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2012年6月20日 第2回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会麻しんに関する小委員会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成24年6月20日(水)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(17F)


○出席者

遠藤委員 岡部委員長 小森委員 竹田委員 多屋委員
中野委員 皆川委員 南委員 多田参考人 島田参考人
中田参考人 發坂参考人 有賀参考人

○議題

(1)麻しんに関する特定感染症予防指針の見直しについて
(2)その他

○議事

○難波江補佐 定刻になりましたので、ただいまより第2回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会麻しんに関する小委員会を開催いたします。本日はお足元が悪い中、ご出席いただきありがとうございます。
 本日の出席状況をご報告いたします。増田委員によりご欠席との連絡をいただいております。また本日、参考人ということで、5名の先生にご出席いただいておりますので、ご紹介させていただきます。国立感染症研究所感染症情報センターの多田先生です。同じく国立感染症研究所感染症情報センターの島田先生です。福井県健康福祉部健康増進課の中田課長です。岡山県美作保健所の發坂所長です。文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課学校保健対策専門官の有賀専門官です。
 ここからは委員長に進行をお願いいたします。
○岡部委員長 麻しんの小委員会、第2回目になります。特定指針の見直しということでの議論をしたいと思います。前回は、多くの方へのブリーフィングといったような形で、現在の状況とこれまでの取組みの説明、いくつかの項目についてフリーディスカッションをやったわけですが、それを踏まえて事務局で資料を作っていただいているので、それが今日の議論のたたき台、並びにプラスアルファということになると思います。資料の説明と、その次の論点整理について事務局からご説明をお願いします。
○難波江補佐 お手元の資料の確認をさせていただきます。1枚目が議事次第、2枚目が配付資料一覧、3枚目が委員名簿となっております。資料1「麻しんに関する特定感染症予防指針の再検討に関する論点・ご意見」、資料2「麻しんの検査診断について」、資料3「医師による麻しん届出ガイドライン」、資料4「麻しん検査診断の結果と届出状況」、資料5「福井県の麻しん対策」、資料6「岡山県の麻しん対策」、資料7「麻しん風しんワクチン定期予防接種の年度別・期別未接種者数」、参考資料1として「麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン」を付けております。不足等がございましたらお申し付けくださいませ。
 申し訳ございませんが、カメラ撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。ご協力のほど、よろしくお願いします。
○梅木補佐 それでは、資料1の説明を行います。麻しんに関する特定感染症予防指針の再検討に関する論点・ご意見というものになります。この麻しんに関する特定感染症予防指針を前文と本文の第1から第7、それぞれに区切っております。その区切った部分ごとに、論点や第1回の麻しんに関する小委員会でいただきましたご意見をまとめております。
 1頁目は前文です。2頁は前文の論点。第1「目標」と論点。2頁から3頁にかけて、第2「原因の究明」とご意見をまとめています。ご意見はサーベイランスの強化(届出・検査・診断・病原体サーベイランス、積極的疫学調査・アウトブレイク時対応、報道機関との協力に分けております。4頁から7頁にかけて、第3「発生の予防及びまん延の防止」とご意見です。ご意見は予防接種、文部科学省との連携、災害時対応に分けております。同じく7頁、第4「医療の提供」。8頁、第5の「研究開発の推進」。8頁から9頁にかけまして、第6「国際的な連携」とご意見です。同じく9頁から10頁、第7「評価及び推進体制の確立」となっております。
 これらのご意見等を踏まえて、どのように現在の麻しんに関する特定感染症予防指針の修正を行うのかをご議論いただければと存じます。説明は以上でございます。
○岡部委員長 ありがとうございました。いまのところ、アウトラインだけの説明なのですけれども、よろしいでしょうか。
 それでは、そのまま進めていきたいと思いますが、ここについて何かご意見があればどうぞ。前回、これからの検査診断、その他を含めて、資料1の2頁第2番目に、原因の究明ということについて、かなりの議論をいただきました。今日はここについて、まず中心に議論をいただきたいと思います。麻しんの検査診断ということでは、今日、竹田委員に資料を用意していただいていると思うので、これに関する説明をお願いいたします。

○竹田委員 よろしくお願いいたします。現在、PCRの検査とIgM ELISAの検査が行われていますが、それぞれの特性について説明の資料を作ってくださいと言われていましたので、少し用意してまいりました。
 表紙の次のスライドですが、その説明をする前に、まずPCRの検査というものは、ウイルスを検出する検査です。IgMのほうは血清診断をする検査です。感染の初期、発症の初期にはウイルスの排出量が非常に多いので、感染の早い時期にはウイルスを検出する検査のほうが感度が高いです。病気が進んできますと、患者の中の抗体価が上がってきますので、血清診断の診断精度が上がってまいります。血清診断に関しては、これは必ず上がってくるものですので、感染がある程度進めば、100%陽性になってくるものです。どの時期が検査として適切なのかというデータを示してほしいと言われていましたので、他の国の研究者等にも聞いてデータを持ってまいりました。
 1頁目が韓国で解析されたものを参考にしたものです。結論だけ述べますと、症状出現後の3日目までは、RT-PCRの検査のほうがIgM検査よりも感度が高い。症状が3日過ぎてくると、むしろIgM検査のほうが感度が高いと彼らは示しております。
 次は香港で解析されているものです。同じように結論を述べますと、発疹の出現後、3日目までは咽頭拭い液を用いたRT-PCR検査のほうがIgM検査よりも優れていると示しております。
 米国のCDCでもかなり解析がされておりまして、発疹出現後4日目までにはIgMが全例において陽性になってくるということ。その一方、3日目ぐらいまではIgMの検出率は概ね70%程度であって、見落とすことがあるということがわかっています。一方、PCRによる検査においては、陽性となる期間は限られておりまして、現在、正確な期間を述べることは彼らでも難しいと言っておりました。
 次はWHOが示しているものです。WHOの解析でも、発疹出現後4日目まではウイルスを検出する検査、すなわちRT-PCRのほうが感度が高い。4日目を過ぎてくるとIgM検査のほうが診断能力は高いということを示しております。
 次は、同じもので飛ばしたいと思います。
 次のものが日本でのデータで、現在私どもでやっている検査で、Akiyoshi先生が報告されたものです。発疹出現後、12日目ぐらいまでは、RT-PCRによるウイルス検出率は、私たちがいま用いているものを使いますと、非常に検出感度は高いということを示しておりますが、一方で、3日目まではウイルスの排出が非常に多い時期でありますけれども、必ずしも陽性にならない例もあるということを示しております。次の棒グラフですけれども、一方、IgMが必ず陽性になるというのは、発疹出現後6日目ぐらいからであると示しております。以上がIgMとPCRの、どの時期に検査すればどれぐらいの感度があるかということを示すものです。
 残りの説明をさせていただきます。残りの説明は、現在、我が国で汎用されているIgMの検査法では、麻しんの検査キットではあるのですけれども、麻しんの類似疾患でも偽陽性と出てしまうということの実例を示したものです。厚労省の科学研究班で中央衛生研究所の方々が出してくださったデータです。1つ目は北海道衛研の先生が解析されたものです。黒く塗りつぶしているところが重要なところですが、例えばパルボウイルス、伝染性紅斑でもやはり少しIgMが偽陽性と出てしまう、風しんの感染症でも、少し偽陽性と出てしまうということが示されています。ただ、備考のところで見ていただくと、麻しんウイルスが検出されている、麻しんの申請の患者さんであるという例ですが、その場合にはIgMの検査で20を超えるような非常に高い値になっていますので、そういう意味で、値の低いときには他疾患を考える必要があるということ、並びに麻しんであれば相当IgMの値は高くなるということを認識していただくことが重要かと思います。
 次の頁も同じようなデータですが、横浜市の衛生研究所の先生が解析されたものです。やはりIgMの検査値が8より低い場合には、検査キット上は陽性ではあるのですが、多くの例で風しんであったり、伝染性紅斑であったり、突発性発疹であったりするということです。一方、8を超えてくるようであれば、概ね麻しんと判断して間違いないということが示されています。
 次のスライドは福岡県の衛生研究所の先生に出していただいたもので、やはり同様に風しんの患者さんでも偽陽性と出てしまうということが示されています。
 まとめです。発疹出現後、3-4日目では、RT-PCRのほうがIgM ELISAよりも検出率が高い。発疹出現後4日、発熱からであれば6日以降においては、IgMがほぼ確実に陽性になると考えている。ただし、我が国で現在汎用されているIgM ELISAキットでは、伝染性紅斑、風しん、突発性発疹などで、偽陽性となる頻度が高い。結果、正確な診断のためには感染初期の検体を用いたRT-PCR法の有用性が高いと考えられるが、麻しん診断のRT-PCR法については、世界的に確立された標準手法はなく、試験手順、実験者の技量、試験環境、ウイルス株の種類などの影響を大きく受ける可能性がありますので、充分考慮する必要があります。
○岡部委員長 どうもありがとうございました。いまの検査法についてご説明いただきましたが、何かご意見、ご質問があればお願いします。
○中野委員 わかりやすい資料をありがとうございました。2点教えてください。1点目ですが、3頁の米国CDCの定義では、初感染ときちんと定義しています。4頁のWHOのWeekly Epidemiological Recordも、このグラフから推測すると初感染の状態を示しているかなと思います。先生がほかの国の状況ということで入手いただいた韓国や香港のデータというのは、初感染だけなのでしょうか。それとも再感染も含めて、再感染というか修飾麻しんも含めてのデータなのでしょうか。それが1点目です。
○竹田委員 分けられていないと思います。
○中野委員 ありがとうございます。もう1点教えていただきたいのは、6頁の日本の資料です。これはRT-PCRで末梢血単核球を採って、PBMCですから、末梢血単核球ですよね。それでやりますと100%陽性。ただ、ほかの国のものでは、血清のPCRをやるとそれよりは低いというのは、日本は発熱の時期、他国はどちらかというと発疹が発現してからで、少し採取時期は遅いわけですが、これは採取時期の問題というよりは、ウイルスがどこにいるかで末梢血単核球にいるので、末梢血単核球をやったほうが感度が高いと考えてよろしいですか。
○竹田委員 どうも咽頭拭い液を適切に採れば、そちらのほうが感度としては高いようです。この検出率がすごくいいのは、RT-PCRの、日本でやっているのがnested-PCRであるので、検査法の差かと思います。
○中野委員 ありがとうございます。
○岡部委員長 ほかにはいかがでしょうか。
 ちょっとよろしいですか。Akiyoshi先生のデータで、日本の場合は咽頭スアブ、血液、尿の3点セットという言い方でやっているのですが、尿でこういうようなデータはあるのでしょうか。
○竹田委員 どこかで見た記憶はありまして、やはり尿と血液と咽頭スアブでやっていて、咽頭スアブがいちばん検出率が高いというデータを見たことがあります。尿で悪くはないですが、咽頭スアブよりは劣っています。
○岡部委員長 もしデータとしてあるならば、あとででも結構なので、教えていただければ、反映させるときの資料になると思いますので、よろしくお願いいたします。ほかはいかがでしょうか。
 まとめのところで、「RT-PCRの方が、IgM ELISAより検出率が高い」。これは普遍的にそのようにに言っていいことですか。それともこの3番目のポツの、我が国で汎用されているIgM ELISAキットに、というのを続けて読んだほうがいいのですか。
○竹田委員 1については、いわゆる一般論に近いものでして、それぞれ適切にやればこういう結果になるというか。
○岡部委員長 ありがとうございました。それから、最後なのですが、このまとめの4番目のポツところなのですが、RP-PCR法が世界的に標準手法として確立されていないと。そうすると、これは世界中に向けてはあまりリコメンデーションできないけれども、国内では一応標準法としてスタンダード化されているので、国内では勧めていいという考えでよろしいでしょうか。
○竹田委員 いま、病原体検出マニュアルを出しているものでやっていただいているかと思うのですけれども、nested-PCRで現在それが広く使われております。地方衛生研究所のほうでリアルタイムPCRに手法を変えていただけないかというリクエストは結構ありますので、そのようなことも検討しています。
○岡部委員長 ありがとうございました。ちょっと確認させていただきました。ほかにご質問はないですか。我が国によってどうやって確認するかということは、一方では外国に対して説明をしていかなければいけないというところがあるので、そこら辺の共通性と、日本ではこういう方法であるということをきちんと説明できるかどうかというのは、ポイントになってくると思うのです。
○中野委員 それに関して1点確認させてください。咽頭拭い液は、確かに感度はいいかもしれませんが、RT-PCRだといいかもしれません。ウイルス培養をしようと思うと、真菌とかほかの菌がいて、わりとコンタミネーションの影響とかで判定しにくいことがありますよね。その場合でも、やはり咽頭拭い液と血液を比べて、どちらがよりいいというのは、言い方は難しいと思うのですが、我が国あるいはインターナショナルに、どの方法がいちばん汎用性が高いと考えられますか。
○竹田委員 ウイルス分離は、やはり特別なラボでないとできないので、あまり汎用性はないと思っておりますので、PCRという考え方からしますと、採取の容易さも考えると咽頭拭い液がいちばんいいのかと思っています。
○多屋委員 医療機関の先生からご相談があった事例なのですが、先生方が細菌培養用の培地に咽頭を拭った綿棒を入れてお出しになられていることがあると、先日わかりました。それですと、やはりいくら咽頭拭い液といっても感度は落ちてしまいますので、検体の採取の方法についても、十分に情報の共有が必要かなと思いました。以前、ウイルス分離をやっていたときの経験から申し上げますと、発疹が出てすぐの頃では、全血一滴からウイルスは分離されてきますので、非常に効率はいいということは申し上げられるかなと思います。○皆川委員 先ほど咽頭拭い液と血液の有用性についてお話がありましたが、現在ご承知のように、尿を加えた3点セットでやっております。尿につきましては、やはり咽頭拭い液や血液がPCR陰性になりかけたのではないかと思われる、ちょっと病日の進んだ方で、尿のみ陽性であったという検体を経験しております。尿はかなり有用であるという印象を持っておりますので、付け加えさせていただきます。
○岡部委員長 ありがとうございました。なかなか普遍的に、唯一これが絶対という方法がないのが検査法の特徴でもあるので、本来ならばその場に応じていろいろ切り替えなくてはいけないのです。しかし、全般に切り替えてくださいというのは、やはり説明しにくいので、ある程度検出率の高いものを選ぶということになっていくと思います。そこのところも含めて、届出のときの基準といいますか、こういったようなものをお願いするということを配慮していきたいと思いますので、よろしくお願いします。それでは、あとでまた総合的に話をしたいと思いますので、検査診断の次に、届出でのガイドラインについてお願いします。届出も医学的な突っ込んだ診断とサーベイランスでやるための届出の基準というところで、少しずれたりするところもあるので質問も多いところですが、多田参考人からお願いします。
○多田参考人 医師の届出は患者発生の探知となり、保健所などによる感染拡大防止対応につながることはもちろん、報告数や報告内容の解析から得られる情報は、地域のみならず国全体の麻しん対策、麻しん排除へ向けた必要な対策立案の基となります。そのため届出内容には漏れのないこと、また必要十分な質、正確性が求められます。そのような内容の確保を目的に、このガイドラインを情報センターで作成しました。
 一人ひとりの届出の情報は公衆衛生とつながりますが、それは一人ひとりの予防や診断、治療につながるものと言えます。医師による麻しん届出ガイドラインは、全数届出になった2008年1月に第1版を作成しました。本日ご説明する第3版は2011年4月に変更された届出票に沿って改編したものです。配付資料3のガイドライン第3版をご覧ください。
 「はじめに」です。感染症法施行後の麻しんの届出は、それまで全国約3,000カ所の小児科定点医療機関からの麻しん、及び全国約470カ所の基幹定点からの成人麻しんの届出であったものが、全数届出となり、麻しんを診断したすべての医師に届出が義務付けられました。さらに、昨年4月に届出票が変更され、届出内容には、発疹と発熱の出現日、これは麻しんの臨床経過に合致するかを見るためのものです。検体採取日、竹田先生からもご説明がありましたが、各検査に適した採取日に採取されているかどうか。麻しんウイルスの遺伝子型、これは日本土着のものか、海外由来のものかを判定します。国外感染が疑われる場合には、その渡航期間、潜伏期間がしっかりと合っているかも確認するためです。麻しんの確実な診断、麻しん排除の確認に必要な内容など、さらに詳細な記載が求められるようになっています。
 「届出の前に」のところです。麻しんに限らずですが、感染症法では、届出基準に合致する症例が感染法上の届出対象となります。麻しんでは、3つの典型的な症状と検査診断の有無から、3つのカテゴリーに分類して届け出ていただくことになります。
 次の頁の3)です。保健所等が、患者発生に伴って感染拡大防止対応を迅速に実施するため、医師には診断後24時間以内の保健所への届出が求められています。それに応じて保健所が対応を始めます。
 3の「届出票の記入方法」です。届出票の項目順に、求められる記入内容、どのような点に注意し、また注目して記載していただきたいかを、届出医の方への要望を含めて記載しました。また、ここでは臨床診断に留めずに、できるだけ検査診断を行っていただきたいことを強調しています。
 さらに検査結果を判断する際には、11頁に添付しているカラーのものですが、「最近の知見に基づく麻疹の検査診断の考え方」を参考にしていただきたいことを記載しました。この考え方のIgM検査の説明の部分ですが、これは竹田先生からご説明のあったものですが、現在日本で用いられているデンカ生研のキットを使用した場合のものを基に作っています。陽性のところが、1.2とか8という数字が出ています。
 3頁に戻ります。届出後に、もし合併症が出現した場合には、さらに追加報告をいただきたいこと。最初の24時間以内の届出では合併症の出現がまだの場合がありますので、その際には追加でお願いしたいということを書きました。
 5の診断方法です。届出時には臨床診断であっても、その後の検査実施や検査結果が出た段階で、病型の変更、当初は麻しんと診断していたけれども、麻しんではなかったと最終的に判断された場合には、その最終判断を保健所に再度連絡していただきたいことなどについて、言及しています。
 4頁の《注意点》です。届出基準に規定されている各診断方法ごとに、ウイルス分離・同定と、PCR検査の実施を保健所に相談していただきたいこと、検査を公的に実施するのか医療機関で実施するのかの道筋、検査の結果を基に的確に判断していただくための注意点、これは先ほどの、最近の知見に基づく麻しんの検査診断の考え方の内容を踏まえて、ここには掲載しています。特に竹田先生のお話にもありましたが、検体採取日や方法によって、PCRは発疹出現は7日以内とか、IgM抗体は4日以降ということとか、検査の値の判断の仕方です。
 さらに6頁からですが、感染原因・感染経路・感染地域の項目です。これらは感染症対策に直結した項目になります。麻しんの潜伏期間を考慮して、感染源となった可能性のある人はいなかったか、どこで感染したと考えられるかを、是非診療の段階で問診を徹底していただき、できる限り情報収集を医療機関のレベルから始めていただきたいこと、さらに集団発生の疑いはないか、患者と診断された方が感染を受ける、あるいは周囲へ感染を広げるリスクのある職業でないかなどの情報についても、追加でできるだけ記載していただきたいことに触れているものです。説明は以上になります。
○岡部委員長 これまでにもあったものを、さらに新しいというか、いまの状況に対応できるようにということで、リバイスを加えていったという第3版です。これについてご意見がありましたらお願いします。
○中野委員 11頁のアルゴリズムですが、非常にわかりやすくていいと思うのですが、IgMは8以上で、デンカ生研のキットでという定義もきちんと書いていただいているのですが、国内でほかのキットが使われている割合は何パーセントあるかということと、IgMの手法が、国内の汎用性ももちろんなのですが、世界標準と標準化、麻しん排除はグローバル計画ですから、どれぐらい進んでいるかもお教えいただきたいと思います。
○岡部委員長 竹田先生、多屋先生、お願いできますか。
○竹田委員 国内ではあとシーメンス社のキットが利用可能ではなかろうかと思うのですが、主要な検査会社がデンカ生研のものを使っていますので、シェア率は90%ぐらいデンカ生研だと思います。
 ただ、国際的にはシーメンス社のキットを使用しているところが非常に多いと思います。特にどれを利用しなさいというリコメンデーションもありませんので、国によって違います。
○多屋委員 特に補足はないのですが、この数字を作ったきっかけは、当時麻しんではない疾患で、麻しんのIgM抗体が陽性になった人のうち、最も高かった方が7の後半でした。8を超えて麻しんではなかった方がいなかったことから、この値を作りました。その後いろいろな先生がご検討くださいまして、この値の妥当性が徐々に蓄積されてきたのかなと考えております。
○中野委員 臨床の現場にいますと、例えば検査会社は自社で測定しているところもあれば、どこかに委託してウイルス抗体価を測定していることもあって、採血をされた先生にお伺いしても、何の方法かが検査会社ですぐにわからない場合があります。それなので、確かに90%以上デンカ生研ということではありますが、10%の検体を他社の方法で測っているとは限らないと思うのですが、排除を目指すのであれば、10%でも無視のできないパーセンテージかなと思ったので、ご質問させていただきました。
○岡部委員長 ほかにはいかがでしょうか。現状でどのようにして届ていくか、これをさらにもう1回わかりやすいというか、パッと見てわかるような形のものもまた必要になってくると思います。
 特にご意見はないようですので、次の資料の説明をいただきます。届出には、本来は検査診断が重要になってくるのですが、かつては「麻しんです」というだけの届出だったのが、だんだん検査を求める形になっていますが、実情はどうなっているかを調べていただいたので、島田参考人からお願いいたします。
○島田参考人 まず標題の中のNESIDの言葉の説明です。下に「*」で示してあるように、National Epidemiological Surveillance of Infectious Diseasesという名前の略称でして、具体的には医師の届出内容を、保健所をはじめとする自治体が入力する発生動向調査のデータベースのことです。
 次の頁です。本日の内容ですが、麻しんと診断された者、逆に麻しんでないと診断された者、その中に診断根拠が十分でないと思われる症例が少なからずあるということを、このような内容に基づいて説明いたします。
 2枚目です。現在の麻しんの届出基準は、先ほど多田先生からご報告があったとおりで、大きく分けると臨床症状が揃っているか、病原体診断がなされているかに基づいています。病原体診断の結果の判断には、症状の発現日や検体採取日が重要な情報となるので、3枚目に示したように、昨年4月からは、届出票にもそれらが記入できるようになりました。
 4枚目のスライドですが、2008年から2011年までの報告例と取下げ例の推移です。用語の説明は下に示しているとおりで、医師の届出に基づき、NESIDへ登録された症例のうち、最終的な診断が麻しんとなって、集計の対象になったものが報告例です。一方、1度登録されたものの、検査結果などで最終的には麻しんではないと判断されたものが、取下げ例です。2011年には取下げ例が報告例を超え、計648例でした。ただし、このように1度登録していただいてから取り下げるというのは、登録側の義務ではなく、あくまでも協力依頼で運用されています。つまり、麻しんが疑われ、検査中のものはNESIDへ登録せず、確定診断に至ったものだけを登録する自治体のほうが多いと考えています。
 次のスライドです。麻しんと診断された報告例の442例の中での、検査結果の状況です。この中で、麻しんと診断してまず間違いないだろうと思われるのが、赤の実線で囲んだ135例、31%です。残りは、これらの検査結果を麻しんの診断根拠とするにはまだ検討するべき点が残っている症例や検査結果の情報が把握できないものでした。
 次の頁です。これは麻しんでないと判断された取下げ例の648例での検査結果の状況です。この中で麻しんではないと高い確率で判断できるのは、青の点線で囲んだもので、ほかの病原体が検出された24例と、PCR陰性、かつ抗体価が高くない49例の計73例、11%でした。残りは取下げの根拠となった検査結果などの情報が把握できない症例と思われました。
 7頁からは、検体採取日までの期間の検討です。まずPCR検査です。最初に数字の訂正をお願いいたします。下段の「取下げ例」ですが、この数は28ではなく97例です。その凡例も間違って記載していまして、陰性例は26になっていますが94、ほかの病原体は2になっていますが3です。訂正は以上です。
 上の段に戻ります。報告例でPCRが実施されたものは、178例の40%でしたが、その中で発疹出現日、検体採取日、PCRの結果ともに把握できたものは、ここに示している83例、47%でした。
 ここで赤の矢印の期間で示していますが、偽陰性となり得る8日目以降に採取されていたのは、9例、約10%でした。ここで、検体採取までの期間が適切と思われるのにPCR陰性で、しかも報告例として残った22例、青のドットのバーについてですが、少し説明を加えます。青のドットのバーは計22例と申し上げましたが、このうちの約半分は抗体価の測定も未実施、または陰性ということで、臨床診断例として届けられていました。そのほかには、例えば5日目のドットの1例ですが、IgM抗体価1.49で、これは調べてみると、発疹出現日その日に採取されたものでしたが、1.49ということを検査診断例としての根拠にして届け出ているものでした。
 下の取下げ例では、PCR法が実施された352例中、発疹出現日、検体採取日、PCRの結果ともに把握できたのは、97例、28%でした。偽陰性となり得る期間である8日目以降に含まれるものは、10例、約10%でした。この10例の中には、例えば9日目の症例にあるように、発疹から5日目の検体で、IgM抗体価が2.44であり、確かに麻しんでない可能性が高いなと思われる症例もありましたが、ほかには例えば3日以内のIgMの低い抗体価をもって、取下げと判断されていたり、抗体価の検査そのものが実施されていないものもありました。
 次のスライドです。これは陽性例、陰性例で、検体採取日が適切かどうかを比較したものです。平均日数については統計学的な差がありましたが、両方とも90%以上で7日以内に検体採取が行われているものですので、臨床的意義はこの差についてはないものと考えます。
 次のスライドです。こようにIgM抗体価に関するものですが、上段から報告例全体の59%に当たる260例でIgMの抗体価が測定されていました。そのうちの27%、70例がここに示されているものです。このうち、ちゃんと陽性になるであろう4日目以降に検体採取をされて、IgMが8未満であるという症例が、どのような理由で届出例として残っているかというと、中には、例えば5日目の症例では、PCRが陽性ということで麻しんと診断されて残ったものもありました。一方で、例えば12日目ですが、これはIgMが1.89にもかかわらず、検査診断例として残っているものでした。同様に取下げ例の25例中ですが、偽陰性になる可能性のある3日目以内に採血されているものが、同様に75%を占めています。このうち発疹当日に検体を採取され、IgM抗体価が陰性ということで取り下げられた症例もありました。
 次のスライドです。これは抗体価が十分に上がった症例と十分に上がっていない症例では、検体採取日に差があるかどうかを検定したものです。これには統計学的な差はありませんでした。ただ、どちらの検体も3日以内に検体を採取されているものが、約75%を占めていました。
 11枚目です。ここで検討したいのは、PCRの陰性であった55例が、どのような病型で届けられているかです。下のほうにいきまして、陰性55例です。このうちの22例が、修飾麻しんを含めて検査診断例として届けられています。その内訳を見ますと、上の四角で囲んでありますが、抗体価が8以上で確実に麻しんであろうと思われるものが2例、そのほかには抗体価不明のもの、未実施のもの、抗体価の上昇が不十分なものが17例含まれていました。
 年報集計のときに訂正しなければいけないものは、臨床診断例にあります。PCRが陽性にもかかわらず、臨床診断例で届けられているものが5例ありましたが、これは単に病型の記載ミス、もしくは修正ミスだと思われます。
 12頁目は、同じようなことをIgMの点から指し示してありますが、割愛させていただきます。
 まとめです。2011年の取下げ例は、届出や自治体の協力の下、報告例よりも多く登録されていました。検査結果の情報は十分な症例で判断すると、報告例のうち麻しんの診断が妥当と思われるのは、30%でした。検体採取日については、IgM抗体価については75%前後の症例において、偽陰性となりやすい発疹から3日目以内に採取されていました。反対にPCR検査については、偽陰性となりやすい8日目以上に検体採取された症例は約10%でした。これらは症状が出たら早めに受診し、その受診日にはIgM抗体価の検査を実施するという、日本の受診行動、医療環境を反映したものと思われます。最後のポツです。報告例となった根拠、取下げ例となった根拠が、それぞれ不明確な症例もまだ少なくありません。検体採取の適切な時期と結果の判断についての共通認識の構築と、1例1例に対する丁寧な検討が、これからの麻しん排除への過程にはより一層必要と思われました。以上です。
○岡部委員長 そうすると、発症から3日目ぐらいまでならIgMでいいけれども、そのあとならPCRをやってくださいという、非常に単純な言い方ができてしまうのですか。
○島田参考人 いえ、本当は先ほどのご発表にもあったとおり、IgMに関しては4日目以降にしていただきたいのですが、発疹が出たらすぐに受診してしまって、そこで検査をしてしまうという。3日目以内、偽陰性になりやすい時期に採られているのが日本では多いという現状です。
○岡部委員長 実際には、保健所経由で衛研に検体が持ち込まれたなら、IgMではなくてPCRをやる可能性のほうが高いですね。
○島田参考人 そうです。実際にPCRについては90%の症例で、適切な検体採取日に検体が採られているという結果でした。
○岡部委員長 だんだん検査をする例が増加してきているのは、5類感染症ではあっても、国のほうから、結核感染症課が「検査診断をできるだけやってください」という通知が出したのは、非常に大きな動きになったと思うのです。一方で、現場ではこの間もディスカッションがありましたが、一旦報告した例について取り下げるということについて暫々トラブルが起きやすいということがあります。これは臨床医目を否定するものではなくて、世界的にも通用する診断を求めるためのものだという説明を丁寧にしていかないと、対臨床の現場と保健所というところで、変な摩擦が出たりすることもありますので、その辺も含めて、今後よろしくお願いします。ほかに何かございますか。
○中野委員 修飾麻しんの検査診断について確認させていただきます。自分の経験では、修飾麻しんの子は、IgMが陰性の子はたくさんいますし、8以上ではなくて低い子もいらっしゃると思うのです。IgMでは修飾麻しんの検査診断が難しいかなと思いますと、そういう子たちでも、病初期にPCRなりウイルス分離をやると、かなりの割合でウイルスが採れると思うのです。3日、4日のところで分けるのはもちろんわかりやすくていいと思うのですが、修飾麻しんに関しては病初期の有熱期、発疹のある時期のPCRが非常に大事だということを強調したほうがいいのではないかと感じました。
○多屋委員 私も中野先生のご意見に賛成です。日本では、発疹が出て3日以内に受診するという行動は、多くの方が取られていると思います。まずそこで、衛生研究所にウイルスを検出するための検体を出していただくということを、もう少し確実にしていただければと思います。IgMを見て、その結果で判断しようかと思っている先生も多いのではないかと思うので、まずはIgMとPCRを両方同時に出すことを徹底していけば、いまのことが随分解決していくのではないかと感じています。
○岡部委員長 衛研側も麻しんの検体が運び込まれた場合には、できるだけ早く検査をして、その回答を出すというようには変わってきています。この辺はいろいろな衛研の協力をいただかなくてはいけないところですが、だいぶ実施されてきていると思います。
 それから、もともとWHOは修飾麻しんまでも考えてエリミネーションをスタートしたわけではなくて、だんだんこういう問題点が起きてきているので、それに対する解決が一歩一歩進められているということです。ですから、以前のこととは随分違ってきているので、検査法の考え方も違ってきていると思います。この指針を考えるときにそのようなことも考慮していただければと思います。資料4はここまでとします。
 次は、福井県で実際に行われているところについて、福井県の様子を中田参考人からご説明をお願いいたします。
○中田参考人 福井県で健康増進課長を拝命しております中田でございます。本日、福井県の1行政の取組みとして、麻しん対策をご報告させていただきます。
 1頁です。本日はこの4つの項目について話したいと思います。ポイントを申し上げますと、福井県ではワクチン接種状況は非常に良い状況なのですが、麻しんの発生動向はなかなか下がらないというところで、福井県では、本年度から「麻しんアドイバイザー」というものを設けまして、しっかりとした診断をするという方針で取り組んでいるところです。
 2頁です。接種状況ですが、1期から4期を通じて、全国と比べても接種率が高い状況です。
 3頁目です。このような接種率向上の取組みについては、さまざまな関係者の努力によるものです。特にポイントを申し上げますと、市町の取組みとして、予防接種台帳をしっかりとシステム化しまして、対象者への複数回の個別通知、個別勧奨を徹底して行っています。こういったことを通じて、非常に予防接種率が高い状況に達しているところです。
 4頁目です。2009年、2010年ですが、麻しん報告数を見ましても、非常に接種率は高いのですが、報告数があります。
 5頁目です。直近の2011年においても、麻しんの発生報告が出ているところで、福井県の1つの課題としては、このように予防接種率が高いにもかかわらず、麻しんの届出が多いということを、どのようにして解決していくのかというところです。
 6頁です。それに向けた対策です。ここには「平常時」「疑い発生時」「届出後の対応」ということで分けて書いています。平常時については、先ほど申し上げましたとおり、こういった予防接種をしっかり対応していくということです。今回のポイントとしては、麻しん疑い発生時において、PCRの検体確保を徹底していくことと、福井県小児科医会の協力により、麻しん疑い患者を診断した場合に、その医師からアドバイザーにコンタクトが取れる体制を取っています。さらに、届出後においては、疫学調査等を行うこととなりますが、麻しんアドバイザーを設置したことにより、届出が最終的に麻しん対策会議に上がってきた場合についても、必要に応じて医師に対する技術的な助言が可能である、また行政に対してまん延防止策の技術的助言が可能であるという体制になっています。
 7頁です。福井県の麻しんアドバイザーを詳細に説明した資料です。まず経緯ですが、アドバイザーについては福井県小児科医会が設置しているものです。県の組織である福井県麻しん対策会議と連携することによって、本年度から運用を開始しています。構成については、各健康福祉センターごとに2名、合計12名を配置していまして、原則として、担当する管区内の医師からの相談、または健康福祉センターの職員からの相談に対して、技術的な助言の対応をお願いしているところです。
 繰り返しになりますが、役割としては届出前については、疑い患者を診察する医師の求めに応じて、臨床的な症状、検査等について助言をすることとしております。また、届出後においても、必要に応じて確認すべき医学的事項、また麻しん対策会議と連携して、まん延防止対策についての技術的助言を行うとなっております。
 8頁です。麻しんアドバイザーによる相談体制の整備ということで、本年4月4日に、福井県健康福祉部健康増進課から、各団体に対して通知をしています。この通知の趣旨として、相談体制を公的に構築したということで、記の1にあるとおり、麻しんを疑う診断に当たっては、積極的にこのアドバイザーを活用してほしいとしています。
 9頁です。福井県小児科医会から福井県麻しん対策会議に宛てまして、福井県小児科医会としても積極的に麻しん排除を進めるためにアドバイザーを設置したので、県の麻しん対策会議と連携して取り組むため、届出医師については、このアドバイザーを積極的に活用してほしいということで、この名簿も公開しております。また、この名簿については、福井県医師会の協力をいただいて、県会報等にも載せていただいて、全県下の医師に周知をしているところです。
 10頁目です。PCR検体確保の徹底ということで、平成23年度からすでに実施しておりますが、定期的に検体の確保を徹底するということで、必ず麻しんが疑われた場合については、IgM検査だけでは確定できないということがありますので、必ずPCR用の検体を採っておくことの徹底をお願いしています。
 11頁目は、検査までのフローです。これはすでにご存じのことかと思いますので、簡単にご説明させていただきます。真ん中にありますとおり、県では必ず麻しんを疑った場合にはPCR検体をしっかり確保してほしいということで、各医師にお願いしております。点々で表しているところは、原則として、鑑別診断、除外診断のためだけにPCRをやるということでは、検査体制に負荷がかかりますので、IgM抗体検査で陽性になった場合に、PCR検体をかけて、そこで確定診断するという状況を考えています。
 12頁です。麻しん対策会議の技術的助言の流れです。このように、医師から健康福祉センターに届出がありまして、この段階で麻しんアドバイザーにアドバイスを求めるというものがあります。そこで、仮にアドバイザーに接触できなかったとしても、最終的にはこの麻しん対策会議に上げまして、そこで現場の麻しんアドバイザーとしっかりと協議して、もう1回確認すべきということがあれば、意見書を提出するという流れになっています。これの流れにつきましては、本年度から進めているもので、まだ麻しん対策会議から意見書を提出するような事例までは発生していない状況です。
 13頁目です。これまでの届出状況です。平成23年度、平成24年度の概要がありまして、平成23年度は6件の届出がありましたが、5件は取下げという状況です。届出受理となった事例については、30代女性の例で、これはPCR検体を採っていなかったという状況で、ここにある検査項目により、届出を受理しています。また、平成24年度は、ここにある4件が出てきているところですが、全例取下げ状況になっています。取下げの理由としては、PCR検体が確保できていましたので、その検査結果を踏まえて、届出医師より取下げ願いが出ています。また、3番目の30代男性の事例については、届出医師から麻しんアドバイザーにコンタクトがありまして、臨床診断、その他技術的助言をいただいたということです。50代女性の件については、健康福祉センターの職員が、麻しんアドバイザーにいろいろと技術的な相談をしたということで、いま実績としては2件アドバイザーが活用されているということです。
 14頁目です。こちらは対策後の届出状況です。平成22年度まで届出数が多かったところですが、平成23年度からPCRを検査を徹底したということで、非常に取下げ件数が多くなっている状況です。また、平成24年度から、こういったアドバイザー体制を設けまして、現在のところはまだ届出なしという状況になっています。
 最後は15頁目で、まとめです。県としては、対策の効果については、この3点を徹底したことによるものかと考えております。非常に高い予防接種率をこれまで続けてきたことと、本年度から福井県小児科医会の協力を得て、診断サポートをするようにしたこと、またPCR検体についても、福井県医師会等のご協力の下、しっかりと確保できるように徹底していることです。今後、こういった取組みを徹底させつつ、麻しん対策会議の助言を得ながら、早期に麻しんゼロを達成することを目標として取組みを進めていきたいと考えています。
○岡部委員長 貴重な経験のご発表ですが、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○多屋委員 福井県は予防接種率が本当に高くて、いつも素晴らしい結果を残されていて敬服しております。
 1つ検査のところでお教えください。いま先生がご発表になられた11頁の検査までのフローなのですが、IgM抗体が陽性ならPCRとおっしゃられたと思うのですが、発症早期の検体で、IgM抗体がまだ陰性の時期のほうが、PCRの検体としては適切なのですが、そこは両方やっていると思っていてよろしかったでしょうか。
○中田参考人 実態としては、PCR検体を確保した段階でやっているという状況ですので、マイナスでも検査しているという状況です。
○多屋委員 もう1つですが、PCR検体の確保なのですが、これは医療機関に確保されているということではなくて、一旦衛生研究所に保健所を通して送られていて、そこで確保されていると理解してよろしいでしょうか。
○中田参考人 医療機関で確保していただいて、後ほど健康福祉センターを通じて衛生研究所で検査するという流れになります。
○多屋委員 確保の期間が長くなってきますと、血液ですと溶血をしたり、咽頭拭い液や尿ですと検出の感度が落ちてきますので、できれば衛生研究所で温度管理などした上で、保管をされたほうが陽性率は高くなるかなと感じました。
○岡部委員長 ほかにはいかがでしょうか。
○皆川委員 東海北陸支部では、私どもは福井県様の衛研とは一緒の支部で、大変お世話になっています。人数も少なくて本当に大変だと思うのですが、13頁について質問いたします。取下げのところで、風しんとありますが、これは衛研でPCRをやられたのでしょうか。
○中田参考人 こちらは医療機関が検体を採っておいて、あとで確定診断のために検査結果を確認した結果、風しんと判明した事例です。
○皆川委員 血清学的診断ということでしょうか。
○中田参考人 血清学的な診断です。
○小森委員 お答えは事務局からお願いしますが、福井県の予防接種に関する予防接種台帳の管理については、私は石川県の医師会長を6年務めておりましたので、お隣の県として敬服してまいりました。
 麻しんアドバイザーのことについてお聞きしたいのですが、昨日、私ども石川県の小児科医会の者に連絡を取りましたところ、石川県でも麻しんゼロ対策委員会ということで、小児科医会の中に、こういったアドバイザーの仕事をしようということで、ただ石川県は3人だけでして、行政との連携がうまくいかなかったということがありまして、石川県医師会として、それを応援するという形で、石川県医師会は広報だけを行っていたという経緯があります。そういう意味で、福井県が各保健所ごとに2名ずつということで、行政としてしっかりとした体制を取られたことは、大変素晴らしいと思ってお聞きしておりました。
 そこで事務局にお聞きしたいのは、こういったアドバイザリングの実態は、ある程度把握をしておられるのでしょうか。
○難波江補佐 お答えとしては、全国全体を網羅するような調査は実施していませんので、こういったケースをお聞きするというレベルになります。
○岡部委員長 麻しん患者数がかなり少なくなり、また診断法が複雑になってきた場合には、できればここでもご発表頂いたようなアドバイザリーグループというか、そういうところで診断に関して一定の結論を下せる形にしたほうがいいということをこの委員会あるいは麻しん対策委員会でも言っていましたので、今日のご発表で1つのモデルを見せていただいたような気がします。
 私もお尋ねしたいのですが、このアドバイザリーグループの人たちに、例えばある委員のところで疑いの患者があると、いちばん最初はその方に個別に相談をしているのですか。最終的には麻しん対策会議で検討するということでしたが。
○中田参考人 現段階では、健康福祉センターに上がってきた段階で、こういうリストがあるということで紹介して、届出医師から、この先生にコンタクトを取ってもらうという状況になっています。
○岡部委員長 それから、例えば風しんだろうとして取下げになっているのですが、それは風しんとしての届出もしてくださいという形でお願いをしているのですか。
○中田参考人 その事後対応については、健康福祉センターからそのドクターに対応させていただいております。
○小森委員 究極的に、我が国が排除宣言を行うということになりますと、世界的にそれを評価をしていただきます。ただし、PCRについてもIgMについても、検査というのは絶対ではないので、必ず偽陽性、偽陰性が生まれてくるということがあります。だから、私どものアドバイザー体制はあくまでも個別の相談に応じるという形なのですが、そこの決定というか、最終的に麻しんであるかどうかの決定というようなアドバイザリーボードを都道府県に設置して、その上で国で管理していくことが必要なのではないかと常々思っていましたので、ご質問させていただいたということです。
○岡部委員長 この辺も、小委員会として異論がなければ、そういったアドバイザリーボードを都道府県単位で置いていただいて、そこが決めるというか、ある程度の結論を出すというようにしないと、フロントでやると、その間の解釈の問題、あるいは逆にあまり何遍もやり取りをするとうまく話が進まないということもありますので、そのようなものの設置を指針の中にでも盛り込むか、ほかのところでそういうものが必要であるということを提言としてはどうかと思います。ということは、国のほうでも、最終的な判断をして、診断をすると。届出とは時間的にずれが生じたり、その結果として報告数に違いが出たるする、可能性はあると思うのですが、そちらは排除のため、またWHOの報告のためのということであるので、そこを理解したうえで組織としては、そういう確認をする場があってもいいのではないかと思いますので、是非検討をお願いします。ということで委員会のほうはコンセンサスが得られたということでよろしいですか。
○中田参考人 地元の福井県小児科医会の先生からは、フロントラインの対応も非常に重視されておりまして、本当に麻しんであった場合にはしっかりとまん延防止対策をしなければいけないと考えております。そのためには、地域の小児科医が積極的にかかわらなければいけないという思いがありましたので、流れとしてはこのような流れで、最終的には麻しん対策会議に上がってきますが、現場でいち早くキャッチして、どう対応するのかということも、ここで課せられた役割になっています。
○岡部委員長 大変参考になる資料とご意見をいただきまして、ありがとうございました。
 続いて、この次は岡山県から發坂参考人にお出でいただいています。大変なご苦労をした美作における麻しんの院内感染対応だったのですが、その状況をご説明していただいて、経験などをお聞きかせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○發坂参考人 それでは1枚目からご覧いただきたいと思います。麻しん対策についての取組をご報告したいと思います。状況ですが左の上からです。フィリピンから1月1日に関空経由で帰国し、11日に発症した6歳の女児が1例目です。その女児の兄に当たる双子の男の子、6歳の方が1月19日に発症し、その日に熱性けいれんを起こしてB病院に救急搬送となっています。B病院では陰圧個室で厳重な管理をしている状況でしたので、保健所のほうでは、幼稚園、ご家族、消防隊員等接触者の厳重な管理ということで対策を講じていました。
 その後、実はこの陰圧個室ではなくヘパフィルター付の個室であったということで、ドクターも陰圧だと思い込んでいたということもあったようです。その中で3例目の男、13歳の方は、部屋から言えば3つ目の部屋におられる方で直接の接触はありません。そして4例目の女の子、1歳は肺炎で入院していた方ですけれども、廊下を挟んで対角線上の向かいですから距離的には遠いのですが、そういったお2人の方が発病したという状況です。
 その4例目の方は2月1日に退院し、その後、2月3日におばさんが実家で、このお子さんとお母さんと接触し、2月14日に発熱症状で発症しています。保健所では15日にそういう状況も把握し、状況等を伺うと、この方は16日、17日にケアマネージャー研修に参加することがわかりました。これは非常に厳しい、大変な状況であるということで、4例目のお母さんを通じて、お姉さんに連絡先、住所、その他を教えてほしいとお願いしたのですが、それは教えられないということで、さらにお母さんのご主人からは大変強力な苦情をいただき、なかなか関係づくりができない状況もありました。
 そうは言っても見過ごせない面もあり、4例目の主治医からも、お母さんを通じて5例目の方に「行かないように」というお話もしていただきましたが、5例目のおばさんは14日の夕刻に内科医院を受診しています。その際、親戚の子に麻しんの子どもがいるということもお話いただいたようですが、インフルエンザのキットがマイナス、麻しんは40歳を過ぎているので可能性はないでしょうということで、医療機関からも麻しんは否定されたということと、ケアマネージャーの資格には必須の研修であるということ。さらに16日の朝には若干熱が下がっていたこともあって、この方は16日、17日のケアマネージャー研修に参加しています。ケアマネージャー研修の主催者の方と協議して、その方は別室でやる。あるいは後日の補修研修で資格を与える等の対策も協議したのですが、グループワークがあるのでそれはできませんということで、この16日、17日のケアマネージャー研修に参加したという状況です。
 こうした状況もあり、次の2枚目の真ん中に保健所の対応等を挙げせています。接触者の調査ですが、感染期間は発熱1日前から下熱後3日まで、対象者は、空間を共有した者あるいは対面した人すべてとなります。「1例目、2例目」は家族、幼稚園、消防隊員の32名を対象に、「3例目、4例目」は院内での感染の事例になりますが、家族や友人、入院患者、入院患者、院内学級参加者等を対象に、接触者の健康観察、調査等を行いました。
 「5例目」について、発病の1日前と発病日は1枚目に戻って真ん中の下のN施設、この方は介護職でN施設で勤務している状況がありました。また16日、17日はケアマネ研修に参加されたという状況がありました。そうした状況もありましたので保健所としては、右のところにありますけれども、研修参加者全員に緊急ワクチンを接種していただこうということで、ケアマネ研修の主催者の方から名簿も協力いただいて全部連絡し、翌日の18日の土曜日に、B病院の緊急ワクチン外来を受診していただきたいと粘り強く受診を勧奨したところ、47人の方が受診していただきました。ただ、受けないという方もおられました。なぜ自費で受けないといけないのか、我々は被害者であるといったお話もありましたが、残りの26名については保健所のほうで無料の抗体検査をしますということで、無料抗体検査を26名の方に受けていただいて、PA法で検査をしたところ、64以下の方が5名おられ、その方についての特にハイリスクの対策と、あとは抗体検査を受けない方が最終的に5名おられ、その方の健康観察を厳重に行うことと、自宅待機と就業自粛などを要請しました。
 13日、14日に勤務していた施設については右の表ですが、この方はグループホームで小規模のほうが勤務先でしたので、そちらのほうの入所者の健康観察、さらに抗体検査を行って64倍以下の人にはγグロブリンを投与することになりました。その他の施設の利用者の方も14日間の健康観察、さらに施設の職員も14日間の経過観察ですが、抗体検査をデンカ生研キットのEIA法で行い、IgG16未満の16人全員に対してはワクチン接種と3週間の健康観察を行っています。
 2枚目に戻っていただき、保健所の対応等は真ん中にありますけれども、接触者の調査、接触者に対する健康観察、緊急ワクチン接種の実施、広報活動や地域での強化サーベイランスとして管内の医療機関に対して、有症者、疑い例も含めて積極的に保健所への届出、連絡をいただくことを行いました。またマスコミでも事例を取り上げていただき、県外からも保健所にご相談等があったということです。関係機関との調整なども行い、その他、施設管理者等からの問い合わせなども行っています。
 そうした中で問題点を右の下に書いています。改めて未接種の多いグループ、特に外国から来た方が相当数地域にもおられることがわかり、そういった方々の接種率の向上、さらには幼稚園も予防接種状況を把握していない状況がありましたが、予防接種の状況なども把握していただく必要があると思います。保健医療福祉従事者や保母さん、教員、消防隊員等、多くの人と接するグループあるいは感染した際に影響の大きいグループについては、確実な予防接種、抗体価を持っておいていただくことが必要なように思います。
 2)の接触者対策の強化で、公衆衛生上の意義を十分説明してはいたのですが、5例目のように個人情報については教えられないということで、若干限界もありました。またコンビニ、スーパーを含め5例目の人が立ち寄った所も調査を行い、本人の同意のもとに電話番号等も提供いただきましたけれども、若干、情報提供不可の方もおられる状況がありました。そういった方は、コンビニやスーパーの施設については店の管理者に、毎日、健康観察をしていただいた状況です。それと同時に、このケアマネ研修参加者には外出の自粛や勤務を控えるお願いをさせていただき、施設の管理者にも厳重な対応について最大限の配慮をお願いした状況があり、守っていただいた施設が多いのですが、施設によって対応は若干分かれた状況があります。
 3)の緊急ワクチン接種ですが、被害者なのに、なぜワクチン接種をしなければいけないのかといったお話もありました。どうしてもしない方については保健所で無料の抗体検査をさせていただいたということがあります。
 4)の院内感染対策ですが、陰圧室を備えている医療機関は少ない状況で、小児では付添いもいますので対策が重要になってくると思います。特に一般の病院もそうですが、ここは地域の中核的な医療機関で、小児科病棟に隣接して周産期医療センター、さらに同じフロアに産科病棟がある体制ですので、付添いの方が行き来することについての感染の広がりなども、今後懸念されますから、院内感染対策を厳重にやっていただくことも必要だと思います。
 麻しんに対する正しい知識の普及啓発では、医療機関の方、さらに行政関係者では、接触者調査が多数に上り、特に土日に大量動員でやっていただいて、はしかなのにそこまでやる必要があるのかとか、時間外で相当長時間に及んだこともありましたが、保健所の使命としてやる必要があるということでやらせていただきました。?5の方も、「はしかがこんなに大変なこととは思わなかった」といった後日談がありますが、非常に影響力が大きい問題としての認識を、一般の方にも持っていただく必要があると思います。
 このケアマネ研修に参加して、感染のアウトブレークも予測されましたので、国立感染症研究所の方にも相談させていただき、いろいろとご指導いただきました。特に麻しんのこういう事例は、地域の保健所では経験することが少ない面もありますから、アドバイスを受けられたことは大変役に立ったと思っています。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。本当に大変だっただろうと思いますが、その経験をお話いただきました。ご質問あるいはご意見がありましたら、お願いします。
○遠藤委員 緊急ワクチン接種にあたり、抗体検査を保健所でおやりになったということですが、これは実際には衛研でなされたと。
○發坂参考人 そうです。県の衛生研究所にすべてPA法で、同じ様式でやっていただきました。
○遠藤委員 もう1点、医療機関との顔の見える関係づくり、いわゆる地域における感染制御ネットワークということですけれども、このことに関しては実際に発生したときに、こういった顔の見える関係づくりができたというところですかね。
○發坂参考人 これは普段からの関係づくりができていたことが、大きいかなと思っています。特に指定感染症の医療機関の院長先生あたりとは普段、中核的な医療機関ですのでいろいろな面でお話をさせていただいています。また私は保健所に出る前任が県の医療推進課長をしていましたので、こういった病院や医療関係者の集まりでよくお会いしていた方でもあります。嘱託医の方もよくお会いしていた方ですので、顔の見える関係づくりが以前よりできていたということがあると思います。
○遠藤委員 そして、そこに社会福祉施設とのネットワークが広がれば、地域として更に関係機関との輪が広がるのかなと思いますので、本当に素晴らしい対応をしていただいて同じ保健所として頭の下がる思いです。ありがとうございます。
○發坂参考人 ありがとうございます。
○岡部委員長 ほかには、いかがでしょうか。
○中野委員 大変なご苦労があったかと思います。先ほどの接触者へのワクチン接種について自分自身、臨床医として皆さんにお願いしておきたいことがあります。現在、おそらくワクチンで暴露後免疫、暴露後感染予防が可能なワクチン予防可能性疾患は水痘と麻しんが代表的ではないかと思います。そして、暴露後3日以内であれば効果があるのではないかと思います。水痘ワクチンは添付文書に暴露後免疫のことが書いていますが、麻しんワクチンにもMRワクチンにも書いてありません。私たちが臨床の現場で頼りにしているのは、感染症研究所の感染症情報センターが、暴露後免疫が有効な方法であり、することが望ましいとしていて、それは非常に心の支えになっているのですが、先ほど、私たちはうつされたほうであるのに、なぜしなければならないのかというお話がありました。そのように、いざ集団発生が起こったときに現場での細々とした問題が出てきます。そのときに、その薬剤が予防のために適切で有効な手段であるということの支えがもう少しあると、現場の医師はもっと使いやすいのではないかという気がしています。
○岡部委員長 ありがとうございます。そこら辺は添付文書をすぐにというのではないかもしれませんが、そういう方法が重要であるということをもう少し啓発すると。
○中野委員 できれば、こういった事例を集積して、有効であったというのが積み重なるといいなと思っています。
○岡部委員長 ありがとうございます。もしこれが、もう1段階小さく、あるいはもうちょっと苦労なくできるには、どこを改善することがポイントになるでしょうか。最初からみんなの予防接種率向上とかは、やらなければいけないことだろうとは思いますが、こういうアウトブレークが起きたときの対応として、もし何かほかの所へのアドバイスがありましたら、お願いします。
○發坂参考人 そういう面で反省点としては、フィリピンから帰国した女の子と男の子、6歳の方がおられた段階が第1段階で、その方が入院してから広がった院内感染が第2段階、さらにその方が地域に帰って接触したことによって、また広まっていくのが第3段階だとすると、それぞれ早目にいろいろな対策が必要であると思います。特に院内で広がると病院自身も非常に厳しいクレームを受けるし、非常に影響が大きい面がありますので、少なくとも、まず院内で封じ込めができることが重要だと思います。
○岡部委員長 ありがとうございました。それではもうひとつ進めたいと思います。いま話題となっているのは資料1の2頁の原因の究明、届出、迅速な対応、いろいろな機関との協力、この辺の議論だったのですが、ここに指針として書き加えるべき何か重要なこと、あるいは変更すべきところがありましたら、ご意見としておっしゃってください。
○遠藤委員 目標についても、よろしいですか。
○岡部委員長 お願いします。
○遠藤委員 現在は輸入麻しんが多いですので、世界各国と情報共有することも必要です。海外渡航して日本で発症した場合に、相手方の海外渡航国のほうに情報提供し、遺伝子の型も含めてお互いに麻しんに関する情報を共有していくことが大切です。そういう意味で目標として、その後も世界各国と情報共有する必要があると思います。
○岡部委員長 あとで国際のところもあるので、そこの点もディスカッションできればいいと思いますが、目標については、5年前にこれが作られたときはまだ本当に国内で何万人、下手すると10万人単位のはしかがいたころで、これをとにかく減らしていかなければというところが第1目標だったわけですが、この次は仮に今年度、麻しんのエリミネーションぎりぎりかプラスマイナスかにしても、この活動がポシャってしまうのではなくずっと続ける。あるいは1年後、2年後、3年後に排除が達成されたとすれば、それを監視していくための目標、となるので、目標の書き方がこれまでのものとは違ってくると思います。実際にはたぶんこの夏、WHOの西太平洋地域事務局でこれに対する検討を行い、それでWPRO全体の方針といったものも決まってくると思います。その辺も盛り込みながらの目標ということなので、いま、現段階であまり細かい目標の字句まではいかないと思います。いま遠藤委員がおっしゃったことや大きい目標のことも含めて、ご意見があればお願いします。今すぐ変えるというところには入っていかないと思います。
○多屋委員 先ほど岡山の先生方の本当に素晴らしい対応の事例を聞かせていただき、ご苦労されたことを聞いて感じたのですが、指針の6頁で「予防接種法に基づかない予防接種の推奨」という欄に、医療関係者、保育園、幼稚園、学校関係者の人に対する予防接種は、「予防接種の推奨を行う必要がある」と非常に弱い表現になっているように思います。今回も、なぜしないといけないのかという意見が述べられたと伺いましたが、院内感染を研究している日本環境感染学会で作っているガイドラインですと、医療に関係する人は、ワクチンで免疫を付ける場合は2回のワクチンを原則とするという記載にしてあります。周りに広げてしまうとリスクが大きい可能性がある方々に対する予防接種というのは、もう少し強く推奨する表現にしていただいたほうが、現場の先生方もご苦労が少なくなるのではないかと思いました。いかがでしょうか。
○岡部委員長 いまの環境感染学会のこと、もうちょっと触れてみてください。
○多屋委員 日本環境感染学会では岡部先生が委員長となり、院内感染対策に関するワクチン接種のガイドラインを2、3年ほど前に作成しました。麻しん、風しん、水痘、ムンプスのように生ワクチンがあって、また医療従事者が発症した場合に大きな影響を及ぼす4疾患については、罹患した人は確実に罹患したことが抗体検査で確認されること。ワクチンで免疫を付ける方は、2回の接種を原則とするという表現が要旨の中に盛り込まれています。これが日本環境感染学会のガイドラインの内容かと存じます。
○岡部委員長 そこら辺を強くリマインドしていただくことも、必要になってくると思います。それから予防接種の勧奨という言葉を使ってしまうと、たぶん定期接種と同じということになって非常に難しいところがあると思います。もうちょっと勧めるということで、特に緊急事態の対応ということでの必要性、先ほど中野先生がおっしゃった早くやった場合には予防的な効果があるということも含めて、そこら辺をまとめておいたほうがいいだろうと思います。どこかで反映していただければと思います。参考人の先生方もどうぞご意見をおっしゃってください。
○多田参考人 どこかに書かれているのかもしれませんけれども、先ほどの美作保健所の先生のお話にもあったのですが、ケアマネージャーの方であっても、麻しんがこんなに大変になるとは思わなかったというあたり。あるいは臨床の先生たちは、麻しんと思ったときには検体を採取しなければいけない。あるいは麻しんと診断された患者さんの感染源になった人の抗体検査をしなければいけない。そういうことに国民が広く協力をしなければいけないとまでは言えないのかもしれませんが、医師が説明したときに協力を得やすいように一言記載していただくと、スムーズになるのではないかと思います。麻しんがそういう疾患なのだということが、なかなか理解していただけないかと思いましたので、ちょっと言わせていただきました。
○岡部委員長 ありがとうございます。小森委員、どうぞ。
○小森委員 多田参考人がおっしゃったことに賛同を示したいと思います。皆さんもおそらく同じ意見だと思いますが、3点あります。1点は、福井県は本当に素晴らしい結果を残しておられますが、予防接種の接種率について決して満足できる数字とは思っていませんので、海外株等について対応するためにも、より接種率を上げることについて強く示さないといけないと思います。2点目は、今日の会議で特に重点的にされましたように、本当に麻しんの確定例を科学的、臨床的、さまざまな分野からしっかり検証し、アドバイザリーボード等を設置した上で検証していく体制をしっかり作ること。3点目は、多田参考人がおっしゃったように、実は石川県は福井県を目標にして頑張った結果90%を超えて、小児科の先生は頑張っておられるのですが、県民として何となく「やったね」みたいな雰囲気があり、発症も、この2、3年なくなったものですから達成感が妙に出てきてしまって、逆に困っている面もあります。いま多田参考人がおっしゃいましたし、また發坂参考人から切実な現場の声をお話いただいたように、もうしばらくで我が国も麻しん排除宣言ができるのだという積極的な国民的合意形成が、この指針ではあまり謳っていません。報道との協力という形にしかなっていませんので、国民的な合意形成を少し強く打ち出す必要があるのではないかと思いました。
○岡部委員長 ありがとうございました。貴重なご意見だと思いますので、いまのは事務局はきちんとノートしておいてください。ほかにはいかがでしょうか。第2の原因の究明のところですが、届出の問題、検査の問題等々について、届出、取下げも含めたことですけれども、この仕組みについて指針の中に加えておいていただく。各論的なものは別のところで、例えばガイドラインの説明とか出てくると思いますが、いまのご意見あるいは資料の内容を指針の中に入れていくことと、届出が出た場合、いま岡山県の事例などもあったわけですが、1例が出た場合の対応が、特にエリミネーションが確認された場合には非常に重要になってくると思いますので、それにどういう対応をするかも、もう少し踏み込んだ指針が必要になってくるだろうと思います。
 特にいまのディスカッションの中であった、1つは緊急接種をどうするか。それから緊急検査も含まれると思いますが、そういったこともできれば指針、あるいは指針に加わる何らかのペーパーに入れていくことも必要ではないかと思います。岡山からの発表でもいただきましたが、ここには問題点の中で5類感染症であるが故に対応が非常に困難性があったということ。これは常々指摘はされていますが、この間もこの委員会だったか、その前の親委員会だったか、今すぐ5類が、例えば1類、2類というのはテクニカルにも難しいという説明が事務局からありました。そのときに、5類感染症だけれども、しかし、これはエリミネーションを目標とするので、これこれ、こういうことが必要ですといったことは、通知として最大限工夫していただけるということでしたので、是非、そこら辺も加えていただければと思います。その最大限をどこら辺までできるかというのは、たぶんディスカッションの要るところだと思います。これが第1段階の議論のまとめになるかと思いますが、何か加えること、あるいは異論がありましたら、よろしいでしょうか。
 それでは残った時間で、いまのは2頁、3頁をやったのですが、4頁の発生の予防及びまんえんの防止、この辺は前回もそれほど大きい意見は出ていなかったと思います。ご意見がありましたらいただきたいのですが、その前に、定期予防接種の年度別・期別未接種者数を資料としていただいていますので、多屋先生からご説明をお願いします。
○多屋委員 資料7に基づき、ご説明させていただきます。厚生労働省が年に3回、麻しん・風しんワクチン定期予防接種の接種率、接種者数を調査しています。その結果を基に、現時点で最終結果まで出ている2010年度までの3年間について、それぞれの期で受けそびれている方の人数を図にまとめました。図1-1で示したように、2008年から2010年まで、第1期の受けそびれはどんどん減ってはきていますが、年間、4万~7万人の未接種者が残っています。第2期、第3期、第4期となるに従って未接種者が増えています。各1年間の間に受けそびれた方ということになります。2期が約10万人弱、3期が大体15万人強、第4期が25万人から30万人となっています。年々減っているとはいえ、これを3年間足し合わせると図1-2に記載したように、この3年間で1期は20万人弱、2期は30万人弱、3期は50万人、4期は約80万人の受けていない人が残っていることになります。
 次に3頁ですが、いま、麻しん・風しん混合ワクチンを原則とするとなっていますので、ほとんどの方がMRワクチンの接種を受けています。一部、麻しん単独のワクチン、風しん単独のワクチンという方がいますので、麻しんと風しんを分けて図にしていますが、麻しんと風しんについて大きな差はありません。風しんは今年非常に流行していますけれども、いまの流行の特徴は、昔、定期の予防接種の対象でなかった方が最も多いわけです。個別接種になって中学生男女の接種率がグッと減ってしまい、そのときの方々も、いま流行に曝露して罹っている方に含まれてきていますので、こういう未接種者の方は、いつかまた罹ってしまう可能性を残していることから、この80万人規模の数は決して少なくないと感じます。今後、昨年度の結果が出てきますし、今年度もありますので、これに積み重なるところがなるべく少なくなるように、接種率の向上につなげていく必要があるかと感じました。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございます。この指針で言えば4頁の「予防接種法に基づく予防接種の一層の充実」ということで、5頁の真ん中に書いてある4の定期接種、このときが1期、2期に加えて3期、4期がスタートしたわけですが、これについても、今後どういうふうにしていくか。いま結論が出る話ではありませんが、ご意見を是非いただければと思います。いかがでしょうか。
○中野委員 麻しん排除というのは天然痘根絶と違い、エラディケーションではなくてエリミネーションなので、排除達成後も対策を継続していかなければならない対策だと思います。サーベイランスに関しても予防接種に関しても長い目で見て継続できるような、先ほど多屋先生に出していただいた表で見ると、麻しん・風しんともおよそ200万人近く対象であったにもかかわらず、まだ接種を受けていない方々が国内に存在するわけですから、予防接種に関しては、その方々を長い目で見てカバーできていけるような継続的なものがあると、この2つの疾患のコントロールにとても有効なのではないかと私は思います。
○岡部委員長 先日、臨床ウイルス学会という学会が大阪であって、そのときも、麻しん、風しんも含めてのシンポジウムがありました。そのときのディスカッションの中でも、積み残されたというか接種を忘れてしまった方も含めて、感受性を持ったまま成人していく人が多くなってくると、結果的には例えばいまの風しんの成人での問題が浮き出てしまうので、できるだけそういう感受性者をなくす。つまり打ちそびれたまま大きくなっていった人の対策をどうするかは、エリミネーションの1つのストラテジーとして必要ではないかと、そんな意見が出ていました。
 小児科学会の予防接種対策委員会でも、今後の予防接種をどうするか、医学的検討を含めて提言をすることも議論している最中です。この委員会としてはいかがでしょうか。もう1人、2人、ご意見をいただければと思います。
○遠藤委員 最近、麻しんに関しては、20歳代、30歳代の方が多く罹患している可能性があるのと、風しんに関しては20~40歳代の男性が多いということで、今後は就学時のみならず就職時、そして企業や会社など職場での麻しんの拡大防止、発生の予防という視点も必要です。平成19年の時代とは状況が変化していますので、いま岡部委員長がおっしゃった追加接種も含め、就職時、職場という集団環境での対応は、今後、新たな指針に盛り込む必要があると思います。
○岡部委員長 なかなか大きい年齢というか、例えば就職時だと就職していない人をどうするか、大学に行っていない人をどうするかなどいろいろな意見がありますが、取り急ぎ必要なのは、とにかくきちんとできる年齢の間に、できる人についてはポケットがないようにということがいちばん重要な問題です。海外もエリミネーションと言いながら、大人を対象にするのはなかなか厄介で、技術的な厄介さと法的な問題もあるし、あとお金の問題もある。20代というと20代全員が対象になるし、フィージビリティの面から言って難しさがありますから、そこまでエキスパンドできるかどうかわかりませんけれども、しかし、いま対象としている年齢層が、そのままポケットのように落ち込んでしまうのは問題があるので、いま遠藤先生がおっしゃったことも含めて、議論としては続けてやっておく必要があるのではないかと思います。
○小森委員 確認でもあるのですが、この指針では、予防接種法に基づく予防接種の一層の充実として、いわゆる3期、4期については、あくまで時限的に追加されていることになっています。親会議等を含めてこういった議論の中で、この3期、4期を時限的にというところについて、この小委員会で議論する必要はないのかどうか、座長の先生にちょっと。
○岡部委員長 もう1人ぐらい、ご意見をいただければと思います。
○皆川委員 各論すぎるかもしれませんが、定期接種の積み残しでいちばん気になっているのは、平成18年度に2期の対象者であった、現在小学校6年生の人たちが積み残されていることが大変心配です。25年度に中学校1年生になる人たちですので何らかの議論ができれば、よろしいと思います。それから排除した後は輸出国になってはいけないので、海外渡航時の予防接種について少し強いことが何か書けると、いいのではないかと思いました。
○岡部委員長 通常、予防接種法に基づく定期接種だと、ある一定の時間を決めておいて、この間にやりなさいと言って、そこから漏れた人は、どちらかというとown responsibilityみたいな感じで、外れてしまったのだから後は任意でという仕組みになっているわけです。いま、少なくとも定期接種になっているときに外れてしまった人は、普通の状況と違って今度はエリミネーションという目標があるので、考え方としては少し違った考え方でやる必要もあるのではないか。つまり、具体的には1期、2期でやりそびれた人たちが大きくなっているのもあって、そこは人数が少ないわけです。でも3期、4期でやり損ねている人たちは、ひょっとすると呼び掛けが不十分だった可能性もあるので、そういう人たちについて、もし放っておくとどうなるかを含めて議論した上で、先ほど小森先生がおっしゃっていたように、小委員会としては、この3期、4期はもう少しきちんとやっておいたほうが、将来、エリミネーションを達成し、なおかつ、それを維持するために重要なものでるということ。あるいは3期、4期のときに受け損ねた人たちに、2回目のワクチン接種という意味でのチャンスを与える方法はないか、きちんと考えることを宿題にして、これについては、今日どうしましょうということではないのですが、指針の中に含むべき重要な事項ではないかということで、コンセンサスをいただきたいと思います。よろしいでしょうか。ということで、ここのところもきちんとノートしておいてください。
 ほかのところは、いかがでしょうか。いま接種漏れ者というところの人数を非常に詳細に加えていただきましたが、23年度のはしかの予防接種率は、いつぐらいに出てくるのでしたか。これも現在集計中と聞いていますからそれも含めて、できれば資料として今の議論のベースにもなっていくと思いますし、是非、よろしくお願いいたします。22年度でしたか、前に出していただいた特に1期は95.9%でしたね。海外から見ると日本はここまで達成したかと評価されていますので、達成感だけでなく、その後の維持というところで是非、データを見ながらやっていきたいと思います。
 その他という表現はいけないのですが、この4、5、6のところになってくると資料2の6頁ですが、予防接種に基づかない予防接種の推奨、これは先ほど多屋委員のおっしゃったことなので、そのほかの人たちにどうやってお勧めの度合いを強めていくかは、重要な議論になると思います。この中で文部科学省への協力というのは、前回、文科省からも現状を出していただきましたが、文科省の取組みでもう1回言っておくことはありますか。あるいはその後の変更とか何か。
○有賀参考人 文部科学省の有賀です。前回申し上げたところから、特に施策として何か新しいものが加わったということはないのですが、今後、こちらの事業として健康診断の大きな見直し、これはすぐにやるものではなく、何年かかけてやるということで入っています。その中で、例えば感染症に係る項目についてどう見ていくか、調査についてどう見ていくかという議論は、今後、課題として挙げることはできるかと思います。あと最近は行政担当者が集まる会議の中で、子どもに対する1期、2期での勧奨、プラス3期、4期の接種勧奨に加えて、特に20代、30代の若い教職員の方の接種歴についても確認するようにといったことは、正式な局長通知といったものではないのですが、一応、いろいろ連絡したりといった取組みはしています。
○岡部委員長 ありがとうございました。その後の項目でも、その他必要な措置とか医療の提供、研究開発、国際的な連携もありますが、この辺も含めてあと10分ぐらいですが、指針の中で重要なところがあったら是非、南委員、どうぞ。
○南委員 何度も言っていただいているように、報道との連携やメディアの立場が非常 に重要であるというのは、私どもも重々承知しているのですが、少なくとも私どものような全国紙や地上波テレビといったものに関して申し上げれば、何か大きなアウトブレークとか大きなニュースがないと、なかなか話題にはしにくいという現状がどうしてもあるのです。
 折に触れてそういうことは申し上げているのですが、もちろんそれだけでなく、もっと地道な解説や注意の喚起もしなければいけないと思っています。しかし、こういう国民の根本的な健康の維持に関する情報の出し方について、ほかの国の状況はわかりませんが、日本は非常に短期間にいろいろな健康の指標を達成したりして、ある意味、結果的にはうまくいっていると見るのが妥当だと私は思います。けれども、結局、情報が多くなったが故に、ニュースでない情報はどうしても埋もれてしまう。マニアックに検索していけばこういう情報にも辿り着けると思いますが、ごく普通の国民が、普通にこういうことを、でも実は重要な健康情報を知る機会は意外と難しいのではないかと常々思っています。
 それで感染症情報センターも、記者に対する地道な教育や啓発などもしていただいて、間接的にとても役に立っていると思いますが、ありとあらゆる手段で、そういう健康に関する根本的な情報を出していくことを、何か考えないといけないのではないかと思っています。教育の中でも、子どもが健康の問題で何か思ったら必ずこれを見るみたいな、何かそういうものがあったらと思います。いま、エラディケーションでなくエリミネーションであるとありましたが、その意味はどういうことかみたいな話は、やはりわかりにくい話だと思いますので、そういうことを常々感じています。
○岡部委員長 どの辺をすればいいですかね。どの辺でディスカッションすると。
○南委員 今日の議論の中では、岡山県のケースはすごく貴重だと思います。これは古い昔の話でもありませんし、こういうことは、もちろんメディアも心して出していく必要がありますけれども、それで暴露後の予防接種がこんなふうに役に立ったとか、そういうことに焦点を当てて出していく。メディアはもちろんですけれども、それ以外にもこれまでもいろいろな努力はされていると思います。ポスターとかいろいろなことでされていると思いますが、関心を持ってくれた人が見れば出ているみたいなことを考える必要があると思います。
○岡部委員長 ちょっと思い付きの話を、こういう所でするのはあれですけれども、例えば結核予防週間とか結核予防デーというのがありますね。あるいはインフルエンザ流行に入るキックオフとか、性感染症(STD)も何かそんなのがなかったでしたか。エイズ予防週間がありますね。はしか、ポリオは案外、一般の方は「何でそんなに、はしかで騒ぐんだろう」という先ほどの話があるように、はしかゼロが目標であるとか、ポリオはもうなくなったから気にしていない方も多いですが、このごろポリオの問題で多くなっている。そういうことを一気に啓発するような、イベントみたいなものがあると、メディアの方もそれをきっかけにしやすいということがあるのではないかと思います。多屋先生、前にアンケートを取ったときに、例えば「エリミネーション」という言葉を高校生がどのぐらい理解しているかとか、そういうのがありましたか。
○多屋委員 はい。以前、流行したときに高校生を対象に何千人かの調査をさせていただきましたが、「はしかという病気を知っていますか」という問いに、「はい」と答えたのは3割ぐらいしかなかったのです。ですから岡部先生がおっしゃったように、はしかのことも知らない小中高校生、大学生が多くいらっしゃると思います。
○岡部委員長 それとプロの方々で、例えば小児科や医師会の先生に話をすると、「えっ、はしかはもう500にまで減ったのか」と、昔のはしかのイメージをまだ持っていたりすることもあります。2012年がもうちょっとなので、そこをきっかけに、先ほど南先生が言われたいろいろな動きを発表する企画が必要ではないか。小森先生、どうぞ。医師会のほうからお願いします。
○小森委員 失敗すると大変なのですが、これはエリミネーションに向かってですから、どこかで覚悟を決めて、スペキュレーションでいいから少し展望がないといけない。やはりカウントダウンでしょうね、それができるなと思ったところでカウントダウン宣言して、厚生労働省でもいいのですが、逆に数える時計を設置して、これは外れると大変なことになりますけれども、ちょっと思い付きです。いま南委員がおっしゃいましたので、そこまで覚悟を決めてやるのもいいかなと。
○岡部委員長 ありがとうございました。先ほども申し上げたのですが、この8月にWHOの西太平洋地域事務局が、2012年の目標についてどう考えるかについても結論を出していくと思います。だから日本が全部それに追随するということはないけれども、そこもひとつ視点に置いて今後の活動を、カウントダウンも含めてどういうことをやろうかというのは、きちっとしたところで話をしたほうがいいだろうと思います。先ほどの目標設定というところになりますが、国からも情報センターからもこの会議に出てくると思いますので、是非、それも含めてこの委員会の中で結論を出していきたいと思います。思い付きのことですけれども、できれば何かそういうことをやるひとつのイベントみたいなものがあるといいと思います。そのほかにはいかがでしょうか。
 私からもう1つ意見ですが、資料1の9頁の2の「国際機関で定める目標の達成」とあり、先ほど遠藤委員が言われた目標がここにも入ってきますが、前回も輸入例に対する対応の部分で幸いにして輸出国ではなくなったと、これは達成ができたというわけです。けれども、では輸入国だといって手をこまねいているわけにもいかないので、そこから広がらないための状況、対外的なイベントになったときへの対応も加えて、目標としては、例えばポリオのアジアでのエラディケーションとか世界的なエラディケーションに、技術的にも金銭的にも日本はかなりコントリビューションしたわけです。それは日本が達成したから、ある程度できたし意見も聞いてくれたのだと思いますが、ようやくアジア地域でもびりっけつからトップグループに入った感じですので、今後の視点としては、もし日本がエリミネーションを達成したならば、国際的なコントリビューションというところも目標にしていくべきではないかと思うので、そこら辺も指針の目標の中に加えていただければと思っていますが、いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。
 そろそろ時間ですが、もし全体で何かご意見がありましたら、どうぞ遠慮なくおっしゃっていただいて、発言のなかった先生は特にいませんね。参考人の先生方から何かご意見がありましたらどうぞ。よろしいですか。それでは今日のところは、きちんとした結論には至っていないのですが、いくつか重要なご意見をいただいて、それについては事務局でノートしていただいています。では今後のスケジュールも含めて事務局からアナウンスをお願いします。
○難波江補佐 ありがとうございました。本日いただきましたご意見を整理いたしまして、また次回に事務局から資料を提出させていただきたいと思います。今後のスケジュールですが、今回は第2のところを中心にご議論いただきましたので、次回は第3の予防接種のあたりを中心にご議論いただければと思っています。次回の日程につきましては改めてご連絡させていただきます。
○岡部委員長 そのほか事務局からよろしいですか。それでは今日は暑い中、ありがとうございました。終了したいと思います。


(了)

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