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2010年7月20日 平成22年度第3回目安制度に関する小委員会 議事録

労働基準局労働条件政策課賃金時間室

○日時

平成22年度7月20日(火)
15:00~16:45


○場所

厚生労働省専用第18、19、20会議室(17階)


○出席者

【公益委員】

今野委員長、勝委員、野寺委員、藤村委員

【労働者委員】

石黒委員、田村委員、團野委員、萩原委員

【使用者委員】

池田委員、小林委員、高橋委員、横山委員

【事務局】

八田勤労者生活部長、畑中勤労者生活課長、山本主任中央賃金指導官
瀧原調査官、伊津野副主任中央賃金指導官、平岡勤労者生活課長補佐

○議題

平成22年度地域別最低賃金額改定の目安について

○議事

第3回目安に関する小委員会
(第1回全体会議)

○今野委員長
 ただ今から第3回目の目安に関する小委員会を開催いたします。まず始めに、前回の小委員会で高橋委員、池田委員、藤村委員から御依頼のありました資料について、事務局から説明をお願いします。

○畑中勤労者生活課長
 それでは、御説明します。お手元に第3回目安に関する小委員会資料一覧がございますが、まず、資料No.1から御説明申し上げます。生活保護と最低賃金の乖離額変動の要因分析でございます。その表の見方ですが、例えば、北海道につきましては、右から3列目に3円という数字がございますが、これは乖離額が拡大した数字であります。平成19年度データと平成20年度データで比較した要因分析です。その右隣の2つがその要因となります。1つ目が住宅扶助の実績の変化による影響額が1.6円、それから可処分所得割合が0.859から0.857へ変動したことによる影響額が1.9円、若干、端数処理の関係で足した数字というのは3.5となりますけれども、こういう見方をします。
 青森県については、特に乖離額は広がっておりませんでした。ただ、要因分析としては、住宅扶助の影響額というのは、-1.5円、可処分所得割合の変動による影響額が1.6円という額になります。網掛けの乖離のあるところだけ御紹介します。
 宮城県については乖離拡大分が3円となっていますが、住宅扶助の影響額は1.8円、可処分所得割合の変動による影響額は1.7円となっています。
 秋田県は5円となっていますが、住宅扶助の変化による影響額が4.5円、それから可処分所得割合が変動したことによる影響額が1.5円です。
 埼玉県は4円の乖離拡大がありましたが、住宅扶助の実績の変化による影響額が1.7円、可処分所得割合が変動したことによる影響額は1.9円です。
 千葉県は5円ですが、住宅扶助実績の変化による影響額は4.0円、可処分所得割合の影響が1.8円です。
 東京都は5円ですけれども、住宅扶助実績の変化による影響額は2.9円、可処分所得割合の変化が2.2円です。
 神奈川県については、乖離拡大額が4円、住宅扶助実績の変化による影響額が1.8円、可処分所得割合の影響が2.3円です。
 次に京都府ですが、乖離拡大額は9円で、住宅扶助実績の変化による影響額は7.1円、可処分所得割合が変動したことによる影響額は1.9円です。
 大阪府は5円ですが、住宅扶助実績の変化による影響額は3.2円、可処分所得割合が1.9円です。
 兵庫県は6円の拡大額ですが、住宅扶助実績の変化による影響額は4.3円、可処分所得割合が1.8円です。
 広島県が6円の拡大ですが、住宅扶助実績の変化による影響額が4.2円、可処分所得割合が1.7円となっています。
 続きまして、資料No.2ですが、昨年と今年の賃金分布の推移でして、賃金分布がどのようになっているのかを表したものです。実はこの資料ですが、1つの資料を作成するのに時間が掛かりまして、4県分しか作成できませんでした。大変恐縮でございます。主立ったC、Dランクから2県ずつ代表的なものを選定し、作成させていただきました。代表的と申しますのは、最低賃金額に張り付いている状態が顕著な県とそうでない県、それぞれ1県ずつC、Dランクから取り出しています。いずれも短時間労働者の賃金分布です。まず1枚目は北海道です。北海道は平成20年に最低賃金額が13円引き上がりましたが、それに伴いまして、グラフが10円単位で表しているのですが、棒グラフが1本分右にシフトした形になっています。続きまして、山梨県ですが、山梨県は短時間労働者の賃金があまり最低賃金に張り付いていない県として出していますが、御覧いただきましたように、山梨県の場合は、11円引き上がっていますが、その11円引き上がった影響というのがこのグラフからは顕著には読み取れない状態であります。続きまして、Dランクの沖縄県ですが、沖縄についてはやはり、最低賃金額に張り付いている状況です。沖縄県は平成20年に9円の引上げが行われました。その関係で、棒グラフが1つ右にシフトした状況がうかがえます。同じDランクではありますが、最低賃金にあまり張り付いていない佐賀県についても、これも御覧いただきますと、佐賀県でも9円の最低賃金引上げが行われましたが、あまり顕著な賃金分布のシフトというのが行われていないという状況がうかがえます。
 続きまして、資料No.3、最新の経済指標の動向です。1枚おめくりいただきまして、まず経済指標の動向ですが、2010年の1~3月期で1.3%、年率換算いたしますと5.4%の経済成長となっています。これは1年前の2009年1~3月期から比べますと大きく改善されている状況です。それから生産指数ですが、鉱工業生産指数ですと2009年の3~5月にかけては軒並み前年同月比で-30%程度で推移していましたが、今年の3~5月ですと前年同月比で+20~30%程度の推移となっています。それから、第三次産業活動につきましても、2009年はマイナス推移でしたが、2010年の2~4月ですと、いずれもプラスで推移している状況です。それから企業収益ですが、2009年の1~3月期、2010年の1~3月期を比べますと2009年1~3月期は全ての企業規模においてマイナスとなっています。それに対しまして、2010年の1~3月期企業規模計で前年同期比で+163.8%、企業規模の大きいところでは、企業収益の前年同期比で+360.1%となっており、小さいところでも70.5%の改善となっています。それから企業倒産ですけれども、2009年と2010年の比較となっていますが、2010年は4~6月いずれも前年同月比10数%のマイナスとなっています。それから商業販売ですが、こちらも前年同月比でみますと2009年はほとんどマイナスという状況となっていますが、2010年3~5月は商業計、卸売業、小売業いずれもプラスに推移しているという状況です。それから個人消費ですが、個人消費の方は2009年では二人以上の世帯が3~5月いずれもマイナス、うち勤労者世帯はむしろプラスとなっています。2010年では3月は二人以上世帯のうち勤労者世帯のいずれもプラスとなっているが、4、5月ではいずれもマイナスとなっている状況です。業況判断ですが、2009年、2010年いずれもマイナスですけれども、マイナス幅がやや縮小している状況です。それから中小企業庁が行った中小企業景況調査による中小企業の業況判断ですが、こちらも2009年、2010年も依然としてマイナスですが、マイナス幅が若干縮小しているという状況です。それから賃金ですが、現金給与総額の前年同月比でみたものです。2009年3~5月はマイナスでしたが、2010年に入りましてプラスになっております。労働時間の方も2009年3~5月は所定内労働時間、所定外労働時間のいずれも前年同月比でマイナスとなっていますが、2010年3~5月については所定内労働時間もやや増えて、所定外労働時間についても一般労働者の方は二桁台の伸びとなっています。続きまして、経済成長率の動向ですが、先ほど御紹介しましたように、名目の経済成長率が2010年の1~3月期は1.3%で、年率換算で5.4%となっております。それから経済見通しですが、内閣府年央試算の6月のものですが、経済見通しとして名目国内総生産は2010年度で1.6%という数字になっています。なお、日本銀行の経済見通しとしましては、実質の国内総生産として出されていますが、2010年度の見通しは2.5~2.7%であります。続きまして地域経済動向ですが、こちらにつきましては、1番右下の蜘蛛の巣状のグラフのところがわかりやすいかと思います。こちらを御覧いただきますと、点線が今年の2月の調査結果となっています。それに対して、太線が今年5月に行われた景況調査の結果でして、1番外側の枠が「持ち直している」、2番目に外側の枠が「持ち直しの動きがみられる」、3番目は「持ち直しの動きが緩やかになっている」4番目が「下げ止まっている」、1番奧が「悪化しつつある」というグラフですけれども、いずれも前回2月の調査よりも5月の調査の方が景況判断が改善しております。特に南関東地方での改善が著しいですけれども、ただ、四国地方だけが若干悪化したしたとの結果になっています。沖縄県は依然として厳しい状況ではありますが、「下げ止まった」という状況に改善してきています。
 続きまして、地域経済動向を詳しくしたものが、次頁でございます。こちらは前頁と同じ内容となっていますので、省略させていただきます。
 それから主要指標の動きをみていただきますと、鉱工業生産指数ですが、こちらについては平成21年10~12月期と比べると平成22年1~3月期は速報値ではありますが、全国的には若干改善したという結果になっています。ただ設備投資計画の方は依然横ばいとなっています。大型小売店販売額ですが依然としてマイナスではありますが、若干の改善がみられるところであります。新設住宅着工戸数ですが、こちらもまだマイナスではありますが、若干の改善傾向が伺えます。有効求人倍率はいずれも改善している状況です。ただ完全失業率の方はやや高くなってきている状況がうかがえます。
 最後の頁ですが、これは内閣府の分析結果です。トピックとして掲載していますが、個人消費の持ち直しの傾向がみられるということと、多くの地域で雇用の持ち直しの傾向がうかがえるという記事が紹介されています。
 以上です。

○今野委員長
 ありがとうございました。それでは資料について御質問はございませんか。

○高橋委員
 資料1の要因分析についてですが、すべての都道府県について、とりわけ住宅扶助で2桁変動の県があります。特に島根県等がものすごく変動していますが、このように変動するのはどのような要因で変動しているのか、現在わかっている統計結果などでわかる資料等はありますか。

○平岡課長補佐
 今のところ分かる情報としては、そもそも住宅扶助を受けられている方ですが、公営団地に入っていない人が増えている、また、平均の家賃が高くなっている、ということが主な要因なのではないかと考えられます。

○高橋委員
 大きくマイナスになっている県の要因はなんですか。

○畑中勤労者生活課長
 それはまだ完璧に分析できている訳ではありませんが、おそらく島根県にしても、山梨県にしても、統計の母数が非常に小さいものがあり、住宅扶助を受けている人が少なく、年によって変動幅が大きいのではないか。母数が少ないところは相対的に高くなるのではないかと考えています。

○今野委員長
 マイナスにブレるということですか?

○畑中勤労者生活課長
 そうです。おそらくデータの母数の関係で変動幅が大きくなっているのではないかと考えています。

○今野委員長
 他に質問はございませんか。

○小林委員
 生活保護の資料NO.2について、可処分所得割合の変動は、社会保険料の増加が要因という理解でいいですか。

○畑中勤労者生活課長
 そうですね。基本的に税金と社会保険料です。沖縄県の最低賃金額が9円上がった影響で社会保険料も上がったと認識しています。

○小林委員
 税金と社会保険料のどちらが割合として大きいのですか?

○平岡課長補佐
 主に税金の方が割合としては影響が大きいです。補足ですが、社会保険料というのは、厚生年金の保険料率が毎年上昇している状況です。社会保険料の場合ですと、健康保険と厚生年金については標準報酬という形で等級制になっているため、今回は等級の変動はなかったが、厚生年金の保険料率が毎年上昇しているのが影響していると考えています。

○今野委員長
 標準報酬のブラケットが上がる可能性というのはありますか。

○平岡課長補佐
 可能性としてはあると思います。昨年0.864から0.859にブラケットの変更があった年なので、今年ブラケットが上がる可能性はないわけではないですが、もうしばらく余裕はあります。もちろん今年の上げ方にもよります。

○高橋委員
 ちなみにどれくらい上がったら上のブラケットに上がるのですか。

○平岡課長補佐
 今、手元に資料がないため、もしよろしければ、次回に出せるものがあれば出したいと思います。

○高橋委員
 住宅扶助について、プラスにもマイナスにも出るということが確認されたと思いますが、そういう数値を勘案するのはどうなのですか。乖離解消が住宅扶助の数値変動によって、解消したものがまた乖離が発生するというのは使用者側として、あまり好ましいことではないと思います。今、この場ですぐに、ということではないが、住宅扶助について改めて話し合いたいと思います。

○田村委員
 生活保護との乖離解消については、生活保護を最低賃金が上回ることを最優先するべきであると思います。最低賃金が生活保護を上回るのが前提条件としてあって、その上で最低賃金を生活できる賃金へとすることを目標とすべきであるということを主張します。

○今野委員長
 前回の労使からの主張について、追加があればどうぞ。
 それでは、ないようですので議論に入りたいと思います。まず、前回労使からそれぞれの目安についての考え方を表明していただきましたが、こちらで双方の考えを整理しましたので、最初に御紹介したいと思います。前回の両者の見解を整理させていただきますと、論点が労使ともに大きく分けて2つありまして、1つ目は雇用戦略対話の合意を踏まえた議論について、2つ目に生活保護との乖離解消についてです。前者についてですが、労働者側からは、最低賃金引上げについての具体的な目標が掲げられているため、その達成に向けた着実な一歩となるような目安を具体的に示すべきであり、雇用戦略対話では、できる限り早期に全国最低800円を確保することとなっていますので、この点については、今年度をスタートとして3年程度でこの目標を実現することが必要であり、とりわけ全国最低800円との乖離が大きいC、Dランクについては、この目標プラス大幅な引上げを行うべきであるという主張をされております。この点について使用者側からは、雇用戦略対話の合意は単に数値目標の部分だけを取り出すのではなく、前提条件の4つの事項すべてをパッケージとして合意されたものであり、数値目標だけを取り出して検討はできない。とりわけ2020年度まで平均で名目3%、実質2%を上回る成長がパッケージとしてあるので重要だということです。多くのエコノミストは当面の間は達成が極めて困難であると言っています。また、中小企業の生産性は停滞ないしマイナス傾向であり、中小企業の具体的な支援策も決定されていない中で最低賃金だけを引き上げれば中小零細企業に対する影響は計り知れず、地域雇用情勢にさらなる悪化を招くおそれがあるという主張をされました。
 生活保護との乖離解消については、労働者側からは、昨年は、乖離幅の大幅な拡大や経済危機を受けて緊急避難的に解消ルールの見直しはやむなしとしたが、今年は経済状況も改善しており、既存の解消ルールに則って速やかな解消をはかるべきであるという主張がなされたところであります。使用者側からは、乖離額が拡大した地域についてはその地域の経済状況及び賃金分布を踏まえながら昨年同様に乖離解消のルールの見直しが必要であると主張されました。前回はそういう御主張でありましたが、これに加えまして本日改めて追加される主張があればお願いします。いかがでしょうか。

○團野委員
 基本的には今、会長からいただいたとおりですが、あえて追加するとすれば、経済情勢の見方についてでありますが、急速に回復してきていると認識していますが、そういう中で、安心して暮らせる社会の構築というのは急務です。そういう意味でいうと、生活できる最低賃金水準の構築が必要不可欠であると考えています。勤労者生活の実態及び最低賃金の現実を踏まえればできる限り早期、3年程度で最低800円を実現させるべきであり、とりわけC、Dランクについて大幅な引上げが必要だということを強く主張したいと思います。それから生活保護との乖離解消については、昨年は緊急避難的な措置として、解消期間の調整をしましたが、これは最低賃金法を改正した趣旨の1つということで、乖離がある都道府県は一気に解消し、しかも、さらにその水準を一定程度上回るようなものとすることが必要なのではないでしょうか。第4表についても、前回意見交換がありましたので、申し上げます。労働者側としては、公労使の審議の場で第4表中心の議論だけをしてきたという解釈はしておりません。使用者側の見解にもありましたが、生計費、賃金、通常の事業の支払い能力、それから生活保護に係る施策の整合性を総合的に勘案しながら審議を行ってきたというように認識いたしております。したがって、今年度も、第4表のみにとらわれることなく、さまざまな指標を踏まえた審議を行うべきではないかと考えております。
 また、雇用戦略対話において合意をした経緯もあるので、その水準を重視した議論をすべきであると考えます。それから、雇用戦略対話の目標達成についてですが、経済成長なり企業の活性化及び中小企業の生産性の向上等について政労使一体となって取り組むべきだと考えておりまして、どの項目が優先といったわけではなくて、政労使がそれぞれの立場から各項目ごとに並行的に対応していく、このことによって持続的な経済成長を達成していくことが大変重要なのではないかと考えています。

○今野委員長
 それでは、使用者側はいかがですか。

○小林委員
 私どもも調査を行っておりまして、情報提供として最新のデータを提出したいと思っています。一つは平成22年度中小企業賃金改定状況調査、もう一つは中小企業労働事情実態調査です。
 中小企業賃金改定状況調査は小規模の29人以下の事業所の賃金改定状況です。今回の調査では6,886事業所を調査しております。従業員29人以下の賃金改定状況ですと、引き上げたところは36.5%ですので、若干回復が見られます。しかし、引き下げたところ及び凍結以下のところが合計ですと56.1%、従業員9人以下も同様に、引き下げたところ及び凍結以下のところが66.6%です。従業員4人以下についてが次頁です。従業員4人以下の引き下げたところ及び凍結以下のところが72.1%というような状況でございます。中小企業は依然として厳しい状況でして、特に小規模になれば厳しい状況がうかがえます。
 それから、従業員29人以下のランク別賃金改定状況ですが、これはランク別にABCDのランクごとにそれぞれ29人以下、それから9人以下、それから4人以下もデータとして出していまして、やはりこのデータからも中小企業の厳しさがうかがえると思います。
 それから、4頁です。年度比較表がありますが、平成21年度、平成22年度の比較をしたものだが、平成21年度は経済危機後で、非常に厳しかった状況ですから、平成20年度も含め、3年度で比較しました。これを御覧になりますと、従業員29人以下の事業所の賃金改定状況は、平成20年度は41.3%とかなり賃金を引き上げた事業所が多かったのですが、平成21年度は多少落ち込みまして32.4%、平成22年度は36.5%となっておりまして、全体的にいずれも賃金を引き上げたところよりも凍結のほうが高くなっている状況です。
 次の頁を御覧いただきますと、従業員29人以下のランク別の状況及び従業員9人以下のランク別の状況とが御覧になれると思うのですが、相変わらず厳しい状況が続いているということがうかがえます。
 それから、6月の中小企業月次景況調査も、1頁目の表を御覧いただきますと、平成21年2月が底となっていたのか、回復の状況がみられます。ただ、先月から横ばいになっている状況です。正直申し上げまして、過去をみますと、マイナスで推移している状況です。中小企業で景況感がマイナス30%以下というのは本当に厳しい状況です。次頁を御覧いただきますと、輸出型の産業については、売上等、回復の兆しが見られるところですが、「食品」、「繊維・革製品」、「印刷」等の内需を中心とする産業は、相変わらず厳しい状況となっているという状況です。それから業種によってかなり大きい差が見られるところです。製造業については、金属・機械関連業種の景況改善はみられるものの、全体として10ヶ月ぶりにわずかに悪化したという状況です。要因としては原材料価格の高騰、資金繰りが厳しいという報告や、宮崎県ですと口蹄疫の影響というのが挙げられます。最低賃金の議論に当たって、最低賃金の影響が大きいのは中小企業なので、このような厳しい現状というのを勘案していただいて、その影響を十分考慮していただきたいと思います。

○今野委員長
 ありがとうございました。他にございますか。

○高橋委員
 1点だけよろしいですか。前提となっている経済成長率についてですが、名目3%、実質2%の経済成長に物価上昇率1%の前提があるということを確認させていただいてよろしいですか。最低賃金の三要素の1つである生計費について重要な要素かと思いましたので、念のためにうかがわせていただきたいと思います。

○萩原委員
 我々も勤労者短観を資料として提出しています。第19回勤労者短観です。2001年から年2回行っている調査なのですが、今年の4月に調査したものでして、たとえば26頁を見るとお分かりになるかと思いますが、過去1年間の世帯収入は38.6%が赤字と答えている状況です。これは今までの調査の中で過去最高となっています。世帯収入400万円未満の非正規社員では6割が赤字であり、中には社会保険料や税金が払えないというところもあります。
 29頁を御覧ください。世帯収入400万円未満のところで、収入が少なくて医者にかかれなかったというのが15.0%あり、人間らしい生活という中で、お金がなくて医者にかかれないというのは、基本的な生存権が守られているのかということになるかと思います。先ほど、物価上昇率の話もありましたが、こういった収入のない人がきちんとした最低限の生活が出来るレベルまで最低賃金を上げるべきであります。

○團野委員
 賃金の改定状況については調査のとおりでしょうが、この約10年くらいの賃金の状況をみてみますと企業部門と家計部門の社会的ひずみが相当大きくなっている、ということを労側として主張しておきます。そういう状況下での賃金の状況なんだと主張しておきたいと思います。したがって、そういう状況が個人消費につながらない、ひいては内需が弱い、そういう意味で賃金の底上げ、下支えを果たす最低賃金の引上げが必要であると考えています。勤労者短観によっても、勤労者の生活は厳しいということがうかがえます。

○田村委員
 池田委員の要望された資料を見ると、仕事に対する賃金、その中で、短時間労働者が家計を支えてきたという傾向をみますと、時間当たりの作業効率は非常に上がっている。そういう意味で、労働に対する配分のゆがみが大きくなってきていると理解しています。また、地方最低賃金審議会の使用者側委員と意見交換をする場がありましたが、聞いた話としては、最低賃金が上がったら対応する、発注元に対して最低賃金の引上げは契約金の向上につながるので、あまり影響はありません、との御意見がありました。ゼロとはいいませんが。
 中小企業の生産性の向上については、労働した分の発注の増加がなければ作業効率が上がっている分、契約金のダウンになってしまっている。作業効率の上昇が労働者への配分が良い方向に動いていないと言えます。

○今野委員長
 ほかにございますか。

○萩原委員
 今日の資料について、経済状況をみたところ、景気は回復基調にあるとみえると思います。ただ1つ気になるのは、個人消費が戻っていないということです。個人消費についてですが、総務省の家計調査によると、年収の帯の中でみていきますと、一番、平均消費性向が高いのは収入が100~200万円の層です。具体的に申し上げますと、65.2と消費性向の数字がでています。この金額は、最低賃金による勤労者世帯を表しているのかなと思います。そうしますと、最低賃金の引上げは、マクロ的に見れば個人消費も刺激するのかと思います。

○今野委員長
 他にありませんか。それでは、追加的な主張をいただいたところで、依然として労使の隔たりは大きく、全体会議での対応は難しいと考えます。そこで、公労、公使で個別に意見をうかがいながら詰めていきたいと思っていますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○今野委員長
 それでは、そのようにしたいと思います。では、まず公労会議から始めたいと思いますので、使用者側委員は控え室でお待ちください。

(第2回全体会議)


○今野委員長
 ただ今から、第2回全体会議を始めたいと思います。本日は目安を取りまとめるべく、労使双方の歩み寄りを期待してお話しさせていただいてまいりましたが、依然として労使の見解の隔たりが大きいことから、本日中の取りまとめは断念し、次回に持ち越すことにしたいと思います。よろしいですか。


(了承)


 それでは、労使各側におかれましては、目安の取りまとめに向けて次回までに再考をお願いいたします。次回の日程と会場は、追って事務局から連絡させていただきます。
 以上をもちまして、本日の第3回目安に関する小委員会を終了します。議事録の署名は、萩原委員と横山委員にお願いいたします。
 本日はお疲れ様でした。


(了)
<照会先>

労働基準局労働条件政策課賃金時間室
最低賃金係 (内線5532)

(代表番号)03-5253-1111

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