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2011年12月28日 第49回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録について

職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課

○日時

平成23年12月28日(水) 10:00~11:30


○場所

厚生労働省専用第15・16会議室(合同庁舎5号館 17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 12階)


○議事

○大橋部会長 それではただいまから第49回雇用対策基本問題部会を開催します。本日の委員の出欠状況を報告します。公益委員宮本委員がご欠席です。
 それでは議事に入ります。前回の部会では、報告案の素案を基に様々なご意見をいただきましたが、労使双方のご意見には末だ見解の違いがあるようでしたので、最終の取りまとめに向けて最終的な調整を行うため、私及び公益委員が労働側・使用者側それぞれとお会いして、双方のご意見をお伺いした上で、部会報告案を作成しました。部会報告案について事務局からご説明をお願いします。
○野田高齢者雇用対策調査官 それでは部会報告について読上げをもって説明に代えさせていただきます。
 今後の高年齢者雇用対策について(案)。少子高齢化が急速に進展する中、全就業者数は2020年には2009年と比較して約433万人減少することが見込まれており、2012年には団塊の世代が60歳代後半に達し、職業生活から引退して非労働力化する者が増加すると見込まれている。一方、我が国の高年齢者の就業意欲は非常に高く、65歳以上まで働きたいという者が高齢者の大部分を占めている。
 このような中、現行の高年齢者雇用安定法では、60歳定年及び65歳まで(平成23年12月時点では64歳)の雇用確保措置を義務化しているが、例外的に、労使協定により継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、継続雇用制度を講じたものとみなしている。
 雇用確保措置を導入している企業の割合は、31人以上規模企業の内95.7%に達しており、全企業のうち、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は47.9%であり、希望者全員が64歳(平成23年12月時点での雇用確保措置義務年齢)まで働ける企業の割合は50.8%である。また、継続雇用を希望しない者が定年到達者全体に占める割合は24.6%、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準により離職した者が定年到達者全体に占める割合は1.8%(定年到達者約43万5千人中、約7千6百人)となっている。
 一方で、年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、男性については、定額部分は平成25年度に65歳までの引上げが完了し、同年度から、報酬比例部分についても61歳に引き上げられる(平成37年度までに65歳まで段階的に引上げ)ため、無年金・無収入となる者が生じる可能性がある。そのため、企業、労働者、行政など社会全体で取り組む必要がある。
 また、高年齢者については、長い職業人生で培ってきた職業知識や経験を経済社会において有効に活用することが重要であり、そのためには高年齢者がその意欲及び能力に応じて働くことができる生涯現役社会を実現するための環境を整備することが必要である。
 なお、高年齢者雇用の促進と若年者雇用との関係について、労働力が質的に異なるためそれほど問題とならないとの指摘や、経済状況が厳しい中で若年者雇用に影響が出るとの指摘がなされたところだが、今後、労働力人口が減少していくことなどから、長期的な視点に立ち、高齢者、若年者の意欲と能力に応じて働くことができる環境の整備をすることが重要である。
 当部会においてはこのような問題意識の下、マル1希望者全員の65歳までの雇用確保策。マル2生涯現役社会の実現に向けた環境整備のための方策について検討を行ったところであり、その結果は以下のとおりであるので報告する。
この報告を受けて、厚生労働省において法的整備も含め、所要の措置を講じることが適当と考える。
 1.「希望者全員の65歳までの雇用確保措置について」。少子高齢化が進展し、労働力人口が減少する中、現行の年金制度に基づき公的年金の支給開始年齢が65歳まで引き上げられることを踏まえると、雇用と年金が確実に接続するよう、65歳までは、特に定年制の対象となる者について、希望者全員が働くことができるようにするための措置が求められている。
 (1)希望者全員の65歳までの雇用を確保するためには、法定定年年齢を公的年金支給開始年齢と合わせて引き上げることも考えられるが、現在60歳定年制は広く定着し機能しており、法律による定年年齢の引上げは企業の労務管理上、極めて大きな影響を及ぼすこと、60歳以降は働き方や暮らし方に対する労働者のニーズが多様であることなどを踏まえると、直ちに法定定年年齢を65歳に引き上げることは困難である。この問題に関しては、年功的な要素が強い賃金制度や退職金制度、さらには、高齢者の人事管理の在り方など、企業の労務管理上の様々な課題に関する環境整備の状況を踏まえて、中長期的に検討していくべき課題である。
 (2)しかし、現行制度では65歳までの希望者全員の雇用を確保することとなっていない。これにより、2013年度からの老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに伴い、無年金・無収入となる者が生じることのないよう、意欲と能力に応じて働き続けることが可能となる環境整備が求められており、雇用と年金を確実に接続させるため、現行の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は廃止することが適当である。
 その際、就業規則における解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する者について継続雇用の対象外とすることもできるとすることが適当である(この場合、客観的合理性・社会的相当性が求められると考えられる)。
 また、基準廃止後の継続雇用制度の円滑な運用に資するよう、企業現場の取扱いについて労使双方にわかりやすく示すことが適当である。
 なお、使用者側委員から、マル1現行法9条2項に基づく継続雇用の対象者基準は、労使自治の観点から妥当な制度であり、企業の現場で安定的に運用されていることや、基準をなくした場合、若年者雇用に大きな影響を及ぼす懸念があることから、引き続き当該基準制度を維持する必要がある、マル2仮に現行の基準制度の維持が困難な場合には新しい基準制度を認めるべき、との意見が出された。
 (3)こうした事情に対する一つの方策として、老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の段階的引上げを勘案し、雇用と年金を確実に接続した以降は、できる限り長期間にわたり現行の9条2項に基づく対象者基準を利用できる特例を認める経過措置を設けることが適当である。
 (4)また、継続雇用制度の基準を廃止する場合であっても、就労を希望する高齢労働者が増加していくことを考えると、同一の企業の中だけでの雇用の確保には限界があるため、マル1親会社、マル2子会社、マル3親会社の子会社(同一の親会社を持つ子会社間)、マル4関連会社など事業主としての責任を果たしているといえる範囲において、継続雇用における雇用確保先の対象拡大が必要である。
 (5)雇用確保措置はほとんどの企業で実施されており定着していると考えられるが、末だ雇用確保措置を実施していない企業が存在するため、今後全ての企業で確実に措置が実施されるよう、指導の徹底を図り、指導に従わない企業に対する企業名の公表等を行うことが適当である。また、労働者への相談支援の充実や個別労働紛争解決制度などについて周知を行い、個々の労働者の救済を図ることが適当である。
 (6)希望者全員の65歳までの雇用確保についての普及・啓発や、同制度の導入に関する相談支援等について、特に経営環境の厳しい中小企業をはじめ、政府としても積極的に支援することが必要である。
 2.「生涯現役社会の実現に向けた環境の整備」。2025年には65歳以上人口が全人口の3割を超えると見込まれる中で、生涯現役社会の実現が求められるが、高齢期は個々の労働者の意欲・体力等に個人差があることなどから、それらに応じて正社員以外の働き方や短時間・短日勤務やフレックス勤務を希望する者がいるなど、雇用就業形態や労働時間等のニーズが多様化している。このため、このような高年齢者の多様な雇用・就業ニーズに応じた環境整備を行うことにより雇用・就業機会を確保する必要がある。
 また、中高年齢者を取り巻く雇用情勢は依然として厳しく、有期契約労働者を含め離職する労働者に対して、再就職しやすい環境整備が一層必要である。
 (1)生涯現役社会の実現のためには、高年齢者も含め高齢期を見据えた職業能力開発や健康管理の推進が必要であるが、労働者自身の意識と取組を前提としつつも、企業の取組の支援など国としても高齢期を見据える職業能力開発や健康管理の推進に一層取り組むことが必要である。
 なお、現在の高年齢者等職業安定対策基本方針に定める事項は65歳までの雇用機会の確保を主眼としたものとされているが、現行の高年齢者等職業安定対策基本方針においては、70歳までの雇用・就業の目標が設定されており、齟齬が生じているため、変更が必要である。
 (2)高年齢者で定年まで雇用されていた企業ではなくその知識経験を生かすことができる他の企業での雇用を希望するような者が、再就職できるよう、定年前の産業雇用安定センターや有料職業紹介事業者を通じた高年齢者の円滑な労働移動の支援を強化する必要がある。
 (3)求職活動支援書は再就職支援のために有効であると考えられるが、活用状況が低調であるため、求職活動支援書やジョブ・カードの作成・交付について周知・徹底が必要である。
(4)高年齢者の就業ニーズに応じ、多様な雇用・就業機会を確保するため、高年齢者に配慮した職場環境の整備などに対する支援が必要である。また、シルバー人材センター事業については、有識者等による検討の場を設けシルバー事業の運営などの検討を行うとともに、組織や業務等について不断の見直しを行い、事業運営がより一層効果的かつ効率的に行われる必要がある。
 (5)高齢期の生活の安定を実現するため、高齢者雇用の促進に向けた議論と併せて雇用に係る給付など多様な施策の展開が行えるよう、環境整備が必要である。以上です。
○大橋部会長 それでは、部会報告案についてご意見、ご質問があればご発言ください。
○荻野委員 内容に関しての使用者代表委員の総活的なコメントは、後程あると思いますので私から最初に3点ほど感想を申し述べさせていただきます。
 今回基準制度の存続についてご理解が得られず、大橋部会長をはじめ公益の先生方の多大なご尽力にもかかわらずまとまらない部分が残ってしまったということについては、大変残念に思うところです。ただ、思うに今回のこの議論は個別労使レベルにおいての取組があまり進んでいないという状況の中で、年金支給開始年齢引上げのスケジュールの要請もあってこの場に持ち出されたという経緯があり、個別労使での取組が進んでいない中での議論という難しさもあったのかと思っています。
 振り返ると週40時間制を入れたときのように、個別労使での取組が進んで、ある程度社会的に広がったら、それをこういった場でルールにしていくという方法が望ましいやり方ではないのかと思ったというのが1つ目の感想です。
 2つ目の感想ですが、使用者代表から再々発言をしたにもかかわらず、労働協約という文言が取りまとめの中に入らなかったということは大変残念に思っているところです。労働契約については、我が国でも長年労使関係の最も重要な道具として使われてきていますし、これを尊重しあるいは活用して、労使関係の安定あるいは発展を進めてきた諸先輩に対して若干申し訳ないなという気持ちがあるというところが2点目の感想です。
 3点目は感想というより政府へのお願いということになると思いますが、今後こういった経済情勢の大変厳しい、雇用失業情勢の厳しい中で一層の拡大ということに労使取り組んでいくということになると、特に個別企業レベルでは大変難しい判断をしなければならない場面が今後出てくるだろうと思います。それについてこういった労使での取組が促進される方向で是非行政を進めていただくと共に、当然60歳前の労働者に対しても影響のある話ですので、世代を問わない雇用政策の充実ということと、企業活動の活発化あるいは雇用機会の創出、労働移動の促進などに結び付くような労働政策における規制緩和等を是非ご検討いただいて、実施していただければと思っています。以上です。
○福田委員 1つ感想を述べさせていただきたいと思うんですが、雇用と年金を確実に接続させる、このことは大変重要なことだと思います。企業と労働者に責任があるのではなく、議論していくとなんか国が問題をすりかえているような気がして65歳という議論の中で進めていますが、非常に不安になるのはいつまた68歳やそんなことで持ち出されて、全て企業に責任を突き付けられる不安が今回の議論で感じました。以上です。
○橋本委員 では使用者側としてまとめてお話をします。
 初めに労使の意見がかなり異なっている中で、調整を図っていただいた部会長のご尽力と努力に感謝申し上げます。使用者側としても、意欲と能力のある高齢者に積極的に経済社会の中で活躍していただくというのは大変重要だと思っていまして、今後もその必要性はますます高まってくるのではないかと考えています。その一方で従来から主張してきたように、無年金・無収入となる者が生じないようにするために、企業の雇用確保のみにその対応を求めるということになれば企業活力を削ぐことになり、結果として若年者を含めた雇用全般に悪影響を及ぼす懸念が強いということを改めて指摘させていただきたいと思います。その上で先ほど部会長から示された報告案の中に、一定の経過措置が盛り込まれているということは評価したいと考えます。
 ただし、この経過措置のみを持って基準廃止に伴う影響や企業の負荷を緩和するには、とても十分とは言えない、部会長もそういった点を考慮してこの文言の中に一つの方策としてという表現を使ったものと理解をしています。報告案には私どもの意見として、あくまで使用者側としては基準制度の維持が必要であるということ、仮に現行の基準制度を廃止するにしても、新たな基準を容認すべきということが盛り込まれていまして、現在有効に機能している労使協定が問題視されるなど納得できないという点はありますが、私どもの意見が明確に書かれたということを踏まえて報告書の取りまとめについては、やむなしとしたいと思っています。
 最後に行政当局においては、今後の制度改正の実施にあたりまして、企業現場において無用な混乱が生じないように、現行Q&Aなどの柔軟な見直しを含めて、周到な準備が必要になるかと思いますが、企業実務の見地から問題が生じないよう事業主の意見を十分に踏まえた対応を是非よろしくお願いしたいと思います。私のほうからは以上です。
○新谷委員 それでは労働側委員を代表しまして、今回まとめていただいた報告案について意見と要望を申し上げたいと思います。
 まずこの報告案をまとめていただいた部会長に感謝を申し上げます。今回まとめていただいたこの報告案には、希望者全員の65歳までの雇用確保措置を義務付ける法整備を行うとともに高齢者の多様な雇用就業ニーズに応じた環境整備を求めるという内容が盛り込まれましたので、労働側としては評価したいと思っています。その上で2点、意見と要望を申し上げたいと思っています。
 1つは報告書の中にも記載されていますが、残念ながら雇用確保措置を実施していない企業がいまだに存在するということで、それに対する対応策として今回企業名の公表に加えまして、助成金の停止等を行うといった措置が論議されましてこの中に盛り込まれています。これは実効性の確保という意味では一歩前進だと考えています。ただ、私どもが主張した高齢法の9条に規定する、3つの雇用確保措置のいずれも導入していない場合における私法上の効果(民事効)を規定する法整備が見送られたことについては残念であるということを申し上げたいと思います。
 2点目は先ほど使用者側委員も触れられている点ですが、今後法律案要綱の審議が行われると思います。その際に、継続雇用制度における基準の廃止後の運用について、この法律は行政指導法ですので、行政指導に関する通達等の論議がなされると思います。この行政通達は、行政内部での統一的な運用を図るとともに、労使が現場において実際の行動規範としても使われるということになるので、この法律案要綱とともに行政通達等々の内容についても十分にこの部会で検討したいということをお願い申し上げたいと思っています。以上2点意見と要望を申し上げまして労働側としましては、この報告案について了承したいと考えています。これまで報告案のとりまとめに当たってご尽力いただきました部会長をはじめ、公益側の先生方に感謝を申し上げて労働側を代表しての意見とさせていただきます。以上です。
○大橋部会長 ほかにご意見ありましたらお願いします。
(意見なし)
○大橋部会長 それでは当部会としては、この部会報告案については一通り議論されたものと思います。議論の過程では、労働側・使用者側それぞれの立場から様々な意見が出されたところですが、本日一応取りまとめることができたと思います。労働側の皆さん使用者側の皆さんありがとうございました。
 今後の労働高齢者の雇用対策についての当部会における検討については、本報告案を以ってその取りまとめとさせていただき、当部会としては本報告案を労働政策審議会から厚生労働大臣へ建議すべきであるという結論に達した旨を職業安定分科会へ報告したいと思いますがよろしいでしょうか。
(異議なし)
○大橋部会長 ありがとうございます。それでは事務局から職業安定分科会への報告文(案)をお配りします。お願いします。
(報告文(案)配付)
○大橋部会長 お手元の案のとおりですが、これでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○大橋部会長 それでは、そのように報告させていただきます。
 高齢者の雇用対策については、本年9月から本日まで委員の皆様には大変精力的にご議論いただきました。様々なご意見もこれまであったところですが、なんとか本報告で建議するということをご了解いただいたわけです。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。最後に森山職業安定局長よりご挨拶をいただきます。
○森山職業安定局長 一言事務局から御礼のご挨拶をさせていただきます。
 部会長のほうからありましたように、委員の皆様におかれましては9月以降本日12月28日まで精力的にご議論いただきました。いま部会長からご報告ありましたように、報告を取りまとめていただいて誠にありがとうございました。深く感謝申し上げます。
 いま労使からもご意見ありましたように、行政に対する要望も本日もご意見いただきました。しっかり私ども対応させていただきたいと思っています。また、この報告を元に先ほどありました法律案を作成していきたいと考えていまして、法案要綱について後日この部会にお諮りをさせていただきたいと思っています。またよろしくお願いします。簡単ですが本来のご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○大橋部会長 それでは以上をもちまして終了したいと思います。本日はお忙しい中どうもありがとうございました。本日の署名委員は新谷委員及び市瀬委員にお願いします。


(了)
<照会先>

厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課 (TEL)03-5253-1111(内線5815)

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