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2012年5月29日 第6回 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年5月29日(火)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用14会議室


○出席者

【委員】 岩村座長、石井委員、大胡田委員、北野委員、駒村委員、杉山委員、武石委員、田中委員、野澤委員、山岡委員


【事務局】 中沖高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、吉田障害者雇用対策課長補佐、安達障害者雇用対策課長補佐、西川障害者雇用対策課長補佐


○議題

1.これまでの論点の整理
2.今後の主な論点「第3 職場における合理的配慮」のうち、「合理的配慮の提供の実効性を担保するための措置、特に、事業主の負担に対する助成の在り方」と「過度の負担について」
3.その他

○議事

○岩村座長
 定刻となりましたので、ただいまから「第6回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」を開催いたします。本日の委員の出欠状況ですが、森委員がご欠席でいらっしゃいます。
 まず、会議の開催に当たり、前回と同様、会議の進行について皆様にお願いしたいと存じます。視覚・聴覚障害をお持ちの方などへの情報保障の観点から、ご発言などをされる場合には、まず発言される方は必ず挙手をしていただきたい。そして、挙手をされた発言者に対し私、座長から指名をいたします。指名を受けられた発言者の方は、まずご自分のご氏名をお名乗りいただいてから発言をお願いいたします。こういう形での運営を徹底してまいりたいと考えておりますので、ご協力、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入りたいと存じます。前回までの研究会におきましては、主な論点ごとについての検討を行ってまいりました。「事業主への助成の在り方」と「過度の負担に関する論点」、この2つの論点以外の事柄につきましては一通りご意見を皆様からいただいたと考えております。
 本日はこれまでの論点の整理ということで、前回までの研究会における主な意見を論点ごとに取りまとめたものを配付させていただいております。まず、そちらについて事務局から説明をいただき、それについての質疑というものを行いたいと思います。そのあと、議題2ということで、最後に残っております論点であります「事業主への助成の在り方」と「過度の負担に関する論点」というものについてご検討をいただきたいと考えております。なお、議題2につきましては、次回の第7回におきましても引き続きご検討いただくことを考えております。その点、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、議事次第に沿いまして議論を進めてまいりたいと思います。まずは議事次第にあります1番目、「これまでの論点の整理」というものであります。これについては先ほども申しましたけれども、事務局のほうで資料を出していただいていますので説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 おはようございます、課長補佐の西川でございます。資料1をご覧ください。資料1は、本日の議題2以外の論点について、これまでの研究会で頂戴してきましたご意見を論点ごとにまとめたものになっております。論点ごとに簡単にご説明させていただきます。
 まず1頁目の上の四角。権利条約における労働・雇用分野での差別禁止等について、個別法である「障害者雇用促進法」に位置づけることについてです。上から3つ目の○。第4回で石井委員から、差別禁止法は一般法として位置づけ、障害者雇用促進法は雇用分野の特別法として位置づけるのがいいのではないか、との意見をいただいています。
 続いて次の四角。雇用率制度についてです。ここは第4回での駒村委員をはじめ他の委員からも、差別禁止は機会の均等であり、実質的な機会均等を維持するためには、ポジティブアクションとして雇用率制度を残したほうがいいのではないか、という意見をいただいています。
 2頁、2「差別禁止等枠組みの対象範囲」についてです。1つ目の四角囲みですが、差別禁止等の対象となる障害者、事業主の範囲について、どのように考えるかです。ここについては、まず障害者の範囲につきまして2頁目のいちばん下、第4回で石井委員から、障害者雇用促進法の第2条の障害者が適切ではないかとのご意見がございました。3頁目、1つ目の○。第4回、第5回、大胡田委員からは、過去に障害を負っていた方、障害児を持つ親など、家族も対象とすべきではないか、とのご意見がございました。このほか、その次の○。第4回、武石委員からは、あらゆる障害を持つ人は差別をされてはいけないというのが基本理念だけれども、どこかで一定の範囲を決めていかないと実務的に難しい面があるのではないか、とのご意見をいただいています。
 4頁の中段からが「事業主の範囲について」です。第4回、石井委員からは、公的支援の整備状況などを勘案し、段階的または十分な準備期間を置くべきではないか、とのご意見をいただいています。
 5頁目に移りまして、第2「障害を理由とする差別の禁止」についてです。1つ目の四角囲み、いわゆる差別の類型・種類についてどのように考えるか、という点です。まず、「間接差別」については1つ目の○。第4回、石井委員から、間接差別は具体的な基準がないと法の施行は困難ではないか。障害は多様性・個別性もあり、これが間接差別だという基準が示せるかどうか。事業主の義務という点からは、それが示されないと現場での対応というのは困難ではないか、とのご意見をいただいています。
 一方、その次の○です。第4回、大胡田委員からは、間接差別の類型は維持した上で、差別の正当化事由を設けることで無理のない、納得のいくような規定を設けることができるのではないか、との意見がございました。
 次の6頁目については「ハラスメントについて」、それぞれ大胡田委員、石井委員からご意見を頂戴しております。
 その次の「合理的配慮の不提供について」は、第4回、石井委員から、事業主の責務として、措置義務や配慮義務というものは法体系の中でも受け入れやすいが、不提供は「差別」として禁止されるのは法体系の中でどのように位置づけられるのか。同じ法の中で「義務」と「やらないという不提供」が差別であるということが両立をするのか、という意見をいただいています。
 次の○。第4回、大胡田委員からは、合理的配慮の提供義務を事業主に課すことでしっくりくるというなら、それで体裁はかまわないけれども、実質的に合理的配慮を障害者が受けられるようにすることが必要ではないか、という意見をいただいています。
 7頁目の1つ目の四角をご覧ください。「差別の正当化事由について」「差別禁止の私法上の効果について」です。私法上の効果については、第4回、石井委員から、私法上の効果については法律に特段の定めがなくても、公序良俗違反で無効となるということで問題ないのではないかとの意見。第4回、岩村座長から、規定を置かなくても解釈上でそのような効力があるということとしている例もあり、そのような規定の置き方もあるのではないか、との意見をいただいています。
 7頁の最後の四角、2「差別が禁止される事項」につきましては、障害者雇用分科会での「中間的な取りまとめ」と同じく、雇用にかかるすべての事項を差別禁止の対象とする方向で問題がないということで、特段ご意見はなかったと記憶しています。
 8頁、第3「職場における合理的配慮」についてです。8頁の「合理的配慮の不提供について」、それから9頁にある「差別禁止等の対象となる範囲」については、先ほどの差別禁止のところでいただいたご意見と同じですので、割愛をさせていただきます。
 9頁の2「合理的配慮の内容について」です。1つ目の四角、合理的配慮の枠組みとその内容についてどのように考えるか、という点につきましては、第5回で杉山委員ほか複数の委員から、合理的配慮については概念を法律で定め、具体的な内容については指針で定める考え方でいいのではないか、という意見がございました。
 次の10頁には精神障害者や発達障害者に対する、障害特性に応じた合理的配慮の具体的な内容についてご意見を記載しています。10頁の最後は「通勤時の支援について」です。11頁の上から3つ目の○。第5回、石井委員から、労働法では通勤はあくまでも労働時間外ということで、個別の事業主責任とはされていない。通勤途上災害というのは保険給付をするため制度として別に作ったものであって、合理的配慮と通勤の問題は切り離されて考えるべきもので、福祉的サービスで対応すべきではないか、とのご意見がございました。1つ飛ばして次の○。第5回、大胡田委員からは、財源の問題はあるにせよ、積極的に雇用分野で対応していくのがいいのではないか、とのご意見がございました。
 11頁の下の四角ですが、合理的配慮が適切に提供されるための企業内での仕組みについてです。12頁の○の上から4つ目。第5回、岩村座長から各委員の意見を踏まえ、「合理的配慮については、まず企業内で当事者同士が話合いをする。その際、場合によっては、ジョブコーチや他の支援機関も入った形で話し合うという枠組みが必要であるというコンセンサスは取れているのではないか。」各委員からもそのような意見をいただいています。
 12頁のいちばん下の四角、合理的配慮の提供に関する企業以外の相談機関等の仕組みについてです。次の13頁、2つ目の○をご覧ください。第5回、山岡委員から、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどでの助言や指導については、固有の障害のためこのような困難を持っているということがきちんとわかるように指導・助言してもらう必要がある、とのご意見がありました。また、3つ飛ばした○。第5回における北野委員からも、相談機関側の専門性のレベルを担保する必要がある、とのご意見をいただいています。
 14頁は本日の議題2ですので割愛させていただき、15頁、第4「権利擁護(紛争解決手続)について」です。1つ目の四角囲み、企業内における紛争解決手続きにおいてどのように考えるかです。3つ目の○。第5回、石井委員から、紛争解決の仕組みについてはまずは企業内での自主的な解決、次に行政で解決のための助言や指導、それから調停制度。これは均等法やパートタイム労働法などでもそうした仕組みがあり、それを活用するべきではないか、とのご意見をいただいています。
 最後、15頁の下の四角囲みです。外部機関による紛争解決手続きについて、16頁の1つ目の○。第5回、大胡田委員からは、均等法の場合、労働局長による指導・助言に加えて勧告権限もあり、障害者についても第三者機関が勧告できるような権限を持つ必要があるのではないか、とのご意見をいただいています。
 資料1については以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。ただいま、ご説明いただきました資料1と2ですけれども、これまでの議論の整理、研究会の主な意見につきましては、これから報告書をこの研究会でまとめていく際には主な材料となるものといえます。ですので、いまの段階で追加しておくべきご意見、あるいは「ここは自分の発言の趣旨とは違う」というようなことなどがございましたら、出来るだけご意見をお出しいただきたいと思いますし、またそれとの関係でご質問がありましたらお出しいただければと思います。
○大胡田委員
 大胡田です。順番等、あまり関係なく話してしまうのですが、すみません。
 「ハラスメントについて」のところで、あのとき私はあまり考えていませんで、うまく意見が出せませんでした。いま考えているところなのですが、石井委員からは、障害者虐待防止法ができるので、そちらで対処可能なのではないかというご意見がありました。ただ、虐待というのは相当程度行って初めて「虐待」となりまして、虐待となれば行政が企業なり民間なりに関与していくということも可能なわけです。
 しかし、実際、職場では虐待に至らないハラスメント、例えば「お前、障害があるんだから早く辞めれば」とか、そこまで露骨ではないにしても「障害があるんでしょ、早く帰って面倒をみたほうがいいんじゃないの」など、そういったことは枚挙に遑がない事象です。やはり障害を持つ者、ないしは障害者が身近にいる労働者が働けるためには、障害を理由とするハラスメントをきちんと禁止していく。できれば、「これが差別だ」というように明確に位置づけておくことが必要かと考えています。
○岩村座長
 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
○野澤委員
 野澤です。なかなか出席の機会がなくて、十分に意見が言えませんでした。きちんとまとめて言えるかどうか、若干不安です。やはり、知的障害や発達障害の方に対する合理的配慮ということについての議論が、まだまだ薄いなという感じがしています。これは別にこの場でということでなくても、世間一般に見ても、差別禁止部会、私もメンバーですけれどもなかなかよくわかっていない、議論が高まっていない。私自身もよくわかっていません。
 現実を見てみると、最近は特例子会社等で知的・発達・精神の方々をたくさん雇ってくださっている。それは私も大変歓迎というか、評価しているのですが、よく見てみると「いい」と言われている所でもやはり定着しないのです。それはやはり彼らの障害特性からいって少し難しいのかなということを言われています。
 どのような指導をされているのか、もう少し中に入って見てみると、意外に発達障害についてほとんど知らないのです。一般の障害者と同じようにやっている、厳しく指導する。「ここは福祉の場ではない」ということをかなり言われていて、それが結果的に彼らが辞めていくことにつながっていくのかなという感じがしております。ここに出てくるハローワークとか「ナカポツセンター」がもっと指導していけばいいではないかとありますけれども、ここも知らないのです。特に、発達障害の方たちの特性についてよくわかっていないのではないかと思います。
 彼らの特性をどう捉えて、どういう指導をしていけばいいのか。なかなか難しいのですが、山岡委員がいろいろ具体的に発言されているものがあります。例えば最近私が思っているのは、イギリスの自閉症協会が提言している、彼らに対する支援の基本的なスタンスとして"SPELL"というものがあります。SはStructure、「構造化された環境」だとか「明確で一貫した指導方法」ということですね。PはPositive Approach、「いいところを見てアプローチしていってあげましょう」というものです。EはEmpathy(共感)、これはなかなか誤解されてしまうのですが、話している言葉と彼らが本当に感じていることというのはかなり違うのです。言葉で反応されてしまうので「反省していない」とか「自分のことしか考えていない」とか、いろいろな言われ方をしていますけれども実際はそうではない。反省しているのだけど、その表現の仕方を知らないだけであって、本当の意味での彼らの理解というものをしていこうではないかというのがEです。
 LはLow Arousal、「刺激の少ない指導方法」だとか「刺激をできるだけ抑えた環境」だということでした。もう1つのLはlinks、狭い福祉の中、職場の中だけで解決しようというのではなくて、さまざまな専門性を持った人たちとつながりながらやっていきましょうということです。一人ひとりの特性を考えればそれぞれ違うのですが、基本的な考え方としてはこういうものをスタンダードにしてやっていこうということが謳われています。
 私、こういうものはもっともっと彼らの職場における環境を整えたり、あるいは指導をしたり、人間関係を調整したりという面でとても必要なことだと思っています。少なくとも、こういう考え方がある、こういうものがあれば彼らがうまくやれるのだということを知っていただきたいと思います。これを知らずに、ただ単に「ここは福祉じゃないんだから」と厳しくガンガンやって、それが二次的な症状を引き起こして引きこもったり、うつになったり触法的な要素が出てきたりする。それはむしろ、虐待に近いのではないかと最近思ったりしています。
 実際、引きこもりの人の中で発達障害の方が非常に多いです。ところが、学校の現場においては、このようにいろいろ理解されないまま厳しくやられたりしている。必ずしも手を挙げたり、性的なということではないにしろ、彼らのこういう特性を理解せずに感情的に怒ったりというのは、ほとんど精神的虐待といっていいのではないかと私、最近思ったりしています。
 こういうものを職場でもどこまでやるのか、難しい問題かもしれません。少なくとも発達障害の方、あるいは知的障害の方を雇用している現場の担当者なり管理者なりは少なくともこういう考え方がある、彼らの特性をもっと知るんだということを、研修なり、あるいはスーパーバイズで入れるなりしてやる。それもやらずに叱りつけて、「厳しくすればいいんだ」と傷つけて彼らをひどい状況にしてしまうというのは、お互いにとって不幸だと思います。
 ポジティブアプローチなどと言われると、「甘やかしていいのか」みたいなことを言われるかもしれません。それは甘やかすことではなくて、彼らの特性を配慮するというごく当たり前のことで、我々一般の企業だって、その人の特性によって厳しくしたほうが伸びる部下もいれば、良いところを見ておだててやったほうがかえって伸びる部下もいるし、それぞれの特性に合わせてやっているわけです。そういうものをもう1つ、我々とは違う次元での特性を持った人たちなのだという理解を、少なくとも彼らを雇用している現場では理解していただきたい。あるいはそれを監督するところ、ナカポツセンターのような支援をするところはもっともっと理解しなければいけないと思います。
 長くなってしまうので、一度この辺で切らせていただきます。
○岩村座長
 ありがとうございます。
○北野委員
 北野です、発言いたします。前回、4月17日の第5回の資料1の11頁ですけれども、わからないことがありました。アメリカのADA、合理的配慮の提供のための企業内での仕組み、特に施行規則の第1630条の「合理的配慮の内容を特定し、提供する際の相互関与プログラムについて」という資料があったと思います。
 ADAの法解釈ガイダンスの説明が4つあって、とりわけ4番は初めて見た表現でしたので私も確かめてみたのです。4にはこう書いてあります。「配慮を受ける者の意見を考慮し、労使双方にとって適切な配慮を選択し実施する。相互関与プロセスはADAが強制するものではないけれども、こうしたプロセスに参加したことを使用者が証明できれば結果として、合理的配慮の提供に至らなかった場合でも責任を問われない可能性があるものであり、このプロセスへの関与は重要である」という表現があります。
 このような表現を初めて見たものですから、ちょっとガイダンスを見てみたのですが、私が確かめてみた結果の報告をさせていただきたいと思います。1つは、相互関与プロセスの提供ができなかったことをもって差別的行為に当たると、厳しい解釈をしている州がいくつかあります。2つ目は、国や行政からの合理的配慮に関する技術的提供が得られなかったことをもって、事業主が合理的配慮義務を行わないことの言い訳にすることはできない、という表現が見られました。
 3つ目、ここは大事なところなのですが、実は4番は1991年のいわゆる公民権法の改正の部分に関係しています。「改正公民権法」の中で、懲罰的な損害賠償請求を可能にしたということが、1991年の改正公民権法のいちばん大きなところです。それと関係している表現で、「障害者が合理的配慮を要求した場合に、事業主が障害者との相互関係プロセスにおいて機会を提供し、事業主に過度の負担とならない合理的配慮を見つけ出そうとしていたとすれば、そのことによって懲罰的な賠償請求を免れ得るかもしれない」というのが書いてある実際のところです。そのことを4で表現されていると思うのですが、ちょっとこの表現では誤解を生むのではないかと思います。
 つまり、これらのことを整理いたしますと、1つ目は、合理的配慮について、まずは関係者である障害者と事業者が真摯に相互関与プロセスを形成することが非常に重要である。出来る限り、話合いの中で合理的配慮を見つけ出すことが望ましい。これはもう当然のことだと思います。2つ目は、さらに国や行政等、外部からの技術的支援というものを得ることが望ましい、重要である。これも当然だと思います。3つ目、しかし、国や行政等外部からの支援がうまく得られないことをもって、事業主の合理的配慮義務を免除することにはならないというのが3番目です。
 4番目は真摯に相互関与プロセスを形成することが、もしそれが決裂したのちに裁判等で争われることになった場合、裁判によって懲罰的賠償を免れることはあり得るが、それによって合理的配慮義務を免除されることにはならないということです。5、要するに合理的配慮の中身につきましては、合理的配慮は事業主のオブリゲーション、法的義務であり、一定の過剰な負担以外はそれを行わないこと、つまり不作為というものは差別であり、作為義務が事業主に課せられているというのがADAの施行規則と判例からわかることだと思われます。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございます。合理的配慮について、いくつか貴重なご意見をいただきました。これはまた、今日作成している資料1の中に適宜取り込ませていただきたいと思います。そのほかにはいかがでございましょうか、よろしゅうございましょうか。
○野澤委員
 すみません、欠席した分を補って申し訳ありません。
○岩村座長
 もちろんかまいません。
○野澤委員
 恐縮しつつ発言します。「通勤」のところなのですが、これは大変悩ましい問題だと思っています。通勤を「義務」とされてしまうと企業にとってつらいだろうというのはわかるのです。ただ、実際、なかなか通勤は難しい危ない人たちがいるのも事実です。
 一般的な努力をしても、それでもなかなか難しい人に対して、企業側が通勤の配慮・便宜を図るということはとても大事です。これを「義務」とするのではないにしても、そういう企業を応援していくような仕組みは是非必要だろうと思います。特にこれから雇用率が1.8から2.0になると、単独での通勤が難しい人が主なターゲットになってくるわけです。ここで「通勤を義務にするのはおかしい」でバサッと切ってしまったのでは、なかなか実体として彼らが働く能力、適した仕事があれば十分やれるのに通勤だけが足かせになってしまって能力が発揮できないとなれば、やはりそれは両方にとってマイナスだろうと思います。
 これはこちら側でやるのか、あるいは福祉の側でやるのかわかりませんけれども、どちらかに譲り合うのではなくて、むしろ奪い合うような形で施策を是非考えていただきたいと思います。
○岩村座長
 ありがとうございました。ほかはいかがでございましょうか、よろしいでしょうか。
○大胡田委員
 すみません、たびたび。先ほどの「合理的配慮」の点なのですが、今日、遅れての「意見書」を出させていただきました。これまで私は、合理的配慮は義務だということで結構だ、特段、差別としての位置づけまでは強く求めないということを考えていたのですが、やはり勉強してみると、合理的配慮を欠くというのは、実質的にその人が能力を発揮することをいただくチャンスを与えられない。つまり、看板に「犬と障害者はお断り」と書いてあるのと合理的配慮がされないのと、効果で言うとほとんど同じなのです。ですので、やはり合理的配慮の不提供は差別だということをきちんと位置づけて、差別に至らないために義務を課すということで位置づけないと、これまで人類が21世紀まで発達させてきた人権概念などを、実は骨抜きにしてしまうことになるのかなという不安を感じましたので、今日「意見書」を出させていただきました。是非、そういったことで、合理的配慮を欠くことは差別であるということをはっきりさせたいと思います。
○岩村座長
 ありがとうございます。今日は机上配付ということで、大胡田委員からお出しいただいたペーパーはお配りしていますので、ご一読いただければと思います。
 ただ、実際の立法ということになると、前にも申し上げたように立法事実というのが必要になってきて、そこのところが多分、特に閣法、内閣法案で出そうとすると非常にハードルが高くなるものですから、是非、障害者団体関係の方、別にこれが合理的配慮を欠く例ということではなく、こういうことをやられて困っているという事例をできるだけたくさんお出しいただきたいと思います。そうすると、多分その中から事務局のほうで、合理的配慮を欠く例に当たるものとしての整理を立法事実として作っていくことができると思います。その点、是非、ご協力をお願いしたいと思います。
○大胡田委員
 たびたび申し訳ありません。実は私も前回、座長からそのようなご指摘があったので調べてみたのですが、まだ日本ではご存じのように「合理的配慮」という概念があまり定着していないもので、そういう観点から、事例収集が見当たらないというのが率直なところでした。私は止むを得ず、ADA法のガイドラインを今回参考資料として提出いたしましたが、こういうことをしなければいけないというガイドラインがある。つまり、こういうことをしないことが合理的配慮の不提供なのだという、ちょっと間接的ながらもこれが1つの参考になるのではないかという思いでこれを提出いたしましたので、その点を確認させていただきました。
○岩村座長
 ありがとうございます。ただ、ちょっと難しいのは、直接差別の概念が日本とアメリカで少し違っているということもあって、その辺の議論の整理もやや必要かなという気はしております。これは今日の議題ではないので、また時間があれば改めて検討する必要があるかもしれません。いずれにしろ、貴重な資料を提供いただいてありがとうございました。よろしいでしょうか。
○野澤委員
 ここであまり詳しく話すべきものではないのかもしれなくて、ガイドラインとかを作るときに話すべきものかもしれませんが、具体的にイメージしてほしいということで発言します。先ほど言った発達障害の方に対する合理的配慮、これは環境の整備やコミュニケーション、人間関係の調整とかいろいろ言いますけれども、ハード面の整備もあると思うのです。
 ある福祉的就労をやっているところなのですが、この前行ったら、現場では自閉症の人とダウン症の人は一般的に相性が悪い。向こうは愛着を持って触ってくるのですが、それがとても苦手だというのは結構一般的な自閉症の人のタイプです。そういう人たちが同じ事業所内で仕事をしなければいけないとき、ちょっと逃げ込める場所というか、スペースを用意する。自閉症の人のためのクールダウンできる、あるいは感覚を遮断して落ち着くことのできるようなスペースを確保するだけで、ものすごく違うというのです。それがあると、だんだん自閉症の人も安心してその場で作業して、「いざというときに逃げ込める場所があるんだ」というところで定着というか、自傷とか他害も静まってくるということを言っていました。
 それがどのぐらい一般化できるかわかりませんけれども、例えば車椅子の方用のトイレが必要とされるというのが合理的配慮だとするのであれば、自閉症の人のためにはそういうスペースを確保するということは合理的配慮だと私は思ったのですが、いかがでしょうか。
○岩村座長
 ありがとうございます。
○北野委員
 北野です。いまおっしゃったのは、例えば職場の中での人的配置といいますか、この方はここにいらっしゃってここで安定されていて、この方とこの方とは一緒でなく違う所で配置されてとか、そういう理解でよろしいでしょうか。
○野澤委員
 それもありますし、同じ所にいながら自閉症の人がコントロールできなくなったり、感情的に混乱してきたときにその人がスッと角に行って、例えばこのパーティションで区切ったりとか、あるいはもう少し遮断できるような所を設けるというような、いろいろな配慮がされていました。
○岩村座長
 ありがとうございます。合理的配慮ということでなくても出来るだけいろいろな具体的事例、こういうことで例えば知的障害、あるいは発達障害の人が職場で困っている、そういう事例をできるだけ事務局に提起していただければ、また今度整理していく中で直接差別なのか、間接差別の問題なのか、合理的配慮を欠くことの問題なのかということを整理していきたいと思います。出していただくに当たってあまり整理していただく必要はないので、「こういうトラブルがあるんです」という具体的実例をできるだけ挙げていただけると、事務局のほうは非常に助かると思いますので、是非よろしくお願いいたします。ほかにいかがでしょうか、よろしゅうございましょうか。
 それでは、今日いただいた意見も付加する形で、資料1については整理をさせていただくということにいたします。この資料1でこれから議論する部分は除きまして、これをベースにしながら報告書の作成という形でこれから進んでいくと思います。ですので、今日この場でまだお出しいただいていなくてあとでお気づきの問題であるとか、少し考えをまとめた上でということがございましたら、個別で結構ですので事務局のほうにお出しいただければというように思います。
 よろしければ、議事次第の2番目ということです。2番目の議題は職場における合理的配慮のうち、事業主への助成の在り方と過度の負担についてになります。これについて資料を用意していただいていますので、それに基づきながら説明をいただきたいと思います。事務局、よろしくお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 課長補佐の西川です。それでは、本日の議題2の説明に移ります。資料2をご覧ください。こちらにつきましては、これまでの研究会の資料と同様に、論点のあとに、これまでの研究会で出た意見と分科会での中間とりまとめ、中間整理の該当部分、それから諸外国制度の概要という形で記載をしています。
 事業主への提供義務という形で合理的配慮について義務を課すことは、この研究会でも概ね合意が得られているとは思いますが、ここでの議論は、そうしたときに事業主への支援措置をどのように講じていくのか、また、過度の負担というものについてどのように考えていくかという点で、この研究会で検討すべきテーマの1つです。座長のほうからご説明があったように、スケジュールとしては、本日の残りの時間と次回の1回分をこのテーマで議論していただくことになります。本日は資料2に加えて参考資料1~3をお配りしています。現行制度における事業主支援措置、助成措置というものをお配りして、少々長くなりますが、参考資料についても併せてご説明をして、本日と次回の検討の参考にしていただければと思います。
 まず資料2です。四角囲み1つ目、事業主の負担に対する助成の在り方について。前回までの意見では、第1回目に駒村委員、岩村座長から意見をいただいています。
  次に、1頁目の下の段です。平成20年研究会の『中間整理』では、○の1つ目で、現行の納付金制度に基づく助成金は合理的配慮として行うこととなるものが対象として含まれており、この助成措置を見直すことで対応すべきとの意見がありました。次の○ですが、雇用率制度の対象ではない事業主も含めて全事業主を対象とする場合に、財政措置、財政支援をどのような形で行うのかが課題、問題になるという意見がありました。2頁目の最上段ですが、現行の助成金などには期限がありまして、それについては期限のない制度を確立すべきではないかとのご意見がありました。
 点線囲みの部分は諸外国の状況です。まず、「ドイツ・フランス」です。下線を引いておりますが、ドイツ・フランスについては雇用率制度がありまして、雇用率の未達成企業から集めた納付金を原資として、事業主に対する給付金などの形で支援をしています。「アメリカ」については、政府が援助・支援をする仕組みがなく、税制上の優遇措置だけが講じられています。それから、「イギリス」については、Access to Workという障害者も含めた求職者に対する雇用促進事業のプログラムがあります。その中で、事業主支援として、実質的に合理的配慮に該当するであろう事項に財政支援をしている状況です。
 2頁目の中段以降、4「過度の負担について」です。2頁目の最後、分科会の中間とりまとめでは、過度の負担に該当する場合には、事業主が提供義務を負わないことについては異論がないとされた上で、過度の負担は合理的配慮と同様に個別性が強いということから、事業規模などを総合的に勘案して個別に判断する必要があり、一律の数値基準を設けることはなじまないとの意見があり、異論はなかったとされています。3頁目、○の1つ目です。公的な助成なども考慮した上で、過度の負担か否かを判断すべきではないかとの意見も出されています。
 最後、諸外国の状況ですが、ドイツ・フランス・アメリカ・イギリスとも、過度の負担の場合には、合理的配慮の提供義務は免れる形になっていまして、ドイツ・フランスでは公的な助成を考慮した上で、過度な負担か否かを判断するとされています。
 続きまして、障害者雇用に関する現行制度の支援措置、助成措置の説明をいたします。参考資料1~3が現行の支援措置、助成措置等になっています。まず、参考資料1をご覧ください。こちらが「障害者雇用納付金制度についてマル1」です。まず、いちばん上の「考え方と概要」の部分ですが、この制度の考え方としては2つの目的があります。下線を引いている部分ですが、障害者雇用にともなう事業主間の経済負担の調整を行うこと。それから、障害者雇用を促進し、雇用の継続を図るのが目的です。その目的のために、雇用率未達成の企業から納付金を徴収して、雇用率を超えている企業に対して調整金という形で支払うとともに、障害者雇用を促進するという目的のために、達成企業かどうかを問わずに企業に対して各種の助成金を支給している、というのがこの納付金制度の考え方です。
 納付金制度は障害者雇用率を達成させるためのいわゆる罰金、という位置づけで考えられている方もいますが、我が国においては、経済負担の調整をすることと、それから、雇用促進及び継続を図るという目的のための制度としております。罰金的な位置づけでないというのは、このお金を払ったとしても雇用しなければならないという雇用義務は履行されない、というのが日本の特徴です。
 なお、納付金につきましては、雇用義務の対象となる、現在であれば56人以上の企業から徴収すべきというのが原則ですが、経過措置として、当分の間、200人を超える規模の企業で雇用率未達成の企業から徴収をしております。また、納付金の対象とならない企業規模、200人以下の企業については、障害者雇用にともなう経済負担を軽減する、それから、その雇用を奨励するという観点から、一定の雇用水準を超える200人以下の企業に対しては「報奨金」という形で支給しています。それを図で示したのが下の図です。
 なお、納付金の額、それから調整金の額は、※の1番をつけています。下の※1に記載しているように、法律上、納付金の額については雇用率を達成するまでに障害者を雇用するとした場合に、それから、調整金の額は雇用率を超えて雇用するとした場合に、それぞれ障害者1人につき通常に必要とされる1か月当たりの特別費用の額の平均額を基準として設定するとされています。雇用にともなう費用は、基本的に障害者雇用が進んでいけば1人当たりにかかるコストは逓減していくことから、納付金の額のほうが高く、調整金の額のほうが低くなっています。
 なお、ここで言う特別費用とは、法律においては、障害者を雇用する場合に、必要な施設または設備にかかる費用。例えば、障害者用の機械とか設備、スロープなどの設備の設置費用。それから、適正な雇用管理に必要な措置にかかる費用と書いてありまして、例えば、指導員とか相談員などの配置をする人的支援、特別な訓練とか研修などの実施にかかる費用、その他、雇用にともない特別にかかる費用ということで、特別な手当などの費用とされています。これらの費用については5年ごとに調査を行いまして、その費用の平均額と雇用率に達成するまでの費用、それから雇用率を超えて雇用する場合の費用、それぞれ算出をして、納付金額、調整金額を決定しています。
 いま特別費用の話をしましたが、基本的には障害者雇用にかかるであろう必要な設備、ハード面にかかる費用、それから人的な支援その他、雇用管理にかかる費用ということで、我々がこれまでに議論してきた合理的配慮の内容と非常に合致するものではないかと考えます。
 なお、参考資料1の3頁には、先日5月23日に労働政策審議会障害者雇用分科会で、納付金の額と調整金の額をご審議いただいて、現行どおりとするという答申を得ていますが、いま申し上げたように、平均額、雇用率に達成するまで、それから雇用率を超えて雇用するというところでの費用の格差を出して、納付金の額と調整金の額をそれぞれ決定しています。
 2頁です。いま現行の納付金制度の解説をしましたが、その2つの大きな目的を踏まえて、その制度における納付したものを分配・調整する仕組みをイメージ図として描いたものが、こちらの図です。先ほども説明したように、四角囲みで、性格としては、まず「調整金的な性格」として、事業主間の障害者雇用にともなう経済的負担の平等化のために調整をする。もう1つが、雇用をさらに進めていく。これは「共同拠出金的な性格」と書いてありますが、各種の助成金を支給して障害者雇用をさらに進めていく、という2つの性格がありまして、その負担調整を示しているものがこのイメージ図になります。
 イメージ図の解説ですが、左側の縦軸に障害者の雇用割合を取っていて、横軸には事業主の分布を示しています。また、同じ縦軸の右側です。これは記載はしていませんが、事業主の負担額を取っていまして、AからH、便宜上直線にしていますが、そこに事業主が分布することを表しています。つまり、障害者雇用の割合が高い事業主は、それだけ事業主負担も高くなる、多くなることから、例えば、法定雇用率を超えている事業主であれば、図でいえばAからDまでに位置することになっています。逆に、雇用していないと、障害者雇用の割合が低い事業主については、それだけ事業主の負担も小さいことから、図でいえばEからHの方向に位置づけられています。この図の中に、法定雇用率のラインをBからF、それから事業主の規模を問わない、我が国全体の平均的な雇用割合をCからGに示しています。
 先ほど来申し上げている、納付金制度の2つの目的がどのようなイメージで納付され、それから分配・調整されているのかが、太い矢印で示した2つのものです。まず1つ目、斜めの矢印です。納付金制度の性格としては調整金的な目的として、経済負担を平等化するとあります。それはイメージ図の右側のマル1に書かれているように、平均的な雇用割合にも達していない事業主から、平均的な雇用割合まで雇用した場合に負担したであろう費用が△EHGになります。その部分を納付金という形で徴収して、平均的な雇用割合を超えて雇用する事業主が負担する分、これは△ACEに該当し、その負担分を調整するとして、斜めの太い矢印を記載しています。説明書きでは右側のマル3になりまして、△EHGから△ACEということで、これが負担の調整です。
 また、納付金制度の目的で、残りの1つが共同拠出金的な性格として、日本全体の障害者の雇用促進を図る目的があります。それは、平均的な雇用割合から法定雇用率までの差分を埋めようとするものであり、ここには失業が生じているわけですから、それを解消する効果です。イメージ図の中でいえば□BCGFが該当して、この失業している障害者に対する雇用促進の経費として、右側でいえばマル2で徴収するとなっています。結果としてどうなるかというと、右側のマル4に書いてありますが、□BCGFのうち□BCEDの部分については、雇用促進経費として徴収される分と、それから、先ほどマル3で申し上げた、負担の調整として支給される分が相殺されることになって、実質的にはこの部分は徴収されないことになります。
 マル1からマル4の、負担の調整・分配の結果、右側のいちばん下の説明書きに書いてある、実際の納付金の徴収は△DHF、つまり、法定雇用率が未達成である企業が、本来なら雇用率まで達成した場合に負担したであろう差分の△分を徴収されることになって、結果としては、納付金として徴収したものを△ABDに調整金として支給していく形です。これはあくまでも納付と、調整、分配をイメージ図で捉えているので、ご理解をいただければと思います。
 最後に、参考資料の5頁目、納付金制度の財政状況を示しています。決算値として出ているのが平成22年度までです。平成16、17年度以降を見ていただくと、障害者雇用の進展とともに納付金額、つまり、いちばん上の収入額では収入は減少していて、逆に、その次の中に「調整金」とありますが、調整金の支給額は年々増大している状況です。結果として、平成22年度の決算値で申し上げれば、収入が約137億円ですが、総支出額、調整金、それから報奨金、助成金等を合わせた額が236億円となりまして、単年度では100億円弱の赤字という状況になっています。
 次に、参考資料2-1です。納付金と調整金の詳細な説明はしましたが、参考資料2-1、それから、2-2が納付金の財源を使って行っている助成金です。2-1がその概要、詳細は2-2に記載していますが、概要のほうで掻い摘んで説明します。
 どういった種類の助成金があるかですが、いちばん上の○です。「障害者作業施設設置等助成金」です。障害者が作業を容易に行うことができるように配慮された作業施設や作業設備を設置した場合に、障害者1人当たり450万円を上限として助成しているものです。例えば、作業施設のほかに、次の○で「障害者福祉施設設置等助成金」とありまして、これは休憩所とか保健室、それから食堂などの福利厚生施設といったものを障害者が利用できるような形で設置した場合に、また一部を助成するという助成金です。次、「障害者介助等助成金」です。これは、雇用管理のために必要な介助者とか支援者といった方々を配置したり、または委嘱した場合に、それに要する費用の一部を助成するものとなっています。
 助成金はメニューが非常に多様でして、詳細な説明は割愛します。助成金ですので、それぞれの助成金についてはそれぞれ要件が設定されていて、助成金ごとに対象となる障害者、支給期間、限度額が設定されています。詳細については参考資料2-2をご覧ください。これらの助成金を見ていただくとわかるとおり、これまでこの研究会で議論されてきた、合理的配慮の内容に該当するものが多数含まれているのではないかと、我々としては考えています。
 続きまして、参考資料3-1です。実は、障害者雇用にかかる支援措置は、先ほど納付金財源で説明したもの以外に、一般会計、それから雇用保険の特別会計における助成金措置があります。資料3-1の右側にマルで一般、マルで雇用と書かれているのが、それぞれ一般会計と雇用特会の財源としている区別です。この助成金の詳細については、参考資料3-2以降にそれぞれの助成金の内容が書いてありますが、3-1のほうで簡単に説明すれば、例えばマル1の「障害者試行雇用(トライアル雇用)事業」です。これは、障害者雇用に不安を抱える事業主、それから働くことに不安を抱える障害者とがトライアル、試行的に雇用を行ってマッチングを図るものです。これは、3か月以内にそうしたトライアル雇用を行う事業主に、奨励金という形で月4万円を支給しているものです。
 また、マル4については、「職場支援従事者配置助成金」とあります。これは、重度知的障害者、それから精神障害者の雇入れにともなって、そういった方々を職場で支援する方を配置した場合に、事業主にその配置にかかる経費の一部を助成するものです。
 それぞれ、特別会計、一般会計、助成金のメニユーがありますが、特に雇用特会のほうでは、財源が雇用保険ですから、失業の解消が目的にありますので、雇用の継続を支援するよりは、雇入れを支援するという助成が中心になっています。詳細については参考資料3-2にあるのでご覧ください。
 少々長くなりましたが、資料2と参考資料の説明は以上でございます。
○岩村座長
 ありがとうございました。ただいまご説明いただきました合理的配慮の提供の実効性を担保する仕組みとしての事業主への助成の在り方と、それから過度の負担については、それぞれ別個の項目にはなっていますが、実際には関連する事柄です。ですので、この2つの項目については併せてご意見を伺いたいと思います。
 とりわけ平成20年の研究会におきましては、事業主への助成については、現行の納付金制度の仕組みを見直すことによって対応していくべきというご意見がありました。事務局からは、納付金制度やそれに基づく助成金、さらには一般会計や特別会計による助成金などについてのご説明をいただきました。こうした現行の制度を踏まえながら、合理的配慮と関連づけて事業主への支援措置を考えて、採用していく場合に考えられる問題点などを含めてご意見をいただければと思います。
 実は、合理的配慮を事業主の法的義務だとしますと、事業主への支援措置についての公的助成が理屈の上で整理できないという、非常に難しい問題を抱えています。そのため、一般会計や特別会計による助成が現在行われていますが、具体的には雇用保険特会による助成も行われていて、それを合理的配慮と被るような形のものというのは、多分、合理的配慮を義務化してしまうと維持するのが非常に難しくなるだろうとのことです。その辺のところをどうするのか。
 それから合理的配慮については、今回の資料1のペーパーの中で整理されている議論にもありましたように、非常に個別性が高い。また、それに対応して、企業の側の合理的配慮についても個別性が高いことになってしまいます。いまご説明いただいたような、従来とってきたような助成金という枠組みでできるのかという、厄介な問題が存在しています。つまり、いまのような助成金のつくりでいくと、膨大な数のメニューを作らないと対応できないということです。非常に厄介な問題を抱えています。
 もう1つは、いまの助成金は期限付きのものが多いのです。性質上、1回やればおしまいというのもありますが、そうではなくて期限付きというものです。しかし他方で、合理的配慮そのものは継続して行わなければいけないとなると、期限付きのところに関係してくるような助成金は、どう整理したらいいのかという検討課題もあります。
 過度の負担との関係では、前回の中間報告などにありましたように、過度の負担が発生する場合については合理的配慮の義務は負わないと整理するとすれば、「これは過度の負担ですね、したがって、事業主は合理的配慮の義務を負いませんね」、という状態をどうやって確定するのか、その辺の問題も存在します。合理的配慮について、これは前にも議論しましたが、逆に言うと、障害者サイドと事業主サイドとの間で、どういう形で場を設定して話をしていくのかという問題と関係することでもあろうかと思います。
 どうぞ、どういう点からでも結構ですので。先ほど申し上げたように、今日だけではなくてもう1回やりますので、いろいろご意見をお出しいただければと思います。
○駒村委員
 慶應義塾の駒村です。具体的な制度の話に入ってきて、ここからは思いの部分とともに、極めて現実的というか実証的な議論に入ってこなければいけないのかと思います。
 いまご説明にあった、あるいは平成20年の研究会で議論があった「納付金」というのは、これの利用が1つの候補であるというお話だったわけです。まず、納付金制度については、現行において、雇用率達成について企業は義務を果たさなければいけない。そのために、障害者雇用促進にともなう費用分を調整する機能が1個あります。それからその達成を、現状は労働市場のメカニズムを誘導することによって達成しようとしていると。ある種、市場に誘導的なものを入れていくことがこの制度のエッセンスであるわけですが、雇用率の達成に加えて、新たに合理的な配慮義務が企業に発生する、そのコストを企業が対応するという考え方ですので、現行の仕組みを強化していくのが1個の選択肢だと思ってお話を聞いていました。
 ただ、先ほどの数字を見ていても、財政的な強化が当然に必要ですし、費用の幅も個別性が高いという意味でかなりバラつきも大きくなって、具体的にどういう形で支援をしていくのか、誘導していくのかが課題になってくると思います。
 まず現状が、先ほども説明をいただいたわけですけれども。5月23日に開催された根拠ですが、この辺ももう少し細かいデータをいただいた上で、この合理的配慮をさらに考慮したらどういう姿になるのかという議論をしてみたいと思います。市場に介入する仕組みですので、数字を間違えたり制度の係数を間違えると予期しない結果になりますので、それは丁寧にやらなければいけないと。
 例えば先ほどの説明だと、特別費用のデータが出ていましたが、これは平均額です。例えば、これは制度が定着してからどういう傾向になっていたのか、分散がどう動いていったのか、それから、特別費用の平均額が障害雇用者数とともに逓減していくというお話もあったわけですが、どのくらいの規模でそういうことが発生しているのか、1.28と0.65というのはどう動いているのか。まず現状はどうなっているのか、さらにこれに合理的配慮の費用を入れていったときにどういう姿になっていくのかというところで、ここから先は何か、もしこれを使うとすれば精緻な議論をしなければいけないのかと思ってお話を聞いていました。
○岩村座長
 ありがとうございました。いまの駒村委員のご意見、ご質問について、事務局のほうで何かございますか。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 課長補佐の西川です。ただいま駒村委員からいただいたご意見の中で、特別費用の関係については、お示しできる資料、それから、これまでどのように経過でなってきたかがありましたので、これは過去の資料を含めてお出しできるものはお出ししてご検討いただきたいと思います。
○岩村座長
 では事務局のほう、よろしくお願いいたします。駒村委員、よろしいですか。
○大胡田委員
 財政的な裏づけの話も大変重要なのですが、実際に助成金の下で雇用を求めている障害者の立場からの話を2点ほどしたいと思います。
 1点目が、私も詳しくないのですが、特定求職者雇用開発助成金という制度があるらしいのですが、これは障害者等を雇用した場合に期限付きで2年間は給与の一定金額、10万円ぐらいの援助が出るという制度らしいのですが、この期限があるために、私の知り合いの数人も、2年経つと雇止めされると。結局、2年経つとその会社には別の障害者が勤めているというケースを何件か知っております。この期限付きの助成金が常時雇用につながってきていないのではないかという危惧を持っています。ですので、障害者1人の人生の中で安定して仕事をしていくためには、期限付きの助成金というのは非常に問題ではないかという気がしています。
 あとは、先ほど課長補佐の説明の中でもありましたが、この助成金の仕組みというのは、一見して非常にわかりにくいです。私がチラッと見ても、ちょっと勉強しないとわからないなという感じなので、事業者サイドからすると、本当にわかりにくいようなのです。障害者が、私を雇っても各種助成金があるので費用負担は少ないと言っても、よくわからない。どうせ会社側が事務負担を背負い込むのだろうから、面倒だから雇わないということになってしまっていて、そこが1つ壁になっているという話を聞きます。ですので、できればもっとわかりやすいシステムというのは当然なのですが、障害者自らが申請に関与できるような仕組みを作って、私はここまで申請してある、私を雇えば自動的にこのお金が出ると。そういうところまで御膳立てできるようなシステムが必要なのではないかと思っております。
 もう1点は理念的な話なのですが、公的な義務にした場合に、助成金を支給することが理屈として難しいのではないかという座長のご発言があったのですが、公的な義務としても、例えば教育がそうであるように、私学にも助成金が出されていますが、公的な目的を設定する、例えば障害者でいえば、誰もがともに生きられる社会を作るという公益に向けられた助成金であれば、国民も一定程度の理解があるのではないかと思います。私も教育分野、環境分野等で、何か公的な義務を果たしていれば受けられる助成金というのがあるのではないか、こういう辺りをできれば事務局で調べていただければと思っています。
○岩村座長
 いまの大胡田委員のご意見、ご質問について、事務局からお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 大胡田委員から3つほどご意見をいただきました。1つ目の「特定求職者雇用開発助成金」についてです。参考資料3-2の6頁に概要があります。この財源については先ほど説明は割愛いたしましたが、雇用保険、失業保険の特別会計から支給しているもので、雇入れの促進していくことが主たる目的です。概要に書いているように「高年齢者や障害者など」とありますが、特定求職者雇用開発助成金については、高齢者や障害者のみならず、いわゆる就職困難者に対して雇用を促進していこうという趣旨の助成金です。
 基本的には雇用契約、雇用関係というのは、労使での民民の契約が一般の中で、いわゆる失業対策として国が支援していくというところで助成をするわけですから、つまりこれを無期限に支給していくというのは、本来であれば資本主義ですから、民民で契約される労働市場の中で、それを無期限に延長して支給していくというのは、歪みが生まれてくるのではないかというところもあって、当然それは一定程度雇入れが促進されるという効果が終わったときには、当然労使間での決定になっていくのが原則だと思います。
 ただ、この特定求職者雇用開発助成金とは別に、先ほど座長から話があったのは、納付金助成金の中で、例えば合理的配慮に関連するような措置を講じたときに支援をする、というものにも期限が付されているというのは、合理的配慮は雇用期間中ずっと継続するものであることから、期限はどうするのかは検討するべき事項ではないかというご意見だと思いますので、この特定求職者雇用開発助成金はその財源とともに、いわゆる雇用契約という原則から若干違うのかなとは思います。
 2点目については、助成金の仕組みが複雑で不明確だというご指摘でした。これは事業主だけではなく、私も参考資料を3番までお配りして、ほとんど説明は割愛しましたが、非常に複雑です。なぜ複雑になるかと言いますと、先ほど座長からもお話があったように、障害特性、障害種別、事業主の業種、業態、職種というのは非常に複雑で、それにきめ細やかに対応していこうとなればなるほど、当然メニューは複雑になっていくわけです。いわゆる交付金という形で事業主にお金を投げて、あとは事業主に任せるというやり方をしてしまうと、我々が意図している政策効果が生まれない場合もあるので、そこはtrade offというか、難しい関係かなと思っています。
 ただ、不明確さ、わかりづらさ、複雑さゆえに、障害者が申請をする必要、そういった仕組みでもいいのではないかというお話だったと思いますが、これはあくまでも事業主に支援をしていくという助成ですから、特に一般会計、それから雇用勘定の特別会計についても、障害者に申請権をというのは、ほかの雇用対策の考え方とも照らし合わせても、そこも違うのかなと思います。ただ、不明確、複雑、煩雑というのは、ご意見としてはいただいて、なるだけ簡素化をやっていかないといけないかと思います。
 3番目の公的義務を課した場合に助成が難しいという点で、これは座長からもお話があったことでして、例示として大胡田委員から私学助成のお話がありました。私も疎覚えで、次回までに課題としてちょうだいしたいと思うのですが、私学助成やいわゆる社会福祉法人などに対する公費の助成、補助というのは、別の理屈を立てて助成がなされているのではないかと思います。たしかこれは憲法問題でよく問題になるような話だったと思いますので、そこは勉強させていただきたいと思います。
 それから、1点目の特定求職者雇用開発助成金の関係で、先ほど大胡田委員からの具体例では、期限付きで支給されて、その期限が終わってしまうと解雇なり辞めさせられてしまった。雇止めになってしまって、実は違う障害者が新たに雇用されているということですが、財源が雇用保険で、失業を解消して雇用促進を図るという目的ですが、当然、雇用継続はされていないといけないわけです。雇止めになった場合には、その事業主については、次に新しい障害者を雇っても支給が出ないという仕組みになっていますので、2年ごとに別の障害者を雇うという形には仕組みとしてなっていませんので、そこは事実関係をご説明させていただきます。以上です。
○大胡田委員
 そういったお答えがくることを予定して発言したところですが、当事者の実感としてはそういう感覚があるということです。ですので、例えば2点目の話でいうと、助成金をどんなに充実させても、それが事業者サイドが事務負担をしてきちんとやらないと助成されないということであると、現状は変わらない。先ほど私が申したように、障害者が全部御膳立てをして、私を雇えばこういうのが全部付いてくるというところまでできないと、現実的な結果としての改善につながっていかないというのが私の意見ですので、よろしくお願いいたします。
○岩村座長
 そこは大変重要なご指摘だと思いますので、そこも含めて合理的配慮についての助成金の組み方をどうするのかを考えていく必要があろうかと思います。現在の雇用特会でやっているものは、もともと財源が使用者側の保険料からきていることがあるので、それで事業主への助成金という形をとるという組立てになっている。雇用特会の場合はそういう限界があるのですが、合理的配慮の場合の助成金をどう仕組むかというのは、どこまでやれるかについてはもう少し検討の価値があろうかと思います。ほかにいかがでしょうか。
○山岡委員
 日本発達障害ネットワークの山岡です。いま大胡田委員が言われた2つ目の点で、障害者自身が申請するような手続きというのは非常にいいことだと思いますが、例えば知的障害、発達障害の方の一部には、そういうことが自分でできない方もいるので、そういうことにもご配慮いただきたいと思います。
 それから、期限のある調整金、助成金の問題ですが、大胡田委員や座長、事務局からご説明のあったとおり、実際にそういうことがあるのです。合理的配慮という場合に、おっしゃったとおりなのですが、期限なくずっと必要なものがあると思います。是非この研究会の中で、私どももできれば事例を出したいと思いますが、こういうものについては期限なくできるような仕組みが必要だ、ということを是非謳っていただきたいと思うのです。
 もともとジョブコーチなどは、ある一定の期間の職場に定着するための制度ですが、例えば2年目、3年目になったときに、仕事を変えたいといったとき、雇用主側からジョブコーチを要請できるようなことがあると、新たな仕事を組むことができるというようなことがあると思います。これは雇用に関する制度ではないかもしれませんが、例えば発達障害者、知的障害者の場合は、雇用を継続していくためにも相談支援が長期的・継続的に必要な場合があります。私どもでももう少し事例を集めたいと思いますが、この研究会の報告書の中に、こういったものについては長期的な支援制度が必要だということを謳っていただきたいと思っています。
 それから、座長から言われた、個別性が非常に高いというところで、どのように対処していくかということです。最終的に個別なので謳い様がないということではなく、おそらくガイドラインなどでいくと、いまもそうなのですが、自立支援法でいくといろいろなサービスのメニューがあって、そのサービスのメニューの中から障害者は使っていくわけです。標準的なサービスのメニューがいくつか用意されていて、その中で利用していくのだろうという気がするのです。助成金の使い方の中では、そのメニューの中で何に使うかというのは個別性があると思いますが、標準的にどういったサービスメニューが提供できて、助成ができるかということを何かで謳っていくべきだろうと思います。抽象的な言い方で申し訳ないのですが、そのような意見をもっております。
○岩村座長
 いま山岡委員のおっしゃったイメージとの関係で、例えば知的障害者だと、標準的には普通の職場で働くためにはこういうサポートが必要だということをいくつか定型化して、メニューが提示できれば、それに応じて助成金を考える。さらに、実はそれではカバーできない部分が残りますから、そこはどうするのかというのは、最後の最後のギリギリにいくと残ってしまうのですが。
○山岡委員
 標準的メニューで9割ぐらいがカバーできるという話ですよね。
○岩村座長
 ほかにいかがでしょうか。
○武石委員
 武石です。先ほどの駒村先生からの「この議論をするに当たってはいろいろなシミュレーションが必要ではないか」というご意見に関連する点です。まず、合理的配慮に義務を課すというときに、助成措置をやるやらないという選択があって、ここの議論でいうと、やらないというのはないのだと思います。助成措置を何らかの形でとっていくというときに、雇用特会、一般会計での措置というのは、非常に理屈としては難しいのかなという印象を持っています。この納付金制度の中で、事業主から集めたお金の中で助成措置を考えるのが、いちばん筋としては通りやすいのかなという気がします。
 そのときに、今は、達成している企業だけに調整金が支払われていると思うのですが、合理的配慮になってくると、1人でも障害者を雇うと合理的配慮が必要になるということで、ものすごく対象が広くなってしまう可能性があって、そうなったときに納付金の額が膨大になっていく可能性があると思います。それと、障害の対象で、これも発達、精神など、いろいろ入ってくると、そこで母数が大きくなっていくので、現実的な形での納付金制度が回るのかというところを非常に心配しておりますので、そこをお願いしたいと思います。
 あと、過度な負担なった場合に義務を超えるので、理屈の話ですが、過度な部分に関しては雇用特会辺りで対応することが可能なのかなということが2つ目です。
 それから、合理的配慮はものすごく個別性があるというのは、配慮自体は個別性があると思うのですが、助成措置という制度を作るときにはある程度類型化をしていかないと、3万円かかった、7万円かかったというのをいちいち支援していくことは難しいので。類型化していくときに、ものすごくシンプルな類型化から、かなり複雑な類型化まであって、タイプを100個作るのか、3個作るのかによって、全然対応が違ってくると思うのですが、事務的な負荷もあると思います。ドイツ・フランスが人的な支援などで類型化していると思うのですが、私はそういう形での助成の中身をタイプ分けをしていく必要があるのかなと考えています。
○岩村座長
 1つ面白い論点としては、過度の負担で、結局事業主は義務を負わないというときに、さらに一般会計ないし特会で、助成金なり補助金が付けられるのかというご質問だったと思いますが、そこはいかがでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 一般会計も雇用特会も財政当局との調整は当然あるので、ここで付けられる付けられないという話にはならないのですが、考え方としては武石委員がおっしゃったように、義務化しているものに助成するのは難しいのであれば、義務化の外にいっているものであれば助成ができるというのは、理屈上はそうなるのかなと思って聞いておりました。
 例えばいまの一般会計、特別会計の中でも、参考資料3-1にお示ししているように、?、?というのは、「特例子会社等設立促進助成金」「重度障害者等多数雇用施設設置等助成金」で、これは軽度の人も含めて単に法定雇用率を満たすといったときに助成をするというのではなくて、そのハードルを超えて重度の方をたくさん雇っていくと、当然この会社は雇用率は超えているのですが、超えて重度の方をたくさん雇うといったときに、すでに助成はしていますので、そこの仕組みがいまあるということは、過度の負担の場合には義務を課されないわけだからこそ、助成が可能ではないかというのは、おっしゃるとおりかなと思います。
○岩村座長
 ほかにいかがでしょうか。
○駒村委員
 駒村です。労働市場への介入ですので、きちんと理屈の整理をしておいたほうがいいと思います。先ほど議論のありました特会、一般会計あるいは納付金、どういう仕組みを使うのかということですが、経済学の中では、私的財と公共財という発想があって、私的財というのは、便益が個別の企業なり個人に留まっているようなものについては、基本的には市場メカニズムの中でやっていただくわけです。今回のように、合理的配慮への対応が個別企業にとって義務であるとなってくれば、当然、個別企業にとって対応しなければいけない、ある種私的財的な性格がある。それは市場で放置しておいてもうまくいくわけではないので、政府による納付金会計のような形での一定の介入をすることは、正当化されるのかなと思います。
 ただ、先ほど大胡田委員がおっしゃったように、合理的配慮ということによる障害者雇用の質の向上自体が社会にとって非常に意味がある、外部性があるという理屈づけであれば、財政的な支援を正当化することができるとも思いますので、その辺をどうやって理屈づけをしていくのか。原則は、個別企業に義務づけということを明記した以上、最小限の市場への介入である納付金を利用していくというのが原則で、そこから広がった部分については、公共財的な性格、外部性があるので、一般財政からの支援も求めていきたいと。こういう支援の理屈の整理も必要なのかなと思ってお聞きしておりました。
○岩村座長
 障害者雇用について、雇用義務を課して雇用率をやっているというのも、通常の労働市場のメカニズムに委ねたのでは労働市場から排除されてしまう人たちがいるという、一種の市場の失敗が起こるので、そこに国家が介入してという説明に経済学的にはなるのでしょうね。
○駒村委員
 はい。
○岩村座長
 ほかにいかがでしょうか。
○石井委員
 石井です。合理的配慮を義務づけるのであれば、助成金は難しいということではありましたが、すでにお話は出ていますが、納付金制度であればそもそも事業主間の経済的負担の調整ですので、そこはあまり違和感なく義務づけたこととの整合性は失われないのではないかと思っています。そういう意味で、納付金制度を利用する形での助成が考えられていいのではないかと思います。
 過度の負担はこの先の議論かもしれませんが、過度の負担かどうかについては企業規模、経営状況もありますし、そこはある程度これからの議論で類型化、項目化するのだと思いますが、諸般の事情を総合する中で、当然どのような助成があるかというのも重要な考慮要素になると思います。
○岩村座長
 いま石井委員から、義務づけたことに対する助成をするにしても、納付金制度からならあまり問題ないのではないかというご意見でした。そこは事務局はいかがでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 課長補佐の西川です。おそらく平成20年の研究会でも、石井委員のご意見の前にさまざまなご意見をいただいていたのも、納付金制度の負担調整、平等化をするという理屈であれば支給できるのではないかというのは、おっしゃるとおりでして、事務局としてもそのような方向で考えていくのが、いちばん望ましいのかなと思っています。
 もう1点の過度な負担のところで、あまりそこまでまだ議論はいっていないのですが、ここも合理的配慮が多様性・個別性があるという反面、過度の負担の部分というのも、どこからが過度なのかというのも、個別性・多様性のある中で、いま言われた経営状況、企業規模のようなものも何らかの類型化はするものの、それを一律に決めていくわけではないというようなご意見が理屈としては整理できるかなとは思います。
○北野委員
 北野です。資料2で、特に諸外国の過度の負担も含めてご質問させていただきます。いまの話は過度の負担の話と重なってしまうのです。というのは、いちばん大きな問題は障害者の合理的配慮に関する請求権を明確にできるかどうかだと思うのです。請求権を明確にしない限り次の展開は出ません。ですから、障害者の請求権を認める場合、例えば過度の負担でいうと、「ドイツ・フランス・イギリスともに『過度の負担』に関する法的な定義はないが、ドイツ、フランスでは公的な助成を考慮した上で、過度な負担か否かを判断」と書いてあります。たしかフランスは障害者の個別の請求権を認めていて、ドイツは認めていません。逆かもしれませんが、どちらかが認めているはずです。
 この公的な助成の問題でいくと、請求権を明確にすることと、助成がどう連動しているかが気になっています。簡単に考えますと、合理的配慮というのはなぜ動くかというと、いま言ったように障害者の請求権で合理的配慮が必要になってくる。そのときに事業主に法的な義務が課される。ただ、問題は過度の負担がある場合はそれは除かれる。逆にいうと、過度な負担があるかどうかについて、イギリス、ドイツ、スペインは、公的な各種の助成金を考慮するということですから、当然一定の助成がなされている場合はもらっているのですから、基本的に過度の負担とは見なさない。
 これはアメリカなどでも、ADA法ができる前は、リハビリテーション法504条のときは、1万ドル以上の連邦政府からのお金が流れている企業については、基本的には各種の差別を許さないということになっていましたから、お金の流れをそういう形で規定することがありますので、基本的には、そういうときには公的な助成がある場合は、過度の負担というのは特定の場合のみだと思われます。
 問題は、事業者に過度な負担が伴うが、公的な助成がない場合、あるいはあっても助成を上回ってしまう場合です。その場合は、個別の障害者の状況に応じて、個別の助成金を期限を付けずに申請する仕組みを企業に認めて、それを出す仕組み。はっきり言うと調整金、報奨金、助成金という仕組みを整理されて、一般的な障害者の助成、つまり障害者の雇用の促進のための助成金の一般の部分と、過度な負担に対する助成という形で仕分けして、整理したらどうかと思いました。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長です。根本的にこの問題が厄介なのは、個別性・多様性が強いことを前提にして、制度の組立てをしなければいけないというところで、過度の負担もそういう意味で、個別性・多様性が強い話です。ただ、現実に制度として定着させなければいけないということを、制度を運営する行政側としては背負わなければいけません。そういう中で、どのように落としていくのかということだと思います。
 多様性を否定してしまったら、この合理的配慮の議論というのは、一切できなくなってしまいますし、この研究会でも何度も指摘されていますように、特に知的障害者、精神障害者、発達障害者への合理的配慮を考えることについて、内閣府の差別禁止部会でも、その辺りはきちんと議論されていないという話はありましたが、それは多様性の問題ゆえではないかと思っています。ですので、その辺りは、あるべき論と実際にどのような形で制度に定着させていくのかについて、きちんと整理しなければいけないと思います。ただ、多様性を全面的に認めて助成金もそれに合わせるという話をすれば、いま以上に助成金は複雑なものになるのははっきりしています。
 あと問題なのは、この合理的配慮の提供をめぐっての問題だけではなくて、特に一般会計、特別会計から何らかの助成をするということであれば、それは雇用対策のロジックが一方で影響してくるものです。もともと、基本的に労働市場で自由にやることが大原則になっている中での、市場に対する干渉を政府がしているわけです。ただ、障害者については就職困難者中の就職困難者ということで、今日お示しした障害者雇用対策の各種助成金というのは、就職困難者の中でも充実した手厚いものになっています。
 いずれにしても、障害者雇用対策という雇用対策という側面と、いまの納付金制度における納付金、調整金、報奨金の話と、助成金の話について、合理的配慮の提供という概念を持ち込んだ瞬間に、考え方自体に大きな変更を余儀なくされますが、それを現実的にきちんと制度がワークするようにするためにどうしたらいいのかを考えなければいけないということで、あえて過度の負担と公的支援について、ほかの項目に比べて議論の時間を長く取っています。割り切りがしにくい。特に制度化するに当たって、非常にハードルが高いものであるということで、あえて時間を2回に分けて取っています。
○岩村座長
 平成20年の研究会以来、とにかく合理的配慮を組み込む必要があること自体は異論がなくて。事業主の義務という形で入れるのか、そもそも第3の差別類型という形で入れるのかという議論はあるにしても、いずれにしても合理的配慮というもの自体を入れ込んでいかなければいけないということについては、異論がないと思っています。ただ、そうはいっても、合理的配慮をするということになれば、お金のかからないものもありますが、事業主にとってはお金のかかるものもあるので、そこのところをどうするかということが常に問題になってきています。
 先ほど山岡委員がおっしゃったように、ある程度メニュー化して助成金の体系を作った上で、最後に残った特殊な事情でメニューに乗れないようなものについて、さらに別枠の仕組みを考えるのか。さらに過度の負担になってしまうケースについて、さらに別途理屈を立てて何らかの形で助成するのか。現実的に考えると、そういう制度設計の組み方が考えられるのかなという気はしますが、いずれにしろ、そこのところはいろいろご意見をいただければなと思っています。
 もう1つ関連する項目としては、合理的配慮が何か、過度の負担とはどこまでなのかを、一体どのようなプロセスで誰が決めて、最終的に当事者が納得しないときに、どのようにしてそれを処理するのかというもう1つ別の問題が、それとはしかし全く別ではなく、密接にかかわる問題がもう1つ存在するだろうなと私は思っております。
○山岡委員
 山岡です。いま議論の中で、合理的配慮について義務化をすると国での負担は難しいという理論的な話があって、それはそうなのかなと思います。我々研究会として、現実感のない案を出しても意味がないと思うのです。例えば先ほど資料でいただいた「障害者雇用納付金関係収支状況の推移」を見ますと、平成22年度は約100億円の赤字になっていて、従来、積立てがあったものをどんどん食い潰していて、雇用率2%になるとまたこの収支が改善するのだと思うのですが、この100億円という規模の赤字が出ていても、従来の積立てがあるので何とか保っているのが現状です。
 もし一般会計や特会から出せなくなったときに、どのぐらいの影響があるのかというのが、規模的なイメージがわからないのですが、参考資料3-1の10個の助成金や開発金ですが、この予算規模がどのぐらいかについて、次回にでもお示しいただけると議論の中で現実感が出るかなと思うので、お願いします。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長です。資料については、また次回にでもお出しできるようにしたいと思います。念のために申し上げておきますと、参考資料3-1に「一般会計及び雇用保険特別会計の助成金等の概要」とありますが、ここに載っているのが、すべて合理的配慮の提供と連動しているものではないので、雇用対策の論理として、雇入れを積極的にして、就職困難者の障害者雇用を促進するという観点で助成するということ自体までも否定されているわけではありません。あくまでも合理的配慮の提供と連動している話については、厳しいということを言っているだけですので、合理的配慮の提供を入れた瞬間に、すべてが何もできなくなるという話ではないということです。
○岩村座長
 いま山岡委員がご指摘になって、先ほど武石委員も触れられましたが、合理的配慮に関しては助成金をやるとして、最終的にはいまの納付金制度の枠の中で、一体どのくらいお金が使えるかというのは、現実的には最後の最後になってくると、非常に重要な問題だと思います。ただ、あまり最初からそれに縛られて議論をしてもということもあり、他方で、全く念頭に置かずに議論をするのもという、非常に兼ね合いの難しいところだとは思います。
○野澤委員
 思いだけではなくて、その思いをきちんと理屈にしなければいけないというのはわかった上で、あえてですが、いまの納付金、調整金というのは、雇用率という定量的な根拠で運営されているわけです。これをもう少し合理的配慮をきちんとして、継続しているという、質を問うような尺度を盛り込んだモデルを示せるものなのか、示せないのか。変な質問かもしれませんが、事務局にあえてお投げしたいなと思っています。
 それと1つですが、先ほどもいろいろと議論がありましたが、できれば助成金を使って、きちんと合理的配慮をしている企業のメリットが大きくなるような市場原理が働いて、そういうことをしない企業は淘汰されていくようになれば、全く理想的で問題ないと思うのですが、なかなかそうはいかないので、義務を課して最低限のところを保障していきましょうということです。そこを何らかの理屈を付けて、乗り越えていきたいと思います。
 それと、多様性・個別性に対応していこうとすると、細分化されていくわけですが、これは限界があると思うのです。むしろそれを乗り越えるには、現場の裁量を増やして、もっと自由な使い方ができるような助成金を考えたほうがいいのではないかという気がします。これは一般納税者の感覚からして、納得が得られるものなのかどうかというのはありますが。というのは、細分化されるほど使い勝手が悪くなって、実際に使いにくい。そういうのをうまく使いこなせるようなコンサルがビジネスを見い出していって、企業の支出という面で、そういうところにロスが発生していくという矛盾も感じていますので、もっと使い勝手のいい自由度の利くようなもので、個別性・多様性をすくっていけるような方法はないのかなと。これもなかなか難しいのでしょうけれども、西川補佐にお投げしたいと思っています。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 課長補佐の西川です。野澤委員がおっしゃるように、いまの納付金制度というのは量的な面からの切り口で、未達成のところから達成を超えているところに負担を調整しています。合理的配慮というのは、量的な雇用を増やすというよりは、雇用されている、また雇用されるという障害者に、質の高いという意味での定性的な議論というのは、おっしゃるとおりだと思います。
 ただ、質というのが、これまでも意見が出ているとおり、個別性・多様性があるということで、定性的な尺度を盛り込んだモデルということになってくると、実際には個々の事業主が1人の障害者を雇ったときに、どういった仕事に就いてもらって、どういった配置の中でどういう業務をやってもらうかを決めて、そこにかかる経費がいくらぐらいで、それがまさに合理的配慮であるということを申請してくる。当然、公的ないわゆる事業主から集めたお金であれば、それを効果的、効率的に使わなければならないから、判定員のようなものがいて、おそらく現場に行って逐一チェックする。そうすると、事業主と障害者は合理的だと思っていたけれども、判定員は、それは過度ではなく過剰な負担ではないかというと、これで切り詰められていくと。そういうことが現実にできれば、いちばん精緻な支給ができるのだと思うのですが、誰がその判定をしていくのかということ。
 もう1つは、実際の現場では、事業主も負担はすべて助成をもらったほうがいいし、障害者もいろいろな配慮をしていただいたほうがいいことから、両者のインセンティブがたくさん助成をもらうほうに働いて、判定員は基本的に厳しくチェックするわけだから、今度は不服の請求が非常に多くなる。そうしていくと、これは実務的に回っていくのかどうか。
 ドイツ、フランスについて北野委員からご意見がありまして、武石委員からも類型化というお話がありました。フランスの制度を調べてみますと、類型化されている中で一定要件を設定して、それを満たしたところに助成をするという、いまの助成金のスタイルと同じでした。岩村座長がおっしゃるように、そこから漏れたときにどうしていくのかというのがあるのだと思いますので、類型化できるところまで類型化していくというのが、事務的な負担も考えると、効率的なのかなと思います。
 最後に、現場の裁量を活かして使える仕組みということで、ここもまた難しいのです。実際には知的障害者、発達障害者の場合ですと、こういう業種に就かれると、合理的配慮は標準メニューでこれぐらいかかるから、事業主に対して、何に使うかわかりませんが、ある一定程度の丸めたお金を支給することになってくるのですが、それをどう設定していくかという問題もそもそもあります。そこも同じ議論ですが、実際には現場レベルになると、丸めたお金では足りないという要求が多くなってきて、合理的か過度かというのは紙一重の議論なので、結果として合理的な配慮のラインはどこかという判定員が必要になってきますので、それもまた非常に難しいかなとは思います。
○岩村座長
 一般論としては、制度設計をするときに助成金なりを受ける人について、あまり性善説に立てないというのもあります。その結果として、助成金、補助金というのはどんどん精緻になってくるという歯車の回り方をしてしまっているのです。特に、丸めたお金を渡してといったときに、それをどうコントロールするかというのは、可能だとは思いますが、なかなか仕組み方は難しいということになろうかと思います。
○杉山委員
 もう1回議論があるということなので、次回の議論への引渡しという趣旨も含めて発言させていただきます。まず、過度な負担がある場合に、義務を免れるという考え方は、前回の中間報告から今回の議論も踏まえて、異論はないのだろうと思います。そういったことを全部踏まえた上で、まず過度な負担を判断するシーンというのはどこにあるのか。先ほど座長が言われていたプロセスということにも重なるかもしれないのですが、障害者を採用する段階、働いている途中に変わった場合、雇用終了の場合、いろいろなパターンがあって、そのときどきで、過度な負担というのは誰がどのように判断していくのか、そこの共通認識を持たせていただいたほうが議論しやすいと思います。
 判定員という話が出ていましたが、特に合理的な配慮の部分というのは非常に個別性が高いということで、これも異論がないと思っています。前回の議論にもあったように、いきなり紛争解決機関に持っていくということではなくて、現場の中で、いちばんわかっている当事者と事業主、例えば労働組合なりが、そこで話し合うという仕組みがいいのだろうと思います。これは全くアイデアの域を出ないのですが、障害者を見るジョブコーチの方、いろいろな支援組織の方がいて、その方たちの活用という意味も含めて、合理的配慮の中身を検討する中に、どう仕組みとして参画させて、そこで判定の手助けをしてもらうのか。それが仕組みとしては、1つ考えられるのではないかと思っています。次回にはそのような議論も深めていければと思います。
○田中委員
 田中です。助成金のところですが、野澤委員からもお話があったように、個別性の高い知的、精神の場合には、単にお金だけではなくて、人的支援という位置づけもこの際検討の範囲に入れていただくと。個別性を把握する際の、問題が起きてからチェックするというところでなくて、きちんと職場にたどり着くまでの支援装置としての機能も含めて、それがどの程度まで維持されるかということも含めた検討をいただければと提案させていただきます。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長です。今回は助成金という形でお示ししましたが、言われるとおり、これは行政がかかわる形でのサービスという意味での人的支援も、当然大きな問題だと思っていますので、そちらも含めて考えていく必要があると思います。
 あと杉山委員からご指摘された件については、この研究会も終盤に差しかかっています。この研究会の議論というのは、取りまとめた上で労働政策審議会障害者雇用分科会に送ることになっていて、そこで最終的なコンセンサスの形成を図ります。とはいえ、実際にそれを仕組んだときに、うまくワークするのかということのイメージをもって、最終的な取りまとめをしなければいけないと思っています。それは単にお金がかかるとか、かからないという問題ではなくて、現実に職場という空間の中に合理的配慮なり、過度の負担なりを決めていく仕組みを打ち込むことが、果たして本当にうまく回せるような仕組みになり得るのかもイメージしながら、最終的なところに到達することだろうと思います。
 おそらくこの差別禁止、合理的配慮、公的支援をめぐる問題というのは、国際的に見ても完全にある国の仕組みをそのまま持ってくれば何とかなるというようなベストプラクティスが、個々の内容については個別にはあるとは思いますが、1つのパッケージとしてはいまは存在していない。100カ国以上がいまの権利条約の批准はしていますが、その100カ国以上の国が国内法制をきちんと整備した上で批准しているのかというのは、正直疑問なところがあります。
 ただ、日本がある意味批准に時間をかけて、国内法制をきっちりと整備した上でやろうとしているということは、おそらく施行はちゃんとできる、きっちりと権利条約の精神を体現できるような仕組みにするということをもって、じっくりと時間をかけてやっていると思います。その辺りで、現実に合理的配慮や公的支援を、労働という現場にどうやって納められるかも意識していただいて、取りまとめにだんだん入っていっていただきたいと思います。
○岩村座長
 まだご意見はあろうかと思いますが、この話題についてはもう1回議論を深めたいと思っていますので、よろしくお願いします。次回の議論に有益だと思われるような資料、あるいはこういう資料を出してほしいというご要望、先ほど来話題に出た何が合理的配慮なのか、こういうことをやってもらえないと非常に困るという例を、この間にいろいろご検討いただきお出しいただけると、議論を深めることができるかなと思います。よろしくお願いいたします。次回の日程について事務局からお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐(西川)
 課長補佐の西川です。次回は第7回になりまして、6月19日(火)の10時から12時まで、この庁舎の17階の専用第21会議室です。よろしくお願いいたします。
○岩村座長
 これをもちまして、第6回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会を終了といたします。お忙しい中をありがとうございました。


(了)

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