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2010年7月9日 独立行政法人評価委員会医療・福祉部会(第48回)議事録

○日時

平成22年7月9日(金)17:00~20:00


○場所

経済産業省別館1012会議室


○出席者

   上野谷部会長、大島部会長代理、平井委員、真野委員、松原委員


○議事

(以下、議事録)

○上野谷部会長
 定刻になりましたので、ただいまから第48回独立行政法人評価委員会医療・福祉部会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、なぜかいつも雨が降る状況の中でお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、浅野委員、五十嵐委員、宗林委員、關委員が欠席です。真野委員は少し遅れて参加されます。
 本日の議題は、お手元の議事次第のとおり、福祉医療機構の平成21年度業務実績に関する個別評価を行います。それでは、早速、福祉医療機構の個別評価に入ります。最初に長野理事長からご挨拶と、平成21年度の取組(概要)の説明をお願いいたします。

○福祉医療機構理事長
 理事長の長野です。本日はよろしくお願いいたします。私から、平成21年度の業務実績の概要について、総括的なご報告をさせていただきます。お手元の資料1「独立行政法人福祉医療機構平成21年度業務実績の概要」に沿ってご説明させていただきます。1頁は、福祉医療機構の概要を記載しています。左下に記載していますとおり、理事ポストについて平成22年度から1名減とするとともに、国家公務員再就職者、いわゆる天下りをゼロといたしました。右側の絵をご覧ください。私どもは、経営理念であります民間活動応援宣言に基づきまして、福祉医療貸付事業をはじめとする多岐にわたる事業を実施しています。福祉と医療の専門機関として、地域の福祉と医療の向上を目指し、お客さまの目線に立ち、民間活動を総合的に応援していくこと、このことが私どもの役割であると私は認識しています。
 2頁をご覧ください。この資料では、私どもの役割である地域の福祉や医療の向上の実現に向けまして、平成21年度における各事業の業務実績がどのように貢献しているかを整理したものです。上の四角で囲った部分が「地域」です。地域における福祉施設や医療施設、また民間活動を行うNPO法人等を、私どもが矢印のとおり下から支援しています。ここで3つの矢印がありますが、各矢印の下に細長い楕円で囲まれている部分が、私ども事業の4本の柱です。左側、「福祉医療の施設整備を支援」という柱。資料の中ほどには、「安定的な経営を支援」。右側には、「NPO等の活動支援、障害者・高齢者の生活支援」。さらに下には「適切な業務運営のための組織・予算」という柱があります。4本の柱の下に、今回の17の評価項目と実績を記載しています。今回S評価とさせていただきましたのは、医療貸付事業と退職手当共済事業の2つです。ここでは、まずこの2事業を説明します。
 4頁の左をご覧ください。医療貸付事業においては、施設の耐震化に加え、経済情勢の悪化及び出産育児一時金の制度見直しに伴う緊急的な資金ニーズに臨機応変に対応したところです。特に、出産育児一時金の制度見直しの際には、通常の予算要求とは別に、個別で厚生労働省や財務省との調整を行い、お客さまのご要望に随時対応する形で、優遇融資の拡充を図りました。これらの緊急融資等により、地域における医療機関の安定経営に貢献したことを通し、地域の医療の向上に役立ったものと認識しています。貸付の審査額面でも、前年比189%となる等、前年を大幅に上回る実績を上げることができ、Sの自己評価をさせていただきました。
 2頁に戻っていただいて、真ん中の「安定的な経営を支援」の退職手当共済事業についてです。社会福祉法人に従事している職員のうち、約6万4,000人の退職者に対し、約806億円の退職金を支給いたしました。1人平均125万円となります。また、請求から給付までの平均処理期間や、電子届出システムの利用率についても、中期計画を上回るとともに、対前年度実績をも上回り、この結果、利用者サービスの向上や事務負担の軽減を図ることができたところであり、自己評価は昨年に引き続きましてS評価といたしました。以上で、事業全体の説明を終わります。
 3頁をご覧ください。当機構におけるガバナンス強化への取組です。右側の内部チェックの覧にありますとおり、平成21年10月に新たにリスク・危機管理基本方針に基づき、リスク管理委員会を設置いたしました。これにより、リスク管理体制のさらなる強化を図りました。また、平成22年7月からは、お客さまからのご意見や苦情等を業務改善に活用することを目的としまして、「お客さまの声」制度を新たに導入したところです。今後も、より一層のお客さま目線に立った利用者サービスの向上に努めていく所存であります。
 続いて4頁をご覧ください。平成21年度における業務実績のうち特記すべき事項を、この4頁と次の5頁に記載しています。まず4頁右のリスク管理債権の抑制です。昨今の度重なる診療報酬等のマイナス改定の影響等により、医療機関等を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況が続いています。その中で私どもとしては、政策金融としての役割を踏まえ、経営が悪化した施設の立て直しや再生を後押しし、地域における施設の維持・存続を支援しています。私どもは、長年の融資で蓄積されたデータやノウハウをフルに活用しまして、債権悪化の未然防止や正常化に向けた助言等を積極的に行いました。また、金融検査マニュアルに沿った自己査定等を適切に実施した結果、リスク管理債権は前年度より180億円、率では0.48%減少することができたところです。
 次に右下ですが、経済情勢の悪化を踏まえた対応としまして、約定どおりの償還が困難となったお客さまに対し、中小企業金融円滑化法等の趣旨にかんがみ、返済条件の変更等を迅速かつ適切に実施したところです。
 続いて5頁をご覧ください。長寿・子育て・障害者基金事業です。当該事業におきましては、行政刷新会議の事業仕分けに伴う助成制度の見直しと、新制度への円滑な移行を実施しました。平成22事業年度分の助成金交付要望については、既に昨年9月から10月にかけて受付を行っていたため、これらの助成要望団体に不利益が生じないよう、国と協議の上、取扱いを決定し、新制度の円滑な移行を実施することができました。右側をご覧ください。適切な業務運営の実施について、平成21年度中に課長ポストを1名減としました。また先ほども述べましたが、平成22年4月からは役員である理事ポストを1名減としたところです。随意契約の見直し計画の取組状況については、随意契約件数割合が平成18年度には71%あったものが、平成21年度末に6%となり、随意契約見直し計画を達成することができました。
 また、一般管理費の節減については、平成21年度予算を大幅に上回る節減を達成し、さらに業務の効率化、経費節減、エコ対策等の観点から、会議資料のペーパーレス化などの各種の取組を行いまして、年間約4,800万円のコスト削減を実現しました。今後とも継続的に事務・事業の見直しを実施し、独立行政法人として相応しい効率的かつ効果的な業務運営を実行していく所存です。
 次の6、7頁に、平成21年度における法人全体の財務状況及び経営状況を記載しています。ここでの説明は省略させていただきますが、後ほどご覧いただければと思います。
 今回ご案内のように、本年4月に厚生労働省内での省内事業仕分け、そして行政刷新会議における事業仕分けが行われました。事業仕分けの結果については、後ほど政策評価官室から説明があると聞いています。私は事前のヒアリングを含めて、すべての事業仕分けに出席させていただきましたが、事業仕分けを通して福祉医療機構の今後のあるべき姿、進むべき道として、私自身、次の4点を強く認識し、決意したところです。1つ目は、利用者であるお客さまのニーズを把握することに努めて、お客さま目線に立った経営を進めること。2つ目は、福祉と医療の専門性をさらに磨き、福祉と医療の専門店としてお客さまのお役に立てる組織であること。3つ目は、貸付、経営支援、その他のサービスを一体となって提供し、地域の福祉と医療の向上に貢献していくこと。4つ目は、常に自己改革に向かって汗をかいていくことです。以上4つが、この事業仕分けを通して、私自身が決意したところです。
 最後になりますが、委員の先生方におかれましては、引き続き私どもの今後の業務運営についてご指導、ご鞭撻をくださいますようお願い申し上げまして、以上で平成21年度の業務実績の概要の説明を終わらせていただきます。

○上野谷部会長
 ありがとうございました。いま出ましたが、省内の事業仕分けと、4月23日に行政刷新会議の事業仕分けが行われましたが、評価の参考ということで、事務局から少し説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 まず、省内事業仕分けの位置づけについて説明します。省内事業仕分けは、厚生労働省が自ら改革を実施するため、行政刷新会議における事業仕分けとは別に、独自に厚生労働省の事務・事業や所管する独立行政法人、公益法人等の事業などのあり方について、公開かつ外部の視点を入れた議論を行い、最終的な改革案は政務三役で決定するとして、4月12日から実施しています。福祉医療機構については4月19日に行われました。
 お手元の参考資料1をご覧ください。頭のほうは評決結果になっています。1-?@は、福祉貸付、医療貸付、福祉医療経営支援事業についてです。この中では、「貸付事業や経営支援事業は、福祉医療機構で必ずしも行う必要はなく、日本政策金融公庫等に移管が可能ではないか」。それから、「福祉医療は他の収益を目的とする事業と異なることから、福祉医療機構の事業として存続することが望ましく、さらに専門性等を高めてほしい」というような意見がありました。
 2頁ですが、左側が年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業についてです。「貸付を受けた者が、返済中に生活が苦しくなるなど、問題があり廃止が妥当」。それから、「制度そのものの見直しが必要ではないか」というような意見がありました。右側にいきましてWAMNET事業ですが、「厚生労働省へ移管して実施するのが妥当ではないか」「よく利用されているので福祉医療機構で事業を継続し、内容を一層充実してほしい」というような反対の意見がありました。
 次の頁の?Cですが、退職手当共済事業・心身障害者扶養保険事業についてです。ここでは、「両事業は引き続き適切に実施してもらいたい」というような意見です。それから最後に組織・運営体制についてですが、「管理部門について見直しが必要」。また、「福祉医療機構独自の役割があることから、他との統合または事業移管は好ましくないのではないか」というような意見でした。4頁以降が、そのとき事業仕分けで出された資料となっていますので、参考にしていただければと思います。
参考資料2は、行政刷新会議の事業仕分けです。第2弾の前半戦として、独立行政法人を対象に4月23日から4月28日までの4日間行われました。そのうち厚生労働省の関係はワーキンググループBで、福祉医療機構については4月23日に議論されました。この参考資料2にあるとおりですが、この資料は、まず評価者のコメント、次の頁にWGの評価結果、とりまとめコメントと3頁に分かれています。ここで指摘があったことは、福祉貸付、医療貸付については、「貸付事業自体については必要であるが、効率的かつスピーディーな融資体制となっているか」。また、「事業規模についてはニーズは多くあるのではないか」といった議論がありまして、ワーキンググループBの結論としては福祉医療機構が実施、事業規模は現状維持というような結論になっています。
 年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業については、「生活保護に至る例などもあり、年金を担保に貸し付ける仕組みは問題がある」と。それから、「全国社会福祉協議会の貸付制度または生活資金の融資制度に切り替えていくべきだ」というような意見。「制度を廃止した場合における利用者への影響等を調査し判断すべきだ」との議論がありまして、ここでの結論は、移行期間が必要であるが代替制度を十分に用意した上で廃止となっています。この4頁以降も、そのときの提出資料と行革担当部局から出された論点等の説明資料となっています。以上です。

○上野谷部会長
 ありがとうございました。参考にしていただくということです。これからの進め方ですが、いつも4つのグループに分けてやっていただいています。個別評価を評価シートの個別項目4つのグループに分けながら評価を進めます。機構からの説明を聞きながら、委員の皆様方は評価をしていただくということですので、聞きながら、評価を進めながら、質問しながら評価をしていただくという、いつものやり方でよろしくお願いします。それでは、機構のほうから4つのグループを進めていきたいと思います。法人からの説明は大体30分以内でよろしくお願いします。

○福祉医療機構企画指導部長
 企画指導部長の長門です。お手元に先ほど理事長が概要をご説明しました資料1に加えまして、資料2から6までと、財務諸表等の経理関係の資料8を業績評価をしていただくための資料としてお配りしています。非常に大部なものですが、これらをもとにご判断をいただければと思います。お手元の資料2に「平成21年度業務実績評価シート説明用資料」をお配りしているかと思います。これはパワーポイントで作成した説明用資料を、上下に2頁を1頁に入れた形でお配りしていますが、この資料の頁に従ってご説明させていただきます。先ほど触れました資料の中で、資料3が実績評価シートの本体です。こちらのほうには説明用資料の内容を文書で詳しく書いています。資料6では、過去からの変化を見ていただくということで、経年実績をお配りしています。
 それでは資料2をご覧ください。資料2の下半分をご覧いただきますと、評価項目の目次があります。本日評価をいただきます委員の皆様は、昨年も評価を担当していただきましたので、要領はご存じのことと思いますが、当機構の場合、非常に事業が多岐にわたっているということもあり、評価項目が17あります。いま、部会長からもお話がありましたように、Part1からPart4の4つに分けてご説明をさせていただきます。
 Part1につきましては、次の頁をお開きください。法人全体の業務運営の改善に関する事項と、業務運営の効率化に関する事項の大きな2つの柱について、2つずつの評価項目、合計で4つの評価項目があります。資料2の構成については、昨年もご説明しておりますので繰り返しになりますが、全体の構成として、評価項目の1の例でご説明させていただきますと、2頁の下半分ですが、その評価項目の概要について総括したシートが1枚付いています。そのあとに総括シートに書いてある取組内容の柱立てに従って、個別事項の詳細をご説明したシートを付けています。総括シートについては、各委員において評価を記入いただくときに、全体のまとめとして参考にしていただければと思います。私のご説明は、時間の関係もありますので総括シートは省略させていただき、個別のシートに従ってご説明をしていきたいと思います。
 説明用資料の3頁をご覧ください。業務運営の改善の評価項目の1ですが、効率的な業務運営の体制ができているかということに関してです。3頁の二重破線で囲った四角のところに4項目書いてありますが、内部統制の強化から始まり、リスク管理債権への対応、事業の効率化、福祉と医療のネットワーク作りの4つの視点で組織の効率化、見直しに取り組んでいます。
 具体的に内部統制の強化につきましては、監査部門を従来の総務部から理事長直属にして、独立性を高め、監査体制の強化を図っております。リスク管理債権につきましては、債権の管理を行っている管理部の組織再編を行いまして、特に調査役を新設いたしまして、長期の対応が必要になるような個別案件への対応の強化を図っております。
 また、事業の効率化の関係では、助成事業の審査の効率化を図るため、課の再編をし、その際には課を削減するスリム化も行っております。
 さらに、一昨年10月、現在の理事長が民間から来られて、当機構の役割を明示するために経営理念を「民間活動応援宣言」という形で出させていただきましたが、その具体化を図るために、業務間の連携強化を図ることができるよう、平成21年4月から「民間活動応援本部」を機構内に設け、その活動については後ほど該当箇所でご説明しますが、組織横断的な取組を推進しております。
 4頁をご覧ください。併せて組織体制の強化を図るために、トップマネジメントの徹底を図っております。当機構では、平成15年に法人が設立されたときから、経営企画会議を設置し、理事長をはじめとする役員と各部署の担当部長をメンバーとするトップマネジメントの会議を設置しています。平成21年度におきましても、この会議において担当ごとの役員から分野ごとの重点目標の指示を行い、また国の補正予算への対応、民間活動応援本部の活動、さらには年金担保貸付事業の金利設定などの重要案件について、この経営企画会議で機構としての意思決定をさせていただいております。
 5頁をご覧ください。業務間の連携強化につきましては、先ほども触れましたように、「民間活動応援本部」を立上げました。ここでは、顧客満足度調査を機構の各部署のサービスを利用されている方々に対して実施しました。当機構の場合には福祉施設、医療施設を整備されている方々等を対象に多岐にわたるサービスを実施しているわけですが、その利用状況についての実態把握、分析も行いました。また、お客さま目線から見た組織のあり方ということで、管理部門の再編を進め、より事業部門に重点を置いた組織のあり方を考えるべきであるというような提言もこの場で取りまとめました。先ほど評価官室からご説明がありました、4月の厚労省内の事業仕分けで私どもが改革案を提示する際には、この提言をもとに組織の見直し案を提示させていただくことができました。
 さらには機構の総合力ということで、助成事業と貸付事業の連携による福祉・医療の一層の推進の可能性等を検討するため、現場の施設を訪問し、福祉・医療の関係者等と意見交換をさせていただきました。以上が評価項目1「効率的かつ効果的な業務運営体制の整備」に関わる取組状況です。
 7頁をご覧ください。業務管理、特にリスク管理の充実に関する項目です。8頁ですが、これは独立行政法人でもおそらく稀といいますか、極めて先進的な取組みかと思いますが、当機構は、ISO9001という、品質マネジメントシステムの国際認証を平成17年に取得しまして、毎年それが有効に機能していることの確認を受けています。平成21年度の場合には、平成22年2月にその定期審査を受け、確認をいただいていますが、そうしたISO9001を中心とした品質マネジメントを行っています。ISO9001は、もともとは製造業の工場等を中心に、日頃の業務を細かいことから一つひとつ改善していく改善運動を規格化したものですが、現在、国等でもPDCAサイクルの推進ということが言われる中、私どもの業務においては、現状について分析し、問題点があればそれをチェックして、改善を考えてまたその次のサイクルにつなげていくというPDCAサイクルに基づく取組みを、ISO9001のマネジメントシステムを中心に進めております。
 また、平成21年度で特筆すべき項目は、9頁です。独法のあり方についての総務省等からの指摘でも、内部統制の強化が大きな課題になっています。内部統制には、アメリカの委員会の報告書等によりますと、6つの基本的要素があり、そのうちの大きな柱の一つにリスクの評価と対応がありますが、私どもとしましては、平成21年10月になりますが、リスク・危機管理基本方針を機構として定めまして、時を同じくして、リスク管理委員会を立ち上げました。この委員会での議論を通じて、年度末の3月には、部署ごとに、その業務の性格を踏まえつつ抱えるリスクの洗出しを行い、その対応について検討する方向性をまとめたリスク対応計画を策定しております。そのような形でリスク・危機に関する管理体制の強化を特に推進したのが平成21年度の特色です。
 リスク管理体制の概要は10頁に簡単にご紹介していますが、時間の関係で詳細なご説明は省かせていただきます。
 11頁は業務改善の取組についてです。業務改善の活性化が図られているかという観点が必要になっていますが、私どもでは全職員を対象に改善アイデアの募集を毎年定期的に行っております。平成22年度からはこれを恒常化して行うことを予定していますが、これまでは改善アイデアの募集月間を設けて、職員の提案を受けて、業務の円滑な遂行を図っています。具体的には職員の職務に対する満足度調査の実施や職員が専門性を高めるための資格取得を行う際の支援制度の創設などの提案がこれまでに具体化されております。
 11頁の下半分ですが、これはリスク管理の一環としてご説明したほうがいいのかもしれませんが、私どもの事業の大きな割合を貸付事業が占めております。そうした関係でALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)システムによる分析、要するに資産と負債の関係を整理して、金利リスク等に十分対応できるかどうか等の分析、検討を行っております。具体的には民間の都市銀行の協力を得て作成された金利の予測モデルを活用してALM分析を行い、金利リスクの抑制等を図っております。
 12頁ですが、個人情報の保護、さらには情報セキュリティ対策です。これは本組織の必要不可欠な分野で、個人情報の保護に関しましては、これまでも個人情報管理規程を整備しておりましたが、平成21年度におきましては、10月に個人情報の保護のための具体の手順を定め、マニュアルを策定いたしました。これにより、職員個々人がより具体的なイメージを持って個人情報保護に取り組む体制を作っております。また、情報セキュリティ対策につきましては、12頁の左下に、ピラミッド型で規程から実施手順まで4層の仕組みを示していますが、規程類を整備し、職員の研修、さらには一人ひとりの職員が自己点検をするというような活動を進めまして、お客さまの個人情報が漏洩することがないような取組みをしております。以上が2つ目の評価項目に関しての取組みです。
 評価項目の3つ目ですが、業務システムの効率化・情報化の推進に関する項目です。14頁をご覧ください。昨年もご説明しましたが、当機構では、システムの規模が1億円を超えるもの、それから、旧態然のシステム、いわゆるレガシーシステムを対象に、システムの効率化を図るための最適化計画を平成20年2月に策定しています。具体的な対象は、14頁の下のところにありますが、退職手当共済事業のシステム、福祉保健医療情報サービス事業、いわゆるWAMNET事業、年金担保貸付事業・承継年金住宅融資等債権管理回収業務のシステム、最後に福祉医療貸付事業のシステムの4つについて計画を作っております。特に平成21年度における成果としては、まず、退職手当共済事業の関係が挙げられます。退職手当共済事業につきましては、昨年、電子届出システムの利用率が75%に達したということでS評価をいただきましたが、今年は被保険者の届出制度等の機能がさらに追加されるとともに、利用率もさらに向上して、79%になっております。
 もう1点は、福祉医療貸付事業の関係です。貸付事業を行う際には、借入をした各事業者の方から財務状況について、年に1回事業報告をいただいています。その報告をいままでは紙でやり取りしていましたが、平成21年度からは本格的にこれを電子化して行うようにいたしました。平成21年度の利用率は55%、過半数を越える方々に利用いただけたということで、これも業務の効率化を図る上で、非常に有効でした。
 WAMNET事業の関係ですが、昨年この場でも、WAMNET事業で約8.5億円かかっている運営費を、次期システムの開発費を除きますと5億円ぐらいまで圧縮する最適化計画を作って取り組んでいるというご説明をしておりました。昨年の秋以降、先ほどの事業仕分けに具体的な形で現れましたが、独立行政法人の事業のあり方について、見直しの動きがありました。そうした関係で、非常に大きな調達を伴うWAMNET事業の最適化計画については一時、計画の進捗を保留させていただいています。これについては、その後の取組状況をWAMNET事業のところでご説明させていただきます。
 15頁は業務・システム最適化計画の対象になるもの以外のシステムの改善についてです。規模の小さなシステムを含め、非常に多岐にわたる事業を効率的に進めていく上で、多くのITのシステムを使っておりますが、それぞれについても必要に応じた見直しをし、効率化を図っております。
 16頁ですが、情報化の推進体制の強化ということで、私どもはCIOを置いて情報化への取組を進めておりますが、そのCIOを補佐する補佐官を民間のIT企業からリクルートしまして、その方の助言を得ながら、IT化の見直し、推進を図っております。
 Part1の最後の評価項目は経費の節減に関する項目です。18頁をご覧下さい。冒頭で理事長からもご説明をさせていただきましたが、経費の節減を図る上で、契約形態の見直しに積極的に取り組んでいます。具体的には18頁左上の表で平成18年度の実績を見ていただきますと、71.1%が競争性のない随意契約でした。1つ飛ばしてその右を見ていただきますと、平成21年度は4件、6.4%でした。随意契約見直し計画を立てたときの目標が、左から2つ目の欄ですが、6件、7.9%まで減らしていくこととしておりましたが、取組の結果、それを上回る見直しができております。この4件と申しますのは、財務諸表の官報への掲載の契約や会計システムを民間のソフトを借用してシステムを組んでおりますが、そのシステムの著作権の関係で、著作権者に随意契約をしているという、やむを得ないものが4件残っているという状況です。そうした随意契約の見直しをして、より競争性のある契約をすることで、価格面で費用の適正化を推進してきたこと、これがこの1年の結果だと思います。
 19頁をご覧下さい。契約については、随意契約の見直しも大きな柱ですが、競争性・透明性の確保が重要となります。随意契約に限らず、一般競争入札を行う場合、結果として、まだ移行期ということもあり、一者応札・一者応募のケースもありました。そこで、契約手続きについても19頁にあるような工夫をしております。具体的には図の中ほどに契約審査会というのが2回ほど出てまいりますが、最初に契約の募集をする際に、仕様書を定める必要があります。その仕様書の内容が競争を制約するような中身になっていないかを、まず契約審査会に判断を仰ぐことといたしました。さらに企画競争や総合評価方式の一般競争入札の場合には、競争の評価をしなければなりませんが、その評価結果についても、評価結果に対する評価が妥当かどうかを同じく契約審査会に諮ってチェックを受けることにしております。さらに、右下ですが、契約監視委員会、これは私どもの監事と外部者から構成されますが、外部的な立場から、私どもが行った契約の内容について事後チェックを中心にチェックをしていただくという場を設けています。
 20頁です。コスト削減の取組、あるいは環境問題への対応として、使います紙の量を減らすべく、会議の資料のペーパーレス化、電子データでの会議の実施に取り組んだほか、事務所の賃借料の引下げ交渉などにより、少なくとも数字で直ちに把握できるものだけでも4,800万円を超える節減を行っています。
 21頁ですが、一般管理費等の節減です。これにつきましては、中期目標では5年間で15.5%、単純に申しますと平均で年3.1%ほどの削減を行う必要があり、平成21年度は2年目ですので3.1%の2年分、6.2%が最低限の節減目標となっておりましたが、実績は記載のとおり12.4%、目標を大幅に上回る節減を行っております。
 22頁ですが、その一環として、人件費の削減については国家公務員並びで年1%の削減を行っていくことを目標に掲げ、5年間で5%以上削減することとしています。平成21年度は基準となる平成17年度に対して11.4%、これも大幅に目標を超える削減ができております。ちなみに、対国家公務員給与との指数の比較、いわゆるラスパイレス指数の推移ですが、昨年の104.5から1.0低下して103.5となっております。
 23頁です。給与水準につきまして、103.5、国家公務員の方の水準を若干上回っています。この理由としましては、23頁の中ほどに書いていますが、昨年もご説明した内容と基本的には変わっておりません。貸付事業を行う事業内容から、民間の金融機関等の間で優秀な人材を確保するために、ある程度それとの比較も念頭におきながら、給与を設定する部分があるということが1つ、また、企画・調整に関わる業務が多いため管理職比率が高いということ、大卒者の割合が公務員の方の場合に比べて高いということ、在職地が、東京と大阪という2カ所で効率的に事業を行う体制を取っているものですから、大都市圏のみの勤務者になっているという点で、給与水準にこうした差が出ております。給与水準の検証としましては、左下の表を見ていただきますと、全体の支出予算が2,083億円の中で、退職手当共済事業の給付費に当てる国の補助金等も入れて399億円、400億円弱ありますが、給与費の占める割合は、約1%という状況にあるということを申し上げて、Part1のご説明にしたいと思います。

○上野谷部会長
 ありがとうございました。委員の皆様方、評価シートに書きながら、どうぞご質問、ご指摘をお願いします。いかがでしょうか。

○大島部会長代理
 しっかりと理解できているかどうかわかりませんが、1つはALMシステムのところで、私はそれ自体よく存じ上げないので教えていただきたいのですが、これは外注というか、毎年委託をして行っていただいているということで、ある程度の経費がかかっていると思われるのですが、どのぐらいの額がかかっているのかということと、このような内容で毎年委託をしなければならないのか、先ほどの給与のところでも内部で優秀な人材を集め、大卒者が多くということでしたので、内部でできるものではないのかどうかということを教えてください。

○福祉医療機構企画指導部長
 基本的にALMの分析は、内部の職員が行っております。先ほど外部の協力も得てと申し上げましたのは、まずALMの分析を行うためにはモデルの設定をしなければなりませんが、その点で協力をいただいているからです。具体的にALMシステムというのはどういうものか申し上げますと、私どもの事業のかなりの部分は貸付事業になります。貸付事業を行う際に、お金を貸している貸付金は資産(アセット)となります。その一方で、貸付を行うための資金を、例えば財政融資資金から借り入れる、財投機関債を発行して市場から調達するということで、私どもは金利を払って借りてきてそれを貸す形を取っています。ですから、そういう意味では借りてくる原資は負債(ライアビィリティ)になります。この資産と負債の関係のバランスをうまくとっていかないと、例えば金利が急騰したような場合に、急激に損失を被るようなことが起こります。
 ALMシステムで行っている代表的な分析は大きなものが2つあります。1つは資金調達する際の資金をどのぐらいの期間で借りてくるか、そして何年で貸し付けるかという問題です。借入期間と貸付期間がずれると、金利変動に伴うリスクが発生する危険が高まります。年々貸付残高が入れ替わっていく中で、どの程度の期間のずれがあるかを分析するのが、一つめの分析、いわゆるデュレーションギャップ分析です。
 それから、もう一つは、貸し付けたお金が返ってくる、収入がどれぐらいあるかということと、原資をどれぐらい返済していかなければいけないかということとのバランスをとらなければ、資金繰りがうまくいかなくて、資金がショートしてしまうおそれがあります。その両方の「出」と「入」のバランスを取る、それがうまくバランスが取れているかどうか、大きなギャップがないかということを見るマチュリティラダーという分析をしております。
 それ以外に、年金担保貸付事業では財投機関債を発行して資金を調達していますが、その資金を調達する際の金利をどれぐらいで設定をすれば財務にどのような影響があるかという分析、例えば医療・福祉の貸付を、いま主としては長期の資金調達をして、長期の融資をしておりますが、後ほどご説明する、例えば出産一時金や経営安定化資金のような運転資金については短期の借入をして貸付をするというようなことも最近始めていますので、その辺の資金構成をどうするかといったいろいろなシナリオにおいて、貸付事業の進め方による財務への影響の分析を行うものが、ALMシステムとなっております。
これらの分析を行う際には、将来の金利がどのように動くかというのが、非常に大きな要素になります。民間金融機関の協力もいただいて、モデル設定をしていますが、毎年モデルの保守・点検をしていただいていますから、費用としては委託費を大体900万前後、今年は900万を切るぐらいの委託費をお支払いして、モデルの維持をしていただきながら、私どもの職員がそのモデルを使って数値を入力し、分析をするという形で進めております。

○上野谷部会長
 ありがとうございました。いかがでしょうか。かなり改善と独自の計画も含めて、事業途中のものもありますが、また次年度が楽しみという結果でした。評定は全部Aで出てきております。よろしいですか。では、Part2をお願いします。

○福祉医療機構企画指導部長
 それではPart2についてご説明します。Part2は私どもの事業の最も核である部分の福祉医療貸付事業と、それに関連する債権管理、福祉・医療の事業者の経営の支援に関する事業の項目です。24頁にその評価項目が4つありますが、これについてご説明します。
 福祉貸付事業の総括は26頁にありますが、説明は27頁からご説明します。平成21年度の貸付けの実績ですが、審査実績で件数、金額をここにお示ししております。件数は699件、金額にしまして1,124億4,600万円です。平成21年度の特色ですが、右側の棒グラフをご覧ください。ここ数年は、診療報酬、介護報酬のマイナス改定が続いたり、サブプライムローンの問題を例に挙げるまでもなく、国際金融環境、経済環境が非常に不透明になって、景気の動向も危ぶまれるような状況が続いたりした中で、設備投資の意欲がどちらかというと阻害されて、福祉・医療の施設整備が必要だと言われる中でも、なかなか施設の整備が進まず、その結果として融資の額が減少傾向にありましたが、平成21年度はこれがようやく反転して、1,124億円と増額した状況になっております。その背景にありますのは、この棒グラフの上、楕円の中に書いていますが、一つには、平成21年度においては、補正予算においてでしたが、介護基盤の緊急整備について大きな基金が積まれ、これによって、介護関係施設の整備を公費をより手厚く投入することによって一気に加速しようという動きがあったということがあります。
 現在、厚生労働省で発表されている資料等によりますと、平成21年から平成23年の3年間に約16万人分の介護の受入施設として特養、介護老健施設、認知症の高齢者のグループホームといった施設を、緊急に整備していこうという動きがございます。補正予算で基金ができ事務手続が進んでいくのには多少のタイムラグがありますから、まだ平成21年度はすべて影響が出てきているとは言えず、おそらく今後22年度以降、これがもっと大きな形で影響してくると思いますが、その影響の兆しがこのような額の反転になっていると思います。
 もう1つは、補正予算等における基金の造成等の動きに表れていますが、保育所の整備、いわゆる子育て支援の基盤の整備ということが非常に大きな社会的な課題になっているということがあります。待機児童の数については、時期によって異なり、2万5,000人と言われる方もおられますが、最近では年間に少なくとも4~5万人の整備をしていかなければならないと言われております。国においても、今後、平成26年頃までに、特に3歳未満の低年齢の保育を中心に、25万人分ぐらいの受皿整備をしていくというような話もあるように聞いています。ですから、そうした保育所の緊急整備の影響が出て、保育所の案件が非常に伸びております。
 ちなみに老人福祉関係施設262件の中では、特別養護老人ホームが182件を占めており、児童福祉関係施設302件の中では277件が保育所の案件となっています。私どもの福祉貸付の担当者は肌でこれを感じているようですが、こうした介護基盤、子育て支援のための保育所整備が、ここにきて一気に加速してきた結果が、平成21年度の実績に出ているかと思います。
 融資方針については、具体的な融資方針を明文化して、先ほどお配りしたシートの添付資料の中にも入れていますが、これを公表して、関係者に周知して融資の促進を図っております。
 29頁ですが、私どもの使命というのは、まさに国、自治体の政策としっかりと符合する形で福祉分野、医療分野の施設整備を進めていくということにあるわけですが、平成21年度の例について申し上げますと、29頁にありますように、介護基盤の緊急整備、保育所等の整備というのはいま申し上げましたが、それ以外にも右側からご紹介しますと、耐震化の整備ですとか、1つ飛ばしますがスプリンクラーの整備という安全面での施設整備。左のほうですが、緊急的な経営資金ということで、金融環境や経済環境が非常に不安定・不透明で、停滞した時期が続きましたので、そういう中で一時的な資金繰りに困る社会福祉施設が出る中での緊急的な経営資金の融資などの取組をしております。また、その一環として、障害者の就労支援に関しても、これを活用した支援を行うなど、平成21年度はこれまで以上に臨機応変に政策対応を図ったという状況でした。
 ちなみに、いまご紹介した経済危機対策に伴う取組みですが、30頁でその内容をご紹介しております。1つは介護基盤の緊急整備です。これは融資率の引上げ、利率の引下げなど、一層の優遇措置も講じております。緊急的な経営資金につきましては、従来私どもは2名保証人をお願いすることを常としておりましたが、これを1名に緩和するとか、貸付の相手方をいわゆる社会福祉法人だけではなくて、事業にもよりますが、NPO等にも対象を広げていくといった工夫もしています。スプリンクラー、耐震化についても、ここにあるような融資率、利率等の優遇を特に手厚く行っております。
 31頁をご覧ください。31頁は私どもの融資がより政策との関連性が高いということの1つの証左としまして、31頁の破線の下ですが、平成21年度の審査案件660件のうち、国の補助、あるいは地方公共団体の交付金等の公的な資金の支援を受けた案件は563件で、85.3%を占めております。ですから、基本的には行政の政策決定と相応ずる形で、その取組みをしております。事業仕分けの中では、そういう形で行政が判断しているのであれば、あえて機構が専門性を発揮して、案件の選択をしなくてもいいのではないかというようなお話もありましたが、実際には行政が交付金、補助金の採択をされるプロセスにおいて、私どもとの相互協調で、そういう判断を作り上げていただいている、そういう意味で、単なる決定を受けて貸付を行っているものではありませんというご説明をして、ご理解をいただきました。
 右に「補助なし事業への融資」と書いてありますが、基本的にはいま申しましたような公的な資金が入った案件を中心に貸付を行ってきているわけですが、最近は、例えばかつてのゴールドプランで整備されたような施設が、そろそろ20年を超えるような年数になってまいりまして、建替需要が今後見込まれます。そうしたものについては、必ずしも公的資金の投入が行われていませんので、地域での体制整備に必要性があるものについては貸付を行っていくということで、こうした記述もしております。
 その下の「参考」は、利用者のニーズに即した取組みということで、3点ご紹介しています。1点目は、経済情勢の悪化に伴う経営安定化資金。これは、いまご説明したようなことで、非常にきめ細かい対応をしているということです。その下2点記載しております。1つは、特別養護老人ホームの中で、ユニット型の特別養護老人ホームというのがあります。これは施設整備費が、どうしても通常の特別養護老人ホームよりも大規模化いたしますために、借入金の償還が非常に難しい場面も出てまいりますので、償還期間を20年から25年に延長するとともに、据置期間も1年延ばして3年に見直して、利用者の利便性の向上を図る工夫をしております。また、個人保証について、いままで個人保証をお願いしてまいりましたが、民間の住宅ローン等ですと金利を若干上乗せする等により、保証人を必要としない扱いがありますので、機構においても、福祉貸付事業の場合には0.05%、これは過去のリスク管理債権等の動向をもとに算出しましたが、金利を若干上乗せすることで個人保証を免除するメニューを、利用者の選択の幅を広げるということで作っております。
 33頁は融資相談に早期から応じるとか、融資のポイントと書いてありますが、融資を申し込まれるときの手続、手順を詳しくご紹介したような資料も作成して、お配りをするといった取組みをご紹介しています。
 34頁に、協調融資の状況について書いてあります。平成20年度からすべての施設について協調融資を行うようになっております。案件としては、右側の表の中ほどに122件の実績がありまして、協調融資を行うために覚書を結んでいる民間金融機関の数も、右下の棒グラフのとおり、平成20年度から着実にその数を伸ばしている状況で、協調融資についても取組みが一層進んでおります。これによって、私どもも民間の資金とうまく役割分担をすることで資金をより効率的に活用して、より多くの借入希望者を対象に貸付事業を行うことができます。
 36頁は、審査の事務処理の期間です。これは、目標期間の中期目標を大きく下回る形で、より短い期間で事務処理が行われる状況になっています。処理期間が38日、資金交付は15日で実施をしております。以上が福祉貸付の関係です。
 続いて、医療貸付の関係です。医療貸付は今回、冒頭でも理事長から紹介させていただきましたが、17項目のうち2項目について、自己評価ではS評価にしております。そのうちの1つが、この医療貸付です。医療貸付の部分には38頁の総括表で、特にS評価をしたものについては総括表の中にさらに四角囲いで、その要点を書いておりますが、大きくは経済情勢の急激な悪化で資金繰りに困っている医療施設の経営者に、非常に大きな額の経営安定化資金を提供して弾力的に対応したことと、出産育児一時金の支払制度が変更されるという制度改正に柔軟に対応する融資制度を作ったこと、それから耐震化等への対応を進めたこと等、医療施設整備に係る今日的ニーズに、非常に即応した融資の実績を上げることができたことを中心に、S評価にしております。その詳しい内容は、39頁からご紹介します。
 医療貸付の実績は836件、1,234億円になっております。これも先ほどの福祉貸付と同様ですが、貸付の推移を右側の棒グラフで見ていただきますと、これまで毎年減少傾向にあったものが増額しています。ちなみに、平成21年度にこれが大幅に増額した背景としては、一つには、1,234億円のうちの約404億円が経営環境変化に伴う運転資金、いわゆる経営安定化資金ということで、一時的な資金繰りに伴う資金需要があったと思います。従来、私どもはどちらかというと施設整備に関わる長期資金の用立てをしてまいりましたが、ここ数年来の経済環境の変化の中で運転資金についても今回積極的に対応した結果、これだけのニーズがあって、それにお応えすることができたのではないかと思います。
 もう1つは41頁です。審査段階ではなくて受付段階の数字なので、件数などが39頁と若干異なっておりますが、大きな傾向は変わりませんのでご覧いただければと思います。平成20年度における医療貸付事業の政策的な意味合いを棒グラフで、構成比で示しています。具体的な金額と件数はその横の数字を見ていただければと思います。平成20年度の場合には特定病院という4疾病5事業、いわゆる、がんや心疾患といった4つの代表的な病気への対応や、周産期医療や救急医療という5つの代表的な医療分野の事業に対応していく上で重要な役割を果たす特定病院に対する支援の割合が多くございましたが、平成21年度の特色としては、一つには、先ほどご説明した経営安定化資金が38.1%と、非常に大きなシェアを占めた点があげられ、そういう意味では、運転資金に関する緊急の必要に即応性をもって対応ができたということが言えるかと思いますが、もう1点は、先ほどの審査実績が反転して増額した要因の一つになろうかと思いますが、事業費も多額となる耐震化整備のための貸付けの割合が増えたことが挙げられます。厚生労働省が今年の1月に発表した調査では、完全な耐震化ができている病院は56%ほど、災害拠点や救急救命センターに限っても62%ほどです。医療施設の耐震化は不可欠ですので、国のほうでも補正予算で基金を作って、これを緊急に進めていこうとされているわけですが、これを一方から支援する形で、私どもも重点的に貸付を行っているという取組の変化が、この融資の名目の、構成割合の変化に現れてきているかと思います。そういう意味で、まさに時宜を得た貸付事業が実施できたということで、医療貸付については自己評価も高い評価にしています。
 40頁です。医療貸付の分野で政策融資としての役割は、特に平成21年度はどういうものがあったかということですが、この絵で言うと左上の、いまご説明した緊急的な経営資金の必要性、それから右上の耐震化の整備に対する必要性に加えて、昨年10月からの実施が若干猶予されましたが、出産育児一時金の支払方法が、直接医療機関に支払う形に見直されたことに伴い、一時的に産科のほうでの資金繰りが厳しくなるという問題が生じたことへの対応も行っています。
 46頁をご覧下さい。理事長は、私どもに、よりお客さま目線に立った業務運営を心掛けるよう、繰り返し指示をされておりますが、利用者のニーズに即した、お客さま目線の取組ということで、一つには、経営安定化資金についてここにあるような条件の改善をしていますが、ここでご説明したかったのは、その下の出産育児一時金の制度見直しです。平成21年6月に融資メニューを用意したときは、貸付利率も1.6%で、無担保で融資する限度も1,000万円という貸付条件でしたが、理事長も先ほど言及しておりましたように、利用者である医療関係者、行政のご意見もいただいて、貸付条件の見直しを弾力的に行っています。平成21年10月から記載のとおり条件緩和をし、最終的には平成22年4月からは貸付金利は0.8%、保証人を場合によっては免除することができて、無担保融資についても限度額を設けない形で融資を行うという、思い切った対応をいたしました。そうした利用者ニーズに即した取組みを行うことにより、まさに制度改正があったときに柔軟に対応するという私どもの役割が果たせたかと思っています。
 40頁に戻りまして、そうした大きな3つの柱に加えて、介護基盤の緊急整備や財政基盤の弱い中小規模病院を優先した融資や、介護基盤の緊急整備と重なりますが、療養病床の転換といったことについても、政策的な取組みを引き続きこの1年させていただきました。その内容をまとめたものが42頁の資料です。具体的な条件の改善点は、ここにあるような融資条件、貸付条件の見直し、改善を行っております。時間の関係もありますので、少し説明を省略して先に進みます。
 47頁の医療貸付についても、事務処理の期間について審査処理期間の目標45日以内に対して33日、資金の交付期間についても15日営業以内の交付の実施といったことを計画どおり達成しております。以上が、医療貸付の事業です。医療貸付は、繰り返しになりますが、貸付けの量的な面、質的な面、いずれを見ましても、いまご説明したような形で、政策と連動することに非常に重点を置いて事業が進められており、それから、例えば先ほどの出産育児一時金制度の変更への対応等は日々の行政あるいは医療関係者等とのやり取りの中で自ら問題意識を持って取り組んだということで、私どもとしてはS評価をしております。それが医療貸付の関係です。
 48頁からがPart2の3つ目の評価項目、債権管理の関係です。49頁で、新規融資の枠の目標値を中期目標には書いてあります。これは、平成17年の新規融資額を基準にして、その80%の額、3,220億円を中期目標に置いておりますが、これに対し、貸付けの実績は、先ほどご紹介したような形で、福祉貸付も医療貸付も審査増加に転じていますが、補正で積んだ緊急の基盤整備等についても、その動きが本格化するには若干の時間のずれもあること等から、平成21年の新規融資額は約1,846億円となっています。ここでは、むしろ3,220億円よりも下げるという中期目標ですので、そういう意味では目標を既に達成しているわけです。私どもとしては、今後、福祉・医療分野における施設整備のニーズの大幅な増大が見込まれることを考えますと、平成24年の3,220億円の水準にこれから戻していく方向で考えなければならないのではないかと思っておりますが、少なくとも中期目標との関係では、それはクリアしている状況です。
 貸付けを行う場合に、政策的に非常に重要性の高い、例えば医療貸付の耐震化の融資等ですと、最初の5年間はいま補助金等を受けているような耐震化整備の案件であれば、調達金利の△0.5%、逆鞘で貸付けを行っておりますが、原則として私どもは逆鞘で赤字が生じた場合には国からの費用補填をいただくことになりますので、そういうことがないように貸付けについては利差を取って、自己完結的に貸付事業ができるような取組みをしています。ですから、特に本当に政策的に優先度が高くて、どうしても非常に低い金利設定をしなければいけないものを除きますと、ここにありますように、わずかではありますが、金利差0.044を確保して、プラスを維持している状況です。
 53頁です。中期目標では、リスク管理債権の比率については1.56%で、第1期の中期目標期間中の実績を目標として置いています。私どもの場合には先ほど申しましたように、赤字が出た場合には公費で補填をいただく部分がございますので、そういうことにならないようにとのことで、こういう厳しい目標を与えられているわけですが、平成21年度は昨年よりも0.48%下がりまして2.49%、金額では180億円減少と、リスク管理債権の比率、額ともに減っています。この理由としては56頁の右側をご覧いただきますと、今回リスク管理債権が減少した理由を3点書いております。
 1つ目は、新規案件で3カ月未満の延滞債権の増加に歯止めがかかったことです。これは、具体的にはいままで貸付を行ったものを償還いただくときには、年払いの償還が一般的でしたが、これを月払い、あるいは3カ月に1回ということで、より頻度を上げて償還していただく、そうすることで、事業者の経営状況をよりきめ細かく把握し、それによって改善のための支援を早めに私どもからもさせていただくことができるようになり、その成果として新規発生案件に歯止めがかかったことが挙げられるかと思います。もちろん、その背景には、景気の動向も昨年この場でご説明したときよりは状況が改善し、診療報酬や介護報酬もマイナス改定が続いていたような環境についても若干風向きが変わったという、いくつかの好材料も背景にあったものと思います。
 2つ目は、医療貸付部と管理部、さらに私どもの企画指導部の中にある経営支援室の職員が連携して、個別の案件について現地に出向いて実地調査等をしながら、改善に向けてのご相談、助言等をさせていただいた結果、好転した部分があろうかと思います。
 いちばん影響が大きかったかと思われますのは3つ目です。金融庁が金融機関の貸付について、金融検査マニュアルというものを出しており、これに基づいて、各金融機関、貸付機関はいわゆる不良債権というか、リスク管理債権の額を特定しているわけですが、このマニュアルの見直しが行われまして、改善計画を作って、その計画が着実に計画どおり実施されている場合には、リスク管理債権の対象から除いてよいという運用の見直しが行われました。それを踏まえて、私どもでも見直しを行い、私どもだけでは恣意的な見直しになってはいけませんので、監査法人にも検証していただいてその整理をしたということがあります。そういうことで、リスク管理債権比率は1.56%という非常に高いハードルを越えることはできていませんが、中期計画期間の2年目においては少なくとも、より目標の方向に向けて改善したという状況です。そういう意味では、私どもの自己評価はもう少し良い評価をつけるという選択もあろうかとも思ったのですが、結果としてはまだ中期目標の数字を下回ることはできておりませんので、これについてはB評価としております。以上が、リスク管理債権の関係です。
 若干データとして後ほどご覧いただければと思いますのは、55頁の左側にリスク管理債権の福祉貸付と医療貸付それぞれの内訳をグラフで示しております。依然、傾向としては、福祉貸付のほうは1.15%が0.94%になり、医療貸付のほうは4.32%が3.56%ということで、医療貸付のほうが高めである傾向は変わっておりません。57頁をご覧いただきますと、ほかの金融機関、特に政策融資を行っている日本政策金融公庫の国民生活事業部、中小企業事業部等との比較をしても、WAMの2.49%というのは、かなり低い水準になっております。地銀と都銀については、公表時期の関係で1年前の数字しかわかりませんが、いずれにしても私どもの率はかなり厳しい債権管理が実施された結果になっているということが言えようかと思います。
 58頁からが、4つ目の評価項目に関する福祉医療経営指導の関係です。これについては59頁に総括が、60頁から個別の中期目標との関係の成果が書いてあります。60頁をご覧ください。まず集団経営指導です。福祉医療の事業を経営されている方々、もしくはこれから経営しようとされる方々に集まっていただいて、これからの政策動向なり施設経営に関するノウハウを情報共有していただくセミナーを年間17回ほど開催しています。事業の実施に当たりましては10週間前にはセミナーを開きますという事前の告知を行うとともに、年間2,500名以上の方に参加いただくという目標等を掲げておりますが、いずれも目標を達成しており、参加者数については3,400名と目標を大幅に上回る実績を上げております。また、満足度も74.7%と前年度を上回る評価をいただいております。61頁の個別経営診断については、年間280件、5年間で1,400件以上の経営診断の実績を上げるという目標をいただいていますが、実績は1,273件です。これは東京都からの都の福祉施設について、機構のノウハウを使って経営診断を受けたいという要望があり、その関係で大体900件ぐらいありますので昨年度から大幅な件数増があって、目標を大きく上回っております。平均処理日数についても、目標の50日以内を十分上回る35.8日で処理しております。
 62頁は、こうしたセミナーや経営診断の事業については、職員の人件費は運営費交付金で賄っておりますが、基本的に収入と費用、収支相償で見ますと、若干の収益が上がるような形で事業が実施できております。これも、中期目標に従った内容になっているかと思います。以上がPart2の4つの評価項目に関する部分です。ここは、特に私どもの事業の核になる部分ですので、少し説明が長くなったかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

○上野谷部会長
 ありがとうございました。委員の方々からご質問、ご意見をどうぞ。

○真野委員
 遅れて来て申し訳ありません。3つほど質問というか確認をさせていただければと思います。最初はいなかったので聞き逃したのかもしれません。このセクションになってからはいますが、41のスライドで特定病院のほうは4疾病5事業対応であるというお話でしたが、4疾病5事業というのは医療計画の中の話ではないのですか。

○福祉医療機構企画指導部長
 4疾病5事業というのは、4疾病5事業に関わる医療を担うような病院という意味で申し上げたもので、具体的には44頁に特定病院の説明を書いております。説明に誤解を与える点があったならば訂正させていただきますが、4疾病5事業に関わる医療の提供体制において、重要な役割を果たしているような病院が従前は特定病院として融資の主たる対象になっていたということを申し上げたかったということです。医療計画は医療計画で、融資をしております。

○真野委員
 そうすると、これは別に特定病院だから何か優遇しているという話ではなくて、政策的に意味がある所にたくさん貸しているということを言いたいわけですね。

○福祉医療機構企画指導部長
 そうです。

○真野委員
 同じような話ですが、再生という部分もありましたよね。医療再生でしたか。

○福祉医療機構企画指導部長
 それは補正予算で、救急医療等について地域の医療提供体制が危うくなっているので、それを再生するための特別の基金を積んで、当初3,000億円という話が政権が代わって額が圧縮されましたが、取組みを行うものです。

○真野委員
 それは、41頁の表には出ていないのですね。もともと別の補助金だから出ていないのですか。

○福祉医療機構企画指導部長
 どういう項目で括るかという括り方の問題だと思いますが、41頁の資料は、事業仕分けを受けたときに、医療関係の貸付けはどういう政策的な取組みをしているか非常にわかりにくいというお話があって、とりあえず私どものほうの1つの括り方として、この左側にあるような件数の取り方をしている資料が手元にあったので、ご紹介しようと作成したもので、その資料がわかりやすいかと思い今日もお配りしたものです。この括り方が医療施設に関する融資の政策メニューの括り方として唯一というわけではなく、例えば福祉計画というのは、介護基盤の整備の話になりますので、療養病床の転換と重なってくる部分もあります。ですから、どういうカテゴライズというか、線引きをするかは、いろいろな選択の仕方があると思いますが、1つのわかりやすい選択というか実績をとった形として、お示しをしたということです。

○真野委員
 というのは、再生基金というのは先ほどご指摘もあったように少し金額も減りましたので、どういう形に使われたかというのが見えるといいなと思ったのですが。

○福祉医療機構企画指導部長
 再生基金については、平成21年度においては。相談は来ていると思いますが、融資の実績はありませんでした。耐震化は事業規模が大きいので、まだ初めのほうですけれども、それなりの数字が出ていますが、地域再生の関係は、補正予算等で基金ができて、それが自治体に話が行って事業者にも伝わり、手続きを取って融資の相談に至るまでには時間のラグがありますので、本格化するのは平成22年度以降だと思っております。

○真野委員
 わかりました。もう1つだけすみません。57のスライドで私の理解が悪いのかもしれませんが、このリスク管理債権比率というのは、もちろんきちんと管理することによって比率が減るという側面はあると思いますが、経営状態や社会環境の悪化によっても高くなると理解していいですよね。

○福祉医療機構企画指導部長
 はい、そうです。

○真野委員
 そうしますと、この最近の変化というのは、ずっと悪くなっているわけですよね。それはわかりますが、今回下がったというのは先ほどいろいろ理由を言ってくださいましたが、環境が良くなったというよりも56頁の3つの理由のほうが大きいということですか。

○福祉医療機構企画指導部長
 端的には、金融検査マニュアルの基準の考え方が整理されたというのが大きいと思います。それから、環境が厳しい状況は正直言ってあまり大きく変わっていないと思いますが、ただ若干、昨年この場でご説明させていただいたときに比べると、診療報酬も今年の4月にはプラス改定でしたし、介護報酬も人材の処遇の底上げということで、なにがしかのプラスの改定は行えるようになってきています。ですから、厳しい中でも少しは風向きが変わるのではないかという期待感が出始めたのは事実だと思います。

○真野委員
 だから、リスク債権の話は違いますよね。新たに借りるという話ではなくて、過去の話ですね。

○福祉医療機構企画指導部長
 もちろん、過去の話です。

○真野委員
 そうすると、診療報酬はまた最近の話だから関係ない。というのは、一般的にはむしろ倒産も増えているという話で、そんなに経営環境が良くなっているという認識はないけれども。

○福祉医療機構企画指導部長
 大きく状況は好転していないというのは、おっしゃるとおりだと思います。ただ、倒産件数は若干頭打ちになってきているように思います。確かに過去に貸付けたものではありますが、例えば報酬が若干でも改定されて、特に急性期の医療のようなところにウエイトを置いた形での報酬改定がされた中で、少しずつでも収支が良くなりますと、53頁を見ていただくとわかりますように、リスク管理債権と一言で申し上げましたが、本当に破綻した債権と、6カ月延滞と、3カ月延滞と、条件緩和しているものとあるわけですので、条件緩和しているようなものであれば、収支が少しずつ改善するだけでも正常化していくものはあります。実際、私どもが現場に行って相談をさせていただき支出等の効率化が図られて収支状況が少しずつ変わっていく中で、条件緩和債権が正常化していく事例もあります。そうした効果が若干は出ているかと思います。
他方、冒頭で真野委員がおっしゃったように、経済環境がいちばん大きく効いているというのはそのとおりで、その意味でいうと、もともとの中期目標の1.56というのは非常に厳しい目標をいただいているかと思っています。そういう中では、かなり債権の管理については成果が上がってきているかと思います。ですから、先ほども申し上げかけたように、もう少し違う評価もあるかとは思いましたが、結果的に数字がクリアできていないので、B評価とさせていただいているということです。

○真野委員
 ありがとうございました。

○松原委員
 1つ目は質問で、2つ目は意見です。質問は、個人保証免除の要件としては利率をプラスすればいいだけで、持ち分ありなしなどは関係なしということでしょうか。

○福祉医療機構企画指導部長
 金利差だけです。

○松原委員
 2つ目の意見は、先ほどから出ているリスク管理債権比率のことです。昨年のこの評価委員会でも申し上げましたが、WAMさんの大きな存在意義は、民間金融機関の手が出せないようなところをきめ細かくケアしながら見ていくところにありますので、あまりリスク債権比率がこんなに低いよと言われましても、本当にあるべき機能は果たしていらっしゃるのですかと言いたくなるところですし、第1期実績の平均で1.56になっていますが、この頃はまだまだ医療・福祉の環境が、いまと比べればもっと良かった時代の数字ですので、都銀でさえこの数値は達成できていませんから、それを考えると本当にAでいいのではないかなと思います。これは最後の意見です。

○上野谷部会長
 昨年もこういうことが出ましたが。

○福祉医療機構企画指導部長
 確かにそこは、中で自己評価の議論をさせていただいたときも、議論が分かれました。ただ、比較的厳しめにそこは見たということです。
 それから、松原委員が言われた機構の役割というのは、いかに医療施設や福祉施設に地域でしっかり存続していただいて、必要なサービスの提供体制を維持できるかにある、我々はまさにそういう気持ちで業務を行っておりますので、支援に入って存続する形の中で、これを解消する努力をここ1年、特に力を入れて実施しております。

○真野委員
 関連でいいですか。先ほどのスライドでも、ほかの政策金融の管理比率がもっと高かったですよね。逆に、そういう議論は出ていないのですか。つまりWAMさんの中で、本来の役割から見ればある程度高いのは当然だという議論はあるけれども、ほかの政策系の金融機関は監督が違うのでしょうがないのでしょうけれども、何が言いたいかというと、こちらでこれだけ高いのに、WAMさんはこれだけ頑張っているのに難しいではないですか。だから、全体のそもそもこういう政策投資は若干ハイリスクなのだというようなコンセンサスというのが、ほかのいくつかあるところでは得られないものですか。政策金融機関に関してです。それは、やはり監督官庁が違うからなのか。というのは、どうしても中でこうやって議論をしていると、確かにそれはごもっともの話だけれども、2.49の数字が適正なものなのかどうかがよくわからないです。そうすると、1.5いくつは最初は厳しいかもしれないけれども、ほかの人は違うかもしれませんが、金融の素人から見ると高いのか低いのかはわからなくて、一方ではほかのものに比べるとすごく低いし、都銀よりは高いかもしれないけれども、それが適正なのかどうかというのをなかなか評価しにくいのです。意見とも何とも言えないような話ですが。

○福祉医療機構企画指導部長
 そこのところは、我々としては、医療施設や福祉施設の地域での存続を最優先で考えておりますから、ある意味ではなるべく緩やかな融資条件を設定するなり、そのあとの管理も緩やかに行いたい、それが使命だという気持ちがありますが、その一方で、これは理事長が昨年職員と共に作られた民間活動応援宣言の中にも書いてありますが、健全性というのも必要になってくると思います。我々は、ある意味では金融機関的な仕事をしているのも間違いないことであって、財源の一部を財投機関債等を発行して市場から調達していますので、市場の方々は金融機関としての健全性にどういう努力をしているかということも、かなり関心を持っておられます。ですから、そこは二律背反のことをこなしていかなければいけないという難しさはあります。この点については今後第3期の中期目標等をお考えいただくときにも議論になると思いますので、各委員からもいろいろご意見をいただいて、また厚生労働省等関係省庁ともよくご相談しながら考えていくということかと思います。現時点では、少なくとも定められた数字に対しては、ここにあるような努力をして、こういう水準を維持しつつ、なおかつ地域の提供体制に支障が生じるようなことがないよう頑張っております。

○福祉医療機構理事長
 私からも繰り返しではありますが、私どもの経営の目標というのは、お客さま目線と健全性という2つでチェックしているわけです。ただ、お客さま目線ということで、私どもが単なる金融機関ではなくて、この貸付を通して福祉と医療の向上に資するのだということと、一方で金融機関としての健全性を求められて、どこに置くのかというので、この数字が低いから胸を張れるかは、政策金融機関としてのものではあろうかとは思います。この目標が1.56とあるもので、私自身は政策金融機関としてはかなり厳しいとは思っていますが、これは目標でありますので、これに向けていろいろな手を打っていくということです。我々政策金融機関として、先ほど1、2、3でご説明したように、打てる手はきちんと打っていこうではないかということで、取り組んでいるつもりです。

○真野委員
 当初の目標は、たしか相当前に出ているものだと思いますが、これが変わることも当然あり得るのですか。1.5いくつというのは、よほど根拠が明確でないと変えられないのですか。

○社会・援護局福祉基盤課長
 いまのご質問ですが、1.56自体は中期目標で厚生労働省から機構にお示しをしておりますので、私から申し上げますと、基本的には、ほかの様々な独立行政法人に対する数値目標もそうですが、各期に数値目標を定めて、これでお願いしますと言っているものの中でも、これは特に重大なものだと思います。それは、5年間なら5年間の中期目標期間で、トータルで達成をしていただきたいということで、途中の期間で一部のギザギザのものがあっても、トータルでこういうことをやっていただきたいということでお願い申し上げているものです。

○真野委員
 その時々の政治的な背景等、いろいろな部分もあるのかなと思ったのですが、それはしょうがないですね。ありがとうございました。

○上野谷部会長
 どうもありがとうございました。ご意見はありますか。

○大島部会長代理
 1点だけですが、例えば福祉貸付事業で児童福祉関係そのほかに、こういう形で出ていますが、もともと税金ですね。そして、非常に保育所が足りないということで政策によって作られていて、あるいは耐震がどうしても子供の命や利用者の命を守る、これはお客さまというよりも国民の命と暮らしと、子供たちの未来をということで作っているわけですから、それに利子を付けたり保証人を付けたりということで、その数値目標がどうだったかというのがどうも私の中に馴染まない。もともと税金の中だから、そこら辺は返せない場合はどうするのかとか、それが不要になるのかどうかというと、どうも馴染まないのではないか。ですから、次の何年計画のときにこういうものを外していくということ、どうしても政策上、これは必要だというものは外していくということができるのでしょうか。先ほどから聞いていて、医療はわかりませんが、福祉関係は特になかなか馴染まない議論だと思って、ほとんど私どものように普通に生活していると、この辺のことはわかりませんし、出産一時金に関しても、どうしても間に合わない場合そこに利息が発生してというのも何か馴染まないような気がします。その辺は、どんなふうに考えたらよろしいのでしょうか。

○福祉医療機構企画指導部長
 まず、福祉施設のほうですが、これは事業仕分けのときも、貸付けという仕組みではなくて例えば補助金で整備をしたらどうかというお話もありました。すべてを補助金で見ることになりますと、対応できる施設の数も当然限られてきますので、そういう意味で一部は地方の交付金等で行うにしても、ある部分は貸付けという形での取組みが必要になると思います。そのときに、先ほどもご説明したように、貸付条件を耐震化に関する整備等については、当初の5年間は我々が調達した金利の逆鞘で、調達した金利よりも低い金利でお貸しする取組みを行っておりますが、一方で民間の方が医療施設なり福祉施設を整備された場合には、それは1つの資産として残る面もあるわけです。その辺のバランスの中で、一部金利をいただくものも必要になってくるのかと思います。ですから、そこは政策の必要度といいますか、どれほど公的なお金を投与して実施するべきかという国民の判断によるのだと思います。それが端的に申し上げて、我々の場合だと貸付の場合の条件、金利等の設定の仕方にも影響してきていると思っています。ですから、必要度の高いものについては、より有利な条件での貸付、ほとんど調達した金利そのままでお貸しするようなメニューもたくさんありますので、そういうことで実施させていただいております。
 出産育児一時金の件も、確かに国の制度改正で医療機関側に負担が生じる話なので、利子を付けるのはどうかというご指摘は確かにありました。一方で、医療機関を運営されている方には、ご自身で資金繰りをされて、その間をしのがれている方もありますし、民間の金融機関との関係で、なにがしかの金利を払って短期の借入れをしてしのがれている方もおられます。そうしたいろいろな選択肢がある中で1つの選択肢としては、無利子とするのは、財政当局ともご相談しましたが、なかなか難しいだろうということになりました。ただ、ここで設定している0.8という金利も、最近低金利ですから、それほど効果が見えてこないかもしれませんが、非常に低い金利であるのは事実で、そうしたことを考慮しながら取組みをさせていただいているということかと思います。

○平井委員
 教えていただきたいです。経営改善支援で指導をされてセミナーも開かれていまして、62頁に出ているのは収入と費用で、収入が勝っているという意味ですね。

○福祉医療機構企画指導部長
 はい。

○平井委員
 その指導をされて、指導を受けた機関などが、どの程度経営等々に改善が見られたとか、そういうのは調査をされていますか。

○福祉医療機構企画指導部長
 実は前回、今年の3月のこの部会の場だったと思いますが、評価の視点の見直しのご議論があったかと思います。あのときに、政策評価官室からも、今後はなるべく数値目標的なものを入れて下さい、年度計画を作るときは具体的な目標値を入れて下さいというお話があって、その1つとして経営改善についても、今後は事業者が事業の改善に役立ったかどうかというところをフォローアップするような指標を年度計画には入れました。ただ、それは今年の3月に入れましたので、残念ながら今回の平成21年度の結果には間に合っていません。あえて申し上げますと、先ほど満足度調査をご紹介しましたが、満足度で見ると大体74、5%の方が満足されていますので、それなりの評価はしていただいていると思っておりますが、問の設定の仕方が満足度を聞いておりますので、直裁に事業の実施改善に役立ったかというような聞き方は、今年は間に合っておりません。後ほどまたご紹介しますが、ほかに退職手当共済事業や長寿・子育て・障害者基金事業の関係でも評価の視点の見直しで入れた項目がありまして、そちらは少し無理もしたのですが、今年度に調査をして今回その指標を取った部分もありますので、ご指摘のような点についてはこれからも取り組んでいきたいと思っております。

○平井委員
 ありがとうございます。

○上野谷部会長
 それでは、委員の方は評価をお願いします。全体としては、法人としては非常に謙虚に評価をされている。ここのところは毎年、委員のほうが。

○福祉医療機構企画指導部長
 先ほど、松原委員からAでもいいのではないかとおっしゃっていただいたのは、本当にありがたいのですが、そこは難しい面があるというのが率直なところです。

○上野谷部会長
 しかしということですし、本当に国民目線で見た場合に、いろいろなお考えもありますので、皆さんに説得ができますようにという意味でBを付けておられます。そのことも踏まえつつ、それぞれの評価をお願いします。
 それではPart3にまいりましょう。

○福祉医療機構企画指導部長
 3つ目のパートについてご説明します。63頁です。Part3は、全部で5つの評価項目があります。NPO等の民間の福祉医療活動を支援している長寿・子育て・障害者基金事業の関係が2つ、退職手当共済事業と心身障害者扶養保険事業、WAMNET事業の関係です。
 長寿・子育て・障害者基金事業の関係については、平成21年度までは2つの評価項目があります。前段が、66頁の助成を行う募集の段階までの取組についての評価項目です。これについて、67頁をお開きください。これも理事長から概要をご説明したときに話題に上りましたが、行政刷新会議の事業仕分けの本格的な実施は今年の4月でしたが、それに先行する形で、昨年11月に行政刷新会議の事業仕分けがありました。その際、当機構の関係では、この長寿・子育て・障害者基金事業が見直しの対象にされまして、67頁に書いてありますが、基本的に国から助成費を捻出するためにいただいていた基金は国庫に返納することとするが、助成事業の重要性そのものは理解できるので、毎年度厚生労働省を通じて、助成金に充てる費用を補助金として予算要求するようにという仕分け結果をいただきました。その関係で、今年の事業評価に当たっては、少し変則的な事業のご説明となります。67頁の図をご覧いただければと思います。
 長寿・子育て・障害者基金事業については前年度等の事業の結果を、PDCAサイクルで評価の結果を反映する形で7月に募集要領を策定して、9月から10月に翌年度の事業を募集します。実際には、12月から3月に翌年度の助成対象事業を決定して、年度が明けた4月から助成事業を実施していただく流れになっていたのですが、9月から10月の募集を行った段階で事業仕分けがありました。それで、前回の部会においても既に募集を行っているものについて、円滑な移行を図るようご指示をいただいたところですが、厚生労働省にも随分お骨折りいただいて、12月から3月の限られた時間の中で、社会福祉振興助成費補助金という新しい補助金を作っていただいて、その補助金に基づく事業を立ち上げることができました。9月から10月に募集したものについても、基本的に今回の制度の対象にするということで、12月から3月に審査を行いました。「平成21年度」と「平成22年度」の間に「社会福祉振興助成事業開始」と縦に書いてある隣の「907事業」というのは、旧の募集の事業の中から内容的に新の事業に引き継げるだろうというものを対象に採択されたものです。
 これ以外に、その横にあるように、今年5月に募集要領を策定しまして、6月いっぱいで追加の募集を行っております。これは完全に新制度に移行した枠組みでの募集になっていますが、幸いにして、これも7月7日現在で413件の応募が来ておりまして、これから外部の委員に選定・採択をお願いして決定していくということです。ただ、実施時期についてはこれからの選定になりますから、実施期間がどうしても丸1年ではなく、多少短くなると思いますが、そのような事業の進め方になっております。
 68頁をご覧いただくと、これは旧事業の関係ですが、外部の有識者からなる基金事業審査・評価委員会、これは潮谷長崎国際大学学長が委員長をされている外部有識者の委員会ですが、そこで平成19年度助成事業の評価結果を反映する形で平成22年度の募集要領が策定されました。その際、右側の四角の中にあるような助成区分の名称について、従来は一般分、特別分、地方分といったように、制度を知っている人には分かっても一般には分かりにくいものでしたので、「政策関連」「先駆的活動」「地域活動」という分かりやすい形に直したり、重点助成分野についても、17分野あったものを、少し絞り込んで8分野にしたり、そうした見直しを行いました。
 さらに、69頁にあるように、重点助成分野については、17分野から8分野に見直しを行っていたのですが、行政刷新会議の仕分けの結果を踏まえた新制度では、さらに絞込みをして4分野にしております。そして、4つの重点助成分野のいちばん下、4つ目にあるように、従前の事業では必ずしも明確ではなかった「貧困問題等への対応」といった視点が、新しく国からのご要請もありまして、組み込まれた形で事業化が図られ、その実施を私どもが受ける形で事業が動き出しております。
 69頁の下に「平成21年度におけるNPO等への柔軟な助成」と書いてあって、合計の所で34件、1億5,700万円という数字が入っております。ちょっと紛らわしいのですが、これは平成21年度にも追加の募集を行っております。先ほど67頁で説明させていただいたように、募集は前年の9月から10月に行うのが原則ですが、団体の中には事務に不慣れでタイミングを失する所もありますし、事業実施のタイミングで、その時期ではないときに申込みをしたいという団体もありますので、弾力的に助成をしようということです。平成21年度は年度が新しく始まった6月にも追加助成を受け付けるといった工夫もしております。今回は事業仕分けの関係で、たまたま2回に分けて募集することになり、それが踏襲される形になりましたが、利用者が利用しやすい支援の仕方というものを引き続き考えていこうとしております。
 70頁をご覧下さい。助成事業の選定は事業仕分けがされてからの話ですが、事後評価の結果を、募集要領だけではなく、選定の段階でも反映させております。常にフィードバック、PDCAのサイクルを回して、より内容の濃い事業をしていただけるように助成ができるような取組みをしております。その関係で具体的に採択された案件は、右側の表のとおり907件です。その内訳はご覧のような内容となっておりまして、先ほどご紹介した貧困対策等の事業も64事業という状況にあります。
 71頁です。これまでの助成事業の中期計画上の目標として、助成した事業のうちの85%以上が継続されているという目標を定めておりましたが、実績は95.2%で計画を達成しております。その成果としては、その下にある黒っぽい四角に「信用度が向上した」「組織が活性化した」「会員が増大した」等いくつかの声をいただいておりまして、我々もある意味では励まされております。ここのところで先ほどの平井委員からのお話に関わりますが、3月にアウトカム指標の追加として、長寿・子育て・障害者基金事業については、助成先団体のうち80%以上の団体から、助成事業を通じて新たに他団体・関係機関等との連携等の効果があったとの回答が得られているかという指標を追加いたしました。その際には、これについては平成22年度の事業評価からと理解しておりましたが、基金事業部、現在の助成事業部のほうで、6月に助成事業を受けた方々の自己評価の集計を急ぎまして、71頁のすぐ上の所にあるように、結果としては92.0%の団体からそのような回答をいただきました。そうした点で評価の視点にも応える形で成果が上がっているという状況であろうかと思います。
 72頁の独創的・先駆的事業ですが、中期計画で独創的・先駆的事業の割合が8割以上という目標に対しては、83.5%と実績が上がっております。73頁の事務処理期間についても、目標30日以内のところを15.3日、それから基金は今年度中には国庫へ返納することとしておりますが、これまでの運用実績は、財投機関債を中心に運用していることもありまして、下のグラフにあるように、わずかですが国債利回りを上回る運用ができております。長寿・子育て・障害者基金事業の最初の評価項目については、しっかりした対応をさせていただいていると思っております。
 75頁からは助成事業を実施した後の評価、さらには助成事業の成果をいかに普及させていくかといった観点からの評価項目です。76頁をご覧下さい。私どもの助成事業の最大の特色は、76頁のシートの左上に書いてありますように、助成団体による自己評価、外部の有識者が入って実地で行うヒアリング評価、報告書を出していただいて評価する書面評価の3つの切り口で重層的に事業評価を行っているということです。このような仕組みを導入するときは、正直申しまして、助成団体の負担になるのではないかといった議論もありましたが、実際にはこれがかなり定着してきておりまして、それが先ほどから繰り返し申し上げているPDCAのサイクルであり、団体にとっても、助成事業を行う私どもにとっても、成果として現れてきているという状況があります。
 77頁の職員の専門性向上についての取組みですが、右にある「民間活動支援強化プロジェクト」は、基金事業部の職員を中心に、機構内で関心を持っている有志の職員を募って、民間活動支援強化プロジェクトチームという1つの合議の場を作っております。ここでは関係団体の方との意見交換をすることによって、より質の高い助成事業ができるよう、職員の資質の向上に取り組んでおります。また、事後評価を行うだけではなく、評価を行った後にフォローアップの調査を行っておりますが、1年経過後のフォローアップに加えて、平成21年度からは助成実施から3年経過後の事業についてもフォローアップを行うこととし、一定の期間が過ぎたものについてもしっかり追跡して成果を確認していこうという取組みをしております。
78頁は事業報告会、ホームページ等でも成果の普及について紹介しておりますが、時間の関係で説明は省略いたします。
 3つ目の項目は退職手当共済事業です。退職手当共済事業については、昨年の私どもの自己評価ではS評価とさせていただき、この委員会でもS評価をいただきましたが、今年度も自己評価はS評価とさせていただいております。その理由は、81頁にあるとおり、平成21年度におけるお客さま目線での具体的な取組みとして、退職手当金の給付回数について従来の月2回を月4回に改め、こまめに給付ができるようにしたということがあります。また、その下にあるように、退職手当共済制度については、すべてではありませんが、一定の対象者については施設から払っていただく掛金とともに、費用構成の中には国、都道府県からの公費が含まれております。国からの費用負担はともかくとして、都道府県からの補助金の納付が遅れて退職手当金の支給が遅れるという事例が過去にはありましたので、そのようなことがないようにするため、都道府県の補助金の早期入金のお願い等の徹底を行っております。そのため平均所要期間も37.6日とかなり短縮できております。90日とか80日かかっていた時代というのは、いま申し上げたような資金繰りの問題等があったわけですが、現在はここにあるような改善がされております。
 82頁は、先ほど業務・システム最適化のところでも少し触れましたが、昨年退職手当共済事業がS評価をいただいた1つの要因は、届出書類の電子化の推進でした。先ほども説明申し上げたように、75%の利用率がさらに伸びて79%になっております。82頁の左下の図をご覧いただくと、細かい字で申し訳ないのですが、棒グラフの下に参考となる一般の行政手続きのオンラインの利用状況の実績の数字をお示ししてあります。国が27.5%、他の独法等が56.1%、地方公共団体が27.6%というのが現在の平均的な数字ですが、これらに比べても相当高い利用をしていただいております。この結果として、右側にあるように、単に事務手続きが簡素化されるだけではなく、矢印で絵が描いてありますが、電子化されてデータがまいりますので、誤記や転載誤りといった書類上のエラーの発生が10分の1に減少いたしました。それによって事務負担が軽減されて給付事務により多くの時間を割くことができるようになり、より短い日数で支給することができるという非常に良い循環が起きています。
 ここでも先ほどのアウトカム指標、評価の視点の変更の話がありまして、退職手当共済事業の共済契約者に対する利用者アンケート調査では、70%以上の契約者から事務届出システムにより、事務処理が簡素化されたとの回答が得られているかというアウトカム指標を追加しております。これについても本来は平成22年度の事業評価からを想定しておりましたが、平成22年4月に追加のアンケート調査を行うことができ、82頁の右下にあるとおり、88%の利用者がそのような評価をいただきました。高い成果が上がっているのではないかと思います。利用率が着実に伸びたことによって、業務の誤りを大幅に減らし、効率化を生んでいるという点と、アウトカム指標で見ても高い評価をいただいているといったことで、この事業については引き続きS評価とさせていただいております。
 84頁からは心身障害者扶養保険事業です。この事業については、本日ご欠席の五十嵐委員から昨年ご指摘がありましたが、国のほうで基本的な枠組みが制度化されており、私どもとしては実施事務を受けている形ですので、独法として直ちに改善を図る余地は少ない面があります。しかしながら利用者である障害者の立場に立って少しでも利用しやすい制度とするために、87頁以下の取組みをしております。具体的には、年一度、心身障害者扶養保険事業の財政状況について外部の有識者に検討をいただき、その結果について厚生労働省をはじめとして、当事者である障害者の関係団体、加入者に対して説明行っております。外部有識者からなる心身障害者扶養保険事業財務状況検討会については、元みずほ銀行年金研究所顧問の戸田氏を委員長として、外部有識者の方々に財政状況の検証をしていただいております。
 この事業の実施に当たっては資産運用がありますが、その運用については88頁にあるように、早稲田大学大学院ファイナンス研究科の米澤教授を委員長として、外部委員による心身障害者扶養保険資産運用委員会において、基本となる運用資産構成(ポートフォリオ)を策定していただき、運用を行っております。ちなみに厚生労働大臣からは、運用利回りとして年2.8%は達成するようにということで現在の心身障害者扶養保険制度は設計されております。これに対する結果は89頁のいちばん下、頁の数字のすぐ上の黒塗りの所に書いてありますが、平成21年度は大臣より指示されている運用利回り2.8%をほぼ倍上回る5.7%という水準を達成することができまして、剰余金が16億円出ましたので、その16億円を充てて繰越欠損金もその分だけ解消することができました。
 そのような意味では、心身障害者扶養保険に関する私どもの自己評価はAとすることも検討したのですが、運用利回りの結果というのは、基本ポートフォリオを決めた後は市場の運用環境次第というところがあるわけです。89頁の右側をご覧いただくとお分かりのように、今年の場合は外国株式が非常に高い運用益が出ておりまして、基準に対して私どものほうが1.65%下回っておりますのも、やはり外国株式の構成割合が少し少なかったために、結果としてそのような成果となったということであります。ですから、私どもが直接運用で裁量を発揮したというよりは、市場環境の結果、昨年は▲5.89%でしたが、今年は5.70%ということで、そのような意味でB評価ということでこの事業の評価をさせていただいております。繰越欠損金については先ほども少し申し上げましたが、90頁の下にありますように、平成19年末に制度改正があって、公費を投入することで繰越欠損金の解消を目指しましたが、平成20年度は運用環境が非常に悪かったために、112億円の繰越欠損金が残りました。今回、そのうちの16億円が解消されて96億円の繰越欠損金が残っておりますので、これについては引き続き解消に努めていきたいと思っております。
 94頁からはWAMNET事業です。WAMNET事業については昨年の評価委員会でもいろいろご意見をいただきましたが、厚生労働省の事業仕分けでも議論の対象になりました。時間が限られていたので、先ほどの政策評価官室からのご紹介は簡潔なものでしたが、仕分けをされた方々からは非常に高い評価、ある意味では予想外に高い評価をいただくことができたと思っております。一方で、一定の費用がかかっていることもあって、仕分けの結果としては、私どもが提供している情報のうち、国と重複する行政情報については国へ役割を移す、つまり、少なくとも私どもの事業としては廃止することとされ、むしろ、介護事業者等の事業者情報が高く評価され、利用されているようですので、そちらのほうで引き続きWAMNET事業を実施していくという方向性をいただいております。
 WAMNETの実績は98頁にあるとおりで、昨年、ヒット件数は2億件を超えたと申し上げましたが、今年はさらに伸びて2億1,610万件を超えました。中期目標上はヒット件数ではなく、いわゆるポータルサイトへのアクセス件数が1,400万件以上であることを目標としておりますが、昨年はこれを下回ったものの、今年は1,412万件とこの目標についても達成しております。一部専用サイトを設け、登録をいただいてからご利用いただく部分がありますが、その利用機関登録数についても目標とする7.2万件を上回る8.1万件の会員登録をいただいております。また、利用者の満足度調査を行っておりますが、これも90.3%と非常に高い評価結果となっております。
 101頁はWAMNETの自己収入の拡大についてです。WAMNET事業については、過去の平均で申し上げますと、運転・保守に約8億5,000万円という費用がかかっておりました。これをシステム・最適化計画では5億円ぐらいに、新システムの開発費用を除けば5億円ぐらいに効率化していくこととしておりましたが、この場でも、より効率化を図る必要があるだろうとのご指摘をいただきました。そのような観点から、自己収入の拡大を検討するようにとのご指示を中期目標でもいただいており、具体的には、業務・システム最適化計画では新システムが平成22年7月から動く予定でしたので、平成21年度末までに自己収入の拡大策等についての一定の結論を得るということが中期目標に書かれておりました。
 その検討の結果ですが、結論は101頁の白抜きの部分に書いてあるように、例えば専用サイトの利用者に限って利用料を徴収するなど、収入拡大を検討するということでしたが、後段に書いてあるように、専用サイトというのは、会員に自由に書込みしていただき、情報をどんどん膨らましていくことに価値があるわけですから、情報を提供した上に費用まで取られるということになると、心理的な抵抗感もあるのではないかということで、現時点での費用徴収は難しいのではないか。また、平成20年度の実績評価をいただいた場で、何人かの委員の方から、WAMNETが提供している情報というのは万人に等しく、要するに経済的な負担能力にかかわらず利用できることが必要な情報が大半であろうという、そのような観点からは収支の改善という観点だけではなく、本来の使命ということも考えた運営が必要ではないかといったご指摘があったこと等も踏まえて、今回は直ちに収入拡大として何か新しい取組みをすることは見送るという結論とさせていただいております。しかし、事業仕分けの結果を受けて、いずれにしても業務・システム最適化計画を再始動することにしておりますので、実施のタイミングと合わせる形で、少しでも自前の収入を得ていくことができないか。もちろん、本来の趣旨を損なわない範囲でという制約を付けた上で、今後も引き続き検討していきたいと考えております。
 ちなみに、WAMNETの自己収入の実績ですが、平成21年度は1,072万円、これに厚生労働省の看護師の養成施設等の事業報告システムに場を提供している費用として、厚生労働省から900万円ほどいただいておりますので、合計で2,000万円ほど自己収入はありましたが、今後の課題として、引き続きその拡大について取り組んでいきたいと考えております。現状の費用について申し上げますと、事業仕分けに臨む過程で最適化計画は一旦中断しましたが、いくつかの見直しを行いました。具体的には、ハードウエアの更新時期が来て、本来は換えなければならない機器について、若干のリスクはあるのですが、引き続き使うことにするとか、WAMNETを使っている方が使用方法がわからない際等に問い合わせるヘルプデスクというのがあるのですが、その体制を簡素化して費用負担を減らすとかすることにより、現在7億円程度までは運営費を削減することができております。事業仕分けの場では、そこからさらにもう1億円ぐらいの費用の縮減を考えていきたいということを、私どもからご説明させていただきました。そのようなことも含めて、今後、最適化計画の中身を一部見直し、再始動していきたいと思っております。以上です。

○上野谷部会長
 ご質問、ご意見があればお願いいたします。

○真野委員
 確認で恐縮です。先ほどのWAMNETに対してのご意見、要は行政刷新会議からの話が少し出ているとのことですが、私が遅れてきたせいか、見方が悪いせいか、ここにWAMNETの話というのはどのように出ているのでしょうか。

○福祉医療機構理事長
 厚生労働省の省内事業仕分けの対象となったところです。

○福祉医療機構企画指導部長
 参考資料1の方に記載されております。

○福祉医療機構理事長
 行政刷新会議では貸付事業のみが対象となっております。

○福祉医療機構企画指導部長
 参考資料1のWAMNET事業についてのコメントが書かれている部分をご覧ください。基本的に改革案が妥当とされた方が4名おられて、不十分という方の中でも、「法人で」というのは当機構でということだと思いますが、「法人で事業継続するが、更なる見直しが必要」という方が2名ですから、妥当の4名とこの2名を足すと6名です。つまり、過半の方々は少なくともWAMNET事業を何らかの形で機構が実施していくことをご支持いただいておりますし、下のコメントにあるように、いくつかの評価をいただいたということです。

○真野委員
 そうすると、いわゆる事業仕分けで話題に出なかったのは、そもそも選ばれていなかったということですか。

○福祉医療機構企画指導部長
 行政刷新会議では対象にならず、貸付事業に特化した形で議論されました。

○真野委員
 そうですか。それには何か理由があるのですか。

○福祉医療機構企画指導部長
 行政刷新会議で仕分けを受ける前段階に、これは理事長にも行っていただきましたが、事務当局から、仕分け人の方も一部国会議員の方などが入っていましたが、事前のヒアリングがあり、そこで事業の概要や実施状況を説明いたしました。その際WAMNETについても説明いたしましたが、経営支援などの事業もそうだったのですが、比較的パフォーマンスがいいということで、そこではあまり厳しいご意見はありませんでした。

○真野委員
 よくわかりました。

○上野谷部会長
 その他何かあればお願いいたします。

○大島部会長代理
 昨年、WAMNETについていろいろと質問したのですが、例えば行政に関することは厚生労働省のほうでということが1つあると同時に、例えばこの介護事業の情報とか、その他の関連の情報などといったものは、地方自治体の窓口から取り込んだり、いろいろな入口があるわけですが、そこを全体で一体化できるような方法の開発というのは進められているのでしょうか。介護事業に関しては地域でかなり充実したものを自治体が作っている場合もありますから、そうなると本当にこれをこちらの機構でする必要があるのかどうか。というのは、今どこを見ていいか分からないぐらいに件数が多く、そして各事業所は自分の所がいちばん上にくるようにするために、例えばGoogleでいちばん上にくるにはどのような操作をしたらいいかということにかなり力を入れているということを聞くのです。一般人、特に介護の必要があったり、福祉の事業が必要な人間が行き当たるには非常に難しくなってくると思うのですが、その辺は既に次の段階で考えられているのでしょうか。そうだとすると、経費も節減されるのではないかと思います。

○福祉医療機構企画指導部長
 今回、厚生労働省内の事業仕分けでも、私どものWAMNETは、実は行政情報でも評価はされているのですが、やはり介護事業者や医療機関の情報などといった点で評価されたと思います。大臣のご意向が特に強かったと思うのですが、行政情報はこれから国がしっかりやっていくということをおっしゃっていましたので、そのような意味で言えば、自治体の関係も含めて、今後は1つそのような枠組みができていくと思います。いままでは行政を補完するような形で私どもがそこまで広げてやっていた部分があったと思いますが、今回の仕分けを1つのきっかけとして、そのような役割分担は今後進めていくことになると思います。
 もう1つ、例えば私どもの介護事業者の情報ですが、最近は介護事業者の情報を提供しているサイトはたくさんあって、行政刷新会議のヒアリングの場などでもそのような議論がありましたが、私のほうからは、私どもの事業者情報では報酬の加算に関する情報というものも付加されているということを説明させていただきました。ケアマネージャーが介護計画を作られるときに、報酬の情報が非常に有益なようで、ケアマネージャーの団体が調査した結果では、ケアマネージャーの約74%がWAMNETから情報を取っていると回答しております。こうしたことなどが、評価された1つの背景というか根拠としてあったということです。福祉医療機構が持っているノウハウとか切り口とかを活かした情報提供ということで言えば、当機構でこの事業を続けていく意義はあるだろうというのが1つです。
 それから情報提供に限らずセミナーなどもそうで、最近は福祉医療のセミナーがたくさんあるのですが、厚生労働省の事業仕分けの際に、事前に事務方がプロジェクトチームを作り、機構のサービスの利用者をヒアリングしたのですが、その際には、WAMNETが提供する情報ということで、正当性といいますか安心、信頼して利用できるという声がありました。福祉・医療の分野を総合的に支援している組織の情報だということが評価されている部分もありますので、そのような点での事業の継続ということは考えていきたいと思います。ただ、一方でいろいろな事例も出てきていますから、最適化計画を先ほどの行政情報の部分の重複を除くという形でもう一度見直して再始動する中でその辺の検討というか考慮もしていきたいと思っております。

○上野谷部会長
 いかがですか。

○真野委員
 なかなか難しいところだと思うのですが、ちょっと厳しいことを言うと、いまのお話でいくと、長妻大臣が行政でやると言っているものに対しては存在意義がないということになりますね。何が言いたいかと言うと、総合的であるとか、民間ではなくてという言い方がいいかどうか分からないですが、安心であるとか、ここにも改革案が出ていましたが、そういったもののほうを厚生労働省がやったほうがいいという話になってしまうわけですね。

○福祉医療機構企画指導部長
 そこは役割分担の話だと思います。行政情報についても、いろいろな制約がある中、いままでも国は国で取組みをされてきたと思いますが、どちらかと言うと、国のシステムは情報の掲載に時間がかかるなど、WAMNETのほうに利点がある面もあったわけです。ただ、情報の掲載に時間がかかるといったようなことは、取組みの仕方によっては改善していく可能性があるわけですから、そこはむしろ役割分担をして、WAMNETはWAMNETで限られた資源をより効率的に投入していこう、そのような思いで取り組んでいこうと思っております。

○真野委員
 全然とんちんかんなことを言うかもしれません。独立行政法人ではないですが、医療機能評価機構は病院機能評価で点数を付けています。いいか悪いかはちょっと難しいのですが、WAMNETはそのようなことはせずに、単に情報をいろいろ提供しているだけですね。

○福祉医療機構企画指導部長
 評価機構の場合は、まさに調査に行って、調査結果に基づいて評価を示しています。もちろん、今後の機構の事業のあり方として、いまの事業の枠組みを固定しようとしているわけではないので、将来は経営支援などの事業を発展させて、例えば施設の評価のようなことに乗り出していってはどうかという議論もないわけではありません。ただ、一方で市町村単位で見たときには、いろいろな形でサービスの評価の仕組みができつつあるのも確かですので、福祉医療機構として限られた財源なり、人的な制約なりの中で、どの事業を優先してやっていくかということがあると思います。検討材料の1つであることは間違いないと思いますが、いきなり医療機能評価機構のようなことができるかと言うと、少なくとも今はそのような状況にはないと思います。

○真野委員
 ありがとうございました。

○上野谷部会長
 よろしいでしょうか。本来、情報というものは入手するにもお金がかかり、時間もかかるところです。国民のためにという形でWAMNETの場合は非常に適切な情報を提供していただいておりますが、まだまだ工夫の余地があるだろうということと、国としての情報管理、あるいは情報提供もあるでしょうから、役割分担をしながらということでしょうか。役に立つ情報は専門職も、国民も、介護者も、あるいはサービス利用者も必要ですので、充実していく方向でやっていただきたいということに変わりはないと思います。どのようにということで前年度もお金の問題でかかり過ぎではないかという話も出ましたが、今日のお話を聞いておりますと、有効に使うという方向もかなり出ているようです。それでは最後の部分をお願いいたします。

○福祉医療機構企画指導部長
 最後の4つ目のパートですが、ここは4項目あります。年金担保貸付事業及び労災年金担保貸付事業に関するものと、承継年金住宅融資等債権管理回収業務等に関するもの、財務内容に関する事項及び人事に関する事項の4つです。まず、年金担保貸付事業及び労災年金担保貸付事業の関係から説明いたします。資料105頁をご覧下さい。貸付事業を行うに当たっては、平成20年度から運営費交付金で運営費用を賄うのではなく、貸付金利の中に運営費を上乗せする形で、自主財源でこの制度が運用できるようにと、独立行政法人整理合理化計画の中でご指摘をいただいたことから、制度の見直しを行いました。
 平成20年4月から、まさに貸付金利の中に業務運営のコストを反映した形で事業を行っておりますが、その際いたずらに高い金利を設定することなく、適正な金利が反映できているかどうかが評価の大きな項目となります。105頁をご覧いただくと、年金担保貸付事業については、矢印の所にありますように、平成22年2月現在で1.9%、労災年金担保貸付事業は0.9%になっております。年金担保貸付事業と労災年金担保貸付事業ではお金の賄い方が若干違う関係もあって、このように金利に差が出ておりますが、労災年金担保貸付事業のほうは私どもが前身の団体の解散に伴って事業を引き継いだときに、政府出資金として58億円を引き継いでいるため、その出資金をもとに貸付事業を行っておりまして、0.9%という金利を設定しております。
 それに対して厚生年金等を担保にして実施している年金担保貸付事業については、私どもで財投機関債を発行して資金調達し、それを原資にして貸付けを行っております。平成20年4月の段階で、財投機関債を財源に事業を行う形に切り替えたときには、貸付金利を2.6%に設定して事業を行っておりましたが、その後、債券発行の工夫を重ねて、平成22年2月には1.9%、年度が変わりますが、さらに今年7月からは1.8%に引き下げて事業を実施しております。そのようなことができるようになった背景としては、経理部が中心となって財投機関債の発行について努力をし、非常に安い金利で資金調達をすることができるようになったということがあります。
 年金担保融資の関係でもう1つは、借入れをした方々が、借入れをしたがために生活が破綻することがないように、無理のない返済ができる事業とするべきとの視点です。106頁にあるように、返済額を定額にするとか、生活保護受給中は利用できないようにするといった取組みをしていたわけですが、平成22年2月からは、下に書いてあるように4つの新しい取組みの変更を行い、借りた方が無理なく返済ができるように努めております。詳しいことは107頁に書いてありますが、2月からの制度の取扱い変更は、資金の必要性、必要な額について、いままで以上に確認を強化すること、年金が全額返済に当てられるような返済の仕方はやめるということ、返済回数を増やし、1回当たりの返済額を減らすということ、どうしても生活が苦しくなった方については、返済の猶予等の緩和措置に弾力的に応じるということといった取組を行い、借入れをした方が生活に困らないような工夫をしております。
 年金担保貸付事業の関係では、この機会に、本日冒頭でもご紹介がありました行政刷新会議及び厚生労働省内の事業仕分けでのご指摘について、もう少しご紹介させていただきたいと思います。省内の仕分けにおいても、行政刷新会議の仕分けにおいても、基本的にこの事業は廃止するようにとの方向性をいただいております。言い方に若干差はありますが、代わりになる制度を作り、移行期間を取った上で廃止する方向で考えるようにというご指摘をいただいております。その背景にあるのは、先ほども説明したように、年金を担保にして借入れをすること自体が、本来許されないのではないかという問題意識を持たれた方がいらっしゃったということです。そうだからこそ法律で禁止しているのであって、特例的に私どもがこの事業を実施しているわけですが、事業の必要性よりも、年金を担保にすることについての問題性を重視する方がいらっしゃったということが1つ背景にあります。
 これは誤解があったのかもしれませんが、年金担保貸付の借入れをして、生活保護を受けるようになっている方というのは、統計の取り方もあるかもしれませんが、一般に政府で把握している割合で申し上げると約2%です。つまり、100人が年金担保融資を受けていて、2人は生活保護を受けているが、残りの方は普通に返済し、普通に暮らしていらっしゃる。また、生活保護とこの制度の間を行ったり来たりしている方というのは約0.4%ぐらいと言われておりますから、1,000人のうち4人、それを多いと見るかどうかということについては、議論があるのではないかと思っております。また、現在行われているこの制度は私どもが制度を創設したわけではなく、もともとは前身の団体が共済年金等を担保にして借入れをしている公務員の方とのバランスを考えながら実施していた事業です。そのような事業の必要性を重視して、やめるにやめられないために福祉医療機構に承継したという経緯もあるものですから、私どもとしてはこの事業のあり方についてはもう少し議論していただいたほうがいいのかとも思っております。
 2つ目の承継年金住宅融資等債権管理回収業務は、過去に業務を承継した団体が年金保険料をもとに住宅ローンを貸し付けていたお金の回収ということで、過去の貸付を回収する業務の残務を引き継いでいる業務ですので、その業務を淡々と実施しております。110頁をご覧いただくとお分かりのように、融資残高も引き継いだときは3兆円を超えておりましたが、平成21年度末で2兆500億円まで減ってきております。下の表にあるように、毎年元本で3,000億円を超える額、平成21年度ですと3,481億円、利息等で780億円、合計4,260億円が機構のほうに回収されております。これについては法律の規定に従って、翌年度の7月に国庫に納付しており、着実に業務を実施しているということです。
 この関係の取組みで、あえてご紹介するならば、113頁の所です。こうした住宅ローンの回収をする際に、経済動向が厳しくなる中では返済が一時的に苦しくなる方もおられます。そのような方に対しては、113頁の中ほどにあるように、実績で申し上げると1,200件、民事再生の案件を入れると1,266件に対して返済条件の変更措置を講じるなど、弾力的な対応をしております。さらに、これは実際には平成22年4月からの施行ですが、中小企業の金融円滑化法の施行を受けて、今後は返済条件のより弾力的な対応ということも行っていこうとしております。以上が評価項目の2つ目に関する説明事項です。
 3つ目は財務の関係で、冒頭の理事長の資料の中にもありましたが、同じものを重ねてお付けしております。116頁をご覧いただくと、いちばん下の表の右端、法人全体では808億700万円の黒字になっております。ただ、このうちの大半は承継債権管理回収勘定で、利息収入等の回収分が780億円あり、それ以外は保険勘定での心身障害者扶養保険資金の運用益が16億円、年金担保貸付勘定で若干黒字が出て3億8,000万円、そして長寿・子育て・障害者基金勘定で8億円ほど剰余が出ておりまして、合わせますと約808億円の黒字となり、ほぼ収支均衡した運用、収支相償で事業運営がされております。
 119頁の運営費交付金以外の収入としては、先ほどご紹介した経営指導事業収入が4,500万円、WAMNET事業収入が厚生労働省からの委託費も含めて2,000万円あります。120頁の上の表にあるように、財投機関債の発行状況は福祉医療貸付、年金担保貸付それぞれについて内訳のとおりで、平成21年度は合計440億円を発行いたしました。また、保有資産の見直しについては、最近、保有資産の売却等による国庫への貢献ということが問題にされますが、これについても宿舎の売却等の手続きを進めております。宿舎については一度売却手続きを行ったのですが、不動産市況が悪くて売却に至らなかったので、現在再度の手続きを行っております。また、他の公庫と共有する形で運動場を1つ所有しておりますが、これについても平成22年度中に売却に向けた入札手続ができるよう、現在取組みを進めております。
 最後の評価項目は人事に関する項目ですが、昨年もご紹介したように、私どもは独法発足の翌年の平成16年度から目標管理のシステムを導入し、その評価結果を賞与、現在は定期昇給にも反映させるという取組みを行っております。また、平成21年度においては、平成22年度から実施する予定ですが、業務の効率化について取り組んだ職員については、その分だけ評価の評点が高く出るような仕組みの工夫することを人事課を中心に検討し、その実施を図ることとしております。また、職員の数については、平成21年度末で再雇用3名を含めて260名となっております。最後は駆け足になってしまいましたが、Part4の4つの評価項目についてのご説明は以上です。

○上野谷部会長
 いかがでしょうか。

○真野委員
 本質的なことではなくて、先ほどの行政刷新会議での話になると思うのですが、そもそも固定化した資産というか、保険でもいいのですが、そういったものをある程度流動化していくという動きは、貧しい人にではないかもしれませんが、大きな流れとしてありますねと。今回、年金を担保にして融資するという話ですが、そのようなことは意味がないというご指摘だったわけですね。ということは、それは目的が積極的というか、健全なものではないという意味合いなのでしょうか。

○福祉医療機構企画指導部長
 議論としてあったのは、1つは年金担保の借入れをしている方が、どれぐらいの例があるかというのはなかなか難しいところですが、いわゆる遊興費等として借り入れたお金を使ってしまい、その結果として年金の一部を取り崩す形で返済していかなくてはならなくなる、他の収入もあるかもしれませんが、年金は基本的に生計費に当てるものとして想定されているだろうから、結局生活が苦しくなり、最後は生活保護にいってしまうというようなことがあるのではないかという議論がありました。すなわち、1つには使途が遊興費的なものになっているけしからぬ例があるのではないかというご指摘があり、もう1つには生計費の基本となる年金は、担保に取ることは法律でも禁止しているぐらいだから、なるべく保全したほうがいいのではないか、年金を担保にするというのは考え直したほうがよいというご指摘がありました。
 ただ、一方で高齢者の場合は、余程資産があるような方は別として、年齢的な制限で民間の金融機関ではなかなかお金を融通していただけないのが実態です。それは銀行だけではなく、消費者金融なども含めてそのような実態があります。例えば家の改築をしなければいけないとか、冠婚葬祭でどうしても一時的にお金が要るなど、年齢にかかわらず、生活していると一時的にまとまったお金が必要になる場面というのはあろうかと思います。そのような意味で、必要性があるからこの事業が特例的にできて、そこで営利性を追求するようなことが主体ではなく、公的な性格を持った独法であれば、利益追求に走ることもないだろうから特例的にこの事業を行わせる、そのような位置づけだったと思うのですが、そこのところがなかなか理解いただけなかったということがあったかと思います。
 もう1つ、行政刷新会議の場合は国費をいかに効率的に使っていくかという問題意識で、本来は国費の支出を減らすことが目的だったと思うのですが、先ほどもご説明したように、いまの年金担保貸付事業というのは、財投機関債を発行して市場から資金調達をしているわけで、その分経理部が骨を折っていますが、つまり独法の信用力によって非常に安い金利で調達しているわけで、少なくとも年金担保貸付事業分については、国費は使っておりませんが、この点もなかなか理解されなかったと思います。今後別の貸付事業等を考えるに当たっては、昨年、生活福祉資金が拡充された動きがあったものですから、これをさらに拡充してはどうかというようなことを言われる方は仕分け会議の場に限らずいらっしゃいますが、今回の議論に方向性を与えた1つの動きとしては、日弁連が報告書を出しておられ、その中でもそうした指摘がされていたということがあったかと思います。

○真野委員
 日弁連というのは弁護士の。

○福祉医療機構企画指導部長
 そうです。弁護士会がそのようなことを提言されていたので、そうした影響もあったかとは思います。国費の支出という観点から申し上げると、むしろ今の仕組みのほうが国費を伴わない、効率的な制度になっていますから、本当はもう少しご議論いただいて、利用者の声がいちばんだと思いますので、利用者が本当に一時的な資金融通を必要としているのかどうか、もし、別の制度にするというのであれば、どのような制度が仕組めるのかということを十分検討いただいた上で、私どもの事業の方向性を与えていただく必要があると思っております。その意味で、いま我々は、この件については受け身の立場で対応しております。

○真野委員
 ただ、それはこの委員会で議論できることではないですね。

○福祉医療機構企画指導部長
 そうかと思います。

○真野委員
 議論できることではないかもしれませんが、それに関係して2つ確認です。諸外国で国費と言いますか、いわゆる公的年金を担保にしてこのような事業をやっている所はあるかというのが1つ。もう1つは、先ほど生活保護に転落する云々という話がありましたし、一方では公的な所、独立行政法人がやっている意味ということも言われたと思うのですが、要するに、払えなくなった場合の取立てという部分においては、普通の金融機関と違う考え方はあるのでしょうか。

○福祉医療機構企画指導部長
 残念ながら、諸外国の例は手元にある資料では承知しておりません。返済ができなくなった場合ですが、基本的には返済猶予等で弾力的に対応することで、時間はかかるかもしれませんが何とか返済していただくような取組みをするのが基本だと思いますけれども、一応、この貸付事業については債務保証の仕組みがあります。生命保険に加入していただき、亡くなられたときにそのお金で返済するなどといった債務保証の仕組みがありますので、結果的にこの件で貸倒れが発生するようなことは起きておりません。

○上野谷部会長
 ほかにはいかがでしょうか。

○大島部会長代理
 最後の人員に関する指標で、国家公務員に比べて高い給与ということが前のほうに出てきましたが、推移を見ると、一旦下がり、また上がり、また下がって、また上がりといった形で、平成21年度は10名ぐらいの常勤の職員がいるのですが、この必要性というか、事業規模が急速に大きくなって10名の職員が必要になったのかどうか。あるいは平成18年は270人とかなり大きくなって、14人減らしたわけですが、そのような動き、一体どのようなことで見直されて上がったり、下がったりしているのでしょうか。

○福祉医療機構総務部長
 下の囲みに書いてある注1にあるように、平成18年度には新しい業務を承継したので、250人であった人員が270人に増えたということです。

○福祉医療機構企画指導部長
 人員枠としては34人を承継しております。

○福祉医療機構総務部長
 125頁です。

○福祉医療機構企画指導部長
 人数が増えているのは、平成17年度から18年度と、平成20年度から21年度に増えているかと思います。平成18年度に人数が増えているのは、先ほどご説明したように、他団体から年金住宅融資の回収業務を引き継いだ関係からです。その際34名を承継したのですが、実際には34名増えたわけではなく、私どもの職員に退職者もおりましたので、差引すると20名の増員になっております。これは業務の増に伴う増ですのでやむを得ないもので、人件費の見直しなどの基準を考えるときも、この部分だけは平成18年度を基準として削減率を考えるとか、そこは特例扱いされている部分です。また、退職者の見込みをある程度立てながら職員の採用をしているのですが、平成21年度は見込んだほど退職者が出なかったというか、自己都合で退職する方が予想よりも少なかった影響があると思います。なお、先ほどの定員の枠で申し上げれば、34人増えていてもおかしくはない状況でやっておりますので、いまの260名でも、本来の職員よりはかなり抑えた職員数にはなっております。

○上野谷部会長
 よろしいでしょうか。以上ですべての評価が終わりました。事務局からこのあとの取扱いについて、説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 本日お配りした資料について送付を希望される方は、部会終了後お申し出いただければ郵送いたします。評価の記入が終わっていない方は、残っていただいて書いてくださっても結構ですし、評価シートと評定記入用紙をお持ち帰りいただいて記入されても構いません。その場合は事務局にお申し付けください。お持ち帰りになる場合は、14日(木)までに評定記入用紙だけ事務局にお送りいただければと思います。

○上野谷部会長
 本日は本当に遅くまでありがとうございました。本日の議事は以上です。次回の日程と確認をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 次回は7月22日(木)9時からです。場所は経済産業省別館8階、825会議室です。議題は医薬品医療機器総合機構の個別評価となっておりますので、よろしくお願いいたします。

○上野谷部会長
 本日は以上です。本当にありがとうございました。



(了)
<連絡先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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