ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価委員会(独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会)> 独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第7回)議事録
2011年8月4日 独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第7回)議事録
○日時
平成23年8月4日(木)13:00~17:25
○場所
厚生労働省専用第14会議室
○出席者
猿田部会長代理、内山委員、祖父江委員、夏目委員、花井委員、本田委員、三好委員、和田委員
○議事
○猿田部会長代理
定刻になりましたので、第7回厚生労働省独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会を開催いたします。委員の先生方におかれましては、大変暑いところ、また、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました。本日は、永井部会長がどうしてもご都合が悪くて来られないということなので、代理の私が進行させていただきますので、よろしくお願いいたします。
議事に入る前に、事務局に人事異動がありましたのでご紹介させていただきます。田原政策評価官です。
○政策評価官
7月29日付で政策評価官を拝命しました田原と申します。よろしくお願いいたします。
○猿田部会長代理
ありがとうございます。よろしくどうぞ。それから、片岡国立病院課長です。よろしくお願いいたします。
○医政局国立病院課長
新しく国立病院課長を拝命いたしました片岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○猿田部会長代理
よろしくお願いします。
お手元に資料があるかと思いますが、本日は、国立精神・神経医療研究センターと国立長寿医療研究センターの個別評価です。最初に、国立精神・神経医療研究センターの評価をさせていただきます。早速ですが、まず、国立精神・神経医療研究センターの理事長であります樋口先生からご説明いただきたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
理事長の樋口でございます。よろしくお願いいたします。本日、私どものために時間をお取りいただきましてありがとうございます。着席して話をさせていただきます。
私から、業務実績の概要を説明させていただきます。お手元にあります資料1-1「平成22年度業務実績の概要」をご覧ください。1頁です。ここには、私どものセンターの使命が記してあります。改めて申し上げるまでもないのでありますが、病院と研究所が一体となって、精神疾患、神経疾患、筋疾患及び発達障害の克服を目指した研究・開発を行い、その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに全国への普及を図ることを使命としております。その下は、当センターのいろいろな設立の概況ですが、これは割愛させていただきまして、次の頁をご覧ください。
国立精神・神経医療研究センターの行う事業としてまとめています。これは、中期目標、中期計画に基づきましたものをアウトラインだけここに整理させていただきました。ごくかいつまんで申し上げますと、4つです。1つ目が研究・開発、2つ目が医療の提供、3つ目が人材育成・情報発信、4つ目が適切な業務運営のための組織・予算と分けて記しています。研究・開発に関しましては、使命のところでもありましたように、臨床を志向した優れた研究・開発成果を継続的に生み出すことが第1の課題と考えています。2点目としては、臨床研究を円滑に実施していくこと。3つ目は、戦略的かつ重点的な研究・開発を推進していくこととしています。
2つ目の医療の提供に関しましては、まず1つ目として、高度先駆的医療の提供、これはナショナルセンターすべてに共通するものです。2つ目は、何と言っても患者との信頼関係を構築することが医療の基本ですので、これを掲げています。3つ目には、医療観察法という政策医療を私たちは担っていますので、医療観察法の対象者に対する医療を提供していますが、その中身として質の高い医療を提供していくことを挙げています。4つ目は、重症心身障害児(者)に対しての総合的な医療を行うということです。
人材育成と情報発信に関しましては、やはりナショナルセンターの1つの大きな役割である、リーダーとして医療の様々な局面で活躍できる人材を育成し、一方では、モデル的な事業あるいは研修が展開できるように研修と講習を行う。2つ目は、都道府県も含めた全国のネットワークを構築する中核になることです。3つ目は、国民向け及び医療機関向けの情報提供を積極的に行うことです。
適切な業務運営のための組織・予算として、やはり第1には、効率的な業務運営体制が大事でありまして、その構築のために努力する。2番目は、これもすべての独法機関に共通することですが、総人件費改革への取組み。3つ目は、収支の改善の実施と電子化の推進。4つ目は、コンプライアンスの遵守です。5つ目には、優秀な人材を持続的に確保するために能力・実績本位の人材を登用することにしています。
次頁は、平成22年度の業務実績として具体的な実績を書いています。ここと次の頁も含めて、この後、担当理事及び各部門の責任者から報告させていただきますので、いまは飛ばさせていただきます。
次の頁をご覧ください。ここでは、独法初年度に重点的に私どもが取り組んだ取組みとその結果どういう成果があったかを、ごくかいつまんで要約させていただいていますので、少し説明させていただきます。項目立ては、先ほどと同じところもありますが、1番目は、運営・経営の基本としました。何といいましても、初めて独法組織になりまして、何もかもが初めてであると同時に、国立の時代、特に私どもは療養所から出発していますので、いろいろな意味で、人の問題、定員の問題等々によって縛られた部分がありまして、その辺りを強化・整備する必要がありました。経営の改善・安定化への努力とミッション達成に向けた基盤強化のための先行投資を行って、自由度を活かしたセンターの近代化を推進していくことを重点課題としていました。その結果としまして、経常収支の改善を当初の目標を超えて行うことができましたし、優秀な人材の登用・確保も進めることができました。そして、組織を拡充し、施設、特に新病院という形で病院の施設も整備していただくことができましたし、情報システムも新たに立ち上げることができました。
2番目が、研究と医療です。いちばん大きな課題としては、やはり、研究所と病院が一体となって研究・開発に進むことが非常に重要な課題です。そのためのいくつかの仕掛けと言いますか、仕組みを初年度は作ってまいりました。1つは、専門疾病センターです。これも後ほど詳しく説明いたします。それから、TMCと書いてありますが、トランスレーショナル・メディカルセンター、要するに、研究所と病院との間をつなぐインターフェースの役割を果たす仕組みを作りました。そして、精神・神経医療研究開発費を十分に活用して医療研究に取り組んでまいりました。2つ目が、研究推進基盤の整備と研究領域・手法の拡大が重点の取組みでした。その成果としましては、先ほど述べましたTMCの創設もこれに絡みますし、それから、IBIC・CBTセンターとありますが、これは脳画像のセンターと、認知行動療法のセンターです。これらを立ち上げさせていただいています。そして、治験を含む臨床研究を推進するための体制の強化、さらには図書館の機能の充実を挙げています。
それから、画期的・先駆的研究・医療の推進として、後ほどこれも詳しく述べますが、特にこの中では、筋ジストロフィーの国際共同治験に参加するという大きな出来事がありました。それから、視神経脊髄炎発症メカニズムの解明や、PET-Hatという新しい装置を開発するとか、パーキンソン病の姿勢異常に対する治療法を開発するというような、新しい開発を手掛けてまいりました。病院の近代化については、先ほど述べましたように、新しい病院が完成しまして、これを中心に非常に機能が強化された病院ができ上がりました。
3番目の人材に関しましては、先ほども述べましたが、人事システムを弾力化して優秀な人材を登用する。それから、連携大学院を推進するということで、山梨大学あるいは千葉大学等との連携。それから、諸外国との関係では、マックスプランク研究所との連携などを進めてまいりました。
4つ目の、情報発信です。情報発信・広報活動は非常に重要であり、これを重点的に取り組む課題に設定していました。広報戦略を構築し、広報専門家がこれまでおりませんでしたので採用し、ホームページを刷新したなどの取組みです。あるいは、メディアの理解が私たちにとっては大変大事なことですので、定期的にメディア・カンファレンスを開催しました。
5番目の、組織運営に関しましては、独法業務遂行のための業務体制・コンプライアンスの確立を重点課題としまして、初年度は当初の計画・予想を大きく上回る進捗・成果を達成いたしました。これも後ほど説明いたします。そして、職員の意識改革、モチベーションを向上させていくことを重点課題にしまして、そこに掲げましたような、そのための情報発信、適切な業績評価システムの導入、業務フローの見直し・効率化、顕彰制度の創設といったところをその成果としてここにまとめています。
以上、概要としてはそのようなことで、残りについては、後ほど説明させていただきます。ありがとうございました。
○猿田部会長代理
どうもありがとうございました。これから評価に入りますけれども、個別評価の項目に関しましては、4つのグループに分けて、それぞれ進めさせていただきます。いちばん大切なことは、評価の「S」「A」「B」です。最初の会であったのですけれども、今度の場合も初めての評価です。既に、国立がんセンターと循環器病センターを評価したときにも、実は、皆さん「S」が随分多いのです。初年度なので確かに評価は難しいのです。拝見していて、非常に業績を上げているのはわかるのですけれども、永井先生とも相談させていただいて、大体、標準的なものは「B」なのです。大雑把に数字も出ていますけれども、かなりよかった場合が「A」で、ものすごくよかったときに「S」となります。
私は実際に、2、3年前からいろいろな評価をやらせていただいていて、矢崎先生のところの国立病院評価のときに、中でもあそこが非常に業績を上げていたのですけれども、いちばんよくても、自分としては彼らは評価は低く見積もっているのです。ですから「S」というのはほとんどなかったか、ほんの少しだけある。そういうことなので、成績については、そういうことだとまず知っておいていただきたい。委員の先生方も、「B」が標準で、かなりよい場合は「A」、ものすごくよかったときが「S」と。
それから、もう1つは、これから評価していくのに時間に追われると思います。いまのところは、3時ちょっと過ぎまでに前半を終わらせて、それから後は長寿センターをやればと考えております。時間がないものですから、おそらく家に帰っての仕事となるかもしれませんが、よく正しく見ていただいて提出していただきます。また後でどのぐらいの期限かを申し上げます。始まりますとわかりますが、とてもついていけないのです。ですから、よく見ていただきたいので、そこだけ最初にお断りしておきます。よろしいでしょうか。何か委員の先生方、ございませんでしょうか。「S」「A」「B」のところ、点のつけ方だけ知っておいてください。
特にご意見がなければ、早速ですけれども、まず、項目の1から3、研究・開発に関する事項について評価したいと思います。所要時間は、法人からの説明が約10分、委員の先生方の評点と質疑で15分を取りたいと思います。それでは、法人から、よろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
研究・開発の3項目につきましては、理事をしております高坂でございます、私からご説明申し上げます。説明に当たりましては、主に資料1-2「評価シート」と呼ばれている横長の大きい紙に加えて、資料1-1の参考資料で説明させていただきたいと思います。
○猿田部会長代理
そういうことは言っていただくと助かります。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
よろしくお願いいたします。それでは、資料1-2の1頁をご覧ください。項目としては、臨床を志向した研究・開発の推進です。研究所と病院の連携強化で私たちが取り組みましたのは、先ほども理事長から申し上げましたような、専門疾病センターを立ち上げるということです。これは参考資料の1頁をご覧ください。この専門疾病センターは、簡単に申し上げますと、施設横断的、あるいは診療科横断的に多職種にわたる人々にチームを作っていただいて、そこでよい医療を提供していただく。加えて、治療の開発研究を推進する。そしてまた、センターの中でのその分野における人材を育成することが、このセンター内センターの目的です。一応これは、グループ単位で公募をいたしまして、幹部によって厳密に審査をして、基準に合ったものについてセンターの中で活動をしていただく。現在この専門疾病センターにつきましては、1頁目にあります、パーキンソン病、筋疾患センター、多発性硬化症、てんかん、地域精神科モデル医療の5つのセンターが非常に活発に活動しています。
評価シートの6頁をご覧ください。時間が短くて、大事なところだけをご説明いたしたいと思います。これは研究基盤の整備です。ここでやはりご説明しなければいけないのが、TMCの体制整備です。参考資料の7頁をご覧ください。これは要するに、研究のシーズを臨床へ応用する、あるいは病院の臨床でのベッドサイドのニーズを研究に戻すということで、研究所と病院の間を有機的に繋いでいく組織になります。そのポンチ絵を参考資料の9頁右下に載せています。それがいちばんわかりやすいポンチ絵です。センター病院と両研究所を結ぶ組織である。このTMCと呼ばれるセンターの大事な目的は、基礎的な研究成果を病院に届ける。それから、先ほど言いましたように、臨床からの要請に従って研究を随時推進する。さらに、産官学の連携推進、また、次世代に対応した研究者の育成であります。それに加えてもう1つ、TMCの大事な目的を7頁から書いていまして、質の高い臨床研究・治験を推進する上での支援体制です。支援を行うことが非常に大事な目的です。
TMCがやっている機能を7頁に書いております。まず1.として、臨床研究の研修制度等の人材育成を行う。2.として、例えば、臨床研究の簡易相談窓口を設けるなど、臨床研究の支援体制を強化する。3.として、臨床研究に必要である倫理性を担保する制度を確立するために必要なことをする。4.としては、臨床研究に関する業務手順書を整備するなど、臨床研究の効率的な実施のための体制整備が挙げられます。それから、5.として、もちろんのことですが、企業との連携を深める。6.としては、国際共同での医師主導型治験の推進とそれを支援すること。これら非常に多岐にわたる大事な機能をTMCが果たしています。従って、TMCには常時10人以上のCRCを配置しています。これは後で申し上げますが、実際に筋ジス関連で国際共同の多施設共同治験が始まるところです。
もう1つ、このセンターの大事な点は、バイオリソースを整備することです。将来的には一元管理を考えていますが、臨床研究に非常に大切なバイオリソースを整備していくこともまたこのセンターの大事な役目です。実際に今年度収集された非常に貴重なサンプル、例えば、精神疾患における髄液等のサンプル、あるいは筋芽細胞といったものについても、今年度だけでも898検体という非常にたくさんの検体を集めることができています。
評価シートの2.にあります、IBIC設立準備室の活動についてです。これは、参考資料の11頁をご覧ください。IBICというのは、脳病態統合イメージングセンター、Integrative Brain Imaging Centerの略ですが、これを設立いたしました。次の頁をご覧ください。それがわかりやすいポンチ絵だと思います。真ん中にあるIBIC、ここに、MRIやPET、もちろんサイクロトロンも含まれますが、SPECT、MEG、NIRSといったような多彩な先端的な脳イメージングを有機的に組み合わせることによって、センターの中で統合的な脳病態イメージング研究を推進したい、そのために組織したものです。行く行くは多施設共同臨床研究の拠点としても機能させたいと考えています。現在ここでは、合成化学出身の研究者など専任の方も来ていただいている状況です。
次に、評価シートの7頁、産官学との連携強化についても、私たちは非常に活発に活動してまいりました。特に大学等との連携ですが、(2)に書いてありますように、例えば早稲田大学、山梨大学、千葉大学などの国立あるいは私学との連携で学生を交換したり、教師を交換したりを現実に行っています。外国では、メルボルン大学、ジョンズホプキンス大学、マックスプランク研究所、パスツール研究所など、多彩な、有名な研究所と共同研究あるいは人事交流を進めています。
次の9頁をご覧ください。研究の企画・体制整備です。これにつきましても、先ほどのTMCが大事な働きをしてくれていますし、また、1.に書いてありますように、我々にとって非常に大切な基盤整備のお金、即ち研究開発費につきましても、審議課題を我々できちっとその内容もチェックをして新しい課題を立ち上げることも努力しています。
10頁です。我々が独法化して非常に大切な知財の問題です。基本的にはセンター内の体制を充実させるとともに、特に製薬協が主体となっております、いわゆる知財戦略ネットワークを活用する。また、平木特許事務所、あるいはTMI総合法律事務所等と専属に契約することでしっかりとした業務を遂行しています。実際に、数はちょっと少ないのですが、非常に重要な特許を出願することができています。参考資料の19頁をご覧ください。この特許の1つの例を挙げています。これは、ハンチントン病という、非常に難しい神経難病を取り扱ったものです。同じ遺伝子が2つあるわけですが、その片方にだけ異常な遺伝子があるとします。そうすると、正常なほうに乗っている遺伝子には影響を与えないけれども、もう1つの遺伝子に乗っている異常な遺伝子にだけ干渉するような方法を見つけて、病気の原因となる片方の遺伝子の染色体に乗ったものだけを抑えることができる方法を開発いたしました。この成果によって、難治性の優性遺伝を持つ疾患に広く応用できるのではないかという、非常に大切な画期的な成果であろうと私は考えています。
評価シートの15頁をご覧ください。病院における研究・開発の推進です。これにつきましてもまた、先ほどのTMCが非常に大事な働きをしていますが、ここで申し上げたいことは、2.にあります希少疾患の患者登録事業の推進です。筋ジストロフィーの患者様の患者登録システムを我々は立ち上げました。いろいろな資料を使って非常に恐縮ですが、資料1-4の29頁をご覧ください。ここで概要がおわかりいただけるのではないかと思います。我々がRemudyと名付けております、筋ジストロフィーの患者登録システムです。ここに書いてありますように、これは基本的には患者様ご自身の臨床情報と遺伝情報を患者様自ら自発的にセンターに登録していただくものです。それによってどういうメリットがあるかというと、これからいろいろな治験が始まりますが、そのリクルートをする場合に、このRemudyをしっかり使っていただければ割と容易に治験が推進できるという、非常に大切なシステムです。立ち上げて間もないのですが、今年4月の時点で既に713人の方々が登録をしていただいています。国際共同で、多施設にわたる医師主導型の治験も実際にこれを活用させていただくことになろうかと考えています。
評価シートの21頁をご覧ください。担当領域の特性を踏まえた戦略的あるいは重点的な研究・開発の推進です。ここで大事なことは、研究発表です。22頁に示していますように、いろいろな大事な論文発表をしておりまして、順調に、原著論文あるいは総説を出版することができています。実際、具体的にどのような成果があったかを23頁から28頁にわたって記載しています。
その代表例を参考資料でご説明申し上げたいと思います。例えば14頁をご覧ください。これは代表例として、高度先駆的な治療法の開発の中で特筆すべき成果です。要するに、筋ジストロフィーの患者様、これはもちろん遺伝子異常があるわけですが、エクソン51と下に書いてありますが、わかりやすく言えば、51番地と考えてください。遺伝子の51番地に異常がある場合には、そこでタンパクが作れなくなってしまうのが普通ですが、この場合、合成の核酸、即ち、そこに書いてありますアンチセンス・オリゴヌクレオチドを投与することによって、51番地の悪いところを飛ばしてしまう。その次の番地にすぐ飛ばせてしまうような方法、これをエクソンスキップと言っておりますが、この方法によって見事に、多少短かいタンパクではありますが、欠損していたタンパクを元に戻すことに成功して、実際に動物レベルでは見事な機能回復が見られた。この成果に従いまして、多施設の国際共同治験、これはGSKが管轄しておりますが、実際に1月から治験が開始されています。
その次の15頁には、薬物乱用、依存状況を把握するとありますが、これは実態把握の項目で顕著なデータです。この仕事は、精神保健研究所の薬物依存研究部で出された例ですが、どのぐらいの方々が薬物を乱用しているのか、使っているのか、あるいは依存しているかを全国調査をするという、これは大変な調査研究を行っています。これは全国の住民に対する調査、全国の中学生に対する調査、全国の精神科病院に対する調査を行っています。端的に申し上げますと、下に赤字で書いてありますように、薬物を使った経験者は何と日本で280万人もの方々がそういった経験を持っていらっしゃる。使ったことも含めて、最も乱用されているものは大麻であるという、政策上非常に重要な成果がここで出ています。
その次の16頁をご覧ください。これは、精神・神経疾患の本態解明という項目の中で顕著な例です。これは、視神経脊随炎、NMOと言います。一種の自己抗体を産生する自己免疫疾患ですが、この抗体がどこでできるのか。IL-6と書いてありますが、特殊なサイトカインがその産生を担っているということで、これも治療に向けて非常に大切な研究発表です。これは後ほどまた病院長からもご説明申し上げると思います。
最後に、医療機器の開発のところです。これは18頁です。先ほど、理事長も申し上げましたPET-Hatという非常に面白い機器を開発いたしました。これまでのPETは、患者様を拘束してしまうわけです。従って、重篤な精神病患者さんにはできない。それで、右の写真をご覧いただきますと、座って帽子のように上からスポッと被せる、それだけで、PETとほぼ同じような機能の画像が撮れるため、これによって重篤な精神病患者さん、あるいは小児、高齢者など、拘束が困難な被験者にこれを使って測ることができるようになったという、画期的な機械を我々のところで開発することができるようになりました。以上です。本当に駆け足で申し上げておわかりにくかったと思いますが、この研究・開発の項目におきましては、体制整備を含めて、我々としては非常に努力をいたして優れた成果も上げることができたのではないかと考えています。ありがとうございました。
○猿田部会長代理
どうもありがとうございました。非常にわかりやすく説明いただいたことと、特に、いまご説明いただいた1~3が今度の場合には特に重要な点で、確かにいろいろなセンターの立ち上げ、あるいは論文のことに関しても、教育に関しても、非常にしっかりした体制で進んできているということです。早速どなたかご質問ございませんでしょうか。ここがこのセンターにとってはいちばんポイントのところだと思うのです。非常に新しい機械のこともありますし。
○三好委員
質問です。PET-Hatを開発されたということですが、これは随分以前から研究されていて、今回これが完成して、初めて適用された、使用されたという意味なのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
先生がおっしゃいますように、これはNEDOの研究で4年ほど前から始めておりまして、それが一昨年ほぼ完成してきています。それを実際の主任研究者が、病院が新しくなるということで、その機械をNEDOの研究所から移して、実際にこれから稼働させる状況になっています。従って、正確に言うと、昨年度の純粋に1年間の成果ではありません。
○三好委員
稼働しているという理解でいいのですか。稼働する予定ですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
今年度稼働させたいと思っておりますが、この節電でいま全部ストップして、間もなく稼働させたいと思っています。
○三好委員
ありがとうございます。
○祖父江委員
いま座長もお話しになりましたけれども、全体としては非常によくおやりになっておられると思います。まず、神経の場合は特に、疾患ごとにかなりインテンシブにやっていく体制が非常に大事だと思うのですけれども、それを疾患別のセンターという形にされて、しかもそれが、研究と臨床が一体化するような仕組みを見える形で作ってこられているのは非常にいいなと思いました。
いまのご質問と絡むのですが、実際に初年度ですので、前からおやりになっていたのがいま花開いている部分も結構あるかなと拝聴したのです。こういう仕組みがきちっとできつつある、見える形で出口志向の仕組みができつつあるというのは、今後に向けても非常に大きな力になるのではないかと拝聴いたしました。ちょっと教えていただきたいと思うのは、特に、TMCが中核になる重要な組織だと思ったのですが、その具体的な中身のインフラがどのぐらい整っているのか、あるいは、どのぐらいこれから整えていこうとされているのか。先ほどはCRCが10人以上とおっしゃったのですが、例えば、生物統計の方がどのぐらいいるか、データマネジャーがどうか、あるいはプロジェクトリーダーがどうかというような、それは治験ですけれど、それ以外にも、インフラの構造、それから、今後どう展開されるのかを教えていただきたいと思います。まず、それが1つです。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
ご質問ありがとうございました。ここにTMCセンター長の武田が来ていますので、武田からご説明させていただきます。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
ご指名ですので、トランスレーショナル・メディカルセンター長からお答え申し上げたいと思います。確かに、先生がご指摘になりましたように、トランスレーショナル、即ち橋渡しと言っても、病院と研究所の間にどのように具体的に橋を架けるかが非常に重要かと思います。まず、ハードの面ですけれども、これは厚生労働省のご配慮によりまして、補正予算によってTMC棟、即ち実際にTMCのコアのメンバーが入るところ、それからクラスター、これはもともと厚生労働省の医療クラスターの構想に基づいて産官学のための準備を進めるところで、このクラスター研究棟と、それから、実際に治験を行うクラスター病棟、これらを整備いただきました。既に建物自体は完成しておりまして、やはり節電のことがありますので、夏が過ぎて10月末ぐらいにはこれらの建物を正式に開棟して実際に行動を始めようと思っています。
恐らく、より重要なことは、このハードの中でどういった陣容を整備するかですけれども、これは、これまでやってきた基礎研究を、介入を伴うような臨床研究、あるいは医師主導型治験などに展開する必要がありますので、これも先生からご指摘がありましたように、順次人員を整備していまして、生物学の統計家については、かなりの経験がある者、こういったプロジェクトのデザインができる方を1人採っていまして、その下で若い方を育成していただいています。この育成もまたTMCの義務です。また、プロジェクトマネジャーに関しましては、既に製薬企業で開発本部長クラスを務めた方を顧問として2人お迎えしていまして、さらにそれより若い方で、やはり現役のプロジェクトマネジャーに当たる方を1人、これについてもさらに若い方を採りまして、これもTMCの中でトレーニングをしています。こういったハードの整備もいただいていますし、人員についてもご配慮いただいていますので、少し時間がかかるかもしれませんけれども、仕事をやりつつこういった体制を完備したいと考えています。以上です。
○猿田部会長代理
よろしいですか。いまご案内がありましたけれども、いわゆるシーズから出て特許のところ、それから後の進める過程がいま大体こちらはでき上がって、揃っているのです。場所も揃い、しかも人も見ていると大体よく揃っているということで、これからはもう動き出すところだけだと思います。
○夏目委員
いちばん大事な、臨床研究を志向した研究・開発の推進について、いろいろと資料に基づいて詳しく説明していただいてありがとうございます。ただ、評価委員としては、釈迦に説法ですが、中期目標・中期計画に従って独法初年度どこまで実績を上げたかを評価しろということになっておりまして、特に定量的な数値目標について、あるいは定性的な内容について、質の評価も併せてするようにということなのです。どちらかというと私は医療の全くの素人でありますので、質の評価は専門の先生が重点的にされると思いますので、定量評価のほうが、よりわかりやすいので、そちらが気になるのです。
いろいろと中期計画・数値目標は出ているのですが、例えば、資料6頁のバイオリソースに登録する検体数、これは先ほどの参考資料でご説明がありました。ただ、右の業務の実績のところには、どういうわけか書いていないのです。それから、資料27頁にも数値目標が、臨床研究実施件数とか治験の実施件数が書いてあるのですが、それも右の業務の実績を見るとなかなか出ていないのではないか。どこか他のところにたぶん出ているのだろうと思うので、一生懸命探さなければいけないのですが、でき得れば、大事な数値目標に対する実績でありますので、その辺の数値が実績はどうなのかを具体的に説明していただけるといいのではないかと思います。よろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
そのとおりで大変申し訳ないことだと思います。例えば、評価シート12頁をご覧いただきますと、実際に委員の先生方に点数を付けていただくところに、真ん中の項目に、大事な数値目標だけをピックアップして記載しています。例えば、共同研究の数がどうかというのは、昨年度は25件が今年51件になっていますとか、その下の、臨床研究の試料ですね、これが昨年度は779検体が今年度は898検体収集しているとか、そこのところに数値をピックアップさせていただいている形になっています。
○猿田部会長代理
計画と両方見ていただくと。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
大変見づらい資料で申し訳ございませんでした、本当に。
○夏目委員
わかりました。
○猿田部会長代理
例えば、この評価シートのところのページの書き方をもう少し分かりやすくしてあればよかったと思います。1頁目からスタートして、ちょっとずれているように見えるのです。33と書いてありますと、これは項目4に入っているのかと思うと、33頁が1で終わりということですから、ちょっとページ数の見方が混乱するのです。ほかになければ。
○花井委員
いまちょっとお話が出ましたけれども、私も細々見たところ、数値目標をかなり大幅に上回っている項目が多いのですが、唯一、治験症例数だけがちょっと下がっている形になっていますね。そこに、下がっている理由を説明していただけているのですけれども、もうちょっとここは、先ほど言ったように、数値が下がっていると下がっているという評価になってしまうので、何か追加補正、ご説明があったらお願いしたいのですが。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
私から説明させていただきます。評価シートの13頁のいちばん上を見ていただきますと、確かに、一見、治験の数は平成21年度が176であったものが平成22年度に156で減ったように見えるのですけれども、実際にその年新規に初めた治験の数を見ますと、実は、平成21年度の場合は前からずっと長く年を越えてやっていたものが含まれていまして、新規のスタート数は、平成21年度が128、それに対して平成22年度は新規スタート数が156となっておりまして、これは目標を十分クリアしていると私どもは考えています。そのように概要にも書かせていただいています。以上です。
○花井委員
そうするとこれは、その年度年度で評価するとすれば、スタート数をそもそも基準としなければいけないのだけれど、これはそこがちょっと、実際上は、スタートした治験数は大幅増加していると見られるということですね。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
ご指摘のとおりです。最初からそのように明確に書いていればもっとわかりやすかったのではないかと反省しています。
○猿田部会長代理
よろしいですか。ほかにどなたか、ご質問なければ、4、5分いただいて評価していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
(評価シート記入中)
○猿田部会長代理
時間がないかと思いますが、次のセッションに入らないと間に合わなくなりますので、次の第2グループです。項目は4~6、医療の提供に関する事項についての評価です。法人からの説明を10分ぐらい、質疑を15分、合計25分、説明をよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
医療の提供に関する事項、評価の4、5、6です。これはひとつ高度先駆的な医療の提供と患者の視点に立った良質な安心できる医療の提供、その他の医療政策の一環としての医療の提供という3つの評価項目で説明させていただきます。まず、評価シート33頁をご覧ください。高度先駆的な医療の提供に関しまして、当院におきましては、先進医療制度を活用した高度先駆的な医療として、ミトコンドリア病の遺伝子診断と、光トポグラフィを用いたうつ病の鑑別診断を上げております。このミトコンドリアの遺伝子診断としては、これは神経疾患の、特に筋疾患の特殊な例において、ミトコンドリア遺伝子異常で起こることがあります。当院におきましては、642件ほど遺伝子診断を行いまして、特にミトコンドリアDNA全体の塩基配列を検査するというふうに、全国でも当院でしかできない検査を行っております。
また、光トポグラフィによるうつ病の鑑別診断は、これはうつ病と躁うつ病の鑑別はなかなか難しいものがあり、治療によって非常に重要な影響を及ぼします。これは非侵襲的に脳の血流の変化を用いて診断する方法で、これも260件近い件数を行っています。その他の高度先進先駆的な医療に関しましては、33頁の下に示してあります。パーキンソン病はL-dopaという薬が効くことは明らかになっていますが、しばしばこれが副作用を及ぼしたり、また、適正な投与量がまちまちでありますので、血液の濃度を測りながらその患者さんごとに適切な治療が行われていることを確認しながらやっております。
次の34頁では、高度先進医療のリストアップを8項目に分けています。その中で主だったものを述べさせていただきます。特に(1)の乳幼児の難治性てんかん、これは5歳以下の乳幼児の難治性てんかんで、これは大変治療に困ります。当院においては、全国から患者さんが集まってきますが、12例の非常に難しい症例の手術を行い、改善に導いております。
(5)の睡眠障害では、これは非常にいま現在増えてきていますが、睡眠ポリグラフ試験等のテストをしながら診断と治療方針を決めております。特に当院においては、概日リズムの睡眠障害、そういうリズムの障害に関して研究所と一体となり研究しまして、体内時計の周期を測りながら病態解明を行っております。また、治療としては、認知行動療法のプログラムを応用していこうと考えております。また、(6)の電気けいれん療法、これは精神疾患において、薬物に抵抗性のある疾患に対しましては、この療法を用いるのですが、ただやるだけではなかなか効果は出ませんので、当院におきましては、当院のマニュアル、クリニカルパスを用いましてエビデンスに基づいた治療効果を高める方法で行ってきております。また、地域の精神疾患の病院のほうからこの電気けいれん療法の依頼があり、地域の精神疾患の医療にも貢献しております。
36頁では、医療の標準化に関しましては、先ほど研究所長のほうから専門疾病センターの説明がありましたが、参考資料の1頁では、専門疾病センターは、5つの疾病に関してセンターを作っております。これは先ほど述べましたが、病院と研究、また病院の中でも各科、各医療職種の者がチーム医療を発揮しながら高度な医療、標準的医療というものの確立に貢献しております。
次の2頁です。多発性硬化症センターにおきましては、先ほど説明がありましたように、視神経脊髄炎という病気の原因が、細胞の水チャンネルに対する抗体によって起こることを明らかにしております。このセンターにおける研究部門において、この抗体を作るのはIL-6が大きな役割をしていることを確かめて新聞報道されています。この発見は今後IL-6を抑えることにより、治療が可能であることの治験の計画にも繋がってきています。
参考資料5頁、パーキンソン病、先ほど血中濃度の測定治療の件を言いましたが、パーキンソン病で薬剤では治らないタイプの姿勢異常、腰曲がり病があります。こういうものは痛みを伴ったり、日常生活に大変苦労していますが、外腹斜筋にリドカインを注射することによって、画像にあるように非常に効果を得ております。現在のところ30名の患者さんにこの効果を確かめて、その特許を現在取得しているところです。
次に14頁では、先ほど研究所長のほうからも説明がありましたが、筋疾患センターのほうにおいては、筋ジストロフィーに関する治療研究の協働が行われています。患者さんの遺伝子異常の登録は先ほどありましたが、Remudyによりまして、700例以上の登録があります。今回、エクソン51スキッピング療法というものの国際共同治験が始まっており、先ほど説明がありましたように、現在当センター病院においては、世界でもいちばん多い6例を既に病棟で行っています。もう1つ国際医師主導の治験を、CINRGといちばん下に書いてますが、これを現在行っております。これは世界10箇所で、日本では1箇所だけですが、医師主導の治験に参加し、この筋ジストロフィーの患者さんの心機能の改善をいま目指して治験を行っているところです。これらは専門疾病センターの中の代表的な高度先進医療またはチーム医療、標準化医療の説明をいたしました。
次に評価シートの38頁で、次の評価項目、「患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供に関して」述べます。これは多くの項目を課題に上げていますが、大事な1つとして、患者の自己決定、情報の共有化があります。特に述べたいものは、医療観察法病棟対象患者に対する治療であり、これは大変難しいものがあります。治療、そして地域への退院後の地域生活の指導等に大変難しいものがありますが、患者会、または患者さんに対し全ての情報を相談しながら、退院に向けての効率のよい医療を行ってきております。また、先ほどのミトコンドリア遺伝子の検査でも言いましたように、遺伝子疾患が神経疾患には大変多いので、常勤の認定遺伝子カウンセラーを設けまして相談体制を充実しております。セカンドオピニオンも昨年と比べ55件から61件に増加してきております。
39頁では、2番目の患者等参加型医療の推進をしております。特に認知行動療法に関しては、これは薬物で大変抵抗性のある精神疾患、特にうつ病に関しまして、個人にとって悪循環のパターンを認識させ、それをいい方向に理解し、行動させる認知行動療法を行ってきております。22年度は、特に開設の準備を進めております。参考資料21頁を見てください。こういう認知行動療法センターを、昨年においては、設立準備の活動、認知行動療法の院内または院外に向けての研修を終え、今年度からセンターとしてスタートしております。
次に41頁、チーム医療の推進です。これは先ほどから申し上げている専門疾病センター、まさに各研究所、病院の各科、多職種が集まりチーム医療を推進しています。これは5疾患に対し現在進めております。また、チーム医療にとり情報の共有化の点では、電子カルテの導入を昨年9月から始め、情報の共有化を図っております。43頁の?では、入院時から地域ケアを見通した医療の提供を行っています。これは特に政策医療とも繋がりますが、地域における精神科医療の充実を目標とし、退院された患者さんに対し厚い支援を行っております。44頁にあるように、訪問看護件数が、昨年21年度と比べ370件から、1,000件を超える形で訪問支援を行っています。
45頁では、医療安全管理体制に関しては、特に我々の精神・神経疾患においては、転倒・転落が非常に多いもので、これにわがセンター病院のアセスメントシートを改善して対応し、80件ほど件数を減らすことが可能になっています。
次に3つ目の評価項目で50頁をご覧ください。その他の医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供です。特に医療観察法対象患者の医療の提供について説明します。参考資料24頁です。医療観察法病棟、これは重大な他害、対象行為を行った精神疾患の患者さんの治療をし、退院に導く目的を持っています。わが国最大の66床を持っています。昨年から身体合併症医療の病棟を持っております。なかなかこういう患者さんが合併症を伴った場合の治療が困難となるので、こういう病棟が役立ちます。この治療に関して医師、看護師、心理士、OT、PSW、多職種のチームが一体となり、ほぼ1日おきぐらいにケア会議を行って治療にあたってきております。また、先ほども申しましたが、家族もある意味では大変な被害者になることもあるので、家族会または患者を含めての情報共有をしながら治療、退院に向けての努力をしております。こういう活動に関しては教育研修の目的に関しては、ほぼ毎日、年間204件ほど見学・研修に来ております。また、政策提言としては、厚生科研の力をかり、毎年全国の調査をし、療養のあり方、医療内容のあり方等を調査、報告または提言してきております。
最後に、52頁の重症心身障害児(者)への医療の提供に関しては、当院においては長期重症児の比率が大変高いこともあり、他科との連携、すなわち内科、外科の先生と連携し、長期にわたる入院患者さんに対し、可能な限りの医療を施し、長い療養の助けになるように行ってきております。以上、私は3つの点で高度先駆的医療、患者の視点に立った医療、政策医療に関する提言の実績をご報告させていただきました。よろしくお願いします。
○猿田部会長代理
どうもありがとうございました。特に患者さんのことを考えたこと、政策提言で、先ほどの研究面がいかに臨床に活かされて、病院の機能に活かされているかということだと思います。どなたか質問はありますか。
○花井委員
評価シートの50頁で、観察法対象患者さんで22年度の計画には、入院患者さんに対し特有な病態に対応した諸検査をあえて書いていますが、特に22年度に新たな検査方式を決めて実施したとかはありますか。右側にそのことがあまり書いてなかったので、計画には書いてあるので何か理由はありますか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
多くは、合併症医療に対するいろいろな検査を行うことや、新しい治療法に関しまして、特にクロザピン等に関しては検査ということに対する治療や何かに対する検査を想定したものと思います。
○花井委員
ということは、平成22年度4月から運用開始したいわゆる合併症に対応できる病棟の稼動に合わせて、全身的ないろいろな検査を22年度は強化して行ったという理解でよろしいですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
はい。
○夏目委員
患者視点に立った医療の提供のところで、39~40頁にかけて、患者満足度調査に非常に関心がありますが、患者満足度調査の実施が40頁に記載されていますが、これは国立病院機構の調査に参加し、実施したというのは、要するに質問用紙とかそういうものは国立病院機構のものをそのまま使いましたということなのか。やはり国立病院機構の病院と精神・神経医療研究センターの病院というか、そこではだいぶ内容が違いがあるのではないかという意味で、患者満足度を測るものとして、やはり独自に当院の特殊性等を踏まえた質問項目等を考えたほうがいいのではないかと思いますが、その辺はどうお考えですか。
関心がありますので事前にいただいている評価シート説明資料217、218頁にありますが、総じて、機構、NCと比べて当院というのは低いのではないかという気がします。この辺は大変大きな課題として当然認識されていると思いますが、今後ここにも検討していくこととすると書いてありますので、今後に期待したいと思いますが、何か特別にこの点について補足されることはありますか。その2点についてお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
ありがとうございます。全く先生のおっしゃるとおりです。別冊のシート217頁を見てください。これが当院の21年度に行いました満足度調査の結果です。いま夏目先生が言われましたように、当院においては、他のNHOに比べましてもあまりよろしくない結果が出ています。この時はちょうど病院の改築もあり、現在は新装になりまして、それでいい結果が出るかといまは期待しておりますが、これは古い段階での印象が主に出ているものと思います。
先生がおっしゃったように、やはりNHO全体の調査表よりも、我々の特種な使命のある病院における満足調査は是非必要と思っております。この低い結果がありますので、先ほど言いましたように、39頁の患者サービスの改善のところにおいて、我々医療サービス検討委員会を作り、常に会議で検討すると共に改善の対策をうってきています。重症の患者さんがいるところに療養介助職を付ける、そして外来においては、待ち時間の改善をいま現在図っています。いろいろな接遇のための研修会を行っています。苦情・要望に対する回答も直ぐに行うような形でいま整備しております。まずサービス度が低いという現状に立ちまして改善をし、今度23年度はどのようになるのかをいま考えていますが、やはり先生がおっしゃいましたように我々の病院特有の満足度調査、評価を考えるべきだと思っています。ありがとうございました。
○猿田部会長代理
結局、先生方のところでは、特に研究を重視しての上ということ、それから病気の特殊性があります。この2つでどうしても病院における活動は満足度は少し大変だと思います。国立病院機構とはちょっと違います。よくわかっていますが、がんばってください。
○本田委員
違う視点かもしれませんが、41頁の地域精神科モデル医療センターのところにあるのかもしれませんが、地域のモデル、地域で暮らすこととか就労支援に繋げるとかそういうモデル的なことに取り組んでいると思いますが、その点についての説明があまりされなかったので、1つ教えてください。これは始めた事業ですか、もう続けていて、特に就労支援にこうしたら繋がるとか成果みたいな数字的なものが出ていればもう1つ教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
私のほうから少し説明させていただきます。ここに書きました地域モデルに関しましては既に独法に移行する前から、アウトリーチ、いま国の大きな政策としても病院に入院中心から地域中心への医療へ移行していこうという大方針があります。それを移行していく上で、どういうモデルを地域の中に展開していけば入院から地域へと促進できるか、そのモデルを作るのが私たちの役割です。それは、米国に倣ったような形でACTというシステムを使って多職種の人で実際に訪問し、退院した患者さんをケアしていくという、それはこれまでやってまいりました。それが一定の成果を上げて、実はもう1つ前にあった病院、千葉にありました国府台の病院でスタートしていたものです。それを今度こちらの小平のキャンパスの中でもやっていくためのシステムを作っていこうということで、研究所と病院が一体になって進めている1つのモデル作りになるかと思います。それは現在は進行形です。
○本田委員
何かしらの成果でこういうふうにしたらというモデル的なものを示したというわけですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
それを最終的には目標として、まだ1年しか経っていませんので。そのモデルとして提起できるようなところに持って行きたいと思います。
○本田委員
これから目指すということですね。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
はい。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。非常によくわかる説明をいただいたと思います。いまの質問とちょっと関係しますが、これはナショナルセンターとして、どちらかと言うと全国スケールで臨床研究出口の医療ということが1つ課せられています。と言いながら、いまの話で、地域の医療という視点も当然あると思いますが、その切り分けはどのように。いま例えば地域モデルをきちっと疾患ごとに出していくということが、これは全国スケールに繋がる考え方もあると思いますが、地域の病院としてのスタンスと、研究、全国スケールのナショナルセンターと、その辺はどう考えていますか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
それも私のほうからちょっと説明させていただきます。私どもは精神疾患と神経疾患、筋疾患、発達障害と4つの分野があります。それぞれ例えば神経疾患である、神経難病とかという話になると、これは全国から患者さんがやってこられて診断だ、治療だという話になります。ところが精神のほうは、なかなか全国からうちに精神の患者さんが入院して検査をし治療する状況にはないです。実際にその方が近くの地域で生活をしながら医療を受けていくという。そのためのモデルを私たちは作るのであり、地域医療を展開するのはナショナルセンターのミッションではないと理解しています。したがいまして、それはモデルであり、モデルを1つ完成させればそれを全国に発信して、国に向かって政策提言をして、そこで1つ完成したらそのモデルの研究はおしまいという理解です。
○猿田部会長代理
よろしいでしょうか。それでは時間のこともありますので、4、5分いただいて評価をお願いします。
(評価シート記入中)
○猿田部会長代理
それでは、時間の関係もございますので、次に移らせていただきます。今度は第3グループのところになりますが、特に人材育成に関することとそのほかをよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
人材育成、情報発信、政策提言の一部につきまして、ご報告をいたします。精神保健研究所の所長をしております加我牧子と申します、よろしくお願いいたします。評価シートでは56頁から70頁までが対応いたします。ご説明に際しましては資料1-1、特に後半のほうを随時参照させていただきます。
独立行政法人としての当センターの使命に関しましては、最初樋口総長が申しましたとおりでございますが、その背景として、私どものセンターは、精神・神経・筋疾患・発達障害に関する医療、そして精神保健に関する調査研究、技術開発、技術者の研修を行って、国民に高度専門的な医療を届ける、精神保健の向上を図って国民に寄与することを目的として定められているということがございます。私が今日ご報告する項目に関しましては、当センターにとって研究開発、高度の医療に加えまして、重要なミッションであると理解しております。
まず、人材育成ですが、56頁からご覧いただければと思います。基本は病院においてはレジデント教育、研究所においては若手研究者の養成がファーストステップとして最も重要な課題と考えてまいりました。医師に限らず医療者が臨床に従事する際には、患者さんやご家族の不安や思いを尊重して共有した上で、研究を行うことは専門職として当然要求される基本的な姿勢であって、臨床と研究は全く別のものではないという基本的な姿勢を身に付けて、臨床研究を行う気運を高めていくことが重要であると考えております。
当センターでは、疾患に関するプロ、そして各疾患群、精神保健などのプロを養い、この部門のリーダーを養成する目的ももっておりますので、どのような職種であっても、こういった専門分野に関して専門性を育てていくことが、重要であると思っております。
病院でのレジデント教育は、定められた年限の中でプロとなるための知識や、技術習得のためのプログラムを用意しております。治らない病気も多い中で、患者さんやご家族に接する心や態度を養えるよう、上級生、指導員が配慮しております。また、レジデント期間中に研究に携わる機会を持てるよう、指導医の研究プロジェクトの研究協力者となるように積極的に勧めているだけでなく、神経研究所ならびに精神保健研究所の複数の研究部では、毎週定期的に専門的な講義や実習の機会をレジデントに提供しています。また、修業年限中に両研究所の研究部に所属して半年間研究に従事する制度も設けております。
カラーの参考資料、後半のほうですが、1頁から6頁目まで、高坂所長、糸山院長ともにご紹介したてんかんやパーキンソン病、地域精神科モデル医療など専門センターや各診療科の専門外来では、各職種の専門家が若手からベテランまで集ってカンファレンスが行われていまして、これが臨床面、研究面での人材育成に地道な成果を上げているところでございます。
昨今、モラルの低い研究が心配される時代になりまして、TMCでは研究における倫理性確保のための体制整備に当たっております。このために臨床研究研修制度を設け、当センターでの研究計画を倫理委員会などに提出する際には、この研修を受講していることを条件としております。また、この研修講座は外部にも開かれた講座として機能しております。TMCでは、これまで研究指導を受ける機会のなかった若手職員の教育にも力を入れております。
学位取得の支援につきましては、先ほどもご紹介がございましたが、山梨大学、千葉大学など、連携大学院と協定を結んで、センター職員が社会人大学院生という形で、当センターでの研究によって学位取得を目指すことができるようになりました。両大学についてはセンターの部長がそれぞれ3名客員教授となって、大学院生となった職員、また相手先大学の学生の指導に当たっております。
モデル的研修につきましては、実績評価シート58頁下段に記載しております。精神保健研究所における研修は、それぞれの研究成果を広く全国に還元し、専門領域の知識と技術を広める役割を果たしております。精神保健指導課程、薬物依存、精神科医療従事者や心理職のための自殺予防、発達障害支援医学、発達障害精神医療、司法精神医学、アウトリーチによる地域ケアマネジメントなどの研修を20課程実施しまして、多職種の方に研修を受けていただいております。平成22年度は1,015名の専門職の教育を行いました。研修受講者は地域に帰って、それぞれの地域でリーダーとしての役割を負っていただいています。
神経研究所における筋病理セミナーや、病院における小児神経セミナーは、少人数でのていねいな教育が、この領域で全国的に知られておりまして、参加者の中からレジデントとして学ぶきっかけともなっており、優秀な若い人材養成を確実にする入門講座の役割も果たしております。平成22年度の受講者の中からも、今年度レジデントとして数名がすでに臨床研修を開始しております。その他、病院で行われている研修を含め、外部からの研修生に対し、昨年度1,600名以上の方たちに研修を行いました。
カラーの参考資料の21頁から23頁をご覧ください。今年度、認知行動療法センター(CBTセンター)が設立されました。昨年度は準備室ということでしたが、この段階でPTSD(心的外傷後ストレス症候群)、薬物依存、不眠症などに対するCBTの研修を6回実施し、延べ204名が参加しました。特にうつ病認知行動療法の研修は、定員の5倍以上の受講希望者があり、当初予定の3倍、3回実施いたしましたが、なお多くの方をお断りせざるを得ない状態で今年度に継続されております。
このほか医療観察法にかかわる研修、包括的暴力防止プログラム研修のほか、精神科医療における行動制限を最小限にすることを目標に開発した行動制限の記録を簡単に分析できるソフトウエア、eCODOを使用するための研修を実施するなど、各領域の専門的知識を持つ職員に、より高度の専門知識を持っていただくための研修、教育、その他の活動に積極的に取り組んで成果を上げていると考えております。
また、いま申し上げました研修や教育関係の業務実績は、次の評価項目である情報発信とも大いに関係した成果となっています。業務実績評価シート61頁には、医療の均てん化のためのネットワーク構築の推進の成果として、重症心身障害医療、筋ジストロフィー医療といった、独法化前から当センターが全国の国立病院、療養所と協力して取り組んできた成果を発展させた内容が記載されてあります。重症心身病棟では入所者の高齢化や重症化についての問題を指摘しておりますし、筋ジストロフィー関係では、患者さんに自主的な登録をお願いできる制度を構築して、治療研究を目指したネットワークの準備を始めることができました。
政策医療の提供の例としては、参考資料24頁をご覧ください。この領域は医療観察法に規定される重要な医療を提供するもので、全国に先駆けて開設された医療観察法病棟は、強盗、殺人などの重度の犯罪を犯した精神障害者を罪人ではなくて、病者として診断、治療を行うための病棟であり全国の医療観察法病棟の臨床及び研究ネットワークとして機能しております。さらに、多職種によるチーム医療の実践によって地域と連携し、退院に向けて共同作業を行っています。病院職員、研究所職員が協力した調査研究が実施されており、全国の施設のご協力をいただいてデータを集約し、政策につながるデータ提供、解析などを行っております。
国立高度医療研究センターにとって、医療の均てん化というキーワードは、最低限の医療レベルを確保することではなくて、最高レベルの医療を国内に、そして国外にも広げる必要性があるものであると理解をしております。この点に関しましては、評価シート65頁に記載しておりますので、ご覧いただければと思います。例えば難治性てんかんの治療に当センター、医師、研究者、コメディカルまた一部外部研究者にも加わっていただき、最先端検査機器を用いた治療、研究に貢献しております。また、筋ジストロフィー関係の先端的、先駆的治療に関しては、既にご報告を申し上げたとおりでございます。
情報発信につきましては、評価シート63頁から記載をしております。ホームページの掲載にはセンターとして工夫をこらしております。平成22年度のトップページのアクセス数は、年間176万件を超えました。このうち患者さん向けの頁のアクセス数が80%以上ということで、多くの国民の方に興味、関心を持っていただいていると理解しております。特に自殺予防総合対策センターのホームページである「いきる」につきましては、以前コンスタントに1カ月3万件程度のアクセスでしたが、これまでのさまざまな活動や自殺予防強化月間、3月11日の大震災もきっかけとなったのではないかと思っております。毎月5万件以上までアクセスが増加してきております。
3月11日の大震災について申し上げれば、被災者ならびに支援者のメンタルヘルスを維持、向上するための目的で、ただちに情報発信サイトを立ち上げました。このサイトは震災翌週にはセンタートップページに公開、掲載しまして、時間の経過とともに変わる臨床的、社会的必要度を見渡した更新を現在も続けております。このサイトはこれまで当センターの研究所で行ってまいりました調査研究の成果を被災地の皆さんだけでなく、支援者の方々に還元することにつながり、多くの方々に参照されております。サイトで紹介している資料は、支援者への必見のマニュアルともなっております。具体的な臨床支援に関しましては、たぶん次年度にご報告できると思いますが、震災発生当時から都道府県に対する支援に関しましては、現地派遣、対策施策への助言、また実際の支援活動を中心に、長期的なフォローを考えているところでございます。
業務実績の概要、参考資料26頁をご覧ください。ここにはメディアカンファレンスをご紹介しております。メディアカンファレンスは、新聞やテレビ、インターネットなど、幅広いメディアの方々を対象としたカンファレンスで、私たちのセンターでの臨床研究の成果を正確な情報として提供することによって、より正確な報道をお願いしているところです。
具体的には、社会的に偏見を持たれがちな精神疾患、知的障害や自閉症などの発達障害、また大きな問題であります自殺に関わる課題について、メディアの方々と双方向での意見交換を行うことを心がけて行っているところでございます。
上記と関連しまして、国への政策提言に関する事項についてもご報告をいたします。資料65頁をご覧ください。自殺対策は我が国の喫緊の課題の1つとして取り上げられております。自殺予防対策基本法の施行に続き、閣議決定された自殺総合対策大綱の改定も迫っております。内閣府の自殺対策推進会議の果たす役割は大きくなっており、理事長はこの会議の座長を務めております。また、内閣府の自殺対策推進室にも、政策参与として2名が活動をしており、センターの業務を介して国策への協力を行っております。
以上ご説明申し上げたとおりで、私どもが取り組んでおります精神・神経・筋・発達障害に関わる人材育成と情報発信は、長期的な視野に立ちながらも、即効性のある事業と考えて、平成22年度にも施行したところです。今後も国民全体の精神健康の維持、増進につながる形での研究開発、医療提供のための事業展開を進めるべく一同準備をしているところでございます。以上です。
○猿田部会長代理
どうもありがとうございました。ご質問がございますでしょうか。私から1点お聞きしたいのは、特に若手の人の教育において、レジデントそのほかが、冒頭にありました専門疾病センターが出来上がって、かなり専門に入っていくのは、卒業して大体どのくらいの先生方が入っていくのですか。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
院長からお答えいただいたほうがいいかもしれないのですが、多くの診療科では卒後すぐではなく、一定の研修を経てある程度の専門性を目指してレジデントとして来られます。ご自分の診療科での一般診療はもちろんですが、専門的な診療が普段の診療の延長、継続した形で行われておりますので、早い方は研修期間のかなり早期からより専門の専門分野で一緒に加わっていただいているところでございます。もし追加があれば、院長先生お願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
そのとおりだと思いますが、後期研修の方々が主に入って来られる。そして、先ほどの高度先進医療などに携わるのも、そういうレジデントの方々に携わってもらっています。
○猿田部会長代理
ナショナルセンターですから、将来のリーダーなものですから、その辺り非常に大切だと思っています。ありがとうございました。
○内山委員
評価シート57頁の連携大学院の件ですが、山梨大学と千葉大でセンターの職員、あるいは部長職の方が教授として指導する。加えて、こちらから大学院生になるとあるのですが、逆に大学のほうから、大学院生がセンターに来られて研究をするという実績がこれまであったかどうか、また今後はどうかということを、教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
いままでも多くの方々が研究生や研究員として研究所に来られ、ここでの研究で学位を取得されるというケースはたくさんございました。しかし、大学院生であったり、大学から派遣される方は学位を受ける大学の問題はないのですが、大学の医局を離れた方たちは、学位取得の場を探すことに苦労をされておられました。この連携大学院のシステムは、そういった方々に学位取得の機会を提供する良い制度であるというふうに捉えております。
○国立精神・神経医療研究センター理事(神経研究所長)
追加をさせていただきますと、この57頁に書いてある連携大学院は、主に病院との連携を強めている所でございまして、例えば山梨大学で言えば、昨年度末で11名の我々のセンターの職員が、向こうで大学院生にならせていただいているという実績があります。基礎分野、研究所との関連で言いますと、特に早稲田大学の理工学部ですが、連携が非常に進んでいまして、この場合には早稲田の大学院生、いま延べ大体10人ぐらいですが、向こうからこちらに来て実際に研究をやって、我々が副主査的な立場で関与し、学位も取らせられるという活動をしております。
○内山委員
もう1つ教えていただきたいのですが、ホームページのアクセス数が非常に多いということは喜ばしいことなのですが、ホームページのアクセスが多いということ、すなわち、センターの情報を多く発信しているわけなのですが、その成果、あるいはそれを評価する方法というのは、将来お考えでしょうか。情報発信が現場でどのように役立って、それに基づいてホームページをどのように改善するかということは、将来の課題としては非常に重要なのではないかという気がしております。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
まさにその点ご指摘のとおりでありまして、いま広報の部門の強化というのは、今日、総長からの冒頭の説明でありましたが、広報の専門家をいま採用していろいろとやってもらっているのですが、その中でホームページのアクセスの分析をこれから始めたいと考えております。私も専門はよくわからないのですが、何かグーグルか何かのツールがあって、それを入れていきますと、中に入った人が最初の所から次の所に行って、どこにどのぐらい止まっていたかとか、そういうことがわかりますので、これをきちんと分析をして、どういう情報のところにアクセスされて、どのような関心があるのかということなども、これからやっていきたいということで、今年度の取組のアジェンダに入っております。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。1つお聞きしたいのは、いちばん最初にご説明いただいた「リーダーとして活躍できる人材の育成」という項目がございますね。レジデントとかさらに流動研究員、さらにキャリアパスとしてPIなどにだんだん上がっていくと思うのですが、そういうキャリアパスという視点から見て、たぶんこれよりももっと前からの話になってしまうかもしれませんが、例えば実際のアカデミアなどへの就職とか、どれぐらいその人が座っているかということなのですが、それはいかがかということと、外国との関係ですね。これがどうなっているかというのを教えていただけるとありがたいのです。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
研究所のほうは研究リーダーとしてのキャリアパスというのがもちろんありますし、私どものセンターを卒業して行かれる若手研究者の方たちは、大学に行かれる方が多いと思います。いま数値は持ち合わせておりませんが、毎年の結果等で見ても、かなり多くの方が大学、アカデミアに就職して行っておられます。病院のほうはいままですべてアカデミアというわけではございませんが、その領域の診療部門の第一人者としてのキャリア、それからやはり研究を志向した形で研究部門、教育部門に行かれる方もある状況でございます。
海外からの研究生ですとか、訪問研究者などもかなりお受けしておりまして、評価シートの69頁に数値がございます。海外からの研修生及び研究者が一昨年度11名ということで、平成22年度は17名という数値を見ております。中国からの留学生が多いのですが、アメリカ、イギリス、その他からいらしております。実際、流動研究員で中国とか韓国の方をお受けしております。
○夏目委員
もう時間がないので本当に一言なのですが、評価シートの67頁の東日本大震災に対する対応についてなのですが、やはり大変な大惨劇に見舞われた方々が、心の病に陥っている方が相当いるというような報道もされています。ここにも情報提供とか助言をという話が出ていますし、心のケアを被災地に派遣しているということなので、これは平成22年度の実績評価なので、平成23年度がおそらく主になる、先ほどもそういうお話がありました。是非この点について、おそらく国民が相当期待していると思いますので、よろしくお願いいします。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
ありがとうございます。たぶん被災直後ではなく、半年、1年、まあ10年、20年を考えたことを用意しているところでございます。これは国民の皆様に貢献できるような内容を是非提供していきたいと考えております。
○猿田部会長代理
よろしくお願いします。時間の関係から4、5分で評価をお願いいたします。
(評価シート記入中)
○猿田部会長代理
時間の関係もありますので、最後のセッションに入らせていただきます。第4グループということで、項目は10~14です。効率的な業務運営に関する事項、法令遵守等、内部統制の適切な構築、予算・収支計画及び資金計画等、その他主務省令で定める業務運営に関する事項ということで、法人から10分、委員の先生方からのご質問と評定の時間を合わせて15分、約25分ということでよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
評価シートの71頁以降のご説明をさせていただきます。全体の項目が事務の部門が大きく関与するということで、私、企画戦略室長の立場からご説明させていただきたいと存じます。全体のこの5項目に関して共通する事項といたしまして、先ほど総長の説明にございましたが、やはり独法初年度での経営安定化と、それからミッションを果たすための先行投資という部分のバランスの問題と、療養所から出発した中での整備が不十分な中での人員、あるいは組織、設備、施設といったものの整備をいかにやっていくかということが大きな課題でございました。
また、併せまして独法初年度ということで、大変に多くの業務のくる中で、事務部門としていかにそれをこなしつつ、しかし、発展的にさらにいいものを目指していくのかと、そういう点で腐心をしながら取り組んできたということです。説明に関しましては、資料1-1の参考資料にシェーマとして、各項目について簡潔におわかりいただけるようなものをご用意いたしましたので、そちらを主としてご説明させていただきたいと思います。また、全体としてこの5項目につきましては、数値目標があまりありませんで、どちらかというと評価の視点という部分で、定性的な評価になってまいりますので、私自身もこの評価の基準を見まして、質的な評価も加味して評価するということでしたので、その辺のポイントになった点を中心にご説明をさせていただきたいと思います。
参考資料の27頁以下がこの資料になります。ここの第1番目の効率的な業務運営体制ということで、ガバナンス強化等を目指した体制の構築ということで、厚生労働省から、あるいはガバナンスチーム、この独法がスタートする時点で、いろいろな指摘をいただきまして、独法としてスタートをして、こういう体制をとれというご指示がございました。そういうものをまず体系的に取り込んだのがこのシェーマです。これは他のセンターも当然同じようにやっている部分というのが多いですし、評価の視点に盛り込まれましたような評価の視点につきましては、基本的にすべて達成しているという認識ですが、特にこの中で私のほうから申し上げたいのは、左のほうの2つ目の真ん中のところにある四角の中に、企画戦略室会議を設け、企画戦略室としてのファンクションを起こしてきたという、ここを強調させていただきたいと思っております。
これにつきましては、企画戦略室という組織自体はどこにもあるのですが、私どもはこの業務を少し大きく発展させて、センター全体の企画立案、調整機能にまで拡大をして、どうしてもナショナルセンターとして横の連携が十分いかないということもありますので、総長を補佐する形での取組をさまざまに進めてきたということと、それから経営面を初年度、昨年度は重視しましたが、企画立案として経営に資するような、特に病院での経営改善に資するような提案を、センターの中の有志を募りまして、20数名のチームを作って、さまざまな提案を行ってきたというところが、私どもとして自負できる取組であったのかなと思っております。
?にありますように、その連続線上に昨年度からスタートした経営安定化プラン開発プロジェクトがございまして、ここのところでいろいろな収入の道の確保のことをいろいろ検討している。これは平成23年度に結実するという計画です。
そして、参考資料の27頁の右下をご覧いただきますと、?、?のところに、病院経営会議、病院経営説明会の実施というのがあります。これはおそらくどこでもやっているとは思うのですが、これも非常に充実した中身で、よく取り組めたという認識をもっています。これは後ほどまた言及してみたいと思います。
28頁、赤と紺で色分けした鮮やかなのがありますが、これは総人件費改革の取組ということですが、全体としてマイナスにしろというのがご指摘ですが、結果としては青のほうが減で赤のほうが増ということです。これは全体として努力をしながら減にした部分がありますが、下のほうの部分がすべて必要なものでした。そして、特に上の2つの医療の高度化ですとか、医師確保に向けてというのは、この評価シートの中にも入っていますが、中期目標の中に総人件費は削減していくのだけれども、医療に関しては安全だとか高度医療を実施するために必要な手当をするようになっています。まさしくそれを受けて、こういう整理をしたものです。
その成果として右のほうに星の爆発マークがありますが、そういうことを通じて前年度、4億8,000万円の増加の医療の収益の確保をしたというような取組をしておりまして、着実に政府の方針に沿いつつ、しかし、ミッションを果たすための必要な投資と言いましょうか、行いながらしかも経営面での努力をしてきたということで、ここの効率的な業務運営体制については、私どもかなり良くやったのではないかという自負をもっているところです。
参考資料29頁ですが、効率化・収支改善、電子化推進というところです。まずはここのところに数値目標が3つ挙がっておりますが、第1番目が収支の実績ということで、経常収支率を基本的に黒にしていくという中期計画の目標がありますが、?にありますように、私ども精神科医療、不採算という中で、医療収益を上げるという課題があるわけですが、中期計画で最後には黒になっていくだろうという見通しを立てていまして、平成22年度計画は経常収支率97.4%と、2億9,800万円の赤を予定していましたが、これを実績の結果として見ますと、収益のほうが3億6,000万円ほど増えまして、費用のほうは9,000万円ほどまた増えたと、しかし、全体として増のほうが大きいので、経常収支率がほぼ黒に近いところまでこぎ着けることができたということでの努力といいますか、ここのところをまずは数値として評価ができるのかなと思っております。
次の30頁になりますが、効率化への取組の努力ということで、ここはおそらくどこのセンターもやっていると思いますが、それぞれ努力をしてやっております。一般管理費の数値目標が平成21年度比、中期計画の最後に15%下げろというのがありましたが、これは15.4%ということで、特に委託費などの節減というところが大きく出ていまして、そういうことを反映しまして、平成22年度1年でまず基本的にこういう数字を達成できたということは、いろいろとこれまでがどうなのかというご意見もあるのかもしれませんが、我々としては、目標に達成する形でやれたというように考えております。
もう1点、評価シートのほうには数値目標がありましたが、未収金の問題がありました。これについてはほぼ達成をしていまして、若干横ばいなのですが、全体の収入が増えていますので、そういう意味では非常に達成ができたというように見てもいいのではないかなと考えております。
?の収入増への主な取組、ここのところが私どもとしては大変に努力をいたしまして、私どもの中でも評価をしているところです。基本的な診療収入に関しては、?の下に書いたようなことを代表例として掲げていますが、これについて評価シートをご覧いただきたいと思います。この80頁からが業務の実績ということで、どのような取組をしたかということが、いろいろと書いてあります。この80頁のいちばん右の「業務の実績」の収入の確保というところで未収金対策、これは絶対額はそう多くはないのですが、努力をしてやっています。
それから適正な診療報酬業務の推進ということで、ある意味でこれまで国の時代、こういうことにはあまり力が入れられなかったということもあるのですが、これは診療報酬改定の状況をきちんと知らせる。それから(2)の診療報酬事務の推進のための取組み、この辺のところで診療報酬委員会の立上げ、民間コンサルティングを介した診療報酬請求事務の強化、それから上位基準の取得というような、基本的な体制を整備しつつ、先ほど申し上げました企画戦略室で、81頁の3になりますが、病院経営改善のための取組ということで、いちばん大きな入院診療の収入を上げるという王道をやるための体系的なアプローチ、ここにはそこまで言及していませんが、そういうことを作成して提案をしたと。そして、その取組が進んでいる。また、経営安定化プロジェクトというのは、この診療報酬以外のところで、センターがどういう収入を上げられるかというところのプロジェクトを現在進行中です。
82頁です。経営努力ということで、地域との連携などをいろいろ進めながら、収入として上げられるものを上げていこうということをやっています。記載が別の所になりますが、病院経営会議であるとか、病床の利用のコントロール委員会ですか、そういうものも立ち上げて、そこでかなり濃密な検討をいたしております。
もう1点だけ、簡単にいたしますが、説明資料の273頁をご覧ください。これが実は昨年度このセンター病院の経営をする中で、センター病院の財務状況ということですね。病院職員全員を対象にしてこの会をもちまして、一体、病院の経営というのはどうなっているのだと、非常にわかりにくいと。つまり交付金が若干昨年度も入っていたり、それから収入とそのコストが一体どうなっているのだとか、どこまでを病院の経営で見なければいけないのかとか、わからないという声があったもので、これを担当者が大変努力をしてくれまして、ここに書きましたような274頁にありますような「はじめに」という問題意識を掲げて、民間よりも優遇されているのだということも認識しつつ、しかし。
○猿田部会長代理
参考資料33頁も一緒に見ていただいたほうがいいでしょうね。運営費交付金のお金が書いてあります。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
そうですね、すみません。参考資料33頁。そういうことが実はここの中に示されていまして、これでほぼ病院の経営の状況とそれから民間病院と比較したこのセンターの構造がわかるということが、大変大きな成果であったかなと考えております。
次に参考資料の31頁に入ります。「内部統制の適切な構築」ということです。これは定性的なものになりまして、コンプライアンスの関係ですので、大体これをやれとあったものを、的確にこなしたということが基本線です。その中であえて私どもの内部的な評価として申し上げたいこととしては、いちばん上のコラム、監査室のところです。ここの「内部統制の適切な構築」というところで、担当者以下大変頑張りまして、監事あるいは外部監査法人などと連携しながら、非常に密な連携の中で、何が問題でどういうことを進めていけばいいのかを、総長あるいは施設長とのヒアリングなども組み入れながらやってきました。
そして、基本的な評価シートの作成、アンケート調査などもいろいろ練りながら進めてきたということがありまして、その結果、評価シートのほうであとでご覧いただきますと、いろいろと指摘がありました。こういうことを改善しろという指摘が出てまいりました。ある意味でいままでやっていなかったことかもしれませんが、これを改善するところに、きちんと指摘がなされて、我々の目から見てかなりのことがこのコンプライアンスとして、あるいはこういう入札の問題も含めた法令遵守の体制、内部統制が進んだのではないかという認識をもっているということです。
32頁です。これが、予算・収支・資金計画ということで、これもいろいろと評価項目の中では記載がされていますが、こちらのほうでシェーマとして私どもが申し上げたいということで、それぞれの項目が達成されているわけですが、特にこれからの収入を確保していくという観点から、民間企業等からの寄附や受託・共同研究を受け入れる体制をきっちりしていくということと、それからあと関係機関への働きかけと申しましょうか、私どもがやっている中身、能力、キャパシティを理解していただいて、共同研究、受託研究が進むように、あるいは寄附していただける方が増えていくように、こういうことを進めたというのが昨年度の取組です。そういう意味で成果はこれから上がってくるのかなとは思うのですが、ここで受託・共同研究と、厚生労働科学研究とございますが、受託・共同研究では平成21年度に比べて6,000万円ほど増となっていまして、2割方はアップしているのかなと思いまして、ある程度の効果が現われているのではないかと認識をいたしております。財務状況等につきましては、このとおりでございます。
最後になりますが、34頁、人事、その他の事項です。これも評価シートでいろいろと記載しておりますが、特に申し上げたい点だけ2、3申し上げさせていただきます。官民人事交流、真ん中の上のほうのコラム、橙色、職場環境整備のところで、優秀な人材を確保して民間から採用するということは、従来なかったものを、先ほども話題が出ましたが、官民の人事交流で、臨床研究プロジェクトマネジャーを公募したり、職場環境を整備するために、従来の療養所体制の中でなかなか配置がなかった病棟クラークを配置して、きちんと安心して医療ができるような環境を作ることに留意したこと。
それから?にありますように、先ほど医療の改善のために人件費が増えたということを申し上げましたが、ここに書きましたようなことを実施いたしました。特にいちばん上の医師確保につきましては、通常、医師のポジション以外に、総長のリーダーシップの下で、上級専門職と専門職という総長直属のポストを作りまして、ここにある意味で特任のテーマを持ってもらいながら、柔軟に採用できるような仕組みを作ったということで、特に上級専門職の先生は、プロフェッサーの方に来ていただきまして、精神分野の治験臨床研究の総括とかをやっていただく。また、専門職の方はスーパー特区の治験を担当すると。こういうことを非常に柔軟に進めておりますし、また、介護士の確保のための仕組み、療養介助職員、また医療技術職員も大幅にリハビリのためにPT、OT、STを増加いたしまして、まさしくそのセンターでやるべき中身を、柔軟に独法になって対応がとれるという中で、強化しているということです。
最後に35頁の?職員の意見聴取のところで、これは私も担当をしていますが、企画戦略室において、右側にあります「ご提案窓口の新設」をやって、中に載せまして、それで内部の人の意見を吸い上げて検討をして、必ずフィードバックをする。そして、その取組をやったものをデスクネッツという新しく電子化された内部LANの新しいものに載せて、周知徹底できるようにするということで、提案をした人がきちんとそれが反映されている自覚を持ち、またその成果は必ず明確になって職員全体にフィードバックされると。こういった形の取組もいたしてまいりました。駆け足で申し訳ありませんが、これで終わらせていただきます。
○猿田部会長代理
どうもありがとうございました。それでは、どなたかご質問がございますでしょうか。
○花井委員
業務実績概要の参考資料の33頁に、運営費交付金収益の内訳が書いてあるのですが、研究基盤経費というのには、人件費も含まれているのですか。つまり収益性はないけれども、国のミッションとしてやるべきというところが運営費交付金の掴みだと思うですが、そうすると人もそこはたくさんいるわけですよね。その分が含まれているのかということ。これは細かい話で、私も専門ではないのでわからないのですが、最後、退職手当2.3億円が書いてあるのですが、これは性質としては運営費交付金から出しているというのは、これでいいのですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
まず1点目のほうですが、研究基盤経費という中で、両研究所、私ども2つ研究所がございますが、そこの基本的な人件費ですとか、運営に関わる経費ですとか、そういうものがこの基盤経費ということです。これは採算性は基本的にございませんので、運営費交付金で見ていただいていると。こういうことになっております。
○花井委員
退職手当というのは。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
退職手当は運営費交付金です。これまで私ども国家公務員でずっときましたので、特に積立があるわけでもないので、その部分につきましては、毎年大体どれぐらいの人が退職するかが前年度に予測されますので、その分を運営費交付金に積んでいただいて、運営費交付金から出すと。
○花井委員
旧制度から移行しているから、国家公務員扱いした分については、運営費交付金で見ていると。こういう整理ですね。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
はい、そういうことでございます。
○花井委員
わかりました。
○祖父江委員
ちょっと細かい問題で申し訳ないのですが、大学のほうから見ると、先ほど人事交流、キャリアパスというお話がございましたが、いまの退職金の問題でナショナルセンター、厚生労働省の組織全般がそうだと思うのですが、たぶん未だにそうなっているのではないかと思うのです。辞められて国立大学法人に異動される場合に、そこでたしかキャリアが切れるのですよね。ですから退職金が積立できなくなるという形にたしかなっているのではないでしょうか。そうですね。ですから人事交流を図る上で、これはここで議論をするのではなくて、むしろ厚労省と文科省の間でやってほしいのですが、それがつながるようにしていただくと、人事交流が非常にスムーズになると思いますので。先生のとこだけではないのですが、大学の側から見ると、あるいは大学の先生のほうから見てもそうだと思うのですが、非常にまずい状況にあってということがございますので、是非よろしく。すぐには解決できないと思うのですが、よろしくお願いいたします。
○猿田部会長代理
ナショナルセンターとしても検討をしていただかなくてはいけないのですが。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
お答はよろしいのでしょうか。わかりました。
○夏目委員
初年度、非常に頑張っておられるということがよくわかりましたが、もしわかったら教えていただきたいのです。参考資料の29頁、収支についてなのですが、計画と実績は整理されているのですが、前年度、これは経営形態が違うから、国時代だから企業会計を導入していないから、全く平成21年度はわからないのだということなのか、一応平成21年度も仮に計算したら、このくらいの赤字だったのだということがわかるのかどうか。それが1点目です。平成21年度、経営形態が違うからわからないと言われれば、それで終わりなのですが、国時代、仮に計算すればこのぐらいの赤字が発生していたはずだというのがわかれば教えていただきたいのが1点目です。
2点目は少し細かいので恐縮なのですが、ほかでもあったのですが、外部の弁護士先生を活用で、コンプライアンス室長を設けていると。これは要するに常勤で配置されているのかどうかということと、このコンプライアンス室長と総務に法務グループというか、病院である以上、法務をやる人はいるのではないかと思うのですね。法務を担当している人との関係はどうなのか。要するに総務部長とコンプライアンス室長との関係はどうなのか。その辺の位置付けとか、業務内容を教えていただければと思います。以上2点です。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
まず第1点ですが、基本的にはやはり比較が難しいということで、私も担当に聞いたのですが、それはなかなか難しいということであったのです。そういう意味で現時点で平成21年度と比較したものはないのですが、収入としては基本的には4億8,000万円ほどアップしているという実態上の比較はできますということでございます。また、すごく時間をかけて詳細にやればどうなるか私もわかりませんが、現時点ではそのような比較はできないのかと聞いてみたのですが、なかなか難しいということで用意してございませんでした。
2点目です。まずコンプライアンス室長を弁護士さんにお願いしていますが、これは非常勤です。正直申し上げて、まだコンプライアンス室長さんが監事さんですとか、外部監査法人のように、いろいろと見ていただくようなところまでは十分至っておりません。私どものほうで必要に応じて、いろいろお尋ねしたり、アドバイスを受けるのが現状でございますが、いま先生がおっしゃられたように、法務部門をどうしていくのかというのは、実は大きな課題でして、このセンターとしてこれから組織を、特に事務部門の強化を図っていく中で、法務部門をどうするかというのは、やはりアジェンダの中に入っております。それで、現在はコンプライアンス室は、総長の直属になりますので、総務部長の管轄下ということではございませんが、法務のいわゆるさまざまな契約ですとか、医事訴訟ですとかいろいろなことがございますが、そういうものを一括して見られるような体制というのは、やはりどこかにあるべきではないかという問題認識をもっていますので、ご指摘を踏まえて検討をしてまいりたいと思います。
○猿田部会長代理
いまのことに関して、非常勤の方を選ぶときは、公募の形で面接してやっておられたのですか。というのは、いま非常にいい方が応募してくれるのですね。厚労省の諸独立行政法人に、国の立て直しが必要だとかそういうことをおっしゃって応募してくれますが、どうですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
これに関しては特段公募ではなくて、これまでいろいろとアドバイスをいただいた方に、もちろんその方をよく知っておりますので、とりあえずその方にお願いしているということです。
○和田委員
時間も押していて申し訳ないのですが、財務についてのご報告をざっと拝見したのですが、この中で設備投資についてのご説明がなかったので、財務諸表等の18頁の決算報告書がございます。これが予算と決算との対比をして差額を出されているのですが、この中で少し気になったのが、下から5行目の施設整備費が予算が115億7,600万円なのに対して、決算額が73億8,300万円。41億差額が出ていまして、これは進捗の遅れにより工事が未完となったことによるとなっていますが、これはどういう施設整備が遅れたのか。そして3月31日時点ではどういう状況で、いま現在どういうようになっているのか、この辺のご説明を。たぶんこれが完成すれば、施設整備費補助金、16億円が国から収入になったと思うのです。しかし、この差額はもし自己負担するとなると、やはり借入金が必要だったのかなという、財務的に必ずしも安全ではないのか、それとも心配ないのか、その辺のところを考えてみたいので、いまの設備投資についての実態をご説明いただきたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
まず何が遅れたかということですが、これは補正予算で取れた建物の工事と、それから施設整備補助金で取りました研究所のほうの関係の工事と、こういうものが年度内に終わらなかったということで、繰越したというものがこの内容でございます。
○和田委員
建物、診療所とか、設備とか。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
診療所ではございません。研究所関係と、それから先ほど申し上げましたTMC関係の建物等々です。そちらのほうが繰越しとなっているということでして、ただ、その部分はあるのですが、決算全体としてはですね。経常収支のほうでは、この部分の繰越しのところを除いておりますので、フローとしての経営としては単年度約2,600万円ぐらいの赤という形になるということになっています。したがってキャッシュとしては回っておりますし、経常収支としての差もだいぶ少なくなってきているということと、全体として繰越しのいま申し上げた状況で、TMC棟ですとか、あるいは研究所関係の工事が繰り越されたという姿になっております。
○和田委員
すみません、よろしいでしょうか。どうもご質問の中身と違うようなので、私がお聞きしたいのは、110億円の予算があって、70億円しか使わなくて、40億円が、予算が差異が出ていると。それはもう契約が済んでいて、そして完成したら払わなければいけないものがあるのか。それとももう計画はやめてしまってあれしたのかと思うのだけれども、ここには「工事が未完」となっているので、それはどういう工事のいくらが未完になっているのですかという質問なのです。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
私も詳しくは。
○和田委員
あとで資料をお出しいただければと思います。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
申し訳ありません。手元にございませんので、後ほど届けさせていただきます。
○猿田部会長代理
申し訳ございません。だいぶ時間が過ぎてしまいましたので、それでは評価をしていただきます。
(評価シート記入)
○猿田部会長代理
今日、何か特別なことがございますか。
○政策評価官室長補佐
事務局より今後の取扱いにつきまして連絡させていただきます。評価のご記入がまだ終わっていない委員の方がいらっしゃいましたら、お持ち帰りになられてご記入していただければと思います。日にちにつきましては8月9日の火曜日ということで、総合評価の関係もありますので、日にちは大変恐縮なのですが厳守ということでお願いいたします。
○猿田部会長代理
委員の先生方についてはファックスでやらせてくださいということも。
○政策評価官室長補佐
この後、電子媒体もお送りいたしますので、そちらに記入していただいても結構でございます。以上です。お願いいたします。
○猿田部会長代理
委員の先生方、どうもありがとうございました。あと、5、6分休みましてから次にまいります。
(法人入れ替え)
○猿田部会長代理
予定の時間をだいぶ過ぎてしまい申し訳ございませんでした。これから国立長寿医療研究センターの評価に入ります。まず最初に理事長から一言ご挨拶をいただけますか。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
本日、申し訳ございませんが理事長は欠席という形で、私、研究所長の鈴木、病院長の鳥羽が中心にご説明をいたしますので、どうぞよろしくお願いします。
それでは概要説明を最初に10分程度させていただきます。使います資料は資料2-1、2-2で、特に資料2-1の業務実績概要資料というポンチ絵を中心に、時間の限りもございますので、ご説明いたします。1頁と2頁が続きになっております。いちばん上に私ども国立長寿医療研究センターのミッションということで、研究、診療、教育・研修、情報発信という大きな4つの機能の中で、我が国の長寿医療に先導的な役割を果たすということで、特に我が国のみならずアジアにおいても急激な高齢化がありますので、それらを牽引するひとつのセンターとして努力したいというのが、私どものミッションです。
今回、全部で14項目ありますが、大きく分けて研究業務、診療業務、教育研修及び情報発信業務、そして適切な業務運営のための組織・予算となっております。最初に自己評価をそれぞれの項目で行いました。特に平成22年は独法化した初年度ということもあり、私どもは特に基盤整備に力を入れました。そういうことでS評価、これはかなり十分に吟味してどのような視点から見ても、極めて達成度が高いということで付けさせていただきますが、これについては3項目についてSを付けました。特に重点的な研究・開発の推進、それから我が国の医療政策の推進に関わる事項、それから高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供、この3項目についてSを付けました。少しSの項目は、かなり厳しい自己評価を実施しました結果、そういう形になりました。そのほかはほとんどがAです。1項目Bを残しておりますが、ほとんどがA評価で、自己評価にいたしました。それが1頁と2頁に書かれている評価に関する概要です。
次は3、4頁に関してご説明します。私どものセンターの概要が3頁に書かれています。センターが行う業務、理念。特に理念としては高齢者の心と身体の自立を促進し、健康長寿社会の構築に貢献することを理念としております。4頁に、私どものそういう理念に基づいて、どういった長寿医療、研究・開発を行うかのポンチ絵が描かれております。この個別の項目については、後ほどそれぞれの担当の者からご説明申し上げますが、特に私どもでは、やはり現在あるいは今後急増していくであろう認知症について、認知症の患者様、あるいは認知症の本態あるいは認知症のケアについて、重点的に取り組んで参っております。特に平成22年度に独法化してからは、認知症に対する臨床研究を一段と強化させており、ひとつには認知症先進医療開発センター、これは創薬の開発あるいは危険因子の解明、早期診断、早期治療を目指す、そういうセンターを設置しております。これについても後ほど詳しくセンター長からご説明いたします。
そのほかに病院では「もの忘れセンター」を新たにオープンさせております。これも後ほど病院長から詳しくご説明申し上げますが、規模といい、実際の各科の連動といい、今後非常に増える認知症に対して、高度先進的なモデル医療ということで進めております。
そのほかにもちろん認知症だけではなく、4頁のポンチ絵に描かれているように、どうしても高齢期になると運動器が弱くなります。骨粗鬆症あるいは骨折といった問題、あるいは私どもがいくつかポイントで力点を置いているものとしては、感覚器疾患、皮膚、それから目、耳、その下にあります口腔疾患、特に高齢者になると必ず歯が失われていくわけですが、これについても再生医療を含めた先駆的な医療、あるいは研究を行っている状況です。さらに個人の尊厳との関わり、あるいはケアとの関わりで摂食・排泄機能障害といったようなことをどのようにやっていくか。これらと関連して在宅医療をどうやって今後進展させていくかという、大きな国の方針とも共同歩調を取りながら、こういった高齢者医療あるいは長寿医療に対して取り組んでいる状況です。
さらに今年度の特質として、少し後で詳しく申しますが、国の政策提言あるいは協力ということで、3月に起きた東日本大震災においても、国と共同で人材派遣あるいは物的な支援、それから特に避難所に多くおられる高齢者の方々に対して、生活不活発病予防対策といったことを現在も永々と研究者を派遣して続けている状況です。そういった総合的な取組みを研究あるいは診療の面で行っております。
最後にこれも後ほど詳しく申し上げますが、経営面については3頁の5「財務」に書かれていますが、経常収支率が98%で、これは当初計画の97.0%を1ポイント改善させております。これは昨年度から新しく病院長を迎え、病院の経営改善に取り組んでおり、今後も引き続き収支相償へ努力を重ねている状況です。5頁についてはいま申し上げたような研究、診療、教育・研修、情報発信、トータルで長寿医療を推進させています。
最後の6頁に私どもの組織図として、独法化してから特に理事長特任補佐を置き、それから企画戦略室、いわゆる今後の長寿医療のあり方を全体で考えていくような体制をとっております。また研究所、病院には先ほど申したようにそれぞれに特化した開発センター、あるいはもの忘れセンターを設置したというのが、昨年のいちばん大きな組織上の改革です。以上、大変簡単ですが、全体の概要を説明いたしました。
○猿田部会長代理
全体がよくわかりました。もう一つ先ほどの評価のことですが、かなり先生方のところは厳しく自己評価をしてくださいました。この前のところは皆様方わりに甘いのです。一応この評価委員会としては、Bが標準的で、それがかなり良かった場合にAと。ものすごく良かった場合にSという形をとっており、いままでのところはほかの所がどうも少し甘い付け方だったということで、先生方の所が標準的なのかもしれませんが、一応そういう形で付けているということだけは、ご存じで、Bが平均のところだということです。ありがとうございました。それでは時間の関係がありますので、早速各部分に入りたいと思います。まず、最初に第1グループの解説をお願いします。所要時間はできるだけ10分程度でしていただき、後で委員からの質問、評定の時間で15分をいただく、合計で25分ぐらいでやりたいと思いますので、よろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
それでは最初の第1パートです。これは私ども主として研究の部分ですので、評価項目3と9について、特に7頁です。評価項目3については、認知症がかなり含まれておりますので、認知症先進医療開発センター長の柳澤から説明をさせていただきます。
○国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター長
よろしくお願いします。柳澤です。それでは評価項目3、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進に関して、説明いたします。
評価シートに関しては、1~36頁が相当します。私どもの長寿医療研究センターにおいては、加齢に伴うさまざまな疾患の病態解明、そして予防、診断、治療法の開発研究を行っております。加えて日本人の老化に関する基礎的なデータの収集と解析も併せて行ってきました。特に認知症に関して重点的に活動を行うに当たり、平成22年度には認知症先進医療開発センターならびにもの忘れセンターを設立しました。
認知症先進医療開発センターに関しては8頁です。認知症の予防、診断、治療、支援の先進的な開発研究を目指しております。中央部に赤字で書いたいくつかの部門を設立して、左の上の緑の丸の絵を見てください。私どもが十数年来続けてきました長期縦断疫学研究から得られた治験を基に、どのような生活習慣、例えば食事、運動といったものですが、それが認知症の予防につながるのかということを明らかにしてまいりたいと思っております。右上の丸のBです。患者様の頭の中にはもうすでにアミロイドが蓄積しているということが、最近の方法でわかるようになってまいりましたが、それに加えて私どもが得意とする脳磁図、あるいはファンクショナルMRIといった先駆的な手法を駆使して、認知症を早期の段階で捕捉するという脳画像診断法の開発に当たっています。
左下の緑の丸のC、Dです。私たち自身が開発した研究シーズをアルツハイマー病根治薬の開発に結実すべく化合物ライブラリーの収集、あるいはハイスループットといったような低分子化合物の探査機器の導入をほぼ終えた段階です。
右下のEは、地域住民を対象に運動介入による認知機能維持法の開発を近赤外線分光法等による脳の活動の客観的な指標をモニターしながら、評価を行うというものです。
アルツハイマー病の治療薬開発に関して若干説明をさせていただきます。アルツハイマー病の脳の中では、アミロイドβ蛋白の蓄積に始まり、全体でおそらくは20年を超える長い病的なプロセスがあります。私どもはこの長い病的なプロセスの中で、2点ポイントを決めて、その進行を阻止する開発を始めました。このうちアミロイドβ蛋白標的薬の開発に関しては、次の10頁です。平成22年度の科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラムの採択を受けることができ、すでに国内のベンチャー2社と共同で研究・開発しています。過去においては新薬の開発というのは、30年の期間と1,000億円の費用がかかると言われた時代もありますが、私どもは何とか我が国における創薬のパラダイムを変えることによって、産官学連携で革新的な新薬の開発システムを構築してまいりたいと考えております。
11頁は、私どもの研究センターの研究の一つの柱と言える、老化に関する長期縦断疫学研究です。地域住民を対象に老化に関するさまざまな基礎データを収集していますが、これまでに得られた治験をもとに、私どもは今後はどのような生活習慣が、先ほど申し上げましたように、認知症の予防に有用であるかを明らかにしてまいりたいと思います。12頁、平成21年度の先端医療開発特区、いわゆるスーパー特区に採択されて、歯髄再生を目指した開発研究を推進しております。すでに犬を対象とした非臨床試験において歯髄幹細胞の分取・培養・増殖、そして移植に成功して、その安全性と有効性は確認しております。現在はこれを踏まえて、ヒトへの応用に向けた臨床研究の準備を鋭意進めております。
13頁は、先ほどご紹介した地域住民を対象とした運動介入による認知機能維持法の開発研究です。これまでに認知症の予防には、運動習慣の獲得、抗酸化作用の強い食物の摂取、知的活動の実行あるいは継続などが有効であることは指摘はされておりますが、日本人を対象に、客観的なそして科学的な手法による国内ではおそらく初めてとなる大規模な調査・研究を始めました。
最後に14頁は、外部資金(研究費)の獲得状況を示したものです。上段の獲得金額、下段の獲得件数ともに前年度の平成21年度に比べて、若干ですが、増加傾向にあり、さらなる努力を続けていきたいと考えております。評価項目3に関しては以上です。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
引き続き評価項目9、国への政策提言に関する事項について概略をご説明します。国への政策提言については、長寿医療開発研究費を活用した、特に社会医学的研究の推進の立場から何点か行っております。例えば、介護予防に関する効果的な推進に関わる提言、あるいは認知症の患者様の運転免許、ドライバーライセンスを今後どのようにしていくかについてのマニュアルの作成など、そういったようなことを平成22年度では行っております。
さらに平成22年度の特性として、公衆衛生上の重大な危害に対する対応の点で、国への政策提言あるいは国家政策の推進に関わっております。即ち、東日本大震災に対する支援として、災害医療班の派遣、これは16頁に私ども国立長寿医療研究センターから災害医療支援チームが実際に数次にわたって派遣されていますが、そのようなことを行っております。さらに震災による停電に際して、ALS患者さんの人工呼吸器のバックアップ電源、これを私ども長寿医療工学では、車のバッテリーを改良して非常に手軽に使えるバックアップ電源を開発しております。そういったものを実際に今回の震災で停電になったときに、非常に活用度が大きかったことが明らかになっております。これについては17頁に実際の写真が載せられています。
さらに、総長、病院長名による地震によって避難されている高齢者への初期、急性期の留意点や、被災された高齢者の生活不活発病に対する避難所での対応は、現在も私どもセンターから人員を派遣してやっております。これが18頁に出されておりますが、18頁右側に「生活不活発病に注意しましょう」という、これは厚生労働省のポスターですが、非常に多く発生していますので、これを一人でも食い止めることで、実際に国と共同歩調をとっております。
また最後になりますが、19頁、特に高齢社会、高齢化は、アジアにおいて今後急速に進むことがわかっております。そういうことを念頭において、「2010年アジア・エイジング・フォーラム」を昨年開催しました。今年も「アジア・エイジング・フォーラム・2011」、来年は大きな「アジア・エイジング・サミット」、それはすべて、研究者だけではなく、ビジネスセクター、あるいは行政の方などをすべて含めてやろうと思っております。また例年行っております「国立長寿医療研究センター国際シンポジウム」も今年は特にアルツハイマーで企画を組んでやるところでございます。以上が国の施策と医療政策の推進等に関わる事項です。以上でグループ1は終わります。
○猿田部会長代理
クリアカットに説明していただきましたが、どなたかご質問ございませんでしょうか。
○三好委員
質問ですが、9頁の認知症先進医療開発センターは、新たに設置された、設定されて、これから動きますということですね。
○国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター長
平成22年4月に設立をいたし、活動を始めております。
○三好委員
ありがとうございます。
○祖父江委員
非常にわかりやすくご説明いただいたと思います。臨床への出口型の研究をやっていくという話を途中でされたと思うのですが、例えば、最終的な治験をやっていこうということになると、インフラが現在どのくらい整っていて、それが将来的にどの辺りまでのインフラを整えようとされているのか。例えば、生物統計家、データマネジャーなど、CRCもそうですが、あるいはプロジェクトリーダーのようなものがどうなのかが、少し気になるのですが。その辺り、将来計画でも結構ですが、何かございますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター長
私どもが進めております臨床研究の中で、いちばん最先端で進んでいるのが、口腔疾患の再生に関するものだと思います。そちらに関しては、すでにプロジェクトリーダーを決めて、グループを作って進めています。また倫理委員会、それから先生がおっしゃった生物統計学者に入っていただくような委員会は、正直申し上げてこれから設立していきたいと考えております。
○内山委員
東日本大震災の支援活動について、数次というお話が出ましたが、具体的に延べで何人ぐらいの医療班の方が出られたのか。それから生活不活発病について、掲載されている資料は厚労省によるポスターのようですが、これについて具体的に現地で指導されたかどうかの2点を教えてください。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
まず1点目、1チームは5人です。これを2回派遣しております。1回目は特に在宅医療専門の部長が医師として、そのほかに看護師、薬剤師、事務方のサポートが2名、合計5名です。第二次はリハビリテーション、これは時間が少し経過したので、特にリハビリテーションで重要性が大きいだろうということで、リハビリテーション部長が医師のメインとして、同じようなチーム構成で派遣されています。
それから生活不活発病については、実際にいわゆる避難所を回って、当然現地には多くの市町村の保健師さん等がいらっしゃいますので、その保健師さんたちと協力しながら、実際に身体を動かすこと、それから少し言葉が悪いのですが、あまり大事にしない、自分で動いていただくということを重点的に、いまも継続的に、現在も行っております。それは生活機能不活研究部という部がございます。そこの部長を中心として、現在もそういう活動を続けている状況です。
○国立長寿医療研究センター臨床研究推進部長
追加で、臨床研究のインフラ整備についてです。先ほどセンター長が申し上げたとおりですが、このたび5階建の第2研究棟が出来まして、その1フロアを臨床研究推進部門として整備しました。そこに人的な、特に常勤に近い形での生物統計家を含めた人的な配置の努力をいましております。またCRCもいま働いている者に加えて、強化していく途上にあります。以上です。
○夏目委員
評価項目3、評価項目9について自己評定でSランクを付けられているので、より詳しく説明しようということなのだろうと思うのですが、その間の評価項目1、2はこれからご説明になるのですか。それとももうここはA評価だからいいということで飛ばされたのですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
この後に、私どもから。
○夏目委員
あまりにも評価シート3が詳しく資料が出来ていて、評価項目1と2は非常に簡単なのです。では1と2はこれからご説明があるということでよろしいですか。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
いま部会長がグループ1を説明してほしいということでしたので、グループ1に即するのが3と9になります。
○夏目委員
そうですか。
○猿田部会長代理
1つだけ、先ほどの研究棟のことで伺いたいのですが、やはりナショナルセンターとして特に研究重視なのですが、いまお話にありました新しい研究棟が出来て、人事面で結局、新しいシーズからずっと開発を進めるためには、知財権、あるいは薬理的なこと、さらに生物統計の方などがわかった方、そういったところの人事的なことはもうかなり出来上がっているのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター臨床研究推進部長
知財管理については、ライフサイエンスセンターとの共同ということでやっています。知財の方が常勤して仕事ができるスペースもいま整備した中に設ける予定です。
○猿田部会長代理
さらに整備して進んでいくということでよろしいですか。
○夏目委員
もう1つ、これから高齢化社会が進むわけで、私も含めて認知症、もの忘れなどというのが将来的に心配なのですが、先ほどご説明があったアルツハイマーについてのいろいろな研究・開発をされていて、30年はかからないというお話があったと思いますが、あと何年ぐらいしたら一般に実用化されるのか。その辺の見通しはいかがですか。
○国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター長
いろいろな所で必ず聞かれる質問ですが、少なくてもいま大きく、あるいは欧米の製薬企業を含めて、開発のパラダイムを変えていこうという大きなうねりがあります。一言で申し上げると、オープンイノベーション、いままでは企業あるいは大学、すべてが自分たちの持っているものを抱え込んで、協力はなかなか出来なかったところがあります。幸い私どもは昨年独法化しましたので、国有財産保護法のもとに、やりにくかった知財のことなど、それを非常に活用できるようになりましたので、少なくともいままでのような時間と費用はかからないということで、ご勘弁いただきたいと思います。
○本田委員
確認のために教えていただきたいのですが、この評価項目3がSということで、いちばんアピールしていただいているのだと思うのですが、9頁のアミロイドβ蛋白標的薬の開発、タウ蛋白標的薬の開発、ここの部分についてのご説明だったと思うのですが、両方ともこのシーズを研究所で見出しておられ、それを実際の実用化の薬に乗せるための研究が、さらにベンチャーと一緒に進んでいるという理解でよろしいのですよね。
○国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター長
そのとおりです。まず、私たち自身が開発したものでなければ、なかなか産官学と申しても企業の方も協力しにくいところもあろうかと思います。現在行っているのは、私たちのシーズです。ただ将来的には9頁の左下、認知症研究コンソーシアムというようなものを作りたいと、少し大きな話をさせていただきましたが、もしそういうことが可能であれば、私たちがプラットホームを準備して、そこに例えば、ほかの大学、ほかの研究所の方のシーズを導入して、一緒にやっていくということも可能ではないかと考えています。
○本田委員
そういうこともやっていこうということですか。
○国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター長
是非やりたいです。
○本田委員
ちなみにこの2つの薬は、矢印の棒線にいくと、ここを出たばかりという感じでしょうか。どの辺にあたるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター長
黒の棒線が左から上に時間が流れていますが、おそらく全部で20年。比較的早い所と進んだ2点で、止めたいと考えています。
○猿田部会長代理
よろしいでしょうか。それでは評価に入ります。もう1回、私が最初に説明すればよかったのですが、第1グループはここでは項目3及び項目9で、研究・開発に関する事項、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進、国への政策提言に関する事項、その他我が国の医療政策の推進等に関する事項ということです。
次に、また1、2を説明していただくということでよろしいですね。
(評価シート記入中)
○猿田部会長代理
それでは時間がまいりましたので、次に入りたいと思います。次が第2グループで、今度は項目の1~2及び項目の4~8です。研究・開発に関する事項、臨床を志向した研究・開発の推進、病院における研究・開発の推進、医療の提供に関する事項、人材育成に関する事項、医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項についての評価になりますが、法人から10分間、それから委員の評定を含めて15分間です。実は、最初にいただいていたシートと今度のが少しずれているものですから、それで先ほどちょっと混乱したということです。申し訳ございませんでした。
それではよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
病院長の鳥羽です。もの忘れセンター長を兼任しておりますが、説明させていただきます。
20頁の評価項目1で、臨床を志向した研究・開発の推進ですが、研究所と病院等、センター内の連携強化は数で29%増加していますが、実際に人事の交流や5テーマ以上で複数の研究班において双方の人材が同時に研究をやっているという状況です。評価シート45~50頁をご覧ください。産官学との連携強化ですが、ここには簡単に書いていますが、評価シートの49頁に受託研究、産官学連携と複数の項目が挙がっていまして、特に49頁の企業との共同研究の実施状況におきまして、平成22年度に8項目の具体的な共同研究がなされています。研究・開発の企画及び評価体制の整備では外部委員による研究評価体制を元々取っておりましたが、この評価シートには書いてはいませんが、より厳しい内部評価の研究発表を昨年の秋に始めたところです。
それから、知的財産の管理強化及び活用推進には顧問弁理士を確保し、TLOの活用による相談支援機能強化を行っています。
次頁の共同研究の具体例ですが、先ほど柳澤センター長からありましたようにPET検査を研究データに基づき、実際の病院でこれらを患者さんに応用してやっていくことです。その下に書いてありますが、J-COCMIC、SEAD-J、J-ADNI、この3つとも全国規模の臨床の画像の共同研究でして、いろいろな方法を用いて認知症を早期に発見するためにはどうしたらいいかを長寿だけではなくて、全国の様々な組織で実際に患者さんにおいてやらせていただいて、2年ぐらい前からアルツハイマーが確実に予知できるといった成績を出しているところです。
22頁は、評価項目2の病院における研究・開発の推進です。24頁です。もの忘れセンターは2,000?を超える日本最大の広さの認知症疾患医療センターで、愛知県で初めてですが、特徴は、5診療科合同、神経内科、精神科、脳神経外科、内科、放射線科が同時に関わることです。同時にカンファレンスを毎週やって、年間の患者さまが新しい患者さんだけで1,200名が来る日本の最大のものです。小さく書いてありますが、認知症の早期発見から周辺症状と言って、気分の乱れ、そして体、肺炎などの合併症の治療、そして終末期の医療まで、発見から終末期まで、一貫してすべての医療サービスにおいて日本一を目指すものです。これは認知症疾患医療センターのモデルになることは最低限の目標としています。昨年度は外来部分だけがオープンしまして、25頁に外来の写真が載っています。メンバー構成などが書いてありますが、カンファレンスをやって、そして後ほど述べますボランティアの患者家族教室をやっています。この患者さんの、相当外来数を増やしましたが、残念ながらまだ、外来が4カ月待ちの状況になっています。
26頁の評価項目4、高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供ですが、評価シート56~70頁です。認知症の早期診断法の確立、運動器疾患、褥瘡、感覚機能、たくさん書いてありますが、主にこの長寿医療研究センターの病院におきましては、寝たきりの主要疾患の認知症、それから骨粗鬆症、転倒骨折といったところに特に焦点を置いておりまして、脳血管障害については国立循環器医療センターに譲っておりますが、寝たきりの予防の原因になる疾患、そして寝たきりになったときに起きてくるような様々な病態についての先駆的な医療を提供することを目標にしています。
27頁は先ほどと被りますけれども、認知症の早期発見のためにこのような新しい画像診断法を使いますと、2年以内のアルツハイマーの発症が80%以上の確立で予測可能であるといったようなことを出しています。また同時になりにくい人もだんだんわかってくるところです。右側には東京大学の岩坪先生が主体にやっておられるJ-ADNIと言いますが、日本全国規模の中で画像診断の中心を長寿センターが任されています。
28頁は、筋肉減少と転倒予防で、転倒は骨折の原因の8割で、骨折は寝たきりの3番目の日本での原因になっています。そういった意味で、転倒予防は大変重要です。全国の複数の県で調べました治験を基に、ごく簡単な転倒を予測するような転倒予防手帳を万単位で配りました。その予防効果を測るとともに、この右側の複数の写真の中段にあるような、長寿センターでオリジナルに開発した分度器みたいな小さな機械が足関節の挙上角度の測定器ですが、これによりまして全然角度が上がらない人は2人に1人は転びますが、30度以上上がる人は1割しか転ばないことで、この機械を研究所の長寿医療工学と一緒に大きく作りまして、現在、複数台配って、これは厚労省の転倒予防のためのものに何れ採用される運びになっています。
29頁です。通常、虫歯は痛くなってから発見されるのですが、近赤外線を使いましてごく軽度のときにその虫歯が早期発見されて、早期に治すといったような診断法の開発に成功しています。そしてこの診断法は実は口腔内のがんの診断にも応用できることで、これはパナソニックなどとのいわゆる産学の共同に進んで行っています。
30頁の評価項目5、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供です。自己決定への支援としまして、わかりやすいハンドブックを作成しました。そして患者参加型医療の推進でもの忘れ家族教室を開催しています。31頁です。もの忘れ家族教室の開催で、月3回ずつ、医師、看護師、医療福祉士や様々な他職種が交替でご家族に対して30分ぐらいのお話と30分ぐらいの質問を設けてやっています。当初、5、6名の参加と思っていましたが、多いときには50名ぐらいの参加がございまして、毎回、20名ぐらいの方に熱心に聞いていただいています。もの忘れ家族教室は自分が聞けないことを他のご家族が聞いてくれたりということで、大変効果があると同時に、この家族の中で、じゃあ、家族の会をここで作ろうかというような動きが、最近出ているようです。
評価項目6、その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供ですが、認知症に対する包括的支援の提供ではだぶりますが、もの忘れ家族教室の開催、そして医療従事者の研修会の開催は、長寿センターの内部におきましては、私、病院長が昨年10回、老年医学に関するものを開催しました。モデル的な在宅医療の提供とモデル的な終末期医療の提供は次頁で、モデル的な在宅医療支援病棟の取組みを書いています。
やや複雑な絵ですけれども、ご存じのように40年前には8割がお家で亡くなっていた方が、現在、お家で亡くなられる方は14~15%のようなところです。そして病院のベッドが増えないためにこれからお年寄りが増えて行ったときに、どこで亡くなったらいいかが深刻な問題になっています。この在宅医療支援病棟は、開業医の先生が午後からの先生でも少し不安定なときに開業医の先生自体がうちの病院のベッドの入院決定権を持って、そして病院に来ていただいて診るといったために在宅復帰率が96%、在宅死亡率が36%と愛知県の3倍の成績を出しています。
この仕組みをいま、複数のところでやっておりますけれども、人口10万人の都市であれば、このようなベッドがどのぐらいあれば、より在宅での安らかな看取りにつながるかどうかを提言しておりまして、これに関しても医療政策に近々活かされると聞いております。
34頁のモデル的な終末期医療の提供の取組みですが、医療を含め、この終末期に関しては様々な問題があります。少なくともご本人の終末期の希望をしっかりと聞いて、なるべくそれを活かすような医療をするために、このようなことを聞いてなるべく活かすようなことをしています。
36頁の評価項目7、人材育成に関する事項です。リーダーとして活躍できる人材の育成は、全国に老年医学教室は22しかないものですから、夏にサマーセミナー、そのような学生を集めて現在、ちょうど今日、明日ですが軽井沢で行われています。そして長寿医療分野に関する職員向けの講習会を先ほど私がやったと申し上げました。36頁にサマーセミナーの写真がありまして、泊まりがけで若い熱心なこのような分野を志す人との交流をしています。
37頁の評価項目8、医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項です。ネットワーク構築ですが、認知症サポート医と申しまして、これは主に自治医科の先生です。ご存じのように、10年前には認知症は50%のお医者さんはまだ病気ではないと考えておられましたけれども、現在、この認知症を正しく知っていただくための講習会を年に6回やっていまして、サポート医を1,667名養成しました。これによってかかりつけ医対応力向上研修と二次的に各医師会で教えていただいた認知症に理解のある医者は、全国でちょうど約3万人の養成ができています。情報収集・発信についてはホームページ、ハンドブックの作成です。38頁に認知症サポート医養成研修事業の体制があります。
以上、駆け足でしたが、病院及び診療体制に対する説明をさせていただきました。
○猿田部会長代理
どうもありがとうございました。非常にわかりやすく説明していただいたと思いますが。それではどなたか、ご質問ございますでしょうか。
1つ伺いたいのは、いまの実地医家の先生方と連携を取ってやっていますと、かなり先生方は積極的にやってくださいますか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
最初の日は医師会から行けと言われて来た、何のためにここに来たかわからない。帰るときにはこれからサポート医として地域で是非、認知症を支える医者の核となりたいと言って帰っていただいて、いろいろ逆にこちらがエンカレッジさせられることが多いです。
○猿田部会長代理
実際に医療現場で聞いていますと、やっぱり非常に大切な問題なので、できるだけ積極的に参加したいという意見が強いものですから。ありがとうございました。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。大変、よくわかるご説明をいただきました。ちょっと2、3お聞きしたいことがあるのですが、まず1つは、先ほど来、地域医療の話で、いまもご質問がありましたけれども、地域に対する医療とそれからナショナルセンターとして診療でどういう展開をしていくのかの2つの狭間があると思うのです。例えば先生の話をちょっとお聞きしていると、地域で、例えば1つの疾患と言うか、老年、高齢者に関する医療システム、ケアシステムを構築することが、それが全国へ展開することになるのだというようなお話のようにもお聞きしたのですが、その辺はどういうふうに切り分けておられるかをちょっとお聞きしたいのですが。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
地域の病院として、お年寄りが「私はここが悪いのだけれど」と言ったら、ナショナルセンターだから診てもらえないことはありません。すべての臓器に関して地域の医療機関としての役割は果たしておりますし、例えば神経難病や血液がうちの病院から南の、半島の中間にあるのですが、お医者さんがいませんのでしっかりとやらせていただいています。ただ、このナショナルセンターとして寝たきりに繋がるような、全国に対する情報発信をするような機能を同時に持たなければいけないということで、そちらをちょっと強調させて言わせていただきました。
○祖父江委員
この病院と研究所との連携をしながら出口に持っていくという話をいただいていると思うのですが、このもの忘れセンターもすごくすばらしいと思っているのですけれども、具体的な認知症では例として共同連携が行われているという話をいただいたのですが、先ほど、最初にお話をいただいた骨粗鬆とか感覚器、いろいろなミッションがありますが、そういうものが病院と研究所との間で、どういう連携を取ろうとされているのか、これからのことでも結構なのですが教えていただけますか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
いちばんわかりやすい例は、研究所に長寿医療工学という実際に支援機器を作成してくれるところがあります。先ほどの私の転倒予防外来で、「あの機械を作ってくれ」と言うと長寿医療工学が1週間で10台作ってくれました。ですから、それの検定とか研究レベル、それに握力計を作ってもくれますし、様々な研究所の部門がありますので、それがまた、企業とつながっていくと。ですから、そのいろいろな他の感覚器の分野でも同じようなことがされています。ですから実質上、日々、ご連絡をお願いしているところです。
○猿田部会長代理
ほかにございませんか。
○花井委員
ナショナルセンターとしては、ある種、モデルを作って、病診連携なり地域のケアチームとの連携のモデルを作るということで、それを広めて行くことだと思うのですが、養成研修も全国でやられているということなのですが、結構、全国というのは幅広くやられているかをお聞きしたいのと、あと、研修を受けられる医師の年齢はどんな感じかをちょっと教えていただければと。それでやっぱり地域の医師会との連携でやられているのかどうかと、その点をちょっと教えてください。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
九州から北海道まで、主に大都市ですが年に6カ所やらせていただいています。それで、各医師会からの推薦という形でやっていますが、最近はご自身で受けたいという方もいらっしゃいますので、その場合には医師会に申し込んでいただいてという形になっています。
年齢は、本当に20代の方から70代の先生まで様々ですが、平均して大体40代ぐらいの先生が最近、増えてきたような気がします。サポート医研修のことでよろしいのですよね。
○花井委員
はい、よくわかりました。やはりいま、都市部のケアと、それから地方のケア、そういう分け方でいいかどうかも含めて何か議論の基軸がないところでどうするかというところもあるので、是非、その辺を取り組んでいただきたいと思います。ありがとうございます。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
ありがとうございました。在宅医療の提言をさせていただきましたが、やはり在宅も都市と地方では全く事情が違いますので、その事情に応じたことをやはり、認知症のサポート医研修でも取り入れるように、その与えられた課題について都会型だけでやっていたら大きな間違いだと、実はそう思っております。
○夏目委員
ちょっとまたご説明があったことの理解不足の質問になるかもしれませんが、例の高齢化に伴う認知症、あるいはもの忘れという大きな問題に対して、研究所では先進医療開発センターを設置されて、いろいろな研究・開発を進められる。病院ではもの忘れセンターで臨床でこの問題に対応するのでしょうが、この2つの機関は、役割分担などは明確になっていると理解してよろしいのですか。病院はもの忘れのご老人の治療を主にやるのだということになると、地域医療のような色彩が強くなるのかという感じがするのですが、もの忘れセンターとこの先進医療開発センターとの役割分担みたいなものはどうなのでしょうか。ちょっと理解不足での質問かもしれませんがよろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
もの忘れセンターは基礎研究以外は全てやります。臨床もやりますし研究もします。認知症先進医療開発センターは患者さんを直接診ること以外の臨床研究、基礎研究をやるということで、臨床研究では重なってオーバーラップしています。例えばもの忘れセンターでは年間1,200名の新しい患者さんの同意を得て、ほとんどの方から血液などをいただき、将来の研究に資するものを溜めていますが、これも研究所とタイアップしてやっています。だから将来、認知症先進医療開発センター、もの忘れセンターはより融合した組織になっていくと私は思っています。
○国立長寿医療研究センター臨床研究推進部長
追加してよろしいでしょうか。ただいまの件ですが、22頁にありますように臨床研究推進部による臨床研究支援体制の強化とありますが、これは病院に向かってることだけではありませんで、基礎研究をやっている先生方のシーズが発生したときに、それを受けてどう臨床研究に持って行くかをアドバイス、あるいは具体的にここでこうしたらいいということを提案する機能として取っていただければ幸いです
○猿田部会長代理
ありがとうございました。あと1つだけ私が参考でお聞きしたいのですが、いま老年医学サマーセミナーがあって、本当に興味のある学生が来ていますけれども、やはり大学に老年科が置いてあるところの大学から来るのが多いのか、そうでないところから来るほうが多いのか、そこはどうでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
半々です。やはりないところが若干多いのですが、そういうことです。
○猿田部会長代理
その問題が本当に議論のあるところで、もっと置くべきではないかとの議論があって、うちの大学でもなかなか揉めているものですから。ありがとうございました。
○祖父江委員
人材育成でちょっと1点だけお聞きしておきたいのですが、若い人たちの、例えばレジデントだとかその次の段階、あるいはPIへ行く、更には研究者として、あるいは臨床家として独立していくというようなキャリアパスを描く観点から、これも今後の見通しでも結構だと思うのですが、例えばアカデミアへの就職、これは実績になるのかもしれませんが。それから学位をどうするのか、それから海外との関係をどうするのかというような観点が必要だと思うのですが、その辺は、今後のあれでも結構ですけど、ちょっと教えてください。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
学位に関しては、連携大学院がたくさんありますが、より多くは大学院生といったものを当センターで受け入れて、そのセンターの中で研究を一部やっていただくようなことをもっと広げたいと思っています。海外とのものはこの9月にもカナダにまいりますが、より海外留学の機会を得たいと。
アカデミアには、当然、中から人事交流でどんどん教授になって行って欲しいと思っておりますけれども、いままでまだ、不十分なところがありましたので、これは1、2年でできるものではありませんが、大きな目標として頑張りたいと思います。
○本田委員
すみません、3点あるのですが、1つはこの28頁の転倒予防のところで、こういうところを外来で取り組んでこられて、今後、国の政策なんかにもというお話でしたが、これはずっと長年のものを収集されて平成22年度にこういうものがまとまったということなのですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
この機械自体、ようやく1つだけでなくしっかりと作れる体制になりましたので、ここに発表させていただきました。
○本田委員
平成22年度にできたということですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
平成22年度までにやったものです。
○本田委員
あと、29頁で、日本発・世界初の製品化を目指した開発研究ということで、これはもう製品開発ができたという理解でよろしいですか。それとも進捗中ということでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
パナソニックヘルスケア社製のもので、もうできています。
○本田委員
できたということですね。もう1つ、これは意見と言うかあれなのですけど、ホームページとかを通した国民への情報提供とか、いろいろ素晴らしい研究とか、いろいろのデータとかあるようなのですが、そういうところがちょっともう一つ、弱いと感じたのと、私はメディアなのですが、メディアへのアピールとかもちょっとないのか、書いてないだけなのかなと、これからやられるのかなというのをちょっと教えてください。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
私は東京から移って、まさにそれを非常に感じていて、やはりこのメディアとの関係が非常に実際は弱い。ホームページについても田舎臭くて全然、行ったときは0点でした。まだ、相当駄目だと思います。渡辺室長に日本で一番いい、見栄えのする病院のホームページのところに研修に行かせまして、いま鋭意改良中ですので、来年度の評価においてはもう少し高い評価をいただけるように頑張りたいと思います。
○猿田部会長代理
それでは、4~5分いただきまして評価をお願いします。
(評価シート記入中)
○猿田部会長代理
次は第3グループということで、項目の10~12です。効率的な業務運営に関する事項、法令遵守等内部統制の適切な構築についてということで、法人から10分程度でご説明をお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
最初に総括的なことを1、2分だけ私から話します。主に経営に関しては病院の経営が問題になるということで、昨年10月に病院原価計算を導入し、病院における収入および支出について細かく見直しをしたところです。それに至る前に経営の状態について、奈良県立医大の今村教授に生の数字を見ていただいて、課題を見ていただきました。もう1つは、人事評価については、研究所においては研究業績、病院においては患者数、売上、利益などを含め人事評価制度を昨年から取り上げ、本年4月からはこれによって給与に反映しているところです。あと、細かい点については、経営企画戦略室長から説明します。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
評価シートで言うと93~95頁、評価票の96頁になりますが、パワーポイントは39頁です。最初に評価項目10、効率的な業務運営体制ですが、当センターとしての使命を果たすことができるように組織の見直し、研究、診療部門の強化、総人件費改革への取組みを行っており、組織の見直しについては、大体どこのセンターも似たようなことかと感じていますが、その中で?ですが、当方としては、病院経営や知的財産権の管理に精通した外部有識者を「総長特任補佐」「顧問」という形で任命をして、いろいろとこういった病院経営、知的財産のことについてのアドバイスをいただいたりしています。
研究、診療部門の強化については、先ほどのもの忘れセンターとか、認知症先進医療開発センターのところで説明があったとおりです。
総人件費改革の取組みについて、基本的にはパワーポイントの43頁のところに全体像が載っていますが、給与体系の見直しを図りましたが、その他具体的に技能職の退職の不補充とかアウトソーシング化、また看護業務量の変化に応じて外来診療部門への非常勤看護師の配置等、柔軟な人事配置を行ったりしています。
40頁は事務部門を絵にしたものでして、そこに黄色く描いてありますように「人」「物」「金」を分離する形で3部を新しく創設したということです。
39頁のところで言い忘れましたが、この他に副院長の複数制とか、特命事項に関する事項を統括・整理する特命副院長の設置を可能としたり、また4名の特命診療部長を設置しました。
パワーポイントの42頁を見ていただきますと、それについて少し詳しく図示しています。この中で下のほうになりますが、研究についても研究所の部・室とは独立した研究体制を構築して、必要に応じて横断的なプロジェクト研究に取り組むことが可能となる体制も整備しています。
評価項目11になりますが、パワーポイント44頁です。評価シートは98~105頁、評価票は106頁になります。平成22年度の実績ですが、収支改善を推進した結果、数字はここには出ていませんが、経常費用が76億2,000万円、経常収益が74億7,000万円ということで、割算をして経常収支率が98.0%でした。最終的な総損失を2.1億円計上しています。
一方、一般管理費については3.1億円であり、前年度と比較をして32%の減になっています。未収金の比率は前年度と同様の0.07%であり、一般管理費については数値目標を達成する形になっています。
こうした経費の節減策として、医薬品、医療用消耗品の共同講入や、診療材料の契約単価の見直し、あるいは水道光熱費や役務費など一般管理費の節減を行うとともに、職員に対して、先ほどもお話がありましたが経営改善セミナーを開催したり、また節減に対する啓発活動を行ったりした結果です。
次に45頁です。一方、収入増対策ですが、先ほど院長からも冒頭少し話がありましたが、収入増に対しても基本的には民間手法を取り入れた形で収入増を図りました。施設基準の新規、上位基準取得による診療収入の増とか、診療報酬プロジェクト、診療科長会議、目標患者数ヒアリングなどによる診療報酬増、請求漏れ改善セミナーの開催、緊急点検チームによる請求漏れ対策などに取り組み、結果として前年度と比較して約1億6,300万円の医業収益の増となっています。
電子化の推進についてですが、イントラネットによる院内掲示板の活用、昨年10月から電子カルテを導入しています。また、財務会計システムの導入により、月次決算を実施しており、46頁にその節減と収入を1枚にまとめたパワーポイントがあります。先ほど述べたことのほか、左に書いてある項目などを踏まえて、最終的に診療収入では1億6,000万円の増収、いきなりであれですが材料費率が0.82%減ったということです。一般管理費も減少しています。次の47頁を見ていただきまして、いちばん下段ですが、こうした結果、先ほどから申し上げていますが経常収支率98.0%となっており、本日の冒頭にも話が出ていましたが、計画よりも1ポイント改善をしています。今後とも診療収益の増収を図り、いま収支相償を目指していきたいと考えています。
次に49頁をご覧ください。電子化の推進における効率的な業務運営についてですが、企業会計原則に基づく会計処理を実施するため、新たに財務会計システムを導入し、左のところに書いてありますようにほかのシステムと連携しながら、真ん中に書いてありますように月次決算、月毎の患者動向、月別部門別収支状況を把握し、関係者間で情報を共有し、経営改善を進めてまいりました。これは先ほど院長が話した内容を絵にしたものです。
これだけではありませんが、これらのことから平成22年度の決算は、先ほど申し上げましたとおり総損失として2.1億円の赤字となっていますが、当初の見込みよりは6,000万円の改善になっており、そういう改善をしているところです。
次に評価12です。法令等内部規制の適正な構築ですが、評価シートの110~112頁、評価票は113頁にあります。内部統制部門として新たに監査室を設置し、内部監査に加え、会計監査人や監事と連携しセンター業務について監査および指導を行っています。
平成22年度は、研究費に係る会計処理状況の調査をはじめとして24回の内部監査を実施しました。契約業務に関しては競争性、公正性、透明性の確保、不正行為防止の観点から国の基準に準拠した会計規程や、契約事務取扱細則などを整備するとともに、原則一般競争入札であることなどの周知徹底を図っています。院内売店などの運営についても、総合評価によるプロポーザル契約を導入しました。また、公的研究費の不正防止のため、研究活動規範委員会の設置や不正行為窓口を設置しています。
最後に53頁をご覧ください。更なる契約事項の競争性・透明性の確保をする観点から、契約監視委員会を設置すべく準備を進めてまいりまして、3月にこの委員会を設置することができたところです。私からは以上です。
○猿田部会長代理
ご質問をいただけますか。
○三好委員
総人件費のところで、私が見ている頁は評価シートの94頁ですが、総人件費は対前年で3%増えているけれども、それは理由があって、結局、最終的には中期の中ではそれは減るということなのでしょうか。要するに、ゴールをどこに置いて、いまは増やしたと。いまは人件費が増えているので、元来、総人件費を減らしていきましょうという方向性があるにもかかわらず増えているということは、何か理由があって一時的に増やして、ゴールはもう少しスリム化するのです、しないのですと。それはどちらでも構わないのですが、ゴールの姿がこうだからいまは増えていますよと、その理由を。
○国立長寿医療研究センター総務部長
私から説明をします。人件費の増加については、ご存じのようにどうしても医療を行う上で医師とか研究者の増員が必要となってまいりますので、今回、そこの部分が増えたということです。
ただ、特に問題になっている技能職であったり、事務職であったり、そこの部分については更なる削減を詰めようと思っていますが、最終的にどうなるかという件については、ご存じのようにもともとナショナルセンターの中で規模がいちばん小さなセンターです。いちばん最後にできたということもあるのでしょうが、ただ同じ医療・研究を行う中で、規模は今後それなりのものを持たないといけないと考えていますので、今後どうかと言われますと、やはり人を増やしていくという形で対応せざるを得ないのではないかという形で考えていますので、そこは必要なところについて増やす、要らない部分については効率化を行うという形で考えています。
○夏目委員
いまのに少し絡むのですが、いままでご説明があったナショナルセンター独法化に当たって、給与カーブの見直しというのを、いままでご説明のあったセンターは全部実施しているのですが、それは長寿センターでも給与カーブの見直しは実施したと。ただ、効果はこれから出てくるということですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
しています。ご存じのようにいまの現給保障がありますので、その方がお辞めになるとかになってきますと、そこでやっと影響が出てくるのかと。
○夏目委員
現給保障は、ここではなくて前のところかな、質問できなかったのですが、何か4年間ぐらい移行措置を設けているというところがあったように思うのですが、長寿センターでも同じぐらい移行期間は長いのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
同じです。
○夏目委員
段階的に実施していかなかったら見直ししたとは言えないのが普通で、それは給料にかかわる事柄ですから、制度を変えたから直ちに減ずることはできませんが、しかし段階的に時間をかけてしていかないと、いつまで経っても変わらないということになってしまいますよね。
○国立長寿医療研究センター総務部長
先生のおっしゃるとおりです。ただ、いま働いている方をある程度の公務員ということで減らす部分はありますので、そこについてはまた今後検討していく中で進めていきたいと思っています。
○夏目委員
細かい質問ですが、説明資料の45頁に「収入増への対策」ということでいろいろなご努力をされているということですが、施設基準の新規とか、上位基準の取得による診療収入の増が、これを合わせて1億8,900万円増になりましたと。それから3行ぐらいあって、上記の対策により医業収益は1億6,300万円の増加ということですよね。上位基準とか何かで1億8,900万円増加して、なぜまたさらにほかの努力もされていてトータルは1億6,300万円になってしまうのですか。ほかのほうの患者が減ったとか何かで減があったということですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
例えば、あくまでもここに書いています新たに取得した施設基準です。ただ、ここで2つ目の急性期看護補助体制加算があります。ここの部分については、もともとありました看護補助加算があります。そこの部分については急性期ということでさらに高度な部分を取っています。ただ、逆に言いますと、過去にあったものはその分取り下げていますが、そこの部分が減っているということがありますので、要するに基準を上げた部分、増えた部分だけが約1億9,000万円。減った部分もあります。先ほど言いましたように取り下げるのでしょうか、変わった部分については下がりますので、そこの部分を計算しますとこのような形になっているとご理解いただければと思います。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
いまのご質問に関して追加します。昨年8月に電子カルテが導入されましたが、この前後で準備および影響で相当落ち込みがありました。原価計算以降、各科の診療科の意識改革でようやくJカーブ現象でそのようになりましたが、ようやくこの程度と。この効果に関しては来年3月になりますと全く違ったものになってくると思っています。
○夏目委員
もう1つ、一般管理費を32%という大幅に削減されて大変なご努力をされたと思うのですが、特にいちばん効果があったというかいちばん大きな節減項目は何なのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
今回は節減にならないかもわかりませんが、それを申しますのは、看護師等の確保が難しくて、そこの部分について病棟を閉鎖せざるを得なくなったということがあり、今回そこの部分について減っている部分があります。ということで、今回32%ということで高くなっていますが、今後、そこについて看護師等の確保ができれば、そういうところが増えてまいりますので、そういうところを努力して15%以上のものは今中期計画期間中にやっていきたいと思っています。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
追加します。委託費とか、材料費について、すべてのナショセンの費用と比べてそれより安くしなければいけないという形、ナショセンと国病機構です。すべてそれと同等かそれを下回る形でお願いしていますので、修繕費も減りましたが、かなりの節減ができたと思っています。ちなみに、特に委託費については、私立の病院とも比較し、それよりも安くできていました。
○祖父江委員
先ほどの人事のキャリアパスとも関連するのですが、これは別の法人、ナショナルセンターにも少しお聞きした同じことを言っていますので、聞き流していただいてもいいとはと思いますが、厚労省のナショナルセンターからあるキャリアをつくって大学へ移られると、退職金の加算がそこで切れてしまうのです。同じ国の中で文科省と厚労省で移ると、全くそこが切れてしまうという状況にいまあり、大学では人事の交流という観点から、これが実は非常に障壁になっているのです。ここで議論する内容ではないと思うのですが、是非これを頭に入れておいていただいて、人事の交流、あるいはキャリアパスをつくっていく上で、私はこれは非常に重要ではないかと思っていますので、また今後の展開で是非よろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター総務部長
いまの点ですが、あとでもう1回説明をしますが、大学から人事交流に来ていただいて籍をこちらへ移していただく方については、退職金は継続してやっています。
○祖父江委員
それは非常にありがたいです。逆の方向がむしろ非常にまずいのではないかと思っています。
もう1点目は、先ほどのご説明で副院長の複数制とか、特命診療部長の配置とか、プロジェクトリーダーの配置は、非常に素晴らしいというか、今後の展開に向けて非常にいい足跡だと私は思います。もう1つは、これはガバナンスを発揮するには非常にいいシステムだと思うのですが、下から上に上げるシステムはどうお考えなのか。いろいろな意見とか、下のほうから上に上げていくプロセスをどう担保するのかをもしお考えになっておられたら教えていただきたい。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
病院だけのことですが、意欲のある、あるいは成績のいい若手の方がしっかりとしたポジションを得るようにしなければいけないとはいうものの、総人件費の中で人件費が上がる部長といったものをどんどんつくるわけにもいかないというところがあります。ただ、人事に関しては複数の人の目をもって公平な昇進のシステムを全国的な公募という形でやっていますので、部長以上に関して。
○祖父江委員
いや、組織の中でいろいろな改善の意見とか、そういうものを下から上げていくシステムが、これは組織のガバナンスという点では、私は上から下という方向では非常にいいのです。
○国立長寿医療研究センター総務部長
いまの件については、若手とか中堅の職員を中心とした活性化委員会をつくり、そちらから取り上げています。
○猿田部会長代理
それでは時間の関係がありますので、評定をお願いします。
(評価シート記入中)
○猿田部会長代理
時間が来ましたので、最後のところに入りたいと思います。最後の項目は、第4グループで評価項目13と14、予算、収支計画及び資金計画等、その他主務省令で定める業務運営に関する事項ということで、法人から10分程度でご説明をお願いします。
○国立長寿医療研究センター総務部長
評価項目13、予算、収支計画及び資金計画等です。資料については54頁、評価シートについては115頁からです。平成22年度の実績ですが、外部資金を獲得するということで、事業者から依頼を受けやすい受託研究の取扱規程の見直しをしています。具体的には、契約金の前払制から出来高払制、申請書の簡素化等を行っています。また、新たに寄附金受入規程を新設して、寄附金の受入れをしています。結果として、対前年度1,200万円程度の増加をしています。
次に負債の減少です。負債の減少については、財政投融資等からの外部資金を新たに借入れを行わず、固定負債等を確実に償還し、対前年度8,000万円が減少しています。
4つ目の重要な財産処分、また担保に供する計画等については、行っていません。剰与金の使途についても先ほどから説明していますように、繰越欠損金がありますので該当していません。
55頁です。財務状況です。先ほどから何度も説明していますが、左の下の表にありますように損益計算書は、経常費用76億円、経常収益74億円ということで、経常収支98%です。また、欠損金として2億円ですが、どちらにしても当該事業年度の予定よりも上回っているということです。運営費交付金の件ですが、平成22年度の経常収益75億円のうち交付金の占める割合は下にあります内訳ですが、約30億円ですので約40%となっています。ちなみに、対前年度というのでしょうか、国時代ですが、国からの補てんは大体60%ですので、ここについては相当よくなっているのではないかと思っています。
56頁です。外部資金の受入れ、投資計画の見直しについては、先ほど説明しました。あと、下の列車のようになっている緑の部分ですが、こちらについては政・独委等からの評価の視点でも言われているところですが、当センターについてはすべて該当していませんので、ここについては説明するものはありません。以上について評価シートは評価の13の評価ですが、全体的に若干上回っていますが、ほぼ計画どおりということで、私どもとしてはBという評価をしました。
57頁、評価項目14、その他主務省令で定める業務運営に関する事項です。平成22年度の実績については、主なものとして赤く書かれている部分です。人事システムの最適化、魅力的な職場環境の整備、医師・看護師の処遇改善、アクションプランの作成・管理、NCGG、これは当センターのことですが、病院活性化チームの設置等をしました。
具体的なものについては、59頁から説明をします。職員の実績を正当に評価するために業績評価制度を導入・運用しています。その結果として、右手にありますように平成22年度より評価を開始し、年俸制職員、課長職については平成22年6月から導入、業績については12月から反映、その他の職員については10月から導入、平成23年6月から反映としています。ただ、平成22年度の決算が赤字ということもありましたので、平成23年度のほとんどの年俸制職員から一応、等々になりますが、基本的に業績はすべて下げているのが実績として出ています。
人事交流の促進です。これについてはいい人材を確保するということですが、当センターと国、国病機構、国立大学法人、他の独法、民間という所を想定して、平成22年度の実績は40人です。ただ、平成22年度については、国から大学までは実績ですが、民間等についてはありません。平成23年度においては老健施設からの受入れを開始しています。
60頁、職場環境の改善です。これについてはまさに職員が働きやすい環境づくりです。主なものとして5点やりました。全職員を対象とした職員満足度環境改善アンケートを実施し、ここで問題点を取り上げています。センター内の院内保育所ですが、これについて充実を図り、具体的には保育者数の増、延長保育の実施を行いました。
3点目です。育児休業制度の見直しを行い、育児短時間の対象を小学校前から小学校3年までに拡大したということです。あと2点やっており、看護師のリーダーシップ研修の実地をし、下からの相談に対応できるスキルアップの向上に努めました。スキルアップ講習会ということで、最近特に問題になっていますコミュニケーション、これについて能力を上げるためにやり、全体として医療職の4割程度の研修をここで受けています。
次に、良質な医療提供のための医療従事者の確保です。これはどこの病院も大変だと思いますが、医師・看護師の確保をするために、そこに書いてあるものをやりました。
61頁です。専門性の高い職員の採用制度の創設です。私どもは採用に当たり、基本的には公募をしています。ここについては優秀な部長、医長、室長等の専門性を有する方たちを採用するためにそういうものを開始しています。ただ、採用に当たりましては、単に書類、面接というものでの選考だけではなく、私どもとしてはセミナー方式による発表等を行っていただき、それによって決定するということで、ただ書類と面接だけではないということで、昨年度は実績として病院の部長1名、研究所の室長等で4名、計5名をこれで採用しています。
医療のニーズに合った職員の配置です。中身的には施設基準・医療安全等を考慮した職員配置、アウトソーシング化、勤務実態に合わせた職員配置ということで、先ほどから何度か出ておりますように、看護師の確保について相当困ったことがありました。他の病院同様、看護師の確保については相当厳しく、病棟閉鎖というところに追い込まれたところですが、私どもとしては単に病棟閉鎖をするということではなく、まず平均在院日数の短縮を図るというところをやり、1病棟を閉鎖しても周りから求められる医療についてはしっかり確保するということをさせていただき、その結果として1人当たりの診療点数アップにつながり、また本年度7月には看護師配置基準7対1を取得することで実績も上げています。
ミッション達成のための取組みです。私どものミッションは、まさに中期計画、年度計画ですが、これについては左にありますようにそれぞれの実行前に主任者を定め、それぞれのミッションに対するアクションプランを作成し、進捗管理、問題点の整理という体制を整備し、先ほどから申し上げました事項に対して実施しているところです。その辺についても中期計画も含めてホームページ等への広報活動も実施しています。
最後ですが、これは特に政・独委や厚労省の独法委員会から必然として示されている部分です。職員・患者等からの提案に対する取組みですが、左にありますように、患者等からの意見については、どこでもやっていますが、意見箱、メール等に対しては私どもは2週間以内には回答するという形で考えています。また、満足度調査をやっており、これについては他のNCと平均として私どもは上回っています。
先ほど祖父江先生からもありましたが、職員からの意見についてどうするかということです。これについては意見箱等を設置し、これに対してまず多職種から成る若手、中堅職員で構成された病院活性化チームを設置し、そこで検討をしています。この結果については、私どもの最高決定機関等である運営会議に報告しており、重要な案件ついては理事会へも報告しているということです。
具体的な改善については、先ほどから申し上げているとおりですが、業務の改善や事業の見直し、また新たな職員の表彰等をするということです。それらを総合し、評価項目の14ですが、相当速いスピードでやっていたということ、また多岐にわたって報告を行った、改善を行ったということですので、自己評定をAという形にしました。
○猿田部会長代理
それでは、ご質問をお願いします。医師の確保に関しては、いまどうですか。かなり厳しいですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
昨年は麻酔科もリハビリの常勤医も私が来たときはいなかったのですが、それらを確保できまして、一応最低限のものは確保されていますが、まだまだ若手の医師が足りない状態ですので、頑張りたいと思っています。
○夏目委員
長寿センターは愛知県にあるのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
はい。
○夏目委員
そうすると、地域手当みたいなのがありますよね。
○国立長寿医療研究センター総務部長
はい。
○夏目委員
そこだと東京などに比べると相当低いのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
6%です。
○夏目委員
看護師にご苦労されているというのは、そういう待遇の問題が民間と比べて見劣るというところですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
はい、先生がおっしゃるとおりでして、私どもは大府市という所で、愛知県名古屋市に近接する市でして、愛知県名古屋市は10%であり、やはり看護師の給与が低いということで、昨年中に近隣のすべての病院等の調査を行い、大体1万円ぐらい低いということがありましたので、ここについて給与の制度を若干改正し、1万円の増額。ただし、これはずっと1万円の増額ではなくて、年々下がるシステムを考えました。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
付け加えますと、東海地区、名古屋地区は全国的に見ても看護学校などの数で看護師がいちばん厳しい日本の中の地域なのです。
○猿田部会長代理
いま国立病院機構の矢崎先生も、医師・看護師の確保ということで大変なのです。そこのところのお金の問題はできるだけキープしてという形です。それも先生方の所は7対1が維持できているということで、それはいいですね。
○国立長寿医療研究センター総務部長
7月から7対1になっています。
○猿田部会長代理
ほかにどなたかご意見はありませんか。もしありませんようでしたら、最後の評点をお願いします。
(評価シート記入)
○猿田部会長代理
長時間にわたりましたが、これですべての評価項目に関して評定を付けていただいたかと思いますが、どうもありがとうございました。事務局から今後のことをお話しいただきたいと思います。
○政策評価官室長補佐
繰返しになり恐縮ですが、評定記入用紙については8月9日(火)の締切厳守ということで、それまでに事務局までファックスおよびメールでご提出いただくようお願いします。
もう1つ、次回の開催予定です。次回については、8月10日(水)10時からを予定しています。場所は省内17階専用第21会議室です。机の上に次々回、18日のご案内を置いていますので、そちらについても8月10日までに事務局宛ご提出いただければと思います。よろしくお願いします。
○猿田部会長代理
先生方、どうもご苦労さまでした。また、委員の先生方もありがとうございました。ご苦労さまでした。どうぞ頑張ってください。
<照会先>
政策統括官付政策評価官室
独立行政法人評価係: | 03-5253-1111(内線7790) |
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価委員会(独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会)> 独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第7回)議事録