ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> HTLV-1対策推進協議会> 第6回HTLV-1対策推進協議会議事録(2014年3月13日)




2014年3月13日 第6回HTLV-1対策推進協議会議事録

○日時

平成26年3月13日(木)
10:00~11:30


○場所

KKRホテル東京10階「瑞宝の間」


○議題

(1) HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について   
(2) ATL患者の立場から
(3)HAMに関する研究について
 ・HAMに対する抗CCR4抗体療法の実用化に向けた治験の進捗状況について           
 ・ロボットスーツHALの医学応用、HAMの歩行改善効果と治験に向けた準備について       
(4)HTLV-1関連疾患研究領域研究の3年間の成果について
(5)平成26年度の厚生労働科学研究について

○議事

○石原結核感染症課課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより「第 6 HTLV-1 対策推進協議会」を開催いたします。開会に当たりまして、佐藤健康局長より御挨拶申し上げます。

○健康局長 健康局長の佐藤です。本日はお忙しい中、本会議に御出席いただき誠にありがとうございます。また、日頃より厚生労働行政に御理解と御協力をいただき、厚く御礼申し上げます。「 HTLV-1 総合対策」に基づく大変難しい疾患対策を含め、公衆衛生行政全般にお力添えいただいておりますことに、この場を借りて厚く御礼申し上げる次第でございます。

 私が申し上げるまでもありませんけれども、この協議会は平成 23 7 月に立ち上げまして以来、今日で 6 回目ということになりました。これまでは総合対策の取組状況を報告させていただき、毎回テーマを決め、それについて御議論いただいたわけです。今回は安河内委員に新しく委員に御就任いただき、 ATL の患者さんというお立場から御発表いただきます。 ATL に関する医療や相談体制の在り方について、御議論いただければと思う次第です。

 また、 HAM に関する 2 つの研究の進捗状況について報告していただきます。そのため、本日は参考人として、国立病院機構の新潟病院の中島副院長にお越しいただいております。また、渡邉座長からは HTLV-1 関連疾患研究領域について、今年度で 3 年間のクールが一旦終了するということですから、全体を概括していただくことをお願いをしております。

 いずれにしましても、限られた時間ですが、実りのある議論になりますようお願い申し上げます。 HTLV-1 総合対策、感染症という立場だけでもいけませんし、白血病と申しますか、疾患としての取組があり、いろいろな分野やいろいろな立場の方に御協力いただいてこの問題を進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○石原結核感染症課課長補佐 委員の出席状況を御報告いたします。本日は委員 15 名中 13 名の方々に御出席いただいております。林委員と宮崎委員の 2 名から欠席の御連絡を頂いています。また、本日は参考人として独立行政法人国立病院機構新潟病院の中島副院長に御出席いただいています。

 ここからは渡邉座長、議事をお願いいたします。

○渡邉座長 それでは、私が座長をさせていただきます。最初に事務局より、資料等の確認をお願いしたいと思います。

○石原結核感染症課課長補佐 お手元の資料を御覧ください。まず一番最初に議事次第があります。委員名簿のほか、資料 1 から資料 6 を御用意しております。また、議事 (2) の「 ATL 患者の立場から」ということで、安河内委員からの資料を資料の一番最後に留めております。作業の都合上、連番の資料に組み込めませんでした。申し訳ございません。ホームページ等で後日、資料を公表する際には資料に含めますので御了承ください。また、菅付委員からも資料の御提出がありましたので、資料の最後から 2 番目に留めさせていただきました。資料一覧と照らして、不足の資料がありましたら事務局にお申し付けください。

 冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。それでは座長、お願いします。

○渡邉座長 早速ですが議事に入りたいと思います。委員の皆様には、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたしたいと思います。それでは議題 1 について、事務局から資料 1 の説明をお願いいたします。

○母子保健課長 母子保健課長です。資料 1 について御説明いたします。資料 1 HTLV-1 の各都道府県の実施状況、特に妊婦健康診査とフォローアップの状況について調査をしましたので、その御報告をさせていただきます。

1 ページの下のほうになります。現在は HTLV-1 の総合対策に基づき、各都道府県に対策の協議会を設置していただくようお願いしているところです。 2 つ目の○、その対策が始まってから既に 3 年が経過しておりますので、好事例も幾つか出てきております。本日、後ほど御説明させていただきます。そうした体制を調べさせていただきましたので御報告するということです。 3 つ目の○は、この調査の内容については、研究班の代表者である昭和大学の板橋先生にお願いし、作成をしております。

2 ページを御覧ください。調査の概要です。「各都道府県の事業実施状況」について、幾つかの観点に基づいて調べているわけですが、全体として上から妊婦健康診査の抗体検査、確認検査、それから出産までのフォローアップ、出産した後の母親のフォローアップ、児のフォローアップ、 3 歳児前後の抗体検査、こうした流れで全体のフォローアップはなされているわけです。各都道府県、必ずしも全体的に全てがうまくいっているわけではございません。その実施状況について見ていただくために、その流れに沿って調査項目を設定しております。その結果について下の方から御説明してまいります。

 まず下のほう、円グラフを幾つか並べております。「各都道府県の事業実施状況」についてということです。まず、一番の基本となりますけれども、この母子感染対策協議会の設置について 1 でお示ししています。残念ながら、まだ 47 都道府県全てで設置されているわけではありません。 29 の都道府県で設置されていますけれども、残念ながらないという所、既存事業で対応する所もありますけれども、必ずしも全体の対応になっておりません。 2 .相談窓口が決まっているかということも、 45 で決まっていますが、残念ながら 2 つの地域においてはなされておりません。それから相談の内容を把握しているか、あるいは研修を行っているか、普及啓発を行っているかということで、円グラフにお示ししているとおりでございます。

3 ページを御覧ください。抗体検査を実施して、その結果について都道府県のほうで把握をしているかどうかです。 1 .スクリーニング検査結果を把握しているか。残念ながら 29 ですけれども、残りの 18 については都道府県では把握をしていない。確認検査についても同様の調査ですが、結果を把握していないという結果になっています。幾つか把握をしていないという所では、個人情報ということで都道府県にまで送付されていないという県からの回答でございます。

3 「検査、陽性・判定保留者への相談支援体制」について、決まっているかどうかということです。これも半分程度の自治体で実施がなされていないという結果。逆に言いますと、半分が実施体制を整えているという内容です。その内容としては、コメント欄にも書いていますけれども、地元の産婦人科医会の協力の下、研究協力施設への紹介を行う。あるいは保険医療連携体制の中で相談支援体制を実施している。保健所や市町村保健センターでの対応をしているという体制づくりに努めていただいています。

4 ページは、 HLV 感染予防について、医療機関との連携方法は決まっているかということでございます。決まっているとお答えいただいたのが 16 です。これにつきましても、 HTLV-1 の協議会の中でそれぞれの連携体制をお決めいただいている所もありますし、産科医療機関から市町村母子保健部門への連絡。一番進んでいる所は、しっかりマニュアルを作成して、連携方法にしっかり固めているような所ということです。ただ、「いいえ」の所につきましても、現在検討中の所も多く、マニュアルの作成準備に取りかかっていただいている所もあるわけです。

 下の円グラフですが、こうした状況について地元の医師会としっかり連携を取っている。 30 の自治体については「はい」と御回答いただいています。

5 ページで、こうした体制は様々な関係部局との連携が必要ということで質問させていただいています。「はい」と答えていただいている所が 30 です。その関連部局として、感染症対策部署、子育て支援部署、がん対策、難病対策、それから保健所や市町村との連携という回答です。

8 ページです。冒頭、好事例を御紹介申し上げると申し上げました。都道府県の実例として 2 つ御紹介申し上げています。 1 つは富山県の事例です。詳細につきましては後ほど齋藤先生のフォローもあろうかと思いますので、省略させていただきます。ポイントとしては右下に書いていますが、キャリア妊婦への説明やカウンセリングを行う医療機関をしっかり決めていただく、あるいは子供へのフォローアップをする医療機関を地域の実状に合わせて決めていただくなど、きめ細やかな対応を既にお決めいただいております。

 好事例として私どもが選ばせていただいたもう 1 つが、三重県の事例です。三重県は独自のマニュアルをしっかりお作りいただいています。そうした中で、下から 2 つ目のポツ、

受診をする際のフォローアップシートもしっかりお決めいただいています。フォローアップシートにつきましては、 10 ページにお載せしております。

 これはキャリア妊婦、判定保留者が医療機関に受診する際に持参するフォローアップシートということで、独自にお作りいただいています。中身としてはポツに書いていますが、説明内容がよく分かったか、妊婦が相談したいことというようなことをこの中でお書きいただいて、これを受診の際に持参する。こうしたものも準備されておられます。こうしたものを活用するための研修を三重県の中で取組があると伺っています。

 雑駁ですが説明を終わらせていただきます。ありがとうございます。

○渡邉座長 ありがとうございました。母子感染対策事業に関する自治体の取組についての調査結果を御報告いただきました。主に体制ができているかどうかという調査結果になると思います。後半は子供のフォローアップ体制に関して、富山県と三重県の取組の事例についての御紹介を頂いたことになります。ただいまの御報告に対し、質問や御意見等がありましたらお願いいたします。

○齋藤構成員 富山県の齋藤です。第 2 回目のこの会で、 HTLV- 母子感染対策協議会が 40 の都道府県で設置されているというアンケートの結果が出ています。これが今回のデータで 29 都道府県にとどまっているというのは、もう少し事情をきっちり調べた結果このようになったのでしょうか。若しくは、そのときはあったけれども今はもうなくなってしまったと、多分あり得ないと思うのですが、どういう状況なのでしょうか。私も似たような所で公演させてもらっているのですが、大体 40 都道府県で協議会がありますので、皆さんの県にも多分あるはずですということで説明させていただいたのですが、事情は 2 ページの下のほうの 29 、こちらが数になっていると考えたほうがいいのですね。

○亀田母子保健課課長補佐 母子保健課課長補佐の亀田です。前回、お示ししたものの中では、恐らく 2 回の部分に関しては確認を取ってみないと言えないのですが、少なくとも前回お示ししたのは、既存事業で対応も含むというものも入れさせていただいているところです。その後、詳細に一件一件電話で確認したところ、御覧のような調査結果になっているところです。また、設置予定というところに関しても、今回はなしというように整理させていただいていますので、恐らくそういう影響もあるかと存じます。

齋藤構成員 もしよろしければ、詳細をお知らせいただきますと、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本小児科学会から各県に依頼するという方法もあります。

○渡邉座長 この件に関しては、情報をもう一度整理して。

○亀田母子保健課課長補佐 分かりました。

○渡邉座長 お願いいたします。そのほかに御質問、御意見はありますでしょうか。

○菅付構成員 この資料について説明させていただきます。鹿児島県のように患者やキャリアの多発発生地域の場合では、相談体制の中に当事者が加わることで、効率の良い成果が上がっていると思われます。この資料は行政側が当事者の悩みを聞き、実際に何に対して困っているかを知り、それを検討して解決していこうという姿勢でいることを示しております。

 資料の 1 枚目は鹿児島県の行政の取組についてです。ここの部分はおそらく他の都道府県でも実行されていると思いますが、違いはというと当事者との交流会などに積極的に参加して、その声を聞いて反映させていくというやり方です。「講演会『知ってください! HTLV-1 のこと』」というチラシですが、 3 月に県と医師会、患者団体の同時主催という形で講演会を予定しています。

 このような一般を対象にした講演会開催は HTLV-1 母子感染予防対策にも大きく関わることです。なぜかというと、キャリアママが孤独に陥ることの最大の原因は、周囲の理解が得られないと考えられるからです。できるだけ多くの人に HTLV-1 のことを理解してもらい、後方から支援をもらうための啓発事業になります。以上、鹿児島県の取り組みを紹介いたしました。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○木下構成員 地域の対策協議会の有無も含め、いわゆるキャリア妊婦の感染その他、フォローアップ等、それから児に対する問題が、一番 ATL とか様々な疾患になる前の予防のところでは最大の問題、最も可能な体制づくりではないかと思っておりますだけに、いかに重要であるかにもかかわらず、半数近い所の場所ではそういった対策室がない。それは当然で、実は年間、発症件数が僅か 10 にも至らない所もあるわけです。とすると、常時、そういった場所を設けるということが果たして行政で可能かというと、恐らく無駄というぐらいの感覚ではないかと思います。

 そうなりますと今、こういった仕組みを作っていく最大の成功例のポイントとしては、齋藤先生が富山県にいらっしゃるとか、三重県ではどなたかというと、 1 人のイニシアティブを取って動き回るという方がいらっしゃって初めて動いているような感じがいたします。私たちはたまたま妊婦を扱っている関係から、誰かそのような積極的な方を各都道府県で 1 人、 2 人つくり、それが動き回る結果がどうなるかをしていかないと、任せてもなかなかやってくれないのではないかと思います。つまり、毎年調べても同じような結果になるのではないかと思っておりますだけに、私たちも具体的な数値を見た上で考えることもありますので、それを試みてみたいと思っております。

 もう 1 つ大事なことは、齋藤先生のところにお願いしたいのですが、そのような仕組みを作った結果どのような成果が出てきたか。妊婦のフォローアップのやり方、その後どういうような姿勢で人生を送っていくようになっていくのか。それから児のフォローアップに関しても、成果として母乳の関係からどのぐらいの頻度で減ってきたかとか、様々な成果が出てくると思います。そういう成果についても今度御発表願いまして、そのような実績を皆様に知らしめることにより、もっと積極的にこの動きを進めていくようにしたいと思いますだけに、今このお話を聞きましてちょっと愕然としているところがあります。私たちももう少し真剣に取り組んでいこうという思いをしただけに、一言御報告と思いましてお話いたしました。

○亀田母子保健課課長補佐 一応、アンケートの補足をさせていただきたいと思います。このアンケートは都道府県に対しての調査ということで、都道府県にヒアリングをしております。やはり、課題としては地域で取り組んでいただいている事業、特に母子保健事業は市町村で取り組んでいるところがあります。まずは医療機関と自治体との連携という問題、情報共有という問題もありますし、市町村の情報を都道府県がしっかり把握しているかという問題もあります。そういう問題もあり、都道府県に調査をかけたというところで、情報共有がうまくいっていないために実態をしっかり把握されていない可能性もある。なので、以降はアンケートの内容や調査の方法等も考え、更に精度の高い調査ができるように考えております。

 木下構成員に発言いただいている相談支援体制に関しては、少なくとも各都道府県で相談窓口は決定されているところです。そうした所で対応していただいているとは思うのですが、「決まっているか」という調査にしてしまったがために、確定はしていないが各医療機関や自治体の窓口等で対応いただいているという調査も、ヒアリングの結果頂いています。これよりは少なくとも実態としてはうまくいっている結果だと了承ください。以上です。

○伊川構成員 石川県の保健所です。今お話もありましたけれども、都道府県が市町村の状況を把握し切れていないということも県によってはあるかもしれないのですが、市町村が感染しているかしていないか、お母さんの状況を把握し切れていないという状況も実はあります。県が把握することにはなっていて、県のほうに聞くのですが、県も一次スクリーニングの結果は健診票を出してその結果が来るので、陽性になっているというのが分かるのですが、その後精検に行ったかどうか、また精検に行って結果がどうだったかというところが、なかなかお母さんのほうに聞いても分かるときと分からないときがあるということもあり、正確なところを把握し切れない状況があります。

 今、石川県のほうも齋藤先生に普段からいろいろお世話になっているのですが、仕組みづくりをやっているところで、まだ検討中なのですが、 1 つは要精検になれば精検票を出すことになっています。精検票を持って医療機関に行けば結果をしっかりと聞けますし把握できるのですが、精検票を使わずに受診されたりするとなかなか聞きにくい。精検票を皆さんに使ってもらって、その結果も把握できるような体制にする必要があるのではないか。もう 1 つはやはり医療機関同士の連携を、今、専門医療機関と一般の医療機関がどのように役割分担していただくかを考えているところです。

 そういう点も含め、全体的に国のほうで今どういう状況なのかというアンケート調査をやっていただくことは、国全体の進捗状況が分かるのでいいかと思いますので、また引き続き正確な情報を把握していただくようにお願いしたいと思います。以上です。

○亀田母子保健課課長補佐 もう 1 点補足させていただきます。 3 年前はあるべき姿、どのように体制を構築するかが分かっていなかったところでした。今回、 3 年間の取組でようやくあるべき姿が示されはじめ、各自由記載欄にどのように取り組んでいただいているか実態を収集いたしましたので、それを参考に今後推進を図っていただければと考えております。

○渡邉座長 ありがとうございます。そのほか御発言はいかがでしょうか。

○森内構成員 これは毎回言っていることなのですが、アンケート調査全体を把握するということでこの結果を頂くのはもちろん大事なことですが、 3 年間やってきて、最初はどういうように持っていけばいいか分からないことが見えてきた現時点ですので、今度は具体的に、各都道府県でこういう点がうまくいっていないというそれぞれの点を指導していくような流れにはなっているのでしょうか。

○亀田母子保健課課長補佐 現状は、まずは好事例も含めて取組状況を整理させていただいて、こうした取組状況をこういう場でお示しすることによって、これを参考にして各都道府県等で取り組んでいただければと考えております。情報の共有や周知等もこれから図っていきたいと考えています。

○山野構成員 板橋班の研究で、実際の妊婦の感染者の数が多い都道府県が出ていると思います。例えば、その中のトップ 10 に入るような都道府県で、エンデミックの地域だけでなくノン・エンデミックでも、大都市圏ですとやはりベスト 10 に入ってきている。例えば東京都とかそういう所でも、まだ、このような母子感染対策協議会が設置されていないと思います。感染者が多いけれども、感染率が低いのでなかなか関心が高まらないという点が非常に問題だと思うので、そういう所を特に重点的にやっていくとか、そういうような取組があってもいいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

○亀田母子保健課課長補佐 御意見として承っておきたいと思います。今後、推進を図ってまいりたいと思います。

○渡邉座長 そのほか、御発言はありますか。今の議論を伺っていて、木下先生の御指摘で幾つか大きな問題があったかと思います。 1 つは、実際にキャリアの方が少ない所で体制を組んでいくことのモチベーションであったり、効率、コスト・パフォーマンスの問題というのはずっと付いて回る事柄である。もう 1 つは、積極的なキーパーソンがいるかいないかということで結果が非常に大きく異なる。これは恐らく事実、間違いのないことだと思います。

 それからもう 1 つ私が伺っていた範囲で、木下先生の件とは違うのですが、母子保健を担当する市町村レベル、それから感染を把握しようとする都道府県というレベル、自治体のレベルが異なっている。そこの部分の情報共有なり協力体制も大きな問題ではなかろうかと思いました。

 最初の点、組織のコスト・パフォーマンスなどというところはまた別途いろいろ議論すべきことかと思います。今の行政単位、守備範囲の異なる部分をどのような形でうまく情報共有をしていくかに関して、何か具体的な方法論なりあるものでしょうか。

○菅付構成員 国の協議会で決まったことが都道府県レベルで活かされているかということなのですが、ここのメンバーの方が都道府県の協議会の中に入って、ここでの話合いの内容を伝えるということはなされているのでしょうか。

○難波江結核感染症課課長補佐 それに対してではないのですが、先ほどの市町村が母子保健事業をやって、感染対策は県レベルがやることで、御参考までになのですが。はしかが平成 17 年ぐらいに流行したあとに、各県に麻疹の対策推進協議会を設置しています。予防接種自体は市町村がやる事業、感染対策は県がやる。その対策推進協議会にもちゃんと市町村の人にも入ってもらって、市町村ごとの接種率の情報をその対策協議会で出してもらって、毎年毎年そのようなことを議論しています。そういうことで情報の共有が図られてきて、ぐっとはしかが減ってきたという経緯がありますので、 1 つ御参考になればと思いました。

○渡邉座長 私から追加で質問です。富山県や三重県の組織の場合、県や市町村も含めた形での組織化が行われているということになるのでしょうか。

○齋藤構成員 最初は県のほうでさせていただきました。そのあと、こういった事業が市町村のほうに移りましたので、もう 1 度市町村に全部集まっていただき、医師会も集まって地域でやることを再確認いたしました。その上で、この事業は継続となりましたので比較的スムーズにいったと思います。

 今から始める方はもともと市町村に置いた事業なので、それを県がいかに取りまとめるかというちょっと難しい面があろうかと思います。こういった事業というのは 1 つのモデルになりますので、 HTLV-1 だけでなく、感染症のモデルになりますので、それをもっと使っていただくということがこれからのことと思います。

 あと、市町村単位で入っていただきたいのは保健師さんを含めて行政の方にも入っていただきました。そういったことで、各市町村にいわゆる保健師等が積極的に動いていただき、いろいろな問題点が解決しつつあります。大きな問題点が、フォローアップ率が非常に悪かったのですが、自治体に、早期に断乳する際にコンタクトすることによって信頼関係ができ、今 3 歳になっている子が出てきていますが、そういった子が紛れもなくフォローアップされております。ただ、これで育った方はほとんど分からないという状況になっていますので、やはりこれは大きな問題となっています。

○森内構成員 先ほど麻疹の例を出していただいたのですが、これも当初からずっと長崎県の連絡協議会では麻疹だけでなく風疹も一緒にしてほしい。対策は同じ MR ワクチンで行うし、 1 つだけのことでやるのは非常に不効率である。ようやく、風疹のトラブルが起こって両方の対策をしていくという形になりました。この HTLV-1 も当初から言っていることですが、ほかにも B 型肝炎でも HIV でもどんなものでも、母子保健に関わるくくりの中でやっていくべきものが一杯あるのに、一つ一つの感染症や病原体ごとに縦割りに、うちの県では年間数人しか出ないからみたいなことをするのは無駄遣いになるのではないか。先ほど齋藤先生がおっしゃられたように、実際上、これは切り口としてほかのものも全部含むような形に是非発展させていただかないと、このようなものを作ってもどうせ利用しないのにということにつながるのではないかと思います。この連絡協議会、推進協議会で話し合う枠を超えることだとは思いますけれども、是非発展すべきことだと思います。

○渡邉座長 どうもありがとうございます。

○石母田構成員 今、森内先生もおっしゃっていましたが、これができて 3 年たっているにもかかわらず、まだ産婦人科レベルでは検査をやっていない所が現実にある。これはやはり資料にあります補助券方式で検査項目明示なし、 313 市町村とありますが、こういうことが問題になっているのではないのでしょうか。患者やキャリアにとってはその辺はもっと、市町村レベルでやっているのであれば、そこまできちんと下りるような指導がされて然るべきだと考えるのですが。

○亀田母子保健課課長補佐 市町村の実施率に関しては、毎年、厚生労働省に報告を各市町村から頂いています。妊婦健康審査のどういう内容を取り組んでいるかという。そこで HTLV-1 の抗体検査に関しては、少なくとも市町村では 100 %の実施というようにお返事いただいております。

○石母田構成員 でも、現実に産婦人科でやっていない病院があるのです。

○渡邉座長 なるほど。

○齋藤構成員 もう既にガイドラインで推奨レベルが A なのです。 A は強く進める、やらなければいけないということです。以前は 90 数パーセント、今は 100 %近いと思います。患者が断らない限りは、 100 %となっています。また、幸いなことに費用が公費で賄われておりますので、母子手帳をもらったほとんどの方が無償でできるようになっています。

○石母田構成員 私もそう信じていたのですが、つい最近その話を聞いた段階なので、どうなっているのだろうという疑問を感じました。

○渡邉座長 分かりました。いろいろな御意見が出ましたけれども、恐らく実際に検査が行われているか、その後のフォローアップ体制がどう組まれているかというのは、まだ都道府県あるいは自治体レベルで様々な温度差があるというのが残念ながら現状のようです。それを改善していくためにどういう取組をすべきかというのは、今いろいろな御意見を伺っている中でいろいろなヒントがあったかと思います。ただ、私が懸念するのは、いわゆる国からこうしろという通知を出すような形だけで物事が動くとは思えないので、様々な啓発活動も含めた、学会レベルもそうですし一般の方もそうですけれども、情報をきちんと広めていくという努力は必要なのかなとは思いました。是非、今後ともしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 次の議題に移ります。本日、委員に就任後、初めて御出席いただきました安河内委員から ATL の患者という立場からのお話をお願いしたいと思っています。御提出いただきました資料によりますと、安河内委員は胆管がんと ATL という非常に希ながんを 2 つ経験されていらっしゃいます。友人のネットワークなどで医療機関の情報等を探して受診、 ATL については九州がんセンターで移植を受けて回復され、現在では社会復帰されております。古美術の専門家としても御活躍されておりますことは、皆さんも御承知のことと思います。お話の内容が御紹介と重なりますので、早速ですが安河内委員からお話をお願いしたいと思います。

○安河内構成員 安河内です。患者代表ということで、お話をさせていただきます。資料がありますので、流れはそれを読んでいただければ分かるかと思いますが、ザッとたどると、 1999 年に肝内胆管がんをわずらいまして、その時点で最初の病院、そしてセカンドオピニオンを受けに行きましたが、そこでもやはり今一つ納得がいかなかったということで、最終的には名古屋のほうで手術を受けました。その間やはり 1 人では、とてもセカンドオピニオン、サードオピニオンまでたどり着けなかったと思うのですが、友人がいろいろとインターネット、あるいはつてを頼り調べてくれたおかげで、最終的に私としてはベストな選択肢を与えられたかなと思っております。精神的にも非常に信頼できる先生だというところで手術を受けて回復をいたしました。

 問題は 2 番目の ATL にかかったときのことなのですが、 1 回目の経験がありましたので、最初に ATL という病気で、大体の場合、 1 年ぐらいの余命ですよということを言われました。 2004 年のことでしたが、そのときにいわゆる専門病院にもかかわらず、移植という選択肢を全く提示されなかったのです。一番の問題は、私はやはりそこのところだと思っています。その時点で移植がそれほど何と言うか認められていなかったというか、普及していなかったのかどうかはちょっと分からないのですが、 ATL の血液の専門医であるにもかかわらず、化学療法のみを言われて、そこからまた 2 回目の闘いというか、友人たちがインターネットで調べて、鹿児島のほうがたくさん症例があり、詳しい先生がいるらしいということで鹿児島まで飛んで、そこで初めて移植ということがあることを聞くことができたということなのです。ですから、もし最初の所でそのまま入院をしていたら、多分、今いなかっただろうと思います。

 自分 1 人では調べ切れないところで、何とか、インターネットで調べてもすぐには出てくるのではなくて、症例も少なかったのだろうと思うのですが、調べて調べてようやく出てきた鹿児島に行き、そこでこの病気は時間がかかるので、家族の助けが得られる福岡のほうがいいのではないかという助言を頂いて、最終的に九州がんセンターで移植を受けることができ、家族の助けも得られて、今、職場復帰というか、仕事ができているぐらいに復帰できているということなのです。

 病気の流れは、今更申し上げるほどの内容はないと思いますが、一番その中で感じたのは、 ATL と最初の病院で言われたときに、次にセカンドオピニオンを取りに行きたいというときに、なかなかスムーズにいかなかったことが一番精神的につらかったところです。自分としてはやはり一刻を争う気持ちですから、今すぐに出してくれとは言わないまでも、なるべくその気持ちの負担なく、では、というように資料を出すなりしていただきたい。あるいは「 ATL ネット」という患者会があるのですが、その方たちの意見を見ても、別の大病院に行く際に必ず紹介状がないと行けないというところがあるので、それが本当にどの程度必要なことなのかというか、こちらのお医者さんの意見を聞きたい、診てもらいたいというときに、前の先生にもちろん断ることは必要なのでしょうが、そこの許可なしに行けない。その許可を得るのが一番の私の場合も精神的な苦痛というか、涙したところなので、その流れをもう少しスムーズにできる方法はないものかなというのが感じたところです。

 それはそれとして、患者の方がおっしゃっていたのは、病院によって年齢的に 59 歳ぐらいの時点で移植はできないと言われたとおっしゃっていまして、移植をしても良くなるのは 1 割だし、必ず再発するというようなことを言われたということが書いてあるのがあり、それが何年のことなのかちょっと調べていないのですが、地方によって、先生によってはやはりそういう認識の方もいらっしゃるのかなというのが、ちょっとショックだったのがあります。

 患者が一番つらいのは、その病気が何かというのが分からないときが一番つらい。分かった後はこのような治療法があることを認識すればそれを一生懸命やるだけなので、かえって精神的には落ち着くところがあると思うのですね。ですから、正確な情報を患者に教えていただいて、やるべきことは何かをしっかりと認識し、治すべくベストを尽すというか。そのときにお医者様からの言葉というのが一番大きくて、私も退院し定期的に検査していただいているのですが、お医者様はどちらかと言うとマイナスマイナスのことをおっしゃるという傾向があるようで、それは最悪こうなのだからという予防線なのかなと思うのですが、その一言その一言に患者は本当に敏感に反応し、そこで免疫力が落ちるようなところがあるので、嘘でもいいからとは申しませんが、プラスのこともたくさん言ってほしいという気がいたします。とにかく気持ちの持ちようとは言いませんが、頑張ろうと、治すのだという気持ちがまず大事なところというのを、改めて申し上げたいなと思っております。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。いろいろと貴重な体験に基づいた御発言がありましたが、私から確認ですが、 ATL の話ですが、御病気になられる前に HTLV-1 とウイルスとか、 ATL という病気に関して何らかの知識や情報はもっておられましたか。

○安河内構成員 全くもっておりませんでした。

○渡邉座長 そうですか。

○安河内構成員 はい。検査の結果が出て、最初にあなたは九州出身というように言われたところから説明を頂いて、それまではそういう病気があるということも知らなかったです。

○渡邉座長 なるほど。あとは議論の中でもうちょっと浮かび上がってくればいいのかもしれませんが、今実際に当事者、患者としていろいろ経験されたことから、行政あるいは医療の専門家に対して、取り組むべきこと。先ほど、医者の側に対しての御希望は伺ったのですが。

○安河内構成員 なかった、はい。

○渡邉座長 行政的な部分での取組がこうあってほしいとか、このようなことが必要ではないかということをお感じになることがあれば。

○安河内構成員 これは行政に対してになるのか、先ほど申し上げた、ほかの病院に行くことは本当に紹介状なしでは大病院は受け付てくださらないというのは、国のことなのでしょうか。ちょっとよく分からないのですが。

○渡邉座長 今現実には、紹介状が有るか無いかで費用が異なることはありますが、どうなっていましたかね、そこのところは。

○小森構生員 日本医師会の役員をしております、小森と申します。大変、大切なお話を聞かせていただいたなというように思っています。確かに、今、患者さんがいろいろなことでお悩み、また、本当に結果として単純に風邪であったとしても、出てくる症状、お悩みというのは患者にとってはそれぞれ大切な生活の中の事象ですので、特に都心部におかれては、患者さんの権利として、大きな病院に直接行かれるというようなことが保証されているのです。

 ただ一方で、大きな病院にとっては非常に重篤な、あるいは高度な医療を必要とする患者さんからそうでない方まで、非常に多く押し掛けるというような現状があり、その中で、それぞれ何でも御相談ができるかかりつけの医師を持たれて、そして、できるだけそこで御相談いただいてということをお勧めするために、病院によっては突然来られた患者さんには、一定の額を徴収をしてよろしいということになっています。それは大きな病院によってその額を少なく抑えている場合、あるいは徴収しておられない場合や、高額を徴収しておられる場合で、それぞれなのですが、一定額、余り高額は非常識なことですが、徴収をしていいということに一応なっています。

 ただ、それぞれの病院なり診療所であっても、一定の検査をすることがあると思います。その検査の結果をセカンドオピニオン、あるいは医師を替えるという場合にその検査が無駄になるという、また同じ検査を繰り返すということは患者さんにとって大変苦痛なことですので、私どもとしては、かかりつけのお医者さんや最初にかかられた病院のお医者さん、あるいはスタッフの方々にお願いを申し上げて。随分浸透してきたと思っておりますが、ただ、現実に安河内さんは、大変それが苦痛であったということを言われましたので、まだまだ反省し、国民の方々に応えていかなければいけないなと痛感した次第です。

 そういったお声に謙虚に、そして朗らかに、快く、それは良いことですねと、是非お聞きになるといいですよと。すぐ紹介状と言いましても、診療があるので 1 時間待ってくださいというようなこともあると思いますが、当院で調べた検査結果を今みんなコピーをして、紹介状もお付けをしますので、是非それを持って行ってくださいと、応援しています、というような形の対応が必要ですということを日本医師会の会員、また、会員でなくても全国の医師の方々にお呼び掛けをし、また、医療倫理に関する様々な指針にもそれを明示し、そうしなければならないと、それが患者さんの様々なお悩みに応える大切な、大切な道ですということを申し上げているのです。

 現実にそのことにはやはり大きなハードルがあった、御不快な思いもあったということですので、また、会員の方を中心に私たちも反省とともに呼び掛けてまいりたいと思っておりますが、今、申し上げたように、どこでも行くとなると、それぞれの前の医療機関のデータがそこに来ないというか、また、同じ検査を何度も繰り返すということは、患者さんにとっても決していいことであるとは思っておりませんので、それよりはその方にお気軽にお話になる、そのお悩みを聞いたときに医師を中心としたスタッフが、快くそれにお応えをして、データをお出ししますという対応をもっともっとしっかり徹底をしていくということかと思いますので、また、これからも是非努力してまいりたいと思います。

○菅付構成員 スマイルリボンにも同じような相談があるのですが、セカンドオピニオンをお勧めすると、最初にかかった病院で紹介状を書いていただくことができております。患者も賢くなって情報を身に付けておくということが大事だと思います。残念ながら安河内さんの診断された時代にはそういう情報が得られなかったのだろうと思います。

○安河内構成員 はい。

○菅付構成員 HTLV- 1 総合対策ができたこともあって、セカンドオピニオンは当たり前の時代になったと言えると思います。

○渡邉座長 それでは今、安河内さんの御発言の中で、もう 1 つの別のポイントがあったかと思います。いわゆる治療のオプションというか、選択肢ですね。

○安河内構成員 はい。

○渡邉座長 それがその時点で提示されていたか、あるいはもっと別な言い方をすると、医療機関によらず、最も適切な医療が受けられるような体制が整っていたかというようなことにもつながるかと思うのです。その辺に関して時代的な背景も含めて、治療のオプションとその連携の関係も含めて、塚崎先生から御発言を頂けますでしょうか。

○塚崎構成員 国立がん研究センター東病院の塚崎です。今お話いただいた骨髄移植、今この治療法というのは、 ATL の診療において無くてはならない治療法の 1 つなのですが、それを安河内さんが治療を受けられた当時と比べると、治療成績が良くなっているという中で、最初の病院で移植についての御提示がなかったということは、少なくとも私個人的にはいろいろな治療のオプションとして、そういうものを御提示することが望ましいのかなと思っています。しかし、その当時、その治療法に伴うリスクが高かったという中で、どの時点で患者さんにその治療法を御提示するのかというところが、段階をおいて御提示する場合もあったのかなと思っております。

 もう 1 つは、当時、診療ガイドラインというものが実はなかったのです。血液腫瘍は少しそのガイドラインができるのが遅かったのですが、昨年できました。今は ATL を含む血液腫瘍の診療ガイドラインがあり、その中で ATL に対しては同種造血幹細胞移植は積極的に検討する治療法であると記載されておりますので、少なくとも現時点において、同様なことは起こらないと考えております。

○渡邉座長 今、塚崎先生の説明では時代的なもので、まだいろいろなことが整備されていなかったという環境もあったと。それが少なくとも、例えば、治療成績、治療法に関しても非常に進歩してきたということ。もう 1 つは、診療のガイドラインができたために、誰が見てもオプショントして明示されていますので、恐らくどこの治療機関で受けても大体同じような対応を受けられるような環境になってきているのではないか、という御発言だったと思います。

 ただ、問題点は、塚崎先生が研究班でこれまで取り組んでこられた医療体制、 ATL の治療をする全国的なその体制がどうなっているかということに関して言うと、経験が多い西南日本、九州、沖縄のほうの先生方、医療機関とノン・エンデミックエリアの医療機関での対応は多少違う部分が現状としてあり、それが段々ガイドラインが整備されることにより、一定の均一化が進んでいくであろうということにはなっている。ただ、経験がある施設とそうではない施設はどうしても最後まで残るとは思いますが、そのように変化してきているというのが現状だと思います。

○塚崎構成員 今のお話のとおりなのですが、更により良い治療法というものを開発していくことが、例えば移植のやり方についてもありますし、新しいお薬の開発ということもあります。そういうものについては、いろいろな情報を患者さんたちに提供するようにということで、「 HTLV-1 情報サービス」というホームページの中で、いろいろな新しい治療法についての臨床研究をどこの病院でやっているのかということを、幾つかの研究班が連携して公開してます。

○渡邉座長 ということですが。それでは、どうもありがとうございました。非常に治療が難しいとされてきた ATL から社会復帰されている安河内先生のお話は、発症の不安を抱えるキャリアの方々にとって大変心強いことだと思います。今、御発言がありましたように、治療法に関しても着実に進歩しており、決して理想的な状況にはほど遠いのですが、確実に進歩している現状であると考えております。

 それでは、次の議題に入らさせていただきます。資料 2 を山野先生から御説明いただきたいと思います。

○山野構成員 よろしくお願いします。スライドで発表させていただきます。本日は、「 HAM に対する抗 CCR4 抗体療法の実用化に向けた治験の進捗状況について」お話いたします。これは、厚生労働科学研究費の難治性疾患克服研究事業で支援を受けているものです。

 皆さんも御存じのように、 HAM HTLV-1 感染者の極一部に発症する神経の難病であります。 HTLV-1 に感染した T 細胞が脊髄に入り、そこで慢性の炎症を起こし、脊髄が壊れることによって発症すると考えられている病気です。脊髄がやられるので患者さんの症状としては、両足が麻痺して動かない。あるいは痛み、しびれ、排尿、排便障害などの症状が進行し、重症な方は車イス生活や寝たきりとなる疾患です。残念ながら治療法が確立しておりません。患者さんの生活は非常に深刻であり、 2009 年度から難治性疾患克服研究事業の対象疾患になっております。また、 HAM の患者さんは感染細胞が一部がん化して、 ATL を発症するというリスクも抱えております。

 「 HAM の臨床経過の特徴」としては、個人差が非常に大きいという特徴があります。大体、約 8 割の方は 10 年、 20 年と長い年月をかけてゆっくりこのような車イスや、寝たきりの状態になるという進行をたどります。約 1 割弱の方は、発症して数年で車イスレベルになるというような非常に急速に進行する方もいらっしゃいますし、一方で、発症して 20 年経過しても片手の杖で歩くぐらいの軽症な経過をたどる方もいらっしゃいます。このように個人差が大きく、より脊髄の炎症が強い方、あるいはウイルス量が多い方がより重症化しやすいということがこれまでの研究で分かってきております。

 このような HAM の病態というのは、ウイルス感染細胞が増えている方が多い、そして、活性化している方が多い。それにより脊髄の慢性炎症が起こり、そのせいで脊髄が壊れていってしまうというような病気と考えられています。ですから、このような病態を把握するための検査としては、まだ研究レベルである部分が多いのですが、ウイルス量を測ったり、髄液の炎症レベルを測ったりという形で、それぞれの病態に対して、治療が本来行われるべきなのですが、現時点ではステロイドやインターフェロンαなどの炎症を対処的に抑えるというような治療が行われているのが現状です。

 ですので、何も治療をしなかった場合にはこのような重症化する疾患であり、現在はステロイドなどで一時的に良くなるのですが、また、その治療を継続しても段々悪くなっていってしまうというのが現在の状況です。ですから、ステロイド治療によって一時的に改善しても、減量によって戻ることが多く、また、治療を継続しても、次第に進行することが多いのが現状ですので、画期的な新薬開発の要望が強いという病気です。

 このような感染細胞の増加により、脊髄の炎症による神経組織の破壊という病態に対して、現状では炎症を抑えるだけという治療法です。しかも、感染細胞数が多い方ほど、患者の長期予後が悪いというようなことが報告されております。ですので、この感染細胞をきちんと制御することが、炎症の制御、疾患の制御には重要であろうということが分かってきております。

 世界的にも例えば、エイズの薬として使われる「逆転写酵素阻害剤」や、「プロテアーゼ阻害剤」なども試みられてきたのですが、全く感染細胞が制御できず、臨床的な効果も得られなかったということが分かっており、やはり HTLV-1 は感染細胞を直接殺すようなお薬の開発が必要であると、これはウイルス学的な特徴からも考えられます。

 その中で我々は、 HAM の患者さんの「 CD4 」という T 細胞にウイルスが多いことが分かっていたのですが、その中でも CCR4 という分子を表面に出している細胞に非常にウイルスの感染率が高いということを証明しております。

ATL 2012 年に承認された薬「 KW-0761 」というお薬がきっと HAM にも有効ではないかということで検証したところ、このようにウイルスの感染細胞を破壊する効果が HAM の患者さんでも認められました。実際、 ATL 患者さんで投与されている血中濃度の 1,000 分の 1 ぐらいの濃度でも、 HAM の患者さんでは有効性があるということが vitro の研究で確認されております。

 また、更にウイルス感染細胞を破壊することで、 HAM に特徴的な炎症反応の抑制効果もあるということも証明しております。これは、炎症のメディエターとして、一番重要なサイトカインであるインターフェロンγというものの産生をきれいに落とすことも証明されております。

 また、このお薬はこれまでの治験で、健常者に対する安全性の報告があります。 0.003 ミリグラムまでは健常者でも全く問題がなかったという報告があり、また、 ATL の患者を対象とした第1相 / 2相試験で 1 ミリグラム / キログラムまでは、忍容性があるということが報告されております。

 このように抗 CCR4 製剤というのは、 HAM 患者において抗感染細胞効果・抗炎症効果を認めており、また、先行の臨床試験で安全性の情報が得られている。また、 ATL 患者における CCR4 陽性細胞への有効性が証明されているという背景から、このお薬はこれまで実現されなかった HAM の感染細胞を標的とした新規の分子標的治療薬として有望と考えられましたので、医師主導治験の実施につなげるために、安全性に十分配慮し、至適投与量・投与回数などを検討するための薬事承認申請に耐え得る医師主導治験のプロトコルを作成して、 PMDA の対面助言を 2012 11 6 日に終了しております。これは、平成 24 年度までの厚労省の科研費で支援していただいて、ここまで達成してきております。

 このお薬の将来の開発スケジュールですが、やはり HAM の患者さんの数が少なく難治性疾患ですので、オーファンドラッグ認定を前提に、できるだけ早く患者に新薬を届けるということを目指すために、本来、企業主導治験であればなかなか Phase 1と Phase 2をドッキングというのは難しいのですが、それぞれを別々にやると 3 年、 3 年、 3 年で薬事承認までに 10 年かかるので、今回、 Phase . a という形でドッキングして、ここを 3 年でやるということのデザインになっております。ここを医師主導治験でやって、更に検証的試験をやれば 5 年ぐらいで、できるだけ早く患者さんに届けるような形を取っていけないかと考えております。

 これがプロトコルの骨子です。目標症例数は 18 から 33 例で、試験デザインは Phase / a になります。対象が、既存治療で効果不十分なステロイド維持療法中の HAM 患者。主要評価項目は安全性で、用量制限毒性 (DLT) の発現状況に基づいて、最大耐用量 (MTD) を明らかにし、また PK 、薬物動態を評価します。また、副次評価項目として、有効性を探索するということになっており、 Phase 1ではウイルス量が下がるかどうか。 Phase 2では、抗感染細胞効果の持続期間や、臨床的な有効性の非増悪期間というものを見ていきます。また、付随研究では、例えば ATL の発症予防効果がないかどうかとか、そのようなことも見ていくようになっております。

 これが実際のデザインの概要です。有効性の観点から最小の投与量 0.003 ミリグラム / キログラム、今の ATL の治療薬で使われている 1,000 分の 3 の投与量からスタートします。最大の投与は安全性の観点から 0.3 ミリグラム / キログラムとなっており、公比用量を設けて、レベル 1 で安全性が確認されたらレベル 2 に上がっていくというような形で、さらに投与を 1 Phase 1でやり、今度は Phase 2で定期的に再投与を繰り返すというデザインになっております。12

 安全性の確保ですが、これまでの報告で 2 つ気を付けなければいけない点があります。 1 つは、重篤な皮疹が出るということで、治験では皮膚科と連携して適切な処置を行う体制をしっかりととっております。また、 B 型肝炎の再活性化、劇症肝炎などを起こすというリスクがあるということで、今回治験では、 B 型肝炎のリスクのおそれがある方は入れないということになっております。

 適格基準は様々な項目がありますが、基本的には、有効性をきちんと均一の集団で評価できるような集団を抽出するための基準です。また、除外基準に関しては、とにかく被験者の安全性を守る観点で、重篤な合併症がある方、あるいは B 型肝炎のリスクのある方は今回は入れないという形になります。

 こちらが「試験実施体制」ですが、聖マリアンナ医科大学病院で実施し、治験薬は企業から供与を受けて実施いたします。モニタリング、データマネジメント、統計解析とか、このような全てのデータの解析など、あるいは治験の実施体制をきちんとやっているかを第三者の客観的な評価を受けながら実施いたします。そちらは北里大学臨床試験コーディネーティング部にお願いしております。さらに、効果安全性評価委員会なども外部評価委員会が設けられております。

9 月にこの研究費が採択されたので、 10 月にはうちの治験審査委員会で承認を受けて、 11 12 日に治験届を提出し、 PMDA で特に照会事項がありませんでしたので、 11 28 日を治験開始日としました。その後、検査をずっと開始して、 2 4 日に第 1 例目、世界初の HAM 患者への投与を開始しております。 3 4 日には 2 例目、 3 例目の投与も終了し、現時点で副作用、 DLT の発生は無く、効果安全性評価委員会に諮り、投与レベル 2 へ移行する予定です。現在は安全性に十分配慮しながら、粛々と進めております。医師主導治験を完遂し、日本から発進する HAM の革新的な新薬の創出につなげていきたいと考えております。

 治験情報は「 HAM ねっと」で御案内しております。治験への患者リクルートを確保するためにも、患者会と連携して HAM ねっとを開設しております。非常に印象的でしたのは、それを開設して約半年で 400 名の患者さんが申込みを行いまして、全国の HAM の患者さんの切実な願いということを改めて感じた次第です。また、このようなシステムを使って治験への患者リクルートは順調に進んでおります。

 このお薬の最終的な標準化、製品化のイメージです。既存治療でこのような状況があるのが現状ですが、この薬で最終的に患者さんの長期機能予後の改善に結び付く治療法の確立に向けて進んでいけるのではないかと期待しております。

 また、このお薬の更なる臨床的なインパクトですが、キャリアの中でもウイルス量の多い方、渡邉先生方の研究でウイルス量が 4 %以上の方は、 ATL の発症リスクが 20 25 %というように言われております。このようなハイリスクのキャリア、 HAM の患者さんも ATL を発症するリスクがありますが、ハイリスクのキャリアは ATL 、あるいは HAM の発症リスクが高いということが分かっております。今回この治験で、 HAM 患者において、安全性やウイルス量の減少効果が証明されれば、ウイルス量の多いハイリスクキャリアの発症予防薬としての道を開き、 HTLV-1 総合対策の飛躍的な推進にも貢献できるのではないかと考えております。以上です。どうもありがとうございました。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対して、御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。

○森内構成員 学会的な質問で恐縮なのですが、 HIV の世界では御存じのとおり、 CCR5 というレセプターが遺伝的に、もともとバリエーションというべきでしょうか、全く働かない、要するになくても別に生きていく上ではそれほど困らない変異を持つ人がいて、そのような人たちは HIV に感染しません。そして、それをターゲットとするような small molecule の治療薬があり、少なくとも、カクテル療法の中に 1 つ混ぜるものとして有効性を発揮しているということがありますが、今後、この分子標的療法でも、モノクローナル抗体を作るだけではなくて、 small molecule を用いるものであったり、若しくは、本当に極端な話、 ATL の患者さんが骨髄移植をするときでも、 CCR4 に対して遺伝的にもともと欠損があるような人がいた場合に、そのような人がドナーになると本当の意味での治癒をするのかどうかとか、関連することで何か御存じの方がいたら御教授願います。

○山野構成員  HTLV-1 の場合は、 CCR4 がウイルスのレセプターとして機能するかどうかということはまだ証明されておりません。 CCR4 に対する感染率が非常に高い原因としては 1 つだけ報告があり、ウイルス自体が CCR4 のリガンドである CCL22 を産生して、ウイルス感染細胞が CCR4 陽性細胞とくっ付きやすいというような特徴があるので、感染が CCR4 陽性に広がりやすいというような報告があります。ただ、一方では、感染細胞自体が CCR4 をウイルスの作用として出させるような作用があるのではないかという議論があることや、あるいは CCR4 陽性細胞自体がウイルスに感染した後により生き残りやすいというような特徴があるのではないかということが議論されており、まだ、ちょっとそこはペンディングなところが今の現状かなと思っております。

 当然、そのレセプターとして機能、あるいはそのトロビズムに関するメカニズムを解明していくことにより、先生がおっしゃられたような治療法につながっていく、新たな治療法につながっていくと思います。

○渡邉座長 齋藤先生、どうぞ。

○齋藤構成員 富山大の齋藤です。約 30 年前にこのウイルスが見つかり、産婦人科の領域ではすぐに薬がなくて、まず母子感染ということが注目されたのですが、一方、自らのお母さんが発病予防とか、そこについては全く進歩がなかったのです。当初は、あなたが発病する頃には、良いお薬が出来ていますから大丈夫ですということをずっと説明していたのですが、なかなかそういった方法が見つからないままに 30 年が経過したのですが、ようやく何らかの光が見えてきたかなと思います。

 今、結構、ウイルスの量を PCR 等で測ると、ウイルスの量が多い人と少ない人が分かるのです。少ない人はいいのですが、多い人はかなりの不安を持たれますので、そういった方についてはこれだけでは本当に不十分なのでしょうが、 1 つの可能性が出てきたということは、キャリアの方に説明をするときに大きな福音だと思います。今後、ますます進めていただきたいと思います。

○山野構成員 ありがとうございました。

○渡邉座長 ありがとうございます。ほかに御発言ありますでしょうか。菅付さん、どうぞ。

 

○菅付構成員 私自身は典型的な HAM の患者で、発症して 25 年、徐々に徐々に進行して車イスの移動になっております。治療薬開発が一番の目標で、 10 年前に「アトムの会」という患者会を立ち上げました。ここにきて薬という大きな希望ができて、疾病対策課、厚生労働省の方々、国の方針に大変感謝しております。ありがとうございます。ただ、私はこの進行度合いですと、近い将来寝たきりになっていくだろうなと思うと、絶望がすてきれません。 1 日でも早くお薬が飲めるようにしていただきたいと思います。できましたら、今まで 10 年かかることを 5 年、 5 年かかることを 2 年半に短縮していただきたいと思います。同じような HAM 患者が全国にたくさんおります。これは、多くの HAM 患者の代弁としてお伝えしました。

 国に対する意見を言わせてください。この HAM のお薬はキャリアの発症予防薬につながる可能性があります。治験は HAM 患者でやるわけですがウイルス量の高いキャリアの発症を抑制すると考えられます。世界に目を向けますと、ブラジルとかはキャリアが 300 万人ぐらいいると聞いております。キャリアは発展途上国に多いのですが、そのような国に対して、 ATL HAM の治療研究で海外に発信していく先進国としての日本の役割があるのではないかと思うのです。だとすれば、今のうちに海外にできるアプローチはないのかなと思いまして、具体的には、成長戦略の中の医薬品を輸出するという観点を念頭においておくということになるのですが、今の段階で何らかのアプローチをすることも考えておいたほうがいいのではないかと思ったりします。以上です。

○渡邉座長 どうもありがとうございます。 HAM 患者、当事者としての切実なお気持ちを頂きました。まだ、いろいろと御質問、御討議があろうかと思いますが時間ですので、個別に後ほどお願いしたいと思います。

 それでは、資料 3 について、中島参考人から御説明をお願いしたいと思います。

○中島参考人 開始させていただきます。私は参考人として説明いたしますが、国立病院機構新潟病院の中島孝と申します。平成 24 年度から厚生労働省難治性疾患等克服研究事業、この 4 月からは克服のところは実用化という名前に変わると聞いておりますが、その「希少性難治性疾患 - 神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装型補助ロボット (HAL-HN01) に関する医師主導治験の実施研究」の研究代表者で、今、 1 つ治験を行っておりまして、治験調整医師となっております。その治験の進捗状況と、今回、追加として HAM の歩行改善効果と治験に向けた準備を行ったことについて、説明させていただきます。

HAL は身体機能の増強ということで、このように重い鉄骨を持ち上げるといった写真で皆さんに御理解されていると思いますが、動画がありますのでお見せしますと、医療においては、こういう使い方をするのではなくて、随意運動障害の治療として使うと考えております。

 脳血管障害を代表として、もちろん HAM も随意運動機能障害を来すわけですが、随意運動は人が内的環境を自ら整え、主体的に生きていく際に最も重要な人間の機能ですが、医学界においては疾患の根治療法の開発にのみ主眼が置かれていて、随意運動の機能障害に対する治療はいろいろな方法論が使われていますが、十分な研究がなされておらず、エビデンスも不十分でした。そこで、今回、ロボットスーツ HAL を使った運動機能、随意運動機能障害を治療する治験を行っているわけです。その背景となる理論はサイバニックスというものですが、これは後ほど説明します。

HAL 福祉モデルでの経験や、今やっている治験において、 HAL はどうして効くのか、どうして随意運動障害が改善するのかについてですが、神経・筋系の可塑性を促進することによってであろうと推測されてきております。それは神経可塑性や、運動神経や筋の保護効果や、廃用症候群の治療が総合されてそうなると考えております。 HAL には随意運動機能の改善効果がありますが、例えば HAM においては、抗 CCR4 抗体による治療法と随意運動機能の回復を狙った HAL の治療の両者を将来複合療法とすることが、注目されると思います。今回、その 1 つのステップとして HAL における単独療法の治験を準備しております。

HAL には福祉モデルはありますが、基本機能はサイバニック随意制御、これは先ほどのサイバニクスという学問から出ているのですが、生体の随意運動意図を生体電位信号として皮膚表面から検出し、それに基づいて HAL が動くわけです。それと同時に、 HAL 自体がサイバニック自律制御というメカニズムで安定した動きをするのが、 HAL の基本機能です。

 今回、治験をやっております HAL-HN01 は、希少性の神経・筋難病を対象としたために、生体電位信号が微小・微弱でも、まばらでも、使えるようになりました。このお陰で HAL-HN01 は、あらゆる脳・脊髄・神経・筋疾患に対する運動機能障害、歩行不安定症に対応できるではないかと考えられております。 EU では既に EU の医療機器の承認である CE マークを取得して、昨年、ドイツの労災保険では脊髄損傷に対する保険適用がなされています。

日本では、 HAL-HN01 NCY-3001 試験として、希少性神経・筋疾患に対して治験が行われております。この疾患名は、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、下肢症状が緩徐進行性の ALS 、シャルコー・マリー・トゥース、遠位型ミオパチー、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー、封入体筋炎及び同等なものとして、昨年 1 4 日に治験届を出しまして、現在、実施施設は 10 施設で、この 3 31 日までに当局から許可された 30 例の 2 次登録が完了して、 7 31 日に後観察を終了し、この 12 月末までに治験総括報告書を提出する予定となっております。

 慢性進行性の神経・筋疾患の場合は、このスライドのように概念的な進行が考えられますが、これに対して間欠的に HAL-HN01 を定期的に使用して歩行練習を行うと少し良くなる。そして、また少し進行することを繰り返して、進行のスピードが緩やかになると考えております。今回、治験では、この 1 つのタイムフレームに対して、短期効果としての改善効果を検証する治験を行っております。

 今、このスライドの様なグループで多施設共同治験をやっております。最終年度に HAM に対する追加治験を、 HAM に対する必要度が高く、有効性が期待できることから、治験の準備を行っております。このスライドの表は今までの福祉モデル、今やっている治験の中の経験から、概念的に臨床での利用を想定したものです。

 この表では、現在やっている治験は、黄色で書かれており、運動ニューロンより下位、運動ニューロンから運動神経、筋肉の障害の病気、これらに対する治験としてやっておりまして、これはとても HAL-HN01 の性能限界を試すもので、有効性は証明されると信じておりますが、有効性の想定は一重丸としました。

 運動ニューロンより上位の病変に対する有効性は、幾つかの preliminary なデータなどを見ますと非常に期待できる。二重丸です。その中で難治性疾患の中では HAM が非常に期待できるということで、今回 HAM の治験準備を行っております。 HAM は日本で疾患患者はいらっしゃるのですが、とにかく世界に先駆けて、日本でこのような治験を進める価値があるだろうということで、山野委員からの発言もあると思います。

HAM の運動機能障害としての痙性対麻痺による歩行障害の原因として、どのように炎症を停止するのかということが重要ですが、それと同等に、機能回復にとっては HAL-HN01 による歩行練習がとても有効であろうと考えております。事前の preliminary な福祉モデルを使ったデータで 3 例をやりました。後でビデオを見せますが、歩行の改善効果としては、 38.1 %の平均の改善効果を示しております。これらを根拠として治験の実施を準備しております。

 これは最初の 1 例でとてもすごく改善したのですが、 60 代の女性で、もともとつかまり歩行がやっとでしたが、冬期間で更に移動能力は悪化して起き上がれなくなり、ほとんど寝たきり状態となり、当院に入院されました。この患者の最初は全く歩行ができなかったので、ホイストでつり上げてようやく足を前に出せる状態でした。ロボットスーツ HAL を付けて歩行練習をすると、実はこの患者は、たった 5 回の HAL 装着練習ですたすたと歩けるようになってしまったということで、劇的でした。これが第 1 例でした。この患者は、 2 分間歩行テストで歩行距離が 56 %の改善を示しました。どのような練習をしたかといいますと、立ち上がりや、足踏みや、歩行練習をしていきますと、足の動きがとても良くなって、歩行改善をしたということです。

 これは NHK ワールドニュースのビデオです。これは希少性神経・筋疾患の紹介のときに HAM のビデオが出されたので、ちょっと当惑したのですが、とても注目されて、 NHK の海外放送として放送されたそうです。

 これは 2 症例目です。このビデオは最初の状態で、その後、 HAL による歩行訓練をしました。その結果、歩行スピードも 2 m歩行テストの歩行距離も延びています。この患者で、更にすごかったのは、足の痙性、突っ張り感が取れたということで、突っ張り感を評価する検査として、クローヌスという検査をしましたが、最初は HAL を装着する前、 7 秒のクローヌスがあったのですが、終わった時は 4 秒ということで、しばらくの間、足の突っ張り感が改善して歩行がとても良かったと言っていました。この方は数か月にわたって治寮効果が継続しておりましたが、また定期的な HAL の装着、歩行訓練をしようと思っています。

 この様な HAL に対する preliminary データから治験を準備しておりますが、現在、神経・筋疾患で治験を行っておりますので、スライドの様に疾患に関係する所を変えることによって比較的治験準備はスムーズに行われると考えております。

 現在、ホイストによる治療群を対照群として、 HAL による治療群の有効性と比較評価するということで準備を行っていますが、ホイストだけの歩行練習でも多少の改善効果があるわけで、今、そこを HHH-1001 試験ということで、どの程度有効性があるのかを検討しております。治験準備をしていく中で目標としている開始時期は、今年の秋に NCY-2001 試験を開始したいと考えております。ホイストとの群間比較になりますから、どうしてもがっかりしてしまわないようにするためには、 HAL 福祉用で動作をする場合は、治験終了後に HAL 福祉用を用いた治寮も継続できるように組んでおります。今、疾患の分布から、九州では 2 施設、関西で 1 施設、関東で聖マリアンナ医科大学の山野先生の所、それから私の病院を治験実施施設として調整中です。

 これは参考資料ですが、このグラフの様に、脳血管障害や脊髄損傷などの急性期疾患モデルにおいても、 HAL の随意運動の改善効果は非常に期待できるとおもわれ、こういう情報も提供しておきます。

 もう 1 つは、サイバニクスはモーターを使って体をアシストするのが 1 つの特徴ですが、生体電位信号を検出する所だけを抜き出して、四肢麻痺患者、たとえば、脊髄損傷や ALS などの四肢麻痺の患者の意思伝達装置を生体電位の電極だけで作っていく仕事がほぼ完成いたしました。これをサイバニックスイッチと言います。こういった研究も付随的に行っております。

 まとめですが、生体電位駆動型装着ロボット HAL を用いた運動機能回復訓練は、エビデンスを固めることで、今後あらゆる歩行不安定症に対する主流の治療法となると考えます。希少性の神経・筋難病に関しましては、今、 NCY-3001 試験として行っております。 HAM に対しては、 NCY-2001 試験として今年の秋から治験ができることを目標に準備を行っています。

 難病は世界の人に共通の課題であり、これを解決することで人は進歩すると同時に、普遍的に人と人は国境を越えて助け合えると思います。 1 人の個人を超えて国自体が応援できると思います。それは経済活動を伴ってということで、何とか日本発の医療機器・医薬品で世界に貢献していくのが日本の務めではないかと考えております。

 私の参考論文として挙げましたが、 1 2 は自由にお持ち帰りになれるように後で受付に置いておきます。 2 の論文に関しては、先ほどのパイロットデータ、 preliminary HAM 患者のデータを一部記載しておりますので、是非、御参考にしてください。

○渡邉座長 ただいまの御説明に対して、御質問、御意見等がありましたら、よろしくお願します。

○石母田構成員 中島先生、ありがとうございました。山野先生の治験も含めて中島先生の治験は、この患者会ができて約 10 年、自分たちの時代では歩けない、治らないと諦めていた患者にとって、山野先生の薬によって症状が改善し、続いて中島先生の HAL で歩ける見通しが出てきたのは、とてもうれしくて言葉が出ないくらいです。薬で良くなったあと歩けるまで、是非、継続して治験と実用化できるように期待していますので、頑張ってやっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 それと同時に、先ほど菅付さんがおっしゃっていましたが海外です。私は去年、学会に招待されて、患者会代表としてブラジルとイギリスの患者代表とお話する機会を頂いたのですが、この病気に関しては本当に日本へ持っている期待はものすごく大きかったのです。是非、国がこれを主導して、日本だけでなくて海外の患者にも役に立つように、予算も一杯使っていただいて開発を進めていただけたらとお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○塚崎構成員 臨床試験のところで少し教えてほしいのと、これが臨床応用された後、医療の現場で実際にどう使われていくのかと、その 2 点です。最初のほうは、そのプライマリー・エンド・ポイントと予定登録数を教えてもらいたいと思います。

○中島参考人 随意運動の歩行、改善効果としてのプライマリー・エンド・ポイントを 2 分間歩行テストとすることは、今、神経・筋疾患の中では少しメジャーになってきているのですが、患者が 2 分間でどの位頑張って歩けるかをプライマリー・エンド・ポイントとして、それを対照群と比較して、対照群はホイストによる訓練ですが、どれだけ良くなっているのか、有意差を持って良くなっているのかを検証するということで、今回は無作為化比較対照並行群間試験を準備しております。

 神経・筋疾患はより穏やかな進行をするので、クロスオーバー法を取りましたが、今回は HAM では劇的な改善が見込める、推定できるので、クロスオーバー法ですと、例えば天井効果で次のホイストになったときに効果が見込めなくなるので、並行群間試験をすることにしました。

 今回、多施設共同臨床治験ということでは、今、先行する 1 つが走っているわけですが、 HAM も多施設で行います。多施設になると、実臨床に非常に近い形で行うことになりますので、恐らく治験プロトコールと同じ様な利用法が医療機器として認可されて、適用疾患として拡大した際は同じ結果がでるだろうと思います。

 具体的には、 HAL-HN01 はリハビリの PT OT 又は看護師が使い、ドクターが監督し、医療機器として使いながら患者に装着して訓練をすることになると考えています。まずは病院又は診療所のリハビリ等の部門で、それから、これはまた交渉になりますが、訪問看護とか在宅でも可能になればいいと思っております。そこはまだ分かりません。

○渡邉座長 ほかに御発言はありませんか。それでは、先生、どうもありがとうございました。ほかの介護分野でも大変注目されているロボット技術ですが、 HAM の患者でこういう効果が得られそうだということで大変期待しています。

 次に進みます。次は議題 4 で「 HTLV-1 関連疾患研究領域研究の 3 年間の成果」についてということで、これに関しては私が進捗状況の評価と提言の研究班をやってまいりましたので、私が発表させていただきたいと思います。

 資料 4 を御覧いただきたいと思います。最初の下のページに、平成 23 年度の HTLV-1 総合対策が立ち上がった時点での、関連疾患研究領域をこういう形で運用しますという厚生労働省が作成された絵です。つまり、既存の様々な研究事業の中から、関連するものを横串を刺す形でまとめて研究領域を設定することでスタートしたわけです。

 次のページを見てください。この研究領域と指定された枠で採択された課題ですが、ここにありますように、平成 23 年度からスタートして平成 25 年度まで、大体 25 件あるいは 26 件の研究事業が採択されている。ただ、実際に動き出しましたのは平成 23 年秋ですので、正味 2 年半ほどの研究期間があったことになります。

 その下に書いてありますのは、この枠組みで採択された研究事業が我々医療側から見たときに、ウイルスの感染からキャリア、そして最終的にいろいろな病気を発症するという自然史を考えたときに、どの部分に該当するものが研究班として組織されていたかということの概略です。

 その次のページを見ていただきますと、私どもの研究班で研究成果を取りまとめて評価しているのですが、これは非常に箇条書き的に項目的に並べたものです。左側は、どういう取組が行われたかというのをカテゴリー別に四角で囲ってまとめてあります。研究成果としてどういうものが得られたかを、右側の箱の中に箇条書き的に書いてありますが、研究室での研究の内容と政策的な課題、行政的なものにつながるものと分けてありますが、これらは箇条書き的な記載だけですので、引き続くスライドでもう少し具体的に中身に関しての説明をさせていただいております。

 ということで、 (2) と書いてあります図を見ていただきたいと思います。私が領域的にある程度区分して、こういうことが成果として挙がってきたと分けてあります。その 3 つの領域は、ウイルスの感染に関係した部分、実際にキャリアの方・関連疾患に関連した部分、最終的に ATL という悪性腫瘍に関わる部分と分けてあります。この 3 年の中でウイルス感染に関しての研究としましては、自然史といいますか、実際このウイルスがどう感染して伝わっていくかという部分で、実は重要な発見があったと考えております。

 それは水平感染です。今回の議論でも基本的には母子感染が非常に大きな感染ルートとして注目されて、いろいろな対策が行われておりますが、日赤のデータに基づいていろいろ分析をいたしますと、現時点では、母親から子供への感染の実数に匹敵するだけの水平感染が、毎年起きていることを非常に強く示唆するデータが得られております。

 もう 1 つは、これは長崎の長期の観察をしている研究班から、母乳を遮断した後でも感染が実際には起こることも、そのメカニズムに関して示唆的なデータといいますか、今、胎盤感染を示すエビデンスが得られつつあるところまでまいりました。これは感染に関しての新しい部分ではないかと思います。

 そのほか、下のほうに書いてありますように、検査法に関しましては、きちっとした標準化ができて、これを WHO に登録して世界標準の DNA 検査という形に持っていくところまで話が進んできております。ワクチンの研究も進んではいますが、最も実用化に近いところは、抗ウイルス・イムノグロブリンという部分ではなかろうかと。これは、ほとんど有効性の確認と製剤化への道筋についてもかなり煮詰まってきた状況であります。

 キャリアと関連疾患ですが、これは実はこれまで知られている関連疾患以外にも、ウイルス感染に伴う病気があるのではないかということでいろいろ研究されていますが、シェグレン症候群という膠原病との関係が更に疑われていることと、新たに呼吸器疾患に関しては、これはどうも本当にありそうだというところに広がってきています。ぜんそく、あるいは気管支拡張症ですが、これは欧米からの報告も出始めているということで、我々としてもそこをきちんと押さえていく必要があろうかと思っております。 HAM に関しては先ほども山野先生からありましたように、新たな治療法の展開が進んでいるということです。

ATL に関しましては、残念ながら固有、新しい治療法がというのは、研究班の期間内に CCR4 抗体が実際に承認されたのは大きなイベントではあったのですが、現在は世界で行われている幾つかの治療法をきちんと検証するという、割と地道な研究が動いている。それは日本でしかできない部分がありますので、きちんとしたデータを発信していくことが必要であろうと思います。

 順番がもう一度戻りまして申し訳ありません。先ほど少し話題になっていたキャリアから ATL を発症する人たちをもう少しきちっとつかまえて、それを発症予防するための対象としていこうと、そのリスクグループの同定という部分に関しましても、かなり基本的な技術の開発がこの 3 年間で進んだということで、進捗は期待される状況になっているということです。

 次のページの (3) です。「政策的課題の成果」ですが、「キャリア対応」に関しましては、これまでもいろいろな場面での議論がありましたので、余り詳しくは申しませんが、少なくとも現実にどうなっているかという窓口相談の実態がどうであるか、行政の対応がどうであるか、普及啓発活動がどうなっているかという状況の把握と、情報発信の整理、様々なパンフレット、 web サイトの整備が進んでいるということです。

 「診療実態」に関しましては、これは ATL に関係した部分ですが、先ほど塚崎先生からお話がありましたように、血液腫瘍の診療ガイドラインができたということで、非常に大きな一歩になったと考えております。その下に書いてある ATL 関係は、現状、どのぐらい患者がいて、どういう治療、どこでどういう治療を受けているかに関して、これからも更に解析を深く進めるということ。それから、 ATL の診療に直結する臨床診断、病型分類がありますが、それで治療法が大きく別れるのですが、その病型分類に関して本当に現状のままでいいのか、もう少し見直す必要があるのかという議論も、今進んできていると。つまり、ウォッチ・アンド・ウエイトでそのまま見ていればいいのか、強力な科学療法なり何なりの介入をしなければいけないのかは、臨床病型分類に依存するわけで、現場においては非常に大きな問題であります。これをより科学的なエビデンスに基づいてアップデイトできないか、という議論が進んでいるということです。

 最後のほうですが、「実施体制」と申しましたのは、実は最初の総合対策ができましたときに、様々な実施体制の中で都道府県の対策協議会を作るといういろいろな項目の中で、最後の所が研究の進捗状況を把握していろいろアドバイスする組織を作るのだと、それが実施体制の 1 つの柱であると書かれておりましたので、そういう意味での実施体制で、私どもがやってきた事柄をそう位置付けております。

 何をやってきたかというと、実は先ほど申しました 25 26 の関連の研究班でどういう研究が動いているか、目標・計画と比較して進捗状況はどうであるかに関して、私どもの研究班のメンバーが参加して、評価シートにコメントを記載して全部集約をすると。最終的には、評価をそれぞれの研究班の方々に情報としてお返しするという作業を、 2 年目からずっとスタートしています。初年度は秋からスタートでしたので体制が整いませんでしたが、平成 24 年度目からそういうことをやっていると。もう 1 つは、国内外の研究の進捗状況を把握するためのいろいろなイベントをやってきたというのが、これまでのものです。

 今後はこういうものがということが書いてありますが、次のスライドだけで説明はほぼあれしますが、「強化推進すべき研究課題」としては、ウイルス感染に伴う病気であるという立場から、感染、ウイルス側の自然史といいますか、どう感染して何が起こるかという視点での研究、それから、ウイルスに感染した固体がどういう運命をたどるかに関する研究という 2 つに別れるかと思います。それぞれに課題がありますが、そういったことをバランスよく進めることによって、非常に特殊な理解していただきにくい感染症だと思いますが、そういったことの全体像を捉えて治療あるいは病気の発症予防が可能になってくるであろうと。そういう枠組みを今後とも維持してほしいということで書いてあります。

 それが、その後に書いてあるポンチ絵の所は、前にも一度使った図ですが、感染から病気に至るまでで、どういった課題を整理して取り組んでいったらいいのではないかと。これは我々の研究班の最終的な取りまとめ、提言の部分に当たります。

 最後に参考資料として付けましたのが、 HTLV-1 学会というこの領域の学会が昨年 11 にスタートいたしました。背景はいろいろありますが、簡単に申しますと、それぞれの研究領域が、実はウイルス学にしても、免疫学にしても、血液学にしても、 HTLV-1 に関係した部分は、全てそれぞれの各特定の学会領域ではマイノリティー、小さな一部分にしかならなくて、なかなか情報交換とか、研究協力、ディスカッションができなかったので、そういう皆さん、関係の人が一堂に集まって情報交換と協同研究を促進するとか、そういった場、しかも永続的な場を作る必要があるであろうと。そういうことによって基本的なキャリアのフォローアップのガイドラインとか、発症リスクに関するいろいろな指針、対応の仕方とかいうのを、学会が責任を持ってそういうことを管理していくことができるようになるであろうと期待しております。御質問等がありましたら、どうぞお願いします。

○岩本構成員 質問というよりコメントですが、研究成果は、大変素晴らしいと思います。 5 ページの上のスライドに関係したことで、一般的なコメントを申し上げたいと思います。私の専門は HIV ですが、自分自身は患者を診る立場なので、研究であるとか、医療に対策推進協議会の重点が置かれるのは非常にありがたいのですが、今の日本の感染症が、法律もそうですが、ほとんどが急性の感染症を対象にして作られていて、 HIV とか、 HTLV とか、肝炎といった慢性の経過をたどるウイルス感染症の対策としては、欠落している部分があると思うのです。

 それは上のスライドで言うと 2 番目に当たるかと思うのです。急性感染症を考える場合に、どうしても予防と発生源と治療などの対策ということになるのですが、その間をつなぐものとして、ここに書かれているのはフォロー体制の確立、感染者への手引書の改訂、社会における体制の確立です。これらはもちろん大事ですが、私が申し上げたいのは、今推定でどのぐらいの感染者がいて、その方々のうち何人が自分の感染を知っていて、それから対策によってどう変わってきたかという議論が、日本ではほとんどないのです。

 先ほど 100 万人以上の方が感染しているという話はあったのですが、この間にその数が全体として減ったのか、あるいは年齢分布が、子供たちが感染から守られてきたことを示すような年齢分布になってきたのか、その人たちのうち何パーセントが診断を受け、経過観察をされて医療に結び付いているのか。これらについては実数把握は無理なので、みんなが納得できる推定感染数と、何パーセントぐらいの方が自分の感染を知っていてその方々がどういうケアを受けて、どういうふうに治療を受けて、その治療効果はどうなのだという、慢性感染症の全体像を把握するための研究がとても大事だと思います。その辺は決して HTLV-1 だけではなくて、私は肝炎研究でも HIV の研究でも非常に抜けている部分だと思います。その部分は厚労省の感染対策にとって非常に大事なことだと思いますので、是非そういう点の研究もお考えいただければと思います。

○渡邉座長 大変貴重なコメントをありがとうございました。 1 つだけ個別のことですが、感染者数等の年次推移も含めて情報自体を我々は発信していますが、一番問題なのはかなり大雑把な推定であると。つまり、日赤のドナーを基にしたデータしかなくて、地域の住民のデータが取れていないのが実態把握としては大きな欠陥であること。

○岩本構成員 その辺は、人権問題、個人情報の問題と絡み合わせて、日本の国として、日本の中にはこういう疾患に関してこの程度の感染者の方々がおられて、その辺がどういう対策で変わってきていますということをもう少し、どういうことをやれば効果的にやれるのか、私も専門でないので分かりませんが、国の感染症対策で、そういう点に関する研究に力を入れて頂くことが非常に大事だと思います。

○渡邉座長 難波江さん、御発言願います。

○難波江結核感染症課課長補佐 後ほどの研究費のところでお話を。

○渡邉座長 はい。

○岩本構成員 その辺りで言おうと思っていたので、その後で言うと、もっと刺が立つかと思ったので。

○渡邉座長 本当に貴重なコメントをありがとうございました。

○齋藤構成員 現在の推定のキャリア数は、一番最初に献血する際で、初回献血の際の年齢分布から推計して。

○渡邉座長 推定です。

○齋藤構成員 今回、日本産婦人科医会で 70 万検体ぐらいの妊婦のデータを集めさせていただきまして、女性しかいないのですが、その中で推定した献血のデータとすり合わせますと、ほぼ一致しました。また、年齢分布にしましても、非常に初期の頃の妊婦のキャリア率と現在を比べますと、約 8 分の 1 程度まで低下しています。ですから、そういったこともありますので、この母子感染の対策事業を後 30 年ぐらい続けると、出生した赤ちゃんからの ATL が撲滅できるのはシミュレーションできます。

 ただ、そういった方について、本人がどのような形で知っているのかどうかを含めて、今後やっていかなければいけないと思います。日赤では献血しますと、キャリアの紙が出てきて説明書も付いているのですが、私たちの所に来た患者はほとんどが分からないとか、急にこういう紙が来て非常に困惑したということを言われていますので、そこも問題があって残っていると思います。

○渡邉座長 時間が押していますので、申し訳ありません。遅れてしまいましたが、最後の資料 5 を事務局から御説明いただきたいと思います。

○難波江結核感染症課課長補佐 お手元の資料 5 の説明します。平成 26 年度研究費概要について、説明させていただきます。資料 5 ですが、 1 2 ページが表裏の印刷になっているのですが、 1 ページが「厚生労働科学研究費補助金」となっています。 2 ページが「厚生労働科学研究委託費」となっておりまして、平成 26 年度から厚生労働科学研究は 2 つに分かれることとなります。その背景といたしましては、補助金の 1 ページにある部分はより行政的な研究という内容になっておりまして、 2 ページの委託費の部分はより開発系に係る分野となっています。

3 ページにありますが、昨年、政府で総理大臣を本部長といたしまして「健康・医療戦略推進本部」を立ち上げました。ここで、先ほど菅付構成員、石母田構成員からもお話がありました健康医療分野を成長分野として見て、日本発の医薬品などを世界に出していって、戦略的に研究を推進していくという決定がなされております。

 この決定を受けまして 4 ページ、これまで医療分野の研究は、厚生労働省だけではなくて文科省や経産省も助成などを行ってきたわけですが、こういった各省で行われている研究を集約化しまして、新しく独立行政法人、今まだ仮称で正式には法律が成立しておりませんが、日本医療研究開発機構という新しい独立行政法人を設立いたしまして、そこにこれまで各省でやっていた研究を集約化して、より戦略的に実施していくということとなっております。

 先ほど 1 2 ページを分けたと申しましたが、 2 ページの委託費の部分については、新しい独立行政法人ができれば、そこに集約化されていく分野となっております。 2 ページの中で、先ほど岩本構成員からお話がありました感染実態とか疫学研究については、前回の会議で日赤のサザキ構成員から御発表いただきまして、着実に減ってきているけれども、水平感染、特に中高年の女性の中で水平感染が示唆されると。ただし、これが本当にそうかをきちんと見ていかないといけないということで、疫学研究についても来年度の課題として今ちょうど評価に入っているところです。こういった取組をしっかり進めていきたいと思っております。

 併せて資料 6 についても説明させていただければと思います。資料 6 は「 HTLV-1 対策関連予算」になります。推進体制、感染予防実施、相談支援、医療体制の整備、普及啓発・情報提供、研究開発の推進。平成 26 年度予算がちょうど国会で審議されているところですが、予算が成立しましたら、こういった事業もしっかりと進めていきたいと思います。

○渡邉座長 ただいまの御発言に関して、御質問とか、御意見とかはありますか。特にありませんか。来年度の研究課題の紹介と厚生労働科学研究の仕組みが変わって新しい研究費の仕組みはこうなるという御説明を頂きました。さらに、資料 6 TLV-1 総合対策ということで、実際、国の予算がどういう所にどのような形で使われて動いているかの説明を頂きまして、研究費、開発費とはまた別にいろいろな費用が使われていることがよく分かったかと思います。

 特に御発言がないようでしたら、時間もまいりましたので、本日は以上で終了とさせていただきます。委員の皆様、中島先生におかれましては、御出席いただきまして、誠にありがとうございました。次回の協議会で議論するテーマについて、もし御意見がありましたら、御提案をお願いしたいと思います。特に今すぐないようでしたら、次回のテーマについては、事務局と相談の上また決めさせていただきたいと思います。事務局から、何かありましたらお願いします。

○石原結核感染症課課長補佐 次回の開催については、座長と調整させていただきまして、改めて事務局より御連絡差し上げます。本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> HTLV-1対策推進協議会> 第6回HTLV-1対策推進協議会議事録(2014年3月13日)

ページの先頭へ戻る