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2014年6月24日 第17回新型インフルエンザ専門家会議議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成26年6月24日 16:00~17:30


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

伊藤委員 岡部委員 押谷委員 吉川委員 坂元委員
宇田委員 田代委員 大石委員 永井委員 丸井委員

○議題

H7N9ワクチンの臨床試験の実施について

○議事

○滝室長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第17回「厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議」を開催いたします。

 委員の皆様方には、御多忙の折、お集まりいただき、お礼申し上げます。ありがとうございます。

 初めに、委員の出席状況を確認したいと思います。

 本日は、委員15名中11名の方に御出席いただいております。なお、庵原委員、川名委員、小森委員、櫻井委員から御欠席の御連絡をいただいております。

 ここで、新たに委員に就任された方の御紹介をいたします。

 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切委員。

 佐々木委員の後任といたしまして伊集院保健所長(全国保健所長会長)の宇田委員。

 また、本日は、参考人として独立行政法人国立病院機構本部総合研究センター臨床研究統括部長の伊藤参考人に御出席いただいております。

 それでは、以降の議事進行を岡部議長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○岡部議長 お忙しい中、お集まりいただいてありがとうございました。

 それでは、第17回新型インフルエンザ専門家会議を行います。

 最初に、配付資料の確認をお願いします。

○滝室長補佐 事務局より配付資料の確認をさせていただきます。

 上から、議事次第、委員名簿のほか、

 資料1「H7N9ワクチンの開発経緯」。

 資料2「治験薬インフルエンザワクチン(H7N9株)の試験成績及び非臨床試験の結果」。

 資料3「海外の臨床試験データについて」。

 資料4「H7N9ワクチンの臨床試験の実施について」。

 参考資料1「海外の臨床試験データ(ホームページ掲載版)」。

 参考資料2「H7N9インフルエンザワクチン医師主導治験概要」。

 それから、追加資料として、2014年4月に公表されましたNOVARTISMF59-Adjuvantedを加えたH7N9ワクチンの論文をつけさせていただいております。なお、この追加資料につきましては委員の先生方のみへの配付とさせていただいております。

 不足しております資料がございましたら事務局にお申しつけください。

 また、カメラ撮影はここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○岡部議長 ありがとうございました。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 きょうの議事は、ここにありますように、議題としては1つになっています。「H7N9ワクチンの臨床試験の実施について」です。経緯は後で細かく説明があると思いますけれども、一応この委員会で以前に非臨床試験をやるということを承認し、それを経てから臨床開発に関する治験をどうしようかという検討を行うというような経緯になっていたと思います。ワーキンググループのほうでこのH7N9の検討を行っているので、きょうは、それについて主にディスカッションすることになろうかと思います。活発な議論をよろしくお願いいたします。

 それでは、事務局から資料1の御説明をお願いします。

○滝室長補佐 資料1の説明を事務局からさせていただきます。

 昨年3月の中国における鳥インフルエンザH7N9ウイルスの人感染例の公表を受けまして、昨年6月、7月に「厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議ワクチン作業班会議」を開催、さらに、昨年9月に「新型インフルエンザ専門家会議」を開催し、H7N9インフルエンザワクチンのあり方について検討をさせていただきました。

 その結果、今後、必要に応じてH7N9インフルエンザワクチンの生産・備蓄ができるよう、試験的に少量を製造した上で非臨床試験を実施するなど、その開発を進めていくことが結論づけられました。

 この結論を受けまして、非臨床試験では、H7N9インフルエンザワクチンのワクチン株としてワクチン製造候補株を日本で分与が可能となっておりましたNIBRG-268NIIDRG-10.1の2株について増殖性、抗原性等が検討されまして、NIIDRG-10.1株と決定されております。

 さらに、そのワクチン形態でございますが、H5N1インフルエンザワクチンでの実績を踏まえまして、鶏卵培養法による不活化全粒子ワクチンでアルミニウムアジュバントを含む場合と含まない場合で検討することが適当とされました。

 また、抗原量については、H7型ウイルスがワクチンを接種しても免疫ができにくい可能性があるという指摘がありましたので、既に承認されているH5N1インフルエンザワクチンの抗原量で免疫が誘導されるかについても検討されることとなりました。

 この非臨床試験の結果につきましては後ほど御報告をさせていただきます。

 さて、本日開催させていただきました新型インフルエンザ専門家会議では、この非臨床試験結果と海外での臨床試験の結果などの情報を踏まえまして、H7N9インフルエンザワクチンの臨床試験の実施について、本年、6月2日に開催させていただきました「新型インフルエンザ専門家会議ワクチン作業班会議」においてその方針を取りまとめていただきましたので、その方針についてこの会議にて了承してよろしいか御審議いただきたいと存じます。

 なお、臨床試験につきましては、平成18年のH5N1型インフルエンザワクチンを医師主導治験として実施され、さらに、平成21年のH1N1型インフルエンザパンデミック時に免疫原性が不明であったH1N1ワクチンの用量に関する医師主導治験を実施されました国立病院機構本部総合研究センター臨床研究統括部長の伊藤先生に、厚生労働科学研究事業として実施していただく予定でございます。

 以上となります。よろしくお願いいたします。

○岡部議長 ありがとうございました。

 それでは、今までの経過というところで何か御質問とか御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、きょうのこれからの議論のもとになるわけですけれども、これまでに行われた国内の非臨床試験についての御説明も事務局からよろしくお願いします。

○滝室長補佐 事務局より資料2について御説明をさせていただきます。なお、本資料内の詳細データにつきましては、企業情報にもつながることから割愛をさせていただいております。あらかじめ御了承ください。

 資料2「治験薬インフルエンザワクチンの試験成績及び非臨床試験の結果となります。右下にページ数を記載させていただいておりますのでご覧ください。

 まず2ページ目ですけれども、治験薬インフルエンザワクチンの製造についてということで、原液製造については昨年の9月から12月にかけてウイルス株をNIIDRG -10.1として、H5N1ワクチンの製法に準じた治験薬インフルエンザワクチン原液3ロットの製造が行われました。

 また、小分け製品につきましては、今年の2月に原液1ロットを用いまして6ロットの製造が行われました。

 ページをおめくりください。3ページ目になります。その小分け製品についてですけれども、1ml中の成分、分量について表1に示してございます。一番上、有効成分「不活化インフルエンザウイルス」というところにございますが、HA含量を153060/mlの6群として、アルミニウムを含むもの、含まないものとして製剤化されております。

 続きまして、4ページ目ですが、原液の試験成績結果となります。無菌試験を初め、原液の試験成績については適合もしくは異常なしという結果が得られております。

 次に、5ページ目となります。小分け製品の試験成績となります。pH試験を初め、数々の試験が行われましたが、全て適合あるいは異常なしという結果が得られております。

 続きまして、6ページ目、インフルエンザワクチンの動物を用いた安全性の評価です。表4にございますように、1マウス免疫原性試験、2マウス白血球数減少試験、3異常毒性否定試験、4発熱試験、5カニクイザルを用いた免疫原性試験が行われました。

 その結果が次のページ以降になります。ページをおめくりください。

 まず、1マウス免疫原性試験の結果ですけれども、原液を用いました試験中の臨床観察を行った結果、異常は観察されませんでした。臨床観察項目については、以下にございます1から5になります。

 続いて、2マウス白血球数減少試験ですけれども、これは小分け製品を用いまして試験が行われました。全ての小分け製品が判定基準に適合しております。

 続きまして、8ページ目になります。モルモットでの評価になりますけれども、異常毒性否定試験が行われました。小分け製品を用いたこの試験におきまして実施した全ての小分け製品が生物学的製剤基準の判定基準に適合いたしました。

 次のページをごらんください。ウサギでの評価です。原液につきまして生物学的製剤基準に準じた発熱試験が行われました。その結果、製造した原液3ロット中2ロットが発熱陽性という結果が出ました。ただし、加熱処理(70℃、30分)をした試料では全て陰性となり、試験に適合いたしました。

 ここで考察として書かせていただいておりますけれども、この発熱試験で陽性となったことについてなのですが、4ページ目にございます原液の試験でありますエンドトキシン試験にまず異常がないこと、それから、接種3時間前後から発熱反応が発現していること、加熱処理により発熱反応が陰性になったことから、エンドトキシンによるものではなくて、ウイルス粒子に由来する発熱活性によるものと考えられております。また、これまで製造したインフルエンザワクチン(H5N1株)原液は、同一の試験方法でありながら発熱を認められなかったことから、インフルエンザワクチン(H7N9株)原液に特有の現象と推測されております。

 続きまして、10ページ目、カニクイザルでの評価です。原液をもとに試作されましたワクチンでこの免疫原性試験において臨床観察を行ったところ、上のポツですけれども、インフルエンザワクチン2回目接種後2週目の採血時に1頭が死亡いたしました。ただし、本例につきましては、採血前の一般状態に異常は認めず、活動性は正常であり、また、剖検においても異常な所見は認められず、2.5ml採血のほぼ終了時に突然死亡したことから、採血に対する脱血とストレスによる突然死と判断されております。

 2ポツ目ですけれども、インフルエンザワクチン2回目接種後2週目に1頭に嘔吐痕を認めております。

 ただし、最後のポツですけれども、これら2頭以外の個体に異常は認められませんでした。また、これら2頭を含め、全ての個体の体重の推移に異常は認められませんでした。

 続いて、11ページ目になります。治験薬インフルエンザワクチン(H7N9株)の原液の免疫原性を評価するために、表5にありますように、1マウス免疫原性試験、2カニクイザルを用いた免疫原性試験が行われました。結果につきましては12ページ以降となります。

 まず、1マウス免疫原性試験ですけれども、インフルエンザワクチン(H7N9株)はインフルエンザワクチン(H5N1株)と同様の免疫原性を有しており、また、アルミニウムアジュバントの添加によりわずかに免疫原性が高くなることが確認されております。

 この詳細につきましては、作業班会議の先生方に御議論いただき、見ていただいて確認をしていただいております。

 続いて、13ページ目、カニクイザルでの免疫原性の評価です。これにつきましても、インフルエンザワクチン(H7N9株)原液の免疫原性はH5N1株を製造株とするインフルエンザワクチン(H5N1株)原液の免疫原性より4倍程度低いが、2回の接種後2週目に全ての検体がHI抗体価40倍以上となることがわかりました。また、その免疫原性はアルミニウムアジュバントの添加によりわずかに高くなることが確認されております。

 非臨床試験の結果については以上となります。

○岡部議長 どうもありがとうございました。

 ワーキンググループの方もこの中にはおられると思いますけれども、このデータに接していない先生方もいると思いますので、御質問あるいは意見がありましたら、どうぞお願いします。

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 伊藤です。

 今、御説明いただいたものの中で少し教えてほしいのですが、10ページのカニクイザルでの評価である個体が死亡したと書いてあるのです。これは、いわゆる治験をした個体数Nが全体で幾つかということと、1頭に嘔吐痕を認めたということに関しては、アルミニウムアジュバントあり、なしかということも含めて、その2点についてお尋ねしたいのです。

○岡部議長 事務局からでいいですか。

○滝室長補佐 6群でこの試験は行われておりまして、1群3頭のカニクイザルが使われております。計18頭のカニクイザルで非臨床試験が行われております。

 アルミニウムアジュバントを含むか、含まないかについては、10ページの※のところに書かせていただいておりますけれども、HA含量は60/ml、アルミニウムアジュバントなしです。

 ごめんなさい。嘔吐痕のあったカニクイザルに投与されたワクチンのアルミニウムアジュバントあり、なしですね。

○伊藤委員 死亡した個体についてはここに書かれていますけれども、嘔吐痕を認めた個体に使ったいわゆるワクチンは何かということをちょっとお尋ねしたいのです。

○滝室長補佐 嘔吐痕のカニクイザルですけれども、アルミニウムアジュバントは含んでおりません。

○伊藤委員 ということは、なしでよろしいのですね。

○滝室長補佐 なしで結構です。

○伊藤委員 はい。

○滝室長補佐 1ml/ボディで投与されております。

○伊藤委員 亡くなったものは0.5より多いということですね。

○岡部議長 用量としてはどのぐらいのものだったのですか。

○滝室長補佐 用量としては1.0ml/ボディで投与されております。HA含量は60/mlです。

○岡部議長 私のほうから質問してしまって済みません。

 そうすると、死亡したカニクイザルも60/mlですよね。だから、60/ml使ったときに1頭が嘔吐痕で1頭が死亡ということで、全体の頭数としては18頭だったという考えでよろしいですね。

○伊藤委員 あと、性別も。

○岡部議長 性別ももしわかったらお願いします。

○滝室長補佐 発言を修正させていただきます。

 まず、死亡のカニクイザルですけれども、アルミニウムアジュバントを含まない60/ml0.5mlが投与をされております。また、嘔吐痕につきましては、アルミニウムアジュバントを含まない60/mlのものが1.0ml投与されております。

○岡部議長 あとは、伊藤委員から性別はどうですかという御質問です。

 では、今、調べているようなので、そのほかの質問を先に。

 大石委員、どうぞ。

○大石委員 ウサギでの発熱試験のところですけれども、H5N1を人に使ったらかなり発熱が起こったということがあったと思うのです。ウサギ試験ではH5N1では発熱は認めなかったけれども、このH7N9のほうではこの発熱が出ているということは、人に接種すると発熱という副作用がかなり出やすいということを意味しているのでしょうか。

○岡部議長 では、田代委員のほうから。田代先生はワーキンググループのほうのメンバーかと思います。

○田代委員 はい、ワーキンググループのメンバーです。

 まず、ウサギでの発熱試験というのはかなり昔に制定された試験で、国外では全く行われていません。どういう目的でこういう試験が行われてきているのかといいますと、卵で製造するワクチンは、製造に用いる卵が過去においてサルモネラとか、ほかのグラム陰性桿菌で汚染されていたわけです。そこからエンドトキシンがまじってきて、それによって発熱活性が出てさまざまな副反応が起こる可能性があったわけです。それを否定するためにこの試験が導入されていました。

 エンドトキシンがまざっている場合にはウサギでは発熱するわけですけれども、これを加熱処理しますと、エンドトキシンは失活します。加熱後に発熱活性が見られなくなったということで、エンドトキシンだという判定になるわけです。今回の場合は、加熱して発熱活性がなくなりました。

 これ、なくならなかったのですね。ちょっと待ってください。

 陰性になりました。失礼しました。先ほどの説明は間違っています。

 エンドトキシンは、この70℃、30分の加熱処理では失活しませんので、加熱後に発熱活性がなくなったということからエンドトキシンの可能性は否定された。この考察に書いてありますように、では、何によってこのウサギによる発熱が起こったのかということにつきましては、詳細はわかりませんけれども、製造方法としては、以前やられたH5N1のワクチンと全く同じ方法でつくっていますので、ウイルスの株によるものだろう、H7による特異的なものだろうと考えております。

 ただし、発熱の程度は、大きな問題になるほどの発熱ではありませんでしたし、ウサギにおけるその程度の発熱が人においてどの程度の発熱をもたらすのか、もしくはほかの副反応をもたらすのかということについては全くわかっていませんけれども、この程度の発熱は通常のインフルエンザワクチンでも起こる場合がかなりありますので、特に大きな問題はないと判断いたしております。

○大石委員 わかりました。

○岡部議長 先ほどの雄、雌はわかりましたか。

○滝室長補佐 まだ確認中です。

○岡部議長 それでは、先に丸井委員、どうぞ。

○丸井委員 恐らく、非常に繁雑になるからだろうと思いますが、先ほどもコメントありましたように、今回報告していただいたものは、どれも一体どれだけの動物を使ったのかという全体のNがありません。そしてまた、小分け製品の場合には、ドーズがさまざまで、全てで影響がなかったというような報告があります。安全性評価の話のときには、こういう資料でも、信頼性確保のためには実際どれだけの対象に行って、どれだけに見られたのか。先ほどのように1頭が死亡したといっても、5頭のうちの1頭なのか、50頭のうちの1頭なのかというのは全く違うので、繁雑にならない程度に、でも、必要な数字は表示しておかないと信頼性を疑われることがあると思います。そのあたりをぜひ入れておいていただければと思います。

○岡部議長 関連してのご質問ですか。

 では、坂元委員。

○坂元委員 いいえ、事務局から先に。

○岡部議長 いいですか。

 では、事務局、先ほどの雄、雌のことですか。

○滝室長補佐 いいえ、発熱試験についてです。

○岡部議長 はい。

○滝室長補佐 これについては、生物学的製剤基準の一般試験法に従いまして試験が行われております。1回の試験当たりウサギ3匹の発熱反応を見ております。

 以上です。

○岡部議長 レベルはどのぐらいだったですか。

○滝室長補佐 試験結果の判断材料としてよろしいでしょうか。

○岡部議長 多分、異常になると判断できるような発熱の度合いではなかったという御説明だったのですけれども、それは判定試験をクリアする範囲内のものかどうかというのが丸井先生の質問ではないかと思うのです。

○滝室長補佐 ウサギ3匹の発熱反応の和が1.3℃以下の場合は陰性、1.3℃から2.5℃の場合は偽陽性、2.5℃の場合は陽性というような判断基準に基づきまして、まず、陰性になったものは1.25℃、陽性となったものが5.06℃、4.99℃になります。この後も、一度、偽陽性、陽性という判定が出ましたので、何度か試験を繰り返しておりますけれども、そのデータにつきましては、企業情報になるかもしれませんので、割愛させていただきたいと思います。

○岡部議長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 このカニクイザルが死亡したところで「採血に対する脱血とストレス」と書いてあるのですけれども、採血量を見ると2.5mlなのです。ちょっとぴんと来ないのですけれども、人に換算するとどれぐらいの血液の出血量に相当するのか。なぜ「脱血」という言葉が書いてあるのか。おわかりになればお教えいただければと思います。

○岡部議長 どうぞ。

○滝室長補佐 企業からいただいている情報ではそこまではございません。確認します。

○岡部議長 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 今の質問に関連するのですが、「採血に対する脱血とストレスによる突然死と判断した」とあるのですけれども、この判断した根拠というのを、剖検をどのようにしたかという詳細がわかればありがたいのです。

○岡部議長 事務局、お願いします。

○滝室長補佐 まず、人での投与だとどれぐらいかというところですけれども、62.5mlになります。

 それから、剖検結果ですけれども、腹水はなく、肝臓、腎臓、心臓、脾臓及び内臓臓器に異常な所見は認められなかった、胸郭内にわずかな出血と肺の点状出血を認めたが、蘇生操作によるものと判断されたという記載がございます。

○岡部議長 どうそ。

○伊藤委員 今の「剖検による」ということは、目視によるということですか。例えば、心筋の細胞を顕微鏡で見たとか、そういう詳細な剖検の結果かどうか、ちょっとお聞きしたいのです。

○岡部議長 どうぞ。

○滝室長補佐 目視によるものです。

○岡部議長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 人で60ml換算というのは、今、献血でも400mlというのは普通の献血量なので、この「脱血」という表現がちょっとひっかかるのですけれども、例えばこういうカニクイザルというのは、2.5mlでも、もともと脱血というものに非常に弱いのか。今、おわかりにならないと思うのですけれども、一応、相手側にこの「脱血」とわざわざ記載したのはどういう理由か、人換算で見ると60mlというのはショック死を起こすような量ではないと思いますが。

○岡部議長 これはワーキンググループのほうでどんな議論があったか、御説明をいただけますか。

 どうぞ。

○田代委員 カニクイザルの接種試験というのも生物学的製剤基準に特に入っていません。それで、なぜやられたかというと、ある程度人に近いものがアベイラブルだったからやってみたということだと思います。それで、たまたまといいますか、最大用量の60/ml1.0ml接種した場合に、2回目の接種後、血液を採取する際に死亡したということで、この間に何らかの異常な病変が起こっているということは、マクロスコピックな所見からですけれども、特に認められなかったということで、ワクチン接種による何らかの影響であるとは考えにくいという判断をしました。

○岡部議長 通常、この接種試験のときというのは、病理はミクロはやらないのですか。

○田代委員 規定されていません。これはやるという規定はありません。

○岡部議長 もともとがないから、やっていないということですね。

 ほかに御意見はいかがでしょうか。

 それから、製剤の方法は私どもも初めて拝見したのですけれども、防腐剤としてだと思うのですが、チメロサールを使っているのです。だんだんチロメサールフリーになっているのだけれども、このチメロサールを使ったというのは何か特別な理由があるのですか。

フリーではなくて、ロードーズのチメロサールが当然使われているので、チメロサールを使う、使わないに大きい問題があるわけではないと思うのです。

○滝室長補佐 H5N1のワクチンと同じ製法で製剤化をさせていただいております。

○岡部議長 田代委員、どうぞ。

○田代委員 チメロサールを入れた大きな理由は、このパンデミックの際に10mlのバイアルで提供するという可能性があります。そうしますと、1つのバイアルから20人分のワクチンを0.5mlずつ注射器でとるわけですから、この間の細菌による汚染ということが一応否定はできませんので、そのためにチメロサールを加えたということになっております。

○岡部議長 ありがとうございました。

 ほかに何か御質問かコメントかありますか。

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 H5N1と比較しているのですが、H5N1のときもカニクイザルの試験というのはされたのでしょうか。そのときに同じように死亡事例というのはあったのでしょうか。

○岡部議長 それはいかがですか。

○滝室長補佐 H7N9のこの試験と並行してH5N1についてもカニクイザルの試験を並行して行っております。死亡例はございませんでした。

○岡部議長 ありがとうございました。

 この中で、ワーキンググループに入られていた先生は、小田切先生がそうですか。何か追加して御説明かコメントかありましたら。

○小田切委員 特にありません。今、議論されたとおりだと思います。

○岡部議長 あとは、雄、雌。

○滝室長補佐 雄だろうということなのですけれども、確認して御連絡させていただきます。

○岡部議長 本質には迫ることではないと思うのですけれども、一応データとしてはあったほうがいいので、後でそれは確認してください。

 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、海外の臨床試験になるでしょうか。製剤は随分違うのだと思うのですけれども、海外でH7N9に対する幾つかのものが開発されて、それについて試験も行われていますので、事務局からお願いします。

○滝室長補佐 海外の臨床データにつきましては、資料3として御用意させていただきました。

 まず、上のNOVARTISの臨床試験結果ですけれども、これにつきましては、MF59-Adjuvantedを組み合わせた二度によるワクチン接種によって85%の治験者に免疫が得られたということ、また、このNOVARTISのワクチンについては、細胞培養法であるので、大規模製造に迅速に対応できる能力があるということが記載されております。

 次のページはNOVAVAXの海外データ。これはH7N9 VLPワクチンになります。インフルエンザ株に対するワクチンの臨床試験から得られたデータです。その結果は、このワクチンはサポニン由来のISCOM-Matrixと呼ばれますアジュバント5㎍を含んだワクチンなのですけれども、81%がHAIレベルを有していたこと、また、そのアジュバントワクチン接種後のうち97%が抗ノイラミニダーゼ抗体反応を有していたことなどが公開されております。

 次のページはNOVAVAXの臨床試験データの結果の表になります。簡単に申しますと、左側がアジュバントがないもの、右側がアジュバントのあるものとして下線部を比較させていただいているのですけれども、真ん中ぐらいに、セロコンバージョン、抗体出現がどうかというところで試験が行われております。アジュバントを含むものはアジュバントを含まないものに比べて抗体の出現が得られているという結果が公表されております。

 なお、これらのワクチンの公表データにつきましては、参考資料1としてもう少し詳しく公表データをつけさせていただいております。

 また、先生方にお配りした追加資料は、4月に公表されましたMF59NOVARTISのデータの論文となります。御参考のために資料を追加させていただきました。

 以上となります。

○岡部議長 ありがとうございました。

 では、田代委員から補足をお願いします。

○田代委員 国外でもH7N9のワクチン開発が行われていまして、幾つかの臨床試験の成績が一部発表されています。現在我々が進めている日本のワクチン製剤と同じフォーミュレーションのワクチンの成績というのはまだどこからも報告されていないのですが、今、事務局から紹介があったものは2種類です。

 1つは、細胞培養ワクチンです。MDCK細胞という細胞で増殖させたウイルスをスプリットワクチンにしまして、それに対してMF59という新しいアジュバントを加えたというものです。

 追加資料のほうに成績が。4ページを見ていただくとわかると思いますが、白いカラムがアジュバントが入っていないものです。どこにあるかわかりにくいかもしれませんが、抗体がほとんど上がってきていない。アジュバントを加えないと抗体を誘導できないということがわかります。これはH7N9のウイルスそのものの性質にもよるわけですけれども、H7N9のウイルスはワクチンとしてつくった場合に、それを接種しても、人においては抗体応答がほとんど認められないということです。

 そのための解決方法としては大きく2つあるわけです。

 1つは、HAたんぱく、抗原の上にT-cellエピトープと言われるヘルパーティーを誘導するエピトープが存在しているわけですけれども、そのシグナルがほとんどないということで、そこに何とかシグナルをくっつけてやらなければいけないというアプローチがあります。これは時間もかかって、安全性その他、かなり大変な作業になるわけです。

 もう一つの解決方法としては、アジュバントを加えて無理やり免疫を高めてやるというアプローチです。現在、日本を含めて海外で行われている開発は全てアジュバントを用いて免疫原性を高めてやろうということです。

 きょう紹介された2つについては、1つは、先ほど言いましたように、細胞培養で増殖したスプリット抗原に新型のMF59というアジュバントを加えた場合には、ある程度の抗体上昇が認められたということです。

 もう一つのオーストラリアからの報告は、VLPvirus-like particle)と言いまして、NOVAVAXという商品名ですけれども、これは、ウイルスと似たような、脂質で囲んだ粒子を人工的につくりまして、HAたんぱくだけを表面にくっつけてやったものです。これをワクチンとして使った場合にも、量がかなり必要ですけれども、ある程度の免疫応答は認められた。

 この2つの成績があります。

 それ以外に海外では、軽微の弱毒化、生ワクチンを使った場合にはそれなりの効果が認められたという成績もロシアのメーカーから報告されています。

 あと、ワクチン開発が進められているのは中国なのですが、中国では、聞いている限りでは6カ所のメーカーが独立してワクチン開発を進めているということです。さまざまな報道がされていますけれども、実際には臨床試験が実施されて有効な成績が得られたという報告はまだ公表されていません。

 以上です。

○岡部議長 ありがとうございました。

 海外で実施されている状況、現実にはこの2つがデータとして明らかになっているようですけれども、何か御質問、御意見がありましたら、どうぞ。

○田代委員 追加のコメントなのですが、H7N9というのは、ウイルス自身が特に変わっているウイルスではないのですね。ウイルス自身は鳥のウイルスに由来したウイルスですけれども、今のところ、強毒性、人における強い病原性を示唆するような遺伝子のシグナルは持っていません。中国で高齢者において30%の致死率が報告されていますけれども、どういう理由によってそういうことが起こるか、本当のことはよくわかっていません。

 それから、中国における感染者の抗体応答を見ましても、それなりに抗体応答は認められてはいますが、抗体価がいずれも低いことがあって、このウイルスは人において抗体を誘導する能力、すなわち免疫原性と言っていますが、これが低いということが強く示唆されています。

 それから、同じH7ですけれども、人では感染していませんが、過去に鳥の間で流行したH7N3とかH7N7とかいうほかの鳥のウイルスに対する試験ワクチンが海外でも過去に開発されていて、人における臨床試験が行われました。その結果、アジュバントを加えないワクチンは全く抗体が誘導されなかったという報告が幾つか出ております。ということで、H7については人において免疫原性が非常に低いということがわかってきたわけです。

 その理由として幾つか考えられますが、大きな理由は、先ほどお話ししたように、H7の主要抗原であるHAたんぱくの表面にT-cellエピトープが非常に少ない、もしくはない。ですから、動物に対しては免疫が誘導されても、人においては必ずしも誘導されないということが強く示唆されています。

 もう一つは、T-cellエピトープが少ないということに加えて、ウイルスが感染した場合、もしくはワクチンを接種した場合に、それを認識して免疫応答を誘導するためには、デュアルリコグニションと言われるメカニズムがあるわけですけれども、そのうちの宿主のHLAを認識して反応するようなシグナルというのが人自身の抗原とかなり共通しているということで、そういう人の抗原に対する免疫応答というのは生体のメカニズムで抑制されているわけです。やたらと自己免疫が起こって困るので、そういうことが起こらないように調節されているわけですけれども、それが強く働いているために、H7に対しても免疫応答が抑制されているのではないかということが一方で示唆されてきています。

 そういうことで、いずれにしても、H7のワクチン開発については、従来のインフルエンザワクチンに比べて非常に困難な状況が想定されていました。昨年からそういうことがわかっていたわけですけれども、今回の海外の臨床試験の成績を見てもそれが裏づけられていると考えられます。

 今回の動物を使った非臨床試験の結果、抗体の応答はある程度見られたということなのですが、これはあくまでもマウスとカニクイザルで認められたという状況で、人においてどうかということは全くわかりません。人においては、海外における臨床試験と同じように、免疫原性が非常に低いだろうということが強く示唆されていますので、臨床試験を行って、アジュバントを加えた場合に、確かに抗体が上がってくるということを確かめておく必要があるかと思います。

 以上です。

○岡部議長 ありがとうございました。

 今、補足的な説明をいただいたのですけれども、あとはいかがでしょう。

 この委員会は、基本的には、専門部会と名前がついていまして専門的にこれについて議論するところですけれども、いわゆるワクチン学的なところであるとか、そういったような基本的なところは作業グループにお願いしてディスカッションをやっていくということが作業班へのお願いだったわけです。その作業班のグループのほうである程度結論をまとめてきていると伺っていますので、それに基づいて、作業班としては臨床試験をやるべきであろうというのが今の田代先生の最後のサマリーだと思うのですけれども、実際に臨床試験をやる場合にはどのようなデザインかといったようなことについてまとめたものを、まず事務局から御説明をお願いします。

○滝室長補佐 資料4にH7N9ワクチンの臨床試験の実施についてということで、当時の開発方針からまとめをさせていただきました。

 その前に、カニクイザルの件ですけれども、全て雄ということです。よろしくお願いします。

 では、御説明させていただきます。

 まず、H7N9ワクチンの開発方針につきましては、昨年の9月のインフルエンザ専門家会議においてH7N9ワクチンのあり方が検討されまして、大量生産の備蓄を行うのではなく、必要に応じてワクチンを生産、備蓄できるよう試験的に少量を製造した上で非臨床試験を実施し、開発を進めていくこと。当面、治験用のH7N9ワクチンを製造し、非臨床試験までを実施する。そして、国内での臨床試験の実施について、国内でのこの非臨床試験の結果や海外の臨床試験の結果など、各種の情報を踏まえて検討するということで、きょうの会議になっております。

 そこで、これまでも御説明をさせていただきましたけれども、国内での非臨床試験及び海外の臨床試験の結果です。

 まず、国内での非臨床試験の結果としては、マウス及びカニクイザルによる免疫原性試験の結果では、H5N1ワクチンと同等程度の免疫が得られました。

 それから、ウサギによる発熱試験の結果では、複数の資料で発熱が見られ、これらの結果から、H7N9ワクチンはH5N1ワクチンと比べて発熱傾向にあると考えられた。

 それから、海外での臨床試験の結果についてです。田代先生から御説明もいただきましたけれども、アジュバントを添加した場合に比べ、アジュバントを添加しなかった場合は免疫応答が明らかに不十分でございました。

 裏面をごらんください。このことを踏まえまして、臨床試験の実施について6月2日に作業班会議を開催させていただきまして、

1製造実績のある形態(鶏卵培養法による不活化全粒子ワクチン)で製造したH7N9鶏卵培養ワクチンによる臨床試験の実施

H5N1を含めた複数の亜型への対応を想定したプロトタイプワクチンとしての承認を取得した細胞培養ワクチン等による非臨床試験及び臨床研究の実施

につきまして、以下に記載させていただきました方針が取りまとめられました。

 1製造実績のある形態のワクチンによる臨床試験として、鶏卵培養ワクチン(不活化全粒子ワクチン)で臨床試験を実施する。この臨床試験につきましては、7.5,1530/ドーズ、0.5mlを3週間隔で2回接種。アルミニウムアジュバントを添加した3群で実施をする。安全面の観点から、非臨床試験の結果における発熱等を考慮し、抗原量の少ない7.5/ドーズの少人数に対する接種から順に臨床試験を実施する。

 これにつきましては参考資料2としてつけさせていただいておりますけれども、医師主導治験の概要として、少量から始めまして、その間に臨床研究中核病院に設置をします効果安全性検討委員会におきまして判断をし、次の用量の臨床試験に進むというようなデザインをしていただいております。これにつきましては後ほど伊藤先生から御助言いただけると助かります。

 それから、効果の観点からアジュバントを添加したワクチンで実施をする。それから、被験者に対し、ワクチンの安全面に関するインフォームドコンセントを十分に行う。

 2プロトタイプワクチンによる非臨床試験・臨床研究の実施です。3月にプロトタイプワクチンとして承認取得しました(承認取得を目指しているものも含む)細胞培養ワクチンで非臨床試験を実施する。この非臨床試験の結果を踏まえまして、臨床研究を実施します。なお、プロトタイプワクチンにつきましては、既に承認を取得した細胞培養ワクチンはあるものの、H7型ウイルスはワクチンを接種しても免疫ができにくい可能性が指摘されていることから、新型インフルエンザが発生する前にこのH7N9ワクチンの臨床データを確認するものは有用であるということで、作業班会議で御結論をいただいております。

 以上、この方針につきましてこの専門家会議として了承してよろしいか、御審議いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○岡部議長 それでは、補足的な説明をまた作業部会のほうからいただきたいと思うのですけれども、田代先生、これについてお願いします。

○田代委員 先ほど御説明しましたように、このH7N9ワクチンについては、いつ使う必要が出てくるかわかりませんけれども、現時点では有効性と安全性を担保できるようなワクチンを準備しておく必要があるだろうということで臨床試験を実施する必要があると考えております。

 2つのオプションがあります。

 1つは、現在、H5N1のワクチンとして、臨床試験の結果、既に製造承認を受けて国家備蓄されております製剤と同じ剤形です。卵で増殖したウイルスを不活化して、全粒子の不活化ワクチンにアルミアジュバントを加えたものを用いるということ。

 2番目が、先ほど説明がありましたけれども、ことしの3月までに、現在、審査の最終段階に入っています細胞培養ワクチンについてそれぞれの承認を受けた剤形で非臨床試験及び臨床試験を実施する。

 この2つの方法を並行して進めていきたいと考えております。

○岡部議長 ありがとうございました。

 それと、参考人としておいでいただいたほうの伊藤先生、補足がありましたらお願いします。

○伊藤参考人 国立病院機構の伊藤でございます。

H5のワクチンとかH1N1の医師主導治験とかずっとやらせていただきまして、こういった試験に関しては比較的なれていると思っておりますが、今回の非臨床試験の成績も含めて、大変安全に取り組んだほうがいいと思っておりまして、参考資料2につくらせていただいたように、ファースト・イン・ヒューマンとほぼ同じデザインで組ませていただいておるところでございます。当然、安全性には十分配慮すべきだとは思っておりますので、救命救急センターのスタッフも含めてスタンバイした状態で実施をするということで準備を進めているところでございます。

 説明は以上でございます。

○岡部議長 それは接種のときに救命救急センターを含めたスタッフの方にスタンバイしていただくということですね。

○伊藤参考人 救命救急センターのある病棟で入院治験として接種をすることを考えています。外来でやるということではございません。

○岡部議長 ありがとうございました。

 これで、デザインといいますか、もし臨床試験をやるとするとこのようなことですよということなのですが、これについて御意見をいただければと思います。

 大石先生、どうぞ。

○大石委員 意見というよりは質問なのですけれども、H7N9は鶏卵培養ではウイルスがふえるということは伺っていたと思うのですけれども、細胞培養でもウイルスはふえるという確証はあるのでしょうか。

○田代委員 これは野生株を使うメーカーもありますけれども、細胞培養用に開発した製造用ウイルス、種ウイルスについては、全ての細胞で同じようにふえるわけではありませんけれども、ワクチン製造に十分に対応できる程度の増殖性が認められていると思います。

○大石委員 ありがとうございました。

○岡部議長 ほかにはいかがでしょうか。

 今まで御発言のない先生方、何かあったらどうぞ。よろしいですか。

 今までの委員会や何かでも、作業グループがやっていることについて全体的な判断を委員会で、いわば親会議でやるということですけれども、非常にテクニカルなことについてはやはり作業班でやっていただいたことを尊重するというようなことだとは思います。それなので、今、作業班と事務局から提案をいただいていた、1つは、非臨床試験はこれで了解をしたと。では、これをもって臨床試験のほうに行っていいかどうかということ、及び、臨床試験のデザインとしてこのようなものが提案されたことについて、いいかどうか。いい、悪いを含めて、もし御意見がありましたら。

 大石委員、どうぞ。

○大石委員 先ほど田代先生から御説明があったところなのですけれども、結局、資料4の中では「H7N9ワクチンはH5N1ワクチンと比べて発熱傾向にあると考えられる」という記載があるわけです。そうなると、動物実験レベルでその発熱物質というのはある程度特定されているわけですから、科学的にサイトカインなりプロスタグランジンなりの発熱物質についてのエビデンスを示したうえで、臨床応用に進むのがよろしいのではないかと思います。また、臨床治験において救命救急医をスタンバイするというのもちょっとどうなのかなという気もしますけれども、いかがでしょうか。

○岡部議長 伊藤参考人、どうぞ。

○伊藤参考人 救命救急センターをスタンバイというか、救命救急センターのスタッフも含めて治験のグループに属していただいて、救命救急センターの中でやるということでは決してございません。

 それから、今、おっしゃられた点について十分考えておりまして、実は私ども国立病院機構がバイオバンク・ジャパンの遺伝子の解析研究とかを含めて、同時に、このプロトコルで治験者の方の同意をとって動かしたり。それから、入院治験でやるつもりでありますので、とりわけレスポンスが出そうな時期を選んで採血させていただいて、その血清については保管をするなり、特に最初のフェーズ1の部分についてはきちんとした解析をしようと思っているところでございます。

○岡部議長 田代先生、どうぞ。

○田代委員 これは、先ほど言いましたように、少なくとも非臨床試験、動物を使った実験ではH5N1に比べて発熱活性があるのではないか、高いのではないかということが推定されているわけです。だからといって、先ほど言いましたように、人に対してどうかというのは全くわかりません。というのは、動物における免疫応答と人における免疫応答はH7の場合に必ずしもパラレルでない。動物に対してはきちっとT-cellエピトープがありますので、免疫応答も燃焼応答も起こるわけですけれども、人に対してはその辺のことが全くわからないということで、臨床試験をやる必要があるだろうということです。

 先ほど伊藤先生からお話がありましたように、少量、ロードーズから始めて、少しずつ安全性を確保しながらやっていこうということです。この結果、現在開発中のこのワクチンが人において発熱が高いとか、ほかの副反応が出て、これはとても使用できないというような結果になるかもしれません。そうなった場合にはまた原点に戻ってワクチンの開発をスタートし直さなければいけないということで、その判断をするためにも臨床試験をぜひ進めておく必要があると思っています。

○岡部議長 永井委員、どうぞ。

○永井委員 参考資料1に書いてあります臨床試験の年齢なのですが、18歳から64歳までという年齢設定。こちらはわかりやすい20歳から60歳。これの違いというのは何か意味があるのですか。

○岡部議長 これは、伊藤先生、お答えいただけますか。

○伊藤参考人 日本では18歳では同意がとれないので20歳以上にさせていただいているところでございます。上のほうの60歳は原則としてそれぐらいの年齢でということで書いているところでありまして、別に上限についてここで切るつもりはなかったとは思っております。ただ、第2相部分に関しては私どももわかりません。少なくとも神経管リスクがない方でないととてもできないと思っているので、40という形に切らせていただいているところでございます。

○岡部議長 丸井先生、どうぞ。

○丸井委員 ちょっと小さいことですが、今、参考資料2をごらんになっていたと思います。フェーズ1で、少ないドーズから始めていってということで、この場合には例えば5名の方、そして1週間の経過を見て、この委員会で判断して、次に15人の5名を始める、そういう手順になるのですか。この5名、5名、5名を全部済ませた後で検討するのか。恐らく、安全にかかわる事象が起きてきたら、そこで何らかの形で委員会が機能すると思うのですが、そのあたりのデザインをご説明ください。

○伊藤参考人 もちろん、TGN1412試験という昔の試験の失敗があるので、少なくとも最少用量に関しては、1日お1人ずつ接種をすることを考えております。過去、H5のワクチンをずっとやっておりまして、もし何か起きるとすると当日か翌日ですので、翌日まで見た上で、翌日まで出てこなければ、局所反応も含めてほぼ出てこないという過去の経験に基づいて、1日ずつ、お1人ずつ始めてみるということを考えております。

 過去、H5のワクチンを見ておりますと、1週間たって、それから新たに出てくることはないと思っておりますので、ここで1週間の観察期間という形にさせていただいているところでございます。

○岡部議長 坂元委員。

○坂元委員 同じです。

○岡部議長 ほかはよろしいでしょうか。

 このワクチンは、市販をして、多くの人に定期接種とか任意接種とか、そういう形で使うワクチンではなくて、あくまでH7N9というものがパンデミックの原因になって、なおかつ重症であるといったような場合に持ち出すワクチン。つまり、危機管理用のワクチンであるということで、治験のやり方や何かも前提としては違うと思うのです。

 そういう意味では、一方では、H7N9が仮に人に来るような状態になった場合には、ワクチンの必要性というものもまた出てくるので、そのバランスをとりながら考える必要があると思うのですけれども、どこかでボランティアの方に御協力をいただいて、治験というのはどんな場合でも必要なので、それを十分慎重にやっていただくということが今のデザインの中の、例えば一人一人とか、そのような通常の市販をもくろんでいるワクチンとは違うやり方ではないかと思います。

 ただ、ここのまとめのところの発熱のことに関する注意も、人でやった場合にどうなるかというのは、確かに田代先生がおっしゃるようにわからないわけですが、全粒子型ワクチンというのはスプリットに比べれば発熱が多いわけなので、そういったものが許容範囲内かどうかということも調べていただかなくてはいけないわけです。

 それから、この資料4の中には、カニクイザルにおいて死亡がワクチンに関係がないと思われる判断だったけれども、事実としてはそういうものがあったということは、やはり注意事項としてここに記入しておいたほうがいいのではないかと思います。それは私からの提案です。

 そのような注意事項と慎重にお願いをしたいということと、一方では、ニーズが危機管理としてあるというようなことで、本委員会としては、作業グループのほうで専門的な議論を尽くして提案された今の臨床試験に持っていくということで一応了承するというような結論でよろしいかどうか。もし異論とコメントがあったらお願いします。

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 結論を出すのであれば、いわゆる誰が賛成、反対というのをできればお願いしたい。

 あと、これに対する全体のコストを教えていただきたいのです。

○岡部議長 この治験にかかわるコストということですか。

○伊藤委員 そうです。

○岡部議長 それとも開発に関するコスト。

○伊藤委員 いわゆるこのH7N9の危機管理をするための製剤をつくるための全体のコスト。わかっている範囲で結構です。

○岡部議長 大まかだとどうですか。事務局は何か資料を持っていますか。

○滝室長補佐 臨床研究につきましては、厚労科研の中でやっていただきますので、厚生労働科学研究事業費として算出しております。製剤化等につきましては、確認出来れば御報告させていただきます。

○岡部議長 では、それは後で委員のほうに連絡をするということでよろしいですか。伊藤委員だけではなくて、この委員会全体には教えていただきたい。それはメールでも結構です。

 では、伊藤委員、そういうことでよろしいですか。

○伊藤委員 はい。

○岡部議長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 

この委員会との位置づけを教えていただきたいのです。

 この委員会での承認というのは、つまりIRBに相当するのか、それともIRBでないのか、単に新型インフルエンザ専門家会議として意見を言うということなのか、いわゆる外部IRBに相当するのか、その位置づけだけをお教えいただきたいと思います。

○岡部議長 これは事務局のほうからお答えいただけますか。

○滝室長補佐 IRBにつきましては伊藤先生のほうでやっていただいていると聞いております。

○岡部議長 では、伊藤参考人、お願いします。

○伊藤参考人 もちろん、施設のほうの治験の手順に従ってIRBでの承認を得た上でPMDAのほうに治験届を出させていただいて、今、これが14日ホールドなのか、30日ホールドなのかわかりませんが、PMDAとの協議を経た上で試験を実施するという手順になっております。

○岡部議長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 そうすると、IRBというのが別に設定されている場合、この委員会での承認というのはあくまでも参考なのか、その位置づけに関してもう一度教えていただきたいと思います。

○岡部議長 これは事務局のほうですか。

○野村血液対策企画官 先ほど御説明させていただいたように、今回、厚生労働省の科研費で実施をするということもございますけれども、H7N9に対してどのような格好で対応していくのかという大きな方針の中で、具体的にワクチンの臨床治験を実施していいのかどうかというところについて御意見をいただきたいということです。先ほど申し上げたように、実際の実施に当たっての細かい点については、PMDAとの確認、それから施設でのIRBで、GCPに沿った御確認をいただくという位置づけになります。

○岡部議長 よろしいでしょうか。

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 済みません。今のお話だと位置づけがよくわからないのですけれども、例えば、この会議で賛成、反対というのは、どのような手順を経て承認されるということなのですか。今、何となく抽象論ではわかったのですが、仮に会議で採決をとって賛成になった場合に、それが何を意味するのかというのをもう少し具体的に法的な枠組みの中で教えていただきたいのです。

○岡部議長 どうぞ。

○滝室長補佐 平成25年6月に策定されております「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」に基づく対策のうち、この会議の開催要項というのが決められておりまして、厚生労働省所管の専門的、技術的事項について、健康局長の主催により、この委員会、専門家会議を必要に応じて開催し、有識者から意見を求めるというような位置づけになっております。

○岡部議長 私の認識だと、ここで決めたことはアドバイスであって、それに基づいて治験のデザインがちゃんと決まって、治験をやるところで、この手続に従った承認で初めてスタートができる。ただ、もしここの委員会で否決ということであれば、最初から審査にかける必要がないということで、臨床試験はやらないということになるのだろうと思います。

 押谷先生、何かありますか。

○押谷委員 今のところは。

○岡部議長 では、今の私の理解はいいでしょうか。

○野村血液対策企画官 はい。

○岡部議長 では、そのようなことで。

 では、押谷先生、どうぞ。

○押谷委員 この計画を承認するかどうかという話と余りリンクしない話かもしれませんけれども、今後のタイムラインというか、スピード感がどんな感じなのかというのをちょっとお聞きしたいのです。岡部議長のほうから、危機管理として重要だというお話がありましたけれども、この臨床試験が仮に全てうまくいって、一体いつ認可されて製造するような見込があるのか。もしかすると、この冬にパンデミックを起こす可能性がゼロではないということでこのワクチンの話が議論されているのだと思うのですけれども、今後のスピード感というか、見込み。あとは、H5N1のときにこの段階から一体どのくらい時間がかかっているのかということも含めて教えていただけたらと思うのです。

○岡部議長 それは、パンデミックのタイムラインではなくて、このワクチンのタイムラインですね。

○押谷委員 はい。

○岡部議長 では、事務局は何か答えられますか。

○滝室長補佐 参考資料2にもございますけれども、第2相の部分につきましては、安全性が第1相部分で確認できたら10月ぐらいに開始されます。

 この先、PMDAのほうにメーカーが承認するかどうかということになるかと思いますけれども、仮にことしの冬にパンデミックが起きた場合については、この鶏卵培養法によるワクチンについては承認されておりませんので使用できないということになります。

 ただ、細胞培養法によるプロトタイプワクチン、3月において承認されていたものにつきましては、H7N9の株を使って使用することが一番早いワクチンの接種方法になるかと思います。

○岡部議長 よろしいですか。

 余り過大な期待でワクチンがすぐ目の前にあるのだというふうにも一般に思っていただきたくない。ステップを踏んでいかなくてはいけないものがあります。しかし、一方では、きちんとした形で進めて、危機管理上ではあるけれども、効果、安全性の確認されたものを入手していくということが必要ではないかと思います。

 ほかに御意見はよろしいでしょうか。

 丸井委員、どうぞ。

○丸井委員 済みません。小さいことではありますけれども、1、2とあって、2のほうはプロトタイプワクチンの非臨床試験と臨床研究となっています。1で言う臨床試験は先ほどフェーズ1、フェーズ2、わかりましたけれども、ここで言う臨床研究というのは、1で言う臨床試験ではなく、もう少しほかのものが加わっているとか、内容が少し違うものなのでしょうか。そこだけ疑問です。

○岡部議長 では、事務局、お願いします。

○滝室長補佐 3月に承認をされておりますプロトタイプワクチンのものにつきましては、もう承認がされておりますので、あくまでも臨床試験、治験ではなくて臨床研究という位置づけになります。

○丸井委員 わかりました。

○岡部議長 それでは、時間は少し残してはありますけれども、先ほど伊藤委員からの提案もあったように、もしこれに対して積極的に否定的である、臨床試験まで持っていかないほうがいいだろうという方がおられましたら、手を挙げてください。

 では、その方はおられないと。

 それから、現在、自分ではそこら辺を決めかねるというのも中間にあると思うので、採決に入らないという方は手を挙げてみてください。

 伊藤委員ですね。

 では、そのほかの委員に関してはこれについて承認をすると。ただ、先ほど私が提案したことと幾つかの条件づけのほうは承認していただいたというような形でお願いしたいと思うのですけれども、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○岡部議長 それでは、最終的には、今回出席した委員の大多数は、臨床試験について行くということをこの委員会としては承認すると。ただし、1名の委員の方については賛否どちらにも加わらなかったということを残しておいてください。これは記名で残していただいていいのですね。

○伊藤委員 はい。

○岡部議長 では、そういうことになりました。

 いろいろ議論をいただいてありがとうございました。時間は少し早目に終わっていますけれども、そういう点では議論は尽くしたと言っていいのではないかと思います。

 本日のこの委員会は、このH7N9に限ってのことですので一応終了にしたいと思うのですが、ちょっと時間はあるので、何か御質問か全体のコメントがあればどうぞおっしゃってください。

 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 これは質問というよりも、この2つの英文の資料で、NOVARTISの出しているほうが中国で3月に初めて発生したと書いてあって、もう一つの論文は2月に発生したと書いてあるのですけれども、そこら辺、素人なので、これはどちらが正しいのでしょうか。

○岡部議長 これは大石委員。

○大石委員 発生は2月だったと思います。

○坂元委員 発表したのが3月。

○大石委員 そうです。

○岡部議長 ありがとうございました。そのミスはあるのかもしれませんし、何か点をとっているどこかが違うのかもしれません。

 押谷先生も何か。どうぞ。

○押谷委員 これはもともと中国から分与された株を使っているのですが、このWHOのフレームワークをもとに来ているのだと思うのですけれども、これによって、もしパンデミックが起きてこのワクチンを使うといった場合にどういう制限があったり、どういうオブリゲーションがあるのかというあたり、どうなっているのかというのがちょっと気になっているのです。

○岡部議長 これは、実際にSMTA2というのがあるのですけれども、そういう契約をWHOと結んでいたかどうかということだと思うのです。その前提としては、今、どこかでパンデミック、あるいはパンデミックの候補になるようなウイルスが発生した場合に、それはWHOを通じて一種の契約をして、それで必要な国あるいは必要な研究機関等々に分与される。そういうパンデミックプリペアドネスのWHO委員会があるのですけれども、そこでの議論で、今のこの対象となったウイルスが契約の対象になったかどうかという御質問になると思うのです。

 田代委員、お願いします。

○田代委員 国内で開発しているワクチンは中国から分与されたウイルスを用いて開発しています。ですから、これは、今、話があったWHOPIPバイオロジカルマテリアルズというか、そのスキームに該当します。ですから、これを使って実際にビジネスとしてワクチンを販売した場合には、それに対する利益の何パーセントというか、それは各メーカーとWHOとの契約ですけれども、それに応じてフィードバックをする、もしくはパンデミックが起こったときには製造されたワクチン製剤の10%前後かと思いますが、それをWHOに提供するというような義務がかかります。

○岡部議長 今、田代委員がおっしゃったことは一つ重要なところがあって、WHOの枠組みの中でこういうウイルス株のやりとりをしないと世界のためのワクチンがつくれないという中で、日本がほかの国からもらってきたウイルスをワクチンの原材料として、それで製造した場合、国民がそれを全部自分たちのところで使えるというわけではない。それは、お金のやりとり、その他いろいろな細かいところがありますが、必要なものについてはある一定数、WHOにドネーションをし、WHOはそれをワクチンのつくれない国々に回していくというスキームがあるので、特にこの後ろ側にいる傍聴の方たちには理解をしておいていただければと思います。

 ほかには何か御意見がありますでしょうか。

 では、これで終了にしたいと思います。

 事務局、今後のことも含めて、あるいは省外者のほうから何かありますか。よろしいですか。

○滝室長補佐 本日は、長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございます。本日、承諾をいただきましたH7N9ワクチンの臨床試験につきましては、今後、伊藤先生を中心に厚生労働科学研究の中で進めてまいりたいと思います。

 これで、第17回「厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議」を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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健康局結核感染症課

電話: 03-5253-1111

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