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2010年11月5日 第1回今後の高年齢者雇用に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課

○日時

平成22年11月5日(金)13:00~15:00


○場所

厚生労働省専用第23会議室(合同庁舎5号館19階)


○出席者

小畑准教授、権丈准教授、駒村教授、佐藤教授、清家塾長


中沖高齢・障害者雇用対策部長、土田高齢者雇用対策課長


上田高齢者雇用事業室長、望月高齢者雇用対策課長補佐


長山高齢者雇用事業室長補佐


○議題

(1)高年齢者雇用の現状と課題
(2)その他

○議事

○望月高齢者雇用対策課長補佐 定刻となりましたので、「第1回今後の高年齢者雇用に関する研究会」を開催いたします。本日はご多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は第1回目の会合ですので、まず、委員の皆様を五十音順にご紹介いたします。本日はご欠席ですが、東京大学法学部教授の岩村先生です。京都大学大学院地球環境学堂准教授の小畑先生です。亜細亜大学経済学部准教授の権丈先生です。慶應義塾大学経済学部教授の駒村先生です。東京大学社会科学研究所教授の佐藤先生です。慶應義塾大学塾長の清家先生です。本日はご欠席ですが、法政大学キャリアセンター長の藤村先生です。以上の方々です。
次に、事務局側を紹介いたします。まず、高齢者雇用対策課長の土田です。高齢者事業室長の上田です。高齢者事業室室長補佐の長山です。本日は高齢・障害者対策部長が国会で出ておりますが、後ほどこちらに駆けつけることになっております。よろしくお願いいたします。それでは開催に当たりまして、高齢者雇用対策課長の土田よりご挨拶申し上げます。

○土田高齢者雇用対策課長 部長は所用のためこの場におりませんが、後ほどご挨拶させていただきます。このあと事務局から説明いたしますが、開催要綱に基づきまして研究会を進めさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。なお、事前にお願いいたしましたとおり、清家先生に座長をお願いいたしまして、研究会を進行させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○望月高齢者雇用対策課長補佐 まず、資料2で「当研究会の開催要綱」について説明いたします。目的ですが、急速に少子高齢化が進展しており、公的年金支給開始年齢(報酬比例部分)の65歳引上げが開始される平成25年度を目前に控え、高齢者が長年培った知識や経験を活かして働くことができ、生活の安定を図ることができる社会を実現する必要があります。このため、本研究会で今後の高年齢者の雇用・就業機会の確保のための総合的な対策を検討していただくことを目的としております。
 検討事項としては、希望者全員の65歳までの雇用確保、年齢に関わりなく働ける環境の整備としております。研究会の運営は、学識経験者の方々にお集まりいただき、議論していただくこととしております。庶務は厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課にて行うこととしております。スケジュールとしては、第1回目の会合である本日から平成23年春ごろまでを目処に、月1回程度の開催を考えております。ご多忙のことと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほど土田の挨拶にもありましたとおり、清家先生に座長をお願いすることとしておりますので、ここからの進行は清家先生にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○清家塾長 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、議事の公開の取扱いについて、事務局から説明をお願いいたします。

○望月高齢者雇用対策課長補佐 資料3にあるように、厚生労働省としての審議会の公開に関する取扱いについては、例外的な場合を除き、会議を公開することとしております。この研究会においても、原則として会議を公開し、特段の事情により非公開とすることが適当な場合は、座長のご判断により、非公開とすることとしたいと考えております。また、議事録についても、原則として発言者名を記載した議事録を作成の上公開し、特段の事情により、発言者を伏して公開することが適当な場合は、座長のご判断により、発言者名を伏して公開することとしたいと考えております。

○清家塾長 議事の公開については、ただいま事務局から説明があったような形で取り決めさせていただいてよろしいですか。

                  (了承)

○清家塾長 それでは、そのようにさせていただきます。次に、高齢者雇用対策の内容に関する議論に入ります。まず、事務局から資料の説明を受けて、その後意見交換を行いたいと思いますので、事務局からの説明をお願いいたします。

○望月高齢者雇用対策課長補佐 資料4、5について説明いたします。資料の数が大変多いので、必要なところのみ説明いたします。資料4の1頁の我が国の労働力需給の現状と課題について、概要をご覧ください。図表1は人口・高齢化率の推移ですが、既にご存じのとおり、人口のピークは2004年の1億2,779万人であり、現在は減少局面に入っております。さらに、2055年には9,000万人を割り込み、高齢化率は40%を超えることが推計されておりまして、高齢者雇用の活用は喫緊の課題となっております。図表2をご覧いただくと、特に、1947~49年生まれの団塊の世代が、2009年には、既に60歳に差し掛かっており、今後この世代の方々が退職していくにつれて、労働力需給や社会保障の面にも大きな影響が出てくるという局面に入っております。
 3頁の図表3には、労働力人口と労働力率の推移を載せております。特に注目していただきたいのは、下にある60~64歳の労働力率の推移で、2006年から急速に上昇局面に入っており、2009年には60.2%となっているということです。ここで注目されるのは、2006年に高齢者雇用確保措置が義務化されていることで、おそらくこのような影響も出てきているのではないかと思います。図表4ですが、特に女性の労働力率全体で影響があるのがM字カーブで、直近のものとして2009年を載せておりますが、M字の部分がだいぶ緩やかになっていることが見て取れると思います。
 次に、各論に入ります。2以降ですが、高年齢者雇用を取り巻く状況について資料を付けております。まず、6頁は完全失業率の推移ですが、ここでは年齢計と、主に45歳以上の中高年齢者層の完全失業率を取っております。ご覧いただきたいのは、上にある60~64歳のところで、2000年ぐらいまではかなり高い水準であり、2000年、2001年が8.0%、8.1%と高い水準にあったのですが、それ以降急速に下がっておりまして、その下の赤い部分の年齢計と近付くような動きになっております。2007年には完全に一致しており、それ以降は年齢計とほぼ似たような動きをしております。先ほど述べたように、2006年に高年齢者雇用確保措置が法的に義務化されたことや、2000年には高年齢者雇用確保措置が努力義務化されていること等、法施行の実施状況も踏まえて、このような完全失業率の推移となっていると考えております。
 関連して、7頁の図表9では就業率の推移を取っております。下にある60~64歳のところをご覧いただくと、就業率は2000年以降ぐらいから緩やかに上昇しており、2006年からは急速に上昇していることが見て取れます。この辺も高年齢者雇用確保措置の法的義務化と合わせて上昇しているので、政策効果があったことが推測されます。8頁の図表11は、厚生労働省の就業形態の多様化に関する総合調査の2007年の表ですが、正社員以外の労働者を活用する理由として、事業所ごとに3つまで複数回答を取ったものです。右から3番目に「高年齢者の再雇用対策のため」というのがあります。どのような就業形態が多いかといったことを見てみると、上から3番目の「嘱託社員」が67.3%となっており、高年齢者の再雇用のために、事業所が嘱託をかなり使っていることが数値に表れております。
 9頁以降は賃金の状況について、主なものを図表として載せております。図表14は標準労働者の賃金カーブですが、高齢者の活用とともに、賃金カーブはフラット化していることが見て取れると思います。図表15は基本給の決定要素別事業数割合ですが、2001年と2009年を比べると、左端の「年齢・勤続年数等」の決定要素が減少していることが見て取れます。これも賃金カーブのフラット化と合わせて、このような動きが出ていることが考えられます。図表16の高年齢者の生活の主な収入源は、55~69歳の生活源を見たものでして、「あなたの賃金等収入」については、55~59歳は45.4%とかなり高くなっておりますが、年齢がだんだん高くなるにつれて、60~64歳では29.7%、60~69歳では10.9%と下がっております。それに対して「あなたの年金収入」あるいは「配偶者の年金収入」においては、年齢が高くなるにつれて上昇しております。
 以上が賃金等の状況ですが、11頁以降で高年齢者の雇用確保措置について、6つほどグラフを付けております。合わせて35頁をご覧いただくと、上には平成16年の改正による改正高年齢者雇用安定法による高年齢者雇用確保措置の義務づけの内容が書かれております。高年齢者雇用確保措置のやり方として、以下に掲げるような3つの方法があります。まず、定年の引上げ、2番目に継続雇用制度の導入、これは労使協定により、基準を定めた場合は希望者全員を対象としない制度も可能となっております。そして、3番目が定年の定めの廃止です。以上のような3つの柱に基づき、いずれかの措置を講じることが事業主の義務となっております。この高年齢者雇用確保措置の義務年齢ですが、この年齢は年金の支給開始年齢の引上げに合わせて、平成18年以降段階的に引き上げており、現在は64歳となっております。2013年度からは65歳に引き上げられることとなっております。
 11頁に戻りまして、図表17以降は高年齢者雇用確保措置の実施状況を見ております。まず、企業全体で高年齢者雇用確保措置を講じている企業は、平成22年6月1日現在の最新の調査では96.6%、「未実施」の企業は3.4%です。大企業と中小企業を簡単に比べてみると、中小企業は「実施済み」が96.3%、301人以上の大企業は98.7%です。図表18の高年齢者雇用確保措置の上限年齢は、現在は64歳を上回っておりますが、この状況を見ていくと、企業全体で65歳以上としている所は89.9%であるのに対して、法律で定められている最低限の64歳としているのが10.1%となっております。
 12頁は、どのような内容の措置を取っているかということですが、「定年の定めの廃止」が2.8%、「定年の引上げ」が13.9%、「継続雇用制度の導入」が83.3%です。このように継続雇用制度の導入が大半となっております。企業規模別に見てみると、31~300人の所では定年の定めの廃止、定年の引上げが相対的に多くなっており、継続雇用制度の導入は少なくなっております。これに対して301人以上の所は、継続雇用制度の導入が93.3%と大半となっております。図表20は継続雇用制度を導入した企業のうち、希望者全員を対象とした所はどのぐらいあるかを見たもので、41.4%となっております。希望者全員を対象としていない所は58.6%で、これは基準を作っているということになりますが、その基準の作り方を見てみると、労使協定による所は47.5%、就業規則などで基準を定めている所は11.1%となっております。
 13頁の高年齢者雇用確保措置等の実施状況ですが、高年齢者雇用確保措置実施割合を、いずれかの措置を講じているというところで見てみると、平成22年は96.6%で右肩上がりに上昇しており、ほぼ100%に近いところまでいっております。ただ、さらに見ていくと、65歳まで働ける企業の割合は、平成22年で46.2%、70歳まで働ける企業は17.1%です。これは後ほどご紹介いたします基本方針の目標の中で、平成22年度末でそれぞれ50%、20%とすることを目標としておりますが、この目標にはまだ達していない水準です。図表22の定年到達者に占める継続雇用者の割合は、全体の状況で見ると、定年による離職者のうち、定年後に継続雇用された方の割合は71.7%となっております。
 14頁以降は、主にJILPTが調査した結果に基づいて図表を作っております。継続雇用を希望した方のうち、実際に雇用された割合ですが、90%以上と答えた企業は70.7%です。これを基準がある企業とない企業とで比べてみると、基準があるほうが濃い青、基準がないほうが薄い青ですが、基準がない企業で希望者の90%以上雇用した割合は82.1%で、やはりある程度基準ではねられていることが見て取れます。また、継続雇用制度の基準の内容を図表24で見ていくと、「働く意思・意欲があること」あるいは「健康上、支障がないこと」といったところがそれぞれ9割以上となっており、ここが大半を占めております。その他、以下に掲げるようなさまざまな基準が挙げられております。
 16頁の図表27は、60歳を迎えた正社員のうち、引き続き雇用する割合を3年前と比較してみたもので、これは2008年時点の調査ですので、2005年と比べた場合です。「増加した」と答えた企業は32.8%、「変わらない」と答えた企業は63.3%であるのに対して、「減少した」という所は2.4%となっております。2006年に高年齢者雇用確保措置が義務化されておりますので、義務化前の2005年と比べてみると、やはり、増加したと答えた企業が多くなっております。増加した要因を下の図表28で見てみると、こちらは複数回答で要因を挙げておりますが、「継続雇用の希望者が増加した」という所が44.9%、「高年齢者雇用安定法の改正に対応した」という所が48.2%と多くなっております。
 17頁の図表29の継続雇用者を配置する際に配慮している点については、「本人の希望」が53.0%、「慣れている仕事に継続して配置する」が74.1%となっており、やはり継続性を重視していることが見て取れます。図表30は継続雇用者の契約期間で、「1年」が83.5%で大半となっております。図表31は、高年齢者雇用確保措置の課題は何かということを企業に聞いたものです。多いのは「特に課題はない」の28.5%で最も多く、「高年齢社員の担当する仕事を自社内に確保するのが難しい」と答えた所が27.2%です。以上、主に65歳までのところを見てきましたが、以下は65歳より先のところを見ていきたいと思います。図表32で65歳より先の雇用確保措置の実施検討状況を見ていくと、「実施も検討もしていない」という所は62.1%とかなり多くなっております。
 19頁の図表33ですが、65歳より先の雇用確保措置を検討する際に、検討している内容は何かと聞いてみると、継続雇用制度の上限年齢の引上げや上限年齢の廃止なども挙がっているのですが、これ以外で「企業の実情に応じて働くことができる何らかの仕組み」と答えた所が49.6%ですので、おそらく個々の希望や実情、あるいは企業の実情に合わせて柔軟な措置を取っているという所が半数近くあると考えられます。図表34の65歳より先の雇用確保措置が必要と考える理由は、「会社にとって戦力となる高年齢者を積極的に活用する必要がある」が59.0%、「高年齢者でも十分働くことができる」が62.0%と多くなっております。さらに、20頁の図表36で65歳より先の雇用確保措置を実施、検討していない理由を聞いていくと、「65歳までの対応で精一杯であり、65歳から先の雇用は差し迫った課題でないと考えている」と答えた所が48.5%と最も多くなっており、次いで「個々の従業員の体力や能力に差があり、一律に雇用・処遇するのは難しいから」と答えた所が38.9%です。
 21頁以下は、研修制度などについて3つほど図表を載せております。図表37で60歳に到達する前の正社員を対象とする研修やセミナー、説明会等があるかどうかを聞いてみると、「実施している・ある」と答えた所は、セミナー、説明会で14.4%となっております。それに対して「実施していない・ない」と答えた所は、いずれもかなり多くなっております。さらに、22頁の図表39で研修についてはどのようになっているかを見ていくと、60歳前半の継続雇用者を対象とする研修ですが、「実施している」と答えた所は2.8%と非常に少なく、「実施していない」と答えた所が9割近くとなっております。また、何を目的とするものかということを見ていくと、「技能や知識の陳腐化を防ぐため」が65.1%、「仕事の効率を上げてもらうため」が43.1%と多くなっております。図表40以下では、高年齢者の中途採用の状況について聞いております。23頁の図表41では、55歳以上の労働者を中途採用した職種について聞いております。ここでは「技能職」が30.6%、サービス、保安、運輸などが入っていますが、「その他」が38.2%と多くなっております。
 24頁以降は、同じくJILPTの調査に基づき、主に個人に対する調査の結果を載せております。図表44は、いつまで働きたいかということを60歳以上の高年齢者に対して聞いたところ、「60歳ぐらいまで」と答えた方は9.7%ですが、大半は「65歳以上」、あるいは右端の「働けるうちはいつまでも働きたい」と答えた方が36.8%と非常に多くなっておりますので、高年齢者の就業意欲はかなり高いことがこの調査からも見て取れると思います。
 25頁で、なぜ働きたいかといったところを見ていくと、左の紫色の「経済上の理由によって働きたい」という方がかなり多く、特に年金がまだ開始されていない55~59歳では84.7%と多くなっており、年齢が上がるにつれてだんだん少なくなっております。それに対して「生きがい・社会参加のために働きたい」と答えた方は、年齢が上がるにつれてだんだん多くなっております。
 26頁の図表47は、就業を希望した高年齢者のうち、仕事に就けなかった理由を聞いた結果ですが、「適当な仕事が見つからなかった」と答えた方は41.4%と最も多く、次いで「健康上の理由」が27.0%、あるいは「家族の健康上の理由」が13.2%となっております。健康上の理由もありますが、やはり、適当な仕事が見つからないという方がかなり多くなっております。
 以下は、どのような働き方をしたいかを聞いたものですが、図表48で適当な仕事が見つからなかった方に対して、最も希望する働き方を聞いてみると、「短時間勤務などで会社などに雇われたい」と答えた方が48.4%と最も多く、「普通勤務で会社などに雇われたい」と答えた方が33.0%となっております。
 27頁の図表50は、定年や退職後、どのような勤務先や仕事内容を希望するかを聞いた結果です。まず、勤務先ですが、55歳当時雇用者であった方に対して、55歳以上で勤務先の希望と状況を見ていくと、「定年・退職時と同じ企業で働く」と答えた方は47.9%ですが、実際は28.1%ですので、実情はかなり厳しいものとなっております。
 28頁の図表51は、仕事内容について聞いておりますが、55歳以降の最初の定年退職後に最も希望する仕事内容については、「定年・退職時と同じ」と答えた方が38.8%に対して、実情は31.4%と低くなっております。以下は就業形態、フルタイム等の労働時間、収入なども聞いておりますが、図表54で収入について一言ご紹介いたします。29頁ですが、収入については希望と実情を同様に聞いておりまして、もちろん、「定年・退職時と同程度あるいは8~9割」を希望している方が多いのですが、実情は希望よりはかなり少なくなっています。これに対して、「定年・退職時の4~5割」あるいは「定年・退職時の3割程度」と答えた方は、もちろん希望は少ないのですが、実情はかなり多くなっております。
 以上、駆け足でしたがデータを紹介いたしましたので、次に現在出ている政府の方針や提言などについて説明いたします。31頁は高年齢者雇用対策法第6条に基づき、高年齢者等職業安定対策基本方針というものを定めております。この期間は平成21年から24年度までの4年間を対象期間としており、目標なども定めております。目標として定められているのが、先ほど紹介した、希望者全員が65歳まで働ける企業の割合を平成22年度末を目処に50%とし、平成25年3月までに、さらなる普及に努めること、あるいは65歳を超えて70歳まで働ける企業の割合を、平成22年度末を目途に20%とすることが定められております。さらに、高年齢者の雇用施策の推進によって、平成24年には60~64歳の就業率を56~57%、65~69歳の就業率を37%とすることを目標として定め、高年齢者雇用施策を進めております。
 32頁で、新成長戦略について紹介いたします。これは平成22年6月18日に閣議決定されたものですが、この中の「雇用・人材戦略」の中で、2020年までの目標として、60~64歳の就業率を63%とする成果目標が定められております。2009年時点での就業率は、57%です。この目標を達成するための工程表が下に付いておりますが、ご覧いただくと、2011年度に実施すべき事項として、「65歳までの希望者全員の雇用が確保されるよう、施策の在り方について検討する」とされておりまして、2013年度までに実施すべき事項としては、「検討結果を踏まえて65歳まで希望者全員の雇用が確保されるよう、所要の措置を講ずる」とされております。
 さらに、雇用政策研究会の報告書が出されておりますので、紹介したいと思います。これは7月14日に公表されたものですが、高齢者の就労促進の中で、「65歳までの希望者全員の雇用が確保されるよう、施策の在り方について検討を行う必要がある」と指摘しております。さらに「60代半ば以降の高齢者が働ける職場を増やしていくことが重要」、あるいは「高齢者の多様な就業機会の創出が求められている」と指摘しております。
 次に、高齢者雇用対策の関連で、いま進めている対策や関連する制度について紹介いたします。34頁ですが、高齢者雇用対策の施策の体系は、主にこのような3つの柱を基としております。1つ目は「60歳代の雇用の確保」で、先ほどから述べている65歳までの段階的な定年の引上げ、継続雇用制度などの高齢者の雇用確保措置を義務化しており、これに基づいて進めていることとか、70歳まで働ける企業の普及促進を図っているということです。また、「高年齢者等の再就職の促進」ということでは、募集、採用時における年齢制限の禁止を、雇用対策法を改正して平成19年10月に施行しております。さらに、高年齢者の再就職は非常に厳しい環境となっておりますが、助成金などを出して促進を図っております。3番目は「多様な就業・社会参加の促進」ということで、主にシルバー人材センターなどで臨時的・短期的な就業機会の確保を促進するといった施策を進めております。
 34頁の下は、厚生年金の支給開始年齢との関係ですが、どのようになっているかということです。定額部分は2013年4月までに段階的に上がっていきます。2013年4月以降については、定額部分の引上げは既に終わりまして、報酬比例部分の引上げが2013年4月から始まることになります。したがって、2013年4月以降は、60~61歳の層で報酬比例部分の年金が受け取れない人が生じてくる可能性があります。35頁は先ほど紹介した高年齢者雇用確保措置の義務づけの体系ですので、省略させていただきます。
 36頁は平成16年改正法によって設けられた再就職支援措置ですが、45歳から65歳の高年齢者に対する再就職の支援措置です。平成16年の法改正に伴い、離職理由を見直しておりまして、経過措置を設けておりますが、その内容などを書いております。以下、図表55、56で実績を付けておりますので、ご覧いただければと思います。
 37頁以降でシルバー人材センターの事業の概要を紹介したいと思います。現状ですが、団体数は全国で1,332団体、会員は79万人程度です。目的は定年退職後に臨時的かつ短期的、または軽易な就業を希望する高年齢者に対して、地域の日常生活に密着した仕事を提供し、就業機会の増大を図り、活力ある地域社会づくりに寄与することとなっております。図表57で実績を見ていくと、最近は団体数が若干減少しているのですが、会員数は平成21年度で79万人と急激に増加しており、就業人員数も増加しております。このように多様な就業形態の促進や提供といったことでは役割を果たしていると考えております。以下、39頁で一般労働者派遣事業の実施状況、39頁下では高年齢者雇用安定法の改正の経緯を付けております。
 41頁では高年齢者雇用に関する労使の方々の意見の主なものを紹介しております。まず、労働側の意見を2011年度の連合の重点施策で見ていくと、高年齢者雇用関係では、「希望する者全員が65歳まで働き続けられる環境の整備を図る」といったことが挙がっております。また、最近経済誌などに掲載された意見を見てみると、65歳までの継続雇用を推進し、例外規定、現在は労使協定で基準を定めることも認められておりますが、このようなことは認めるべきではないという意見もあります。下は使用者側の意見で、ここではいろいろな内容が盛り込まれておりますが、「継続雇用者を指導者に任命する等、高年齢者から若い世代への円滑な技術・技能の移転を急ぐ必要がある」「対象となる従業員の希望者全員とすることが要請されている」あるいは「従業者自身も65歳まで働き続けられるように、壮年時から健康、体力、能力の維持、伸長を図ることが肝要である」といった指摘がされております。以上が資料4の説明です。
 資料5は事務局が作成した検討のポイントで、たたき台ですが、いくつかポイントを挙げております。まず、「希望者全員の65歳までの雇用確保の在り方」ですが、現在機能している継続雇用制度は、基準で希望者全員ではなく、基準を定めることができるとしております。このような在り方ですとか、高年齢者雇用確保措置の実効性を確保するために、さらにどのような方策があるかといったことがポイントとなってくると思います。さらに進みまして、「年齢に関わりなく働ける環境の整備」ということでは、年齢差別の禁止、高年齢者の雇用促進、多様な就業形態の確保、あるいは70歳まで働ける環境の整備策といったことをポイントとして挙げております。駆け足でしたが、事務局の説明は以上です。

○清家塾長 ありがとうございました。中沖部長がいらっしゃいましたが、後ほどご挨拶いただきたいと思います。早速ですが、本日は初回ですので、いまの資料4、5について、委員の皆様方からご自由にご質問、ご意見をいただきたいと思います。資料についてはいろいろとご質問、ご意見があると思いますし、事務局作成の資料5の議論のためのメモに付け加えるべきもの、あるいはこれに対して、このような別の視点があるのではないかなど、何でも結構です。今日は第1回目ですから、是非幅広く、ご自由にご意見を賜りたいと思います。

○佐藤教授 最初ですから、やや的外れなこともあるかと思いますが、3つあります。1つは、これからの継続雇用を考えていくときに、就業率を高めていくことも必要ですし、年金も動いていくということもあるわけですが、女性と男性で就業率が相当違うということがあると思います。たぶん、基本的には男性を想定して当面は議論することになると思うので、それでいいかどうかということがあります。60歳前半の就業率目標も男女込みの数字で、男性は既に達成していますから、たぶん男性はさらに上げろということになると思うのですが、女性のほうをどう考えていくか。今回の議論も、60歳前半というと、女性の場合は非常に低くなっているので、女性のほうをどう考えるかというのが1つです。
 もう1つは、定年延長なり、希望者全員を継続雇用というときに、それまで雇用期間定めなしで雇用されている人が、定年にくると、雇い続けようということになる。定年が60歳で、継続雇用の対象になると、今度は1年更新で、希望すればこれから65歳までとなるわけですが、問題は、いわゆる有期契約の人がたくさんいるということです。例えば、7頁にある55歳とか64歳ぐらいのところに有期の人が相当いる。もちろん、嘱託は定年後の継続雇用などでなっている人がいると思うのですが、ずっと有期できた人たちは、例えば3年更新ぐらいで60歳、そこで終わりましたというと、ある面ではその先は契約更新するか、しないかになってしまうのです。ところが、無期雇用できた人については、そこから有期に変わっても、希望すれば65歳までいくわけです。基本的にはそのような方向で進めるわけですから、有期の人たちの継続雇用と言うのでしょうか、そこをどう考えるか。現状はわかりませんが、有期の人も60歳を超えたら有期契約では雇いませんみたいなことがあったりするのです。ただ、これは現行法でどうなのかはわかりません。つまり、正社員で雇われた人はずっと65歳までいくのですが、その前が有期ですと、そこで終わりという枠組みでいいだろうかと。特に、いま非正規が増えてきていますし、女性の議論とも重なるのですが、そこをどう考えるか。1つには年齢、つまり雇止めをする場合でも、他の要素がある場合、年齢だけは駄目とか、そのような形にするかどうか、ちょっと議論したほうがいいかなというのが2つ目です。
 3つ目、定年年齢というのは、55~60歳を65歳とかに延長してきたわけで、希望者全員雇用も基本的には同じだと思うのです。企業にとっては、雇ったら定年まで基本的には雇用する責任があると考えられていますが、定年がくれば、年齢で契約解除できるわけです。ですから、働く人は定年までは雇ってもらえるだろうし、企業も雇う社会的責任があるということになっているわけですが、これが今後も可能なのか。どういうことかと言うと、大学を出ると22歳ですから65歳までは43年間、つまり1度雇ったら定年まで雇い続けろというのが、企業にとって可能かどうか。特定の企業に1度雇われると、例えば22歳で雇えば43年間、その人にとっての雇用機会を確保し、かつその人の能力を活かせる仕事をつくることが、現実的にどの程度の企業が可能なのだろうか。その比率というのは、実はどんどん減ってきているかなという気もしているのです。
 やはり、企業が努力しても難しい状況、つまり事業もどんどん変わっていくし、社員に求められる能力も当然変わってくるわけです。もちろん、それについて行ける社員もいれば、ついて行くよりは転職をしたほうがその人にとって幸せということもあると思うので、定年延長という形で進めていって、雇った以上は60歳まで雇い続けろという仕組みというのが、本当に企業ができるような環境なのか。つまり、企業の寿命という話で、43年間あるかどうか、あるいは企業は生き残れても、企業の業態なり、事業内容がガラッと変わるということがあるから、そうすると、可能なのかなと。極端な言い方をすれば、企業が提供できる仕事があって、その人が就いてもいいと言えば雇用できる、それはそうだと思うのですが、雇い続けろということが実際に可能なのかと。
 定年というものが持っている意味が、相当変わってきているのではないか。逆に言うと、変えないと定年制は維持できないかなと。企業としては雇用機会を提供する努力をするが、それがその人の能力を活かせる雇用機会を提供できるかどうかというのは、また別ですから、雇用機会を提供し、かつ本人がそれをいいと言えば雇用するが、提供できなくても雇用しろということまでやれるような状況なのかというのは、ちょっと気になっているのです。社会全体として雇用を続けるということ、企業に雇用確保の責任をどう課すかというところは、今後のことを考えると少し議論する必要があると思います。

○清家塾長 その他何かあればお願いいたします。

○権丈准教授 別の論点ですが、26頁の「就業希望者が仕事に就けなかった理由」および「就業希望者の希望する働き方」についてです。希望者全員の雇用確保を考えるのであれば、就業を希望しながらも就業していない人の状況を確認する必要があると思います。
就業希望者が仕事に就けなかった理由では、「適当な仕事が見つからなかった」や「あなたの健康上の理由」に続いて、「家族の健康上の理由(介護等)」や「介護以外の家庭の事情」が多くなっています。そうすると、希望者が働くことができる環境の整備には、やや広く介護休業制度や介護施設の整備等の問題にも関わってくるのではないかと思います。
 26頁の下の、適当な仕事が見つからなかった就業希望者についての最も希望する働き方を見ると、最も多い理由が「普通勤務(フルタイム勤務)で会社などに雇われたい」で50.3%、次に多い理由が「短時間勤務で会社などに雇われたい」で42.9%となっています。特に55-59歳の女性では7割が、短時間勤務を希望しています。関連して、さきほど多様な就業機会の確保の話の中で、シルバー人材センターの説明がされました。しかし、多様な働き方としては、おそらく、それ以外の働き方への希望、例えば、短時間正社員やパート労働といったものがあるのではないかと思います。その点も議論していくことができればと思っています。また、そうした多様な働き方は、高齢労働者だけではなく、すべての年齢の男女の働き方に関連します。より多くの人が長い期間働くことができるような環境を整えるためには、全体としての働き方の柔軟性を高めることも重要ではないかと思います。

○駒村教授 私は2つありまして、例えば26頁の仕事に就けなかった理由のところに健康のことが掲げられていて、これは割と多いと。家族の健康に加えて、本人の健康については、加齢とともに1個の大きな要因になっていくと。企業側から見ても、14頁の図表24の継続雇用の基準のところですが、「健康上の支障がないこと」というのがあります。また、「特定健診の結果」というのも挙げているのですが、これも何らかの尺度として考えているのかなと思うのです。要するに、高齢者になると確かに健康のばらつきが出てくるということで、先ほど紹介された41頁の使用者側のリクエストの中でも、「壮年からの健康、体力、能力の維持、伸長を心がけること」とありますから、健康や能力の維持に企業側が具体的に何らかのサポートをしているのかどうかといったことも、1つ教えていただきたい。これからこのグループが、まさにど真ん中になったときに、健康上の問題や能力上の問題がどれだけ制約条件になってきて、なおかつ、それは労働者の責任ということになっているのか、積極的に取り組んでいる企業はあるのかどうか、その辺の実態を教えてもらいたいと思います。
 あとは先ほど佐藤先生が言われた転職市場ということになってくるのかもしれないですが、それをサポートする政策というのが、現時点では資料36頁のジョブカードになるのでしょうか。ただ、これは普及率が指摘されているように、4.2%が現状ということですから、これ以外に高齢者の転職システムをサポートする政策というのは検討されているのかどうか、以上2点を質問したいと思います。

○清家塾長 一通りお伺いして、後ほど事務局からお答えいただきます。小畑先生、お願いいたします。

○小畑准教授 既に先生方からご指摘のあったところと重ならないところを申し上げますと、佐藤先生が3番目に指摘されたことに少し関連して、定年制というのは日本で随分長く続いてきて、今でも定年制を取っている企業は多いわけですが、企業自身が近未来において、それについていじるようなことを考えているかどうかを1つ議論すべきと考えております。それと繋がりますが、年齢差別の受け止め方です。これをどのように考えていくべきか、これは非常に重要だと思いますので、その辺りを問題意識として持っております。

○清家塾長 いままでのご発言の中で事務局に対する質問に当たる部分について、少しお答えいただけますでしょうか。

○土田高齢者雇用対策課長 いま駒村先生からお話がありました、企業が能力や健康の維持のために何らかの政策をしているかということについては、事務局のほうでちょっと調べてみたいと思います。転職の支援策については、現在はジョブカードがあるわけですが、中高年齢者についてはこれ以外に、いわゆるトライアル雇用ということで支援しておりまして、今年度はかなりの利用を得ているところです。これについては次の機会にでもその辺の状況をご報告したいと思います。

○清家塾長 いま一巡目で先生方から出たお話の中で、おそらく検討すべきポイントの中に共通して入ってくるのかもしれませんが、非正規雇用の方々の問題をどうするかというのが1つあると思います。非正規雇用の方が60歳を超えた場合というのもありますし、60歳を超えた後、定年後の非正規雇用の扱いをどのようにするかということもあると思いますが、この非正規雇用の問題が、事務局から挙げられた中のいろいろなところに入ってくる可能性があると思います。
 それから、佐藤委員が最初に言われた女性の問題も、どうしても高齢者雇用の話となると男性が中心になりやすいのですが、女性の部分もそろそろ議論しなければいけないと。もう1つは女性については、ご承知のとおり、年金の支給開始年齢の引上げスケジュールも少し違うので、それも併せて、女性についてテイクノートするということが共通に出てくるかと思います。
 それからもう1つは、これは非常に大きなテーマで、具体的にその話に踏み込むと哲学論になってしまうのかもしれないのですが、高齢者の雇用、高齢者の雇用確保というのを1企業で行うと考えていくのか、いまいろいろと議論の出た転職市場の整備等も通じて、それを労働市場全体で確保していくと考えるのかはあると思います。ただ、これはトレードオフとまでは言いませんが、労働市場全体でという話が出た途端に、個別企業は許してもらえるのですねということにもなりかねないしと。だから、なかなかそこは難しいところではありますが、それは考えていかなければいけないところかと思います。
 それから、これはどうなのかなという少し具体的な話ですが、先ほどの連合の意見などにも出てきましたが、2013年問題と言いましょうか、2013年度になると、男性の場合は報酬比例部分も61歳に引き上げられ、理屈の上からいくと、2013年度に60歳になられる方、基礎年金部分と報酬比例部分の両方をもらえなくなる可能性があります。つまり、いままでの継続雇用制度がそのようなことをはっきり言っているかどうかは別として、確かに支給開始年齢は65歳になるのだけれども、報酬比例部分のところはまだあるのだから、定年後にかなり賃金が下がって、再雇用という形でも、何とか合せ技でできるのではないかという考え方もあったと思うのですが、2013年度から61歳、それから3年置きに1歳ずつ引き上げられていくので、そのときに、そこを段階的に何らかの手当てをしていくのか、あるいは一気に65歳までという手当てをするのか。
 特に、ここで連合が言っておられる希望者全員を徹底するとしても、それが61歳までなのか、それとも65歳までにするのか、あるいは希望者全員として、61歳までの定年引上げを原則とするというものが入ってくるのかどうかと、すべてのことにかかってくると思いますが、1つのイシューとして、2013年度問題は、ここで取り上げていただいたほうがいいかなと思います。
 一巡しましたが、さらに引き続き皆様からご意見をいただきたいと思います。

○佐藤教授 先ほど小畑委員からの定年制企業が変えようとしているのかどうかということ、これはどのぐらいの時期を考えるかなのです。たぶん雇用システムがどう変わるかということで、今回の雇用政策研究会でも、いわゆる正社員の多元化という有期契約の研究会でも少し出てきたものですが、従来、一般的に正社員は業務を限定して雇うわけではないですし、複数事業がある場合は事業所を限定して雇うわけではなくて、会社が人事権を持って、事業所間異動なり仕事を動かすと。そのような形だったのですが、新しい正社員というときの1つのイメージとしては、例えば業務限定型の無期雇用を想定すると、もしかすると、これが入ってくるとそこは定年を外す、つまりその仕事をやる能力があるかないか。従来は業務を限定していませんので、仕事を遂行する能力がないとやれなかったわけですが、例えば業務限定型の無期雇用みたいなものができてくるとすると、そこについては例えば定年をなくす、あるいは定年があっても、途中でその業務を遂行する能力がなければ契約を解除することが、方向としてはあり得るかもしれないので、そうすると、雇用システム、特に正社員の雇用のシステムがどう変わっていくかということで、定年のあり方も違ってくるかなと。ですから、定年廃止ということになると、業務限定型の無期雇用が出てくる可能性は十分にあると思います。
 もう1つは、今後希望者全員雇用の中身は何かを議論していくときに、定年延長とは別で、希望者全員を継続雇用するといったときの、希望者のほうはいいですが、企業側としては、定年延長と違って希望者全員を雇用継続するといったときに、事業主側の責任とは何なのかが、1つは雇用機会は提供しなければいけないということがあると思います。
 次は、雇用機会を提供するだけではなく、本人が希望するような仕事を提供しろということなのか、処遇をどうするのか。基本的に、企業として雇用の機会を提供する義務はあるけれども、本人が希望するものが提供できるかということは、企業の責任ではない。あるいは処遇についても、提供できる仕事に見合った処遇であれば、処遇がガラッと変わってもいいと考えるか。これは希望者全員継続雇用する中身については、かなり幅があるので、それをどう理解するかで相当違ってくるかと思っています。
 ですから、例えば1つのやり方は、企業としては雇用の機会、働く機会を提供しなければならない、もちろん労働条件はそれに見合っていなければいけないのですが、合理的であればあとは本人が受けるかどうかですから、嫌だと言えば、それ以上は企業としては責任はありません。でも、本人をやめさせるような低い労働条件を提示していたら、個別紛争処理か何かでやるしかないと思います。
 現状がどうなっているのか、法律上も希望者全員というのは、何をもって希望者全員雇用していることになるのかというのは、私はわからないのですが、そこの中身は大事かなという気がします。

○清家塾長 いま佐藤委員が指摘されたことに関連して、小畑委員からいかがですか。

○小畑准教授 佐藤先生が初めにご指摘になった2番目の有期雇用の話とも関連するのですが、いまのご発言の前半部分に関して、非正規雇用をグッと絞る方向性を取っていくということになると、正社員が広くなり、その正社員というものをいくつかに分けるという発想を企業が取ることは大いにあり得ると思うのです。
 そのことがどのような影響をもたらすかに関しては、まず先ほどの初めのご発言の中の2番目の問題としては、有期契約の人をどうするのかというご指摘については、その有期契約で雇われる人が小さくなる可能性があることが1つです。もう1つは、先ほどのご発言の中での正社員の多様化と、いくつかに正社員を分けたときに、この雇用の終わりについて、その分かれた人たちについてどのような処遇をするのかを考えるかだと思うのです。そこら辺は詰めていく必要があるかなと感じます。

○清家塾長 いまの希望者全員というのがシンボリックだと思うのですが、これは高齢者に限らず、すべての労働者は希望したら企業に雇ってもらえるというわけではなくて、あくまでも働く意思のある人が能力に応じて雇われるわけです。ただ、この希望者全員というのは、一旦雇われた人がということですね。

○佐藤教授 そうです。

○清家塾長 そのあと雇われ続ける条件として、それでも、おそらく原則は意思がなければいけませんから、そこはいいと思うのですが、能力と機会がなければ、なかなか難しいということになるのでしょうが、そこが普通の定年までの雇用の場合と、定年後の雇用、つまり定年までの雇用の場合であっても、仕事がなくなったり能力が低下することはあるのだけれども、そこは従来の期間の定めのない雇用慣行だと、何とか定年までは雇用をする。ただ、そのときの労働条件などはどうなるのでしょうか。企業がそれで雇い続けられるように、雇用を守れば労働条件のある程度の変更は認めるということがあるのかもしれません。
 いまはどうなのでしょうか、これから企業にヒアリングもするわけですが、例えば原則希望者全員というルールにできるだけ応えるためには、例えば労働条件等でこのようなことを許してもらわないと難しい、あるいは実態としてどうなっているのか。そこは調べているところもあると思いますが、少し精査したほうがいいかもしれません。

○佐藤教授 有期契約のことを教えていただきたいのですが、1年で更新したと。自動更新ではなく、きちんと更新の都度に面談をし、本人の意思も確認し、評価もして、更新したと。そういう意味では実質無期とみなすというか、きちんとやっていたとします。60歳になって、60歳ですから更新しませんというのは、いまの高齢法でいうと、有期だからということで問題なしとなるわけですね。社員のほうは有期でくれば60歳で契約更新をしなくても、全然問題ないのですね。

○小畑准教授 そうですね。

○清家塾長 そうすると、65歳までの雇用の規制を厳しくすると、企業としてはそれ以前の雇用契約を有期に変える強いインセンティブを持たせてしまうことになるかもしれませんね。もしほかにございませんでしたら、せっかく事務局に論点のメモを作っていただいていますので、希望者全員65歳までの雇用確保措置の在り方という中で、定年制あるいは定年を延長する、それから継続雇用制度をどう考えるか。それから、高年齢者雇用確保措置の実効性確保のための方策ということで、これは労使双方が、形はどうあれ実際として65歳まで雇用確保しやすい、あるいはすることができる状況はどのようなものかということです。
 話の取っ掛かりとして私の感想を申しますと、前回の改正高齢法というのは、いろいろな議論もあり、労使双方の鬩ぎ合いもあった中で、いまのような形に決まったわけです。そして、そのときには私のような無責任な研究者などが、これは少し中途半端ではないかと思ったこともありましたが、結果として見ると、かなり実効性は上がったわけです。つまり、明らかに60歳代前半の就業率は統計的にも有意に高まっています。あれなどを見ると、実効性の上がる改革というのは、ぎりぎりのところで労使がこれなら何とかできるでしょうと、納得できるというところで決まったものなのかなという気も、一方でするわけです。
 ただ、同時に、今度は、例えば先ほど2013年問題のようなことを申しましたが、国の制度として2013年度から年金の支給開始年齢が、1階、2階を含めて、男性の場合に61歳に上がるというときに、60歳から61歳までの間、また延びてくるわけですが、とにかく実効性が上がれば何でもいいからやってくださいという考え方が、社会のルールとして正しいかどうかというような、少し別の視点も必要かなと思います。
 そういうことで、希望者全員65歳までというときに、ザクッとした言い方をすれば、雇用確保措置、労使、特に使用者側が、自分たちにそれができる条件を付与してくれれば、継続雇用制度なら何とかなると考えているのではないかと思いますが、同時に、例えば年金の支給開始年齢が最終的に65歳になったときには、定年制は私企業の私的契約だとしても、雇用制度というのは公的な側面も持っているわけですから、公的な年金の支給開始年齢に合わせて、定年も原則は65歳に引き上げるのが望ましいという考え方も一方であると思いますので、そういう中で65歳までの雇用確保措置をどのように考えていくかということを、最初ですので皆さんの忌憚のないお考えを伺いたいと思います。
 もしよければ事務局から、この3つの論点を出した趣旨というか、追加的な説明はございませんか。

○駒村教授 時間があれば議論したいところでもありますので。

○清家塾長 そうですね。

○駒村教授 今回の議論は2013年のころがターゲットになっているわけですが、もう少し先を見ていくと、中長期的にいえば経過点なのかと思って見ています。この目標を中長期的にどう考えていくかで、これは1つ事務局に確認をしたいのですが、私は年金が専門なのですが、2009年に経済財政再検証を行ったときに出された経済前提の雇用見通しと、目標が合っているのかどうかというのが1つ確認をしていただきたいということです。要するに、同じ厚生労働省の中で目標値にギャップがないでしょうねということです。
 もう1つは、年金財政はマクロ経済スライドが効き始めれば給付水準が下がるので、それが嫌だということになれば、マクロ経済スライドを中和する方法としては、支給開始年齢を2年程度繰下げていただければ、支給開始部分をマクロ経済スライドは中和できる設計になると思うのです。だから、現行の年金制度を考えても、60歳から65歳の間のものというのは通過点だと思うので、そういう視点も重要かなと思います。要するに、2013年の姿だけで議論しているのかということと、目標値はほかの政策と数字が合っているのかということを問題提起させていただきたいです。
 それから、先ほど清家先生からも、転職システムをやれというと、簡単に企業をギブアップさせる口実になると。これをさせないように、転職システムをサポートするように、企業側に動機づけるような制度設計はできないのか。
 もう少し資料もほしいのは、22頁にもありますが、65歳以上の中途採用については活発とは言えないわけですが、企業側から見て、何が障害になっているのか。これも研究や資料があったら、是非見てみたいと思います。先ほどの佐藤先生の冒頭の話ではありませんが、本格的に60歳代が働く社会に持っていくためには、いろいろな組合せを考えなければいけなくて、ただイージーに外に出すという選択をさせないような仕組みを組みながら、企業側も簡単に転職させるのではなくて、もし転職に出すなら、企業側にも出すに当たっての何らかの協力を組み込む仕組みは考えられないのか。この点を聞きたいと思います。

○佐藤教授 いちばん最初に話したことは、清家座長がよく言われるように、職業寿命が長くなってくるけれども、企業として特定の人を継続して40年も50年も、その人の能力を活かせる仕事を提供できるかというと、これはあまり現実的ではないと思います。
 ですから、いまもそうだと思うのですが、個人から見ても入った会社に定年までいる人はどんどん減ってきて、1つは若い頃に1度転職する人、もう1つは、キャリアアップだったりあるいは勤務先で自分の能力を活かすような転職をする。そういう中で、企業としてはそのときに雇った人は60歳なり65歳までと。私が言いたいのは、新卒を65歳までというイメージで定年を考えると、そういうものに乗る人は基本的に減ると思います。企業も、それを考えると難しいのではないかと思います。
 ただ、基本的に雇うときに60歳でも、63歳でも雇う。65歳までは年齢に関係なく雇いますと。そこで、63歳で雇ったら65歳まで雇用機会を提供すると。そのように変わっていくかなということで、定年というのがイメージとして、雇うと65歳までその人を雇うという、特に新卒を雇って65歳までと。それが定年というものではなくなるかなというイメージです。
 もう1つです。シルバー人材センターですが、これができたのは定年が55歳のときですか。

○上田高齢者雇用事業室長 55歳のときです。

○佐藤教授 そうですよね。他方で、いまも雇用ではなくて就業で、今度はシルバー人材センターの60歳は動かせないですか。つまり、ある面では雇用ではなくて就業で、場合によっては、雇用できちんとやっていると競争という点では、安いコストでサービスを提供するという議論もあるわけです。ですから、60歳というのを本来考えると、定年55歳のときで、60歳から引退過程ということで設計されていたと思うのです。いまは60歳ではないわけです。そうすると、これは65歳、70歳でもいいのではないかという気がするのですが、そちらの議論はないのですかね。シルバー人材センターが60歳というのはおかしいのではないかという議論ですが。

○中沖高齢・障害者雇用対策部長 実態としてはかなり幅広くなっていまして、以前は生き甲斐が主流だったのですが、最近は景気が悪いせいもあるのか、入ってくる方の3割以上の方が生活が苦しいと訴えられています。しかも、年金が200万円以下の方が半分近くを占めています。生活の足しにすると答えた割合が5割を超えているのです。
 年齢が高いのでハローワークで正規の仕事を得られないような方が、仕方なくシルバーに流れてくる実態もあるのかもしれないということです。ひょっとすると、前の3本柱で考えていた部分から広がったものになっている可能性はあります。
 この場でシルバーの性格づけのあり方についても論議していただこうと考えています。

○清家塾長 当然それとの関係で、雇用保険65歳以上適用をどうするかの議論も出てくると思います。

○上田高齢者雇用事業室長 シルバー人材センターの会員の構成も、その当時ははっきり60歳と言っていましたが、実質上はいまは60歳から65歳の方がいちばん多いわけではなくて、いちばん多いのは65歳から70歳という形で、実質上の形態が変わってきています。

○清家塾長 いま佐藤さんが言ったこととの関係で、雇対法の募集採用の年齢制限は、定年の年齢まではいけないということでしたか。

○土田高齢者雇用対策課長 定年の年齢までとは言っていません。あれはあくまでも、年齢に関わりない求人を出してくださいということです。

○清家塾長 そうすると、そこは定年制度とは関係ないですね。

○佐藤教授 定年制がある場合は、例えば60歳を超える定年であれば、採用のときに年齢設定をしてもよかったのではなかったですか。

○土田高齢者雇用対策課長 いくつか適用除外の要件があって、長期的に育成する場合は構わないとか、そうした条件もございます。

○清家塾長 つまり、定年が60歳という会社を認めているわけだから、そのあとは再雇用制度はあるのだけれども、そうするとそういう会社に62歳の人が応募してきた場合は、再雇用制度だったらいいですよとしてくださいとなるわけですか。そうすると、定年は60歳なので、申しわけないけれどもと言えるわけですね。

○土田高齢者雇用対策課長 そうです。

○佐藤教授 そこは問題があるかなと思いますね。

○清家塾長 そうすると、そちらの面でも定年を置いておいたほうが有利だということはありますね。引き上げてしまうと、なかなかそうは言えませんからね。

○佐藤教授 採用でそこは結構大きいと思います。つまり、65歳までであれば、採用のときに年齢で差別されないとするかどうかです。そのことを、企業に定年延長という形で言えるかというと、さっきみたいな難しさがあります。そこをどうするかというのが大きいと思います。

○清家塾長 先ほど駒村委員が言われましたが、とりあえずこの研究会の射程というのは、できるだけ前広に、長期的にと。例えばいまのとりあえずの年金支給開始引上げルールで言えば、例えば2025年から見たときに、どのような雇用の変革のストーリーがいいかということかと思います。
 ただ、マストでやらなければいけないのは、2013年が迫っていますから、その中で、具体的に2013年の問題をどうしますかという話にはなってくると思いますが、議論そのものは2013年とか、そのような短い射程だけではなくて、できるだけ広い射程の中でと。それから、いま駒村委員が言われた年金の支給開始年齢の引上げ等の議論も、少し含めてと。特に今日は初回ですし、今日に限らず幅広く議論していただけたらと思います。
 年金の支給開始年齢に関連して言えば、アメリカはもうそのスケジュールに入っているわけですし、イギリス、ヨーロッパ等でも、少しずつ具体的な議論に入っています。イギリスはそれに合わせているかわかりませんが、来年から定年なしというか、雇用における年齢差別禁止ルールも導入すると聞いています。
 ただ、研究会の最初からタクティックスの話をしてもあれですが、報告書を出したときには、あとは三者構成の審議会に出して、例えば61歳までどうするのかという議論をするわけだから、あまり年金の支給開始年齢の引上げが直接的に出てくると、議論の収拾が付かなくなるかもしれないので、そこはあれだと思いますが、やはり長期のあるべき姿から逆算していく考え方のほうが、整合的なデザインはできるので、その中で少し具体的な議論をしていけばいいのかなと思います。

○権丈准教授 先ほど転職の話が出ていたのですが、高齢者に限らず転職などをサポートするとして、企業側ではどのようなことをしているのでしょうか。実態がわかればと思います。
 31頁の高年齢者等職業安定対策基本方針の概要によれば、「事業主は、定年、解雇等により離職することとなっている高年齢者等が再就職を希望するときは、求職活動支援書の作成や求職活動のための休暇の付与等を通じ、積極的に支援すること等により、その再就職の援助に努めるものとする」とあります。例えばヨーロッパでは、解雇を予定している場合には、労働者と話し合い、今後どういった方向に進んでいきたいかを相談して、そのために必要な訓練であれば、数カ月間のように、わりと長い期間にわたって使用者側が訓練費用を負担するということがあります。日本でも、何らかのサポートはあるかと思いますが、実態はどうなっているのでしょうか。今後、定年延長や継続雇用による同一企業内での雇用の確保が難しいということであれば、他の企業での雇用の確保につながるような、支援体制を充実することに力を注いでもらうようにできればと思います。

○清家塾長 労働市場全体で、高齢者雇用を担保するとしても、その際でも個別の企業がどのようなサポートをするべきかということですね。

○権丈准教授 はい。

○清家塾長 小畑委員、いかがでしょうか。

○小畑准教授 転職市場が早急に整うということで、それが非常に活発に利用される状況がすぐにくればいいのですが、それには時間もかかりますので、そこにいくまではさまざまな工夫をしながら、転職市場が成熟していくのを待つ必要もあるので、あまり転職市場が整って活発に転職がなされるようになることが、近い未来に実現するという前提で話すのは危険があるのではないかと考えています。それをしていく必要はあるのですが、いままでの経緯の中で、不自然でないような着地点を探さなければいけないのではないかということで、もちろん転職市場について成熟させていくことも重要ですが、それと同時に、いままでの経緯を踏まえた政策も取っていくことが肝要なのではないかと考えています。

○権丈准教授 先ほどの私の発言に関して、誤解があるといけないのでもう少し説明させてください。最近、EUでは、労働市場の柔軟性と保障を組み合わせたフレキシキュリティというコンセプトが政策レベルで広がってきています。これは、従来のひとつの仕事や会社での雇用保障ではなく、労働市場全体で労働者の生活を保障するという考え方で、以前よりも労働市場における流動性を高めるという議論にもなっています。といいましても、正社員についてみれば、これまで雇用保護の強かった国が、急激に解雇規制を緩和したりはしていません。むしろ、以前から流動性が高く、時には労働者の定着率の低さによりスキル形成に問題があった国、イギリスやデンマークなどにおいて、転職や職探しを円滑にすすめながらキャリアを形成し、長期間にわたって働いていくことができるようにサポートする仕組みを整えるようになっています。これに対して、もともと解雇規制の強いヨーロッパ大陸諸国の多くの国では、キャリア形成へのサポートは強化しながらも、正社員の働き方を大きく変えることなく、非正規雇用を活用するという形で柔軟性をとりつつ、非正規雇用の待遇改善にも努めてきています。
 私も、基本的には、これまでの日本の労働市場の状況を考えると、いまのところ、定年延長や勤務延長制度など、労働者が同一企業で働き続けることをサポートする仕組みを考えていくことが重要だと思います。ただ、それに加えて、どうしても長期間の雇用を保障することが難しいということも出てくるかもしれません。その際には、労働者が新たな職場を見つけることができるように、代わりの措置を準備してもらうことで、人々が能力を発揮し生活が成り立つような仕組みを徐々に整えていくことも視野にいれておくとよいのではないかと考えたわけです。

○清家塾長 検討すべきポイントの下半分の「年齢に関わりなく働ける環境の整備」ということも含めて、さらにご意見等がありましたら、お願いします。年齢差別の禁止ということが出ていますが、高齢者雇用の進め方として、定年を延長するというのは、先ほど来議論の出ている、年を取っても雇用が確保されるという目的と、それまでの雇用保障を両立させるという策だと思いますが、一方で年齢差別の禁止となると、そういう話では済まなくなってきますかね。逆に年齢差別を禁止するのであれば、雇用の保障は緩めさせてもらわないと。つまり能力や成果に応じて、労働条件を自由に決めたり、解雇できるようにしてくれなければ困るという話が出てくるかと思いますので、その辺についても、中期、長期、短期でどう見るかにもよりますが、定年の延長あるいは継続雇用制度というタイプでいくのか、雇用するかしないかは企業に任せるけれども、しかし年齢の差別はしてはいけないというタイプにしていくのか。大きく考え方が分かれるところだと思います。

○佐藤教授 いわゆる有期契約の先ほどの例でいうと、従来であれば仕事もあるし、能力もあると。本来であれば契約更新されていたにもかかわらず、63歳だから更新されないというところです。もしかすると年齢というだけの要素で契約更新しないことについて、年齢差別禁止ということでいけば、非正規の人のカバーはできる可能性はあると思うのです。そこは1つ考える必要はあるかなと思います。

○中沖高齢・障害者雇用対策部長 31頁にいまの基本方針が載っています。表現が若干省略になっていますが、これは審議会でご議論いただいて、労使で合意した中身です。この2の四角の中の(2)の最後のほうで、一応有期の話も扱っていて、「むやみに短い契約期間とすることのないように努めること」とあります。省略されているので恐縮なのですが、そのあとに「65歳前に契約終了とする場合には、65歳までは契約更新ができる旨を周知するような形で」と。ある程度は尊重しなければいけないと。有期にするにしてもつなぐような形ということで指針が出ています。

○佐藤教授 いままでは定年制できた人について、その先の有期の話ですよね。

○中沖高齢・障害者雇用対策部長 そうです。

○佐藤教授 ずっと有期だった人なのですよね。

○中沖高齢・障害者雇用対策部長 そうです。そういう方について、まだ議論がなかったということですので、そこも今回議論しなければいけないと。
 そうすると、いま基準局でやっている有期の研究会があるので、あちらの議論を待たなければならないかもしれません。局の違いがあって大変恐縮ですが、基準法のほうが強い法律になるので。

○佐藤教授 ただ、年齢差別禁止というのは別ですが、それが入れば有期とは別の話ですよね。すぐにできるというわけではないですけれども。

○駒村教授 違っていたら教えてもらいたいのですが、高齢者ジョブ・カードのフォーマットというのは、私が知っているフォーマットと違うものなのですが、何かいいサンプルがあれば、どのようなものを書かれたものが想定されているのかわからなかったのですが。

○清家塾長 基本的には同じです。

○駒村教授 書かれている内容のボリュームがあるということですね。

○長山高齢者雇用事業室長補佐 職歴の長い人への対応です。

○駒村教授 なるほど、それだけなのですね。わかりました。

○小畑准教授 先ほどから定年の話、年齢差別の話が出ているのですが、これはよく言われることですが、定年がきたからやめるというのと、能力がなくなったからやめなさいの2つの中で、前者だと年齢は誰でもくるし、納得がいくけれども、後者だと納得がいかない、もしくは非常にトラブルへと進展していく可能性も高いという意味では、ある意味では定年制というのはいい制度であったし、雇われているほうからしても雇っているほうからしても、ある意味では日本においていい制度だということはあったと思うのです。
 年齢差別の禁止ということになって、年齢がきたからやめるということが選択肢としてとれなくなった場合に、トラブルの多発と、能力や成果を理由として解雇することが生じた場合に、能力や成果が正しく評価されるための指標とか、評価のスキルをどうやって管理者が持っていくかというのは、非常に大きな問題になるのではないかと思います。それはここで申し上げたほうがいいかなと思いました。

○清家塾長 年齢差別禁止については、長期的なスパンではこれを議論の対象にはするかもしれませんが、少なくとも当面の政策課題という観点からいうと、まだ議論が十分に熟していないというところではないでしょうか。
 それから、いま小畑委員が言われたように、これはアメリカなどでもそのような面があると思いますが、一律に差別禁止、すなわち個人の責によらない事由によって労働条件等が変わるのはおかしいといっても、性差別、人種差別等と違って、年齢の場合は誰もが同じように経験するというところもあるので、あなたは女だからやめてください、肌の色がこうだからやめてくださいと言われるのと、年齢が65歳を超えたのだからやめてくださいというのは、外形的な理由のみによって条件が決まるという面では同じでも、内容的には少し違うのではないかということがあると思います。
 ただ、一方で、働く意思も能力もあるのに、年齢だけを事由として、職場の平和のためにやめてもらうことがいいのかどうという議論も、議論としてはあると思います。ただ、いきなり日本で年齢差別禁止ルールというのは馴染まない。しかし、おそらく年齢差別禁止ルール的なものの1つが、先ほどの雇対法みたいな考え方の中には少し出てきていて、雇対法の場合には、これから雇われる人の話ですので、これから雇われる人のチャンスが年齢によって妨げられないというようなところについては、かなりやられるのではないかと思います。
 これは要するにインサイダー、アウトサイダーの話の中で、例えば解雇規制というのはインサイダーにとってはいいけれども、アウトサイダーにとっては雇用機会が奪われるという議論が当然あります。ただ、それを本当にパラレルに考えられるかどうか、つまりこれから仕事を探そうとしている人の職業上のチャンスの確率が低下することと、実際に長く働いている人が明日から会社にいられなくなるということと同列に考えていいかという問題もあるのだろうと思います。
 ここで年齢差別禁止というのは、大切なテーマとしては上がってきているわけですが、これはどちらかというと、中長期的にこれをどう考えていくかというような形で、これから議論していくということになるのでしょうかね。ほかによろしゅうございますか。
 それでは、今日は1回目ということで、少し幅広く皆さんのお考えを伺ったわけですが、次回以降は今日の議論も踏まえて、私と事務局でも相談させていただいて、論点を少しずつ絞りながら議論をさせていただきたいと思います。恐縮ですが、部長からご挨拶をいただけますでしょうか。

○中沖高齢・障害者雇用対策部長 国会の関係で遅れまして、大変失礼いたしました。
 今回、本当に先生方お忙しい中委員をお引き受けいただきまして、ありがとうございます。先ほど事務局の資料の中でご説明いたしましたように、やはり年金の問題は大変重要な問題でございますので、ここに穴が開いているということになりますと、日本の社会にとっても大変不安を醸し出すということになります。そうしたことも踏まえつつ、これは理想でございますが、できればエイジフリーとか、そういった方向に踏み出すような方向として、何ができるのかということも、ここでやっていただきたいと思っています。ひとつよろしくお願いします。

○清家塾長 ありがとうございます。いま部長からお話がありましたように、長期的にはエイジフリーということも視野に入れて、少し前広に考えていきたいと思います。次回以降は先ほども申しましたけれども、この要綱にございます検討事項を基本として、本日出されたご意見を踏まえて、順次具体的に議論してまいりたいと思っております。すでに次回の研究会については、12月13日(月)の15時から開催させていただくということで、日程の調整をさせていただいているかと思いますので、出席方よろしくお願いいたします。本日はこれをもちまして研究会を終了させていただきます。お忙しい中ありがとうございました。


(了)
<照会先>

職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課
(TEL)03-5253-1111(内線5815)

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