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2010年11月15日 第30回 職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会

職業安定局建設・港湾対策室

○日時

平成22年11月15日(月)13:30~


○場所

厚生労働省 職業安定局第1会議室


○出席者

公益代表

征矢座長、白木委員

労働者代表

上山委員、野村委員、古市委員

使用者代表

才賀委員、福田委員、室川委員

参考人

芝浦工業大学工学部建築工学科 蟹澤教授
社団法人全国工業高等学校長協会 村田事務局次長

事務局

山田職業安定局次長、堀井建設・港湾対策室長、高松建設・港湾対策室長補佐、山建設・港湾対策室長補佐

○議題

(1)建設労働の現状と課題について
(2)工業高校生の進路状況等について
(3)雇用管理現状把握実態調査報告について

○議事

○征矢座長 それでは定刻より少し早いですが、始めさせていただきます。本日の委員の出欠状況でありますが、柴田、山下、加藤の各委員が欠席です。本日、2名の方からご説明をいただくことにしておりますが、まず、第1の議題「建設労働の現状と課題」につきまして、芝浦工業大学工学部建築工学科の蟹澤教授にご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○蟹澤教授 それではご指名いただきましたので説明させていただきます。芝浦工大の蟹澤と申します。よろしくお願いします。2時5分ぐらいまでですね。あまり時間もありませんので、資料はたくさん用意しましたが、もしかしたら全部ご紹介できないかもしれませんが、かいつまんで私の考えていることについてご説明させていただきたいと思います。
 どういうメンバーがここにいらっしゃるかわからなかったのですが、今日、来てみましたらほとんど顔馴染みの方で、もしかしたら釈迦に説法になるのかなと思います。建設労働に係わる問題ということで、一般論で申しますと、まず、雇用というのは日本のいろんな社会保障制度の前提としてあると思うのですけれども、建設労働の世界にはそれがない。それから、ギルドやユニオンが発達している国には技能者を評価する制度とか仕組みがあるのですが、日本にはそういったものが多少あるにはあるのですが、多分、処遇と身分とが一致したような資格制度は日本にはないという状況があります。
 それから、技能者の育成ということでは、よく言われることですが徒弟以外に方法がないというようなことが言われますが、合理化というか確立された技能者育成の仕組みがないのが現状だと思います。
 そういうことがありますので、これは皆さんご存じのこととかと思いますが、処遇がどんどん下がっていって、最近では日当に換算すると1万円割れということもよくあると聞いております。実際、私の知っている、世話役に相当する専門工事業の下で自分のチームを率いてきたような人たちは、私の知っている限り、誰も子どもに後を継がせずに、むしろ建設業以外の世界で働くことを勧めているというのが現状です。
 日当1万円ぐらいと言いますと、コンビニで時給950円か1000円ぐらいで、働いてもほぼ同じぐらいの金額が得られますし、ご存じのように技能者の場合には賃金というより請負ですので、その1万円の中には経費なども入っています。そんなことがある一方で、これは1つの問題提起でもありますけども、徒弟以外に教育訓練の方法がない。一人前になるのに10年はかかると言っている世界に、若い人が魅力を持つかということを真剣に考える必要があるのではないでしょうか。
 それから、業界のほうを見ますと、例えば1995年の建設産業政策大綱に一生懸命に技能者を雇用して社会保障を適用して、休日も設けて人材の育成もしている会社が随分取り上げられたのですが、その会社がいま何社残っているのか。多くが倒産したり、再生法で再生中というのが実態です。それ以外にも、専門工事業の方と話しているとまだお金があるうちに廃業しようかななんていうようなこともよくある話だというふうに伺っております。そういったのが建設業の実態であります。実際に、例えば鉄筋業界では、優秀な会社が何社も廃業したとかというようなことが発表されていましたけれども、そういったところが現状の問題だと思います。
 それを簡単にまとめてみますと、少し大袈裟な言い方かもしれませんけれども、要は一番の問題は建設技能者の世界に、雇用というものは実態として成立していないこと。後ほど、データを出しますが、正社員として雇用している技能者というのは、せいぜい1割か2割ぐらいしかいない。しかしながら、職業安定法というのは、「雇用」が前提として書かれているわけであります。一方、例えば労災保険制度元請一括加入という制度は、専門工事業の側で雇用というのは成り立っていないのだから元請けで一括で入りましょうという制度になっているわけですし、建設業退職金共済についても、建設業だけが例外的に公共工事であれば元請けがその経費を一括で払うということになっているわけです。これは元々、雇用者が払うものを建設業だけが例外として扱われているわけで、制度も建設業の特殊性を前提にしている場合があるわけです。
 それから実際に一人親方というのものも制度上、曖昧な存在として認められているわけですし、、要は技能者を評価する仕組みが整ってないものですから、同じ坪単価であれば能力のある人はたくさんもうかるというような意味で一人親方をポジティブに評価するような風潮が業界全体にあるわけですが、それが足かせになっているような感じもいたします。
 それから、建設労働に対しては、今までもいろいろな対策が出されてきましたけれども、そういう実態があるのに、基本的には雇用対策の範疇で扱われてきたので、対象者が非常に限られているという問題がありました。失業予防という観点での対策もあったわけですが、やはり大部分が雇用されている人に対して何らかの助成金が出るとか、インセンティブがあるものが多かったわけです。だから、実際の現場で見ていると対象者はほとんどいない。要は、雇用保険を払っている人がほとんどいないので、対象者にならないということが多いのです。
 業界も請負幻想というように、要は最後は請負で上がりなのだというのが一般的に考えられてきたので、雇用の促進がなかなか進まなかった。これはいろんな制度上の問題もあると思いますが、経済の成長・安定という状況があれば請負のリスクよりもメリットが大きかったのですが、それがなくなってしまったわけです。それでは、どのような方向で対策を考えていくかという早急の問題があるわけですが、そもそも行政や研究の側に実態を知っている一がほとんどいないという問題があります。
 建設労働はとても複雑な問題なので、今までも研究されていた方もいなくはないと思うのですけども、なかなか現場の実態をつかめないというようなこともあり、故に適切な対策が出せなかったというのもあるのかなと思っております。要は、いろんなことが悪循環に陥っていて、且ついろいろな制度の矛盾を、今まで放置してきたことの問題が一気に顕在化してきているのが建設業の現状なのだと思います。
 業界を研究していますと、慣習として、直用とか准直用とか常用とか、いろんな言い方があるのですが、これらは、いわゆる法律上の直接雇用ではない場合が少なからずあります。直用というのは、直接雇用の略と解釈するのが合理的だと思うのですけれども、多くの場合が直接雇用ではない、請負なのに直接使用されているということが実態としてあります。厳密に見ていくと、これは派遣法や安定法で問題がある行為だと思うのですが、あんまり厳密に捉えると、ますます外注化が進むという負のスパイラルが今までもあったわけです。
 それから、準直用なんていうのもよく言われるのですが、これは役所の調査でもよく言葉として使われたりするのですけれども、例えば、雇用に準も本当もあるのかどうかというのがそもそも問題でありまして、雇用ではないのに、それに準ずるというのがあってもいいのかというようなことがあります。業界でもわりと準直用という言葉はよく言われます。それから、直用の一方で常用ということも言われていまして、これも業界の一般的な用語になっているわけですけれども、これは常時雇用の略というのが本来だと思うのですが、常時雇用ではなく常時使用していることを業界では常用と言うことがあるわけです。これは法律に当てはめたときに、本当にいいのかなというようなものもあるわけですが、実際の言葉としても状態としても業界では通用している仕組みであります。
 それから社員についてですが、これこそ本当にいわゆる雇用関係があるものだと思うのですが、これも業界の人と話していると、特に中小の事業主の場合が多いのですが「うちは職人もみんな社員だよ」と言っているのです。「その人たちは年金に入っているのか?」と聞くと「そんなのは個人でしょ」というような話がほとんどだったりします。良い、悪いは別にして、ずっとそういう形でやってきた。ある時期まで適応除外があったとか、ややこしい問題はあるわけですけども、わりと現場の社長さんに聞いても、この辺の言葉の使い方が曖昧であることが、よくあります。
 私が、そもそもの問題かなと思うのは、例えばいろんな対策を打ち出そうとしたときに、皆さんがその言葉の捉え方に温度差があるというか、イメージが一致しない。社員化の推進といったときに、真面目な考えの人は厚生年金まで入るわけですが、そこまで考えない人はその一歩手前になるとか、そもそも言葉の定義を揃えないと真面目にやった人が損をするということが今までの問題であったわけですから、まずは、こういうところから直すというか、再認識、再確認する必要があるのかなというふうに考えております。
 ちなみに「戦後の技能者問題の根本」というのは、私はこの当事者ではないのですが、建設労働の、私がよく参考にしている先達の京都大学の故古川先生、それから元佐藤工業の佐崎さんがよく研究されていたのですが、このお二人が指摘しているのは、本来GHQが作った職業安定法では、重層構造、要するに個人の請負というのもできなかったはずなのに、講和条約の直後、職業安定法施行規則第4条というところをに改正したところから、個人請負が解禁されて、どんどん重層下請が進むようになったということです。
 私もそれは法解釈の問題なので、よくわかりませんが、第4項のところに、今は「企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験」という「or」条件が3つ並んでいるのですが、改正以前は「専門的な企画、技術」という「and」条件で、これを全部満たさないと請負とはみなさないことになっていた。それが「若しくは」になって、ほとんどが専門的な経験というようなところで請負でもいいと認めるようになった。ここが戦後の建設労働問題の始まりだと大先輩はおっしゃっているところであります。ですから、法律をいじるのは難しいことだと思いますが、立ち返って考えると、この第4項、これは消費税法でも何でもほとんどがこれを参照しているわけですが、この第4項に問題があるということを大先輩は指摘しているという、参考までの情報です。
 実態としての建設労働ということで構図を書いてみました。私の研究室ではずっと現場のこういう下請が何次まであるかとかということを調査しているのですが、確認した限りではスーパーゼネコンが施工し、施主が超大手の不動産会社のマンション現場でも、施工体制台帳上で6次下請ぐらいまでは普通にあります。そこで6次ぐらいの人に聞いてみると、実際はその下の人が請負である可能性が高いので、実態としては、7次、8次ということになる。
 全建総連の方に聞くと、10次くらいは普通にあるというように言われます。要するに、日本を代表するような現場であっても5次、6次、7次ぐらいは当たり前にある。それがなぜあるかということを申し上げると、一次下請の大きな会社の社員としての技能者は私が調べた限りは大体、10%ぐらいです。仕上業界はそれよりもちょっと多いとか職種ごとの違いはありますが、それでもせいぜい3割ぐらいで、あとはいわゆる「班」との請負契約です。班というのはほとんどが、ずっと付き合っている親子関係のようなもので、5、6人のチームです。最近は建設業法上、下請契約の認定が厳しくなっていますので、500万円以上の仕事をやろうと思ったら、建設業の許可を取っていなければならないわけで、法人組織である場合もありますが、大きな班は、その下にまた班を持っているので、3次ぐらいまでは自然に重層化します。
 ここら辺まではまだ自然かなと思うのですが、福利厚生費などの負担の問題とか、人を常時どれだけ抱えておくかという問題もあるので、どんどん潜って行って最後は10次近くまでになるのが実態なわけです。法律的に考えると、5人未満の組織にしてしまえば、健康保険、年金が任意になるので、3次、4次ぐらいから下は、ある意味合法的に適用除外ということになる。日本のいろいろな制度から考えると、建設業には非常に脆弱な処遇の人がたくさんいるのではないかというように予測できるわけであります。
 一次下請のレベルのところで見ますと、社員というのは役員とか技術系社員、これは施工図を書いたりとか現場に建設業法上常駐するような社員とか、安全衛生法上の現場の責任者になるような人とか、そういう人は社員としているわけです。「一部の技能工」というのは、例えば加工場を持っているような業種ですと、そこは社員としている場合が多いです。あとは真面目な会社ですと、採用して間もなくの若い人を社員にしておいて、数年経つと独立させて請負にするという形もあります。
 それから、外国人実習生はもうその処遇でみると立派な正社員でありまして、変な話がほとんどの日本人よりも保険に入り、年金に入り、きちんとした処遇で働いているという実態があります。逆に考えると私は外国人実習生に対してそれができるのだから、日本人に対しても、業界で抜け駆けせずにみんながやればできるという面もあるんじゃないかと思いますが、これを法律で縛るとなるとやはり難しい問題があるのかなというふうに考えております。
 それから、「一部の技能工」には今言いましたように若手の人とか、加工場の常用の人とか、に加え基幹的な技能者が含まれることがあります。。ちなみにこういうことを申し上げていいのかどうかわかりませんが、基幹技能者として登録されている人の多くは、班の親方であるというのが多いと思います。すなわち、「社員」ではなく、「専属班」の親方のあたりが基幹技能者というのが実態かなと思っております。
 それから、この「擬制直用」という言葉ですが、これは決して悪い意味ではなくて、見かけ上、直接雇用に見えるという、私が論文に書くときに使っている言葉で、法律用語でいう擬制というのに似ているわけですが、例えば「季節工」の場合には雇用契約をして雇用保険を払ってないと特例一時金がもらえないものですから、建工保険や年金などには入っていないのだけど、雇用保険だけは入っているという場合が結構あります。それから、これも専門工事業が真面目であれば真面目であるほど、例えば健康保険だけは面倒をみてあげるとか、国保に入ってるんだけども、その費用を援助してあげるとか、そういうようなことをやっている場合もあります。
 あと、一人親方を現場によっては直用扱いにして労災で不利益にならないよう配慮していたりとか、いろんな制度があるものですから、この擬制と呼ばざるを得ないような領域にはいろんなパターンの人がいます。これは、調査すればするほどよくわからなくなってくるところもあるのですけれども、大体、この「季節工」、「一人親方」、それから建設業許可がない「専属班」の人、そういったところが該当するわけです。
 それから最後のところは本当の請負にあたる「外注」で、専属班でも最近はきちんと建設業許可を持っている人は、建設業法上の取締りも結構厳しいので、完全な請負契約でやるとか、また、臨時のいわゆる応援部隊というのは外注関係であるとか、このような形が今の専門工事業では一般的だと考えてもいいのではないかと思います。
 それから、これはずっと建専連を通じていろんな調査をさせていただいているのですが、調査をしていてわかったのですが、「御社に直用は何人いますか」という聞き方をしますと、先ほどのように「半分は直用だ」と言われるので、じゃあどうやって聞いたらいいのかなということで、例えば「販管費とか一般管理費の労務費から給料を出している人が技能者が100とした場合に何人いますか」とか「賃金台帳に載っている人が100人のうちどれだけいますか」というようなことを聞いていくと、実態が見えてくるということがわかってきました。
 例えば、賃金台帳に載っている人が、簡単に言いますと100人中、14人、15人くらいで、源泉徴収をしている人になると11人ぐらい、施工体制台帳に直用というふうに記載されている人が40人ぐらい、雇用契約をしている人というのが11人ぐらい、一番少ないのが、厚生年金に加入している人で7人ぐらい、多分これが本当の意味での社員になると思います。それから、その会社のヘルメットをかぶっている人というのが100人を超すというのは、要するに非専属の人の一部も、その会社の責任施工ということでヘルメットをかぶっている場合があるのですが、わりと多くの人がいるということ。要するに、現場でどの人が二次か三次か四次かというのがわからないというのがあるのです。そういった意味から、本当の意味での社員技能者といえる人の率を出してみると100人中7.4人ぐらい、ただしこれは躯体系だけの集計結果であります。厚生年金よりちょっと多くなるのは、年齢の例外規定によるもの等で、その辺もちょっと厳密にして計算し直してみると、これぐらいになるということです。
 これは、もう少しマクロに、業界別にアンケート調査を取りまして、雇用契約をしていて、社会保険、労働保険に入っていて、源泉徴収をしている人が社員とみた場合、業界別にどれぐらいいるかを集計してみた結果ですが、躯体系はわりと少なくて、直接雇用が多いと言われる左官でも18.2%ぐらい、内装もわりと多いと言われていたのですが11.2%とか12%とか、先ほど申し上げましたようにせいぜい1割くらいです。これは単純平均値なのですが、実際は0というのが非常に多いのです。0と100がいれば50%になってしまうので、統計上では平均値の限界があります。左官とか内装は分散が大きくなります。直接雇用をやってるところとやってないところですごく差が出てきますが、マクロにみると、このような結果になります。
 それで、何でこのような擬制直用みたいなものが出なきゃいけないのかということで言いますと、先ほどもちらっと言いましたが、例えば許可なしだと500万円以上の下請工事ができないので、施工体制台帳上は「直用」として記載されるとか、一人親方はいろんな不利益があるので労災だけはその会社で入るとか、一番多いのは、最近は大分減ってきましたが、短期の特例給付金をもらうために、雇用契約だけはちゃんとして、毎年、定期的に離職票を出すとかというのがあります。それからあとは、とにかく常駐させる数が足りないので、建設業法上の専任の主任技術者や管理技術者として置くためにこの擬制直用という形をとっているとか、あとは、完全に専門工事業者が、元々はこういうのが多かったのですが、せめて何かをしてあげたいということで、雇用保険だけ入っているとか、健康保険だけ入っているというのがよくあるパターンであります。
 それで、擬制直用が何で存在し得てきたのかということを考えますと、やはり仕事量の変動リスクを誰が負ってきたのかということですが、これは結局、悪い言い方をしますと、下にどんどんツケを回していくというようなことで成り立っていたのです。右肩上がりでどんどん仕事が増えているときにはこういう心配はなかったわけですが、仕事が減ってきた途端にこの辺の問題が出てきたわけです。当然のことながら一次下請が全部を雇用していたら、確実に会社は倒産するわけでありまして、年金と健康保険に加入するだけでも、事業主負担が支払いの賃金の十数%になるわけですから、これは、利益率が数%でやっているところが十数%も持っていかれたら相当な問題があるわけです。
 それは大きな資本力があるゼネコンですら、一部の直接雇用もできなかった問題ですから、それがどんどん重層化して組織が小さくなっていくなかで雇用が成立するわけがないと考えるのが合理的であろうと考えるわけです。
 それから、社会や発注者の無理解というのがあります。要するに、落札率が低いほど良いというのは、これはやはり建設業界も情報発信していかないと、いちばん削りやすいのが実は技能者の賃金だったり、社会保障料で、例えば社会保障料の部分を全部無視してしまえば、1割かそこら下がるわけですから、そういうことになってきた。そういうのは私は大きな問題かなというように考えております。それから、別に法律が悪いというわけではありませんが、改正をする度に例外規定とか特例規定をたくさん作ってきて、実際に今もそれが残っておりますので、そういった狭間にいろんな問題が起きているのかなというように考えています。
 今までは重層下請構造というブラックボックスがその中で様々な矛盾を吸収してきたのですが、その問題が表に出てくるようになったのが昨今の状況かなというのが、繰り返しになりますが私が考えているところです。
 それから、健全な業界になるためには何があるべきかなというふうに思いますと、例えばまずは全員が法令を守る、特に、いわゆるアウトサイダーというような、要するに人だけを集めて仕事をするようなところと、真面目に人を育てて会社の事業所を持って、その中で税金を納めてというようなところが、同じ競争の土壌にいる限りは良い方向に行かないわけですから、まず「法令遵守を前提としたきちんとしたプラットホーム」ができないとなかなかいい方向には向かないんじゃないかなと思います。最低限、労働保険とか社会保険とか訓練費の何か別枠支給のようなものができるようになると良いのではないかと考えています。
 それから2番目に、業界全体としていわゆるセンセーショーナルに言うと「請負幻想からの脱却」ということですが、やはりこれからは常用が可能な環境整備をしていかないと業界自体がもたないのではないかというふうに私は思います。例えば、リニューアルとか、そういう市場は常用が馴染むシステムになりやすいですし、少しずつニーズのほうも変わってくるので、それに合わせて業界がやっていく必要があるのかなと思っています。
 それから、「技能者の正当な評価と実態に即した制度設計」ということですが、まずは技能者を特定する必要があるだろうと私は考えています。そういった中で、建設共通パスという活動もゼネコンの方や業界の方とやっているのですが、これはまず、個々の技能者を特定しないことには何もできないだろうというふうに思っています。それから、少なくとも労働保険の手続きの自動化、それからゆくゆくは、これもギルドやユニオンが強い国が、市場のグローバル化などによってうまくいっているとは限らないというふうに聞いておりますが、来月にドイツがどうなっているかというのを調査に行ってくるのですけれども、そうは言え、職能等級と報酬が連動するような仕組み、特に常用が成り立った場合には、それを考えなければいけないと思います。
 「重層下請の解消」ですが、要するにみんなが法律を守っていて抜け穴をなくせば、ブラックボックスの必要もないので自ずと重層下請が解消するのかと考えております。
 最後は、ちょうど資料を提出した時なのですが、先週、先々週と韓国に調査に行っておりました。今回は、概略だけを述べますが、、韓国は2008年度に建設産業基本法という日本の建設業法に相当する法律を抜本改正して、多段階下請、要するに2次以下を原則禁止にしたわけですが、そこから何を見習うべきかが重要です。業界自体はやはり建設業ですので、いろいろな問題を抱えているのですが、多段階下請を禁止したというのは韓国流に言うと、施工参加者というものを禁止したということで、これは日本でいう世話役みたいな人に専門工事業が労務を抱えずに、実態としては労務調達を任せているのですが、そこの部分を専門工事業が直接雇用しろという仕組みにしたのが韓国のこの制度の大きなポイントです。
 ただし、サブコンが全て経費を負担するというのでは、それは成り立つわけがないわけでありますが、制度がうまくできているなと思うのは、労働保険に関しては、労災も雇用保険も元請が一括負担するというところです。これは、いまの日本の労災と同じように、前年度の売上高に応じて賦課するという方法で、売上高の内の人件費比率が何%というのを政府が公示して、それに対して雇用保険料が何%というのがありその分を一括納入します。一人親方が、個人請負することも基本法上は許されていますが、労働保険に関しては全員が区別なく、現場単位で加入というように韓国は仕組みを改正しました。これは非常に参考になるのではないかと思っております。
 それから、日本でいう建退協も、これも韓国は日本を見習って作った制度なのですけど、これも法改正に伴って公共工事はほぼ例外なく加入。それから民間も100億ウォン、いまのレートで言いますと7億円から8億円ぐらいですが、それくらい以上は強制加入というようになっているということです。要は法定福利費が別枠化されていて、見積り上も全部分かれていて、そこを食い潰すことは法律上、やってはいけないと、罰則もあるということになっています。教育訓練の時の評価の一元化というのは、今まではなかったのですが、今年から工業高校と連動するとか、そういう制度を始めたのだと聞いております。
 それから、やはり韓国はIT先進国ですので、例えばいろいろな労働保険の名簿の提出なんかはEDIを通じてできるわけですし、実はそれを自動化する雇用保険カードというのがあります。それはいろいろな理由で普及していないのですが、それにしてもITの活用ができている。それから本人も自分の保険料が払われたかどうかというのはネット上で確認ができるとか、3カ月に1回ぐらい自分がいくら報酬をもらっていくら税金を納めて、そのうちいくら労働保険料を支払っているかとか、何日分の雇用保険料を払ったとかというのが年金定期便みたいに送られてくるらしいのですが、そこで確認できるので途中で中抜きされた場合でも、本人が確認できる制度になっている。また、全ての制度を住民登録番号、ID番号で管理しているので不正がしにくいのが、日本と韓国の大きな違いだというふうに思っています。
 ただし、いいことづくめではなくて、問題があるとすると、結局は国民背番号を持っている韓国人、あるいは正規の外国人労働者では不正がしづらいものですから、その人たちを使わずに不法就労外国人を現場にたくさん使うようになるような問題があるようです。あと、実態としては3次、4次ぐらいの下請はあるということです。ただし、法定福利費は別枠加入となっておりますので、せいぜい3段階か4段階ぐらいまでしか重層化は進まないそうです。
 それから、何でそういうことが起きるかというと、やはりこれも日本でも言われますが保険料の分を給与として払ってくれと言うような職人がいっぱいいるとか、業界もそれがいいと思っているとか、そういう問題は日本と同じなのだと思います。それにしても、2年前に韓国に行って、今年は3回行ったのですが、確実に業界の意識は労働保険や何かは別枠で、これはもう全員が払っているので、払って当たり前だというように意識が変わってきている。建設業が抱える問題というのは全く日本と同じような状態でありますが、お隣の国の動向も参考にすると、日本のあるべき方向もある程度見えるのかなという気がいたしました。ちょうどいただいた時間になりましたので、終わりにさせていただきたいと思います。
○征矢座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきましてご質問等がありましたらお願いいたします。
○白木委員 白木と申します。今日はいろいろ詳しいお話ありがとうございました。全く知らないので教えていただきたいのですが、韓国は外国人の建設労働者を入れてますよね。この人たちはどういう形で入るのですか。どこかの請負会社に雇われるとか、あるいは直接雇用者として入るのか、どういう形態で。
○蟹澤教授 その辺は詳しくはわからないのですが、ただ、専門工事業が直接雇用しているというのはほとんどないようなので、実態としては、その1段階下の「施行参加者」のところ、彼らは、日本語が定着して親父と呼ばれているのですが、要するに、班のような形の中に組み込まれているのが一般的なのだと思います。ただ、不法外国人と違ってきちんとIDを持っています。どうやら、一次下請が、日本は少ないと言っても1割ぐらいは直接雇用の社員がいるわけですが、向うはサブコンが雇用している労働者はほとんどいないようですので、おそらくそういう流動的な労働市場に外国人の正規の労働者もいるのだと思います。
○古市委員 質問ではないのですが、あまりにも赤裸々で声もなしという、そういう感じですよね。例えば、子どもを育てる側にとっては、「自分が育てた子どもをとてもこういう産業には送れないなあ」という、そういうお気持にきっとなると思うので、私たちは、しっかりこの状況をやはり改善するための道筋というのを知恵を出して作っていかないと、本当に入ってくる人がいなくなってしまうと思うのです。
○征矢座長 ほかにございますか。
○蟹澤教授 私は大学で研究しながら、とても仲良くなった、これはもう野丁場、町場に限らずよく飲みに誘ってくれる親方たちがたくさんいるのですが、本当にこの人たちは尊敬すべき能力、技能を持ち、技能だけではなくてとても人間的にも優れていて、いろいろな意味で建設業界のために働いてきた人なのですが、やはり時代が変わったので、徒弟で修行して、最後は一人立ちして、上がりというのと、違うシステムを何とか作っていかないといけないのだろうと思っています。
 ただし、だいぶ人が減ってきましたので、減るところまで減ってしまえば、きちんとした人はもしかしたら自ずと評価されるのかなというのはあります。ただ、近年若い人の入職状況が非常によくないので、業界としては、そこは危機感を持たないといけないと思います。韓国などを見ると非常に痛感するのは、韓国は現場のシステムはとても単純と言うか、複雑化していない。簡単に言うと設計図どおりに現場は作れば良いという仕組みで、日本の場合には、最終的には職人が100分の1の図面から読み取って、細かいところは図面に描いていなくても収めるというような仕組みでやっている。これはとても良い仕組みだと思うのですが、それをきちんと維持するのだということを考えれば、人に対する投資というのもそんなに高いものではないと思います。かつてやろうとした自動化施行システムというものの開発費に比べれば、人を育てる予算のほうが随分安く済むのかなという気もしております。是非若い人が入ってくるような産業にすべきだというのは同感であります。
○福田委員 いま、蟹澤先生が積極的に研究されているIDカードによる就労履歴というシステムですけれども、これが行われることによって、退職金が確保されたり、それから、自分の就労履歴で自分の立場がはっきり公にされると。これが非常に今後の建設業にとって大事なことではないかなと思って、これからの一層の活躍をお願いしたいなと。こちらのほうもバックアップしなければいけないと思っています。やはり安心して働ける職場にしていかなければいけないかなと。そのためにはこれから新しい、韓国が先駆けてやっていたかもしれませんが、なかなか先に進まなかった部分があるので、やはりその点は日本が先駆けてやっていかなくてはいけないのかなと、そういうふうに、私も随行させていただいた一員なのですが、ちょっとそんなふうな感想をもちました。
○堀井室長 私が質問する場ではないかもしれないのですが、いま伺ったお話の中で2点教えていただきたい所があります。1点は、韓国のケースの中で、ご紹介があった雇用保険カードについて、ある理由があって普及がまだ十分ではないというお話がありましたが、その辺りの背景事情についてお伺いしたいというのが1点です。それともう1つは、資料の中で、雇用契約、社会保険・労災保険の加入、あと、税徴収というところで、社員の条件を各専門業種ごとに見ておられるのがあったのですが、その中で比較的直接雇用が多いとおっしゃった左官ですとか、内装関係、その中でも分散があるというお話がありました。その分散が見られる理由のようなものが、調査されておられる過程で、もしわかっておられるようであれば教えていただきたいと思います。以上2点です。
○蟹澤教授 1点目の雇用保険カードについてですが、いろいろな理由があるのですが、概要を申し上げますと、こういう雇用保険のIDカードという、福田常務のお話にあった、我々がやろうとしているのは中にICチップが入っているカードなのですが、これを現場でピッとやると、自動的に雇用保険の情報が雇用保険省と言ったと思いますが、それを運用している関連の公団に、自動的に情報が行くというのが雇用保険カードなのです。向うの人に聞くと、やはり機械をいちいち現場に置くのが大変だとか、費用がかかるとかという問題もあるのですが、私が聞いていて一番大きな問題かなと思うのは、それを使うと働いている人が100%把握されてしまうことです。例えば、不法外国人、あと、韓国人の中にもいろいろな事情があって、身分を明らかにしたくない人も現場にいっぱいいるので、全部が明らかになってしまうと困るという業界側の問題があります。現状は、要するに紙ベースとかエクセルベースで申告したい人の情報だけが行くという形になっているのが実態のようなのですが、やはり、完全なIT化をするとすべてがガラス張りになってしまうというと、困る人も多いという建設業の体質的な問題があるのかなと思っております。
 ただし、これは日本に置き換えた場合には、不法外国人はいるにしても、市場は開放していませんし、全員の身分がガラス張りになるのはどうですかというのを調査したことがあるのですが、サブコンの経営者も技能者の側も、そんなことで困るのはテレビに出てくるような一部の人であって、業界としてはむしろそういう人を排除したいのだというような答えをいただきました。韓国は、特にこういう制度を作れば作るほどアングラな部分でしかダンピング受注ができなくなるので、そのギャップが問題になるのだろうと考えております。  それから、2つ目の社員の条件で、これはいろいろあります。それは例えば、専門工事業の体質というようなものもありますし、規模もあります。たくさん雇用できる、要するにパーセントとしてたくさん雇用しやすいのは、比較的小さな所で、身の丈経営というか、要するに、その範囲でしか仕事をやらなければ安定雇用ができるわけです。それから、逆に規模が大きくて、例えば、30%、40%は常時雇用していても、ほかの部分がそんなになくていいというような会社です。それから、やはり何よりも経営者の経営方針で自分の会社はきちんとそうしたいとかというところがあると思います。
 ただし、これはいわゆる負の側面というか、最初に申し上げた政策大綱で取り上げられた会社は、私は何社も知っておりますが、一生懸命教育訓練して一人前にした途端に、技能はどこの会社へ行っても通用しますから、お前の所よりうちのほうが手取りが千円いいよと、そこでは保険のことなどは無視されているわけなのですが、ドンドン引き抜かれて行くとか結局はそういう問題があるので、真面目にやっている会社は、大変な苦労をしていろいろな手立てを考えてつなぎ止めているというようなことがあるのが実態だと思います。
○征矢座長 ほかにございませんでしょうか、よろしいですか。では、どうもありがとうございました。今後いろいろと参考にさせていただきます。
 次に、議題の(2)の「工業高校生の進路状況等」につきまして、社団法人全国工業高等学校長協会の村田事務局次長さんにお願いいたします。
○全工協会村田事務局次長 ご紹介いただきました、全国工業高等学校長協会の村田と言います。私は工業高校の出身です。群馬の高崎工業高校です。そこを出まして、三菱地所に入りそこで設計監理業務をやったあと教員になりました。教員を10年やった後、群馬県庁に入り教育委員会管理課に配属され、実際の建物の設計監理を6年経験しました。主に学校建築でした。その後7年間を教育センターで先生方の指導をしました。その後、学校現場に出て前橋工業高校の建築科長をやり、さらに定時制の教頭、昼間部の教頭、太田工業高校の校長を2年、前橋工業高校の校長を5年やらせてもらいました。一昨年から現職です。前橋工業高校に在職中、文科省の中教審の高等学校部会と産業教育部会の委員を拝命しました。また、今回の高等学校指導要領改訂における建築の部分を担当させていただきました。
 はじめ進路状況を話して欲しいということでしたが、課題も含めて話しても良いと言うことなので、進路以外の事もお話しさせていただきたいと思います。工業高校自体が今どんな状況に置かれており、どんな建築教育をしていて、何が課題なのかをご理解いただくことは大切な事だと思っています。このことは建設業にとっても重要なことではないかと感じています。
 お配りしましたパンフレットは全国工業高等学校長協会が作成したものです。
本協会における現在の加盟校は624校で、全国のほとんどの工業高校が私学も含めて加入しております。本協会の主催事業としては、ロボット相撲やものづくりの全国大会などをやっています。ものづくりの大会では、建設関係は測量と建築大工部門があります。建築大工では技能士の2級レベルのものを実際に作らせています。全部で7部門あり、それぞれの部門において県大会、地区大会、全国大会を開催しています。その他、検定試験の実施、検定のための参考書を作っています。また、工業高校の校長先生方の総会や研究協議会を開き、工業高校の在り方や課題について議論しています。また関係機関、メディアなどに工業教育への提言も行っています。
 資料2を見ていただければと思います。このレジュメで簡単にお話したいと思います。平成21年度の学校数が624校です。生徒数は全国ですべて入れまして26万7,000人という数値です。注目していただきたいのは、その括弧に書いてあります女子の11.7%です。26万7,000人の内の11.7%が実は女子だということであります。このうち特視しなくてはいけないのは、女子は何科にいるかと言いますと、その筆頭にくるのが建築であります。それに続くのが化学、情報です。土木は少ないと思います。全国で工業高校の女子生徒3万人以上いるということです。
 現在全体の高校で工業高校が占めている割合は約8%です。その下に※で書きましたが、昭和45年、日本が一番頑張っている時期だと思いますが、その頃は13.4%でした。100校あるうちの13.4校は工業高校でした。現在平成21年度において普通科の生徒の占める割合が72.3%、皆さん方はどうお考えでしょうか。これは世界の中で突出した数字です。これほど普通高校が多いのは日本と韓国です。先進諸国ではその2国です。ほとんどの国は大体5割から6割が職業高校で、進学校は3~5割ではないかと思います。日本の普通科志向が実は今の日本の高校教育をおかしくしている気がしています。13.4%あったのが、現在はたったの8%です。昔は職業高校とか実業高校と言いましたが、今は専門高校と言っています。専門高校は八つ大学科ありますが、この合計が高校全体に占める割合は大体22~25%ということです。専門高校は大まかには日本の高校の約4分の1しかないのです。
 2番目の進路状況です。今年3月に卒業した生徒の就職、進路状況はどうなっているかということですが、就職率が58.1%ということで、進学を回っています。平成14年度の50%が過去最低となっています。昔から比べてジワリジワリ就職率は下がっています。もともと専門高校は地元の産業への就職、または地元に限りませんが、就職というために作られた学校といわれていますが、その状況が今崩れつつあります。
 例えば群馬県の商業高校などでみますと、前橋商業高校や高崎商業高校などは約7割は進学しています。商業高校は就職している生徒は非常に少なくなっています。ある意味では、専門高校の中で就職を一番しているのは、少なくなっているとはいえ工業高校生だと思います。群馬県内への就職率がどのくらいかと言いますと、72%、残り28%が県外に出て行きます。この状況は各県の状況によって随分違います。最近の全国的傾向ですが、その県から出たがらないということがあります。私が工業高校卒業した当時ですと、クラスの中で地元に残るのは数人で、残りはすべて東京、または関西に出ていました。今と逆であったと思います。
 就職における職種別の動向はどうなっているかと言いますと、技術・技能職が86.6%、圧倒的にこの部分が多いと思います。製造業が55.5%、建設業が14.8%です。工業高校の中で、建築・土木の建設系がすべての科の中で占める割合は大体2割5分くらいだと思います。圧倒的に機械、電気が多く、その両者で大体6割近くを占めてしまいます。その次に来るのが建設、あとはもう数多くの小さな科が出てくるという状況です。科の数で言いますと、全部で300を越える科があり、建設系だけでも72科もあります。最近はかなり多様化している状況にあります。
 進学率ですが、39.2%ということで、約4割が進学しています。このうちの約半分が四大に行っています。残りの2割はどこへ行っているかと言いますと、いわゆる専門学校に行っています。就職の内定率は、そこにありますように98.2%ということで、たぶん農、工、商含め、高校生の全体から見た中で、一番高い率を示しています。
 今年の10月末就職内定状況です。今朝の段階で全国を都道府県別に調査がでました。この時点での調査は文科省もやっていません、私どもの協会だけがやっています。その結果を申し上げますと、10月末での就職内定状況が79.1%です。たぶん普通高校などでは5割もいってないのではないかと思います。危惧していますのは、最低の沖縄です。これが33.8%ということで、ものすごいく低くなっています。次に低いのが北海道です。低いと言っても沖縄の倍あり62.1%です。続いて宮城の67.4%、青森の68.8%、福島の69.6%、次に北海道となります。反対によい所はどこかといいますと、徳島が93%、岐阜が91.8%、長崎が91%、大分が90.7%です。ちなみに関東は、どこの県も昨年よりも大体5%ぐらい落ち込んでいます。
 次は群馬県の最近の就職内定状況についてお話します。群馬は全国的に見て平均的なところにあると思います。単独の工業高校は群馬県下に6つあります。工業科設置校ということならば、群馬県下では12校となります。9月末日現在で内定率が47.2%、10月28日で75%、11月15日では81.7%まで上がっています。最終的には、例年通りほぼ100%になると思います。しかし、私が科長の時は、1人で4社、5社とあって会社を選べた状況ですが、いまは大体1~2社程度しかありません。ほとんど選べる状況にありません。これはあとでお話しますが、1人1社制のため、1回受けたら次がないという状況にあります。
 高校全体の進路においての課題は、専門高校よりむしろ普通科高校にあると考えています。また、現在いま高校が抱えている課題として質の保証があります。高校と言っても、いわゆる東大に入る進学校から中学レベルをやっとこなしている高校と様々であります。高校によってレベル差が相当あるわけです。こうした状況において現在では半数を超える生徒が大学にいっています。日本の高校を出ましても大学へ無試験で入れる資格として認められていません。日本から海外の大学へ行く時は、すべてその学校の試験を受けなければいけなくなっています。日本の教育は内向きで、外国に対しての質の保証していません。それを解決することは喫緊の課題だと思っています。
 今、授業料の無償化の問題が出ています。世界の中で、いま無償化していないのは、日本を含めた数カ国だけです。ほかは、全部無償化です。無償化は最終的には高校の義務教育化を意味します。義務化すれば、今高校でやっている入試が必要なくなります。無償化と義務化は対のことです。今までの教育改革は小中学校が対象でしたが、今後10年は高校のための教育改革が行われると言われています。
 裏面になると思いますが、離職率です。よく7・5・3ということがよく言われます。下に厚労省の資料を出しておきましたが、これによると高校が1年で23.7%、2年で36.3%、3年では44.4%が辞めてしまいます。大学も3分の1が3年でやめています。高校については全体のほぼ半数がやめるデータとなっています。しかし、工業高校は、それほど高くないと言い続けています。私どもの協会独自で工業高校の調査データを集めたほうがいいということで調査を始めました。
 東海地区の機械系と電気系を設置する全日制工業科における平成18年3月卒業生に関する離職率調査結果ですが、1年までで10.2%、2年までで17.1%、3年までで21.5%が辞めています。近畿地区の平成15年3月卒業生の調査では3年後の離職率24.3%となっていました。また、各県でも独自にやっており、大体22~28%という結果がでています。これらから分かるように厚労省のデータである高校生全体の約5割に比べれば半分以下になっています。しかし、低いと言っても2割以上がやめてしまことは、問題だと捉えています。
 やめている理由をそれらの調査からみると「一身上」が最も多くなっています。次いで「仕事の適性」となっています。工業科を選択し学んだ結果でありながら、適性が合わないということですので、我々工業高校関係者は深刻に捉えています。次は「転職」したい。4番目に「進学」が上がっています。工業高校に行ったけれども、どうもこれでは駄目だと。改めて大学を出直す必要があるということだと思います。さらに「職場の人間関係」「会社の要求について行けない」。その会社を決めるときに「安易な選択」をしてしまった。自分自身の「辛抱のなさ」。こんなことが離職理由としてあげられています。
 さらに、やめた生徒たちがその後どんな状況になっているのだろうかを調べてみますと、一番多いのが「不明」。他の会社に正社員として転職して、約2割はきちんとやっています。あとの9.2%は勤めていますが、非正規で正社員にはなれていません。また、就業していない者もおります。何れにしても、工業高校卒業生の離職率は、一般に言われている離職率の約半分であるということです。
 それでは次の課題についてお話をしていきたいと思います。5つ挙げてみました。最初に、「建設(建築・土木)の教育内容」を挙げました。私自身も工業高校の建築を出ていますが、当時機械、電気の人の中には旋盤工、電工などになる人もいました。それらの科では技能教育をガッチリやっていました。資格も随分取らせたと思います。しかし、建設の土木・建築は、「お前たちは現場監督だ。資格を取る必要もない。」ということでした。当時は測量士補という資格は、会社に入った後、会社が取らせてくれるものという認識だったと思います。しかし、最近では企業は即戦力重視で、測量士補を取っている生徒を評価します。資格取得の学習は、通常の授業でなく、本来は課外でやるのが一般的です。しかし、それは少なからずカリキュラム編成に影響を与えます。そのことは決してよいことだと思いません。限られた時間の中で、基礎学習をないがしろにして資格取得学習に取り組むことが、将来にとってほんとうによいことか疑問を感じます。
 二つ目は「建設業界で必要とする技術者」というのは、業界は工業高校に対して何を求めているのだろうか。どういう技術者を求めているのだろうか。ということです。先ほど、蟹澤先生のお話がありましたが、現場監督は大学卒がやることなのでしょうか。工業高校生ではいけないのでしょうか。高校生は現場監督は駄目で技能工でよいということでしょうか。工業高校卒のやるべき仕事内容が明快になっていません。現在、工業高校の建築や土木の教員をみると、大学で学んだだけで、現場を経験している人が少なくなっています。大学でも、たぶん建設関係の現場のことを教えられる先生はほとんどおられないと思います。建築の先生でありながら、現場監督の仕事内容を学んできていないのです。そうした先生が建築の施工をほんとうに教えられるのかという疑問を持っています。
 今回、私は学習指導要領改訂執筆の機会を得ましたが、その点について悩みました。今回は部分改訂で前面改訂ではないことから、そのことについては触れることができず、今日的課題についてだけ取り入れる結果となってしまいました。耐震、技術者倫理、環境問題、産業遺産の意義保存等について、新たに書き込んだだけです。ここ数十年、ほとんど建築の教科書の内容は変わっていないのです。
かつて私が学んだ工業高校では、教科内容はもっと細かく、今の学習内容の1.5倍位あったと思います。施工や技能面が少ないという基本的なことはな何も変わっていないのです。別な言い方をすれば、工業高校は大学のミニ版であり、技能面にシフトしていないのです。
ところでシンガポールにITEという学校があります。4年制の中学校をでて入る技術者学校で1年制と2年制があります。その学校では全く普通科目はやっていません。2年間全部専門科目をやります。日本の専門高校は普通科目と専門科目の両方を学んでいます。中教審の産業教育専門部会でも話題になったのは、専門高校の専門科目の少なさです。現在日本の高校では、卒業するためには必要最低単位が74単位です。でも、文科省で決めている実業高校で学ぶ単位数は最低25単位となています。25単位学んだだけでも工業高校卒と言えるのです。商業高校は英語が専門科目としてカウントできるので、さらにそれより少なくとも商業高校卒と名乗れることになっています。日本の専門高校は、専門高校でありながら学習指導要領上、専門科目は全体の三分の一でよいことになっています。
 しかし、多くの工業高校では25単位では少ないということで大体専門は40単位前後をやっていると思います。やっている学校は50単位までやっています。工業高校では少ない学校でも、35単位はやっていると思います。又、35単位、40単位、45単位などと設定し、選択できるようにしている学校もあります。諸外国の例をみると、技術・技能を教える学校で普通科目が専門科目を上回っている例はないと思います。企業が求めている専門教育がきちんとできているのかが心配です。現場で行われていることと、教育内容が乖離しているのではないかと思うわけです。
 たぶん日本の学校は、小学校、中学校、大学のすべてそうだと思いますが、職業や社会と関係ないところにあると思います。私が教員になった当時、教育委員会や先輩の方々は、企業の方とあまり付き合うなと言われました。今は産学連携が大学も当たり前ですが、当時はそのことは駄目のだといわれていました。しかし、今は全く逆の方向に動いています。専門高校でありながら、また職業教育を行っているのに企業や業界の方々と付き合って来なかったのです。最近の傾向は良いことだと思っています。教育関係者だけでなく、業界の皆さん方にも、高校で学んでいる内容、また大学の内容も含めてご検討いただければと思います。、もっと具体的な内容が出てきて、学校の教育内容が充実すると思います。
 3つ目に、「施工に関する教育内容が少ない」ということです。建築施工、土木施工という科目がありすが、それを2単位(週に2時間)でやるのが一般的だと思います。多くても4単位しかやっていないと思います。ですから工業高校を出てきても、建築の施工、土木の施工については詳しいはずがないのです。そこで私たちはビデオを作ったり、視覚的教材を作ったりして努力はしています。また、現場見学はなるべく実施して、少しでも建築現場や建築の仕事について理解してもらいたいと頑張っているつもりです。
 その次は、「資格や即戦力を求める企業」と書きました。先ほど申し上げたように、最近は入社試験で「あなたは何の資格を持っていますか」と聞きます。高校生に対して、そういうことが言われるようになってしまいました。機械であれば「あなたは旋盤の2級技能士を持っていますか。3級技能士を持っていますか」と言われます。土木・建築では、施工管理技士や測量士補について聞かれます。資格は今までは企業に入ってから取得するものでした。学校は、もともと基礎・基本を教えるところであり、即戦力を育てる体制を持っていないのです。
 今回、事業仕分けの中で「地域担い手育成プロジェクト」が仕分の対象になりました。このプロジェクトは文部科学省と国土交通省が地元の行政、建設業界、建築士会などが協力して、地域の活性化とともに工業高校の土木・建築科を盛り上げていこうとする事業です。指定されると3年間で、相当な補助金が出ていたと思いますが、今回は仕分け対象となり、ここれからは補助金が従来の三分の一となり、残りを地方が分担することになりました。理由はモデル事業だから、また県立学校のことは県でやればよいよいというのが理由です。ところがSSH、SSPという普通高校対象の技術・科学教育については、全くメスは入れられていません。ものづくりは大切だと言いながら、足下はお寒い現状です。国としての産業教育をやる気が全く見られないのです。産業教育はますます後退の傾向にあります。もっと言いますと、職業教育課という職業教育を担当する課が以前は文科省にありました。現在その課はありません。日本の高校生4分の1が通っているのに、担当課がないのです。これはおかしいと思います。世界を見ても、希な国という感じがしています。
 専門高校において専門科目を学ぶ時間が減少しています。これは大学進学のと関連しています。大学入試は普通科目ですから、進学希望者が増えると工業高校は専門科目が増やしにくいという面があります。私が学んだ工業高校と現在の工業高校を比べれば、専門科目を現在やっている時間数はの少ない所で半分、多い場合は3分の2程度減少していると思います。当時、私は工業高校から大学に行きましたが、大学の学部1、2年でやる内容は、工業高校とほとんど変わらなかったと記憶しています。かなりのレベルにあったと思います。昔の工業高校と比べ、現在の工業高校のにおける専門力は後退していると感じています。
 次は「進学率の上昇」です。年々専門高校の生徒の大学進学率は上がっています。専門高校生は必ずしも就職ということではなくなっています。なぜ、工業高校は技能者となり、地元へ就職しなければならないのか。工業高校生は進学してはいけないのか。このような課題に工業高校はきちんと答えなければいけなくなっています。工業高校の在り方が昔とは変わってきています。普通高校も含めて、高校の在り方を今一度再構築する必要があると思います。
 「皆さんは自分の子どもさんに、高校で就職しなさいといいますか。進学できるものなら、是非大学に入ってほしいという話が出るんじゃないでしょうか。」このことはごく当たり前のことだと思います。ところが、工業高校生が受験する場合、入試科目に専門科目はなく、普通科目しかないのです。現在、スムースに工業高校からつながる大学はないのです。制度が確立していないのです。明らかに不平等だと感じています。現在審議中の中教審の特別部会では、中間まとめで専門高校生を受け入れる大学を提案しています。既に工業高校生を受け入れている大学において、工業高校生の評判はけっして悪くないのです。確かに普通科目は不得意だと思います。しかし、山形大学をはじめ、工業高校生を受け入れている大学のお話を聞きますと、1年さえクリアできれば、工業高校卒は優秀であり、伸びるとも言ています。
 また、工業高校卒が大学院に行った場合、手が実際に動くことから、普通高校卒より成績が良い場合が多いという評価をいくつかの大学からいただいています。今年度に特に、四大に行く生徒はお金がないということで、少なくなり2年制、3年制の専門学校へ進学が増えている傾向が見られます。専門高校を含めた進学率は昨年より上がっています。
 次の課題は、「女子の就職先がない」です。これは、ほとんどの学校が悩んでいます。今、建築・土木については、工業学校の先生方や自分たちの同級生、又は先輩、後輩あたりをつてに、個人的に頼んで就職をお願いしている以外は、ほとんどないと言ったほうがいいと思います。前橋工業高校では私が校長の時から、技能士の建築大工3級を全員に受けさせています。1年生でもクラスの半数以上が技能の3級を取ってしまいます。群馬県の技能五輪の代表の4人のうちの1名は、毎年前橋工業高校から出ています。3級を取得した生徒は、一部ですがさらに技能士2級を目指しています。2級技能士に受かった女子が信州大学で建築に入学した例もみられます。ここ数年就職先がないから進学という傾向も見られます。現在の男子さえ難しい中、女子はほとんど採ってもらえません。今年の建築・土木の就職状況は、昨年より下回るのではないかと思います。
 沖縄は就職内定率は38%と出ていますが、建設関係は10%と極端に低いと聞いています。10人いても、1人しか就職が決まっていないということです。女子については1人も決まっていないとのことです。建築には夢があり設計があることから、女子は憧れて来ます。しかし、就職の段階になったら何もないのです。ほとんど進学するしかないのです。このことは大きな問題だと思います。建設業界としては、女子をどう考えているのかという問題も問われていると思います。
 次は労働環境、賃金改善のことです。数年前にある経済誌が行った調査で職種別の賃金がありました。その中で電工さんがいちばん高くて年収500万円とあったと思います。建設技能者の賃金が低すぎると思います。工業高校卒であっても、製造業の一流企業に入る人たちもいるわけです。そうした会社は、週休2日でボーナスもあります。残業時間もきちんと管理され、残業手当もきちんとでます。しかし、一方建設業界はどうでしょうか。一流会社であっても土曜日に出勤するのは当たり前になっています。こういう状況を生徒は知っていますから、待遇改善ということができない限りは、なかなか就職しようと思わないということもあると思います。
 高卒での技術者・技能者、これは建設だけでは限らないと思いますが、日本の中で、そういった技能者を取締役とする例がないのではないでしょうか。技能者であってもそれなりの待遇をすべきだと思います。よく日本ではものづくりとは言いますが、ものづくりは誰かがやるもの、人がやってくれるというレベルでしか考えていないことを痛感しています。実際のものづくりは現場の技術者・技能者がやっています。そういった人の待遇をきちんとすべきだと思います。
 次の問題として「高校生の一人一社制」という慣行があります。これは皆さんご存じのように、原則として内定結果が出るまで1社しか受けられないのです。
この制度が維持されたのは、学校が推薦した生徒は必ず企業が採るという前提がありました。現在、指定校はなくなり、企業は今は、A校、B校、C校、D校の全部に応募を促すわけです。そこで競わせるわけです。採るのは1人しか採ってくれないわけです。落ちた生徒たちは、落ちると言われるまでの2週間全く次の求人活動ができないのです。1人に2社ぐらいの求人数では、落ちた後に行くところがないのです。このことから、成績の優秀な子であっても、行き場がなってしまうことが起きます。大学へ行く準備はしていないので、ではやむを得ず専門学校へ行くという傾向もみられます。この「高校生の一人一社制」は高校生にとって不利なことであると捉えています。
 現在は、これが多少是正されまして、10月の1週目、中には10月の初めになれば、自由に受けてよいことになっています。このこと自体を、皆さんあまりご存じない場合も多いのではないかと思いますが、高校生の就職において、大きい課題ではないかと感じています。
 次は、今までに述べたのとは異なる視点からの工業高校の課題について述べてみたいと思います。最初は「工業高校の実態が把握されていない」ということです。これは工業高校に限ったことでなく、専門高校全体にいえることかもしれません。専門高校は、技能者の養成をするところと捉えられているのかもしれません。しかし、先ほども述べましたように進学も増える傾向にあります。また、教育内容は技能教育に特化していません。工業高校の教育内容が企業のニーズに沿ったものになっているかの検証も行われていないと思います。専門高校が日本におい全高校に占める割合はほぼ4分の1です。それだけの生徒が在籍しているのですが、その先が開けていません。進学が単線型で、よその国みたいに複線型になっていないのです。そういう意味で、袋小路になっています。15歳の段階で、進路の決断が本当にできるという問題もあります。
 一方、適時性ということがあります。若い段階から手を動かさなければ駄目なのです。優秀の技能者になるためには早い時期から取り組む必要があります。また、工業高校生は、作業着を着て安全靴を履いてやることに抵抗感を持っていませんので、作業現場へすんなりはっていけます。日本の普通科高校ではほとんど職業教育はなされていないと思います。職業教育をやっているのは、高校では専門高校だけです。専門高校そして工業高校における教育内容、方法などは関係者以外には、あまり理解されていないと思います。文科省でも、カリュキュラムは分かっているが、実際は理解していないのではないかという気がします。
 次は、「企業と学校の交流が少ない」。これは私どもの課題だと捉えています。学校の先生方も企業でやっている実態等がかっていないのではないか。建設会社一つをみても、昔とはずいぶん違ってきています。先生方には企業現状が語れるように実際に見てほしいと思っています。私が勤務した学校では、先生方に1人1社以上、必ず訪ねて下さいということで、実習助手の先生も含めてお願いし、実施してもらいいました。ほんとうにインターンシップが必要なのは、生徒ではなくて先生方ではないかと理解しています。いま本協会では今年度から全国の精鋭18人を集めて工業校長会独自で研修を5日間、泊込み費用も全部出しまして開催しました。先生方の力量を高めることが求められていると思います。その中でも、学校の論理でなく、工業高校に何がもとめられているのかきちんと把握すること、それには企業との交流は欠かせないと力説しています。
 次は「職業教育は誰がどのようにして行うべきかが不明確な状況」ということです。今回、国の事業仕分けの中では、職業教育は地方でやるべきだと結論づけられました。しかし、職業教育を地方でやっている国はどこにもないと思います。韓国の工業高校が素晴らしいですが、全部国立です。
 前橋工業高校時代、何度か台湾の工業高校(国立)と交流の機会があり、前橋工業高校に来ていただきました。前橋工業高校は敷地が7万5,000平米あります。建物全体で、総額で約80数億円かかっていますが、見ていただいても、実は台湾の関係者は驚かないのです。「うちの敷地は、その倍あります。マシニングセンターは2,000万、3,000万円のものが10台あります」と言います。私どもはたったの2台しかありません。
 今、私ども会員校の工業高校で使っている旋盤には、昭和30年代、40年代のものもあります。こういう状況の中でありながら、日本の職業教育に対する補助金がどんどん少なくなっています。韓国では、5年ごとに工業高校の設備を見直しいると聞いています。国際技能五輪が静岡であったときに、韓国は50人の工業高校の校長を送り込んできました。残念ながら、海外で開催されたとき日本からは1人も行っていません。職業教育は誰が主体になって、どのようなことをどのように行うべきか。OJTが弱体化した今、真剣に考える必要があると思います。
 最後に出てくるのが、「ものづくりは誰がやるもの」ということです。ものづくりは、誰かがやってくれるもので、自分がやるものとしてしか捉えていただけない状況にあると思います。要はものづくりはひとごとなのです。工業高校だけにまかせておいていいものでしょうか。「工業高校に入れば、あなたは就職するのです」といっても必ずしもそうなりません。工業高校は今までに述べた課題を背負っています。ご理解いただきたいと思います。私ども工業高校関係者は、積極的に業界の皆さんと意見交換し、業界の希望にどう答えられるか、真剣に考えなければならないと思っています。先ほど言いましたように生徒は働くことに関して、抵抗感は全くありません。作業着を着て働くことについては、いいことだと思っていますから、そういった意味での職業教育は工業高校では十分になされています。いずれにしても、建設業の皆さんに期待される工業高校になりたいということは我々は思っています。失礼なことをいろいろ申し上げましたが、お許しいただきたいと思います。以上で終わります。

○征矢座長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明について、何かご質問等がありましたらお願いします。
○白木委員 1頁に進学率という言葉、就職率という言葉がありますが、これは就職比率、進学比率と解釈したほうが正確だと思います。そういう解釈で、進学率の4割ぐらいは希望して進学したというよりは、先ほどのお話を伺いますと女子の場合はほとんどがやむを得ず行っているという、消極的な選択によって進学している人も半分ぐらい入っているのかなと。先生のおっしゃったような進学も、選択肢としてはあるべきだという議論と両方が入っているから難しいとは思いますが、実態としては半分ぐらいはやむを得ず行っていると。
○全工協会村田事務局次長 消極的な進学率はありますが、それほど高くはありません。多くは、工業高校へ来てわけですが、はじめから進学を希望しています。
工業高校からの進学は、センター試験を受けていくのは皆無です。ほとんどがAO入試で入っていると思います。
○白木委員 もう1つは、職業教育はどこが行うかということですが、先ほどシンガポールの例のITEは、むしろレイバーの下ですよね。ですから、職業教育を文科省でやるのは、個人的にはかなり限界があるのかなと日頃から思っています。その辺の連携を、仕分けするだけではなくて、もう少し総合的にやっていく視点が必要かなと感じています。
○全工協会村田事務局次長 おっしゃるとおりだと思います。今回、厚労省さんがこういう形でやっています。今回の国がやっている担い手育成事業も、農業、建築・土木等があります。農水省、国交省と文科省がコラボしてやっている事業です。ここ数年でようやくそういう動きになってきました。たいへん良いことだと思います。私どもが大会を開催する場合、来ていただけるのは、経産省の課長さんで、文科省が来ていただけない場合もあります。私ども協会は文科省だけでなく、経産省、厚労省、国交省など各省庁と密接に連携しています。もっと文科省がもっときちんとリードを取ってほしいと思っています。職業教育は教育関係者だけでできるものではありません。業界の皆様との連携は不可欠のことです。今後それをどれだけ進めるかが重要だと考えています。
○白木委員 横のコラボレーションをうまく、どこがイニシアティブを取るかはわかりませんが、それぞれの分野によっても違うかもしれませんが、コラボレーションをするべき分野だと思います。
○全工協会村田事務局次長 全く同感です。
○征矢座長 ほかにありますか。
○才賀委員 いま、我々は富士で学校の先生を教育しているのですが、「こんなに建設業って難しかったのか」という学校の先生が非常に多いです。例えば、我々の富士は仮枠を組ませたり鉄筋を組ませたりしていますから、先生たちは今までは経験がなくて授業を教えていた。それが生徒たちに、こんなに重いものを持って1日仕事をやっているのだというのが実感できましたよというお話ができる。我々は二次下請が多いものですから、二次下請の技能と技術という問題で言うと、技能を学校でもう少しきちんと教えてもらわないと、高校生で就職しても、「学校ではこんなことを教わらなかったよ。こんな重いものを持ったことないよ」ということで、すぐにやめてしまうことが多いので、進学も1つでしょうけれども、就職される方は少しその辺の教育をしていただきたいなと思います。
 千葉の東総工業高校は、鉄筋の柱のベースのミニチュアを持っていって現地で組ませて、実習をやっていただいています。そうしますと生徒が面白いからということで、たしか今年はその場で2人就職が決まったという話も聞いています。我々も努力はするつもりでいますが、学校側ともう少しきちんと打合せできればいいなと思います。今後とも1つ、よろしくお願いします。
○全工協会村田事務局次長 富士で学校では、工業高校生徒も先生もお世話になっていて、その状況も知っています。東総工業高校からも報告を受けています。

ただ、私は今までに申し上げたように、施工関係はやっても最高で4単位、実習でたぶん1単位ぐらいしか取れないのです。結局、建築でいえば計画があり、設備があり、構造があり、力学ありという状況であり、
施工関係にまわせる時間は2単位程度になってしまいます。本当に現場関係の学習時間数が足らないのが現状です。こんな状況があるからこそ、25単位を40単位、50単位にしてくれませんかということで、中教審の産業専門部会では35単位に上げるという案ができたわけです。しかし、高等学校部会において潰され、最終的には25単位となり、今後10年も以前と変わらないことになってしまいました。非常に情けない状況です。なかなか必要とされる実態が理解されていないのです。富士訓練センターさんに、ここ数年教員、生徒の研修実施していただいています。ほんとうに有り難く思っています。もっともっと研修が広まるよう努力したいと思います。
○才賀委員 いま、日建連さんと協力して、高校生が学生時代に資格を取って建設業に就職した場合には、最高1万円を助成するというようなこともやっていますし、この間、神奈川県で五輪がありましたよね。そのとき、ものつくり大学を出た生徒が金賞を取ったということで、いま若い人たちもだいぶ建設業の専門工事業者のほうへ目を向けているので、我々としても就職口はだいぶあると思うので、ひとつご協力をいただきたい。また、それと同時に我々のところでも、宿舎を持たないとか寮がないというのがあるものですから、その辺は今後考えなければいけない問題だろうとは思いますが、ひとつご協力ができれば、我々のところも就職率があがると思いますので、よろしくお願いします。
○全工協会村田事務局次長 こちらこそ、よろしくお願いしたいと思います。
○征矢座長 ほかにありますか。
○福田委員 2枚目の「課題」の(3)の女子の就職先がないということで、全国で約3万名が在籍している中で、建築は女子に人気があるとなっていますが、具体的に建築のどういうところが人気があるということですか。
○全工協会村田事務局次長 意匠設計だと思います。大学も同様だと思います。
設計でいきたいという人が多いと思います。実際に設計で食べるとなると、なかなか難しいと思うのですが。
○福田委員 現場でも設計をやってみたいということなのかな。現場ということではなくて、管理をやりたいというのではなくて、設計をやりたいということですか。
○全工協会村田事務局次長 現場と設計で分ければ、設計をイメージして入ってきている生徒が多いと思います。現場の方は数が少ないと思います。建設業界の現状をいかに生徒へ知らせるかが大切だと考えています。私がいた前橋工業高校では、1年生からガイダンスで建築の仕事内容の話をしています。また、インターンシップも行っています。
○白木委員 カタカナ文字の職業ですかね、インテリアデザイナーとかいろいろありますよね。そういうのに憧れるのではないですか。
○全工協会村田事務局次長 そうだと思います。
○才賀委員 いまの大学の女子は、現場という人も多いですよ。現場へ行きたいという人が結構おられる。
○福田委員 現場監督も随分。
○白木委員 建築志望の高校生、イメージはそういうふうに入ってくるのでしょうね。
○福田委員 そうすると、なかなか3万人は捌けないですよね。設計で希望したら。
○全工協会村田事務局次長 現在の厳しい建設業界の現状において、女子にしても男子にしても科別就職率を、出せない状況もあります。出した場合、建設業って、そんなもんだ、となっては困ります。オブラートにくるんでの話しかできないのです。
○征矢座長 よろしいですか。どうもありがとうございました。
 最後の議題です。雇用管理状況把握実態調査報告について、独立行政法人雇用・能力開発機構建設雇用支援課の中村課長から説明をお願いします。
○能開機構中村課長 ただいまご紹介いただきました、雇用・能力開発機構で建設雇用支援課を担当している中村と申します。どうぞ、よろしくお願いします。
 私からは、建設業における雇用管理の現状把握の実態調査の報告をします。これについては、5月に行われた第25回の専門委員会でアンケート調査の概要を説明しています。調査表についても説明の調査表を使いまして、8月にアンケート調査を実施しています。その中身を、今回は概略ということで説明します。
 お手元の資料3を見ていただきたいと思います。?Tは「調査の概要」で、4頁以降が「調査結果(要約)」ということでまとめています。調査の概要は調査の対象範囲として、対象地域は日本全国の地域を対象としています。対象業種はそこの表にありますように、総合工事業、職別工事業、設備工事業の3つの中分類に分けて、さらにそれぞれ小分類で分けて調査をしています。(3)は調査対象の事業所です。事業所数は1万5,000所を対象として、アンケートを出しています。抽出は、帝国データバンク及び東京商工リサーチの企業情報ファイルより、全国を平均的に出しています。かつ、建設業の事業所の構成割合に合わせて抽出をさせていただいています。
 具体的には2頁が、その分類になっています。それぞれ中分類と小分類ごとに1万5,000所、そのパーセントに応じて部数をその事業所に出しています。ですから、総合工事業は41.1%の6,165所に達しています。職別工事業は34.1%の5,115所、設備工事業は24.8%の3,720所にアンケートを出しています。回収結果は、その右側に数字が出ています。総合工事業として6,165所に対して1,808所、職別工事業は5,115所の1,049所、設備工事業は3,720所の1,143所という結果になっています。調査の実施は先ほど言いましたように、平成22年6月1日現在の状況をアンケート調査に書いていただくようにしています。
 4頁から、調査結果の要約です。調査項目は大きく7項目あります。1番目は「企業の属性に関する事業」、2番目は5頁にある「経営状況及び雇用の動向」、3番目は8頁の「新規分野と成長分野への進出の状況」、4番目は9頁の「雇用形態及び労働保険・社会保険の加入状況」、5番目は12頁の「労働時間等」、6番目は13頁の「離職者等再就職支援」、7番目は「一人親方の活用状況」と分かれています。ポイントを掻い摘んで説明します。
 4頁の「企業の属性に関する事業」としては、主たる業種は先ほど申したとおり、回収率27%で総計4,087事業所のアンケートの結果を得ています。「総合工事業」が44.2%、「職別工事業」が25.7%、「設備工事業」が28%、「無回答」が2.1%となっています。2番目の所在地は、関東が一番多く24.3%、以下、中部、近畿、九州、東北と分布のとおりになっています。3番目は企業の事業形態で、4,087所のうち、「株式会社」が74%の3,026所です。4番目は従業員数で、この回収がありました4,087事業所の合計として総従業員5万9,736人で、1事業所平均14.62人です。この中身の(4)の職種別雇用者数を見ていくと、5万9,000人のうち「事務職・営業職」が1万1,953人、「現場監督・作業所長」が1万4,209人、「技能労働者」が1万9,459人、「その他」が5,145人という分類になっています。
 5頁の「(5)の職種別就業形態別雇用者数」として、ウの技能労働者で、先ほど言いました「技能労働者」1万9,459人の就業形態の「常用」が1万7,161人、「期間雇用・臨時雇用」が1,582人、「日雇」が716人という結果になっています。なお、「常用」の中には「家族従業員」として394人が含まれています。第7次の計画のときに、平成16年度も同じような調査をしています。平成16年のアンケート調査の回収は、27%の4,062所でした。ですから、平成22年度とほぼ同額の事業所数ということで比較しますと、平成22年度の1万9,459人に対して平成16年度は2万2,827人と、3,368人減少している状況が見られます。1事業所あたり0.86人減少している形になっています。
 2番目は「経営状況及び雇用の動向」です。まず経営の状況については、ここ2~3年の受注の工事高ということで、アンケートを取っています。「10%以上増加」が68所の1.7%、「やや増加」が253所の6.2%、「横ばい」が685所の16.8%、「やや減少」が837所の20.5%、「10%以上減少」が2,050所の50.1%で、「10%以上減少」が半分以上という結果になっています。「やや減少」及び「10%以上減少」も含めますと、全体の70.6%が減少と回答をしています。
 雇用の動向です。5の「人材確保の状況」を見てください。1番目の問は必要な人材の確保ができているかで、4,087所のうち、必要な人材の確保が「ほぼできている」が964所の23.6%、「どちらかといえばできている」が1,827所の44.7%、「あまりできていない」が858所の21%、「できていない」が230所の5.6%です。「ほぼできている」と「どちらかといえばできている」の「確保できている合計」を合わせると、68.3%が必要な人材は確保できているということです。これも平成16年の調査と比較すると、「確保できている合計」が平成22年度に1.7%増加になっているという結果を得ています。
 6は「若年者の状況」を聞いています。(1)質の良い若年者の確保はできているかです。「ほぼできている」が353所の8.6%、「どちらかといえばできている」が1,152所の28.2%で、合わせると36.8%が確保できている形になります。「あまりできていない」が33.8%、「できていない」が23%で、できていない合計が56.8%ということで、できていないほうがかなり多い形になりました。ただ、全体の必要な人材の確保の中で「できている」が68.3%ですので、若年者の確保は36.8%しか確保できていないという状況です。
 この確保に合わせて、(2)で若年者の定着状況も聞いています。若年者が「ほぼ定着している」が882所の20.1%、「どちらかといえば定着している」が33.8%、「あまり定着していない」が21.5%、「定着していない」が16.2%になります。先ほどの若年者の減少と比べると、定着しているという割合を合わせると53.9%ですので、半分以上は定着しているというアンケートを受けています。以上が雇用の動向です。
 3番目は、「新規分野や成長分野への進出の状況」のアンケートの結果です。1番目は進出の状況を聞いています。新分野・成長分野に「既に進出している」が10.8%、「計画・検討中である」が15%、「進出の予定はない」が71.6%で、あまり進出は進んでいない結果になっています。3番目で、進出している事業主に売上・受注の割合を聞いています。新規分野・成長分野へ「既に進出している」あるいは「計画・検討中である」1,058の事業所に対して、売上又は受注分野の割合を尋ねたところ、「70%以上」が2.9%、「50%程度」が8.8%、「30%以下」が73.2%ということで、ほとんどが割合としては30%以下の売上又は受注の割合になっているアンケートの結果になっています。
 4番目は、「雇用形態及び労働保険・社会保険の加入状況」です。まず、雇用形態については、1で技能労働者に特化して聞いています。技能労働者の雇用形態が「主に常用の月給制」であると答えた所が1,692所の59.3%で、6割近くが月給制を導入しています。その次は「主に常用の日給月払制等」が1,041所の36.5%の導入。「主に非正規雇用」が72所の2.5%になっています。これも総計で、平成16年度の第7次の調査に比較してみると、月給制に導入増加率が16ポイントということで、月給制の導入が増えている。あとの日給月給と非正規は減少している傾向にあります。2番目の月給制にできない理由の一番多いのは、2段目にありますように「工事受注量の変動が多いため」できないと回答をしているのが60.9%です。
 4に技能労働者の労働保険・社会保険の加入状況を調べてあります。常用だけで見ていきますと、雇用保険については常用では加入率「100%」と答えた事業所が2,300所の80.7%で、一番多いです。健康保険については、常用において加入率「100%」が2,125所の74.5%です。国民健康保険については個人加入ですので、ほとんど把握していない状況が多いです。4番目は厚生年金で、常用で見ますと「100%」加入が2,184所の76.6%と、高い割合で加入をしている状況です。
 5番目は「労働時間等」で、勤務形態の質問です。1番目は、労働時間について聞いています。「一年単位の変形労働時間制」を採用しているというのが1,674所の41%で、一番多いです。あとは「半年、あるいは一ケ月単位の変形労働時間制」が5.2%、「完全週休二日制」が10.5%、「隔週または何らかの週休二日制」が26.9%と2番目に多い数字です。この調査も平成16年度にやっていますので、それと比較して、特に「完全週休二日制」だけが平成16年度の割合に対して0.4ポイント増加している。あとは、ほとんど3ポイント、1.3ポイントということで減少している。「完全週休二日制」だけ、平成22年度には増加傾向があることが見られます。
 2番目が社内制度として、制度のありを実態として、複数回答を調べています。一番多いのが制度を設けている中で、「年次有給休暇制度」が55.6%、「特別休暇制度」が22.1%、「育児休暇制度」が21.6%で、「裁量労働制」「フレックスタイム」が続いている形になっています。3番目は計画的な年休の取得ということで、「取り組んでいる」が30.9%、「取り組んでいない」が60.4%です。4番目は就業規則の定めで、就業規則を「定めている」という事業所は77%です。
 6番目は、「離職者等再就職支援」です。まず初めに、離職者の状況を聞いています。過去3年間の離職状況を聞いていて、3年間の離職者は総数で9,973人と受けています。本人都合が6,681人の全体の67%、事業主の都合が1,719人の17.2%、定年が1,573人の15.8%です。それぞれ分析してみますと、(1)の6,681人の本人都合の場合の年齢別に見ますと、いちばん多いのが「29歳以下」の2,068人の全体の31%です。ほかの30代、40代、50代についても、それぞれ23%、14%、24%と、かなりの率で平均的にパーセントとして人数が多くなっています。これも平成16年度の調査と比較すると、全体的に増加傾向です。「29歳以下」が全体の割合としては多いですが、平成16年度の比較で見ると29歳以下が6.2ポイント減少しています。
 (2)の事業主の都合による離職者が1,719人で、これも年齢的に見ますと「29歳以下」が9.6%、30代が18.7%、40代が17.5%、50~64歳が44.3%と、ここがいちばん多い割合になっています。50歳以上が過半数以上を占めるのが、事業主都合の離職者の数となっています。平成16年度の比較として、全体的に減少傾向ですが、「30~39歳」は5.2ポイント増加しているのが現状です。
 7番目は、「一人親方の活用状況」です。一人親方を「活用している」事業所が1,782所の43.6%、「活用していない」が1,843所の45.1%です。率としてはあまり変わりないですが、活用していないほうが多いことになっています。今後、直近3年間の動向ではどうだったかを2番目で聞いています。直近3年間で一人親方が「増加」したのが4.5%、「減少」が11.3%、「変わらない」が41.7%、「わからない」が19.3%ですので、変わらないというのがその3年間の動向になっています。
 3番目が、現場における一人親方の活用人数としまして、「活用している」1,782事業所に対して、1つの現場において、どの職種に一人親方を何人活用しているかを尋ねています。全体で通してみますと、1つの現場で1事業所あたり約4.98人、平均で5人程度の一人親方を活用していることになっています。職種で見ますと、上位でいうと、大工、電気作業者、配管工、職長、左官です。
 4番目が、活用している理由ですが、やはり「一人親方には熟練技術が備わっているから」というのが一番多いです。
 以上、簡単ですが、平成22年度の調査の概要ということで報告いたしました。この正式な報告書については今作成中ですので、12月中にできて、1月にはお届けできるという感じで進めさせていただいています。以上です。
○征矢座長 ありがとうございました。ただいまのご説明に対して、ご質問、ご意見等があればどうぞ。
○古市委員 2頁に表があります。「総合工事業」の一番上の、一般土木建築工事業の調査対象事業所数は540ですが、集計対象事業所数は733となっていますね。これはどういうことか、説明してください。
○能開機構中村課長 これは、帝国データバンク、東京商工リサーチの調査から抽出した、一般土木建築工事業540社に対してアンケートを出したのですが、回答してきた業種を見ると、一般土木建築工事業と回答したのは733でした。業種については事業所で、○を記入方式で提出させていますから、事業所は、「うちは一般土木建築工事です。」と言ってきている事業所は、帝国データバンク、東京商工リサーチの調査より多いということです。自己申告制ですので。
○古市委員 よく呑み込めないです。
○能開機構中村課長 データ的に帝国データバンク、東京商工リサーチで、主たる事業所で業種を見ると、この540社を抽出できたのですが、回答を得た調査票を見ると、一般土木工事に他の職種の方も200社ぐらい○をつけてきているのです。ですから、下の、他の土木工事業の方が一般土木建築工事業として○をつけてきているという調査結果になってしまったのです。
○白木委員 これは統計のとり方が、元々の母集団を示す統計で分類されたものと、ご本人が考えたものとは違うことと、もう1つは、その間に仕事を拡大したとか、そういうことによって、土木工事業から一般の建築工事業に拡張したとか、そういうような変化があったとか、両方考えられますか。
○能開機構中村課長 考えられます。主たる業種が変わったという可能性はあります。
○白木委員 相当な変化ですから、何か意味があるのではないですか。これだけ乖離があると、回収率を掛けると、多分ものすごい数で変わっているということですね。そこは少し分析する価値があるのではないですか。要するに、3割の回収だと150ぐらいあれば十分なのですが、それが500ぐらい増えているわけですね。違う所から500がこちらに来ているわけですから、質問に答える意味では、何故だろうと分析する価値があります。
○能開機構中村課長 分析してみます。
○才賀委員 これは舗装工事業でも一般土木に入っている人もいたから、そちらに○をしたのではないですか。
○古市委員 2つの事業をやったりね。
○白木委員 それはあり得ます。どちらがウエイトが大きいか。
○古市委員 それをきちっと仕分けができないとね。
○才賀委員 ウエイトが多いほうに○をしたのではないからね。
○古市委員 もう1つ。従業員の数で、1事業所あたり平均14.6人となっていまして、これを少し階層別に、例えば、5人未満とか、5人から10人までとか、10人を超えているものとか、という仕分けの仕方ができる条件があるのですか。
○能開機構中村課長 調査ではそういうふうになっていて、もっと詳しい結果を出すことはできます。
○古市委員 どうしてそういうことをお聞きしたかというと、就業規則を定めている所と定めていない所とがありますね。就業規則は何人で作らなければいけなくなっているのですか。
○堀井室長 10人です。
○古市委員 10人ですよね。そういうことが見られるほうがよいと思います。
○能開機構中村課長 わかりました。それはもっと詳しく。
○古市委員 次か、全体の詳しい発表のときに教えてください。
○古市委員 それと、例えば、社会保険の加入状況とか、そういった数字を見ると、先ほどの蟹澤先生のお話と相当程度違いがあると私には見えるのですが、こういうアンケート調査ですから、明らかに法に、例えば、従業員が10人以上いるのに、就業規則も作っていなかったりとか、そういった所はなかなか回答しにくいことがあるような気がします。いつもアンケートへの回答率はそんなに高くないと私は思います。前回から比べればどうだと、そういうことはあり得るかと思いますが、この数字は高く出ているというのが私の印象ですから、こういうのが建設雇用改善計画づくりのベースになると、例えば、協会建保にしっかり加入しているという前提で物事が議論されると、あまり具合がよろしくないのではないかという印象を持ちました。
○蟹澤教授 オブザーバーですが、よろしいですか。数値を見ると、技能者は、1事業所平均14人の3割ぐらいです。だとすると、労働力調査だと、75%ぐらいが技能労働者と言われているとすると、要するに、私の集計はその専門工事業の配下にある技能者を全部入れているのでああなるのですが、事業所であることと、あと、総合工事業が半分ぐらい、元々技能者がいない所ですから、少なくとも労働力調査の比率でいうとずい分差があるので、少し修正しないと、保険の加入率が高いことはそのまま言えないのではないかと思います。
○才賀委員 それも1つあるでしょうが。例えば職別工事業で見て、全国で5,115でしょう。それで、アンケートを出しているのは1,000ですから、保険などをきちんと入っている企業がほとんど出しているので、古市さんが言うように、掛けていない業者は出していないというように見られてもしょうがないです。
○白木委員 アンケートをやると常にそうですね。回収は3割ですから、7割は回収しないわけです。でも3割とは、アンケートとしては高いです。
 もう1つは、これは雇用管理調査ですから、基本的には常用で入っている人がメインの調査対象になっています。対象が違うわけですから、先ほどの先生方の報告とは大分違っていて、ずれていて当たり前のことなのですね。その流れをどう改善するかを考える必要があると思います。それは調査対象についての一般的な、当たり前の話です。
 もう1つは、人材確保の所です。この調査で見る限り、常用雇用に関する限り、量は確保していると。しかし、質はどうかという課題が出ている感じが明らかにします。ですから、その辺は業種別とかでクロスをかけて、常用雇用に関して、どの辺に問題があるのかを少し掘り下げる価値があるのではないかと思います。おそらく建設業界の中の一部が調査対象になっていて、これもやむを得ないですね。調査対象がそうなっていますから、でも、その中でどういうことが言えるのかを深く掘り下げるのは価値があると思います。
 もう1つは、数年前の調査と、時系列で細かな0.何パーセントの違いがあるというのはあまり意味がないです。回答者が違っていますから。全体を見るのはそれでいいのですが、あまり細かくされると却って怪しげな分析になると思います。ざっくりとした所で、この辺が増えているかなという程度のことしか言ってはいけないと思います。
○堀井室長 今までの議論の関係で補足をします。本日、資料4として横表を出しています。こちらは過去の調査で、いま白木先生からご指摘がありましたが、数字の細かいポイントの変動を見るというよりは、ざっくりと7次計画の策定をしている5年間に、それぞれの項目がどういう傾向で動いているかを見るために作成したものです。先ほど来、蟹澤先生のお話からもありましたが、建設業の重層的な、非常に複雑な状態で、いろいろな切り口で見ないとなかなか全体像が把握しにくいのかもしれません。ただ、一定程度の期間で機構の調査をして、調査の項目を揃えて、比較ができる形をしていますので、参考にしていただければいいと考えています。
○山室長補佐 資料4を説明します。今中村課長から平成22年度調査について説明がありました。それで、資料4のほうは、本年1月1日基準日で行った平成21年度調査、これは過去5年間ほぼ同じ調査項目で行っていますので、平成17年度の調査からの傾向を示したものです。資料のつくりとしては、現行の第7次の計画の項目に合わせて整理し直しています。左側から第7次計画の項目がありまして、その次に調査項目、それから、調査時期の所に2通りありますが、平成17~21年の調査なのか、それとも、先ほど説明のあった平成22年度の調査を平成16年度の調査と比較しているのか、その部分も一緒に記載しています。その後に、年度ごとの推移がありまして、一番右側に、傾向として、数字が上がっているのか下がっているのか、横ばいなのかというところを簡単に示しています。
 順を追って説明していくと、最初の「魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備」の所では、雇入れについては、雇用管理責任者の割合、平成21年度を見ていただくと、それ以前と比べて減少しています。ただ、平成21年度は減少していますが、全体的に見ると90%前後で推移している状況です。
 1つ飛ばして、雇用条件を文書で明示している割合です。これについては多少なりとも凸凹がありますが、70%ぐらいの数字になっています。文書の種類についてはその下のほうに出ています。
 真ん中辺の、労災保険の特別加入制度を知っている割合です。これは平成20、21年、2カ年のデータしかありませんが、80%前後、その制度を一人親方に知らせたことがある割合は70%という具合になっています。
 2頁目の下のほうです。労働災害の防止の所で、健康診断の質問をしています。常用については平成21年度しかデータがありませんが、93%で、その下の、期間雇用・臨時雇用については平成21年で71.5%と、5年前と比べると少し低下しているという具合です。
 3頁目の一番上に労災保険の加入という所があります。これは5年間で見ていきますと、横ばいか、多少上がっているかということで、平成21年度は97%です。
 中ほどに、建設教育助成金の認知度で、知っているかということがありますが、これについては4年間のデータで、平成21年度は65%、活用している割合についても39.9%という具合になっています。その下の、活用しない理由については、平成21年度で一番多いのは、「手続が煩雑」という項目が挙げられています。
 4頁目、技能労働者の育成についてですが、一番上のほうは過去、直近3カ年の動向を聞いています。これは先ほども、平成16年度と平成22年度との比較であったように、変わらない割合が多くなっています。1つ飛んで、今後確保したい技能労働者の職種とか、年齢層とか、その辺の所を聞いていまして、上位3つの項目を載せています。これについては後ほどご覧ください。
 5頁目、職業能力の自発的な開発ということで、どんな支援をしているかです。過去5年間を見ると、大体80%前後で推移しています。具体的な内容については、受講料に対する金銭的援助が少しずつ低下していること、その他の項目についてもご覧のとおりです。それから、熟練技能を承継するための取組みで実施していること、その他、今後予定していることとか、上位3つを挙げています。実施している割合については24%となっています。
 6頁、若年労働者の確保について聞いています。一番上は、30歳未満の若年者がいる割合、これについては平成21年度で56%と、低下しています。その他、募集人員とか採用人員、その辺りの数値も載せています。真ん中辺に離職率の状況が出ています。平成21年度は40%ぐらいで、離職率については多少低下している具合です。
 7頁、高年齢労働者の所と女性労働者の所ですが、定年制度のこととか、高齢者がいるかどうかというような割合を聞いています。高齢者がいる割合については、平成17年度は93%だったのが、平成21年度については71%で、平成20年から21年にかけて低下したというふうに見えます。一番下の、女性労働者の所では、女性がいる割合については、平成17年度の20%から、平成21年度は11%と、これも低下している状況にあります。福利厚生施設についてはご覧のとおりです。
 8頁目、雇用管理推進体制の整備です。中ほどから下ですが、下請けを常時行っている割合が70%ぐらいで推移していて、企業数はずうっと10社未満となっています。下請けに対する雇用管理、指導を行っている割合は、それぞれの項目ごとで推移を表していますが、おおかた上昇しているものが多いという具合です。
 以上、簡単でしたが、5年間の傾向についてお話いたしました。
○征矢座長 ありがとうございました。5年間のおおかたの傾向についてご説明いただきました。これについて何かご質問等はありますか。よろしいですか。
 それでは、これも今後の検討の参考にさせていただくことでよろしいですか。あと、事務局から何かありますか。
○堀井室長 すみません。予定時刻を超過したところで恐縮ですが、事業仕分けの関係の状況の報告をしたいと思います。去る10月27日から30日にかけてですが、行政刷新会議で、事業仕分けの第3段の前半部分が開催されました。そして、27日に労働保険特別会計について議論がされたという状況です。労働保険特別会計の中の、雇用保険2事業についても10個の個別事業が取り上げられまして、また、制度のあり方についても議論されました。結論としまして、そのワーキングの中では、その枠組みのあり方については、雇用勘定に関し、雇用調整助成金以外の必要性の低い雇用保険2事業は特別会計の事業としては行わない、という形でされました。それで、これはワーキンググループAの評価結果ということで、11月9日の行政刷新会議、いわゆる親会議のほうにも報告をされたという状況になっています。
 いずれにしましても、厚生労働省としては、雇用のセーフティーネットが損なわれないように、留保をしながら、特別会計の目的や、刷新会議の仕分けの結果なども踏まえながら、適宜、事業の見直しとか効率的な実施を行って、真に必要な対策を講じていきたいと考えています。以上です。
 また、次回の専門委員会ですが、ヒアリングということで、関係者の皆様方からひと通りお伺いしたので、次回はこれまでのヒアリング結果、また、第8次計画の策定に向けての基本的な論点ということでご議論をお願いしたいと考えます。また日程調整をしてご連絡をしたいと思います。以上です。
○征矢座長 ありがとうございました。本日の委員会はこれで終了いたします。会議に関する議事録の署名委員については、労働者代表は古市委員、使用者代表は才賀委員にお願いします。よろしくお願いします。
 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。


(了)

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