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2011年7月19日 平成23年度第3回目安に関する小委員会 議事録

労働基準局

○日時

平成23年7月19日(火)
19:00~23:20


○場所

於:厚生労働省専用第15会議室(12F)


○出席者

【公益委員】

今野委員長、勝委員、仁田委員、藤村委員

【労働者委員】

石黒委員、田村委員、團野委員、萩原委員

【使用者委員】

小林委員、高橋委員、矢口委員、横山委員

【事務局】

森岡大臣官房審議官、本多大臣官房参事官(併)賃金時間室長、藤永主任中央賃金指導官
川田代副主任中央賃金指導官、伊津野副主任中央賃金指導官、亀井賃金時間室長補佐

○議題

平成23年度地域別最低賃金額改定の目安について

○議事

○今野委員長
  ただ今から第3回目安に関する小委員会を開催いたします。まず、追加資料として資料No.1というのが配られておりますので、事務局から説明してください。

○亀井室長補佐
  それでは私の方から資料No.1につきまして御説明をさせていただきます。お手元の配付資料の頭紙をおめくりいただいて、資料No.1でございますが、前回の第2回目安に関する小委員会において、高橋委員からお求めがあり、その後、公益の先生方と御相談させていただいて、提出させていただいたものでございます。
  表題としましては、「最低賃金と生活保護の乖離額及び解消に向けた引上げ額の推移」ということで、表の左3分の2くらいには、平成20年度、平成21年度、平成22年度、平成23年度というかたちで、前回お出しした資料No.2や資料No.3と体裁を合わせております。まず、機械的に計算した乖離額がいくらか、その乖離額が同年度の引上げ額によっていくら乖離額が残ったか、翌年はどうか、ということで推移を記しています。右から2列に、この3年間の乖離額がいくら拡大したかということの合計額を示し、一番右の列には、参考として、平成20年から22年の間の各都道府県の地域別最低賃金額の引上げの合計額を記しております。以上でございます。
○今野委員長
  ありがとうございました。それでは、この資料は過去の実績を整理していただいたということですので、参考にしていただければと思います。
  前回の小委員会で、労使の今年度の目安についての基本的な考え方を表明していただきました。それを整理しますと、労使ともに明確な数字は主張されていませんでしたが、まず、雇用戦略対話の合意を踏まえた引上げ額の目安ということについては、労働側からは、現在の最低賃金の水準は未だに低いということに触れながら、雇用戦略対話合意は、条件付きではあるものの政労使で合意されたものであり、最低800円を早期に確立すべきということで、主張をされております。
  他方、使用者側からは、雇用戦略対話合意の扱いに関しては、昨年度の目安審議では全国最低800円という数字目標が強く意識され過ぎた、経済成長率が考慮されないこととなると、支払能力について軽視するということになる審議になってしまう、経済成長率については、やはり実績が重要であり、実績を踏まえた審議をすべきである、という主張がありました。
  また、目安については、賃金改定状況調査結果等の他、東日本大震災を始めとする時々の事情を踏まえ、相当節度のある目安にすべきであるという御主張でございました。
  さらに、中小企業の生産性は停滞ないしマイナス傾向であり、最低賃金引上げのための中小企業支援事業についても実効性がほとんどない現時点においては、最低賃金を引き上げる根拠はないということも併せて主張をされております。
  次に生活保護との乖離解消については、労働側からは、法律の要請でもあり一気に解消すべきである、少なくとも昨年度決めたルールを適用して解消するべき、という御主張でありました。
  使用者側からは、乖離額が拡大した地域や新たに乖離が発生した地域については、解消年数を柔軟に対応すべきであり、各年度によって生活保護との乖離額が変動し、乖離が散逸することについて検討する必要があるのではないかという主張がありました。
  さらに、時々の事情として、東日本大震災の影響については、労働側からは、被災者の生活再建のためにも、雇用の創出に加えて、従来以上に最低賃金の引上げが不可欠という主張でありました。使用者側からは、東日本大震災による影響は直接の被災地域のみならず、全国に及んでおり、最低賃金引上げによる影響を最も受ける中小企業においては、リーマン・ショックの時より景況感が厳しい状況である、最低賃金の引上げを行えば企業の存続に関わる事態となりかねない、という御主張でございました。
  これまでの労使各側の主張を整理しますと、以上のような議論になると思います。そこで、労使各側より、補足、訂正の他に追加して主張されたい御意見がありましたら、また、前回からまた再検討されたことがございましたらまずお伺いをしたいと考えております。それではいかがでしょうか。労側から、どうぞ。

○團野委員
  それでは前回、委員長から要請もございましたので、改めて労働側としての基本姿勢について申し上げたいというふうに思います。
  今ほど委員長から紹介がありましたように、労働側としては、3点、基本的な主張をさせていただきました。繰り返しはいたしません。本日はこれに加えまして、公労使三者構成による十分な審議と、それによる目安決定の重要性について、見解をさせていただきたいと思います。それと同時に若干の認識、考え方についても披瀝したいと思います。
  まず、公労使三者による十分な審議と目安額決定の重要性について申し述べたいと思います。本年の2月10日、目安制度のあり方に関する全員協議会報告が取りまとめられました。ここでは公労使の三者が、法の原則、目安制度を基にして、時々の事情を総合的に勘案しながら審議を行うという、目安審議のあり方が改めて確認されました。労働側としては、この合意事項を尊重し、真摯かつ重厚な議論、目安額を決定すべきであるという認識を持って本年の審議会に臨んでいることを表明しておきたいと思います。一方、この審議については、労使交渉のある意味での補完的機能を有していると我々は認識いたしています。交渉にはぎりぎりの折り合いをつけることも時としては必要と考えます。そこでは、公労使の信頼関係は極めて大切と思っております。このことも、あえて付言させていただきたいと思います。その上で、様々な課題について少し考え方を述べさせていただきたいと思います。私は前回、相対的貧困率が過去最大の16%に達しているということについて申し上げました。642円は、この貧困ラインを割り込んだ水準である。ここに、問題の本質があるのではないか、ここにきちっと視点を置くべきではないかと主張いたしました。
  使用者側の主張にもありましたけれども、我が国が震災前から様々な中長期の構造的課題を抱えていることは、我々も認識をいたしております。それは、確かに、別の見方をすれば、成長阻害要因なのかもしれません、しかし、我々労働側からすれば、それこそ問題の所在、危機の本質が隠されているような気がしてならないわけであります。そうした視点から少し簡単に3,4点申し上げたいと思います。
  まず、デフレ状態を脱しきれないマクロ経済について申し上げたいと思います。7月12日に日本銀行が、当面の金融政策運営について発表いたしました。それによれば、我が国経済は、震災による様々な供給制約要因があったが、少し持ち直し始めているとあります。中小企業中心に、一部で資金繰りに厳しさはあるものの、緩和の動きは続いています。私も東日本大震災復興構想会議の検討部会の委員として、中小企業に対するつなぎ資金の融資、メンタルケアの問題、何よりも重要なのは、二重債務ローン問題、これをきちっと解消してほしい。そのためにも銀行があるんだというふうに主張しました。公的資金で資本金のケアをしてやれと、それで十分済むはずだという主張もいたしました。そういう意味合いでは、中小企業の厳しい状況は理解をしておりますけれども、これについてもクリアできるのではないかと認識しております。物価面についても、消費者物価は前年比で小幅なプラスで推移をしている状況であります。先行きの明るい経済は、生産活動が回復するにつれて、今年度後半以降、ゆるやかな回復形状に復していくというこういう見方であります。具体的に言えば、2012年度の経済成長は2%から3%という見通しであります。
  確かに、東日本大震災は日本経済全体にマイナスのインパクトを与えました。しかし、これも経済全体の浮上にとって、また、デフレからの脱却にとって、大きな契機、きっかけにしていかなければならないと思っております。そのための復旧、復興だというふうに考えております。
  ただし、復興、復旧をしていく上で、効率性ばかりを追いかけるような企業活動は良くないとも思っております。効率性の追求は、日本経済にとってかえってデフレを助長するという認識も必要だと思っております。生産性向上の必要性を、労働組合としても否定するつもりはまったくありません。しかし、労働コストに偏った削減策のみでは、一時的に収益性は向上しても、持続可能な経営基盤は構築できない。そのためには、分母ではなく、分子の付加価値総額をいかに増大させるかという視点が必要なのではないかと思うのです。マクロ経済はそういう状況にもう変わっているという認識を持ってもらいたい、また、持つべきだと思います。これは最低賃金の水準についても言えると思います。経営にとって負担が軽ければ、特にコストが低ければ良いというものではないと思います。健康で文化的な最低限度の生活、それを担保する最低賃金の水準、これはやはり雇用戦略対話合意の水準ではないかと我々としては考えている次第であります。
  次に、中小企業における生産性向上と最低賃金について申し上げたいと思います。どんな企業にとっても生産性の向上、収益率の維持確保なくして、企業の存続はありえないということは論を待たないと思います。このことは誰も否定し得ないことだと思っております。しかし、中小零細規模の企業にとって、また、規模が小さくなればなるほど、企業間の取引問題が収益面に大きな影響を及ぼしているのだと理解をしております。そして、収益面に最低賃金の水準がまったく関わりないとまでは申し上げません。しかし、公正、公平な取引環境の確立こそが、経営の最大課題であると私は認識しております。これは政府や、地方の自治体が発注する公共事業における労働者の賃金、俗に言う公契約においても例外ではないと考えている次第であります。
  次に、第4表について簡単にこれは触れされていただきたいと思います。労働側としてはこれまでも参考資料の1つとして第4表を重視してまいりました。しかし、第4表を中心とした議論をしてきたつもりはありません。あえていえば、これは労務構成差や労働時間差などを含んだ増減額を仮に示したものであるというように見ております。表題に偽りありというふうに思います。賃上げ結果ではないということであります。男女別、一般労働者・パートタイム労働者別の賃金の絶対水準を読み取るべきであると考えております。今回、示されたデータからは、パートタイム労働者の賃金は+1.4%であり、ここにこそ最低賃金との関わりがあると受理すべきではないかと我々としては考えております。
  最後に、賃金水準の低いCランク,Dランクの底上げの必要性についても申し上げたいと思います。最低賃金法の趣旨からして、生活保護水準との乖離解消を早期に達成することが必要であります。その限りでは、現行の解消方法を維持すべきだと考えております。年ごとの乖離の発生についてもありますけれども、これは元々の最低賃金の水準が低すぎるということが原因だと我々は見ているわけでございます。したがって、Cランク及びDランクの水準を大幅に引き上げる必要がある、生活できる最低賃金を早期に確立する、これが不可欠だと労働側としては考えていることを最後に申し上げて、総括的な見解とさせていただきたいと思います。

○今野委員長
  ありがとうございました。他にございますか。どうぞ。

○萩原委員
  私の方から、震災関係のことについて一言言わせていただきたいと思います。今年度の最低賃金の目安審議に当たって配慮すべき時々の事情についてですが、使用者側の東日本大震災のマイナス影響のみを強く主張する、この姿勢については我々としては同意できません。震災についての配慮が必要、そういうことであれば、復興、復旧に向けて、最低賃金には何ができるか、最低賃金の役割についても考慮すべきではないかと考えております。被災地については、足下の問題としては、早期に将来像に基づいた復興がバランス良く行われていくものだと思いますし、行われるべきものだと思っております。
  まず、復旧についてでございます。これについては、前回の主張の繰り返しになりますから、詳細については触れませんが、やはり、被災地における生活が再建できる最低賃金ということが、必要ではないかと思っております。今回は、それにプラスして、復興について考えてみたいと思います。復興を目指すという観点では、今回の震災におきましては、サプライチェーンは国内だけではなく、グローバルな部分についてもございます。このグローバルなサプライチェーンの中でも、日本のものづくり、そして、中小企業の実力が、再度強く、高く評価されたものだと思っております。この、再評価された事業を推進することで、地域経済に活力を与え、まさに復興につながるものではないかと考えております。そのためには、これまで、これらの企業、産業を支えてきた、高度な技術、それから熟練した技能、これを持った労働者を失業者として他の地域に流出させるようなことがあってはならないと思います。このような点においても、ぜひとも生活できる最低賃金を確保し、この地域で生活できる、このような取組が、今の最低賃金には求められているのではないかと思います。
  さらにこのサプライチェーンについて申しますと、震災の被害から急速に立ち上がっております。こうした早期の復旧が可能であった背景には、高度な労働の質、そして労使の信頼関係、こういうものがあったからこそだということも言われております。この面における労使の信頼関係とは、ただ単に労働組合と使用者という狭義な意味ではなく、中小企業においては、家族的一体感をもった取組が、早期に復旧をできた根拠になったのではないかと思います。
  さらにもう一つ加えますと、正規従業員のみならず、パートタイム労働者などの非正規の社員の方々も含め、自らが被災者でもある全従業員の方々が一体となって復旧に取り組んだこと、このような努力があったからこそ、早期の復旧ができたものだと思います。こういった方々の協力、努力について、企業経営という観点から、是非とも、あるべき賃金水準、最低賃金の水準、これについて考えていただきたいと思っております。以上でございます。

○今野委員長
  ありがとうございます。どうぞ。

○田村委員
  第4表について、4点ほど申し上げたいと思います。まず、第1点は、團野委員から言われたとおりでございまして、第4表そのものは賃金の引上げを示したものではない。抽出企業の去年と今年の6月時点の賃金を比較したものでしかありませんので、一資料であると思っています。
  2点目は、ここ数年の引上げ額が反映されていない、そういうことを言いたいと思います。パートタイム労働者を含めて低賃金層は上がっているわけでございまして、4年で58円、昨年は17円という、生活保護との乖離解消を含めた引上げがあったわけでございます。第4表の一般労働者、それからパートタイム労働者の集計はゼロということでございますから、低賃金層の引上げというのはやはり、先ほど團野委員が言ったように、パートタイム労働者の賃上げ状況を見るとするならば+1.4%、約15円程度上がっている。これをむしろ重視すべきではないかと思っております。
  3点目は、労使交渉の結果ということは表れる必要があるのではないか思っております。私どもの努力も足りませんが、組織率の低い中小零細企業のところでは、労使交渉はありません。ここに出てくる数字というのはまさに、労働者が関与しない、逆説的に言えば使用者の判断で出ている数字でしかなのではないかと思っていますので、労使交渉が納得した形で出ているものとするならば、連合で集約された+1.74%であるだとか、経団連が集約されている中小企業の+1.67%とかいう数字があるわけでございますから、これは、労使納得の上で出た数字ということで、参考になると思っています。
  4点目は、これまでも第4表はかなり重要視されてきた指標ということになっていますけれども、経済成長なり、賃金の上昇率がそれに見合った時期、1978年の目安審議が始まって以来、役割を果たしてきたと思っていますけれども、基本的に絶対額、その時点の絶対額に各ランクの第4表の数字をかけてきたという経過がございまして、元々の母数字が高いところに同じ率を掛ければ、低いところとの間の金額格差は広がっていくばかりでございますので、2007年の法改正の趣旨と相反するような気がしますので、絶対水準の不条理というところをぜひ見ていただきたいと考えております。そういう意味では、第4表は一指標でしかないという具合に思っております。以上でございます。

○今野委員長
  ありがとうございます。どうぞ。

○石黒委員
  最後に、生活保護との乖離解消について、もう一度、お話をしたいと思います。基本的には、即刻、乖離解消すべきだという立場に立っております。少なくとも、昨年の目安審議、目安制度のあり方に関する全員協議会のときに含めて議論しましたが、乖離が発生した地域については早期解消を目指していくべきです。
  私どもの労働組合に所属している企業なのですが、パートタイム労働者が約95,000人いる企業に行って話を聞くと、いつまで働いていない人たちの生活保護と、働いている私たちが適用される最低賃金を比べて議論をしているんだと、3年経ってもまだ変わらないのか、というお怒りの声を聞いていますし、働いている側からすれば、そもそも働いて得られる賃金の問題と生活保護に係る整合性については即座にやらなければならない。それがまた、乖離解消出来ないという問題については最も重要なことだと思っています。色々と、使用者側の方から逃げ水というような話もありましたけれども、そもそも、生活保護水準に行けばいいというようなレベルのことではなく、働いている人たちの、働いて生活できる賃金というものについての、生活保護、最低賃金というものについて、もっと考える場ではないかと思っていますので、そういったところも含めて、生活保護との乖離解消についてはきちっとやっていきたいと思っております。以上です。

○今野委員長
  ありがとうございます。よろしいですか。
  それでは使用者側は御意見ありますか。特にないですか。前回と一緒ということでよろしいですね。それでは、依然として労使の主張の隔たりは大きいということでございますので、これからは、公労、公使会議で個別に考えながら進めていきたいと思います。
  それでは、最初に公労会議を行いたいと思います。使用者側の委員の方は、16階の専用第17会議室が控え室になっておりますので、そこでしばらくお待ちいただければと思います。それでは、何か事務局からありますか。

○亀井室長補佐
  1点、事務的な御連絡をさせていただきますが、本年度におきましては、控え室の方に軽食を用意しております。ですから、審議の合間に適宜お召し上がりいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○今野委員長
  それでは終わりたいと思います。

(第2回全体会議)

○今野委員長
  それでは、ただ今から、第2回全体会議を開催いたします。本日は、労使の方々と色々と話をさせていただいて、歩み寄りを期待させていただきましたが、依然として双方の見解に隔たりが大きいので、本日中の取りまとめは断念して次回に持ち越したいと思います。よろしいですね。
  それでは、労使各側におかれましては、目安の取りまとめに向けて、本日の議論を踏まえて次回までに是非とも再考をお願いしたいと思います。次回の日程と会議は、追って事務局からお知らせします。
  それでは、以上をもちまして、本日の第3回目安に関する小委員会を終了いたします。議事録の署名ですが、萩原委員と矢口委員にお願いをいたします。それでは終わります。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労働条件政策課賃金時間室
最低賃金係(内線:5532)

代表 03-5253-1111

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