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2011年10月24日 第55回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部

○日時

平成23年10月24日(月)


○場所

経済産業省別館共用第825会議室(8階)
東京都千代田区霞ヶ関1-3-1


○出席者

委員:五十音順、敬称略

相澤好治、明石祐二、浅井紀子、犬飼米男、小野真理子、小畑明、新谷信幸、瀬戸実、高橋信雄、谷口元、土橋律、冨高裕子、中村聡子、縄野徳弘、三浦武男

事務局

宮野甚一 (安全衛生部長)
高崎真一 (計画課長)
田中正晴 (安全課長)
椎葉茂樹 (労働衛生課長)
半田有通 (化学物質対策課長)
亀澤典子 (環境改善室長)

○議題

(1)「労働安全衛生法の一部を改正する法律案要綱」について(諮問)
(2)「平成二十三年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応するための電離放射線障害防止規則の特例に関する省令の一部を改正する省令案要綱」について(諮問)
(3)その他

○議事

○分科会長 皆様こんばんは。定刻より少し前ですが、出席予定の委員の方々
がお見えでございますので、始めさせていただきます。「第55回労働政策審議
会安全衛生分科会」を開催いたします。本日は日下部委員、角田委員、三柴委
員、古市委員、大山委員、中田委員が欠席されております。高橋委員は少し遅
れるとの連絡がございました。
 議事に入る前に委員の交代がございましたので、ご紹介いたします。労働者
代表の市川委員と眞部委員が退任され、日本労働組合総連合会の新谷信幸様そ
して全日本交通運輸労働組合総連合の縄野徳弘様が就任されました。お二人と
も今回はご都合が合いませんので、ご欠席でございますが、次回以降は審議に
参加していただくことになっております。本日は新谷委員の代理として杉山様
にご出席いただいております。よろしくお願いいたします。

○杉山氏 よろしくお願いいたします。

○分科会長 それでは議事に入ります。本日は議題のとおり、労働安全衛生法
の改正法律案要綱の諮問及び電離放射線障害防止規則の特例に関する改正省令
案要綱の諮問の2点についてご審議いただきたいと思います。
 皆様ご存じのとおり、今後の職場における安全衛生対策については、昨年7
月末からご議論いただき、12月に厚生労働大臣に建議いたしました。資料1の
法律案要綱については、同建議に基づいた形で作成され、本日10月24日付で
厚生労働大臣から労働政策審議会へ諮問がなされ、同日に労働政策審議会長か
ら当分科会において検討することとされました。本日は本法律案要綱につきま
して、ご議論いただきたいと思います。事務局から内容について説明していた
だいた後に、議論に移りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
それでは事務局からお願いいたします。

○計画課長補佐 私から法律案要綱についてご説明いたします。労働安全衛生
法の一部を改正する法律案要綱に関して、資料1として諮問文と別紙に要綱を
付けたもの、参考資料1として法律案の概要のポンチ絵、また参考資料3とし
て昨年12月にいただきました建議を配付しております。
 まず資料1の要綱案にしたがいご説明します。2頁で要綱の第一、「精神的健
康の状況を把握するための検査等」ということで、職場におけるメンタルヘル
ス対策に関してです。メンタルヘルス対策に関しては、参考資料1の2頁にポ
ンチ絵を付けておりますので、こちらも適宜ご参照いただければと思います。
 まず、第一の一、事業者は労働者に対して医師又は保健師による精神的健康
の状況を把握するための検査を行わなければならないこととしております。こ
れはポンチ絵の左側の部分です。「医師・保健師がメンタルチェックを実施」
という部分に概当する部分です。このメンタルチェックについては、建議の段
階では、「医師が」としておりましたが、法制的な整理をした結果、医業には
該当しないというもので、また安衛法の中では50人未満の規模の事業場で産業
医の選任義務のない事業場においては、事業者は医師又は保健師の方に労働者
の健康管理の全部又は一部を行わせるよう努めなければならないといったよう
に、安衛法上一定の役割を保健師が担っていることもありますので、このメン
タルチェックに関しては「医師又は保健師」ということで保健師も実施主体と
することとしました。
 次に第一の二、労働者は事業者が行うこの検査を受けなければならないこと
としております。
 次に三、事業者はこの検査の結果について、検査を行った医師又は保健師か
ら労働者に通知されるようにし、医師又は保健師は予め労働者の同意を得ない
で、この検査の結果を事業者に提供してはならないこととしております。参考
資料1の2頁、ポンチ絵では1の結果の通知、1’の「労働者の同意を得て事
業者に通知」とありますが、労働者の同意を得ずに提供してはならないという
ことで、いまの要綱の三の部分はこの1と1’に該当する部分です。
 要綱に戻り第一の四、この結果、検査の結果の通知をされた労働者の方が、
厚生労働省令で定める要件、これはメンタルチェックの結果、一定程度のスト
レス過重があるといったようなことを定めることを予定しておりますが、この
労働者が面接指導を受けることを希望する旨の申出をした場合には、事業者は
医師による面接指導を実施しなければならないこととしております。この四の
部分は、ポンチ絵では2の面接の申出があり、3の事業者が医師に面接の実施
依頼、そして4の医師による面接指導の実施という部分が該当する部分です。
 また2頁の最後の行からで、事業者の方は労働者がこの申出をしたことを理
由として不利益な取扱いをしてはならないこととしております。なおポンチ絵
をご覧いただくと、申出をしない労働者の方については、ポンチ絵の下の部分
「地域の機関」という所に行くことが想定されますが、この場合においても、
申出を行わなかった労働者であったとしても、地域において適切な相談機関、
医療機関につなぐことができるように、地域と職域の連携を促進していくこと
としております。この結果、労働者の方が地域の医療機関を受診して、診断書
が提出されたような場合には、従来の枠組みの中でございますが、事業者は健
康を確保する観点から、その診断書に基づきまして、必要があれば適切な対応
がなされることとなります。地域と職域の連携の部分に関しては、ポンチ絵の3
頁に具体的な連携図を付けておりますので、ご覧いただければと思います。
 要綱に戻り、3頁の五、事業者は面接指導の結果を記録しておかなければなら
ないものとすることということで、これは長時間労働の面接指導と同様です。
 六は事業者は面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴かなければならない
こととしております。
 また七は事業者は医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは当該労働
者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業
の回数の減少等の適切な就業上の措置を講じなければならないこととしており
ます。これは先ほどの2頁のポンチ絵で申しますと、5の医師からの意見聴取
と6の事後処置の実施に該当します。
 要綱に戻り、八の部分です。厚生労働大臣は七により、事業者が講ずべき措
置の適切かつ有効な実施を図るために、必要な指針を公表することとしており
ます。
 また九は、厚生労働大臣は必要があると認めるときは、事業者又はその団体
に対し、当該指針に関し必要な指導を行うことができるものとしています。な
お建議の中では、面接指導の申出と面接指導の結果を理由とする不利益な取扱
いについて記載しています。これについては面接指導の結果を理由とする不利
益な取扱いについては、適切な就業上の措置との違いが必ずしも明確ではなく、
切り分けが難しいことがありますので、厚生労働大臣が定めることとしている
指針の中で、お示しをしていくこととしております。
 要綱の十です。健康診断や長時間労働の面接指導と同様ですが、メンタルチ
ェック、面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た秘
密を漏らしてはならないものとしています。
 なお、12月にいただいた建議の中では、メンタルヘルス対策の中で、外部専
門機関についての記述がありました。これについては整理をした結果、産業医
の選任という法律上の規定は変更せずに、一定の要件のもとで、産業医とその
他の医師・保健師等との連携について認めるということを省令において措置を
していくことといたしました。この省令については、また今後この分科会にお
いてお諮りしたいと考えておりますので、その際にはよろしくお願いいたしま
す。
 またメンタルヘルス対策について建議の中には、記載がありました管理職に
対する教育、職場のメンタルヘルス対策に関する情報提供の充実、メンタル不
調者に適切に対応できる産業保健スタッフの養成及び活用、ストレスが高まる
おそれがある時期における取組の強化、うつ病等による休業者の職場復帰のた
めの支援の実施という点については、それぞれ予算事業ということで、平成23
年度予算による事業で実施をしておりますので、ご説明させていただきます。
 次に要綱に戻り、第二が職場における受動喫煙の防止対策の関係です。要綱
の4頁です。第二の一で、事業者は労働者の受動喫煙を防止するため、屋内作
業場その他の厚生労働省令で定める作業場、これは例えば車両や航空機内の内
部など、移動施設の内部を定める予定ですが、この作業場について専ら喫煙の
ために利用されることを目的とする室、これはたばこの煙が漏れるおそれがな
いものとして、省令で定める基準に合致する必要があるものですが、この喫煙
室を除いて喫煙を禁止すること、その他省令で定める措置を講じなければなら
ないこととしております。つまりこの一ですが、原則全面禁煙又は空間分煙の
措置を職場で講じていただくということを事業者に義務づけるものです。
 ただし第二の二の部分ですが、当分の間飲食物の提供その他の役務の提供の
事業であって、厚生労働省令で定めるもの、これは飲食店・宿泊業・娯楽業を
定める予定ですが、これを行う事業者については、第二の一の規定は適用せず、
この場合は事業者は労働者の受動喫煙の程度を低減させるための措置として、
省令で定める措置を講じなければならないこととしております。この省令で定
める措置としては、具体的には一定の濃度又は換気の基準を守るということを
定める予定にしております。
 なお受動喫煙防止対策についても、建議の中で技術的支援や財政的支援につ
いての記述がありました。これについても平成23年度予算の事業として実施し
ており、この具体的な内容については参考資料1の4頁に付けておりますので、
後ほどご覧いただければと思います。
 次に、要綱の第三についてご説明します。5頁で電動ファン付き呼吸用保護具
に関してです。第三の一で、電動ファン付き呼吸用保護具を譲渡、貸与又は設
置に際して、大臣の定める規格又は安全装置を具備しなければならないものに
追加することとしています。
 二は電動ファン付き呼吸用保護具をその製造又は輸入に際して型式検定を受
けなければならないものに追加することとしています。
 三は電動ファン付き呼吸用保護具の型式検定を行う登録機関について、その
登録要件として別表第14に掲げる設備、その括弧の中にあるように材料試験機、
ガス濃度計測器、内圧試験装置、通気抵抗試験装置、粉じん捕集効率測定装置、
排気弁気密試験装置、漏れ率試験装置、最低必要風量試験装置、公称稼動時間
試験装置及び騒音計といったものを用いて、型式検定を行うものであることを
規定することとしています。
 第四はその他の規定の整備を行うこととしています。
 施行期日の6頁の第五の一です。施行日はメンタルヘルス対策と受動喫煙防
止対策については、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令
で定める日から施行することとしています。ただし電動ファン付き呼吸用保護
具に関しては、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定
める日から施行するものとしています。
 第五の二の経過措置、電動ファン付き呼吸用保護具に関しては、施行日前に
製造又は輸入されたものについては、譲渡等の制限及び型式検定を受けること
を要しないこととしております。このほか法律の施行に関し必要な経過措置は
政令で定めることとしています。
 三の検討規定は、この法律の施行後5年を経過した場合において、法律の施
行状況について検討を加え、必要があると認めるときには、その結果に基づい
て所要の措置を講ずるものとしております。
 四はその他関係法律について所要の規定の整備を行うこととしています。
 法律案要綱の説明は以上ですが、昨年12月にいただいた建議の中に盛り込ま
れている事項のうち、機械譲渡時における機械の危険情報の提供の促進、職場
における自主的化学物質管理の促進に関しては、今後省令・告示等で対応する
予定にしております。また省令等を定める際には、この分科会にお諮りするこ
ととなりますので、その際にはどうぞよろしくお願いいたします。説明は以上
でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明に対しまして、質問等
がございましたらお願いいたします。

○中村委員 メンタルヘルス対策についてご質問させていただきます。具体的
な事柄については、今後詳細な提示があると思いますが、その前に2点ほど要
望と、1点確認させていただきたいと思います。
 1つは、今回導入される精神的健康の状況を把握するための検査は、一般的健
康診断の問診に併せて実施しますが、一般健康診断の一部ではなくて、独立し
たものであるという点、あるいは事業者のかかわり方、つまり事業者は検査の
場は提供するが、積極的なかかわりが出てくるのは労働者が検査結果により面
接指導を申し出てからという点など、通常より複雑な流れになっていますので、
事前に十分な周知の機会を作っていただき、これによる混乱が起こらないよう
にしていただきたいと思います。
 もう1点は、実際にメンタルヘルスチェックを実施する医師・保健師は、そ
の専門性や経験において様々なバックグラウンドの方がかかわることになると
思いますので、その対応に大きなばらつきが出ないように、わかりやすくシン
プルな方法で行えるように工夫をしていただきたいと思います。事業者は実際
に行われる検査の部分については、積極的に介入しにくいような設計になって
いますので、その部分の質の管理が難しいということが起こり得ると思います。
その点で混乱が起こらないようにしていただきたいと思います。
 次に1つ確認しておきたい点です。この制度の導入は、まだメンタルヘルス
対策に取り組んでいない事業者がその取組をスタートするきっかけになること、
特に小規模事業者における底上げが1つの目的であったと思いますが、既に先
行してメンタルヘルス対策を行っている事業者に対しては、その取組が十分な
もので問題なく行われている場合には、その変更は必要ないと考えてよいので
しょうか。この建議の中で新たな取組については既に多くの企業で取り組まれ
ているメンタルヘルス対策の事例に十分に配慮した上で制度設計がなされるべ
きであるとあります。例えば実際に行われている健康診断の問診項目に、先に
提示がありました9項目に匹敵するような内容が含まれていて、それが健康診
断として問題なく行われているような場合に、改めて問診項目から切り分けて
システムを変えて作り直す必要があるのか、あるいは特に問題はなく行われて
いるのであれば、そのまま同じような形で続けていいのかを確認させていただ
きたいと思います。以上です。

○分科会長 ありがとうございます。4つ程要望と、最後のはご質問だと思いま
すが、いかがでしょうか。衛生課長お願いします。

○労働衛生課長 貴重なご意見をありがとうございました。このシステムはま
さに十分な周知を図り、円滑に導入できるようにしっかり周知をさせていただ
きたいと考えおります。
 実際このメンタルチェックをやっていただく医師と保健師は、ばらつきがな
いように、円滑に出来るようにマニュアルを作り研修もやることを考えていま
す。メンタルヘルス対策は新たな枠組みで、これが本当に労働者に気付きの促
進となるきっかけになるものということで私どももこれを積極的に導入したい
と思いますが、実際先行しているところもあり、その中で例えばドクターによ
る健康診断と一緒にやり、十分にやっているところもあるかと思います。全く
小規模の事業所で全然やっていないところもあるわけです。今回すべての事業
場に義務づけるわけで、しっかりとやるようにということで、医師又は保健師
にやらせるつもりです。そういう先行したところは、9項目以上のものを一生懸
命やっているところは、これにより下げる必要はなくて、これまでどおりしっ
かりやっていただきたいとします。
 実際9項目を健診の項目に入れてやっている場合は、この法が目指すところ
は、メンタルチェックの結果を健診であれば結果は事業者に伝わるものです。
このメンタル関係の9項目については、大変慎重な扱いが必要ということで労
働者の方に通知をしていただき、その労働者の方から面接の申出があった場合
に、医師による面談をしていただくのが1つの法律事項です。ここだけしっか
りすればいいかと、積極的にこちらのほうも混乱しないよう周知させていただ
くように考えているところです。

○杉山氏 ありがとうございます。新谷委員の代理で出席していますが発言を
お許しいただきたいと思います。いまの中村委員の発言と多少かぶるところが
ありますが、基本的には賛同したいと思っています。精神的健康の状況を確認
する検査の関係で先ほども出ていますが、大企業においてはメンタルヘルスに
関する措置等は進んでいるところも多いですが、一方で中小企業等の中では、
非常に取組が遅れているところも多数あるのではないかと理解しております。
そういった意味では今回の法律案の中では公布の日から起算して1年を超えな
い範囲内において、政令で定める日云々ということで定められておりますが、
施行前までに先ほど説明がありましたが、説明会、マニュアル作成、又は地域
産業保健センターとの連携、いろいろな角度から各事業場に対する周知啓発活
動を是非お願いしたいと考えておりますのでよろしくお願いします。
 もう1点は、今回のメンタルヘルス、受動喫煙防止の関係は当分科会におい
て、2010年12月22日の建議以降早期に改正を行うべきだとしてきたと理解し
ております。そういった意味で、今回の臨時国会の中で成立に向けて全力を尽
くすようお願い申し上げて発言に代えたいというふうに思います。よろしくお
願いします。

○冨高委員 ご説明ありがとうございました。今回説明いただいた要綱は、早
期発見の側面が主だと思っています。先ほども触れていただきましたが、建議
では早期発見だけではなく、メンタルヘルス対策をトータルで促進するべく治
療・職業復帰という一連の対策が必要で、総合的検討を進めるべきであるとさ
れています。先ほど平成23年度の予算と合わせて少し職業復帰の辺りの話はし
ていただいたかとは思います。いま何をし、これから何か強化されるのか、そ
れともそのままなのかどうかを少しわからないのでもう少し詳しく説明いただ
ければと思うのが1点です。
 質問が2点あり、もう1点は、面接指導の結果に基づく不利益取扱いの禁止
については、要綱で、今後指針等に規定されると説明いただきましたが、やは
りメンタルヘルスの問題は労働者にとって非常にセンシティブでデリケートな
問題だと我々考えており、そういった観点からもプライバシーの保護であった
り、不利益取扱いについては非常に厳格に運用すべきであると考えています。
特に紛争が生じた場合には専門的かつ慎重な取扱いというものが必要かと思っ
ておりますので、そういった視点でいいますと、個別紛争処理機関の体制強化
といったことも含めて検討すべきではないかと考えておりますが、その点につ
いてどのように考えているか、現時点で何かお考えがありましたら教えていた
だきたいと思います。

○労働衛生課長 まずメンタルヘルス対策関係予算です。いまメンタルヘルス
関係においては、各都道府県レベルにメンタルヘルス対策支援センターという
のを運営しておりまして、この予算が今年度は、12.7億円です。昨年度は、4.9
億円ですので、大幅な増ということで、しっかりとこのメンタルヘルス支援セ
ンターの中で、メンタル不調の予防から復職支援まで事業者が行う職場のメン
タルヘルス対策を、総合的に支援していきたいということです。この中で事業
者や産業保健スタッフからの相談への対応であるとか、専門家による個別の支
援であるとか、職場の管理職に対する教育等、職場復帰プログラム、地域との
連携で主治医や産業医、相談員、行政機関とのネットワーク等の構築等も含め
て総合的にやって参りたいと思います。
 今年度予算では年度途中で1.6億円を計上し、ここで医師・保健師の今回の
ストレスチェックや面接指導を行う際のマニュアルを作りまして、研修を行う
ということです。メンタルヘルス・ポータルサイト「心の耳」というのをやっ
ておりまして、労働者の皆さんや、産業医等の保健スタッフ等すべての多くの
方が使えるような相談事業をインターネットホームページにサイトとして出し
て、ここに必要な情報等がありますので、これへのアクセスを導入する等総合
的にやっていきたいと考えています。来年度予算も同じように計上する予定で
す。
 プライバシーの保護、まさにメンタルヘルスというのは、いちばん労働者に
とりまして、本当にプライバシーというか、大変慎重に取り扱わなければいけ
ない事項です。かといって、事業者がまったく知らないと、事業場における対
策が進まないということで、この兼ね合いが難しいわけです。今回の法令の中
には労働者が面接を受けたいと申出をした際に、不利益な取扱いをしてはなら
ないという項目の条文があります。これについては指針を定めましてこれに基
づいて指導を行いたいということです。その中でどういった不利益事項がある
か、そういったことについて具体的に検討して指針を定めてまいりたいと考え
ています。

○安全衛生部長 個別紛争処理の関係は、ご案内のとおり各全国の労働局、す
べての労働基準監督署に、個別紛争処理の相談員を置いて様々な個別紛争につ
いての相談に応じているところです。その中でもいま指摘がありましたように
こうしたメンタルの関係の相談のようなものもいま増えてきていると思います。
したがって今回この法律を契機にして、こうした法改正の内容等も、この個別
相談事業に携わる相談員にも十分周知してこうした相談にも十分に対応できる
ような形で進めてまいりたいと思っています。

○冨高委員 ありがとうございます。ちょっと1点周知の点について先ほどか
ら労使ともに周知をしっかりしていただきたいという話がありますが、大手で
枠組みがしっかり整っているところについても、やはり労働者はなかなか相談
できないということで外部の機関に相談したりするパターンもあるかと思いま
す。そういった意味で今回枠組み以外のところの工夫もしていただいているわ
けなのでが、是非周知の部分でこの枠組みをやっているからいいよねと企業が
思わないような、職場における理解というものを醸成できるような周知の仕方
を工夫していただければと思いますので、よろしくお願いします。

○明石委員 ちょっとわからないところを、細々したところで申し訳ないので
すが。ポンチ絵の2頁の先ほど紹介いただいた左側は「医師・保健師がメンタ
ルチェックを実施」になっていますが、建議の段階ではストレスチェックとい
ったと思いますが、これは何か変わった意味はありますか。

○安全衛生部長 実質的な意味は何もないのですが、ストレスチェックという
言葉がご案内のとおり原発のストレステストということでかなり使われました。
どうもそれと紛らわしいのではないかという意見があり、メンタルチェックと
いう用語を使っています。単にそれだけです。中身については何も変わっては
おりません。

○明石委員 それでは条文の二で労働者の責務が書かれていますが、健康診断
においては、この下に但書があり、自分の希望で外へ行って医師を選択し証明
書を出せばいいことになっています。この場合は当然事業者は申出以外のとき
には行ったかどうかの確認ができませんが、これは外部を利用することは可能
ですか。

○計画課長補佐 健康診断については、明石委員がおっしゃるように、労働者
が希望した場合には事業者が指定した医師以外の医師による実施を認めていま
す。これは労働者の既往歴、生活習慣といった短時間ではなかなか知りえない
事項を熟知しているような主治医とかかかりつけ医に実施していただいたほう
が望ましい場合が想定されることがありますので、そういった但書を設けてい
ます。今般のメンテルチェックについては、労働者の方の業種、部署、作業内
容、勤務機関が与える影響と、性別、年齢といった客観的事項を勘案していた
だき、平均的な労働者と比較してストレス反応の程度がどの程度かと。一度審
議会に出させていただきましたが、標準的な例としては、9項目に4段階で○を
つけていただくといったようなものです。実施する医師なり保健師によって結
果が大きく変わるものではないので、今回はメンタルチェックにおいては他の
医師による実施を認める必要はないのではないかということで、健康診断によ
る但書と同様の規定は設けていないところです。

○明石委員 細かいことですけれど、外部の機関を利用するときは、自己責任、
自己負担で行くわけですか。

○計画課長補佐 ここのメンタルチェック自体は受けていただき、そこからさ
らに結果の通知を受けて、この地域の機関に行くような場合には、そこは事業
者の責任で、事業者の費用負担ではなく、労働者の方の負担になっていくもの
です。

○明石委員 わかりました。条文三で、この条文はちょっとわかりにくいので
す。通知をするのが医師又は保健師というのはわかりますが、このまま厳密に
読むと、医師が封筒に入れて送るような印象がありますが、この場合そういう
意図ではなく、この後の十に書いてある秘密の保護みたいなところがあるので、
例えば外部機関を企業が利用した場合は、そういう方々に、扱った方に対して
は、秘密の保護がありますよというところを加味して書いているということで
よろしいですか。

○計画課長補佐 そうです、検査の実施主体として医師又は保健師によるメン
タルチェックと書いていますので、三の法律上の書き振りとしては、医師又は
保健師から通知をする。ただ実際の事務としては、その医師本人がやるもので
はない場合も多々想定されると思いますので、そういった場合には先ほど申し
上げました十の事務に従事した方についても当然秘密を漏らしてはならないと
いうものがかかりますので、その事務を実施していただく方についても、当然
その結果については労働者の方に直接通知をされるような事務をしていただく
という必要はあります。

○明石委員 若干法律的解釈ですが、事業者に雇用されている医師・保健師が
いますが、その方々がやった場合は、既に事業者が知り得た扱いにはなりませ
んか。

○計画課長補佐 メンタルチェックの結果については、当然雇用されている医
師の方としても事業者にいくのではなく、当然労働者に直接いくということで、
それは既に知っている事実にはならないものです。

○明石委員 すみませんもう1つ。条文の七に衛生委員会に報告をしなければ
いけないと書いてあります。衛生委員会等に報告すると、個人を特定される恐
れがあるのではないかと思います。というのは議事録を作り、誰でも見られる
ようにしなければいけないというところがあると思いますので、ここら辺はい
かがでしょうか。

○計画課長補佐 衛生委員会に報告していただく際には、やはり個人が特定さ
れないようにプライバシーへの配慮をし、統計的な資料にしていただく、こう
いった形で報告していただく必要があると思っています。これについても指針
の中できちんと示していきたいと考えています。

○明石委員 わかりました。

○犬飼委員 先ほど少し不利益取扱いのことがあり、今後指針でという話があ
りました。建議の中でも「『新たな枠組み』を実施するまでに、労働及び労務
管理の実態を十分に踏まえた上で整理すること」ということなので、当然これ
が行われるときには指針の部分が整理されて同時に出ていくという理解でいい
とは思います。検討会の報告を見ますと、例えば健康診断結果に基づき事業者
が講ずべき措置に関する指針を見ますと、その中では安易に解雇等をすること
を避けるべきことを規定しているとか、かなりきついというかいちばん重いと
ころが書いてあります。検討会報告書では、その他に健康確保に必要な措置を
超えた不利益な取扱いをしてはならないというのがありますので、解釈の問題
がかなり入っているので、このあたりを具体的にわかるようにしてあげないと、
ちょっと言葉ずらで難しいかなと思いますので、是非その点の配慮をお願いし
ます。
 今回の法律事項は、ポンチ絵もありますように、点線の枠の中で整理されて
いるとのことですが、私たちが思っているのは健康診断でセルフケアで気付き
を起こさせることはいいのですが、もう少し重い方、メンタルヘルスを実際に
自分自身あるいは家族がやらなければならないだろうと思った方が、この下の
矢印の直接受診をすると。医療機関へ行って医師から当然、次に書いてある医
師から事業者に対する意見聴取を含めてやられることになると思います。法律
要綱は点線の四角の中で、連携の中で外部医師に直接行った場合は、行ってそ
こから事後処置まで乗り移っていくのです。だからこの部分はできれば、難し
いとは思うのですが、事後の処置へ移るときに、別に健康診断で1から順番に1、
2、3、4、5、6とこなくても外部で医師があって医師が何らかの事後措置をしな
ければいけないと判断すれば、事業者に対して措置をしてくださいと申し上げ
るわけですから、法律要綱でいくと、六項になります。六項は四の面接指導の
結果に基づきはやりますが、解釈とすれば当然外部の医療機関で受けても六に
乗ってくるのです。乗っかってくる。措置自身は変わらないと思っています。
だからその辺が事業者とか労働者にちょっとわかるように、健康診断でわかる
のはもちろんですが、その他に外部の医師から受けても当然同じように、いま
先ほど私が言いましたような不利益の観点も含めて同じようなレールの上で措
置がされるということが明確にわかるとよいと思いますのでよろしくお願いし
ます。

○分科会長 よろしいですか。何か指針のところ書いていただくということで
すか。

○労働衛生課長 貴重なご意見をありがとうございました。指針については、
いまご指摘がありましたような事後措置指針と同じようにこのシステムについ
て、今回指針で定めることになっていますが、この指針作成の目的とか、面接
指導の実施の措置の必要性であるとか、メンタルチェックの実施項目の結果の
意味、面接指導の実施後の就業上の措置の必要性、実施後の適切な就業上の措
置の方法、事後措値を実施した際の不利益取扱いの禁止等について考えられる
わけですが、これについては専門家の意見を聞きながら具体的な内容を検討し
たいと考えています。
 労働安全衛生法の整理なので、労働安全衛生法の世界では事業者にいろいろ
な義務を課すわけで、事業場ではこういったメンタルチェックの結果を受けま
して労働者の方が面接指導の申出をされた場合は、医師による面談指導を受け、
その医師からの意見聴取をへて時間外労働の制限とか、作業の転換等の措置を
講じるという一連の流れがあります。労働者の方々の中にはそういう地域のほ
うの医療機関に直接相談したいというところもありますので、そういう相談し
たいという方を想定し、いろいろと考えたいと。これは実際法律上では出てき
ませんが、これからいろいろと検討して本当に動きやすいようなシステムにし
たいということで、そこは検討させていただきたいと思います。

○犬飼委員 法律上出てこないとおっしゃいますが、事業者が講ずべき処置は
法律上出てくるわけです。だから私が言いましたように途中から同じように外
部機関で受けて、この方については事後処置をしなければいけませんよという
ふうに事業主に言った場合は、当然そこからは同じレールに乗ってくるのです
よねという話です。

○労働衛生課長 いちばん最初に私どもの中條から説明したように、実際外の
医療機関で診断書を受けまして、それを事業者に提出した場合は、事業者のほ
うがまさに職場の安全配慮義務の中で適切にやられると承知しているところで
す。

○分科会長 これはいままでもやっているところです。今回新たな枠組みでは
ないけれどもということです。いかがですか。

○小畑委員 くどいようで恐縮です。不利益取扱いについて最度確認をしたい、
あるいは要望になるかとは思いますが。面接指導を実施することを義務づけ、
条文のほうで申出をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならない。
これはおそらく申出をしたことを理由に不利益取扱いをする事業者はまずいな
いと思います。ほかの理由にかこつけて不利益取扱いをしてしまう。そういう
ふうなことも懸念はされるところで、是非指針の中にその辺も含めてわかりや
すい指針を是非作成をお願いしたいと思います。これは要望です。

○分科会長 いかがでしょうか。もし後でありましたら。受動喫煙もやりまし
ょう。

○小畑委員 参考資料3の建議の6頁の(3)で、罰則は付さない云々というこの
ような形に書いていますが、罰則は付さないけれども、今後の履行確保のあり
方については、これらの措値の実施状況を踏まえつつ検討していくとあります。
そうありますので、この実施状況の進捗を分科会でもしっかりとフォローをし
て実効性のある措値になるように継続的に議論をしてはどうかと思いますが、
それについての考えを聞かせてください。それが1点です。
 もう1つはこれは要望です。同じ6頁(6)の国民的コンセンサス形成の重要性
の部分です。この建議の中でも受動喫煙防止対策に対する国民のコンセンサス
の形成に努めるとありますので、是非国民的コンセンサスの形成を主眼として
この受動喫煙防止に向けた環境形成に努めるということを実効あるものとして
いってほしいという要望です。以上です。

○安全衛生部長 ただいまのご要望ですが、この部分に限らず、先ほどの要綱
の5頁最後のところですが、検討規定で「施行後5年を経過した場合において
の施行の状況について検討を加える必要がある場合には」とありますように、
いずれにしてもこの法律の施行状況について、随時この審議会にもご報告し、
その状況を踏まえて必要があれば見直す部分については見直ししていきたいと
考えています。また、いずれにしてもこの受動喫煙については、建議にありま
すように事業主の責務としても実際たばこを吸うのは働いている労働者の方等
々でありますので、そこはやはり国民のコンセンサスというものをいかに得て
いくかというのが非常に重要なことだと思っておりますので、その点について
も引き続きいろいろな形で取組を進めてまいりたいと考えています。

○犬飼委員 23年度より助成金を始められ、2.8億円を付けていらっしゃるこ
とは大変評価できることだと思います。前の分科会でも中小の人が大変困るだ
ろうということで求めていらしたことなので、これができる前に先行してやっ
ていると大変評価を申し上げたいと思います。ただ、実効性の問題で、いちば
ん懸念しているのは、大きなビルに小さなテナントがいっぱい入っているよう
な場合、これは誰が処置するかは非常に問題になるとは思うのですけれども、
それぞれが、それぞれでというとまた大変なことです。あるいは、みんなの合
意を得ても大変だと思います。是非その辺について周知する場合に、えいやっ
とやってしまうと下で大変混乱すると思いますので、いかにその辺を周知して
いくかということだと思います。部屋を作ることもそうですが、例えばこの前
議論になりましたように、0.15mg/m3というもの。では、これはどう測るのかと
いう話。簡易の粉じん測定機器はかなり高価だという話があったり、換気扇を
付けたとしてもそれが1,406m2/hというのが本当に確保されているかというこ
とが問題だと思うのです。その規格のものを付けましたと。しかしおそらくこ
れでいったら、その風量で稼働しているかを確認しなければいけないようにな
るのではないかと思います。その辺のところまで少し配慮できるようにしてあ
げないと、これは設置する側でも大変だなと思っています。よろしくお願いし
ます。

○環境改善室長 ご指摘いただきました2点ですが、最初の周知の問題につい
ては、事業者の方、それから働く側だけではなくて、いまご指摘がありました
様々なテナントの方が入っているビルのオーナーの方々に対しましても取組の
必要性についてご理解いただくようにしたいと思っています。
 測定等の面については、先ほどご指摘いただいた支援事業の中に機器の貸出
事業もあり、参考資料1の4頁に、三本柱でこの10月から事業を進めています。
これはいずれも建議で指摘いただいたものです。1と書いてあるいちばん上に
書いてありますのが先ほど話がありました助成金です。これは本年度は2.8億
円の規模ですが、その他に技術的な支援、高価な機器は買えないという意見も
受け、2に技術的な支援については、電話相談、現地に出向いて専門家の方が
アドバイスをするという事業を始めています。3については、デジタル粉じん
計、風速計の無料貸出しを行っています。いま一生懸命いろいろなルートを通
じて、都道府県、労働局等を通じて周知をしていますが、徐々に問合わせいた
だいているようですので、こういうものを通じて、こういう機器を使っていた
だきながら確認していただくようお願いをしたいと思いますし、実際にどこを
どう測定するのか等については、これからわかりやすい測定方法等をまた改め
て示したいと考えています。

○明石委員 最初にお願いですが、やはりいまだに受動喫煙といっても喫煙と
間違える人が結構いらして、1から説明するのが大変なので周知期間を十分に置
いていただきお願いしたいと思います。また、省令に当たっては現場をよく見
ていただき、労使の意見を聞いていただくと幸いです。
 質問を2点させてください。条文1終わりのほうの2行目、ここに分煙と完
全分煙の意味で書かれている「喫煙を禁止すること」、その前が分煙でその下
に「その他の措置」がありますが、それが意図しているのはどこら辺ですか。

○環境改善室長 これにつきましては例えばここが喫煙室ですという表示、そ
のことを規定するようなことを考えています。

○明石委員 それともう1点、この1条が68条の2に置かれるとのことで、そ
れは結構なのですが、68条は罰則がかかっていますので、関係法令のときに1
と2を別に扱い、罰則はこの受動喫煙にはつきませんので、そこは分けて考え
ていただければと思います。
 もう1個だけお願いですが、飲食店、宿泊等で当面の間は認められています
が、それに対しても措置をしなければいけないとのことで、空気清浄機を買っ
たりするところがあると思いますが、そういうことがゆくゆく無駄にならない
ようにそこら辺もまた考えていただきその後の実施をしていただければと思い
ます。よろしくお願いします。

○環境改善室長 いちばん最後の要望に関連して、当分の間は、換気をする、
あるいは一定の換気量を確保していただくことで、対応していただくことをお
願いをしたいと考えていますが、その後においても一定の換気は有効だと思い
ます。何か装置を使うことにしても、それは無駄にはならないと思いますので
ご指摘も承って、当分の間の後の対策も考えたいと思います。

○瀬戸委員 この受動喫煙防止対策の支援については、私どももこの分科会に
おいて、中小企業者への配慮をお願いし、さっそく23年度よりこのような措置
をしていただいたことに対し、心より感謝申し上げたいと存じます。
 要望というか聞きたい点がいくつかあります。第1点目はどなたか他の委員
の方からも言っていましたが、この件に関しての周知を徹底していただきたい。
この助成金のところで、対象事業主で「旅館業、料理店又は飲食店」というこ
とで限定されていますが、これは過去の分科会におきましてもそういう議論が
あったかと思いますが、他の中小事業者への適用事業主の範囲の拡大というも
のは考える余地はないのか。もう1点は、23年度の予算については約2.8億円
ですが、24年度の概算要求の中においては、どの程度の予算が計上されている
のか確認をさせていただきたいと思います。以上です。

○環境改善室長 周知については、先ほども指摘がありましたので、できるだ
け丁寧に、どういう方策を取ればいいのかを含め、いろいろな方にお知らせを
していきたいと考えています。
 助成金の関係では、ここの対象事業主を拡大することについては、本日ご意
見として承って、建議にも今後の支援がどうあるべきかについては引き続き検
討すべきであるということをいただいていますので、そういう中で考えていき
たいと思っています。対象をこのように絞ったのは顧客が喫煙することをサー
ビスに含めて提供している業種であり、なかなかただちには全面禁煙又は、空
間分煙の措置を取ることは難しいであろうと。そういうように思われるところ
については、対策を促進するために財政的支援を行うべきという建議にそった
形で、それは整理しています。今年度は、10月からの助成金でしたので2.8億
円でしたが、来年度は4月から1年分ありますので、いまその2倍の5.6億円
を計上しています。

○谷口委員 ご説明の中で、もともと建議の1つ目の柱と2つ目の柱について、
機械の危険情報の提供、自主的な化学物質管理の促進についての対応について
は今後また省令等で対応するという説明をいただきましたので、今後適切な対
応をお願いしたいと思います。この中にも既に国がやること等について記載が
ありますが、これらが実効あるものとすることが大変重要であると思います。
その点についてもし何か考えがあれば聞かせてください。

○安全課長 機械の危険情報の関係では、先ほどの話のように省令等で対応す
るという話が1つはありますが、それとともに施策を支援するために予算事業
として、来年度要求に向けて例えば、中小のメーカーへの個別指導、機械災害
要因のデータベースを構築するとか、そういうような形で危険情報の提供を側
面的にサポートするような予算事業というものを要求して、来年度から進めて
いきたいと考えているところです。

○犬飼委員 建議の中の項目には上がらなかったのですが、建議の報告の中の
冒頭に、なかなか災害が減らない、リスクアセスメントが中小で進まないとい
うことがあり、安全対策を講じていくことができるようにする必要があるとく
くられていますが、法律改正云々ではなくて、いまのところのリスクアセスメ
ントの中小における推進が埋没しないように、是非、具体的な対策をお取りい
ただきたいということを要求します。

○安全課長 簡単に申し上げますと、以前から分科会で議論されているところ
で、それについては今年度も中小企業をターゲットとしたリスクアセスメント
導入というものをさらに徹底していきたいと思っています。あとはいろいろな
形での、リスクアセスメントに取り組みやすいように、例えばインターネット
で支援できるようにシステムを一部動かしていますし、そういうところからも
中小の方々がいろいろな形でリスクアセスメントに取り組んでいただければと
思っているところです。一般的にいえば安全文化の醸成というところから、私
たちも説明させていただきましたけれども、安全プロジェクト、そういう形で
の運動としてそういう安全というものに取り組んでいただきたいという形で皆
様方にお願いしているというところです。以上です。

○分科会長 よろしいですか。他にはございませんか。
 それでは、労働安全衛生法の一部を改正する法律案要綱について、当分科会
として妥当と認めることとして、その旨の報告を労働政策審議会会長宛に行う
こととしたいと思いますが、お認めいただけますか。

(異議なし)

○分科会長 ありがとうございます。事務局から報告文(案)の配付をお願い
します。
 お配りした報告文(案)ですが、労働政策審議会会長宛に報告したいと思い
ます。よろしいでしょうか。

(了承)

○分科会長 ありがとうございます。それでは、お配りした報告文(案)で労
働政策審議会会長宛に報告することとします。
 2点目の議題に入ります。東電福島第一原子力発電所における緊急作業では、
原子力災害の拡大を防止するため、特にやむを得ない場合であるとして、被ば
く上限が100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げられています。
今般、厚生労働省において、作業の進捗により労働者の被ばく線量も低下して
いることから、関係機関とも調整しつつ、被ばく上限について検討した結果、
新たに緊急作業に従事する方については被ばく限度を100ミリシーベルトに引
き下げる案が示されました。本改正省令案要綱についても法律案要綱と同様、
本日10月24日付で厚生労働大臣から労働政策審議会へ諮問がなされ、同日に
労働政策審議会会長から当分科会において検討することとされています。
 それでは、改正省令案要綱についてご議論いただきたいと思いますので、事
務局から内容についてご説明いただいた後、議論に移りたいと思いますので、
よろしくお願い申し上げます。

○労働衛生課調査官 それでは、「電離放射線障害防止規則の特例に関する改
正省令案」について説明します。資料2の省令案要綱、それから、参考資料2
を用いて説明します。
 まず参考資料2をご覧ください。1の「趣旨」です。電離放射線障害防止規則、
略して電離則と申しますが、第7条で、緊急作業の被ばく限度を100ミリシー
ベルトと定めて、これまで放射線による労働者の健康障害防止を図ってきまし
た。しかし、東電福島第一原発の原子力災害につきましては、災害の状況に鑑
み、また、国民の安全を図るために、特にやむを得ない場合であると考えまし
て、3月14日の特例省令で被ばく限度を250ミリシーベルトに引き上げていま
す。また、東電福島第一原発での緊急作業の進捗を見て、敷地外への放射性物
質の放出を防止するための作業が限定されてきています。また、8月に従事した
作業員の最高被ばく線量が18ミリシーベルトに低下していまして、こうした状
況を踏まえて、関係省庁と調整をして、また、検討を行った結果、現在は250
ミリシーベルトに引き上げている被ばく限度について、一部を100ミリシーベ
ルトに戻すことにしたいというのが本日の諮問の内容です。
 具体的には、参考資料2の3頁をご覧ください。左側の欄ですが、今回の改
正省令の施行日以降、新たに緊急作業に従事する労働者の方については、上限
100ミリシーベルトを適用します。右の欄の下のほうですが、既に緊急作業に従
事している労働者については、今回は250ミリシーベルトの上限を変更しませ
ん。また、100ミリシーベルトに引き下げたこの新規従事者につきましても、原
子炉冷却のための注水設備のトラブルへの対応など、そうした復旧作業に従事
する場合には250ミリシーベルトを適用する必要があると考えています。
 具体的には、資料2の省令案要綱をご覧ください。第一、「緊急作業時にお
ける被ばく限度の特例を適用する場合の限定」というタイトルがあります。1行
目、「東北地方太平洋沖地震に起因して」から、3行目の「応急対策実施区域に
おいて」と、前提が長く書いてありますが、この部分については引き上げたと
きの特例省令に書いてある表現です。ですから、その範囲の作業につきまして
は、電離則第7条の100ミリシーベルトを250ミリシーベルトと適用する、そ
うした特にやむを得ない緊急の場合というものを、今般、「特にやむを得ない
緊急の場合」として大臣が定める場合とするとしたいということです。
 この250ミリシーベルトの適用範囲をどのような場合に絞るかですが、※に
福島第一の原子炉、タービン、その附属設備又は周辺区域で毎時0.1ミリシー
ベルトを超えるおそれがある場所で、次の復旧作業を行う場合ということで、1
号と2号があります。まず1号が、原子炉施設、それから燃料貯蔵槽を冷却す
る設備の機能が著しく低下又は機能を失った場合に復旧する作業です。2号とし
て、原子炉施設の故障、損傷で、多量の放射性物質の放出のおそれがある場合
で、抑制、防止する機能が著しく低下又は機能を失った場合に復旧する作業で
す。こういうものについては、新しく入る方であっても250ミリシーベルトの
適用をします。
 要綱の第二、経過措置としているのは、この省令の施行日以前に緊急作業に
従事する者については従前の例によると。つまり、これは250ミリシーベルト
の上限を変更しないことを規定するものです。
 第三、施行の日ですが、本日に答申をいただければ、速やかに関係手続きを
経て、11月1日を目標に施行したいと考えています。説明は以上でございます。
何とぞよろしく審議のほどをお願いします。

○分科会長 ありがとうございました。ただいまのご説明に対して、質問等が
あればお願いします。

○高橋委員 遅れて来てすみません。ただいまの案について、1つ質問させてく
ださい。緊急作業時の作業者のばく露を低レベルに抑えるという意味では大事
な対応だと思います。1つお聞きしたいのは、これは現実可能性が大丈夫なのか
ということです。従来は100ミリシーベルトと規定していたものを今回の事案
で250ミリシーベルトに引き上げたと。これも現実として可能性を考えたこと
が背景にあると思いますが、今回、それを元に戻すということですね。それは
望ましいことですが、現実に対応が可能なのかどうか、現実をきちんと把握さ
れて考えられたことなのかということです。よろしくお願いします。

○労働衛生課調査官 その点については緊急作業がかなり進捗してきていまし
て、実際8月に、緊急作業に従事している方の最高線量が18ミリシーベルトで、
全員の平均であればもう1桁というような状況にあります。今回の検討に当た
っては、当然、作業を行っている東京電力、あるいは、原子力安全保安院、資
源エネルギー庁、その辺りと調整をした結果、こうしたことで今後は行ってい
くということで了解をいただいていますので、今回はそうした検討の結果、提
案しています。

○分科会長 よろしいですか。

○高橋委員 ちょっと細かいことですが。東電さんとか保安院さんとも相談さ
れたということですが、実際に入っているのは、ゼネコンなどの下に、下請け
の方が多重構造的に入っていると思います。そういう方の実態もいまおっしゃ
っていただいた状況であると理解してよろしいですか。

○労働衛生課調査官 実際に緊急作業に従事している方全員の被ばく線量がそ
のように低下しています。

○谷口委員 今回、今後新たに緊急作業に従事する労働者の限度について、250
ミリシーベルトから100ミリシーベルトに引き下げられたことについては妥当
だと思います。その上での質問です。現に従事をしている労働者については引
き続き250ミリシーベルトで管理をするということですが、最終的にはいつ100
ミリシーベルトに引き下げるかという点について、考えがあればお聞かせくだ
さい。

○労働衛生課調査官 私どもは、この緊急作業についてはあくまで例外的な扱
いですので、できるだけ早く引き下げることが適切だと考えています。ただし、
当然この作業全体の進捗もあるので、関係省庁と調整をした上でということに
なるわけですが、今回のものはあくまでも経過的な扱いなので、さらなる引き
下げについて調整をしていきたいと思います。1つ、従前からいわれている目安
としては、年内に第2ステップという作業が一段落しますので、現在、それに
向けて調整を行っています。よろしくお願いします。

○小野委員 参考資料2の右側の3、注水設備等のトラブルというか、水物に
ついての所が特記されています。これまでも、ガスとか、粒子についての防護
は割と世間一般に情報がありますが、水にかかわるものについてはなかなか情
報も得にくくて、管理が難しい分野だと思います。そういうことで、こちらの
250ミリシーベルトになったのは理解できるのですが、今後もそういう面に関す
る防護についての情報や知識を集積していただいて、なるべく労働者の皆さん
の被ばくが高くならないように、いろいろなサポートとかいった面で、国も、
企業も、働く方も、その辺の情報を共有しながら進めていただけたら有難いと
考えます。以上です。

○労働衛生課調査官 おっしゃるとおり、汚染水を扱う作業というのは、いま
でも水がかかったりして事故が発生しています。各事業者が集まって、そうし
た災害事例を共有するような場も設けていただいていますので、そういう所で、
そうした事故が二度と起こらないようにという指導は私どももしています。

○杉山氏 250ミリシーベルトを100ミリシーベルトに下げると、そのことの是
非はおいて、今回の数値を定めることによって、例えば、現に働いている方で、
そこの数値をオーバーしてしまったために、継続してその作業に従事できなく
なると。そうすると、大きい所であれば、ジョブローテーションや配置換えと
か、企業内でいろいろな対応ができるかと思います。例えば、そういう作業に
専門に従事されている方とか、それほどの規模がない場合とかいったとき、250
ミリシーベルトでも100ミリシーベルトでも、達してしまった人たち、その人
たちが一定期間その作業に従事できなくなってしまうことに対する支援策とい
うか、そこへの対処があればお聞かせください。

○労働衛生課調査官 この緊急作業で受けた被ばく線量と通常の放射線作業で
受けたものについては、我々はきちんと通して考えるようにと従前から言って
いまして、その中で、そのように線量が高くなってしまった方が職を失うよう
なことがないように、事業場のほうにもしっかりとした配慮を行うようにと通
知で出しています。ですから、今後もそうした配慮をするように、十分指導し
ていきたいと考えています。

○犬飼委員 これは確認みたいなことになると思いますが。改正内容、(1)「特
にやむを得ない緊急の場合」で、「厚生労働大臣が定める場合」と規定されて
いますが、これはあくまで緊急時のトラブル対応となれば、現在、実際に福島
第一原発において、対象となる作業に従事されている労働者はいないという認
識でいいのかどうかです。

○労働衛生課調査官 ですから、いまここで、新しく入る方に例外として適用
する。この作業は差し当たり起こっていることではないです。現在は冷却機能
が維持されている状態ですので、この状態が続けばよろしいのですが、そうい
う機能が著しく低下、あるいは、失われることがあった場合には、新しく入る
方についても250ミリシーベルトが適用されます。

○犬飼委員 前回申し上げたのですが、100ミリシーベルトから250ミリシーベ
ルトに上がったとき、緊急性があったものですから、当分科会では事後の報告
書しかなかったもので、今回、事前に省令内で250ミリシーベルトと、作業内
容も規定されたことについてはよろしいかと思います。

○瀬戸委員 この横長のポンチ絵について教えてください。右の下のほうに
「既に緊急作業に従事している労働者」という欄がありまして、※で、「該当
者のうち、100ミリシーベルトを超える被ばくがあるのは137人(8月末)」と
書いてありますが、該当者の137人は比率的にどのぐらいなのですか。

○労働衛生課調査官 どのぐらいと申しますと。

○瀬戸委員 該当者のうち、100ミリシーベルトを超えるのは137人ですが、該
当者全体は何人で、そのうちの137人なのかです。

○労働衛生課調査官 これまでの緊急作業従事者は、実人員で1万9,000人い
らっしゃいます。その1万9,000人のうち、100ミリシーベルトを超えた方は
137人いらっしゃいます。

○分科会長 他にはございませんか。よろしいですか。
 それでは、平成23年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応する
ための、電離放射線障害防止規則の特例に関する省令の一部を改正する省令案
要綱について、当分科会として妥当と認めるということでよろしいですか。
(異議なし)

○分科会長 ありがとうございます。当分科会としては妥当と答申します。事
務局においては手続きをよろしくお願いします。
 事務局から連絡事項をお願いします。

○計画課長 次回の日程について、追って連絡させていただきたいと思います。
よろしくお願いします。

○分科会長 本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名につ
きましては、労働者代表は冨高委員に、使用者代表として明石委員にお願いし
ます。
 本日はお忙しいところ、遅くまでどうもありがとうございました。


(了)

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