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2011年6月23日 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 第5回「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年6月23日(木)14:00~16:00


○場所

経済産業省別館1107号会議室(経済産業省別館11階)
(東京都千代田区霞が関1-3-1)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

戒能民江、加茂登志子、水島郁子、山口浩一郎

(厚生労働省:事務局)

小宮山洋子、尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、倉持清子、板垣正、西川聡子

○議事

○倉持職業病認定対策室長補佐 初めに、本検討会は原則公開としておりますが、傍聴される皆様におかれましては、別途配付しております留意事項をよくお読みいただき、静粛に傍聴いただくとともに、参集者の自由な意見の交換を旨とする検討会の趣旨を損なわないよう、会議の開始前後を問わず、ご留意をお願いいたします。
 定刻になりましたので、ただいまから「第5回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」を開催いたします。先生方におかれましては、ご多忙中のところをご出席いただきまして、誠にありがとうございます。なお、黒木先生は所用によりご欠席との連絡をいただいております。会議を始めるに当たり、事務局から資料の確認等をさせていただきます。お手元に資料をとじたものをお配りしていますが、本日ご用意させていただきました資料は、1頁からが資料1「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会報告書(たたき台)」、11頁以降が資料2「団体からの意見要望」の資料になっています。資料の欠落等がありましたら、お申し出ください。写真撮影につきましては以上とさせていただきますのでご協力お願いいたします。それでは座長の山口先生、よろしくお願いいたします。
○山口座長 それでは、議事に入りたいと思います。前回の第4回の分科会では、これまでの検討を踏まえ、各論点についてご議論をいただきました。前回の議論の内容、そのとき、あるいはそのあと各先生からいただきましたご意見も含めまして、本日、事務局で報告書の「たたき台」を用意していただいています。本日は、これに基づいてご議論、ご検討いただければ幸いかと思います。まず、事務局から、この資料について説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 それでは、資料について説明させていただきます。先ほど山口座長からご紹介がありましたとおり、前回のご議論では、論点についてご検討いただき、そのご議論の結果と、その後いただいたご意見を報告書の案ということで、事務局でまとめさせていただいております。あくまで、たたき台ということですので、これを参考にしてご議論をいただければと思っております。
 資料1は、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会、このセクシュアルハラスメント事案に係る分科会の報告書のたたき台ということで、お示ししております。章立ては、1番が「はじめに」、2番が「認定の基準について」、3番が「運用について」という構成としております。1の「はじめに」ですが、この検討会を行っている趣旨を書いております。精神障害の労災認定について、「セクシュアルハラスメントを受けた」ことは、いまの判断指針のうち「心理的負荷評価表」の中に位置づけられています。しかし、セクシュアルハラスメントは、その性質から、被害を受けて精神障害を発病した労働者の方、以下「被害者」と呼ばせていただきますが、その方自身の労災請求ですとか、労働基準監督署での事実関係の調査が困難となる場合が多いなど、他の出来事と異なる特有の事情があるため、実態を適切に把握した上で、労災認定の基準の検討を行う必要があるということで、この分科会を開催し、特有の事情を踏まえた精神障害の労災認定の基準や運用の在り方について検討を加えたと。今般、その検討結果を取りまとめ専門検討会に報告するという形で、まとめております。
 2「認定の基準について」ですが、(1)心理的負荷の程度とその評価方法で、前回の第4回で示させていただいた論点のうち、心理的負荷の程度、その評価に関する部分をまとめているものです。
 ア「平均的な強度とその修正」ですが、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事について、現行の評価表はその平均的な心理的負荷の強度をIIとしています。しかしながら、セクシュアルハラスメントの態様は非常に様々でして、これによる心理的負荷の強度も、実際には、弱いものから極めて強いものまで幅広く存在するところです。今回、日本産業精神保健学会が実施した「ストレス評価に関する調査研究」の結果では、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事の平均ストレス点数は5.6点で、IIIの出来事の水準が、いちばん高いものが7.1点、いちばん低いものが5.8点でしたが、そこまでには至っていなかったところです。ただ、その回答分布を拝見しますと、0~10点の11段階で回答していただいていますが、最も多い回答は5点(中程度のストレスを感じた)というところでしたが、次に多い回答は10点(極めて強いストレスを感じた)というところで、回答分布が二極化していることが認められます。また、過去の労災請求事案を見ましても、出来事の強度をIIと評価したものがいちばん多いところですが、極度の心理的負荷があったと評価したもの、あるいは強度をIIIに修正したものも少なくないところです。評価表の在り方全体についての検討は、今後、上の検討会である専門検討会で行われることとなりますが、本分科会の意見として、これらの状況を踏まえ、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事の平均的強度はIIとした上で、IIIに修正する要素(行為の態様やその反復継続の程度等)を具体的に示すことが適当と考えます。なお、これまでの「ストレス評価に関する調査研究」は、調査対象者に男性及び正規社員が多いことから、今後、セクシュアルハラスメントを受けやすい女性労働者、非正規労働者の経験が反映できるような調査の仕組みを検討していくべきであるとのご指摘がありました。また、実際に個別の労災請求事案について心理的負荷の強度を評価するに当たっては、被害者及びセクシュアルハラスメントの行為者とされる者「行為者」ですが、その雇用形態等の事情をも評価に際して考慮すべきである。これは後ほど(4)のエでも出てきますが、そのようにまとめております。
 次にイ「特に心理的負荷が強いセクシュアルハラスメントの取扱い」です。過去の労災請求事案の中には、先ほど検討した心理的負荷の強度をIIIに修正するべきもののほかに、強姦ですとか、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為など、特に心理的負荷が強いといえる出来事も認められています。こういったセクシュアルハラスメントについては、その出来事だけで心理的負荷の強度を「強」と判断できる、現行の「特別な出来事等」、一発で強いと言える、そういったものに該当することを明確に定めることが適当であると。なお、この「本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為」というところは、ご議論のあったところですが、被害者が抵抗したにもかかわらず強制的にわいせつ行為がなされた場合はもとより、被害者が抵抗しなかった(できなかった)場合であっても、行為者が優越的立場を利用するなどして、物理的・精神的な手段によって被害者の意思を抑圧してわいせつ行為が行われた場合が含まれることに留意すべきである。
 ウ「繰り返されるセクシュアルハラスメントの評価」で示しております。セクシュアルハラスメント事案は、その大半が当該出来事が反復継続して行われるものです。行為が反復継続することは、心理的負荷を強める要素と考えられ、セクシュアルハラスメントが繰り返し行われている事案の中には、単発の出来事としては強い心理的負荷とは言えないが、これが一定期間反復継続することで強い心理的負荷と評価できるものがある。こういった事案を適切に評価するためには、行為の内容やその反復継続の程度を組み合わせて一体的にとらえ、全体としてその心理的負荷を評価すること、また、その中で、強い心理的負荷といえるものを、具体的に例示することが適当であるとしております。
 エ「出来事後の状況としての申立て等の評価」、被害者の申立て等の評価ということですが、過去の労災請求事案では、被害者が会社に対してセクシュアルハラスメント被害の事実やその改善を申し立てた場合と、申し立てることができなかった場合の双方が見られております。また、被害者が申し立てた場合に、会社側が適切な対応をした事案、対応が適切でなかった事案、何ら対応をしなかった事案がそれぞれみられるところです。前回の資料では、対応した、しなかったとだけ書いていたかと思いますが、先生方から、対応したけれども適切でなかったという場合もあるというご指摘をいただいて、ここを補わせていただいております。こういった事案について、被害者が会社に対してセクシュアルハラスメント被害の事実やその改善を申し立てた場合に、それを契機として職場の人間関係が悪化した事実ですとか、そういったことをしたにもかかわらず会社が何ら対応をしなかった事実は、心理的負荷を強める要素として明示することが適当である。また、被害者からの申立てがなかったとしても、会社がセクシュアルハラスメント被害を把握している、被害者が嫌だと思っていることを把握しているにもかかわらず、会社が全然対応してくれなかったということは、心理的負荷を強める要素となり得ると考えられる。後段についても、これは、先生から補足でご指摘をいただき補わせていただいております。一方、被害者がセクシュアルハラスメントの被害を申し立てなかったとしても、その事実は必ずしも心理的負荷の強度の判断に影響を与えないものと考えられます。また、被害の申立てに対し、会社が発生前に適切な対応を行った場合でも、場合によってはそれで心理的負荷が改善するかもしれませんが、セクシュアルハラスメントの態様によっては、心理的負荷が弱まることがない場合もあることには留意すべきである、とまとめております。
 これらを踏まえまして、「具体的な修正等の例」ということで、具体例をオの中で挙げております。(ア)「特別な出来事等」ですが、先ほどのイの関係ですが、次のような事例については、その出来事だけで心理的負荷の強度を「強」と判断できる「特別な出来事等」に該当することを定めることが適当であるということで、4頁ですが、「強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメント」は、心理的負荷が極度に該当するものということで例示しております。
 次に強度の修正の例ということで、いずれも例示ですが、いくつかお示ししています。メリハリを付けるという観点から、まず強く修正するもの、それから弱く修正するものを示させていただいた上で、参考として、修正をしないものも書いております。ここまでの上記ア、ウ及びエを踏まえて、次のような事例については、行為の態様や反復継続の程度等を要素として、心理的負荷の強度をIII(強い心理的負荷)に修正することが適当であるというものの例として、1つ目ですが、胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、継続して行われた事案。2つ目ですが、胸や腰等の身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった又は会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した事案ということで書いております。身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされているような事案も、IIIの修正の例として挙げております。
 4番目ですが、身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクシュアルハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった事案。この4番目ですが、前回の資料では、これも「相談していても会社の適切な対応がなく」と書かせていただいていたかと思いますが、先ほども御説明したとおり、相談がなかったとしても、会社が、これは本人が嫌がっていることがわかっていたのにやらなかったような場合というのは、やはり心理的負荷を強める要素になるのではないかというご指摘をいただいておりますので、「会社が把握していても」ということで書いております。また、対応の適切さについては、結局改善がなされたか、なされなかったかということが一義的な判断になろうかと考えております。
 これらがIIIに修正する事例ですが、逆に、次のような事例については心理的負荷の強度をI(弱い心理的負荷)に修正することが適当であるということで、「○○ちゃん」と呼びかけたりなどのセクシュアルハラスメントに当たる発言をされたような事案ですとか、職場内に水着姿の女性のポスター等を掲示された事案、ここは前回示させていただいた例から変わっておりません。
 こういった修正の例を示していますが、わかりやすさの観点から、修正しないものの例も示させていただいております。「一般的には心理的負荷の強度を修正しないものの例として、次のようなものが考えられる。ただし、これらの事例にあっても、その深刻さ等によっては修正すべき場合があることに留意すべきである」ということで、修正しないものの例として、胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであっても、行為が継続しておらず、会社が適切かつ迅速に対応し発病前に解決した事案ですとか、あるいは、身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言が継続していない事案ですとか、身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントで、複数回行われたものの、その後、会社が適切かつ迅速に対応し発病前にそれが終了した事案といったものを示しております。
 次に、(2)「評価期間に関する事情」でまとめております。判断指針では、心理的負荷の評価の対象となる出来事は、対象疾病の「発病前おおむね6か月」以内に発生したものとしています。実際に、過去の労災請求事案を見ましても、6か月以上前にセクシュアルハラスメントがあって、発病する直前の6か月には何もなかったという事案はなかったことからも、これは維持することが適当であると。一方で、先ほども述べたとおり、セクシュアルハラスメントについては、当該行為が反復継続しつつ長期間にわたって行われるという事情があります。また、過去の労災請求事案でも、そういった反復して継続して行われているもので、発病の6か月よりも前に開始され、発病前6か月以内の期間までずっと継続している事案が多く見られることから、こういった特有な事情について考慮する必要があると。具体的には、発病の6か月よりも前に開始され、発病前6か月以内の期間にも継続しているセクシュアルハラスメントについては、評価期間の関係について、開始時から発病前までの行為を、一体の出来事として評価することが適当であると。実際、過去の請求事案でも、こういったものを一体的に評価した例が多いとしています。
 これに関連してということで、注を付けております。例えば、強姦等の非常に強いセクシュアルハラスメントを受けて、その直後に無感覚、情動鈍化、健忘など、解離に関連する重度ストレスによる心理的反応状態が生じた事案では、そういった状態のせいで医療機関への受診が直ちに行われずに、医療機関への受診時期が当該出来事から6か月よりも後になった場合もあることに留意すべきであると。ただ、これは、そういったときに発病前6か月の出来事にそれを入れるのか入れないのか、そこを見るのか見ないのかというよりは、発病時期をどこに置いて考えるのかという判断の問題であって、このような場合には、先ほどの解離性の反応が生じた時期を発病の時期と判断して、当該セクシュアルハラスメントは当然評価の対象とするべきであり、発病時期の判断についても、こういった特有な事情があることを示しておくべきである、としております。ここの病名等の書きぶりについては、加茂先生、黒木先生とご相談させていただいて、記載をしております。
 (3)「併発する出来事に関する事情」ですが、セクシュアルハラスメント事案については、セクシュアルハラスメントを受けたという出来事のほかに、行為者からの嫌がらせ等の別の出来事が同時に、あるいは終わってすぐになど近接して生じることが少なくないと。特に、被害者が会社に対してセクシュアルハラスメント被害の事実やその改善を申し立てたことを契機として、行為者や同僚からいじめや嫌がらせを受けたりすることは、しばしば見られる事例です。このように「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事に伴いいじめや嫌がらせ等の出来事が生じている場合は、出来事の心理的負荷の強度を、より強めに修正できることを示すべきであるということで、まとめております。
 (4)の「その他留意すべき事項」ですが、これまでお示ししたもののほか、次の事項への留意が必要であることを示すべきであるということで、アですが、被害者は、勤務を継続したいとか、行為者からのセクシュアルハラスメントの被害をできるだけ軽くしたいといった心理等から、やむを得ず行為者に迎合するようなメール等を送ることや、行為者からの誘いを受け入れるといったことがあります。このため、これらの事実から被害者の同意があったと安易に判断するべきではない。イ、被害者は、被害を受けてからすぐに相談行動をとらないことが多いが、この事実から単純に心理的負荷が弱いと判断すべきではないこと。ウ、被害者は、医療機関でもセクシュアルハラスメントを受けたということをすぐに話せないことが多い。初診時にセクシュアルハラスメントの事実を申し立てていないことのみをもって心理的負荷が弱いと判断すべきではないこと。エ、行為者が上司であり被害者が部下である場合、行為者が正規職員であり被害者が非正規労働者である場合等、行為者が雇用関係上被害者に対して優越的な立場にある事実は、どちらかといえば心理的負荷を強める要素となり得ること。オ、被害者の過去の性暴力被害、妊娠経験等は、個体側要因の判断要素とならないので、調査の対象にしないとありますが、こういったことに留意すべきことを示すために、まとめております。
 (5)の「心理的負荷評価表での位置づけ」ですが、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事は、現行の心理的負荷評価表では、「対人関係のトラブル」という出来事の類型に分類されています。しかしながら、セクシュアルハラスメントは、一方的な被害であることが一般的であることから、「対人関係のトラブル」という分類から想定される、対人関係の相互性の中で生じるものに限らないという事情を考慮して、独立した項目とすることも検討すべきであるというご議論をいただいております。また、今後、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事をさらに細分化・類型化し、各類型ごとの平均的な心理的負荷の強度を例示することも検討すべきというご意見を、前回の検討会後に戒能先生からいただいておりますので、後ほど少しご説明をいただければと思っております。
 3「運用について」ですが、(1)相談・請求段階での対応です。セクシュアルハラスメント行為の詳細は、被害者が他人に知られたくない場合が大半である。このため、精神障害を発病した被害者であっても、労災請求やその相談を控えるという場合があり、そういった事態を解消していくよう、次のような対応が望まれる。1つ目は、被害者が適切に労災請求できるよう、わかりやすいパンフレットを作成して、これを労働基準監督署に置くだけでなく、地方自治体の相談窓口、医療機関、関係団体等にも配布する等、被害者が入手しやすい方法を検討する。2つ目は、窓口での相談の際には、被害者の心情を十分に考慮して懇切・丁寧に対応し、相談段階において業務上認定が困難として請求を断念させるようなことがないよう留意すること。3番目は、請求人からの聴取に当たっては、職員に対する研修を充実させるとともに、専門的知識を有する担当者を育成・配置することが必要ではないか。こういったことが望まれるということを示させていただいております。
 (2)調査に当たっての留意事項で、ア、効率的な調査の実施ですが、調査に当たって、前記2の(1)のオで例示を挙げさせていただきましたが、これに該当すると見込まれる場合には、主としてそれらの例示に該当する事実があるか否かを確認する調査、そこにターゲットを当てた調査を実施して、できる限り調査の迅速化、請求人の負担の軽減等を図るよう努めることを示させていただいております。
 イ、関係者からの聴取として、実際の調査に当たっては聴取という方法が非常に重要になってくるわけですが、セクシュアルハラスメント行為の詳細は他人に知られたくない場合が大半であることや、被害者が被害の事実を想起することによって精神障害が悪化する場合があることを考慮し、労働基準監督署での調査のうち、特に、被害者や行為者、事業主、同僚等の関係者からの聴取に当たっては、次のような事項に留意する必要があるということで、4点示しております。
 1点目ですが、被害者、行為者等のプライバシー保護に関することで、行為者、同僚等の関係者からの聴取を行う場合には、被害者及び行為者双方のプライバシーに特に配慮すること。2点目として聴取の順序に関することとして、事実を的確に把握するために、原則として、最初に被害者からの聴取を行い、その供述の内容を基本として、他の関係者からの聴取を行うこと。3点目として聴取時間、人数、性別に関することですが、精神障害を発病した被害者に対する長時間に及ぶ聴取や、多人数で行う聴取は、被害者の症状の悪化を招く場合がある。このため、主治医の意見も参考にしながら、短時間で聴取を行うことや、1回があまり長くならないように複数回に分割して聴取を行うこと。聴取を行う職員が必要以上に多人数とならないようにすることについて配慮すること。また、女性の被害者からの聴取は、できる限り女性の職員が実施又は同席するように配慮し、男性の職員が聴取する場合には、事前に被害者にその旨を説明することなどを示しております。4点目ですが、聴取の内容等に関することで、聴取自体は必要なものですが、その内容や方法によっては被害者が責め立てられているような心理状況に陥り、症状の悪化を招く場合があるということで、認定に必要な事項は当然伺うわけですが、そういった事項以外の聴取や、必要以上に詳細な内容の聴取を行わないよう、また、同じことを繰り返し聞くことにならないよう考慮することとしています。
 ウ、当事者にしか事実関係が明らかでない場合の調査ですが、セクシュアルハラスメント事案は、その事実関係を当事者のみが知る場合も少なくない、また、さらに事実関係を客観的に示す証拠がない等の事情により、行為者や一部の関係者がその事実を否認するというものも事例として非常に多く見られています。事実関係が客観的に明らかでなく、当事者の主張に大きな相違がある事案の事実関係の把握は、非常に困難を伴うものとなります。このような場合、次のような手法が有効である場合があることに留意すべきであるということで、ヒアリングでもご指摘のあったことですが、被害者の供述のほか、当時の日記、メモ等を収集して、それらの資料に基づき関連する出来事を時系列的に整理すること。行為者や被害者の主張を否定する関係者の聴取では、必要に応じて、具体的な情報を示しながら、整合しない点の釈明を求めながら聴取を行うことに留意することが必要であると。
 最後にエ、その他ですが、これも事後に戒能先生からご指摘いただいたことですが、今後、セクシュアルハラスメント事案に係る精神障害の労災認定の基準の見直しを行った場合には、その後、労災認定を担当する職員の研修を行うとともに、見直し後の基準が適切に運用されているかどうかについて、適時、事後評価を行うことが望ましいというご指摘をいただいています。資料1は以上です。
 資料2ですが、先日、6月20日付で2通の要望書を、厚生労働省厚生労働大臣、副大臣あてにご提出をいただいております。1つ目は、セクハラ労災行政訴訟呼びかけ団体からで、判断基準の見直し等に関する要望書で4枚付けております。12頁の「記」で、「以下のとおり要望します」ということで要望内容を書いていただいております。また、最後の14頁には、こういった形の申請書でチェック式でやってはどうかというご提案をいただいております。15頁からは、弁護士の先生方からいただいているものです。日本労働弁護団セクシュアル・ハラスメント被害対策PTからご提出いただいておりますが、具体的な内容については要望書の3頁、全体の資料頁では17頁以降ということで、「出来事の類型」に「セクシュアル・ハラスメント」の独立した項目を設けるべきであるということのほか、全部で9点のご要望をいただいております。これらについては、ご紹介とさせていただきます。事務局からの説明は以上です。
○山口座長 どうもありがとうございました。それでは、事務局の説明の中にもありましたが、前回までの議論で検討した内容以外の点について、戒能先生からご意見をいただいているようですので、その点について先生からご説明をお願いできますか。
○戒能先生 7頁の(5)ですね。これは極めて単純なことです。現在の「心理的負荷評価表」では、対人関係のトラブルの中の1つとして強度がIIとなっているわけです。今回はその原則に基づきながら、修正していくということだったと思うのです。これはむしろ親委員会のほうでご検討なさることかと思うのですが、セクシュアルハラスメントについては、やはり独立した項目として項目立てをしたほうがいい、というご意見は申し上げたと思います。
 それに加えてその後の問題として、現在でも「心理的負荷表」には例えば事故や災害の体験というのが最初の出来事の類型としてあり、重度の病気やけがをしたとか、そういう程度問題が書かれております。先ほどご説明を受けた本日の資料の1頁の「認定の基準について」、(1)のアの2行目の最後のほうの「しかしながら」というのは、まさに私も申し上げたい点をご指摘いただいております。セクシュアルハラスメントの態様は、申し上げるまでもなく右から左まで様々なので、まずは強度というものを出して、それからIIIに修正できるものということで出してきたわけです。
 それを今日はどういう類型にすればいいかというのは、ご提案する用意がないのですが、今日の検討のたたき台でご指摘いただいたように、IIからIIIへ修正するものというのは、ひとつはっきりしています。また、先ほどの強度という具合にあとは平均的な強度ということで、今日のたたき台を活かしながらも、そういう類型化はできるのではないかと。そうしないと、実際に認定に当たられる現場で困るのではないかということもあり、今後の検討課題として親委員会で是非、ご検討いただければという意見です。
 あと、最後の「運用について」の9頁(2)のエについてです。研修というのは前にも書いていただいています。それは常時研修をするという意味だと思いますが、今回はかなり大幅な修正というか改善がありましたので、それについてできれば研修をしたほうがいいのではないかと。たぶん具体的なケースをいろいろお持ちなので、こういう場合はどうかというご議論が必ず出てくると思いますので、そこでまた細かく詰めていく作業も必要ではないかと思います。
 それから、事後評価というのは、今はどこの世界でもやっています。特に国立大学はしょっちゅうやっています。これをいつやるのかということを、いま私は判断できませんが、然るべきときにそういう改善が行われたら、その改善がどう反映されているかということは、やはりチェックしていったほうがいいし、それから先の今後の改善に結び付いていくのではないかと考え、ご提案した次第です。
○山口座長 今日はこのたたき台で、こういう形でご議論いただくということでよろしいですね。それでは、このたたき台に基づき議論を進めてまいりたいと思います。先ほど事務局からご紹介がありましたように、大きく3つの部分に分かれています。最初が「はじめに」です。その次が「認定の基準」、「運用」です。「認定の基準」、「運用」についてもいろいろここでご議論いただいたことを要約し、まとめていただいておりますが、まず「はじめに」という点についてどうでしょうか。何か問題はありますか。
                 (発言なし)
○山口座長 それでは差し当たり「はじめに」は問題がないということで、「認定の基準」に入ります。ここはご議論いただいた中でも、いちばん議論の出た点です。最初に(1)「心理的負荷の程度とその評価方法」というのがあります。いちばん問題になった特別な出来事というのを捉えて、心理的負荷が極度、つまり非常に強いというのに該当するものを取り上げたり、修正するときの視点や基準を取り上げたりしておりますから、まず「心理的負荷の程度とその評価方法」から、ご意見を伺いたいと思います。この点はいかがでしょうか。水島先生、ご意見はありませんか。
○水島先生 前回の私の疑問等についても反映していただきましたのでありません。
○山口座長 よろしいですか。それでは、また後で戻って議論していただいてもよろしいので、ご意見がないようでしたら、先に進みたいと思います。
 次は(2)「評価期間に関する事情」です。これは6頁の(3)の「併発する出来事に関する事情」とも関係がありますので、「評価期間に関する事情」と「併発する出来事に関する事情」と併せてご意見がありましたら、いかがでしょうか。
 「評価期間に関する事情」は、心理的負荷の評価の対象期間というのが他の出来事でも発病前おおむね6か月というのが原則になっているわけですが、ここではこの原則を一応原則として認めながら、セクシュアルハラスメントの特性として、反復継続して長期間にわたって行われているということがあります。そういう場合は開始時から発病までの行為を、一体の出来事として評価することが適当だという指摘をしているわけです。次に、「併発する出来事」のほうは、評価表では出来事ごとに発病との関係を捉えているわけですが、セクシュアルハラスメントの場合はその出来事に関連してというか、それに伴っていじめや嫌がらせ等の出来事が生じていることがあるので、そういう点を十分注意して修正できるようにすべきだという意見を言っているわけです。どうでしょうか。
○小宮山厚生労働副大臣 先日、私もお会いして承りましたセクハラ労災行政訴訟呼びかけ団体の皆さんからの要望の中で、1番目として6か月という期間を見直してほしいというのが出てくるということは、報告書の中では、6か月以前にあって、その後は繰り返されないものはないと断定的に書いているのですが、実際にやっていらっしゃる方がそこに対して疑問があるというか、見直してほしいと言われていることとの整合性の問題は本当に心配ないのでしょうか。
 それについては(注)のところにあるように、どこを発病時期と判断するかによるということですが、そこがきちんと判断されるのだろうかという疑問が、たぶん当事者にはあるのではないかと思うのです。6か月前にあってその後はないということはあり得ないということです。発病の時期がきちんと判断されるというのは、性善説と言うと何ですが、善意にそういう解釈をすることでいいのでしょうか。もう少しそこのところを考える必要があるのではないか。この間お会いしてお話を伺ったときに、まずそれが最初の要望として出てくるということは、そこに対してやはり何かご意見が当事者にはあるのではないかと思ったので、どのようなご議論になるかということです。
○山口座長 いちばん後の医学的な観点から、実は加茂先生と黒木先生からご意見がありまして、臨床の問題なので、どの時点で判断するかは微妙だけれども、出来事があって発症・発病まで6か月といった場合、よく見れば出来事から発症までの間にまた出来事があったという場合が結構ありますと。ですから、そこをよく見れば、そんなに心配ないのではないかというご意見だと思うのです。加茂先生、この前議論になったそこの点はどうですか。
○加茂先生 今おっしゃった心配は、本当にそういうことだろうと思うし、そこは相当難しい面ではあると思うのです。性善説というようにおっしゃいましたが、今回これを書き添えさせていただいたことで、精神科医のほうもこういうことに注意を払わなければいけないという1つの大きな指標にはなるのではないかと思います。もう1つは、この中には入れ込まれていないところですが、遅発性のPTSDに関しては、いま書き添えた文章だけでは難しいところがあるかもしれません。ただ遅発性のPTSDに関しては、精神科医の中でもかなり議論のあるところなので、そこをあえて書くかどうかに関しては、確かにためらいはありました。そこをどうするかということが、少しポイントとして残るのではないかと思います。
○山口座長 私の記憶では、具体的な病名の付いた例が挙げられました。それは加茂先生がおっしゃったのですか、例えば出来事が5年前で発症が5年後という例もあるじゃないか、というのが問題になった。それで黒木先生が意見を述べられて、よく見たら間にこういう出来事があった、そこが出来事なのではないですかと。単発の出来事が5年前にあって、後は何もないということは少ないわけです。その件はそういうことかなということで収まりが着いたのではなかったかと思います。
○加茂先生 そうですね。
○山口座長 それから副大臣がご指摘になった6か月という点は、ほかの出来事を含んだ評価表全体のルールになっていますので、セクハラだけでこのルールを打ち消すことは難しい。しかし、セクハラに適した対応をすべきではないかということで、セクハラの中で反復継続して行われるのがいちばん問題ですので、その対応をこういうルールで出しているわけです。
○加茂先生 もう1点は、遅発性のPTSDに関してはセクハラだけではなくて、ほかの出来事で起きる可能性もあるかと思います。ですから、そこは座長がおっしゃったように、全体を見ないと少し難しいところではないかと思いました。医療的に言うと、遅発性のPTSDという文言を入れ込むかどうかで、かなり変わってくるかと思います。
○山口座長 何か少しご説明はありますか。
○河合補償課長 この前個別の案件を見たときに、こういう結論にはなったのですが、6か月というのが入ったことによって、実務的にも、やはり職員自身もこの点を十分認識して、一体として捉えるということで、そこは間違いなく調査をするし、そういう目で判断するというように私どもは考えております。いずれにしろ、新しい基準になりますので、そういう意味ではPDCAサイクルの中で確認しながら、問題点をはっきりさせていくつもりではおります。
○山口座長 どうですか。皆さまにも納得していただかないと困りますから。
○戒能先生 この部分はやはり臨床のご経験からご検討があって、大変難しそうだなと。いまのお話ですと、他の要因とも絡んで、遅発性のPTSDの場合もあるということですが、ここに書き込むのは難しいでしょうか。あるいは、そういう意見もあった程度では。ここはやはり合意がないと難しいでしょうか。
○山口座長 精神障害だけではなく、労災の負傷に伴う事故とか他の疾病もありますし、労災ではなく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)というのは医療事故でも起こるわけです。これはいろいろな所で問題になっているのですが、我々法律屋としていちばん困ってしまうのが、医学的知見としてまとまったものがなかなか出てこないということです。裁判でも非常に厳しく見て認めないものと、簡単に認めているものと乱立していて整理できない。正直申しまして、医学的知見が固まりある程度まとまった方向が判例でも出てこないと、認定基準の中に採用するのは難しい状況なのです。ですから、もうちょっと事態の進捗を見ないと、まとめ切れないのではないかというのが、私の率直な感触です。
○小宮山厚生労働副大臣 これは全体の労災の認定問題で、セクシュアルハラスメントだけで6か月をいじることができないというのはよく分かります。知見がないとなかなかできないというのもよく分かります。しかし今まではこういうケースはないけれども遅発性の問題とか、何か問題点があるということは、どこかに留意事項として書いておいていただけると、今度親委員会のほうで検討するときに、そういうことも。もちろん今度のことで画期的に全体がやりやすくなるし、進むであろうことは分かるのですが、やはりやり残したというか、これからまた知見が積み上がれば、多少検討の余地があるというか、検討できることがあるのであれば、注記しておいていただいたほうがいいのではないかという感じです。
○河合補償課長 いまの話はそういう感じでよろしいですか。また加茂先生とも相談しながら、文言自体は。
○小宮山厚生労働副大臣 その書きぶりは、そういう問題があるという形で。ただ、これが全部、今まではなかったからというように言われると、当事者としては心配があるのもよくわかるのです。そこは現状で無理やり何かを書きなさいということではなくて、今後知見が積み重なったら、また全体の中でそこも留意ということを書いていただけるといいかと思います。
○山口座長 今後もないという偏見を持っているわけではないので、それがわかるように。
○小宮山厚生労働副大臣 そこを工夫していただけると、うれしいなと思います。
○河合補償課長 それでは先生と相談した上で、最終的に座長にまたご相談するという形でよろしいでしょうか。
○小宮山厚生労働副大臣 はい、そうですね。
○河合補償課長 お願いいたします。
○山口座長 それでは「評価期間と併発する出来事」はどうでしょうか。さらに特にご意見がないようでしたら、次の「心理的負荷の評価に当たり留意すべき事項」です。それは「評価表の位置づけ」とも関連しておりますから、この2つについてどうでしょうか。「評価表の位置づけ」は、先ほど戒能委員から、今後はセクシュアルハラスメントを受けたという出来事そのものをさらに細分化、類型化できないかどうかを検討すべきだというご意見がありましたので、これをここで付記することにしたいと思います。
 もし、ご意見がないようでしたら次の「運用について」に移りたいと思います。運用は大体各項目の括弧に入っている1、2ですが、独立しておりますし、相談と請求と事実調査に分かれておりますから、どちらからでも結構ですので、ご意見をお願いいたします。
○戒能先生 要望書をいただいています。最初の要望書に、「申請書の形式の簡略化」というのが書いてあって、定形的なものはチェックするだけで済むような様式にできないかというご提案があります。この可能性というのはいかがでしょうか。これは現在もこういうようになっているのですか。
○西川職業病認定業務第一係長 まず労災の請求書自体は、省令で決まっている様式があります。それはけがでも精神障害でもみんな共通の統一様式ですので、それをすぐに変えることはなかなか難しいのではないかと思います。それとは別に、精神障害の事案について、調査を簡便にあるいは効率的にやるために、こういったものを一緒に添付していただいてはどうかということかと思います。この中身を見ても、ご提案なさったのはそういったご趣旨かと思います。それについてはその先、検討していただくことはできるかと思います。
○河合補償課長 この中身がこのままというわけではないかと思いますが、その点も含めて、わかりやすい調査表みたいな感じですね。
○戒能先生 積極的なご提案ではないかと思いましたので。
○山口座長 この要望はこれでやれということではなくて、こういうように簡単にできるようにしろというご趣旨でしょう。ですから申請全体をやりやすいように、迅速にできるようにするという全体の検討の中で、形式も検討するということですね。
○戒能先生 あと、これを見ていると窓口などで話さなければならないところもあって、そこでいろいろな事実を言うことが二次被害になる。それをなるべく抑えようという趣旨かと思いますので、こういうものもあると。DVでも裁判所によってはこういうものをやっています。
○小宮山厚生労働副大臣 このとおりでなくても是非、積極的にこういうものを取り入れさせていただければと思います。
○山口座長 戒能先生、運用の(1)の「相談・請求段階での対応」にポツが3つありますが、実際の運用では真ん中下辺りではいけませんか。皆さんがご議論なさっていたことも、戒能先生がおっしゃっていたことと同じようなご指摘がありましたから、そのこと自体、別に皆さん反対はなさらないと思います。あとはいかがでしょうか。
○水島先生 内容については異論ないのですが、3の(1)の最後のポツに「請求人」とあって、この頁のいちばん下にも「請求人」という言葉が出ております。おそらくこの2か所だけ「請求人」になっています。「被害者」に統一することはできますか。例えば、7頁の3の最終行に、「請求人の負担」というのがあります。労災請求をしたので請求人ということです。厳密に言うと、被害者イコール請求人ではないのかもしれませんが、全体を見ますと、ここは「被害者」に統一されたほうがいいのではないかと思います。
○山口座長 すみません。どこですか。
○水島先生 7頁の3の(2)のアの最後の行に、「請求人の負担の軽減」というのがあります。もう1か所は(2)の2行上に、「請求人からの聴取」とあります。ここを両方とも「被害者」にしてよろしいでしょうか。
○小宮山厚生労働副大臣 ここだけ「請求人」が出てきているのを「被害者」に直したいと。
○山口座長 なるほど、そういう意味ですか。これは事務局から言ったら、被請求人のつもりですか。
○西川職業病認定業務第一係長 いや、請求人は請求人ですが、被害者のことですので修正いたします。失礼いたしました。
○山口座長 そういう言葉にしたほうがいいということですね。
○小宮山厚生労働副大臣 揃えたほうがいいということです。
○山口座長 では、そのとおりにします。
○戒能先生 あと1点。これはもう既に2の(4)の「評価に当たり留意すべき事項」のオに書かれているので、それを繰り返す必要はないと言えばそうですが、8頁の「運用」の(2)のイの関係者からの聴取の最後に、「このため、認定に必要な事項以外の聴取」というのがあります。7頁のいちばん上のオに、過去の被害や妊娠経験等は、判断要素とならないというのがありますので、「運用」でも繰り返してほしい。今まではわりとそういうことが聴かれていたともお聞きしますので、注意的にここにも書いていただくといいかと思いますが、いかがでしょうか。「等」という。
○山口座長 7頁のいちばん上のオですね。それでは、「繰返しの聴取にならないよう考慮すること」として、括弧して(4)のオに、「留意すること」というのでどうですか。
○戒能先生 それでも結構です。
○山口座長 同じ文章を2回繰り返すというのは、ちょっと抵抗がありますので、ここではそのことに注意すべきだというようにする。
○戒能先生 あと、この場合に現場のことが全然わからないのです。成育歴というのはどうですか。やはりお聴きする必要のあることなのでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 成育歴については、もともとの精神障害の判断指針の中で、個体側要因の検討に当たって既往歴、生活史、アルコール等依存状況、性格傾向といった要素を示して確認しているところです。その中の生活史を確認したいということで、おそらくお伺いしたのではないかと思います。ここは必要な範囲だけ聴いて、必要でないところは聴くなということですかね。
○小宮山厚生労働副大臣 どこに書いてあるのですか。
○戒能先生 もともとの判断指針の中に入っているのです。セクハラだけではなくて全体のです。
○山口座長 3つの要因があります。業務上の負荷と、業務外の負荷と、個体要因という3つの要因を見ることになっております。個体側要因の中のどの要因になるのか。
○小宮山厚生労働副大臣 今おっしゃろうとしたニュアンスでは、やはりセクシュアルハラスメント等の場合、生活史は関係ないだろうと思います。
○戒能先生 関係ないですよね。
○小宮山厚生労働副大臣 そのときの事故というか、出会ったことなので、それまでにあなたの日ごろの言動がどうだからという、ここには先ほどのオに等しいことがあるように思います。
○西川職業病認定業務第一係長 この趣旨としては。
○小宮山厚生労働副大臣 特に今回の中には入っていないですよね。
○戒能先生 入っていません。そういうお話をしばしば承りますので、どういう関係があるのかと、多くの方はお思いになるのではないかと。いま副大臣がおっしゃったようなことです。
○小宮山厚生労働副大臣 書けるのであれば、全体の精神障害としてはこういうことが評価の方法になっているけれども、セクシュアルハラスメントの場合は、「必要ない」と書くかどうかはともかく、そこまで強く言うかはともかく、それとはまた違うということだと思うのです。
○西川職業病認定業務第一係長 ここで言う個体側要因の評価の調査事項は、もちろんセクシュアルハラスメントの評価のために聴いているのではないのです。
○小宮山厚生労働副大臣 わかっています。ですからセクシュアルハラスメントの場合は別だろうというのが、いまのご趣旨です。私もそれはそうだと思います。
○山口座長 こういう要素は強度の評価には関係ないと言っていますから、聴かないほうがいいということですね。
○小宮山厚生労働副大臣 そういうことです。
○山口座長 ただ、係長がおっしゃったように、あれは全体でできていますから。例えば脳死の判断指針などでは、酒をものすごく飲んでいるとかタバコを吸っているとか、個体側要因がかなり重要なのです。セクハラの場合、精神障害の発症に個体側要因はどうかということです。
○小宮山厚生労働副大臣 それも検討事項というか留意事項で。最後になっていろいろ言うと、ゴチャゴチャしてしまいますか。しかし、それは大事なところなのです。全体を変ようというのではないのですが、セクシュアルハラスメントを強調して取り上げてやっている中で、セクシュアルハラスメントの場合、これは関係ないでしょうということです。
○山口座長 いや、この3つの項目は関係ないと言えますが、個体側要因というものが全く。
○小宮山厚生労働副大臣 いや、そうではなくて、個体側要因の中の生活史は関係ないでしょということです。
○西川職業病認定業務第一係長 判断指針には「社会適応状況」と書いてあるのですが、要は生活史というのは、いままでも既に別に病気を発病していて、今回もその症状ではないか、適応に障害があったというのはそういうことではないかという趣旨で聴いているものです。確かに社会適応状況を聴くべき話ですので、社会適応状況に問題がなければ、特にそれ以上、いつ生まれてどこで育ってということまでは。
○小宮山厚生労働副大臣 あまり根掘り葉掘り、そういうことは関係ないでしょという意味です。
○山口座長 根掘り葉掘り聴くのをなくそうという方向はいいのです。皆さんも賛成なのです。
○小宮山厚生労働副大臣 そうです。
○山口座長 ただ、生活史は関係ないというのは、一寸自信がないですね。それはどうですか。
○水島先生 ただ、生活史やアルコール等依存状況というのは、ほかの精神疾患の事案であっても、いつもいつも聴くわけではなくて、そういう可能性があるときに聴く問題ですよね。そうなりますと、もしかすると(4)のオ自体、ここでわざわざ書く必要のない記述であると。ですからこちらには書かずに、こういうものが個体側要因の判断要素にならないのは、むしろ当たり前のことであって、だからこそ書く必要がないと。逆に戒能先生がおっしゃったように、3の(2)のイで、こういったことは関係ないので聴かないようにということに。
○小宮山厚生労働副大臣 それはそうです。
○水島先生 その中には成育歴も入ってくるかと思います。
○山口座長 いま水島委員から具体的な提案も出ましたので、新しくご提案します。水島委員のご提案は、7頁のいちばん上のオは削る、これは当たり前のことだから、むしろこの文章はそこではなくて、戒能委員がおっしゃったように、8頁のイの最後のポツの最後の所にこの文章で付け加えるということです。
○小宮山厚生労働副大臣 はい、そうですね。
○山口座長 それでどうでしょうか。
○戒能先生 社会適応状況とは違うと思いますので、「等」と入れて、成育歴というのは入れておいていただきたいと思います。
○小宮山厚生労働副大臣 やっとわかった。
○山口座長 皆さんがそれでよろしければ、そのほうがはっきりしますし、私もそれでいいのではないかと思います。どうでしょうか。
                 (発言なし)
○山口座長 それでは、それでお願いしたいと思います。
○河合補償課長 この個体側要因の問題をどうするかというのは、専門検討会では結構議論になりました。ここは絶対に必要だという話になったものですから、どう整合性を取るかというところだけです。
○小宮山厚生労働副大臣 しかし、こちら側からの意見としては、そういう報告書をまとめて出すということはあるのではないですか。
○河合補償課長 そういう意味では構いません。
○水島先生 おそらくセクシュアルハラスメントの事案であるので、あえてこれを聴くことはしなくてもいいということだと思うのです。
○小宮山厚生労働副大臣 それに絡めてはそういう。
○水島先生 通常の精神科の診療の中で出てきた話とか、それ以前に医師が聴いた話に関しては、もちろん1つの判断の中に入ってくると思うのですが、もう1回事情聴取をするときにこれが絡んでいるから、これを聴かなければいけないということではないと思うのです。
○小宮山厚生労働副大臣 そうです。
○山口座長 ですから判断指針の3つの要素そのものは、変更なく維持されるのです。
○小宮山厚生労働副大臣 もちろん、それはそうです。
○山口座長 セクハラの認定に使うときには、いま言ったようなことは聴取の対象にしないようにということになるわけですね。
○小宮山厚生労働副大臣 そういうことです。
○加茂先生 職業などでも、結構根掘り葉掘り聴かれてしまうことがあるのです。要するに風俗に就いていたことがあるとか、学生のころキャバクラに行っていたといったことも判断基準の中に一部入ってしまうこともあるので、実はその辺は非常に要注意なところです。
○小宮山厚生労働副大臣 そうですね。折角のご指摘ですから、それも入れておいてください。
○山口座長 それはいいですか。
○加茂先生 もともとの聴取の中で出てくるのは、全然問題ないと思うのです。しかし、あえて聴くときには、あまりそこに重きを置いて聴き過ぎないほうがいいという意味です。ちょっと難しい話ですかね。
○山口座長 何か別の問題が出てきてしまったりとか。
○加茂先生 そうですね。やはりこの辺のことはかなりデリケートなので、気を付けておいたほうがいいと。
○山口座長 運用に当たっては、必要のないことを根掘り葉掘り聴かないようにというのを原則にするということですね。それは研修か何かでも徹底していただくと。
○加茂先生 徹底していただいたほうがいいと思います。
○山口座長 ほかにいかがでしょうか。先ほど戒能委員からご指摘の点がもう1点ありました。「その他」で、研修と事後評価をタイムリーに行えという提案がありました。これももっともだと思われますので、ここに挙げております。
○小宮山厚生労働副大臣 事後評価はどこでするのですか。
○河合補償課長 もともと毎年、我々は労災監察という形で現実にやっておりますので、その報告を受けて改善すべきものを、具体的に翌年度の留意通達で示すという形になっていこうかと思います。問題点を含めて、それをグルグル回す感じになります。
○小宮山厚生労働副大臣 やはり事後評価をして、ここがこう指摘されてこうなるということが、皆さんにわかるようにしたほうがいいですよね。今やっていることは、あまり世の中一般にはわかっていないのではないですか。少なくとも私は知らないです。
○西川職業病認定業務第一係長 通達自体は公開のものではありますが、確かに。
○小宮山厚生労働副大臣 それをちゃんと皆さんにわかるように示す工夫をしましょう。
○戒能先生 大学もそういうことを義務づけられております。
○河合補償課長 もちろん、それは我々も十分承知しておりますので。
○小宮山厚生労働副大臣 このことに限りません。そういうようにしていることが皆さんにどう伝わるかというのは、ちゃんと工夫してやったらいいということです。そんな無理難題を言っているつもりはありません。
○河合補償課長 表現としては正しい表現ですね。確かに、どういうように工夫していくかというのは。
○山口座長 私のいる所は政策研究研修機構ということで、今度研修だけが国に戻ります。事後評価は現在、研修も含めてやっておりますが、研修表を見ますと年間、実に多種多様なものが行われています。とにかく年に3分の1以上教室が空いていれば、使っている効率が悪いというお叱りを被るような状況ですから、ものすごくやっています。毎年、全事業を評価の対象とするということは、正直申しまして不可能です。それを評価するのに、それだけで半年以上かかってしまいます。順番を決めて何年かに一遍は必ず評価がなされるようになっていますから、そんなに野放しにはなっていないのです。ただ、それが世間の人にわかるようになっているかと言いますと、正直言ってちょっとわかりにくいのではないかという気はいたします。
○小宮山厚生労働副大臣 これは別に研修の事後評価ではなくて、今回、運用を変えたことの評価をどうするかですよね。
○河合補償課長 わかります。
○山口座長 ほかにいかがですか。それでは全体として、いまご意見があった点以外は、これでいいということでご了解いただいてよろしいですか。いちばん大きな変化は、今ここで皆様のご了承を得ましたように、7頁のオです。文章から言えば認定基準の(4)の「その他心理的負荷の評価に当たり留意すべき事項」の最後のオを削り、戒能委員からご指摘いただいた8頁の「運用について」の(2)のイの最後、「このため、認定に必要な事項以外の聴取や、必要以上に詳細な内容の聴取は行わないよう、また、繰り返しの聴取にならないよう考慮すること」の後に、「被害者の過去の性暴力被害、妊娠経験等は、個体側要因の判断要素とならないことに留意すべきである」という文章を入れます。
 細かい点としては、「請求人」を「被害者」に直すなどという点はありましたが、大きな点はこれですね。もし、これでよろしいということになりましたら、最終的な文言の表現を点検して、全体として直す点は私にご一任いただいてよろしいですか。そこは事務局と相談しながら精査したいと思います。それでよろしければ、これを「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」に宛て、分科会の報告書として提出したいと思います。その点もよろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○山口座長 では、そういうことにさせていただきます。それでは概ね結論が得られたと思いますので、事務局のほうにお返しいたします。
○倉持職業病認定対策室長補佐 ご議論、ありがとうございました。本分科会の報告書については、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」にご提出いただき、今後の専門検討会でのご議論に活かしていただくこととなりますことを申し添えます。また、報告書については報告書のご提出がなされた後に、専門検討会の資料として、さらに厚生労働省ホームページへの掲載等で公開する予定としております。
 では最後に、小宮山厚生労働副大臣からご挨拶をお願いいたします。
○小宮山厚生労働副大臣 今年2月の第1回以来、お忙しい中、ご専門の皆様に多くの意見をいただき、今日のセクシュアルハラスメントに関する分科会でほぼ報告書をまとめていただきましたことに、心から御礼申し上げます。私もセクシュアルハラスメントについては、以前からいろいろな形でかかわってまいりました。これは労災と言っても、本当に目に見える形ではなくて、複雑に精神的なものやいろいろなものが入り組んでおりますので、非常にきちんと評価されにくいという問題意識を持っておりました。今回、専門の皆様に集まって詰めた議論をしていただいた中で、これから被害者の方がきちんとそういう請求がしやすくなり、調査をし、その対応をする側もやりやすい基準をしっかり出していただいたと思っています。
 そういう意味では、心理的負荷が強いと評価できるものを具体的に示していただきましたし、評価期間が長期間継続する場合とか、さらに相談や請求の場合の留意事項まで細かく挙げていただきましたことは、大変大きな成果だと思っております。いま座長にもおまとめいただきましたように、親委員会である「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」のほうにこちらの報告書を上げて、皆様のご意見がしっかりと果実となりますようにやっていきたいと思っております。また、今日最後のほうでもご議論いただいたように、これで事後評価をしっかりされて、きちんと働いていけるものになるように努めていきたいと思っております。重ねて皆様のご努力に感謝申し上げます。さらに労働行政全般についてご意見をいただければと思いますので、感謝の言葉とさせていただきます。ありがとうございます。
○山口座長 どうもありがとうございました。この分科会は最初に副大臣にご出席いただいて、副大臣のご示唆で関係団体のヒアリングなどもいたしましたので、私どもとしては事情がかなりつぶさにわかり、審議もしやすかったと思います。また合間合間にも副大臣からいろいろご支援を賜りましたので、先生方のご意見も何とか、ここにうまくまとまったのではないかと思います。どうも大変ありがとうございました。
○小宮山厚生労働副大臣 本当にありがとうございました。
○倉持職業病認定対策室長補佐 それでは、本日をもって本分科会を終了いたします。先生方におかれましては本年2月から非常にご多忙のところ、ご参集いただきましてありがとうございました。
○山口座長 どうもご苦労様でした。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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