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2011年10月4日 第6回社会保障審議会生活保護基準部会議事録

社会・援護局

○日時

平成23年10月 4日(火)15:00~17:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
阿部 彩 (委員)
庄司 洋子 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
林  徹 (委員)
道中 隆 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

・委員からの報告
・その他

○議事

○駒村部会長 定刻になりましたので、ただいまから第6回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
 まず、本日の委員の出欠状況について、事務局よりお願いいたします。
○古川社会・援護局保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございます。栃本委員は若干遅れるという御連絡をいただいておりますけれども、栃本委員を含めまして、全員の御出席をいただくことになっております。
 それでは、議事の議事進行を部会長によろしくお願い申し上げます。
○駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 まず、事務局より本日提出された資料1について、御報告をお願いいたします。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料1につきまして御説明させていただきます。
 前回御質問いただきました1点目でございますけれども、こちらは栃本委員から御質問をいただきました、精神疾患の有無別の被保護人員数といったものでございます。
 2ページ目をごらんいただきますと、被保護人員全体としましては約167万人中のおよそ1割であります16万人程度が精神疾患を有している。これを世代類型別に見ますと、やはり傷病者世帯に属する被保護者が精神疾患を有する割合が比較的高い。一方で、それ以外の世帯類型に属する被保護者はそうではないといった傾向がございます。こちらが1点目でございます。
 2点目は庄司委員から御質問いただきました、世帯類型別1世帯当たり就労収入月額の分布でございます。こちらが3ページ目にございまして、ごらんいただきますと世帯類型全体としましては、平均水準よりやや低い側に多めに分布しているような状況でございます。平均のところに点線を入れております。こちらの世帯類型に見ますと、稼働年齢層が比較的多いと考えられます母子世帯あるいはその他世帯につきましては、平均よりやや低い側、高い側と満遍なく分布をしている状況でございますが、一方で高齢者世帯、障害者世帯並びに傷病者世帯といった類型につきましては、平均よりやや低い側に多めに分布しているといった状況が見られます。
 以上、2つの資料につきまして前回の道中委員の御指摘を踏まえまして、傷病者世帯と障害者世帯は別々に計上させていただいております。
 以上でございます。
○駒村部会長 それでは、ただいまの事務局の説明について、質問等ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。道中先生よろしいですか。
 では、また後でもし何かありましたら戻るということにしまして、続けて岩田委員より前回の部会において御提出された資料について、追加訂正がありますとのことですので、御説明をお願いします。
○岩田部会長代理 申し訳ありません。1つは前回資料の16ページと18ページですけれども、抵抗点の加重平均した金額を間違えて記載していましたので、アンダーラインのある数字にお直しいただければと思います。
 また、追加として、前回高齢世帯の話が出ていましたので、1級地-2の地域で行った高齢世帯の家計調査のうち、単身世帯のケースが生保と被生保でちょうど大体半分ずつありますので、その両者を比較したグラフを提出しました。上は消費支出と家賃と保健医療費を取った、ほぼ生活扶助に該当するものを棒グラフで示したものです。おわかりのように、生活保護以外の世帯は消費支出あるいは生活扶助相当支出にとても大きな差がありますけれども、生活保護受給世帯はほぼ一定の水準に並んでいる様子がよく示されています。
 下の図ですが、赤い線が生活扶助の基準です。生活扶助に該当する金額を合わせますと、当然ですけれども、生活保護世帯の場合は生活扶助基準すれすれのところで大体そろうわけですが、それ以外の世帯は、やはり格差が大きいことがわかると思います。つまり生活保護が「最低限」として機能しているということだと思います。
 次のページの追加2ですが、これは前回、阿部委員の方から私が出すであろうと予想された、異なった方法での最低生活費算定結果の比較図です。前回報告しました金澤さんたちのマーケットバスケットと、科研調査、全消分析、本日御報告があります主観的最低生活費、前回阿部委員から報告がありましたMISの男性、女性、生活保護基準1級地-1の生活扶助相当部分を並べますとこんなふうになります。これが追加の資料です。
 以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 前回の資料に追加修正がございますけれども、何か御質問などございますか。
 では、続いて山田委員より御提出いただいた資料2について、御報告をお願いいたします。
○山田委員 私の報告は資料3に基づいて行います。
 私の報告は、主観的最低生活費の測定ということで、一般の方々が主観的最低生活費というのをどのようにとらえているのかというのを明らかにした研究となります。なお、この研究はスライド1にございます4名の共同研究者の研究成果でございまして、また、この研究は厚生労働省労働科学研究費補助金を受けたプロジェクトで、研究代表者は座長の駒村先生であり、その一環として実施されたものでございます。
 スライド2をごらんください。まず、なぜ主観的最低生活費を測定するのかという意義についてです。そもそもどれくらい社会に低所得層がいるのか、貧困者層がいるのか、ということで、主観的最低生活費とは全く別個に、相対的貧困線というものがございます。一般的によく使われる相対的貧困線というのは、中位等価可処分所得の50%に設定するということが多うございます。40%に設定されたり、60%に設定されたりすることもあるんですが、50%に設定されていることが多い。
ちょっとわかりにくいのでもう少し噛み砕いて説明いたしますと、所得の低い方から高い方に社会を構成する人々を順番に並べて、そのちょうど真ん中の所得の人の半分を相対的貧困線と設定して、それよりも下にある人を貧困層と機械的に算出するという方法がよくとられております。OECDでやっているような国際比較分析もしくはヨーロッパなどでもこうした中位等価可処分所得に基づく貧困線で、どれだけの人が低所得にいるのかということがよく分析されております。比較分析によく使われているということです。
 更に日本の場合には中位等価可処分所得の50%というのは、生活保護基準で低所得層を把握したときと非常に似たような測定結果を出すということから、簡便な方法としては利用価値の高い指標となっております。ただ、問題は機械的に中位等価可処分所得の50%と設定されている貧困線ということで、具体的な最低生活費の裏付けがあるのかという観点からは、実際には確固たる裏付けはないということになります。
 そうしたことから、裏付けを持った基準というのはどういうところにあるのかということで、さまざまなアプローチで最低生活費がこれまで計測されているわけです。
 これは前回の岩田先生の御報告にもありましたけれども、幾つかのアプローチがあります。例えば理論的な必要栄養量に基づいて、その栄養量を満たすような食材を出して、価格づけをして理論的な生活費を専門家が決めるような方法もあれば、家計調査とか家計簿といった調査に基づいて、低所得層にある人々の実態家計を分析して、最低生活費を出すというやり方もあります。
 最近注目されるのは、これは前回の阿部委員の御報告にもありましたように、専門家ではなくて租税負担者等を含めた、一般市民が考える最低生活費とは何かということから、最低生活費を求めていこうという流れが新たに出ていることです。
 今日御紹介する主観的最低生活費の測定も、実は市民参加型というか、一般市民の方に最低生活費が幾らかということを尋ねるアプローチで測定した研究となります。それ以外にもいろいろとありますけれども、時間の都合上、割愛させていただきます。
 スライド3におめくりください。今日お話する主観的最低生活費の測定で何がわかったのかという結論を先に申し上げますと、3つのことがわかりました。この研究では最低生活費について、どういうふうな聞き方をするかというのがまず問題になってくるわけですけれども、非常に両極端の聞き方で最低生活費を尋ねております。これは後で説明します。
 まずどうしてそういったことをやったかというと、いろいろな尋ね方があって、それによって余りにも結果がまちまちだと、そもそも最低生活費ははかれるのかという問題が出てきますので、非常に両極端の尋ね方をして、一定の範囲におさまったかどうかというのを確認しました。勿論、何が一定の範囲かというのは議論の余地がありますけれども、少なくとも非常に両極端の尋ね方をしても、出てくる最低生活費というのは、ある幅を持ってはいるが一定の範囲におさまっているということがわかったというのが第一点になります。
 第二点は、そうして求められた主観的最低生活費の水準と、一例として保護基準というものを比べた場合に、どういった相対的な位置関係にあるのかということです。この点に関しては、両極端の聞き方というのは後で詳しく御紹介しますけれども、生活を切り詰めるだけ切り詰め、という聞き方をした場合の最低生活費と、つつましやかなという聞き方をした場合の最低生活費と2種類あるんですけれども、保護基準というのはちょうど真ん中に入ってきていることがわかりました。ただし、その例外は単身世帯の保護基準で、こちらに関してはいずれの聞き方で尋ねた最低生活費よりも、相対的に低くなっていることがわかりました。
 3番目にわかったこととしましては、主観的最低生活費の特徴として、まず第1類に関する消費を見てみますと、20歳未満の世帯員については相対的に低く見積もっている傾向がある。一方で第2類に関連する消費に関しては、主観的最低生活費というのは相対的に高く見積もる傾向があるということです。つまり、第1類関連消費と第2類関連消費のバランスというのが、主観的最低生活費の場合には相対的に異なっていることになります。
そして、世帯に働く規模の経済性。世帯に働く規模の経済性というのは、要は世帯員が増えるごとに必要になってくる最低生活費というのはどんどん増えていくというわけではなくて、増え方が逓減する場合、それは世帯に規模の経済性が働いていると申しますけれども、その世帯に働く規模の経済性というものを主観的最低生活費では、相対的に高く見積もる傾向があるということがわかりました。もう少し言えば、要は世帯員数が増えても相対的に最低生活費は増えないということがわかったということです。
それでは、具体的な研究の中身の方に入っていきたいと思います。スライド4をごらんください。
まず、主観的最低生活費を測定する目的ですけれども、これは今回使った方法としてはインタビュー調査ではなくて、インターネット調査という方法を使いました。前回、阿部委員が御報告されましたようにMISのような形でやると、インタビューを何回も積み重ねるという形で非常に膨大な労力と時間がかかる。そうではない方法が何かないかということでインターネット調査という方法を使って、市民参加型に基づく測定方法をするというのが、この研究の1つの目的です。
2つ目の目的としては、主観的最低生活費の幅がどれほどあるのかというのを、質問方法を変えることによって確認するということです。これは先ほども少し述べましたけれども、同じ属性を持つ個人の集まり、2つのグループに以下の2通りの質問を別々に割り当てることで、こうした幅を見ようとしています。
質問は、切り詰めるだけ切り詰めて、あなたと御家族に最低限幾ら必要かというのが1つ目の聞き方です。
2つ目の聞き方というのは、つつましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活を送るためには幾ら必要かという聞き方です。
以降、切り詰めるだけ切りつめて、という聞き方の方を、頭文字をとってK調査と言うことにします。つつましいながらもという聞き方の方を、T調査ということにします。
このK調査とT調査の質問方法というのは、自分と家族にとっての最低限必要な生活費を考える場合の両極端と考えられます。その両極端がどれくらい大きいのか。余りにも違うのであれば、聞き方によって結果がかなりぶれるというインプリケーションがありますので、どれくらいの幅におさまるのかということです。
もう一つ、最後の3つ目の目的ですけれども、生活保護制度との比較。単純な基準の比較と世帯規模の経済性の比較を行うということです。世帯員が1人増えたとき、追加的に幾ら必要かというのを見るということです。
それでは、もう少し詳細にこの研究の中身を紹介したいと思います。スライド5をごらんください。インターネット調査は2009年2月に実施されました。これはインターネット調査会社提携の買い物ポイントが付くようなプログラムがあるんですけれども、その会員400万人から抽出されたサンプルを使っています。サンプルは合計で1,440サンプルで、次のスライドで説明する方法で割り当てています。
インターネット調査は顔が見えない調査でありますので、インターネット調査会社の方でさまざまな不正防止策はとられているということです。
調査対象者というのが何をインセンティブにこの調査に回答しているのかということですけれども、ポイントが与えられるということで、それをインセンティブに調査に参加することになっています。
スライド6をごらんください。調査対象者ですけれども、もともとのこのポイントプログラム会員、モニターと言っていますが、その分布というのは性別では男性が多く、年齢では30代、40代が多く、居住地としては大都市圏が多いといった特徴を持っておりますので、具体的に1,440サンプルというのは世帯、単身、夫婦、子どもの数、一人親といった世帯類型、そして収入、単身であれば400万以上、未満、夫婦と子ども、もしくは夫婦であれば700万以上、未満、一人親であれば300万以上、未満というところで収入カテゴリをつくって、それぞれの世帯類型と収入をかけ合わせて12類型にそれぞれ60サンプルを割り当てて、720サンプルをまず確保しました。更に2通りの聞き方で尋ねますので、2倍して1,440というのがサンプルになります。
2種類の調査内容はスライド7をごらんください。これは720サンプルずつにそれぞれ異なる最低生活費の尋ね方をして、更に具体的な消費項目としては月単位での消費として15項目、そして年単位での消費項目として11項目。26項目になりますけれども、それぞれの消費項目ごとに幾ら必要かということを回答していただくことになっています。
必要消費項目の具体的内容としましてはスライド8をごらんください。食費から交際費までの15項目が月単位での必要消費、被服から非貯蓄型保険料までの11項目が年単位での必要消費ということで、それぞれを聞いております。
スライド9、調査上の工夫というのは主に3つございます。1つはそれぞれ26項目を一つひとつ回答していただいて足し合わせると、過大な合計額が発生する可能性がございますので、やりくり感を持たせるということで必要消費項目の合計額を確認しながら、各項目を回答するような工夫をしています。
2番目の工夫としては、持ち家の場合の住宅費用を推計するため、持ち家の場合には仮想的家賃を回答していただくという工夫をしております。
3番目としては、回答漏れの発生を抑制するために、すべての調査項目に回答していただくという条件を付けて、回答をお願いしております。
それでは、測定された結果に入っていきたいと思います。スライド10をごらんください。ここではK調査、T調査の尋ね方による比較を行っています。こちらの表の表側(ひょうそく)をごらんください。表側側には単身、夫婦のみから子1人がいる一人親まで6世帯の類型が書かれております。
この表は大きく左右に2つに分割できまして、1つは左側の月単位の必要消費、右側は年単位の必要消費を示しています。左の月単位の必要消費なんですけれども、K調査の聞き方で言えば夫婦のみだと17万2,000円、T調査だと先ほどの15項目の合計は21万5,000円。このT調査とK調査の比率を見ますと、当然ながらT調査の方が大きくなっているんですが、大体1.2倍の倍率になっている。同じく年単位の必要消費項目についてもK調査の中央値とT調査の中央値を見ますと、大体1.2~1.9倍の範囲に入っているということで、何を一定の範囲とするかということがございますけれども、非常に両極端の聞き方をしても最低生活費というのはある一定の幅におさまっているので、割合とそれほど聞き方によるばらつきはないだろうということで研究を進めております。
スライド11をごらんください。主観的最低生活費と保護基準というものを比較した表です。表側側には先ほどの6種類の世帯類型が示されております。表頭側は左からK調査、保護基準、T調査のそれぞれ保護基準に対応する消費項目の中央値を示しております。保護基準はその保護基準そのままですけれども、生活扶助、母子・児童養育加算、教育扶助、住宅扶助特別基準を加えたものを示しています。数字と数字の間に入っています不等号は、それぞれどちらの方が大きいかということを示していますが、夫婦のみから一人親のところまで見ますと、ほぼ保護基準というのはK調査とT調査の中間に入ってきていることがわかります。例外は単身世帯のみで、保護基準の方が相対的にやや低くなっていることが見てとれます。
更にこれを細かく見るために、スライド12では第1類関連費と2類関連費に分けて見ております。このスライド12は2つパネルがございまして、左パネルは回答者の世帯に属する各年齢階級の各世帯員に必要な消費額を見ております。右パネルは1人世帯、2人世帯、3人世帯、そうした各世帯員数の各世帯に必要な消費額を示しております。
まず左パネルに注目しますと、第1類関連消費、個人的経費については、20歳未満については保護基準の方が相対的にK調査もしくはT調査よりも高い水準になっている。一方で20歳以上については、保護基準というはK調査とT調査のちょうど真ん中に入っていることがわかります。
次に右パネルに注目していただきますと、第2類の世帯共通経費では、いずれも保護基準というのが相対的にK調査、T調査よりも低くなっている。これは要は第2類と第1類のバランスが主観的最低生活費では異なることを示しているものと考えられます。
それでは、スライド13をごらんください。等価尺度の比較をしています。等価尺度というのはここで初めて出る言葉ですけれども、これは世帯に働く規模の経済性を示す指標とお考えください。ここでは単身というのが一番左に来ていますが、その単身というのをベースに各世帯類型の最低生活費が単身世帯をベースにした場合、何倍必要かということを表しています。この読み方なんですけれども、単身のところの黒いボックスがK調査、灰色のボックスが保護基準、白いボックスがT調査で、単身では全部1になっています。これは単身を1に基準化しているわけですから、全部1になっているわけですけれども、これを1と置いて各調査の例えば夫婦のみ、夫婦+子2人でどれくらい最低生活費が何倍必要かというのを見ています。
これで見ますと、保護基準というのが灰色のボックスで、世帯員数が増えていくにつれて、相対的に比較的すぐに増大していくんですけれども、K調査、T調査というのはそれほど相対的に増えない。ただし、上のボックスにも書いてありますが、ここでは単身世帯をベースにした比率を表してございますので、各世帯類型の水準の絶対的な多寡ではなくて、単に等価尺度の違いを表わしているにしか過ぎないということに、注意をする必要があります。
繰り返しになってしまいますが、スライド14でもう一度主観的最低生活費の測定で何がわかったのかということを、改めて3つ指摘したいと思います。
1点目は質問方法の違いによる最低生活費の幅というのは、一定の範囲におさまっているということです。最低生活費、ここでは両極端の尋ね方をしましたけれども、月に必要な消費項目の中央値で見てみますと、T調査というのはK調査の1.2~1.3倍です。年間必要消費項目の中央値に関しても、T調査というのはK調査の1.2~1.9倍の範囲におさまっていることになります。
2点目としては、単身世帯以外で主観的最低生活費の両極端のちょうど間に、保護基準というのが入っていることになります。単身世帯については主観的最低生活費、いずれの2つの指標よりも相対的に低くなっていることがわかりました。
3点目として、主観的最低生活費の特徴としては、第1類関連消費については20歳未満の世帯について、主観的最低生活費は相対的に低く見積もる傾向がある一方で、第2類関連消費では主観的最低生活費の方が、相対的に高く見積もる傾向があることがわかりました。更に世帯に働く規模の経済性というのは、主観的最低生活費というのは相対的に高く見積もる傾向があることがわかりました。ただし、それほどサンプル数が多くない分析でもありますし、こうしたやり方が正しいのかを含め、まだトライアル・アンド・エラーの状況にあることをお断りしておきたいと思います。
私からの報告は以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの山田委員からの報告について、質問等があったらお願いいたします。
○阿部委員 改めて幾つか質問させていただきます。
 非常に面白い調査だと常々思っておりました。1つは収入を3種類といいますか、3つのカテゴリの収入の方々を調査対象者となさっているんですけれども、こちらで出していただいた例えば単身世帯、夫婦のみ世帯のK調査とT調査の額というのは、すべての所得の人の平均値と考えればよろしいんでしょうか。もし所得によって違いがあるのであれば、その違いがあるのかというところを御説明いただければと思いました。
 もう一つ、最後のところの子どもの経費なんですけれども、聞き方として例えば食費でとか、子どもだけにかかる経費というのはなかなかイメージしにくいとは思うんですが、そういったところの費用が聞き方として、MISみたいな仮定のモデル世帯ではなくて、自分の家のことも聞いているわけですね。お宅ではお子さんの食費が幾らですかと聞いているのか、そこら辺の聞き方について教えていただければと思いました。
○山田委員 まず第一の御質問ですけれども、こちらのスライド6にあります割り当てに使っている金額というのは、各種所得調査の各世帯類型の平均値を使っています。例えば単身で400万というのは平均値を使って、その上と下ということで基準を設けています。
 2点目の御質問ですけれども、どういう聞き方をしたかということです。聞き方としては、あなたと同居家族が切り詰めるだけ切り詰めて最低限幾ら必要ですかという聞き方で、要するに調査対象者が自分のこととして理解していただくという尋ね方をしているつもりです。勿論、回答するのは子どもではなくて親、各世帯類型の成人ということであれば当然親になりますから、例えば夫婦+子1人なんかでもすべて親が回答しているということで、子ども自体が子どものニーズを判断しているというわけではなくて、親の子に対するニーズの判断ということになろうかと思います。
○阿部委員 スライド12に年齢別の第1類費、第2類費があります。その分け方なんですけれども、お宅では食費が幾らかかりますかと聞いているんだとして、そこで3~5歳での例えば1類費、2類費の幾らというのは、どのように計算なさったのでしょうか。
○山田委員 これは解析的に求めています。世帯員のそれぞれの年齢階級というのはわかっておりますので、その年齢階級に何人いるかというのを説明変数にして、被説明変数を最低生活費にすると、解析的に年齢階級別に各世帯員の必要な額を求めることができるという考え方で、OLS推計によって求めた係数の値をここでは示しています。
○阿部委員 すべての品目について、それぞれOLSで。
○山田委員 この場合は第1類関連費とざくっとくくって。
○阿部委員 第1類関連費全部という形ですか。
○山田委員 そうです。それを被説明変数にして分解しています。
○阿部委員 ありがとうございます。
○駒村部会長 岩田先生、どうぞ。
○岩田部会長代理 同じような質問なんですけれども、先ほどの収入の割り当てで、例えば400万以上と未満という分け方をした場合に、その多い方と少ない方で違いは出たんでしょうか。
○山田委員 こちらのフルペーパーの方にはそういった分析もしております。今の岩田委員の御質問は、世帯所得が上昇した場合に、最低生活費というのも多分上昇するのではないかということだと思うんですけれども、それを大きいとみなすか小さいとみなすかというのは議論の余地があると思うんですが、数字だけ申し上げれば世帯所得が1%上昇すると、主観的最低生活費というのは0.2%ほど上昇するということで、確かに世帯所得が上昇するにつれて、最低生活費も上昇する傾向があるというのは確認しております。
○岩田部会長代理 そう大きくはないということですか。
○山田委員 大きさというのも計算しているんですけれども、例えば非常に低い層で計算してみて、世帯所得が例えば年間200万円から220万円へという形で、20万円上昇しましたという場合に、主観的最低生活費が月額でどれくらい上昇するかというと2,700円ということで、勿論これを大きいと見るか小さいと見るかというのは議論の余地がありますが、大体その程度の上昇の仕方となります。
○阿部委員 今の点で追加で質問させていただきたいんですが、ということは1%の上昇が0.2というのは、所得をOLSで入れたときにリニアで入れたわけではなくて、カテゴリ値ですとか、そのような形で入れているということなんですか。200から220万で計算すると2,700円とおっしゃっていましたけれども、例えば400から420万では違う値で、同じと仮定していないということなんでしょうか。
○山田委員 世帯所得が上昇するにつれて、リニアと言えばリニアで上昇するんですけれども、対数変換していますので、実額に直すとリニアにはなりません。
○阿部委員 その人の実際の生活水準と、その人が一体幾ら最低生活費に必要だというのを答えるというものを見たときに、両極端に離れるというものが外国の文献で見たことがあるんです。つまり所得が低い層と高い層で、こういうふうに大きくぶれる。下の方ではぶれが大きくて、真ん中の中間層では比較的ぶれが小さくて、また高い層でぶれが大きくなっていくというようなものを見て、中間層といいますか、最低生活費のラインぐらいの世帯の人たちの話でないと、そのぶれが小さくならないのではないかという議論を聞いたことがあるのですが、そこら辺はどう思われますか。
○山田委員 これは論文にも出していない図表で、自分の手元でデータを確認した時点ですけれども、最低生活費を縦軸にして、横軸に所得階層をとると、大体どういうふうに動くかというと、所得が低い方のときには割合とフラットな動きをしているし、所得が第6十分位を超えるぐらいから上に動くかなということなんです。ただ、これはざっくりと基礎集計で確かめたぐらいなので何とも言えないんですけれども、低所得のところだけぶれがめちゃくちゃ大きかったかというと、そういうことはこのデータでは確認できなかったというのが1つです。
 あとは、ちょうど最低生活ラインの人の主観的最低生活費を聞くか聞かないかという話なんですけれども、そこまでおっしゃっていないかもしれないですが、抵抗点という話がありますので、それを考えると素直にすべての所得階層を入れて推計した方がいいのではないかというのが、この推計をやったときすべての所得階層を入れて分析した理由です。そういうふうにはおっしゃっていなかったかもしれないですけれども、補足説明として、そういうことがありました。
○駒村部会長 よろしいですか。岩田先生、どうぞ。
○岩田部会長代理 質問ではないんですけれども、コメントというか、結論は今までの生活保護基準の展開の仕方で幾つか出てきていた問題点を、ほぼ証明していると思います。ですから大変有意義だし、1類と2類のバランスとか、基本にマーケットバスケットがあるので、どうしても子どもの1類が高めに出てしまうとか、そういうことが多分関係しているんだろうなと思います。だからそういう意味では非常に面白いやり方だと思います。
 多分、月単位のT調査とK調査の幅の方が小さくて、年単位の方が大きいですね。年単位にやや家具だとか大きな教養代などが入っているので、多分そういう辺りで、月単位の日常的なものでは割合幅が小さいんだけれども、大きなもので幅が出てくるという感じもよく出ていて、私は大変面白いと思いました。
 1つだけ、仮想的家賃というのはどういうふうに聞いたんですか。
○山田委員 手元に調査票がございませんので、ちょっとその質問は今お答えすることはできないです。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
○栃本委員 月単位と年単位の15項目、11項目の区分けなんですけれども、説明があったのかもしれないですが、年単位というのは月間変動というか、月変動が大きいから類別したという理解でいいんですか。
○山田委員 説明は省略いたしましたけれども、栃本委員のおっしゃるとおりでございます。
○栃本委員 だから診療代といった場合には、入院とかそういうものが入る可能性があるとか、そういう感じだから月単位ではなくて年単位で見るという理解でいいですか。
○山田委員 はい。月単位で聞いたのでは非常に変動が大きそうだというのを、年単位の消費項目の中に入れてございます。
○栃本委員 それともう一つ、このパワーポイントバージョンの必要消費項目の具体的内容の部分で、例えば生保上の第2類類型に保健医療というのが入っていますね。
○山田委員 済みません、先ほどの回答で不正確だったんですけれども、この医薬品保健医療用品は調査票の中では注意書きが付けられていまして、診療代を除くというふうに指定を付けております。要するに、イメージしているものは、公的医療保険でカバーされるものではない部分を。
○栃本委員 それがいわゆる生保の第2類費とイコールという形になっているんですか。
○山田委員 はい。第2類関連項目には入れております。正確に申しますと医薬品のところに注意書きで市販薬と強調してありまして、保健医療用品などはめがね、コンタクトレンズなどというふうに強調しております。
○栃本委員 わかりました。
 これは事務局の方に聞けばいいんだけれども、第2類費の保健医療の範囲は全部これに一致するんですか。これは勿論、ほかの先生方は専門なので御存じで、私だけ知らないのかもしれないですが、生活保護の方の生活水準基準額の、先ほどから出ている第1類関連費と第2類費というのは、世帯人数に応じて世帯単位なんだけれども、項目で言うと両方ともカバーしている。教養娯楽は両方とも第1類も第2類も出てくるでしょう。保健医療というのは第2類費として上がってくるではないですか。その第2類費に出てくるものの保健医療は第1類の方には出てこないんだから、その保健医療というものと、その保健医療の中身というものと、ここで研究されているこの項目というのは一致するのでしょうか。
○山田委員 ここでの保健医療用品というのは、めがね、コンタクトレンズなどと、医薬品と言えば市販薬という限定です。
○栃本委員 だから診療代というのは診療費、要するにお医者さんに行ってかかった診療費ではありませんよということですね。
○山田委員 それは除くことになっています。
○栃本委員 わかりました。
 もう一つ、メディア機器というのは、生保上の第2類費の中での通信は電話代とかインターネット代とか、そういうものですね。
○伊沢社会・援護局保護課課長補佐 通信でございますけれども、郵便料と固定電話の通話料、宅配運送料等も入っています。
○栃本委員 先生の研究された月単位の通信費の部分が、そちらになるという感じですか。
○山田委員 はい。通信費は郵便や電話代です。
○栃本委員 もう一つ、診療費とか医薬品の概念というか、ここでの定義はわかったんですけれども、先ほどのKT方式によるKTの差が出るものと出ないものがあるではないですか。それは報告書をちゃんと勉強すればいいんですが、医薬品とかそういうものというのはKTの差が出やすいものとして見るのですか。押し並べてKTの差というのは同じような形で出るものなのか。要するに生活需要の項目の中でKTは少し差があるなという感じになったんですか。それを勉強のために教えていただきたい。
○山田委員 今、御質問にあった医薬品保健医療とか、別途聞いている診療代というのは、中央値を見る限りではT調査とK調査でそれほど大きな差は出ていないということに、基礎集計を見る限りではなっております。対象者は60歳未満ですので、インターネット調査ということもあって高齢者が含まれておりませんので、高齢者を入れた場合にどうなるかというのは、私のこの研究ではわかりません。
○栃本委員 前回の第5回目に岩田先生と阿部先生の御報告の中で、主観的な部分、いわゆる社会的交際費をどうとらえるかとか、そういうものも関係があると思うんだけれども、そういうことからKT差というのが、項目によって差が出るものと出ないものがあるのかなというのが関心があったんです。これはかなり固定的に変わらないというものと、かなり差が出るものがあるのかなみたいに思ったんです。それでお尋ねしました。
 もう一つは、先ほどの御説明で私が聞き損じたのかもしれませんけれども、2類の方については相対的に高く見積もる傾向があるというのが出てくるではないですか。なぜ第2類関連消費というのは相対的に高く見積もる傾向があるのか。推測というのもあれだけれども、勿論そもそもが2類というのは世帯人員数ということと、世帯単位でということがベースに勿論あると思うんだけれども、なぜでしょうかねというのをお聞きするのもあれなんですが。
○駒村部会長 まだ報告が2つありまして、そのままだと4時間コースぐらいになってしまいますので、栃本さんにまた後でフルペーパーがもし用意できていればお見せするとして、なかなか難しい質問で、こういう研究自体がほとんど日本になかったわけですので、山田先生がびしっと答えられるかどうかというのはやや難しい。もし山田先生がお答えできればの範囲でお願いします。
○山田委員 第2類費の方が高いか低いかというよりも、比重の、比率の問題と理解しております。なぜ比率が高いのかというのは、お答えになっておりませんけれども、これをどういうふうに考えたらいいのかというのはオープンクエスチョンという形で、私も正直いろいろとは考えていますが、データから言えることだけということで禁欲すべきだと考えておりましたので、済みませんが。
○駒村部会長 まさに最後私がお話したかった部分を先取りしてしまったので、今後そういう部分をむしろこのバランス自体を含めて、きちんと設計構造を見ていこうという話でありますので、次の道中先生の報告とさせていただきたいと思います。
 道中先生の御報告は私との共同論文なんですけれども、先生の御報告の前に私の方からおわびをしておきたいんですが、印刷してもうこれは世の中に出版されているものなんですけれども、ゲラの時点のものをどうも配付してしまって、道中先生と私の間で意思の疎通ができておりませんでして、今、事務局に印刷されてファイナルなものを用意してもらっていますので、後ほどそれと差し替えさせていただきます。
ただ、説明においてはほとんどコアの部分は変化ございませんので、てにをはとか細かい数字に少し変更がある程度ですので、報告自体はこれでお願いしたいと思います。
 では、道中先生、お願いします。
○道中委員 私の方から、被保護母子世帯における貧困の世代間連鎖と生活上の問題ということで、御報告をさせていただきたいと思います。後ほど修正の入った資料を皆さん方のお手元にお配りさせていただきたいと思います。
 本研究は駒村先生、丸山先生、そして私、道中の共同研究で発表したものであります。フルペーパーとしてざっと27ページと少し厚めになってございます。口頭での詳細報告ということが時間的に限られますので、後でじっくりと読んでいただくということでの情報提供を含めまして、フルペーパーとなっております。
 調査の対象なんですが、これは関西の政令市を対象にした調査であります。具体的には受給層の中でとりわけ母子世帯を対象にした調査で、大体20項目ぐらいの項目をデザインしておりまして、その中で特に10項目を取り上げています。例えば生活保護の受給履歴、生活歴、離死別(離婚とか死別の状況)、健康状態は特に精神疾患というものもとらえています。そして学歴、10代出産ママの発生の状況を見ています。子どもの健康というところも項目があります。更にはDV、児童虐待、非嫡出子の状況、稼働収入はどうかといった問題を項目でたどっていこうということであります。
これは既に先行研究で、私の方で2006年にA市390世帯757人、2008年のB市では214世帯638人、2010年C市調査では104世帯288人という中で、合計708世帯そして1,679世帯のサンプリング数なんですが、ここの解析で用いたのは318世帯の926人という状況があります。
 この間いろいろな先行研究が多くございますが、いずれも全消調査、家計調査あるいは山田先生の先ほどの主観的な最低生活費などのいわゆるマクロデータに対しまして、この研究の報告では、いわゆるメゾミクロデータを用いた貧困研究として考えております。ちょっと逆説的な見方ということであります。
 政令市の対象市なんですが、いわゆる基礎自治体に限定した調査ということなので、サンプリング数は多くありません。その結果をもって全体の代表値であるとは考えておりません。しかしながら、マクロデータによります分析では、生活困窮者の生活実態が必ずしもぴんと来ないものがございます。いろいろ解析で数値はわかるんですけれども、どうも生活実態からはもう一つわかりにくいということがあります。
そこで本調査では、現に生活保護を受給する世帯を対象とした調査です。いわゆる開始でありますとか、あるいは廃止の世帯は入ってございません。要するに細かく木の葉っぱの裏側までルーペでフォーカスした現実のリアリティとして、生活実態が浮かび上がってまいります。マクロデータによります統計が空中戦ということでありますと、この調査は地を這う泥だらけのミクロデータの地上戦といったところでございましょうか。
 分析結果はアブストラクトのとおり、要旨のところにございます。データとしては解析上、棄却されたものが多くありますけれども、この棄却されたものの示唆が結構示唆に富むものが多くございます。貧困が親から子へと引き継がれ、負のスパイラルを何とか数量的に実証しようという試みであります。
 柱としては3本あります。1点目は被保護母子世帯の4割近くが成育期に生活保護を経験しており、中卒、高校中退や10代出産など、成育期に発生した事柄、つまり環境的相違によりますところの現在の生活の負荷になっているということです。
 2点目といたしましては、就労阻害要因の最も大きなものが母親の健康状態でありまして、次が学歴ということが強く関連をしているということでございます。
 3点目は、その生活実態の中でDVあるいは児童虐待、非嫡出子の相関が非常に強くあらわれております。母親の健康状態と子どもの健康状態の関連性が確認されたところでございます。こうした家庭内のハンディといったものが蓄積、集中していることが明らかになったわけでございます。つまり、被保護母子世帯が貧困の担い手になっていることが数量的に確認されたわけでございます。
 具体的に中身を少し詳細に見てみたいと思います。2ページをごらんください。先行研究という形で2ページ以降、先行研究レビューを掲げてございます。とりわけ政策上、非常に優先度の高い重要な領域である。それが特にこの受給層の中でも、被保護母子世帯というものが浮かび上がってきているわけです。OECDといった資料でも確認されるわけです。
 2ページ中段以降「こうしたOECDによる分析には」以下に書いてございますように、経済状況の代理指標とか15歳の母の暮らしぶりの自己評価というか、そういった代用するような資料が中心になっているということで、なかなか政策導入に必要なデータ、エビデンスのある情報がなかなか得られていないという現況があるわけであります。
 3ページ、上から5行目でありますが、要するに親の経済状況が子どもの学歴、所得に及ぼす影響というものです。子どもの人的資本面での不利益と貧困、健康、学力等、幅広い分野の不利の世代間連鎖が明らかにされているわけであります。
 我が国では残念ながら、教育という視点から見ますと、先進国の中でもOECD諸国のうち4か国だけが、高校が義務教育化されていないというのは、残念ながら日本の現実であります。
 3ページ(2)日本の貧困の世代間連鎖に関する先行研究には、2つのパターンに大別されます。1つはすべての所得層を対象とした統計調査データから導き出される親と子の世代の所得、学歴等の経済的側面を説明する変数の移動状況を追跡する手法であります。
 もう一つはパネル調査や生活保護受給者を対象にしたアンケート、聞き取り調査といったものを分析する方法、この2通りであります。
 4ページ、最初の代理指標に基づく貧困の世代間連鎖の研究というのが、以下こういった形で先行研究がございます。後段の「しかし」以下をごらんください。データの制約として標本の4割は、例えばこのケースは小塩先生の調査でしょうか。この調査ではデータの制約として標本の約4割は大卒者であって、比較的富裕層が多いといった面で実態を反映したものかどうかという面があります。本研究で見る生活保護受給というスティグマの伴う圧倒的な貧困状況の世代間移転分析とは、やや方法が異なるということがございます。
 5ページ上段の母子世帯、低所得者を対象とした世代間連鎖の研究としては、ここに掲げていますようなそれぞれの研究者の研究がございます。特に北大の青木先生の研究は、貧困の世代内再生産というような先鞭を切っておられた調査ということで、非常に注目されたわけであります。母子世帯数はわずか19世帯と限定的ではありますけれども、それを契機にいろんな研究を先導的といいましょうか、刺激を与えていただいたということがあります。
 5ページ中段ですけれども、岩田先生、濱本先生の研究、家計経済研究所によるパネル調査です。このパネル調査はなかなかございませんで、示唆に富んだ御研究だと思います。ここでは貧困に結びやすい要因といたしまして離死別の経験でありますとか、子どもが3人以上あれば貧困度が高くなる。あるいは中卒などの学歴の要因を指摘されております。そういった形で更に慢性型の貧困にかかりやすい要因として未婚継続、離死別経験、子ども3人以上、離職、借家居住、標準的な生活様式からの逸脱という表現でとらえられております。そして就業変動です。そういったものが多重貧困リスクとして統計上つまびらかにされているということがあります。
 続けて石井先生、山田先生のパネル調査がございます。そして後藤先生のディーセント、これはアマルティア・センのcapabilityという概念を用いられているということで、ディーセントの概念を用いた分析であります。
 阿部先生の相対的剥奪指標という世帯所得の分析も行われております。母子世帯の母親が無理をして子どものために家計をやりくりして、将来の先行投資をかけているという母子世帯の姿を浮かび上がらせているわけであります。
 藤原先生の日本労働研究機構の調査があります。
 6ページ中段は大規模標本によるアンケート調査ということで、それでも属性の特徴をとらえるには限界があるということで、生活保護受給者に焦点を絞りながら一定の標本数を確保した研究といたしまして、中囿先生とか福岡県立大の研究所でありますとか、中村、道中という研究があります。
 ここの中で北海道釧路市の被保護母子世帯のアンケート調査では、父親の4割、母親の5割が中卒あるいは高校中退であるということで、学歴のインパクトが非常に強いという傾向があります。そして福岡大の研究所でありますけれども、ここは特別な旧産炭地の田川地区を対象に調査された、廃止台帳の詳細な分析が行われております。いわゆる保護の2世、3世、4世と、世代をわたってそういった生活保護を需給されているといった地域の特殊事情と申しましょうか、産業構造という歴史的な経緯があるということがあります。そういったことでいろいろ調査が行われているわけです。
私の調査では被保護世帯の貧困の世代間連鎖に着眼しまして、2009年は被保護世帯の4分の1が生まれ育った家での生活保護の受給歴がある。母子世帯ではこの割合が約4割。被保護世帯の中でも、母子世帯の貧困の世代間連鎖の強さを指摘できるのではないかということであります。
 「また」以下の藤原先生、湯澤先生の共同研究では、開廃要因で要件を絞って調査をされていますけれども、しかし保護の廃止世帯を対象にしているということで、健康面とか学歴などの不利の蓄積が相対的に低いのではないかといった特徴があります。
 7ページ(3)母子世帯の子どもへの負の連鎖、特にDV経験、虐待経験を手がかりにということでの分析をしてございます。要するに心身面に長期的かつ甚大な影響を与える成育環境として、貧困の関係についても分析等したものであります。
 中段3.本研究で用いるデータでありますが、これは2007年の調査で390世帯753人を調査した解析であります。被保護母子世帯の母親の就労状況と子どもの虐待経験についての実証分析を行ったわけであります。ここで母子世帯と申し上げますのは、生活保護制度で統計で用いられています母子世帯であります。用いるデータは2008年調査の214世帯638人、2010年調査の104世帯288人といったサンプルを抽出しまして、その状況を精査したわけであります。合わせて926人318世帯でございます。
 8ページ、記述統計量によります解析でありますが、ここでこういった表側でずっと項目を掲げてございます。特に母の就労ダミー、世代間の生活保護受給歴あるいは母の病気のダミー。この影響は後ほど説明をさせていただきたいと思います。
 年齢構成で中段以降でありますが、被保護母子世帯の母親の年齢の区分でありますけれども、ごらんいただきますように本調査では平均年齢35.6歳。全国一斉調査の平均年齢が38.4歳、釧路調査では年齢が確認できません。本調査の中ではとりわけ20~29歳のところを見ていただければと思いますが、20.4%です。ところが、全国一斉調査では10.8%という形で数字の大きな違いが出ているわけであります。
 9ページ(3)の学歴でありますけれども、中卒、高校中退などの低学歴を持つ者は約55%というのが10ページ表3でございます。被保護母子世帯の母親の学歴分布ということでございます。いずれにしても40歳弱から60歳弱が中心になってございます。釧路調査では高校中退と中卒の割合が、表頭の釧路調査に目を転じていただければ37.2%となっています。ちなみに本調査では55%ということで高くなっております。
 就労状況と疾病状況ということで、就労という形でR=1でリグレッションが強いという動向があります。それが10ページの表4でございます。
 続けて収入面についても少し(5)に数値が出てございます。
 12ページもごらんいただきたいと思います。4.貧困の世代間連鎖ということで、貧困の世代間連鎖が具体的にどういう状況にあらわれているのかということで分析をしています。本調査の場合について連鎖が少し強く出ているのは、昭和40年代生まれ以降の世代が82%を占める若年者が多いという特徴がございます。年齢構成別にごらんいただければおわかりだろうと思います。
 表6は世代間の生活保護の受給歴と学歴、そして生活保護の受給歴の関係をクロスした結果でありまして、表6の生活保護の受給歴というところで、ありの表頭から3つ目では世代間の受給歴ありとなりまして、生活保護の受給歴ありのところと69.6%という形で有意な数値になってございます。
 世代間にわたります受給歴の有無と受給回数という相関がございますが、それが14ページでございます。図1をごらんいただければおわかりだと思います。けれども、受給歴は本人の年齢、就労状況、病気の有無、世帯人員数、10代の出産経験などの他の変数とは相関が認められなかったことを御報告いたします。
 表7から被保護母子世帯の親世代も82.3%。この数字は配偶者との離死別経験があるということで特徴が出てございます。親の離死別経験の有無というのが今後の不利益を強く引き継ぐ可能性を示唆する内容になってございます。
 15ページ(2)真ん中辺りでございますが、表8であります。ここでは10代での出産経験が高校進学や卒業の阻害要因として、被保護リスクを引き上げている。要するに貧困リスクが高くなるということであります。
 同じく15ページ下の5.多変量解析によります分析結果ということで、いろいろな変数が多数ございますので、そういった中心になる項目をクロス集計して解析したものであります。
 16ページ、表9では世代間受給歴のダミーと、要するに世代間受給と10代出産経験というものが、分析では優位に出てきたということであります。
 表10、高卒以上の学歴の場合と10代出産ということでの関連と申しましょうか、そういうものが有意な数値で出ているというわけであります。
 続けて、受給期間に与える影響ということで16ページをごらんください。これは受給期間の回帰分析でございます。高卒と母親の病気ダミーということで有意な数値が検出されております。
 今度は世帯の抱える課題というところで、16ページ(3)DV、非嫡出子と児童虐待という項目でございます。ここでごらんいただいたように、それぞれ関連が強いという結果になってございます。
 18ページの図2をごらんください。続けてずっとこういった解析をクロスした図をごらんいただいたらと思います。
 時間が迫ってまいりますので、そこで政策的なインプリケーションとして母親の精神疾患というものが挙げられます。母親の精神疾患の罹患率が33.6%ということであります。いわゆるこれでは精神保健福祉とか、あるいは自立支援プログラムで新たな取組みを示唆したものと考えられます。いわゆるメンタルヘルスのヘルスプロモートの視点が必要ではないかということと、もう一つは母親の離死別経験の有無が不利益を強く形成している可能性が強いということであります。
 もう一つは、これは10代出産の抑制による政策効果が期待されるということが示唆できるものと考えられます。多変量解析の結果、データ分析から確認できた事柄であります。
 今後のインプリケーションといたしましては、成育環境の重要性等関連分野と連携した研究手法の開発が望まれるということと、もう一点は子どもの成育過程への介入政策が今後の課題として浮かび上がったということがあります。
 以上でございます。
○駒村部会長 道中先生、ありがとうございました。急がせてしまって申し訳ございませんでした。
 道中先生の報告は私と一緒に研究させていただいたテーマで、道中先生が苦労して集められた被保護世帯、母子世帯のデータを300余り分析させていただいたという内容でございまして、なかなか一般母子世帯との比較はこのデータからすぐに言えない部分がありますけれども、かなり不利が累積している状態が被保護母子世帯には見られるのではないかということでございます。従来はケーススタディが多かった研究の中でこういうデータ分析をしたということでございます。
 道中先生の御報告について何か御質問はありますでしょうか。
○阿部委員 対象者がすべて被保護世帯ということなので、なかなか一般的な政策、インプリケーションに結びづらいというところがあるんですけれども、1つ興味深いと思ったのが、被保護の母子世帯の中で過去に世代間受給があったかどうかということがどれぐらい効いているか。被保護の母子世帯の中の質的な違いみたいなものがあるのかどうかというところで、受給期間と就労のロジスティックのところで、両方とも世代間受給歴ダミーは有意でない形で出てきているんです。ですので、それを見る限り。
○駒村部会長 何ページですか。
○阿部委員 17ページの一番上の表が受給期間のロジスティックです。あと19ページに就労ロジスティックが表14にあります。
 なので、年齢ですとか学歴などコントロールしてしまえば、世代間を通じて子どものときも生活保護を受けていた受給母子世帯と、そうでない受給母子世帯の間には違いがないということかと思うんですけれども、その点、どのように解釈されるかお聞きしたいなと思ったんです。私自身、余り実際に受給者の方々と接触する機会が少ないものですから。
○駒村部会長 統計的なところは、今おっしゃったところは確かにそういう部分があるんですけれども、20ページの方で今度は世代間受給歴というところで、親の子どものときに御自身が受給した経験があるというところは、学歴に影響を与えてしまっているので、こちらのルートがあると思うんです。つまり当時の生活保護制度というのは、今は違いますけれども、高校進学を制限されていましたので、学歴のルートで生活保護受給歴がハンディになっているという部分は、こちらの方で読めるのではないかと思います。
 現場に近い視点から、道中先生に統計的ではない方についてお話いただきたいと思います。
○道中委員 受給期間の影響ということですか。
○阿部委員 過去に生活保護の御家庭で育って、現在、生活保護になってしまっている方と、そうでない家庭で育って現在、生活保護になっている方というのは、何か違いがあるのかというところです。
○道中委員 これは統計上出るわけではありませんけれども、例えば教育に対する親のインセンティブとか、ほかの事項にもありますように、なぜ非嫡出子を抽出しているかと申しますと、親の生き様みたいなところが投影され、例えば離死別を繰り返している母子世帯の方も結構多くございまして、その中身をよく吟味しますと、最初の初婚は婚姻関係をきちんと持っておられますが、2回目以降の場合は同棲婚で、そこで子どもが生まれて非嫡出子になっています。通常であればそれで続くんですが、そのまままた別れてしまうということで、そこには将来の展望のなさ、今後の生活設計という視点から計画性の欠如が伺われます。その結果、非嫡の出現率が非常に高くなっているものと解釈しております。子どもの権利主体というところでは余り子どもへの期待とか、計画的な展望をもった対応に思いが及んでいないのではないかという親の姿があり、日々、刹那刹那に生きている親の姿と見ることができます。経験からの感覚的なArtですが、数多くのケースを見ておりますと、それが伝わってくる。それを統計的に資料で示せるものは、せいぜい非嫡出子の出現状況でしか補足はできないんですけれども。
○阿部委員 ありがとうございます。
○駒村部会長 先ほどの阿部先生の御質問に対して、20ページのパス図をどう書くかというのは研究者に任されている部分があるので、いろいろなとらえ方があるんですけれども、一番上のところを見ると世代間受給歴、つまり子どものときに受けた生活保護受給歴が、過去に御自身で成人した後に複数回生活保護を受けているかどうかという影響については正の影響を受けていますので、それがどういうことなのか。
つまり、子どものときに受けたから割と生活保護に抵抗感がないのかどうなのかというふうに解釈していいかどうかわかりませんけれども、あるいはここではコントロールできないハンディキャップがこの中に潜んでいるかわかりませんが、そこはこのパス図から見れば出てきているということであります。だから就業のところには先ほどダイレクトに影響を与えていませんけれども、いろいろなその人の持っている人的資源なり、物の見方に影響を与えている可能性はあるのではないかと見ています。
 いかがでしょうか。岩田先生、どうぞ。
○岩田部会長代理 2008年と2010年の調査では、これは同じところからデータをとっているので、その中には同じ世帯が含まれている可能性はありますか。
○駒村部会長 これは別の人たちです。
○岩田部会長代理 大分学歴とか、勿論、数が少なくなりますので収入状況が2時点で違うというか、就労している人が少ないから、その影響が大きいんだと思いますけれども、2008年が変わった数字だなという感じがありました。
○駒村部会長 就業状況は2つのデータでは差がないように見えますけれども。
○岩田部会長代理 11ページの学歴別の平均月収はすごく小さい額です。
○駒村部会長 そうですね。これはサンプルが正社員の方も少ないわけで、ばらついてしまうかもしれないです。
 司会の不手際で自分自身の発表時間がほとんどなくなってしまいましたので、私の話をさせていただきたいと思いますけれども、私の話はお手元に資料がございますが、どちらかというと新しい知見というよりは、今までの皆さんのお話をまとめて、問題提起をしているということになるかと思います。
 貧困研究の概要をどうまとめるかというのは、いろいろまとめ方があると思います。ここでは7種類にまとめていますけれども、貧困の概念から貧困世帯の生活状況、貧困率の推計、家計の状況といったもの、あるいは複数の貧困ラインを使って貧困率の変化をチェックすることも研究では行われている。
本日は生活保護制度の評価といったものに係る研究。これは捕捉率を代表にされますけれども、捕捉率もかなり突っ込んだ研究もありまして、どうして捕捉率を間違うのかというような、各国の公的扶助のプロセスまでさかのぼって、ちゃんとセーフティネットは機能しているか機能していないかという議論もありますし、公的扶助の制度そのものに関する評価研究というものもある。
最低生計費については前回、阿部先生、岩田先生、山田先生からも今日お話があったテーマだと思います。
6番目の貧困状態が一時点のものなのか、それとも貧困状態は継続しているのかという動態的な話。これも紹介がありました山田先生が1つ研究をやっていたと思います。
7番目の貧困状態が世代間で連鎖していくのかどうなのか。これは今日、道中先生がお話されたようなテーマで、この辺の5、6をやろうとすると長期のパネルデータがないとなかなかできないテーマでございます。
 次を開けていただいて、今日は機能評価に関わるところで、1つ生活保護の扶助の基準のつくり方そのものについて、少し議論をしてみたいなと思います。
 この評価をどういうふうに評価するのか。左からどのくらいの社会的コストを生活保護の分野に使っていくのかというようなこと。あるいは生活保護制度の質的、定性的な構造について。つまりは公的扶助制度はどの程度の水準でカバーをしているかということ、あるいはその結果、防貧機能や貧困率を下げているかどうかというようなことに、要するに4つぐらい評価方法があるということが、これはフィンランドの研究者がまとめた報告ですけれども、そういうふうにも見ることができる。この辺で単に部分的な比較研究ではなくて、体系的な評価研究をする必要があるだろうと思います。
 本日は2つほど設問を自らに出して、それを少し考える形で非常に短時間ですけれども、お話をさせていただきたいと思います。
 まず、生活扶助の水準を決めるに当たっては、これからお話する標準世帯というのが1つの重要なベンチマークになっているということでございます。この標準世帯をこの部会ではどのように考えていくのかということが1つ、これを設問として設定したい。それから、生活扶助の水準そのものの議論がこの部会でも重要なテーマになるわけでありますけれども、そもそも生活扶助の設計、一人世帯、二人世帯あるいは何歳の子どもにどのくらいの比重をかけるのかという設計方法そのものも、議論をしていく必要がある。そういう意味では今日御紹介するのは水準そのものではなくて、構造とか評価方法についてのお話をしていきたいと思います。
 従来の生活保護の扶助基準の決定方法は5ページに書いてあるとおりでありまして、これもこれまで部会で議論をしてきた内容でありますけれども、3人の標準世帯を決めて、そこから展開していくという方法であります。1つのキーワードとして3人標準世帯を基準の軸にしていくということと、Aという1類費と2類費の構成比をデータから決めていく。Bについては調整をしていくという形で、ある種パラメータで展開をしていくということでありますけれども、この辺のデータが安定しているのかどうなのかということを議論しなければいけない。これが先ほど栃本先生から1類費、2類費のバランスがなぜこうなっているのか等々、これをどう評価するのかという議論にあったと思いますので、それはまさに世帯の規模の経済問題と大きく関わる問題ではないか。この辺も部会としては少し議論をしたいなと、一研究者としては思っているわけであります。
 6ページも今、言ったことを厚生省の第2回の資料でこういうふうに掲げています。これは単に資料の再掲ということでございまして、7ページも厚労省の前回の会議資料から提出された展開方法ということで、これはおさらいということになっています。こういう構造になっているわけです。
 まずクエスチョンですけれども、標準世帯というのは一体どういう意味があるのか。全消の標準世帯に近い姿と、扶助の標準世帯に近い姿を比べていって、そこがバランスとれているかどうかという方法であります。現在、そういう方法で確認がとられているわけでありますけれども、この標準3人世帯というのはどういう意味合いがあるんでしょうかということで、この部会の過去の資料においても基軸である、標準とは軸にするんだ、モデルではない、比較の軸にするんだということが言われておりまして、9ページにあるように、これまでにおいてもそういう方法で行われてきたということになっています。
 標準を何に選ぶのかということが、10ページと11ページで今までの議論を広げていきますと、標準というのは一体何なのかということで、標準世帯自体が時代とともに変わってきたということでありますけれども、標準世帯が変わった理由は何なのか。受給者のモデルと考えていたものか一般国民のモデルと考えていたのかということで、標準をどう選ぶのかというのも重要な点かと思います。
 これは一般においても、更には被保護者においても、既に3人世帯が最も多い世帯類型ではなくなっているということであります。11ページを見ていただいてもそのことがわかりますし、一般世帯の方も既に単身世帯が一番多くなっている状態でありますので、1つモデルというものは一体何なのかということであります。
 12ページに書かれていることは、19年の検討会のときにも標準をどう考えるかということが1つ議論になり、単身ということも1つの比較のベンチマークにもなるのではないかという議論が行われております。この標準のとり方は、他国においてどうなっているのかというのを私も十分調べ切れておりません。ドイツがどうも標準3人世帯を使って、日本とかなり類似したような比較方法をしているようにも伺っております。この辺はドイツと言えば栃本さんですので、栃本さんにもし御存じであれば教えていただきたいなと思いますけれども、標準というのをどう考えていくのかというのを1つ問題提起しておきたいと思います。
 13ページ、標準からそれぞれパラメータを使って、ほかの世帯類型の給付額を決めていくという方法を使っているわけでありますけれども、この際に例えば先ほどの1類、2類のバランスはどう考えるのか、2類は世帯人数とともにどう変化していくのかということを決めるに当たっては、先ほども山田先生が御紹介した、家計の規模の経済性をどう考慮していくのかというのが大事なことになってくる。
 13ページに書いてあるように、統計的にはいろいろな手法で家計規模の調整があって、有名なのがOECDの基準でありまして、通常は家族の人数を√Nで計算する。だから2の√だと1.4という話になるわけでありまして、N0.5というのが規模の経済性を調整する方法と言われている。だからOECDの貧困基準が1人当たりの可処分所得のうち50%というのは、一人頭に変換するに当たっては√Nというもので割っていることをしていることになります。
 この√Nで割ったOECD貧困基準と14ページを見ていただくと、我々が全消の、これは全国を1級地-1、つまり我々研究者が使わせていただけるデータの制約上は、どこにだれが住んでいるかというのはわかりませんので、全員1級地-1でシミュレーションをしているという制約はありますけれども、1級地-1で推計した貧困率とOECD基準で推計した貧困率は、対象者がかなりの部分重なっている。つまり、どちらの方法でもかなり近い人を捕まえているようにも見える。
 ただ、15ページで見てわかるように、高齢者層で生活保護の基準でつかまえた貧困者と、OECDで捕まえた貧困者においてギャップが生まれてくる。これは生活保護の設計そのもの、生活保護の家族のカウント方法は√Nみたいな単純な方法ではなくて、乖離しているのかといったような部分があるかもしれない。これを世帯人数別でどの世帯でギャップが大きいかということを見ますと、少人数世帯においてはOECD基準で測定した方が貧困率は高くなりますけれども、大人数世帯では小さくなるという傾向が出てきておりますので、この辺は家族の世帯規模をどう調整するかによっても差が出てくることになります。
 16ページには、そもそも等価尺度で何種類あるのかということでありまして、これは等価尺度の調整方法そのものが膨大な研究分野になっておりまして、ここでは4種類に分けてありまして、貧困率を統計的に捕捉するための統計的尺度、生活保護の中で等価尺度は幾らとは出していないわけですが、暗黙裡に想定している尺度。これは逆算すれば抽出できますので、そういう等価尺度。それから、実際に消費データから技術的に回帰分析等によって家計の支出行動から推計できる等価尺度。それから、先ほどの山田さんの手法のような形でやった主観的等価尺度というものがある。大体この順番で等価尺度は大きくなっています。
つまり、統計的尺度が一番大きくなっております。つまり規模の経済性を一番小さく読んでいる。したがって、貧困率が高く出るという傾向があることになります。そして主観的等価尺度が一番厳しく読んでいる、つまり規模の経済性が一番強く読んでいるという傾向がある。これは世界でさまざまな研究が行われていて、それを平均値当たりで議論するとこのようなことで、BuhmannあるいはAtkinsonという方がこういうことをやっているということでございます。17ページにこういう話が出ています。
 18ページについては、これは等価尺度で一体何の意味があるのか。例えば所得保証政策で1人の支出と2人の支出をどのくらい調整すればいいのかというのは、政策的な課題としてはすぐ出てくるというわけでありまして、仮に√N、N0.5という係数が正しいとするならば、例えば基礎年金については2人で13万2,000円だとしても、1人なくなってしまったら半分でいいのかというと、13万2,000円で生活している状態から1人なくなったら、それでも9.3万円ぐらいは必要ではないのかということで、こういうとり方もできる。あるいは遺族年金についてもこういう設定も議論としては可能になってくるということで、1人と2人の差をどのくらい設計すればいいのかということにもつながってくる。ただ、勿論社会保障制度のそれぞれの目的が異なりますので、こんな単純な話ではございませんけれども、等価尺度というのはどういう政策上の意味があるのかということをわかりやすく言うと、18ページのような形になる。
 19ページは私の研究室の渡辺さんが、全国消費実態調査の生活扶助相当額の支出について等価尺度を推計した。これも御関心がある方は論文もまたお見せすることができますし、手法においては24ページに紹介をしておりますので、この辺は実はある種、推計方法というのは確立した方法がありますので、それに従って行っていきますと、消費から出した等価尺度と生活扶助の設定する等価尺度においては乖離がある。消費データを使った尺度の方が低くなっている。つまり家計の規模の経済性を強く見ている。相対的に制度の方が小さく見ているということなる。これも先ほど申し上げたように、制度的な等価尺度の方が主観的や消費データから使った等価尺度よりも大きいという傾向はありますので、世界共通の現象でありますけれども、このくらいの乖離があります。
 20ページには各国の公的扶助制度の設定する等価尺度。これは2000年のデータでそろえております。日本のデータは私の方で加えております。ほかのデータはフィンランドの研究者で、こういう公的扶助の等価尺度の国際比較をやっている研究者がおりますので、そこから取ったデータでございますけれども、オランダがちょっと特殊なんですが、1人の世帯、2人の世帯は2倍かかるというふうに設定している。完全に個人単位の国だということになりますが、ほかの国は1人で追加的な2人目に対しては、例えばフィンランドの0.85、日本は0.53という設計をしているということであります。
 繰り返して言いますけれども、このこと自体は生活扶助の水準比較をしているわけではない。形の比較をしているわけでありますので、その辺は少し強調しておきたいと思います。
 21ページもフィンランドの研究者が行われた世帯類型別、単身大人世帯を1としたときに、それぞれの世帯類型でどのくらいの給付水準になっているかというふうに見たものであります。日本が二重線の折れ線になっていますけれども、世帯類型別に見ると若干低いのかなという気もしますが、ほぼ動きとしては世界の標準的なところを取っているとも見えるとうことであります。
では、子どもへの評価は一体どうなのかということを見ていきたいと思います。どういう世帯で比較しているかというのは26ページを見てください。このレポートを書いている方が各国でモデル世帯というか、比較のための基準世帯を26ページのような形で固定をした上で、比較をしているということでございます。
 22ページが子どもの年齢別の等価尺度、どのくらい子どもに重みを置いているのか。1人親世帯から1人子どもが追加した場合に、どのくらい上乗せをしているのか。ドイツは先ほど申し上げたように2005年から少し計算方法が変わっておりまして、ドイツは14歳以上が80%に下がっているようでありますけれども、ドイツはおおむね2段階で、こういうふうな形になっている。横軸は子どもの年齢、縦軸が等価尺度の大きさということで、1に近ければ完全に大人1人と見ているということであります。
 日本は母子加算があるかないかによって場所が変わってくる。日本については私の方で独自に推計した結果でございますので、母子加算があるかないかということで、母子加算があれば先進国の中でも、かなりきちんと子どもの様子を見ているわけですけれども、母子加算がなければかなり低い方になる。だから加算の問題なのか、子どもそのものの評価をどう考えるのかということを少し考えなければいけないのではないか。母子世帯ゆえ加算が必要なのか、それとも子どもへの評価をどう考えていくのかということの問題にもつながるのではないかと思います。この辺はまた後ほどまた議論できればと思います。
 23ページですけれども、全消は今までのさまざまな研究を見てもやや厳しめに見ている。更には今回の駒村の研究室で渡辺さんがやったのも、全所得層のデータから推計した方法ですが、例えば世帯類型や所得水準によって特殊な形が出ている、規模の経済性が違ってくるのかもしれない。国際比較においても単純比較はできないわけでありまして、家族の在り方とか、所得保証政策全体の体系はどうなっているのか。例えば稼働可能世帯とそうでない世帯で分けるような手当制度になっていたり、高齢者は最低所得保障年金みたいなものでカバーされているとか、住宅手当はどのくらい普遍的にあるとか、こういった公的扶助制度外の影響を受ける可能性もある。あるいは福祉サービスを使ったときの窓口負担もどうなっているかということも考慮しないといけないので、単純な比較はできないということでございます。
 あとは資料で24ページが推計方法、25ページがこのときに比較した各国の制度、26ページは先ほど申し上げた世帯類型、27~28ページがフィンランドの研究者が計算していた公的扶助の金額ということで、29ページが最近手に入れたデータでございます。
 非常に細かい話でございましたけれども、以上で私の御報告を終わらせていただきたいと思います。
では、ただいまの私の報告について質疑などがありましたら、よろしくお願いします。
○阿部委員 非常に等価尺度についていろいろ勉強させていただきました。
私は諸外国のシステムをそれほどよく知らないところで発言するんですけれども、日本で1類と2類とあって、等価尺度を適用するところと適用しないところとあって、そのほかにも加算というものがあるので、加算は等価尺度一様という形で、子ども手当もそうですけれども、あるわけです。そうしたときに、ほかの国では家計の中でも等価尺度を適用するものと、品目によって違う等価尺度を使うものだとか、そういうような形でつくっているところというのはあるのでしょうか。
○駒村部会長 等価尺度そのものは観測できるというよりは、等価尺度を逆算しているんです。各国の設計はもしかしたら事務局がちゃんと手に入れているかもしれませんけれども、スウェーデンとか幾つかの国はマーケットバスケット方式をやっていると思いますので、結果的にそれを等価尺度に返還すると、このくらいを帰化しているんだと見るべきだと思います。
ドイツについては先ほど申し上げたように、たしか10%の消費水準と扶助の金額を比較して比べていくという話だったと思いますので、栃本さんが御存じだったら今のドイツなんかで家計の規模の経済みたいなものをどういうふうに見ているかとか、そういうものを御存じだったら教えてもらいたい。ドイツについて私は余り詳しい情報を持っていませんけれども、等価尺度自体を見られるというわけではなくて、結果的に見たものです。
○阿部委員 そう申し上げるのは、恐らくどこの国でも同じようなライフスタイルの変化は起こっていると思うんですけれども、消費の品目、家計がだんだん個人化してきていると思うんです。そうすると第1類と第2類の分類の仕方がどんどん変わってくるわけで、それによって等価尺度もどんどん変わってきてしまうわけですので、そこら辺はやはり考慮していくべきではないかという1つのコメントです。
○駒村部会長 この委員会でも過去のパラメータを固定したり、どの層を考慮すべきだということはちゃんとチェックしなければいけない。そういう意味ではここ10年、20年の家計の支出のパターンの変化を、どう制度設計をつくるときのパラメータに反映させるのかというのは重要な論点ではないかと思いますし、委員会をこういうふうにオープンにやっている1つの目的としては、より透明性のあるプロセスと設計、1つずつのパラメータを家計の変化も含めて、きちんと特定されているというのが大事だと思います。おっしゃるとおりだと思います。
○栃本委員 実は道中先生の時間がなくて、質問しようと思ったんですけれども、それはまた次回ということで、委員長からは非常にコンパクトのお話で、この2つの設問で話されているのは根幹に関わることです。私が言うまでもないことだけれども、すごいことをおっしゃっているわけです。もしかしたらこれを軸にいろいろ議論していくのかどうか知らないんですが、この2つの標準世帯のこの部分と、生活扶助の基本設計に関するものでしょう。これはすごいことを一委員として、一研究者として考えたのかどちらなのかわからないけれども、これは次回以降も是非時間をかけてお尋ねしたいということが1点です。
 ドイツは御承知のように社会扶助法が変わったので、それ以降のコンメンタールは実は見ていないんだけれども、コンメンタールというのはすごくドイツは面白いことは面白いんですが、その今の部分については書いていなかったと思います。
ただ、コンメンタール以外で、これはいわゆる基軸としてとか、そういう話になっているんだけれども、これは基準だからそれでいいんだけれども、例えばドイツだったら社会事務所が扶助の給付をするではないですか。そのときに言い方は非常に変な言い方になるんですが、誤解されるといけないんだけれども、裁量の部分というのがあるんです。例えば従来に議論は出てないし、基本的に違うんだけれども、例えば1つの例で言えば資産というか資力というか、それをどのぐらい活用すべきかとか、貯蓄をどうしてこうしてというのがありますね。これは実は社会事務所のワーカーがある部分判断することができるんだけれども、それに対する異議申立を行政裁判所でやって、一々判例でやるんです。だから判例がやたらと多くて、それをずっと探して調べてみたことがあるんだけれども、そういう部分も実はあるので、勿論、今ずっと議論しているのは骨格とかそういうことで、厳密にどう額を判断してこういうということでもあるんですが、一方で日本は非常に厳格にというか、裁量権はないと言ったら大変だけれども、違うではないですか。違うというイメージがあるんです。そういう意味で額の部分についてなかなか、例えば比較するときにドイツの場合に議論する際に、そういう部分も実は関係あるというのが、脇の話なんだけれども、1つ。
 もう一つは、先ほど根幹に関わることではないですかと言ったのはいい意味で申し上げたんだけれども、そういうことが議論されるとしたら素晴らしいと思うし、すごいなと思うんですが、細かいことで係数で1とか0.8とか0.85とかあるではないですか。これは勿論大人2人でということになっているんだけれども、基本的に男同士2人というのではなくて、そういう人もいるかもしれない。男女という形になっているものでもあるものだから、オランダであるとか、それ以外の国々で女性の就労率とかそういうことは言わないけれども、そういうことについてはどういうことになっているのかなというのは、そちらで知っているんですか。
○駒村部会長 事務局、いかがですか。
○伊沢社会・援護局保健課長補佐 現時点でそれに関わる資料といったものは、申し訳ございませんけれども、事務局といいますか、こちらサイドでも手元にはございません。
○栃本委員 基本的なことを議論しようとしているのというのは非常によくわりかました。
○駒村部会長 どういう立場でしゃべっているのかと言われてしまうと、事務局とは全くこの件については全く打ち合わせしていないわけですので、一研究者として。
ただ、前回の平成19年のときにも、前からこういう話というのはあったわけですので、これが直ちにできるか。この会議も時間の制限があるものですから、直ちにできるかということはともかくとして、標準世帯なんかはかなり大きい話ですし、ただ、設計図についてはより現実に近いパラメータを選んでいきましょうというのが、この部会としてはやるべき1つのテーマかなとは思います。これは一研究者というか、一委員としての見解であります。
○岩田部会長代理 とてもこのことが大事で、水準比較というのがそれとしてだけ独り歩きしてきたというのが問題だと思います。過去2回の検証でも議論としてはこの構造の問題ということが繰り返し提起されたにもかかわらず、最終的には単純に水準だけ独り歩きしたということがあるので、今回はどのデータを当てはめるのかというのと、このアプローチの仕方を精査して、今後どのようにこれを検証するかという方法論がある程度ここで合意されるということが重要かなと思います。
栃本先生がおっしゃったのは、特に保有貯蓄額の問題で各国が違うということで、先ほどの年間消費なんかと関わってくると思うのですが、消費の平準化をしながら十分に家計運用できるかできないかということがある。
もう一つ、標準世帯ということの意味の裏側に、標準の家計運営能力を持つということが当然前提にされざるを得ないわけです。貧困基準というのは先ほどの道中委員の報告にもあるように、それがうまくできない世帯がいっぱい含まれてしまっている。それをどうするかというのは水準の問題ではなくて、別の支援の話であるという仕分けをしないと、実際にそれでできるのか、やってみろみたいになったときに、別の要因でできないということが当然出てくるわけですが、そのすべてを含んだ水準設定はできないわけですから、そういう意味での標準、そして現在の標準ということをどう考えるかという議論を、是非ここでやりたいと思います。
○駒村部会長 ありがとうございます。標準から計算されたり、あるいは昔のマーケットバスケットも、現在のマーケットバスケットもそうかもしれませんけれども、それで家計をやりくりするためにはかなり工夫が必要だ。そういう技術自体を持っていないとするならば、家計管理といったところもサポートしなければいけないという話につながってくるということで、前回も阿部さんの疾患をなぜ考えたのかというのと、従来型の専門家がつくったマーケットバスケットとの乖離をどう考えるのかというのを、局長からも御質問がありましたけれども、そういう背景もあるのかなと。今、岩田先生がおっしゃったような背景があって、要するにお金だけの問題と、道中先生から今日お話があったような支援の問題の重要性と、今日は2つの報告がありました。
 今日も5分オーバーをしております。栃本さんの道中先生の御質問はまた次回ということで、山田先生、お願いいたします。
○山田委員 先ほど私の報告で、岩田先生からの御質問で答え漏れがあったんですけれども、仮想的家賃についてなんですが、具体的には持ち家の方には引っ越し費用などを考えず、幾ら以上の家賃の住居で生活可能か、K調査、T調査それぞれの聞き方で仮想的家賃を聞いているということです。先ほどは失礼いたしました。
○駒村部会長 ここまでのやりとりで、事務局から議論のポイントとか何かコメントはございますか。特段よろしいですか。
 それでは、予定の時刻となりましたので、本日の審議を終了したいと思います。 それでは、最後に次回の開催について、事務局から連絡をお願いいたします。
○伊沢社会・援護局保護課長補佐 次回でございますが、10月25日火曜日でございます。14時から16時まで、場所は今回と同じこの17階国会側の専用第21会議室を予定しております。よろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。御多忙の中、ありがとうございました。


(了)

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