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2014年4月24日 第14回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会(議事録)
労働基準局安全衛生部労働衛生課
○日時
平成26年4月24日
10:00~12:00
○場所
厚生労働省専用第17会議室
○出席者
公益代表(敬称略)
神山宣彦、土橋 律、永井厚志、山口直人 |
労働者代表(敬称略)
伊藤彰久、上原幸作、近藤之、真島勝重 |
使用者代表(敬称略)
明石祐二、浅井宏行、桐明公男、本多雅之 |
事務局
泉陽子 (労働衛生課長) 、中山鋼 (主任中央じん肺診査医) 、松崎淳人(中央じん肺診査医) |
○議題
1 開 会
2 議 題
(1)粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案要綱について
(2)じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究について
(3)その他
3 閉 会
○配布資料
【資料1】諮問文(粉じん則 | |
【資料2】粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案(概要) | |
【資料2】(参考)粉じん則別表第1、第3 | |
[資料3]じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究 | |
【参考資料1】屋外における岩石等の研磨 | |
【参考資料2】屋外における岩石等の研磨・ばり取り作業等に係る調査研究報告書(H25.3月分) | |
【参考資料2】研ま・ばり取り作業で発生する粉じんの測定(H25.8月分) | |
【参考資料3】じん肺健康診断等に関する検討会 報告書 | |
【参考】じん肺部会委員名簿 |
○議事
○土橋部会長 時間になりましたので、「第14回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会」を開催いたします。皆様におかれましては、大変お忙しい中当部会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は小畑委員、川原委員、梅原委員から御欠席の御連絡を頂いておりますが、その他の委員は御出席いただいておりますので、労働政策審議会令第9条第1項及び第3項により定足数を満たしております。なお、御欠席の梅原委員は、この4月に藤原委員に代わって新しく委員になられましたのでお知らせしておきます。
後ほど参考人として、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の芦澤和人教授に御出席いただくことになっております。議題に入る前に、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○主任中央じん肺診査医 資料の確認をさせていただく前に、事務局で人事異動がありましたので御紹介させていただきます。中央じん肺診査医として諸冨の後任で参りました松崎です。
まず議事次第、裏に資料が載っております。資料1については、粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案要綱に係る諮問文となっており、別紙も付いております。資料2は、粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案(概要)です。こちらは1枚紙です。その次から参考として2枚紙が付いております。これは粉じん障害防止規則の関連条文抜粋ということで、粉じん作業の定義とマスクを着用させる業務について、別表第一、別表第三という形で掲載しております。
資料3は、じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究(概要)です。こちらが1枚で2ページものです。参考資料1については、前回、去年の11月22日の部会で、名古屋教授から御提案させていただいた調査結果の報告書の概要になっており、それを改めて掲載しております。これが1枚紙で2ページものです。
参考資料2は、これも前回、昨年の11月22日の第13回のじん肺部会で報告させていただいた報告書です。参考資料2は2つありまして、昨年の3月3日に報告されたものが、全部で59ページまであります。参考資料2として、その後の追加の調査結果を去年の8月取りまとめたものが付いており、19ページまでとなっております。参考資料3は、じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会報告書です。こちらが14ページまでです。一番最後に参考として、本日付けの安全衛生分科会じん肺部会の名簿が載っております。資料の不足等ありましたら、事務局までお知らせいただきますようお願いいたします。
○土橋部会長 本日の議題は、粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案要綱についてです。省令案については、厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛ての諮問案件であり、当部会において審議を行うこととしたいと思います。事務局から御説明をお願いします。
○労働衛生課長 「粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案要綱」について御説明します。私から概要を御説明して、資料に基づく詳細な説明を次にさせていただきます。
従来から粉じん障害防止対策については、労働安全衛生法、じん肺法などに基づいて、粉じん発生源対策、じん肺健康診断の実施など、それぞれの時代の科学的知見に応じて、必要な対策を講じてきたところです。このような対策、関係の皆様方の御努力によりまして、じん肺の新規有所見者数は大幅な減少を示してきました。しかし、これまで以上に新規有所見者数を減少させるためには、新たな視点に立った粉じん障害防止対策についての検討が必要という状況です。こうしたことから、厚生労働省では、早稲田大学の名古屋教授に調査研究をお願いして、屋外における岩石等の研磨・ばり取り作業などについて、呼吸用保護具の使用対象にすべきか、について検討をするための調査研究をしていただいたところです。この結果については、第13回のじん肺部会において御報告しました。それに基づいて部会からは呼吸用保護具を使用する作業として、法的に規制することが適当であるとの御意見を頂いたところで、それに基づいて今回粉じん障害防止規則についての所要の改正を行うというものです。詳細について担当から御説明しますので、引き続きよろしくお願いいたします。
○主任中央じん肺診査医 引き続きまして私から御説明いたします。資料1は諮問文となっております。中身は、その次に付いている別紙になっております。粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案要綱です。第1にあるように、これまでは屋内に限定していたのですが、事業者は屋外において手持式又は可搬式動力工具(研磨材を用いたものに限る)を用いて、岩石又は鉱物を研磨し、又はばり取りする作業に労働者を従事させる場合にあっては、当該作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならないものとするということで、施行期日については、今年の7月1日から施行ということで考えております。
具体的には資料2を御覧ください。資料2の最初に改正の趣旨が1として載っております。こちらについては、先ほど課長から御紹介させていただきましたが、おさらいの意味も含めて、参考資料1を御覧ください。参考資料1、昨年の11月22日のじん肺部会で、名古屋教授から御報告していただきました概要になっております。
こちらの中段以降に2.調査の概要とありますが、調査の対象として岩石の研磨・ばり取り、鉱物の研磨・ばり取り、金属の研磨・ばり取り、金属の裁断作業について、屋外に設けた実験用の作業場や、現に労働者が従事している事業場の屋外作業場の調査を行ったというところでした。
次のページに調査結果が載っており、上のほうに結果があります。岩石や鉱物の研磨・ばり取り作業につきましては、実験場、現場とも管理濃度超えの割合が非常に高かったと。逆に金属の研磨・ばり取り作業、金属の裁断作業については、ほとんど管理濃度超えの割合はなかったということを踏まえて、4.の調査結果を踏まえた方針ということで、岩石の研磨・ばり取り作業、鉱物の研磨・ばり取り作業については、有効な呼吸用保護具を着用することが必要ではないかということ。金属の研磨・ばり取り作業、金属の裁断作業については、特段、追加すべき特別な対策は不要ではないかということを御提案させていただいて、当日の部会で御承認いただいたということです。その元になっているのが参考資料2です。
こういった経過がありまして、資料2に戻りますと、「改正の趣旨」の2、3段落目辺りが、今、私のほうで御紹介させていただいた内容です。平成24年度の厚生労働省の委託研究や、平成25年度の厚生労働科学研究費におきまして、屋外における岩石や鉱物の研磨・ばり取り作業について調査を行って報告書が取りまとめられて、その報告書について、昨年の11月22日に開催された第13回のじん肺部会に報告されて、その部会で屋外における岩石・鉱物の研磨・ばり取り作業については、有効な呼吸用保護具の使用が必要であるとの意見が示されました。これを踏まえて、有効な呼吸用保護具の使用が必要な粉じん作業の範囲を見直すため、粉じん障害防止規則について所要の改正を行うものということです。
裏の「参考」に「粉じん障害防止規則 関連条文抜粋」とあります。ここで別表第一に粉じん作業というのがどういうものかというのが列記してあります。該当する部分については、2ページの七号です。研磨材の吹き付けにより研磨し、又は研磨材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、若しくは金属を裁断する場所における作業が、作業の大元になっております。
さらに3ページ目に「呼吸用保護具の使用」として、当該作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならないとする作業が、別表第三に挙がっております。今回該当するのは六号になります。先ほど御説明した別表第一第七号に掲げる作業のうち、「屋内、坑内又はタンク、船舶、管、車両等の内部において、手持式又は可搬式動力工具(研磨材を用いたものに限る)を用いて、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する作業」を改正するものです。
資料2の改正の内容を読み上げますと、現在「手持式又は可搬式動力工具(研磨材を用いたものに限る)を用いて、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する作業」に労働者を従事させる場合にあっては、「屋内、坑内又はタンク、船舶、管、車両等の内部」において、当該作業を行う場合のみ、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならないこととなっていたところです。今般、当該作業のうち、岩石又は鉱物を研磨し、又はばり取りする作業については、屋外でこれを行う場合にも事業者は労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならないこととするというものです。
公布については5月の上旬、施行については7月1日を予定しております。資料の説明は以上です。
○土橋部会長 ただいまの御説明を踏まえて、皆さんから御質問、御意見などありましたら伺います。いかがでしょうか。
○伊藤委員 労働側からになりますが発言させていただきます。屋外での岩石・鉱物の研磨・ばり取り作業について、有効な呼吸用保護具の使用を義務付けることは、労働者の保護に資するものであり妥当だと考えます。今回の規則の改正は、労働者の生命、健康に深く関わる事項ですので、7月1日の施行ということですが、施行に当たっては十分な周知と履行の確保に取り組んでいただきますよう、お願い申し上げて、労働側としては省令案の要綱を了承したいと思います。
○土橋部会長 ほかにいかがでしょうか。ほかに御発言はありませんか。御意見がないようでしたら、ただいまの「粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案要綱」について、当部会では妥当と認めることとしますが、よろしいですか。
(異議なし)
○土橋部会長 ありがとうございました。御異議がないようですので、この件については、労働政策審議会令第9条第2項に基づいて議決したものといたします。以上の審議の結果、「粉じん障害防止規則の一部を改正する省令案要綱」については、当部会として妥当と認めることになりましたので、その旨の報告を私から労働政策審議会安全衛生分科会長宛てに行うこととしたいと考えますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○土橋部会長 ありがとうございました。そのようにさせていただきますが、その報告文については、私に一任させていただくということでよろしいですか。
(異議なし)
○土橋部会長 ありがとうございました。そのようにさせていただきます。続いて、議題2、じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究について、事務局から説明をお願いします。
○主任中央じん肺診査医 資料3に基づいて御説明させていただきます。こちらの研究については、本年度から3年間の計画で、長崎大学の芦澤教授に研究代表者として、厚生労働科学研究として行っていただくものです。恐らく、その3年後の結果が出てきたときに、こちらの部会にお諮りして、御意見を伺っていく形になるかと思います。
資料3の2段落目に、現在のじん肺健康診断について書いてあります。現在のじん肺の健康診断については、画像所見としては、胸部レントゲン写真のみを撮ることになっております。そのほか、じん肺の作業歴、職歴の調査、胸部に関する臨床検査、肺機能検査等の方法は行うのですが、特段胸部CTを撮るという状況にはなっておりません。ただ唯一肺がんの合併症が疑われた場合のみCTを撮ることと。一応、規定上はそうなっております。一方、一般の診療における胸部画像検査では、胸部CTが診断において広く利用されており、じん肺健康診断における胸部CTの活用促進を求めていく御意見があります。このような状況の下というところから、参考資料3を御覧ください。
平成22年5月13日付けで取りまとめられたじん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会の報告書です。こちらはどういった経緯で取りまとめられたか御紹介させていただきます。2ページの「第1 はじめに」の下から2段落目、今般、環境大臣から中央環境審議会に対し「石綿健康被害救済制度の在り方について」の諮問が行われ、同審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会において、石綿肺に関する最新の医学的知見等が示され、石綿健康被害救済法の趣旨に照らした石綿肺の取扱いに係る考え方等が検討されたということを契機にして、じん肺の検査や基準について改めて見直しが行われたというのが経緯です。
この検討会のメンバーを御紹介させていただきます。13ページに検討会の委員が載っております。京都大学の中原教授は公衆衛生の先生ですが、中原教授が座長です。阿部先生、岸本先生、工藤先生、坂谷先生と呼吸器内科の御専門の先生方がメンバーとして入っております。
この検討の中で写真についても議論はされているのですが、こちらの検討の主な内容としては、こちらを検討する前に、日本呼吸器学会が基準の見直しを行っておりまして、6ページの6行目に、2001年に日本呼吸器学会が提案したものを用いることが妥当と書いております。呼吸器学会が提案した内容を踏まえて見直すタイミングにあったということもあり、こちらの報告書の多くの紙面は、肺機能検査の内容について見直しが行われ、その内容が記載されております。
ただ、一部画像検査についても検討が行われており、3ページの後半から4ページの前半にかけては、胸部エックス線写真についてのコメントが主です。4ページの3段落目からCTについて記載されております。胸部CT写真については、検査の普及が進んでおり、またじん肺に係るCT写真の国際的なガイドラインが発刊されている一方、これからが課題の3点ですが、放射線被曝量が単純エックス線写真に比べて高いという課題が1点です。
2点目は、事業者がじん肺健康診断の費用を負担するということ。これが課題の2点目です。3点目が読影技術の普及が必要であるということです。この3点について問題提起した上で、現時点において、胸部CT写真の検査をじん肺健康診断における検査として位置付け、全ての対象者に対し、一律に検査を行うのは妥当ではないという方向性が示されました。
また、上述の国際的なガイドラインは、専門家により編集されたものであるが、ILO等において定められるものではないと。しかしながら、じん肺の所見を的確に把握するためには、胸部CT写真の画像所見も有用であることや、現行において、じん肺の合併症の検査の1つとして位置付けられており、一部のじん肺健康診断の受診者において、肺がんに関する検査としてCT検査が実施されていることも踏まえ、引き続きじん肺の所見の有無は胸部エックス線写真により判断することを基本とし、既に撮影されたようなCT写真がある場合は、参考にとどめておくことが妥当という方向性が、この検討会で示されました。ただ、上記の状況を踏まえながら、胸部CT写真の取扱いについて、引き続き必要な情報収集に努めることが必要であるとされたということです。
資料3、こういう状況を踏まえて、中段にある段落に、このため、胸部CT写真でないと適切に診断できないような事例があれば、そういう事例の収集・分析を含めて、胸部CTの有用性を検証して、適切な診断手法の確立を目指すということと、先ほどの3つの課題、胸部CTによる被曝リスクに関する知見の収集や、事業者の費用負担、読影技術の普及方策について調査・検討することにより、今後の法令改正等の必要性を検討する上での基礎資料とするということです。こちらの研究で、今まで単純エックス線写真のみを写真としては義務付けていたのですが、今後、CT検査を導入するかどうかという検討を、この3年間で行っていただく内容となっております。具体的な中身については、芦澤先生のほうから御紹介いただければと思います。
○参考人 長崎大学の芦澤と申します。今日はよろしくお願いいたします。資料3のほうで既に御説明があったかと思いますが、じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究を今回担当させていただくことになりました。
基本的な主な目的としては、じん肺の診断が単純写真で行われておりますが、診断能の確信度をより上げるというのが1点です。それから、そのじん肺における合併症、特に肺がんなどがありますが、それに関する診断能を上げることを目的としております。
そのために資料3の下にフローチャートがありますが、基本的なところは過去の症例をたくさん収集することによりまして、じん肺と、そのじん肺に非常に類似する疾患が多数ありますので、その鑑別診断を、実際読影実験等を行って、CTと単純写真の診断能を比較するのが1点です。
2つ目は、単純写真自体で0/1、1/0の境界の症例はたくさんあると思いますので、そういうものに関する適切なCTにおけるクライテリアを作成できないかということで、定量的な評価も含めて、CT画像の基準みたいなものを作成できないかと考えております。
もう1点は、CTを用いる場合にはどうしても線量が問題になりますが、現在は低線量CTで撮像されることが比較的ルーチンとなってきましたので、その低線量CTで、通常の線量に比べて画質や診断能が落ちないかということを、読影実験を行って、それに関しても検証することが右側のフローチャートになります。
以上、前回のじん肺の検討会で御指摘を頂いている被曝量に関する問題、費用の問題、読影能の向上性に関するものを少しでも解決できる方向で、このような研究を行っていきたいと考えております。簡単ですが、以上説明をさせていただきました。
○土橋部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問などありましたらお願いいたします。
○明石委員 先生の研究は是非やっていただきたいと思います。懸念点の2番に事業者がじん肺健康診断費用を負担すると書かれておりますので、どのぐらい現行から費用が増えるかどうか分かりませんが、地方へ行くと、労働力不足とかで未入札工事が結構あって、やはり、中小がこういう工事をやっている所に関しては、この健康診断もコストがかなり上がるとできなかったりすることがあると思います。それは逆に言うと雇用問題につながりかねないので、是非、事業者へのヒアリングも加えていただければと思います。
○土橋部会長 何かありますか。よろしいですか。それでは伊藤委員お願いします。
○伊藤委員 今の御質問にも関連する話です。今回の調査研究の概要で、コストベネフィット解析も行うということで非常に期待をしております。この場合のコストベネフィット解析というのは、どういったことが視野に入っているのかをお教えいただければと思います。今日の話でも、合併症の早期発見とか、そういった観点で言えば医療費へのメリットという面もあると思います。確かに検査費用についてのコストは高くなるという面もあるだろうし、様々あり得るのだろうと思います。もしかしたら、退職者については検査費用は自己負担になるのでしょうか。いろいろあると思うのですが、コストベネフィット解析の視野に入れている所があれば教えていただきたいと思います。
○参考人 分かりました。現在診療報酬のほうでは、胸部単純写真に比べますと、CTは大体約2倍ぐらいの費用がかかります。一方では、今、人間ドックのほうで低線量CT検診というのが肺がんに対して、任意ですが行われています。この検診は、私の長崎も含めて全国で5,000円~1万円ぐらいを出してもらって検査を行っているのが実状です。
低線量CT検診の費用というのは、例えば技師の人件費とか、CTの減価償却とかを試算されて、CT検診学会というのがありますが、その学会との中で大体そのような値段が設定されております。
一方、多分問題となるのは、肺がんなどが見つかる頻度に関してです。通常の日本で行われている非喫煙者も含めたCT検診では、単純写真の約10倍肺がんが見つかることが分かっております。大体、単純写真で人口10万対30ぐらいとしますと、その10倍の300人ぐらいが見つかることになります。さらに班研究の1つ前の研究で、石綿の患者さんやじん肺の患者さんでは、肺がんの頻度が一般住民に比べると頻度が高いという結果が出ておりますので、このじん肺検診においてCT検診をしますと、恐らくたくさんの肺がんの患者さんが見つかると思いますので、それは早期発見をしますと、その後の医療費の削減にはなるのではないかと考えております。
もう1つは年齢の問題があります。これは特に被曝との問題があります。通常の人間ドックのCT検診では、日本の代表的な研究者の報告によりますと、50歳以上では、被曝よりも肺がんが見つかるベネフィットのほうが大きいということになっています。40代の女性に関しては少しボーダーラインというところがあります。特に最初にターゲットを退職者の方にする場合には、年齢に関するハードルといいますか、問題は恐らく解決できているのではないかと思います。最終的な被曝やコストを含めて、分担研究者の中に五十嵐先生にお入りいただいて、コストベネフィットの専門家でいらっしゃいますので、その先生に解析をお願いすることにしております。以上です。
○土橋部会長 よろしいですか。
○主任中央じん肺診査医 補足いたします。先ほど退職者については自費ではないかというお話でしたが、離職されて、健康管理手帳を申請するとき、基本的に1回だと思うのですが、1回そのときには自費で検査を受けていただきますが、そこで手帳の交付対象になりましたら、あとは国費でずっと受けていただくことになります。
○土橋部会長 よろしいですか。
○伊藤委員 事務局にも御質問させていただきます。資料3によりますと、今回の調査検討することにより今後の法令改正等の必要性の検討を行う上での基礎資料とするとされておりますが、当部会でも、胸部CT検査導入の必要性について議論を行う機会があるということで、それはよろしいでしょうか。
○主任中央じん肺診査医 冒頭で御説明しましたが、基本的には3年間計画の研究で、3年後に研究結果が出てきたら、こちらの部会にお諮りして御意見をお伺いすると。導入するかどうか、また導入した場合にどういう条件でやるかという部分について、委員の先生方からも御意見を伺って対策をとっていきたいと思っております。先ほど明石委員からもお話がありましたが、その間も事業者等の御意見も伺いながら、研究を進めていただきたいと思っております。
○伊藤委員 できましたら、今回の検討に先立って行われた中環審の検討の中でも、胸部CTの有用性が指摘されています。その一方で、放射線の被曝量の問題が懸念といいますか、デメリットという形で出ているということも承知しております。そういう意味で、より有用な手法を採用することは重要だと思っております。一方で被曝量も看過できない部分ですので、あと費用が事業主にかかるということも承知していますが、労働者の健康確保を第一に調査研究を慎重かつ迅速に進めていただいて、適切な措置が取られるように取り組んでいただきたいと思います。以上です。
○土橋部会長 ほかにいかがでしょうか。
○神山委員 芦澤先生には専門家としてお忙しい中で、こういう調査研究を3年間というのは大変だと思いますが、是非、進めていただきたいと思います。1、2質問させていただきたいと思います。1つは、平成22年度の報告書が一番後ろに添付資料でありまして、先ほど説明いただいたのですが、その4ページで、結論的に言及されていて、従来、国際的なガイドラインというのは専門家によって編集されたものがあるが、ILOによって定められているものはないということで、前回、少しネガティブな表現がされていたと。今回も計画書の真ん中辺りに、国際的なガイドラインが発行されていると書いてありますが、ILOはその後変化はなく、発行はされていないわけですね。
○参考人 そうですね。日下先生たちのグループが英語で教科書を書かれておりますが、実際のところはILOでは採用されておりませんし、日本でも今のところは余りそれが使われている傾向はありません。
○神山委員 今回、3年間相当な症例で、もし得られた場合には、むしろ積極的に日本発のILOの設定に寄与できると期待できるのですが、そんなふうなところも1つあります。
もう1つは、最後のほうで、過去、CT写真でないと適切に診断できない事例を、今後この研究で最大限収集していかれるということですが、この辺の具体的な見通しみたいなものがあれば御説明いただきたいと思います。
○参考人 CT写真でないと適切に診断できないというのは、2つの観点があると思います。1つは存在診断です。中央じん肺診査医をしておりますと、単純写真ではどうしても一型に当たらないのですが、私たちが見ると明らかに粒状影があるということで、CTをお出しいただいている場合には、CTでは粒状影が確認できて、医学的にはじん肺と診断できるという症例を多数見かけます。存在診断に関しては、今、単純写真による分類がなされていますが、それに見合ったCTのレファレンス画像みたいなものによって、ある程度定量的とまでは言えませんが、グレードみたいな分類ができないかと考えております。
もう1つの問題は鑑別診断です。特に今、石綿肺に関しては非常に医学的にも問題になっておりますが、いわゆる下肺野の間質性の変化というのが、本当にアスベストによるものなのかどうかということを、どうやらCTではかなり病理との比較で鑑別ができていけそうだと。逆に言いますと、特発性間質性肺炎を含めて、いろいろな間質性肺炎の中では、本来の意味のアスベストーシス、アスベスト肺をきちんと診断できる可能性は極めて高いと思います。そういう意味で、CTでしか適切に診断できないと。鑑別診断のほうでも適切に診断できる症例がかなり絞られるのではないかと考えております。
○土橋部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、本日の意見を参考にして、今後の研究に取り組んでいただきたいと思います。議題として3番に「その他」とありますが、事務局から何かありましたらお願いします。
○主任中央じん肺診査医 特にございません。
○土橋部会長 それでは終了してよろしいですか。本日の部会は以上をもって終了といたします。なお、議事録については、労働政策審議会運営規程第6条第1項により、議事録には部会長の私と、私の指名する委員のお二方が署名することとされております。署名は労使代表1名ずつとしたいと思います。本日の議事録の署名は上原委員と浅井委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。皆様お忙しいところありがとうございました。以上をもちまして閉会とさせていただきます。
○労働衛生課長 今日の御審議に基づいて省令改正の作業をしてまいります。また、周知についても御意見を頂きましたが、今後、周知の取組を充実していきたいと考えております。どうもありがとうございました。
厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課
東京都千代田区霞が関1-2-2
電話番号: | 03-5253-1111(内線5495) |
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