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2010年11月4日 第46回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成22年11月4日(木)


○場所

厚生労働省専用第15・16会議室(12階)


○出席者

<委員:五十音順、敬称略>

相澤好治、明石祐二、市川佳子、関口氏(伊藤雅人代理)、犬飼米男、今田幸子、瀬戸実、高橋孝行、高橋信雄、谷口元、露木保、土橋律、豊田耕二、内藤恵、中原俊隆、名古屋俊士、三浦武男、芳野友子

<事務局>

金子順一 (労働基準局長)
平野良雄 (安全衛生部長)
高崎真一 (計画課長)
鈴木幸雄 (労働衛生課長)
亀澤典子 (環境改善室長)

○議題

・職場におけるメンタルヘルス対策について(2)
・その他

○議事

○分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第46回労働政策審議会安全衛
生分科会を開催いたします。本日は、古市委員、眞部委員、伊藤委員、中村委員
が欠席されています。伊藤委員の代理といたしまして東京商工会議所の関口様が
ご出席されております。
 それでは議事を始めます。はじめに、議題にはありませんけれども、「職場にお
ける受動喫煙対策における公聴会」について1点、委員の皆様にお諮りしたいと
思います。前回の分科会では、公聴会での意見発表者についてご議論いただきま
して8名の方を選定していただきました。その後、事務局において選定された方
に連絡していただいたのですが、その中で都合がつかず、意見発表を辞退する方
が1名おられました。代わりの候補者について、幅広くご意見をいただくという
観点から私が再度検討させていただきました。
 委員限りで配付しておりますお手元の資料「公聴会に寄せられた代表的な意見
について」の16番の方が辞退されました。その代りに31番の方にお願いしたい
と考えております。国民全体の受動喫煙の健康問題について取り組んでいるお立
場からご意見が伺えると思います。この案にご意見やご質問がありましたらお願
いしたいと思います。ご意見がありましたら、それぞれ候補者に振ってあります
番号でお願いします。いかがでしょうか。よろしいですか。どうもありがとうご
ざいます。
 それでは、公聴会での意見発表者についてはこのとおり決定させていただきま
す。そのほかに公聴会に関して事務局から説明等がありましたらお願いいたしま
す。

○環境改善室長 公聴会の進行などにつきまして、この場をお借りしてご報告申
し上げます。まず、進行ですが、冒頭に分科会長からご挨拶いただいた後に、議
題1として本分科会での職場の受動喫煙防止に関するご検討の状況を事務局から
ご説明する予定です。それに続きまして、議題2として8人の意見発表者の方に
よる意見発表と考えております。その意見発表者の方は五十音順にご発表いただ
くことを考えておりまして、それぞれの方の持ち時間は15分の予定です。そのう
ち、ご発表が8分間、その後の7分間はご出席いただいた委員の方から意見発表
者の方に対する質疑と考えています。委員の方のお席ですが、ステージ上にお席
をご用意しています。意見発表者の方はステージ上ではなくフロアのいちばん前
にご着席いただいておいて、発表なさる方がお一人ずつステージに上がっていた
だいて意見発表と質疑応答にご対応いただくことを考えています。当日の資料は
まだ最新のものができ上がっておりませんが、事前にご覧いただくものとしまし
て、暫定版と書いたものを机の上の封筒に入れています。また、事務局にお寄せ
いただきました94人分の意見も、個人名は伏せてはおりますが、コピーを同じ封
筒に入れさせていただいております。委員限りの資料としております。参考まで
にご覧いただきますようよろしくお願い申し上げます。以上、概略をご説明申し
上げましたが、当日ご出席をいただきます委員の方々にはもう1種類封筒があり
まして、お越しいただきたい時刻や当日の流れなどをメモにまとめたものをお届
けしています。何かご不明な点がございましたら事務局にご連絡いただきますよ
うによろしくお願いいたします。以上です。

○分科会長 公聴会にご出席いただく委員の方々はよろしくお願い申し上げます。
 それでは、前回に引き続きまして、「職場におけるメンタルヘルス対策について」
ご議論をいただきたいと思います。はじめに、前回の資料としまして、労働政策
研究・研修機構において実施しました、「職場におけるメンタルヘルス対策に関す
る緊急調査結果」がありました。前回の議論において事業所規模別のデータの要
望がございましたので、これについて事務局で追加の資料を作成しておりますの
で説明をお願いします。

○労働衛生課長 資料1でご説明させていただきます。1は、規模別の調査票の
配布数と回収数です。数字はご覧のとおりですが、これは配布した時点では、例
えば「100~299」というデータに基づいて配布しましたが、結果的には人数が増
えたり減ったりする事業所がありますので、これは最初に想定した規模別の回収
数による回収数です。そういう意味では正確な分母が分かりませんので、正式な
回収率は規模別に出しにくい状況です。これは、最初の想定における配布数と回
収数を基にするとこういう回収率になるとご理解いただきたいと思います。
 2は具体的な調査結果です。2-1は取組状況について、(1)は取り組んでいる事
業所の割合です。全体では33.6%から49.7%に増加したのですが、内訳を見てみ
ますと、特に「10~49人」では44.5%と前回に比べて約10%ほど増加している
数字になっています。逆に「300人以上」は平成19年の健康状況調査では、例え
ば「300~500人」は83%だったものが、これは「300人以上」全部引っくるめ
てですけれども、67.9%となっていますので、今回回答をいただいた「300人以
上」の事業所の中ではちょっと取組状況が低かった。これが後ほどの、「取り組ま
ない理由」などに影響しているのかなと思っています。
 2頁をご覧ください。(2)は、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所での
具体的な取組内容とその割合です。全般にそれぞれの項目は、規模が大きいほど
取組みの実施率が高い傾向がありますが、個別に見てまいりますと、例えば、い
ちばん左の「衛生委員会などでの調査審議」ですと、50人以上ではあまり取り組
んでいる割合は変わらないという状況になります。
 計画の策定は全般に低い状況です。次の右ですが、例えば、担当者の選任、や
はりこれも規模が大きくなりますと選任の率は高い状況です。
 労働者への教育研修は、前回49.3%ですが、今回はあまり高い数字にはなりま
せんでした。これは2つあって、対象事業所がどうしても違うことによる影響な
のか、それとも、労働者への教育研修が一周りしたので、一旦、本年の時点では
少し実施が低いという解釈も成り立とうかと思います。逆に、その右側にありま
す、管理監督者への教育研修に重点がシフトしているという見方もできるかもし
れません。これが特に「300人以上」の事業所では73.6%で、それより規模の小
さいところよりも20%以上実施率が高くなっておりますので、特に大きい企業に
おける管理監督者の責任、役割が大きくなってきていることが窺えると思います。
 2つほど飛ばしまして、労働者からの相談窓口の整備ですが、これも特に「300
人以上」では77%という非常に高い数字になっている傾向が窺えます。
 職場復帰における支援、これも「300人未満」では20%ほどですが、「300人以
上」ですと39.5%で40%近い、2倍の差がある傾向があります。
 (3)の取り組んでいない事業所での取り組んでいない理由ですが、これも従来は
「取り組み方が分からない」といういちばん左の枠と、「その他」のすぐ左、「専
門スタッフがいない」が2大要因でしたが、今回はどの規模を見てもその割合が
減少傾向にある。特に「取り組み方が分からない」というのは、「300人以上」で
は17.8%と低下してきております。また、「専門スタッフがいない」についても、
「300人以上」のところでは22.9%と非常に低い数字になっています。逆に、今
回いちばん多かった、「必要性を感じない」は、平均値を押し上げているのは、「10
~49人」の48.5%とか、「50~99人」の33.2%とか、これらが平均値に影響して
いると思いますが、「300人以上」で53.7%という比較的高い数字はちょっと問題
だと思います。これは先ほど言いましたが、むしろこの規模で、「300人以上」で
前回の健康状況調査より全体の実施率が低い数字が出ていますので、今回ご回答
いただいたところで、必要性を感じなくて取り組んでいないところが多かった影
響が出ているのではないかと思っています。なぜ必要性を感じないかについては、
事務局でクロス集計したところ、休業者のいない事業所で「300人以上」で必要
性を感じないと答えているところがある傾向がありました。今回回答いただいた
「300人以上」で、休業者がいなくて必要性を感じないために、全体の実施率と
しても下がっている関係にあるのかなと思います。これについては今後さらに分
析したり、指導していく必要があると思っております。
 3頁は、専門スタッフの配置状況です。これは100人以上ですと、あまり率に
変わりがありません。
 4頁は、その具体的なスタッフの職種を規模別に見た表です。産業医がやはり
多く、ほとんどの規模の事業所で8割前後です。「10~49人」では産業医の選任
義務はないのですが、資本関係にある子会社と親会社の関係では、親会社から子
会社のほうに定期的に巡回といいますか、そういう産業保健活動をやっていると
聞きますので、これは単独で産業医を選任してメンタルの専門スタッフとしてい
るというよりも、本社との関係で産業医を活用している表われではないかと考え
ています。保健師又は看護師は、やはり「300人以上」のところで社内に保健師
を抱えて活動している実態があろうかと思いますが、そうでない「50~99人」や
「100~299人」では、その右の、「衛生管理者又は衛生推進者」を充てている傾
向に分かれていると読めるかと思います。
 2-3です。メンタルヘルス上の理由により休業・退職した労働者ですが、これ
も規模が大きくなるほど「いる」と答えている割合が非常に高くなっている状況
です。
 5頁の2-4は、休職した労働者の職場復帰の状況です。これは規模が小さい所、
例えば「10~49人」では、「全員復職できた」が32.4%、「全員復職しなかった」
が21.2%です。これが、規模が大きい所ですと、やはり配置転換ができるとか、
いろいろなバッファーになる制度があると、オール・オア・ナッシングと言いま
すか、全員復職できたかできなかったかではなくて、その中間のような実績があ
り、例えば、「300人以上」ですと、「ほとんど復職できた」がいちばん多くて26%、
「7~8割」が19%、「半分程度」が22.4%で、数字がバラける傾向があると言え
ると思います。
 2-5は、職場復帰のルールの状況です。あまり規模別に大きな傾向はありませ
んが、「手続きルールが定められている」が「50~99人」で42%といちばん多く、
ここは若干傾向が違う状況がありました。
 次は6頁、今後のメンタルヘルスの問題に対する認識別の事業所割合です。こ
れも数字の多いものは、「やや深刻になる」、「ほぼ現状のまま」で、あまり規模別
には傾向は変わりませんが、若干、「300人以上」ですと「やや深刻になる」と「深
刻になる」の数字が、それより小さい所よりも高いかなと。逆に、中小規模では
「ほぼ現状のまま」のほうが認識としては多いと、少し傾向が違うことが読み取
れると思います。
 (2)は、メンタルヘルスの問題と、重大事故の発生など企業のパフォーマンスへ
のマイナス影響についてです。これも「関係がある」がいちばん多く、ほぼ似た
ような傾向で、特段規模別の状況は変化がないものでした。
 最後の7頁は、メンタルヘルス対策の効果があると考えている事業所の割合で
す。これも「300人以上」で82%と高い数字ですが、「300人未満」でも7割前後
で、それぞれ取り組んでいる所ではその効果の手応えを感じている状況が読み取
れるかと思います。以上でございます。

○分科会長 ただいまご説明いただきました事業規模別の分析について、何かご
質問がございましたらお願いします。

○市川委員 質問ではありませんが、今回、緊急調査ということで、短い期間の
中でいろいろとまとめていただいて、課題がある程度明確に見えてきた点もある
と思います。じっくりこの後も分析をしていただいて、今後の厚生労働省として
も諸施策の中に反映していただきたい。それと、定期的にやっておられる労働健
康状況調査は、5年に1回ですか。これから将来的にメンタルヘルスの対策の問
題は非常に重要ですので、例えば、こういう聞き方をしていればこういう点がも
っと分かったとか、こういう質問をすればこれだけでは分からないことももう少
し状況が見えるといった課題も今回の調査でいくつか出ているのではないかと思
いますので、そういう点も踏まえて、より充実したメンタルヘルス対策に関する
調査が今後もできるように、是非ご検討をお願いしたいと思います。

○労働衛生課長 今回、特に大企業などで、管理監督者への研修が積極的に行わ
れている傾向とか、いろいろ新しく分かったこともあります。既存の事業の中で
も、例えば、管理監督者への研修は今年度、メンタルヘルス対策支援センターな
どでも取り組み始めたところですが、そういったことも含めて、次回まとめられ
るものについては今後の方向性についてご提示することもできようかと思います
し、また、今回の新しい枠組みの議論の中で、ご議論いただきながら方向性を出
していただければそれに結び付けることもできようかと思います。また、質問の
仕方も今回1つ工夫をしたところもありますので、それを踏まえて、さらにこう
いうことが分からなかったものがあれば、それもまた反映させることは検討して
いきたいと思います。

○分科会長 ほかに何かございますか。

○瀬戸委員 1頁目の1の規模別のところですけれども、「9人以下」の「集計せ
ず」というのは、回収があまりにも少なかったからという意味でしょうか。

○労働衛生課長 これは、従来から行っております5年に1度の健康状況調査で
も、「9人まで」というのは集計の平均値などのデータに入れておりませんので、
それと合わせるためだけです。これについても数はあるので出そうと思えば出せ
ると思います。今回、比較のために技術的に集計しなかったのです。

○瀬戸委員 ちなみに、回収数はどのぐらいあったのですか。

○労働衛生課長 163で、かなり少ない数字になっています。

○瀬戸委員 ありがとうございます。

○分科会長 ほかにはございますか。よろしいでしょうか。
 それでは続いて、自殺対策に関する各府省の役割について事務局から説明をお
願いいたします。

○労働衛生課長 今回、政府全体の自殺対策について体系的に説明して欲しいと
ご要望がございましたので、資料2にまとめました。1頁目は、自殺対策に関連
する各府省の役割で、政府全体の取りまとめを行っておりますのは内閣府で、真
ん中の四角にありますように、各担当の大臣が構成員であります自殺総合対策会
議があります。実際の施策は、具体的にはその右の自殺対策推進会議で、座長は
国立精神・神経センターの樋口総長ですが、それに民間有識者を加えまして、各
省庁の担当課長レベルがオブザーバーで出まして、事務局とのやり取りをしてお
ります。
 各省庁の役割についてはその下にあるとおりですが、警察庁はいわゆる自殺に
ついての遺族等からの事故としての聴き取りなどを通じた自殺統計を出しており
ます。総務省は、ここに書いてありませんが、各都道府県、市町村など地方自治
体への指導という役割もございます。厚生労働省はいちばん核になる心の健康づ
くりや医療体制整備もございますが、当然、やはり都道府県、市町村の衛生部局、
福祉部局を通じた指導・支援なども行っておりますし、これも書いてありません
が、人口動態統計などを活用した自殺の分析なども行っています。別途、資料は
既存のものを流用させていただきましたのでここには書き込んでおりませんが、
補足説明させていただきます。
 2頁は、「自殺対策基本法のあらまし」で、基本理念としてはここに書いてある
とおりで、「社会的要因が様々で社会的な取り組みが必要」だとか、「精神保健的
観点のみならず実態に則した取り組みが必要」等とありまして、責務としては国・
地方自治体・事業主・国民それぞれに規定がございます。「自殺対策大綱」という
ものを策定しておりますが、そこにぶら下がっている基本的施策として、特にこ
の分科会に関係がありますのは?Cの、「職域・学校・地域等における心の健康保持
に係る体制整備」という項目になります。
 もう少し細かいものが3頁にありまして、繰り返しになりますが、この分科会
に関係がありますのは、この枠でいいますと、右の真ん中の「当面の重点施策」
の中の「心の健康づくりを進める」ということで、労働衛生課の業務ではメンタ
ルヘルス対策支援センターや各種の研修、地域産業保健センターにおけるメンタ
ルヘルス対策、こういった事業がこの中に含まれています。大変簡単ですが、以
上で概要を説明させていただきました。

○分科会長 ありがとうございました。ただいまのご説明について何かご質問が
ありましたらお願いします。

○瀬戸委員 1頁目の下の各省の下から2番目の経済産業省で、「中小企業等への
融資等」と書いてありますが、この融資は自殺対策に関しての融資という意味な
のでしょうか。

○労働衛生課長 特段、自殺対策に特化したものではなくて、それぞれに持って
いるものはそういうものにも活用できるということで、いろいろ登録されている、
ほかの省庁も同じでございまして、自殺のためだけの事業を挙げることは、ほと
んどないかと思います。

○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
 続いて資料3労働者の「ストレスに関連する症状・不調として確認することが
適当な項目について」です。これは資料4「職場におけるメンタルヘルス対策の
論点について」の議論と密接にかかわってまいります。資料3と資料4について
事務局からまとめて説明をいただきまして、論点を議論する中で、資料3の内容
についても併せてご意見をいただきたいと思います。
 資料4については、前回の資料の再配布となりますが、前回は検討項目一覧の
7つの項目のうち3以外について議論しましたので、今回は検討項目3を議論し
ていきたいと思います。検討項目3には(1)から(4)までありますが、(4)は現在、
別途検討会を開催して検討していますので、本日は検討項目3の(1)から(3)につい
て時間をかけて議論したいと思います。それでは事務局からご説明いたします。

○労働衛生課長 それではまず、資料3をご説明いたしますが、資料5の参考資
料のほうも一緒にご覧いただきたいと思いますので、参考の1-2「職業性ストレ
ス簡易調査票」2、3頁見開きですが、これと一緒にご覧いただきたいと思います。
 今回のメンタルヘルスの新しい枠組みに関するご議論をいただくために、入口
になります健康診断の機会を捕まえて、ストレスの項目を確認する、こういうこ
とについて現実的にあまりコストを掛けずに、どのような項目で確認できるのか、
このイメージを持っていただきませんと議論が進まないと思いますので、緊急的
に独立行政法人の労働安全衛生総合研究所に依頼をし、専門家の方々に簡易な項
目をまとめていただいたものです。その土台となっておりますのが、参考資料1-2
の「職業性ストレス簡易調査票」です。これには、A「ストレス要因」という大
項目と、B「ストレス反応」です。これは具体的にいわゆる精神的な反応として
起こってくるものですが、それと3頁のCです。これは「就職要因」と呼ばれて
いますが、そういったストレス反応を、就職する上司との関係とか、同僚との関
係、こういったものの大分類があります。また、満足度等ありますが、一応、こ
の研究所に委託した研究委員会では、ストレスを確認するという趣旨からは、こ
のストレス反応の中から、更に項目を絞って、ストレスの強度について判定して
はどうかというようなことから検討を始めました。更に、B「ストレス反応」に
はいくつかの中分類といいますか、いくつかのカテゴリーに分かれており、上か
ら順番に申しますと、2頁のBの1「活気がわいてくる」~3「生き生きする」ま
で、これはいわゆる活気があるかないかというようなことです。4~6については、
イライラ感というように言われるものです。7~9については疲労の指標として、
そういうストレス反応として言われています。10~12は不安です。13~18が抑
うつです。次の3頁の19~29は一括して身体愁訴。「愁訴」という言葉は医学の
分野でよく使いますが、いわゆる身体の不調を訴えるというふうにご理解いただ
きたいと思います。
 こういった中分類があるわけですが、ストレスが高くなるに連れて初めからこ
の点数が高くなるものは、擬陽性の方が多く含まれてしまいますので、そういっ
た意味から、このイライラ感とか、身体愁訴も比較的早期の段階から比例的に点
数が高くなるというようなこともありますし、ほかの身体疾患でももちろん丸を
付ける方もいらっしゃいますので、そういった趣旨からこういったものは、候補
に残らず、最終的には資料3の右側の四角のいまほどご照会した中分類でいうと、
「疲労」は7~9のところにあるひどく疲れた、へとへとだ、だるい。それから「不
安」、気が張りつめている、不安だ、落ち着かない。「抑うつ」が3項目ですが、2
頁の簡易調査票では元々13~18ということで6項目あったわけですが、特に全体
の最終的なストレスの強さと相関関係が強いものを項目として抽出したところ、
資料3の「ゆううつだ」「何をするのも面倒だ」「気分が晴れない」、これが非常に
鋭敏な指標だろうということで、候補としてふるい分けに残りました。
 特に個別に説明しますと、「疲労」については全般的には脳、心臓疾患のリスク
を反映するということや、実際に将来のうつ病で休業する方というものを予測す
るのにいい指標だと言われております。「不安」というものは、しばしば「抑うつ」
と似たような概念ですので合併しますが、より労働時間に影響を受けやすいと、
鋭敏に労働時間の影響を受けて高い点数になるという傾向が、この「ストレス簡
易調査票」を開発したときの基礎データですので、そういうことからこのカテゴ
リーが選ばれたと。逆にいうと、繰り返しますが、身体愁訴はほかの方も丸を付
けやすいということと、最終的なストレスの強度に鋭敏に反応しない部分という
か、そこがあるということです。
 イライラ感も比較的早めに高い点数になってしまうというようなことです。活
気についてもそのようなわりと早めから立ち上がって、擬陽性が多くなるという
ようなことから生き残ったのがこの中分類ということで、特に「抑うつ」はその
中でも鋭敏な反応を示す3項目に絞られたということです。
 全部で9項目ですが、例えば疲労について、それぞれいちばんきついものは4
点ということですので、合計12点。不安も12点。抑うつもそれぞれ12点とな
りますが、だいたいうつ病というのは一般的な有病率が2%ほどと言われていま
すが、それにもう少し広い概念である気分障害やその他の周辺のものを含めます
と、数パーセント拾えるのがいいのではないかということで、それぞれ12点満点
で、数パーセント拾うということになると何点ぐらいが裾切りの点数かというの
も検討していただいております。それで言いますと、例えば疲労ですと12点満点
です。取らないと数パーセントには絞り込めない。不安は11点ぐらい、抑うつは
10点ほどで、相乗的に、うつ状の人を逃さずに、ある程度パーセントを拾うには
それぞれの項目では、上から12、11、10と。
 もう一度確認しますが、抑うつで10、不安で11、疲労12です。それぞれまた
はということでやりますと重複者が出ますので、それぞれの例えば12点以上とか
を取った人は、結局何人いるのか、100人いればどのくらいの割合になるのかと
なると、この質問票でいまのような裾切りをするとすれば、だいたい12パーセン
トの方が絞り込まれるというようなことになっています。なお、先進的な事例で、
全国の健診機関がメンタルヘルス健診のような形でやっておりますと、だいたい
面接が必要と言われた方の半分ぐらいが実際に面接を受けるというような傾向が
あるようです。もちろん今度の新たな枠組みの制度の組み方にもよりますけれど
も、だいたいこのくらいの項目でいまのようなパーセントをそれぞれ裾切りし、
重複を排除しますと、だいたい12パーセントの方が一応、要面接というような、
一定の目安になるということですが、あくまでもそれは機械的な操作ですので、
実際には更に医師がちょっとした確認をすることにより、それなら心配ないです
ねとか、家庭要因でわかりきっているので、それは自分の責任ということであれ
ば、様子を見ましょうということにもなろうかと思っております。以上が資料の
3です。
 資料4については前回ご説明いたしましたが、今ご議論をいただくために、も
う少し簡単に再度ご説明いたします。これと資料4の2頁と、参考資料の概念図
が書いてあります参考資料1-3です。論点の「検討項目」3の(1)メンタルヘルス
の不調を把握する方策として何が考えられるかということですが、繰り返しにな
りますが、自殺PTの取りまとめの表現ですので、この検討会での新たな枠組み
の提案では、ストレスに関連する症状・不調を確認する方策として、どんなこと
が考えられるかというように、読み替えて考えていただければと思います。2頁
の検討項目3の(1)の2 今後のあり方の(1)のところに現時点において、全ての
職場において調査票を用いて精神疾患を早期に発見するという方法を取ることは
様々な困難を伴うということで、最終的にはストレスの要因についてを把握して
はどうか、という提言になっています。具体的には3頁に基本方針を書いてあり
ますが、これは何度もご紹介しておりますので、省略します。
 3頁の(2)「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」の際に併せて、食欲がない等
のストレスに関連する症状・不調について医師が適切に確認するということで、
これに関連するものが、先ほどご説明した資料3に該当しようかと思います。
 4頁の検討項目3の2 今後のあり方についての(1 医師による面接)ですが、
これは健診を担当する医師ですが、ストレスに関連する症状・不調の確認を行う
医師です。労働者の症状・不調の状況から、次の医師は就業上の措置について意
見を述べる医師ですが、こういった医師による面接が必要と判断した場合には、
当該労働者にその旨を通知するということで、事業者はその医師を予め指定して
おくということです。これにつきましては、参考1-3「新たな枠組み」にありま
すように、労働者に通知するということで、事業者には通知しないというような
ことになっており、この辺りがこういう枠組みで確実に面接に行くのか、という
ことがこの検討会の報告書が出て以来各方面から寄せられているご意見ですので、
大きな論点のひとつになろうかと思います。
 4頁の(2 就業上の措置等)については、意見を述べる医師が面接を行った結
果、事業者に対し、就業上の措置について意見を述べる場合には、その内容を示
した上で労働者の同意を得るということです。この辺りも報告書が出て以来、医
師がこれはもう放っておけないというような状況と判断して、事業者に伝えたい
と思っても、同意が得られなかった場合はどうするのかというご意見も寄せられ
ていますので、ここも論点の大きなひとつになろうかと思います。6頁に実際に
入っておりますが、これについて5頁の検討項目の(個人情報の保護)、(就業上
の措置等)のところ、同じ報告書の引用をしておりますが、こういったところと
密接に関係しておりますので、併せてご議論をいただければと思います。
 5頁の検討項目3の(3)については、そういった意味では、個人情報、あるいは
健康情報の保護は、先ほど言いましたストレス確認後の結果を事業者に通知しな
いという辺りでご議論をいただくとなると、検討項目3の(3)については、実質的
には不利益取扱いの防止の措置、6頁の(3)の部分のみになろうかと思いますので、
個人情報については、ストレスの確認の段階と、面接の段階それぞれで一緒にご
議論をいただいて、その後不利益取扱いということで3(3)をご議論いただければ
いいかと考えております。以上です。

○分科会長 ありがとうございました。資料4の各項目について、検討項目ごと
に議論をしていただきたいと思います。密接に関連する項目についてはまとめて
ご意見をいただきたいと思います。
 まず、検討項目3の(1)労働者のメンタルヘルス不調を把握する方策として何が
考えられるか、関連する資料3の内容と、検討項目3の(3)今後のあり方、個人情
報の保護の部分と併せてご意見、ご質問をいただきたいと思います。

○高橋(信)委員 前回欠席してしまいまして申し訳ありません。経過は聞いて
おります。いま説明がありました中身についてコメントをさせていただきたいと
思います。目下の社会の状況とか、職場の状況によりメンタル不調者が増えてい
るなど、いろんな課題が指摘されておりますが、そういうことに鑑みますと、こ
ういう方策を積極的に検討することは大変大事なことだと思います。ただ、既存
の枠組みの中でいろいろやってきたこととリンクする部分が多々あります。それ
から、使用者としてこれまでも健康診断あるいはその他の相談ということにおい
て、体系的な取組みをやってきているわけですけれども、それに対して新たな枠
組みを追加して行うことで、コスト面などの問題があります。そして現実と整合
しないのではないかなど、かなり厳しい意見が使用者サイドから出ております。
あと我々の会社には産業医とか、臨床心理士とか、対応してきたメンバーが多々
おりますが、そういう方からもいろいろな疑義ないしは意見が出されています。
それを紹介しながらお話したいと思います。
 ただいまの3の論点のことですが、事業者にとって導入が容易であり、安心し
て採用できるものである、ということが基本だったと思います。そして先進事例
を踏まえてという表現も出されていたと思います。ただその先進事例というのは、
先ほど申しましたとおり、これまでの枠組みの中で、健康診断の問診表の中に、
既にストレス由来のものが入っておりまして、それに基づいて事後措置や、適切
な指導改善に繋げてきたというのが実態です。その上で今回の枠組みで現実にや
ってみようとしたときに、どういう負担があって、どういうところに実務上の問
題があるのか、そういうことを検証してみる必要があると思います。
 次にストレス類由来の症状についてです。ただいま参考資料3でいろいろ検討
した結果を出していただきましたが、実際にやってみて、リライアブルなものか
どうか、質問を絞ってやったときにはどうかということはまだ現実的に見えてい
ません。こういう問題があると思います。現実的に対応できるかどうかというこ
とに関しまして、例えばこれでチェックアップされた人が医師の面接を受ける時
のことがあります。先ほど健康状態を判定する医師と、就業上の措置について意
見を述べる医師と、2通りの医師の存在が提示されましたが、労働者個人が、そ
れでは行きなさいと言われたときに行く医師ですが、産業医がいっても必ずしも
行かないかもしれません。それと産業医がいないところはどこかを指定するかと
悩みます。指定医というのを我々がお願いするときはおそらく契約関係になるの
だろうと思います。そのときに契約はどういう形でするのかという問題もありま
す。あの先生はいいから行きなさいと言葉で言うただけではこのシステムは動か
ないと思います。
 それから、これは業務命令でなくても行くのでしょうが、そういうところに行
くときに事業者負担で行かせるのか、個人負担なのかということです。いままで
説明を受けた中では、医師の指示を受けて行くということで、事業者の介在はあ
りませんので、事業者が知るすべはないということになります。ただ交通費の支
給や、ドクターにかかったときの対価をどういう形で支払うのか。これも個人負
担でやるということであったら現実味がありますが、会社ないしは事業場が払う
ということになりますと、それによって会社は知ることになります。そしてプラ
イバシーに抵触しないかという懸念が出てまいります。それから、面接した上で
必要があれば、本人の同意を得て事業者に言うということですが、これまでの枠
組みだと、それまでは事業者は知らないということになります。もとより心の活
性が低い方が、そういうことを積極的に言うか、あるいは伝えて下さいと言うか
という問題があります。その診定をする先生もクライアントの情報だけでものを
考えることになると思います。そういうときに何が言うべきことで、職場のスト
レス由来のものをどう改善したらいいのかと、現実的な提言なり意見ができるか
ということに不安を感じます。
 労働者個々人についても参加しやすいやり方で、ということですけれども、お
そらく別な枠組みというと健診以外にまた受けにくることになると思います。問
診票を書いて、それを提出するということですが、ものを書くというのは現場は
嫌がる傾向があります。例えば、JFEスチールですと、健診では100項目近くを
聞いているのですが、それでもかなり忌避感があります。ストレスに関するもの
がそのうちの20パーセントくらいありますが、そこに更に負荷するということに
なると、書くほうの抵抗も出てくると思います。そういうことの現実的な対応に
ついて事業場外の先生、スタッフの負担も含めて検証していただけたらよろしい
と思います。ちょっと時間がかかると思いますが、現実を見極めて全体を構成し
ていただきたいと思います。
 さらに次は、把握された不調な労働者への対応の仕組みです。元よりセルフチ
ェックと言いますか、個人の気付きを促すということが、基本だと思います。ス
トレスは職場だけではなくて、家庭の問題や社会的な背景など、いろいろな中で
生じてくるわけですが、それを事業者側だけが把握して、対応を考えるというこ
とでは不充分かと思います。ポイントを得ていればいいのですが、職場のことだ
けに絞られてしまってほかが放置されると困ります。先ほども、医師の見たてで
ストレスが家庭由来であったら、それは様子見だと言われましたが、そういう方
は職場に来ても活性が出るどころか、いろいろな課題を抱えたまま就業をすると
いうことになります。そういうところに目をあてなくていいのかということが懸
念されます。中小事業場はもちろん、大手企業でも支社、支店、出張所において
は、5人10人でやっているというところがいっぱいありますので、そういうとこ
ろを含めてこれらシステム全体への対応が図れるよう考える必要があると思いま
す。
 ただ、いまの説明を聞きまして思っていたのは以上ですが、さらに2つありま
す。既存の体系では、ストレスチェックは健康診断のときにおそらくいままで問
診の枠に入っていないというのですが、実際に健康診断をやっている産業医の方
などに聞きますと、心身の健康という意味で、必ず聞いていますと言います。私
の足もとの鉄鋼業、造船業、エンジニアリング会社などでは皆さんそうしている
と言っています。そこを切り分けて新たにやるということは、その必然性がある
のかという問題が出てきます。今回医師のチェックが入るということですが、一
般的なステップは、質問表を保健師さんですとか、臨床心理士の方がチェックし
て、必要があれば医師に繋げるというやり方です。それで事後措置なり、患者紹
介なり、指導を行うことを講じているわけです。これと違う方向で新たな筋道を
作ることになると、産業保健スタッフなど、関係するスタッフがとまどってしま
うのではないかという懸念があります。現実に私のところにそういう方から心配
する声が寄せられておりまして、充分に是非大きく見直してご配慮いただきたい
と思います。
 もう1点は、事業者に新たな配慮義務を課すという問題に、これも成りかねな
いということです。医師がチェックする機会は事業者が提供します。行くのを命
じるのは医療スタッフが言えばいいとしても、そのあとのお金の支払いや、就業
時間内に受けてもらうときの業務命令などは事業者サイドが采配します。すると
業務命令は出しても結果は全くないというケースも生じます。先程申し上げたよ
うに、職場に関する改善とかリコメンドが出されて、これが適正であった場合に
はいいのですが、そうではないと困ります。ほかの要因もいろいろ絡んでいるこ
とが多くあります。そういうときの責務の範囲についてある程度明確にして欲し
いということです。決して我々は放っておくということではなく、なるべく組織
を構成する人ですから、いい状況で働いていただきたいわけです。前向きにきち
んと対応できるようになるといいと思います。
 最後に要点を繰り返します。こういう取組みを検討することは重要なことだと
思いますが、早急にこれを現状の体制に組み入れるということではなくて、検証
をよくやって欲しいと思います。現場の実態としていまどういう展開の仕方をし
ているのか、ストレス由来の症状をどう扱っているのかなどです。最初は自覚症
状と言っていたのですが、ストレス由来の症状ということだけで、これだけの施
策を展開することについて使用者側は大変とまどっているというのが現実です。
そういったことを見極めて、効率のいいやり方を考えて下さい。それが労働者の
ためになりますし、ひいては組織のためになるわけです。以上です。長くなりま
してすみません。

○分科会長 ありがとうございました。3の全体についてのご意見だったと思い
ます。1について中心に事務局からお願いします。

○労働衛生課長 一応メモした順に現時点の考え方などをお話したいと思います
が、もし漏れがありましたらご指摘をお願いします。
 まず、事業者に対するコスト負担というようなことで現実的に成功しないとい
うご意見が1つありましたが、今回先ほどの資料3でご説明しましたように、こ
れをどのように問診等に組み込むかというのは、またこれは一工夫ですが、生活
習慣やその他の家族歴等々を聞いた上で労働者の負担、あるいは健診機関との委
託の際に、それほどのコストにならないという範囲を前提にしながら9項目まで
絞ったところです。もちろんこれがいくらかかるか等については、行政が責任を
もって誘導できるものではありませんが、1つの提案として、このぐらいの項目
は標準的に、事業者、記入する労働者それぞれに少なくとも大きな負担をかけず
にやれる可能性はあるのではないか、ということでこの提案を申し上げたところ
です。
 先進的事例には既に問診にストレス由来の項目は入っているというご指摘はご
もっともでして、そういう意味では、今回は全く別の枠組みとして検討会からご
提案いただいておりますが、もう少し、検討会でも途中までご議論があったよう
に、健康診断の機会にとけ込ませるような形で、こういった項目の確認ができな
いか、というのは検討の余地があろうかと思います。その際でも、これも各方面
から問い合わせのあったところですが、やはり事業場によっていろいろな健診の
パターンがありますので、それぞれの場合で、例えばこの9項目を使うとしたら、
現実的にどんな紙と言いますか問診になって、それがどう流れていくのか、こう
いうことがパターン別に、ある程度分けて吟味してみないと実現可能性について
は確認ができないのではないかというようなこともありますので、例えば次回、
いくつかの代表的なパターンについてこれをとけ込ませた形でストレスの確認が
できるというような資料を元に提示できるのではないかと思っております。
 それとこの9項目に絞ったといっても、従来は全体で57項目ありますが、その
ときと、絞ってやった場合にはそれぞれの有所見の率と言いますか、そういった
ことも変わるのではないかというご指摘はごもっともです。ただ、開発のときに
ストレスの強度とそれぞれの項目が重複せず、どういった傾向で陽性率が、点数
が上がっていくかということについては、一定のエビデンスがありますので、絞
ったときにはそれぞれの得点でどのくらい絞られるか、これは基準を定める際に、
もう一度絞った形で問いをやってみて、その場合はこのくらいで切るとこのくら
いのパーセントがスクリーニングされると、そういうデータは実際に枠組みを実
施するときにまでには提示しないと、やはり絞り方に、思っていたよりものすご
く多く、要面接が出てしまった、というような困難が生じる可能性がありますの
で、それをやることになれば、それまでには最低限の確認は必要ではないかと思
いますが、この項目それぞれに医学的エビデンスがあるかどうかについては、一
定程度が開発の際に証明されているというように認識しております。
 面接について、確かに産業医がいても行かない場合があります。それを確実に
結びつける方法として、このような枠組みで実効性が上がるのかというような話
と、それから予め指定しておくというのは、一体いままでにないちょっと珍しい
契約と言いますか、そういうことだと思いますので、この枠組みは検討会の提言
では、こういったことで労働者のプライバシーを極めて高く保護しておりますが、
確実に面接に結びつけるには、もう少し何らかの最低限の情報は事業者に伝えら
れた上で、例えば産業保健スタッフが守秘義務を厳重に管理した上で、面接へ結
びつけるというような枠組みをここでのご議論により、また更に新たな枠組みと
しても構築ができる可能性はあるのではないかと思っておりますので、ここは事
務局としてこの枠組みでなければということではなくて、ご議論をいただければ
と思います。
 その面接に行く際の事業者負担、個人負担についても、確かに全く新しい枠組
みと考えますと、あまりそこは従来事例のない制度ですので、非常に整理されて
いない部分だと思いますので、それもいまの面接にどう結びついているか、とい
うことと一体的にご議論をいただければいいのではないかと思っております。
 同意を得て事業者に言うということについても、これも二重の面接が必要かど
うかについてまず一重目の個人情報の保護があって、同意を得るというところに
も二重の労働者の保護があるわけです。ここについても先ほども説明しましたが、
就業上の強い制限をかけなければいけないと面接の医師が判断した場合でも、労
働者の同意がない場合にはそれが伝えられない。そうすると、面接した医師に非
常に重い負担なりジレンマのようなものがかかってくるのではないかというのは
何度かご意見として事務局にいただいていますので、ここについてもいちばん最
後の不利益取扱いの関連で、その守られる範囲内で何か1つ工夫ができるという
のは議論の余地があるところかと思っています。全く別な枠組みにすると、個人
が健診とは別ということで記入等を嫌がることを常に経験されているということ
ですが、これもコスト面だけでなくて手間という面でも、より健診の問診等にと
け込ますような工夫というのも可能かと思いますので、これも皆様にご議論いた
だければと思っています。
 セルフチェックが基本であるというのは確かに先進事例ではあって、あと事業
者側に伝わるのは事業場全体とか部門別ということで、いわゆる発生予防、一時
予防的に使われているわけです。もちろん、この新たな枠組みでも面接に行かな
い方でも自己の気付きというのは、自分が単に記入して気付くのではなくて、医
師にコメントをもらうことがセルフチェックの促進につながる要素を持っている
かと思います。それと関連した事業者が、家庭要因などの問題を抱えていても、
それで仕事をすれば負荷がかかるし、家庭要因であっても事業場として管理する
場合には、いろいろ必要な情報があるのではないかということで、そういったこ
との目配りが50人未満のような小さい所でもできるかということについてです
が、いま別に進んでいる次回に報告する予定の検討会でも、例えば小さい所では
地域産業保健センターを使っていただく。その際に、自治体のメンタルヘルス担
当との連携をとりながら、家庭の要因が主たるところについては、そういったサ
ービスにつなげていくことが大事ではないかというご議論もいただいていますし、
地産保でも保健師の活用等によって、そういった流れができやすいようにすると
いったこともいま検討しています。
 医師がチェックして、そのあと面接をやるわけですが、一般的なステップとし
ては保健師、心理士がやって、ドクターが最終判断をするということです。これ
もいまほど紹介した検討会において、地産保に保健師を置くことによって産業医
の負担を減らすとか、効率性を高めるということや、外部の専門機関を育成して
いく中で、保健師やカウンセラーなども活用して、効率的な面接の実施を検討し
ています。就業時間内の面接などについて、事業者との責務の関係はどうなるの
かについても、先ほどの面接に結び付けることについて全く新たな枠組みにする
のか、もう少し既存の体系との連携を図ったようなものにするのかは、ここでご
議論いただければと思っています。とりあえず以上です。

○分科会長 ありがとうございました。高橋委員、よろしいでしょうか。

○高橋(信)委員 ありがとうございます。たくさん申し上げてすみませんでし
た。ただ今継続して検討しますとか、これはとりあえず専門家の検討を待ちます
というお答えを何件かいただいたと思います。既存体系との融和についても考え
ていただけるとのことでした。したがって、もう少し時間をかけて、じっくり検
討していただくとともに、実施までの猶予を十分にいただくことをお願い致した
いと思います。

○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。市川委員お願いします。

○市川委員 先ほどの高橋委員のご発言に重なるところもあるかもしれませんが、
労働者側としてもこういう新たな枠組みになったときに、自分が健診を受けると
きにどういう手順で、書くのか。書いたものがどの人の手に渡って医師の所に行
くのか、あるいはその結果がどういうふうに自分に返ってくるのかが、なかなか
イメージしづらかったので、いまの高橋委員へのお答えの中でいくつかわかりま
した。1つは、いま課長から具体的にパターンを出してみますというお話があり
まして、私ども労働側の中でいろいろ話をしますと、事業場によって一般健診の
やり方がいろいろです。大きな企業では自分の所に診療所があって、そこで実施
するパターンがまずありますし、中小ですと外部の健診機関に行き、それも、あ
る特定の日に健診車が来て、そこで一斉に実施する、あるいは一斉ではなくて、
外部の健診センターに都合のいい日程の中で2、3人が行く。来週は何人かがバラ
バラに行く。どうもいろいろなパターンがあるようで、それぞれにこの話をして
も、自分がいま受けている一般健診のイメージでものを考えるので、話合いをし
ていてもなかなか共通認識が取れにくいと思いましたので、是非先ほどおっしゃ
ったように少しイメージが湧くようないくつかのパターンをお示しいただきたい
と思います。それが1点です。
 もう1つは、検討会のときもいろいろご意見があったわけですが、一般の身体
的な不調と比べた際のメンタルの不調の扱いです。事業者にそのプライバシーを
保護してもらいたいという労働者側の気持というのは、身体の不調以上にセンシ
ティブな問題があると思います。そのことを考慮し事業者に通さずにやっていく
仕組みが提起されたわけですが、このプライバシー、個人情報と労働者の意向と
いうものをきちんと守っていただくことは、常に最優先で考えていただきたいの
です。とはいえ、全く事業者が知らない間に物事が進んでいっても、それでいて
あとで配慮だけしなさいというのも、これまた無理という思いも一方であり、労
働側としては非常に難しいところですが、少しいろいろな具体的な例を見ながら、
ここは詳細にこの場で検討していくことが必要であると考えます。労働側からも、
面接というのは勤務時間中なのかどうかについては質問が出ていまして、事業者
に知らないうちというのは変ですが、面接が行われるとすると勤務中というわけ
にはいかないというのも疑問です。非常に難しい問題ですので、高橋委員と同じ
く少し具体的に、かつ慎重に検討し、労働者の不利益がないような形の方向性を
作っていただきたいなと思っています。これは、この次の課題の不利益取扱いや、
そういったところについてさらに意見を申し上げたい。密接に関連してくるので
はないかと思っています。以上です。

○分科会長 ありがとうございます。

○労働衛生課長 1点目の新たな枠組みというものが、既存の健診のどういうパ
ターンにどういうふうに当てはまるのかというのは、確かにもう少し整理しませ
んと、もし導入となると運用に支障を来すかと思いますので、次回までに例えば
事業場ごとに資料3にあるような項目は、いまの時点ではガチッと規則でこの項
目でということに定めることは予定していませんので、事業場により、少し追加
したり若干削除したりというのはあるのかと思っています。その際に、ある医療
機関に契約するときに、健診を担当する医療機関がA社から頼まれたときはこの
項目で、B社だといったら相当混乱が生じるようなパターンもありますので、そ
ういったものはどういうふうにやれば、もっとスムーズにできるのかも含めて整
理してみたいと思います。
 当初、メンタル不調者の把握というところから、そうではなくて、より前段の
ストレス反応を確認して予防的なものにつなげることになったわけですが、依然
として結局ストレスの高い人はメンタル不調者ではないかと見られる可能性や危
険性もありますし、ここは制度としてはもう少し一般的なものになったわけです
が、誤解に基づく運用がなされないように啓発なり、また啓発だけでなくて個人
情報の保護という一定の防止策はきちんとしなければいけないとは思っています。
しかし、それがために事業者が全く知らない形で、半ば任意のように面接に行く
というのが本当にいいかどうかというのは、非常に重要な議論になろうかと思っ
ています。

○計画課長 若干補足ですが、まさに今いただきましたご意見等を踏まえて、こ
の場で議論を深めていただきたいと思います。確認しておきたいのは、ここは労
働政策審議会の安全衛生分科会ですので、ここで議論していただいているのは事
業者の安全配慮義務、責任においてメンタル不調者なのか、それが労働災害とい
う形ではないところについても非常に激増していて、今後も増加することを懸念
されている状況下において、事業主の責任として何をしていただくのかを議論し
ていただいているということです。勤務時間内外という話がありましたが、基本
は勤務時間内ということだと思います。ただ、それが先ほどありました秘密の問
題で、そこをどのように調整するかという話は議論としてはありますが、もちろ
ん基本的には事業主の責任でやっていただくという話であれば、そこでかかる費
用については事業者の負担でやっていただくことがスタートの考え方としてはあ
りまして、任意のそういうものとして議論していただくということではないこと
を確認しておかないと、議論がどこへ向かっていっているのかが不明確になると
いけません。ただ、今意見があったように、そうはいっても、うまくいくのかど
うかの話があると思いますので、そこはこの場で集中的に議論し、いい方法があ
ればそれを採用していき、妥当なものに結論を結び付けていくということでお願
いできればと思います。

○分科会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

○市川委員 わかりました。言い落としたのですが、先ほど調査の結果の中の2
頁のメンタル対策に取り組んでいる具体的内容の中で、労働者のストレスの状況
などについて調査表を用いて調査しているというのは、特に規模が小さくなれば
なるほど非常に少ないわけです。つまり、そういうことに対して慣れていない事
業者が中小は多い。
 私も自分の働いた以前の経験ですが、これは単にストレス状況とか職場の環境
を良くしようという目的でやっていることを労働者も事業者もよく理解しないと
怖いのです。具体的には「あなたはメンタル不調だから」と受け取られてしまう
のではないかとか、それによって不利益な取扱いを受けてしまうのではないかと
いう危惧があります。ストレスチェックの実績がある事業場は、これはもっと前
向きなものなのだということが何回かそういうのをやっていくことで、労働者に
も中間の管理職にも理解が進んで、それによって個別の労働者に対して何か言う
とか言わないというものではないよという理解が進むのですが、やったことのな
い事業場というのはそういう先入観というか、まさにメンタル不調者をスクリー
ニングするようなものではないかというふうに誤解をしていて、ストレス反応を
受ける労働者も恐れてしまうケースがあるわけです。特に中小に行けば行くほど、
いままでそういうことをやったことがない。それが今度、新たな枠組みの中でス
トレス反応を聞いていくということだと、丁寧な説明がないとますます労働者は
本当のことを書かない。悪く取られたくないという変な反応も起きてしまうので、
周知が必要ではないかなと。そうすると、不必要に不利益な取扱いを恐れること
もなくなるのではないかと思います。そういったことも併せて、取組みとして必
要だと思います。

○労働衛生課長 確かにご指摘のように、枠組みとして不調者の把握ではなくて、
そういうストレスというのを作ったとしても、それを責務として実施する際にそ
ういうふうに理解してしまえば、労働者もそう思いますし、そうすると恐れて本
当のことを書かない。枠組みの制度自体が低下してしまうことになります。例え
ば化学物質ですと、化学物質の濃度を測定して、一次予防的にそれを低下するこ
とができるわけですので、病気になったらそれは検診というものがあります。こ
れは精神疾患の検診ではなくて、その前の段階のストレスの強度というものを何
かの機械で測定はできないので、起こってきた反応をある程度定量的に測るとい
うか把握して、特に閾値をある程度超えた強度の強い人がいれば、それは予防的
な職場環境改善につなげ、あるいはとっくに相当超えている人は受診勧奨につな
げるという理念というか、その枠組みの本当の目的を十分に周知しなければ、枠
組みを作って導入を仮にしたとしても、特に小規模では効果を上げないという、
まさにご指摘というかご懸念が起こると思います。この基になった検討会も最初
は献身的なものからスタートして、各委員の反対意見や各界からのご意見を踏ま
えて、相当方向性が変わりましたので、そこは十分に導入前に周知する必要はあ
ろうかと思っています。

○分科会長 大変大事なご指摘です。ほかにはありませんか。

○関口氏(伊藤委員代理) 一般定期健康診断とは別の新たな枠組みに関して、
会員企業をヒアリングしたところ、いまの健康保険料だけでもかなりの負担感を
持っているという声も多くて、さらにその負担が増えることについては非常に困
惑というか困るという声が出されています。したがって、どのくらいの負担感な
のかはいまの段階では全然わかりませんので、できるだけ新たな対応を求めるの
であれば、費用の面をはじめとして、具体的にどのような負担が生じるのかを示
していただいた上で、議論を進めることも大事ではないかなと思います。
 もう1点、プライバシーの保護のあり方の点ですが、いままでも中小企業とい
うのは弊社と管理する者と、従業員の距離が非常に近いわけです。したがって、
四六時中というか朝から晩まで一緒に仕事をしていれば、体調の不良や精神的な
ミスが多いとかがわかるわけです。そういった意味では、予防の意味で専門医に
つなげるというのを企業側から言うこともあり得る話だと思います。それは逆に
ご本人に言うだけではなくて、家庭を持っていれば奥さんにつなげるとか、そう
いう方向もあると思います。このメンタライズについては、できるだけ早めの予
防がいちばん効果的だろうと思っていますので、企業のほうから専門家につなげ
る道もあって然るべきではないかと思っていますので、その辺もご検討いただけ
ればと思っています。以上2点です。

○労働衛生課長 1点目、より具体的な費用の面の負担等を含めて提示をという
ことですが、何分、これをやるのは新しいもので、先ほど言った9項目というの
はどれほどのものに該当するのかが我々はわかりませんが、何らかの相場感の資
料というか材料は必要だと思いますので、検討させていただきます。
 2点目、企業と普段から接点がありますので、専門家につなげることもありま
すので、むしろそういうものに資するような制度であってもいいのかなと思いま
すので、そこはまたさらにご議論いただければと思います。

○分科会長 ありがとうございました。谷口委員どうぞ。

○谷口委員 先ほど高橋委員からもご指摘がありましたが、重なりますが、あえ
て発言をさせていただきたいと思います。資料3にあるストレスの確認の項目で
すが、いろいろなご議論があった末、なおかつ医学的エビデンスもあるというこ
とで、だいぶ項目が絞られた形になっているのが印象であると思いますので、実
際この項目でやった場合に、どの程度の確認ができるかについて、さらに慎重な
ご検討をしていただきたいと思います。
 これも先ほど労働衛生課長のご答弁にありましたので、特にこれ以上のご答弁
をいただくことはないと思いますが、仮に新たな枠組みで実施をするのであれば、
今回のこの取組みの目的を労働者自身もそうですし、すべての関係者がしっかり
認識した上でやっていくことが重要です。市川委員からも指摘をしましたが、重
ねてその目的や意義を全員がしっかりと共有化をすることが必要であることにつ
いて、改めて指摘をさせていただきたいと思います。

○労働衛生課長 後段は、まさに先ほどのお答えのとおりです。前段については、
かなり限られた時間で既存のデータ等でまとめて絞り込んだ項目ですので、これ
を実際に活用する際の留意点とか、直系はまた労働者の方々の意識も相当変わっ
ている可能性がありますので、同じ項目でも開発時とそれらのデータが示す傾向
というのが変わっている可能性があります。それは、その事業場の目的に応じて、
例えば項目の線引きをどうするかに資するようなデータの準備というのは重要か
と思っています。

○豊田委員 この資料でいいますと、3頁に基本方針というのが書かれています。
ここをさらに基本方針の骨格という意味でいいますと、イに書いてありますとお
り事業者にとっては、容易に導入できるものであることというのが非常に大事で
はないかなと思っています。事業者にとっては、安心して参加できるものである
ということは言うまでもないことです。この安心というのがこの中でいいますと、
アの労働者のプライバシーがきちんと保護されることとか、アウトプットである
オの人事処遇において不利益を被らないことが担保されることではないかなと思
います。こういった観点で、今回の新たな提案について見てみますと、先ほど来
議論がありますとおり、今回の新たな仕組みというのは既存のものを修正して見
直しをやっていくものではなくて、全く事例のない枠組みをどうやっていくかと
いう議論ではないかと思います。そういった意味では、非常に不確定要素が多い
と思います。ですから、先ほどもこういったケースはどうするとか、いろいろな
ことがいま出ています。それを今回この場で詰めていこう、それはそれで詰めて
より確かなものにしていくというのは、重要だと思います。
 ここで、もう1つ提案をしたいと思います。そうやって煮詰めたものを、いき
なり本格導入をするのは無理があるのではないかという気が致します。先ほど来、
聞いていますと、これは非常にセンシティブな問題ですし、いろいろなことをパ
ターン別事例として考えなければいけないと思います。そういった意味では、あ
る程度枠組みを煮詰めた段階で、パイロット検証という形を導入してはどうかと
思います。例えば、規模別に見ますと大、中、小、分野別、先ほどパターン別と
いう話も出しましたが、そういったことで何種類かパイロット検証的なテーマ、
パターンを選んで、そこで実際に流してみて、また新たな課題が出てくると思い
ます。そういったものを課題抽出した上で、さらにそれを見直して、その段階で
これなら全体的に流してもいいのではないかというところで本格導入という、い
わゆるパイロット検証過程というものをこの検討の段階で入れて、いろいろ普及
も図っていく。いろいろな課題がどんどん、はっきりしてくると思います。そう
いった過程がこの検討には是非とも必要ではないかと思います。
 例えばケミカルを例にあげていいますと、ビーカースケールで基本合成を確実
にやって、いきなり何万トンの本格プラントというのはできません。その中間に、
パイロット的なスケールのものでもって実証試験を行って、そこでまたいろいろ
な問題点を抽出して改善するという過程が必要だと思います。まさに、このテー
マの検討を見ていまして、そういう過程が必要ではないかということを感じます。
以上でございます。

○計画課長 豊田委員からのご指摘は、ごもっともだと思います。そういう意味
では、いきなり本番でやってみるということではなくて、本当にこの項目でうま
くいくのかについても検証することは当然必要だろうと思います。他方、いま委
員からもご指摘があったとおり、この制度を本当に安心なものにしていくために
は、プライバシーの保護や不利益取扱いの禁止に対して、きちんと法的な手当と
いうか、枠組みを決めた上でないとそこはなかなか難しい面も一方あるのではな
いかと思います。また、労働側委員からもありましたように、これを本当に国民
あるいは事業者、労働者が、その域を十分認識した上でやっていくとなれば、そ
れもまたパイロット的というよりは、きちんとした位置づけを基にやっていくこ
とが必要なのではないかという面もあります。当然、本格的に実施するについて
も、すぐできるということではありませんので、それまでの間に十分検証等をし
て中身を確認して、「これなら大丈夫」ということをやっていくプロセス自体もや
らなければならないと思います。全体としてそれを試しにといっても、プライバ
シーの問題や不利益取扱いのあたりについては、不安感が残ってしまうのかと思
います。そういう意味では認識はあまり違いがなくて、豊田委員が仰ったとおり、
中身を実効あるものにしつつ、きちんと安心できるものにしていくという両方を
目指して、制度の導入の仕方をご議論いただければありがたいと思っています。

○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。それでは、またあとに戻っていただい
ても結構です。3-1については、いまたくさんのご意見をいただきましたので、
これらを参考に次回もパターン等を出していただくということで進めたいと思い
ます。
 次は検討項目3(2)で、把握されたメンタルヘルス不調の労働者への対応として、
どのような仕組みが考えられるかです。関連する検討項目3(3)の今後のあり方の
就業上の措置等の部分と併せて、ご意見やご質問をいただきたいと思います。先
ほど来、ご意見が出ているところもありますが、新たにご意見がありましたらお
願いしたいと思います。いかがでしょうか。いまのところ、(2)のところです。先
ほど来、かなりこの辺についてもご意見が出ていますので、よろしければ新たに
検討していただいて、次回また提案していただくことになるかと思いますが、続
けて議論したいと思います。
 3(3)にいきましょう。メンタルヘルス不調に関する情報は、実態として労働者
にとって不利益な取扱いにつながりやすいということで、特に慎重な対応が必要
ではないかということ。また、事業者は、不利益な取扱いを行わないようにする
ため、何をすべきか、ということです。これについても先ほどからご意見をいた
だいていますが、新たにまたありましたらお願いします。

○市川委員 6頁の今後のあり方の(3)の、「労働者がメンタルヘルス不調であるこ
とのみをもって、事業者が客観的合理的な理由なく労働者を解雇すること等の不
利益への取扱いを行うことがあってはならないものである」という検討会報告で
すが、もともと客観的合理的な理由のない解雇は無効という定めはありますが、
一方で例えば均等法では女性であることを理由としてとか、いろいろなことを理
由としての解雇の禁止があります。例えば育児休業を取得したこと云々とか、そ
ういう中でメンタル不調であることのみをもって、解雇その他の不利益な取扱い
を行うことがあってはならないのは当然ですが、それを法的に何か定めるという
か、規定していくような場合に、どういった規定ぶりになるのかというのを1つ
お伺いしておきたい点です。
 もう1つは全体に言えますが、紛争解決の手段をどう考えているのか。例えば
ストレス反応でもいいですが、この関連で自分が不利益に取り扱われたケースに
ついてです。先ほどの件にも関わりますが、就業上の措置を必要以上に、つまり
残業時間を減らす措置でいいものを短時間勤務にさせられたとか、必要以上の対
応をされたときの苦情の持っていきどころをどうするのか。こういった個別の苦
情は、企業内労使でやりなさいよというのは当然あるとして、持っていった場合
に、例えばいまある個別紛争のいくつかのパターンは都道府県労働局なのか、労
働委員会か労働審判か、あるいは監督署に持っていくのかといった中で、通常の
労基法違反等々の訴えとは違って、メンタル的な不調の問題での不利益を受けた
というと、そういった労働者からの申請を受けるほうも、それなりの対応をして
いただかないといけないのではないかと思っており、通常の個別紛争とは違う対
応も必要なのかなと思います。こういった紛争に対するあり方も、少し検討が必
要ではないかと思いますが、お聞きしたいと思います。

○計画課長 いまの市川委員のご質問は、いくつかの前提を置かないとお答えし
にくいです。仮に不利益取扱いの禁止について、法的な手当が必要だということ
を前提にした上でのご意見とすれば、そういう法律上の手当をした場合に、そこ
にどういう書きぶりになるかということについてはもちろんここでご議論をいた
だければいいと思いますし、あるいは法制的なテクニカルな問題であれば、事務
局からもご説明はできると思います。これは検討会の報告書を抜粋したもので、
この審議会の場でも申し上げておりますとおり、別にこれをフィックスされたも
のとして捉えるということではないわけですが、労働衛生課長から申し上げてい
るように、いまのここの審議会あるいは現実の議論がメンタル不調ということで
はなくて、ストレスの負荷なり何なりというようなことで、そこを一次予防もあ
り二次予防として予防していく観点だとすると、そこの中ではストレートにメン
タル不調という場面は登場しないこともあり得ると思います。そうすると、スト
レートに法律上手当をしていくことはなくて、もう少し具体的な手続なり実態法、
安衛法の中に入れ込んでいこうとしているようなものを規定文の中に入れていく
ことにたぶんなるだろうと思います。そこは今後どういう制度を労働安全衛生法
の体系、ここの分科会の議論として考えていくかにかかっていると思います。そ
れと独立独歩で、不利益取扱いの規定ぶりのようなものが存在するという話では
ないと思いますが、そこも含めてご議論をいただければというのが1つ。
 仮にそうなったとして、労働安全衛生法ということになるとすれば、そこは行
政機関がその法律を施行する形になりますので、不利益取扱いについてのいろい
ろな指導をすることはもちろんあります。いま市川委員が言われたのは、具体的
な民事というか、そこでの効果なり原状復帰ということだとすると、そこは労働
安全衛生法の中で手当するということではなくて、民対民の間のことを争うとい
うことであり、それの紛争ということであれば、もちろん最終的には裁判にもな
りますが、私どもが考えている制度としては、委員がご指摘した個別紛争法とい
う法律がありますので、そこの中で対応することは可能ということになるのでは
ないかと思います。その際に、この分野において特別に勘案すべきことがあると
すれば、それは個別紛争法を施行している都道府県労働局の職員に対して、また
必要な情報提供をするなり、そのあたり対応することは必要になってくるのでは
ないかと思います。そういう意味では法律手当をすれば、それについて不利益取
扱いをしてはいけないということの指導は、施行機関である監督署になると思い
ますが、民事の部分は個別紛争なり労働調停や裁判でも行えますが、いちばん簡
易な方法としては個別紛争の制度に乗っ取って紛争を解決していくことがあるの
ではないかと思います。

○市川委員 いまの答えでわかりました。労働側として、もっと突っ込んで次回
までに検討をしておきたいと思います。

○分科会長 ありがとうございます。ほかにはありませんか。よろしいですか。
先ほども、だいぶこれについてもご議論をいただいていますので、今日はこれで
よろしいですか。時間が少しありますが、本日の議論はここまでにしたいと思い
ます。これについては、新たにご議論をいただいた内容について今後も検討した
いと思います。
 次回は、来週10日に職場における受動喫煙対策に関する公聴会が開催される予
定ですので、その結果の報告と職場における受動喫煙防止対策についてのご議論
をしていただきたいと思います。
 また、前々回の受動喫煙防止対策についてご議論をいただいた際、委員から神
奈川県の担当者から現状を伺ってみてはどうかというご提案がありましたので、
事務局に神奈川県と調整していただいたところ、出席していただけることになっ
ています。したがいまして、メンタルヘルス対策については次々回に本日の議論
の続きを行いたいと思います。事務局におかれましては、議論のたたき台になる
ような資料やデータ等のご準備をお願いします。
 それでは、事務局から、連絡事項をお願いします。

○計画課長 次回の分科会は、いま分科会長よりお話がありましたように受動喫
煙防止対策の関係をご審議いただきますが、11月12日(金)の17時から、場所は
12階の専用第15、16会議室で実施する予定としていますので、よろしくお願い
します。

○分科会長 本日の分科会はこれで終了します。なお、議事録の署名については、
労働者代表は高橋孝幸委員、使用者代表は高橋信雄委員にお願いします。
 本日は、どうもありがとうございました。終了いたします。


(了)

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