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2013年8月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成25年8月26日(月)15:00~


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

出席委員(16名)五十音順

○新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 川 崎 ナ ナ、  菊 池    嘉、
  清 田     浩、 佐 藤 俊 哉、 鈴 木 邦 彦、  関 水 和 久、
  田 島  優 子、 田 村 友 秀、 豊 見 雅 文、  中 島 恵 美、
  濱 口     功、 半 田    誠、 福 山     哲、◎吉 田 茂 昭
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(5名)

庵 原 俊 昭、 大槻 マミ太郎、 前 崎 繁 文、 増 井   徹、
山 本 一 彦

行政機関出席者

今別府 敏 雄 (医薬食品局長)
成 田 昌 稔 (大臣官房審議官)
佐 藤 岳 幸 (審査管理課長)
森 口    裕 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
山 本 弘 史 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
山 田 雅 信 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催します。本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。本日の委員の出欠についてですが、庵原委員、大槻委員、前 委員、増井委員、山本委員より欠席の御連絡をいただいております。佐藤委員は出席の御予定ですが遅れておられるようです。現在のところ、当部会委員数21名のうち、15名の先生方の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。吉田部会長、以降の進行をお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、本日の審議に入ります。事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しています。議事次第に記載されている資料1~資料14をあらかじめお送りしています。このほか当日配布資料として、資料15「審議品目の薬事分科会における取扱い等の()」、資料16「専門委員リスト」、資料17「競合品目・競合企業リスト」、その他、資料18「佐藤委員からの御質問」、「資料1追加資料」と左上に記載した1枚紙、資料番号は付しておりませんが川崎委員からの事前コメントの1枚紙を配布しております。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告します。資料17を御覧ください。各品目の競合品目選定理由については、次のとおりです。

 資料17の1ページです。レルベア100エリプタ14吸入用ほか3規格です。本品目は「気管支喘息」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページです。ウルティブロ吸入用カプセルです。本品目は「慢性閉塞性肺疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の寛解」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページです。注射用レザフィリン100mgです。本品目は「原発性悪性脳腫瘍」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 4ページです。カドサイラ点滴静注用100mg及び同点滴静注用160mgです。本品目は「HER2陽性の手術不能又は再発乳癌」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 5ページです。ソラフェニブトシル酸塩です。本品目は「甲状腺癌」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページです。dolutegravir sodiumです。本品目は「HIV感染症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 7ページです。Mepolizumabです。本品目は、「チャーグ・ストラウス症候群」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 8ページです。アレクチニブ塩酸塩です。本品目は「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 9ページです。trametinibです。本品目は「BRAF V600遺伝子変異を有する悪性黒色腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

10ページは、dabrafenibです。本品目は「BRAF V600遺伝子変異を有する悪性黒色腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上でございます。

○吉田部会長 今の事務局からの説明に、特段の御意見等はございますか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。次に委員からの申出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。

 議題1「レルベア吸入用」について、退室委員は奥田委員、議決には参加しない委員は清田委員。

 議題2「ウルティブロ吸入用カプセル」について、退室委員なし、議決には参加しない委員は清田委員。

 議題3「注射用レザフィリン」について、退室委員は関水委員、議決に参加しない委員はなし。

 議題4「カドサイラ点滴静注用」について、退室委員なし、議決には参加しない委員は田村委員。

 議題5「ソラフェニブトシル酸塩」について、退室委員なし、議決には参加しない委員は田村委員。

 議題6「ドルテグラビルソディウム」について、退室委員なし、議決には参加しない委員は奥田委員。

 議題7「メポリズマブ」について、退室委員は関水委員、議決には参加しない委員は奥田委員、清田委員。

 議題8「アレクチニブ塩酸塩」について、退室委員は田村委員、議決には参加しない委員は奥田委員。

 議題9「トラメチニブ」について、退室委員は関水委員、田村委員、議決には参加しない委員は奥田委員、清田委員。

 議題10「ダブラフェニブ」について、退室委員は関水委員、田村委員、議決には参加しない委員は奥田委員、清田委員。以上です。

○吉田部会長 本日は審議事項が10議題、報告事項が4議題となっています。各委員からの申出状況を踏まえ、議題1、議題2、議題3、議題7、議題9、議題10、議題8、以降は議題4、議題5、議題6の順で進めたいと思います。

 審議事項の議題1に移ります。奥田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題1の審議の間、別室で御待機いただくこととします。

── 奥田委員退室 ──

○吉田部会長 議題1について、機構からの概要説明をお願いします。

○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品レルベア100エリプタ14吸入用、同100エリプタ30吸入用、同200エリプタ14吸入用及び同200エリプタ30吸入用の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否 ベータ について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。

 本剤は、長時間作用型2刺激薬(以下、LABA)であるビランテロールトリフェニル酢酸塩(以下、ビランテロール)及び吸入ステロイド薬(以下、ICS)であるフルチカゾンフランカルボン酸エステル(以下、フルチカゾン)を有効成分として配合する気管支喘息に用いられる定量式吸入用散剤です。ICS/LABA配合剤は、定期使用を要する気管支喘息患者においては利便性が高く、服薬遵守の向上や安全性上の問題が指摘されているLABAの単独使用の防止にもつながることから、治療ガイドライン等において使用が推奨されています。本邦では気管支喘息に係る効能・効果を有するICS/LABA配合剤として、アドエア及びシムビコートが承認されていますが、いずれも1日2回投与製剤であることから、1日1回投与の新たなICS/LABA配合剤を臨床現場に提供することにより、更に利便性を向上させ、服薬遵守を改善することなどを目的として、本剤の開発が行われました。

 海外において、本剤は、米国では2013年5月にCOPDの効能・効果で承認されています。欧州では、気管支喘息及びCOPDの効能・効果で申請され、2013年6月現在審査中です。

 本申請の専門委員としては、資料16に記載されている10名の委員を指名いたしました。主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡単に説明いたします。

 まず有効性に関して、審査報告書63ページ上段、1)国際共同第III相試験、HZA106827試験(以下、27試験)の項を御覧ください。低用量から中用量のICS、又は低用量のICS/LABA配合剤で治療中の日本人及び外国人の持続型喘息患者609名を対象に、フルチカゾンとして100μg、ビランテロールとして25μgを含有する本剤、フルチカゾン100μg又はプラセボを1日1回吸入投与した際の有効性を比較する、すなわち、フルチカゾンに対するビランテロールの上乗せ効果を検討するため、無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。その結果、64ページ上段の表33に示していますように、主要評価項目である投与12週後のFEV1トラフ値のベースラインからの変化量について、本剤群とフルチカゾン群との差は0.036Lであり、統計学的に有意な差は認められませんでした。

 次に、審査報告書の67ページ下段、3)国際共同第III相試験、HZA106837試験(以下、37試験)の項を御覧ください。低用量から高用量のICS、又は低用量から中用量のICS/LABA配合剤で治療中の日本人及び外国人の持続型喘息患者2019名を対象に、27試験と同用量で本剤とフルチカゾンの有効性を検討した無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施され、68ページ下段の表40及び69ページの図2の左に示していますように、主要評価項目である最初の重度の喘息増悪までの時間について、本剤群とフルチカゾン群の対比較において、統計学的に有意な差が認められました。また、69ページの表42に示していますように、副次評価項目である投与36週後のFEV1トラフ値のベースラインからの変化量について、本剤群とフルチカゾン群との差は0.083Lであり、統計学的に有意な差が認められました。

 以上のように、喘息の長期管理薬の有効性評価において重要と考えられるFEV1トラフ値の評価において、27試験と37試験で異なる結果が得られましたが、82ページ以降、()有効性についての項に記載しているように、27試験においてベースラインのFEV1可逆性に投与群間で偏りが認められたことがその一因である可能性が示されていること、87ページの表64のとおり、27試験において、FEV1と同様の肺機能指標であるピークフローを含む副次評価項目等について、本剤群の改善効果はフルチカゾン群を上回ることが示されていること、37試験において副次評価項目ではあるものの、十分な検出力を有する症例数が設定され、検定の多重性も考慮された解析計画の下、FEV1トラフ値についてフルチカゾン群に対するビランテロールの上乗せ効果が示されていること等を勘案し、機構は、本剤の有効性は期待できると判断いたしました。

 また、65ページ上段、2)国際共同第III相試験、HZA106829試験の項の記載のとおり、重症度の高い喘息患者を対象に、フルチカゾンとして200μg、ビランテロールとして25μgを含有する本剤群のフルチカゾン群に対する優越性が検証されたことから、症状に応じて本剤を増量した場合の有効性も期待できると判断いたしました。

 次に、89ページ上段、()安全性についての項を御覧ください。国内外臨床試験の併合集計成績等に基づき、ステロイドに関連した有害事象として、肺炎について検討した結果を91ページ下段~94ページに、副腎皮質機能への影響、骨障害及び眼障害について検討した結果を9597ページに、また、LABAに関連した有害事象として、心血管系有害事象並びに喘息に関連した入院、挿管及び死亡について検討した結果を97ページ下段~99ページ中段にそれぞれ記載しております。いずれの事象についても、類薬を上回るリスクは示唆されていないと考えておりますが、臨床試験における本剤の使用経験は海外も含め限られていることから、製造販売後調査において、特に高用量及び長期投与時の安全性情報を集積する必要があると考えています。

 次に、104ページ中段、()臨床的位置付けについての項を御覧ください。国内外の治療ガイドラインにおいて、気管支喘息はその重症度に応じて、ステップ1(軽症間欠型相当)からステップ4(重症持続型相当)に分類され、引用箇所メモの図にあるように、ステップ別に推奨する薬物治療が規定されています。既存のICS/LABA配合剤では、ステップ2からステップ4に相当する3用量が通常設定されているのに対し、本剤は、2用量のみが申請されており、フルチカゾン100μgを含有する本剤は、既存薬よりも広いステップ2からステップ3相当の患者を適用対象とすることが想定されています。機構は、提出された臨床試験成績に基づき、主に前治療でコントロール不十分な患者に対するステップアップ治療として、図のとおり、本剤2用量を適応することは許容可能と判断しております。一方、フルチカゾン100μgを含有する本剤とステップ2(軽症持続型)との対応関係等について情報が不足しており、本剤投与で症状がコントロールされた患者において、他の治療にステップダウンする際には症状コントロールの維持などに支障を来す可能性も否定できないことから、専門協議における議論も踏まえ、105ページ中段に記載した、本剤の臨床的位置付け及び適切なステップダウン方法を検討するための臨床試験を製造販売後に実施する必要があると判断いたしました。申請者は、当該臨床試験を早急に実施するとともに、フルチカゾン100μgを含有する本剤からのステップダウンについては、慎重に行う旨を注意喚起すること等を回答しております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤に配合されているビランテロールは新有効成分であることから、再審査期間は8年、また、原体(ビランテロール)及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。

 なお、部会に先立ち、佐藤委員より御質問、御意見を頂いております。御質問は「審査報告書87ページ2~4行目において、機構は『本邦における喘息の長期管理薬の有効性評価においては、FEV1トラフ値に基づく評価を最も重視しており、ICS/LABA配合剤の有効性評価においては、FEV1トラフ値に基づき、喘息治療の基本であるICSに対するLABAの上乗せ効果が示されることが重要であると考える』としています。これより、27試験の主要評価項目であるFEV1トラフ値、投与後FEV1加重平均値ともに、フルチカゾンに対する上乗せ効果が示されなかったことは重要な点だと考えます。機構は、37試験ではFEV1トラフ値でフルチカゾンに対する本剤の上乗せ効果が示されたこと、27試験では、本剤群とフルチカゾン群でベースラインのFEV1可逆性に偏りが見られたこと等から、上乗せ効果は期待できると評価しています。しかし、37試験でのFEV1トラフ値は主要評価項目ではなく、副次評価項目としても2番目の位置付けですし、69ページの表42において、本剤群とフルチカゾン群との36週後のFEV1トラフ値のベースラインからの変化量の群間差は0.083Lとなっています。これはベースラインのFEV1トラフ値から4%しか改善に寄与しておらず、37試験は主要評価項目が『最初の重度の喘息増悪率』であることから、各群1,000名の大規模試験であり、参加者数が多かったことから小さな変化量の差を統計学的に有意と検出してしまった可能性が考えられます。この37試験での0.083Lという変化量の群間差が臨床的にどの程度意味のある差と考えられるのか教えてください。」との御質問です。

 この点につきましては、FEV1トラフ値の変化量の群間差について、どの程度であれば臨床的に意義があると考えられるのか確立した数値はありませんが、近年行われた既承認のICS/LABA配合剤の臨床試験において、ICS/LABA配合剤におけるLABAの上乗せ効果は40110mLであり、今回の37試験で投与36週後に認められた群間差の83mLとほぼ同程度であったことから、本剤においても既存薬と大きく異ならない臨床効果が期待できるものと考えております。

 次の御意見は、「27試験と37試験の結果が異なったことについて、申請者は、27試験では本剤群とフルチカゾン群でベースラインのFEV1可逆性でサブグループ解析を行い、85ページの表61のとおり、可逆性の高いサブグループでは、変化量に群間差はほとんど見られず、共分散分析にFEV1可逆性を説明変数として加えて解析したところ、投与後FEV1加重平均値では、本剤群とフルチカゾン群で、統計的に有意な変化量の群間差が得られ、FEV1トラフ値では有意ではなかったものの群間差は主要解析よりも大きくなったことから、ベースラインのFEV1可逆性に群間で偏りが見られたことが一因だとしています。しかし、これは27試験の結果のみの追加解析であることから、たまたま27試験ではそういう結果だったという可能性があり、37試験についても表61と同様のベースラインのFEV1可逆性によるサブグループ解析を実施し、可逆性の高いサブグループではやはり変化量に群間差が見られないことが再現するのか検討する必要があります。この再現性が確認できれば、27試験と37試験の結果の相違は、27試験ではベースラインのFEV1可逆性が群間で偏りがあったが、37試験ではベースラインFEV1可逆性が群間でバランスしていたので異なった結果となったと解釈できますが、再現性がなければ結果の相違はベースラインのFEV1可逆性では説明できないと考えます。」との御意見です。

 この点につきまして、資料1追加資料の表2-3に示していますように、37試験において、投与12週後でのFEV1トラフ値のベースラインからの変化量は、可逆性の割合の低い集団及び高い集団の順に、フルチカゾン群で151mL及び255mL、本剤群で244mL及び346mLであり、いずれの群においても可逆性の割合が高い集団の方がFEV1トラフ値の変化量が大きくなっており、可逆性の絶対値によるサブグループ解析においても同様の結果が得られています。27試験においても、85ページの表61に示していますように、投与12週後でのFEV1トラフ値のベースラインからの変化量は、可逆性の割合の低い集団及び高い集団の順に、プラセボ群で112mL及び292mL、フルチカゾン群で202mL及び411mL、本剤群で321mL及び405mLであり、37試験と同様に、いずれの群においても可逆性が高い集団の方がFEV1トラフ値の変化量が大きくなっており、可逆性の絶対値によるサブグループ解析においても同様の結果が得られています。以上の追加解析の結果より、フルチカゾン群に可逆性の高い集団が偏って分布していた27試験と、可逆性の偏りが認められなかった37試験の結果の相違の要因について、全てではないものの部分的には説明可能と考えます。

 なお、審査報告書の誤記の御指摘を数点頂いておりますが、こちらについても適切に修正させていただきます。御指摘ありがとうございました。説明は以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○吉田部会長 佐藤先生はまだお見えになっていません。この審議の間に見えましたら、御意見を頂くこととします。その他の委員の先生方から、コメント、御意見等がございましたらお願いします。

○豊見委員 この製剤で、非常に複雑な機構をもった吸入器の件について書いてありますが、8ページにもその頑健性についていろいろやっておられることが書いてあるのですが、根本的に、もともと混ぜてではいけないのかという疑問があると思います。なぜ、混ぜた製剤ではいけなかったかという理由は、どこかに書いてありましたか。

○機構 開発に当たっては、2つの有効成分を分けて吸入器の中に入れておき、吸入の際に混合するシステムを採用することで、今後異なる有効成分の組み合わせの配合剤を開発する際にも片方を入れ換えればいい等のメリットがあるため、このような形にしているということです。

○豊見委員 製造上の理由と考えてよろしいですか。

○機構 そうです。

○吉田部会長 ほかにございますか。

○関水委員 質問することを躊躇ったのですが、私は余りクリアな効果がないと思うのです。「統計学的に有意な差がある」というのは書いてあるとおりだと思うのですが、こういうものが、特に、喘息の増悪までの期間が変わるとか、結局は治らないわけですね。これは、臨床家から、確かにこういうものは使う意義があると認められていることなのですか。つまり、これを素人目で見ると、こういう薬は世に出てきても、プラスになることは実際上はないと思うのです。そういう質問に応えられる薬なのですか。

○機構 既存のICS/LABA配合剤が1日2回投与であるのに対して、本剤は1日1回投与ということで、臨床的には一定の意義があると考えられます。

○関水委員 臨床的に意義があるというのは、どこに知見があるのですか。別にそのようなことは、承認するときは問題がなければ承認して、後で世の成果を問うということもあるかもしれませんが、臨床家の先生から御覧になって、結局は服用しても、既存の薬と効果が差がなくなることが分かっている薬ですね。そういったものを世に出す価値があるのだろうかと私は思うのですが。

○吉田部会長 そのことについては、2つの議論点があると思います。1点目は、佐藤先生の言われる、結果が違ってしまったということに対して、いわゆる統計学的なサンプリングのバイアスがあったかどうか、それで説明できるかどうかが一つです。

 2点目は、図にも出ていますが、発作までの期間が少しでも延びれば、それはそれなりに患者さんにとってはメリットがあると、一般的には考えられる。ということは、対症療法が全て駄目だということにはならないということも、QOLの問題も含めてあるのだろうと思います。抗がん剤でも、結局は治らないのではないかと言われたらそれまでですが、50%生存期間が延びてくれば、それを評価して有効性を認めています。

 問題は、佐藤先生の指摘が、今の説明でOKとされるかどうかなのですが、この辺に関する最終的な機構側の判断としては、FEV1のトラフ値の絶対値が大きかったためではないかということですね。

○機構 はい。ベースラインのFEV1可逆性に投与群間で偏りが認められたことがその一因である可能性があると考えております。

○吉田部会長 集団の中における絶対値のばらつきが大きいものと、そうでない群で効き方が違ったのではないか。その説明で佐藤先生が納得されるかなのですが、今日これから来られるということですので、この議論は後ほど御確認いただくということにして、どうしても駄目だということであれば、もう1回議論をやり直すということになるかもしれませんが、そういった方向で処理したいと思います。

 もう一つは、機構の説明が正しいかどうかを知るために、FEV1のトラフ値を市販後でも測れるようにして、ある程度妥当性を証明できるような市販後臨床試験をするようにというような条件を付けてやれば、後から見たときに、それでよかったか悪かったかがわかるのではないかということですが、この点については私からもお願いしたいと思います。ほかに、どなたかから御意見等はございますか。よろしいですか。佐藤先生は来られる予定ということですので、来られた時点でもう一度、今の回答に関するコメントを頂くということで、議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。後でまた議論になるかもしれませんが、そのような含みで、本議題について議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。別室で待機されている奥田委員に入って頂いてください。

── 奥田委員入室 ──

○吉田部会長 議題2に移ります。機構から概要説明をお願いします。

○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ウルティブロ吸入用カプセルの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。

 本剤は慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)治療剤として承認されている、長時間作用性抗コリン剤(以下、LAMA)であるグリコピロニウム臭化物(以下、グリコピロニウム)と、長時間作用性 ベータ 2 刺激剤(以下、LABA)であるインダカテロールマレイン酸塩(以下、インダカテロール)の2つの有効成分を配合した吸入用製剤です。安定期のCOPDの薬物治療の中心は気管支拡張薬であり、重症度に応じて段階的に用いられ、単剤で治療効果が不十分な場合には2剤以上の気管支拡張薬の併用が推奨されています。本剤は、呼吸困難を伴う患者の薬物吸入の負担軽減、コンプライアンスの向上を目的とし、LAMA/LABA配合剤として1日1回投与の治療薬を提供するために、開発が行われました。

 海外において、本剤は、2013年7月現在、承認されている国又は地域はありませんが、欧州において承認審査中です。

 本申請の専門委員としては、資料16に記載されている6名の委員を指名しました。主な審査内容について、臨床試験成績を中心に、簡単に説明いたします。

 審査報告書21ページ、()国際共同第III相試験の項を御覧ください。中等症又は重症の日本人及び外国人COPD患者を対象に、インダカテロール110μg、グリコピロニウム50μgを配合した本剤、インダカテロール150μg、グリコピロニウム50μg、及びプラセボを二重盲検下で、チオトロピウム18μgを非盲検下で、それぞれ1日1回吸入投与したときの有効性及び安全性を比較検討する臨床試験が実施されております。なお、本剤の設定用量は各単剤の承認用量を参考に設定されておりますが、インダカテロールについては配合剤として投与した場合に、空気力学的微粒子投与量が同一用量の単剤を投与した場合よりも約%高くなることを踏まえ、単剤の承認用量である150μgとほぼ同様の空気力学的微粒子投与量が得られる用量として110μgと設定されております。

 有効性の主要評価項目である投与後26週のトラフFEV1の結果は22ページの表11に示したとおりであり、本剤のインダカテロール及びグリコピロニウム各単剤に対する優越性が検証されました。また、日本人部分集団の成績は、表12のとおりであり、試験全体の成績と類似した結果が認められました。以上より、日本人COPD患者における本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 なお、効能・効果について、本剤はLAMA及びLABAの併用治療が必要な場合に限り使用される薬剤として位置付けるべきと考えることから、審査報告書2ページのとおり「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の寛解(長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入 ベータ 2 刺激剤の併用が必要な場合)」とすることが適切と判断いたしました。

 次に、安全性については審査報告書32ページ以降を御覧ください。臨床試験の併合集計成績に基づき検討した結果、33ページの表25に示しますとおり、本剤投与時の有害事象の発現状況は、インンダカテロール、グリコピロニウム各単剤や類薬と比較して、大きな相違は認められませんでした。また、LAMA及びLABA投与との関連が指摘されている重篤な心血管系・脳血管系イベントの発現について検討した結果、35ページの表26のとおり、Core12か月併合集団及び国内A1301試験においてプラセボ群、又、チオトロピウム群に比べ本剤群の発現率が高い傾向が認められましたが、発現例のほとんどは心血管系、脳血管系疾患の既往・合併症等を有していたこと、その発現率はプラセボ群を大きく上回らず、ほかの併合集団においては、インダカテロール、グリコピロニウム各単剤群及び類薬群と同程度であったこと等から、本剤投与時の発現リスクは臨床上許容可能なものと判断しております。しかしながら、臨床試験における本剤の長期投与症例数は限られていること、血管系・脳血管系への影響は、LAMA及びLABAにおける薬理学的な潜在的リスクとして否定できないことから、43ページ()製造販売後調査について、に記載しております製造販売後調査等において、重篤な心血管系・脳血管系イベントの発現をはじめとする本剤の安全性について、引き続き慎重に検討する必要があると考えております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請に係る再審査期間は、本剤の有効成分の一つであるグリコピロニウムの初回承認時に設定された再審査期間の残余期間である、平成32年9月27日まで、また、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。

 薬事分科会では報告を予定しています。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方から、御質問、御意見をお願いします。

○菊池委員 呼吸器の専門ではないのですが、効能・効果の所に、「長時間作用吸入コリン剤及び長時間作用性吸入 ベータ 2 刺激剤の併用が必要な場合」とただし書きがありますが、これはこの薬を使うに当たって当たり前ですね。このただし書きを書かなければいけない根拠というか、これ自体が必要だから使う薬ですね。それはどういう根拠で記載されているのでしょうか。

○機構 通常、気管支拡張薬単剤の使用で効果不十分な場合には併用されるというように、患者の重症度に応じて段階的に治療を増強することが推奨されていること、LAMA及びLABAの長期併用投与による重篤な心血管系・脳血管系イベントの発現リスク等が十分に明らかにされていないことも踏まえると、本剤が一律にCOPD患者に投与されることは適切ではないと考えておりますので、位置付けが明確になるよう、このような記載としています。

○菊池委員 安易に合剤でないのも使えるという意味で、注意喚起をしているということなのですか。

○機構 そういうことにもなるかと思います。

○吉田部会長 というか、その病態の重篤な方という意味ですか。コントロールが難しいということを暗に言おうとしているのですか。

○機構 はい。

○吉田部会長 適応の中に、そういう付帯状況のようなものを付けて、こういう患者に使ってくださいということですね。

○機構 はい。より重症度の高い、LAMA、LABA単剤では十分にコントロールできないような患者に対して使用されることが適切と考えております。

○吉田部会長 ほかにございますか。

○豊見委員 これも添付文書の書き方の問題で、揚げ足を取るような形になるかもしれませんが、添付文書の「用法及び用量に関する使用上の注意」の2に「本剤は1日1回一定の時間帯に吸入すること、できなかった場合は可能な限り速やかに1回分を吸入する」とあります。例えば朝10時に忘れた場合、12時に吸入したとします。その次を見ると、「24時間持続するので、その間は次の投与を行わないこと」という文書があります。そうすると、次の日は、また12時まで待たなければいけないのかと、「24時間」と書いてあるところに、1日1回というのは分かるのですが、24時間以内に投与してはいけないことになると、1回忘れると遅れていかざるを得ないように読めてしまうのです。屁理屈のようなのですが、そのように読めてしまうのです。ルーズになってはいけないのかもしれませんが、解釈のしやすいような書き方はないものかと思ったのですが。

○機構 2の飲み忘れた場合に関しては、できるだけ速やかに飲んでいただき、基本的には次の日の投与は通常に戻っていただくことを考えています。「24時間持続するので、その間は次の投与を行わないこと」に関しては、安全性の懸念からということで書かせていただいているところではあるのですが、御指摘のとおり、飲み忘れた場合には、次の投与が若干24時間よりも短かったり長かったりということが生じる可能性はあると思いますし、状況によってとるべき対応が違ってくる可能性がありますので、ここは資材等で、飲み忘れた場合の対応についてはもう少し詳しく情報提供する形で対応させていただきたいと思います。

○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにございますか。今の対応ですが、11回のものは、みんなそのような形にしているのですか。ほかの薬との関係もあろうかと思いますが、ほかの薬でも同じような書きぶりになっているのでしょうか。

○機構 インダカテロールの単剤については、同じ記載になっています。

○吉田部会長 私からの質問です。CCVのイベントとあるのですが、確かに本剤群で結構見えているのですが、グレードは関係なくて、出るか出ないかという二者択一的な評価なのですか。例えばうっ血性心不全でも、程度は全く関係なくて、有る無しだけですか。

○機構 CCVイベントについて、グレードを関係なく集計しているものと、重篤な事象を集計したものといずれの集計も行われています。

○吉田部会長 ここで問題にしているのは、重篤なCCVイベントがあったかなかったかですから、細かく言えば、重篤の中でも軽症とか重度だったとか、いろいろなことがあると思うのですが、その辺については、出たら全部載せるという形の取決めなのですね。

○機構 集計としてはそうなっています。

○吉田部会長 一過性の脳虚血発作があったと思われたものは載せるし、心筋虚血も心電図で少し変化があっても、それは載せるということなのですね。

○機構 はい。

○吉田部会長 症状がなくてもですね。

○機構 有害事象として報告されているものを集計したものです。

○吉田部会長 ほかによろしいでしょうか。

○新井部会長代理 教えてほしいのですが、基本的に気管支拡張を目指して、症状を寛解させる薬だと思うのですが、本質的に炎症症状や線維化といったものに対して、長期的には、気管支を拡張することはいい効果が出るのか、そうではないのかというのは、どうなのですか。この薬とは直接は関係なくて、素人の質問として聞きたかったのですが。この薬に限らず、一般的なことでもいいのですが、データがなければそれはそれでいいのですが。

○機構 御質問の意図としては、COPD治療に対して、気管支拡張を継続的にすることに意味があるかどうかということでしょうか。

○新井部会長代理 長期的に見たら、悪化していってしまうことも懸念されなくはないですね。目の前の症状は治してくれると思うのですが、その辺は成績があるのかどうかというのは。

○機構 本質的に炎症症状等を改善するようなものではないと考えられますが、気管支拡張薬の長期投与によってCOPDの増悪の発現率を抑えるとの臨床成績もありますので、COPDの増悪を抑制する可能性はあるだろうと思います。

○新井部会長代理 増悪の傾向がなければ、それはそれでいいかとは思うのですが、むしろかえって目の前のことを抑えたために、将来的に増悪化していくことがあるのだとすると、そういうことを考慮した方がいいのではないかと思いますが。

○機構 現時点では、COPDに対する気管支拡張薬投与について、そのような示唆は得られてはいないと考えています。

○吉田部会長 強制換気してはいけないというのはありますが、田村先生、御存じですか。

○田村委員 知りません。

○吉田部会長 COPDは治療して治る病気ではなく、進行性の病気なので、少しずつ症状を取りながらでも、薬物療法で我慢強く対応していくというところはそのとおりなのですが、実際問題として気管支を無理に拡張するとひどくなることもあり得るかもしれません。どこかで聞いたことがあるような気もしますが、定かではありません。

 ほかによろしいでしょうか。御意見も出ませんようですので、そろそろ議決に入りたいと思います。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。

 ただ今佐藤委員が見えましたので、先ほどの議題1について御意見を伺いたいと思います。奥田委員におかれましては度々恐縮ですが利益相反に関する申し出に基づき再度御退室をお願いいたします。

── 奥田委員退室 ──

○佐藤委員 遅れて申し訳ありませんでした。先ほど説明を伺ったのですが、上乗せを検証するための試験で上乗せ効果が見られたかどうかというのは、怪しいところだと思うのですが、国際共同試験で統計的な有意差も付いて、上乗せが検証されているということと、少し差が小さいのではないかということを心配したのですが、ほかの1日2回製剤の薬の結果も大体同じようなものだということを伺いましたので、差は小さいかもしれませんが、一応上乗せ効果は確認できたということで了解いたしました。

○吉田部会長 ありがとうございました。議題1については、そのように整理させていただきます。奥田委員にお入りいただいてください。

── 奥田委員入室 ──

○吉田部会長 それでは議題3に移ります。関水先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題3、議題7、議題9、議題10の審議の間は別室で待機をお願いします。

── 関水委員退室 ──

○吉田部会長 議題3について、機構からの概要説明をお願いします。

○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品注射用レザフィリン100mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。

 本剤の有効成分であるタラポルフィンナトリウムは、植物クロロフィル由来の光感受性物質であり、光線力学的療法(以下、「PDT」)に使用される薬剤です。PDTは、腫瘍組織に集積性を有する光感受性物質を投与した後、腫瘍組織にレーザー光を照射することにより、レーザー光を吸収した光感受性物質が、励起一重項酸素分子を生成し、当該一重項酸素が腫瘍細胞を障害すること等により、抗腫瘍効果を示すと考えられている治療法であり、本剤は、早期肺癌に係る効能・効果で既に承認されております。

 今般、本剤について悪性脳腫瘍に係る効能・効果等の追加に関する承認事項一部変更承認申請がなされました。また、本剤を用いたPDTに使用される半導体レーザー装置については、パナソニックヘルスケア株式会社により製造販売承認申請されており、今月の医療機器・体外診断薬部会において、審議される予定となっております。なお、本剤は、平成25年7月に開催された当医薬品第二部会での審議結果を踏まえて、希少疾病用医薬品に指定されております。本剤は、審査報告書の3ページに記載しておりますように、平成25年5月時点において、悪性脳腫瘍に関する適用にて承認を取得している国又は地域はありません。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料16のとおり4名の委員です。

 以下、臨床試験成績を中心に、悪性脳腫瘍に対する本剤の承認審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、本邦において医師主導治験として実施された第II相試験であるME2906-BT-1試験が提出されました。有効性については、審査報告書8ページの下から20行目以降及び23ページの上から18行目以降に示すように、ME2906-BT-1試験において得られた、PDT施行12か月後の全生存率の結果等から、初発膠芽腫に対する、本剤を用いたPDTの有効性は期待できると判断いたしました。

 安全性については、審査報告書9ページ、本文上から15行目以降及び24ページ本文上から16行目以降に示すように、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、光線過敏症及び肝機能検査値異常であると考えますが、その他の有害事象を含め、既承認の早期肺癌と同様に注意することにより、本剤は忍容可能と判断いたしました。ただし、悪性脳腫瘍患者での検討は限られており、審査報告書18ページの上から1行目以降、及び26ページの上から2行目以降に示すように、製造販売後には、本剤を使用した症例を対象として、目標症例数100例、登録期間3年間の調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。

 また、本剤を用いたPDTを適正に施行し、有効性及び安全性を確保するためには、PDTに関する技術及び知識の習熟は必須と考えることから、既承認の早期肺癌と同様に、PDTに関する十分な知識・経験のある医師によって施行されるなど、必要な対応を承認条件とすることが適切と判断しております。

 以上のような審査の結果、機構は、審査報告書13ページの上から20行目以降及び24ページの下から21行目以降に示すように、「原発性悪性脳腫瘍(腫瘍摘出手術を施行する場合に限る)を効能・効果として、記載されているような承認条件を付した上で、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は、希少疾病用医薬品に指定された新効能医薬品及び新用量医薬品であることから、再審査期間を10年とすることが適当であると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方の御質問、御意見をお願いいたします。

○佐藤委員 承認条件で、光線力学療法ということなのですけれども、添付文書案の最後のページを見ると、承認条件の所がそっくり「早期肺癌」とだけになっていますので、ここは修正していただかないと。

○機構 承認条件の添付文書への記載につきましては、本部会で承認条件の内容についてご審議をいただき、御了解いただいた上で記載させていただく予定としております。

○吉田部会長 6ページに、脳腫瘍組織へのポルフィリンの集積性について表があります。これは、手術前の患者にこのPDTをやる、やらないにかかわらず本剤を投与し、どれぐらい集積するかを調べたものだろうと思うのですが、審査報告書を最後まで読んでも、結局、閾値が分からないのです。どれぐらい入っていれば効くのかということについて、例えば、PDTをやった22例で組織内濃度を測ったのか、測らなかったのかも不明です。一体、どれぐらいの濃度があれば有効性があると言えるのか。全例有効だったと判断していますけれども、実際問題として手術を併せてやっているので、手術が効いてしまったのではないかという話も当然考えられるわけです。目では残してきたように見えても、取り切れている場合もあるでしょうし、この辺の根拠が見えてこないのです。

 膠芽腫とか、非常に難病の脳腫瘍を少しでも治療を良くしようという試みなので、水を差す気はないのですけれども、やはりこの辺のメカニズムを市販後にでも明らかにしていただきたいのです。例えば閾値がいくつ以下だったら難しいとか、手術で明らかに取り残したと考えられる群と、ある程度取り切れたと思われる群と分けて検討していただいて、本当にこれが効いているかどうかを証明していただければ有り難いと思います。そういうことを条件というか、コメントとしたいのですが、いかがですか。

○機構 審査報告書24ページを御覧ください。御指摘いただいた点については、24ページの上から二つ目です。実施された国内第II相試験は単群試験であり、上乗せ効果の程度は必ずしも測りきれていないだろうという御指摘を専門委員からも頂いており、製造販売後において、関連学会と協力するなどして、本薬を用いたPDTの臨床的位置付けをより明確にするための情報を収集するべきとの御意見を頂いております。それに対して、申請者からは、関連学会と協力し、製造販売後に前向きコホート研究のような形で情報を収集していく予定と伺っております。

 製造販売後に実施予定の調査・研究において、御指摘いただきました腫瘍の摘出度等も含めて情報収集する予定にしておりますが、御指摘いただいた内容については、再度申請者に伝えたいと思います。

○吉田部会長 よろしくお願いします。早期肺癌の場合とか、別の医薬品を用いたPDTだと食道癌とか胃癌とかあります。肺とか食道では焼灼されている状況が内視鏡的に直接見えているので効いていると分かるのですが、脳腫瘍の場合はいわゆる白黒画像で見ているだけなので、直接的に効いているかどうかを把握しにくいということが一つであります。また、胃癌や肺癌の適応に「早期」と付いているのは、PDTには深達性が余りないというのがその理由です。深い所には効かないのです。従って、腫瘍の量というか厚さによって、本当に効くものと効かないものが出てくる可能性もあります。メカニズムとしていけそうだというのはよく分かるのですけれども、その辺の解明を是非製造販売後にしていただきたいということです。

○機構 御指摘ありがとうございました。

○吉田部会長 ほかにございますか。

○菊池委員 これはパナソニック ヘルスケアの医療機器で、医療機器の部会で検討しているということですが、そちらも確実に大丈夫で、薬の効果も大丈夫なのでしょうか。以前も言いましたけれども、薬の効果については私たちの方で言えても、医療機器の効果については同時に審査できないというのは。しかし、そういうものなのですね。どうなのでしょうか。

○吉田部会長 ただ、本薬は早期肺癌で既に適用が通っているので、パナソニック ヘルスケアの半導体レーザーは既に薬事承認されているのだと思うのですが、その辺はどうなっているのですか。

○機構 医療機器については御指摘いただいたように肺癌の機器はありますが、今回は肺癌に使用される機器とは別の医療機器として承認申請されております。医療機器の審査においても、今回提出されております国内の第II相試験の試験成績に基づいて評価が行われていると理解しております。少なくとも専門協議では、特に承認に関しての異議は出ていないと聞いております。医療機器部会の方が、当部会の後になってしまうということはありますが、少なくとも機構の審査の判断としては承認して差し支えないと、医療機器の方も判断していると聞いております。

○吉田部会長 同じ機器であっても、適応が変わる度に薬事承認を取るのですか。

○機構 今回は、肺癌とは適応が異なっており、PDTのレーザーのエネルギー密度も異なりますので、薬事承認の取得が必要となっております。

○吉田部会長 効くかどうか分からないということなのですか。

○機構 はい、エネルギー密度等の違いを踏まえると、同じものを使用するというわけにはいかないということです。

○吉田部会長 パワーを落として使っているから、本当に有効かどうかはわからない。レンジが変わるので審査が必要ということですか。

○機構 はい。適応も異なりますので、肺癌用の医療機器とは異なるものとして、取り扱っているということです。

○吉田部会長 菊池先生がおっしゃるように、ここでOKを出したけれども、機器の方で駄目と言われる可能性もあるわけですか。

○機構 可能性は完全に否定できませんが、ないと信じております。

○吉田部会長 医療機器としての有効性は医療機器部会の方で審査していて、私どもとしては、薬の適用拡大のような考え方になると思うのですが、こういう用法での申請ということで御理解いただければと思います。よろしいでしょうか、御意見もないようですので、議決に入ります。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、初めにお話いたしましたように議題7に移ります。議題7について、事務局から概要説明をお願いいたします。

○事務局 審議事項議題7、資料7「mepolizumabを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。

 資料7の事前評価報告書をもとに御説明いたします。報告書のタブをお開きください。予定される効能・効果はチャーグ・ストラウス症候群(以下、CSS)、申請者はグラクソ・スミスクライン株式会社です。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に説明いたします。

 「対象者数」は、1ページの下方において、2009年の厚生労働省特定疾患難治性血管炎に関する調査研究班による全国疫学調査で、国内推計患者数は1866例、年間新規患者数は約100例と報告されております。また、成人喘息患者におけるCSS患者の割合と、成人喘息患者数から推定患者数は32164288人とされていることから、本剤の予定される効能又は効果における患者数は、指定要件の「5万人未満」を満たすと考えられます。

 「医療上の必要性」についてですが、CSS治療の第一選択薬は、副腎皮質ステロイド剤であり、ステロイド剤で効果不十分、又は抵抗性を示す患者には免疫抑制剤の併用が推奨されております。しかしながら、これらの治療を行っても、約20%の患者で重篤な臓器障害が生じ、寛解例であっても、約10%程度の患者で再燃を来すと報告されております。また、ステロイド剤が効果不十分の場合、本邦では静注用人免疫グロブリン製剤(IVIg)が「チャーグ・ストラウス症候群及びアレルギー性肉芽腫性血管炎における神経障害の改善」を効能・効果として承認されておりますが、その他の臓器障害に対するIVIgの有効性は明らかにされておりません。本剤は、抗IL-5ヒト化モノクローナル抗体であり、活動性のCSS患者で血中IL-5の上昇が認められていること等から、海外において再燃又は難治性のCSS患者を対象として開発が進められ、これまでに非盲検非対照試験として第II相臨床試験2試験が実施され、寛解例も認められていることから、従来の治療法が奏効しないCSS患者に対して、本剤は有用な治療法となる可能性が期待されます。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えられます。

 最後に「開発の可能性」ですが、海外において前述の第II相臨床試験2試験の結果を踏まえ、日本を含めた国際共同第III相臨床試験が□□月から実施予定であることから、本剤の開発の可能性は高いと考えられます。これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。症例数、医療上の必要性、既に第II相臨床試験が2試験行われていて有効性が示唆されている。更に開発の可能性として、日本を含む国際共同第III相臨床試験が用意されているということで、特段の問題はないと思いますが、よろしいでしょうか。議決に入ります。なお、奥田委員、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 次は議題9及び議題10に移ります。田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議題9及び議題10と、議題8の審議の間、別室で待機していただくことといたします。

── 田村委員退室 ──

○吉田部会長 議題9及び議題10について事務局から概要の説明をお願いいたします。

○事務局 審議事項議題9、資料9「trametinibを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、審議事項議題10、資料10dabrafenibを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」です。

 これら2剤は併用して用いられる予定となっており、医薬品医療機器総合機構からの評価報告書もほぼ同様の内容となっておりますので、説明は両剤を併せて、資料9のtrametinibの評価報告書に従って事務局より御説明させていただきます。

 申請者はグラクソ・スミスクライン株式会社、予定される効能・効果は「BRAF V600遺伝子変異を有する悪性黒色腫」となります。希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に御説明いたします。

 「対象者数」は、本邦における悪性黒色腫の患者数は、日本皮膚悪性腫瘍学会が実施したアンケート調査では約1000人、厚生労働省による平成23年の患者調査では約4000人と報告されており、そのうちBRAF V600遺伝子変異陽性の患者数は更に絞られることから、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。

 「医療上の必要性」についてですが、悪性黒色腫は、皮膚癌における死亡の約45%を占め、極めて予後不良な疾患です。悪性黒色腫に対する治療は、根治切除可能な場合には外科的切除等が行われますが、根治治療不能な場合には化学療法が行われます。本邦では、化学療法としてダカルバジンの単剤投与が主に用いられますが、現時点で予後を有意に改善する薬剤は存在しないため、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 「開発の可能性」については、海外においてtrametinib及びdabrafenibの併用投与による第III相試験が実施されており、本邦でも第I/II相試験が実施中であるとともに、海外で実施中の第III相試験への参加も検討されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。BRAF V600変異のメラノーマに対する有効性ということです。米国ではBRAF V600阻害薬等々で治療環境が一変したけれども、我が国では相変わらず昔の治療になっているという現状もあり、医療上の必要性は非常に高いだろうと思われます。我が国内でも臨床試験が始められるということですね。

○事務局 我が国でも、第I/II相試験が実施されていて、間もなく第III相試験です。

○吉田部会長 そういうことで、開発の可能性も高いということですがよろしいですね。議決に入ります。奥田委員、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。別室で待機されている関水委員をお呼びください。

── 関水委員入室 ──

○吉田部会長 議題8になります。議題8について事務局から概要の説明をお願いいたします。

○事務局 審議事項議題8、資料8「アレクチニブ塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」医薬品医療機器総合機構からの評価報告書に沿って事務局より御説明いたします。

 申請者は中外製薬株式会社、予定される効能・効果は「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」です。希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に御説明いたします。

 「対象患者数」は、本邦における肺癌の罹患者数は約97000人であり、そのうち80%が非小細胞肺癌、更にその2~5%がALK陽性と報告されているため、本邦におけるALK陽性の非小細胞肺癌患者数は約16003900人程度と推計されます。したがって、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。

 「医療上の必要性」についてですが、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌は、予後不良な疾患であり、本邦での治療にはプラチナ製剤やクリゾチニブ等が用いられておりますが、いずれもその治療効果は満足できるものではありません。また、本剤は既存のALK阻害剤とは異なる新たな特徴を有する薬剤であることから、医療上の必要性は高いと考えております。

 「開発の可能性」については、国内において、化学療法歴のあるALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者を対象に、第I/II相試験が実施されており、奏効率が93.5%と良好な成績を得られているとともに、クリゾチニブを対象とした第III相試験が計画されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たしているものと判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。非小細胞肺癌の5%ということなので、人数的にも非常に少ないということで、患者数の条件を満足しておりますし、臨床的な有用性に関しても、開発の可能性についても既に明らかにされているようですが、よろしいですか。議決に入ります。なお、奥田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りいたします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。別室で待機されている田村委員をお呼びください。

── 田村委員入室 ──

○吉田部会長 議題4に戻って審議を続けます。議題4について、機構からの概要説明をお願いいたします。

○機構 審議事項議題4、資料4「医薬品カドサイラ点滴静注用100mg及び同点滴静注用160mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。

 本剤の有効成分であるトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型(以下、HER2)に対する免疫グロブリンG1サブクラスのヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(遺伝子組換え)にリンカーを介して、チューブリン重合阻害作用を有するDM1が結合した抗悪性腫瘍剤です。

 本剤は、HER2に結合することでトラスツズマブ(遺伝子組換え)と同様に抗体依存性細胞障害作用等を惹起するとともに、細胞内に取り込まれたDM1が細胞周期を停止及びアポトーシスを誘導すること等により、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。今般、本剤はHER2陽性の手術不能、又は再発乳癌に対して効果を示す薬剤として承認申請されました。本剤は、審査報告書6ページに記載しているように、平成25年5月時点において、HER2陽性の手術不能又は再発乳癌に関する適応にて3か国で承認されています。本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料16のとおり9名の委員です。

 以下、臨床試験成績を中心に、HER2陽性の手術不能又は再発乳癌に対する本剤の承認審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、海外で実施された第III相試験であるEMILIA試験と、本邦で実施された第II相試験が提出されました。「有効性」については審査報告書58ページ上から18行目以降及び87ページの上から13行目以降に示すように、タキサン系抗悪性腫瘍剤及びトラスツズマブによる化学療法歴があり、HER2陽性の遠隔転移を有する、又は再発乳癌患者における本剤の有効性及び安全性を検討したEMILIA試験の結果、対照群とされたラパチニブトシル酸塩とカペシタビンとの併用投与群と比較し、本剤単独投与群で無増悪生存期間の優越性が検証され、また全生存期間についても、追加で実施された中間解析の結果、有意に延長したことから、当該患者に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 「安全性」については、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、審査報告書59ページの上から9行目以降及び87ページの下から16行目以降に示しますように、肝毒性及び結節性再生性過形成、血小板減少症、infusion reaction、間質性肺疾患、心機能障害並びに末梢性ニューロパチーが認められており、注意喚起が必要と考えております。

 これらの有害事象については、がん化学療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により、対応可能と判断いたしました。ただし、本剤の日本人における検討症例は限られており、審査報告書72ページの上から3行目以降及び91ページの本文上から5行目以降に示すように、製造販売後には目標症例数250例、観察期間6か月の使用成績調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。

 以上のような審査の結果、機構はHER2陽性の手術不能、又は再発乳癌を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当であり、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。

 なお、川崎委員から事前にコメントを頂いておりますので、機構から回答させていただきます。

○機構 御説明いたします。審査報告書12ページに、重要品質特性CQAを列挙しておりますが、このことに関して4つ御質問、御意見を頂いております。

 1.「コンジュゲーションは重要工程パラメーター(CPP)で管理されているようですが、□□□□□□□□□□□□□□□□□□に対する原因分析しか示されておらず、□□□□□□□□□□□に影響するCPPも管理方法も不明です。CQAと特性された場合は、対応方法の説明が必要と思います。」との御意見を頂いております。

 機構としては、□□□□□□□□□□□の管理については、審査において照会し、その回答も踏まえて以下のように考えております。□□□□□□□□□□□□□□□□□については製法変更前後の原薬の□□□□□□□により、□□□□□□に影響を与えなかった、つまり□□□□□□□□□□や、□□□にバッチ間で変化が認められず、ほぼ一定であることが確認されていること。また、□□□□□の規格値付近においては、□□□□□の変化に対して、それぞれの結合部位の□□□の変化は比例的であることから、申請者が□□□□□により、□□□□□□□□□□□を管理するという品質管理戦略を提案していることは受入れ可能と考えました。1点目は以上です。

 2.□□□□□□が本品の薬効と関係があるのであれば、□□のクリティカリティ(リスクランキング)は高くなると予想されます。同様にQbDで品質管理戦略が構築された□□□□□□□□□□□□□では、□□□□□□□がCQAとして特定され、規格及び試験方法で管理されています。工程由来不純物に対する『クリティカリティは□□□□により変わるものではなく、品質特性そのものが有効性及び安全性に与え得る潜在的な影響の大きさに基づいて評価されるべきものである』との機構のコメントは□□にも当てはまると考えます。」このような趣旨の御意見を頂いております。

 これに関して機構としては、本剤の薬効としては、エムタンシンによる殺細胞活性が主要なものであると考えたため、□□□□□□に影響すると考えられる□□□□□□□はCQAとしなくてもよいと判断いたしました。

 3.「原薬はハーセプチンより厳しい管理基準が設けられているとありますが、ハーセプチンも実際は同様の管理が行われていると考えてよろしいでしょうか。」という御質問を頂いております。

 この点については、ハーセプチンの規格については、審査報告書に記載したとおり、本剤の原薬と異なっておりますが、実際のハーセプチンの原薬、トラスツズマブ原薬のロット分析結果は、本剤の原薬の規格でも満たすような値となっていることを確認いたしました。

 4.「異性体とは同じ分子式をもち、構造が異なるものをいいます。審査報告書及びCTD2中のサイズ異性体( □□□□□□□ )、構造異性体( □□□□□□□□□□□□□□□□ )、電荷異性体の表記について、見直しが必要と思います。」という御意見を頂いています。

 これに対して機構としては、化成品における異性体の定義については御指摘のとおりと考えております。ただし、電荷異性体等はこれまで用いられてきた用語であることから、本報告書においても従来どおり使用していましたが、御指摘のような意図にも取られますので、より明確化にするため、例えばvariantなどといった表現をすることを今後検討したいと思います。以上、事前に頂いた御質問、御意見に対する回答になります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 川崎先生いかがですか。

○川崎委員 御回答ありがとうございました。1.で、バッチ間で変化が見られなかったということと、□□□□□□□□□□□□を反映しているというお話でした。それは、設定されるパラメーターの範囲内で確認されたと理解してよろしいでしょうか。

 2.で、本品の効能はエムタンシンによるものが主要と考え、□□に関してはCQAとは考えなくてもよいと考えたというお話だったのですが、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□がありました。そこで□□□□□□も主要な効果ではないかと思ったのですが、それについてはいかがでしょうか。

○機構 1.については、御指摘のとおり設定された工程パラメーターの範囲内ということで、通常の管理では薬物結合比で管理するとされておりますが、今後将来的にスケール変更や製造変更などがあった場合には、同等性/同質性評価の中で、□□□□□□□□□を、補足特性解析の一環として実施する、という申請者からの回答が得られております。したがって、彼らの管理方法は受入れ可能と考えました。

 2.の薬効に関してなのですが、確かに薬理作用がどの程度本剤の薬効に寄与しているのか、それぞれの薬理作用がどの程度薬効に寄与しているかというところは難しいところではあるのですが、本申請における本剤の薬効としては、先ほど述べたように、やはり殺細胞活性が圧倒的に効いているのではないか。トラスツズマブ無効例に対して使用されるというところも踏まえると、やはりエムタンシンによる殺細胞活性が主要なものであると考えております。なお、□□□□□□□の管理については、トラスツズマブの規格には入っておりませんが、これまでの約□□ロットの成績より一定であることを確認しておりますので、今回の薬効、□□□□□□の位置付けを踏まえると、申請されている管理方法も受入れ可能と考えました。

○吉田部会長 貴重な御指摘をありがとうございました。本当にコンジュゲートに意味があるかとか、構造的に大丈夫かという御指摘は極めて大事だと思うので、今後ともいろいろな情報を教えてください。

 それでは、委員の先生方の御意見、御質問をお願いいたします。効能・効果の所で、HER2陽性の手術不能又は再発乳癌としか書いてなくて、ファーストラインでも使えるように読めるのですけれども、これはどのようなことでこうされたのですか。臨床試験とは違いますね。臨床試験は既に使われた患者さんで、抵抗性の人に対して使ったのだけれども。

○機構 本剤の投与が推奨される、臨床試験に組み入れられた患者の情報に関しては、効能・効果に関連する使用上の注意で記載させていただき、医療現場には注意喚起等をさせていただくことになっています。

○吉田部会長 使用上の注意にした理由は何かあるのですか。

○機構 一つの理由としては、ほかの乳癌の薬剤に関しては、効能・効果では手術不能又は再発乳癌とさせていただいて、効能・効果に関連する使用上の注意で、ライン等の注意喚起をさせていただいておりますので、そういった点も考慮しました。また、現在未治療の患者を対象とした、本剤の開発も行われていますので、当該試験成績が出次第、速やかに添付文書の改訂等で対応できるように、使用上の注意での注意喚起とさせていただきました。

○吉田部会長 そういうことで、あえて条件を付けなかったということのようです。

○関水委員 臨床ではなくて、前臨床の段階の成績について質問します。動物試験を使った有効性については、この報告書ではどこを見たらよろしいのでしょうか。それは、実際に提出されているのでしょうか。動物試験での抗腫瘍効果です。

○機構 非臨床試験に関しては、審査報告書14ページから記載しております。

○関水委員 拝見するに、これは細胞ですね。

○機構 14ページの下の所にin vivoと書いてある項があります。そこは、ヌードマウスに移植した試験成績になります。

○関水委員 15ページの表は、ヌードマウスでの腫瘍体積を見ているということでよろしいですか。

○機構 はい。

○関水委員 わかりました。

○新井部会長代理 薬を開発した人は恐らく分かっているのでしょうけれども、血中の抗体というのは合成されているのと同時に、消費というか分解もされていて濃度を保っていると思うのです。使われなかった抗体というのは、どういう細胞が、どのように分解しているのか知らないのです。要するにこういう薬を使うと、そういう細胞に障害を与えてしまわないかということが、今後の可能性としてこの抗体自体が全体の抗体に対して非常に微量だというのであれば問題ないかもしれないのですけれども。例えば、こういうものを投与することによって、血中のトータルな抗体のIgGのレベルが少し上がってしまうようなことはないということでよろしいのですか。要するに、抗体の消去機構を壊さないかという解析が、どういう所が抗体を消去しているのかよく分からないのですけれども。抗体をエンドサイトーシスで消去するような細胞がもしあるとすると、そこにもこれが入っていって障害を与えるようなことはないのですか。これは、ほとんどスペシフィックに結合してくれて、そういうことはないのか、その辺はどのようになっているのでしょうか。これを開発した人たちは、きっとそういうことはないだろうということで開発しているのではないかと思うのですが。

○吉田部会長 事務局で分かりますか。田村先生、アバスチンとか余ってしまった抗体はどこへ行ってしまうのでしょうか。

○田村委員 大体あの手のものは半減期が2~3週間でしょうけれども、これは私よりも薬学の先生ではないですか。肝臓でしょうか。

○吉田部会長 多分そうだと思うのですが、今すぐでなくてもいいので、宿題にしておきます。アバスチンにしても、ハーセプチンにしても、そういう抗体療法で使って余った抗体はどうなっているのかを後で教えてください。

○新井部会長代理 抗体自体だけだと問題ないと思うのですけれども。

○吉田部会長 抗体はがん組織だけではなく全身の標的分子に作用しますし、量的にも膨大ですから、消去機構が壊れてしまうとか、負荷がかかって、変なものが出てくることはないのかということですね。よろしくお願いします。

○関水委員 重ねてそのin vivoの試験というか、マウスの実験について伺います。このマウスの制がん作用というのは、期待されるメカニズムによっているという証拠はどこかにあるのですか。例えば、コントロールで溶媒となっています。ですから抗体なら何でもこういう効果が出るのか、という批判が残ると思うのです。質問は、最初にうたわれたようなメカニズムで、マウスの制がん治療効果がなされているという証拠は直接・間接に何かあるのでしょうか。

○機構 直接的な腫瘍に対する効果を見た試験というのが、審査報告書1416ページの上段までに書いてある結果です。これは、腫瘍が大きくなった、小さくなったという効果を見ている結果です。2)作用機序という項、審査報告書1618ページの上段ぐらいまでに記載させていただいた結果が、こちらの検討でADCC活性であったり、チューブリンの阻害反応というものを検討して、本剤の作用機序の確認をしています。

○関水委員 それは細胞レベルですね。私が伺ったのは、マウスでの抗腫瘍効果を示すメカニズムが、この期待されるメカニズムによっているということが示されているかということです。審査センター長は御専門ですから審査センター長に。これは問題ですね、そうではないですか。

○審査センター長 お答えいたします。in vivoで期待どおりの効果があるかどうか。この場合はチューブリンの阻害剤ですから、in vivoで組織像を取って、そのチューブリンの構築等に影響があれば、というのが一番直接的な証拠になると思います。今は私の手元にデータがないので、それがデータとしてあるのかどうか、それは確認しておきます。

○関水委員 コントロールは溶媒となっているけれども、こういうのが抗体の試験だとすると、何かもっとしっかりしたコントロールがあるべきだと思うのですけれども。

○機構 もう一つ抗体のコントロールとして、溶媒の下にトラスツズマブ投与群があります。審査報告書15ページの図でいうと、図の中のそれぞれの線が示すものの説明の中に、溶媒と抗体のコントロールとしてトラスツズマブがあります。トラスツズマブとの比較結果も示されています。こちらでは、先生の御懸念の説明にはなりますでしょうか。

○吉田部会長 今の説明でいいですか。15ページの上のトラスツズマブが15mg/kgに対して、本薬0.3mg/kgが同等で、それ以降はずっと全部本薬の方が効いているから、トラスツズマブ単独よりも有効性が高いということが示されているのではないかと言いたいわけでしょう。

○機構 はい。

○関水委員 それは、本薬が示されたようなメカニズムによって効いているということとは少し違いますね。

○吉田部会長 つまり、その細かなメカニズムまでは分からないけれども、トラスツズマブ単独と比較して、要するに同じ機構が効くという前提で、新しくコンジュゲートした方の、チューブリンの方の効果がどれぐらいかということを知りたいわけですね。

○関水委員 そうです。今、お答えがあったように、確かに細胞の中がチューブリンの重合が阻害されていたとか、そういう大雑把でいいですから、何か証明があるべきだと思うのです。

○審査第五部長 関水先生からの御質問ですが、非臨床の試験から臨床に対する外挿性というものを、こういう申請資料の中でどう考えるかという非常に深淵な御質問を頂いていると思っております。基本的には臨床でも効果があり、かつ、これまでも非臨床試験において腫瘍縮小効果が認められたものであれば、そのメカニズムについて、実際に申請資料のレベルでは必ずしも分子学的な部分まで求めてきていないところはございます。

 やはり、こういう非臨床試験の在り方とか、非臨床の薬理試験のヒトへの外挿性も含めた論点については、この品目だけに限る問題ではありませんので、機構の科学委員会等とも相談させていただき、こういうものに対する審査での考え方について検討させていただきたいと思います。

○吉田部会長 よろしいですか。要するに、腫瘍増殖抑制のことだけではなくて、メカニズムも分かるようなin vivoの試験をやれるように指導するということですね。

○審査第五部長 必ずしも指導するということではなく、どのぐらい非臨床の薬理試験、薬効・薬理の試験というものに対して、人に対する外挿性から見て意義があるかどうかというところも含めた、科学的な見地からの検討をさせていただくということです。

○吉田部会長 ほかにございますか。

○奥田委員 先ほど議論になっていた、抗体コンジュゲートにすることによって臓器分布は変わって、障害の特性は変わらないかということと関連するかもしれないのですけれども、肝障害のグレード3が高かったということに基づいて、それに伴う休薬の割合が高かったということで、市販後の調査の対象にも加えられているわけです。外国人と比べて高かったであるとか、その辺りの原因について、先ほどの肝蓄積性との兼ね合いで開発メーカーからの説明といいますか、メカニズム的な所がどのように考察されるかというのは、何か分かっていることがあるのでしょうか。そういうことをバックグラウンドにした安全管理の方策に生かすことも考えた方がいいのかと思いました。

○機構 肝障害が日本人で高かった原因までは不明だったのですが、その出た結果を重視し、重点評価項目として設定し、製販後の調査で特に重点的に見ていただくということで、申請者に対応を指示したというものです。

○吉田部会長 チューブリンの毒性というのは、意外と民族間差があったりします。ですから、そういうところが多少影響しているのかもしれませんが、これは、市販後のたくさんの数を見てみないと何とも言えない。日本人のデータを見ないと分からないと思います。市販後のときにも、その辺の日本人のデータを肝障害のことについてフォローをお願いしたいということを条件に付けたいと思います。

 意見も出尽くしたようですので、議決に入ります。なお、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。議題5に移ります。

○事務局 審議事項議題5、資料5「ソラフェニブトシル酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」医薬品医療機器総合機構からの評価報告書に沿って、事務局より御説明いたします。

 申請社はバイエル薬品株式会社、予定される効能・効果は甲状腺癌です。希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に御説明いたします。

 まず「対象患者数」です。厚生労働省の平成23年患者調査によると、本邦における甲状腺癌の総患者数は29000人と報告されていることから、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。

 次に、「医療上の必要性」についてです。甲状腺癌の治療法は組織型により異なり、甲状腺分化癌及び甲状腺髄様癌については手術が第一選択であり、甲状腺未分化癌については全身化学療法と、放射線外照射の集学的治療が行われています。また、一部の患者では放射線ヨウ素内用療法などが行われますが、それ以外では確立した標準的な治療法はなく、治療選択肢が極めて限られていることから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に「開発の可能性」については、放射線ヨウ素治療抵抗性の局所進行、又は転移性の分化型甲状腺癌患者を対象とした国際共同第III相臨床試験において、プラセボ群と比較して本剤群で無増悪性生存期間(PFS)の有意な延長が認められております。また、甲状腺髄様癌及び甲状腺未分化癌患者を対象とした国内臨床試験の実施が検討されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。

 以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たしているものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 甲状腺癌に罹患した対象疾患数が3万人弱ですね。治療開発の状況や必要性等々、特に問題はないと思いますが、よろしいでしょうか。

 御意見がないようですので、議決に入ります。なお、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決の参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは議題6に移ります。議題6について、事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 審議事項議題6、資料6「dolutegravir sodiumを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」資料6の事前評価報告書を基に事務局より御説明いたします。評価報告書のタブをお開きください。予定される効能・効果はHIV感染症、申請者はヴィーブヘルスケア株式会社です。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に説明いたします。

 まず「対象者数」です。1ページの下方において、厚生労働省エイズ動向委員会報告によると、HIV感染者、AIDS患者の類型報告例はそれぞれ14,932例、6,824例であるなど、本剤の予定される効能・効果における患者数は、指定要件の5万人未満を満たすと考えられます。

 次に、「医療上の必要性」についてです。本薬は新規のインテグラーゼ阻害薬であり、ウイルス学的効果と忍容性に加え、薬剤耐性を獲得されにくく、既承認のインテグラーゼ阻害薬であるラルテグラビル及びエルビテグラビルに耐性を示すHIV分離株に対しても、効果を発揮することが確認されています。また、本薬は1日1回投与が可能であるため、アドヒアランスの向上が期待でき、抗レトロウイルス療法における薬剤選択肢を増やすものとして期待されます。以上を勘案して、本剤の医療上の必要性はあると考えられます。

 最後に、「開発の可能性」です。本剤は、海外の主要な第III相試験4試験において良好な成績が得られており、また、薬物動態試験において、日本人と外国人における本薬の薬物動態に大きな差異は認められなかったことから、本薬の開発の可能性はあると考えられます。

 これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。よろしいですか。

 御意見もないようですので、議決に入ります。なお、奥田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは報告事項に移ります。報告事項について、説明をお願いします。

○事務局 報告事項議題1、資料11「医薬品ゲンタシン注10、同注40及び同注60の製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より御報告いたします。

 ゲンタシン注10、同注40及び同注60は、アミノグリコシド系の抗生物質であるゲンタマイシン硫酸塩を有効成分とする抗生物質注射剤です。本邦では1968年2月に、成人及び小児の細菌感染症患者に対する筋肉内投与が承認され、1986年3月に成人に対する静脈内投与が承認されています。

 本邦における既承認用量は、海外の承認用量と比較して低く、本薬の効果が十分に発揮されない可能性があるとの理由から、日本感染症学会及び日本感染症教育研究会より、本剤の高用量投与に関する開発要望が提出されました。

 厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、「医療上の必要性が高い」と評価され、厚生労働省から申請者に対して開発要請がなされております。今般、日本人健康成人を対象にした国内単回投与試験が実施され、申請用法・用量における暴露量は、国内外のガイドライン・成書等で推奨されている血中濃度の範囲にあることが確認されたことから、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、申請用法・用量への変更を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて報告事項議題2、資料12「医薬品フィブロガミンP静注用の製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。本剤は人血漿由来の血液凝固第13因子製剤であり、血液凝固第13因子が先天性に欠乏している患者に対する効能・効果が承認されております。本剤については医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成25年4月25日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、今般、CSLベーリング株式会社から、後天性に血液凝固第13因子が欠乏した患者に対する効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

○事務局 報告事項議題3、資料13「医療用医薬品の承認条件について(タルセバ錠25mg、同錠50mg、同150mg」事務局より御説明いたします。

 資料2ページを御覧ください。エルロチニブ塩酸塩を有効成分とする医薬品タルセバ錠25mg、同錠100mg、同錠150mgは、平成191019日に「切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌」、平成25年6月14日に「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な再発・進行性で、がん化学療法未治療の非小細胞肺癌」の適応で承認されております。これら2つの非小細胞肺癌に関する効能・効果については、承認条件として、下線部の流通管理に関する承認条件が付されております。この度、承認取得者である中外製薬株式会社から、承認条件に基づいて実施された特定使用成績調査の最終解析結果と、本調査結果に基づく流通管理を含めた安全対策に関する承認取得者の考察及び対応に関する調査に係る報告書が提出され、機構において審査されましたので御報告いたします。

 4ページを御覧ください。報告された調査結果は、本薬の使用実態下での副作用の発現状況の把握等を目的として、本薬を使用した全症例を対象に目標症例数3,000例、観察期間最長1年間として、平成211012日までに登録された10,708例の情報を基に、最終報告書が取りまとめられたものです。

 続いて、4ページの1)を御覧ください。安全性解析対象症例9,909例における間質性肺疾患の発現状況は、4ページ中ほどの表のとおりとなり、製造販売後における本薬の間質性肺疾患の発現状況に承認取得時との大きな差異は認められておりません。また、5ページの()として、製造販売後に実施されたリスク最小化活動の内容が記載されています。承認条件に基づく流通管理として、「本薬を納入する施設・医師の要件の設定、納入前の確認」、「治療確認シートの運用」、6ページにまいりまして「病院及び薬局における初回納入管理」を行っているほか、その他の安全対策として、「セルフチェックシートによる投与患者の慎重な選定」、「資材による医療従事者及び患者向けの情報提供」を行っております。また、6ページ後半には流通管理の実施状況が記載されております。治療確認シートなどを用いて、要件に合致していない施設や医師、初回納入施設における本薬の有効性、安全性、安全対策に関する説明を行っていることなどが記載されています。

 これらの状況を踏まえ、製造販売後において適切な安全確保がなされていると判断されることから、今後は承認取得者が実施する予定として、7~8ページにかけて記載されているリスク最小化活動及び安全性監視活動を引き続き実施し、適正使用のために必要な措置を適時講じることが適切と判断しております。なお、8ページの()、「今後の安全性監視活動」の検討の結果、間質性肺疾患の発現状況に大きな問題が認められた場合は厳格な流通管理の実施も含めて、必要なリスク最小化活動の内容を再度検討する必要があると考えております。以上、本剤の承認時に比較して間質性肺疾患の発現状況に大きな差異が認められないこと、承認条件に係る流通管理は適切に実施されたと考えられることから、本剤の流通管理に関する承認条件の内容については、対応されたものと判断しております。

○事務局 報告事項議題4、資料14「医療用医薬品の再審査結果について(プロジフ静注液100、同200、同400)」御報告いたします。

 資料14は、「医薬品再審査確認等結果通知書」となっております。一般的名称は「ホスフルコナゾール」、販売名は「プロジフ静注液100、同静注液200及び同静注液400」です。こちらの品目については製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。

○吉田部会長 一部変更承認が2件、承認条件の解除が1件、カテゴリー1の再審査結果が1件です。委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。

○半田委員 資料12のフィブロガミン静注用についてです。今回、後天性第13因子欠乏症に対する適応拡大ということなので、実際に一番多い対象患者ではないかと思うのです。添付文書を見ていただきたいのですが、添付文書の1ページには下線が書いてありますけれども、用法・用量では「先天性及び後天性血液凝固第13因子欠乏症における出血傾向」と、下の方に「症状等」とあり、その次の右側の段落に点線の括弧で囲ってある所に、「インヒビター等」と書いてあるのです。第13因子の欠乏症で特に後天性の場合、インヒビターが多いのです。実際にインヒビターの場合は対応する抗原である第13因子が入りますと、それを失活させますから、血友病のAとかBだと、インヒビター症例には使えないのです。しかし、この場合は使えるというケーススタディーがあるということです。それもいいとは思うのですが、実際にこれを使う立場になりますと、最後の「臨床成績」という左の上の方を見ていただきたいと思います。追加の効能が出たにもかかわらず、先天性の第13因子、従来の3つの適応しか臨床成績の項目がないのです。ここに是非、後天性の第13因子欠乏症の臨床成績のサマリーを入れてほしいのです。できれば使用文献も入れていただきたい。そうすると、使う側も非常に助かります。

○吉田部会長 確かに私も、抗体があるのにどうして次に抗原を入れるのだろうと、非常に変な感じがしました。よろしくお願いします。

○濱口委員 今回の追加の効能の所ではないのですけれども、フィブロガミンPについてお伺いしたいのです。こういったヒト由来の凝子因子製剤については多くの場合、生物学的製剤基準が作られると思うのです。今回の場合は新たな効能ということで、新たな承認ではないのですが、これは1994年に承認されたということが書いてあります。その当時はどういう経緯で生物学的製剤基準を作らなくても良いという形になったのか、かねがね疑問に思っていたところもありますので、分かる範囲で結構ですから、教えていただきたいと思います。

○事務局 先生の御指摘のとおり、これには生物学的製剤基準の各条がないのです。私どもも今回の効能追加に当たって少し調べてみたのですが、特に理由は明確には見つからなかったということです。

○濱口委員 血液製剤の中でも幾つか生物学的製剤基準のないものもあって、ある意味でメーカーの方で品質管理をやって、それに頼っているところが多分にあるのかという感じがあります。こういった形で患者の対象が少ないものについては、余りきちんとチェックができていない可能性もありますので、今日でなくても結構ですから、それについては今後、どういうようにやっていくべきかをお示しいただけると有り難いと思います。

○吉田部会長 そうですね。いろいろと検討いただけるという方向でよろしいでしょうか。では課長、よろしくお願いします。

○審査管理課長 一律に今こうだというお答えはなかなかできませんので、今の先生の御指摘を受けて、今後はもう少しいろいろなエビデンスと言いますか、状況等も調査した上で、しかるべき時期に検討させていただきたいと思います。

○吉田部会長 要するに、院内のアフェレーシスと同じような考え方でずっと行ってしまっているというところですか。状況が若干違うかもしれないですが。

○審査管理課長 その辺は状況がまだ不明ですので。ただ、古いものは調べ切るのが結構大変なものがありますので、それはお時間を頂戴したいと思います。

○吉田部会長 血液製剤は、非常にデリケートな問題だと思うので、是非よろしくお願いしたいと思います。ほかにございますか。濱口先生、そういうことでよろしいでしょうか。

○濱口委員 はい。

○吉田部会長 ほかにございますか。

○奥田委員 ゲンタシンの投与量の増量に関して教えてほしいのです。私の理解ではアミノグリコシド系抗生物質の場合、頻回投与よりも1日1回というように、投与回数を減らして血中濃度を上げる方が治療管理がしやすいと思うのです。最高血中濃度も上げられるし、Post antibiotic effectも期待できるということで、アルベカシンなどはそういう投与方法の変更なども申請されていると思うのです。今回、ゲンタシンは1日3回ないし4回ということで、従来と変わっていないみたいなのです。海外では1日1回という投与方法もあると思うのですが、その辺りは要望として全然上がってこなかったのでしょうか。あるいは、こういうことに関しては余り必要性がないという判断なのでしょうか。お教えいただければと思います。

○機構 機構より御説明いたします。御指摘、ありがとうございました。本件は、日本感染症学会及び日本感染症教育研究会より要望された内容が1日3~4回とされており、アメリカでの承認の用法・用量が、そのまま要望として上がっております。欧州では1日1回という用法・用量が設定されている国もありますが、1日1回の用法・用量に関しては要望がありませんでした。本申請では、アメリカの用法・用量を採用する形で申請され、それに対する妥当性を確認し、承認しています。

○吉田部会長 いかがですか。よろしいですか。何か追加がありますか。

○機構 先ほど半田委員から御意見をいただいた、フィブロガミンPの添付文書の臨床成績の記載の件です。今回は公知申請ということで効能を追加しておりますので、臨床成績の詳細について、PMDAの方で評価した知見がないということです。過去の公知申請の品目での添付文書の記載方法をもう少し考慮して、記載できるかどうかを検討させていただければと思います。

○吉田部会長 文献がないわけではないのですから、それはそれで使って進めるように指導してあげた方がいい。今回は少々矛盾するような感じがするので。

○機構 文献の引用の記載のやり方でできるのかも含めて作成します。

○吉田部会長 よろしくお願いします。

○半田委員 難病の研究班でやっておられたのですね。ですからその成績でも構わないと思います。

○機構 はい、分かりました。

○関水委員 ホスフルコナゾールの有効性については、非常によく効くというレポートになっていて、場合によっては100%近いということになっていますね。抗真菌薬の有効性の評価に関して書いてあることは、厚生労働省が現在要求するクライテリアを満足した報告なのですか。つまり、これには対照薬が設定されていないですね。これは抗真菌薬がすごく効くというようになっていますが、実際にはそんなに効くような薬ではないと私は認識しているのです。再審査の問題にならなかったようなことだったら、マイナーな話ですから別にいいのですが、有効性については問題にならなかったのですか。

○機構 機構よりお答えさせていただきます。こちらは製造販売後調査ですので、実際の有効性の評価については、再審査報告書の3ページの「有効性」の3行目から書かせていただいております。有効性の評価については臨床症状、画像診断、内視鏡検査、真菌学的検査、血清学的検査等の中から、調査担当医師の方が有効、無効、判定不能ということで、有効性を総合的に判定しているという形の評価をさせていただいています。ですから、これは承認を得るときの治験とは異なる評価方法で行っており、対照群を置いたようなものではないということです。

○関水委員 製造販売後調査のときは、対照群は別に置かなくてもいいことになっているのですか。

○機構 従来の傾向として対照群は置かれておらず、本剤についても同様の調査内容とされています。

○関水委員 それは一般的な抗真菌薬の評価の考え方に基づくと、ひどく問題ではありませんか。

○吉田部会長 承認審査においては、対照薬を置いて比較試験をして、有効性を確認してますね。これに対して、再審査の場合は、再現性があったかどうかを確認しているのです。審査のときに思いもよらなかった有害事象が起こるかどうか、有効性に関しても申請時の有効性と同じか、あるいは上回っているか、というところが評価点になるので、ランダムトライアルで有効性が明らかであるという比較試験のデータは基本的に求められていないのです。ですから仕組みとしては、再審査で例えば有害事象がひどかったり、実際に有効率が低かったりすると、カテゴリーIから外れて、もう1回再調査に入ることになると思います。よろしいでしょうか。ほかに御意見はよろしいでしょうか。それでは、報告事項としては確認いただけたものとしたいと思います。本日の議題は以上です。事務局から報告はありますか。

○事務局 次回の部会は臨時での開催となり、9月13()、午前10時から開催させていただく予定です。先生方には御多用中のところ、大変恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 本日はこれにて終了とさせていただきます。御苦労様でございました。


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 益山(内線2746)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)> 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録(2013年8月26日)

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