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2010年12月24日 第4回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会エイズ・性感染症ワーキンググループ議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成22年12月24日(金)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館12階 専用第14会議室


○出席者

【出席委員(五十音順)】

味澤委員 池上委員 小野寺委員 北村委員 木村委員
北村委員 廣田委員 南委員

【厚生労働省】

亀井結核感染症課長 中嶋感染症情報管理室長 林結核感染症課長補佐
畑農結核感染症課長補佐 荒木疾病対策課長補佐 平賀疾病対策課長補佐

○議題

エイズ及び性感染症の特定感染症予防指針の改正について

○議事

○林課長補佐 それでは、定刻でございますので「厚生科学審議会感染症分科会感染症部会エイズ・性感染症ワーキンググループ」を開会させていただきます。
 開催するに当たりまして、まず、結核感染症課長よりごあいさつを申し上げます。
○亀井課長 おはようございます。結核感染症課の亀井でございます。
 本日は大変お忙しい中、先生方におかれましては「エイズ・性感染症ワーキンググループ」にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。また日ごろから厚生労働行政の推進につきまして格別の御協力、御支援をいただいておりますことにつきまして、改めてお礼を申し上げたいと思います。
 さて、後天性免疫不全症候群、いわゆるエイズや性感染症は、性的接触を介してだれもが感染する可能性がございまして、若年層にある男女を中心といたしまして、大きな健康問題の1つと考えております。
 特に女性がかかられた場合は、母子感染による次世代への影響もありますことから、大変重要とこのように認識しております。
 厚生労働省といたしましては、エイズ及び性感染症対策を進めてまいります上の基本方針といたしまして、感染症法に基づく特定感染症予防指針を作成しております。いずれも5年ごとに再検討を加えるということになっておりまして、今年がその時期になっているところでございます。
 本ワーキンググループにおきましては、最近のエイズや性感染症の発生動向等を踏まえまして、この5年間に蓄積されました科学的知見に基づいて、今後のエイズ、性感染症対策について御議論いただきたいと思っております。どうか忌憚のない御議論を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
○林課長補佐 それでは、次に本WGの委員の方々を御紹介させていただきます。資料の名簿の順に沿って御紹介をさせていただきます。
 まず、都立駒込病院感染症科部長の味澤篤委員です。
 続きまして、NPO法人ぷれいす東京代表の池上千寿子委員です。
 富士市立中央病院長の小野寺昭一委員です。
 日本家族計画協会家族計画研究センター所長の北村邦夫委員です。
 東京逓信病院長の木村哲委員です。
 神戸市保健所参事の白井千香委員は、御欠席の連絡をいただいております。
 大阪市立大学大学院医学研究科教授の廣田良夫委員です。
 読売新聞東京本社編集委員の南砂委員です。
 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。
 結核感染症課長の亀井でございます。
 結核感染症課感染症情報管理室長の中嶋です。
 私は、結核感染症課の林でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、結核感染症課課長補佐の畑農でございます。
 疾病対策課の荒木は遅れておりますが、後ほど参ります。
 疾病対策課の平賀でございます。
 続きまして、お手元に配付いたしました資料の確認をさせていただきます。
 議事次第。
 委員名簿に続きまして、資料1として「特定感染症予防指針について」。
 資料2として「性感染症対策について」と横にとじたもの。
 別添1「『性の健康週間』の実施ついて」という通知。
 別添2「『健やか親子21』第2回中間評価報告書に基づく今後の推進について」という通知。
 続いて資料3として、横にとじているものでございますが「性感染症に関する特定感染症予防指針の推進に関する研究」。
 資料4「エイズ対策について」。
 資料5「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の再検討の進め方について(案)」
 資料6「エイズ予防指針作業班開催要項(案)」。
 参考資料1として、厚生労働省告示等をとじたもの。
 参考資料2として「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)」
 以上でございます。
 不足あるいは乱丁等がございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。
 それでは、本ワーキンググループの座長についてでございますが、特に規定はございませんが、前回の見直しの際にも座長を務めていただきました木村委員にお願いしてはどうかと思いますけれども、いかがでしょうか。
(拍手起こる)
○林課長補佐 それでは、これからの議事進行につきましては、木村座長によろしくお願いいたします。
○木村座長 木村でございます。今、お話があったように前回も5年前ですか、座長をさせていただいたということで、余り代わり映えがしませんけれども、中身については、この5年間を振り返ってアップデートしたものをつくり上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、特定感染症予防指針の概要と今後の検討の進め方につきまして、事務局の方から御説明お願いします。
○畑農課長補佐 結核感染症課の畑農が説明させていただきます。座って説明させていただきます。
 お手元の資料1の方をごらんいただきたいと思います。特定感染症予防指針のエイズと性感染症についてです。
 まず「1.位置づけ」ですが、感染症法が平成11年4月から施行されまして、その際に性病予防法というのが廃止されまして、性感染症につきましては、この感染症法に基づく対策となりました。
 この感染症法第11条においては、特に総合的に予防のための施策を推進する必要がある感染症に対しては、特定感染症予防指針を策定して、それを公表することとされております。
 これに基づき、厚生労働省令におきまして、性感染症としては、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、梅毒、淋菌感染症については、指針を策定する感染症として定められているところです。
 この特定感染症予防指針につきましては、少なくとも5年ごとに再検討を加えることとされておりまして、エイズに関する予防指針は前回が平成18年3月に、性感染症の予防指針の方は前回が平成18年11月に改正されておりまして、来年改正の時期、5年を迎えるということになっております。
 次に「2.今後の進め方」について、御説明させていただきます。この「エイズ・性感染症ワーキンググループ」ですが、10月に「厚生科学審議会感染症分科会感染症部会」の方が開催されまして、この中でこのワーキンググループの開催について承認を受けました。そして、今回に至っております。
 本日第1回目、本年度第1回目のワーキングを開催させていただいた以降は、今後3、4回ほどの開催を予定しておりまして、それぞれの指針の改定の時期が異なっておりますので、先に改定しておりますエイズ指針、性感染症指針についての改正案を順次策定、検討していただきたいと思っております。
 それから、エイズ指針につきましては、後ほど具体的に御説明いたしますけれども、エイズ指針の改正案は、別途エイズ予防指針作業班において検討を行った上で、このワーキンググループの方に報告を予定ということにしております。それぞれの指針の見直しのとりまとめができましたら、「厚生科学審議会感染症分科会感染症部会」の方に改正案の検討をしていただいて、その後にパブリックコメントや必要によって関係省庁と協議いたしまして、その手続を経て、新しい指針の告示という段取りで進めていきたいと思っております。
 検討の進め方の説明については、以上です。
○木村座長 ただいまの御説明に何か質問などございますでしょうか。
 それでは、引き続き2番目の性感染症に関する特定感染症予防指針についてと3番の後天性免疫不全症候群に関する予防指針について事務局の方から御説明いただいて、その後、討論に入りたいと思います。
 よろしくお願いします。
○畑農課長補佐 引き続き、それでは、資料2の方で説明をさせていただきます。
 性感染症対策について、横とじの部をごらんください。
 まず、初めに発生動向の調査でございます。感染症の情報は、感染症法に基づきまして、全数または定点で情報を収集いたしまして、発生動向として、これは、国立感染症研究所の感染症情報センターのホームページ等で公表を行っているところです。
 性感染症の対象疾患については、次のとおりになっております。定点で把握しておりますのが性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症です。それから、全数の把握が梅毒となります。
 定点把握につきましては、都道府県が指定しました指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出るということで、これは、法第14条に規定されております。それから、全数把握につきましては、梅毒と医師が診断した場合は、保健所長を経由して都道府県知事に届け出るという義務付けが法第12条でなされております。
 表の下にあります指定届出機関数の11月24日現在の数ですが、1,061か所となっております。その内訳ですが、産婦人科・産科・婦人科と標榜したところが529か所。泌尿器科・皮膚科が561か所というバランスの設定になっております。
 この指定届出機関は、月単位、月報で翌月に御報告をいただいていまして、男女別、年齢区分別に数の報告を行っていただいております。
 次の2ページからのグラフで、この調査の結果についてまとめさせていただいています。このデータは、1999年~2009年の11年間のデータになっております。男女別、年齢階級別の方でグラフに表わしております。
 赤が10代、緑が20代、紫が30代というように色分けをしております。そして、このグラフの左側が年間の報告数を表したグラフでございます。右側の方のグラフが人口の増減による偏りを補正するために人口100万人単位の数字で表したものということになります。
 疾患ごとに簡単に御説明させていただきますと、性器クラミジア感染症につきましては、女性の方が報告数は上回っておりますが、男女とも20代の報告が最も多く、いずれも減少傾向にあります。
 続きまして、次を開いていただきまして、3ページの性器ヘルペスウイルス感染症ですが、これも女性の方の報告数が上回っております。男性の方は、30代の報告が最も多く、女性は20代の報告が多いということで、いずれも男女とも減少傾向が見られております。性器ヘルペスウイルス感染症は、ほかの定点疾患と比較しますと、オレンジ色の50代、グレーの線の60代、この辺の報告数がほかの疾患よりも若干多いというところが特徴かと思われます。
 続きまして、次の尖圭コンジローマですが、男性の方は、20代、30代の報告数が多くなっております。女性の方は、圧倒的に20代の報告が多いということで、男女とも減少の傾向にございます。
 続きまして、5ページですが、淋菌感染症です。これにつきましては、圧倒的に男性の報告数が上回っておりまして、男性が20代、30代が多い。女性も20代が多いという結果で、男性の方は、減少の一途をたどっているという結果になっております。
 続きまして梅毒ですが、これは全数届出の報告数になります。男性を見てみますと、30代の報告が多く、この年代に限っては、増加の傾向が見られております。それから、50代、60代の報告も比較的多いという結果が出ております。女性の方は20代の報告が多いという結果になっています。
 続いて開いていただきまして、ここも梅毒なんですけれども、全数届出である梅毒は報告の項目の中に病型が含まれております。そこで、ここは感染性のある早期顕症梅毒についての数を示させていただいております。男性の報告数は、これもやはり30代が多く、横ばいかもしくはやや増加という結果になっております。女性は20代の方の報告数が多いという結果になっております。
 これらの報告数のとりまとめを8ページに載せさせていただいていますので、御参照ください。
 そして、最後に発生動向のまとめとして、簡単にまとめさせていただいております。
 説明は、10ページの発生の予防及び蔓延の防止の方に移らせていただきます。まず、特定感染症検査事業ですが、これは保健所におきまして、性感染症の検査、今、御報告しました5疾患のうちから自治体が検査項目を選択しまして、実施して、その検査の前後には相談指導を行うということに対して、国の方が2分の1の補助を行っているというものです。
 検査の実績について、下の表にしております。検査項目としましては、性器クラミジア感染症、梅毒。この項目が各自治体の7割ちょっとの実施率ということになっております。逆に尖圭コンジローマについての検査を実施しているところはございませんでした。検査数の推移でございますが、平成19年、20年にかけては検査数が増加しているんですが、平成21年度については、大幅に減少しているという結果が出ております。
 続きまして、11ページに移らせていただきますが、こちらに普及啓発事業ということで、都道県等が正しい知識を普及させるために講習会の実施やポスターの作成を行っておりまして、これに国が補助をしております。
 上の表がエイズの普及啓発事業と併せて実施したもののとりまとめでございまして、主に説明会、講演会。それから、パンフレット、リーフレット。この辺が6割程度の自治体でエイズと併せて実施しているという結果が出ております。
 下の表は、エイズ普及啓発活動とは別に単独で性感染症の普及啓発として実施しているとりまとめになりますが、若干数が少なくなってまいりますけれども、説明会、講演会等についても取り組んでいるという結果が出ております。
 次の12ページの性感染症の相談事業ですが、性感染症の相談は、対面で相談が受けにくいという特性から平成18年度からは、財団法人の性の健康医学財団の方に事業を委託しまして、医師、保健師等による電話相談事業窓口を設置しております。平成22年度からは、保健同人社へ当業務を引き継ぎまして、ほかの感染症の相談と併せて電話相談事業を継続して実施しております。相談の実績については、この表に示した数となっております。
 続きまして、次の13ページ、14ページ。これは、予算関係の資料を付けさせていただきました。事業の内容につきましては、今、御説明したものですので、ここの資料の説明は割愛させていだきます。
 続きまして、15ページになりますが、これは、性感染症に関する特定感染症予防指針の概要でございます。オレンジの枠で囲んだものがこの指針の6つの柱になります。この柱に沿って性感染症対策の取り組むべき項目というのを右の方に抜粋してまとめさせていただいています。この指針の原文は、最後の方に参考資料としてそのものの原本を添付させていただいています。
 最後に関連情報ですが、2つ別添資料を付けさせていただきました。1つ目は、「性の健康週間」ということで、普及啓発事業の一環として、財団法人性の健康医学財団の方が主催しておりまして、毎年11月25日~12月1日までの間を「性の健康週間」として位置づけて、さまざまな普及啓発を実施していただいています。これに合わせて、都道府県におきましても普及啓発活動を推進するようにという通知文を毎年通知させていただいているところです。
 それから、もう一つは「すこやか親子21」第2回中間評価報告書の方を添付させていただいています。これは、母子保健分野の主要な課題についての取組みの指標や目標を設定した21世紀の母子保健のビジョンでございます。今後5年間の重点的取組みの中で思春期の保健対策として、性感染症対策についての取組みが記載され、その目標値、疾患の罹患率等について示させておりますので、参考として付けさせていただきました。
 資料2につきましての説明は、以上で終わらせていただきますが、この後にページ戻りまして、14ページの予算資料の一番下の方に研究開発の推進というのを付けさせていただいていますが、厚生労働科学研究事業の方で性感染症についての課題の研究も取り組んでいただいています。
 その結果は、今日御出席いただきました小野寺先生が研究代表者としてとりまとめていただきました。その内容を今日、御報告いただくようお願いしていましたので、引き続き御説明をお願いしたいと思います。では、よろしくお願いいたします。
○小野寺委員 小野寺でございます。
 資料3をごらんいただきたいと思います。前のこの予防指針の改正にともないまして、この研究班がスタートいたしました。
 1ページ目は、研究班のメンバーであります。この研究班の研究の要約でありますけれども、1つは、検査法の開発、治療法に関する研究として、ヘルペス、コンジローマの迅速診断法の開発。咽頭の淋菌感染に対する診断法、治療法の開発。
 それから、性感染症の発生動向に関する疫学研究としましては、今、畑農さんから御報告のありました定点医療機関の選定方策に関する研究とそれを検証するサーベイランスとして、地域を限定した性感染症の全数調査。
 社会面と医学面における性の行動様式等に関する研究として、1つには、若者を対象とした検体の自己採取と郵送による性感染症検査の普及に関する試行的な研究。これは、かぶるんですが、性感染症の無症状病原体保有者の推移に関する研究ということであります。
 その下がこの研究成果と申しますか、1つの全体の流れを示したものですが、左の縦の流れが検査法、診断法の開発。それから、無症候感染症者の把握等です。それが結局、性感染症予防を支援する環境づくりの推進に基づいていく。
 それから、真ん中のところが社会面、医学面における性行動様式に関する研究で、若者のピア・エデュケーションのシステムの構築。検査コーディネーターの養成と自己検査の普及、自己検査の機会の提供。それに基づいて、若者の無症候の性感染症患者の実態把握。
 右の縦のラインが性感染症の発生動向の正確な把握ということで、動向調査としての定点調査を検証するためのサーベイランスの施行。それが4~7モデル県における性感染症の全数調査で、これで若者の性感染症発生調査における報告数の乖離があるかどうかを確認するということであります。
 次のページからは、今、畑農さんの方から説明がありましたので省略しますが、一言でいえば、全体で性感染症は減少傾向にある。ずっと同じことです。
 7ページ以降は、やはり同じように年代別に見ておりますと、特に10歳代後半から20歳代ぐらいまでの若い世代において2003年以降の減少傾向は、クラミジア、淋菌等の減少が著しいということであります。
 それから、9ページがクラミジア感染症の2008年の報告件数と定点の医療機関との関連を見たものでありますが、全数調査をして、その県で報告を受けた医療機関を多い順にずっと並べてあります。その中で定点とされている医療機関がピンクのグラフで示してありますけれども、例えば兵庫県で言いますと、最も患者数の多い医療機関が入っていない。そのピンクの部分も結構あるんですが、最も多い医療機関が入っていないということが問題であろうと思います。
 岐阜県も同じような傾向であります。千葉県は、比較的バランスはよく定点が定められていると思いますけれども、やはり患者数の多い医療機関がこの中には入っていない。石川県もそういう傾向があります。茨城県は、全体としてのバランスを考えれば、最も多い医療機関も入っておりますし、定点も比較的バランスよく配置されているように見えます。岩手県、徳島県に至りましては、やはり同じように患者数の多い医療機関がこの定点の中には含まれていない。
 こういったばらつきが全体的に見られるわけでありまして、すなわち定点と医療機関の設定の基準が定められていない、非常にばらつきが大きいということが言えると思います。
 梅毒の方は先ほどお話しましたので、飛ばさせていただきますが、一応全数調査の関連のものは、14ページからお示してあります。7県の合計、梅毒、定点把握4疾患、その他疾患。年齢分布を発生動向調査と比較するということであります。
 15ページが今回、全数調査を行った調査の流れでありますけれども、モデル県といたしましては、千葉県、岩手県、石川県、茨城県、岐阜県、徳島県、兵庫県の7つのモデル県に協力をお願いしております。この調査は、日本医師会に私の方からお願いいたしまして、日本医師会から各県の医師会あるいは臨床医会、STD研究会等に調査を依頼しております。
 県によっては、県の医師会が10年ぐらいやっているところもありますので、そこから調査票を配布する。あるいは臨床医会、STD研究会から泌尿器科、産婦人科、皮膚科、性病科等にその調査票をお送りして、大体1か月間で調査をする。
調査期間は、2006年と2007年が11月1日~30日までの1か月間。2008年以降は9月1日~30日まで。これは、ただ単に11月の調査ですと、その年度末までに統計処理も含めて、解析が間に合わないということで、少し前倒しして行っております。調査項目は、下に示しているとおりであります。郵送法によって行っております。
次に3年間のまとめをお示してあります。18ページのクラミジア感染症(発症者)(男性)でありますけれども、棒グラフが全数調査、10万人当たりの数ですので、7県の合計の数ですが、左に全数調査、5、10、15、20。それから、発生動向調査は、2、4,8と右の方に書いてあります。
これで見ていただきたいのは、1つには、年齢分布が発生動向調査と全数調査とで乖離があるかどうかということであります。始めた当初は、特に10歳代後半の若年層での患者数が発生動向調査ですと、非常に低いデータがありましたもんですから、それが把握し切れていないのではないかという懸念があったわけですが、結果的には、クラミジア感染症の男子を見ていますと、そんなに年齢分布に大きな乖離はない。比較的数の多い感染症の場合は、年齢分布がよく一致しているという傾向が見られております。
次が女性でありますが、やはり女性も同じように少し見づらいんですが、例えば2007年の黄色の棒グラフと発生動向調査のオレンジ色の折れ線グラフを比べていただくと、ごらんになってわかりますように年齢分布に大きな違いはない。つまり、これで見る限りは、それほど大きな乖離は見られていないということであります。
淋菌感染症も同様ということです。女性もそうですね。
それから、22ページがヘルペスでありますが、ヘルペスは中高年層において、発生動向調査と全数調査とで年齢分布に少し乖離が見られているということあります。
次のヘルペスの女性、コンジローマも少しばらつきがありますけれども、それほど大きな乖離は見られていないということであります。
26ページが3年間継続的に報告した医療機関のみでの結果報告を見たものでありますが、まず、梅毒です。梅毒は、発生動向調査ではなくて全数調査ですので、少し意味合いが違うと思うんですが、ただ、全数調査を3年間継続的に協力をお願いした医療機関で見ても、男性の場合にはやや減少傾向。女性は、ほぼ横ばいということであります。
それから、淋菌感染症。発生動向調査は、減少傾向なんですが、全数調査でいくと、男性で横ばい。女性では、やや減少傾向ということになります。
それから、ヘルペス。ヘルペスも男性の場合には、発生動向調査、全数調査等も同じように減少傾向が見られている。女性の場合には、発生動向調査では減少傾向ですが、全数調査では横ばいという傾向であります。
コンジローマも男性では、減少傾向。女性も減少傾向であります。ですから、これはそれほど発生動向調査と全数調査で乖離が見られていないということになります。
ただ、クラミジアは、特に男性のクラミジア感染症の場合には、定点調査でも減少しておりますし、発生動向調査では横ばいなんですが、7つのモデル県を対象とした調査では、やや増加傾向。女性は、ほぼ横ばいということであります。
32ページに一応7モデル県における性感染症サーベイランスのまとめとしてお示してありますけれども、発生動向調査と全数調査では、全体としてはそれほど大きな乖離はなかった。発生動向調査、全数調査とも減少していたのは、男性の性器ヘルペス、女性の淋菌感染症、尖圭コンジローマであったわけですが、ただ、一方、男性の性器クラミジア感染症では、全数調査で増加傾向が認められた。
全数調査による性感染症の動向は、各県によって異なる傾向が見られたわけですが、ただ、どうしても全体的な傾向としては、報告数の多い県の動向が全体の動向として示される傾向があった。
やはりこの調査の問題は、東京あるいは大阪の大都市圏、あるいは福岡、札幌等の地方の大きい都市が入っていないわけです。ですから、その辺の動向によって、全体が引っ張られる傾向はあると思うんですが、この7つのモデル県の調査ではむしろ横ばい状況ということで、それほど減少が目立っているわけではないという結果でありました。
次が、一応若者における無症候性性器クラミジア感染者の現状ということで、郵送によるクラミジア自己検査による調査でありますけれども、主に東京あるいは神戸、岡山等での若者が集まるイベントでの検査。あるいは大学の学園祭での調査です。一応コーディネーターが若者に声をかけて集めて、検査の同意をとってクラミジアの検査をする。方法は、PCRであります。女性は、膣分泌物の自己採取。男性は、初尿による検査ということで行っております。
35ページが平成18年~20年までの3年間であります。21年は、研究班の変わり目の年でしたので、数が少なかったんですが、大体毎年2,000キットぐらいの配布数であります。
左の棒グラフが検査キットを回収して、男性では約20%前後の回収率。女性では、30%前後の回収率であります。これも年ごとに見ておりますと、余り大きな変化はないですね。
右のグラスが検査の陽性率の推移をこの4年間で見たものでありますけれども、例えば男性の場合には、平成18年から5.8、6.5、3.3、4.0というクラミジアの陽性率。女性の場合には、8.6、4.2、5.3、3.6。ですから、全体としては、余り大きな変化はなく、同じイベントでやっておりますので、厳密な意味での比較はできないかもしれませんが、トレンドとしては無症候感染者も減少傾向ということが言えると思います。
そのときに行っているアンケート調査を示したのが36ページでありますけれども、男性と女性とで性感染症の検査あるいは治療に望むこととしてお示ししてあります。女性の場合に最も多い検査に対する希望が自宅で検査を受けたい。つまり、産婦人科に行って、検診台に乗って検査を受けるようなことは、できるだけしたくない。
それから、気軽な医療機関を知りたい。これは、医者のところにかかっても怒られない、責められない、優しく対応してくれる、そういう医療機関を望んでいる。
検査、治療の費用ですが、当然若者は特になかなか検査ができないという現状がありますので、そういった費用を知りたい。あるいは具体的な予防法を知りたい。
男性の場合には、気軽な医療機関を知りたいが最も多いんですが、やはり自宅での検査を希望する者が多いということで、この傾向は、ここ何年かの調査でほとんど変わっていない。もう一つ、プライバシーの保護に注意をしてほしいという要望も非常に強くありました。
この無症候感染者の調査の考察と結論でありますけれども、検査コーディネーターを特に若者を対象として養成したんですが、NGOあるいは行政の協力によって、若者の自主的な自己検査勧奨の事業運営につながる。ピア・エデュケーションが同世代の課題に気付いて解決に取り組むきっかけになるということです。
イベントでの自己検査キットの配布は、返信率が3割程度です。それを多いと見るか少ないと見るかですが、無症状での感染の有無を知る機会になる。ただ、これは参加者がどうしても大学生が多い。平均22歳ぐらいなんですけれども、高校生以下には普及しにくい方法であると思います。
3番目は飛ばしまして、4番目は、自己検査による性感染症の早期発見、早期治療につなげる具体的な対策について、若年者のニーズをとらえることができた。ただ、確実に医療につなげる体制づくりには、課題が残った。この性感染症対策は、啓発や情報提供のみならず、検査から受診まで行政がNGOや医療機関と円滑に連携する必要があると思います。
我が国における性感染症の現状は、一応全体としては、減少傾向。若年層の男女における無症候のクラミジア陽性率は、女子で3.6~8.6%。男子で3.3~6.5%で、やはり減少傾向が見られる。定点調査と全数調査で全体としては、大きな乖離はないんですが、定点の設定はやはり基準に基づいて行う必要があろう。今後も継続して、定点調査を検証していく、そういったサーベイランスが必要であろうと思います。
最後は、特に一番下の段ですね。若者における無症候の性器クラミジア感染症は、増加傾向が見られないけれども、検査から受診、治療に結び付けられるシステムの構築が必要であるというのが、研究班としての提言であります。
以上です。
○木村座長 どうもありがとうございます。一旦、この御発表の内容について御質問があれば、少し受けた後、エイズの方に移りたいと思います。
 北村委員、どうぞ。
○北村委員 1つは、まず細かいところですが、畑農さんが発表された尖圭コンジローマの字が間違っておりますので、これは「形」ではなくて「圭」にされたらよろしいのではないかと思います。
 もう一つは、5ページでしたか。定点のデータで特に性感染症が減少傾向にあるということを御発表いただいておりますけれども、国は、減少傾向にある理由は何だと分析しておられるのか、是非お聞きしたいなという感じがしております。
 それと私自身は、母子保健をやっている立場で「健やか親子21」の動向などにも大変関心を持っておるわけですけれども、別添の「健やか親子21」の資料には、別添2の最後から2ページ目でございますが、「感染症発生動向調査の報告件数は、医療機関の受診件数であり、その評価については受療行動の影響を受けるため留意が必要である」と書かれています。
私自身は、東京の市ヶ谷で小さなクリニックを営んでおりますが、クラミジアを始めとした性感染症の検出率が下がっているという事実でして、性感染症罹患率の減少は明らかだと確信しています。
 そのような意味では、「定点データについては、単純に医療機関の受診件数であり、その評価については、受療行動の影響を受けるため留意が必要である」との表現はとても残念です。前回私も予防指針の議論に加わらせていただきましが、その予防指針の中では、「定点の決定は十分検討すべきである」という、こういうことが文言として盛り込まれているにもかかわらず、それがこの5年間でどのような努力がなされたのか具体的にお示しいただけますと幸いです。本日の小野寺委員の報告でも、全数調査に比べて信頼を欠くとありましたが、是非検証結果を教えていただけたらと思っております。
 また、この予防指針の中ではクラミジアや淋菌などについては、病原体検査が原則であって、抗体検査は意味がないのだという議論を実は5年前にしたことを私もよく記憶しておりますけれども、どうも現状では、保健所においてはあくまでも抗体検査にとどまっているという情報が私の耳に届いております。となると、予防指針というのは、一体どれほどの影響を現場、例えば保健所などに与えているのか、5年間を踏まえた国の努力の成果を私どもにお話いただけたらと思っております。
○木村座長 特に最初の御質問で、最近はSTDが減少傾向にある。細かく見ると、梅毒については、30代、40代の男性で増加していて、それがここ2、3年については、横ばいという状況がありますけれども、ほかの性感染症については減少傾向にある。これをどういうふうに厚労省として解釈しているのか。その点を今後の予防指針にどういうふうに生かしていったらいいのかという辺りが重要な御指摘だったと思うんですが、何か事務局の方からありますか。
○林課長補佐 御指摘ありがとうございます。
 後ほどまたこの指針をどう見直していくかということについては、時間を取っていただいて、先生方の中で御議論いただければと思っておるわけでございますが、定点観測のデータにつきましては、今、先生からも御指摘がありましたように国として、現時点ででき得る方法で性感染症発生の動向を調査しておる貴重なデータであります。また、いろいろ細かなところで十分ではないという御指摘はあるにしても、全国のデータとしては、それなりの代表性を持ったサンプリングをさせていただいて、データを取っていただいているものだと考えております。
 したがいまして、ここで減少の傾向が見えてきているということに関しては、それ相応の意義を持っているととらえております。ただ、受療行動の影響を受けるため留意が必要といった記載は、その影響の大きさがどれほどかはわからないにしても、患者さんがもし医療機関にかからなくなってしまえば、数字が出てこなくなるという事実を記載しているものでありまして、勿論、減少したときにその理由が受療行動の影響だということを申し上げているものでありませんが、間違っても受療行動のせいで患者さんの数がわからなくなったということがないようにということを戒める記載だととらえていただければと思っております。
 現場の先生方の感覚として、こういう理由で減っているという御指摘も非常に貴重だと思います。私どもなかなかそういった動向をつぶさに把握できるわけではございませんので、その辺りも含めて後ほど、御議論のきっかけとしていただけるとありがたいなと思います。
○木村座長 それでは、その辺りの詳細については、最後の総合的な討論でお願いしようと思いますが、小野寺先生、全数調査と定点調査とで余り大きな乖離はないという御発表と自己検査の2つお話があったと思うんですけれども、特に最後の自己検査をされた場合の結果のフィードバックは、どういうふうにやっていたんですか。
 この辺は、HIVの場合にも少し関連してくるかなと思って、お聞きしたいんですが。
○小野寺委員 これは、NGOの協力を得てやっているんですが、数パーセントの陽性率というと、結局数名なんです。年間10名いくかいかないかぐらいの陽性率です。一応私の方で結果については、あくまでプライバシーを尊重して、結果を知るのはIDカードを渡して、自分自身がIDを私のホームページの方に打ち込んで、結果が陽性か陰性かを知る。そこにアプローチしますと、陽性だった場合になぜ治療が必要なのか。あるいは淋菌感染症とは何か、クラミジア感染症とは何かということが一応書いてあって、その地域ごとに推奨する医療機関を書いてあるんです。
 ですから、もし陽性だった人は、そのカードを持って、その医療機関を受診すれば、ちゃんとした治療を受けられます。費用についても大体親の保険証を使えば、幾らぐらい。自費だと幾らぐらいということが書いてあります。そういうふうにはしてはいるんですけれども、なかなか数パーセントの陽性者がすべて受診しているということまでは、把握できていませんので、そこが少しシステムとしてまだ不十分だなと思っているんです。
○木村座長 どうもありがとうございました。
 それでは、次に後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針について、事務局から御説明をお願いします。
○平賀課長補佐 疾病対策課でございます。
 続きまして、後天性免疫不全症候群、エイズに関します特定感染症予防指針の再検討につきまして、資料4、5、6により御説明いたします。
 まず、お手元の資料4をごらんいただきたいと思います。資料4は、現在のエイズ対策の全体的な動向につきまして、委員の先生方に共通の御認識を持っていただきたく、資料を準備させていただきました。
 梅毒と同様に医師から保健所長を経由して、都道府県知事に届出を行うという意味では、HIV感染症、エイズに関しましても全数把握の対象となっております。
 まず、動向に関して説明させていただきますが、近年のHIV感染症、エイズの発生動向でございます。ごらんいただきますと、依然として増加傾向にあることがおわかりいただけるかと思います。昨年2009年度の新規報告数に関しましては、HIV感染者が1,021件。エイズ患者が431件。合わせますと、1,452件というところで、年々増加傾向にあるということが御理解いただけるかと思います。
 その下の図でございます。次に日本におけるHIV感染者の発生動向でございますが、日本国籍男性の報告数を除きましては、1985年のサーベイランス開始後から特に大きな変化はないと言えるのではないかと思います。我が国におけますエイズ対策は、日本国籍男性における感染対策が重要であると言えるかと思います。
 次に2ページ目でございます。平成21年に報告されました新規HIV感染者及びエイズ患者の年代別内訳と感染経路別内訳でございます。年代別の内訳に関しましては、向かって左側がHIV感染者、向かって右側がエイズ患者でございます。
 特にHIV感染者では、20代及び30代での感染報告が約4分の3を占めるというところでございます。エイズに関しましては、20代、30代がマジョリティーでございますが、若干年代が高くなり40歳代も増えてくるというところでございます。50歳代以上も増えているという状況でございます。
 感染経路別の内訳につきまして、左がHIV感染者、右がエイズ患者でございますが、一見しておわかりいただけますように、同性間の性的接触による感染が際立っています。おおよそのところでございますが、HIVの感染者による感染経路は、大きく言いますと、9割が性行為。
 エイズに関しましても、不明なところはございますが、8割が性行為でございます。その中で同性間性的接触がマジョリティーを占めるというところです。
 3ページに移りたいと思います。発生動向のまとめでございます。御説明申し上げましたが、我が国におけますHIV感染者及びエイズ患者の発生動向の特徴は、増加傾向でございまして、性的接触、特に男性の同性間性的接触や20代、30代の感染が多数を占めるという状況でございます。こちらは、先ほど御説明させていただいたとおりでございます。
 4ページ目でございます。前回、平成18年にエイズ予防指針の見直しを行わせていただきました。その際に議論されましたエイズ対策の基本的方向でございます。新薬の登場や多剤併用療法の確立によります発症の抑制により、エイズは、コントロール可能な疾患になりつつあるという疾患概念の変化。
 こちらに対応した施策展開を行い、国と地方自治体の役割分担の明確化を行った上で、施策の重点化、計画化することを見直しの基本的な方向として位置づけまして、国、地方自治体、医療機関、患者団体を含めNGO等が連携いたしまして、患者の人権を十分に配慮しつつ、正しい知識の普及啓発及び教育、HIV検査、相談体制の充実等による発生の予防及び蔓延の防止、そして、患者の人権を尊重した良質かつ適切な医療の提供について、重点的に取り組んでいくこととさせていただきました。
 それらをまとめましたものがエイズ予防指針、この基本的な考え方というところでございまして、そちらに基づいた具体的な施策は、その下の図でございます。3本柱に沿って行われているところでございます。
 5ページ目でございます。こちらは、厚生労働省におきますエイズ対策関係予算、その主な事業を記載しております。非常に大まかでございますが、このような形で事業をさせていただいております。
 では、続きまして、資料5に移らせていただきたいと思います。資料5は、いわゆるエイズ予防指針の再検討の進め方について。これは、事務局の案でございます。
 エイズ予防指針におきまして、少なくとも5年ごとに指針に再検討を加えることとされておりますが、本ワーキンググループで検討するに当たり、本ワーキンググループにおいて、エイズ予防指針作業班を設置いたしまして、エイズの発生動向や若年者の行動様式の変化等を踏まえ、エイズ予防指針の再検討を行い、その結果を本ワーキンググループに報告していただきます。
 なお、資料6、こちらをごらんいただきたいのですが、その作業班の開催要項(案)でございます。詳細はこちらを御参照いただきたいと思います。
 申し訳ありません。また戻らせていただきます、資料5の2ページ目です。エイズ予防指針作業班におきます検討の視点ということで、事務局として考えておりますエイズ対策の現状と課題。こちらを示させていただきました。
 我が国におきますHIV、エイズの発生動向。これは、先ほども説明させていただきましたが、新規感染者及びエイズ患者の報告数が増加傾向であり、首都圏や大阪府などだけではなく、地方においても増加しております。
 また、若年者や性行為。特に男性同性間の性的接触による報告が多数を占めておるところでございます。それは、先ほど説明させていただいたとおりでございます。
 このような発生動向の中で、平成18年の前回見直しから約5年が経ち、エイズ対策についての課題が多く変化してきておるところです。HIV検査受検につながるよう普及啓発を国、自治体等、多方面から行っておりますが、まだ、HIV検査の受検が進んでおらず、こちらは、課題の一番上のところでございますけれども、エイズを発症して初めてHIV感染に気付く、いわゆる「いきなりエイズ」の患者さんが依然多く認められております。
 エイズの診断に際しましては、指標疾患が23疾患ございます。エイズに関しましては、非常に多くの病像を呈する疾患がございますが、短期的な治療で済むものから、長期的療養を必要とするものまで多くございます。
 短期的治療で申し上げるならば、具体的にはヘルペスやカンジタ等がございますが、長期療養というところでございましたら、HIV脳症、Non Hodgkin lymphoma等、多くございます。そのように多くの疾患が認められており、非常に治療に関しても難渋する場合が多くございます。
 次の男性同性愛者、略してMSNに関して申し上げます。こちらの予防行動に関してでございますが、男性同性間の性的接触に関しましては、感染報告者数が依然減少しておりません。5年前も同様な状態で、同様に指摘させていただいたところですが、現在もやはり増加傾向にあるということに変わりはないというところでございます。
 次にHIV治療の長期化に伴う諸問題でございます。HIV感染報告数が増加していくと同時に医療の進歩により、エイズは、コントロール可能な疾患となりつつあります。具体的には、HAARTの登場により、コントロール可能な疾患となったと申し上げても過言ではないと思います。
 しかしながら、その一方で治療が長期化することでHIV感染に伴う問題のみならず、他の疾患と重複すること、具体的には例えばB型肝炎、C型肝炎との重複感染、先ほどのHIV脳症のような形もあります。そのように長期療養化につながっていくような多くの問題、また、HIVでは、逆に亡くなられず、むしろ他疾患が原因で亡くなられるといった非常に複雑な問題が関与しております。
 また、HIV感染症に対し高度な医療を提供するため、全国にブロック拠点病院、中核拠点病院、治療拠点病院を設置させていただきました。しかしながら、特定の病院、具体的には、ブロック拠点病院や中核ということになりますが、特定の病院に患者が集中して、医療機関の先生方が疲弊しているという状況等も多く認められているところです。
 次に性行為によるHIV感染報告数が多数を占めているところでございますけれども、当然ながら、薬害被害者の方に対します恒久対策も、あらためて再確認する必要もあるかと存じます。
 では、3ページ。こちらが見直しに際しまして、御議論いただきたいポイントを記載させていただいております。
 これも事務局案でございますが、エイズ予防指針、こちらは、資料の向かって左側にありますように指標のフレームと記載がございます。大きく8つのパートで構成されております。
 そして、現在のエイズ対策に係る各施策内容が真ん中の図でございますが、記載のとおり3本柱に沿って実施しているところでございます。具体的には、上からでございますが、正しい知識の普及啓発。保健所での無料匿名の検査相談、医療提供体制の充実などでございます。
 エイズ予防指針作業班では、まず、委員の先生方の間で現状認識を共有いたします。どのような問題点等があるかということを新たに評価の上、共有させていただきたいと思います。その上で、施策の評価を含む検討をさせていただき、今後の施策の方向性といったところにつきまして、集中的に御議論いただきたいと考えております。
 このような議論を踏まえ、予防指針の見直し案の報告書を作成いたしまして、本ワーキンググループに報告させていただき、その見直しを行った指針に基づいて新たなエイズ対策に取り組んでいくことで、より一層のエイズ対策の推進を図ってまいりたいと考えております。
 また、資料6は先ほど簡単に説明いたしましたが、開催要項に関してでございます。エイズ対策をより総合的、体系的に実施させていただくために、エイズ予防指針について再検討を加えまして、本ワーキンググループに検討結果を報告する。これを目的として、エイズ予防指針作業班を設置したいと考えているところです。
 メンバーは、今回の座長の木村先生、それと我々事務局とで相談させていただきますが、メンバーの先生方におかれましては、エイズ予防指針に関する国、都道府県の取組み状況について評価の上、検討を進めてまいりたいと考えております。エイズ予防指針作業班における検討を御承認いただけますよう、よろしくお願いいたします。
 事務局からは、以上でございます。
○木村座長 どうもありがとうございました。
 それでは、両方の御説明をいただきまたので、これから委員の方々の御意見、特に指針の見直しの観点などについて、御意見をいただきたいと思います。それと今、エイズについて説明のあった中で、後天性免疫不全症候群の見直しについては、作業班をつくって検討を綿密にやる必要があるのではないかということがありましたので、その2つについて主に御議論いただきたいと思います。
 見直しの観点につきましては、先ほどSTDの5疾患については、減少傾向にあるという話があって、一方、HIVについては、いまだに増加しているというデータに乖離があるわけです。この辺はどうなんでしょうか。STDの予防指針はうまくいったけれども、エイズの方はうまくいっていないということなのか、どういう要因が考えられるから、見直しはこうした方がいいというところで御意見があれば、お伺いしたいと思います。
 STDについては、先ほど事務局からお話がありましたけれども、事実として減ってきているということは間違いないだろうということで、小野寺先生の全数報告でも、その傾向は、ほぼ一致しているということでよろしいでしょうか。
○小野寺委員 これは、北村先生の方がその減少の理由については、何かお考えがあると思うんですが、私も現場といいますか、いろんなところで話を聞いてみると、最近の若者というのは、特にコミュニケーションが不足している、とれない。ですから、男の子でいえば、インターネットですとかテレビゲームあるいはDVDみたいなもの、そういったところに引きこもってしまって、外に出て行って、友人をつくってパートナーをつくって、そういったチャンスを求めようという若い男の子が減っているんでないかという話があります。勿論、現場での予防啓発活動が功を奏したと考えておきたいところなんですけれども、現実には個人個人でそういった若者が増えているのではないかと、私は聞きます。
○木村座長 北村先生、いかがですか。
○北村委員 今、御指摘いただいたような調査を実は、結核感染症課ではなくて、母子保健課の主管している厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「望まない妊娠防止に関する総合的研究」班として、「第5回男女の生活と意識に関する調査」をしております。
 その結果からは、若い人たちを含めたセックスレス化が一段と進んでいます。私にとって、若い人がセックスする、しないは、基本的にどうでもいいのですが、婚姻関係にある人がセックスをしないのは、どうしたものかという視点で婚姻関係にある人で1か月以上セックスをしていない人たちは、一体どれぐらいいるのかということをずっと追いかけてきています。前回2008年のときが36.5%、1か月以上セックスをしていない、いわゆるセックスレスでした。今回2010年については、40.8%という数字が出ておりまして、これは、調査をするたびに増加傾向にあります。
 若い人たちについても、16歳~49歳を対象年齢としておりまして、5歳階級別に性交経験率などを調べても、例えば16~19歳の回答者が15歳で何パーセント経験したか。20~24歳では15歳、18歳で何パーセント経験したか、こういうのをかなり細かく分析しているんですけれども、若い人たちの初交年齢の低年齢化、加速化は実態とはかけ離れています。
 私は、こういうデータの収集を今は人工妊娠中絶の防止がテーマになっていることから母子保健課にお願いさせていただいておるのですが、性感染症予防指針の主管課こそ、日本人の性意識、性行動調査を定期的にきちっと実施していくことが、性感染症の動向、HIV/エイズの動向などを探る上でとても重要ではないだろうかと常々考えております。
○木村座長 ありがとうございました。
 性行動の早期化というのがひところ随分言われましたけれども、最近はそうでもないんだろうという調査結果ということですね。
 池上委員は、この辺はどんな印象を持っておられますか。
○池上委員 私の関係しております日本性教育協会というところも6年に一度全国調査を行っております。青少年の性行動調査で、つい最近の報告書が出たところです。
 そこでも小学生、中学生等々で特に男子において性的関心の低下というのが見られるということですが、ただし、性的に活発である人たちも勿論一部にいて、非常に二極化しているというところが言えるのではないかと思います。ですから、若者一般とくくってしまうのは、大いに危険であると思います。
 それと性的に活発である人たちの間で、経年調査ですので、前との比較ができるんですけれども、どうも10年ぐらい前と性行動の意味合いが若干違ってきている。付き合っているからセックスをするというような記号的な感じの意味合いが非常に強くなってきているのではないか、特に女子においてという指摘が調査者からされております。
 それと同時に性感染症及びHIV等々についての情報をとても欲しがっているんだけれども、学校現場においては、十分に提供されているとはいえない。しだがいまして、感染予防行動については、過去10年、20年の調査結果を一緒に並べてみましても、全く上昇していない。
 つまり、コンドームの使用率とか避妊についての誤解等については、一向に変化がないということも、これは、1つ明らかになっております。この辺り、私は、性感染症の低下というのが非常に興味深く、HIVは勿論増加しておりますので、なぜだろうというのは、非常に興味深く伺ったんですが、予防行動の方は、残念ながら変化はしていないということは、性教育関連の調査からは明らかになっております。
 あともう一点よろしいでしょうか。
○木村座長 どうぞ。
○池上委員 エイズ予防指針の見直しについて、私は大きな現状認識の共有をしていただきたいと思いますのは、5年前に疾病概念の変化に対応した施策展開ということで、不治の特別な病からコントロール可能な一般的な病になった、この認識の変化というものが挙げられました。私も委員だったので、よく覚えております。
 これは、医学的には全くそうだと思うのでありますが、この5年間、現場でHIV陽性の方あるいはその御家族の方の相談をずっと受けておりまして、感じるのは、医療的には確かに服薬で長期にお付き合いできる病にはなったとはいえ、それ以外の長期化することによる問題、先ほど肝炎の重複感染のお話が出ましたが、重複感染だけではなく社会的な生活者としての生きづらさ。仕事がない、職場の問題、職場に例えば感染、服薬のことを告げられない。告げると、不都合が起きるであろうということの予測。それによるストレスが長期になればなるほど、医療的なことよりものしかかってくるというようなことがありまして、社会的な環境は一向に変化していないということをこの5年経った今、改めて認識して、どうしていったらいいのだろう。何を強化すべきかということを是非検討していただきたい、また検討していきたいと思っております。
○木村座長 ありがとうございました。
 ほかに何か御意見ございますでしょうか。
 味澤委員、どうぞ。
○味澤委員 先ほどから話では、若い人の性的意欲が低下しているので、日本のSTDが減っているということなのですが、逆にHIVの場合は、ゲイの方が多くて、セクシャルアクティビティが非常に高い方が多いですね。
 B型肝炎、梅毒、最近では、急性C型肝炎などSTDで感染する病気が、ゲイのHIV患者の中で非常に増えているということが問題になっています。日本全体でHIVが増えているのは、ゲイの人で増えていて、そのセクシャルアクティビティが非常に高い。一般のヘテロの人は増えていないというのは、STDが減っているのと同じなのかなと思っています。
 ですから、今のところ、一般社会にはHIVが蔓延していないのは、(上記の)影響があるせいで、国の政策がうまくいっているからと言えるといいのですがなかなかそうは言いづらいと思います。少なくともゲイに関しては、全くうまくいっていないというのが実情ではないかと思います。
○木村座長 その点、私も同感でやはりポピュレーションが少し違っていて、その差が数字に出ているのかなと思います。
○北村委員 見直しについてでよろしいでしょうか。
○木村座長 北村委員、どうぞ。
○北村委員 性感染症に関する特定感染症予防指針の改訂については現場の仲間たちとやりとりを積極的に行っております。
 まず、1つは、この予防指針は既に10年ほど前に制定されて、前回5年前に改訂されているわけですが、この5年間で何がどう変わったのか、どのような効果が得られたのかなどについて、一つひとつ検証していく必要があるだろうと思っています。しかし、残念ながら具体的なアクションプランがないために、性感染症が減ったのは、このような取組みが奏功したなどが具体的に明確化できていません。
 そういう意味では、今後、やはり地方自治体などを動かすことも含めて、例えば「健やか親子21」や「健康日本21」にもあるようなアクションプランを具体的に示して、何をいつまでにどの数値をどこまで減らす、あるいは増やすなどの目標を設定すべきということを提案させていただけたらと思っております。
 それと先ほどもHIV、エイズの問題が話題になる中、例えばB型肝炎やC型肝炎などが種々影響している可能性があるという話題が出ておりましたけれども、性感染症予防指針において追記をすべきもの、あるいは話題にすべき性感染症疾患が果たして5疾患でいいのかどうか。もう少し幅広く性感染症をとらえていく必要はないのだろうかということを考えております。
 更にこの性感染症予防指針の中では、予防としてコンドームのみが取り上げられておりますけれども、私などが実は、過去に5回行ってまいりました調査データなどを見ますと、例えば性交開始年齢を遅らせることが、性感染症罹患率を下げるのにも役立つでしょうし、あるいはそういうことを含めてコンドーム以外の予防施策というものをもう少し具体的に示していく必要はないだろうかと思っております。
 私自身はHIV/エイズも性感染症なので、この予防指針とエイズの予防指針を合体してもいいんではないだろうかという思いで、ここに参加しましたが、先ほどの味澤委員や池上委員の話から、合体は難しそうだとの結論に至っております。しかし、これら二つの予防指針をセクシャルヘルスという視点からとらえるような枠組みをつくって、性感染症、HIV/エイズを考えていくという視点が殊の外、足りないのではないでしょうか。さらに、先ほど私自身提案させていただきましたけれども、是非日本人の性意識、性行動調査をこの分野で進めていただけるような予算化あるいは研究費の設定などをお願いできないだろうかということを私の意見とさせていただきます。
○木村座長 貴重な御意見ありがとうございました。
 アクションプランをもっと具体的につくっていかないと、なかなか進まないのではないかという点と、そういう行動の調査を進めるべきとのお話しがありましたが、後者は事業化というよりも何か大きな研究班をということですか。
○北村委員 私が今、人工妊娠中絶をテーマに男女の生活意識に関する調査をさせていただいておるわけですけれども、できれば、本当に堂々と性意識、性行動ということをテーマにした調査をしっかりとやれる仕組みを国のレベルで研究班を組織するなりしていただけないだろうかという要望でございます。
○木村座長 これまでの施策が功を奏していたのか、いないのか。単に行動パターンがだんだん変わってきているということの反映だけなのかという大きな点で、今後の予防指針をどうしていくかということにも関連してくると思うんですが、これまでの施策なり予防指針の評価というのは、可能なんでしょうか。
 先ほどHIVについては、これまでの施策についての評価をこれからきちっとやっていく。前回の見直しにときにそういうことをやりしょうということで、それを踏まえて作業部会で検討していきましょうという御説明でしたが、そちらはできるとして。STDの方は、いかがでしょうかね。何かこれまでの国あるいは自治体としてやってきたことの効果についての評価は可能でしょうか。そういうデータがあるかどうかですね。
○林課長補佐 なかなか難しい課題だろうと思います。
 自治体がやってきたことがどういうものであるかということは、今日、簡単ではございますが、データを出させていただいていて、そのアウトカムについてもデータを出させていただいているわけですけれども、そこをどうつないで解釈していくかというところは、なかなか技術的に難しいところなかと思います。
 この見直しを進めていく中で、こういう分析といったものについては、できる範囲で対応させていただきたいと思っておりますが、基本的には、このワーキンググループの中でそういった部分も含めて御検討いただけるとありがたいと思っております。
○木村座長 今後、言われるようにアクションプランをきちっと立てて、それを評価できるような形の指針を考えていくということが望ましいということでしょうか。
○林課長補佐 指針自体は、指針として大きな方向性を示すものということだろうと思いますが、それを具体的に施策に落としていくときにどうするかということが、また、私どももしっかり考えていかなくてはいけない問題かと思います。
○木村座長 あとSTDについては、定点の見直しをどうするかということも1つの大きな課題かと思うんですけれども、先ほど小野寺先生から話があって、多少偏りがあるのではないかということで何かの基準をつくったらいいかというはお話でしたが。
 小野寺委員、どうぞ。
○小野寺委員 どこで聞いてもやはり定点というのは、悪い言い方をすれば、医師会への丸投げである。ですから、医師会の方であくまでも決めて、しかも、総合病院的な公的な病院が結構多く入っているということですから、それですと、実態はなかなか把握できないだろうということなんですね。
 ですから、やはり定点設定の基準に関しての提言はできると思うんですが、果たしてそれが国の施策として、どこまで実施可能なものなのかということは、是非検討していただきたいといいますか。随分以前から批判されていることですので、数ですとか産婦人科、泌尿器科などのバランス等については、結構よくなっているとは思うんですけれども、要するに、どこを定点とするかという基準をある程度決めていただかないと、地域によるばらつきが大き過ぎるという印象があると思います。
○木村座長 定点を主として、医師会の方で決めておられるわけですけれども、年によってどんどん定点も変わっていってしまうという現実があるわけですか。
○小野寺委員 はい。
○木村座長 そこを検証されるために3年間、同じところでやったら、どんな結果になるかという検討もされたわけですけれども、その結果は。
○小野寺委員 ただ、先ほどお示したように、まとめてしまうと、余り大きい乖離はなくなってしまうように見えるんですが、ただ、県ごとにやってみますと、かなりばらつきが出てきます。
 ですから、先ほど少し申し上げたんですが、報告数の多い県にトータルすると引っ張られるような形になってしまって、各定点数が少ない、比較的人口が少ない県の実態を反映しているかというと、かなり難しい。
 それから、もう一つは、やはり流動人口がありますから、例えば千葉県なんかですと、東京に近い地域の発生率は低いんですね。要するに、東京から離れている地域は高いのに対して、東京に近いところでは発生率が低い。
 つまり、それは、地元では検査を受けたり治療を受けたりしないで、あくまでも東京に行って検査をするという実態もあり、そういうところもなかなか難しいですが、どうにかサーベイランスの中に反映できないだろうかと思っております。
○木村座長 ほかに。
 池上委員、どうぞ。
○池上委員 ありがとうございます。
 最初に北村委員が御質問になったことで、大変気になっていることがあって、まだお答えいただいていないと思うんですけれども、それは、やはり病原体検査と抗体検査。前回も私、記憶しておりますが、抗体検査ではなく病原体検査でいこうといったものが実質どれくらい本当に地方自治体レベルで実践されているのか。これは、施策評価のひとつの指針になると思うんですね。私は、病原体検査のはずですよみたいなことを各地で言っていますので。
 しかし、そうではないとなると、これは、変えなければいけないということになってしまいますので、もしそこら辺の実態が本当に把握できるのであれば、是非把握していただきたいし、病原体検査と決めたものが5年経ってもまだ抗体検査のままなのだったとしたら、施策を検討していって、しかし、実行できないとなると、それこそ今後何を提言していったらいいのということに関わってくると思いますので、そこの情報をいただけたらありがたいと思います。
○木村座長 どうでしょうか。これは、結核感染症課ですかね。データはないですか。
○小野寺委員 よろしいですか。
 先ほど、畑農さんから御説明があった中で、資料2の10ページで保健所での性感染症検査という項目があるんですが、クラミジアの実施自治体のパーセントが70%ぐらいです。それから、ヘルペスとかコンジローマが極めて低くて、梅毒が72%。ということは、つまり血清抗体検査なんですね。一緒に血液を採って、クラミジアの抗体と梅毒の抗体検査をしているということですから、病原検査でやられていない。
 これは、調べればすぐわかると思うんですけれども、前もそれをかなり強く主張して、是非病原体検査をしてほしいと言ったのに、それが実際に反映されていないですね。
○木村座長 指針はつくったけれども、全然実践されてなかったということでしょうか。全然されていないのかどうかは、これから急遽調査可能でしょうかね。
○林課長補佐 その辺り、自治体で行う検査あるいは健康保険で行う検査、いろいろあると思いますけれども、どういったことが把握できるか少し検討させていただきたいと思います。
○木村座長 それと検査については、STDもHIVもそうなんですけれども、去年のインフルエンザのあおりかどうか検査が随分落ちているんでしょうね。先ほどの数字を見ると、STDの方もかなり落ちていますね。ちょっとしたことでもなかったのかもしれないけれども、何かアクシデント、イベントがあったことによって、検査ががくっと落ちてしまうような体制というのは、好ましくない。そうならないように手を打っておく方がいいのかなという気もしたんですけれども、この点はいかがでしょう。
○中嶋室長 御指摘のとおりに、自治体における病原体サーベイランスと病原体を地方衛生研究所で行う体制というところには、やはり非常に困難な実態があるかと思います。
 去年の新型インフルエンザのときには、あれだけの検査を緊急的にやるという能力はあるんですが、そういったものを恒常的に維持するというところについては、やはり相当難しいところがあるのが現状です。
 それは、人的にも自治体の予算的にも、すべてやはり病原体の検査ということになりますと、検体の輸送というところから始まりまして、だれが取りに行って、どこで回してというところになってきますので、この患者さんの報告というのとは違った難しさがある。このところについては、性感染症というところだけの問題ではございませんで、感染症全般、いろいろな感染症にわたるところでございます。
 今回の新型インフルエンザの発生等を踏まえて、そういったところの課題点というのが出てまいりまして、私どもこの病原体サーベイランスをどう強化して、各自治体で維持できるように何か厚生労働省として、手が打てるかというところを今、検討しているところでございます。
○木村座長 ありがとうございました。
 何かほかに御意見ございますでしょうか。
 小野寺委員、どうぞ。
○小野寺委員 性感染症予防指針に関しまして、2つほど付け加えておきたいことがあるんです。1つは、咽頭感染が非常に重要な問題になっておりますので、発生及び予防、蔓延の防止のところに入るのかもしれませんが、そういった何らかの形で性感染症病原体の咽頭感染についての記載をしていただきたいということが1つ。
 もう一つが御存じのようにワクチン、HPV等、ワクチンが既に認可されて、今度はコンジローマも含めたワクチンが出てまいりますので、是非ワクチンの効果、普及に関する文言をここに盛り込んでほしいと思っております。
 以上です。
○木村座長 北村委員、どうぞ。
○北村委員 先ほど来、話題になっておりますけれども、私自身も県の仕事をしておった過去がございまして、いろいろ問いかけてみますと、この予防指針そのものがあることを知らない担当者がややもするといるという現実もあると聞いております。
 そういう意味では、どうぞこの機会に47都道府県あるいは市区町村に向けてもそうかもしれませんけれども、この予防指針の存在をどれほど認識しているのか。それがどれほど地方自治体の施策に影響を及ぼしているのか。この辺りを探っていただけたらと思っております。
 先ほど来申し上げましたように、具体的なアクションプランが欠けているために国が何をいつまでにするのか。そして、同時に地方自治体が何をいつまでにするのかという具体的なものがないために、笛吹けど踊らずという状況があると私は思っております。
 それと先ほど紹介しております「男女の生活と意識に関する調査」、もう5回目でございますけれども、実は、国民からの性教育に対する期待は毎回高くなっておりまして、例えばHIV/エイズについては、いつまでに知らせるべきあるいは知るべきだと思うかという問いかけをしますと、少なくとも義務教育年限15歳までに77.1%の国民がきちんと知らせるべきだと回答しています。
 性感染症については、74.2%という数字が出ております。コンドームの使い方については、中学生のときまでに67.2%の国民がきちんと知らせるべきだと回答しているのにもかかわらず、私の聞く限りにおいては、中学校でのコンドームの使用法などの公教育は、文科省からのいろいろな制約もあって、行われていないという現実がございます。
 これでは、性感染症予防あるいはHIV/エイズ予防に大きな影響を及ぼすということにならないように思います。厚労省と文科省が是非十分な調整を図って、公教育の中で性教育をきちんと国民の期待にこたえるべく行えるような、そういう指針づくりに励んでいただきたいと思っております。
○木村座長 その点については、味澤委員あるいは池上委員、御意見あろうかと思います。
 味澤委員、どうぞ。
○味澤委員 この間、私のHIVの患者さんが老人ホームに入るということになりまして、そのときに30代、40代の職員の方は非常に抵抗があったようです。学校時代にHIVに関して余り習っていない。逆に20代の方は非常にスムーズだったということで、これは、曲がりなりにもHIVの教育が功を奏しているのかなと思ったんです。
 けれども、それはあくまで患者の受入れということで、STDの予防に関しては、小中学校までほとんど血液でうつるとかせいぜいその程度の教育しかされていません。私も大昔に文科省で一緒に資料をつくったことがあるので、教育は全く無駄ではなかったのだと思いたいのですが、STDに関しては、ほとんど功を奏していないようです。むしろ先ほど北村委員からありましたように、セクシャルアクティビティの低下の方が有効なのかなと思います。
 それから、先ほど小野寺委員からありましたけれども、やはりワクチンは非常に大事です。特にHIVの方々の中で、先ほど言いましたように、B型肝炎なども非常に問題になっています。HIVに感染してからB型肝炎になりますと、非常に慢性化しやすい。というのと最近のB型肝炎はいわゆる性感染で感染するタイプ、ジェノタイプAというウイルスが増えておりまして、非常に症状が軽いんだけれども、慢性化しやすい。要するに、ほかの人にもうつしやすいという大きな問題があります。B型肝炎のワクチンに関しては、特に台湾では、ほぼ全国民に打つようになっておりますので、日本もそういったことを考えていく必要があるんではないでしょうか。
以上です。
○木村座長 池上委員、どうぞ。
○池上委員 私も文科省とのことについては、是非言いたいと思っておりましたので、北村委員の補足になりますが。つい最近、区立の中学に参りました。呼ばれて行ったんですけれども、ちゃんと条件が付いておりまして、セックスとかコンドームとかいう言葉は、自然な流れで出てくる分にはよろしいが、さもなければいけない。不自然な流れで出すというのは、非常に難しいと思うんですけれども。それと予防の話はしてもいいけれども、具体的な方法を見せたり、図示したりしてはいけない。
 前は、こんなことなかったんです。だから、性教育の現場では、セクシャルヘルスという点からいうと、むしろ後退しているということが現状かと思います。
 ただ、先ほど味澤委員からもありましたけれども、今の若い人たちの方が年齢の上の者よりは、性についてのハードルが低い。それがいい面もあれば、悪い面もあると思うんですけれども、率直に語り得るということ。あるいはエイズに対する否定的な印象が薄いという意味では、非常に情報がすっと入っていく余地はあるのだろうと思うのですね。
 ですから、国がという場合に、厚労省だけでは「国が」にならない。文科省としっかり何を若者に伝えたいのかということで、共通認識を持って、具体的にどうしたらいいんだろうということを是非やっていただきたいと思います。
 これは、5年前も言ったかと思うのですが、文科省は残念ながら 、性については、若干後退しているというのが現実だと思いますので、この点も是非この機会に検討していただけたらありがたいと思います。
○木村座長 廣田委員あるいは南委員、何か御意見ございますでしょうか。
○廣田委員 もう少し後でいいですか。総括的なところで意見を言わせていただきたい。
○木村座長 ありがとうございます。
 今日、話し合っておかなくてはいけないもう一つの大事な点は、先ほど疾病対策課の方から話がありました後天性免疫不全症候群についてはいろいろ特殊性があるので、これをSTDとは別に作業班をつくって検討して、このワーキンググループに上げていくプロセスがあった方がいいのではないかという話ですが、その点については、先ほど北村委員の方からそれでよろしいのではないかというお話がございましたけれども、何かほかの委員でこの点につきまして、御意見はありますでしょうか。
 もし、その方針でよければ、そのようにさせていただこうと思いますが。では、御了解いただいたということでお願いします。
 では、あと全般的なことにつきまして、御意見がございましたら。第1回目ですので、フリーに御意見、今までに出ていなかった点などありましたら、御指摘いただきたいと思います。
 廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 白板を使わせていただけますか。
 資料2の2ページ目の右上です。1999~2009年まであって、こういうふうに見ますと、最初に20~29歳が0.6ぐらいから始まって、途中1を上がって、0.6ぐらいまで下がっていますかね。こういう感じです。これが20~29歳。
 次が0.4からいって、0.6ぐらいまでいっていますね。そして、また0.4まで下がっています。これが30~39歳です。
 次が40~49歳ですが、これが0.2の少し下からいって、こんな感じでこういっていますね。これが40~49歳。
 その下が橙色の丸です。50~59歳、これがこのくらいからいって、何かだらだらだらだらといって、極端に言えば、上がり気味というかほとんど変わらない。
 常に感染症関係のデータというと、年齢と調査年でしか処理させていないんですね。例えば30~39歳の人が2009年というと、1970年~79年に生まれた人ということになります。そういう数値です。そうすると、ここの人です。
 1999年に20~29歳というと、この人たちが70~79年に生まれた人の数値になりますね。そうすると、この人たちはこのように落ちているわけで、同じことが次にも言えて、やはりこう落ちているわけです。
 これが50~59歳ですので、この人たちはこの時点で1950年~1959年に生まれた人です。そうすると、これだけで見ると、50~59歳というのは、いい年こいていまだに落ちないという感覚ですけれども、この人たちは1950~1959年に生まれた人は当然落ちているわけです。だから、これでいけば、50~59歳の人が下がらないというのは、その次の世代のセクシャルアクティビティが高い人たちが10年後は、ここに入ってくるから、こういう結果になっているわけです。
 だから、先ほどから最近の例えば高校生ではとかいろいろありますけども、必ずその調査年と年代ともう一つ、必ず生まれた年、出生コホートを考えないと判断が非常にまずくなると思うんです。特にエイズの場合は、生まれた年の世代というのが非常に大きな影響を受けると思いますので、調査年と年代だけではなくて、必ず生まれた年を考慮していただきたいと思います。
 それを考えますと、一番大事なのは、調査のときに何歳と聞くとまずいんですね。何年何月生まれぐらい。何日というのと、また問題になります。何年何月をきちんと聞いておくと、この出生コホートも計算しやすいし、厚労省が何年度に通知を出したというときに計算できますね。4月1日~3月31日までの世代ということで。
 そういったことから、少し感染症の世界では余りいないんですけれども、感染症の世界に本当の疫学者を入れて、その力を借りてデータを整えるようにしてほしいと思います。
○木村座長 貴重な御指摘ありがとうございます。少し観点も変えて、解析する必要があるということで、ありがとうございました。
 そのほかに何か御意見等がございましたら、お願いいたします。
 南委員、どうぞ。
○南委員 私は、今日の話を伺っていて、やはり一番強く感じたのは、厚生行政の中での議論だけでは手詰まりなところにきているのかなという率直な印象を受けました。STDにしましても、HIV、エイズにしましても、池上委員が言われたように5年前、10年前にも文科省の学校教育の場での参画も必要だということは言われた記憶がはっきりあります。
今日の結果でSTDに関しては、どの年代層でもほぼ減少傾向ということで、予防指針がうまくいったかに一見見えるというか、もう少し深読みをしないといけない。若者の現在の性行動が非常に変わってきている。それもアクティブでなくなっているだけではなくて、二極化しているとか、かなりいろいろな深読みが必要だということもわかってきている以上、これは、感染症予防という観点からだけ見れば、非常に歓迎すべき結果と言えますけれども、もっと深く読んで、人間の社会的な現象としては、問題があるということを如実に語っているということが推測できるわけですから、やはり今後の議論の中にオブザーバーという形でも何でもいいと思うんですが、他の関係省庁とかも参画していただくなりして、きちんと認識及び現状を知っていただくということが遅過ぎるぐらいで非常に必要であるということは明らかだと思います。
 かつて自殺予防というのも心の健康、うつ対策という観点だけでやってきたことが非常にまずかったので、内閣府に上げて総合対策という経緯をとりましたけれども、結局のところ、今のさまざまな健康の問題というのが社会問題そのものになっているという現状がありますので、是非広範囲な議論を早急にしていただきたいと思います。
○木村座長 ありがとうございました。
 ほかに総括的な観点から御意見ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、今後のスケジュール等につきまして、先ほどの話では、HIVについては作業班をつくって、進めることになりました。そのメンバーについては、疾病対策課と私、座長に一任させていただきたいという説明がありましたが、それはそれでよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○木村座長 それでは、HIVの方については、その作業班を立ち上げる。それから、STDについてはこのワーキンググループで検討することになります。このHIV、STDワーキンググループの今後の予定等について、この時点で何か御説明いただけることがあればお願いします。
○林課長補佐 この性感染症の指針、5年ごとに検討するということになっておりまして、来年の11月までに検討したいと大まかには思っております。今日いろいろ御指摘もございましたので、そういった情報について可能な限り集めるということ。
それから、関係省庁をという話もございましたが、その辺りも特に関連するところとは相談させていただいた上で、また日程調整を改めてさせていただきたいと思っております。
 年明け2月、3月ごろをめどに開催したいと思っておりますが、また改めて御連絡をさせていただきます。
○木村座長 ありがとうございました。
 それでは、第1回目のワーキンググループ会議をこれで終了とさせていただきます。暮れの慌ただしい中、熱心な御議論をいただきまして、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局結核感染症課
03-5253-1111(2386)

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