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2010年11月22日 第48回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成22年11月22日(月)


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

<委員:五十音順、敬称略>

相澤好治、明石祐二、市川佳子、伊藤雅人、犬飼米男、今田幸子、瀬戸実、高橋孝行、高橋信雄、谷口元、露木保、土橋律、豊田耕二、内藤恵、中原俊隆、中村聡子、名古屋俊士、古市良洋、眞部行雄、三浦武男、芳野友子

<事務局>

金子順一 (労働基準局長)
平野良雄 (安全衛生部長)
高崎真一 (計画課長)
田中正晴 (安全課長)
鈴木幸雄 (労働衛生課長)
半田有通 (化学物質対策課長)

○議題

・職場におけるメンタルヘルス対策について(3)
・その他

○議事

○分科会長 ただいまから第48回「労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いた
します。本日は、内藤委員、犬飼委員、伊藤委員が欠席されております。伊藤委
員の代理として、東京商工会議所の関口様が出席されております。
 それでは、議事を進めます。本日は前々回に引き続きまして、「職場におけるメ
ンタルヘルス対策について」議論したいと思います。最初の議題である「外部機
関の整備・育成」につきましては、論点整理の項目にあげておりましたが、別途、
専門家による検討会を行っていた関係で議論を後回しにしておりました。その検
討結果が報告書としてまとまったそうなので、事務局からご説明をお願いします。

○労働衛生課長 それでは、資料の1に基づきましてご説明します。中原委員に
座長をお願いして、4回にわたり「事業場における産業保健活動の拡充に関する
検討会」において検討を行ってきました。先週末までには各委員の調整が終了し
ておりましたが、土日を挟むなどの諸事情により、本日公表となっています。こ
のため、報告書本体は委員のみに机上配付しております。本体の1頁を開いて一
緒に見ていただければと思います。傍聴の方々は、既にホームページにアップし
ておりますので、後刻、確認いただければと思います。
 資料1で説明いたします。当審議会におきましては、一般定期健康診断の機会
に併せてストレスに関連する症状・不調を確認し、必要な労働者に対して医師に
よる面接を行い、就業上の措置等が必要な場合は同意を得た上で事業者に意見を
述べる「新たな枠組み」について審議を行っています。これは、本年9月に提言
をいただきました検討会の報告書によるものであります。その中では「新たな枠
組み」への対応に向けて6点、更なる検討課題が提示されたところであります。
それが本体の1頁の「はじめに」にあります2つ目の○の「また」以下で4行に
わたって書いてあります。具体的には「ストレスに関連する症状・不調の確認項
目」。これは、研究会レベルで検討したもので、既に標準的な9項目をお示しした
ところです。また、「不利益取扱いの防止のための措置等」につきましては、今後、
新たな枠組みが確定した段階で、事務局として、さらに具体的な事例、あるいは
定義と言いますか、考え方等を整理していかなければいけないと思っております。
この検討会では「事業上に対する支援体制の整備」、「人材の確保」、「地域保険と
の連携」、この3点について絞って検討を行ったというところです。
 資料1の最初の枠ですが、この検討会では、50人以上と50人未満に分けまし
て検討を行いました。まず、50人以上の産業医の選任義務があるところにつきま
しては、その産業保健活動を取り巻く現状としてどのようなことになっているか
ということです。そこにあるように、メンタルヘルスに対応できる産業医の体制
は必ずしも十分ではない。また、50人以上でも比較的小規模、具体的には50~
100人規模の事業場では、産業医の選任率が十分ではないという課題。それから、
産業医が選任されている事業場であっても、健康診断結果に基づく事後措置、い
わゆる医師の意見聴取が十分に実施されていない事業場があります。また、巡視
などを含めて産業医の活動時間や事業場を訪問する頻度が十分ではないという実
態があることが報告されています。よい状況としては、産業医とメンタルヘルス
に対応可能な医師・保健師等の連携により、充実したメンタルヘルス対策を実施
している事例が少なくないと、そういう優良事例があるということです。
 こうした状況を受けまして、新たな考え方として、次の枠にありますように、
面接等を適切に行うための外部専門機関を活用してはどうかという提言がされて
おります。具体的には、事業場に対する支援体制の整備として、「事業者の選択肢
の一つとして、複数の産業医有資格者等からなり、新たな枠組みの面接等の産業
医の職務を実施する外部専門機関を活用できる仕組みを設けることが適当である」
と。括弧の中は、一般の事業場では1000人以上ですけれども、専属産業医の選
任義務を有するところは専属産業医がメンタルヘルスも適切に対応すべきだとい
うことで、今回の提言からは、そこは除外されています。2つ目ですが、「外部専
門機関は、所属する産業医有資格者等の資質の確保、医師等の間でも情報共有、
機関の管理者による調整や監督を担保するような一定の要件を満たすものとする」
べきであるということです。それから、「外部専門機関が要件に適合し適正な業務
を行っているかについて、行政が確認し、事業者に周知するとともに、外部専門
機関に対して必要な指導を行うことが適当である」と言われています。
 具体的には、次の外部専門機関の基本的な考え方については、3頁の概念図、「外
部専門機関のイメージ」で説明したいと思います。例えば、上のほうに事業場が
ア~エまで書いてあります。外部専門機関には、産業医で成り立っているAチー
ムがありますが、産業医の職務を提供するのは、あくまでも産業医の資格のある
方が行います。従来ですと、ア社とかイ社がこのチームと契約する際には、それ
ぞれの産業医を個別に選任するという法令上の義務になっておりました。また、
それぞれの産業医は、個別に産業医としての職務を果たさなければいけないとい
うことで、職場巡視や、例えば衛生委員会の出席についても、複数がやる場合は
もう少し重複を避けると言いますか、効率化してもいいのではないかというご意
見は現場からいただいていたところです。今回、このAチームというものと契約
する際に、外部専門機関と、ア社、イ社から包括的に契約とありますが、これは
アとイが合同で契約するわけではなくて、Aチームがアとイをそれぞれ担当する
こともあると。Bチームがウ、Cチームがエとか、そういうことが可能であると
いう意味です。あくまでも契約は、ア社と外部専門機関が包括的に契約すると、
このAチームが専門のチームとしてア社の産業医の職務を提供するということで
す。その際に、Aチームの総括医師ですね。従来は個別に責任が明確になってお
りましたが、チームになるとその責任が分散してしまうおそれがありますので、
このAチームの業務の調整なり、情報の共有化について、この総括医師が主担当
となって責任を持って行うということです。また、Aチームがイ社とも契約する
場合には、同じくイ社についてチームを総括するという役割を演じるわけです。
 それから、下にあります産業医有資格者の方は、総括医師については内科が専
門ですが、産業医の有資格者のそのほかの者は、メンタルヘルスが専門であると
か、あるいはじん肺が専門であるとか、そういった専門性を、ある程度活かして
分担が可能であると。それから、先ほど申し上げましたが、職場巡視は総括医師
がほとんど行いますが、メンタルヘルスに関連するような場合の巡視については、
下にいる産業医が行ったり、衛生委員会もメンタルヘルスがテーマのときにだけ
出席するというような効率化については、この機会に効率化を図るような規定を
整備してもいいのではないかということになっています。
 基本的には、このAチームの責任は総括医師が見るわけですが、この外部専門
機関に、もし複数のA、B、Cとあります場合は、それぞれがきちんと調整とか情
報の共有化を行っているかということについて、さらに第三者の目で管理・監督
するということで、左上の●の中の産業医長というものの設置を義務付けてはど
うかということです。これは、産業医としての資格も豊富で、こういったチーム
の中の情報共有や意見の集約が適切に行われているかどうかについて管理すると
いうことです。
 各チームは、基本的には産業医の職務を提供するわけですが、安衛法上では、
健診後の意見は、必ずしも産業医ではなく、一般の医師でいいということになっ
ておりますし、保健指導に関しても保健師でもよいということになってますので、
右下にありますように、外部専門機関には産業医の資格を持たない医師の活用、
あるいは保健師の活用を図るということもできるというか、そういうふうにすべ
きではないかということです。特に、メンタルヘルスに関する面接には時間がか
かるわけですので、保健師がある程度の職場の状況等を聞いて、最終的にメンタ
ルヘルスの担当の産業医がそれを含めて本人と面接して結論を出すということが
効率的、効果的ではないかと報告書では言われています。そういったことで、保
健師の設置もこの外部専門機関には義務付けてはどうかということになっていま
す。外部専門機関の大まかなイメージは以上です。
 なお、外部専門機関の法令上の位置付けにつきましては、この報告書本体の5
頁の下から2段落目の「なお」以下に書いてあります。これをそのまま読み上げ
ますが、複数の委員から慎重に判断すべきというご意見をいただいておりまして、
その内容を読み上げさせていただきます。「なお、新しいメンタルヘルス対策の枠
組みが整備されておらずニーズが正確に把握できない現時点において、産業医に
代わりうるものとして外部専門機関との契約を認めることについては、現場の混
乱が危惧されるとし、その影響等を見極めた上で慎重に判断すべきという意見が
あった」ということをご紹介申し上げます。
 次に、2頁の概要に戻ります。今度は、50人未満の事業場に対する今後の支援
のあり方ですが、50人未満の小規模事業場につきましては、地域産業保健センタ
ーが一部を担っているわけです。今後、こういった小規模事業場においても新た
な枠組みの面接等を効率的・効果的に実施するために、地産保において、メンタ
ルヘルスに対応可能な医師・保健師の確保、医師と保健師等との連携等を進める
必要があるということです。また、地産保の量的ニーズ及び質的ニーズを踏まえ、
活用の促進を図っていく必要があるということ。50人未満の小規模事業場におい
ては、メンタルヘルスを含めた健康課題に対応する観点から、なかなか事業場内
の資源だけでは難しいわけですから、地産保を利用するとともに、家庭要因等に
起因する場合、あるいは生活習慣でも、主にその本人の生活習慣の要因に起因す
る場合においては、地域保健における健康づくりに関する情報が必要な労働者に
情報提供されることが望ましいと。各都道府県や市町村で行っている地域保健の
サービスを利用するなどで負担を軽減していく必要があるのではないかというよ
うなことです。
 最後の人材の確保についてですが、1つ目の○は、外部専門機関における保健
師の確保のために、必ずしも現状において、その産業保健領域の保健師に対し十
分な新任、現任教育が行われていないという現状があります。こういったものを
強化して、新たに外部専門機関という制度が導入される場合には、そこで常勤の
保健師として活躍できる人材の確保、育成を図ることが重要であるということ。
地産保においては、保健師の活用・連携が必要ですが、さらに大事なこととして
は、現行でも行っていますが、産業医に対するメンタルヘルスに関する研修をよ
り一層促進し、十分な対応が可能であるようにしていく必要があるというご提言
をいただいております。以上でございます。

○分科会長 ありがとうございました。それでは、ただいまのご説明につきまし
て、質問等ございましたらお願いします。

○市川委員 外部専門機関の活用について、例えば、新しいチーム制にして包括
的に契約するというような形にしていくということを、行政が確認し、事業者に
周知するということは、何か一定の認可というか、許可というようなことが必要
だということなのか。そうでない外部専門機関というのは、ある意味、産業医の
認定等々ができなくなるということなのかお聞きしたい。その外部専門機関のイ
メージとしては、健診機関とか、一定の病院とか、そういう理解でいいのか、お
聞きしたいと思います。

○労働衛生課長 まず1点目ですが、法令上、登録によってその機関の質を確保
していくという制度がありますので、基本的にはこういった要件に合致したとこ
ろについて登録し、行政が内容を確認した上で登録機関として認めるということ。
それから、その後も定期的に監査と言いますか、行政が確認に入れるということ
も必要だと。できたときには満たしていても、その後どんどん質が低下するので
はないのかという危惧も委員から寄せられましたので、認めたあとも、定期的に
確認できる仕組みということでは登録期間ということで想定しています。
 そのほかのところはできないのかと言いますと、安衛法上、できないという制
限はできないのかなというふうに思っています。ただ、2つ目の点とかぶります
が、既に健診機関で、健診とメンタルヘルスに関するストレスチェックもセット
で提供しているところもあります。具体的には、そのあとの面接なども提供して
いるところもありますので、そういったところは、新たな枠組みが導入される中
で、その増大するニーズに対応するあまりに、少し効率化を図り過ぎて質が低下
することがあるのではないかと危惧されますので、イメージとしては、基本的に
は先ほど言いました、機関としても産業医の職務を効率化できるメリットとか、
そういったことでいままでにやっているところに少しメリットを与えた上で、こ
ういったものに手を挙げていただいて質の確保を図っていってはどうかというこ
とです。基本的には、登録機関にならなければ参加できないということではあり
ません。
 2つ目のイメージとしては、いまほど言いました、既に健診と面接をセットで
提供しているようなところが手を挙げるという可能性が一番高いのではないかと
思いますが、ほかに、例えば医師会では、地域の産業医のネットワークがあるわ
けですので、保健師を確保して常勤にすれば、医師会という組織で産業医のチー
ムを作って、この外部機関になるという可能性は十分あると思っています。あと
は、病院については、例えば健診センターを持っていて、一定の健診の対応がで
きるという余力があるところであれば、さらにこういったことにも乗り出すとい
う可能性がありますが、現実では、臨床をやりながら健診に携わっている医師を
回しているということがあると思いますので、そう簡単に産業医を確保して、か
つメンタルヘルスに対応できる産業医も確保しなければならないとなると、なか
なかそう簡単にはいかないのではないかと思っております。

○市川委員 では、新しいこの外部専門機関で従来の産業医と同様の職務ができ
るようになるということであって、外部専門機関を確保しなければこの新しい面
接の仕組みの対応は駄目だということではないということですか。

○計画課長 若干補足いたしますと、今回、検討会のほうでご提案いただいてい
ます外部専門機関は、こういうような要件を担保した上で登録すれば、産業医に
代わることができると、そういうものですね。ですので、安衛法上、産業医がや
らなければならないと位置づけられている機能を、いまは個人の医者しかできな
いのですけれども、機関として、代替しようとするためにはこういう要件をクリ
アして、登録していただかなければならないということは厳然として言えるわけ
ですね。
 ただ、ほかは一切駄目かといったら、ほかの機関は、代替はできませんので、
ほかにいらっしゃる産業医をサポートすると。それはいまでもできるわけですね。
サポートするということはいまでもやっているし、それは今後もやることであり
ます。それは別に安衛法でどうこうの話ではありませんので、安衛法は、あくま
で産業医に代わるのであれば、それは先ほど言いましたような、いまのニーズな
り課題にきちっと対応していただかなければ、新しいそういうものを認める意味
がありませんので、そういう形できちっと位置づけ、登録されたものについて認
められると、そういうことですので。

○市川委員 と言うことは、産業医と同じ職務ができるようになるということと
考えていいのですか。

○計画課長 そうです、産業医に代わると。

○市川委員 つまり、新しい面接の説明の仕組み、新たな枠組みができても、従
来どおり、普通に産業医と契約しており、その産業医が実施することはそれはそ
れでよいと。

○計画課長 そうです。

○市川委員 それに代わるものとして、こういう仕組みも新たにできますよと。
そういう考え方ですね。

○高橋(信)委員 ただいまの市川委員の質問に重なるのですが、産業医登録の
関係で、組織だって契約ができるようになると、理解できたのですが、報告書を
見ると、メンタルという言葉がたくさん出てきます。それに関してEAPという機
関がたくさんありますが、そのEAPとこの外部機関というものは、明確にどこが
違うのかというポイントがありましたら教えていただきたいと思います。

○労働衛生課長 EAPは、基本的に、心理職の方が中心となって立ち上げている
機関だと思います。この新たな枠組みでは、面接は医師が行うこととなっており
ますので、基本的には、EAPという組織で、精神科医なり、メンタルヘルスに詳
しい医師が常勤、非常勤を問わず、中にいて、最終的な判断をしているというの
は、ごく希ではないかと思っております。先行する相談機関の紹介をメンタル対
策支援センターで行っておりますが、これはやはり、自殺企図のある方を見逃さ
ないということで、必ず相談の前後、なるべく近い時期に精神科医との面談をと
いうのを条件としていますが、それがごく少ない30ほどの数に留まっているとこ
ろを見ると、基本的には、いまのEAPのまま外部専門機関になろうとすると、ほ
とんど困難ではないかと思っています。先ほど言いました相談機関についても、
外部のどこかの精神科の医療機関と連携が取れているという形でようやくこのく
らいの数ですので、このような産業医の中に複数確保してというと、いまのEAP
では難しいのではないかと思っています。

○高橋(信)委員 あと1点、すみません。資料1の3頁の図の説明で、保健師
が出ていまして、先ほどのご説明では設置を義務付けようかと考えているとおっ
しゃったと思います。Aチーム、Bチームがありますが、これは組織の中の人材
と思っていいのでしょうか。いろいろな外部専門機関の中に、既に常勤として必
ず置くということで、兼務するという立場ではないということですね。保健師さ
んで個人的にやっている人もいますが、そういう方がいろいろなところへ参画す
るという概念とは違うと思ってよろしいでしょう。

○労働衛生課長 一応、今回の検討会では、メンタルヘルスに対応するためには
密接な連携が必要ということで、事務局から1つの提案として委員会の委員に認
めていただいたのは、この外部専門機関に常勤としていると。ただ、その活用は、
Aチーム、Bチーム、Cチームがそれぞれオーバーラップしながら、その中に必
ずしも1対1で対応する必要はないということです。ただ、確かに保健師さんが
独立して活動している場合の連携はどうするかというのは、少し連携が弱くなる
ので、この時点では想定しておりませんが、1つの議論ではあると思っています。

○関口(伊藤委員代理) 外部専門機関の件で、続いてご質問させていただきま
す。これは産業医でも構わないというご回答でしたけれども、産業医でも、精神
科、神経内科、心療内科で1.8%ぐらいしかできる人間がいないということで、や
はりその産業医の有資格者ということで、複数の方と契約を交わさなければいけ
ないということになりますと、従来以上に経費的負担が必要になると考えてよろ
しいわけですか。

○労働衛生課長 前々回ですか。宿題になった費用について、また後ほどご説明
しようと思っていましたが、このことに関しては、先ほど言った職場巡視などが
効率化されるということとか、保健師がある程度、面接においても一定の前さば
きといいますか、そういった部分については対応するということで、単価がどう
設定されるかは、実際にちょっと動かしてみないとわからない部分もあろうかと
思います。
 ただ、いままで全部産業医が、例えば30分かけていたものを、少し効率化する
という工夫も可能なのかなと。それを効率化する代わりに、こういう外部機関で
きちんと情報共有と意見調整等を義務づけることによって、質の担保を図ろうと
いうのが目的ですので、それぞれの組織でどのくらい産業医を関わらせるかとい
う、または保健師を面接において代替させるかという、それによって異なってく
るのではないかと思っています。

○関口氏(伊藤委員代理) 企業側からすれば、いままで産業医と契約を交わし
ていますね。今回、この総括医師という位置づけになった場合に、産業医が負え
ない部分は他の方にお願いすると、当然そこで費用がかかるわけですよね。それ
が跳ね返って企業側にくるというのが普通の考え方ですので、この企業の負担が
どのくらい発生して、どういう状況になるのかということは、それを踏まえた上
での議論を是非お願いしたいということです。
 もう1点、50人未満の事業場におけるメンタルヘルス対策支援ですが、○の2
つ目にありますように、地産保センターの「活用の促進を図る」と書かれている
のですが、先般の行政刷新会議の仕分けにおいて、この部分については原則廃止
とされたところでして、これはこれからどういう状況になっていくのかわからな
い以上、ここで活用の促進を図るということで議論を進めていくのは、ちょっと
できないのではないかと思います。

○計画課長 刷新会議の仕分けの結果については、前回もご質問をいただきまし
て、そこでご報告したとおりです。前回の刷新会議の結果についても、例えば管
総理の国会における答弁などを聞いていますと、最終的に刷新会議なり何なりで
もう1回整理するということも言っておられますので、そういう意味ではまさに
これからそういうプロセスがあるわけでして、あそこで原則廃止となったら、即、
原則廃止ではないということです。
 その中で、ではこの部分はどのように整理されていくかということになります
が、ここは前回も申し上げたとおり、メンタルヘルスについて新成長戦略にも掲
げ、2020年に全ての事業場においてケアを受けられるようにしていくという政府
の方針も閣議決定してやってきているわけですので、少なくともこの予算を要求
し、担当している私ども事務局としては、そういうことを説明していく中で、一
定のご理解を得られるのではないかと考えているところです。
 関口委員がおっしゃった、まだ予算が固まっていないとうのは、そのとおりで
す。検討会の報告としてはそういう報告があったということですが、それはまさ
にいま現在、予算編成作業もどんどん進んできていまして、もう12月の声を聞こ
うかという状況ですので、この審議会、この分科会でご議論いただいていた時期
には、その辺りもある程度見えてくるということでもあります。そこの点につい
ては、しばらくお待ちいただくことにならざるを得ませんが、方向としてはそう
いう形で予算が手当てされるのではないかと、事務局としては考えているところ
です。

○分科会長 他にはございませんか。それでは、また戻っても結構ですので、次
の議題にまいります。
 前々回の分科会において、労働者側と使用者側の双方から、「職場におけるメン
タルヘルス対策検討会」で提案された新たな枠組みに対して、見直しが必要であ
るというご意見をいただいています。前回の最後に、各委員からいただいた意見
を踏まえて、「新たな枠組み」を事務局で修正し、お示しいただくことにしていま
した。事務局から、修正した「新たな枠組み」について、ご説明をお願いします。

○労働衛生課長 それでは資料2に基づいて、ご説明します。「ストレス症状を有
する者への面接指導制度(案)」というものです。1番の(1)に経緯が書いてありま
すが、これまでお示しした新たな枠組みについては、健診の機会に、医師が労働
者のストレスに関連する症状・不調を確認して、面接を行うということですが、
労働者の個人情報保護の観点から、労働者のストレスに関連する症状・不調の状
況、あるいは面接の要否等については伝えないという仕組みになっていました。
 これに対して(2)にありますが、前々回を中心に、主な意見としては、ア「面接
の要否等に関する情報の事業者への非通知に関連すること」として、まず労務管
理の観点から、「労働者のプライバシーの保護や労働者の意向を尊重することにつ
いて最優先で考える必要があるが、一方で事業者に全く知らせない仕組みについ
ては労務管理の点で無理がある」ということで、以下の3点ほどが代表的な指摘
事項と思われます。
 具体的には「就業時間内に事業者の知らないところで面接に行くとなると、業
務命令との関係で問題が生じるおそれがある」。「面接に要する交通費、面接を行
う医師との契約、報酬の支払い方法等の実務的な問題が生じる恐れがある」。「中
小企業では事業者と労働者の距離が近く、早期に労働者の不調に気づくことが可
能。事業者から専門医につなげるという方法も考えられる」のではないかという
ことです。
 また、?Aの「事業者への医師の意見について」ということですが、「面接を行う
医師は、労働者からの一方的な情報により、事業者に対して意見を述べることと
なり、的確な意見を述べることができない恐れがある」というご指摘がありまし
た。
 次に「制度の運用に関すること」ということについては、「様々な目配りが必要
な新しい仕組みであり、中小企業においては運用が難しい」。普及までには数年を
要してしまうのではないかということです。「全く新しい枠組みを導入するのであ
れば、現場において適切に運用が可能なものか十分に検証することが必要である」
と。
 それから次の2頁、ウです。「ストレスに関連する症状・不調の確認に関するこ
と」ですが、「鉄鋼、造船等の産業では、一般定期健康診断の問診においてストレ
スの症状の確認を行っており、これを切り分けて新たに行う必然性に乏しい」。「質
問票を用いた調査では、一般的には、保健師等が確認して必要があれば医師につ
なげる仕組みとしている」というようなことです。
 こういった意見を踏まえて、2の修正案です。「労働者のプライバシーの保護や
労働者の意向の尊重、不利益取扱いの防止に配慮しつつ、適切な労務管理も可能
な仕組みを導入することが適当と考えられる。また、既存の仕組みと同様の仕組
みとすることにより、中小企業においても円滑に運用可能とすることが必要であ
る」ということです。以下は修正案を書いていますが、次の頁の概念図でご説明
したほうがわかりやすいと思うので、これでご説明します。
 「ストレス症状を有する者への面接指導制度(仮称)」ですが、一般定期健康診
断の仕組みは変更しないということは、これまで提言されていた新たな枠組みと
同様ですが、この一般定期健康診断の機会に併せて、事前に問診票に記入すると
いう仕組みとか、問診を行うというシステムがあるわけですので、その際に医師
がストレスに関連する症状・不調を確認する。ここは基本的に同じでして、標準
的なものも行政が用意していってはどうかと考えています。ここで医師が、スト
レスに関連する症状・不調の状況から、いちばん下の枠にありますように医師に
よる面接が必要と判断した場合ですが、その場合には労働者に通知することにな
ります。
 ここから先が、この破線で囲んであるいちばん上に書いてあります、「長時間労
働者に対する、医師による面接指導制度と同様の仕組み」とありますが、既に安
衛法上行われている長時間労働者に対する面接指導、この流れを思い出しながら
見ていただければと思いますが、通知があった場合に労働者は、?Aにあります「面
接の申出」を行うことになっています。この場合に、下にあります「労働者の意
向を尊重」するという要素が、ここに入っているということです。
 次に「申出後は事業者が対応」というのが、事業者の枠の上に書いてあります。
事業者は、これで労働者の申出があれば、医師の面接の機会を設けなければいけ
ないことを、もちろん認識するわけですので、?Bにありますように、従来、長時
間労働の医師に依頼をしているのと同様に、「面接の実施依頼」を行うということ
です。これは産業医が望ましいわけですが、場合によっては一般の医師、あるい
は地産保の医師に依頼することになります。
 そうしますと、依頼を受けた医師は労働者に対して、この枠の下のほうにあり
ます?Cの「面接指導の実施」ということで、労働者と面接を行います。従来の案
ですと、ここで労働者の一方的な情報だけを頼りに行っていたわけですが、この
枠組みですと、事業者があらかじめ労働者を特定できるわけですので、その当該
労働者が置かれた状況、例えば長時間労働の状況とか、現在担当しているプロジ
ェクトが困難であるかどうかなど、そういった職場の状況も併せて、医師にあら
かじめ提供することも可能になるわけですので、この面接がより内容の濃いもの
になるということです。
 それから?Dです。従来は医師からの面接が終わると、一方通行で事業者に意見
を述べることになっていましたが、これは矢印が双方向でわかりますように、先
ほど言いましたような事業者からも情報を提供できるということで、ある程度情
報を共有した上で意見を決定することが可能になるわけです。また、医師が一方
的に意見を言うのではなくて、どちらかというと事業者が能動的に医師から意見
を聴取するということですので、就業上の措置の改善に必要な情報は、基本的に
は事業者が全て確認することができるということになります。
 その後、事業者はさらに現場の状況などを確認することも可能ですし、そうし
た上で?Eの「事後措置の実施」ということになりますが、この際に、以前から繰
り返し言っていますように、健康を確保する以上の必要性を越えて不利益な取扱
いを行う、あるいはそういった解雇を行ってはならないというようなことが、こ
こで必要になってこようかと思います。
 なお、安衛法の枠外になりますが、面接の申出を行わなかった労働者であって
も、医師により、そういったストレスがかなり強いという、客観的な判断を伝え
られることによって、いわゆるセルフケア、自己の気づきが促進され、医療機関
に直接受診するということもありますし、また、医師が面接した際に症状や表情
などを見ながら、これはとにかく医療機関で受診すべきだと判断すれば、必要に
応じて受診を勧奨するということになるわけです。
 以上が資料2のご説明ですが、なお、この分野に関係する学会として、産業衛
生学会がございます。先日、日本産業衛生学会からは大臣宛に要望書が届いてお
りまして、例えば従来の枠組みですと、医師が面接を行う場合に、労働者だけの
情報になってしまって、就業とは無関係の意見を述べる危険性があるのではない
かとか、あらかじめ労働者が特定できなくて、医師を指定するだけですと、面接
の時間や場所の確保が困難ではないかというご意見など。それから、産業医が面
接を行って同意が得られなかった場合には、産業医は事業者に雇われているわけ
ですので、特に安全配慮義務というものが問題になるのではないかというご意見
が寄せられていたところです。この資料2のさらに新たな枠組みにおいては、そ
ういった関係学会から、あるいは我々が各方面から聞いている課題も、かなり解
決できるのではないかと考えています。
 次に資料3をご説明します。資料3は、市川委員からの「健診の主なパターン
はどのようなものがあるのか」ということで整理したものです。それに併せて、
新たな枠組みで、問診でストレスに関連する症状・不調を確認する場合、その情
報がどうなるかも上乗せしたものを、上のほうに載せています。
 下の括弧付きのものが健診のパターンです。例えば資料3-1については、下の
ほうを見ていただきますと、いま健診機関を活用している場合には、労働者が問
診票を提出して、医師がそれに併せて診察を行うというのが?Aです。事業場には、
基本的には健診結果は、安衛法上、全て通知されまして、保存義務があるものに
ついては保管されるということです。また、個人の健診結果も通知されますが、
これは基本的には事業者が知ることになっています。同じ内容ですので、これは
郵送する場合もあろうかと思いますし、事業場にまとめて送られて、健康管理担
当者が個別に配付すると。その際に、特に封がしてなくても、基本的には事業者
が知っている内容ですので、あまり問題がなかったというものです。
 今回、一般定期健康診断と併せて実施する場合、この仕組み、この健診のパタ
ーンで、上乗せでストレスの項目を確認する場合には、上の段を見ていただきた
いのですが、問診票を提出する際に、問診票と一体にするか別紙にするかはそれ
ぞれ自由ですが、いずれにしてもストレスに関連する項目を含んだ問診票を、健
診機関が健診の際に提供すると。それを看護師が、例えばあらかじめ採点などを
して、スコアをつけて医師に提供するということも考えられます。それで医師が
一般疾病の問診・診察と併せて、このストレスの項目についても何点以上である
とか、その人のいまの状況がどうかとか、ある程度やり取りして、面接の必要性
があるかどうかを判断するというものです。
 安衛法上、一般定期健康診断の項目として規定されている結果については、?B
のルートで、そのまままとめて通知ということになります。ただし、この情報に
は面接の要否等を除いたものがいくということですので、従来の健診機関が発行
している健診結果の様式といいますか、面接の要否については若干、問診項目と
一体化するけれども、送付するときにはそれが印刷されないような工夫が必要に
なってくるというものです。
 面接の要否については、健診機関から個人にUターンといいますか、Jターン
といいますか、これで返るわけですが、この際には、例えば個別にお金をかけて
郵送するということであれば、当然、封がされています。事業場で誰も知り得る
ことはありません。先ほど言いましたように、一括してまず健康管理担当者の所
にいって、それを個別に職場で配付するような場合には、この矢印では必ず封を
して見ることができないという工夫が必要になってまいります。これは?Bの「個
人の健診結果、面接の要否の通知」です。?Bが2通りありますが、事業者向けと
個人向けでそういった違いが必要になってくるということでして、その下の黒枠
にありますように、「ストレス症状の確認結果は事業者には伝えない」ということ
です。また、※にありますように、健診機関でこういった「ストレス症状の確認
の事務に従事した者は、その実務に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはな
らないこととする」という規定が必要になってまいります。
 次に2頁です。次のパターンとして、下にありますように、事業場内の施設で
一般定期健康診断を行う場合は、労働者が事業場内で行う産業保健スタッフに問
診票を提出して、産業医やその日に来る医師が、問診や診察を行うと。当然その
結果は、事業場内の産業保健スタッフは知っていますし、また、その労働者に健
診結果が通知されるということになっています。
 従来、この流れで特に問題はありませんが、ここにストレスに関連する項目の
確認を入れますと、上の段になりますが、問診票を提出する際には同じでして、
ストレスに関連する項目を含んで、産業医が問診と診察を行って、面接の要否を
決定します。労働者には従来の健診結果に合わせて、面接の要否についての通知
が行きます。このままですと、事業主も面接の要否も含めて知り得ることになり
ます。この産業保健スタッフと産業医の若干色の付いた枠と、事業場全体に仕切
りがありますが、このストレス症状の確認結果については、事業者には伝えない
と。要は、産業医と産業保健スタッフについて、そういった面接の要否に関して
は伝えないという規定を新たに作ると。それが下の※に相当するものです。
 次に3頁目ですが、これはあまりないパターンだと思います。人間ドックにし
ても、基本的には事業者が指定した健診機関、医療機関に行くわけですが、例え
ば3頁の下にあります、労働者が既に指定外のある医療機関に、私病でかかって
いて、年に1回、安衛法の項目を含むような健康チェックを自己負担でやってい
るという場合に、二重に受けなくてもその結果を提示することによって、安衛法
の健診の結果に代えるということが行われていると。この場合は、負担を支払う
という機会が生じませんので、事業者がメンタルヘルスというか、ストレスに関
連する機会を設けるとか、上にありますように、「別途ストレス症状の確認を行う
機会を設ける必要がある」ということです。先週中頃に、事前にこういった資料
をご説明したときには、上のほうに図が描いてありましたが、これは少し事務局
の勘違いでした。こういう場合には、そもそも事業者が支払いや健診の設定自体
に関与していないので、少し工夫の必要があるということで、資料が少し変わっ
ておりますので、ご了解いただきたいと思います。
 いままでは健診の機会に同時に行う場合ですが、4頁の上の段、下の段は、全
く違う機会に一斉に行うということです。例えば、人間ドックでバラバラやって
いるときには、その都度、問診票をいろいろな委託契約の健診機関に配付すると
いうのは煩雑になりますので、一斉にやりたいといった場合には、そういったこ
とをみなすような規定も考えられると。その場合、例えば上で、外部機関を利用
する場合においては、労働者が外部機関、これは健診機関かもしれませんし、先
ほど言ったような、一般の病院でも健診をやるくらいですから可能かもしれませ
ん。問診票を提出して、医師が確認して、面接の要否を判断する。この場合には
事業場を経由しますが、先ほど言いましたように、事業者には伝えないというこ
とですので、封をするような工夫で、事業者が知らない形で労働者に通知する必
要が出てまいります。
 それから、専属産業医が実施するような場合は下になりますが、この場合は、
産業医や産業保健スタッフが内容を知ることになりますので、このスタッフと事
業者の間には壁を設けて伝えないという規定を作るということで、基本的には労
働者と産業保健スタッフだけが知り得るという仕組みが必要になろうかと思いま
す。
 資料3の説明は以上ですが、前回宿題になっていた費用がどのくらいかかるの
かということについては、紙の資料を用意していませんが、口頭で簡単にご説明
したいと思います。まず、ストレスに関連する症状・不調の問診・診察、これに
さらにどのくらいの負担が増えるのかということですが、典型的な1つのパター
ンをご紹介しますと、1日5時間くらいかけて100人を見ている場合があります。
医師を5時間拘束するとして、大体、単価が30分5,000円くらいというのが地産
保の、いまの医師の単価ですので、1時間1万円ということで、単純計算すれば5
時間では5万円くらいということになります。要するに、いままで5時間くらい
かかっていたとすれば、5万円かかる。ただ、このストレス項目を確認する余分
な時間が、例えば1割の方が陽性だと。この前は14%ほどが陽性になると言いま
したが、仮にわかりやすくして1割くらいが強いストレスの陽性者になると仮定
しますと、1人にまた2分くらいかかるだろうというのが、いまの健診機関に聞
いた感じです。いままでも、先ほどの単純計算でいいますと、3分くらいかかる
かもしれません。出入りとか、診察するために服を脱ぐとかを入れると、正味は
2分くらいかなと思います。この問診にさらに2分かけるとすると、ほぼ同じ時
間が1人にかかると。ただ、陽性者は1割ですので、時間としては1割増えると
いう計算が成り立つかと思います。
 そうしますと、先ほどの5万円で1割ですので、5万5,000円くらいかかると
いうことになります。例えば50人規模で1割増えるとなれば、50で割りますと、
50人の1人当たりということで100円程度ということになるわけです。計算式で
言いますと、5万円×1割ですね。それを50人で割るということですから、50人
規模ですと、1人当たりは100円程度の計算ということになります。
 ただ、先ほど言いました問診票の打出し方を変えるとなると、そのプログラム
の初期投資がかかるということも言われています。それは、4、500万円かかると
聞いていますが、それが1社にのしかかってくるわけではありませんので、何年
かに分けて分散するとすれば、それほど大きい負担にはならないのではないかと
思っています。
 それから、次は医師による面接です。これも地産保では30分5,000円という単
価でやっていますが、例えば100人の事業場で1割が対象者になったとします。
いま既に全国規模の健診機関で行っている場合、大体対象者の半分くらいが面接
に申し出ているという実績があります。仮に1割の対象者で、さらに申出率を5
割、半分にしますと、要するに1人30分かけて5,000円増えるということになり
ます。仮に100人いたとすれば、そのうちの1割が対象者で、さらに0.5をかけ
るということで、それに単価を5,000円かけますと、受診者1人当たりでは250
円程度という計算が成り立つのではないかと思います。これは100人に限らず、
さすがに10人ですと1割というのは1人で、そのうちの2分の1というのは成り
立ちませんが、一応何人規模でも5,000円×0.1×0.5で250円というのが、仮の
計算としては成り立つのではないかと考えています。
 ちなみに50人未満ですと、地産保を活用すれば費用は、いまは一応無料でいま
は提供しています。また、既に50人以上で、産業医の選任をしている所では、例
えば健康相談の日を決めて一定時間拘束していれば、2時間、3時間、全部埋まっ
ているとは限りませんので、そこに面接を入れるということになれば、純増とい
うことではなくて、オーバーする分を増やすということですから、あまり面接に
おいて費用に過大な負担が生じないということもあり得るのかなと思っています。
以上です。

○分科会長 ありがとうございました。前回、前々回の委員からのご意見を踏ま
えて、修正案を出していただきました。ただいまのご説明について、ご意見はあ
りませんか。

○市川委員 新たな提案として、労働者から申出をした場合にということですが、
ご説明にもあった現行制度では、100時間を超えて疲労の蓄積が認められる場合
の労働者の申出によって面接指導を行うという制度があるわけですが、これは改
正して何年経っているのでしょうか。どの程度定着しているのか、実施状況、あ
るいは運用状況、またはそういったものの中で問題点等々があるのかないのかと
いったことを、もし把握されていれば、ご説明いただきたいです。その際に、現
行の100時間超えの場合も、面接指導における医師の確認事項として、安全衛生
規則に疲労蓄積等具体的に規定されている中に、当該労働者の心身の状況をしっ
かり見なさいということが書かれていて、当然、心身ですから、心と身体ですか
ら、既にそういう規則の中で定められているわけですが、こういったものが今回
のストレス症状を有する新しい仕組みも円滑に運用できるように、やはりいまの
仕組みを少しおさらいしておくことが必要ではないかということです。現行の
100時間超えの所でも、心身の状況ということですから、ここを徹底していただ
いて、私どもとしては、長時間労働について、これは肉体的にも大変ですが、ス
トレスあるいは精神的な負担も最大の要因の1つだと考えています。ですから、
現行法上の面接指導でも、きちんと丁寧な心のケア、心身の状況を把握すること
を、もう少しアピールしてもいいのではないかと考えています。

○労働衛生課長 失礼しました。これも説明すればよかったのですが、本日の資
料5の11頁です。参考5という所に、「長時間労働者に対する面接指導」の法の
規定と規則。「長時間労働者への面接指導マニュアル」。12頁には、これは分科会
には1回お出しした資料ですが、前回改正の実績ということで、「長時間労働者に
対する医師による面接指導の実施状況について」ということで、(独)労働安全衛
生総合研究所が調査したものです。これは後でご説明します。13頁には、現行の
「長時間労働者への面接指導チェックリスト」。これは大まかな手順、進め方が書
いてあります。14頁には、具体的な面接指導を行う医師がやりやすいようにチェ
ックリストを作っておりますので、ここに心身の項目も入っています。
 また順に説明しますが、長時間労働は平成18年度からでして、50人未満が平
成20年度から義務づけられました。1点目の実績は12頁にあります。これは、
今年の5月に研究所が行った調査でして、ここに書いてありませんので口頭で申
し上げますが、2,000事業場に対して調査を行いました。2,000事業場のうち、規
模が明確な状況で回答いただいたのが527、約25%強ということです。2,000事
業場に対して527のうち、長時間労働者が発生したという回答があった事業場は
ちょうど100です。そのうち面接を実施したというのは、全てにやったかどうか
ということではなくて、発生した事業場においてとにかく1人でも面接の実績が
あったというのが81.0%です。真ん中の枠に、約8割と書いてあります。81.0%
において面接指導が実施されているということですので、少なくとも申出があっ
た所には、かなり的確に面接の機会を設けているのではないかということがうか
がえます。なお、全体では真ん中の枠にありますように、回答があった527のう
ち、面接指導制度の認知度については60.7%ということですので、ここはまだま
だこれから課題ですが、一応、その中でも発生したところについては、約8割で
実施実績があるということです。
 3.「今後の方向性」の中に書いてありますが、知っている割合がこのとおりで、
300人以上ですとほとんど100%知っているということですが、やはり平成20年
から義務づけられた50人未満では40%、それから実施された割合ということで
は、300人以上では100%ですが、50人未満では4割に留まっていますので、や
はり遅れて義務づけられたところの周知が課題かとなっています。
 13頁の主な流れですが、事業者からの情報を入手すると。Aにありますように、
労働時間の情報を入手すると。直接対象者から入手したり補充する場合もあると。
Bの労働者本人からの情報としては、業務の過重性・ストレス、自己診断チェッ
クリストの結果、うつ病等の一次スクリーニングがあります。実際の医師による
面接調査実施では、疲労やストレス蓄積状況の質問調査と採点を行うと。それか
ら、面接調査によるうつ病等の可能性の評価と受診の要否の判断ということにな
っています。
 14頁に具体的にありますが、上にある「最近1か月の自覚症状について」とい
うことで、「イライラする」「不安だ」「落ち着かない」「ゆううつだ」というよう
な、いわゆる心理的な症状・不調や、「強い眠気に襲われる」「ぐったりした疲れ
を感じる」というのは、心身両方に共通するようなものだと思います。また、下
の(2)にありますように、「1か月の時間外労働」「不規則な勤務」「出張に伴う負担」
ということで、身体負荷がどのぐらいかかっているかに加えて、6、7にあります
ように、6では精神的負担、7では身体的負担を確認することになっています。
 ですから、今回さらに「新たな枠組み」が導入されれば、これに倣ってメンタ
ル面が中心ですが、やはり身体面の負荷等についても考慮したうえで面接を行う
というようなガイドラインをつくる必要があると思っています。

○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○関口氏(伊藤委員代理人) 本日示されました改正の修正案で、事業者による
労務管理が可能になった点については、これまでの意見を取り入れていただいた
ものと思っています。ただ、中小企業が現実に実行していくうえにおいては、や
はり現場に及ぼす影響等、実際によく検証していかなければいけないと思ってい
ます。特に、事業主の責任の範囲であるとか、不利益の取扱いのあり方について
は、まだ議論が進んでいないと思っていますので、この詳細を詰めるという意味
でも、今後この辺りについて議論していくべきではないかと思っています。以上
です。

○瀬戸委員 ちょっとお聞きしたいのですが、3頁の表で、医師が面接が必要と
判断した場合、問診票から判断されるのだろうと思うのですが、これは、医師の
どなたが判断しても面接が必要というような判断をされるものなのですか。

○労働衛生課長 前々回に、標準的な一定の9項目を示して、例えば、うつとそ
の周辺のメンタル不調が、ある程度含まれるというパーセントでやると、14%ぐ
らいが引っかかる基準値だということは示しました。基本的に、あれを使ってい
ただければ、その基準値で10%ちょっとということは、機械的には一旦出るわけ
です。ただ、そのボーダーラインの方についてどうするかというのは、一定程度
やり取りや表情を見ながら、職場の環境など短時間ですが、健診対象の労働者か
ら聞いたうえでやるとなると、誰でもが均一にできるかというと、そこはもちろ
ん医師の最終的な判断ですので、若干、出入れがあるのかなと思っています。行
政が用意できるものとしては、それなりに理論的にうつ病+αその周辺の病態が
含まれるような基準値というものは提示できると思っています。

○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○高橋(信)委員 ただいまの資料2の概念図を拝見しまして、要望が2点あり
ます。1点は、左側にあります「一般定期健康診断の仕組みは変更しない」とい
うことなのですが、大きい事業場ですと、この概念図にぴったり当てはまらない
といいますか、例えば中で完結してしまいまして、健診のときにこういうストレ
スチェックもしてしまうと。それで産業医が必要であればまた別途呼び出すとか、
あるいは本当に必要な場合には、外部の精神科の先生に来てもらっていまして、
そこで面接あるいは治療につなげる、そこまでやってしまうという例もあります。
そういう既にやられている所について、また新たな枠組みで定型的なものを必ず
やれということではなくて、質的なものが担保されている場合には、それはそれ
で容認するという姿勢で、これから対応に臨んでいただきたいと思います。
 それともう1点は、この図で見ていましても、事後措置の実施ということが時
間の制限や作業の転換や、いわゆる就業労務管理に帰結するわけですが、これは
これで増悪防止あるいは健康維持のために大事なことなのです。そもそもストレ
ス要因が社会的な背景や家庭的な問題とか、すべてから生起するものですので、
そういったファクターも併せて問題になることがあると思うのですね。したがっ
て、そういうことの対応はここには出ていないのですが、それを考えていただく
と。その中で特に大事なことは、セルフケアといいますか、従業員が自己責任で
やれということではないのですが、事業者サイドだけでこういうことだけを必ず
やれというだけではちょっと間に合わない部分も出てくると思いますので、そう
いう客観的に見た必要な事項、これをうまくカバーできるような、例えばいま申
し上げたセルフケアや、ほかの事業場外資源というのですか、一般的な、社会的
な資源を活用すると、そういうものにうまくつながるような施策にしていただけ
るとありがたいと思います。

○計画課長 1点目の大企業で先進的に取り組まれている取組みが否定されるも
のであってはならないという話ですが、それは基本的にはそのとおりだろうと思
います。ただ、今回、安衛法の中でいくつか絶対に守っていただかなければなら
ない部分がありますので、そことの整理はつけさせていただく必要があると思い
ます。それであれば、今回の新しい制度の中で折合いをつけていくことは可能で
はないかと思います。先ほどおっしゃっていました産業保健スタッフのレベルで、
いろいろと病気の部分も含めて対応しているという話は、最初に衛生課長から説
明しましたスタッフのところの守秘義務という形で対応可能だろうと思いますの
で、それは今回の制度において、事業者に直に伝わらない限りにおいて、両立し
得るものだと理解したところです。
 それから、解雇、その他不利益な取扱いの関係については、東商さんからも検
討が必要だという意見をいただきましたし、そのとおりだろうと思います。この
部分は、メンタル特有の個人の事情、家庭の事情等のいろいろな部分がありまし
て、単純な労働条件の引き下げなり解雇とは同視し得ないということは、もちろ
ん認識しているところです。ただ、そこを完全に詰め切らないと、この制度を判
断できないかということではなくて、そこはまた実施までの間に十分時間をいた
だいて、我々も準備もしますし、議論もさせていただければと思っているところ
です。そういう特別な部分があって、簡単にいままでどおりのものでいけるとい
うことではないということは、そのとおりだろうと考えています。
 最後の、労働者のセルフケアは、先ほどの2点目とも絡みますが、本人の問題
が相当部分、あるいは大部分というようなことは当然あり得るわけです。そうし
ますと、いくら事業者が頑張っても十分手当できない、あるいは行政がいろいろ
なことを考えても対応できないというのはそのとおりです。まさにメンタル対策
を考える場合には、ご本人のセルフケア、あるいはそれにつなげるための気づき
を促すということは、一定の機能を持ち得ると思いますので、そのあとの対応に
ついては、絵にも直接受診もあり得ますよということで書かせていただいている
意味は、実はそういう意味合いもあります。その辺りのことについては、労働者
に対する啓発なり情報提供等についても、併せて力を入れてやっていかなければ
ならないと考えているところです。

○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○明石委員 この制度については理解していますが、これがあまねくすべての企
業に行われるのであれば、やはり十分な周知・啓発、それから準備期間を置いて
いただくことが大事かと思っていますので、その点をよろしくお願いします。そ
れと、指導制度の枠組みの中で、点線内に括弧で3つほど濃い字が書いてあるの
ですが、これはこの制度の枠組みの中であれば、この濃い字が何でこのように書
いてあるのかをちょっと読み間違える可能性があるので、ホームページ等に載せ
られるときは外すなりしていただくほうがいいのではないかと思います。

○計画課長 この指導制度のポイントが濃くなっているところですね。

○明石委員 はい。

○計画課長 わかりました。

○分科会長 ほかにはありませんか。よろしいですか。ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明やご議論と重複するところもありますが、論点整理の
項目3の「職場におけるメンタルヘルス対策の新たな枠組みについて」ご議論い
ただきたいと思います。論点整理の項目の3の(1)から(3)は、前々回の分科会で説
明いただいていますので省略させていただきます。今回は、(4)「メンタルヘルス
に対応できる外部専門機関を整備・育成すべきではないか」について、事務局か
ら説明をお願いします。

○労働衛生課長 資料4の8頁です。ここだけ検討されていないで残っていた部
分ですが、本日、最初に報告しました検討会の報告書を受けまして、論点をこの
ように整理しています。(4)のタイトルは、「メンタルヘルスに対応できる外部専
門機関を整備・育成するべきではないか」ということで、1「現状」については、
先ほど概要で述べたとおりのものです。特に嘱託産業医について、日常診療等に
おいて、いわゆる専門としている診療科が精神科、神経科である医者が1.8%に過
ぎないということで、必ずしもすべての産業医がメンタルヘルスに関する十分な
知識・経験を有していないということです。
 (2)は、これも産業医の活動が時間が限られているとか、頻度が少ないというよ
うなことで、月当たり平均勤務時間が3時間程度である、それから健診結果に基
づく有所見者の就業場の措置の検討実施を行っている割合が、平均で64.4%とい
うことで、選任されていても健診後のきちんとした対応が低調であるということ
が言われています。
 (3)ですが、健診期間の契約により、労働者の健康管理等に知識のある保健師や
心理職・カウンセラーを嘱託産業医に加えた体制として、メンタルヘルス対策を
充実させている例があるということです。2「今後のあり方」については、報告書
から抜粋していまして、事業者の選択肢の一つとして、メンタルヘルスに対応で
きるということで、産業医等で構成されて、組織内での産業医の資質の確保がな
され、医師等の間での情報共有がなされ、組織の管理者による調整や監督を担保
するような一定の要件を満たす事業場外組織、これを「外部専門機関」と呼んで
いますが、これを活用できる仕組みを設けることが適当であると。この場合、嘱
託産業医と同様の職務に責任を持って従事させるために、外部専門機関に属する、
先ほど言いましたAチーム、Bチーム、Cチームの資格者のうち、1名を総括す
る医師として、当該事業場が定めたうえで、総括する医師が主担当となり、他の
産業医有資格者との間で、事業場や個々の労働者についての情報共有などによる
連携を図りながら、産業医の職務を提供する契約を外部専門機関との間で結ぶこ
とが必要であるということで、こういった要件を満たした場合に、従来の産業医
の選任等を一部代わり得るものとして、包括的な契約を認めてはどうかというこ
とです。以上です。

○分科会長 先ほど議論いただいた内容ですが、ただいまの説明を含めまして、
論点整理の項目3の(1)から(4)までについて、全般的に質問等がありましたらお願
いします。

○労働衛生課長 すみません説明を忘れました。前回までは、検討項目3の(1)か
ら(3)までは、タイトルがメンタルヘルス不調の把握や、メンタルヘルス不調の労
働者となっていました。これは、自殺、うつ病等対策プロジェクトチームの取り
まとめ時点での表現をそのまま流用していましたが、現時点においては、今回の
新たな枠組みは、そういった不調者、精神疾患の早期発見ではないということで、
あくまでも強いストレスを持つ労働者を面接につなげるということですので、今
回の資料からはご覧のとおり、例えば2頁の(1)ですと、「労働者のストレスに関
連する症状・不調を確認する方策」や、4頁の(2)ですと、「ストレスに関連する症
状・不調を有する労働者」と表現を変えていますので、一応追加で説明しました。

○分科会長 ありがとうございました。項目3について、全般的に質問はいかが
でしょうか。よろしいですか。それでは、論点整理の項目の3については、(1)か
ら(4)のそれぞれの部分にあります「今後のあり方」で示された方法で進めたいと
思います。
 以上で、職場におけるメンタルヘルス対策については、一応議論の集約ができ
たものと思います。当分科会においては、本年7月下旬から、「機械譲渡時におけ
る機械の危険情報の提供のあり方」「職場における化学物質管理のあり方」「職場
における受動喫煙防止対策のあり方」そして、「職場におけるメンタルヘルス対策」
の4項目について、今後の方向性を議論して意見を集約してまいりました。次回
の分科会では、各項目ごとに議論して決めていただいた内容に、予算要求の内容
等を反映した資料、いわば報告書の骨子に当たるようなものを事務局で作成して
いただきまして、それに基づいて全体議論をしていただきたいと思います。
 そのほか、別の案件としまして、次回の審議会には「プレス機械の安全装置の
技術的事項に関する安全衛生規則の改正に係る諮問」と「新規化学物質の有害性
の調査結果に関する学識経験者の意見の報告」があります。新規化学物質の関係
は、労働安全衛生規則で労働政策審議会に報告するものとされていますので、例
年報告させていただいているものです。事務局におかれましては、このような方
向で進めてまいりますので、資料の準備をお願いいたします。それでは、事務局
から連絡事項をお願いします。

○計画課長 いま、座長より説明がありましたとおり、次回については、今後の
安全衛生行政のあるべき姿に関する全体的な議論に加えて、従来のものとして2
つ、1つがプレスの関係の構造規格を改正することを予定しています。その関係
で、必要な改正がありますので、そのご審議と、報告事項で化学物質の関係があ
りますので、よろしくお願いします。
 次回の分科会ですが、12月6日(月)13時より、19階にあります専用第23
会議室において実施することとしています。よろしくお願いします。

○分科会長 よろしくお願いします。それでは、本日の分科会はこれで終了いた
します。なお、議事録の署名については、労働者代表が谷口委員、使用者代表は
中村委員にお願いします。よろしくお願いします。本日は、お忙しい中どうもあ
りがとうございました。


(了)

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