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労働基準局労働条件政策課

○日時

平成22年4月28日(水)
10時00分~15時00分


○場所

中央合同庁舎第5号館16階労働基準局会議室


○議題

○岩村分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第81回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催することにいたします。
 今日は公益代表では荒木委員、大沢委員、使用者代表では高尾委員、渡邊委員が御欠席と承っております。また、神津委員については少々遅れてこられるものと思います。
 今日の議事に入ります前に、委員の異動と定足数につきまして、事務局の方から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○監督課長 それでは、議事に先立ちまして、まず委員の異動に関する御報告をさせていただきます。公益代表の岡部喜代子委員が最高裁判所判事に御就任されたことに伴いまして、平成22年4月11日付で辞任をされております。後任の公益代表の委員につきましては現在調整中であり、現在の委員は資料1の委員名簿のとおりとなってございます。
 次に定足数の確認でございます。労働政策審議会令第9条第1項によりまして、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますけれども、本日はいずれの数も上回っておりますので、定足数は満たされております。以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。それでは、早速議事に入りたいと存じます。お手元に議事次第及び資料項目という1枚紙があると思いますが、それに沿いながら進めさせていただきます。
 議題でございますけれども「(1)労働条件政策の戦略的な実施について」でございます。そこでまず資料に基づきつつ、事務方の方から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○企画課長 企画課長でございます。初めに今般、分科会を開催させていただきました背景等につきまして、御説明させていただきたいと存じます。
 資料2をごらんいただきたいと存じます。昨年末、まさにぎりぎりに新成長戦略の基本方針が決定されました。成長戦略をどのようにつくっていくのか、大変重要な課題になっておりますが、その基本的な方向につきまして、昨年決められたということでございます。
 6つの戦略分野を立てまして、それぞれに基本方針と目標とする成果を出していこうということでございます。その6番目の戦略といたしまして、雇用人材戦略が掲げられております。言わば成長の底支えになる人の問題に焦点を当てて、成長のプラットホームをつくろうではないかということでございまして「『出番』と『居場所』のある国・日本」という理念の下で、2020年まで今後10年間の目標でございますが、この四角に書いてありますように、以下の項目につきまして、雇用戦略対話等を踏まえまして、具体的に目標を定めるというように決められたわけでございます。
 二重かぎでいろいろと項目がございますが、当分科会につきましては、『有給休暇取得促進』、『労働時間短縮』が主として大きな課題になろうかと思います。主な施策といたしまして、4つの●がございますが、この最後の「●地域雇用創造と『ディーセント・ワーク』の実現」がそれに関わる施策ということになります。
 その部分を下に抜粋してございますが「地域雇用創造と『ディーセント・ワーク』の実現」の中、その最初の前段が雇用の量的拡大という問題でございます。ディーセント・ワークはまさに雇用の質の面に着目いたしまして、この向上を図ろう、そのことが競争力強化、成長へとつながっていく。また、その果実の適正な分配が国内消費の拡大、次の経済成長へつながるといういいサイクルをつくり出そうではないかということになるわけでございます。そこで「ディーセント・ワーク(人間らしい働きがいのある仕事)」を実現しようということで、その下に書いてございますような同一価値労働同一賃金に向けました均等・均衡待遇の推進以下、ワーク・ライフ・バランスの実現まで取り組むというような施策が打ち出されたわけでございます。
 これの実現に向けてということでございますが、1ページめくっていただきますと「3.豊かな国民生活の実現を目指した経済運営と今後の進め方」ということで、まず前提となりますマクロ経済運営を行うことが規定されております。新成長戦略の実行と並行して、豊かな国民生活の実現を目指したマクロ経済運営を行う。その下の方でございますが、具体的には2020年度までの平均で名目3%、実質2%を上回る成長、2020年度における名目GDP、650兆円規模を目指すということがまず前提になるわけでございます。
 この成長戦略をどのようにつくっていくかというのがその次の(2)でございまして、この決められました本基本方針に沿って、2010年6月、まさに今年の6月を目途に新成長戦略をとりまとめるということになっているわけでございます。
 先ほど出てまいりました雇用戦略対話でございますが、これも既に皆さん御案内のとおり、雇用戦略に関します重要事項につきまして、総理主導の下、関係閣僚、各界のトップレベルの代表の方、労働界、産業界を始め、各界のリーダーや有識者に集まっていただきまして意見交換を行い、合意形成をしていこうということで設けられているものでございます。
 その第2回目の会合でありますが、この雇用戦略につきましては、PDCAサイクルを確立して、そのPDCAサイクルにのっとった整合性のとれた制度、政策を設計し、その運用実態を検証、実施する必要があるというような御指摘をいただいたわけでございます。
 それをどうしようかということが議論になりまして、その結果、考え出されましたものが資料3になります。「労働政策におけるPDCAサイクルの流れ」ということでございます。
 PDCAのP、D、C、Aと流れが書いてございますが、それぞれにつきまして、私どもが大変いつも御尽力を賜っております労働政策審議会のお力をお借りしようということで、まずPlanの部分につきましては、分野ごとの中長期あるいは年度ごとの目標についての御報告をさせていただき、御審議を賜る部分でPlanに関わっていただく。
 立てられました目標の達成に向けまして、私ども行政として施策を実施するのがDoでございまして、それをCheckをするのがCでございますが、このCheckにつきましては、さまざま各分野にまたがっておりますので、それを横で見ながら統一的にCheckをいただくということで、労働政策審議会に新たに点検評価部会という部会を設けたらどうかということになったわけでございます。
 そのCheckを経まして、目標自体どうなのか、あるいは施策について改善すべき点はないかといったことにつきまして、また御議論をいただくのがActionでございます。ここでまた各分野ごとに各分科会に御参画をいただくということで、それがまたPlanにつながっていくという流れをつくったらどうかということで、4月1日に開かれました労働政策審議会の本審議会の方でこの流れが御了解を得られた、そして、部会の設置が御了承されたということになったと伺っております。
 その結果でございますが、3ページでスケジュール(案)と示させていただいております。これは標準的なスケジュールのイメージでございますので、こういうことで進めていくのではないかということだろうと思いますが、平成22年度のところをご覧いただきますと、先ほど4月1日に親審議会が開かれまして、まさに今4月下旬でございますが、各分科会が開かれるということで、先ほどの目標等について報告、御審議をいただくということでスケジュールが立てられたわけでございます。こうしたことで、本日、当審議会の開催に至ったということが経過になるわけでございます。
 その次に問題になりますのが中身の議論でございまして、雇用戦略をどうつくっていくのかという中身の議論が資料4に関わるものでございます。資料4は本体の資料が2枚紙がございまして、その後に参考資料?@~?Dまでございます。
 最初に?@をごらんいただきたいと存じます。慶應義塾大学の樋口先生の出されましたペーパー、試案でございます。出されましたのは私どもが開催させていただいております雇用政策研究会で、樋口先生は座長を務めていただいておりますが、その場で出していただきました「雇用戦略の戦略的な実施について」ということでございます。
 まさに先ほどの基本方針に沿った形で、高質な労働市場をつくっていくこと。それに向けて政策パッケージとして労使の意見を踏まえつつ、戦略的に実施をする。そして、更にそれをPDCAサイクルによって取り組んでいくということでございます。その背景といたしまして、先ほど申し上げましたような経済規模の成長を遂げていくということでございます。
 以下、1~4までの柱として立てられたわけでございます。このペーパーでございますが、樋口先生自身は雇用戦略対話に参加をされている先生でございますし、非常に重要なペーパーであるということで、4月1日の本審議会の中でも御紹介をされたという経過がございます。
 先ほどの数値目標に関して言いますと4ページ目「4.安心して働くことのできる環境の整備」が関係のあるところでございます。ディーセント・ワークの実現、ワーク・ライフ・バランスの推進の観点から、安心して働くことのできる環境の整備を進めるといたしまして、(1)~(7)までの項目が挙げられております。
 「(1)均等・均衡待遇の推進等」から始まりまして「(3)労働時間短縮の促進等」、(5)のテレワークの問題、(7)労働関係法令の履行確保あるいは個別労働紛争の予防と解決に向けた取組みの問題でございます。
 特にこの目標に関しましては「(3)労働時間短縮の促進等」の中で具体的な目標を御提示いただいておりまして、年次有給休暇の取得率を2020年に70%とするということでございます。労働時間の短縮の問題につきましては、特に長時間労働の抑制を図るという観点から、2020年に週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5割減とするというような目標を立てていただいたわけでございます。
 なお、この樋口ペーパーの中の目標を一覧としてまとめさせていただいておりますのが、次の6ページでございます。就業率から始まりまして、?@~?Pまで17の目標を出させていただいているわけでございます。その中で当分科会に関係のありますのが4番目の柱の中の先ほど申し上げました?Lと?Mになるわけでございます。
 この樋口ペーパーを受けまして、私ども厚生労働省としてのペーパーに書き下ろさせていただきましたのが資料4の本体の資料となります。1ページをごらんいただきたいと存じます。最初の柱書きの最後でございますが、「『出番』と『居場所』のある国・日本」の実現。それはどういうことかと言いますと、国民すべてが意欲と能力に応じ、労働市場やさまざまな社会活動に参加できる社会を実現する。それを基に我が国の成長力を高めていくと、こういう基本的な方向でございます。
 そこで出てまいりましたのが先ほど来出ておりますけれども、ディーセント・ワークを実現させようではないかということで、そこでは1~4までの柱が掲げられているわけでございます。
 まず「1.同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進等」を図る。非正規労働者の問題が課題になっておりますけれども、特に今後大きな課題となると思われますのは、有期契約労働者の問題でございます。その有期契約労働者の均衡待遇の確保、あるいは正社員転換の推進を図っていく。更に今後の施策の在り方について、現在、有期労働契約研究会で研究をいただいておりますが、その研究の成果を踏まえまして、必要な対応を行っていこうということが書かれております。なお、この項目ごとに後で参考資料がありますので、補足的に各担当の方から御説明させていただきたいと思います。
 「2.労働時間短縮の促進」ということで、先ほどの樋口ペーパーの目標を引かせていただきまして、目標1が年次有給休暇の問題でございます。勿論、完全取得を目指すことは目指すわけでございます。それを当面2020年には70%とするという目標でございます。
 目標2、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を2020年に現在の5割減、半分にしたらどうかという目標をそのまま引かせていただいております。その目標に向けて行うべき施策といたしまして(1)、(2)と掲げられておりますが、(1)が働き方の見直しを行って、ワーク・ライフ・バランスを実現させようではないかということでございます。働き方のルールの面から光を当てていこうということでございます。
 先般、前回の分科会で大変御議論をいただきまして、御協力を賜りましたガイドラインの見直し、有給休暇取得促進ということで改定をお認めいただいたわけでございますが、現在、一生懸命その周知に向けまして頑張らせていただいておりまして、200を超える経済団体、事業主団体の方々にお願いを申し上げ、また30以上の団体に私ども直接お伺いさせていただきまして、この有給休暇促進としまして、ゴールデンウィーク目前ということもございますので、今、一生懸命お願いをさせていただいているということがございます。
 そういうことも含めまして、勿論今後は景気回復が図られていくと思いますが、景気回復期も含めまして、今、減っております長時間労働を抑制していく。そして、また年次有給休暇の取得促進を図るということで、これらの取組みを進めます中小企業の事業主の方々に対する支援も拡充するといった形で、労働時間の設定改善に向けた環境整備を推進するというのが1つ目の柱です。
 2つ目の柱は、これもこの分科会において御議論いただきまして、労働基準法の改正に至ったわけでございますが、その改正労働基準法がまさにこの4月から施行され、割増賃金率50%引上げの問題、あるいは時間単位の年休の取得が可能になった問題等を含めまして、その円滑な施行、その浸透をいかに図っていくかが重要な課題になっておりまして、それも一生懸命取り組んでまいりたいということでございます。
 「3.適正な労働条件下でのテレワークの普及促進」でございます。これは関係省庁が集まって連携をとりながら進めさせていただいております。私どもとしましては、やはり一番重要なのが適正な労働条件を確保するという問題でございます。そこの問題に十分配慮しながら、テレワークの普及を推進していきたいと考えております。
 4が労働関係法令の履行確保でございます。労働基準監督行政の充実強化を図っていく。また、近年非常に増加が見られております個別労働紛争をいかに円滑に、または迅速に解決を図っていくか。これが重要な課題でございまして、それに向けまして取り組んでまいりたいと考えております。
 なお、基本方針に掲げられておりました給付付き税額控除の問題につきましては、主として財務省が行うということで、そちらの方で御議論はまた進んでいくのだろうと思っております。
 最後に四角で※を掲げておりますけれども、現在の数値目標等の議論につきましては、雇用戦略対話においても並行して議論が進められておりまして、この審議会での御議論も踏まえながら、今後6月に向けて決定されていくということでございまして、さまざまな変更要素はあり得るということを述べさせていただいております。
 以上が資料4としての本体的な資料の説明でございまして、補足的に参考資料?A~?Dまで、それぞれ担当の方から御説明させていただきたいと思います。
○労働契約企画室長 労働契約企画室の青山でございます。では、具体的な説明をいたします。
 繰り返しになりますが、資料4の本体の方のディーセント・ワークの実現の「1.同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進等」でございます。概略は企画課長が御説明したとおりでございますが、本文の文字の配列がおかしくなっていまして、本文の1行目の「有期契約労働者の均衡待遇の確保と正社員転換の推進等」で一旦改行を本来しなければいけないところで、タイトルで一旦改行されまして、「有機労働者について」以降が本文でございます。申し訳ございません。
 本分科会関係では、有機労働契約者の部分が関係するということを申し上げましたが、特に2パラ目の「有期労働契約に関する施策の在り方について」がこの労働条件分科会が関係してくるものでございます。
 資料は参考?Aでございます。本文のとおりでございますが、労働基準局におきましては、平成21年2月から学識経験者からなる有期労働契約研究会を開催しております。有機労働契約に関して、待遇の在り方も含めまして、施策の在り方について検討をいただいているところでございます。研究会に引き続き、検討を深めていただきまして、その成果を踏まえて必要な対応をしてまいりたいと思います。
 検討研究はまだ続いておりますが、今年3月の時点での中間的な検討状況をとりまとめた中間とりまとめという資料を載せております。時間の関係で詳細な御説明は省略いたしますが、御参照いただければと思います。以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。では、企画課長、お願いします。
○企画課長 それでは、参考?Bの労働時間等に関する問題につきまして、御説明させていただきたいと思います。
 最初の1ページ。これまでの総実労働時間の推移を中心にグラフにさせていただいております。終戦直後は2,200時間程度でありましたけれども、例の朝鮮戦争後の経済拡大に呼応いたしまして、どんどん労働時間が伸びてまいりました。ここにございますとおり、左端の方でございますが、昭和35年がまさに戦後最高でございまして、2,426時間になってしまったということでございます。
 ただ、その後は高度経済成長期を通じまして、週休二日制の導入等もあって、比較的順調に減ってまいりました。それが50年代に入りまして、若干足踏み状態になってきてございます。2,100時間程度で横ばいに推移をする。経済成長率の低下等もありまして、足踏み状態になってしまったということでございます。
 60年代に入りまして、非常に海外との貿易摩擦問題が拡大いたしまして、また経済力と国民生活の乖離が問題視されてきたということで、本格的な内需拡大政策に取り組むべきではないかということで、前川リポート等も出されまして、まさに労働時間短縮が大きな課題として進められたということで下がっていきまして、この後、1,800時間台になってきたということでございます。
 ただ、最近の課題と言われていますのは2ページでございますけれども、1,800時間という時間数で言いますとそれなりに下がってきたわけでございますが、中身が問題であるということで、やはりパートタイム労働者の比率が高まってきた結果、言わば合成されて時間が減ってしまった。この右側の表にございますとおり、一般労働者の総実労働時間で見ますと2,000時間で横一線になっておりまして、いわゆる長短二極化の問題が課題として提起されてきているということになってございます。
 3ページでございますが、一般労働者につきまして、規模別に見たものが左側にございます。この所定労働時間は、規模が小さい事業所につきましては、長くなっているという現状がございます。その分、残業時間等はそれほど長くはないのでございますが、根っこの基本の部分が長いということで、総実労働時間で行きますと長くなっているという傾向になっているわけでございます。
 めくっていただきまして、週労働時間別の雇用者の割合でございます。ここで一番問題になりますのが週60時間以上働いていらっしゃる方でございます。平成20年度、最近の速報では平成21年度が出ておりますけれども、60時間以上働いていらっしゃる方が10%いらっしゃるということでございます。なお、この内訳で若干申し上げますと、規模別で行きますと29人以下の事業所でありますと171万人いらっしゃいまして、その29人以下の事業者全体で見ますと11%。以下、同じような状況でございまして、99人以下、499人以下、いずれも10%ということで、規模別にはほぼ同じような10%という率になっていますので、やはり10%という高い率で労働者の方々がいらっしゃるということでございます。
 その下の表でございますが、特に子育て世代で20%とかなり高くなっておりまして、非常に問題であるということが大変大きな課題でございます。
 以下、年休の問題につきましては、前回の分科会でも御説明させていただきましたので簡単に触れますけれども、取得率が5割を下回る水準の推移について、最近上昇傾向にありますが、まだまだ芳しくない状況にありますので、頑張らなければいけない。
 6ページ目が、ためらいの問題が依然として課題である。年休をためらわずにとれるような環境をつくっていかなければいけない。そのためには年次有給休暇の計画的付与制度を導入するのが一つの手でございますが、その企業の割合がまだまだ2割に達しないというのが7~8ページの資料でございます。
 ただ、計画的付与制度がある場合には、8ページの調査産業計のところでございますが、計画的付与日数は平均で5日程度付与されまして、その結果、平均取得日数が10.5日、平均取得率で53.2ということで、この付与制度がない企業に比べまして、取得日数で3日弱、取得率で9ポイント弱多いということでございますので、やはりこの計画的付与制度の導入をいま一つしっかりやっていく必要があるのではないか。そういう現状になっているわけでございます。
 その辺につきまして、労働時間についての取組みを簡単にまとめさせていただきましたのが9ページ以下でございます。まず労働時間としてどうするのかという目標を設定してきた経緯を簡単に述べさせていただきたいと思います。やはり発端は前川レポートで、これは昭和61年4月でございましたけれども、欧米先進国並みの年間総実労働時間を実現する、あるいは週休二日制の早期完全実施を図るという理念を掲げられたのが61年4月でございます。
 その直後、61年11月に閣議決定されました展望と指針におきまして、1990年度までに年間総労働時間2,000時間に向けて短縮する。ちょうどこの時期が先ほどのグラフでごらんいただいたところは2,100時間ございまして、年間休日を10日程度増加させて2,000時間にしようではないかという目標が掲げられました。
 そのすぐ先でございますけれども、昭和63年5月には、新前川レポートを受けまして、更にこの目標を1,800時間程度に下げまして、それをできるだけ実行していこう。1,800時間と言いますのは、週40時間労働制、完全週休二日制実施、有給休暇20日完全消化といったようなことを念頭に置いて提起されました時間でございます。
 その次に時短法がつくられました。それが平成4年でございまして、時短計画の中でやはり同じく1,800時間という目標が提起された。この時短法は時限立法でございまして、平成9年、平成13年と延長されましたけれども、平成17年度末で切れまして、それが生まれ変わったものが現在の労働時間等の設定改善法でございます。
 施策といたしましては10ページでございます。労働基準法の改正に随時取り組んできていただいておりまして、63年4月に本則で週40時間制を明記し、段階的に昭和63年4月からは週46時間、平成3年からは週44時間、平成6年になりまして原則週40時間制に移行しまして、平成9年には例外を除きまして、全面的に週40時間制になるということで、ここで40時間制度が基本的に実現をされたわけでございます。
 つい先般の改正を経まして、22年4月から割増賃金率50%以上に引上げということが実現されたわけでございます。
 年次有給休暇の取得促進につきましては、付与日数の増加に随時取り組んできてございます。直近では1年に5日分を限度とした時間単位の取得という制度が盛り込まれたわけでございます。
 労働時間等の設定改善につきましては、11ページでございます。労働時間の短縮という側面だけではなくて、まず労働者の健康を第一に配慮した上で、多様な働き方に対応するという視点を盛り込むということで法律が生まれ変わりまして、それに基づいて先般来、御議論いただきましたガイドラインがつくられた。20年にはワーク・ライフ・バランスを踏まえて全面見直しをされまして、つい先ごろ、年休の取得促進に向けた指針の改正が行われたという経過になってございます。
 予算面、助成面につきましては、中小企業事業主に対しまして、後で申し上げますような助成を行わせていただいているということでございます。
 12ページでございます。課題といたしまして述べさせていただいておりますけれども、まず心身の健康を保持できる。健康がまず第一に確保されること。また、生活に各段階がございますが、さまざまなライフスタイルに応じまして、労働時間を柔軟に組み合わせる、多様な働き方を可能にするということが大きな課題になっているわけでございます。
 また具体的な問題といたしまして、先ほど来申し上げておりますけれども、長短二極化の問題、長時間労働の問題、年休の取得率がなかなか達していない。この辺が提起されているということでございます。
 以下、13ページは、先ほど申し上げましたガイドライン全体の概要。
 14ページで見直しさせていただきました概要を付けさせていただいております。なお、このガイドラインの見直しにつきましては、資料5といたしまして、お手元に配らせていただいております。これは3月19日に告示が改正されまして、そのときにプレスリリースした資料そのものでございます。前回のおおむね妥当という御意見をいただきまして、いろいろと調整をさせていただいた上、こういう形で改定がされたということで御報告させていただきました。
 なお、席上にこのガイドラインの見直しにつきましてのパンフレットを配らせていただいております。これも前回の分科会におきまして、このガイドライン自体の周知が足りないのではないかというお叱りを頂戴し、また周知に当たりましては事例などを入れて、わかりやすく周知したらどうかというアドバイスもいただきました。それを踏まえまして、今回のガイドラインの見直しを踏まえたパンフレットをつくらせていただきましたので、これを基に私どもは周知に努めたいと思っております。
 それでは、説明を続けさせていただきますが、15ページが主として予算面におきます、いわゆる労働時間等の設定改善の推進でございます。平成22年度の予算規模といたしまして、15億8,500万円余でございますが、労働時間の設定改善援助事業、推進助成金、職場意識改善助成金といった個別の援助ないし助成を行う。それから、労働局に設定改善コンサルタントの配置をする。特に配慮を必要とする労働者に対して休暇制度を普及する。こういうことにつきまして、取り組ませていただいております。
 以下、簡単に申し上げますが、16ページが労働時間等設定改善援助事業でございます。これは集団的に労働時間の設定改善の援助をするということでございまして、事業主団体にこの仕事をお願いする。その事業主団体の方が中小企業集団を幾つか選定いただきまして、その集団に対して、さまざまな指導を行うという事業でございます。
 17ページが事業主団体自身に傘下の事業所に対しての指導を行っていただく。その指導していただく事業主団体に対して助成をするという中身でございます。
 18ページが職場意識改善助成金でございますが、これは個別の企業に対して、例えばノー残業デーに取り組むでありますとか、設定改善に向けたプランをつくっていただいて、それを実施いただくということに応じまして、助成させていただくという中身でございまして、先ほどのガイドラインの改正を踏まえまして、(3)にございますが、上乗せ助成の支給対象拡充、労働時間等の制度面にまで踏み込んだ改善を実施した場合には、1年度目で50万円の上乗せ助成をするというものを今年度から盛り込ませていただいております。制度面まで踏み込んだ改善例といたしまして、(3)の※に書いてあるようなことを例として挙げさせていただいております。
 19ページが労動基準法の一部改正。これも既に御案内のとおりでございますが、時間外労働の削減、年次有給休暇の有効活用ということで、ここに書かれているような課題について取り組ませていただいた。なお、法定割増賃金率につきましては、中小企業につきましては、当分の間、適用が猶予されているという現状でございます。参考?Bにつきましては、以上でございます。
 済みません。私は先ほど説明を少し漏らしてしまいまして、資料4の最後のページに先ほど来申し上げております目標の一覧を挙げさせていただいております。2010年の目標。中期目標が先ほど申し上げました2020年の目標でございますが、それの単年度の目標としての目標を掲げさせていただいています。以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございました。
○企画課長 済みません。それから、参考資料の?Cでございます。引き続きよろしくお願いします。テレワークの関連施策につきまして、概要を御説明申し上げます。
 先ほど簡単に触れましたけれども、4省庁が関わっております。国土交通省は国土政策の観点から、特に交通機関の渋滞緩和は非常に大きな課題でございますけれども、テレワークを進めようではないかということで、この国土交通省におきまして、テレワーク人口実態調査といった数字面についても御担当いただいております。
 特にこのテレワークはITを使うということが一つの重要なキーでございまして、IT戦略という立場から経済産業省の方で関わっていただいています。勿論、私どもは適正な労働条件の確保というところが意を用いなければいけないところでございまして、そういう観点から関わらせていただいているということでございます。
 下の方で経済産業省の方は32億円とやや数字が大きいのですが、これは内数でございますので、この全体がテレワークに使われているというわけではございません。
 2ページでございます。現在そのテレワークに関します目標が掲げられております。2010年までにテレワーカー人口比率を2割達成でありますとか、あるいはi-Japan戦略では在宅型テレワーカーの倍増といったような課題が掲げられております。
 3ページ以下は、私どもとして取り組んでおりますテレワーク関連施策でございます。まず何よりも在宅勤務ガイドラインを周知する。これは、労働基準法をきちんと適用いただくために、どうしてもテレワークといいますのは勤務時間帯と日常生活時間帯が混在をしてしまうという状況でございますので、その場合について注意しなければいけない点をいろいろまとめさせていただいたガイドラインでございまして、その周知を図ることによりまして、ちゃんと残業代も出していただこうということでございます。
 テレワーク相談センターでさまざまな相談に応じさせていただく。また具体的にテレワーク・セミナーを開催させていただくという取組みをさせていただいております。
 ガイドラインにつきましては、そのポイントを4~5ページに掲げさせていただいておりまして、テレワーク相談センターにつきましては6ページにございますが、設置が札幌、東京、大阪、名古屋、福岡で相談員を配置いたしまして、具体的なさまざまな課題、疑問についてお答えをしているという状況にございます。相談件数は下のとおりでございます。
 テレワーク・セミナーでございますが7ページにございまして、主として3つの点から、在宅勤務ガイドラインの中身の御紹介をして、特に労務管理で問題になる点を御説明する。テレワークはIT、特にVDTを使いますので、VDT作業での労働安全性の確保の問題。実際にテレワークを導入した場合のさまざまな体験談。これが一番わかりやすいと思いますが、そういうことも御紹介をするというセミナーをここに掲げている開催地で開催させていただいている状況にございます。
 最後でございますが、8~9ページに現在のIT戦略本部の方でまさに新たなIT戦略についての議論が始まったところを御紹介させていただいたペーパーでございます。以上でございます。
○監督課長 では、続きまして、私の方から先ほど資料4の項目4に労働基準関係法令の履行確保のため、労働基準監督行政の強化を図るという部分がございました。それに関係いたしまして、参考?Dの資料「労働基準監督の仕組み」を簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず基本的に、労働基準関係法令は最低基準を定めるもので、法令違反があった場合に、それにどういうふうに対応していくかということになりますと、民事・刑事裁判で当面解決を図っていくということになりますと非常に長時間を要するということで、実効ある権利救済には不十分だろうということで、我々は監督指導と言っておりますが、行政指導によりまして、違反の未然防止を図りつつ、違反が認められた場合には早急にこれを直していただいて、労働者の実効ある権利救済を図るよう、労働基準監督官制度を設けているところでございます。
 その仕組みでございますけれども、基本的には労働基準関係法令の履行確保は、労働基準監督官が実施しております。労働基準監督官は司法警察官としての職権も持っているということでございます。
 大きく2つ仕事の内容があると思っています。1つは、いわゆる行政指導、監督指導によりまして法令違反があった場合には、それを是正していただいて、労働条件の確保を図るということでございます。これが基本的な使命だと考えております。しかしながら、是正が図られない場合等、重大、悪質な事案につきましては、検察庁に送検処分を行う。我々はこれを司法処分と呼んでございますけれども、司法処分を行うということをしております。
 監督指導の件数でございますけれども、平成20年で15万9,090件でございます。次のページをごらんいただきたいのでございますが、この内訳が簡単に出ております。定期監督等が一番上に書いてございますけれども、これは我々は一定の計画をつくって事業所を回っているということが多いわけです。その計画をつくる際には、各種の情報を基に問題がありそうなところを選定して監督をする。もし重大な災害などが起こった場合には、緊急に計画外でも監督を行うというような、この分野を定期監督等と呼んでございます。それが11万5,993件。
 次の申告監督と言いまして、労働者が労働基準法関係の違反があるということで監督署に申告をすることに基づいて監督をしているケースが3万3,238件。
 再監督と申しまして、1回是正をお願いして、直っているかどうかを実地にもう一回確認した方がいいだろうと思うときに、もう一度同じ事業場に監督をします。それが再監督で9,859件ということになっております。
 その下に、司法処分が1,227件という数字になっております。簡単でございますけれども、以上でございます。
○岩村分科会長 事務方の資料の御説明は以上でよろしいですね。ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局の方から今回の雇用・人材戦略について、特に労働条件政策の戦略的な実施についてということで、一連の資料を御説明いただいたわけでありますので、ただいま御説明いただいたことにつきまして、御意見あるいは御質問等をいただきたいと思います。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今日、議題になっております雇用・人材戦略の労働条件政策についてはさまざまな場面で論議をさせていただいておりますので、中身については私どもも妥当な内容かなと思ってございます。
 その中で実際にこれを推進するに当たって、先ほども御説明いただきましたPDCAサイクルの中で検証しながら進めるということでございますが、実際の政策の実施に当たってはDoの部分ということになるわけであります。
 そのDoの部分については、多分この分科会等でまた論議をされると思いますが、特に今回御提起いただいております「2.労働時間短縮の促進」の目標に週の労働時間60時間以上の雇用者の割合を毎年0.4ポイントずつ減少させて半減させるという取組みが掲げられております。
 それに関連する資料として、先ほど資料4の参考?Bという中で、現在の雇用者数に占める割合が示されております。4ページの横長の資料に入っておりますが、5,394万人の雇用者数のうち週60時間を超える人は537万人。これが10%であるという御説明をいただいたところです。
 申し上げたいのは、このDoに当たっては、雇用者の塊を層別にきちんと把握されて、対応をお願いしたいという点でございます。今回の改正労基法の施行が4月1日からされまして、60時間超についてはかなり重い割増率、国際的には低いのですけれども、従来に比べると倍増した割増率の適用がありますので、かなりの時間外抑制効果はあると思います。
 ところが、今回3年間の特例措置で猶予をされています中小企業についてはこの適用がないわけでありまして、かつその中小企業の労働者はさっきの5,394万人の雇用者に占める割合はかなり高いと思っておりまして、今回の改正労基法の適用がないわけでありますから、ここの部分についても、層別は企業別であるとか性別であるとかいった、かなりきめの細かい対応を是非お願いしたいということを申し上げておきたいと思ってございます。まず私からは以上です。
○岩村分科会長 では、企画課長あるいは監督課長から何かございますか。企画課長、お願いします。
○企画課長 確かに先ほどの雇用者の数でございますが、499人以下のところは非常に多うございまして、中小企業に働いていらっしゃる方に光を当てていくことは重要な課題だと思います。
 先ほど簡単に触れさせていただきました助成事業でございますが、例えば労働時間等設定改善援助事業でございますけれども、平成20年度の実績で行きますと、この事業に取り組んでいただきました団体が52、これは中小企業団体中央会でありますとか、商工会議所でありますとか、県の基準協会にお願いしておりますけれども、中小企業集団は344でお取り組みいただき、構成事業場の数は5,498でございます。何らかの取組みをしていただいたのが4,413。結果として、この数字は機械的に積み上げておりますので、個別の数字は精査しておりますが、その大まかな傾向として申し上げますと、事業開始前の年次有給休暇の取得日数7.8日が、事業が終わりました後は8.6日、わずかではございますが、0.8日増加をさせていただけた。あるいは所定外労働時間数につきましては、所定外労働時間の削減につきましては2,491の事業場に取り組んでいただきましたけれども、事業開始前は187.9時間が157.6時間、30.3時間の減少、率にして16.1%削減という形で取り組ませていただきました。
 また、同じく団体の指導でございますけれども、労働時間等設定改善推進助成金の方で、これも平成20年の実績でございますが、事業主団体は45取り組んでいただいております。イメージ的には協同組合をお考えいただければいいと思いますが、印刷でありますとか、食肉、食品等の協同組合で45取り組んでいただきました。年次有給休暇につきましては、事業開始前6.5日が事業開始後7.3日、わずかでございますが、0.8日増加をする。所定外労働の削減につきましては、187.2時間が161.6時間で25.6時間削減される。率にして13.7%というような効果を出させていただきました。
 また、個別企業への助成であります職場意識改善助成金でございますが、平成20年度で408の企業から御申請いただきましたけれども、結果として、うまくいって助成金を支給させていただいたのは346企業でございます。これも年次有給休暇の取得日数が1.2日増えるとか、あるいは所定外労働時間が155.5時間から137.9時間で17.6時間削減されて、率にして11.3%ということで、それなりの効果を出させていただいておりますので、まさに中小企業の皆様方が相手でございますので、こういうような事業も活用させていただきながら、目標達成に向けて施策を講じさせていただきたいと考えている次第でございます。
○岩村分科会長 それでは、まず監督課長、お願いいたします。
○監督課長 今の新谷委員の御質問に関連しまして、今回は改正法で経営体力が必ずしも強くない中小企業の経済的負担等に考慮しまして、猶予措置が設けられているわけでございます。この猶予措置につきましては、改正法の施行3年を経過した場合に、中小企業の割増賃金の貸付の状況や時間外労働の状況等を勘案し、検討を行うこととされておると御案内のとおりでございます。
 猶予措置が講じられている3年間におきまして、猶予措置の検討につながるような環境整備を私どもとしてもしていきたいと考えている次第でございます。このため、現在、限度基準告示が改正されまして、その中で労働時間をできるだけ短くすることとか、法定を上回る割増賃金率とすることというのは努力義務になっておりますが、これは中小企業にも適用があるということでございますので、この部分につきましては周知に努めていきたいと思っておりますと同時に、法定を上回る割増賃金率を定めている企業の先進事例の収集、提供等も行いながら、中小企業における取組みを促進することによりまして、3年後の検討につなげていきたいと考えている次第でございます。
○岩村分科会長 それでは、お二方の手が挙がっておりますので、最初にまず輪島委員で、その後に島田委員ということでお願いいたします。
○輪島委員 ありがとうございます。資料4に示されている中身でございますけれども、雇用・人材戦略についても非常に私どもは重要だと思っております。安心して働ける環境を整えるという意味でも重要だろうと思っています。とりわけ労働市場に多様な主体の参画を促す。それから、求職者能力開発を支援するということも大変重要だと思っておりまして、この中身については私どもも非常に適切であると思っております。
 ワーク・ライフ・バランスの関係で私どもが多少研究をしているところで、イギリス等々の事例を見ていると、やはりサッチャー政権からブレア政権になったときからの90年以降にイギリスの方でのワーク・ライフ・バランスの進展があったのではないかと理解をしていますけれども、その中ではかなり経済状況がよかった。そのところを背景にして、企業も労働条件を改善していこうというところと、働く人たちのニーズを合致させていくということが一番大きなイギリスの進展の要因ではなかったのかと思っております。
 そういう意味では、この中にもGDPを成長させるための成長戦略だと思いますので、そういう両輪相まって、この目標を達成することは非常に重要なのではないかと思っています。以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、島田委員。
○島田委員 こういう目標を掲げてやるということは非常にいいことです。ただ、目標が本当に達成できるかどうかが1つあるのと、今更言っても仕方がないのですが、この目標だけで本当に達成できるかと言ったら非常に難しい。
 先ほど新谷委員が言われたように、規模別もあるけれども、本来は業種別もあるわけですね。今までこの厚労省が出しているデータはすべて平均で出されている。現実は平均では見られないです。要するに製造業は基本的に言ったら労働条件は多分そんなにひどいことはないでしょう。ただ、今、増えている小売サービス業、流通業というものは物すごく格差があるような労働条件に多分なっているはずです。そこを攻めていかない限り、平均値として1.5と言ったって無理です。
 逆に言ったら、せめて年次有給休暇は全員、どの業種でもみんな最低50%はとるというランクがあって、製造業が80以上とっていると1.5を上げるなんて関係ないわけです。逆に言ったら、35幾らのことをいかに50に上げてあげるかという施策をしない限り無理です。同じように週の60時間も多分そうかもしれない。
 もうちょっとポイントを絞った攻め方を厚労省として指導ができるのかどうか。我々は労使としてそれを話し合う中で業界とやって、経団連でここを攻めようという話ができるのかどうか。そういうところも踏み込んだことをしないと、多分これは絵にかいたもちになっていく。要するに1.5の平均はどこかがやれば上がってしまうし、やらなかったらわからない世界になるので、もっとターゲットを絞ったやり方をしないと難しいのではないかと思います。
 そういう意味で、今後これを本当に動かそうとしたら、今後のデータも含めて、できていないところはどこだということを見極めるようなデータを出していただくのが一番ありがたいかなと思っています。以上です。
○岩村分科会長 何か事務局の方はございますか。企画課長、よろしくお願いします。
○企画課長 誠に重要な御指摘をいただいたと思っております。私どもはこれまでの取組みの中でも、例えば業種ごとに長時間労働の実態が多いのではないか。あるいはなかなか休みがとれないのではないかということに着目させていただいて、どうワーク・ライフ・バランスをとっていくのかという取組みもさせていただいた経過もございますが、そうしたところのまさに取組みが進んでいないところに光を当てながら、そこを引き上げていくという取組みをしないと、やはり先ほどの達成目標自体もなかなか行かないのだろうと思いますので、まさに御指摘のとおりのことも踏まえながら、一生懸命考えさせていただきたいと考えております。
○岩村分科会長 それでは、八野委員、お願いいたします。
○八野委員 今そういう指摘がありましたので、私はサービス流通連合の代表で来ておりますので、その観点から言います。例えばサービス業は、非常に広義でサービス業ととらえたときに、世界の中では80%くらいが今後そこのところへ就業するだろうと言われていますし、やはり日本の中でも就業の人口は多くなってくるだろうと思っています。
 もう一点は、パートタイマーやここで出てきている契約労働者の数、または女性の働く人数が非常に多いということが特徴点だと思っています。ここに出ておりますディーセント・ワークという非常に高い概念を掲げてやられているということですから、これはILOの考え方に沿ってやっていくのだろうと思っていますので、この辺は労使の理解も含めていかなくてはいけないと思っています。
 例えばここで出てきております労働時間短縮というテーマの中で1つ、2つと出ておりますけれども、これをPDCAのサイクルでやると言ったときに、これは達成目標が10年後の目標になっていまして、普通は企業の中で10年間のPDCAを組むことは非常に難しいことだと認識をしています。普通は中期計画が3年くらい出たものに対して、初年度のところでPDCAとして何をやっていくのか。それで実行できなかったものは次に何をやっていくのかというのが一般的なプロセスだと思っています。
 ですので、このDoの部分に入る前の具体的な施策をどういうふうにしていくのかということが非常に重要で、そこにその業種・業態の問題や働き方の雇用形態の違いの問題だとかを考えていく必要があるだろうと思っています。そういうふうに進めていかなくてはいけないだろうと。
 やはり今までの労働政策も比較的、いわゆる製造業を中心としてきたものであったり、正社員を中心としてきたものを切り替えていかなくていけないのだろうと思っています。そういう意味で、例えばここに同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進と出ておりますが、ここの中でいつも私が悲しく思うのは、こういう文章が具体的になると均等という言葉は消えてしまう。具体的なところでは正社員と同じ賃金の均等ということであるわけですけれども、本来、労働条件が均等であってもいいのでないだろうか。
 例えば我々の例で言いますと、時間外であったり、有給休暇の取得はパートタイマーのところにおいても問題になっております。例えば時間外で言えば、6時間の契約の人が超えたときにそこから時間外を発生されるものなのか。それとも8時間を超えたところから割増を発生させるのか。これは企業労使の中で決めるところもあり、8時間を超えた場合には割増を付けていくというふうになってきますが、契約時間と時間外の問題というのも関係してくるだろうと思っています。
 もう一点は、助成の観点から見たときに、今、パートタイマーやフルタイマーも短時間の勤務とかそういうのをやっておりますが、そういうのをやりながらも労働時間が短縮にならない。または有給休暇が取得できないというのは介護や保育の問題とも非常に大きく関連しておりまして、今、預けるところがないから働けない。またはそこの事情によって、例えば我々の産業は土日も普通に営業しておりますし、祭日も営業しております。そういうところは割増になる。または預ける場所がないという問題があります。
 そういう全体の観点から見ていかないと、現時点で難しいところがあるわけなので、かなり社会資本としての整備というものも今、考えられているということは承知しておりますが、スピードが遅いということがあるのではないかと思います。そういう観点からも、このDoの部分の前の施策の段階が非常に重要になってくるのだろうと思っています。以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございました。そのほかにいかがでございましょうか。それでは、三浦委員、どうぞ。
○三浦委員 先ほど、時短の問題にしても休暇の問題にしても業種とか規模によって違うということがあって、それぞれどういうところに焦点を当てて何かをやっていこうということ。それについては、そういったことが必要だと考えます。
 ただ、その際に考えなければいけないのは、そこが遅れているから、そこを引き上げるということだけではなくて、なぜそうなっているのかをまず考えて、そうならざるを得ない原因を除く努力をした上で、そこの遅れているところを目標に近づけるというふうに持っていかないといけないだろうと思います。
 多分このPDCAサイクルの中で、実現のための目標値の施策がとられてくる形になると思いますけれども、その際には是非そういったところを十分考慮しながらやっていくということが必要ではないかと考えます。
○岩村分科会長 ありがとうございます。そのほかにいかがでございましょうか。それでは、輪島委員。
○輪島委員 参考?Dですけれども、質問です。この枠組みはよくわかるのですけれども、今の監督行政全体はマンパワーがどれくらいあって、仕組みはわかるのですけれども、監督署でどれくらいの実施体制で、どういうふうにおやりになっているのかを教えていただけますでしょうか。
○岩村分科会長 総務課長、お願いします。
○総務課長 監督署の監督官の定員で、平成20年度が3,076人という定員でございます。これについては、これまで行政課題に即して体制の強化を図り、やってきておるところでございます。監督署は321でございます。
○輪島委員 ハローワークの半分くらいですか。
○総務課長 半分強です。ハローワークは500弱です。
○岩村分科会長 よろしいですか。それでは、ほかにはいかがでしょうか。新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 今、輪島委員から出していただいたことも関連するのですが、今回の資料の中に2ページの2の(2)に改正労基法の施行に伴う長時間の抑制の中に、事業場に対する36協定の適正化指導という記述がございますし、また4.にも監督行政の強化を図るという記載をされております。是非これは全国規模で、先ほど伺った321署3,000名強の監督官の方にフルに活躍をいただいて、監督行政の強化を是非お願いしたいと思っております。
 その際に36協定の指導に当たっては、単に労働時間のチェックをするということだけではなくて、マックの裁判でありますように、管理監督者の範囲であるとかいった内容まで踏み込んで、監督指導を是非お願いしたいと思ってございます。勿論この36協定ということでありますと、協定当事者の一方の我々労働組合の方も、連合としても構成組織に対して注意の喚起をしてまいりたいと思っております。以上です。
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、監督課長、お願いします。
○監督課長 36協定につきましては、基本的にはまず窓口で受理の際に法定要件のみならず、限度基準告示が遵守されているかどうかについてチェックをいたしまして、指導をする形で全国やっております。
 いわゆる名ばかり管理職問題等につきましては、これは今、行政の重点課題の一つということで、全国の監督官が問題がありそうな事業場を監督して、その是正を求めているという状況でございます。今度ともしっかりやってまいりたいと思います。
○岩村分科会長 ほかにはいかがでございましょうか。小山委員、どうぞ。
○小山委員 先ほど来の議論のとおり、これから具体的に進めていくに当たっては、さまざま、きめ細かな対応が是非必要だろうと思いますし、労使の協力も是非お願いをしたいと思います。
 特に私どもは中小企業が多い職場の組合なものですから、まだ組合があるところはいいのですけれども、圧倒的多数の労働組合もない職場は、労働相談などをやると、そういう職場で働いている労働者からの相談が非常に多いわけですけれども、実態は労働基準法違反が当たり前のように行われているということが何年経っても全然よくならないです。
 先ほど三浦委員がおっしゃったように、なぜ中小の条件が悪いのか。それは確かに利益が出ないような経済構造、産業の仕組みがあるのだろうと思います。ただ小さいからというだけではなくて、どうしてもどこかに収益が吸い取られていくような経済構造、産業構造が現実にあるわけで、そこを正していかないといけないと言っても、それは自由な市場競争の中でなかなか進んでいかない。
 そうすると結局最後にどうしなければいけないかというと、労働基準法できちんと法的な規制をかけざるを得ないです。そのたびに中小は適用除外だというのは、非常に経済的環境が厳しいところに置かれていると言うわけです。しかし、公正な競争を行っていくとすれば、法定の最低限を引き上げていく中で変えていくという、みんなが同じ条件にするならば、一部のところだけがよくなるということはあり得ないです。みんなの条件を変えていくことでしか公正な競争はできないわけです。この辺は是非労使の御理解、特に使用者の皆さんの御理解をいただかないと、いつも中小が苦しいのだ、だから適用除外なのだと、あるいは適用猶予なのだということから少し脱却していかないと、現実、日本の労働基準法が余りにも簡単に法違反が行われていて、この監督行政だけではそれを摘発したり、あるいは指導し切れない現実があるということを踏まえた対応が必要だろうと思っております。
 ですから、具体的に言えば、今、労働基準法の適用除外になっている部分を3年と言わずにもっと早く見直しをしていただければいいだろうと思いますけれども、それは私からのお願いであります。今後、中小なりあるいは業種、特定の産業で適用除外になっている労働時間の分野もまだまだあるわけですから、そういうところも含めて、きめ細かい対応をお願いしたいと思います。2点です。
○岩村分科会長 お願いということで承るということにしたいと思います。三浦委員、どうぞ。
○三浦委員 中小企業において、労働関係法令を守るのは当たり前だというのは、それはそのとおりだと考えております。守らなくていいという考えは全くないですけれども、監督行政の強化のときに考えていただきたいのは、関係法令についての一層の周知の機会をもう少しつくることが必要ではないかと思います。
 勿論、経営する限り関係法令を知っておくべきだということはわかるのですけれども、特に最近の法令は中身がかなり複雑になってきていて、一見わかりにくいところもございますので、その辺の周知をすることによっての改善もかなりあるのではないかも思いますので、その辺のところに力を入れていただければと考えています。
○岩村分科会長 ありがとうございます。田中委員、どうぞ。
○田中委員 今の三浦委員のお話に付け加えるところですけれども、これは企業規模にかかわらず、監督行政で法律と今の現状とのチェックをしていただくことは非常に大事だと思いますけれども、一方で労働時間を減らすとか、あるいは有給休暇をきちんととっていくためには仕事の仕方を変えていかないと、なかなかできないところもあります。そのベースには業界の仕組みもあるでしょうし、意識の問題もあるかと思います。
 先ほど企画課長から御説明いただいた中にいろいろな助成金とか、あるいは中小企業の方向けの好事例の開示とか、やはり知恵を出していかないと、こうしなさい、ああそうですかとはできないところもありますので、こういうところではこういうことをやっているという知恵の集積をいろいろな場で、法令の周知と合わせて是非お願いできないかと。あえて違反をしようと思って、していらっしゃる方はそんなにたくさんいらっしゃるわけではないと思いますので、こういう知恵があるよというのを共有化することで、少し底上げがされるのではないかと思います。
 是非、法令の周知とともに、そういった場を積極的に設けていただくことは意味があるのではないと感じておりますので、よろしくお願いいたします。これは企業規模にかかわらず、私のところの住宅業界とかもありますけれども、業種によって相当濃淡があるのは事実ですので、業界の中では人材確保という意味でそれぞれ御努力をされているのも事実だと思いますので、そういう後押しがあると非常にありがたいと思っております。以上でございます。
○岩村分科会長 ありがとうございます。そういう意味で今回、今日お手元にあるパンフレットの中でも最後の方に幾つか具体例、取組例といったものも入れていただいて、パンフレットをつくっていただいているということで、今、田中委員から御指摘がありましたように、こういう知恵を出せばこういうことができますよというものを積極的に提供していくことによって、いろいろな意味での労働時間の短縮その他、ワーク・ライフ・バランスについても同じだと思いますが、そういったものへの取組みをより積極化できるかなとは思っておりますので、そこは行政が頭で考えるのには限界がございますので、現場に近い労使の方々からいろいろな取組例等を行政の方に御紹介いただいて、それをまた行政の方がさまざまな形で提供していくという、うまくサイクルができればいいのではないかとも思いますので、是非労使それぞれ御協力をいただければと思います。
 神津委員、どうぞ。
○神津委員 関連してですけれども、工夫してパンフレットもつくっていただいていますが、当然すべての企業の労使に配布するのは不可能なわけです。一方、今はホームページという非常に便利なツールもありますし、今回の内容を含めて、報道機関、プレスの皆さん方にも是非特徴ある形でアピールしていただいて、どういう問題がカギになっていくのかというところですとか、具体的な事例を示して、こういう話であればホームページにアクセスしてみようと思えるような取り上げ方がなされるような工夫をお願いします。
 併せて今回全体の話が、PDCAを回していくのは非常に大きい特徴だと思いますので、その辺りも含めてアピールをしていだければありがたいと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。今、別のところでもホームページの議論は私もしているのですが、これは特に企業側から御指摘をいただいたのですけれども、検索ソフトでGoogleとかそういうところでキーワードを入れたときに引っかかるかどうか。それが一番ポイントだという御指摘をいただいたものですから、今、神津委員がおっしゃったようにホームページは非常に有力なツールでありますけれども、余り内容を一生懸命盛り込んでも、結局検索ソフトで引っかからないと読んでもらえないのが現状だと思いますので、そういったところも御工夫をいただきながら、取り組んでいただければとは思います。
 今は携帯もそうですが、キーワードを入れて、それで引っかかるかどうかでみんな探すので、そこから引っかかるようなコンテンツを考えないとだめですよということを教えていただきましたので、御工夫をいただければと思います。
 そのほかにいかがでございましょうか。伊丹委員、お願いいたします。
○伊丹委員 先ほど来からのいろいろな議論の中で、輪島委員ですとか田中委員からも話がありましたが、やはり公正競争の中でこういったワーク・ライフ・バランスを実現していくということになるわけなので、基本的には競争力がないとうまくいかないと思います。まさに全世界でこれはよくも悪くも切磋琢磨していく仕組みの中で、企業は事業を行っているわけなので、海外のいろいろな企業のやり方なども参考にしながら、いわゆる生産性を上げていくことによって競争力を確保し、ワーク・ライフ・バランスを実現していくしかないだろうと思います。
 ワークを減らす、ジョブを変えていく、よりよいものにしていくことによって、生産性が上がって収益につながる。これがワーク・ライフ・バランスの本質だと思うわけです。だからこそワーク・ライフ・バランスの知恵については生産性を上げることにより、結果として一人ひとりの労働時間を削減できるという事例として、紹介していかないといけないのだと思いますし、それは決して国内だけでなくて、海外との競争の中でも、そういう知恵はあるのだということを紹介していかないと、ワーク・ライフ・バランスが絵にかいたもちになってしまうのではないかと思います。
 そういうことで、きめ細かい対応が必要だという話も先ほど来ありましたが、労働行政だけではなくて、各省庁との連携が不可欠になります。監督官庁のお立場からは駄目なものは駄目だという指導をされると思いますが、それを変えていこうとしたときに、先ほどインターネットとかで知恵をよりわかるようにという御発言もありましたが、中小企業庁なども含め行政として、知恵がなくて悩んでいる企業により的確にアドバイスできるネットワークをつくっていくことが必要なのではないかと思います。
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、新谷委員。
○新谷委員 今の伊丹委員のご発言に関して、本題の前に私の感想めいたものをお話ししたいと思います。生産性を上げるために労使で知恵を出すということは、私どもは全く異論がありません。私どもも労使で生産性運動に取り組んでおり、公正な分配、適正な雇用を求めてまいりました。
 それは全く異論はないのですが、そうは言いながらも、今海外も含めた公正な競争条件というお話がありましたので、先ほど来、話になっています時間外の割増率について、本当に国際的に見て公正な条件になっているかという疑問があります。その話をし出すと長くなりますので置いておきますが、確かに公正な競争条件というのであれば、労働条件についても国際的なスタンダードに比べてどうなのかということも見ていく必要があると思っております。というのは感想めいた話で、本題を申し上げたいと思います。
 この資料の3.にテレワークの普及促進という形で目標が掲げられております。このテレワークというのは、例えば通勤負担の軽減であるとかワーク・ライフ・バランスの実現、あるいは障害者の方の就業機会の拡大という面でメリットがあると思っております。ただ、新しい働き方であることから、幾つかの課題があるのではないかと思います。
 テレワークと言ったときに、雇用関係にある在宅勤務といった形態と、例えば請負とか準委任のような雇用関係にない労働をされている、いわゆる在宅ワーカーと言われる形態と2つあり、それぞれ抱えている課題が違うのではないかと思っています。
 まず最初に雇用関係にある在宅勤務の方への対応ですが、これは4省庁の役割分担の中で厚生労働省が在宅勤務のガイドラインをおつくりになられて、いろいろな労働関係諸法の適用についてポイントを示していただいているのですが、こういう対応で済むのかなという懸念があります。
 ここにテレワーカーの数を倍増させるとありますが、在宅ワークで働く方がどんどん増えていったときに、今の労働基準法なり安全衛生法をきちんと適用すると書いてあるのですけれども、在宅勤務の方を対象とした特別法とは言いませんが、これに適用する法令なりの整備が要るのではないかと。それに向けての検討を進めていくべきではないかと思っています。
 例えばガイドラインでは安全衛生についても注意点が書かれており、適正な安全衛生教育をやるとなっているのですが、例えば安全衛生法における事務所衛生基準規則ですと、事業所に対して換気、温度、空調、照明等について一定の水準等を満たすように要求をされています。これが在宅勤務の方々ですと、実際にポイントに書かれている内容でどういうふうにこれを運用すればいいのかといった問題があろうかと思います。
 また、労災保険の適用の問題もありますが、労災の民事訴訟における安全配慮義務との関係で、どこまで使用者側として安全配慮に尽くせばいいのかといった点など、使用者の方々は基準がないから戸惑いがあるのではないかと思います。
 勿論、日常の作業等々についてもVDTのセミナーの中でも喚起されていますが、例えば腰痛であるとかドライアイといったような対策をどうするのか。こうした問題を考えていくと、今ある既存の法律をこことここを当てはめて適用しろということだけではなくて、在宅勤務の方に向けての横断的な検討が必要な時期に来ているのではないかと思いますので、是非そういった面での検討をお願いしたいと思います。
 もう一つの類型のいわゆる雇用関係にない在宅ワーカーの方々の問題についてです。これについては資料の中でも仲介機関による安定的な仕事の確保の支援等と記載されているのですが、この請負または準委任に基づく在宅ワーカーの方については、先ほどのネットの話ではないですが、ネット上ではいろいろな業者のホームページがあり、その中には、例えば法外な登録料をとる、紹介料をとる、あるいは保証金をとるといったことだけではなくて、その仕事をするに当たっての必要経費をあらかじめ明示しなくて、いざやってみたら物すごい必要経費の請求が来るとか、あるいは突然契約が打ち切られるといったようなトラブルも出ているようです。
 これは厚生労働省が対応すべき問題かわかりませんが、こういった請負または準委任の在宅ワークに関する指導方針なりを国としてきちんとつくっておかないと、かつてあったような内職詐欺といったような悪徳業者に悪用されかねないと懸念しており、是非早めにご対応をお願いしたいと思っております。以上です。
○岩村分科会長 では、企画課長、お願いいたします。
○企画課長 まず最初に在宅ワークの問題につきまして、若干発言させていただきたいと思います。まず住宅ワークにつきましては、雇用関係にないということで、実は私どもの局ではなくて、雇用均等・児童家庭局の方でやっておりまして、分科会も恐らく別になるのだと思いますけれども、現在こんな状況であると聞いております。勿論、在宅ワークそのものは、例えば母子家庭の皆様でありますとか、就業機会が制約されているような方々にとって柔軟に働くことができる就業形態であるという意味では、大変メリットがあるということでございますけれども、今、御指摘のような、まさに犯罪につながるようなものは論外だと思いますけれども、インチキ的な内職を始め、悪質な業者の方々とのトラブルも見受けられるという問題も指摘されてございます。
 そのため現在は在宅ワークは契約でやっていただくわけでございますが、その最低限確保されるべき事項といたしましてのガイドラインを作成させていただいております。その中で文書上明示すべき契約条件でありますとか、さまざまな留意事項を付けさせていただきまして、注文者はどういうことを守らなくてはいけないのか、報酬の支払いの問題、納期の問題とか、さまざまなことにつきまして、ガイドラインとして出させていただいて、このガイドラインに沿って適切に行われるように取り組んでいるところでございます。
 在宅就業者総合支援事業というのをやっておりまして、情報ポータルサイトを運営させていただきまして、情報提供をさせていただきましたり、あるいはスキルアップを支援させていただきましたり、そもそも相談窓口を設置させていただくということをやらせていただいています。
 確かに在宅ワークの更に細かい実態につきましては、かなり複雑な請負構造になっていることも多く見受けられるということで、例えばどんなような形で利益、収益がどんな構造になっているのかといった実態がなかなか把握できないのが実情ではないかと思っております。今、御指摘いただきました問題点につきまして、担当局の方に私どもの方からきっちりと伝えさせていただきながら、また必要な対応を御検討いただければと思っております。
 在宅勤務の方でございますが、勤務の方は雇用者でございますので、テレワークと言った場合には在宅ワークと在宅勤務と両方入り得るのですが、私どもでやっています在宅のガイドラインにつきましては、在宅勤務の方でございます。
 そのものにつきましては、私どもはガイドラインを示させていただいて、わかりにくいのではないかということでガイドラインの見直しをさせていただいたという経過がございます。
 そのほか、例えば昨年度の事業でモデル事業のようなことを実施させていただいて、実際に個別にやっていただいた結果、どういう問題があったのか。何か改善すべき点はあるか。この辺が困ったとか、そういうことを今、把握させていただきつつあります。したがいまして、そういう個別事例の把握集積の中でどのような問題があるのかを把握させていただいて、更に研究も続けさせていただきたいと考えております。
 勿論、法制的な整備につきましては、実はいろいろ御意見もございまして、一方、やや逆の立場からの御意見もあるところでございますけれども、いずれにいたしましても、さまざまな御意見がある中で、まず実態としてどういう課題があるのかを私どもでよく見極めさせていただきたいと考えております。
○岩村分科会長 よろしゅうございますでしょうか。輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 今、新谷さんが御指摘になった点の雇用関係があるものと、それ以外のものというところの整理ですけれども、まず雇用関係のあるところは、今は基本的には在宅勤務ガイドラインというのがあることを前提にして、もう少し整理をした上で、既存の法令からどういうことが必要なのかをもう少し検討して、わかりやすいものをつくる。このガイドラインを見直すかどうかは別にしても、そういうような観点から必要なのではないかと思います。
 個人請負、契約ベースのところをどういうふうにするのかという整理を家内労働との関係と、今の在宅ですけれども、情報通信機器を使った働き方は多分新しい働き方で、そこは既存のものと整理が付いていないというところが課題であるということはよくわかります。
 もう一つは、今月でしたか。厚生労働省の方で個人請負の研究会が報告書をまとめられたと思いますので、行政としては対応はしているのではないかと思いますが、それを受けて、今後は何か行政の施策の展開があるのではないかと思っていますので、それを併せて検討していくということが重要なのではないかと私どもとしては思っています。
○岩村分科会長 ありがとうございます。そのほかにいかがでございましょうか。
 私の方から一つだけ。今回の労働条件の政策の戦略的な実施について、今日頂戴したペーパーで、よくまとまっているのは資料4の一番最後のページにある目標一覧というところですけれども、ここで今日、事務局から御提示いただいている目標というものと、労働条件分科会との関係をどう理解したらよろしいのか。端的に言えば、この目標は我々がここで議論をしたので、我々が定めたということになるのか。そうではなくて、これは厚生労働省の方で定めたものであって、私たちはその御説明を聞いて、厚生労働省がそういう目標をお定めになったということを承ったということであるのか。そこのところを確認させていただきたい。総務課長、お願いします。
○総務課長 基本的にはこの目標については、政府といいますか、厚生労働省として、こういう目標を定めて、実現のために施策を実施していく。それについては、またこの分科会あるいは評価点検部会とかでPDCAサイクルも含めてやっていくということで、分科会として責任を持って決めるというよりも、あくまで厚生労働省としての目標として定めさせていただくということで御理解いただいて、それに向けて分科会の皆様を始め、労使の方も御理解、御協力をいただくという性質のものと理解しております。
○岩村分科会長 ありがとうございました。そういう性格のものだということをここで御説明いただいて、全体として、とりまとめとしては今日御説明いただいた、具体的には資料4の3ページにある目標を政府目標として設置します。具体的には厚生労働省として、これを目標として今後政策を展開していきますということについて今日お話を伺い、それについて、我々としてはそういう目標を設定したのですねということについて了承するというとりまとめでよろしゅうございましょうか。
(「はい」と声あり)
○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局の方では、今のような旨を労働政策審議会の本審の方に、特に事務局の方から会長にお伝えいただくということと、厚生労働省におかれましては、政府でとりまとめていただく新成長戦略というものがこれからの政策の目標と整合性のあるものになるよう御尽力をいただきたいと思います。
 もう一つ、勝手に付け加えれば、やはり労働政策の基本的な事項は、労働政策審議会、具体的には各分科会、部会で決めるものでありますので、その点については是非、厚生労働省としても御留意をいただいて、お願いをしたいと思います。
 以上でございますが、委員の方々から、そのほかに特にございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、本日の分科会はこれで終了させていただきたいと思います。そこで議事録の署名でございますけれども、労働側は新谷委員にお願いしたいと思います。使用者側は伊丹委員にお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今日はどうもお忙しいところをありがとうございました。


照会先
 労働基準局労働条件政策課企画係
電話03-5253-1111(5353)

(了)

勤労者生活部企画課
企画係(内線5353)

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