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2012年2月14日 第11回石綿による疾病の認定基準に関する検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成24年2月14日(火)17:30~


○場所

経済産業省別館1020号会議室(10階)
(東京都千代田区霞が関1-3-1)



○出席者

参集者:五十音順、敬称略

審良正則、岸本卓巳、神山宣彦、篠原也寸志、廣島健三
三浦溥太郎、宮本顕二、森永謙二、由佐俊和

厚生労働省:事務局

鈴木幸雄、河合智則、神保裕臣、児屋野文男、渡辺輝生、倉持清子、大根秀明、斎藤将

○議事

○斉藤職業病認定業務第二係長 定刻となりましたので、これより第11回石綿による疾病の認定基準に関する検討会を開催いたします。本日は大変お忙しい中、またお足下の悪い中をお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。本日の検討会にはオブザーバーとしまして、環境省環境保健部石綿健康被害対策室の桑島室長にご出席いただいております。また、厚生労働省安全衛生部労働衛生課の田原中央じん肺診査医にも同席いただいております。よろしくお願いいたします。座長であります森永先生に、議事の進行をお願いいたします。
○森永座長 資料の確認からお願いします。
○斉藤職業病認定業務第二係長 本日の資料の確認です。資料1「石綿による疾病(肺がん)の論点メモ」、資料2として文献の3枚ものです。なお、文献につきましては、著作権等の問題があるため、前回と同様に委員の方々のみに配付させていただいております。資料3「ドイツにおける作業別の石綿濃度の変遷」、資料4「石綿建材に使用された石綿量の推移」、資料5「日本における石綿輸入量の推移」、資料6「石綿による疾病の認定基準に関する検討会報告書案」で、第1部が肺がん関係、第2部がびまん性胸膜肥厚関係のものです。資料の確認は以上です。
○森永座長 今日の議論を始めます。論点メモを、事務局のほうでお願いいたします。
○大根中央職業病認定調査官 簡単ではありますが、資料のご説明を申し上げます。資料1は、肺がんの認定に関する論点メモです。前回までの検討結果を簡潔に記載させていただいております。前回の検討会で議論された点について見ていただきますと、4「胸膜プラーク画像所見を指標とする考え方について」。最初の矢印ですが、エックス線写真によって胸膜プラークが確認でき、CT画像によってもプラークと認められるもの、及びCT画像により胸壁内側の1/4以上のプラークが確認できるものを要件に加えるに当たりまして、読影基準とも言うべきものにつきましては、さらに検討が必要とされていたかと思います。
 矢印の2つ目です。現行の胸膜プラーク+石綿ばく露作業従事期間10年以上の要件ですが、こちらについては当面維持することが適当との結論であったかと思います。ただし、石綿ばく露作業の従事時期によって、石綿ばく露の評価を変える手法の導入について、さらに検討する必要があるとされていたかと思います。これは6の「石綿ばく露作業従事期間を指標とする考え方について」も同様です。
 7「その他」の潜伏期間についてですが、矢印の2つ目で、最初のばく露から肺がん発症までの潜伏期間を、少なくとも10年とする要件を付加することが適当との結論であったかと思います。資料1については以上です。
 資料2は文献が3件です。関係部分のみの抜粋とさせていただいております。資料2-1は『World Cancer Report』、資料2-2はAttanoosによるもの、資料2-3は清水らのものです。
 資料3「ドイツにおける作業別の石綿濃度の変遷」です。これはBK-Reportに記載されているものです。左の欄は「石綿繊維製造作業」ですが、石綿繊維製造のさまざまな領域における繊維濃度です。1950年から1954年の期間においては、1cm³当たり100ファイバーであったものが、1960年から1964年の期間においては41ファイバー、1970年から1974年は10ファイバー、1980年においては3.8ファイバー、1990年においては0.9ファイバーまで減少したことを示しております。
 真ん中の欄は「石綿セメント製品製造作業」で、石綿セメント製品を工業的に製造したときの繊維濃度状況です。右の欄は「一般的な建設態様の作業」です。これは閉鎖的な空間における手作業でのボードを用いた被覆または断熱作業時のドリル作業、のこ作業、ポンチ作業等と例示されておりますが、これらも同様に、1950年から1954年の期間以降の石綿濃度の変化が示されております。石綿繊維製造及び石綿セメント製品製造におきましては、1980年には、1950年代、1960年代と比較しまして、相当低下してきています。また、全体として、1990年には顕著に低下したと言えるのではないかと思います。
 続いて資料4「石綿建材に使用された石綿量の推移」です。年ごとに各製品の出荷量を平米単位、それに石綿含有率、パーセントを乗じて算出したものです。何トンという石綿の実量ではありませんが、石綿量の推移を見るための指数としては、参考になるものではないかと思っております。
 左の「石綿含有スレート波板」から、石綿含有成形板9種類の年ごとの石綿量の合計がいちばん右の欄にあります。昭和48年を見ていただきますと、こちらがピークとなっていまして、2万7,400です。その後、しばらく増減を繰り返しておりますが、昭和63年以降は一貫して減少しています。平成7年には1万を切りまして、ピーク時の1/3程度と読めます。作業現場におけるばく露が低減している状況の、1つの目安になると見ております。
 資料5は、日本の石綿の輸入量の推移を表したものです。昭和49年の約35万2,000トンをピークとしまして、その後しばらくの間増減を繰り返しておりますが、先ほどの建材に使用する石綿量と同じように、昭和63年以降は一貫して減少しています。平成8年には17万8,000トンということで、ピーク時の約1/2ぐらいまでに減少していることがわかります。
 次に資料6で、報告書案で、2部構成となっています。第1部が肺がん関係、第2部がびまん性胸膜肥厚関係です。この報告書案につきまして、後ほど必要な部分を読み上げさせていただきます。
 最後に、資料にはしておりませんが、団体等から要請書などが寄せられておりますので、委員の先生方には参考としてお手元にお配りさせていただいております。資料の関係は以上です。
○森永座長 まだ検討が残っていたプラークの読影の件と、従事期間を判断する際の評価のあり方について議論をして、最終的に報告書案を取りまとめたいと思います。まず、胸膜プラークの読影基準についての報告書案を読み上げてください。
○大根中央職業病認定調査官 4頁の(2)胸膜プラーク所見の指標を読み上げさせていただきます。
 限局性胸膜肥厚あるいは胸膜肥厚斑は、多くは石綿ばく露によって発生するものであるが、結核性胸膜炎、胸壁結核、外傷等によって生じることもある。このため、平成18年報告書では、限局性胸膜肥厚あるいは胸膜肥厚斑のうち、石綿によるものについてのみ、胸膜プラークの呼称を用いている。平成18年報告書では、胸膜プラークは低濃度のばく露でも発生するとし、画像上の胸膜プラークがある人の肺がんの発症リスクは、これまでの疫学調査では1.3倍~3.7倍と幅があり、調査対象集団が最も大きいHillerdalのコホート調査の結果では、胸部エックス線写真で石綿肺はないが胸膜プラークがある場合の肺がんの発症リスクは1.4倍であったことから、胸膜プラークが認められることのみをもって、肺がん発症リスクが2倍になる石綿ばく露があったとはいえないとしている。一方、ドイツでは一定の広がりや厚みがある胸膜プラークが認められる場合を認定要件の一つに掲げているが、その他の国において単独の要件としているところは見当たらない。
 今回、胸膜プラークと石綿ばく露量との関係についての研究報告を検証したところ、廣島、由佐らが行った胸膜プラークと石綿小体濃度の関係についての症例研究においては、胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められた事例(161例中32例)については、その87%(28例)が石綿小体数5,000本以上であったと報告している。また、左右いずれか一側の胸部CT画像上、胸膜プラークが最も広範囲に描出されたスライスで、胸膜プラークの範囲が胸壁内側の1/4以上の事例(168例中55例)については、その73%(40例)が石綿小体数5,000本以上であったと報告している。また、Parisらは、過去に石綿ばく露作業に従事した者5,544人を対象にHRCTで胸膜プラークを調べた結果、胸膜プラーク有所見率とばく露開始からの期間及び胸膜プラーク有所見率と石綿累積ばく露量との間にそれぞれ個別に相関関係が認められたと報告している。
 これらの結果は、画像上の胸膜プラークの所見やその範囲と石綿ばく露量との間の相関関係の存在を示唆している。本検討会は、最近の胸部CTを用いたこれらの調査結果を重視して、以下の①又は②の要件を満たすものは、肺がん発症リスクが2倍になる石綿ばく露があったものとみなして差し支えないものと考える。①胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、CT画像によって当該陰影が胸膜プラークとして確認されるもの。②胸部CT画像で胸膜プラークを認め、左右いずれか一側の胸部CT画像上、胸膜プラークが最も広範囲に描出されたスライスで、その広がりが胸壁内側の1/4以上のもの。
 この「胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影」とは、廣島、由佐らの症例研究における読影基準をそのまま採用し、次の(ア)又は(イ)のいずれかの場合をいうものとする。(ア)両側又は片側の横隔膜に、太い線状ないし斑状の石灰化陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないこと。(イ)両側側胸壁の第6~10肋骨内側に、石灰化又は非石灰化、非対称性の限局性胸膜肥厚陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないこと。(ア)及び(イ)に係る画像例等、胸部画像の撮影条件及び胸膜プラークの読影に関しては、本報告書末尾に添付した「『胸膜プラークと判断できる明らかな陰影』に係る画像例及び読影における留意点等」を参照のこと。なお、労災補償の対象と判断するためには、労働者としての石綿ばく露作業従事歴が1年以上あるとの要件を付加すべきである。この場合、石綿ばく露作業従事年数が1年に満たないときは、職業ばく露以外の要因についても検討が必要である。
 別添も読み上げをさせていただきます。16頁です。
 「胸膜プラークと判断できる明らかな陰影」に係る画像例及び読影における留意点等。1「胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影」に係る画像例。「(ア)両側又は片側の横隔膜に、太い線状ないし斑状の石灰化陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないこと」に係るもの-図1及び写真1、2。図1、典型的な種々の横隔膜部石灰化像。写真1、典型的石灰化胸膜プラークの一例。両側横隔膜に太い線状の石灰化陰影が認められ、肋横角は消失していない。「(イ)両側側胸壁の第6~10肋骨内側に、石灰化又は非石灰化、非対称性の限局性肥厚陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないこと」に係るもの-写真2。写真1と2を作成の際に取り違えて反対にはめ込んでしまったようです。1と2の画像が逆になっているということです。申し訳ございません、お詫びをさせていただきます。「写真2、側胸部にみられる非石灰化胸膜プラーク例。両側側胸壁の第6~10肋骨内側に、石灰化又は非石灰化、非対称性の限局性肥厚陰影が認められ、肋横角の消失を伴わない。
 2胸部画像の撮影条件及び胸膜プラークの読影における留意点。(1)胸部正面エックス線写真及び胸部CTの撮像条件について。胸部正面エックス線写真は、じん肺健康診断における撮影条件(じん肺診査ハンドブック)に基づいて適切な条件のもとに撮影されたもので読影に供されるべきである。DR写真、CR写真については「じん肺健康診断等のためのDR(FPD)撮像表示条件」及び「じん肺健康診断及びじん肺管理区分の決定におけるDR(FPD)写真及びCR写真の取扱い等について」の一部改正についてに基づいて撮像されたものであること。胸部CTは、背臥位又は腹臥位で深吸気位にて撮像する。画像は、少なくとも5mm幅、5mm間隔で、肺野条件と縦隔条件を表示する。通常の撮像方法の一例としては、管電圧は120kVp、管電流はオートとし、X線ビームは幅40mmで1秒間に2回転、寝台移動速度は4mm/秒とする。可能な限り高分解能CT(HRCT)を行うのが望ましい。
 (2)胸膜プラーク読影における留意点。胸膜プラークは、石綿ばく露に起因する壁側胸膜の線維性組織の増生からなる変化で、限局性の平板状隆起を示す。通常は両側に多発するが、肺尖部や肋横角部近辺にはみられない。胸部正面エックス線写真で肋横角の消失がある場合には、結核性胸膜炎や膿胸などの胸膜疾患の後遺症の可能性がある。このため、肋横角の消失がある側では胸膜プラークの有無についての診断は行わない。胸部正面エックス線写真での側胸壁内側の胸膜肥厚所見については、胸筋による陰影、胸膜下脂肪組織による陰影、肋骨随伴陰影(肋間筋、脂肪組織)との鑑別が必要である。これらは、両側で左右対称性の陰影として描出される場合が多い。また、古い肋骨骨折後の化骨像や胸壁腫瘍などが胸膜プラークと混同される場合がある。胸膜プラークによる側胸壁内側の胸膜肥厚は、限局性で左右の形状は非対称性であり、内部に石灰化を伴う場合もある。
 胸部CT画像上の胸膜プラークは、壁側胸膜の限局性肥厚を示す所見である。縦隔条件で肥厚の境界部が明らかで、かつ、肥厚部分の陰影濃度(CT値)が胸筋と比べて同等又はそれ以上であることが確認できるものとする。また、縦隔条件ばかりでなく肺野条件も用いて肺野の変化に伴う胸膜の肥厚でないことを確認する。胸部CT画像での胸膜プラークの広がりは、左右いずれか一側の胸部CT画像において最も広範囲に胸膜プラークが描出されたスライスを選択し、胸壁内側の長さを4等分し、胸膜プラークの広がりが1/4以上であるか否かを計測する。一側胸壁の範囲は、腹側は胸骨縁から背側は肋骨起始部に至るまでの胸壁内側とする。胸膜プラークが複数ある場合(同一スライスで縦隔胸膜に認められる胸膜プラークを含む)は、各胸膜プラークの範囲を合計する(写真3参照)。写真3、胸膜プラークのCT画像における胸壁内側の拡がりの測定法。胸壁内側の長さの4等分を示す。写真4、CT画像における胸膜プラークの広がりの実測例。胸膜プラークの広がりが、同一スライスの胸壁内側の長さの1/4以上か否かを計測する。この例では、4個の胸膜プラークを合計した範囲は1/4以上と判断される。以上でございます。
○森永座長 別添について、由佐委員から追加コメントはございますか。
○由佐委員 特にありませんが、胸膜プラークの画像診断というのは非常に幅があって、難しいということで、細かいところで疑いを入れてくると、非常にバリエーションが出てくるということで、我々が報告書のときに調査をしたときの基準としては、誰が見てもプラークということが納得できるような影ということで、このような基準の下に調査をしたということです。その結果として、先ほどのデータが出たということです。
○森永座長 審良委員、チェックをして、おかしいところを訂正してください。
○審良委員 CTの撮影条件ですが、「一例として」と書いてあるのでいいのですが、何列のCTでしたかということで、使う列によってかなり条件は変わってきます。これは初期の頃の40mmの幅とか、1秒2回転とか。最近のもっと大きなものですと、この条件とはまた変わる可能性がありまして、何列のCTかという条件も入れておかないと、何列でしたときにこの条件と。
 それと、これは4mm/秒と書いてあるのですが、これは寝台移動速度が1秒間に4mmで動かすと、胸を撮影するのが。
○由佐委員 そうですね、これは間違いかもしれません。
○審良委員 そうですね。
○由佐委員 この1例というのは、千葉労災病院で撮っているものの、64列のCTです。それの例として出しました。これはやはり機種によっていろいろと条件の違いがあると思います。また、最近はうちは64列ですが、もっといい機種も出てきていますし、一概にこの条件だということではなくて、これは1例ということでご理解いただければと思います。
○審良委員 それと、この条件にすると、肺がんであったらステージングで撮ってある写真があって、これをまた別追加で撮らなければいけないことになるのですが。
○森永座長 画像は機種によって違うけれども、例えば64列の場合ではという書き方にしないとしようがないですね。
○審良委員 それと、5mmと使っているのは、おそらく胸膜プラークを出そうとして5mmの、普通はステージングしているときの肺がんのものは、7mmを使っているところもあるので。
○由佐委員 施設によっては7mmにしたりするところもあると思います。うちは5mmなのですが、その辺は。
○森永座長 一般的には、ルーティンはどちらかというと7mmのほうが多いのですよね。だけれども、プラークの場合は5mmのほうがいいと思うので、そういうことははっきりと書いておいたほうがいいですよね。
○審良委員 あとで5mmに出せばいいだけなので、データとして取ったら、あとは7mm出しのフィルムと5mm出しのフィルムを別に、フィルムとして出せば終わりなのです。その条件さえ言っておけば、そのような条件で出してくれと条件を付ければ、それで肺がんのときに撮ったもので、そのときにデータ処理してしまえば作れるので。あとでは作れなくなるので、条件を入れてもらっていれば大丈夫だと思います。
○森永座長 ここは何列かの機械にもよるし、メーカーでも1つずつ違うので、その辺は工夫して書き直すようにしましょう。審良委員、またあとでどう修正したらいいか意見をください。
○審良委員 HRCTを追加していただきたいというか、HRCTのほうが肺野病変だけではなくて、プラークも広く撮れると思うのです。ヘリカルで5mmで撮っても、HRで撮ったほうが、より幅を広く、細かく読めると思うので、HRCTのほうが見やすいというか。ヘリカルのほうが少し低めに取ってしまうので、HRCHを追加したほうがプラークの範囲は広く撮れると思います。
○森永座長 これは、放射線専門の審良委員のほうに修正をお願いします。
○由佐委員 この調査をしたときには、ほとんどがHRCTではなくて、通常のCTの画像で調査をしたものですから、このように書いています。
○審良委員 あと1点あるのですが、胸部写真では、いろいろ肋骨随伴陰影などを区別すると書いているのですが、CT上は肋間静脈があってまぎらわしいので、肋間静脈をプラークと見間違いやすいということを。
○森永座長 肋間静脈のものは、これは撮るべきではないという写真も付けたほうがいいですか。岸本委員、どうですか。
○岸本委員 肋間静脈は暫々間違いますが、1スライスの所見だけで胸膜プラークの診断をしないすなわち、2スライス以上でプラークの診断をしましょうと付記しておけば、肋間静脈はまず外れると思います。
○森永座長 そこをもう少し工夫をして、修正しましょう。
○岸本委員 それともう1つで、HRCTはいいのですが、HRCTを普通はHRCTモードで撮らなくて、ヘリカルCTで画像を再構成をするということなので、HRCTモードのCTを別途撮るということを入れるかどうかというのは、問題のないことはないと思います。
○森永座長 HRCTのほうがよりはっきりする、というようなコメントにしておいたほうがいいのではないですかね。
○岸本委員 そういうコメントにしておいたほうがいいと思います。通常は由佐委員がこの研究をなされたように、コンベンショナルで撮る場合のほうが多くて、特別にHRCTモードで撮影することは少ないと思います。どの病院でも通常に撮るのは、やはりコンベンショナルなので、HRCTのほうが精度が高いということを付けたぐらいほうが、私はいいのではないかと思います。
○森永座長 コンベンショナルでいくと、大体7mmのほうが多いですよね。
○岸本委員 いまは、そうですね。
○森永座長 5mmのほうがそれはいいよね。ここは審良委員が専門の分野なので、修正を加えるということにしましょう。CTもよく肋間静脈と間違えるので、できたらそれも写真を載せるほうが望ましいので、それも検討しましょう。
 それから、写真1と写真2は入れ換わってしまっていますが、非石灰化の胸膜プラークは、拡大写真を付けていただくほうがいいですよね。
○岸本委員 そうですね。典型例ということで、片肺の胸膜プラーク典型例を丸で囲んだような形のものを、非石灰化胸膜プラーク例の隣にもう1枚付けるということで良いと思います。
○森永座長 拡大のものを付けるようにしましょう。
○岸本委員 拡大のものを付けることのほうがいいと思います。
○森永座長 ほかに何かご意見はありますか。なければ、次の論点に進みます。
○大根中央職業病認定調査官 7頁の(4)石綿ばく露作業従事期間の指標です。
 石綿ばく露作業従事期間のみで肺がん発症リスク2倍と判断するためには、ドイツのBK-Reportで示されているように、年代別の作業ごとのばく露濃度のデータが必要となるが、日本にはそのようなデータが存在せず、また、ドイツとは作業年代及び作業方法や作業環境等が全く同じとは限らないことから、ドイツのデータをそのまま採用することはできない。このため、平成18年報告書では従事期間のみの基準の設定は見送られたものである。今回、平成18年2月9日から平成22年11月30日までに決定した石綿による肺がんの全事案3,030件のデータを収集・分析し、石綿ばく露作業従事期間のみで肺がん発症リスク2倍となる基準が設定できるかを検討した。
 収集したデータのうち、石綿小体計測が行われた事例について、労働者が従事していた作業の種類ごとに分類の上、各事例の石綿小体数が5,000本に到達する期間を推定して比較したところ、「石綿糸、石綿布等の石綿紡織製品製造作業」の従事者9例のうち、8例が5,000本到達期間4.13年以下、「石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品の製造工程における作業」の従事者6例のうち、5例が5,000本到達期間3.44年以下、「石綿の吹付け作業」の従事者9例はすべてが5,000本到達期間7.34年以下であり、また、そのうち8例は3.13年以下という結果を得た。この結果から、以上の3つの作業に従事した者については、その期間が5年程度あることが確実である場合には、発症リスクが2倍以上となる石綿ばく露があったものとみなすことに合理性があると考える。
 一方、それ以外の作業の従事者については、石綿小体数が5,000本に到達する期間に大きな差が認められ、作業内容や従事頻度により累積ばく露量が大きく異なることが改めて示唆されており、石綿ばく露作業従事期間によって累積ばく露量を推定することは、現在までに日本で得られた知見からは適当ではない。上記の3作業以外については、さらに事例が集積された時点で、再検証の必要があると考える。
 ところで、従事期間の要件のみにより認定する場合、その従事時期が問題となる。このため、イギリスでは1975年以前の時期であれば5年以上の従事期間で足りるが、1975年以降の時期であれば10年以上の従事期間を必要とし、ベルギーでは1985年以前の時期に従事した場合に限り10年以上の従事期間という要件としている。また、ドイツでは、一部の作業では石綿濃度が年代別に示され、従事時期別にそれが当てはめられて累積ばく露量が算出されている。石綿繊維製造作業の石綿濃度は、1980年にはピーク時の約1/26、1990年には同じく1/111に、石綿セメント製品製造作業では1980年にはピーク時の約1/181、1990年には同じく1/666に、一般的な建設態様の作業では1980年にはピーク時の約1/1.7、1990年には同じく1/75に低下するデータを示し、これに基づき評価している。
 日本がドイツのデータと同様の状況ではないにしても、石綿に対する規制が逐次強化されてきた中で、原料としての石綿や石綿含有製品を取り扱う職場における作業環境の改善も図られてきており、石綿吹付け作業が行われていた昭和50年以前の時期におけるばく露と、最近の時期におけるばく露とを従事期間が同じということだけで同様に評価することは、著しく合理性を欠くものと言わざるを得ない。また、今後は石綿濃度が低下している時期に作業に従事した事案が増加してくることを踏まえ、従事時期によって石綿ばく露の評価を変える手法を採用することは必要なことと考える。
 日本においては、昭和46年に旧特定化学物質等障害予防規則において、屋内作業での局所排気装置の設置が義務付けられ、その性能を担保する要件として、抑制濃度を5繊維/cm³とすることとされたほか、昭和50年に石綿吹付け作業が原則禁止され、昭和63年には作業場内のほとんどの場所で石綿粉じん濃度の基準値である管理濃度を2繊維/cm³以下とするよう法令で規定し、また、平成元年には大気汚染防止法の改正で石綿が特定粉じんに定められ、境界敷地領域での石綿濃度が10繊維/Lに規制された。実際、Higashiらは、日本石綿協会加盟110社の石綿製品製造工場における職場大気中の石綿濃度は、幾つかの石綿紡織事業場を除くと、平成4年以降全ての事業場での定点測定濃度の幾何平均が1繊維/cm³を下回り、これは個人ばく露での0.3繊維/cm³以下に相当すると報告している。さらに、平成7年にはクロシドライト及び一部の石綿含有建材に使われていたアモサイトの製造・使用等が禁止されたほか、保護具、作業衣等の着用が義務化される等、規制が強化された。
 石綿の使用状況としては、日本の石綿の輸入量がピーク時の約半分になったのが平成8年であり、また、この頃には、石綿含有建材に使用される石綿の量がピーク時の少なくとも半分以下に低下している。さらに、石綿製品を製造・加工する工場の約2/3が平成8年頃までに石綿の取扱いを中止したものと推測される。これらの状況を考慮すれば、遅くとも平成8年以降の石綿ばく露作業従事期間については、原則としてそれ以前の時期における従事期間の半分として評価して従事期間を算定することが妥当である。ただし、従事期間を半分で評価した結果、5年の年数に達しない事案については、慎重を期するため、当分の間、本省で確認するのが適当である。※各事案について石綿小体計測数を当該作業の従事年数で割った単位年当たりの石綿小体数から算出。例:石綿小体計測数10,000本、作業従事年数20年の場合、単位年当たり石綿小体数は10,000本/20年で500本、したがって、5,000本到達年数は10年となる。
 (5)胸膜プラーク+石綿ばく露作業従事期間10年の指標。前述のとおり、平成18年報告書は、胸膜プラークがあることだけで、肺がんの発症リスクが2倍になる石綿ばく露があったとはいえないとしている。他方、石綿ばく露作業従事期間については、概ね10年以上のばく露期間があったとしても、石綿作業の内容、頻度、程度によっては必ずしも肺がんの発症リスク2倍を満たすとは限らないことから、概ね10年以上の石綿ばく露期間のみをもって判断指標とするのではなく、肺がんの発症リスク2倍を満たす要件としては、胸膜プラーク等の医学的所見と併せて評価することが必要であるとしている。
 現在の認定基準は、この平成18年報告書と昭和53年から続く運用を踏まえ、医学的所見と石綿ばく露作業従事期間を組み合わせて設けられている。今回、この要件の今日的な妥当性を検証するため、平成18年2月9日から平成22年11月30日までに決定した石綿による肺がん事案3,030件のうち、「胸膜プラーク+石綿ばく露作業従事期間10年以上」の要件を満たし、かつ、石綿小体数が明らかになっている130件を分析したところ、石綿小体数5,000本以上のものが94件(72.3%)、5,000本未満のものが36件(27.7%)という結果を得た。したがって、この要件は、概ね肺がんのリスクを2倍に高める累積石綿ばく露量の指標として、現時点では一定の評価ができるものと考える。
 しかしながら、先に石綿ばく露作業従事期間の指標のところでも述べたように、日本においても作業環境における石綿濃度は明らかに低下しており、今後は石綿濃度が低下している時期に作業に従事した事案が増加してくることを考えれば、「胸膜プラーク+石綿ばく露作業従事期間10年以上」の要件における従事期間についても従事時期によって石綿ばく露の評価を変える手法を同様に採用すべきである。したがって、平成8年以降の石綿製品製造作業従事者の石綿ばく露作業従事期間については、原則としてそれ以前の時期における従事期間の半分として評価し算定することが妥当と思われる。この場合においても、従事期間を半分で評価した結果、10年の年数に達しない事案については、慎重を期するため、当分の間、本省で確認するのが適当である。ただし、古い建築物の解体作業や配管断熱材の除去作業、また、古い船舶の修理作業については、石綿製品の製造や使用が全面的に禁止された現在でも行われていることを考慮すると、当面は現行の取扱いを存続することが妥当と思われる。
 また、石綿製品製造作業、古い建築物の解体作業や配管断熱材の除去作業、船舶の修理作業以外の作業については、平成7年に石綿製品の切断等の作業についても保護具、作業衣等の使用が義務化されたこと、平成16年10月には建材等への石綿(クリソタイル)の使用が禁止されたこと、平成17年7月の石綿障害予防規則の施行によりばく露防止措置が強化されたこと等の状況も踏まえ、平成17年以降における作業期間は、当面の間現行の取扱いを存続するが、そのばく露状況等を検証し、今後の参考とすることが必要である。
 なお、「胸膜プラーク+石綿ばく露作業従事期間10年」の要件における胸膜プラークについては、これまで胸部CT等の画像では確認されないが、手術時等において肉眼で確認されたものも含むものとされているところ、廣島、由佐らの報告では、左右いずれか一側の胸部CT画像上、胸膜プラークが最も広範囲に描出されたスライスで、胸膜プラークの範囲が胸壁内側の1/4以上に認められたものは、ほとんどの例で石綿小体が1,000本/g(乾燥肺重量)以上(中央値は5,626本/g(乾燥肺重量))であったのに対し、肉眼的に胸膜プラークが確認された61例のうち25例では胸部CT画像で胸膜プラークを検出できず、それらの石綿小体の中央値は612本/g(乾燥肺重量)であったことから、今後、肉眼的にしか見えない胸膜プラークと画像で認められる胸膜プラークを同一に扱うべきかどうかについてもさらに検討する必要があると考える。
 ※日本で最初に石綿による肺がんの認定基準を検討したのは、昭和51年6月に設置された「石綿による健康障害に関する専門家会議(座長国立療養所近畿中央病院長(当時)瀬良好澄氏)」であり、そこでの検討結果がとりまとめられた報告書(以下「昭和53年報告書」という)をもとに、昭和53年11月23日「石綿ばく露作業従事労働者に発生した疾病の業務上外の認定について」が示された。
 昭和53年報告書は、当時の石綿ばく露産業別の疫学調査(当然1977年以前のもの)をレビューし、潜伏期間、量-反応関係、喫煙との関係、石綿の種類別と肺がん発生についても検討を行った。対象とした石綿産業は、①石綿紡織産業、②断熱作業、③石綿鉱石採掘作業、④石綿製品製造作業、⑤ブレーキライニング製造作業である。まとめの一部に「最近の疫学調査から、石綿ばく露量が大となるにつれて肺がん発生の超過危険が大きくなる傾向がみられ、症例としては石綿ばく露期間が概ね10年を超える労働者に発生したものが多い」と述べている。そして通達では、石綿へのばく露の医学的所見として、胸膜プラーク陰影(当時の報告書では胸膜の肥厚斑影または石灰化影)が胸部エックス線写真で認められること、あるいは経気管支鏡的肺生検、開胸生検、剖検等に基づく胸膜の硝子性肥厚又は石灰沈着(結核性胸膜炎、外傷等石綿ばく露以外の原因による病変を除く)、もしくは喀痰中石綿小体、肺組織内の石綿線維または石綿小体の病理所見を挙げている。以上です。
○森永座長 これについて、委員の先生方からご意見はございませんか。
○岸本委員 石綿ばく露濃度が、昭和53年のときと現時点と違うというのは、報告書案どおりなので、昭和53年の基準の10年以上、胸膜プラークというのは、当初のとおり据置くにしても、現段階ではアスベストばく露というのが非常に少なくなっていますから、認定基準も外国のように、ばく露年数について、いずれかの時点で検討をし直すとしたほうがいいのではないかなと思います。例えば石綿小体で、廣島先生や由佐先生がおやりになられた手法でもいいのですが、どの時点でのばく露というのは大体わかるわけですから、その辺りを年代的に見ていくというのも、手法としてはいいのではないかと思います。平成になって、10年ばく露で、石綿小体5,000本を超えるようなばく露はないのではないかと思います。この辺の文言について、どのような文言がいいのかわかりませんけれども、私としてはそのように思います。
○森永座長 私も同じように思いますね。これは平成17年以降については、基本的には1/2ぐらいに見るほうがよくて、それ以外の例は、むしろそういうものがあれば実際に調べて、それは事業主が法違反をしていることになるわけですから、むしろそちらのほうをやっていかないと、いつまで経っても同じようなばく露が出てくるので。やはり予防がいちばん大事ですからね。そこのところを本当は考えるべきでしょうね。ほかにご意見はございますか。
○三浦委員 いまの予防が大事というのは非常に大切なことで、最後のほうのどこかに、予防が大切だということを書き込む必要があると思います。現に法的な規制はありますが、実際にどの程度行われているかわからないのですが、これはきちんと予防という観点から。
○森永座長 終わりのところで触れますか。
○大根中央職業病認定調査官 「おわりに」ですが、こちらも読み上げをさせていただきます。
 おわりに。石綿による肺がんに関しては、定見が確立されていないと考えられる事項がみられることから、今後とも最新の医学的知見の収集を行うとともに、事案の本省への集約と解析を行い、認定基準の見直しに関する検討を適宜行う必要がある。また、医学的所見の確認に関し、胸膜プラークを石綿肺と診断したり、脂肪等の肥厚像を胸膜プラークの所見と見誤るなど、胸膜プラーク等の診断が的確に行われていない事例がみられる。このため、医師に対する一層の研修が重要と考える。
○森永座長 ここに予防のことも入れたほうがいいという三浦委員の意見もありますし、岸本委員もそうですよね。
○岸本委員 はい。
○森永座長 これは入れないと、補償の話ばかりで、石綿の問題は予防がいちばん大事だということを認識してもらわないといけないので、それは是非入れましょう。
 それから、私から補足しておきますと、11頁に昭和53年の報告書がありますが、ここのいちばん下に、「喀痰中の石綿小体、肺組織内の石綿線維または石綿小体の病理所見」とありまして、「病理所見」と書いてある意味は、病理の切片で石綿小体が見つかることという意味なので、病理所見という言葉が入っているということです。HEの標本で、石綿小体が2本あれば、5,000本以上と。
○神山委員 この頃は、いまみたいに大量の肺組織を使った定量的な方法というのはなくて、いまおっしゃったように、プレパラートの中に石綿小体が確認されると、それはかなりの高濃度ばく露者だという経験に基づいてやっているわけで、そのことと、いま現在定量的ににやっていることの両立するわけなので、これはそこを少し明確にしたほうがいいかなと思います。
 それで、いまの数字で言えば、1cm²当たり2本以上、大体普通の5μぐらいの切片で計算すると、1g乾燥肺当たりで4万本ぐらいに相当するのです。ですから、1本あれば2万本ぐらいということで、かなり高濃度に計算されますので、当然病理の先生は複数のプレパラートにちらちらと石綿小体があったら、これは高濃度ばく露者だという判定は当時からしていたのだと思うのです。その辺は、廣島先生なども常に経験されていることだと思うのですが、その辺のところは間違いないですね。
○廣島委員 昨年度から行っている研究で、切片上の石綿小体の本数と肺内石綿小体濃度の比較を180例以上について行いました。その結果、切片上1cm²当たり0.5本以上あった場合に肺内石綿小体濃度が5,000本以上であると考えますと、偽陽性偽陰性が最も少なくなります。
 また、切片1cm²当たり0.1本の石綿小体があった場合に肺内石綿小体が5,000本以上と考えるとした場合のpositive predictive valueは7割以上になりますので、切片上に石綿小体が1本あったら5,000本以上のばく露があると考えて、ほぼ間違いないと思います。施設で肺組織を切り出す大きさは異なりますが、通常4cm²から6cm²です。
○神山委員 その場合、偶然性を除くとすれば、複数に確認した場合ということが付け加わるのではないかと思うのです。たまに何十枚に1本ということがあるのかもしれないと考えれば。
○森永座長 2本あったら、まずこうなのですね。
○神山委員 そうですね。それと、少し話の趣旨が違うのですが、先ほど読み上げてもらった中で、資料3の「ドイツにおける作業別の石綿濃度の変遷」というのは、文面からしても、石綿ばく露濃度。ばく露濃度と作業環境濃度を明確にしておいたほうがいいという発想なのですが、BK-Reportはばく露濃度でしているのだろうと思うのです。
○森永座長 90%値でしたかね、かなり高い値を取っているのですよね。
○神山委員 それで本文でいきますと、8頁の第2パラグラフで、「また、ドイツでは、一部の作業では石綿濃度が年代別に示され」と書いてありますが、「石綿ばく露濃度が年代別に示され」と、明確にしておいたほうがいいのかなと思います。
○森永座長 はい。しかも、これは平均値とか中央値ではなくて、90%タイル値で、非常に高く取っているということですので。
○神山委員 90%、高いほうの値を取っているということですね。
○森永座長 はい。
○神山委員 それと9頁のいちばん上ですが、日本では「定点測定濃度」という言葉はあまり使わないので、「作業環境濃度」と一般的に書き換えておいたほうがいいのかなと思います。厳密には定点ではないので、定点測定ではなくて、「作業環境濃度の幾何平均が」としたらいいと思います。
○森永座長 ほかにご意見はございませんか。
○渡辺職業病認定対策室長 先ほどのお話の中で、プレパラートの本数ですが、いまは基本的には小体については溶解して1g当たりの本数の数値と、それとは別にプレパラートでの数値というのを基準に示したほうがよろしいというお話だったのでしょうか。
○神山委員 11頁の「昭和53年報告書は」といういちばん最後のところで、「病理所見を挙げている」というのはプレパラートという、森永座長のお話のとおりだと思うのですが、より明確にするかどうかという話です。
○森永座長 いままでも、救済法でも労災でも、プレパラートに石綿小体があれば、それを確認する資料が出れば、それでみんな認めていたのです。それはいまでもそのようにしていたと思いますが。
○神山委員 現在でもそのようにしていると思います。
○森永座長 ですから、別に。
○渡辺職業病認定対策室長 基準として、そこは乾燥肺1g当たりの数値の基準と、プレパラートで見た場合の基準を明示しておいたほうがいいのか、そのようなものは当たり前だからいいのだということなのか。いいのだけれどもそういうものだということで、先ほどのお話が成り立つのか、そこがちょっと。
○神山委員 明示できるなら、しておいたほうが間違いないのかなと思うのですが、病理のほうで何か問題がありますかね。
○廣島委員 客観的に表すためには、1枚ではなくて1cm²当たりの本数を評価することが重要です。
○神山委員 複数枚とか、そういう表現が必要だと。
○廣島委員 1cm²当たり何本ということが、いちばん客観性があると思います。
○神山委員 0.5本とか、1本とか。
○廣島委員 そうです。
○神山委員 0.5本というのは言いにくいので。
○廣島委員 0.5本がどういうことかというと、4cm²当たりに2本あるということです。4cm²当たりに2本あれば、5,000本以上のばく露があるだろうと考えます。
○神山委員 1本/2cm²以上、複数の切片を見て、それに相当するような石綿小体があったら、2倍以上と認めるとか、そういう文面になるのだと思うのです。
○廣島委員 「石綿小体濃度が1g当たり」と書いておりますので、それと同等の基準を設けるのでしたら、1cm²当たり何本ということがいいと思います。
○神山委員 そちらでもいいと思います。
○森永座長 いまでもそれでやっていると思いますが、いまでも救済もやっていますよね。
○廣島委員 やっています。
○森永座長 ほかにご意見はございませんか。予防の話は「おわり」に入れるということと、脂肪と肋間静脈は入れないのですね。
○岸本委員 肋間静脈は入れておいたほうがいいと思います。
○森永座長 「脂肪や肋間静脈等」ですね。
○河合補償課長 予防の話ですが、労災の報告書なので、どこまで言えるかは関係部署とも協議しないといけませんので。
○森永座長 そのように縦割りのことばかり言っているからいけないのです。予防も大事だということを一言入れてほしいということです。
○河合補償課長 表現としてどのような形で盛り込むかは、協議させていただきますので。
○森永座長 ほかに意見はございませんか。あとは細かい文言は座長と事務局預かりとさせていただいて、概ねこれで了承していただいたとします。
 引き続き、びまん性胸膜肥厚に移ります。びまん性胸膜肥厚の書きぶりが、肺がんと併せてだいぶ変わりましたが、中身はほとんど変わっていないので、事務局から説明をお願いいたします。
○大根中央職業病認定調査官 主な変更点についてご説明いたします。まず、検討会での指摘事項として、3点修正させていただきました。具体的には、報告書のびまん性胸膜肥厚関係の2頁の上の○で、「石綿ばく露以外に、臓側胸膜と壁側胸膜がゆ着して肥厚する病態を引き起こす原因の主なものとしては以下のものが挙げられる」という中に、以前は「冠動脈バイパス術(後)」という記述がありましたが、これを「冠動脈バイパス術等の開胸術(後)」に修正させていただきました。これが1点目です。
 続いて、同じ2頁の(3)「びまん性胸膜肥厚」の診断です。こちらで、従前は「以下の①または②により、画像診断を行うべきである」としていましたが、これを「以下の画像診断を行うことが適当である」としまして、端的に申しますと、エックス線写真とCT画像をor要件としていたわけですが、And要件に変更いたしております。これが2点目です。
 5頁の呼吸機能障害に関する部分です。上から2行目の「今回、びまん性胸膜肥厚に係る文献を整理した結果」に続く部分ですが、「慢性呼吸不全を来さないびまん性胸膜肥厚は労災補償の対象としないという考え方について変更を要する知見が認められなかった。また、この具体的な要件として」と従前はなっていたものですが、これを「慢性呼吸不全を来すびまん性胸膜肥厚を労災補償の対象とするという考え方について変更を要する知見は認められなかった。この具体的な要件として」という形に修正させていただいております。これが3点目です。こちらが、以前の検討会で、先生方からご指摘をいただいた点でございます。
 それから、5頁の(3)その他の前ですが、「びまん性胸膜肥厚を有する労働者又は石綿健康管理手帳所持者に対して行う健康診断においては」「必要に応じて呼吸機能検査も実施することができるようにすることが望ましい」との行を加えております。
 それから、すでにお気づきかと思いますが、全体の構成としまして、医学的知見の整理を後ろのほうに移動いたしました。診断の要件、労災認定の要件を前のほうに持ってきております。それから、肺がん関係と同様に、「はじめに」と「終わりに」を加えております。
 なお、医学的知見の整理の部分ですが、「角閃石系石綿」との表現になっていましたものを、「角閃石族石綿」という形に修正いたしております。そのほか、若干の修正を加えたところでございます。主な点につきましては、具体的にいま申し上げた部分でございます。以上です。
○森永座長 全体でもいいですから、何かご意見はございますか。
○宮本委員 5頁の上から2行目について、「慢性呼吸不全を来す」となっていますが、来さないものも条件を満たせばもちろん救済されているわけで、この文言を読むと慢性呼吸不全を来すものだけを救済すると誤解されてしまうのではないでしょうか。具体的な基準値がわかるように平成22年の報告書を添付資料として付けるか、あるいはこの報告書の中に詳しく記載しておいたほうが、誤解が生じないように思います。
○森永座長 平成22年の報告書を、後ろに参考資料で付けるようにしたほうがいいですかね。ほかにご意見はございませんか。肺がんのところでも、びまん性胸膜肥厚でも「症例の集積と解析に努める必要がある」と書いてあります。本省への事案の集約と解析を行える制度にしてほしいのです。イギリスのように、認定された事例についてはきちんと集めて解析をするというのは、これからも大事ですから、そういうシステムがとれるような体制を役所の中で作ってほしいと思います。それを考えてほしいです。そうでないと、参考にするものは必要ですからね。ほかに何かご意見はございませんか。
○岸本委員 いまの件ですが、びまん性胸膜肥厚のいちばん最後の「終わりに」のところにあるのですが、胸水が持続、被包化された症例の知見は十分には得られていないのですよね。過去の教科書にも、こういう事案について記載がないというのは、報告書(案)にもありますので、是非こういう症例については、今後の認定基準等にも参考になるので、いま座長が言われましたように、症例を集めて詳細な検討をしていくということにしましょう。びまん性胸膜肥厚の場合は、良性石綿胸水後に起こる事案が最も多く、どの時点でびまん性胸膜肥厚状況になって、肺の再膨張がなくなるということは、いままで知見がないので、今後是非調べていく必要があると思います。座長が言われましたように、本省に症例は集積することができますので、是非、医学的な解析を今後していかなければならないと思いますので、ご協力をよろしくお願いします。
○森永座長 事務方の仕事が増えるから大変だというのはわかりますが、監督署から局を通じて集めて、集積をして、それを分析しないと、また良いものに変えていく材料を集めて解析をしないと、いつまで経ってもバタバタで終わってはいけませんので、きちんと行政の中で体制を作るように。人手が要るなら、それぐらいの人手は付けるようにしてもらってでもやらないと駄目だと思いますので、その辺は是非行政のほうも考えてください。
 ほかにご意見はございませんか。あとはBK-Reportが抜けていましたので、それを付け加えるのと、Fletcherの論文が古い論文で、どこかで探さないと出てこないので、取りあえず私が書いた論文を引用させていただきましたが、これはオリジナルの論文のFletcherのほうに、見つかり次第差し換えさせていただきますので、その点はご了解ください。ほかに意見がなければ、これで検討会を終わりたいと思いますが、「当面の間」と書いてあるのは、いつを言うのですか。
○渡辺職業病認定対策室長 プラークがあって10年の期間という要件については、今回もいろいろな状況としては、最近のばく露は明らかに少なくなっているだろうという想定はできるのですが、それでは実際どの程度のものかというのがよくわからないというのが、最終的にはっきりしなかった「当面の間」という形で残ったのだろうと思います。その辺のいろいろな状況を確認して、それをまた検討会に諮って、新たな基準の検討にしていくということになると思いますので、その間というようなことで考えているところです。
○森永座長 ということは、つまり平成17年以降のばく露作業期間を含めないと、10年に満たないような例が出てくるような時期までにはという意味ですね。いまは過去のばく露で評価できるわけですから、そういう意味ですね。
○渡辺職業病認定対策室長 いま請求があるのはほとんどが高濃度のばく露があった時代に働いていた人の事案ですので、これがだんだん低濃度のばく露しかないような時代の事案が出てくるわけですから、そういったようなことも分析をしながらいくのだろうと思っております。
○森永座長 では、あとは先ほどの文面の差し換えと、文言のところは事務局と座長に一任していただいて。
○渡辺職業病認定対策室長 先ほどの事例の集積ということですが、私ども事務局としても今回監督署から集めましたが、あの資料はあくまでも監督署に残っている記録を集めてということで分析をしました。先生がおっしゃっているのは、もう少し医学的な資料、例えば画像やカルテ等を集めるといったことが必要になってくるのだろうと思いますが、その点については個人情報などいろいろな問題がありまして、やろうと思えばすぐにできるというものではないことをご理解いただきたいと思います。いろいろな法律的な問題もあるのだろうと思っておりますので、その点は是非ご理解を賜っておきたいと思います。
○森永座長 ですが、それに反対する人はいないと思いますし、反対するのはおかしな話なわけです。ただ、それをスムーズにできるようなシステムを行政の中に作ってくれという要望です。
○宮本委員 本検討会に関して、いろいろな方々から要望書が出されています.その中に非科学的な議論をしていると書かれたものがいくつかありました.私達はまさに科学的に議論しているのであって、このような誤解を受けていることは非常に残念な事と感じました.一委員として発言させていただきます。
○森永座長 胸膜プラークをCTでどんどん調査しているのは、フランスと日本なのです。ですから、フランスと日本しかデータが出てこないのは当然なわけで、それはきちんとした調査に基づいて、日本は日本の基準を作るのは全然問題はないわけで、そこを変に誤解している人がいるのは間違いです。それだけは一言申しておきます。我々はきちんと科学的に検討しているという理解をしていただきたいと思います。以上で私のほうからは終わります。
○大根中央職業病認定調査官 森永座長、ありがとうございました。これをもちまして11回にわたりました本検討会を終了したいと思いますが、終了に当たりまして、鈴木労災補償部長からご挨拶を申し上げます。
○鈴木労災補償部長 検討会の終了に当たり、一言御礼のご挨拶をさせていただきます。森永座長をはじめ、ご参集の先生方には、大変お忙しい中、一昨年の5月以来、延べ11回にわたり精力的にご検討をいただきました。本日、ほぼ報告書として取りまとめ、あとは若干の修正が残っているというところまでまいりました。改めて皆様方に感謝申し上げる次第でございます。
 現在の労災認定基準は平成18年2月に策定されましたが、新たな医学的知見を踏まえまして検討していただきました。肺がんについては、胸膜プラークが広範囲に認められる場合、あるいは石綿紡織製品製造作業などに従事した場合、従事期間だけで労災認定するなどの新たな要件を示していただきました。これらの新しい要件が加わることにより、労災補償の対象となる方々の範囲が広がるものと考えております。また、びまん性胸膜肥厚も含めて、これまで以上に適正な判断につながるものと考えております。
 報告書でいただいた内容を、然るべき手順を踏まえまして、できるだけ早く通達の改正などに結び付けたいと思いますし、また、いまほど問題になりました症例の集積、分析については、そのシステムやどのような体制でやるかについては、別途検討させていただきたいと思いますので、また必要に応じたご指導をよろしくお願いいたします。
 最後になりましたが、各先生方のそれぞれの経験に基づいた非常に貴重なご意見を幅広くいただきましたことについて、重ねて感謝申し上げますとともに、今後ともこの分野へのご支援を賜りますようお願いを申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
○大根中央職業病認定調査官 以上をもちまして、第11回石綿による疾病の認定基準に関する検討会を終了させていただきます。ありがとうございました。


(了)

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