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2011年10月31日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録

医薬食品局

○日時

平成23年10月31日(月)


○場所

厚生労働省 専用第23会議室


○出席者

出席委員(15名):五十音順 敬省略

 新 井 洋 由、  庵 原 俊 昭、 大 槻 マミ太郎、 黒 木 由美子、

佐 藤 俊 哉、 清 水 秀 行、  田 村 友 秀、 ○土 屋 友 房、

 中 島 恵 美、 濱 口   功、  半 田   誠、  前 崎 繁 文、

  山 口 照 英、  ◎吉 田 茂 昭

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(7名):五十音順 敬省略

 奥 田 真 弘、 菊 池   嘉、  清 田   浩、 櫻 井 敬 子、

鈴 木 邦 彦、 増 井   徹、 山 本 一 彦

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎  (審査管理課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森 和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 佐 藤 岳 幸  (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。本日の委員の出席についてですが、奥田委員、菊池委員、清田委員、櫻井委員、鈴木委員、増井委員、山本委員より御欠席との御連絡をいただいております。大槻委員は10分ほど遅れる旨御連絡をいただいております。新井委員におかれましても間もなくお見えになる予定です。
 現在のところ、当部会委員数21名のうち12名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 本日、その他事項に関しましては、独立行政法人国立がん研究センター中央病院の安藤正志先生、独立行政法人国立成育医療研究センターの中村秀文先生を参考人としてお呼びしております。それでは吉田部会長、以後の進行をお願いいたします。
○吉田部会長 それでは本日の審議に入ります。事務局から配付資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告をお願いします。
○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。本日席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1~16をあらかじめお送りしております。このほか資料17「医薬品第二部会審議品目の薬事分科会における取り扱い、毒薬・劇薬の指定の要否及び生物由来製品/特定生物由来製品の要否について(案)」、資料18「専門委員リスト」、資料19「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。また当日配付資料として、資料8-2「エルプラット部会報告用資料1枚目の差し替え」、資料20「佐藤委員からの御質問」を配付しております。
 続きまして、資料19、本日の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
 1ページ、ロタテック内用液ですが、本品目は「ロタウイルスによる胃腸炎の予防」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページ、イレッサ錠250ですが、本品目は「EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺癌」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページ、サムチレール内用懸濁液15%ですが、本品目は「適応菌種:ニューモシスチス・イロベチー」、「適応症:ニューモシスチス肺炎、ニューモシスチス肺炎の発症抑制」としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページ、リルピビリン塩酸塩ですが、本品目は「HIV-1感染症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページ、ストレプトゾシンですが、本品目は「膵・消化管神経内分泌腫瘍」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページ、パゾパニブ塩酸塩ですが、本品目は「進行性悪性軟部腫瘍」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に特段の意見はございますか。ないようでございますので、本部会の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」につきましては、皆様の御了解を得たものといたします。続いて、委員からの申出状況についての報告をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりとなっております。
 議題1、議題7の「ロタテック内用液」は、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。
 議題2の「イレッサ錠250」は、退室委員は田村委員です。議決に参加しない委員はいらっしゃいません。
 議題3の「サムチレール内用懸濁液15%」は、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は大槻委員、田村委員です。
 議題4の「リルピビリン塩酸塩」は、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は大槻委員です。
 議題5の「ストレプトゾシン」は、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は大槻委員、前崎委員です。
 議題6の「パゾパニブ塩酸塩」は、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。以上です。
○吉田部会長 本日は審議事項が7議題、報告事項が8議題、その他事項が1議題となっております。また議題7は関連する議題1と併せて審議することといたします。本日は、参考人の先生に来ていただいている関係上、その他の事項から審議を始めます。
 それでは、その他事項議題1「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」参考人の安藤先生から御説明をお願いします。
○安藤参考人 医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の抗癌WGの安藤と申します。よろしくお願いします。資料16を御覧ください。今日はイホスファミドとパクリタキセルの効能が全部で6効能ありますので、すべてを説明させていただいた上で質議をお願いしたいと思います。
 3ページを御覧ください。イホスファミドの小児悪性リンパ腫の適応追加の要望です。要望者は、小児血液学会と小児がん学会です。なお、3ページの備考欄に記載してあるとおり、検討会議では疾患概念として、小児悪性リンパ腫、成人悪性リンパ腫という分類はないので、悪性リンパ腫という括りで検討を行いました。
 4ページを御覧ください。本剤の悪性リンパ腫に対する治療に関しては、国内外の教科書及び診療ガイドライン等において、他の抗悪性腫瘍剤との併用で使用される薬剤の一つとして推奨されており、欧米において標準的治療に位置付けられていると判断されて、検討会議では、医療上の必要性は高いと判断されました。
 次に30ページの(3)の「要望内容に係る公知申請の妥当性について」を御覧ください。国内外の臨床試験において、本薬を含む治療レジメンの有効性が示唆されておりまして、当該試験成績に基づいて、国内外の教科書及び診療ガイドライン等においても、治療の選択肢として本薬を含む治療レジメンが推奨されておりますので、小児及び成人の悪性リンパ腫に対する本薬の一定の有効性が認められると判断されております。
 また安全性については、悪性リンパ腫を対象とした国内外の臨床試験で認められる主な有害事象というのは、いずれも国内の添付文書で既に記載されている事象と相違はありません。本疾患に用いられている用法・用量は、既承認の他のがん種に関して承認されている用法・用量の範囲内であるので、日本人における一定の安全性情報というのは蓄積されていると判断いたしました。
 以上の内容と教科書、ガイドライン等の記載内容を踏まえて、検討会議ではイホスファミドの悪性リンパ腫への適応について、医学薬学上公知であると判断されました。
 次に41ページを御覧ください。パクリタキセルの血管肉腫の適応追加の要望について御説明させていただきます。要望者は、日本皮膚悪性腫瘍学会と日本臨床腫瘍学会等です。42ページを御覧ください。本剤は、米国のNCCNガイドラインなどの国際的なガイドラインにおいて使用が奨励されており、欧米においては、標準的治療に位置付けられていると考えられまして、検討会議では医療上の必要性が高いと判断されました。なお、血管肉腫というのは、皮膚の頭皮に多い疾患で、非常に稀な疾患であることと、今まで有効な抗がん剤がほとんどない状況である疾患でした。
 52ページの(3)「要望内容に係る公知申請の妥当性について」を御覧ください。本剤の血管肉腫に対して、海外第II相試験が実施されておりまして、一定の有効性が示唆されております。
 安全性については海外第II相試験で認められた主な有害事象は、いずれも国内添付文書に記載されている事象です。本疾患に用いられている用法・用量というのは、既承認の他のがん種、例えば乳癌等に対して承認されている用法・用量の範囲内でありますので、日本人における一定の安全情報は蓄積されていると判断されました。
 以上の内容及び教科書、ガイドライン等の記載内容を踏まえて、検討会議ではパクリタキセルの血管肉腫への適応について、医学薬学上公知であると判断されました。
 次に57ページを御覧ください。パクリタキセルの食道癌の適応追加の要望について御説明いたします。要望者は日本食道学会と日本臨床腫瘍学会です。国内外の臨床成績、国際的な教科書、ガイドライン等の記載を踏まえますと、本剤は食道癌に対する標準的な治療体系が確立されていない再発又は遠隔転移を有する食道癌に対しての治療選択肢の一つとして、欧米では一般的に用いられていると考えられまして、検討会議では、医療上の必要性は高いと判断いたしました。
 次に76ページの(3)「要望内容に係る公知申請の妥当性について」を御覧ください。本剤の再発又は遠隔転移を有する食道癌に対しては、国内外の複数の臨床試験成績から、一定の腫瘍縮小効果が得られております。
 安全性については、国内外の臨床試験で認められた主な有害事象というのは、先ほども述べましたが、いずれも国内の添付文書で既に記載されている事象であります。また、この食道癌に用いられる用法・用量というのは、既承認の他がん種に対して承認されている用法・用量の範囲内でありますので、日本人における一定の安全性情報は蓄積されていると判断いたしました。以上の内容と教科書、ガイドライン等の記載内容を含めて、検討会議ではパクリタキセルの再発又は遠隔転移を有する食道癌の効能について、医学薬学上公知であると判断されました。
 次に81ページを御覧ください。パクリタキセルの頭頸部癌の適応追加の要望について御説明いたします。要望者は日本耳鼻咽喉科学会、日本臨床腫瘍学会です。国内外の臨床成績と国際的な教科書、ガイドライン等の記載を踏まえますと、本剤も食道癌と同じように、標準的な治療体系が確立されていない再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌に対しての治療選択の一つとして、欧米では一般的に用いられていると考えられまして、検討会議では、医療上の必要性が高いと判断いたしました。
 97~98ページに記載されている(3)「要望内容に係る公知申請の妥当性について」を御覧ください。本剤の再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌に対しては、海外第III相、国内第II相試験の成績等から、本剤投与によって一定の効果が得られております。安全性に関しては、国内外の臨床試験において認められた主な有害事象というのが、これも食道癌と同じように、国内の添付文書で既に記載されている事象の内容と相違はありません。また、頭頸部癌に用いられる今回の用法・用量というのは、既承認の他がん種に対して承認されている用法・用量の範囲内ですので、日本人に対しての一定の安全性情報は蓄積されていると判断されました。以上の内容及び教科書、ガイドライン等の記載内容を踏まえて、検討会議ではパクリタキセルの再発又は遠隔転移を有する食道癌への適応について、検討会議では医学薬学上公知であると判断されました。
 次に103ページを御覧ください。パクリタキセルの子宮頸癌の適応追加の要望について御説明いたします。要望者は日本産科婦人科学会と、日本婦人科腫瘍学会です。海外の臨床試験、国際的な教科書、ガイドライン等を踏まえ、本剤は欧米において標準的な治療に位置付けられていると考えられまして、検討会議では医療上の必要性は高いと判断いたしました。
 次に116ページの(3)「要望内容に係る公知申請の妥当性について」を御覧ください。これは二つの海外の第III相試験等がありまして、一定の有効性が認められると判断されております。安全性については国内外の臨床試験において認められた主な有害事象というのは、先ほどから述べていますように、国内の添付文書で既に記載されている有害事象の内容と相違はありません。他がん種での使用実態、今回のものはシスプラチン併用下でのパクリタキセルの24時間持続点滴ですが、忍容可能であったために安全性についてもマネジメントできる範囲だと考えました。なお、国内でも子宮頸癌に対してパクリタキセルの今回の用法・用量である24時間点滴とシスプラチンの併用の第III相試験が、今国内では行われている最中です。以上の内容及び教科書、ガイドライン等の記載内容を踏まえて、検討会議ではパクリタキセルの進行又は再発の子宮頸癌の適応について、医学薬学上公知であると判断されました。
 次は121ページを御覧ください。パクリタキセルの卵巣癌への週1回投与の要望です。これは、3週1回のものは既に承認されておりまして、今回は週1回投与の要望について御説明いたします。要望者は日本臨床腫瘍学会です。これに関しては国内で行われた第III相試験の結果、カルボプラチンを3週間1回投与において、本剤が既承認の3週間1回投与と、今回の週1回投与で比較試験が行われ、無増悪生存期間の有意な延長が示されておりまして、検討会議では医療上の必要性は高いと判断いたしました。
 次に135ページの(3)「要望内容に係る公知申請の妥当性について」を御覧ください。先ほど説明いたしました国内第III相試験等を基に、国内外の診療ガイドラインや教科書で卵巣癌の初回化学療法の一つとして、本剤の週1回投与、カルボプラチンの3週間1回の投与の併用が推奨されております。安全性に関しては、国内で行われた臨床試験の結果から、本剤パクリタキセルの週1回投与及びカルボプラチンの3週間1回投与のみ認められている特異的な有害事象はないということと、他がん種で本剤の週1回投与が承認されている等から安全性に関しても十分マネジメントできると検討委員会では判断いたしました。
 以上の内容及び教科書及びガイドライン等の記載内容を踏まえて、検討会議ではパクリタキセルの卵巣癌の週1回投与について、医学薬学上公知であると判断されました。以上ですが、パクリタキセルに関しては、今回要望に上がってきた疾患によっては第III相試験まであるエビデンスレベルの高いものから、第II相試験しかない、第III相試験のあるものと比べると少し低いものまでありますが、それぞれの疾患の特異性等を考慮して、今回お示ししたものに関しては医学薬学上公知であると検討委員会では判断いたしました。以上です。
○吉田部会長 委員の先生から御質問がございましたらお願いします。
○庵原委員 これは癌の組織型に関係なく、効果があるという判断をされたわけですか。
○安藤参考人 どのがん種のことをおっしゃっておられるのでしょうか。
○庵原委員 すべてにわたってです。それぞれ癌というのは、食道癌だとほとんど扁平上皮癌だと思うのですが、卵巣癌、子宮頸癌だと扁平上皮癌とか腺癌とか、いろいろながん種があります。そういう種類に関係なく、その部位にできた癌ならば、すべて認めるという判断をされたという解釈でよろしいですか。
○安藤参考人 はい。現在の治療体系に関して、例えば、先生がおっしゃられたように、子宮頸癌でしたら、ほとんどが扁平上皮癌で、稀に腺癌がありますし、卵巣癌は漿液性腺癌が大半で、明細胞癌、クリアセルという抗癌剤の効きにくいものもありますが、それらの組織型によって、一般的に行われている大半を占める組織型で積み上げられたエビデンス以上に薬を変えた方がいいというのがないので、現在は組織型によって治療を変えましょうということは行われておりません。
○庵原委員 それは、それぞれの学会の標準的な考え方ですか。
○安藤参考人 そうです。
○庵原委員 がん種によって抗がん剤の治療の組み合わせを変えたりとか、種類を変えるとかいう考え方は、それぞれされていないわけですか。
○安藤参考人 子宮頸癌と頭頸部癌と卵巣癌と食道癌に関しては、非常に稀な組織型を除いては、大半を占めている組織型に関しては同じように治療していきましょうということになっています。
○庵原委員 さらに言いますと、生物学的特性でHER2がどうとか、その辺のところまでを踏まえて選択していくという考え方もないわけですね。
○安藤参考人 それは一部のがん種で、胃癌とか乳癌ではHER2過剰発現を起こしたものに関しては、トラスツズマブの抗体が使われたりとかいうことはされています。一部のがん種はそういうことが行われていますが、今日お示ししたがん種に関しては、個別治療というのははっきりしたものは決まっていないということです。
○吉田部会長 がん種ではというのではなくて、殺細胞性の抗がん剤においては、組織型にかかわらず、一つの臓器癌を対象にしている、というのが基本的な考え方です。ほかにございますか。
○清水委員 それぞれの申請については、特段私は異議はありません。これは結果として、それぞれのがん種については、専門の先生方がお使いになるので用法等については間違いが生じる可能性は少ないとは思うのですが、薬剤としては、適応と用法・用量が非常に複雑な設定になり、用法としては、現行はA法、B法で収載されているものがC法、D法も含まれた収載になるということで、適応と用法・用量に関する情報提供を、当初はかなりきちんと実施する必要があろうかと思うのですが、その辺については何かお考えはございますか。
○事務局 今御指摘をいただいた点につきましては、事務局からお答えさせていただきます。今後、製薬企業より申請が行われますので、その中で申請者とやり取りをしまして、どういった情報提供を行っていくのかというのを詰めて、またこの部会で御報告させていただきたいと思います。
○吉田部会長 その点について、例えばイホスファミドでは、小児の用量と成人の用量と区別していないので、800?から3gと、ものすごく幅があります。申請の際にはそういったところも明確にしてもらえると、審査しやすいと思うのでよろしくお願いします。ほかにございますか。田村先生、何かコメントはございますか。
○田村委員 いえ、特にございません。
○吉田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。御質問はないようでございます。引き続きまして、参考人の中村先生から説明をお願いします。
○中村参考人 続きまして、141ページからになります。アンピシリンナトリウムの小児に対する適応追加の要望について、要望者は社団法人日本感染症学会です。
 142ページを御覧ください。本剤の小児に対する適応については、国内外の教科書及び診療ガイドライン等において、第一選択薬として推奨されており、欧米においても標準的治療法に位置付けられていると判断され、検討会議では医療上の必要性は高いと判断されました。
 次に174ページの(1)~(3)の「公知申請の妥当性について」です。国内外の文献調査の結果、国内外で小児を対象とした臨床試験報告があり、本剤の有用性・安全性が確認されていること。教科書や国内外の各種ガイドラインにおいて、本剤が治療薬として推奨されていることなどから、小児に対する治療法として確立されたものであり、臨床現場においても使用実態が蓄積されているものと判断いたしました。
 また、小児及び新生児において報告されている副作用は、成人で報告されている副作用とほぼ同様であることを確認しております。以上、検討会議では、本剤の小児適応追加に関する有効性や安全性については、医学薬学上公知であると判断されました。
 用法・用量については177ページの下「2.小児」になります。通常、小児には1日100~200?/?を3~4回に分けて投与する。静脈内注射又は点滴静注。なお、症状・病態に応じて適宜増量とするが、投与量の上限は1日400?/?までとする、としております。また、新生児につきましては、1日50~200?/?を2~4回に分ける。静脈内注射又は点滴静注としております。
 戻りまして、176ページの(1)の「効能・効果について」の一番下の段落から、次の177ページ、リステリア菌についてです。今回の要望内容を受けまして、調査した結果、分離頻度は低いものの、小児の細菌性髄膜炎及び敗血症の原因菌としてリステリア菌が報告されており、国内でリステリア菌による髄膜炎の治療において、本剤の投与例が報告されており、また、海外では本剤の適応としてリステリア菌が承認されていること、国内外の各種ガイドライン等においても、リステリア菌に対して本剤は有効とされ、本剤を含めた併用療法が推奨されていることから、リステリア菌の適応菌種への追加も併せて検討いたしました。
 その結果、効能・効果につきまして、今回の要望内容である小児適応追加に併せ、適応菌種にリステリア・モノサイトゲネスを追加することが適切であると判断されました。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方からの御意見をお願いします。よろしいでしょうか。これは申請を上げるときに、リステリア菌のことに関しては、データはなしになるのでしょうか。それとも海外データを使って申請するということになるのでしょうか。事務局ではどういう取り扱いになっているのでしょうか。
○事務局 今回、適応菌種としてリステリア菌も追加してはどうかということで、検討会議でまとめていただいていますので、広く文献等の情報等々を含めまして、申請されるものと考えております。
○吉田部会長 そういう予定だということでございます。ほかにございますか。庵原先生、よろしいですか。
○庵原委員 リステリアに対しては、ABPC、世界の標準薬ですので、それが認められなかったことが、逆におかしいということです。
○吉田部会長 ほかによろしいですか。意見がないようでございます。それでは、その他の事項については御確認いただいたものとします。参考人の先生方、ありがとうございました。
──安藤参考人、中村参考人退室──
○吉田部会長 続きまして、審議事項に移ります。初めに議題1と議題7を審議したいと思います。機構から概要の説明をお願いします。
○機構 議題1、資料1「医薬品ロタテック内用液の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否ついて」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、5種類のヒト-ウシ再集合体ロタウイルスを有効成分とする経口生ワクチンであり、2005年にメキシコで承認され、2011年8月現在において、米国や欧州を含む世界102か国で承認されております。
 ロタウイルスは、乳幼児の重症急性胃腸炎の主な原因とされています。ロタウイルスに対する抗ウイルス療法等はなく、対症療法として補液療法が行われております。また本邦におけるロタウイルスに対するワクチンですが、本年5月の当医薬品第二部会において、GSK社から申請されたロタリックス内用液を御審議いただき、ロタウイルス胃腸炎の予防を効能・効果として、承認して差し支えないとの判断を御報告いただいたところです。今般、ロタリックス内用液と同様の効能で、MSD社より本剤の申請がございました。
 本剤の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料18にお示しした8名の委員です。
 審査の概略について、まず臨床試験成績を中心に御説明いたします。
 有効性については、ロタウイルス胃腸炎の発症予防効果が評価されています。結果は、報告書の19ページ、表4-2及び20ページ、表4-4にお示ししております。国内臨床試験の結果、重症度を問わず、ロタウイルス胃腸炎に対する発症予防効果が認められました。
 安全性については、国内臨床試験の結果を報告書の20ページ、表4-5及び21ページ、表4-6に記載しております。その結果、プラセボ群とワクチン接種群で大きな差異はなく、報告書の26ページ、表4-11及び表4-12にお示しした、海外の臨床試験結果とも同様と認められ、本剤の安全性は忍容可能と考えております。
 過去に欧米で、本剤及びロタリックス内用液とは別のロタウイルスワクチンであるRotashieldという製剤が、腸重積症の発症増加のために市場から撤退したことがあります。その経緯を踏まえまして、本剤でも、腸重積症の発症に関して大規模な検討がなされております。報告書37~39ページに記載しておりますように、6万例規模の海外006試験、米国における製造販売後調査において、本剤接種による腸重積症発症の増加は認められておりません。
 一方、報告書の39ページに記載しましたが、オーストラリアの疫学研究において、本剤の初回接種後7日間に腸重積症発症が多い傾向にあることも報告されています。機構の審査では、重症ロタウイルス胃腸炎の予防のベネフィットとのバランスを検討し、当該リスクは忍容可能と判断いたしました。ただし、報告書46ページにお示ししたとおり、本剤の製造販売後調査として、本邦における腸重積症の発症状況の把握を目的として、1万例を対象とした特定使用成績調査が計画されております。また1,000例を対象として、本剤接種後の安全性情報を収集する使用成績調査や、同時期に接種される可能性が高い定期接種ワクチンであるDPT等との同時接種時の免疫原性及び安全性について、製造販売後臨床試験の実施が予定されております。
 以上の機構における審査の結果、本剤はロタウイルス胃腸炎の予防を効能・効果として、承認して差し支えないと判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とし、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断いたしました。本剤の承認に伴い、生物学的製剤基準の医薬品各条に、資料7にお示しした本剤の基準を追加することとしています。本剤の承認の可否と併せて御議論をいただければと思います。
 なお、報告書の誤記について事前に御指摘いただきました点については、適切に訂正させていただきます。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方からの御質問、御質疑をお願いいたしたいと思います。
○庵原委員 たしか、ロタリックスのときはOPV、経口生ポリオワクチンと一緒にしても大丈夫だというような、添付文書があったと思いますが、このワクチンに関しては、今後検討した上で考えるという意味ですか。これは同時接種は認めないというニュアンスですか。
○機構 ロタリックス内用液もロタテック内用液も、OPVとの接種は、生ワクチンと生ワクチンですので、27日間の期間をおいて接種することという結論になっております。本剤も同時接種を勧めているというわけではなくて、基本的な期間をおいてから接種するようにということになっております。
 またOPVとの同時接種の検討というのは、海外でも実施されております。海外の臨床試験での検討というのは44ページに示してあります。傾向としては、血清中の抗ロタウィルスIgA抗体価が下がっているという報告もありますので、基本的にはOPVとは同時には接種しないことにしております。
○庵原委員 ロタリックスのときは、そのデータがあって、OPVとの同時接種は認めないのではなくて、同時接種してもいいですよというような回答だったと思うのです。ロタテックに関しては、今度は逆に駄目ですよという回答に聞こえるのです。同じロタウイルスのワクチンで対応が異なると現場が混乱するのですが、その点の統一をお願いできないかということです。
○機構 ロタリックスの件に関しましては、OPVとの接種でポリオウィルスに対する免疫原性の低下が認められていたかと思いますので、同時接種を勧めてはないという形での注意喚起をしております。本剤に関しても、同様の結果ですので、OPVとの同時接種を積極的に認めるという形での情報提供、注意喚起をするということではございません。したがいまして、先生が御指摘のような形での違いは生じないものと理解しているところです。
○庵原委員 要するに、勧めないけれども、否定はしないということですか。
○機構 はい。結局、個々の接種事例、対象の方によっては、どうしても同時接種せざるを得ない場合も考慮して、基本的には勧めるものではないのですが、個別判断をふまえ、絶対に同時接種しては駄目とのエビデンスもない状況と理解していただければと思います。
○庵原委員 わかりました。
○吉田部会長 ほかにございますか。濱口先生、どうぞ。
○濱口委員 添付文書の中に、経口接種に関しては、生後6~32週までに3回行いなさいということが書いてあるのですが、例えば、32週を超えてしまって接種することは可能なのかどうか。それについてのコメントがあまり書いていないような気がしますが、その辺はどうなっているのでしょうか。
○機構 添付文書の3ページ目の「小児等への接種」というところにおいて、「生後6週未満又は生後32週を超える乳児に対する安全性及び有効性は確立されていない」ということで、注意喚起させていただいております。32週以上については、腸重積症の発症が高まる危険があり、基本的には32週以上の乳児というのは接種しないことが望ましいと考えております。
○濱口委員 臨床試験のデータを見せてもらっても、結構32週より前のところでいろいろデータを出されていて、それより後のデータが少ないような気がするのです。もし32週以降は、非常に問題を起こしやすいということであれば、そこのところはもう少し明確に書いておく必要があるのかという気がします。
○機構 先生御指摘の点については、情報提供資材等も活用して、有効性・安全性が確立されていないことについては、適切な注意喚起、情報提供をさせていただきたいと思います。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○濱口委員 非臨床試験についてお願いがあります。非臨床試験のガイドラインというのが、昨年の5月に発出されたと思うのです。この中で、例えば反復投与試験などは、原則、実際に投与される回数よりも多い回数で投与するということをやるよう書いてあったと思います。早速、このワクチンに関しては、「投与回数と同じ回数でやりました。その理由としては、既に臨床データもたくさんあるので、3回以上やる必要はない。投与量も相当量が多いので必要がない」という業者からのコメントを一応受け入れて、問題ないでしょうということですが、折角、ガイドラインでそこの回数を超えるのか、それとも回数以上なのかというところは、よくよくディスカッションしたところでもあります。日本でガイドラインがない状況の中では、こういったコメントもよいかという気はしますが、既にそういうガイドラインを作った状況の中では、ある程度日本のやり方というのをメーカーの方にも言っていただきたいと思います。
○吉田部会長 それは要望ですか。
○濱口委員 要望です。
○吉田部会長 わかりました。ほかにございますか。
○土屋部会長代理 審査報告書の15ページの中程から下に、適切な動物モデルがないので、いくつかの試験を省略したというようなことが書いてあります。一つ気になるのは、弱毒ウイルスなわけですが、強毒型に変わる頻度に関して、申請者側からの説明などはございますか。ポリオなどの場合にも、頻度は非常に低いのですが、そういう事例も起きておりますので。
○機構 本剤は、ウシのロタウイルスを母体とし、一部のゲノム分解をヒトロタウィルスに組換えたウイルスを、ワクチンウイルス株として含んでおります。申請者側からは、ウイルスが全てヒト由来に組換わっていくという可能性が非常に低いという、原理的な説明があるところです。
 また、ヨーロッパ等で約14万人の5歳以下の乳幼児を対象に、再集合体等の出現に関する調査をした結果、再集合体が検出される確率は低いであろうという結果も出ております。したがいまして、申請者からはそう頻繁に強毒化、強毒復帰が起こるようなワクチンウイルス株とは考えにくいと説明されているところです。
○庵原委員 今の土屋先生の質問に答えます。この報告書のどこかに書いてあったと思うのですが、現在のところ、ロタウイルス自体はインフルエンザウイルスと一緒で、核酸RNAが分節状になっていまして、自然界でリアソーティングを起こす危険性があるのです。そこで、論文で今年出たと思うのですが、ロタワクチンを飲ませた兄弟で、リアソーティングを起こしたG1P[8]という強毒型といいますか、先祖返りしたような型のものが出て、それで下痢を起こしたという論文が一つ出ています。ただ、論文として出ているのはそれ一つだけで、それ以外には出ていませんので、極めて稀な現象だと思います。
○機構 説明不足で申し訳ありません。今の部分につきましては、報告書の36ページに載せております。
○吉田部会長 ほかにございますか。これは部会とはあまり関係ないかもしれませんが、ロタリックス等々との使い分け方は、どういうふうになるのか疑問に思っていたのですが。
○機構 ロタリックス内用液を、本剤と交互接種した場合の有効性及び安全性は確認されておりませんので、本剤なら本剤を3回、ロタリックス内用液ならロタリックス内用液を2回接種することが基本と考えます。
○吉田部会長 それぞれの、どういうところが良いのかという点は、あまり明確に書いていないような気がするのですが。
○機構 開発時期が同時期だったことから、直接比較したデータはございませんが、どちらも海外では同様の位置付けで使われているという現状があり、特に使い分け等はされていないです。
○庵原委員 それに関して、CDCのポジションペーパーは優劣付けがたいというコメント1行です。
○吉田部会長 それではどちらを使ってもいいよという意味なのですね。ほかにございますか。一応、議論は尽きたようです。そろそろ議決に入りたいと思います。本議題について、承認及び生物学的製剤基準の改正を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。承認及び生物学的製剤基準の改正を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題2に移ります。田村委員におかれましては、議題2の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
──田村委員退室──
○吉田部会長 それでは、議題2について機構から概要を説明してください。
○機構 議題2、資料2「医薬品イレッサ錠250の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるゲフィチニブは、上皮成長因子受容体(以下EGFR)チロシンキナーゼのリン酸化抑制を介してその下流のシグナル伝達を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられております。本剤は、平成14年7月に「手術不能又は再発非小細胞肺癌」に対する薬剤として国内で承認されました。今般、本剤は既承認の適応をEGFR遺伝子変異陽性に限定すること等を目的として承認申請されました。本剤は、審査報告書3ページに記載していますように、平成23年9月時点において、非小細胞肺癌を適応として海外では81の国又は地域で承認されています。
 本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料18にありますとおり5名の委員です。
 以下、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌に対する本剤の承認審査の概要を説明します。今般の承認申請では、主な臨床試験成績としては、手術不能又は再発非小細胞肺癌患者を対象に、国内を含む9の国又は地域で実施された国際共同第III相試験(以下IPASS試験)の成績が提出されました。
 有効性については、審査報告書13ページ、上から13行目以降及び41ページ、上から13行目以降に示しますように、IPASS試験のサブグループ解析の結果に加えて、このサブグループ解析結果が参考資料として提出された二つの研究者主導の国内第III相試験の結果と一貫していることも踏まえ、化学療法未治療でEGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌患者に対する本剤の有効性は期待されると判断しました。
 安全性については、審査報告書19ページ、本文の上から4行目以降及び47ページ、上から1行目以降に示しますように、本剤投与時に認められた有害事象は化学療法歴及びEGFR遺伝子変異の有無によって異ならず、既知の事象であり、今般の承認事項一部変更承認申請の対象であるEGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌患者においても、がん化学療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により、本剤は忍容可能と判断しました。
 以上のような審査の結果、機構はEGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断しました。本剤は新効能医薬品であるものの、再審査期間は新たに付さないことが適当であると判断しました。EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌に対する本剤の承認の可否等について、御審議のほどよろしくお願いいたします。
 なお、資料20にありますとおり、事前に佐藤委員から御質問、御意見をいただきましたので、機構から回答させていただきます。御質問は二つあり、一つ目は試験の信頼性に関するもので、以下のような主旨です。「専門協議において、IPASS試験におけるEGFR遺伝子変異別の結果は、遺伝子変異が測定可能であった一部の患者を対象としたサブグループ解析の結果であり、検証的な結果とは考えられない。したがって、EGFR遺伝子変異陽性患者のみを対象とした二つの国内第III相試験であるWJTOG3405試験及びNEJ002試験は重要であり、IPASS試験の結果と併せて総合的に評価することが適切との専門委員の意見を受けて、審査報告(2)ではこの2試験の結果が詳しく記載されている。しかし、この2試験は申請者ではなく、がん研究グループが実施した臨床データパッケージにも含まれていない試験であり、その結果が妥当であると判断するためには、試験が適切に計画・実施・解析されたというプロセスに関するある程度の保証が必要だと考えるが、審査報告書にはその記載がない。この2試験の信頼性について機構の見解を説明してほしい」という御質問でした。
 御質問に対する機構の見解としては、WJTOG3405試験及びNEJ002試験の信頼性については、公表論文から得られる情報から判断せざるを得ません。ただし、これらの二つの試験については、公表論文から得られる情報からの判断として症例数設定や第一種の過誤の制御等、試験計画そのものについて明らかな問題は見当たりませんでした。また、二つの試験の評価は、中間解析であること等から結果の解釈については限界があると考えますが、これらの状況及び二つの試験は、いずれも「LANCET」「New England Journal Medicine」といった世界的にも評価されている医学専門誌にpeer reviewを受けた論文として掲載されていることも考慮すると、二つの試験の結果については一定の信頼性はあるものと考えており、IPASS試験のサブグループ解析結果と一貫した結果が得られているかどうかを判断することに支障はないものと考えました。
 なお、EUにおいては、本邦における臨床データパッケージと同様にIPASS試験を主要な臨床試験成績として、EGFR遺伝子変異陽性患者に対して本剤が承認されています。本邦においては、主要な評価資料であるIPASS試験に加えて、一定の信頼性が担保されているWJTOG3405試験及びNEJ002試験において、IPASS試験のサブグループ解析結果と一貫した結果が得られていることも考慮し、EGFR遺伝子変異陽性患者に対して本剤の有効性は期待できると総合的に判断しております。
 御質問の二つ目は、添付文書の効能・効果に関連する使用上の注意の記載に関するもので、以下のような主旨です。効能・効果に関連する使用上の注意の項において、「EGFR遺伝子変異検査を実施すること。検体が入手できない等の理由によりEGFR遺伝子変異検査ができない場合等を含めて、本剤を投与する際には日本肺癌学会の『肺癌診療ガイドライン』等の最新の情報を参考に行うこと」と記載され、EGFR遺伝子変異の有無が不明であっても、医師の判断で本剤が使用できる旨が記載されている。その理由として、審査報告書の48ページ、上から14行目以降には「EGFR遺伝子変異が不明な患者については、その一部にはEGFR遺伝子変異陽性患者が含まれている可能性があること等を踏まえると、がん化学療法に十分な知識と経験を有する医師がEGFR遺伝子変異以外の情報を含めて、最新の知見を基に個々の患者の背景やリスク・ベネフィットバランスを考慮した上で、患者ごとに個々に本薬投与の適否を判断される必要がある」と記載されている。しかし、審査報告書31ページ、上から10行目以降で「申請者がEGFR遺伝子変異陽性の腫瘍では、民族・人種、組織型、喫煙歴等の個々の患者の背景因子よりも、変異型EGFRタンパクを発現していること自体が、より強くその腫瘍の生物学的特性を規定していることが報告されている」と述べているように、患者背景だけでは本剤を使用する十分な情報にはならないと考えることから、「検体が入手できない等の理由によりEGFR遺伝子変異検査ができない場合等を含めて、」は削除することが適切ではないかというものでした。
 この件に関して、日本肺癌学会により作成された肺癌診療ガイドラインでは、EGFR遺伝子変異が不明の患者については、可能な限りEGFR遺伝子変異の検査を行うよう努めることを求めるとともに、IPASS試験と同様の背景因子を有する場合には本剤の効果が期待され、本剤が選択肢の一つになり得る旨が記載されています。医療現場における実態として、患者の状態、腫瘍の大きさや部位により検体の採取が困難な場合等があり、専門協議における専門委員の御意見としても、可能な限りEGFR遺伝子変異検査を実施すべき旨を注意喚起した上で、EGFR遺伝子変異が不明の患者に対しては肺癌診療ガイドライン等の国内外のガイドラインを参考にして、本剤の投与の適否が医師によって判断されるべきというものでした。佐藤委員が御指摘の効能・効果に関連する使用上の注意の項における記載については、実際の医療現場で直面した場合の対応方策を明確にしたものと御理解いただきたいと考えております。なお、本剤の投与が適切に行われるための方策の一つとして、添付文書だけではなく、資材等も利用して情報提供を徹底するよう申請者には指示しております。
 また、佐藤委員からIPASS試験の全患者集団の結果解釈に関する審査報告書14ページ、上から22行目以降の記載について御指摘がありました。IPASS試験において主要評価項目に設定されたPFSについて、「本薬群のTC群に対する優越性が示されたものの」と記載されており、PFSの優越性が示されたと機構が解釈しているように読み取れる。IPASS試験のPFSの結果については、本薬群とTC群のハザード比が等しいという帰無仮説が棄却されたとだけ解釈するのが正しいことから、この記載については、申請者の主張であることを明確にし、「本薬群のTC群に対する優越性が示されたと申請者は主張しているものの」と修正すべきである、という御指摘がありました。御指摘の箇所については、適切に修正させていただきます。
 さらに、佐藤委員から審査報告書14ページ、下から7行目以降に「しかしながら、そのハザード比は試験期間を通じて一定ではなく、無作為化後6カ月間はTC群で良好であり、その後は本薬群で良好な結果であった」との申請者の説明が記載されているが、この説明は間違っている。審査報告書にこのように記載すると、この説明が正しいと認めていることになることから、申請者に修正させるべきである、という御指摘がありました。御指摘の箇所については、申請者がKaplan-Meier曲線について説明しているところと理解していますが、「良好な結果」という文言が適切でないという御指摘だと思いますので、誤解を招かない記載への変更を申請者と検討させていただきたいと考えております。御指摘ありがとうございました。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。佐藤先生、今の回答でいかがでしょうか。
○佐藤委員 最初に、参考として付けられた2試験の信頼性についてです。もちろん、文献情報でしか信頼性を当たれないというのは分かるのですが、少なくとも申請者にこの2試験の信頼性をどう考えているか聞いてもよかったのではないかと思います。国内の臨床研究グループの試験ですから、申請者が直接インタビューに行ったり、査察は無理にしても、どういう試験内容だったのかということを研究者の方に聞くことは十分可能だったと思いますので、それぐらいのことは指示していただけたらよかったのではないかと思います。
 また、文献上のみということなのですが、例えばこの2試験、IPASS試験もPFSがプライマリ・エンドポイントになっていますので、一番重要なのは腫瘍の画像評価の時期だと思うのです。IPASS試験に比べて、この2試験の腫瘍の画像評価の時期がどういう具合だったのかということはどうでしょうか。
○機構 この二つの医師主導の試験については、プロトコールの詳細を確認できておりませんので、佐藤委員から御質問いただいた点に対して機構から回答することは難しい状況です。
○佐藤委員 PFSを評価するという意味では、画像評価をいつ行ったのかというのは非常に重要な情報になりますので、そういったことも含めてこの2試験の信頼性についての見解を審査報告書に含めていただきたいと思うのですが、それはいかがでしょうか。
○機構 先ほどコメントをさせていただきましたように、会社にはこの試験の内容について確認等々をすることはできるのですが、我々が実際に現場へ行って内容を確認することができない資料の位置付けということもあって、あくまでも参考の扱いにとどまっているというのが現状です。
○佐藤委員 信頼性について審査報告書に含めてほしいということはどうですか。
○審査第五部長 参考資料の信頼性については、私どもでの確認に限界もあります。審査報告書の中に書くというよりも、本日のこのような形での御説明に代えさせていただくわけにはいかないでしょうか。
○佐藤委員 これは参考資料と言っても、EGFR遺伝子変異陽性の患者に対して明らかにPFSが有意に優っていることを示すと、確かに専門委員の方も指摘されているように重要な資料ですので、あれだけ結果について審査報告(2)で取り上げている以上、この試験の結果が信頼に足るものだという評価は加えた方がいいのではないかと思います。
○審査第五部長 それでは、参考資料の信頼性の確認に私どもの対応にも限界はありますが、申請者ともう一度その辺りの話をして、できる限りの範囲で対応したいと思います。
○佐藤委員 結構です。ただ、先ほど言った画像評価のタイミングは論文にも書かれていますから、そのぐらいはきちんと答えてほしいと思います。
○吉田部会長 今の点で、少し疑問に思うのですが、例えばアメリカでもECOGやSWOGなどがやっている、ニュードラッグトライアルではない臨床試験の資料でも、生存率などを、きちんとFDAで評価して、エビデンスがあるとかないとか、というやり方をしていて、そのときに研究者にはプロトコールを提出してもらって、そのクオリティを評価してというふうにやっていると思うのですが、日本の場合は、承認に際して一般のいわゆる治験以外の資料を評価するときには、そういうルールみたいなものはないのですか。それはあくまでも参考資料であって、治験のデータだけが唯一信頼性があると判断されているのか、その辺りが少し疑問に思うのですが。
○審査管理課長 薬事法においては、あくまでも製造販売承認の申請のための臨床試験の成績が、いわゆる臨床試験の実施の基準に基づいて行われているということです。その行われていることを確認することも含めて、審査で行っているということですが、薬事法に基づく臨床試験である治験以外の臨床試験として行われたものについて、ICH-GCPに準拠してやっていただきたいとか、今そういう議論がなされているところではありますが、行政上の整理から言いますと、どうしても薬事法に基づく治験として行われた以外のものについて、その信頼性の確認についてはGCPとの適合性という観点からは、治験としてやられたものはできますが、それ以外のものについてはどこまでやるのかは定められておりませんので、そこはPMDAでも今般そこまでやるという判断がなかったのだと思います。それについて私どもでもっと詰めてやるべきだと現時点で言えるかどうかというと、内容がどれだけクリティカルなものかということにも関わると思いますし、一方で公知申請等の場合でも、「Peer Reviewed Journal」に掲載されているものについてどこまで、国内であれば見に行くのかとか、そういった問題にまで発展しかねないところもあって、今のところはあくまでも薬事法上の治験の範囲でやっているというところが基本かとは思っています。ただ、もちろん御指摘のように、それだけで本当にクリティカルなポイントになっていて、それで判断するという事例が出てきたら、それは個別に判断すると考えております。
○吉田部会長 ですから、GCPの査察に入る仕組みがまだないということですね。医師主導治験の場合は、一応それに準拠して医師が主導して、きちんとクオリティをコントロールすることができているのだけれど、West Japanとかいわゆる任意的な団体でやっている臨床試験に関しては、クオリティはまだ保証されていないということですね。そうすると、いくら良いジャーナルを通ったとしても、行政的にはエビデンスとしては認めないという感じにさえ聞こえてしまいます。一方で公知申請と言っておきながら、どうなのかなということがありますので、今後、是非検討していただきたいと思います。佐藤先生の言うことはごもっともなのですが、今はできないということで御了解いただきたいと思います。
○佐藤委員 分かりました。2点目ですが、効能・効果の注意書きのところで、なかなか難しいところなのですが、今退出されている御専門の田村委員の御意見を是非お伺いしたいのですが、部会長、いかがでしょうか。
○吉田部会長 佐藤先生がおっしゃっているのは、最後の説明の部分を読むと、「EGFR遺伝子変異検査を実施すること」「本薬を投与する場合は、日本肺癌学会の肺癌診療ガイドライン等の最新の情報を参考に行うこと」という2つの文章だけでいいではないか、なぜこれをもう1回言うのかという話ですね。
○佐藤委員 そうですね。先ほど、機構からもIPASS試験の結果で検体検査ができない患者さんの中にも陽性の人がいるはずだから、という説明がありましたが、IPASS試験と同じ背景を持っている患者さんですと、3対2で陰性の患者さんもいらっしゃるのです。そうすると、陰性の患者さんは、IPASS試験の結果ではむしろイレッサを使った方が悪い傾向が見られているので、それを考慮すると。
○吉田部会長 私の理解では、肺癌の診療ガイドラインでも検体入手ができないことに関してコメントしていますが、それをなぜあえて2回書いたかという話と、もしその文言を外したら不都合が起こるかどうかが論点になるのだろうと思います。肺癌のガイドラインは年々変わっていくわけで、そうするとここに残すよりも、その方が現実的にはアップデーテッドされる可能性もあります。そういう意味では、先生の指摘の方がいいかと私自身は思うのです。田村先生にも伺ったのですが、現実的には、背景的に変異例のように思われるけれど、非手術例とか病巣がかなり小さい場合には針生検をしても検体が十分に採れないというようなことがあって、治療が行き詰まったときにこういったものがあった方が、現場としてはいい、とおっしゃっていました。ですから、ガイドラインに従うことだけではどうして駄目かということに関して、もう少し具体的に示唆を与えた方がいいと考えられたのか、機構の判断をお聞きしたいと思います。
○審査第五部長 御指摘の部分につきましては、専門協議でも随分議論をいただいたところで、大前提としてはできる限り検査をやっていただきたいという思いについては、専門委員の各先生も同じ意見をおっしゃっていただいたところです。それでもなお、どうしても検査ができない患者さんがいらっしゃるという現実を踏まえたときに、それについてはガイドラインに沿った形で対応していただくという考え方は、きちんと注意喚起もしてほしいといった御要請もありましたので、そういう趣旨でここの部分について書き加えたという背景があります。
○吉田部会長 屋上屋みたいな格好で「検体が入手できない等の理由により」というのをわざわざ書いたのは、何か意味があるのですか。
○審査第五部長 そのような専門協議の背景があったということなのですが、あとは「本薬を投与する際は、」と記載されているとおり、検査不明例に関する取扱い以外のことについても本薬投与に際してはガイドラインを参考にすべきと考えられましたので、そういったことを含め注意喚起したということです。
○吉田部会長 専門協議の意向を踏まえてこういう形にしたと。
○審査第五部長 はい。
○吉田部会長 いかがでしょうか。
○庵原委員 専門外なのですが、肺癌を専門にされている方は、臨床的にこういう条件が揃えば、これはEGFR陽性の肺癌である可能性が、例えば90%ぐらい確率が高いといったエビデンスがあるわけですか。
○吉田部会長 私も肺癌の専門ではないから言いにくいのですが、基本的に女性で非喫煙者で腺癌だったら一応変異例を疑うのですが、例えば、ほかの抗癌剤が全然効かないときに、イレッサは変異例しか使ってはいけないということになるとこの様な症例には使えなくなります。ですが、日本の場合は使っていい、となると使ってみます。それで効かなければこれは変異例ではなかったのだと分かるし、変異例の場合だと劇的に効きますので、そういった意味では現場としてはあった方がいいということです。効かない薬をずっと使うということはまずしませんし、効果が出てくればこれは変異例だったのだという解釈できますから、そういった意味では検体が手に入らない患者さんに対しても使う道は残しておいてほしいと思うのです。ただ、ガイドラインとの兼合いでわざわざここまで書く必要があるかどうか、むしろガイドラインにもそのようなことは書いてあるわけで、そこだけ少ししつこいという感じがします。基本的に陽性例に限るとしてしまうと、相当難しいことが起こることは事実です。佐藤先生、結局どうしましょうか。
○佐藤委員 できれば、部会長がおっしゃるようにガイドラインで読んでいただいて、使用上の注意はすっきりした方がいいと思うのですが。
○吉田部会長 私もその方がいいような気がしますが、いかがでしょうか。PMDAではそれだと困りますか。
○事務局 専門協議での議論もあったのですが、懸念しているのは、不明例に関してガイドラインを参照とするだけでは分かりにくいという意見が一方であったということです。
○吉田部会長 要するに、不明例に対して使いやすいような環境を作ってほしいということですね。
○事務局 もう一つ、保険の適応について、どうかというポイントもあったと聞いています。
○吉田部会長 しかし、承認する側としては、文言はできるだけ少ない方がいいのです。
○事務局 この部分の文言については、御意見を踏まえ、部会長と具体的な文言をどうするか御相談をさせていただければと思います。
○吉田部会長 それならば、不明例等々に関しては、「肺癌の何々に従う」等としておいてくれたら分かるのではないかと思うのですが。検体が入手できない云々と細かいところまで書かないで、不明例の取扱いに関しては肺癌のガイドラインに従う、としておいたら、それでいいのではないですか。そういうことで、我々としては意見をまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。ほかにございますか。
 それでは、議題2について議決に入ります。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。今の議論をうまく反映していただきたいと思います。
 それでは、議題3に入ります。機構から概要の説明をお願いします。
──田村委員入室──
○機構 議題3、資料3「医薬品サムチレール内用懸濁液15%の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 サムチレール内用懸濁液15%の有効成分であるアトバコン(以下本薬)は、抗ニューモシスチス活性を有するユビキノン類似体であり、pneumocystis jiroveciiに対して抗真菌作用が期待できるとされております。海外では、1992年11月に米国でニューモシスチス肺炎(以下PCP)に対する治療薬としてアトバコン錠が承認されたのを初めとし、ドイツ、英国、フランス等で承認されました。その後、本薬の吸収を高めるために本薬の超微粒子を用いた懸濁液剤が開発され、1995年2月に米国で承認されたのを初めとし、フランス、英国、ドイツ等で承認されております。また、1999年1月に米国でPCPの予防効能が追加で承認されております。
 一方、本邦では本剤は未承認薬ではありますが、厚生労働省エイズ治療薬研究班等によりエイズ治療研究を目的に個人輸入され、ST合剤及びその他の治療薬に不耐容のPCP患者への代替治療の選択肢の一つとして既に使用されております。この状況を踏まえ、日本エイズ学会よりPCPの治療及び発症抑制を目的とする本剤の開発に関する要望書が提出され、「医療上の必要性が高い未承認薬の医薬品」としての開発要請がなされたことを受け、今般、製造販売承認申請がなされました。
 本品目の専門協議に際し、専門委員としては資料18にありますとおり12名の委員を指名し、御意見を賜りました。
 機構における審査内容のうち、本剤の臨床評価について概略を説明させていただきます。本剤は、これまでに海外において相当の使用実態があること、本邦においてもエイズ治療薬研究班等での個人輸入による使用経験が蓄積されていることから、提出された資料を中心に国内外ガイドライン、教科書、公表文献等に基づき、本剤のPCPの治療及び発症抑制における有効性及び安全性を検討しました。
 有効性については、審査報告書56ページの表中に示しておりますように、治療効果については軽症から中等症のHIV陽性PCP患者を対象とした海外比較試験(03試験)において、本薬(錠剤)群とST合剤群の有効率は各々62%及び64%であり、同様の成績が得られました。また、軽症から中等症のPCPを有するHIV患者を対象とした海外比較試験(05試験)における初期治療の有効率は、本薬群とペンタミジン群で各々57%及び40%でした。
 発症抑制について、57ページの表に記載しておりますように、HIV陽性患者でPCPの既往歴があり、ST合剤に不耐容の患者を対象とした海外比較試験(115-211試験)において、最大30か月投与におけるPCPの確定/推定診断率は本剤群22.8%、ダプソン群25.9%でした。また、HIV陽性患者でPCPの既往歴があり、ST合剤に不耐容の患者を対象とした海外比較試験(115-213試験)において、最大34か月投与におけるPCPの確定/推定診断率は、本剤750mg1日1回群25%、本剤1,500mg1日1回群22%、ペンタミジン吸入群17%でした。
 以上のように、海外臨床試験では、剤形が異なるものの、軽症から中等症のPCP患者における本薬(錠剤)群の有効率はST合剤群又はペンタミジン群と同様であったこと、国内外のガイドライン、教科書等において本薬が代替薬として記載され、推奨されていること、また国内臨床研究においても、ST合剤不耐容例に対する代替薬として本剤の有効性が確認されていることを踏まえると、本剤のPCPの治療に対する有効性は期待できると判断しました。ただし、海外臨床試験において本薬(錠剤)群での効果不足による無効率は、対照薬群と比べて高い傾向が認められたこと、重症例における本剤の有効性については明確ではないことから、本剤の投与対象についてはPCPの治療及び発症抑制のいずれについてもST合剤不耐容の場合の選択肢の一つとして位置付け、情報提供することが適切であると判断しました。
 安全性については、審査報告書58ページから記載しておりますように忍容可能と考えるものの、皮膚障害、胃腸障害、肝機能障害の発現、非HIV感染患者における併用薬の違いによる安全性及び有効性等については、製造販売後に引き続き情報収集する必要があると判断しました。
 機構は、以上のような審査を行った結果、本剤の有効性は示され、また安全性は忍容可能と判断し、審査報告書の2ページに記載しましたように承認条件を付した上で、記載された効能・効果及び用法・用量にて承認して差し支えないと判断しました。なお、本剤の再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも毒薬・劇薬に該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○大槻委員 皮膚科の立場から質問します。ST合剤は皮膚科でもよく使って、皮疹あるいは汎血球減少や肝機能障害がすごく起こって使いにくいのですが、この薬剤はそれに比べると予防投与も含めてしやすいということで、データとしても64~65ページに、皮膚障害は軽度から中等度がほとんど、と書いてあるのですが、65ページに「重症度については、重篤な皮膚障害の報告もあることから」と突然出てくるのです。これは皮膚科として、例えばTEN型薬疹とかスティーブンス・ジョンソン症候群とか薬剤性過敏症症候群ではないということだけ確認しておきたいのですが、いかがでしょうか。「重篤な皮膚障害の報告もあることから」というのは65ページの中程辺りですが、「機構は以下のように考える」というところです。ただ、この本文中では、「すべて軽度又は中等度であった」あるいは皮膚障害の有害事象は「ほとんどが軽症又は中等症であった」としか書いていないのです。
 また、59ページの一番上の図で有害事象は発疹と書いてあるのが、注釈で「斑状丘疹状皮疹を含む」と書いてあって、重篤な薬疹のタイプは書いていないので、恐らくなかったのではないかと思うのですが、重篤な皮膚障害の報告というのが少し気になったものですからお伺いいたします。
○吉田部会長 いつも思うのですが、審査資料に有害事象のグレードを書いてくれませんね。出た有害事象をみんな書いてしまうのですが、グレードがどうだったかというのを付けてくれると、先生の今のような御質問がたちどころに分かると思うのですが、その辺りの程度の差は分かりますか。
○機構 臨床試験においては、スティーブンス・ジョンソン症候群等は認められていないことを確認しております。なお、添付文書の「重大な副作用」の項の、1)でスティーブンス・ジョンソン症候群等について、「自発報告又は海外のみで認められている副作用については頻度不明」ということですが、注意喚起をしております。
○大槻委員 わかりました。
○吉田部会長 前崎先生どうぞ。
○前崎委員 HIVに関しては、海外のデータ、日本のエイズ研究班のデータがあるのはよく分かるのですが、日本の場合はいわゆる生物製剤のときにPCPの発症が多いということで、恐らく生物製剤を使っている患者さんのPCPの予防に使われる可能性があると思うのですが、この承認条件で言うと、これはあくまでもHIVの発症予防であって、非HIVに関しては承認できないというニュアンスでよろしいでしょうか。
○機構 非HIVについても、今回は審査報告にも記載はしておりますが、適応の範囲と考えております。
○前崎委員 残念ながら、公表文献はほとんど臓器移植ですね。いわゆる生物製剤を使っているとか、あるいはリウマチの患者さんの安全性・有効性の確認は全くないという状況で承認しても差し支えないのかという疑問があったのですが、いかがでしょうか。
○機構 HIVであっても非HIVであっても、恐らく本剤自身の使い方の基準等は大きく変わらないであろうと理解しております。ただし、先生のご指導にもありますように日本での経験が非常に少ないので、製造販売後に情報収集していただきたいと考えております。
○前崎委員 この添付文書上では、現時点では使ってもよろしいということですね。
○吉田部会長 ですから、HIVとは関係なしに適応を認めるということですね。
○前崎委員 ということは、予防のところはCD4の数が書いてあるのですが、基本的にリウマチの患者はCD4の数は変わらないわけですから、ここはどう解釈すればいいのでしょうか。
○機構 現在のところ、非HIVに関してはほとんど使用経験がないという状況ですので、まずスタート段階としてはHIVの基準を準拠しようと。そして、これからいろいろ情報を収積する中で使用の仕方を整備していこうということで、この辺りは非HIV、リウマチ関係の先生、専門委員にも加わっていただいて、いろいろ意見をいただきました。その中で先生方が口を揃えて言われたのが、ガイドラインの整備をする必要があるということでした。そのためには、日本の中でのデータが必要であるということで、その第一歩として門戸を開いて、早急に使い方の整備をしていきたいということです。
○前崎委員 結局、有効性・安全性が確認されていない状況で使ってもいいという形にしていいものなのでしょうか。
○機構 日本人という点ではそうですが、海外においては、今回の効能・効果、用法・用量と同じですので、本剤としては使用経験がないということではないと考えております。
○吉田部会長 半分公知申請みたいな格好になっていて、HIVに関しては特別扱いになっていますので、それに乗せてほかのものも一緒に見ていけるようにしようということで、非HIVに関しては門を閉ざさなかったと。そのことは公知申請と似た考え方で整理したということではないかと思うのですが。
○前崎委員 HIVはCD4の数が戻ってくればいいので、やめていいのですが、生物製剤とかステロイドの場合はなかなかやめることができない状況になります。そうすると、投与期間もかなり変わってくるので、そこで安全性が本当に担保されていいのかという気がしたので、データがないのであればデータがないときちんと書いていただきたいし、例えばある程度のデータが出たところでもう1回検討するかしていただかないとまずいのではないかという気がしたのですが。
○吉田部会長 全症例を登録させてチェックするのでしょう。そのときのデータの解析をどのようにやるかとか、どういうことを調べていくかとか、対象患者をどうするかをもう少しきちんと書いてもらえば、前崎先生の懸念はなくなるのではないかと思います。
○機構 全例調査を行うことを予定しております。先ほど併用薬と申し上げたのは、抗リウマチ薬の生物製剤等といったことを考えておりまして、どういった薬剤が併用されたときに本剤の有効性・安全性がどのようになっているかということも含めて、情報集積がされた段階で適切に医療機関に情報提供していただくことを考えております。また、ガイドライン等でも適切に情報提供していただくことを考えております。
○前崎委員 もう1点、これはSTが使えない場合に使うというのは分かるのですが、STが無効な場合にこれを使うということが現場で出てくるのではないかと思うのです。このときには、「副作用等でSTが使えない場合は」と書いてありますが、例えば臨床的にSTが無効だと判断してこの薬に変えたいというときは、重症例は確かにあまり効果がないのかと思うのですが、軽症、中等症の場合はそのような使い方は実際的にいかがなのでしょうか。そういう使い方をされることがあるのか、そういう使い方が有効なのかどうかをお聞きしたいと思います。
○機構 作用機序が違いますので、可能性は否定はしません。ただし、実際に本剤自身が有効性という点ではST合剤に若干劣る可能性があるということで、必ずしも第1選択薬とはならないであろうと考えております。また、ST合剤については副作用が本剤よりも強いということで、ST合剤に不耐容のものについて本剤を用いると考えております。
○前崎委員 わかりました。
○吉田部会長 ほかにございますか。庵原先生どうぞ。
○庵原委員 この薬は、海外では小児適応は持っているのですか。それとも、まだ成人だけですか。、吸排のところで小児はどのぐらい投与したら血中濃度がどのぐらいとかCmaxがいくらとかというデータがありましたので、一部の国では適応があるかという印象を受けたのですが、その辺りを教えてください。
○機構 用法・用量につきましては、米国の添付文書1.6.1の16ページにおいて「成人及び青年」とあり、13~16歳ということでの記載があります。
○吉田部会長 小児はありませんか。
○機構 適応としてはないようです。
○吉田部会長 今回、日本の場合も小児は適応としないということですか。
○機構 成人には、ということで考えております。
○庵原委員 先ほど言われた添付文書の1.6.1の3ページのTable.1では、小児の吸排のデータが出ているのですが、小児適応は認めていないということですか。
○機構 1.6.3の4ページにありますように、錠剤において小児で適応があるようですが、PCPという効能ではないようです。
○吉田部会長 わかりました。ほかにありますか。ないようですので、議決に入ります。
 なお、大槻委員、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題4に移ります。事務局から説明をお願いします。
○事務局 議題4、資料4「リルピビリン塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」医薬品医療機器総合機構が取りまとめております事前評価の報告書に沿って希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性、この3点について事務局より御説明いたします。
 まず、本剤の予定される効能・効果はHIV-1型感染症です。申請者はヤンセンファーマ株式会社です。対象患者数について御説明します。当省のエイズ動向委員会の資料によれば、2011年までのHIV患者の累積報告件数が12,866件、エイズ患者が5,900件、2010年5月までの凝固因子製剤による感染者は1,439件であったことから、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人未満を満たすものと判断しています。
 次に、医療上の必要性です。HIVは複製能が非常に高く、また高頻度で変異を起こすため、薬剤耐性ウイルスの出現が問題になっています。また、交叉耐性を示すことも多く、HIV治療において薬剤の選択肢を広げることは非常に重要です。本剤は非ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害薬です。HIV-1野生株及び既存の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬の耐性株に対しても活性を示しており、今後、本剤の有効性・安全性が検証されれば、医療上の必要性はあると判断しています。
 最後に、開発の可能性です。米国においては本年5月に承認、EUにおいては現在審査中という状況でして、開発の可能性はあると判断しています。以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点を検討した結果、本剤は希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと判断しています。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性、いずれも特段問題はなさそうに思いますが、皆様よろしいでしょうか。それでは議決に入ります。大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、議題5をお願いします。
○事務局 議題5、資料5「ストレプトゾシンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」医薬品医療機器総合機構の評価の報告書に基づいて事務局より御説明いたします。
 医薬品の名称はストレプトゾシン、予定される効能・効果は膵・消化管神経内分泌腫瘍です。申請者はノーベルファーマ株式会社です。
 希少疾病用医薬品の該当性について御説明をさせていただきます。1.対象者数ですが、2005年の全国実態調査では、有病患者数は人口10万人当たり約5.7人と報告されており、我が国の患者数は約7,299人と推定されています。以上から、本邦における推定患者数は指定要件の対象患者数5万人未満であり、指定要件は満たしているものと考えています。
 次に医療上の必要性についてです。現時点で治療の第1選択は外科的切除であり、切除不能又は根治切除が不可能な場合には化学療法が適応となりますが、国内においては膵・内分泌腫瘍等の適応を持つものがなく、本剤の医療上の必要性は高いと考えられます。
 続いて、開発の可能性です。海外では本剤を投与した場合に奏効率が機能性腫瘍で50%、また、非機能性腫瘍で63%であったことなどが報告されています。国内では現在、膵・消化管神経内分泌腫瘍の患者を対象にI/II相試験が実施中であり、本剤の開発の可能性はあると判断しています。以上の評価の結果、本品目は希少疾病用医薬品の指定基準に該当し、指定して差し支えないと判断しています。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。対象患者数の基準は満たしているということです。医療上の必要性についてですが、実はこの薬は40年ぐらい歴史がありまして、しかもその40年間ずっと有効性が示されていて、やはりこれしかないという場合もあって大変重要な薬ではあるのです。ようやく日本でも始まったかと、私個人的には大変感慨深いのですが。委員の先生方、何かコメントはございますか。よろしいですか。
 では、議決に入りたいと思います。大槻委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。ありがとうございました。
○清水委員 直接承認に関することではないのですが、この申請書を見て気がついたことがあったので、要望として一言発言させていただきたいのです。例えば、申請の概要のところを見ていただくと、「医療上の必要性」の8行目辺りにドキソルビシンの略語を「DOX」と略して記載をしています。事前審査報告書の中では、ドキソルビシンは「DXR」という略語を使っていらっしゃいます。昔、処方せんに係る医薬品名を略語で記載することは非常に危ないという議論をさせてもらったことがあるのですが、昨今、抗癌剤のレジュメを作る中で略語が使われている。多分主な腫瘍学会の中での使い方が「DOX」だったり「DXR」だったり、またこれはアドレアシンという商品名なので「ADR」と略語で使われたりすることもあって、気になるところでありますので、略語の在り方、適正な使い方というのでしょうか、そこのところにも注意を喚起していただければと思いました。よろしくお願いします。
○吉田部会長 ありがとうございました。続いて、議題6をお願いします。
○事務局 議題6、資料6「パゾパニブ塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」医薬品医療機器総合機構の評価の報告書に基づいて事務局より御説明いたします。
 名称はパゾパニブ塩酸塩、予定される効能・効果は進行性悪性軟部腫瘍、申請者はグラクソ・スミスクライン株式会社です。
 希少疾病用医薬品の該当性について、御説明をさせていただきます。対象者数ですが、平成20年の患者調査では、総患者数が約3,000人と推定されています。以上から、本邦における推定患者数は指定要件の対象患者数5万人未満であり、要件を満たしているものと考えています。
 次に医療上の必要性についてです。現時点で悪性軟部腫瘍の患者に対する一般的な治療は外科的切除であり、根治的切除は困難な患者又は再発リスクの高い患者では、放射線療法又は化学療法を補助的に併用する集学的治療が行われます。国内においては悪性軟部腫瘍に対する適応を有する薬剤は、ドキソルビシン及びイホスファミドのみであり、その治療効果は限定的であること、ドキソルビシン等に無効になった患者には使用可能な薬剤は存在しないことから、本剤の医療上の必要性は高いと考えています。
 開発の可能性についてですが、海外では再発又は治療抵抗性の悪性軟部腫瘍の患者を対象に、本剤の単独投与による第II相試験が実施され、投与12週後の無増悪率は平滑筋肉腫で44%、脂肪肉腫で26%、滑膜肉腫49%、その他悪性軟部腫瘍で39%との結果が得られています。国内では、固形癌患者を対象とした第I相試験において、単独投与時に忍容性が確認されており、また日本、米国、欧州等の13か国で実施された第III相国際共同試験では、本剤群で無増悪生存期間の優位な延長が認められています。以上の評価の結果、本品目は希少疾病用医薬品の指定基準に該当し、指定して差し支えないと判断しています。御審議のほどよろしくお願いします。
○吉田部会長 委員の先生方の御意見、御質問をお願いしたいと思います。
○大槻委員 皮膚科の大槻です。似たようなマルチターゲットのチロシンキナーゼ阻害薬が他にもたくさん出ている背景を考えると、悪性軟部腫瘍の治療がこの新規薬剤である必要は必ずしもないと考えてよろしいのでしょうか。例えば、スニチニブとか、ソラフェニブとか、ほかにもいままでトライアルがなされていることがもしあれば教えていただきたいのですが。薬効的にはVEGF、PDGFのレセプターを抑えるということで十分効くはずなのですが、もしお分かりになれば教えてください。
○事務局 他剤については、今、御回答できる正確な情報を手元に持っておりません。申し訳ありません。
○大槻委員 分かりました。あと、これはVEGFを抑えるので、カポジ肉腫とか、皮膚科領域では血管肉腫という比較的頻度が高くて致死的な肉腫があるのですが、そういうものに対しても有効性が期待できるように思うのです。それらに対しての開発は海外でも全くなされていないと理解してよろしいでしょうか。現在の開発状況についての記載の部分を見ると、特にそういう指摘がないのです。学内の倫理委員会の手続きは必要と思いますが、可能性を秘めたこのカテゴリーの薬剤を、皮膚科領域でも積極的に使っていく道が拓かれるのかなという期待がもてる気がします。これはコメントです。
○吉田部会長 最初の質問についてですが、今度の軟部腫瘍を対象にした分子標的薬剤というのは、私は初めてのような気がするのだけれども、ほかにありますか。あったら、教えてほしいのですが。
○事務局 事務局よりお答えいたします。以前、オーファン指定を御審議いただきましたトラベクテジンが、悪性軟部腫瘍のような形で進められていたかと思います。あと、mTOR阻害剤の一部品目で開発が進んでいるという公表情報を目にした覚えがございます。
○吉田部会長 という話からも分かるように、これは貴重な薬と言えそうです。ここでは競合品目なしになっていますが、ほかの疾病にも効く可能性が確かにあります。
 ほかに御意見はありますか。では、ないようですので、議決に入ります。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、報告事項の1~8まで、説明をよろしくお願いします。
○機構 報告事項議題1、資料8「医薬品エルプラット注射用50mg、同注射用100mg、同点滴静注液50mg、及び同点滴静注液100mgの製造販売承認事項一部変更承認について」御報告いたします。エルプラット注射用50mg、同注射用100mg、同点滴静注液50mg、及び同点滴静注液100mgの有効成分であるオキサリプラチンは、DNAと白金付加体を形成し、DNA合成を阻害することにより、細胞増殖抑制作用を発現すると考えられている抗悪性腫瘍剤でして、現在「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」及び「結腸癌における術後補助化学療法」を効能・効果として承認されています。
 今般、株式会社ヤクルト本社から「結腸癌における術後補助化学療法」の効能・効果に係る用法・用量を変更する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、エルプラット注射用50mg、同注射用100mg、同点滴静注液50mg、及び同点滴静注液100mgを承認して差し支えないと判断しました。
 なお、資料20の裏面ですが、事前に佐藤委員から御意見をいただきましたので、機構より御回答させていただきます。御質問は以下のような主旨です。申請者における用法・用量は、結腸癌における術後補助化学療法に対するFOLFOX4レジメンにXELOXレジメン、すなわち審査報告書3ページ、下から13行目以降の(2)を追記するというものでした。
 しかし、機構の審査の結果では、効能・効果の「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」と「結腸癌における術後補助化学療法」とで用法・用量を区別せず、現行の「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の用法・用量と同じ「他の抗悪性腫瘍剤との併用において」で始まる用法・用量が設定されています。
 その理由として機構は、審査報告書(1)の15ページ、(6)「用法・用量について」の項で、大腸癌領域の専門医が使用する前提であれば、進行・再発の結腸・直腸癌患者と同様に用法・用量において併用薬剤を限定することなく、本薬の用法・用量を以下のように設定することが適切であると判断したと説明しています。しかしながら、申請者の提案のようにFOLFOX4レジメン、XELOXレジメンとしての使用がはっきりと記載されていれば、大腸癌領域の専門医が使用することを前提としなくても間違える可能性を少なくできると考えることから、用法・用量について申請どおり設定した方がよいと考えます。
 この点に関して、これまで国内で本薬を治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌で使用した場合に、大腸がん領域の専門医が使用した際に用法・用量の間違いや、そのために発現した重篤な副作用の報告の有無、及び大腸癌領域の専門医ではない医師が使用したことで発現した重篤な副作用の報告の有無について説明してほしい、という御質問でした。大腸癌領域の専門医か否かを区別して本薬投与により何らかの副作用が生じているかなど、個別の症例に対する情報に直ちに当たるのは困難な状況でした。佐藤委員からいただいた御質問に対する直接な回答にはならないのかもしれませんが、本剤の承認後に得られました製造販売後の安全性情報から、本剤は安全性上大きな問題はなく適切に使用されているものと考えています。
 なお、御参考までですが、日本医療機能評価機構による直近2年の医療事故の事例を調べてみたところ、大腸癌領域の専門医が本薬の用法・用量を間違えるなどの事例は見当たりませんでした。これらのことから、資材等により有効性・安全性が確認された臨床成績を情報提供することで、適切な使用が図られるものと考えています。
 なお、御指摘いただいた併用薬剤に関する情報についても、資材等を用いて適切に情報提供するよう申請者に指導します。
 続いて、報告事項議題2、資料9「医薬品ハーセプチン注射用60及び同注射用150の製造販売承認事項一部変更承認について」御報告いたします。本剤はHER2に対するヒト化マウスモノクローナル抗体であり、HER2に特異的に結合し、ナチュラルキラー細胞及び単球を作用細胞とした抗体依存性の細胞障害作用等を惹起することにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている抗悪性腫瘍剤です。現在は「HER2過剰発現が確認された転移性乳癌」、「HER2過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法」及び「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌」の効能・効果で承認されています。
 本剤については、医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年4月28日に開催されました本部会における事前評価を踏まえて、中外製薬株式会社から、「HER2過剰発現が確認された乳癌における術前補助化学療法」の効能・効果及び用法・用量を追加し、また「HER2過剰発現が確認された転移性乳癌」の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断しました。
 続いて、報告事項議題3、資料10「医薬品サンドスタチンLAR筋注用10mg、同LAR筋注用20mg、及び同LAR筋注用30mgの製造販売承認事項一部変更承認について」御報告いたします。本剤は、持続性のソマトスタチンアナログであり、VIP、ガストリンなどの種々のホルモン分泌を抑制すると考えられており、現在は「消化管ホルモン産生腫瘍に伴う諸症状の改善」及び「先端巨大症・下垂体性巨人症における成長ホルモン、ソマトメジン-C分泌過剰状態及び諸症状の改善」の効能・効果で承認されています。
 本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年4月28日に開催された本部会における事前評価を踏まえまして、ノバルティスファーマ株式会社から、「消化管神経内分泌腫瘍」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断しました。
 続いて、報告事項議題4、資料11「医薬品パラプラチン注射液50mg、同注射液150mg、及び同注射液450mgの製造販売承認事項一部変更承認について」御報告いたします。本剤は白金錯体化合物の抗悪性腫瘍剤でして、現在は「頭頸部癌、肺小細胞癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮頸癌、悪性リンパ腫、非小細胞肺癌」及び「小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法」の効能・効果で承認されています。
 本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年4月28日に開催されました本部会における事前評価を踏まえて、ブリストル・マイヤーズ株式会社から、「乳癌」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断しました。
 続いて、報告事項議題5、資料12「医薬品ジフルカン静注液50mg、同静注液100mg、同静注液200mg、ジフルカンカプセル50mg、及び同カプセル100mgの製造販売承認事項一部変更承認について」御報告いたします。フルコナゾールは、真菌のエルゴステロール生合成を阻害することで抗真菌作用を有するアゾール系の抗真菌薬です。
 本邦で臨床上問題となる深在性真菌症は、一般に重篤な感染症でして、発症後は小児及び成人において致命的な転帰をたどることも多い疾患で、例えば造血幹細胞移植患者など免疫機能が低下した患者に好発します。
 また、小児の適応を有しています抗真菌性は、ポリエンマクロライド系のアムホテリシンBの内服剤、及びキャンディン系のミカファンギンナトリウムの静注剤のみでして、アムホテリシンBの内服剤は消化管カンジダ症以外には有効性が期待できず、ミカファンギンにおいてはクリプトコッカス属による真菌症の適応を取得していないこと、及び経口剤が存在しないことから、外来治療が困難となっています。一方、本薬は、アゾール系抗真菌薬であること、静注剤に加えてカプセル剤があること、及び消化管以外の真菌感染症の治療及び予防に有効です。
 本薬は、小児の真菌感染症に対する治療薬及び造血幹細胞移植患者における深在性真菌感染症の予防薬として、各種学会診療ガイドライン及び成書等で推奨されており、国内外での使用実績がありますことから、「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において公知申請への該当性に係わる報告書が取りまとめられ、平成23年4月28日に開催されました本部会における事前評価を踏まえまして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、資料12に記載しました効能・効果及び用法・用量において承認して差し支えないと判断しました。以上です。
○事務局 続いて、報告事項議題6、資料13「優先審査指定品目の審査結果について」事務局より御説明いたします。こちらの医薬品の名称はインライタ錠、予定される効能・効果は根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、申請者はファイザー株式会社です。
 4ページ以降に優先審査の対象とする医薬品の考え方をお示ししていますが、希少疾病用医薬品のほか、適応疾病の重篤性と医療上の有用性等を総合的に評価して選定されています。5ページ「1.適応疾病の重篤性」については、申請された根治切除不能又は転移性の腎細胞癌は、生命に重大な影響がある疾患に該当すると考える、とされています。「2.医療上の有用性について」は、腎癌に対して効能・効果を有する既存の薬剤としてインターフェロン、テセロイキン、スニチニブ、ソラフェニブ等があり、一次治療で選択されなかった薬剤が二次治療として選択されることから、既存の治療法等はあるとしています。
 「イ有効性」については、一次治療が無効となった転移性腎細胞癌患者を対象に、非盲検無作為化比較試験が日本を含む22か国で実施されており、主要評価項目とされた無増悪生存期間の中央値は本薬群6.7か月、ソラフェニブ群4.7か月であったが、全生存期間の中央値は観察期間が不十分なため推定できず、現時点では本薬の全生存期間への寄与は不明です。
 5ページの下からですが「安全性について」及び「肉体的・精神的な患者負担について」の観点からは本薬は忍容可能と考えられますが、既存の治療法に比べ優れているとは判断できないと考えています。以上、6ページですが、総合的に判断して、本申請は優先審査に該当しないと判断し、通常の審査を行うことが適当と判断しています。以上です。
○事務局 続いて、報告事項議題7、資料14「医療用医薬品の承認条件の解除について」事務局から御報告いたします。販売名はバリキサ錠450mg、一般名はバルガンシクロビル塩酸塩、承認取得者は田辺三菱製薬株式会社の承認条件の一部解除について御報告します。1ページを御覧ください。本剤は、平成16年11月に後天性免疫不全症候群におけるサイトメガロウイルス感染症の効能で承認されており、その後平成21年5月に造血幹細胞を含む臓器移植の患者におけます効能が追加されています。その際、この承認条件の項に示しています条件を付した上で承認がなされました。
 今般、この造血幹細胞移植を含む臓器移植の患者に対して、下線部の承認条件の2に基づき前例調査の結果が提出されたことから、医薬品医療機器総合機構が提出資料の審査を行いました。目標症例数を150例として調査を開始したところ、2010年4月末までに312例が登録され、そのうち安全性解析対象が287例、有効性安全解析対象が279例として評価が行われました。
 7~8ページの「III.総合評価」を御覧ください。医薬品医療機器総合機構において提出された資料について審査を行いました結果、安全性については白血球減少の副作用が多く報告されていること、減量用法に比べて通常用量において副作用の発現が高くなる傾向が認められること、ガンシクロビルの点滴静注製剤からの切り替え症例において重篤な副作用が発現していることにより、今後も適切な情報収集、情報提供の継続は必要と考えるものの、新たな対応が必要になるような問題は認められませんでした。有効性についても、特段、対応が必要になる問題は認められませんでした。そのためこの臓器移植に係る承認条件2については、解除しても差し支えないものと判断しましたので、御報告します。以上です。
○機構 報告事項議題8、資料15-1、15-2、15-3「医療用医薬品の再審査結果について」まとめて御報告いたします。これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。
 資料15-1、一般的名称はビアペネム、販売名はオメガシン点滴用0.3g、同点滴用0.3gバッグ、及びオメガシン皮内反応用セット。
 資料15-2、一般的名称はザナミビル水和物、販売名はリレンザ。
 資料15-3、一般的名称はリトナビル、販売名はノービア内用液8%、及びノービア・ソフトカプセル100mgです。
 これらの品目について、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はないカテゴリー1と判定したものです。以上です。
○吉田部会長 委員の先生方からの質疑応答ですが、議題1のエルプラットに関して、佐藤先生、コメントはありますか。
○佐藤委員 前回の部会で、余り細かく決めてしまうと使い方に困る、というお話がありましたが、一方で安全対策を考えますと、やはりきちんと用法・用量と使用方法が明示されている方が確かにいいと思います。特に昨今、そういう状況が起こらないという想定のことが我が国で次々と起こっているわけですので、できるだけ安全対策も考慮した上で用法・用量、使用上の注意の記載をお願いしたいと思います。
 一つだけお願いしたいのですが、副作用報告について、申請者に何か情報を持っていないかという確認はされていますでしょうか。
○機構 機構からお答えします。申請者の方に再度確認しまして、現時点で自発報告の例になりますが、重篤な副作用報告は確認されてないという回答を得ています。
○佐藤委員 分かりました。ありがとうございます。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにありますか。よろしいですか。それでは、報告事項については御確認いただいたものとします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か御報告はありますか。
○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように12月1日(木)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いします。
○吉田部会長 長時間お疲れ様でした。本日はこれにて終了とさせていただきます。ありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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