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2011年1月26日 第1回 安全から元気を起こす懇談会 議事録

労働基準局安全衛生部安全課

○日時

平成23年1月26日(水)13:30~14:15


○場所

JFEスチール株式会社東日本製鉄所(京浜地区)アメニティホール小ホール


○出席者

小林 正夫 (厚生労働大臣政務官)

参集者(五十音順、敬称略)

高  巖 (麗澤大学国際経済学部長)
内藤 恵 (慶応義塾大学法学部教授)
西野 濃 (日本鐵鋼連盟安全衛生推進委員会委員長)
野口 和彦 (株式会社三菱総合研究所理事)
野中 格 (野中労務安全事務所所長)

厚生労働省(事務局)

平野安全衛生部長、高崎計画課長、田中安全課長、森戸主任中央産業安全専門官

○議題

(1)産業現場における自主的な労働災害防止活動を活性化させるための方策
(2)その他

○議事

(資料2について)

西野委員 
 鉄鋼業界は増産と2007年問題で若者の採用を増やしているが、約6割の事業所で若年者の災害が顕在化しているアンケート結果が出ている。また、若い層に不休災害が多いとする企業もある。こういう若者が業界の中核を担うようになった時のことを考えると、今のうちから対策が必要であるので、業界では若者対策を真剣に考えている。

高委員
 大学で経営学を教える時、労働安全衛生はほとんど教えていない。会社に入ったら労働安全衛生が如何に重要か、それをモチベーションにどうつなげていくか、私どもの大学でもやるべきと思うが、ぜひ、全国的な展開をするべし。

野口委員
 安全を頑張っている企業が評価される仕組みはぜひとも必要。表彰制度は既にあるが、企業の指標化までもっていかなければならない。それとともに、企業内で安全を頑張っている人をどう評価するかが重要。
 安全を現場だけの問題にしてしまうと、事後は現場が悪い、安全は現場で頑張ってくれということになるが、この枠組みを超えて、安全を経営の中で捉えないと今後は行きづまる。安全は企業の品質管理でもあり、安全がしっかりしているところは良い仕事をする会社であるという評価にもなる。

野中委員
 建設業界の経営者も安全を真剣に考えているが、一生懸命努力しているところとそうでないところの差がない。例えば、マネジメントシステムのようなものを導入しているところには点数を加点するなどインセンティブが必要である。
 官工事は直工費と一般管理費で構成されているが、あるが、低い金額で入札すると安全経費まで安くなる。値段が低いと全体的に下げる。安全経費は別枠計上するとか、今の発注方法を変えないと、建設業界を取り巻く厳しい環境の中で、安全活動は後退してしまいかねない。
 新入社員の2、3割は大学、大学院を出ており、その技術レベルは高いが、安全は勉強しておらず、全くの素人。企業は10年くらいかけて安全を教え込んでいるが、大学で安全管理を正規の科目としてほしい。
 最近は事故が減ってきているので、若い人の危険に対する感性も鈍ってきている。教育も座学が中心。危険疑似体験型の教育がいる。

内藤委員
 労働力人口が減っていく中で、女性や高齢者にもっと参加していただく必要がある。人命にかかる重大な災害を如何に防ぐということが大事だが、女性や高齢者の視点に立って、職場環境を改善していくことが災害防止活動を支えることになる。

高委員
 明確なインセンティブが必要。例えば、公的年金の投資先を選ぶ指標の一つに労働安全を加えることは国としてもおかしなことではない。企業のパフォーマンスだけでなく長期的には労災の少ない企業がよい。E(Environment)S(Social)G(Governance)投資が世界的な規模で展開されており、公的年金の運用にも適用されている。

野口委員
 極端なことをいうと、安全をしっかりやっている企業には法人税を割り引くくらいの大きな仕組みがいる。実際、労災を起こせば社会コストをかけるわけであるから。
 安全教育の問題は小中学校の教育まで遡って考える必要がある。科学技術教育というが、科学技術のとらえ方が「理科」中心で技術の視点が弱い。小学校の高学年になってもドライバーも扱えない子もいるし、それでは日本の将来のものづくりに支障がある。ある一部だけの仕組みでは難しい時期にきていると思う。

西野委員
 鉄鋼業界の取組としては、まず、業界が安全を頑張っている事業所を表彰する。事業所にとっては光栄なこと。事業所内では、部、室、工場単位で優秀な結果をだしているまたは安全活動を実施している部署を表彰金付きで表彰する。さらに工場内では、工場長が表彰でもらったお金で、職場の表彰を行う。良い活動に対して、表彰金が入ってくる。こういうインセンティブが更に良い活動、結果生み出している。とくに京浜地区は熱心で好循環が良い成績をあげている。

小林政務官
 こういう会合を何回か開いて3月までにとりまとめたいと思っている。
 安全がどれだけ大事であるかを認識してもらい、命を守って、元気に働けるよう、しっかり教育することが大事。若い人がヒヤットとしたり、小さい事故を起こしているということだが、六本木ヒルズでお子さんが亡くなった事故でも、実はその前に31件くらいの小さい事故が起きていたとのことである。
 事故に遭うのはヘルメットを被って現場で働いている方である。そういう方に対して、目で見て、ものをさわって、注意喚起を呼び起こすような策はないかと思っている。

野口委員
 日本の場合、災害分析は科学的だが、対策となると再発防止的なパッチワークになってしまっている。どうして事故を起こしてしまったか、例えば「作業が楽になる」、「大丈夫だ」と思ったとか、短時間にたくさんの仕事を処理しなければいけない背景があるのかもしれない。この場合、安全担当の権限だけでは安全の実現は無理だ。会社の権限を総動員して、会社のマネジメントとして対応する必要がある。

内藤委員
 社会にまだ出ていない大学の学生の相手をしていて、人間関係が希薄になっていないか懸念している。本来チームであれば防げる事故であるが、チームがあったとしても一人一人が孤立していてそれがうまく行かない。これが職場でも起きているのではないか。

西野委員
 新入社員には1ヶ月くらい社会教育からやる。本来はものづくりの話から始めたいが、集団生活、挨拶をするための教育からやっている。

野口委員
 日本は安全という体系がきちっと出来ていないのではないか。米国には「Safety」という技術士があるが、日本には「安全」という技術士がない。やっと10年前に「総合技術管理」が必要ということで、その中の5分野の一つとして安全管理を扱っているところである。大学で「安全」と冠する講座でも、化学の現象論の中の危険性を教えているだけのところもあり、安全学として独立しておらず、大学の中で「安全」を教えることが難しい状況にある。
 企業はこういう状況を受けて、企業の中で教育をしている状況にある。

小林政務官
 体験でもって教育することは大切、危険感受性教育などそれそれの企業でやっていると思うが、そういう場が多いと良い。

野中委員
 昔は危険な場所がいっぱいあったわけで、経験から学んだところが多い。今の若い人が危険に対し鈍いのはある意味、当然である。いろいろ対策を講じて危険を排除してきた後で、入ってきた人たちだから。
 今の若い人は、パソコンは得意でも、コミュニケーションや汗をかくということが不得手なのではないか。しかし、それでは「もの」はつくれない。協力会社の人たちにきちっと指示ができず、逆に怒られて帰ってくる。「やだな~」といって止めていく人もいる。


(了)
労働基準局安全衛生部安全課: 03(5253)1111(内線5481)

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