50%から80%ぐらいです。
 次の頁は健診受診率です。これは健診を行っている機関等の中で、従事者の受診率
がどうなっているかというものですが、これは高いということになります。なので、
健診を行っている機関では受診率は高いということになりますが、機関全体で見た場
合の実施率においては、それほどでもないということになります。
 12は、「学習塾をデインジャーグループとして対応しているかどうか」です。学習
塾については、デインジャーグループというような規定はありませんが、現行指針の
中では、デインジャーの可能性としては触れられております。これは101自治体中32
自治体が、そのように捉えているという結果です。12-1は、「その他あげられていた
デインジャーグループ」というもので、ご覧になっているような内容です。
 34頁です。これは予防指針の中で、市町村が定期健康診断の対象者を定める際に参
酌する基準が、現行指針でありますが、その根拠となっている論文についてご紹介さ
せていただくものです。イギリスでは、患者発見率0.05%、西ドイツでは0.04%と
いう記載がありました。
 35頁は、結核集団感染の件数について、過去10年間のデータになります。集団感
染の件数全体については、若干少なくなっているような感じがあります。個々に見る
と多いのは事業所です。学校等については減っている傾向が見られます。
 注意書きをご覧いただきますと、「病院等」に関しては、病院、診療所、(介護)老
人保健施設が含まれ、「社会福祉施設」には、生活保護施設、養護老人ホーム、身体
障害者更生施設などが含まれ、「事業所」には会社、職場などが含まれ、「その他」に
は飲食店、遊技場、不明等が含まれるとあります。ご留意ください。こちらからの資
料説明は以上です。
○坂谷部会長 以前は、何らかの網で、全国民を定期健康診断に組み入れようという
ことでやっておりました。施設長、事業主がやる健診、学校長がやる健診、それで漏
れたものとして市町村長がやる健診ということで、全国民に網掛けをしていたわけで
す。ですが、メリハリが必要であるということになって、補導院、少年院については
廃止になりました。それ以外のものはまだ続いているわけですが、最近ではデインジ
ャーグループ、ハイリスクグループに特化した、外国人なども含めてやりましょうと
なってきています。現状の経過について、水野補佐から説明がありましたが、大森参
考人から追加がありましたらお願いします。
○大森参考人 追加の説明と言いますと、「結核サーベイランスより」からというこ
とでよろしいですか。
○坂谷部会長 はい。
○大森参考人 「結核の現状」の「結核サーベイランスより」ということで、疫学情
報センターからの提供資料を報告させていただきます。4頁の結核罹患率の推移です
が、このように低下していますが、なかなか減少率のスピードが早まらない状況にあ
ります。
 5頁です。全国的に罹患率の地域格差が大きくなってきています。いまでも西高東
低の形は変わらないのですが、それがだんだん崩れてきていまして、大都市でも、特
定の大都市に偏ってきている傾向があります。
 その下の図で、年齢ですが、男と女に分けて、5歳階級別に頻度を10年隔てて見て
いますが、高齢者の結核のいちばん頻度の高い年齢層が、ちょうど10年経つと、10
歳高齢のほうに動いているのがわかります。このように、結核患者の数で見ると、だ
んだん高齢のほうに偏ってきているのが特徴的になっています。
 将来予測として、2030年まで予測したところ、女性の場合ですと、20代のピーク
と、80歳以上の特に年齢の高い高齢者のところがほぼ同じぐらいになってきます。男
性の場合にも、20代から70歳ぐらいまでは罹患率が変わらないぐらいになって、あ
とは非常に高い年齢の方のところが高くなる状況になります。
 その下のグラフです。年齢調整罹患率を昭和60年のモデル人口で計算しますと、
高齢化によって罹患率が表向きで高くなっているというのが、よく理解できると思い
ます。
 次の頁です。65歳以上の高齢者という定義で見ると、この65歳以上の高齢者の割
合はどんどん拡大していまして、2002年に50%以上が、65歳以上の高齢者になって
いますが、この割合はほとんど同じぐらいのスピードで拡大していまして、まだ一定
のレベルに達する兆しは見られておりません。
 その下に患者数を掲げていますが、65歳以上の高齢者と言いましても、60代、70
代前半の高齢者の場合には、患者の発生する数が2000年以降、急速に低下してきて
います。しかし、それに比べて80歳以上の患者は、過去10年にわたってほとんど減
ることなく、最近では増加の兆しもあるぐらい、数が多うございまして、80歳以上で
6,000人もの患者が、10年間変わらず発生しているという状況です。
 次の頁は外国人の割合です。先ほど少し説明しましたが、外国人の割合はどんどん
拡大していまして、特に20歳代では拡大の傾向が早くて、4人に1人が外国人という
ことになっています。外国籍の方の結核患者は20歳代にいちばん多く発生していま
す。その次に出身国があるのですが、中国、フィリピン、韓国という状況になってい
ます。
 その下です。これは推計ですが、全結核患者に占めるホームレスの方の発生の割合
と、外国人の発生の割合を推計しました。ホームレスの発生は、2000年にかけて全体
の5%ぐらいまで拡大していたのですが、その後は低下傾向にあります。それに代わ
って、外国人の割合は拡大傾向にありまして、いまは逆転しています。ただし、結核
患者の内面的なところ、職業とか、発見時に重症かどうかというところで見ると、20
代から50代の男性、働いているだろうという年齢層で職業を見ると、50代後半では、
無職という方がかなり多いです。これは取り方にもよりますが、登録したときに無職
になっていたのかもしれないので、発症したときには職があったのかもしれないので
すが、発症してくる患者の背景が職業で何となくわかるかなということです。
 その下に、同じ20代から50代の男の方の発病時の病状を見ています。肺結核で発
見されたときに、喀痰塗抹で陽性、かつ肺は空洞であったということで、重症で発見
されたという割合を見ますと、「臨時・日雇」の方で重症で発見される方の割合が多
いです。無保険だったり、国民保険の保険医療費が払えなかったりで、なかなか受診
につながらないという背景が、ここから窺われるのではないかと思います。
 次の頁は、2004年の看護師の結核罹患率です。相対危険度を推計すると、同じ年齢
の女性の4倍高いです。その下に、男性と女性の医療職からの発症数を書いています。
女性に比べて男性のほうが約2倍弱患者数は多いのですが、医療職という職で限定す
ると、女性のほうが非常に数が多いです。その多くが看護師で、20歳代後半から、ち
ょうど就労年齢のところで患者数が多いです。全体的に年齢の中で占める医療職の割
合を見ても、女性の場合には、それぞれの年齢の患者の15%ぐらいは医療職です。か
なりハイリスクの職場で、結核の患者が出ているというところです。
 ただ、医療職の方の場合には、臨時・日雇の方のように、重症で発見されるという
よりも、菌陰性で、早期に発見されている患者の数が多くなっています。
 その下は職業別に分かれているものですが、デインジャーグループとして、「教員
/保育士」というところがありますが、これは数だけですが、以前に職業でリスクを
計算したことはあるのですが、教員/保育士の発病リスクは、そう高いものではあり
ません。ただ、発生すると、周囲に未感染の児童、生徒がたくさんいるということで、
非常に危険な職からの発病になるかと思います。
 先ほど、職場健診からの発見でご説明がありましたが、発見された方の発見方法で
は、職場健診からの発見が、住民健診からの発見よりも割合が高いのです。2008年で
すと、職場健診からの発見が7.6%で、住民健診からの発見が2.0%なのです。職場
健診からの発見患者が、正確に報告されていないというところが、健診をベースに見
ると、発見率が低下してしまう要因になっているのではないかと思いまして、その辺
を修正したところ、住民健診よりは職場健診からの発見率が高いことを推計しました。
以上です。
○坂谷部会長 健診のメリハリの付け方について、ポイントをお話しいただきました。
 事務局からの説明で、斟酌する基準の根拠で、この程度に発生率が低くなければ、
定期健康診断を省いてもよかろうという基準について、1枚ものが出ていますが、そ
れはそうとしまして、本日は阿彦参考人から、結核の効果的な患者発見及び予防対策
という観点からのご提案がございます。資料3の30頁からです。阿彦先生、よろし
くお願いします。
○阿彦参考人 30頁から、山形県の最近4年間の菌陽性肺結核患者について、全例に
ついて、県内4つの保健所と一緒に分析した結果をご説明します。
 表1、表2は、対象者の基本的な項目です。真ん中の図1をご覧いただくと、結核
患者の発見方法です。年齢別には80歳以上が全体の41%を占めています。ここで意
外なのは、年齢が若いほど、健診発見割合が高く、39歳以下がいちばん健診発見が多
いです。その下に内訳を載せていますが、39歳以下の患者では、他の年齢層に比べて
各種健診の割合が高いのですが、中でも事業所、職場の定期健診を受けての発見が、
39歳以下は15人もいまして、非常に多かったということです。
 これは労安法に基づく健診が、医療従事者等の特定職種を除けば、一般事業所では
39歳以下の方は5歳刻みの節目年齢が基本にあるわけですが、節目以外でも、呼吸器
症状などを有する者には、医師の判断で胸部エックス線検査を実施するとなっている
のですが、健診発見例では、裏の頁の「発見方法別にみた結核患者の菌所見」をご覧
いただくとわかりますが、各種健診発見の患者の菌所見は、塗抹陰性が多くて、呼吸
器症状のない方が多いという実態を踏まえると、医師の判断で、39歳で対象者が増え
るというケースは、それほど多くないと思いますので、これを見ると、それが間引か
れた部分は接触者の健診でかなり補充しなければいけないということと、あとは職場
の健診の中での特定の方、例えば外国人の方、そういった方は若くてもやるとか、そ
ういった配慮が求められるのではないかと思いました。
 一方、60歳以上の方ですが、60歳以上になると健診発見が低くなりまして、一方
59歳以下と比べると、図1の白抜きの「その他」という発見が多くなります。これは、
がんなどの手術目的で入院した際のレントゲンで異常を指摘されたとか、その他の疾
病で受診したことを契機に結核が発見されたという人が入っています。
 その内訳は32頁に、主な経過について示しています。1と3は無症状で、主治医の
ところで最近レントゲンを撮っていないので、撮ってみようかということで、高血圧
だと心臓の状態を見たくて撮ったけれども肺に陰影があって、精査に進んで結核とい
うことはありますが、その他はハイリスクの、がん、糖尿病とか、いろいろなものが
あって、その診療過程で診断が付いたということで、「その他」です。
 また30頁に戻っていただくと、個別健診というのがあるのですが、これはかかり
つけ医の下で、あるいは人間ドックでとか、定期ではなくて、かかりつけ医の下で、
年1回とか半年に1回はレントゲンを撮ってみましょうかとか、古い影があるので撮
ってみましょうかとか、そういったことを定期的にやっていて見つかった人を、この
表では個別健診扱いをしています。そういう面で、個別健診で定期的にかかりつけ医
の下で撮ったとか、その他の病気でかかっていて偶然見つかったという人が、60歳以
上になると多くなるということがわかりました。
 そのほかです。31頁の表4には、入院・入所中あるいは介護保険サービス利用中に
結核が発病し、診断された方が、80歳以上では両方とも3割を超えています。32頁
の表5は、入院・入所中のほか、定期的に通院中の人を含めるとどのくらい日頃から
医療とのかかわりがあったかというと、70歳以上の方は8割以上の方が、何らかの病
気で医者に日頃からかかっているという状況でした。
 33頁のものはハイリスク因子ということで、発病しやすくなるハイリスク因子を持
っている人が、最近では4割を超えて5割に近くなっているということで、その内訳
を示しています。
 提案は、国内で結核罹患率が低く、かつ高齢化が進んだ山形県のような地域は多く
なっているので、そのようなところでは具体的な方法として、慢性疾患、特に結核発
病のハイリスク因子を合併して、定期的に医療機関で受療中の高齢者が今後も増加す
ると推定されますので、かかりつけ医が結核発病のハイリスク因子を念頭に置いて、
この受療中の高齢患者に定期的に胸部のレントゲンを撮って、高齢者のレントゲンは
古い影がある人も結構ありますので、必要に応じて過去のレントゲンと比較というの
もかかりつけ医の下ではやりやすいと思いますので、そのような比較読影を含めた定
期的なレントゲン検診を推奨するというのが、効果的ではないかと思われます。かか
りつけ医の下で定期的に、あるいは有症時のレントゲン検査を実施する方法を推奨す
ることによって、そのかかりつけ医のほうでも結核というものに関心を留めることが
できますので、副次的に結核の診断遅れの防止に寄与するのではないかと、そう思っ
た次第です。
 最後に、33頁のいちばん下に、低まん延と言っても、40歳未満の患者さんもまだ
若干おります。51人ほど4年間にいたのですが、この4年間の51人の40歳未満の患
者について感染経路の推定を行ったところ、全体の3分の2はある程度の推定が可能
でした。いちばん上の9名は、分子疫学調査で完全に同一の感染源からの感染だとい
うことが推定されたものです。3段目の中国での感染というのは、中国から就労、研
修、結婚のために中国から来られて、1年以内に発病したという人が、山形でもこの
くらいおります。あと院内感染を疑われるものも5名です。国内高まん延地域という
ことで大阪、東京等で長く就労して、山形に戻って1年以内の発病、あるいは大阪の
ほうで発病して治療のために山形に戻ってきた、そういったケースがあります。これ
を考えると、例えば中国からの方については何らかの定期的な健診の手立てを職場や、
例えば市町村のほうでできないかということは、我々の現場からのこういうデータか
らも言えると思っています。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございます。大森先生のほうから、サーベイランスシステ
ムからの情報を詳細に、それから期せずして、同じこととプラスアルファのご提案が
阿彦先生からありました。阿彦先生からは、定期健康診断にかかりつけ医を取り入れ
たらどうかというお話です。
 議論は3つございます。第1点、指針策定後、感染症法及び労安法に基づく健康診
断は、効率化を目的とした見直しが行われておりますけれど、それを前提とした書き
ぶりにすることが必要かどうか、これが1点です。2点目、高齢者、地域の実情に即
した疫学的な解析により結核発病の危険が高いとされる住民層、すなわちハイリスク
グループ、発病すると二次感染を起こしやすいデインジャーグループ等の定期健康診
断の実施状況は適切であろうか。改変する必要がなかろうかということ、これについ
ては事務局から水野さんの詳細なデータの提示がございました。それを踏まえて、さ
らなる健診の効率化の観点から健診対象とする高齢者の範囲、年齢の定義を見直すこ
とを検討することが必要か。こういうことについてご議論を願いたいと思います。労
安法の効率化を目的とした見直しに即して書きぶりを変える必要があるのではなか
ろうか。それからハイリスクグループ・デインジャーグループの現状の健診体制は適
切であろうかどうか。それから高齢者という範囲の年齢をいつ……閾値を何歳にする
か、こういうことを議論したいと思います。いかがでしょうか。まず、事務局のほう
からいま私が申し上げたことについて何か補足の説明がございますか。
○水野補佐 これについては議論の視点が実際10点ほどあるのですが、大まかに最
初にご説明申し上げたとおり、3つのグループに対する定期健康診断をどういう方向
に持っていくかというような議論の視点になっております。
 先ほど坂谷部会長よりご説明のありましたとおり、「指針策定後、感染症法及び労
働安全衛生法に基づく健康診断は、効率化を目的とした見直しが行われているが、そ
れを前提とした書きぶりにすることが必要か」ということについて、まず議論をして
いただく。その後、ハイリスクグループとデインジャーグループと高齢者について順
次議論をしていただく。基本的にはこの視点の順番でよろしくお願いいたします。
○坂谷部会長 結核予防法が感染症法に統合されて、その親法のほうの規定、それか
ら労安法に基づく健康診断と、こうなるわけです。ですから、そういう書きぶりにシ
フトするのは当然と思われますが、いかがでしょうか。第1番目の視点について、何
かご議論がありますか。
○南委員 その議論に入る前に、ちょっとお話の中でわからなかった点を教えていた
だきたいのですが、医療職からの結核の発症者というのが非常に突出して多いという
のがわかりました。これは当然想像されるのは、結核患者に接触をしたといったこと
が背景でしょうが、そういうふうに分けて数字を取ったりはしてないのですか。一般
医療職全部について、こういう結果ということですか。
○大森参考人 サーベイランスの情報からは、最近結核患者さんに接触したために発
病したのかどうかという情報はないので、残念ながらその辺はわからないのです。
○南委員 その辺は何かリサーチがあるのでしょうか。
○坂谷部会長 全国的なことではないのですが、私自身が近畿地区で、国立病院・療
養所関係で20の施設で調べたことがありますが、結核病棟を持っている所では間違
いなくナースでの発病、それから検査技師の発病が高いです。ですけれども、通常結
核患者を意識して診ていない国立病院、総合病院ですね、結核病棟を持っていない施
設のナースであるとか、検査技師さんも発病率が多少高い。だから、医療職として高
いと、こういうことであって、結核患者を診ているか診てないかは考慮に入れなくと
も高いのです。
○南委員 かなり特筆的なデータだと思うので申し上げたのですが。何か対応を考え
ていったほうがよいぐらいの結果ではないんでしょうか。
○坂谷部会長 加藤先生、何かこのことについて最近調査したことありましたか。
○加藤委員 直接的な調査はございません。ただ、一般的に言われているのは、病院
の中でも、必ずしも結核病棟だけではなくて、例えば気管支鏡室とか、救急部門とか、
特にハイリスク、いわゆるハイリスクグループがたくさん来るような病院ではやはり
十分な注意が必要だということは言われています。
○坂谷部会長 それから有名なのは、東京都の監察医ですね。公路で倒れた方の解剖
をやりまして、それがたまたま結核であることの頻度が高くて、それと知らずにやっ
ているときに貰ってしまうというようなこと、病理の医者、それから細菌の検査室、
呼吸機能ですとか心電図でありますとか、患者さんと接してやる生理学的な検査技師
さん、それからナース。ドクターは案外低い、高くないのです。ほか、いかがでしょ
うか。
○深山委員 高齢者、高齢者、ハイリスクというふうなことが出ているのですが、ど
こにいる高齢者が多いのか。老健の方に多いのか、在宅なのか。老健だけで出てきて
いるのですが、高齢者の中でどこにおられる方が多いのですか。
○坂谷部会長 これは、分けたデータはありますか。
○阿彦参考人 先ほどの31頁の表4、いちばん下にありますが、80歳以上ですと、
介護保険サービスを利用しているというのが37.8%あります。ここの中に老人保健施
設、特別養護老人ホームを利用している人もありますが、在宅で介護保険サービスを
利用している人も、ここに含んでいます。そういう状況です。ですから、老人ホーム
の施設サービスと在宅サービス両方併せて、80歳以上の高齢者だと、37.8%の方が、
山形ではどちらかを利用していた人からの発病だったということです。
○坂谷部会長 逆に、高齢者でもこの職種というか、こういう生活レベルの方は省い
てもいいですよということが言える段階にありましょうか。やはり高齢者も一括して
高いと考えていいですね。
 それから3つ目の話題として、高齢者というのは何歳から上を一般的には、ハイリ
スクグループであることを別にして、何歳を以て高齢者ということにするかというこ
とも明らかにせんといかんのですが、そういうことも含めてご議論願います。深山委
員のご質問に対しては、いまの阿彦先生のご説明あるいは先ほどの大森先生のデータ
でよろしゅうございますか。
○阿彦参考人 補足をさせてもらうと、老人保健施設と介護の老人福祉施設で違った
のは、老健の場合だと老健の施設長がドクターなので、施設入所中に疑わしい症状が
あったときにまず独自に施設内で治療をやっていて、そこで一旦良くなったかなとか
何とか言っているうちに大量排菌という事例が結構目立っていまして、介護老人福祉
施設ですと、初めからもうすぐ病院に紹介とかそうしたことが多いので、逆にそちら
のほうよりは老健のほうが診断の遅れが大きくて、そういうのが4年間の分析ではあ
りました。
○坂谷部会長 話題を変えまして、ハイリスクグループ、デインジャーグループの具
体的な職種といいますか、グループの名前に関して、もう一度改めて大森先生と阿彦
先生から、具体的に、リストアップのことですが、いままでのデータでよろしいです
か。ほかの委員の方々から、こういうのが書かれていないがハイリスクグループに属
するのではなかろうか、デインジャーグループに属するのではなかろうかというご意
見がないでしょうか。
 ご意見がないようです、それでは、高齢者の範囲について見直しが必要かどうか、
現状の65歳というポイントをもっと下げる必要がある、あるいは低すぎて70以上に
すべきであるとか、80以上をそういうようにするべきであるとか、そういうことにつ
いて検討することが必要かどうかについて、いかがでしょうか。
○加藤委員 高齢者のことを言いますと、先ほどデータを示されておりますとおり、
80歳より下の年齢というのは罹患率は急速に下がっているのです。と申しますのは、
この年代というのは、戦後の非常に高まん延期に感染を受けた人がある年代になって
発症していますけれども、その年代がだんだん上のほうに上がっていますので、非常
に急速に罹患率が下がっている。そういった場合、どのくらいの罹患率があったとき
に健診の対象にすべきかといったことから議論が必要だと思います。
 もう少しハイリスクというグループを広く見ますと、例えば外国人の問題がありま
す。外国人、あるいは高まん延国の居住歴がある人と言うほうが正確かもしれません
が、それにつきましてもどの範囲を本当に健診の対象にすべきか。そうすると、そう
いった高まん延国、あるいは職業的なもの、あるいは高齢者が、ある程度整合性がと
れた形で健診の範囲を設定する必要があるのではないか。現時点で何歳と言うのは、
ちょっとすぐにはお示しできませんが、そこらも併せた上で、日本でどういう人たち
がリスクグループとして健診の対象になるか。この問題というのは、健診をやらなか
ったら発見されないのではなくて、いずれ症状が出て発見されるはずであるというの
が1つあります。それは世界的に健診があまりやられていない理由なのです。もちろ
ん早く見つかったほうがいいですから、やることに意味がないわけではないのですが、
そのときのコスト等々も考えた上で、一体どのくらいが合理的かと、こういう発想で
す。
 逆に、健診を受けなかった場合、症状が出たとき確実に受診しなきゃいけないとい
う問題があるものですから、それが裏打ちされてないとなりません。そういう意味で
は、ホームレスとかそういう社会的経済的弱者というのは有症状でも受診しないとい
った問題がある場合は、これに対して積極的に介入していく必要がある。こういった
観点からも考えた上で、本当に、感染・伝播を防止するために、患者さん自身の早期
発見、早期治療を含める。どういった健診範囲が適正かといった議論を進める必要が
あるだろうと思っています。
○坂谷部会長 いまおっしゃられましたように、年齢の範囲でありますとか、対象事
業所の洗い出しでありますとか、現在手に入っているデータを見ることによって可能
か、新しい調査が必要かということをお教え願いたいと思います。加藤先生、大森先
生、いかがでしょうか。いま手に入っているデータからいまのポイントを洗い出しす
ることができるか、新たな調査をしないといかんかと、こういうことですが。
○大森参考人 例えば高齢者なのですが、登録者情報システムのほうで、65歳以上で
症状があって発見された方というのは62.9%ですが、入院中に発見されたという方が
10%で、そこの前の60代前半の方が7.4%なので、65歳から入院中とか、増えて、
拡大していくのです。通院中の方ですと、60歳以上から10%増えています。大体70
代辺りは、通院中に発見されている方というのがマキシマムになるのです。入院中に
発見された方は、65歳からどんどん高くなりまして、80代では17%から18%、90
歳以上になると22%以上となっています。実際にはもっと多いのではないかとは思う
のですが、ですからこの辺が、阿彦先生もおっしゃいましたけれども、常日頃診てい
る家庭医さんとか、医療機関とかそういった所で、どのような経過をとられているの
か。長いこと通院している方に関して、定期的に胸部レントゲンを撮っているのかと
か、そういったような情報があると、もっと具体的な対策なりが考えられるのかなと
は思いました。
○坂谷部会長 デインジャーグループ、事業所についてはいかがでしょうか。いまま
でのデータで結論を出すことが可能でしょうか。これも、加藤先生、大森先生、いか
がですか。職種ですが、何か新しく調査が必要ですか。
○大森参考人 先ほど感染症課のほうの調査から提示していただいた医療職の方と
か、教員の方とか、そういった施設の長、その辺の健診の受診の状況、結構医療職の
方がそれほど高くなかったような気がしますので、ハイリスクの職場であるにもかか
わらず、健診を実施したりとか受診したりとかいうことが、本当に徹底してやられて
いるのかどうかというのが、少し気になりました。
○坂谷部会長 紺屋の白袴で、医療職いままでは低かったのですが、この頃行政であ
るとか上位機関から厳しく、特に保健所からの指導ですよね、医療職の健診の受診率
を高めるようにということが強く言われていますので、改善しつつはあると思うので
す。たぶん年齢の範囲のことも、事業所のことも、今まで得られているデータを基に
して、特定することが可能と考えます。
 ただ、もう1つ、施策の重点化のためのリスクグループに焦点を当てた対策をやる
わけですが、特に、医療職のことにスポットを当てましたが、住所不定者、社会経済
的弱者、新入国外国人などについて、対象とすべき具体的な集団の範囲を整理し、必
要とされる対策を示すことが必要か、こういう議論がいままでにされているわけです。
当然のような気がしますけれど、いかがでしょうか。そのとおりだというご意見が多
いと思いますが、リスクグループのうち、特にスポットを当てる対象として住所不定
者、経済弱者、新入国外国人、これも外国籍であるかどうかではなくて、生国、生ま
れ育った国を特定することが必要かというご意見がありました。そういうオプション
を入れて、具体的な診断の範囲を定義し整理する必要があると考えられますが、ご意
見がありましたらお願いします。
○重藤委員 新入国外国人なのですが、大体研修で来られる方を私たちはたくさん見
ていますが、受入れの段階でどのような健康診断がされているのか、受入れ団体がい
ろいろあるみたいなのですが、そこのところでがっちりチェックをかけられないかと
いうのが、1つ疑問なのです。
 いままで受け入れた患者さんを見ていますと、受入れ団体によってかなり扱いが違
っています。例えば、発病した後の医療対応も含めてなのですが。やはり入国のとき
にチェック、それから1年後、2年後というきちっとした定期健診を新入国の方にか
ける、特に研修生のようなグループは非常に効率的にできるのではないかなと思いま
す。
○坂谷部会長 現状を踏まえて、何か事務局のほうからご意見ありますか。
○水野補佐 新入国のいまの件に関しましては、こちらのほうも少し情報が足りない
と思いますので、また調べてご報告させていただきたいと思います。
○大森参考人 住所不定者とか社会的弱者のことについてなのですが、ホームレス健
診とかは結構都会ではやっています。あとは、ある所では簡宿の集まっている所で簡
宿健診というのを実施したりしております。簡宿の方の90何パーセントが生活保護
なのですが、かなり罹患率も高くて、効果的だと思います。しかし、そういうところ
にもかからない人たちがいると思うのですね。例えば、ネットカフェ難民とか。新宿
区ではネットカフェ健診とかやっていますが、対象者はどうしても従業員になってし
まって、そこの利用者とかにどう対応したらいいのかとか、なかなか難しいところは
あると思うのです。例えば、具合が悪くなって、医療機関にかかりたいと言ったとき
に、福祉事務所を訪れても、医療券や特診券で1回だけの受診です。緊急で医療単給
を認めてくれれば何回かの受診で結核と診断されるかもしれませんが、全体の生活保
護を受けなければなかなか継続的医療につながらないとか、そういう福祉との関係で
も、すごく難しい問題があると思うのですね。だから、具合が悪くなったときにどこ
かに駆け込めるというような、そういうような措置がこういう方たちには必要なので
はないかなと思うのです。
○坂谷部会長 簡宿とおっしゃいましたのは、簡易宿舎、ドヤですね。ああいう所の
ことを、簡宿と申します。それから母数がわからないわけで、ですから高率にその方々
を健診するのにはどうしたらいいかという問題、それに漏れた方々に対してさらに二
次的な網というか、駆け込む所を作る必要がないかどうかということ。もう1つは、
どれぐらい強制力というか、人権の絡む話にもなってくると思いますが、そういう問
題点を残しつつの議論になろうかと思います。住所不定者でありますとか、経済弱者、
それから外国人のことに関しまして、個人情報とか、人権の問題から高橋先生、何か
ご意見ありますでしょうか、健康診断に関して。
○高橋委員 いいえ、特にいまのところはございません。
○坂谷部会長 わかりました。次の議題として、外国人への対応ということを特別挙
げてあるのですが、加藤先生からご意見がありました、高まん延国での滞在歴をリス
クと考える考え方から、国籍ではなく、高まん延国の出身者または居住歴のある者と
いうことが考えられるわけですが、こういうことを含めて外国人を対象にした健診の
あり方について、より深める議論がありましたら、お願いします。
○加藤委員 それに関しまして、欧米の各国では先ほど申し上げたように、外国人結
核の患者さんの割合が非常に多いので、新入国者検診が実施されている所があります。
ただし、実際やられているのは、亡命者として認定された人たちが中心です。検診対
象につきましては、オランダでは罹患率50、イギリスでは40以上の国から実施され
ています。最近オランダ等でも、対象に対する見直しに関する研究が行われておりま
す。最近の論文で、、罹患率100以下の国からの繰り返しの検診はあまり効果がない
といったデータも出ていたり、スイスでは、最近レントゲン等での検診をやめて、症
状のスクリーニングだけにしたということもあり、ヨーロッパの国々自体が見直しの
方向があるようです。そういった諸外国の状況も考え合わせながら、しっかり検討す
る必要があると思います。
○坂谷部会長 日本もそれに準じて、体制を変える必要があるというか、メリハリを
つける必要があるというご意見ですよね。
○加藤委員 例えば、学校につきましても、最近学生の健診を、検討したのですが、
日本人学生では結核の罹患率10万対5くらいですが、外国人は100以上あり、かな
り大きな罹患率の違いがあるということです。これは、先ほど申し上げたように、い
ろいろなほかの健診との整合性も含めて検討していく必要があるのだろうと思いま
す。
○坂谷部会長 いま、おっしゃった学校というのは、日本語学校などのことを言って
いるのですか。
○加藤委員 日本語学校とか留学とか、ちょっと実は母集団を、分母を正確に把握す
るのはなかなか難しいのですが、日本語学校、専門学校、大学、大学院等々の数を調
べたものです。
○坂谷部会長 また年齢の問題に戻りますが、先ほど深山委員から、年齢だけではな
くて、在籍している場所によって違うのではなかろうかというご意見がありました。
検診をどの段階からやるかということに関して、事務局から、34頁のイギリスのデー
タで以て、これぐらいに斟酌する基準を設けてやっているが、これに準じてこの程度
以下になりましたら検診を「やめてもいいか」ということですね。
 住民健診で65歳以上、年齢を区切るのにこの基準を取り入れてもいいか、近年の
知見を踏まえて見直しが必要かどうかということを議論しないといけないのですが、
いままでこれが適用されているわけですが、それでよろしいかということです。まあ、
問題はなかろうかと思いますが。
○加藤委員 これは市町村レベルで考えますと、市町村自体の人口がそれほど大きく
ない市町村もちろんありますので、これを発見率でやるというのは技術的に難しいの
です。有意なレベルというところで統計を処理したことがあるのですが、やはり対象
人口100万とか200万とかそういうレベルでないと、発見率のパーセント、有意な数
字にはならないのです。
○坂谷部会長 そうですね。
○加藤委員 ですから、そういう意味では少なくともこの各市町村で発見率というの
は、やはり技術的にちょっと無理があるのではなかろうかと思っています。
○坂谷部会長 せめて都道府県単位にしたらということ、市町村レベルではちょっと
無理かもしれませんね。
 次は、低まん延状態に向けて、「有症時の早期受診」が重要になります。「症状の出
現、増悪に際して早期受診」をこの予防指針の中に盛り込む。症状が出たときには早
期受診をするようにということを推奨する。こういうことですが、この点についても
先ほどからご意見が出ていますが、いかがでしょうか。定期健診だけではなくて、そ
れを裏打ちする文言を入れようと、こういうことです。これもご異論はないと思いま
す。
 10点目、健康診断において胸部レントゲン検査による診断が困難な場合、喀痰検査
を積極的に行うことが必要かどうか、こういうことですね。有症状の有無、問診によ
り必要なときには喀痰検査を実施すること。こういうことを謳うかどうかということ
ですね。レントゲン検査、日本では定期健康診断でたくさんやっていますので、利用
価値は高いわけです。普通喀痰検査はしないわけですが、デベロッピングカントリー
では痰の検査を第一義に考えて、検診的なことをやっているわけです。日本でもレン
トゲンが困難な場合には、喀痰の検査を積極的に取り入れるべきであろうかどうか、
こういうことです。何かご意見ありませんか。
○大森参考人 高齢者を対象にした喀痰検診というのは非常に難しいと、私は思うの
です。というのはレントゲンを撮れない、例えば寝たきりの高齢者の方に、レントゲ
ンを撮れないから喀痰といっても、喀痰を出せる状況にもないような状況だと思うの
ですね。良質な痰が取れるかというと、それもまた難しくなってくるときに、果たし
てその喀痰を取るという検診、それを健診としてやることが必要なのかどうかという
のは、ちょっと疑問です。それを例えば、診断のために喀痰検査をするというのなら
それは全然問題ではなく、最も重要なことですが、健診ではどうかなという思いです。
 というのは京都のほうで、そういった喀痰検診ということが言われたときに、実際
に保健所で行って、立派な報告書が出ていますが、喀痰は30%ぐらいしか高齢者から
は採れなくて、かつ、そこから培養で陽性になっても、10何例あったと思うのですが、
ちょっと詳しくはわかりませんが、すべて非結核性抗酸菌だったということです。ま
ず陽性だったという結果がわかってから、それが非結核だとわかるまでにかなり対応
に苦慮したということが実際にあります。そういうのが報告書にありますので、そう
いったようなことも検討しつつ、高齢者の検診についてはかなり慎重に考えたほうが
いいのではないかと思います。
○坂谷部会長 それは効率が悪いというか、対費用効果的にも問題があると、こうい
うことですかね。
○大森参考人 実施するその意義というか、果たしてそれでどれだけ結核患者さんを
早期に発見することが可能なのか、その結果の解釈とかそういったことも含めて、い
ろいろ議論することはたくさんあるのではないかと思います。
 それも重要なのですけれども、それよりも、もっと医療機関とかそういう所で、症
状があったらと言っても、高齢者の症状というのは咳痰ではない症状が多いですから、
かかりつけのお医者さんがいつ気づいてくれる、それを適切な医療機関に送ってくれ
る、そういうルートを作ってくれる、それはかかりつけのお医者さんでなくても、高
齢者施設でも同じなのですが、そういったことのほうがすごく重要なのではないかと、
私は思います。
 それから健診に関しても、かつて老人保健施設3カ所の健診を調査したことがある
のですが、自治体がそういう健診を委託する、健診機関がそういう健診を受託してや
られているのですが、結果を、精検指示ですとお返ししても、そこで終わってしまっ
ているのですね。その先、精検指示された方を丁寧に最後まで見たかどうかというの
を、それを委託した自治体もなかなかわからないし、実際、その3カ所のうち1カ所
は、この方は毎年結果が同じなのでということで、精検指示をされてながら、実は実
施していませんでした。私、実際そういうことを経験してますので、本当に健診する
なら、最後まできちっとやるというところを書き込むのが重要なのではないかと、特
に高齢者に関しては重要なのではないかと思います。
○坂谷部会長 国が事業としてやります健康診断の中に取り入れるほどのことはな
いと、これは健康診断の範囲を超えているという意見です。レベルは違いますけれど、
肺がん検診の場合には喀痰検査、これはどうなっていたのですか。喀痰検査は精密検
査のほうに入るのですか。まあ、どうですかね。
○重藤委員 一次検査の検査項目に入れて、入っていたと思います。
○坂谷部会長 綜合病院の健康診断では問診をやって。
○重藤委員 スモーカーの場合には、実施することになっていたと思います。
○江浪補佐 お配りしました資料の22頁に、肺がん検診に関します資料を掲載して
おります。この資料におきましては、喀痰細胞診は問診の結果、医師が必要と認める
ものに対して行う、という記載があります。
○坂谷部会長 健康診断の範囲としては入っているわけですね。
○江浪補佐 はい、検診項目の中に入っておりまして、肺がん検診の検診項目は問診、
胸部エックス線検査及び喀痰細胞診ということで、喀痰細胞診に関しては問診の結果、
医師が必要と認めるものに対してとなっているようです。
○坂谷部会長 大森先生、肺がんのほうではこうなっているのですけれど、結核につ
いてはどう考えたらいいかと、こういうことですね。先生のご意見では、可能性のあ
る人はもう健診の範囲を外れて、医療機関へ回していいのではなかろうかと、こうい
うことですよね。
○大森参考人 肺がん検診の場合には年齢層がかなり若いのと、喫煙指数、たしか400
か600とか何かそういう規定の基準があって、それ以上の方について細胞診も含めて
やりなさいと、あと血痰も入っていたと思うのですが、そういう基準があったと思う
んですね。高齢者の場合には、レントゲンが撮れない場合、喀痰というのがどういう
状況なのか、そこがちょっと把握できないですから、どうなのかなというところです。
健診としてはどうかしらという感じです。
○重藤委員 たぶんこの文章を読みますと、何となくイメージとして、いままでエッ
クス線検査を皆さんしていた、喀痰検査も同じように、皆さんするというようなイメ
ージがパッと浮かぶのですけれども。やはりそれは過剰ですと、私も思います。非常
に効率が悪いし、デメリットのほうもいっぱい出てくると思います。ですから、これ
でいきますと、喀痰があれば、受診して診療というのではなくて、喀痰がもしあれば、
もしくは吸引できれば、それが健診の範囲で処理できるというような、そういうシス
テムが妥当なのかなと思います。
○坂谷部会長 原案では、胸部エックス線検査による診断が困難な場合など、喀痰検
査を積極的に行うことが必要、有症状の有無等、問診により必要なときに喀痰検査を
実施すること、という書きぶりにしようかということですね。だから、全員その喀痰
検査をすべきであるということではないのですね。喀痰検査をやることによるデメリ
ットは何かありますか。それを健診で喀痰検査をやることのデメリットがあるかどう
か。
○重藤委員 明らかに喀痰のある人に実施すれば、デメリットは少なくなると思いま
すけれど。先ほどの非結核性抗酸菌がたくさん出てくるというのは当然あると思いま
すので、その辺りの処理に迷わないようにすれば、そのデメリットも少なくできると。
○坂谷部会長 正確に判断がされる条件下に、間違って結核でもないのに、結核結核
と言われて、専門施設に送られる危険性というか、それが大きな問題点ですね。川城
先生、何かありますか。
○川城委員 私は、寝たきり老人の喀出喀痰はかなり困難だと思うのですけれども、
やはり吸引喀痰ということも、次の選択肢としては考えておくべきだと、ずうっと思
っているのですね。その吸引の装置をどう活用するかというのは、非常に具体的に現
場のことを考えると大変だけれども、イメージとしてやはり喀出はお年寄りにはとて
も、口の中がグジャグジャして、唾液と一緒に出すのが現実ですから、吸引喀痰もう
まく利用してほしいなというのが、僕の思いです。
○坂谷部会長 今日は、結論を出す会ではないと申し上げましたように、両方の意見
が出た。喀痰検査を健康診断のレベルでやることではないというご意見と、健康診断
のレベルでやってもよかろうというご意見、両方あったと思います。
 全体を通しまして、何か言い忘れたこと、それから。
○川城委員 発言するチャンスがなくて過ぎてしまって、前のほうの大森先生のとこ
ろのシステムの入力項目の中で、入力率がすごく低い、資料の2の14頁、あります
ね。これ、コホートの1カ月後の状況を、15%とか、これはずうっとこのまま続くだ
ろうと、僕思うのです。というのは、おそらくこれは医者が1カ月後に情報提供しな
いと、入らないのではないかなと思うのですが、それで理解正しいでしょうか。
○大森参考人 いまここにありますのは抜粋している状況だけなのですが、1カ月目
から12カ月目まで入れるところがあるのです。いま、この1カ月目のところを取っ
たときには15%だったというのですが、これは医療機関の医師がというよりは、保健
所のほうで、どういうDOTSタイプをいま実施しているかという情報を得ているかと
いうことですね。
 いまこの15%は単純にこれ必須項目でもありませんし、画面のところから入れる状
況になっているので、単に入れてないというだけです。この情報を今は評価というふ
うに使っていないのです。これが、例えば指標みたいな形で、外にさらされるような
ことになれば、入力率は高まる可能性もあります。まだ、これは項目として準備した
というだけで、いまのところ15%入力です。
○川城委員 言いたかったのは、治療を完遂させるためには、やはり始めたときの情
報、あと一定期間の情報、すごく大事ですよね。ここの情報は、このシステムにどう
いうふうに組み上げられてくるか。現場の医者が1カ月後、あるいは半年後にまたい
ろいろ情報を提供するということが期待されるのかなと思ったのです。というのは、
もしそのようなシステムだと、何か補助してあげないと、医者はやらないだろうと、
僕は思うのですよ。やらないなんて断言してはいけないのかもしれないけれど、やり
にくいだろうと思うのですよ。
 いま最近の診療報酬改定でも、MAというのが出ていますね。フィジカル・アシスタ
ント、ああいう方向に動いているので、そういうところと組み合わせて、うまく定期
的な情報が出るように医者をアシストしてあげるということも視野に入れて、これを
成長させていくようなことがいいかなと、僕は思うのですよ。
○大森参考人 時間がないのですけれども。
○坂谷部会長 簡単に。
○大森委員 簡単に言います。このシステムに関しては、2009年の2月の医療の基準
の改正があったときのシステムが、まだここに反映されていないのです。そこで、間
欠療法というのが入って、絶対にそれは全部DOTSしなければいけない、直接対面服
薬ですが、そういったところがシステムに導入されればこのDOTSタイプに関しては、
お薬を入力する場所から一緒に入力するようにしようということを、去年の研究会で
まとめました。そのような形で入れて、それを自動的にこちらに持ってくれば、この
入力は上がると思っています。このシステムの作りもすごく影響しております。以上
です。
○坂谷部会長 これですべての視点について議論を終えたわけでありますが、定期健
康診断のところで阿彦先生から、定期健康診断にかかりつけ医を取り入れてというご
提案があったわけです。突然振って申し訳ないですが、事務局のほうでそのことに関
して何か現状について、あるいは制度上のことについてご解説いただけることがあり
ましたら、一言お願いします。
○水野補佐 かかりつけ医に関しましては、現状かかりつけ医でどれだけ行われてい
るかというデータもございませんので、まずその調査は必要かと思います。また、現
状において市町村で行われているものが委託として、かかりつけ医で行うことができ
るかどうかというような検討も必要です。こちらのほうを進めさせていただきます。
○坂谷部会長 最初に20分間の延長をお認めいただいたわけですが、それをさらに
10分間延長しまして、本日ちょっと座長の不手際で議論がもうひとつだったかに感じ
られますが、これで議論は終えることができました。次回以降の日程などについて、
事務局から伝達事項がありましたら、よろしくお願いします。
○水野補佐 次回の部会につきましては、現状では8月に予定しております。具体的
な日時、議題等については追ってご連絡させていただきます。
○坂谷部会長 これで本日の部会は閉会にいたしたいと思います。お忙しい中をあり
がとうございました。


〈照会先〉
厚生労働省健康局結核感染症課結核対策係
TEL:03-5253-1111(内線2931,2381)


(了)

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