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2014年3月24日 第4回 積立金基本指針に関する検討会議事録

年金局

○日時

平成26年3月24日(月) 14:00~15:30


○場所

全国都市会館3階 第1会議室
東京都千代田区平河町2-4-2


○出席者

米澤 康博 (座長)
浅野 幸弘 (委員)
臼杵 政治 (委員)
小島 茂 (委員)
川北 英隆 (委員)
山崎 泰彦 (委員)

○議題

(1)モデルポートフォリオ(厚生年金年金積立金全体)の運用目標について
(2)積立金基本指針に盛り込むべき事項(案)について
(3)その他

○議事

○米澤座長 定刻より少し早いのですが、皆様方お集まりのようですので、ただいまから「積立金基本指針に関する検討会」を開催させていただきます。本日は、第4回の会議ということになります。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から委員の出欠状況等について御確認をお願いいたしたいと思います。
○森大臣官房参事官 委員の皆様方におかれましては、本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 本日の会議の出席状況でございますが、本日は全委員御出席をいただいております。また、前回に引き続き、今回も各運用主体の方々にお越しいただいております。
 なお、本日は年金課長の度山が欠席のため、事務局ですが、企画官の成松が代理で出席しております。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきたいと存じます。
 まず、議事次第がございまして、配付資料一覧がございますので、こちらも参考にしながら御確認をお願いします。
 資料1でございますが、「積立金基本指針の概要」。
 資料2でございますが、「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方について」。
 参考資料1で、「平成26年財政検証における経済前提の範囲について」。
 2でございますが、「賃金上昇率を上回る運用利回りについて」。
 3でございますが、「被用者年金一元化における年金積立金の運用に関する主な意見の整理(未定稿)」でございます。
 また、先般、国家公務員共済組合連合会及び地方公務員共済組合連合会におきまして基本ポートフォリオの見直しが行われましたので、御参考までに資料を配付させていただいております。
 参考資料4-1でございますが、「国家公務員共済組合連合会の基本ポートフォリオの変更について」。
 4-2でございますが、「地方公務員共済組合連合会の基本ポートフォリオの許容乖離幅の変更について」でございます。
 なお、本日の1つの議題でございます「積立金基本指針に盛り込むべき事項(案)」につきましては、市場への影響等を配慮いたしまして、資料をメーンのテーブルの方々の机上配付とさせていただいています。会議終了後は事務局から回収させていただきますので、委員各位におかれましてはよろしくお願いいたします。
 以上でございますが、もし不足等ございましたら、適宜、事務局までお知らせください。
○米澤座長 それでは、カメラ撮りはここまでにさせていただきたいと思いますので、御協力のほどよろしくお願いします。
(カメラ撮り終了)
○米澤座長 それでは、議事に入ります。
 これまで積立金基本指針に規定すべき事項の検討の当たりましては、大きく4つの論点がございました。具体的には、積立金の管理及び運用に関する基本的な方針、2つ目としましては、積立金の資産の構成の目標に関する基本的な事項、3つ目としましては、積立金の管理及び運用に関し管理運用主体が遵守すべき事項、4番目は、その他積立金の管理及び運用に関する重要事項、これらを御議論いただきました。
 また、一元化後の厚生年金積立金の運用目標につきましては、社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用に関する専門委員会等の検討を踏まえ、別途議論させていただきましたので、本日は、まず一元化後の厚生年金の運用目標となる運用利回り等について御説明いただいた後、積立金基本指針に盛り込むべき事項(案)について御議論いただきたいと思います。
 それでは、まず一元化後の厚生年金の運用目標の御説明と、これにあわせて今回の財政検証における経済前提の考え方を大まかに御説明いただき、それに引き続いて積立金基本指針に盛り込むべき事項(案)の説明を事務局よりお願いしたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたしたいと思います。
○山崎数理課長 それでは、御説明申し上げます。年金局の数理課長でございます。
 お手元の資料2「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方について(検討結果の報告)」ということで、平成23年10月以来、年金部会の年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会、2年半の間に17回にわたる審議を重ねました結果、報告書を取りまとめまして、3月12日の年金部会に報告し、了承いただいたところでございます。こちらに関しまして、私のほうから2ページの第1部の経済前提の範囲につきまして概略御説明申し上げまして、第2部のほうは後ほど森参事官のほうから御説明申し上げます。
 御説明を聞いていただくに当たりまして、参考資料1ということで、この関係の基礎資料を配付してございますので、適宜、該当のページをお開きいただいて御参照いただきながら聞いていただければと存じます。
 まず、この報告書の2ページ、経済前提の基本的な考え方でございますが、ポイントといたしまして、(2)の2番目のパラグラフにございます。財政検証の結果というものは、人口や経済を含めた将来の状況を正確に見通す予測(forecast)というよりも、現時点で得られるデータの将来の年金財政への投影(projection)という性格のものであることに留意して、複数ケースの前提を設定し、その結果についても幅を持って解釈する必要があるということで、基本的な考え方が整理されてございます。
 次の3ページの(3)でございますが、長期の経済成長率等の前提を設定するにあたりまして、21年財政検証及び16年再計算において用いられてきましたマクロ経済に関する試算に基づく設定方法というものは、諸外国と比べましても工夫されたものになっているという御評価をいただきまして、今回も基本的には同様の手法を用いる。ただし、全般的に改良の余地が残されていると考えられる点には、可能な限りの改善手法をとるという考え方でやってきているということでございます。
 次の4ページ以下が経済モデルの立て方とパラメータの設定についてということでございますが、文章で見ていただくよりもフローチャートを見ていただいたほうがわかりやすいかと思いますので、参考資料1の2ページをお開きいただきますと、こちらに今回の長期の経済前提の設定に用いる経済モデルのフローチャートを掲げてございます。
 一番上の枠囲いにございますように、基本的にコブ・ダグラス型の生産関数にのっとった推計を行うということで、実質経済成長率が労働投入の寄与の分と資本投入の寄与の分、その残差として計測されてまいります全要素生産性の上昇率ということで、将来に向けて推計いたします際には、この一番右側の全要素生産性上昇率、これは外生で与えるわけでございますが、これをどう与えるかということによって、将来の経済成長率というのはかなり変わってくるということでございます。
 また、その他パラメータといたしまして、資本分配率とその裏返しとしての労働分配率でございますが、これも外生で与えますし、資本減耗率も外生で与える。この2つの変数に関しましては、従来は直近10年の平均ということで固定していたところでございますが、今回の経済前提の設定に当たりましては、この10年平均だけではなくて、30年平均というケースも考えまして、それぞれ将来のTFPが高いもの、低いものに応じて使い分けるということで御議論いただいて設定しておるところでございます。
 それから、労働投入量でございますけれども、これは人口推計と労働力の需給推計で決まってくるものでございますが、労働力の需給推計につきましても、女性や高齢者を中心に労働参加が進むケース、あるいはそれが全く進まないケース。これもTFPが高い、低いということで使い分けるということで設定されているところでございます。
 それから、中ほど少し右側の総投資率でございますが、こちらも基本的に過去からのトレンドを伸ばして外生で与えるものでございますが、従来は総投資率そのものの過去の実績を外挿しておりましたが、今回、海外経済とのやりとりを考えるということで、投資だけではなくて貯蓄率の動向、両方をにらみ合わせるということで、貯蓄と投資の差の部分が経常収支の対GDP比ということで、この両者を考えあわせて、これは幅のある見方で見るという考え方になっているところでございます。
 ちょっとデータを眺めていただくために10ページを見ていただきますと、太い実線が過去の総投資率の実績ということで、1990年ころをピークといたしましてずっと下がってきておりますが、こちらの下がる傾向を緩やかに外生するということで、「投-ベータ」と書いてある下の線、従来の考え方ですと、こちら1本でやっていたわけでございますけれども、今回、その上に細い実線でございますが、総貯蓄率というものがほぼパラレルに下がってきているということで、これを外挿した線に緩やかに遷移していく「投-α」という、総投資率が従来型の設定より高目になる設定、この両者を考えあわせまして幅を設けるというものを導入したということでございます。
 2ページに戻っていただきまして、この一番下のところにございますが、基本的に供給型のモデルのもとで、ある程度需要の要素を考えるために稼働率というものを取り入れられないかということで御議論いただきまして、稼働率を明示的に組み込むのは難しいので、考え方といたしまして推計の初期値のGDPを、平均的な稼働率で経済が推移したときに実現されるものとしての潜在GDPに置きかえるということをやって、間接的に考慮するというやり方をとっております。
 それで出てまいりますものといたしまして、左上真ん中あたりにあります賃金上昇率、これは1人あたり実質ということで、実質経済成長率を1人あたりに換算するということで賃金上昇率、実質のものを出している。
 あと、右の真ん中あたりにございます利潤率、これが資本に分配された利潤をストックで割り返すということで利潤率を算定して、これと過去における利潤率と実質長期金利の相関に基づきまして、将来の実質長期金利を算定するということをやっている。そこに株式等にも投資しているということで、分散投資効果の分を足しまして、実質の運用利回りを算出していくというやり方でやっております。
 物価上昇率については、右下にございますように、長期の値は外生的に与えるという仕組みで計算されているところでございます。
 このような形でやります場合に、全要素生産性を幾つで置くかということが重要なファクターになってまいりますので、これに関しまして、同じフローチャートのある資料の5ページでございます。まず、足下の期間、2023年までは賃金、物価、運用利回り等、内閣府の試算に準拠するということでございまして、こちらの試算では経済再生ケースにおきまして、TFPが足下の0.5%から1.8%まで高まる。この1.8%というのは、1983年から93年の日本経済がよかったころの平均的なTFPの姿ということで、こちらまで高まる。
 こちらを下敷きといたしまして、以後接続するケースとしまして、そのまま1.8%で推移するのをケースAと。以下、0.2%刻みで下に刻んでいきまして、参考ケースのほうの1.0%というところまで落ちるものをケースEということで設定しております。
 内閣府の試算の参考ケースの1.0%というのは、過去30年近い期間、1983年から2009年まで、そちらの平均のTFPがこの1.0%ということでございますが、これがそのまま推移するのがケースF。その下に0.7%のケースG、足下の0.5%まで戻るケースHということで、この8通りのケースを設定するということで、このTFPを軸としてケース設定を行っております。
 もとの報告書のほうに戻っていただきまして、今、概略御説明いたしましたようなところで2は終わりまして、9ページに参りまして、経済前提の設定に係る他の論点についてというところでございます。運用利回りの設定につきましては、21年の財政検証と基本的なやり方としては同じ考え方を下敷きとしたわけでございますが、(1)の一番下の行にありますように、長期間の平均としての国内債券の運用利回りに分散投資による効果を上積みするという考え方になっているところでございます。
 先ほどフローチャートのところでも御説明いたしましたように、実質長期金利と利潤率の相関関係に基づいて設定するという考え方が基本ということで、先ほどの参考資料の17ページをお開きいただきますと、将来の実質長期金利が「過去の一定期間における平均実質長期金利」×「過去の一定期間における利潤率」分の「将来の利潤率」という算式を書いてございまして、将来の利潤率というのが今のフローチャートから計算されて出てくる将来の利潤率。これは、TFPの水準ごとに違ってくるということで、過去の一定期間という、この一定期間をどうとるかということでございます。
 右下にございますように、利潤率と実質長期金利を見ていただきますと、バブル崩壊前の期間には利潤率も高く、実質長期金利も高い。以後は両方とも低くて、余りはっきりした相関が見られないということで、右下の相関係数を見ていただいても、左側の今回の対象期間ということで、過去30年、25年はそれなりに高い相関係数がございますが、20年の後、かなり下がってまいりまして、15年ですとほとんど相関がないということでございます。
 前回の財政検証では、過去の期間としては25年、20年、15年をとったところでございますが、今回はそれがもう少し古い期間のデータも使用できるようになったということで、過去30年、25年、20年という相関関係が比較的認められる期間を利用して相関係数というものを用いて、それによって利潤率に基づく推計を行う。
 ただ、こういうやり方でございますと、最近の利潤率と実質長期金利との相関が落ちている状況が必ずしも反映されないのではないかという御議論がございまして、報告書の9ページに戻っていただきますと、(ア)の2番目のパラグラフ、「ただし」からのところでございますが、TFPの上昇率を1.0%よりも低く設定するケース、ケースG、Hでございますが、これにつきましては低成長経済の下で両者の相関関係が低いと考えられるため、この方法は採らない。
 しからばどういう方法をとるかというのが(イ)にございまして、これは市場における長期のイールドカーブを観察いたしまして、市場関係者がフォワードレートをどの程度の水準で見ているかというのを検討し、それに基づいて設定することをやったところでございます。
 参考資料18ページを見ていただきますと、2012年12月以降でございますが、さまざまな期間で計測したイールドカーブに基づく10年国債のフォワードレートということで、これのうち内閣府の推計期間を過ぎました10年後から30年後あたりで見まして、この幾つかのフォワードレートのカーブのうち、一番上のところ、一番下のところ、それぞれをケースのGとHに当てて設定するという考え方でやっているところでございます。
 続きまして、報告書の10ページ、分散投資効果ということでございまして、こちらに関しましては、今回新たに名目賃金上昇率を基準として示す方法によって算出したところでございまして、各資産の名目期待リターンから名目賃金上昇率を差し引いた実質的な期待リターン、及び過去の各資産の実質的なリターンの実績から算出されるリスクと相関係数を用いて有効フロンティアを導出いたしまして、国内債券並みのリスク水準における国内債券の期待リターンからの上積み分として分散投資効果を算出したということでございます。
 参考資料24ページに各ケースではじきました分散投資効果の幅が出ておりますが、どのケースも0.4%前後ぐらい、0.3%から0.5%という感じの数値になっているところでございます。
 それから、報告書の10ページの下の(4)でございますが、今回は長期的な経済前提の設定におきまして、変動を織り込む場合の経済前提ということについても設定するということで、これにつきましては景気循環の周期を考えて4年周期、変動の幅は標準偏差を考えて1.2%と設定したところでございます。
 報告書の11ページ、具体的な経済前提の設定でございますが、2023年度までの足下の経済前提については、内閣府の経済再生ケースに準拠する経済前提が各年ごとに上の段にあるとおりで、参考ケースに準拠する経済前提は下の段にあるとおりでございます。
 次に、12ページ、2024年度以降の長期の経済前提につきましては、マクロ経済に関する試算等を参考にということで、このように設定したところでございまして、物価上昇率につきましては、ケースAが内閣府に準拠して2.0%ということで、ケースEとF、TFPが1.0%につきましては、内閣府のほうの1.2%というものをそのまま使わせていただいて、間については、それをつなぐような形で刻んでいるところでございます。
 下のほう、ケースHにつきましては過去30年の平均ということで、物価上昇率0.6%ということで、Gについてはその両者の中間ということで0.9%というものを当てているところでございます。
 先ほどのフローチャートにあるような将来のマクロ経済に関する試算の結果といたしまして、実質賃金上昇率がそれぞれのケースごとに、ここにあるような範囲になる。対物価の実質運用利回りも、こちらにあるような数値ということで、賃金のほうも運用利回りのほうも、TFPが高くなればより高くなるという傾向はどちらも共通でございますが、よく見ていただきますと、実質賃金上昇率のほうがTFPに対する感応度が高い。TFPが上がったときの上がり方がそのままストレートに効いているということでございまして、運用利回りのほうは利潤率から算定しているケース、ケースAからFまではそういう形で算定したわけでございますが、TFPが上がりますと、当然利潤率そのものが上がるわけでございますが、その構成要素としての利潤は賃金上昇と同じようにストレートにTFP上昇を反映して上がる要素があるのですが、分母になります資本ストックも、TFPが高ければ、投資額そのものが多くなるので、より大きくなるということで、分母も分子も大きくなるという要素がございますので、実質賃金上昇率ほどには、TFPが上がっても高まらない。その結果といたしまして、両者の間差でございます実質的な運用利回り、対賃金上昇率でのスプレッドは、ケースAからEのところで見ていただきますと、TFPが高いほうがむしろこの間差は縮小するという関係になっているというところでございます。
 一番右側に参考として実質経済成長率がございますが、2024年度以降の時期はかなり労働力人口が減っている時期でございますので、ケースAでも1.3から1.5%程度、ケースGやHではマイナス成長になっているということでございます。
 この実質運用利回りの諸外国との比較ということで、参考資料1の28ページ、一番後ろのページを見ていただきますと、国際的に見てどのぐらいの水準かということの目安でございます。諸外国が公的年金の長期の財政見通しに使っている経済前提ということで整理してございますが、アメリカの場合、御案内のように全額非市場性の国債で運用している国でございますが、下から3段目ぐらいにございます実質の運用利回り、物価上昇率を上回って何%という数字でございますが、こちら3通りあるうちの中位のケースで2.9%、高位が3.4%、低位が2.4%という姿になっているところでございます。
 カナダの場合は株式等にも運用を行っていて、これが実質4%という数字でございます。
 あと、積立金をある程度持って運用している国といたしまして、スウェーデン、フィンランドという4年分とか8年分持っている国で見ますと、スウェーデンは真ん中のケースで3.25%、フィンランドで3.5%という数値でございまして、日本もこちらは21年のときの数値を掲げてございますが、3.1%ということで、国際的に見れば大体横並びの感じの数値になっている状況でございます。
 私からの説明は以上でございます。
○森大臣官房参事官 引き続きまして、年金積立金の運用のあり方について説明いたします。運用利回りについて中心に御説明いたしたいと思います。あと、お手元に参考資料2の「賃金上昇率を上回る運用利回りについて」がございますが、これを適宜参照しながら説明させていただきたいと存じます。
 運用利回りの示し方等についてでございますが、参考資料2の1ページ目、「年金給付費は賃金上昇率に連動して増加」を見てください。新規裁定者の年金額というのは、現役世代の賃金に応じて再評価され、そのことで年金給付費自体が賃金上昇率によって上昇していくということがポンチ絵でついております。
 本文に戻っていただきまして、16ページでございますが、年金積立金の運用は年金財政の安定化を目的としており、これは他の資金運用でも同様ですが、適合性原則から、運用利回りにつきましては、従来どおり年金給付費のほうが賃金上昇率に連動して増加していきますので、名目賃金上昇+αで設定するという考え方が1つ目の○で示されております。
 2つ目の○でございますが、前回の財政検証の場合、名目値による運用利回りがひとり歩きしまして、これは「年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会」でも同様の意見が出されたのですが、運用目標に関する議論がかなり混乱したという御意見がございますので、運用目標につきましては名目賃金上昇率を上回る運用利回りのみを数値で設定することにしております。
 4番目の○でございますが、昨年11月に内閣官房の有識者会議提言が出されましたが、その中で年金等につきましても収益最大化の努力が重要であるということをお示しいただきました。その考え方に立ちまして、収益最大化の努力が年金財政の強化に貢献するという考え方に立てば、アクティブ運用につきまして確たる根拠がある場合に認め、たゆまぬ検討を明示的に求めるということが書いてございます。
 また、先ほど山崎課長のほうから説明ございましたが、分散投資効果。これは、従前、名目値で示しておりましたが、今回の運用利回りにつきまして、名目賃金上昇率を基準として示す方法と整合的に、賃金上昇率を基準としてリターン、リスク、共分散を計算しまして算出する方式に変更いたしました。
 17ページでございます。また戻っていただきまして、参考資料2の「賃金上昇率を上回る運用利回りについて」の2ページ目をごらんいただきたいと思います。TFPの各ケースにおける賃金上昇率を上回る実質的な運用利回りということでございます。先ほど説明ありましたように、今回の財政検証では、経済前提につきましてTFP上昇率を複数設定いたしまして、それぞれのケースにつきまして実質賃金上昇率及び実質長期金利を一定の幅をもって算出しておりますけれども、その中で、ケースAからケースEということで顕著でございますが、実質的な運用利回りにつきましては、TFP上昇率が高いほど低く算出されております。
 それで、全体を見てみますと、労働市場への参加が進むケースとしまして、TFP上昇率が1.8のケースAからTFP上昇率が1.0のケースEまでにつきまして、●が中央値になっておりますけれども、実質的な運用利回りが中央値1.1から1.7まで推移しております。
 また、労働市場への参加が進まないケースとしまして、TFP上昇率が1.0のケースFからTFP上昇率が0.5のケースHにつきましては、実質的な運用利回りが中央値1.5から0.9に推移しておりまして、このように今回、委員のほうで合理的に算定したケースにつきまして、全てのケースに対応できる実質的な利回りとしまして1.7%が示されておるところでございます。
 ただ、TFP上昇率につきましては、事前にどうなるかわからないものでございまして、全てに対応するケースとして1.7%を運用してございますけれども、仮にTFP上昇率が高いケースが実現して、実質的な運用利回りを上回る運用収益が実現した場合には年金財政にプラスに寄与いたしますし、ポートフォリオにつきまして、TFP上昇率の変化に応じまして複数のシナリオでリスク分析しまして、リスク管理していくという形にはなっております。
 めくっていただきまして、本文18ページでございます。リスクの示し方についてでございます。今回はリスクについての考え方を明確にするということでございまして、年金につきましては下振れリスクが国民の皆様の御関心が非常に高いということでございまして、下振れリスクを明確にすることを追加しております。
 下振れリスクにつきましては、2つ目の○でございますけれども、1つは、目標としましては名目賃金上昇率がございますので、ここから下振れるリスクをどうかということを考えております。通常の経済ですと、タンス預金にしますと名目賃金上昇率から下振れますし、他方、リスクが非常に高い商品でございますと、また下振れリスクが大きくなるということでございます。年金部会等で国内債券並みのリスクが重要だという御意見が出ましたので、ここでは全額、国内債券運用での下振れリスクを超えないことをポートフォリオのリスクとして新たに示しているところでございます。
 19ページ、基本ポートフォリオの設定期間でございます。基本ポートフォリオについては、年金資金は、アメリカにおきましても企業年金はいまだ長期でみて7%後半の予定利率にしていますし、公務員年金につきましても7.5%から8%ぐらいの予定利率にしておりますけれども、そういう長期的な性格、あと、アセットアロケーションについては安定的に維持したほうがいいという、現代投資理論等に沿いまして、ここでも従前どおり長期的な観点から設定するとしています。
 ただ、市場の構造的な変化に対応するように、定期的な検証の際に機動的に見直しをいたしますし、乖離許容幅の中で機動的な運用ができるよう明確にすることになっております。
 20ページ、運用手法の具体的な検討の在り方ということで、GPIFの関係でございます。GPIFにつきましては、運用の専門家でございますので、資金運用について一般的に認められた知見に基づき、基本的にここに任せる形ではどうか。ただ、専門家に任せるといっても、被保険者から徴収された保険料の一部でございまして、損失が起こった場合には年金財政に影響いたしますので、拠出者の立場から労使代表も参画する年金部会のような場で引き続き審議することが必要であるとされております。
 21ページで、全額国債運用・国内債券中心の運用についてということで、3つ目の○でございますが、従前のデフレ下におきましては「国内債券中心の運用」が安全かつ効率的な運用であったが、デフレ脱却を図り、適度なインフレ環境に移行しつつある我が国経済の環境においては、あらかじめ「国内債券中心」を示す必要はなく、GPIFにおいて、フォワードルッキングの視点も踏まえ、ポートフォリオを検討すべきである。
 22ページでございますが、運用対象資産の多様化についても、GPIFのほうで検討する。
 ただ、3つ目の○でございますけれども、運用側の能力向上のみでは対応できないこともありますので、市場環境の整備を十分踏まえた対応を行う必要がある。
 23ページでございますが、アクティブ運用につきましても、あらかじめパッシブ運用中心を示す必要はないが、他方、有識者会議のほうでアクティブ比率の向上が言われていることに対しましては、超過収益率が獲得できる新たな手法や優れたアクティブマネージャーの輩出等運用環境の整備が図られることが重要であると示しておるところでございます。
 24ページで、年金積立金をどうするかという目的と、巨額のお金でございますので、成長分野に使ったらいいか、もしくは環境とか社会という社会的投資をどう考えるかという話でございますが、国民の皆様から強制的に集めた資金でございますので、専ら被保険者の利益のためという形で運用して、結果的に日本経済等に貢献する好循環を目指すべきであるということが書いてございます。
 一番下に、先般、金融庁のほうで機関投資家一般の行動原則として公表されました、日本版スチュワードシップ・コードにつきましては、市場、その他の民間活動に与える影響に留意しつつ運用するという法規定に則しつつ、方針の策定・公表等を検討すべきということが示されております。
 これが検討委員会の報告書でございまして、これで積立金基本指針に盛り込むべき事項としましては、一通り項目については御説明さしあげたところになります。
 続きまして、これまでこの検討会におきまして、どのような御意見をいただいたかにつきまして、参考資料3「被用者年金一元化における年金積立金の運用に関する主な意見の整理」につきまして、事務局で暫定的に整理したものでございますが、御説明さしあげたいと思います。
 運用の基本的な目的については、各運用主体の運用方針に多少の文言の違いはあっても、年金事業の運営の安定に資するということが書かれており、それに異存はないのではないかということでございます。
 運用目標につきましても、長期的に実質運用利回りを確保するということは共通でございまして、今回、一元化ということで、法律上、厚生年金に一元化されることになっていますので、最終的な運用目標についてはしっかりと統一しておく必要がある。その際、運用目標は1本だけれども、リスクやベンチマークということで運用のあり方については多少違いが生じてくることがあるだろうということでございます。
 特に3つ目の○の運用主体の自主性・独立性については、別途さまざまな御議論をいただきました。各運用主体の自主性・独立性を認めていく方向だということでございまして、各運用主体が工夫し、どのような運用をするかという競争をしたほうがいいのではないか。モデルポートフォリオについては一つの考え方がありますけれども、細かいところはそれぞれに任せてはどうか。また、モデルポートフォリオと実際のポートフォリオの乖離、移行ポートフォリオみたいな考え方でございますが、そこは共済等につきましては、これまでの経緯も含めたことがございますので、2ページ目でございますけれども、ある程度自主性を認めていく必要があるだろう。
 他方、2ページ目の2ポツ目でございますが、モデルポートフォリオにつきましても、自由度があり過ぎると、工夫の余地がある反面、モデルポートフォリオの意義が薄れるので、ある程度まとめる必要があるのではないか。
 一番最後にございますが、資産クラスにつきましては、アセットクラスの解釈を弾力化して認めていくという方法もあるのではないかと御意見をいただいております。
 その他でございますけれども、今後100年間のキャッシュフローを考えた場合には、ALMみたいなものをきちんと考えながら設定していく必要がある。
 あと、スチュワードシップ・コードにつきましても、基本指針においてきちんと検討していく必要があるのではないか。
 また、国共済や地共済のほうでESGみたいな考え方もございますが、そういうものについても検討していくことにつきまして、必要があるのではないかという御意見をいただいております。
 それで、席上配付の資料でございますが、今回、「積立金基本指針に盛り込むべき事項(案)」ということで書かせていただいたものを御説明さしあげたいと思います。1つ目の○は、資料1にもございますが、従前から御説明しています柱立てに沿いまして、積立金の管理及び運用に関する基本的な方針でございます。
 目的でございますけれども、積立金の運用は、共済につきましても厚生年金ということでございまして、将来にわたって厚生年金保険事業の運営の安定化に資することを目的として行う。ただ、共済につきましては独自運用も法律によって認められていますので、共済確保の目的に沿って運用する場合においては、厚生年金保険の被保険者の利益のためにということはございますけれども、あくまで一元化した形で運用していくことが挙げられております。
 また、2つ目の○で積立金の運用でございますけれども、厚生年金保険事業の財政上の諸前提を踏まえる。あと、保険給付等に必要な流動性を確保するということでございまして、先ほども御指摘がございましたが、実質的な運用利回りを最低限のリスクで確保するよう行うということでございます。
 2モデルポートフォリオに関する基本的な事項でございます。管理運用主体につきましては、本指針に適合するよう、共同してモデルポートフォリオを定めることになっておりまして、それを確認する。今回の財政検証におきまして、共済も含めた積立金予定額が出ますが、先ほどの御意見にもございましたけれども、年金財政の積立金等の見通しと整合的な形で、リスクの検証、バリューアットリスクというシミュレーションで見ることになると思いますけれども、行うことが書いてございます。
 2つ目の○で、積立金資産の構成の目標につきましては、先ほど専門委員会のほうで御説明いたしましたが、厚生年金保険事業の財政上の諸前提と整合性を持つ予定運用利回りとして、財政検証を行う際に積立金の運用利回りとして示される適切な運用利回りを長期に確保する資産構成とすることが書いてございます。
 また、運用の目標につきましては、資産運用に関しまして一般に認められている専門的な知見、また内外の経済動向を考慮して定めるということでございまして、これは有識者会議のほうでも言われましたが、フォワードルッキングなリスク分析を行うことを示しております。
 1ページ目の最後の○でございますが、積立金の資産構成の目標を定めるに当たっては、それぞれの主体が定める基本ポートフォリオとの関係もあわせて検討すること。これにつきましては、本法律の趣旨でございます厚生年金保険事業の共通の財源としての一体性を確保することのほか、委員各位から御意見が出ました自主性・相違性を発揮できるようなものとするという2つの要素で考えていくことが示されております。具体的にどうするかということにつきまして、意見にも出ていましたが、一定の範囲内ということがございましたので、例示としまして、積立金の資産の構成目標の乖離許容幅の中で、それぞれの運用主体の基本ポートフォリオを定めるなどというやり方を挙げさせていただいているところでございます。
 めくっていただきまして、2ページ目でございます。モデルポートフォリオにつきましても、財政の現況及び見通しが作成された場合、必要があるときには共同して検討する。また、策定時に想定した運用状況環境が乖離していないかなど、定期的な検証の必要性について検討してくれという話がございます。
 3が積立金の管理及び運用に関し、管理運用主体が遵守すべき事項でございまして、これは個別のポートフォリオ等にかかる話でございます。積立金の管理及び運用を適切に行うためには、指針に適合するよう、まず積立金の資産の構成目標に則して、基本ポートフォリオを含む管理運用方針を定めること。その際、それぞれのポートフォリオにつきましても、年金財政の積立金等の見通しと整合的に検証を行ってくれという話がございます。モデルポートフォリオだけでなく、それぞれの基本ポートフォリオについても同じように検証をしてくれという話でございます。
 2つ目の○でございますけれども、指針が改正された場合の変更。また、基本ポートフォリオにつきまして、策定時に想定した運用環境からの乖離についても、必要に応じ、見直すことが示されております。
 3つ目の○でございますけれども、これはモデルポートフォリオと同じようなことでございますが、運用に関する一般知見。内外の経済動向、フォワードルッキングなリスク分析の必要性について示しております。
 4つ目の○につきましては、本指針及び管理運用方針に従って、実際の積立金の管理及び運用は行わなければならない。
 その次は、分散投資。GPIFにつきましては、専門委員会のほうから、専ら国内債券のみとかアクティブ運用とか示さないという話がございましたけれども、分散投資ということは運用の基本でございますので、分散投資による運用管理を行うこと。この際、ポートフォリオ管理を適切に行うとともに、資産全体、運用受託機関なり資産管理機関等の各種リスク管理を行うことを示しております。
 また、積立金の運用は、各共済年金もそれぞれかなりの規模を持っておりますので、市場規模を考慮し、みずから過大なマーケットインパクトをこうむることのないように努めるとともに、市場の価格形成や民間の投資行動をゆがめないよう配慮するということで示させていただいております。
 スチュワードシップ・コードにつきましても記述すべきという御意見ございました。民間の企業の経営に対して、過度に影響を及ぼさないよう配慮するとともに、企業経営等に与える影響を考慮しつつ、スチュワードシップ・コードを踏まえた方針の策定・公表について検討すべきということでございます。
 3ページ目でございますけれども、個別銘柄選択は行わない。必要な流動性は確保するということ。予定運用利回りを確保するため、リスク管理のコード化等に努めることということでございまして、先ほども述べましたが、原則としてパッシブとアクティブを併用し、アクティブ運用も取り組む。超過収益が獲得できるとの期待を裏づける重要な根拠を得ることを前提に、アクティブ運用について取り組むということを記載しております。
 また、ESG要素につきましても、各管理運用主体におきまして検討することということで示させていただいています。
 その他、積立金の管理及び運用に関する重要事項といたしましては、先ほども移行ポートフォリオに関して御意見が出ていましたけれども、基本ポートフォリオを見直す場合におきまして、円滑に見直し後の基本ポートフォリオの割合に移行させるため、移行ポートフォリオを策定すること。積立金の運用状況につきましては、これは原則として時価評価。これによりがたい場合については、管理運用方針において評価方法を明らかにするという形で、時価評価についても明瞭性を確保しているということでございます。
 また、厚生年金の共通の財源という形になりますので、よりわかりやすい、広い広報が必要だということでございまして、被保険者に対する情報公開、広報活動を積極的に行うことということでございまして、報告書等についてはさらにわかりやすいものになるよう工夫することとしております。
 また、体制の話が重要でございますので、受託者責任を徹底するための機能を確保するとともに、業務を的確に遂行する上で必要となる人材の確保に努めること。
 めくっていただきまして、各運用主体におきまして共通の厚生年金の財源を運用するということでございますので、必要な情報の提供を行うなど相互に連携を図りながら協力するということ。
 あと、1つは、今回、賃金上昇率ということを基準として運用し、運用を評価されるということでございますので、主務大臣は管理運用主体に対し、積立金の運用評価等に用いる賃金上昇率の実績を適宜提供する。また、主務大臣につきましては、財政検証の際等、本指針に検討を加え、必要に応じ、これを変更するものとするということでございます。
 こういう形で、事務局のほうで積立金基本指針に盛り込むべき事項を議論を踏まえまして検討したものでございます。以上でございます。
○米澤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日は、今まで説明していただきました内容に関しての質疑応答になります。大分材料が多いので、いかがいたしましょうか。大きくは、モデルポートフォリオの目標についてということで、この大半は前半の経済前提での目標のことに関する話です。これが1点ですね。後半は、今、説明していただきました積立金基本指針に盛り込むべき事項(案)についてということですので、まず前半のポートフォリオの運用の目標に関してのほうから、ちょっと御意見いただければと思います。いかがでしょうか。
 浅野委員、どうぞ。
○浅野委員 今回は、運用の目標として賃金上昇率+αという形で、そのαの具体的な数値として1.7%が示されて、モデルポートフォリオあるいは基本ポートフォリオは、それに向けて作成されるということになるわけですが、賃金上昇率が変動したときにもα分を確保できるようにするには、リターンもリスクも賃金上昇率との相対で捉えるということになると思います。積立金基本指針に盛り込むべき事項の1の2番目にも、実質的な運用利回りを最低限のリスクで確保するよう行うことと書いてありますが、そこで想定しているリスクというのは、賃金上昇率との相対での運用利回りの変動と考えてよろしいかと思います。
 その場合、問題になるのは、これまで各運用主体が基本ポートフォリオをつくって運用してきたのですけれども、賃金上昇率との相対でという運用を具体的に示していないので、新たにそうした考え方でモデルの開発をしないといけないということです。今までそういう考え方はあるものの、必ずしもそれに沿った運用にはなっていないというわけです。
 また、私、これに関して論文を書いたことがあるのですけれども、寡聞にしてほかには見たことがありません。ということは、この目標に対して、どういうモデルポートフォリオをつくるか、基本ポートフォリオをつくるかという根本からやり直さないといけないというか、方法論から構築しないといけないと思うのですが、それはそういう理解でよろしいでしょうか。
 それと、こういう運用目標とリスクの捉え方等が決められた一方で、国内債券並みのリスクで運用しろということが書いてあるのですけれども、これはちょっと矛盾しているのではないかと思います。例えば、実質的な運用利回りを最低限のリスクで確保するということを全面に出すなら、物価連動国債などを入れれば、かなりリスクが小さくできます。国内債券並みのリスクとは何を想定しているのかわかりませんけれども、これまでの各運用主体の計算方法からすると、NOMURA-BPIとかのインデックスのリスクを想定しているのではなかろうかと思われますが、そのリスクは今回の目標に関して言うと、ちょっと筋違いでないでしょうか。このところをどう調整するのかということが大きな課題として残っていると思います。
 もう一つ、いいですか。後にしたほうがいいのかもしれませんが。具体的な1.7%という数字ですけれども、これは2009年度の見直しのときにも問題になったのですが、相当高い水準だと言わざるを得ません。この計算の過程を見ると、1.7%というα部分は20年先の話ですね。
○臼杵委員 10年。
○浅野委員 10年先ですか。しかし、実際運用することになると、足下の経済情勢とか市場とかからは離れられません。その足下の情勢が資料2の11ページに出ているのですが、これを見れば実質的な運用利回り、すなわち名目賃金上昇率を上回る名目運用利回りというのはどれだけかというと、ここ数年はマイナスなのです。そうしたら、モデルポートフォリオなり基本ポートフォリオなりをつくるときに目標とするのはどっちなのでしょうか。1.7%を上回るようにするのか、いや、ほぼゼロないしマイナスでいいのかということになります。
 前回の2009年度のときは、だいたいは足下だけ達成すればいいやということでポートフォリオが組まれました。でも、今回、それをまたやるとしたら、当面は低い利回りでいい、でも将来はうんと上げないといけないというのでは、負担の先送りをしているだけではないかという気がします。このあたり、どういうふうにお考えになるのでしょうか。
○米澤座長 私は半分かかわっていたので、わかる範囲でお答えして、わからないところは森参事官に回したいと思います。
 実質リターンは、今、浅野委員が説明していただいたとおりのイメージです。実際には、相関係数というのは余り明示しなくて、変数から対賃金上昇率を引いてしまった差で、そこで実質リターンを考えて、そこのリスク、リターンでやる。結局同じことですね。実質賃金値も確率変数として見ているということ。はい。
○浅野委員 それは、月次の名目リターンから月次の賃金上昇率を引いて。
○米澤座長 年次だと思います。
○浅野委員 年次ですか。年次にしても、その場合、名目の運用利回りと賃金上昇率の相関は非常に低い、ほとんどゼロに近いと思います。それだとほぼ独立だから、賃金上昇率を考えないでやるのとほとんど変わらない結論になるのではないでしょうか。
○米澤座長 そうでもない。
○浅野委員 多少は出てくるかもしれませんが。でも、ここでは長期の運用を想定しているわけだから、3年なり5年なりに伸ばすと、景気循環によって賃金も金利も株価もかなり同じような動きをしてきます。そうなると、相関関係もかなり違って、リスクもかなり違ってきます。そういう意味で、投資期間あるいはリスク、リターンを計測する時間の長さをどうとるかによって、答えが随分違ってくると思うのです。それについての確立された方法、こういう方法をとったらいいというのはないわけで、そのあたりどうするかというのはどこで議論するのでしょうか。
○米澤座長 それは、まず厚生年金に関してはGPIFのほうで検討していただくことになるかと思います。
○浅野委員 今回はGPIだけではなくて、4運用機関、共同でやるということではないのですか。
○米澤座長 それは、まず直前まで議論されてきた年金部会の経済前提等に関しては、先ほど報告していただいた報告書に関しましてはGPIFですので、あそこの報告書マターに関してはGPIFのほうでポートフォリオを策定していくときには、そういうことを考慮してやっていただくことになると思いますし、それを受けて、モデルポートフォリオのところでも考えていくことが必要かと思います。浅野委員がおっしゃるとおり、年次でやっても、普通にやると債券のウエートがより高くなるのです。よほど工夫しないと、債券のほうが金利と相関が高いほうを引くよりいいわけですね。
 ということもありますので、生のデータでいいかどうかというのは、浅野委員の言うとおり工夫が必要かと思いますけれども、そういうつもりで計算して、実際にはGPIFのほうで工夫していただくことになるのだと思います。
 2点目は、そこのリスクと債券並みのリスクというのは違うのではないかとおっしゃったかと思うのですけれども、債券並みのリスクというのは、あくまで財政検証のときは、リターンは全額債券並みで低く抑えて財政検証しましょうということですね。他方、運用のほうの運用目標は、今回はそれとちょっと切り離して、1.7というのは、ベースはそこですけれども、債券並みのリスクじゃなくて、債券並みのところの下振れリスクを下回らないという新しい概念が出てきていますので、リスクの絶対水準の債券並みというところは外れています。リターンが稼げれば、もう少し右じゃなくて、こっちに移るということも想定しています。
 ただ、それは運用の際の話で、GPIFのほうに対する話であって、財政検証するときは今までと同じ債券並みのリスク、そこから出てくる真上に行ったリターンでもって計算するというので、2つに分けているというのが前回と違うところです。
○浅野委員 その場合、債券並みのリスクでリターンは金利より少し上げてありますが、これは要するに分散効果で0.4上乗せするということですね。数字が出ていないので何とも言えませんが、本当に0.4も上乗せできるのでしょうか。
 それと、今までのようなリスクのはかり方の場合と、今回のように賃金との相対ではかる場合では、その答えは当然違ってくるのではないでしょうか。賃金との相対ではかった場合には、先ほども言いましたように、債券で運用するよりももっとリスクが低いような、もっといい運用があるかもわかりません。具体的に言えば、物価連動国債で全部運用すれば、債券並みのリスクをとるよりはいいわけです。今は、その債券並みリスクが何を想定しているかわからないので、これもなかなか議論しにくいところではあるのですが。
○米澤座長 財政検証のときはこういう格好で、今までと全く同じ方法ですけれども、ポートフォリオをつくるときは、浅野委員が言ったような工夫の余地を今回入れて、GPIFのほうで精緻なポートフォリオをつくっていただこうということだと思います。
 あと、森参事官、どうぞ。
○森大臣官房参事官 浅野先生からの分散投資効果につきまして、根本的な御疑問が出たところです。
 ちょっと済みません、資料を説明するのを省略しました。参考資料1「平成26年財政検証における経済前提の範囲」につきましての基礎資料の22ページに分散投資効果の試算についてということで、試算の仕方が書いてございます。2つ目の●でございますけれども、実質的な期待リターンということでございまして、ビルディングブロック方式でやったのですけれども、期待リターンから賃金上昇率を差し引いたリターンを使った。リスクにつきましても、リターンから賃金上昇率を引いたもので、それぞれリスクなり共分散なりを出しまして分散投資効果を出してみたということでございます。
 この経済前提のAからHの8つのケースで期待リターンを算出したところでございまして、また年限につきましても、過去40年、過去25年、過去10年ということで演繹的に出したものでございまして、それで国内債券並みのリスク、リターン。これは、リスクにつきましてはNOMURA-BPIを使いましたけれども、それでどのぐらいサープラスがあったかというものでございます。
 これにつきまして、先ほど山崎課長から紹介がございました24ページでございますけれども、非常にきれいに0.3から0.5ということでございましたので、その中間値0.4というのを使わせていただきました。確かに長期で見たら分散投資効果が薄れるのではないかみたいな御議論があるかと存じますけれども、今回、私どもがつくったデータを使いますと、0.4%の分散投資効果。これは平成21年の財政検証のときは名目値でやったのですが、それは0.4だったのですけれども、そういう効果は大体あるものだということでございます。
 あわせまして、先ほど委員からいただいた論点につきまして、どんな御議論があったか事務局のほうから紹介させていただきます。
 まず、運用利回りの示し方に関しましては、資料2、報告書本体の26ページをごらんください。そこに運用利回りの示し方等に関する主な意見ということで、左側にGPIFの運営のあり方に関する検討会、今回の専門委員会、また、下の有識者会議でどのような御意見があったかという話でございます。
 専門委員会の主な意見としましては、3つ目の丸でございますけれども、年金財政からみると、賃金上昇率+αという目標は自然ということでございます。
 4つ目の丸でございますが、長期的には伝統的資産のリターンと賃金上昇率にはある程度の相関がみられることから、そういう賃金上昇率+αという運用利回りの目標と整合的な基本ポートフォリオの構築は可能という御意見は出されております。ただ、長期金利との関係というのがございますので、長期金利を見る必要があるという御意見は確かに出されておりますし、リスク許容度の範囲であること、資本市場の現実に則したものであるという必要がございますので、この算出の方法につきましては長期金利に分散投資効果を加えるというやり方で出させていただいているところでございます。これが1番目の論点に関してでございます。
 2つ目の御質問で、国内債券並みのリスクでございますが、今、申しましたように、リターンは長期金利に分散投資効果。分散投資効果の定義でございますが、国内債券だけで運用するよりも、いろいろな資産に分散したら有効フロンティアの関係でサープラスがどれ程度取れるかというもので測っている。そういう意味で、国内債券並みのリスクというものがそこで反映されている。
 もう一つの点につきましては、先ほど座長から御紹介ございましたけれども、ショートホール確率のところで国内債券並みという考えを入れておるというのが、国内債券並みのリスクがどのように年金積立金の運用にかかってくるかという話でございます。
 3番目の論点は、実質的な運用利回りにつきましてのこれまでの実績でございます。これも説明を省略して恐縮だったのですが、参考資料2の賃金上昇率を上回る運用利回りの2ページ目をごらんください。そこに黒い線が右側に入っていると思います。自主運用につきましては平成13年度から始めましたが、これは名目賃金上昇率を2.76%、小数点第1位ですと2.8%を上回っているということで、これまでのGPIFの運用につきましては、名目賃金上昇率+1.6というのが平成21年財政検証等の長期の目標でございますが、それをはるかに上回る2.8%という数字がとれていたという話でございます。
 お話のとおり、その間、名目賃金上昇率が負だったという話もちょっと考えなきゃいけませんが、その0.5%を引いても2.3%でございますので、そういう意味からすれば、今回の1.7%という目標はある意味保守的な数字じゃないかと考えております。
 以上でございます。
○浅野委員 今の数字、コメントしていいですか。
○米澤座長 はい。
○浅野委員 過去、2点何%の実質的な運用利回りだったということを示されましたが、これはデフレ経済下で金利はマイナスにはならないが、物価は下がった、賃金上昇率もマイナスになったからです。このおかげで実質的にプラスになっているわけで、賃金が上がりだしたら、この資料2の11ページに書いてあるように、実質的な運用利回りがマイナスになる可能性というのは多分にあるのではないでしょうか。ですから、この政府の見通しでも11ページのような数字になっているのではないでしょうか。これがこの延長線上で本当に1.7%のプラスに今後なっていくのか、非常に心配であるということです。
 その最大の要因というか、期待されるファクターとして考えられているのがTFPですね。このTFPが上がることによって利潤率が上がることになっているわけですが、分配率がほぼ一定で推移するとしているので、利潤率が上がるということは、実は資本係数が下がるということですね。そうでないと利潤率が上がりません。ところが、資本係数を見てみると、過去ずっとトレンドとして上がっているのです。それを覆して下がるという理由は、非常に考えにくい。むしろ、少子・高齢化の中でGDP成長率を保とうとすれば、資本装備率を上げる。それに伴って資本係数も上がる。だから、利潤率は長期的に低下していくと考えるほうが安全ではないでしょうか。
○米澤座長 貯蓄率も下がりますから。
○浅野委員 貯蓄率が下がって、資本装備率も下がったら、どうやって生産性を上げていくのですかと思いますが。
○米澤座長 どうぞ。
○山崎数理課長 数理課長です。お答え申し上げます。
 お手元の参考資料1というのがございまして、こちらの3ページを見ていただけますでしょうか。これが日本経済の計数の過去の実績でございますが、一番左の有形固定資産が資本ストックでございまして、これを見ていただきますと、過去ずっとふえてきて、実は2008年、リーマンショックの年にピークを迎えまして、以後は2009、2010、2011、2012と資本ストックは既に減少傾向に転じております。御案内のように、その2つ右のところ、名目GDPは1994年以降をずっと見ていただきますと500兆円前後でございまして、かなり横ばいでございます。
 そういう意味では、この有形固定資産、資本ストックがふえてきている2008年までの間は、資本係数、GDP分の資本ストックという数値は御案内のように上がってきているということでございますが、2008年のところを境といたしまして、GDPも多少減っているのですけれども、資本ストックが減ってまいっておりますので、資本係数のほうはむしろ横ばいから、やや減少傾向に転じている。
 これはどういう事情があるかと申しますと、右から2番目の総投資率を見ていただきますと、93年とか、その前あたりは大体30%前後の総投資率でございますが、それが2008年では22.5%、2009年で19.2%と、ずっと下がってきておりまして、下がってきてはいるのですけれども、まだ20%台後半ぐらいの高い時期には資本ストックは増加してきているわけでございますが、さすがに20%前後になってまいりますと資本ストックの伸びがとまって、逆に減少に向かっているということでございますので、将来に向けて総投資率が反転して上昇していくと見るのであれば別でございますが、そうでもないのであれば、むしろ資本ストックの上昇というのはピークに達してピークアウトするということでございます。
 ですので、おっしゃっているような資本係数が上がっていっている様子が、過去がそういうトレンドだから、そのまま上がっていくのだという状況ではない。足下では、既に横ばいから微減の方向に転じているという状況でございます。
 それから、資本装備率と資本係数の関係でございますが、TFPが高い状況のもとで資本装備率が下がるということだと、そんなに経済成長は望めないのではないか。それはおっしゃるとおりでございますが、資本装備率というのは資本ストック÷労働投入量ということで、K/Lという数値でございますが、このL自体がどんどん下がっていく。生産年齢人口が減ってまいりますので、労働力率が上がっても労働投入というのは下がっていくということでございます。
 資本係数というのはK/Yでございますので、分母がGDP、分子が資本ストックということで、これはTFPが高い状況のもとで経済成長率が1%台前半とか、高くなるときに、資本自体も成長するのですが、これは0点何%という数字でございますので、資本係数自体は下がっていくということです。
 一方で、資本装備率K/Lを見たときのLのほうは、むしろマイナス0.8%とか1%とかマイナスになりますので、分母のLがマイナス、分子のKがちょっとプラスということですので、資本装備率はどんどん上がっていくということで、資本装備率の増大と資本係数の減少が同時に実現するというのは、全く矛盾はしない状況でございます。
 以上です。
○米澤座長 ほかの方はいかがでしょうか。臼杵委員、どうぞ。
○臼杵委員 私は、浅野先生の3つ目の質問に関連するのですけれども、2024年からは今、御説明いただいた、いろいろな議論はあると思いますが、一つのプロジェクションということで、賃金+1.7%が目標になるというお考えだと理解しております。ただ。そこに至るまでの間、どういう目標を与えようと考えておられるのか。さっき浅野先生から、資料2の11ページの数値について御指摘がありましたけれども、計算しますと、10年間の平均で運用利回りは賃金上昇率とほぼ等しいような状況です。このときに当面10年間の目標として、まず賃金上昇率をベースとするのかどうかということ。それから、仮に賃金上昇率をベースとする場合に、どういう目標を与えるということでお考えになっているか、ちょっとお伺いしたいのです。
○米澤座長 森参事官。
○森大臣官房参事官 これにつきまして、資料2の「年金財政における経済前提と積立金の運用のあり方」の報告書の本体の28ページを見ていただきたいのですけれども、まさに運用設定期間につきましてどういうふうに考えるかという話でございます。その中では、そもそも年金の運用につきまして超長期に運用できるのだから、5年ごとに運用利回り等も含めて見直すのもマイナスだねという御意見。他方、年金財政に則して100年の目標を立てるけれども、5年ごとに見直すことに意味があるのではないかという話。国民のリスク許容度や、それほど長くないタイムホライズンを考えると、想定運用利回りを5年ごとに見直すという現行の仕組みは適当ではないかという話でございます。
 1つの考え方としまして、これは今までGPIFもそうだったのですが、長期の前提という形でポートフォリオは立てる。ただ、その中で具体的な評価につきましては、足下につきましては必ずしも長期の目標ではございませんで、内閣府の出している前提に則したところで足下を評価していくというのが、「年金の積立金がそもそも長期で運用すべき」、もしくは「ポートフォリオについては安定的につくるべき」という考えにも合っていると存じます。
 あと、先ほどちょっと説明の中で申しましたが、例えば今、アメリカは非常に低金利でございますが、各年金の運用主体につきましては、非常に高い運用利回りでポートフォリオ等を策定していることから考えますと国際的にみても整合的ではないかということで、ポートフォリオ自体は今回、名目賃金上昇率+1.7という形でおつくりいただくのかなと考えております。
○米澤座長 どうぞ。
○臼杵委員 だから、モデルポートフォリオという名前になるのかどうかわかりませんけれども、2024年以降、賃金上昇率+1.7%を獲得できるような見通しのポートフォリオをつくると、今のお話で理解しました。それをつくった場合には、2024年までの間は内閣府の数値をとった場合には賃金上昇率+0%程度だと、そういうふうに評価すると理解しました。
 あと2つ、コメントですけれども、賃金上昇率と債券中心のポートフォリオの、あるいはモデルポートフォリオの利回りの関係というのは、内閣府の想定どおりになるかどうかというのは全然保証がないわけです。そういう意味では、果たして賃金をベースにするのががいいのかどうか。これは御検討いただければということで、ちょっと申し上げるわけですけれども、例えば債券100%にした場合の利回り+0.4%ということを目標にすることも考えられますし、あるいはカナダのCPPIBがやっているように、長期のモデルポートフォリオのリターンを上回ることを目標とする考えもあります
 仮に2024年以降、賃金上昇率+1.7%が稼げるようなポートフォリオがあるとして、そのモデルという意味でMと言いますと、そのMポートフォリオのリターンを上回るように、足下10年について各運用機関で工夫するという、3つの方法が、多分あると思うのです。内閣府の想定を、まさにフォワードルッキングに考える場合にこの想定をそのまま受け入れるかどうかというのはちょっと疑問があるのでと、例えば2番目、3番目の方法ということも御検討いただければなというのが1点です。
 もう一点は、やや細かい話なのですが、11ページの名目運用利回りの計算がよくわからないところがあって、これは多分10年満期の金利+0.4%、これで1.3%とか1.9%とかいう数値が出ているという理解でよろしいのですか。
○米澤座長 よろしいでしょうか、確認をお願い致します。
○山崎数理課長 今の後者の御質問ですけれども、11ページの下の※2というところに注がございます。名目運用利回りの設定は、長期金利に内外の株式等による分散投資でどれだけ上積みできるか(分散投資効果)を0.4%として、これを加味して設定の後、「また」とございますように、21年財政検証における設定と同様、長期金利上昇による国内債券への影響を考慮して設定ということで、これは新発物の金利が上がりますと、既に持っている債券の分は評価損が生じますので、マイナスが生じる。その要素を織り込んで、こちらの数値は設定しているということでございます。それで御質問のお答えになっていますでしょうか。
○臼杵委員 例えば平成26年から27年で新発債の評価損をこの中に。例えばデュレーションが7年とか8年とすると、そのデュレーション×金利上昇もこの中に入っているという理解でよろしいのですか。
○山崎数理課長 その中に込み込みに入っている。0.4%乗せて、一方でそのキャピタルロスの分も評価して、そこのマイナスも織り込んで、結果の数字がこれということでございます。
○臼杵委員 あと、インカムはどういうふうに設定されているのですか。例えば、10年国債の利回りが全部取れると理解されているのですか。
○米澤座長 インカムは取れる。
○臼杵委員 つまり、毎期、10年国債を満期で、翌年また10年国債に乗り換えていくという想定ですね。
○山崎数理課長 そういう感じのことです。
○米澤座長 キャピタルロスは入っている。
○臼杵委員 仰有ることはわかりますが、現実と少し離れているかなという気はします。その辺、債券で10年債のインカムが全部取れる。今のような想定を置けばこれで良いということだと思うのですけれども、もしも少し現実に添えるようなものがあれば、またちょっと御検討いただければと思います。
○森大臣官房参事官 臼杵先生が言われた前半の話でございますけれども、まさに運用の世界で言うところの上振れと下振れの確率の同等性、マルチンゲールみたいな話と、シナリオで物事が動いていく世界というのをどういうふうに考えていくかという話でございます。
 報告書本体の19ページでございますけれども、1つはGPIFの話でございます。経済環境や市場環境の変化が激しい最近の傾向を踏まえれば、基本ポートフォリオの乖離許容幅の中で、市場環境の適切な見通しを踏まえ、機動的な運用ができる旨明確にするということがございます。それとかなり類似した考え方なのですが、今回の「積立金基本方針に盛り込むべき事項」の1ページ目の一番下でございますが、モデルポートフォリオと各運用主体のポートフォリオの関係です。モデルポートフォリオの乖離許容幅の中で、各運用主体が基本ポートフォリオを定めるというところでございまして、ここにおきまして臼杵先生が言われた2番目の考え方みたいなところも十分考える余地があるのではないかと考えております。
○米澤座長 はい。
○小島委員 運用目標をどう設定するかということですが、従来から、厚生年金では、今回示されているような実質的な運用利回り、名目賃金上昇率+αという前提で運用目標を示して、それに基づいてGPIFが運用してきた。今回の実質的な運用利回り1.7%が高いか低いかという議論はあるかと思いますけれども、専門委員会でGPIFからの意見も踏まえて1.7%を想定したのかどうかわからないですが、GPIFが1.7%をクリアできるかどうかは課題ではないかと思います。
 なお、GPIFは今までそういうやり方でやってきたけれども、共済はそうなっていなかったので、今回、同じような実質的な運用利回り1.7%ということをベースにしたモデルポートフォリオなり、基本ポートフォリオをつくるということにうまくなじむかどうかが課題だと思います。
 特に、地共済には連合会と、それを含めて6つの管理運用主体があるので、トータルで実質的な運用利回り1.7%をクリアすることでいいということになるのだと思いますが、各共済の管理運用主体はこれでおおむねいいと理解されているのかどうか。そこはどうなのでしょう。
○米澤座長 これはどなたに聞けばよろしいですか。というか、森参事官、考え方は各主体にこの目標を与えるということで。
○森大臣官房参事官 事務局としましては、今回、同じ厚生年金の共通の財源ということでございまして、このような考え方で統一していただきたいという要請をいたしまして、今のところ各省庁におきましても御理解いただいているものと理解しております。
○米澤座長 ほかに。時間の関係もありますので、後半の「積立金基本指針に盛り込むべき事項」も含めて。どうぞ。
○浅野委員 先ほど年金の運用は長期だから、あるいは超長期だからということで、10年先の理想的な姿を描いて、それに合わせた運用をすればいいというお答えだったと思うのでが、長期的な観点で運用するということと、足下を無視するということは全然違います。足下を無視して先のことだけ考えるということでは運用はできません。長期的な観点で運用するというのは、足下の経済情勢なりマーケットの情勢を踏まえて、1年や2年じゃなくて、5年なり10年運用するにはどうしたらいいかということを考えることであって、現実に運用する主体として、今、運用しないといけないわけですから、今のマーケットは無視できません。
 そうしたら、目標も今のところに合わせた数字で立ててもらわないとどうしようもありません。そんな10年先の議論では運用できないわけですからね。その場合どういう数字を置くのか。ただ、将来は運用利回りが高くなるから、今は少なくていいですよというのは、どうも先送りしているだけで、ちょっと問題だなという感じが否めません。
○米澤座長 はい。
○川北委員 現実において、どういうふうなポートフォリオ、モデルポートフォリオなのか、基本ポートフォリオなのかは今後議論していくわけですけれども、差し当たってはモデルポートフォリオですか。そのときに、この専門委員会でも私としては多少議論したつもりなのですけれども、資料2の報告書の11ページにある見通し、特にTFPを踏まえて12ページのケース分けをつくったわけですけれども、これもある意味では内閣府が描く、日本の経済が再生していくのだというシナリオのもとで書かれた数字なわけですね。
 ただ、現実に議論するときには、基本モデルポートフォリオを策定するときには、これ以外のシナリオもある程度描いて議論していかないと、単に内閣府が描いたから、それを信じて、そこに向かっていくのだというのでは問題です。もちろん、リスクシナリオも多少考慮しているわけですけれども、それだけでは受託者としてある意味では無責任だと思うのです。だから、現実にモデルポートフォリオを議論するときには、これ以外のリスクシナリオも踏まえて議論していただきたいと私は思っています。
 それでは、どういうシナリオを描くのかというのは、ここで議論してもいいわけですけれども、時間的な制約もあるし、余り本筋じゃないのでやめますけれども、少なくとも内閣府のモデルは、特に足下10年間、TFPが今の0.5から1.0に上がっていくことを前提に書かれているわけで、そういうことが本当に何%の確率であるのかも踏まえた議論をしていただきたい。繰り返しになりますけれども、これは私の意見というか、要望です。
○米澤座長 1つ確認したいのは、目標としては賃金上昇率プラス1.7%ですけれども、それ以外、ポートフォリオを策定するときに何か縛っていることはないと私は理解するので、それと整合的なポートフォリオをつくるということで、短期のための5年だけのポートフォリオですよ、いや、10年先のポートフォリオですよということを余り区別しなくていいのではないだろうかという感じを持っています。
○浅野委員 具体的に今、債券の利回りが1%行かないような中で、物価も賃金も上がってきている。そういう今の経済情勢、マーケットの情勢を前提にして、賃金上昇率+1.7%のポートフォリオを組みなさいといわれても、それは不可能です。それは将来のことですよ、10年先のことだから、それはつくっても現実はどうするのですかということになってしまうのではないでしょうか。では、10年先のポートフォリオはこうですけれども、今はこういうポートフォリオでやるのですよとなってしまうのでしょうか。そういうことも認めるのでしょうか。でないと、実際、運用する側としては困ってしまうわけですね。10年先のポートフォリオで今、運用しなさいと言われても、全然合ってないではないかとなってしまいます。
○米澤座長 ただ、今、賃金上昇率は0%だと、名目目標利回りがプラス1.7%ですね。そこは、債券だけに分散効果を足す。1.7というのは多少高いですけれども、全く見当外れに高いということではないと思いますが、いかがでしょう。
○浅野委員 では、この資料2の11ページの数字は関係ないと。
○米澤座長 いや、足下はこれで評価することになると思います。
○浅野委員 でも、1.7%を達成しろというなら、1.7%で評価しないと。
○米澤座長 目標としては1.7%ですけれども、足下に関しては前回と同じように。
○浅野委員 でも、それじゃ矛盾するのではないですか。やはり目標との関係で評価しないといけないわけだし。
○米澤座長 ごめんなさい、これまでの足下のところも目標で評価してきましたね。1.1ですけれども、それで直近は評価してきたということですね。
○浅野委員 確認ですけれども、この11ページの数字は関係ないと。
○米澤座長 関係ないというか、評価するときには1.7で評価するということでいいのではないでしょうか。賃金上昇率+1.7。
○浅野委員 それで評価するとしたら、この数字は関係なくて、賃金上昇率+1.7があくまで目標になると。
○米澤座長 今までそういう方法で。
○川北委員 私の理解は、これは専門委員会で確認したのですけれども、この数字は何なのですかということを議論しまして、その結果として13ページから14、15に参考として内閣府の試算がついている。だから、この内閣府の試算のような経済が達成できるのであれば、この数字はそんなに変な数字ではないでしょう。でも、仮に賃金上昇率+1.7が達成できなかったとして、要因は何なのでしょうというところを検証しにいかないといけない。それは、内閣府の目標利回り、目標値とかなりかけ離れた世界が生じてしまった。例えばそういうケースだってあり得るわけです。
 そういうことで説明をしないといけないし、逆に言うと、そういうこともあり得るということで、ひょっとすれば1.7に届かないかもわからないけれども、あえて多少リスクを押さえたポートフォリオをつくるということだって考えていかないといけないのではないかというのが私の理解なのです。
○米澤座長 はい、臼杵委員。
○臼杵委員 私も賃金+1.7というのは、賃金と長期金利の間が1.3あるという状況で初めて成立している話で、そこの状況について運用期間は何らコントロールできないと考えると、最初の10年に関して、基本的には賃金を外すほうが、例えばさっき申し上げたように債券+0.4というほうがより現実的かなという気がします。
○米澤座長 森参事官、どうぞ。
○森大臣官房参事官 多分、今のお話は、1つは名目でどう考えていくかという御議論だと思うのです。確かに今、数字を見ていただくとわかるのですけれども、過去10年ぐらいにつきましては割と長期金利が低かったこともございまして、実質的な運用利回りで考えれば十分に年金財政に貢献してきた。
 今回も名目賃金上昇率を1つ基準として使うことによりまして、実際、経済がどう動くかに追随でやる。内閣府のシナリオがございますが、この報告書で書いていただいていますけれども、一つのシナリオでは危ういから複数のシナリオでリスクを検証せよとございますけれども、不確実な経済に応じて名目的な運用目標利回りについては、フローティングで+1.7%で動いているわけでございますので、むしろ名目賃金上昇率を基準にして、そこから+1.7%を考えていくほうが、経済の動きに即応して運用目標が変わっていくし、適切に評価できる世界なのかと考えております。
○米澤座長 よろしいですか。
○臼杵委員 それは、過去10年はそうだったということですね。もちろん、今後10年、そういう状況もあるかもしれないけれども、そうじゃなくなるかもしれない。それについては、運用するほうはコントロールできない。さっきの話じゃないけれども、賃金にマッチするような試算がないですから、そこだけ申し上げておきたいと思います。
○米澤座長 おっしゃるとおり、これは以前も同じような話があって、賃金という試算がないので、それをヘッジするのは難しいと言ったのですけれども、過去、賃金の上昇率と名目金利はかなり高い相関を持っているのですね。これが唯一の救いなのです。何を言いたいかと言いますと、名目利回りプラス何とかがもし追いかけていけるのであれば、多少精度は悪いですけれども、賃金上昇率+αを追いかけていけないことはないというのが、過去の経験です。ですから、繰り返しますけれども、それは長期金利+何とかのほうが運用のほうとしてはやりやすいのですけれども、両者はかなり高い相関を持っていますので、結果としては賃金上昇率を追いかけていくこともできないことはないと理解しています。
 ここのところは、議論しても余り出てこないかもしれませんので、一旦、終わりにして、このほかで特に後半の盛り込む点に関して、ぜひ言及したいことがございましたら。川北さん、お願いします。
○川北委員 確認的なことですけれども、例えば盛り込むべき事項の2ページ目にそれぞれの運用主体が基本ポートフォリオを含む管理運用の方針を定めるということを書いておりまして、その中にモデルポートフォリオからそんなに離れてはいけないという制約も別途あったと思うのです。そのときに今までと異なったアセットクラスを独自に組み込むことができるのか。例えば有識者会議で出ているREITみたいなもの、もしくはインフラ投資みたいなもの。そういうものをどういうふうに考えるのかということ。もう一つは、貸付金のように独自に今までもやってきているものがあるわけですけれども、これの位置づけをどういうふうに読むのか。これが1点です。
 もう一点、3ページの一番上の行ですけれども、企業経営等に与える影響を考慮し、株式運用において個別銘柄の選択は行わないことと書いてあります。これは、どこかに自主運用ということが書いてあったと思うのですけれども、自主運用を行うに際して個別の銘柄の選択は行わない。ですから、インデックスファンドみたいなもの、もしくはETFみたいなものを買うのですよということを言われているのか。
 この2点です。
○米澤座長 森参事官。
○森大臣官房参事官 1点目の話でございますけれども、現行でも、例えばGPIFは今回、インフラファンドにつきまして例えば外国債券でやるとか。あと、今、御紹介ございましたように、各共済につきましては貸付金等を国内債券で整理するとか。そういういわゆるアセットクラスに関するところにどのぐらいたがをはめるかという話につきましては、現行いろいろなお取り組みがあるかと存じております。
 また、どの程度アセットクラスのリスク、リターン特性を維持するかどうかにつきましては、これは一般的な資産運用の知見もございますし、あとアセットクラスにつきまして、例えばモデルポートフォリオで設定する場合にどの程度制約するかにつきまして、各共済なりGPIFのほうで考えていただくか、さような問題なのかなと受けとめております。これが1点目でございます。
 3ページ目につきましては、まさに先生おっしゃるとおりでございまして、委託運用につきまして、銘柄選択なり銘柄を選択しないと、これはアクティブ運用になりませんので、あくまで自家運用における話でございます。
○米澤座長 大分時間も過ぎていますけれども、ぜひ確かめたいというものがありましたら。小島委員、どうぞ。
○小島委員 盛り込むべき事項について、2の積立金の資産の構成の目標に関する基本的な事項の1ページの一番下、ここはモデルポートフォリオと各管理運用主体がつくる基本ポートフォリオとの関係です。「例えば」という表現になっていますが、モデルポートフォリオの目標の乖離許容幅内で基本ポートフォリオを定めるなど、とされています。そのくらいの範囲内であれば、モデルポートフォリオと基本ポートフォリオの関係は一体性が確保できるという考え方だと思います。
 そうすると、モデルポートフォリオに乖離許容幅をどのぐらいとるかということも出てくるのではないかと思います。これは、許容範囲をどのぐらいまで認めるかという話になってくる。例えばモデルポートフォリオで債券を60%として、乖離許容幅をプラス・マイナス10%とした場合に、アンダーで言うと50%までは認められるという形になります。その上で、基本ポートフォリオで債券50%にして、乖離幅をプラス・マイナス10%とすると、40%まで認めるという話になり、幅としては20%の実質的な許容範囲ができてしまう。それでもいいのか、この辺をどう考えるか。ここはGPIFなどの管理運用主体で調整するという話になるのですか。
○米澤座長 今の段階で何か想定されていることは、ここに書かれている以上にありますか。
○森大臣官房参事官 あくまで、ここにつきましては、厚生年金保険事業の共通の財源としての一体性と創意工夫ということで、1つの方法としまして乖離許容幅の中で基本ポートフォリオを定めることを申しましたので、具体的にそこをどうするかにつきましては、現段階では考えておりませんし、またそれは今の表現ですと各主体において考えていただくということだと存じております。
○米澤座長 臼杵委員、どうぞ。
○臼杵委員 今の点ですけれども、もちろん乖離許容幅ということを全く否定するわけではありませんけれども、さっき参事官から御説明のあったように、債券100%のポートフォリオに比較して、賃金上昇率を下回る確率がそれを上回らないということをリスクの定義にしようとするのであれば、それを守るように各運用機関で留意すればいいのかなという気がします。
○米澤座長 この辺は、ここまで書き込んでありますけれども、実際のモデルポートフォリオを策定するのはこことは違う主体が行うので、そういうことも添えて申し送っておけばいいのかなと思います。森参事官、よろしいでしょうか。
○森大臣官房参事官 はい。
○米澤座長 山崎委員、どうぞ。
○山崎委員 一番最後に「主務大臣は」とありますけれども、管理運営主体についても同じことが言われているのですが、財政の現況及び見通しを作成されたとき。これは、財政検証のことだと理解すればよろしいのでしょうか。その他必要があると認めるときは、どういったことを想定されているのかということですが。
○米澤座長 森参事官、お願いしましょう。
○森大臣官房参事官 ポートフォリオにつきまして、例えば市場の構造的な変化がございましたら、主務大臣側で本指針について変更することとかはあるかと存じます。山崎先生おっしゃるとおり、基本は財政検証でございますが、そのほかの場合でも必要に応じ変更できるよう、本規定を置いておるということでございます。
○米澤座長 どうぞ。
○山崎委員 これまでいろいろ論争のようなことがあったのですが、この「その他必要があるときは」という考え方を弾力的に運用していただければいいのではないかなと思っております。
○米澤座長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。まだいろいろありそうな感じもしますが、大体出尽くしたのかなという感じもします。
 本日の御議論を踏まえまして必要な修正を行いまして、それらを含めた報告書の案について、次回議論していただきたいと思います。そういう流れでよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○米澤座長 ありがとうございました。
 それでは、予定の議事が終了しましたので、本日の審議を終了したいと思います。
 事務局のほうから何か連絡事項がありましたらお願いいたします。
○森大臣官房参事官 次回の開催につきましては、また日程調整させていただきまして御案内いたしたいと存じます。
○米澤座長 はい。では、どうもありがとうございました。


(了)

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