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2014年5月8日 平成26年度第2回有害性評価小検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成26年5月8日(木) 15:26~


○場所

第5合同庁舎仮設第4会議室


○議事

○大前座長 再開します。次の2物質は、昨年からの持越しの分です。

○角田化学物質評価室長 その前に、先ほどのオルト-フェニレンジアミンの所で、厚労省が弾いた10-4 レベルに対応するばく露濃度を、9.6×10-3 と資料1-6で説明をして、それで評価レベルとしたのですが、そのときに検討した際に、資料1-7のノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルについても同様な試算をやっております。先ほど、9.6×10-3 というのがオルト-フェニレンジアミンで出ましたが、それに対応するものとして0.83ppbという試算をやっております。ノルマル-ブチルは一次評価値なしという形になりましたが、そこも含めてバランスを検討したほうがいいかと思います。

○大前座長 0.83ppbですか。

○角田化学物質評価室長 0.83ppbです。

○大前座長 「m」ではなくて、「b」ですね。先ほどのこともありますので、左下に「一次なし」ということで厚労省の文章を入れていただいて、その計算結果が0.83ppbとして、これを一次評価値とするという形に変更してよろしいですか。そうすると、先ほどのものと整合性が取れることになります。ppbですから、間違いなく10分の1よりも小さな数字なので、一次評価値としては採用できることになります。

 それでは、ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルに関しては、一次評価値は0.83ppbで文章を直していただくということで、よろしくお願いします。

 次に、三酸化二アンチモンをお願いします。

○角田化学物質評価室長 資料1-8を御覧ください。三酸化二アンチモンについては、昨年、中間取りまとめの形になっております。経緯ですが、アンチモン及びその化合物を対象に、平成23年度にばく露実態調査を行い、平成248月に初期評価を取りまとめた状況です。その結果を踏まえて、ばく露水準が高く、またIARCで発がん性評価が2Bになっている三酸化二アンチモンに絞り込んで評価しようということになり、平成24年度に再度ばく露実態調査を行いました。その結果を平成257月にリスク評価報告書に取りまとめたのですが、評価値の設定ができなかったこともあり、中間報告ということで取りまとめて公表し、引き続き評価値設定のための情報収集をするという状況になっていました。

 評価値の設定ができなかったというのは、二次評価値の候補として、まず許容濃度やTLVを使うことになっており、ACGIHTLV0.5mg/m3 や日本産衛学会の許容濃度である0.1等がありましたが、ACGIHは五塩化アンチモンの健康影響からの外挿のデータであること、産衛学会は根拠である生殖毒性のデータの詳細が不明であることなどもあり、設定に至らなかったということです。平成25年度について引き続き情報収集を行い、同じような有害性総合評価表を再整理したので、その内容を踏まえて資料1-8を修正したということです。

 物質名は三酸化二アンチモン、化学式はSb203 です。物理的化学的性状、外観は白色の結晶性粉末。沸点1,550℃、融点は656℃、蒸気圧は130Paです。生産量は、6,845トン(2010)(アンチモンの酸化物として)、輸出量は1,716トン(アンチモンの酸化物として)です。用途は、各種樹脂、ビニル電線、帆布、繊維、塗料などの難燃助剤、高級ガラス清澄剤、ほうろう、吐酒石、合繊触媒、顔料等となっております。

 重視すべき有害性としては、おそらくヒトに対しても発がん性があるということで、根拠として、IARCは三酸化二アンチモンを「グループ2B」に分類しております。三酸化二アンチモンのヒトにおける発がん性の証拠は不十分であるが、動物における発がん性の証拠は十分である。ただし、ACGIHはアンチモン工程に従事する労働者の職業がん疫学調査報告を評価して、三酸化二アンチモンの発がん性をA2「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類しております。IARC2B、産衛学会は2BNTPは報告なし、ACGIHA2EUCat.2となっております。

 生殖毒性については「判断できない」ということです。根拠は、旧ソ連のアンチモン冶金工場で金属アンチモン、三酸化二アンチモン、五硫化二アンチモンを含む粉じんに職業性にばく露された女性労働者の生殖能力における影響が調べられているが、混合ばく露であり詳細が不明なことから、生殖毒性については判断できないということです。遺伝毒性は「あり」。根拠としては、ネズミチフス菌を用いたin vitroの復帰突然変異試験では、S9の添加の有無にかかわらず陰性であった。マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験でも陰性であった。ヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験では、S9添加で陽性を示した。ヒト末梢血リンパ球及びV79細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性を示した。枯草菌を用いたDNA修復試験でも陽性を示した。in vivo染色体異常試験では、三酸化二アンチモンの単回経口投与マウス骨髄細胞で陰性、21日間反復投与で陽性。in vivo小核試験では三酸化二アンチモン単回、反復投与マウス骨髄細胞とも陰性であったということです。in vivo不定期DNA合成試験では、単回投与ラット肝細胞で陰性。職業ばく露した男性労働者23人のリンパ球に対する遺伝毒性が調べられ、リンパ球の姉妹染色分体交換試験と小核試験結果は全ての群で陰性であったが、酸化的DNA損傷を検出する酵素処理コメットアッセイでは、高ばく露群は有意に高い陽性を示したということです。これらの結果、酸化的ストレスを引き起こし、DNAに酸化的損傷を起こしていることを示しているが、アンチモンと遺伝毒性との関連については更に研究する必要があるとされております。

 閾値の有無は判断できないということで、根拠として、in vitro突然変異試験ではS9の添加の有無にかかわらず陰性であったということです。マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験でも陰性。ヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験では、S9添加で陽性を示した。ヒト末梢血リンパ球及びV79細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性を示したということです。これは右上の部分を引用しておりますが、そういった形です。枯草菌を用いたDNA修復試験でも陽性を示したということです。

in vivo染色体異常試験では、単回経口投与マウス骨髄細胞で陰性、21日間反復投与で陽性であったということです。in vivo小核試験では、単回、反復投与マウス骨髄細胞とも陰性。in vivo不定期DNA合成試験では、三酸化二アンチモン単回投与ラット肝細胞で陰性であったということです。三酸化二アンチモンに職業ばく露した男性労働者23人、これも先ほど申し上げましたが、姉妹染色分体交換試験と小核試験結果は全ての群で陰性であったが、酸化的DNA損傷を検出する酵素処理コメットアッセイでは、高ばく露群は有意に高い陽性を示したということです。こうしたことで、結果として閾値の有無は判断できないという結論になっています。

 その下ですが、反復投与毒性に関する動物試験データです。これはNOAEL0.51mg/m3 と設定しておりますが、これはラットへの1年間吸入ばく露試験の肺クリアランス機能低下をエンドポイントとするNOAELから試算した評価レベルを0.038mgとしております。「0.038mgSb」と書いてありますが、これは三酸化二アンチモンの数値として見ていただいて、「Sb」は取っていただければと思います。それから労働補正をし、不確実性係数をこのような形にすると、評価レベルは0.038となります。これについては、参考資料の141ページに、今の算出のデータを載せております。一番下に計算式が出ておりますが、これで0.038となっております。「本有害性評価書では、肺クリアランス機能低下が4.50mg/m3 群で認められ(80)0.51mg/m3 群で認められていないことから、NOAEL0.51mg/m3 であると判断した」ということで、これを踏まえて算定をしております。

 資料1-8に戻ります。許容濃度等です。ACGIHの値ですが、TLV-TWA:0.5mg/m3(アンチモン及びその化合物、1978:設定)ということです。アンチモン及びその化合物のTWA0.5mg/m3(Sbとして)は、上気道の刺激、腹痛及び食欲減退発現の可能性を最小限にする意図で設定しております。著しく高い単回又は繰返しばく露による重大な影響、例えば心臓や血液の障害が発生することがある。入手できる全てのアンチモン化合物に共通の有害性情報からTLVを導くことは困難である。当該TLVは、生物学的に活性なアンチモン化合物の中の1つである五塩化アンチモンで特定できる健康影響からの外挿によって設定された。経皮吸収性、感作性、発がん性の注釈の付記、又はTLV-STELを勧告するための十分な情報はないということです。

 三酸化二アンチモンの製造現場については、A2と設定されております。TLVが勧告されていないが、発がん性が指定される化学物質については、全てのばく露経路による労働者のばく露は注意深く管理され、ばく露濃度は可及的に低くしなければならない。ヒトの発がん性やその他の健康障害についての情報が不明確である英国及び米国のアンチモン製造工場の労働者の研究から得られたデータに基づいて、三酸化二アンチモンの製造現場環境について数値的なTLVを勧告しない。アンチモンの製造工場の労働者におけるアンチモンへのばく露と肺がんに関する歴史的なデータに基づき、発がん性をA2(ヒトに対する発がん性が疑われる)に分類するということです。

 日本産業衛生学会ですが、1991年のもので、0.1mg/m3(アンチモン及びその化合物として)ということで設定をしております。根拠ですが、アンチモン及びその無機化合物の許容濃度の提案に当たって、肺がんの発生と、胚ないし胎児()への影響及び心臓毒性を考慮すべきと考える。ラットの胚への影響として報告のあった酸化アンチモン82μg/ m3 を最小作用濃度と考えるべきであるが、この値を最小作用濃度と考えるとすれば、現行のTLVMAKの勧告値とは8倍近い違いとなり、ラットの感受性が高いと仮定したとしても充分な安全性を確保しているとは言い難い。したがって、現行のTLVMAKの勧告値0.5mg/m3 より低い値を提案すべきであると考える。また、労働者の心臓毒性を報告した報告では、ばく露濃度が0.65.5mgSb/m3 となっており、0.5mg/m3 が充分な安全率を見込んだ値とは言い難く、暫定的に0.1mg/m3 を提案するということです。

 なお、2013年度に、1991年度以降の知見を加味して、許容濃度の妥当性が評価され、許容濃度の暫定値が提案されています。それによれば、1991年提案の許容濃度、発がん分類は妥当であり、暫定値として、アンチモン及びアンチモン化合物(スチビンを除く)について許容濃度0.1mg/m3(Sbとして)、三酸化アンチモンについて発がん分類を第2Bとすることが提案されております。DFG MAKは設定なし、NIOSH0.5OSHA0.5です。EPARFC(吸入参照濃度:ヒトの健康への悪影響が生じないと見込まれる1日当たりのばく露レベルの科学的な推定値)ですが、Newtonらの1年間のラットの吸入ばく露試験データから、0.2μg/m3 と算出しており、信頼性は中等度ということです。

 評価値ですが、一次評価値は閾値の判断ができないこともあり、「なし」という形で整理しています。二次評価値については、0.1mg/m3 又は0.5mg/m3 。理由としては、米国産業衛生専門家会議は0.5としております。また、日本産業衛生学会は2013年に、「アンチモン及びアンチモン化合物(スチビンを除く)」について、心臓毒性、皮膚炎の発症、ラット吸入ばく露試験結果による肺クリアランス機能低下等を踏まえて、1991年提案の許容濃度は妥当として、同じ0.1mg/m3 を提案しているということです。2013年の提案では、生殖毒性の部分については根拠としては入れていない形になっております。参考資料213ページを見ると、平成25514日に日本産業衛生学会が提案した暫定値があります。0.1mg/m3(Sbとして)と書かれておりますが、216ページに「許容濃度の提案」とあります。1つ目は、第1パラグラフについては心臓毒性ということで書かれており、第2パラグラフについてはろう付け棒製造工場でアンチモンの溶融作業に従事した労働者の皮膚炎の関係が書かれております。最後の所には、三酸化二アンチモンの1年間の吸入ばく露試験で、肺クリアランス機能低下ということで0.51mg/m3 で認められていないということです。以上を総合すれば、1991年に提案された許容濃度0.1mg/m3 は妥当なものと考えるということです。

 資料は以上です。基本的に昨年度と大きく変わっている部分はありませんが、特に付け加えている部分として、左下の反復投与毒性に関する動物試験データの部分を加えていること、また、右下で日本産業衛生学会が2013年の暫定値の部分で1991年の提案の許容濃度が妥当であるということで、同じ0.1mg/m3 を提案しているところが変更点です。昨年中間報告となった三酸化二アンチモンについては、現在のところ、このような状況なので、評価値設定の可否も含めて御審議いただければと思います。以上です。

○大前座長 昨年から持越しの分に、何か所か情報を追加していただきました。何か御質問、御意見はいかがでしょうか。

○宮川委員 少し気になるのは、最終的にこの産衛学会の0.1という提案の根拠が1991年のままで、その根拠は動物実験での生殖毒性ですね。

○大前座長 動物実験の生殖毒性もあるのですが、Briegerの心臓毒性がメインとなっています。

○宮川委員 この書きぶりでは、肺がんの発生と、胚ないし胎児への影響及び心臓毒性と、3つ書いてあるのです。その後、ラットの胚への影響として報告のあった酸化アンチモンの82μg/m3 を最小作用濃度と考えるべきということで、それを否定する言葉が出てこないのです。そうすると、そこが産衛学会の0.1mg/m3 のことかという段階で、生殖毒性が判断できないと右上に書いてあるのが少し気になる所です。評価書に、この産衛学会が取り上げたものに対応する実験が書いていないのではないでしょうか。

○大前座長 評価書は、ソ連の実験は信用できないということで外したのです。それで書いていないのです。産業衛生学会も、1991年のときは入れていたのですが、2013年は外しています。これはソビエトのもので、2ページぐらいの論文で、余り信用できないというか、信頼性がないということで外しています。それを外して、216ページの提案理由のBriegerの心臓毒性と、先ほどの雌雄F344ラットの0.51というのを総合的に判断して、0.1は仕方なかったという言いぶりですね。それで生殖毒性は2013年の分は外れているということです。

○宮川委員 そこが最後のまとめで分かるように書いていただかないと、少し気になる所です。

○大前座長 そうですね。そういう意味では、右上の生殖毒性が判断できないという旧ソ連のデータは、書かないほうがいいかもしれませんね。すみません、これは動物実験のデータですね。

○宮川委員 はい。

○角田化学物質評価室長 許容濃度が1991年の勧告中心に書いているものですから、そこはむしろ2013年をベースに整理した方が。2013年がなお書きのような形になっているものですから。

○大前座長 昨年提案されて、520何日に産業衛生学会があって、そこでフィックスするので、あと2週間ぐらいで2013が決まります。そういう意味では、2013を中心にまとめていただいたほうがいいのではないかと思います。0.1という数字は変わらないので。

 その他にいかがでしょうか。生殖毒性の所は外していただいたほうがいいと。産衛学会の書きぶりは2013年のほうにしていただく。また、先ほど室長から説明があったように、前回二次評価値が決まらなかったのは、産業衛生学会もACGIHも三酸化二アンチモンの許容濃度ではないのです。根拠が三酸化アンチモンではないアンチモン化合物を使っているので、ここは詰めようがなかったということですが、これをどうするかというのが1つの議論です。多分、世界中に三酸化アンチモンの許容濃度はないと思うのです。アンチモン及びその化合物の許容濃度はOSHAなどもやっていますが、三酸化アンチモンとしての許容濃度はないので、ここではどう扱うかということです。

 先ほどのBriegerの論文は、確か1950何年の論文なのです。だから、これもそんなに信頼性のおける論文でないのは事実です。とは言っても、三酸化アンチモンの疫学の論文はないのです。三酸化アンチモンとBriegerSbアンチモンの相対的な毒性の比較もないと思うので、もし三酸化アンチモンのほうの毒性が強ければ0.1でいいのでしょうけれども、三酸化アンチモンのほうが毒性が強くないという証拠があれば、0.1だと厳しすぎるということになりますが、そういう情報もない状態で、どうしようかということです。反復投与の実験データで0.51NOAELとして計算すると、この場合はSb203 の濃度ですが、0.038になります。これがアンチモンとしてということになると、もっと小さくなるわけです。

○角田化学物質評価室長 0.032です。去年、同じような試算をしたときは、アンチモンとしての試算はその数字だったと思います。

○大前座長 そういうことですが、いかがでしょうか。ないものはやむを得ないので、0.1若しくは0.5にしてしまうという判断と、ないからやめようという判断と、大きく分けて2つになると思います。

○宮川委員 規制をかけるわけではなくて、世の中の状況を見るということであれば、なしでやるよりは産業衛生学会の0.1を採るほうが、動物実験のデータも使えるし、よろしいのではないかという気がします。

○大前座長 この動物実験は三酸化アンチモンのデータなので、NOAEL0.51動物は三酸化アンチモンの情報なのです。それは0.51ですから、0.5というのは少し辛いかなという感じですね。0.1だったらベターかなと。どちらか選ぶとなれば0.1だと思いますが。

○清水委員 安全サイドで。

○大前座長 0.51NOAEL0.5というのは、採りにくいことは採りにくいですね。もともと0.5は五塩化アンチモンの濃度ですし。

 それでは、宮川先生の御意見の取りあえず産衛学会の0.1を採ってはどうかと。その主な理由としては、動物実験のNOAEL0.51なので、それよりも低いほうがいいと。0.5だと少しマージンが小さすぎると。それでよろしいですか。

○津田委員 発がん性の所で、「おそらく」は「可能性がある」より1つ上の段階なのです。そうすると、それを採った理由は、IARCよりもACGIHを採ったということですね。それをここに入れておいたほうがいいのではないかと思います。ただ、2Bは「おそらく」にはなりません。

○大前座長 でも、ACGIHは三酸化二アンチモンの製造現場なのですが、難しいですね。

○津田委員 ここで「おそらく」に相当するのは、A2以外ないですね。

○大前座長 これは、表現は決めていましたよね。2B2Aはどのような表現をするか、いつか決めた記憶があるのですが。

○宮川委員 がんの所で、IARCのときには津田先生がおっしゃったとおりの翻訳の言葉を使っていたと思いますが、それ以外のときにどうするかを決めたかどうかがはっきりしないのです。

○大前座長 決めたのは、前の中災防の委員会でしたでしょうか。何か決めたような記憶もあるのです。

○宮川委員 もし決めたとすれば、そのとおりにルールブックを見て書けばいいと思いますので。

○津田委員 IARCでは「probably」と「possibly」を使い分けていて、動物で2Aの場合はprobablyで、2Bpossiblyです。ここでは評価は2Bですから、IARCの評価は「probably」だと思いますが、それには当たらないことになります。ですから、A2の評価があったので、大事を取ってそちらにしたということをどこかに明記したほうが理解しやすいと思います。

○大前座長 それは根拠の所で、特にACGIHA2だから「おそらく」を使ったということを加えていただくと。

 そのほかに御意見はいかがですか。今まで御意見は、今の発がんの「おそらく」の所をもう少し書いていただくことと、右上の生殖毒性のソ連のは除くことと、日本産業衛生学会の根拠は2013年のほうに準拠していただくこと、一次評価値はいずれにしても0.038だと10分の1にはならないので、これは「なし」ということですかね。二次評価値は産業衛生学会の0.1を採るというのが今までの御意見ですが、よろしいでしょうか。

 どうもありがとうございました。修正すべき文章等々が幾つかありますが、結論としてはそのような形で、よろしくお願いします。

 物質の最後ですが、金属インジウムをお願いします。

○角田化学物質評価室長 金属インジウムです。インジウムも、同じように中間報告ということでしたが。平成23年度に詳細リスク評価を行いまして、健康障害防止措置の検討会も行われました。その結果、インジウム化合物については、特化則に規定し、規制措置を導入したというところです。ただし、金属インジウムについては、有害性に関する情報が不足しているということで、平成24年度に、更に金属インジウムの溶融等を行う事業場で、ばく露の実態調査を行い、関係機関の御協力を得て、血清中のインジウムなどの測定を行いました。それを踏まえて、平成257月に、金属インジウムの詳細リスク評価書を取りまとめたところです。ただ、その際、金属インジウムについては情報が不足していて、評価値の設定もできないということから、その旨を取りまとめ、中間報告という形で公表したという経緯があります。平成25年度については、引き続き情報収集を行い、有害性評価書と有害性総合評価書をリヴァイズしたというところです。その内容を踏まえて再整理した結果を御報告します。資料1-9です。

 インジウムということで、化学式In、物理的化学的性状、銀白色の軟らかい金属ということで、生産量は、2010年で20トンというところです。輸入量は494トン、塊、くず及び粉ですが、2011年です。用途としては、御覧のとおり、銀ロウ、銀合金接点、ハンダ、低融点合金、液晶セル電極用、歯科用合金、防食アルミニウム、テレビカメラ、ゲルマニウム・トランジスター、光通信、太陽熱発電、電子部品、軸受金属、リン化インジウム結晶の原料というところです。

 発がん性の有無については「判断できない」ということにしていますが、根拠として、調査した範囲で金属インジウムに関する情報はないということです。参考として、リン化インジウムについては、ヒトに対しておそらく発がん性があるということで、IARCではリン化インジウムとして発がん性はグループ2Aに分類しているところです。それから、ITOの長期吸入ばく露試験によりラットに発がんが確認されている。発がん性はインジウムに起因していると考えられる。ただし、他のインジウム化合物の発がん性に関しては、現在までに明らかな証拠はないということです。

 それから、インジウム化合物については、ヒトに対しておそらく発がん性があるということです。根拠としては、難溶性インジウム化合物の発がん性に関する疫学研究からの証拠はない。しかし、動物実験では、リン化インジウムについては、吸入ばく露により悪性を含む肺腫瘍の発生増加がラットとマウスの雌雄、肝臓腫瘍の発生増加がマウスの雌雄に認められ、また、ITOについても、吸入ばく露により悪性を含む肺腫瘍の発生増加がラットの雌雄に認められている。したがって、難溶性インジウム化合物の動物実験からの発がん性の証拠は不十分であると判断されました。又、動物実験での腫瘍の発生増加が極めて低濃度あるいは短期間のばく露で起きていること、又、ヒトの職業性ばく露でも動物と共通して肺疾患の発生が多く報告されている。これらにより日本産業衛生学会は、難溶性インジウム化合物の発がん物質分類を第2Aとすることを提案しているということです。IARC2AEUは設定なし、日本産業衛生学会2Aということで、DFG MAKCat.2ということです。InPです。

 重視すべき有害性で、発がん性以外、生殖毒性は「判断できない」ということです。これは、情報がないということです。それから、遺伝毒性、変異原性を含むということですが、これは、遺伝毒性は「なし」ということです。根拠ですが、細菌を用いた復帰突然変異試験及び培養動物細胞を用いた染色体異常試験において、インジウムは陰性であったということでデータがありますので、遺伝毒性はないという形でまとめています。

 参考として、リン化インジウムですが、マウスを用いたInPin vivoにおける小核試験で、多染性赤血球では雄で陽性成績であったが、雌では陰性であり、さらに、正染性赤血球では雄雌ともに陰性であった。一方、体細胞突然変異ベータ-catenin mutationでは陽性であったが、H-ras mutationでは陰性であった。さらに、三塩化インジウムの突然変異原性試験では陰性であって、遺伝毒性は疑われるが、確定的ではないということです。

 左下に、閾値の有無は「判断できない」と書いていますが、これは訂正が必要だと思います。先ほどの所で、遺伝毒性に関しては「なし」という整理をしていますので、それを踏まえて、ここは「閾値あり」とすべきではないかと思います。その辺も御議論いただければと思います。参考として、インジウム化合物では、閾値の有無ということで「閾値あり」ということです。根拠としては、マウスを用いたリン化インジウムのin vivoにおける小核試験や体細胞突然変異試験結果から遺伝毒性は疑われるが、確定的ではない。吸入ばく露実験の結果より、肺の持続的な炎症反応の結果、肺胞・細気管支上皮が増生し、肺がんが進展すると考えられるということです。

 下は、反復投与毒性に関する試験データです。このデータは、有害性評価書等にも今回追加になったものですが、ラットの経口投与試験の28日間で死亡はなく、一般状態や体重、血液、臨床生化学、尿検査、主要臓器重量や病理組織に影響がなかったことから、NOAEL1,000mg/kg/日以上とされたということです。これを補正、吸入換算して、評価レベル600mg/m3 を算出していますが、計算式は下にあるとおり日数補正、種差等を含めてやっており、600mgという形で算定されています。こちらの資料については、参考資料の151ページに経口投与/経皮投与/その他の経路ということでまとめています。評価表は、160ページの反復投与毒性のところで、NOAEL1,000mg/kg/日ということで、これを踏まえて、600mgの評価レベルを試算しているということです。

 資料1-9の許容濃度等、ACGIHTLV-TWA:0.1mg/m3 インジウムとしてという所ですが、根拠は、ラットを用いて酸化インジウムを2497mg/m3 の濃度で連日吸入ばく露し、合計224時間ばく露が行われた、その結果、ラットの肺では広範な肺水腫が観察され、通常の肺水腫と異なり、顆粒状の浸出液や異物を貪殖した僅かなマクロファージ、多核巨細胞、核の壊死片が肺胞内に貯留していた。さらに、ばく露期間中及びばく露終了12週後においても、これらの病変はほとんど変化せず、線維化もほとんど観察されなかった。この値(0.1mg/m3)は、肺水腫、急性肺炎、骨格系・胃腸系障害及び肺への悪影響の可能性を最小限とする意図で設定されたというところです。

 日本産業衛生学会ですが、これは許容濃度の設定はないということで、参考で、生物学許容値、血清インジウム濃度3μg/Lということで設定されています。

 評価値の案という所で、一次評価値は、設定値は「なし」という形です二次評価値については今後検討ということで、今のデータを踏まえても、金属インジウムとして設定できるようなデータは今のところないのではないかということで、今後検討という整理をしているところです。

○大前座長 ありがとうございました。これは、西川先生は何か。

○角田化学物質評価室長 西川先生は、先ほどの御指摘です。要するに、遺伝毒性がないということであれば、閾値の有無という所は、「判断できない」ではなくて「閾値あり」とすべきではないですか、という御意見でした。

○大前座長 分かりました。いかがでしょうか。インジウム化合物はもう既に終わっているわけですが、金属インジウムに関しては、取り残されているといいますか、余り情報がないということで、去年からの継続になっていますが。

○津田委員 産業衛生学会が2Aというのは、ヒトには全く外挿する内容ではないのですか。

○大前座長 これは通常のGLPの実験等々であれですが、ただ、これは飽くまでも金属インジウムではないのですよね。これはITOという、インジウムそのものの酸化化合物の。

○津田委員 ここで話をしているのは、インジウムそのものではないのですか。

○大前座長 今回は、インジウムそのものの話です。

○津田委員 インジウムの粉ですね。金属そのものの。

○大前座長 粉もありますが、メタルですね。0価のインジウムです。インジウム化合物はもう既に終わっていまして、これはもう終了しているのですが、0価のインジウム、金属インジウムに関しては、まだ情報がなかったということです。今回新しく、遺伝毒性のところで、金属インジウムのEMSと染色体異常はネガティブだったということと、同じく金属インジウムの、強制経口投与だったと思うのですが、反復投与はネガティブだったということが加わったと思います。ネガティブというのは、何も影響を受けなくて、計算上600mg/m3 になるということです。二次評価値については、ACGIH0.1ですが、これはインジウム及びその化合物ということで、これはメタルではないのですよね。これは化合物としたら、0.1というのはとんでもなく高い数字で採用できないレベルではあります。産業衛生学会のほうは、メタルのインジウムも、インジウム化合物も、まだ設定していないという状況です。

○津田委員 Indium-tin oxideは、来年からの5年間にIARCで評価に掛かります。

○大前座長 そうでしたね。少なくとも2Aにはなってほしいと思います。

○津田委員 ABになるでしょうね。

○大前座長 ラットだけでしたね。マウスはなかったのですね。

○津田委員 どちらかで、肺に発がん性があったと思います。

○大前座長 金属インジウムですが、いかがいたしましょうか。現段階では、まだ二次評価値も作りようがないというところですかね。これは、もうしばらくペンディングでもいいのですか。

○角田化学物質評価室長 データがないと正確なところができませんので、やむを得ない。もちろん早く評価できるに越したことはないのですが、やむを得ないと思います。

○大前座長 もし特段御意見がなければ、もうしばらく、やむを得ないということで、二次評価値、一次評価値を作れない状況ということで、このままでよろしいですか。もちろん情報収集は続けていただくと。

 ありがとうございました。そういうことで、インジウムに関しては現状維持で、情報収集をしていただくということです。御協力、ありがとうございます。

2番目のテーマです。有機溶剤での中毒が発生したときの応急処置について、事務局から御説明をお願いします。

○樋口労働衛生専門官 資料2と、参考資料の243ページ以降を御覧ください。今回の議題については、この会議のミッションの本筋ではないのですが、各界の御専門の先生に集まっていただいているということで、今、行政で検討している内容について、問題がないかどうかチェックしていただきたいということで、お時間を頂きました。

 資料2、概要ですが、有機溶剤中毒予防規則があります。これは、いわゆるシンナー中毒を防ぐもので、塗装作業などの有機溶剤のばく露防止のための規制です。この規制の第24条で、事業場の中で労働者の方に有機溶剤の有害性等を把握していただくために掲示をすることになっていて、その内容も省令で決まっています。丸数字1から丸数字3とありますが、有機溶剤が危ないこと、取扱いの注意、そして最後に、今回議題にさせていただいた応急処置を書くことになっています。この内容についても、厚生労働大臣の告示で決まっていて、それが資料の裏面、13ページになります。具体的にこういう有害性があって、取扱いについてはこういう注意がありますと。応急処置のやり方についても細かく書いています。

 今回は、特に応急処置の部分です。参考資料の243ページ以降に付けていますが、日本蘇生協議会等が定めたガイドラインの内容と比べると若干古くなっているところがありまして、そのガイドラインに沿った形で内容を少し直させていただきたいと考えているということです。

 参考資料の246ページに、一次救命処置ということで、救急車を呼んでから救急車がたどり着くまでの間、現場にいる人に要求する処置の内容をフロー図で書いています。反応がなければ救急車を呼んで、回復体位で、呼吸がある場合は、その倒れた方を安静にしていただいて、呼吸がない場合には、速やかにCPR、心肺蘇生につないでいただくという流れになっています。

 前のページの改正案に戻りますが、今は、応急処置は、中毒にかかった方については、風通しの良い場所に連れていっていただくということです。意識のある方については、頭を低くして、横向きか仰向きに寝かせて、体温の保温に努めてくださいと。そして、3番目以降が今回の一次救命に当たる部分ですが、中毒にかかった方の意識がなくなっている場合は、口の中の異物を取り除いていただいて、呼吸が止まっている場合は人工呼吸をしてください、というようなことを書いています。これについては、今、参考資料で御説明したような内容に置き換えるということで、まず、中毒にかかった方については横向きの回復体位にしていただくということです。仰向きについては、吐いてしまったとき等に呼吸が障害されるということですので、なるべく横向きにということで、「仰向きに」という部分を削除してはどうかと考えています。それから、中毒にかかった者の反応、意識がない場合は、まず救急車を呼んでいただくということで、救急通報を行うということです。呼吸が止まっている場合は、CPRということで、心肺蘇生をやっていただく。これまでは人工呼吸と書いていましたが、まず心臓マッサージのほうからきちんとやっていただくということで、内容を変えたいと書いています。ガイドラインに沿った形で直したいと考えていますが、それぞれの御専門の方で、こうしたほうがいいとか、問題があるということがありましたら、御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○大前座長 応急処置を修正案のようにすると。人工呼吸ではなくて心肺蘇生だという所が一番大きな変更だと思いますが、この修正案について何か御意見、アドバイス、御質問がありますか。

○清水委員 3番ですが、「口中の異物」というのは、何か食べていたりするということと、あとは入れ歯なのです。義歯があった場合に、それが外れて飲み込むということを言っていたのではないかと思うのです。

○樋口労働衛生専門官 そうですね。異物を取り除くということについては昔からあるわけですが、今のガイドラインでは、そこのトーンが大分落ちているのです。闇雲に口に手を突っ込むと、かまれたり、嘔吐を誘発したりということで、今日は解説を付けていませんが、解説のほうで、見える範囲でやってくださいというように、少しトーンダウンしているのです。それよりは、救急車を呼んでいただくという第1命題のほうをはっきり書いたほうがいいのではないかということで、変えさせていただいています。

○清水委員 解説書も付くわけですね。

○樋口労働衛凄専門官 そうです。今日は付けていませんが、このあとの解説書にそのような記述がありましたので、異物を取り除くことよりは救急車のほうをはっきり書いたほうがいいのではないかということで、書かせていただきました。

○大前座長 そのほかに何か、いかがですか。

○津田委員 人工呼吸というと2つあるのですが、救急蘇生ではマウス・ツー・マウスです。この場合は、胸郭を外から圧迫したりする人工呼吸でしょうか。

○樋口労働衛生専門官 人工呼吸についても、246ページのフロー図の4番を見ていただければと思いますが、必ずしも必須という書き方にしていなかったので、むしろ心肺蘇生を第一にというガイドラインになっていましたので、それで少し置き換えました。人工呼吸がためらわれる場合は、骨格の圧迫だけでいいという書き方に、今のガイドラインはなっていますので。

○大前座長 胸郭を圧迫することで換気ができるという意味ですかね。5cmだと、結構動きますよね。ある程度、換気できるのでしょうね。

○樋口労働衛生専門官 もちろん、やれればやったほうがいいに決まっていますが。

○大前座長 看板にするのはこれだけにしても、このあとに詳しい説明文章が付くということですね。

○樋口労働衛生専門官 看板は、これだけです。実際の救急に関しては具体的には一次救命の研修等を受けてやっていただくというのが本来の筋ですので、通達等で、その辺は、できる範囲でやっていただくということになろうかと思います。

○大前座長 取りあえず、看板についてはこのように直してしまうということですね。

○樋口労働衛生専門官 はい。なお、補足しますが、心肺蘇生という言葉自体の中に人工呼吸も含まれています。

○大前座長 そのほか特にアドバイスがなければ、この件は、御意見を伺うということだけでよろしいわけですね。

○樋口労働衛生専門官 はい。

○大前座長 次は、今後の予定について事務局からお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 資料3を御覧ください。第2回として528日の10時から評価値の検討を入れていますが、今日全て終わりましたので、第2回は行いません。528日は取りやめということで御了解ください。そのため、次は618日の午後1時半からになります。その際には、がん原性試験結果の評価ということで、物質は、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの吸入投与試験の評価ということになります。今後の予定ですが、9月、10月頃に評価値の検討を行います。これまで評価値の検討は年度当初1回だけだったのですが、今後は2回に分けてすることにしています。なぜかといいますと、ばく露実態調査を年間通じて連続して行って、半期ごとに取りまとめて、リスク評価を行うということに体制を変えたためです。年度前半にばく露実態調査を中災防で行っていただいていますので、その結果が取りまとまる9月、10月前後に、その対象物質に関しての評価値の検討をしたいと思います。詳しい日程については、日程調整をした上で決めたいと思いますが、9月、10月頃を予定しています。

 第5回は、11月から12月頃に、同じく、がん原性試験結果の評価ということで、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルの吸入投与の試験に関しての評価を行うこととしています。それと併せ、がん原性試験対象物質の選定についても、その時に行いたいと思っています。今後の予定としては、以上です。

○大前座長 ありがとうございました。次回の528日はなしということで、次は618日です。どうぞよろしく御予定のほど、お願いいたします。そのほかにございますか。特になければ、今日はこれでよろしいですか。今日は、3時間近い長い時間、どうもありがとうございました。お陰さまで、予定の物質を全部終わることができました。幾つか修正すべき所は残っていますが、評価値に関しては特に修正なしということで終わったと思います。長い時間、どうもありがとうございました。


(了)

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