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2014年5月8日 平成26年度第1回有害性評価小検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成26年5月8日(木) 13:30~


○場所

第5合同庁舎仮設第4会議室


○議事

○岸化学物質評価室長補佐 本日は大変お忙しい中を御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより「平成26年度第1回有害性評価小検討会」を開催いたします。

 本日、御出席の皆様を紹介いたします。お配りしています参考資料1を併せて御覧ください。左側より、江馬委員、清水委員、大前委員、高田委員、津田委員、宮川委員です。

 事務局は、森戸課長、角田室長です。また、本日は有機則の関係の検討がありますので、その担当の樋口労働衛生専門官が出席しています。加えて、高村化学物質情報管理官、私は岸と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、池田委員と西川委員が所用のため御欠席です。では、以下の議事進行を大前座長にお願いいたします。

○大前座長 本日の会議を始めます。本日は2時間掛ける24時間の会議で、予定終了時間が5時半です。その間、全部で9物質プラスαを予定していますので、どうぞよろしくお願いいたします。途中で15分程度の休憩を入れて、第1回は3時半前後までを目処にしています。最初に、資料の確認をお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 資料は資料関係と参考資料関係の2つに分かれています。まず、資料関係です。資料1「平成25年度ばく露実態調査対象物質の評価値について」です。右下の通しページで申し上げますと、1.エチレンクロロヒドリンが3ページ、2.グルタルアルデヒドが4ページ、3.タリウム及びその水溶性化合物が5ページ、4.メタクリロニトリルが6ページ、5.クメンが7ページ、6.オルト-フェニレンジアミンが8ページ、7.ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルが9ページ、8.三酸化二アンチモンが10ページ、9.金属インジウムが11ページとなっています。資料2「有機溶剤による中毒が発生したときの応急措置について」が12ページから。資料3「今後の予定」については14ページです。

 続いて、参考資料関係です。参考資料1「リスク評価検討会参集者名簿」が1ページ。参考資料2「有害性評価書」です。物質ごとに、2-1がエチレンクロロヒドリンで3ページから、2-2がグルタルアルデヒドで21ページから、2-3がタリウム及びその水溶性化合物で41ページから、2-4がメタクリロニトリルで61ページから、2-5がクメンで75ページから、2-6はオルト-フェニレンジアミンで97ページから、2-7がノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルで109ページから、2-8が三酸化二アンチモンで127ページから、2-9が金属インジウム及びその化合物で145ページからです。

 さらに、委員の方のみの机上配布資料で、参考資料3「許容濃度等の関連資料」です。3-1がエチレンクロロヒドリンで165ページから、3-2がグルタルアルデヒドで、ACGIH169ページから、日本産衛学会が179ページからです。3-3がタリウム及びその水溶性化合物で187ページから、3-4がメタクリロニトリルで195ページから、3-5がクメンで199ページから、3-6オルト-フェニレンジアミンで、ACGIH203ページから、日本産衛学会が207ページからです。3-7がノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルで209ページから、3-8が三酸化二アンチモンで、日本産衛学会が213ページから、ACGIH219ページからです。3-9が金属インジウムで227ページからです。参考資料4「国が行う化学物質等による労働者の健康障害防止に係るリスク評価実施要領」が229ページから、参考資料5「リスク評価の手法(平成24年改訂版)」が237ページから、参考資料6「蘇生ガイドライン2010」が243ページからとなっています。資料は以上です。足りないもの等がありましたら、お知らせください。

○大前座長 資料の欠落がなければ本題に入ります。先ほど言いましたように、本日は全部で9物質の予定です。では、第1番目の物質のエチレンクロロヒドリンについて、事務局から説明をお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 資料1-1を御覧ください。エチレンクロロヒドリンの物質名、化学式、構造式等は表にあるとおりです。物理的化学的性状は、外観は、特徴的な臭気のある無色の液体。沸点は128130℃、融点は-67℃。蒸気圧は20℃で0.65kPaです。生産量等については、製造・輸入量は1,000トン未満。用途は、医薬品、農薬、染料など有機合成の中間体、重合調整剤、架橋剤となっています。

 重視すべき有害性に関して、発がん性については、ヒトに対する発がん性は「判断できない」となっています。発がん性以外のものについては、生殖毒性については「判断できない」、神経毒性については「あり」、遺伝毒性については「あり」となっています。そのうち神経毒性に関しては、根拠として、体表面の4分の10.5時間接触した事例では、重度の中毒になった。さらに、その後間もなく、吐き気、嘔吐、重度の精神症状が見られ、その後、意識喪失、肺水腫、呼吸麻痺の初期兆候が出現した。5日間の意識喪失後、症状が軽減していったが、錐体外路症状は2年後も見られたということです。

 次に、左下の反復投与毒性に関する動物試験データです。NOAEL6.4mg/kg 体重/日としています。根拠としては、エチレンクロロヒドリンのLD50 10分の1の量(6.4mg/kg 体重/)30日間毎日、若齢ラットに腹腔内投与した実験では、生理食塩液を投与した対照群と比較して、死亡率及び体重増加に差は見られなかった。しかし、投与量をLD50 5分の1の量(12.8mg/kg 体重/)に増加すると、死亡率が著しく上昇し、成長の遅延も見られた。週3回の投与では、これらの影響は見られなかったということです。不確実性係数を種差10と見て計算したところ、評価レベルは1.2ppmとなりました。

 続いて、許容濃度等です。ACGIHにおいては、TWAは設定なし。Ceiling1ppmSkinの付記がされています。設定は1996年です。根拠としては、エチレンクロロヒドリンの標的臓器は、中枢神経系(呼吸抑制、無気力、脳障害)、循環器系(心筋症、洞頻脈、循環性ショック)、肝臓(グルタチオン喪失、薬物代謝酵素の不活性化、変性)、腎臓(多尿症、電解質や窒素の排泄異常、変性)、消化器系(吐き気、嘔吐、腹痛)、皮膚(紅斑、ピクノーシス、水疱)、眼(刺激)である。中枢神経系、循環器系、肝臓及び腎臓への影響を予防するために天井値として1ppmを勧告する。この値は、眼、皮膚、鼻及び肺の刺激、腹痛、吐き気、嘔吐などの消化器系への影響も最小限にできると勧告されています。日本産衛学会では情報なし。その他については、以下のとおりです。

 以上から、評価値の案です。一次評価値は「なし」。理由としては、動物試験により導き出されたNOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルは、二次評価値の10分の1以上のためということです。また、二次評価値は1ppmで、ACGIHが定めるTLV-Ceiling1ppmを採用したものです。以上です。

○大前座長 本日のミッションは、一次評価値、二次評価値を決めていくというものです。まず、エチレンクロロヒドリンについて、影響のレベル、それから一次評価値、二次評価値の候補値を挙げていただきました。いかがでしょうか。一次評価値は、動物実験から計算した値が二次評価値の10分の1以上、要するに決める意味がないということで、今回は「なし」。二次評価値は、ルール上、産業衛生学会若しくはACGIH、両方ともなければMAK等ほかのものも参考にしますが、今回はACGIH1Ceilingですが、あります。Ceilingですが、一次評価値が1ppmという数字です。CeilingTWAのような形で使ったことは過去にもありますので、今回新しい考え方の提案ではありません。いかがでしょうか。何か御意見ございますか。

○角田化学物質評価室長 御欠席の西川先生から事前に御意見が出ていますので紹介いたします。今の評価値の部分ではありませんが、上の段の「重視すべき有害性」の「丸数字1発がん性」の所についてです。「ヒトに対する発がん性について判断できない」となっていて、根拠では、「動物の経口、経皮試験では発がん性は見られなかった」となっています。この「経口」の部分についての確認です。

 これについて、参考資料の9ページを御覧ください。8ページの中ほどから「発がん性」が書かれていて、9ページの上から2つ目の黒ポツの「エチレンクロロヒドリンの発がん性の有無については」で始まる部分の5行目から、「この事実は、新生ラットに50mg/kg 体重/日の2,2'-ジクロロジエチルエーテルあるいはエチレンクロロヒドリンを3週間にわたり経口投与し、その後10週間通常飼育した実験で、前がん病変と考えられている肝臓のATPアーゼ陰性病巣が見られなかった結果と一致している」と、経口に関する記述はここの部分にあり、先ほどの所にも「経口」と書きました。西川先生の御指摘は、この部分は短期間の前腫瘍性病変をマーカーとした試験なので、長期のがん原性試験とは異なるものではないかということです。そうすると、この「経口」が要らないのかどうかということです。こういう御意見が出ましたので紹介いたしました。

○大前座長 西川先生は、この「経口」を取ったらどうかということです。今のこの記述だけでは、発がん性の試験とは言えないので、なくてもいいのではないかという御意見ですが、いかがでしょうか。よろしいですか。では、これは、根拠の「動物の経口、経皮」の「経口」を削除することとします。

 そのほかのことで、いかがでしょうか。そのほか、特に御意見がなければ、一次評価値は「なし」、二次評価値は1ppmということで、よろしゅうございますか。

 では、この物質はそのように決定いたします。

 次に、第2の物質のグルタルアルデヒドについて説明をお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 グルタルアルデヒドについて、資料1-2を御覧ください。物質名、化学式、構造式は表のとおりです。物理的化学的性状について、外観は、刺激臭のある透明無色の液体です。沸点は187189℃、融点は-14℃。蒸気圧は20℃で2.3kPaです。生産量等について、生産量は1,000トン未満。用途は、電子顕微鏡用試薬、2%水溶液で低温滅菌剤、架橋剤、なめし剤、一部のX線現像液の硬化剤、金属細工液、殺生物剤、スライム剤、織物柔軟剤、防腐剤、生物学的標本の固定剤、生体移植材料の安定剤、また、ノーカーボン紙、化粧品、衛生用品に使用されている。発汗抑制剤、動物舎や通風ダクトの消毒薬、皮膚疾患の治療にも使用されてきたということです。

 重視すべき有害性で、発がん性については、ヒトに対する発がん性は「判断できない」としています。発がん性以外の有害性については、生殖毒性については「判断できない」、神経毒性については「あり」、遺伝毒性については「判断できない」としています。そのうち神経毒性の根拠については、ヒトにおいて、グルタルアルデヒドを顔面に浴びた小児に、嘔吐、頻呼吸、頻脈などの症状が、職業上、慢性ばく露された労働者に、心悸亢進と頻脈が認められ、グルタルアルデヒド溶液による殺菌消毒に従事した人に、頭痛と吐き気が見られたということです。

 次に、左下の、反復投与毒性に関する動物試験データです。LOAELとして0.0625ppmを設定しています。これは、マウス(10/)にグルタルアルデヒドを、0.06250.1250.250.51ppm16時間、週5日の頻度で13週間吸入ばく露した実験で、鼻前庭の炎症()、体重増加抑制()、鼻腔呼吸上皮の扁平上皮化生(雄雌)を影響指標とした場合、LOAEL0.0625ppmと推定されるということです。不確実性係数は100で、これは種差10LOAELからNOAELへの変換を10として計算したところ、評価レベルは、4.7×10-4ppmとなります。

 続いて、許容濃度等です。ACGIHにおいては、Ceilingとして0.05ppmSENの付記があります。根拠としては、活性又は不活性グルタルアルデヒドへの職業ばく露について、TLV-天井値として0.05ppmを勧告する。この値は、鼻、喉、皮膚及び眼への刺激の可能性を最小にすることを意図して設定された。環境中濃度0.1ppm以下で15分以内のばく露のあった作業者で、鼻、喉、皮膚、眼の刺激と頭痛の訴えが認められたとする報告がある。0.03ppm又は0.01ppmでも症状の発現が報告されているが、量反応関係は認められていない。0.010.34ppmの範囲の濃度で慢性ばく露されても、作業者に皮膚や呼吸器への感作性反応は認められなかったが、皮膚接触によるアレルギー発現については多くの報告が出されているので、十分な管理が必要であるとされています。

 日本産衛学会では0.03ppm(最大許容濃度)、また、感作性分類がなされています。根拠としては、眼、皮膚、呼吸器の症状は、個人ばく露濃度の幾何平均が0.032ppmの群で有意に多い。職業性喘息の発症が短時間個人ばく露濃度の中央値が0.039ppmである病院で認められており、特に内視鏡洗浄時の気中濃度が36.1ppb以下で咽頭痛の訴えがあることから、ばく露濃度は0.032ppmより低濃度であることが望ましいとされる。以上から、グルタルアルデヒドの毒性として、眼、皮膚及び呼吸器への刺激性と感作性を考慮して、最大許容濃度として0.03ppmを勧告するということです。産衛学会のほうは2006年の設定で、ACGIHのほうは1999年の設定です。その他の許容濃度等については以下のとおりで、DFG MAK0.05ppmとなっています。

 以上から、評価値()です。一次評価値は4.7×10-4ppm。これは動物試験により導き出されたLOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルです。二次評価値については、0.03ppm又は0.05ppmの両方を併記しています。理由は、ACGIHは、鼻、喉、皮膚及び眼への刺激の可能性を最小にするために天井値として0.05ppmを勧告している中、日本産衛学会は眼、皮膚及び呼吸器への刺激性と感作性を考慮して0.03ppmとしており、どちらを評価値とするかは検討が必要であるとしています。以上です。

○大前座長 西川先生の御意見もお願いします。

○角田化学物質評価室長 右上に、「神経毒性:あり」という表現がありまして、その根拠の部分についてです。「ヒトにおいて、グルタルアルデヒドを顔面に浴びた小児に、嘔吐、頻呼吸、頻脈などの症状が、職業上、慢性ばく露された労働者に、心悸亢進と頻脈が認められ、グルタルアルデヒド溶液による殺菌消毒に従事した人に、頭痛と吐き気が見られた」と書かれていますが、この所見は、どちらかと言うと、主に循環器系や消化器系への影響を示唆するものではないか。もう少し神経毒性に合致した表現に変更したほうがいいのではないかという御意見です。

 この表現については、参考資料の37ページを御覧ください。一番上の箱の中に「神経毒性」があって、2つパラグラフがありますが、この前段の部分を今の表現に持ってきています。この前段部分には「ヒトにおいて」と書かれているとおり、30ページに神経毒性に関して4つほど項目があり、この中に「誤ってグルタルアルデヒドを顔面に浴びた小児に」ということが書かれているので、ここの所を書いています。それと、その次の部分を整理して入れています。

 それから、37ページに動物の例がありましたが、そちらについては25ページを御覧ください。上のほうの「神経毒性」の部分で、「経口投与では、うずくまり姿勢、自発運動低下、歩行障害」などがあり、こうしたものから3つほどまとめていますが、これは横長の評価表には記載していません。

 先ほどの御指摘のように、もう少し神経毒性に合致した表現に変更できないかという御意見について、ほかに適切なものがあるという御意見等があれば承りたいと思います。

○津田委員 現在書いてある内容では、それが神経毒性かどうか分かりません。表現の形としてこういうようなことが起きたので、神経毒性特有ではありません。グルタルアルデヒドは私も使ったことがありますが、刺激が強いのです。特有の臭いがあって、それに対する反応もみえます。従って、直接の神経毒性であるかどうかは、これは分からないということになると思います。ですから、神経毒性に特化した表現をすると、かえって正しくない恐れがあります。

○大前座長 参考資料37ページの動物の所でも、経口投与で「うずくまり」うんぬんと、これもやはり神経毒性特有ではないということですね。

○津田委員 はい、そうです。

○大前座長 そうすると、ヒトにおいても動物においても、神経毒性特有の症状とはなかなか考えにくいということですね。

○津田委員 はい。

○大前座長 御意見、いかがでしょうか。

○津田委員 蛋白の固定作用が強いので、ネズミの吸入試験では鼻の扁平上皮化生が起こるので、やはり、自体の刺激性と蛋白固定力だと思います。

○大前座長 そうしますと、むしろ神経毒性に関しては「あり」ではなくて「判断できない」で、根拠としては、情報が十分ではないと。

○津田委員 そういうことになりますね。神経毒性というと、それ特有の症状がないといけないと思いますが、これを見ると、どれがその点についてよく分からないのです。

○大前座長 今の津田先生の御意見ですが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。では、この神経毒性に関しては「判断できない」で、根拠としては、情報が十分でない。要するに、神経毒性特有の情報としては捉えられないというような表現のほうがいいでしょうか。

○津田委員 それ用の試験がされていないですね。

○大前座長 ありがとうございました。神経毒性に関しては、そういうことで。一次評価値、二次評価値にいくまでのプロセスといいますか、道筋に関してはいかがでしょうか。一次評価値が4.7×10-4 、これは鼻腔の炎症ですね。これを使って、不確実性係数100で計算をしています。二次評価値については、産衛かあるいはACGIHのどちらを取るかは次の議論にしたいと思いますが、一次評価値はこれでよろしいですか。

 二次評価値はどうしましょうか。産衛が2006年、ACGIH1999年。根拠はそれほど大きく変わらないと思いますが、産衛の許容濃度で0.0320.039で少し影響があるということで0.03にしたという記述がありますので、産衛のほうがベターでしょうか。ACGIHを採る理由はありませんね。では、ここは0.03でよろしいですか。

 では、二次評価値に関しては、産衛学会のほうの数字を採って0.03ppmということにいたします。

 次に、タリウムについてお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 タリウム及び水溶性化合物です。資料1-3です。物質名、化学式、構造式は、表に記載のとおりです。物理的化学的性状は、タリウムについては、外観は帯青白色の非常に軟らかい金属で、空気にばく露すると灰色になる沸点は1,457℃、融点は304℃です。硫酸タリウムについては、外観が無臭、白色又は無色の結晶で、沸点は分解、融点は632℃です。生産量等は、タリウムについては、生産量、輸入量の情報はなし。用途は半導体工業、合金、鉱物溶解剤、光学・温度測定器などとなっています。硫酸タリウムについては、生産量は液剤としては6.4kL、粒剤としては0.3%含有のもので12.1トン、1%含有のもので3.2トンとなっています。輸入量の情報はなしです。用途は、アリ、ゴキブリ殺虫剤、殺鼠剤です。

 重視すべき有害性で、発がん性については、ヒトに対する発がん性は「判断できない」。発がん性以外の有害性は、生殖毒性は「判断できない」、神経毒性は「あり」、遺伝毒性は「判断できない」としています。神経毒性の根拠としては、ヒトの症例報告は、タリウムが急性の経口ばく露後、末梢及び中枢神経系の阻害を引き起こすことを示している。経口ばく露後に、爪先と指の痺れ、灼熱脚現象及び筋痙攣とともに、運動失調、震え及び多発性脳麻痺が報告されている。セメント製造に544年間関わった36人の労働者は、感覚異常、爪先と指の痺れ、灼熱脚現象及び筋痙攣を示した。

 次に左下、反復投与毒性に関する動物試験データです。LOAEL1.4mg/kg/日としています。これは1.4mg/kg/日を240日間経口投与されたラットにおいて、末梢神経の構造的機能的変化が観察されるということです。これに基づき、不確実性係数を100、これは種差の10LOAELからNOAELへの変換10ということで、それをもって計算すると以下のとおりとなり、評価レベルはタリウムとして0.07mg Tl/m3 となります。

 許容濃度等ですが、ACGIHTWA0.02mg/m3 、吸引性粒子、タリウムとして評価しています。あとSkinの表記が付けられています。根拠は、タリウム及びその化合物のTLV-TWAの勧告値の0.02mg/m3 は、タリウムばく露と関連した健康障害の証拠がなかったバッテリー工場で測定された最も高い気中タリウム濃度を基にしている。尿タリウム濃度の中央値は1.3μg/Lであった。この濃度はドイツのタリウムを放出していたセメント工場作業者、近隣住民の間で神経学的影響が関連していない尿タリウム濃度の範囲内であるということです。日本産衛学会においては設定されておりません。MAKにおいても設定されておりません。以上のことから、評価値()は、一次評価値は「なし」としています。これは、動物試験により導き出されたLOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルが、二次評価値の10分の1以上であったためです。二次評価値は0.02mg/m3 で、これはACGIHのばく露限界値を採用したものです。

○大前座長 西川先生、何か御意見はありましたでしょうか。

○角田化学物質評価室長 いえ、特にはございません。

○大前座長 いかがでしょうか。

○江馬委員 生殖毒性の所の「判断できない」の根拠が「吸入ばく露による生殖毒性の報告はない」となっているのですが、最初のエチレンクロロヒドリンの場合では、生殖毒性の所の根拠として、経口投与毒性の試験の結果が出ています。そうすると、ここでの経口投与毒性その他による評価も書かないといけないのではないでしょうか。

○大前座長 参考資料の58ページの生殖毒性には、参考として経口のデータも載っておりますが、これを書くべきではないかというのが江馬先生の御意見ですね。

○江馬委員 1つ目の物質では経口投与の試験を根拠として書いているので、吸入ばく露の試験だけの評価を書くなら、最初の物質のほうも変えないといけないと思います。

○大前座長 吸入だけを書いたのには、何か根拠があるのでしたっけ。

○岸化学物質評価室長補佐 特にはありません。

○大前座長 もちろん吸入があれば、それが大優先なのですが。

○角田化学物質評価室長 吸入優先ということで、生殖毒性の所に参考値として経口を書いたのですが、確かに先生がおっしゃったように、並びが統一されていない部分はあるかと思いますので、検討したいと思います。

○大前座長 そうしますと、参考資料の58ページを見ているのですが、動物の参考で、LOAEL0.008から計算すると、最終的には0.0048mg/m3 という計算ができるということになるわけですね。

 そうするとこれは、二次評価値に0.02を採るとしたらという話ですが、10分の1より小さいことになりますね。したがって、左下に書いてある反復投与毒性の動物実験データの所に、今の動物の生殖毒性を持ってくると、一次評価値が作れるかもしれないということになりますかね。

○宮川委員 基本的に、吸入がないので使わないというのはおかしいと思うので、吸入ではなくて経口でも使うべきだと思います。

 あとは計算ですが、58ページにある表は、生殖毒性の内容が「学習の障害」というのは疑問に思われるかもしれないので、評価書の48ページの中身ももう一度見直していただくのがよろしいかと思います。

○江馬委員 生殖毒性の所の用量反応関係がなかったということなので、これを書くのは余りよくないのではないかと思います。腹腔内投与も3件しかなくて、よく結果が分からないのですが、これも影響が出ていて、3ポツ目の所の精巣上体うんぬんの所で、生殖毒性が出ているということになると思います。

○宮川委員 腹腔内投与は今までは参考として使っていなかったと思いますが、3ポツから計算をすると齟齬がないことになると思います。

○大前座長 もし計算するとしたら、少なくとも100は掛かるわけですから、0.007よりも小さくなる。

○宮川委員 あと精巣上体に未成熟精子が増加したというのを生殖毒性として採るかどうかという

○大前座長 そうしましたら、一次評価値に関しては、今の生殖毒性の所がありますのでペンディングにしておきまして、48ページの3ポツを生殖毒性として採るか採らないか。採ることが妥当かどうかを検討して、本表のほうに持ってくるということでよろしいですか。

 そういう意味で一次評価値はペンディングで、0.7を使いますと0.02より。10分の1にはならないかな。0.7から少なくとも100分の1になりますから、0.007だから、あと労働補正を掛けるから際どいところか。

○宮川委員 半分ですかね。

○高田委員 計算は1.4でされていますから、この値は半分です。

○大前座長 ああ、そうですね。そうすると0.03ぐらいになるのですね。

○高田委員 はい。

○大前座長 0.02を採ればですが、いずれにしても一次評価値は出てこない。もし3ポツを採ったとしても一次評価値はないということになろうかと思いますが、この記載に関しましては、生殖毒性の記載を3ポツで書いておくのかおかないのか、これは判断ですね。

 そうしましたら、今までのお話ですと、一次評価値は「なし」ということでいいだろうということで、生殖毒性の所にどのように書くかに関してはペンディングとして、次回に最終決定するということでよろしいですか。

 ありがとうございました。一次評価値は、いずれにしても「なし」。二次評価値は0.02ACGIHを採っておりますが、このACGIHは吸引性粒子(inhalable particle)ということで0.02を採っておりますが、これはこのままでよろしいですね。

 確か、以前にニッケルの議論をしたときに、inhalable particleの濃度のほうが、日本で測っているトータルダストよりも高いというようなことだったので、トータルの0.02は安全方向に行っているということだと思いますので。

 バッテリー工場でタリウムなどを使うのかなと思っていたのですが。この決め方は独特ですよね。影響がなかった濃度の最大値を採って0.02を使っているわけですから、根拠としては非常に安全方向の根拠ですね。今までは影響があったところをベースにして決めるのが通常のベースなのですが、この場合は、逆になかった濃度の最大値を採っているということなので、どちらかというと安全方向を見ているということですから、安全性に関しては0.02で十分だと思います。二次評価値は0.02ということでよろしいですか。一次評価値は「なし」。生殖毒性の書き方は、本日の段階ではペンディングにしておくと。どうもありがとうございました。

 次に、4番のメタクリロニトリルです。よろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 次はメタクリロニトリルで、資料1-4を御覧ください。物質名、構造式等については、表に記載のとおりです。物理的化学的性状ですが、外観は特徴的な臭気のある無色の液体です。沸点は90.3℃、蒸気圧は25℃で8.66kPa、融点は-35.8℃となっています。

 生産量等については、製造・輸入量は3,560トンです。用途は、紙コーティング等に使用されるSBR(スチレンブタジエンゴム)、ラテックスや塩化ビニリデン共重合樹脂の重合原料となっています。

 重視すべき有害性、ヒトに対する発がん性は「判断できない」としています。発がん性以外については、生殖毒性は「判断できない」、神経毒性は「あり」、遺伝毒性は「なし」としています。このうち神経毒性の根拠として、ビーグル犬に03.28.813.5ppmのメタクリロニトリル蒸気を17時間、週5日で90日間吸入ばく露した。13.5ppm群の3匹中2匹で、投与期間の半ば過ぎから、強直性痙攣と後肢の運動失調を伴う中枢神経毒性が見られた。このうちの1匹で脳に病理組織学的障害が認められたというものです。

 反復投与毒性に関する動物試験データにおいては、NOAEL10mg/kg 体重/日としています。これは雄雌のF344/Nラット、150匹にメタクリロニトリル031030mg/kg 体重/日を2年間、週5日、104105週間の強制経口投与した試験で、30mg/kg 体重/日で、雄雌に体重増加抑制、鼻腔嗅上皮の萎縮及び立方体様あるいは円柱様上皮細胞への化生、肝細胞の空胞化、雌に主に骨髄球と赤血球を含む骨髄の過形成の発生率増加が認められた。主な標的組織は鼻腔嗅上皮であったことから、鼻腔嗅上皮の変化をエンドポイントとして、NOAEL10mg/kg 体重/日としたということで、不確実性係数を、種差を10として計算したところ、以下の計算式となり、評価レベルとしては6mg/m3(2.2ppm)となったところです。

 許容濃度等は、ACGIHTLV-TWA1ppmSkinの付記がされています。1973年にTLVが設定され、発がん性の注記は2011年となっています。根拠としては、雄のビーグル犬にメタクリロニトリル蒸気03.28.813.5ppm17時間、週5日、13週間吸入ばく露した試験で、13.5ppm群で、強直性痙攣と後肢の運動失調が認められた。ボランティアにメタクリロニトリル蒸気0271424ppm1分間吸入ばく露した結果、2ppmでは臭気を感知した者はいなかったが、7ppm47%、14ppm88%の人が臭気を感知し、24ppmで、鼻、喉あるいは眼に刺激を感じた人は、62217%であった。TLV-TWA1ppmはメタクリロニトリルによる中枢神経系への悪影響、眼及び皮膚の刺激の可能性を最小限とすることを意図しているということです。日本産衛学会では情報なし、MAKにおいても情報なしとなっています。以上から評価値の案としましては、一次評価値は「なし」、これは動物試験により導き出されたNOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルが、二次評価値の10分の1以上のためです。二次評価値は1ppmということで、これはACGIHのばく露限界値を採用したものです。以上です。

○大前座長 西川先生、何か御意見はございますか。

○角田化学物質評価室長 ございません。

○大前座長 いかがでしょうか。

○江馬委員 生殖性毒性が「判断できない」の根拠の文章が、評価書の65ページの文章と違うように思うのです。

 というのは、資料1-4には「、ばく露期間中の母動物に体重増加抑制が見られた」と書いてあるのですが、65ページの3行目、「いずれのばく露群においても母動物の毒性は認められなかった」という記載になっていまして、文章が違うのではないか。

 それから、「経口投与による発生毒性の報告もあるが、出生後の投与であり」というのが、どこの文章に当たるのかがよく分からないのです。

 それから、経口投与/経皮投与/その他の経路等、65ページの3ポツ目の「妊娠SDラットに投与した」というのが、実験群で妊娠動物数が減っているという結果が出ていますので、生殖毒性はあるということに。これは体重増加抑制があるので。

○大前座長 そうですね。71ページの評価表のほうをここに持ってきているわけですが、72ページの根拠の所には、今、江馬先生のおっしゃったそのものが載っていますね。

○宮川委員 少なくとも最近では、この資料を作る作業の中で、評価書に書いてあったことで根拠にしたものを、そのまま評価表に写していたはずですので、違うのが書いてあるのは例外的な措置になると思いますから、できれば65ページの文章のままに、今、江馬先生が言われたものを写していただく。

 それから、経口のほうも、今、江馬先生がおっしゃられた、確かに母動物に対しては体重抑制はあるものの、トータルに見ると通常だと生殖毒性があるといってもいいようなところではないかと私は思いますが、江馬先生、いかがですか。

○江馬委員 経口投与/その他の毒性の所の3ポツ目の所で、妊娠7日まで投与した群で、妊娠動物数が減っている。体重増加抑制はあったわけですが、減っているということがあるので。

 もう1つは、F1 ラットの雌雄の子供の肝臓の相対重量の増加が見られたと。ぽつぽつと毒性が見られているように思います。母動物の肝臓重量の増加も、65ページの最後のカラムに書いてあります。

○大前座長 今の経口投与のこれは、65ページの3ポツの所を見ているのですが、先生が最初におっしゃった。

○江馬委員 その文書がよく分からないのですが。

○大前座長 「母動物に用量に依存した体重増加抑制、卵管の水腫(軽度から重度)」とありますが、卵管の水腫で子供の数が減ったということはないのですか。

○江馬委員 そうすると、妊娠成立数が減っていますね。3ポツの3行目の6分の6はコントロールだと思うのですが。それから妊娠7日までのコントロール群の妊娠数が6分の650mg投与群で6分の0、妊娠の8から14で、50mg6分の16分の0と。

 前半だけ見れば、妊娠動物数が減ったように見えるのですが、この実験自体が余り信用できないのではないかと思います。妊娠8日から14日で妊娠動物が減るというのは、この時期は既に妊娠の成立した時点ですので、投与は関係ないことになります。6分の16分の0の数値というのは、信用できないと思います。妊娠8日というのは、妊娠が確定している時期なので、その後に投与しても、妊娠動物が0になるということは、まずない。

 これを見て信用できないデータだとすれば、妊娠7日までの投与で妊娠動物数が減るというデータも信用できない。

○宮川委員 この訳文がおかしいという可能性はないですか。

○大前座長 それは原則的にない。今の経口投与の所は、今おっしゃったような形で、3ポツの所は怪しい、元がどうなっているかは見ないと結局分からないということだと思うのですが、原則として、吸入を優先するということですと、吸入に関しても表現が違っているわけなので、これはまずいわけですよね。

 それは71ページの評価表から持ってきたと思うのですが、次の72ページに、正に本文と同じことが書いてあるので、これを見ると、吸入試験でこれを採用すると、評価レベルが3.75ppmになるということです。いずれにしても一次評価値は決まらないわけですが、生殖毒性の書き方を変えなければいけないですよね。この生殖毒性の所は「判断できない」ではなくて、生殖毒性は「あり」でいいのですか。

○江馬委員 「あり」ということになると思います。

○大前座長 「あり」ということで、根拠として72ページの文章、若しくは65ページの本文のほうの文章を持ってくるという変更ですね。ありがとうございます。生殖毒性は、そういう形で中身を変更するということですね。

 そのほかの点はいかがですか。そうしましたら、生殖毒性の書きぶりがどうなろうが一次評価値は「なし」ということになります。二次評価値は1ppm、これはACGIHを持ってきているわけですが、これはいかがでしょうか。よろしいですか。

 非常に不思議な感じはするのですが、1分間吸入の短期間ばく露で2ppmを持ってきておいて、それを8時間の時間加重平均で1ppmにすると。Ceilingではなくて。とにかくACGIHはこういう決め方をしたので、二次評価値は1ppmということでよろしいですか。

 はい。生殖毒性に関しましては、先ほどのように書き替えるということで、よろしくお願いいたします。

 次にクメンです。よろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 続きまして、クメンです。資料は1-5を御覧ください。物質名、構造式については、表に記載のとおりです。物理的化学的性状ですが、外観は特徴的な臭気のある無色の液体です。沸点は152℃、融点は-96℃、蒸気圧は20℃で427Paです。生産量等ですが、製造・輸入量は80万トンです。輸出量は472,000トン余りです。用途は、有機合成(石炭酸・アセトンの製造)、航空ガソリンに混用、過酸化物、酸化促進剤などの原料となっています。

 重視すべき有害性で、発がん性については、ヒトに対する発がんの可能性があるとしています。根拠としては、IARCはクメンを「グループ2B」に分類した。クメンのヒトに対する発がん性の証拠は不十分であるが、動物における発がん性の証拠は十分である。また、NTPは、クメンには発がん性の明らかな証拠があると結論しているということです。各評価区分としては、IARC2B、産衛学会では「設定なし」などとなっています。発がん性以外の有害性については、生殖毒性は「判断できない」、神経毒性については「あり」、遺伝毒性については「判断できない」としています。そのうち、神経毒性の根拠としては、CFW雄マウスに、クメン2,0004,0008,000ppm20分間吸入ばく露し、機能観察試験をマウスに適用した。2,000ppm以上のばく露群で覚醒レベルの減少、歩行障害、運動障害、正向反射抑制、神経運動障害、前肢握力の低下、その他神経行動障害が見られた。

 遺伝毒性の「判断できない」の根拠としては、in vitroでは、復帰突然変異試験のうち、ネズミチフス菌で陽性結果があるが、詳細は不明で、ほかは全て陰性である。不定期DNA合成試験の陽性結果は再現性なし。細胞形質転換試験では3件中1件のみが陽性である。一方、in vivoでは、小核試験のみの報告であり、ラット雄に腹腔内投与で骨髄細胞での試験は、2件で陽性、Fischer344ラットを用いた試験では陽性を示す用量もあったが、用量作用反応が見られなかったということです。左下に行きまして、閾値の有無については「判断できない」ということで、これは遺伝毒性について判断できないことから、このようなこととしたものです。

 次に、反復投与毒性に関する動物試験データです。CFW雄マウスに、クメン2,0004,0008,000ppm20分間吸入ばく露し、機能観察試験をマウスに適用した。2,000ppm以上のばく露群で覚醒レベルの減少、歩行障害、運動障害、正向反射抑制、神経運動障害、前肢握力の低下、その他神経行動障害が見られたことから、LOAEL2,000ppmとしたところです。これについては、不確実性係数を1,000とし、種差10LOAELからNOAELへの変換が10、ばく露時間による補正を10としたところでして、以下の計算式により評価レベルを2ppmとしたところです。許容濃度等については、ACGIHではTLV-TWA50ppm1999年に設定したところです。根拠としては、眼、皮膚及び呼吸器の刺激性及び中枢神経抑制による障害を最小限に維持するために、クメンのTLV-TWA値として50ppmを設定する。この勧告値は、ヒトへのかすかな刺激性を引き起こす濃度(75ppm)よりも低く、急性の神経系変化を引き起こす濃度よりもかなり低い値であるということです。日本産衛学会では設定なし、MAKでは10ppmとしたところです。

 評価値の案としては、発がん性を中心に評価した場合、一次評価値は「なし」ということで、これは閾値の判断ができないためです。参考までに、神経毒性を中心に評価した場合には2ppmでして、これは、動物試験により導き出されたLOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルです。二次評価値は50ppmということで、ACGIHのばく露限界値を採用したものです。

○大前座長 西川先生はこの物質に関しては、何か御意見はございましたでしょうか。

○角田化学物質評価室長 特にありません。

○大前座長 いかがでしょうか。

○津田委員 左の反復毒性の所の2,0004,0008,000ppmを立方メートル当たりにすると、半分になるという計算は何かあるのですか。質問いたします。

○大前座長 換算係数が、1mg/m3 0.2ppm1ppm4.92ですから。これはおかしいですかね。参考資料の75ページの換算係数は、1ppmが大体5mg/m3 ぐらいなので、これはグラムか。1ppmが大体5ぐらいですから、この括弧の中は102040g。5倍だからそんなことはないか。いいのか。

○宮川委員 100倍ぐらい出ていますね。

○大前座長 100倍ぐらいですね。この数値は間違っていますね。この102040というのは間違っていますね。これは確認ということでよろしくお願いします。

○角田化学物質評価室長 はい。

○津田委員 このまま204080になるのではないですか。重さのppmだから100万分の1ですよね。

○大前座長 ppmはこの場合は体積なので、単純にはいかないと思うのですが。

○津田委員 そうなのですか。重さだとそのまま。

○大前座長 はい。

○津田委員 10gですね。

○大前座長 グラムですよね、これね。

○岸化学物質評価室長補佐 ACGIHの値を見ても、大体5倍ぐらいの数字なので、4,000だと20g。

○大前座長 グラムですよね。だから「mg/m3 」ではなくて、「g/m3 」という、凄まじいですが。

○高田委員 77ページを見ますと、マウスの所の、Albinoマウスの所のクメン2,000ppm9,840mg/m3 です。それなのに、下の濃度は2,0004,0008,000ppm102040mg/ m3 と計算されています。

○大前座長 本当だ、計算が間違っていますね。77ページの本文のほうも、ミリグラムではなくてグラムですね。本文のほうも間違っていますし、これも間違っています。これは修正をよろしくお願いします。右上と左下と両方ありますが。

○角田化学物質評価室長 はい。

○大前座長 いかがでしょうか。発がんの場合は閾値が判断できないということ、公的な機関から出ていませんので、発がんを考慮した場合は、一次評価値は「なし」と

 神経毒性を考慮した場合は一次評価値が2ppmということですが、この2ppmというのは、今の2,0004,0008,000で計算した値になります。

 参考資料の241ページを見ますと、ルールブックなのですが、リスク評価の一次評価値の所で、「リスク評価の選定基準が神経毒性の場合」というのがあります。これを見ますと、「毒性試験がGLP等を満たした動物実験施設で、OECDのガイドライン等にのっとって行った試験、又は信頼できる試験報告若しくは」ということで、試験の質がしっかりしていなくてはいけないというのが、ルールブックになっております。

 この20分間実験というのは、OECDのガイドライン等にのっとっている実験ですかね。違いますよね。

○宮川委員 違います。

○大前座長 そうすると、ルールブックにのっとる限りは、神経毒性に基づいて評価したとしても、一次評価値は作れない。発がんに関しては、先ほど言いました閾値の有無、それから公的な機関で出ていないので作れない、これはいいと思うのですが、神経毒性の場合も、ルールブックにのっとっていないという意味で作れないということでよろしいですか。

 では、二次評価値ですが、二次評価値はACGIH50を採っていますが、これについて御意見はいかがでしょうか。ヒトへのかすかな刺激を起こす濃度よりも低い。したがって、急性の神経系変化は起きないだろうと。こういうレベルで決まっているということなので、比較的安全そうな濃度なわけですが、二次評価値はこれでよろしいですか。

 そうしましたら、クメンに関しては先ほどの神経毒性の所の単位を立方メートルに直していただくには、「g/m3 」にするという箇所が2か所、一次評価値の所では、神経毒性を中心に評価した場合も、この場合はGLP等にのっとっていないので、ルールブック上は、一次評価値は「なし」。

○津田委員 発がん性の所ですが、NTPの所に、誤解を防ぐために「クメンには動物において発がん性の明らかな証拠があると結論した」と。上の項目はヒトに対する発がん性の評価の項目なので、動物であることを明らかにしたほうがいいと思います。

○大前座長 ありがとうございます。「又NTPは、クメンには動物に対する発がん性の明らかな証拠がある」と。「動物に対する」という言葉を入れるということですね。ありがとうございました。

 そのほかにクメンについてなければ、次にいきますが、よろしゅうございますか。ありがとうございました。

 次にオルト-フェニレンジアミンです。よろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 続きまして、オルト-フェニレンジアミンです。資料1-6を御覧ください。物質名、化学式、構造式は、表に記載のとおりです。物理的化学的性状につきましては、外観が茶~黄色の結晶、光にばく露すると暗色になる、沸点は256258℃、融点は103104℃となっております。生産量は、製造・輸入量が1,000トン未満、用途は農薬、防錆剤、ゴム薬、医薬、顔料となっております。

 重視すべき有害性で、発がん性につきましては、ヒトに対する発がんの可能性があるとしております。根拠は、ACGIHA3DFG3Bに分類しているところです。各評価区分は、IARCは設定なし、産衛学会は設定なし、その他については以下のとおりとなっております。重視すべき有害性で発がん性以外のものにつきましては、生殖毒性については「判断できない」、神経毒性については「判断できない」、遺伝毒性については「あり」としたところです。そのうち遺伝毒性につきましては、根拠として、本物質はin vitro試験系では、復帰突然変異試験、不定期DNA合成試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験のいずれでも陽性を示し、特にネズミチフス菌TA98では比活性値が3.5×103 と強い変異原性を示している。一方、in vivo試験系でも小核試験及びDNA合成阻害試験で陽性を示していることから、遺伝毒性ありと判断したところです。

 次に左下ですが、閾値の有無につきましては「なし」ということです。遺伝毒性は「あり」と判定したところから、閾値の有無は「なし」としたところです。

 次に、生涯過剰発がん1×10-4 レベルに相当するばく露濃度ということで、厚生労働省は「化学物質による健康障害防止措置に係る検討会」で、オルト-フェニレンジアミンの「がん原性試験から算定した評価参考値(作業環境測定の指針値)について」で、オルト-フェニレンジアミン二塩酸塩を混合した飲水の自由摂取によるラットでの経口ばく露発がん性試験の結果における雌の肝臓の良性、悪性腫瘍の合計をエンドポイントとして、吸入ばく露濃度に換算した閾値のない評価での生涯過剰発がん1×10-4 レベルに相当するばく露濃度を9.6×10-3mg/m3 と算定しております。

 許容濃度等につきましては、ACGIH1996年に、TLV-TWA0.1mg/m3 ということで設定しております。根拠としましては、オルト-フェニレンジアミンへの職業ばく露について、TLV-TWAとして0.1mg/m3 を勧告する。この値は、造血機能障害を最小限とするため設定するとしております。日本産衛学会におきましては、0.1mg/m3 ということで、皮膚感作性物質第1群も1999年に併せて設定されております。根拠としましては、オルト-フェニレンジアミンへの職業ばく露について、許容濃度として0.1mg/m3 を勧告する。この値は、肝腫瘍の発生を最小限とするための設定であるとしております。DFG MAKについては、設定なしとなっております。

 以上のことから評価値の案としまして、一次評価値は9.6×10-3mg/m3 です。これは、オルト-フェニレンジアミン二塩酸塩を混合した飲水の自由摂取によるラットでの経口ばく露発がん性試験の結果、吸入ばく露濃度に換算した閾値のない評価での生涯過剰発がん1×10-4 レベルに相当するばく露濃度を9.6×103mg/m3 と算定したためです。次に、二次評価値は0.1mg/m3 です。これは、ACGIH及び日本産衛学会の許容濃度が根拠となっているところです。

○大前座長 ありがとうございました。西川先生はこの物質に関しましては。

○角田化学物質評価室長 特に御意見ということではないのですが、10-4 レベルということで、この数値の出てきている根拠ということで御質問がありました。参考資料の最後のほうに先ほどのルールブックがありますが、239ページの一番下に「(4)リスクの判定方法」というのがあります。ここで「丸数字1一次評価」とありまして、「発がん性を考慮して評価を行うことが必要な物質の場合」ということで、閾値がないとみなされる場合は、aとして、ユニットリスクを用いたがんの過剰発生率が算定できる場合は10-4 に対応した濃度を一次評価値として評価する。一次評価値を超える場合は二次評価に進むというような形で、ここのルールで定義しているという形です。

 左の下に、厚労省が「化学物質による健康障害防止措置に係る検討会」で算定したとあります。これにつきましては、少し古いのですが、平成226月に健康障害防止措置に係る検討会を開催してがんの原性指針を検討したときに、作業環境測定の指標値ということで設定したものです。それを受けてがんの指針において、この数字を活用して作業環境管理を行うように周知しているという性格のものです。左の一番下にあります「9.6×10-3 」というのはそういう性格の数字ですので、それを参考として掲載しているというところです。ただ、この数字自体は、ユニットリスクというよりスロープファクターを使ってやっているものですので、そういう意味では先ほどのルールブックとは若干ずれている部分があります。

○大前座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。今の9.6×10-3 をどのように扱うかということも含めて御意見を頂きたいと思います、ルールブックですと、国際機関等において得られた信頼性の高いユニットリスクが得られる場合となっているのですが、厚労省の「化学物質による健康障害防止措置に係る検討会」も国際機関等に入れるかどうかということになります。多分これは、今言った計算の仕方がユニットリスクではなくてスロープファクターというお話ですが、多少やり方は違うということですが。

○宮川委員 多分、経口なのでスロープファクターとおっしゃったと思うのですが、厚労省の中で統一が取れないのもおかしいと思いますし、計算の仕方は普通と同じ方法を採っていると思いますので、これを私は採用しています。

○大前座長 いかがでしょうか。そうしますと、一次評価値としては9.6×10-3 を採用する。これから、恐らく同じようなものが出てくると思いますが、その場合は、一応採用していくという方針でよろしいですか。今度、ルールブックを改訂するときに、そのことも少しルールブックの中に入れておいていただけると統一が取れると思いますので、よろしくお願いします。

○角田化学物質評価室長 はい。

○大前座長 今の点以外についていかがでしょうか。この物質は遺伝毒性があるので、今のような形で計算されているということですが。

 それから二次評価値が0.1、これは産衛もACGIHも同じです。設定でも大体似通っています。産業衛生学会の根拠の所、207ページに許容濃度の提案理由が載っているのですが、何かこの文章がないので困っているのです。どこかにありましたか、108ページの評価表のほうには正にこの文章が載っているのですが、提案理由のほうに余り似たような文章がないので。恐らく、評価書を作ったときに意訳をしてここに書いたのではないかと思うのですが。

○宮川委員 これは、後から出来た「感作性の物質の提案」の文書に、ここのものがあって、それが

○大前座長 そちらから持ってきているのですか。足したのですね。

○宮川委員 ええ、それがあったから、もともとの基本の提案理由ではなくて、感作性物質をリストアップするときの提案の文言だと。

○大前座長 その可能性は大きいですね。分かりました。今、産業衛生学会は、空気中の許容濃度の提案理由と感作性がある場合、あるいは生殖毒性がある場合でそれぞれの提案理由を作っております。多分、その感作性の提案理由と最初の空気中の提案理由が混ざって評価表に書いていただいたということだと思います、中身は間違っていないと思うので。

○宮川委員 最初の2行だけは少し気になります。「肝腫瘍の発生を最小限とするための設定である」という文言がある。それが感作性のほうにあるとは思えないのです。

○大前座長 最小にするためにという言葉が、そうですよね。構造上の類似性から問題であるということは書いてあるのですが、最小にするためのというのは書いていないのです。この言葉は、多分、感作性のほうの提案理由には載っていないですよね。

○角田化学物質評価室長 では、元の表現も確認しまして中身を調整したいと思います。

○大前座長 そうですね、それで直していただいて。よろしくお願いします。いずれにしても、数値は両方とも0.1ですので、これは変わらないと思いますが、この根拠の所を少し原文に近く直していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○高田委員 そうしますと、日本産業衛生学会について、こちらのA3のシートでは皮膚感作性物質第1群が1999と書いてありますが、103ページの参考資料2では「皮膚感作性物質第3(2012)」と書いてあるのですが、そこの表現もそろえなければいけないですね。

○大前座長 なるほど、そうですね。オルト-フェニレンジアミンの感作性は、多分、比較的最近、提案理由を作ったのですよね。ですから、空気中の1999年と別の年ですものね。では、ここの産衛学会の根拠のところは少しリヴァイズをお願いいたします。一次評価値は、9.6×10-3 、二次評価値は、0.1mg/m3 ということでよろしくお願いします。

○津田委員 この左の隅の生涯過剰発がんの所の「オルト-フェニレンジアミン二塩酸塩を混合した」からの文章が非常に分かりにくいので、もう少し。

○大前座長 ここですね。

○津田委員 「飲水の自由摂取による」と言って、もう一度「経口」と書いてあって。多分、元からそのままコピーしてあると思うのです。

○大前座長 そうですね、飲水の自由摂取は経口に決まっているわけですから、重複して書いたりすることはないので、この文章のリヴァイズを少し分かりやすいようによろしくお願いします。

○宮川委員 それからもう1点。もしかすると、産衛の提案理由の所は、パラに似たようなものをとってきている可能性があるかもしれない。

○大前座長 かもしれませんね。

○宮川委員 そこも一応押さえておいて

○大前座長 ええ。このオルトの提案理由がパラとの比較で書いてあるので、ひょっとしたらここの文章はパラの文章を少し持ってきているのかもしれません。特に今の「肝腫瘍の発生を最小限とする」というのは、ひょっとしたらパラの中に入っている文章かもしれませんね。

○角田化学物質評価室長 そこも含めて確認します。

○大前座長 よろしくお願いします。それでは7番目の物質、ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルです。よろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 続きまして、ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルです。資料は1-7です。物質名、化学式、構造式は、表に記載のとおりです。物理的化学的性状につきましては、外観が特徴的な臭気のある無色の液体です。沸点は、164℃、融点は、-31℃、蒸気圧は、25℃で0.43kPaです。生産量等につきましては、製造・輸入量は1,000トン未満、用途は、エポキシ樹脂、アルキド樹脂の反応性希釈剤、樹脂農薬などの安定剤、木綿・羊毛などの改質剤、分散染料、反応性染料の染色性改良剤、シランカップリング剤原料となっております。

 重視すべき有害性で、発がん性につきましては、ヒトに対する発がんの可能性があるとしております。根拠につきましては、日本バイオアッセイ研究センターのがん原性試験(GLP対応試験)において、雌雄のFischerラットに103090ppmBGE蒸気を16時間、週5日で2年間、104週間、各群50匹を吸入全身ばく露したところ、雌雄とも鼻腔に腫瘍の発生増加が認められたとなっております。その他の評価区分につきましては、IARCは情報なし、産衛学会は情報なしなどとなっております。そのほか、発がん性以外の有害性につきましては、生殖毒性が「あり」、神経毒性は「判断できない」、遺伝毒性は「あり」としているところです。そのうち生殖毒性につきましては、根拠としては、雄ラットにBGE蒸気3875150300ppm、各群10匹を17時間、週5日で計10週間吸入ばく露させたところ、300ppm群では、ばく露50日までに10匹中5匹が死亡し、生存した5匹のうち4匹のラット精巣に萎縮が観察されたということです。また、遺伝毒性につきましては、in vitro試験系では、復帰突然変異試験及び染色体異常試験において強い変異原性を示すとともに、不定期DNA合成試験でも陽性を示し、また、in vivo試験系でも、優性致死試験、体細胞を用いた小核試験で陽性を示していることから、遺伝毒性ありと判断するとしたところです。

 閾値の有無につきましては「なし」としております。これは、遺伝毒性がありということから「なし」としているところです。また、生涯過剰発がんの1×10-4 レベルに相当するばく露濃度については、情報なしとしております。生殖毒性に関する動物試験データにつきましては、NOAEL38ppmとしているところです。根拠としては、雄ラットにBGE蒸気3875150300ppm、各群10匹を17時間、週5日で計10週間吸入ばく露させたところ、300ppm群ではばく露50日までに10匹中5匹が死亡し、生存した5匹のうち4匹のラット精巣に萎縮が観察された。精巣萎縮が観察された300ppm群ラットでは、1匹を除く全てに肺炎と限局性肝病変も認められた。75ppmでは1匹の精巣にのみ軽度の限局性萎縮病変が認められ、150ppm群では、9匹中1匹に精巣萎縮と体重増加抑制が認められた。以上の結果から、10週間吸入ばく露による生殖毒性のNOAEL38ppmであるとしたということで、不確実性係数は種差の10で計算したところ、以下のような計算式となり、評価レベルは3ppmとなったところです。

 次に許容濃度等ですが、ACGIHTWA3ppmとしたところです。経皮吸収及び感作性に注意ということで2005年に設定されたところです。根拠としましては、Andersonらの雄マウスにおける吸入ばく露実験では、生殖毒性(精巣萎縮)を指標としたNOAEL38ppmであり、in vitroin vivoでの変異原性試験で陽性結果が出ていること、また、雄マウスの背部皮膚にBGE1.5g/kgを閉塞適用した後に交配させた実験で発生毒性が認められていることから、1981年~2004年まで25ppmであった設定値を見直し、2005年に3ppmに変更したということとしております。日本産衛学会では情報なしとしております。そのほかは以下のとおりです。

 以上のことから評価値の案としまして、一次評価値につきましては「なし」ということで、発がん性を考慮した場合で閾値のない場合において、ユニットリスクを用いたがんの過剰発生率(1×10-4 レベル)に相当する濃度設定に関する情報がないためということです。参考までに生殖毒性で見た場合ですと、動物試験により導き出されたNOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルが二次評価値の10分の1以上であるため、「なし」ということとなります。二次評価値につきましては、3ppmということでACGIHのばく露限界値を採用したものです。

○大前座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。

○宮川委員 よろしいですか。

○大前座長 どうぞ。

○宮川委員 生殖毒性が幾つか気になるのです。まず、これは雄マウスで精巣の萎縮だけなので繁殖試験をしていませんし、しかも、死亡するような濃度で精巣萎縮があるからといって生殖毒性とするかどうかというので、余り適切な実験ではないような気がしますので、是非江馬先生の御意見を伺いたいと思います。

 それともう1つ、113ページの変異原性のところに優性致死ポジティブの結果が2つ出ています。そうすると今度は、これを採ると優性致死試験でポジティブであれば、これは、生殖毒性としてこちらのほうを採用したほうがいいのかなという気もいたします。いかがでしょうか。

○大前座長 江馬先生、いかがでしょうか。

○江馬委員 厳しい判定だとは思いました。精巣の萎縮の程度が分からないということがありますので。精巣重量低下ぐらいの感じなのか、ものすごく萎縮しているのか分からない状況があるので、厳しい判定だという感じはしました。

75ppm10匹中1例の軽度の限局性萎縮病変という表現になっています。今まで、病変があれば生殖毒性ありとしていたと思うのですが、萎縮だけで、その程度が分からない状態で生殖毒性ありという判定をしてきていないのであれば「なし」でいいと思います。情報が不足しているのは確かなので。「あり」と判定するには、少し情報不足の感じはします。

○宮川委員 優性致死のほうはいかがでしょうか、これは経皮なので量は計算しにくいと思うのですが。

○江馬委員 今まで、生殖毒性として評価していなかったと思うのです。どうですか。

○宮川委員 記憶が明らかでないのですが、この会では余り。

○大前座長 やっていなかったですよね。

○宮川委員 はい。ただ、産業衛生学会のほうでは、優性致死が出ている場合は生殖毒性があると判断するという考え方に昨年からなっています。

○江馬委員 昨年からですか。

○大前座長 優性致死をどのように扱うか。

○江馬委員 現実的にマウスの胚の死亡率が増加しているわけですから、生殖毒性としても構わないと思います。

○宮川委員 ただ、そこから評価値を計算できるかというと、経皮ですよね。

○大前座長 これは経皮ですから。

○宮川委員 次の114ページのほうも、多分、経皮だと思いますので、計算は困難だと。

○大前座長 そうすると、優性致死をどのように扱うかというのはどこかでルールブックとして決めなくてはいけない。今まではそれを使ってこなかったので、今日の段階では、そこに関しての結論は得にくいということです。それがまず1つです。

 それから、今の雄の精巣の萎縮、吸入試験で。これは、情報不十分ということで採らないという考え方もあるでしょうし、その中身によっては採ってもいいのかもしれないというのがあるでしょうから、ここの文章だけでは読み切れない。ということで、ここの生殖毒性の右上の「あり」に関しましては、結局、原文を見ないと分からないということですか。2324ですから、これはどこかの二次文章ですかね。これは原文ですね、23Andersonうんぬんですものね。24Hineという人ですかね。副院長ですね。そうすると、この原著をどなたかに見ていただいて、これが採るに値するものなのか、あるいは大したことないのかということを判断していただく必要があるということですかね。

○清水委員 優性致死を採るのも非常にいいと思います。要は、この0.375から1.5は非常に濃度の幅が広いですから、どこからずれているか、それも原著を見なければ分からないですね。

○大前座長 そうしますと生殖毒性に関しては、2324の原著をどなたかに少し評価していただいて、採る必要があるかないかを決めていただいて、ここに書くかどうかを決めると。それから、今の優性致死に関しましては、まず、これをどうするかという最初の議論はどこかで決めなくてはいけないということ。それから今日のこととしては、濃度が0.375から1.5まで随分幅が広いので、どこら辺からきているのか、その辺はチェックしておく必要があるということですね。

 とはいっても、一次評価値はいずれにしても、これが生殖毒性で十分価値があるものだと仮定した場合でも、結局、出てくるのは3.325ということですから、二次評価値の3ppmを採るとしたら、いずれにしても一次評価値はない。結論はそうなろうかと思います。ただ、生殖毒性のところと今の遺伝毒性のところに関しては少し見直していただくと。

○宮川委員 今の2324ですが、24Pattyの中にある文章ですし、231950何年と非常に古いので。

○大前座長 これは「Confidential Report」と書いてありますね。これは入手不可能ですかね。古いということもありますし。古いということは逆に、きちんとしたことは多分書いていないだろうという意味ですね。

○宮川委員 ええ。ですから、そこを無理に読むよりは「なし」にしておいて。

○大前座長 情報が十分ではないと。

○宮川委員 ええ。

○大前座長 なるほど。

○宮川委員 あと、生殖毒性「あり、なし」の判断としては、私は個人的には、優性致死が本当にポジティブであれば、これは採るべきだと思いますが、評価レベルの計算には使えないということなので。

○大前座長 分かりました。今、宮川先生に2324のあれを見ていただきました。そうしますと今日の段階の結論としては、生殖毒性は判断できない、なし。多分、「判断できない」ですね。根拠としては、情報の質、量が評価できない。生殖毒性に関してはそういう表現にしておくということですね。あえて、23番、24番は戻らない。

 遺伝毒性に関しましては、先ほど申しましたように、優性致死をどう扱うかは、どこかでルールブックに載せなくてはいけないので、今日の段階では、取りあえず生殖毒性のほうには入れない。要するに今日の段階では採らないということですが、そういう形で進める。

 濃度に関しては、濃度範囲が広いので、もしこれも原著に当たることができれば、濃度に関してはしっかり書いたほうがベターだということですね。将来的に優性致死を採ることになりましたら。しかし、計算できないとおっしゃっていましたか、経皮ですものね。その問題はまた別にやります。しかし、一応、濃度をチェックしておくのはベターだと思います。

 ということで最終的な結論としては、一次評価値はなし、二次評価値は3ppm。これはよろしいですね、これも先ほどのAndersonのものを使っているので、これを基にしていますから。こちらは見ないと言ったものをACGIHは見ているわけなので。しかし、それはACGIH3と判断していますから、ルールブック上は採るということですね。

 ありがとうございました。1時間40分ぐらいたちまして、あと2つ残っているのですが、区切りとしては今の区切りがちょうどいいと思うので、15分休憩をとりまして、午後325分に再開したいと思います。では一旦、休憩いたします。


(了)

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