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2010年6月11日 平成21年度 第4回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会、ばく露評価小検討会合同開催)

○日時

平成22年6月11日(金)16:00~18:00


○場所

経済産業省別館1038号会議室


○議事

○寺島化学物質情報管理官 大変お忙しい中ご参集いただきまして、ありがとうございます。定刻に
なりましたので、ただいまより「第4回化学物質のリスク評価検討会」を開催します。以下の議事進行
については、座長にお願いします。
○名古屋座長 第4回化学物質のリスク評価検討会について、事務局から資料の確認をお願いします。
○寺島化学物質情報管理官 資料の確認をします。1枚目が「議事次第」となっており、その裏面に
「資料一覧」があります。そちらをご覧いただきながらご確認いただければと思います。資料1「リス
ク評価検討会報告書(案)」、資料1別冊1~14がリスク評価書、15~20の一綴りが「有害性評価書」
になっています。資料2「平成21年度リスク評価対象物質の今後の対応について(案)」、資料3
「ITO(インジウム)の有害性試験について」です。参考1「ばく露評価ガイドライン」、参考2「リス
ク評価の手法」、参考3「リスク評価の進捗状況」となっています。落丁、重複等がありましたら、事
務局にお申し出いただければと思います。
○名古屋座長 よろしいですか。本日の議題に入ります。平成21年度リスク評価報告書についてとい
うことでご検討いただきます。本日の検討会では、報告書としてまとめる予定なので、最初にこれま
での議論でいただいた修正部分について事務局からよろしくお願いします。
○寺島化学物質情報管理官 これまでの指摘を踏まえまして、リスク評価書そのものの全般的な修正
事項について簡単に説明します。例を取りまして、資料1別冊1「アクリル酸エチル」をご覧ください。
2頁に「発がん性以外の有害性」ということで、第1回にご検討いただきました物質についても、有害
性の具体的な毒性について単にあり、なしというのではなくて、主なデータを追記するという形での
修正を行っています。
 (3)「許容濃度等」にありますように、「5ppm」とある「ppm」の「単位」の前に半角スペースを空
けるという修正についても、大かた気づくところを修正しています。
 3頁、16、17行目辺りに「局所排気装置の設置がなされている作業」「マスクの着用されている作
業」ということでデータを入れていたのですが、ここも数字の計算の誤りがあり、全般的に修正をし
ています。
 4頁、上から6行目にありますとおり「8時間TWAの幾何平均値」ですが、これも全般的に見直しま
したところ、相加平均を入れている部分があり、それをすべて「相乗平均」に修正しています。それ
に伴いましてそれぞれのリスク評価書の末尾に付けておりますグラフ、表についても見直しを行って
います。
 前回も説明しましたが、個人ばく露測定の実測値として、実際に測定された値を入れていた所があ
ったのですが、それも8時間TWAということで全部置き直しています。
 たくさん修正をしまして、大変申し訳ありませんが、ご確認いただければと思います。よろしくお
願いします。
○座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。では次お願いします。
○長山室長補佐 前回の5月21日において6物質をご議論いただきましたが、その修正の部分につい
て説明します。別冊4「エチルベンゼン」ですが、こちらは先ほど申し上げた所要の改正を行うとと
もに、2頁の22行目辺りから「許容濃度」がありますが、こちらで産衛学会の決定の勧告年度を記入
するという修正を行っています。
 別冊7「1.2-ジブロモエタン」については、4頁のグラフの上の部分に文章がありますが、こちらに
おいて下線部を引いた所の修正を行っています。上の1~7行目辺りまでの部分ですが、本年度の報告
書において二次評価値をどうするかということで前回ご議論をいただき、二次評価値としてはNIOSHの
0.045ppmを置いて進めるということですが、原文の論文とかこういったものを集めて、また引き続き
精査が必要という旨を1~7行目に記載しています。11~13行目に1.2-ジブロモエタンついて、有害性
として経皮吸収が指摘されているということから、今後実態調査を行うときには、その点についても
詳細の調査において調べる旨を付記しているという修正を行っています。ジブロモエタンについての
大きな修正は以上です。
 3番目として別冊9「コバルト化合物」の中間報告のリスク評価書になります。前回申し上げたとお
り、こちらは詳細リスク評価書ではなくて中間報告という形で今回取りまとめていますので、表題も
変えています。中は、所要の修正と8頁のいちばん上に3行ありますが、「及び」や「粉じんマスクが
使用されていた」と文言を修正している所です。9頁の下のほうですが、「ヒューム」の表現について
修正をしている部分が前回からの修正となっています。コバルト化合物は以上です。
 別冊12「2.4-ジニトロトルエン」です。こちらについて所要の修正を行うとともに、7頁の15行目、
上側5%の部分については、データ数が少ないので参考値とするということで前回検討をいただきまし
たので、こちらの所に「参考」という形で書き、後ろのほうの「7.96mg/m3」は参考値としてわかるよ
うに記載しています。
 10~11頁にかけての「結論(まとめ)」の部分ですが、修正のポイントとしては11頁の1、2行目
になります。こちらにおいて「但し、同様の作業が今後行われる可能性も否定できない」ということ
で、こちらの物質は粉砕作業については高いばく露が想定されるけれども、すでに当該作業が中止さ
れて同様の作業もないことから、リスク低減措置の方針としては、対策は特に不要ではないかという
ことでご議論いただきましたが、今後、同じ作業が他の事業場で再開される可能性も否定できないと
いうことから、継続して調査する旨を付記するということで修正を加えています。2.4-ジニトロトル
エンは以上です。
 13「ジメチルヒドラジン」についての修正点ですが、9頁のいちばん下の行になりますが、こちらは
呼吸用保護具について書いています。ジメチルヒドラジンの呼吸用保護具に関しては、アンモニアガ
ス用防毒マスクとか、どういったマスクが適しているのかということで、誤解されて使ってばく露さ
れないように注意喚起するという意味を含めて、いちばん下の所にその旨を付記しています。ジメチ
ルヒドラジンの修正点は以上です。
 最後に、14「1.3-プロパンスルトン」ですが、こちらについては所要の修正と、2頁の32行目から
の部分ですが、「反復経口投与」の試験について文言を読みやすく修正を行っています。プロパンス
ルトンについては以上です。
 以上が前回からの6物質についての主な修正点です。
○名古屋座長 ただいまの説明について、ご意見、ご質問等はありますか、まとめてで結構ですが。
よろしいですか。
 次に進んでいきたいと思います。有害性評価小検討委員会において有害性評価のみをまとめられた
物質がありますので、その検討をしていきたいと思います。これは事務局から説明をよろしくお願い
します。
○長山室長補佐 資料としては、別冊15~20と書いたホチキス留めで一綴りにしているものについて、
物質1つずつごとに説明したいと思います。
 15「アルファ、アルファ-ジクロロトルエン」から説明したいと思います。1頁になりますが、こち
らの物質は「物理的性状」の所ですが、別名としては「塩化ベンザル」また、様々な呼び名で呼ばれ
ているものです。
 物理的化学的性状としては、無色の液体という形で使われているものです。
 3番目の「生産・輸入/使用/用途」の部分ですが、こちらについては、特に報告なしということで、
用途としては工業用の中間体で使われるというものになっています。
 28行目からの「有害性評価」の部分ですが、こちらの物質はIARCでは2Aということで、ヒトに対
しておそらく発がん性があると評価されています。閾値の有無の判断の部分については、そういった
遺伝毒性の実験が報告されていないということから、有無の判断としては不明という形で整理されて
います。
 発がん性以外の有害性の所について急性毒性などが報告されていますが、皮膚感作性や生殖毒性、
この辺りは報告なしと書かれています。あと記載が少し漏れていますが、反復投与毒性は、別添2「有
害性評価書」の2頁に、反復毒性でラットに対する試験があり、こちらはラットに対して吸入ばく露し
た実験で「体重増加抑制が認められている」という記載がありますので、こちらの本文でも「ラット
に対する体重増加抑制が見られた」という旨を追記したいと考えています。
 (3)許容濃度等ですが、ACGIHと産衛学会、どちらも設定されていないという状況となっています。
 (4)評価値は、一次評価値としては発がんの閾値が不明であるということで評価値なし。二次評価値
については、有害性の小検討会において検討中ということで結論づけられ、今後、海外の濃度、海外
の基準に関する証拠を集めたり、また、それらが見つからなければ類似物質の情報を集めるなど検討
していくということで、検討中ということで議論されているものです。
 こちらについては今年度は有害性の評価のみということになりますので、またいずれ実態調査やば
く露調査を行って、また評価を行うときには二次評価値を決めていくという形になっていきますが、
いまの段階として本年度としては検討中という形で報告書に盛り込みたいと考えているところです。
15「アルファ、アルファ-ジクロロトルエン」は以上です。
○名古屋座長 ただいまの説明について、ご意見、ご質問等はありますか。よろしいですか。
○島田化学物質評価室長 先ほどの反復投与毒性のラットの吸入の「体重増加抑制」という記述があ
りますが、これはいわゆる毒性と認識してよろしいものですか。
○名古屋座長 これはどうしますか。いいですか。
○大前委員 これはきっと有意に下がっているのですね。ほかに何の知見がなくてもよろしいのでは
ないかと思いますが。
○島田化学物質評価室長 それでは入れることにします。
○名古屋座長 文献からいいますとそう書いてあるということですね。取扱いはこのあたりでよろし
いですか。あと、ほかにありますか。よろしいですか。それでは検討をいろいろありがとうございま
した。
 次の「ウレタン」に進みたいと思います。よろしくお願いします。
○長山室長補佐 16「ウレタン」にまいりたいと思います。1枚目になりますが、「物理的性状」とい
うことで、こちらは「ウレタン」と書いてありますが、別名「カルバミン酸エチル」ということで、
ウレタン樹脂、ポリウレタンは含まないということで、それとはまた別ものということで考えていた
だければと思います。
 物理的化学的性状としては、結晶またはペレット、粉末という形状になっています。
 20行目からの「生産・輸入量/用途」については報告なしで、生化学用という形で書かれています。
 「有害性評価」の部分ですが、IARCとしては、ヒトに対しておそらく発がん性があると評価されて
います。閾値の有無の判断ですが、こちらについては、様々な試験で変異原性が確認されているとい
うことで、閾値はなしということで、9行目からにある「労働補正後のがんの過剰発生率に対応する濃
度」として、California EPAのユニットリスクから計算された1.7μg/m3が算出されています。
 発がん性以外の有害性として、急性毒性、生殖毒性などが挙げられています。こちらについても反
復投与毒性が後ろのほうにあるのですが、こちらもラット/マウスに対して体重増加抑制や肺、腎臓、
肝臓の相対重量の増加等ということで、別添2の2枚目辺りの「経口投与」の下のほうにおいて有意差
を認めたという文献もあり、このあたりを同様に本文に入れるかというところもご検討いただければ
と思います。
 (3)許容濃度等としても、ACGIH、産衛学会で設定されていないという状態となっています。
 評価値は、一次評価値としては1.7μg/m3の10-4に対応した濃度、二次評価値としては検討中とい
うことで案を作らせていただいています。
○名古屋座長 ただいまの説明について、ご質問、ご意見等はありますか。
○西川委員 反復投与毒性で体重増加抑制があるということは、毒性と考えたほうがいいと思います。
臓器重量についても、一部の試験で組織変化を伴っていますので、これも毒性であろうと思います。
○名古屋座長 ここは本文のほうにあるから大丈夫ですか。
○西川委員 書いても差し支えないのであれば記載していただきたい。
○長山室長補佐 では、別添2の毒性の部分について、本文にも同じように入れるという形で。
○名古屋座長 よろしくお願いします。あといいですか。ではウレタンはそれにしたいと思います。
 続いて、「カテコール」をよろしくお願いします。
○長山室長補佐 17「カテコール」にまいります。こちらについては「物理的性状」としては無色の
結晶という形で固体で取り扱われています。
 生産量や用途としては多く使われており、様々な原料などの用途として使われているものとなって
います。
 2「有害性評価」の部分ですが、発がん性としてはIARC、2Bということで、ヒトに対して発がん性が
疑われるものとなっています。閾値の判断の部分ですが、こちらについて閾値なしとしており、変異
原性の試験では陰性だったのですが、ほかの試験の結果を見ると、多くが陽性ということで、有害性
の小検討会においても、結果を踏まえると閾値なしとみなすのがよいのではないかということで、閾
値なしとしています。2頁に移り、ユニットリスクに関する情報はないとなっています。
 発がん性以外の有害性としては、急性毒性、生殖毒性、反復投与毒性などが挙げられています。
 こちらの許容濃度としては、ACGIHのTWAで5ppmというものが設定されています。
 評価値は、一次評価値としては閾値がないのですが、ユニットリスクについては情報なしというこ
とで一次評価値なし、二次評価値としてはACGIHのTLV-TWAの5ppmとするということで本文を作らせ
ています。
○名古屋座長 ただいまの説明について、ご意見、ご質問等はありますか。よろしいですか。
○島田化学物質評価室長 細かなことですが、いま説明申し上げましたように、融点が105℃というこ
とで、通常は常温で固体ということですが、閾値としてTWAが5ppmという表記になっているものです
からこれを優先したのですが、mg/m3としたほうがよろしいのですか、それともppmのままのほうがよ
ろしいですか。
○名古屋座長 有害評価のほうはどうですか。
○大前委員 蒸気圧はなかったのでしたか。
○名古屋座長 ないですね、書いていないです。
○大前委員 ACGIHがppmでまず表現しているので、蒸気圧がたぶんあるのだと思います。固体でも蒸
気圧があればppmでも構わないと思うのです。それを確認したいと思いますが。
○名古屋座長 これは事務局、よろしいですか。あるいはまた大前先生に見ていただいて蒸気圧があ
るようでしたらppm表記という形で。あと、よろしいですか。確かに融点が低いですね。
○櫻井企画検討会座長 蒸気圧の点で是非知りたいと思うのですが、臭気があるのは当然ある程度は
昇華しているはずです。程度の問題になっているわけです。ACGIHはある程度の量が、意味のある蒸気
圧と判断したからppmという表現を採用したのだと思います。
○名古屋座長 そこは表記に関わってきますので、よろしくお願いします。あと、よろしいですか。
○西川委員 反復投与毒性のところで評価書の2頁なのですが、コロンの後「あり」としか書いてない
のですが、これは前から申し上げているとおり、あり、なしではなくて、できれば無毒性量とかの数
値を記載すべきなのです。資料を見ますと直接のデータはないとありますので、それを少し簡潔に、
「あり」の代わりに記載したらいいのではないかと思います。
○長山室長補佐 そこの部分は、反復投与毒性でそこの毒性の部分を直接書いて、実験としては、ラ
ットに対する部分でのものだったので「(ラット)」という形で別記したいと思います。
○宮川委員 さっきの蒸気圧とmg/m3の話ですけれども、もっと早い段階で気がつけばよかったかと思
うのですが、ACGIHは5ppm(23mg/m3)がTWAということで、この程度の濃度であれば、昇華した蒸気が
問題になっていてそれを基準に考えたのかもしれないのですけれども、同じ換算でもって前の頁のク
の特定臓器毒性のところでは、1500mg/m3で330ppm、2800mg/m3で620ppmと同じ換算でもって書いてあ
るのですけれども、これは元の実験の論文を見ないと、粒子を含むものでやったのかガスでやったの
かがわからず、その片方でやったものを単純にppmで書いてしまうと、ガスではなくて粒子の場合は濃
度をppmで表示できないので、間違いになると思いますので、ちょっと。
○名古屋座長 併記のほうかと。
○宮川委員 併記をしているときには、どちらかが間違いになる可能性もあると思いますので、最後
の許容濃度のところはACGIHが紹介されるのでいいのですけれども、実験のところについては元の論文
を本当はチェックしないとppmではまずい場合があるかもしれないなと思います。元の論文から作った
のではなくて、どこかの評価書で作っているとすると、その段階でもうすでにこうなっているので、
確認するのは難しいのかもしれません。
○名古屋座長 数字だけ持ってきているのですよね、きっとね。やはり蒸気圧をきちんと書いて、我
々は判断しましょうということでよろしいでしょうか。
○長山室長補佐 はい、わかりました。
○名古屋座長 あとはよろしいですか。具体的には、西川先生言われたような形で、具体的な形で入
れてもらう形にするとよろしいと思います。
○内山委員 有害性評価書のいちばん最後のところで、水環境有害性というのがあるのですが、現在
もこういう記述をした物質はありましたでしょうか。
○圓藤委員 これは、環境省だといるのですけれども。
○名古屋座長 水環境、(2)のところですね。水環境有害性、生体毒性データと書いてあります、ここ
は。
○内山委員 有害評価表のいちばん最後に、この物質だけ、この許容濃度の後に水環境有害性という
のがあるのですが、いままでこういう項目というのはあったのですか。
○細田(中災防) ちょっと説明させていただきますと、この有害性評価の事業が7年目ぐらいになる
のですけれども、最初の3年ぐらいはMSDSを作るためにも使おうということで、環境毒性のほうも項
目として入っていたのです。平成18年かなんかから以降の評価は、MSDSは別の目的でやるからという
ことで、こちらを外したものですから、それ以降の有害性評価書には環境毒性のほうの項目は入って
ないです。ですから、ここで環境毒性があるのは、古い時期にやったものがそのまま出ているという
ことで。ですから、揃えるためには、いまは切ってしまえばいいのではないかと思います。
○内山委員 そういう経緯があるのであれば、現在のリスク評価は作業環境中心でやっているので、
なくしてしまってもいいと思います。
○細田(中災防) そのころ報告したのは、そうなってます。切ってしまえばいいのではないかと思
います。
○内山委員 なるほど、わかりました。
○名古屋座長 では、ここでは新しいほうの、切るということでよろしいでしょうか。
○長山室長補佐 ちょっと迷って、どうしようかと思って残したのですけれども。
○細田(中災防) それと、評価表の結論というのがありますよね。これも切ったほうがいいかと思
うのですよね。報告書の段階では案として結論を書いてあるのですが、採用されたときにそれと違う
結論になる可能性がありますので。
○名古屋座長 わかりました。これも、結論ですね。よろしくお願いします。あと、よろしいでしょ
うか。ありがとうございました。それでは次のジアゾメタンのほうに移りたいと思います。
○長山室長補佐 次の「ジアゾメタン」に移ります。こちらにつきましては、物理的化学的性状とし
ては、黄色の気体で、気体として扱っていると。
 下のほうに「生産・輸入量/使用量/用途」とありますけれども、生産量・輸入量は報告なし。用
途として実験室でのメチル化剤ということで、有害性の小検討会におきましてもこちらについては実
験室で使うことはあるけれども、産業会ではそれほど多くは使われてないのではないかというような
議論があったものです。
 2頁、「有害性評価」としては、発がん性としては、こちらはACGIHでA2と評価されているもので
すので、こちらを採用して人に対して、おそらく発がん性があるということで取っています。閾値の
有無の判断については、情報なしということで不明となっています。
 発がん性以外の有害性としても、あまり報告がなされているものではなかったです。
 許容濃度としては、ACGIHで0.2ppmと設定されています。
 このことから、一次評価値としては、閾値の有無は不明ということで、一次評価値はなし。二次評
価値としては、ACGIHの0.2ppmを取るということで作っているものです。以上でございます。
○名古屋座長 ありがとうございました。たたいまの説明につきまして、ご意見、ご質問等あります
でしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、次に移りたいと思います。
○長山室長補佐 それでは、19番目の「ジメチルカルバモイル=クロリド」にいきます。1頁、別名で
「DMCC」などと呼ばれているものです。
 こちらについては物理的化学的性状としては、刺激臭の液体という形で取り扱われているものです。
 「生産・輸入/用途」は報告なしということで、用途としては医薬、殺虫剤などの中間体などで使
われていると報告されています。
 2頁、有害性評価ですけれども、発がん性としてはIARCは2Aで、おそらく発がん性があるとされて
います。閾値の有無ですが、変異原性の試験で変異原性が認められたということで、閾値はなしと。
ただ、ユニットリスクに関する情報なしというものです。
 発がん性以外の有害性としては、急性毒性が報告されていますけれども、その他生殖毒性などは報
告なしとなっています。
 許容濃度はACGIHで0.005ppmと設定されています。
 評価値ですが、一次評価値としては、閾値がない場合であり、ただユニットリスクについての情報
がないということで、評価値なしと。二次評価値ですが、こちらは修正ミスで、その前のジアゾメタ
ンのものをそのまま使ってしまって、混同して書いたと思いますけれども、こちらは0.005ppmの間違
いですので修正をお願いしたいと思います。ACGIHで0.005ppmが設定されていますので、こちらを二
次評価値として設定するとなっています。以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。これにつきましても、質問等、何かありますでしょうか。
○内山委員 2頁目のACGIHの分類が、2Aと書いてあるのですが、A2ではなかったのでしたか。
○長山室長補佐 そうですね。ACGIHはそうですね。すみません。
○名古屋座長 ありがとうございました。他に、ありますでしょうか。そうしましたら次に進みます。
最後になると思いますけれども、ナフタレンということで、よろしくお願いいたします。
○長山室長補佐 20番の「ナフタレン」にまいります。こちらについては、物理的化学的性状として
は、白色の固体です。ただ、特徴的な臭いがあるものとなっています。
 「生産・輸入/用途」について、生産料としてもかなり多く作られており、用途としても様々な中
間体や顔料などに使われているものとなっています。
 有害性ですが、IARCで2Bと整理されています。閾値の判断ですけれども、判断できないとしており、
こちらについてはいろいろな試験があり、陽性を示すものと陰性を示すものと評価が分かれています
ので、将来的に評価が変わる可能性がありますが、いまの段階としては分かれているので判断できな
いという形で整理しています。
 発がん性以外の有害性ですが、急性毒性があり、こちらについても記載していなかったのですが、
反復投与毒性の部分について、マウスに対する毒性として嗅上皮の慢性炎症などが挙げられることが、
別添1、3頁の右上にNTPでの実験データがあることが書かれておりますけれども、これを本文にも記
載してはどうかと考えています。
 許容濃度については、ACGIHで10ppmのTWAと、15ppmのSTELの2つが設定されています。
 評価値として、一次評価値としては閾値が判断できないということで、評価値なし。二次評価値と
しては、ACGIHのTWAを取って10ppmと設定するとなっています。以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。ただいまの説明について、ご質問等がありますか。これも
さっきと同じように、水環境のものは除いていいのですよね。
○長山室長補佐 同じように、これとか、もしかしたら過去のものであれば、同様の修正を全体的に
かけさせていただきたいと思います。
○名古屋座長 別添1の3枚目に水環境有害性と書いてありますが、ここも外したほうがいいというこ
とですね。
○長山室長補佐 同じように。
○名古屋座長 さっきもあったから、これも見ておいてください。よろしくお願いします。他に、何
かありますでしょうか。
○西川委員 反復投与毒性のマウス吸入試験についてご説明があったのですが、経口投与についても
記載していいように思いますが。
○長山室長補佐 別添2の反復ばく露の経口投与で、こちらについても臓器の相対重量の減少とかその
辺。
○西川委員 経口投与でいくつか試験がなされていて、NOAELも推定されているものがありますので、
可能であれば加えたほうがいいのではないですか。
○名古屋座長 それを2頁に加えてください。
○長山室長補佐 では、こちらの別添2から経口投与の部分を抜き出して加えたいと思います。
○名古屋座長 他にありますか。
○大前委員 これはどうしていましたか。経口吸入で、吸入の場外内は。
○細田(中災防) 吸入がない場合には、経口を無理にということはあるのですけれども、労働環境
なので、吸入があればそれを優先するという形でやっていければ。
○大前委員 吸入があれば。そういう形で。
○細田(中災防) 絶対出さないという意味ではないですけれども。優先するというようなことで。
○大前委員 別添1のほうは、そういう考え方で吸入しか書いてないということですけれども、新たに
こちらに加えるとしたら。
○名古屋座長 加えたほうがいいのですか。どうしましょう。
○細田(中災防) 物質の全ての情報を出すという観点であれば、加えたほうがいいと思いますけれ
ども、労働環境ということで、しかも呼気で入るという発想で見た場合には、情報としてはいいかも
しれません。
○大前委員 ほかのとの整合性を見てみないと、ちょっとわからない。これだけ入れてもとか、その
辺が。
○圓藤委員 この経口投与の実験はみな短期なので、吸入ばく露は104週やってますけど、これは最大
で13週ぐらいなので、予備実験みたいな感じなので、無理して入れる必要はないのではないかと思い
ます。
○名古屋座長 よろしいでしょうか。どうしましょう。
○西川委員 いや、13週というのは、必ずしも発がん性の予備試験ばかりではなくて、いわゆる亜慢
性毒性を評価するきちんとした試験でもありますので、そういう意味からは十分意味のある試験デー
タだとは思うのですけれども、先ほどのルールで吸入と経口の両方があったときに、吸入を優先する
というルールで一貫して評価されているのであれば別にいいと思いますが。
○名古屋座長 では、この報告書どうりでよろしくお願いします。あとは、よろしいでしょうか。
○内山委員 また細かいことですが、これも古い報告書だからと思うのですが、サルモネラ菌は、ネ
ズミチフス菌に統一したのですよね。
○細田(中災防) そうです。これも古いのですね。環境がありますから。言葉は統一されているは
ずです。
○内山委員 そうですね。本文の中で2箇所サルモネラ菌を用いてと書いてありますので、これは最近
はネズミチフス菌に統一していたと思いますが。
○長山室長補佐 ちょっと、そこは。
○宮川委員 すみません。いま頃申し訳ございませんけれども、全部がそうなのですけれども、例え
ば記載にあるようにラットに何gを何投与した実験でこういう影響が見られたというのは、その実験は
他の用量についても実施されているものの、記載は、影響が認められた用量中のいちばん低い用量で
LOAELに相当するところだけを抜き書きにして書いてあるのですけれども、どのような実験なのか疑問
に思うときがあります。もう少し正確に書き出すと良いと思います。ラットに何々の物質を何週間投
与した実験では、どれぐらいの用量からこういう影響が見られ、どれぐらいまでは見られなかったと
いう書きぶりにしたほうがよかったと思います。ただこれは元の評価書の表現を取ってきたためにこ
うなっているので、今後はこのような評価書を引用するときに、詳しい記載に少し変えたほうがいい
のか、あるいはそのまま元のまま引いてくるのがいいか、有害性評価の委員会でも検討していただけ
たらと思います。
○名古屋座長 これだけ見た人がわかるような形の少し詳しい表記がいいかなということですよね。
では事務局と大前先生、よろしくお願いいたします。
○圓藤委員 有害性評価書に書き込めということではなくてですか。
○名古屋座長 いま言ったのは有害のところを見たときに、もう少し詳しい記載があったほうがいい
のではないかと。
○大前委員 評価書にも、あるいは評価表にもあるようにしたらどうかという意味です。
○名古屋座長 今回は、これで進めさせてもらってもよろしいでしょうか。
○島田化学物質評価室長 この物質については、まだばく露のほうが終わっていませんので、その段
階で初期リスク評価のときには、いまのご意見も入れさせていただくような形にいたします。
○名古屋座長 よろしいでしょうか。この物質が終わりまして、本当にいろいろとご検討ありがとう
ございました。それでは、最終的に報告書に移りたいと思います。事務局からよろしくお願いします。
○寺島化学物質情報管理官 資料1の検討会報告書(案)をご説明させていただきます。この検討会の
報告書といたしましては、いままでご議論いただいたリスク評価書を取りまとめて、その表に位置づ
けであるとか、全体のまとめを記載するという形で付いて世の中に出ていくというものです。先生方
にご覧いただくのは初めてですので、順を追ってご説明したいと思います。
 まず「はじめに」とあるところは、このリスク評価について制度が平成18年から始まっていますと
いうような趣旨の部分から記載しています。ご確認いただければと思います。
 2頁、リスク評価の経緯ですが、昨年度と同様に(1)の平成20年度までの部分は変更を加えていませ
ん。平成21年度、ここが新たに書き加えた部分でして、アクリル酸エチル等20物質について有害性ば
く露作業報告を受け、リスク評価検討を行っているということ。その20物質のうち、1として、有害
性評価・ばく露評価双方が終了し、初期リスク評価を行ったものが6、有害性評価を行ったものが2、
両方とも未了なものが12ということで、1と2についてまとめましたということ。
 平成22年度持ち越しのもの44物質のうち、3頁のいちばん上に4として詳細リスク評価を実施した
ものが7物質、初期リスク評価を行ったものが1、20年度に両方とも未了のもののうち、有害性評価の
み終了したものが4で、全体としていくつ取りまとめたかということがわかるような形で記載しており
ます。
 (2)として、リスク評価対象物質の選定の考え方ということで、企画検討会でこの物質が選定された
経緯を今年度に合わせて変更しております。昨年まではIARCの発がん性評価で「1」又は「2A」と記載
されていたものを「2B」に変更しております。ACGIH、TLV、日本産衛学会の許容濃度があるというこ
とで、4を追加しています。これに基づきまして選定物質ということでリスク評価の対象とした物質、
イから次頁の表の平成21年の報告を受けて選定したものが1番から20番まで。平成20年の報告を受
けて選定したものが、6番から32番までの11物質。この物質について評価をしましたということで、
記載しています。
 (3)のリスク評価の手法については、昨年はもう少し詳しく書いていましたけれども、これについて
は他のところに委ねるとして、「リスク評価の手法」と「ガイドライン」に則って行ったことを記載
しています。
 (4)リスク評価関係の検討会にご参集いただいた先生方の名簿、(5)これまでの開催の経過というこ
とで、まとめています。
 8頁、「リスク評価結果の概要」、ここが本文に当たるわけですけれども、(1)リスク評価の進捗状
況ということで、平成20年に報告をいただくこととしていた44物質の進捗について図のとおり示して
います。先ほどの説明と重複いたしますけれども、図にあるように詳細リスク評価に移行したもの7物
質をグループAとして、初期リスク評価を実施したのがジブロモエタン、B。有害性評価のみ実施した
のがグループCで4物質。
 次頁、2平成21年の報告の20物質のうち、18物質についてリスク評価を進めているということで、
初期リスク評価を実施したのが6物質、グループB、有害性評価のみ実施したのが2物質、グループC
と整理しています。グループAについては詳細リスク評価を行いました。グループBについては初期リ
スク評価を行って、このうち5物質については次年度に詳細リスク評価を行うこととしております。
 グループCについては、有害性評価のみ終了したもので、平成22年度以降ばく露評価を行うことに
しております。グループDについては、有害物ばく露作業報告により事業場把握ができなかった、1箇
所しかなかったというところが含まれていますので、改めて有害物ばく露作業報告を求めています。
 グループAとグループBのものを別冊として添付しています。有害性評価書についても、添付してい
ます。有害性評価書についても別冊として添付したことを書き加えたいと思います。
 (2)リスク評価の結果の概要ですが、1初期リスク評価結果として、いままで検討いただいた結果を
まとめた形になっています。アでは、次の5物質については二次評価値を超えるばく露が見られたこと
から、詳細なリスク評価を行うということで、5物質を列挙しています。
 イでは、次の2物質については二次評価値以下であったものの、一次評価値を超えていた又は一次評
価値が設定できないということで、リスク評価ではリスクは高くないと考えられるが、有害性の高い
物質であることから事業者においてリスク評価を実施して、引き続き適切な管理を行うべきであると
しています。
 2詳細リスク評価です。アでは、次の3物質については二次評価値を超えるばく露が見られ、ばく露
要因によれば作業工程共通のリスクであるため、健康障害防止措置等の対策の検討を行うべきである
ということです。
 イにありますように、プロパンスルトンについては定量下限値以下ということで、二次評価値を超
えた超えないということではないのですが、発がん性が認められるということで、健康障害防止措置
等の対策の検討としています。
 ウについては、コバルトの中間報告は、次年度に繰り越すことが書いてあります。
 エについては、二次評価値を超えるばく露が見られたのだけれども、それを解析したところ、作業
工程共通ではないということで、国は事業者の自主的なリスク管理を行うよう指導すべきということ
でまとめてあります。
 12頁は、まとめとして、詳細リスク評価に繰り越すものと、措置が必要とまとめたものをもう一度
記載しております。
 最後に「なお」として、今回行ったリスク評価、このリスク評価の報告書については、現時点で入
手されたものを基に行ったものですので、将来にわたって不変ではない。引き続き情報収集に努めて
いくことを記載しております。以上です。
○名古屋座長 ただいまの説明についてご意見、ご質問等はありますか。経過と現状のところのまと
めということです。よろしいでしょうか、お気づきのことがありましたら、最後のまとめですから事
務局に言っていただければよろしいかと思います。ここのところだけは、一応ご検討いただいたとい
うことでありがとうございました。この報告書についてはご意見を反映させていただくということで、
座長一任となっておりますのでこれを公表させていただきます。
 なお、インジウム及びその化合物については、この後議事2のところで、ITOにかかわる有害性の説
明があるので、その検討を踏まえて若干修正があると思いますので、それを含めた意味でまとめてみ
ようと思います。これからその対応として、資料2の説明をしてからということで、事務局から資料2
の説明をお願いいたします。
○寺島化学物質情報管理官 若干説明が重複いたしますけれども、資料2「今後の対応について」をご
覧ください。いま報告書の中で申し上げましたように、いくつかやったのだけれども、結果としてで
きなかったものがありますので、それを一覧表にしたものが資料2です。
 資料2の今後の対応のところに「措置の検討」等と書いてあるものはいまご説明したとおりです。下
3行のオルト-ニトロアニソール、クロロ-メチルアニリン、フェニルヒドラジンについては平成22年
度以降に測定、あるいは測定法がまだ決まっていないものもありますので、今年度測定できるとも限
りませんが繰越しで引き続き取り組んでいくことにしております。
 裏面についても、平成21年報告の20物質のうち初期リスク評価に取り組めなかった事情があり、事
業場のほうで測定ができなかったものもあります。カテコールから20番のヘキサクロロエタンまでは
次年度以降としております。ヘキサクロロエタンについては、事業場数の報告が少なかったので、こ
れは有害物ばく露作業報告の再報告を求めているところです。6番から3番のアンチモン辺りが平成22
年度のリスク評価に持っていくものということで考えております。簡単ですが以上です。
○名古屋座長 ただいまの説明についてご意見、ご質問等はありますか。先ほどのまとめと、現状と
これからの方向ということでちょっとダブりますけれどもよろしいでしょうか。11番から32番の物質
については、健康障害防止措置の検討会の場に移して、具体的な対策を検討していただきたいと思い
ますので、その場でよろしくお願いいたします。次の議題に移ります。パワーポイントを使って資料3
の説明をお願いいたします。
○寺島化学物質情報管理官 準備がありますので5分程休憩を取らせていただきます。
(休憩)
○寺島化学物質情報管理官 再開させていただきます。資料3、議題2のITOの有害性試験の結果をご
報告いただきます。その前に1枚目をご説明させていただきます。ご承知のようにインジウム及びその
化合物については、今回のリスク評価検討会において、初期リスク評価を検討していただいたところ
です。平成22年度には詳細リスク評価に移る予定となっております。この初期リスク評価書の中にお
いては、二次評価値が0.1mg/m3ということで、ACGIHの結果を基にして一応設定した形で進めること
になっております。そうした中で、つい最近厚生労働省のほうに試験結果の報告がありました。その
ため、この検討会にその結果をご報告いただき、今後の対応に活かしていきたいということです。
 この有害性試験はインジウム・スズ化合物、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)というものが
試験物質となっております。受託者は日本バイオアッセイ研究センターです。委託したのは国ではな
くてITO、この物質の製造事業者が共同して出資して実施したものです。
 対象物質は、ITOの製造時に出る研削粉ということで粒径が1μ~3μの範囲のものを使用していると
いうことです。研削粉についても、概ねこういった非常に細かいものが出ているということで、それ
を実際に使用して試験を実施したということです。インジウムはレアメタルの1つで、ITOは主に液晶
パネルや太陽電池等の透明導電膜材料として、製品内部に使われております。この試験は平成18年10
月から平成22年3月にかけて実施されております。
 試験の方法は、労働環境と同様に粉体を実験動物(マウス/ラット)に長期に吸入ばく露した形の
試験をしております。その他ということでここにありますように、本試験は労働環境と同じように、
ITOの微粉末を長期ばく露させたものですので、ITOが製品として使用されている液晶等を取り扱うこ
とによってこの粉じんにばく露することは考えられませんので、この健康影響が生じるものではない
ということを付記しております。そういうことで、試験結果について日本バイオアッセイ研究センタ
ーから説明をお願いいたします。
○西沢氏(日本バイオアッセイ研究センター試験管理部長) 日本バイオアッセイ研究センターの西
沢です。どうぞよろしくお願いいたします。ITO研削粉のラットとマウスを用いた吸入によるがん原性
試験の結果を報告させていただきます。
(パワーポイント開始)
 試験方法ですが、動物はF334ラットと、B6C3F1マウスを用いました。群構成としては、試験物質投
与群をラット/マウスとも3群、対照群1群です。投与濃度は0.01、0.03、0.1mg/m3の3段階といた
しました。投与濃度は、13週間の予備試験と、試験委託者との協議の上決定いたしました。試験委託
者との協議の上では、現在の空気中のインジウム及びその化合物の管理すべき濃度基準、これはイン
ジウムとしてですけれども、これが0.1mg/m3であるということで、最高濃度をこの0.1mg/m3と決定い
たしました。
 投与頻度は1日6時間、週5日間のばく露です。投与期間及び使用動物数については、がん原性試験
ですので投与期間は104週を基本としています。ただ、ラットのほうは最高濃度群の0.1mg/m3群、こ
れは13週間の予備試験において、肺の重量が既に1.7倍ぐらいに雌雄とも上がっていて、さらに病理
検査では肺胞蛋白症等、傷害性の変化が中等度に出ておりましたので、ラットの0.1mg/m3群は104週
間の投与は負荷が強すぎると判断し、ラットの0.1mg/m3群は投与期間を26週間といたしました。0.01
mg/m3群と0.03mg/m3群は投与期間を通常どおり104週間としました。マウスも、同じように13週間の
予備試験を行ったのですが、ラットに比べて変化が少なかったので、全投与群とも、基本どおり104週
間のばく露といたしました。
 使用動物数は、がん原性試験ですので、基本は雌雄各50匹です。ラットの0.1mg/m3群で、26週投
与終了時点での途中解剖群を10匹設け、それに合わせて対照群も雌雄各10匹設けましたので、ラット
の0.1mg/m3群と対照群は60匹でスタートし、最終的に104週間まで試験期間を全うするものは50匹
を確保いたしました。マウスのほうは、通常どおり雌雄各50匹で試験を始めております。
 検査項目は生死、一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、血液学的検査、生化学的検査、尿検査、
剖検観察、臓器重量の測定、病理学的検査、それから組織、血中のインジウム濃度の測定を最後に行
いました。なお、このがん原性試験の投与開始が2006年10月で、2年間の試験を行い、今年度の3月
に試験委託者に報告書を提出しております。
 それでは結果のほうにまいります。ITOのばく露の結果、変化が見られたのは肺とリンパ節です。主
な変化は肺に見られておりますので、肺の所見を中心に説明いたします。まず生存率、体重、一般状
態のラットの結果です。最終の生存率は雄は対照群78%に対し、投与群もほぼ同様の値で変化は見ら
れておりません。雌も対照群82%、投与群もほぼ同じような生存率を示しております。
 最終体重は、対照群の値を100%とした数字が示してあります。投与群の雄は前半に軽度の増加抑制
が見られました。また投与期間の終期にやや体重が低値となり、0.01mg/m3群が95%、0.03mg/m3群が
92%、0.1mg/m3群が97%と体重がやや低くなっています。雌は対照群とほぼ同様の推移を示し、最終
体重も同じような値となっております。
 一般状態はほとんど変化はありませんでした。見られたのは不整呼吸、ネズミの呼吸のリズムが変
化する、この不整呼吸が雄では0.03mg/m3群で5匹、雌も0.03mg/m3群で7匹と、0.03mg/m3群で少し
多くなっております。0.1mg/m3群に対して雄の体重が0.03mg/m3群のほうが低い、又は一般状態も不
整呼吸は0.03mg/m3群に多く見られているというのは、最高群0.1mg/m3群は26週で投与を終了してい
ますので、その影響が少し出ているのだと思います。
 臓器重量と剖検観察です。ラットの臓器重量では肺の重量増加が見られています。雄では投与終了
時点で0.01mg/m3群で1.60倍、0.03mg/m3群で1.92倍、0.1mg/m3群で1.36倍の肺の重量増加が見ら
れています。最高濃度群の0.1mg/m3群では、26週投与終了時点で既に肺の重量は増加していて1.97
倍になっております。剖検所見としては、肺に白色斑と結節が見られました。肺の白色斑は雄のラッ
トではほぼ全動物に見られています。結節は0.01mg/m3群で4匹、0.03mg/m3群で3匹、0.1mg/m3群で
7匹と投与群に多く見られています。肺の白色斑は、最高投与群の0.1mg/m3群の26週投与終了時点で
も10匹中10匹と全動物に見られています。
 ラットの雌も同様な状況です。肺の重量増加が見られていて、投与104週終了時点の解剖群で0.01
mg/m3群で1.56倍、0.03mg/m3群では2倍、0.1mg/m3群では1.41倍と重量が増加しております。26週
の時点でも0.1mg/m3群は1.88倍と重量が増加しております。剖検所見では、同様の肺の白色斑と結節
が見られています。104週終了時点で肺の白色斑は雌の投与群では全例に見られています。26週終了時
点でも10匹中10匹に見られています。結節も投与群のみに0.01mg/m3群に2匹、0.03mg/m3群に5匹、
0.1mg/m3群に5匹に結節が見られています。
 写真をご覧ください。左側はコントロール群の肺です。右側は投与群の肺です。白色斑としたのは
この白いところです。多くは肺の辺縁部といいますか、端のほうがこのように白くなります。この動
物は、ここに大きな結節があります。ご承知のように結節は腫瘍に関連した場合が多いのですが、こ
の動物はここの結節部分に肺の腫瘍がありました。
 病理の組織所見の写真をご覧いただきます。これは、マクロファージの浸潤と粒子の沈着を示して
おります。ここの矢印の部分に、こういうものがITOの研削粉に相当するもので、顕微鏡下では透明感
があって光沢があるような粒子として見られています。このような粒子の沈着が肺に見られます。
 これは、肺胞蛋白症です。このようにエオジンでピンクに染まります蛋白様の液が肺胞に充満して
おります。肺胞蛋白症です。
 これらの病理組織所見、非腫瘍性病変をまとめた表がこれです。ラットの雄では粒子の沈着、気管
支周囲リンパ組織の粒子の沈着、肺胞マクロファージの出現、肺胞蛋白症、炎症性細胞浸潤、肺胞上
皮の過形成、肺胞壁の線維化、胸膜の肥厚、細気管支-肺胞上皮の増生、気管支周囲リンパ組織の肉芽
形成という所見が見られています。これらの所見は、104週投与終了時では、最低濃度群の0.01mg/m3
群から投与群全部に見られております。途中解剖群の0.1mg/m3群の26週投与終了時では胸膜の肥厚と
細気管支-肺胞上皮の増生、気管支周囲リンパ組織の肉芽形成は見られませんでしたけれども、肺胞壁
の線維化までの所見は同様に既に見られております。
 ラットの雌も基本的には同様です。ラットの雄と同じような所見が見られていて、これらの所見は
雄と同様104週間の投与終了時点では、最低投与群の0.01mg/m3群から全投与群に見られております。
0.1mg/m3群の26週投与終了時においても、雄と同様に胸膜の肥厚、細気管支-肺胞上皮の増生、気管
支周囲リンパ組織肉芽形成は見られておりませんが、それ以外の所見は雄と同様に26週時点で既に見
られております。
 ラットの腫瘍性病変についてご説明いたします。ラットの雄の腫瘍性病変ですが、肺の細気管支-肺
胞上皮腺腫の発生がPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。0.03mg/m3群と0.1
mg/m3群ではFisher検定でも有意な増加となりました。
 悪性腫瘍で、肺の細気管支-肺胞上皮癌の発生がPeto検定で増加傾向を示し、0.03mg/m3群と0.01
mg/m3群ではFisher検定で有意な増加となっております。少数例ですが、肺の腺扁平上皮癌が0.01mg
/m3群で1例見られております。
 これらの肺の腫瘍を全部足した発生数、即ち、細気管支-肺胞上皮腺腫、細気管支-肺胞上皮癌、腺
扁平上皮癌を合わせた発生数はPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示し、全投与群の発生
数がFisher検定で有意な増加となっております。
 ラットの雌です。雌のほうも基本的には同様です。肺の細気管支-肺胞上皮腺腫が最高群の0.1mg/m3
群でFisher検定で有意な増加となっております。悪性腫瘍、肺の細気管支-肺胞上皮癌の発生はPeto
検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示し、0.03mg/m3群と0.01mg/m3群ではFisher検定で有意
な増加となっております。少数例ですが、肺の扁平上皮癌が0.01mg/m3群で1匹、0.1mg/m3群で1匹。
腺扁平上皮癌は0.01mg/m3群で1匹見られています。扁平上皮癌や腺扁平上皮癌も、肺胞上皮腺腫、腺
癌と一連の腫瘍だと考えております。
 ラットの雌で、これら肺の腫瘍を全部足した発生数は、Peto検定、Cochran-Armitage検定で増加傾
向を示し、全投与群でFisher検定で有意な増加となっております。ラットの雄と雌で見られた肺の腫
瘍は、ITO研削粉の投与の影響だと考えております。
 腫瘍の写真を示します。真ん中の写真が細気管支-肺胞上皮腺腫です。雄の中間投与群0.03mg/m3群
の写真です。右側は細気管支-肺胞上皮癌で、雌の0.03mg/m3群の写真です。以上がラットの結果とな
ります。ラットは、ITO研削粉の試験の結果、肺に影響を受け、肺の傷害性変化が見られています。こ
れは最低投与群の0.01mg/m3群から見られ、さらに0.1mg/m3群は26週で投与を終了しておりますけれ
ども、104週の観察終了時点でも同様な変化が見られております。腫瘍の発生に関しては、雌雄とも最
低投与群の0.01mg/m3群から腫瘍の発生増加が見られています。
 マウスの結果です。まずマウスの生存率、体重、一般状態です。雄の最終生存率は、対照群62%に
対し、投与群もほぼ同様の生存率を示しております。雌は対照群76%で、投与群のほうが少し低いよ
うに見えますが、この試験では対照群の生存率がバイオアッセイの背景データに比べると、非常に良
かったという試験です。投与群の数字は特に低下を起こしていると思っておりません。最終体重は、
対照群を100%として示しておりますが、雄の0.1mg/m3群は、投与期間の後半にやや低値となり、最
終体重はやや低値の93%となっています。雌もほぼ同様の推移を示しております。一般状態ですが、
マウスは一般状態には特別に変化はありませんでした。
 マウスの臓器重量と剖検観察です。臓器重量は、マウス投与群では肺の重量増加が起きています。
ただ、重量増加が起きているのは、雌雄とも0.03mg/m3群以上ということで、最低濃度群では肺の重量
増加は起きていません。剖検観察で肺の白色斑が見られましたが、雄の0.1mg/m3群で4匹、雌の0.03
mg/m3群が4匹、0.1mg/m3群が7匹ということで、ラットに比べると白色斑の例数も少なくなっていま
す。
 マウスの雄の病理組織学的所見です。基本的にはラットと同じような所見が出ております。粒子の
沈着、気管支周囲リンパ組織の粒子の沈着、肺胞マクロファージの出現、肺胞蛋白症、炎症性細胞浸
潤、胸膜肥厚、気管支周囲リンパ組織の過形成という所見が見られております。0.01mg/m3群では、炎
症性細胞浸潤と胸膜肥厚、気管支周囲リンパ組織の過形成が見られておりませんので、ラットに比べ
ると少し軽度であると思われます。
 マウスの雌です。マウスの雌も、基本的には雄と同様の所見が見られております。炎症性細胞浸潤、
胸膜肥厚、気管支周囲リンパ組織の過形成の所見が増加したのは、雄と同様0.03mg/m3群以上というこ
とで、雄同様、マウスの雌もラットの雌に比べて少し軽度な変化であると思われます。
 マウスの腫瘍です。まず肝臓の血管腫がPeto検定で増加傾向を示しましたが、Fisher検定では有意
な増加とは至りませんでした。血管腫は、対照群と投与群との発生数の差はわずかで、明らかな腫瘍
の発生増加とは判断いたしませんでした。ラットでは、肺の腫瘍の増加が見られましたが、マウスの
雄では肺の腫瘍の増加は見られておりません。
 マウスの雌です。肺の細気管支-肺胞上皮腺腫が、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を
示しております。その他、子宮の組織球性肉腫、乳腺の腺癌がPeto検定で増加傾向を示しております。
しかし、これらの腫瘍はいずれもFisher検定では有意な増加となっておりません。0.1mg/m3群で、そ
れぞれがいちばん発生数が多いのですけれども、それぞれ対照群との発生数の増加はわずかというこ
とで、これらの腫瘍も明らかな腫瘍の発生増加とは判断しませんでした。
 雌の肺では細気管支-肺胞上皮腺腫、細気管支-肺胞上皮癌を合わせた発生数がPeto検定とCochran-
Armitage検定で増加傾向を示しました。ただFisher検定では有意な増加とは至りませんでした。また、
発生数は背景データの範囲内ということで、雌の肺の腫瘍に関しても、腫瘍の発生の明らかな増加と
は判断しておりません。以上がマウスの結果です。
 マウスも、ITOの研削粉のばく露により、肺に傷害性の変化を受け、肺重量の増加が起きております。
非腫瘍性病変は、最低濃度群の0.01mg/m3群から見られておりますが、ラットに比べると少し変化が軽
度であったと思われます。それから腫瘍性病変ですが、特に雌においては肺の腫瘍が増加傾向を示し
ましたが、Fisher検定では有意な増加は見られておりませんので、マウスの腫瘍に関しては肺を含め
て全臓器において明らかな腫瘍の発生増加はなかったと判断しております。
 投与終了時点における血中のインジウム濃度を示します。104週時点におけるラットの血中濃度です。
最終104週時点では、雌雄とも10匹ずつのネズミに関してインジウムの濃度を測定いたしました。全
投与群からインジウムは検出限界以上の値が検出されています。雄0.01mg/m3群では10匹中7匹、
0.03mg/m3群では10匹中10匹と、投与濃度に対応して0.03mg/m3群のほうが少し血中インジウム濃度
が高い値となっております。最高群の0.1mg/m3群は、26週で投与を終了して、104週間まで観察をし
ましたが、やはり10匹中1匹にインジウムが検出されて0.68という値が出ております。雌も同様に
0.01mg/m3群で6匹、0.03mg/m3群で10匹と、値も投与量に対応して0.03mg/m3群のほうが少し高い値
となっております。ただ雌のほうは、0.1mg/m3群の104週間観察終了時点で、10匹中7匹の動物にイ
ンジウムが検出されています。値は雄の1匹と変わりませんが、雌のほうが多くの動物から検出されて
おります。13週間試験のときから、ラット/マウスのインジウムの血中濃度を測っておりますけれど
も、どういうわけか雌のほうがインジウム濃度が高い結果が出ております。
 最後に、本がん原性試験としての結論を報告いたします。F334ラットを用いて、ITO研削粉の2年間
にわたる吸入によるがん原性試験を行いました。雌雄とも肺に細気管支-肺胞上皮癌及び細気管支-肺
胞上皮腺腫の発生増加が認められ、さらに雄では肺に腺扁平上皮癌、雌では肺に腺扁平上皮癌と扁平
上皮癌も認められました。肺における悪性腫瘍の発生増加は、雌雄ラットに対するがん原性を示す明
らかな証拠と考えました。
 またB6C3F1マウスを用いて、ITOの研削粉の2年間にわたる吸入によるがん原性試験を行いました
が、本試験では雌雄とも明らかな腫瘍の発生増加は見られなかった。以上のように結論いたしました。
以上です。
(パワーポイント終了)
○名古屋座長 ありがとうございました。ご意見、ご質問等がありましたらお願いいたします。
○池田委員 血中濃度を測っているのですけれども、マウスの測定値があるのでしょうか。
○西沢氏 はい、あります。
○池田委員 数字そのものというよりも、マウスは腫瘍の発生が統計学的にはゼロといいますか、有
意差はないわけですね。
○西沢氏 はい。
○池田委員 コントロール対照群の血液中のインジウムの数値は一応ゼロと出るのでしょうか。
○西沢氏 コントロール群はありません。
○池田委員 それで有意差も出ないということで、ばく露がクロスコンタミのようなことが起きて、
コントロール群の数値が上がったということではないということですね。
○西沢氏 コントロール群はもちろん血中インジウム濃度は出ません。それから、マウスの投与終了
時点のインジウムの濃度は、ラットより少し検出が少ないです。雄は最高群の0.1mg/m3群だけに見ら
れました。この値は0.64です。
○池田委員 濃度が低いことが、マウスの場合には腫瘍の出方が低いということと対応するかなとい
う感じなのでしょうか。
○西沢氏 それは、はっきりはわかりません。肺の変化等が、マウスのほうが少し低いですので、全
体的に取込み量に少し差があったかもしれません。
○西川委員 結論はいいと思うのですが、その前に確認したいことがあります。リンパ節の変化で沈
着があるということですが、肺と同じようにマクロファージに取り込まれているのでしょうか。
○長野氏(日本バイオアッセイ研究センター副所長) はい、そうです。マクロファージの中に入っ
た状態で見られます。今回は3カ所のリンパ節に沈着が認められました。1カ所は肺の中の気管支周囲
リンパ組織。2番目は縦隔のリンパ節に入っております。あとは大変少数なのですが鼻咽頭管、鼻腔に
関与したリンパ節組織があるのですが、そこでも少数例出ております。
○西川委員 ラットで胸膜の肥厚があったということですが組織変化というのは、単なる線維性肥厚
ですか。
○長野氏 はい、線維性肥厚です。
○西川委員 そこに沈着はあったのですか。
○長野氏 胸膜下のところで、先ほど肉眼でも見られましたように、辺縁部で白い線維化が起きます。
それにつながって胸膜の肥厚が起きております。線維化が起きている部分では、しばしばマクロファ
ージが集まっており、少量のインジウムの沈着が見られます。
○西川委員 ラットで少数例ですけれども、扁平上皮癌とか、腺扁平上皮癌ができたということです
けれども、気管支上皮に扁平上皮化生などは見られたのでしょうか。
○長野氏 気管支上皮には扁平上皮化生が見られませんが、先ほどの線維化巣の部分に見られました。
線維化は全体に起きるのではなくて、肺胞蛋白症の中の一部に巣状に出現します。この線維化巣の部
分に上皮の過形成があり、それとともに、扁平上皮化生が見られます。
○内山委員 ラットで出て、マウスで出ないというのは種差なのか、それとも先ほどおっしゃいまし
たように、内部ばく露量の違いなのか。インジウムの血中濃度はPPTで出ましたけれども、最初にお示
しいただいたプロトコールでは、臓器重量当たりのインジウム量が測定項目になっているのですが、
それはどうでしたでしょうか。単に種差なのか、あるいはインナードースがマウスとラットで、特に
粒子の場合に違ってくるのか、その辺はいかがでしょうか。
○西沢氏 がん原性試験では、組織中の濃度を測定しましたのは、ラットの26週時点の動物だけです。
がん原性試験ですので、組織をこの分析にたくさん当ててしまいますと、腫瘍の検索のための肺組織
の量が減り、後でクレームが付いたときに十分な病理検索が行われていないという批判を受けますの
で、ラットの26週の途中解剖群だけで組織中の濃度測定を行いました。このときにはほとんど肺にイ
ンジウムが見られております。この時点で血中濃度を測定しているのですが、これはラットですけれ
ども、雄よりも雌のほうが多いという状況になっております。
○長野氏 先生のご質問のラットとマウスの差についてですが、がん原性試験の予備実験の2週間、13
週間試験で組織中の濃度を測定しております。13週間の時点で肺の中のインジウム量を測って結果で
は、同じ0.1mg/m3群で比較しますと、ラットの雄では24.0μg/gであります。それに対してマウスの
ほうは11.6μg/gであって、約2倍違います。そういう意味で先生がおっしゃるように、まず1つの要
因として肺への到達率が低かった可能性があります。また、感受性の差もあるかもしれません。
○内山委員 おそらくガス状だとラット/マウス同じように外部濃度がそのまま入るかもしれません
が、粒子だと今回のものは1~3μですので、粒径が非常に小さいと思うのです。
○長野氏 マウスのほうが空気量当たりの鼻腔の表面積が大きいので、鼻腔での沈着率が高いと思う
のです。そういう意味で、肺に達する前に上部気道で吸着を受けている可能性はあります。
○内山委員 こういう発がん試験で、2~3種以上のもので、同じような結果だったら発がん性の証
拠が非常に強い。片方で出て、片方で出ないとどうかというようなこともあります。一般的にそのよ
うなことが言えるのかどうかわからないのですけれども、別の粒子でやっても小さいマウス等では発
がん率が落ちるのか、それともインジウム特有のものなのかというのは勉強不足でわからないのです
が、結論を単に同じ濃度でも、ラットでは出たけれどもマウスは大丈夫と、書いてしまうと評価が落
ちてしまうと思います。考察のところにでも、肺の重量当たりの沈着量がマウスの場合はラットの2分
の1以下だったのでそれが関係しているかもしれないということでもちょっと書いておいていただくと、
ラットで発がんして、マウスでは出なかったけれども、発がんの可能性は高いということが読み取れ
るかと思います。
○長野氏 はい。
○内山委員 ただ、私の解釈でいいのかどうかはわかりませんので、ご検討をお願いします。。
○圓藤委員 構造的に言うと、ラットのほうがヒトに近いという感じなのですか。例えば、上気道も
しくは下部気道まで行く量を考えるとそういうことですか。
○長野氏 上部気道のクリアランスという面で見た場合には、ヒトのほうが鼻の構造は単純ですから、
より多くが肺に入っていきます。そういう意味では、ヒト肺への沈着率は今回のマウスよりもラット
に近く、ラットよりもさらに沈着量は増えると考えています。
○圓藤委員 血中は血清ではなくて全血ですか。
○西沢氏 全血で測っています。
○圓藤委員 膜に付いているかどうかはわからないのですね。
○長野氏 大前先生、それはどうでしょうか。
○大前委員 ヒトの場合は全血、血清であまり変わりません。
○圓藤委員 変わらないのですか。
○大前委員 たぶんラット/マウスでも同じではないかと思うのです。
○圓藤委員 ということは膜に付いていないということですね。
○大前委員 そうでしょうね。
○圓藤委員 すごく血中濃度が低い気がするのです。
○長野氏 今回は最も高いところでも、先ほどの2年の試験では3.01ですから、そういう意味で現在
の生物学的許容限界値が3μg/dlなので、それとほぼ同じ数字です。
○圓藤委員 そうするとみんな排泄は早いということですか。
○長野氏 いいえ、肺からの排泄は大変遅いです。
○大前委員  いまの点で、先ほど肺の濃度がラットの場合には24μg/gぐらいというのが26週のも
のでした。そのときのラット、あるいはマウスの血液の中のインジウムはどれぐらいだったのですか。
何倍ぐらいだったのですか。
○西沢氏 ラットの26週時点でのデータですが、肺のインジウム量は、雄では20.184μg/gです。雌
は21.107μg/gと、ほとんど同じで大体20μgということです。この時点での血中のインジウム濃度は、
雄は0.81μg/?、雌は1.60μg/?ということで、雌のほうはちょうど2倍ですけれども低い値です。
○圓藤委員 この臓器重量は湿重量ですか。
○西沢氏 湿重量です。
○大前委員 血液と肺の濃度比がμg/lだから、ng/gですか。
○長野氏 ヒトに比べてラットの場合には血中に出づらいと考えたほうがいいのでしょうか。
○大前委員 ヒトの場合はまだ2例ぐらいしかないのですが、偶然肺癌が見つかった方で、血中濃度が
高くない方なのですけれども、グラム当たり1,000倍ぐらいの差があります。血液と肺が。でも、この
場合だと0.1ng/gですよね。やはりそのぐらいですか。そのぐらいの差があるのですね。そうするとな
かなか肺から出ていきにくいですね。
○長野氏 肺からの移行に関しては、13週間のばく露の後、6カ月置いた実験があります。そのときに、
先ほどの肺のグラム当たりの濃度が24μgだったのです。6カ月後で8.8μgに変わっています。約3
分の1です。そういう意味では6カ月で3分の1ということではかなり遅いほうかなと思います。
○大前委員 すごく早いのではないかと思います。普通だともっと遅いのではないかと思います。す
ごく早いなと今思いました。
○清水委員 腎臓の臓器中のインジウムは。
○西沢氏 26週時点で肺以外の臓器も測っております。26週時点でインジウムが検出された臓器は、
肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、骨髄、精巣、精巣上体、卵巣等にインジウムは見られました。ただ数字は
すごく少なくて、ほとんどが0.1μg/g未満ということで非常に少ない濃度です。
○圓藤委員 血中インジウム濃度が関連しているんですね。
○大前委員 そうですね。全身の濃度。それからヒトの場合は肺胞蛋白症はいままであまり見られて
いないのですけれども、ごく一部ローカルにあったみたいです。ラット/マウスの場合は肺胞蛋白症
がメインですよね。これはヒトとラット/マウスに何らかの差があるということですか。
○長野氏 今回、アメリカからの報告2例があります。それでは肺胞蛋白症がメインで、線維化が弱い
という症例がありました。そういう意味ではアメリカでの症例と今回の症例は大変よく似ていると思
います。
○大前委員 非常に不思議で、アメリカでは肺胞蛋白症2例で、日本ではほとんどないのです。
○圓藤委員 ばく露の違いですか。
○大前委員 いや、それはわかりません。肺胞蛋白症のレポートが非常に不完全でよくわからないの
です。しかも同じ論文中に2例あるのですけれども、そのうちの1例のほうは血漿中のインジウムはデ
テクトされないと書いてありまして。
○圓藤委員 感度の悪い測定だと、これもそんなに感度よくないですよね。0.50というと。
○大前委員 いや、これはいまできる結構いい感度だと思いますよ。そうですよね。
○長野氏 はい、ICP-MSで清水先生の所で測っていただいています。
○名古屋座長 時間もあれですが貴重ですのでどうぞ。
○櫻井企画検討会座長 肺胞蛋白症の出現率だけデータとして出ていますね。個体数の比率として10
分の10とか10分の9とか。程度はプラスというのは。
○長野氏 グレードの記載です。
○櫻井企画検討会座長 要するにその範囲を示しているわけですね。

○長野氏 ラットでは、肺胞蛋白のグレーディングをしてあります。0.01mg/m3群と0.03mg/m3群の程
度を比べると、やはり0.03mg/m3群のほうが高くなります。0.1mg/m3群は26週のばく露終了時点でか
なり強い蛋白症が出ています。がスライドにありますとおり+、2+、3+で示しています。
○櫻井企画検討会座長 そのグレードは面積ですか。
○長野氏 はい、面積でやっております。
○櫻井企画検討会座長 肺の全体の中でどのぐらいを占めているのですか。
○長野氏 この3+になると、ほぼ全域です。
○櫻井企画検討会座長 3+で全域ですか。
○長野氏 はい。先ほどの写真にありましたように、ほぼ全域が顆粒状の蛋白液で占められます。
○宮川委員 材料なのですけれども、製造工程で発生する研削粉で1~3μと書いてありますけれども、
これは平均粒径がこの辺ということと思いますが、でサイズの分布等はどうだったのでしょうか。
○西沢氏 まず材料自体は、試験委託者のほうで研削粉をわざわざ作っていただきました。これをふ
るいに掛けて、その細かいものを作っていただいた状況です。それで、実際の試験では当然吸入チャ
ンバー内の粒子径を測定しております。104週間の中で9回ぐらい測定しているのですが、単純平均で
いうとMMADがラット/マウスとも0.01mg/m3群は1.8μm。0.03mg/m3群はラットは1.9μm、マウスは
2.1μm。最高群の0.1mg/m3群はMMADはラット/マウスとも単純平均で2.4μmぐらいです。
○櫻井企画検討会座長 肺胞蛋白症でもう1つ聞きたいのは、全肺を占めていても、呼吸困難で死亡す
るとかそういうことはないのですか。
○長野氏 ありません。ヒトの場合でも、肺胞蛋白症の場合ではなかなか症状が出づらくて、多少息
切れがする程度なのだそうです。そういう意味で、案外とこういう状態でも体重もほとんど落ちませ
ん。
○櫻井企画検討会座長 肺の重量増には関与していると。
○長野氏 はい、関与しています。
○大前委員 それから、ITOと言いましても必ずしも1つの化学物質ではなくて、作り方によって様々
な物性等が出ると思うのです。だから、今回使ったITOがITO全部だというふうに思わなくて、もっと
別のタイプがあるので。今回、たぶんインジウムは酸化インジウム90と、酸化スズ10%も、たぶん典
型的なのだと思うのです。典型的なので、たぶん高密度に固めたもので、いまいちばん性能としては
良いITOではないかと思うのです。ところが、それ以外にも様々なITOがありますので、この辺を書く
ときには構成比率、構成リスト、あるいは高密とか低密とかみたいな、そういうタイプのことも書い
たほうがいいと思います。
○名古屋座長 そうしたら違う可能性がある。
○大前委員 違う可能性があります。
○細田(中災防) 私の見たところでは、ITOを焼結した後、機械で研削して、その後微妙な凹凸を修
正する作業において金属インジウムを使っていました。場合によったら、それで微粉末が出るかどう
かは別ですけれども扱ってはいるようです。
○大前委員 たぶんそこではメタルのインジウムのお話ですよね。メタルのインジウムというのは私
の聞いた範囲では、随分軟らかくてねっとりしたもので、あまり粉にならない。
○細田(中災防) ハンダの広がったような感じのものです。
○大前委員 ええ、そのように聞いております。
○細田(中災防) だから、粉末はどうも出にくいと思います。
○大前委員 メタルのインジウムはあまり考えなくてもいいのではないかと思うのです。
○圓藤委員 この結果と、いままでのNTPでしたか、リン化インジウムの結果と合わせると、やはりイ
ンジウムの毒性と考えていいのですか。
○長野氏 はい。
○圓藤委員 ITOに特別というよりはむしろインジウムと。
○長野氏 はい。最終のがん原性試験はITOでやったのですが、予備実験としてITOと酸化インジウム
の粉末の2種類でまず予備実験をしています。2週間と13週間の実験を実施したのですが、性質的に
は全く同じで、両者とも肺胞蛋白症を中心とした肺の変化が見られています。ただし、毒性の強さと
しては、ITOのほうが強く出ています。
○名古屋座長 まだまだ意見はあるかと思いますけれども、先に進めたいと思います。いまの結果を
受け、事務局よりインジウムに関する今後の対応について説明をお願いいたします。
○寺島化学物質情報管理官 いまの報告を受け、事務局として初期リスク評価書に追記させていただ
きたいと考えておりますのでご議論いただければと思います。資料1別冊?Bのインジウム及びその化合
物の6頁の27行目以降にあるところを、事務局案としてお示しさせていただきました。
 本検討会に報告されたところによると、ITOについて関連事業者が共同で実施した発がん性試験の結
果、速報ということですが、動物実験で新たに発がん性が確認されたということで、有害性に関する
評価については、今後また再度といいますか、そこも含んで有害性評価をしていただくということで
考慮が必要であるが、その結果を待つことなく、国は自主的に事業者がリスク管理に取り組むよう指
導することが必要であるということ。
 なお、今回ITOについて問題とされた健康影響については、製品においてそのような健康影響が発生
するおそれはない。国はITOの有害性に係る正しい情報の提供に努め、いわゆる風評の流布が起きない
よう対応すべきである。
 こういうことで、初期リスク評価書に追記させていただければと考えておりますが、ご議論をお願
いいたします。
○名古屋座長 いまのところはどうでしょうか。いちばんは、最後の下のところはちゃんとしておか
ないと、ほかのところでこれは大変だということになるかもしれません。詳細に行く前に国としては
自主的な指導をするというのだけれども、詳細リスクに行きましょうということでよろしいでしょう
か。よさそうなので、それでは。
○寺島化学物質情報管理官 ありがとうございます。実は、インジウムについては平成16年にインジ
ウムの健康障害を防止するための通知を1回出しております。そこで濃度についても0.1ということで
既に出した経緯があります。それを改正といいますか、改める形でまず通知を出させていただき、そ
れでリスク評価については1年かけてどういう対応が可能であるのかということで進めてまいりたいと
考えております。
○名古屋座長 低い結果が出てしまいましたが、わかりました。あとはよろしいですか。以上をもち
まして本日予定しました議事の検討を終了いたします。今回をもちまして平成21年度の化学物質の評
価検討委員会は終了いたします。最後ということで、半田課長からご挨拶をお願いいたします。
○半田化学物質対策課長 先生方におかれましてはお忙しい中、このご検討をお願いいたしまして本
当にありがとうございました。平成18年度から進めてまいりましたリスク評価ですが、平成21年度に
は大きく評価のやり方についても初期評価リスク、詳細評価に分けるような試みもやっていただきま
したし、ガイドライン等の点もお願いいたしました。今回、今年度の成果といたしましては7物質の初
期リスク評価、同じく7物質詳細リスク評価、6物質の有害性評価をそれぞれ終了させていただきまし
た。これを基にいたしまして、私ども必要な措置を講じていくわけですが、また先生方におかれまし
ては引き続き平成22年度の評価もすぐに続いて行っていただくことをお願いすることになると思いま
すので、あまりゆっくりではございませんけれども、引き続きご検討、ご協力のほどよろしくお願い
申し上げます。どうもありがとうございました。
○名古屋座長 平成21年度は終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

厚生労働省労働基準局安全衛生部
化学物質対策課化学物質評価室 寺島

〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2

TEL: 03-5253-1111(内線5518)
FAX: 03-3502-1598

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