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2010年10月29日 年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会(第9回)の議事要旨

○日時

平成22年10月29日(金)13:00~15:00


○場所

厚生労働省 省議室


○出席者

【メンバー(敬称略)】

浅野幸弘 植田和男 (座長) 小幡績 末吉竹二郎 竹詰仁
村上正人 山崎元 山崎養世 米澤康博

【総務省】

内山晃総務大臣政務官

【厚生労働省】

藤村修厚生労働副大臣

○議事

(1)藤村厚生労働副大臣ご挨拶
委員には、御多忙の中、本検討会に御出席を賜り感謝。年金積立金は、将来の年金給付に充てるために、国民の皆様方から預かっている大切な資産であり、安全かつ確実に運用することが何よりも重要。本検討会においては、この年金積立金の運用を取り巻く幅広い論点について、昨年11月からヒアリングなども含め精力的な御議論をいただき、今日が9回目。今年6月には中間的な取りまとめをいただいたと伺っている。
  これから年末に向け、限られた時間の中ではあるが、本分野について深い識見をお持ちの委員各位から御意見を伺える貴重な機会であると考えており、引き続き忌憚のない御議論をお願い申し上げる。

(2)内山総務大臣政務官ご挨拶
  年金積立金は、国民の皆様からお預かりした、将来、年金給付に充てられる大切な資産。一連の年金問題と同様、国民生活に直結し、その運用にも大変関心が高いところ。年内の最終取りまとめまで時間も限られているが、運用の在り方について、特にガバナンス体制の強化に向けて精力的に御議論いただきたい。
  よりよい年金資産の運用につきまして結論を出していただくことをお願い申し上げる。

(3) 年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方について
・ガバナンスについては、組織体制や人材も含めた広義のガバナンスについて議論をするべき。政府における責任関係の中でのGPIFの位置づけや委託者である厚労省の役割も含めた包括的な議論をお願いしたい。
・ガバナンスを取り上げることのほかに合意を得られたのは、運用目標の与え方が現実離れしているという点。現実から乖離している、GPIFがどれだけしっかりガバナンスの体制を整えたとしても、きちんとした運用が出来ない。
・昨年度、基本ポートフォリオは年金制度の見直しを待って見直すということであったが、年金制度の見直しがそう簡単にできるのかという問題もあるし、それ以上に今のポートフォリオが作られた2004年と市場環境は大きく変わっているのに、見直しをしないのはおかしい。
・なぜ現実離れした数字が出てきたのか。検討会の守備範囲外ではあるが、そこのガバナンスについて今後厚労省はどう対応するのかをきちんと回答してほしい。
・運用目標を含め、誰がどのような機能を持つべきかを制度部門で決めていくことは、GPIFがよく機能するために重要。
・厚生労働省がやるべき仕事は、どれだけの給付を国民に対して行うかを決めること。アセット・ライアビリティー・マネジメントの中で、負債がどの程度なのかを確定し、保険料徴収レベルをどう設定するか。保険料徴収レベルを設定するには、金利や予定利率の算定が必ず入ってくる。
・任命権者が適切な任命を行い得るということを、任命権者の属人的な能力に依るのではなく、組織体制で担保できるようにするべき。GPIF理事長は、日銀総裁よりも困難で多様で世界的な仕事である。日銀総裁よりも能力のある人を選ぶには任命権者にも高い能力が要求される。主務大臣が継続性を持って理事長を評価できるということが重要。
・日銀の政策委員会が運用委員会と違う点は常勤組織であること。運用委員は常勤、内部者であることが不可欠。
・主務大臣が与えるのは、ライアビリティー構造から出てくる運用目標。さらに付加するとすれば、厚労省の役割は、雇用と経済の成長、税収を結果として確保するという、国民経済に対する一定の責任を果たすこと。これは、なぜベンチャーキャピタルへ投資しなければならないかというリーズニングにもなる。
・取締役会、社長の他に監査する人として、企業でいう監査役、さらには外部監査人といった新たな監視機関が常勤で必要。全ての日常の決定はここを通るという組織が必要。
・理事会の構成と運用目標を提示するための場どちらに各界代表を入れるかはバリエーションの問題。大臣との協議の中で運用目標を適切に提示するために社会的合意が必要であるならば、大臣の下に審議会などを設置して各界から委員に入ってもらう。各界の代表を理事会に入れる場合の理事会は、運用とは少し離れることになる。
・GPIFの目標は運用目標をクリアするということを明確にするべき。過大な目標が与えられないようにするためには、主務大臣の運用目標の決定にGPIFからも意見を言える逆フィードバックループが必要。
・ガバナンスを考える上で重要なのは、国民に十分な説明責任を果たせる組織になれるかどうか。GPIFは国民に対してどのような責任を持ち、その責任を果たすための執行体制はどうあるべきかということを考える必要がある。
・GPIFが国民経済への責任も果たしていくべきとすれば、ガバナンスの在り方も変わったものになるはず。
・ガバナンスの在り方を議論するには、ガバナンスの起点をどこに置くかを整理することが出発点として重要。
・基本ポートフォリオを決定する理事会と、一定の裁量の範囲で執行する執行部隊、これを対比して、数量的に測るためには、理事会と執行は明確に切り離されていることが必要。
・厚労大臣の運用目標の与え方も含めて、厚労大臣の外に監視機関を置くべきではないか。
・新たな監視機関をGPIF内に作ることが必要。毎年基本ポートフォリオを見直しているが、今は策定する人とチェックをする人が一緒になってしまっているので、これを明確に分ける必要がある。
・内部監査というより、パフォーマンスをチェックするという監視が必要。
・仮に基本ポートフォリオを変更する場合、大臣まで上げなくてはならず、相当の労力が必要。ポートフォリオを頻繁に変えるべきということではないが、より実効的な体制にするべきではないか。
・ガバナンスの第一歩は情報公開と説明責任。運用目標提示の段階から、各界からの広汎な参加をしてもらい、財政・経済事情の率直な分析に基づく結果を公開して、広範囲に議論をしていくべき。
・日銀総裁の任命に相当の説明が求められるように、GPIF理事長の任命についても説明責任が問われることになるだろう。
・理事会の下に並ぶ組織として、情報公開説明委員会や運用評価委員会を置くべき。
・理事会がPlan、理事長がDo、運用評価委員会がSeeを担う「Plan Do See」の体制を整える必要。
・監視には理事会が執行役に対して行うものと、執行役が外部の個別運用機関に対して行うものと二つあり、十分な見識を持った理事長が個別運用機関に係る執行を監視し、その下に実行能力を持ったCIOを置くのが良いのではないか。監視と執行を分けることは利益相反を防ぐために重要。
・意思決定と執行を完全に分けることがいいのかどうか。多少のつながりを持たせるべきではないか。目標の非現実性に執行部門が意見を言える形にすることが必要。実際に執行を行う人も基本ポートフォリオの策定に参加した方がいい。
・執行を担う人が意思決定に参加するのは日銀方式。日常的な執行の組織の長は理事会のメンバーになるべき。
・日銀の場合、必ずしも総裁が政策委員会の議長となるわけではない。互選で選出し、たまたま総裁が政策委員会の議長に選ばれるということが続いているだけであ
・「監視」といっても、何をいったい監視するのか。基本運用方針の意思決定を監視するのか、それとも、決められたことをきちんと行っているかどうかを監視するのか。今、GPIFが意思決定する範囲が限られている中で、監視対象に明確なコンセンサスが得られないと、組織の持ち方の議論は難しい。
・GPIFのガバナンスが持つべき原則を考える必要。一般企業でもガバナンスとマネジメントを分離させているので、執行とガバナンスが同一人物というのはもうあり得ないと思う。
・外部ステークホルダーから見たときのガバナンスが確保されているか。GPIF内部だけでガバナンス組織を作っていいのか。また、組織論や形式論だけで新たな機関を作り、理事会や運用委員会に専門家をそれぞれ入れても、それがワークするのか。やはりそこには専門家同士のコラボレーションがないと難しい。
・GPIFがディシプリンを守るガバナンス体制を築くのが非常に重要なのと同時に、運用という特殊な世界のガバナンスの在り方については、日々の運用の中に、専門家の議論がどう反映されるかが重要。例えば運用規則を作るなら、組織論と一緒に議論した方がよくワークし、結果としてGPIFが国民から見て信頼のおける組織になる。
・今の運用委員会の体制の問題点は、諮問機関であるがゆえに責任と権限が曖昧であること。
・運用委員会が基本ポートフォリオを策定しても、最後は理事長の合意が必要。
・実際に運用委員と執行部の意見がぶつかることがあった。一つには、ポートフォリオの策定段階でオルタナティブを入れるかという議論になったが、GPIFとしては早い段階でやらないということでストップしてしまった。もう一つは、運用委員は金利が上昇するという仮定でポートフォリオを策定したいと言ったが、執行部は金利がいつ上昇するかというのも分からないので、金利は一本で行きたいとのことだった。ここに運用委員会の限界がある。ただ、それ以外で困ったということは特にない。
・GPIFだけでなく、主務大臣、関係大臣も含めて、国民に対してのプルーデントマン・ルールに則らなければならない。この場合、受給者である国民全体の利益を最大化すること、すなわち雇用と成長を最大化することがプルーデントマン・ルール。この原則がきちんとあれば、たくさん発行された国債を買えという話になっても、プルーデントマン・ルールとして拒否できる。
・監査をする人は独立した外部の監査人でなければならない。プルーデントマン・ルールや説明責任の裏にあるのは、監視システムがきちんとできているということ。しかし、それはベストの結果をということではなく、プロセスがきちんとしているかどうかを問うもの。
・運用目標を提示するなら、理事長も参加して議論を全て公開し、きちんと国民に説明するべき。
・組織論で言えば、理事会が執行部隊を任命し、理事会の下に監視委員会、運用評価の部局、情報公開と説明責任の部局があるという形にすべき。それに加え、主務大臣の下に運用目標を決定する組織を作るなら、そこも同様にきちんと情報公開すべき。
・現在のGPIFの問題は理事長の専管であることと、それを助ける運用委員が非常勤であり、責任と権限が曖昧であることである。
・優秀な理事長が来ればいいが、全ての論点をカバーするのはかなり難しい。複数の人が議論して意思決定につながる仕組とすべき。
・運用委員が非常勤であるため、運用委員会を開こうとしても委員の日程が合わないと開催できないし、また、運用委員に十分な情報も与えられていない。これでは組織の運営に充分な機能を果たしていくことができない。
・最終的な決定をするのは理事長であるが、意思決定に至るまでの議論は当然ある。最終的な責任が理事長にある点とその議論のプロセスが外には見えないという点が問題。
・最終的な責任が理事長にあることと、自分たちの責任で議論を尽くすことは大きな違い。
・GPIFのように大きなお金を組織で運用する場合、一人で意思決定をし、全部間違えて損失が大きく出てしまったりとか、当たって大もうけすることは必要ない。意思決定を合議にすることで振れやリスクをなくす意味で、合議にした方が良いのではないか。
・運用委員会は外から見えるよりもスムーズ、円滑に行われている。
・運用委員会は制度上、理事長に建議することができることになっているが、基本的には執行部が取り仕切り、その流れの中で、非常に良い議論ができている。
・理事長、執行部、運用委員会で役割分担ができていてスムーズな一方、市場の急激な変化が起きたときなど、新しく変えないといけない場合にリーダーシップを取りにくい。誰もが危機意識を持ちながらも、行動に移しづらい。
・リーマン・ショックなど大きな変化があったとき、運用委員会が何をしていたかと言えば、議論はしていた。しかし、理事長の判断が正しかったかどうか、それを監視する役割がない。
・運用委員会のメンバーは、日時的・時間的な制約等があって、力を発揮できていない。運用委員が遺憾なく力を発揮できれば、今議論しているような課題は起きなかったかもしれないので、運用委員会の改善点ということに絞れば、そのあたりを起点に検討するのか良いと思う。
・巨大金融機関であるGPIFが、今後、情報公開をし、説明責任を問われるようになったときに「運用委員が非常勤で集まれなかったので決断できなかった」は通用しない。
・日銀の政策委員会は常勤で、議事録を公開している。議事録を公開することで、各委員がどのような見識を持ち、どのようなプロセスで決めていったのか、そういうことも含めて公開して、批判を仰いでいる。
・GPIFはOECDの基準に合致していない。このような組織に120兆円を預けていいのか、また、積立金で年金を運用していいのかという全く次元の違う議論にもなってしまう。
・理事長をどうやって任命するのかということと、世界最大の積立金運用組織にふさわしい常勤の組織体制をどう作るかということが、改革の根幹になる。
・運用委員会の議論については議事要旨と議事録を公開するようになっている。しかるべき議論がきちんと行われているかというのが大切。
・民間企業はうまくいかなければ会社が潰れてしまうので、もっと責任を問われている。
・権限を持っている人には責任が伴い、その権限への外部からの牽制機能、チェック機能が働くということでないと、誰が権限を持ってもうまくいかないのではないか。
・運用委員会は毎月1回は開催するし、執行部から出されたテーマ以外もフリーディスカッションをかなりしている。リーマン・ショックのときも、リバランスすべきか否かという議論は相当した。
・運用委員の属人的な問題ではなく、今の組織体制の中では運用委員は力を発揮できない。
・一企業の中で積立金について議論するのと違い、中央銀行以上の大きさがあるのに、与えられている責任に対して体制があまりにも整っていない。運用委員は本来であれば、高い給料を出して、オフィスを用意し、アシスタントも付け、車も付けるくらいでないといけない。
・またきちんとやっているかどうかの評価は究極的には国民がするものであるが、そもそも組織や情報公開の在り方が、フィードバックを受ける形になっていないことが問題。
・運用委員会で議論し、理事長が決定するという流れでは、理事長の胸の内が議事録などではっきり残らない。理事会で議論するのであれば、意思決定の形がはっきり残るので、合議の形にすることが是非とも必要。
・「理事長の専管に運用委員は関与する」という形態はふさわしくない。
・運用委員会は、実質的には執行部隊依存、主導である。議論すべきところはしているし、足りないところは運用委員が意見を述べるが、運用委員が実力を十分に発揮しているか、理事長がリーダーシップを十分に発揮しているかというと、制度的な要因からそうではないという印象がある。
・複数人による組織体だけでなく、執行の長がどのような権限と責任とを持つか。理事長には強いリーダーシップが必要。平時では合議で決めてもいいが、金融市場には4~5年に1度嵐が来るし、20年に1度大変動が起きる。その中で全責任を負える人でなければならない。
・運用委員会を作るのであれば、運用委員を常勤にし、適切な人をCEO又はCIOとして委員会のトップに置くことが重要。
・一般論として、組織全体の公正な運営をどうするか、その組織が持つ経営要素を使って最大の利益を出すようCEOが動けているかどうかを見るのがガバナンス。運用の在り方のガバナンスと同時に、GPIFの組織全体をより効率的に、より公正な運営をしているかどうかのガバナンス機能も重要。
・日銀政策委員会は常勤で責任も重い。一方、運用委員会は非常勤で時間的な制限もあり、どれくらいの責任と権限があるのかが不明確で、どこまで踏み込んでいいのかが分からなかった部分もある。責任が大きいならそれなりの情報と十分な時間的余裕が必要。
・ただ、合議体にすることで良くなるか悪くなるかは意見が分かれるだろう。政策委員会についても意見が分かれている。最後はリーダーの意思決定やクオリティに依存する部分が大きい。
・諸外国の例では運用組織を財務大臣や中央銀行が所管しているので、GPIFについても財務省や日銀に見させればいいという意見も出てくるかもしれない。ただ歴史的に見ると、80年代、90年代まで、旧大蔵省は護送船団の金融業界の秩序を守るのが最大の眼目であり、プルーデントマンルール、国民に対する受託者責任という考えはなかった。これを突破するために、厚労省や連合、経団連などに働きかけ、大蔵省に対する折衝を行ったという経緯がある。
・さらに、旧大蔵省は財務省と金融庁に分かれたが、この20年の財務省の最大の眼目は国債の消化。この状況で主務大臣を財務大臣にすべきとは今の段階では議論できない。
・全体として年金を守ってきた厚労省の功績は大きいが、今後は、理事長の任命責任が極めて重くなるので、その理事長を選べるだけの識見を持った人材の育成、組織の継続性を厚労省自身が持つ必要がある。
・フルタイムとパートタイムを使い分ければよい。民間企業の場合、社外取締役は外部の意見を取り入れる役目を担う。それと同じで、必ずしも運用専門家でなく、外部のステークホルダーの声を反映させるような人がパートタイムで入ることの意義はある。
・プルーデントマン・ルールについては、日本でももっと議論が必要。表に出るものではないが、どういう思想で年金を運用しているのかとか、受託者責任についての議論を始めてほしい。この分野についても、法律の手当てを含めて、世界の中で遅れ始めている。
・昔の経緯として、GPIFは特殊法人改革の流れの中で独法化してしまったのであって、独法の器がよかったから移行したわけではない。最初は日銀方式を模索していたが、そこまで予算的な措置ができないということで、新しくできる独法制度を使うことになったと聞いている。独法であることの問題は多々あるので、今回、白地に絵を描けるなら、そういうところから議論をしていくべき。
・しかし、運用委員会は常勤でするほどの仕事はないと思う。常勤と非常勤をうまく使い分けることが必要ではないか。

以上


年金局総務課 企画係

TEL: 03-5253-1111(内線3358)

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