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2010年7月8日 第5回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成22年7月8日(木)


○場所

中央合同庁舎4号館108号会議室


○議事

○永田主任中央労働衛生専門官 本日は大変お忙しい中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより第5回「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」を開催いたします。今回から新たに委員として、尾崎紀夫委員、中村純委員にご出席をいただいております。また、ヒアリングでご意見をいただく方として日本精神神経科診療所協会の三野進会長、日本精神科病院協会の南良武常務理事にお越しいただいております。なお、本日は川上憲人委員、三柴丈典委員がご欠席です。
 今後の議事進行については、相澤先生にお願いいたします。
○相澤座長 皆さん、こんにちは。よろしくお願いします。本日の議事に入らせていただきます。本日は、最初にお二人の方からヒアリングをいただきまして、その後、資料に基づいて議論を予定しております。なお、本日の配付資料については、後ほどの議論の際に説明させていただきます。
 まず、ヒアリングを始めさせていただきます。最初に、日本精神神経科診療所協会の三野会長からご意見をいただきます。約10分程度でお願いします。
○三野会長(日本精神神経科診療所協会) 精神神経科診療所協会の三野と申します。私もいくつか検討会に参加させていただいたことがありますので、見知った方々もお出でになると思います。本日は、お呼びいただきまして、ありがとうございます。本日、私に与えられた課題は、最近の受診者のうち労働者にどういう傾向があるか。そして、診療側から見て、企業内の活動に望むもの、それから今回の検討会における論点に関する意見ということです。約10分ということで、あまり時間がないので、少し延長するかもわかりません。
 まず、私の立場といいますか、日本精神神経科診療所協会の会長という立場もあるのですが、実際には産業精神保健活動をメインというわけではないのですが、昔からいろいろと関わっておりまして、その立場を最初に少し説明申し上げたいと思います。私は香川県高松市の精神科の開業医です。高松という所は人口が約40万人、県だけでも全国一狭いといいますか、100万人しかおりません。第三次産業が主体で、おそらく労働基準局が1つのモデルとしているような大規模工場というのはほとんどなくて、選任の産業医が選出されている事業場は非常に数が少ない所です。そういう所で診療活動をしておりますが、標準的な精神科診療所よりちょっと規模が大きいかもわかりませんが、規模としては小さな診療所です。それでも、患者さんが月に大体600~700人来ます。町中にあるということで、ほぼ6割ぐらいが健保本人、勤労者ということになろうかと思います。もちろん統合失調症の方もいますが、多くは気分障害、うつ病圏の患者さん、アルコール依存・薬物依存の患者さんもおりますが、大体この検討会で検討するような患者さんが対象となることになると思います。
 開業医の活動と同時に、これもいくらか議論になったかもわかりませんが、最近非常にいろいろな要請がありまして、基本的にはお受けするようにしているのです。嘱託の精神科医ということで、産業医がお出でになるのですが、精神科医としても意見を聞いてほしいということで、月に1度、ちょうど木曜日を休みにしており、何か公的活動がない限りは基本的にそういう活動をしようということで、いま5社ほどやっております。1,2時間程度、健康管理室などに行ってお話を伺ったり、いちばん大きいのは復職の判定といいますか、長期に休業された方の判定をどうするか、面接をどうするかということで、活動をしております。
 会社の名前を挙げたほうがわかりやすいと思いますので申し上げますが、最近いろいろ構造的な改革があった準公的な企業、日本たばこであるとか、住宅支援機構であるとか、あるいは国土交通省の四国地方整備局。それから、非常に金融機関の支店が多いものですから、損保関係の会社、銀行などを主体にやっております。医師会の活動として、地域産業保健センター(地産保)の過重労働面接やメンタルヘルスの相談、産業医会の精神科関連の責任者もしております。随時、地域の会社の人事や厚生部門から、復職に関して、むしろ会社の側で、どのような形でメンタルヘルスの対策をしたらいいかという相談を受けることがよくあります。
 そういった中で、1つは地方という中での地域の産業保健、あるいはメンタルヘルス対策をお考えいただきたいということで申し上げたいところもありますし、精神科の産業保健嘱託医という立場からも、少し意見を申し上げたいと思っております。最近の職場からの受診の動向ですが、これは中村委員や尾崎委員がお出でになりますので、あまり私から申し上げることもないかもわかりませんが、私が開業して15年になりますが、診療所においても15年前と明らかに患者さんの病態といいますか、特にうつ病圏に関しては違ってきたというのが印象としてあります。私が大学病院に勤めていてもそうだったのですが、かつてはうつ病圏といいますと、中高年や管理職層のメランコリー、親和性の方が圧倒的に多い。最初、治療に抵抗性がありますが、薬物療法をして休養して、会社の秩序に非常に几帳面で自己犠牲的な、自罰的な、こういった典型的なメランコリー、親和性の方が多かったのですが、これが目に見えて減少しております。こういう方が患者さんとして減ったかどうかは私どもにわかりませんが、おそらく年齢的に見ますと、こういう方は退行期、退職をされて、老年性のうつ病などに少し移行しているのかなという気がします。老年性、退行期のうつ病は妄想を伴うような非常に難治の方が多いのも、よくよく人格傾向を見ると、かつてのメランコリー、親和性のうつ病に近い方が非常に多いだろうと思います。
 増加したのは、就職後2、3年経った、あるいは30年代の働き盛りの若い方、これはちょっと専門的なお話になるとなかなか難しいのですが、いわゆるディスティミア、親和性うつ病と呼んでおります。新型うつ病と言うとちょっと語弊があるかもわかりませんが、会社の仕事はとにかくできない。選択的な精神運動抑制があって、もう一方で自分の持っている秩序などに関してそれが崩されると、非常に抑うつ的になるのだけれども、余暇とか、自分が楽しんでいることに関してはあまり精神運動抑制を感じない。本当にこれがうつ病なのかと思うところもありますが、やはり長い経過で見ているとうつ病の可能性がありますし、自殺企図の可能性もあるという、我々の昔の精神科医の概念からいうと少し外れるような方。しかし、これは大事な患者さんとして、こういう方が非常に多くなっています。こういう方に関して言えば、薬物もあまり奏効しない。しかし、経過は長くて、先日もご審議をいただいて、通達であった長期に休業された復職者に関する手引と、ああいう手順になかなか乗らないのです。非常に難しい患者さん、これは会社側にとっても難しいですし、私ども治療者にとっても難しい方がたくさん増えてきたというところがあります。
 もう1つ、これは言うまでもなく、数年前まで特に香川県では非常に多かったのですが、勤務先での企業の病態変化とかリストラなど、大きな環境の変化によって希死念慮を伴うような、定年間際の管理職の方の患者さんが一時、非常に増えたことがあります。ただ、これは大体そういった会社、先ほど申し上げた例えば日本たばこという会社の大きな高松の工場が閉鎖になる。そして、支社の規模もほぼ3分の1に縮小する。こういう状態の中で非常に危機的な状況があったわけですが、そういうことに関しては会社の側もメンタルヘルス不全に関してかなり慎重な配慮をして、何とか乗り切ったということがありますが、今でもポツポツとそういう方がお出でになります。こういう方に関しては、休職・休業した後に、どういった配慮をするか。大体定式的なものはありますが、問題はちょうど退職に当たる、あるいは早期勧奨の退職などといったことが絡んできますので、そういう意味では非常に難しいことがあるかと思います。
 もう一方で、労働衛生政策の中で非常に肝要である過重労働です。残業時間が100時間を超えるような、かなりハードな職域の労働者の動向はどうかというと、意外と私どもの診療所にはお出でにならない。私がよく接するのは、地域産業保健センターでの100時間超えの過重労働の面接、これはある程度法的に決まっていますので、香川県においてはサービス業が多いのです。例えば大手家電の修理部門とか、納入部門とか、こういう方は真夏のクーラーの導入のときには、8月などは残業時間が150時間とか200時間が常態化しているような、とんでもない状況です。こういう方々にお会いすると、これは別に患者というわけではないのですが、明らかにメタボリックシンドロームであるとか、毎日睡眠時間が4時間、5時間という状態の中で、相当に頑張っている。ご本人はあまりそういうメンタルヘルス不全に気が付かない。しかし、我々医師から見ますと、どう考えてもこれは脳・心疾患の増加につながる、あるいは一歩間違えれば、へたをすればここからうつ病圏につながるような状態もあり得るのかという、そういった方々が予備群としておりますが、これはあまり受診につながらないというところがあります。この辺がいまご議論いただいているストレスチェックというところの1つの対象になるのかなと思っています。
 もう1つは女性労働者に関してです。これはお年をとった方は別にしまして、若い方の場合は圧倒的に不安障害の患者さんが多い。パニック障害の方もお出でになりますが、全般性不安障害。多くは仕事の内容や上司との接触や対人関係、あるいはお客との接触において、特に第三次産業においてはいろいろな決まりごとがあって、それに適用できない、対処できないような不安障害の患者さんが急増しているのが現状で、これは最近の風潮ですが、このことに関して言えば、企業は仕事に行けなくなったときに、すぐに精神科診療所に診断書を取りに行ってこいといった指導をされます。退職を申し出ても、診断書が要るという形になって、この診断書の扱いをめぐってどうなのかと。休業できるのかどうなのかという問題よりも、我々の治療以前に先に診断書が出てきて、その以降、治療は継続しないような方が非常に多いということが現状としてあって、少し困っているところがあります。それは私どもだけの現象ではなくて、どうもいろいろな各地方の方々に聞いても、大体共通した悩みということにもなろうかと思います。こういった患者さんの動向があります。
 もう1つ、我々診療側から見て、企業内の活動に望むものということです。そういう意味では、最近いろいろな通達が功を奏したということもあります。特に長期に休業された復職者に関しては、先日のマニュアルが出たということもあって、次第に単に医師の診断書だけですべて復職の過程が決まってしまうというところは、非常に困ったところがあったのです。あとで少し意見を申し述べたいと思いますが、やはり精神科医療というのは中立性を保つのは非常に難しくて、うつ病の患者さんにせよ、適応障害の患者さんにせよ、ある程度患者さんのサイドに立たなければ診療ができないということがあります。診断書や復職の過程についても、疾病がどうなっているかということだけで、職場への適応ということに関してはなかなか配慮しにくいというところがあります。そういう意味では、従来の復職の判定のように、診断書だけですべてが決するということは非常に難しいので、会社の側にもきちんとした復職判定のルールと過程を設けていただくことが次第に浸透しておりますので、我々にとっては非常に良い傾向かなと思っています。
 その反面、診断書の取扱い、あるいはうつ病の概念、これは我々治療者側にもいろいろ責任がありますが、あまりにも広い範囲をうつ病と定義をされてしまって、適応障害の方もいれば、広い範囲のうつ病圏の方もお出でになるし、診断としてはそうかもわかりませんが、すべてが先ほど申し上げたメランコリーや親和性のうつ病ではないので、そういうところでの病気に対する認識の混乱といいますか、これは企業側にすべて求めてもいけないのですが、その辺の整理が必要なのではないかというのが診療側としてはあります。ただ、これは法的な整備というよりは、我々の側からの啓蒙といいますか、病気に対する理解の浸透度というのも、ある程度問題になってこようかと思います。
 頂戴いたしました今回の検討会の論点について、2点だけお願いといいますか、私の意見を申し述べさせていただきます。課題1の「労働者のメンタルヘルス不調の把握方法について」ということで、これは議論の経過をすべて追っているわけではないのですが、この検討会では一般健診においてストレスチェック票などを用いて、何らかのストレス過重を担った方の状態をスクリーニングしようといった意図といいますか、試みがあろうかと思います。
 最初、新聞報道などで伺ったので、これは実際どうかわかりませんが、うつ病などをスクリーニングするというようなお話が出ていたので、これはいかがなものか、どうなのかと私は思っていました。今回の検討を見ていますと、ストレス簡易調査票に関して、どのように扱うかという議論になっているところは、誠に正当な議論だろうと思います。ひとつ私ども診療の現場での扱いで、意見を上申させていただきたいと思います。
 いま現状では、私ども診療現場でも、あるいは精神保健、労働保険の現場でも、簡易なストレスチェック、あるいはうつ病チェックが用いられている。医学的に言えば、ある程度妥当性が証明されているのはベックのスケール(Beck Depression Inventory, BDI)、あるいはZungの開発したSDS(Self-Assessment Depression Scale)、これは1枚1枚著作権がありますので、ある程度お金のかかる方法ですが、こういった調査票があります。これがインターネット等では、うつ病か、うつ病でないかのチェックリストだという形で、結構無視して、いろいろなところに出ています。これを少し修正しています。
 これをもって、患者さんが「私はうつ病に違いない」と言って、お出でになる方が、先ほど言った新型うつ病の方で結構多いと憂慮すべき状態があります。私どもから見ますと、こういった質問票はあくまで、本来はうつ病の重症度の評価、あるいは臨床経過をずっと見るために、少なくとも治療現場において、あるいは治療現場でなくてもいいのですが、治療者がいる、あるいは医療関係者がいる、医師がいるという中で、うつ病という診断がある程度成立した中で、どこまで患者さんの病態に対する評価、自己評価がどう経過側として起こるかと、こういったものの1つの診察の補助手段として用いるものだろうと思っています。そういった前提があって使えば、非常に有効で妥当性のあるものだと思います。
 つまり、私ども治療者が見て、こういったうつ病の病態でないかと思っているのに、例えばSDSを見ると、少しスケールは違う。違うところに入れている場合、その違いはどこにあるのかというように、治療者は考える。こういった形で、治療者が考えて、本人に結果をフィードバックするというもので開発されたと思っております。ですから、もしうつ病のスクリーニングなるものがあるとすれば、それは医師、精神科医が関与して、治療的関与の下でやるものだと思っていますし、もし健診項目でおやりになるとすれば、もう少し広い範囲でのストレス疲労度を把握するような調査票でなければ、なかなか難しいところがあります。仮にそういった非常に妥当性のあるものを採用されたとしても、現状ではそれがうつ病のチェックになるという誤解もありますので、私はその辺の啓蒙活動と厳重な範囲の限定といいますか、適用の限定が必要だろうと思います。
 最近は、自殺対策ということで、うつ病に関する精神科診療も含めて、医療というものが注目されて、いろいろな批判もあろうかと思います。私ども医師は、やはりうつ病というのは、うつ病を見つけるということも含めて、あるいは患者さんが非常にうつ状態、抑うつ状態になったのを、これがうつ病であるか、うつ病でないか、そういったことを診断すること自体、あるいはうつ病でないと除外することも含めて、これは重要な医療行為、医行為だと思っています。ですから、ここのところは一歩間違えると、例えばスクリーニングであまりうつ病的な状況にないからといって、うつ病でないと除外してしまえば、これは安全配慮義務の問題から言っても非常に難しい問題が出ますし、あるいはうつ病でない、こういったスクリーニングやこういった調査票は経時的に時間を追っていますので、そのときはそういう抑うつ的な傾向が出ても、翌日には違うということは当然あり得るわけですから、そういったものが勝手に独り歩きすることによって、現実に医療行為として患者さんに侵襲を与えることもありますので、この辺については、特にうつ病のスクリーニングという場合には慎重に扱われるべきではないかと思っています。
 もう一度申し上げますが、診療現場で非常に困っているのは、自らうつ病というように、これが悪いというわけではないのですが、調査票などをチェックされて持ってこられる方が非常に多い。そのことはうつ病の啓蒙、よく知っていただくという意味では良いことだろうと思いますが、扱いについては特に職場においては慎重であるべきというように思います。あと、法律的な問題や産業保健上の問題については、専門の先生がお出でになられますので、お任せしたいと思っています。これが1つ、私の意見です。
 もう1つの論点で、産業医等の中立性、メンタルヘルス不調に対してどう担保すべきかというお話が少し出ていましたので、これについて意見といいますか、現状の中で申し上げたいと思います。これは先ほども申し上げましたが、精神科医療の特性から言いますと、精神科医療は例えば結核であるとか、感染症であるとか、あるいは労働災害などで整形外科的な治療疾患を要した場合には、これは疾病性に対して産業医が中立で、会社に対しても患者さんに対しても、ある程度業務をできるようになるためには、こういう線があるよということは、きちんと査定できるだろうと思います。ただ、精神疾患に関して言えば、疾病として良くなっている。うつ病として良くなっていても、それが職業適用として、職場に復職したときどれだけの能力を発揮できるかということを、精神科医がすべて担保するわけにはいかないということがあります。これはやはり会社側の中で、もちろん産業医の先生にご判断していただくこと。会社のラインの方がどこまでいけるかということを判断していっていただくという、いわば事例性といいますか、その患者さんの適応能力をどう判断するかという事例性の問題がありますので、中立性の担保ではなくて、疾病性と事例性ということで少し区別して考えられるべきだと思います。
 ただ、会社として、例えば統合失調症、うつ病、その他のそううつ病、精神障害に関してすべて専門性を要求する。これは非常に難しい問題がありますので、そういう意味から言えば、会社の側にも産業医に加えて、精神科医療の知識を持った医療従事者が関与することが、私は望ましいのではないかと思っています。いろいろな形で外部医療機関を使うという試みもされていますが、外部医療機関がある程度成長するためには時間がかかりますし、全国規模でやるとなると、例えば私どもの香川県高松で言いますと、出先機関で病に倒れた方がいる。それを判定したり、援助を与えるのも、東京に本社がある外部の例えばEAPがやるとなったら、すべてが東京で決せられることになれば、患者さんのためにどういった復職があるかなどというのは、なかなか難しいです。そういう意味から言えば、企業の側に精神科の嘱託医がいる。それはそれほどヘビーなものでなくても、何かあれば相談をするということでも構わないと思いますが、ある程度相談ができるような契約をすることによって、復職過程において、主治医としての精神科医がつくと。それとは別に、会社の側で嘱託医という形で、産業医に準ずるような精神科医がいるということが、ひとつ大きな役割を果たすのではないかと思っています。私ども協会もいろいろな研修を通じて、そのような役割を果たしていきたいと思っています。
 最後に、地域産業保健センター事業についてです。これは私が高松の医師会で担当していますが、ここは人的な資源、経費的な問題もあり、だんだん事業が縮小しており、難しいところがあります。お金の問題もありますが、少し事業の形をこの場でも考えていただいて、どのような形で有効に利用したらいいか、コーディネーターの方はすごく頑張っていただいているのですが、地方においてはそこを掘り出していくといいますか、来ていただくのはなかなか。100時間超えの残業に関しては、きちんとできます。啓蒙活動もできるのですが、そこからあとのことに関しては、やはり復職の判定とか、そういうところで利用するということでなければ、なかなか利用ができないということを申し上げたいと思います。予定を大幅に超過して申し訳ございません。以上です。
○相澤座長 ありがとうございました。いま三野会長からいただきましたが、委員の方から何かご意見はありませんでしょうか。後ほどまた議論に参加していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。次に、日本精神科病院協会の南常務理事からご意見をいただきたいと思います。10分ぐらいで、よろしくお願いします。
○南常務理事(日本精神科病院協会) 日本精神科病院協会からは、この会議は初めての発言だと思います。私は主に協会の立場ということで、どのように協力ができるのかということを中心に話していきたいと思います。お話の前に、私も大阪で精神科病院を経営しています。院長としては20年以上の経験があります。それと最近では地元、貝塚市なのですが、精神科の敷居は低くなったとはいえ、病院に受診する人が非常に少ないということで、貝塚市内の市役所の前に、心療内科、クリニックを開業しました。私も月に3、4回、診療を行っています。そこでは、関西地区では非常に少ないと言われました復職支援のリワークプログラムをもって、精神科病院のほうで経験を積んだ臨床心理士と協力して、現在リワークプログラムを2年間行いました。30人規模ですが、大体1日20人ぐらい、デイケア、リワークプログラムに通われています。非常に増えてきています。需要が非常にあるなということで、その診療所は1日50人ぐらいの受診者がいます。
 それと先ほど三野先生からもお話がありましたように、主治医としての精神科医、医師ということではなく、企業に産業医とは別に精神科医の専門の嘱託、精神科産業医のような形で、私自身が一部上場している企業の2カ所にそのような形で、5年ぐらいアドバイザーというのですか、産業医がそこにきちんとお勤めになっているわけですが、精神科にとってはもうお手上げだというような状況です。私が月に1回ずつそこに行って、実践しています。また、そんなことをしておりますと、地元市役所のほうから、管理職のメンタルヘルス教育に来てほしいとか、教育委員会の嘱託になってほしいとか言って、産業保健、メンタルヘルスに関わるようになりました。そんなことで、日本精神科病院協会からも、常務理事の中でも私に本日の席に行って話してくるようにということになったと思います。
 私の資料を見てください。資料3-1です。1頁ですが、日本精神科病院協会からは3つの立場からお話をしたいと思います。まず、医療を提供する立場からはどうか。2番目に、我々の協会に既に教育研修体制、全国的な規模で長年の実績があることをご理解いただき、このように何かにお役に立てることができるのではないかと。3つ目は、産業精神保健に関わる立場からということで、お話をしたいと思います。
 まず、資料3-1の2頁ですが、医療を提供する立場からということです。我々は日精協と略称しますが、日本精神科病院協会では、既に常勤の医師、精神科専門医が4,300人、全国で勤務しているという事実があります。日々この精神科の医師が臨床活動をしている中で、職場のメンタルヘルスに関する場としては現在は入院治療ということになりましたら、急性期治療病棟、あるいは最近ストレスケア病棟というのが増えていますが、このような場所で入院治療を行っている。あるいは、決まった担当で週に1回とか2回とか、その病院に勤務する精神科医は外来診療を行っています。精神科病院でも非常に多いところでしたら、1日200人、300人という病院もありますし、少なくとも10人、20人は来ると思います。現在私が勤めております木島病院では、外来は1日60人から70人ぐらいです。そのような中に、働きながらうつ、あるいはうつ状態になった方が一部、受診に来ます。あとで調査の数字を言います。
 とりわけ入院治療については、地域の精神科病院は地域のメンタルクリニックをはじめとする医療機関、またそれ以外にも障害者職業センターなどの職業リハビリ施設との連携もあり、職域とも連携して有機的なネットワークづくりを構築していくことで、より早期に安全な治療に結び付けることが可能ではないでしょうか。
 3頁です。私ども日本精神科病院協会では、長年にわたり、1年ごとの総合調査を行っております。多角的に行っておりますが、10万人以上の精神科医療に関わる人間がこの中で働いているという事実があります。紹介しますと、病院の数は全国で1,211あります。精神科の医師は、ここに常勤で4,320名、勤務しております。非常勤では3,739名。もちろん大学から週1回、2回という先生方も混ざっております。他科の医師というのは、内科や外科の医師など、内科の先生を中心にその一部が働いています。看護職員というものは、8万3,218人が常勤で、非常勤を常勤換算したら7,369人、約9万人近いような看護職員です。過去には精神科は非常に大きな偏見がありまして、看護でもいろいろな意味で、年齢的にも違うとか、現場の第一線は内科や外科だと言われましたが、最近では大学を卒業した看護師などが精神科を自ら希望してくると。実際、私の病院の看護の職員の平均年齢は36歳ぐらいです。それに薬剤師も2,580名、管理栄養士も8,075人、検査職員は1,128人、コ・メディカルは8,680人、勤務しています。
 これで皆さんに大変ご迷惑をおかけしましたが、記入を入れていただきたいのです。このようなメンタルヘルスについての臨床心理士の関わりということで、コ・メディカル8,680名のうち、実態調査で1,367名の常勤の臨床心理士が精神科医療に関わっていると。臨床心理士の学会は、40学会ぐらいあります。諸派40連合ぐらいがありまして、大変いろいろな分野で活躍していますが、そういう実際の現場で精神医療と関わっているのは1,367名プラス精神科、診療指導科の中にもあると思います。心理士は、常勤1,367名と非常勤の常勤換算157名を合わせて1,525人が、我々民間病院を中心に日々日本の精神科医療の現場で働いているということです。
 ちなみに、日本の精神科医療の中でも、入院医療については歴史的な経過もありまして、大体入院医療の85%は民間精神科病院で治療がなされているという事実もあります。このように非常にたくさんのマンパワーを有しておりますので、あとでこの4,320人のうち、何パーセントぐらいがメンタルヘルスに関わっているかということも数字で出てきています。
 大きな課題の2番目、教育研修体制の実績からということです。我々の協会は、既に大きな全国的な規模の研修を重ねています。厚生労働省のほうからも委託を受けて、20年以上にわたって研修を重ねています。4頁の下の表ですが、精神保健指定医研修会を全国規模で行っています。また、医療安全管理者養成研修会、その他諸々の厚生労働省が特段急を要するような要請、ある時期にマンパワーを要請しないといけない精神医療に関わるようなものは、日本精神科病院協会を通じて研修活動をすれば、一気に職員が学ぶことができると。
 この点が1つ、実績と公益事業というのですか。いま公益法人改革の中でも、我々の協会はこの辺りを中心に非常に力を入れていますが、こういうことで産業医や産業保健師などの産業保健スタッフの研修を中央だけで行うのではなくて、あるいは日精神さんもだと思いますが、日本精神科病院協会などの組織を通じて行えば、そういうスタッフが身近にいるし実績もあって、都道府県単位、あるいは近畿ブロックとか関東ブロック単位でも、人の要請はできるのではないか。そういうことをするのは吝かではないと。今月の常務理事会でも、ここに出席するに当たりそういう意見が出ています。むしろ我々がこの検討会にもっと協力していかないといけないのではないかということも、現場のほうから上がってきています。
 3番ですが、産業保健に関わる立場から言いますと、4,300人を超える常勤精神科医師が、それぞれの地域で産業医として活動しているのは、12%といいますと500人ぐらいですか、その程度に留まっていると。この人たちはもっと、先ほど三野先生がおっしゃいましたように、企業に精神科医のエキスパートとして、企業の産業医とのコラボというのですか、精神科部門のエキスパートとして入っていける部分は、診療所協会さんもそうですが、これだけの人たちが日本精神科病院協会の中にいると。その人たちをいろいろ教育すれば、もっとこの勉強会に近いようなことができるのではないかと。それと地元医師会に設置されています地域産業保健センターとの協力の下ということで、先ほどもお話がありましたが、各地の事業所におけるメンタルヘルス活動に参画できる可能性。この辺りの日本精神科病院協会の医師と地元の地産センターというのですか、こういうものをもっと密にできるはずだと思います。
 これについて、今日は参考資料を添えてきています。少し話が続くかもわかりませんが、時間をお許しください。この日本精神科診療所協会と日本精神科病院協会の精神科医を中心とした産業メンタルヘルスに、現場の精神科の医師はどのような意識を持っているかという調査を、平成20年度と平成21年度に行っています。資料は3-2、これを行ったのは平成21年度、田中健記念研究助成事業研究会という中で、精神科医療機関における病院や診療所で、うつ病・不安障害で休職する患者の実態。精神科医療機関から見た休職者が、いったいどのぐらいいるかと。その人たちがうつ病や不安障害でどうやってくるのか。リハビリテーションニーズに関する調査研究を、皆さんご承知だと思いますが、メディカルケア虎ノ門、五十嵐良雄先生のほうでこの結果を合体させて取りまとめて発表したということで、五十嵐先生のお許しの下に資料をいただいてきました。少し発表します。
 調査の目的は、うつ病やうつ状態で休職する社員が増加していますが、全国に存在する精神科、診療所や病院は、治療の最前線にありますので、この現場で働く精神科医師の産業メンタルヘルスについての意識調査を行い、今後の復職支援をどのように取り組んでいけばいいのかということを推察していきたいという調査です。
 次の頁です。これは上のほうは平成20年度には三野会長の日精神の358件の病院調査、診療所調査と、平成21年度には日本精神科病院の1,211病院のうちの588病院の調査を、ほとんど調査票が同じでしたから、合体させて分析し直したということです。3頁の下に外来患者調査があります。診療の1週間、月曜日から日曜日まで1施設平均どのぐらい患者が来ているかということで、診療所では延べ244名、病院の外来では326名。ここは非常に大事なところなのですが、診療所では56.1%はうつ病や不安障害の受診者であった。精神科病院の外来においても、28.2%はうつ病、あるいは不安障害だと。その右は、そのうち休職中の外来患者数はどのぐらいいましたかということです。診療所では、総受診者の5.6%が休職をしながら受診したと。精神科病院の外来では1.5%。気分障害と不安障害に限っては、診療所では9.9%、10人に1人は休職しながら診療所に通っているのだという数値で、病院でもその半数だということです。
 次の頁ですが、これは直接、実際に診療しているドクターが記載することを条件にしていますので、うつ病が年々増加していることは実感していますかということで、診療所では72%、精神科病院では65%が増えているだろうと実感している。その下ですが、うつ病休職者の復職時や復職後にお困りのこと。精神科医師が困っていることをすべて選んでくださいということですが、ここでは実際に休職者を見ていて、復職しても短期間で再休職することが多い。これは約半数以上の人が答えています。また、これは本当に難しいと思います。復職可能かどうかの判断を精神科医も迷っていると。このようなことが半数以上。あるいは、不十分な回復だと医師は思っているけれども、家族や本人が強い。復職しないと、もう私は勤められませんということで、非常に焦って復職していく人がいて困るということを、診療所の先生の半数が答えています。また細かいのは見てのとおりです。
 次の頁、クエスチョン4、通院のうつ病患者に、復職前にどのような治療や支援を行っているか。これは通常、過去の古典的な薬物療法とカウンセリングがほとんどの病院、診療所で行われている。真ん中にありますが、認知療法や行動療法は、個人あるいは集団で行っているかということについては、診療所では21.7%、病院では17.0%。認知療法や行動療法は非常に難しいのですが、実践的に取り組んでいる所が実際そんなに多くはないように思います。具体的には、関西地区に限っては、復職支援でインターネットなどで専門のクリニックを探そうとすれば、専門的にやっている所が1カ所か2カ所しかない。最近で5カ所以内ぐらい。認知・行動療法は非常に難しいですが、私は五十嵐先生といろいろ話をして、クリニックを開いてしたので、これほど復職支援を希望して、リワークを希望してデイケアに来る人が多いのかなと実感しております。ただし、プログラム等は非常に難しいです。そこにも、プログラムの参加とか、このようなことが数字で出ていますが、復職支援、リワークは非常に認知されつつありますが、実践的にはまだまだだと。これを是非ともこの検討会などを通じて掘り起こしていただきたいと思っていますので、紹介しています。リワークについては、ほとんどの医師、7割、8割の医師がこういうことを知っていると。
 次の頁ですが、このリワークプログラムを知っている方に質問したところ、このプログラムを実践しようとしているのですが、非常に困難だという表現の結果が出ています。次の復職支援を行う医療機関以外の機関との連携についても、どんなものと連携しているのかというところで、診療所の先生は障害者職業センターを6割の人が利用しているとか、あるいは行政を利用しているのが3割あるなどということを書いています。
 最後の2番目ですが、企業において、産業医や顧問医、先ほど言いました産業医と専門の精神科医がコラボレーションというのですか。スーパービジョンというようなことができる。精神科の専門医として、企業で活動を行っておられますかという質問は、精神科病院では87.9%が活動していないと、ここが大事だと思います。日精協の調査の五十嵐先生の調査では、ぴったり一致している。精神科病院に勤めている4,300名の医師のうち、そういうことに携わっている人は約1割ぐらいだろう。9割近くは、そのような企業の産業保健のメンタルヘルス専門家が関わっていない。精神科診療所協会では、63.9%、診療所の先生のほうが少し関わりが強い。
 結果のまとめですが、2番目です。診療所および病院の精神科医が主治医として、事業所との連絡調整を持つことは現状から見て可能だと思います。また、専門医などとして、診療所では3割、病院では1割の医師しか関わっていない。復職前の支援を行う職種としては、診療所・病院ともに心理職の役割が非常に大きい。これは私も実践をして実感をしています。私はこの数年、臨床心理士の国家資格化にも携わっていますが、いま国会の壇上に上程される以前で迷走しています。最後の国家資格化と言われていますが、これは非常に難産で、難産の前の前ぐらいになっておりますが、このようなうつ病、自殺対策、復職支援と、この一連のもので私が主張したいのは、日本精神科病院協会は積極的にこれからまだまだいろいろなことを協力することができますので、もしこの検討会がご発展していくならば、我々の協会としてはご協力することは吝かでございませんので、そのことをお伝えします。ご清聴ありがとうございました。
○相澤座長 ありがとうございました。ご質問があるかと思いますが、まだ残っていただいて議論に参加していただきますので、よろしいでしょうか。次に、資料説明を行っていただきます。まず、前回までの議論を踏まえて、事務局で現状等を整理した資料、厚生労働省健康局保健指導室が作成した資料を用意していただいていますので、事務局からご説明をお願いします。
○永田主任中央労働衛生専門官 事務局のほうから、資料1-1から資料1-6までについて説明します。資料1-1から資料1-4までは、今までに事務局が説明したこと、ご議論をいただいた中身を取りまとめたような形になっています。事前に資料をお送りしていますので、項目の読上げで説明させていただきます。資料1-1「職場のメンタルヘルス対策の現状等」は、項目が1から4まであります。1「労働者の状況等」、2「事業場の取組状況」、3「メンタルヘルス不調の要因等」、4「メンタルヘルス対策の強化について」。4については、これらの状況を踏まえると、メンタルヘルス不調者が早期に適切な対応を受けられるような新たな枠組みの導入により、職場におけるメンタルヘルス対策の取組を促進すべきであるということになっています。
 次に資料1-2です。「一般定期健康診断とストレス調査の現状等」ということで、3項目あります。1「一般定期健康診断におけるメンタルヘルスに関連した取組の現状」ということで、現行の健康診断の項目、先進的な取組状況を記載しています。2「一般定期健康診断における事後措置の仕組み等」ということで、就業上の措置、保健指導について記載しています。3「メンタルヘルスに関する調査票」ということで、調査票についてはいろいろなものがありますが、項目数の多さに関わらず、精度に大きな差はないという評価について検討会の席上でご発言がありました。
 資料1-3「産業保健スタッフの活動と外部の支援機関の現状」ということで、1「産業保健スタッフの活動」、2「外部の支援機関の現状」です。
 資料1-4「健康診断における労働者の個人情報等の取扱い」です。1「個人情報の取扱い」、2「不利益取扱い」ということで、これについてはさらにご議論があろうかと思っています。
 資料1-5については、いままでの議論等を踏まえて整理しています。「メンタルヘルス対策を促進するに当たっての基本的な方向(案)」ですが、1「労働者のプライバシーが保護されること」、2「メンタルヘルス不調に関連する対応に要する時間及び費用が過大な負担とならないこと」、3「ストレス調査の医学的エビデンスやメンタルヘルス不調者の受入れ体制などの事後対応(リハビリを含む)の現状を踏まえ、労働者本人による気づきが促進されるとともに、事後対応については基本的に事業場内の産業医・保健師等や地域産業保健センターなどが対応し、必要な場合には専門家につなぐことができること」、4「事後措置が適切に行われるよう、専門的な知識を有する人材の確保や活用等の基盤整備が図られること」、5「上記の措置を講じることにより、労働者が健康の保持に必要な措置を超えて、人事、処遇などにおいて不利益を被らないこと」。
 さらに、資料1-6、資料1-6-2ですが、こういった今までの経過を踏まえて、「新たな枠組みの具体的なイメージ(案)」ということで整理をしています。1「自覚症状の項目の明確化」。法令上、自覚症状および多覚症状の有無の検査がありますが、それにおいて、現在は医師の判断に委ねられている自覚症状の項目について、脳神経に関する項目、呼吸器に関連した項目、循環器に関連した項目、ストレスに関連した項目などのように、法令等で明示する。ストレスに関連した項目としては、実際にどのような項目を確認するかについては、専門家により検討し、他の項目を含めてガイドラインで示してはどうかということです。
 2「健診結果報告における個人情報保護等」。自覚症状に関する所見については、所見の「有」、「無」のみを事業者に伝えることとする。その際、自覚症状の所見から医師(健康診断を実施する医師等)が必要と判断した場合には、医師等、(就業上の措置について、意見を述べる医師等)による面接を必要とする旨を「要面接」として、健康診断個人票に記載することを新たに法令などで規定をしてはどうか。
 3「事後措置の推進」。事業者は「要面接」とされた者について、労働安全衛生法第66条の4に基づき、事業者は当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師などから意見を聴取することとし、その際には意見を述べる医師などが面接を行うことを法令などで規定する。また、労働安全衛生法第66条の7の「医師または保健師」による保健指導の努力義務規定をも踏まえて、保健師による保健指導を行い、その結果を労働安全衛生法第66条の4に基づき意見を述べる医師が参考とすることについて指導する。事業者は意見を述べる医師などをあらかじめ定めて、健診を受診する労働者に周知しておくことが望ましい旨を通達などで指導する。
 資料1-6の4ですが、「事業場に対する支援体制の整備」、これは別紙になっています。メンタルヘルスに対応できる産業医の数は十分でないなど、当該分野に精通した者の確保・活用が課題となっているが、産業医のメンタルヘルス対策への対応については、?@「研修等により必要な知識等を得て職務を行っているが、十分な対応が困難な場合もあること」。?A「精神保健分野等様々な分野の複数の産業医を選任することには多くの経費を要するなど、必ずしも職場の実態に合わない状況もある」。※「このため、メンタルヘルスに対応できる産業医の有資格者、他の専門分野の産業医の有資格者などがチームとなった事業場外の組織(外部専門機関)を整備・育成し、メンタルヘルス不調者への対応などに関する産業医の業務を効率的かつ適切に実施することを可能とすること。また、こうした事業場外の組織において、的確に業務が実施されるよう、その質を担保することが必要である」。事務局からは以上です。
○健康局保健指導室長 健康局保健指導室長の勝又と申します。私のほうは地域・職域連携推進事業を所管していますので、資料2に関して説明をさせていただきます。まず、「地域・職域連携の基本的な考え方」ですが、青壮年の人たちを対象に行われる保健事業は、健康増進法や労働安全衛生法、高齢者の医療の確保法に関する法律等の根拠法令により、目的、対象、実施主体、事業内容がそれぞれ異なっており、制度間のつながりがなかなか難しいということで、地域全体の健康状況を把握できなかったり、あるいは退職後の保健指導が継続できないといった問題が出ていました。
 地域保健、職域保健では、目的が一致しているわけではありませんが、提供している保健サービスに変わりはないということがあり、地域と職域がいろいろ情報交換を行ってやっていこうということで地域・職域連携推進協議会を設けて対応をしているところです。平成17年から始めて、平成21年の状況では47都道府県、すべての都道府県に地域・職域連携推進協議会が設置をされ、346の二次医療圏のうち342の二次医療圏でこの事業が実施されており、ほとんどの地域で各保健所を主体として、連携会議が進められています。
 その下の「協議会の設置」ですが、地域保健法第4条、健康増進法第9条に基づき、この協議会が設置されているところです。特に地域と職域が具体的に連携するという意味では、二次医療圏の中ではそれぞれの固有の健康課題を特定して、地域特性を活かした健康課題の解決に必要な連携事業の計画、実施、評価をしていただいているところです。具体的な事業の中身としては、共通課題やニーズを把握するための調査事業、あるいは健康づくりに関する講演会をやったり、健康情報マップを作ったり、関係者間の資質の向上に関する研修会などをやっています。
 次の頁ですが、地域・職域連携の中で、現在、保健所が中心に特定健診・保健指導を進めることと、もう1つ大きな課題としてはメンタルヘルス対策について取り組むということです。5つぐらい書いてあるのですが、「調査研究」という所では、南多摩の保健所等では死亡統計を分析して、なぜ自殺が多いのかということをいろいろ議論をしたり、あるいは地区医師会の先生、労働関係機関に聞き取り調査などをしながら、働き盛りのうつ病の対策を中心に進めています。あるいは、滋賀県の草津保健所ですと、遺族の方の了解を得て検案医師が精神保健福祉センターや保健所にその自殺者の情報を提供して、保健師が心理学的剖検調査を実施して、その後フォローするということもやっています。
 さらに、次の所では就労者、休職者およびその家族等への相談ということで、地域産業保健センターの方々と共同して中小企業に出向いていって、従業員の方のメンタルヘルスチェックを行って、メンタルヘルスに関する講演会をその企業の中で行うということをやっています。あるいは、地産保の保健師と保健所の保健師が連携をとり、休職中の人たちに対するフォローを行っていることを、実際報告を受けているところです。
 最後の頁ですが、そういった保健所からの報告を受けて、今後、地域・職域連携推進事業の中で、自殺・うつ対策としてどのようなことが考えられるかということですが、地域・職域連携推進協議会の中では、いままでの推進協議会では特に代表者の方々に来ていただいていましたので、今回自殺対策の実務者の人たち、実際に連携をとっていくような人たちが集まって、顔と顔を見合わせながら、例えば病院・診療所の先生、産業保健師、市町村の保健師、あるいは産業医の方、事業所の労務担当者といった人たちに集まっていただいて、1に書いてありますように、自殺者の動向、自殺・うつに至った原因の分析、あるいは事例検討などを行っていくというのはどうだろうかということ。2番目に休職者およびその家族の方への健康相談ということで、本人の同意を基本として、職場と地域とが連携を取り合って、その方のフォローをしていくということは必須なのではないかと考えています。
 メンタルヘルスに関する事業所研修の開催、あるいは事業主に対するスーパーバイズなども必要なのではないかと思っています。環境整備としては、地域づくり型のヘルスプロモーション活動、サロンを開設していろいろ話し合うとか、広報・啓発、自死遺族の会の方々の育成といったことが、今後、地域・職域連携推進会議、あるいは推進事業の中でやっていかなければならないこととして考えていく必要があるのではないかと考えています。以上です。
○相澤座長 後ほどこの資料1-5と資料1-6を中心にご議論いただきますが、尾崎委員から事前の資料の提出とご発言の申し出がありましたので、資料4についてよろしくお願いします。
○尾崎委員 今回から検討会に参加させていただきました名古屋大学の尾崎と申します。よろしくお願いします。私の資料4にもとづいてお話しさせて頂く前に、先ほどご紹介のありました資料1-1の2、「事業場の取組状況」を少し振り返らせていただきます。ここで明白なのは、7割以上の事業所は実際には取り組んでいらっしゃらないこと。その理由としては、半分近くの方が「専門スタッフがいない、人材がいない」、「やり方がわからない」、この2点であること。それに加えて、事業所の30%が「必要性を感じない」で、労働者も30%ぐらいが「関心がない」という理由で、事業所がメンタルヘルス対策に取り組んでいないことが挙げられている点が私は問題だろうと思っています。したがって、職場のメンタルヘルス対策というのは必要である。しかしながら、まだまだ不十分であるというのが現状である。この現状をどうすれば良いのかということについて、提出しました資料をご紹介していきたいと思います。
 資料4にお移りください。これまで私は本委員会に関わっていないものですから、的外れ、あるいはもう既に議論されていたことの繰り返しになるかもしれません。そのことはお許しください。私の意見は資料4にすべてまとめていますので、そのまま読ませていただきます。「『労働者のメンタルヘルス不調の把握』に関する意見」ですが、実施に当たり必要と思われる事柄を7点まとめました。
 1.うつ病等、精神疾患に関する知識理解を職域が持っていただき、「労働者のメンタル不調の把握」が実施されること、決してそれが偏見の助長にならないように留意をしていただきたい。2.情報の守秘を十分確保する体制を構築する。3.「メンタルヘルス不調」の診断・評価に当たっては、信頼性と妥当性のある方法をとっていただく。4.質問紙によるスクリーニングだけではなくて、そのあとに治療導入を踏まえた支持的・共感的な態度を持った診断・評価面接を実施していくということが必要だろうと思います。5.その後、診断・評価から治療導入へのシステムを作り上げる。6.治療導入が終わったあとも職域でサポートをしていただくことが大事ですし、7.休務に至るケースがかなり多いという先ほどの実情もありましたが、その後の職場復帰支援プログラムをきっちりシステムとして構築することが必要だろうと思います。
 以上を踏まえた対策をまとめさせていただきます。資料1-1の2、「事業場の取組状況」において「専門スタッフがいない、人材がいない」という点が指摘されておりましたが、まず人材を確保すること。そのためには、当然予算的な措置が必要ですから、先ほど紹介された「これまでの本委員会の議論のまとめ」に「あまりお金がかからないように」という話がありましたが、この点については、私は疑問を持っています。予算的措置はきちんととるべきで、それができないのならばこれは空文化するだろうと思っています。
 それから、「事業場の取組状況」で「方法がわからない」という話が、これまた半分近くありました。ということは、以上の対応をする具体的指針を作るために、「近々どういう方向がいいのか」という点について、パイロット的研究を行って、その後も継続的な研究をして、より良いものにブラッシュアップすることが中長期的に必要だろうと思っています。
 次の頁です。その上記の項目のいくつかに関して、若干の補足説明をさせていただきます。1、「精神疾患に関する偏見」という問題なのですが、私はうつ病学会の代表という形でここに参加させていただいていると思っていますが、うつ病というのは、ここのところ自殺とうつ病とか、過労とうつ病という形で、マスコミ等の報道でも取り上げられて、職域でも偏見は確かに軽減する傾向にはあります。しかしながら、こういった啓発活動に関して地域の差、あるいは企業の規模といったこともあって、いまだうつ病に関しても理解が必ずしも十分とは思えないというところもあります。
 さらに、うつ病以外の統合失調症が、必ず一定の確率で100人に1人ぐらい起こり、職域にもおられます。また、最初にうつ病と診断された方の10%は、そのうちに双極性障害という診断が確定することが報告されており、双極性障害に罹患している労働者の方もおられます。加えて、発達障害者支援法が2005年にできており、国のほうでもいろいろ関与していただいていますが、特に高機能の発達障害、知的なレベルに問題がない方が就労して、そこで気分障害、うつ病とかそううつ障害を併発することもよくあって、そういったことに関する知識に関しては不十分、あるいは間違ったままで、対応も取り残されているのが現状です。こういったことも含めて、十分な啓発活動がない段階では職域のメンタルヘルス対策は進まない。十分な啓発がないと、「事業場の取組状況」で抽出されたように、3割の事業所は「要らない」、3割の労働者も「関心がない」と思っていらっしゃる結果につながります。まだ、職場の精神疾患に関する啓発活動も不十分ではないかと思っています。
 2、「情報の守秘」ですが、労働者は非常に関心が高いわけで、これは1とも連動した問題だと思っています。血液検体等が、よしんば職域の一般職員の目に触れたとしても、ただ血だなと思うだけです。個人情報は提供いたしません。しかし、例えば肥満の方がいらっしゃると、外見的にもわかります。その場合でも、健診で体重を測定するという場合、当然、客観化された数値は、この人は85?sだなということはわかります。それはちゃんと隠すようにするような配慮が、健診のときに必要になります。
 一方、メンタル不調の把握に関して、もし質問紙を使ったスクリーニングが実施された場合、それが一般職員の目に触れますと、個人情報を提供する、わかってしまうという結果になります。したがって、質問紙を導入した場合、守秘性の確保の配慮が、一般の検体検査項目以上に必要ではないかと思っております。また、質問紙の結果が医療上の判断に活用される以外、守秘義務が明確でない人事担当者の方や管理職等に漏れることがないことも、あらかじめ質問紙にきちんと明記して、インフォームド・コンセントの下でやっていただくことが必要かと思っています。こういった守秘性が十分に確保されないと、質問紙、あるいはそのあとの面接においても、回答が意図的に歪められてしまうという危険性もあろうかと思います。
 一方で、こういった精神疾患の特殊性を強調するあまり、身体疾患とは違うのだというような特別視を生まないことも、非常に重要だろうと思っています。メンタル不調の把握も、実施に当たっては健診における守秘性の確保、あるいは身体疾患と同様、精神疾患も早期発見が重要というような、基本的な労使双方および安全衛生委員会が再認識することが重要なのだろうと思います。これまで身体疾患の健診において守秘性が必ずしもきちんと守られていないということもあるように思います。したがって、「この状態でメンタルヘルスの健診まで行ってしまったら、我々労働者側としては非常に不安ですよ」ということなのだろうと思っています。
 3「質問紙だけではなくて、治療導入を踏まえた面接」ということです。質問紙は、あくまでスクリーニングでしかありません。まして限られた項目数の質問紙では、多様な精神疾患、先ほど申し上げたようなことに対応は不十分です。例えば不眠だとか、あるいは抑うつなどを呈する精神疾患は多数あります。うつ病等の精神疾患の診断基準は、一方でご本人の主観、要するに質問紙でわかるものだけではなくて、我々が観察をして、それでこの人はこうだなという項目が入っています。そういったことも留意する必要があります。
 したがって、スクリーニングのあとに専門職による面接を実施することで、次の判断ステップ、とりわけ緊急介入が必要かどうかということを確認しないといけないと思っています。実施面においては、健診とメンタルヘルスの面接を同時に行うのは、時間的に困難です。別の日に健診後のフォローという形で、身体面での保健指導の中でメンタルヘルスの面接を実施し、必要があれば治療導入につなげていくのが望ましいと思っています。
 また、メンタルヘルスの面接を身体面での保健指導と連動させることによって、あの職員の方はメンタルヘルス面接を受けたというようなレッテル貼りとか、特別視をしないような配慮が必要だと思っています。ただし、スクリーニングの点数で、明らかに緊急性が示唆された場合は、早期に面談の指導を行うなど、きめ細やかな対応ができるようなシステムが必要だと思っています。
 ところが、私はこういう面では産業保健師の方に随分助けてもらっているのですが、実施に当たる産業保健師の方々の数が極めて少ない。大企業においてもまだ少ない所がありますし、私が関与している大企業は1万6千人の労働者に50人ぐらい産業保健師がいらっしゃって非常に助かっていますが、こんな企業はほとんどないと思います。
 治療への導入体制ですが、精神科を受診したくないという一般の職員の方がいまだ存在するということに加えて、うつ病等の精神疾患の場合は否定的なものの見方が出てきます。症状として、例えば受診しても役に立たない、この職場におる限りは駄目だというような極端な捉え方が出てまいります。そういったことを踏まえた上で、丁寧な保健指導が必要だろうと思います。
 また、先ほども申しましたが、精神疾患の発症例には介入を早急に必要とする場合があり得ることを考えますと、緊急性の判断ができる人材確保が重要です。同時に、健診で要治療と判断されても、治療を受けるかどうかはあくまで労働者本人の意思という点、身体疾患と精神疾患においては同様であるということは留意して、「精神疾患だけは強制なのだ」というニュアンスも避けたいなと思っています。
 最後に、5「治療導入後および復帰後における職場との連携」です。特殊な職域と疾患、これは例として考えたものですが、外食産業に勤務する職員が職務上いろいろ食べなければいけないので、脂質代謝や耐糖能が変化するということもあろうと思いますが、そういった特殊例を除けば就労状況と疾患との関係は一般的には薄いと思います。ところが、就労状況等、精神疾患の発症の経緯には非常に関連があります。治療および再発予防には、職場との連携が必須であります。しかし、私の経験から言っても、治療導入後、主治医から本人の同意の下、職場の上司とお会いし、介入は必ずしも軽減勤務だけに限らないのですが、依頼してもそれが全く顧慮されないという場合もあります。つい先ごろも、患者さんの復帰にあたって、主治医である私から「厚生労働省から「復帰支援の手引き」が出ていますから、「復帰支援プログラム」をお願いします」ということをある大きな企業の方に申し上げたら、「これには義務規定はありませんよね」と言われてしまいました。それが現状です。かなり大きな企業です。さらには、治療後の診断書の「休務」が受けられない職場もあるというのが実態です。
 以上を踏まえて、1として健診前の段階から、これは職場におけるメンタルヘルスに関する啓発活動等のことです。健診の方法。健診後、どのように治療導入をし、職場復帰を果たしてもらうかという方法論の確立が必要である。そのためには、今後、まずパイロットスタディを実施すること。大企業と中小企業など、実施条件の違い、あるいは実施の時期はいつがいいのか。それから、1年1回でいいのか。例えば実施時期ですが、繁忙期もありますし、季節ということもあります。方法論に関してですが、就労状態や日本の経済状況、あるいは医療技術の革新によって、今後も適宜改定が必要だろうという意味で、中長期的な研究プロジェクトが必要だろうと思っています。
 2として実際に動いていただく方の人員の育成です。1で確立した方法論が実行できる人材ですが、産業精神衛生、精神医療に通暁した産業医、あるいは産業保健師の方の育成・確保。産業衛生に通暁した精神科医の育成・確保。私の個人的な感想ですが、地域医療の崩壊が叫ばれるように、なかなか医師の十分な確保ができない状況を鑑みれば、産業保健師の方、特に精神保健に通暁した保健師の方を育成し増やす、ということが必要だろうと思っています。何よりも拙速な対応に陥らないように、関係各省にはお願いする次第であります。以上です。
○相澤座長 ありがとうございました。尾崎委員にご意見をいただきましたが、何か委員の中からご意見がございますか。
○石井(正)委員 日本医師会からまいりました石井です。私も尾崎委員と同じで5回目にしてようやく第1回の出席なものですから、お互いの議論がどうなるかはちょっとあれなのですが、別に避けていたわけではなくて、私の出られない日にちに設定されていたということだけなのです。よろしくお願いします。
 先生のご提案でいくつかのところがもう少し明確にしてほしいなと思うところがあるのです。1つは例えば私自身産業医ですし、地域産業保健センターの運営もやったことがありますし、その上部のほうにも関わっていたことがあります。先生の2頁の2番「情報の守秘」というテーマがあります。これは今日の別なまとめのほうにもあると思いますが、産業医として情報の守秘をしなさいよと言われるということは、普通は産業医は事業主と情報連携をしなければいけないということになっているのですね。では、しなくていいのかと、しない場合の責任は誰がとるのか。では、ちゃんとするべきだと思ってした責任はやはり産業医がとるのか、そこのところが明確でないと、産業医活動そのものがやりにくいと思います。そこのところの先生のイメージはどのようなものでしょうか。
○尾崎委員 この問題は、私も非常に大きな問題だと思っています。要するに医療従事者としての保健師の方も含めて、我々は常に守秘性というのを法的に求められています。一方で関わっている事業所のほうは安全配慮義務というものがあるわけです。その間のところをどういうふうにつなげるべきかということに関する、厚生労働省の指針を作ってほしいということを私は15年ぐらい前にお願いをしています。
 当時、私は保健衛生大学にいたのですが、そのときに名古屋大学におられた竹内教授が「それは検討しているのだが、なかなか策定にいたらない」と、その当事聞きました。したがいまして石井委員からのご疑問はまさにそのとおりでして、産業医あるいは産業精神保健に関わっている者としては、医療者として守秘性を尊びながら、どのように企業の方と連継をもっていけばよいのかというガイドライン、指針ができていないので、非常に困っています。それで石井委員、お答えになりますでしょうか。 
○石井(正)委員 ありがとうございます。もう少し質問があります。要するに医療関係者はどのような場面でも、当然守秘義務は持っているわけです。しかしながらこういう産業保健のときのところで、どうするかというところが悩ましいというお答えだったと思います。
 もう1つは、先生のプレゼンテーション、前の諸々も全くそうなのですが、要するにメンタルケアに通暁した専門性の高い人材が少ないと、然らばというお話から、ではいろいろな資格をこうしようとか、こういう育成だとかいろいろな話になりますね。私は救急医療のほうで、この4年間いろいろな救急現場は本当に足りないという議論の中で、どういう議論をしてきたかということを申し上げます。それは学校保健でも同じだと思うのですが、救急で言えば一般救急と専門の救急の連携というのは、地域でうまく連携できているかどうか。治療の現場で連携ができているかどうか。そこをむしろ評価していきませんかというような方向で、ある種の施策の中にも合意が形成され、そして反映されていると思っているのです。
 ここでまた、いわゆる専門性の高い方々をもう1回育成しましょうという議論をしますと、では、それがいつ実現するのか、今現在は実現していないわけですから、今現在、非常に困った患者さんと言っていいか、相談者と言っていいか、いろいろあると思いますが、そういう方々をどうするかという答えが出ないと思うのです。したがって、やはり例えばドクターだけに関して言えば、ドクターで一般的な産業医と、それから先生のように専門性の高い産業保健に関わった精神科の先生方がどのぐらい連携できるかという、そこのところをしっかり担保しないと、ここでいくら議論をしても明日、航海には全く出れないのではないですか。
 それプラスもちろんさまざまなリソースの方々がその中に働いていただくということは、非常に大事なことなので、先ほどの2番の議論と疑問と同じで、それを両方やった上で連携をとりながら、しかしながら、守秘義務、情報を守秘しながらネットワークを広げるわけですから、これはしっかりとした人で全体を取り回すガイドが必要になってくる。私はそういうイメージで今日のお話を聞いていたのですが、後半のほうはいかがですか。
○尾崎委員 はい、ご指摘のとおりです。本委員会に今回は精神科医が4人入っているのですが、日本の精神医療の大きな問題点は、精神科医の数ではないのですね。人口当たりの精神科医の日米の比較で言いますと、0.8ぐらいだったと思います。決してそう少なくはない。一般の全部の科の医師全体では0.9ぐらいです。したがって、医師数は非常に不足した状態ではないのですね。
 ところが医師以外の精神医療に関わる方、先ほど南先生でしたか心理士の話が出ていましたが、心理士とかPSWというのが、私はアメリカで5年臨床もやっていましたが、圧倒的に彼、彼女たちが多いのです。精神医療を助けてくれるのですね。その方々の力があってはじめてアメリカの精神医療はある一定の結果を得ています。産業精神保健も然りなのです。産業精神保健もアメリカでは私の知っている限り、心理士がかなり関わっています。そういう人たちがいないと、やはり無理だと思っています。だから産業保健師の方が、先ほど明日からどうなのだという話だったのですが、首都圏の事情を私は知りませんが、企業が保健師の方を採用している所は、名古屋地区で言えば非常に少ない。もっと企業が産業保健師を登用していただく。看護学科のある4年制大学が増えており、いま保健師資格のある学生はずいぶん増えています。企業が保健師の方を採用すれば、来年からでも一気に増やせていけるはずです。今回は保健師の方々もいらっしゃるので、その辺についてはおっしゃっていただければと思います。
○石井(正)委員 その件は全く賛成なのです。私は福島県で地域産業保健センターとかいろいろな活動をやる場合には、医師会としてどうだということだけではなくて、臨床心理士であるとか、コーディネーターの優秀な方だとか、そういう方々のリソースがあって初めて非常に有効なことができ、もう1つは、私のところは地域労災病院がありましたので、そこの全面的なサポートをいただいています。それが相乗した上である種の仕事ができるし、効果も出てくるというふうに考えています。だからその点に関しては全く違論はありません。
○相澤座長 あとでまたご議論をいただきます。椎葉委員からも発言要望が出ていますので、よろしくお願いします。
○椎葉委員 私は尾崎先生から大変勇気をいただきました保健師の一人でございます。よろしくお願いします。私どもの会社は2001年から出来たのです。それから10年間メンタルヘルス対策には取り組んできまして、それを通じて思うことがあったので今日お時間をいただきました。
 今日お手元に資料をお配りしていないので、口下手ですが、お聞きいただければと思います。私どもの会社のメンタルヘルス対策ですが、いま現在出ている指針、ガイドライン、手引等と、ほぼ同じぐらいの内容で、一次予防から三次予防まで取り組んでいます。メンタルヘルス対策の重要性は大企業に入る規模の会社ですが、余裕は通常零細企業に比べてはございますが、それでも昨今とても厳しくて、1人倒れると周囲がカバーしなければいけない度合いが非常に高くなっていますので、弊社としては「倒れない、倒せない会社にしよう」ということで取り組んでいます。
 一次予防、二次予防、三次予防も含めてなのですが、弊社の特徴としては健診後の事後の面断を検査結果の有所見が有る無し関わらず全員会っていまして、その中で某メンタルチェックツールを使いまして、それを基に1人当たり30分時間を設けまして、公私にわたる状況を確認するような形で面談をやっているのが特徴かと思います。
 そのメンタルチェックを使っていますが、それに関しては、それで引っかかったとしても、ほとんどの方はたまたま業務が忙しかった、たまたまご家庭でいろいろなことがあったというのが大半で、人間関係とかちょっとしたことであり、結果として医療機関につなげるような例というのはほとんどないと言ってもいいくらいの割合です。
 ほかにも一次予防としては社内研修も行っていますし、管理職には安全配慮義務を中心とした活動もやっています。ただ、一方的に健康管理主体でやっても、なかなか現場は動いてくれないので、人事、労務、現場の関係者で意識統一をして取り組んでいくことが必要だということで、採用から配属、業務配置、負荷、ライン、評価、育成、それを全部トータルで現在取り組んでいます。復職に関しても復職制度をきちんと設けて、これまで取り組んできました。
 職場風土に関しても健康管理の切口ではなくて、人事の切口から3年に1回、全社的に調査を行って、必要に応じた介入を行っています。それは手前味噌なのですが、それなりに充実した体制で取り組んできたと思うのですが、それでも現場によっては新規発生がゼロでいっているところと、そうではないところがやはり差が出てくる。それはなぜかというと、やはり現場がきちんと取り組む風土が出来ていない。弊社の場合は精神科医も雇っていますし、保健師の数もほかの会社よりも多くて、一次予防から取り組んでいます。専門職がいくら専門職なりに頑張っても、現場がそういうことに面と向かって取り組む姿勢がないと、いくらやってもうまくいきません。モグラ叩きに終わってしまうというのが実感でございます。 
 今回、労働安全衛生法の法定項目の中に、ストレス疾患のスクリーニングという議題がございましたが、中途半端な職場の体制でそういうことに取り組むと、逆にかえって差別というのですか偏見というのを助長するのではなかろうかというのを、非常に私どもは危惧しています。
 うつ病の医学的な概念、それが明確化されてからこういうことは行うべきであろうというふうなことを私どもは考えており、ストレス疾患においては医療でやるべきなのか、会社が会社なりのやり方でやるべきなのかというのは十分に議論をいただきたいと思っています。以上です。
○相澤座長 ありがとうございました。何かいまのご意見に対してございますか。
○中野委員 いままでの議論と少しまたずれるかもしれませんが、そうはいっても規模の大小によって取扱い。先ほども資料の1-1の2番で、専門スタッフがいない、確保できない。それから取組み方がわからない。特に中小零細企業の場合は当然ここにぶち当たっていて、どうしたらいいのだろうというのが現状であるわけですね。
 平成21年に、私ども東京商工会議所の文京支部なのですが、支部が中心に「中小企業のためのガイドライン」を作りました。それには不調者が出た場合にはどういう対応をしたらいいのか。それをどういうところに相談、例えば地産保なり、相談窓口はどういうところにあるのか。それから復職するためにはどういう復職のパターンがあるのか、そういうものをすべて含んだガイドラインを作ったのです。そして、当初約2,000部印刷しまして、会員企業さんに配付したのですが、後から後から増刷をしてくれと。一部報道番組にちょっと取り上げられました、特に中小零細企業においては現実的にはいまの議論の中であるのですが、では、何をいますぐできるのかということが理解できていない。要するに人材が確保できていない、対応できる予算もないというのがあると思うのです。
 これはどこの地域でもそれほど格差はないと思うのですが、やはりそういった簡単な構図でいいのですが、ガイドラインなりをもっといろいろな地域で作成するなり配付するなりして、こういうところの相談は地産保でも保健師さんでもいらっしゃいます。地域で対応できるのだよということが、今後メディアを通してでも公表、認知してもらったほうが、対策の第一歩にはなるのではないかなと私は考えています。
○椎葉委員 すみません。肝心なことを申し上げるのを忘れていました。何から取り組むかということに関しては、三次予防、職場復帰に関してきっちり取り組んでいくということから、二次予防とか一次予防にもつながっていくというのが、私どものこれまででいちばん効果的な方法だと思っています。中小零細企業においては、一次予防からまずやるというのは難しい。二次予防からやるとまだ偏見というのがあるかもしれないということを考えると、いちばん着手しやすいのは、職場復帰の部分からきっちりやれるように関係団体とかの支援を得られるような形にするのが、いちばん効果的ではないかと思います。
○石井(正)委員 いまの中野委員のマニュアル作り、それはわかるのですが、一回全国に地域産業保健センターというのが整備されたわけですよ。50人以下の事業所は相談できますよという状況にして、それから予算を削ったり、今年また仕分けか何か知りませんが、別な形をとったりして、少しその運営が揺らいでいることが問題なのですよ。だからそういう窓口はもう出来ていますよと、それをこれからどう使うかというのは、単純にパンフレットの問題だけではなくて、これシーン・メーキングなのです。こういうところでそういうことをもっとやったほうがいいねという合意ができれば、おそらくそういう話が始まるのだと思いますが、いままでのところはそれを減らす方向でやっていますから、一旦出来たリソースとかネットワークを、そういうところが問題だと思いますよ。
○相澤座長 ありがとうございました。それでは椎葉委員からのご提言についてはご議論はよろしいでしょうか。よろしければ今日の本論でございますが、議論をはじめさせていただきたいと思います。
 この委員会、非常に急いでおりますが、本日のこれからの議論を踏まえて、次回は取りまとめの案を事務局で作っていただきたいと思うのです。そのたたき台として今日、資料1~6までが提出されておりますので、これについてご議論をいただければと思います。その前に三柴委員が本日ご欠席ですが、この資料について意見が届いていますので、事務局からお願いいたします。
○永田主任中央労働衛生専門官 三柴丈典先生は残念ながら本日はご欠席ですが、特に不利益取扱いといったようなところを中心に、ご意見を頂戴していますので、この場でご紹介させていただきます。
 本日外すことのできない用務のため欠席いたしましたけれども、法律論者としての立場から以下、特に資料1~6に関する所見を述べたいと思います。
 私自身、資料1-6や別紙、新たな枠組みのイメージ案に示された対策の方向性は、就労者のプライバシーにも応分の配慮がなされており、かつメンタルヘルス不調の一次予防にもつながり、結果、公労使すべての福利に貢献する現実的なものとして賛同いたします。ただし、その方向性を実効あらしめるためにとるべき視点として以下の4点が挙げられるものと存じます。
 ?@労使を含め、できる限り国民全体にメンタルヘルス不調についての差別や偏見が排除されるべきこと。
 ?A就労者が長時間を過ごし、濃密な人間関係をもち、所得を得る場であることの多い事業場においては、特にメンタルヘルス不調についての理解・促進を図る必要があること。
 ?B就業上の措置は、あくまで就労者の心の健康のために講じられるものであって、事業者側の都合によるものであってはならないこと。
 ?C健康診断措置指針にも明記されているように、就業上の措置は医師の意見に基づき、かつ就労者との話し合いを踏まえて実施される必要があること。加えて以下のとおりです。
 まず、不利益措置の抑制ないし禁止についてですが、基本的には今回示された枠組みによって、不調状態は事業者には直接的には伝わらず、よってその前提をなくすことが予定されていると考えられます。けれども、「要面接」という情報や、就業上の措置などの加工情報や、何らかの方法で得られた直接情報などをとらえて、不利益措置がなされる可能性を全否定はできません。
 そこで考えられる具体的な不利益措置として、正規就労者については昇格昇給停止から、降格、降給(給料が下がるという意味)など、さまざまな懲戒処分。降職(職を下ろされる)、退職勧奨、解雇などが考えられます。有期雇用、派遣などの非正規就労者については、昇格、昇給停止から契約更新に際しての降給、雇い止めなどが考えられます。また、有形無形のハラスメントなども現実に行われており無視はできません。ですので、有効な対策のため、不利益措置は一般的に抑制ないし禁止されねばならないと存じますが、就業上の措置など、健康確保のための措置と見分けがつきにくい場合も生じ得るので、先に述べた?B「就業上の措置はあくまで就労者の心の健康のために講じられるものであって、事業者側の都合によるものであってはならないこと」、ということですが、の考え方が重要になります。
 なお、不調の程度や性質によっては消極的な不利益措置の禁止というだけでなく、アメリカにおけるように使用者にとって過剰な負担にならない範囲で、積極的に合理的な配慮、便宜を図るようにすることで、スタートラインを整えるという発想が求められますが、今回示された対策の方向性では、就業上の措置によりこれも担保されるようになっていると考えられます。
 あとは不利益措置が禁止、抑制される対象者の不調の程度や、性質、業務上外で対応を分けるべきか、賃金の保障、特に私傷病による休職期間中の賃金、成果主義賃金制度など、減給などが予定された処遇制度への対応、不調ゆえの異常な行動やパフォーマンスの低下の評価などが残された検討課題となると考えられます。
 次に定期健診について述べます。以前からあった健康診断項目の中の不調状態の調査をより明確化し、医師などの面接を通じて就業上の措置や個別の保健指導に結びつけるという枠組みにはおおいに賛同いたします。
 本来の用途はともかく、ストレスチェックや面接などを通じ、これまでに比べ、業務上外の判定も行いやすくなるでしょうし、受診する就労者に対しても、職場のストレス対策に役立つものであり、何より自分自身のためにプライバシーがしっかり守られた状態で調査を行うものですと説明し続けることで、徐々に正直な回答を行う方が増えてくるのではないかと思われます。
 確かに記録の利用の仕方によっては、例えば企業単位で模範解答が示され、調査を無意味にするような可能性を全否定はできませんが、このような問題は事業者や管理者などに対し、有効なストレス対策はリスクマネージメントだけでなく、経営改善にも結びつくものですよということを、繰返し啓蒙し実感していただく機会を設けることなどで対応していくほかないのではないかと考えます。
 そのためにも先に述べた?@「労使を含め、できるかぎり国民全体にメンタルヘルス不調についての差別や偏見が排除されるべきこと」。?A「就労者が長時間を過ごし、濃密な人関係を持ち、所得を得る場であることの多い事業場において、特にメンタルヘルス不調についての理解促進を図る必要があること」。この2つの視点が極めて重要になるものと考えます。
 職場のメンタルヘルス対策には、もとより多面的な視点と手当が必要なものと存じますが、今回示された対策の方向性は、それらの基軸をなすものであると思います。この具体化により対策が推進し、不調者や自殺者が少しでも減ることを切に願っております。
 三柴委員からでございました。ご紹介させていただきました。 
○相澤座長 ありがとうございました。最初に資料1-1から進めたいと思います。これは現状でございますので、委員にはあらかじめお配りしていますので、何かお気づきの点がありましたらご指摘いただきたいと思います。資料1-1、労働者の状況、事業場の取組状況、メンタルヘルス不調の要因等、メンタルヘルス対策の強化についてです。
○尾崎委員 状況の部分はいいのですが、不調の要因の部分ですが、「長時間労働、深夜労働等の労働により、精神障害が発生する」という点は明確化されているのでしょうか。この部分は明確なエビデンスに則って、この委員会の議論が進んできたのでしょうか。
○鈴木労働衛生課長 WHOの作業関連疾患の中に、一部にはストレス関連疾患が作業関連疾患というふうなケースが確かあると思います。ここで作業関連疾患としなかったのは、そういう明確なメンタルヘルス不調というのは、行政がある意味便宜的に定義した用語でありますので、それとストレス関連疾患とか作業関連疾患と、集合で言うイコールとか、含まれるという概念ではなかなか記述できませんので、仮にこういう表現にしたわけです。例えばさまざまな労災の申請などで上がってくるものについても、単一の要因ではないというのは多々ありますので、エビデンスというより事実としてこういうことはあるのだろうというものです。
○尾崎委員 事実としてある。
○鈴木労働衛生課長 はい。
○尾崎委員 それはある意味ではエビデンスよりもっと強いのですが、明確な事実であろうというご指摘です。エビデンスのレベルには強い弱いがあるのですが、その事実ということは最も強いエビデンスだということだと思うのですけれども。それから先ほど申した精神疾患と言っても多様でございます。発症において非常に環境要因が強く関与するものから、それが非常に弱いものまであります。それから環境要因の関与という場合、発症後の話というのと、発症する前の話を同一にされては不適切だろうと思います。その点がこの文章、短い文章にまとめていらっしゃるので多分難しいのだと思いますが、私には合点がいきません。例えば長時間労働という話が出ておりますが、長時間労働が例えばうつ病の初発において、明確に関わっているという論文がありますでしょうか。
○鈴木労働衛生課長 これの、要因という言葉とかが適当でないということであれば、それは修正をいただければいいと思うのです。事務局の理解がそういう意味では少し理解というか表現が洗練されていないということであれば、適当な言葉をいただければと思います。ただ、作業関連疾患としての側面があるというご意見は、三柴委員からだいぶ以前ですがいただいていますので、それを更に吟味して、仮に認識としておいたものでありますので、ここは医学的に見て妥当な表現に書いていただいても結構でございます。
○尾崎委員 私は本委員会に参加するのが初めてなものですから、どういう議論になって、どういうデータがここで提示されて、この文章に表現されている結論に達しているかが分かりません。しかも来週、もう1回でこの会議が終わるという座長からのお話が先ほどありました。この文章はかなり大きなインパクトを持ちますので、私は来週本委員会に出られないものですから確認をさせていただきました。
○鈴木労働衛生課長 そういう意味では、何らかの論文的な意味でのデータを示したエビデンスということで、ここでご議論されたわけです。
○尾崎委員 是非そうしてください。方法論も私きちんと妥当性や信頼性のあることをと申し上げましたが、こういった精神疾患の発症に関わる要因に関する記述も妥当性と信頼性のある方法できちんとしたデータとして出たものだけを載せてほしいのです。
○鈴木労働衛生課長 それはまたご相談させていただきますが、この検討会の目的として、現状を正確に把握するといいますか分析して、それにピンポイント的に予防対策をとるということではありませんので、そこはご配慮いただきたいと思います。
○尾崎委員 この文章が誤解を招く結果を生み出し得るということです。突然すみません。
○相澤座長 よろしいですか。メンタルヘルス不調というのは、非常に広いものですから、例えばストレスがかかっているとか、うつ的なというのは作業が原因でなっているというのは欧米でもありますし日本でもありますので、ですからそういったものをここで全部議論する時間がありませんが。
○尾崎委員 とりあえず精神科医なものですから、精神疾患に限って私は話をしております。
○五十嵐委員 ここの「基本的には」というところに問題があるのではないでしょうか。職場におけるメンタルヘルス不調が、作業に関連したものがあるというのはあるのだろうと思いますけれども、基本的にそうだとは言えないというご意見ではないかと思うのですね。ですから尾崎委員に専門家のお立場でここの表現を加工していただいたほうがいいのではないかと思います。そのエビデンスが明確でないところを表現する表現をきちんとされたほうが。これは確かに、この表現ですと本当に職場におけるメンタルヘルス不調が基本的には作業と全部関係しているというふうに、見えてしまいますよね。ですから、今日、専門の先生方が何人かいらっしゃいますので、そういう誤解のないような表現に変えていただければいいのではないかと思うのです。
○下光委員 この部分ですが、私も少し違和感がありましたので、この文言については事務方で考えていただくというよりも、委員の中でいろいろご提案をいただいてエビデンスも含めた形できちんとした表現で書いていったほうがいいと思うのです。自殺のことが書かれていまして、その後、労災のことが書かれていて、そのあとにその要因としてということで、エビデンスの問題もあるのですが、これが両方にかかっているのか、労災のほうにだけにかかっているのかとか、その辺のこともはっきりしませんので、その辺もう少し整理をされたらいいかと思います。
○尾崎委員 そうしますと、正確な文章を起草することは、かなり時間を要する作業になりますので、次回1回でという話があったのですが、私には困難なのですが。
○相澤座長 次回1回ということではなくて、次回まとめを出してもらうということですから、それは1回になるかどうかは私は分かりません。この文言については委員の中から。
○堀江委員 産業医科大学の堀江です。私もこれまでのうち半分ぐらい出席していますが、これまで議論をしたことを繰り返し議論しているように思います。この部分は私は基本的にはこれでいいのではないかと思っています。エビデンスということですが、この頁の冒頭にあります労働者健康状況調査におきましては、ストレスを感じる労働者の割合が高いと書いてありますが、この調査のクロス集計を見てみますと、労働時間が長くなるほどストレスが強くなるという傾向がはっきり出ています。厚生労働科学研究の調査でも面接指導の対象となる労働時間が長い労働者の中でいちばん多いのはうつ状態の方です。もちろんそれが原因であるのか、結果であるのかという議論もあるのですが、こういった調査を基に現場の産業保健に携わっている先生方からしますと、こういった労働現場のストレスというものが、メンタルヘルスの不調に何らかの悪い影響を与えているということは多くの方のコンセンサスになっているのではないかと思います。それを起点にして予防対策を論じるということは、かまわないのではないかと思います。もしこの文章の中でどこをどういうふうに修正したらいいかということがあれば、そこのところについて議論をしたらよいのではないかと思います。
 もう1点ですが、2つ目の「こうしたことからメンタルヘルス不調においては、基本的に作業に関連した疾患として対応すべき側面がある」という一文ですが、社会制度の中で労働衛生の分野というものは職場や職業に関連したものを取り扱う分野ですから、この文章はそういう意味では正しいのではないかというふうに私は読みました。以上です。
○尾崎委員 第一に長時間労働、深夜労働等の労働により、これメンタルヘルス不調の悪化というのは、私には埒外なので分かりませんが、これは関係しうると思います。同時に、長時間労働、深夜労働等の労働により、精神障害が発生する場合があるとこの文章は読めますよね。精神障害はうつ病も統合失調症も、あるいは双極性障害も発達障害も含んでいるのですが、長時間労働、深夜労働等によって発生するのだ。要するに発症原因だということになります、その点に関して、明確な証左を、私は存じません。
○堀江委員 分かりました。「メンタルヘルス不調の悪化する場合」というところは、これはこれでよろしいということですか。
○尾崎委員 そうです。
○堀江委員 私もいまご指摘いただいた点についてはあまり意識して読んでいませんでした。その次の「精神障害が発生する場合」というところを削除したほうがいいのではないかと私も思います。
○尾崎委員 そういたしますと、「メンタルヘルス不調の悪化」という言葉が、何を定義しているのかというのが問題になります。「精神障害の発生とは関係がない」ということでしょうか?
 もう1つ申し上げます。発症に関しては、長時間労働や深夜労働との関係が乏しくて発症する人はいらっしゃいます。統合失調症や双極性障害、あるいは就労前から持っておられる発達障害の方がいらっしゃるのです。そういう方への対応も是非考えてください。加えて、就労上の負荷が、精神疾患発症後の病状を悪化させることも銘記しておきたいと思います。
○堀江委員 この文章は、「場合がある」という表現になっていますので、すべての事例がそうなるという意味の文章ではないと思います。
○鈴木労働衛生課長 少し整理させていただきますが、例えば自殺対策でも自殺が3万人を超えるという中で、警視庁では遺族などに思い当たる要因を3つまで挙げていただいています。その中で職場における要因という言い方、表現があれですが、そういうものが主たる要因といいますか、挙がってくるのが2,500人ということですが、正確に発症する原因を突き止めて、それが職場に関係なければ労働安全衛生法で対応しなくてもいいということではありませんのと、やはりどのような原因であろうが、たまたま全く原因がなくていま言われたようなことであっても、やはり職場というものはいろいろな影響を与えるというので、それに対する対応が必要ではないかということで、それも含めていま職場でできる予防なりを議論していただいていますので、ここで不適切な表現があってつまずくというのは本意ではありませんので、不要なものは削らせていただきますが、統計的な事実としては、職場が原因というのが挙げられる場合が多々ありますので、それを少しでも場の改善につなげていくためには、どのような方法があるかということでご議論をいただきたいと思います。表現については削るべきものは削らせていただきます。
○尾崎委員 是非そうしていただきたいと思います。もう1つだけ。本検討委員会の発足には自殺防止ということが非常に大きく関わっていると認識しておりますが、自殺企図者の方々の統計によりますと、気分障害が日本においてもWHOにおいても3割ぐらい。その次は統合失調症の方で20%~15%、そのことも是非お見知りおきください。
○生越委員 医学的なことのお話が出たのですが、法律的にいままでやってきた議論を1点確認したいのです。一般定期健康診断ということで、この議論というのは労働安全衛生法の中に組み込むわけですよね。労働安全衛生法はもともと目的は労働基準法と相俟って、労働災害防止することが主な目的であったはずですよね。労働災害というのは何かというと、この定義規定2条1項ですか、ありますが、労働者の就業にかかるそういう物理的なものとか、作業行動その他、業務に起因して労働者が疾病または死亡したことということになっています。そういう労安衛法の労働災害を防止するという大枠の議論の中で、健康診断をして職場のメンタルヘルスをするのだということは、これはその主目的として、もちろん健康の増進であるとかいう側面はあると思いますが、主な目的としてはここに組み込む以上は、労働災害の防止、つまり業務上のものそれはすべてとは言わないですが、それを前提にしているというふうに、この職場のメンタルヘルスという言葉は、そういうふうに理解していいのですか。事務局の方に教えていただきたいのです。
○高崎計画課長 確かに労働災害を防止するということで、もちろんそれで例えば不幸にして職場関連でお亡くなりになる方の数を減らすとか、休業者の数を減らすということも当然目的の中に入ると思いますが、最終的には労働安全衛生法というのは委員のおっしゃったとおり労働基準法と相俟って、まさに事業場における最低労働条件としての安全衛生の部分を担保する機能がありますので、そういう意味からしますと、まさに労働者が職域において、最低労働条件としての安全衛生を担保された形で働き続けていただいて、そういうことで社会に貢献していただくということも、目的なのだろうと思うのです。そういう意味では、もちろんその結果として、労働災害を減らすという場面で評価される部分がありますが、そういう意味では労働者の方の健康の保持あるいは増進されて働き続けていただけることを支援するという機能もあると思うのです。
○生越委員 その労働者が働き続けることを、なるほどそういうむき出しの労働災害の話ではなくて、ある種のパターナリズムというか、この話はやはり職場のメンタルヘルスと言ってしまうと非常に曖昧で、どれだけ事業主が業務外のことについて力を注がなければいけないのか。この話は実は医師からの、あとで議論が出ると思いますが、枠組みイメージの案のところで意見を述べるとかというところがありますよね。この意見の中味は何なのかということの解釈に関わってくると思うのです。
 つまり労働災害の防止ということであれば、それは労働災害を防止するような意見を言わなければいけないのであって、労働者個々に「あなた休みなさいよ」とか言ったところで、職場の環境がそういう環境でなければ、これは趣旨とずれるところは必ず出てくると思うのです。
 私もずっとこの検討会に参加させていただいて、ここは法律家として非常に気持ちが悪いルールになったのです。職場のメンタルヘルスというのは何なのかということは、そこはある種しっかり定義をして、別にそれは使用者側の合意は要ると思いますよ。私は業務外の労働災害のほかの部分もある種パターナリズムのような日本社会における企業の一体性みたいなものを確保するために、企業に踏み込んでもらうのだという話を前提にして議論をするのであれば、それはかまわないと思います。
 ですから、そこのところを曖昧にして入れてしまうと、例えば業務外の状況で、その企業に入って来て、最終的にチェックできずに悪化して、亡くなったときに、それは訴訟に発展しないかと言われると、発展する可能性が十分にある。判例が積み重なっていくでしょうから、法律実務においてそれがどう評価。特に予見可能性、因果関係の話になると思います。だから、そこはいずれにしても、医学的な枠組みは当然ですが、法律的にもどういうことなのか、この言葉をきちんと位置づけたほうがいいのではないかなというのが、私の意見です。
○高崎計画課長 いまの委員のご発言に異議を唱えるものではありませんが、労働安全衛生法の目的規定をご紹介しますと、この法律は労働基準法と相俟って、労働災害の防止のための危険防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等、その防止に関する総合的、計画的な対策を推進することにより、なのですが、いまの部分は手段でして、目的のところは職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とするという形になっていますので、そういう意味で。
○生越委員 そちらにかかっているのですね。
○高崎計画課長 結果として労働災害の防止に貢献するということもあるのでしょうが、労働災害の防止に直結しなければ。
○生越委員 私は直結する必要はないと繰り返し申し上げています。ただ、法律家として労働安全衛生法に位置づける以上は、目的規定と定義規定との関係と、どういうふうにこの健診の話をビルトインしていくのかというのは、最終的にほかの委員もおっしゃるようにこの検討委員会の結果が外に出ると影響力が大きいですから、ここのところは曖昧にすべきではないというのが私の意見です。もちろん労働災害の防止以外に目的があるのは私も認識しています。
○平野安全衛生部長 生越委員が言われるように、もっと私ども整理をしなければならないかもしれませんが、現時点ではこういうふうに整理できるのではないかと考えています。それは、現在健診項目で例えばコレステロールとか、脳・心等疾患につながる項目については既に義務づけています。そういうものが異常がある人が更に過重労働で長時間働いたりすると、それが非常に悪くなって、いわゆる過労死、労災の認定、労働災害の発生につながってしまう。
 そういうことを予防するために健診項目として、事業者に例えばコレステロール値だとかいうものを実施づけている。今回のメンタルの問題につきましても、メンタルに不調が少しあるという人たちが、例えば更に長時間労働を受けた場合、そこに非常に負荷がかかって、それが本当の主原因で、例えば自殺とかいう不幸なことになってしまったら、それはまさに労災認定もされるでしょうし、労働災害ということになる。そういう観点でメンタル面での健康チェックといいますか、そういうことについても安衛法上に位置づけてはどうかと考えているものです。
 そういう観点で、先ほど医師の意見についても、それは当然就業上の措置とかいうことが中心となってきて、例えば借金を返すとかそういう話にはなってこないというふうに理解しています。
○生越委員 非常に理解できました。そういう位置づけで議論をしているのですね。
○平野安全衛生部長 そういうことでございます。
○相澤座長 ありがとうございました。基本的なことでございました。
○石井(正)委員 その次の行ですが、一方でメンタルヘルス不調は、その取扱いについては個人情報の保護等を含めて、極めて慎重な対応が必要とされるという項目は、先ほど尾崎委員のお話にコメントとしてありますね。医療関係者は守秘義務を課せられているわけです。それ以外の守秘義務というのが別に担保される必要があると言っているのかどうか、そこのところは非常にフワッとした言い方だと分からないのですね。
○鈴木労働衛生課長 事業者が就業上の措置を決定する際には、既に以前の資料で提供していますが、産業医が最低限の情報なり、加工して事業者に提供するといっても、やはりメンタルに関してある程度分かるわけです。
 ですから、何が言いたいかといいますと、例えば一般の身体疾患であれば肥満からくるようなものについて、労働者が運動をしない、あるいは食べ過ぎたという情報について、事業者がそれを把握しても、比較的ですが抵抗感がない。けれどもメンタルに関しては就業上の措置を決定する際に、たとえ事業場の中に原因があるとしても、例えば上司との人間関係等についてで抑うつ状態になっているという情報が知られるのは、やはり抵抗があるということで、守秘義務が外に漏れるのはもちろん問題外ですが、労働安全衛生法で規定された情報のやり取りの中でも、メンタルに関しては更に慎重な取扱いが必要ではないかということを、ここで表現しています。
○石井(正)委員 あまり納得できないですね。結局フィジカルならもっとラフに取り扱っていいというふうに聞こえるのですが、そんなことはないのだと思うのです。
○鈴木労働衛生課長 先ほど言いました偏見、誤解等がまだある中で、事業者にそういった不利益取扱い的な処分をさせるようなきっかけにならないかということです。
○石井(正)委員 少し時代を遡れば、水俣であるとか、イタイイタイ病であるとかというものは、職場環境とも関連したり、生活環境とも関連しましたが、そういう中でドクターというのは非常に困難な立場に追い込まれるわけです。産業保健からすれば働いてもらう義務、働いていただくように何とかしなければいけないと思うけど、原因不明の病気がどうもあるとか、理解できない訴えがあるとかいうところから始まるわけです。
 その担当したドクターは本当に困難な状況に追い込まれるのが最初なのです。だから、フィジカルだからそういうものはフワッと言っておけばいいとか、そういうのは全然違うと思うのです。メンタルこそフィジカルよりずっと強いものだという言い方は医学的には、それはそういうふうに言っても、ではどうすればいいかという答えが出ないような気がする、例えば性病であるとか、いろいろなものも全部そうです。では、そういうものはフィジカルだからオープンにしていいかと、そんなことはないですよ。医療関係者は守秘義務を課せられているのです。ここでは誰に対して、「個人情報の保護等を含めて極めて慎重な対応が必要」という文言は、誰のために書いているのですか、そこを教えてください。
○鈴木労働衛生課長 先ほどの繰り返しになるのですが、別に身体疾患の比較ということでありますので、もちろん身体疾患に関しては何でもかんでもということではございません。例えば自覚症状をチェックしていただくにしても、いずれ産業医を通じて事業者に伝わるということを考えると、そもそもそこで正確な記載をしていただけるかどうかというようなこともありますし、ここは結論から言えば、労働者のためにより慎重な情報の取扱いが必要ということを、入念的にいままでの議論の流れからすると、このような表現かなと。
○石井(正)委員 誰に言っているのですか。産業医に言っているのか、それとも企業側に言っているのか。
○鈴木労働衛生課長 これは今の健康診断の枠組みでやるとなると、その流れ、仕組みについて言っているだけです。ですから、産業医により何か守秘義務を課せるとかいうことではなくて、仕組みとしてもう少し工夫が必要だということを言っています。
○相澤座長 ちょっとストレートに言えば事業主ですよね。これの対象と言いますか、よく理解をしてもらいたいのは事業主でしょうね。
○石井(正)委員 だったらそう書いてくださいよ、わかりやすく。
○中村委員 私も今日初めて委員に入れていただいたのですが、私は精神神経学会から推薦ということで、一言お話しさせていただきます。今回の試みがやはり精神障害者の差別とか、企業からのこういう患者さんの排除に絶対につながらないような仕組みにしていただきたいと思います。私はまずは企業のトップの方の精神疾患に対する意識改革が必要ではないかと思っています。
 精神科医としては三野先生、南先生、尾崎先生が話されましたが、結果的には案外自殺をされた人の1カ月前には、精神科医が診ていたというようなお話を私は聞いたことがあります。それこそエビデンスがあるかどうかは知りませんが、そういうことを考えると、やはり精神科医として、精神神経学会としても、何らかの役割を果たさないといけないというふうには認識しています。日本精神神経学会では、平成21年度から産業精神保健部会を立ち上げたところです。現段階で企業におけるメンタルヘルス対策が十分に機能しているとは、まだ言えないのではないか。
 それと先ほどから出ました地域産業保健センターとか、私もよく知りませんでしたが、地域・職域連携推進協議会、こういうものの活動が相当活発にならないと、日本の企業の大部分を占めている中小企業では全く、それと健診がうまくいかないと、メンタルヘルス対策がうまくいかないのではないかというふうに思っています。ですから、ツールとしてはストレスをどのぐらい、疾病というよりもストレスへの気づきを促すような何かツールのようなものでしたら、私は可能ではないかと思っています。話したいことはいろいろありますけれども。
○鈴木労働衛生課長 先ほど就業上の措置を言いましたが、その前段として事業者には健康診断結果の保存義務がございます。その様式の書きぶりについても特に、様式の型はありますが、記述の仕方までは定めていません。もし例えばメンタルの項目、自覚症状なり何かに入れるとしても、それが健診機関によって、そのまま事業者の保存する書類に記載されるわけです。ですから、その仕組みはそういう意味で誰に課したか。行政に対してそういう仕組みについて、ちょっと考慮すべきだというふうなご意見と認識して書いたのが、表現ぶりが産業医なり保健師さんが更に今後、個人情報に、守秘義務に気をつけるべきだというふうにとられたのかもしれませんが、そういうことではございませんので、よろしくお願いします。
○五十嵐委員 今日は5回目の会議です。1回目、2回目にそのあたりの問題を相当議論しました。それはなぜかと言いますと、やはりメンタルな不調をスクリーニングするような項目が、仮に加工して事業者に行った場合でも、あるいはそのままの生データが行ったらもちろんのことなのですが、要は最終的には労働者に不利益が生じる可能性があるという危惧があるからです。それの最大たる不利益が解雇ということにつながるということを考えると、とにかく慎重にしなければならないという議論は、相当いたしました。よって、個人情報保護においては事業者の責任ということもありますが、例えば健診でやったプロセスにおいてもという、すべての過程においてこれがかかってくるのだろうと思います。ですから産業医や産業保健師等、医療職が更に配慮をし、すべての情報を開示する場面、あるいは要指導とする表現においても、極めて慎重でなければなりません。
 その場合、では、フィジカルなデータとメンタルなデータがどう違うのかというのがありますが、実質中小零細企業などの実情では、健診データがそのままボンと置いてあるような状況です。そのような中でフィジカルなデータに比べると、メンタルなデータについてはやはりまだ偏見があったり、や理解がされないところがあって、極めて慎重な対応が必要であるというのが議論の結論だったかと思うのです。同じ議論がまた初めからとなってしまうと、先に進まないので、その辺は多少個別に事務局とも合意をとっていただきながら、議論を先に進めてほしいと思います。本日は、日本産業保健師会としてももってきた意見があるものですから。もちろん指摘はしていただきながらということですが。
○相澤座長 よろしいでしょうか。あとでまたご意見をいただいて。
○石井(正)委員 あとでということでいいですね。
○相澤座長 まだ1-1ですよね。1-2に進ませていただきますが、これは一般定期健康診断とストレス調査の現状等ということです。一般健診におけるメンタルヘルスに関連した取組みの現状、2番目が一般健診における事後措置の仕組みについて、3番目がメンタルヘルスに関する調査表ということです。これについて何かお気づきの点がございますか。
○下光委員 「3.メンタルヘルスに関する調査表」のところで、職業性ストレス簡易調査表のご紹介をいただいているのですが、「自覚症状に早期に気づくことにより、メンタル不調の発生防止、治療に活用することを目的として作成されている」というところなのですが、この調査表はご承知のように、職場環境などのストレッサーと、それによるストレス反応と、もう1つ修飾要因としてのソーシャルサポートを同時に測定するという特徴を持っており、ストレスの症状だけを把握するものではなくて、労働者のストレスの状態を総合的に把握するというような文言に少し変えていただければということなのです。「労働者のストレス状態を職場環境も含めて総合的に把握することにより」、というような文言に変えていただければ、正確な表現になるのではないかなということです。是非お願いします。
○鈴木労働衛生課長 全体の事実関係を書くつもりで、認識ということではありませんので、そこはまた個別にお伺いしたいと思います。
○相澤座長 ありがとうございました。それでは資料1-3ですが、産業保健スタッフの活動と外部の支援機関の現状です。1が産業保健スタッフの活動、2が外部の支援機関の現状、(2)には地域産保のこともあります。よろしいですか。
○石井(正)委員 地域産業保健センターに関しては先ほど申し上げたように、むしろペースはダウンしているわけです。予算も減ったり、仕分けによって地域産業保健センターを受けない医師会が出てきたりという状況に、現状はあるわけです。
○鈴木労働衛生課長 途中で申し訳ありません。21年度から22年度にかけて予算は増額しています。それから仕分け作業では産業保健推進センター事業と重複する部分については、整理を図るようにという仕分けはいただきましたが、最終的なものはまだこれからですし、事実としてまだ予算が減っていることはありませんので、ご理解いただきたいと思います。
○石井(正)委員 単年度でなくて、この中期的な状況はそうでしょう。
○鈴木労働衛生課長 少なくとも20から21、21から22にかけて増額しています。
○石井(正)委員 そうですか。
○鈴木労働衛生課長 ただ、実績に応じて傾斜配分はやらせていただいていますし、今回、都道府県単位の契約にした場合に、そこも裁量権は都道府県医師会等にお願いしています。
○石井(正)委員 いずれにしてもこれではやっていられないという話が、現場からは出てきているのです。
○鈴木労働衛生課長 貴重なご意見として承ります。
○相澤座長 もう少しやるということでの説明ですから、よろしいでしょうか。
○市川委員 今の件に関連してですが、たしか前回だと思いますけれども、地域産業保健センターの方からヒアリングをしました。細かい数字は覚えていませんが、いま、対象となる中小企業の数と、そこでやっているスタッフの数、認知度といったことから考えると、ごくわずかな企業にしか使われていないという報告が、確かあったと思います。もし本格的に地域産業保健センターを活用し、中小の方々にもっとカバレッジを広げて活用していただくとなれば、とてもじゃないけど対応できませんというのが、前回の地域産業保健センターの方のご報告ではなかったかと私は記憶しています。
 そういう意味で、先進的な大企業であれば、自らの取組みの中でできることがあるけれども、どうしても漏れてしまうのは50人未満の小さな所です。次のペーパーで先ほど尾崎先生がおっしゃっていましたが、費用がかからないというのは誰の費用がかからないのかが問題です。要するに中小ではなかなか自ら費用をかけられないとすれば公的な機関の費用でする。何か取組みをするのに費用がかからないわけはないのですから、それが中小の負担にならないように、公的な機関がきちんと整備をしてということであれば、現状として足りてないのではないか。そして認知度が低いのではないか。これはヒアリングにはっきりありましたから、そういったことも書いて必要性を強調すべきではないかと思います。
○鈴木労働衛生課長 ありがとうございます。これはあくまでも骨子を書いてあるだけですので、その中で現状としても予算が不足している。あるいは、たしか前回2割程度というような数字を記憶していますが、そういった事実としてのデータ提供はありましたので、ここで書かせていただき、今後の課題については案がどうなるか決まらないと、何を課題とすべきかも出ませんので、そのときにまたご意見をいただきたいと思います。現状として不足しているカバー率の件については、盛り込ませていただきます。
○相澤座長 ほかにはよろしいでしょうか。
○岡田委員 この件について現在の産保の活動から見て、地域の産業医というものを新しく創設しない限り、50人未満の事業所の産業保健活動はうまくいかないと私は思っています。受け身よりも、むしろ積極的な活動をしなければいけないと思っていますので出向いて行くとか、そういう新しい形の体制をとらない限りは、メンタルも身体的な疾患についても、今後は非常に難しいのではないかと思います。地域産業保健センター事業の活性化ということであれば、お1人の先生が地域の産業医となっていただいて、そういうところを活性化する。もしくは健康増進するために予算を注入していただく。それは国が雇用するのか都道府県が雇用するのかわかりませんが、中小企業に月々少しのお金を出していただいて、そういうシステムを作れば、この健診のフォローなどもできるのではないか。そういうことをご提案したいと思います。
○相澤座長 よろしいですか。それでは資料1-4ですが、健康診断における労働者の個人情報等の取扱いです。1は個人情報の取扱い、2は不利益取扱いです。いかがでしょうか。
○堀江委員 先ほども議論がありましたが、資料1-4の1の現状というところに、平成16年10月29日付1029001号の労働基準局長通達で、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」という文書も含めていただければと思います。
 この通達の中に2つほど重要なことが書いてあります。「診断名、検査値等のいわゆる生データの取扱いについては、その利用に当たって医学的知識に基づく判断等を要することがあることから、医師や保健師等の看護職員に行わせること」という点、もう1つは、「産業保健従事者以外の者に健康情報を取り扱わせるときには、利用目的の達成に必要な範囲に限定させるよう、必要に応じて健康情報を適切に加工した上で提供するなどの措置を講ずること」という点です。精神障害を含めた健康情報の取扱いにおいて、この2つのことが本当にきちんと達成されれば、医師が絡んだ上で精神科の専門医等とのパイプ役になって、事業所に対する措置が講じられる道筋ができるのではないかと期待しています。ただ、これは通達ですので、先ほどもありましたが、通達の内容がきちんと実施される体制を担保していくことが重要ではないかと個人的に思っています。
○相澤座長 では加えていただくように、よろしいでしょうか。ほかにはございませんか。いいですか。それでは、いよいよ本題のところにいきます。これまでの議論の流れとしては、新聞報道等で出ていましたけれども、自殺・うつ病等の対策プロジェクトチームからの検討事項の提示ということで始まっていました。現状分析あるいはご意見をいただいて、現状分析では一般定期健康診断の取組みの実態、事後措置の対応、先進事例等を含むことを検討してきました。また各種ストレス調査票の目的や特性についてもご議論いただいて、個人情報の保護、不利益取扱いの現状ということで、いま資料にあったような検討をしてきました。
 主なご意見としては、労働者のプライバシーに十分な配慮が必要であること。またメンタルヘルス不調の発生防止について、一次予防ですけれども、その充実を図るべきであるというご意見が多かったと思います。また産業保健活動によって基本的な対応が行われるべきであるというご意見も多かったと思います。そういったことでだいぶ修正というか、新たな枠組みとして資料1-5にありますように、一般定期健康診断の仕組みに含まれる、一次予防的な流れを活用した枠組みの導入が必要である、というご意見が強かったと思います。労働者の気づき、あるいは面接指導の推進ということが挙げられていて、1-5のような案が出てきました。これは先ほど読んでいただきましたので、もう一度ご一読いただいてご意見をいただければと思います。
○尾崎委員 繰り返しになりますが、2に関して私は反対です。
○中村委員 私も費用が過大に負担とならないというのは、ちょっとおかしいと思います。これは企業にとってという意味ですか。
○鈴木労働衛生課長 はい。安衛法では健診はすべて事業者負担でやっていますので、先ほどの研究的なものについて、行政がどのようにするかとか、あるいは労災特別会計の中で地域産業保健センターとか産業保健推進センターといった支援は、また別の話ですけれども、今回、この枠組みに当たって大きな事業者負担を生じるのは、現実的ではないのではないかということで。
○中村委員 しかし、わざわざこの文章を入れないといけないのですか。
○鈴木労働衛生課長 ご議論いただければと思います。これは、これまでの議論を踏まえて書いたというよりも、いくつか論点的なものもございますので、これからまさにご議論いただくということです。
○石井(正)委員 ですから、1もそうですし2も主語がないのです。主語がなくてフワッと書いているから、どうにでも読めてしまう。「あなたは」を省いている。その「あなたは」の部分がないから、どうにでも読めてしまうのは問題だと思います。
○相澤座長 全体的なことなのでしょうね。事業者、産業保健従事者を含めてね。
○岡田委員 先生がおっしゃるとおり、これは例えばメタボの検診のときでも経団連から、腹囲測で150円は高すぎるという議論があったわけです。中小規模事業場では、1人の産業医に月に1回来ていただくのも大変だし、とても法定外健診項目を増やすことはできないということで、例えばこういう健診が入ったとしても、それに費用がかかるのであればおそらく実効性に欠けてくる。同じやるのだったら、中小企業に実行してもらわなければいけないと私は思います。そうすると150円であれだけ議論されているのですから、おそらく費用の面でどこが負担する云々がありますけれども、その辺は議論しておかないといけないと思います。
 例えば、地域職域連携モデル事業評価委員会での議論では、保健所で健診をしたのですが、地域の保健師が日曜日と就業時間後に行ったら中小企業は受け入れてくれたのです。勤務時間内に来てくれるなということがあって、労働時間の損失が企業にとって非常に問題だったのです。なおかつ無料でやってくれるのだったらいいという話で、それでうまくいったという経緯があるのです。そういうことをいろいろ考えていると、やはり中小企業に浸透させて、いちばん問題の中小企業で働いている方にとなってくると、保健師の活用や保健所の活用、それからできるだけ経費を節約しない限りは、結局、絵に描いた餅になってしまうと思います。
 産業保健推進センターは無料で相談もやっていますし、事業主の方も来やすいという形で、1人が1時間でも2時間でも相談は受けられるのですが、実際、それにお金がかかるとなると、大企業には浸透したとしても、50人未満の事業所でこれが本当に浸透するのかとなれば、極めて大きな問題点で、私は課題になるのではないかと思います。やはり実効性というものを求めない限りは、働いている方のメンタルヘルス、健康の確保は難しいのではないか。どうしても現場の意見を聞いた限り、経費の問題、時間の問題を抜きにしては健康の確保というのはできないのではないかと私個人としては思っているのですが、いかがでしょうか。
○尾崎委員 先ほども丁寧で細やかな保健指導と申し上げたと思いますが、丁寧で細やかな保健指導がないと、中小企業でも大企業でも労働者の方にとっては、不適切に扱われるということになってしまいますから、かえって偏見を助長してしまうし、労働者の方の不信感を煽ることになりかねません。拙速な対応はやめていただきたいと思っています。
○鈴木労働衛生課長 この1-5、1-6をご議論いただくに当たって、ひとつ補足説明します。前回、五十嵐委員も含めて、ストレス解消は先ほどのような少し重装備なものをというのは、たとえ普及型と言っても、一般健診に組み込むのはなかなか抵抗感があり、いろいろな面で厳しいというご意見をいただきました。健診と言うと、一般的に二次予防で早期発見、早期治療ですが、健診の中にも一次予防的な要素があります。そこの仕組みを使って、まさに基本的な方向性を満たすような形で1-6の案を作りました。
 ただし、当初、現状を把握したり分析してきた先進事例とか、いわゆる健診機関で既に行っているものとか、岡田委員に紹介していただいた事例とか、ストレス簡易調査票をどう活用できるか。これについては本日、尾崎委員がご提言されたような形もありますので、そこは石井委員が言われたように、いま目の前にあるものをどう解決するかについて、今、できる組合せとしては1-6ではないかという意味でご提示しました。ただ、先進事例についてどう普及していくかについては、またご提言をいただいて、それについて次回以降の文章の中に入れることが必要ではないかと思っていますが、現時点で事務局が、それをどうすべきかは持ち合わせていませんので、書いていないということです。
○尾崎委員 いまも一次予防という話があったのですが、私はずっと疑問を感じています。一次予防というのは、メンタルヘルス不調ではなく精神疾患を考えていらっしゃると思いますが、精神疾患の発症を予防するという話だと思います。一次予防に資するような、要するに何が発症の原因なのかというのは、まだ十分にわかっていないのが現状です。発症機転がわからない段階で妥当性のある一次予防はできないと思います。私が関与している事業所でも、「一次予防の方策はわかりません」と私は言っております。現時点では、「二次予防、三次予防をやりましょう」と申しております。先ほどの新日鐵の話でも、三次予防をまず第1にやっていますというお話でしたね。二次予防、三次予防でまずできることをやるのが先決で、この方策が一次予防ということを念頭に置いているのであれば、私は無理があると思っています。
○岡田委員 企業に勤めている産業医として、法務チームといろいろ相談をするのですが、司法の判断というのは、業務に内在する危険性が現実化したときに賠償責任が発生してくるとしています。だから、それが予見できる、推認できるのであれば危険予知の義務があって、企業に結果回避の義務がある。これは私たち産業医の義務の1つとしてやっているわけです。いま先生がおっしゃったようなエビデンスが有るか無いかだけでなく、予見し得るものであれば予防しなければいけない立場に企業は置かれている。それが結果として1億、2億の賠償額が出ているということで、これは働いている方にとっても不幸なことです。企業にとっても問題がある。だから私たちはその両方を予防するという形であれば、疑わしきものに関しては介入して予防していく。そういう立場でいかなければいけないのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。
○尾崎委員 二次予防と三次予防に関しては、おっしゃるとおりだと思います。一次予防は方法が不明です。間違った方策をとれば、労働者の仕事をする権利、労働権の侵害をも招きかねないことで、それはやってはいけないだろうと思います。だから、一次予防に関しては軽々にここで取り扱ってほしくないと私は思っています。
○五十嵐委員 尾崎先生の最初のプレゼンは、私も椎葉委員と同じで本当に産業保健師の動きもよくわかっていただいていて、非常に心強いプレゼンをいただいたと思いますが、ここで言う一次予防というのは、先生は精神領域の専門家でいらっしゃるので、そのエビデンスにとてもこだわっていらっしゃるのだろうと思いますけれども、いまの岡田委員のお話に付け加える形で意見を述べさせていただきます。私も産業保健現場に24年間いて、例えば連鎖的にうつ病がどんどん出てくるような職場があったときに、その職場の潜在的なリスクが何なのか保健師も職場診断等をいたしますので、職場の問題を見たときに、例えば人が足りないとか、職場の仕事の形態に問題があるというところを提案し、職場で改善してもらうと、メンタルヘルス不調の新規発症がなくなることを経験的に感じています。そこで何が明らかになっているのかは、おそらく科学的にはまだ不明確なのかもしれませんが、ただ、対策として潜在的なリスクがそこにあるとした場合に、医療保健専門職や職場の人たち、経営部門も含めて職場形態を変えることにより、非常に生き生きと仕事をして、病気の発生が止まったりすることは経験的にあるのです。
 それは、精神科領域からみれば一次予防と呼ばないとおっしゃるのかもしれませんが、ただ、ここで言うメンタルヘルス対策というのは、病気の人を早く見つけて、早く医療機関につなげるということではなく、職場環境としていかにストレス度を少なくして、みんなが生き生きと働ける職場に持っていくかというところを、一次予防と呼んでいるので、それをなくしてメンタルヘルス対策はあり得ないと思います。産業医の先生もそうですが、私たち産業保健師は個別を通じて、最終的にその職場のあり方や働き方に介入し、初めて全体的な車の両輪のように動いていきますから、ここは一次予防という言葉を使って、職場改善につなげるべきではないかと思います。
○尾崎委員 それではメンタル不調とすべてしていただいて、精神疾患は外していただくのが妥当かと思います。精神疾患と言われると非常に抵抗があります。精神疾患に関しては、一方できちんとしたエビデンスが今までありますから、精神疾患と混同してもらうと困るのです。我々精神科医にとって「メンタルヘルス不調」という言葉は耳慣れず、その定義が曖昧に感じます。
○鈴木労働衛生課長 言葉の定義については、確かにメンタルヘルスの指針の用語解説のときに「疾患」も入るようになっています。ただ、今回、疾患の一次予防ということになると、まさにご指摘のとおり何が要因かわからないのに、そういう方の早期の徴候を見つけて一次予防につなげるというのは、エビデンスの面でもなかなか難しい。いま尾崎委員が言われたものと目的は一緒ですので、表現ぶりは更に慎重に検討させていただきます。
○北村委員 鈴木課長のお話は、そうなのかなとは思うのですが、メンタルヘルス不調から精神疾患を除くと、何が残るのですか。要するに精神疾患の一次予防ということは外すわけでしょう。そうすると、あとは何が残るのですか。
○鈴木労働衛生課長 この案で各関係と意見交換した際に、明らかに精密検査に行くべき方は、きちんと対応すべきではないかというご意見をいただきました。もし疾患とわかっているのであれば、それは一次予防の中で対応するものではないのかなという意味で、いま申し上げました。
○尾崎委員 一次予防はメンタルヘルス不調、精神疾患の二次予防と三次予防はきちんと実施する。そのことを私はここで決めていただきたい。二次予防と三次予防は精神疾患です。
○北村委員 メンタルヘルス不調というのは、ますますわからなくなったのですけれどもね。
○鈴木労働衛生課長 行政的には今のところ、精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある、精神的及び行動上の問題を幅広く含むものを言うということです。
○北村委員 そこから精神疾患を除くわけですね。
○鈴木労働衛生課長 厳密な意味で一次予防、二次予防で言えば、確かに厳密な一次予防的に対応するのは、いま、ご提案している枠組みでは厳しいものがあろうかと思います。
○生越委員 ですから、先ほど職場のメンタルヘルスとは何かという話は、法律上、どうなんだという話をしましたけれども、医学的にも法律的にも、どの言葉をどういう意味で使うのかを、一度整理すべきだと思います。過去に通達も出ていますから、出してしまったものはさておいて、そこで議論を深める必要があるのではないかなという気はしますけれども、いかがですか。
○椎葉委員 いつも会議でグルグル回っている部分があって、またグルグルになっているようなイメージを持っています。この会議が始まったときは、スクリーニングを法的根拠に入れるかどうかということだったかと思いますが、ストレスにしても精神疾患にしても、いずれにせよ私は、法定項目にストレスに関連した項目を入れることに関しては反対です。
○相澤座長 ほかには、いかがでしょうか。メンタルヘルス不調の定義ということになってきましたが、いま、おっしゃったことでいいわけですね。考え方としてはそれでいくこと。
○堀江委員 2つ申し上げます。1つは、第1回の会議を私は欠席したのですが、産業保健の分野の専門職が集まる日本産業衛生学会という学会があって、本検討会として、そこの意見を聞いてはどうかという意見があったと伺っています。たまたま6月に日本産業衛生学会の理事会があり、その際、学会の中の一組織である産業精神衛生研究会から学会の理事会宛に要望書が提出されました。その中では、新聞報道等で言われたように、健診の中にうつのスクリーニングを入れることについての懸念が、多角的に述べられていました。うつのスクリーニングをするという方向については、学会としても、まだ専門職のいない産業現場においてスクリーニングを実施するのは難しいと判断しています。それよりも職場のメンタルヘルスに関する教育、啓発活動を充実する。あるいは事業所でストレス対策に関する措置を充実させる。あるいは個人情報の取扱いを注意する。こういったことを先にやらないと、なかなか難しいという議論を理事会でもしています。ただ、現在の検討会における議論というかこれまでの議論は、概ね望ましい方向に向いているのかなというふうに私は感じているところです。
 ただし、言葉の問題は最初から私も気になっています。精神障害について産業保健で何かをしようというのは、私は無理があるのではないかと思っていました。職場における心理的なストレスはいろいろな形で職場に存在すると認めざるを得ないと思います。精神障害に対する対策ではなく、心理的なストレスに対する対策については、きちんと産業保健がやっていかなければならないことであると思うのです。それをここで一次予防と呼ぶべきかどうかわかりませんが、私どもはそれを一次予防と理解して、ストレス対策をすることを今後の対策の中に入れるということには賛成です。
 もう1つは、もし、既に精神障害等を発症している、あるいはここで言うメンタルヘルス不調でしょうか、そういった状態にある方の職場適応を促進させていく。そういったことが、この対策の中に盛り込まれていくのであれば、日本産業衛生学会としても納得がいくのではないかと思いますし、私としてもそういう方向に賛成しています。
○尾崎委員 うつ病学会では、いま学会という話が出ましたので申し上げますと、私の意見に関して、ワーキンググループの10人ほどのメンバーにメールで何度も回し、かなり意見を集約してこれを出しています。最終的な結論としては最後の頁のとおりで、先ほどから何度も申しておりますが、方法論がまだ確立していない、人材がいない段階で進めるのは待ってくださいということです。これから方法論をきちんと詰めていただく。人材を育成する。そのことによって今後どうするかを決めてください。ただし、メンタルヘルスに対する対策をきちんとしていくことに関しては賛成しています。そこのところは賛同しておりますが、この法定健診項目に入れることに関しては待ってください。
○中村委員 私も尾崎先生と全く同じ立場の人間ですけれども、少なくとも例えば大企業と中小企業、あるいは都会と地方、そういうところでのモデル事業みたいなものを、まず考えたほうがいいのではないか。実際に全員にやるというのはなかなか難しいのではないかと思っています。産業衛生学会は、必要ではあるけれど今は時期尚早ということだと思いますが、精神科医として何かやらないといけないということは私も思っています。
○鈴木労働衛生課長 椎葉委員が言われたように、当初は言葉の問題と分科会から振られた表現で、我々事務局も二次予防的なことを想定して検討を始めたのですが、先ほど座長が言われたような議論の流れの中で、精神障害を二次予防的に健診するのは技術的に難しく、スタッフの問題やエビデンスの問題がある。ただ、現実に起こっていることについて、いまの一般健診の枠組みを使って少し問診の聴取内容、その後の産業医、保健師の対応によって有害要因というか、職場環境でストレス等のかかる有害要因を除去するような産業保健活動ができないか。そういうふうに議論はいっていると思いますので、その基本理念をこれは書いたつもりです。それを修正していただき、かつ、1-6もそういうつもりで書いたということですので、いまのご意見あるいは先ほど堀江委員が言われたご意見が、まさにそういうことだと思いますから、矛盾はしていないと思っています。
○五十嵐委員 1-5と1-6の両方に係ると思いますが、前回の会議で私は保健師の役割ということを申し上げました。メンタル不調を把握するには、タイムリーな相談の中で見つかるのであって、1年に1回とか2回、そこを縦割りにして何かメンタルチェックなどをして見つかるというものではないと思っています。実は日本産業保健師会にこの話を持って帰りました。先ほど尾崎先生がおっしゃったように、人材を評価していただくためには何か取っ掛りが必要です。例えば先ほど鈴木課長からもお話がありましたが、健康診断の中で自覚症状を聞くことになっていて、私は内閣府の自殺対策推進会議の委員もしていますけれども、行政のほうでは既に富士モデルにみられる睡眠キャンペーンということで、うつ病のスクリーニングとして睡眠をチェックするのは一般的にされています。そのモデルを考えると、気分が優れないとか落ち込むというのは非常にデリケートな聞き方ですし、問題もあるということであれば、例えば睡眠や食欲、あるいは過重労働にも関係してきますが、疲れがとれにくいとか、いくつかそういうフィジカルなところを聞いて、そこから何かチェックがある人は必ず産業医や保健師に面談をするという仕組みが考えられルと思います。
 何が言いたいかというと、先ほど椎葉委員も言われたように全員面談が意味を成しているということです。その話の中で労働者の体調に何かあったときに、この人たちに相談すればいいという関係性がそこでできることが重要です。その後、継続的に労働者のニーズに何かあったときに、そういう相談する基盤が労働者の中で脈々とできていくところにつながるのではないか。そんな議論がありました。
 1-6では、事業者に出す表現と本人に返すものと分けるということがあり、これがうまくいけばいいですが、先ほども申しましたが、私が中小零細企業を回っていると、健康診断の票が衛生管理者の机にバンと置いてあるのをよく見ます。そういったようにいくら縛りをかけても、そのような状況にあっても例えば睡眠や食欲、疲れなど、それでさすがに解雇につながることはあり得ないのではないか。むしろ自覚症状をきっかけに保健指導につなげていく仕組みの中で、考えられるのでないかという議論がありましたので、今日はその議論も報告させていただきます。
 日本産業保健師会の中であったのは、いま地産保の話がありましたけれども、以前、栗原先生がおっしゃったように、健診機関の中にも保健師がいます。そういう地産保が行き届かない企業でも、毎年、健診機関の同じ人たちが関わっていく仕組みがあれば、そういう労働衛生機関にいる保健師や産業医が、担当した企業を丁寧に診ていくことも可能になってくるので、そういった幅広い仕組みを考えるべきではないかという意見が出ました。
 先ほど尾崎委員から、1-5の2は反対ということで、私も一部賛成、一部反対という気がするのですが、メンタルヘルス不調の一次的把握で、要するに何かスクリーニングするのにお金をかけるのは反対です。私も企業にいましたので企業の立場はよくわかるわけですが、一方で、それをフォローする人材というのはお金をかけていかないと、これはいくら自前でと言っても難しいのです。それは事業者が負担するのか国が負担するのか、大企業と中小企業でだいぶ変わってくるとは思いますが、そういったことも含めて2のところは短絡的な発想にならないような表現にしていただけると、ありがたいと思います。
○北村委員 五十嵐委員の発言と関係ないことを申し上げますが、先ほどの議論ですと、要するに精神疾患のスクリーニングはやりませんという方向に、話はいっているかと思います。そうだとすると、この4の「事後措置が適切に行われるよう」云々というのは、表現としてちょっと問題だと思います。というのは、病気であることがわかったときに、例えば業務負荷を軽くするとか休ませるとか、そういう措置をとるのが事後措置かなと思うからです。
○鈴木労働衛生課長 これは医師の意見聴取や、その後、必要に応じて保健指導をやるとか、そこも含んでいます。就業上の措置という意味での事後措置だけではありません。ですから、いま身体疾患でも健診結果の情報だけでは不十分な場合には、医師に面接をさせることができますので、そういうことです。ですから、それは例えば他の項目にチェックが付かなくても自覚症状で長い間眠れないとか、そういうものがあって事業者が判断すれば、これは面接してから意見を聴取したほうがいいとか、そういうことです。
○生越委員 次回、私は出られないので、事後措置のところで1点だけ私の考えをお話します。結局、事後措置ということで、例えば眠れないとか疲労がとれないという方がいて、産業医の先生方がそういう方がいることがわかって、事業者に対して医師の意見を言うわけですね。医師の意見を言った結果、最終的な事後措置のイメージというのは、例えば「通常勤務就業制限」「要休業」といった区分が例示されていると思います。確かにこの話はあると思いますが、ただ、今までの話の流れから見ると、何かストレスチェックがある人がいて、そのときに医師が事業主に伝えるべきは、当該労働者がいる職場には何かストレスの原因があるのではないかと言わなければ、当初の目的にはつながっていかないと思います。
 例えば産業医の先生がお話しても、うちはそんなこと言っていられないと、どなたかおっしゃっていましたけれども、要するに手当しなければいけないのはそこであって、当該労働者に対して休みなさいとか働くなと言うのは、最終的に病気になっていたら話はわかります。これは明らかに病気で休ませないといけない、このまま通常勤務を続けたら企業に安全配慮義務違反が認められる、重度のうつがあるのに通常の勤務をずっと続けさせたら、やり方によってはおそらく裁判所は損害賠償を認めると思いますが、今までの話を聞いていると、そういう話ではないと思うのです。ですから、ここの就業上の措置をどうするのか。医師が事業主に対してどんなことを言うのかは、もう一度今までの議論を踏まえた上で、この図は作り変えるべきだと私は思います。具体的に過重労働があったら、その過重労働をなくしなさいとか、業務が多いのだったらそのことを言う。ハラスメントがあるのだったらその話をするのが、この枠組みの中では整合性があるのではないかと考えます。
○相澤座長 一般的に事後措置と言うと、そういうものというイメージがあるので、もう少し分けて、事後措置でも医師の意見聴取や面接とか分けて。
○北村委員 事後措置という言葉を使うと誤解を招くと思います。だから例えば職場環境の改善を図るとか、それが適切かどうかわかりませんが、事後措置という表現はちょっと引っ掛ります。
○鈴木労働衛生課長 行政内部で慣例的に、その辺を含めてこういう表現をしていますし、外部の方もこういう表現をよく使っているのを見たので書きました。
○北村委員 意味はわかりますけれどもね。
○鈴木労働衛生課長 そこは少し分けるのと、いま生越委員が言われたようなものは、既にいろいろな事例で産業医の先生や保健師の方が、どのように対応されているかというのがありますので、それが全国的にできるものかどうかを吟味し、この検討会で大枠を決めて、さらにその流れを決めていただいて、どのようにすべきかガイドライン的なものを、また別途検討することも考えられますので、基本的なことについて提言をいただければ、ありがたいと思います。
○尾崎委員 次回、出られませんので最後に1つだけ、精神疾患に関して啓発活動をきちんとしていただくことを、項目として入れていただきたいと思います。
○鈴木労働衛生課長 はい、それは我々も念頭に置いていました。
○相澤座長 時間が5時になってしまいました。まだ1-6も残っていて延長戦に入らざるを得ないのですが、先生方は遠い所から来られているので、このまま続けてよろしいですか。あるいは休憩を入れますか。では延長戦に入ります。
○石井(妙)委員 話を戻すようですが、疾患をチェックするのかストレスをチェックするのかによって、生越先生もおっしゃったように事後措置の内容も違ってくると思います。今まで健康診断後の事後措置というのは疾病に関するものだったので、意味合いが全然違ってくるでしょうし、そうすると次の不利益取扱いしないことというのも、全然状況が違ってくると思います。だから何をチェックするかをまず決めて。
○尾崎委員 チェックするのですか。
○石井(妙)委員 ストレス状況をチェックするのかどうか。
○尾崎委員 私はチェックしない方向でいったほうがいいと。
○相澤座長 その辺、資料1-6をご議論いただいてから入りたいと思います。具体的なイメージとして自覚症状の項目の明確化の中で、今まで内容については決められていなかったのですが、ストレスに関連したような症状、あるいは体に対する症状を項目として入れていこうということで、ストレスチェックとか。
○中村委員 この間の議論からすれば、精神障害を見つけるとかでなくて、ストレスへの気づきを促す程度ですよね。
○相澤座長 そうですね。
○尾崎委員 ストレスに対する気づきをすれば、当然、精神疾患も入ってきますので、これを法令等で明示するのは、椎葉先生もおっしゃっていましたが、私は反対です。
○中村委員 ストレスを把握すること自体がですか。
○尾崎委員 法令等で明示するのは、現時点では反対です。
○北村委員 義務化するのは反対と。
○尾崎委員 義務化反対です。もう少しきちんと時間をかけて、どういうふうにするか決めないといけないと思っています。
○北村委員 拙速はいけないというのは、私もそうです。
○鈴木労働衛生課長 例示なりガイドラインで示すというのは、いかがなのですか。強制ではないという意味ですね。
○尾崎委員 そこは具体的な話になってくるので、少なくとも法定項目に入れるのは反対です。
○相澤座長 それについては、いかがでしょうか。こういうストレスに関連した項目の内容については、まだこれから検討しなければいけない。例えば睡眠がとりにくいとか、そういったことについても反対ですか。
○尾崎委員 それをしっかり議論して、どういう方法がいいのかということが確認できた上です。スクリーニングをした後、放っておけないわけです。何らかの事後対応が要るわけで、その整備ができていないし、人材がいないのに、それだけやるというわけにいかないと思います。
○岡田委員 過重労働の面接というのは既に66条の8で決まっていて、過重労働が発生したときに私たちは面接をして、そのときにストレスの度合いを見て精神科の先生に紹介する。実際に何人か見つかっているのですが、その枠組みの中でやっている部分については問題ないと、先生はお考えですか。
○尾崎委員 先ほども申し上げましたが、長時間労働が本当に精神疾患発症のリスクファクターなのか、そのことに関する議論がなされないままにスタートするのは、私はいかがなものかと思っています。
○岡田委員 私どもが健康診断を実施して、血圧が高くなってきたり体重が増えたりしたところで保健指導するわけです。例えば企業ですとリコールの問題がありますね。急に労働時間が増えたときは、保健師、看護師をそこの職場へ派遣してスクリーニングをしてもらい、そこで問題のある人を産業医につなげる役割を果たしてもらっていて、それは非常に効果的であると思っています。
○尾崎委員 私が同意しますのは、発症している人に過重労働をかけたら、病状が悪化するという点です。
○岡田委員 それは問題です。
○尾崎委員 私が申しあげているのは二次予防や三次予防の話なのです。一次予防的な話であれば、私はまだ軽々に実施する段階にはないと言っているのです。
○鈴木労働衛生課長 先ほど精神疾患の一次予防としては、まさに要因がはっきりしない中で安易に法令で義務づけるのはと、そういうご議論だったと思いますが、ストレスが加わっているような状況の方の自己の気づきを促進する。あるいはそう思った方について何か面接するというのは、既に一般健診の枠組みの中にあります。もちろん実施率の問題はありますが、そこは今後、支援をしながら強化していこうという前提のもとに、いまの流れを充実させる。その中にメンタルだけでなく、身体疾患でも実は同じように見過されていたものがあるということで、自覚症状についてある程度、もう少しきめ細やかにやる。それからその後の面接や意見聴取、保健指導をきっちりやらなければ、まず大前提として無理ではないかということで、その提案です。
 ただ、その中で自覚症状についても、要するにエビデンスがはっきりしないと言われると、ちょっと先ほどのご議論とまた違うのかなと思います。負荷がかかれば一定の症状が出てくる、これは間違いないことではないかと思いますけれども。
○五十嵐委員 健康診断の中で、自覚症状をもっと丁寧にするということだと思います。例えば先ほど申し上げた睡眠や食欲、疲労というところを、きちっと捉えて面談につなげていく。そこで何かあった場合には本人のフォローも含め、例えばそれが職場に起因する場合には、既に調整なども健康診断の事後措置としてやっているわけです。そこをもっと丁寧に、ストレスを念頭に置きながら健康診断の中で実行していくというのは、私は何ら不思議はないのです。
 あと、先ほど岡田先生がおっしゃいましたが、いまの過重労働対策のあり方というのは、残業時間が100時間とか、疲労の蓄積が認められて本人が申請した場合等、いくつか条件がありますが、必ずしも残業時間に関わらない疲労、労働負荷というのが非常にあります。そういうところを見ていく、ひとつの突っ掛りとして、健康診断での自覚症状をきちっと捉えて職業にフィードバックしていくのは、いちばん簡便な方法だと思います。何度も言いますが、その時に、そういうタイミングでなくても誰と関われば自分の健康、あるいは職場の調整につながっていくのかを、労働者が知ることがすごく大事です。特に中小零細企業の人たちは、「一体、そういう人たちはどこにいるんだろう」と言っているわけです。ですから、まだフォローする基盤ができていない中で進めるのは危険だとおっしゃいますが、でも一歩踏み出さないことには、今度は基盤整備につながっていかないのです。もちろん何を健康診断の中で聞いていくかは、また専門家の意見を入れて考えるべきかとは思いますが、大枠として、ここで何らかの合意がないと先に進めません。現に私は内閣府の自殺対策のほうから来ていますので、のんびりしている時間はないし、できるところから一歩一歩進めながらやっていくことだと思っています。
 ただ、労働安全衛生法というのは、事業者に開示される特別な法律ですので、そこは慎重に考えながら、安易にポンポンと入れて後で、また引っ込めるというわけにいきませんから、そこは議論をしなければならないと思いますが、大枠でどうなのかというところは、ここで合意が取れると本当によいと思っています。
○生越委員 私は五十嵐委員とほぼ同じ意見です。先ほど法律上の定義で言葉を整理したほうがいいと申し上げましたが、現にたくさんの方が亡くなられているわけです。私も何十件も事件を抱えてやっていますが、明らかに労働基準法に違反するような職場の事情があって、うつ病になり、ないしは適応障害という病気になって亡くなってしまうとか、働けなくなる方は日々量産されているわけです。ですから職場の有害なものを取り除くための1つのシステムは、必ず火急に作り切らないといけないと私は思っています。
 ただ、前提として私もこの検討会で何回も申し上げているとおり、労働者が不利益にならないような仕組みを、これも「できるだけ」ということです。すべてカバーするのは無理ですから、情報を加工するなり何かして、できるだけそういう人が減るようなシステムを作り切ることが必要だと思っています。
○相澤座長 ほかに、いかがでしょうか。
○北村委員 この検討会では最初から、健康診断の中にチェック項目を入れることについては、問題が多いという議論がいっぱい出ています。これをあまり拙速にやってしまうと現場はものすごく混乱しますし、労働者にも企業にも大変困った問題を生じると思います。尾崎先生がおっしゃっているように、拙速を求めずに慎重な検討をすべきだと私は思います。
○市川委員 私は労働組合の立場ですので、医学的なことはわかりませんが、専門の先生がこれだけおっしゃっている中で、検討会で結論を出すのは、素人としては心配です。もう少し専門の先生方のご意見を聞きながら、いま本当にこれを入れていいのか、1回だけでということでなく、じっくりご検討をお願いしたいと思います。
 労働組合としては、働く者がストレスの少ない、働きやすい環境で働けるような状態を作っていくことが一番であり、そういう意味でこの検討会の最初から違和感があったのは、職場におけるメンタルヘルス対策と銘を打ちつつも、出てきた対策はスクリーニングのことだけで、定期健診でチェックを入れるという結論しかないことです。それよりも職場のメンタルヘルス対策と言えば、例えば労働条件を良くする、労働時間を減らすなど、ほかにやることも本当はあるはずです。ハラスメントの防止、日常のコミュニケーションの活発化なども必要で、対策も併せて進めつつ、健康診断も工夫してということがあれば、職場のメンタルヘルス対策という標題にふさわしいのではないか。そういう意味で、チェック項目を入れることありきの議論ではなく、もう少し職場環境を良くしようという大きな枠組みの中で、まとめができたらいいのではないかと思っています。
○五十嵐委員 いまのご意見に対して、私は何度も申し上げてほかの先生もおっしゃっていますが、決して個人だけのスクリーニングではなく、そこを1つの情報源として私たちは安全衛生委員会に出たり、労使協議のほうに提案したりということで、ダイナミックな関わりができるわけです。岡田先生もそういう事例をお話されていましたが、まさに個人のケアをしていくということも当然そうですけれども、職場の改善は、この仕組みをきっかけにできると考えているわけです。ですから単に個人のスクリーニングをして、あなたは病気だから医療機関にいってくださいというのでなく、そこから見えてきた問題を、私たちは職場や経営側にもフィードバックしていくわけですから、その一歩をこういう形ででも進めていくべきではないかと思っているわけです。
 もう1つは、これも私は何回目かの会議で申し上げたのですが、そういう健康診断を通じてのボトムアップということもありますけれども、そうは言っても、経営方針の中でメンタルヘルスをきちっと進めていくことに、何らかの認証を与えていくとか、CSRも含めたような考え方の中で事業者にもそこを理解してもらい、働きやすい職場を作っていくよう企業努力をしてもらう施策も、両方でやるべきだと思っています。
 下光先生がご専門なので、今日、お出ししようか迷ったのですが、例えばデンマークなどは法体制の中で、企業のメンタルヘルス対策を評価しています。スマイリーマークを与えるといった、メンタルヘルスをきちっと推進している企業には、そういった認証を与えて社会貢献にもつながるし、就職するときにも、そういう企業を目指していくような社会風土ができ、そういう仕組みを取っている国があるわけです。ですから、いまの議論は健康診断が中心になっていますけれども、併せてそういうところも、この会で考えていけばいいことであって、もちろん拙速に物事を考えてはいけないと思いますが、せっかくこういうことが動き始めていますので、のんびりというのではなく、議論するにしてもどういうメンバーで更に深めていくかつなげていく。そして対策につながるような会にしてもらいたいと思っています。
○尾崎委員 先ほど市川委員がおっしゃったのは、私も全く同意しています。ひとつ付け加えますと、先ほど私が申し上げましたが、一般の身体疾患と同じような形での健診というのはもう一度考え直すべきです。いま、一般身体疾患の健診の十分な守秘性が守られているでしょうか。その点に関して労働者の中には疑義があるのだろうと思います。それが守られていて初めてメンタルも入れようという議論になっていただきたいと思います。基本原理がまずできているのかということです。メンタルヘルスの対策は、五十嵐先生がおっしゃるように私も是非やってほしいのです。ただし、この段階で法定項目にスクリーニングを入れるというところから始めるのではなく、その前にやるべきことがいろいろあるのではないかと私は思います。よろしくお願いします。
○鈴木労働衛生課長 1回目に整理してご説明したつもりですが、この検討会のタイトルについてはセンスの問題ですので、これですべてを表わせるわけではありません。自殺PTのほうには長時間労働の抑制等、いま労働分野で考えられるものはすべて実施すべき項目として盛り込んであります。ただ、まだ慎重な検討が必要なものとして、健診の機会を利用した更なる対策について、この検討会にそこだけ投げられたということですので、これだけで職場におけるメンタルヘルス対策を、何とかしようというミッションが、ここにあるわけではありません。繰り返してご説明いたします。
○石井(正)委員 結局、新たな枠組みのイメージ(案)を見ると、睡眠、食欲、疲れがとれにくい、これが明確な3項目プラスアルファという書き方になっていると思いますが、私の知っている限りで言うと、静岡のシステムで、実際に継続的睡眠不足があったら専門医に相談という啓発活動が効果を上げて、自殺対策になっているというレポートは、静岡県医師会からももらっています。ですから、そういう非常にシンプルなメッセージは伝わりやすい、そして結局、それは単なる不眠の掘り起こしだけでなく、何かのときには相談の窓口がありますよという、ひとつのメッセージになっているという話を聞いています。ですから、こういうアクションそのものが全く無意味だとか、そういうことはないのだと思います。
 ただ、今日の議論を聞いていても、いきなり法制化、義務化の方向かどうかというのは、ちょっと早いかなという印象はあります。ですから先ほど課長がおっしゃったように、要するに今の枠組みでも、そういうことを実際にやったら成果が出ているというものがあるわけですから、例えばガイドラインであるとか、そういうことを考えていったり、聴取りのときにこういうのも入れていけば、こういう事がわかりますよみたいなことのほうが、むしろ現場を大きく縛るよりも、どうなのでしょうか。手間暇はかけないと書いてあるのですから、費用をかけないのだったら啓発事業やポスター作るとか、それを全国の事業所に通知するとか、その程度は是非やったほうがいいと思いますが、それをどこまで進めるかという議論なのだと思います。法律化となると、本当に弁護士の先生方と一字一句やっていかないといけないから、次回で結論が出るとは思えないです。そういう印象です。
○相澤座長 この会としては、これは報告書の形になるのですか。
○鈴木労働衛生課長 最終的には表現ぶりなり用語の厳密性、あるいは法律にすべき云々という表現は普通の報告書にはありませんので、そこは。
○高崎計画課長 私は聞いていて、たぶん皆さんの言っていることに、そんなに大きな違いはないような気がします。ここにこう表現されてはいますが、ある程度網羅的に書いたものがなく、スクリーニングという印象が先行してしまっているから、そこに引っ張られている部分もあると思います。その意味で次回、もう少し事務局で、あるいは最初のミッションはそうだったかもしれないけれども、事後措置のその後の対応とか、ほかの、働き方の見直しのほうの施策なんかも、全体を見せてもらったほうがいいというのであれば、そういうものを見せることを途中でやって議論していただければ、そんなに断片的な情報なり何なりの部分で、いろいろな議論がされているところが無きにしも非ずのような気がします。そんな形で次回、提案させていただいて議論していただければいいと思いました。
○北村委員 確認ですが、スクリーニングではない、チェックでもない、ストレス状態への気づきを促すということですね。
○鈴木労働衛生課長 気づきと、それから今、例えば50人以上でも意見聴取が4割程度の実施率に留まっているのです。そこはきちんとスタッフの確保をする。あるいは外部の支援体制をきちんとして、希望制にするかどうかはまた議論ですけれども、面接なり保健指導を受けたい方が適切に受けられるようにする。これが趣旨です。
○平野安全衛生部長 そして、それを職場環境の改善につなげるということです。
○生越委員 繰り返しになりますが、労働者に気づけと言われても実務家から言うと、それを気づいてどうするのですかとなるわけです。確かにセルフケアという話はありますが、安全衛生課長がおっしゃったように最終的には職場の話で、気づくのは誰かと言ったら事業主が気づけという話です。
○平野安全衛生部長 労働者の気づきというのは、いま生越委員が言われるように、労働安全衛生法の体系の中で副次的に出てくる話だろうと思います。あくまでも事業主が職場環境の改善をして労働者の健康を確保する。それが本来の趣旨だと考えます。
○生越委員 そういうことでやっていただきたい。
○鈴木労働衛生課長 それで枠組みを作っても、何かきっかけがないと回り出さないので、そのときに問診項目に具体的にということですが、それをどのレベルでするか。義務づけとか勧奨とかありますが、そこはあまりこだわるところではないと思います。面接や保健指導に行く流れのきっかけを作るのが、今回は大事ではないかということだと思いますので、それから事業者による場の改善と言いますか、そこにつなげられれば一番いいと思っています。
○相澤座長 ほかにご意見はございますか。
○五十嵐委員 法改正は極めて重いことだとは思いますが、ここで何をターゲットにしなければいけないかというと、中小零細企業でちゃんとできるためには、どういう方策がいいのかということを念頭に、それがどういう方向かはまた事務方に検討していただければと思います。つまりガイドラインは今でも相当出ているわけです。それでもやれていないのはなぜかということの中で、いま仕組みが回り出すためにというお話がありましたけれども、どうしたら回り出すのかというのを是非、考えるべきだろうと思います。その場合に、法改正が有り無しというところも議論になってくるだろうと思います。とても慎重に考えなければならないことだとは思いますけれども。
○相澤座長 だいぶ時間が超過して過重労働になってしまいます。よろしいでしょうか。一応、この具体的なイメージで次回、もう少し詳しく、わかりやすい形で議論いただければと考えています。事務局から連絡はございますか。
○永田主任中央労働衛生専門官 次回は、7月14日(水)、10時から12時に開催する予定です。
○相澤座長 次回は、報告書案をまとめることをしたいと思います。長時間にわたりありがとうございました。これで第5回職場におけるメンタルヘルス対策検討会を閉会します。ありがとうございました。


(了)

(担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部

労働衛生課 古田、永田

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