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2010年7月14日 第6回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成22年7月14日(水)


○場所

経済産業省別館1014号会議室


○議事

○永田主任中央労働衛生専門官 定刻になりましたので、ただいまより第6回「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」を開催いたします。本日は、市川佳子委員、岡田邦夫委員、生越照幸委員、尾崎紀夫委員、中村純委員、堀江正知委員がご欠席です。
 議事進行は相澤先生にお願いします。
○相澤座長 皆さん、おはようございます。本日はこれまでの議論を踏まえて、事務局のほうで報告書(案)を作成していただいておりますので、報告書(案)をとりまとめたいと考えています。
 昨日までに各委員には報告書案を事務局から送付いただいており、委員の皆様にはご一読いただいていると思います。ここでは報告書(案)の概要とポイントをご紹介いただきたいと思いますので、事務局よりご説明をお願いします。
○永田主任中央労働衛生専門官 報告書(案)は、全部で10頁になっております。
 1「はじめに」は前提条件等を説明しています。我が国の自殺をめぐる状況を見ると、自殺率は先進7カ国で最も高い水準にあるという深刻な実態となっており、今年の1月に「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」を設置し、今後、厚生労働省が自殺対策に取り組む指針のとりまとめが行われています。
 その中で「職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実」が重点対策の1つとされており、今後の検討事項ということで、労働安全衛生法に基づく定期健康診断において、労働者が不利益を被らないよう、効果的にメンタルヘルス不調者を把握する方法について検討する。また、メンタルヘルス不調者の把握後、事業者による労働時間の短縮、作業転換、休業職場復帰等の対応が適切に行われるようメンタルヘルスの専門家と産業医を有する外部機関の活用、産業医の選任義務のない中小規模事業場における医師の確保に関する制度等について検討する。また、外部機関の質を確保するための措置について検討することなどが盛り込まれたところです。また、新成長戦略においては、2020年までの目標として「メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合100%」が盛り込まれています。
 こうしたことから本検討会では、今後、職場におけるメンタルヘルス対策として、新たに取り組むべき方策等について検討を行ったということです。
 2の「職場におけるメンタルヘルスの現状等」ですが、労働者の状況では、労働者健康状況調査などで、仕事や職業生活で強い不安やストレスがある労働者が58%、過去1年間でメンタルヘルス上の理由で休業・退職した労働者がいる事業場の割合が8%という状況です。
 (2)事業場の取組状況の中で、同じメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場についての調査では、未だ7割の事業場が取り組んでいないという状況にあります。また、取り組んでいない理由としては、専門スタッフがいない、取り組み方がわからないという理由が多く挙げられています。
 (3)メンタルヘルス不調への対応等ということで、労働者のメンタルヘルス不調については、職場の要因のみならず、家庭などの職場以外の要因によるものも考えられ、またこれらが複雑に影響し合う場合も多いとされています。また、長時間労働、深夜労働等によりメンタルヘルス不調が悪化する場合もあるとされています。
 続けて、労働安全衛生法の目的を述べています。次に作業に関連する疾患について説明し、脳・心臓疾患等を対象とした健康障害防止措置も講じている。職場におけるメンタルヘルス不調についても、基本的にはこうした作業に関連する疾患と同様に対応すべき側面があると言えます。
 一方でメンタルヘルス不調は、他人に知られたくないという特別な要素もあるため、その取扱いについては慎重な対応が必要とされています。
 その後の「メンタルヘルス対策強化について」ですが、先程申し上げてまいりました状況を踏まえると、メンタルヘルス不調者を含めた労働者が、職場環境から受ける様々なストレスなどの要因に関して、早期に適切な対応が実施されるよう、新たな枠組みを導入することにより、職場におけるメンタルヘルス対策の取組を促進すべきであるとされています。
 3「一般定期健康診断におけるメンタルヘルスに関連した取組の現状」ですが、(1)現行の健康診断項目では、自覚症状及び他覚症状の有無の検査があります。そこについてはメンタルヘルス不調から生じる症状も含む場合があるが、その具体的な手法は医師の判断に委ねられている、と記載しています。
 (2)一般定期健康診断の機会を活用したメンタルヘルス不調把握の事例ということで、先進的な企業においては、次のような取組が行われており、①②で紹介しています。いずれもストレスの程度等の把握を実施することに同意した労働者を対象にストレス調査を行うということで実施されています。こうした事例においては、労働者の同意を得て調査を実施し、専門的知識を有する者による面談が行われており、労使が協力して、適切な対応が実施できる体制が整えられています。
 4「一般健康診断実施後の対応の仕組等」です。(1)就業上の措置の3行目ですが、医師の意見を聴取し、当該意見を勘案し、労働者の実情を考慮して就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じるとされているというところです。意見の聴取に際しては健康診断の結果のみでは、労働者の身体的又は精神的状態を判断するための情報が十分でない場合は、労働者との面接の機会を提供することが適当であるとされています。
 (2)保健指導ですが、労働安全衛生法においては、事業者は健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を行うよう努めるとされています。事業場に所属する保健師の多くが、メンタルヘルス教育やメンタルヘルス不調者への対応の職務にも関わっているとされています。
 (3)メンタルヘルス不調等に対応している人材・体制等の現状では、産業保健スタッフについては、人材の確保が重要な課題となっています。3つ目のパラグラフですが、嘱託産業医の専門分野は、内科及び外科が大部分を占めており、精神科は約5%、神経科は0.1%となっています。また、産業保健スタッフの資質の向上のためのメンタルヘルスに関する研修が様々な団体等で行われています。
 イの外部の支援機関で、メンタルヘルス対策支援センターについて記述をしており、(イ)は地域産業保健センターについて記載をしています。
 5「メンタルヘルスに関する調査票」ですが、これについては検討会の当初に随分議論をいただきまして、最後の2行で、項目数が異なる様々なものが普及しているが、項目数の多さにかかわらず、精度に大きな差はないと評価されているとされています。
 6「健康診断における労働者の個人情報の取扱い」ですが、労働者の健康情報の取扱いは、労働安全衛生法第104条において「健康診断等の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない」とされており、刑法等において、守秘義務が課されています。また、雇用管理に関する個人情報のうち、健康情報を取り扱うに当たっての留意事項ということで、産業保健業務従事者以外の者に、健康情報を取り扱わせるときは、利用目的の達成に必要な範囲で限定されるよう、必要に応じて適切に加工した上、提供する等の措置を講ずることとされています。
 不利益取扱いに関しては「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」において、事業者は就業上の措置を決定する場合には、労働者の了解が得られるよう努めること、また、健康の保持に必要な措置を越えた措置を講ずるべきではないことを規定しています。
 また、心の健康はすべての労働者に関わることであり、すべての労働者が心の問題を抱える可能性があるにもかかわらず、心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題や、心の健康問題自体についての誤解や偏見等を解決すべき問題が存在しており、うつ病であることがわかった途端に解雇されるという事例もあるとされている。
 さらに、うつ病のスクリーニングが職場で実施されることを希望する労働者の割合が、約5割とか、またうつ病のスクリーニングで重要な点としては、医師や看護師以外の者に自分の書いた内容が見られないことを挙げる労働者は約6割という調査結果もあります。
 7「メンタルヘルス対策を促進するに当たっての基本的な方向」の(1)基本的な方針、これまで述べてきたような現状を踏まえると、一般定期健康診断において、メンタルヘルスに関する調査票を用いて精神疾患を早期に発見することは困難であるが、メンタルヘルス不調に影響を与える職場におけるストレス等の要因について、産業保健スタッフにより、労働者個人や職場環境に対して適切な対応が実施されるためには、新たな枠組みを導入することが適当である。また、その際には次のような方針に基づき対応することが必要であるとして、ア~オを挙げています。
 ア 労働者のプライバシーが保護されること、イ 事業者にとって新たな枠組みの実施に要する時間及び費用負担が過大なものとならないこと、また、労働者にとっても時間的な負担が大きくならないこと、ウ 必要な場合にはメンタルヘルス不調者を適切に専門家につなぐことができること、エ 健康診断実施後の対応が適切に行われるよう、専門的な知識を有する人材の確保や活用等の基盤整備が図られること、オ 上記の措置を講じるとともに、メンタルヘルスに関する正しい知識の普及を図り、労働者が健康の保持に必要な措置を超えて、人事、処遇等において不利益を被らないこと。
 (2)は具体的な枠組みを挙げています。ア 自覚症状の確認。「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」において、現在は医師の判断に委ねられている自覚症状について、例えば、頭痛や胃の調子などのほか、睡眠の状況、食欲の状況、倦怠感といったストレスに関するものも含め、様々な症状を把握するようにする。
 イ 健康診断に関する個人情報の保護、自覚症状に関する所見については有無のみを事業者に伝える。また、面接を必要とする旨を「要面接」などとして健康診断個人票に記載するようにする。
 ウ 就業上の措置としては、必要な措置について医師等から意見を聴取することとして、その際には意見を述べる医師等が面接を行う。また、保健師による保健指導を行い、その結果を労働安全衛生法第66条の4に基づき、意見を述べる医師が参考とすることについて指導する。また、就業上の措置を踏まえ、職場環境の改善につなげていくよう指導する。
 (3)新たな枠組みへの対応で、ア、イ、ウと挙げています。まず一般定期健康診断の自覚症状有無の検査項目。一般定期健康診断における自覚症状の有無の検査として確認することが適当な項目について、専門家による検討を行うことが必要である。
 イ 不利益取扱いの防止等では、労働者がメンタルヘルス不調であることのみをもって、客観的に合理的な理由なく解雇すること等の不利益な取扱いを行うことがあってはならない。①労働安全衛生法第66条の4に基づく「医師の意見」の具体的な内容によるものであること、②「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」に基づき、あらかじめ労働者の意見を聴き、労働者の了解を得ることを目的にした話合いを実施すること、③当該話合いにおいては、医師の意見の内容を労働者に明示することが必要であり、健康保持に必要な措置を超えた措置が行われないようにすることが必要である。また、職場におけるメンタルヘルス不調について、正しい知識の普及に関する啓発が行われることが必要である。
 ウ 事業場に対する支援体制の整備。(ア)小規模事業場における対応ということで、労働者50人未満の事業場においては、就業上の措置に関する意見を述べる医師の確保。また、その医師が事業場の状況を十分に把握することができるようにすることが必要であるということで、そうした医師をあらかじめ定めておくこと、選定する医師に対して、職場環境の情報を提供することなどが望ましいとしております。また、50人未満の事業場においては、労働者の健康管理を行わせるに当たっては医師の選任、地域産業保健センター事業の利用等に努めることとされています。
 以下については事前にお送りしたものに、さらに丁寧に書き加えています。小規模事業場において独自に医師を確保し、労働者に産業保健サービスを提供することが困難な事業場においては、その利用が効果的であることから、地域産業保健センターへの事業場の登録を推奨する必要がある。また、地域産業保健センターが、小規模事業場に優良な産業保健サービスを提供できるよう、その機能の拡充・強化を図るため、地域産業保健センターの産業医、保健師等の名簿登載を進めるとともに、資質の向上を図る必要がある。
 (イ)事業場外の組織(外部専門機関)の育成等。産業医は、労働者の健康管理において、専門的知識を必要とする職務とされており、重要な役割を担っていただいています。しかし、メンタルヘルスに対応できる産業医の数は十分でないなど、当該分野に精通した者の確保、活用が課題となっている。
 また、産業医のメンタルヘルス対策への対応について、①研修等により必要な知識等を得て、職務を行うことが必要ではあるが、嘱託産業医は、専ら産業医の業務を行っていない状況等を踏まえると、十分な対応が困難な場合もあること、②精神保健分野等、様々な分野の複数の産業医を選任した場合に、それぞれの産業医が、月1回以上の職場巡視が必要となる場合があること、また、その場合には多くの経費を要することなど、必ずしも職場の実態に合わない状況もある。
 このため、メンタルヘルスに対応できる産業医等がチームとなった事業場外の組織(外部専門機関)を整備・育成し、メンタルヘルス不調者への対応等に関する産業医の業務を効率的、かつ適切に実施することを可能とすることが必要である。
 さらに、メンタルヘルス不調者について、産業医の意見に基づき、事業者が就業上の措置を行う場合には意見を述べる産業医等の医師は、労働者が不利益を被ることがないよう、中立性、独立性が求められる。このような状況に的確に対応していくためには、将来的には中立性、独立性及び専門性を有した外部の専門機関が、産業医の職務を実施する仕組みとしていくことが必要であり、こうした外部の専門機関を整備・育成していくことが必要である。
 エ 先進的事例の普及。大企業においては労働者の合意の下に、先進的な取組をしている事例がありますので、こうした先進的な事例の普及を図るとともに、その効果について検証する必要がある。また、デンマークで実施されているような社会心理的な観点から、職場環境の改善を促進する対策が望まれる。
 オ 人材の確保。メンタルヘルス不調者に適切に対応できるよう産業医、意見を述べる医師等に対して、関係団体とも協力して研修等を実施し、必要な知見を付与するとともに、必要な場合には適切に専門医につなぐことができるようにすることが必要である。
 カ 健康診断の対象労働者の拡大。メンタルヘルス不調に影響を与えるストレス等の要因への対応が、幅広く実施されるよう健康診断対象者の範囲の拡大が必要である。
 キ 地域保健との連携。メンタルヘルス対策の推進において、地域産業保健センターに登録された医師、保健師等を地域と職域の連携において活用することなどにより、地域と職域との連携の強化を図っていくことが必要である。以上です。
○相澤座長 ありがとうございました。この報告書(案)については、後ほど議論しますが、デンマークの話が9頁にありましたように、五十嵐委員から資料2が提出されていますので、五十嵐委員からご説明を簡潔にお願いいたします。
○五十嵐委員 資料2です。9頁の下のほうにデンマークでのメンタルヘルス対策での取り組みについてふれられていますが、それについて少し加筆をした資料です。いままで当検討会の議論はどちらかといいますと、メンタルヘルス不調を有する労働者をどのようにケアしていくかという仕組みの話が主だったかと思いますが、そもそもそういうメンタルヘルス不調を出すような職場をどうやって見直していくかという一次予防の観点から、この資料を出させていただいています。
 企業側の努力もどうしても必要で、特に中小・零細企業といった所で、安易にメンタルヘルス不調者を解雇してしまったり、メンタルヘルス対策そのものになかなか取り組めていない実情から、企業側の努力をデンマークにおける産業ストレス対策を基に、モデルとして示したものです。
 まず【デンマークの産業保健対策の特徴】ですが、これは下光先生の講座の小田切先生が、第16回の日本産業ストレス学会で発表されたものから抜粋したものです。これに関しては川上先生もよくご存じですので、私が申し上げるよりも川上先生からのほうがよろしいのかもしれません。
 デンマークにおいては労働法、いわゆる労働環境法と言っていますが、日本の労働安全衛生法に匹敵するもので、もともとの考え方が下線を引いているところで、心理社会的ストレスを含めた職場環境を整えることが最優先課題と位置づけてあります。その中で、心理社会的ストレスを含む職場環境評価文書を、各企業が作成して、労働者が、いつでも自分の会社はきちっとやっているということを確認できるような自助努力で職場環境を改善しているという仕組みになっています。
 そのガイドラインをここにいくつか示しています。職場環境評価の提出は必要ないのですが、企業内の労働者及び管理監督者がいつでもアクセスできるようになっていますし、外部機関の労働環境局(日本でいう労働基準監督署)からでも、いつでも開示できるようにし、このような仕組みを作っておくことで、企業はいつでもメンタルヘルス対策を自分たちの企業はきちっとやっていますということを示すことになります。
 それに基づいて労働者は職場環境評価の計画、組織作り、実践、フォローアップ、つまりPDCAのところですが、それを回すために企業内の安全衛生組織、日本だったら安全衛生委員会になると思いますが、そういったものを関わらせてメンタルヘルス対策を自主的に進めていくというところです。
 それに対しては外部の専門家が支援をすることになっていまして、企業によるアクションプランに対しては、労働局の査察結果により、スマイリーマーク(スマイリーシステムともいう)といったマークが与えられています。例えば岡田委員の大阪ガスとか、私がいた富士電機や椎葉委員の企業はクラウンスマイリーマークという、いちばん進んでいるというマークになるのかもしれません。いくつかのバージョンがあって、それぞれの企業のメンタルヘルス対策を格付けしていくマークを出して認証しているのです。それによって労働者の安全と健康に対する企業努力を評価しています。
 こういった取組を、例えば日本版に考えてみたときの1つの案ですが、日本では平成12年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」が出されており、皆様ご存じの4つのケアがあります。この4つのケアは膨大なマニュアルがちゃんとあるにもかかわらず、なかなか実践できていない企業も多いということで、例えばこの4つのケアをきちんとやっている所に対しては、そういった認証を行うという取組も考えられるかと思います。
 ここで問題になってくるのは、3つ目のケアの「事業内産業保健スタッフによるケア」ですが、中でそういうスタッフを持てない中小零細企業の場合は、いままでの議論にありましたような地域産業保健センター、健康診断実施機関などの産業医や保健師などがかかわっていく。小さい所は保健師になってくると思いますが、そういう人たちが継続的に関わっていれば3つ目のケアはきちんとしているとみなすとすれば、いままで議論してきたような仕組みも企業の中では定着してくるのではないかと思います。
 日本には労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)があります。労働者の自主的な活動というのが、リスクマネジメントで化学物質とか、そういった有害業務にどうしても特化している傾向があるのですが、メンタルヘルスに対しても、企業の中で全員が自分たちで、自分たちの職場についての問題を解決するようなシステムを回し、それを格付けのような形で“マル適”マークのような認証を与えて、企業のCSRの1つとして位置づけてはどうかということを提案している内容です。
 それに関してはデンマークと同じように、その企業内でのシステムに関して、企業の管理監督者や労働者がいつでもアクセスできるようになっていて、自分たちの企業はちゃんとそれに基づいてできているのかどうかを、自分たちで判断できるということです。
 デンマークと日本では人口の規模も違いますし、労働基準監督署がすべてをチェックすることは難しいのですが、企業内の労働者からもきちんと自分たちはやっているということが認証できれば、そこのロスは少ないのではないかと思います。いまは企業もとても大変ですので、やっていないときに罰則を設けるのではなくて、むしろポジティブにインセンティブを付けることを考えるとすれば、この認証があれば社会的ステータスや新人採用の面でも、こういった企業に入りたいということをメリットとして考えるポジティブな考え方でこの仕組みを考えていってはどうかと思っています。
 デンマークの心理社会的ストレス要因に特化した職場環境評価というのがあります。現在、下光先生や川上先生が中心になって研究されていますので、それをどうやって評価するかは今後の成果を待って、さらに進めていけばいいとは思います。企業側の努力を入れていかないと、いくらメンタルヘルス不調の人をケアしますと言っても、その職場の改善できなければ、次々にケアをしていかなければならないという状況が発生します。よって、一方で企業側がペナルティーのない緩やかな形の中でストレス対策を進めるようなガイドラインも、今後は検討していただきたいということで、この資料を出させていただきました。
 補足ですが、【日本におけるモデル案】のいちばん上のパラグラフに「地域産業保健センターや労働衛生機関の保健師」とあえて書いていますが、もともとは保健所に保健師がたくさんいて、前は自分の管轄区の企業を見ていた経緯があります。ただ、公務員削減の中で、本当に保健所の保健師が少なくなっている状況です。本来は保健所に保健師がいて、関わっていくというのが理想的だと思いますので、ここには書き漏らしていますが、それも補足したいと思います。以上です。
○相澤座長 いまの五十嵐委員からの資料のご説明ですが、ご質問、ご意見はありますか。
○川上委員 付け加えさせていただければと思います。五十嵐先生のご発言というか、日本におけるモデル案は、これからの日本における職場のストレス対策の1つの枠組みであるというのは私たちも全く同感です。
 補足させていただきますと、ヨーロッパ全体ではEU指令が出ていて、EU全体でストレス対策を進めなさいという決まりが労使の代表のもとに決まっていて、それを基に各国でストレス対策が進むという形に構成されています。デンマークもそうですが、ほかの欧州の国も同じようにストレス対策を進めているところです。
 デンマークの対策はEUの中でも多少特殊で、こちらは非常に強力な保護制度をもって、行政が労働環境、職場のストレスに介入するという形を採っていますので、流れとしては決して間違いではないのですが、少し特殊な例かと思います。むしろ現在ですと、英国のHSE(健康安全局)でやっているマネジメントスタンダードのような自主的な職場での職場のストレスの改善を促すようなやり方のほうが、いまの日本で進めているような、例えば簡易版調査票によって職場を評価して、それの改善を促すという形に近いのかなという印象を持っております。
 英国の対策の中では、3つ目のケアの事業場内産業保健スタッフによるケアに加えて、ラインマネージャーのコンピテンシーというか、ラインマネージャーがメンタルヘルスによい職場づくりをするための能力のリストを作って、ラインマネージャーのケアを重視することも進められている、と補足させていただきたいと思います。
○相澤座長 ほかにいかがですか。
○石井(正)委員 まずデンマークから始まりましたから、デンマークに限ってですが、私はここのパラグラフの中にデンマークと特別な書込みをするのはあまり賛成できません。これを取っても、その後ろの「心理社会的な観点から等々の、望まれる」という文章は残るわけですから。それはどこにあるのだと言われれば、例えば、こういうものがありますと。アカデミックないろいろなものを検討されるのは結構ですが、デンマークだけが素晴らしいモデルであるかのごとくの書込みは、ちょっと生すぎる感じがします。
 と言いますのは、私自身、医師会活動の中でデンマークの医師会長とも付き合っていますし、2回お話をしています。彼は1回こちらに来て、日本の医療制度、特に救急医療関連は、是非参考にしたいと見ていきました。
 いろいろな所でデンマークというのは出てきますが、デンマークそのものもいろいろな問題を抱えていますし、制度は作ったが、その中に矛盾を持っていたり、そういうものは常にあるわけですから、日本は形としては何もないわけではなくて、日本的ないろいろな解決をしているわけです。その上で足りない部分がある、それをどうするかという議論の中で、いきなりデンマーク型であるべきかどうかというのは、学問的にもう少し詰める必要があると思います。ですから、発想、コンセプトそのものには反対しませんが、特定の事例を入れることに関しては、私は賛成できません。
○相澤座長 というご意見ですが、下光先生はどういうご意見ですか。
○下光委員 特にないのですが、教室の小田切講師が、川上先生の厚生労働科学研究班の研究の中で調べさせていただいたものです。デンマークの労働衛生の専門家のターゲー・クリステンセン先生を通して資料を集め、それを分析し、まとめたもので、これが注目されたのだろうと思います。いま医師会の先生がおっしゃったことも一理あるのかと思います。実際にデンマークに滞在していろいろ調べたというわけではなく、資料での検討が中心になっています。
 ただ、EUではデンマークも含めて、川上先生が言われたように、先進的な取組が随分いろいろな所で行われていますし、労使の協調というか、労使の話合いの場でいろいろな施策が進んでいます。この検討会でも労使の代表の方が出ていますが、積極的に関与していただいて、ポジティブな方向で進めていただきたいと思います。
 現在、実際に川上先生の厚生労働科学研究班でステークホルダー会議を行っておりまして、我が国の労使の代表にも入っていただいて、メンタルヘルスの取組を日本でどのようにすすめていったらいいかということも話し合っておりますので、こういう先進的な取組を参考にすることは大変大事なことではないかと思います。
○相澤座長 ということでよろしいでしょうか。一次予防のことを強調するということです。大変貴重な資料をご提供いただきましてありがとうございました。ほかにご意見がなければ全体のほうに行かせていただきます。その前に今日ご欠席の委員からご意見をいただいておりますので、そのご意見を事務局からご紹介いただきたいと思います。
○永田主任中央労働衛生専門官 では、本日ご欠席の委員の中でご意見を賜っております先生のご意見をご紹介したいと思います。ご意見を賜りましたのは尾崎紀夫委員、中村純委員、堀江正知委員、生越照幸委員です。市川佳子委員からは本報告書について意見なしのコメントをいただいており、岡田邦夫委員からは未だご意見をいただいておりません。
 まず、尾崎紀夫委員ですが、7頁の「基本的な方針」のところで「職域での精神疾患に関する啓発活動を実施し、職域(労使ともに)が精神障害に関する十分な知識・情報を持つこと」という項目を入れるというご意見をいただいています。これについては、先般、尾崎紀夫委員がご出席になったときに発言しておられていた部分です。当方としては、7頁のオで当初なかった文ですが、「メンタルヘルスに関する正しい知識の普及を図り」という文言を入れ、また8頁のイ、ウのすぐ上で「また、職場におけるメンタルヘルス不調について、正しい知識の普及に関する啓発が行われることが必要である」という旨で、前回出していた資料からは修正はしていますが、先生からはこれをご覧になった上で、このような修正を、というご意見をいただいています。
 次に、中村委員からは3点ご意見を頂いています。1頁の1の②の出だしの部分ですが、「メンタルヘルス不調者の把握後・・・」と書かれていますが、①から②が唐突すぎるように思います。①が大変困難な状況ですので、少し慎重な書き方をすべきではないかと思いますというご意見をいただいています。 
2番目として7頁目の7の(2)のイで、健康診断結果に関する個人情報の保護のところで、自覚症状に関する所見について、所見の「有無」のみを事業者に伝えることは、医師の面接後のことではないかと思われますということで、書き方を最後のパラグラフに持っていくべきではないでしょうかというご意見をいただいています。
 3点目は7の(3)のア、8頁ではいちばん上の2行に当たる部分ですが、「専門家による検討を行うことが必要である」ということについて「精神科医、産業医を含めたプロジェクトチームを結成する」ということを加筆して欲しいということをご意見でいただいています。
 3番目に堀江委員です。9頁の事業場外組織の育成のところの9頁の真ん中辺りのパラグラフで「さらに」というところがあります。ここを読みますと「産業医等の意見に基づき、事業者が就業上の措置を行う場合には」から「整備・育成していく必要がある」というところで、「さらに、メンタルヘルス不調者について、産業医等の医師の意見に基づき、事業者が就業上の措置を行う場合には、意見を述べる産業医等の医師は、労働者が不利益を被ることがないよう」の後ですが、「独立性が求められる。また、このような状況に的確に対応していくためには、将来的には独立性及び専門性を有した外部の専門機関が産業医の職務を支援する仕組みのあり方について検討していくことが考えられる」という修正意見を頂いています。
 堀江委員に確認しましたところ、産業医は労使どちらにも偏らない独立性を有する必要があると考えるがその折々において、結果的に労側に見える場合があって、使側に見える場合もあるため、実際に労使の中間に位置することは非常に困難である。
 また、労働者の健康問題に関しては、労使間の問題に介入せざるを得ないことから、労使間で中立性を保つことは難しい。こうした実態を踏まえ、最近では産業医の職務について中立性という用語を用いないようにしているということで、ご意見を頂いています。
 また外部専門機関の位置付けについて、外部専門機関は、産業医を選任した上で、産業医を支援する立場として整備・育成していくべきであるという考え方を明確化したということです。
 最後に、生越照幸委員からのご意見は5点あります。説明の部分もありますので、生越照幸委員からご意見を頂いている箇所という箇所について説明します。
 1「はじめに」で、職場におけるメンタルヘルス対策検討委員会報告書に対し、意見を述べます。職場におけるストレス要因の対応は、一次的に職場環境に対してなされるべきであり、報告書(案)は基本的な方針においてメンタルヘルス不調に影響を与える職場におけるストレスの要因について、産業保健スタッフにより労働者個人や職場環境に対して適切な対応が実施される新たな枠組みを導入することが適当であるとしています。
 しかし、メンタルヘルス不調に影響を与える職場におけるストレス等の要因は、一次的には職場環境によるものであり、労働者個人に帰責されるべきではありません。例えば、長時間労働やひどいいじめ・嫌がらせを受けている労働者個人がいた場合、まず適切な対応の対象となるのは、長時間労働やひどいいじめ・嫌がらせが発生している職場環境そのものであるべきということで、メンタルヘルス不調に影響を与える職場におけるストレス等の要因に対する対応は、一次的に職場環境に対して行われ、二次的に労働者に対して行われることを報告書に明記すべきであると考えますということで、ご意見をいただいています。
 次に、医師からの意見の聴取については、7頁の(2)と思いますが、報告書(案)ではメンタルヘルス不調に影響を与える職場におけるストレス等の要因について、適切な対応が実施される新たな枠組みを導入することを目的としています。そこで、このような目的に鑑みれば、医師等から意見を聴取する場合は、健康診断結果に基づき、事業者が講ずべき措置に関する指針の2の(3)のロのとおりということで、その前提として、医師に対して職場環境に関する十分な情報が提供されるべきことを報告書に明記すべきだと考えますということで、かかる目的に鑑みれば、医師等の意見は労働者個人に着目した上記指針2(3)ハ、(イ)の「就業区分及びその内容についての意見」より、むしろ職場環境等に着目した同(ロ)の「作業環境管理及び作業管理についての意見」を重視し、その旨を報告書に明記すべきだと考えます。この指針は、第1回及び第2回の検討会の資料としてお示ししています。
 4の「医師等の独立性・中立性の確保」で、メンタルヘルス不調を防止するためには、医師等が事業者に対して適切な意見を述べる必要があり、このことが極めて重要な意味を持つと考えますということで、医師等の独立性・中立性が担保されていない場合、事業者の経営判断に沿った意見のみが出され、職場におけるメンタルヘルス不調に対して適切な対応が行われない可能性が高いと言えます。また、様々な指針が有効に機能しなかった1つの原因は前述のとおり、医師等から事業者に対して、労働環境に対して意見が適正に行われていないことにあると考えられます。
 ご意見で、医師等の独立性・中立性の確保が重要である旨を明記し、将来的には事業者から独立性・中立性の高い法的地位を創設した上で、選任方法、任期、報酬、権限などを法定することが望ましいと考えます。
 5番目は、メンタルヘルス不調を理由に解雇することは、労働基準法第19条第1項本文違反であることを明記すべきであるというご意見で、不利益取扱いの防止について、8頁で客観的に合理的な理由なく解雇する等の不利益な取扱いを行うことがあってはならないものである。事実、中小企業などの場合においては、メンタルヘルス不調が業務上のものであったとしても、メンタルヘルス不調が発覚した段階で解雇される例が散見されます。
 もっとも、かかる解雇は労働基準法第19条第1項本文に違反し、同法第119条により6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰則が科される行為に該当します。「したがって」からは修正意見ですが、上記のような違法な解雇を抑制する観点から、業務上のメンタルヘルス不調を理由に解雇することは労働基準法19条違反であり、罰則の対象となることを明記すべきであると考えます。
 6点目です。メンタルヘルスを検討するに当たって、労働者がどのような過程で自殺に追い込まれているかを例示することは非常に有効であり、NPO法人ライフリンクが現在行っている自殺遺族への聞き取り調査のうち、労働者の自殺事例についても報告書の中で具体例として採り上げるべきであると考えます。以上です。
○相澤委員 いまのご意見については、これからの議論の中で取り入れるかどうかをご議論頂きたいと思っています。それでは、最初のほうから行きたいと思います。1頁の「はじめに」ですが、中村委員から、ちょっと唐突だという話がありましたが、委員の皆様方からお気づきの点、ご意見はありますか。
○川上委員 いまの中村先生のご指摘は①②で、これは本来のプロジェクトチームのとりまとめを書かれただけなので、これを修正するわけにはいかないのではないかという気がします。
 私は別の点で気になるのは、「はじめに」のいちばん下に2行あって、「今後、職場におけるメンタルヘルス対策として新たに取り組むべき方策等について検討を行った」になっていますが、これは第1回ときに確認いたしましたが、プロジェクトチームから出てきたもので、まだ未検討のものをここでやるということですし、少し範囲が限られていたような印象があるのです。この書き方でそう読めないこともないのですが。「プロジェクトチームから出た検討事項に関して検討を行った」という表現のほうが適切ではないかと思いました。
○相澤座長 いかがですか。
○鈴木労働衛生課長 この①②自体は、まさにプロジェクトチームからの引用ですので、これ自体は修正できませんが、確かに①から②にかけて、何かつなぎの文章を入れるとかということは、丁寧に説明するという意味ではできるのかなと思います。
 最後の2行についても、確かに全く白紙状態で新たに取り組むべき方策等ではなくて、この検討会の開催要綱にも規定するように、基本的にはこの流れからきておりますので、そこも丁寧に記述をしたいと思います。
○相澤座長 文言を訂正していただくということでよろしいでしょうか。ほかにはありませんか。よろしければ2番目の「職場におけるメンタルヘルスの現状等」です。労働者の状況等、2番、3番、4番、3頁前半までですが、いかがですか。
○三柴委員 2の(1)の「こうした状況の中で」という段落の3行目の「増加している」の後について申し上げます。もし可能ならばという前提でですが、「また企業などに高額な賠償額の支払いを命じる民事裁判例も多く出されている」という一句を、1つの事実として入れて頂いても宜しいのではないか、という気が致します。私個人は、今の賠償法理については、より客観化と適正化を図る必要があると思ってはいますが、賠償法理のいかんよりも予防はもっと重要ですので、それを喚起する意味で、という趣旨です。
○相澤座長 高額の賠償例もあるということを記載したらどうかいうことですが、これは事務局で、皆さんのご意見がそうであればですが。石井(妙)委員はいかがでしょうか。
○石井(妙)委員 事実として高額の民事賠償事例もあるというのはそのとおりですが、場所として唐突でなければいいなと思っていたところです。
○相澤座長 では、これは事務局でよろしいですか。
○鈴木労働衛生課長 これまでのご議論、使用した資料に基づいていますが、今回、口頭でそういう事実があるというのをご発言いただいたということを根拠に、表現は後ほど調整させていただきますが、一定の事実を確認した上で、事務局として案文を作りたいと思います。入れる位置についても、調整ということでいかがでしょうか。
○相澤座長 考慮いただくということで。ほかにはございませんか。
 それでは、3頁の3「一般定期健康診断におけるメンタルヘルスに関連した取組の現状」、現行の健康診断項目、一般定期健康診断の機会を活用したメンタルヘルス不調把握の事例ですが、いかがですか。
○石井(妙)委員 言葉の問題ですが、「メンタルヘルス不調の把握」という言葉について、先ほども冒頭の所は引用なので直すことはできないという話がありましたが、ここでもちょっと気になります。メンタルヘルス不調把握の事例でも、具体的にはストレス調査になっていますし、先の話ですが、今回の把握もメンタルヘルス不調者を探すというよりは、自覚症状ですので、この辺りの用語が整理されていないなというのが、ここだけではありませんが、気になっています。
○鈴木労働衛生課長 これはまさに(2)のタイトルが「不調把握の事例」となっており、事実に基づく記述ですので、その健診機関なり企業がどういう目的でやっているかを再確認した上で、適切なタイトルに変えたいと思います。
 それから、これまでの議論で、当初はそういう課題としてメンタルヘルス不調が健康診断の機会に把握できないかということで検討を始めましたが、流れの中で、あくまでもストレスからくる自覚症状等の確認、それに対する対応ということになっていますので、全般を通じて、初期の議論に基づく誤解が生じないように精査いたします。タイトルをどう変えるかは、この事例のそれぞれの実施主体がどういう目的でやっているかによって、やはり不調の把握もしているのだと言えば、それは事実としてそう書かなければいけませんので、こういう単一のタイトルで可能かどうかは検討させていただきたいと思います。
○栗原委員 実施主体ですので一言、私どもはメンタルヘルス不調を把握するつもりで行っておりません。職場におけるストレス要因を把握するということを基本に行っております。岡田委員の所の話とは少し違うかもしれませんが、少なくとも私どもは、そうしたスタンスで行っております。
○相澤座長 栗原委員の健診機関は、②のほうですか。
○栗原委員 ①のほうです。
○相澤座長 そうすると、岡田委員のいらっしゃる大阪ガスがどういう目的で行っているのかということもありますので、その辺は精査いただくということで。なかなか、メンタルヘルス不調という言葉は難しいので。ほかにお気づきの点はありませんか。よろしければ、4「一般健診実施後の対応の仕組等」ということで、就業上の措置、保健指導、メンタルヘルス不調者に対応している人材・体制等の現状ということですが、いかがでしょうか。4頁の(3)の言葉の問題だけなのですけれども、第3パラグラフの嘱託産業医の専門分野のところで、「主たる診療科目名別の医療、従事する医師は26万人となっており」か、「であり」ですかね。これは、一般的な医療施設の従事する医師ですね。
○鈴木労働衛生課長 そうです。
○相澤座長 「26万人であり、このうち精神科医は5%」ということですが、よろしいでしょうか。
○川上委員 小さなことですが、4頁の(2)の保健指導の中の最後のところに、「事業場に所属する保健師の多くが」と書いてあるのですが、これは「保健師等」とか、あるいは「保健師・看護師等」ではいけないのですか。「保健指導を行う」というのがその前段で終わっているので、教育や不調者の対応に参加している看護師もいるような気もします。これは、私もよくわからないのです。
○相澤座長 確かにそうですね。「保健師等」ですね。
○鈴木労働衛生課長 看護師が入る。
○川上委員 「保健師等」ですかね。メンタルヘルスの指針では「保健師等」になっていましたので。
○相澤座長 これは、よろしいですか。
○五十嵐委員 私の資料のことを言っているのかなと思ったのですけれども。産業保健師の実態調査から、保健師がメンタルヘルス教育や、メンタル不調の対応の職務に多く関わっているという、事実を言っているのかなと思ったのですけれども。
○相澤座長 五十嵐委員のその調査は「保健師」だけですか。
○五十嵐委員 はい。
○相澤座長 実際は「看護師等」とか。
○五十嵐委員 「等」ですかね。「等」と入れておいたほうがいいのでしょうか。
○相澤座長 「等」を入れておいたほうがいいのですかね。ご検討いただいて、よろしければ「等」を入れるということで。ほかにはよろしいですか。それでは、5「メンタルヘルスに関する調査票」です。
○川上委員 私のパートだと思いますが、ちょっとだけ意見を述べさせてください。書かれている内容で間違いではないのですが、たぶん前回の議論で出たのだと思いますが、睡眠を聴くとか、頭痛を聴くとかで、どのぐらいうつ病をスクリーニングするかという話も出たのだと思います。ここに書いてあるものは、一定の精度を有していますけれども、例えば睡眠の質問票の感度は50%を切りますので、うつ病の方は半分は見逃します。必ずしもこういう書き方の中に、「項目数の多さにかかわらず」と書かれると、ちょっと誤解が発生するかなという印象があります。
 ここは、こういうふうにさせていただきたいと思うのです。「一般健康調査票(GHQ-12)など、一定の精度を有していると評価されているが、陽性者には多くの健常者が含まれること。また適切な事後措置がない場合には十分な効果が期待できない点に留意すべきである」というふうにさせていただけるとありがたいのですが、いかがでしょうか。
○相澤座長 ちょっと、全部はフォローできていませんけれども、先生のご発表の内容を入れるのだということですね。
○川上委員 そうです。先ほどの趣旨に近いものにさせていただけるとうれしいのですが。
○北村委員 川上先生にお伺いしたいのですけれども、一般健康調査票というのは、いまGHQ-12しか使われないのですか。ここには、「12」と限定されていますけれども。
○川上委員 私は、職場で比較的多く使われているものとして、GHQ-12を例示したのでこれが載っているのだと思います。世界的に28や30よりも、いまはGHQ-12が最もよく使われています。
○北村委員 これは、「12」という限定で例示したほうがいいわけですね。
○川上委員 特に私自身は好みはないのですが。
○北村委員 細かいところなので、別にこだわりません。
○相澤座長 そうですね、この文章だとかなり肯定的な感じがするけれども、川上先生のご意見ですと、少し問題もあるということも入れたいということですね。
○五十嵐委員 戻って4頁の(2)の保健指導のところですが、やはり、これは労働安全衛生法での66条の保健指導をさしており、医師と保健師のことを示しているので、ここで「等」と付けると文脈が合わないのではないかと思うのです。これは医師と保健師で、保健師もやっていますよということを言っているのではないかと思うので、ここに「等」を入れるのはちょっと抵抗があります。
 実態としては、保健師以外の看護職もやっていますけれども、たぶんここは労働安全衛生法での保健指導においてということですから、ここは「等」を入れるべきではないと思いますので、私の意見として言っておきます。
○鈴木労働衛生課長 改行した上で、労働安全衛生法の規定はこうですが現実。要するにこの4番目は事実関係を、仕組みを基本的に紹介した後、実態を記述する部分ですので、改行した上で「また」とか、そういうことで、実際に看護師さんが活動されているのであれば、それを詳しく紹介するのはむしろいいのかと思います。確かに労働安全衛生法上の保健指導の現実、仕組みとは別に、入れるかどうか、これも「多くが」という言葉がかかりますので、事実を確認した上で記述を修正するかどうか検討させていただきたいと思います。
○相澤座長 そうしますと、5番は川上先生のご意見のとおりでよろしいでしょうか。よろしければ6「健康診断における労働者の個人情報等の取扱い」です。大事なところですが、5頁から6頁にかけていかがでしょうか。
○石井(妙)委員 6頁の真ん中辺りの、「心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強い」とあるのですが、そこは具体的な事実は示されていないと思います。「健康問題以外の観点から」というのはどういうことかというのもちょっと不明確です。健康の問題を抱えて「休みがちである」とか、「無断の遅刻が多い」というので悩んでいる職場というのは多いと思います。その結果、評価も必ずしも良くないということはあると思うのですが、それは別に不当な話ではないと思っています。この辺りはどういうことをイメージしているのかで、事実として確認されているのか疑問です。裁判例でも別にそういうのはないと思うのです。少し唐突感があります。
○鈴木労働衛生課長 これは、我が方で出しておりますメンタルヘルスの指針にこの表現があり、そのときには事実関係などを確認したのだと思うのです。それをそのまま一般的な傾向としてここに引用しているということです。今回、確かにこの検討会では、こういう実例があるかどうかを確認し、資料として出したわけではないです。
○三柴委員 裁判例ということですと、例えば、石井(妙)委員もご存じの片山組事件は、ストレスとの関連性も指摘されるバセドウ病にり患した労働者が、休職後の復職を拒否されたという事案ですが、おそらくは、その労働者が就業期間中に労組で結構活発な活動をしていたということが背景にあったと伺われる事案でもあるかと思うのです。けれども、たしかに、健康問題以外の観点での評価がなされている実態が一般的にあるか否かということについては、もう少し個別具体的に確認していかなければいけないかな、とは思っております。
○相澤座長 そうしましたら、一応確認した上で入れるかどうか。石井(妙)委員の例があれば。
○石井(妙)委員 すみませんが、ここは記載がなくても「その誤解や偏見等が解消されるべきだ」というのだけでいいのではないか。その後の「うつ病だとわかった途端に解雇される」という事例も、確認があるのかどうかという気もいたします。
○鈴木労働衛生課長 この「健康問題以外の観点から評価を行う」という文言自体は確かに指針にはあるのですけれども、わかりにくいというのはほかの方からも指摘されている部分です。確かに、ここはなくても意味は通じる部分ですので、そこは少し吟味したいと思います。
 それから、「うつ病であることがわかった途端に解雇される」というのは、生越委員が2回ほど前に発言されましたので、そういう事例があるということには間違いないのかなということで入れたものです。
○相澤座長 不利益取扱いという事例を挙げている文章ですので、少し検討していただけますか。
○三柴委員 以前、ほかの場面で提示させていただいた資料なのですが、また、障害者手帳をお持ちの方々を対象にしているので、症状がやや重い方が対象という前提にはなりますが、厚生労働省の調査結果で、就職率とか再就職率については、精神分類の方は、身体や知的分類の方に比べても、相対的に低いというデータはあります。
○相澤座長 就職の点ですね。そうしましたら、この文章をもう少し誤解のないようにまた精査していただいてどうするか。石井(妙)委員は、外してしまったほうがいいというご意見のようですね。
○石井(妙)委員 そうです。
○相澤座長 文脈をちょっと考えていただきます。それでは7「メンタルヘルス対策を促進するに当たっての基本的な方向」ということで基本的な方針、具体的な枠組み、新たな枠組みへの対応といういちばん大事なところです。
○北村委員 これまでの議論で精神疾患のチェックはやらないということになったと思っているのです。それは6頁の下のほうに、「メンタルヘルスに関する調査票を用いて精神疾患を早期に発見することは困難であるが」と書いてあります。健康診断のもともとの目的というのは、病気の発見や異常の発見ということです。それと、ストレスへの気づきを促すということが、どうも性質がかなり違うような気がするのです。健康診断の中にこれを入れるとすれば、ちょっと性質の違うものをかなり無理矢理入れ込んでいるのだというような文言が何か必要ではないかと思います。
○鈴木労働衛生課長 確かに、今回は既に労働安全衛生法で事業者に義務付けられている定期健康診断の機会をとらまえて、精神障害という疾病の発見ではなくて、ストレスからくる自覚症状を確認し、そのストレスの要因を除去するような対応をとるという仕組みを入れ込みます。ただ問診票に、睡眠障害、食欲となると、結局は病気の発見という流れに乗ってしまいます。
 そこはいろいろな仕組みは活用するにしても、病気発見の論理といいますか、仕組みで流すのではないということを、相当明確に現場に知らせないと、結局は誤解されるといいますか、あるいは事後措置は医師の意見を最優先して、労働者の了解を取るといっても、その時点ではなかなか難しいということになり兼ねません。この報告書でどう書けるかということと、実際にこれを運用するときに、どのように周知するかという2つの課題があろうかと思います。そのご趣旨については、さらに北村委員のご意見も入れながら加えたいと思います。
○北村委員 ですから、精神疾患をチェックするのではないのだと。ストレスへの気づきを促す対応を、本来なら別の形でやることを、ここに入れ込んだのだという趣旨を明確に書いていただきたいと思います。
○平野安全衛生部長 補足的にお話をさせていただきます。健康診断は、病気の早期発見という機能は当然あるわけです。現在、事業場で労働安全衛生法によって、事業者に罰則付きで義務付けているという趣旨は、結局健康診断を実施して、それが病気につながらないように、就業上の措置だとか職場環境を改善する。そういうことによって、病気につながらないようにする、ということの趣旨で事業主に義務付けているわけです。
 今回、メンタルヘルスに関して同じような仕組みの中に取り込んではどうかということについては、基本的には先ほど申し上げました、職場環境なり就業上の措置をきちんと改善することにより、メンタルヘルスの問題が悪化しないようにという趣旨です。全然別のシステムを引っ付けるということにはならないのではないかと思います。ただ、北村委員がおっしゃいましたように、そこのところは誤解のないような表現ぶりを検討していきたいと思います。
○北村委員 従来の健康診断は病気を見つけるだけではなくて、異常を見つける、調子の悪いところを見つけて、それが悪化しないように配慮するというのはよくわかります。この検討会での議論は、本人にストレス状態を気づかせることをやろうという話になったのではないですか。気づきを促す、病気をチェックするとか、異常をチェックするのではないのだと。
○平野安全衛生部長 それはまさにそうです。前回も同じ議論があったわけです。
○北村委員 ただそこはちょっと違うので、そこはきちんと書き込んでいただきたいと思います。
○三柴委員 北村先生にお尋ねしたいのですが、これまでの健康診断の制度枠組みでも、自覚症状調べとか、他覚症状調べというのは書き込まれていたわけです。この趣旨について、北村先生はどのようにお考えなのでしょうか。要するに今回の事務局案というのは、そこに新たに項目を加える形で具体化して、診断の内容をより明確化するというものと解されます。私が読む限りでは、一義的には本人のストレスへの気づきということで、病気とはいえないものをチェック対象とするけれども、そこに医師を介させることにより、病気の発見、つまり精神疾患の発見というのも、場合によっては起こり得るという、そういう前提に読めるのですが。
○北村委員 先週の議論で、名古屋大学の尾崎委員から、病気発見というのは、いまの体制の中では無理だと。病気の人を発見するということは、この中には入れないようにしようという意見が強く出ました。一応それで前回はまとまったのかなと私は理解しています。
○三柴委員 先週の議論状況を私なりに確認させて頂いたところでは、病気、精神疾患を正確に全部拾えるかというと疑問だ、ということだったように思われるのですが。
○北村委員 いまのやり方でやると、病気の人も拾うというように読めてしまうのです。自覚症状を見て、それで就業上の措置を講じなさいということですよね。
○三柴委員 そうであれば、病気であるかどうかということを、完全に区分、確定する必要はないのではないでしょうか。たしかに、今回の検討課題では、健診の方法のいかんがミッションとして強く出されてはいますけれども、その大目的は、あくまで不調者なり、自殺者なりを減らすことにあるわけですから、そのためにこういう制度枠組みをどのように活用すべきかということを考えれば、要するに病気であるかどうかはともかくとして、不調に関する自覚症状に加え、場合によっては病気の捕捉もなされるかもしれないということで良いのではないか、ということです。
○鈴木労働衛生課長 前回までの流れは、まさにいま北村委員が言われたとおりだと思います。やはり表現について、より丁寧に、詳しくやると誤解が少ないのかもしれません。病気を見つけるということを今回の枠組みで事業者に義務付けると、これはその人材の資質とか、受け皿もパンクすることがありますので、事務局としてこれが三柴委員に正確に伝わったかどうかはありますけれども、メンタルヘルス不調の要因にもなる可能性もあります。それから、悪影響を及ぼすのは間違いないストレスの要因、これに基づく自覚症状を確認し、その阻害要因となっている職場の環境を改善するというか、除去していくというか、それは一定程度義務付けられるのではないか。
 ただ、そういう中でここで入れ込んでいる面接などで、実はだいぶ前から眠れない状態が続いていて、一回精神科の医師に相談しようと思っていたのだというようなことがあれば、それは当然医師の一般的な判断として、近所にこういう所があるから一回受診されてはどうですかという事後対応だったらありますが、そこまで判断して、受診勧奨するというところまで義務付けるとなると今回は難しいかなということが、この表現では不十分だということを北村委員が言われましたが、そこでたまたま見つかるようなものも捕捉されるというのも否定はされていないのだと思うのです。
○五十嵐委員 確認させていただきたいのですが、労働者のストレスの気づきを促すぐらいなのでしょうか。私は、もっとリスク状態までも、病気かどうかの判断ではなく、病気の人をスクリーニングするというのではなくて、例えば自覚症状で引っかかってきた人を面談するわけです。このまま置いておくと病気につながるかもしれないというリスク状態を、やはり私たち専門家が、それも客観的な見方をして、それだったら職場のほうにも改善を要求しようとか、あるいは本人にも保健指導をしていくというようなこともあります。本人が気がつくだけではないのではないかと思うのです。
○鈴木労働衛生課長 いまのお話は、面接なりその後保健指導する際のお話だと思います。北村委員が言われているのはきっかけで、新しい枠組みを作っても、歯車ができても、それを回すきっかけが必要ですと。それは、この検討会では本人の気づきを促進するというきっかけをつくるということだったのではないかと思います。トータルで見れば、もちろん本人が気づいて、自己責任で医療機関を受診するとか、上司に職場改善を申し出るということではなくて、そこは産業保健スタッフがかかわりながら改善していくということですので、議論は矛盾していないのではないかと思います。
○五十嵐委員 その辺を丁寧に示していただくとわかりやすいのかなと思います。
○鈴木労働衛生課長 前回、生越委員から、気づきだけではなく、その後のきちんとした職場の環境の改善などに結び付かなければ意味がないというコメントは頂いておりますので、その要素はいま五十嵐委員が言われたことで、どういうふうに解決するかはまた微妙な問題がありますけれども、きちんと流れていくのかなと思います。
○三柴委員 これもあくまでご提案なのですけれども、また、五十嵐先生のご意見とも共通しますけれども、例えば、「アイウエオ」と7頁の上にありますので、その下に「カ」を入れて、「上記の措置に関連して、個々の事業場の実情に応じたメンタルヘルス対策のためのPDCAサイクルの構築が図られること」というような趣旨の一文を入れても良いのではないでしょうか。
 それに平仄を合わせて、「ア」の3行上の真ん中に「実施される」とあるので、ここに「実施され、労働者個人の保健とともに、職場における継続的な環境改善等が図られることとなる新たな枠組みを導入することが適当である」というふうにすると、産業精神保健に関するPDCAサイクルの構築につながる議論だ、という趣旨が出てくるように思われるのですが、いかがでしょうか。
職域のストレス問題というのは、非常に複雑で多層化した問題と言えるように思います。ですので、従来型の一律の規制でそれを強制するということはなかなか馴染まない面があると思うのです。
 それで少々調べてみたところ、東京大学の水町准教授による最近の著書で、諸外国の法制度の動向調査の結果がまとめられておりました。これによれば、欧州やアメリカでも、そのような性格の問題に対する対処が求められている事情があり、アメリカでは構造的なアプローチという方途で対応が図られている。他方、欧州では、手続的なアプローチという方途で対応が図られている。いずれも個々の産業や事業の特徴や事情を踏まえたアプローチという点に特徴があり、日本の安全衛生法でこのような発想を最も体現しているのは、個々の事業所ごとに安全衛生のPDCAサイクルを構築しなさいというOSHMSです。これを積極活用されたらいかがでしょうかという趣旨です。
○相澤座長 確かに一次予防に使うという話がありましたので、それも強調したほうがわかりやすいかもしれません。いまのご提案はいかがでしょうか。事務局はいかがでしょうか。
○鈴木労働衛生課長 特にいまの時点ではありません。ご意見次第だと思います。
○川上委員 三柴先生のご意見自体は、私は2回ほど休んだので厳密に流れを把握していませんが、適切ではないかと思います。もし「カ」を入れるとしたら、7頁の「イ」にある「事業者にとって、時間及び費用負担が過大なものとならないこと」と。「時間的な負担が大きくならないこと」というのは妙な位置づけになります。これは議論されたかどうかわからないのですが、議論されていないのなら削除したらどうかと思います。
○三柴委員 いま申し上げたことで費用が嵩むことになるというご趣旨でしょうか。
○川上委員 いや、状況や実情を踏まえたPDCAサイクルというのに、「事業者にとって時間と費用が過大なものとならないこと」というのが前提としてあるというのは、何か少し流れがおかしいと思いました。
○三柴委員 あくまで私案としてですが、先ほどの私の提案にあわせ、例えば10頁とか最後のところに「インセンティブ」という項目を入れて頂いて、事業者の方への配慮の1つとして、「効果的なメンタルヘルス対策は、様々な面で事業者の利益にもなるものであるが、対策の促進を図るためのインセンティブ制度の導入についても検討することが必要である」といった1句を追加して頂いても良いのでは、とも考えておりました。
 現行の労働安全衛生法第88条というのは、OSHMSを導入した方について、一定のメリット措置を定めていますけれども、これは非常に限定的で、産業精神保健についてもそういう方向性が将来課題として検討されても良いのではないか、対策の実効的な促進のためにも、可能ならばそういう促進策とセットで事業者の講じるべき措置が議論されでも良いのではないか、と思うのです。川上先生のご指摘とは、ちょっとずれているかもしれませんが。
○川上委員 三柴委員のポイントは理解しているつもりなのですけれども、7頁の「イ」が入っていること自体に私は付いていけなくて、どなたかからご発言があったかどうかを確認させていただきたいのです。
○鈴木労働衛生課長 「イ」については前回もやり取りがありました。前回は、主語がはっきりしない形で書いてありました。これは、この度の新たな枠組み、まさに健康診断の機会にどれぐらいの時間的、あるいは費用的負担が生じるか。これによって実施率の確保がどうなるかということに大きく影響します。三柴委員のご発言は、年間を通じてといいますか、普段からの企業における体制づくり全般のことで、その中にPDCAサイクルを入れるということです。
 もちろんそれをやれば時間的・費用的負担はかかるかもしれませんが、「イ」で言っているのはかなり限定的な話であります。そういうご指摘を踏まえて「カ」として入れると条件になってしまいます。これを通じて将来的には望ましいような姿を記述するのだと「イ」とはあまり矛盾しないことになろうかと思います。やはり「カ」の並びで入れると、今回の枠組みの絶対必要条件になりますので、そこをご議論いただければと思います。
○相澤座長 基本的な方針ということですから、いますぐこれをやらざるを得なくなっていますけれども。
○三柴委員 特に位置とか表現とかにこだわっていなくて、ただ考え方としてそういうサイクルが継続的にあったほうが、今回の報告書の趣旨が生きるのではないかと思ったということです。
○川上委員 「カ」の議論をしているのですが、いまのような形だと「イ」のところが少し違和感のある表現になっています。例えば「事業者にとって導入されやすく、また労働者も参加しやすい仕組みであるべきである」とか、そのような書き方はいかがですか。
○相澤座長 「労働者にとっての時間的な負担」ではなくて、確かにそうですね。
○川上委員 ここで「時間」と「費用負担」を出されても、そのリスクとどう調整しているのかが、産業保健スタッフとしては微妙なのです。
○相澤座長 そうだと思いますね。確かに、事業者と労働者の立場としての文言を変えましょうか。
○鈴木労働衛生課長 これはご議論があって、メタボ健診のときの項目追加の話もありましたが、これは、なるべく時間や費用を削ろうという趣旨ではありませんので、いまの川上委員のご発言を踏まえて、また文言は考えさせていただきます。
○北村委員 7頁の(2)のウのところで、就業上の措置等で、要面接とされた人については医師が面接を行い、事業者は、その必要な措置について医師等から意見を聴取するということが書かれています。病気をチェックするのが目的ではないですから、本人がこのぐらいのことで就業上の措置はとらないでほしい。あるいは措置をとられたことによって、自分は精神的に何か問題があることを知られてしまうからいやだと拒否する場合があると思うのです。医師の面接の中でそういう拒否が起こった場合の取扱いについても書いていただければと思います。
○鈴木労働衛生課長 6頁の真ん中の「不利益取扱いに関しては」というところで現行の指針を紹介しています。この中で「事業者は就業上の措置を決定する場合には、労働者の了解が得られるよう努めること」となっておりますので、当然面接の時点で了解しそうもないことを、医師が意見として言うというのも非現実的です。
 また、医学的にある程度データに基づいた疾病であれば、医師も適切な意見を言うことを義務付けられても答えることができると思うのです。自覚症状に基づくものだけで責務を負うのはなかなか難しい面があろうと思います。ですから、そこについては、そもそも意見を言う際の条件を相当程度付与するかどうかは議論があるところだと思います。まさに症状のみに基づく部分ですから、ここは少しご議論いただいたほうがいいのかと思います。
○椎葉委員 いまのご意見に関してなのですが、6頁の下から2行目の「産業保健スタッフにより労働者個人や職場環境に対して適切な対応が実施されるため」に行うのですよね。そうすると、症状のみではなくて、職場環境に対して対応するために行うというふうに取れるので、ちょっと意味がよくわからなくなるような気がします。
○鈴木労働衛生課長 これも少し読みにくい表現だと思います。労働者個人を取り巻く、例えば長時間労働とか、非常に困難な課題が仕事のテーマとしてあるということについてというのは個人ごとの話です。職場環境といっているのは、職場全般に共通する因子があれば、そういうものを改善するということで書き分けています。これは、生越委員のご意見でも、ちょっとわかりにくいというご指摘があったと思います。
 それから、これはこの枠組みで直ちに対応が可能になるということではなくて、こういう枠組みを導入することにより、体制が整って、1年を通してPDCAサイクルのようなことより良くなっていくということのきっかけとして、新たな枠組みを導入するという趣旨です。この枠組みの中で個人、職場環境が完全に完結する形で適切に対応できるというところまでここでは言っていないつもりなのです。非常にわかりにくいとは思います。
 そういう意味で、先ほどの北村委員からのお話でも、すべて面接と意見聴取といいますか、医師からの意見でこれを解決するというのはちょっと無理があるのかなと思っています。
○北村委員 6頁の真ん中辺りの文は「事業者は」という主語なのです。「事業者は就業上の措置を決定する場合に、労働者の了解が得られるように努める」ということになっています。現実には、まず産業医が話を聴いて、こういう措置があったほうがいいのではないかと判断するわけです。そこの時点で労働者が、それはやめてくれと言った場合にどうするのかということが問題かと思います。
○鈴木労働衛生課長 これは、新しい枠組みに変えるときには指針も変える可能性は十分あります。現行では、この段階に至ってようやく了解を確認するので、そうすると事業者には情報が一定程度伝わってしまいます。例えば、面接の際に意見を取りまとめるときには、産業医などは事業者の了解の下に取りまとめることというのを今後指針に盛り込むというのは十分あり得ると思います。そうなると、本人が希望しない場合は、その時点でもう少し様子を見ようかとか、本人の責任でもう少し頑張ってみるということになることもあるのだと思います。
○北村委員 その取扱いをここに書き込むべきかと思うのですが、いかがでしょうか。
○鈴木労働衛生課長 皆さんのご意見の大勢がそういうことになれば、方向性をそのように示していただければ。そういうことをクリアできなければ新しい枠組みも導入しないことになると思います。
○栗原委員 先ほど堀江先生からご意見が出ておりました、産業医の独立性を明確にしていくのであれば、その一方でいま北村先生がおっしゃったような、産業医がそこでヒアリングをする、あるいは面談するときに、その辺りの配慮はされていくべきであろうと思います。そういう意味では、ある程度明確にしておくべき話なのか。独立性を強くすればするほど、その辺の問題は整理しておかなければいけないのかという印象を持ちます。
○石井(正)委員 いま議論されていることで言うと、一般の臨床の現場で、治療法にこういうのがあります、ドラスティックな治療法は、例えば手術です、ところがまだ希望されないときにどうするか。それは、説明と同意が取れなかったということで、全体のプロセスを書いておいて、それは意見書には反映しないと。もしくは、一部分でも触りとして、そういう方法もあるということについては同意が得られなかったという意見を書くとか、その担保の仕方というのはあるのではないでしょうか。先ほどの独立性と絡めれば、すべてが事業者に明らかにされる状況でなければ、そういう担保の仕方はあるのではないでしょうか。
○北村委員 現実問題として、そういう担保の仕方を現場ではせざるを得ないと思うのです。ただ私が危惧するのは、これは病気をチェックするものではないとは言いながら、「就業上の措置を講じる」という項目があります。そうすると、その就業上の措置を講じなかったがために、何かトラブルが起こるということを、現場では非常におそれる可能性があります。そうなっては、安全サイドを見込んで、かなり過剰な就業措置が講じられるリスクもあるのではないか。そうすると、労働者本人にとっても、企業にとっても大変なマイナスになる。
 本人が、そこまでしてもらわなくていいです、いまは自分でちゃんとやれますとおっしゃるのであれば、そこは自己責任でまず様子を見るというようなことをきちんと書いておかないと、過剰な就業上の措置がとられてしまうのではないかということを危惧するのです。
○鈴木労働衛生課長 先ほど石井(正)委員が紹介されたのは、個別に関わった方たちがどのように免責されるかというか、きちんと経過を記録することにより、一定の責任の所在を明確化するかということです。いま北村委員が言われたのは、それでも組織としてその辺の整理を担保するというか、そういう仕組みが要るだろうということですので、両方について何らかの記述を加えるということでいかがでしょうか。
○相澤座長 それでよろしいでしょうか。
○石井(正)委員 先ほどから言葉に出ていますが、「独立性」という文言がどこかに入ったほうがいいというのは私も感じます。それに関連して、主語は随分付けていただいたのでわかりやすいのですが、肝心のいちばん上の「ア」のところの「労働者のプライバシーが保護されること」という文言は、相変わらず誰に、どういう状況で、何のためのというのが抜けているのです。ご承知のとおり、医療サイドというのは医療のチームの中ではプライバシーの保護よりは、事実を伝えて、例えばコンサルティングする精神科のプロに相談するとか、保健師さんと職場の現状について意見交換をする。そのときにプライバシーの保護に努めながら意見交換するのは、むしろ労働者にとって不利益を生じます。そこのところは抜いていただいて、それは我々に独立的にやらせていただいて、その上で事業場の中ではプライバシーの保護は当然みられるべきであると考えます。
 だから、ここに先ほどの「独立」の言葉が別に入っていれば、ここは「事業場における労働者のプライバシーが保護されること」、又は「事業者はそれに努めなければいけない」と言ってくれれば、これは非常にわかりやすいのではないかと思うのです。
○鈴木労働衛生課長 前回のご指摘の後、再度吟味したのですが、場面を限定しながら保護されることにするとかなりの分量になりかねません。当然医師、保健師等が業務で行う場合には、それぞれ規定している法律などで言うまでもないことなのですが、それ以外の場面で規定の範囲を超えた情報の提供が行われないことという意味で言ったのですが、再度限定列挙ができるかどうか検討させていただきます。
○五十嵐委員 別の件なのですが、3頁のいちばん上のところに、「早期に適切な対応が実施されるよう新たな枠組みを導入することにより」とあります。それで7頁に戻りまして、今回の健康診断での気づきというのは、あくまでも歯車が回るきっかけの部分であって、産業医又は保健師が保健指導に関わることで、今後健康診断以外のところでも、何かあったときにすぐに相談体制がとれる相手として、それを明確にするような位置づけもあると思うのです。むしろそちらのほうが問題は大きくて、その後何か本人が、職場環境の変化等によって体調不良を起こしたときに、まずはこの産業保健専門職に相談してみようというところが大事なのです。それは、いままでにも散々私も申し上げました。
 今回の枠組みだと、健康診断のその後のことしか書いていないのですが、むしろこれをきっかけに、その後何か相談を受けるときには、面談をした産業医や保健師が継続的にかかわることといったような文言を是非入れていただきたいと思います。
○相澤座長 それは基本的なところか、あるいはこれをやった上でのあれでしょうね。
○五十嵐委員 ここに入れるのか、最後に入れるのかです。
○相澤座長 最後辺りがいいですかね。
○五十嵐委員 要するに、そこをきちんと明確にすることが、事業者に対しても明確にし、労働者に対しても明確にすることが大事かと思います。
○三柴委員 これは、事務局への確認の趣旨も含むのですが、いまの労働安全衛生法第66条では、医師の選択の自由が書かれています。これに対して、今回提示された事務局案は、要は、病気の発見が主目的ではないという趣旨に立ち、他方では事業場内の産業保健スタッフに大いにかかわっていただくという枠組みを提示するものと理解されます。そこで例えば、産業医に面接されるのはいやだという労働者。例外想定になってはいけませんけれども、そういう方が現れた場合に、いまの医師選択自由の規定というのは生きるのかということなのです。
○鈴木労働衛生課長 すみません、にわかには答えられないのですが、この場合でも生きるということのようです。
○三柴委員 そうしますと、余計先ほどの北村先生のお話に関わりますけれども、それでも受けないというような方については、法的にも自己責任性は高まると考えます。もちろん石井(正)委員がおっしゃる、記録を前提にしてということになるでしょうが。
○北村委員 その辺は触れていただかないと、現場としては安全サイドをやりすぎてしまう心配がありますのでよろしくお願いします。
○永田主任中央労働衛生専門官 先ほど欠席されている委員の意見をご紹介しました。7頁についていくつかありますので、ご検討をお願いいたします。生越委員からは、一次的に職場環境に対して行われ、二次的に労働者個人に対して行われるべき旨を報告書に明記すべきである。そういう意見がありました。
 尾崎委員から、職域での精神疾患に関する啓発活動についてご意見がありました。
 (2)について中村委員から、所見の有無のみが前に書いてあるけれども、後ではないかというご意見が出ています。
 生越委員からは、就業の区分及び内容の意見について、作業環境管理及び作業管理についての意見を書いたほうがいいのではないかというご意見がありました。
生越委員の、一次的に職場環境に対して、二次的に労働者に対して行われるべき事項、作業環境管理についてのところがあります。それから、尾崎委員のコメントについて、その3点は7頁のところです。
○相澤座長 生越委員の、作業環境のほうのことと、受診者についての対応ですか。
○鈴木労働衛生課長 生越委員の一次的に職場環境に対して行われ、二次的に労働者個人に対して行われるというのは、先ほど私は表現がわかりにくいと申し上げましたが、個人については個人のみに関係する労働時間等についての改善が行われることで、職場環境というのは共通するものと書き分けたつもりですが、これがわかりにくいのでこういうご意見が出たのだと思います。
 おそらく生越委員は、二次的に労働者個人というのは、何か労働者個人の生活習慣を改善することによって解決するのではないかと。それは一義的に来るのではないのだろうというふうにたぶん取られたのだと思います。事務局がご説明することと、基本的には労働者を取り巻く職場環境を改善するのは当然ですので、誤解の部分を解けば、表現ぶりの修正だけで、ご議論いただかなくてもいいのかと思っています。
○相澤座長 中村委員の、所見の有無が前後というのはどういうことでしたか。
○鈴木労働衛生課長 健康診断実施後、自覚症状に関する所見の有無が、事業者にまず伝わる。それで要面接の人には面接の機会を提供するということではなくて、中村委員は逆に面接の結果、所見の有無を事業者に伝えるという仕組みではないかというご意見なのかと思うのですが、違いますでしょうか。
○永田主任中央労働衛生専門官 面接の前後のことを、先生が我々の意図したところと違ってお読みになったのかなという気がいたしますので、先生方がこれでよろしいということであれば別にこれで構わないと思っています。
○相澤座長 面接が必要かどうかという判定で、あまり内容を出さないで有無ということがこの趣旨ですよね。それでよろしいですよね。もう1つ尾崎委員のは何でしたか。
○鈴木労働衛生課長 これに関しては、7頁の(1)の基本的な方針のオにありますが、確かに言われますと「上記の措置を講じるとともに」という、いかにも付け足しふうに書いてありますので、ここは並列的に「職域における啓発活動をさらに強化していく」というような表現になるように、この前提の文章をなくして書くほうが適切かと思いますが、いかがでしょうか。
○相澤座長 よろしいでしょうか。
○北村委員 瑣末なことで恐縮なのですが、先ほど、これは病気のチェックをするのではないということを明確に書き込んでいただきたいと申し上げました。その関連ですが、7頁の真ん中辺りの(2)のアの最後の行に「様々な症状を把握するようにする」とあります。「症状」という言葉は、どうも病気の状態という意味で、病気という意味になるようです。ここは「メンタルヘルス不調」という言葉を使っているので、「不調の把握」とか、「不調を把握する」という表現に変えていただければと思います。
○川上委員 議論の流れを理解していないせいかもしれませんが、いま北村委員が尋ねた(2)のアのところで、「頭痛や胃の調子などのほか、睡眠の状況、食欲の状況、倦怠感」といったものを含めていますが、この文章はどういう意味なのでしょうか。頭痛や胃の調子というのは身体のことで、後ろはストレスに関係するもので、両方を把握しろという意味なのでしょうか、それとも頭痛や胃の調子もストレスだと考えているのでしょうか。私は産業医としてこの報告書を読んだときによくわからない印象があります。
○鈴木労働衛生課長 これは、今回自覚症状の項目の中に、いわゆるストレスに関連する項目だけ明記するというか、確認することを明示すると、いかにも要面接になった方は、何かメンタルヘルス関連でということが明らかになります。
 そもそも、現在は全く医師の判断に委ねておりますけれども、この際1つ標準的な聴き取るべきというか、確認すべき項目については、身体疾患によるものも含め、整理して提示してはどうかと。ただ、それを法令で義務づけるのは反対だというご意見がありましたので、その手法については今後また検討したいと思います。そういう趣旨で胃の調子とか頭痛が入っているということです。これが、ストレスに関連する症状なり不調としての候補として考えられるということではありません。
○川上委員 その点は議事録で確認しておいてください。了解しました。もう1点は、ウの就業上の措置等のところで、「労働安全衛生法第66条の7の医師又は保健師による保健指導の努力義務規定をも踏まえて、保健師による保健指導を行い」と書いてあります。ここだけ読むと、必ず保健師が介在しなくてはいけないような印象になるのですが、これは「医師又は保健師による保健指導を行い」だと、その後の「医師が参考とすることに指導する」というのはうまく理解できないのですが。医師が直接指導してというのでも構わないわけですよね。もちろん保健師が保健指導をして、医師の参考とすることについて指導するでも構わない。ここは、少し文言を工夫していただければと思います。
○相澤座長 あまり限定しないほうがいいですね。9頁辺りについては、デンマークが先ほども出ましたけれども、それに名前を入れるかどうかは事務局で少しご検討いただくということでよろしいですね。
○鈴木労働衛生課長 ご議論いただく前に修正といいますか、最後の10頁のカの「健康診断の対象労働者の拡大」ということで、本日の報告書はこれまでの議論や資料を基に書いておりますが、ここはこれまでに議論が行われないまま、言い切りで「拡大が必要である」という表現にしておりますが、ここは修正させていただいて、論点としては一時出して、川上委員からも質問がありまして、これは短時間労働者の件についてということとご説明いたしましたが、その後議論されていませんので、「範囲の拡大が必要である」ではなくて、「範囲の拡大について別途検討する必要がある」とか、一旦そういうことで修正させていただいて、その上でご議論いただいて、適当であるかどうかご判断いただきたいと思います。
○石井(正)委員 9頁の真ん中の「このため」、それから第3パラグラフの「メンタルヘルスに対応できる産業医等がチームとなった組織を整備・育成」というのは地域産業保健センター等々の様々な事業としての存立をプッシュするというありがたいお話だと思います。そうであれば我々も協力するというふうに読めます。
 もう1つは、組織だけ整備すれば終わるのではなくて、あくまでこれは事業場内の産業医なり、こういう組織なり、メンタルのプロなり、様々な職種が連携する、チームをつくっていくことが大事なのだと思います。ただし、中村委員のところにある、8頁の「プロジェクトチームを結成する」と書かれると違和感があります。病状とか状態に対する対応はオンデマンドで、その都度チームはいろいろな形でできるわけです。固定のチームがそこにあってどうするか、そこに予算をいくら出すかなどという話をするべきではないです。
 「産業医等チームとなった事業場外の組織」ではなくて、「産業医と事業場外の整備・育成された組織のチーム」だとか「連携」とか、ここの文章の書き方をちょっと工夫してもらうとありがたいと思います。
○鈴木労働衛生課長 中村委員から出たプロジェクトチームについては、自覚症状の項目について、もう少し吟味する必要がありますので、それを検討する際に検討会というのか、研究会というのか、そのプロジェクトチームということです。いまのご意見で反映できるものは文章を修正します。
○川上委員 いま石井(正)委員が言われた直下のところなのですが、「さらにメンタルヘルス不調者に対して」とあり、いちばん下のほうに「産業医の職務を実施する仕組みとしていくことが必要である」とありますが、この段落は堀江委員からもご指摘がありますように、これは産業医制度の根幹にかかわることがここに書かれております。このままだと、産業医は社内にいなくて、社外の機関で提供すれば十分という話になります。この検討会ではここまで議論していないような気がいたしますので、できましたらこれをごっそり削るか、あるいは堀江委員のご意見のように、「外部機関が産業医を支援する」という形のものに変えていただくか、どちらかに選択していただきたいのです。
○相澤座長 そうですね、これはあまり議論していなかったです。
○三柴委員 堀江先生のご意見を受けた、川上先生のご意見についてです。堀江先生は「中立性」を削るべきとご指摘になられている点です。そもそも日本の産業医制度というのは、諸外国の制度も参考にしてはいるものの、あくまで事業者の履行補助者である。事業者は専門的な業務を行えないから、法的にいう手足となって業務を代わって行うという位置づけになっています。
 例えばヨーロッパの制度であれば、労働者もその選任から解任に至るまで関与する仕組みになっています。日本の場合は事業者責任の仕組みの一環として、そういう仕組みになっているので、中立性というのは抽象的な概念として、理念としては非常に基本になる考え方だと思うのです。ですから個々の場面で、どちらかに寄らなければいけないという調整が必要であるとしても、基本的な概念、理念としては中立性というのは欠かせないのだろうと思うのです。問題は、それを今回のように新たな仕組みを導入したときに、どのように実効的、具体的に担保するかということなのだと思うのです。
 この文言の走りというのは、私も意見を申し上げた部分です。産業医が、業務を遂行する職場で働くことがまずいのではなくて、産業医の独立性、中立性というのを担保するために、まさに独立性を担保するための組織が必要なのではないかということを申し上げたのです。要するに、企業組織の中へ入って、組織人として働いてしまうと、どうしても組織のほうを向いてしまう問題が起こるので、何らかの担保制度、ヨーロッパの制度に倣うならそれもよし、それが無理ならば、例えば監査法人に近いような位置づけを与えるとか、何らかの措置が必要なのではないかということがあると思います。
○川上委員 ご意見はとてもよくわかるのですが、この部分は本検討会の目的から逸脱しています。検討をするのであれば、十分慎重な検討をしていただかないと、日本産業衛生学会としてもかなりご意見を申し上げる用意もありますので、ここは削るか堀江先生のご意見にしていただきたいと思います。
○北村委員 私も川上先生と同じ意見です。ここは議論していないことですし、産業医のあり方はかなり重要な要素を含んでいますので、議論していないことをここに書かれると違和感がありますから、ここは削っていただくのがよろしいのではないかと思います。
○相澤座長 削るか、堀江先生のご意見を入れるかのどちらかということで、事務局としてはそういう対応でよろしいですか。
○鈴木労働衛生課長 はい。
○五十嵐委員 9頁の真ん中のところですが、これは「事業場外組織の育成等」ということで、先ほど石井委員がご指摘されたところのパラグラフです。産業医がいる場合はこうなのかもしれませんが、この検討会では産業医がいない企業ではどうするかということを話し合ったわけです。その場合は医師、保健師などがチームになって関わっていく。特に行政の保健所などがかかわる場合は保健師が中心になっていますので、その意味合いを是非入れていただきたいと思います。
○石井(正)委員 その件だと、検討会で十分検討されていないのではないかと思っています。
○五十嵐委員 いえ、十分検討いたしました。
○石井(正)委員 要するに、日本のこういう構造がどうなっているかというと、医療保険制度でも何でも、職域保健と地域保健の組合せがうまく噛み合ってきた。地域産業保健センターの位置づけというのは、あくまで地域保健をやっているドクターが、ある部分産業医的に協力しますよ、というボランティア的な仕事なのです。そういうことで成り立っているのです。
 保健所に保健師がいるだろうと。それは地域保健の担い手なのです。地域保健の担い手のリソースまですべて使いましょう、という考え方そのものは賛成なのですが、保健所の保健師だけをうまく活用しましょうという文言になれば、それは話は小さくなります。地域保健の担い手も、産業保健のほうをサポートするというので、いままでなんとか成り立っているわけです。それを一部分だけ強調することは逆になると思います。だから、これは別途そういうものをどうやっていくのかという考え方というのが、この中で文章に組み込むかどうかではなくて、また十分検討しながらやるべきことだと思います。
○五十嵐委員 そうしますと、ここの「産業医等」の「等」のところに何が示されますか。ここの真ん中の「メンタルヘルスに対応できる産業医等」の「等」には何が入りますか。ここに保健師が入っているということになりますか。
○石井(正)委員 臨床心理士も入ります。
○五十嵐委員 これは、明記されることになりますか。
○鈴木労働衛生課長 「等」で全部括るのではなくてということであれば、それはできると思います。
○五十嵐委員 これは石井(正)委員がいらっしゃらないときでしたけれども、散々私がモデルを示したりして、保健師の活用ということはお話させていただきましたので、外出しに「産業医・保健師」なりを出していただきたいと。ここでは議論が埋もれてしまっているように思います。
○石井(正)委員 このパラグラフは「産業医等」の次の「医師の意見に基づき」という文章ですから。
○五十嵐委員 「メンタルヘルスに対応できる産業医等がチームになった」という。
○石井(正)委員 それは、どこですか。
○五十嵐委員 真ん中です。
○石井(正)委員 1つ上の行で言っているのですね。
○五十嵐委員 はい。外部機関のことを言っているわけです。要するに、産業医がいない企業もあるわけです。それは地産保がかかわりますけれども、そこには保健師を明確に位置づけるという議論もしてきました。それだったら「産業医・保健師等」というふうに書いていただきたいと思います。
○北村委員 それをおっしゃるのだったら、私は臨床心理士なのだけれども、臨床心理士の役割などは、この検討会の中では言っていないから入れない、保健師については言ったから入れるというのだとちょっとおかしな話になるのです。
○五十嵐委員 言ったからではなくて、ここで、地産保においても保健師の活用を強化していこうということでしたので、例えば「産業医・保健師等」というふうに。
○北村委員 なんで保健師だけが入ってしまうのかなということなのです。
○五十嵐委員 モデルとして、そういう職種を活用するということは議論してきましたよね。
○北村委員 言ったら入るというのだとおかしいのではないですか。
○五十嵐委員 でも、これはこの検討会の報告書でしょう。私は、地域産業保健センターなど、事業場以外の機関に保健師を位置付け、産業医の選任義務のない中小零細企業へのケアは保健師が医師と協働しながらおこなうというコンセンサスが取れたと、以前の会議では思っていましたので。
○石井(正)委員 私はあまり賛成できません。それは、そうあるべきだと。そういうものを活用するべきだというのは全く賛成です。ただ、いま地域の保健師がどういう状況にあるかというのもある程度知っていますので、そういうことをプッシュするのであれば、別途全体の枠組みの議論をしなければいけないと思います。
○五十嵐委員 それは、もちろんそうだと思います。実際に中小・零細の企業で、産業医も手が届かない所があると。日本医師会の今村理事は、医師会の立場としてもそこのところをもっとプッシュすべきだとおっしゃっていました。
○石井(正)委員 押し問答だと思うのですけれども、私の意見はもう言いました。あまり繰り返してもあれですから、あとは皆さんで。
○相澤座長 最終的には、事務局の最終案が出た段階で。十分ご意見はいただいたということに、要望をいただいたということですが、ほかにいかがでしょうか。
○石井(妙)委員 生越委員からの修正意見で、労働基準法第19条を明記すべきだという意見をいただいています。第19条は労災休業中の解雇禁止で、理由もそれを理由としてではなくて、理由の如何を問わずですので、ちょっと違う話だと思っています。今回は、健康診断でストレスへの気づきだということですので、休業中の場合の話をここに持ち込んでくるのは違和感があります。修正意見についての意見ということになりますが、明記するのはかえって混乱するのではないでしょうか。
 先ほどの話の繰り返しになりますけれども、ストレスへの気づきだと確定したのが前回の検討会ぐらいだったと思うのです。その後、不利益取扱いの点についての議論は特になされていないままですので、どうも病気の発見だという話をしていたときの議論と、ここも混ざっています。その結果の修正意見であると思うのですけれども、その辺もちょっと整理していただけたらと思います。
○鈴木労働衛生課長 この辺りは、前回の議論もかなり難しい部分を含んでいました。そもそも労働安全衛生法の健康診断の対象、目的とする疾病等についても生越委員からご質問がありました。その辺に事務局の意図と、生越委員の理解に混乱というか齟齬があると思います。この流れをもう一回明確にした上で、修正意見をいま石井(妙)委員が言われたようなことで解決できるのではないかと思っています。
○川上委員 これから申し上げるのは意見だけなので、サポートがなければ取り下げてもいいと思います。10頁の地域保健との連携です。この検討会では地域のうつ、自殺対策等の連携についても触れられたような印象を持っておりますが、それが抜けています。例えば「地域と職域の連携によって活用すること」、それから「地域のうつ・自殺対策と連携することなどにより、地域と職域の連携の強化を図っていく」というふうに入れたらどうかと思います。
 もう1つは言わずもがなかもしれませんが、現在ここで検討している案は、暫定的なもののような印象があります。「一定期間を目処に有効性を評価して、より効果的なものに見直す」というものを、いちばん最後の「ケ」に入れてはどうかと思います。これは、サポートがなければ引っ込めます。
○相澤座長 「ケ」を入れるということですが、これはどうでしょうか。
○鈴木労働衛生課長 いま、いろいろな場面で事業評価を受けますので、当然そういうことを要素として書くことは問題ないと思います。
○相澤座長 それでは、入れるということで。大変多岐にわたってご議論いただきましてありがとうございました。本日は、報告書案全体をご議論いただきまして、基本的にはご了解いただいたものと思います。本日の議論を踏まえ、事務局には報告書案について必要な修正をお願いします。それについて、事務局から何かありますか。
○永田主任中央労働衛生専門官 ただいまのご意見を踏まえ、必要な修正をさせていただきます。
○相澤座長 結果については、事務局と調整をいたしますけれども、座長である私にご一任いただくということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○相澤座長 ありがとうございます。議題2「その他」について事務局からお願いいたします。
○平野安全衛生部長 事務局を代表してご挨拶をさせていただきます。委員の皆様におかれましては、5月31日の第1回検討会から、非常に集中的に短期間で、6回にわたり精力的にご議論いただきまして本当にありがとうございました。また、関係者からヒアリングなども実施していただくなど、大変熱心にご検討いただきました。本日、報告書案を概ね取りまとめていただいたと考えております。本当にどうもありがとうございました。
 職場におけるメンタルヘルス対策については、国民の関心も非常に高く、マスコミなどでも頻繁に取り上げられています。また、こういう対策の進展に対する期待も含め、私ども行政に対しても様々な反響があります。それだけに、私どもに課せられた責任は非常に大きいと考えております。この検討会でいただきました、個人情報の取扱いの配慮などの課題についても、きちんと配慮していく必要があると考えております。
 今回、概ね取りまとめていただいた報告書案を踏まえ、今後最終的な報告書の取りまとめ、また専門家による専門的事項の検討、その後は労働政策審議会に検討の場を移し、職場におけるメンタルヘルス対策に必要な施策について議論していただくことになろうかと考えております。その際、いずれにしても厚生労働省といたしましては、この検討会で検討していただいた内容を、今後の職場におけるメンタルヘルス対策の推進に着実につなげていきたいと考えておりますので、引き続きまして委員の皆様方にはご協力をお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。本当にどうもありがとうございました。
○相澤座長 どうもありがとうございました。本検討委員会はこれで終了いたします。大変熱心なご議論をどうもありがとうございました。


(了)

(担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部

労働衛生課 古田、永田

〒100-8916                           

東京都千代田区霞が関1-2-2   

TEL 03-5253-1111(内線5181,5505) 

FAX 03-3502-1598                      

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