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2011年2月22日 平成22年度化学物質のリスク評価検討会(第1回有害性評価小検討会)

労働基準局

○日時

2011年2月22日


○場所

経済産業省別館 8階 825号会議室


○議事

○長山化学物質評価室長補佐 定刻になりましたので、ただいまより「化学物質のリスク評価検討会(第1回有害性評価小検討会)」を開催いたします。座長が決まるまで進行役を務めさせていただきます化学物質評価室の長山と申します。よろしくお願いいたします。
 今年度の初回ですので、本日の出席者の紹介をいたします。資料1の開催要綱の裏に参集者の名簿を付けておりますので、それをご覧いただきながら紹介したいと思います。
 横浜薬科大学臨床薬学科教授の池田委員、慶應義塾大学医学部教授の大前委員、中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所長の清水委員、聖マリアンナ医科大学医学部予防医学教室教授の高田委員、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長の西川委員、独立行政法人労働安全衛生総合研究所健康障害予防研究グループ部長の宮川委員です。
 事務局は、半田化学物質対策課長、松井化学物質評価室長、柳川化学物質対策課調査官、寺島化学物質情報管理官、須藤有害性調査機関査察官です。
 本日は、日本バイオアッセイ研究センターより、西沢部長、同じく松本主管、中央労働災害防止協会から細田様をお呼びしております。以上で本日の出席者のご紹介を終わりにしたいと思います。
 次に座長の選出をお願いしたいと思いますが、どなたかご推薦はございますでしょうか。特にないようでしたら、事務局としては大前先生にお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○長山化学物質評価室長補佐 それでは、大前先生に座長をお願いすることといたします。よろしくお願いします。
○大前座長 それでは、この会の座長を務めさせていただきます。今日はたくさんテーマがありますので、挨拶は抜きにして、早速始めたいと思います。事務局から資料の確認をよろしくお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。いちばん上に「座席表」、本日の「議事次第」を付けています。本日の議題は「がん原性試験(吸入試験)対象物質の選定について」ということで、フィージビリティテスト終了物質から選定していただくもの。(2)が「リスク評価(有害性評価)の実施予定について」、(3)は「有害性評価書、評価値の検討」の3つを予定しております。
 裏側に本日の配付資料の一覧を付けておりますので、これをご覧になりながら確認をお願いします。資料1は本検討会、「化学物質のリスク評価検討会開催要綱及び参集者名簿」。資料2は「平成23年度がん原性試験(吸入試験)着手候補物質」ということでA3の折り込んだものが3枚、後ろに別紙1から「フィージビリティテストの実施結果について」というA4のものが2枚留めてあります。資料3は「リスク評価(有害性評価)の実施予定について」というA4の図になったものが1枚あります。資料4-1は「平成22年度リスク評価対象物質に係る有害性評価関係資料」ということで、本日は7物質を議題として用意しておりますが、物質ごとのA3で7枚の「平成22年度リスク評価対象物質の評価値一覧(案)」を付けております。資料4-2は「有害情総合評価表 有害性評価書」、7物質それぞれについてホチキス留めしたものを、全体をクリップ留めしたものを付けております。資料5は「今後の検討予定」が1枚付けております。
 参考資料は、参考1「国が実施するがん原性試験について」ということで、がん原性試験に係るスキーム及びそのフロー、またいままでの対象物質をA4で3枚付けております。参考2は「リスク評価の手法(改訂版)」ということで、本日ご議論いただく評価値の設定の仕方などについて定めたもので、A4で裏表3枚を付けております。参考3は机上のみ配付としておりますが、今回ご議論いただく7物質について、ACGIHや日本産衛学会の各物質の提案理由書を配付しております。資料は以上です。
○大前座長 皆さん、お揃いでしょうか。それでは、お揃いのようなので議事に入りたいと思います。議題に入る前に、この検討会の開催要綱、検討体制について、事務局から説明をお願いします。
○長山化学物質評価室長補佐 それでは、資料1「化学物質のリスク評価検討会開催要綱」で説明いたします。「趣旨・目的」を読み上げます。
 職場における化学物質の取扱いによる健康障害の防止を図るためには、事業者が自らの責務として個々の事業場でのばく露状況等を把握してリスクを評価し、その結果に基づきばく露防止対策を講ずる等の自律的な化学物質管理を適切に実施することが基本である。しかし、中小企業等においては自律的な化学物質管理が必ずしも十分ではないことから、平成18年度から、国は、重篤な健康障害のおそれのある有害化学物質について、労働者のばく露状況等の関係情報に基づきリスク評価を行い、健康障害発生のリスクが高い作業等については、リスクの程度に応じて、特別規則による規制を行う等のリスク管理を講じてきている。
 このリスク評価を適切に行うため、学識経験者から成る検討会を開催し、有害性が認められる化学物質について、有害性の評価及び有害物ばく露作業報告等を活用した労働者のばく露レベルの評価から労働者の健康障害防止に係るリスクの評価を行うこととするとしております。
 2「検討事項」としては、有害性の評価、ばく露の評価、リスクの判定という3つを行っていきます。
 3「構成等」は、構成としては別紙1の参集者によって、リスク評価検討会として構成します。また、その中で有害性に係る部分について、本日の小検討会、ばく露に係る部分について、「ばく露評価に係る小検討会」をそれぞれ開催できるようにしております。あとはその合同の検討会及びそれぞれの小検討会において座長を置いて、議事を整理する。また必要に応じて参集者以外の有識者を参集し、また関係者からヒアリングを行うことができることとしております。
 4「その他」としては、合同の検討会及び小検討会は、原則として公開するものとする。ただし、個別企業等に係る事案を取り扱うときは非公開とする。また事務は化学物質評価室において行う。検討会は平成22年度の報告書をとりまとめた時点で終了するものとする、ということで進めていきたいと考えております。以上です。
○大前座長 開催要綱について、何かご質問はありますか。とりあえずこの会は報告書がまとまったら解散の予定の会です。
 特になければ、早速、今日の最初の議題の「がん原性試験(吸入試験)対象物質の選定について」、事務局から説明をよろしくお願いします。
○須藤査察官 資料の中の参考1ですが、この検討会においては、がん原性試験を実施する対象物質についてご議論いただきたいと考えております。参考1にありますように、「国が実施するがん原性試験について」ということで、冒頭を読み上げますと「国が実施するがん原性試験は、労働安全衛生法第57条の5に基づき、化学物質による労働者の健康障害防止のための国の援助等として実施されている」というものです。
 試験を行った結果として、試験を行った物質が労働者に対してがんを生ずるおそれのあるものであると判断される場合には、厚生労働大臣として、当該化学物質を製造又は取扱う事業者に対して、労働者の健康障害を防止するため指導できるような指針を公表することとなっております。こちらは最終的には実際の作業の態様なども勘案し、規制を導入していく可能性もありますが、ひとまずこの指針を出すかどうかがゴールとなっております。
 そして、がん原性試験の実施にかかるスキームは、予算面もしくは時間の関係からも当てずっぽうにやっていけるという状況ではく、なおかつ、がん原性試験そのものを実施するに当たっても、それが適切に実施できるかどうか、確認する必要があります。それがフィージビリティテストを実施するというところで、文章の2つ目の大きな固まりの中の2行目ですが、「がん原性試験の実施の可能性を判断するフィージビリティテストを実施。これを踏まえて、試験が可能となった物質の中から、吸入試験について1物質を選び試験に着手する」こととしています。過去においては、吸入試験、経口試験の2種類を実施していましたが、現在に関しては吸入試験に絞って行うこととしています。
 がん原性試験ですが、実際には最終的に2年間程度の試験、104週間として、がん原性試験を実施しておりますが、それに先立ち2週間試験、13週間試験を実施し、さらには試験を実施した後に、解剖、病理標本の作成なども含めて、概ね5年程度を要して、この物質にがん原性があるかないかを科学的に判断しているところです。次頁の別紙1の「がん原性試験の実施について」の中で、まずフィージビリティテストを実施したものの中から、試験対象物質として1物質を選定し、その後、2週間試験、13週間試験、がん原性試験ということで実施していくものが、それです。
 ご参考までに別紙2の「がん原性試験の実績等」で、昭和62年度から、この辺りを報告しているところです。報告年度が書かれていますが、実際に始まっているのは5年ぐらい前となっています。最新のものとしては昨年度の段階でアクロレインをがん原性試験の試験対象物質として選定したところですが、また改めて試験結果そのものを最終的に報告いただく年度としては平成27年度ぐらいになってまいりますが、まずは平成23年度から開始する吸入試験の対象物質を選定していただきたく存じます。
 資料2としてA3を3枚ほど付けておりますが、こちらに計6物質ほど試験の候補物質を載せております。こちらに関しては試験の実施が可能かどうかを、この物質を気中に安定的にとどまらせることができるかどうかなども含めて試験を行った結果として、これであればがん原性試験そのものが科学的にできるだろうということで、結果が出てきたものがこの6物質です。
 1番目は「酢酸エチル」という物質です。これは香料の原料、香料そのものにも使われていたり、身近なところではシンナーにも入っていたりという形で、非常に多く使われている物質です。こちらは生産量も非常に多いのですが、「留意事項」にありますように、毒性が比較的低いため高濃度での試験となります。また、これと似たものとして酢酸イソプロピルのがん原性試験を既に実施しております。酢酸エチルも体内に入った段階で加水分解されて酢酸とエタノールになることが予想されますので、酢酸イソプロピルと、アルコールの部分に関しては違いますが、酸の部分に関しては似たような挙動を示すのではないかということが想定されます。
 2番目は「2-エトキシエタノール(別名エチレングリコールモノエチルエーテル)」で、エチレングリコールに似た形の物質です。「留意事項」を先に見ますと、類縁化学物質であるエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートのがん原性試験を現在、既に実施しているところです。いまこちらで示している物質に酢酸がくっ付いてできたような物質ということになり、体内に入ったら、速やかに酢酸とエチレングリコールモノエチルエーテルになることが考えられています。用途としては、溶剤もしくは医薬用の抽出剤ということで使われており、生産量そのものは、この物質だけに限ったものではありませんが、エチレングリコール類として推定したものは年間7,000トン程度作られています。
 3番目の物質を簡単にご紹介いたします。「メタクリル酸ブチル」という物質ですが、こちらも酸とアルコールがくっ付いたエステルです。生産量はメタクリル酸エステルに限ったものではありませんが、1万~10万トン程度作られております。用途としては、樹脂などの材料、もしくは添加剤となっています。「留意事項」は、蒸気圧は低いが、毒性の認められる濃度でのばく露試験の実施が可能です。
 4番目は「酢酸ブチル」、その中でもノルマル-ブチルです。年間の生産量としても、相当な分量が作られています。用途は、溶剤が非常に多くなっています。それ以外にも人造真珠の塗料や天然ゴムなどにも使われております。「留意事項」は、類縁化学物質である酢酸イソプロピルのがん原性試験を既に実施しております。酢酸ブチルにしても酢酸イソプロピルにしても、体内に入ると加水分解をされて、ブタノール、もう1つはイソプロピルアルコールになることが予想されておりますが、酢酸の部分については同じということになります。
 5番目は「アリルアルコール」です。こちらはほかの物質とは違って、エステル化合物ではない物質で、アルコールそのものです。こちらに関しては「代謝」を見ますと「本物質は体内で迅速に、ほとんど完全に酸化される」とあり、その主な代謝経路としてはアクロレインへの代謝が非常に多いとなっています。そして、何らかの障害がこの吸入、もしくは経口投与によって起きるとしても、この物質そのものというよりは、これから発生してできてきたアクロレインによるものと考えられています。「留意事項」としては代謝産物であるアクリル酸およびアクロレインのがん原性試験を、既に実施している状況です。
 6番目は「アクリル酸メチル」です。こちらもそれなりに生産量はあります。留意事項には書いてありませんが、こちらに関して明確な結果が出ているものではないながら、がん原性試験を実施していることが、真ん中辺りに、「HSDBまたはPubMed等の毒性情報」として書かれています。以上が候補となっている6物質の概要です。
 続きまして別紙1を用いてフィージビリティテストの実施結果、こちらの物質そのもののフィージビリティテストの結果がどうだったかを、日本バイオアッセイ研究センターからご説明いただきたいと思います。
○西沢部長(日本バイオアッセイ研究センター) それでは、別紙1「フィージビリティテストの実施結果について」をご覧ください。ここの表にある6物質についてフィージビリティテストが終了しております。
 1番目の「酢酸エチル」は文献等を参考にして、テストの目標濃度を80ppmと8,000ppmの2濃度に設定して、6時間の発生検討試験を行いました。発生は被験物質を温度コントロール下で、清浄空気のバブリングにより蒸発させ、清浄空気と混合して、これを吸入チャンバーの中に送り込むという方法です。吸入チャンバー内の濃度は、ガスクロマトグラフィーで15分間に1回ずつ、6時間測定しております。その結果、低濃度側で79.1±8.8、高濃度側で7,976±88と、精度よくばく露ができました。最高濃度の8,000ppmはラットの6時間のLC50値で1万6,000ppmというデータがありましたので、想定している最初の試験が6時間の2週間ばく露。計10回ばく露を行うことを想定しておりますので、LC50値の1万6,000の1/2の8,000ppmを最高濃度といたし、最低濃度は8,000ppmの.1/100を想定しました。その結果、毒性ができる範囲でばく露が実施可能と思われます。
 2番目は「2-エトキシエタノール」、表ではエチレングリコールモノエチレンエーテルです。同じように文献から目標濃度を10ppmと1,000ppmの2濃度に設定しました。同様に6時間の発生検討試験を行い、温度コントロール下で清浄空気のバブリングにより被験物質を蒸発させております。低濃度側は10ppmに対して、10.4±0.8、高濃度側は997±66と精度よくばく露ができました。
 この物質の最高濃度は、文献によりますと、ラットの7時間ばく露のLC50値が2,000ppmというデータがありましたので、同様に1/2、1,000ppmを最高濃度に設定し、最低濃度側はその1/100といたしました。同様に毒性が出る範囲でばく露ができると考えます。
 「メタクリル酸ブチル」ですが、同じように文献から目標濃度を10ppmと1,000ppmに設定して、6時間の検討試験を行いました。同様に温度コントロール下で清浄空気でバブリングいたしまして蒸気を得て、低濃度側は10ppmに対して10.1±0.2、1,000ppm側は1,006±36と精度よくばく露ができました。
 この物質についてはラットの4週間のばく露ですが、952ppmで一般症状や鼻腔への影響が見られるということですので、952に近い1,000ppmを最高濃度側に設定しました。最低濃度側はその1/100として毒性できる範囲でばく露ができると考えます。
別紙1の2頁の4番目の「酢酸ブチル」です。酢酸ブチルは文献を検索した結果、割合急性的な毒性が低いというデータがありましたので、なるべく高濃度の設定をしようかと考えましたが、当センターは1レベル吸入チャンバーで使う吸入試験システムでは、動物の飼育環境条件を満たしながら、技術的にばく露可能な最高濃度は2,000ppmでしたので、2,000ppmを高濃度の目標としました。それと1/100の20ppmの2濃度を設定して、6時間の発生検討試験を行いました。同様に温度コントロール下で清浄空気のバブリングにより蒸発をさせて、吸入チャンバー内の濃度は、低濃度側が19.7±1.3、高濃度側が1,993±40ppmと精度よくばく露できました。
 2,000ppmですが、ラットの13週間の吸入試験では、1,500ppm以上で体重増加の抑制等の変化が報告されております。さらにここには書いてないのですが、ラットの4時間のLC50値で2,000ppmというデータもありますので、2,000ppmの反復投与は動物への影響が見られる濃度と考えられると思います。
 5番目は「アリルアルコール」です。目標濃度を1.5と150ppmの2濃度に設定して、6時間の発生検討試験を行ました。同様の方法で発生を行い、低濃度側1.49±0.12、高濃度側150.21±0.92と精度よくばく露できました。
 最高濃度はラットの4時間ばく露のLC50値が165、我々が想定しているのは6時間の2週間試験ですので、これは4時間のLC50値ですから、165に近い150ppmを最高濃度に設定しました。最低濃度はその1/100としました。毒性が出る濃度範囲でばく露は可能だと思います。
 6番目は「アクリル酸メチル」です。目標濃度を10ppmと1,000ppmの2濃度にしました。同様に6時間の検討試験を行い、10ppm側の吸入チャンバー内濃度が10.0±0.5、高濃度側が996.7±9.5と精度よくばく露できました。
 この物質についても最高濃度はラットの4時間のLC50値は1,350、マウスの4時間のLC50値が1,420-1,590ということですので、1,000ppmを高濃度側に設定しました。低濃度側はその1/100としました。同様に毒性が出る範囲でばく露は可能と思われます。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。今回のこの6物質は設定された濃度の範囲内では、高濃度も低濃度も精度よく測れるということだそうです。今日の作業は、この6物質中、1物質を選んでいただかなければいけないということですので、よろしくお願いします。今日中に選ばないと平成23年度から仕事ができないことになりますので、どうぞよろしくお願いします。
 いまご説明がありましたように、それぞれの物質について、留意事項とか、どんなことが起きるかとか、使用量等々、生産量等々を説明していただきましたが、この中の説明にあった酢酸エステル類は、平成20年度に酢酸イソプロピルをやって、現在進行形ですが、これがあるので、例えば酢酸エチルの留意事項や4番の酢酸ブチルの留意事項に、いま酢酸イソプロピルをやっているからある意味でいいのではないか、みたいなイメージでこれは書いてあるのですが、イソプロピルとノーマルのエチル、もしくはブチルを同じように考えていいものなのか、あるいは別と考えなければいけないのですか。
○池田委員 基本的に加水分解が進んでアルコールと酸の部分に分かれるというのは間違いないと思います。そうしますと、アンコールアルコールの長さの毒性だけということになりますので、基本は同じと考えていいと思います。
○大前座長 基本的には酢酸エチルですとエタノール、酢酸ブチルですとブタノール、イソプロピルですとイソプロピルアルコール。刺激などは酢酸なのでしょうが、それの毒性と考えていいということなので、酢酸エステル類は外してもいいのではないかというのが、留意事項の意図だと思いますが、いかがですか。これはとりあえず、現段階ではそういうことでよろしいですかね。
 2つ目のエトキシエタノールですが、これは現在進行形で、酢酸エトキシエタノール、エチレングリコールモノエチルエーテルのアセテートが現在進行形で、アセテートを除いているのがこの物質で、これも同じように加水分解をするので、これは全く同じと考えていいわけですよね。
○池田委員 そう考えます。
○大前座長 そうすると、2番のエトキシエタノールは最初から外していいと考えてよろしいですか。そうしますと残りが3物質で、この3物質の中でどれがいいかということですが、また留意事項のところに要らないのではないかということが書いてありまして、それが5番の物質で「アリルアルコール」なのです。アリルアルコールというのは代謝をされると体内で迅速に代謝されて、アクロレインとアクリル酸ができるということなのですが、アクリル酸は既に平成22年度末に報告があるようですが、これで終わっていて、アクロレインは去年選んだということなので、アリルアルコールも外してもいいのではないかというのは、事務局の意見だと思いますが、いかかでしょうか。
○池田委員 私もいちばん問題となるのはアクロレインだと思っていますので、その前の物質であるアルコールを特に取り上げてやらなければならないという理由はないと思います。
○大前座長 そうすると、アリルアルコールも外してよろしいですか。そうすると6番のアクリル酸メチルと、3番のメタクリル酸ブチルは6物質の中で残るわけですが、このどちらかをこの検討会で選んでいただきたいと思いますが、何かご意見はありますか。それからメタクリル酸ブチルのほうはメタクリル酸2,3-エポキシプロピルというのを既に選んでいるのですが、これはエポキシなので、ちょっと話は違うだろうということで、これは前回やっているからいいだろうということにはならないのではないかと思います。あとは類似の物質はいままで吸入試験でやった中では見当たらなくて、かつIARCの発がんの分類でも、まだ分類がない、もしくは分類できないというレベルになっています。
○西川委員 変異原性といいますか、遺伝毒性から見ると6番だと思うのですが、実は既に2年間の吸入ばく露試験をやってあるようなのです。これは評価に値しないものという捉え方なのですか。
○大前座長 これはいかがでしょうか、いまおっしゃったように変異原性試験は6番のアクリル酸メチルは染色体異常等々陽性になっていて、メタクリル酸ブチルは情報の範囲内では陰性なのですが、この2年間のラットを使った発がん実験はどの程度のものなのかということです。いかがですか、何かご意見はありますか。
○松本主管(日本バイオアッセイ研究センター) これに関しましては、ドイツのほうで、インツィドフォー・バイオロディッシュ・コーシュランケルンュランケルンという所でやっております。ただし、これはBASF社がスポンサーになっているとはっきり書かれております。論文としてはアクリル酸メチルとアクリル酸ノルマル-ブチルの2物質についての試験で、相当量のデータが記載されている試験ではございます。
○西川委員 この文献というのは普通の科学雑誌に。
○松本主管 Food Chemical Toxicologyの1991年です。
○西川委員 では、ちゃんとした雑誌だと思いますね。
○松本主管 そうです。
○西川委員 そうであれば、評価に値するものと考えられるので、さらに試験をやる必要性があるかどうか十分検討しなければいけないと思います。
○大前座長 IARCのこの物質は評価3になっていますが、これは1991年の論文が出た後の評価ですか、あるいは前の評価ですか、そこまではわかりませんか。
○松本主管 IARCは71巻で1999年ですから、どこかに入っていると思います。
○大前座長 一応1991年のデータも見て、分類できないというところに入っているということですね。これはラットだけですから、マウスがないとか、いろいろなことはあるのでしょうけれども。そのほか、ご意見はいかがでしょうか。
○清水委員 6番は最高が135ppmまでしかやっていませんね。今度のバイオのほうですと、1,000ppmからの精度ということになりますね。1991年の報告というのは、用量が足りなかったということですかね。
○大前座長 その辺の可能性はいかがですか。先ほど1,000でやった理由は、LC50値が1,500前後なので、最大濃度を1,000ということで設定されていたのですが。
○西沢部長 1,000ppm近辺は、予備試験である2週間試験の最高濃度をこの近辺に設定しておりますので、これから2週間試験、13週間試験をやれば、それなりの毒性が出れば投与濃度はずっと下がってしまいますので、結局はこの近辺に落ち着く可能性はあると思います。
○大前座長 135最大というのは、必ずしも低い値ではない、ない可能性があるということでいいということすね。
○西沢部長 はい。
○松本主管 3カ月の予備試験でのMTDを参考にしたという記載も論文中にありました。
○大前座 そうですか。あと使用量に関しては、3番はメタクリル酸アルキルとして載っているので、単品ではわからないということですね、製造輸入量ですと。6番のほうは何も書いていないということは単品の数字なのでしょうね。
○須藤査察官 そのようなところと理解しております。
○大前座長 考え方としては、一応6番のアクリル酸メチルはBASFがオーナーであったにせよ、2年間の実験をしっかりやって、そうだと。これがネガティブである。ただし、変異原性はポジティブであろうと。
 それに対して3番のメタクリル酸ブチルは十分な実験はもちろんないが、ただし変異原性はエームスと染色体異常試験しか、ここには載っていませんが、これは一応ネガティブであるということで、どちらにしようかということですが。決定的にこちらが良いというご意見があると、非常にありがたいのですが。
○池田委員 正直「こちらですよ」と言うのは非常に難しいのですが、やはりいちばん気になるのはアルコールの部分よりも二重結合のところだと思います。そういった意味でアクリル酸のアルキルエステルというようにとるしかないのですが、そうすると、その次はどのぐらい使用されているかというとで、ほとんど同じということで、これも差がないのです。それでもメチルエステルのほうは単品で相当量は使われているのだと思います。ブチルのほうはアルキルとして出ていますので、このものとしてはそれほど多くないのではないかと想定できるのです。そうしますと、労働者がいちばんばく露される可能性が強いというと、どちらかと選ぶのならばアクリル酸メチルではないかという感じがいたします。
○大前座長 いかがでしょうか。製造及び輸入量はこちらのほうが多いだろうと。したがって、両方にそんなに大きな差がなければ量の多いほうを採ったらどうかと。
○池田委員 おそらく片方の毒性で、片方の毒性が予測できるのではないかと思いますので。
○大前座長 いかがでしょうか。ラットに関しては結果を追認するような形になるかもしれませんが、これはマウスもやるのですよね。マウスに関しては現在のところはデータがないということもありますから。変異原性試験の陽性が出ているということで、使用量もたぶん多いだろう、労働者のばく露量も多いだろうということで、アクリル酸メチルを選んだらどうかということでよろしいですか。
 そうしましたら、この小検討会としては、6番の物質のアクリル酸メチルをやったらどうかということにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、議題2「リスク評価の実施予定について」、事務局からご説明をお願いします。
○長山化学物質評価室長補佐 資料3「リスク評価(有害性評価)の実施予定について」を説明したいと思います。この小検討会は、ばく露のほうと合わせて、去年の同じぐらいでいうと、6月ぐらいまでかけて評価書を作っていくのですが、それに当たって、有害性評価の小検討会のほうで議論していただいて、決めていただかなければいけない部分としてどういうことがあるかを、これで説明したいと思います。
 特に初期リスク評価に今度報告書としてとりまとめようとする物質のうちに、有害性評価のほうも実施しなければいけない予定物質として、あとで説明しますが、7物質があると整理しております。
 評価書を書いていく中で、平成21年1~3月にばく露作業報告を求めていた20物質の辺りが対象に入ってくるのですが、そのうち8物質は昨年で有害性の評価は実施済みで、12物質はまだ未実施となっております。昨年8物質実施した中で6物質については初期リスク評価を行って、そのうち4物質についてはリスクが高いということで詳細リスクに移行します。そのうち、2物質については初期リスクを昨年行って、リスクは高くいないということで評価終了になっているものが6物質あります。
 あと平成22年のばく露実施調査を実施しているものとして、カテコールとナフタレンの2物質があります。こちらも今年度調査を実施して、このデータを含めてリスク評価書を作っていきますが、有害性評価としては去年実施しておりますので、今年は作る必要がないと考えております。
 下のほうの12物質は未実施ですが、そのうち「ばく露作業報告再提出物質」が3物質あります。これは平成21年にばく露報告がなかったもの、もしくは少なかったものについて、告示で今年の1~3月に報告の再提出を求めているものですので、やれたとしてもばく露は平成23年度にデータを集めることになり、今年度の評価は必要ないということです。
 下から2番目の「平成22年度ばく露実態調査未了」というのが2物質あります。?@のアンチモン及びその化合物については、平成22年度に、いま分析手法を検討している最中ですので、それができてから実態調査に移行することになりますので、早くても平成23年度以降に測定という形になり、今年度は有害性評価まで絶対に必要というものではないということです。
 ?Aのキシリジンですが、ばく露実態調査を平成22年度に行って、これも含めて8物質の有害性評価も含めてやって、評価書を作ろうかと思っておりましたが、いま現在でいうと、事業場に行っているデータ数が不足しておりますので、平成23年度も引き続き行って、データが集まった段階で有害性とばく露を合わせて評価していくという形で考えたいと思いますので、平成22年度はまだ必須ではないということになります。
 そうすると、7物質をアンダーラインで書いてありますが、?@~?Fについては、平成22年度ばく露のデータがまいりまして、ばく露の小検討会で検討しつつ、こちらの小検討会で評価値などを設定していく必要があるということで、この7物質について、今年度リスク評価をするに当たって、評価書、評価値を設定していく必要があると考えております。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。3番の議事の根源といいますか、今回は7物質しっかり有害性評価を実施してくださいという理由を述べていただきましたが、何かご質問はありますか。アンチモン以外は分析法はオーケーになっているのですか。そうでもないのですか。
○寺島化学物質情報管理官 まだです。
○大前座長 まだ。わかりました。特にいまの予定につきましてご質問がなければ、3番目の議題に行きますが、よろしいですか。7物質ありますので、1物質ずつ、この順番でやっていきたいと思います。最初の1,3-ジクロロプロペンについて、事務局から説明をよろしくお願いします。
○長山化学物質評価室長補佐 資料4-1にそれぞれの物質ごとにA3でまとめたものと、資料4-2でそれぞれの物質ごとに有害性の総合評価表と有害性評価書を綴じたものがあります。お手元に参考2で「リスク評価の手法」がありますので、それを併せてご覧いただいて、あとは机上配付で提案理由書ACGIHと産衛学会のものもありますので、適宜使いながらということで考えております。
 毎年リスク評価書を6月ぐらいに向けてまとめていきますが、その中で別添としても、またその評価書の中に盛り込む事項として資料4-2の「有害性総合評価表 有害性評価書」を物質ごとに作っております。今回はボリュームがかなり多く、事務局のほうでその中の抜粋部分として資料4-1で抜き出したものを作りましたので、資料4-1と資料4-2を併せて説明したいと思います。
 まず1番目の「1.3-ジクロロプロペン」です。資料4-1の表で説明します。「物理的化学的性状」が左から3番目にあり、資料4-2の3頁の有害性評価書の最初の部分から抜粋しております。物性は無色の液体で、沸点が108℃、融点は-50℃以下です。蒸気圧は20℃で、3.7kPaとなっております。「生産量等用途」は、生産量は約1万トンを超えるもので、用途は殺虫剤の原料として使われています。
 「重視すべき有害性」は、?@発がん性、?A発がん性以外ということで分けて書いています。?@の発がん性は、総合評価書の2頁にキ「発がん性」とありますが、そちらから持ってきております。ヒトに対する発がん性が疑われるということで、根拠としてはIARCで2Bに分類されております。雄のマウスで2年間のばく露、吸入ばく露実験を行ったところ、量反応関係を観察したということです。そういった腺腫の発生が有意に発生しているということから、動物実験に対する発がん性については十分な証拠があるということで2Bとされており、産衛学会でも2Bという評価がなされています。
 発がん性以外の毒性としては、総合評価表の1頁になりますが、急性毒性ということで吸入と経口を、それぞれマウスとラットについてデータのあるものがあります。主な影響としては、動物では肝臓や腎臓の障害とか、眼と鼻に刺激性の毒性があります。また皮膚刺激性/腐食性もあり、眼に対する重篤な損傷性/刺激性もあります。また皮膚の感作性もあるとされています。反復投与毒性については、ラットの吸入において腎臓の尿細管上皮の混濁腫張が見られるという結果が出されております。
 4-1の表の下の段ですが、左側に「閾値の有無、ユニットリスクの有無等」をまとめています。4-2で言いますと、2頁のカの「遺伝毒性」の辺りから引っ張っています。こちらについては、復帰突然変異試験で遺伝子の突然変異を、哺乳動物の培養細胞で染色体異常を認め、In vivo試験系でDNA傷害が認められていることから、遺伝毒性を有すると考えられて、閾値なしと判断するということで原案を作っています。また遺伝毒性の詳しい結果については、有害性評価書の通し番号で6頁目において、それぞれIn vitro、In vivoの変異原性の結果、陽性、陰性の一覧表が掲げられております。こちらの結果から、閾値としては閾値なしで判断できるのではないかと考えております。
 次に「許容濃度等」の部分については、有害性総合評価表の2頁のいちばん下の「許容濃度の設定」の欄で書いております。許容濃度としてはACGIHがTWAで1ppm、経皮吸収ありということで2004年に設定しております。これの根拠として、この値は腎障害の可能性を最小限にするために設定するという形で書かれております。また皮膚障害、経皮吸収性も併せて書かれております。そういった形で許容濃度としては1ppmがACGIHで提言されており、日本産衛学会ほうでは「設定なし」となっております。
 これらのことを踏まえて、評価値をどう設定していくかということで、右下の欄に「評価値(案)」という欄を設けております。まず一次評価値について、まず考え方としては発がん性の中で閾値がない物質であるということで、そういった中でどう一次評価値を作っていくかという議論になっていきます。
 お手元の参考2で、昨年からも同じように評価値を作るときにこれを参照しながら作っておりますが、4頁の13行目から?Cリスクの判定方法等ということで、判定の評価値の作り方を書いております。一次評価値の中で、発がん性の閾値がない場合、閾値がある場合、閾値の有無が判断できない場合というように場合分けをして、それぞれ作り方を書いております。
 1番目の1.3-ジクロロプロペンについては、閾値なしと判断できることから、これでいきますと、アの一次評価値の中で、aの「発がん性の閾値がないとみなされる場合」ということになります。この中で(ア)と(イ)でユニットリスクがあるもの、定量的なリスクが判定できないものと分かれますが、こちらについては(ア)のユニットリスクを用いたがんの過剰発生率が算定できる場合に該当するのではないかと。
 こちらの計算としては、EPAのIRISのほうで、10-4に対応する気中濃度として25μg/㎥というものがあって、こちらの数値を基に労働補正として呼吸量、労働日数、労働年数の補正を行うと、労働補正後の10-4に対応する気中濃度としては、計算しますと0.13?r/㎥、ppmでいうと0.029ppmが計算として求められるということで、こちらを一次評価値としてはどうかと考えております。
 また二次評価値案としては、1ppmということで、参考2の評価値の5頁の7行目から「二次評価値の決定」の仕方を書いております。その中で「許容濃度又はTLVが設定されている場合」ということで(?@)、(?A)のように産衛学会が勧告している許容濃度とか、ACGIHが提言しているばく露限界値があれば、その濃度を設定していく。両者が一致していればその値を、異なっている場合は産衛指針の値を考慮して、いずれかを決めていくといことで考えております。それに当てはめていくと、ACGIHのTWAがありますので、1ppmではどうかと考えております。
 あとは表記として、一次評価値を?r/㎥で書いていますが、二次評価値はppmですし、また無色の液体でということなので、表記としては0.029ppmを表に出して、括弧書きで0.13?r/㎥と逆に表記したほうがいいのかなと思いますが、ppmで統一したいと考えております。1番目の物質については以上です。
○大前座長 有害性の有害性評価書、あるいは総合評価表を使って、それからこの参考に「リスク評価の手法(改訂版)」に従って、どの影響を持ってきて、それをどう計算するかということで、1,3-ジクロロプロペンに関しては一次評価値として0.029ppm、二次としてACGIHの数字1ppmというご提案ですがいかがでしょうか。
○池田委員 数値の問題ではないのですが、1,3-ジクロロプロペン[別名]D-Dと書いてありますけれども、この「D-D」というのは正しいのでしょうか。「D」が2つくる理由がよくわからないのですが。
○松井化学物質評価室長 農薬の名称としては「D-D」というのはよく使われているのですが、なぜ「D」が2つなのかというのはちょっと。
○大前座長 どの「D」と「D」を取ったのか。
○池田委員 いずれにしても、何らかの根拠があるということですね。
○松井化学物質評価室長 そうです。
○大前座長 これは、もう一度確認をしていただきます。この一次評価値、二次評価値はEPAの数字から一次評価値を持ってきたということですが、よろしいですか。
(特に発言なし)
○大前座長 特にご意見がなければ、一次評価値(案)、二次評価値(案)は採用とさせていただきます。2番目の物質の説明をお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 2番目の「ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト」についても、同じような手順で説明させていただきます。表のほうで「物理的化学的性状」、評価書のほうでは通し番号7頁目から書かれています。性状としては液体、沸点は140℃、蒸気圧は1.6Paとなっております。生産量は135.5トンです。用途としては、作物の殺虫剤として使われています。
 「重視すべき有害性」については、こちらの表と総合評価表の3頁目になります。印刷にミスがありまして、2枚目と4枚目が白紙になっておりますが、印刷が抜けているわけではありません。2枚目から3枚目にいくときの最後に、片仮名で「オ・カ・キ」の次に「コ」となっていて、「ク・ケ」が抜けているように見えていますが、全体的に項目を見直したときに「ク・ケ」を抜かして、本来であれば「コ」を「ク」に持ってくればよかったのですが、その修正の名残りが残っています。これに限らず、ほかのものも全部「ク・ケ」が抜けていたりしますので、それは次回までに直しておきます。片仮名はつながっていませんけれども、物としてはつながっているということでご理解ください。
 3頁目のいちばん下の「発がん性」の欄でも、ヒトに対する発がん性が疑われるということで、IARCは2B、あとは産衛とかEPAも2Bとなっております。こちらについても、ヒトでの関連性が報告されています。ただ、ヒトに関しては対象者数が少ないということで、ヒトに対する発がん性の証拠は不十分である。ただ、動物実験ではマウスとラットで発がん性が報告されていますが、どちらも経口です。発がん性で、発生率として用量依存性に増加したということで2Bとされています。
 発がん性以外の有害性は、総合評価表の1頁目からです。急性毒性としては、吸入、経口それぞれラットとマウスでの値が得られております。主な影響としては、動物のほうでは急性の神経毒性ということで、コリン作動性の神経症状などが観察されています。またヒトに対してもコリンエステラーゼ活性阻害とか神経毒性が見られます。刺激性のところでは皮膚刺激性/腐食性、皮膚感作性がありという報告がされております。
 反復毒性は1頁目からです。ラットでの吸入ばく露において、脳中のコリンエステラーゼ活性の低下が1頁目から3頁目にかけて書かれております。3頁目の上のほうで、経口ばく露として、動物ではイヌにおいても同じようにコリンエステラーゼ活性の低下が見られます。
 表の下のほうで、「閾値の有無」の部分です。総合評価表の上から3番目、カ「遺伝毒性」のところになりますが域値なしということです。こちらの物質についてはIn vitoroでDNAと結合してDNA損傷を起こすということ、また変異原性も誘発するとされています。ただIn vivoのほうでは陰性を示すという結果もあります。両方ありますけれども、総合的に見て遺伝毒性ありと判断して、閾値なしと判断してはどうかと結論を書いております。
 詳しい一覧については、通し番号12頁から15頁において、遺伝毒性のIn vitoro、In vivoの陽性、陰性の一覧表が載せてあります。In vitoroでは若干プラスのほうが多いのかなと。In vivoは13頁目の下のほうから15頁目にかけてということで、こちらは陰性を示すものもあり、また陽性を示すものもあるという結果になっております。委託事業における原案のほうでは、総合的に見ると閾値なしと判断してよいのではないかという結論を得ております。
 次は「許容濃度等」です。総合評価表の5頁目の「許容濃度の設定」のところになります。こちらについては、ACGIHのほうで、TWAで0.01ppm(0.1mg/㎥)で(Inhalable Fraction&Vapor)という形で設定されております。あとは経皮ありとなっております。こちらについては2002年に設定され、設定の根拠としては、ヒトおよび動物のデータに基づいて勧告しています。これは、コリン作動性の影響から、作業者を安全に防護するための十分な余地を与えるための濃度ということで設定されているものです。産衛学会では設定なしです。
 これらの情報を踏まえ、右下の「評価値(案)」ですけれども、閾値がないとみなされる場合となります。ただ、参考2の評価値の手法で閾値なしの場合になりますが、その中では(イ)の閾値なしなのですけれども、ユニットリスクが算出できないほうに該当するのではないか。EPAのIRISのほうでは、ユニットリスクを算出しているのですけれども、いずれも経口投与の毒性試験の結果で、飲料水のユニットリスクは算出されているのですが、吸入ばく露については算出していないということです。吸入ばく露によるユニットリスクの情報がなく、リスクレベルを算出できないということで、評価値は「設定せず」と書いてしまいましたが、一次評価値としては評価値なしとしてはどうかと考えております。二次評価値としては、ACGIHの提言している0.01ppm(0.1mg/㎥)(Inhalable Fraction&Vapor)のほうを設定してはどうかという案を作っております。以上です。
○大前座長 この物質は、評価書の7頁に沸点140℃と書いてありますが、これは2.7kPaのときの数字なのではないですか。たぶん常温では固体なのではないのかという気がします。
○細田中災防 錠剤にするときも、樹脂とプラスチックにして固体みたいな扱いにします。
○大前座長 蒸気圧もこんなに低いですから、普通の液体だったらこんなにはならないです。
○細田中災防 はい、液体だったらグチャグチャになってしまいます。
○大前座長 そこは、後でもう一回調べ直して書き直していただきます。したがって、表記は「ppm」よりも「mg/㎥」のほうがいいのかもしれません。ACGIHは0.01ppm括弧という形にしています。その物性の点は別にしていかがでしょうか。ヒトでの発がん性は、白血病との関連があるかないかよくわからない。ある程度ここにあるのだけれども、最適根拠がないということで、動物のほうには経口で発がん性が間違いなくあるということです。
○宮川委員 ユニットリスクのところで確認ですけれども、スロープファクターしかない場合は使わなかったというのは、いままでも同じようにやっていらしたのですか。
○細田中災防 いままではそうでした。
○宮川委員 もしそれであれば、やり方のところに書いてありましたか、書いてなかったら。
○細田中災防 ここのレベルでは書いてありません。
○宮川委員 これからもそれでやるのであれば、書いておいたほうがいいですね。
○細田中災防 そうですね。ちょっと問題があって、IRISでは経口しか使っていないのだけれども、CaliforniaEPAが吸入を無理矢理作っているケースがあります。作っているケースと、作っていないケースがあります。CaliforniaEPAで、IRISの経口から計算している場合にはそれを参考値として、レベルの低いものと、優先度の低いものとして計算しているケースがあります。それは、注意書きを書いた上でです。
○宮川委員 発がん性とは違いますけれども、一般毒性について、動物試験等々から評価値を計算している場合には、経口と吸入のものはお互いに変換をしてやっているので、お互いに使っていることになります。この発がんのユニットリスクに関しては、経口のスロープファクターを使わないことを、どこかにきちんと書いておいたほうがはっきりするかと思います。
○細田中災防 はい。
○大前座長 ACGIHのInhalable Fraction&Vaporと書いてあるのですが、これは実際に現場の測定をするときにはどうするのですか。
○細田中災防 両方吸収できるやり方で測ります。
○大前座長 ちゃんとVaporもキャッチできるし、ダストもキャッチできるというやり方ですね。
○細田中災防 現場として、今年の対象で3カ所の事業所でやっているのですが、そのうちのいくつかを見ました。現場を見ますと、確かに粉炭の汚染が出る可能性もあります。樹脂と混ぜてチョコレートみたいにして、それを殺虫剤、防虫剤のために使うみたいなことをやっています。ただ、ほとんどのケースはその粉が飛ぶというより、研磨するわけではありませんので、蒸気が出てくるような環境なのです。わずかながら蒸気が出るという。
○大前座長 ほかにご意見はありませんか。
(特に発言なし)
○大前座長 特にないようですので、この一次、二次の評価値(案)でいかせていただきます。それでは、3つ目の物質の説明をお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 3番目は「ニトロベンゼン」です。「物理的化学的性状」は、評価書の5頁目になります。外観は油状の液体、沸点が211℃、蒸気圧が20℃で20Pa、融点は5℃です。5頁目の下で生産量と用途ですが、生産量は報告なしとあります。2006年度排出・移動量273トンとあります。先ほど申し上げたように、これらの物質は平成22年にばく露実態調査を行っていて、まさに事業場へ測定に行っています。こちらの物質については、16事業場のほうからばく露作業報告をいただいておりますので、そういう意味で実際に使われているものは確認されております。用途は染料、香料中間体、酸化剤などに使われています。
 有害性の「発がん性」は、総合評価表の3頁目の上のほうの、発がん性の有無としては、ヒトに対する発がん性が疑われる。IARC2Bとなっております。ラットとマウスについて、2年間の吸入ばく露を行ったところ肝臓、腎臓などでの発がん性が認められたということで分類されています。
 「発がん性以外」の有害性は1頁目で、急性毒性では、吸入と経口について、ラットとマウスのデータがあります。主な影響として、動物に対してメトヘモグロビン血症とか、肝臓や精巣への影響、またヒトに対しても同じようなメトヘモグロビン血症、意識障害、チアノーゼ等が見られます。皮膚刺激性/腐食性、眼に対する重篤な損傷性は軽度だがある。下のほうで、反復投与毒性については、吸入でニトロベンゼン蒸気を受けている職場の労働者において、軽度のメトヘモグロビンおよびハンイツ小体形成が認められたものがあります。2頁目で、動物では、ラットにおける吸入ばく露で、鼻腔の嗅上皮の色素沈着、メトヘモグロビンの増加が見られた。
 オ「生殖・発生毒性」ですが、生殖毒性ありということで、ラットでの吸入ばく露を行ったところ、受胎率の低下、精巣上体の重量減少などが観察されたということで、吸入のほうであるということです。(2)で、ラットの経口投与においても、精巣などの重量減少が見られ、どちらにおいても影響が見られました。
 下の欄で「閾値の有無」として、2頁目から3頁目のカ「遺伝毒性」のところです。閾値の有無としては判断できない。カのところと、キ「発がん性」の閾値の有無のところで判断できないと書いております。こちらについてはIn vitoro、In viboとやっておりますが、ほとんどの結果が陰性です。ただし、揮発性が高いこと、試験方法に問題があると考えられること。遺伝毒性試験の結果では、陽性と陰性の結果があることもあり、弱い遺伝毒性があるとも考えられる。一覧表としては、評価書の19頁目から21頁目にかけて、遺伝毒性のIn vitoro、In vivoの結果を示しております。In vitoroのほうではマイナスとプラスが混在していて、In vivoのほうもマイナスとプラスがちょっと混在している状況です。こういうことで結果が分かれており、閾値の有無は判断できないのではないかと考えております。
 4頁目で「許容濃度の設定」です。ACGIHのTWAのほうで1ppm、産衛学会でも同じように1ppmを設定されております。ACGIHは1ppm(5mg/㎥)ということで1996年の設定です。根拠としては、メトヘモグロビン血症の発症を基準として勧告しています。1ppmよりも高濃度のニトロベンゼンにばく露した動物実験や労働者のところで変化が見られるというのが、1ppmを設定した根拠に書かれております。産衛学会のほうは、1988年の提案でしたので、設定は翌年もしくは翌々年かもしれません。こちらについてはニトロベンゼンの合成工場で3あるいは6ppmのニトロベンゼンの蒸気ばく露といった職場において、メトヘモグロビンおよびハンイツ小体で軽度のものが見られたといったことから、1988年時点で1ppmの訂正の必要はないと判断されたと記載されております。
 以上のことから一次評価値は、発がん性の閾値の有無が不明な場合ということで、定量的なリスクの判定ができないということで、一次評価値としては評価値なし。二次評価値としては、ACGIHと産衛学会の両方とも同じ数値を示しておりますので、それをもって二次評価値としてはどうかという案を作らせていただきました。以上です。
○大前座長 閾値の有無の表が出てまいりましたが、プラス・マイナスさまざまな状況であって判断できないということで評価値なしということです。もし評価値を作るとしたら、3頁のところには閾値ありの場合と、閾値なしの場合が参考として計算してありますけれども、これはあくまで参考の値であって、第一次評価値なしという提案ですが、いかがでしょうか。
 閾値の有無の判断のところで、「当該物質は揮発性が高いことから、気相ばく露試験法に問題がある」というのは、いま気がついたのですが、蒸気圧が20Paだからそんなに揮発性はないですよね。
○細田中災防 そうですね。
○大前座長 ほとんど蒸気圧はないぐらいのものです。ここのところは、原案を作るときに見落としたところになるのですが、本文もそう書いてありますね。
○長山化学物質評価室長補佐 19頁目の3行目のところに書いてあります。文献は22番ということでNDAから取っています。
○大前座長 IRISにこういう記載があるということですね。ここのところは気になるので、もう一度確認だけしていただきたいと思います。IRISの訳が間違っていないかという意味での確認です。やはり、20Paだとそんなに揮発性は高くないと思います。その件は別にして、閾値の有無としては判断できないということで、一次評価値はない。二次評価値は産衛、ACGIHとも、主としてメトヘモグロビン血症の予防をメインにして1ppm(5mg/㎥)を提案しているので二次評価値は1と。この数字に関してはよろしいですか。
○清水委員 前の記載では、培養のときに37℃ですよね。そうすると、どのぐらいの蒸気圧になるのかです。
○大前座長 そうか、37℃の蒸気圧ですね。ここに書いてある20℃の蒸気圧ではいけないのですね、わかりました。特にご意見、ご異議がないようでしたら、一次評価値なし、二次評価値1でよろしいですか。
(異議なし)
○宮川委員 細かいことで2点あります。何箇所か「ACGIH」が「AGCIH」という綴り間違いがあります。これは、元の評価書まで遡って間違っています。
 もう1点は確認ですが、生殖・発生毒性のNOAELが、元が吸入の場合と経口の場合と両方別々に並んで書いてあるのですが、いままでもそうだったでしょうか。それぞれ最終的には吸入に変換しているのに、元が違って、違う数値が出てくるというのは、見た人が「あらっ」と思う可能性があります。これまでもそうしているのであればそれでもいいのですけれども、この辺りも整理して、これから作業するに当たって、この作業の仕方の書類等々に反映させていただければと思います。
○大前座長 ありがとうございました。4つ目の物質の説明をお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 4つ目の物質はニトロメタンです。評価書の5頁目の、「物理的化学的性状」ですが、液体で、沸点が101℃、蒸気圧が3.7kPaです。「生産量等用途」ですが、生産量は文献上報告なしとなっております。こちらは、5つの事業場からばく露作業報告がありましたので、実態として使われていることは確認しております。用途は溶剤、助燃剤などの原料に使われています。
 有害性の「発がん性」については、評価表の2頁目の真ん中辺りになります。ヒトに対する発がん性が疑われ、IARCで2Bとなっております。ラットにおけるばく露を行ったところ、濃度依存的にがんの発生率が増加しているということで定義づけられております。
 発がん生以外の有害性は1頁目で、急性毒性については経口のほうでラットとマウス、あとは経口の濃度ということでヒトです。吸入のほうは見当たらなかったというものです。主な影響としては動物では、中枢神経系への影響とか、ヒトでは催眠性、呼吸器系への影響が見られる。反復投与毒性については、ウサギに対する吸入ばく露で甲状腺の重量の増加が見られる。
 「閾値の有無」としては、閾値ありと判断されるのではないかと考えております。2頁目の上から2番目のカ「遺伝毒性」のところにも書いてありますが、ハムスターを用いた試験で、高濃度では陽性であったけれども、その他のIn vitoroとIn vivoの試験ではすべて陰性であって、変異原性はないと判断したということです。一覧表としては10頁目から11頁目に、それぞれ遺伝毒性の試験結果があります。In vitoroでマイナスを示している。若干たまにプラスもありますけれども、ほとんどがマイナスということで変異原性はないと判断されて、閾値ありとしてはどうかと思っております。
 「許容濃度等」については、3頁目と見比べてください。ACGIHのほうでTWAで20ppm(50mg/㎥)を設定されております。こちらについては、動物における甲状腺への悪影響を減らすためのTWAとして20ppmを勧告すると書かれています。高濃度のニトロメタンにばく露した動物実験において、血液関係や精子数、運動性の低下といったもののリスクを最小限にとどめるには20ppmと考えられたものとなっております。産衛学会のほうでは設定なしとなっております。
 以上のことから、「評価値(案)」としては、一次評価値としては閾値があると判断されますので、閾値がありの場合の評価値の作り方としては、実験で得られたLOAELとかNOAELの辺りから、不確実係数を考慮して定めて値を決めていく形になります。ラットへの吸入ばく露実験から、NOAELとしては94ppmと考え、また不確実係数としては種差の10、がんの重大性の10、合わせて100ということ。また労働補正として時間を6時間を8時間に補正し、94ppmと、時間補正と、不確実係数を掛けて加味して0.71ppmという形で閾値があるとみなされる場合で、無毒性量に不確実係数を考慮して求めた評価レベルを一次評価値としてはどうかと考えております。
 二次評価値としては、ACGIHの示す20ppm(50mg/㎥)を二次評価値としてはどうかと考えております。以上です。
○大前座長 この物質の場合は閾値がある、遺伝毒性はないということで、不確実性係数を使って一次評価値が計算されております。結果として0.71ppmという数字になっておりますが、ご意見がありましたらお願いいたします。
 20頁から21頁の表を見ますと、ほとんどマイナスで、1つだけプラスですけれども、これは高濃度であるということで、遺伝毒性なしという判断です。
○高田委員 一覧のほうの、?@発がん性のところの「188ppmでは対象群と比べて」の対象の字が間違っています。
○大前座長 下から5行目か6行目ぐらいのところの「対象群」は、コントロールの対照群ですね。
○高田委員 コントロールの対照群です。あとは「NTPのでは」となっているので、たぶん「の」を取る。それをお願いいたします。
○大前座長 そうですね、訂正させていただきます。5つ目の物質のパラ-ジクロロベンゼンの説明をお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 5番目のパラ-ジクロロベンゼンの「物理的化学的性状」を、5頁目と見比べてください。外観は結晶、沸点は174℃、融点は53℃、蒸気圧は170Paです。「生産等用途」ですが、生産量は3万2,500トンです。用途は染料中間体、殺虫剤/農薬原料として使われています。
 有害性の「発がん性」については、評価表の2頁目の下のほうで、発がん性はIARCとして2Bに評価されています。次の頁で、許容濃度の設定の欄に書かれていますが、産衛学会のほうでも2Bと評価されています。許容濃度の設定根拠のところに、若干その部分も触れられています。3頁目から4頁目にかけて、「勧告根拠」の(3)発がん性については、ヒトでの疫学的研究では報告はないけれども、動物実験で2年間の吸入ばく露を実験したということで、その中では肝臓がんの発生率が有意に増加した。そういう形で、産衛学会のほうでも、動物実験で発がん性ありという実験があったということで報告されています。
 発がん性以外のところは、1頁目と見比べてください。急性毒性では、吸入と経口でラットとマウスの値が示されています。主な影響として、ラットに対する経口としては流涎、歩行異常が見られた。吸入ばく露については、自発運動の亢進、体重増加抑制といったものが動物で見られるというものが挙げられております。刺激性としては皮膚刺激性、眼に対する損傷。皮膚感作性が示されています。
 動物に対する反復毒性投与で、イヌに対する経口試験で血液での変化、臓器への重量増加の影響といったさまざまな影響が見られました。生殖毒性についてはありということで、2頁目のオ「生殖・発生毒性」にあるように、ラットに対する吸入ばく露を行ったところ、産児数の減少が見られたということで、生殖・発生毒性のほうでも影響があると考えられます。
 「閾値の有無」としては判断できないと考えております。2頁目のカ「遺伝毒性」のところに書いておりますけれども、In vivo、In vitoroでは染色体、DNA、不定期DNAの辺りでは陰性と報告されている。ただ、別の部分では陰性と陽性の報告がある。またDNA合成試験の値については陽性の報告があった。In vivo試験においては陰性もありますが、DNA関係の試験においては陽性の報告もある。
 詳しくは一覧表の9頁目から11頁目に遺伝毒性の陽性、陰性が書かれていますが、これを見てもIn vitoro、In vivoのどちらについても陽性と陰性が混在したような結果になっております。以上の結果から、変異原性の有無は判断できないということで、閾値の有無は判断できないと評価してはと考えております。
 「許容濃度等」については、3頁目から4頁目にかけて許容濃度が設定されております。ACGIHと産衛学会のどちらについても10ppmと設定されております。ACGIHのほうは、ヒトへの刺激と、ラットでの腎毒性の辺りを根拠に10ppmと設定しています。産衛学会のほうはいろいろと根拠が書いてありますが、下のほうだけ説明させていただきます。(5)人への嗅覚閾値、ラットへの一般毒性、マウスへのがんの発生率といったものを考慮すると、当初1998年の提案の前には許容濃度50ppmとなっておりましたが、1998年の提案によって10ppmに改訂ということで設定されております。
 以上から、評価値(案)としては、一次評価値としては、リスクの有無が不明な場合ということで、定量的なリスクが判定できないということで一次評価値なし。二次評価値としては、ACGIHと産衛学会はどちらも同じ値だったということで、10ppmとしてはどうかということで案を作らせていただいております。以上です。
○大前座長 語句の修正をしてほしいのですが、14頁の上から2行目「長期経口投与によってラットの雄に腎腫瘍、マウスの雌雄に肝腫瘍の発生率の増加が認められた」とあります。これが正しい文章で、例えば、いまの横長の表の「重視すべき有害性」の発がん性のところの下から2行目「長期経口投与によってラットの雄に腎腫癌、マウスの雌雄に肝腫癌」とあるのですが、これは両方とも「腫瘍」になります。
 同じようにその下の許容濃度等のところの(3)の下から2行目「長期経口投与によってラットの雄に腎腫癌、マウスの雌雄に肝腫癌」となっていますが、これは「腎腫瘍」です。もう1カ所は、有害性総合評価表でここはもともと間違っています。有害性総合評価表の4頁の上から2行目「長期経口投与によってラットの雄に腎腫癌、マウスの雌雄に肝腫癌」となっています。たぶんここが間違っていて、これをコピー・アンド・ペーストしたから、こっちも全部間違っているのだと思うのです。これは全部「腫瘍」に直してください。
○長山化学物質評価室長補佐 はい。
○大前座長 この物質に関しては、閾値の有無が判断できないということで、一次評価値が設定できない。二次評価値に関しては産衛の1998年の10ppm、ACGIHも1993年に10ppmを提案しておりますけれども、産衛のほうが新しくて、少し情報が多い状態で出しているということで、二次評価値は10ppmというのが提案ですが、ご意見がありましたらお願いいたします。
 パラ-ジクロロベンゼンはご家庭にも結構たくさんある物質です。箪笥の防虫剤にたぶん使っていると思うのです。
○細田中災防 今年のばく露試験でも、これがいちばん高くて10何ppmでした。くさいのでオープンにしている工場なので、近所の家からクレームが付いて、それで、だんだん囲っていっ狭い所で渦巻きのように2階式のあれにして、投入から最後の包装までを、こんな狭い範囲に縮こめています。そうすると、みんな臭ってしまうのです。
○大前座長 よろしいでしょうか、特にご意見がなければ、パラ-ジクロロベンゼンの一次評価値はなし、二次評価値は10ppmとさせていただきます。6つ目の物質の4-ビニル-1-シクロヘキセンの説明をお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 6番目の物質は「4-ビニル-1-シクロヘキセン」です。「物理的化学的性状」は、5頁ですが、液体、沸点は130℃、融点は-109℃、蒸気圧が3.43kPaです。「生産量等用途」は、化審法での結果として566トンです。こちらもばく露作業報告も7事業場から出ておりますので、国内で使われています。用途は難燃剤、樹脂などの原料として使われています。
 「発がん性」は2頁目と見比べてください。こちらもIARCで2Bです。マウスの実験では、発がん性の有無については判断できなかった。しかし、マウスを用いた雌での実験ではがんが認められたということで2Bとなっております。
 「発がん性以外」の有害性は1頁と見比べますと、吸入と経口で、ラットとマウスについてデータがあります。あとは皮膚刺激性、眼に対する刺激性。反復投与毒性は、経口ですがラットとマウスで死亡率の増加等が見られたデータがあります。
 「閾値の有無」については、2頁で判断できないということ。こちらについては陰性のものもあった。ただし、陰性であるか否かについては、現在のところ判断できないと記載されている有害性評価書もあるということで、遺伝毒性は判断できないものと考えられ、閾値の有無は判断できないと書かせていただきました。一覧は9頁ですが、実験数は少なく、陰性についてもまだ実験数が少ないと考えております。
 「許容濃度等」は3頁と見比べて、ACGIHのほうがTWA0.1ppmを設定しています。実際のばく露は少ないことが考えられるけれども、類似の物質での発がん性は認められる。マウスにおいて腫瘍が認められたことから、TWAとして0.1ppmをACGIHが1996年に設定しております。産衛学会のほうは設定なしです。
 これらのことから「評価値(案)」としては、一次評価値は閾値の有無が不明な場合ということで、定量的なリスクが判定できないので一次評価値はなし。二次評価値は、ACGIHが提言している0.1ppmとしてはどうかということで案を作っております。以上です。
○大前座長 閾値の有無に関しては情報がなさすぎて、いま判断することは難しいということです。とりあえずマイナスにはなっておりますけれども、判断できないという判断をしたということです。二次評価値は、ACGIHが1996年に設定しております0.1ppmを使う。一次評価値は、閾値の有無が判断できないので、評価値はなしという提案ですが、いかがでしょうか。
○池田委員 数値ではなくて申し訳ありません。別名のところなのですが、4-エチル-1-シクロヘキセンというのは、「エチル」ではなくて「エチレニル」ではないかと思うのです。「ビニル」ですから、「エチル」ではなくて「エチレニル」だろうと思うのですけれども、私の勘違いかなということです。
○大前座長 いまのところは確認してください。これは二重結合ですから「エチル」ではおかしいですね。
○池田委員 おかしいです。
○長山化学物質評価室長補佐 別名のほうは確認してみます。
○大前座長 よろしくお願いいたします。ほかにないようでしたら、閾値の有無はデータが少なすぎて判断できない。したがって一次評価値はなし。二次評価値はACGIHが0.1ppmを提案しておりますのでこれを使うということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○大前座長 特にご意見がなければ、いまの別名のところだけチェックしていただいてよろしくお願いいたします。最後の物質の酸化チタンについてですが、もう時間があまりないのでどういたしましょうか。
○長山化学物質評価室長補佐 次回のこともあるので、説明だけさせていただきます。酸化チタンですが、前提として物質名のところは総合評価表と評価書のほうで書いてありますように酸化チタンですが、今回の評価としては全部の粒径を考えて、ナノサイズに特化した有害性のところでは、まだいろいろ研究や調査が途上の段階ですので、ナノに特化した有害性は今回の評価には含めていないということで作らせていただいております。
 「物理的化学的性状」は5頁目からあるとおり、結晶性の粉末です。「生産量等用途」ですが、生産量は24万トン、用途は塗料や各種原料に使われています。
 有害性の「発がん性」については、評価表の2頁目から3頁目に書かれております。IARCで2Bで分類されております。ただし、総合評価表、評価書を委託事業で作ったときには、1987年のIARCのモノグラフで二酸化チタンは、最初はグループ3でしたが、2006年にグループ2Bに再分類されました。その時点では、モノグラフはまだ作成されていないために、その根拠は不明であるという形で当時作ったものです。
 その後、事務局のほうでIARCのモノグラフを調べたところ、Vol.93が発行されていました。今回は間に合わなかったのですが、次回までにその辺を追記した形で加えさせていただきます。仮訳だったので事務局として自信がなかったのですが、書いてあったことのエッセンスとしては、酸化チタンがヒトにがんを引き起こすかどうか判断する疫学的研究は不十分な証拠があった。ただ、ラットで肺腫瘍発症増加の結果において、動物実験で発がん性があるという十分な証拠であると結論しています。酸化チタンの証拠は、グループ2B以外の分類を正当化するのに十分強くないと考えた、という内容の表記がされておりました。次回までに、専門家の目から見た訳で少し追記してお出ししたいと考えております。
○大前座長 グループ3だったのが、2006年にグループ2Bに上がって、その根拠のモノグラフがようやく最近出たということです。そのモノグラフを、この有害性評価表、あるいは評価書は反映していない状態で作っているということですので、次回までにモノグラフの93を精査し、案を提案したいということですので、これはペンディングとさせていただきます。
 酸化チタンをペンディングにして、本日の審議事項は終わりました。最後に今後の予定について報告をお願いいたします。
○長山化学物質評価室長補佐 資料5で今後の予定です。まだ日時の調整ができておりませんので、追って先生方に日時の調整をさせていただきます。議事として予定しているのは、有害性評価書・評価値の検討です。次回にと言った酸化チタンについては、IARCを調べ、そこに書いてある内容を踏まえて評価値も検討していただきたいと思います。初期評価として、ほかのものは大体これで評価値を設定しています。
 詳細評価のほうに、先ほどの4物質と、もうちょっと前に選定された1,2-ジクロロエタンがあって、合計5物質あります。そのうち、1,2-ジクロロエタンについては暫定値という形で、ナイオスやオーシャ辺りの評価値を調べてから決定していきましょうということで、昨年からそういう形で引き継いでおりますので、その辺のことについてご議論いただきたいということです。
 同じく詳細評価で、インジウム及びその化合物について、今回は詳細リスク評価を行っていきます。前回は0.1mg/㎥ということで設定しました。その後、バイオのほうでの長期試験を踏まえ、いろいろ新しい知見が出てきましたので、その辺りの新しいデータを踏まえてどう設定していくか、再度ご議論いただきたいということと、本日の積み残しをご議論いただきたいということが1点目です。
 2点目は、「がん原性試験結果の評価について」ということで、昨年も5月に小検討会でご議論いただきましたが、がん原性で長期試験が終わった物質について、それが黒だったのか、白だったのかについての評価結果を判断していただくということで、昨年と同じように考えております。この2点について検討を予定しております。
○大前座長 日時、場所等はそのうちに事務局から連絡があると思います。以上で本日の予定はすべて終わりました。どうも長い時間ありがとうございました。


(了)

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