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2011年10月24日 第92回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成23年10月24日(月)
16:00~18:00


○場所

中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

平成23年10月24日 第92回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

・日時
平成23年10月24日(月)16時00分~18時00分

・場所
厚生労働省専用第21会議室(17階)

・出席者
【公益代表委員】
 荒木委員、岩村委員、権丈委員、田島委員、村中委員、守島委員、山川委員

【労働者代表委員】
 工藤委員、島田委員、新谷委員、?松委員、中島委員、宮本委員、安永委員

【使用者代表委員】
 池田委員、伊丹委員、伊藤委員、田中委員、三浦委員、宮地委員、輪島委員

【事務局】
 金子労働基準局長、熊谷審議官、前田総務課長、田中労働条件政策課長、
青山労働条件政策課調査官

・議題
 1 有期労働契約について
 2 その他

○岩村分科会長 定刻となりましたので、ただいまから、「第92回労働政策審議会労働条件分科会」を開催することにいたします。
 委員の出欠でございますが、本日は、使用者代表の池田委員が御欠席ということでございます。
 議事に入ります前に、定足数につきまして、事務局から御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青山調査官 定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、本日はいずれの数も上回っております。定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
○岩村分科会長 それでは、議事に入りたいと存じます。
 お手元の議事次第にありますとおり、本日の議題は「有期労働契約について」でございます。
 まず、前回報告をいただきました「平成23年有期労働契約実態調査」の結果につきまして、委員から事務局に求めがありました資料について、事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○澁谷課長補佐 それでは、資料1をごらんいただきたいと存じます。前回の労働条件分科会におきまして、労働契約に関する実態調査のうち個人調査について、大学生の方を除いた数字はどのようになっているかという委員の方からの御質問があり、追加で集計したものでございます。ボリュームがありますので、主要な表をかいつまんで御説明申し上げます。
 まず、第1表をごらんいただきたいと思います。一番左側は各表共通で回答数の欄がございます。全体で5,415名回答をいただきましたうち、在学中の方が354名、卒業している方が5,061名となっておりました。在学中の方が占める割合が7.0%でございます。
 ちなみに、ここには載せておりませんが、労働力調査の方で在学中か在学中でないかということで数字を見ましても、有期とは定義が異なりますが、非正規労働者に占める在学中の方の割合が6.8%でございまして、この調査もおおむね同じような比率で在学中の方が現れているものでございます。
 したがいまして、いわゆるトータルの数字と、在学中の方を除いた数字というのは、ほとんどの表につきまして傾向はほぼ一致しております。そのようなものということでごらんいただければと存じます。
 第2表は「有期契約労働者の有期契約労働による年間収入」でございますが、在学中の方を見ますと、50万円以下と50万円超~100万円以下のところに8割の方が集中しております。それに比較しまして卒業している方で見ますと、最も多いのが100万円超~200万円以下が35.0%、50万円超100万円以下が31.2%となっておりまして、在学中の方と卒業している方ではピークの場所がずれている状況でございます。
 第3表、「有期契約労働者の主たる収入源」でございます。在学中の方で最も多いのが「家族の収入」で51.4%になっております。卒業している方につきましては、「勤務先からの1か所からの賃金収入」38.1%と「家族の収入」37.9%が、ほぼ同じぐらい現れれているという結果でございます。
 第4表、「有期契約労働者の1回当たりの契約期間」でございます。在学中の方、卒業している方、いずれを見ましても、一番多いのは6か月超1年以内で、ここはさほど変わりがなかったところでございます。
 第5表、「有期契約労働者の就業形態」でございます。この表が最も顕著に違いの現れたところでございます。在学中の方で見ますと、最も多いのが「アルバイト」で80.5%を占めており、2番目に多いのが「契約社員」7.9%となっております。一方、卒業している方で見ますと、最も多いのが「短時間のパートタイマー」25.0%で、「その他のパートタイマー」が20.2%、「契約社員」が20.0%となっておりまして、学生はやはりアルバイトが中心であるということでございます。繰り返しになりますが、卒業している方とトータルの傾向とはおおむね一致しているところでございます。
 2ページ、第6表の「有期契約労働者となることを選んだ理由」でございます。選んだ理由として、在学中の方、卒業している方、いずれを見ましても、一番多いのが「仕事の内容、責任の程度が自分の希望にあっていた」、2番目に多いのが「勤務時間、日数が短く、自分の希望にあっていた」で、傾向に違いは見られなかったところでございます。
 第7表以降、労働契約締結時における契約期間や更新の有無等の明示の結果でございますが、明示の状況には特段の差がなかったところでございます。説明は省略いたします。
 3ページ、第12表「現在の勤務先での勤続年数」です。在学中の方で最も多かったのが6か月以内で40.7%、2番目に多いのが1年超~3年以内の28.5%でございます。これに比較しまして、卒業している方で最も多いのは1年超~3年以内の25.5%、2番目に多いのが5年超~10年以内の18.9%となっておりまして、卒業している方の方がやはり長く勤続されている方が多いという結果が出てきているところでございます。
 4ページ、第14-1表「有期契約労働者の残業状況」でございます。「残業することがある」という有期契約労働者の回答が、在学中である方、卒業している方、いずれも47%台ということで、この辺りの働かされ方につきましては、学生も含めて同様の状況なのかなというところが見てとれるところでございます。
 14-2表以降、有期契約労働者と正社員との残業や異動、昇進等の状況の比較についての認識を聞いている設問につきましては、在学中か否かで実態にさほど差はないかと考えられますので、説明は省略させていただきます。
 飛ばしまして、6ページの上から2つ目、第21-1表「有期契約労働者の福利厚生状況」でございます。「有期契約労働者について福利厚生がある」と答えた労働者でございますが、在学中の方が31.6%に対しまして、卒業している方で54.0%と、かなりの差が見られる結果となっております。
 ただ、これにつきましては、一番右側の「わからない」という欄をごらんいただきますと、在学中の方の方が回答が多くなっておりまして、制度のありなしというよりは、在学中の方についてこうしたものの認知度が余りない。必要がないということかもしれませんけれども、そういう結果が現れているのかと思っております。
 7ページ、第24-1表「現在の仕事に対する満足度」でございます。在学中の方は「満足している」が76.8%と非常に高くなっております。卒業している方につきましては、「満足している」が53.8%、「不満である」が46.2%と、「満足している」がやや多いものの、ほぼ拮抗しているという結果でございます。トータルの数字と同様の傾向でございます。
 次に第24-2表、満足している方に満足している理由を聞いたものでございます。在学中である方、卒業している方、いずれも最も多かったのが「労働時間、日数が自分の希望に合致しているから」で、7割を超えております。2番目に多いのが「職場の人間関係が良いから」で、どちらも4割を超える傾向で、「満足している理由」には特段の差がないように見受けられるところでございます。
 第24-3表、「現在の仕事に不満の理由」でございます。在学中である方で不満と答えた方が82名で、卒業している方で不満と答えた方が2,337名ということで、全体に占める在学中の方の割合が3.5%程度にとどまっております。したがいまして、全体の傾向の中で卒業している方の傾向がより強く出るというものでございます。この表につきまして、在学中である方が最も回答が多かったのは、「賃金の絶対水準が低いから」51.2%、2番目に多かったのが、「頑張ってもステップアップが見込めないから」の34.1%となっております。
 これに対しまして、卒業している方で見ますと、最も多いのが「頑張ってもステップアップが見込めないから」で、こちらの方が高くなっております。2番目に多いのが「賃金の絶対水準が低いから」で、41.4%となっております。
 なお、卒業している方の方が顕著に高い回答としましては、「いつ解雇・雇止めされるかわからないから」が、在学中の方が12.2%であるのに比べて卒業している方は33.5%と高くなっております。
 第26表、「現在の勤務先での今後の就労意向」でございます。在学中の方、卒業している方、いずれも「現在の勤務先で有期契約労働者として働きたい」が6割を超えて最も多くなっております。
 続きまして8ページでございます。第27表から第28-2表まで「現在の勤務先以前の就労状況」に着目した設問につきましては、欄外に記載しておりますとおり卒業している方のみを調査対象としておりますので、在学中の方の集計はございません。
 第29表「解雇・雇止めの経験」の結果でございます。在学中の方につきましては、左から1~3列目を足しまして、期間途中での解雇・雇止めの両方あるいは片方がある方の回答を合わせますと15.8%となっております。卒業している方につきまして左3列を同様に足し合わせますと21.9%となっておりまして、卒業している方の方がやや高いという結果が出ております。
 9ページ、第30表の「雇止めの理由」でございます。在学中の方で最も多いもの、卒業している方で最も多いもの、いずれも「契約期間の満了」で、5割を超えております。この設問につきまして、「景気要因などによる業務量の減少」「経営状況の悪化」「担当していた業務・職務の打ち切り・終了」、この辺りの項目は、卒業している方の方が顕著に高くなっているところでございます。
 第31表以降、「雇止め時にとられた手続き」や「トラブル」等につきましての説明は、省略させていただきます。
 説明は以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま説明いただきました個人調査の結果の追加につきまして、御意見、御質問などありましたら、お願いしたいと思います。
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次に、今年の7月に、労働政策研究・研修機構(JILPT)が、「雇用形態による均等処遇についての研究会報告書」を取りまとめまして、これが公表されております。この研究会は、本分科会の荒木委員が座長を務められ、その研究会で取りまとめられたものでございます。EU及びその加盟国における、正規・非正規労働者間の不合理な処遇格差を禁止する法制などの概要や運用の実態などについて調査したものとなっています。この分科会では、有期契約労働者の均等・均衡処遇を議論するところもありますので、その議論に当たって参考になるかと思われます。そこで、この研究会報告書の概要につきまして説明をいただきたいと考えておりますので、事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青山調査官 では、御説明いたします。「資料?2」が該当の資料ですので、ごらんいただきたいと思います。
 今、御紹介いただきました労働政策研究・研修機構で行いました、「雇用形態による均等処遇についての研究会報告書」の御説明でございます。
 表紙を1枚めくっていただきますと、「まえがき」とあります。そちらに経緯がありますので、そちらを参考にしながら御説明いたします。
 我が国の非正規労働者は3分の1を超えるに至っているという状況の中で、一方、雇用の不安定さ、処遇の低さ等の問題点が指摘されるなどの二極化構造が問題となっていることを踏まえまして、昨年9月に、厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室が協力する形で、独立行政法人労働政策研究・研修機構、いわゆるJILPTに「雇用形態による均等処遇についての研究会」が設けられました。メンバー表が資料の?ページにありますけれども、荒木委員を座長とし、座長を含め8名の学識経験者で構成されています。その研究の成果が今年7月に取りまとめられたものでございます。
 まえがきに戻っていただきますと、この研究会では、EUとその加盟国であるドイツ、フランス、イギリス、スウェーデンと日本を対象に、正規・非正規間の処遇格差を禁止する法制をはじめとした、関連する法制の概要、運用の実態について検討し、内容を取りまとめております。本文では後ろの方の第2部、42ページ以降にあります。そうしたEU諸国における概要、運用の実態もベースに、その法制の性格、特徴等を整理し、また、日本における正規・非正規間の格差を是正するための仕組みづくりへの示唆を、併せてまとめたというものでございます。
 資料は全体が非常に大部でございますので、まえがきの次のページから数ページほど、ローマ数字であらわされるページが概要ですので、そちらにしたがいまして御報告させていただきます。個々の制度の概要は、本日の説明でも省略し、それから得られる示唆という形でこの概要に従い御説明させていただきます。
 ?ページをごらんください。「研究会報告書の概要」とあります。
 第1章は「非正規労働者の現状及び正規・非正規労働者間の不合理な処遇格差を禁止する法原則に関する議論の高まりの背景」ということで、主に我が国の状況が書いてあります。非正規労働者が3分の1を超えるに至っている一方で、正規労働者は、常用雇用・基幹化の傾向が見られること、若年層の割合が上昇傾向にある等の特徴が見られます。処遇を見ると、働き方が違うことが一因となって格差が見られるというような二極化構造が言われ、その解消が労働政策上の大きな課題となっているということで、政府が閣議決定した「新成長戦略」にも、「同一価値労働同一賃金」に向けた均等・均衡待遇の推進に取り組むことも盛り込まれているわけでございます。
 こうして非正規労働者の常用雇用・基幹化によって両者の働き方が近づく中、その処遇の差が、合理的な理由によるものか否か、また、合理的理由があるとしても、処遇の差が大きく納得が得られていないのではないか、そうだとすれば、何かの方策がとられるべきか否かが問われているということで、研究を進めたということでございます。
 第2章が、「EU諸国における正規・非正規労働者間の不合理な処遇格差を禁止する法制等の概要及び運用の実態から得られた知見並びに日本への示唆」を述べている部分でございます。
 まず、1でございますが、EU諸国における正規・非正規間の不合理な処遇格差を禁止する法制の法的性格と特徴等を整理しております。下の3行にありますけれども、日本における二極化構造が問題になる中で、EU諸国に見られる「同一(価値)労働同一賃金原則」や「均等待遇原則」などを導入すべきか否かが議論されております。ただし、それらの概念について十分に整理されてこなかったのではないかという問題意識から、EUの法制の概要等について整理されております。
 ?ページにいっていただきまして、順に、各原則についての分析がございますので、御紹介します。
 (1)は、この研究会は雇用形態による均等待遇についての研究会ですので、雇用形態を理由とした処遇格差の問題を扱うのですが、EU諸国にはそれ以外に、人権保障に係る「均等待遇原則」もあります。それとの比較をするという整理で、まず、人権保障に係る均等待遇原則の法的性格、特徴、すなわち差別的取扱い禁止原則を分析しております。
 人権保障に係る均等待遇原則は、人権保障の観点から、性別、人種など個人の意思や努力によって変えることのできない属性や、自らの意思での選択の自由が保障されている宗教・信条を理由に、賃金を含む労働条件につき、差別的取扱いを禁止するものと解されます。
 この原則は、一定の属性を持つ者を不利に扱うことのみならず、有利に取り扱うことも逆差別として許容しない両面的規制であることが特徴であります。
 なお、性別や人種などを理由とする異別取扱いは、原則として、真に職務上の必要性がある場合、そしてポジティブ・アクションとして例外的に許容される場合のみ許されるとされています。
 以上が人権保障の部分でございます。
 (2)が、雇用形態に係る「均等待遇原則」についてでございます。これは「不利益取扱い禁止原則」と整理されております。
 EU諸国におけるこの原則は、差別禁止の範疇で議論されることも少なくないですが、分析しますと、先ほどの差別的取扱い禁止原則と異なり、非正規労働者の処遇改善の観点から、賃金を含む労働条件につき、雇用形態(パートタイム労働・有期契約労働・派遣労働)を理由とする不利益取扱いを禁止するものと解されます。
 この原則は、主に労働政策上の要請から、非正規労働者の処遇改善等を図ることを目的として導入されていますので、正規労働者と比べて、非正規労働者を不利に扱うことを禁止し、かつ有利に取り扱うことは許容する片面的規制であることが特徴です。
 なお、雇用形態の違いを理由とする異別取扱いは、客観的(合理的)理由があれば許容されております。
 (3)は、「同一(価値)労働同一賃金原則」についてです。これは、この概念について整理したものではございますけれども、EU諸国における「同一(価値)労働同一賃金原則」は、人権保障の観点から、主として性別など個人の意思、努力によって変えることのできない属性等を理由に、ある労働者が、他の労働者と比較して、同一(価値)の労働をしていると認められるにもかかわらず、他の労働者より低い賃金の支払いを受けている場合に、同一の賃金の支払いを義務づけるというものでございまして、先ほどの(1)の方の、人権保障に係る「均等待遇原則(差別的取扱い禁止原則)」の賃金に関する一原則と位置づけられるものでございます。
 その帰結として、(1)と同様、一方の属性を持つ者を他方より有利に取り扱うことも許さない両面的規制でございます。
 また、「同一(価値)労働同一賃金原則」と言われるものは、もともと、男女間の賃金差別につき、性別の違いによる職務分離が見られる中、同一労働同一賃金原則では十分に是正できないことから、異なる職務間でも適用ができるよう、同一労働から同一価値労働へ比較対象を拡大したという経緯がございます。
 これに対して、性別とは異なり当事者の合意により決定される、パートとか有期という雇用形態の違いを理由とする賃金格差については、何らかの立法がない限り、「同一(価値)労働同一賃金原則」は直接的に適用可能な法原則とは解されていないところです。
 なお、性別等人権にかかわる「同一(価値)労働同一賃金原則」に戻りますけれども、こちらは強行的なもので、この差別禁止事由を直接理由とする異別取扱いは原則として許されないのですが、一方、間接差別として争われる場合には、より広い客観的(合理的)理由が認められるとされております。例えば、EU法における男女の「同一(価値)労働同一賃金原則」の間接差別に関する判例を見ると、勤続年数、学歴、資格、勤務成績等、労働市場の状況等が、広く賃金に関する異別取扱いを許容する客観的(合理的)理由として考慮されております。
 このうち、勤続年数の違いによる賃金格差は、通常、使用者の立証を要しないとされています。
 また、勤務時間や就業場所の変更にどの程度対応できるかという柔軟性については、それらが、特定の職務の遂行に重要であることを使用者が立証できれば、合理的理由として認められるとされています。
 以上が、各原則、すなわち、人権保障や雇用形態に基づく「均等待遇原則」と「同一(価値)労働同一賃金原則」の関係を整理したものでございます。
 (4)では、雇用形態の違いを理由とする不合理な賃金格差という賃金の面に着目した原則についての性格を整理しております。
 今、見てきましたように、EU諸国においては、雇用形態の違いを理由とする賃金に関する異別取扱いについては、(2)の雇用形態に係る不利益取扱い原則の中で対処されています。
 特に賃金に関する異別取扱いを見ると、差別を判断するに当たっては、誰と比較して差別と認定するかという比較対象者の存在が問題となるとともに、問題となる給付の性質・目的に応じて、差別が許容されるところの客観的(合理的)理由の有無がそれぞれ判断されるということで、黒ポツでそれぞれ整理されております。
 1つ目のポツにありますとおり、給付の種類、性質として、職務関連給付(基本給、職務手当など)については、比較するに当たって、同一労働に従事する比較対象者が必要とされています。そういう人がいなければ差別の判断にならないということでございますけれども、更に、勤続期間、学歴、資格、職業格付けが違う場合には、客観的(合理的)理由があるものとして、異別取扱いが認められております。
 一方、給付の性質として、職務関連以外の給付(食事手当など)については、比較対象者が必要とされますけれども、同一労働であることまでは求められていない。同一労働ではない比較対象者との間でも、差別が認定されるということでございます。
 また、客観的(合理的)理由がない限り、量的に分割可能な給付は比例原則(時間が短ければ時間比例原則、期間が違えば期間比例原則だと思いますが)による給付が求められるとともに、量的に分割不能な給付(食事手当など)については、全面的に非正規労働者に認められる傾向がある。要は、分割不能な給付は、非正規に給付されないと差別と取り扱われる傾向にあるという趣旨でございます。
 一方、我が国のパートタイム労働法8条の「均等待遇原則」との比較をしていますけれども、パートタイム労働法8条は、「職務の内容」が同一であることに加えて、全期間にわたり人材活用の仕組みや運用も同一で、「期間の定めがない」ことという3要件を満たす場合に、通常の労働者と同視されるパートタイム労働者とされて、その場合のみについて不利益取扱い禁止原則を適用しておりますけれども、そういう面でEU諸国との枠組みの違いを整理しております。
 (5)の「まとめ」です。多少繰り返しになりますが、おさらい的に申し上げますと、1つ目にありますとおり、EU諸国においては、同一(価値)労働同一賃金原則は、性別など個人の意思や努力によって変えられない属性等を理由とする、人権保障に係る差別的取扱い禁止原則の賃金に関する一原則として位置づけられていると理解できます。
 このため、当事者の合意により決定される雇用形態の違いを理由とするものにつきましては、何らかの立法がない限り、この同一(価値)労働同一賃金原則は直接適用可能な法原則とは解されていないところです。
 そして、EU諸国においては、正規・非正規労働者間の賃金格差等の是正については、雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則の枠組みの中で対処されておりまして、具体的には、?~?ページにわたりますけれども、賃金に限定されず、処遇全般を射程として、正規労働者と比べて、客観的(合理的)理由なく、非正規労働者を不利に取り扱うことを禁止し、かつ、非正規労働者を有利に取り扱うことも許容する、片面的規制であることを特徴とする原則だと理解できるとされております。
 そして、その具体的適用においては、基本給など職務関連給付については、同一労働に該当しない、すなわち異なる職種・職務間の格差は射程とされない、間接差別は禁止されないという特色も見られます。
 また、今の原則の適用に当たりまして、異別取扱いを許容する客観的(合理的)理由につきましては、給付の種類・目的に応じて柔軟な判断がなされる傾向が見られて、その判断要素も勤続期間、学歴、資格、職業格付けなど、さまざまな点が考慮されています。
 なお、日本における正規・非正規労働者間の処遇の差は、先ほど紹介したパートタイム労働法8条の仕組みのように、両者の職務の違いに加え、働き方(人材活用の仕組み・運用等)の違いも一因と考えられています。
 一方、この研究会で、先ほどからるる整理しています、EU諸国における雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則の判例等の中では、客観的(合理的)理由の判断要素として、今、我が国のものとして紹介したような人材活用の仕組み・運用が明示的に取り上げたものはなかったということです。
 しかしながら、先ほど御紹介しましたが、EU法でも、男女の「同一(価値)労働同一賃金原則」の判例で、労働時間や就業場所の変更にどれだけ対応できるかという点が、特定の職務の遂行に重要であることを使用者が立証できれば、男女間の格差の客観的正当化事由として認められています。
 フランスの判例法理である「同一労働同一賃金原則」の判例では、キャリアコースの違いが賃金格差を許容する客観的(合理的)理由になり得るとされているなど、人権保障に係る「均等待遇原則」に由来する「同一(価値)労働同一賃金原則」に関して、人材活用に通ずる要素について正当化事由と解する考え方が見られたということで、このことは、日本とEU諸国との間の働き方の違いに留意する必要はあるものの、EUの雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則についても、同様の考え方、今、紹介したような人権保障で一部とられている考え方が、認められる可能性を示唆しているように思われるということでございます。
 以上がEU諸国の法制の整理でございます。
 ?ページは、それも踏まえて、「正規・非正規労働者間の不合理な処遇格差を是正するための仕組みづくりへの示唆」ということで、日本への示唆をまとめております。
 (1)が、「個別企業の労使による取組を通じた処遇の改善及び納得性の向上」でございます。
 EU諸国においては、職種・職務給が中心で、かつ産業別に設定される協約賃金、すなわち労働協約で策定する賃金が適用されることなどから、正規・非正規労働者間での基本給についての処遇格差の紛争が余り見られないとされています。これは先ほどの1までの部分で、本文では言及されていましたけれども、そういうこともわかっております。
 一方、日本では、非正規・正規間のとりわけ基本給をめぐる処遇格差が問題となっております。日本におきましては、正規労働者について、職務遂行能力という要素を中核に据え、職務のほか人材活用の仕組み・運用などを含めて待遇が決定されるなど、長期間を見据えた賃金制度が主流と考えられる一方、非正規労働者については、地域の外部労働市場の需給状況等を踏まえた職務給的な要素が中心の賃金制度が多いと考えられます。
 このように、正規・非正規労働者間で適用される賃金制度が異なることが多い中で、EU対象国のような、パートタイム労働者や有期契約労働者等々であることを理由とする不合理な不利益取扱いを禁止する法原則の下、その具体的な適用については、個々に裁判所などが判断するという枠組みを日本に導入した場合、何が合理的な理由のない不利益取扱いに当たるかの判断を行うことが難しく、裁判における判断も区々となることを懸念する向きもあります。
 EUにおいては、先ほどから見ていますような、実体規制のみを通じた法違反による事後救済のみでは十分に効果が上がらないことから、当事者自らによる改善に向けた取組を促す手続規制を活用する例も見られます。
 最後のマルですけれども、雇用形態差別の実情の違いにも十分考慮を払いながら、日本においても、個別企業における処遇の差の実態把握や、当該処遇格差が不合理な場合の是正に向けた労使の取組を進めることが、非正規労働者の処遇改善、納得性の向上に資すると考えられると結んでおります。
 ?ページにいっていただきまして、初めのマルですけれども、なお、処遇の決定要素の一つである職務を把握するための制度である、職務分析・職務評価制度の活用が考えられるとされています。
 自社内の人事管理の実情に応じて、職務分析・職務評価を実施できる企業が、その取組を進めることは、処遇格差についての納得性の向上、処遇の改善にも資するのではないかと考えられるとされています。
 もう1点、(2)が、「正社員の移行や多様な正社員に係る環境整備等の取組」でございます。先ほどから見ています雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則は、正規・非正規労働者で業務内容が異なる場合や、同じ業務内容でも責任が軽かったりする場合など、職務分離が発生しているケースや、非正規労働者が正規労働者への移行を希望しているケースには、十分実効的には機能しない。このため、非正規労働者の正社員等への移行に向けたキャリアアップ支援、多様な正社員に係る環境整備など、他の施策も併せて検討・推進していくことも考えられると書いております。
 実質的な内容は以上ですけれども、最後、3の「おわりに」は、基本的にこれまでの要約ですが、簡潔に御紹介します。
 最後の?ページです。繰り返しになりますけれども、EU諸国では、正規・非正規労働者間の賃金を含む処遇格差の是正については、雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則の枠組みの中で対処されております。これは、先ほどから見ていますように、不利に扱うことを禁止する一方で、有利に扱うことは許容するという片面性があるという点で、人権保障の観点からの均等待遇原則(差別的取扱い禁止原則)とは異なるという整理がされます。
 そして、異別取扱いが違法となるかどうかは、客観的(合理的)理由の有無により決せられますけれども、その判断は、人権保障に係る差別的取扱い禁止原則よりも柔軟な解釈が行われているわけでございます。
 このような原則は、客観的(合理的)理由につき使用者に説明責任を負わせることで、処遇格差の是正を図るとともに、処遇の差が妥当公正なものであるかの検証を迫る仕組みと解することができるということで、我が国においても示唆に富むものと考えられると結んでおります。
 「また」のところで、最後にありましたとおり、当事者自らによる改善に向けた取組を促すアプローチも導入されていることを参考に、日本においても、個別企業における処遇差の実態把握や、格差が不合理な場合の是正に向けた労使の取組を進めることは、処遇の改善、納得性の向上に資すると考えられるということで、この報告書は終わっております。
 長くなりましたが、以上でございます。
○岩村分科会長 それでは、ただいま御説明いただきました、「雇用形態による均等処遇についての研究会報告書」につきまして、御意見、御質問などありましたら、お願いしたいと思います。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 ありがとうございました。荒木先生を中心に、研究会のおまとめをいただきました委員の先生方に感謝申し上げたいと思います。論点を非常に整理していただいて、今後の私どもの検討の中でも参考になるというふうに思っております。
 その上で、概要の部分を御説明いただきましたが、本文の方で教えていただきたい点がございます。本文の28ページに、日本における均等待遇原則についての分析として、パートタイム労働法8条の分析をされておりまして、28ページの2つ目の項目に「履行確保手段」というものがございます。「行政機関による指導・援助、ADR」と書かれてあって、その最後に「司法上の救済も想定される」という分析がなされております。パート法8条にかかわる司法判断というのは少ないのではないかと思いますけれども、ここで書かれている「司法上の救済も想定される」というのは、例えば格差があって、その格差分について合理的ではないとみなされたときに、損害賠償を認めるというようなものを想定されているのか。その辺の考え方について、教えていただきたいと思います。
○岩村分科会長 内容にわたるので、どうしましょうか。事務局でお答えいただけますか。
○青山調査官 確かにパートタイム労働法というのは、8条も含めて、行政指導による履行確保をするのが内容ですけれども、あのような規定を置くことで、裁判所に訴えられた場合にも、8条が規律しているのか、あるいは公序とされることになるのかいずれの判断もあると思いますけれども、そういうことも含めて判断がされ、また不法行為を形成し、損害賠償が認められる可能性もあるということかと思います。ちょっと所管ではないので、済みません、こちらはそう思っているという趣旨でのお答えになりますけれども、そうかと思います。
○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 そうですね。いきなりお聞きしても明確にはなかなか難しいと思います。この内容については、私ども前々から申し上げておりますように、労働者の権利義務として、ここの格差、均等取扱いについては、労働契約法のような、労働者の個人の権利義務についてきちっと書き込めるようなものを、法体系の中に組み込むべきだと考えておりますので、それについても改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○岩村分科会長 それでは、輪島委員、お待たせしました。
○輪島委員 「雇用形態による均等処遇についての研究会」報告書を、荒木先生、それから守島先生に御参画いただいて、整理をしていただいて、高く評価したいというふうに思っているところでございます。7月に発表されておりますけれども、もう少しPRも含めて、ここのところがこれからの議論のとっかかりになるのではないかと思います。そういう意味で、せっかく整理されたものの周知ないし広報というものが必要なのではないかと思っているところでございます。
 そこで、荒木先生にお伺いした方がいいのかどうかよくわかりませんが、全体を通じて、?~?ページの(4)のところです。「雇用形態の違いを理由とする不合理な賃金格差を禁止する法原則」のところを読ませていただいて、1つは、私ども実務的に企業の人事管理をしているときには、?ページの上の1ポツ、職務関連給付については、同一労働に従事する比較対象者、このことを、現行のパートタイム労働法でも気にして見ているわけですけれども、そこのところで最近の状況というのは、同一の業務に従事する比較対象者が、そもそも本当にいるのか悩みがある。その辺のところは、どういうふうに考えたらいいのかということは常に企業の人事担当者の中では話をしているのですが、2ポツのところも、職務関連給付以外のものは「同一労働であることまで求められない」とされています。何か御見解があれば教えていただきたいと思っています。
 3点目ですけれども、現状のパートタイム労働法8条についての記述が?ページにありますが、8条では、人材活用の仕組み・運用、契約の期間というものが、「両者の職務の違いに加え、働き方の違い」ということで説明をするとなっているわけです。そこのところでは、まとめとしては、EUの方は、そういうふうに考えるとできなくはないということですが、?ページの最後、「同様の考え方が認められる可能性を示唆している」ということについては、EUとは考え方が違って、パート法8条で先ほどの3要件を示しているけれども、そんなにEUとの考え方とは離れていない、というふうに理解をしていいのかどうかということだけお聞きしたいと思います。
○岩村分科会長 では、荒木委員からお願いいたします。
○荒木委員 御質問、ありがとうございました。守島先生にも入っていただいて、大変いろいろな分野の方から御議論をいただいた成果でございますので、私がちゃんとお答えできるかどうか、少し心もとないところもありますけれども、まず第1点です。雇用形態の違いを理由とする不合理な賃金格差のときに、比較対象者がいることが大原則であること、これはそのとおりです。しかし、比較対象者がいないと一切このルールが働かないかといいますと、ヨーロッパの状況を見てみると、必ずしもそうではない。職務関連給付、つまり、ある職務に対して支払われる基本給を問題とする限りでは比較対象者が必要なんですけれども、ヨーロッパでは基本給は産業別協約で決まっておりますから、フルタイマーとパートタイマーとか、有期、無期で差があるということは余りないわけです。争いになっているのは、基本給ではない、付加給付、フリンジベネフィットのところで、フルタイマーや無期契約労働者には認められているけれども、パートタイマーや有期労働者には認められていない場合、これがこのルールによって是正されるかどうか、というところで問題となります。
 判例等を見てみますと、こうした付加給付が争われる場面では、厳格な意味での同一労働や比較対象者が求められているわけではない。例えば食堂の利用とか、食事の手当とか、そういったものについては、必ずしも比較対象者の存否、同一労働とは関係なく、この不利益取扱い禁止原則が適用されるという状況がわかってきました。したがって、どういう労働条件について争っているかということもにらみながら考えないと、このルールについても、よく把握できないということです。
 3点目、日本のパートタイム労働法8条との異同ですが、?ページの(5)のすぐ上のところでまとめているのは、ヨーロッパでは同一労働の要件が満たされればこのルールが適用されると考えられているのに対して、日本の方は、職務の同一性のほかに、人材活用の仕組みとか、期間の定めといった3つの要件を要求している点は違うのではないか。そこで、御質問があったわけですが、?ページの下のところで、日本の人材活用と似たようなことを見ているのではないかということが示唆されているので、その点について、説明していただきたいということだと思います。
 これは、ヨーロッパの場合は同一労働が前提で、それがあれば雇用形態の違いを理由とする不利益取扱いの禁止のルールの適用問題に入るんですけれども、そこでは、合理的な理由があるか、ないかが問題となる。合理的な理由があればその格差も是認される。その合理的な理由の判断の中で、人材活用の仕組みに通じるような事項も考慮されていると言えるのではないか。これは、直接には人権にかかわるような均等待遇原則で議論されている問題ですけれども、雇用形態差別の方は、もっと緩やかに正当事由が認められると解されておりますので、人権に係る均等待遇のところで認められる正当事由であれば、雇用形態差別のところでも同じような議論がされるのではないかということです。
○岩村分科会長 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございました。もう一つ、次の質問は、?ページの(2)のところですが、「正社員への移行や多様な正社員」というところで、これは有期の関係で労働条件分科会でも議論をしているところです。ここにありますように、正規・非正規で職務分離が発生している場合、不利益取扱い禁止原則は機能しないというふうに読めるわけですけれども、仮に有期であることを理由とした不利益取扱いになった場合には、その中身はかなり限定されるということで理解していいのでしょうか。
○岩村分科会長 荒木委員、いかがでしょうか。
○荒木委員 先ほどちょっと説明しましたように、基本的には比較対象者がいなければいけない、同一労働をやっている人がいなければいけない。ところが、セグリゲーションがありまして、職務というのが、正社員と非正規の方が違っているということになりますと、比較対象者を見いだすのは非常に困難ということで、このルールの適用にはある程度の限界があるのではないか。そうすると、不利益取扱い禁止原則のみに頼るということでは実効性が上がらない可能性があるので、ほかの方策も併用した形で、この処遇の是正を図ることも考えられるのではないかという指摘をしたところであります。
○岩村分科会長 そのほか、いかがでございましょうか。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 ?ページの(1)、(2)で、それぞれ、均等待遇原則について2つの考え方を整理いただいているわけです。人権保障にかかわる差別的取扱いの禁止、雇用形態にかかわる不利益取扱いの禁止という整理をいただいているわけでありまして、私ども労働側としては、(2)に記載されておりますように、片面的な規制というところについて、非常に示唆に富んだ指摘ではないかなと考えております。今後の検討に当たっては、雇用形態にかかわる均等待遇原則の部分について、より深掘りをしていきたいと思っております。やはり人は労働に対して等しく報いられなければならないという大原則を、今回の分科会の検討の中では打ち立てるべきではないかと思っております。
 それと、先ほどの輪島委員の御質問とも関連しますけれども、?ページのところに、不合理な処遇格差を是正するための仕組みとして、個別企業労使による取組を通じた内容について、御示唆いただいているわけであります。我々としては、たびたび申し上げておりますように、雇用契約期間の有無を理由とした、合理的な理由のない不利益取扱いについては禁止するべきであるという一般的大綱的な規定を設けていくべきではないかと、前々から申し上げているとおりでありますけれども、そこでは?ページにありますように、個々の裁判所の判断という中で、民事裁判における判断も区々となることが懸念されるという御指摘があるわけです。これについても、現場を一番よく知っている労使の知恵を、ここで活用するべきではないかと思っております。多分それは裁判規範となるようなものではないかもしれませんが、個々の労使の中で行為規範となるようなものを、労使が参画する中である程度つくり上げていって、仮に裁判が起こったときのいわゆる判例の蓄積としてつながっていくようなものを、この中でつくり上げていけばいいのではないかという考え方を持っておりますので、これはまた、今後の論議の中で申し上げていきたいと思っております。
○岩村分科会長 ありがとうございます。
 守島委員、何かコメントなどありましたら、いかがでしょうか。
○守島委員 まじめな参加者ではなかったので余り言うことはないのかもしれませんけれども、この研究会の中で一つ理解されたことは、雇用形態の違いが含んでいるものというのは実は大変多くて、その人が持っているキャリアの方向性であるとか、瞬間的に同じ仕事であったとしても、キャリアというものを考えると違った意味を持ってくるという話であるとか、先ほど荒木先生がおっしゃいましたけれども、基本給とその他の部分が分離されている国と、分離されていない国というか、そういうこともあって、この問題というのは単純に考えられる問題ではないのだろうなと。当たり前のことですけれども、そういう議論が出て、それがある意味で非常に整理されたところがこの研究会の報告書のいいところで、そういうふうなさまざまな要素を整理した上で、かつ、先ほど荒木さんの話にもありましたけれども、ヨーロッパでもやはりある程度の複雑な試行を経た上で今の状態にたどり着いているんだということがわかった。そういう意味でここを出発点としてこの問題を考えていける、大きな出発点になるのではないかなという気はいたします。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 それでは、研究会報告書については、この辺でよろしゅうございましょうか。
(「はい」と声あり)
○岩村分科会長 それでは、もう一つ、やはり研究会の報告書がございまして、「今後のパートタイム労働政策に関する研究会報告書」でございます。この研究会は、平成20年4月1日に施行されました改正パートタイム労働法の施行状況も含め、今後のパートタイム労働対策について検討を行うということで、本年の2月から、雇用均等・児童家庭局長による参集の下で開催されたものでございます。本年9月にその結果が取りまとめられまして、報告書として公表されております。この報告書は、この分科会で有期契約労働者の均等・均衡待遇を議論していくに当たっても、参考になろうかと思われます。
 そこで、その概要について説明をいただきたいと思いますので、事務局にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○青山調査官 それでは、「資料?3」をごらんください。「今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書」を御説明いたします。資料の構造が先ほどと違って、初めの9枚ほどが概要になっていまして、残りのページが本体になっております。今回も全体が大部でございますので、恐縮ですが、概要に沿いまして御説明させていただきます。
 ただ、概要に入る前に、この研究会の経緯ですが、本文の1ページ、「はじめに」のところに多少経緯が書いてあります。パートタイム労働者の雇用管理につきましては、パートタイム労働法が制定されていますけれども、平成19年に、一定の場合の差別的取扱い禁止とか、均衡の確保等を内容とする法改正がなされております。その改正の際に改正法の附則におきまして、この法律の施行後3年を経過した場合、施行状況を勘案し、必要があると認めたときは、検討を加え、措置を講ずるという検討条項がありまして、また、「新成長戦略」にも「見直しの検討」とされていることなどを踏まえ、先ほど御紹介ありましたとおり、本年2月に当省の雇用均等・児童家庭局でこの研究会が設置されております。
 この研究会は、学習院大学の今野浩一郎教授を座長とする7名の研究会でございまして、本文の最後の1枚紙にあります。先ほど、守島先生のお名前を御紹介するのを失念して申し訳ございませんでしたが、今回、御紹介しますと、本分科会委員の山川委員、権丈委員も委員でおられたところでございます。
 そしてこの検討会で研究してきた結果を、今年9月に取りまとめたものでございます。
 では、概要の方で御説明いたします。
 第1の「総論」の(1)、「パートタイム労働をめぐる現状」。恐縮ですが、概要の項目だけになっていますので、簡単にどういうことが書いてあるかを御紹介いたします。パートタイム労働の現状として、パートタイム労働者の規模、賃金等の状況、増えてきているという状況などが整理されております。
 (2)の「パートタイム労働法の施行状況」につきましては、労働政策研究・研修機構の行いました「短時間労働者実態調査」により、事業所、個人に対して行った実態や意識についての結果報告をまとめております。併せて、パートタイム労働法を、施行事務を担っております雇用均等室における指導状況等も整理することで、施行状況を明らかにしております。個々には論点のところで出てくるかと思います。
 (3)の「諸外国のパートタイム労働法制」は、まさに先ほど資料2で御説明した、EU諸国の法制のパートタイム労働の部分を説明している部分でございますので、ここも省略いたします。一言で言いますと、例えばEUパートタイム労働指令では、パートタイム労働者で労働するというだけの理由では、客観的な証拠によって正当化されない限り、比較可能なフルタイム労働者よりも不利な取扱いをしてはならないということが書いてあり、それに基づきEU諸国においても立法がされているということでございます。
 ちなみに、均等研究会で分類しました中では、パートタイム労働については雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則の分野の一例だということでございます。
 2の「検討に当たっての基本的考え方」です。(1)が「パートタイム労働者の公正な待遇の確保」でございます。パートタイム労働者と通常の労働者の間の待遇の格差につきましては、働き方等が異なることが理由と考えられますけれども、平成19年の法改正による20年4月からの改正パート法の施行を経ましても、依然として待遇の格差が存在するということで、働き・貢献に見合った公正な待遇を一層確保していくことが極めて重要とされております。
 2つ目が、「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」でございます。人口減少社会を迎えようとしている中で、「全員参加型社会」の実現が必要ですけれども、短時間労働も、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすい働き方として位置づけられるということなので、パートタイム労働者が能力を十分に発揮できる条件を整備しつつ、積極的な活用を図ることは重要であり、パートタイム労働者の均衡待遇の確保、均等待遇を目指していくことの必要性を書いております。
 2ページにいっていただきまして、考え方の3つ目ですが、「パートタイム労働者の多様な就業実態や企業の雇用管理制度等を踏まえた対応」ということで、パートタイム労働者といっても多様な就業実態がある、企業の雇用管理も多様だということも踏まえまして、きめ細かく対応できる方策の検討が必要であるとしております。
 3は「パートタイム労働の課題」でございます。現在の施行状況から課題を整理しております。
 1つ目が、「通常の労働者との待遇の異同」でございます。?が「差別的取扱いの禁止(第8条)」でございます。これは先ほどございましたように、3つの要件に該当するパートタイム労働者を正社員と同視し得る者と整理しまして、一切の待遇についての差別を禁止しているという規律でございますけれども、ここで言っている3要件、職務の同一性、全期間にわたる人材活用の仕組み・運用の同一性と、実質無期も含めた無期という、3つの要件に該当するパートタイム労働者を実態調査で調べますと、調査対象パートタイム労働者の0.1%ということで、今の8条の規定を活用して改善を進める余地は小さい、としています。
 そう考えると、この3要件が、パートタイム労働者の均等待遇を図る手段として合理性を有しているか。単にネガティブ・チェックリストとして機能しているのではないか。また、あらゆる待遇につき一律に3要件が不可欠となるのかなどの点を含めて、検討する必要があるとされております。
 ?が「均衡待遇の確保」です。これは、パートタイム労働法第9条において、現在、?に該当するパートタイム労働者以外の人については、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案して、職務関連の賃金を決定する努力義務とがかかっているのですが、これも現状として、こういうニーズが高いと考えられますし、雇用均等室による是正指導も一定程度実施していることにかんがみまして、より一層の待遇改善を推進する方策について検討する必要があるとしております。
 (2)が「待遇に関する納得性の向上」です。パートタイム労働法13条では、パートタイム労働者から求めがあったときは、待遇の決定に当たって考慮した内容について、事業主が説明をすることとされております。これについての現状は、そうはいっても事業主に説明を求めることが必ずしも容易ではない状況がうかがえるということで、「労働者からの求め」という要件を、必要性も含めて検討する必要があるとされております。
 (3)は「教育訓練」です。パートタイム労働法10条に、教育訓練についての実施義務等がありますけれども、職務に必要な導入訓練は一定程度実施されていますけれども、キャリア形成のための教育訓練となると必ずしも十分に行われていないということで、教育訓練を通じてキャリア形成を促進していくための方策を検討する必要があると考えられる、としています。
 3ページ目にいっていただきまして、「通常の労働者への転換の推進」です。通常の労働者への転換推進措置を実施している事業所は約半数となっていることなどから、更なる推進が必要であるとともに、雇用の安定を志向する一方で、さまざまな事情により、勤務時間や日数が柔軟な働き方を自ら選択しているパートタイム労働者のニーズがあり、それに応える方策があるかどうか。具体的には、通常の労働者への転換以外にも、雇用の安定に応える方策があるかどうかということについて、検討する必要があるとされております。
 (5)は、「パートタイム労働法の実効性の確保」ということで、今、法に規定されている紛争解決援助の在り方についての検討が書かれております。
 「その他」は、税制、社会保険制度等関連制度についてですので、省略いたします。
 最後、4の「留意事項」が幾つか書かれていますけれども、1つ目に「有期労働契約の在り方の検討との整合性確保」という項目があります。本文は後で見ていただければいいと思いますけれども、当分科会において、有期労働契約について、均等・均衡待遇も含めて検討されているという事実に触れた上で、パートタイム労働者の多くが有期であることを踏まえて、当分科会で行っている有期労働契約の検討との整合性の確保についても必要である、としているところでございます。
 4の残りは省略いたします。
 これらの現状分析を踏まえて、第2の「今後のパートタイム労働対策」の項目がございます。これは、パートタイム労働者の雇用管理の改善を進めるために考えられる選択肢を幅広く整理したものとされています。
 順に御説明します。3ページの下の方ですけれども、1つ目は、「通常の労働者との間の待遇の異同」の項目でございます。(1)は「均等待遇の確保」でございます。?に「3要件の在り方とパートタイム労働者であることを理由とする合理的な理由のない不利益取扱いの禁止」とあります。
 4ページにいっていただきまして、8条の3要件の在り方については、そのうちの一つである、「職務の内容が同一であること」の要件のみでよいのではないかという意見、また、「人材活用の仕組み・運用等が同一であること」の要件のみでよいのではないかという意見があったり、また、例えば職務給かどうかなどの賃金制度の違いを考慮せず、すべての事業主に対し、一律に3要件を適用していることが問題なのではないかという意見もあったということで、研究会における議論が紹介されております。
 更に、第8条の適用範囲を広げていくことを検討すべきということで、今の8条の3要件が、ネガティブ・チェックリストとして機能しているのではないかとの懸念、及び事業所における賃金制度が多様であることに対応する観点から、事業主はパートタイム労働者であることを理由として、合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならないとする法制をとることが適当ではないかとの意見もあった、ということでございます。
 次のマルですが、今の最後の合理的理由という法制については、何が「合理的な理由」に当たるかということの判断が難しいことを前提としまして、予測可能性を確保するために、「合理的な理由」の考慮要素となり得るものについて、一定の例をガイドラインで示すこととし、行政指導に活用するとともに、司法手続でも参考とされることを期待することが適当ではないか、との意見もあったということでございます。
 ここからは先ほどの研究会の知見だと思いますけれども、EU諸国において、「合理的な理由」として、雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則においては、勤続年数、学歴、資格、職業格付け等、「同一(価値)労働同一賃金原則」においては、労働時間や就業場所の変更にどれだけ対応できるかという点や、キャリアコースなどが考慮されているという事実も踏まえますと、日本の雇用システムでの「合理的な理由」の考慮要素の例としても、諸外国の例を参考に、幅広く考えられるのではないかとの意見があったというところでございます。
 概要には載っていませんけれども、報告書の本文から一部補充しますと、更にこの仕組みを考える場合には、立証責任の在り方も検討すべきということも議論されたということでございます。更に、先ほどの均等研究会でも多少出てきましたけれども、労働条件の種類ごとに要件の在り方も考えるべきではないかという議論もあったということなど、論点が多々議論されたということが紹介されています。
 ?が「フルタイム有期契約労働者」でございます。フルタイム有期労働者というのは、フルタイムでございますのでパートタイム労働法は適用されないのですが、パートタイム労働法の施行の一環で行っている相談で見ますと、フルタイム有期労働者に関する相談も一定件数挙がっているという事実が注目される、としています。
 こうしたことから、フルタイム有期契約労働者についても、実質的に期間の定めがないと見られるものも含めまして、パート法の拡大の可否という視点から検討することが重要であると考えられ、有期労働契約の在り方に関する議論を見極めつつ、検討する必要があるとしています。
 (2)は、「均等待遇の対象とならないパートタイム労働者の待遇改善」でございます。先ほど、8条の3要件に該当する者以外の労働者の均衡を考慮した待遇という規律があると申し上げましたけれども、こういうものを考えるに当たり、賃金制度や雇用管理の取組は事業所ごとに多様であることから、待遇改善の在り方について法律などで一律の基準を設けることには限界がある。待遇の一層の改善のためには、個々の事業所ごとに、雇用管理の取組やパートタイム労働者のニーズ等の実情に応じて、事業主が、自主的にパートタイム労働者の雇用管理の改善等を計画的に進めること(いわば積極的改善措置の取組)が重要であるとの意見があったということでございます。
 この場合、例えば「次世代育成支援対策推進法の枠組み」とありますが、これは、事業主に行動計画を出していただいている法制度でが、それも参考にしまして、行動計画といったものを策定することを考え、その内容としては、賃金水準の改善、賃金制度の見直し、教育訓練の実施、通常の労働者への転換の推進等、実情に応じた幅広いものを認めることが考えられる、としています。
 また、次世代育成支援対策推進法では、計画を策定して、それが一定の基準を満たしたと認定された事業主に対する雇用促進税制が導入されていたことも踏まえまして、こうしたインセンティブを付与し取組を促進することも適当だということも述べております。
 (3)の「職務評価」でございます。これは、均等・均衡を図るための要素の一つである職務の内容を把握するツールであります、職務分析・職務評価について、この研究会で専門家からヒアリングをされたということでございます。そのヒアリングの中の議論として、職務評価を実施することにより職務評価点が明らかになって、評価点に見合った賃金を計算でき、差に応じた賃金を払うことができるという見解が示されたことや、ただし、職務評価は単一の賃金体系を企業に要請するものではなく、また、企業にとっての職務の序列を決めるものであるので、評価点に比例して水準を一律に決めるというものではない。そもそも賃金体系は、職務給、職能給、成果給、属人給などの組合せになっているので、職務評価の結果は賃金のすべてを決定するものではないという意見があった一方で、職務評価のプロセスを明示することによって、使用者の重視する価値を労使で共有することを契機に議論が進むことが期待される、という議論があったことが紹介されています。
 こうしたことから、中小企業の企業を含めた事業主に広範に職務分析・評価を義務づけることは困難でありますが、むしろ事業主が実情に合わせてこうした職務評価制度を導入して、労使間で共有することで、待遇について議論を進めることを促していくことが、方向性として考えられるとしております。
 ということで、先ほども出てきました行動計画において、職務評価をメニューの一つとして位置づけることも考えられる、ということに言及しております。
 また、現在、厚労省においてつくっている職務評価マニュアルについての改善についても、提案しております。
 6ページにいっていただきまして、「待遇に関する納得性の向上」です。現在の法規制にある、パートタイム労働者が求めた場合には、待遇の考慮した事項を説明しなければいけないという規律についてでございますけれども、パートタイム労働者が説明を求めやすくするためには、説明を求めたことを理由とする不利益取扱いの禁止を法律に定めることが考えられると提案しております。
 一方、そうした事項の説明を事業主に義務づけることも考えられるが、しかしながら、一律の規制を設けるよりも、実情に応じて柔軟なコミュニケーションを集団的労使関係の中で行う枠組みの方が重要だ、という意見もあったとしております。
 これについては、集団的労使関係の在り方について考慮する必要があるということで、ドイツ、フランスの制度を参考にした労使委員会という考え方もあるということでございますけれども、日本では一般的には労使委員会の仕組みがないことから、十分に検討が必要ということになっております。
 3が「教育訓練」でございます。先ほど、現状で見ましたように、キャリア形成のための教育訓練については充実するということでございますが、これも経営戦略に応じて行われることを踏まえると、法律等により一律に基準を義務づけることは困難であり、むしろ、先ほど出てきました行動計画の中に、パートタイム労働者のキャリア・ラダー(パートタイム労働者が更に条件の良い仕事へ移行することが可能な環境)の整備や、これに応じた計画的な教育訓練を盛り込むこととし、それに対して政策的なインセンティブを付与し、誘導していくことが考えられるとしております。
 この場合、教育訓練、待遇改善、通常の労働者への転換等の問題について、一体として行動計画に盛り込むことが適当としております。
 また、職業訓練といった場合に、それで得られた経験・能力を評価しやすくし、待遇に結びつけるように、「ジョブ・カード制度」「職業能力評価基準」「キャリア段位制度」といった能力開発の分野で進めている制度の、一層の普及・促進も重要ということも書かれております。
 4でございますが、「通常の労働者への転換の推進」でございます。これも、引き続き促進することが必要ということでございますけれども、(1)のマルの最後のパラですが、事業主自らが行動計画を作成し、その中で、パートタイム労働者のキャリア・ラダーを設け、計画的な訓練を実施し、最終的に、正社員へ転換するための措置を講じることを促進するアプローチということで、正社員転換そのものに加えて、それに至るさまざまな環境整備もセットで行動計画で進めていただくことが提案されています。
 (2)が、「『勤務地限定』、『職種限定』の無期労働契約」とあります。解説しますと、通常の労働者への転換などに関する労働者のニーズとしては、柔軟な働き方のまま雇用の安定を望むニーズもあるということですので、そのニーズを考えますと、勤務地限定や職種限定の形での、限定がついた無期労働契約への転換を支援することも検討する必要があるという意識の下に議論されております。
 こういった勤務地限定、職種限定の無期契約労働者については、そういうことを志向するニーズに対応し、かつ雇用が安定するというメリットはありますけれども、その一方で、事業所の閉鎖、職種の廃止の際の雇用保障の在り方について整理が必要とされ、判例の内容の整理が必要ということも指摘されております。
 事業主が、勤務地限定等の無期労働契約という選択肢を労働者に提供する場合には、今、言ったような旨を十分に説明するように義務づける必要があるといった意見や、勤務地限定等の無期契約労働者に対して教育訓練等の支援を行うことが、キャリアアップの観点から必要ではないかという意見もあったということでございます。
 8ページにいきます。「パートタイム労働とフルタイム労働との間の相互転換」でございます。これは簡単に申し上げますが、EU諸国では、労働時間を労働者が柔軟に選択できるよう、パートとフルの間の相互転換を促進する法制をとっているということでございます。日本におきましては、まずは待遇の格差の是正が必要であるということで、こうした相互転換については、状況を見極めつつ、実現を目指していくことが考えられるとしております。
 5の「パートタイム労働法の実効性の確保」でございます。(1)が、「報告徴収、勧告等」でございますが、これは行政の指導の部分でございまして、勧告に従わなかった場合の公表とか、過料を課す対象の拡大の検討が述べられております。
 (2)が「紛争解決援助」でございます。現行のパート法では、義務規定を対象として、紛争解決援助の仕組みが設けられていますけれども、これを努力義務規定に広げることも考えられる。判例の集積があるかどうかとか、調停案の中で賃金の水準に言及することが適当かという問題点も含めて、検討する必要があるとしています。
 「その他」ということで、EU諸国を例にとりまして、実体規制を通じた法違反による事後救済と併せて、当事者自らによる改善に向けた取組を促す手続規制の活用も、今後、重要になると考えられるとあります。本文にいきますと具体的に書いてありますけれども、先ほどから何か所かで出てきている行動計画ということを通じて、こういうことを実現しようという提案がされているところでございます。
 最後、9ページは、「6 その他」ということで、その他の論点を整理しております。
 1つ目が「フルタイム無期契約労働者の取扱い」ということで、フルタイムで無期といいますと、パートタイム労働法でも、有期労働契約の検討でも、保護の対象から外れてしまうのですけれども、今後、その実態を踏まえ、何らかの保護が図られるよう検討すべきであるとの意見も紹介されております。こういうフルタイム無期というものは、正社員と違いまして、勤務地、職種が限定される場合が多く、一つのステップとして考えられるという認識の下に言及がされております。
 (2)が「税制、社会保険制度等関連制度」ということで、これは、「社会保障・税一体改革」の中で併せて検討されている、年金・健康保険制度の適用拡大についての言及でございますので、内容は省略させていただきます。
 長くなりましたが、以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 ただいま御説明いただきました研究会報告書につきまして、御意見、御質問がありましたら、お願いしたいと思います。
 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 概要の3ページ、パートタイム労働者であることを理由とする合理的な理由のない不利益取扱いの禁止と、有期であることを理由とする合理的な理由のない不利益取扱いの禁止が、同じものなのか、そうでないのか、ニアイコールなのか。ニアイコールであれば、どこが違うのかというところをクリアーにお聞きしたいと思います。先ほどの質問が悪かったのかもしれませんが、そういう趣旨だったという意味です。
 それで、当方は前提として、労働条件分科会でございまして、パートタイム労働法の改正についての研究会報告なので、それはそれなりに参考にはなるというふうに思いますけれども、直接的に私どもに直接関係しているという立場ではないということ。それから、伺っているところによると、10月14日の均等分科会でも、このパート研の報告書については労使ともに、参考ですねというコメントがあったというふうに聞いていますので、そういう意味での参考ということで質問させていただきます。
 4ページの、第9条の均等待遇の対象とならない労働者の待遇改善の関係で、「雇用管理の改善等」というところを、次世代育成法に基づいた行動計画ということで啓発をしていってはいかがかということで、具体的にはというのが5ページ目に書いてはありますが、パートの人たちに対する賃金水準の改善とか、制度の見直しというのを具体的にどういうふうに書くのか。実務家としてはどう書いたらいいのかなというふうに思うわけでございまして、研究会報告としてきれいに書いてあるのですが、本当にどうするのかなというふうに思うので、その点についてどのような議論があったのかをお聞きしてみたいと思いました。
○岩村分科会長 では、事務局、お願いします。
○青山調査官 パートタイム労働法研究会の議事の経緯を参照しますと、趣旨としては、待遇改善の在り方について一律に法律で義務づけというのは限界があるので、事業所ごとに、実情に応じて自主的に計画的に進めていただくということで議論されましたので、例えばですけれども、次世代法も参考にする、大臣が指針を定めて、一定の取組というものを明確にして、その指針に即して各事業主が策定すると考えられるとされています。内容としては、先ほど概要で御説明した賃金制度の見直し、教育訓練の実施、通常の労働者への転換の推進、職務評価の導入等が例示されているにとどまり、あとは、個々の事業所の実情に応じて、幅広いものを認めるということが議論されているにとどまったと聞いております。ということで、それ以上の詳細は今後の雇用均等分科会の御議論ということではないかと、担当課からも聞いているところでございます。
○岩村分科会長 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 そこまではそうなんでしょうけれども、一方で、労働条件分科会側から見ると、その人は有期で働いているというふうに見たときに、例えば6か月の契約で働いている人の賃金水準の改善とか、賃金制度の見直しというのを、どういうふうに計画の中で書くのかというのが実務的によくわからないということです。
 2つ目は、先ほどの説明にもありましたように、行動計画の中に例えば転換制度等を書くことが一例ではないかという説明があったように聞いたのですが、例えば、パート法が改正されて行動計画を書くとなったときに、これによって正社員へ転換すると必然的に雇止めが難しい状況になる。こういうことを誘発するのではないかという懸念を持っているのですが、その辺の整理は可能なのかどうかというのがよくわからないということです。
○岩村分科会長 1点目は御意見ということだと思います。2点目は御質問だと思いますので、事務局、お願いします。
○青山調査官 行動計画をつくったことの、個々の有期労働者への影響とか、6か月契約の人の賃金水準の話とか、雇止め法理との関係ですが、こちらが聞いているこれまでの研究会の御議論は、この行動計画でイメージしているのは、事業所全体の法制度の導入に係るものを取り組んでもらいましょうということで、例えば事業所におけるパートタイム労働者のキャリア・ラダーを設け、教育訓練を実施し、最終的に正社員へ転換というものを事業所全体の制度として整理するものと聞いております。このため、有期のパートの人も含めて、個々の労働者の労働条件のありようについての計画となるようなものではないとして議論されたというふうに聞いておりますので、個々の6か月契約の人がどうなるかとか、雇止め法理の適用との関係というのは直接には出てこないのではないかと、担当課から我々が聞いた限りでは思っております。何か補足があれば、お願いします。
○岩村分科会長 ○輪島委員、いかがでしょうか。
○輪島委員 その辺が本当なのかどうか。担当課がそう言っているから、そうですねと裁判所が認めてくれるとは到底思えないので、少なくともそういう整理が必要だろうということだけは申し上げておきます。
○岩村分科会長 ほかにいかがでございましょうか。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 パートタイム労働についての課題と今後のあるべき姿について、おまとめいただきました委員の先生方、山川先生、権丈先生、ありがとうございました。非常に参考になる内容だと思っております。
 この記述の中で、例えば4ページに、フルタイム有期契約労働者について、有期労働契約の在り方に関する議論について、一番下に、「議論を見極めつつ、検討する必要があると考えられる」という記述がございます。また、概要の中では項目しか載っておりませんけれども、本文の27ページに、「有期労働契約の在り方の検討との整合性確保」ということで、「整合性を図りつつ、検討する必要がある」と書いていただいております。これは研究会報告ですので、そういう御指摘を我々も十分踏まえなければいけないと思っております。
 といいますのも、有期労働契約の検討が始まったときに、パートタイム労働者と重なる部分がある、要するに契約期間の有無と労働時間の長短でクロスをかければ、重なる部分は当然出てきますので、ここの検討の順序といいますか、これをどういうふうに考えるか。これは研究会報告ということではなく、事務方に聞かなければいけないのですけれども、パートタイム労働法というのは重要な役割を果たしてきたと思うのです。これまで、非正規労働者の中に労働者の権利保護という法律がない中で、このパートタイム労働法が果たしてきた役割は大きいと思っております。
 その一方で、今、有期労働契約についても、より大きなカテゴリーの中で規制の在り方の論議を始めているわけであります。例えば均等・均衡処遇の在り方ということになりますと、雇用均等分科会とこの分科会と重なる部分が多々あって、厚労省の中で同時に2つの分科会で論議をするといったときに、かなり混乱を生じるのではないかなというふうに思っております。やはり議論の順番としては、対象者の数の多い、より上位の概念である有期労働契約というところの基本的なルールの論議をまずしていって、そこで一定の結論を出した後にパートタイム労働者について雇用均等分科会での御論議をいただく。こういったような論議の順番の整理をしないと、同じ省の中で縦割りで2つの分科会が同じテーマで同時に走るというのはちょっと考えにくいと思います。その辺の整理がないと、今後の詰めに当たって、あちこち違う分科会からいろいろな意見が出てきて、それをどういうふうに踏まえるのかということになりかねませんので、その辺の順番の整理をどういうふうに考えるかというのを、事務局にお伺いしたいと思っております。
○岩村分科会長 では、事務局、お願いします。
○田中労働条件政策課長 この問題は、当分科会でも累次にわたり何回も御質問を受けておりますが、取りまとめの近い時期に至り、今後、具体的な議論をしていくにつれて、より相互の関係というのが重要になってくるというふうに思います。今、新谷委員からありましたような視点、有期というものがどのようなカバレッジになっているのかということ、あるいは、今回、均等の各研究会報告でありましたように、中身によって区別していく部分もあろうかと思いますので、そういった意味でよく整理をしながらやっていきたいというふうに思います。新谷委員からいただいた意見も十分参考にしながら、事務的にも整理がきっちりいくように努力したいと思っております。
○岩村分科会長 輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 新谷委員と意見が一致することは余りないのですけれども、それもそうだなというふうに思ったわけです。さらに加えて述べると、概要の3ページの4の「留意事項」の(3)、社会保障・税一体改革のところの議論もされているわけです。来年にはこの関係の法律改正があるわけで、労働条件分科会と均等分科会との関係で言うと、そのことは私も新谷委員に同意するのですが、この社会保障・税一体改革の方が大きな影響を与えるのではないでしょうか。これによって、どういう働き方を選択するのかということがおのずと決まってきて、それに対応して、パート法であるとか、労働条件分科会で議論をしていることについて、どういうふうにするのかというのが決まるのが順序ではないか。それを一遍に議論をしているというのは、非常に難しい議論ですし、そのことで整合性がとれるとはなかなか思えないので、そういう厚労省全体の整理が必要なのではないかということを強く申し上げておきたいと思います。
○岩村分科会長 そのほか、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、本日の議論はこの辺にさせていただきたいと思います。
 最後に、事務局から何かございますでしょうか。
○青山調査官 次回の労働条件分科会の日程につきましては、調整の上、委員の皆様にお知らせしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本日の分科会はこれで終了させていただきます。お忙しい中、ありがとうございました。
 なお、議事録の署名につきましては、労働者代表委員については安永委員、使用者代表委員については三浦委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。


(了)

労働条件政策課
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