ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金数理部会)> 社会保障審議会年金数理部会(第42回)議事録




2010年11月19日 社会保障審議会 年金数理部会(第42回)議事録

○日時

平成22年11月19日(金)10:00~11:54


○場所

ホテルフロラシオン青山 孔雀(3階)


○出席者

山崎部会長、宮武部会長代理、翁委員、佐々木委員、田中委員、野上委員、林委員

○議題

(1)年金数理部会における財政検証
  ・厚生年金保険、国民年金(基礎年金)の財政検証結果等の聴取について
(2)その他

○議事

○石原首席年金数理官
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより「第42回社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
 座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
 資料1は「平成21年財政検証結果等について-国民年金(基礎年金)-」でございます。
 資料2は「平成21年財政検証結果等について-厚生年金保険-」でございます。
 資料3は「(参考資料1)経済前提の設定に関する参考資料」でございます。
 資料4は「(参考資料2)将来見通しの推計方法に関する参考資料」でございます。
 配付資料は以上でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、牛丸委員と駒村委員が御都合により御欠席とのことでございます。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 それでは、以後の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。

○山崎部会長
 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。
 年金数理部会においては、被用者年金制度の安定性、公平性の確保に関し、財政再計算時における検証をすることとされております。このため、今回と次回で平成21年財政検証、財政再計算結果等につき、報告を各制度所管から順次聴取いたします。今回は、厚生年金保険、国民年金の平成21年財政検証結果等についての報告を聴取いたします。
 今回の財政検証のために、厚生労働省にお願いをして、以前、当部会で決めた事項に従って検証、分析に必要な資料を作成していただきました。お忙しいところ、作業していただき、ありがとうございました。最初に国民年金、次に厚生年金の説明をお願いしたいと思います。それでは、説明をお願いいたします。

○安部数理課長
 年金局数理課長でございます。よろしくお願いをいたします。
 それでは、まず、前半で国民年金につきまして、後半で厚生年金につきまして御説明を申し上げます。国民年金の御説明の際に、両制度に共通いたします経済前提ですとか、被保険者の設定につきましても併せて御説明をいたしたいと考えております。そのため、前半の御説明が少し長目になってしまいますことを御容赦いただきたいと思います。その分、後半の説明は短目にさせていただきます。
 まず、資料1をごらんいただきたいと思います。表紙をめくっていただきまして、目次がありまして、1ページ目でございます。「財政検証の基本方針」ということで、財政検証を行うに当たりましての骨格となります考え方を5項目ほど挙げております。1つ目が経済前提をどのように設定したか、そして、2つ目で被保険者数をどういうふうに設定したか、そして、3番目は財政方式、特に従来の方式の永久均衡から有限均衡に変えていること、そして、4番目として給付水準とか保険料率をどのように設定したか、その他という5項目につきまして、ここで整理をいたしております。
 まず1番目の「経済前提の考え方」でございますけれども、長期の設定と、足元から数年間の前提という2つに分けて経済前提は設定をいたしております。このうち長期の設定につきましては、2016年度以降を対象としまして設定をいたしております。この前提を置くに当たりましては、社会保障審議会年金部会の下に経済前提専門委員会という専門家の方々で構成される委員会を設置いたしまして、そこで御検討いただいた結果を踏まえて設定をいたしているところでございます。
 ここで設定した方法といたしましては、ここにありますように、マクロ経済に関する基本的な関係式をまず設定をいたしまして、そこから導き出されます実質経済成長率とか利潤率といったものを推計しております。基本的な考え方としては、長期間の平均的な経済前提を考えておりまして、直近ではリーマンショックですとか、そういう状況がありますけれども、現下の金融危機の混乱というものを脱した後で、再び安定的な成長軌道に復帰することを想定した上で、その時点でどのような姿になるかということを見通しているものでございます。
 また、一方、直近の足元から2015年度までの前提につきましては、別途、平成21年1月に内閣府で試算が行われております。これに準拠して設定をしているところでございます。
 また、出発点となります、特に積立金の状況につきましては、実際に作業しましたのは平成20年の途中ですけれども、平成20年度末において積立金が大体どの程度になるかということを、一番運用状況が悪かった12月末の株価の状況などを織り込んだ上で推計を行っています。基本的にはそのような考え方でございます。
 それでは、この経済前提をどのように推計、推定をしていったかということにつきまして、資料3の(参考資料1)に基づきまして簡単に御説明を申し上げます。資料3の1ページ、2ページは、過去どのようにして経済前提を決めてきたかということでございますので、これは飛ばしまして、3ページからでございます。
 3ページの2には基本的考え方ということで、これは先ほど御説明したとおりでございます。経済前提専門委員会において検討を行ったということと、平成16年再計算における設定の考え方を基本的には踏襲をしたということでございます。平成16年の考え方というのは、その前の平成15年8月に社会保障審議会の中に年金資金運用分科会がございました。そこがとりまとめました報告の中で使用された方法を、平成16年再計算はほぼそのまま踏襲をいたしまして、それを21年の財政検証でも使用したと、そのような流れになってございます。
 それでは、具体的にどのような方法であったかということを3以降で御説明をしております。下から4行目にありますが、先ほど、経済前提を設定するに当たって基本的な関係式と申し上げましたのは、標準的な生産関数でありますコブダグラス型生産関数を前提としておきまして、そこからいろいろと導き出される結果を踏まえて設定をしたということでございます。
 それでは、これが具体的にどのような式かということが、4ページ目の上の方にございます。枠囲みの中に数式が書いてございますけれども、基本的にはこれがコブダグラス型を前提とした場合の経済成長率の算定式ということになります。基本的には、資本、そして労働、それらがどれくらい投入されるかによって経済成長率というのは決まってくるということで、経済成長率は3つの項目の足し算になっておりますが、1つ目と2つ目はそういうことで資本の要素、そして、労働の要素ということでございます。
 3番目に、全要素生産性上昇率というのがございます。経済成長のうち、先ほど申しました資本と労働の成長率で説明できない部分が出てきてございます。それにつきまして、実績などを分析した結果、そういった要素、要するに生産性が上昇することによって経済成長が上がっていくという要素があるということで、3番目の項目がつけ加えられているということでございます。
 この算定式をすべて基本といたしまして、以下の計算を行っていくわけでございます。ここで経済成長率というのは、マクロの成長率でございますけれども、例えば、単位労働時間当たりの成長率と考えますと、この実質GDP成長率から労働成長率を引いたもの、これが言ってみれば実質賃金上昇率のベースとなるものでございますけれども、こういった考え方でございます。
 このうちの資本成長率はどのようにして考えるか、設定するかということが、3番目の枠囲みに書いてございます。資本成長率というのはどういうふうに考えるかといいますと、結局、GDPで生産されたものの一部が投資に回る。そして、投資に回った分だけが資本成長する。ただ、その一方で、過去投資したものが減っていく資本減耗する部分は差し引かなければいけない。そのような考え方から、GDPに総投資率を掛けて、これがGDPのうちの投資に回る分、それを資本ストックで割ることで、この分だけ、まずグロスでの資本増加率を推計します。ただ、その一方で、資本減耗率、減る分がありますので、それを差し引くことによって、実質的なネットの資本成長率を設定する。このような考え方がこの3つ目の枠囲みでございます。
 一方、労働成長率というものも設定をしなければいけないわけですけれども、これにつきましては、後で別途御説明をいたします被保険者の推計と密接に関係しますので、そちらの方で御説明いたします。
そういったものを計算した後で、最終的に運用利率などを設定することが必要になってくるわけですけれども、それの前段階として、日本経済全体の利潤率を推計するというステップがあります。これは結局、日本全体の資本ストック、いわゆる有形固定資産になるわけですけれども、そういった資本ストックによって生み出される資本分配が大体どれくらいになるかを推計するものでございます。そして、資産の運用利回り、基本的には国債の利回りをベースに考えておりますが、それは、この利潤率と非常に密接に連動して、ほぼ比例関係で推移するだろうという前提で推計をします。
 このようなプロセスで将来の我が国の経済を見込むという考え方でございますが、これを推計するためには何を設定しなければいけないかと言いますと、全要素生産性上昇率をどのように設定するか、また、資本分配率をどう考えるか、そして資本減耗率、総投資率、この4つのパラメータを設定する必要がございます。それと、プラス別途推計いたします労働成長率というもの、合計5つの仮定を置くわけでございます。
 以下、それぞれにつきまして、どのように設定したかということを御説明申し上げますが、5ページからしばらくは労働投入量の設定の話でございます。これは、2番目の被保険者の見込みのところで御説明をいたしますので、14ページまで飛んでいただきたいと思います。
 14ページの下に「5.全要素生産性上昇率等の設定」ということで記載をいたしております。まず、(1)で全要素生産性上昇率をどのように設定したかということでございますが、16年の再計算のときには、0.7%を基本ケースといたしまして、高位、低位ということで、1.0%、0.4%の3通りの前提を置いたわけでございます。
 最近の動向を見ますと、例えば、内閣府がまとめました平成19年の分析などを見ますと、足元では大体1%程度の水準まで高まってきているという分析がなされておりました。また、同じく内閣府が平成20年に出しました「日本経済の進路と戦略」といった資料を見ましても、成長シナリオでは1.4~1.5、リスクシナリオでも0.9%程度という前提が置かれていたところでございます。
 こういった状況を踏まえまして、今回の財政検証では、1.0%を中心として設定をして、高位と低位ということで、1.3%と0.7%という3通りの前提を置いて、それぞれのケースごとの推計を行ったということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、15ページでございますけれども、(2)で資本分配率、そして(3)で資本減耗率をどのように設定したかということで、第17図に資本分配率と資本減耗率の過去の実績がどういうふうに推移してきたかというものをお示しをしております。基本的には、こういった実績を踏まえまして、大体その延長線上で設定するという考え方を取っております。
 例えば、左側の資本分配率をごらんいただきますと、点線で横に伸びておりますのが、前回、平成16年の財政再計算のときにどのように設定したかということですが、直近の数字、水準を踏まえますと、そのまま推移するであろうということで、37.3%という前提を置いたわけでございます。ただ、その後の推移を見ますと、この資本分配率は上昇いたしております。そういったことを踏まえまして、今回の財政検証では若干高目に設定をいたしまして、39.1%ぐらいで今後推移していくのではないかという前提を置いたところでございます。
 同じく資本減耗率につきましても、前回8.2%でしたが、その後やはり上昇してきていることを踏まえまして、8.9%という設定を今回しております。
 また、総投資比率でございますけれども、これは16ページの上の第18図に、同じく過去の実績と、前回と今回の設定を図でお示しをしております。長期的なトレンドを見ますと、基本的に減少傾向にございます。そういったことを踏まえまして、基本的に減少していくという前提を置いております。点線が平成16年の設定でございますけれども、その後の実績を見ますと、それ以上に低目で推移しているという実態がございますので、今回、若干ですが、低い水準で設定をしています。ただ、低下傾向は変わらないということで設定をしたところでございます。
 以上のような方法で、全要素生産性上昇率等々、将来、このように推移していくのではないかという前提を置いた上で推計をしたということでございます。
 18ページからがその結果を記載したところでございます。18~19ページにかけまして、表がございます。これが先ほど御説明した算式と、それぞれパラメータの前提を置いた上でどのように推移するかということを推計したもので、18ページの下が中位推計ということで、全要素生産性上昇率が1%の場合、19ページに高位推計、低位推計ということでお示しをしております。
 財政検証はおおむね100年間を前提としておるわけでございますけれども、こういった経済の見通しというものをそのような超長期にわたって一挙に推計することは非常に困難でございます。こういった経済モデルを使っていると言いましても、やはり限界がございます。そこで、推計に当たりましては、まず、一旦20~30年程度の期間を対象として、このモデルを使って推計をして、それに基づいて経済前提を設定した上で、それ以降については、その前提がそのまま推移していくという仮定を置くという2段構えの考え方で設定をしているところでございます。
 18ページの第21表が、それぞれの結果をまとめたものでございますけれども、例えば、一番上にございますけれども、全要素生産性上昇率が1%を想定いたしますと、実質経済成長率が0.77%、そして、労働時間当たり実質経済成長率が1.58%、これを被保険者1人当たりに換算しますと大体1.5%、そして、利潤率が9.7%、ある程度幅をもって推計をいたしておりますけれども、その真ん中の中央値を取りますと、大体このような結果になるのではないかという推計結果になってございます。
 これを用いまして、利回り等、設定を考えていくわけですけれども、20ページの「7.長期の運用利回りの設定」というところがございます。公的年金における積立金の運用といいますのは、基本的に長期的な観点から、安全かつ効率的に行うこととされているわけでございます。そういう意味で、安全という観点から、国内債券といったリスクの低い資産が中心となる一方で、「効率的」という観点も重要でございますので、ある程度、国内外の債券、または、株式等を一定程度組み入れるという分散投資を行う、こういったことが基本的な考え方でございます。
 そういうことを踏まえまして、長期の運用利回りの設定におきましては、平成16年財政再計算と同じでございますけれども、長期間の平均的な債券として、国内債券の運用利回りというものを設定をした上で、分散投資効果を上積みをするという考え方で設定をいたしております。
 具体的には、この枠囲みにありますように、将来の実質長期金利をベースとして、それに分散投資効果を上乗せをする。ここまでは実質の利回りですので、それに名目値にするために物価上昇率を足算をする。こういうふうな考え方で設定をしたところでございます。
 このうちの将来の実質長期金利をどのように推計するかということにつきましては、16年の財政再計算と同じ考え方でございますけれども、過去における実質長期金利の実績を基礎として、先ほど推計しました利潤率、日本経済全体での資本ストックがどれくらいの利潤を生み出すかという利潤率と関連づけることで推計をしたということでございます。
 具体的にはどのように計算をしたかというのが、21ページの下の第24表でございます。この第24表を見ていただきますと、まず、実質の長期金利の過去平均の実績がどれくらいであったかというのが一番左に来まして、そして、その期間において、この利潤率というものが実績として幾つになったかというのが?の2番目の欄でございます。そして、それに対して、この利潤率というのが将来はどうなるだろうかということを推計したもの、これは先ほど推計したものですが、これが?になります。この3つの数字を使いまして、?として、過去と将来とで利潤率がどれくらい変化するだろうかということを計算した上で、その変化割合というものを過去の実質の長期金利に掛算をするということで、?という実質長期金利の将来の推計値を推計するというやり方を取っております。
 全要素生産性上昇率が1%の場合、1.3%の場合、0.7%の場合、3通り推計しておりまして、また、それぞれにつきまして、過去の実績として何年間取るかということも、1つになかなか決め切れませんので、過去25年の場合、20年の場合、15年の場合という3通りについて、同じような考え方で計算をしております。実質長期金利を推計いたしますと、?にありますように、過去15年を取った場合ですが、2.4%が一番低い数字になります。一番高い結果になりますのは、過去25年を考えた場合の3.0%になります。大体これぐらいの幅になるというような推計結果になったということでございます。
 一方、分散投資を行うに当たっての効果がどれくらいあるかということでございますけれども、これが22ページにございます。詳細は省略させていただきますけれども、いろいろと仮定を置いて計算をいたしますと、大体、分散投資効果によって0.3~0.5%ぐらい上乗せができるのではないかという推計結果が出たところでございます。
 この2つを組み合わせますと、実質長期金利が大体2.4~3.0ぐらい、分散投資効果による上乗せが0.3~0.5ということで、これは全要素生産性が1%の場合ですけれども、そういうことで、分散投資効果を加えた実質運用利回りとしては、下限で大体2.7%、そして上限で3.5%、これぐらいの範囲にあるのではないかという推計結果としたわけでございます。
 最後に、これは実質でございますので、名目にする必要がありますけれども、長期の物価上昇率をどのように設定するかということにつきましては、日銀の金融政策決定会合の状況などを踏まえますと、大体0~2%の範囲内にあり、大勢として1%が中心値としてあったということも踏まえまして、長期の前提として、物価上昇率1%と設定をすることにしたところでございます。
 その結果、最終的にどのような結果になったかというのが23ページの第26表で表記しているところでございます。最終的には、第26表の下の表でございますけれども、生産性上昇率1%の場合を想定しますと、物価が1%、そして名目賃金上昇率が2.4~2.6%ということで、真ん中を取って2.5%という前提。そして、名目運用利回りにつきましては、3.7~4.5%ということで、この真ん中を取りまして、大体4.1%という前提を置いたという結果でございます。
 以上のようなプロセスを踏みまして、今回の財政検証の経済前提を設定したところでございます。
 それでは、また資料1にお戻りをいただきまして、今度は被保険者数をどのように設定をしたかということが次でございます。「(2)被保険者数の前提について」をごらんいただきたいと思いますが、最も基本となりますのは、そもそも人口がどうなるのかということですが、これは平成18年の12月に社会保障・人口問題研究所が行いました「日本の将来推計人口」をすべての基本として使用いたしております。それを踏まえた上で、労働力の状況はどうなるかということで使いましたものが、労働政策研究・研修機構が20年の3月に行いました「労働力需給の推計」で、何通りか推計を行っておられますけれども、そのうちの「労働市場への参加が進むケース」を基礎として被保険者数の推計を行っております。
 また、特に女性について推計する際には、有配偶か、無配偶かといった区分が重要になってございますけれども、これにつきましても同じく社会保障・人口問題研究所が平成20年の3月に世帯数の将来推計を行っておりますので、これを踏まえて設定をしたところでございます。
 また、第3号被保険者は、基本的には被用者年金の被保険者数を推計し、その結果を踏まえまして、第1号被保険者と第3号被保険者を推計するわけですけれども、第3号被保険者をどのように推計するかということにつきましては、男性と女性とで推計方法を違えております。
 男性の場合には、女性有配偶者の第2号被保険者に対する男性の第3号の被保険者、要するにペアの対応関係を考えまして、その比率を実績から計算をいたしまして推計をいたしております。
 また、女性の第3号被保険者につきましては、女性の有配偶人口の推計結果があるわけですけれども、そこから本人が被用者年金に入っておられる方を除いた上で、その中で第3号被保険者になっておられる方がどれくらいいるかという割合について、これもまた実績データを基にしまして、それを将来の推計結果として計算をしていくというやり方で第3号被保険者を推計しているところでございます。
 このようにして、第2号被保険者と第3号被保険者を計算した上で、第1号被保険者というのは、人口からこの2つの推計値を差し引くというやり方で被保険者を推計いたしております。
 先ほどご説明しました労働力のデータなどを使って、どのように推計したかということにつきまして、同じく先ほどごらんいただきました資料3で、先程省略しました5ページ以降をごらんいただきたいと思います。基本的なフローが5ページの下の第3図で、これに推計の流れというものをまとめております。
 まず、すべての出発点となりますのが、一番上にあります性・年齢別将来推計人口で、そこに有配偶の割合というもの、これは世帯推計から出てくる数字ですけれども、それを使うことによりまして、女性につきましては、有配偶と無配偶という分割を行います。そして、労働力需給の推計から労働力率の推計値を持ってきまして、それを適用することによりまして、男性、そして女性の有配偶、無配偶別の労働力人口を推計します。
 そして、その次の段階として、今度は労働力の中で実際に就業している人の割合を、これも同じく労働力需給の推計に推計結果がございますので、そのデータを使うことによりまして、今度は男性、女性の有配偶、無配偶別の就業者数というものを推計します。
 ここまでは人口の推計、そして労働力推計のデータを使って計算をするわけですけれども、最終的に雇用者数の推計を行う必要がありますが、残念なことに、雇用者数の推計は既存のものがございませんので、そこだけは財政検証独自の推計を行うことによりまして、雇用者数を推計しております。
 そして、雇用者数を推計した後で、特に最近、短時間雇用者の割合が増えてきておりますので、そういった実態も踏まえる必要があるということで、この雇用者数をフルタイム雇用者と短時間雇用者にそれぞれ分けまして、それぞれごとに、大体、平均労働時間がどれくらいになるかというものを掛け算することによって、まず、ここでは総労働時間というものを計算します。そして、この総労働時間というものを使うことによって、先ほど経済モデルの中の労働力の増加率というものに変数として使うと、そういうプロセスをたどったわけでございます。
 被保険者数を推計する際にも、ほとんど同じプロセスをたどりまして、最後のところだけ違いまして、フルタイムの雇用者数と短時間雇用者数を推計した後で、2号被保険者、そして厚生年金被保険者の割合がそれぞれどれくらいあるかという、これも実績をベースにして設定をするわけですけれども、それぞれの雇用者に対する被保険者数の割合を掛算することによって、この第2号被保険者、そして厚生年金被保険者、そういったものの推計を行うということで、被保険者それぞれの推計を行っているところでございます。
 6ページ以降は、その辺りの詳細について御説明しておりますけれども、省略をさせていただきます。労働力需給の推計などのデータの割合を使って掛け算をするということですが、雇用者数の推計だけは独自の推計を行っていると申し上げました。その考え方だけ簡単に御説明いたします。
 9ページの第7図をごらんいただきたいのですが、就業者数までは推計値がデータとしてあって、そこから雇用者数をどのように推計するかということなのですが、基本的には、出生率などを推計する際に使われますコーホート要因法を使っております。同一出生集団、コーホートごとに実績を分析いたしますと、大体どのコーホートで見ましても、雇用者比率というものは、若いころはずっと高くて、高齢になると急速に下がっていくという傾向がございます。ただ、それをコーホートごとに見ていきますと、若い世代ほど、水準そのものは少しずつ上がっていっているという実態がございます。それを踏まえまして、基本的には年齢ごとに下がっていくパターンは同じだと仮定して、ただ、出発点の水準が高い分は少しずつ上げていく。そのようなやり方で雇用者比率というものを、それぞれのコーホートごとに推計しております。
 例えば、ここで申しますと、一番下にありますX年生まれの方については、もう既に65歳まで実績が出ているということで、実線がずっと並んでいるわけですけれども、このような実績がまずあります。それでは、5年若いX+5年生まれの人について、どのように雇用者比率を推計するかといいますと、その1つ上の線になるわけです。そうしますと、60歳までは実績があるわけですが、60~65歳について実績がない。ここをどう推計するかというときに、その前のコーホートの世帯の低下率をほぼ反映するような形で下げていく。これを順次若い世代に適用していくということで、各コーホートの雇用者比率を推計して、それを就業者数に掛算することによって雇用者数を推計する。このような考え方で雇用者数を推計し、そして、それを基にして、被保険者数を推計していったわけです。
 それでは、また資料1にお戻りをいただきまして、以上、経済前提、そして被保険者数の推計について御説明したわけですけれども、あと「(3)財政方式について」は、16年に考え方が大きく変わりまして、従来は給付を先に決めて、その給付を賄うために保険料率がどれくらい必要かという観点で、財政再計算ということで行っていたわけですけれども、16年改正におきまして、将来の保険料率をあらかじめ固定しまして、その中で収支がバランスするためにはどういうふうに給付を調整していく必要があるかという、順番を逆転した考え方に変更いたしました。今回の平成21年の財政検証におきましても、そこは同じ考え方で行っております。
 また、将来見通しを行うに当たりまして、均衡する期間をどういうふうに考えるかということで、従来は永久に均衡させるということで考えていたわけですけれども、平成16年から考え方を変えまして、おおむね100年間という有限の期間を切って、その中で均衡させるという考え方に変更したところでございます。
 今回の財政検証では、おおむね100年ということで、2105年までを財政均衡期間ということで設定をしているところでございます。そして、それが終了する時点で、大体、支出の1年分を積立金として保有するように設定をしているという考え方でございます。
 2ページ目でございますけれども、給付水準や保険料率の設定の考え方は、先程申し上げましたとおりでございます。保険料をまず決めて、それに応じて収支が均衡するように給付水準を調整していくという考え方でございます。
 なお、その他としましては、基礎年金の国庫負担につきましては2分の1を前提としております。
 また、1号被保険者についての保険料の納付率につきましては、この時点での社会保険庁の目標を踏まえまして、80%ということで推計をしているところでございます。
 平成21年の財政検証の基本方針の主要な事項は大体以上でございます。以下、個別の基礎数・基礎率について、個々の数字について御説明する時間はございませんので、考え方だけ簡単に御説明を申し上げます。
 基礎数・基礎率につきましては、どのような数字を使っているかということで、3ページ目に目次がございます。こういったような基礎数、そして基礎率を設定して推計をしているところでございます。
 4ページ目に、基礎数・基礎率を設定するに当たっての基本的な考え方ということで、経済前提などにつきましては、先程御説明しましたので、それ以外のことといたしましては、上の3行にございますように、まず、基礎数については、被保険者については、100分の1抽出統計をベースにして設定をいたしております。また、年金受給者につきましては全数統計を使いまして作成をしているということでございます。また、人口学的要素についての基礎率につきましては、直近のデータ、それ以外に生命表などの統計資料も参考として作成をいたしております。
 2番目の黒丸にありますように、死亡率の将来の改善につきましては、将来推計人口において、将来の死亡率の改善が見込まれております。それと同程度の改善をこちらの財政検証でも仮定をいたしておるところでございます。
 また、マクロ経済スライド、平成16年に導入されたものですけれども、この考え方といたしましては、2105年までを財政均衡期間と設定をいたしまして、その終了時点で積立金が支出の1年分となるように、マクロ経済スライドの終了時期を設定したところでございます。
 以下、基礎数・基礎率について、グラフ、表などがございます。これにつきましては、一つひとつ御説明していく時間もございませんので、後程ごらんをいただきたいと思います。
 以上のような考え方におきまして推計をしていくわけですけれども、基本的にどのようなフローで推計をしているかということにつきましては、資料の40ページまでお飛びいただきたいと思いますが、将来推計の全体構造がわかるフローチャートということでお示しをいたしております。
 これをごらんいただきますと、まず、出発点としては、被保険者の実績データ、それに、将来推計人口ですとか、労働力率の見込みを適用することで、被保険者数の将来推計をまず行います。そして、将来の被保険者数を基にいたしまして、左側から矢印が出ておりますけれども、受給者のデータですとか、賃金上昇率、物価上昇率、いろいろな基礎率を適用することによりまして、まず、給付水準調整を行わない、いわゆるマクロ経済スライドを行わない場合での給付費の推計というものを一度行います。
 そして、それを行った上で、将来のスライド調整率を別途推計いたしまして、それを合わせることによりまして、実際、給付水準の調整を行った後での給付水準、そしてまた財政の見通しというものを推計する。これは厚生年金、国民年金共通でございますけれども、こういったことを行っています。そして、財政見通しを推計する際には、積立金の初期値を踏まえ、そして、運用利回り、何%で回るかと、そういったことなどをデータとして入れつつ、将来の財政見通しを計算していく。そのようなプロセスで作成をいたしているところでございます。
 42ページ以降は、そのように計算した結果がどうなっているかということで、まず、被保険者数の見込みから、順次列挙いたしております。
 46ページにありますのが、将来の給付の見通しを踏まえた上で、財政見通しがどうなるかということをお示ししたものでございます。
 これをごらんいただく際に御注意いただきたい点が2つほどございまして、まず1つは、基礎年金交付金というものがございます。46ページの表ですと、収入の欄の右から2つ目に、欄だけあって数字は入っておりません。
 この基礎年金交付金というのは何かと申しますと、昭和61年に基礎年金制度が導入されましたが、基本的には基礎年金につきましては、各制度が拠出金で支出をして、それで費用を賄うということになるわけですが、ただ、61年以前に裁定された年金の中にも、基礎年金に相当する部分があるわけです。その部分をまとめて基礎年金拠出金として各制度が拠出をするわけですが、その中から各制度の給付の名前で支出する分はそれぞれの制度に戻すという仕組みになっております。その戻す金額が基礎年金交付金という名称がついておりますが、この財政見通しにおきましては、それは結局、支出と収入が両方カウントされるという性質のものですので、支出と収入、両方から差し引いているというのが、ここの注の意味でございます。基礎年金交付金は完全に空欄になっているということは、そういうことでございます。
 支出の方からも引くことになりますが、どの欄から引かれているかと申しますと、支出の給付費の欄から差し引いております。特に国民年金の場合には、給付費のほとんどが基礎年金交付金で賄われるものでございます。給付費がほとんどゼロに近い数字になっているということはそういう意味でございます。ですから、基礎年金に相当する以外の国民年金独自の給付がここに計上されている。なので、ほとんどゼロに近い数字になっているということでございます。
 それと、もう一つ御注意をいただきたいのは、基礎年金に国庫負担2分の1を設定をするわけですけれども、国庫負担にはもう一つ、特別国庫負担というものがございます。これはどういうものかと申しますと、例えば、過去、保険料を免除されていた方にも、国庫負担分の給付だけは出るわけですけれども、そういった部分の国庫負担は特別国庫負担ということで、2分の1の国庫負担とは別に整理をされております。この推計資料では、基礎年金拠出金とか、国庫負担といった場合には、特別国庫負担を大体含んでいる数字を計上しております。そのために、例えば、基礎年金拠出金と国庫負担の比率を見ますと、2分の1を超えていることになるわけですが、それはなぜかと言いますと、そういう特別国庫負担を含んでいるという事情がございます。この2点につきまして御注意をいただいてごらんいただければと思います。
 46ページの表において、今申しました、そういうことで、収支、収入と支出、そして将来の積立金がどうなるかということで、一番右側に積立ての状況をまとめておりますが、ここで積立度合と積立比率という2つの数字が並んでおります。これは何が違うかと申しますと、一番右側の積立比率というのは、従来から年金数理部会でお使いになっておられる比率でございまして、積立金を分子とするのは同じなんですが、国庫負担を除いた部分を分母として計算するのが積立比率でございます。その左にあります積立度合というのは、支出に対する比率でございます。ですから、実際にはその一部は国庫負担で賄われるわけですけれども、国庫負担を引き算しない支出に対する比率というもので計算しておりますのが積立度合でございます。
 財政検証におきまして、おおむね100年後に1年分と設定する際には、積立度合を最終的に1になるように調整期間を設定しています。そのために、積立度合を見ていただきますと、最後は1.0になっております。ただ、積立比率で見ますと、分母から国庫負担が引き算される分だけ小さくなります。しかも、先ほど申しましたように、特別国庫負担がありますから、2分の1よりももっと多く分母が小さくなりますので、ここが2より少し大きくなっております。この点についても御留意をいただければと思います。
 以降は、48ページですと、基礎年金の給付費、過去期間と将来期間に分けた推計。また、49ページには、その基礎年金につきまして、拠出金として按分するわけですけれども、按分のベースとなります算定対象者数の見込み等々、基本的な計数の見込みを列挙いたしております。これにつきましても一つ一つの御説明は省略させていただきます。
 55ページ以降からは、そういった将来の被保険者数の見込み、また、給付費の見込み等をベースといたしまして、通常年金数理部会が用いていらっしゃいます様々な指標、年金扶養比率、収支比率、積立比率などについて、それらの将来見込みというものを推計を行ったものでございます。55ページがそれらをまとめた数字でございまして、56ページ以降は、その基礎となったデータ、例えば、56ページですと、年金扶養比率を推計するに当たって、被保険者数がどうなっているか、そして、老齢基礎年金受給者数がどうなっているかといったことを分解してお示しをしております。57ページ、58ページも同じでございます。
 59ページは、マクロ経済スライドを行うわけですけれども、それのスライド調整率、これは基本的には公的年金被保険者数の減少率、それから、寿命の伸びを勘案して設定した、これは0.3%ですけれども、この2つで決まりますが、将来、スライド調整率がどうなるかということをお示しした表でございます。
 ただ、注2にございますように、この調整がすべて行われるわけではございませんで、いろいろと条件がございます。例えば、賃金や物価が低下した場合には、給付水準調整は行わない等々の条件がございますので、この分すべてが調整が行われるわけではございませんが、そのベースとなる数値がこのようになっているということでございます。
 また、61ページには、これはよくごらんになることもある図ではないかと思いますけれども、こういった将来の給付、また、保険料収入などを推計いたしますが、それを現在の価値に割り戻したらどうなるかということを、給付と、それを賄うための財源ということで、図でお示ししたものでございます。また、給付を計算するに当たりましては、それが過去期間に係る分か、将来期間、これから加入することによって増える給付部分かということに分けて推計したものでございます。61ページが国民年金、そして、62ページは基礎年金について、同じように計算をしたところでございます。
 また、63ページは、デュレーションというものを計算せよという御指示をいただきましたので、御指示いただいた定義どおり計算した結果でございます。
 また、64ページには同様にGDPに対する比率のお求めがございましたので、こちらにお示しをしております。
 これまでお示しをいたしましたのは基本ケースという前提を置いた場合の数字でございますけれども、幾つか、出生、死亡、また、経済要素につきまして変動した場合の推計も行っております。それをまとめて表として作成をいたしたものが65ページ以降でございます。当然のことですけれども、基本的には、出生が高くなれば財政状況は好転をいたしますし、出生が予想よりも悪くなれば、財政状況はより厳しくなる。死亡につきましては、死亡率がより高くなれば好転しますし、死亡率が更に低下して平均寿命が延びれば厳しくなる。経済前提についても同じでございまして、経済前提が高い場合には、より財政状況は改善をするというような傾向にありますので、大体そういった結果がここに出てきております。
 以下は経済前提を変更した場合でのさまざまな試算結果をまとめたものでございますので、これもまたごらんいただければと思います。
 すみません。時間が長くなってしまって恐縮ですけれども、国民年金、それから、その前提となりました経済前提等の御説明は以上でございます。

○山崎部会長
 ありがとうございました。
 ただいまの説明に関しまして、何か御質問等ありますでしょうか。
 野上委員。

○野上委員
 2点ほど質問と意見のようなものを述べさせていただきたいと思います。
 まず、質問の方ですけれども、最近ちょっと話題になっております未納の方ですが、資料を見させていただきますと、16ページに19年度の基礎数値を使われているというふうに示されておりますが、ここ数年、急激に未納が増えておりまして、その辺りの最近の動きは反映されているのかどうかというのが1点目の質問でございます。
 2点目は、マクロ経済スライドでございますが、足元、去年の分析などを見ますと、残念ながら物価が下がりワークしていないという状況にございますが、100年たつとうまくいくというのは、仕組み上、ある意味では当たり前なのですが、足元のマクロ経済、例えば、直近5年とか10年の辺り、どのぐらいワークするというような前提といいますか、試算をされているのか、これが質問でございます。
 3番目は、どちらかというと意見でございますが、経済モデルを使って、こういうシミュレーションといいますか、財政検証するというのは、ある意味では1つのやり方だというのは理解しているんですが、最近、国際会計基準等の議論でやられておりますのは、こういう経済前提に立って財政検証するというよりも、現在のマーケットと整合性を持って検証するというのが、どちらかというと主流でございます。
 そういう前提で考えますと、例えば、ここに出しておられます名目金利、4%を超えるような前提で試算されておりますが、仮にそういうフェアバリューといいますか、マーケットと同じような前提に立つということになりますと、恐らく3%未満の名目金利しか適用できないのではないかと思います。勿論、やり方としては、それぞれ考え方があるので、どちらが絶対正しいということはないんですが、仮に、最近、主流の意見になりつつある国際会計基準のような考え方で名目金利を置いたとしたら、どういう数字になるのかというのも、数字として見てみたいというのが私の意見でございます。
 以上でございます。

○山崎部会長
 どうぞ。

○安部数理課長
 まず、未納の状況でございますけれども、これは納付率の設定というところで設定をいたしておるんですが、先ほど説明しましたとおり、実態としてかなり低い水準にあるわけですけれども、財政基準の前提といたしましては、当時の社会保険庁の目標でございました80%という前提を、この財政検証では設定をいたしております。そういう意味で、直近下がっていることは承知をいたしておりますけれども、財政検証の前提としては、そういうふうな設定を置いているというのが実態でございます。
 この件についてはいろいろと御議論ございまして、実際、納付率が変動した場合に、どの程度財政に影響するものかというような試算も行ってはおります。そういうものを見ますと、納付率が下がりますと、例えば、最終的な所得代替率などを見ますと、若干は下がるんですけれども、納付率が下がることによって、それほど大きく下がるわけではありません。納付率が下がって、保険料を支払われる方が少なくなりますと、一時的には保険料収入は減るわけですけれども、長期的に見ますと、その分、給付費も減っていくということで、長期的な財政状況としては、それほど大きな影響はないという試算を行っております。
 ただ、これはあくまでも財政という観点でみた場合の話でございますので、現実にはそのようにして未納の方が多くなれば、将来、年金をもらえる方は少なくなりまして、年金額が低くなるということは非常に大きな問題でございます。それはそれとして大きな問題としてありますが、財政の観点だけから見ればということで、そういうふうな分析は行っております。
 それから、2番目でございますけれども、マクロ経済スライドの状況でございます。この財政検証におきましても、直ちにマクロ経済スライドの調整が発動するという前提には見ておりませんで、2012年度から発動するという前提が平成21年の財政検証でございます。そういう意味では、まだ数年先のことでございます。ただ、御指摘ありましたように、直近の物価上昇率などを見ましても、財政検証のときに設定したものより低目になっているということで、もしこれがそのまま行けば、マクロ経済スライドの発動時期は遅くなる可能性も考えられるんですが、2012年度からという設定ですと、今年も最終的にどうなるかというのは数字が出てきておりませんで、その辺の動向次第でまた変わっていくものでございます。今後どうなっていくかというような試算は、特に現段階では行ってはおりません。
 それから、3番目は御意見ということで承りました。会計基準が今、そのような流れにあるということは私も承知をいたしているところでございます。ただ、その会計基準の考え方と、年金財政という面で見た考え方は、正直、多少違いはあるのかなという感じでございまして、確かに直近の状況を踏まえて設定すべきだというお考えもあろうかとは思いますけれども、直近の状況というのはものすごく振れるものでございますので、そのたびに将来見通しを計算しますと、財政の運営もものすごく上に行ったり、下に行ったりということもございます。そういったことを考えますと、直近の状況は勿論踏まえる必要はありますけれども、それと将来、100年という長期を見通した上での仮定の設定も何らかの方法でやっていく必要があるのでないかというのが私の率直な感想でございます。
 以上でございます。

○山崎部会長
 野上委員。

○野上委員
 まず、納付の件でございますが、長期的には確かに給付が減るという効果もありますし、そういう意味では影響がないというのは理解できるのですが、直近の、例えば、5年とか、その辺りで、すぐさま6割が8割にするということでございませんでしょうし、目標としては8割だというのは理解できるのですが、6割が仮に何年か続いたときに、直近の収支が大丈夫かと。勿論、100年でシミュレーションするというのは一番のメインだと思いますが、財政検証というのは長期の見通しも加えて、短期的な、例えば、積立金が枯渇しないとか、そういう観点からの検証も必要かなということで質問いたしました。
 もう一つの物価スライドの方ですが、直近、デフレがかなり進んでおりまして、経済ということで専門外なんですけれども、政府の方も、デフレに関しては、現在、デフレであるという宣言はされたとお伺いしておりますし、ある程度デフレが続くというシナリオも考慮せざるを得ないんではないかという気はいたします。これも直近の収支にはかなり影響があるんではないかと思います。
 それと、国際会計基準については、公的な年金と、国際会計基準が前提にしているような私的な年金は違いがあるのは当たり前でございますが、現在の年金制度を見ますと、マクロ経済スライドを別にすると、保険料とか、給付に関しては、かなり決まってきているということで、収支の中で、そんなにアローワンスといいますか、公的年金に通常あるような自由度はかなり減殺されてきているんではないかということもございます。勿論、参考数値という位置づけからは出ないとは思うんですが、仮にそういう見方をしたらどういうものになるかというのは、参考になるような数字にはなるんではないかと思っております。
 以上でございます。

○山崎部会長
 宮武委員。

○宮武部会長代理
 野上委員の御意見に関連しまして、私も、国民年金の本文の2ページのところに「社会保険庁の目標に基づいて80%として推計を行っている。」と、これだけでは余りにも愛想がないです。やはりどうして80%にしているのか説明しなければいけませんし、現実にはそんなところには毛頭行っていないわけで、現実との違いをどこかで説明しないと、誤解を受けると思います。
 保険料を納めていなければ、納めていない人の分は積立金からいわば仮払いをして払った形にしていくわけです。現実にその方が支給の年齢に達したときには、保険料を払っていないわけですから、年金が減額されたり、あるいは年金が全く出なかったりして、また積立金が戻ってくるということになるわけです。そうすると、60%台ぐらいの納付率であれば、ある意味では積立金の取り崩しペースは早まっていくわけです。そういうのが全くこういうのから見えてこないわけです。あるいはもっと先を見れば、最終的に1年分しか積立金がなければ、それで未納者の分の仮払いができるのかなと、素人考えでそんなふうに思うわけです。
 だから、やはりこの点については多少説明をされたらどうですか。80%にしている理由とか、60%と乖離があるんだけれども、財政的にはこういう理由で、そんなに大きな違いはないので、80%でも財政検証としては整合性があるんだということをお書きになった方がいいと私は思います。

○安部数理課長
 短期的にどういうふうな影響があるかということでございますが、国民年金の保険料の納付率が財政検証よりも低い、例えば、60%となった場合ですが、結局、基礎年金の拠出金の按分をするときに、どういうふうに按分するかと言いますと、基本的には人数割りをするわけでございます。ただ、そのときに、国民年金の拠出金算定対象者数というのは、保険料を納付した人をデータとして使います。そうしますと、納付率が下がったという状態を想定しますと、その分、拠出金の按分のときに、第1号被保険者としてカウントされる分が少なくなる。そうしますと、国民年金の会計から出ていく拠出金が低くなるという結果になります。その分は厚生年金が少し増えるわけです。
 当面そうなるわけですけれども、今度、遠い将来どうなるかといいますと、先ほど申しましたように、給付費が、納付率が高い場合より少なくなります。そうすると、今度は、厚生年金が払う分が逆に小さくなります。先ほどおっしゃったように、積立金でバッファーとして吸収するという構造は同じなんですが、それは国民年金だけでバッファーになるわけではなくて、国民年金の積立金も含めて、全体でバッファーになって、一旦積立金から出ていって、また戻っていくという格好になります。
 そういう意味で、国民年金の積立金だけでやるとすると、短期的に大丈夫かなという印象もあるかもしれませんが、厚生年金も含めた全体がバッファーになって、最終的には収支がプラスマイナスで相殺するという構造になっておりますので、そういう意味で、当面のことにつきましても、また長期的に見ても、財政という面からだけ考えれば、納付率の設定をこのようにしていることによって、非常に大きな影響があるということはないのではないかと考えております。

○宮武部会長代理
 ですから、そういう説明を加えたらどうですかと私は言っています。

○野上委員
 もし影響がないのでしたら、6割でスタートされてもいいような気がします。

○安部数理課長
 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 質問ですが、経済の前提がいろいろ動くと、後の給付水準に影響するということで、資料3の経済の前提のところをお聞きします。26ページ目の第29表に経済前提ということを書いてあります。1つは、疑問ですが、例えば、中位、高位でもいいのですが、名目賃金上昇率の平成21年度が0.1で、翌年度が3.4、2.7とあるわけです。最終2.5で安定的に行く、2.5がどうかというのは別にして、足元はものすごく悪いわけです。だから、足元がゼロから2.5に上がっていくというのだったら、確かにそうかなと思うんですが、足元が安定的な水準より高いというのがどうか、去年も平均-5ぐらい下がっているわけです。高位も、今年、3とか4の賃金が上がるのかと言えば、平成22年度はわかりませんが、恐らく、過去10年間のトレースした分と違うのではないかというのが素朴な疑問です。
 もう一つは、20年度以降の中位、高位、低位の差について、先ほどいろいろ御説明いただいたのですが、例えば、中位と低位で賃金上昇率が0.4違うとか、運用率が0.2違うという、この主な原因をもう一度御説明いただければと思います。
 それから、出生率の高位、中位、低位の率はどこかに載っているのか。
 それと、死亡率の高位、中位、低位の平均寿命はどうなっているか、その3点、教えていただければと思います。

○安部数理課長
 まず最初に第29表の足元の前提の数字でございますけれども、実は、2015年まで前提といいますのは、21年の1月に内閣府が行いました展望試算のデータをそのまま使っているものでございます。私どもも内閣府の試算の細部まで詳細に把握しているわけではありませんけれども、先方に聞いたところでは、あくまでもその時点での想定ですけれども、経済が回復することによって、名目成長率が2009年度の0.1から、2010年度は1.8%へ高まると見込んでいたとか、また、従来、賃金が低く抑えられた反動もあって、この労働分配率が上昇することによって、他の賃金上昇率が上がるということで、当時、こういった推計をしていたという説明を受けているところでございます。ただ、これも時点といたしましては、今から1年半前の推計でありますので、今から見てどうかというのはあろうかと思いますけれども、当時、内閣府の考え方としては、そのような前提で試算を行ったという結果でございます。
 それから、2番目ですけれども、長期のところで、経済の高位、中位、低位の違いでございます。これは先ほど御説明した中の幾つかのパラメータのうちの全要素生産性の上昇率を設定をするわけです。資料3ですと14ページにございます。今回財政検証では、1.0%を中心に置いたわけですけれども、これが1.3%となった場合を経済の高位、0.7%と仮定した場合を経済低位というふうに設定をしているところでございます。
 それと、3番目の出生率の数字は、どの数字を。

○佐々木委員
 例えば、中位の出生率は1.26とかいうものですか。

○安部数理課長
 合計特殊出生率ですね。中位は1.26で、出生高位というのは最終的に2055年段階で1.55まで上昇する。出生低位は1.06まで低下するという前提でございます。

○佐々木委員
 死亡率の寿命というのは、例えば、中位であれば、どれぐらいですか。

○安部数理課長
 2055年の数字ですけれども、中位ですと、男が83.67、女性が90.34でございます。死亡低位の場合は、男性が84.93、女性が91.51。死亡が低位ということは、寿命が長いということになります。逆に死亡高位の方は、男性が82.41、女性が89.17でございます。

○佐々木委員
 内閣府のものですから、こうだったら嬉しいですけれども、どうも実感としては、こういう数字は、なかなか納得しがたい国民の方が多いんではないかという気がします。前提の出発点としてどうかという気がします。

○山崎部会長
 田中委員。

○田中委員
 経済前提、その他の前提がありますが、そもそも、これは予測なのか、プロジェクションなのかよくわかりませんので、お聞きしたいのですが、まず1つは、経済前提の置き方について、私は経済学をよくわかっておりませんが、コブダグラス型の標準的な経済理論に沿ってやるにしても、結局、何らかの数字を置いて100年の予測をやるということは、ある意味で非常にリスクが大きい作業だと思うんです。そこに頼って100年後に1年間の給付費に見合う積立金を置くという作業をされているわけですが、その場合、確率として、中位であれば、まあまあこの辺だなということが本当に確信できるのか、あるいは高位、低位というリスクシナリオが2つあって、リスクシナリオはどの程度の信頼度があるかということについて、何の情報もないので、そんなものかと思うしかないのです。
 例えば、死亡率の高位、中位、低位と、経済前提の高位、中位、低位と、これはどの程度の数字の重みがあるのかということについて、何らかの工夫が要るのかなと思っています。これはなかなか難しい問題で、諸外国でもできているとは思いませんけれども、この数字だけ見せられても、将来推計なるものに対する信頼度がなかなかぴんとこないというのがあると思います。
 それから、経済前提の置き方につきましても、賃金上昇率と物価上昇率の関係が、本当に比例的に、いわゆるビルディングブロックで積み上げていっていいものなのかというのは、標準的な経済理論でも恐らく相関が強い要素もあったりしますので、こういうふうに足し上げていくというやり方だけでは、いわゆる高位、中位、低位の問題を別にしても、いろんな問題が発生することも考えられますので、シナリオのつくり方はもうちょっと工夫された方がいいのではないかと思います。
 それから、GPIFで一応、基本ポートフォリオ策定の作業もされており、平均分散アプローチのようなやり方で分散効果を取り入れているんですが、このような効果が継続するという保証もそれほどないでしょうし、それから、1期間モデルで検証するというやり方では余りにも素朴過ぎまして、いずれは給付費がこれから増えて、収入と支出のキャッシュフローが逆転する、それまでの期間で積立金を増やしていこうという戦略だとお聞きしております。それなら、100年後の積立金を目標として、多期間モデルでやる方がもう少しは理論的かなと思います。これは意見です。
 もう一点は、全く違う質問なのですが、国民年金の18ページの国民年金総脱退力(3号)に関するものです。この、ほとんどの方が女性配偶者だと思うんですが、20歳と40歳にこぶがありますが、これは恐らく出産が終わってまた勤められて厚生年金に加入されたりと、厚生年金と国民年金の間を行ったり来たりしている方もおられるようです。これが財政収支にどういう影響があるのかということが質問です。単に脱退力というよりは、女性がとういう働き方をするか、そういうモデルでやられた方が、どの程度の影響があるのかわかりませんけれども、もうちょっと正確な推計ができるのではないか。どういう処理をされているか。ただ脱退力で計算しているだけなのか、その辺りを教えていただきたい。

○安部数理課長
 まず、最初の経済前提の設定についての御指摘でございます。確かにおっしゃいますように、今後100年間の経済状況を見通すということで、非常に難しい作業でございます。実際、こういうふうに100年の将来見通しを必要とする分野は公的年金しかありませんものですから、本当でしたら、専門部署、経済などをマクロで見るようなところが決定版などを作成していただいていれば非常にありがたい話なのですが、そういうものもありませんものですから、どうしてもそういったものが必要だということで、従来は、過去の平均値なども採っていたわけですけれども、それにつきまして、EUの委員会などからも、ある程度整合性を持ったものも必要だという御指摘もありまして、ある意味、初歩的と言えば非常に初歩的なモデルであるわけでございますけれども、工夫をして設定をしているわけでございます。
 ただ、確かにおっしゃいましたように、例えば、経済の高位とか、低位とか、分けていますけれども、それもある意味、それぞれどれくらいの分散で、高位になる確率がどれくらいかと御質問いただきましても、こうだというようなお答えができるわけではございません。そういう意味で、これで全く間違いがないというものではなくて、改善の余地はいろいろとあろうかと思っておりますので、今後もこれを出発点として、より御納得のいただける、説得力のあるようなやり方を検討していきたいと考えております。
 また、最後の脱退力につきましては、これも御指摘のように、純粋に実績を踏まえて、過去の実績を反映して設定しているということでございますので、これにつきましても、勿論、実際にシミュレーションする段階では相互に行ったり来たりということをやっておりますけれども、基礎率の設定の段階でも少しそういったものを踏まえたものも検討していければと思っております。

○山崎部会長
 翁委員、お願いします。

○翁委員
 1つ目は、今、皆様がおっしゃっている点と同じでございまして、経済前提そのものが、足元の状況を確認いたしますと、どうしてもやや楽観的に見えて、その点について、同じような思いを持っております。例えば、資本成長率とかがマクロ経済に対する推計過程というところに、資料3の18ページに載っておりますけれども、これはISバランスの状況とか、足元の総固定資本形成との関係から、やや今回の設定値を下げているということでございますけれども、これから中長期的な日本のISバランス、特に政府部門の負債がすごく大きくなっていて、どの程度こういった資本成長率の方に向いていくのか、それから、海外からどの程度そういった資本が提供されるのか、長期的に見た場合は、もう少しペシミスティックなのではないかという感じを持っておりまして、その点について何かコメントがございましたら教えていただきたいということが1つ。
 それと、もう一つは、デュレーションについて計算しましたという御説明が63ページでございましたが、この内容を教えていただきまして、現状のデュレーションとの関係についても少しコメントいただければと思います。

○安部数理課長
 まず、資本成長率でございますが、1つございますのは、今、国の債務が増えていくということも御指摘ございましたが、ここで資本と申しておりますのは、いわゆる有形固定資産という、金融資産とは別物の、例えば、工場ですとか、道路とか、インフラとか、金融ではない、現物の固定資産を計上して、それが将来どうなっていくかというものを推計しているものでございます。勿論、そういったものを推計する際にも、例えば、国の財政状況ですとか、それと、海外との関係なども恐らくは影響はしてくるとは思われます。
 ただ、そういった海外のやりとりなどを含めた経済モデルというものを今後いろいろと考えていかなければいけないだろうとは思っておりますけれども、そこまで対象としたモデルを現段階まで持ち合わせておりませんものですから、とりあえず国内で閉じた状態で、一定の仮定を置いて、GDPの何%は投資の方に回るというような前提を置いて、こういう推計を行っているというものでございます。そういう意味で、御専門の立場からいろいろと御指摘もあろうかと思いますので、そういった御指摘なども踏まえまして、更にいろいろと改善すべき点は改善していきたいとは思っておりますけれども、現在使っているモデルはそのような前提で行っております。
 それと、デュレーションにつきましては、実は私どもも、御依頼をいただきまして計算したものでございますけれども、そもそも公的年金において、このデュレーションというものをどういうふうに見ていけばいいのかというのは、むしろ御指摘をいただければと思っておりまして、正直、私どもが、これを見てどうだというふうに御説明しづらいところがありますが、運用サイドからもし何かあればお願いします。

○渡辺参事官
 運用担当の参事官でございます。
 財政検証上のデュレーションは、今、数理課長から御説明申し上げたとおりでございますが、今の運用の実態としてどうかということでございます。GPIFで運用しております国内債券のベンチマークは、野村BPIを使っております。デュレーションは、変動はございますけれども、大体5~6年ぐらいでございます。22年の4月からの新しい基本ポートフォリオをつくる際に、GPIFの中でも、もう少し年金負債に合った、カスタマイズされたベンチマークに変更するかどうかということも、検討したようでございます。ただ、実際に今、市場に超長期債がそれほど出回っていないということなどもありまして、カスタマイズしたとしても、今のBPIと余り変わらないだろうということで、一応、ベンチマークとしては、引き続き野村BPIを使っているというのが、現状でございます。

○翁委員
 1点目につきましては、これから高齢化で貯蓄・投資バランスが大きく変化してまいりますし、やはり長期的にはグローバルな貯蓄・投資バランスも踏まえた考え方で見ていく必要があるのではないかというのが1つのコメントです。
 2つ目につきましては、公的年金では今までそういう考え方はあまりしてこられていないと思いますけれども、負債は非常に長いと考えてまいりますと、運用につきましても、もっと長くする必要があると思います。ですから、国債市場も相当いろいろと、超長期債なども出てきております。これは運用の話でございますけれども、いろいろと検討する余地があるんではないかと感じました。

○山崎部会長
 ありがとうございました。
 何かございますか。よろしいですか。
 時間が大幅に超過しておりますので、次に移らせていただきます。引き続き厚生年金の説明を、ポイントに重点を置いてお願いいたします。

○安部数理課長
 それでは、資料2の厚生年金につきまして御説明を申し上げますけれども、経済前提等は共通でございますので、その辺りは省略をさせていただきます。そういう意味で、1ページ目からあります基本方針、この辺りは省略をさせていただきますが、1つ、厚生年金について御留意いただきたいのは、2ページ目の(4)でございます。先ほど国民年金のときにも、おおむね100年後に1年分の積立金を持つように調整期間を定める、そのように御説明いたしました。国民年金の場合はほとんど基礎年金ですので、そこで1つ決まりますけれども、厚生年金の場合には、支出要素としては基礎年金の拠出金と、それと、自前の給付の2つの部分がございます。そういうことから、順番といたしましては、まず、国民年金の財政が均衡するように調整期間を定めて、それを前提として厚生年金の方で、基礎年金の方は将来の給付水準、そして、拠出金の額が定まりますので、それを前提とした上で、今度は報酬比例部分について、どこまで調整すればいいかということを計算するという順番で行っていると、ここだけ1つ御留意をいただきたいと思います。
 以降は、基礎率等の設定でございますが、これは多種多様のものがございます。例えば、資料ですと6ページ目に被保険者数の状況などもお示ししております。これは毎年の決算などでごらんいただいている数字でございますけれども、前回の再計算などのデータと比較してみますと、この被保険者数を年齢別に見ておりますけれども、若いところでは減って、高齢層、55歳以降、この辺りで増加しているという傾向ははっきりと出てきているところでございます。
 13ページ以降に基礎率の設定ということで、どういうふうに設定しているかということを列挙しております。一番右に前回との変更点という欄がございます。基本的には前回と変えておりませんので、ほとんど空欄になっておりますが、13ページの一番下、標準報酬指数のところに変更点として書いておりますのは、平成15年度から総報酬制が導入されたということで、総報酬制ベースで標準報酬指数は作成したということでございます。ただ、前回も基礎データは標準報酬月額をベースにしておりますけれども、ボーナスの支給割合を別途設定して、総報酬ベースを仮想して指数を作成いたしておりますので、結果としてはそんなに大きな変化はございません。やり方だけ少々変わっているということでございます。
 あとは細かいことですけれども、次のページの有遺族率の設定のところで配偶関係の変化を織り込んだということが変更点としてございます。
 あとは基本的に方法として前回と大きな変更というのはございません。
 17ページ以降に、そうやって設定した基礎率のグラフをお示ししております。前回のグラフを見てみましても、状況としてそんなに大きな変化はございませんが、1つ、17ページの総脱退力のグラフがございます。これは男性、女性ともに、60歳と65歳に2つの山がある形になっています。前回の脱退率のグラフを見てみますと、同じく山はあるんですが、前回ですと、65歳の山はそんなに高くはありませんでした。それが今回、60歳とほぼ匹敵するぐらいの高さまで来ているということは、従来の60歳だけではなくて、65歳というものが脱退の1つの節目としてだんだん出てきているということが、基礎率の結果の中にも出てきているのかなと考えられます。
 あとの基礎率、グラフですとか、数字とかございますけれども、前回と比べて非常に大きな変化があったというところは特段ございません。
 資料52ページに、先ほど国民年金の際にごらんいただきましたものと同じですけれども、推計のフローを図でお示ししております。これにつきましては、国民年金と同じでございます。特段の差はありませんで、被保険者数を推計した上で給付水準調整を行わない場合の給付を推計して、給付調整、この効果を織り込んで、最終的な財政見通しを計算するということで、基本的な構造は国民年金と同じでございます。
 54ページ以降が、被保険者数ですとか、受給者数、将来の給付、そして、収支、これらの結果をまとめたものでございます。
 57ページに収支表がございますけれども、国民年金と同じでございます。基礎年金交付金につきましては、収入支出から差し引いております。同じように給付費から交付金は差し引いておりますが、国民年金とは違いまして、それ以外の給付が規模が大きいものですから、国民年金のようにほとんど給付費がなくなるという結果にはなっておりません。
 また、積立度合と積立比率の違いというのは、先ほど御説明したとおりでございます。
 あとは、収入支出、そういったものですけれども、66ページをごらんいただければと思います。これが国民年金にはなかった表でございますけれども、給付水準の見通しということで、いわゆる所得代替率が将来どうなっていくかということをお示ししたものでございます。この前提といたしましては、夫婦で、いわゆる専業主婦の世帯を前提として、それぞれの年金額、基礎年金部分、報酬比例部分のモデル年金額、これが手取賃金に対して何%になっているかという推計を行ったところでございます。
 ちなみに、このような世帯構成を前提としておりますのは、こういった世帯を前提として、この給付水準を計算して、それをチェックしていくというような規定が法律上ございますので、こういう前提で推計をしております。財政検証本体の中では、これ以外の世帯構成の場合の所得代替率がどうなっていくかということも計算をいたしまして公表しているところでございます。
 以降も推計結果がいろいろございますけれども、個々の数字につきましての御説明は省略をさせていただきたいと思います。
 最後に、77ページでございますけれども、これも国民年金の方にもございました将来の給付、そしてまた保険料収入を推計した上で、それを現在価値に割り戻して、給付と財源とを見てみるとどうなるかということを図でお示ししたものでございます。厚生年金の場合ですと、給付全体で現価ベースで1,660兆円ございますけれども、それを過去期間と将来期間に分けて、ちょうど半々。これはたまたまですけれども、半分ずつの830兆円ずつとなってございます。一方、それがどのような財源で賄われるかということで、現在ある積立金、そして国庫負担、そして保険料収入と、それぞれどういうふうな財源構成になっているかということでございます。
 1つ御注意いただきたいのは、積立金から得られる財源ということで140兆円となってございます。実際持っている金額よりも多くなってございますけれども、これは例えば、厚生年金基金が代行している部分がございまして、実際にはその分の積立金は厚生年金基金が持っております。一方、財政検証においては、厚生年金基金がない状態を想定しておりますので、この積立金についても厚生年金が保有していると仮定しております。そういったものなどを足し算しているために、現実に持っている積立金よりも多い数字がここに計上されてございます。
 最後のところは、さまざまに前提を変更した場合について、それぞれ各指標がどうなっていくかということをまとめたものでございますので、後程ごらんいただければと思います。
 非常に短くて申し訳ございませんが、御説明は以上でございます。

○山崎部会長
 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして、御質問等ございますでしょうか。
 林委員、お願いします。

○林委員
 すみません、遅くなりましたので、既に御説明あったかと存じますけれども、厚生年金の資料2でまいりますと、7ページに年金種別の人数等を書いてあります。障害厚生年金なのですが、全体から言いますと、ウェイト的には非常に少ないと存じております。ただし、遺族厚生年金の受給権者と、障害厚生年金の受給権者を見ると、中高年齢はおっつかっつの数字になっているので、そういう意味では無視できるのか、できないかということを思っております。それで、昨今の事情を見ますと、中高年の方のうつ病が増加しているという流れ、それから、児童においても、そういった精神的な障害者が増えているということを、データはありませんが、聞いてございます。今回の御推計におきましては、その辺のトレンドをどの程度反映しておられるのかということが御質問でございます。

○安部数理課長
 基本的には、遺族年金などにつきましては、発生率というものを見込んで設定をいたしております。そういう意味で、どの基礎率もそうですけれども、直近の発生率も踏まえて設定をしております。ただ、将来、高くなっていくというところまでは見込み切れているわけではございませんけれども、直近の状況などは反映して、それぞれ設定はしているところでございます。

○林委員
 わかりました。ありがとうございました。

○山崎部会長
 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 確認の意味なのですが、前提で、まず66ページに基本ケースで所得代替率が一番下の50年のところ、足元が62%ぐらいあるわけですけれども、これは50.1、よく止まっているなと思うのです。それが経済の前提とか、出生の動向を変えると、80ページの一番右端で見ますと、Dのところに一番高いケースで、54%ありますし、一番低いベースですと43ということで、50を7ポイント下回る。この中位ケースというのは、前提がどうかわかりませんが、成長率で言えば、名目的には2%ぐらいあれば、大体この辺りに着地するんではないかと、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。物価と実質成長率を足してですね。目標としては、そういうことの前提があると考えてよいのか。1つの物差しとして、そういうことで考えていいのかどうかを教えていただきたい。

○安部数理課長
 今、2%とおっしゃったのは。

○佐々木委員
 物価が1%で、実質的な経済成長を先ほど、全要素生産性で1%ぐらいというお話でしたから、足して2%ぐらい、名目的な成長があれば、この中位の水準を達成する2%成長しましても、各要素が若干動くかもわかりませんが、ごく大雑把に言うと、そのように考えていいのかということなんです。

○安部数理課長
 おっしゃるとおりでございまして、いわゆる経済の基本ケース、物価上昇率が1%で、賃金上昇率というのは名目で2.5%、実質1.5%ですけれども、これは1人当たりで、実際の被保険者率は-0.7%ぐらい減ってまいりますので、実質経済成長率としては0.8%ぐらいというような見込みをしております。そういう意味で、おっしゃいました名目で見れば、2%弱ぐらいの名目経済成長率を前提としているのが基本ケースということでございます。

○山崎部会長
 他にいかがでしょうか。
 宮武委員。

○宮武部会長代理
 お願いなのですが、私も財政検証を初めてこういう形で参画させていただいて、前回もなかなか数字が読み取りにくくて、素人は理解がしにくかったんですが、例えば、被保険者の将来的な見通しなども含めまして、関係してくるのは、労働力率がどんなふうに変化していくのか。男性と女性それぞれに、例えば、女性の場合、M字型のボトムのところ、少しへこんでいる30~34歳の年齢層では、現在がどれぐらいの労働力率で、この財政検証ではどれぐらいの伸びになっているのか。あるいは、男性で言えば、60代の前半のところが、現状がどうで、先行きどのくらいに増えていくのを見込んでいるのか、そのような数字がありましたら、次回お出しいただければと思います。それはお願いです。

○安部数理課長
 一応、前提となりました労働経済政策研究・研修機構の報告書の中に、労働力率の見込みの数字などもございますので、次回ご提出致します。

○山崎部会長
 他にいかがでしょうか。
 佐々木委員、どうぞ。

○佐々木委員
 これは次回かもしれませんが、今までいろいろいただいた分で、新しい年金制度がどうなるかわかりませんが、検討されていくわけですけれども、今後参考になる、給付水準が、6割が5割になるとか、こういうことのサマリー的な分というのはどうなっておりますでしょうか。

○石原首席年金数理官
 年金数理部会での審議の予定という御質問だと思いますが、基本的には今回、厚生年金と国民年金のヒアリングをお願いしておりまして、次回は共済組合のヒアリングをお願いしたいと思います。今、先生がおっしゃいました、まとめて、ある程度の分析をしたものというのは、年明けぐらいにでももう一度お願いできたらと思っております。
 以上でございます。

○佐々木委員
 わかりました。

○山崎部会長
 他にいかがでしょうか。
 田中委員。

○田中委員
 この報告書のまとめ方なのですが、こういった数字で厳密に分厚いものをつくるというのは重要なことで、勿論、数理担当者がすべき仕事だと思うのですが、世間の人が見ると、やはりわかりにくい。結局、図とか、エグゼクティブサマリーのようなものを、例えば、プレス発表するとか、特別に工夫されないと、多分、なかなか浸透しないのではないか。これからいろいろな年金改革案などが出てくるときに、それを参考にしてどうだという議論をするときに、なるべく多くの方がこの現状を理解できるような形にしておく必要があると思いますので、その辺りは是非お願いしたいと思います。

○山崎部会長
 翁委員。

○翁委員
 今の御意見と似た意見なんですけれども、例えば、68ページに安定性の検証に関する資料というので数字がずらっと並んでいるわけですけれども、マクロ経済スライドによって、どのぐらい収支比率が改善しているのかとか、支給開始年齢を引き上げることによって、この指標がこのぐらい改善するとか、そういったさまざまな取組みによって、どこからどこぐらいまでにどういう影響が出ているのかということがわかるように御説明いただくと、今、取り組んでいることとの関係がよりわかってくると思うので、見える図表をつくっていただけると、よりわかりやすくなるのではないかと感じました。

○山崎部会長
 それでは、よろしくお願いします。
 ほかにありますでしょうか。
 野上委員。

○野上委員
 先程国民年金のところで申し上げたことに加えて、佐々木委員が御指摘された給与の賃金上昇率については、厚生年金ではより重要なファクターではないかという気がしますので、先程指摘された点については更に検証を重ねていただきたいということです。
 加えて、最近の動きということでは、非正規の方が特に若年層で増えているとお見受けいたしますが、前提として、どの辺りまで取り入れておられるのか。あるいは厚生年金に入ってくるのか、あるいは国民年金の方で入るのか、その辺りについて、最近の動きとして、前提として、考え方をつくっておかないといけないのではないかという気はいたします。

○安部数理課長
 この被保険者数の推計におきましては、ベースとしております労働経済政策研究・研修機構の推計の中でも、短期間雇用者が増加していくということも想定されておりまして、それを反映させる意味でも、長期と短期の雇用者をそれぞれごとに推計して、その中で厚生年金保険者がどれくらいあるかということを推計いたしておりますので、こういった短期雇用者が増えていくということもある程度踏まえた上で推計は行っているところでございます。

○野上委員
 厚生年金に入ってくるという前提ということですか。

○安部数理課長
 全員というわけではありませんで、過去の実績を見まして、短期雇用者の中の大体何割ぐらいは厚生年金に入るだろうというような設定をしております。

○山崎部会長
 まだ少々時間がありますが、いかがですか。
 どうぞ。

○宮武部会長代理
 フルタイムとパートの区分を30時間ではなくて35時間でやっているのは何か理由があるんですか。

○安部数理課長
 これにつきましては、ベースとなりました労働経済政策研究・研修機構で短期間雇用の割合を設定しているのですが、それが35時間で分けております。ただ、元となります分母がそのように分かれておりますものですから、それを前提として、実績値はそれを踏まえて将来設定したというところでございます。

○山崎部会長
 よろしいでしょうか。それでは、以上で厚生年金保険、国民年金の財政検証結果等についての報告の聴取を終了します。報告者の方々、お忙しい中をありがとうございました。
 本日はこれまでにさせていただきたいと思います。
 最後に、次回の日程等につきまして、事務局に確認していただきます。

○石原首席年金数理官
 次回の第43回年金数理部会につきましては、11月26日金曜日10時から、東京会館11階のゴールドルームで予定しております。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○山崎部会長
 ありがとうございました。
 本日はこれで終了いたします。

- 了 -


(照会先)
 厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室
 (代)03-5253-1111(内線3382)


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金数理部会)> 社会保障審議会年金数理部会(第42回)議事録

ページの先頭へ戻る