ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(安全衛生分科会)> 第43回労働政策審議会安全衛生分科会議事録




2010年10月8日 第43回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部

○日時

平成22年10月8日(金)


○場所

厚生労働省専用12会議室(12階)


○出席者

<委員:五十音順、敬称略>

相澤好治、明石祐二、市川佳子、犬飼米男、今田幸子、小林氏(瀬戸実代理)、高橋孝行、高橋信雄、谷口元、露木保、土橋律、豊田耕二、内藤恵、中原俊隆、中村聡子、名古屋俊士、眞部行雄、三浦武男

<事務局>

平野良雄 (安全衛生部長)
高崎真一 (計画課長)
田中正晴 (安全課長)
鈴木幸雄 (労働衛生課長)
半田有通 (化学物質対策課長)

○議題

・職場における化学物質管理のあり方について
・その他

○議事

○分科会長 定刻になりましたので、ただいまから、第43回「労働政策審議会
安全衛生分科会」を開催いたします。本日は、古市委員、芳野委員、伊藤委員、
瀬戸委員が欠席されています。瀬戸委員の代理として全国中小企業団体中央会労
働政策部長の小林様が出席されています。
 それでは、議事を進めます。本日の議題は「職場における化学物質管理の今後
のあり方等について」となっております。今回、事務局のほか、豊田委員からも
資料を提出いただいております。事務局、豊田委員と順に説明していただいた後、
議論に入りたいと思います。それでは、事務局の方からご説明をお願いします。

○化学物質対策課長 それではまず資料の確認させていただきます。

○調査官 それでは資料の確認をお願いします。本日の「議事次第」です。その
下に「資料一覧」があります。資料1として「職場における化学物質管理の今後
のあり方等について(論点整理)」です。ダブルクリップにとめた2枚です。その
後に資料2は「職業における化学物質管理の今後のあり方等について(別添)」で
図表等でまとめたものです。委員提出資料といたしまして、豊田委員から提出さ
れた「職業における化学物質管理の今後のあり方について」というパワーポイン
トを図にしたものがあります。これとは別に、こちらは先生方のみ配付させてい
ただきましたが、今年7月に出されました「職場における化学物質管理の今後の
あり方に関する検討会」の報告書を一部添付させていただいております。
 また、その他に化学物質の危険有害性の文書提供の際に用いられますMSDS製
品安全データシートですが、その例としまして、トルエンのMSDSを一部添付さ
せていただいています。現行の化学物質等の表示、文書交付制度のあらましにつ
いてのパンフレットを一部添付させていただいております。以上です。

○分科会長 よろしいでしょうか。

○化学物質対策課長 資料1、2に基づきまして、基本的に資料1に基づきまして、
簡単にご説明いたします。私ども、これまでの分科会で整理していただきました
ように化学物質の管理に関しましては、大きく2項目。検討項目の1といたしま
して、基本的方向の中で危険有害性情報をどのように伝達していくかにかかわる
話です。
 次に資料1の3頁で、検討項目に「リスクに基づく自主的な化学物質管理を促
進するためにどういうふうに考えていくべきか」とこの2点に整理しております。
これに先立ちまして、以前の分科会でもご報告申し上げましたように、今年1月
から7月にかけまして、名古屋委員、市川委員、豊田委員にもご参画いただきま
して、別途「あり方検討会」というのを開催していただきました。そこで議論し
ていただいたこと等を踏まえて、この資料を作成しております。大きな目的は簡
単に一言で申し上げますと、リスクに基づいた合理的な化学物質管理を進めるに
はどうしたらいいだろうかというのが、大きなテーマです。そういった中でこの
2つのテーマに、更に整理していただいたところです。
 検討項目1「基本的方向」危険有害性情報伝達のあり方について、資料1の1
頁で説明いたします。それぞれ検討項目ごとに、まず現状を説明いたしまして、
その後に今後のあり方について検討会報告に基づいてまとめたとこういう体裁に
なっていますのでご承知おきください。
 それでは1頁の1「現状」です。まず、化学物質による労働災害の発生状況で
す。これについては大体年間600件から700件程度発生しているということです。
(2)で、労働者の皆さんが取り扱われる容器等にラベル表示がなくて、その結果不
安全な取扱いを誘発したのではないだろうかと思われる災害。これも年間30件程
度起こっている状況です。
 (3)、既存の化学物質というのは大体60,000物質ほどと言われています。新規
化学物質については、有害性調査をやっていただいて、届けていただくという制
度が動いています。昭和54年から動いていますが、当時40,000件ほど既存化学
物質がありました。この新規届出が年々積み重なりまして、この制度が動き始め
だした頃は、大体年間4、500件程度だったわけですが、(3)にございますように
現在はその2、3倍のレベルに達しております。年間1,300件程度届出をいただい
ております。こういったことで、現在60,000物質ほどに増えてきているとこうい
う現状です。この60,000という膨大な数の化学物質、これはすべてが危ないとい
うわけではございませんが、こういった現状の中で、どう合理的な管理を進めて
いくかという課題があるのだと認識しています。
 こういった中で、国際的にはどういうふうな動向にあるかということが(4)です。
化学物質の危険有害性情報の伝達に関しましては、平成15年に国連からGHS勧
告というものが出されております。平たく申し上げますと、すべての危険有害な
化学物質についての情報をラベル表示等で伝達する仕組みを作っていこう、それ
も世界共通の仕組みとして作っていこうというものでございます。条約といった
ような厳しい拘束力のあるものではございませんが、世界各国はこれに基づいて
情報制度・伝達制度を整備していこうというのが、今の流れとなっているところ
です。そういった中で(4)にもご紹介していますが、EUにおきましては「化学品
の分類、表示、包装に関する規則」、私どもCLP規則と呼んでいますが、こうい
ったものが出されています。今年12月から施行されることになっています。この
中でもGHSに従いまして分類を行った結果、危険有害とされるすべての化学物質
をこういう表示対象としてやっていきましょうということになっています。
 こういった中で、私どもの現行制度はどうなっているかということです。(5)で
は、ラベル表示義務の対象物質とMSDS交付義務対象物質というのがございます
が、ラベルに関しましては100物質、MSDSは640物質ということになっていま
す。資料2の2頁の、下のほうにあります4という資料をご欄ください。現行と
いうところでは、ただいま申し上げましたように譲渡・提供時の表示義務、これ
は100物質を指定して義務付けています。事業場内の表示義務というのは、法令
上では定まっておりません。譲渡・提供時のMSDSその化学物質の危険有害性情
報を網羅したものですが、先生方の机上には参考までに入れていますが、A4で
10頁ほどのかなり分量の多いものですが、こういったMSDSというものを交付し
てくださいという義務化をして、それが640物質あります。この他に点線で囲ん
でいますのは、その他危険有害な化学物質について、このラベル表示、MSDS、
あるいは事業場内表示、こういったことをやってくださいと指導ベースでいま私
どもがやっています。これが現状です。
 こういう現状に対しまして、今後どう進めていくかが資料1の2頁です。先ほ
ど申し上げました「あり方検討会」でご検討いただいたところを踏まえて整理さ
せていただいたものです。(1)では、職場において使用されるすべての化学物質に
ついて、GHSに従いまして、それぞれ化学物質の危険有害性を分類していただい
た結果、何らかの危険有害性が認められたすべての化学物質について、このGHS
国連勧告が示すようなラベル表示、MSDSなどを実施して行くようにしてはどう
かというのが(1)です。
 (2)では、その中でも事業者から事業者へと、B to Bの情報を伝達するとともに、
事業場内部でその情報を受け取られた事業者におかれては自分の事業場において、
それを実際に取り扱われる労働者の皆さんに、その情報を提供するような仕組み
を導入していただきたいということで、実際作業をする労働者の皆さんが取り扱
われる区分けした容器にもどういった物が入っているかがわかるようなラベル表
示を導入してはどうかということを提言をいただいております。
 ラベル表示の考え方は、資料2の3頁目、5「事業場内の表示の考え方」という
ところに、ちょっと紹介しています。実際にはラベルを貼るといっても容器もい
ろいろ大きさがありますのですべてを貼るというふうにはいきませんので、ある
程度代替措置ですとか、簡便な方法を導入しなくてはいけないであろうというこ
とが言われています。
 資料1の2頁に戻りまして(3)です。この事業場内表示等GHSの仕組みとこう
いったものを進めていくためには、(1)、(2)ここでは制度的なものを提言いただい
ているわけですが、そういった制度が実際にきちんと機能して効果を上げるため
には、こういった情報伝達の考え方を各方面にきちんと周知していくことが必要
であろうと。実際にそれを責任もってやっていただく事業者の皆さんへの支援、
あるいは、それを取り扱う方々への支援ということで、このGHSのものの考え方
の周知、あるいは実際にそういう作業をやっていただく皆さんを支援をするため
にデータべースの拡充ですとか、相談窓口の拡充、こういったことが必要になる
のではないかというのが(3)の趣旨です。
 GHSのことに関しまして現在経済産業省のほうでアンケート調査を8月30日
から9月10日にかけまして、日本化学工業協会、化成品工業会、日本化学品輸出
入協会のご協力いただきまして、アンケート調査を実施しておられます。今回の
調査結果がまとまりましたらここでもご報告、ご紹介したいと考えていましたが、
まだまとまってないとのことですので、この状況については、またどこかで報告、
紹介させていただきたいと思っております。以上が検討項目1です。
 次いで資料1の3頁です。「リスクに基づく自主的化学物質管理の促進」という
ことで準備をしてまいりました。3頁の1「現状」です。リスク云々ということで、
リスクアセスメントから始まるわけです。リスクアセスメントの実施状況はどう
なっているかというのが(1)、(2)です。(1)に書いていますが、平成18年に行われ
ました労働環境調査報告では、リスクアセスメントを実施しているという回答は
半数以下にとどまっている。これも当然のことでしょうが、事業場の規模が小さ
いところほどやはり難しいという状況があります。これは資料2の4頁の上半分
の6のところに紹介していますので、ご参照ください。
 そういうことでなかなか実施が難しいとのことですが、それはなぜだろうと伺
った結果が(2)です。約1/4の事業場におきまして、「実施するに当たって十分な知
識を有する人材がいない又は不足している」こういう回答をいただいています。
これは資料2の4頁目の7のところに、ただいま紹介しました6の下の7のとこ
ろに示されています。
 こういうことでリスクアセスメントまだ十分定着しているとはまだ言い難い状
況であるとのことです。そういった中で例えばヨーロッパではどういうふうにや
っているかということが(3)ですが、このリスクアセスメント、本来かっちりやっ
ていただくことになりますと、測定なりをやり、それの結果に基づいて評価をし
て、といくわけですが、これをやるのにはやはり専門的な人間が必要ですし、手
間も経費もかかる、時間もかかるということです。そういったことも1つにはリ
スクアセスメントがやりづらい理由になっている可能性もあるわけですが、EU
におきましては、この化学物質を取扱う作業ごとにMSDSに記載されているいろ
んな情報を踏まえまして、実際ばく露濃度の測定を行うことなしにリスクアセス
メントを実施する、いわば簡便法というものが開発され事業場に導入されていま
す。これは資料2の5頁にも書いていますが、化学物質の性状、それから取扱量
もグラム単位、キログラム単位、トン単位か、そういうふうに大きく区分けしま
して、そういったところでこういう取扱であればやはり局排が必要です、局所排
気装置が必要ですね、あるいはマスクをきちんと付けてもらうぐらいでいいでし
ょう、こういった簡単な判断をしてくれると。こういうツールを開発していると
のことです。
 こういう中で私どもはどういう制度になっているかというのが次の(4)、(5)です。
まず(4)です。ただいまも申し上げましたように、リスクアセスメントのもっとも
有効確実な方法というのは、このばく露測定になるわけです。私どものいまの実
施している測定は作業環境測定というものでして、作業場の中の複数の点を測る
A測定、もっとも有害物の濃度が高くなる場所、高くなる時間において測るB測
定というもので成り立っています。いわば「場の測定」をやっていただいていま
す。この手法に限定されていますが、その測定結果に基づいて改善の必要性を検
討し、実際に改善方策を作って、実施していただくわけですが、そういったこと
については、現在の法体系では、衛生委員会への付議事項とされていますが、労
働者の皆さんに直接伝える仕組みにはなってはいません。こういうことです。
 リスクアセスメントが終りますと実際に必要な措置を講じていたわけですが、
現在のところ私どもの体系の中では、局所排気装置、密閉設備あるいはプッシュ
プル換気装置といったものに限定されているといってもよろしいかと思います。
しかもこういった装置に関しまして構造要件、性能要件といったものが、わりと
かっちりと定められています。そういうことで、リスクアセスメントを行っても
結局やることはこれになってしまう。1つのやり方になってしまうという部分が
あると。そういうことで専門家の皆さんの創意工夫による自主的な管理を行うと
いう機会が十分に与えられてなかったのではないだろうかという指摘があります。
 続きまして(6)です。(6)はただいま議論いただいたことと毛色が違いますが。こ
れも「あり方検討会」で議論いただいたものです。「あり方検討会」では基本的に
今後の化学物質管理のあり方をどうするかという大きなテーマで議論いただきま
した。それに比べますと、ここは非常に現実的、個別的ですが、といいながらも
そこに(6)に書いてありますように、CO中毒これは古典的な災害で、相変わらず
年間40件程度起こっています。その他にも屋外での作業における中毒災害、こう
いったことも起こっています。屋外作業に関しましては基本的に通気がいいとの
ことで、私どものところでは一部の例外を除きまして、特段の規制をもうけてい
ないわけですが、そういった中でも最近の建設現場では、足場に建設シートを掛
けたりということもございまして、通気があまりよくなくて中毒災害が起こった
例もあります。ということで、こういうことも個別に検討する必要があるのでは
ないだろうかという指摘でした。
 こういったことを踏まえまして今後どう取り組んでいくかということを提言を
まとめたものが次の4頁です。最初の(1)では、これは前頁の(1)から(3)の対象に
なりますが、従来のリスクアセスメントは、測定等を中心としたものですが、そ
れが非常に困難な事業場において、ではどうするかということですが、このリス
クアセスメントの簡便法、そういったものを我が国の実情にあうように開発して
導入してはどうかと。これは先ほどヨーロッパ諸国でそういう簡便法があります
よということを紹介を申し上げましたが、そういったものを我が国でも、実情に
応じたような形で開発指導してはどうかという趣旨です。
 次に(2)です。これは前頁の(4)に対応するものですが、作業環境測定の評価結果
こういったものを直接的に労働者に通知するような仕組みにしてはどうだろうか
ということを提言いただいています。
 次に(3)です。これは先ほども申し上げました(6)の少し個別具体的な事例に対応
するものですが、内燃機関ガス機器等によるCO中毒の防止について、これも「あ
り方検討会」で紹介いただきましたが、鉄鋼業などではこのCOセンサーの着用
を促進することにより、災害を大きく減らしてきている。こういった例もありま
すので、このCOセンサーの着用などは促進していったらどうだろうかというこ
とです。先ほど申し上げましたような屋外作業についても、一部の有害作業につ
いては、換気・送気あるいは呼吸用保護具の着用などの対策が有効と思われます
ので、そういった対策の推進を図ってはどうだろうかということです。このCO
中毒に関しましては、私どもだけではありませんので、経済産業省のほうでも、
このCO対策に取り組んでいますので、共同しながら進めてきていますし、これ
からも進めて行うと考えています。
 以上(1)から(3)は今後の具体的な方向性、こういう方向でやってはどうだろうか
ということで、検討いただいていますが、この他に直ちにこういう方向でという
のではないけれど、ある程度の検討の方向を示していただきまして、引き続き検
討が必要とされた事項がございます。こういったものを(4)にまとめています。(4)
のア~ウに整理しています。(4)のアでは、これに関しましては先ほども申し上げ
ましたように、いわゆる作業環境測定ということを現状でお願いしています。こ
の作業環境測定で、的確な評価が困難と思われる作業も実はちょっと出てきてい
ます。そういった作業を対象に、個人サンプラーによる測定を導入することを検
討してはどうだろうかという提言です。測定に関しまして、欧米諸国では個人サ
ンプラーを中心とした測定で進んできたわけですが、わが国は、作業環境測定い
わゆる「場の測定」ということでやってまいりました。これは個人サンプラー方
式に比べますと比較的簡便にできる。そういったことで今わが国では作業環境測
定が非常に定着したのには、この「場の測定方式」というものの開発が大きく貢
献していると考えていまして、非常に有用な測定方法であったと考えています。
ただやはり、何事にも得手不得手がありまして、最近この「場の測定方式」では、
やや難しいかなという事例も見られるというわけで、その導入についても、一部
について導入を検討してはどうだろうかということです。
 イでは、先ほども申し上げましたように、局所排気装置に関しまして、構造要
件、性能要件というものが、細かく定められています。そういったことで、やや
もすれば現場の方々の創意工夫の余地がないということも指摘されているところ
です。この構造要件、性能要件などについても、「あり方検討会」で何点か議論い
ただきました。議論いただきましたが、いくつかのものについては、検討会報告
として、なお、これはいろんなデータをあつめて慎重に検討を進めていく必要が
あるだろうというようなことで、先送りされたものもありますが、1点この屋内
還流ということについてのみ引き続き検討したらどうかという提言をいただいて
います。
 どういうことかと申し上げますと、現在の局所排気装置等で換気する場合です
が、気中の有害物を吸い取って、それを屋外に排出します。もちろんその前に除
じん又は除毒を行った上できれいな空気にして出すわけですが、そうして出され
る排気は基本的に屋外にそのまま出さなくてはならないという規定になっていま
す。それは、それでいいですが、いくつか問題も出てきています。例えば暑いと
きの作業、寒いときの作業なんかでは、やはり例えば寒い環境の中では粉じん作
業をやっているようなときに、やはり局排が吐き出すということは当然、吐き出
した分だけ外気を導入することになりますので、空調が悪くなる、暖房が悪くな
る、冷房が悪くなることがあります。そういったことで、あってはならないこと
ですが、現実に起こる話としては作業員の皆さんが局排を止めたり、ファンの速
度を落として作業をやってしまう。そういうことで、結局有害物にばく露してし
まうというようなことが起こっています。そういうやってはいけないことをやっ
ているということも問題ではありますけれど、きちんときれいになった空気であ
れば、それを還流するということも考えてもいいだろうということを提言いただ
いています。ただそれにあたっては慎重にいろんな条件を検討していく必要があ
るだろうということで、例えばということで「あり方検討会」で示していただい
たのは、1つにはセンサーで連続モニタリングをしていく。連続モニタリングを
やって、万が一にも除じん・除毒装置がうまく機能しないで、気中に有害物が出
てきているとわかりましたら、ただちに屋内還流を止めるとそういったことが必
要ではないか。そもそもの話としまして、例えば発がん性物質はいかに除じん・
除毒をやっていると言っても、そういったものが含まれている空気を吸うという
のは作業員の感情といたしましても、よくないと思いますので、そういったもの
は例外にすべきではないだろうかというようなことを提言いただいています。こ
ういった例を示していますが、こういったことについて引き続き検討していただ
いてはどうだろうかというのが「あり方検討会」での提言でした。
 ウでは、先ほどからも申し上げていますように、化学物質の管理ということに
なりますと、基本的に局所排気装置、密閉設備、プッシュプル換気装置というこ
とになっていますが、これをもう少し柔軟化してはどうだろうかという提言がウ
です。
 これを進めるにあたりまして、局排以外の発散抑制法についてどうやっていく
のかは、基本的に私ども提言いただいていますのは、各事業者の皆さんから個別
にこういったやり方で、やりたいということを申請していただきまして、それを
専門家の皆さんにきちんと審査していただいて、これなら大丈夫というところに
対して、個別に例外的に発散抑制装置を認めるというようなことにしてはどうだ
ろうかというのが「あり方検討会」の提言で、これについてはその仕組みだとか
をもっと詳細なところを別途検討していく必要があるのではないかという提言を
いただいています。以上のことで検討項目2つについて現状、今後のあり方につ
いての提言、「あり方検討会」を踏まえました今後の方向性について、ご説明申し
上げました。

○分科会長 どうもありがとうございました。続いて豊田委員からお願いします。

○豊田委員 それではお手元の資料に基づいてご説明したいと思います。
 説明の順番は目次に書いておりますとおり、まず1.「背景・目的における留意
点」としまして安全の確保及び国際的動向への対応について意見を述べたいと思
います。なお、ここで言う「留意点」というのは下の注に書いてありますが、化
学業界としての意見の要点と捉えていただければ結構です。次に2.「現状と課題
における留意点」としまして、先ほどご紹介がありましたが、今回の論点の2点
です。「危険有害性情報の伝達及び活用」と、「リスクに基づく化学物質管理」、特
に自主的化学物質管理といったものについて意見を述べたいと思います。次に3.
ですが、この検討会報告書でまとめました「今後のあり方」の内容に対する留意
点を述べまして、最後に、「今後の安衛法改正検討に対する意見」という順番で説
明を行いたいと思います。
 まずは、資料の1頁目の下のスライドに、「背景・目的における留意点」、その
1として「職場における安全の確保」と書いております。本件については下に網
掛けで検討会報告資料を抜粋しておりますが、この■の3番目に「職場における
化学物質管理は化学産業のみにとどまらず、全産業の課題」と記されております
が、安全の確保を考えますと、特にその中でも留意すべき対象範囲は何なのか、
項目は何かということは非常に重要と考えます。それについて次に説明したいと
思います。
 次のページに、検討会において事務局から提出された「化学物質等による健康
障害の発生調査結果」資料があります。この表の左側には、下の注に書いてあり
ますが、平成14年から平成20年の所轄の労働基準監督署による災害調査が行わ
れた障害件数が書かれています。平均しますと年間約150件ぐらい調査をしてい
ますが、重要なのは、この表の右側に、この内約30件ぐらいが事業場内表示によ
り防止できると考えられる件数として整理されています。ただ、これは検討会で
議論を進めていく中で、上のタイトルにも書いてありますが、単に容器等へのラ
ベル表示だけではなく、危険有害性情報の知識、活用等が非常に不十分と思われ
る、そういったものが約30件あると結論付けられて報告書にまとめられています。
この30件の内容についてもう少し詳しく整理して説明してくださいということ
で、事務局から出ましたのが下にあります表です。これは先ほどの年間約30件の
代表事例として整理していただいた資料です。発生日、原因化学物質、業種、災
害発生状況という形でまとめられていますが、見ていただくと分かるように、原
因化学物質は塩素ガス等が多いようです。業種は病院とか造船業、小学校、食品
関係、温泉業、解体工事とか、いわゆる化学を本業とするところよりも、むしろ
サプライチェーンでいう下流の中小規模のところが非常に多いことが伺えると思
います。災害発生状況については詳しくはご説明しませんが、ご覧になれば分か
るように、非常に化学の初歩的な知識に乏しい、そういった原因によるものが多
く見られます。以上のことより、下に留意点としてまとめていますが、原因は、
容器等への表示だけでなく、やはり危険有害性情報の知識や活用等に関する教育
不足もあると思います。つきましては、安全の確保のためには、こういった下流
の中小規模から普及、教育の仕組み等を見直す必要があり、これを今回の対策に
反映させる必要があると考えます。
 次に、「背景・目的における留意点」におけるその2ですが、「化学物質管理に
おける国際的動向への対応」ということです。これについては主に2点ポイント
がありまして、1点目は2002年のWSSD(世界サミット)における合意目標への対
応があります。この合意内容については皆様ご存じの方が多いと思いますが、書
いてありますものを読み上げますと、「化学物質が人の健康と環境にもたらす著し
い悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成する」
という合意目標が世界サミットでなされています。ここでさらに注目しなければ
いけないのは、その冠に、「リスク評価・管理手順を用いて、」と謳われていまし
て、合意目標への対応のポイントとしまして、今後、「従来の化学物質固有の危険
性のみに着目したハザードベース管理から、人や環境への排出量(ばく露量)を
考慮したリスクベース管理への対応を行っていく必要がある」ということが重要
なポイントです。その後、戦略的アプローチ(SAICM)という(本合意目標実現の
ための)ロードマップも採択されました。以上に対する具体的な各国の対応が、
欧州ではREACH、日本では改正化審法等にリスクベース管理を導入したという
経緯になっています。
 2点目は、先ほど半田課長からもご紹介ありましたが、GHSです。これは以上
のような流れの中で2003年に国連の肝入りで国際的枠組みが出来上がりまして、
各国、これに対応する必要があります。これに対しまして、欧州はCLP規則、こ
れは2010年から施行されていますが、日本は2006年、平成18年に安衛法へ導
入したという経緯があります。以上本スライドでの留意点としては、1つはリス
クベース管理にいかに対応していくか、もう1つはGHSをいかに導入していくか
ということです。下に書いてありますが、これらについて「戦略的」に対応して
いく必要があるのではないかと考えています。この「戦略的」意味を次に述べた
いと思います。
 1点目の「リスクベース管理への対応」は、下のスライドに書いてありますと
おり。従来のハザード(危険有害性)にばく露量を掛けてリスク評価をやってい
く、こういったリスクベース管理へのシフトというものは、上のタイトルにも書
いてありますが、時代の潮流です。こういった意味で、職場における化学物質管
理においてもハザードベース管理からリスクベース管理へ移行させる必要がある
という状況になっています。
 では、リスクベース管理へ移行するときにどういったことに気を付けなければ
いけないかということが、4頁目の上のスライドに書いてあります。従前はハザ
ードベースの規制でしたが、リスクベース管理上の戦略的対応と致しまして、今
後「リスクに基づく規制と自主的管理の適切な組合せを、以下の役割分担で推進
していくべき」と考えます。具体的にいいますと、国は「重篤な健康障害の恐れ
のある物質についてリスク評価を行って、結果に基づいて適切な規制を行う」。こ
れは平成18年から始まりましたリスク評価制度でいま実施されております。一方、
事業者は、先ほど(事務局から)も若干ご紹介ありましたが、「簡便なリスクアセ
スメントを実施し、その結果に基づいて適切な自主的管理を行っていくべき」、こ
れはまだ不十分な状況ですが、これを促進していくべきと思います。
 さらに、こういったことを円滑に推進していくには、今日の論点整理にありま
す2点が重要で不可欠ではないかと考えています。1点目は、「危険有害性情報の
伝達及び活用」。当初検討会の中では「伝達」だけだったのですが、先ほどの災害
の解析などを踏まえますと「及び活用」とすべきということで、「活用」も織り込
まれております。2点目が、「リスクに基づく事業者の自主的化学物質管理」の促
進であります。この2点が今回の論点整理における検討項目になっています。
 次に、「GHS導入上の戦略的対応」について若干説明したいと思います。まず、
1番目の○にGHSの定義を書いています。これはGHSの国連勧告に基づき、化
学物質の危険有害性の分類基準を国際的に統一し、その分類に応じたラベル表示
と安全データシート(MSDS等)による危険有害性情報の伝達を目指す、そうい
う制度です。目的は次の○に書いてあるとおりで、重要な点は、GHSの基本的な
考え方としてさらに下に書いてあります。この中の3番目が特に重要で、「自主が
基本であり、各国の状況に応じて柔軟に導入することも可能」という形になって
おり、フレキシビリティを非常に重視した考え方になっています。ただし、これ
は逆に解しますと、注に書いてありますが、GHSの国連勧告書には非常に曖昧な
点が多く、この勧告書及び関連のガイドラインを読んだだけでは、実際にGHS
分類はできません。そういった意味で、日本ではそれを補完すべく官民連携でこ
の2、3年間、例えばGHS分類のJIS化とか、行政当局が使えるGHS分類マニ
ュアルとか、事業者向けGHS分類マニュアルとか、そういったGHS分類におけ
るインフラ基盤整備に注力してまいりました。日化協もこれに対して支援、協力
させていただきました。
 そういった背景の下、GHS導入の戦略的対応上の「留意点」を下に書いてあり
ます。1つは、効果的、効率的に、しかもGHSの内容、制度上の仕組みを分かり
易く導入することがポイントになります。もう1つ、制度上については、包括性
を考える必要があると思います。具体的に言いますと、GHSの制度化に当たって
は、包括的に、上位概念的に導入するのが望ましい、例えば、GHSの基本法など
のように上位概念で導入しまして、後は各法律が下にブランチする、そういう形
が望ましいといわれています。言い換えますと、規制でガチガチに縛ると、元々
GHSの意図している柔軟性が損なわれる恐れもあるということでもあり、GHS
の大家である城内先生からも、検討会の中でご発言があったと記憶しています。
さらに考えておかなければいけないのは、国際的な統一を図るという意味では、
国際的制度調和とか整合性といったことも導入に当たっては勘案すべきというこ
とです。それから、制度もさることながらGHSの普及、周知の仕組みの確立も重
要なポイントになります。
 以上のことを踏まえまして、次の「2.現状と課題における留意点」に移りたい
と思います。ここの論点は、先ほど紹介しました2点です。その1として「危険
有害性情報の伝達及び活用」があります。これについては、現状どうなっている
かといいますと、先ほど半田課長からもご紹介ありましたが、現在、GHSのラベ
ル表示は、製品の譲渡提供だけにラベルを100物質、平成18年(2006年)に安
衛法で導入しています。化学物質の安全データシート(MSDS)については、平
成12年に交付制度が開始されまして、対象物質については逐時追加しまして、現
状640に至っています。これはすべて混合物も含みということです。こういった
中で「留意点」として下に整理しています。まず、1は、MSDS制度の普及は、
相当進展しましたが、先ほど申しました例えば事故の多い下流の中小規模では今
一歩である(未だMSDSを知らないケースもある)ということです。私共は、支
援・協力の一環として、地方における化学物質管理に関する講習会に講演者とし
て頻繁に出向いて行きますが、そこで、事業者の中にMSDSを知らない方々がま
だいるという現状に遭遇いたします。導入してまだ新しいGHSの普及、教育につ
いてはさらに状況は悪く、これも昨年、経団連の場でアンケート調査をやらせて
いただきましたが、大手企業の中でもGHSの普及、教育の点については不十分と
いう状況です。3については、7月30日の安衛分科会でも申し述べましたが、
MSDS制度に関する縦割り行政の弊害があります。資料に書いてありますように、
MSDS制度についてはPRTR法、毒劇法、安衛法の3つにまたがっています。そ
のために、「五月雨式にMSDS制度の法改正」がありまして、その対応に産業界
も引っ張り廻され、その負荷は大変な状況になっています。具体例でいいますと、
2008年に化管法で規制対象物質の追加が約100件ありましたが、この100件程
度の追加でも混合物を考慮するとその対応負荷は大変なことになります。例えば、
ある塗料業界の会社ですと30万銘柄を製造していますが、この約100件の対象
物質の追加でもって、その1/3の10万銘柄のMSDSを書き換えなければならな
いという作業が生じました。このように、産業界への影響は非常に甚大だという
状況です。
 4については、平成18年にGHSが安衛法に導入されたわけですが、これは安
衛法のみに導入したものですから、包括性という観点から見ますと、海外から見
て非常に分かり難いという評価をいただいています。日化協は、(日本を代表する
化学業界団体として、世界の主要な化学工業団体で構成されている)国際化学工
業協会協議会(ICCA)に参画し、それを通じて各国と交流させていただいていま
すが、各国からは、日本の安衛法へのGHS導入は非常に分かり難いといわれてい
ます。
 こういったことを踏まえまして、1と2への対応としては、今回の安衛法の改
正に当たっては、法制度の枠外ですが、下流の中小規模までを対象として、GHS
及びMSDS制度の普及、教育及びインフラ整備等の仕組み確立は不可欠と考えま
す。3、4に対しましては、GHSとMSDS制度は一対であり、今後のこれらの包
括的、一体運営を目指し、関係省庁間で連携し検討をさらに継続していただきた
いと考えています。1、2は安全の確保のための方策ですが、3、4については
国際的合意に対して国際的制度調和、整合性を勘案してきちんと対応するという
観点と、それからもう1つ、安全の確保を追求しつつ、効率的、効果的、しかも
産業の競争力確保の観点からの対応ということで、是非ともお願いしたいと思っ
ております。
 次に、「2.現状と課題における留意点」におけるその2ですが、「リスクに基づ
く自主的化学物質管理」があります。これについては、下に現状が書いてありま
すが、先ほども紹介がありましたが、リスクアセスメントについては未だ普及不
十分、事業規模が小さいほど実施率が低いという状況です。その他、作業環境測
定、局所排気装置についても先ほど事務局から説明がありました問題点がありま
す。局所排気以外の発散抑制措置についても現行法令では自主的対策を推進する
上で制約を受けるという状況です。以上から、この点に関する「留意点」として
は、こういった問題点の解決に取り組んで、リスクに基づく自主的化学物質管理
の一層の促進を行っていく必要があると考えています。
 以上、1.及び2.を踏まえて、検討会報告としてまとめられたものが、今回の「今
後のあり方」の内容です。その中の留意点を次の6頁目の上段スライド「3.検討
会報告書の「今後のあり方」内容に対する留意点」で述べたいと思います。まず、
その1は、「危険有害性情報の伝達及び活用の促進」であります。これについては、
骨子として以下のようにまとめられています。まず1番目には、「すべての危険有
害な化学物質に関する情報伝達及び活用の取組定着化」がまとめられています。
その中身を紹介しますと、まず1に、国はGHS分類の結果、危険有害とされるす
べての化学物質(以下「すべての危険有害な化学物質」という)について、ラベ
ル表示、これは事業場内表示も含みますが、及びMSDS交付による危険有害性情
報を有効に伝達し、活用する取組を確立し定着化することが謳われています。2
点目は、国は、今回は、先ほど紹介した既存の100とか640の対象物質の追加を
行うのではなく、すべての危険有害な化学物質の譲渡提供時の情報伝達の確立を
推進するとしています。さらに、先ほど紹介しましたPRTR法、毒劇法等にまた
がっていますラベル表示、MSDS交付制度の今後のあり方については、今後関係
省庁と継続検討するとしています。
 2.には、事業場内で使用される容器等へのラベル表示については定着を図りま
しょう、ただし、「代替措置を認める等の一定の柔軟性を付与する」ということ、
「国は運用に際して細かなガイドライン等の実施すべき措置を示す」こととされ
ています。
 上記1.と2.は制度のコアになるところですが、3.は制度の枠外として本取組を
定着させるための仕組み構築として、国がラベル表示及びMSDS交付に関連する
普及、教育及びインフラ整備の実施のための仕組みを構築する必要がある。これ
については官民連携が不可欠ということがまとめられています。産業界としまし
ては、1.から3.については、5頁目の上段のスライドで指摘しました課題におけ
る「留意点」がそれなりに反映されていると評価いたします。つきましては、「1.
及び2.」が実行可能なものとして、有効に機能し、安全の確保に資するために「3.」
は不可欠と考えます。言い換えますと、「1.及び2.」と「3.」は車の両輪として、
是非とも並行して取り進めることをお願いしたいと思います。こういった普及、
教育及びインフラ整備推進については、産業界も支援、協力を行いたいと考えて
います。
 6頁目下のスライドにおいては、特に「GHS事業場内表示」について抜粋して
います。2番目の■に書いてありますが、「容器にラベルを貼付することが困難で
ある場合」として種々のポイントが取りまとめられています。要は、「GHSの代
替手段」をいかに有効活用するかということだと思いますが、「留意点」としては
下に書いてあります。各事業場の作業実態に応じて、GHSの代替手段を勘案し、
既存の安全表示システムとGHSによるラベル表示の適切な組合せによって安全
の向上を図ることが肝要と思います。GHSの代替手段を入れたことによって既存
の安全システムが阻害されて、却って安全が低下するということもあろうかと思
います。そういった意味で、GHSの代替手段をうまく活用し、既存の安全表示シ
ステムとGHSラベル表示を融合させて、この辺を適切に組合せて安全の向上を図
るということが1つのポイントになります。
 それから、「国際的制度調和へも配慮」と書いてありますが、GHSの事業場内
表示の制度化につきましては、先ほど紹介にありました、EUのCLPの規則にも
まだ規定はございません。現在GHSの事業場内表示の制度化について計画してい
ますのは、オーストラリアとか韓国がいま検討中という段階です。つきましては、
本制度化については、国際的制度調和の観点からも、各国と十分に意見交換しな
がら慎重に取り進める必要があると考えています。
 以上が、「その1」です。次の頁に、「その2」として「リスクに基づいた合理的
な自主的化学物質管理の促進」における留意点ついて説明したいと思います。ポ
イントとしましては、「簡便なリスクアセスメント」、これを導入するということ
自体はよいのですが、導入の仕方に、以下の配慮が必要と考えます。コントロー
ルバンディングと欧米で称しているこの簡便なリスクアセスメント手法を、先ず
一旦、日本の中で咀嚼した上で、我が国の作業実態、実情に合った独自の簡便な
リスクアセスメント手法を開発していただいた上で、普及・定着を図ることが必
要と思います。例えば、「コントロールバンディング」のような呼び方のままで導
入しますと、また中小の方たちからは、横文字が分からないということになりま
すので、これについては、是非とも充分な咀嚼・整理が必要と思います。それか
ら、個人サンプラー導入については、事業者の最終的な自主的な選択も勘案した
上で検討すべきと考えます。4の「局所排気装置の要件の柔軟化」、これも重要な
点です。5の「局所排気装置等以外の発生抑制方法の導入」、これも事業者により
ます合理的な自主的管理を推進する上では非常に重要だと思っています。今後こ
れにつきましては行政当局の説明会等をいろいろな業界団体で開催していただい
て、活発な意見交換を行う中で推進していったらどうかと考えています。それか
ら、インセンティブの付与等があります。こういった、下線部に留意しまして、
リスクアセスメントの結果に応じた合理的な自主的当該管理を促進していくこと
が肝要と考えています。
 次に「その3」です。以上の「その1」、「その2」を促進するためには人材やい
ろいろなインフラ基盤整備が必要だと思います。中小におきましては1の「人材
を育成する」という余裕はないと思いますので、特に下の2の取り進め(化学物
質管理の外部専門機関の育成、相談窓口の拡充等)をお願いしたいと思います。
 最後のスライドですが、4.に以上のことを踏まえまして、今後の安衛法改正検
討に対する意見としてまとめています。まず1点目は、安全確保及び国際動向へ
の対応等という観点から、「今後のあり方」に示されました大きな枠組みについて
は評価いたします。2点目は、今後の改正検討に当たっては、本枠組みが実行可
能なものとして円滑にかつ効率的に機能し、安全の確保に効果的に資するために、
当方が示しました各留意点、特に◎を付けている箇所ですが、これを是非とも勘
案の上、取り進めをお願いしたいと思います。3点目ですが、化学業界としても
負荷は大変ではありますが、本枠組みが上記目的を目指して実行可能なものとし
て、円滑に効率的に機能するように支援、協力したいと思っております。
 4点目、制度の細かな実務的な内容については、産業界の実態を十分に勘案し
て、負荷対効果も考慮した上で実効のあるものとして戴きたいと思います。そう
いった意味で、安全の確保を追求しつつ、産業の競争力確保にも配慮した制度検
討をお願いしたいと思います。これにつきましては特に昨今、経済情勢が悪化す
る中で雇用不安等もございます。雇用安定化のためにも、産業の競争力確保への
配慮を是非ともお願いしたいと思います。
 5点目ですが、改正の施行時期についてです。まず1点は、GHSラベル表示及
びMSDS交付については改正施行前に、その関連の普及、教育及びインフラ整備
等に関する適切な準備期間の確保を是非ともお願いしたいと思います。もう1点
目ですが、GHSの分類につきましては純物質と混合物も含めてやらなければいけ
ないということで、例えばEUは2010年に純物質を施行しています。そのデータ
が揃ったところで5年後の2015年に混合物ということで、5年の時間差を設けて
います。また、韓国も2010年に純物質、混合物は2013年と3年の時間差を設け
ており、このように各国、時間差を設けています。つきましては、これらを参考
の上、純物質の分類が揃わないと混合物はできないことを勘案していただきまし
て、混合物の分類実施時期については適切な準備期間の確保をお願いしたいと思
います。以上でございます。

○分科会長 どうもありがとうございました。半田課長からご説明いただいて、
豊田委員からご意見をいただきました。
 それでは検討項目ごとに議論していただきたいと思います。資料1の「検討項
目1」と「検討項目2」がありますので、まず基本的な方向として、譲渡提供時に
危険性等を情報伝達すべき化学物質の範囲はどうあるべきかということでしたが、
このような仕組みを確立すべきかどうかについてご意見あるいはご質問がありま
したらお願いします。

○市川委員 2ページ目の「今後のあり方」の(2)にありますように、「小分けした
化学物質を直接取り扱う労働者等に情報を提供することも重要であることから、
事業場内でラベル表示を定着させる必要がある」。これはまさにそのとおりだと思
います。先ほど豊田委員からもいろいろと現場実態に基づいたご提言がありまし
たが、労働組合としましても、やはり、小分けにもラベル表示をするということ
は、単にラベル表示をすることが目的ではなく、それによって労働者の安全が守
られることが目的であり、ラベル表示を議務付けることと合わせて、労働者への
教育や、事業者から労働者への教育も必要となり、パンフレットや、普及啓発活
動なども必要になると思います。ともすれば表示が議務付けられると表示すれば
それでよいということにもなりがちですから、むしろ大事なのは労働者の安全を
守ること。そこが目的であるということが明確になるような取組の方向性を出し
ていただくよう要望したいと思います。

○豊田委員 いま市川委員がおっしゃったこと(単にラベル表示をすることが目
的ではなく、それによって労働者の安全を守ることが目的であり、ラベル表示を
議務付けることと合わせて、労働者への教育や、事業者から労働者への教育も必
要)は、まさにそのとおりだと我々も思っておりまして、例えば、配られました
資料の4ページ目に、このようにGHSのラベル表示の例が書いてあります。ラベ
ル表示のすべての要件を満たすとこれぐらいのA4のスペースがいるのです。こ
れを小分けの小さいものに全部貼ることは、まず1つは物理的に不可能というこ
ともありますし、よく見ていただきますと、ラベル表示には危険有害性情報の他
に、注意書き、緊急処置、そういった要件等も書いてあります。GHSラベルを現
地に貼って注意喚起を促すという意味では、このような要件すべてを毎回読んで
作業するということはとてもあり得ないことです。むしろ、GHSラベル表示のす
べての要件を満たした表示資料などは教育指導に活用すればよいと思っています。
事前にラベルに関するこのような教育を行った上で、現地には例えばこの中の、
注意喚起の絵表示だけを貼付するとか、そういったメリハリの付いた安全表示を
行って、目的である安全確保をする必要があると考えています。

○分科会長 よろしいですか。追加がございましたら、また後でお願いします。
譲渡提供時に危険性等を情報伝達すべき化学物質の範囲については、検討会報告
2の「今後のあり方」で示された方法で進めたいと思います。
 次の項目です。リスクに基づく自主的化学物質管理を促進するためには、何が
必要かということです。これにつきましてご意見、ご質問がありましたらお願い
いたします。

○高橋(信)委員 3ページの(現行制度)の(5)に出てくるのですが、「専門家の
創意工夫による自主的な管理の機会が十分に与えられてこなかったこと」と、別
のところで出てくるのが、「専門人材の育成が必要であるということ」。まさにそ
のとおりだと思います。ただ、いまでも専門家たる人はいると思うのですが、こ
れは質問なのですが、いわゆる安全衛生コンサルタントとか測定士、あるいは産
業医の方もそうかもしれません、それから衛生管理士もそういう有害性防止のた
めの措置を考えますが、そういう既存の専門家のスキルを上げるということをお
考えなのか、それとも全く別な、実務家としての修練をこれから考えていくとい
うことなのか。そういうディスカッションをいままでされたのか、あるいは今後
のお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

○化学物質対策課長 「あり方検討会」での議論では、ただいまからご説明する
ところで大体集約されたかと存じます。何か資格制度を設ける、必要があればそ
ういうことも考えるべきかもしれませんが、資格制度を設けていくことよりも、
実務を担えるような人材を送り出す。既存の資格はいろいろな資格の方々がおら
れますが、そういった方々がそれぞれ能力を発揮していただく、その能力を高め
るとともに、さらに言えば、それ以前に、そういった方々が能力を発揮できるよ
うな枠組みにしてくださいということです。いまですと、先ほど説明の中でも申
し上げましたが、何かで化学物質を使っておられ、作業環境測定をやっていただ
きました、その結果が管理区分2、3であれば当然改善をしなくてはいけないの
ですが、管理区分1であっても何であっても、管理区分1が極めて良好な状況に
あってもなくても、局所排気装置、風速何メートルで回しなさいということをガ
チッと決められているわけです。これでは専門家が創意工夫して、より合理的で
効果的な対策を講じようとしても、そういう能力を発揮する場がない。そういう
ことがない結果、よくお聞きしているのは、コンサルタントの皆さんも、あるい
は衛生管理者の皆さんも、結局、法令読みになってしまって、本当の衛生管理の
技術者たることができないとお聞きしてきました。そういったことが問題ではな
かろうかというのが、「あり方検討会」の主な議論であったと理解しています。

○高橋(信)委員 分かりました。そういうことでありますと、有資格者とか知
識を持った方、そういう方がいないところの層をどうカバーするか、そういうニ
ュアンスの文面は入っておりますが、いわゆる中小ですとか、そういう資源のな
い地域でどういうカバーをするかということに用いてもらえたらいいと思います。

○市川委員 いまのに加えまして、そういう外部専門機関の活用ということも考
えられると思います。化学物質に限らず、どうしても中小あるいは零細の事業場
は安全の問題についてなかなか対応ができない、あるいは専門家がいないという
問題を抱えていますので、やはりトータルに中小零細企業の安全衛生活動をバッ
クアップする公的な仕組みなり何なりを充実して欲しいという声が、特に近頃、
連合の中の地方連合会の皆さん方から、ここ何回かの会議の中で非常に強く出さ
れております。中小の現場を預かっている地方の皆さん方が安全問題に非常に危
機感を感じている。化学物質だけでなく、是非、そういった支援のあり方をトー
タルに考えていただきたいことが1点です。
 個別課題として、4ページの(2)ですが、作業環境測定の問題で「評価結果を直
接に労働者に周知することが望ましい」これは検討会報告の内容です。私も検討
会に参加させていただいておりましたが、望ましいというよりは、周知してもら
うようにきちんとやっていただきたいというのが、私の、分科会委員としての要
望として申し上げておきたい。と言いますのは、ともすれば労働者は日頃の作業
の中でどうしても自分の作業の中に没頭しがちでありますし、働いている環境に
常に気を配っているわけでもなくなってしまう。そういうときに、やはりいま自
分が働いている環境はどうなのかということを数字で常に労働者に知らせること
は、労働者自身の安全意識にも非常に効果的ですし、ちょっと大袈裟に言えば、
ひいては国民全体の安全意識にも広がっていくこともありますので、ここは是非、
「望ましい」というよりは、きちんとやれる仕組みにしていただきたいと思いま
す。以上です。

○化学物質対策課長 ただいま高橋委員、市川委員から、専門人材機関あるいは
支援の仕組みについてご指摘がございました。その前に豊田委員からも、ご発表
の中でこの点をはっきりと言及されていました。そういうことで、私どもが準備
していた4ページ「今後のあり方」では、もちろんそういう議論を承知していま
すが露わに書いてありませんでしたけれども、たたいまご指摘いただきましたこ
とを受け止めて対応を考えていくようにいたしたいと思います。
 それから、ただいま市川委員からご指摘いただきました2.(2)の「作業環境測定
結果の労働者への周知」につきましても、積極的に取り組んでまいりたいと考え
ます。ありがとうございました。

○名古屋委員 是非お願いしたいのは、諸外国は測定したら必ずその人に報告す
るとなっているので、「望ましい」ではなくて「して欲しい」。いまガイドライン
では、測定した作業者に直接お話しましょうになっているので、「望ましい」より
は知らせたほうがいいという形の仕組みを、これは、「あり方委員会」の委員とし
て是非お願いしたいと思います。

○分科会長 個人ばく露だと、労働者が付けるわけですから、それを知らせない
ということはどうなのかと思います。

○名古屋委員 知ると、たぶん意識されるからいいと思います。

○土橋委員 リスクに基づく自主管理ということで、この方向性としては非常に
重要と考えます。いまの労働安全衛生法では、非常に細かくいろいろなことが規
定されていまして、それはそれでやるべきことがはっきりするという点はありま
すが、今回取り上げている化学物質では、種類がどんどん増えていくとともに、
使い方も多様化している中で、ケースによっては法律に書いてあることが必ずし
も最適ではないものも出てくるかと思います。そういった部分に的確にと対応す
るためには、やはりどういう物質がどのような使われ方をしているか把握し、そ
れによるリスクを自ら把握して管理していくという自主管理の枠組みは非常に有
効ではないかと思います。これは海外でも実証されていることですので、これを
より導入しやすくするという取組みとのことですので、是非よろしくお進めいた
だきたいと思います。実際、リスクアセスメントは既に努力義務になっています
が、先ほど半田課長からありましたように、一生懸命リスクアセスメントをやっ
て、かなり効率的な対策手法ができたとしても、安全装置の構造要件なり性能要
件は非常に細かくて実態としては効率的な手法を実施できない場合もあるわけで、
そのような状況は、リスクアセスメントをやることの動機付けを削いでいるのか
なという気がします。対策として効果と安全性が実証されたものは、是非効率的
に使えるような、そういう法律の弾力的な運用も一緒に検討していただければと
思います。以上です。

○高橋(信)委員 これは要請なのですが、先ほど豊田委員のプレゼンテーショ
ンの中にありましたことと一緒です。1.の「その2」にありました、国際的動向へ
の対応なのですが、例えばEUでやっていますREACH、それでいろいろな規制
がかかっていますが、現実、産業社会では輸出入の量がかなり増えていまして、
その度に日本の法に適用させ、なおかつ相手国にも合わせるということで、かな
りの混乱が起きていると思っているのですけれども、こういう枠組みを整理して、
これからそういうことの整合性を付けていただけるということなので大いに期待
したいと思います。是非センシティブにそういうことを続けていただきたいと思
います。

○化学物質対策課長 承りました。この問題は各国と、ということもありますし、
この有害性情報伝達制度は労働安全性だけではなく、化学物質にかかわるすべて
のところで共同歩調を取っていかねばならないという認識を持っています。そう
いったことで、以前の分科会でもご紹介申し上げましたが、関係省庁とも定期的
に連絡を取りつつやっているところですが、そういった取組みを一層強化しつつ、
国内的にも国際的にも整合性の取れたものにしていくように努めてまいります。
ありがとうございました。

○分科会長 ほかには、よろしいでしょうか。是非この動きを進めて欲しいとい
うご意見が多かったと思いますので、行政当局もよろしくお願いいたします。ほ
かになければ、この「リスクに基づく自主的化学物質管理を促進するためには何
が必要か」という項目については、検討会報告2の「今後のあり方」で示された
方法で進めたいと思います。
 以上で、「職場における化学物質管理の今後のあり方について」については議論
が十分進んだと思います。本項目につきましては報告書をまとめる際に再度ご議
論いただくことにしたいと思います。
 次回は、「職場における受動喫煙防止対策のあり方」について議論したいと思い
ますので、事務局におかれましては議論のたたき台になるような資料・データ等
の準備をお願いいたします。それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。

○計画課長 本日の分科会におきましては、別途、「事業場における産業保健活動
の拡充に関する検討会について」のご報告も可能であれば報告する予定でしたが、
取りまとめにもう少し時間がかかりますため、本日は報告を見送らせていただい
ておりますので、その旨ご理解下さい。
 次回は、10月19日(火)17時より、専用12会議室で実施する予定ですので
よろしくお願いいたします。以上でございます。

○分科会長 それから受動喫煙の公聴会がありますね。

○計画課長 公聴会は11月10日(水)に開催いたします。公聴会につきまして
は前回ご承認いただいた形で、既に広報もしております。公聴会当日に意見を述
べられたい方の募集、あるいは参加者も受け付けています。前回も報告しました
が、この分科会で意見の発表者を決定していただくこともこの先お願いしたいと
思いますので、よろしくお願いします。

○分科会長 それでは本日の分科会はこれで終了いたします。議事録の署名は、
労働者代表は市川委員、使用者代表は中村委員、よろしくお願いします。
 本日はお忙しいところをどうもありがとうございました。終了いたします。
1


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(安全衛生分科会)> 第43回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

ページの先頭へ戻る