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2014年2月13日 第7回「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成26年2月13日(木)15:00~16:40


○場所

厚生労働省共用第8会議室(19階)


○出席者

委員

今野座長 神林委員 黒田委員 山川委員

事務局

中野労働基準局長
大西大臣官房審議官
岡労働条件確保改善対策室長
鈴木職業安定局派遣・有期労働対策部企画課長
伊藤職業能力開発局能力評価課長
小林雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長

○議題

(1)転換制度について
(2)その他

○議事

○今野座長 ただいまから「第7回『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」を開催いたします。

 本日は、前回議論した「処遇のあり方」に引き続いて、個別テーマとして「転換制度」について議論をしたいと思います。

まず、委員の出欠状況と資料について、事務局から説明をお願いします。

○岡労働条件確保改善対策室長 本日は、黒澤委員、櫻庭委員、佐藤委員、竹内委員、野田委員から御欠席との御連絡をいただいております。あと、水町委員は所用によりかなりおくれるという御連絡をいただいておりまして、場合によっては欠席ということでございます。

続きまして、配付資料ですけれども、1冊にまとめております。1ページ目が資料1「多様な正社員の転換制度に関する論点ペーパー」、6ページ目以降が資料2「多様な正社員の転換制度」の関連資料となっております。

参考資料として、36ページ目以降でございますけれども、前回1月30日の主な議論、主な意見をまとめてございます。

資料について不備等がございましたら、事務局までお申しつけください。

○今野座長 それでは、議事に入ります。

まず、事務局から多様な正社員の転換制度に関する資料について、説明してください。

○岡労働条件確保改善対策室長 それでは、資料の2ページ目、論点ペーパー「転換制度」をごらんいただきたいと思います。

「転換制度の導入」でございます。

1つ目として「柔軟な運用と制度化」ということで、1つ目の◇です。非正規雇用労働者、多様な正社員、いわゆる正社員の雇用区分間での転換について、定期的に一定規模の非正規雇用労働者を正規雇用労働者に引き上げるために、制度として転換を行う企業がある一方で、労働者の個別事情を配慮して、制度ではなくて、運用により勤務地等を限定する企業があります。

2つ目です。運用により個別に勤務地等を限定する場合、雇用区分上は勤務地の限定がない正社員であっても、本人や家庭の事情等を踏まえ、転勤を命じることなく、勤務地限定の正社員と同じく限定された地域内のみでの勤務とするなど、個人の事情の変化により柔軟な転換を行っているところがありますけれども、そういったことについてどのように考えるかということでございます。

3つ目です。いわゆる正社員の処遇のままで、育児等の個別事情に配慮し、運用で勤務地等を限定して働く正社員がいる場合に、他方、勤務地等が限定されている多様な正社員が処遇について不満を持つことがあります。運用での暖昧な勤務地等の限定ではなくて、転換制度を設けることについてどのように考えるか。

4つ目です。非正規雇用労働者のモチベーションの向上やキャリアアップ、ワーク・ライフ・バランスの実現による優秀な人材の確保・定着のために、多様な正社員制度の普及・促進に当たっては、運用ではなく転換を制度として活用していくことが望ましいのではないかということでございます。

 次に、3ページ「制度の整備・周知」です。

1つ目です。そうした転換制度を設ける場合に、就業規則で定めるという場合もありますが、就業規則とは別途の規定において詳細な規定を定める企業や、人事制度に関するハンドブックを作成しまして、その中で制度を記載する企業というのがあります。今後、制度を導入する企業においては、こうした例が参考になるのではないかということでございます。

2つ目です。労働者にこうした転換制度が幅広く活用されるためには、転換制度の要件や手続きを周知する必要があるのではないかということでございます。

次に、「相互転換」でございます。

上記のこともここにも関連するわけでございます。

1つ目でございます。キャリア形成への影響やモチベーションの低下を軽減させ、安心して多様な正社員を選択できるように、状況が変化した場合に多様な正社員からいわゆる正社員に再転換できるような仕組みを設けることについてどう考えるか。これは前回、黒澤先生から御意見があった内容でございます。

2つ目でございます。一時的に多様な正社員に転換した者がいわゆる正社員に復帰した場合に、その間ずっといわゆる正社員であった者と同格のポストに配置することは難しい場合も多いと解されますが、しかしながら、多様な正社員制度が活用され、また、労働者のモチベーションを維持するためには、多様な正社員における勤務実績や経験も適正に評価し、それにふさわしいポストに配置することが望ましいのではないか。

3つ目でございます。いわゆる正社員と多様な正社員について、相互転換を円滑にする方策として法制化するという意見がありますが、そのことについてどう考えるか。

これは12月の規制改革会議でこのような意見が入ってございます。

なお、参考といたしまして下の※で労働契約法18条の無期転換、パートタイム労働法12条の転換措置の規定を紹介してございます。

 次に、4ページでございます。

以上のような転換制度の導入をするということになった場合の「転換制度の要件」についてでございます。

 「労働者の意向による転換」と「企業の意向による転換」と2つに分けまして、まず、労働者の意向によって転換する場合でございます。

「応募資格等」でございます。

1つ目として、いわゆる正社員として採用された者に対する期待や役割、人材育成等の観点から、一定の年齢や役職にならなければ多様な正社員に転換できないとするなど、制限を設けている企業がございますけれども、そうしたことについてどのように考えるか。

2つ目でございます。人材育成や活用の観点から、いわゆる正社員から職務限定正社員への転換は1回限りとするなど、転換の回数について制限を設けるといった企業がヒアリングでもございました。そうした転換の回数について制限を設けることについて、どのように考えるか。

逆に、転換の回数に制限を設けない場合に、随時労働者から転換の希望があれば、その都度転換させる場合もあるかもしれませんけれども、多くの企業では年1回の人事異動の時期などに応募制をとって転換をするということで、転換の実施時期を決めているところもたくさんございます。そういった転換の時期を随時ではなくて、1年に1回などとすることについてどう考えるかということでございます。

3つ目でございます。今のような回数制限とか時期を制限する企業がある一方で、本人の申し出のみで理由や応募資格を問わない、あるいは随時ということで、時期も問わないという企業もありますが、そういったことについて、どのように考えるかということでございます。

以上が応募資格でしたが、応募してきた場合の企業側の判断についてでございます。

1つ目でございます。労働者の意向のみで相互転換を認めますと、企業の事業運営に支障が生じるため、所属長の推薦、役員の面接等を求める企業が多数ありますけれども、そうした推薦や面接、あるいは試験といったことについてどのように考えるか。

また、そうした推薦とか面接などを求める場合にしても、労働者の転換へのモチベーションを低下させないように、一定の実績が出る程度の制限、セレクションにすべきではないかということでございます。

 2つ目でございます。他方で、本人の申し出のみで転換を認める企業というのもございます。企業活動(人事権)とのバランスについて、どのように考えるかということでございます。

次に、5ページでございます。

先ほどは労働者の意向による転換でございましたが、逆に企業の意向による転換という例もございました。その場合に、本人の同意が必要かどうかということでございます。

1つ目でございます。昇進に伴って、労働者の申し出がなく、業務命令として多様な正社員からいわゆる正社員に転換を行い、実際には勤務地限定の範囲内で転勤をするという事例がありましたけれども、本人の同意をどこまで求めることが適当と考えるか。

2つ目でございます。いわゆる正社員から多様な正社員への転換の場合、賃金など処遇が下がる場合には、当然本人の同意が必要ではないか。

転換により賃金等の処遇が下がらない、不利益変更がない場合であっても、働き方が変わるということで、本人の同意が必要ではないかということでございます。

その次が「その他」です。

1つ目が「労使コミュニケーション」です。これは前回の処遇のところでも出てきましたが、企業によってさまざまな事情がありますので、非正規雇用の労働者、多様な正社員、いわゆる正社員の雇用区分間での納得性を高めるために、転換制度についてもわかりやすい制度とするとともに、労使間で十分に話し合って、それから制度にすべきではないかということでございます。

その下は「情報発信」です。これも前回処遇のところでございましたし、黒田先生からも御意見をいただきました。

今後、多様な正社員制度を導入する企業等が転換制度の設定を円滑に行うことができるように、転換制度の整備や周知、ほかの企業では一般的にどういった要件などを課しているか、そういった情報に関して、参考となる情報を行政のほうで発信していくということも有用かと思いますけれども、そうしたことについて、どのように考えるかということでございます。

以上が論点ペーパーでございます。

 参考といたしまして7ページ以降に関連の資料をお付けしております。

まず、7ページは、これまでのヒアリングとか先行の調査研究から得られました多様な正社員関係の転換制度のメリットと課題でございます。

メリットについては、冒頭の「転換制度の導入」というところでいろいろ書かせていただきましたが、転換のパターンによって違いはございますけれども、1つには優秀な人材の確保、それから前回山川先生から御意見がございましたが、雇用の安定化という点で役立つのではないか。それからモチベーションの向上や、あるいは多様な正社員からいわゆる正社員に転換する場合については、新たな期待役割に応じた人材育成や人事配置の選択肢が拡大するというメリットもあるのではないかということでございます。

 逆に、いわゆる正社員から多様な正社員に転換することについては、これも優秀な人材の定着とか、柔軟な働き方の選択が可能になるというメリットもございますし、労働者個人の視点から見ますと、ワーク・ライフ・バランスの実現ということもございます。

職務限定であれば、前回議論にもなりましたけれども、より専門的な職務でスキルアップをするという場合に、こうした職務限定正社員への転換というものが役立つのではないか。

あるいは勤務時間限定については、ライフステージに応じた柔軟な働き方、ワーク・ライフ・バランスの実現に役立つと思いますし、また、恒常的な長時間労働を前提とする、職場内の業務の見直し・効率化のきっかけにもなるのではないかということでございます。

他方、課題といたしましては、これも前回の議論と重なりますが、職域や勤務地が拡大することで、それを望まない者にとっては、なかなか転換がしづらいとか、あるいは処遇差が非常に大きいと、なかなか企業のほうが転換が認めづらいといった課題もございます。

 多様な正社員からいわゆる正社員に転換する場合についても、同じく転勤や長時間労働が前提となっているようなところでは、転換することによってワーク・ライフ・バランスが実現できなくなるとか、そういったデメリットもあるということでございます。

 逆にいわゆる正社員から多様な正社員への転換の課題といたしましては、雇用管理が複雑化するとか、あるいは人事政策、人事配置とのバランスがなかなか難しくなるということとか、あるいは職務限定については、頻繁に職務を変更すると長期的な人材育成が難しくなるといったことがあります。

あるいは勤務時間限定に転換する場合は、いわゆる正社員の働き方全体の見直し、あるいは業務配分などの見直しが必要であること、あるいはシフトが組みづらいこと、そういった課題があるかと思います。

 1ページ飛ばしまして、9ページをごらんいただきたいと思います。

 有期の人を無期契約に転換するメリットについて、企業に聞いたアンケートでございます。

 一番多い回答といたしましては「長期勤続・定着が期待できる」、「働く意欲を増大できる」「要員を安定的に確保できる」「技能の蓄積やノウハウの伝承ができる」「職場の人間関係が良好になる」、こういったことをメリットに挙げるところが多いということでございます。

10%は切っておるのですけれども、前回、教育訓練への投資を企業が行うかどうかという話がございましたが、「雇用が安定することによって、教育訓練投資を行いやすくなる」、そういった意見もあるということでございます。

10ページでございます。

逆に有期を無期に転換するときの課題といたしまして、「雇用調整が必要になった場合の対処方法」といったことを挙げる企業が多いということでございます。あと、正社員と有期労働者の労働条件のバランスといったことを挙げる企業も多いということでございます。

以上が企業の事情でございます。

次に、11ページは、非正規の労働者の人自身はどう思っているのかということでございますが、非正規雇用の人で、もちろんそういった働き方がいいという方もたくさんいるわけですけれども、他方で、正社員になりたい人も一定数いるということですので、その割合が平成11年のころは11%程度だったのが、平成19年、平成22年になりますとその倍の20%超ということで、正社員になりたい方も一定程度いるということで、先ほどの転換制度というのが有用ではないかなということでございます。

次の12ページは、そういったニーズがある中で、実際に転換制度を導入している事業所はどれくらいあるのかということでございます。有期とパートについて、非正規からいわゆる正社員への転換制度を導入している事業所は約5割ということでございます。

そのうち実際に転換の実績がある事業所はどれくらいかということで、有期に限ってですが、約4割の事業所で転換の実績があるということでございます。

次に、13ページはこれまでお出ししていなかった資料でございますが、無期転換をするに当たって、無期転換後の労働条件をどうするのか、その場合に雇用区分を新設するのか、既存のものを活用するかといったことを聞いたものでございます。ちょっとわかりづらいかもしれませんけれども、まず、有期契約が5年を超えた場合に無期転換させるか、あるいは雇止めをさせるかというのが左上の図でございます。無期転換させるという企業が64.8%ということで、3分の2の企業は法律に基づいて無期転換をさせるというふうに答えております。

その際に労働条件をどうするかということでございますが、左下の丸で囲った部分でございます。労働条件が変わるとしたところが、既存の雇用区分を活用するところと新規のものと2つありますけれども、それぞれ12.5%と7.1%ということになりますので、変わるというところが約2割ということになります。

他方、真ん中の紫、労働条件を変えずに無期にするだけという企業が、上の42.1%と17.5%を足しますと大体6割ということになります。あと、未定というところもございます。今のところ多くの企業では労働条件はそのままで、無期にだけするという企業が多いのかなということでございます。

以上が非正規から多様な正社員への転換でございます。

次に、14ページは多様な正社員からいわゆる正社員への転換制度についてでございます。

多様な正社員からいわゆる正社員への転換制度があるかどうかということでございますが、「従業員本人の希望に基づいて転換できる制度がある」という企業が42%。「人事異動や企業からの申し入れに基づいて転換できる制度がある」という企業が35.3%。これは両方ダブっているところもあると思いますので、内訳はわからないのですけれども、これだけの企業で転換制度があるということでございます。

なお、下のほうに限定の区分ごとのデータも載せております。これを見ますと、勤務地限定で従業員本人の希望に基づいて転換できる制度があるという企業が多いということでございます。

次のページは、転換する際の条件でございます。

一番多い回答といたしましては、「上司による推薦があること」。以下、「仕事内容や職種の変更に応じられること」「転換のための選考に合格すること」「仕事に必要なスキルがあること」、こういった順に並んでございます。

 以上が多様な正社員からいわゆる正社員への転換でございます。

16ページは、逆にいわゆる正社員から多様な正社員への転換制度についてでございます。

こちらにつきましても、「従業員本人の希望に基づいて転換できる制度がある」という企業が48.2%ということで、約半数。先ほどの多様な正社員からいわゆる正社員と比べましても、こちらのほうが高いということが言えるかと思います。

他方で、人事異動や企業側からの申し入れに基づいていわゆる正社員から多様な正社員への転換制度があるとした企業についても、一定程度あるということでございます。

こちらにつきましても、同じく下のほうに限定の区分ごとにデータを載せておりますが、勤務地限定は、先ほども本人の希望に基づいた転換制度があるという企業が多かったわけですが、労働時間限定Bというのは、残業がないということですが、そういった雇用区分への転換制度を設けている企業も多いということでございます。

次の17ページがいわゆる正社員から多様な正社員への転換の条件はどうかということでございますが、これもほとんど先ほどと同じでございまして、本人に基づくものではございますけれども、上司による推薦や何らかの選考、会社側の判断があるということがうかがえるかと思います。

以下、実績等ですので、23ページをごらんいただきたいと思います。

第2回から第4回にかけてこの懇談会でヒアリングを行ってまいりました。それを一覧表にまとめたものでございます。転換制度がある企業がほとんどでございました。部分的にないという赤字の部分もございますが、それ以外は転換制度があるということでございます。

ちょっと特徴的なものとして、一番上の製造業の事例1は、非正規から多様な正社員への転換については、本人からの申し出の制度はなくて、会社側の部門長の推薦によって転換をするという制度だけがあるということ。

その右のほうに行きまして、多様な正社員からいわゆる正社員、あるいはいわゆる正社員から多様な正社員への転換については、本人の申し出によるものもあるのですが、期待役割の変更、格付の変更など、企業側からの申し出によって転換をする場合もあるということでございます。

同じく事例4の小売業についても、非正規から多様な正社員、あるいは多様な正社員からいわゆる正社員への転換の場面においては、本人からの申し出の制度がなくて、企業側からの申し出による制度だけがあるというのが特徴的でございます。

あと、事例7の飲食業の非正規から多様な正社員についても同じような制度がございます。

なお、事例8の小売業では、非正規から多様な正社員、多様な正社員からいわゆる正社員のところで「本人の申出、上司の推薦」とございますけれども、これは本人の申し出を受けて上司が推薦する制度でございます。

いわゆる正社員から多様な正社員への転換の制度はないというふうに右のほうに赤字で書いてございますが、では、勤務地等の限定ができないのかといいますと、運用で実際には配慮して限定をしているということでございます。

次のページにはどういった資格あるいは要件が必要かということを載せております。

25ページ以降はもう少し詳しく書いてございます。

29ページから先行調査研究の事例を載せておりますけれども、いずれにおいても転換制度はあるのですが、何らかの資格とか、あるいは会社側による試験とか面接といったところを経て転換する制度というのがほとんどではないかということでございます。

34ページをごらんいただきたいと思います。

前回、均衡処遇のところでも御紹介いたしましたが、年末の規制改革会議の意見書の抜粋でございます。この中で相互転換についても触れられております。

3の「(1)無限定契約とジョブ型契約について、相互転換を円滑にする方策を法的枠組みも含めて検討する」ということで、先ほどの論点ペーパーにもこの部分を抜粋しております。

(2)としまして、「相互転換に当たっては、労働者本人の自発的意思を前提とし、労働条件決定を合意することに加え、労働条件変更の書面による明示を義務付ける」。

(3)は、労働契約法20条に類する規定を設けるということが載ってございます。

35ページは、第5回の懇談会で経団連と連合からヒアリングを行いましたが、その際の転換制度の部分の意見でございます。

経団連のほうは、転換制度の方向性を示すことは反対である。

契約自由の原則を尊重すべきということで、制度化については反対の意見を表明しております。

他方、連合のほうからは、とにかく本人の同意が必要なのだということが意見として出されております。

同意がある場合であっても、それが真意に基づく同意でなければならないということでございます。

以上が関連の資料でございます。

以下、37ページ以降は、前回の制度導入、処遇についての主な意見を抜粋してございます。

40ページでございます。処遇と転換制度は密接不可分な部分もございますので、前回の処遇の議論の中でも転換制度に関する御意見もございました。

2つ挙げてございます。

1つ目といたしまして、勤務時間限定正社員の課題として挙げられるキャリア形成への影響やモチベーションの低下については、一旦多様な正社員に転換した後でも、いわゆる正社員へ再転換できるようにすることで対応することが可能ではないかという意見がございました。

もう一つは、勤務時間限定正社員については、(1)育児や介護等で一定期間のみ勤務時間限定正社員になるパターンと、有期契約のパートタイム労働者などが無期契約に変わって、恒久的に勤務時間限定正社員として働くパターンがある。

(1)のパターンの場合は、フルタイムの業務を切り出すなど、組織運営での工夫が必要ではないか。(2)のパターンの場合は、これまでのパートのときと比べて、職種の範囲を広げるなどの対応が必要ではないか。こういった御意見がありました。

以下、参考資料と前回の資料をお付けしております。

私からは以上でございます。

○今野座長 ありがとうございました。

 それでは、自由に議論をしていただければと思います。

御自由にどうぞ。いかがですか。

○山川委員 御説明の確認的な質問ですけれども、資料1の2ページ目「論点ペーパー」で、柔軟な運用がなされているということと、制度として活用していくのが望ましいのではないかということが書かれていますが、そもそも柔軟な運用は避けたほうがいい、望ましくないという発想に立つべきなのかという点を確認したいといいますか、もしかしたら議論したらいいのかもしれませんが、個人的には、柔軟な運用はなくならないのではないかという感じもしています。

しかし、望ましくないというよりも、こういう制度があったほうが活用が促進されるというか、特に周知がなされて透明性が増すことによって、活用したい人は活用する機会がふえるというようなことかなと思います。柔軟な運用があってはいけないというような趣旨では多分ないだろうという感じなのですが、そのあたりをお伺いしたいと思います。

○今野座長 どうぞ。

○岡労働条件確保改善対策室長 今の御意見は、2ページの一番下「運用ではなく転換を制度として活用していくことが」ということでございますが、「望ましいのではないか」ということで、そちらに寄ってしまった書き方になっており、書きぶりが不適切だったかもしれません。確かにおっしゃるように柔軟な運用がうまくいっている場合もあると思いますし、今後もそういうやり方もあるかと思います。

他方で、今、先生がおっしゃったように、制度として確立していれば周知も図られますし、活用する方もそれをわかった上で活用することができるということで、制度も設けたほうがいいのではないかという意味で書いたつもりでございます。

○神林委員 「運用」という言葉の意味なのですけれども、これはちゃんと書面にする運用ですか。

○岡労働条件確保改善対策室長 書面には多分しないのかなと思うのですけれども。

○神林委員 通常「運用で」と言うときは、暗黙のうちにあなたには転勤を命じませんよということを、どうして合意しているかよくわからないのですが、何となく合意できている。そういうことを「運用」というふうに言っているのだと思うのですが、それと制度との大きな違いというのが明示されているかどうかではないかと思います。

なので、運用で何とかなるというのは、あらゆる労働条件は運用で何とかなるのですけれども、きちんとした約束になっているかどうかと言われると、運用でうまくいっている間は問題が生じないので、わからないのだけれども、問題が生じたときに、きちんと約束されているかどうかというのは確認できると思うのですが、そういう事例はございますか。

○岡労働条件確保改善対策室長 個別の事例までは把握していないのですが、ただ、この懇談会のヒアリングでもよくあった話としては、全国転勤型で無限定なのに実際には転勤がない人がいて、他方で限定されている人がいて、何であの人は無限定なのに転勤がないのだと。処遇の差がある場合、非常に不満が出るということで、それをどうにかしないといけないというのが、企業のほうも課題としてはわかっていて、ただ、それをどうしたらいいかということをヒアリングでもおっしゃっていたのですけれども、そういった事例があるということは承知しております。

○神林委員 そういう事例ではなくて、運用で例えば事実上勤務先が固定されてしまうような人たちが会社の中にいて、そういう人たちが仮に自分は転勤がないというふうに考えていたとして、いきなり転勤を命じられたときに、事実上自分は転勤がない限定正社員になっていたはずなのに転勤を命じられたと言って不満を表明するなり、紛争が出てくるなりというような事例というのは、先生方も含めて御存じですか。

○今野座長 どうぞ。

○山川委員 ホワイトカラーの事務職の場合は、事実上、何年かにわたって勤務地あるいは職務的なものが固定していても、それと異なる人事異動の命令が出て、裁判所で争った場合に労働者が勝つことはまずないと思われますので、そこは法的には契約のレベルに達していないかと思います。

ただ、あるとしたら、家族の介護ですとかそういうことを説明していた場合、書面には残さないけれども、何らかの形で訴訟上、証拠が出てきた場合に、それは契約上の限定というときもありますし、そういうプロセスを経ておきながら、例えば遠隔地に転勤するようなことは、権利があるとしても濫用ではないかとか、そういうさまざまな理屈がありますが、その意味では、運用で行われている場合は、がちがちの制約を裁判所がかけることは少ないかもしれませんが、運用が柔軟だったら、濫用レベルで法的判断もある意味では柔軟になるようなことはあるかと思います。

○神林委員 その点は多分指摘してもいいのではないかと思います。運用でやっているのは多分簡単で時間もかからないと思うのですけれども、恐らくきちんとした約束になっていないということなので、何かあったときに不都合が生じるかもしれないし、相互で本当に合意できているのか、怪しいというようなこともあり得る。

それに対して、転換制度という制度を設けて、自分がそこにアプライして、そこで承認されたというふうに考えれば、一定のコミットメントにはなるのではないかと思います。それが1点目です。

ただ、自由に転換を認めたとすると、これについて僕はこの場で何度か言っていると思うのですけれども、コミットメントになっているのかと言われると、どうなのかなというふうになってしまうので、一番わかりやすい話というのは、転換を1回したら次の変更は絶対許さないというふうになると、本当のコミットメントになるのですが、そこはトレードオフの関係になっているのかなと思います。

なので、円滑な転換を保障するということとぐだぐだな運用でやるということは限りなく近づいていくという気がします。

○今野座長 後者については、実質上、大企業などを見ると、例えば回数制限をするとか、一度言ったら5年間はだめよという形で制度化して、一種のコミットメントをさせるということにはなっていると思うけれども、ただ、一度やったら一生だめよという制度は余り聞いたことがないと思う。いずれにしてもそういう形で。そうしないと、企業だって困るからね。勝手に出たり入ったりされれば。

○神林委員 解雇して雇い直せばいい。

○今野座長 それだったらいいけれども。

前者の問題は、制度があって、運用でやっているというケースがある。だから、全国社員ですよという制度は明確なのです。でも、例えば研究所の研究者なんて、そこにしか事業所がないから、本人はずうっと動かないと思っている。多分契約は総合職なのだよ。でも、あるとき、おまえ、研究者としてそれをやっていても成果が出ないから工場に行け言われたら、先ほど言った期待していた勤務地限定社員が崩れるわけだ。そういうことはあり得ると思うけれども、そのときにどうなるのだ。

○神林委員 勤務地限定契約を結んでいたとしたら。

○今野座長 いや、限定でないのだ。普通は全国社員として契約している。でも、何となくそこで働いている人は動かないと思っている。でも、あるとき動くことはあり得ると。

○神林委員 そうすると、恐らく今の裁判所は、それは行けということになるわけなので、労働者の側がそれを避けるためには、勤務地限定だという契約をしてくださいというふうに申し込むインセンティブがある。そのときに、勤務地限定契約というのがもしあったとすれば、それを選択するという形で転換を申し出ることができるので、そういう制度がもしあったとしたら、恐らくエフィシェントだということになるだろうということです。

○今野座長 そうすると、企業側からすると、今の研究者の例で言うと、うちの事業構造からしたら、その研究分野はもう要らないというときにどうなるか。どうなりますか。

○山川委員 研究分野で限定して雇用しているというのは余りないかもしれませんけれども。

○今野座長 事業所限定でいいのですよ。研究所事業所限定。でも、研究開発などという事業分野があったら、この分野はもう要らないというのはよくあるので、そこの技術者はもう要りませんと。そうすると、研究所にはいられません。でも、契約は研究所契約だったら、どうなるのですか。

○神林委員 それは単純に。

○今野座長 解雇になると。

○神林委員 ええ。

○山川委員 限定の仕方が、そのためにだけ雇ったかどうかとか、いろいろ事情によって異なると思います。

 これも現実的にありそうだと思うのですけれども、本研究会の対象ではないでしょうが、夫も妻も公務員で、ワーク・ライフ・バランス上の問題が生じた場合に、その公務員が全国転勤するタイプの公務員であるときでも、一定の配慮はなされるのではないかと思います。あと、典型的なのは裁判官、検察官です。同じ裁判体に行くということはちょっと考えられないのですけれども、地方裁判所と支部での配属とか、最近では、大規模庁の場合、同じ裁判所の中でかなり離れた配属ということもあるかもしれません。公務員ですから契約のレベルではないのですが、一定の事情が解消するまではそういう運用がありうるのではないか。そのような運用は、権利濫用の判断の背景にはなるのですが、法的に明確化しないでやっている部分が現実にはかなりあるような感じがします。

○今野座長 最近、ワーク・ライフ・バランス政策で、旦那が移ったら、そちらの近いところへ移してあげるというのが徐々にふえてきている。それも1つのあれかな。それは運用でやっているわけですね。

○山川委員 そうです。運用が多いと思いますが、最近、配偶者帯同休暇みたいなものもできつつあるので、制度化できるのであれば、したほうが望ましい面もあろうかと思います。ただ、先ほどの公務員とか裁判所の例でも、いざとなると離れた場所に配置する、例えば高裁長官としてという場合はある得るわけですね。

○今野座長 でも、どんな場合も、しょせん制度は、そういう制度を全部規定できるわけではないものね。ベースだけ制度にしておいて、余った分はいつも運用でやっているわけですね。

○神林委員 その度合いがあります。違うということだと思います。

○今野座長 度合いの問題でね。

○神林委員 なので、転換というのができるか、できないかというのは結構重要な問題なのではないかと思います。

先ほどの今野さんの例だと、自分は研究所限定で雇われていたと。しかし、総合職に転換する転換トラックというのがある。理科系の研究者の場合にはこれが非常に現実的ですね。自由に転換できるというふうに思っていた。そこで研究所がつぶれてしまって、あなたは仕事がなくなりましたから解雇ですねというふうに説明を受けたときに、納得できるかということですね。

転換制度があるということは、自分がオプションを持っているのと同じになるわけなので、そのオプションを行使する機会をつくらせないということは、不満の原因にはなるだろうなと思います。

なので、自由に転換できるというふうに言ってしまうと、その制度をそもそもつくる意味がなくなってくるのかなと思います。

○今野座長 理念的というか、原則で考えると、分けているということは、やってほしいことが違うわけですね。ということは、こちらをやってほしい人は、要員をこれだけ欲しい、こちらをやっている人は、これだけの要員が欲しいと思っているのは当然だね。そうすると、全く自由なんてあり得ないと私は思っているのだ。つまり、買い手の都合だってあるだろう。そういうふうに思っているから、本人が希望したら全部オーケーという世界は余り想定できないのです。もしそれが可能だったら、区分している意味がない。区分している意味というのは、やってほしいことが違うということが前提なので。

どうぞ。

○岡労働条件確保改善対策室長 企業によっていろいろあると思うのですけれども、前回、短時間勤務の正社員の事例をお出ししたかと思いますが、そこについては、基本的に本人が申し出ると転換できるのですけれども、今、おっしゃったように、やはり定員がありますので、幾ら希望しても、そのポストがあかないと転換できないということで、その場合、待機状態で、あいたらその人が順番に転換できるということで、無条件といっても、そういう制約はどうしてもできるのかなとは思います。

○今野座長 転換するというのは、キャリアルートを変えるという非常に大きなことなので、制度化は一定程度にちゃんとしておいたほうがいいと思うけどね。それだけ大きな契約変更なので。

○神林委員 そこが共通認識ができていないところではないかと思います。転換制度というのは、一般的に考えれば、キャリアの変更と同値だと考えられるわけですけれども、細かく見ていくと、ただの労働条件の変更にすぎないという場合が多々あるわけです。なので、キャリアの変更を前提にした転換制度というのをつくっておいて、それがただの労働条件の変更として運用されるという場合も多々あり得るわけです。それは恐らく時間的なディメンションも全然違う。1年、2年の間だけ短時間になればいいという要望と、そもそも猛烈社員にはなりませんというキャリアを選択するということは全然違うのだけれども、実は制度上は同じだということが起こってきてしまって、それを制度で区別するということは結構難しいのかなと思います。

○今野座長 その前に、今、言ったただの労働条件の変更というところは、どんなケースですか。イメージできないのだけれども。

○神林委員 残業したくない。

○今野座長 残業する、しないということね。

○山川委員 今の点は、私も神林さんと同感で、運用でなされていることが多いというのは、多分キャリアの変更という意識を余り持っていなくて、残業しないという点は、例えばワーク・ライフ・バランス上の配慮の必要性がある時期はある。そういうことで、キャリアへ影響を与えないという前提での労働条件の変更を運用でやっているという場合に、もし制度化して、それがキャリアの変更となると、そもそも雇用区分のキャリアとは何なのかというところから出発しないといけないかもしれないという感じがします。

○今野座長 どうぞ。

○黒田委員 私も今の意見に同感なのですけれども、ここでそれぞれ皆さんがイメージされている転換が、職種限定なのか、事業所限定なのか、時間限定なのかでも運用が大分違ってくると思うのですが、時間限定の場合、私がイメージするのは、ライフステージによって、同じ人であっても短時間で働きたい時もあれば、子育てが終わったのでもっとばりばり働きたい、働く時間を増やしたいという時もあるでしょうし、時間限定については限定と非限定との間を何回か行ったり来たりすることができる体制のほうが労働者としては恐らく望ましいのだと思います。

一方で、勤務地限定とか職種限定とかになってきますと、グローバルで働ける幹部候補を養成するというような企業のニーズを踏まえると、何度も変更が可能な体制は教育訓練投資をどの程度企業がするのかという点にもかかわってくると思いますので、この転換制度の在り方については、先ほど神林先生、山川先生がおっしゃったように、相当程度整理をしないといけない点なのではないかと思います。

1点、事務局に念のために申し上げておきたいのですけれども、情報発信のところで前回申し上げたのは、きちんとした約束をしていないことによるトラブルを回避するために、労働条件について労使でしっかりと話をするということが重要なのではないかということを申し上げたのであって、例えばA社がこういう事例をやっているから、B社もやりなさいというような啓蒙活動の情報発信ではなく、各企業がどういう労働条件で働いてもらいたいのかということをきちんと明示した上で、そこに労働者が応募するということで均衡賃金ができ上がるのではないかということを申し上げたので、そこの部分がもしうまく伝わっていないようであれば、お願いいたします。

○今野座長 今、ここであった議論というのは、例えば神林先生の言葉で言うと、ただの労働条件変更、もう少し言うと、例えば時間限定みたいなやつとキャリア変更というのは実は違うのだという話だね。例えば時間限定をしたって、キャリアは変更していないケースなんて幾らでもあるだろうということを想定されたわけですが、ただ、現状、キャリアをつくるときに、そこに時間も変数で入れてしまっているから面倒くさいのです。これを切り離していれば、今の話は非常にすっきりするのです。

そうすると、我々ができることは、今後こういう転換制度を考えるときに、時間限定でキャリアを分割するということはやめたほうがいいではないですかみたいなことを入れると、そのほうが全体としてうまくいきますよということを言ってあげるということになるかな。

そうしないと、普通にしゃべっていると、現実が時間限定イコールキャリア変更になっているから。総合職は無限定でしょ。でも、総合職というのは、本当はやってほしいこと、例えば将来管理職になってほしいとか、企画業務をやってほしいというのがあるのだけれども、そこに時間も無限定で入ってしまっているから、ちょっとややこしくなってしまった。そこを切り離して上手にやれれば。

○神林委員 こんな感じで図が描ければ、もっとわかりやすくなるのです。(縦軸に労働条件の変更内容、横軸にキャリア変更の大きさをとった図を記載)

 結局、僕が言いたかった話というのは、キャリアの変更とただの労働時間変更、労働条件の変更というのは次元が違う、方向が全然違うという話なのです。

理想的なのは、今、黒田さんがおっしゃったみたいに、例えば時間変更というのは、キャリアの変更というよりは労働条件の変更で、一番キャリアの変更が大きいのは職種の変更ですかね。

勤務地限定は、キャリア変更の大きさは中間程度ですね。(左上部に勤務時間限定正社員、中央中部に勤務地限定正社員、右下部に職種限定正社員とする。以下「図1」とする。)

○今野座長 職種というか、多分キャリア形成パターン。

○神林委員 そういう感じですね。

 こういうふうに整序していれば、多分わかりやすいのですけれども。

○今野座長 いや、黒田さんの話というのは、勤務時間限定正社員はキャリア変更としても大きいということ。(図1の左上部の勤務時間限定正社員の枠を右側に延長)

○神林委員 こういうふうに整序していれば、時間変更の制度をつくるときには、何を前提に制度をつくればいいのか。例えば時間制度の変更については、自由な変更を認めたほうがいいという話になって、ただ、職種の変更の制度をつくるときには、もっとコミットメントをしっかりしないといけないという話になるのですが、現実はこのような図になっているという話ですね。なので、時間変更の制度を考えたときには、実はキャリア変更が小さい場合と大きい場合の両方が入ってきてしまっていて、前者と後者を同列に扱うとうまく整合的に理解するということができなくなるというのが問題。

 今野さんがおっしゃったのは、勤務時間限定正社員への転換はキャリア変更を小さくするべきと。

○今野座長 時間変更をしても、キャリア変更は小さい。

○神林委員 小さい。

○今野座長 そういう制度ができるか。

○神林委員 勤務時間限定正社員と勤務地限定正社員のキャリア変更が大きく伴う変換は認めない。

○今野座長 認めないのは、ちょっときついな。

○神林委員 そういう考え方をとれば、制度の導入というのは多分やりやすくなるのではないか。

○今野座長 そのかわり、時間限定をして、キャリア変更はないけれども、キャリアの出世スピードは遅くなるとか、そういうことはあり得るということだね。

○神林委員 そういうのはあり得る。

○今野座長 そういう制度設計ができるかな。

○岡労働条件確保改善対策室長 これまでも、こちらもどの限定も一緒くたに資料とかをつくってきたことが多かったのですけれども、最後まとめるときは、できるだけ限定の種類ごとに分けてまとめられればいいなと思っております。

○今野座長 基本理念としては、単なる労働条件の変更はキャリア変更に連結しないというのが一つの考え方だと思いますよ。

○神林委員 本来ならば。

○今野座長 そうしないと、今、企業が困ることは実際にはいっぱい起きていて、例えば介護に携わる中高年のマネジャーは、時間限定になった途端にキャリア変更をしろという話になってしまうのだね。でも、現実はそういう人にもどうにか働いてほしいと企業が思っているということは、この図のキャリア変更の小さい方(左側)にいてほしいと思っているわけですよ。少しずつですけれども、トレンドとしてはそういう形。

我々は別に法律でこうしろと書くわけでもないので、キャリア変更の小さい方向でやったらいいぞという提言としてはいいと思うのだけれども。

○神林委員 この2つを明確に分けるというのはいいかもしれません。短期的な労働条件の変更をフレキシブルにするということと。

○今野座長 ただ、職種はだめよ。キャリアをつくるパターンみたいなのにしておかないと。職種とやってしまうと何か。

 これはいいのではないですか。どうですか。

 ここから横の転換というのは非常に大きいね。キャリアが変わるから。そうすると、こちらのほうは最低限制度化して、ルールをはっきりしておいたほうがいいですね。

○山川委員 その場合、職種の変更あるいはキャリアの形成パターンの変更については、必要性みたいなものを考えると、やはり時間と職種、勤務地ではかなり違う面がある。おっしゃったように、勤務時間の場合、短時間正社員というのは、今のところ少なくともキャリア変更というイメージが余りないものとして想定されているような気がするのですけれども。

○神林委員 表面上そのとおりなのですが、ところが、実際上はそうではないということなのです。短時間正社員を選択するかどうか、もっと正確に言うと、残業をどれだけやるかというのがキャリアを選択していることとほとんど同値になるというのが現在の状況ですね。なので、そういう考え方をやめましょうと言うのですか。それは結構すごいことだな。

○山川委員 今野先生のおっしゃる、変数であることをやめようということ、そこまではちょっと難しいかもしれない。

○今野座長 やめようというのは、強制するわけでなくて、こういうやり方がいいのではないかというソフトな政策として打ち出すというのがいいと思うのです。それを法律でしろなんて全然思っていないので。

○神林委員 あるいはこれを明確に区別していないと、転換制度をつくってもうまく運用できませんという言い方になる。

○今野座長 いいのではないですか。

○岡労働条件確保改善対策室長 はい。

○今野座長 こういうアイデアがあと2~3個あったらいいです。どうぞ。

○黒田委員 きょう、櫻庭先生がいらっしゃらないので、かわりにというわけではないのですけれども、第1回のときにたしか櫻庭先生が、コースをがちっがちっと決め過ぎてしまうと、コースによってそこに性別の分業体制みたいなものが確立してしまうのではないかということをおっしゃっていたように思います。

そういう意味では、職種の転換とか地域の転換について、余りバーを高くしてしまうと、恐らく今の日本の労働市場であれば、女性は余り幹部候補でないコースを最初から選ぶというような感じがします。

○今野座長 でも、勤務時間限定正社員のキャリア変更を小さくできたらいいでしょう。場所の問題は残るけれども、コース転換とは相対的に切り離すわけね。こちらが一番切り離しが大きいだろう。中程度というのもあるのです。

○神林委員 だとすると、括弧つきで職種と書いてありますが、そこの転換制度というのはかなりハードルを高くしてコミットしないといけないという形をとると、そこのところでは男女のセグリゲーションが起こってしまうのではないかと。

○黒田委員 ということを櫻庭先生が危惧されていたように記憶していますので、きょういらっしゃらないので。

○神林委員 いや、そのときのセグリゲーション、要するに、バーが高くなってしまうのは、例えば労働時間の柔軟性がないからバーが高くなってしまう。それとこれはクリアした。そうすると、今度勤務地だね。

そうすると、勤務地はあると。もしかしたら、勤務地のほうは分けてもいいから、勤務地限定社員のキャリアの天井を高くしてあげれば、実質バーは低くしたことと同じなのだよ。

○神林委員 もともとキャリアの変更が小さい方(左側)に寄せてしまうということですね。

○今野座長 相対的にね。そういう方法で分けておいてもいいけれども、キャリアの天井を高くしておいてあげれば、相対的にキャリアの変更が小さい方(左側)に動く。

○神林委員 問題は、男女で職種とか職場とかが分離してしまう理由というのがこういうところにあるのだったら、これをなるべくキャリアの変更が小さい方(左側)に寄せることでその要因を排除することができる。

○黒田委員 なるべく寄せるというのは、具体的にどういうイメージですか。

○今野座長 中範囲で具体的に言うと、先ほど言ったのは、時間の柔軟性でキャリアを変更するということはやめるという制度にするということ。

 地域については、どうしても職域上問題があるのだったら、地域限定の昇進の天井をなるべく高くしてあげれば、実質上これはキャリアの変更が小さい方(左側)に移ったことになる。

○黒田委員 法律でそういうのを。

○今野座長 そういう方法をとったほうがうまくいくのではないですかということ。

○黒田委員 提言をするということですか。

○山川委員 今でも既にありまして、均等法の間接差別に関しては、転勤可能性を昇進とか職種の転換の要件とすることは、業務上の必要性がない限り、間接差別として禁止されるということになったのです。ということで、業務上の必要性がある意味ではキーポイントになるかと思います。

ただ、逆に言うと、業務上の必要性があれば、そのようなハードルを設けても構わないということになるのですけれども、ある意味では、このキャリアパターンについては、こういう要素が必要かどうかというのを洗い出して、勤務地限定制度みたいな転換制度をつくるということ。これは、各企業でのキャリアパターンとかキャリア形成とはどういうものかというものを洗い出したり、あるいは合理化する作業を伴う。そういう意味では、間接的ですけれども、いい見直しの機会になるのかなという感じがします。

○神林委員 これは議論のための議論かもしれないのですが、思考実験として、時間の変更に関しては、労働者側からの自由な申し出を必ず認めなければいけないというふうに考える。そうすると、キャリアというのは労使でつくるものですから、企業側は時間を条件にしたキャリア形成というのができないですね。そういうことを認めてしまうというのは、多分乱暴なのですけれども。

○今野座長 私は時間を限定したいのですというときには、現実に考えると、一方的に労働者がしたいからと言っても、それは認めない。それは業務上のニーズもあるので、お互いに相談をしながら最適値を見つけて限定してくださいということだと思うのだけれども。

○神林委員 それは事実としてというか、そうしないと現実は動かないと思うのですが、そうすると、暗黙のうちにその話し合いの背後に、この人はどういうキャリアをとるのかなという影が忍び寄ってくる。

○今野座長 そうすると、今、神林さんが言ったのは、時間をこうしたいということは、労働者側の一方的な要望を認めると。

○神林委員 認めなければいけないというふうにする。そうすると、労働時間の選択をどうするかということに関して、企業側はいろいろ文句をつけることができなくなるわけですね。

○今野座長 文句を言ってもいいけれども、認めなければいけないのだろう。

○神林委員 事実上コントロールできなくなっていますので、認めなければいけない。

ちょっと無理か。どうですか。

キャリアの選択には役に立たないというものをつくれればいいのですね。

○黒田委員 極端な例かもしれませんが、職種について幹部コースとアシスタントコースという感じに分かれているとした場合、時間についても長時間コースと短時間コースというように職種と時間との相関が非常に高いというのが実態ではないかと思います。

 今の議論は、幹部コースであっても短時間が選べる、アシスタントコースであっても長時間が選べるというような感じに切り離せばいいのではないかということだと思うのですが、それが果たしてうまくいけるのか。

○神林委員 そうすると、無相関になるのではないか。

○黒田委員 概念上、無相関になるのですけれども、できるのかなということですね。

○今野座長 でも、今の企業の実態は、少し無相関にしないと困る状況がいっぱい出てきている。介護を抱えた中高年の男などというのは、少し無相関にしてあげないと、管理職から外さなければいけなくなってしまうから。そうすると、どの程度かは別にして、無相関にする。そういうニーズもあるから。

○黒田委員 完全に無相関なのが担保されれば、恐らく入り口の部分でも、本当は幹部のような仕事をしたいけれども、出産も望んでいるからアシスタントコースで、というように選択を狭めることはなくなるかもしれませんね。

○今野座長 そうすると、神林さんから出てきた問題だって、では、労働者側の一方的な要望をそのまま聞かなければいけないのかという話になると、ちょっと解釈を考えるな。

○山川委員 相関させることに一定の合理性があるかということでしょうかね。

○今野座長 そこのすり合わせを何か考えてくれれば。

○神林委員 今、考えたではないですか。

○今野座長 一番よくわからなくて、適当な答えは、私が先ほど言ったように、お互いに相談してうまくやってねというものなのだけれども、そうすると、その相談のメカニズムをどういうふうにするかということぐらいをちゃんと考えておけばいいという話になる。

○神林委員 そのときに時間に関する相談とキャリアに関する相談というのは、相談する人が一緒ではないですか。今は時間に関する相談しかしませんと言っても、例えば、では、これからキャリアに関する相談にしましょうと言ったら、簡単に切りかわるわけです。ということは。

○今野座長 でも、制度で言うと、総合職で入ったらずっと総合職だから、管理職が、おまえは時間限定だから、総合職から外れろということは言えないという制度的な仕掛けを前提にしているわけよ。そうすると、制度的には一応最低限は担保されている。

あとは実質上いい仕事を回さないとか、そういう対応になる。

○神林委員 どうしても相関してしまうのかな。

○今野座長 いやいや、そんなことはないのではない。

○山川委員 いずれにしても、今野先生が言われたのは、法的に強制するとかそういう話ではないということなので、制度の多様性とか、あるいは相談も含めて設計の中に組み込んで透明化させていくというようなことはあり得ると思いますが。

○今野座長 あとは、神林さんが心配されたように、相談してしまうと、今のマネジャーの感覚からすると、あーあ、時間制限ねと。では、実質上総合職だけれども、総合職でないような扱いをしてしまいましょうねという行動をとらないように、人事は監査機能か何かでちゃんと見ていろと。

○神林委員 それで済むのだったら、こんな複雑なことをしなくてもいいでしょう。

○今野座長 そんなことはないよ。だって、これをつくるということは、制度上切り離すというのが大きいから。勤務時間限定正社員をキャリアの変更の小さい方(左側)に寄せるというのは、制度上表現してしまうわけだから、それは大きいと思いますよ。

○神林委員 そういうのを法律とかに書くことはできるのですか。例えばこの3つの転換制度をつくったとして、バーの高さというのをちゃんと調整しなさいみたいなこと。

○山川委員 非常に難しいというか、相当の議論を要すると思います。

○今野座長 企業が例えば女性総合職をだんだん活用したいと思っているとすると、こちらキャリアの変更の小さい方(左側)に持ってこなければいけないのだよ。女性については。先ほど言った中高年の男もそうだし。何となくトレンドとしてはこちら(左側)に持ってくる。ただ、これを持ってきたときに、全体が効率性を維持できるような周辺の仕掛けをどうやったらいいだろうかということについては思い悩んでいる。だから、ここでこうやったらいいぞというのを提出してあげれば、それはすごくいいと思うのです。

○神林委員 それはわかるのです。ヒアリングの中でも、活用したいからこういう多様な正社員をつくるのだというタイプの企業と、とにかく人件費を抑えたいからこういう多様な正社員をつくるのだという企業と大きく分けて2つあると思うのですが、前者の場合には、多分ほっておいてもこういう制度をつくってくるのですけれども、運用上、どこが肝なのかがよくわかっていなくて、ぐちゃぐちゃになってしまっているということはあり得ると思います。そういう企業のために、こういうふうにキャリアの形成というのと短期間の労働条件の形成というのを概念上分けて、それぞれの転換制度をどこにリンクさせるかというのを明確に設置するというようなプラクティスをすれば、かなりいい方向に行けるのではないですかという提案はできると思うのです。

あとは後者のほう、人件費を下げたりしたいという理由でこういう転換制度をつくっているような企業に対しては、今のような説得方法というのはほとんど意味をなさないですね。

○今野座長 でも、考えようによっては、人件費を下げるために多様な正社員、例えば地域限定の社員をつくって、相対的に賃金を低くしましたと。企業側から言えば、賃金を下げたというより、もともと地域限定になっていて多く払い過ぎていたので、バランスをとったというふうに企業は思うだろう。そういう面からすると、そこをはっきりしたほうが人材活用ははっきりするし、人件費の効率化は進むということであれば、そこは余り考えなくてもいいかなという気もするけれども。

○神林委員 なので、そういう企業にとっては、多分キャリアの選択しか考えていないのではないかと思うのです。勤務地限定にするかしないかというのは、幹部候補生かどうかということで、短時間労働に残業を認めるのか、認めないかというのも、残業を認めるのだったら幹部候補生であって、残業を認めないのだったらアシスタントですよと。全てがキャリアの選択というのと同じディメンションで制度設計というのがなされているのではないかと思います。

○今野座長 その前に、気になっているのだけれども、我々は転換制度の議論を全くしていないのだよ。転換制度の前の議論をしているのですが、神林さんが言うように、もしこういうふうに切ったときに、賃金が適正に低ければいいわけですよ。要するに、こういう切り方で、それぞれのグループについて適正に賃金決定がされていれば、結果的に多様な正社員をつくって、地域限定をつくって、人件費が下がったとしたって、別にいいのでは。

○神林委員 だから、転換なのですよ。斜めにこういうふうにポジションができるとすれば、その転換のハードルというのは低いほうから高いほうに並びますね。なので、時間限定に関しては低くて、例えば括弧つきの職種限定に関しては高くなるという形になるわけですけれども、これはキャリア変更が大きい方(右側)に縦に並んでいると、つまり、全ての転換制度というのがキャリアの転換と非常に密接に関係しているというふうになると、そのハードルの高さというのは全部同じにしないといけません。全部高くしないといけない。

○今野座長 もう一度。

○神林委員 こういう場合です。(右上部に勤務時間限定正社員、右中部に勤務地限定正社員、右下部に職種限定正社員とする。以下「図2」とする。)時間の限定に関しても、勤務地の限定に関しても、職種の限定に関しても、それを選択させるということは、実はキャリアの選択なのだというふうに考えると、自由に行ったり来たりするようなまねというのは、勤務時間限定正社員でも勤務地限定正社員でもできなくなってきます。だから、事実上、今の企業というのは、こういうことをやっている企業があるということ。

図1に行ってほしいというのが理想で、先ほど言った活用しなければいけないというふうに考えている企業は、多分こういうふうに並ぶ力が働いているのだろう。ただ、ノウハウがないからぐちゃぐちゃになっているだけで。もともとこれで行きますというふうに強く心に決めている企業は、絶対図1にはならないです。

○今野座長 でも、我々は、図1のほうが人材活用上効率的ですよというふうに言う以外ないのですよ。

○神林委員 そうですか。

○今野座長 それ以外ないのではない。

○神林委員 勤務時間限定正社員のキャリア変更と大きく連動すること(図2の右上部)を禁止するみたいな。

○今野座長 ここを禁止するの。

○神林委員 論理的に言えばですけれども。こういう使い方をしてはいけませんと。

○今野座長 法律で。

○神林委員 いや、わかりません。

○黒田委員 私も、企業で人的資源を有効に使えるように図のような斜めの運用にしようと考えている企業と、がちがちの縦に並べてすべてはキャリアの選択であると考えている企業と2つタイプがあると思うのですが、後者の企業が、単純に全くノウハウがないとか、うまく制度設計ができるということを知らないがためにそのような体制をとっているのか、それともその体制が一番シンプルかつ合理的だと考えたうえでそうしているのかによっても、今後のトレンドは違っていくのだと思うのですが、企業が合理的に考えて、うちの産業は縦だよというふうに思っているのであれば、アナウンスメント効果は余りないのではと思うのですが。

○今野座長 そうすると、何か強制しろということ。

○黒田委員 多分神林さんのご意見はそういう発想から来ているのではないかなと思ったのですけれども。

○山川委員 なぜ強制するのかというのは、全体としての労働力の有効活用ということかと思いますが、それは重要ですが、それをもって強制できるかという問題があるのと、あと、キャリアとか、法的に概念がまだ明確でないものをもって強制するというのは、なかなか難しいような感じはしますね。推奨とかその辺の迫力のないような話になるような感じはします。

ただ、面倒くさいからという企業がかなりあるとすると、それは面倒くさくないのですよということを示してあげて、かついろんな意味で有効なのですよということを示してあげるということは意味がありそうな気はします。

○今野座長 転換制度の話も議論してもらわないと困るので。

これでいくと、これが転換だよな。

○神林委員 そうです。

○今野座長 今、出てきているのは、転換制度はお互いにコミットメントというのが重要だからというので、そこの問題は議論があったと思う。

○神林委員 なので、ハードルの高さがどんどん高くなっていくという感じですかね。

○今野座長 そうね。キャリア転換が大きいからね。

○神林委員 キャリア転換が大きいから。比較的自由に認めるというのと、あと。

○今野座長 自由に認めるか。

○神林委員 それは極端な例ですよ。自由に認めるのというのと、あと、本当に回数制にしてしまうとか、そういう格好というのが、どうやってそのバーの高さを決めるかというのはまだよくわからないですけれども。

○今野座長 これは横軸でキャリア転換が大きいということなのです。そうすると、そのときは、言ってみれば、労働者の都合で言っているわけ。私にとってみると大変大きな影響がある。

○神林委員 企業にとってもそうではないですか。ある人のキャリアを変えるという意思決定というのはかなり大きいと思います。

○今野座長 そうすると、企業にとってみると、社員をどう使おうかといったときに、どういう職域、キャリアで働いてもらうのかということと、時間でも場所でもどういう労働力を供給してくれるのか。両方あるよな。時間については自由にしてしまう。本人の申請だとすると、2番目の変数について、企業は使えないという話になるのだよ。

○神林委員 どういう労働時間を選択するかということはキャリアの選択と全く関係ありませんという状態をつくるということです。

○今野座長 俺が人事で、それを認めるのだったら、労働時間の柔軟化については、選択した途端に、かなり労働条件を下げないと。こちらはリスクをとるから、そちらを多目にリスク。だって、労働時間を勝手に言うのだろう。

○神林委員 本来、労働時間と言うからよくわからなくなるのですけれども、労働時間は需要と供給で決まるもので、供給サイドだけで決まるものではないですから。

○今野座長 だから、相談と言ったの。

○神林委員 相談と違うメカニズムをつくらなければいけないのですが、確かに。

○今野座長 すり合わせでもいい。

○神林委員 何かないのですか。

○黒田委員 縦につながっているタイプのところというのは、一つには教育訓練投資の問題があると思います。例えば多大なコストをかけて留学させ、フルタイムでバリバリ働いてもらおうと企業が思っていたところ、留学などの多大な教育訓練投資をした社員が突然時間限定で通常勤務の半分の時間しか働きたくありませんと言い出す、そんな人がたくさんでてくるということになると、せっかくそれだけ費用を投じたのにもかかわらず、企業としては困るということにもなる。ですから、職種と時間との相関は教育訓練投資の観点から、どうしても高くなってしまうということがあるのだと思います。

そういう意味では、日本企業のように教育訓練投資が盛んに行われてきた歴史を考えると、このまま何にも規定しない限りは、恐らく図のような斜めのような感じにはなりにくいのだろうなと思います。

○神林委員 実質的に時間というのは労働の量と関係してきてしまうので、確かにそれは。

○今野座長 そのとおり。だから、こうしましょうか。少しこちら(左)に持っていったらというぐらいにする。少なくとも今より時間とキャリアを少し離したらと。そのぐらいならいいね。今の理屈はわかったけれども。

神林理論でいくと、ここは応募資格について限定しないということだな。こちらは非常に限定する。

○神林委員 はい。

○今野座長 そうなるのだよな。

 それで、企業側の判断も、こちらは大きいし、こちらは小さくしますということね。

○神林委員 そういうことです。

○今野座長 だから、それは時間、地域限定、キャリアとは関係なく、キャリア変更が大きければ大きいほどそうしろという話だね。それが理屈だというか、原則だと思う。キャリア変更が小さい場合には従業員の自由度をいっぱい認めろということだ。大きい場合は、会社側の判断とか応募条件、要するに、ハードルを高くする。理屈としてはそういうことになるだろうね。

 あと、細かい制度は各社で勝手に考えろと。

○神林委員 大体応募資格と会社の判断がどれだけ必要かということと回数ぐらいしかないような気がするのですけれども。

○今野座長 コミットメントの問題ね。

○神林委員 ええ。

○今野座長 あとは、こちら(右)にしたって、一番左側にしたって、買い手と売り手の相談はしなければいけないから、そうすると、相談の仕掛け。

○神林委員 相談の仕掛けは必要だと思うのですが、どうすればいいのか。

○山川委員 あとは、資料にもありますけれども、このディメンションの中に出てこない労働の対価としての賃金が絡んでくると別の次元が入ってくるので、一方的な変更みたいなものになると、やはり別個の問題は生ずると思うので、今の話は本人の同意ということで議論してきたということでよろしいのでしょうか。つまり、会社の業務命令で雇用区分の転換をするということがあるかどうか。そこで賃金が下がるような場合、どうするか。

○今野座長 先ほどの議論の延長ですると、キャリア転換すること自体が非常に大きなことなので、本人同意だよな。

○神林委員 それはそうだと思います。

○今野座長 それは不可欠ではないですか。下がろうが、上がろうが。そうではないですか。ヒアリングで大企業の実態もそうなっていると思うのだ。

○黒田委員 前回の処遇の話にまた戻るという感じなのかもしれないですけれども、そこは労使で決めて、8割が望ましいとかいうふうに何か数値を示すというよりは、労使で決めてもらう。

○今野座長 もしかしたら、転換というより、それぞれのグループの処遇をどうするかという話なのだね。

○神林委員 実際賃金格差が大きいのは、こちら(左)でなくて、こちら(右)ですね。キャリアを変えると賃金格差が大きくなりますね。本来だったらこちら(左)も大きくなければいけないはずなのですけれども。

○今野座長 そこが現実は面倒くさくて、こちらを変えた途端に上の2つが変わってしまっているというのが現実だから、今、そこは抽出でできないのだな。

○神林委員 それは研究者の責任ですね。

○今野座長 でも、理論的にはそうです。キャリアの系列が変わるというのが一番大きいと思う。

○神林委員 そうすると、一番右下のところというのは、労使交渉をちゃんとして、処遇についてもちゃんと同意を得てきちんとしてくださいというふうになる一方で、左上のほうは、どちらかのフリーハンド、例えば労働者が勝手に時間を決められるのだけれども、賃金は使用者が勝手に決められて、下がるとか。

○今野座長 それでバランスをとる。

 一番単純なのは、時間比例にしてしまう。残業しないというのもある。

○神林委員 逆でもいいです。時間は勝手に企業が決められるのだけれども、労働者が叫んだ賃金を払わなければいけない。

○今野座長 私の知っている範囲内だと、ヨーロッパの場合は、労働者が勝手に時間を言える。そのかわり会社側が業務上どうしても困るということが説明できれば、拒否できるというか、変更を迫れる。これがもう一つの解だと思うのだ。

○神林委員 交渉の仕方と権限の配分の仕方というのが、キャリアを変更するような転換とただの労働条件を変更するような転換では違うのだということをきちんと表現するというのが多分重要なのかなと思う。

憶測ですけれども、左側、縦に並んでしまっているときというのは、多分全部ハードルが高いのではないですか。

○今野座長 全部高い。

○神林委員 それはキャリアの転換と結びついているから。

 逆に言うと、労働者のほうは、どういう制度を企業が持っているかを見ることで、その企業が時間に対してどういう意識を持っているのかとか、勤務地に対してどういう意識を持っているのかというのがわかるというふうに宣伝をする。こういうふうになっていたら、こういう企業というのはこういう企業なのだと。そんなところですか。

○今野座長 転換については、大体そんなところでいいのではない。ねえ。

 これの考え方がきちっと固まれば、あとは論理的にずっといく話だから。

 ほかに何かあるかな。

大企業は、今はほとんどこれでしょう。これをこうしたいのだろう。

○神林委員 そうです。

○今野座長 その仕方の問題なのだな。だから、本当はきょうの転換のテーマとは違うのだけれども。

ラジカル案は法律でやれと言っている。

○神林委員 そう。ラジカル案は法律で、例えば時間変更に関しては、ハードルを法律上むちゃくちゃ低くしなければいけないと規定してしまう。例えば労働者の言いなりになります。

○山川委員 フレックスタイム制というものがありますし。

○神林委員 実際はそんなことは無理だとわかっているのですけれども、そうすると、時間の変更というのは、ここでは運用できなくなるのです。こちらに寄らざるを得なくする。

○黒田委員 神林さんの提案は、多分オランダの法律とかに近いイメージなのですね。

○神林委員 近い。

○黒田委員 それが成立するのは、賃金カーブがそんなに年功的になっていないというのがあるかもしれないですね。

○今野座長 さあ、終わりにしようかな。大体いい線いったよ。どう。

○岡労働条件確保改善対策室長 法律でというのはなかなか難しいかもしれませんが、ただ、きょう、時間限定はキャリアと切り離せる場合もあるのではないかというお話だったのですけれども、ヒアリングで出てきた銀行で、勤務地限定でも無限定の人でも昇進は全く同じという例がありましたので、それを義務づけるというわけにはいかないですが、そういうのでうまくいっているということを発信していけば、神林先生がおっしゃるような縦の企業ももしかすると意識を変えていくかもしれませんし、ちょっと迂遠かもしれませんけれども、意外とそれが早道かもしれませんので、そういうことは考えていければと思います。

○今野座長 いずれにしても、この絵は、もうちょっと直すともっとわかりやすくなるのではないかなと思います。そこも工夫していただいて。

○岡労働条件確保改善対策室長 はい。

○神林委員 その辺は経営学の方がすごく上手なので。

○今野座長 いえいえ、事務局になると思います。

 きょうは、なかなかいいアイデアが出たね。

 では、終わりにしますか。

 それでは、次回以降の日程について、事務局からお話しいただきます。

○岡労働条件確保改善対策室長 次回の日程につきましては、現在調整中でございますので、決定次第、改めて御連絡させていただきます。

○今野座長 きょうは転換制度の議論させていただきましたが、おもしろかったです。大変よかったと思います。

それでは、終わりたいと思います。ありがとうございました。


(了)


※図1及び図2については、資料参照。

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会> 第7回「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会議事録(2014年2月13日)

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