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2014年3月11日 第8回「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成26年3月11日(木)15:00~16:20


○場所

厚生労働省専用第23会議室(6階)


○出席者

委員

今野座長 黒田委員 櫻庭委員 野田委員

事務局

中野労働基準局長
大西大臣官房審議官
村山労働条件政策課長
岡労働条件確保改善対策室長
鈴木職業安定局派遣・有期労働対策部企画課長
伊藤職業能力開発局能力評価課長
田中雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課長

○議題

(1)労働条件の明示について
(2)労働コミュニケーションについて
(3)その他

○議事

○今野座長 それでは、時間になりましたので、ただいまから、第8回「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」を開催いたします。

 本日は、前回議論した「転換制度」に続きまして、個別テーマとして「労働条件の明示」及び「労使コミュニケーション」について議論をしたいと思います。

 それでは、まず、委員の出欠状況と資料について、説明をお願いします。

○岡労働条件確保改善対策室長 本日は、神林委員、黒澤委員、佐藤委員、竹内委員、水町委員、山川委員から御欠席の連絡をいただいております。

 続きまして、配付資料ですが、通し番号になってございます。資料1-1、1ページ目が「労働条件の明示について」の関連資料でございます。それから、資料1-2が35ページ目からでございまして、「労働条件の明示に関する論点ペーパー」となってございます。40ページ目からが資料2-1で「労使コミュニケーションについて」の関連資料。51ページ目からが「労使コミュニケーションに関する論点ペーパー」となってございます。

また、53ページ目以降は前回までの懇談会の議論等を参考資料としてつけてございます。

 資料について、御不備等がございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。

○今野座長 それでは、よろしいですか。

 最初にきょうの進め方について御相談したいと思うのですけれども、労働条件明示という非常に重要なテーマでもありますが、残念ながら委員が少ないので、きょうはこの範囲内で意見を言っていただいて、次回もう少し、メンバーが集まったときに、もう一度残りの議論をさせていただくという形にさせていただければと思います。

したがって、やってみなければわかりませんが、いいかなと思ったらきょうはやめるというぐらいで進めたいと思いますので、無理して引き延ばしませんので、よろしくお願いします。

 それではまず、事務局から労働条件明示に関する資料の説明をお願いします。

○岡労働条件確保改善対策室長 それでは、御説明申し上げます。表紙をめくっていただきまして2ページをごらんいただきたいと思います。

 資料1-1で現行の規定と通達でございます。まず、労働基準法第15条では、使用者は、労働契約の締結に際し、労働条件を明示しなければならないとされております。また、具体的な明示事項につきましては、規則のほうで定めておりまして、その中で今回の多様な正社員に特に関連するものといたしましては、第1号の3の就業の場所及び従事すべき業務に関する事項、2号の労働時間に関する事項でございます。

また、直接ということではないかもしれませんけれども、退職に関する事項ということで解雇の事由も明示をすることになってございます。

 これに関しまして、次の3ページでございますけれども、通達のほうでその解釈を示してございます。

就業の場所及び従事すべき業務に関する事項については、規則の文言上特に時間的なスパンというのはわからないのですけれども、通達による解釈といたしましては雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りるものであるが、将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えないこと、としてございます。

 次に4ページをごらんいただきたいと思います。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成いたしまして、監督署に届け出ることになってございます。就業規則に定める事項については法律で網羅的に書いてございまして、関連するものといたしましては第1号で労働時間の関係について書くことになってございます。また、3号のほうで退職に関する事項を定めることになってございます。

 先ほどの第15条は就業の場所や業務について明示することになっておりましたが、就業規則の定める事項については、その2つは特に法令で決まっていないことになります。

 続きまして、5ページでございます。労働契約法第4条でございます。使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするとされております。また2項のほうでできる限り書面により確認するものとしております。こちらについても下に局長通達で解釈を示してございます。先ほどの労働基準法第15条の労働条件明示については、契約の締結時における明示が義務づけられていましたけれども、こちらの労働契約法4条については、それ以外の部分についての適用があるということでございます。

 (2)に書いてございますけれども、先ほどの労働基準法第15条第1項より明示が義務づけられている労働契約の締結時よりも広いということと、ウのところでございますけれども、締結前または変更前において、使用者が労働契約を締結または変更しようする際に提示する労働条件をいうということでございます。先ほどの労働基準法よりも広く解しているということでございます。

 また、次のページに書面で確認するというところの解釈についても、通達のほうで入れておりますけれども、イのところでございますが、労働契約が締結または変更されて継続している間の各場面が広く含まれるものであること。これは、労働基準法第15条第1項により労働条件の明示が義務付けられている労働契約の締結時よりも広いものとされてございます。

 今の労働契約法の成立過程については7ページ以降に解釈、参考としておつけしております。労働契約法をつくる際に、労働基準法の先ほどの第15条を契約法に移してくること、あるいは書面によって契約のときの書面を交わさないといけないとすることも検討されたわけですけれども、多様な規模や業種の企業、多様な雇用形態すべてについて書面による契約をというのはなかなか難しいのではないか。また、労働基準法は違反があった場合は罰則つきの義務ということで行政の監督というのもあるわけですけれども、なかなか民事法である労働契約法で、それを義務づけることは難しいのではないかということで、この時点では引き続き労働条件の明示については労働基準法にこれを委ねることといたしまして、労働契約法については、労働契約の合意原則に対応して合意内容を明確化することの重要性をうたった理念規定ということで、先ほどの4条を規定したということでございます。

 次の8ページ、9ページも同様なことが書いてございます。

11ページから他の法律でどういった明示義務があるかということで、参考としてお付けしてございます。

11ページはパートタイム労働法でございまして、こちらにつきましては、先ほどの労働基準法第15条第1項の明示義務の事項に加えまして、省令の方に落としておりますけれども、昇給の有無ですとか退職手当や賞与についても明示することになってございます。

 次の1213ページは労働者派遣でございます。こちらは使用者という意味もありますけれども、事業者という意味もあって、幅広く明示事項がございますけれども、派遣労働者が従事する業務の内容ですとか従事する事業所の名称、場所についても明示することになってございます。

 飛びまして14ページには職業安定法がございます。こちらも紹介事業者は、求職者に明示する事項として具体的には省令のほうに書いてございますけれども、労働者が従事すべき業務の内容あるいは就業場所、労働時間といったことについても明示することとされております。以上が法令やその解釈でございます。

 次に、以前この懇談会でも資料をお出しいたしましたけれども、実態についてでございます。職務限定、勤務地限定の正社員がいる事業所は非常に多いわけですけれども、ただ、就業規則や労働契約でそれを明確に限定を定めているというのはそれほど多くないということで、職務限定につきましてはこの円グラフの青いほうですが、約半分ぐらいは定めておるわけですが、逆に半分は運用で限定しているということでございます。

 また、右の勤務地限定につきましても、この青と赤の部分が就業規則あるいは労働契約で限定について定めておるわけですけれども、それを合わせましても3割ぐらいということで、それ以外のところについては限定された正社員がいるのですけれども、実際には運用で限定しているということでございます。

 次に、16ページをごらんいただきたいと思います。これは統計としては古い、10年前ぐらいのものになってしまいますけれども、企業が採用するときにきちんとその書面で明示しているかどうかということでございます。おおむね6割ぐらいは書面で明示していることになっていますけれども、4割ぐらいは書面にはよっていないという実態がございます。

 次に、17ページからこの懇談会で8社ヒアリングを行ってきて、また、追加して事務局のほうでもヒアリングをやってきましたけれども、その実態についてでございます。ヒアリングの対象企業につきましては、多様な正社員を導入する企業では多様な正社員を就業規則で明示している場合が多い。なお、勤務地限定と職務限定を組み合わせて定義する場合もあったということでございます。就業規則では大まかな限定の内容、定義を定めまして、個々の労働者に対しては就業規則を渡す、あるいは労働条件通知書や雇用契約書あるいは辞令や場合によっては同意書などによって、個々にその人がどの区分に当たるか明示するパターンが多かったということでございます。

 また、雇用区分によって賃金テーブルが異なる場合には、給与と連動するということで、給与明細書などで具体的な就業場所を示している事例もございました。

 次の18ページからが実際にどういった規定をしているかというヒアリングによる事例でございます。まず勤務地限定正社員を導入している事業場の記載例です。正社員は転居を伴う異動がある、あるいは勤務地は全国とする、勤務地の地域を限定しないといった書き方をしている例がありました。

 他方、勤務地限定正社員については、勤務する地域を限定し、転居を伴う異動をしないあるいは採用時に決定した限定された地区とする、通勤可能な事業所への配属とするといった書き方の例が見られました。

 職務限定につきましては、正社員については総合的な基幹業務を行うあるいは職務区分に限定はない、業務全般に従事すると規定した上で、職務限定については特定の分野の専門・基幹業務を行う、あるいは具体的に○○業務あるいは○○業務のいずれかに従事する業務の範囲を限定する。限定的な事務や営業補助業務といった形で規定する例がありました。限定といっても比較的広目の内容に読めるような限定が多かったということでございます。

 それから、勤務時間限定正社員の場合は具体的に時間が書いてございました。1週間の所定労働時間が何時間以上何時間以下あるいは正社員よりも年間の所定労働時間が短いというような規定でございました。

 次のページも同じように社員区分には社員の定義を書きまして、あるいは勤務地限定であれば具体的なエリアを示すといったような規定の例がございました。

 次に、20ページ、21ページをごらんいただきたいと思います。外側は就業規則で定義などを定める例でございまして、こちらは契約書のほうにどういった定めをしている例があるかということでございます。一番上は就業規則で限定された正社員の定義を書きまして、その上で、契約書のほうで具体的な就業場所を書くあるいは業務の内容を書くということになっておりました。また、あなたは○○社員ですといった社員区分を表記するといった例が見られました。また、先ほど同意書をとるということを申し上げましたけれども、その例といたしましては具体的にあなたは○○社員です、また、地域についてはここですというのを本人に示して、本人からも同意をもらうといった事例もございました。

 また次のページも同じでございます。就業規則で定義を書いて契約書あるいは辞令で具体的な場所や業務の内容を示すといった事例が見られました。

22ページの場合は就業規則には勤務地の限定の有無が書いていないのですけれども、慣例といいますか、総合職は全国転勤がある、事務職については通勤圏内の異動しかないという慣行がございまして、明文化されていないのですけれども、社員のほうはみんなそれを認識しているということで、採用の事例ですとかそういったところで具体的にどこの営業所だ、事務職何級で○○営業所と示されますと、その人はその営業所を含む地域に限定されるということがわかるという明示の仕方をしているところもございました。

 次の2324ページは厚労省の方で出しています労働条件通知書のモデルでございます。

25ページでございますけれども、勤務地限定、職務限定ということですが、職務とか勤務地が消滅した場合にどういう人事上の取り扱いをするかということが就業規則に書いてあるかどうかということでございます。事務局でヒアリングをした企業では、そういう規定があるという情報を得た企業にヒアリングをしたのですけれども、いずれも職務とか勤務地がなくなったら直ちに解雇というわけではなくて、いずれも配置転換などの雇用維持の措置を講ずるということが明記されていたり、あるいは明記されていなくてもそういったことをやった上で解雇している事例がありました。それが世の中の全てではないのかもしれませんけれども、たまたまヒアリングを行ったところは全てそういった事例でございました。

 まず例1でございますけれども、配置転換等が困難な場合に「解雇する」旨を定める例ということで、次のような場合には解雇事由の1つといたしまして、業務の縮小、事業所の閉鎖等に際し、通勤可能な範囲に事業所がなく、かつ本人の都合により異動が不可能で、継続雇用の難しい状況が生じたときに解雇になりますということで、これは勤務地限定、職種限定の正社員だけではなくて、正社員も含む全正社員に適用される規則でございます。

 例2は、配置転換等の措置を明文化せずに解雇する旨を定めた例ということで、事業の縮小その他事業の運営上やむを得ない事情により、社員の減員等が必要となったときは解雇するとなっているのですが、ただ、実際には運用上は配置転換などをしているということでございます。

 それから、例3も同じでございます。

 次に26ページをごらんいただきたいと思います。労働条件の明示あるいは就業規則の作成届出義務の今の違反状況でございます。年によって数が多少ばらつきがございますけれども、おおむね十数万の事業場に毎年監督に行っているわけですけれども、そのうち労働条件の明示、就業規則に関する違反がそれぞれ大体1割ぐらいあったということでございます。これを多いと見るか低いと見るかというのはあるのですけれども、やはり一定数の違反が見られるということでございます。

以上が実態でございます。

 続きまして、27ページからが規制改革会議の雇用ワーキング・グループの報告書と意見書でございます。5月に報告書が出された中では、就業規則においてジョブ型正社員の具体的な契約類型を明確に定めるとともに、契約条件として書面を交わし、明確にすることが望ましい。あるいは労働基準法第15条の明示義務、労働契約法4条2項の書面による確認等の諸規定の適用関係を整理しておくことが適当である。労働基準法施行規則第5条、さっきの法律15条ですけれども、就業の場所及び従事すべき業務に関する事項について、無限定正社員かジョブ型正社員かの別について明示を求めることなども検討課題となるだろうといったことが書かれてございます。

2829ページが昨年12月に出ました規制改革会議の意見書でございます。赤で囲ったところが労働条件明示の関係でございます。2の(1)はジョブ型正社員の雇用形態を導入する場合には就業規則においてジョブ型正社員の具体的な契約類型を明確に定めることを義務づける。(2)はジョブ型正社員を採用するときは、その契約類型であることを契約条件として書面で交わし明確にすることを義務づける。(3)が労働条件明示に関する現行規定、15条でございますけれども、労働契約締結時だけを対象としていると解されるため、ジョブ型正社員については、労働条件を変更する場合にも、変更内容を書面で明示することを義務づける。(4)は労働基準法施行規則第5条により労働者に通知することが求められる事項の1つである「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」につき、無限定正社員かジョブ型正社員かの別について明示することを義務づける。こういった意見が出てございます。

また、相互転換につきましても書面による明示を義務づけるということが提言されてございます。

 以下3031ページは産業競争力会議の報告書で、おおむね明示について同じような検討をすべきではないかということが述べられてございます。

33ページでございます。第5回の懇談会で労使の団体に来ていただきまして、ヒアリングを行ったときの労働条件の明示についての意見でございます。

まず、事業主団体のほうは、労働条件の明示義務の強化は、勤務地等が消滅した場合の使用者の雇用保障責任ルールの透明化とセットですべきだという御意見でございました。ただし、労働条件の限定の仕方は個別企業に委ねるべきで、なかなか限定が難しいケースがあるということが言われております。契約変更時の明示については、変更には明示義務というよりはむしろ個別合意が必要だ、そちらのほうを周知することのほうが重要ではないかといった意見が出されました。

 労働者団体のほうからは職種や勤務地を限定する場合には、労働者にとっての明確性、納得性の確保が必要ということで、書面による明示、その限定された職種や勤務地が消滅した場合にどういった対応をするか。下に書いてございますけれども、そういったものが消滅した場合でも解雇回避努力は尽くされるべきで、それを前提にいかなることをするかということを具体的に明示すべきだといった御意見が出されたところでございます。

 以上を踏まえまして、次の35ページからが「論点ペーパー」でございます。まず、「労働条件明示の義務付けの必要性、メリット」でございます。

まず、企業側の都合によって配置転換を命じられたり、あるいは限定された範囲外の仕事に従事させられるなど、契約の内容と実態が乖離したり、あるいは勤務地や職務を限定した趣旨を没却することがないようにするためには、その限定の内容について労働条件通知書や契約書等に明示されることが望ましいのではないか。

また、2つ目でございますけども、勤務地や職務等の限定が明確になることで、労使双方の認識や期待の相違によるトラブルの防止、あるいは従業員からの不満や不公平感を解消することができるのではないか。

 また3つ目でございますけれども、勤務地や職務等の限定が明確になることで、労働者が職業生活や長期的なキャリア形成のビジョンを持つことができるようになり、企業にとっても優秀な人材を確保することが可能となるのではないか。また、職務限定については、職務の範囲が明確になることで、労働時間の短縮、年休の取得率の向上といったことにもつながるのではないか。

 また、上記のメリットは、最初から限定された正社員として雇用される場合はもちろんですけれども、正社員から転換した場合にも当てはまるのではないかということでございます。

 次の36ページをごらんいただきたいと思います。今のようなメリットが考えられる一方で、義務付けをした場合の課題でございます。1つ目が明示を義務付けることで、企業による柔軟な人事労務管理が制約されることについてどのように考えるか。

 2つ目として明示を義務付けることで、1つ目と同じですけれども、企業の人事が制約されますので、企業が多様な正社員を活用しなくなることがないか、あるいは勤務地や職務の範囲を非常に広範に設定して、その結果として多様な正社員の趣旨が没却する可能性もあるけれども、これについてどのように考えるかという点でございます。

 3つ目といたしまして、限定して長期的なビジョンが持てるのはいい一方で、労働契約は長期間継続するものでございますので、明示された勤務地や職務が長期間にわたって固定されることが望ましいと限られない場合もあるものですから、職務や勤務地の範囲の変更ですとか契約類型の転換の制度を設けることも考えられるのではないか。

 4つ目といたしまして、この懇談会でも何回か話がありましたけれども、我が国においては職務の範囲が必ずしも明確ではなく、職務限定正社員の職務について非常に広範で明確でない場合も多いという事例が見られました。職務限定の明示について義務を果たしているかどうかを判断がなかなか難しいのではないか、そういった課題も考えられるということでございます。

 それから、これもこの懇談会で特に神林先生が何度かおっしゃっていましたけれども、労働契約や就業規則等で明記されているかどうか、それも必要なのですけれども、それだけではなくて運用、労働者の期待にどのように限定をかけるかという視点も必要ではないかといった課題も考えられるということでございます。

 以上のようなメリットと課題も前提としながら、先ほど規制改革のほうでもいろいろな提言があったわけですけれども、法令等によって明示を義務づけることについてでございます。

3の1つ目でございますけれども、労働基準法等において、将来にわたって勤務地や職務等を限定する旨を明示することを義務付けるという意見について、どのように考えるか。

 先ほど資料の中で御説明がありましたけれども、現行の労働基準法15条は当面の就業場所と業務を明示すればいいということになってございます。

 2つ目は、今と重なりますけれども、労働契約の締結時だけではなくて変更時にも、明示を義務づける意見についてどのように考えるか。

 3つ目は、就業規則において多様な正社員の契約類型を定めることを義務づけるという意見について、どのように考えるか。先ほどの説明にもありましたけれども、現行の労働基準法の89条では、就業場所や業務の契約類型については定めることにはなっていないところでございます。

 4つ目でございますが、多様な正社員を雇用する場合に契約類型について労働契約書に明記することを義務づける意見について、どのように考えるか。これについても今は法律で契約書を交わすことを義務づけるといったものはないということでございます。

 次のページ、38ページに今の法令等で義務づけることについての課題でございます。まずは労働契約や就業規則に明記することなく慣例によって現在限定をしている企業が非常に多いという実態がございますし、また、先ほど御説明申し上げましたように、労働基準法の15条や89条の違反も一定程度ある中で、罰則つきの規制であります労働基準法で明示を義務づけることについてどのように考えるか。また、その義務づけによってかえって多様な正社員を活用しなくなることや範囲を非常に広くとるといった制度の活用を阻害する可能性もあり得る中で、義務づけがどうかということでございます。

 2つ目でございますが、前述のとおり、労働契約の書面の交付ですとか変更時の労働条件明示について行うことが望ましいという考え方もあるのですが、他方、例えば契約社員やパートタイムなどほかの契約類型については現在明示の義務はない中で、この多様な正社員に限って法令で明示の義務づけをすることについてどのように考えるかという点がございます。

 3つ目でございますが、職務の範囲は明確でない場合が多い我が国の事情の中で、何をもって限定したといえるかどうかが必ずしも明確でない場合も多いわけですので、罰則つきの法令で義務づけることについてどのように考えるかといった課題がございます。

 次の39ページはその他ということでございます。先ほど資料の中で事業所閉鎖や職務がなくなった場合の対応について規定例を御紹介いたしましたけれども、そういったことについて明示することについてはどのように考えるかということが1点でございます。

 2点目は先ほどの規定例を要約した話でございますけれども、ヒアリングをした事例では就業規則で多様な正社員の区分ですとか定義を定めまして、個々の労働者に対しては契約書や通知書などでどの類型が適用されるかといったことを明示されるかという例が多く見られました。

 多様な正社員を含む契約類型の定義や労働条件についてハンドブックをつくってそれに明記をして、全従業員に配付している事例や、イントラネットで社員が見られるようにしているといった事例も見られました。義務づけ云々はちょっと置いておきまして、明示の方法についてはこういったさまざまな方法がありますけれども、今後制度を導入しようとする企業においては参考となるのではないかということでございます。

 3つ目でございますけれども、企業による多様な正社員に対する的確な労働条件明示に資するように、例えば労働条件通知書や就業規則の規定のモデルといったものを示すことも考えられるのではないかということでございます。

 以上でございます。

○今野座長 ありがとうございます。

 それでは、御意見をお願いします。どうぞ。

○黒田委員 ありがとうございました。

 今回ご用意いただいた資料は、各コースに関する各条件の明示をいかにするかということが大方の内容だったと理解していますが、さらに考えなければいけないのはコース転換する際の要件をどの程度明示するべきなのかという点も論点になるのかと思いました。

○今野座長 実質、コースについてちゃんと明示せいといったら、自動的にコース転換は明示だよね、そうなってしまうよね。もしそう言えばですよ。

○黒田委員 企業によっては転換できない、あるいは回数を制限するということもあり得るわけですよね。例えばあるコースからあるコースに変更したいという人は、前回の議論ですと生涯にわたり1回に限ってコース転換可能だとか時間限定に関してはフレキシブルにその都度のライフステージに応じて可能だとか、そういった議論があったと記憶しています。そうした詳細を明示するかしないかも恐らく関係してくるのではないかと思います。

○岡労働条件確保改善対策室長 今の点でございますけれども、確かに前回類型によっていろいろやり方もあるとか御議論がありまして、そちらの議論がまずあると思いますし、今回の資料では限定の種類とかそういうことばかり書いて、転換の条件といったところは記述しておりませんでしたけれども、そこもまた加えていきたいと思います。

○今野座長 ほかにどうですか。どうぞ。

○野田委員 勤務地、職務と限定をする旨を明示することを義務づけるか否かという話ですが、勤務地、職務と限定する旨を明示すると、勤務地と職務がなくなったときどうするのかという話になってくるので、雇用終了、解雇のいろいろな話も触れざるを得ないという話になるのですか。経営者団体と労働組合団体の話を聞くと、両方ともそこには余り触れたくないという感じが見える。経営者団体はもう透明化とか言っているけれども、私はたしか質問したのですけれども、透明化はどういうことと聞いたら何かうにゃうにゃ言っててよくわからなかったので、悪く言えば曖昧にというので、よく言えば労使自治でやってくださいという話なのですけれども、結局、そこに落ちつくという話になるのですか、その会合の話は。多様な正社員だけ取り出して何かルール化するというのは、後ろにも出ていましたか、確かにバランス欠いている気もするのでその辺はどうなのかなと。勤務地とか職務をちゃんと書くのだったら、終わったときの話も書かないとバランス悪いとは思うのですが、どうやったらとちょっと考えているのですけれども、済みません。

○今野座長 何か理屈としてはそうなるのですけれども、実際には、例えば限定の範囲を広目に限定する場合と、狭めに限定する場合とは全然ケースが違います。本当は、実は限定の仕方が極めて多様なので、出口を一律に決められないのです。限定すれば例えば仕事、事業所がなくなったときにこうなると原則を書いても限定が多様だからどうなのか。例えば、前からここでも話がありますけれども、職務限定をホワイトカラーとやってしまうと、そういうケースが意外に多いわけだけれども、あるいは営業でもいいですけれども、事業所はなくなりました。こっちに営業事業所がいっぱいあるではないかという話になってしまう。そことのセットだから一律に書けないのではないかという気がするのです。

○野田委員 書くべきではないかなと思います。

○今野座長 ずっとお聞きして思ったのですけれども、多様な正社員についての限定を明示するといったときに、多様な正社員、ここで言うとジョブ型正社員を入れるか入れないかは自由、それはいいのですね。必ず入れろではないですよね。そうすると、場合分けすると、入れている会社とない会社があるわけね。入れている会社の中で実態がある会社とない会社があって、実態がある会社の中ではルールでやっているのと運用でやっている会社がある。いろいろな場合分けがあるかと思うのですが、どうぞほかに。

○櫻庭委員 内容というよりは確認というか教えていただきたいということなのですけれども、26ページで労働条件の明示の違反事業数というのが結構な率であったかと思うのですけれども、これはどういうふうにすれば違反しているかということがわかるのでしょうか。労働基準監督官が監督に赴いたときにたまたま明示の瞬間があるわけではないように思うのです。労働契約の締結の場面に遭遇することはそんなにないように思うのですが、どのようにすればこの労働条件明示義務が果たされているかということを把握できるのかなと思いまして。

○岡労働条件確保改善対策室長 確かにその場面で見るということはできませんので、定期監督に行ったときにちゃんと明示しているかどうかをお聞きすることになるかと思います。

○今野座長 答えになっているような、なっていないような答えだったね。少なくとも文書はあるかとかいうのは聞くのでしょう。

○岡労働条件確保改善対策室長 はい。

○今野座長 文書がない場合だね。文書がある場合はわかるよね。

○岡労働条件確保改善対策室長 ただ、書面で明示するものとそうでないものもありますので。

○今野座長 そうすると、書面でない場合は、やっていますとかやっていませんと口頭で。

○岡労働条件確保改善対策室長 ちょっとそれはお時間いただきますけれども。

○今野座長 どうぞ。

○黒田委員 先ほどの話に戻るのですけれども、例えば事業所が閉鎖になった場合とかある職種がなくなった場合のことを想定して、どのくらいそれを明示的に書いておくかという点なのですけれども、そこの部分と先ほど申し上げたコース転換の条件をどの程度明示しておくかという点も深く関わってくると思います。コース転換の条件等を曖昧にしておいた場合、例えば勤務地限定の労働者が勤務していた工場が閉鎖になった際、そうであれば転勤型コースに転換したいと労働者が希望したら企業はどう対応するのかとか、あるいは研究職という職種限定で働いていて研究所が廃止になったときに、営業職への転換を労働者が希望した場合にどうするのかということもありますので、やはり労働条件の明示に関してはいろいろなことが複雑に絡まっているのではないかと思います。

○今野座長 私が先ほど事情は多様だと言ったのは、拘束する表現の仕方は多様だから多様と言いましたけれども、今、おっしゃられた変数ももう一個入ると、ますます多様になるよね。何か一律にますます書きにくいということ、総合的な判断をしてくださいということになってしまうのかもしれない。確かに、それも実際にそういう気持ちがなくても転換ルートがあったときに、そういう人を転換ルートに載せて、雇用継続できるかどうかということを企業は検討したっていいわけです。

 全く関係ない話なのですけれども、この限定のある社員をジョブ型正社員と言うの。何かジョブ型という言葉だと職務しかイメージしないよね。

○野田委員 いずれこれで出させるのはそういうのもあるでしょうけれども、どうなのかと思うということを申し上げたところで、表現上の問題です。

○岡労働条件確保改善対策室長 我々のほうは大半が正社員ということでいろいろな勤務地限定とかもあるのです。

○野田委員 何か違和感はありますねという。

○岡労働条件確保改善対策室長 ただ、政府全体の例えば規制改革ですとか共通の会議ですと、職務の専門性を高めて、それをスキルアップしてキャリア形成していこうと、そういう意味でジョブ型と言います。

○野田委員 でも、中小企業だと職務限定とかあるかもわからん、大企業でヒアリングして余りない、なかなか難しいという話ですよね、じゃないですか。

○今野座長 それも表現の仕方です。生産労働者というのだったら職務限定は幾らでもある。昔からありますからね。営業職とか事務系はもちろんのことですが、生産職から事務技術系に移るときは昔から系列変更と言っていた。だから、転換制度というのはあった。

○野田委員 でも、これだけ成熟した社会で新しいのをつくっていかないとあかんのに、職務限定でスキルアップしてと方向性が逆ではないかという気がしなくなかったりするので、全員が全員そういう働きをする可能性はないのですけれども、もちろん限定があって、人もあっていいし、ステップアップを望まない人もオーケーだと私もそう思いますけれども、何か全部職務を決めてしまうのがいいのだ、何か方向性の議論になっていくとするとそれは全部が全部はそれはおかしいでしょうと思ってしまいます。

○今野座長 それに関連して、先ほど言ったことはそういうことを考えて言ったのです。別に多様な正社員をつくる必要はないわけ。業務上の必要性とか社員の都合を考えてなくたっていい、あってもいい。そうすると一番最初に多様な正社員が、あるかないか、必要か必要ではないかというのがあって、ここで法的に何かつくれというかあるいはプロモーションをするかどうかの問題がある。さらに、あるとか必要だというときに実態としてあるのかないのかというケースがあって、実態としてあったときに慣行としてあるのかルール化されるのかがある。

そうするとこの明文化というのは、どのステップを言っているのかなと思っている。多分皆さんが思っているのは実態としてとあったときに、それを明文化してもいいかなと思うけれども、そのときにどの段階を明文化と言うのかと意識したほうがいいかなということでさっき言ったのです。何かありますか。

○岡労働条件確保改善対策室長 恐らく実態は限定しているのに何か曖昧にやっているというところを、本当にそういう合意としてそうなっているのだったらちゃんと明確にしていくという、そうするとトラブルもなくなるということだと思います。

○今野座長 ということはやらなくてもいいのだね。

○野田委員 いいんじゃないですか。

○岡労働条件確保改善対策室長 ただ、限定をもちろん広くしてしまうと余り意味はないのかもしれませんけれども、ちゃんと明確になっていれば他のことをやらなくていいかということもあります。

○今野座長 今言ったようなロジックでいくと、限定を広目にしようが狭目にしようが、そんなのは個々の労使が合理的に決めればいいという話になる。そのとき労使にとってみて一番合理的な範囲で決めればいいので、事前に狭くしろとか広くしろということを何かガイドラインでもいいけれども、もちろん法的には絶対に言えないのではないかという議論になる。そこで実態としてあるのにうやむやにするのはよしてよねという話だったらわかる。だから、ある会社がキャリア形成からみたら広目のほうがいいといったら、それはそれでいいよね。あるいは業務や市場条件を考えたら広目のほうがいいよねといったら、それはそれでいいということなのではないかと思うのだけれども、どうですか。

○黒田委員 明記されていないけれども、実態は限定正社員という運用がなされているという会社がデータでは半分ぐらいあるということでしたが、そうした実態で運用している企業のうち何らかのトラブルになって、それが労使の紛争に結びつくという事例は大体どれくらいあるのでしょうか。曖昧にしていてもこれまではうまくワークしてきたということであれば、曖昧になっているからといって明示すべきということもないという考えもあるかもしれませんので現状を把握しておく必要はあるようにも思います。

○今野座長 ますます柔軟になってきた。

○岡労働条件確保改善対策室長 残念ながらどれくらいトラブルになっているかという数字的なものはないのですけれども、ただ、ヒアリングの中でも不満があるという話が出てきたと思いますので、そういった意味では、明示されていないことによって弊害も生じていることは伺えるかと思っています。

○黒田委員 例えば、労働審判とか総合労働相談コーナーで、どういった内容でトラブルが発生しているのかということはある程度把握されているのではないかと思うのですけれども、山川先生がいらっしゃったらまたお聞きできるのかもしれません。

○今野座長 いずれにしても今の黒田さんの御意見は実態としてもあります。でも、文章、ルール化されていません、慣行でやっています。もしトラブルが多ければ明文化ということも考えましょう、トラブルがなかったらいいのではないという1個変数がふえたということですけれども、山川さんがいればいいのですけれども、ほかの方でもいいですけれども、これがないとすごくトラブルが多いのだというのだったら明文化でいきましょうというロジックだね。

 いずれにしても、今までのヒアリングでいくと大企業はもうみんなやっているよね、明示しているよね。やはり明示しないとトラブルもあるけれども、社員のモチベーションとかあるいはキャリア形成に影響が大きいので明示をしているということだと思うのです。そうすると、明示していないのは中小企業ということになるのですか。どうですか、統計なんかで見て。

○岡労働条件確保改善対策室長 先ほどの違反件数の規模とかそういうものも多分分類すればあるのかもしれません。

○野田委員 私、この違反ケースは一般的に少ないなと思います。どういうのが監督するのか私もよくわからないのです。私の直感で見ると少ないのではないかなとは思いました。単なる感想なので。

○今野座長 大体この明示については議論が出たような感じかなと思うのですけれども。ただ、もう一つ考えなければいけないのは、ワーク・ライフ・バランスとかいろいろなことを考えたときに、ここの最終報告書で多様な正社員を強制するわけではないけれども、やっていないところもちゃんと考えたらいいよみたいな出し方をするのか、あるいはそこは労使で勝手にやってくださいと、さっきの実態としてあって慣行がないところだけ明示してください程度にするのかという書き方の問題はあるかなと思います。我々としてプロモーションするのかね。

○岡労働条件確保改善対策室長 委員の方に御議論いただくので当方がどうこうということはないのですけれども、ただ、明示のところはさっきからありましたように、実態としては限定しているのに曖昧にしているものを明確にしていこう。ただ、導入するかどうかというところを義務づけるところはまた別でございます。メリットなどを知らずにまだ導入していない企業も当然あると思いますので、最後のまとめでメリットとかも書いて、今までやっていなかった企業において、うちも導入してみようかということになれば良いということは考えております。

○今野座長 ほかにどうですか。次に行く、野田さんいい、次行く。大体言いたいこと言った。いいですか。

○野田委員 済みません、今回無理ですけれども、ぜひともやらないとか試行制度を普及していったかというのもあらわれると思いますけれども、こういう多様な制度を入れないところ、入れる必要のないところをちゃんと調査、何でかなというのは面倒くさいでしょうけれども、もちろん調査してほしいなと、本当の比較ができないのでと思います。

○岡労働条件確保改善対策室長 それは制度を入れない理由でしょうか。それは前々回にそんなに精緻なデータではないですけれども、何で制度を入れないのかという調査で一番の理由は普通の正社員でも柔軟にやっているので特に不要ということでした。それでうまくいっているところもあるということです。

○今野座長 コミュニケーションに行こうか。お願いします。

○岡労働条件確保改善対策室長 では、41ページをごらんいただきたいと思います。

 まず、労働組合の組織率についてはよく御案内のとおり組織率は低下傾向にある。他方、多様な正社員のところはわからないですけれども、パートについては上昇傾向にあるということでございます。

 次のページに安定局のほうでやりました研究会でのアンケート調査でございます。組合への加入状況ということで、この調査ですといわゆる正社員が半分ぐらい加入をしている。多様な正社員についても4割強、他方非正社員の方については18.4%ということで、やはり限定はあっても正社員ということで、いわゆる正社員と近い数字になっているということでございます。また、限定の種類、職種限定、労働時間限定、勤務地限定と分けてございますけれども、特に限定の種類によって組織加入率に差があることはないということでございます。

 次の43ページでございますけれども、今加入していない人について組合があったほうがいいかどうかということを聞いた調査でございます。今、組合に入っていない人ではあるのですけれども、正社員、パート、アルバイト、契約社員、派遣の方も、いずれもぜひ組合は必要あるいはあったほうがいいということで必要性があると考えているということでございます。

44ページでは、労働組合を必要とする理由はどういった理由かということを聞いた調査でございます。これも形態別に聞いておりますけれども、いずれも雇用が守られる、あるいは労働条件が保障されるということで、組合が必要だということを答えております。

 次の45ページでございますけれども、今度は企業側に聞いたアンケートでございまして、どういった場合に労使コミュニケーションが必要かということを聞いた調査でございます。多かった答えといたしましては、日常業務の改善ですとかあるいは職場の人間関係を良好に保つという意味で、労使コミュニケーションが必要だと考えている企業が多いということでございます。

46ページでございますけれども、コミュニケーションを重視しているかどうか、4つグラフがございますけれども、まず(1)でございますが、コミュニケーションについて肯定的に捉えているところ、やや肯定的、やや否定的、否定的という4タイプに分けてございますけれども、肯定的に捉えているところは労使コミュニケーションがうまくいっているということで、問題が比較的少ないということになります。他方、否定型になりますといろいろな項目について課題があるということで、結果的に足し上げますと非常にグラフも長くなるということで、やはり労使コミュニケーションが大事だということがわかるのではないかと思います。

 (2)は経営側に従業員に意見を伝えるかどうかということで、これも当たり前かもしれませんけれども、肯定型のほうがそうだと答えているところが多いということでございます。

 (3)も当たり前の結果なのかもしれませんけれども、従業員の経営への協力度がどうかということで、コミュニケーションを重視している企業については、従業員は協力的だと答えております。

ということで、全体といたしまして労使コミュニケーションがうまくいっているところのほうが、雇用管理もうまくいっているということが伺えるかということでございます。

 また、次の47ページは組合があるところですとか、組合はないけれども、ほかの形態でそういった従業員の組織があるところ、又は組織がないところと分けておりまして、それぞれどういったコミュニケーションの内容、コミュニケーションの手法をとっているかということを書いてございます。

48ページが懇談会でヒアリングを行った企業においてどういったコミュニケーションが行われていたかということでございます。労働組合がある企業では組合との定例の労使協議の他、そういった多様な正社員などの制度を導入することについて、労使であらかじめ検討会を開きまして検討したり、あるいはその制度について全従業員へ説明するなどの取り組みをしていただくという事例が見られました。また、組合がない企業においても例えば互助会の従業員代表に説明をしたり、あるいは制度について協議を行っている事例が見られたということでございます。以下その具体例を書いてございます。

49ページは組合がない事業場で、先ほど互助会とかそういったところでという話がありましたけれども、そういった事業場で過半数代表を選出する場合どういうふうに選出しているかということで聞いたアンケート調査でございます。多くの場合は選挙や話し合いによって決めていたという反面、会社が指名してきたところもあるということでございます。

50ページでございますが、労使コミュニケーションについてのこの懇談会での労使ヒアリングでの意見でございます。まず、事業所団体のほうは新しい社員制度をつくるに当たっては制度設計は経営が行うけれども、導入変更に当たって組合と協議して合意することが基本だという意見がありました。また一般論として組合がない企業では従業員に説明をして、テーマによっては同意をとるなど、適正な手続のことでの変更が行われているという主張がありました。

 組合側、労働者団体側からは労働者のライフスタイルや規模に応じたワーク・ライフ・バランスにも資する働き方として、この多様な正社員が活用されるためには、導入に当たって労使間で十分なコミュニケーションがなされて、相互理解が醸成されることが不可欠だと述べておりまして、両者とも労使コミュニケーションは重要だということは意識は一致しているところでございます。

 そういった実態、意見などを踏まえまして52ページが論点でございます。

 まず1つ目ですけれども、各企業における多様な正社員制度について労使双方にとって合理的で納得できる仕組みとすることや、制度の円滑な運営のためには労使の話し合いや従業員への十分な説明が重要である。企業ヒアリングでは、多様な正社員の制度導入や運営について組合がある企業では、組合への労使協議、労使による検討会での検討、全従業員への説明などが行われていた。先ほど申し上げた点でございます。また、組合のない企業では互助会の代表への説明・協議が行われている事例があったということで、企業によっては組合がありますし、いろいろな組織がありますというのがありますけれども、今後制度を導入する企業では参考となるのではないかということでございます。

 また、労使コミュニケーションを通して多様な正社員制度を検討することが、労使が納得できる公正な制度、処遇につながるのではないか。

 多様な正社員を含むさまざまな雇用形態をカバーする労使関係を確保する仕組みについてどのように考えるか。

 また、組合がない企業においても先ほどいろいろな例を申し上げましたけれども、労使コミュニケーションが可能とする仕組みについてどのように考えるかということで、余り対立するような論点はないと思いますけれども、以上のような論点が考えられるということでございます。

 以上でございます。

○今野座長 どうぞ。何か議論しにくいよね。何か労使でしっかり話し合うことが重要だよなで終わりとか。

○野田委員 お話ししてください。

○岡労働条件確保改善対策室長 今回のヒアリングでも転換の条件とか限定をどうしているか、そちらのほうは非常に細かく聞いたのですけれども、この部分についてはそんなに事前の話し合いでもヒアリングのときも十分聞けなかったということはあるのですけれども、ただ、いずれもちゃんとやっているということでしたし、そんなに労使で対立するような論点ではないのかなというふうには思います。

○今野座長 これはどういう多様な正社員の制度を設計するかということよりか、そこに行き着くまでちゃんとどういうふうにコミュニケーションをとるかということですから、出口はどうであっても、それはしっかり話し合ってくださいということだよな。それのほうがいいよなと。

○野田委員 それに関すればそれしかないですよね。

○今野座長 どうぞ。

○黒田委員 限定コースを設けている企業は労働組合も複数あるところが多いのでしょうか。もし、大体1つだとすると多様な正社員が普及した場合、コース別に利害関係が異なるような事態が発生する場合も増えていく可能性があるかと思います。ヒアリングなどで多様な正社員を設けている企業の中で単一の組合しかないところで生じている何かコース間のフレクションみたいなものがないかどうかということを調べてみるのも必要かと思います。

○今野座長 何かありますか。

○岡労働条件確保改善対策室長 恐らくヒアリングを行った8社は第2組合があるところもあるかもしれませんけれども、基本的には1つの組合に正社員も多様な正社員も入っていて、だからこそ賃金差もそんなに設けなかったのではないかと思いますけれども、ただ他方、曖昧だったり不満が逆に生じている原因もあるのではないかと思います。

○黒田委員 例えば会社存続の危機で経営のスリム化を図らなくてはならないといったときに、勤務地限定正社員は自分が勤務する工場が閉鎖されるのは非常に困るわけですけれども、全国転勤型を選んでいる正社員はどこかの工場を閉鎖しさえすれば自分の雇用は守られるということであれば、工場閉鎖のほうに一票を投じるということもあるわけなので、そういった場合にかなりコース間で意見の相違が出るのではないかと思います。

○今野座長 論理的には考えられるね。

○野田委員 それはかえって議論が活発になっていいのではないですか、逆説的ですけれども。

○岡労働条件確保改善対策室長 ヒアリングしたところでは、今のところそういう事態がないということと、あと1社、製造業のところは経営が厳しくなったときにそういう制度を導入したということで、賃金が下がって不満に思っている人もいるということではあったのですけれども、ただ、みんなで雇用を守っていこうということで何とか同じ方向に向けたということです。それ以上の状況になってどちらを切るとかという事態には今のところなっていないので、そういう場面になったらどうかというのは、確かにわからない面がございます。

○今野座長 今、黒田さんが言われたのをどうやって整理しようか。つまりそういう事態になったとしてもコミュニケーションの問題としてはコミュニケーションしなさいということなのだよな。そうすると、どういうふうにくくればいいのかな。つまり出口の政策については組合員間でいろいろな利害関係はあるのは、それはいいですよね。それはいいのですけれども、一応ここのテーマは労使コミュニケーションなので、そこがどうあろうが労使で最後手を打つにあたっては、どうしたらいいかということにはちゃんとコミュニケーションしなさいと、あるいはこういうふうにしなさいということだと思うのだよね。

 多分現実としては、例えば総合職と一般職の賃金差をどうするかなんていうときには、組合員の中ではいろいろな意見があるはずだよね。それをまとめて組合が1個の案をつくって、会社として交渉してある制度をつくる。ここは組合がある案をつくってきて、会社側とどういうふうにコミュニケーションをとっていい制度をつくるか、そこから先の話がここのテーマだな。ですから、どういうふうに扱えばいいかなと考えている。

 多分、正社員と非正社員の問題は、実際上は大きいものではないかと思うのだけれども。いずれにしても、今までヒアリングした範囲内でそういうことの利害関係でものすごくトラブって、なかなか制度設計がうまくいかなかったというような例はどうもなかったということのようですよね。

○黒田委員 今の岡室長のある製造業に関するご説明の御説明は、例えば工場を閉鎖したときにもどこかの工場に転勤させるという形で雇用を保護してきたということだと思います。もしそうだとすると、あえて勤務地限定正社員というのをここで一生懸命広める意味がどこまであるのかというところに何かまた議論が戻ってくるのかなというふうに思います。

○今野座長 先ほど出たように組合のあるほうが、例えば限定社員と非限定社員の賃金差は小さいかもしれないよね、実際。それは内部のコンフリクトを考えて小さくしているという可能性はありますよね。ほかにありますか。このままでいくとここの論点はしっかりコミュニケーションをとってくださいで終わりになる。

○櫻庭委員 黒田先生が御指摘の点というのは制度導入のときもそうだけれども、制度運用していく過程で労使コミュニケーションをどういうふうに図ることができるかが問題になるということかなと思ったのですけれども、そこはヒアリングでは出てこなかったということなのですか。

○岡労働条件確保改善対策室長 余りここの点は。

○野田委員 聞いてもなさそうでしたね。言いたくないのか、ないから入れて出てきているのか。そもそも述べていたら出てこないのではないかという、ここでサンプルセレクションが加わっている可能性があるので聞いても余り別にないという話が多かったですね。

○今野座長 今回ヒアリングしたのは、大企業で組合もあって、もしこういう多様な正社員を入れるというのは非常に大きな労働条件の変更なので、それはほかのテーマと同じように重要な事項だからちゃんと話し合って、いろいろな不満があるかもしれないけれども、ちゃんと合意をしてやったということなので、トラブらなかったという意味だと思います。だから、組合の中ではもしかしたらいろいろな議論があったのかもしれないです。

○櫻庭委員 黒田先生がおっしゃったような事例で、誰かを解雇しなければいけないとなったときに、誰を被解雇者として選定するかということが現実の問題になったとして、限定正社員の人がいて、その人たちを選定することがいいのかどうかということを組合が話し合う場合に、そのコンフリクトをどういうふうに解決したらいいのかとか、もし裁判になったときに組合が合意したことをどういうふうに評価したらいいのかという形では問題になってくると思います。

○今野座長 そうするとここでのテーマとすると、今のところは労使でコミュニケーションをちゃんとやってくださいというのはいいのだけれども、こうしてくださいよねという点で何かあれば議論が前に進むのだけれども、ないと議論が進まないよね。何かある。

○今野座長 いっぱい議論しなさいとか、時間を使いなさいとか何でもいいのだけれども。何かそういういいアイデアが何かない。

○岡労働条件確保改善対策室長 議論がずれてしまうかもしれませんけれども、JILPTのほうで、山川先生とか水町先生が入っていました従業員代表制の検討会がありましたけれども、そのときは多様な正社員とかという話はなかったのですが、非正規の人などの意見を聞くためにということで、複数代表にするとか、あるいは従業員代表の人が公正代表ということで、自分たちの立場だけではなくて他の雇用形態の人の利益も代表する。もちろん代表になったからにはちゃんと身分、雇用も保障される、そういったことでまずは交渉する人にいろいろな立場の人が入る、その人がいろいろな立場を代表できるといったもの、これは義務づけることは難しいですけれども、お勧めということになるのかなと。1つはそういうことがあるかと思います。

○今野座長 それは一般論で言うと多様な正社員の人たちの声がちゃんと反映できるように何か考えなさいということね。ほかには。なければやめるかな。もう原則は決まっているからね。

 それでは、きょうは前半と後半ありましたが、通しで何かありましたら御意見いただいて。

○櫻庭委員 済みません、意見というわけではなく、先ほど議論になった点で、トラブルになっている事例がないのかということだったのですけれども、裁判では、職務が限定されているようなタイプの労働者について、それ以外の職務への配転を命じられて、その効力が争われた例というのももちろんあるのですけれども、そういう場合は有効になることも多い。というのはまさに限定が契約上されていないので、看護師の方が看護の助手まで配転されたというときに、看護師という形でははっきりは特定されていないので、一応配転の権限があることは認められて、一定の恣意的な濫用に至っていない限りは有効と認められるということです。

 そういう柔軟な運営を確保したいがために限定しないという実態が日本の社会では広がっており、労働者が職務が限定されているのではないかと期待されている状況でも、やはり使用者側は配転を命じられるということで判断がなされてきたと。ですので、この資料の中で出てきていたと思うのですけれども、職務を限定しないことについては、柔軟な運用を確保できるというメリットが優先されてきた実態がこれまであった。それが裁判において反映されているということをつけ加えたいと思います。

○今野座長 どうぞ。

○黒田委員 教えていただいてありがとうございます。それは、労働者にとって不利益変更でなければおおむね有効とされるという理解でよろしいでしょうか。むしろ労働者にとって明らかに不利益になるような変更の場合は、裁判の場合は無効になるけれども、雇用を守るためとか雇用者にとって何らかの利益となる変更であれば曖昧な中でそういった変更をすることは日本の裁判所は認めてきたという理解でよろしいでしょうか。

○櫻庭委員 必要性の高さということを一方で考えて、不利益の大きさも考えるのですけれども、雇用確保のための配転であれば有効と認められることが多いと理解できると思います。

○今野座長 ほかに言い残したこと、いいですか。

 じゃあ、終わりにしようか。お願いなのですけれども、きょうの資料の説明を休まれた委員の人にしていただいて、次回特に前半のほうが重要だと思いますけれども、2つのテーマについて少しまた時間をとってもらって議論をする。そのときには説明はしない。これを説明したら大変だから。それでもう一度議論しましょう、そんな進め方のほうがいいですよね。

 じゃあ、そういうことできょうは労働条件の明示と労使コミュニケーションについての議論は前半戦が終わったということで、後半戦はもう一度やらせていただくということにさせていただければと思います。

 それでは、きょうはこれでいいのかな。いいのですよね。次回の日程をお願いできますか。

○岡労働条件確保改善対策室長 また次回の日程につきまして現在調整中でございますので、決まりましたら御連絡いたします。

○今野座長 特に次回は優先順位をつけるわけではないけれども、出てこなかった人が出られることを優先して、それで設定をしてください。

 それでは、これで終わります。ありがとうございました。


(了)

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