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2012年2月7日 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(第2回有害性評価小検討会)

労働基準局安全衛生部

○日時

2012年2月7日(火)14:00~16:00


○場所

経済産業省別館 8階 827号会議室


○議事

○瀧ヶ平室長補佐 本日は大変お忙しい中ご参集いただきましてが、皆様お集まりですのでただいまから始めさせていただきます。本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして誠にありがとうございます。ただいまより「第2回有害性評価小検討会」を開催します。本日は、ご都合により清水委員と高田委員がご欠席です。以下の進行については大前座長にお願いします。
○大前座長 それでは、第2回有害性評価小検討会を開催します。まず最初に資料の確認をよろしくお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 お手元に議事次第と裏側に資料一覧が書いてありますのでそれを参考にしてください。資料1-1「平成24年度がん原性試験候補物質」、資料1-2「フィージビリティテストの実施結果について」、最後の頁に別紙が付いています。資料2「国が行う生殖毒性試験の対象物質について」の(報告)、資料3「リスク評価(有害性評価)の実施予定について」、資料4「発がん性以外で選定した物質に係る評価値について」、資料5「有害性総合評価表、有害性評価書」、資料6「平成23年度リスク評価予定物質に係る有害性評価値の関係」です。参考として国が実施するがん原性試験について。別紙1、別紙2が付いています。参考2「リスク評価の手法(改訂版)」を付けています。委員の先生方には各種提案理由書を付けています。もしなければ申し出ください。
○大前座長 資料はよろしいですか。今日は議題がたくさんありますので早速入ります。最初の議題は、がん原性試験対象物質の選定、フィージビリティテスト終了物質からということで事務局から説明をよろしくお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 それでは事務局の大淵より説明させていただきます。説明に用いる資料は資料1-1、資料1-2、参考の3種類です。
 まず参考1をご覧ください。こちらの資料はいままでにも何度かお配りしている資料ですが、簡単に説明させていただきます。「国が実施するがん原性試験について」ということで、国が実施するがん原性試験は、法律上労働安全衛生法第57条の5に化学物質による労働者の健康障害防止のための国の援助の項目があり、そのうちの1つとして国自ら有害性の調査を実施するものがあります。そこで、動物を用いたがん原性試験も行っております。
 試験の結果、対象化学物質が「がんを労働者に生じるおそれがあるもの」と判断された場合には、厚生労働大臣がその物質に関して、健康障害を防止するための指針を公表することになっております。そちらが参考1の下半分に「がん原性試験の実施から行政対応までのフロー図」があります。法に基づいてのがん原性試験の実施の試験結果について学識経験者による試験結果の評価ということで、有害性評価小検討会での議論の評価によって、がんを労働者に生じる恐れのあるものであると判断された場合には「指針の作成」、リスク評価の対象物質ということで「企画検討会」に提案して、企画検討会でリスク評価の対象にするかどうかというご判断をしていただいております。がん原性の恐れがないと判断された場合には指針の作成はしないということです。
 こういった形で試験の実施から行政対応までの流れがあるわけですが、その中で実際に試験の実施に関しては上の2段落目にいっていただき、「試験の実施にかかるスキームは別紙1のように」と書いていますが、2頁目をご覧ください。別紙1のようにがん原性試験の実施についての時間を追っての流れをお示ししております。がん原性試験自体は、最終的には2年間の吸入の試験を行うわけですが、その前に2週間の試験、13週間の試験を行い、それをもとに最終的に2年間の濃度設定をすることになります。これらの2週間、13週間、2年間の試験は実際に動物を用いて試験をするわけですが、その前にフィージビリティテストを行い、その化学物質が試験に用いるためのガスなり蒸気なりをきちんと発生させて安定な濃度で保つことができるかということを調べるフィージビリティテストを行い、フィージビリティテストを行った物質の中から、実際に次の動物を使った試験に進むための物質を選んでいただくということで、資料の上では黒く網掛かってしまって見づらいのですが、本日は平成23年度の試験対象物質の選定の部分を先生方にお願いします。参考として、別紙2には、これまで試験を実施してきた物質について試験結果や行政対応の状況等を示しています。
 前回の第1回のときにも似たような資料をお示ししておりますが、そのときにはこちらは物質名のところまでしかありませんでしたので、今回は試験結果、あるいは行政対応の状況まで含めた形になっております。こちらに書いてある平成何年、あるいは昭和何年は試験結果の報告の年度で、実際の試験については報告年度よりも5年ぐらい前から試験を開始しているところです。
 平成22年度の検討会、いわゆる有害性評価小検討会においてはフィージビリティテストの結果を踏まえて、物質選定の作業を同じようにやっていただきました。その際選んでいただいた物質が別紙2のいちばん下にあるアクリル酸メチルが昨年度の検討会で選んでいただいた物質です。
 続いて、本日皆様方にご議論いただく物質の具体的な説明です。物質名をさっと見ていただくには、資料1-2が見やすいかと思いますのでこちらをご覧ください。A4サイズの小さい資料です。「フィージビリティテストの実施結果について」と書いてある資料です。本日、先生方にご議論いただく物質は全部で7物質あります。これらは、日本バイオアッセイ研究センターでフィジビリティテストを実施してもらった物質です。1~7まで書いてあります。このうち、1~5までは昨年度の会議でも資料としてお配りした物質です。平成19年度から平成22年度までに試験、フィージビリティテストを実施した物質で、かつ、いままでにまだがんの試験の対象に選ばれていない物質です。昨年度はこの物質にアクリル酸メチルも加わった形の6物質でご議論いただきましたが、アクリル酸ブチルはもう既にがんの対象に選ばれましたので、これを外して今回新たに資料の中に付け加わった物質が6番の2-ブロモプロパン、7番の1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5トリアジン-2,4,6-トリオンの2物質が平成23年度にフィージリビリティテストを実施した物質ということで追加させていただいております。フィージビリティテストの詳細については、後ほど日本バイオアッセイ研究センターから説明をしてもらいます。今回のポイントは、いままでの1~5の物質はすべて液体でしたが、今回の6番と7番の物質のうち、6番は液体の物質、7番は粉状の固体の物質です。
 これらの7物質について、横長のA3の資料1-1をご覧ください。資料1-1については、これらの7物質について物性とか毒性情報、あるいは生産量や用途を整理した表です。情報がいろいろ書いてありますが、説明の中では主に製造量、用途、留意事項を中心に説明させていただきます。
 まず、1番の酢酸エチルについては、製造量及び輸入量が10万t~100万tと書いてあるように、非常にたくさん製造、使用されている物質です。用途は塗料、印刷インキ、接着剤云々ということで、いろいろなものに使われています。こちらの物質の留意事項ですが、毒性が比較的低いため、高濃度での試験となるということで、この表の中の左から3分の1ぐらいのところに毒性情報がありますが、神経毒性に着目したラットの吸入試験で、高濃度まで試験をしている情報で、もしがんの関係にしても高濃度の試験となります。
 留意事項の2つ目として、この化学物質の類縁物質である酢酸イソプロピル、エステルのアルキルの部分だけが違う物質について既にがん原性試験が実施済みです。試験結果の評価も行われております。こちらは、平成21年に評価がされており、評価結果は雄ラットに対して閾値のあるがん原性を有するということです。先ほどの参考1にもこの辺りは書いていますが、酢酸イソプロピルは指針の対象とはせず、リスク評価だけ行うとなった物質です。
 2番の2-エトキシエタノール(別名でエチレングリコールモノエチルエーテル)といった物質については、製造量、輸入量をまず見ていただくと、10万t~100万t。こちらについてもかなり多い物質です。用途は各種樹脂用の溶剤、医薬用抽出剤となっております。留意事項は類縁化学物質であるエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートのがん原性試験を日本バイオアッセイ研究センターで実施中です。
 先ほど1番のところで申し遅れましたが、1番の酢酸エチルについてもただいま申し上げた2番目の物質についても留意事項に書いてある情報がありましたので、昨年の検討会の中では、がん原性試験の対象とするかどうかという観点では優先順位は低いと判断されておりました。
 次の2頁目をご覧ください。3番はメタクリル酸ブチルは製造量、輸入量が1万~10万tと書いていますが、これはメタクリル酸ブチルだけのものではありません。括弧書きで書いてあるとおりメタクリル酸アルキル(C=2~20)のこれらをまとめた形の量ということで、1万t~10万tとなっています。用途は可撓性樹脂、たわみの性質を持ったような樹脂です。繊維処理剤、紙コーティング剤、塗料、潤滑油添化剤といったもので使用されております。留意事項は、蒸気圧は低いが、毒性の認められる濃度でのばく露試験の実施が可能である。エステルの化合物であるということです。もう1つのところでは、昨年度、平成22年度の小検討会では、アクリル酸メチルに次いで優先順位が高かったという結果があり、そのときには製造量等の比較でアクリル酸メチルがより優先順位が高いだろうということで落ちましたが、こちらについても優先順位が比較的高いということで前回の議論がありました。
 4番の酢酸ブチル(酢酸ノルマルーブチル)です。こちらについては、製造量、輸入量は1万t~10万t。用途はいろいろなものの溶剤として使われております。また、人造真珠塗料、天然ゴムの溶剤としても使われております。4番の物質についても、類縁化学物質である酢酸イソプロピルは既に試験実施済みと先ほどご説明したとおりです。
 3頁の5番目の物質です。アリルアルコールは生産量情報、そのままはないのですが、PRTRの排出量、あるいは移動量の情報で排出量が4t、移動量が147tといったような情報があります。用途はジアリルフタレート樹脂・医薬・香料・難燃化剤などの原料です。留意事項は代謝産物であるアクリル酸及びアクロレインのがん原性試験を日本バイオアッセイ研究センターで実施中であるということで、こういった観点から、こちらの物質についても昨年度は優先順位が低いと評価されたものです。以上までが昨年度もご説明させていただいた物質です。
 6番、7番が今回新しく説明させていただく物質になります。6番の2-ブロモプロパンについては、製造量、輸入量が100t~1,000t。用途は農薬・医薬・中間体、各種有機合成用ということです。留意事項には、皮膚吸収が大きいという情報を記載しております。また、ほかのところですが、毒性情報では生殖毒性に関係する情報を記載しています。そちらでは動物実験の結果を記載しています。この物質については、人に対しても生殖毒性が見られている情報も多くあります。
 7番目の物質の1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンの生産量については化審法の監視化学物質としての届出結果ということで3,256tという情報があります。用途は粉体塗料、はんだレジストインク、光半導体の封止樹脂等々といった用途があります。留意事項はこの物質そのものの留意事項ではないのですが、今回ご説明した7物質のうち、この物質だけが固体の粉状の物質でして、実は私どもで今後ナノマテリアルについてもがんの試験をやっていこうということで、平成24年度はその準備段階としてナノマテリアルのフィージビリティテストを予定しております。ナノのフィージビリティテストをするためには、粉状物質用の短期吸入試験用の設備を使用することになるわけですが、実際に試験を受託する試験機関において、ナノのフィージビリティテストとがんのための粉状の2週間の試験を同時に実施できるような試験施設があるかということが気掛りになるところです。資料1-1の説明は以上です。続いて、「資料1-2フィージビリティテストの実施結果について」。バイオアッセイの西沢部長から説明をお願いします。
○西沢氏 バイオアッセイの西沢です。平成19年度から行ったフィージビリティテストの結果について簡単に説明します。
 平成19年度には酢酸エチルを行いました。文献よりばく露の目標濃度8,000ppmとその100分の1の80ppmに設定し、6時間のばく露の発生検討試験を行いました。被験物質を清浄空気でバブリングし、蒸発させ、清浄空気と混合する方法により、吸入チャンバー内の濃度は79.1±8.8、7,976±88という精度でばく露ができました。動物実験が可能な範囲のばく露ができると判断します。
 2-エトキシエタノールを同じように文献より1,000ppmを高濃度、その100分の1の10ppmを低濃度にして同様な発生試験を行いました。チャンバー内濃度は10.4±0.8、997±66と精度よくばく露ができましたので動物実験が可能と判断します。
 平成20年度にはメタクリル酸ブチルを行いました。同様に文献より最高濃度を1,000ppm、低濃度をその100分の1の10ppmとして同様の方法で発生検討試験を行いました。チャンバー内濃度は10.1±0.2、1,006±36と動物実験が可能と考えます。
 次に、平成21年度に酢酸ブチルのフィージビリティテストを行いました。文献より、この物質に関しては、なるべく高濃度の試験をしたかったのですが、当センターで使用している1m3の試験用吸入チャンバーでは安定的にばく露ができる最高濃度は2,000ppmでした。そこで2,000ppmを高濃度にして、その100分の1の20ppmを低濃度として、同様に清浄空気でバブリングする方法により、発生検討試験を行いました。チャンバー内濃度は19.7±1.3、1,993±40ppmの精度でばく露可能でした。なお、2,000ppmですが、文献ではラットの13週間試験で1,500ppm以上で体重増加の抑制等が見られておりますので、2,000ppmは何らかの動物への影響が見られる濃度と考えられます。
 平成22年度にアリルアルコールの試験を行いました。文献より高濃度を150ppm、低濃度を100分の1の1.5ppmとして、同様の方法で発生検討試験を行いました。チャンバー内濃度は1.49±0.12、150.21±1.92と動物実験が可能だと思います。
 6番と7番は本年度、平成23年度にフィージビリティテストを行いました。2-ブロモプロパンを文献より高濃度を15,000ppm、低濃度を100分の1の150ppmとして、同様に清浄空気のバブリングによる発生検討試験を行いました。チャンバー内濃度は147.7±0.2、高濃度は14,929.6±339.6で精度よくばく露できました。
 なお、文献ではラットでは29,440ppmの6時間、1回のばく露で動物の死亡が報告されております。マウスについては、4時間のLC50値が31,171ppmと報告されております。そこで、2週間の10回ばく露試験を想定して、30,000ppmの2分の1の15,000ppmを高濃度としました。
 7番は1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンです。この物質は固体で粉塵ばく露によるフィージビリティテストを行いました。目標濃度は0.1から30mg/m3の3濃度に設定して、6時間のばく露時間で発生検討試験を行いました。この物質のエアロゾル化はエジェクター吸引型粉塵発生装置(ダストフィーダー)を使って行いました。さらに分級装置を組み合わせました。ダストフィダーの運転又は吸入チャンバーへの粒子の供給量を帰還制御する方法でコントロールしました。吸入チャンバー内濃度は発生検討時間中6回の測定を行いました。測定濃度は0.12±0.01、2.87±0.15、28.90±1.16でそれぞればく露が可能でした。なお、吸入チャンバー内の空気力学的質量中位径(MMAD)は3.1~3.4μm、幾何標準偏差(σg)は1.6~1.7でした。
 現在のOECDテストガイドラインのMMADの推奨粒子径は1~3μmですので、少しMMADが大きいということで、実際の試験にはもう少し検討が必要であると考えております。なお、ばく露濃度についてはマウスの5日間の試験で40mg/m3の濃度で死亡が見られた報告がありますので、2週間(10回ばく露)を想定して最高濃度を30mg/m3としました。以上です。
○大前座長 最初の議事については、いまフィージビリティテストを含めて7物質を挙げていただきました。このうちどれか1つを選んで発がん性試験に持っていく物質にすることが最初の目標になります。いまお示しいただいた7物質のどれを選ぶかに関するご意見があればお願いします。この物質はいい、あるいは外しても構わないというご意見で、最終的に1物質に絞りたいのです。あるいは、いまの説明に対する質問でも結構です。
 7番目の物質の、空気力学的質量の中位径が若干大きいという説明がありましたが、これは最初に使用した分級装置の性能になるのですか。
○西沢氏 フィージビリティテストですから、取りあえずバイオアッセイが持っています機器、装置で行ったということです。実際に試験を行うとなれば、またそれなりのいろいろな工夫ができると思います。特に、濃度が何段階にもなりますから、実際のシステムとはまた違うものになると思います。
○大前座長 そうしますと、MMADが若干大きいことは今回の判断ではあまり考えなくてもいいということでよろしいですか。
○西沢氏 そうですね。まだ実際にはやっておりませんけれど、検討すれば克服可能と思います。
○大前座長 そのほかいかがでしょうか。7物質のうち1物質を選ぶということで、皆さんから是非ご意見を伺いたいのです。特になければ、順番にやっていきましょう。
 まず、1番目の物質、酢酸エチルです。これを見ていただきますと、変異原性試験に関しては、染色体異常試験が陽性である、ただ小核試験は陰性、エームス陰性。留意事項の中で、酢酸イソプロピルを既にやっていまして、これは閾値があるがん原性があるというデータは既にあるということです。酢酸エチルは溶剤として非常に大量に使われている物質ではあります。現場の感じではあまり毒性がないというイメージでずっと使っていますが、何かご意見ありますか。
 次の、2-エトキシエタノールです。これは留意事項にあるように、これのアセテート、酢酸エステルを既にいま実施している最中です。このアセテートは体内に入るとたぶん2-エトキシエタノールに分解されるだろうということで、アセテートのほうの試験を見ていれば大体2-エトキシエタノールのことは大体わかるのではないか。そのような考え方で、おそらくこの留意事項が書いてあると思うのです。池田委員、この辺はそのような考え方でよろしいですか。
○池田委員 そう思います。エステルの加水分解は相当早いと思いますので、現実にはエステルを投与したら、少なくともこの化合物を相当に投与した結果になると思います。
○大前座長 ということで、この2-エトキシエタノールは今回の候補から外してよろしいですか。特にご意見がなければ、2番の物質は外すことにいたします。
 3番目は、メタクリル酸ブチルです。これは昨年度のこの検討会で、アクリル酸メチルの次に優先順位が高かったのですが、生産量がアクリル酸メチルは多いということで、前回は見送りになったものです。いままでやっている中では、メタクリル酸関係では、参考資料1にがん原性試験の一覧表のメタクリル酸を見ていきますと、下の小さいほうの表の「平成26年」とあるところに、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルとあります。これはエポキシが入っているので、がん原性があったとしても、今回の物質とは作用機序が違うと思いますので、これはあまり参考になりません。要するに、過去の実験からはあまり推定できないと思います。この物質は、エームス陰性、染色体異常試験陰性、in vitroの実験では変異性なしという情報になっています。これについて、何かご意見はいかがでしょうか。これもエステルですけれど、メタクリル酸ブチルを投与すると、やはりメタクリル酸ブチルとブチルアルコール、ブタノールに割と早く変わってしまうと考えてよろしいですか。
○池田委員 私もそう思います。
○大前座長 何かご意見はいかがでしょうか。
 では次に進みます。酢酸ブチル、酢酸N-ブチルです。これは、エームス陰性、染色体異常に関しては、ここには情報がない。留意事項では、類縁物質で酢酸イソプロピルのがん原性試験は既にある、これは最初の酢酸エチルも同じで、類縁物質のデータは既にあるということです。何かご意見いかがですか。類縁物質の話を採用すると、最初の酢酸エチルとこの酢酸ブチルの両方ともやらなくてもいいのではないかという感じにはなります。すみません、やらなくていいということではなく、優先順位は高くないのではないかという意味です。
 5番目の物質は、アリルアルコールで、これは染色体異常も陽性、エームスも陽性で、変異試験はほとんどの試験で陽性という結果があります。それから、アリルアルコールの代謝産物としてあるアクリル酸とアクロレインが現在進行しているということです。そういう意味では、アリルアルコールは当然代謝されるのでしょうから、結局はアクリル酸とアクロレインの発がん性を見ていれば大体見当がつくというような考え方でよろしいでしょうか。
○池田委員 アクロレインも還元されてこの化合物に変わります。それから、アリルアルコールは、メインの代謝経路としてはやはり酸化されてアクロレインに変わり、さらにアクリル酸に変わると考えられますので、この3つはもうほぼ、投与すれば同じような感じと考えていいと思います。
○大前座長 ということは、この物質は今回の選定では、既に現在進行形の2物質があるので優先順位は低いとして外してよろしいですか。いかがですか、何かご意見はありますか。
○宮川委員 代謝されて同じものが出来る場合には毒性は予想されるので、試験の優先順位は低いということには賛成します。その結果として、予想されるだけであるとすると、その後の措置はどうなるのかを考えて、予想された場合にはそれなりの措置をある程度考えておかないと、同じような毒性が予想されるから試験はしないで、そのまま何の措置もされないというのでは、いかがなものかと思いますので、その辺をご検討いただく条件で、優先順位が低いということでよろしいかなと思います。
○大前座長 宮川委員のご意見は、アクリル酸とアクロレインの結果が出て、もし発がん性がある、がん原性があるとなった場合は、当然アリルアルコールに関してもがん原性の可能性が高いとして注意すべきだという、そのようなnotationをちゃんと付ける必要があるということですか。
○宮川委員 はい。
○大前座長 よろしゅうございますか。いまの意見は非常に重要な意見だと思います。これはアクロレインとアクリル酸の結果が出た後の話ですけれども。
○松井化学物質評価室長 事務局で手違いがありまして、参考1の資料に別紙2として、過去の試験結果といま実施中の表が出ていますが、平成22年の報告物質で、アクリル酸についてはラット・マウスともに発がん性なしという結果が既に出ています。古いもので、アップデートが遅れていたようで申し訳ありません。
○大前座長 平成22年のアクリル酸は発がん性なし、アクロレインは現在進行中ということですね。したがって、アクロレインの結果が出て、もし発がん性があればですが、いま宮川委員がおっしゃった注意書きを必ず付ける必要があると思います。では、いまの留意事項のところは修正をお願いします。アクリル酸に関しては発がんネガティブ。アクロレインは現在進行中としてください。これは、いま宮川委員がおっしゃった注意を加味して、今回はいいだろうとしてよろしゅうございますか。
○西川委員 結論はそれでいいと思います。代謝物等から推定するような場合、できれば、毒性情報に関しても、代謝物あるいは類縁物質の情報があるとより判断がしやすいと思います。今後のことで結構ですのでお願いします。
○大前座長 今年度はもう間に合いませんが、2012年度以降は、もしそういう物質があった場合に、類縁物質あるいは代謝物質の毒性情報があれば、それを少しこの情報の中に加えていただきたい。それは是非よろしくお願いしたいと思います。
 次に6番目の物質です。これは平成23年度にフィージビリティテストをされた物質です。2-ブロモプロパンです。これは、エームス陽性。染色体異常陽性。留意事項には皮膚吸収が大きいとあるだけで、特にありません。産衛の許容濃度1ppmというのは、ヒトの生殖毒性から持ってきたのではないかと思います。許容濃度自体は非常に低い物質である。発がんに関してはまだ評価されていないという物質です。これについてはご意見はいかがでしょうか。ちょっと心配するのは、製造量・出荷量が100t~1,000tですが、生殖毒性の報告があってからオープンの形で使われていない可能性もありますね。もちろん、医薬品・農薬の中間体としては使われるのでしょうが、作業者がもうあまりばく露していない可能性がありますね。1-ブロモプロパンはたくさん扱っているので、ばく露はあると思うのですけれども。その辺について何か情報はありますか。
○松井化学物質評価室長 事務局から補足させていただきます。2-ブロモプロパンは企画検討会で以前にリスク評価の対象物質に選んでいただきまして、平成22年1~12月までの取扱いについて500kg以上の製造・取扱いのあった事業場に有害物ばく露作業報告を出していただくこととしました。その結果は平成23年に報告されまして、500kg以上の取扱いが3事業場というデータがあります。
○大前座長 実際の使用形態、どういう使い方をしているのかなど、そこまではわからないのですね。
○松井化学物質評価室長 ちょっと、わかりません。
○大前座長 何か情報がありますか。
○細田氏 ばく露作業でやったとすると用途はわかるのではないですか。報告されているのではないですか。
○大前座長 用途は何かわかりますか。
○松井化学物質評価室長 用途の区分は報告されていますが、ちょっと、いま手元にないので。すみません。
○大前座長 用途の中の、中間体あるいは有機合成などですと、大体パイプの中を通っているという形になりますか。
○細田氏 あとは作業ですね、具体的な報告で。開封作業を報告しているものがあります。
○大前座長 開封作業ですか。事業場が3カ所と非常に少ない。したがってばく露作業場もそれほどは多くないだろうという物質にはなります。
 7番目の物質は液体ではなく粉体ですので、粉体ばく露になります。これは、エームス陽性、染色体異常陽性。ただし、留意事項としては、いまナノマテリアルのフィージビリティをやっているので、端的に言うとチャンバーが使えないのではないかという物理的な制限で、手を挙げて応募してくれる機関が少ないのではないかというのが現実的な話になろうかとは思います。実際にこのような工業化学物質の粉体のばく露実験、発がん実験ができる機関というのは、日本の中では何機関ぐらいあるのですか。バイオアッセイはずっとやっていますからありますね。そのほかにも、複数ありますか。たぶん、あまりないですよね。
○松井化学物質評価室長 まず、長期のものは、バイオアッセイセンター以外にはあまり聞きません。最近はナノマテリアルでは産業医大などで、比較的長期でないものは扱っていますが、その程度しかわかりません。
○大前座長 現実的には粉体ばく露はバイオアッセイしかできないのではないかというのが認識です。それは、もしバイオアッセイが受けた場合に、ナノをやっていてチャンバーが空かないということですか。
○松井化学物質評価室長 今月21日に企画検討会を開催しまして対象物質を選んでいただくのですが、そのときにナノマテリアルも選んでいただこうとしています。委託試験では、既にカーボナノチューブのばく露試験を今年13週間バイオアッセイセンターで行っていただいていまして、平成24、25年度で2年間の長期試験を委託で予定しています。
○大前座長 そのような状況で、これを選ぶと現実的に難しいかなという客観的な状況がありますので、粉体に関しては今年度は外してよろしいですか。ちょっとやむを得ないかなと思うのです。
 そうしますと、残ったのが、1番の酢酸エチルと、3番のメタクリル酸ブチルと、4番の酢酸ブチルと、6番の2-ブロモプロパン。酢酸エステル関係は類縁物質のデータがある。2-ブロモプロパンに関しては、実際のばく露作業はあまりないかもしれない、要するに、3事業場ぐらいしか使っていないようなことがあります。そういう意味で、残る可能性があるのは3番です。これは、エームス陰性、染色体異常陰性と、セレクションする場合の情報としてはネガティブな方向に働くものもあります。いかがいたしましょうか。
○池田委員 酢酸のエステルが2つあり、酢酸エチルと酢酸ブチルですね。この2つでどちらかを選ぶとなったら、いずれにしても両方選ばなくては意味がないと思うのです。技術的には、この構造から見て、そのうちのどちらかを選ぶというのは不可能だと思うのです。類縁のエステルが、構造は確かに違ってイソプロピルではありますけれども、これのデータがある程度ありますので、これから類推することは可能かと言えば、ある程度可能かなと思うのです。もちろん、化学物質が違いますとそれぞれ違うはずではあるのですけれども、どうしても優先順位を付けないといけないのであれば、この2つの酢酸エステルは外してもいいのではないかと思います。優先順位を下げていいのではないかと考えます。
○大前座長 いまの池田委員のご意見はいかがでしょうか。いまのご意見でよろしゅうございますか。
 そうしますと、残るのは、3番のメタクリル酸ブチルと、6番の2-ブロモプロパンです。これはどちらを優先順位としたほうがよろしいでしょうか。2-ブロモプロパンはもっと低い濃度まで測定精度は大丈夫そうですか。一番下の濃度も今回フィージビリティ150でしたね。許容濃度が1なので、ひょっとしたらもう少し低いところまでいくのかなという気がしないのでもありません。発がんに関してはそこまでいかないかもしれませんけれども。
○西沢 2-BPは低濃度でのばく露は十分可能です。
○大前座長 十分ですね。
○西沢 反対に、急性毒性が強くないということで、一般毒性を追いかけて濃度を設定していきますと、13週試験やがん原性試験でかなり高濃度を設定しなければいけないということが予想されます。
○大前座長 いまのようなこと、それから先ほどのばく露作業者が2-ブロモプロパンは相当低い可能性があることを考えますと、3番のメタクリル酸ブチルが残ってきます。これの欠点は、変異原性が陰性なので、ひょっとしたら発がん性がない実験になるかもしれないという可能性があります。別に発がん性がなくても、なければないでしっかりデータが出ればいいので、構わないわけですが。いままでの物質でも発がん性なしのものはやっていますので、結果として、発がん性なしでもそれは当然いいわけです。
 優先順位として1番に挙げるものとして、今年度選択するのはこの物質でよろしいですか。あとは、この物質は比較的、PRTRですと量が少ないこともありますが。
 では、特にご意見がなければ、今年度に関しましては、3番のメタクリル酸ブチルとしてよろしいですか。
                 (異議なし)
○大前座長 では、今日の検討会ではメタクリル酸ブチルと決めさせていただきます。どうもありがとうございました。最初のテーマはこれで終わりです。
 2つ目のテーマに移ります。国が行う生殖毒性試験の対象物質についての報告です。事務局からお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 資料2です。生殖毒性試験の関係では、10月18日開催の第1回の小検討会において先生方に議論をいただきました。その際に、今後リスク評価対象として予定している12物質を掲げ、その中から生殖毒性の情報が十分でなく、かつ生殖毒性が疑われるような物質を選定することとなりました。生殖毒性の情報につきましては、化学物質のGHS分類の際に使用した文献を参照しました。この12物質の中から検討いただいた結果、3物質を候補として挙げていただきました。1番のアクリル酸メチル、8番のピリジン、10番のメタクリル酸メチルの3つが試験の候補として選ばれました。この中からどれを選択するかは厚生労働省と試験委託先とで相談の上決めるようにとのことでした。その後の検討結果についてご報告させていただきます。
 これら3物質について検討した結果、以下の理由によりアクリル酸メチルを選定しました。まず、アクリル酸メチルはがん原性試験のためのフィージビリティテストを実施済みのため改めてばく露検討を行う必要がなく、平成23年度中に2週間の予備試験が確実に実施可能であること。また2頁にありますとおり、生産量が多いにもかかわらず生殖毒性試験の報告が少なく、生殖毒性のGHS区分でも分類できない物質であること。関連物質であるアクリル酸エチルは過去に厚生労働省委託試験で反復吸入毒性・生殖発生毒性併合試験が実施されており、その結果との比較も重要な情報となること。これらにより、アクリル酸メチルを平成23年度から24年度にかけての生殖毒性試験の物質として選ばせていただきました。
 参考ですが、過去に厚生労働省の委託で生殖毒性試験を実施しています関係の情報を2頁に記載しています。その表の下に注意書きで記載していますように、これらの物質は、行政が平成8年度に「化学物質の有害性調査推進専門家会議」を開催しまして、その中で生殖毒性の候補物質をリストアップしていただいたものから選んで試験を行ったものです。エピクロルヒドリンから始まりエチルベンゼンまでの9物質について過去にも試験を行っています。このうち、1番のエピクロルヒドリンと5番の酸化プロピレンについては、はっきりとした生殖毒性が認められ、行政指導の通達を発出している状況です。生殖毒性試験の対象物質についての報告は以上です。
○大前座長 今回の3物質の、メタクリル酸メチルが候補ですが、これは既に平成11年度にやっているのですね。これは、生殖発生毒性はなしという結果が出ているということですね。いまのご説明は、アクリル酸メチル、ピリジン、メタクリル酸メチルの中からアクリル酸メチルを選んだというご報告でした。前回の委員会で、以降は厚労省と委託先で相談して決めてくださいということでしたので、その報告でした。何かご質問あるいはご意見はいかがですか。
○西川委員 確認です。過去の試験でアクリル酸エチルは生殖毒性がないということでよろしいのですか。この9つの物質のうちの、1番目と5番目に生殖毒性があり、だから行政指導通達が出ているということですね。事務局に確認しているのですけれども、違いますか。
○松井化学物質評価室長 2頁の参考表の1番から9番のうち、行政通知を出していない物質については、生殖毒性は陰性であった。
○大淵有害性調査機関査察官 陰性、あるいは出たとしても弱いもので、行政対応までは必要ないだろうという範囲です。
○西川委員 そこで、なぜアクリル酸メチルをやることになったのか、その理屈が理解できないので確認したのです。
○大淵有害性調査機関査察官 私どもでは必ずしも陽性の結果が出るものだけを狙うという趣旨ではなく、非常にたくさん作られているものであれば、それに生殖毒性があるのかないのかの情報をきちんと把握する。そして、こちらの物質につきましては今後リスク評価を行う予定にしていますので、その中でも試験の結果を反映させる。また、今後GHS分類の見直し作業もありますので、その際の参考にもできるということで選んでいます。
○西川委員 アクリル酸メチルも陰性になる可能性が高いということではないのですか。
○松井化学物質評価室長 1頁の表にある1番から12番までは、今後リスク評価を行っていく物質でありまして、必ずしも生殖毒性が疑われる最も危いものという形で選んでいるわけではないのです。この12物質のうち生殖毒性について今後参考になる可能性が高いものについて試験を行えば、生殖毒性試験は、がん原性試験に比べれば短期間で行えますので、今後のリスク評価にも役立てられるということで選んでいます。そういう意味からすると、たくさんある物質の中から絞り込んだ場合よりは生殖毒性の可能性が一番高い物質が選ばれているわけではないのです。
○西川委員 この資料2の2「その後の選定結果」に○が並んでいまして、その最後に、「関連物質であるアクリル酸エチルは既に試験が実施されていて、その結果との比較も重要な情報となる」とある、これが理解できなかったのです。既に陰性であるという結果は出ているわけですね。
○大前座長 いかがでしょうか。エチレングリコールは、モノエチルとモノメチルは随分毒性の強さが違うことはもう既にわかっておりまして、もちろんメチルとエチルが必ずしも同じ毒性を示すとは限らないことはありますが、それにしても、西川委員は、エチルがネガティブだったのならばほかのものを選べばよかったのではないかというご意見ですか。そこまではいかないのですか。
○西川委員 そこまで言っていないです。単純な疑問として確認させていただきたかったのです。これは3番目の○がなくても、上の2つの○で十分に理解できますので、その辺りを整理してください。
○大前座長 では、その辺を少し整理していただきたいと思います。これは報告事項ですので、これで終わりたいと思います。
 次に、3つ目のテーマです。「リスク評価の実施予定について」、事務局からお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料3に実施予定について1枚でまとめています。平成21年3月報告対象物質については、右側の上のほう、酸化チタン、1,3-ジクロロプロペン、ジメチル-2,ジクロロビニルホスフェイト、パラ-ジクロロベンゼン、4-ビニル-1-シクロヘキサンが昨年度の評価の結果、詳細リスク評価をするとして、現在詳細なばく露測定をしています。その下、アンチモン、キシリジン、ニトロベンゼンにつきましては、初期のばく露調査をしまして、これを今年度まずやることになります。平成23年1~3月に報告を受けたものが(43物質)ありますが、その前に発がんに着目して告示したところ出てこなかったものが(17物質)ありました。それらについては取扱いがほとんどないとして、当面リスク評価の対象にしないことにしています。報告があったもののうち、2-アミノエタノール、フタル酸ビス、メチレンビスについて現在ばく露実態調査をしていますので、これについてリスク評価をすることになります。それ以下の物質につきましては、平成24年度にばく露実態調査等を行ってリスク評価を進めるという段取りになっています。
 平成23年1~3月の報告の項から、発がんではなく生殖毒性や神経毒性に着目した物質を選んでいますので、この後の議題になるのですが、評価値の設定等の検討をしなければならないことになっています。以上です。
○大前座長 資料3についてご質問はいかがですか。「平成24年度ばく露実態調査実施予定」の(17物質)の中のウレタンは、以前にも、たしか問題になっています。ウレタンというのは、いわゆるウレタン樹脂、ウレタンフォームなどのあれではないということで問題になったのです。今回の場合もウレタンフォームでないものということですか。
○瀧ヶ平室長補佐 前回、間違った報告がありましたが、今回は確認をして、ここでウレタンになっています。
○大前座長 わかりました。
○大前座長 よくわからない物質があります。一番下の「2.のフルオロ酸ナトリウム」というのは弗化ナトリウムのことですか。この物質はよくわからないのですけれども。
○松井化学物質評価室長 弗化ナトリウムは別途9.にありまして。
○大前座長 何か抜けているかもしれませんね。ちょっとこれは確認してください。フルオロ酢酸かもしれませんね。
○松井化学物質評価室長 すみません、「フルオロ酢酸ナトリウム」です。「酢」の字が落丁しています。
○大前座長 そのほか、資料3につきましてご質問、ご意見ありますか。よろしいですか。どうもありがとうございました。
 続きまして、今日の議題の4「発がん性以外で選定した物質に係わる評価値」について、事務局からお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料4です。いままでリスク評価をやってきたものは、発がん性に着目してということになっております。リスク評価のやり方としては、一次評価値、二次評価値となっております。一次評価値については、発がん性をもとに発がん性の閾値がないとみなされる場合で、がんの過剰発生率が算定できる場合、もしくは発がん性の閾値があるとみなされる場合について、一次評価値を設定して行う。これについては、発がん性に着目して行うという議論で進んできております。
 先ほど申し上げましたように、これからは発がん性以外の観点から有害性に着目してリスク評価をする物質を選んでおりますので、一次評価値を設定したほうがいいのかということを改めて確認したいということで議題とさせていただいております。それの参考ということで、2頁以降にそれぞれ選定したときの理由と、それぞれの物質のACGIH、産衛学会、有害性総合評価表等に、中災防のほうで文献を拾って出している数値を並べております。資料5のほうに、有害性総合評価書と、机上配付になっておりますACGIHと産衛学会の提案理由書を付けております。
 順番に説明させていただきます。1番の「2-アミノエタノール」については、ACGIHでTWAが3ppm、産衛学会が3ppm。これは神経毒性ということで、反復投与毒性のところの数値が、選定した理由から求められた評価値になり、これは0.05ppmとなっております。ACGIHと産衛学会の求めた根拠は、同じ実験をもとにとなっております。反復投与毒性についてはLOAELを5ppmとして、そこから計算して出しています。
 2番の「アルファーメチルスチレン」については、ACGIHで10ppm、産衛学会では許容濃度は設定されておりません。神経毒性については、反復投与毒性についてあるとおり、LOAELを75ppmのところから求めて0.56ppmと評価値にしたものです。
 3番の「クメン」については、ACGIHで50ppm、産衛学会では設定なしで、これについても反復投与毒性でラットの自発的運動量の有意な減少ということで100ppmをNOAELとして7.5ppmと評価値を求めています。
 4番の「一酸化二窒素」は生殖毒性、神経毒性ともにGHSで区分1ということで、これについてはACGIHが50ppmで、提案理由はそこに書いてあるとおりです。これについては、生殖・発生毒性のほうから評価値を求めたところ、NOAEL=500ppmから、評価値を5ppmと求めています。
 5番の「クロロメタン(別名塩化メチル)」は、ACGIHでTWAが50ppm、産衛学会が50ppm。選定理由は、生殖・発生毒性なので、それについてはNOAELが250ppmから、19ppmを評価値としております。
 6番の「フタル酸ビス(別名DEHP)」は生殖毒性から求めていて、ACGIHがTWAで5mg/m3、産衛学会が5mg。生殖毒性から求めたものが、NOAEL14mg/kg体重/日で11.8mgということで、評価値としてはACGIHや産衛学会の数値よりも大きな値になっております。
 7番の「N,N-ジメチルアセトアミド」については、ACGIHがTWAで10ppm、産衛学会が10ppm。生殖毒性から求めたものは、この計算の根拠は産衛学会の報告等から280ppmをLOAELとして計算して0.21ppmを評価値として出しております。
 8番の「2-エチルヘキサン酸」については、ACGIHが5mg/m3、産衛学会は設定なし。生殖・発生毒性については、LOAELを100mg/kg体重/日で、経口ばく露のデータを吸入ばく露に換算して計算した結果、参考:評価レベルとして6mg/m3で、これもACGIHの数値よりも大きな数値になっております。
 9番の「メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(別名MDI)」は、生殖毒性、神経毒性は区分1ではないのですけれども、いろいろと有害であるということで委員のほうから提案していただいて選定している物質になります。ACGIHでTWAで0.005ppm、(0.051mgm3)、産衛学会が0.05mg/m3。反復投与毒性から計算すると2.0×10-3mg/m3という数値が評価値になるということです。この詳しいものは有害性評価書のほうに書いてあります。事務局からは以上です。
○大前座長 いままでの一次評価値は発がんだけで決めていました。閾値がないものについて、評価値のあるものはそれを使う。それで閾値があるものについては発がんの重大性も含めて不確実係数を入れて、それで一次評価値を求めて示してきているわけです。いまのお話は発がん以外の毒性から、この場合はみんな閾値がある影響だと思いますが、不確実性係数を掛けて、その数字が二次評価値、ACGIHもしくは産衛学会の許容濃度よりも低い場合は、一次評価値として示したほうがいいのかどうか、その辺はどうなのかというお話です。
 その実際の具体例がいくつかここに出てきているわけですが、物によっては高めに出るのもあるし、それは当然一次評価値にはならないわけですが、低めに出る物に関しては、例えば生殖・発生毒性を基準にして一次評価値を示す手もあるのではないかというお話です。
○宮川委員 いろいろな毒性があるので、がんだけに限る必要はないと思いますので、是非生殖・発生毒性とか、一般の臓器毒性も含めて本来は検討すべきだと思いますので、方向性としてはよろしいのかと思います。
 ただ、この有害性評価書を見ると、生殖毒性のほうでは評価値の計算の時に、何を重篤な影響と取ってUFを10余計に付けるか、あるいはばく露期間がいろいろ異なったものがあって、発生の後期だけにばく露したものもあり、それでばく露期間の修正をどのようにするか、というようななかなか難しいところもあると思います。ある程度データが溜まって、生殖毒性についてのリスク評価を一次評価値を求めて行うときには、候補となった物質をずらりと並べて、トータルとして妥当なところに重篤度を取っているかとか、期間の補正等が適度にできているか、ということをまとめて検討する機会があってもよろしいかと思います。一つひとつの評価書を作っているときには、個別の判断で進んでいると思うのですけれども、全体としてそれがバランスが取れているかどうかというのは別の話だと思います。
○大前座長 発がんの場合はバランスが取れていると思います。がんで切らずになっているので、その辺はバランスが取れています。生殖毒性の場合はいまおっしゃるように何を見たか。もう1つは、データが不完全であればあるほど不確実性係数は多くなるので、数字が小さくなるという非常に矛盾があります。そういうところも含めて、全体を見ないといけないのではないかというのが、いまの宮川先生のご意見だと思います。
 表を作ってみて、根拠とその実験の確かさといいますか、二世代ちゃんとやっているのかというのも含め、それで横並びにして検討したらどうか。それは生殖毒性だけではなくて、神経毒性もそうでしょうし、ほかのものもそうだと思うのです。そういうご意見だったと思いますが、いかがでしょうか。宮川先生ご自身は、基本的には発がんだけではなくて、そのほかの毒性に関しても、重大な生殖毒性、あるいは神経毒性のような重大な毒性に関しては、第一次評価値を作る方向でいいのではないかというご意見だったと思います。ただし、作るに当たっては全体を見ましょう、アンバランスといいますか、不整合がないようにしましょうという話だったと思います。
○宮川委員 もう1点踏み込めば、事務局からはいまの2つのエンドポイントということなのかもしれませんが、一般的な臓器毒性、特に呼吸器等への影響については、発がん以外にも問題になってくる場合が、今後リスク評価を進める上ではあると思います。いただいた参考2の3頁には発がんまでで終わっていますけれども、急性ではなくて慢性の臓器毒性についても、ある程度の配慮をいただきたいという気がいたします。
○大前座長 参考2というのは、「リスク評価の手法(改訂版)」ですけれども、これによっていままでは発がんだけでやっている。一般論としては、ACGIHと産衛学会は両方を取っているからうまくできているはずなのです。当然ACGIHにしても産衛学会にしてもその改訂の時期とか、あるいは影響の重みづけとか、実験の不確実性で取らない情報もあるので、このようなことが出てくるのではないかと思います。
 先ほど言ったように、情報が不完全であれば不完全であるほど、一次評価値が小さくなるという非常に難しい問題があります。だから、どこまでの情報だったら使うかというのも、ある程度整合性を持たないと、先ほどのニュアンスの意見だと思うのです。生殖毒性、発がん性毒性だと二世代ぐらいちゃんとやっていないと使わないというルールを決めるとか、何かルールづけをしておかないと整合性が取れなくなってしまいます。
○松井化学物質評価室長 事務局としては、これから個別の物質の評価をしていただくときに、一次評価値を設定するという議論をしていただくのですが、そのときにある程度のルールがあったほうが、円滑に進むのではないかということで、何か共通して行うべきことで、最低限のところで何かありましたら決めていただくとありがたいのです。
○大前座長 もちろん影響の種別によっていまのところは変わると思うのです。例えば生殖・発生毒性では、どのレベルまでの情報があればという辺りについてのご意見はいかがですか。奇形でも大したことのない奇形と、重大な奇形と、影響の強さといいますか、影響の重大さにも多少変わってくるのでしょうが、まず情報の質の面ではいかがでしょうか。いま、バイオのほうで生殖・発生毒性試験をやるときには、OECDか何かのガイドラインに則ってやっているわけですよね。
○大淵有害性調査機関査察官 はい、そうです。
○大前座長 そういたしますと、生殖・発生毒性で一次評価値を決める場合の情報というのは、OECDなり何なりのガイドラインを満たしている実験のデータを使う、というようなルールづけもあるとは思うのです。数は途端に減るのかもしれませんが、それがいちばん厳しいルールづけですか。
○宮川委員 困るのは、たぶん現実的ではないばく露の経路、投与の経路を使って催奇形性が認められたような場合をどう扱うかです。
○大前座長 労働現場は全部ありますか、そんなことはないですか。経皮吸収、経肺吸収、それから粒子の場合だと経口もありますよね。そうは言っても、たくさん食わせたやつを使うかという問題もあります。
○宮川委員 ただ、試験によっては皮下投与で影響が出ているような、たぶん医薬品で使うようなものについてはいろいろな試験がされると思います。それから、妊娠期間の後期だけ短い期間だけ投与して奇形が出たときに、その濃度とばく露日数の修正をどうやってするのか、しないのかということで計算結果はだいぶ違ってくると思います。ハザードの同定だけであれば問題はないと思いますが、確実なものの内でも、リスクレベルを求めるとなると個別に困ることがたぶん出てくると思います。
○大前座長 神経毒性に関してはいかがですか。末梢神経、中枢神経、不可逆的な毒性、可逆的な毒性、あるいは生体反応の範囲とかいろいろなものがありますが、これは確かに影響として出てくるのは反応だと。毒性とは言えないみたいなものもあるので、どのような線引きをしてデータを使うか。どのような質のデータを使うかということです。とりあえず本日は意見を出していただいて、実際に具体的なクライテリアを決めるのはほかの委員会なり、ワーキンググループというような形になりますか。
○瀧ヶ平室長補佐 いいえ、この委員会でお決めいただきたいと思います。
○大前座長 そういうことだそうです。そういたしましたら、生殖毒性に戻ってとりあえずそれをはっきりしましょう。生殖毒性に関してですけれども、いま出てきているのは経路の問題と、ガイドラインに則っているかどうか、影響の重大性をどこまで取るかという問題と、ばく露のタイミングでしょうか。
○西川委員 試験の内容以前に、GLP基準で実施された試験がどうかとか、そういうものも試験の信頼性を担保する1つの重要なところだと思います。あと発生毒性をどう取り扱うかというのは非常に難しいと思うのです。通常、子どもに出てきた奇形の重篤性もあるのですけれども、母体の毒性がない用量で子どもに現れるのを真の奇形と判断することが多いので、そういう考え方をルールとして作ればいいのかという気がいたします。
 神経の場合も、一応ガイドラインに準拠した試験もあるでしょうし、神経症状だけでも毒性と言えば毒性ですけれども、さらに組織変化を伴っていれば間違いないというか、重篤性についてその組織変化がある、ということも重要なファクターになると思います。その辺は、総合的に考えを持ち寄ってルールを作るしかないのかと思います。
○大前座長 そういたしますと、いままでのところで生殖・発生毒性に限ると、まずGLP等を満たした動物実験施設で、OECDのガイドラインに則ってやったというのは、情報としては取るべき情報であると。それから、母体毒性がなくて、子どもに対する毒性が出てくるものが1つの条件であると。
 もう1つの投与経路に関しては、労働衛生なので基本的には吸入ばく露があればいいのですが、吸入ばく露の毒性情報は非常に少ないと思うので、いまもやっていると思いますけれども、プラス経口投与の情報も、今回もやっているような感じで使用する。生殖・発生毒性についてはそのぐらいでよろしいでしょうか。
○西川委員 思いついたところを申し上げただけで、たぶんほかにもディスカッションして決めていかなければいけないところがいくつかあると思います。
○大前座長 そうですね。本日ここで決めろと言われているので、いま出たことはたぶん必要最小限といいますか、それプラス派生的にいろいろなものがあるのではないかと思います。少なくとも、いまの生殖・発生に関しては、満たす情報を使って一次評価値を計算するのはいいだろうと。神経毒性に関しては、これも同じように動物実験の場合はGLPの施設でガイドラインに則ったもので、これは中枢神経毒性と、特に高次脳機能の結果は動物では出てこないですよね。ヒトでしかわからないけれども、ヒトで実験するわけにはいかないので、その辺はどう考えたらいいですか。
○宮川委員 神経毒性についてですが、スクリーニング試験はGLP適応の試験施設がOECDのガイドラインで行ったものが非常に多いと思うのですが、そこで引っかかっても、その先を詳しく調べるような実験については、具体的な試験方法を指示したガイドラインがあるという状態ではないと思うのです。多くの論文は、大学等でそれぞれの方法に従って実験されたものが多いので、そういうものを初めから排除してしまうと取れなくなる可能性もあるのかという気はいたします。
 もう1つはヒトの調査のほうで出ているのであれば、これは入ると思います。現にヒトで影響が出ているものについては、そちらのほうが参考になるのかという気もしております。
○大前座長 ガイドラインに則ってやられているものは当然として、そうでないものもたぶんたくさんあると。特に、いまこのものはアイディアで勝負しているようなところもありますから、試験方法の妥当性がそれなりに認められているような資料だったら、大学等でやった、研究機関でやったものも一応採用せざるを得ない。
 それからヒトのデータの場合は、基本的には採用する。これは先ほど言いました、神経の場合ですと反射を見ているみたいなものもあります。だから、その影響のレベルによって、反射レベルの影響はadverse effectと、どこで線引きするのかというのは非常に難しいと思うのです。それは、個別の物質を見て、個別の論文を見て、個別の影響を見て、この影響はやはり防ぐべき影響だという判断をしていくしかないですかね。
○宮川委員 初めから全部確定的な判断をしてしまうのではなくて、10物質とか20物質を溜めてやっていって、そのときにどういうデータを使って、どういう判断をしたとか、そのときに重篤性のUFを使ったとか使わなかったとか、ばく露期間の補正をどう行ったとかを、一覧表のようにまとめて、トータルで眺めてバランスがおかしくないことをチェックした上で、最終判断という方法が必要かという気がいたします。
○大前座長 先ほども宮川先生がおっしゃいましたけれども、その作業はどこかでやらなければいけないですよね。そのほかにこれまでに出てきている毒性の中では、いちばん最後の頁のMDI、これは呼吸器に対する毒性で、肺胞・細気管支上皮の増生等との空気に対する毒性です。これも、動物実験の場合はGLP等の条件は同じなのでしょうが。どこまで、例えば、刺激性の物質を吸わせると呼吸数が減りますが、それも取るのかな。その辺の影響の種類によってどうしたものか。
 呼吸器の場合は、今回のMDIみたいに解剖してみて、病理学的な変化があれば当然重要な影響だということで取るのは当然だと思います。その辺もやはり個別ですかね。呼吸器の場合は、一過性の影響と、沈着して起きてくる、あとの間質性肺炎とか、そういう別のタイプの影響等もあるので。共通しているのは、神経毒性にしても、こういう呼吸器にしても、病理学的な変化があるのは間違いなくアウトだというのは当然だと思うのですが、もっと下流域をどう見るかというのは個別の論文、あるいは個別の影響を見て判断せざるを得ないかもしれません。そのときには、先ほど宮川先生がおっしゃったように、少し物を並べてみてどの辺で線を引くかみたいなことはやらなくてはいけないのでしょうね。
 あとは臓器毒性で比較的多いのは、肝臓や腎臓等は許容濃度の中で区別していると思うのです。神経、生殖、呼吸器、いわゆる特殊毒性というようにときどき括られるもの、あとは何でしたか、そんなものでしたか。
○瀧ヶ平室長補佐 リスク評価で選ぶのは、いまのところ神経と、生殖毒性からと。それ以外にたまたま今回MDIがそれ以外に入っていますけれども、それ以外の物はあまり物質的には出てこないです。
○大前座長 という話をいただいたので、とりあえず神経と生殖に関して、先ほど議論があったように、生殖に関しては大体最低限の枠が決まっている。神経に関しても大体枠が決まって、あとはその重篤度等々は個別にやらざるを得ない。神経と生殖に関しては、できればどこかの機会に一覧表みたいなものを作っていただいて、それでどこかで線引きを考える、というのがいままでの議論ですね。
○松井化学物質評価室長 資料4の表をご覧いただくとわかりますけれども、生殖・発生毒性の場合は、かなり個別に分けられています。一方、神経毒性のほうは、いまの評価書の作り方ですと、反復投与毒性と括られていて、結構多くの実験結果のレポートなりが反復投与毒性という括りでグルーピングされています。この中に、結構いろいろな有害性が出てきていますので、それはその物質ごとにご検討いただくことになるのでしょうか、それとも何かもう少し統一できれば、それはそれでありがたいです。
○大前座長 例えば、3頁のクメンの反復投与毒性が書いてありますけれども、これは自発運動量の有意な減少というのはたぶん麻酔作用ですよね。
○宮川委員 違うと思います。反復投与毒性として書いてあるので、元の実験が長い期間の投与によるものなので、単回ばく露の麻酔とは別なものだと思います。神経毒性を判断するためには、例えばGHSの分類・表示でいうと、単回投与による特定標的臓器毒性の部分と、それから反復投与による特定標的臓器毒性の部分の両方を見て、さらに総合的に判断しないと、本当に神経なのかどうなのかはわからないと思います。
 例えば、いちばん上の2-アミノエタノールで、自発運動の抑制と書いてありますけれども、こういうものも神経によるものかどうかというのは、これだけでは判断できないと思います。
○大前座長 神経毒性は難しいですね。溶剤系は全部麻酔作用があります。それを急性毒性のほうで書くのでしょうけれども。そのほかに神経毒性のところでいかがですか。これは、具体的に平成24年度のリスク評価書を作るときから、生殖毒性もしくは神経毒性の処方がある場合は、それを基にして一次評価値を計算していこうということを考えておられるのですね。
○瀧ヶ平室長補佐 3物質がそれで選んだ物質になります。いま並べた9つのうちの6つは平成24年度以降になりますが、3つほど絡んできます。
○大前座長 この3物質に関してはやってみると。その中で評価書を作る作業の中で、いまの議論がもっと深まっていけばいいなと。ある程度の方向性といいますか、枠ができればいいということですか。いずれにしても、この会の意見としては、発がん性以外の特殊毒性で、一次評価値を作るのはいいだろうというのは共通ですね。生殖・発生毒性に関しては、先ほどいくつか出たような枠組みは少なくとも要るだろうと。神経毒性に関しては、必ずしもGLPではない所でも、いろいろなアイディアでいろいろなことをやっている先生方がたくさんいらっしゃるので、そちらを見ながら情報見ていくと。
 この場合は二次文献ではたぶんわからないので、オリジナルに当たらなくてはいけないことになります。オリジナルに当たっても、必ずしも元まで辿り着けるかどうかわかりませんけれども、少なくとも二次文献の段階ではどうしようもないことになります。特に、一次評価値を決めるために使った情報に関しては、一次文献に戻るといいますか、またちょっと大変になります。
○細田氏 これは前向きに考えればいいのでしょうか、これからやる新たな物質についてそう考えるということで、過去に戻ってということは考えるのでしょうか。既に評価してしまった物質です。
○松井化学物質評価室長 既に委託でいただいている物も含めて考える必要があるかなと。あとは、ある程度合理化する意味では、ACGIHや産衛学会が、生殖毒性や神経毒性に配慮して設定している数値についてはどのように考えるかということも検討していただければと思います。
 例えば、これでいくと資料4に2-エチルヘキサン酸というのが5頁の下の表にあります。これは生殖毒性から選んでいるわけですが、ACGIHの設定がNOAELから導いていて、生殖・発生毒性の評価書の算定と大体同レベルというか、少し低いレベルに設定されているようなものもあります。こういう物の一次評価値はもういいのかどうか、というところも併せて考えていただければと思います。
○細田氏 もう1つは、発がん性の物質は一次評価値があるのですけれども、あれはあくまでも発がん性としての一次評価値なのです。過去に調べたことがあるのですけれども、そういう物質について生殖毒性のエンドポイントがどのぐらいのレベルで出てくるかをやりましたら、発がん性の評価値よりも低い値で出てくる物があります。そういう物も、ある意味では広めていかなければいけないのではないかと思うのですが、どうなのでしょうか。
○松井化学物質評価室長 過去に戻るというのは、委託調査の中では少し先行してやっていただいていますので、それで過去と申し上げたのです。がん原性物質についてはやり方が確立していてそれでやってきておりますので、そこは遡るような話にはならないということです。
○大前座長 参考2の中に、生殖・発生毒性と、神経毒性のルールを何らかの形で書き込む。
○細田氏 5頁の二次評価値。
○大前座長 そうですね、5頁の二次評価値。あっ、一次評価値のほうですから。
○細田氏 一次評価値という言葉が、がん以外は出てこないのです。
○大前座長 これは出てこないですね。
○細田氏 いままでは、がんだけ一次評価値が設定されています。
○大前座長 そうですね。
○瀧ヶ平室長補佐 参考2は落丁です。一次評価値については、発がん性についてしか書いていません。
○大前座長 一次評価値のところに、発がん性以外の物も書き込むということですね。先ほど室長がおっしゃった、一次評価値が二次評価値よりも大きくなるような場合というのは、一次評価値が不要ということでいいわけですよね。一次評価値のほうが、二次評価値より高いというのは、結果的に高くなってしまうような場合は計算する必要がないというのはそれでよろしいですね。あるいは何倍というのもありますか。1桁違えば出しますけれども、1桁違わなかったら出す必要はないというような発想もあるかもしれません。
 これは、先ほどありましたように、この3物質からトライアルみたいな形になるわけでしょうけれども、本日の議論を「リスク評価の手法」のいちばん最後のところに足していただいて、とりあえず今回の参考2のような形になるのでしょうけれども、決定版ではないという意味で、案みたいなものを書いていただいて、それで原案作成者にお願いしていく。これは、原案作成者は決まっていましたか。
○松井化学物質評価室長 参考2の資料ですか、そうではなくて。
○大前座長 先ほど、3物質からやるとおっしゃったのはどれでしたか。
○瀧ヶ平室長補佐 資料3にある、2-アミノエタノールと、フタル酸ビスとメチレンビス=ジイソシアネートの3物質についてリスク評価を今回することになります。
○大前座長 これは、担当者が決まっているのですか。
○瀧ヶ平室長補佐 これは、もう終わってしまっています。
○細田氏 評価値が決まる前に、ばく露測定等は終わっています。
○瀧ヶ平室長補佐 有害性評価が先行しているものですから。
○細田氏 次のアンチモンもそうです。
○大前座長 そのような方向でやってみると。できれば比較的早い時期の半年ぐらい、あるいは遅くとも1年ぐらいの間に、このリスク評価の指標のところが確定できるようにやってみるということですかね。この件について、ほかにはいかがですか。
○西川委員 1点確認したいのですが、資料4の神経毒性から選定の3物質についてです。2つ目のアルファーメチルスチレンはどこに神経毒性を疑う所見があるのですか。
○瀧ヶ平室長補佐 これは、0.56というのを評価値にしているのですけれども、その評価値を出したデータをこの所見から持ってきたというもので、神経毒性の所見からではないケースがあります。
○西川委員 なるほど、わかりました。
○大前座長 いまのお話について、そのほかに一次評価値関連でいかがでしょうか。特にないようでしたら、次の物質からは発がん以外の一次評価値が出てくることになります。 本日の最後の議題は、「平成23年度リスク評価予定物質の評価値について」事務局から説明をお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料6-1です。今回リスク評価をする物質が初期は全部で6つあります。先ほどお話した3つががん以外で、アンチモンと、資料6-2のキシリジンと、資料6-3のニトロベンゼンが、発がんをもとに選ばれている物になります。「アンチモン」は固体で、用途としてはガラス、半導体等電子材料用とか、三酸化アンチモンについては各種樹脂とか、難燃助剤に使われています。IARCで三酸化アンチモンについては2B、三硫化アンチモンについては3になっています。産衛学会でも三酸化アンチモンは2Bになっています。発がん性以外で吸入毒性としても急性毒性について、吸入毒性LC50(ラット)で720mg/m3、反復投与毒性等があります。
 下の許容濃度のところなのですが、ACGIHで(アンチモン及びその化合物)について、TWAで0.5mg/m3アンチモンとして。スチビン;水素化アンチモンについては0.1ppm。三酸化アンチモンの製造現場ということで限りなく低くということになっております。産衛学会については0.1mg/m3アンチモンとして(アンチモン及びその化合物、スチビンは除く)ことになっています。「リスク評価の手法」として、一次評価については、閾値のない場合なのですが、ユニットリスクに関する情報がないということで、一次評価値については設定なし。二次評価値については、産衛学会の0.1としてはどうかということになるのですが、三酸化アンチモンの製造現場ということで、ACGIHが限りなく低くということで言っておりますので、この扱いをどう考えたらいいだろうか、ということを1点検討していただければと思います。
 「キシリジン」は異性体がいろいろあります。生産量としては2,4-キシリジンとして250t、用途としては染料、顔料中間体、ビタミンB、その他の原料となります。発がん性に関する情報については、IARCで2B(2,6-キシリジン)。産衛学会についても2B(2,6-キシリジン)ということです。有害性については、急性毒性と、眼に対する重篤な損傷性とか反復投与毒性等が書いてあります。許容濃度については、ACGIHで0.5ppmとなっています。産衛学会については設定なしです。これについての評価値としては、一次評価値については、発がん性の閾値の有無が不明な場合で、定量的なリスクが判定できないということで一次評価値なし。二次評価値についてはACGIHの0.5ppmを使用してはどうかという案です。
 「ニトロベンゼン」については、昨年既に検討済みです。昨年やったのですけれども、ばく露実態調査が1件事業場の関係で数が足りないということで、今年度それを補充した上で初期リスク評価をすることになっております。3番は参考ということにしていただければと思います。「アンチモン」と「キシリジン」についての評価値をご検討いただければと思います。
○大前座長 アンチモンとキシリジンの2物質ですが、まずアンチモンのほうで、問題として残っているのは、資料6-1の右下のPと書いてあるところです。ACGIHが三酸化アンチモン製造現場についてはas low as possibleにしなさいという記載があるので、これをどのように考えるかということです。
 提案理由等々がありますので見ていただきますと、これは疫学のデータだと思います。ACGIHは1979年、産衛学会は1991年なので、たぶん産衛学会の提案理由を見ていただければいいと思うのです。産衛学会の提案理由が20頁の右側の、4-2-5に発がん性があります。この発がん性の部分にACGIHが書いていることと同じ情報が書いてありますので見てください。三酸化アンチモンの製造工場というのは、どういう工場なのでしょうか。それは、さすがにご存じないですか。どうやって三酸化アンチモンを作るか。
○細田氏 そこの労働者が、歴代労働経験者というのですか、従事者に発がん性があったということから来ているということです。
○大前座長 アンチモン自身は、亜鉛か何かのバイプロになるのですか。やはり、アンチモンの鉱石があるのですか。
○細田氏 いま日本で作っていることしか知らないのですが、それはほとんどが鉛とか何か似たような融点の物を製造したスライムからの回収です。
○大前座長 そうすると、鉱石があってそこにヒ素が含まれていて、それでバンバン焼いてみたいな、そういう工場ではなさそうだということですか。そこの状況がわからないので。三酸化アンチモン以外に何があったのか。例えばヒ素があったのか、あるいは酸があってというようなことがあったのか。あるいはいまおっしゃった、似たような融点ですと、例えばカドミなどが。
○細田氏 例えば銅、亜鉛、鉛の精錬のときに、それ以外の物質がいっぱい混ざっていますので、その中にアンチモンも入っていますし、ビスマスだとか、あの辺の物がほとんど入っています。
○大前座長 それでアンチモンを精錬して、それから三酸化アンチモンを作るということですよね。
○細田氏 そういう形です。
○大前座長 三酸化アンチモンを作るときというのは、基本的にはアンチモンのメタルから作ることになりますか。
○細田氏 たぶんメタルにすると思います。スライムだとか、そういう鉱滓みたいなものを全部炉に入れて溶かして、それから酸に溶かしてみたいなのは全部メタルを作ります。
○大前座長 その辺の様子がわからないのでなんとも言いようがないのですけれども、これはあくまでも三酸化アンチモンの製造現場と書いてあるだけです。いまの製造現場のあれをどのように扱うかというのは、いまのこの情報だけからはなかなか判断しにくいと思うのです。二次評価値の0.1はよろしいですね。一次評価値は、現在のルールだとユニットリスクに関する情報がないからこれはなし。残りの製造現場をどうするかに関しては、いまこの情報だけではなんとも言いようがない。特にこの当時の疫学調査というのは、大体がタバコのことが抜けていたり、いろいろな欠点があるし、しかもネガティブなデータもあるということなので、そんなに強くない情報だと思うのです。
 この場では、この情報に関して現段階では二次評価値0.1、一次評価値なしでいく。三酸化アンチモンの製造現場に関しては、もう少し原本なり何なりに戻ってみて、これが本当に重要な情報なのか、as low as possibleにしなくてはいけないようなレベルの情報なのか、あるいは二次評価値の0.1で十分なのかを、また後から振り返ってみたいと思います。
 産衛学会はこの情報がちゃんと書いてあるのですけれども、それをある意味考えて、あるいは無視して0.1という数字を出していますので、産衛学会の0.1の中にはこの情報は入っていると思いますので、たぶん0.1は大丈夫ではないかと思います。
○宮川委員 確認と質問です。これは、発がん性がもとで選ばれた評価をするという物質ということなのですが、今後はそういうものについても、先ほど言っていた生殖毒性、神経毒性について併せて見ていくという理解ですか。それとも、既に発がんとして選ばれた物についてはそちらは見ないという理解なのですか。
○松井化学物質評価室長 事務局の意図としては、発がん物質については従来のやり方でということで考えております。
○宮川委員 多少気になったのは、アンチモンの産衛学会の評価ですが、動物実験での生殖毒性の報告があるものの、そこからいくと低すぎて現実的ではないので、総合的にみてこの数字にしたというのが産衛学会の許容濃度です。この物質をリスク評価にかけた場合、今後生殖毒性をやると言いながら、これを評価するときに生殖毒性に目をつぶるのはなんとなく落ち着かないところがあるという気がいたします。
 この物質について、それこそ先ほどの例のように、生殖毒性をもとに評価値を作るとすると、動物実験ですのでUFがかかって、かなり低い値が出てきます。そういうものを一次評価値に使うかどうかを考える良い例になるような気がいたしました。しかし、発がん性を対象に選んだ物については、生殖毒性についてはやらないというのが事務局の当時の方針であれば仕方ないと思います。
○大前座長 これは両方やってみて、低いほうを取るという話でもないのですね。
○瀧ヶ平室長補佐 選んだ時点での話では、発がんの話だけなものですから。
○大前座長 アンチモンに関して、そのほかにご意見はありませんか。もしないようでしたら次のキシリジンに移ります。キシリジンは、二次評価値がACGIHの0.5、一次評価値に関しては、発がんの閾値の有無が不明ということなので、定量的なリスク判定はできないということでなしです。
 ここで問題になるのは、ACGIHは1999年ですけれども、IFV:Inhalable Fraction and Vaporと書いてあって、それがそのままこっちに来ています。このInhalable Fractionというのは、たぶん100μmのところで、50%カットぐらいのサンプラーを使ってやっているのが、たぶんInhalableと思うのです。IFVをこのまま付けておくと日本では実際の測定で困るのではないか。いま日本の場合はトータルダスト、オープンフェイスでたぶんやっていると思うので、ベーパーはあるのでベーパーはちゃんとキャッチしなければいけないと思います。IFVを付けておくと現実的ではないのではないか。
 以前にニッケルだったと思いますが、そのときにIFVで測った数値のほうが、トータルで測った数値よりも大きいというデータがあったと思います。このIFVを抜かしてもより安全方向に行くだろう。IFVで0.5だったら、トータルだったら0.5を下回るだろうと思いますので、危険の側には行かないで安全側に行くだろうと考えられますので、このIFVは取ってしまっていいですか。
 たしか、ニッケルのときにIFVのほうが濃度が高かったのです。要するに面速が違って、日本のトータルのほうが面速が低いのです。だから、結果的に数字として低く出てしまったことがありますので、このIFVを取っても、決して危険のほうには行かない、安全なのに行くだろうという推測ができますので、IFVは取りたいと思いますがよろしいでしょうか。
 キシリジンに関しては、二次評価値が0.5ppm。これは「ppm」にしてしまうと粉体はどうなのだという話になるのですが、Vaporと粉体と合わせて0.5ppm相当という意味ですよね、このACGIHは。IFV:Inhalable Fraction and Vaporですから、粉体とVaporが同時に混在するという意味だと思います。
○細田氏 融点が通常の場合固体と、気層と、液層がみんな混在するような条件のものにこれが付きます。
○大前座長 しかも、これの融点は何度でしたか。
○細田氏 キシリジンの融点は、おそらくこれより低いところにあるのだと思います。沸点が216~218℃ですから、50℃ぐらいだと思います。常温で、ちょうど境界にあるような物が大体引っかかります。
○大前座長 蒸気圧が4~130Paというのは、20℃の蒸気圧ですか。
○細田氏 そうだと思います。
○大前座長 だから、通常のレベルだと粉体だろうと。それで一部はもちろんVaporしているだろうということですね。
○細田氏 それと、オフレーションの温度があります。
○大前座長 それによって違いますね。粉体、それからVaporの両方を合わせて0.5ppmが二次評価値であるという解釈ですね。
○宮川委員 念のためですが、ACGIHがそうやっているので、ppmでいいかもしれませんが、粉体が入っていてppm表示というのはなんとなく気にはなります。これは、換算したということですね。
○大前座長 換算して0.5という意味ですよね。
○細田氏 それをあまり厳密に言われると困るのです。例えば100℃で扱っている液があったり、常温で20℃で扱っている場合もありますと、こっちはppm、こっちはmgということが起こりますので、主たるものを表に出して、括弧して何か入れるというのはどうでしょうか。換算して。
○大前座長 そうすると、この0.5ppmの後に「(mg/m3)」とでも書きますか。ACGIHには書いてありますよね。
○細田氏 ACGIHには書いてあります。
○宮川委員 書いてあれば、換算してという意味だとはもちろんわかりますので。
○大前座長 それでは、0.5ppmの後に、ACGIHは何ppmになっていましたか。
○細田氏 その換算は、ACGIHと同じで25℃でいいのですね。
○大前座長 はい。
○瀧ヶ平室長補佐 2.5mg/m3です。
○大前座長 それでは、0.5ppmの後に「(2.5mg/m3)」と書いていただく。アンチモンは宿題が残りましたけれども、キシリジンに関しては一次評価値と二次評価値決定ということでよろしいですか。
○松井化学物質評価室長 はい。
○大前座長 本日の議事予定は1番から5番まで終わりました。非常に難しい一次評価値をどうするかという問題が生まれて、なかなか今回だけで決めるのはきついと思いながらやっていました。いずれにしても方向は決まりましたので、実際にアンチモンなり、あるいは3物質をやってみてと。できれば過去の物も含めてその一覧表のようなものを作って、どうなるかということも提示できるようになれば、最終的に「リスク評価の手法」の改訂版を作るのに非常に役に立つのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。本日の議事は終わりました。事務局から連絡はありますか。
○瀧ヶ平室長補佐 次回は3月8日(木)の10時からを予定しております。いまご指摘のありました、神経毒性、生殖毒性関係の資料を整理し、またお諮りさせていただきます。第3回で終わらなければ、第4回を3月22日(木)の14時からお願いいたします。次回は、がん原性試験の結果についての検討を、昨年10月に引き続き行うこととしております。以上です。
○大前座長 本日は長い間ありがとうございました。これで終わらせていただきます。


(了)

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