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2014年5月14日 平成26年度第1回発がん性評価ワーキンググループ 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成26年5月14日(水) 10:00~


○場所

厚生労働省(19階)共用第8会議室


○議事


○大淵環境改善室長補佐 ただいまから平成26年度の第1回発がん性評価ワーキンググループを開催いたします。どうぞよろしくお願いをいたします。

 本日、出席者につきまして5名の委員の先生方、全員お揃いです。後ほどの中期発がん性試験の結果の説明の関係で、試験を実施した日本バイオアッセイ研究センターから野口さん、梅田さんにも御出席を頂いております。どうぞよろしくお願いいたします。

 以下の進行については、座長の西川先生にお願いいたします。

○西川座長 議事に入る前に、事務局より議事次第と資料の確認をお願いいたします。

○大淵環境改善室長補佐 説明をさせていただきます。議事次第ですが、本日、大きな議題としては4つ予定をしております。1番目の議題としては、平成26年度の発がん性試験の開始物質ということで、酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)を予定しておりますので、その物質の試験方法の詳細についてです。2番目として平成25年度の中期発がん性試験、具体的にはラット肝中期発がん性試験の結果の評価についてです。アとして評価基準をまず御議論いただき、そのあと、イとして具体的な試験結果の評価ということで、2-ビニルピリジン、1,3-ジプロモプロパンの2物質の評価を予定しております。議題の3番目としては、平成26年度の中期発がん性試験の対象物質の選定についてです。4番目は、平成26年度の既存情報による発がん性評価についてです。次回から具体的な評価を行いますが、今回は評価をどのように進めるかについて、御議論いただく予定としております。これらを議論するための資料として、議事次第の次ページからの配布資料一覧に沿って御確認いただきたいと思います。

 資料はかなり種類があり、資料1-1から資料1-3、資料2-1から資料2-7までと大きなグループとしてまとめております。通しページで、それぞれ右下に付けております。念のため確認しますが、資料1の酸化チタンの試験の関係については通しページの1ページから、資料2のグループは通しページの13ページから、資料3のグループの中期発がん性試験の対象物質の選定の関係は63ページからです。資料4のグループ、今年度の発がん性の評価をどう進めるかの関係ですが、87ページからです。資料の5、今後の予定については、121ページです。最後のページは資料目次です。これ以外に、参考資料の1から参考資料の4があります。4種類の資料は右端に通しページを付けております。資料の中には字が細かくて少し見づらいものがありますので、具体的には資料の3-2の表、資料4-2の別紙、資料4-3の丸数字1、資料4-3の丸数字2についてはA3の拡大版も入れておりますので、適宜御活用いただければと存じます。資料については以上です。

○西川座長 本日の議題に入ります。議題の1「平成26年度試験開始物質(酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型))の発がん性試験の試験方法の詳細について」、事務局より説明をお願いいたします。

○大淵環境改善室長補佐 主な資料は資料の1のグループです。補足として参考資料の23ページも御参考いただければと思います。発がん性のワーキンググループの昨年の最終回は7月で、10か月ほど空いております。少し復習的に、参考資料の2で、この会議の検討内容について補足説明し、それから本題に入りたいと思います。

 参考資料の23ページは「職場で使用される化学物質の発がん性評価の加速化」ということで、フロー図があります。縦の真ん中がフロー図、その左側は発がん性評価のワーキンググループの検討事項、右側はもう1つの遺伝毒性のワーキンググループの検討事項の記載です。

 参考資料の2の左側の発がん性評価のワーキンググループの検討事項について、少し確認いたします。検討事項の1つ目として、発がん性の構造活性相関の活用可能性の検討については、先送りにしております。検討事項の2つ目の囲みで、発がん性の可能性の評価基準の決定については昨年度、平成25年度に既に御議論いただいております。同じ囲みの中で、上記の判断基準による評価結果の確認・個別の判断事項については、今年から具体的に個別物質の作業が始まります。

 大きな囲みの2つ目で、スクリーニングのための中期発がん性試験については、昨年度試験の種類、試験の方法の決定等々を行っており、今年から実際の物質の評価が始まります。今回は、評価基準の決定などをしていただきます。

 最後の囲みで、長期発がん性試験関係については、ほかのワーキンググループ、有害性評価の小検討会のほうとも関連してくるのですが、そちらで物質については決定し、そのあと、こちらのワーキンググループで具体的な試験方法を決めるということです。長期試験の動物種はどうするか、あるいは短期試験や中期試験が必要かどうかなど、本日も御議論いただく予定でおります。こうしたことを通して、それぞれの発がん性評価の加速化が中央のフロー図に絡んでいく形で、このワーキンググループを位置付けております。

 本日の議題について、資料の1-1から説明いたします。酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)の発がん性試験の具体的な方法についてです。現在、厚生労働省では吸入による長期発がん性試験を毎年1物質開始する形を取っております。今年度から試験をスタートする物質として、この酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)が選ばれています。

1番の検討すべき事項ですが、国が行う発がん性試験については平成25年度試験開始物質より、原則として丸数字1一種のげっ歯類を使用した長期発がん性試験、丸数字2短期・中期in vivoげっ歯類試験系により実施することとなっている。平成25年度第2回有害性評価小検討において、平成26年度から国が発がん性試験を実施する物質として酸化チタンが選定されたことから、本ワーキンググループにおいては、この物質の試験に関し、以下の事項について検討決定する必要がある。(1)長期発がん性試験に使用する動物種、(2)短期・中期in vivoげっ歯類試験系による試験の要否、(3)として、(2)で短期・中期の試験が必要と判断された場合に、採用する試験方法及び使用する動物種を御検討いただきます。

2番は検討の際に考慮すべき事項についてです。(1)酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)について、まずどういう理由で発がん性試験の対象物質に選定されたか説明いたします。こちらのナノの酸化チタンについては過去にラットを用いた吸入発がん性試験が行われており、肺への炎症が起きるような過負荷の状態で、かつ1用量の試験ということで、低用量での影響を確認する必要があることを、昨年12月に開催した有害性評価小検討会で御意見を頂いております。

(2)ナノの酸化チタンについて製造・輸入量、用途、有害性等についてまとめたものを資料1-2、資料1-3に示しております。3ページの資料1-2は、主な情報を簡単に整理した表です。5ページからの資料1-3は詳しい情報です。ナノの酸化チタンについては有害性の小検討会で有害性評価書を作成しており、その評価書から遺伝毒性の関係、発がん性の関係の資料を抜粋しております。遺伝毒性についてまとめたものは5ページから、発がん性についてまとめたものは9ページからとなっております。既に行われている毒性の試験とかヒトへの影響ということでは、11ページに疫学関係の情報など書いてあります。今のところ、ヒトへの影響では特に知見は得られていないようです。前のページですが、試験はいろいろなものが行われておりますので、こういった状況も加味していただいた上で、資料1-1の検討事項(1)(2)(3)を御検討いただきたいと思います。

 事務局説明の最後、参考のところです。これから試験を行うわけですが、吸入試験においての被験物質ですが、通常発がん性の試験をやるときには、いわゆる試薬を購入して試験をやることが多いのですが、このナノの酸化チタンについては、工業製品であっても非常に純度の高いものが得られているということで、工業製品を使用することを予定しております。具体的なグレード等については、資料の1-1の下に書いたとおりです。事務局からの説明は以上です。以下、検討すべき事項について、西川先生に進行をお願いいたします。

○西川座長 酸化チタン(ナノ粒子、アナターゼ型)の発がん性試験について、1つは長期発がん性試験に使用する動物種をどうするか、ラットかマウスかということになると思いますが、御意見をお願いいたします。特になければ、ラットを用いるのが通例ですので、ラットになると思うのですが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○西川座長 それでは、長期試験についてはラットを使用することにしたいと思います。

2つ目が長期試験に加えて、短期・中期のin vivoのげっ歯類試験をするかどうかについて、御意見をお願いいたします。長期でラットを用いるとしたら、中期の試験は遺伝子改変マウス等を用いることになると思いますが、それを含めて御意見をお願いします。

○津田委員 そのラットは2年の吸入ばく露でしょうか。

○西川座長 吸入ばく露です。

○大淵環境改善室長補佐 2年です。

○津田委員 それがあるのなら、わざわざ中期の動物試験でやることはないと思うのですけれども。

○西川座長 問題は、これまでラット・マウスの2年間の長期試験をやってきたという経緯があって、それとの整合性を取る必要があるかどうかということにもなります。それを踏まえても中期の試験は必要ないという御意見でしょうか。

○津田委員 アナターゼないしルチル型も含めて、IARCでは2年間の吸入ばく露試験がドイツ等で行われております。それによると、雌ラットだけなのですね。マウスの試験はあるけれども、発がん性ははっきりしていないということなので、あえてアナターゼについてマウスにやっても陰性である可能性が非常に高いということになる。あるとすればラットで、雌に出る可能性が十分高いという予測になります。そういう意味で、マウスがどうしても必要かどうかというのはかなりコスト、ベネフィットを考えて決める必要があると思います。

○西川座長 ありがとうございます。短期・中期の試験は不要であるという御意見です。ほかにございますか。

○若林委員 マウスで出ない理由は、何かやられているのですか。

○津田委員 理由はよく分かっていません。ラットにおける試験では組織で見ますと、このような異物が入った場合、どういうわけか扁平上皮成分の多い腫瘍ができて、さらに腫瘍とも言い難いような扁平上皮ののう胞なんかも出てくるという記載があります。それが、マウスにはそういう兆候が全くなかったという試験があります。理由についてはよく分かっていません。発がんに関してはラットのほうがセンシティブではないかということになっています。

○西川座長 確認ですが、マウスの試験はルチル型で行われた。

○津田委員 今までのデータでは、ルチルです。

○西川座長 ルチルとアナターゼで、その毒性所見に大きな差があるかどうかということは分かっているのですか。

○津田委員 それに対して、実は手前味噌になりますが、私どもが、肺の中にルチルとアナターゼを入れた試験をやっております。短期間の毒性を兼ねた試験ですが、毒性に関してはルチルとアナターゼについて差はないという所見が既に論文にしております。

○西川座長 そうですか。

○津田委員 2週間の試験ですから、かなり限られた情報ですけれども、今までの情報からみると、ルチルのほうがラジカル産生が高いために毒性が強いだろうということです。光がある状態ではそういうことかもしれませんが、in vivoにしてしまうと光が当たらないので、異物として作用することには差異はないのではないかというのが結論であります。

○西川座長 それでは文献を共有したいので、事務局にその文献のPDF等を。

○__ 今でもすぐ手に入りますか。

○津田委員 APOJCP(Asian Pacific Journal of Cancer Prevension)はオープンアクセスになっていますので、PDFはすぐ手に入ると思います。

○西川座長 では、情報を事務局に。

○角田化学物質評価室長 以前、肺の中に噴霧投与したという試験ですよね。

○津田委員 そうです。

○角田化学物質評価室長 あれはネットで確認できますよね。

○津田委員 オープンアクセスです。今でもすぐ手に入ります。今年の頭ぐらいには出ていると思います。

○西川座長 ありがとうございます。そうしますと、ほかに御意見がなければ、長期試験はラットで実施するということ、短期・中期のin vivo試験は実施しないということにしたいと思います。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○西川座長 次に、議題の2「平成25年度の中期発がん性試験(ラット肝中期発がん性試験)の結果の評価について」、事務局から説明をお願いいたします。

○大淵環境改善室長補佐 資料の2-113ページを御覧ください。中期発がん性試験(ラット肝中期発がん性試験)の結果の評価基準()についてです。読み上げます。

 厚生労働省では、平成25年度から化学物質の発がん性スクリーニングとして、ラット肝発がん性試験を実施している。この試験結果の評価は、発がん性評価ワーキンググループで行うこととなっており、その際の評価基準は次のとおりとする。

1として、陽性の判断基準。投与群における肝臓の胎盤型GST-P陽性細胞巣の単位面績当たりの個数又は面績が、媒体対照群と比較して有意に増加し、かつ、用量反応性が認められる場合又は単一の用量群において明らかな増加が認められる場合に、陽性と判断する。まず、陽性の判断基準の案です。具体的な検査の方法については、2ページに参考1として検査方法を記載しております。2番としてがん原性指針の策定の要否の判断基準、3番としてリスク評価の要否の判断基準ということで、こちらも補足が必要かと思います。

 先ほど御覧いただいた参考資料の23ページのフロー図に、短期・中期の発がん性試験の関係について、下から4番目の網がかかった枠があります。「短期・中期発がん性試験。2段階発がんモデルによる肝発がん試験を優先的に実施」という黒い枠から下に延びている矢印で、「健康傷害防止措置の指針による指導」があります。こちらは、具体的には労働安全衛生法に基づく厚生労働大臣の指針による指導ということです。このスキームに基本的に持っていきましょうということで、フロー図の策定がされております。

 また、「健康傷害防止措置の指針による指導」の枠から矢印が出て、「長期発がん性試験」に向かう矢印と、もう1つの矢印として一番下に「リスク評価(更なる健康傷害防止措置の実施の要否を判断)」とあります。「リスク評価」というスキームに参りますので、結果的に長期の発がん性試験をしたものについては、その結果が陽性であれば健康傷害防止の指針の対象、それからリスク評価の対象にしていくことを、平成24年に取りまとめた加速化のフロー図で決めております。

 そういうことを踏まえて、今回の試験結果の評価基準の中にも、どういう場合に指針対象としていくか、あるいはリスク評価の対象にしていくかという判断基準も併せて盛り込んでおります。

 資料の2-1に戻り、2番のがん原性指針の策定の要否の判断基準についてです。発がん性評価ワーキンググループにおいて、ラット肝中期発がん性試験の結果が陽性と判断された物質は、原則として労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく厚生労働大臣の指針(がん原性指針)の対象とする。ただし、次の場合にはその限りでない。その例外規定ですが、被験物質が遺伝毒性を有さず、かつ、ラット肝中期発がん性試験から得られたNOAEL等が、日本産業衛生学会の許容濃度等と比較して非常に大きく、労働者に健康影響を与える可能性が低い場合ということで、例外規定を掲げました。

 こちらの例外規定を設けた理由としては、これまで長期の2年間のラット・マウスの発がん性試験をやって、その結果を基に指針を出すことは従来からやってきておりますが、その際においても、発がん性試験でがんが出たもの全部の物質について必ずしも指針を出しているわけではないことや、遺伝毒性がなく、かつ、発がん性試験において最高用量のところだけでがんが出て、かつ、その濃度等、ヒトでの基準値となっているような許容濃度の値を比べて非常にその差が大きく、許容濃度と比べて実験で得られたがんが出る濃度が非常に高い場合については、必ずしも指針の対象にしないというような運用をしてきましたので、それも考慮した形で、例外規定を書いております。

 ただ1つ、事務局でも判断を迷うところですが、従来は通常の吸入試験なり、あるいは経口投与の試験ということで試験をやってきましたが、今回のこれから評価しようとする試験の中期肝発がん性試験は、ラットの肝臓を切除して行うような、かなり特殊な試験なので、それから得られたNOAEL等をそのまま、ほかの従来からやってきたような発がん性試験と同じような方法で、許容濃度などと比較をすることが可能なのかどうか。この辺は事務局では判断しかねるところなので、後ほどの議論の中で触れていただければと思っております。ただ、今回は一応ラボのほうの試験結果が陰性のものなので、もし議論が長く時間がかかりそうであれば、一旦この黒マルの部分についてはペンディングにしていただき、また今後試験結果が陽性のものが出てきたときにもう少し踏み込んで議論するやり方もあると考えております。

3番のリスク評価の要否の判断基準についてです。発がん性評価ワーキンググループにおいて、ラット肝中期発がん性試験の結果が陽性と判断された物質は、原則としてリスク評価の候補物質とし、化学物質のリスク評価に係る企画検討会等での意見聴取を行った上、有害物ばく露作業報告の対象とします。こちらについては、特に例外規定等はなく進めていくということです。ただ、具体的にリスク評価の対象にするかどうか、最終的な判断は企画検討会なりを経てということになります。このワーキングで中期発がん性試験の評価をしていただいて、もし陽性と出れば、リスク評価の候補物質に自動的になります。本日、こちらの基準案について議論していただき、その後、具体的な物質について御検討いただきたいと思います。まず、資料2-1について、どうぞよろしくお願いをいたします。

○西川座長 ただいまの説明に対しまして、何か御意見、御質問等ありましたらお願いします。

○小野寺委員 この黒マルのところなのですが、NOAELが出るということはポジティブに出ていてということが前提ですよね。

○大淵環境改善室長補佐 はい、そうです。

○西川座長 1つ、そのNOAELという言葉ですが、通常の反復投与毒性試験で全く毒性の出ない用量を無毒性量とするので、そういう意味からは全く質の違う量ですね。ですから、それでNOAELという言葉は多分余り適切ではないと思いますが、それを置いておき、GST-Pが増えない量を許容濃度と比較していいかどうかということについて、議論をお願いしたいと思います。

○吉田委員 もう1回確認しますけど、今回のNOAELというのはGST-Pはエンドポイントとして、中期発がん性に対するNOAELということですね。それを強制経口でやった場合ということですね。

○大淵環境改善室長補佐 はい。

○西川座長 そういう意味ですね。

○吉田委員 強制経口ですね、インハレーションなり、イントラトラキアではないですね。ターゲットは肝臓ですね。

○大淵環境改善室長補佐 そうです。

○西川座長 いかがですか。

○吉田委員 今日のデータでもあるのですが、この試験法ですと、またDENを打ったとこで動物の成長が一瞬ストップして、更にヘパテクをしたところで動物の体重が下がるという、非常に特殊な条件というのは、私は事務局がおっしゃったとおりだと思いますので、そのままこのNOAEL。例えば最高用量まで全く発がん性がなかったという場合と、あったという場合は、若干物差しを変えたほうがいいのかもしれないと思っています。

○小野寺委員 吉田委員と同じ意見です。陰性の場合は問題ないのですが、陽性になった場合、最初に申しましたように、用量相関をもってとか、媒体対照群と比べて有意差が非常に高く、陽性として判定した物質は問題ないと思うのですが、今議論しているのは、GST-P陽性所見が用量相関をもって増えてきた場合、低濃度では増えないけれども中・高濃度では増加してきたときに、そこの投与量の判定をどうするかという問題だと思うのです。

 今、吉田委員が言いましたように、この試験系は、事前に化学物質や発がん物質を投与し、その後外科的な処置をします、生体が大分ダメージを受けた後の成績なので、その投与量で外挿性やヒトのばく露量との比較を行うのはなかなか難しいと思うのです。今までも、この中期発がん試験のデータの数値だけをもって何か規制をしたという事はないので、この試験結果は飽くまで陽性か陰性か、それと発がんリスクが低いか高いかという傾向を見る試験だと理解していますが、いかがでしょう。

○西川座長 だから、1つの目安として非常に高い用量しか増えないのかということが、ある程度判断できるかどうかですね。であれば、使うことは可能だと思うのです。

○若林委員 私も意見は一緒でありまして、かなり定性的な意味があるような気がします。けれども、これを定量化して、そのリスクをうんぬんすることになりますと、かなり無理が生じてくるような気がします。

○西川座長 それで、そういう形では全く使いものにならないのか、あるいは非常に大きい1つの目安として使えないかという、事務局の提案だと思うのですが、津田先生、いかがですか。

○津田委員 そういうことを考慮してこれを開発したときに、代表的な発がん物質について高用量、発がん用量から0.00幾つぐらいまで、ppmの単位まで落とした実験がありまして、それでやると、いわゆる非発がん量と、いわゆる長期実験と非常に合うということが論文になって出されています。ですから、この中期発がん法は非常に鋭敏な系なので、そういう意味ではそのままADIに当てはめるのは難しいかもしれません。ある程度の低用量域では定性的な、定量的な意味もあると思います。そのときは閾値と言いましたが、少量域で発がんするしない、この中期発がん法でGST-P陽性巣が有意な差が出る出ないところと、長期の発がん性、発がんする、しないというところは、3'メチルDABと、ジエチルニトロソアミンと23やってありますが、大体合っているということもありますので、系が敏感であることから考えると、低用量域では使えないこともないと考えています。

○吉田委員 ●に「被験物質が遺伝毒性を示さず」と書いてあるので、そうなっていますと、そのDENとかは当てはまらないかもしれない。

○小野寺委員 同じことなのですが、津田委員がおっしゃった実験というのは、既知の発がん物質の中で、発がん用量が、ある程度のレベルが分かっていたときには、非常に低濃度の10-5乗や-4乗から投与出来るのですが、それぐらい大きな用量幅を設定するということは、データがない物質では非常に難しいと思うのです。2回目、3回目と、ある程度の試験からそのリスク用量が分かっていて開始するのでしたなら、その用量設定幅を高い値で細かく取るか、中間量くらいで細かく取るか、低用量で細かく取るかのデザインになると思います。1回の試験でこれを決めるとなると、最初の用量設定のところが難しくなるのではないかと思います。もしも、それでNOAELらしきものを出そうとするとすれば、ですが、どうでしょうか。

○津田委員 要するに、用量をどこまで振るかという問題になると思います。ですから、その試験をするときに、そういうことを想定して低い用量まできちんと振ってやれば、ある程度の量は出ると思います。それから遺伝毒性、変異原性の有無ですが、エチオニンという化学物質を確かやっています。これは、遺伝毒性はないですね。これも低用量のところでほとんど初期試験と合うというデータも、確か出ています。調べていただければ分かります。ですから、遺伝毒性どうのこうのは余り関係ないです。

○西川座長 中期試験での、いわゆる作用量をこういう形で比較したという実績は、恐らくないと思うのです。ですから、もう少し慎重に対応したいと思います。したがいまして、議論が長くなりそうですので、ここでは一旦保留として、陽性物質が出てきた場合に、改めて議論することにしたいと思います。

○若林委員 参考意見としてですが、確か福島先生が中心になられまして、MeIQxの、ジエチルニトロソアミンを投与せずにPHだけでドーズ・レスポンス効果を調べたデータが出ているのだと思います。ああいうような系ですと、かなり参考になるかと思います。ジエチルニトロソアミンを投与した後のものになりますと、かなり桁が上がっていく気がしますので、やはり、リスクを評価する場合には、その前の処置をどうするのかというようなことも考慮に入れる必要があるという気がします。これらのデータは発表されていると思いますので、参考にしていただければと思います。

○西川座長 この議論は一旦保留としたいと思います。ほかに、評価基準案について、何か御意見ございますか。

(特になし)

○西川座長 ないようですので、続いて2物質の試験結果についての評価を行いたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

○大淵環境改善室長補佐 これから2物質について御議論していただくのですが、資料2-2から資料2-42-ビニルピリジン、資料2-5から資料2-71,3-ジブロモプロパンです。資料の説明は実際に試験を行った日本バイオアッセイ研究センターからお願いします。1物質ずつ説明をして、その後にその物質についての議論を行い、それが終わりましたら2物質目の説明、議論という形でお願いいたします。

○日本バイオアッセイ研究センター 平成25年度に実施したラット肝中期発がん性試験の結果を報告いたします。1物質目が2-ビニルピリジンです。資料2-2、通しページの15ページの表を御覧ください。構造は、1-2にあるように、ピリジン環の2位の位置にビニル基が付いた構造活性物です。物理化学的な性状としては、特異臭のある茶色から淡黄色の液体です。比重、融点、沸点等は、ここに記載のとおりです。溶解性は、水に3%弱溶けるものですが、有機溶剤に可溶な物質となっています。製造量、製造業者に関しては1-4に記載しています。2012年度の生産量と輸入量を足したものは1,000トン未満です。2010年の経産省の排出・移動量は、4,331kgとなっています。用途は、タイヤコード接着剤、医薬用の原料となっています。ビニルピリジンの許容濃度に関しては、今までに設定がありません。また、IARCの発がんの分類も設定がありません。

 ビニルピリジンの遺伝毒性に関しては1-7にまとめてあります。ネズミチフス菌を用いた通常Ames試験では陰性です。また、ラットの初代培養肝細胞を用いた不定期DNA合成(UDS)試験でも陰性という報告があります。しかし、NTPで行われているPCB誘導のチャイニーズハムスターS930%の濃度で添加したAmes試験で、TA100TA1535で陽性の報告があります。また、通常のラットS910%添加した大腸菌を用いた遺伝子突然変異試験でも、陽性の結果が出ています。

 何本か大腸菌の遺伝子突然変異試験の結果が出ていますが、非活性の強いものを見ますと、1.02×102 、これはWP2uvrA/pKM101を用いた結果です。また、チャイニーズハムスター肺細胞(CHL細胞)を用いた染色体異常試験で、陽性の結果が出ています。強さの評価を表すD20値は0.00557mg/mL、これは非常に強いというか、低濃度で染色体異常を誘発するものです。in vivoの遺伝毒性試験に関する報告は、今までにございません。ここまでが、2-ビニルピリジンの説明となります。

 これから、ラット肝中期発がん性試験の報告をします。目的としては、2段階発がんモデルによるラット肝中期発がん性試験、一般で言う伊東法というものを用いて、2-ビニルピリジンの肝発がんプロモーション作用の有無を検索するというものです。方法としては、被験物質の投与群4群、媒体を投与した陰性対照群、フェノバルビタールを投与した陽性対照群、計6群で構成されています。各群20匹のF344雄ラットを用いて試験を実施しました。

 起始物質としては、ジエチルニトロソアミン(DEN)200mg/kgを単回腹腔内投与します。DENの処置後3週目より6週間、オリブ油に溶解した被験物質の2-ビニルピリジンを0153060120mg/kgで、また陽性対照物質としては、生理食塩水に溶解したフェノバルビタールを25mg/kgの用量で、毎日1回強制経口投与しました。なお、DENの投与後3週目の終わりに、これは被験物質投与後1週間目ですが、その日に肝臓の3分の2を切除するPHを行います。投与終了の翌日に、生存動物を安楽死させて、肝臓の前腫瘍性病変である胎盤型のGlutathione S-transferase(GST-P)陽性細胞巣の発生を検査しました。

 この2-ビニルピリジンの投与量の設定理由として、4に説明をしてあります。投与量は、2-ビニルピリジンのSDラットを用いた強制経口投与による28日間及び92日間の反復投与毒性試験報告と、この結果に基づいて当センターで行った、F344ラットの雄を用いた用量設定試験の結果を参考にして決定しています。

 文献の28日間投与試験では、雌雄のSDラットに2-ビニルピリジンを12.550200mg/kgの用量で、28日間強制経口投与しています。その結果、投与による死亡は認められません。200mg/kgの用量で、雄の体重が対照群の88%に減少という結果が認められています。50mg200mgの雌雄で、2-ビニルピリジンの腐食性によると思われる胃粘膜の損傷が認められ、200mg/kgでは、胃粘膜の浮腫、びらん等が観察されています。肝臓への影響としては、200mg/kgの用量で、雌の相対重量が増加した以外、変化は認められておりません。

 続いて、92日間の試験の結果では、これは雌雄のSDラットに2-ビニルピリジンを、2060180mg92日間強制経口投与したものです。180mgの雄に体重増加の抑制が認められています。60180mg/kg投与群では、2-ビニルピリジンの腐食性に起因する胃粘膜の傷害、肝臓への影響は60180mg/kg群の肝臓の相対重量の増加が認められています。

 このような文献の結果を踏まえ、用量設定試験としてやったのは、F344ラットの雄を用い、伊東法試験に準じ、起始物質投与とPHを実施した群としない群を設け、文献の結果を参考にして、2-ビニルピリジン60及び180mg/kgの用量で6週間強制経口投与しました。起始物質投与後3週目に、最高投与群の180mg/kg2-ビニルピリジン投与では体重増加の減少が見られました。起始物質投与とPHを実施した物質では、PH後の投与によりまして、動物の状態が悪くなります。これは立毛とか、外陰部の汚染とか、状態の悪い動物が見られました。そのように状態が悪くなりましたので、それ以後は投与を中止しております。下の濃度の60mg/kgでは、投与による動物への影響は認められておりません。

 このような文献の結果及び用量設定試験の結果より、180mg/kgの用量では、肝中期発がん性試験の用量としては、胃への刺激性が強すぎて、起始物質投与とPHを処理した動物では、状態異常の重症化が見られるものと推定しました。また、60mg/kgでは、体重や一般状態に影響はなく、胃への刺激性等による影響も受けないものと推定しました。したがって、本試験としましては、180mg/kg60mg/kgの間を採りまして、120mg/kgを最高用量として、603015mg/kgを設定しました。

 続いて結果を説明します。この結果の参考になるデータを5ページ、6ページに、体重の推移、肝重量及び肝のGST-P陽性細胞巣の数と面積の変化を記載しています。併せて参考にしてください。

 被験物質による影響としては、60及び120mg/kgの投与群で、投与後に流涎が散見されました。また、60及び120mg/kg投与群で、体重増加の有意な抑制、120mg/kgの投与群で摂餌量の高値が認められています。この結果は、図1の体重増加の推移のグラフで御確認いただければと思います。

 被験物質投与による死亡は認められておりません。肝臓重量は用量依存的に増加傾向を示し、60及び120mg/kgの投与群で、相対重量の有意な増加が認められています。これは5ページの表1、一番右の相対重量の数値です。これはDunnetの検定で行ったものなのですが、有意な増加が認められております。

 肝臓のGST-P陽性細胞巣の単位面積当たりの数と面積は、媒体対照群と比較しまして、低値傾向を示しました。しかし、統計学的な有意差は認められておりません。この結果は6ページの表に記載してありますように、数、面積ともに増加は認められていません。また、投与による肝臓の組織学的な変化も認められておりません。陽性対照群におけるGST-P陽性細胞巣の単位面積当たりの数と面積は、ともに媒体対照群と比較しまして、有意な高値を示しています。これは同じく6ページの表2の一番下、フェノバルビタールの欄の記載です。約2倍の有意な増加が認められています。

 本試験は、被験物質の最高投与量として、体重増加の抑制及び肝重量の増加を示す用量まで実施しています。そして、媒体対照群を含む被験物質投与群の最終的な有効動物数は、各群15匹以上を確保しています。また、媒体対照群と陽性対照群のGST-P陽性細胞巣の単位面積当たりの数及び面積は、バックグラウンドデータの範囲内でした。したがいまして、本試験は適切に実施されているものと思います。

 この結果を踏まえまして、2-ビニルピリジンはラット肝臓における発がんプロモーション作用を示さず、その発がん性は陰性と結論を出しました。以上です。

○西川座長 ただいまの説明に対して、御意見、御質問をお願いいたします。

○吉田委員 最初にお伺いしたいのですが、資料2-2の報告書に対してコメントをしていいのか、これはもうこのレポートなので、これで中期発がん性があるかを見るのかどうか。それを最初にお伺いしませんと。と言いますのは、この発がん性評価ワーキンググループでこれはレビューしたということになるのか。そうなりますと、この中に我々はコメントをしなければいけませんし、そこを最初にお伺いしたいのですが、いかがなのでしょうか。

○大淵環境改善室長補佐 基本的に報告書は成果物として国が受け取っているので、報告書自体を直すということは今後ないので、それはあるものとして、それについて、これで陽性か陰性かという判断をしていただくということになります。ただ、何かコメントいただければ、今後試験をする際、次の物質以降のときの参考にはできるかと思います。

○吉田委員 コメントとしては長くなりますので、次回にお送りしたいと思います。

○大淵環境改善室長補佐 分かりました。

○小野寺委員 基本的な質問なのですが、これはほとんど水に溶けず溶解度は3%ということです。有機溶媒には溶けると言うこのですが、オリーブオイルには溶けるのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 溶けます。

○小野寺委員 もう1つ質問ですが、胃の刺激性と肝臓の変化というのは、関連がある所見と考えているのでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター 別ものと思っています。

○吉田委員 これは120匹としているのですが、最初の表ですと、表から対照動物数が20はいないのですが、この原因はどういうことなのでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター この試験の特異的なPHの処理があります。当センターで使っているF344ラットの肝臓の横隔膜ヘルニアの発生が10%から20%とコンスタントにあります。したがいまして、PHの成功率が、そういう動物があったときには100%実施できないという状況がありますので、したがいまして、この最終評価物、動物は20を欠けてしまうということになります。

○吉田委員 失礼かと思ったのですが、あえて20匹の中から一部をセレクトとしますと、GLPには違反をしてしまいますので、そういうことがあるなら素直にそこに書かれませんと、強制経口とか、いろいろ手技がございますので、そういったアクシデンタル・デスあるいはそういうことで有効動物数は幾つだったと書いていただいたほうが、評価はしやすいと思います。

○西川座長 今後のことですかね。

○日本バイオアッセイ研究センター 最終的な有効動物数は何匹という記載はしてあります。ただ、今回の説明資料には載せてありません。次回からは載せます。

○津田委員 陽性巣の大きさについて、直径がどれだけ以上を採ったかなどの記載がないのですが。

○日本バイオアッセイ研究センター 結果だけで、まとめた所には記載しておりませんが、0.2mmです。

○吉田委員 直径が0.2mmですか。

○日本バイオアッセイ研究センター そうです。

○津田委員 どのようにやられたのですか。機械的にやったのか、画像で一つ一つ書いて計測したのか。

○日本バイオアッセイ研究センター 病理を担当しました梅田です。画像解析の測定ですが、機械で、直径が0.2mm以上のものを測定するようにプログラム設定しております。その大きさ以上のものについて、自動で測定するようにしております。

○津田委員 そのプログラムは、機械が面積を測って、円形と仮定して2mmにしたのか、それとも最大直径でやったのか、最小直径でやったのか、どちらですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 「直径で」と先生がおっしゃいますように、最大直径の場合とか、いろいろな形、実際にはフォーサイも必ずしも真円ではありませんので、歪な形のものも。

○津田委員 質問だけに答えてください。

○日本バイオアッセイ研究センター プログラムは直径を0.2mmとして計算した面積を。

○津田委員 円形にして機械的に換算したということですね。

○日本バイオアッセイ研究センター はい。

○津田委員 分かりました。

○若林委員 先ほどの吉田先生とも少しオーバーラップしますけれども、フェノバルビタールの13匹、このスタートも20匹ですか。

○日本バイオアッセイ研究センター はい。

○若林委員 そうすると、これはpartial hepatectomyPH)の手技のときに7匹亡くなってしまったということですか。

○日本バイオアッセイ研究センター そうです。先ほど言いましたように、横隔膜ヘルニアの発生が偏っていたということと、手技のばらつきだと思います。

 ただ、今回フェノバルビタールの陽性対照群は有意な陽性結果ということで、13匹ではありましたが、陽性結果は得られたものと評価しています。

○若林委員 心配しているのは、PHをやるときの手技が完全にエスタブリッシュされていないように思われるので、大丈夫かなという気がしました。

○西川座長 フェノバルビタールの群では7匹が死亡しているということですが、その辺りは実施された施設としてはいかがでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター こちらでも想定外の死亡が出てしまったと思っています。先ほど言いましたように、横隔膜ヘルニアの発生が10%から20%なので、その中に収まってくれるものと思っていたのですが、この群に関しては死亡数が多かったという結論です。

○西川座長 横隔膜ヘルニアが多数あったということですね、この群に。

○日本バイオアッセイ研究センター そう評価しています。

○小野寺委員 今回の試験以外、ほかの物質で試験は実施したことはありますか。この2-ビニルピリルジン以外で、この試験系を用いで試験をしたことは。

○日本バイオアッセイ研究センター 予備試験として、フェノバルビタールの試験ですとか、そのバックグラウンドのデータを採る試験は、この試験の前に。

○小野寺委員 それと、死亡率とか動物の状態はほとんど一緒ですか。

○日本バイオアッセイ研究センター まとめてしまうとそうですけれども、群のばらつきというのはありました。

○西川座長 次の物質では18匹生存しているようですので、たまたまということで理解したいと思います。

○津田委員 何週でスタートしましたか。

○日本バイオアッセイ研究センター スタートは6週です。

○津田委員 何グラムでしたか。

○日本バイオアッセイ研究センター 125から130ぐらいの体重です。

○小野寺委員 すごく気になるのは、経口投与で、胃粘膜の刺激性があって体重が落ちているというのですが、飼料の摂取量が多いというのは、図の中には飼料の摂取量が書いていなくて、文章の中には「図1」と書いているのですが、これは本当に摂取量が増えたのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 基本的には給餌量と残餌量の差で摂餌量というのは計算しますので、胃の刺激に対してストレスがたまって固形飼料をかむという状況があったと思います。

○小野寺委員 ということは、実際に摂取しないで単に餌の消費量が増えたと理解してよろしいのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター はい。

○西川座長 1つ確認したいのは、GST-P陽性巣が増えていない、逆に減っているというような傾向で、それはいいのですが、相対肝重量は増えていますね。17ページに「組織変化はなかった」とあるのですが、これはどうやって説明するのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 重量は確かに増えているのですが、組織の変化では所見として取れるものがなかったものですから、所見は取っておりません。なぜ重量が増えているのに変化がなかったかということに関して、私どもでも答えを持っていない状況です。

○西川座長 肝細胞に肥大があったというわけでもないのですね。

○日本バイオアッセイ研究センター 肥大は起きておりません。

○西川座長 ちょっとなぜかなという素朴な疑問でした。ほかに全体を通して何かありますでしょうか。

(特になし)

○西川座長 ないようでしたら、この物質については中期肝発がん性試験の結果は陰性と判断いたします。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○西川座長 次に1,3-ジブロモプロパンの試験結果について議論をいたします。事務局から説明をお願いいたします。

○日本バイオアッセイ研究センター 資料2-5、通しページで35ページを御覧ください。1,3-ジブロモプロパンのラット肝中期発がん性試験の結果を報告します。

 被験物質の1,3-ジブロモプロパンは、1-2に構造がありますように、末端にブロモが結合したプロパンです。物理化学的な性状としては、無色透明の液体です。比重等は記載されたとおりで、これもビニルピリジンと同様に水に難溶性のもので、有機溶剤に可溶なものです。製造量等は、2012年度の製造・輸入量は1,000トン未満です。国内での生産量として、2011年で5トンという記録があります。用途は、医薬品の中間体として使用されています。許容濃度に関しては、今までに設定はありません。また、IARCの発がんの分類も設定がありません。

 遺伝毒性の結果は、通常のAmes試験、代謝活性化での状況で、復帰突然変異試験において陽性です。何本か報告があるのですが、その中の非活性の最大のものを調べますと、TH1535で、1.49×103 というものがありました。また、CHL細胞を用いた染色体異常試験においては陽性結果が出ていまして、これも複数の報告があります。その強さの比較をするD20値は0.066mg/mLで、これも復帰突然変異試験の結果及び染色体異常試験の結果、ともに強い遺伝毒性を示されたということです。in vivoの試験に関しては報告がありません。1,3-ジブロモプロパンの説明に関しては以上です。

 本題のラット肝中期発がん性試験の結果を報告します。目的としては、ビニルピリジンと同様で、1,3-ジブロモプロパンの肝発がんプロモーション作用の有無を検索し、その発がん性を予測するというものです。試験方法も同じものです。被験物質をオリブ油に溶解しまして、051550150mg/kgの用量で投与しています。同じく陽性対照群として、フェノバルビタールを25mg/kgの用量で、毎日1回強制経口投与しました。DENの投与、PH等は、ビニルピリジンと同じ間隔で実施しています。

 この1,3-ジブロモプロパンの用量設定は4に記載しています。投与量は、1,3-ジブロモプロパンのSDラットを用いた強制経口投与による28日間の反復投与毒性試験の結果及びその結果に基づいて当センターで行った、F344ラットの雄を用いた用量設定試験の結果を参考にして決定しております。

28日間試験では、雌雄のSDラットに1,3-ジブロモプロパンを1050250mg/kgの用量で、28日間強制経口投与しています。投与による死亡は認められておりません。250mg/kgの群で、雄の体重の増加の抑制、これは対照群の82%という状況ですが、それが認められています。肝重量の増加が50mg/kg群の雌、250mg/kg群の雌雄に認められています。組織学的変化としては、小葉中心性の肝細胞の肥大が50及び250mg/kg群で、雌雄に認められています。また、25mg/kg群の雌で腎重量の増加、胸腺重量の減少等が認められておりました。

 当センターで行った用量設定試験では、F344ラットの雄を用いて、起始物質(DEN)投与及びPHの処理をしたものとしない群を設けて、用量設定試験を実施しております。この用量設定試験の用量は、先ほどの28日間試験の結果を参考にしまして、50及び150mg/kgの用量で、6週間の強制経口投与を実施しています。その結果、いずれの群においても、一般状態や体重の異常は認められておりません。また、起始物質投与とPHを実施した群との顕著な差は認められておりませんでした。以上の結果により、本試験では150mg/kgDEN及びPH投与で耐えられる最高用量として、以下50155mg/kgを設定しています。

 試験結果としては、同じく次の4ページと5ページに、体重推移のグラフ、また肝重量の結果の表、肝臓のGST-P陽性細胞巣の結果の表を載せてあります。

 被験物質による影響として、10mg/kgの投与群で、投与後に流涎が散見され、摂餌量の高値が認められておりました。被験物質投与による死亡は認められておりません。肝重量は増加傾向を示しまして、実質重量は50及び150mg/kg投与群で、相対重量は全ての投与群で増加が認められております。これは表1に記載の通りです。肝臓のGST-P陽性細胞巣の単位面積当たりの個数及び面積は、媒体対照群と比較しまして、被験物質投与群は低値傾向を示し、150mg/kg投与群、最高投与群で有意な低値が認められております。これも表2に結果を記載しております。

 ここで、肝のGST-Pですが、被験物質により肝臓にGST-Pの酵素誘導が認められています。これは全体的に薄いGST-P陽性の像として染色されるのですが、陽性細胞巣は境界がはっきり区別されるということで、目視で境界を囲んで画像解析し、データを算出しております。そういう評価をしまして、結果を出しております。投与による肝臓の組織学的変化は認められておりません。また、陽性対照群におけるGST-P陽性細胞巣の単位面積当たりの個数と面積は、ともに媒体対照群と比較して高値を示しておりました。

 本試験は、被験物質の最高投与量として、肝重量の増加を示す用量まで実施しています。また、媒体対照群を含む被験物質投与群の最終的な有効動物数は、各群15匹以上を確保しています。媒体対照群と陽性対照群のGST-P陽性細胞巣の単位面積当たりの個数及び面積は、当センターのバックグラウンドデータの範囲内でありました。したがって、本試験は適切に実施されたものと評価しました。

 以上の結果を踏まえまして、結論として、1,3-ジブロモプロパンはラット肝臓における発がんプロモーション作用を示さず、その発がん性は陰性と評価しました。以上です。

○西川座長 御意見、御質問等をお願いします。

○吉田委員 結果についてお尋ねしたいのですが、肝臓が最高用量の150で、約50%増加していて、確かにヘパテクをすると普通よりも赤かったり、例えばピーパーといったような可能性はなかったでしょうか。全体がびまん性に肥大しているような可能性はなかったでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター 細胞質の色調なのですが、ひいき目に見ると、ややエオジンというよりはヘマトキシリンに強く染まる感じがありました。形態的な変化として捉えるほどのものではないと判断しまして、今回「組織の変化はなし」としておりますが、全体の色調としては、やや青っぽい感じはありました。

○吉田委員 赤くはない。

○日本バイオアッセイ研究センター はい。

○吉田委員 そういたしますと、50%上がっているのに組織学的変化がないというのが、若干不思議だなと思います。というのは、確か昨年度に各国の毒性病理学会が出したリバー・ヘパトロフィーの中で、50%以上も上がったらトキシスティと取ろうよということが、それをアグリーするかどうかは別としても出されていましたので、結構腫れたなというのがあったものです。ありがとうございました。

○西川座長 SDラットでは50以上で小葉中心性の肝細胞肥大が見られる、とありますよね。この中期試験ではいろいろな操作をしているから、それが見えにくくなっているということなのでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター その可能性はあると思います。

○小野寺委員 42ページの肝重量の所ですが、陽性対照群よりも150mg/kgのほうが、実重量が多くなっていますよね、普通に考えると、フェノバルビタールのほうが肝細胞の増殖の活性が強いような気がするのと。もう1つは、SDなのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター SDラットです。

○小野寺委員 いや、平均値のプラスマイナスの後の数字です。

○日本バイオアッセイ研究センター SD(標準偏差)です。

○小野寺委員 そうですと、15mg/kgのところまではSD0.7から0.8ぐらいで、ある程度個体ごと1718で揃っていると思うのですが、50150mg/kgになると、結構ばらつきが多くなってます。その原因は、手技的な問題なのか、それとも物質投与によって、あるいは高用量を投与したことによって、肝細胞の重量の変化にばらつきが出てきたか、どちらでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター ばらつきが多いというのは、私どもの見解では投与の影響ではないかと考えております。フェノバルビタールのほうも重量が上がっているのですが、こちらよりも先生方がおっしゃるように、最高投与群のほうが高い値を示しておりますので、私どもも、何か変化がなければおかしいのではないかと思いまして、何度も見たのですが、形態的に捉えるという形では難しかったというのが結果です。フェノバルビタールのほうは、通常はPHをかけなくても出てくるような、小葉中心性の肝肥大が起きております。

○西川座長 この資料の20ページと43ページを比べますと、フェノバルビタールのGST-P陽性巣の数とか面積というのは、非常に安定しているような印象を受けるのですが。したがって、手技的には慎重にやられているかなと思います。

○若林委員 このフェノバルビタールはポジティブコントロールとして取っていると思いますが、他の機関でやったときのデータとほぼ同じようなデータなのでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター これは論文を参考にしまして、通常の伊東法の試験というのは飲水投与が多くて、フェノバルビタールの強制経口投与によるデータというのは見つけられませんでした。したがいまして、飲水のケミカルインテイクから、1日の投与量を算出しまして、今回予備的に強制経口投与の試験を組みまして、この25mg/kgというものを設定しております。したがいまして、ほかの飲水の結果と同じような、GST-P陽性の増加と評価しています。

○若林委員 比較ができないということですね。

○日本バイオアッセイ研究センター 比較はできませんが、ケミカルインテイクで評価しますと、同じような増加率です。

○若林委員 陽性細胞巣数とか面積も、他の機関で飲水投与したときと、ほぼ同じような結果が出ているという理解でよろしいですか。

○日本バイオアッセイ研究センター はい。

○小野寺委員 今回の試験の目的が、中期発がん性プロモーション作用があるかどうかということなので、GST-P陽性巣の結果から見ると陰性の結果で良いと思うのですが、肝臓に対して、ある程度の毒性、発がんプロモーターではない毒性が発生している投与域で、こういう検討をするということが本当に科学的に良いのかどうかというのは、この物質に限らず、座長が先に言いましたように、中心性の肝肥大が出ていること。今回は出ていないけれど、フェノバルビタール以上に肝臓重量が増えていると。そして、組織学的にはよく分からなかったと。この物質を投与することによって、肝臓に何らかの影響が起きていることは、この実験結果から分かるわけですよね。

 そのようなバイアスというより、正常ではない肝臓で、GST-Pが陽性でなかったから陰性という結果を強調して良いのか。それとも、これは肝臓への傷害性と、いわゆる発がんプロモーターの有無というのは別にして考え、本検討会では発がん性はなかったという結論を出して良いのかというところがわかりません。

○西川座長 結論としては、後者について我々は議論していると思います。発がん性があるかないかです。したがって、もしほかに御意見がなければ、1,3-ジブロモプロパンの試験結果も陰性と判断するということにしたいと思います。

○吉田委員 今回のように、有意に数も面積も減少した場合については、もちろん陰性でよろしいのですね。

○西川座長 私はそのように理解していますが、津田先生、何か。

○津田委員 この減少は実は見掛け上の減少でして、150mg/kgだと肝臓が1.5倍ぐらいになっています。そうすると、切片を採ってやりますと、面積も1.5倍ぐらいに増えるのです。1.5倍までいかないにしても、かなり増えます。

 そうすると、勘定するGST-P陽性巣の数は、単位面積当たりでは減るわけです、肝臓が大きくなっているわけですから。それで、これは少し減っているのです。計算しますと大体2.091.5倍すると3ぐらいになるから、コントロールになるのです。ですから、これは、話は合うのです

○吉田委員 私の勘違いかもしれないのですが、いわゆるPPR剤による肝腫瘍の場合は、GST-Pのフォーサイはディテクトできない可能性があるということが分かったものですから、気になりまして、さっき伺ったら「赤くはない」ということなので、今回はその可能性が低いということなら、今、津田先生の御意見もありますし、アグリーです。

○津田委員 PPRとは、この場合は関係ありません。あれはGST-P陽性巣の発生する機序の所にインタラクトして抑えてしまうということが分かっていますので、これは関係ないと思います。見掛け上減少したのは、肝臓が腫れたからです。

○西川座長 あと、発がん以外の肝臓の病変に対する影響をどのように評価するかについては、最初のNOAELをどうするかというところにも関連してきますので、併せて今後の検討課題としたいと思います。

 次に、議題3「平成26年度の中期発がん性試験の対象物質の選定について」です。事務局から説明をお願いします。

○大淵環境改善室長補佐 資料3-1「平成26年度の中期発がん性試験対象物質の選定について」を御覧ください。まず、1.平成26年度におけるスクリーニング発がん性試験の実施です。平成25年度から中期の試験を行っていますが、平成26年度の試験については6物質を対象としたラット肝中期発がん性試験を予定しています。2.が、これについての物質の選定についてです。物質選定作業は2段階の検討会を経て決定する形としています。まず、1段階目の作業として、化学物質のリスク評価の企画検討会が別途ありまして、そちらで優先候補及び次候補を選定していただいています。具体的には、今年3月に第3回の企画検討会を開いていまして、そこで優先候補6物質、それから、優先候補の中に不適当なものがあるなどのことを懸念して、次候補2物質、計8物質をリストアップしています。

 企画検討会でどのような観点で物質選定をしているかというと、まず、遺伝毒性の強さを基本にして事務局で11物質をリストアップしまして、そこから製造・輸入量や試薬が入手できるかどうかなどを考慮しながら、優先6物質と次候補2物質を選んでいただきました。

 企画検討会で選んだ物質は資料3-2です。拡大版の資料を御覧いただいたほうが分かりやすいと思います。優先候補の6物質と次候補の7物質がありますので、この中から本日のワーキンググループで最終的に試験の対象とする6物質を決めていただきたいと思います。

 その考え方について、64ページを御覧ください。囲みの中の、(2)発がん性評価ワーキンググループにおける絞り込みにある作業です。リストアップしてある物質について、どういう御議論を頂くかということです。丸数字1ラット肝中期発がん性試験の対象とすることが適当な物質であるかどうか。適当であれば、もうそれで終わりですが、そうでないとした場合、丸数字2肝臓以外の臓器を標的とした腫瘍発生の可能性が高く、他の臓器を対象とした中期発がん性試験を実施すべき物質であるか。また、丸数字3スクリーニング試験の追加実施は不要であり、発がん性試験の候補とすべき物質であるか。この趣旨は、既に何らかのスクリーニング試験、これまでに伊東法で試験をして陽性だったなど、そのような状況があった場合に、丸数字3の可能性も出てくるのではないかと考えています。丸数字4としては、中期発がん性試験、発がん性試験のいずれも不要な物質であるか。既に十分にデータがあるので、これ以上の試験の必要がないというような場合には丸数字4に当たると思います。これらのどれに該当するかを本日のワーキンググループで御議論いただいて、6物質を決めていただきたいと思っています。

 この御議論の参考ということで、これらの候補物質8物質について、伊東法の試験をする場合に適当な試験媒体があるかどうか、日本バイオアッセイで検討していただいています。その結果を資料3の一番右にごく簡単に概要を書いています。詳しい資料は、通しの67ページに記載しています。

 拡大版の資料3-2にお戻りください。候補物質について事務局から簡単に説明いたしました後に、御議論いただきたいと思います。主な事項のみ紹介いたします。

 優先候補物質の1番目、1,4-ジブロモブタンです。微生物を用いた変異原性試験、染色体異常試験、ものによっては、それ以外の小核試験などの結果も記載していますが、このように陽性の結果のものです。性状は液体で、医薬品原料です。備考にありますが、構造が似ている1-ブロモブタンは既に国で試験を行って、がん原性ありということで、大臣の指針の対象になっています。

 候補物質の2番目、1,2-ジクロロ-4-ニトロベンゼンです。常温で固体の物質で、医薬・農薬・繊維染料・顔料中間体などの用途で使用されています。これは、ベンゼン環の周りにクロロが2つとニトロ基が付いているのですが、1位の異性体である物質が既にがん原性指針の対象となっています。

3番目は、4-ターシャルブチルフェノールです。常温で固体。用途としては、ポリカーボネート樹脂の分量調整剤などです。備考として、ラットの2段階発がん性試験モデルの情報が既にありまして、ターゲットは胃で陽性の結果が出ています。企画検討会の中では、胃をターゲットとした試験は陽性と出ているので、次の試験として伊東法を行う必要があるか、あるいは、スクリーニング的な試験はもう必要なく、長期の発がん性試験の候補に持っていくかについては、発がん性のワーキンググループで御議論いただくほうがいいだろうということになっています。

4番目は、2-クロロピリジンです。これは常温で液体。医薬・農薬の中間体です。

5番目、1 ,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルです。これも常温で液体の物質で、接着剤原料ということです。備考欄と企画検討会の欄に、マウスの経皮投与の試験は既に行われていて、その結果は陰性という情報がありますが、企画検討会では、経皮投与の試験の結果だけで発がんの有無を判断することはできないということで、伊東法の候補物質に入っています。

6番目は、臭素酸ナトリウムです。物質は常温の固体。医薬部外品添加物、具体的にはパーマネントウェーブ用剤等に使われています。備考欄には、類縁物質である臭素酸カリウムに遺伝毒性及び発がん性があり、IARCでは「2B」となっている物質です。カリウムとナトリウムの違いだけということです。臭素酸ナトリウム自体についての遺伝子改変マウスの発がん性試験の情報があり、結果は陰性です。企画検討会の議論では、遺伝子改変マウスの結果だけでは発がんの有無を判断できないということで、伊東法の候補にすべきだとして入っています。

 次に、次候補です。7番目は、1,2,3-トリクロロベンゼンです。白色の結晶の物質で、染料・顔料中間物、トランス油、潤滑剤などに使われています。備考欄には、ラットの2段階発がんモデル試験の情報があり、標的は肝臓、結果は陰性です。つまり、伊東法の試験は既に行われているということです。このような状況なので、企画検討会では、伊東法は改めて行う必要はないだろうということです。もしやるとすれば、他の手法の中期の試験が考えられると思います。

8番目が、5-ニトロインダゾールです。これは固体の物質で写真薬に使われています。企画検討会では、製造・輸入量が極めて少ない物質なので優先順位としては余り高くないだろうということで、次候補のグループに入っています。

 表の一番右の欄は試験媒体の検討結果です。いずれの物質についても、水ないしオリブ油に溶ける又は懸濁が可能だということで、伊東法の試験を行うには媒体の面では問題はなさそうだという状況です。

 これらの物質の毒性試験等の情報については、補足として、資料3-4、通しの69ページから、各物質についてもう少し詳しい情報を記載したものを配布していますが、説明は省略いたします。もし必要があれば議論において御覧いただきたいと思います。これらの物質の中から平成26年度の伊東法の対象物質6物質の選定をよろしくお願いいたします。

○西川座長 では、今年度の肝中期発がん性試験の候補の選定について御議論をお願いしたいと思います。優先候補物質が6物質と次候補が2物質あります。この中で、中期発がん性試験を実施すべきでないというものがもしありましたら、お願いいたします。

○小野寺委員 次候補の7番は伊東法を既に行っているのですが、改めてする必要はあるのでしょうか。

○西川座長 これは。

○大淵環境改善室長補佐 伊東法の必要性はないので、もしやるとすれば、他の臓器をターゲットとした試験を将来的にする候補に残しておくかどうかということです。

○小野寺委員 今回の試験候補は肝臓をターゲットにしたものですよね。

○西川座長 少なくとも肝中期発がん性試験の候補ではないということですね。

○大淵環境改善室長補佐 はい。

○西川座長 ほかにございますか。いずれも遺伝毒性がかなり強いもので、それなりの製造・輸入量があるということです。

○吉田委員 化審法のスクリーニング評価で、遺伝毒性だけではなく、28日間のものがあるものは、この中にはないということですね。

○大淵環境改善室長補佐 28日間での評価ですか。

○吉田委員 もし肝臓がターゲットだと示唆するようなもので、かつ、生産量が多ければ、と思うのですが。

○西川座長 資料3-4に各物質の詳細な情報、詳細かどうかは物質にもよりますが、反復投与毒性の概略も一応書かれています。

○小野寺委員 ありますか。28日間投与の毒性試験もですか。

○大淵環境改善室長補佐 例えば71ページは28日間の反復投与、強制経口投与ですが、そういった試験の情報があります。

○西川座長 3つ目の物質は胃を標的とした2段階モデルで陽性の結果が出ていますが、さらに、肝臓を標的とする中期試験を実施すべきなのか、あるいは、速やかに長期試験を実施したほうがいいのか、そういう考えもあるのですが。

○若林委員 これは胃と言っても前胃ですね。

○西川座長 これは恐らく前胃ですね。

○大淵環境改善室長補佐 試験の結果については、76ページの真ん中辺りからの「発がん性」の所に試験の内容が載っています。

○小野寺委員 今の資料の73ページと75ページは同じ資料ですが。

○西川座長 そうですね、ダブッていますね。

○大淵環境改善室長補佐 すみません。

○西川座長 74ページか76ページか。

○大淵環境改善室長補佐 ダブりです。申し訳ありません。

○西川座長 これは明らかに前胃ですね。

○吉田委員 対象物質の2番目のうち、ニトロベンゼンなどは明らかに標的が血液ですよね。これについても、2段階の中期をする必要はあるのでしょうか。

○西川座長 2段階の中期ではなくて、直ちに長期試験をやったほうがいいということでしょうか。

○吉田委員 もしそれがないのであれば、直ちに。この標的は血液ですよね。

○西川座長 血液が標的の可能性はありますが、肝臓が標的ではないということは言えるのでしょうか。

○__ やってみないと分からないです。

○西川座長 そこは、やってみないと分からない。

○津田委員 これはこれからずっとやっていくので、余り最初からそのように選んでしまうと。このモデルの有用性も、ある程度データに出てくるということもありますので、そういうことでやっていくと分からなくなる。ある程度データの集積という意味も考えて、余り考えずにやっていったほうがいいのではないかと思います。

○小野寺委員 せっかく検討会で選んでくれた6物質と予備の2物質があるのですが、我々は何を基準にしてこの中から選ぶのか。例えば生産量が多い物質とか、毒性データが少ないとか、何かの基準がないと。個々に比較しても全部、特徴が違うので難しいと思うのですが。

○津田委員 これは要するに、ばく露として問題になるものを選んでいるわけですね。

○大淵環境改善室長補佐 そうです。基本的には、ばく露として問題になりそうなものを選んでいます。量的には8番の物質はやや製造量が少ないので、ばく露の可能性は余りないかもしれないのですが、その他のものは、それなりの量があるという前提で選んでいます。こちらのワーキンググループでの目的としては、優先候補の中から伊東法はもうやる必要がないような物質を外して、外した分を次候補から繰り上げる必要があれば繰り上げるという考え方です。ここにあるものは何らかの試験の必要はありそうだというものを挙げているつもりですが、伊東法に適するかどうかというような観点で見ていただきたいと思います。

○西川座長 伊東法を実施することに適しているかどうかの観点で評価をお願いします。

○吉田委員 臭素酸ナトリウムについて質問です。遺伝子改変動物を用いた6か月の試験が得られていて、備考としてこれだけということになるのでしょうか。既に情報があるので。遺伝子改変動物を用いたものは国際的に発がん性の指標として認められているものなのですが。この辺りは小野寺委員にお伺いしたいのですが。

○小野寺委員 遺伝子改変動物の発がん性試験は、きちんとやられていれば、この結果はもう評価されていると見てもいいと思いますので、あえて試験を追加して評価する意味合いはそれほど大きくないと思います。

○津田委員 遺伝子改変と言ってもいろいろとありますが、これは何ですか、ras-H2ですか。

○小野寺委員 これだけではよく分かりません。

○大淵環境改善室長補佐 81ページを御覧ください。

○西川座長 rasですね。v-Ha-rasですか。

○津田委員 NTPですね、アメリカですね。経皮ですね。

○吉田委員 経皮ではないのですか。臭素酸ナトリウムで。経皮ですね、経皮では分からないかもしれないですね。飲水ですね。

○津田委員 このネズミは確か皮膚発がんの感受性が高い。

○吉田委員 飲水なのですが。

○小野寺委員 いえ、経皮での発がん評価ためにこれを使用したのではないですか。

○大淵環境改善室長補佐 そうです。パーマネント剤などに使われるので、多分、経皮の試験をされたのではないかと思います。

○西川座長 臭素酸カリというのは腎臓に標的性があるので、そういう意味から、肝臓を標的とするこの試験に向いているかということも考慮しないといけないと思います。いろいろと御意見があると思いますが、先ほどの津田先生の御意見に従えば、取りあえずデータを蓄積するという意味から、企画検討会で選定いただいたこれらの優先候補物質を中期発がん性試験として実施したいと思いますが、いかがでしょうか。どうしてもこれは外したほうがいいという御意見があれば、そのようにしたいと思いますが。

○小野寺委員 先ほど言いましたが、3番目のものについては、検討会では伊東法が必要なのかどうかについて疑問が出されていますね。ここで検討して結論を出すように言われているので、これをやるとすれば、こちらの意見をきちんと出しておかなければいけないのではないでしょうか。

○西川座長 それで、いかがですか。

○小野寺委員 目的によると思います。ここの検討会で、伊東法に関して試験を実施してデータを集めて、既存のデータと比較して評価することを目的とするのか。それとも、伊東法以外の発がん性試験の幾つかのデータで、ラットの2段階発がん性試験や長期の試験の結果をもって、ヒトに対するハザードが可能なデータが十分かどうかという観点でみるかだと思うのです。どちらを優先するかによって、これを直接的に発がん性試験に持っていくべきなのか、伊東法をやってから次に進むいくべきなのかという判断ができると思います。

○津田委員 それはもう、これを詰めていくときに十分に討議されたのです。それをやると元に戻ってしまうので、取りあえず、情報のないものについてはこのアルゴリズムで進めるということになったのです。

○小野寺委員 ということは、私たちは検討する意味がないということですか。

○津田委員 いえ、ここで挙がってきたものを、各物質についてはもう一度ここで検討しますが、伊東法を使う、使わないなど、そういうことについては、もう既に検討済みなのです。例えば、肝臓標的性について、絶対に標的としないのであればいいのですが、伊東法を検討するときに、肝臓を標的としないものでも30%近くは陽性に出るということも含めて、取りあえずここの方法でやっていく。データを収集していくということです。このアルゴリズムに当たる物質ですね。そういうことになったのです。それを元に戻してしまうとややこしくなるので。

○小野寺委員 いや、元に戻すのではなくて、検討会での選定理由の説明を我々はする責任がないのでしょうかということです。

○津田委員 ここでは恐らくそれは重要度に応じて討議するということではないでしょうか。

○西川座長 当然それは議論すべきことだと思います。強い反対意見があれば、そのようにしていくべきだと思いますが、今までの議論を聞いていて、必ずしもそれほどの強い意見はなかったと思います。小野寺委員、やはりやる必要はないとお考えでしょうか。

○小野寺委員 これで長期発がん性を直接行うことがはいけない理由は何でしょうか。

○西川座長 肝中期を省略してですか。

○小野寺委員 はい。

○西川座長 そうですね、そういう考えもあると思います。

○若林委員 ただ、長期発がん性試験だけではなくて中期発がん性試験の意味とか効用のようなものも、この中で徐々に作り上げていくことが1つの役目だと思います。私は、この6つの物質をするということについては、いいのではないかと思いました。

○小野寺委員 理由がきちんと説明できれば、それでいいと思います。

○若林委員 その面からすると、7番、8番は、何となく理由が余りよく分からないのです。もし、上の6つの1つが何らかの理由でできなかった場合に、7番、8番のどちらかを選ぶかという話になると少し問題があります。9番目ぐらいを用意しておかないと少しまずいのではないかということを感じました。

○西川座長 次候補として、7番目は、既に中期試験をしてあるのに、このリストに載せる必要はないと思うのです。その辺りは、できれば企画検討会にフィードバックしていただきたいと思います。

○大淵環境改善室長補佐 企画検討会の議論を補足させていただきます。事務局で11物質を挙げたのですが、実は、そのうちの3物質の試薬が入手できない、試験をしようと思っても試験ができない物質だったので、11物質から3物質を引いた残りが自動的に8物質になって、8物質を優先候補と次候補に振り分けたということです。実は、7番、8番は、試験をする必然性は必ずしも高くないと思っています。ただ、何も次候補がないと、優先候補が伊東法不適だとなった場合に代わりのものがないと困るので、表としては付けています。もし本当に、優先候補の6物質の中に伊東法の不要なものがあって、次候補から繰り上げるのも今ひとつ必要性がないということであれば、予定している6物質を5物質に減らすとか。試験を絶対に6物質しなければいけないということではなくて、必要のないものまで試験をするというのも無駄な話ですので。もし伊東法を必要とする物質が5物質しかなければ、それで決めていただくことでもいいと思っています。

○西川座長 中期試験をやっても全く意味がないというものは、恐らく優先候補物質の中にはないと思いますが、いかがでしょうか。

○吉田委員 6物質に関してですね。

○西川座長 優先候補の6物質についてです。

○大淵環境改善室長補佐 3番は、胃のターゲットの試験はありますが、肝臓をターゲットとした伊東法もやってみて、結果を比べてみるというような観点で実施ということでしょうか。

○西川座長 そういうことになると思います。では、平成26年度の中期肝発がん性試験の対象物質は、事務局案の優先候補物質である6つの物質に決定したいと思います。

○津田委員 言い忘れました。ここで言う「中期発がん性」は伊東法だけに限定しているわけではありません。当時の議論としては、多臓器発がんモデルが入っていたと思います。ですから、もしここで伊東法では出そうにもないと考えられたのであれば、多臓器発がんを直ちに始めたほうが時間的な節約にはなると思います。

○西川座長 したがいまして、肝中期発がん性試験ではなくて、他の多臓器モデルのほうがよいという物質が、もしありましたら。

○津田委員 胃を標的とするというのは、もちろん、完全に伊東法でネガティブになるかどうかは分かりませんが、多臓器で胃を標的とする処置をした方法であれば必ず分かるということになります。

○大淵環境改善室長補佐 多臓器を。

○津田委員 そのほうが時間的な節約になると思います。ただ、伊東法は8週ですが、多臓器は20週ぐらいだと思いますので、そういう期間の長さはあります。また、コストのことも多少違ってくると思いますが、結果的に、伊東法をやってからもう一度考え直すよりは早くなると思います。

○西川座長 胃の2段階モデルで既に陽性が出ている物質を多臓器モデルでやるということなのでしょうか。

○津田委員 ここに、胃を標的としたモデルで陽性とありますが、これをまたやるわけですか。

○西川座長 いや、これはもうやらないですね。この結果は尊重して、長期のがん原性試験をやるか、あるいは、肝臓への標的性が否定できないのであれば、肝中期モデルを実施する、そういう議論だと思います。したがって、今議論しているのは、肝中期発がん性試験の候補物質として、これらが妥当かどうかということについてです。

○津田委員 そういうことなのですか。私は、「中期発がん」ということなので、確かあのときには、伊東法以外に多臓器も一緒に包括的に考えると結論されたと思ったものですから、もし多臓器のほうが都合よければ、そちらでやったほうがいいかもしれないということを申し上げたのです。

○大淵環境改善室長補佐 先ほどの資料で説明を残した所があったので、少し戻ってしまいますが、資料2-1、通しの14ページの「参考2」を御覧ください。「ラット肝中期発がん性試験以降の更なる試験の実施について」の所で、(1)は、伊東法で陽性と判断された場合にどうするかということで、これは長期の発がん性試験を念頭に置いて、吸入試験が実際に実施可能かどうかを、試験用のガスや蒸気が安定的に精度よく発生できるかを確認する試験を行って、その上で、長期の対象物質にするかという議論をするとしています。

 もう1つ、(2)のグループとして、伊東法で陰性と判断された場合です。これについては、肝臓以外の臓器をターゲットとした中期発がん性試験の候補物質と考えたいということです。ただ、予算等の関係もあるので、当分の間は伊東法の試験を優先的にこなしていって、ある程度の目処がついてきた段階で、伊東法で陰性だった物質の中から肝臓以外をターゲットとした試験をするという方向で考えてはどうかということで、ここに書いています。

○西川座長 したがいまして、取りあえず、ラット肝中期発がん性試験を優先的に実施する。もちろん、肝臓を標的としない試験についても考慮していく必要はあるのですが、もう少し時間を掛けて検討していきたいということになっているようです。

○大淵環境改善室長補佐 伊東法で物質の検査の数をたくさんこなしたいということです。

○西川座長 今年度のラット肝中期発がん性試験で実施する物質として、優先候補として挙げられている6物質を選定したいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○西川座長 ありがとうございます。

○若林委員 この6物質は1年間のうちに結果を出すということですか。

○西川座長 そのように聞いています。

○大淵環境改善室長補佐 そうです。1年間でやります。これから委託事業として入札手続などを行います。必ずしも6物質を1つのラボで受託するということではなくて、複数のラボで分担して受託する可能性もあります。

○若林委員 最初から最後までに、56か月ぐらい掛かるのではないですか。

○津田委員 全部でですか。

○若林委員 全部でです。それを1年間だとすると。

○吉田委員 用量設定はしっかりしなくてはいけませんね。

○西川座長 7か月あれば。実際には実施している所は、どのぐらいですか。用量設定から始めると、そのぐらい掛かりますか。

○日本バイオアッセイ研究センター 掛かりますね。用量設定はしっかりしないと、いつも不安な結果になりますから。

○津田委員 そうすると、同時に走らせなければ1物質ということですね。それを何本かやれば、その分できるということですね。

○西川座長 よろしいでしょうか。では、議題4に入ってもよろしいですか。

○大淵環境改善室長補佐 残り時間は僅かですが、議題4「平成26年度の既存情報による発がん性評価について」、説明いたします。資料4-1は、昨年度のワーキンググループで御議論いただいた中身です。先ほどの議題までは、国が直接試験をするものでしたが、次の議題は、既存の試験結果なり疫学情報を活用しての評価をどのように進めていくかというもので、昨年、資料4-1のとおりに整理しました。

 発がん性については、既存の知見から、1(1)に「以下に該当する物質についてはリスク評価の対象候補とし、発がん性のスクリーニング対象から除外する」とあるとおり、関係機関の評価の特にIARCの評価を最重要視して、そこで「1」~「2B」に分類されていれば、自動的にリスク評価の候補に入れる。それ以外については、IARCで「1」~「2B」に分類されてはいないが一定の所で一定の評価がされていれば考えようということで、()は化審法での評価、()は他の機関の評価です。他の機関の評価については、ワーキンググループが目を通して、その評価が妥当かどうかを検討した上で、リスク評価の候補にしていくということです。丸数字3も、他の知見をワーキンググループで精査してからどうするかを決めるということです。このような方向性を昨年度は議論していただいています。

 これを踏まえ、今年はどのような評価をするかということです。資料4-2「既存の発がん性情報を活用した発がん性評価の進め方について」、通しの95ページを御覧ください。先ほどの資料4-1の考え方をベースに作業をしていきますが、具体的な作業の進め方としては、今後の第2回以降、ワーキンググループの前に事務局から委員の先生方に、関係機関の発がん性評価書や関係する文献等をお送りして、事前に見ていただきます。その担当の仕方については御意見を頂きたいと思いますが、1物質当たり1名の先生又は1物質当たり2名の先生に見ていただくようにお願いする形にしたいと思っています。事前に見ていただいた上で、ワーキンググループにおいて合議制で御議論いただきたいと思います。

 ただし、(3)にあるとおり、これからの作業は平成25年度の委託データ文献調査の結果を活用しますが、ワーキンググループで評価が必要な物質は135物質ほどありますので、これを全部ワーキンググループで議論しようとすると、仮に1回当たり10物質ずつ議論しても多くの回数を開かなければなりません。事務局案としては、最初の5物質程度をワーキンググループで御議論いただきまして、先生方の評価の水準を合わせる作業をやってみて、それ以降の物質については、先生方に評価結果を文書でまとめていただきまして、それを事務局に御提出いただきましたものを取りまとめまして、事務局からワーキンググループに報告させていただきたいと考えています。必ずしも全部の物質を合議制ではなく、書類での審査の形を提案させていただきたいと思っています。

 具体的にどのような物質を先生方に評価していただかなければいけないか、97ページを御覧ください。文献調査、発がん性評価ワーキンググループでの評価についてです。平成25年度に行った文献調査自体は、大きく2段階に分けて行っています。文献調査1では、関係機関の発がん性分類を調べたり、遺伝毒性情報は主として二次の文献等を調べていただいています。そこで少しふるい分けて、発がん性についてIARCのみ評価あり、他の機関のみ評価あり、両方の評価あり、いずれの評価もない、とグループ分けをして、さらに、それぞれのグループの中で分類を整理していきます。一番右の、発がん性に関して「ワーキンググループでの評価の要否」の所の網掛け部分が先生方に評価していただく必要がある部分です。例えば、IARCのみで評価があり、その内容が「1」~「2B」以外の少しランクの低い評価になっている場合については、IARCの評価書を文献調査2で入手する。また、IARCの評価書に載っていないが関係するような発がん性試験や疫学の文献があれば、それも入手する。このような場合に、ワーキンググループにIARCの評価書とそれ以外の文献を見ていただいて、どのような評価ができるかを御議論いただくということです。そのほかも網掛けの部分については似たような考え方で整理しています。

 次に、それが実際にどのグループに何物質が当てはまるかを示しています。99ページと101ページです。資料が小さいので、必要に応じて拡大した資料も御覧ください。網掛けの部分が先生方に御議論していただく必要があるものです。99ページは平成25年度の文献調査ですが、文献調査に2タイプがありまして、99ページの丸数字1グループは、平成23年度に医薬・食品局で文献調査をある程度実施しているので、それを活用して、さらに詳細調査をしたものです。下から3分の1ぐらいの所にあるとおり、このグループの中では84物質がワーキンググループで議論が必要なものです。

101ページは、違うタイプです。化審法で「一般化学物質」として毎年製造・輸入数量を届け出なければいけない物質がありますが、そこで届け出られた物質について、用途等を考えて、ばく露がどの程度かについて化審法のスクリーニング評価がされています。そこで、平成22年度にばく露クラスが「クラス5」又は「クラス外」に該当する物質です。これは経済産業省から物質のリスクを頂いて、それを基に文献調査を進めたものです。このグループの中で、ワーキンググループで評価が必要なものは計51物質です。この5184を足して全部で135物質となっています。

 これらを先生方に見ていただきますが、基本的には、IARC又は他の機関の評価書が何らかの形で既にあり、評価書同士を比較する作業、あるいは、評価書プラスそれ以降に公表されている文献を見てみるといった作業をしていただくことになります。その作業の進め方が先ほどの95ページです。

 先生方には、あらかじめ135物質を振り分けさせていただきますが、それを1物質当たり1名、あるいは、丁寧に行うということで、1物質当たり2名の委員に見ていただくとしまして、最初の5物質は合議制、その後は書面で結果を出していただくというように考えています。事務局の提案は以上ですが、先生方の御意見を頂いた上で進め方を決めて、次回のワーキンググループから具体的な物質の議論に入りたいと思っています。

○西川座長 既存情報を活用した評価の進め方について、御意見等ございましたらお願いします。よろしいですか。1物質当たり1名の委員に依頼するか2名の委員に依頼するかというのは、最初の5物質に限ったことですか。

○大淵環境改善室長補佐 これは全体的な話です。

○西川座長 全体ですか。

○角田化学物質評価室長 最初の5物質は、先ほどのとおり、目合わせのような形で方針を確認する意味もあります。あとは、委託事業の成果がCDになっていますので、それをお送りして、御担当の部分を見ていただくという形になるだろうと思います。

○西川座長 そうすると、135物質を通して1名にするか2名にするかを決めないといけないのですね。

○大淵環境改善室長補佐 はい。1物質1名でいくと、単純に計算して1名当たり27物質、1物質当たり2名とすると、1名当たりの担当物質はその倍の50を超えることになってしまいます。

○小野寺委員 今までの文献調査12というのは、評価書はあるのですね。その評価書を見ていけばいいのですね。

○大淵環境改善室長補佐 そうです。評価書はありますので、例えばIARCは「1」~「2B」ではないがACGIHはそれよりも高いレベルの評価がされているというものがある場合、両者の評価書を比較して、ACGIHの評価が妥当であるとすれば、それを追認するような形を取るということです。

○小野寺委員 少し待ってください。そこでどちらが妥当であるかとなってくると、その元の文献まで戻らなければいけないということですか。

○大淵環境改善室長補佐 原則、そこまではいかないように、評価書を見ていただくということで。

○角田化学物質評価室長 基本的には、IARCと同じようなレベルかどうかというような結論です。

○小野寺委員 その試験の内容を見てですか。

○角田化学物質評価室長 はい。最初の紙にありますように、IARCの「1」~「2B」相当でいいかどうかという御判断を頂きたいということです。

○若林委員 135物質の中に、誰が見てもこうだろうという物質と、ボーダーラインのもの、難しいものの判断があるので、難しいものの判断は数名でやったほうがいいと思います。簡単なものは、もう誰が見ても同じですから。そういう分類をしてやったほうが効率的なのではないかという気がしますが。判断が難しいものは皆さんのいろいろな意見を聞いたほうがいいのではないかと思います。

○西川座長 最初の5物質はともかく、それ以降の物質については、事務局でそのようなことを追加していただけると評価がスムーズにいくのではないかと思います。やはり、ゼロから評価するのは無理ではありませんが、時間的には無理ではないかと思いますので。

○吉田委員 2つ、お願いがあります。1つは、文献のクオリティについてはきちんとチェックしてあるのかどうか。文献はパブリッシュされたものだけですから、GLPも何も関係ありませんので、文献のクオリティについては事務局でチェックしていただきたいということです。

○西川座長 先ほど事務局から説明がありましたように、原則として文献まで戻ることは想定していないということですね。

○大淵環境改善室長補佐 評価書のみで評価するものは評価書の範囲だけで、文献まで見ていただく必要があるのは、例えばIARCは「3」ランクだけれども、評価が出た以降に別の試験がされていて、発がん性ありなどというような文献があれば、そちらの文献は見ていただくようなことがあります。

○吉田委員 あと、もう1つは、それぞれの評価機関がいつ評価したか、そのイヤーによって大きく変わっていると思います。特に最近は発がん性のヒトへの外挿性というのはドラスティックに変わっています。NTPでもIARCでも、きっと数10年前と今とは違う基準だと思います。その辺りについてはどう考えればいいのでしょうか。

○西川座長 評価書を作成した年ぐらいは情報として入れていただけると助かります。

○大淵環境改善室長補佐 はい。

○西川座長 1名にするか、2名にするかですが、1名では担当の数が減りますが。

○小野寺委員 その前に一度、どの程度なのかというものを見せていただかないと。本当に簡単に見て30分ぐらいでできるのか。1物質に1日、2日掛かるとなってくると、とんでもない仕事量になります。

○大淵環境改善室長補佐 取りあえず、最初の5物質だけ1物質1名で分担をお願いしまして、それ以降については、1回目をやってみてから、どうするかを相談いたします。最初の割り振りは1物質1名で行って、次回に御議論いただくということでよろしいでしょうか。

○西川座長 はい。そうしないと、どのぐらいの仕事量か把握できません。

○大淵環境改善室長補佐 分かりました。

○西川座長 実際の資料をそれぞれ1名ずつ見せていただいた上でどうするかを決めたいと思います。

 時間が超過して申し訳ありません。最後に、「その他」について、事務局からお願いします。

○大淵環境改善室長補佐 資料5、通しの121ページを御覧ください。今後の予定は、次回第2回の予定は710日です。そのときに今の5物質をトライアル的にやってみることをさせていただきたいと思います。先生方の日程調整では、第3回を724日とさせていただいていましたが、当初思い描いていたものと作業の進め方が少し変わってきましたので、できれば724日は中止とさせていただいて、先生方に個別に審査をしていただく時間を何箇月が取って、第3回は9月又は10月といった時期で再度調整したいと思います。今後の作業で、1名当たり何物質にするかがまだ確定しないので、それも見ながら第3回の開催時期については相談させていただきたいと思います。本日の時点では、第3724日は中止、あるいは、5物質の議論が710日の1回で終わらなければ、第3回は5物質の続きとさせていただいてもいいと思います。取りあえず、724日はイキにしておいて、10日に5物質が終われば第3回はしばらく空けて、10日に5物質の議論が終わらなければ24日もということにしておきましょうか。

○西川座長 はい。

○大淵環境改善室長補佐 では、そのようにさせていただきます。

○西川座長 第2回は710日。第3回の724日は予備日ということですね。

○大淵環境改善室長補佐 はい。5物質の議論が710日で終われば第3回は少し期間を空けてからとさせていただきます。

○西川座長 そのようにお願いしたいと思います。

○大淵環境改善室長補佐 秋以降は、次年度以降に向けて、遺伝子改変マウスを用いた試験の基準を議論するなどというような議題も今年度は予定しています。そのほか、委託事業での文献調査や伊東法の試験についても6物質を予定しています。委託事業については実際にその成果を活用したワーキンググループでの検討は平成27年度を予定していますが、このような形で、ワーキンググループと委託事業を並行した形で作業を進めますので、よろしくお願いいたします。

○西川座長 以上で本日の発がん性評価ワーキンググループを閉会いたします。本日はお疲れさまでした。


(了)

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