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2012年1月18日 第15回新型インフルエンザ専門家会議議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成24年1月18日(水)
16:00~18:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議事

【出席委員】(50音順)
伊藤委員、岡部委員、川名委員、坂元委員、田代委員
丸井委員、澁谷委員、保坂委員

○新型インフルエンザ対策推進室長(神ノ田) 定刻となりましたので、ただいまより第15回新型インフルエンザ専門家会議を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙の折、お集まりをいただきまして誠にありがとうございます。私は新型インフルエンザ対策推進室長の神ノ田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 開会に当たりまして、外山健康局長よりご挨拶を申し上げます。
○健康局長(外山) 本日はご多忙のところ、第15回新型インフルエンザ専門家会議にご出席いただきましてありがとうございます。
 前回の専門家会議におきましては、昨年9月の政府の行動計画の改定を踏まえまして、ガイドラインの見直しに係る意見の取りまとめに向けたご検討をお願いしているところであります。11のガイドラインにつきまして、4つの作業班に分かれてご検討いただきましたが、各作業班におかれましては、非常に短期間にもかかわらず、それぞれ3か月、延べ12回にわたり班会議が開催されまして、精力的にご議論いただいたことに厚く感謝申し上げます。本日は、各作業班の検討結果を報告し、専門家会議としての意見書の取りまとめをお願いしたいと考えております。取りまとめられた意見書につきましては、専門的・技術的な観点からの貴重なご意見でございまして、十分にそれを踏まえさせていただき、今後の政府におけるガイドラインの見直しに反映させてまいりたいと考えております。
 また、皆様ご承知のとおり、昨年末に中国の広東省におきまして、現地の男性が強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1)に感染して死亡するという事例があったわけです。いつまた新たな病原性の高い新型インフルエンザが発生するとも限らない中、新型インフルエンザ対策につきましては、政府の行動計画の実効性をさらに高めるため、内閣官房を中心に必要な法制度の検討に取り組んでいるところでございます。本日は、検討中の新型インフルエンザ対策のために必要な法制度につきましても、内閣官房からご報告をいただくこととしております。
 専門家会議の委員の皆様におかれましては、活発なご議論をいただきまして、今後の政府の新型インフルエンザ対策に意義深い会議となるようお願い申し上げます。
○新型インフルエンザ対策推進室長 次に、委員の皆様方の出欠状況を確認させていただきます。本日は、全14名の委員のうち、現時点で7名の委員の皆様方にご出席をいただいております。なお、庵原委員、押谷委員、吉川委員、高橋委員の4名からご欠席とのご連絡をいただいております。また、谷口委員からは、可能であれば遅れて出席、また川名委員からは10分ほど遅れるとのご連絡をいただいております。
 それでは、以降の議事進行につきましては、岡部議長にお願いいたします。
○岡部議長 それでは、第15回の新型インフルエンザ専門家会議を行います。先ほど健康局長からもご挨拶がありましたが、ワーキンググループが昨年11月、12月にかけて4班とも非常に精力的に議論をしていただきました。今日はその班員の方々はお出でになっていない方が多いのですが、厚く御礼申し上げたいと思います。
 早速議事を進めたいと思いますので、資料の確認を事務局からお願いいたします。
○新型インフルエンザ対策推進室長 それでは資料の確認をさせていただきます。カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、ご協力をよろしくお願いいたします。
 資料は議事次第のあと、配付資料一覧、委員名簿、設置要綱を用意させていただいております。そのあと、資料1は1枚紙の資料で「新型インフルエンザ専門家会議作業班会議の検討経緯等」、資料2として「新型インフルエンザ対策ガイドラインの見直しに係る意見書(案)概要」、資料3として「新型インフルエンザ対策ガイドラインの見直しに係る意見書(案)」の本体、資料4として「新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台」、こちらも1枚紙の資料です。参考資料としまして、「『新型インフルエンザ対策行動計画』の改定のポイント」、参考資料2として「新型インフルエンザ専門家会議の進め方について」です。こちらは前回の専門家会議を9月5日に開催しておりますが、その場で了解していただいた資料です。参考資料3として、「平成24年度予算案の主要事項(新型インフルエンザ対策関係予算の抜粋)」を用意させていただいております。また、委員の皆様のお手元には、行動計画のガイドライン等の関係資料をファイルで綴じてご用意させていただいております。資料の不足等がありましたらお申し付けいただければと思います。
○岡部議長 これから議事に入りたいと思います。百何頁の膨大な資料ですが、全体の見直し、ワーキンググループに入っておられた先生方からも補足をいただくような形で、進めていきたいと思います。それでは、新型インフルエンザ対策ガイドラインの見直し意見案について、事務局からご説明をお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進室長 それではご説明を申し上げます。資料1をご覧ください。昨年の9月5日に開催されました専門家会議におきまして、ガイドラインの見直しの進め方についてご了解をいただいております。4つの作業班において分担をして検討を進めていくということで、これについては参考資料2のとおりです。その方針にしたがって各作業班が3回ずつ計12回の会議を開催いたしまして、本日資料3のとおり意見書(案)を取りまとめていただいたところでございます。作業班会議の委員の皆様方におかれましては、大変タイトなスケジュールの中で集中的なご議論をいただいたところであります。あらためて感謝を申し上げます。資料3が意見書(案)の本体でございまして、参考資料を含めますと100頁近い大部なものとなっております。時間が限られておりますので、資料2の概要を用いまして、ポイントのご説明をさせていただきます。
 まず資料2の1頁です。1.「はじめに」ということで、頁を振っておりますが、意見書本文の頁を付記しておりますので、併せて参照いただきたいと思います。
 1つ目の○はいまのガイドラインについてですが、行動計画に基づく、対策の具体的な内容・関係機関の役割等を提示するために、平成21年2月に策定されたものです。
 2つ目の○では、ガイドラインについて、平成21年4月に発生したH1N1の経験から得られた知見・教訓、また総括会議等による検証結果、平成23年9月に行われた行動計画の改定を踏まえた見直しについて、意見を取りまとめたもので、意見書の位置付けについて整理しております。
 3つ目の○ですが、現在、内閣官房を中心に、新型インフルエンザ対策のために必要な法制度の検討が行われております。こういった状況の中で、新たな新型インフルエンザが発生する事態に備えて、現行法制度及び改定行動計画を前提として、現行ガイドラインから改定すべき点や、さらに検討すべき論点について、現時点での検討の成果を中間的に取りまとめたものです。※で書いておりますが、サーベイランス、ワクチン接種に関するガイドラインについては、現時点で未策定となっておりますので、改定すべき点ではなくて、新たに策定するに当たっての重要事項を取りまとめております。
 2.「病原性・感染力について」です。本文の2頁ですが、病原性に応じた対策の考え方を提示しております。具体的には、病原性については、行動計画の被害想定に基づき、過去の経験から、概ねスペインインフルエンザ並みの場合を高い、アジアインフルエンザ並みの場合を中等度、季節性インフルエンザ並みの場合を低いと整理をして、対策の切り替えについてまとめたものです。感染力につきましては、「以下の状況を踏まえ」とありますが、3つほど列記してあります。こういった状況を踏まえて、感染力によって対策を区分せず、個々の対策の実施の判断において必要な場合に、感染力を考慮するという整理です。どういう状況かと申しますと、「多くの感染拡大防止策は、その感染力にかかわらず必要となること」、「感染力は地域の状況、季節等さまざまな要因で変化すること」、「感染力の大きさと対策の効果との関係は複雑であり、感染力を数値化して対策を区分することは困難であること」、この3つの状況を踏まえての整理です。
 2頁です。3.「水際対策に関するガイドラインについて」です。行動計画の改定のポイントを2点まとめておりますが、水際対策の目的は、あくまでも国内発生をできるだけ遅らせるために行われるということで、ウイルスの侵入を完全に防ぐための対策ではないことを明確化しております。また、ウイルスの特徴や発生状況等に関する情報を踏まえて、発生段階の途中であっても、合理性が認められなくなった場合には機動的に措置を縮小というのが改定のポイントでした。これを踏まえて、ガイドラインにつきましては病原性等の程度に応じた水際対策の標準的なパターンを例示しています。既に海外の複数国において流行が見られるなど、侵入遅延の効果が見込めない場合や、病原性が低いと判明した場合の対策について、停留を実施しないなどの現行ガイドラインより縮小した対応の標準的なパターンを例示しております。この標準的なパターンを参考に、状況に応じて、縮小・中止を含め柔軟に対策を実施していくということです。
 資料3、本文の4頁をご覧ください。こちらに各パターンを表でまとめています。パターン1からパターン5までありますが、パターン1が最も強い措置を講じる場合ということで、パターンごとにそれぞれ目的、想定される状況、また実施する措置等について整理をしております。最も強い場合には、発生地域からの入国者を最大限抑制し、在外邦人の帰国を促すという目的の下で行うということです。想定される状況としては、極めて致死率が高い新型インフルエンザが発生し、WHOでは地域の封じ込めを決定した。そのような状況において、パターン1を選択するということです。この場合には、空海港について集約化もしますし、また隔離措置の実施、停留措置についても入国者全員について行うというような、かなり強力な措置を講じていくという整理です。
 もっとも弱い措置につきましては、パターン5ですが、重症化が想定される者への注意喚起をするということで、想定される状況としては、病原性が季節性インフルエンザ並みと判明した場合で、その場合は集約もしませんし、隔離・停留等の措置も講じないということで整理をしております。
 概要の2頁にお戻りいただきまして、2つ目の○です。停留・健康監視の対象者の範囲を明示しています。停留を行う場合の対象者の範囲については、患者と同一旅程の同行者とすることを原則とすると整理をしております。ただし、今後の科学的知見等によっては患者の座席周囲の者等を対象とすることも考慮していくということです。
 3つ目の○、水際対策の縮小・中止時期を具体化ということですが、合理性が認められなくなった場合には、措置を縮小・中止ということですが、その判断の契機を例示しています。縮小の契機となる例としては、致死率が当初の見込み以下であることが判明した時点、国内における医療体制が整った時点、国内において発生国への渡航歴がない患者が確認された時点、こういった契機において縮小する必要があるかどうかを検討するということです。また、中止の契機の例としては、国内において疫学的リンクを追えない患者が確認された時点、つまり国内感染期へ移行した場合には、中止を検討するということです。
 3頁です。4.「感染拡大防止に関するガイドラインについて」です。行動計画の改定のポイントとしては、対策の主な目的は、発生段階によって変化することを明確化し、目的・段階によって実施すべき主な対策を切り替えていくということで、国内発生早期においては、感染拡大の抑制が主になりますし、国内感染期になれば被害の軽減が主になるということです。これを踏まえて、ガイドラインにおいて発生段階に応じた感染拡大防止策の具体化について整理をしていただいております。国内発生早期以降、通常季節性インフルエンザ対策として実施されている対策を強化することになりますが、その目安の設定をしています。例としては学級・学年・学校閉鎖の実施基準、通常は欠席率15%程度のときに行うということですが、欠席率を10%程度に引き下げて、より厳格に実施していくという考え方です。また、学級閉鎖等の実施期間についても、1週間程度に延長をするということも例示されております。
 次に、発生段階に応じた、地域全体での感染拡大防止策の選択肢の設定については、例をいくつか挙げておりまして、国内発生早期から流行拡大以前の間、初期の段階では感染拡大抑制を目的として地域全体での学校の臨時休業等の積極策を検討するということです。流行のピーク時には、医療体制の負荷が過大となって医療が破綻するというような事態が想定された場合、その軽減のために地域全体での学校の臨時休業等の積極策を検討と、そのような整理をしています。
 次に、患者・同居者の自宅待機期間の目安についてですが、過去の知見等を基に、あらかじめ自宅待機期間の目安を提示しております。患者の自宅待機期間の目安につきましては、発症から7日間または解熱の翌々日まで、この両者のいずれか長いほうと提示しております。また、同居者の自宅待機期間の目安としては、患者の発症から7日間としております。※で書いてありますが、この目安は発生時に知見を収集して、必要に応じて修正をする必要があります。
 次に、保育施設等の休業時における児童への対応を明示ということですが、保育施設が休業をしたときには、保護者が仕事を休まなければならない等の影響が出てきますので、それへの対応として考えられるものを例示しております。例えば事業者の業務継続計画に保護者の欠勤を見込むよう要請すること、また医療従事者等の社会機能維持者につきましては、事業所内保育事業、あるいは一部保育施設の開所を行う、あるいはファミリー・サポート・センター等の活用により対応をしていくということで例示しております。
 4頁、5.「サーベイランスに関するガイドラインについて」です。こちらは新設ということになります。行動計画の改定のポイントですが、平時からのサーベイランス体制を確立して、その基盤の下に新型インフルエンザが発生した場合のサーベイランスについて、追加・強化をしていくというような考え方がまとめられています。ガイドラインにおきましては、1つ目の○、平時からのサーベイランス体制の確立ということで、通常の季節性インフルエンザ、新型インフルエンザに対応するために、平時から実施するサーベイランスについて目的、実施方法、実施時期等を明示しております。実施するサーベイランスは以下に整理しておりますが、患者発生サーベイランスについては、約5,000の定点医療機関によるインフルエンザ発生動向の把握、ウイルスサーベイランスについては約500の定点医療機関からのインフルエンザウイルスの分析ということです。入院サーベイランスについては約500の基幹定点医療機関による入院患者の発生動向・特徴の把握、インフルエンザ様疾患発生報告については全国の学校等における臨時休業の情報収集、感染症流行予測調査では国民の各年代ごとの血清抗体を調査するとしています。その他、地域ごとの実情に応じたサーベイランスと書いておりますが、こちらは厚生労働科学研究の中で、ソフトの開発など取組が行われておりますので、そういった研究班と連携した情報収集等を、地域の判断で行うということを例示しております。
 次の○ですが、発生時に追加・強化するサーベイランスの実施方法等を明示とあります。追加・強化するサーベイランスについて、目的、実施方法、実施期間等を示しております。新型インフルエンザ患者の全数把握については、確定患者・疑似症患者の届出基準を例示、また国内患者が数百例に達するなど、そういった時点まで行うという考え方を整理しています。
 資料3、本文の21頁をご覧ください。中ほどにありますように、確定患者、疑似症患者の届出基準について例を示しております。これは発生後にしっかりと整理する必要がありますが、例としては、当初の基準としては発熱が38度以上、急性期呼吸器症状があるといったような症状と、PCR検査等の結果を踏まえて確定患者とする。疑似症患者については症状と蔓延国への渡航歴、迅速検査キットの結果を踏まえて疑似症患者とするといったような考え方を示しています。また、進展を踏まえて見直しをしていくということですが、確定患者については原則として変更しないという考え方で、疑似症患者については最新の知見を踏まえて症状の絞り込み、あるいは蔓延国への渡航歴の要件の見直し等を進めていくといった考え方に基づいて、発生後に届出基準について整理をしていくということです。
 資料2に戻って4頁、インフルエンザ様疾患発生報告の強化についてです。報告対象を大学・専門学校等に拡大するほか、ウイルス検体を採取しまして亜型を分析していくということで強化をしていくことにしております。また、ウイルスサーベイランスの強化につきましては、平時の対象に加えて、全数把握患者、学校等での集団発生、重症患者等のウイルスを分析していくとしております。積極的疫学調査につきましては、感染経路、患者の基礎疾患・症状・治療経過、接触者等の調査を進めていくこととしております。その他、死亡・重症患者の把握、患者の臨床情報の分析をして、それを臨床の現場にフィードバックしていくということも記載をしております。
 資料3の25頁です。以上がサーベイランスに関するガイドラインのポイントですが、今後の検討課題として、集団発生に対するサーベイランス、クラスターサーベイランスと言われておりますが、このサーベイランスは発生の早期探知等を行う上で有効ということですが、整理すべき問題点が残されているということで、今後の検討課題となっております。26頁から28頁までサーベイランスのポイントを一覧表で整理をしております。
 概要の5頁です。6.「医療体制に関するガイドラインについて」です。ポイントは「発熱外来」を「帰国者・接触者外来」に名称変更して、対象を明確化したということ、2点目には弾力的な運用を基本とするということで、発生段階に縛られず、都道府県の判断により診療体制を切り替えていくという考え方、3点目がファクシミリ処方について検討するということです。
 1つ目の○ですが、帰国者・接触者外来の実施条件や運用等についてです。帰国者・接触者外来を実施する目安、国・都道府県・医療機関の具体的役割等を明示しております。例としては、実施の目安は病原性が高いまたは不明の場合に、海外発生期以降に帰国者・接触者外来を行う。地域感染期には原則として中止するという考え方を整理しております。役割については、国としては帰国者・接触者外来の設置、迅速診断キットの安定供給等の要請をすること、検査体制の整備といったことが挙げられています。都道府県等の役割としては、帰国者・接触者外来の設置・受診調整、検査体制の整備、入院勧告・移送といったことが挙げられています。医療機関では、感染防止対策、受診者の診断、検体の採取等を行うとなっております。
 2つ目の○ですが、都道府県等の判断による地域の状況に応じた弾力的な運用の目安ということですが、帰国者・接触者外来や入院勧告等について、地域感染期に至らない初期の段階であっても、都道府県等の判断によって、一般の医療機関での対応に切り替えることができるとなっておりますが、その判断基準をガイドラインで明示してはどうかということです。例としては、帰国者・接触者外来の終了を都道府県等が判断できる目安として、3つほど挙げております。「帰国者・接触者外来以外からの患者の発生数が増加した場合」、「帰国者・接触者外来の受診者数が著しく増加して対応が困難になった場合」、3点目には「地域発生早期までの段階ではあるのだけれども、隣接する都道府県で患者が多数発生した場合」を例示しております。
 次にすべての疑似症患者へのPCR検査による確定診断です。初期の段階ではすべての疑似症患者について検査をしますが、蔓延状態になったらそれを中止するということになります。その時期の目安、あるいはPCR検査実施の優先順位の決定についての目安を示しております。例としては、地域発生早期の間は原則としてすべての疑似症患者の検査を実施ということですが、地域感染期に至った段階では、都道府県等の判断によってすべての疑似症患者の検査を中止が可能という考え方を整理しております。
 次の○ですが、一般の医療機関における新型インフルエンザ患者の診療体制の確保ということで、地域発生早期以前の一般の医療機関の対応を明示しております。具体的には、異常な集団発生や特徴的な症状の増悪等により、新型インフルエンザの患者であることを強く疑った場合には、保健所に連絡をして確定検査の要否を確認するということです。
 次の◆のところで、地域感染期以降の一般の医療機関の対応については、患者とその他の患者等を可能な限り時間的・空間的に分離するなどの院内感染対策を行うこと、また新型インフルエンザの患者の診療を実施、そのための診療体制を地域において連携して確保するといったようなことを整理しております。
 6頁の1つ目の○、電話再診患者へのファクシミリ処方の対応について、具体的な運用を明示しております。例としては、慢性疾患等を有する定期受診患者の場合の対応として、患者が希望し、かかりつけ医が了承した場合には、事前にカルテ等にその旨を記載して、電話による診療によって新型インフルエンザと診断できた場合に、抗インフルエンザウイルス薬のファクシミリ処方が可能であるということ。また、慢性疾患が安定しており、電話により療養指導が可能な場合に、その当該慢性疾患に対する医薬品のファクシミリ処方が可能だというような整理をしております。
 また、インフルエンザ様症状のため、最近の受診歴がある場合の対応として、電話による診療により新型インフルエンザと診断した場合に、抗インフルエンザウイルス薬のファクシミリ処方ができると整理をしております。
 資料3の44頁をご覧ください。こちらに今後の検討課題として整理しております。アとしては、公共施設等における医療の提供、イの医療従事者への被災補償につきましては、法制度の検討の動向を踏まえまして、今後さらに検討するとしております。ウのその他として、医療スタッフの確保、院内感染対策等のために必要な支援についても検討する必要があるとしております。
 45頁、病原性による対策の選択を表でわかりやすく整理をしています。
 概要の6頁に戻り、7.「抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドラインについて」です。抗インフルエンザウイルス薬の備蓄のあり方等について整理をしていただいております。例としては国民の45%に相当する量を目標とする。これは現行通りということです。また予防投与について都道府県及び国が備蓄している抗インフルエンザウイルス薬を使用可能であると明確化しております。また、具体的な放出の手順については、関係通知が出されておりますのでそれを参照の上で整理をしていくとしております。また、新たに承認された抗インフルエンザウイルス薬がありますが、現時点では有効期間が短く備蓄に適さないということで、従来通りタミフル及びリレンザによる備蓄を継続していくとしております。ちなみにラピアクタですが、有効期間が2年、またイナビルについては30か月となっております。
 7頁、8.「新型インフルエンザワクチンに関するガイドラインについて」です。こちらは新設ということになります。行動計画のポイントですが、事前準備の推進、発生時の迅速な対応、プレパンデミックワクチンの備蓄等が挙げられています。まずパンデミックワクチンの接種順位等に関する基本的考え方です。医療従事者への先行接種は必ず実施としております。社会機能維持者への先行接種については、病原性が高くて、接種を行わなければ社会機能維持に必要な人員の確保が困難な場合に実施するということで、これは発生後に判断をしていくことになっております。
 次に優先順位についてです。専門家等の意見を踏まえて、以下のいずれかの考え方に基づき政府対策本部が決定ということです。1点目が重症化、死亡を可能な限り抑えることに重点を置く考え方です。発症した場合に重症化しやすい人をまず優先しようという考え方です。2点目が我が国の将来を守ることに重点を置く考え方ということで、子どもを優先して接種するという考え方、3点目がこの2つの考え方を合わせたような考え方ということで、この3つの考え方について整理をしていただいています。それにしたがって発生後に専門家の意見を踏まえて、どれをチョイスするかを決めるということです。
 ワクチンの確保についてです。6か月以内に全国民分のパンデミックワクチンを製造することを目指して、細胞培養法等の新しいワクチンの製造方法等の研究・開発の促進、生産ラインの整備を推進ということ。また、早期の供給を図るために、マルチバイアルを主に供給していく。プロトタイプワクチンの承認等に基づいて、発生後に迅速に承認等を行っていく。必要に応じて検定も免除できるということも記載をしております。また、国産ワクチンだけでは不足が見込まれる場合には、輸入ワクチンの確保を検討していくということです。
 8頁、ワクチンの供給体制についてです。国が都道府県ごとの配分を決定し、都道府県が卸売販売業者等と協力をして、各供給先への納入を調整していくということです。詳しくは54、55頁に整理をしております。
 プレパンデミックワクチンの接種体制についてです。接種の法的位置付け、実施主体、費用負担等につきましては、現在関係省庁の間で検討中ですが、この意見書の中では都道府県を実施主体として、臨時接種として実施する場合を例に具体的な対応案を整理しております。具体的には、未発生期の段階から、各社会機能維持者の接種予定者数を調整し、接種体制を構築しておくこと。また事業所ごとに接種体制を確保、または都道府県が直接接種体制を構築する。事業所単位で集団的に接種を行う。プレパンデミックワクチンの接種の実施については、政府対策本部が決定する。名簿や接種券の配布等により、接種対象者であることを確認するといったような、かなり実務的な点について整理をしています。
 次にパンデミックワクチンの接種体制についてです。こちらも先ほどと同様に、現在関係省庁で法的位置付け等については検討しているところですが、病原性が高い場合については、市町村を実施主体として、臨時接種として実施する場合を例に、具体的な対応を整理しております。なお、病原性が低い場合につきましては、昨年の予防接種法の改正によりまして、新臨時接種が創設されておりますので、この法律の枠組の中で市町村が実施主体となって行うと整理をしております。具体的な取組ですが、未発生期の段階から、地域医師会等と連携の上、ワクチンの接種体制を構築していくこと。接種の優先順位に沿って接種を実施。公的な施設での実施または医療機関委託により、集団的に接種を実施。地域医師会等の協力を得て、接種に係る医療従事者等を確保する。病原性が高い場合には、公費で接種を実施。地域ごとに窓口を1つに統一する等、予約方法を工夫するといったことが整理されております。
 その他ですが、ワクチンの接種回数は原則として2回ということですが、次の◆に書いてありますように、ワクチン接種の前後に血液検査を行い、ワクチンの有効性を評価・確認するという中で、1回接種で効果を有するという場合については、1回となることも検討するとしております。また、接種と並行して迅速に副反応に関する情報を収集し、副反応の評価、国民等への情報提供等も実施していくとしております。
 資料3の73頁をご覧ください。こちらに今後の検討課題を整理しております。アの接種順位等については別途検討し、事前に決定すべきである。また、パンデミックワクチンについては、国民的な議論を踏まえて優先順位の考え方や決定方法等を事前に決定しておくべき。
 74頁ですが、イのワクチンの供給体制については、不要な在庫を発生させないための流通上の工夫についてさらに検討。また各接種会場にワクチンが平等に供給されるための方策を検討としております。
 ウのワクチンの接種体制につきましては、法改正も含めた抜本的な検討を行う必要があるということで、実施主体や費用負担等も含めて検討を行うとしております。3つ目の○ですが、集団的接種体制の構築に必要な事項について基準を検討しておくべきである。4つ目の○にありますが、学校における集団的接種の実施が不可欠であるということで、その具体的な方法について検討するとしております。また、次の○は、ワクチン接種を円滑に実施するために、国、都道府県、市町村、各関係機関が協力して、予行演習を実施しておくべきという意見です。
 エのプレパンデミックワクチンの接種についてですが、発生後速やかに接種できるようにその方法を検討し、方針を事前に定めるべきであるとしております。75頁ですが、事前製剤化したプレパンデミックワクチンの接種について、その接種対象者の範囲、また接種の方法等について具体的に検討し、決定しておくべきとしております。
 オのプレパンデミックワクチンの事前接種につきましては、行動計画にも書かれておりますが、有効性・安全性に関する臨床研究等を実施して、未発生期の段階で事前接種することについて検討し、方針を定めるべきとしております。
 カのその他ですが、政府対策本部、厚生労働省等の新型インフルエンザ対策に係る権限を明確にして、発生時に迅速に対応できるようにすべきである。2つ目の○では、この新型インフルエンザ対策の実施に当たり、当該関係機関が関与する対策の実施における判断の方法、責任者、具体的な手順をあらかじめ定めておくべきであるという意見です。3点目の○は、東日本大震災により被災した自治体やその住民については、ワクチンの接種体制の構築が困難であるということから、国がその対応を検討すべきという意見です。
 資料2に戻り、8頁の下、9.「事業者・職場における新インフルエンザ対策ガイドラインについて」です。人員計画の立案に関する留意事項を提示していただいています。保護者が乳幼児・児童等に付き添うための欠勤についても業務継続計画に見込むことが必要である。また、従業員が長期にわたり多数欠勤した場合に備えて、運営体制の検討、従業員等に対する教育・訓練等を実施ということを記載しております。
 9頁です。10.「情報提供・共有(リスクコミュニケーション)に関するガイドラインについて」です。1つ目の○は、広報担当官を中心としたチームの設置等についてです。1つ目の◆で、厚生労働省における広報担当官に望まれる役割等を明示しております。例としては、広報担当官は、発生状況や対策に関する情報をわかりやすく提供するスポークスパーソンとしての役割を有するとしております。この広報担当官は、感染症全般に関する一定の知識を有し、意思決定にある程度関与できる立場であることが求められる。また、行政官と専門家が共同して担当することも考えられるとしております。
 2つ目の◆で、広報担当官を中心とした広報担当チームの具体的な業務や運営方法を明示しております。例としては、情報の集約・整理・発信・窓口業務の実施、また一元的な情報発信のため、各対象への窓口を一本化といったことを整理していただいております。情報提供における政府対策本部や関係省庁との調整。発生時には対策本部で発表することもあるでしょうし、官邸で発表することもあるかもしれませんので、そういった対策の実施主体となる省庁が適切に情報を提供できるように、政府対策本部が調整する必要があるとしております。
 2つ目の○の情報提供手段の確保についてです。国民が情報を得る機会の増加や、受け取り手に応じた情報提供のため、インターネットを含めた多様な情報提供手段を活用していくとしています。地方自治体がコールセンターを設置する場合には、他の公衆衛生業務に支障を来たさない運用方法を例示しています。例としては、一般的な問い合わせには事務職員を活用する。またQ&Aを作成した上で、外部の民間業者に委託するということで、特に医師や保健師といったような、衛生職種の方が感染拡大防止策に専念できるような配慮が必要だということです。
 次の○はリアルタイムかつ直接的な方法での双方向の情報共有の検討ということで、国と地方自治体との情報共有の具体的な方法を例示しております。担当者連絡先の事前共有、また発生時の問い合わせ窓口の設置、メール等による対策の理由、プロセス等の共有という例が挙げられています。また、医療関係者との直接的な情報共有方法については、もう既に現在もやっておりますが、メールマガジン等を通じた情報共有、また問い合わせ等に対するフィードバック等が挙げられております。
 本文の84頁以降、参考1となっておりますが、こちらがH1N1が発生した際のリスクコミュニケーションの事例を3つほど提示しております。
 また、87頁から97頁が参考2ということで、公衆衛生対策に係る科学的知見を現時点のものということで整理をしまして、出典も含めてこのような形でまとめております。時間の関係上、ポイントのみの説明となりましたが、事務局からは以上でございます。
○岡部議長 それでは、ご質問あるいは意見の時間に移ります。いくつかご質問があると思うので、かためて、事務局あるいはそれぞれのワーキンググループからお答えいただきたいと思います。その前に、それぞれのワーキンググループの班長の先生がおいでになっていますので、いまのところで何か追加の発言がありましたらお願いします。
○田代委員 ワクチンに特化した問題は後でお話したいと思いますが、全体の問題として、まず第1点お聞きします。資料2の「概要」の1頁に、これは「現時点での検討の成果を中間的に取りまとめた」とありますが、これは最終的な取りまとめを将来やることを前提に考えられているのですか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 ガイドラインの改定については政府全体で検討し、また、最終的には局長級の会議で改定を決めることになります。今後、ガイドラインの検討作業をどう進めていくかについては、後ほど内閣官房から説明があるかと思いますが、法制の作業も同時並行で進められていますので、それをどう整理していくかということだろうと思います。仮に法制化されれば、行動計画についてもまた見直す部分が出てくる可能性がありますし、それを踏まえてさらにこのガイドラインについても改定する必要が出てくるかと思います。そういう意味で、現時点では現行法制を前提にご議論いただきましたので、「中間的な取りまとめ」という表現になっています。つまり、今後また厚生労働省だけではなくて政府全体でガイドラインの改定の検討、また、法制の検討が進められていきますので、その中でまた整理をしていくということです。
○田代委員 そうすると、現在の会議は厚労省に所属していると理解していますが、新型インフルエンザ専門家会議の意見書としては、どういう位置付けになるのですか。これは最終稿ではないということでよろしいのですね。
○新型インフルエンザ対策推進室長 現時点で、現行法制の下で意見を取りまとめていただいています。また、専門的な立場からのご意見ということで、厚生労働省としても、こちらはしっかりと受け止めさせていただきたいと思いますし、いま政府全体で進められているガイドラインの見直しの検討にも、しっかりと反映させていく努力をしたいと思っています。
○健康局長 現時点での最終稿です。
○田代委員 最終稿だとしますと、1頁の※印のところに「未策定」と書いてありますね。サーベイランスに関するガイドラインとワクチンのガイドラインです。これの取り扱いはどうなるのでしょうか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 今回まとめていただく意見書に基づいて策定していくことになります。
○田代委員 意見書として未策定というように、この文章からは読めるのですけれども。
○新型インフルエンザ対策推進室長 これは現在の政府のガイドラインの中で、サーベイランス、また、ワクチンについてはまだ策定されていないという意味です。今回の意見書の中では、サーベイランスについてもワクチンについてもご意見をまとめていただきましたので、それに基づいてしっかりと整理し、策定していきたいと考えています。
○健康局長 現時点では、意見書としてはこれで最終的にまとめてもらっていただきますけれども、ガイドラインとしては政府全体で、ほかの省庁と分担することがありますから、関係省庁の局長級等の会議で確定するということです。
○保坂委員 そもそも、意見書案の概要というのは誰の立場で書いているのでしょうか。いま局長はそのようにおっしゃいましたが、新型インフルエンザ専門家会議の立場で書くとすれば、この「はじめに」のところは全くナンセンスだと思います。専門家会議としては、今回これを中間取りまとめではなくて、一応、取りまとめたと私たちは受け止めています。ですから、サーベイランスに関するガイドライン、ワクチン接種に関するガイドラインについても既に策定についての案を提案したと考えているにもかかわらず、この「はじめに」が付いているのです。この「はじめに」に書いてあることは、厚生労働省の担当としてのお考えであると思います。すべていままでずっとこの経過できたのですけれども、誰の立場で誰が物を言って、どのようにまとめているのかがごちゃごちゃになってやってきているのです。局長がおっしゃったように、この「はじめに」は概要として不適切であるので全部直していただいて、新型インフルエンザ専門家会議としては、こちらの厚い方の意見書の形で意見をまとめた、2つのガイドラインについても意見をまとめた、そういうことで話が進まないとおかしいのではないかと思います。
○新型インフルエンザ対策推進室長 いまいただいたご意見を踏まえまして、そのように整理したいと思います。ちなみに、この概要は、短時間で説明しなければいけないため、本文のポイントをサマリーとしてまとめたものです。
○保坂委員 そういうことを言っているのではなくて、根本的な主張の問題なのです。この専門家会議が一体何か。専門家会議の意見というのは何か。あなたたちはすべて、関係省庁、関係省庁会議を通らないとものが決まらないと常におっしゃっていますけれども、それと、この専門家会議が意見を出すことは別なのです。専門家会議がある意見をまとめて出して、それに対して関係省庁の会議の中で、この点については受け入れられないなどのことがあれば、それがまた出てくることは当然ありますけれども、どちらがどうかというのが、もう行ったり来たりが目茶苦茶になっているので、話がややこしくなるのです。だから、いまお聞きになった意見を反映してどうのこうのではなくて、もうこの「はじめに」はそもそも間違っているわけです。それをまず認めていただいて話をしないと、もうずっと、この会議はその行ったり来たりが続いているのです。「はじめに」は撤回してください。
○健康局長 現時点で最終的な意見ということで修正します。彼が言ったのは、仮にまた新インフルエンザ法制が通った場合にはまた別途かけるという意味ですけれども、そこまで気を回さなくていいのであれば、まさに今日まとめていただく意見で我が方はそれを頂戴するということです。
○保坂委員 専門家会議は意見をまとめて出すのが私たちの仕事であって、そのまとめたものはこうですよということについて、後から別なところで決めることについては別な問題が出てきてもいいけれども、この専門家会議の意見書をどこかの都合で変えることはとてもおかしなことなので、専門家会議の意見書は意見書としてまとめてください。
○岡部議長 この概要は、外に出ると言うか、公式のものではない、今日のメモですね。
○新型インフルエンザ対策推進室長 会議資料としての位置付けです。
○岡部議長 この厚い資料が本物として外に出ていくのです。いまの保坂先生のご意見は、この委員会で今やっていることは中間の取りまとめ段階でこれをまたやり直す、というようなことではなく、これはこれで意見書としてまとまったものであるということだと思うのです。保坂先生、そういうことでよろしいですね。それを基として、各省庁が、我々としてはこれを最大限尊重していただきたいのですけれども、いろいろな行政的な判断に必要なことがあるだろうから、そこは直して、最終的なガイドラインが作られる、そういう理解でよろしいですね。
 いまのことに関連して、私も1つ質問があったのです。これに課題がいくつか残されている部分があります。確かにこの短時間では解決できないところが各ワーキンググループでもあって、その問題点を課題として書き出しておいてもらったのです。これは書きっ放しではまずいので、どこかで検討する、あるいは、実現できるものは実現できる、さらに検討を要するとか、そのようなことが必要だと思うのです。これらの「課題」の取り扱いは今後どうされますか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 当然、しっかりと検討していくことになりますが、その検討に当たって、法制の検討とも同時並行でどう整理していくかということになるかと思います。この検討課題については厚生労働省として受け止めさせていただいて、しっかりと対応したいと思っています。
○伊藤委員 この意見書そのものは最終的に公表されるのですか。そこが知りたいのです。
○新型インフルエンザ対策推進室長 公表されます。現時点でも公開でやっていますし、まとまった後には、しっかりと厚生労働省として公表したいと思っています。
○伊藤委員 いま内閣でこれをたたき台にして何か形になりますね。そうすると、その差分というか、一般の人は、その差が理解できるような状況で公表されるということでよろしいですか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 そこは事務局として、厚生労働省として整理した上で、また専門家会議にお示しすることはできるかと思います。
○健康局長 政府全体としてのガイドラインが確定されれば、明らかになると思いますので、その差は当然、公知の事実と言うか、誰もが知り得る話だと思っています。
○岡部議長 つまり、どうしてそういう差が生じたかという説明が後で必要だということですね。
○伊藤委員 まさに、そういうことです。
○岡部議長 その辺もよろしくお願いします。法制化の点も含めて検討されて、おそらくこれからガイドラインができるのに少し時間がかかると思うのです。今日明日でできるものではないので。あまりそういうことは考えたくないのですが、ひょっとするとその間に何か発生したというようなときにはこれが対策のための1つのモデルになっていくと思うので、できるだけ早く、自治体などには、現在の提案事項としてオープンにしていただきたいというのが、おそらくはこの委員全体の意見だろうと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、田代先生、先ほどの続きをお願いします。
○田代委員 次に、全体についてですが、主語がほとんどない。誰がそれを責任持ってやるのかを明確に記載するべきだと思います。ワクチンのところについては、我々の検討班はかなりそこを注意して、細かい指示を出したと思います。「やる必要がある」というのは誰がやるのか、その辺をはっきり明確にする必要があると思います。
○新型インフルエンザ対策推進室長 ワクチン作業班では、そういったことでご指摘を受けていました。ほかの部分についても可能な限り主語は入れようということでやったのですが、ちょっと不十分なところがありますので、もう一度精査したいと思います。
○田代委員 これは我々としての意見書ということなのですが、オーディエンスは政府ですよね。各省庁でディスカッションされるためのたたき台として提出しているわけですから、厚労省のために出しているわけではないので、そこを十分に考えていただいて、ほかの省庁にも踏み込んだ提案を我々は期待しているのだと思うのです。
○健康局長 そもそも法律でその主体が明らかなものについては、あえて書く必要はありませんけれども、逆に、専門家の立場から見て、主語はこうあるべきだということであれば、主語を入れてもらいたいと思います。
○岡部議長 それは最終のときに必要なところに入れます。ただ、会議の途中でもしばしばいまの質問、意見は出ていたと思うのですが、主語があまり明らかでないところは基本的には国である、というのがそのときのお答えだったと思います。それでよろしいですか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 先ほどの田代委員は、同じ「国」でも、厚労省なのかとか対策本部なのかとか、そこも含めてということだと思います。
○田代委員 それは前回の反省点でもあると思うのです。どこが責任を持ってやっているのか。厚労省と政府対策本部との関係はどうなのかとか、厚労省の対策推進本部との関係がどうなのかとか、その辺が非常に曖昧だったと思うのです。
○健康局長 それは意見として承りますが、本部員と言っても厚生労働大臣は本部員ですから、それはもう一体となってやるのです。まさに、ですからこれは厚労省だけではできないので、今日も内閣官房が来ていますように、そういう特性があるわけです。ですから逆に言うと、こういうときに互いに譲り合うようなことがいちばんまずいので、少しはダブッても我が方は前に出ていきたいと思っています。いまのご意見はご意見として承ります。
○岡部議長 できるだけ反映できるようにお願いします。
○田代委員 いまの提案でいうと、先ほどのこれに主語をなるべく入れてくださいという話だったのですが、これは我々の専門委員会でもう1回それをやればよろしいのですか。どういう作業になるのでしょうか。
○健康局長 我が方としては、まさに冒頭申し上げましたように、専門家会議の意見を尊重して、これに基づいて行動を始める、行政的な作業を始めるということでありますので、まさに我が方が、ああせい、こうせい、ということではなく、この専門家会議が自主的に、我々が見えなかったところでもう少しここの主体を明らかにすべしというご判断があれば、そこについてご指摘いただきたいと思っています。私どもとしては、それを筆を入れることなく尊重したいと思っています。明らかに法的な違いがあれば、それは申し上げますけれども。それから逆に、あえてこういうことは書かなくても本文として当たり前だということでも、仮にそれがそうだとしても、いただいた意見については尊重したいと思っています。
○岡部議長 これは、提案としての最終案なのですが、今日これそのものが直ちに出ていくわけではないと思います。最終的なものとして外に出ていくまでに意見があれば、事務局なり、取りまとめる私のところまで、これはこうすべきであるという意見をいただければ最終的にまとめられるのではないかと思います。
○田代委員 提案です。では、各作業班の班長がメンバーに徹底してその意見を聞いていただくことを提案します。
○岡部議長 それはよろしくお願いします。ただし、時間的な制約が当然あるということが前提だと思います。局長、いいですか。
○健康局長 はい。
○岡部議長 田代先生もよろしいですか。そのほかに、ご意見がありましたらどうぞお願いします。あるいは、コミュニケーションのところの総括も含めて、どうぞ。
○丸井委員 私は10番の「情報提供・共有(リスクコミュニケーション)」の取りまとめをさせていただきました。ここに関して2点だけお話したいと思います。1つは、いま話題になりました、情報提供・共有に関しては主語は非常に重要ですので、誰が誰に対して情報を出すのか、どのように出すのかについて、随分ここに関しては議論をした記憶があります。国と言っても、厚生労働省なのか内閣官房なのか、あるいは地方自治体なのか。地方自治体というときも、都道府県なのか市町村なのか。これが非常に重要になってくるので、そこのところはだいぶ議論したと考えています。
 もう1つは、実は後の法制とも関わります。新型インフルエンザに特化してすべての話をするのかということです。それとも新型インフルエンザと同等の、非常に高い感染力のあるような未知の感染症が発生して我々の前にきたときに、やはり同じようにリスクコミュニケーション、それだけではないのですが、必要ではないか。新型インフルエンザに特定の対策というものもありますが、いずれにしても何らかの健康の脅威、かなり大きい脅威がきたときに、どのように対応するかということです。縦割りで、新型インフルエンザという実態だけを相手とするのか、それと同等の感染症を考えるか。というのは、例えば広報担当官という存在を考えても、日常的なリスクコミュニケーション活動、それから、いざというときのコミュニケーションあるいはマネジメントを考えていくときに非常に重要になってくるのです。文言として「新型インフルエンザ」と入ってはいますが、そこで想定しているのは、先ほど言いましたように、新型インフルエンザ同等、非常に感染力の高い未知の感染症に対してなのだということです。新型インフルエンザと同定できなくても、あるいはそうでなくても、我々がしなければいけないことがあるわけです。そこを何らかの形でどこかに入れておけるといいなと考えています。
○岡部議長 「新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台」という資料4があります。これは後でご説明を当然いただきますが、このいちばん最後、2頁の2に、「新型インフルエンザと同様の影響を持つ未知の新感染症にも適用」という言葉が入っているのです。これを意見書にも、もちろんそれぞれにいろいろな応用があるので、すべてがそのまま使えるわけではないけれども、何もないときにはやはりこれが1つの薦になる、あるいはお手本と言うか、1つの目安のようなものに使えるということを入れておいたほうがいいということですね。
○丸井委員 もう少し広く対処できるのではないかと思います。
○岡部議長 つまり、これは新型インフルエンザだけではなくて他の重症感染症アウトブレイクに応用が可能である。しかし、その応用は、すべてそのままやるのではなくて、それはそれで検討は要るけれども、こういうものがありますよということを示すものである。こういうことを提示していただきたいという意見だと思います。それはよろしいでしょうか。
○田代委員 いまの意見には全く同感です。1つ大事な、我々の教訓は2003年のSARSの流行でした。あのときはH5に対する我々のいまの懸念よりももっと突然やってきて、病原体は全く事前に正体がわからなかったし、起こった当座も1か月以上わからなかったわけです。診断もできなかったし、もちろん治療もワクチンも何もない。いまよりもっと悪い状況、状態だったと思います。幸いなことに国内での感染流行は起こらなかったのですが、そのときには致死率10%で、ここに書いてある2%の想定よりももっと高いアウトブレイクが各国で起こったわけですね。何の対策がよかったかというディスカッションをしても、あまりこれといったものもない、何となく勝手に収束していったのです。日本には非常にラッキーで入ってこなかったということで、SARSに対する十分なディスカッションはされていなかったと私は反省しています。いま丸井先生が言われたように、まさにSARSのようなものが将来繰り返して起こる可能性があるので、それに対しても十分に対応できるようなディスカッションを我々はしたつもりです。ここに書かれているのはインフルエンザに特化されていますけれども、十分に応用可能だと思います。そういう含みを持たせて幅広く適用していただきたいと思います。
○岡部議長  いま記憶がちょっとはっきりしていませんが、金澤先生が取りまとめた総括会議のときにも、たしかそのような一言があったような気がします。いずれにせよ、いまのご意見は非常に貴重だと思います。ほかのものにも応用が可能であるということです。ただ、全くこれと同じように動くことになってしまうとリジッドになるので、そこは柔軟な書き方が必要だと思いますが、考え方としてはそういうものがあるとして、是非よろしくお願いします。そのほかにもご意見がありましたらお出しください。医療体制については何かございますか。
○川名委員 医療体制の部門長ではありませんが、全体に対していくつかコメントをさせていただきたいと思います。まず、いちばん最初の、田代先生が主語をしっかりすべきだと言われましたが、私もそれに対して非常に同感です。旧行動計画、旧ガイドラインのときもそうでしたが、実は行動計画は先にできていて、我々専門家会議は行動計画を踏まえた上で専門家としての意見を言うようにというミッションをいただいたと理解していますので、すべてフリーハンドでのアイディアを出したのではなくて、あくまでもこの行動計画の中で最善のことを考えたということを言うべきだろうと思います。そういう意味から言いますと、例えばこの青いファイルの資料の中の昨年9月20日に出されました行動計画の10頁に、「対策推進のための役割分担」というものが既に行動計画の中に書かれています。ここには、国や地方公共団体、医療機関等々がどういうことをやるのだと書かれています。基本的にはこの既にでき上がっている行動計画に従って、具体的な運用に関するアイディアを出したのだと私は理解しています。
 第2点目としまして、先ほど、未知の新型感染症が出てきたときという話がありました。これにつきましても、どこかの会議で話したことがあると思います。例えば、わが国において未知の新型感染症が出現したときに対応できる枠組みとしましては、感染症法の中にあります、おそらく、「新感染症」のカテゴリーですね、それから「新型インフルエンザ等感染症」といったところが対応することになるのだろうと思います。新感染症が出現したときにどのように対応するのだというのは、ここまで細かく検討されていませんので、今回の新型インフルエンザについて検討したことを流用する、あるいは、ここで検討したことをたたき台にして新しいものを作っていくようなことは、これは当然含み置いておくべきだろうと考えます。
 3点目です。2010年の総括会議と言いますか、新型インフルエンザ対策の反省会がありました。私はそこで発言した記憶があるのですが、それは検疫の強化に関する部分です。検疫の強化につきましては、やったほうがいいとか、やっても意味がないという意見もたくさんありますが、私は基本的には検疫は必要に応じてやるべきだろうと思いますし、やるのであれば有効にやるべきだろうと思います。2009年の新型インフルエンザのときに、わが国は行動計画に従って水際作戦をやったのですが、一方で、例えばアメリカやメキシコなど、WHOが渡航延期勧告を出さなかったこともありますけれども、我々が一生懸命水際作戦をやっているときに、出す方は全くフリーパスで感染者を出していたこともありました。日本はこういうことをやっているのだから、そちらの国は、例えば熱のある人を出すについては例えば何か一定のレギュレーションを設けてくれといったような、国家間でのやり取りを是非取り入れていただきたいということを、私はその総括会議で言った記憶があります。そのようなことも是非検討していただきたい。私は医療班でしたので、そのことについては文書化していませんけれども、ご検討いただきたいと思いまして追加させていただきます。
○岡部議長 いまのはご意見ですが、事務局からは何かレスポンスはありますか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 行動計画にも、発生時にはWHOとか国際機関とも情報をやり取りしてと書かれていますので、ガイドラインについてもそのようなことは記載されると思います。また、IHRのようなレギュレーションの仕組みもありますので、それに従って、各国が情報交換をしながらということになるかなと思っています。
○岡部議長 WHOの会議では、確かにIHRの中には国際交通規制といったことも入っています。まだ最終案としてはなっていませんが、基本的には非常に厳しい交通制限や入国制限など、そこまでは現在WHOは考えていない。あまりそれをやると、混乱や国家間の問題が出てくるので、そこまではやろうとはしていないと思います。
 それから、私は公衆衛生の担当でしたが、公衆衛生では、やはりサーベイランスがいちばんの基本で、その結果を見ていろいろなものに判断をしたり、あるいは応用していくので、サーベイランスの強化が非常に重要であるということが議論されました。この提案にも書いてありますが、そのためには日常のサーベイランスをいかにきちっと動かしていくかが最も基本的なので、特に現在動いているものに加えて、さらに重症者の動向を知るとか、あるいは、ウイルスの動きをきちんと見て、なおかつそれを速やかにリリースしていく方法、これが日常からのいちばん重要なことであるということが議論されました。
 それから、水際対策ももちろん重要ですが、一旦これが侵入した場合には、既に水際が破られているというか、中に入ってるのですから、そこをいつまでも強化し続けていかずに、きちんと国内体制にシフトしていくという意味で、いつスタートしてどのタイミングで縮小するかをきちっとやっていくことが必要だということが議論されました。したがって、水際対策については、縮小・中止時期を具体化したり、停留・健康監視の対象者の範囲を明示することが議論されました。それと、感染拡大防止について、最初の感染者に対しては、本人にとっては迷惑な監視や隔離など、初期段階においては必要な場合にはやらなくてはいけませんが、それをいつまでも、例えある程度の重症度があったとしても、広がってしまったときに、ある特定の人だけを隔離しておくことは無理ですし意味が減少するので、全体の状態を見た公衆衛生対策が必要であること。そのような議論がなされたと思います。公衆衛生の総括はそのようなことです。
 保坂先生は全部にWGに出ていたのではないですか。
○保坂委員 リスコミは出ていません。いまの川名先生のご意見にちょっと同意しかねるところがあります。公衆衛生班の中の水際のところについては、感染症の性質によってはどこかで止めることを非常に強くやることは意味があるかもしれませんけれども、インフルエンザのような感染症であるとすると、大規模に外から入ってくるのを止めるとか移動するのを止めることは、全面的に鎖国にすればともかくとして、そうでなければもうできないのではないかという意見が多かったように思います。SARSのようなもの、要するに、感染させることができる時期とご本人の症状が出る時期が同じようなときであればそれは可能ですが、症状が出る前に感染力があるような感染症の場合はなかなか難しいので、逆にそのようなことをすることがマイナスになって混乱させるのではないかとして、公衆衛生班の中での水際作戦についての意見はまとまったと私は思っていますので、あまり強化することには賛成ではありません。
○川名委員 例えばアメリカに患者さんを出さないでくれということではありません。今回2009年の新型インフルエンザのときには、発生してもうすぐにWHOから航空機の停止や物流を止めたりなどをしないようにというアナウンスが出たわけで、日本も当然それに従うべきだと思います。例えば、日本が成田空港で検疫や停留をやっていたのですね、ホテルに疑いの人を何人か入れたりとか。そういうところに、知らずに来た外国の人が停留されたりして非常に不便があったとか、あるいはそれが事前に知らされていなかったとか、いろいろな問題がありましたので、いま日本ではこういう検疫の強化をやっているのだということを外国に向けてアナウンスするとか、そういったような意味です。決して入って来てはいけないとか、そのようなことを言ったのではありません。
○岡部議長 ほかにもご意見をいただきたいと思います。
○坂元委員 自治体の立場で、前回2009年の新型インフルエンザを通していちばん感じることは、国と地方自治体の関係、プラスα、自治体の中の多重構造の問題、端的に言えば、都道府県と政令指定都市との関係などです。前回、都道府県の中にはその中での調整がうまくいかなかった場合があったと聞いております。私は医療体制の作業班に入っていましたが、実際、実施自治体が「等」などの書き方をしていると、現実にはかなり混乱が起きることが考えられます。やはりそこは、この役割は都道府県、これは市町村というように、ある程度明確化しておかないと、本当に責任の所在が曖昧になってしまう危険性があります。前回に見られたように「それは都道府県の仕事だ」「いや違う、それは市町村だ」というような混乱が起こりかねないと思います。あまり「等」などの表現を使わずに、やはりきっちりと実施主体を明記したほうがいいという意見を持っています。以上です。
○岡部議長 それも主語の部分にかなり関わると思いますので、この委員会案をご覧になって、ここは是非加えておくべきだということがあれば、後でおっしゃっていただきたいと思います。
○澁谷委員 私は公衆衛生班で参加させていただきました。いま岡部議長がおっしゃったように、サーベイランスの問題が非常に重要だということ。もう1つ、あまり目立たなかったのですが、地方衛生研究所の役割がこういった感染症の場合に重要なのです。その辺が、やはり都道府県によって温度差があったりすることがなかなか解消されない。正しいサーベイランスを普段からしていくには、やはり衛生研究所の機能強化が重要だろうということを、この班に参加しながら痛感しました。
 それから、行動計画に項目として「社会経済機能の維持」として書かれていて、以前のガイドラインの中にもありましたが、例えば厚労省の関係ですと、遺体の火葬や安置といった公衆衛生上の問題の部分、あるいは社会弱者への支援の部分が、これは網羅的にはなっていませんので、そういうところが書かれていないのですが、それは前のガイドラインを踏襲するのかなと思っています。
 また、ほかの班の、例えばワクチンのところはたくさん課題が残っていると書かれています。例えば、74頁のウ.「ワクチンの接種体制について」で、通常だと市町村が実施主体になるのですけれども、ここには国を実施主体とすることも考えると書かれています。このように書かれると、ほかの予防接種の体制との整理の問題などがあり、この問題は早く解決しておかないとさらに混乱するのではないかと思いました。市町村でできるようにするのが方向ではないかと思います。できないので国がやるというよりは、市町村でできるように工夫するほうが方向性ではないかという気がしました。これは意見です。
○田代委員 いまの予防接種のことですが、いま澁谷委員が言われた73頁の「今後の検討課題」ですが、これは現時点で国が実施主体になることを積極的に提案しているわけではありません。いまのことに関連して、我々がワクチンについて検討したことは、1頁にあるように「現行の法制度を前提にして行う」、その縛りの中で最善何ができるかを検討したわけです。その結果、現行の予防接種法その他の法制度の下では限界がある。迅速に国民全員に半年以内に効率よくワクチンを接種するのは不可能であるというのが結論だったのです。ですから、それを改善するために根本的な法制度もしくは制度の変更が必要だろうということを提案したのです。
○岡部議長 そこについて、事務局から何かレスポンスがありますか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 いま田代先生からおっしゃっていただいたとおり、具体的な問題としては74頁中ほどの矢印で書いてあるところです。この2点が特に実務上問題になるだろうということだったかと思いますので、ここを改善するような、法改正も含めた方法ということなので、実務的に何か工夫できるところがあるかどうか、また、法改正によって対応できる部分があるかどうか、それらをしっかりと検討していくことになると思っています。
○岡部議長 田代先生のワーキンググループでもそこが議論されていて、リミテーションがあったということでしょうから、法改正も含めて、国民全部にワクチン接種ができることが前提になっているのだとしたら、それをどのようにしてやっていくのかのプラン策定を是非実現に持っていっていただきたい。これも委員会としての総意でよろしいのではないかと思います。
○伊藤委員 サーベイランスのところで、21頁の?「実施方法」です。前回のいわゆる反省会、検証会議のときに、全数の届出が医療機関に非常に大きな負担を与えたことがかなりそこでも議論されていました。クラスターもしくは通常のサーベイランス、もしくは新しい形でそこをフィードバックするシステムを作るべきではないかという議論があったと記憶していますが、この文書を読むとよくわからないのです。どうしてかと言うと、「直ちに受け、感染症サーベイランスシステムにより情報収集し、その結果を分析、情報還元する」と書いてありますけれども、その文脈のいちばん最後に「医療機関や保健所等の業務量を考慮し、過度の負担とならない程度とする」。これは全く矛盾する話なのです。全数調査をしろと言いながら、現場の状況で過度の負担になるのであればやらないでもいいという、非常に玉虫色の文章に見えるのです。ここは具体的に、診療所とか病院で非常に負担があったという話を踏まえた上での議論がされたのでしょうか。そこを聞きたいのです。
○岡部議長 公衆衛生だったので、私から話します。必ずしも数百例あれば全容がわかるわけではないのですけれども、全数報告である程度の傾向が掴めてくる。1つの目安としては数百例ぐらい、場合によってはもう少し多い必要もあるのですが、ある程度の概要が掴めるようになった時点であれば、現場の負担を超えてもさらに全数報告を続ける必要がない、そういう意味合いで議論されました。ですから、それぞれの現場の負担も大きいわけですけれども、やはり当初は全数報告は是非やっていただかないと、これは全体が、病気が掴めない。病気がある程度掴めるようになったにもかかわらず、いつまでも全数報告の形をすれば、届け出るほうも受け取る側も検査する側も整理する側も、大きな負荷がかかってくるので、それはやめましょうという議論の結果の文章です。
○伊藤委員 そうすると、いま冒頭に岡部先生がおっしゃった、まさにそこを、そういうことを書かなければいけないのではないでしょうか。
○岡部議長 いまの意見を汲み上げて、きちんとそこを明確にしておくということは入れておいてください。
○伊藤委員 目標数を具体的に。
○岡部議長 数百例というのをどこかに書いてありました。
○伊藤委員 なるほど、わかりました。
○結核感染症課長補佐 数百例というのは22頁の上から6行目、?「実施期間」の後に、「全国の報告数が概ね数百例に達するまでの間実施する」と明記しています。
○岡部議長 ただ、議論もあったのですが、本当に数百例で大まかな臨床状況がわかってくるかというと、それは数百例という数では表わせないので、あくまでもこれは目安であるとご理解いただきたいと思います。
○伊藤委員 わかりました。ありがとうございます。
○健康局長 少し戻ります。先ほど、田代先生とか澁谷先生もおっしゃったように、例えばこのパンデミックワクチンをするときに、現行の法制では半年以内に全国民に打つことはできないという話がありました。半年以内に作るという話はまた別の話としてありますけれども。いまの予防接種法では臨時の予防接種になっていて、定期の予防接種を実施した市町村がありますけれども、臨時の予防接種というのは都道府県が主体となってやって、そうでない場合は「又は指示して市町村にやらせることができる」となっています。広域的な場合には当然「国が指示してやらせる」と書いてありますので、現行法制だと半年以内にできないというのは、どういうことなのでしょうか。
○田代委員 いくつか細かい項目があって、できないこともあるというディスカッションもされました。それから、理論的には可能であるけれども非常に手続上は効率が悪くて、速やかにできないだろうということで、都道府県が主体になるか国が主体になるかという具体的なディスカッションはありませんでしたが、実際に接種するのは市町村がやるわけですけれども、地域をまたいで接種者がいた場合とか、そういうことを効率よく速やかに公平にワクチンを接種するためには、現行のやり方では不可能だろうという、そういう結論だったわけです。だから、法改正まで踏み込む必要があるかどうかはともかくとして、現行法の中でできるのであれば、それでできるメカニズムを確立する必要がある、そういうことです。
○坂元委員 確か以前正林課長さんのほうから、ある短い期間の間にこの強毒性の鳥インフルエンザワクチンを地域の住民全員に打つ、そういうシミュレーションみたいなものが考えられるのかというお話しをいただきました。実は川崎市で140万人の人口に対して、当時は確か2か月内という提案でしたので、いま6か月という提案ですが、接種できるかどうかというものをごく簡単なシミュレーションを行ってみたのです。そうすると、国民保険対象者と公立学校に行っている生徒などはある程度短期間で把握し接種ができるけれども、それ以外の、市外での勤務者や、市内の一般企業、事業所とか私立学校になると、やはりちょっとなかなか市町村だけで直に全てを把握し実際に短期間で全てやることは難しいこともわかりました。例えば、企業の事業所というのは、会社の本社を介して国が統括的に介入して接種を行ったほうが早い場合もあります。、やはり地域によってどういう事業所があって、どういうものがあるかというので全然違うのです。そこはやはり、いま局長さんがおっしゃられたように、現行法制下では可能だと思うので、これはやはりそれぞれの地域や人口構成などに合わせて、事前にしっかりと把握し、計画を立てるようにと自治体に要求をしておかないと、やはり大変な問題になるのではと思います。
○岡部議長 重要な点をありがとうございました。確か、臨時接種はいままで決まってはいるけれども、動かしたことないと思うんですよね。したがって、どうやって臨時接種をやって、効率よくやるかというのは、いま川崎市ではシミュレーションをやられたようですけれども、ほかはやられたことがないと思うので、これは是非。例えば天然痘でも、いくつかの自治体はすでにバイオテロに備えた訓練をやっているぐらいですから、一応こういったような訓練であるとか、あるいはシミュレーションというのは是非できるように、この提案事項とは別に、そういったようなことを伝えていただければと思います。
○川名委員 またちょっと2点ほどよろしいですか。1点は、サーベイランスの件なのですけれども、先ほどの概要のところにも出ていますし、あと本文ですと24頁のいちばん下の○になりますが、臨床情報の分析というところがあります。この後半のところに、「新型インフルエンザの臨床像及び重症患者等の入院経過を含めた臨床情報を可能な限り収集した上で」云々と書いてありますけれども、これは非常に重要で、例えば新型インフルエンザというのは、いったいどういう経過を辿る、あるいはタミフルが効くのか、リレンザが効くのか、致死率がどのぐらいなのか、あるいはレントゲンを撮るとどうなんだということは、非常に重要な情報だと思います。おそらく、これによって現場はどういう治療をするかを決めていくのだと思いますし、場合によっては、これによって国の対策のフェーズが変わったりする可能性もあると。ところが、2009年の新型インフルエンザの流行のときには、こういった情報のほとんどは外国から入ってきたものに頼らざるを得なかったということもあります。そういう反省を踏まえますと、やはりここの部分をその他のいちばん最後ではなくて、もう少し強化してやっていただけるといいのではと思いました。
 2点目ですけれども、この青いファイルを見ますと、後ろに旧ガイドラインがあります。これは、平成21年2月17日ですから、本当にいちばん最後の改定版になるのですけれども、これを見てもなかったので、ちょっと私の記憶だと、もしかすると、この更に前のバージョンだったのかもしれませんが、もっと前のガイドラインでは、確か大久保先生とか森兼先生あたりがまとめられた、感染対策に関するガイドラインみたいな項目もあったのではないかと思うのです。そういったところもおそらく非常に重要なので、感染対策に関するガイドラインをどこかで言及されているのか、あるいはなければやはり入れる必要があるのではないかと思います。もしくは、どこかに入っているのでしょうか。
○岡部議長 いまのは、具体的な感染対策ということですか。
○川名委員 はい。例えば、マスクを付けてどうだとか、手洗いはどうだとか、患者さんは個室に入れるとか、そういうようなことです。
○岡部議長 では、そこは事務局から。
○新型インフルエンザ対策推進室長 いま、確認しましたところ、平成19年3月に専門家会議として医療施設等における感染対策ガイドライン(案)として取りまとめていただいています。これをどう位置付けるかですが、政府がまとめるガイドラインに位置付けるのか、むしろ臨床現場でのマニュアル的なものなのではとも思いますので、これは既に公表もされてますので、内容についても別途精査するということで対応してはどうかと思っておりますけれども。
○岡部議長 そうすると、このガイドライン(案)ではないけれども、別のところでもう1回、それは整備するという意味でしょうか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 既に活用もされているのではないかと思います。政府の中で関係省庁と一緒に議論してというものとは分けたほうがいいのではと思っております。
○感染症情報管理室長 先ほど川名先生の前段のご質問のところだったのですけれども、24頁のいちばん下の臨床情報の分析というところの書き振り、その他に入っているというところだったのですけれども、これについて、ここでもう一度ここに書かせてもらったようなところが実はあります。21頁のイ、新型インフルエンザ発生時に追加するサーベランスというものの中で、22頁のその他に、実は公衆衛生班でも大分ご議論いただいて重要だというところで、「全数把握を端緒として、地方自治体、医療機関や学会等の協力を得て、個別症例について症状や治療経過等の情報を収集・分析し、個人情報に配慮しつつ可能な範囲で公開し、新たな患者の治療に活用する。そのための具体的な実施方法については今後検討し、別に示す」というところで、入念的に書かせていただいております。今後、こういったところを研究班等の先生方の協力を得ながら、どういう方法が適しているかというところで詰めてまいりたいと考えております。
○川名委員 わかりました。
○岡部議長 それでは、ありがとうございました。ほかに。
○坂元委員 非常に細かい話で申し訳ないのですけれども、これ、医療班の会議の中で議論になったのですが、42頁のファックス処方の件で、実は前回のときもファックス処方というのは、医療機関の先生から自治体への問い合わせが多くて、いろいろな混乱が起こってしまったのです。この42頁の上のところが、前回医療班の会議で議論となって、ちょっと整理できていないまま出てきてしまったのではという感じなのです。この「新型インフルエンザの発生後、患者がファクシミリ処方を希望し、かつ、かかりつけ医師が了承」とか、「事前にその旨をカルテ」の、この「事前」がどこにかかるかというのです。この文章を読むと、もう新型インフルエンザという宣言がされて、ただ宣言がされた後でも、慢性疾患の患者さんは元気でまだこの疾患に罹患せずその医療機関に通院している場合でも、先生が、あなたがもし新型インフルエンザにかかったら、ファックス処方に同意をしますねという意味に解釈してよろしいのでしょうか、この42頁の事前という意味が分かりにくいのですが。
○結核感染症課長補佐 これは、42頁の2行目ですが、新型インフルエンザの発生後に処方を希望し、かつ、かかりつけ医が了承したとなっておりますので、全て発生後と示す内容という趣旨で書いております。誤解が生じるようであれば、工夫したいと思います。
○岡部議長 それでよろしいですね。
○伊藤委員 もう1つよろしいですか。ちょっと、具体的に細かいことなのですけれども、51頁のワクチンの確保についてなのですけれども、いちばん上に「細胞培養法等による製造体制が整備されるまでの間、鶏卵によるパンデミックワクチンの製造体制において可能な限りの生産能力の向上を図る」と書いてあるのですが、これは国内でという、そういう意味なのですかね。これだけ見ていると、海外のものについては製造体制が整備されているものもあるので、輸入ワクチンとの関係も含めて、これについては、もしそういうことであれば、「国内の」という言葉を入れたほうがいいのではないですか。
○岡部議長 では、事務局から回答でよろしいですか。
○結核感染症課長補佐 51頁のところ、鶏卵での生産能力の向上というのは、これは国内の体制ですので、おっしゃるとおりです。加えて、国内で足りない場合については、53頁以降の(オ)のところ、発生時のパンデミックワクチンの確保(海外からの輸入)ということで、国内での確保が速やかにできない期間においてはこちらのほうも併せて行うこととしております。
○岡部議長 田代先生、何か付け加えることはありますか。
○田代委員 国内の話です。海外でも決して整備されていません。
○岡部議長 では、いろいろご意見いただいていますけれども、ある程度時間の制約もあるので、ではこれを最後にしましょう。
○田代委員 あと、ワクチン接種のところで、63頁の4つ目の○ですけれども、接種の実施会場の確保ということで、※で、仮に1万人に1人2回接種するとして、100日間でやる場合に、1日平均200名ということなのですが、200名を1日で接種するとなると、これは10時間働いたとして、1時間20人ですよね。これについても、保坂先生のほうから実質的には不可能だろうと。多分、問診をして、その判断は現行の予防接種法では医師がやらなければいけませんから。そうすると、接種は看護師が医師の監督の下にやるとしても、仮にと書かれていますけれども、こういう説明書が非常に甘いのではないかという意見がありました。ですから、これに基づいて今後のいろいろな具体的な計画を立てられると、これは実施できないということになるのではと思います。
○健康局長 それは、班長が直していただければいいと思います。
○田代委員 削ってください。
○岡部議長 例示として削っておいたほうがいいということですね。では、それは班長からの提案なので。
○伊藤委員 抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドラインのところですが、これは今日の議論とは別なのですが、日本東洋医学会から、漢方薬、いわゆる麻黄湯の抗インフルエンザ薬としての議論をしてほしいという要望が出ているとお聞きしているのです。小児についてもいろいろな議論が既に始まっているのですが、この問題に関して今後どうしていくかということをお聞きしたいのですが。
○岡部議長 事務局から何かありますか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 要望書としていただいておりますので、こういった場でご議論いただくことについては、まずはどういうエビデンスがあるのかというところを整理した上でということになるかと思います。現時点では、情報が不足しておりますので、それを整理した上で、こういった場で対策にどう盛り込んでいくかということをご議論いただくのかなと思っています。
○岡部議長 臨床の現場で使われているのは、いろいろな学会・研究会でも出てますけれども、きちんとしたエビデンスとしてあるかどうかも含めて、要望書が出たのであれば、そういうところも含めて、あるいは専門家の意見も聞きながら、今後どうするか、議論を進めていくか、あるいはどうするか決めていっていただければと思います。
○田代委員 いまの削除をお願いしたところですけれども、67頁の上から3つ目の○のところも同じ記載がありますので、ここも削除をお願いします。
○岡部議長 いまのに関連した例示は、この提案のところからは削除するということで整理をお願いします。
○田代委員 いま、抗ウイルス剤の話ですけれども、現行ではオセルタミビルを備蓄して、一部ザナミビルなのですが、耐性が出たときの対応をどうするかということがほとんどディスカッションされてないと思うのです。これについてはそういう可能性が十分ありますので、最初から耐性の可能性もあるわけですから、その場合どうするか、薬が使えない、そういうケースも考えておく必要があると思います。
○岡部議長 そこは課題に書き入れておいて、宿題として、今日解決できる問題ではないと思いますけれども、重要な事項なので、課題には書き入れておくということでお願いします。
○伊藤委員 あと、要望書等は、専門家委員のほうにお投げいただけるとありがたいと。先ほどの麻黄湯の件ですね。
○岡部議長 ああ、はい。
○伊藤委員 我々のところにも要望が出てるかということが知りたいのですよ。
○岡部議長 その要望書を委員に出してほしいということですか。
○伊藤委員 そうです。
○岡部議長 それは、事務局のほうからお答えください。
○新型インフルエンザ対策推進室長 後ほど対応いたしたいと思います。
○伊藤委員 いまではなくても。
○健康局長 なんで行政がそれを対応するのですか。何を対応するのですか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 うちが受け取った要望書について、提供してほしいと、そういうことですね。
○岡部議長 伊藤委員のおっしゃるのは、要望書を委員のほうに見せてほしいということですか。
○伊藤委員 今後、検討をするかどうかということを含めてそういう話があったという。要望書が出ているということに関して、専門家会議なので、その要望について、今後、要するにどうジャッジメントするかということについては、ある程度やはり情報をいただきたいという意味だったのですね。
○岡部議長 それは、パーソナルに情報をいただくという意味でしょうか。
○伊藤委員 パーソナルという意味ではなくて、基本的には会議に対して。
○岡部議長 私たちも小児科学会、感染症学会などから要望書を出すのですけれども、それを全部公開になっているわけではないし、出すほうが公開するんですよね。それに関して、全部回答が来るかというと、必ずしもそうでもないのです。ですから、私が答えるべきことではないのですけれども、要望書の取扱い方について、事務局からも言っていただいて。
○伊藤委員 そういうことであれば、そういう答えをいただきたい。
○健康局長 位置付けは不明ですけれども、淡々と事務的に、委員のご意見ですので、私も中身を精査していませんけれども、ある意味での情報提供という形でさせていただくと。別にこの委員会でそれをご議論いただく立場ではなくてということで、整理させてもらいたいと思います。
○岡部議長 では、委員から要望があったので、何らかの形で伊藤委員のほうにはフィードバックをしていただければと思います。それでは、いろいろ貴重なご意見もいただいているので、それを含めて修正をするということと、先ほども申し上げたように、いまの時間で全部目を通しているわけではないので、例えば先ほどの主語の点、あるいはその他の削除すべき点というようなことがありましたら、事務局のほうに連絡をしていただければと思います。いつまでにというのは後で教えていただいて、それについては最終的には、これはやはり議長と事務局で打ち合わせをするということでご了承いただきたいと思います。後でタイムラインを示していただいて、今日は意見書の取りまとめに加えて、新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台ということで、まだたたき台ではありますけれども、内閣官房からお出でいただいているので、ご説明をいただければと思います。
○内閣官房新型インフルエンザ等対策室参事官(杉本) 内閣官房新型インフルエンザ等対策室の法制担当をやっております、杉本です。今日、大変貴重な時間をいただいて、ご説明を差し上げたいと思います。お時間が大変限られておりますので、また別途ご議論いただく、ご意見を賜わる場をお願いしたいと思っておりますので、本日は簡単にご説明を申し上げたいと思っております。
 まず、このたたき台の経緯ですけれども、昨年11月に全省庁の局長会議で新型インフルエンザのための法制を考える際の主要な論点は何だろうかという文書を取りまとめて、その後、関係団体、あるいは専門家の先生方からいろいろと意見を伺いながらやってまいりました。そのご意見等を取りまとめて、今回たたき台をまとめたわけです。このたたき台を元に、更に今後、関係団体のご意見を聞きなから深掘りをし、この通常国会に提出できるように努力を続けていきたいと思っております。
 まず、?の趣旨ですけれども、新型インフルエンザの脅威から国民の生命及び健康を保護し、国民生活及び国民経済の安定を確保するため、新法を制定することを書いています。いわば、社会全体の危機管理のための法制という位置付けで考えています。
 ?責務ですけれども、国・地方公共団体・指定公共機関のほか、事業者及び国民、これは広くという意味ですけれども、その責務を定めるとともに、基本的人権の尊重及び国際的な連携をすべきことについて定める。また、国や都道府県、市町村、そういった公的なセクターのみならず、やはり電気、ガス、運輸、運送、そういった民間のセクターについても新型インフルエンザ対策にご貢献をいただくということが、どうしても必要になってまいります。そういう意味で、指定公共機関という危機管理法制によくあるような仕組みをもってくるというものです。また、基本的人権について触れていますけれども、後ほどご説明しますが、国民の自由な行動を一定程度制約する場合も出てくるという局面もありますので、それについては必要最小限のものにするという、理念的な規定が考えられると思っています。
 ?行動計画ですが、新型インフルエンザに対しては、この専門家会議でもいろいろとご議論をされて、行動計画も昨年9月に閣僚級会議に引き上げられて、またガイドラインの見直し等も進められているところですけれども、災害対策基本法等にありますとおり、やはり大きな計画、基本的な計画というのを法定化しておくということが大事ではと思っております。
 そのため、1にあるように、国、都道府県、市町村において、学識経験者の意見を聴いて、新型インフルエンザ対策に関する行動計画を作成し、また国民に理解していただくように公表をしていくことが大事ではと思っています。
 2ですけれども、先ほど申し上げた指定公共機関についても業務計画、蔓延時においても、何とか業務を続けていただく計画を作っていただくことを考えています。
 ?新型インフルエンザ対策の実施に係る体制等ですけれども、これは発生時の体制で、1.から3.まで、国の体制について書いてあります。
 1.が、新型インフルエンザが発生したときは、内閣総理大臣を長とする政府対策本部を設置する。これは、世界のどこで起きたとしても、発生をしたという時点で政府対策本部を設置するということです。
 2.が、政府対策本部長は、行動計画に基づき、具体的なそれぞれの病原性の程度とか、社会に与えるインパクトとか、様々なそのときの状況の違いがありますので、随時基本的対処方針を作り、基本的な方向性、やるべきことといったものを示していくことを考えています。
 3.ですが、政府対策本部長は、都道府県、指定公共機関等、様々なところが新型インフルエンザ対策を実施するわけですけれども、それらについて総合調整を行うという、責任の明確化といいますか、本日もいろいろとご議論されていますけれども、やはり誰が何をというところをきちんと定めておくことを考えています。
 4.が、都道府県における対策本部の設置で、大きな役割を都道府県において担っていただくことが考えられるわけですけれども、それを総合的に効率的に進めていくために、対策本部を設置することが必要であろうということを考えています。
 5.ですが、海外発生時の水際対策の適確な実施ということで、本日もご議論がありましたけれども、やはり国の対策本部において、状況を見ながら緩急を付けてきちんとやっていくやり方が重要であろうということ。それから、「及び国内発生時の初動の強化」とありますけれども、2009年の兵庫のケースのように、国内で初めて発生をしたときに、初動としてどういうことをやるか、そういった地域を特定して、外出の自粛ですとか、予防医療を初動の強化としてやっていくことを考えています。
 ?新型インフルエンザ緊急事態への対応です。こちらからは病原性が非常に高い場合、高いおそれがあって、1.にありますとおり、発生した新型インフルエンザが国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある、つまり病原性が非常に高い場合、かつ国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるときは、区域及び期間を定めて、新型インフルエンザ緊急事態を宣言することです。ですから、2.に掲げているように、様々な措置については、任意のご協力を超えるような措置を含んでいますけれども、こういったような措置というのは、やはり緊急事態、病原性が高くて社会の混乱が招来されるときに限る、そういうトリガーとして、こういう緊急事態の宣言を国において行うことを考えています。2.で措置を書いていますけれども、以下のような措置を、先ほど申し上げた政府対策本部において作成する対処基本方針に基づいて実施していくということです。
 (1)不要不急の外出の自粛の要請ですとか、学校、集会等の制限等の要請及び指示。
 (2)医療関係者、社会機能維持事業者の先行的予防接種、プレパンデミックワクチンの接種ですけれども、それから国民全体への予防接種。
 (3)医療関係者への医療従事の要請・指示及びこれらに伴う措置。これらに伴う措置というのは、安全配慮の義務とか、要請に従って罹患されて、お亡くなりになるような場合の対応ということで、様々なことを検討することが必要があると考えています。
 (4)電気、ガス、水道、これは先ほど申し上げた指定公共機関が発生時においても業務を推進していただくということ。
 (5)医薬品等の緊急物資の輸送ですとか、あるいは安定的な確保のための物資の売渡しというものについて、要請なり収用なりについて考える必要があるだろうということ。
 (6)埋火葬の特例は、病原性が非常に高い場合には、多数お亡くなりになる方が一時的に集中することも考えられますので、墓地埋葬法等の特例、いわば一時埋葬を想定していますけれども、こういったものを考える必要があるのではないかということ。
 (7)生活関連物資の価格の安定で、いわゆる国民生活二法という買い占めですとか、売り惜しみというものの法律がありますけれども、こういったものを適切に運用すること。
 (8)行政・民事上の申請期限・履行期限の延長等ということで、大災害のときにはよく講じられるものですけれども、新型インフルエンザにおいても、こういった緊急事態においては必要になるであろうと考えています。
 (9)政策金融の実施で、2009年のインフルエンザのときも、やはり低利の融資とか、観光業は風評被害で苦しんだということもあり、そういったことも行われています。
 これらの措置については、災害対策基本法とか、国民保護法に規定されている類似の措置で、こういったものについて、多くは政府対策本部が定める基本的対処方針に従って、地方公共団体で実施をしていただく。国が直接実施すべきものについては、国で実施する。その辺のきちんとした整理を付けたいと思っています。
 ?その他。1.罰則については、これはそれぞれ新型インフルエンザ対策の中で、どのように指示違反にどのような社会的評価がなされるのか、罰則によって望ましい行為を確保できるのかどうか、類似法例とのバランスはどうか。様々な慎重な検討を経てようやく決まってくるかと思いますけれども、罰則ということも1つの検討の項目であるということです。いずれにせよ、非常に慎重な検討を要するものです。
 2.ですが、これも本日ご指摘がありましたけれども、未知の新感染症、新型インフルエンザと同様の社会的なインパクトを持つものについては、この同じ法制の中で措置をすることが必要であると考えています。
 以上、非常に雑駁にご説明を申し上げましたけれども、専門家会議のこれまでのご議論もフォローしながら作成をしたつもりですけれども、更に検討を深めていきたいと考えております。また日を改めて、委員の皆様にもこのたたき台を元に、法制的な観点からご意見を賜わる機会を設けさせていただければと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。以上です。
○岡部議長 どうもありがとうございました。後日、また改めてこれについての検討の機会を設けると参事官からおっしゃっていただいているのですけれども、いまちょうど6時になってしまったのですが、あと5分か10分ぐらい遅れてもよろしければ、いまの概要、たたき台に関する質問あるいはコメントをお願いいたします。
○伊藤委員 来週、これが国会に上程されるという話が流れているのですが、その問題、事実関係をお聞きしたい。
 それと、これはとても議論が必要な法律だと思うのですね。とても議論が必要な法律に対して、例えば不要不急の外出の自粛要請指示と書いてありますが、これは国による強制ということですよね。こういうことが、実際に医学的な適用を含めた議論を、どこの誰が、どういう形でした上でここへ出てきたのかについて質問したいのですね。専門家会議は全く通っていないので、ある日突然こういうものが出てきたと私は理解しているのです。そういうことを含めて、最後に保管命令に従わなかったときの罰則の規定というのもありますが、例えば菌を持っている人を個人的に感染症法でどこかに停留するということはいままでもあったのですが、学校や集会を制限するというのは、個人のみならず、相当な人たちを強制的に法律で指示下に置くということだと理解するのですが、そういうことであれば、相当な医学的な適用を含めた議論が必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
○内閣官房新型インフルエンザ等対策室参事官 まず、1点目、来週、法案提出というのは、これはありません。今度の開かれる通常国会に提出できるように頑張りたいということで、それを目指しているということです。
 もう1つ、不要不急の外出の自粛のところですけれども、書き方が何でしたけれども、不要不急の外出の自粛については、緊急事態を宣言する区域に広くかかってくるものですので、それについては指示というものはないだろうと。あくまでも、要請ということです。学校、集会等の制限等について、これは2009年のときに兵庫で発生早期の段階で、知事さんが学校や催し物の自粛を幅広く要請されておられます。その結果、最初に発見されたウイルスが、その後の全国まん延段階では途絶えているということもあり、公衆衛生の重要な手段として各知事会ですとかそういったところからも、そういう学校ないし催し物の自粛について要請したのだけれども、要請する法的な根拠がほしいという話もありまして、今回たたき台としては入れてあります。ただ、名称のとおり、たたき台でして、これから深掘りをやっていく。先生がおっしゃられたとおり、医学的な根拠が全くないような措置は、それは不合理なものですので、これからまた議論していきたいと思っています。
○岡部議長 そのほかにご意見、コメントございますか。
○保坂委員 私は実は内閣官房に対して非常に警戒心と不信を持ってきたのですね。というのは、間接的に厚生労働省からのみ話を聞いていますと、専門家会議、あるいは医学的なことを無視して、内閣官房がことを進めるのではないか。こちらの意見を非常に軽視するというか、そういうふうではないかと思っていたのですが、この少し前から私自身が内閣官房の方とお話して、いまの説明もお聞きして、それは私の誤解であったと思っております。今後は多分この専門家会議の意見も十分聴いてくださって、感染症なので、感染症としての危機的状況について対処することについては、感染症の特性である、当然医学的なことで、所管の厚生労働省を通じた意見を十分に尊重して法制化のことを、私自身は法制化についてはある面必要であろうかと思っておりますので、それを進めていただくものと確信しております。そのように申し上げて、これは議事録に残ると思いますので、是非今後よろしくお願いしたいと思います。
○内閣官房新型インフルエンザ等対策室参事官 ありがとうございます。頑張ってまいります。
○岡部議長 ほかにはご意見ないでしょうか。私からなのですけれども、確かにこの間のH1N12009のときも、仮にマイルドであったとしても、何か動かすとき、あるいはガイドライン策定のときも、一体法的根拠はどうなっているのだということの議論があったり、国民保護法との関係で動かせるのか動かせないのかという議論が多くありました。そういう意味では法律としてある最大限のものが起きたときの対策が必要だと思うのですね。ただ、これを決めたときに、たとえば確かに区域及び期間を定めて、緊急事態を宣言するとありますけれども、病気というのは非常に流動的で、途中で変化をしたり、あるいは見えてきたりすることがあるので、どういうときにこれを降ろすかということも明示しておいていただければというのが、私からのお願いです。
○田代委員 これは、国内外を含めてどこかで新型インフルエンザが発生した場合に、こういう法律が実施されるということだと理解しています。裏側の2.に書いてある緊急事態の措置というのは、実際にこういうことを行うということですが、こういうことを行うためには、事前準備が絶対に必要なわけです。それについても、法的な根拠をきちんとカバーしておかないと、こんなのやりません、何を根拠にそういうことを要請するのですかと言われたときには、絵に描いた餅になってしまうわけですから、その辺を十分に考慮していただきたいと思います。
○内閣官房新型インフルエンザ等対策室参事官 岡部先生、田代先生のご指摘を十分踏まえてやっていきたいと思っております。
○岡部議長 あとは、よろしいでしょうか。それでは、参事官、どうもありがとうございました。
 それでは、今日の会議はこれで終了にしたいと思うのですけれども、先ほど申し上げたようにあとご意見や何か、タイムラインを聞いたのがあると思いますけれども、追加の意見などをいただいた上で、最終的な取りまとめは事務局と私のほうで相談をさせていただきたいと思います。それから、これも委員長というより、多分委員会全体のお願いでいいと思うのですけれども、この見直しに係る意見書、これは医学的なことに関しては最大限尊重していただきたい。これが、私及び皆様同意していただければ本委員会としての意見です。もちろん、法律的な部分、行政的なところはあると思いますけれども、そこを尊重していただいた上で、厚労省から内閣官房に出していただくようにしていただければと思います。
 それでは、事務局、お願いします。
○新型インフルエンザ対策推進室長 長時間にわたり、ご議論いただきましてありがとうございました。本日ご議論いただいた意見書(案)については、岡部議長と相談の上、事務局として取りまとめの作業を進めてまいりたいと考えております。主語を明確化すべきというようなところで、追加のご意見、ご指摘等については、土日を挟みまして、来週の月曜日の朝、23日の朝ということになりますけれども、それぐらいまでということでお願いしてよろしいでしょうか。
                  (了承)
○新型インフルエンザ対策推進室長 では、23日の朝までに、事務局まで追加のご意見、ご指摘等はいただくということで、またその追加のご意見についても岡部議長とご相談の上、対応していきたいと考えております。長時間にわたりましてご議論いただきまして、まことにありがとうございました。
○岡部議長 そうすると、取ってある予備日での開催はなしですね。
○新型インフルエンザ対策推進室長 今後もこの専門家会議では新型インフルエンザの対策についてご議論いただきたいと思っておりますけれども、現時点では今後のスケジュールが固まっておりませんので、また調整等をさせていただきたいと思っております。
○岡部議長 それでは、どうもありがとうございました。


(了)

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