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2013年9月13日 第21回ILO懇談会

大臣官房国際課

○日時

平成25年9月13日(金) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省共用第9会議室(19階)


○出席者

労働者側

桜田 高明 (日本労働組合総連合会国際顧問)
新谷 信幸 (日本労働組合総連合会総合労働局長)
市川 佳子 (日本労働組合総連合会総合国際局長)

使用者側

横尾 賢一郎 (日本経済団体連合会国際協力本部長)
松井 博志 (日本経済団体連合会国際協力本部副本部長)
間利子 晃一 (日本経済団体連合会国際協力本部)

政府側

伊澤 章 (厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当))
堀江 裕 (厚生労働省大臣官房国際課長)
林 雅彦 (厚生労働省大臣官房国際課統括調整官 )

○議題

○報告案件
議題1 第102回ILO総会について
1)政府からの報告
2) 意見交換

○協議案件
議題2 2013年 年次報告について
 1)政府からの説明
  2)意見交換

○議事

議題1:第102回ILO総会について 

伊澤総括審議官(国際担当)からの挨拶、林統括調整官からの出席者紹介に引き続き、政府側より資料1に基づき第102回ILO総会の概要報告がなされた。

 

○ フィジーの第87号条約違反案件について

(労働者側)

フィジーの第87号条約違反案件について、総会基準適用委員会(以下「条勧委」)の個別審査では様々な問題が指摘されていたが、とりわけILOのダイレクトコンタクトミッションが、2012年9月にいわば門前払いされるような形で国外退去を命じられて以来、再訪を果たせていないということについては、各国政労使から遺憾の意が表明されたところである。現時点ではミッション再訪の件について何らかの具体的進展があったとの情報はなく、それどころか、総会後にはストライキが行われないよう使用者側が労働者側に圧力をかけたという情報が入ってきている。総会や理事会の政労使三者で合意して取りまとめた結論が守られないということであれば、当然さらなる対応として、憲章26条に基づく審査委員会を設置して、専門的かつ集中的に対処するということも検討せざるを得ないのではないかと思っている。この問題について、何か最新の情報があれば共有させていただきたいし、日本政府としてどのようなスタンスで望まれるかについても、現時点でお考えがあればお聞かせ願いたい。

 

(政府側)

第102回総会終了翌日に開催された第318回理事会における議論の結論として、 フィジー政府に、2013年10月理事会までの間にダイレクトコンタクトミッションを受け入れるよう求めることと、2013年10月理事会でこの問題を議論することが決定された。その後の調整については、おそらくILOとフィジー政府との間で調整が行われていると考えているが、現時点で我々政府としてILOからの情報はとくに持ち合わせていない。10月理事会までの間に、議題資料として最新情報が提供されると考えている。

いずれにしても、政府としては、これまでも、フィジー政府がILOのダイレクトミッションを受け入れ、本件が早期に解決するよう主張してきているところである。今後もILOからの資料あるいは他国の動向を十分に勘案しつつ、対応について検討してまいりたい。

 

○ ILO100周年に向けた取組について

(使用者側)

 事務局長報告において掲げられた、ILO100周年に向けた7つの優先事項とこれに関する取組について、多くの政労使から賛意が表されたとガイ・ライダー事務局長がおっしゃっていた。日本政府代表としても積極的に参加し、ILOをよりよいものにしていく方向で議論のリードをしていただきたいと思うし、その際、日本の政労使それぞれの立場からも100周年に向けて意見を出し、共有させていただきたい。

 

(政府側)

 100周年に向けて今から準備を進めていかなければならないと思うし、そのためにILO事務局も相当力を入れてくると思っている。そういうなかで、日本として、政府だけでなく労使ともにILO100周年関連行事にどう貢献していけるか、そのことによって日本のプレゼンスをどう高めていけるかについて、非常に重要な問題認識を持っているので、基本的な考え方の方向性としてまったく反対するものではない。具体的にどうするかはこれから考えていかなければいけないと思うので、引き続き議論をさせていただきたいと思う。

 

○ 総会基準適用委員会(条勧委)について

(使用者側)

 次の議題とも関係してくるので、今後日本政府及び労働者側あるいは使用者側全体として、いわゆる条約勧告適用専門家委員会(以下「専門家委」)の権能と総会における条勧委のあり方について、それと今回のメインの議題である既批准の条約に対する政府の報告に対して、日本の労使は本来どういう意見を出していくべきかについて、考え方を可能な範囲で共有していきたい。というのも、使用者側としては、専門家委が言っていることはあくまでもひとつの意見であって、拘束力がないということを従来から主張してきており、専門家委の見解に対し、本来、政府として反論すべきことはもっとするべきではないかと考える。今年は日本の案件が取り上げられなかったが、来年はどうなるかわからないので、この点について今回、意思統一を図りたい。

 

(政府側)

 これは非常に難しい問題をはらんでいる。そもそも専門家委の役割、条勧委との関係については、ILO全体のなかでの議論もまだ決着していないので、使用者側、労働者側のご意見も慎重に聞かせていただきながら、政府のスタンスを検討したいと考えている。先ほど専門家委のオブザベーションに対してどこまで日本政府として反論するかという話があったが、やはり日本の考え方あるいは日本の制度について理解をしてもらうことは重要だと思うので、単に言い訳ではなく、十分に日本の制度を説明し、理解していただいた上で、議論していただけるよう対応したい。

 

(労働者側)

 専門家委の権能の問題、条勧委のあり方等については、理事会も含め今後しっかりと議論をしていくということになると思う。また、たしかに専門家委に拘束力はないし、それは専門家委も自ら認めそのように述べているが、いま政府側からあったように、反論ではなく実情を伝え、誤解があればしっかりとそれを解くことは必要であると思っている。ただ一方、あまりにも国内事情というものが表に出てくると、ILOが掲げるディーセントワークの実現が困難になるといった危険もあると思っている。こういった点から、ILOと各国政府が、社会的パートナーも含めて、できるだけ納得できるように対話を重ねていくということが一番重要だと思っている。

 

 

議題2:2013年 年次報告について

資料2-1から5に基づき、第81号条約、第100号条約、第122号条約、第142号条約及び第159号条約について説明がなされた後、意見交換が行われた。

 

○ 第81号条約

(労働者側)

労働安全衛生現場に対し安全衛生パトロールを実施する労働災害防止指導員制度が廃止され、かわりに、安全衛生パトロールは実施せず、会議室内で議論を行う安全衛生労使専門家会議が都道府県労働局に設置された点について、都道府県労働局安全衛生労使専門家会議には、労働安全衛生現場の専門家が集まっているのだから、労働安全衛生現場に対する安全衛生パトロールを実施し、現場の視点を活かした労働災害防止対策を図ってもらいたい。

また、新規労働基準監督官の採用について、国家公務員の定数削減が労働基準監督官の採用に影響している点は承知しており、全国3,961人の監督官が日々業務に努力していることは認めるが、この数字は全国の事業場数、雇用労働者数と比べ、余りに少ない。国家公務員の定数確保については、難しい点もあると思うが、必要な労働基準監督官数を確保してもらいたい。

 

(政府側)

都道府県労働局安全衛生労使専門家会議については、労働安全衛生現場に対する安全衛生パトロールの実施なども重要であると考えている。

 労働基準監督官数については、十分に確保していくことが必要であると認識しているので、皆様のバックアップのもと、厳しい財政事情ではあるが、必要数の確保に努めてまいりたい。

 

○ 第100号条約

(労働者側)

同一価値労働同一賃金の原則について、政府は、労働基準法第4条により担保されているという行政上の解釈を報告している。しかし、この解釈によって除かれる差別は限定的であり、同一価値労働における男女同一賃金は直接的には取り扱われていないと考えている。男女間賃金格差の是正のためには、格付け・職種・雇用管理区分を含む、雇用形態の異なる男女間の賃金格差が国内法令において規定されていない点を是正すべきである。

コース別雇用管理制度については、同制度が男女間の処遇格差や女性管理職が増えない要因となっており、このコース別雇用管理区分を隠れみのにした間接的な差別も散見されることから、同制度は廃止すべきである。

客観的職務評価制度について、政府は、日本の賃金制度の現状では完全な職務給となっている企業は少ないことから、一時点の職務内容により賃金を決定する客観的職務評価方法は我が国の賃金制度になじまない旨報告している。現状の説明としては、その通りであると思うが、日本の賃金制度は客観的職務評価制度とは相容れないことを理由に、これ以上の対応は困難であるとしていては、一向に男女間賃金格差の解消にはつながらない。日本における男女間賃金格差を解消するには、ILO第100号条約に基づく4要素(責任・内容・負荷・技能)を基準とする性中立的な職務評価を介して、不合理な賃金格差を是正していくことが不可欠であり、そのためにどのような施策をとり得るかを考えていく必要がある。

 

(使用者側)

日本の賃金・雇用管理制度は、企業内で長期間にわたって人を育成・評価し、その適切な配置を行い、経験を積ませ昇進・処遇していくことを通じて運用されていると考えている。この賃金・雇用管理制度においては、一時点で見た仕事の評価だけで処遇が決まらず、長期的なキャリアなどを踏まえ、処遇が決定されていくことが一般的である。なぜ、この点を述べているかと言うと、民間企業において、配置や昇進、人事評価の基準が曖昧であり、制度の整備が不十分なために、固定的性別役割分担意識や性差別的意識をもって運用されることが必ずしも排除されない制度設計になっていると報告されていることに疑問を持っているためである。一方、公務員は法律に基づき客観的職務評価制度が確立されていると報告されているが、統計的に見て公務員の男女間賃金格差がないのかと言えば、必ずしもそうは言えないと思う。

ILOは、男女間で賃金格差が未だ存在していると述べ、労働者側も同旨の指摘をしているが、賃金の実態として、ほとんどの民間企業で職務内容がほとんど同じにもかかわらず賃金水準に差を設けていることはないと考えている。

 

(政府側)

賃金についての性別による差別の禁止は、労働基準法第4条に規定されているところであり、男女雇用機会均等法において重ねて規定する必要はないと考えている。なお、男女間賃金格差に関しては、職階(課長等の役職)や勤続年数の男女差等が大きな要因として指摘されているところ、男女雇用機会均等法は、配置、昇進等についての性別による差別を禁止していることから、男女間賃金格差の解消に貢献しているものと考えている。

コース別雇用管理について、男女雇用機会均等法では、総合職と一般職、正社員とパートなどの職種や雇用形態等の区分であって、他の区分に属している労働者と異なる雇用管理を行うことを予定して設定しているものを雇用管理区分と捉え、差別の有無の判断に当たっては、同一の雇用管理区分内の労働者について判断を行うことになる。これは、1、性差別の有無の判断には、同様の条件にある別の性の者との比較が必要となること、2、我が国の企業においては長期的な視点から人事制度が設計・運用されており、一時点の職務内容よりも、むしろ職種や雇用形態等による区分ごとに、人材育成や処遇等の仕組みを設定するという雇用管理が広く行われていることを踏まえたものである。したがって、雇用管理区分ごとに差別の有無を判断することは、我が国の雇用管理の実態からみて、一定の合理性があるものと考えている。しかし、これらの取組で十分かと言うと、そうではないと考えているところ、厚生労働省としては、コース等で区分した雇用管理についての留意事項を示している。

3点目の客観的職務評価について、一時点の職務内容により賃金を決定する客観的職務評価方法は我が国の賃金制度にはなじまないものと考えているところである。しかし、これをもって十分であると考えているわけではなく、職務評価実施マニュアルを作成し、適切な評価の実施に向け努力を行っているところである。

 

○ 第122号条約

(労働者側)

高齢労働者の雇用確保措置状況について、政府は、2012年6月1日時点における高年齢雇用確保措置の実施済事業場割合について、31人以上規模企業で97.3%であると報告している。我が国では30名以下規模の企業が国内の全企業数の9割、労働者数では3割を占めているにもかかわらず、これら中小企業及びそこで働く労働者は、高齢労働者の雇用確保措置状況に係る統計情報の対象とされていない。30名以下規模企業における高年齢雇用確保措置状況を何らかの形で把握すべきである。

雇用政策の策定における社会的パートナーの参加について、雇用政策に関する法令の制定、改正、施行に関わる重要事項等は公労使で組織される労働政策審議会職業安定分科会、障害者雇用分科会、職業能力開発分科会等において労使の代表者が参加する形で議論がなされている。しかし、現在、安倍政権下で設置されている成長戦略を策定するための政府の諸会議(産業競争力会議、規制改革会議)においては、労働者代表の参画がなく、非公開で、一部の有識者のみで重要な雇用・労働政策が策定され、政府の閣議決定が行われている。この状況は、ILOの三者構成原則の趣旨に反するとの強い懸念を持っている。

 

(政府側)

1点目の30人以下規模の企業に対する高齢者雇用確保措置の実施状況を把握すべきであるとのご意見について、平成24年の高齢者雇用状況報告の集計対象は、31人以上規模の企業が約14万社だが、平成21年の経済センサスによると、29人以下規模の企業は、約165万社にのぼり、全企業を集計対象とした場合、現在の10倍以上の大幅な拡大となり、現在の都道府県労働局・公共職業安定所の体制も非常に厳しい状況であることから対応は難しい。また、30人以上規模の企業について、従業員数でみると、全体の77.3%を占めており、大勢を把握する上で、十分な水準であると考えている。しかし、30人以下規模企業に対しても、高年齢者雇用確保措置の実施を指導することは重要であることから、従来から集団指導を実施しているところである。さらに、昨年度から新たに公共職業安定所に高年齢者継続雇用相談窓口を設置し、労働者・労働組合からの相談等があった場合には、個別に企業に制度内容を確認し、必要に応じて個別指導を行うなど、できる限り企業への指導を強化しているところである。

2点目の政府の諸会議(産業競争力会議、規制改革会議)で三者構成原則が徹底されない中で政策が決定しているのではないかとのご意見について、雇用・労働政策については、ILOの三者構成原則は非常に重要であると考えており、同原則の趣旨を踏まえ、当事者である労使の参画を得て十分に議論が尽くされることが重要であり、具体的な見直しの内容などの決定に当たっては、公労使三者で構成される労働政策審議会の場で対応していくものと考えている。

 

○ 第142号条約

労使ともに特段の意見はなし。

 

○ 159号条約

(労働者側)

障害者雇用について、障害者雇用促進法が改正され、差別禁止や合理的配慮の提供の具体的内容が今後、指針等の策定に向け労働政策審議会で議論される予定となっている。これについて、労働者側として積極的に取り組んでまいりたい。


<照会先>

大臣官房国際課

国際労働機関第二係:03-5253-1111(内線7310)

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