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2012年1月17日 第5回 足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会議事録

労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室

○日時

平成24年1月17日(火) 17:00から19:00


○場所

厚生労働省 専用第15会議室


○出席者

検討会参集者

臼井伸之介
大幢勝利
小林謙二
田村幸雄

厚生労働省

田中正晴 (安全課長)
中屋敷勝也 (建設安全対策室長)
釜石英雄 (主任技術審査官)
船井雄一郎 (技術審査官)

○議題

足場からの墜落防止措置の効果の検証及び評価について

○議事

○事務局(山口) ただいまから、第5回足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会を開催いたします。私は、本日司会を務めます厚生労働省建設安全対策室の山口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 はじめに、傍聴の皆様に向けて注意事項を何点かご説明します。アラーム付きの時計、携帯電話、ポケットベル等の音の出る機器については、音の出ないようにお願いします。写真撮影やビデオカメラ等の使用についてですが、カメラ撮りは会議冒頭までとさせていただきます。会議場における言動に対して賛否を表明し、又は拍手を送ることはできません。静粛を旨とし、会議の妨害となるような行為は慎んでください。その際は事務局職員の指示に従っていただきますようお願いいたします。
 それでは検討会の開催に当たり、田中安全課長より挨拶を申し上げます。
○田中安全課長 本日、委員の先生方にはお忙しい中、夕刻の5時という遅い時間にご出席いただきまして、本当にありがとうございます。また、常日頃からの労働安全衛生行政の推進へのご協力に対して、重ねて御礼申し上げます。
 委員の先生方には、平成21年に改正した労働安全衛生規則や関係通達に基づく、足場からの墜落防止措置の効果について、昨年度、業界関係者からのヒアリングも含めて4回にわたりご議論いただき、報告書として取りまとめていただきました。厚生労働省としてはこの報告書の内容を踏まえて、労働安全衛生規則に基づく措置の徹底に加え、手すり先行工法等、より安全な措置の普及に努めております。特に支援ということでは、委託事業においても手すり先行工法等の普及に支援を行っています。そういう中で、足場からの墜落・転落災害の防止に努めてきたところです。
 昨年度は平成21年度分の評価をいただきましたが、今回は平成22年度に発生した足場からの墜落・転落災害を対象として、死亡災害だけではなく、休業災害も含めたデータについて検証・評価を行っていただきます。昨年度ご議論いただいた先生方の視点に基づき、事務局において報告書案をまとめておりますので、ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
○事務局(山口) それでは議事に移ります。なお、報道関係者の皆様におかれましては、カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。以後の進行を、座長の小林委員にお願いします。
○小林座長 第5回ということで、かなり前のことですので、委員の皆様もいろいろと記憶を新たにしていただかなければいけないのかなと。議事の第3番目にある、これまでの検討の経過について、事務局からご説明いただきたいと思います。
○船井技術審査官 まず説明に入る前に、資料の確認をしたいと思います。まず座席表があり、その後ろに「議事次第」と書かれた裏表の一枚紙があります。その後に資料が1から4まであります。資料1と2はそれぞれ一枚紙で、資料3が分厚いもので報告書【平成22年度発生分】(案)となっております。最後にまた一枚紙で、資料4となっております。
 まず、これまでの検討経緯ということで、おさらい的な部分になります。資料1に、本検討会の開催要綱を添付しております。1の「目的」の部分から確認いたしますと、平成21年に足場からの墜落災害の防止対策の強化を図りました。それに加えて規則の実施に合わせ、平成21年4月に発出した部長通達の中で「より安全な措置」を進めていこうということをお願いしています。また、この通達には、「足場からの墜落災害について、負傷災害を含め毎年データを蓄積・分析し、その結果を示すとともに、改正省令の施行後3年を目途に、改正省令等の措置の効果の把握を行い、必要があると認められるときは、その結果に基づき所要の措置を講ずる」という方針が表明されているところです。
 この検討会はこの方針に基づき、足場からの墜落・転落災害について蓄積・分析したデータを基に、改正省令等の効果の検証・評価を行っていただくという趣旨で開催したものです。委員の皆様にお集まりいただいて、資料2にありますとおり、平成22年度においては8月25日に第1回目を開催したのを皮切りに、全部で4回の会議を開催しました。第1回は設置の趣旨及びフリートーキングをいたしました。そのフリートーキングの中で、足場からの墜落防止措置の効果を検証・評価するに当たっては、やはり足場のユーザー、足場機材を供給するメーカー、もしくは実際に足場上で作業をする人、又は組立作業に従事する人のお話を聞いた上で、検証・評価する必要があるのではないかというご議論がありました。中でも、足場のメインユーザーである建設業界の皆様にお集まりいただき、ヒアリングをやるべきではないかという議論がありました。
 その議論を踏まえて第2回、第3回において、それぞれヒアリングをやっております。第2回においては住宅関係の業界の方々、及び建設業のゼネコンの元請関係の方々にお集まりいただき、お話を伺いました。第3回は専門工事業者、協力会社の業界の方、もしくはその関連の労働者の方々にお集まりいただいてお話を聞きました。それに加えて、足場の供給サイドであるメーカー、リース関係の団体からも話をお伺いしたという経緯がありました。
 これらのヒアリングを踏まえて、第4回では報告書案について議論をして、報告書として取りまとめて1月に公表しました。報告書は委員限りで冊子にした昨年度分のものをお配りしております。今年度はこれと同じような形で、平成22年度分についてご議論いただきたいということで、資料3と4として事務局案を準備しております。これまでの検討経緯については以上です。
○小林座長 平成22年度は平成21年度分の災害の状況を基にして、ご報告・ご検討をいただきました。その検討をしつつ、各業界団体、実際に現場で働いている方たちのご意見を、具体的な形で細かい話を伺いながら、できるだけ実情に即した形で評価・検討を行おうとして、いまご説明いただいたような経緯で評価・検討を行ったわけです。
 今回は、現場に近い方のお話を伺うことはしておりませんが、現場の状況、災害の状況の評価・検討結果をそれとほぼ同じように事務方でとしてまとめていただきました。委員の先生方にはそれを12月中にお送りしてお目通しいただいて、ある程度のご意見をいただき、いまご説明のあったような形でドラフトをお配りしています。さらに、本日はいろいろな形でご意見を伺うとともに、実質化に向けてのご意見もフリートーキングでお願いすることになろうかと思います。今回ご検討いただいた結果については頁数が多いものですから、事務局からある程度区切りながらご説明いただきます。少しずつ、その場で聞いておいたほうがいいようなこともありましょうから、ご質問いただいて、後でまとめてフリートーキングという形で、ご意見をいただきたいと思っております。では、事務局からお願いします。
○船井技術審査官 資料3をご覧ください。「足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会報告書【平成22年度発生分】(案)」という資料を準備いたしました。昨年度は、4回にわたり、委員の皆様に業界団体もしくは労働者からヒアリングをしていただき、それを踏まえて、いろいろな分析、評価・検証に当たっての観点が示されました。それを踏まえて平成21年度の報告書をまとめたわけですので、今回の報告書案は、その視点を忠実に踏まえた形で、事務局案として平成22年度分をまとめたものです。
 目次の構成は、前回と全く変わっておりません。添付資料は別添1~4まであり、こちらにあるようなものを付けております。
 1頁の第1に「はじめに」というのがあります。これは設置要綱でご説明したとおり、規則改正に合わせて発出した部長通達に基づいて、毎年データを蓄積・分析し、その結果を明らかにする、効果の検証を行うという方針が示されております。今回は2年目という形でやらせていただいております。昨年の1月に報告書を取りまとめた際に出ている結論としては、3パラグラフ目の「その結果」をご覧になっていただくと斜体になっております。「安衛則に基づく墜落防止措置の効果は高いと考えられる、したがって直ちにその強化を図る必要はないけれども、安衛則に基づく墜落防止措置の徹底を図るとともに、その労働災害防止効果について継続して検証を行うことが適当」という方針に基づいて、今回はやらせていただいているわけです。この報告書では平成22年度に発生した、足場からの墜落・転落災害を対象としております。
 第2に、「足場からの墜落防止措置の実施状況及び労働災害発生状況について」です。平成21年に規則が施行されて、その結果、どういう普及状況になっているのかという実態調査を行っております。前回の報告書のときにもやっているのですが、それと同じような形で、今回は「6,433現場」を対象に実態調査を行っております。調査結果の詳細については別添3に付けていますが、省略させていただいて、主たる部分の抜粋版を2頁目と3頁目にまとめました。
 まず2頁の(1)をご覧ください。これが安衛則第563条第1項第3号に基づく措置ということで、足場の作業床に設けるべき手すりとか、中さんなどの措置の状況についてチェックしたものです。今回の調査結果では6,433現場のうち約75%の現場において、これらの措置が実施されていたことが明らかになっております。ただ、前年度に実施した結果については右側にグラフがありますように、この割合が約92%だったということで、ポイントとしては少し低下しています。
 この調査対象とした現場というのは、我々行政が監督指導なり個別指導なりで、実際に現場に立ち入って指導させていただいた際の結果をまとめたものですので、基本的にそれらの対象というのは、問題のありそうな所に指導に行くというスタンスでやっております。ですから、この数値が全国津々浦々の平均値を表すものでは必ずしもないということは、ご了承いただければと思います。とはいえ、その結果のポイントは少し下がっておりますので、安衛則に基づく措置をさらに徹底させる必要があるのではないかと考えております。
 (2)が「手すり先行工法の採用状況について」です。こちらも6,433現場を対象にしてチェックしたところ、全体の約31%において採用されていたということです。この数字は前年と全く同じ数字になっております。あと、「手すり先行工法」がメインで使われている「わく組足場」について見たものが、右側の頁にあります。42.6%ということで、少し普及率が上がっています。とは言え、数字だけを見れば横ばいに近い状況ではありますので、引き続きその普及に努める必要があるのではないかと考えております。
 3頁の(3)の「足場の点検の実施状況について」も、実施率は74%ということで、一部未実施、完全にはやっていないけれども、やっているという部分も含めますと、約83%という状況でした。こちらも前年度と比較すると、割合は少し下がっております。したがって規則に基づく墜落防止措置の徹底と合わせて、点検の実施についてもさらに徹底を図る必要があると考えています。いま申し上げたのが実施状況です。
 そういった実施状況のもと、実際の建設現場や建設以外の現場でも、いろいろな足場を使って作業をされているわけです。そういった現場における災害の発生状況がどのようになっているかをまとめたものが、2の(1)です。こちらは経年で表に推移を表しております。平成21年度と平成22年度が今回、この検討会で対象にしたものです。具体的には「足場から」というのが、いちばん下の四角にあります。平成21年度で言えば828件、平成22年度で言えば718件という数値が、今回もしくは前回分析対象にしていただいた数値です。この数値は、災害が起きた場合に労働安全衛生法に基づいて「労働者死傷病報告」というものを事業者に提出していただくことになっており、その記載を基に分析していこうということで、この件数をカウントしております。
 表で経年的に見ますと、長期的には減少傾向にあります。墜落・転落災害のうち、足場からによるものも含めて、全体の件数自体は減少傾向にあることが分かっております。ただ死亡災害については、平成21年度と平成22年度を比較しますと、29人から39人ということで増加している状況です。平成22年度の状況を見ますと、橋梁の塗装や補修などの際に、橋の下に囲うようにして使うつり足場「」というものがありますが、それを組み立てたり解体する際の災害が、例年よりにいう状況がありました。
 (2)が今回、分析の対象にした718件のうち、発生業種についてどのような状況になっているかを、前回同様分析したものです。その結果、約9割が建設業で発生していることがわかっております。死亡災害についても同様に、9割ぐらいを建設業が占めています。建設業の中でも、一般に「ビル建築」と言っている鉄骨・鉄筋コンクリート造建設工事と木造家屋建築工事の2つで、5割以上を占めているという状況があります。これは前回と同じような傾向となっております。
 5頁ですが、今度は墜落箇所の高さで見た場合です。労働安全衛生法上の規制の1つの線引きとして、高さ2mというのがあります。2m以上か未満かというので分けたものがこちらの表です。大体6対4で、2m以上の箇所から落ちて被災しているという状況がわかりました。ただ、全体の件数は6対4ぐらいですが、死亡災害について見ると、2m以上の場所に集中して発生しているという状況がわかりました。
 あと、墜落時の作業についてです。安衛則上、規制がかかっていない2m未満を除いた449件について見ますと、下の表にありますように、組立・解体時におけるものが3割ぐらいで、通常作業時、つまり組み立てられた足場の上で作業をしているものが5割弱という状況になっておりました。少し目立つのが、組立・解体時の最上層からの墜落です。これが全体で100件あるのですが、そのうち死亡災害が12件ということで、全体の割合に比べると、死亡災害が発生する割合が少し高くなっているのではないかと。こちらは主に件数などをまとめた概括的なものですので、説明だけにさせていただきます。もし、こちらで質疑等がありましたら、後でまとめてやっていただければと思います。こちらは基本的に前回やったものに、平成22年度の数値をそのまま落とし込んだ形になっておりますので、ご了解いただければと思います。
 6頁からが足場からの墜落防止措置の災害防止効果についての検証・評価ということで、本題に入っていきます。まず第3の柱書きに書いてあるのが、分析に当たっての視点です。こちらも前年度と同様の視点でやっております。簡単に申し上げますと、安衛則上の墜落防止措置の規制のかかっている、高さ2m以上の箇所からの足場の墜落災害のあった449件を、基本的に分析の対象としております。分析対象については墜落防止措置だけではなくて、墜落時の作業の状況や不安全行動といったものも含めて分析しました。前回、不安全行動の範囲をどう捉えるかということで、だいぶご議論がありました。それを踏まえた形で、今年度も同じような視点でやらせていただいております。
 あと、足場からの墜落・転落災害を分析する上でポイントとなるのが、足場を組み立てているときに、いちばん上にいる状態です。まさに自分がいる場所の手すりなどを付けている状態と、すでに組み立てられた足場の上で作業をしている状態ということで、法令上の規制も異なっておりますので、分析に当たってもそれらを分けて分析することにしました。以降、その方針に基づいてまとめたております。まず大きな1番として、「組立・解体時における足場の最上層からの墜落・転落災害について」ということで、いくつかの視点で分析しております。1つ目の視点は、最上層において組立・解体をやっているときは、安全帯などを使用するように法令上義務付けておりますので、それらの措置がどのような状況であったかというのをまとめたのが、1の(1)です。(1)のアとして、災害発生状況について分析したところ、これに該当する災害が全部で100件ありました。そのうち92件が、法令に定められた措置をやっていなかったものです。逆に引き算をした8件については、法令に基づく措置を実施していたにもかかわらず被災してしまった事案です。これらの状況をまとめたのが7頁の上の表です。いちばん上の段が規則に基づく措置を実施していたもので、8件、それ以下の段が規則に基づく措置が不十分であったもの、もしくは全く実施していなかったものということで、合計92件となっております。これを不安全行動があったのか、もしくは床材や手すりの部材等の緊結不備、構造上の問題があったのかという観点でクロス集計した表がこちらです。その結果、問題となるのがいちばん上の8件です。規則に基づく措置をやっていたにもかかわらず、被災したものについて見ますと、8件のうち6件に床材の緊結不備等の問題がありました。逆に、残りの2件は構造上の問題や不安全行動が、労働者傷病報告の記載からは認められなかったものです。それが6頁の下に書いてある2件です。7頁から8頁にかけて表があります。そこに掲載されているもののうち、「不安全行動等なし」と記載された事案です。この2件はいずれも安全帯を着用していたのですが、墜落した際に安全帯のロープが破断してしまったり、安全帯について定められた方法ではない付け方、誤った着用方法をしていたので、墜落の衝撃で安全帯が破断してしまい、ベルトが抜け落ちてしまったりといった事案でした。
 それ以外の6件については、いずれも床材の緊結不備等が認められたということです。7頁から8頁にかけて掲載している表を見ていただきますとわかります。例えば上から2番目の事案でしたら、「手すりに足をかけた状態で資材の受け渡しをやっていたところ、手すりを止めていたクランプが外れて、手すりごと落ちてしまった」というような、機材が破損したようなものも含まれております。
 上から3つ目は床材の緊結不備ということで整理するのか、不安全行動ということで整理するのかが悩ましいところでした。「足場の組立作業をしていた際、金具を足で踏みつけて取り付けようとしていた」という、ちょっと不安全行動的なものが見られました。その結果、「控えの単管が外れ、足場板とともに落ちてしまった」ということで、両方の要素が入っているのです。どちらかと言うと床材の緊結不備等に近いのではないかということで、そちら側で整理しております。そのほかに8頁の3件についても、いずれも同じような状況です。
 あと1点ご注意いただきたいのが、8頁の表のいちばん下にある事案については、張出し足場の解体作業中に足場が倒壊してしまったものです。これは右側の四角を見ていただくと分かりますように、1つの災害で2人がけがをしております。したがって7頁から8頁にかけての表は、全部で四角が7つですが、いちばん下の四角で2つカウントしておりますので、8名ということでご留意いただければと思います。
 こういった事案を踏まえて、足場からの墜落防止措置の効果と今後必要な対策について、昨年度の報告書と同様の視点で結果をまとめたのが、8頁のイもしくはウです。
イですが、100件中8件が安衛則に基づく措置を実施していたにもかかわらず被災したものです。ただ、このうち不安全行動などがなかったにもかかわらず、被災した事案は2件でした。このことから、規則に基づく措置の災害防止効果は高いのではないかと考えております。
 2ポツ目ですが、安衛則に基づく措置を全く実施していなかった事案について、不安全行動の有無を見ると、3分の2程度は不安全行動がなくても災害に至っています。逆に措置を講じていた事案については、不安全行動がなかったにもかかわらず起きたものは8件中2件ですので、約25%です。したがって、措置の有無によって不安全行動がなかった場合における災害に至る割合というのは、だいぶ変わっております。このことからも、規則に基づく措置の墜落防止効果が高いのではないかということが言えると思います。
以上により、組立・解体時の最上層における墜落防止措置については、直ちに強化する必要はありませんが、引き続き規則に基づく措置の徹底を図ることが重要ではないかと考えられます。
 それに加えて、その徹底を図る上での留意点としては、しっかりと適切な作業計画を作ったり、これに基づく作業を徹底することによって、床材の緊結不備、今回認められたような事案などがなくなるのではないかと考えられます。あと、今回見られた「安全帯の使用方法の誤り」や「安全帯の破断」については、雇入れ時教育や朝礼時のミーティング等で、安全帯の正しい着用方法などをしっかり教えていただく。また、安全帯はずっと腰に付けたままで作業を行うことが多いので、劣化したり、へたったりすることもあります。こちらも安衛則に基づいて、作業主任者の職務として明確に位置づけられておりますので、不良品を取り除いたり、点検を徹底していただくことによって防げる災害もあるのではないかということです。これも安衛則に基づく墜落防止措置を徹底していくことが重要ではないかと考えております。それでは一旦、組立・解体時の最上層の措置で切らせていただきます。
○小林座長 8頁までで、ご質問その他ご意見はありますか。
○田村委員 今ここでおっしゃる最上層というのは、全体の最上層という意味ですか,足場を組んでいる段階での最上層ですか。
○船井技術審査官 はい。組立て、解体を行っている時点においての最上層です。
○小林座長 作っている最中ですよね。
○船井技術審査官 はい。
○田村委員 そうすると、1層目でも最上層になる可能性もあるということですか。
○船井技術審査官 論理的にはそうです。
○大幢委員 安全帯が切れたというのが、昨年度もあったのではないかと思いますが。
○船井技術審査官 昨年度には実は1件ありました。委員の皆様にお配りしている報告書で言いますと、6頁にあります。足場の組立作業において、巻上げ機で揚重した足場の交さ筋かいを取り込む作業中、交さ筋かいとともに墜落したもので、安全帯を使用していたが、ロープ部分で破断してフックが縦わくに残っていたというものです。これとほぼ同様の事案が、今回の報告書の7頁のいちばん下の四角にあります。
○小林座長 5頁の下の表ですが、組立・解体と通常作業というのがあります。これは足場の組立・解体ですか。足場の通常作業ということですよね。
○船井技術審査官 足場上での作業というのは、組立・解体をしているときと、それ以外とにまず分けます。通常作業というのは、足場の上で何かの作業をしているということです。
○小林座長 足場の上で足場を組み立てるための仕事ではなくて。
○船井技術審査官 そうはい。まず、足場の上で組立作業をしているものの中には、足場のいちばん上で組立てしているものというのがあります。これが組立・解体時のうち、最上層からの墜落ということで100件ありました。そうではなく、下のほうで組立作業をしている部分、もしくは資材の受け渡しのために足場から手を出しているものが39件です。
○小林座長 資材の受け渡しはわかるのですが、例えばそのほかに何がありますか。
○船井技術審査官 そのほかに、足場を組む手順にもいろいろあります。本来であれば、組んだ段階で完全な墜落防止措置をしっかりやった上で、どんどん上に行くことが望ましいのですが、まずは大まかな骨組みの部分、構造の部分だけをパッと組んでしまい、例えば、その後に下さんなどを追加するというような実態もあります。
○小林座長 それは「組立て」とは言わないのですか。
○船井技術審査官 それは、組立作業には違いありませんが、集計上は、「組立・解体時の最上層以外」ということになります。
○中屋敷建設安全対策室長 通常作業時というのは、足場を使って壁にペンキを塗ったりするような時のことですね。
○小林座長 いわゆる建築作業のことですね。
○船井技術審査官 通常作業というのは、組立・解体以外の作業一般ということです。
○大幢委員 足場を使う、足場を立てる本来の目的の作業ということですね。
○船井技術審査官 足場を本来の目的として使っているということです。
○大幢委員 平成22年度ということは、平成22年4月から平成23年3月という理解ですね。
○船井技術審査官 はい、そういうことです。
○大幢委員 通常、平成22年ということで一般的にはよく報告されていますが、それとは違うということですね。
○船井技術審査官 それとは違います。この報告書の対象は、あくまでも年度単位でやらせていただいております。その趣旨というのが、昨年度の第1回検討会でもご議論いただいたのですが、規則の施行が平成21年の6月からだったということを踏まえてのものです。その効果を年単位で捉えていくときに、2カ月ほどずれるのですが、年度単位で捉えていたほうが適切ではないかというご議論を踏まえてのものです。
○田村委員 平成18~22年度までの表の中で、「全体」というのと「うち、足場から」というのがありますね。この「全体」というのは、全産業における労働災害の発生件数ですよね。
母数としての足場の作業そのものの年度ごとの件数の情報というのはあるのですか。そういうものはないですか。
○船井技術審査官 そういうものはなかなか把握しづらいですね。今回は災害が起きたもので分析しているのですが、そういうものがあると、逆に災害が起きなかったものがどうなのかというパッシブな分析ができるのでしょうけれども。
○田村委員 数だけでもないのですか。
○船井技術審査官 現場数みたいなものですか。
○田村委員 ええ。減っているか増えているかという割合ぐらいのものです。その割合が改善されていれば効果があると言えるのでしょうけれども。
○船井技術審査官 建設関係で言えば住宅の着工戸数とか、マンションの戸数というのがありますが、それはごく一部でしかなくて、土木の現場などでもいろいろ使われておりますので、額で見たときにどれぐらい足場の作業があるかというのは、なかなか割り出せないですね。例えば、完成工事高というようなデータもありますが、一応前年度にやる際に、そういうこともいろいろ視野に入れたのですが、正直なところ、なかなか難しい部分がありました。
○田村委員 先ほど計算してみたのですが、少なくとも平成18年度と平成22年度は、全体の件数に対する足場の事故の件数や比率は、変わっていないということですよね。
○船井技術審査官 今おっしゃったような計算で言うと、割合はだいぶ違いますよね。
○中屋敷建設安全対策室長 3分の2くらいにはなっています。
○船井技術審査官 割合としては下がっています。
○田村委員 私の計算が間違っていたのですね。わかりました。
○小林座長 いまのサンプルと言いますか、母数と関連しているのですが、初めの立入り検査の話です。前回も同じような話をお聞きしたかと思うのです。先ほどのお話では、立入り検査というのは問題のありそうな所に行うというお話ですよね。そういうことで、これにはある種の偏りがあると見てよろしいですか。
○船井技術審査官 実際の普及率の調査という観点で、統計的にギリギリ言えば、偏りがあると言わざるを得ないですね。対象選定自体が、行政が指導に入るという部分で選んでいますので、厳密に言うと普及率の実態調査としてはちょっと偏りはあります。
○小林座長 例えば、どちらかと言うと少な目に出ているということになりますか。
○船井技術審査官 要は実施率が悪く出ているということですよね。実際に対象選定をする現場としても、何か問題があるだろうというところで入るという点以外にも、現場の把握などの問題もあります。行政がどこでどういう現場をやっているかを把握することにおいては、何か情報があれば小さい現場でも把握できますが、そうでなければいろいろ出てきた届出などから選びます。規模のような話もあって、規模によって措置がしっかりやられている割合が高かったりしますので、両方の観点を踏まえると何とも言いがたい部分があります。
○臼井委員 本来であれば全数調査になるのでしょうけど。ただ、それは当然無理でしょうから。
○船井技術審査官 無作為抽出みたいなもの。
○臼井委員 そういった意味では、普及率が下がるというのは全然構わないと言ったら変ですが、問題のある所へどんどんやっていけばいいと思うのです。ただ、ランダムサンプルではないけれども、無作為に出してその報告でも。それは難しいかもしれませんが、そんなもので普及率を推定するということはあまり意味がないですか。現場に行くのではなくて、やっているかどうかを。
○船井技術審査官 我々が調査をするに当たっては、通信でアンケート表を送って「やっていますか」というのだと、措置の効果・検証という位置づけの1つとしてやる分には、ちょっと不正確かと思います。やはり実際に現場に行って、どうなのかというのを見る必要があるのではないかということで、対象選定においては若干の偏りが出るかもしれないけれども、実際に現認するという視点を第1にやらせていただいています。
○臼井委員 もちろん、それはいいと思います。ただ普及率を把握するという意味では、そういうものも1つの手かと思います。
○船井技術審査官 おっしゃるとおりだと思います。
○小林座長 今の話に関連しますが、バックデータとして今ここにあるのは、任意に立入り検査をしたということしかないのですが、例えば平均していろいろな規模を表す数字があるかと思います。施行の平均の金額や平均の請負高、あるいは足場の使用面積とか、何らかの形のものはありませんか。
○船井技術審査官 発注者の区分というのは、ここに書いてあるとおりですが、そこまで細かく取っていなかったので、今あるデータから掘り下げるのは少し難しいです。実態調査については引き続きやることを検討しておりますので、その中の視点に今いただいた議論も踏まえて、規模なども含め、もうちょっと細かく見られるような視点をということですね。それは検討させていただきます。
○田村委員 先ほどは計算を間違えて、同じだと言いましたが、明らかに、かなりきれいに下がってはいるのです。平成21年、22年は明らかに下がっている。全体の発生件数に対する足場災害の比率は、数字ではなくてグラフなどで表すと、もうちょっとビジュアル的にわかるかもしれないですね。少なくとも比率で出すといいかと思います。
○船井技術審査官 比率については2の(1)の2ポツ目で、「墜落・転落」に占める割合というのを全体の合計値で何パーセントとやっていますが、グラフで推移を入れる方法を考えてみます。
○田村委員 直接的な数字でなくてもいいから、やはり全体の作業数みたいなものを暗示するようなものがあれば、分かりやすいかもしれないですね。
○小林座長 次回には是非。
○臼井委員 もしかしたら、以前に議論が出たかもしれませんが、今回、実際の事故災害のデータからで、この委員会では難しいかもしれませんが、こういう安衛則でヒヤリ・ハットしたときは、何らかの理由でヒヤリ・ハットで済んだということになると思います。そういった意味では、今回の規則は、その1つの抑制になっていると思いますが、その辺の推移と言いますか、やる前と後とか、その辺をこれまでどこかの研究委員会でやっていたら、以前と以降で防げた要因で特徴が出ていたら、効果の1つの指標になり得るのではないかと思います。それが検討の材料になればという気がしました。
○船井技術審査官 大幢委員、ヒヤリ・ハット関係の研究をやられている所はご存じないでしょうか。
○大幢委員 起きた人に対して追いかけていくのは難しいというのがあって、なかなかそこまではやっていないと思います。
○臼井委員 例えば、ゼネコンとか、ああいう所で、1つの単位になりますけれども。
○大幢委員 そうですね。お持ちになっている所もあるのではないかとは思うのですが。
○船井技術審査官 これはある意味で災害が起きたものを分析しているので受動的なのでしょうね。御指摘の点は、ある意味で能動的な分析になり得るかもしれないですね。
○臼井委員 そうですね、
○大幢委員 もう少し突っ込んだ分析ということになるのでしょうね。これだと、どうして床材を緊結しなかったかとか、そういう話になると思うのです。これはたぶん死傷病報告というのでやると、おそらくそこまでは出てこないので。
○船井技術審査官 また、死傷病報告からそういう視点を入れるのはかなり限界がありますので、また別の切り口で。
○大幢委員 次の9頁の説明ですが、こういう死亡災害だと、もう少しわかるのではないかと思うのです。ただ、死傷病報告ですと、現状では、たぶんここに書いてあることしか書いていないのではないかという理解でよろしいですか。《災害の概要》と3行ぐらい書いてあるのですが、その中位しかわからないのです。
○船井技術審査官 事案によるのですが、これよりもっと少ないものもありまして、そういうものについては追跡が可能なものは追跡したりしています。逆に死亡災害の事案については、実際に現場にお邪魔して調べさせていただくこともありますので、9頁なりですね。
○大幢委員 それは9頁に出ていますね。死亡災害についてこうすると。
○船井技術審査官 「なぜショートカットをしたのかとか、」「作業のときに具体的に何をしていたのか」というところまで把握できる可能性があります。
 臼井先生のご指摘の答えになるかどうかわかりませんが、昨年度の委員会においては、御指摘の点もクリアするため、ヒアリングにより、実際に、足場上で作業をしている労働者の方にも来ていただいてお話を聞きました。その際に、実際に作業を行う上で、「落ちてしまったが安全帯をしていたおかげでもといた場所に戻ってきて、何とか下まで落ちないで済んだとか」いった経験談もありました。
 いちばん多かったのは、墜落防止措置自体が、作業の種類にもよりますが、作業をやる上で邪魔になるケースがあるということを言われていました。したがって、工種別に「交さ筋かい」がいいのか、のさん水平に設置する「」がいいのか。左官屋さんだと、どうしても横の動きが大きいので、その辺はいろいろ工種によってご意見がまちまちだったというところがありました。
○小林座長 4頁の「業種」ですが、この業種という書き方は、いわゆる建設業法とは全然関係ないですよね。
○船井技術審査官 直接関係ないのですが、我々は労働基準行政で、ずっと災害統計などをとる際に分類している表で、これとJISの標準産業分類をうまく対応させて位置関係は明確にしているのですが、基準行政でずっと使っている分類です。
○小林座長 例えば、足場の組立てというのは、この場合は建設業の建築工事あるいはそれぞれのビル建築とか木造建築というように分けてよろしいのですか。
○船井技術審査官 足場の組立作業自体ということですか。
○小林座長 はい。
○船井技術審査官 労働者死傷病報告で、業種のカウントの際、「元請一括」という制度が労災保険上ありまして、元請の保険を使ってやるのです。したがって、業種分類もそれに依存している部分があって、実際には土木工事をやっている中の下請が足場の組立てをやっていて、作業で怪我をしたというのも43件の中にはカウントされてきます。
○小林座長 そういうことですか。わかりました。よろしいですか。
○船井技術審査官 また、あとで全体についてご議論いただく時間がありますので、先に進めさせていただきます。
 9頁から戻らせていただきます。9頁の(2)ですが、足場の組立て等作業主任者の選任状況等についてです。ここの柱書に書いてありますように、足場の組立・解体の作業に当たっては、高さ5m以上の足場とか、それ以外の1点構造の足場について組立・解体をやる場合には、作業主任者という一定の資格を有する人を選任して、例えば材料の点検、安全帯等の点検、作業の進行状況の監視、安全帯等をちゃんと付けているかを監視していただくことを、事業者に義務付けているわけです。
 ただ今回、分析対象とした死傷病報告については、先ほど大幢委員からもお話がありましたように、実際のところは記載があまり精緻ではなく、作業主任者とか、こういった管理的な部分については、記載が一切ないケースがほとんどです。したがって、この視点を分析するに当たっては、件数は少なくなりますが、しっかり細かいところまで調べている死亡災害を基に、追加で分析を行ったものです。
 死亡災害は、今回、全部で39件あったのですが、組立・解体時における最上層からの墜落ということで分析する必要がありますので、12件について、抜き出して分析を行いました。この12件のうち、作業主任者を選任していなかったのが1件ありました。残りの11件については選任自体はしていました。選任はしていたのですが、11件中、10件については職務の一部、または全部を怠っていたことが疑われる事案でした。逆に引き算した1件については、作業主任者の職務は適切に実施していたことがわかっていますが、安全帯を取り付けていた手すりが脱落して墜落してしまったという事案でした。
 職務不徹底の具体的な例をいくつか挙げましたが、作業方法や手順に反した作業を行わせていたもの、作業の進行状況を監視していなかった、もしくは安全帯の使用状況を監視していなかった。あとは安全帯の機能を点検したりていなかっ、不良品を取り除くということをやっていなかったものが見受けられました。これは複数カウントですので、足し算しても11件にはなりません。
 このような状況で10頁にまとめています。イの1ポツ目に、いま申し上げた死亡災害12件のうち、作業主任者を選任した上で、職務をちゃんと実施していたものは1件だけでした。安衛則に基づく措置の観点も含めて見ますと、安衛則に基づく措置を実施していたにもかかわらず被災した者は4件で、9頁の下の表のいちばん右上の数字になります。ただ、このうち3件については、安全帯を取り付けていた部材に緊結不備などがあったという事案でした。残りの1件については、そういった問題はなしということですが、安全帯の使用方法の誤りによって外れてしまった。(1)で出てきた事案に該当します。それが1件でした。したがって、作業主任者がちゃんと選任されて、安衛則に基づく職務、安全帯の使用状況の監視や不良品を取り除いたりすることを適切に実施していれば防ぐことができた可能性が高い事案なのではないか。したがって、法令に定められている作業主任者の現在定められている職務を直ちに拡大するとか、そういった強化の必要までは認められず、引き続きこれらの措置を徹底することが重要なのではないかと考えております。
 その他の留意事項として、作業主任者をそもそも選任していないとか、職務不徹底、監視の不徹底については、ともすれば組立・解体時の墜落・転落災害に直結する可能性がありますので、規則に基づく徹底を図っていただくことはもちろんですが、作業主任者自体の職務をしっかりやっていただく、精度の高い職務をやっていただくという観点で、労働安全衛生法第19条の第2項に、作業主任者の能力向上教育が定められておりますので、こういった教育も積極的に受けていただいて、質の高い職務をしっかりやっていただくことが重要なのではないかと考えております。とりあえず、ここで切らせていただきます。
○小林座長 10頁の2の前までですね。これまででいかがでしょうか。
○田村委員 いまの資質向上という点ですが、事故に遭われた方というか、起こされた方の年齢、熟練度、その人自身が安全に対する教育をきちんと受けていたかという情報はあるのですか。能力向上というのは、主任者の能力向上ですよね。それよりもむしろやっている本人の安全に対する認識などの向上というのは、すごく重要だと思うのですが、この資料の中には、熟練者だったからとか、初心者だったから事故に遭ったなどという情報はないのですね。
○船井技術審査官 分析対象にしているのは、全体で言いますと、労働者死傷病報告をもとにしているため、そこまで書いておりませんが、定量的に見られる数字としては、労働者の年齢、作業経験は事業者に記入していただく欄がありますので、そういうので見ることは可能ではあります。
○田村委員 それによる分析というのは、この中にはないのですか。
○船井技術審査官 この中には追加しておりません。
○田村委員 こういう報告書を見ても、私は普段現場にいるわけではないから、言葉をイメージして映像に持っていくのに少し時間がかかるのです。熟練している人はこれを読んでも、すぐ理解ができるのだと思いますが、初心者がこれを読んだだけでわかるのか。漫画も何もありませんから、そういう作業者の教育などを考えると、こういうものにも少し絵が入っているとか、ひと目で、パッとこういうことは危険な行為だということがわかるようなものがあるといいなと思ったのですが、それはどこかにあるのですか。
○船井技術審査官 現在はここにはありませんが、いろいろな書籍などでヒヤリ・ハットの事例や災害事例は、建設業界に限りませんが、極力イラストなどを入れる形で作られる傾向があります。
 ちょっとフライングしてしまいますが、最後の議題の意見交換の中で、少しご議論いただこうと思っていたのですが、資料4で、今後具体的な普及方策を図る中で、これは2年分を分析していただきましたので、この中で出てきた災害事例なども、一般の方にもよくわかるような形で、こういうことをやらないとこういう災害になるのだということが、パッと見てわかるような形で、イラストまでは考えていませんでしたが示していくつもりです。田村先生のご指摘を踏まえて、イラストも視野に入れて災害事例として、すぐイメージが湧くような形で併せてやっていくと、ただ、やれやれと言うのではなくて、こういうことがあるからやってくださいということで、すっと頭に入るのかなという気がしております。
 続きまして、資料に戻ります。10頁の真ん中辺りです。1の「組立・解体時における足場の最上層からの墜落・転落災害について」ということで、2点の視点でその分析をいたしました。2は、最上層以外、いわゆる「通常作業時等における墜落・転落災害について」という形で整理いたしましたが、これについて何点か整理したいと思います。
 (1)は、法令に基づく墜落防止措置をやっていたかどうかというので分析をいたしました。対象としたのは、高さ2m以上の箇所からの墜落・転落が449件で、組立・解体時の最上層は100件あるということで、これを除く必要があります。それに加えて、法令技術的な話ですが、安衛則の第563条第1項第3号という措置の関係では、「一側足場」と言って、建地が1本だけの足場、そこからブラケットのようなものを張り出して作業床を設けているような足場がありますが、これについては法令上、墜落防止措置の第563条の部分について適用が除かれております。手すりとか中さんなどといった措置を両側に設けるのは、構造上なかなか難しいという視点があります。したがって、これを除いた278件について分析をする必要があります。
 1つ補足しますと、では、「一側足場」は危険なままでいいのかというと、必ずしもそうではなくて、第563条の適用はないのですが、別途の条文があって、作業床の端には手すりを設ける。それが難しい場合は安全帯を付けるという規定がありますので、そこで最低基準の墜落防止措置が担保されるという考えです。
 278件について分析をした結果ですが、規則に基づく措置を実施していなかったもの、不十分であったものが278件中240件あり、全体の約86%を占めておりました。その中で、今回規則改正して強化したわけですが、改正前であればオーケーだった措置をやっていたのは、大体3分の1ぐらいの82件ありました。
 一方で現行の新しい規則に基づく措置を実施していたにもかかわらず、墜落したものは278件のうち23件で、約8%ありました。こちらについては右の表に書いておりますが、表のいちばん上の段と2番目の段を合計したものが23になり、これが規則に基づく措置をやっていたというものです。
 その事例については11~14頁に全23件を掲載しております。6件と17件に分けた趣旨というのが、6件の部分については、規則に基づく措置に加えて、さらに実施することが望ましい措置として通達で示したものを実施していたものです。例えば、わく組足場であれば、交さ筋かいの下に1本棒を入れるのが最低限の措置ですが、それに加えて腰高ぐらいにもう1本棒を入れるのが「より安全な措置」です。普通のわく組足場以外の足場であれば、「2段手すりを設けてください」と言っているのですが、これに加えて、「幅木を床からさらに立ち上げる」といったところまでやっていたものは6件、「そこまではやっていないが、最低基準はやっていました」というのが17件という整理になっています。これは全部で23件あるわけですが、そのうち20件については、労働者の不安全行動や床材の緊結不備といったことがありました。これはこの表でいうと、左上の4つで、4件、2件、6件、8件を足すと20になるわけです。逆にいうと、不安全行動がなかったものは23件中、3件ありました。その概要は10~11頁にわたって書いている3件です。
 ?1件目は、「橋梁の点検作業中に、橋梁の下部に設けられたつり足場から落ちた」というものです。めまいが生じてしまって、つり足場の開口部から落ちてしまった。この開口部というのはどのようなものかというと、つり足場自体は全面敷きで床材には開口部はなかったのですが、全面敷いてあるのを橋の下に設けた橋桁にチェーンで吊っていた。どうしてもチェーンで吊りますので、隙間が開くということで、橋桁の鉄骨の下と床材との間が、約37?開いていた。そこにめまいが生じて倒れたのでしょう。落ちてしまったという事案でした。
 2件目は、通常の足場ですが、ちゃんと2段手すりが設けられており、中さん、下の段も床材からの40?の高さで、適法なものでした。ただ、足場の骨組(建地)ですが、この幅が60?幅なのに対し、床材が40?幅のものを1枚だけしか敷いてなかったのです。しかも、その40?の床材というのは、墜落箇所と反対側に寄せられていたと。墜落してしまった側はどうしても隙間が開いてしまったというものです。
 11頁にある3点目は、前回も同じようなものがあったのですが、ローリングタワー(移動式足場)で墜落防止措置は適切に講じられていたのですが、それとは別次元の話で、昇降用の梯子を昇っているときに落ちてしまったということで、直接墜落防止措置とは関係ない事案でした。
 このように23件、規則に基づく措置をやっていた事案がありましたが、不安全行動などがなかった事案は、いま申し上げた3件で、実質上、最後の1件を除けば2件あったというものです。それ以外の20件については、不安全行動ないしは床材の緊結不備等が認めらました。例えば、11頁の下の表でいいますと、ローリングタワー(移動式足場)の手すりの上に足をかけて、上にある建屋の梁に乗り移ろうとした不安全行動とか、2番目にありますように、足場を支えていたブラケットが脱落するといったこともありました。
 次の頁に色々と事案が書いてあります。全部は説明しませんが、手すりが脱落したとか、手すりを乗り越えて降りようとしたとか、足場の外側をよじ上ったとか、そういった事案が、前回と同様に見られたところです。
 こういった事案について、14頁にこれを踏まえてまとめております。イの1ポツ目ですが、これは前回と同じロジックで書いてありますが、先ほどご説明した実態調査の結果、措置が「不十分」であった割合は、全体の約25%に対して、今回分析した278件のうち、約86%が措置が「不十分」であったということです。調査対象が異なりますので、一概に比較することはできませんが、足場からの墜落・転落災害は措置が「不十分」な現場で災害が集中的に発生しているのではないか。したがって、裏返しの言い方になりますが、法令に基づく措置の効果は高いのではないかということが、言えるのではないかと考えております。
 2ポツ目は、278件中23件というのは、措置を実施していたにもかかわらず被災したものです。このうち不安全行動がなかった事案については、いま申し上げた3件で、うち1件についてはローリングタワー(移動式足場)の昇降時に梯子から落ちたものですので、足場の墜落防止措置とは直接関係はありません。こういった件数の割合を見ますと、規則に基づく措置の墜落災害の防止効果が高いのではないかと考えられます。
 3ポツ目については、不安全行動の有無について、措置があったか、なかったかで見ると、措置がないものについては、措置がないので安全水準も低く、不安全行動がなくても災害が起きる割合が高い。一方、措置をちゃんとやっている部分については、不安全行動がなくても落ちる割合は非常に少なくなっています。このことからも、規則の災害防止効果は高いのではないかと思います。
したがって、直ちにこの規則に基づく措置を強化する必要まではなく、引き続きその徹底を図ることが適当なのではないか。しかしながら、その徹底に当たっては、今回出てきた事案を見ても、労働者の不安全行動、床材の緊結不備が多数見受けられますので、規則の徹底は、ただ「やれやれ」と言うのではなく、足場上での具体的な作業手順を定める。「足場に足を掛けて作業をやらなければいけないようなことがないように足場を計画する」とか、「日々の日常的な点検で墜落防止措置に不備がないかをしっかりチェックする」とか、足場の外側をよじ上るという観点でいえば、「適切な位置に適切な数の昇降設備を設けておいてく」などが考えられる。そうすれば、わざわざよじ上らなくても、近い階段から昇り降りできるのではないか。こういったことを併せてやることが重要なのではないかと考えています。
 さらに「手すり等なし」という中には、落ちたときには現になかったわけですが、通常時に取り付けられていたものを一時的に外して、そのままになっていたというものも中にはあるのではないかと考えられます。死傷病報告には、若干数、そこまで書いてあるものもありますが、ほとんどの事案は掘り下げることはできません。これについては法令上は元に戻せとは書いてないのですが、法令の解釈の中で、「手すりを臨時に取り外したときは、作業終了後、直ちに元の状態に戻しておかなければならない」、これは当然であるということが明示されておりますので、これをしっかり教育の中で、労働者に徹底することも必要なのではないかと考えております。とりあえず、ここまでよろしくお願いします。
○小林座長 15頁の(2)の前までですが、いかがでしょうか。
○臼井委員 手すりを取り外して作業をしてと最後にありましたが、規則に基づいていたのに、こういう不安全行動があったものという中には、規則が作業をするときに、やりにくくなったということも可能性としてはあると言われましたが、そういうことで作業がやりにくくなって、不安全行動に結び付いたというマイナスの側面の事例があるとか、
○船井技術審査官 死傷病報告から、「なぜ乗り越えたのかとか、」「作業上、やりにくかったから乗り越えた」というところまでは書いてありません。ただ、推察するに、そうだろうなというのはありますし、おそらくここに載っているものは、わざわざ乗り越えてとか、外側に行ってということは、何かしらの理由があったということですし、その措置自体が邪魔であったことは間違いないと思います。そこから推察するしかないのですが、御指摘のような事例はあるのではないかと思います。
 あとは、前年度実施したときの労働者のヒアリングでは、かなりそういったご意見があります。だからこそ、前年度の取りまとめの中で、実際に足場上で行う作業なども踏まえて使いやすいというか、邪魔にならないような措置を現場の実情に合わせて選んでいただくことが重要なのではないかというご提言をいただきましたので、その視点が非常に重要ではないかと思っています。
○小林座長 使いやすいというのはなかなか難しいですね。ヒアリングのときにも感じたことですが、どう見ても、それが使いにくくなるのかなというようなところを、実際に働いている方が「使いにくい」と表現されるということがあったりして、我々の感じるところの使いやすい、使いにくいということと、実際に働く方の間でも、その評価は違うのでしょうが、そういうのは当然ながらギャップがあるのでしょうが、厳密な実験をやっても意味がないギャップなのだろうと思います。それこそ100人のうち、何パーセントが使いにくいと思うのかという程度の評価の仕方ぐらいしかないのかもしれません。
○大幢委員 見ていると、不安全行動とか緊結不備というのが非常に多いのです。先ほどのヒヤリ・ハットの話ではありませんが、調べると、実際働いている方はかなりこういうことを経験しているのではないかなと。これは実際に表に見える形で起こった「災害」ですが、災害に至る前の事案は結構あるのではないかという感じはします。ハインリッヒの法則ではありませんが。
○船井技術審査官 例えば階段がないので、足場の外側をよじ上って、足が滑って危なかったが大丈夫だったという事案などが御指摘に該当します。
○大幢委員 その辺は先ほどの作業主任者の適正な配置とか、ああいうことをしっかりやっていかなければいけないということにもつながるのでないか。もちろん、働く人の教育も含めて、しっかりやらなくてはいけないという感じはしています。
○小林座長 よろしいでしょうか。15頁の(2)はいかがですか。
○船井技術審査官 続けさせていただきます。15頁の(2)の「より安全な措置」についてということです。いまの(1)と大きく関連しますが、(1)でいう11頁の表のいちばん上の段の6件がポイントになってくるわけです。規則に基づく措置も実施していた。その上で「より安全な措置」も実施していたというのが6件ありました。この6件については、すべてに不安全行動等が見られました。
 「より安全な措置」については、規則に基づく措置に加えて実施することが望ましい、ということですので、「棒」なり「板」が1本増えるということで、規則に基づく措置と同等以上の墜落防止効果があると言えるわけです。
 しかしながら、上記(1)が現行の規則に基づく措置について分析して評価をした結果として、直ちに強化する必要はないということになっておりますのでこれを踏まえると、現時点において「より安全な措置」についても最低基準として、ここまで水準上げをする必要はないのではないかと考えております。
 なお、「より安全な措置」を実施していて怪我したのは6人あったということですが、「より安全な措置」までは実施しておらず、規則に基づく措置のみをやっていたというのが17件あるわけです。これについて、仮に、「より安全な措置」をやっていればどうなったかというのを分析してみますと、「より安全な措置」の1つである「幅木」を設置していれば防ぐことができた可能が高いのではないかという事案が、次の1件ありました。これは先ほど出てきたものですが、つり足場で橋梁の点検作業中に、つりチェーンとつりチェーンの間に空いた高さ37?の隙間から、めまいが生じて倒れたのでしょう、落ちてしまったという事案です。これについては「幅木」を設けていれば、仮に倒れたとしても、その隙間から落ちなかった可能性が高いのではないかということが言えるわけです。
 こういった事案もあるわけですので、引き続き普及・徹底を図ることは重要です。ただ、「より安全な措置」については、通達上、わく組足場における「上さん」とか、それ以外の足場における「幅木」が例示としては挙げられていますが、「足場の形状、」「足場を設置する現場の状況、」「作業の状況」などによって、「上さん」や「幅木」に限らず、それと同等以上の性能を持つ、例えば「防音パネル」、「ネットフレーム」などを設置することでも、当然代替になるということも併せて周知しながら、普及していく必要があるのではないかと考えております。いろいろな選択肢を明示した上で足場上での作業の状況や現場の実情に応じた措置を、現場サイドで適切に選択するように徹底していただくことが必要ではないかと考えております。
 より安全な措置のもう1つとして、部長通達に基づいて「床材と建地のすき間」をなるべくなくしましょうと。建地と床材の幅は同じようにして、同じにならないような場合は、床材を複数枚設置する等によって、すき間を作らないようにしてくださいということをお願いしております。
 これについては、これをやっていれば防ぐことができた可能性が高いと考えられるのが1件あって、建地、骨組みの幅が60?あるにもかかわらず、40?の幅の板1枚を敷いていた。しかも、それを墜落した側の反対側に寄せていたということで落ちてしまったという事案です。
 そういうことを踏まえますと、建地の幅より明らかに狭い床材を今回は使用しており、その設置方法についても問題がありますので、その結果、どういうことが起きたかというと、折角、高さ40?の適法な「中さん」を設けていたにも関わらず、その下から落ちてしまった。この40?のさん「中」が持つ墜落防止効果が、床材の幅の選択とか、どちら側に置いていたかということで低減してしまっていた、十分活かせないようにしてしまったと言えるのではないかと考えられます。
したがって、現時点においては、(1)での評価も踏まえると、最低基準として、ここまで義務付ける必要はないということですが、引き続き、いま言ったような視点で、墜落防止措置の効果を高める役割があるのだということも併せて、その普及に努めていく必要があるのではないかと考えております。
 (4)の足場点検の関係ですが、点検については、法令上、「組立・変更後」に、足場の構造に係る各種の事項について点検してくださいということを義務付けていますし、あとは日々の「作業開始前」に墜落防止措置などについて点検していただく。点検の項目も、組立て変更した後の点検と、日々の「作業開始前」では、だいぶ点検項目も違います。それぞれのタイミングに応じた項目内容でお願いしているわけですが、それぞれ義務付けられているわけです。したがって、これについて分析する必要があるのですが、これも死傷病報告では、ここまで書いてありません。
 死亡災害について追加で調査を行いました。ただ、死亡災害は39件あるわけですが、点検というのが組立・解体後と日々の「作業開始前」ということなので、組立・解体中というのは点検の対象に含まれていませんので、これを除いた23件について分析する必要があります。分析した結果、点検を実施していたというのを確認できたのが4件ありました。ただ、この4件については、いずれも足場の設置段階から、規則に基づいた足場では計画されていなかった。もともと不備がある、墜落防止措置が不十分な足場であったということでした。
 この23件のうち、墜落した際に規則に基づく措置が不十分だったというのが19件ありました。このうち、当初設置されていた交さ筋かいとか手すりが取り外された箇所から墜落したというのが4件ありました。ただ、この4件については、残念ながら点検が未実施でした。当初はしっかりした足場を作っていたので、日々の「作業開始前」の点検をやっていれば、その状態に戻せていた可能性がありますので、防ぐことができた可能性が高いのではないかと思います。
 死亡災害のうち、安衛則に基づく措置を実施していたものが4件ありました。18頁の上に表があり、上から2段目が、部長通達に基づく「より安全な措置」までは行かないのですが、規則に基づく措置を実施していたもので、4件ありました。この4件のうち、2件については、足場の点検とは直接関係がない災害でしたし、残りの2件についても、1度に2人被災した事案ですが、床材の緊結不備等が見られたというものです。
 他の事案については、点検を実施していなかったということが、調査の結果、確認できたものとか、足場の設置段階から、もともと墜落防止措置が不十分なものが計画されているといったもので、点検の実施の有無について確認するまでもなく、労働災害防止上の問題が認められた事案でした。
 このようなことを踏まえますと、イにあり、繰り返しになりますが、23件のうち、4件については、もともとはちゃんとした足場だったのですが、取り外してそのままにしていて落ちてしまったということですので、これは日々の点検を実施していれば防げる可能性が高い事案でした。ということですので、点検を更に徹底する必要があるということが言えます。
 点検を実施していたものは4件ありましたが、これについては、いずれも設置段階から措置に不備があったというものです。したがって、点検をやっていただく以前の話として、墜落防止措置が適切に講じられた足場を計画して設置していただくことが重要なのではないか。したがって、安衛則で定めている「点検項目」、部長通達では「点検実施者」として、こういう方にやっていただくことが望ましいとお示ししているのですが、今回の死亡災害から、こういった点と直接関係のあるような事案はなかったということでした。
 以上を踏まえて、現時点においては、点検は既に義務付けられておりますので、その実施者の資格、点検項目について、もっと拡大するとか、実施者のレベルを上げるとか、そこまでの強化の必要はないのではないか。引き続き、もともと点検の対象となる墜落防止措置、足場をしっかりと適切に組んでいただいて、それに対して点検を徹底するということで、適切な足場がずっと維持されるということになるのではないかと考えております。
 その際の留意点として「組立・変更後の点検」を実施することによって、足場の緊結不備等の構造上の問題を未然防止することが可能になりますし、日々の点検を実施することによって、臨時に取り外した手すりの脱落による災害を未然に防止できると。臨時に取り外したら元に戻しましょうというのは、法令の解釈で当然のことだと示されているので、当然やらなければいけないのですが、どうしても忘れてしまうこともあるでしょう。そういった部分を点検でしっかりと補っていくことが可能になるのではないか。そういうことを可能にするために点検の実施者となる人に対して、しっかりと能力アップしてもらう、点検項目をしっかり熟知してもらう。点検を実施する際には、点検項目は漏れなくきちんと適切にやられるように、チェックリストなども通達で示しておりますので、こういったものも活用していただいて、確実な点検の普及を図っていただく必要があるのではないかと考えております。ここまででよろしくお願いします。
○小林座長 18頁までですね。16頁の真ん中にあるのが、先ほどご説明いただいたので状況はわかりましたが、委員の方々はおわかりいただけましたでしょうか。たぶん、よくイメージできないと思うのですが、少しご説明いただければと思います。
○船井技術審査官 これは手書きのお絵描きベースなので、会議資料には付けなかった追加資料です(席上配布)。先ほどの16頁の真ん中の事案を絵で描いたものが、いまお配りした紙のいちばん下にありますが、要は建地の幅が60?だったのに40?の足場板を置いていたと、しかも落ちる側と反対側に置いていたということで、斜めで見ると結構幅が開いてしまっているということです。この隙間から落ちたと。これが建地、足場の骨組みの幅に合うように床材をびっしりと引いていたら、ここにある中さんが墜落防止効果を非常に発揮して、落ちることもなかった可能性が高いのではないかという話です。
○臼井委員 先ほど教育に何かマニュアルというか、そういうものを作ると言われましたが、このようにしていれば防げたと、そういう事例が多いと思うのですが、そういうものを入れるとわかりやすいというか、説得力はあると思うので、いいと思います。
○船井技術審査官 ご指摘のとおり、床材の幅を合わせろと言うが何の意味があるのだという指摘に対しては、こういう意味があるのですよと、一目瞭然になるような形でご理解いただけるようなものにしたいと考えております。そのために、今回出てきたような実例がいちばんいいのではないかと。
○田村委員 チェックリストはどういう形で普及させているのですか。
○船井技術審査官 チェックリストは、資料3の35頁に付けております。規則の施行に合わせて出した部長通知の後ろに、こういうチェックリストをしっかり作って点検してくださいと、お願いしているものです。足場の種類はいっぱいありますので、共通用として(別添2)を作っているのですが、それに合わせて37頁以降に足場の種類ごとにこういうところをポイントで見てくださいということも、参考で観点を付けていますので、こういったものをアレンジして、各現場に応じたチェックリストを作っていただくことが重要なのではないかと。こういうものを踏まえて、業界団体で独自のチェックリストを作ったり、大きなゼネコンになるとゼネコン様式みたいな感じで各現場に水平展開していただいて、かなり広まってはいるのではないかと思います。
 チェックリストの利点としては、組立・解体した後に、しっかりとした項目を点検してもらった場合には記録を保存することを義務付けているので、これを使っていただき綴じればそのまま記録保存になり、利点になりますので、是非使ってくださいということで、いま周知をしているところです。
○田村委員 もう少し使いやすい、本当のチェックリストでチェックしていくというものではないのですね。そういうものもあるのですか。
○船井技術審査官 そのようにアレンジして作ってくださっている所もあります。
○大幢委員 37頁に具体的な項目があって、そこの横にも○を付けていくようなイメージではないかと思うのですが。
○船井技術審査官 そんな感じで作っておられる所もあります。
○大幢委員 1~9のは、ただ単に安衛則で書いてある点検事項の項目で、この言葉だとよくわからないので、内容として1番から何番まで挙げて、それについてチェックしていくような形になるのかなというイメージなのですが。
○船井技術審査官 おっしゃるとおりのイメージです。
○田村委員 37頁のようなものが、もう少し具体的なものになるということですね。
○大幢委員 そうですね。ただ、35頁の9つの項目がもっと細分化されてチェックしていくのではないかと。
○田村委員 組み立てたときにチェックすべきものと、日常的に始業時に点検する、要するに日常点検的なものとが混じっているような感じがするのですが。
○船井技術審査官 法令上それは峻別がついていて、37頁に載っている項目については、基本的に組立・変更後には全部チェックしてくださいと。ただ、日々の「作業開始前」については、ここで言う4、墜落防止設備だけでいいという形で、日々のほうはだいぶ絞られています。
○田村委員 それがもう少しはっきり分かれているほうがわかりやすいと思ったのです。
○船井技術審査官 日々の点検は、はっきり言ってちゃんと手すりが付いているかというだけなので、記録の保存義務もないのです。組立・変更後のは非常に数が多くなりますので、記録の変更等も義務付けているのです。ただ、同じチェックリストで、もし日々の点検でもどこかに不備があれば、幅広に見ていただくことは悪いことではありません。
○小林座長 それでは、先に進みます。
○船井技術審査官 資料に戻って、19頁の3「手すり先行工法について」です。これについて、2つの視点で分析しております。
 1つ目は、(1)「組立・解体時における最上層からの墜落・転落災害について」で、もともと手すり先行工法自体が組立・解体時に最上層から人が落ちないように、あらかじめ人が乗る前に手すりを立ち上げておくという工法ですので、これがメインフィールドになります。手すり先行工法を使っていたものがどれぐらいあったかを見ますと、組立・解体時の最上層からの墜落100件のうち3件ありました。その3件のうち2件については、手すりわくの適切な取付けやガイドラインに基づく手順に沿った作業を怠っていたもので、床材の緊結不備等があったという事案です。残りの1件については、下に概要と書いてありますし、表のいちばん下にありますが、最上段の手すりの取付作業を行っていたときに雪で足を滑らせたものです。全体としては手すり先行工法を採用していたのですが、墜落箇所の部分については先行手すり部材が他の部材と干渉してしまっていたため、取り付けることができなかったというものでした。雪で滑ったというアクシデントもあったのですが、足場の形状によって手すりわくを付けられない箇所があったというもので、不安全行動等はなしと整理しております。
 こういったことを踏まえると、19頁のイの1ポツにありますように、組立・解体時の最上層の措置として手すり先行工法があるわけですが、これが100件中3件だったと。これは第2で示した実態調査の結果を見ると、建設現場の約3割で採用されていたという状況がありますので、両者の調査対象が違うのですが、普及率と災害発生の中で出てきた現出率を比べると、手すり先行工法自体は組立・解体時における最上層からの墜落防止措置としての災害防止効果は高いのではないかと考えております。ここは3.01%ではなくて、3.0%の誤りです。
 こうしたことを踏まえると、1の(1)の評価結果としては、現行の組立・解体時の最上層の措置として安全帯などを付けてくださいと言っている部分については、直ちに強化する必要はないことから、手すり先行工法についてもこれだけに限定して義務付けるまでの必要性はあるとは言えないのではないかということです。ただ、措置の効果は高いということですので、望ましい措置として現行も行政がガイドラインを示してお勧めしておりますので、そういった形で作業に必要な手順の徹底も含めて、その普及を図ることが適当なのではないかということです。というのも、先ほど出てきた3件中2件について、ガイドラインに基づく手順を誤っていたりといったことは見られましたし、昨年度の事案で不安全行動等もありましたので、それが災害につながることもあると。したがって、使っていただく上で適切に使ってくださいということで、そこもセットで普及を図る必要があるのではないかということです。
 また、今回の事案のように、足場の形状によっては全体としては手すり先行工法でやっているのですが、部分的に手すりわくを取り付けることが困難な場所もあります。したがって、足場を設置する現場や設置状況によっては、先行手すり部材だけで墜落防止措置OKとするのではなくて、安全帯を併用するといったこともトータルで考えて、現場の実情に応じた対策をやっていただくことが必要なのではないかと考えております。
 (2)の視点としては、「通常作業時における墜落・転落災害について」ということで、(1)冒頭でご説明したように、手すり先行工法自体は組立・解体時における最上段からの墜落を防止することを主たる目的としている工法ですので、そうではない出来上がった部分の墜落防止という意味では、手すり先行という観点からは直接は関係ないわけです。ただ、手すり先行工法の中でも手すりわくはわく状になっていますので、それを残存した形で足場を組み上げていくと、それが結果として安衛則に基づく墜落防止措置になると、要は2段手すりの代わりになったりするわけです。そういった観点もありますので、分析の対象にしました。その結果、全部で5件あったわけですが、表にまとめておりますが、安全帯を使用しないで先行手すり部材から身を乗り出すといった不安全行動がありましたし、それ以外にも床材の緊結不備等の事案もありました。
 そういった視点から考えると、21頁のイにありますように、1ポツは先ほどの(1)と同じで、採用率と災害における現出率を比較すると効果は高いのではないかということです。 2ポツについては、手すり先行工法自体は最上層の墜落防止という観点なのですが、その中でも据置式とか手すり先行専用方式のように、手すりわくを組み立てたあとにその場に残して、どんどん上に組み上がっていく方式のものもありますので、こういったものは結果として、安衛則第563条第1項第3号に基づく2段手すりの代わりにもなりますので、組立・解体時の最上層の墜落・転落という観点だけではなくて、通常作業時等における災害防止の効果にもつながるのではないかということです。
 こういったことを踏まえると、先ほど申し上げましたように、現時点においては、直ちに手すり先行工法を組立・解体時の最上層における措置として限定的に義務付ける必要性があるとまでは言えませんが、望ましい措置として作業に必要な手順も含めて引き続きその普及を図るということで、(1)の結論と基本的には同じです。
 その他の留意点としても、作業方法の誤りや不安全行動で災害に至ることもありますので、ガイドラインに基づく手順の徹底等を図る必要があるということです。
 22頁のポツですが、部材の受け渡し等の際に「先行手すり部材」、手すりわくが邪魔になることがあって、身を乗り出して作業を行っていた際に墜落することも考えられますし、今回でもそういった事例もありますので、作業の性質上、臨時に手すりわくを取り外す場合には、安全帯を使用することはもちろんですが、身を乗り出すことがないように、外したりすることがないように、いろいろな作業手順等も考えてやることが必要です。また、取り外さずに付けたままで身を乗り出して作業をするような場合についても、重心が外に出すぎたりするとそのまま落ちてしまうこともありますので、手すりわくに加えて、そういった作業をせざるを得ないときは、安全帯などを併用して万全を期すことが望ましいのではないかと考えております。
○小林座長 いかがでしょうか。この事例は、結果として身を乗り出すということが随分と大きくて、22頁辺りにも出てきていますが、この事例から考えると、身を乗り出したことよりも、取付けがしっかりしていなかったというほうが大きいような気がするのです。全体としての後に出てくるような方策にはあまり影響しないかもしれませんが、22頁の辺りに対する対応策には何か関係しそうなのですが、いかがでしょうか。
○船井技術審査官 具体的には20頁の事例の中で、表のいちばん上とかですね。身を乗り出していて、その結果なのか、もともと悪かったのか、手すりわくが外れて墜落に至っています。
○中屋敷建設安全対策室長 その下もそうかもしれないのですが、20頁の下のほうは、身を乗り出すというよりは足場の外側からなので、少し違います。
○小林座長 これは外側からですね。外側へ出てしまったという話ですね。だから、上だけですね。
○船井技術審査官 上の事案は、身を乗り出すという行為が先なのか、手すりわくが外れるのが先なのか、どちらが重要かという議論は確かにあると思います。ここの分類は、どちらを優先して採るかという議論はあるのですが、結果導き出される対策としては、同じものとなります。
○小林座長 最後の23頁辺りにはあまり影響しないことだと思います。
○船井技術審査官 手順に基づいて手すりわくが外れることがないように、しっかりガイドラインに基づく手順で組み立てることが1つと、その際に身を乗り出して資材を受け渡す場合には、22頁で言うと、手すりわくを取り外さずに身を乗り出して作業を行うような場合についても、万全を期すために安全帯を併用するということが書いてありますので、両方やっていただければ、万が一何かのトラブルで外れたとしても安全帯が留めてくれると。
○小林座長 本来的に、手すりが付いていないのと同じような状態だったということですね。
○船井技術審査官 外れてしまったということはですね。見た目はそこに付いているのでしょうけれど、実際としては機能していなかったということですね。
○田村委員 この事例の5つのうちの4つは安全帯を使用していなかったのですが、後ろから2番目の事例は安全帯に関しては何も書いていません。使用していなかったのですか。
○船井技術審査官 これは使用していなかった事案なのですが、手すり先行工法と直接関係なくて、作業床の開口部に気づかず落ちてしまったというものなので、安全帯はもちろんしていないし、そのままスポッと入ってしまったということです。
○田村委員 そうすると、この事例は全部安全帯を使用していないと。
○船井技術審査官 この事案は安全帯はしていないですね。
○臼井委員 手すり先行工法の効果はかなり高いと読めると思いますので、本当は全部がそれをやればいいと思うのですが、予算等でなかなかできないと思うのです。これを見ていくと、手すりを外して何か事故や災害が起きたり、手すりに寄りかかって過信してといったことで、良いのだけれど、やることでマイナスの側面もあるということを、教育といったところで過信しないように対策とか、それを付けることによって部材を外す機会が増えて、それがそのままになってしまったりとか、ネガティブな話になりますが、デメリットの側面も付けておいたほうが教育にはいいのかなという気がします。
○船井技術審査官 昨年度の議論の中でも、現場の足場の設置状況や作業実態も踏まえて適切な措置をということだったので、例えば全体として手すり先行工法で組むと。ただ、組んだ部分で、ある一部部分は資材の搬入で手すりわくを取ったり外したりが頻繁に行われるという話であれば、そういった部分については通常の安全帯で組んでおいてという話も、現場の実態としてはそちらのほうがトータルでベストなこともあるかもしれません。そこは現場の実情や足場の使い方に応じて、しっかり措置をやっていただければいいのかなと思います。ご指摘のとおりデメリットも併せて、デメリットが生ずるときにどうするのかも併せて周知しないといけないと思います。
○小林座長 20頁のその他の留意点の2つ目のポツの現場や足場の設置状況によってはという所ですが、これは具体例を少し明示しなくてもよろしいでしょうか。これは手すり先行工法に限った話ではないのですが、「設置状況によっては」というのをもう少し具体的に書いておくと、よりわかりやすいと思うのです。
○船井技術審査官 そこの記載は、実際に19頁のいちばん下の四角の事案のことを言っていて、墜落箇所においては先行手すり部材が他の部材と干渉していたということなので、こういったものを後ろのほうで例示として記載したいと思います。
○小林座長 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、第4「まとめ」の部分をお願いします。
○船井技術審査官 23頁の「まとめ」です。まとめとして、いままで各項目、各要素について検証の視点をお示ししてきました。その結果まとめたものが下のポンチ絵で、組立・解体時の最上層とそれ以外を分けて議論してきましたが、これをざっくりまとめますと、378件について詳細な分析を行いました。その結果、約92%において安衛則に基づく措置をやっていなかった、もしくは不十分だったことがわかっております。したがって、こういった部分については規則に基づく措置をまず徹底していただくことが必要なのではないかということです。
 規則に基づいた措置をやっていたにもかかわらず災害に遭ってしまったものは31件、約8%あるわけですが、そのうちの約8割以上は不安全行動や床材の緊結不備などが認められたということで31分の26です。そうでなかったものが5件あって、これについては先ほど個別のところで説明した際にも触れたように、足場の組立・解体時の最上層で安全帯は使っていたのですが、切れてしまったり、抜けてしまったという事案や、残りの3件はつり足場のチェーンとチェーンの間から落ちたとか、狭い床材を設置していて、片側に寄せたので落ちてしまったという事案、また直接墜落防止措置とは関係ないローリングタワーの昇降設備から落ちたという事案もありますが、そういったものが認められたということです。
 このような状況で、その結果は、資料3の53頁にありますが、昨年度取りまとめた報告書の分析結果と、件数については若干増減があるのですが、傾向としては53頁のものとほぼ同様のものであったことが、この絵からも明らかです。総括的なまとめとしても、安衛則に基づく墜落防止措置の効果が高いのではないかと。したがって、これまでに述べてきた検証評価の結果から、直ちに強化を図る必要はないのではないかと考えられます。平成21年度の報告書を取りまとめた際には、こういうざっくりとしたまとめだけではなくて、今後どういう対策を講じていくべきかという具体的なご提案も、54頁に付けてありますが、お示ししております。その提言内容も踏まえつつ、安衛則に基づく措置の徹底を図る。それに加えて、災害防止効果についても継続して、今回と同じような形で検証していくことが適当なのではないかという結論にしました。
 また書き以下ですが、事前に委員の皆様に報告書の案をお送りしてアドバイスをいただいた際に、大幢委員から1点ご指摘があったのですが、簡単に言うと前年度とほぼ同じような傾向ではないかと。若干足場の死亡災害が増えたり、手すり先行工法の普及率も横ばいであったりといった状況もあるので、もっと具体的に規則を守っていただいたり、「より安全な措置」、手すり先行工法等を一層普及させるような具体的な取組みを行政で検討したほうがよいのではないかというご指摘を踏まえて、この部分について入れております。簡単にまとめると、前年度の傾向を引き続いて規則の徹底を図る。それに加えて、より安全な措置も一層の普及を図る。そのために、行政として具体的な普及方策についてもしっかり検討して、それに基づいてやっていくべきではないかというまとめにしました。以上です。
○小林座長 いまのまとめの部分ですが、よろしいでしょうか。時間もないので、大幢委員からいまお話のあったご指摘、新たな方法に関してご説明いただけますか。
○大幢委員 船井さんが言われたとおりのことをお伝えしたのですが、パッと平成21年度と平成22年度の比較を見たときに、微妙に数とか件数は違うのですが、大体割合的にほとんど同じであるということで、折角こういう委員会をやっていながら2年間何も変わらないのもどうかと思いますので、今後はより一層踏み込んで、前回の報告書の提言、徹底とか普及、あるいはリスクアセスメントの視点を踏まえて現場に則した対応をするということを前回言ったのですが、そういった措置が徹底されるように、もう少し具体的にどうしたらいいか、先ほどのように、こういうことをやらないと危ないということを絵を描いてわかりやすくするとか、そのようなことを検討していただいて、この検討会でもう少し議論してはどうかと私は提案しました。
○中屋敷建設安全対策室長  先ほど大幢委員がおっしゃったように、具体的なやり方を考えたらという指摘を事前にいただいておりましたので、事務方として考えたのが資料4です。いままで何度も議論に出ていますが、労働安全衛生規則では墜落防止のために最低限これだけはやらなければならないということを規定しております。「より安全な措置」は、それに加えて、より安全になるためにはこういうことをやってくださいということを安全衛生部長通達で書いているわけですが、それを誰がどのようにしていくかというのがないので、それを作ったらどうかというのが1番目です。先ほどから話題に出ていますが、「総合対策推進要綱」というのは仮称なので、名称については事務方にお任せいただければと思いますが、労働安全衛生規則や「より安全な措置」を徹底ないし普及していくために、こうしていったらいいということを書こうと思っています。
 ?としては、平成21年及び平成22年の分析結果からわかった問題点を明示し、それを踏まえて、?として先ほどから出ている具体的な災害事例を引用して書いたらどうかと考えております。?として、平成21年度の報告書ですが、資料3の54頁のいちばん下の図が足場からの墜落防止にあたってのリスクアセスメントの視点です。優先順位は、?として足場を使わないような、高所作業が少なくなるような工法が何か考えられないのだろうかと。
 ?として、足場を使う場合はこういう措置を講じなければならない、なるべく講じてくださいと。
 ?として、作業主任者による作業指揮などの管理面の徹底、最後に安全帯ならば「2丁掛け」と、これがリスクアセスメント視点ですが、この視点を踏まえて書いたらどうかと考えております。
 資料4に戻ります。?として「不安全行動等」、「等」というのは床材緊結不備等のものですが、そのような不安全行動が多いので、それをなくすための取組みについても触れたらいいのではないかと考えております。
 ?として、誰がどういうことをやっていくかという役割分担をきちんと書いたほうが、皆さん責任を持ってやるのではないかということで、そのようなことを書いたらどうかと考えました。
 ?として、行政が何をやるかは具体的に書いたほうがいいのではないかということで、労働基準監督署において、法律の第88条に基づいて計画届を出さなければならない工事があるので、その受付時や監督指導を行った際に、「より安全な措置」をしてくださいと言うだけではなくて、より具体的にきめ細かく指導していったらいいのではないかと考えました。
 2番目は、平成24年度の予算として「より安全な措置」の普及のための委託事業を財務省に要求して、内示はいただいておりますが、内容は教育の実施、専門家が現場に出かけて診断、指導をするというのが柱ですが、これを平成24年度もやっていきたいと考えております。
 委託先の選定に当たっては、足場からの墜落・転落災害防止に積極的な団体等に対しても広く参加を求めていこうということで、委託事業については最近は随意契約は認められておらず、競争入札になりますので、必ず受託できるかは難しいのですが、手を挙げて土俵に乗っていただければと思っております。
 3番目として、公共工事における「より安全な措置」の更なる普及ということで、国土交通省においては仕様書に「より安全な措置」を講じるようにと書かれておりますので、発注者はお金を出す者ということで、非常に影響力が強いのである程度普及していきます。公共工事全般で具体的な都道府県等に対しても、私どもの出先機関である労働局から働きかけを行い、「より安全な措置」が採用されるような働きかけをしていったらどうかということです。国土交通省もやられるかもしれませんが、我々もやってはどうかと考えております。
 4番目として、東日本大震災の復興工事は春から本格化すると考えておりますが、いろいろなビル、また民間の工場等も建つと思います。その復興工事については、「補助金」や「融資」が当然出てくるかと思います。2月上旬に復興庁ができるということもあって、復興庁が担当になるのかもしれませんが、そこや地方自治体、都道府県等に、「補助金」や「融資」、要するに税金を使うようなものについては「より安全な措置」をやってもらうように契約書に書いてくださいとか、そういった働きかけを私どもや出先の機関でやっていったらどうかと、それによって安全な足場の普及を図っていったらどうかということです。事務方として考えたのはこの4つぐらいですが、それ以外に意見があったらいただければと思います。以上です。
○小林座長 これから本格的にご意見を伺わなければいけないはずの時間ですが、時間が過ぎてしまったので、一言ずついただけますか。臼井先生からお願いします。
○臼井委員 こういう積極的な取組みは非常に良いと感じております。特に現場の方に理解してもらうという意味では、今回の委員会でいろいろ話が出ましたが、こういう良いことがあるということと、もう1つはいろいろと厳しくなっていくと、人は手抜きしたりといったことも出てくるので、そういった危険性も併せてわかりやすく提示してもらったら、より効果の強い啓発書になるのではないかと感じます。
○田村委員 私も同じ意見で、積極的な取組みは大変歓迎されるべきものだと思います。いちばん難しいのは、不安全行動が増えているのか減っているのかもよくわからないのですが、より安全な措置によって余計にそれが増えている可能性もないわけではないので、最後のまとめでいくつか吹出しでクローズアップされていましたが、作業者そのものが、安全性に対する認識を高めることが非常に重要です。1番の対策のポイントの中にいくつかありますが、監督者や事業者というよりは、むしろ作業者の教育を重点に置いた取組みを考えていただけたらと思います。
○大幢委員 先ほどから作業者の教育ということで何回も言っておりますが、それをやっていただきたいと思います。また、税金を使うような公共工事に近いものでの普及は比較的やりやすいのではないかと思いますが、民間工事に対しても、最初の手すり先行工法等の普及率を見ると低いということで、そちらにも少し力を入れていただいたほうがいいのかなと思っております。
○小林座長 最後に、私はいつもこういうときに変なことを言うようですが、現場で直接働いている方はもちろん、重要なことで、例えば民間工事の中で手すり先行の採用が極めて低いということがありますが、理由はここでは聞いていませんが、理由ははっきりしていて、お金を出さないということだろうと思うのです。そのお金を出さないということが、いちばん大きな理由だと現場でも聞いております。そういうことに対してお金をきちんと出すことが重要であって、快適な家造りにも大きく資することなのだという、家造りなら家造りの財布を握っている家庭の主婦にも訴えるようなキャンペーンというか、そういうものも重要ではないかと常々考えております。その辺もやっていただきたいと思っております。
 今後どうしましょうか。皆さんからもっと具体的な話をお聞きしなければいけなかったのですが。
○船井技術審査官 最後のフリーディスカッションでこれについてご議論をいただくつもりだったのですが、初めの質疑でこちらの部分までフライングして、踏み込んだご指摘も色々といただいたけので、大変助かりました。報告書本体については、大筋結論においては間違っているとする意見はなかったと認識しておりますが、報告書自体の記載について、一般の人にわかりやすいような記載の丁寧さとか、もう少しグラフを追加してはどうかとか、そういった部分の修正があったと認識しております。その部分については早急に事務局にて報告書の修正案を作成して、小林座長にご相談させていただいた上で、公表に持っていきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
○小林座長 いかがでしょうか。出来はどうなるかわかりませんが、お任せいただくということで、今月中には公表しなければいけないみたいなので。
○船井技術審査官 むしろ今日いろいろご指摘いただいた中で、資料4の1の要綱の関係を一般の人によりわかりやすくするためのアイディアをいくつかいただきましたので、それは行政内部で議論を進めたいと思います。それでしっかりとしたものを作りたいと思います。また、今日に限らず、追加でもっとこういうアイディアがいいのではないかということがありましたら、随時事務局にご提案いただければと思いますので、よろしくお願いします。
○小林座長 是非、ご意見をお送りいただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは、大幅に時間をオーバーしましたが、最後にその他として何かありますか。
○船井技術審査官 その他については特にありませんが、また小林座長と調整させていただいて、可能な限り早く、報告書については1月中にまとめて公表したいと思っておりますので、よろしくお願いします。
○小林座長 最後に、安全課長から一言お願いします。
○田中安全課長 長時間にわたりましてのご議論、本当にありがとうございました。先ほど船井からも話がありましたように、座長とご相談させていただきまして、今回の議論を最終的な報告書に代えさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 先ほど座長から国民の皆さん、特に家庭の主婦も含めて安全についてというお話がありましたが、私どもはいま「安全から元気を起こす戦略」というものがあって、国民の皆様にまで職場の安全を図ってもらおうという形で、いろいろな活動を展開しております。シンポジウムを開いたり、「安全の見える化」という形でコンクールを開いたりしておりまして、是非とも先生方もご覧いただければと思います。いずれにしましても、今回のご議論を踏まえて報告書を取りまとめ、資料4でご賛同いただいた普及の方策についてもいろいろと工夫していきたいと思っております。
 今後、安衛則に基づく措置、さらには「より安全な措置」の普及に向けて進めていきたいと思っておりますので、引き続きご協力をお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○船井技術審査官 それでは、第5回の検討会を終わります。どうもありがとうございました。お疲れさまでした


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部安全課

建設安全対策室: 03(5253)1111(内線5489)

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