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2012年2月29日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年2月29日(水)


○場所

厚生労働省 専用第15・16会議室


○出席者

出席委員(13名):五十音順 敬省略

新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 菊 池   嘉、 清 田   浩、

佐 藤 俊 哉、 清 水 秀 行、 田 村 友 秀、 中 島 恵 美、

濱 口   功、 半 田   誠、 山 口 照 英、 山 本 一 彦、

◎吉 田 茂 昭

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(8名):五十音順 敬省略

庵 原 俊 昭、 大槻 マミ太郎、 黒 木 由美子、 櫻 井 敬 子、

鈴 木 邦 彦、○土 屋 友 房、 前 崎 繁 文、 増 井   徹

行政機関出席者

平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

赤 川 治 郎  (審査管理課長)

俵 木 登美子 (安全対策課長)

内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

森 和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

佐 藤 岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻前ではありますが、ただ今から、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催させていただきます。
 本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
 本日の委員の出席についてですが、庵原委員、大槻委員、黒木委員、櫻井委員、鈴木委員、田村委員、土屋委員、前崎委員、増井委員より御欠席との御連絡をいただいております。
 現在のところ、当部会委員数21名のうち12名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 それでは、吉田部会長、以後の進行をお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告を行ってください。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1~13をあらかじめお送りしています。このほか、資料14「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料15「専門委員リスト」、資料16「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。また、当日配付資料として、資料17「佐藤委員からの御質問」を配付しています。
 続きまして、本日の審議事項に関する資料16「競合品目・競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
 1ページを御覧ください。「ザーコリカプセル」です。本品目は、「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページは、「プルモザイム」です。本品目は、「嚢胞性線維症における肺機能の改善」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。
 3ページは、「遺伝子組換え型フォンビルブランド因子」です。本品目は、「フォンビルブランド病患者に対し、血漿中のフォンビルブランド因子を補い、その出血傾向を抑制する」を予定効能・効果としており、フォンビルブランド病に対する適用を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページは、「ルリオクトコグアルファ(遺伝子組換え)」です。本品目は、「血漿中の血液凝固第VIII因子濃度が低下しているフォンビルブランド病患者に対し、血漿中の血液凝固第VIII因子を補い、その出血傾向を抑制する」を予定効能・効果としており、フォンビルブランド病に対する適用を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページは、「ブレンツキシマブベドチン」です。本品目は、「CD30陽性のホジキンリンパ腫及び未分化大細胞リンパ腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページは、「クロファラビン」です。本品目は、「再発又は難治性の急性リンパ性白血病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。以上です。
○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の御意見等はありますか。
 特に無いようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。それでは、委員からの申出状況について報告をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
 議題1「ザーコリカプセル」は、退室委員はいらっしゃいません。議決には参加しない委員は、奥田委員、清田委員、山本委員です。
 議題2「プルモザイム」は、退室委員はいらっしゃいません。議決には参加しない委員は、山本委員です。
 議題3「遺伝子組換え型フォンビルブランド因子」は、退室委員はいらっしゃいません。議決には参加しない委員は、奥田委員です。
 議題4「ルリオクトコグアルファ」は、退室委員はいらっしゃいません。議決には参加しない委員は、奥田委員です。
 議題5「ブレンツキシマブベドチン」は、退室委員はいらっしゃいません。議決には参加しない委員は、奥田委員、清田委員です。
議題6「クロファラビン」は、退室委員、議決には参加しない委員は共にいらっしゃいません。以上です。
○吉田部会長 本日は、審議事項が6議題、報告事項は7議題となっています。
 なお、審議事項の3と4は、一括して審議することといたします。
 それでは、議題1に移ります。議題1について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品ザーコリカプセル200mg及び同カプセル250mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。
 本剤の有効成分であるクリゾチニブは、未分化リンパ腫キナーゼ、以下ALKと略させていただきますが、ALKや肝細胞増殖因子受容体等のチロシンキナーゼに対する阻害作用を有する薬剤です。非小細胞肺癌のうち、ヒト2番染色体短腕上のALK遺伝子の逆位により生じるALK融合蛋白は、ALK融合遺伝子陽性癌細胞の増殖や生存、正常細胞の癌化に寄与する本体であると考えられており、本剤はALK融合蛋白のチロシンキナーゼを阻害することで、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌の増殖を抑制すると考えられております。
 今般、本剤はALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対して、効果を示す薬剤として承認申請されました。なお、本剤は平成23年1月の当医薬品第二部会で、希少疾病用医薬品の指定の可否が審議され、指定されております。本剤は、審査報告書の4ページに記載していますように、平成23年12月時点において、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に関する適応にて、米国及び韓国で承認されています。本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料15にございますとおり、10名の委員です。
 以下、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する本剤の承認審査の概要を説明いたします。
 今般の承認申請では、主な臨床試験成績としては、本邦を含む一つの国際共同第II相試験、及び海外で実施された一つの第I相試験が提出されました。
 有効性については、審査報告書51ページの下から8行目以降、及び78ページ上から13行目以降に示しますように、臨床試験成績による本剤の評価には限界があるものの、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌に対する本剤投与により、前治療のレジメン数によらず、高い奏効率が得られていること及び、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌に関する腫瘍生物学的な知見等も考慮すると、本剤はALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者に対して、一定の有効性が期待でき、現時点で治療の選択肢の一つとして位置付けられるものと判断いたしました。
 安全性については、間質性肺疾患等の重篤な有害事象に対する厳重な注意と患者教育を含めた適切な安全管理を実施することで、本剤は認容可能と判断いたしました。
 ただし、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、審査報告書54ページ上から9行目以降、及び80ページ上から11行目以降に示しますように、間質性肺疾患、肝機能障害、視覚障害、血液障害、ニューロパチー、QT延長、徐脈、血栓塞栓症、光線過敏症、及び複雑性腎嚢胞が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により、対応可能と判断しておりますが、本剤の日本人における検討症例数は限られていることから、審査報告書69ページ下から10行目以降、及び85ページ上から1行目以降に示しますように、製造販売後には目標症例数2,000例、観察期間52週間の全例調査の実施が必要であると判断し、これを承認条件として設定することが適切であると判断いたしました。
 以上のような審査の結果、機構は「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。
 本剤は、希少疾病用医薬品に指定された新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を10年とすることが適当であり、原体及び製剤共に劇薬に該当すると判断いたしました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。
 ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する本剤の製造販売承認の可否等について、御審議のほど、よろしくお願いいたします。なお、事前に佐藤委員、奥田委員から御質問、御意見をいただきましたので、機構から回答させていただきます。
 資料17にございますとおり、佐藤委員からの御質問は三つあり、一つ目は有効性と臨床データパッケージに関するもので、以下のような趣旨です。有効性については、海外第I相試験、これについては以下001試験と略させていただきます。それと、国際共同第II相試験、以下この試験については005試験と略させていただきます。001試験と005試験の2試験が提出されており、試験責任医師判定による奏効率は、001試験では61.2%、005試験では30.3%となっている。001試験の奏効率61.2%は素晴らしい成績だと思うが、通常第I相試験の目的は有効性の判定ではないので、第I相試験よりは第II相試験である005試験の奏効率の結果を重視すべきではないかと考える。他方、005試験の途中結果については、まだ投与期間が短く、001試験ほどの高い奏効率が再現されていない。この点については、申請者は承認申請の60日後に、60日アップデートレポートを作成し、その時点の奏効率は51.1%であるとしている。その結果は、001試験の成績に近づいてはいるが、このデータは正式な臨床データパッケージといえるのか。また、本承認申請に当たり、どの時点で提出されたどの試験データから、本剤の有効性に関する判断を行ったのか教えてほしい。また、60日アップデートレポートでの005試験における日本人の奏効率を教えてほしい、というものでした。
 機構の回答としましては、005試験については、臨床データパッケージに含まれる評価資料であり、001試験の結果と併せて、本剤の有効性評価を行っております。また、001試験と005試験のいずれについても、有効性を検討するための目標症例数、評価時期等を予め設定した試験ではなく、また現在実施中の試験であることを踏まえると、最新の結果も確認した上で、その時点の有効性を評価すべきと考え、中間時点のデータであることを確認した上で、60日アップデートレポートの成績も確認し、審査報告書51ページ以降の審査の概略の項に記載しました。機構としては、001試験並びに005試験のデータベーススナップショット及び60日アップデートレポートについては、独立委員会評価など、適切な手法で有効性の評価が行われており、これらの成績を基に、本剤の一定の有効性が期待できるものと総合的に判断しております。なお、005試験の日本人奏効率については、60日アップデートレポートでは、6例の情報が得られており、治験責任医師評価では、PR3例、SD2例、PD1例、独立評価委員会評価ではPR4例、SD1例、PD1例でした。患者数は極めて限られておりますが、機構としては005試験の日本人奏効率の結果からも、本薬の一定の有効性は期待されるものと考えております。
 二つ目の御質問は、本剤の効能・効果に関するもので、以下のような趣旨でございます。本剤の効能・効果は、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌と設定されているが、動物モデルで発生するのは腺癌だけであり、また001試験では97.5%、005試験では94.1%の参加者が腺癌であったことから、効能・効果を非小細胞肺癌ではなく、腺癌に限った方が良いと考える。また、現在実施中の二つの国際共同第III相試験の組織系別の登録状況が分かれば教えてほしい、というものでした。
この件については、本剤の有効性は腫瘍生物学的な知見から、腺癌等の組織系に依存するというよりは、ALK融合遺伝子の有無によるものと考えられること、加えて現に005試験では腺癌以外の肺癌患者や腺癌と腺癌以外の組織系が併存する等、病理において明確に判別することが困難な患者が少数ながらも組入れられており、対象疾患の希少性等を考慮すると、現時点でこのような患者の治療選択肢として本剤を認めないとするよりも、当該試験のフォローアップや製造販売以後の情報と併せて、随時情報提供することにより、医療現場で適切に判断可能と考えること、これらの点を考慮して、現状の効能・効果としております。
 なお、動物モデルに関してですが、作成されたマウスは原理的に肺胞上皮細胞由来の腺癌のみ発生するモデルと考えられます。すなわち、このモデルはALK融合遺伝子をSurfactant protein C遺伝子のプロモーターにより、肺胞上皮細胞で強制発現させたトランスジェニックマウスであり、Surfactant protein C遺伝子のプロモーターが使用されたため、その内在性の発現分布の知見から、原理的に肺胞上皮細胞由来の腺癌しか発生しないモデルと考えられます。したがって、ALK融合遺伝子は腺癌のみの発癌に寄与しているわけではないと考えております。
 また、現在実施中の二つの国際共同第III相試験の組織系別の登録状況については、二つの国際共同第III相試験は非盲検試験ではありますが、申請者の社内システムにより、申請者に対して盲検下で試験が実施されており、試験の完全性を担保するために、現時点では情報が得られておりません。
 三つ目は、現在実施中の二つの国際共同第III相試験に関するもので、以下のような趣旨です。本剤については、現在化学療法既治療患者に関するA8081007試験と、化学療法未治療患者に関するA8081014試験、以下それぞれ007試験及び014試験と略させていただきますが、二つの第III相試験が実施中であり、専門委員からは当該試験の成績が得られた際の対応について、予め検討しておくことが望ましいとの御意見があり、私もそのとおりだと考える。この点について、機構は審査報告書の80ページ上から1行目に現在実施中のALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌患者を対象とした二つの国際共同第III相試験の結果は重要な情報であると考えることから、当該試験を確実に完遂し、試験成績が得られた際には、遅滞なく適切に情報提供する必要があること、また、当該試験成績を基に申請者自らが必要に応じて本薬の承認内容や添付文書の使用上の注意の項の見直しを速やかに検討する必要があると述べているが、本申請自体が第I相試験と第II相試験のmatureでないデータに基づいたものであることを考えると、申請者に任せるのではなく、承認条件とすべきではないか。clinicaltrials.comのウェブサイトで検索したところ、007試験は2014年2月に終了予定、014試験は2013年12月に終了予定となっており、それほど先のことではないので、これらの第III相試験の成績が判明した時点で、再度審査を行うということを承認条件にできないかというものでした。
 機構の判断としましては、二つの国際共同第III相試験の結果が重要であると考えており、当該試験結果が判明した時点で、速やかにその報告を申請者から求め、申請者の考え方も聴取の上、必要な措置を速やかに講じたいと考えております。審査報告書の記載は、その趣旨が十分伝わらなかったものと思いますが、実行上、承認条件を付して対応することと同等の対応を行うこととしており、機構としては承認条件としなくても良いものと考えております。しかし、この点については佐藤委員の問題提起を踏まえ、部会として御議論いただければと存じます。
 次に、配付資料はございませんが、奥田委員からいただいた三つの御質問について説明いたします。一つ目は、薬物動態に関するもので、ヒト肝細胞を用いたCYPのmRNA誘導能試験では、3日間処理の検討で実施されているが、連続投与された場合の発現変動を十分に予測可能と考えて良いか。小動物を用いた長期投与後の臓器ミクロソーム中のCYP活性の評価を行っていないのか。又、審査報告書27ページの「(2)薬物動態学相互作用について」の項において、申請者に照会中との記述があるが、情報は得られているのか説明がほしいというものでした。
 本剤につきましては、ラット等の実験動物を用いた酵素誘導の検討は行われておりませんが、審査報告書25ページ下から16行目以降に示しますように、ヒト肝細胞を用いたin vitro試験が実施されております。本剤250mg、1日2回投与時の定常状態におけるCmaxは、1.3μmol/Lであり、非結合型濃度では0.12μmol/Lとなりますが、当該in vitro試験では7μmol/Lまでの濃度範囲で検討が行われていること、並びに陽性対象とされたリファンピシン及びオメプラゾールにより、それぞれのCYP3A4及び1A2の誘導が認められていることから、CYP3A4及び1A2に対する本剤の誘導作用について、一定の評価がなされていると考えております。
 なお、当該in vitro試験において、本薬はCYP3A4誘導作用を有することが示唆されたものの、別のin vitro試験からは、本剤はCYP3A4阻害作用を有することが示されております。加えて、CYP3A基質であるミダゾラムのPKに及ぼす本剤の影響を検討した臨床試験では、本剤250mg1日2回28日間連日投与により、ミダゾラムの曝露量がミダゾラム単独投与時と比較して上昇したことから、臨床使用時において本剤はCYP3A阻害剤となることが示されております。
 審査報告書27ページ「(2)薬物動態学相互作用について」の項における申請者に照会中である旨の記載につきましては、申請者から提出されました本剤の酵素阻害及び酵素誘導に関する二つの試験成績を審査報告書87ページ下から22行目以降に記載させていただいております。
 二つ目の御質問は、審査報告書49ページの下から1行目に、心停止、呼吸不全の1例は、間質性肺疾患の1例と同様に、本剤の因果関係が否定されなかったと記載されている。一方、添付文書の警告欄で、間質性肺疾患については注意喚起されているものの、心停止、呼吸不全に関しては、同等の注意喚起はされていない。心停止、呼吸不全に関して、同等の注意喚起を行う必要性について、機構の考えを説明してほしい、というものでした。
心停止、呼吸不全により死亡に至った症例の経過は、以下のとおりでした。本剤の投与開始後、217日目に心肺停止状態で発見されましたが、その1週間前のルーチンの検査では、特段の異常は認められませんでした。発見後、救急搬送され、一時心拍の再開が認められましたが、220日目に死亡しました。搬送先の病院での検査では、心拍再開後の心臓エコーの検査で、左心機能には問題が認められませんでしたが、右心の拡大、右心機能の低下、心電図では心筋虚血のような所見が認められました。また、CT検査において、明らかな病性進行は認められませんでした。以上の経過を考慮すると、本剤との因果関係が否定できないものの、心停止、呼吸不全、即ち死亡を意味しますが、死亡に至った直接的な原因は、その経過からは明らかでなく、十分な情報が無いまま警告欄等に心停止、呼吸不全と記載したとしても、医療現場として本剤投与に当たり、どのようなことに注意を払えば良いか不明であると考え、現時点では当該事象について、警告欄への記載を行う必要性は低いものと考えています。なお、当該症例の関連情報につきましては、資材等を用いて医療現場に情報提供するよう申請者に求めることとしております。
 三つ目は、審査結果の用法・用量では、申請時に記載のあった連続が削除されている。この理由として、連続投与しなくても臨床的な効果に決定的な違いを生じないためと理解して良いか説明してほしい、というものでした。
申請者は、申請時の用法・用量として、「連続」と記載していましたが、その後本邦では用法・用量の項に、例えば1日2回経口投与すると記載すれば、「連続」という言葉を使用しなくても、必要な期間中連日投与するものと理解されており、特段「連続」という言葉を記載する必要は無いと申請者も判断し、結果的にこのような用法・用量としたものです。御質問に対する説明は以上になります。また、佐藤委員及び奥田委員からいただいている誤記等の御指摘に対しては、適切に修正させていただきます。御指摘どうもありがとうございました。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見をいただきますが、その前に奥田先生、今の回答はいかがですか。
○奥田委員 説明どおりで、分りやすかったです。
○吉田部会長 もう一つが、佐藤先生からの御質疑ですが、佐藤先生いかがですか。
○佐藤委員 ありがとうございました。やはり申請自体は、I相試験とII相試験の途中経過で申請されてきていて、非常にややこしい内容であり、臨床開発の全体像もよく見えないまま審査しなければいけなかったので、事情を聞き、臨床データパッケージの事情についてはよく分かりました。それから、効能・効果についても、腫瘍増殖抑制試験などでほかの癌腫についても調べていますので、確かに腺癌に限らなくてもいいかと思います。
 最後の承認条件のところですが、やはり最初に申しましたように、I相試験、II相試験が途中で、しかもまだmatureしていないデータに基づいてということで、有効性に関しては非常に期待がもてるのですが、安全性に関する情報が、日本人だけではなくて、全体としても確か250名ぐらいの患者さんのデータですから、不足しているのではないかと思っています。それも含めて、やはり機構の御意見では、承認条件と同等の位置付けであるということですが、可能でしたら承認条件として、この結果が出た時点で再度審査をすることを御検討いただければと思います。
○吉田部会長 事務局サイドからの返答をいただく前に、私にも追加コメントをさせてください。御指摘のように、本薬については、米国のFDAが国策のこともあるのでしょうが、迅速にやり過ぎたきらいがあると思います。それは、恐らく本薬がOncogene driverに関わっていて、効果発現のメカニズムが明瞭であるため、多分いい成績が出るだろうという予測の下で強行突破したというような感じになっているのだろうと思います。いずれにしても、佐藤先生がおっしゃるように、フェーズIIもアーリーフェーズIIの段階から数を増やしていったような形でしか、臨床試験成績が出ていないというのは、ある程度の不安を呼ぶと思います。
 そういった意味で、先生がおっしゃるように、承認条件として、海外の第III相試験の成績をどこかで判断したいという気持ちは、私も同じなのですが、薬事行政上はこのことを承認条件としなくても、向こうのデータがはっきりした時点で承認を取り消すこともできるのだそうです。ですから、実効的には余り変わらないと言えそうです。しかし、この際行政側に是非とも考えていただきたいのは、こういったように迅速に動かなければいけない場合もありますし、これからも様々な分子標的薬がどんどん出てきますね。片方で海外試験が走っているのだけれども、手元のデータはこれだけしかない。しかし、かなり将来性があるというようなことが、これから沢山出てくると思います。
 この間、アバスチンの乳癌の話がありましたね。米国のFDAでは、仮免のような形で1回承認しておいて、海外の試験の結果が出た時に、正式に承認するという2ステップを踏んでいく。米国ではそういった場合もあるようですので、私たちの所でも是非そのような仕組みをつくっていただければと思います。というのは、やはり一端承認してから取り消すというのと、仮承認で結果が出たので取り消すというのでは、一般の人が受ける印象は全く違いますし、私たちもここまでは責任持ち切れないというようなことも、恐らくあると思うのですね。そのような場合、完全にapproveした形にしてしまうと、また取り消す時に大きなアクションが必要になるような気もします。ですから、そういった二段階方式というものを行政側で検討していただければと思います。これは、あくまでも個人的な希望ですが、そうなれば、審査する側としては、かなり思い切った対応もできるような気がしますので、是非お願いしたいと思います。
 本件については、現行の法規で行うしかないので、もし海外の試験成績に差が出ないということが起こった場合は、承認を取り消すこともあり得るということでよろしいでしょうか。
○審査管理課長 御意見ありがとうございます。米国の場合は、accelerated approvalという形を取っていますので、いずれ現在進行中の第III相試験の結果がFDAに提出され、FDAが最終的に判断をする形になろうかと思います。ただ、日本の場合は、特例承認という別な制度がありますが、一般的には承認するかしないかですので、承認の拒否要件のいずれかに該当しないものであれば、承認をするということです。ただ、これはもちろん製造販売後の実際の使用成績、あるいは副作用報告などにより、いずれにしても保健衛生上の何か危害を生じる恐れがある場合には、承認取消し等の処分は可能です。今回の御指摘は、企業に課す承認条件というよりも、既に試験は進行していますので、実施されているものを必ず報告いただくことになろうかと思います。むしろ、行政側が適時適切にこれを評価し、必要な措置を講じることを当部会で御意見をいただいたということで受け止めさせていただきたいと考えています。
○吉田部会長 日本の中でも、いろいろな創薬がこれから動いてくると思うと、やはり臨床試験が全部終わるまでは承認しないという形ではなく、先ほどおっしゃったaccelerated approvalのような形のスタイルも、是非検討していただければと思います。ほかに御意見はありますか。
○菊池委員 このAnaplastic lymphoma kinaseを測れとなっていますが、これを測るのは結構大変であろうかと思います。001試験と005試験で、FISH法を使ったりいろいろなことを行っていますが、この検査の確実性などは担保されているのでしょうか。
○機構 ただ今の質問に関して回答させていただきます。ALK遺伝子の融合遺伝子の検査法としては、FISH法、免疫染色法、PCR等の方法がありますが、現在標準的に確立した方法はありません。ただし、本薬の承認に合わせて、FISH法を利用した診断薬の承認審査が行われており、医薬品が承認されるのと同時期に、診断薬も承認される予定となっています。したがって、FISH法を利用した診断薬を用いれば、一定の確実性で検査は可能であると考えています。
○菊池委員 そうすると、もしその検査が駄目になったら、この承認条件というか、ALK陽性のただし書きが崩れてしまうので、その薬自体が使えないことになりますし、この検査は結構大変なはずなので、これについてしっかりしておかないと、後でどんでん返しになるのではないかという懸念がありますが、いかがでしょうか。
○機構 薬品の承認から遅れるようなことは無く、承認されると聞いています。
○吉田部会長 要するに、この薬と並行して、どこかで審査を受けているということですね。
○審査管理課長 別の部会ですが、そちらの方で診断薬の審査を遅滞無く行っています。どうしても、先生御指摘のように、一方だけではこれは使えませんので、そこはPMDA側も十分認識をしておりまして、関係部門連絡を図って調整をしているところです。
○吉田部会長 ほかにありますか。
○清水委員 この薬剤を減量して使う時の情報提供のことです。審査報告書の84ページ辺りになりますが、250mg2回を200mg2回に第1段階落とすところまでは、きちんと添付文書に書くということで、実際に書かれています。2段目の250mg1日1回についての情報提供は、結果としてどのようにしたいと機構は考えているのかが読み取りづらかったので、そこを御教授ください。
○機構 現在実施中の第III相試験や臨床試験では、250mg1日1回の用量が設定されていますが、実際、2段階目の用量での投与経験が1例も無いため、現時点では添付文書の中で投与経験の無い用量を情報提供するのは適切ではないと考えています。したがって、現時点では、資材等で、実際に臨床試験で使われている用量について情報提供させていただきたいと考えています。ただし、現在実施中の臨床試験の結果等から、2段階目の減量の情報等については得られてくると考えていますので、試験成績が得られ次第、その臨床試験で使われていた減量の情報についての情報提供をさせていただきたいと考えています。
○清水委員 添付文書以外の資材で2段階目の減量については、情報提供をするという考え方ですか。
○機構 説明を補足しますと、現在実施中の試験の中で実際に250mg1日1回の投与量で投与された患者さんがいれば、その情報を添付文書に新たに盛り込めるのではないかと考えてはいますが、さすがにデータが無いので、現時点で添付文書に載せるのは難しいと考えています。ただし、現在実施中の臨床試験の中では、このようなやり方で減量されていますという情報を資材で情報提供できるのではないかと考えています。
○清水委員 その情報提供については、現場は結構都合のいい読み方をしてしまうことがあるので、情報提供をするのであれば、計画であるということをしっかりとしていかれることがいいかと思いますので、よろしくお願いします。
○機構 どうもありがとうございます。
○吉田部会長 ほかにありますか。新しいFISH法を審査中という話なのですが、例えば病理標本をいろいろな施設から集めてきて、ある一つの企業なり施設が中心的にやるのか、それとも各施設で行うようなことになるのかは分かりますか。私が申し上げたいのは、先ほどの間質性肺臓炎などいろいろな有害事象の問題もかなり出ているように思います。ですから、遺伝子の新しいマーカーについては、病理側に臨床のデータを教えるというか、情報交換し合いながら進んでいくような方向でなければ、少し危ない部分もあるのではないかと思います。市販後に、そういった病理の人たちや臨床の人たちに、適宜情報提供や情報交換の場を設けてほしいというような気がするのですが、そういった要望は可能なのでしょうか。
○機構 御意見ありがとうございます。申請者の方に、そういった御意見をいただいたことについて伝えまして、情報の方を収集していきたいと思います。
○吉田部会長 迅速審査という背景もあって、少し分からない部分も残されていそうですから、情報交換を密に行っていかないと、どこかの施設でずっと変な症例が集積してしまうというようなことがあっても困ります。そういったことも含めて市販後よろしくお願いします。ほかにありますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、議決に入りたいと思います。なお、奥田委員、清田委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題2に移ります。議題2について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品プルモザイム吸入液2.5mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
 本剤は「嚢胞性線維症」(以下、CF)の肺病変に対する治療薬として開発されたネブライザーを用いて投与する吸入液です。本剤の有効成分であるドルナーゼアルファ(遺伝子組換え)は、細胞外ヒトデオキシリボ核酸(DNA)を切断するヒトデオキシリボヌクレアーゼ製剤です。CFは、全身の上皮細胞の管腔膜に存在するcyclicAMP依存性塩化物イオンチャネルであるCFTR遺伝子の変異を原因とする常染色体劣性遺伝疾患です。CFでは、全身の上皮細胞の外分泌機能が障害され、消化管や気道等の分泌液が粘稠となり、種々の臨床症状を呈します。特に呼吸器では、粘稠な気道分泌液の貯留に起因する気道閉塞、持続性の細菌感染等が発現します。CF患者の生命予後は極めて不良であり、過去には、多くは乳幼児期に死亡するとされ、近年では、呼吸管理や栄養管理等の進歩に伴い生存期間の延長が認められるものの、2004年時点における過去10年間の疫学調査に基づく日本人CF患者の生存期間の中央値は18歳であり、ほとんどの患者が呼吸不全や気道感染症で死亡するとされています。CFは、欧米のコーカサス系白人種では出生児約2,500人当たり1人の発症頻度を示すのに対して、本邦では出生児約187万人当たり1人と極めてまれな疾患です。1年間の推定患者数は10~15例、10年間の患者数は40名前後と報告されています。CF患者の膿性痰中には、感染等に伴って気道に集積した好中球の変性又は死滅に由来する大量のDNAが含まれており、これが線維を形成することにより、CFTRの機能障害により粘稠となった痰の粘度をさらに高めています。本剤は、CF患者の膿性痰中の高濃度DNAを加水分解し、痰の粘度を下げる作用を有し、気道から痰の排出を容易にすることにより、肺機能の改善、更に気道感染症の予防に寄与することを目的として、CFの肺病変に対する本剤の開発が進められました。
 海外においては、1993年9月にスウェーデンで承認されたのを始めとして、米国では1993年12月に承認され、2011年6月現在、世界約70か国で承認されています。本邦におけるCFに対する本剤の開発は、本邦ではCF患者が非常に少ないため、これまで行われていませんでしたが、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、本剤は「医療上の必要性が高い」と評価され、また、本疾病の重篤性や、患者数が非常に少ないこと等を踏まえ、欧米での臨床試験データを用いて承認申請資料を取りまとめることを検討すべきとの意見が付され、2010年5月に厚生労働省から申請者に対し開発要請がなされました。
 なお、本剤は、国内CF患者の数が非常に少ないこと等を踏まえ、2011年6月に希少疾病用医薬品に指定されています。
 本申請の専門委員としては、資料15に記載されております10名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について簡単に説明いたします。審査報告書34ページの下段、「6)第III相長期投与試験」(Z0342g/Z0343g試験)の項を御覧ください。海外での主要試験の一つとして、5歳以上、かつ中等度までの肺機能低下を伴うCF患者968例を対象に、本剤2.5mgを1日1回、若しくは1日2回又はプラセボを24週間吸入投与した時の有効性及び安全性を検討することを主目的とする無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されています。
 有効性の主要評価項目の一つは、抗生物質の非経口投与を要する気道感染の発現とされ、この解析には二つの定義が用いられ、一つは事前に規定した条件を満たす気道感染のみを対象とした「治験実施計画書で定義された気道感染」、もう一つは「計画書定義を含むすべての気道感染」とされました。
 35ページ中段の図1及び表10に、「治験実施計画書で定義された気道感染」に関する結果を示しています。図1は、「治験実施計画書で定義された気道感染」に最初に罹患するまでの期間のKaplan-Meier曲線であり、群間比較結果については、表10のとおり、年齢に基づく調整を行わない場合の本剤1日1回投与群とプラセボ群の比較を除き、本剤投与群ではプラセボ群に対し最初に罹患するまでの期間の有意な延長が認められました。
 36ページの図2及び表11に「計画書定義を含むすべての気道感染」に関する結果を示しています。こちらの定義においては、表11のとおり、年齢に基づく調整の有無にかかわらず、本剤1日1回群及び1日2回群のいずれも、プラセボ群に対して最初に罹患するまでの期間の有意な延長が認められました。
 表12に、同じく有効性の主要評価項目の一つである一秒量(FEV1)の平均変化率の結果を示しています。ベースラインから投与期間全体(24週間)にわたるFEV1の平均変化率は、プラセボ群0.0%と比較して、本剤1日1回群では5.8%、本剤1日2回群では5.6%と、いずれも有意に高い値が示されました。
 これらの成績を総合的に判断して、機構は、CF患者における肺機能の改善及び気道感染の発現頻度の抑制における本剤の有効性は示されていると判断いたしました。
 次に、44ページ下段、「(3)用法・用量について」を御覧ください。先ほどのZ0342g/Z0343g試験の結果のように、本剤2.5mg1日1回投与と1日2回投与の有効性に大きな差が認められなかったことから、本剤の通常用量については1日1回投与が選択されており、これについて機構は特段の問題は無いと判断しています。一方、本剤の申請用法・用量には、「なお、21歳以上の患者では、1回2.5mgを1日2回の吸入投与が有効な場合がある」との規定も、Z0342g/Z0343g試験における年齢別部分集団解析の結果に基づき含められています。これについて、機構は45ページ最終段落に記載していますように、年齢別の部分集団解析結果は、年齢と本剤の有効性の関係の傾向を示唆するに過ぎないこと、また、CFの肺病変は加齢と共に進行することが示唆されており、海外での使用実態において肺機能低下の重症度の高い患者において1日2回投与が行われていること等を踏まえると、1日2回投与が可能となる対象については、患者の年齢や重症度等を踏まえて医師が個別に判断することがより適切と考え、当該規定部分については「なお、患者の状態に応じて1回2.5mgを1日2回まで吸入投与することができる」に変更し、また用法・用量に関連する使用上の注意として、46ページ中段の記載内容を付すことが適切と機構は判断しました。
 47ページの中段「(5)安全性について」の項を御覧ください。本項では、表21のとおり、CFを対象とした本剤長期投与試験で認められた有害事象等についてまとめています。本剤が投与された症例をまとめた併合群とプラセボ群を比較した場合、死亡や投与中止に至った有害事象の発現率は、プラセボ群と本剤併合群で同程度であり、重篤な有害事象、重度又は生命を脅かす有害事象は、プラセボ群に比べて本剤併合群で少ない傾向が認められました。また、主な有害事象は表22のように要約されており、本剤の長期投与により咽頭炎、発声障害及び喉頭炎の発現率が用量依存的に増加する傾向がみられました。これらの有害事象については、機構は、本剤の添付文書中で適切に注意喚起することで特段の問題は無いものと考えております。
 また、48ページ後段の「2)重度の肺機能低下を伴うCF患者における本剤投与による呼吸困難の発現リスクについて」の項に記載していますように、重度の肺機能低下を伴うCF患者を対象とした複数の海外臨床試験において、プラセボ群と比較して本剤群で呼吸困難の発現率が高い傾向がみられています。呼吸困難等の重篤な呼吸器系事象は、CFの症状としても発現する事象ではありますが、本剤の投与により発現リスクが増大する可能性も否定はできないこと、特に重度の肺機能低下を伴うCF患者では、これらの事象の発現時には呼吸不全により死亡に至る危険性があることから、本剤の投与に際しては注意深く患者の状態を観察することが重要と考えられ、その旨を添付文書等において十分に注意喚起する必要があると機構は判断しました。
 最後に、57ページの「(3)製造販売後調査等について」ですが、機構は、本剤の本邦における使用経験が極めて少ないこと等を踏まえれば、再審査期間中は、投与患者全例を対象とした長期の製造販売後調査を実施する必要があると考えており、申請者からは57~58ページにかけて記載のような重点調査項目等を設定した観察期間最長2年間の調査を行うことなどが説明されております。
 以上の審査を踏まえ、58ページの中段ですが、記載のとおり製造販売後調査に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請に係る再審査期間は10年、また、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当するものと判断しています。薬事分科会では報告を予定しております。
 なお、審査報告書に誤記がありましたので、訂正させていただきます。審査報告書54ページ、「III.機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断」において、「本申請には適合性調査の対象となる資料は提出されていないことから、適合性調査は実施されていない」とありますが、適合性書面調査は実施されていますので、「薬事法の規定に基づき承認申請書に添付すべき資料に対して書面による調査を実施した。その結果、提出された承認申請資料に基づいて審査を行うことについて支障はないものと機構は判断した。」と訂正させていただきます。
 また、本品目に関しては、資料17のとおり、佐藤委員より事前の御意見・御質問をいただいております。そのうちの一つ目について、機構から回答させていただきます。
 佐藤委員の御意見は、本剤の承認条件の冒頭の「国内での治験症例が極めて限られていることから」の部分について、本剤の国内での治験は健康成人を対象としたものであることを踏まえれば、再審査期間中に本剤の投与症例全例を対象とした製造販売後調査の実施を条件とする理由に「健康成人の治験症例が限られているから」というのは適切でないので、承認条件の冒頭を「国内での嚢胞性線維症患者の治験はないので」とすべき、との御指摘です。
 御指摘のとおり、本剤の国内治験は健康成人を対象としたものであり、国内患者を対象とした治験が実施されず、審査報告書28ページの記載のとおり、国内患者□例における使用実績調査の結果のみ提出され、国内でのCF患者を対象とした投与経験が極めて限られていることが、この全例調査を承認条件とすることの主な理由となっております。文章上、その趣旨を明確にするため、承認条件の文言を修正させていただきます。なお、「国内患者での薬剤の投与事例が、治験ではないが存在する場合」の文言について、これまでに「日本人での投与経験が極めて限られていることから」としている例が複数ありましたので、本剤についても「日本人での投与経験が極めて限られていることから」と修正したいと考えております。
○事務局 続きまして、佐藤委員から事前にいただいた質問の二つ目について、事務局より回答させていただきます。御質問の内容ですが、「嚢胞性線維症は、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患となっていることから、19歳までは医療費の補助が受けられます。しかし、膵嚢胞性線維症は難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究対象分野対象疾患とはなっていますが、医療費の助成が受けられる特定疾患治療研究事業の対象とはなっていません。嚢胞性線維症の患者さんが20歳以降も継続して医療費の助成が受けられることが望ましいと思うのですが、特定疾患治療研究事業について何か情報がありましたら教えてください」というものでした。
 御指摘のように、本疾患は小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患となっており、基本的には18歳未満(引き続き治療が必要であると認められる場合は20歳未満)の患者を対象に医療費の助成が行われています。しかしながら、難治性疾患を対象とした医療費の助成である特定疾患治療研究事業の対象とはなっていないため、20歳以上になると公費での医療費の助成は無くなることになります。
 この問題については、いわゆる「キャリーオーバー問題」として、現在厚生科学審議会難病対策委員会等で進められている難病対策の見直しの検討課題の一つとして検討が進められております。
 また、公費負担制度とは別に、医療費が高額となった場合、年齢や疾患にかかわらず、医療保険制度の高額療養費制度での医療費の自己負担の軽減が図られることになります。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方から御質問、御意見を伺います。まず、佐藤先生、今の回答でよろしいでしょうか。
○佐藤委員 ありがとうございました。ここで議論することではないのですが、特定疾患治療研究事業ということで、この患者は難病研究センターのホームページを見ると全国で32名程度となっていますので、もちろん高額医療の制度もありますが、できるだけ公費で助成していただけるような方向で、この薬を認めるということは高額な医療が実際に起こるということですので、その辺についても他部局と調整の上、御検討いただければと思います。
○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにありますか。
○菊池委員 細かいことですが、添付文書の案のところでネブライザーを使えと書いてありますが、ウルトラネブライザーでは駄目で、ジェットネブライザーということがあとの適応上の注意で書かれています。これを行う先生がそのことを間違えることはないと思いますが、こういった大事な記載を添付文書の最初の方に書くのか、後の方に出すのか、全体的に添付文書の中で何か規定があるのですか。
○機構 御指摘の本剤の投与に際して用いるべきネブライザーの情報ですが、添付文書上の記載位置に関しては検討させていただきます。御参考までに、添付文書以外にも患者及び医療従事者への説明用の資材において、ジェットネブライザーを用いるべきであって、超音波式やメッシュ式は望ましくないということはきちんと情報提供する予定としております。
○菊池委員 どうしてそのようなことを申し上げたかというと、これに限らず、研修医などに教えていると、投与方法のことでいろいろなことが書いてあるものとないものがあるということです。例えば、蒸留水で溶いてからでなければ溶けない薬があるわけですが、ある薬だと蒸留水で溶いてほかのものに溶きなさいと初めのところで書いてあるものと、このような感じで適用上の注意のところに書いてあるものがあって、そこはしっかり書き方を統一した方がいいかと思った次第です。ここは希少疾患で、分かる先生は分かっていると思いますが、そういうことです。
○吉田部会長 よろしくお願いします。
○清水委員 この薬剤は、20□年を目処に製剤の一部変更が予定されていて、ペプトンを使用しない製造方法に変更されるということですね。そうしますと、今回の審査で付いた承認条件、市販後調査は、製剤が変わっても継続して行われることになるのでしょうか。その時に解析の中でそういったことを分ける必要性は、特段影響があるとは思えないのですが、そのようなことは何か御検討なさっているのでしょうか。
○機構 御指摘のあった製剤の違いによる本剤の有効性の違いについては、基本的には同等性が確保されるものと理解しておりますが、調査における調査票の様式の中でどちらの製剤が使われたかが分かるような情報の収集が可能かどうか、申請者に確認します。
○吉田部会長 質問ですが、それは海外データを含めてということですね。日本では30人ぐらいしかいないので、国内データだけでは余り意味が無いと思いますが。
○機構 海外でのデータ収集も含めまして、申請者に確認します。
○吉田部会長 よろしくお願いします。
○新井委員 副作用が、特に小児で咽頭炎などが出ていると思いますが、副作用のメカニズムとしては、これは酵素活性によるものなのですか。
○機構 御質問の件ですが、こちらの副作用に関しては薬液を吸入した際の刺激によるものであろうと考えられております。プラセボを吸入した場合であっても同じような副作用が認められておりますので、基本的にはDNAseの酵素活性に由来するものではないと考えております。
○吉田部会長 いわゆる物理的な刺激が結構大きいのだということですね。
○菊池委員 関係無い話なのですが、ネブライザーにこだわったのは、ジェット式のものだと喉に当たってしまうわけです。肺胞性の病変で起きているものですから、ジェットネブライザーでは本来の効果は出ないわけで、もっと肺胞に到達する仕方でやらなければいけないわけです。しかし、それをウルトラネブライザーでやると薬効が落ちるということですので、根本的な話で全然関係ないのですが、この投与方法についての検討を本来もう少し行わなければいけないと思います。嚢胞性線維症で苦しい時に毎日吸入をやっていると、それ自体で消耗して命を落とすようなことがあって、それが契機になって痰詰まりで呼吸不全になるといったこともあるということで、この病気を扱っている人は知っているとは思いますが、そういったことも含めて全般的に考える必要があるかと思っております。
○機構 いただいた御意見を申請者に伝達させていただきます。
○吉田部会長 ほかにありますか。本薬は、希少疾病用医薬品の指定の際に既に本部会でも一度審議しておりますが、そういった意味でニーズは高いと思われます。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入ります。なお、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題3、4に移ります。事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題3、資料3「遺伝子組換え型フォンビルブランド因子を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、審議事項議題4、資料4「ルリオクトコグアルファ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
 医薬品医療機器総合機構が事前評価を取りまとめておりますので、この報告書に沿って指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について説明いたします。
 資料3の4枚目、2ページを御覧ください。これらの製剤の対象となる疾病は、フォンビルブランド病(VWD)です。申請者はバクスター株式会社です。まず、対象患者数について説明いたします。血液凝固異常症全国調査平成22年度報告書によると、VWDの患者数は944人とされており、指定要件である5万人未満を満たすものと判断しております。
 次に、医療上の必要性についてですが、VWDはフォンビルブランド因子の量的又は質的異常により出血傾向を来す先天性疾患であり、普段は出血症状が無い患者でも、外傷時、手術時には大出血を来すことがあるなど、重篤な出血のリスクがある疾患です。なお、VWD患者においては、血液凝固第VIII因子活性も減少していることが多く、フォンビルブランド因子に加え、血液凝固第VIII因子の補充も必要となります。既存の治療薬としては、デスモプレシン酢酸塩水和物及びフォンビルブランド因子を含有するヒト血液由来の血液凝固第VIII因子製剤があります。
 次のページを御覧ください。デスモプレシン酢酸塩水和物は、一部の病気にしか適応が無いことに加え、症例ごとに効果が大きく異なっております。また、既存の第VIII因子製剤は、ヒト血液に由来する感染リスクを完全に排除することはできません。今般、希少疾病用医薬品として指定申請された両製剤は、病気によらず使用できると共に、培養細胞であるCHO細胞以外のヒト又は動物由来原材料を用いない遺伝子組換えフォンビルブランド因子製剤及び血液凝固第VIII因子製剤であり、病原体の伝播にかかる理論的なリスクが低減されています。以上から、医療上の必要性はあるものと判断しております。
 最後に開発の可能性についてですが、現在、日本も参加を予定している国際共同第III相臨床試験が計画されており、開発の可能性はあると判断しております。以上より、両製剤は希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。
 患者数が944人という希少疾病ですが、国際臨床試験を第III相で行うということは、かなり大きな数を用意しているのでしょうか。まだその情報はまだ無いのですか。
○事務局 36ページで「エ.開発計画」となっている所ですが、この表の第III相試験のところで、対象症例数は□例を目標にしており、日本人を□□□□と計画しているということです。
○吉田部会長 分かりました。いわゆる比較試験という意味でしょうか。悪性疾患ではないので、後期第II相みたいな格好になっているのですね。ありがとうございました。ほかにありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入ります。なお、奥田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
続きまして、議題5について事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題5、資料5「ブレンツキシマブベドチンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
 「陽性のホジキンリンパ腫及び未分化大細胞リンパ腫」を予定効能・効果とするブレンツキシマブベドチンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明します。疾患名は、それぞれHL及びALCLと略します。申請者は武田薬品工業株式会社及び武田バイオ開発センター株式会社です。資料の「評価報告書」のタブを御覧いただき、先ほどと同様に希少疾病用医薬品の指定要件の3点について順に御説明します。
 まず、患者数です。報告書の2ページの一番上からですが、平成20年の患者調査やCD30の発現割合を勘案し、本剤の投与対象となる患者数はHLとALCLのそれぞれで950人及び1,060人と推定されております。したがって、5万人未満ということになります。
 次に、医療上の必要性についてです。HLは初回治療としてABVDが標準的療法として用いられていますが、20~40%が再発・難治となることが報告されております。再発・難治例に対して標準療法として確立したものは、国内外共に無いという状況です。また、ALCLの初回治療としてCHOP等が用いられてはおりますが、標準的治療法は確立していないという状況です。このことから、HL及びALCLに対する新たな治療選択肢が求められている状況です。
 最後に開発の可能性ですが、本剤は、海外で実施された第II相試験においてHL、ALCLに対する奏効率がそれぞれ75%、86%、完全寛解率が34%、53%という成績が得られております。国内においては第I、II相試験が実施中ということで、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 以上3点より、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方から御質疑、御意見をお願いします。
 いかがですか。対象患者数についても、医療上の必要性についても、開発の可能性についても特段の問題は見出せないのですが、よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入ります。なお、奥田委員、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 引き続き、議題6について事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題6、資料6「クロファラビンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
 再発又は難治性の急性リンパ性白血病を予定効能・効果とするクロファラビンを希少疾病用医薬品として指定することの可否についてです。疾患名はALLと省略します。申請者はジェンザイム・ジャパン株式会社となっております。先ほどと同様に評価報告書を御覧いただき、希少疾病用医薬品の指定要件3点について順に御説明します。
 患者数ですが、平成20年の患者調査等よりALLの患者数が8,450人と推定されております。本剤は再発・難治例に限定されますので、さらに患者数は少なくなります。したがって、5万人未満ということになると思います。
 次に、医療上の必要性について御説明します。ALLに対しては、初回治療として多剤併用の化学療法が行われております。フィラデルフィア染色体陽性のALLに対してはチロシンキナーゼ阻害剤が用いられております。一方で、再発・難治例のALLについては、予後不良で、かつ標準的治療法も確立してはおりませんので、新たな治療薬の開発が望まれているという状況です。このことから、医療上の必要性は高いと判断しております。
 最後に開発の可能性ですが、本剤は海外第II相試験で寛解率20%という成績が得られており、2004年に米国で、2006年に欧州で、既に承認をされているものです。国内においては、第I相試験が実施されており、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上3点より、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
 本剤も対象患者数は少なく、医療上の必要性ですが、ALLの場合はとにかく叩いて造血幹細胞移植に持っていくという戦略を考えると、いろいろな種類の薬が必要だということも分かりますし、開発の可能性も既にいくつかのスタディの結果が出ているようです。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入ります。
 本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、報告事項について事務局から説明をお願いします。
○機構 報告事項議題1、資料7「医薬品エンブレル皮下注用25mg、同皮下注25mgシリンジ0.5mL、同皮下注用10mg、及び同皮下注50mgシリンジ1.0mLの製造販売承認事項一部変更承認並びに承認条件の解除について」医薬品医療機器総合機構より報告いたします。
 資料7の5ページ、上から3行目の「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料」の項を御覧ください。本剤は、エタネルセプト(遺伝子組換え)を有効成分とするヒトIgG1のFc領域にヒト腫瘍壊死因子II型受容体の細胞外ドメイン2分子を結合させた融合タンパク質で、現在は「関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る)」及び「多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能・効果で承認されております。関節リウマチ(RA)の初回承認時において、承認用法・用量は10~25mgを1日1回、週2回投与とした上で、製造販売後に日本人関節リウマチ患者を対象に10mg週2回投与、及び25mg週2回投与の関節の構造的損傷の進展防止効果を検討し、当該用法・用量の適切性をさらに検討する必要があると判断され、承認条件が付された経緯があります。
 今般、ファイザー株式会社から、日本人関節リウマチ患者において本剤10mg週2回投与及び25mg週2回投与の関節の構造的損傷の進展防止効果が確認されたとして、関節リウマチの効能・効果に「(関節の構造的損傷の防止を含む)」を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされ、医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。また、提出された国内臨床試験成績から、本剤の関節リウマチの初回承認時における承認条件「本剤10mg及び25mg投与時の関節破壊の進展防止効果、安全性等を確認するため、適切な対照群をおいた長期(1年以上)にわたる二重盲検比較臨床試験を実施して、その結果を速やかに報告し、用法・用量の適切性について検討すること」の内容について確認できたものと判断しました。
 報告事項議題2、資料8「医薬品フラジール内服錠250mg及び同腟錠250mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
 本薬の有効成分であるメトロニダゾールは、菌体内の酸化還元系によって還元を受け、ニトロソ化合物に変化することで抗菌作用を示すとされております。本薬は、欧米で細菌性腟症に関する承認を取得しており、国内外の診療ガイドラインにおいて細菌性腟症の治療薬として推奨されております。この状況を踏まえ「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年8月1日に開催された本部会における事前評価を踏まえ、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、資料8に記載した効能・効果及び用法・用量にて承認して差し支えないと判断しました。
 報告事項議題3、資料9「医薬品注射用イホマイド1gの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
 本剤はアルキル化剤に分類される抗悪性腫瘍剤です。本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年10月31日に開催された本部会における事前評価を踏まえ、塩野義製薬株式会社から「悪性リンパ腫」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断しました。
 報告事項議題4、資料10「医薬品タキソール注射液30mg、同注射液100mg、パクリタキセル注30mg/5mL『NK』、同注100mg/16.7mL『NK』、パクリタキセル注射液30mg『サワイ』、同注射液100mg『サワイ』、同注射液150mg『サワイ』、パクリタキセル点滴静注液30mg『サンド』、及び同点滴静注液100mg『サンド』の製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
 本剤はタキサン系の抗悪性腫瘍剤で、現在「卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、子宮体癌」を効能・効果として承認されております。本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年10月31日に開催された本部会における事前評価を踏まえ、今般ブリストル・マイヤーズ株式会社、日本化薬株式会社、沢井製薬株式会社、及びサンド株式会社から、「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌、再発又は遠隔転移を有する食道癌、血管肉腫、進行又は再発の子宮頸癌」の効能・効果及び用法・用量と卵巣癌について、週1回投与の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断しました。
○事務局 報告事項議題5、資料11「医療用医薬品の承認条件の解除について」事務局より報告いたします。
 資料11を御覧ください。2ページですが、スーテントカプセル12.5mgは、平成20年4月16日にイマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍(GIST)と、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌の効能・効果で承認されており、その際に全例調査の承認条件が付されております。今般、この承認条件に関してファイザー株式会社よりデータが提出され、機構における審査が終わりましたので御報告します。
 3ページの調査結果の概要を御覧ください。本剤の特定使用成績調査については、目標症例数が1,000例、観察期間24週間とされ、2,204例の調査票が収集され、調査結果がまとめられております。そのうち安全性解析対象は2,141例で、GISTが21.8%、腎細胞癌が77.8%、その他0.5%という状況です。
 安全性については4ページに記載しておりますが、副作用が発現した症例が95.3%、44.8%で重篤な副作用が認められております。
 5ページの下の表ですが、間質性肺炎等の肺障害や骨髄抑制等の重点調査項目、高血圧等の「本剤に特徴的な副作用」については、添付文書でさらなる注意喚起を要するような問題となる状況は認められておりませんでした。
 有効性については、奏効率が21.7%という成績で、本調査の結果を踏まえた添付文書等の改訂、ホームページでの副作用発現状況の公表等が行われております。これらのことから、承認条件の内容については確認できたものと判断しております。報告は以上です。
 報告事項議題6、資料12「優先審査指定品目の審査結果について」御報告いたします。
 優先審査の取扱いについては、資料の2ページに概要をお示ししています。この制度は、薬事法第14条第7項に基づき、希少疾病用医薬品やその他医療上特に必要性が高いと認められる品目について、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定にあたっては、適用疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断されます。
 1ページにお戻りください。今回の対象品目は、販売名「チゲシル点滴静注用50mg」、一般名「チゲサイクリン」、申請者は「ファイザー株式会社」です。本剤は、多剤耐性グラム陰性菌を適応菌種として、適応症を深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎とする効能・効果で承認申請がなされたものです。事前に取りまとめた医薬品医療機器総合機構の報告書に沿って、本剤の優先審査の該当性について御説明します。
 資料の4~8ページを御覧ください。疾患の重篤性に関して、本邦を含め世界的規模で既存の抗菌薬に対する耐性菌の増加が報告されており、グラム陰性菌では基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)酸性菌、多剤耐性アシネトバクターによる院内感染など、多剤耐性菌に起因する感染症のリスクが高まっております。多剤耐性グラム陰性菌による感染症において、基礎疾患等により免疫状態の不良な症例及び高齢者等では、予後不良となりやすく、感染症状の進行した場合には死亡につながることが懸念されるなど、重篤な疾患に該当すると考えます。
 さらに、多剤耐性グラム陰性菌による感染症に対する治療の選択肢は限定されていること、本剤は海外臨床試験成績から既存の治療薬に耐性を有しており、効果が期待できない多剤耐性グラム陰性菌等においても、少数例の検討ではあるものの、有効性が示唆される結果が示されております。したがって、既存の抗菌薬では十分な臨床効果が期待できない多剤耐性グラム陰性菌に対する本剤の医療上の有用性は高いと判断しました。
 以上を踏まえて、本剤は優先審査品目に該当すると判断しました。
 本剤については、今後、機構での審査を経た後に、改めてこの部会で御審議いただくことになるかと思いますので、その際にはどうぞよろしくお願いいたします。
○機構 報告事項議題7、資料13「医療用医薬品の再審査結果について」報告いたします。
 資料13ですが、こちらは医薬品再審査の確認等結果通知書です。一般名称は「ラミブジンとアバカビル硫酸塩」、販売名は「エプジコム配合錠」です。こちらの品目については、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験の成績等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要は無い「カテゴリー1」と判定したものです。以上です。
○吉田部会長 報告事項議題1は市販後臨床試験による承認条件の確認、議題2~4が公知申請、議題5が製販後調査による承認条件の解除について、議題6が優先審査指定、議題7は再審査結果がカテゴリー1であったという報告です。
 先生方から御質問、御意見がありましたらお願いします。
○清水委員 資料8のフラジール内服錠の妊娠3か月以内の婦人における禁忌についての添付文書への記載の方法ですが、禁忌という枠組みの中に原則禁忌という枠組みは特にこれまで無かったのでしょうか。確か、相互作用の一部のものに原則禁忌という枠組みがあったかと思います。禁忌の中に4番として入れるのも方法かとは思いますが、原則禁忌としてこの項目を入れるということも考えられるかと思います。そこはいかがでしょうか。
○機構 原則禁忌という項を余り設けないようにと考え、今回はこのような記載にしました。
○清水委員 原則禁忌という項目は、今後は基本的には設けない方向で、このような書きぶりにしたということですか。
○機構 なるべく減らすようなことができればということで、今回はこのように記載いたしました。
○菊池委員 資料10のパクリタキセルですが、これは血管肉腫の適応になっていますが、記憶では血管肉腫というか、ほとんどカポジ肉腫で行ったものに対する前回の審議だったような気がするのです。この適応の効能・効果のところではカポジ肉腫は全く入らず、血管肉腫までということになるのでしょうか。
○機構 我々としては、カポジ肉腫は含まれていないと考えております。
○菊池委員 審議した時は、ほとんどカポジ肉腫の資料を用いていたと記憶していますが、いかがですか。
○機構 御指摘いただいた点ですが、以前、当部会で公知の該当性について事前評価いただいた時には、主として、カポジ肉腫が対象に含まれていない海外臨床試験成績を踏まえて、御議論いただいております。
○菊池委員 分かりました。記憶がおぼろげなので、それならいいのですが、もしかしたら外れているものがあるかもしれないと思っただけです。
○奥田委員 資料12のチゲシル点滴静注用について、検討の結果、海外第III相、第IV相では対象群と比べて死亡率が高い傾向があることが認められているということで、それに留意する必要があると書いてあります。このことについて、要因分析とどういうことに留意されるかを教えていただけたらと思います。
○機構 ただ今、この品目に関しては審査中の過程で、その点を含めて審査しているところです。具体的な要因等は審査の中で確認しているところですので、今の時点でお答えできません。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにありますか。特に御意見が無いようですので、ただ今の報告については御確認いただいたものといたします。
 事務局からほかに何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会の日程は、年度が変わりまして、御案内のように4月19日(木)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方から、その他何かありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日はこれにて終了とさせていただきます。ありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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