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2010年8月31日 第41回社会保障審議会年金数理部会 議事録
年金局総務課首席年金数理官室
日時
平成22年8月31日(火)10:00~11:21
場所
全国都市会館 第2会議室(3階)
出席者
山崎部会長、宮武部会長代理、牛丸委員、翁委員、駒村委員、佐々木委員、野上委員、林委員
議題
公的年金財政状況報告-平成20年度-について
議事
- ○石原首席年金数理官
それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第41回社会保障審議会年金数理部会を開催させていただきます。
審議に入ります前に、前回の部会開催以降に事務局で異動がありましたので、御紹介させていただきます。
大臣官房審議官年金担当の今別府でございます。
大臣官房参事官年金運用担当の渡辺でございます。
次に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
「座席図」、「議事次第」の他、次のとおりでございます。
資料1は、1-1、1-2、1-3の3つに分けておりますが、「平成20年度公的年金財政状況報告(案)」でございます。
資料2は「平成20年度公的年金財政状況報告要旨(案)」でございます。
配布資料は以上でございます。
次に本日の委員の出欠状況について、御報告いたします。本日は田中委員が御都合により御欠席とのことでございます。御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
それでは、以後の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。
○山崎部会長
委員の皆様には御多忙のところ御出席いただきまして、どうもありがとうございます。
本日は「平成20年度の公的年金財政状況報告」のとりまとめに関して審議を行いたいと思います。
それでは、本日の議事に入ります。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○石原首席年金数理官
私から資料に沿って御説明申し上げます。
資料1-1でございますが、「公的年金財政状況報告-20年度-(案)」でございます。2枚めくっていただきまして、まずは目次にて全体像をごらんいただきたいと思います。
第1章は公的年金の概要でございます。これはほぼ変えておりませんが、第2章からが実質的な内容になっておりまして、財政状況を記載しております。2の1が財政収支の現状及び推移、2の2が被保険者の現状及び推移、2の3が受給権者の現状及び推移、2の4が財政指標の現状及び推移、2の5が被保険者及び受給者のコーホート分析、これは昨年から入っております項目でございます。
第3章に入りまして、第3章が平成16年財政再計算結果との比較。3の1が財政計画と比較する際の留意点、3の2が積立金の実績と将来見通しとの乖離の分析、3の3が財政指標の実績と将来見通しとの比較となってございます。
内容はかなり大部でございますので、昨年から若干変わっております点や本年度の特徴といった点を主に説明させていただきたいと思います。
では、本年度の決算のとりまとめに当たります表からごらんいただきたいと思いますが、6ページへ行っていただけますでしょうか。
6ページが財政収支状況でございます。平成20年度の各公的年金制度の財政収支でございます。
4月と5月に決算のヒアリングをお願いしましたが、その結果をまとめたものでございます。表の構成ですが、表頭に厚生年金、国共済、地共済、私学共済、国民年金、合計、公的年金制度全体と並んでございまして、表側が収入の各項目、保険料収入、国庫・公経済負担、追加費用、運用収入という形の項目と、支出に給付費、基礎年金拠出金、年金保険者拠出金といった形で分けてそれぞれ項目で計上してございます。その次に収支残、年度末積立金、年度末積立金の対前年度増減額という形でございます。
今年度の特徴でございますが、昨年までは収支の中に時価ベースの運用収入を入れてございまして、時価の変動によってかなり変動が大きいというようなこともございまして、若干表がわかりにくいこともございました。今年度からこの収支の項目については、運用収入の部分については全部簿価ベースで上段のほうは記載するという形で整理してございます。
この表の下のほうに(参考)として運用収入(時価ベース)、年度末積立金(時価ベース)、年度末積立金の対前年度増減額(時価ベース)を参考として最後に計上するという形で整理させていただいております。
各制度はヒアリングしていただきましたので、合計の欄でごらんいただきますと、合計のところですが、収入総額が70兆3,414億円でございます。下のほうに行っていただきまして、支出総額が69兆7,620億円。収支残が5,794億円という形でございます。年度末積立金が183兆9,631億円、対前年度の積立金の減が4兆5,221億円ということでございます。
これが単純な計でございまして、昨年からお話申し上げていますが、収入の中に、例えば収入の項目で申し上げますと、右側の?@と書いてございますが、例えば基礎年金拠出金収入は19兆2,558億円合計の欄に計上してございます。
それと同じ額が支出の欄で、基礎年金拠出金という形で19兆2,558億円計上されていますが、これは各制度からの基礎年金拠出金が支出されて、それを基礎年金勘定で受けているという形のものでございまして、制度間の入り繰りのような形になりますので、合計の欄に、支出、収入が同じものを単純に合計するということはどうかということで、一番右側の公的年金制度全体という欄を計上してございます。そういった支出と収入が同じ項目を落として純粋な形にしたものという意味でごらんいただきますと、収入総額が45兆6,070億円、支出総額は46兆5,952億円という形でございます。
以上が今年度の結果でございますが、昨年度も同様ですが、この表の中で、収入の欄をごらんいただきたいのですが、下から2番目、その他の上にございます積立金より受入収入を計上してございます。積立金を利用して財政運用を行う形でございますので、積立金より受入収入が収入の欄にあります。そういったものは積立金からの受入ということですので、単年度収支として計上するのはどうかということで、単年度収支の形で、積立金からの受入でなくて、単年度ごとの収支で整理したものをつくっているという形でごらんいただきたいのは11ページになります。
11ページが、今申し上げました積立金運用からの繰入れを除いた収入と支出について整理したものでございます。収入の欄をごらんいただきますと、保険料収入、国庫・公経済負担、追加費用、基礎年金交付金と並んでおります。
支出の欄にも給付費、基礎年金拠出金と並んでございます。これも同様なのですが、1点ここで違いますのは、収入の欄には運用収入が入っていないという整理に今年度からさせていただいています。収入の欄に運用収入を入れないでおりますので、収入と支出の下の欄をごらんいただきますと、その次の欄が運用損益分を除いた単年度収支残というのを今年度から新たにつくってございます。
厚生年金で申し上げますと、運用損益分を除いた単年度収支が4兆8,148億円の赤字でございます。
国共済が3,457億円の赤字、地共済が9,712億円の赤字、私学共済が232億円の赤字、国民年金が7,029億円の赤字、合計で6兆8,504億円の赤字ということで、各制度とも運用収入がなければ保険料等では賄えていない状況がここに示されてございます。
運用収入ですが、ここの運用収入の欄が時価ベースで整理してございまして、時価ベースの運用収入が、厚生年金ですと、8兆7,252億円の赤字ですので、運用損益を除いた単年度収支と運用による損益と合わせましてほぼ対前年度の積立金の増減になるという形でございます。それが13兆5,314億円、厚生年金で申しますと、13兆5,000億円の赤字でございます。それで13兆円積立金が減ったということで、積立金の最終的な時価ベースは116兆6,496億円という形になってございます。
今回こういう形に運用損益を除いて数字を出させていただいた理由の1つは、運用損益が黒字のときは大きく黒字ですし、赤字のときはこういった形で赤字になるものですから、財政の状況が見にくいこともございまして、運用損益を除いた単年度収支を出して、ある程度財政の現状を把握しやすいような形を目指したいということで、こういう形に整理させていただいています。
1つの見方でございますが、例えば厚生年金で、運用損益除いて4兆8,148億円の赤字ですが、要は支出を賄うに当たって、保険料と国庫負担で賄えない部分ですので、運用収入なり積立金からの繰入れで充てるべき部分という形になりますので、それを単純に、運用損益はぶれますので、積立金と比較してどの程度の規模になっているのかという見方で、ある程度財政状況を見ることができるのではないかと考えております。
そういった見方をしていただきますと、運用損益分を除いた単年度収支残が4兆8,000億の赤字でございますので、年度末積立金が116兆円、割合にしますと、運用損益を除いた単年度収支残が4.1%程度に当たります。国共済で見ますと、この数字が4.2%、地共済は2.7%、私学共済ですと0.7%、国民年金ですと9.8%、全体でも4.0%という形になってございます。ですから積立金に対して全体で見ますと、積立金からの寄与は4%程度ないととんとんにならないという状態になっているということで、見やすくなっているのかと思っております。
次のページ、12ページへ行っていただきます。これから決算の状況をごらんいただきましたので、その各項目について、どのような状況で今年度推移してきたか、若干御説明申し上げたいと思います。
保険料収入は、図表2-1-4でございます。表頭については、各制度を並べておりますのは同じですが、表側でございますが、年度について、平成7年度~20年度までそれぞれ時系列で並べてございます。上のほうに実額のものと、下のほうに対前年度の増減率を並べてございます。主に実額というよりは対前年度増減率でごらんいただきますと、厚生年金で保険料収入ですが、一番下の欄、平成20年度で3.3%の増加しております。相変わらず保険料収入は、昨年度は4.7ですが、3.3ということで伸びているという状態でございます。
国共済ですと0.8%の増加、昨年0.2ですので、大体同様の伸びでございます。地共済は0.6のマイナスということで、平成17年1.2%伸びていたのですが、保険料率自体は上がっているのですが、被保険者の減や標準報酬が伸びないということもございまして、地共済の場合ですとマイナスになっているということでございます。
私学共済ですと、4.6%の増加ということで、被用者保険の中では私学共済の伸びが高めになっているということになってございます。
国民年金は0.6の減で、公的年金制度全体で2.2%増という形でございます。
それから、16ページに今年度の話でございますので、追加費用のところだけコメントさせていただきたいと思います。図表2-1-8、追加費用の推移ということで、国共済、地共済それぞれ出しておりますが、増減率が右のほうに出ております。国共済の増減率が△17.6、地共済が△12.5と昨年度に比べても追加費用が若干減少が大きくなってございます。他の数字もそうですが、若干追加費用の減少が大きいということで、他の指標に影響を与えている面もあるので御注意いただければという意味でコメントさせていただいていますが、上のほうにこの要因を書いておりまして、3行目からですが、「平成20年度の対前年度増加率は、国共済が17.6%減、地共済が12.5%減と大きく減少しているが、これは当時、国会に提出されていた被用者年金一元化法案に従って、追加費用は削減されることを前提とした予算が組まれたため、実際に受け入れた追加費用の額も減少したものである。」ということで、決算でございますので、予算として受け入れたものは決算になってございますが、予算上で受け入れたものがそういった事情で若干減っているということで、本年度の特殊事情ということを御理解いただければと思います。
それから、18ページへ行っていただきまして、運用利回り、図表2-1-10でございますが、平成20年度を見ていただきますと、18年度まで運用が好調だったのですが、厚生年金で19年度〔△3.54〕、20年度では〔△6.83〕で、リーマン・ショックが平成20年9月15日ですから、そういったこともございまして、その影響などを受けてかなり運用が悪化しております。その影響で〔△6.83%〕ということでございます。これが今年度の大きな特徴でございます。国共済では〔△3.89〕、地共済〔△6.79〕、私学共済〔△7.62〕、国民年金〔△7.29〕ということでございます。
それから、20ページの図表2-1-12、給付費でございますが、下のほうでごらんいただきたいと思いますが、対前年度増減率ですが、厚生年金が1.3%の増加、国共済0.0%、地共済1.0%、私学共済2.7%。厚年と私学が若干伸びておりますが、地共済、国共済は例年どおり、1%前後の伸び、1とか0とか、低い伸びにとどまっている状態でございます。被用者年金は1%ぐらいですが、国民年金を見ていただきますと、基礎年金のところですが、6.8%ということで、基礎年金はどちらかというと伸びが高い状態が続いております。給付費の伸びは乗率の適正化ですとか、そういった影響で伸びが小さいわけですが、それに比べると基礎年金の伸びはかなり伸びてきて
いるといった状態が示されております。
次に22ページの図表2-1-14、先ほど申し上げました運用損益分を除いた単年度収支残の推移でございます。これが新しい項目でございまして、全体としてごらんいただきますと、国共済を除きまして平成7年、8年、9年当たりですと、黒字だったということがおわかりいただけると思います。要は黒字ということは、運用収入を入れなくても保険料と国庫負担等で賄える状態ということから、21世紀になると各制度とも運用益を使っていかないと賄えない状態になってきて、マイナスが立っているという状態になっていることがごらんいただけると思います。
厚生年金で申し上げますと、こういう形で整理したのですが、平成15年度が2兆6,264億円の赤字、16年度1兆3,700億円の赤字、17年度7兆1,123億円の赤字と数字がかなりぶれております。この要因ですが、例えば16年度で申し上げますと、代行返上がございまして、代行返上益が収入として計上されたので、その分運用によらなくて収入が多くなってマイナスが減っているという意味でございます。その逆に、17年度では、運用基金の解散がございまして、長期借入金を繰上償還したりしておりまして、その影響で7兆1,000億も赤字が増えているという状態です。
そういった意味では収入の欄の若干ぶれがございますが、そういったことも含めてごらんいただければということでございます。
それから、24ページの図表2-1-15、積立金の推移でございます。平成20年度厚生年金でごらんいただきますと、伸び率は時価ベースで10%の減、国共済が7.7%の減、地共済9.2%の減、私学共済が8.2%の減、国民年金が15.1%の減、全体が10.1%の減ということで、各制度とも運用の悪化を受けて、マイナスがかなり大きくなっていることが目立ってございます。
以上が、財政、決算の各項目の状況でございます。
それから、31ページへ行っていただきます。これからが被保険者とか、ベーシックになる受給者ですとか、そういった数字が現状どうなってきているかということをごらんいただきたいと思います。31ページの被保険者数でございますが、図表2-2-1でございます。これも、対前年度増減率でごらんいただきますと、厚生年金では△0.4で減少に転じてございます。18、19年と2.3%ずつ伸びておりましたが、20年度は若干減ということで、リーマン・ショックと先ほど申し上げましたが、そういったことでかなり中途採用も含め抑制されてきている状況があらわれているかなということでございます。
国共済は0.4%減、ここはずっと減少傾向をたどっております。地共済も1.6%減ですが、どちらかというと、通常どおり減少してきているということでございます。私学共済は1.7%増。これも学齢人口減っておりますが、依然として伸びが続いている状況が例年どおり続いています。
国民年金でございますが、1号被保険者は厚生年金が18、19年と高く伸びていて、逆に国民年金はその分、18、19年は3.1、4.1ということでマイナスが大きかったのですが、それが今年度は1.7ということでマイナス幅が若干減っているということでございます。その辺りが逆になっています。
それから、細かい数字が続きますので省略させていただきまして、37ページが図表2-2-7、1人当たり標準報酬額(月額)の推移でございます。上のほうの実額でごらんいただきますと、厚生年金が37万810円でございますが、括弧書きで下に書いてございます〈31万2,813円〉、この括弧書きが月々の標準報酬でございまして、ボーナスも加えて平均したものが37万という数字になってございます。
括弧書きはそういった性格だということをご理解いただきまして、下のほうに行っていただきますと、対前年度の伸び率ですが、0.4%のマイナスでございます。標準報酬につきましては、最近マイナスが続いておるということで、リーマン・ショックという話を申し上げましたが、今年度についても、19年度も同じ程度のマイナスにはなっているということでございます。ただ、19年は括弧内もマイナスでしたが、20年では括弧内は若干プラスに戻っています。それほど大きな変化ではないですが、賃金については相変わらず下落傾向が続いているというご理解でお願いしたいと思います。
国共済ですが、これは昨年もプラスでしたが、今年もプラスで0.4のプラス。
地共済が1.3のマイナスでございます。地共済のマイナスですが、17年が△0.1、18年△0.5、19年△0.8、20年△1.3、次第にマイナスの幅が大きくなっていることが言えるかと思います。この辺りが地共済の場合ですと、若干懸念材料になってきているということでございます。
私学共済は△0.4、これは昨年が△0.5ですので、ほぼ同程度、厚年と同じように賃金の下落傾向が若干続いていることかと思います。
それから、次にまいりまして40ページの図表2-3-1、受給権者数の推移でございます。下のほうで対前年度の増減率をごらんいただきますと、厚生年金で5.7%の増加でございます。17、18、19年、20年と3.6、4.2、5.1、5.7、次第に若干受給権者の伸びが高まってございます。やはり団塊の世代がそろそろ退職を迎えて、受給権者になってきているということがございますので、そういった影響も次第に出てきているかなということで、伸び率も高まってきている状況かと思います。
国共済でも4.6%、地共済は4.4%、私学共済は制度が若いこともございますが、6.2%、かなり高めの伸びが出てございます。国民年金は4.0%、これは同程度の伸びでございます。
次にまいりまして、細かい受給権者の内訳等もございますが、省略させていただきまして、62ページへ行っていただきます。受給権者が終わりましたので、財政指標をごらんいただきたいと思います。図表2-4-2、財政指標の第1番目が年金扶養比率でございます。厚生年金のところで申し上げますと、19年度が2.74から20年度が2.60ということで、やはり低下傾向が続いてございます。対前年度の差で見ていただきますと、0.14ぐらいダウンしてきています。国共済の対前年度の差が0.04、地共済が0.10、ほぼ同程度の傾向になってございますが、私学共済は0.18ということで、19年度も同様の傾向が続いてございます。次第に高齢化が進むとともに年金扶養比率も落ちてきているという傾向が続いています。
厚生年金が18、19、20年と見ますと若干大きめになってございますが、先ほど申し上げましたように、被保険者数の伸びが止まっておりますので、昨年よりは少し成熟化といいましょうか、そういったものは進んだ状況という形になっているかと思います。
次にまいりまして、65ページが総合費用率でございます。総合費用率は支出を賄うのに保険料だけでとったら何%必要かという料率でございますが、厚生年金で見ていただきますと、図表2-4-7でございますが、20年度18.2%でございます。ここも括弧書きがございまして、〈21.7〉と書いてございます。この括弧書きは、先ほどと同様ですが、標準報酬だけで料率をとった場合には〈21.7〉ということで、ボーナスも入れると18.2という数字でございます。ボーナスを入れた数字で主にごらんいただきたいと思いますが、厚生年金18.2、国共済が19.9、地共済が19.2、私学共済が12.7ということで、私学共済の料率が低いところが目立っております。
総合費用率の対前年度の差でございますが、下のほうで20年度をごらんいただきますと、厚生年金が0.3だけ上がってございます。厚生年金の数字ですが、17、18、19とほぼ横ばいでございました。被保険者等が増えていることもございまして、受給者の伸びもそれほど大きくないということもございますが、そういった影響を受けまして、ゼロで済んでいたわけですが、20年度は被保険者の減がありますので、0.3上がっているという状態でございます。
国共済につきましては、昨年度1.2増えていますが、今年度も同様に1.2の増。地共済は昨年度0.8ですが、今年度は1.5ということで、先ほど申し上げましたが、かなり地共済ですと賃金が下がってきている影響がございますので、その影響が出ていまして、かなり総合費用率なども上がってきているという状態になってございます。
私学共済は昨年度と同様0.4の上昇で済んでいるという状態でございます。
総合費用率はそういう形でございますが、総合費用率と保険料率を比較してみた表が67ページの図表2-4-8でございますが、総合費用率の推移と保険料率をみた表でございます。昨年度との比較という意味では、今申し上げましたので、少し中期的な見方で見ていただき、15年度から20年度までという形で見ていただきますと、厚生年金は15年度17.3から、20年度が18.2ということで、0.9総合費用率で見ますと上がっております。保険料率はその間ですが、1.8ぐらい上げていますので、そういった意味では、保険料率のアップのほうが総合費用率よりもアップ率が高いという状態で、財政的には若干ずつ改善してきているという状態が見てとれるかと思います。
それに比べますと、国共済ですと、15年度17.4ですが、20年度は19.9まで上がっております。この上がり幅が2.5あります。保険料率ですが、0.6程度しか上がっておりませんので、そういった意味ではかなり総合費用率の上げ幅が保険料率の上げ幅に比べると大きいという状態でございます。
地共済も同様でございまして、総合費用率の上がり幅が、15年度14.4ですが、20年度は19.2でございますので、4.8上がっております。保険料率の上げ幅が厚年と同様ですので、1.8でございますので、これも倍以上総合費用率は上がっているという意味で若干苦しい状態になりつつあるということかと思っております。
私学共済ですが、総合費用率は11.3から12.7で、1.4の増加です。保険料率も1.4ぐらい上がっておりますので、保険料は若干ずつ上がりながら総合費用率も上がってきているという状態でパラレルということで、同様の状態が続いているという形で認識していただけるかと思います。
それから、68ページでございますが、そういった状態の変化でございますが、現状2階までの部分に対して、各制度がどの程度の総合費用率になっているかという数字が図表2-4-9の指標でございます。今までの総合費用率というのは、実績と書いてあるところでありまして、厚生年金で「実績」の総合費用率を出しておりますのが、今までの総合費用率です。厚生年金の「実績」の横に「実績推計」と書いておりますが、これが今まで説明申し上げてきたのは、厚生年金基金ですとか、そういった部分は入っていない総合費用率ですので、それを入れた実績推計で見たら、どのぐらいの実力ベースかというのを実績推計として計上してございます。実績推計で基金など
を入れて、共済については3階を外して、純粋に厚生年金と比較できるような形にしてみた部分ということでご理解いただきたいと思います。20年度で見ていただきますと、厚生年金の実績推計ですと、総合費用率が19.0%です。
それに比べまして、国共済は18.1、地共済は17.5、私学共済は11.8ということですので、まだどちらかといいますと、地共済はかなり悪化してきているという話は申し上げましたが、厚生年金よりも依然として低い状態が続いているということになってございます。
次は71ページ、保険料比率及び収支比率ということで、前回まで収支比率を主に出していたのですが、今回、収支比率はぶれが大きいということで、意味がとりにくい指標よりも保険料比率といったもので代用して少し財政状況を見やすいものにと思っておりまして、保険料比率という新しい財政指標を今回御提案申し上げています。
保険料比率の定義でございますが、申し訳ございませんが、58ページまで戻っていただきます。
58ページの一番下のところに保険料比率の定義がございます。式のところをごらんいただきますと、実質的な支出から国庫・公経済負担を除いて、保険料や積立金からの運用収入で賄わなければいけない実質的な支出に対して保険料収入が何%占めているかといった比率が保険料比率というものにしてございます。
これで見ていただきますと、71ページに戻っていただきまして、実際に支出を賄うのは保険料と運用収入と国庫・公経済負担ですが、国庫・公経済負担は除いて、賄わなければいけない支出に対して保険料収入がどれだけ示しているかということで、あと残りは積立金からの運用収入等で賄うという形で整理される部分ということでございます。
そうすると積立金の増減が入らないものですから、ある程度安定した形になりますし、先ほどから申し上げています運用損益を除いた収支も同様ですが、それに比べますと、厚生年金の代行返上ですが、そういう影響もありませんので、どちらかというと、数字もきれいな数字が並んでいるかと思います。そういった意味でごらんいただきたいと思いますが、厚生年金で申し上げますと、平成7年度が111.9という数字です。111.9というのは、100を超えていますので、保険料で国庫負担を除くすべての支出が賄える状態。運用収益がそのまま余っている状態というのが111.9という数字。ですから平成7~9年当たりでは100を超えていて、要は運用収益がなくても保険料で十分賄える状態が、国共済以外ですが、続いているということでございます。それが10年度から21世紀に入ると、90とかそういう数字になりますので、だんだんと運用益がないと保険料ではやっていけない状態になってきているということを示してございます。
厚生年金で1つのポイントは、16年度までこれが下がってきまして、16年で74.3まで下がります。それが最近は79.8ですので、反転しております。どちらかというと、保険料も上げておりますし、景気もよかったということで、被保険者も増えるといった状況から、保険料比率が上がってきている。支出の中で保険料に占める割合が上がってきていて、運用収益等に頼らなくてもいい状態、要は財政的には楽な状態になりつつあるといった状況が最近の厚生年金の状況ということがこの辺から見てとれるかと思います。
国共済ですと、どちらかというと低下傾向が続いておりまして、最近でも追加費用の問題がありますが、80%を切っている状態になっています。
地共済もかなり急速に低下してきているということがごらんいただけるかと思います。
私学共済は100は割っていますが、90台で安定していて、ここも16年度ですが、90.9を境に、これも保険料比率としては上昇傾向になってきている。国共済、地共済以外では、厚生年金と私学共済はどちらかというと、被保険者が増えていますし、保険料も上げているということで、体質的には若干ずつ改善されてきているというようなところが見られるのではないかということでございます。
それから、次に行きまして、72ページが収支比率です。これは今回からメインの指標としてはどうかということで、一応今回は計上してございますが、収支のバランスがどうなっているかということですが、例えば、平成20年度で見ていただきますと、厚生年金の時価ベースが203.6ですとか、国共済196.5、地共済ですと1,176.2というような異常な数字になって、運用の悪化で収入が極端に時価ベース落ちますので、収支比率が極端な数字が出るものですから、これを財政指標といって見ていっても仕方がないだろうということで、今回からは保険料比率にかえてごらんいただいたらどうかということで新しい指標として御提案申し上げた原因になった表でございます。ですから参考という意味でごらん下さい。このような形で運用が最近ですとぶれが大きいものですから、収支比率みたいな指標ですとかなりぶれてきて、なかなか各制度の財政状況が見にくくなっているという現状になってきていると思っております。
積立比率は省略しまして、時間の関係もございますので、コーホート分析を少しごらんいただきたいと思います。
昨年度から始めましたコーホート分析ですが、76ページでございます。繰り返しになりますが、コーホートの見方を少し御紹介申し上げたいと思いますが、76ページの図表2-5-1ですが、20歳から、表側が年齢をとってございまして、表頭が各制度という形です。これは表題にもございますが、年齢別被保険者数のコーホートの増減率ですが、例えば22歳で厚生年金の男性の増加率が12.6%という数字がございます。これは19年度末の21歳の人が、20年度末は22歳になるわけですが、その間に、21歳の人が22歳になる間で、その層の人が何%増えたか、それが12%増えているという数字がコーホートの増減率という性格のものでございます。
この数字をごらんいただきますと、厚生年金ですと、21歳のところは35%、23歳のところは61%、大学を卒業、短大、専門学校を卒業して社会人になって来られるところでかなり高い伸びが計上されております。それが30歳以降ですとマイナスになってきて若干厚生年金から出ていっているという状態が示されているかと思います。下のほうへ行っていただきますと、60歳の定年のところで見ていただきますと、△17.3ということで、17%ぐらいの減少という形でございます。
そういった数字の性格のものでございますが、本年度の特徴ということで申し上げますと、21歳のところの数字で、本年度35.8ですが、昨年度の数字、報告書をごらんいただければおわかりいただけると思いますが、48.7でございます。23歳のところは61.2ですが、去年は69.2です。
そういった意味では若干ずつ採用は減ってきているかなという状況かと思います。それから、後で見ていただければと思いますが、30歳のところから、厚生年金の男子はマイナスが立っておりますが、去年は55歳までここがプラスでございます。どちらかというと、30になってすぐ厚生年金ですと、退職される方が多くなってきていると。去年まではこの辺が中途採用されていたわけですが、それが退職側に回ってマイナスがずっと続いているということで、採用も抑えられていますし、30代から退職が増えているということで、どちらかというと、そういった人数関係がなかなか伸びない原因がこういったところにあらわれてきているかと思います。60歳の定年のところは、去年は14.9%の減ですが、今年は17.3%の減。各年齢ともかなり抑制的に働いてきているということでございます。
女性の場合も同じでして、23歳のところは51.7ですが、去年は56.3です。25歳~37歳まで、出産の関係でマイナスが立っておるわけですが、これも去年は27~33ぐらいまでマイナスで、あとはプラスだったのですが、これもマイナスの幅が増えております。40代でも去年は5%前後プラスが立っていたのが、今年は2%前後、40代での要は出産を終えて再度勤められる方が40代に多いわけですが、そういった40代の伸び率自体も、去年は5%あったのが、今年は2%しかないというように、厚生年金ですと、そういった変化で若干ずつ被保険者の伸びない状況がこの辺であらわれてきているかと思います。
国共済は採用等は若干増えておりまして、どちらかというと、団塊の世代ですが、国共済、地共済ではいなくなっているものですから、若干採用等は増えている形になります。ちなみに地共済で申し上げますと、23歳のところは、去年158.1で、今年は164.3ということで、そういった意味で厚生年金と若干違った状況が出てきております。
国民年金ですが、厚生年金の採用が抑えられているという話を申し上げましたが、今度は逆でして、国民年金の1号ですと、24歳のところは△15.5で、この辺は国民年金から厚生年金に行くものですからマイナスが大きいのですが、このマイナスが去年は18.6あったものが、今年は△15.5。そういった意味では国民年金は減少がこの辺がとまっているという逆の減少になってきているかと思います。そういったことも見られるということでございます。
被保険者の関係は以上でございますが、78ページへ行っていただきまして、標準報酬の関係でございます。これは大体ほぼ去年と同様の傾向でございます。若年のほうは昇給カーブの関係で高い伸びを示しておりますし、50代後半には厚生年金でマイナスになってきているということでございます。
地共済は、去年まではここはほとんどプラスだったのですが、45歳あたりからマイナスが立っています。この辺は国共済と比べてもかなり地共済の賃金が減ってきているということを表しているかと思います。
79ページのボーナスですが、ボーナスは同様ですので、80ページへ行っていただきたいと思います。80ページは賃金総額をコーホートで見たものでございます。時間の関係もございますので、賃金総額のところで、計の欄だけコメントさせていただきますと、標準報酬総額の計ですが、全体として1兆2,000億、年度末どおしで比べると、賃金総額が減っているということでございます。年齢別にコーホートで見ますと、当然若い方は採用されて賃金も増えるものですから、25歳まででは2兆5,000億を超えていますが、団塊の世代を中心にした55~64歳のところでは4兆円マイナスということでございます。ですから団塊の世代等が退職して賃金はその分4兆円ぐらい浮いているのですが、その分、採用に回っているのは2兆5,000億で全体としては1兆2,000億ぐらい賃金としては減っているという状態を示してございます。
それから、あとは年金受給者のコーホート等ございますが、同様の表でございますので省略させていただきます。
第3章に行っていただきたいと思います。資料1-2でございます。
第3章は、実際に再計算と実績を積立金で比較したらどうかということで分析をしている章でございます。その結果でございますが、90ページに表がございます。厚生年金と国共済+地共済で、国共済、地共済、私学共済、国民年金それぞれについて表側が年度で、16~20年まで。「実績推計」と書いておりますが、再計算が厚生年金基金などを含んでいるものですから、再計算と比較するという意味で厚生年金では実績推計と書いております。実績とか実績推計と再計算を比べて、差をとってどの程度乖離しているかといった表をつくってございます。
厚生年金でごらんいただきますと、20年度ですが、実績推計の積立金が149兆9,000億円、再計算ですと157兆1,000億円で、差が7兆2,000億円、再計算を下回ってございます。19年度はこれが5兆6,000億円上回っていたのですが、今年度は再計算の見通しを下回ってきたという状態でございます。先ほどから申し上げていますように、運用が悪化しておりますので、その影響を受けて再計算よりも実績の積立金は下回ってきているという状態になってございます。
国共済+地共済でごらんいただきますと、これも同様でして、昨年度は括弧内の時価ベースでごらんいただきますと、1兆3,920億円分、実績を上回っていたのですが、今年は3兆5,495億円、再計算を下回っているということです。
私学共済も同様でして、差をごらんいただきますと、785億円、昨年では上回っていますが、今年では2,889億円下回っているということでございます。
国民年金も同様、3,000億昨年は上回っていますが、今年は下回るという状態になってございます。
この状態をどう評価するかということで、この分析をしております。例年と同様の分析ですが、分析結果をまとめたものが96ページでございます。ちょっと細かくて恐縮ですが、表側をごらんいただきたいと思います。20年度末の積立金の将来見通しとの乖離が、今申し上げましたように、厚生年金では7兆2,000億の乖離があったわけですが、7兆2,000億の乖離について、?@16年度末で初期時点で若干の乖離がございます。その乖離分と、17年度については、名目運用利回りが違っていることによる乖離分、名目運用利回りが違っていることによる乖離分も実質的な運用利回りと賃金上昇率が違うことによる分に分けてございます。それから、運用収入以外の収支残によ
る影響分、それも賃金上昇率による分と賃金以外の経済要素、人口等による分という形で17年度は分けております。そういった形で各年度17、18、19、20年と分けて、それぞれ17.2兆円が、どのように年度ごとにその差が発生しているかというものを分析したものでございます。
こういう形で分析していって、何をやっているかということですが、99ページへ行っていただけますでしょうか。細かい今のような要因分析して、99ページでまとめておるのですが、ここでやっておりますのは、96ページで細かくやった中で、賃金の上昇分というのを除いております。
賃金が伸びない分は給付も伸びないですし、保険料も伸びないという意味でパラレルになるという傾向がございます。ですから従来から賃金上昇が積立金で申し上げますと、賃金が伸びないにもかかわらず再計算と同じ積立金を持っている必要はないだろうという評価基準になりますので、賃金が伸びない分は再計算と同じぐらいの積立金は要らないはずだということで、賃金上昇による増加分は除いて考えたらどうかということで、増加要因について、実質的なその差の要因を調べてみようという形で、賃金上昇による分を除いて評価するということをやってございます。
賃金上昇による増を除いてみますと、上の表の寄与分のア~オの合計の欄をごらんいただきますと、厚生年金ですとマイナスが立っていましたが、賃金上昇による分は大きいものですから、賃金が下落していることによって、運用利回りも本当はそんなによくなくてもよかったのですが、実績の運用利回という意味ではある程度達成できているということで、そういったことを評価してみますと、賃金の上昇分を除いたという意味では、全体の評価としては6.4兆プラスであるという評価になってございます。
国共済+地共済でも4,387億円プラス、私学共済でも262億円プラスという形で、各制度とも賃金が下落している影響を除いてみれば、実質的には再計算を上回って推移しているということでございます。
図表でごらんいただきたいと思いますが、105ページでございます。積立金の推移でございますが、厚生年金の真ん中の図、これが積立金の推移、20年度末を100として、どういった推移になっているかということを図にしてございます。青線が将来見通しの推移、実際の実績の積立金が緑線になってございます。ですから緑と青の比較で見ますと、17年、18年と運用がよかったものですから、将来見通しの積立金を上回って推移している。19年度は運用が悪かったのですが、それでも積立金はその前のたまりがあるものですから、運用が悪くて傾きがマイナスになっていますが、全体としては、積立金同士で見ると、将来見通しを上回って推移。先ほどから申し上げていますように、20年度は積立金の将来見通しよりも実際の積立金が減っておるのですが、賃金上昇の分を勘案したものが赤線でございます。その赤線で賃金上昇による影響で、それほど積立金を持たなくていいという形で見ますと、そういった水準からは上回っているという状態になっているということでございます。
国共済と地共済ですと、いずれにしても、同程度でございますが、若干上回っているという状態になってございますし、私学共済でも同程度ということで、実質的には賃金の下落ということを勘案すれば、将来見通しと同程度の積立金の推移になっているのではないかということで考えてございます。
時間も参りましたので、あとは財政指標等の推移の比較、細かい比較でございますので、この辺で、私からの説明は終わらせていただきます。
○山崎部会長
ありがとうございました。それでは、事務局の説明に対する御質問や報告書の案に対する御意見などありましたらお願いいたします。
○佐々木委員
要旨からでよろしいですか。
○石原首席年金数理官
要旨は説明しませんでしたが、資料2-2につけておりますが、今、申し上げた報告書を簡単にまとめた資料でございます。
○佐々木委員
要旨に沿って2~3点御質問したいのですが、1つは、この要旨の財政収支等、表示の問題なのですが、19年度の対比で2年間続けて書いていただいたほうがいいかなと思うのですが、どうでしょうか。全部ということではなく、例えば図表1についてどうか。
それともう一つは、これも表示の問題なのですが、運用収入で簿価ベースと書いてありますが、19年度は時価ベースの表示がされております。これが今年はないのは何か意味があるのかどうか。以上です。
○山崎部会長
その2つでしょうか。
○佐々木委員
今のは表示の問題ですが、まず6ページ目ですが、(「実質」でみた財政状況)ということで、1つ御質問です。元本収支とか運用収支の問題ですが、大きな経営指標として(「実質」でみた財政状況)と書かれておられますが、この3行目から4行目に、「実質賃金上昇率等が変わらなければ、全体の財政規模が相似的に拡大、縮小するだけであり、長期的には財政にあまり影響はないと考えられる」とのコメントがあります。賃金の上昇が大きいとか小さいということでは全体の財政規模が拡大、縮小するというのはよくわかるのですが、「あまり影響がないと考えられる」という検証はできるのかどうか。検証というのは非常に重要な事項だと思いますので、「考えられる」という、このコメントを少し補足をしていただければと思います。
それから、もう一つは、現在のデフレ下で、もともと計画している分に、何かネックというか、相違点があるのであれば、それを補足していただければと思います。その2つです。
○山崎部会長
どうぞ、お願いします。
○石原首席年金数理官
要旨ですが、おっしゃるとおり、19年度と分けたほうがわかりやすい部分もあろうかと思います。ただ、内容が若干大部なものですから、ここでは20年度のみということでさせていただいています。来年度以降、何か工夫できるところあれば御指導いただきたいと思います。
それから、運用収入のところですが、簿価ベースしか計上してないというのは、先ほど申し上げましたとおり、財政状況では参考として時価の運用収入をあげる形にさせていただいておりまして、時価ベースはぶれも大きいものですから、財政収支のところからは、収入と支出の項目から時価ベースの収入を外しているということで整理させていただいています。
それから、もう一点、賃金の上昇で、収入も支出も同様に動くのであまり影響がないという話は書いてありますが、その点につきましては、先ほどおっしゃっていましたデフレの問題がございます。賃金が伸びていないから、先ほども積立金がそれほど要らないという話を申し上げましたが、そこはパラレルというのは原則なのでございますが、例えば懸念しておりますのは、マクロ経済スライドがデフレ状態では働いておりません。ですから、マクロ経済スライドが働かないことの影響というのは、実際には出てくるはずで、それはパラレルでない要因の1つだというようには認識しています。ですから、そういった要因をどのように、今後入れ込んで評価していくべきかということは宿題にさせていただきたいと思います。
○佐々木委員
ありがとうございます。
○山崎部会長
他にございませんでしょうか。
○牛丸委員
今回の平成20年度の公的年金財政状況報告、この内容に関しては、事前に委員の間でも議論をいたしまして、内容に関しては私としては異存ありません。ただし、以前、議論の中でいくつか検討すべきことが提案されました。それは今後の課題ということで、次年度といいますか、そこの中で活かしていくということで、今回提出されたものに関しては特に異存はないです。
内容ということよりも教えていただきたいことがあります。昨年もお聞きしたかもしれません。これだけ事務局も力を注いでおつくりになった、公的年金財政状況報告。それをつくることは数理部会としては当然の仕事でありますし、結果として出てくることは重要なことだと思いますが、それがいかに活用されているか。今後年金制度がどのようになっていくかに関する検討が続くわけですが、その中で、少なくともこれまでそういう検討の中で数理部会がつくり上げた財政状況報告というのはどういう形で活用されたのか、その辺のことがわかれば教えていただきたい。よろしくお願いいたします。
○山崎部会長
お願いします。
○石原首席年金数理官
活用ということでございますが、基本的には国会ですとか、そういったところから資料要求もございますし、一般のマスコミ等からもいろんな問い合わせ等がございます。そういった意味では、年金制度に関する情報公開の一環という形で、公的年金制度をまとめてこのような形で報告させていただいている資料等は他にございませんので、そういった意味ではかなり有用に活用していただいているのではないかと思います。どちらかといいますと、先ほど佐々木先生からいただきましたが、そういったことを今後さらに掘り下げていく。コーホートの話を昨年度から入れましたし、今年度も運用損益を除いて財政を見るという工夫もしておりますし、そういった形の工夫をどんどん取り上げることで、わかりやすいものにすることで、さらに活用してもらえるようなことを目指したいとは思っております。
以上です。
○山崎部会長
他にございますでしょうか。野上委員、お願いします。
○野上委員
私も報告書自体は、今まで大分議論も重ねましたし、この段階で特に意見を申し上げることはございません。ただ、今年から、こういう作業に携わらせていただいて、今後の課題といいますか、おそらく今年の報告の中で4点ほど課題があると思いました。参考程度にお聞きいただければと思います。
1点は、年金全体の信頼感ということで、再三申し上げているとおり、国際会計基準とかいろんな新しい動きもございますので、そのあたりで議論されている手法、やり方等適宜導入されてはいかがかなと。これはそれこそ人間の手当てからしないといけない話ですので、中・長期的な課題だと思います。
2点目は、今年は運用が非常に悪かったと。既に2年ほど前の話なんですけれども、この辺り、どのぐらいのリスクをとれるのか、あるいは実際にうまくいったときはよかったねという話ですけれども、うまくいかなかったときに誰がどういう形で損を補填していくのかというところの考え方自体の整理が、昨今、運用収支が上下するということを再三御説明されているように、その辺りの考え方を整理しておかないと、実際本当に運用が悪くなったときに、制度全体の信頼感にもかかわってくる問題ではないかという気がいたします。
3点目は、特に分析の中では触れられませんでしたが、国民年金の未納の問題が結構深刻になってきたというのは数字の上でも表れているのではないかと思います。6%程度減っておりますので、その辺りは年金制度だけで見ると、そんなに財政上大きなインパクトはない、もしかしたらプラスかもしれないというような御説明は既にいただいておりますが、特に基礎年金といいますか、最低保障年金という話もございますので、他の社会保障制度との負担のあり方といいますか、今後どういう形でやっていくかというようなことは多分年度を経るに従って深刻な問題になってくるのではないかということです。
4点目はマクロスライドの話もあって、賃金が減って、これは本当に年金財政上影響がないのかというのは、前回の作業部会でも御質問いたしまして、それなりの御回答を得ておりますが、特に国民年金・基礎年金も含めて本当に影響がないのか、そのあたりは少し心配な点だなと。特に厚生年金等でも保険料が少ない部分がございますので、制度全体でそこを負担すればいいのだという話をお聞きしておりますが、本当にそれでうまくいくのかという点が今後さらに分析を重ねていただければということでございます。
以上、4点でございます。
○石原首席年金数理官
いずれも今後の宿題ということで取り組まさせていただきたいと思いますが、1点、国民年金の御指摘のあった点について若干説明させていただきます。国民年金ですが、未納の関係で納付率が減っているというようなこともございまして御心配いただいているかと思います。ただ、現状を少しごらんいただきますと、基礎年金の拠出金でございますが、財政報告の資料1-1の、先ほど説明を省略しましたが、29ページをごらんいただけますでしょうか。29ページが基礎年金の資料を整理したものでございます。そこで表ですが、基礎年金給付費と基礎年金相当給付費の合計が?@で計算してありまして、特別国庫負担を引いて、基礎年金単価というのを計算しております。基礎年金単価をごらんいただきますと、20年度2万7,057円になってございます。基礎年金の対象額は18兆円で、それを1人頭で割って2万7,000円、つまり5,669万人で割ると月額2万7,000円という数字でございますが、保険料と比較するという意味では、これには国庫負担が3分の1強ついていますので、国庫負担相当分にしますと1万7,172円という数字になります。
保険料自体が1万4,000円ぐらいでしょうか。ですので、拠出金単価のほうが保険料よりも高い状態になっているということでございます。
ですから、未納との関係で、単純に申し上げると、未納者が増えると拠出金単価でいうと、1万7,000円ぐらいは支出が減って、保険料が1万4,000~1万5,000円減るといった収支バランスになりますので、単純にはそれほど、先ほど野上先生が改善とおっしゃいましたが、改善するというような見方もできないことはないという状態になっているかと思います。
ただ、ここの数字ですが、21年度では、2万7,000円が2万8,000円程度に増加すると思いますが、国庫負担は2分の1になりますので、1万4,000円になります。保険料が1万5,000円ぐらいですので、今度逆転しますので、そうすると未納が増えると、また拠出金の減りのほうが低くなってしまうものですから、そういった意味ではそこは逆転してくるというようなことで、微妙なバランスになってございます。そういった意味で、国民年金の財政を賦課方式の基礎年金が入った状態でどう見ていくのかというのは、大きな課題でございまして、そういった意味では、御指導いただいて今後検討を深めたいと思います。
以上です。
○山崎部会長
他にございますでしょうか。佐々木委員、お願いします。
○佐々木委員
先ほど牛丸先生がディスクロージャーの活用ということを言われたのですが、昨年のこの会議は11月27日ですから、3か月ぐらい早くこのまとめをされているんですけれども、20年度ですから1年遅れというイメージがどうしてもあります。非常に大部の資料ですから努力されていると思うんですけど、前年度分を翌年度にまとめる。もう少し遅くともいいんですが、そういうことは相当ネックがあるということなのですか。
○石原首席年金数理官
確かにおっしゃるとおりで、20年度の決算について、今の時期ですからかなりたっているという状態になっています。情報公開という意味ではなるべく速報性が求められるというふうに認識していまして、昨年よりもかなり早めておりますし、今後とも早めてまいりたいと思っています。ただ、厚生年金ですと、21年度決算がもう出ている状態ですが、まだ決算以外の資料なども必要だということとか、各制度、共済組合の決算の時期が若干遅れている制度もありますので、とりまとめに時間がかかるとか、そういうことも聞いておりますので、共済各制度などともスケジュール調整させていただいて、なるべく早めるという形で努力させていただくことで御容赦いただきたいと思います。
○佐々木委員
長期の財政ですから、あまりなじまないのかもしれませんが、企業ですと四半期決算とか、タイムディスクロージャーと言われているのです。今日もGPIFの運用速報が第1四半期いくらと出ていましたけれども、そういう部分とどうしても乖離が出てきます。その辺のところを、あまり細かい部分はいいと思うのですが、ぜひ御検討いただければと思います。
以上です。
○宮武部会長代理
細かなことで恐縮です。資料1-1の16ページで、追加費用のことをおっしゃっておるので、ちょっと私わからなかったのですが、被用者年金の一元化法案で追加費用がカットされるということを前提として予算を組んでいるわけですが、これは被用者年金の一元化法案では、国共済、地共済は既裁定者も含めて給付のカットをするということであったのですが、それをもう見込んで追加費用を減らしたという意味でしょうか。
○石原首席年金数理官
おっしゃるとおりで、追加費用については被用者年金の一元化法案を見込んで追加費用を減らして計上しているということです。
○宮武部会長代理
予算もそう組んで、決算もその数字が出ているということになると、法案が通らなかったわけですから、積立金かなにかで追加費用の分を埋めているのですか。
○石原首席年金数理官
この部分につきましては、他もそうなのですが、追加費用が入らなかった分は、翌年度また翌々年度精算という形で精算になりますので、翌年度また翌々年度で追加費用の額が多くなるという形になろうかと思います。
○宮武部会長代理
わかりました。
○山崎部会長
他にございますか。
○駒村委員
先ほども議論があって、首席年金数理官からお答えがあったのですが、マクロ経済スライドがデフレ化の下できかなかったということの影響について。これは厚年にも国年にも基礎年金にも影響があるわけですから、先ほど首席年金数理官がどういう形で検討するかという話をされましたけれども、この点については、今後もぜひ議論をしていただきたいと思います。
○山崎部会長
他にございますか。
特にないようでございます。いろいろと今後に向けての宿題・課題はいただきましたけれども、報告書そのものの修文が必要との御意見はございませんでしたので、これをもちまして、本部会の平成20年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○山崎部会長
それでは、異議なしということでございますから、そのようにさせていただきます。
本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。