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2010年10月19日 第29回 職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会

職業安定局建設・港湾対策室

○日時

平成22年10月19日(火)9:30~


○場所

厚生労働省 職業安定局第1会議室


○出席者

公益代表

征矢座長、白木委員

労働者代表

上山委員、野村委員、古市委員、山下委員

使用者代表

加藤委員、才賀委員、福田委員、室川委員

参考人

全国建設労働組合総連合 宮本労働対策部長

事務局

山田職業安定局次長、堀井建設・港湾対策室長、高松建設・港湾対策室長補佐、山建設・港湾対策室長補佐

○議題

(1)建設労働の抱える課題と解決に向けた提言について
(2)建設労働者の雇用の改善等に関する法律第14条第1項の規定による実施計画の変更認定について(非公開)

○議事

○征矢座長 定刻になりましたので、開会いたします。本日の委員の出欠状況ですが、柴田委員がご欠席です。
 最初の議題は、「建設労働の抱える課題と解決に向けた提言」について、3人の方にご説明していただきます。1人目は日本建設産業職員労働組合協議会の上山副議長、2人目は建設連合の野村書記長、3人目は全国建設労働組合総連合の宮本労働対策部長です。
 では初めに上山副議長、よろしくお願いします。
○上山委員 皆様おはようございます。私は日本建設産業職員労働組合協議会で副議長を務めております上山と申します。皆様には、日頃より私どもの日建協の活動にご理解、ご協力をいただいておりますことを、まず、この場を借りましてお礼を申し上げます。
 カラー刷りの資料があります。こちらをお手元にご用意いただきたいと思います。パワーポイントで資料を作成して、若干見にくいところもあるかと思いますが、そちらはご了承いただいて、説明をさせていただきます。
 私ども日建協では、建設産業の課題解決に向けた産業政策活動を主に担当しています。本日は、私たち日建協が取り組んでいる出前講座を中心に、「『就職先』としての建設産業の抱える課題」と題して、私ども日建協の取組みなどをご説明させていただきます。
 まず、私ども日建協の紹介をさせていただきます。私たち日建協はゼネコンの労働組合が加盟する団体で、結成が1954年です。現在38の加盟組合、3万5,000人の組合員によって構成されている組織です。私たちは、組合員のワークライフバランスの実現、建設産業の魅力向上に取り組んでおります。本日は、私たち日建協の活動の出前講座を通して、今後の建設産業の将来を担う若者の就職に対する意識、日建協の考える課題と取組みについてご紹介させていただきます。
 次の資料をご覧ください。「建設産業の現状」です。現在、若者の建設産業への入職希望者は減少しているといった声があるかと思います。新規学卒者における建設産業への入職者としては、1995年の7万5,000人をピークとして減少の一歩を辿って、2008年においてはピーク時の6割減といったデータもあります。その原因はさまざま考えられると思っていますが、やはり建設産業の魅力低下などによって入職を希望する人が減っているとか、少子化によって入職者そのものが減少しているといったことが原因として考えられます。
 次は「就職を控える学生の意識」と題していますが、日建協の活動からも建設産業に入職を希望する学生が減っていることがデータで挙げられています。これは、日建協が行っている大学生に向けた出前講座の取組みの中で、学生に建設産業への入職を希望するかどうかを意識調査した結果です。この出前講座ですが、建設系の学問を学ぶ大学生を対象としたもので、このアンケート調査に回答している者は建築系の学科であるとか土木系の学科などの学生です。にもかかわらず、2009年の出前講座での調査においては、建設産業に「就職したい」あるいは「どちらかと言えば就職したい」と答えた学生が、すべての学生の5割に満たないといった状況でした。建設系の学科を自ら選択して入学した学生にも関わらず、半数の人しか就職を希望しない。非常に憂うべき状況がこのようなデータからも見えてくるのではないかと思っています。
 次の資料にいきます。先ほどの資料の中で出前講座を取り上げましたが、ここからは少し、私ども日建協の出前講座の紹介をさせていただきます。私ども日建協では、出前講座の実施に先立って、2006年に組織内で「魅力アップワーキンググループ」を開催して、建設産業の魅力向上のために日建協として取り組むべきことは何かを討議しました。
 このワーキンググループの中で、いくつかの大学を対象としたアンケートを実施して、建設産業への就職を希望しない理由などを調査しています。その結果、学生が建設産業、中でもゼネコンへの就職を希望しない理由として、「ゼネコンの仕事の内容がわからない」といったこととか、「建設産業への誤解によって招かれた悪いイメージ」が挙げられています。そこで私たちとしても、建設産業の真の姿とか、ゼネコンの仕事を正しく学生に伝えることが必要であると考えて、出前講座の開催をすることとなりました。
 次の頁、「日建協出前講座とは」とあります。日建協の出前講座ですが、私たち日建協の執行委員と加盟組合から派遣をいただいた講師が、これまでの自分の経験などをもとにして、建設産業の役割とか、作業所においてゼネコンの職員がどのような働き方をしているか、建設産業で働くことの魅力を、プライベートな出来事などを交えながら、大学生に直接伝えるといった講義をしております。
 また、この出前講座には、建設業界団体からも協力をいただいており、日建連さんからは建設の仕事を紹介する本ですとか、インフラ整備にスポットを当てた動画をご提供いただいて、出前講座の資料として活用させていただいているだけでなく、当日、講義にも参加いただいて、学生へのメッセージなども頂戴しています。また、今年度からは、業界団体の1つ、社団法人日本土木工業協会さんからも資料提供をいただいて、この日建協出前講座を進めています。
 次の資料です。昨年度2009年度の実績として、ご覧の5つの大学で出前講座を実施しています。学科名はさまざまで、「デザイン」とか「環境」といった言葉が付いていますが、東洋大学の建築学科を除いて、すべて土木系の学科です。しかしながら、その「土木」という名前が、この学科からなくなってきていることは若干気になるなと思っています。
 ここから先は、出前講座の講義内容、実際に学生にどんなことを伝えているかをご紹介します。建築系の学科と土木系の学科では若干講義の内容を変えていますが、本日ご紹介申し上げるのは、土木系の学科を対象とした講義の内容です。
 出前講座では、「建設産業の果たす役割」「建設産業で働く魅力」「ゼネコンの職員の仕事」をキーワードに講義を展開しています。このスライドは一例で、鉄道とか道路を例に挙げることによって、インフラとはどういったものか、また、そのインフラを整備していくのが土木の仕事であることを学生がイメージしやすいように、主にこれを題材として挙げています。
 次の頁です。また、水道を例にとって、身近な生活の中で利用しているインフラの重要性とか、それに関わる多くの事業、例えばダムとか浄水場、水道管の敷設などさまざまな場面で私たち建設産業が関わっているといったことを伝えています。
 次の頁です。このような資料を題材として、建設産業の役割としてインフラ整備の重要性を説いて、インフラ整備を行って社会を支える基盤をつくることが私たち建設産業の役割であることを学生に伝えて、学生たちのいわゆる悪いイメージを払拭したいということで、このような形で進めています。
 次の頁です。もう1つのキーワード「建設産業で働く魅力」を学生に伝えています。左上に「建設産業で働く魅力を伝える」とあります。4つほどありますが、建設産業で働く魅力として、「ものづくりの喜び」「社会的役割の高さ」、日本が保有している「高度な技術力」、ものをつくり上げる「仕事の達成感」をそれぞれキーワードにして、建設産業で働く魅力、こういった魅力、こういった仕事のやりがいがあるということを学生に伝えています。
 次の頁です。また、「ゼネコン職員の仕事を伝える」をキーワードとして、ゼネコンの職員の仕事が施工管理であるということを伝えています。ゼネコンの職員の仕事は大学生にはイメージがつかないという部分が非常にあって、そのようなことから、施工管理は一体どういうことをやるのかを伝えて、入社後のイメージにつながるように努めています。
 次の頁です。このような形で、出前講座の内容について説明させていただきましたが、このような講義を行った結果、実際の学生の反応について最後に御紹介したいと思います。こちらのグラフは、出前講座の受講後にアンケートを実施したものです。そのアンケートで、ゼネコンの就職を希望する度合として、講義を聞いて「ゼネコン希望に変わった」とか「選択肢の一つとして考えてみたい」とする回答が受講者の75%から寄せられていて、建設産業で働くことをイメージすることとか、建設産業の魅力を伝えることに対しては、一定の効果があったのではないかと私どもは考えています。
 次の頁です。入職を控えた大学生の意識です。その最後のアンケートでは、同時に、大学生の入職を促進する観点での課題も浮かび上がっています。この図は、学生にゼネコンの魅力向上に必要なものは何かを問うたものですが、「労働時間の短縮、休日の確保」と答える方が非常に多いという結果が出ています。私たち日建協では、2009年11月に日建協の加盟組合を対象とした時短アンケートによって、加盟組合員の労働時間を調査していますが、その結果、作業所勤務の組合員の月所定外労働時間の平均は80時間を超えている現状があります。そのような状況を知ってか知らずか、学生は、労働時間の短縮がゼネコンの魅力向上に必要と答えています。やはり、このようなことからも、建設産業において労働時間の短縮を図っていくことが、引いては産業の将来を明るいものにするために必要だと言えるのではないかと考えています。
 次の頁です。同時に、学生の建設産業に対するイメージも調査していますが、やはり建設産業に対して悪いイメージを相変わらず有していることも明らかになっています。このイメージの中には、かなり誤解を含んだものも多く、今後も私たち日建協では、建設産業の正しい姿を伝えていくことが重要ではないかと考えています。このような観点にも十分に考慮しつつ、私たち日建協の取組みを進めていきたいと考えています。
 次の頁です。もう1つの課題、先ほど建設産業の正しい発展・明るい発展という観点からも、長時間労働の解消が必要であることを申し上げました。先ほども触れましたが、昨年11月に日建協の加盟組合員を対象に実施したアンケートによると、外勤技術者の所定外労働時間の月平均は80時間を超えている状況です。この水準は若者の建設産業離れのほか、今働いている人々の離職にもつながりかねないものではないかと考えています。また、長時間労働によって、脳・心臓疾患につながりかねない水準にもあり、何か削減していくことが必要であろうと考えています。
 この長時間労働の原因はいくつか考えられますが、その中でも、建設産業は労働基準法第36条の月所定外労働時間の限度時間の適用除外となっていることがあると考えています。適用除外産業となっている経緯などについては諸説ありますが、ワーク・ライフ・バランスの実現が謳われている昨今ですので、建設産業が適用除外産業であるべきかどうかを議論すべき時ではないかと考えています。
 また、休日、主に土曜日ですが、土曜日の出勤が多いことも、この所定外労働時間の中の1つの特徴として挙げられます。土曜日に現場を動かさなければならないことについては、私たち受注者が適正な工期よりも短い工期で工事を受注していることや、少しでも早く工事を竣工させたいといった受注者側の心理など、さまざまな理由があります。
 こういったことを少しずつ変えるためにも、4週8休で受発注を行える環境づくり、土曜日の閉所を実現できる社会を目指すことも重要ではないかと考えています。また、そういったことを目指すうえでも、その際には、建設産業に関わる多くの方々の意見を考慮して、産業としての発展を目指すことが重要であることも、同時に提案したいと考えています。
 最後に、私たち日建協の取組みを御紹介させていただきます。最後の頁です。長時間労働の解消に向けた取組みとして、まず、統一土曜閉所運動を繰り広げています。この取組みについては年2回、6月と11月の第2土曜日を統一閉所日として設定して、休むための準備を通して、休むことの重要性について組合員に再認識していただきたいというところから始まっています。
 私たち建設産労懇は、横にいらっしゃいます建設連合さん、全電工労連さん、通建連合さん、道建労協さん、長谷工グループ労組さんという仲間でこの取組みを展開しています。日建連さんからも、前回の委員会の際に、土曜閉所に取り組まれていることをご紹介いただきましたが、やはりこの取組みについては、労使一体、あるいは産業一体となって取り組むことが非常に重要ではないかと考えています。
 私たち日建協では、2002年度からこの取組みを始めて、年々閉所率が上昇していますが、加盟組合とその企業とが労使で取組みを進めてきたことも、その要因として挙げられています。日建連さん、全建さん、建設連さん、厚労省さん、国交省さんに統一土曜閉所運動についてのお願いや意見交換などをさせていただいていますが、引き続き今後もご協力いただいて、建設産業に広めていきたいと考えています。また私たちは、民間建築工事などにおいても、公共工事と同様に、4週8休でも受発注が行われる仕組みづくりに対して、今後も協力していきたいと考えています。
 以上、大変つたない説明で申し訳ありませんでしたが、日建協の取組みについてのご紹介を終わらせていただきます。従前より、皆様には日建協の活動にご理解、ご協力を賜りまして、厚くお礼を申し上げます。また、今後も皆様のお力添えをいただいて、産業の魅力向上へ向けて活動してまいりたいと考えています。何とぞよろしくお願い申し上げまして、私の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○征矢座長 どうもありがとうございました。ただ今のご説明につきまして、何かご質問等がございましたらお願いします。
○古市委員 いくつか質問といいますか、一緒に考えようという立場で発言いたします。最初に就職を希望する学生が減少したという調査結果がありまして、2008年と2009年の数字があります。69%から49%に一挙に20%少なくなったというのは、ここで何かがあってこうなのかなと。例えば、2010年の調査をして、また20%少なくなっていると30%を切ることになるので、えらいことだなと思うのが1つです。どうしてこういうことになったのだろうかということが1つです。
 もう1つは、大学の土木科という学科名がどんどんなくなっているとお聞きしております。どうして土木科という名前がなくなったかというと、学校側にとってみれば、「土木科」という名前だと要するに学生が集まらないということのようで、名前を変えて、「環境デザイン」とかにすると若干イメージがよくなるということなのでしょうが、そういうことで学生が集まるのであれば、もう名前を変えてしまえばどうだろうかと。「土木」とかいう言葉をこの産業でも使わないで、何かいい名前、学生が「おっ」と言うようなイメージの良い言葉を編みだすことも、もしかしたら役に立つかなと思ったりもしました。まだあるのですが、あまりたくさん言うと、感想を言いにくいと思いますので、とりあえず2つだけ申し上げました。
○福田委員 この出前講座は大変意義のあることで、日建連も一緒にいろいろ協力してやらせていただいています。いろいろ質問があるのですが、まず、出前講座をやるときに、前もって生徒には、どうやってこういう出前講座がありますよと知らせるのか。何か掲示板に貼るのですか。
○上山委員 基本的には学校にお任せしているという形です。こちらから講義の内容等は、先に先生方に説明させていただきまして、学生には先生から、このような講義があるので、ゼネコンに限らず、就職を希望する方については受講するようにといったアナウンスをしていただいていると聞いております。
○福田委員 受講した人の7割は建設業に対して理解を示したと。全体でどの程度の人が受講をするか。私が聞いている範囲では、たぶんそんなに多くはないのではないかと思うのです。
 先ほど古市さんからお話があったのですが、名前を変えるというのに関連して、私が初めに日建連に来て、「出前講座」があると聞いたとき、「出前講座」という名前がいかにも古くさい名前だなと思ったのです。例えば、日建協が行う建設業魅力講座とか、英語の名前でもいいのですが、まずそんな感じでイメージを作らないと、いつまで経っても古くさいイメージで、生徒がこれで来るのかなと、そんな気もするので、その辺も考えたらどうかなと。勝手な意見と思っていますけれども。
○上山委員 ありがとうございます。
○加藤委員 2枚目の裏の紙で、先ほどの「就職したい」「どちらかと言えば就職したい」は足して39.4%で、深刻なのです。やはり問題は、後ろから2枚目にある「イメージの悪さ」というのがかなり原因になっていると思いますので、実態的にこれは建設業として何か考えなければいけないのではないかと。そのイメージの悪さがすべてに対して影響しているのではないかと思って、どうやってイメージアップを図るのかというのは非常に難しいですが、これはやはり一緒に考えていかないといけないかなと思っています。
○上山委員 さまざまな意見をいただきましたので、お答えしたいと思います。まず、全建総連さんからいただきました、2008年から2009年にかけて建設産業に就職したいという人が一気に減っている原因は、ちょうどこの時期が、報道などで八ッ場ダムの話であるとか、そういったことが出た時期と重なった部分も若干あるのではないかと考えています。そればかりではなくて、デザイン工学科というのは、あまり土木というところをイメージせずに入っている学生も中にはいるようです。そのようなこともあって、若干、数字が減っているのかなと考えているところです。
 名前の話ですが、私は実は土木屋ですので、土木職というのがなくなるのはすごく寂しいなとは思うのですが、これは産業の中で考えていってもいいのかなと思いました。
出前講座という名前については、私どももご意見を頂戴しまして、是非、前向きに検討したいと思います。
 建設産業のイメージの悪さということで申し上げますと、私どもは出前講座とは別に、科学技術館で年に1回、ライブショーの中で建設産業の魅力について伝えるということもやらせていただいております。やはり、草の根的に少しずつできることを、いろいろな人たちがやっていくことが何よりも重要なのかなと考えておりまして、その中で、産業一体となって取り組むべきことも同時に考えていくことが重要と私たちは思っております。
○征矢座長 ほかにございますか。
○古市委員 すみません、いくつも申し上げて恐縮です。出前講座の名称の話が出ましたが、なかなか良いことだというふうに思っております。実は私どもは、小学校と中学校にお邪魔して、学校教育の現場で先生の補佐になって木材加工の授業をするということを全国で非常にたくさんやっております。そういったのはなかなか好評で、木を削って、薄いかんなくずがシューッと出てくるのを見て、「おじさん、すごい」となって、そういうふうにして建設業に子どものうちから親しんでもらおうというようなことをしているのです。
 ここで、みんななかなか出前講座を評価しているよという話ですが、学校がそういうのを広告して、「ああ、行ってみたいな」というふうに思った人がたぶん出席しているので、もともとそれなりに興味がある人が顔を出しているから、聞いてよかったと点数が高くなるのは、ある意味当然かなという気もするのですが。ただ、とても良い取組みだと思います。
 あちこち話がいくのですが、もう1つは、私が35年ぐらい前にこの業界に入ったときの話です。メーデーでは日建協さんと大体同じ列にいつも並びます。自分の所のことはさて置いて申し上げると、私の所はもっとレベルが低くて劣悪ですが、35年前の日建協さんのメーデーのスローガンは、「日曜日休ませろ」だったのです。35年経ったら土曜日の話になっているので、飛躍的前進と見るのか、世の中から見ると4週8休というのが当たり前のベースなわけですから、当たり前のベースからずっと遅れていると見るか。
 私が気になるのは、平均80時間残業をすることになると、例えば残業時間の1時間の賃金が非常に安い労働者で2,000円だとすると、16万円になる。3,000円の人は24万円になる。4,000円の単価の人はこうなるとか、こういうふうになってしまうと、賃金に占める残業代の割合が著しく高くて、この辺はどうなってしまうのだろうかと、ちょっと心配になりますよね。
 例えば、本来の基本給といいますか、基本ベースの賃金を引き上げようという意欲というか、そういうのはあまり起こらなくて、月給はこれでいいんだよと。残業代をこんなたくさんもらうよりも、それより休ませてくれということのほうが切実な要求にきっとなっているのだろうと思うのです。その辺のところはどんなものでしょうか。
○上山委員 やはり、組合員の中でも、残業代が一部生活費になっているという現状もあるようで、そのようなところは危惧しているところではございます。ただ、一方で、所定外労働時間を80時間行っていること自体が、健康という面でも、また当然のことながら、ワークライフバランス、生活への影響という観点からも、まずはそこを削減すべきと私たちは思っております。
 組合員の中では、80時間といった長時間労働のほうにも目を向けておりまして、やはりそこは何とか削減していきたいという声が今非常に大きくなっております。まず80時間というよくない状況というものを解消していかないと、組合員たちの生活に悪い影響しか出てこないというところから始まっておりまして、そのような認識が非常に大きくなっているといったところです。そういうこともあって、まずはこの状況を何とか解消していきたいという気運が高まっている状況であることは申し上げておきたいと思います。
○才賀委員 出前講座を全建総連は小学校、日建協は大学ということで、建専連としては、専門学校、高校、工業高校へ出前講座をやっております。その出前講座とは、例えば鉄筋のフープ、柱筋をミニチュアにして現場で組むとか、大工さんの加工、型枠をやるとか、そういうものを実質やらせているのです。とび職ですと足場を組む。そうすると、子どもたちが「こんな重いものを持ってるんだ」とか、「建設現場ってこんなことをやってるんだ」ということで、すごく魅力を感じて、中にはその場で就職したいという人もいると聞いております。また、学校の先生から、「いや、建設業ってこんなことをやってるんですか。我々は全然知らないで教えてました」というようなこととか。建設業という囲いの中に、どんな職種があるかわからないと意見をもらうことがあります。子どもたちは就職をするにしても建設業というのはゼネコンしかないんだという見方があるから、40種類も50種類もあるのですよという説明をコマーシャルベースであちこち宣伝しているのです。やはり、そういうこともやっていかれたほうがいいのかなというふうに思います。
 会員の方を見ても、高校生を受け入れる会社もあると思うのです。今ゼネコンさんは就職の窓口が大学生か院生で、スーパーゼネコンさんはそれ以下は採らないということなので、子どもたちがだんだん建設業に入らなくなっている。院生や大学生がそれほど有能なのかなと。高校生で有能な人も大勢います。その辺も、地場で就職できるような考え方を持たないと、景気もよくならないし、生徒も地元に落ち着かないのではないかと思いまして、我々建専連としては、そんなPRをさせていただいております。
○征矢座長 引き続きまして、建設連合の野村さんから説明をお願いいたします。
○野村委員 おはようございます。建設連合の野村です。日頃より建設連合の諸活動に対しまして、いろいろご指導、またご理解をいただきましてありがとうございます。
 私のほうからは、簡単なメモ程度の資料で大変恐縮ですが、これに基づきまして、建設連合の基本的な考え方、取組み等々をご紹介したいと思います。
 建設連合の生い立ちは昭和51年に当時の同盟、労働4団体時代ですので、そのナショナルセンターの1つである同盟の加盟組合の建設関連の組合と、新たに作りました組合、全体で8組合の7,500名で結成いたしました。
 その後、3年ぐらいで1万名を超えて、ピーク時は1993年、1994年ぐらいに約1万5,000名ぐらいまで組合員が増えました。その後、現在の国土交通省職員組合、当時の建設省職員組合、これは官の組合ですが、その当時、初めて民間企業と官の組合で統合して、建設連合を結成したという状況です。
 その後、厳しい建設産業の状況の中で、建設連合も組合員が減少し続けて、特に1997年、加盟組織の会社更正法申請という状況もありまして、現在、5,800名ということで、結成時を下回るような状況になりました。特に今年の9月には、加盟組合である竹中工務店の労働組合が、竹中工務店の人事諸制度の見直し等で組合を解散し、建設連合も脱退したという状況です。結成以降、最初の3年、4年ぐらいまで増えましたが、その後はずっと減少傾向が続いている状況です。
 主な組合は記載のとおりです。建設連合はゼネコンと言われる組合、あと道路舗装の関係の組合、地域地場の組合ということで、小さい組合、産別のわりには、いろいろな建設の業種の人たちが入っているというのが1つ特徴であろうかと思います。
 また、地方組織は全国9つ、北海道から九州の福岡まで、拠点と言われている所に地方組織を置いて、それぞれ活動をしているところです。建設連合の組織人員の計を見ても、いかに建設業全体の人数が減ってきているというのは、これで如実に表れるのだろうと思っております。
 2頁の「建設連合2009年・2010年度活動方針骨子」には、総論的にいろいろなものが書いてあります。次は、「活動方針に基づく具体的な取り組み」というところで、ポイントだけをメモ書きしてあります。これに基づいて簡単にご報告したいと思います。
 先ほど、日建協さんのほうからも総労働時間短縮の取組みの中で、統一土曜閉所運動をやっているということでしたが、建設連合も共に統一土曜閉所活動の実施を行っております。
ここ何年間の経緯を見てまいりますと、徐々に閉所率は高まってきております。ただ一方で、統計を取っている作業所数が減ってきています。現場の仕事、要は作業所数が減っているということは、仕事自体が相当縮小してきているということも、その数字からうかがえると思っております。
 我々の加盟組合・組合員の労働条件の取組みは連合が中心になって行っております。春季生活闘争、この中で我々も取組みを進めております。この中の1つのポイントとしては、皆さんもご承知かもしれませんが、連合は3月の第1週ぐらいに山場を置いておりますが、建設連合の場合は、それから約1カ月遅れて4月上旬ぐらい、これは日建協さんも一緒ですが、その辺に春闘の妥結の山場を持ってきております。しかし、実際に妥結をする時期というのはゴールデンウィーク明け以降、6月ぐらいまで延びているのが実態です。連合全体の春闘には、なかなか我々は乗り切れていないというのが実態だろうと思います。我々の加盟組合の春闘の妥結状況は、ポイントとしては連合全体の集計から比べると相当低いと。とりわけ一時金等は、大体連合は4カ月ぐらいが全体の平均ですが、建設連合の場合は、若干集計から除外している組合もありますが、全体では3カ月弱、2.7カ月が実質の平均だろうと思っております。全体的には、特に建設業、建設会社、ゼネコンと言われる所は賃金が結構高いと思われがちですが、我々の加盟組合、ごくわずかではありますが、その集計を見ても一時金等は相当低くなってきているのが実態です。我々もそういうことを連合を通じながら発信を現在しているところです。
 もう1点、我々が運動として重点を置いて行っているのが、労働安全衛生の取組みです。ご承知のとおり、建設業は労働災害が大変多いわけです。とりわけ死亡災害は全体の3割と。この人数は若干変化といいますか、ずっと減少傾向が続いてはおります。ただ、全体的に見ると大体3割がずっと続いている状況の中で、やはり我々労働組合としても、働く人の命は最も大事なことだという位置づけの中で、労働安全衛生の取組みを実施しているところです。1つとしては、6月に安全衛生推進大会を開催しました。これは労使、加盟組織企業と一緒に安全衛生推進大会を開催する。主催は我々ですが、企業の代表者にも来ていただく形をとっております。また、組合員ならびに実際に現場の作業所で働いている人たちに、安全というものをしっかり受け止めてもらう。安全意識の向上を図るために、安全ポスターの作成や、毎年標語を作って、それを全部ポスターや短冊にして、作業所に全部貼るという取組みもしております。また、安全衛生政策の立案を毎年しております。
 もう1点が労働災害実態調査の実施です。これは過去3年間の調査を資料として添付しておきました。これを見ますと、今年が全体で242、2008年が306、2007年が742で、若干集計組合の差異がありまして、現実にこれだけ作業所が減っているということにはなりませんが、トレンドとしては、死亡災害はこれだけ減ってきている。その背景には、1つは労働安全衛生に対する取組みが充実してきたこともあると思いますが、それ以上に実は作業所数が相当減ってきているということがあるのではないかと思っています。また、実際に労働災害に遭っている人たちはどういう人たちかというのを見ますと、二次下請・その他に集中しているわけです。やはり、労働組合のメンバーのみならず、一次下請・その他の人たちと一緒に安全衛生運動を取り組んでいくことが必要だろうという認識を持って、作業所等で啓蒙活動を実施しております。
 産業政策の関係については、先ほど委員のほうから、建設産業の役割、必要性、社会に対する発信、理解を求める取組みが必要ではないかという意見も出されていたかと思います。特に我々の場合は、連合の加盟組合ですので、連合の政策を通じながら、そういうことを発信させていただいております。私は建設連合の書記長になって20年近くになりますが、連合の政策の委員会の委員をずっとやっておりました。大体10年、15年前ぐらい前は、連合の政策の資料の中にも「土建国家からの脱却」とか「無駄な公共事業」という言葉が相当書かれておりましたので、その委員会の中で、言い回しや表現、どういう考え方でそういうものを書いているのかを一つひとつ意見交換をしながら、また会議の中で質問も出しながら、少しずつ修正しています。現在、この資料を見ると、そういう言葉の言い回し、ある意味では偏った建設業の見方の言い回しというのは、連合の資料の中でもほとんど見受けられなくなってきたと思っています。
 10年ぐらい前に私が連合のインフラの事務局長をやったときに、インフラというのは建設・資材・林産部門連絡会という連合の中の専門委員会ですが、その中の政策として、公立の小中学校の耐震化を大体10年くらい前に連合として打ち出しました。今の政府、または前の自民党政権もそうですが、そういう政策を今現実的に打ち出していただいております。やはり社会にフィットする政策をしっかり打ち出していく、時代を先取りした政策を発信していくというのも、労働組合にとって大事な活動ではないかと思っております。
 そういう状況の中で我々は、個別の取組みというのは、正直言ってそこまで至っておりませんが、建設産業が社会からしっかり認められる、ある意味では理解をされる取組みをやっていこうということで、昨年の12月と今年の1月には政府に、特にあの時期には民主党のスローガンといいますか政策の中で「コンクリートから人へ」を大々的に言われておりましたので、まず我々としてはそういう言葉の使い方はやめていただきたいと、連合の中央執行委員会の中でも話をさせていただきました。
 それを受けて当時、官邸に中山義活補佐官がおりましたので、直接お尋ねをしました。民主党としての政策なり、考え方はいろいろあるだろうけれども、正直言って我々建設業に携わる者にとっては、大変不愉快な言葉の使い方だという話をして、こういう使い方をしないでほしいと申し出をいたしました。民主党からも、「いや、そういう意味ではないんだ。そういう意図ではないんだ。」という説明も何回も受けましたが、説明を受けた翌日には、また民主党の機関紙に「コンクリートから人へ」というのが大々的に書かれている。これについても再三我々は申し入れをして、菅内閣になってからは、そういう言葉の使い方はしないと。これは建設連合のみならず、産業全体の中で、しっかり発信をしていったことが、結果に結び付いたのではないかと思っております。
 いずれにしても、建設産業の役割、必要性というものをしっかり社会に発信をしていく、理解をしていただく。こういう取組みが私は大事なのだろうと思います。新規の入職者、要は学生さんもそうでしょうが、若い人たちがなかなか建設業に入ってこない1つの理由としては、建設業に対するイメージというものがあるでしょうし、あとは労働条件です。長時間労働に低賃金。建設業は全体的に一般の製造業等に比べると、はるかに低い賃金水準であることは事実だと思います。しっかり我々が社会的な役割に見合う賃金というものを確保していくことが必要だろうと思っています。そのことが魅力ある建設産業につながり、この産業に入ってきてくれる人たちが増えてくるのだろうと思います。
 いずれにしても建設業は、いかに国民の生活の安全・安心に寄与しているか、産業インフラの構築をもとに国際競争力の強化にも寄与し、国民生活にとってなくてはならない産業なんだということを、もっと我々は声を大にして言わないと、正直言いまして、連合の仲間でさえも、わかっているようで、わかっていない。我々は建設業の中の人間ですからわかっている、周りの人たちもわかってくれているだろう、少しぐらいはわかっているだろうと思っていますが、実はあんまり、ある意味では全くわかっていないというのが実態ではないかと思っています。長時間労働は80時間を超えている。そこで災害が起きれば一発で労災ということにもなりかねないような過酷な労働条件で働いている実態を、しっかり社会に発信する。我々はこんな厳しい状況の中で国民生活の安全・安心のために一生懸命黙々と働いているのだということを発信して、理解をしていただかなければ、建設産業で働く者の賃金・労働条件も上がらないでしょうし、また、新たな仲間、新規入職者を迎えることはできないだろうという思いを持っております。
 建設連合という組織は5,800名程度の小さい組合です。これから声を大きくして社会に発信していくためには、建設業のより多くの仲間が結集をしながら、社会に対する発信力を強めていくことが必要だろう、重要だろうと考えております。
 このほかにも国民的な課題ということで、各種のカンパ活動や、我々は幅広にいろいろなことをやっております。核兵器禁止平和建設国民会議というところで核兵器の廃絶、軍縮、もう1つのポイントは原子力の平和利用ということで、原発推進という取組みを我々はさせていただいております。
また、内部の活動になりますがユニオンスクールという形で、建設労働に関するいろいろな教育なり、労働運動、労働法制というものについても教育をさせていただいております。そのほかにも共済ということで、自家共済制度を持ちながら、共に助け合っていこうということで取組みを進めております。これから建設業を魅力ある建設産業にしていくためには、産業労使一体となって社会にしっかり発信をしていく。我々の立場をしっかり明示していくことが最も重要な取組みになるのではないかと最後に申し上げて、甚だ雑駁ではございますが、建設連合としての考え方の報告とさせていただきます。ありがとうございました。
○征矢座長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、ご質問等ありましたらお願いします。
○古市委員 野村さんから、いま「コンクリートから人へ」の言葉遣いについてお話がございましたが、大変もっともなことだと思います。実は私どももそういうふうに思っております。あるとき勉強会に首相に近い副大臣を講師にお呼びしてお話をしたときに、「コンクリートから人へ」というのを言い募って政権を取ったと。与党になったのだから、もう少し考えなければいけないのだよと。要するに建設業で働く人の尊厳を傷ける言葉なんですよと。建設業で働いていることが、あたかも社会悪かの如きイメージをこの言葉は表現している。子どもたちに、「お父さんの仕事は、ちゃんと社会的に有用な立派な仕事をしてるんだよ。」ということを言ってきたのに、テレビでこういうことを言われると、「お父さんの仕事はあんまり社会的に価値のない仕事なんじゃないか」というふうになって、ますます建設業に入ってくる人が少なくなる。政権に就いたからには、そういうデリカシーが必要で、もう少し考えてもらわないといけない。こういう話をしましたところ、当時菅さんは副総理の立場で、その話をした翌日、NHKの番組に出ていまして、「コンクリートから人へ」という言葉が非常によくないと。建設業で働いている人の尊厳を傷けるという意見も聞いていると言っていましたので、そういうのが伝わって、参議院選挙のスローガンからは消えたのだろうなと。こういう間違ったメッセージが社会に出てきたときは、私たちはここで働く者として、そういうものに対してはちゃんとものを言って、訂正させていくという努力は、お互いに必要だと思いました。
 労災について発表がありましたので、少し気になってお尋ねします。これで見ると、死傷者数742人から306人、242人と急激に減ってきている感じですよね。実は今日の夕方に安全衛生分科会があるのですが、そこでは労災事故が減ったんだという報告ばかりなのです。私は、事実として労災の事故が減ったという数字が発表されることは、それはそれでいいのですが、建設投資は一番多いときから比べると半分以下になっているのですよと。工事そのものが半分以下になっているのだから、労災事故が半分になったのは当たり前ではないのですかと。そういうことをちゃんと加味した説明をしてくれないと困りますよという話をするのですが、ほとんど孤軍奮闘で「そうだそうだ」と言う人はあまりいないのです。
 建設業の場合は、労働者の事故だけではなくて、一人親方といいますか、個人就労者の労災事故というのが非常に多い。全建総連の組合員の事故を調べると、労働者の事故は半分以下なのです。私たちは現場で起こった事故を全部労働災害と言いますが、厚生労働省は賃金労働者、雇用労働者の事故だけを労災と言うのです。一人親方の数字が約半分、また、零細事業主の労災保険に特別加入している人たちの事故もあり、労働者の事故は毎年半分以下なのです。厚生労働省は労災事故が減ったと言いますが、実際はその労災事故の倍以上、全建総連の場合は死亡者も死傷者もいると。こういうことを何度も何度も強調しているのですが、「そうですか」という話になかなかなっていかないところが、ちょっと残念だなと。
 しかも、いま厚生労働省の安全対策は、目に見える事故から心の労災や受動喫煙とか、そういう対策にグーッとシフトしていくようです。労災防止指導員も現場である一定の役割を果たしているのですが、私どもは出先の現場で、労働局ともう少し労災防止指導員の数を増やそうではないかという話合いをこの夏までやっていたのですが、突然、労災防止指導員は来年3月で廃止するという説明で、一言の断りもなく、いきなり廃止をするということで、労働災害及び安全対策の取組みは、ここで言うのはあまり適切ではないかもしれませんが、どうかなという気がちょっとします。野村さん、これを見ると、労災事故が著しく減っていると見えるのですが、その辺はどうなのでしょうか。
○野村委員 先ほどもお話しましたが、集計組合に若干差異があるということです。2007年のときは竹中工務店の作業所数が入っておりました。2008年・2009年は竹中の一部の集計のみを報告されましたので、ここで大幅に激減している。この差異は竹中工務店の集計の差がこれに反映しているということです。それ以外のところはいつものデータを取っておりますので、大きく変化はありません。ですから、306、242というのは、ある程度リンクした数字です。2007年と2008年・2009年は、そういう意味ではちょっと違います。
○白木委員 トータルの従業員数は306から242の比率ぐらいで下がっているのですか。
○野村委員 そこは組合員の人数で言いますと、またここも竹中工務店の関係になるのですが、竹中さんの場合は労働組合が2つありまして、社員の組合と、我々建設連合に入っているのはオペレーターの組合、現業の組合ですので、120名ぐらいの組合員です。ですから、組合員の人数イコール竹中工務店の集計データとリンクしないということで理解をいただければと思います。我々の組合は竹中工務店の社員の中のほんの一部です。
○白木委員 2008年から2009年に306から242に減っていますよね。この減り方が全体の組合員数の減り方とパラレルか、あるいはそれ以上に減っているかどうかによって少し状況は推測できるのではないかと思います。
○野村委員 2008年から2009年の組合員は減少はほとんどありませんでしたので、これはありません。
○白木委員 実際、災害が減っているというのは考えられますか。
○野村委員 作業所数が減っているのです。ですから、この数字と、もう1つ、統一土曜閉所も作業所数で全部取ってきますから、そちらのほうで作業所数が見えてくるわけです。それを見ても減っているのです。ですから、はっきり言って、全体的に我々の加盟企業の仕事のボリュームが減ってきていることが、一番の前提にあると思います。
○征矢座長 よろしいですか。ありがとうございました。引き続きまして、全国建設労働組合総連合の宮本労働対策部長に説明をお願いいたします。
○全建総連 宮本部長 ご紹介をいただきました全建総連の宮本と申します。全建総連では労働安全衛生対策、労災問題、雇用・就労問題等を担当しているということで、今日は参加させていただきました。
 報告の機会をいただきまして感謝を申し上げます。今日は報告レジュメの「建設業での今日的な『一人親方』労働をめぐって」と、そのことの調査を行った資料をお出ししております。この調査は、全建総連が建設政策研究所という研究機関と共同で、全国の組合員にアンケートと聴き取り調査を行ってまとめたものです。その引用を含めてご説明をしたいと思います。
 レジュメの冒頭は「全建総連とは」ということであります。簡潔に活動報告と組織のあらましについて記載しております。(全建総連は)建設労働者・職人の雇用の安定、技術・技能の向上、後継者の育成、産業全体の民主化を目的に活動をしている労働組合です。1960年に7万人で結成。現在、すべての県に53の組織があり、67万7,000人の組合員がおります。いわゆる大工・左官など建設業に従事するすべての技能労働者・職人、一人親方、小零細事業主も含めて個人加盟で地域別に組織している連合体組織です。
 項目2は、最初に結論的なことを書いています。「手間請」というのは個人請負とか労務請負という意味ですが、手間請の労働者は労働法規の保護が必要ではないかということで3点書いてあります。先ほどからあるように労災事故、通勤災害、職業病などの場合、カギ括弧付きの「労働者」ですが、これは労働組合法の第3条規定の「労働者」という意味で「労働者」と言っており、こういう人たちの保護が必要ではないか。倒産による不払事件等の場合に「労働債権」として保護される必要があるのではないか。もう1点は、個人請負(手間請)といった労働に馴染む雇用保険制度の創設(特別立法も含む)での保護が必要ではないかということが書いてあります。
 調査・研究報告書の1頁の「はじめに」にありますが、建設現場で働く、多くの労働者が雇用されない就労、いわゆる一人親方と称される雇用形態であり、これが非常に増加しています。そうした一人親方労働によって現場施工が担われているという実態があるのではないか。そうした労働者の賃金・労働条件が非常に悪くなっている。それから、社会保障も含めて、保障がない働き方が、若年技能者からは魅力のない産業と映って、敬遠されるている。そういう視点から見ると、建設産業の未来が危ぶまれる状況ではないかということを問題提起した、となっています。
 項目3は、その現場における一人親方が、いわゆる手間請の労働者とひっくるめて、混同して呼称されているという現状について、何点か述べています。建設業就業者は平成21年度に517万人でしたが、いまは400万人台と言われており、建設雇用者は342万人だと総務省の労働力調査で示されています。従来から個人事業主ということで、建築工事に従事する場合と、労務提供だけで一定の指揮命令を受けて、上位企業から指示を受けて労働する場合も、すべて請負契約ということになっており、こういう人たちをひっくるめて「一人親方」と呼ばれているような状況があって、労働基準法9条規定の「労働者」の保護から外されているのが現状です。
 そういう中で調査・研究報告書の14頁に、今日的な一人親方になる動機が書いてありますが、「雇ってくれるところがないから」あるいは「人を雇えなくなりやむなく」という消極的な理由で一人親方になる人が増加しています。
 年収も経験年数に関係なく300万円台が圧倒的で、7割を占めているという状況です。一人親方労働は、注文者のある上位企業がいる場合はその指示に従って仕事をする、あるいは現場は手間請でやる、材料込みでやる、日給の日雇いという形でやるという、その時々に応じて猫の目のように変わる就労形態での就労状況にあることが、調査の中で明らかになっています。したがって、一人親方を事業者という固定概念的に捉えることにはならないのではないか。実態として労働者であれば、労働者の保護が受けられなければならないわけですが、混同されて何でもかんでも一人親方イコール個人事業主とされている問題があるのではないか。一人親方という定義そのものは、ありません。一人親方労災保険制度はありますが、一人親方の定義はないと思います。建設労働では、徒弟制度があった時代は、ここにおられる皆さんはご承知のように、「見習工」という形から入って、一人前の「職人」になって、「職人」から独立して「一人親方」となっていき、人を使う有雇事業主になっていくという経過をたどっております。これは全建総連の資料の「職人の4つの職階」ということで、ホームページの「家づくり職人の世界」に出しておりました。最近は削りました。
 そういう状況が一般的だったのです。従来から一人親方という場合は個人事業主だと理解されてきた。それから、現場で建設労働に従事しているにしても、一人親方は労働者に準じて補償されていますが、それは労災の特別加入をしているということです。この特別加入というのは任意加入で、すべての一人親方の皆さん、個人事業主の皆さんが救済を受けるという状況にはありません。一人親方労災問題は、このあとまた説明をいたします。
 (3)は、今日、建設投資が(最高時より)半分になっている、受注競争が本当に激化して、小規模事業者の倒産が非常に多くなっている、淘汰が進んでいる状況の中で、元下関係も大きく変化をしているのではないか。また、最近、労務費あるいは安全経費等の削減圧力が強まっているようで、現場では今日的「一人親方」が、増加している状況が最後の資料にあります。この資料をお作りになったのは、あるゼネコンの方です。最近の状況ということで「外注業者」と書いてありますが、外注業者が一人親方という状況です。
 報告書の110頁はゼネコンの施工形態をチャート図にしたものです。一人親方が一人親方を紹介していくというような、一人親方の重層化みたいなものも、この調査の中から明らかになっています。なぜそうなるのかということですが、コスト削減の中で、(下請事業所が)もう雇用労働者を抱え切れないということで社会保険を外して、仕事があるときだけ個人請負に切り換えられているということと、地域の工務店等も消費税問題も含めて、雇用をすることができないということで解雇せざるを得ない。そして自分自身が一人親方、個人事業主になっているという、そういった面から個人請負の労働者が増加しているのではないか。これらをすべてひっくるめて「一人親方」と呼称されている実態にあるということです。
 一人親方の労災保険(第2種)は、労災保険に入っている方は(統計上)わかるわけですが、一人親方そのものを数字で確定することは困難です。先ほど言ったように、誰をもって一人親方というのか定義や基準はありません。ただし、労災保険の特別加入者ということから、推計というか一人親方の数を把握する1つの指標になるのではないかということで、下の表を見ていただきたいと思います。上の表は厚生労働省の事業年報から出した数字で、下の数字は全建総連の一人親方の加入状況です。建設従事者の減少の中にあって、加入者が急激に増えていることを見ても、こういうことが証明されるのではないかということです。(2)は飛ばして(3)に移ります。
 右に表があり、一人親方であれば労災保険制度に特別加入できます。ただし、この特別加入制度は、あくまで労働保険事務組合を通じて任意加入ができるということですから、労働保険事務組合に入らなければ加入できないということで、漏れている未加入の一人親方、あるいは個人請負の労働者が相当いるのではないかという想像もできます。
 また、労働災害に遭ってから初めて「何とかなりませんか」いうことで組合を訪ねてくる場合が一定割合存在しているのも事実です。特別加入者の医療給付は労働者と同じですが、休業補償等については右の自ら選ぶ掛金によって異なるということです。右の表は5,000円からしか書いてありませんが、最低は3,500円、そして4,000円というのもあります。ただ組合としては、そういう低い選択をしないように5,000円から書いているのが現実で、こういう表現をしてあります。
 全建総連の状況が一番下に書いてありますが、2009年度の平均の選択は、一人親方だと6,000円弱、事業主だと7,000円強という選択をして、実際の生活給付に届くような金額を選べない現実があるということについて、ご理解いただけるのではないかと思います。
 項目5は、自営工事の安全確保と補償の関係についてです。労災保険徴収にかかわって事業者の自営工事については、いままでは元請として請負一括の労災保険で適用されていたのですが、元請ではなく、建主あるいは発注者ということになり、労災の元請責任がないということになりました。販売目的で建設工事を行う場合、買主が決まっているか、途中で決まる場合、安全衛生法上の元方責任はあるが、労災補償責任はないということになりました。
 では、誰が元請になるのかというと、建売等を行う企業から最初に請け負った事業者が保険料を負担することになります。そうなりますと、最初に請け負うのが一人親方だったり個人事業主だったり、いろいろな形で個別発注になるものですから、元請がいっぱい出てくることになり、果たして安全確保がこういう形でできるのかという問題意識を持っております。平成20年4月17日に国を訴えた裁判があって、国が負けて控訴を断念して確定したということで、徴収課長通達も出されております。
 この中で、多くの建設現場では、実際にメーカー等が直接建築大工等に発注をしているという状況ですから、建築大工が結果として元請になってしまうということがあるわけで、直接発注を受けた所が労働者と規定されれば、もちろん労働者として労災補償されるわけですが、そういう場合はほとんどありませんで、一人親方ということになり、この一人親方が結果的に請負一括の労災保険に入らないと、自分が連れてきた、あるいはたまたま自分が頼んだ方が事故に遭うということになれば、労災責任だけではなく、民事上の責任も問われる。そういう方は年収300万円台の人ですから、もともと民事賠償能力などは全く持っていないわけです。そういう不安が広がっています。この不安を解消するためには、もちろん制度改定が必要ですが、当面の策として全建総連としては、労働者を雇用することを想定して労災保険加入を指導しているところです。この現状を根本的に打開するには法律改定が必要ではないか、という問題提起をしております。
 6は、労務提供しかしていない方が一人親方とされ、先ほどから言っておりますが、労働者としての保護が得られていない、労働基準法9条から外れてしまうということです。こういう方が、18歳でも一人親方労災保険に入りたいと組合に来たということで驚いたことがあります。18歳ですから親方ではないのです。そういう方が請負契約ということで、本人は全く(事業主とされる)認識がない。労働者なのか請負なのかも、口頭契約といいますか、口頭で言われるだけですから、非常に曖昧な労務請負状況になっており、災害が起こってから初めて自分が労働者なのか、労働者ではないのかということになるわけで、これではこの業界で安心して働くことができないのではないか、こうした災害リスクを排除する必要があるのではないかと思っております。全建総連は、個人請負というか手間請の労働者が事故を起こした場合、労働者性判断とは別に一人親方労災保険に入りなさいという呼び掛けを行っております。
 しかし、労働者に一人親方労災保険に入れということは、結果的に労働者と認定をされたときには、保険料は二重払い状況になるわけです。この二重払いを放置するということになり、ここも根本的に改める必要があるのではないかと思っております。
 (2)労災補償に関わる判断ですが、事故が起こってから決められるということで、厚生労働省からは、昭和60年の労働基準法研究会報告、「労基研」報告と言っておりますが、昭和60年と平成8年の報告によって総合的に判断するとご回答いただいております。
 総合的に判断するのはいいのですが、総合的な判断は、人によってもさまざまな判断があるわけで、この人を労働者にするか労働者にしないかは本当に曖昧というか、そういう問題が横たわっているということで、労働者として給付をされない、特別加入にも入っていないということであれば、健康保険にまわって来る、あるいは現金で支払う、これは労災隠し等にもつながるのではないかと考えております。
 (3)は、アスベスト等の労災認定というのがありますが、職業性疾患であれば、最終ばく露事業所の労災番号を使用することになっており、アスベストなどは、ばく露から30年から40年という期間を経て認定ということになるわけですから、大体労働者のときにばく露をしている。しかし、その被害を労災として申請する場合は、一人親方であったり、事業主であったりという場合になるわけです。そうなると先ほど言ったように、一人親方だと、5,000円ランクだと8割給付で4,000円ですから、1カ月12万円ぐらいの補償しかないという状況になっているわけです。じん肺法と書いてありますが間違いで、じん肺症等での労働基準法の基発51号通達になりますが、この通達によって労災の対象となる労働者期間は、全就業期間の半分以上でなければ駄目だという通達があります。これは一人親方や事業主の期間が長かったら給付されない場合もあるわけです。この補償課長の通達から裁判もあって、課長補佐の事務連絡が出されました。この事務連絡は、労働者の時にばく露していれば、それは労働者としての給付にしましょうといった中身になっており、一定の改善がありました。しかし、その労働者期間というのはどのように認定するかというのが、また争点になるわけです。
 (4)は、手間請の不払い等の債権を確保できないという悩みがあります。これは労働債権として認定されないということで、労働債権として認定されない状況は生活賃金も確保されないということになってくるわけで、多くの債権が労働債権と認定されれば「賃金確保法」の適用が受けられるということで、立替払いが実現するわけです。これは国会質疑で、(労働者かどうかは)実質が雇用関係であればいいという民事局長答弁もありましたが、これも本当にすべて自然に救済を受けることはありませんで、我々の組合が関与して話合いをして救済するという状況になっております。ただしその場合でも、その実態・実質をどう判断するのかが問題になってくるということで、(労働債権かどうかは)天と地の違いです。
 (5)は、企業による労務費や安全経費の削減圧力がかなり強まっているという状況で、小規模な下請事業者が負担感を強めております。労災のメリット適用を受けている場合に、現場監督から「この現場は事故はないよね」と言われますと、事故があっても、事故は届けられない。届けたら自分の仕事はなくなる「元請への配慮」が行われ、まさに労災隠しが起こるのではないかということです。今現場から、各県連の組合から言われているのは、新規入場の際に、自分は雇用されているが、一人親方の労災番号を持ってこいと言われるのだと。それはなぜかといえば、やはりメリットに影響するわけです。「メリット率」というのが下のほうの※に書いてありますが、メリット率というのは労働安全の実績に応じて一定の範囲内(±40%)で労災保険を増減させるもので、厚生労働省としては、「メリット率の拡大は労働災害防止のインセンティブに繋がる」とされてきました。私どもは労災隠しを助長するものではないかということで反対しましたが、結果的に40%ということになっております。そういう状況がありますので、適切な行政指導が求められるのではないかと思います。
 最後に7ですが、雇用保険の創設について記載をしてあります。手間請と言われる労働者は労働者保護が必要なのだということは申し述べてまいりました。現在の雇用保険法では、雇用されていることが条件になります。雇用保険法が改正されましたが、それでも31日以上の雇用ということが条件になっていますので、実態は日々雇用、あるいは雇用主を転々と渡り歩くというのが半ば実態で、こういう方は仕事がなくなっても、どのようになっても雇用保険が出ないわけです。ですから、現状の雇用保険制度を適用することは非常に困難なわけです。実態はハウスメーカー等で専属的な仕事を長年やっていても、労働者的に働いていても、雇用は一切されず、請負契約でやるわけですから、これも適用外だと。また、契約という意識もないままに、今月の取り分はこれだと言われ働いてくる、いつの間にか自分の就労形態がよくわからなくなる。結果として事故が起こったときに、「あいつは労働者じゃないよ。うちは契約でやっているのだから」と言われますと、保護から外されていくという事例が、いま頻発しつつあります。こうした労働者を支える制度が必要なのではないかというのは、この間ずっと厚生労働省にも要請をしているところです。ほかの○は重複しているところですから申し上げませんが、雇用保険で何らかの制度ができないものかということを考えております。
 最後にこの報告書の164頁から見ていただきますと、聴き取り調査の回答者の声が載っております。生活上・仕事上の要求や改善の声が出されております。後ほどお読みいただき、一人親方と称される個人請負就労者の権利拡大、権利保護という視点でルールある建設産業、若年労働者、若年技能者が育つような魅力ある産業に、是非していただきたい。そのために全建総連も努力をしますし、関係各位の皆さんのご努力をお願いしまして、全建総連の報告とさせていただきます。ありがとうございました。
○征矢座長 どうもありがとうございました。それでは、ただまいまの説明に対してご質問、ご意見等があればお願いします。
○加藤委員 一人親方と個人事業主と2つあるのですが、個人事業主のほうが抜けてしまって、一人親方だけを強調しているように思うのです。事業組合でも、一人親方と個人事業主では入り方が違うわけです。その辺はもう少し区別していただきたいと思います。
○全建総連 宮本部長 いわゆる一人親方というのは個人事業主と、手間請(労働者)という部分と両方に分かれるというか、両方の働き方を持っているという意味なのです。労災保険は、一人親方労災保険というのは第2種ですが、事業主の特別加入は第1種で、年間100日以上労働者を雇用する場合に、第1種事業主特別加入に入ります。通常は一人親方労災に入っているということでの、契約形態ですから、個人事業主と労働者、我々とすれば労務提供、体で稼ぐというか、そういう方たちと分けて救済される必要があるのではないかと言っているところです。
○加藤委員 例えば110頁に組織図がありますが、A氏・一人親方、その下に一人親方、さらにまた一人親方で日給1万円と書いてありますが、こういう形態になってくると、これが日給1万円という形態であるならば、彼らは実質的には労働者ではありませんか。
○全建総連 宮本部長 そうですね。
○加藤委員 ですから、この表現が実質的に適用されるのは、左側の一人親方に雇用されている一人親方3人というのは、一人親方ではなくて、実態的に労働者ですね。
○全建総連宮本部長 そう思います。
○加藤委員 その辺の表現が理解できないのです。もう1つは、この報告書の10頁の「都道府県別の一人親方数・割合」で、東京都の17.5%が非常に多いなと思ったら、これは単なるアンケートをとった回収率の話で、東京は多く配って、回収率が良かったからそうなってきたので、実態でいうと、右側の表の1-12の国勢調査・2005年によると、「雇入れのない事業主数」で、例えば水道屋や経師屋で、もとから家内労働で1人でやっているところもいっぱいあるはずで、建設業が実態的に11.3%、これだけ本当にいるかなというのが私たちの感じなのです。とてもではありませんが17.5%というのは。左側で読んでいくとわからないのは、総計で度数が10頁で884になっているのですが、9頁のアンケートの回収数が893で、この数字と違うので、どこから出てきた数字かがよくわからなかったのです。
○白木委員 たぶんこれは県を回答していない人を別計としていないからです。県名不明の人が9人いたということです。それを書いておいたほうがいいですね。
○加藤委員 そういうことですか、わかりました。
○全建総連 宮本部長 ご質問の中で、東京あるいは首都圏が多いというのは、全建総連の組織は首都圏が圧倒的に多いわけで、東京は15万人ぐらいおり、組織率は3割以上です。地方へ行きますと、組織率がかなり低いという関係があって、実際に度数も多いということでアンケートを配付をしていることから、どうしても首都圏の数字がこういう数字になって出てきていると思います。
 それから、ゼネコンの重層下請形態は、一人親方が一人親方を呼んでくるという形だろうと思います。先ほど労働者ではないかというお話がありました。まさに労働者に近い、労働者的な就労形態にあると理解しておりますが、契約形態で判断して、一人親方という形になっています。
○加藤委員 実際は事故が起きるとどういう雇用形態だったか、請負形態だったかを調査されて、それをもとに労災の適否が判断されますね。
○全建総連 宮本部長 そうです。ですから、労働者という判断があれば、そのまま救済されますが、一人親方で事業主だという判断になったら、労災保険の給付はないわけです。事故が起こってからそういうことがあるというのが問題ではないか、ということを言っているわけです。
○福田委員 私の記憶が正しいかどうかわかりませんが、先般、国会で一人親方の問題が取り上げられて、一人親方は労災を受けられないという質問をされたと思います。これを見るように、任意で加入していれば労災はきちんとなっている。保険というのは任意で加入する部分もかなり多いのではないかと思っていますが、その辺は元請も努力しなければいけないだろうと思います。保険に加入する努力をこれからしていかなければいけないのかと思います。今全建総連は任意に入る指導をしているとおっしゃっていましたが、具体的にはどのようなことをやられているのですか。
○全建総連 宮本部長 ポスターを作成しております。それから、各県の組合には必ず労働保険事務組合があります。毎年3月に更新時期がありますから、その際に一斉に呼びかけたり、建設国保を運営しておりますので、建設国保で雇用の証明ができる場合は、持ってきなさいと。雇用の証明を持っていない、雇用されていない方については、一人親方として入ってくださいという指導をしている組合もあります。そういう指導を行っていますが、どうしても漏れてしまうのが現実です。
○古市委員 補足ですが、建設国保という国民健康保険を運営しています。その中で保険料をどうやって算定するかというと、おおかたの組合は事業を行っている人は保険料が高く、雇用されている人は保険料が比較的安いのです。雇用されていることを証明するには、自分の事業主の雇用証明を出すのですが、そういう人は労働者の保険料ランクになっており、事業を行っていると自分が申告する人は、いちばん高い保険料ランクに設定されます。雇用証明を提出することができない人で、事業を自分が行っているという自覚もない人は中間の保険料を支払うことになっています。
 昔は一人親方と呼んでいましたが、事業主ではなく、なおかつ雇用証明を提出することができない人という保険料ランクがあります。このランクの溜りがどんどん大きくなって、組合によっては、雇用証明を提出することができなくて事業を行っているという自覚がない人のグループがどんどん多くなって50%を超えています。そこの保険料ランクに位置する人には、年に1回保険証を切り換えますので、そのたびごとに労災保険の特別加入の番号を確認して、入っていない人には加入勧奨を行います。
 最初から一人親方的な、つまり雇用されないで働く労働者は、私たちの労働組合に加入する場合は、労災保険の特別加入は任意加入ですが、ほぼ義務化しているという組合も複数ありまして、労災保険の特別加入は任意加入でありながら、なるべく加入してもらうという加入勧奨を非常に強く行っています。
○加藤委員 ゼネコンはほとんどそうだと思いますが、事故があってはいけないのですが、あった場合に備えて労災の上乗保険を掛けています。どこでもそうだと思います。労災で填補されない、例えば障害を負ったとか、最悪の場合は死亡した場合に、労災以外に填補しなければいけないものですから掛けています。現場に来た人たち全員を数えて、年間でトータルの人数でいくらと保険料率が決まっていて、それに対して保険料を支払っているわけです。
 ところが、一人親方あるいは個人事業主で特別加入されていて、労災認定されれば保険が給付されるのですが、一人親方・個人事業主で特別加入していないと、労災にリンクした保険給付だから、特別加入してお金をかける保険からも漏れてしまうわけです。ですから、明らかに個人事業主あるいは一人親方で特別加入しているから、すなわち労働者ではないとは言い切れなくて、実際の雇用形態は、明らかに個人事業主や一人親方だという方については入っていただかないと、私たちが掛けているお金も全部無駄になってしまうわけです。その辺をご理解いただいて、組合も未加入の人たちについては頑張ってやっていただきたいというのが、私たちの要望です。
○古市委員 よく理解しております。ですが、法律上は任意加入制度ですから、これを強制するのは、一方で非常に厳しい法律違反だという指導もあったりするのです。労働組合は労働組合法の下でやるわけですが、それでもメンバーに入る人を全部労災保険の任意加入の制度に強制加入させるのはなかなか難しくて、非常に苦慮しています。それでも相当強く特別加入の勧めをしています。
○福田委員 あの人は加入してなかったので、とんでもないことになったという実態を報告してあげるといいかもしれません。そういうこともしないといけませんね。
○古市委員 組合の機関紙を見ると、そういうことをいつも書いています。要するに、不幸にして事故に遭ったのだが、ちゃんと労災保険を掛けていたから、こういう給付がされましたということを、機関紙を発行するたびに、いつも報道するようにしていて、そういうことを一生懸命やっています。
 しかし、先ほどから話をしているように、今日は労働者なのだが、明日は労働者ではない、明後日はまた労働者になるという働き方なのです。先ほど部長が言ったように、労災保険の二重払いが日常的に発生しているわけです。本当は労働者の期間は労働保険の特別加入をする必要はないわけですが、継続して1年間は保険料を払いますので、そういうことが日常的に行われているわけです。上乗補償の話もありますが、上乗補償ではなくて、本体の矛盾の解決も役所には頻繁にお願いしています。
 一番困るのは、自分が労働者なのか事業者なのかがわかっていないということです。事故が起こってから初めて調べられて認定されて、本人は労働者だと思っていたのに「あなたは事業主です。何もありません。」ということになるのが一番困るわけです。日本医師会が今年の冬に、労災隠しをなくすために労災保険の被保険者証を発行すべきだと。そうすると、労災の未加入や給付がされない事例、労災隠しが減るはずだから、自分が労災保険の給付を受けられる人間なのだということがわかるように保険証を発行すべきだという提言をしており、ある審議会で私も意見を申し上げましたが、担当局長は「そうですね、わかりました」とは言いませんでした。
○征矢座長 少し時間が経ちましたので、この辺で次の議題の「建設労働者の雇用の改善等に関する法律第14条第1項の規定による実施計画の変更認定等について」に移りたいと思います。
~非公開~
○征矢座長 以上をもちまして、本日の委員会は終了いたします。本日の会に関する議事録署名委員につきましては、労働者代表は上山委員、使用者代表は加藤委員とさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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