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2011年1月28日 第4回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年1月28日(金)18:00~20:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

阿部未央、荒井稔、岡崎祐士、織英子、黒木宣夫、清水栄司、鈴木庄亮、山口浩一郎、良永彌太郎

(厚生労働省:事務局)

尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、幡野一成、板垣正

○議事

○板垣中央職業病認定調査官 初めに、本検討会は原則公開としておりますが、傍聴される方におかれましては、別途配布しております留意事項をよくお読みの上、会議の間はこれらの事項を守って傍聴いただくようお願い申し上げます。
 定刻となりました。ただいまから第4回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。先生方におかれましては、ご多忙中のところ、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。検討会を始めるにあたり、資料の確認をさせていただきます。本日ご用意させていだたきました資料ですが、資料1 第4回における論点、資料2 労働時間の取扱いに関する第3回の議論の概要、資料3 論点に関する労災補償の現状、資料4 最近の裁判例、資料5 論点に関する医学的知見、資料6 団体からの意見要望、資料7 セクシュアルハラスメント事案に係る分科会の開催について。参考 精神障害及び自殺に関する海外の労災補償制度について。以上です。資料の欠落等がございましたらお申し出ください。なお、「海外の労災補償制度における精神障害の取扱いについて」ですが、事務局で在外公館を通じて調査したものです。ご参考までに後ほどご覧いただきたいと思います。
 それでは、座長の岡崎先生、よろしくお願いします。
○岡崎座長 ありがとうございます。第4回の精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会を始めさせていただきます。それでは、事務局から本日の論点についてご説明をお願いしたいと思います。
○西川職業病認定業務第一係長 それでは資料に基づきご説明させていただきます。資料1の第4回における論点の1ですが、前回ご議論いただきました労働時間数と精神障害の発症との関係での論点の続きとなります。論点1は、評価基準の明確化ということで労働時間数と精神障害の発症の関係についてご議論いただいたところです。前回の議論の状況は資料2にまとめさせていただいておりますが、前回、労働時間のみで強い心理的負荷と評価できるものと、出来事との組合せで強い心理的負荷と評価できるもののご議論が多少入り組んでしまったところもありまして、今回の資料では(1)のアとして出来事に関係なく労働時間の長さのみで強い心理的負荷と評価できる労働時間の目安についてご議論いただきたいと思います。次の頁のイにおいては、出来事との関係で強い心理的負荷と評価できる労働時間の目安についてご議論いただきたいということで、分けて整理をさせていただいております。
 論点のアですが、労働時間の長さのみで強い心理的負荷と評価できる時間の目安ということで、前回の議論では、いろいろご意見をいただきました。月140時間以上であれば認定されることは明確なのではないかと。ただ、件数が少ないので直ちにこれを基準とするのは難しいのではないか。120時間を基準とすることについて賛成のご意見と反対のご意見。また、100時間ということを基準にすることについて反対のご意見。あるいは、1か月の長時間労働がずっと続いているということでなくても、発病前2、3週間で、過重性があれば因果関係を認めていいのではないかというようなご意見。それに関連して、地公災の週40時間というようなことを参考に、例えば3週間で120時間でどうかというようなこと。いわゆる休日が確保できないようなことを考慮すべきでないかというようなこと。さまざまなご意見がありまして、なかなか前回だけでは集約しきれなかったところです。そういった前回のご意見等を踏まえ、第2回のときに資料に出させていただきました地公災のほうの基準を参考に、いろいろな期間ごとに、こういったものは労働時間だけで強い心理的負化と評価できるものでしょうかというものを、いくつか(イ)で出させていだたきました。
 (ア)に現行の判断指針で「極度の長時間労働、例えば、数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働」と書いているところですけれども、これを、より具体的にすることができないかと。この、最小限度の睡眠時間、カッコで5時間程度と書かせていただいておりますのは、いまの判断指針に入っているわけではありませんが、内部的には最小限度の睡眠時間は、4、5時間ぐらいということで示しておりますので、一応入れさせていただいております。こういったことをさらに例示することができないかということで、(イ)で例えば、2週間、毎日睡眠時間5時間ぐらいになるようなもの、土日も含めてですね。そうすると週51時間ぐらい時間外労働をしているということになりますが、こういったものをどうか。1か月にわたって週40時間程度の時間外労働をやっている場合はどうか。2か月にわたって週数十時間、例えば30時間ぐらいやっていたらどうか。6か月にわたって月100時間ぐらいやっていたらどうか。⑤は労働時間数というよりは休日がとれないということに着目したものでございますが、こういった場合は強い心理的負荷といえるかどうか。いえると直ちに思っているわけではありませんが、いままでの臨床でのご経験ですとか、そういったことからいえるのかいえないのかということをご議論いただければと思っております。
 さらに(ウ)では、事例の分析結果からの問題提起をさせていただいております。月100時間以上の事案が基本的に業務上認定されているという実態がありまして、これを踏まえて運用ができないかということですけれども前回お問合わせもありましたが、月100時間を超える時間外労働があった事案は、前回も、出させていただいた資料として、16頁にありますが、100時間以上のものを足し合わせると全部で67件ございます。その中で100時間を超えていて業務外になっているものが3件で、この事案を18頁にお示しさせていただいております。これは、労働時間中に睡眠を多くとっていたとか、労働者さんの裁量性が高く休憩時間もその中にもたくさん混じっていたとか、業務内容からしてここまでの時間数になるようなものではなかったのではないかというような事案です。いずれも、実質的な労働時間の内容が心理的負荷のないものと評価されたもので、時間が長いけど出来事がなかったとか、そういったことではないものです。この3件を除いて100時間を超える事案については業務上と認定されているということです。一方で極度の長時間労働として認定された事案は6件ありましたけれども、これも事案を見ますと何がしかの業務による出来事が存在している実態でございました。
 そういったことであれば、実質的な労働時間が100時間以上認められるものについて、実際の例では出来事はあるということなので、労働時間の密度のことは注意していかなければいけませんけれども、時間数から出来事の存在を推定しつつ、強い心理的負荷の存在を認めることができるのか、やはりそれはできないのかというようなことについてご議論いただければと思います。
 次に、論点のイですが、こちらは、出来事との関連で強い心理的負荷と評価する労働時間数の目安についてです。前回のご議論では、長時間労働と他の出来事との組合せで心理的負荷が強いと判断することは良いのではないか、そういった運用は、留意事項で書くなり、いろいろと明確化していくべきではないかというようなご意見。月100時間以上で評価を上げると心理的負荷が強いと判断していくことというのも十分考えられるのではないかというようなご意見があったかと思います。
 整理した(ア)(イ)(ウ)ですが、(ア)は、中程度の心理的負荷のある出来事に遭った労働者が、その後月100時間程度の時間外労働を行ったケース。これについては強い心理的負荷があると考えてよいかどうか。(イ)は、月100時間の時間外労働を行っている状態にある方が、弱程度の心理的負荷の出来事に遭い、さらにその後も月100時間の時間外労働を行っているような場合は、強い心理的負荷と考えていいかどうか。(ウ)については月100時間の時間外労働を行っている方が、そこで中程度以上の心理的負荷のある出来事に遭った場合に、出来事後の状況にかかわらず強い心理的負荷があると考えていいかどうかです。四角の中の後段ですが、現在、出来事の強度を修正し、あるいは、出来事後の状況の持続する程度、出来事後の状況を「特に過重」と判断することができる恒常的な長時間労働については、1か月当たり、おおむね100時間程度ということを示しておりますので、(ア)と(イ)については現行もやっておるという取り扱いということになりますが、これでよろしいのかどうか。(ウ)については出来事後の状況に関係なくということであれば、いまの判断指針も少し踏み込むような形になるかとは思いますけれども、こういった取り扱いを示すことが妥当なのかどうかということをご議論いただければと思います。
 これの関係で、資料5の医学的知見ですが、38頁で、平成15年にお願いしました「精神疾患発症と長時間残業との因果関係に関する調査研究」の概要で、40頁の上のところに全体のまとめ、結果総括の概要がございます。長時間残業が100時間を超えると、それ以下の長時間残業のときよりも精神疾患の発症が早まると。このために発症するというところまでは言いきれませんが、早まるという結論が得られたということになっております。
 次の頁は、平成19年度の「労働者の自殺予防に関する介入研究」の中の2本の分担報告書ですけれども、一つは自殺予防の観点からも、特に1日5時間未満の睡眠を避けるよう指導すべきということです。もう一つは100時間以上の残業をしているときの認定状況です。これらも参考に、先ほどの100時間と出来事の組合せの取扱いは示させていただいておりますが、参考となる医学的知見として出させていただいております。こういったことを資料としてご覧になりつつ、論点についてご議論いただければと思います。以上でございます。
○岡崎座長 ありがとうございました。中が2つに分かれますが、最初の論点1についての前半のほうですが、出来事の有無に関係なく、その長さのみで強い心理的負荷と評価できる労働時間の目安が設定できるかどうかという点についての議論を、前回の議論を踏まえてお願いできればと思います。
○山口先生 質問よろしいですか。
○岡崎座長 どうぞ。
○山口先生 前回の議論では、「月120時間を基準とすることについて賛否両論があった」という記録になっていますが、月120時間基準というのは、今日頂いている第4回における論点の1(1)ア(イ)③の「2か月にわたって続く週数十時間程度の時間外労働(月120時間程度に相当)」と、この基準と大体同じということですか。
○西川職業病認定業務第一係長 これは直接的にそのように考えたわけではありませんで、資料2で前回の議論の概要をまとめています。12頁ですが、先生から「実際の認定事例を見て120時間を超えた例では全件認定になっているので、120時間を基準にしたらよいのではないか」というご意見をいただいていたかと思います。
○山口先生 表を基礎にして出てきた記録ですね。
○西川職業病認定業務第一係長 そうです、表のほうでということです。それを(イ)の案に書き込んだかというと、そういったことではありません。改めて表を見ますと、表では120時間では確かにそういったことで、またお問合せもあったかと思いますが、100時間では外になっているのが3件あると。そこも含めて分析したところ、(ウ)にあるような状況でしたので、実態からすると、このようなことが考えられるのかどうかというお話です。
 また、それはそれとして、地公災の基準なども参考に、(イ)のようないろいろな例が考えられるのかどうかというお話です。それぞれどういったものかということでご検討いただければと思っています。
○岡崎座長 その点はよろしいですか。具体的には(ウ)に、ある程度の方向性を持った意見が出されていると思うのですが、それを含めてご検討いただいてご発言いただければと思うのですが。引き続いて山口先生、何かありますか。
○山口先生 先生方、どうですか。
○岡崎座長 では黒木先生から何かご意見をいただけますか。
○黒木先生 まず時間外労働と精神疾患の因果関係についてですが、平成20年度の労働衛生課の調査から考えると、労災認定された事案に関して、時間外労働100時間以上の時間外労働と出来事の関係がかなりあるのではないかと思います。同調査結果では「仕事の失敗、過重な責任の発生」の出来事では、出来事の衝撃で時間外労働に関係なく重大な転帰となり、「仕事の質・量の変化」の出来事の発生は100時間以上の時間外労働と関連性が強いと考えられるとの結果が得られました。
 だから、仕事の失敗や過重な責任の発生に関してはいろいろな内容がありますが、それによっては衝撃が強くて精神疾患の発症が非常に早まることもありますし、内容によって違ってくることはあるので、どちらにしても100時間、時間外労働だけで考えるのではなくて、前回もお話しましたが、出来事の内容と時間外労働とを一緒にセットで考えるのが重要ではないかと思います。
○山口先生 いまの黒木先生のご意見は医学的には確かにそのとおりなのだと思いますが、事務局の気持を忖度すれば、いまの出来事と時間外労働100時間があれば、出来事の強度を1ランク上げるというのでやっているわけですね。そうではなくて、時間外労働が一定の数字になったらほかは何も見ないで認定できる数値があれば、非常に迅速に処理ができるから、それが見当たらないだろうかという要望なのではないでしょうか。ですから、黒木先生のおっしゃること以外の答がないということになると、事務局はもっと汗をかいて苦労しなさいということになるわけですが、どうでしょうか。
○黒木先生 例えば100時間に線を引くとすると、出来事の存在はどうしても必要だと思うのです。出来事があって時間外労働は発生するわけですから、出来事がなくて時間外労働ということになると、これはまた生理的に必要な最低限の睡眠しか確保できないような状況が数週続いた場合などは、具体的にどの程度かを決めていかなくてはいけないということなのです。
○山口先生 それがないかということなのではないでしょうか。先ほど見違えましたが、③ではなくて②で見ましたら、月160時間ですから、時間外が160時間だから、月300時間ちょっと働いているわけです。労働時間が時間外を入れてそれぐらいになっていたら、ほかの要素がなくてもそれで認定できないだろうかということです。法律家は医学の知識はないから、そこでどうかということです。
○鈴木先生 黒木先生たちの研究の表がありますね、あれはなかなか示唆的だと思うのですが。それから、法規では、医師による面接の事業者の義務化というのがありますが、これが100時間、過去1か月、時間外労働100ということになっていますし、また、医師の面接の勧奨では過去6か月80時間ということになっていますし、80とか100とかいうのはこの領域ではかなりポピュラーになっていますので、100ということを1つの取扱い上の目安にして、100プラス心理的負荷であるとか出来事かというのを加味しながら検討するということでいかがですか。単にこの数値がこの時間なら絶対だというものを決めるのは、なかなか難しいかと思います。必ずキューポイント、カットポイント、振り分け水準、これを決められると、見かけの様子、見かけの印象で必ず出てくるわけですから、その辺のところは出来事や心理的負荷、これの重さを加味した判断を同時になされるべきであろうと思います。
○岡崎座長 先生、それは出来事との関連でその時間をと、その次の(ア)のその考えとの違いはどうなのでしょうか。
○鈴木先生 同じです。ただ、160と120とかというのを絶対的な時間として決めるのは無理ではないかということです。
○岡崎座長 ここに書いてある(ウ)という事例分析、100時間を超えたけれども認定されなかったという3件の内容分析があって、その100時間というのが実質的な労働時間になってないので除かれたというのがあります。例えば100時間という目安は多くの例で当てはまるけれども、その100時間が実質的な労働時間とみなせるかどうかを検討すれば、100時間ということも設定し得るのかを、これからは読み取れると私は思っているのですが、そういったこともあるのかと思っていますが。もう1人、臨床医の荒井先生、いかがでしょうか。
○荒井先生 極度と恒常的な長時間労働あるいは過重性のある長時間労働と分けて議論しているわけですよね。いま前者の極度のほう、出来事が極端にはなくても労働時間だけで認定できるものというふうに問題を設定すれば、いままでもあるわけで、それが(ア)ですよね。我々が事例を見ていて、あるいは自分の事件例を見ていて感じるのは、「連続して数週間」と書いてありますが、大体長い方で4週間あるのですが、3週間ぐらいが限度だと思っています。3週間を40時間の労働時間の時間外労働をした方、すなわち3週間で120という数字。あるいは4週間で160というのは極端な数値ですから問題にならないというか、それは例示するまでもないということだと思うのです。3週間で120というのは前に申し上げたことがあるのですが、それがいままでの極度の長時間労働のイメージにいちばん近い。行政の一貫性といいましょうか、これまでそれで認めてきたものと同じ線でいくとすると、3週間で120というところが、私としては、実感的にいちばんいいのではないかと思っています。
○岡崎座長 3週間で40時間、3週間40時間と。
○荒井先生 そうです、2週間で80というのがありますが、2週間で80は結構あり得るのです。ですから、3週間で120はダイレクトに、出来事がなくても極度という言葉自体に包含されている意味を指している実態を持っていると思っています。その地公災のものとも一定程度の、3週間というのが、3にこだわる必要はないかと思うのですが、2だと短いと私は正直思っているので、3と。
○山口先生 この前の会議で黒木先生から、そういうときには休日がきちんと取れていたら、それはそれでまた別の要素があるのではないかというご指摘がありましたね。荒井先生が想定しておられる数字の中では、土日の休日はどういうふうな感じになっているのですか。
○荒井先生 原則ないと考えています。要するに、連続して3週間勤める。
○山口先生 月160時間というのは、これは全く休日がないと想定というか、ほとんど断定できるのではないかと思うのですが、先生の事例で、休日を取っていてもそういう数字になり得ることはないのですか。
○荒井先生 あり得ると思います。それはそれこそ調査していただいたものを見ますと、連続していて休日がないという労働記録が出てきますので、それで我々はこれは極度にも相当するよねと。出来事もあるわけですが、積み上げでも業務上ですし、時間外、極度の長時間労働としても、両方で側面から見て業務上と判断できるケースがありますが、それが大体3週間で120ぐらいを目安というか、結果的にはなっているのではないかと思います。
○山口先生 そうしますと、医学の先生方が荒井先生がおっしゃった基準で大体行けるのではないかというご判断でしたら、それでもいいと思います。休日が、きちっと取れているというのがあれば、それは別に見たほうがいいかもしれませんね。
○荒井先生 私の発言したのは連続した3週間です。要するに休日なく3週間労働したと。
○黒木先生 深夜業務というか夜間業務まで食い込んでいると。例えば、ほとんど2時、3時までやって、翌日も寝泊まりして、また仕事をする、そういう状況が連続して起こっている場合は、極度の長時間残業が連続して続いているということで、睡眠が確保できない状況を発症要因として考えなくてはいけないのではないかと思います。実際、事例として2時、3時まで仕事をし、1日に十何時間仕事をしている、翌日もまた休まずに、その翌日も出ている状況が続いている場合は、精神疾患発症との関係は当然あると考えられるのではないかと思うのです。だから、時間だけで区切ってしまうのではなくて、あくまでも毎日の連続を見て決めていくというのが大事だと思います。
○山口先生 そうすると、先生方のご意見を聞いていると、時間だけでどうも単純にいかないということではないのでしょうか。だから、ある程度の時間、極度時間を決めるのはいいけれども、それと同時に、少し勤務時間帯がどれぐらいか、深夜にかかっているかどうか、連続して休日が取れてないかどうかと、そういう付随的な要因を多少見なければ、数値だけではいかないということではないですか。
○荒井先生 例えば120時間なら120時間を算定していくプロセスで、係の方がタイムカードとかを見るわけですが、これは極度という概念自体が、その中でできてきた印象なのだと思うのです。ずうっと仕事をしていて、休みがなくて、かつ時間外も発生しているというのは、実際、我々が見ていても、これはハードだ、明確な心理的負荷があると言えるのは、そういうトーンなのですね。
 ですから、例えば深夜労働をしていて休んだように書いてあるけれども、実は休んでなかったりすることはあり得るわけです。休みと書いてあっても、その日の午前中だから深夜が労働だったりするわけです。ですから、その辺は実質を見ておられる、実際見ていらっしゃるわけですし、時間外についてもその調査をしないわけにはいかないと思うのです。そのときにどういう労働実態かについては、医者でなくても係の方が見て、実際の労働がイメージできるのだろうと思うのです。ですから、例えば私はいま120というのを申し上げていますが、内実というか、それについては医者でなくても判断はもちろんできると思っています。
○岡崎座長 臨床の先生お2人からはそういう方向でのご意見が出ていますが、ほかにはいかがですか。
○織先生 荒井先生がおっしゃるように、いままで積み重ねてきた事例の中で極度の長時間労働を3週間で120時間、また4週間で160時間というのは、実際に運用されてきたのですか。
○荒井先生 4週間はないのです。
○織先生 3週間で120時間というのが医学的に。
○荒井先生 医学的に、収束したところがという意味です。
○織先生 そういう運用を実際にされているのであれば、それを数字で表して今回明確化するのはとてもいいことだと思いますし、あえてそれをさらに不明瞭にする必要もないかと思うので、3週間で120時間というのが、実際に事案の処理をしていく中で、その運用基準があるというのであれば、今回ここで数字として明確化するのはとてもいいことだと思うのです。
 黒木先生などがおっしゃるように、3週間で120時間を下回る場合でも、休日がないとか深夜にずうっとやらされているとか、3週間に120時間の時間外労働をしたのと同じ程度の大変さがある事例を拾い上げるのはいいと思うのですが、3週間で120時間が運用としてあるのであれば、数字でしっかりしてもらいたいと思うのです。
○荒井先生 イメージとしては、みんなほぼ持っているのだろうと思います。
○岡崎座長 そうですか、それはどうなのでしょう。
○鈴木先生 私は、中位の事業所の産業医をしていますが、管理職は原則として医師による面接はないのですが、会社は特別に時間は取っているものだから、面接もやっているのです。月120時間以上時間外というのはいまはほとんどなくて、管理職とか裁量労働の人でもないです。ですから、3週間で120というのは、相当何か異常事態が起きて、異常な休日とか夜勤をやっているということを前提とした数字だと思いますので、120なら文句なく認めるということで、あと後半の100を目安にした取扱いもあるという2本立てなら私はいいかと思います。
○岡崎座長 17頁の資料で認定された中での時間を見ますと、4週間はないということですが、3週間120というと、先ほどのあれで140とか160とかに相当するあれになるのでしょうね。それはかなり少ない割合ですよね。
○荒井先生 少ないですね。4回、160時間としても、最低限なわけですよね。それは6例ありますが、6例とも160以上ですね、極度と相当しても。
○織先生 極度の長時間労働については、140時間以上のもの6件全部が認定になっているということですが、私は極度の長時間労働を140時間以上にするというのが、あまりにも基準が厳しいのではないかという印象を持っています。というのは、労働災害はもともと災害補償という発想から来ているので、急激な、あるいは特異な出来事がある場合に補償するという発想があると思うのですが、むしろ慢性的な長時間労働が心の健康に及ぼす危険性を正面から認めていただいて、いま鈴木先生も3時間で120時間の残業というのは実際にはあまりないと。そこまでひどい事例はあまりないと。極度の長時間労働の概念、つまりほかの出来事と関係なしに、労働時間の長さのみをもって強い心理的負荷と評価できる事例が、ほとんどないことになってしまいますよね。
○荒井先生 それはあると思います。要するに、いまの現行の積み上げでやって業務上と、かつ極端な長時間労働として見ても業務上と、いま2本立てで評価しているわけですね。そうすると、こちらの積み上げで、例えば2の出来事があって云々とやって業務上と極度の時間外労働で業務上になっているものの2本立てで。こちらのほうは書いてありませんから、なお書きで極度の長時間労働にも相当するとしているので、ピックアップされてないケースはたくさんあると思うのです。我々は2本を見ているわけです。2側面を見ているというか、2つの観点で見て、両方とも上だと。
○織先生 そうすると、極度の長時間労働の基準を、いま、現行の運用基準の3週間120時間をより緩やかにするというよりは、出来事との関係で長時間労働を問題にする場合の要件の組合わせをもっと明確にしていったほうが、実際に運用しやすいし。
○荒井先生 基本的には連続して3週間120時間なら出来事がなくてもと結果的にはなっているので、出来事はあるのですが、出来事がなくても3週間で120時間あれば業務上になっているので、それは出来事の有無にかかわらずということで、むしろ関わらなくていいのだと思います。それが極度の意味ですので。
○良永先生 事務局でご説明がありました論点の(ア)(イ)の(イ)ですが、いま、例えば3週間で120時間の時間外労働は目安として議論されていますが、これを見ますと2週間とか1か月とか2か月とか6か月とか業務に従事した期間、つまりこれは評価期間がいくつか段階を踏んで書いてあって、短期間の場合に非常に集中的に業務に従事して、それこそ極度の長時間になったケース。それから、例えば④ですと6か月間ずうっとあって、それの中で継続してでしょうが、多少波はあるかもしれないけれども100時間程度という目安。だから、これはある種、相関関係で考えたらどうかという提案がこの文章の中に見えるのです。もしこの方向だと、この点を相関関係を明確にしないと、使いものにならないと思っていたのですが。
○岡崎座長 労働時間とその前に先行する持続した期間を考慮しないというのは、やはり科学的ではないでしょうね。
○良永先生 それは先ほど山口先生がおっしゃったように私も医者ではありませんので、どれほど医学的合理性があるかどうかはわかりませんが、素人的な考え方ですが、たまたまいくつか書いてありますが、①、②、③、④といった相関関係で判断していくということはあるのかと思って読んだのです。
○岡崎座長 それはどうでしょうか、臨床的にも妥当なことですよね。例えば140時間が1か月あった、120時間が2か月あった、あるいは100時間が3か月以上続いたといった考え方は、臨床的にも妥当なことだと思うのです。
○黒木先生 いや、議論しているのは、出来事がない状態でその時間外労働がどれぐらい続いたら精神疾患発症と因果関係があるかということだから。
○岡崎座長 そうです。だから、労働時間と持続の期間ですよね。それは妥当なものではないでしょうか。
○荒井先生 いまの私が3週間で120時間と言っているのは、長時間労働と発症とが近接していると。時間と近接という相当因果があって発症してくるという場合が、3週間で120ということが言われていて、例えばそれが半年前に3週間が120時間あって、そのあと半年経って発病したというのが、相当因果があるかどうかは、これは議論があるところです。当然あるというふうにおっしゃる方もいると思いますし、あるいはないと主張される方もいるので、私は発症に近接して3週間120時間というのがあるというのが、出来事がなくてもいいのではないかと。それも連続した3週間というのが、1つのイメージなのですね。ある種の急性ストレス反応ではないのですが、それだけの負荷がかかった結果破綻したという時間的な流れの、近接ですよね、それを取り上げてやるのが、いちばん。極度の長時間労働のときには、大体そうなっています。結果としてそのあと発病されています。
○黒木先生 ある事例で、当然、長時間労働はあるわけですが、例えば100時間残業は6か月続いている。しかし、発症はしていない。同じ時間の時間外労働が続いた期間は発症せずに、時間外労働がなくなっているのに過重性のない出来事があって発症する場合もあります。その場合は、時間外労働は発症要因としては、あまり関係がなく、その出来事をきっかけに発症してしまう場合もあります。長時間労働は半年あるいは1年前からあるが、発症していないとなると、時間外労働は、因果関係があるかというと、どうも違うような気もするのです。だから、そこの出来事をどう捉えるかということと、出来事がなくてもこれだけの長時間残業が続いたら発症するのは当然であるというところを整理する必要があると思います。だから、私がいま言ったのは、パッと思い出した事例で、おそらくこの出来事や時間外労働は、発症にはたぶんあまり関係ないだろうと思われるわけです。むしろ個体側要因が主体となって発症したのではないかと推測されるのです。しかし、発症直前の時間外労働だけで発症する極度の時間外労働を設定するのは必要かと思います。
○岡崎座長 いかがですか。ご発言されてない先生、よろしいですか。ただ、脆弱性ストレス仮説でいえば、例えば100時間が2か月間ないし3か月間続いた。非常に機械的に考えるのですが、120時間が2か月続いた、140時間が1か月あったというのを掛算すれば、同じ程度の総量になるとすれば、脆弱性に対して負荷を与えるものとしては等価に考えるといった機械的なものですが、そういったことも説明はあり得るのではないかと思うのです。ですから、良永先生が言われた期間は取り入れないと、先行するどれぐらいの期間に時間外労働が何時間あったかということには評価できないのではないかと思うのです。そのあたりいかがでしょうね。そういうふうに時間外労働を入れるとすると、期間を考えないとなかなか評価しにくいと思うのですが。
○山口先生 その期間というのは、荒井先生が連続性は不可欠ということで言われたとおりだと思います。多くの先生が言われたその間の労働の状況、これも見ないといけないですね。
○岡崎座長 そうすると、簡単にしようとやっているのが、なかなか複雑な面もありますが、労働時間も長い労働時間の評価をしないということも、これはまた間違いだと思うのです。
○山口先生 いまの評価表は、ストレス脆弱性の理論で、ストレスを出来事というインパクトで捉まえていますから、どうしても蓄積性というか、慢性の要素は時間の経過で見ていかざるを得ないですから、いま議論になっている要素を入れて見るということは、どなたも賛成なさるのではないかと思います。私は、黒木先生が言われた要素も、難しいかもしれないけれども、先生方の議論を伺っていると見たほうがいいかという気がします。
○岡崎座長 連続性ということで、休日を取れたか取れないかというのは大きな問題だと思うのです。そういう時間外労働が続いた期間における期間の対応ですよね。
○清水先生 いままでの議論をお聞きして思った点なのですが、このあとたぶん、次の頁のイの議論で、出来事との関連と労働時間というお話で、そのときには月100時間の時間外労働で出来事との関連を考えるというお話になってくると思うのですが、それに対してアのほうは出来事がないという前提だと思いますので、そういった意味では、つまり月100時間の労働に、例えば1.5倍程度の負荷があれば、出来事がなくてもよいのではないかというのが。つまり、先ほど荒井先生がおっしゃっていた3週で120時間というのが、例えば月100時間の1.5倍程度であるという考え方が1つはあるのかと思ったりはしたのですが、いかがなものでしょうか。
○荒井先生 というか、事例を見ていてなのでしょうか。両方とも通常の判断指針の手順でやっても、それからその時間を見て、数週間というのは難しい、数週間としか書いてないので、それは何週間と決められないのですか。事例を見ていると、4週間にわたる方はあまりいないのです。3週間内外の方が多い。そのあと発病しているという方の場合の時間外労働を見ると、120を超えているということがあるので、3週間で120というのは、連続して働いた場合には、1つの人間が対応できる長時間労働の限界なのではないかと。
 そういう意味では、ここにも書いてあるように、その後に発病があるということが前提になってきてしまうので、その前の、随分前、先ほど申しましたように半年前にそれがあっても、それを採用できるかどうかはケース・バイ・ケースだろうと思います。直近にあれば、それは出来事がなくても相当因果を採用していいように、いままで事例を積み上げてくる中ではそう感じています。
○山口先生 清水先生がおっしゃったのは1つの考え方だと思いますが、いまの判断指針による認定の業務というのは、評価表の平均的なI、II、IIIと分かれているわけですね。だから、労働時間と結び合わせて1.5倍に評価するのは1つの考え方だと思いますが、I、II、IIIのどこに当てはまることになるかですね。そうでないと、あまり実務的ではないのではないかという気がします。だから、いままでの事務連絡のレベルと100時間を超えると1ランク上げると、IだったものをIIにするということになっていますから、何かそういう形でないと運用が難しいかという気がします。
○岡崎座長 この出発点は、極度のというのを時間の目安を示せないか、というのがそもそもの出発点ですね。ですから、出来事を入れることになりますと、現行の解釈とか、あるいはそれの運用ですので。
○山口先生 出来事の評価という問題になりますね。時間要素になります。
○岡崎座長 ですから、荒井先生は、3週間で120時間というのであれば極度のというのが該当するのではないかとおっしゃいましたが、それと相当のものがあり得ると思うのです。ただ、その前に2か月であれば、例えば120時間が2か月続くというのが、同等としていいかどうかは別として、例えばそういういくつかの例示をするという形で、その間のいろいろの所は、ケースごとに検討しないといけないと思いますが、そういう目安を示すことも方法としてはあり得るのではないか。そうすると、期間と数値といいますか時間だけで、一応極度は判断できるという方法にもなり得るかと思うのですが。
○山口先生 理屈だけで滑稽かもしれませんが、荒井先生のお考えでは、出来事があって、あと3週間が120時間以上の労働をしていたという状態がありますね。それはあとのほうだけで業務上になるのですか。
○荒井先生 いや、出来事があって、出来事の前に、出来事の。
○山口先生 出来事で上司から非常に業務のことで叱られたとしますね。仕事が忙しくて、3週間で120時間以上の時間外をやっていたと。
○荒井先生 いまの調査で我々が見ているものは、出来事があって、その前半年間を調べてきているわけなので、直近、発病の前3週間が、いま申し上げた全然休みがなく120時間働いているというケースは、相当な確率で極度となっています。
○山口先生 時間は発症の前にあればいいわけでしょう、出来事のあとでもいいわけだから。
○荒井先生 そうです。
○山口先生 そこを独立に評価するのだったらこれは業務上になりますが、どうも一生懸命働いたのは上司が叱責をしたかららしいということになったら、黒木先生が言っておられたようにこちらが因果関係ということになるから、100時間以上超えているのはワンランク上がるだけであって、直ちに業務上とは言えなくなります。
○黒木先生 でも例えば、仕事に失敗して上司から叱責され、そのために本人がノルマを達成しようとして一生懸命仕事をしなければいけなくなった。そのために時間外労働が発生して、それは100時間以上あったという場合は、当然これは業務上になっていくわけですよね。あくまでも出来事を押し上げる形で時間外労働は発生するわけですから、出来事があって、時間外労働があって、そして業務上かどうかということになると思うのです。ただ、いま議論しているのは、そういった出来事がなくて発症要因としての長時間残業がどれぐらい続いた場合にどうするかということですよね。
○山口先生 そうです。だから、出来事があった場合には、100時間超えたら評価がワンランク上がるだけですから、直ちにそれだけで業務上とは言えないのではないかと。
○黒木先生 でも、出来事のあとに時間外労働が100時間以上続いていれば、いまは大体業務上という形になるのではないでしょうか。だから、出来事がある場合は100時間は1つの目安ではないかと思います。
○山口先生 はい、わかりました。何か矛盾してバランスを失するケースが出ないかと心配していたのです。それがなければ。
○岡崎座長 ただ、100時間を超えて認定されたものを見てみると、多くは出来事があったという結果ですね、ほとんどが。という問題があるのですよね。ですから、時間外労働時間が100時間を超えると、出来事も伴っているということを示しているので、労働時間だけでいいのではないかと、そういうことですよね。
○鈴木先生 100から110時間の時間外労働はいくらでもあって、普通にバランスの中でやっていけるのです。3週間で120とか、4週間あるいは1か月で160というのは、異常な働き方をしないとやっていけない。たぶん、ずうっとやっていけないのだと思います。ですから、3週間で120、1か月で160というのは、異常な働き方で、睡眠も5時間以下になっているし、何か理由があってそういう働き方をしているのではなくて、長続きしない、持続性のない働き方。だから、ほかの条件なしで、それ自体で極度に長時間ということで認定できる。その根拠もありますし、それは可能なのではないですか。
○阿部先生 いまの荒井先生と鈴木先生のお話だと、荒井先生はいわば直近に拘ると。
○荒井先生 できればです。
○阿部先生 ですが、岡崎先生や鈴木先生は、もしかしたら時間を積算して、もう少し期間を延ばしても、相対的に極度というふうに認定できるのではないかというお話でいいのですよね。
○鈴木先生 私も直近です。
○阿部先生 直近ですか。先ほど鈴木先生が4週間で160時間とおっしゃっていたのは。
○鈴木先生 直近の4週間です。
○阿部先生 直近の4週間ですが、荒井先生はそこはあくまでも直近の3週間と言っていたので、そこをもう少し長い期間で取れるのであれば、労働時間は非常にわかりやすいので、たぶん労働者側というか、訴訟においても非常に明確なのではないかと思う。3週間に拘わらずにもう少し可能であれば、それは全然法律家ではわからないですが、医学的に可能であれば可能性としていいのかと思ったのですが。
○織先生 発症前何か月以内に3週間にわたる合計120時間の連続した時間外労働があった場合に、極度の労働時間とするかの問題ですが、実際にはうつ病の診断が遅れてすごく時間が経ってしまっているケースもあるので、あまり直近、直近、直近というのが、例えば2か月以内とか、3か月以内とか、あるいは半年以内とかと具体的にイメージはわからないですが、直近というのはどのぐらいのニュアンスですか。
○黒木先生 発症した時期というのは、ものすごく大事なわけです。だから、うつ病を発症した時期をどう特定するのか。自殺の場合には、医療機関にほとんどかかってない事例が多いのです、六十何パーセントぐらいかかってないと。そうする場合は、書類あるいは聴取りでどこで発症したかを決めるわけです。発症した前に長時間残業はどれぐらい続いたかが、いちばん大事なことです。
○織先生 それは医療機関の受診が遅れたり、あるいは本人がお亡くなりになってしまっていても、かなり遡ってこの時点がそれだというふうにできるのですか。
○黒木先生 そうしたら、その時点から発症時期から遡るわけです。
○織先生 そうすると、発症前何か月以内の連続した労働時間を見るかというのは、それほど神経質になる必要はないということですね。
○岡崎座長 そうです。だから、いま議論しているのは、もちろん全部、発症前の直近です。
○山口先生 自殺の場合は、出来事の直後に自殺があるから、発症はいつかわからないというケースが、裁判のときにいちばん困るのです。
○岡崎座長 自殺はまた少し違うところはありますよね。時間がだいぶ過ぎてしまったのですが、どうしましょう。極度の心理的負荷を労働時間の数値だけの目安で判断できるというふうにするかどうかですが、実際上は非常に大事なところというか、そうできれば非常にいいのだと思うのです。いくつか候補数値が出ていますが、1つは候補数値の前に、発症の前のそういう時間外労働が非常に続いた期間も考慮しないと、やはり時間だけでは駄目そうだという意見では一致していただいているかと思うのですが。ただ、はっきり言って、そういう医学的データはたぶん詳細がないのですよね。
○荒井先生 そうですね。経験則、経験ですので積み上げです。
○岡崎座長 ここにいらっしゃる先生方の経験的な数値なのですね。それで、なかなか難しいところはあるのですが。
○良永先生 先ほど座長が少しおっしゃいましたが、例えば100時間を超えたときに業務上認定されているケースがありますね。
○岡崎座長 そうですね、多いですね。
○良永先生 その場合に多くの場合は、出来事が介在しているのだと思うのです。ということであれば、いちいち出来事を取り上げなくても時間という目安だけで決着をつけても、不合理ではないのではないかという趣旨のご発言があったように思いますが、もしそれが可能であれば、私はそういう方向でまとまったらいいかなと思っています。もちろん、これは医学経験則に完全に反するということであれば話が違います。経験則の議論の中に収まるようという議論があれば。
○黒木先生 出来事が基本です。出来事がなければないです。
○良永先生 そうすると、この「出来事に関係なく」という問の立て方自身が、全部取れますね。
○荒井先生 出来事がないとは、100時間の話ではないですか。いまは極度の話をしているので、先生がいまおっしゃっているのは100時間の扱いについては出来事がセットだと。極度については、どのぐらいの目安が立てられるかどうかということをいま議論していて、その場合には出来事がないと。ただし、できればというか、それがいつかというのは難しいですが、ある発症から近接した時間、私どもの考えや経験的に言えば3週間で120時間ぐらいあれば近接した発症が、いわゆる急性ストレス反応と類似した構造になるわけですが、それは相当因果があります。そういう意味では医学的にも正しいし、負荷的にもいま出ている100時間ではないということです。100時間より多くて、かつそれは医師が見ても法律家が見ても、あるいは行政官が見ても、これはさすがにつらいだろうというのがいま申し上げている3週間で120時間というのが、経験的にみんなの合意してきたところなのではないかなというのをお話しているので、出来事は関係ないです。
○岡崎座長 ただ、現実には100時間を超える時間外労働の場合に、何らかの仕事の増加や命令がなくて増えるということは、ほとんどないのではないかと思います。そうなると、出来事が非常に大きなものではなくても、結果として労働時間の増加を引き起こした場合には、次の弱い出来事というのがありますが、それがあとで発見されるというか、あとで見出されるというケースをこちらで論じているのかなという気もします。だから、100時間とか120時間を超えるとなった場合に、出来事がなくて労働時間だけ増えることはあり得ないのではないですか。
○荒井先生 もちろん、そうです。ですから、先ほど申しているとおりです。
○岡崎座長 ただ、労働時間の増加というのは、そういう意味でも出来事も含んだ変化に非常に感度がいいということだと思います。そういう意味で、ここで認定されたものは3件を除いて、実質的な労働時間の増加に該当しないというものを除けば、出来事もほとんどその労働時間で予測できたというか、見知できたことは重要なのではないかと思っています。
○荒井先生 そうなんです。100時間の話と、やはり。
○山口先生 座長がおっしゃっているのは、まさにイの問題の(ア)で、その出来事をこの時間から評価して中程度のものであれば、強と見ていいということではないかと思います。それが、いま荒井先生、黒木先生の間で議論がありましたように、評価される出来事が必ず発症の前でなければいけないのか、後でもいいのかということが(ウ)の問題ではないかと思います。月100時間の時間外労働を労働者が行っている。それが出来事の前にあれば心理的負荷が強かったと見て、中程度であればこの出来事を強と評価するというのがあって。
○黒木先生 それは発症前ですね。
○山口先生 それは、既に事務連絡でやっている処理ですから、これはこれでいいだろうと思います。ところが、100時間の労働が発症の後にあったというときです。
○黒木先生 それは、その前でしょう。
○荒井先生 発症の後は、そんなに仕事ができないと思います。
○山口先生 発症ではなくて、出来事の後というべきですか。
○荒井先生 出来事もなくても、そういう方は実際にいらっしゃいますよね。
○岡崎座長 論点1の(1)のほうは、労働時間だけで極度の心理的負荷を表現できるようにしたほうがいいのではないかということでは先ほど一致ということでしたが、そのあとのどれぐらいかについては、いまのところ十分にまだ一致していないですね。それで3週間で120時間といったような具体的な目安も提案されていますし、もう1つは、私が提案していることですが、期間を入れて、それと同等ということも目安を出せるのではないかということですが、その先はどうしましょうか。
○荒井先生 先生は、先ほど3か月100時間というのを例示されましたね。それが、先生の持っていらっしゃるいちばんのモデルでしょうか。
○岡崎座長 それは、3週間で120時間というのと同等がどれぐらいかというのを十分に考えたわけではないので、それはもう少し数値は検討すべきでしょうけれども、そういったような期間と単位期間における時間外労働時間というのを加味して表現するのは可能かなと思ったのです。そのあたりで、先の詳細はこれで検討するということにしましょうか。
○荒井先生 私は短期間のことを言っているので、ある一定期間、6か月についての極度については座長のお考えのとおり、また問題としてはオープンだと思いますが、単位期間としては時間はいろいろだと思いますが、直近の出来事として、時間外労働として、一定時間以上は出来事があってもいいですが、なくてもいいということはいまもやっているわけですし、それを例示できることは、事務作業の管理にはもちろん役に立つと思いますし、説明できるというか、ということになる。我々の実感には非常に合っているので、我々とすれば物差しを変える必要がないです。
○山口先生 反論ではありませんが、先生の基準の3週間というのは、なぜ3週間が単位ですか。
○荒井先生 事例が多いのです。
○山口先生 けれども、世間で何か見るときには4週間や1か月というのが、わりと常識の単位でしょう。
○荒井先生 いいえ、タイムカードを見ていくのです。そうすると、連続した労働が目立つでしょ。その期間が、4週間の方も確かにいらっしゃいます。でも、3週間ぐらいで大体へばっています。
○山口先生 そうすると、いままでの症例の分析から出てくる単位ですね。
○荒井先生 そうです。ですから、4週間以上やっていらっしゃる方もいると思います。だから160時間ですね。40時間の時間外を1か月やっていらっしゃる方もいますが、それは多くないです。3週間で大体へばっている。
○山口先生 それは、医学的な根拠としてはいいのではないですか。4週間や1か月というのは、どちらかといえば判断指針の運用しやすいための基準ですよね。けれども、先生のは症例から出てきた大きな基準で、医学的に根拠のある期間になっているから、非常にいいのではないですか。
○荒井先生 数週間というのをどのぐらいかと私たちは見るわけですよね。例えばこの人は20日続いているとか、この人は25日とか、この人は30日とありますが、大体は3週間を超えないというのが一般的だろうと思います。
○鈴木先生 それはエビデンスとして、きちんとなっているわけですか。
○荒井先生 エビデンスを示せと言われると、また大調査をしなければいけませんが。
○鈴木先生 ですから、従来どおり1か月で同等の時間ですね。1か月で140時間とかですね。
○荒井先生 数週間で睡眠が5時間を切っている。それを連続した労働だというのが大体120時間だということを経験的にというか、計算がそうなので。
○鈴木先生 3週間で120時間と同等な、2週間で何時間とか1か月で何時間としたほうが使いやすいということです。
○荒井先生 それは先ほど申し上げましたように、確実にタイムカードを見ていただいているわけです。そのタイムカードの連続を、どこからどこまで続いているのかというのを見ていただくのがいちばん確実ですし、それを誰もが目視できるものですから。
○黒木先生 実務的にも4、5時間の睡眠しか取れないような状況が2、3週間は続く場合に、現実にいままで認定はしてきているので、荒井先生がおっしゃったような120時間というのは1つの目安にはなるかもしれません。
○岡崎座長 いずれにしても、心理的負荷を時間外労働時間の数値だけで表現できるだろうということです。そうすると、次のイは表現できない場合の議論ですので、数値がどれぐらいあるかというのを今後議論しないといけませんが、イの議論は飛ばしてよろしいということになりますか。
○西川職業病認定業務第一係長 イのほうは出来事との組合せで、アの結論が示せる、示せないにかかわらず、いままでのところアのほうは、少なくとも3週間120時間に反対の方はいらっしゃらないわけですね。それのほかに、例示できるものがあるかどうかはともかくとして、少なくとも1つは例示できるであろうと。ただ、これは出来事にかかわらずということですから、出来事と組み合わせたときのイの労働時間についても、一応ご議論いただければ。
○岡崎座長 そのときの労働時間も問題はあるわけですね。
○織先生 3週間で120時間の時間外労働以外に、先ほど4週間で140時間という基準と、座長が言った100時間の残業が3か月続いた場合という基準の提案もあったのですが、それに反対の方はおられないのではないでしょうか。
○岡崎座長 特に、いまのところはないですが、そこはもう少し厳密に議論をし直す必要があるだろうと思います。
○黒木先生 長時間残業は、発症に影響を与えていることが前提ですから、直近数週間ですよね。
○岡崎座長 しかし、それは直近数週間に限らないのではないですか。
○織先生 そういう議論があるのですね。
○黒木先生 だから出来事があって、続いて長時間残業が発生して精神障害が発症する、、これは非常に一般的な話です、たとえば何か災害があって不眠不休の状態が続いて、1、2週間全く眠れない状態で従事した場合に、発症して自殺した。それらは当然、因果関係があるわけですよね。だから、この場合はその出来事がなく、その長時間残業をどう捉えるかという話ですから、発症前の数週間というのは重要かなという気がします。
○岡崎座長 そういうアキュートなものとクロニックのものと常に両方ありますので、そこは両方を検討すべき。
○黒木先生 クロニックなものは、例えば100時間残業をずっとやっていても発症しない場合があります。6か月100時間残業をやっても発症しない。しかし、ある一定の期間は、120時間、100時間の残業があっても発症せず、何か出来事があって、その後、さらに時間外労働が発生して精神障害が発症する場合もあるわけです。そういう場合をどう考えるかということにもなるわけです。
○岡崎座長 それは常に、両方あるのではないですか。ですから、急性の方にだけ限る必要はないだろうと医学的には思います。期間を入れないといけないですが、時間外労働時間とその期間の組合せについて、もう一度整理した上で議論をしたいと思います。
○幡野職業病認定対策室長補佐 いまの発症前3週間について120時間ということであれば、当然4週間160時間といった世界も同等だろうと思われます。今回、私どもは2週間という中で若干長い時間ということで出していますが、そういったものを含めて時間の設定を再度、事務局で、荒井先生と黒木先生が実務をやられていますので、その辺のところから取らせていただいたものをご提示してご議論いただく形でいかがでしょうか。
○岡崎座長 また次回にでもいただければと思います。イは、出来事との関連で強い心理的負荷と評価できる労働時間の問題ということですので、やはり議論しないといけないですね。それでは、先ほどのご説明がありましたので、時間配分が悪くて申し訳ないですが、そちらの議論に移ります。これについてはいかがですか。この中で(ア)は、現行と同じですよね。(イ)は、要するに弱い出来事を挟んで、前も後も100時間の時間外労働がある場合ですが、この場合は現在は出来事の評価が弱であったら。
○西川職業病認定業務第一係長 (イ)も現行で、出来事の前に恒常的な長時間労働があれば、出来事の評価を上げるようにということにしていますので、もしIのものが何かあればIはIIになる。
○岡崎座長 中程度があって、その後の引き続き。
○黒木先生 具体的に話してもらったほうが、わかりやすいのではないですか。
○岡崎座長 (ウ)は現在は採用していない。
○西川職業病認定業務第一係長 (ウ)は現在、直ちに採用していませんで、説明が具体的でなく申し訳なかったのですが、(ア)のパターンはいまは中程度と書いていますが、基本的にはIIの出来事があって、そのあと概ね100時間以上の恒常的な長時間労働をしましたと。これは現行の取り扱いでは、出来事の後に100時間程度の恒常的な長時間労働があれば、出来事後の評価を「特に過重」としてよいということで示していますので、IIプラス「特に過重」だと総合評価は強ということになる。
 もう1つは、恒常的な長時間労働をしているときに何か出来事があったときには、その出来事の評価を上げてよいということですので、100時間労働をやっていてIIの出来事があればIIはIIIになる。100時間の時間外労働をやっていて、Iの出来事があれば基本的にはIはIIになるということで、(イ)の場合は100時間やっていて、Iの出来事があればIIになりましたと。今度IIの出来事があるときに、その後100時間の長時間労働をやっていたときには先ほどと同じようなパターンになりますが、出来事後がIIで「特に過重」ということになれば強になるということです。
 (ウ)は、100時間ぐらいの時間外労働をやっておられる方がIIの出来事に遭ったということです。これはIIがIIIになるところまでいくわけですが、いまはIIIでも、その後は「特に過重」か、「相当程度過重」か、何もなかったかということで、「相当程度過重」以上でなければ、強というところまで行き着かないようになっていますが、そこのところを出来事後の状況に関係なく、強い心理的負荷があると考えてよろしいものでしょうか、どうでしょうかということで提示したものです。
○岡崎座長 (ウ)の場合、(ア)や(イ)と同じように強い心理的負荷があると認めることができるかということです。
○黒木先生 出来事後の状況に関係がないというと、この出来事後に長時間残業、100時間以上が続く場合もあるし、もっと残業が延びる場合もあるし、延びない場合も想定しているのですか。
○西川職業病認定業務第一係長 そうですね。
○黒木先生 延びない場合というのは、例えば時間外労働がなくなったとか、そういうことも考えていますか。
○西川職業病認定業務第一係長 なくなった場合もあるかもしれませんし、直ちに発症して休んでしまった場合もあるかもしれません。そこで取扱いが違うのか、違わないのかということも含めてですね。
○黒木先生 でも、それはそのときに発症していますよね。発症の前を見るわけですから、当然その出来事の後のどの時点で発症したかということによるのではないかという気がします。
○西川職業病認定業務第一係長 距離というか、その開き方によるということですね。
○岡崎座長 ただ、これは出来事と発症との間の関係というか、期間を現実には考慮しているのでしょうね、直近であれば。
○山口先生 月100時間の時間外労働というのは、出来事の前に行っているのではないのですか。出来事もかぶって後ろに。
○岡崎座長 出来事の前でしょう。
○西川職業病認定業務第一係長 (ウ)の例は前ですね。
○黒木先生 前に100時間があって、出来事があってということですよね。
○岡崎座長 出来事と発症との期間的な関係ですよね。
○山口先生 そうすると(ウ)の答えは、(イ)のあれをどう考えているかによりけりではないですか。もし、評価表のストレス脆弱性の理論を単純に考えますと、月100時間の時間外労働をやっているというのは出来事に何も当てはまらなければ、先ほどの時間の基準に当てはまらなければ意味のない話ですよね。そうすると、弱程度の心理的負荷がある出来事に遭った。そのあと、100時間程度の時間外労働をしているということだから、評価表のランクを1つ上げるということだから、IからIIにはなるけれども強にはならないのではないかと。
○西川職業病認定業務第一係長 (イ)の例は、出来事の後にも100時間ぐらいの長時間労働をやっているということで、後にやっている場合には今度は出来事後の状況を「特に過重」と見ましょうという、別に示している取扱いがあるわけです。
○岡崎座長 (イ)は(ア)と同じになるのですよね。
○山口先生 ですが、これは心理的負荷が弱ですから、1つ上がるのでIIになるのであって、強にはならないのではないですか。
○西川職業病認定業務第一係長 (イ)がIIになるのは、前の長時間労働でIがIIになるからです。
○山口先生 ですが、評価表ができているストレス脆弱性理論の非常に単純な考え方だと、何も当てはまらないわけです。だから、これは無視しなければいけない要素です。
○黒木先生 でも、出来事が一応あるわけですね。
○岡崎座長 出来事は弱いけれども、前も後も長時間労働があるから、そこで(ア)と同じに持ち上げてしまうというのがいまの操作的な定義ですよね。何か無理がありますよね。
○山口先生 ですが、100時間の時間外労働というのは出来事ではないですよ。
○西川職業病認定業務第一係長 100時間の時間外労働は出来事ではないですが、(イ)で書いているのは100時間の時間外労働をやっている人に、次の弱程度Iの出来事が何かあった場合ですね。
○山口先生 それはわかります。そうだけれども、この100時間労働というのは出来事の前にあるのは、いまの評価表では何の意味もないです。
○西川職業病認定業務第一係長 表の中には、長時間労働ということ自体は入ってこないので表の中に意味があるわけではないですが、表の中の出来事のI、II、IIIという平均的な強度のところがありますよね。それを事案に合わせて修正することになっていますが、この修正のときに出来事の前の長時間労働は考慮するようにということで、取り扱っているわけです。
○山口先生 それはわかります。その善し悪しは言いませんが、もしそうしているのだったら、(ウ)も当然そうしないと論理的に辻褄が合わないでしょう。
○西川職業病認定業務第一係長 (ウ)のほうは、IIはIIIにはなるわけです。ただ、IIIになっただけでは、いまの判断指針の枠組では業務上のところまで行き着かないわけで、出来事後の状況が「特に過重」か「相当程度過重」でないといけないというところですので、そこをもう1回改めてみないといけないものでしょうか。(ウ)のようなケースでは、直ちに強い心理的な負荷があったと認めてよろしいものでしょうか、どうでしょうかと。いまのお話は、発症との場合によるということですね。
○岡崎座長 これは発症との時間的関係によるのでしょうね。
○河合補償課長 (ウ)というのは、極度の長時間労働と同視できるだけのものと言えるかどうかという聞き方だと考えていただければいいかなと思います。極端に言えばです。
○荒井先生 それは100時間やっている人が長時間労働の後、出来事があって、みんな発病していたら発病しない人がいないぐらいだと思います。
○山口先生 だから極度の長時間労働で、その基準だけで判断するのと、何か評価して出来事の評価をランク上げするのと、実質的にどの程度違いますかね。やはり、かなり違ってくるのではないですか。だから、これはランクを上げて処理しようという考え方ではないですか。
○河合補償課長 もちろんランクを上げて処理するのですが。
○黒木先生 恒常的な長時間残業が続いていたということで考えていいわけですよね。そういった中で、この出来事が起こったということですよね。
○荒井先生 要は恒常的ではないですよね。月100時間やって、そのあと違う出来事が起こった。
○黒木先生 それは連続で数か月以上続いているとか。
○荒井先生 これは情報がないので、そこは書いていないです。
○黒木先生 でも、それは設定しているのではないですか。それによって違ってきますよね。
○山口先生 これは評価表の運用ですから、基本的には行政に任せられた裁量の範囲だと思います、事務連絡のように、こうやろうというふうに行政が判断されれば、それでいいのではないかという気がします。だから、この(ア)(イ)(ウ)も、これでやるということなら、それでいいのではないでしょうか。
○岡崎座長 あまり矛盾は感じないですよね。
○荒井先生 1つよろしいですか。この(ア)と(イ)が承認されていくプロセスの中には、必ず時間外労働がある出来事の後にあったということで、周りからの支援という側面がどうしても入ってきています。長時間労働もあり、それを止めなかった事業者の責任もあるという2つの項目がどうしてもセットになって、「特に過重」というふうになっていくことが多いと思います。この(ウ)の場合だと、出来事の後、休んでしまわれたという例が先ほどありまして、そういうケースは実際にあると思います。そうすると、本当に出来事後の状況を全く勘案しないというのは、なかなか難しいのではないかという気がします。休んでしまって、負担がなくなってしまうわけですよね。
○黒木先生 休んだのは、発症したから休んだということになれば、当然関係してきますよね。
○荒井先生 それは、もう決め事ですね。
○岡崎座長 出来事から発症までの期間をどう評価するかということですので、それは通常臨床的な判断がいちばん。裁量に任せるべきではないでしょうか。
○河合補償課長 (ア)と(イ)を認めていれば、(ウ)ということもあり得るということですね。もっと極端なことを言えば、取扱い上どうなのかという感じですが。
○織先生 (ウ)も認めないと、不公平ではないでしょうか。
○岡崎座長 不公平ですよね。これは、いままでの操作的な認定の仕方も隙間があるわけで、それは認めないといけない。
○河合補償課長 医学的にはどうなのですか。取扱いの問題は、また別に見ておいて、臨床的にというか経験則にというか。
○黒木先生 我々がいろいろと決めていくときに、100時間というのは1つの目安があるわけです。100時間残業が数か月続いている中で出来事が起こってくることになると、そしてその直後に発症することになれば、当然認めざるを得ないのではないかなという気がします。100時間というのは、1つの指標ではあると思います。
○荒井先生 確かに単月の100時間のあとにIIの出来事があって、それによって精神障害が発病するというのはあまり多くないと思います。100時間でなくても80時間でもいいですが、ある一定程度の恒常的な長時間労働があって、ここにIIの出来事が起こったときの発病のほうが、より我々は臨床的に確認しているということだと思います。
○岡崎座長 これは、わりと臨床的には自然なことですよね。
○黒木先生 例えば、発症していないとなると、また難しいですよね。100時間がずっと続いて、負荷のある出来事があった。そのあと、発症はしていないけれども半年ぐらい休んでしまった。そして、しばらくして発症したということになると、それを認めるのは難しいということですね。
○荒井先生 発症していない場合ですね。
○黒木先生 現実的に、そういうのはあり得るでしょ。
○山口先生 それは、仮に極度の長時間労働基準という別の基準を作っても、それに合致している人でも発症しない人というのはあり得るわけです。
○黒木先生 もちろん医学的にもあります。そのときは、長時間労働はあまり発症には因果関係がなかったと言えるのではないでしょうか。
○岡崎座長 しかし、これはどうでしょうか。十分あり得ることで。
○荒井先生 一定期間という、単月ではないということは触れたい気がしますが。
○岡崎座長 この期間を明示するのは、臨床的ではないだろうと思います。当然出来事があって発症したという場合でしょうから、そこは相当の関係があるとみなされる場合を想定をして、現実的な処理としてこれも可能であるとしたほうがいいのではないかと思います。
○荒井先生 では、複数月はよろしいですか。1か月だって出来事があるというのは、ものすごく多いのです、一般の会社の中で。それが労災であるということがいま決められたとしたら、ものすごく多くのことが起こる可能性がある気がします。
○河合補償課長 いま、ここですべてということではないので。
○荒井先生 複数月だという主張があったことを記録にとどめていただきたいのです。恒常的な長時間労働までいかなくてもいいですが、複数月100時間を超える時間外労働があったということも含めて、検討していただきたい気がします。単月の100時間は、労働者にとってはあり得るわけですね。それは例外的な出来事ではあるけれども、そんなに珍しくはないのです。ですから、それが続いていてIIの出来事があった場合にという。
○山口先生 いままでの議論を伺っていて、評価表に書いてある出来事の存否は確かめやすいですが、いまのように労働時間が重要な要素だというので調べるときに、労働時間というのは簡単にわかりますか。発症した労働者のほうで言うのと会社のほうで言うのとは、調べに行っても労働時間は何時間かを把握しにくいということはないですか。
○西川職業病認定業務第一係長 現実問題として、いろいろ難しい問題はありますが、そこは現にやっていますし、やれると思います。
○岡崎座長 それはやれるという前提。
○荒井先生 相当、精度の高い調査をされていますし、もちろんそれは必ずしも全部正しいわけではないと思いますが、できる限り得られる情報の中で最善の、あるいは最大のものを選んでいただいていることは我々は経験しています。ですから、それは全然何もないところでも守衛さんに聞くとか同僚に聞くとか、コンピュータの立ち上げとかその他諸々の要件を見て、その方が労務していた時間を判断することをされているので、労働時間については相当精度が良いと。ただ、それとは違った意見が出ることは当然ありますが、1つの意見としてはまとめていただいています。それが相当参考になります。
○山口先生 変なことを言うつもりはないですが、余談です。労災と関係なく、いま時間外労働の割増賃金の請求の訴訟が多いのです。そうすると、時間外労働がどれぐらいであったかを認定して、その上で計算するわけです。それが労使の間にすごく争いがありまして、労働時間は使用者が目で見ていて現認するか、記録によって管理するというのが役所の通達で出ている考え方です。そうすると、タイムカードということになりますでしょう。ところが、使用者はそんなこといっても、朝パソコンを立ち上げて、前の日の自分の何かをやっていたとか、勉強していたとか、だからそんな時間の算定の仕方はおかしいよということになって、いますごく争いがあって、裁判官は頭が痛い状況です。
○黒木先生 待機もそうですね。
○山口先生 もしもこの時間数が労災の認定でも非常に重要な役割を果たすようになれば、被災者というか発症者のほうは何時間と言っているけれども、本当はそうでないというような争いのおきる日が来るかもしれません。○岡崎座長 ありがとうございました。だいぶ遅れてしまいましたが、論点1のアとイについては議論を終わります。時間的には厳しいですが、論点2に移りたいと思います。事務局からご説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 論点2の(1)だけを説明したいと思います。心理的負荷の評価対象となる期間ですが、現在の判断指針では心理的負荷の評価の対象となる職場における出来事は発病前、おおむね6か月に発生したものとしています。この発病前の期間をおおむね6か月に限定することが、最新の知見においても適当であるかどうかについてご議論をいただきたいと考えています。いまの判断指針でそうしている根拠は、下の四角の中にあるとおり、平成11年の報告書でライフイベント調査やPTSDの診断ガイドラインといったものを参考に、そういった考え方を示されているので判断指針もそういった取扱いにしていますが、アの6か月より前に発生した職場における出来事が原因で、業務上と認められる精神障害、いわゆる6か月の例外事例になるようなものがあるのかどうかです。
 イは、例外になるかもしれないような事案をご提示しています。それぞれ例外になるのか、つまり業務上と評価したほうがいいのかどうかをご議論いただきたいと思います。仕事上で大きなケガをして、社会復帰が困難でということで精神障害を発症した。ケガ自体は1年前であった。あるいは、仕事でじん肺等で療養中の方が死の恐怖や苦痛等もあるかもしれませんが、そういったことで精神障害を発病した。そういったものを感じるようになったのが、発病の10か月前であった場合はどうか。①②は療養中の関係ですが、いまの判断指針では基本的には6か月を超えて療養中の方の発病については、発病前6か月以内に症状の急変と、これによる強い苦痛などといったものがあることを求めていますので、①や②についてはこぼれてくる可能性が高いわけですが、こういったものは認めたほうがいいのかどうか。
 ③は、9か月前にノルマを命じられて、その期間が近付いてきて精神障害を発病した。期限自体はまだ3か月先だけれども、こういったものはどうか。あるいは海外に長期出張を命じられて、出張に行ったのは発病の10か月前で、そのあとは現地にいるということですが、現地の治安の問題や取引先とのコミュニケーションがうまくいかない。言葉の問題とかで発病する。こういったケースについては、どのように考えたらいいか。
 ウは、こういったことで対応できるのではないかということですが、例外があるとしてもこれは発病前おおむね6か月の中の状況を出来事というか、そういった評価を適切に行うことで対応することができるものでしょうか。また、それでは足りないのか、現状のままがいいのかどうかをご議論いただければと思います。事例は裁判例などを参考に、現在事務局で設定したものです。
 資料は、資料4の21頁の裁判例と資料5の医学的知見を付けています。資料4の21頁は、発病前の心理的負荷の評価期間について判断した裁判例ということで、7件を示しています。分析対象とした平成20年度、平成21年度の裁判例のうち、評価期間について判断を示したものは全部でこれだけだったということです。判断は分かれていまして、発病前おおむね6か月とすることを肯定的に判示というものが、(1)に2件あります。それから、発症前6か月に限定するのは否定的だというものが4件ありました。特に評価期間の考え方を示していなかったのですが、11か月前の出来事、発症前6か月以前の出来事を評価していたというものも1件あります。
 23頁以降に中身がありますが、23頁には発病前おおむね6か月以内の出来事を評価することが妥当であるということが判示されているもの。24頁にあるものは否定的ということで、①6か月等の一定期間のうちに経験した出来事に限定されるべきものではないけれども、とはいえ、そういった心理的負荷は時間の経過とともに受容されるというような心理的過程を考慮して判断すべきである。②は6か月という期間は行政機関で目安としたもので、これを厳格に判断する必要はない。③は①と全く同じです。④はじん肺で療養中の方の例で、発病前6か月間において先ほどの症状の急変や極度の苦痛がないことをもって、否定することは相当ではないというものが中ほどにあります。25頁の(3)は、ご覧いただいたとおり11か月前の出向を評価しているものです。実際には11か月前に出向したあと、いろいろな出来事が起こっているものですが、判示としてはこういった書き方になっています。
 医学的知見は37頁に表紙がありまして、実際に付けているものは42頁になります。これは事前にいろいろご相談させていただく中で、荒井先生からもご推薦をいただいた2008年の本で、ライフイベント法による調査期間をいろいろ示しているものを抜粋したものです。上のほうは、アンケートによるチェックリスト方式によるライフイベント調査のいろいろな例を挙げています。下のテーブルには、聴取りのインタビュー形式によるライフイベント調査の例をいろいろ挙げています。真ん中辺りの縦で見た3列目で、12MOSや6MOSといったものが並んでいるところが調査期間になります。特に下のインタビュー形式でされているものについては、6か月を調査期間としているものが非常に多いと言えるかなと思っています。まず、こちらについてご議論をいただければ幸いです。
○岡崎座長 ありがとうございました。論点2の前半の(1)ですね。発病前のおおむね6か月に限定することをどうするか。妥当であるかどうかということですが、いかがですか。
○山口先生 この「おおむね」というのは、どういう意味ですか。
○荒井先生 7か月前はおおむね6か月に入るというようにやっていると思います。
○岡崎座長 満で数えるわけですね。
○荒井先生 要するに、出来事の因果としてつながっているのではないですかというところで、始まりが7か月前でも採用していることはあり得るということです。
○山口先生 この3頁のイに出ているような事例で、これを拾うためということでしたら別に6か月を長くしなくても、十分に判断できるのではないかなという気がします。というのは、イの①は単純に言えば切断したというのが出来事でしょう。その社会復帰が困難であるというのがわかったのはそのあとだからということでしょうけれども、こういう現象の場合には出来事を少し広く捉えて、何か直接的な出来事と効果が続いているのは継続しているような行為として捉えて、いちばん典型的な例は出張です。出張に行っているのだから、毎日出張が続いているわけだから、いちばん直近のところから6か月を計算すればいいのではないかという気がします。
○岡崎座長 現在のおおむねでも、こういったものは採用したりしなかったりしているわけですね。
○黒木先生 つながっているものとしては、捉えられるのではないかと思います。①にしても両足切断。前に事例で、手が氷をキューブ状にする機械に触れて、手術を何か月かおきにしたけれども、結局は切断をしなければいけなくなった。そのあとに解雇通告、復帰ができないことになって、自殺をした事例もあります。トータルで見ると出来事から1年ぐらいかかっているかもしれませんが、流れとしてつながっているものは認めてもいいのではないかなという気がします。
○良永先生 いまご発言がありましたので同じことの繰り返しになるかもしれませんが、①は社会復帰の困難状態ですし、②は死の恐怖という一種の心理的には非常に困難な状態、③もノルマを達成できないという非常にきつい状態が続いているし、④は先ほどおっしゃったように出張がずっと続いているということですので、その状態の延長上で発症したということであれば、翻るときっと全部6か月以内に入っているはずです。問題は6か月より前に起きた大ケガや出張命令までを結果的に拾っていくことになるので、おおむね6か月という基準をあえて変えるべき、あとは運用の話ですが、積極的な材料にはならないのではないですか。
○黒木先生 ④にしても出張した中でコミュニケーションができないとか、出来事がないわけではないですよね。そこで発症しているわけですから。やはりおおむね6か月を見ることで、大体はカバーできるのではないかなと思います。
○良永先生 6か月の間は何もなくて、その前の出来事でポンと突然発症するというのは、医学的にはなかなか認めないのでしょ。
○黒木先生 むしろ、因果関係を認めるのは厳しいのではないかなと思います。
○良永先生 きっとそういうことがあって、おおむね6か月という期限を立てられたのでしょうか。その知見に現在変化がなければ。また、運用で変なことが起こらないようにするで、いいではないですか。
○黒木先生 先ほどの長時間の残業もそうだと思います。6か月以前にずっとやっていた。その6か月はないということになれば、それは厳しいことになります。
○山口先生 ③のノルマが達成困難だったというのは、誰がどうやって判断するのですか。判断する人によって随分違いますね。
○黒木先生 与えられたものが期日内にどうしてもできないとか、そういう状況の中に本人が置かれていて、成果物が出てこないとか、そういうところで判断せざるを得ないと思います。
○山口先生 理論的に言えば、そうだと思います。
○荒井先生 期間の問題については、先ほど申しましたように、おおむねというのは、ある出来事が6か月に影響していることも吸収していくというのが、事務局も考えていることだろうと思います。出張したことが前であっても、ずっと出張しているのだから、出張した事実を尊重することだと思いますが、それを半年でなぜ区切っているかというと、これ以上長くすることが仮にあるとすると、この会議の目的が簡素化というか、より早くやっていくためには長期間調べるためにはデータをたくさん調べないといけませんし、聴取りも多くなりますし、また資料がないものもあるので、アンノウンがものすごく増えてしまう。あるいは日記や会社の記録がある場合には正しい事実が出てきますが、個人の記憶の限界、メモ等を見ないでやるときのテスト、リテストの相関が半年を超すとすごく悪くなるので、6か月を選択しているというのがあって、それが42頁にお示しした、研究が大体半年に集約されているということになるのだろうと思います。いまのPTSDとか、そういうものについても半年というのは1つの基準にして考えているものですから、半年の期間というのはそれこそ先ほど申し上げたようにおおむねですし、半年なら半年に影響している諸要因を勘案するという意味ではあると思いますが、半年以上に増やしたら、もっと結論が出るのが遅くなると思います。ですから、半年がいいとは思っています。
○黒木先生 半年の間に発症から半年間だから、その出来事を見ていくとつながっているものが出てきます。それは、例えば6か月前にこういうことがあったとか当然個々を調べていくので、集中的に調べるのがおおむね6か月ということで十分だと思います。
○岡崎座長 そこで6か月調べていくと、例えば仮に2年前に始まったものであっても発見しますよね。ですから、結局は出来事で始まって変化が生じたものが発症前6か月間続いているものであれば、2年前のものであっても関連づけて評価されるということだと思います。ですから、おおむね6か月というのはあまり問題はないのではないか。
○阿部先生 継続している出来事であれば、起算点はあまり関係ないということですよね。
○岡崎座長 そうですね。
○荒井先生 半年の状況を考えるというふうに変えていかないと。
○阿部先生 その後の証拠とか。
○荒井先生 起点が7か月前だから、ないという話にしたら、それはあまりにもアレですよね。
○阿部先生 継続していれば、発生から6か月であれば、それは拾っていくという。
○荒井先生 その中で、主たる問題になっているのが起点が1年前であっても、それが現に生きているわけですから、その時点で半年間のは。
○岡崎座長 という趣旨で、このおおむね6か月というのを理解するということであれば、あまり問題はないかと思います。
○清水先生 私もア、イ、ウはすべて賛成ですが、1つ意見として、精神障害の考え方として大きく2種類あると思います。おそらくPTSDのようなタイプは、ある1日の出来事があって、そのあとはしばらく心理的負荷がない期間、つまり潜伏期間みたいなものがあって、でも、ある日また突然すごく怖くなるという出方ですよね。だから、出来事と潜伏期間と発病の距離というか、時間的な間隔が開いているタイプがあると思います。うつ病みたいなものは、何か出来事があって、その出来事が連日続くような慢性的な心理的負荷があって、ある日うつ病が出てくるというパターンがあると思います。ですから、発病前のおおむね6か月を探してもらうと、必ず心理的負荷は評価として引っかかる。ただ、イの例外となるような事例は、その出来事がもう少し前だったりすると、例えば両足切断して、喪失した足は戻ってきませんので、毎日そういう心理的負荷はずっとあるというようなことは発病前からおおむね6か月を探してもらうと、心理的負荷自体は見つかると思います。そういう意味で、現在の方針は妥当だと考えます。以上のような意見です。
○岡崎座長 ほとんど見つかるだろうと思うけれども、見つけられないケースもあると思います。それは極端だと思います。清水先生が言われた最初の例で、数年前に出来事があって、ずっと何もなくて、ある出来事との関係でそれが想起されて非常に影響するといったようなこともなくはないですよね。ですから、すべて拾うかどうかはわからないけれども、ほとんど拾えるのではないかと。
○山口先生 そこはよく見ていないと、その出来事のパターンとして1回的な出来事と継続的な出来事と、いま座長がおっしゃったように何か回帰的というか、数回繰り返し出てくるのと、3つぐらいがあるかもしれませんね。それをうまく、この6か月の「おおむね」の中で行為のタイプをつかんで、処理しなければいけないですね。
○黒木先生 確かに大きな出来事があって、1か月以上が経った場合に発症する。PTSDの1つの基準になっていますが、その出来事があって潜伏期があって発症するということも、もちろんあると思います。でも、出来事があって急性ストレス反応を起こして、そこからPTSDに移行するタイプが多いわけですから、1年ずっとつながっている。でも、大きな出来事があれば直近で発症することが多い。だから、その疾病の移行が当然あり得るわけです。
○岡崎座長 そういうことは残りますが、おおむね6か月でほぼ補足できるのではないかと考えてよろしいですか。
                 (異議なし)
○岡崎座長 申し訳ありません。私の不手際で、時間があと5分しかありません。もう1つは、またとても難しい問題ですので、今日はここまでにします。次の課題は、また結論が出にくい問題です。事務局のほうに、これでお返ししてよろしいですか。
○西川職業病認定業務第一係長 資料6と資料7について、よろしいですか。論点のほうはご議論いただきまして、ありがとうございました。資料6と資料7について、事務局からご説明をしたいと思います。
 資料6は、11月に働く女性の全国センターさんほかからいただきました要望書、資料7は12月4日に全国労働安全衛生センター連絡会議さんからいただいた要請書です。それぞれ、いろいろなご要望をいただいています。特にセクシュアルハラスメント被害に起因する疾病という精神障害の労災認定に関して、いま現在においてもセクシュアルハラスメントを受けたことというのは、職場における心理的負荷となる具体的な出来事の1つとして位置づけられています。当初、私ども事務局としては全体の出来事の1つとして、本検討会の中でご検討いただければいいのかなと思っていましたが、ご要望がありまして、セクシュアルハラスメント事案の特異性や実態を詳細に把握した上での検討を行ってほしいということで、資料6の1.は被害実態調査やプロジェクトチームの設置、ヒアリング実施等をやってほしいというご要望。また安全衛生センターさんの要望書の中には、セクシュアルハラスメント以外にもご要望の内容が多岐にわたるわけですが、いちばん頭の要望事項には女性団体等も含めた意見聴取のご希望や、④の出来事の「セクシュアルハラスメントを受けた」についての評価の問題提起などをいただいています。
 こうした状況の中で事務局としても、セクシュアルハラスメント事案については全国の均等室等へ数多くの相談が寄せられていることや、その事案の性質から被害を受けて、精神障害を発病された方が労災請求をしにくいということ。あるいは労働基準監督署における事実関係の調査が困難となる場合が多いなどの状況があるのではないかと考えまして、そういった状況を改めて検討したところ、ほかと異なる特有の事情があるため、より深く実態を把握した上で、精神障害の労災認定の基準の検討を行う必要があるのではないかと考えました。
 そういった考え方は、資料7に「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会の開催について」と書いていますが、座長とご相談の上で、この本専門検討会の下に分科会という形で、セクシュアルハラスメントをはじめとする女性問題に詳しい法学、医学の専門家を交えた分科会を開催して、そちらで詳細な検討を行っていただけないかという提案です。参集者をご提示していますが、こちら本体の検討会からは黒木先生、山口先生にご参加をいただき、法女性科学の戒能先生、女性の精神疾患についてご専門の加茂先生、社会保障法、労災保険法等のご専門の水島先生にご参加いただいて、詳細な検討を行っていただけないかと。この検討結果を取りまとめていただいて、本専門検討会にご報告いただいて、基準全体の検討に活かしていただくことができないかということでご提案をさせていただきます。
 検討事項は要望等を踏まえて、いまのところここにあるような、「特に心理的負荷が強度のものの位置づけ」や、こちらでもご検討いただいている先ほどの検討事項の「発病前おおむね6か月」や、「繰り返されるセクシュアルハラスメントの評価の方法」「その他運用上の留意点」がいろいろ出てくるのかなと考えています。その他、こちらの分科会のほうで開催してよろしいということであれば、さらに議論されて論点が決まっていってご議論いただくことになるのかなと思いますが、こういったことで提案として資料を出しました。
○岡崎座長 ただいま事務局からご提案いただいた、セクシュアルハラスメントに関わる専門的な分科会の設置について専門家の先生方にご検討いただいて、この会にご報告いただいて検討するというご提案です。特有の事情もありますので、是非そういった形でやっていただいたほうが、この会の今後の進行を考えても適当ではないかと思います。委員の先生方のご賛同をいただければありがたいのですが、いかがですか。
                 (異議なし)
○岡崎座長 ありがとうございました。そういった方向で進めるということで、事務局のほうにはよろしくお願いしたいと思います。
○鈴木先生 その下に書いてある(参考)で、「精神障害及び自殺に関する海外の労災補償制度について」は、海外から在外公館から集めたというのは、大変貴重な資料だと思います。日本の労災統計は数値が低いと先進諸国から前から言われていたのですが、精神障害については日本は欧米よりも非常によくやっているという評価を噂で聞いて、3年前の学会でも討論されたのです。これは、そういう意味できちんとやられているのはスウェーデンぐらいで、日本のほうが大体進んでいるというかという印象を受けました。以上です。
○岡崎座長 ありがとうございました。それでは、セクシュアルハラスメントに関わる分科会の設置・開催についてはご了承いただいたということで、事務局のほうでよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、本日はなかなかうまく進めなくて失礼しました。事務局へお返ししたいと思います。
○板垣中央職業病認定調査官 事務局から、次回の日程についてお知らせします。検討会は3月11日(金)の午後6時から開催予定としています。よろしくお願いします。
 これをもちまして、本日の検討会を終了します。本日は、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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