ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会)> 第15回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録(2014年2月13日)




2014年2月13日 第15回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録

年金局

○日時

平成26年2月13日(木)13:00~15:00


○場所

全国都市会館3階 第1会議室
東京都千代田区平河町2-4-2


○出席者

吉野 直行 (委員長)
植田 和男 (委員)
小塩 隆士 (委員)
小野 正昭 (委員)
川北 英隆 (委員)
駒村 康平 (委員)
武田 洋子 (委員)
西沢 和彦 (委員)
山田 篤裕 (委員)
米澤 康博 (委員)

○議題

(1)経済前提の設定に用いる経済モデル等について
(2)積立金運用のあり方について
(3)その他

○議事

○吉野委員長 それでは、1時になりましたので、ただいまから、第15回「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」を開催させていただきたいと思います。

きょうは、植田委員も御到着の予定だと思いますが、少し遅られておりますが、植田委員も来られれば、全員の出席となっております。

それでは、議事に入りたいと思いますので、カメラの方は退席をしていただきたいと思います。

(報道関係者退室)

○吉野委員長 まず最初に、事務局から御連絡をお願いいたします。森参事官お願いいたします。

○森大臣官房参事官 年金局資金運用担当参事官の森でございます。

初めに資料の確認をさせていただきます。

資料1      経済前提の設定に用いる経済モデル等について

資料2      年金積立金運用のあり方についての本専門委員会等の議論の整理について

参考資料1-1  内閣府 「中長期の経済財政に関する試算」について

~ 内閣府資料による抜粋 ~

 参考資料1-2  中長期の経済財政に関する試算

参考資料1-3  労働投入量(マンアワーベース)の設定について

参考資料1-4  雇用政策研究会報告書より抜粋(20142月雇用政策研究会)

参考資料2-1  年金財政における経済前提のあり方について

         (専門委員会における議論の経過報告)

        【第18回社会保障審議会年金部会(平成251218日)資料4-1

参考資料2-2  今後の財政検証の進め方について

【第18回社会保障審議会年金部会(平成251218日)資料4-3】となってございますが、皆様お手元にございますでしょうか。

○吉野委員長 森参事官ありがとうございました。

それでは、議事に移らせていただきたいと思います。まず最初の議題は「経済前提の設定に用いる経済モデル等について」ということでございます。

前回(第14回)の専門委員会では、これまで行ってまいりました議論の経過を整理させていただき、昨年の1218日の第18回社会保障審議会年金部会で、私からここでの議論を説明させていただきました。事務局から、ただいまから年金部会における議論の様子とその骨子について説明していただきたいと思います。山崎数理課長、お願いいたします。

○山崎数理課長 それでは、御説明申し上げます。

 まず、お手元の参考資料2-1及び参考資料2-2を御参照いただきたいと存じます。

参考資料2-1が、1218日の年金部会に御報告申し上げました専門委員会における議論の経過報告でございまして、こちらにつきまして、吉野委員長よりポイントを御報告いただきました。

こちらに関しまして、年金部会での御意見でございますが、主なものをかいつまんで申し上げますと、まず1つは、足下の経済前提、これは内閣府の今後出る試算を踏まえ、これについて、現実的な実態的な数字を設定すべきであるという御意見を頂戴したところでございます。また、利潤率と実質金利の関係が以前に比べて不鮮明になっているということで、特に短期的にはデータを短くすると相関が低くなっており、実質金利をどう設定するかということを慎重に議論しないといけないという御議論がございまして、これにつきまして、吉野委員長から、今、長期国債が需要が多く金利と利潤率が少し乖離しているということで、これをどうとるか、長期でとるのかということが1つ議論の課題になるというお話があったところでございます。

もう一点、TFP(全要素生産性)の上昇率につきまして、内閣府の試算で、当時8月の試算が出ておりましたが、経済再生ケース1.8%という非常に高い数字が出ているということで、1月にまた新たに数字が出るということですが、それほど低い数字が出ないことを考えると、これをどう使うかというのがかなり悩ましく、いろいろな数字を幅広く出すことがこの経過報告でもうたわれているけれども、そういうことでないといけないのではないかという御発言がございまして、それに対しましても、吉野委員長から、資本や労働の部分はこの専門委員会で非常に精密に議論しているけれども、全要素生産性(TFP)のところの数字をどう置くかによって、非常に成長率が振れてしまうということで、ここは幅広く見ていかなくてはいけないと考えているというお返事があったところでございます。

参考資料2-1の経過報告に関しましては主立ったところはこのような御議論でございます。

あわせまして、お手元の参考資料2-2をご覧頂きますと、こちらが1218日の年金部会におきまして、事務局から出させていただきました「今後の財政検証の進め方について」という資料でございますが、経済前提に関しましては、この専門委員会における昨年12月の段階の整理ということで、経済前提について一定の幅を持って設定することが必要とされているということで、具体的な数値の設定については、関係する推計や試算等を踏まえて、専門委員会で御議論いただいた上で改めて年金部会にお諮りする予定であることを申し上げております。

あわせまして、《制度改正の検討のためのオプション》ということで、「社会保障制度改革国民会議」の報告書におきましては、財政検証に関して、単に財政の現況と見通しを示すだけでなく、年金制度の課題の検討に資するような検討作業を行うべきとされているところでございまして、いわゆる「プログラム法」におきましても、その報告書で提示された課題を検討課題として列挙しているところです。

ということで、次の財政検証に当たりましては、下に列記しておりますような制度改正を仮定したオプション試算も行うことを検討するということで、具体的には、●物価や賃金の伸びが低い場合でも、マクロ経済スライドによる調整がフルに発動されるような仕組みとした場合。●週20時間以上である短時間労働者を全て被用者保険の適用対象とした場合。●平均余命が延びている状況や65歳までは原則、雇用の場が確保される状況を踏まえ、現行2060歳となっている保険料拠出期間の延長などを行った場合。こういうものを例示して、こういうオプション試算を検討したいということをお諮り申し上げまして、オプション試算について、こういうもの以外にも、例えば20時間未満も含めて全雇用者を厚生年金に適用する場合を考えてはどうか、「女性の活用」という観点から、第3号被保険者制度の見直しを行うオプションを検討してはどうか等、いくつか御提案がございまして、この段階では、まだオプションを何をやると決めるということではなくて、検証の試算に入る段階で、また改めて年金部会において御議論をということで、議論が経過しているということでございます。

この裏面でございますが、「今後の財政検証の進め方(スケジュール)」というものがございまして、こちらは年金部会に出しましたときは12月段階でございましたが、その後、経済見通しにつきまして、1月20日に公表ということ。あと、労働力の需給推計、これも2月6日に公表ということで、その後、数字が実際入るものにつきましては、今回更新したもので、こちらの資料を書いてございますが、こういう形で、今回、第15回の専門委員会、今後議論を重ねまして、経済前提を取りまとめたところで、年金部会に御報告いたしまして、検証作業に入る、こういう段取りで、スケジュールについても御報告申し上げたところでございます。

とりあえず、こちらの御説明は以上でございます。

○吉野委員長 山崎数理課長、ありがとうございました。

今日の大きな議論は、今、御説明あった参考2-1の7ページ、一番後ろのところですけれども、「5 具体的な経済前提の設定について」ということについて皆様に御議論していただきたいと思っております。それに関連しまして、

今年に入ってから内閣府から新しい中長期の経済試算、新しい労働力需給推計が公表されておりますので、それの内容を少し御説明いただいて、個々の具体的な経済モデルに用いるパラメータなどについてどのように考えていきたいか、これから議論させていただきたいと思います。

それでは、また山崎数理課長から、「経済前提の設定に用いる経済モデル」などについて、御説明をお願いいたします。

○山崎数理課長 それでは、引き続き御説明申し上げます。

 お手元の資料1がメーンの資料でございまして、「経済前提の設定に用いる経済モデル等について」ということでございます。こちらの御説明をする中で、必要に応じまして、内閣府の新たな試算や労働力需給の試算について適宜参照する形で進めさせていただきたいと存じます。

それでは、資料1をあけていただきまして、1ページでございますが、前回の専門委員会以降、ここにあるような見通しや統計が新たに公表されていまして、具体的に申し上げますと、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」が1月20日に公表されておりまして、こちらにつきましては、全要素生産性(TFP)の上昇率や物価の設定、足下の経済前提の設定の参考とするということでございます。

それから、内閣府で「平成24年度国民経済計算の確報」が平成2512月末ごろに(フロー編)、その後、26年1月17日に(ストック編)が公表されています。こちらにつきましては、資本分配率、資本減耗率、総投資率等の各種指標の実績値を参考とするということでございまして、平成17年基準として、今回1994年度以降の数値が公表されております。昨年の時点では2001年度以降の数値までが公表でございまして、それより手前のところは遡及推計を行うことで考えていたところですが、今回94年度~2000年度までの数値も公表されたということでございまして、遡及推計によってさかのぼる期間が少し短縮された形になります。

次に労働力需給推計、平成26年2月6日に雇用政策研究会報告書が公表されたところでございますが、こちらを労働投入量の設定に用いるということで、以上、一通り基礎となるような統計や推計がそろった状況にあるところでございます。

2ページは、国民経済計算を用いて算出される各種資料の計数表でございますので御説明は省略いたしまして、3ページでございます。

こちらにつきましても、昨年の段階で整理した「長期の設定に用いるマクロ経済に関する推計の枠組み」で、基本的にコブ・ダグラス型生産関数を用いて、ここにあるようなもので推計を行うということで整理されたところでございます。

4ページでございますが、こちらにつきましても、昨年整理いたしました経済モデルのフローチャートでございまして、今回の財政検証に当たりましての新たな工夫としては、この中ごろにございます海外経済との関係、これは経常収支の将来の動向に応じて貯蓄、投資率の関係がどうなっていくか。この辺をにらんで総投資率の与え方を考えようというのが1点改善点でございまして、あと、下にございますが、景気循環における平均的な稼働率を反映させる意味で、推計初期値のGDPを潜在GDPに置き換える、こういうことをえる。さらに変動を織り込むことを考えてはどうかということで、変動を織り込む場合の前提も考えていく。このあたりが今回の新たな改善点になっているところでございます。

次に5ページ、「財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方」ということで、こちらは経過報告に掲げたところを抜粋したところでございますが、ポイントだけ改めて申し上げますと、複数ケースの前提を設定し、その結果についても幅を持って解釈する必要があるという点。

それから、将来への不確実性という点で考えれば全要素生産性(TFP)の上昇率だけではなく、パラメータごとに幅を持った設定を行う方法も考えられる。

そのときにパラメータを設定するに当たっては、長期的に妥当と考えられるシナリオを想定した上で、どの程度の幅に入るかを検討するということで、パラメータに応じたシナリオの設定に留意する必要があるということで、背景となるシナリオがそれぞれ整合的な組み合わせとするべきである、こういう御指摘をいただいているところでございます。

6ページに入りますが、「全要素生産性(TFP)上昇率の設定について」でございまして、経済成長の原動力となる全要素生産性(TFP)の上昇率につきましては、8月段階での内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」におきましては、経済再生ケース2020年代初頭にかけて1.8%程度まで上昇、参考ケースでは1.0%程度まで上昇という前提が置かれていますが、このような過去の実績に関する分析や平成26年初に公表が見込まれる新たな内閣府の試算等を踏まえつつ、この試算のみにとらわれない幅広い設定を考えるべきではないかと整理されているところでございます。

続きまして7ページでございますが、参考資料1-1、「内閣府『中長期の経済財政に関する試算』について~内閣府資料より抜粋~」、こちらを参照していただいて、あけていただきまして3ページでございますが、こちらが今回1月の内閣府試算の「マクロ経済に関する主要な前提」ということでございまして、ケースとして「経済再生ケース」と(参考ケース)が掲げられていて、経済再生ケースを見ていただきますと、TFPの上昇率は足下の低い水準0.5%程度で2014年度まで推移した後に、2020年代初頭にかけて1.8%程度まで上昇。この1.8%程度というのは、1983年~1993年ぐらいの間の平均という、注釈があるところでございます。

一方で(参考ケース)につきましては、足下の低い水準、0.5%程度で推移した後に、2020年代初頭にかけて、過去の平均程度の1.0%程度まで上昇ということで、こちらにつきましては、1983年~2009年までの景気循環を考慮した過去の平均ということで注釈があるところでございます。

また、経済再生ケースにつきましては、労働力は「日本再興戦略」で掲げられている政策により女性、高齢者を中心に性別年齢階層別労働参加率(労働力率)が上昇していくことが見込まれておりまして、一方で(参考ケース)については、労働力率が足下の水準で横ばいということが前提とされているところでございます。

世界経済につきましても、経済再生ケースにつきましては、IMFの見通し程度の成長率で推移することが見込まれておりますし、(参考ケース)ではそれを下回るような水準で推移することが見込まれているところでございます。

実際の数値につきましては、参考資料の4ページにございますが、経済再生ケースを見ていただきますと、実質成長率が2014年度で1.4%となっているものが徐々に上がってまいりまして、2020年代では2.0%台の実質経済成長率になっている。消費物価上昇率については、2017年以降のところで2.0%となっています。名目長期金利についてはかなり上昇してまいる見込みでございまして、2023年においては、名目長期金利(10年国債の金利)が4.8%になっています。

(参考ケース)については、それぞれ経済再生ケースよりも低い数字が掲げられている。このようなものが発表になっているところでございます。

本資料の7ページに戻っていただきますと、まず、足下の経済前提の関係でございますが、こちらは基本的には、内閣府の出しているものに準拠するものではないかということで、従来から御議論いただいているところですが、全要素生産性(TFP)の上昇率の設定について、内閣府の試算、これは足下をこれを使うこととの関連性、連続性を勘案いたしますと、2023年度までは経済再生ケースに関連、これと接続するものについては、足下の低い水準0.5%から、2023年度にかけて1.8%まで上昇するという内閣府の前提に沿ったものとするべきではないか。

一方で(参考ケース)と接続するものについては、足下の低い水準0.5%から1.0%まで上昇する。これを基軸に考えていくべきではないかというところでございます。

次に2024年度以降の長期について、この全要素生産性(TFP)上昇率をどう置くかということですが、先ほど来の整理にございますように、この全要素生産性(TFP)によってかなり将来の成長率が変わってくる。これについては幅広い見方が必要なのではないかということを考え合わせますと、足下のところで経済再生ケースと接続する、これと関連するものの場合、内閣府試算における経済再生ケースでは数字が上がっていき、全要素生産性(TFP)が1.8%までということですが、一方、(参考ケース)で1.0%が出ておりますので、この1.8%と1.0%、これをそれぞれ上限と下限とすることが1つ考えられるのではないか。そうしますと、その中間の数値を幅広くということで考えますと、0.1%刻みですとかなりケースも多くなりますので、とりあえず0.2%刻みで考えてみると、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%ということが1つ考えられるのではないか。

このように設定した場合にその他のデータを当てはめて、粗々どんな数字になるかというものを、少し幅のある形ですが、とりあえず試算したものも準備いたしましたので、後ほどそちらも見ていただきながら、この辺について改めて御議論いただければと存じます。

(参考ケース)については、1.0%のまま推移するケースと、足下の低い水準0.5%から上がっていき、1.0%ということですので、一番低いケースとしては、また足下の低い水準の0.5%に戻るというようなケース、このぐらいまで考えておけば十分な幅になるのではないかということで、とりあえずこういうことで粗々の試算をやったものを後ほど御紹介したいと存じます。

全要素生産性(TFP)に関しまして、とりあえず以上でございます。

続きまして「資本分配率、資本減耗率の設定について」でございまして、8ページでございますが、専門委員会の御議論では、従来21年の財政検証までは、これまでそれぞれ直近の過去10年間における実績値で一定ということで、一通りだけの設定だったわけですが、今回資本分配率に関しては労働分配率の推移と賃金の動向との関係性に留意しながら設定する必要があるということで、過去10年の平均をとる場合だけではなく、長期的な動向を勘案する観点から、長期間の平均をとることも検討しました。

また、資本減耗率についても、緩やかな減少傾向にあるところでございますが、資本分配率と同様に幅を持った設定とすることも考慮しうるのではないかということで、経過報告では整理されているところでございますが、長期的な動向という意味では、過去30年の平均という値、一方で、従来の過去10年間の平均、これを用いる場合をあわせ考え、幅を持った設定することが考えられるのではないかということございます。

一方、資本分配率と資本減耗率の組み合わせに関しては、ともに過去30年平均を用いるか、あるいはともに過去10年平成を用いるかということで、それぞれ準拠する期間を合わせるのが妥当なのではないかと考えまして、具体的には(資-ア)というケース、こちらは資本分配率、資本減耗率ともに過去30年平均を用いるということで、具体的な数値といたしましては、資本分配率40.8%、資本減耗率7.5%。

一方で、(資-イ)というケースにつきましては、過去10年平均を用いるということで、資本分配率は足下の10年の平均ということですので、少し高くて42.8%、一方、資本減耗率はやや低くて7.1%、こういうような2つの組み合わせを考えてみてはどうかということでございます。

次に9ページを見ていただきますと、資本分配率につきまして、過去の推移がこちらのグラフのとおりでございまして、上がったり下がったりしながら、最近はかなり上がって、やや高どまりしている状況で、右の太い点線が過去10年平均42.8%のレベル。その下、細い実線がずっと引かれておりますのが、過去30年平均の40.8%という数値でございます。

その下に、平成21年財政検証設定値、点線で39.1%と低いところに数字がございますが、「※」にございますように、実は国民経済計算の基準改定によりまして、過去についても数値が直っておりまして、営業余剰が過去について数値が見直しになって大きくなっていることで、平成17年基準で改めて21年検証のときの設定値に対応する10年間の平均を計算いたしますと、41.2%になり、過去30年平均よりは高く、過去10年平均よりは低い、こういうところに入ってくる、こういう状況にあります。

次に、10ページ、資本減耗率でございますが、こちらにつきましては、過去10年平均、この太い点線のところが7.1%で、細い実線、過去30年平均7.5%でございます。こちらも基準改定により、かなり動向が変わっておりまして、太い実線の平成17年基準では、過去への遡及推計値も含めますと緩やかな減少傾向となっておりますが、前回の財政検証のときに見ておった平成12年基準では細点線のように緩やかな増加傾向となっておりまして、そのときの設定値が8.9%とかなり高めの数字だったわけですが、基準改定の結果、こちらの数値はもっと低い数値になる、こういう状況でございます。

続いて11ページでございますが、「総投資率の設定について」というところでございまして、こちらにつきましては、海外経済との関係を考慮するということで、総貯蓄率と総投資率の関係に着目することで、貯蓄と投資の差がおおむね海外経済とのやりとり、経常収支に当たるものですが、従来は総投資率だけ着目して、長期的な低下傾向を外挿して設定していましたが、このことは一定の経常収支の対名目GDP比の黒字、これが勘案されているものと考えられています。一方で、専門委員会で見ていただきましたところ、経常収支の先行きについて、さまざまな機関の見方によりますと、経常収支は現在黒字になっているものが減少してきているということでございますが、このまま減少していって、赤字ないし赤字に近いところまでいくという見方、一方でそれなりの黒字が継続するという見方、さまざまな見方がありまして、今回の総投資率の設定に当たりましては、総投資率だけを過去から外挿したものを見るのではなくて、総貯蓄率の傾向を外挿したものも勘案し、海外経済とのやりとりに関しての幅のある見方を考慮した、幅を持った設定とする必要があるのではないかということでした。

具体的には、下の12ページのグラフを見ていただきますと、総投資率の実績がこの太い実線で、これを素直に外挿しますと、こちらの実線のライン、これは(投-β)と書いてございますが、細い実線ですが、総投資率の過去からの傾向を対数正規曲線により外挿した。これに対しまして、総貯蓄率を外挿していったのが上の細い点線で、これは上に行っている。この差が経常収支の対名目GDP比にほぼ相当するということですので、こちらが縮小する見方をとるのであれば、この総投資率のラインから、総貯蓄率を外挿したラインに緩やかに遷移するように設定することが1つ考えられるのではないか。この一点鎖線のライン、これを(投-α)と書いてございますが、こういうものを考えていくのが幅を持った見方ということになるのではないか、この2通りを設定して検討するということで作業したところでございます。

次に13ページ、「労働投入量の設定について」でございまして、こちらにつきましては、2月6日に「雇用政策研究会報告書」が公表されましたので、それに基づきましてマンアワーベースの労働投入量を推計すると、結果はここにあるとおりでして、詳細につきましては参考資料1-3にございまして、雇用政策研究会報告書の概要、それのもとでの労働力推計の概要については参考資料1-4でございますが、本日お時間限られておりますので、それぞれ詳細にわたる説明は時間をとってしまいますので、この場では省略させていただきまして、後ほどご質問等あれば、その中で質疑に対応いたしたいと考えてございますが、雇用政策研究会の報告書は、労働市場への参加が進むケースと進まないケースと大きく分けて2通りの推計が行われていまして、それを受けての参考資料1-3の「労働投入量(マンアワーベース)の設定について」ですが、1ページだけあけていただきますと、ここにフローチャートが掲げてありますが、これは昨年11月にこの専門委員会におきまして、検討作業班の議論をご紹介いたしました際に、当時の最新の労働力需給推計である2012年8月の推計に基づいてこういう計算をして、こういう結果になりますということを御説明申し上げたところでございますが、今回新たな労働力推計の数字を入れ直して計算したということでございまして、数字はそれほど動いていないと申しますか、相対比で1%も動かないぐらいでございますので、とりあえず前回御説明したものの数字を新たに置き直した版がこちらだということで御理解いただければと思います。

13ページに戻っていただきますと、総労働時間、マンアワーベースというのは、労働市場への参加が進むケースにおきましても、これは減少していくということでございまして、2030年まで労働市場への参加が進むケースと進まないケースとでだんだん差が開いていく。労働市場への参加が進むケースが進まないケースに比べて、総労働時間が減るにしても減りがかなり抑えられるという状況でございまして、2030年以降はそれぞれ労働力率については、その年の数値で固定するということでございますので、以後は平行移動のような形で両方とも生産年齢人口の減少に沿って労働投入は減っていく。この進むケースと進まないケースそれぞれについて、労働投入量はこのようにどちらも将来は減少していく。こういうことを前提として、将来の経済に関しても推計を行っているところでございます。

続きまして、14ページでございますが、「パラメータの組み合わせ方について」ということでございまして、それぞれ幅を持っている各パラメータをどのように組み合わせるかということについての考え方のたたき台でございますが、まず資本分配率と資本減耗率につきましては、相対的に資本分配率が低く、資本減耗率が高い(資-ア)、これは過去30年平均ということで、今の足下の時点よりは資本分配率が低い。つまり労働分配率が高いということですが、資本減耗率は高いケース。一方で、資本分配率が高く、資本減耗率が低い(資-イ)、これは過去10年平均という最近の状況のケースでございますが、この両ケースを全要素生産性(TFP)や労働力とどう組み合わせるべきかということですが、労働力需給に関して労働市場への参加が進み、全要素生産性(TFP)を高く想定する場合につきましては、経済が好調に推移することを見込むことになるわけですので、その場合はデフレによって賃金が低下ないし横ばいの状態にある足下に比べて労働分配率が高くなり、資本分配率が低くなるものと組み合わせるのが整合的なのではないか。また、資本減耗率につきましては、企業の設備投資、設備の更新等が活発に行われるようになるのではないかと考えれば、資本減耗率が比較的高いほうのケースと組み合わせるのが整合的なのではないかと考えられるところでございます。

次に、総投資率に関しまして、これは海外経済との関係を考慮した組み合わせを考えるということでございますが、ただし、これは全要素生産性(TFP)上昇率が高い場合、内需や外需が拡大して輸出・輸入双方とも拡大が見込まれるということですが、貿易収支が現状と比べてどう推移するかは一概には言えないのではないか。また、海外への投資、海外からの投資双方とも経済が好調になれば活性化が見込まれるということですが、その投資の果実についての所得収支が現状と比べてどう推移するかは一概には言えないのではないか。そもそも一般的に経常収支の先行きについてはさまざまな見方がありますので、総投資率については、高いケース、低いケース、(投-α)(投-β)両方それぞれ組み合わせて幅を持って検証する必要があるのではないかと考えたところでございます。

労働力需給との関係については、内閣府試算との関係性に着目いたしまして、「労働市場への参加が進むケース」は経済再生ケース、「労働市場への参加が進まないケース」は(参ケース)と関連するものと組み合わせることがいいのではないかと考えたところでございます。

次に15ページでございますが、以上のような設定に基づきまして、とりあえずマクロ経済に関する試算を試みるということでやりました結果が、次のページ以降ですが、内閣府の試算では2023年度までの見通しが示されていて、将来における長期的な平均値は2024年度以降の期間を対象に算出してございます。

経済モデルを用いる期間については、コブ・ダグラス型生産関数が大体20年ないし30年の経済としては長期の期間ということでの見込みについて推計を行う際に用いられることを踏まえまして、24年度からの20年間の平均、25年間の平均、30年間の平均、この3つの場合につきまして、実質経済成長率、利潤率それぞれの平均値を算出してこちらに数値を掲げているところでございます。

また、需要側の要素を考慮するために、足下のGDPを潜在GDPに置き換えるという御議論をいただいておりますので、具体的には足下2012年度のGDPギャップが▲3%ということでございますので、これを用いまして実績の名目GDPを潜在GDPに機械的に置き換えて算出しているところでございます。

その結果が、16ページの数表でございますが、まず経済再生ケースでございまして、労働力については一番左の欄、労働市場への参加が進むケースを組み合わせていて、全要素生産性上昇率につきましては、2024年度以降の数値は1.8から順次下がっていき1.0%まで。これは経済再生ケースで、経済の好調なケースでございますので、資本分配率、資本減耗率に関しては(資-ア)で過去30年平均のベースでございます。資本分配率は足下よりは低く、資本減耗率については足下よりは少し高くという数字になっています。

総投資率については、αという総貯蓄率にさや寄せされたやや高めの総投資率とβというそのまま将来に向けて外挿したやや低めの総投資率、この両方のケースについて数字を出しています。例えば1.8%のところで期間、実質経済成長率のところ、20年間、25年間、30年間とございますが、とりあえず真ん中の25年間のところを見ていただきますと、(投-α)、投資率が高いほうはこの間の平均の実質経済成長率が1.43%、それに対して投資が低い(投-β)は、投資が少ない分、成長率はやや低くて1.31%になっています。

一方で人が減ってまいりますので、これを被用者1人当たりということで置き直しますと、被用者1人当たりの実質経済成長率、これが(投-α)は2.41%、(投-β)は2.30%になります。

右側の欄、利潤率を見ていただきますと、同じ25年間のところを見ていただきまして、(投-α)は10.4%に対して(投-β)は10.9%と、利潤率は逆に投資が低い(投-β)が高くなっている。これについては、経済成長自体は投資が少なくなり、少し低くなるわけですが、一方で、投資が少ないことによって資本ストックが(投-α)のケースより少なくなりますので、利潤率は資本ストックで資本へ分配されたものを割り返しますので、資本ストックが小さくなった分、利潤率は少し高まり、むしろ賃金上昇率とは逆の傾向になるという関係が見てとれるところでございます。

ずっと下に行っていただきまして、全要素生産性上昇率が1.0%のケースで、(投-α)を見ていただきますと、25年間で経済成長率は0.41%、同じく25年間で見ていただいて、1人当たりの実質経済成長率は1.39%となっておりまして、このとき、利潤率が9.1%、このぐらいの計数ということで、実質賃金上昇率の下がり方に比べると利潤率の下がり方は比較的小さい、こういう状況にあるところでございます。

次に17ページでございますが、これは「(参考ケース)に関連するもの」ということで、労働市場への参加が進まないケースを組み合わせてありまして、全要素生産性上昇率1.0%。基本的には(参考ケース)に関連するものは、資本分配率や資本減耗率も直近10年の平均で資本分配率が比較的高く、資本減耗率が低い(資-イ)のケースを組み合わせることを考えていますが、経済再生ケースとの比較という意味で、こちらは(資-ア)を使ったものにつきましても算出しているところでございまして、一番上の欄が(資-ア)でございまして、(投資-α)で見ていただきますと、こちらが実質経済成長率、25年間で見ていただいて0.15%。賃金上昇率と申し上げましたが、その代理変数となる1人当たりの実質経済成長率でございますが、これが1.36%、利潤率が8.3%となっておりますが、ページが前後として見づらいのですが、1ページ前の経済再生ケースの一番下と見比べていただきますと、2024年度以降の全要素生産性(TFP)が同じ1.0%で、資本分配率、資本減耗率が(資-ア)、(投-α)で、総投資率の設定も同じ。労働力に関する設定の違い、足下のところ、2023年までの設定の違い、この両方の違いによってどのぐらい差が出てくるかということで見ていただきますと、2024年以降の25年間の平均ということで、こちらは実質経済成長率が0.41%だったのに対して、今、申し上げました(参考ケース)の一番上のケース、これは25年間の平均で0.15%ということで、0.25%ぐらい成長が(参考ケース)の場合は低くなる。

一方で、1人当たりの実質経済成長を見ていただきますと、1.39%に対して1.36%ということでほとんど差がなく、経済成長そのものは労働投入が少なくなり小さくなるのですが、一方で被用者の数も減るので、割る分母も少なくなるということで、賃金上昇率はそれほど差がない。

利潤率は、16ページの経済再生ケースでは9.1%でございますが、17ページは、25年のところを見ていただくと8.3%、成長が低い分、利潤率は(参考ケース)が低くなる、このような数字になっています。0.5%の場合には全体の実質経済成長自体マイナスでございまして、賃金上昇率に当たります1人当たりの実質経済成長率も1.0%を切る状態。利潤率はそれほど大きくは下がらないのですが、しかるべく、下がっている数字になっています。

18ページは、具体的に1つのケース、これは全要素生産性上昇率、長期のものが1.4%、労働市場への参加が進む、経済再生ケースで、(資-ア)、(投-α)の組み合わせの場合、具体的な計算がどのように行われているのかを示すために参考としてつけさせていただいたものですので、御説明は省略させていただきます。

次に19ページ、「長期金利の推計について(利潤率と関連づけた推計)」で、実質長期金利と利潤率の相関関係はバブル崩壊前後を含む長期間をとった場合に高くなることに留意して実質長期金利を利潤率と関連させて推計する際の過去の平均値は長期間にわたりとる必要があるのではないかということで、19ページの右下を見ていただきますと、利潤率と実質長期金利の相関係数を今回の対象期間で見ていただきますと、30年、25年はかなりの相関係数がありますが、20年になるとかなり落ちてまいりまして、15年ですとほとんど相関がゼロに近い。今回これを踏まえまして、前回は15年、20年、25年で見たのですが、今回はそれよりも長期の期間を見ていくということで、20年、25年、30年、この期間でそれぞれの関係を見たらどのぐらいになるかというのが20ページの表でございまして、例えば過去30年平均で申しますと、この期間の実質長期金利が実績2.6%。一方で、過去の利潤率の実績が8.17%。

この関係で比例関係をとって相関を見ますと、例えば将来の利潤率が10%の場合、将来の実質長期金利は3.2%という見込みになる。

また、過去20年平均、やや相関係数は低いのですが、これをとりますと、過去の実質長期金利が1.86%に対して、過去の利潤率7.35%、この関係で比例関係をとりますと、利潤率が10%のときに見込まれる将来の実質長期金利が2.5%になるということで、同じ将来の利潤率10%と出たものにつきましても、過去の金利と利潤率の関係の相関をどのような期間の平均で見るかによりまして、このぐらいの幅が出てくる、このような数値でございます。

続いて、21ページですが、専門委員会における御議論で、長期金利については、実際の金融市場では長期的な動向がどう予想されているかといった情報も参考になるということで、そういうものもにらんで将来の利回りを考えていく必要があるのではないかと整理されたところですが、それの参考として、これは国債の市場価格から導出した201212月末から2014年、今年の1月20日のスポットレート・イールドカーブ、これがこちらにあるようなグラフになっています。スポットレート・イールドカーブから、将来の金利に対する投資家の平均的な予想をとらえることができるということでございます。

22ページでございますが、純粋期待仮説に基づきまして、このスポットレート・イールドカーブから導出した10年国債のフォワードレートで、10ないし15年後に2~3%くらいに将来の10年国債の金利は上昇して、その後、緩やかに下降した後再び上昇し、30年後にまた2~3%になる、こういう見込みになっている数字でございます。

次に23ページ、「分散投資効果の試算について」ですが、これは以前、検討作業班で検討した試算がございまして、そのときには、8月の段階での内閣府の試算を前提に置いて試算したところでございます。

そのときには、平成21年財政検証のときと同じ手法、基本的に名目利回りベースを使うような手法のもとでの分散投資効果の試算が1つと、もう一つ、新たに賃金上昇率を上回る実質的な運用利回りの分散投資効果についての試算、この2通り行ったところでございます。

今回、新たな内閣府の試算や労働力推計を踏まえ、前提を洗い替えて試算を行うことができればよかったのですが、それには時間的余裕がなかったため、とりあえず前回検討作業班で行った試算はこういうものでしたという要約をここでは掲げさせていただいているところでございます。

分散投資効果については、今後、本専門委員会での御議論を踏まえまして、また新たなデータに基づいて算定をすることになりますが、次の24ページに、検討作業班での試算で仮置きした利潤率の水準、こちらが【ケース1】で10.0%から【ケース3】で7.3%という数字が出てございますが、こちらの数値と16ページないし17ページのところにとりあえずの試算で出てまいりました利潤率の水準でございます、TFP1.8%のところの一番上のところで10%台の数字、下のほうで9%台、17ページに行きますと、8.0%台、この辺の水準と24ページのところで仮置きした利潤率の水準はそれほど乖離のない状況でございますので、現段階では検討作業班のときに行った試算で、ある程度分散投資効果のレベル感を見るものには使えるのではないかということで、こちらに掲げさせていただいたところでございます。

具体的には24ページでございますが、21年財政検証と同じ手法、名目利回りによる算出を行った分散投資効果の試算に基づきますと、一番下に結果をまとめてございますが、おむね0.3%~0.9%ぐらいの分散投資効果のレンジになる。

次に25ページ、こちらは新たに行った実質的な運用利回りに基づく分散投資効果の複数パターンによる試算結果、比較的値は収れんしておりまして、おおむね0.4%前後になるという結果が出ていたところでございます。

続きまして26ページでございますが、「長期の物価上昇率の設定について」ですが、物価上昇率については、これまで日銀の見解や過去の実績の平均値、内閣府による試算などを参考にして設定されてきたところでございます。今回そういう意味で参考になる数値としては、下にございますように、内閣府の見込みの経済再生ケースの数値、日銀の目標値ということで見ますと2.0%、一方で内閣府の(参考ケース)の試算では1.2%、実績ということで見ますと、過去30年の平均値で0.6%、こういうものである程度幅が考えられるのではないか。

27ページは物価上昇率の実績値でございますので、省略いたしまして、28ページを見ていただきますと、「足下の経済前提の設定について」ですが、これは基本的に内閣府の試算に準拠することではないかというところでございまして、具体的な数値を見ていただきますと、経済再生ケースに準拠する場合には、平成30年のところから物価は2.0%、以後も2.0%でございます。

名目賃金上昇率、これは私どももこの試算を参考にさせていただくということで、内閣府にお願いして数字をいただいたものですが、こちらで見ていただきますと、平成35年(2023年)のところで見ていただきまして、名目値で4.1%、名目長期金利は先ほど見ていただいた4.8%、物価上昇率の2.0%を引きますと、対物価の実質で見まして、賃金上昇率が2.1%、10年国債の金利で2.8%、こういうような数字になっています。

(参考ケース)は、同じく2023年で見ていただきますと、物価上昇率が1.2%、名目賃金上昇率が2.7%でございますので、実質で1.5%、金利は名目長期金利で3.1%、1.2%を差し引きました実質で1.9%、こういうことでございまして、この辺と先ほど見ていただいた試算値との接続をある程度見ていただくことかと思っています。

最後、29ページでございますが、「変動を織り込んだ経済前提の設定について」ということで、変動の周期については経過循環の長さを参考とする、変動の幅については、物価、賃金の過去の実績を見てということでしたが、周期については、これまでの景気循環の平均的な長さを勘案して4年周期とすることが考えられるのではないか。

また、変動の幅ということでは、過去30年間の物価上昇率の標準偏差を計算しますと、1.2%でございますので、これを使うこととしてはどうかということで、基準となる物価上昇率について、±0%、例えば-1.2%、±0%、プラス1.2%、また±0%に戻る、こういった周期ということで、変動を織り込んだ前提を設定することが考えられるのでないか。

賃金上昇率については、実質賃金上昇率は変動させずに、物価の変動に応じて名目賃金上昇率も同様に変動するような設定でいいのではないかと考えているところございます。

以上、時間が長くなりまして恐縮でございますが、資料の説明をさせていただきました。

○吉野委員長 山崎数理課長、どうもありがとうございました。

ただいまの御説明のように、私が書いただけで全部で9つ変数がありまして、6ページの全要素生産性(TFP)の問題、8ページぐらいのところでは資本分配率、資本減耗率、11ページで総投資率が入ってきます。13ページで労働投入量、19ページのあたりで長期金利のところ、これは利潤率との関係でどうするか。もう少し先に行きますと、23ページが分散投資効果、これがどれくらいか。さらに進みますと、26ページで物価上昇率、そこから関連するところで、最後で賃金上昇率、このように9つありまして、それぞれに幅を設けると物すごい組み合わせになるわけですけれども、皆様から、あと30分ぐらいでいろいろ御議論いただきまして、組み合わせはいろいろあると思いますけれども、すごいケースと悪いケースといろいろ幅を持たせるということではないかと思いますけれども、どなたからでも結構ですけれども、お願いします。駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 まさに変数の固まりみたいなので、全部にコメントできないのですけれども、労働投入量について、今日の資料は非常に限定的な資料だったと思いますので、雇用政策研究会の資料は、特に参考資料部分は配付していただいたほうがいいのではないかと思います。というのも、まず労働力の見通しは経済成長ルートで影響を与える。先ほどもこの資料の1617ページを比較すると、前提において0.3%の経済成長に差を与えると。

それだけではなくて、年金財政にもまた二重に影響を与えますので、このところは丁寧に説明をしていただきたいと思います。というのも、雇用政策研究会の報告書は、これは質問なのですけれども、こういうことはないとは思うのですけれども、再興戦略と労働力の参加が増えたという2つの前提を置いているわけですが、労働力の参加が増えているという想定は幾つかの政策を行うと仮定すると。それがこちらのほうでもどういう政策を行っているのか。65歳~69歳については、働く場が用意されたらこのくらい上がると。率でいうと15%程度のトレンドとして上がるということは書いてあるのですけれども、雇用政策研究会は年金のためにやっているわけではないわけですから、そういう情報はきちんとこちらも反映しなければいけない。それから、さまざまな補正をかけているわけですけれども、その補正とこちらでやっている補正は二重にカウントされていないかどうかということも確認しないといけない。

それから、再興戦略のほうで経済成長が進んだというケースで労働力率は上がるという想定をしているわけですけれども、これはないと思うのですけれども、労働力が1回成長の結果を受けて、さらに投入する労働力がまた経済成長に二重にカウントされてはいないか、そういうことはないのか、まさにそれはないと思いますけれども、その確認。

あとは、今日も配られてないのですけれども、雇用政策研究会の資料の99ページには、そちらのプログラムの中で賃金上昇率がどう計算されたのかというのが入っているのですけれども、全く違うプログラムですから、そちらの賃金上昇率とこちらの賃金上昇率は全然関係ない話なのか、それともある程度関係があるように計算されているのか。労働力の資料が足りないので少しわからないところが幾つかありますので、それは次回あたり、参考資料、全部の前段のところから配付してもらうと大変なことになると思いますけれども、労働力率が参加するケースについての想定を年金のこの議論にどのくらい使えるかどうか、確認させていただきたいと思いますので、次回配っていただいて、できたら説明もいただきたいと思います。

○吉野委員長 山崎数理課長、どうぞ。

○山崎数理課長 先ほど説明時間が足りないので、後ほど必要に応じて質疑の中でと申し上げました。参考資料1-4でございますが、「雇用政策研究会報告書より抜粋」ということで、この2月に出ました雇用政策研究会報告書の関係の資料がこちらでございますが、おめくりいただきまして、雇用政策の将来ビジョンということで、大きい考え方として「仕事を通じた一人ひとりの成長と、社会全体の成長の好循環」というテーマで、どのような政策を行っていくかという考え方が書いてある、そちらの概要がずっとございまして、この後ろの8ページにまいりますと、政策シミュレーションということで、「経済成長と労働参加が適切に進まないケース」、「経済成長と労働参加が適切に進むケース」を比べて、どのように労働力に違いがあるかというところが、8ページ、9ページで数値を掲げてございまして、その後、後ろに回っていて恐縮でございますが、この資料の10ページを見ていただきますと、「労働力需給推計の概要」ということで発表されたもの、こちらは資料をつけさせていただいてございますが、推計方法につきましては、以前、JILPT(労働政策研究・研修機構)の方に来ていただきましてフローチャート等もお示しいただいて御説明頂いたところでございますが、基本的に需給をマッチさせるという方法でシミュレーションを行っているということでございまして、労働力需要関数は新たに推計を行わずに、2012年推計値のパラメータを使用したということですが、労働力供給のところで、将来人口推計に、下記の説明変数によって推計される労働力率を乗じて労働力人口を推計となっておりまして、まずは1一般的な就業環境、2若者の就労に影響を与える変数といたしまして進学率、年齢間賃金格差、3女性の就労に影響を与える変数として、保育所幼稚園在所児童比率、男性の家事分担比率、世帯主の将来期待賃金比率、短時間雇用者比率、有配偶出生率、実質賃金といった変数が入っている。4高齢者の就労に影響を与える変数として、65歳まで雇用確保措置ということが入っておりまして、このようなもので、一番下の「・」にございますが、変数のうち一部を政策変数として操作しているということで、一方で継続就業率向上効果等、政策効果の一部は、外生的に算出して労働力率等に直接加算している。

概略このようなものを見て説明変数を入れて、将来の労働力供給というもの、労働力率がどう上昇しているか、推計しているところでございます。

こちらで出てくる賃金上昇率と内閣府の賃金上昇率、あるいは成長。先ほどの御質問では、労働力の成長と経済成長、それが両方で二重にカウントされていることはないだろうかという御質問だったのですが、私ども承っているところでは、私どもの職業安定局、労働力推計を実際取り仕切っているところでございますが、そちらと内閣府で、ある意味情報交換をして、お互いぴったり合うわけではないですが、レベル的には整合性がとれるようにということで両者情報交換をしていると承っておりますので、当然それぞれのプロが行われていることでございますので、二重カウントとか、そういうものに類するものはないと考えておりますし、また、それぞれ成長率のレベルについても、どちらも日本再興戦略に基づいて労働参加が進むというケース同士につきましては、両者の間で齟齬がないようにということでのそれなりの調整をされていると承っております。

賃金上昇率に関しましては、労働力需給推計はそれ自体を推計しているわけではないので、取り出すことはできないということなのですが、内閣府は発表数値にはございませんが、私どもこの検討の参考にするためということで、先ほど申し上げましたような数値をいただいておりますので、内閣府からいただいている賃金上昇率、これは基本的に労働力需給推計の進むケース、再生ケースで申しますと、そちらと経済成長率についてはレベルが合っていると認識しておりますので、長期の推計で、私どもで試算して出てまいります長期の被用者1人当たりの実質経済成長率、これを賃金上昇率の代理変数として用いようとしているわけですが、それとのレベル感を比較するという意味では、内閣府の賃金上昇率の数値として出していただいているもの、その辺と見比べていただければ、ある程度の判断はできるのではないかと考えているところでございます。

以上でございます。

○吉野委員長 駒村委員、いかがですか。

○駒村委員 幾つかばらばらに集めてきてやっているので、きちんと整合性が、少なくとも方向ぐらいは、細かい数値まで別のプログラムでやっていまから一致しないと思いますけれども、いろいろ外から持ってきたものときちんと合っているかどうかというのが気になったのと、先ほど御説明いただいた労働力率の想定についても、雇用政策研究会では、もう少し細かい想定が書かれていて、例えば65歳までの雇用の場が確保できるという書き方ですけれども、65歳~69歳まで上がっていますので、そこについても雇用政策研究会で説明されていますので、そういうこともありますので、少なくとも細かい参考資料の部分は手元にあったほうが議論しやすいのではないかと思いますので、次回あたりで配っていただくか説明いただければと思います。結構です。

○吉野委員長 どうもありがとうございました。植田委員、先にお願いします。それから、西沢委員。

○植田委員 積立金の運用というような観点から言いますと、国債で運用したらどれくらいに回るかというのが大きなポイントの1つのわけですけれども、それを見る際に、ここの計算結果では。

○吉野委員長 ページを言っていただけますか。

○植田委員 全体の試算結果をまとめた1617ページの利潤率のところです。これがごらんいただくとかなり高いのですね。一番下の0.5%の全要素生産性のケースを切ると、大体8.5%より上で、上は10%を超えるというような感じになっています。それと対応する長期金利を計算しているのが1920ページなのですが、まず、今の8.5%から10%を超えるという利潤率の推計値が、19ページの過去のグラフを見ますと、バブル期にはあるのですけれども、90年代以降はもう少しかなり低いところを推移していまして、それと比べるとかなり高い結果にまずなっているということです。

その利潤率をもとに過去の利潤率と実質長期金利の関係から、今後の実質長期金利の推計をしたのが20ページですが、一番右側の金利が低く出るケースでも、利潤率が8.5から10強のところを見ますと、実質で2.1から2.7とか、そういう利回りになるわけで、これに分散効果を加えると国債で運用しただけでかなりの利回りになる。恐らく名目賃金上昇率を上回るのは軽いというような、簡単に上回るというような結果になると思うのですが、というように、私には読める結果論ですが、それでいいかどうか。

あと、なぜ、こんなに利潤率がこの計算で高く出てくるのかということですが、パラメータをいろいろ見ていたのですが、大きいのは貯蓄と投資が下がっていくというところですか。資本ストックの伸びが下がるので、結果的に利潤率は高く出るという解釈でよろしいかどうかあたりを。

○吉野委員長 山崎数理課長、お願いいたします。

○山崎数理課長 まず、後段のお尋ねでございますけれども、この試算の枠組みのもとで利潤率が比較的高どまりすることにつきまして、投資率の設定が影響するのはまさにおっしゃるとおりかと存じまして、具体的には、低いところで言いますと、17ページ、(投-α)と(投-β)、一番上の欄で比べていただきまして、利潤率の25年間のところを見ていただきますと、(投-α)ですと8.3%ですが、(投-β)では8.7%と逆に高くなる。これはβが投資が低くなるケースですので、投資が低くなって、資本ストックが余りたまらないということでは、経済成長自体は低いのですけれども、それを補って余りあるというか、資本がより小さくなるので逆に利潤率は上がる。まさにおっしゃっているようなメカニズムが働いているということでございまして、そういう意味では、逆に経済は振るわないけれども、投資がどんどんくるのだというような設定を置けば利潤率がもっと低くなるような数値は出てくるということでございますが、基本的に過去のトレンドを伸ばして幅で見ましても、総投資率のトレンドと総貯蓄率のトレンドの間ぐらいで考えるということですと、こういうような数値になってくるというところでございます。

一方で、最初のお尋ねで、市場の見方との乖離で考えますと、何といいますか、市場の見込み数値はある程度名目金利の見込みとなるので、物価をどう見ているかというところも込みになった数字になってくることかと思うのですが、一方で、今までの専門委員会でも御議論ありましたように、こちらの利潤率と関係づけた試算だけ見るのでは少し幅が狭いのではないかという御議論をいただいておりまして、そういう意味では、こちらでいうイールドカーブから出るもの、22ページのあたりですが、こちらから出てくるような、これは物価の分も込みにした名目金利の市場の見方ということでございますけれども、2%とか3%、そのくらいの数字。ただ、これは物価自体も2%を見ているわけではないだろうということでございますけれども、こういうものから設定されるようなケースも置くということであれば、それなりに幅の広い前提になるのではないか。

小塩委員からも、両方にらんでといいますか、利潤率と関係づける試算だけではなくて、市場の見方を反映したものと両方にらむ必要があるのではないかという御議論を昨年来頂戴していたと存じますので、幅の広い見方をということであれば、こちらの市場の見方を反映させたケースを設けるということが考えられるのではないかと存じているところでございます。

○吉野委員長 私も先ほどの16ページで利潤率がすごく高く出ていると、多分皆さんそのように思われていると思うのですけれども、御説明のように、資本が減ってくると傾きが大きくなって限界生産性が増えて、このように出てきているのだと思うのですけれども、少し直感と違う感じがしました。

もう一つは、国債で、21とか22から、こちらが国債の長期金利で、前のほうが利潤率ですけれども、金融機関が貸し出しをするか、国債で運用するかを考えたときに、もしこれだけ利潤率が上がれば国債の投資を減らしていき、民間の資本へ流すでしょうから、恐らくそれで国債の金利がもっと上がるということになるかもしれないような気がいたします。ほかにどなたか、西沢委員、どうぞ。

○西沢委員 幾つかありまして、1つは、7ページあたりに関連しますが、内閣府の経済再生ケースを年金財政との関連をどうとらえるかというのが1つ課題だと思いますが、私は経済再生ケースについて、年金財政と関連して2つぐらい重要な視点があると思いますけれども、経済再生ケースはあくまで日本再興戦略をこれから法改正なり実現していって、その効果が徐々にあらわれてくるのが2020年から今後5年、10年かけてだと思いますので、経過観察といいますか、それを見守る必要があると思うのですね。

そういった意味で言うと、今回の財政検証の中で、再興戦略の実現と効果発現を踏まえたケースは見なくていいのではないかと思います。むしろ第3回ぐらいの財政検証が2018年、2019年の作業になってくると思いますから、日本再興戦略の効果があらわれてきたのを観察しながら織り込んでいけばいいのではないかと思いますし、もう一つの視点としては、TFPが高いのが全てに効いてきていると思うのですけれども、2004年の財政再計算ではTFPが基準ケースで0.7%、2009年で1.0%、今回1.8%と1.0%の真ん中をとると1.4%、だんだん上がってきてしまいまして、だんだん上げてきてしまうと、前回と前々回の財政検証と今回がどう違うのかという差が何だかわからなくなってくるので、足下の被保険者、積立金の残高、将来人口推計はそのままにしておきながら、できれば超長期のTFPの指標に関する推計は2004年財政再計算、2009年財政検証と同じものを置いてやってみることによって、より年金財政の姿がクリアにわかってくるのではないかと思います。TFP1.8%と置いたのもいいと思いますけれども、多分そうすると何もしなくても年金財政どころか、日本経済がハッピーシナリオなので、検証しなくても多分年金ももっていると思うのですね。むしろリスクシナリオを置いてやったほうが、年金財政の健全性を検証する意味ではいいのかと思います。それが1つ。

2つ目が、24ページ目と関連しまして、今回幾つかのパターンを分けるということなのですけれども、(3)にパターンが9ケース、プラス下に10があって、網のかかっていないところをピックアップしているわけですけれども、その結果、分散投資効果が0.3%~0.9%。前回が0.3%~0.5%で、真ん中をとって0.4%ということだったと思うのですが、それぞれのケースの発現確率が違うわけであって、一番高い0.9%という発現確率はもしかして1%かもしれないので、ここでは上限と下限をとって、最大と最小のレンジをとって、前回は0.3%と0.5%というレンジをとって真ん中をとるというかなり大胆な結果だったと思いますけれども、それぞれの発現確率が違うのであって、ケース分けするにしても、どれが一番実現確率が高いかをある程度目星をつけてやらないと、単純に10個並べて真ん中ですというのはおかしいと思います。

3つ目は、このページと関連して、TFPを高くとっていることもあって、利潤率も高くなっているのですか、それも影響していると思うのですが、本当はここに各資産の期待リターンをこのページに載せておいてもらったらよかったと思うのですが、第13回の分散投資効果のときの資料を改めて見ますと、株式のリターンが、例えばパターン4であれば8.2%、パターン5で7.6、パターン6で7.1ですから、期待リターンも多分かなり高いと思うのですね。単純に計算しても8%や7%で株式を回していきますと、10年か、十数年たつとバブル期の3万8,000円ぐらいに単純にすればなってしまうので、ここももともとは経済再生シナリオから来ていると思いますので、冒頭申し上げた理由も含めて、経済再生シナリオを私としては経過観察といいますか、次々回の財政検証に持ち越しというのが年金財政上好ましいのではないかと思います。

以上です。

○吉野委員長 どういうシナリオに考えるかというところですね。ありがとうございました。米澤委員、どうぞ。

○米澤委員 最初、確認なのですけれども、利潤率が非常に高く数字が出てきているというのですけれども、コブ・ダグラスの資本には不動産は入ってないのですね。

○山崎数理課長 入ってないです。

○米澤委員 ですから本当の基本ストックだけでGNPを生み出しているというので、普通の企業の財務データあたりから計算するROAというのとは大分違ってもっと高く出てきてしまうというのは1つ注意しなくてはいけないので、そのために、その後で調整などもしているので、全部資本が生み出しているのですよとなると、こういう高い数字が出てきてしまうのは1点注意する必要があるかと思います。

それから、次、コメントなのですけれども、TFPが上は1.8%というのは、以前も一番の上限が1.8%というのは、それはあるとして、今回は17ページで計算してきていただいて、一番下は0.5%というのを計算していただいたわけなのですが、それを見ると実質経済成長率はマイナスになってしまうというので、前回は1%の上限で、先ほども例えば前回と同じ数字と言ったのは、上は1.2%。

○山崎数理課長 よろしいでしょうか。前回の財政検証のときには、真ん中が1.0%で、上が1.3%、下が0.7%ということで、この計算はやりました。

○米澤委員 下が0.5%というのは少し下げ過ぎなのではないか。0.7%ぐらいのところを計算していただくと、本当の下のあらゆる下ということで感触がつかめるのではないかと感じています。0.5%というのは余りにも暗い数字しか出てこないので、できればそこのところを計算していただいて、前回のものと少し比較できるようなものを見ていくのがいいのかと思っております。

物価上昇率に関して、今回初めて2%とか1.2%、0.6%という数値が出てきて、これ自体はこうですよということなのですけれども、できれば組み合わせも普通のケインジアンタイプみたいなもので物価上昇率が高いときには成長率も高いような、成長率と言っていいのか、経済が割といいような状況という格好で組み合わせていくのも1つあるのかと思っています。フィリップスカーブ的な格好で見ていくということなので、いいときには2%、悪いときには0.6%というような格好で見ていくのもあるのかと思っております。

最後なのですけれども、これは足下の話で、足下は、今のところ前回と同じように内閣府の数字を見ておこうということで計算していただいて、このところでは名目賃金上昇率も入れていただいたということで、少し確認なのですけれども、内閣府の数字と物価上昇率が微妙に違うのは暦年でずらしたからということでいいのですね。

○山崎数理課長 さようでございます。

○米澤委員 それから、改めてこれを見ますと、物価が、今年消費税で上がるのはいいのですけれども、名目長期金利が今年は経済再生ケースでは1.0%で、来年が2.1%に上がるということ。同じような格好で賃金上昇率が今年は1.0%なのですけれども、来年は2.5%に上がるというのは、シナリオみたいなものをもう一度、内閣府に、我々は説明受けたのかもしれませんけれども、税金で物価が上がるというのはわかりますけれども、それに伴ってなのかどうかわかりませんけれども、この辺が極めて不自然な動きをするので、ここのところを説明がほしいというか、こんな数字になるのか、極めて不信感を持って見ていますということでございます。

以上です。

○吉野委員長 今の関連で、名目長期金利の2023年で4.8%になると財政破裂しているはずなのですね。どのようになっているか、少し必要。それから、先ほどの米澤委員の17ページの全要素生産性(TFP)の0.5%のところですけれども、多分これは西沢委員の御意見とか私の意見では、低いところも入れておいたほうがいいという、そうでもないですか、私はあったほうがいいと思うのです。

○米澤委員 いいのだけれども、これは余りにも低過ぎないですかということです。

○吉野委員長 いろいろなケースがあって、私はいいような気がしますけれども。

○米澤委員 0.7%もつけ加えてくださいというのがお願いなのですけれども。

○吉野委員長 川北委員、それから、山田委員。

○川北委員 私も資本、利潤率のところが非常に気になっています。18ページを見ますと、1つの計算の事例が書いてあります。全要素生産性上昇率が1.4%のときで経済再生ケースというところなのですが、足下、20136.2%から利潤率がスタートしていて、ずっと上がって8.2%となり、8.4%から本格的に試算しているということだと思うのですけれども、この表を見ていると、利潤率の上昇がかなり問題だと思っています。1つ、わかるのであれば教えていただきたいのは、経済再生ケースではない、(参考ケース)の全要素生産性(TFP)が0.5%のときに、今回の推計のスタート時点までの利潤率の推移がどのようになっているのかということです。そのときに、これも何人かの委員から指摘がありましたように、ここまで果たして上昇するのかどうか。過去、2000年~2005年ぐらいまでの利潤率の上昇率が1つの参考になると思うのですけれども、その後、また落ちこんでしまっているわけですね。再生するのであれば利潤率が上昇することも考えらなくもないのですけれども、(参考ケース)に相当するような部分に関しては、またもとに戻ってしまうような、そういうシナリオを1つ描く必要性があるのではと思います。

それと1つのアイディアとしては、全要素生産性(TFP)が現状のままずっと推移をしてしまって、(参考ケース)よりも、さらによろしくない、リスクシナリオ的なものを描いて、そのときに利潤率がどのような形になるのか、そういう試算があってもいいのではないかと感じた次第です。

私のコメントは以上です。

○吉野委員長 山崎数理課長、先にどうぞ。

○山崎数理課長 18ページのところで、これは全要素生産性上昇率が1.4%になるケースということでございますが、ただ、今、足下のところでの2023年までのところということで利潤率の数字が上がっていっているところでございますが、これは足下のところは経済再生ケースということで、内閣府のものに基本的に準拠しておりますので、TFP1.8%まで上がっている。これの3のところでございますけれども、0.50%~1.8%まで上がっていて、そこから後が1.4%ということでございまして、全要素生産性(TFP)が上がっていくということで利潤率が6.2%~8.2%まで持ち上がっている。

これが(参考ケース)のような、低い場合でどうかということでございますが、(参考ケース)につきましても、足下のところでは内閣府の(参考ケース)に準拠しておりますので、全要素生産性(TFP)は0.5%から、これでは1.8%ですけれども、(参考ケース)は1.0%まで上がるということになって、上がってはいくということでございます。一例を申し上げますと、労働力が進まないほう、(資-ア)の(投-α)というもので計算したものの中身を見ますと、利潤率は足下の6.2%から緩やかに上がってまいりまして、2023年のところでは7.2%というような数字になっておりまして、そういう意味ではTFP0.5%~1.8%まで上がるケースでは8.2%まで上がっているものが7.2%としかるべく、抑えられている。しかし内閣府の前提では0.5%~1.0%まで(参考ケース)のほうでも上がってまいりますので、利潤率はこの段階でも若干は上がる。ただ、経済再生ケースに比べると上がり方はかなり抑えられていると、このような数値になっているところでございます。

○吉野委員長 先ほどからずっと出ている利潤率が高くなるのは限界生産性の傾きが高くなっていくかという、米澤委員からは不動産が入っているとか、政府の資本も多分この中に入っているかもしれないですね。

○米澤委員 政府の資本は入っているのですね。不動産は入ってない。

○吉野委員長 不動産は入ってない。

○山崎数理課長 不動産は入ってない。

○吉野委員長 そのために高く見えるというものもあるのでしょうか。

○山崎数理課長 数値としてはそうです。

○吉野委員長 少し急ぎたいのですが、山田委員、どうぞ。

○山田委員 私からは2点、質問がありまして、1つは、労働投入量、マンアワーベースの設定について、参考資料1-3の12ページにございますけれども、ここで労働市場への参加が進むケースと労働市場への参加が進まないケースで短時間雇用者比率の設定がございます。こちらで2030年に34.7%になって一定になると、この設定はどうなるのかということですね。特に何か意味があるのかということです。とりわけ非正規雇用が比率として増大していることから、それをどのように設定されて考えているのかというのがもし情報としてお持ちだったら教えていただきたい。

それから、同じ資料の14ページの下に、被用者年金への適用拡大なのですけれども、これらの影響については別途見込むことにするとございますけれども、これもどのように考えるのかということです。要するに単純に適用拡大されたから、そこの部分が何ら企業による採用行動などに影響なく、そこの部分が広がった部分を飲み込んでしまうのか、また新たな適用拡大の時間制限に応じて企業がそこの部分の労働者を多く雇用することも考えられるわけですから、そこの部分がどうなっているのか、マンアワーベースの設定に関する質問が1点目です。

2点目については、先ほどからも挙げられています利潤率の設定なのですけれども、こちらも教えていただきたいのは、資料1の10ページで、資本減耗率で大分遡及推計値によって変わったということだと思うのですけれども、資本減耗率の設定で利潤率が、設定の違いによってどれほど大きなインパクトがあったか、ざっくり教えていただきたい。

済みません、以上、よろしくお願いいたします。

○山崎数理課長 まず、第1点でございますが、短時間雇用者比率が労働市場への参加が進むケースと進まないケースでかなり差がある。これが労働市場への参加を進めるに当たってどれぐらい寄与しているかというか、そういうお尋ねということでよろしゅうございましょうか。

○山田委員 済みません、そのこともありますけれども、この34.7%という数値、それが一たん上がった後、ずっと定常状態になるということなのですけれども、場合によってはひょっとしたらこれよりも高いかもしれませんし、非正規化が進めば高くなるでしょうし、一体この34.7%というのがどういう根拠に基づいているのか、非常にテクニカルな質問です。こちらに関してはおわかりになればということですので、もし手持ちに情報等お持ちでなければ、また次回教えていただければと思います。

○山崎数理課長 恐縮ですが、こちらは労働部局に確認しまして、次回ということにさせていただきたいと存じます。

2点目の適用拡大でございますが、14ページにございます適用拡大については、少なくとも、今のこの推計では考えていないということでございまして、確かに適用拡大されますとそれに応じて企業の行動が変わり得るという部分があるわけですが、そこの部分、なかなか見込みは困難な部分ございまして、ただ、一方で、今、考えられております適用拡大の規模はかなり小さいものとなっておりますので、そちらにつきましては、どこまで行動が変わるのか。少なくともマンアワーベースでの労働時間、あと経済成長に大きく影響を与えるほど変わることはないのではないかと思うのですが、ただ、オプション試算等でもっとこれを広げる場合には、その影響がどうかということは、また波及を考えないといけないことがございますので、なかなか難しい課題ではございますが、それにつきましては、よく研究していきたいと考えております。

それから、資本減耗率がこの試算にどういう影響を与えるかということでございますが、まさに資本減耗率を。

○山田委員 利潤率。

○山崎数理課長 資本減耗率を変えたときに利潤率にどう影響するかというお尋ねではなくて。資本減耗率の設定は利潤率にかなり大きな影響を及ぼし得るということでございまして、資本減耗率が高ければ、それだけ同じ投資のもとでも資本のストックの減りが大きくなりますので、そうしますと経済成長率自体も少し減るわけでございますが、むしろ利潤率は資本ストックが小さくなることによって上がる要素があるということでございまして、ただ、具体的に前回と今回では、そもそもデータのとる基準が違って数値が変わっておりますので、そこを機械的に置き換えてどうなるかという試算は特にしていないところでございますけれども、理論的には当然利潤率に影響があるというのはそのとおりでございます。

○吉野委員長 サプライサイドの供給のほうから出しているからですね。だから需要のほうからいくと、今、逆になってきますけれども。小塩委員。

○小塩委員 既に多くの委員の方々が、TFPの高さや利潤率の高さについて言及されました。私も全く同じような意見を持っております。昨年の会議で、内閣府の数値は少し高過ぎるので、いろんな数字を見て作業を進めたらどうかと申し上げたのですが、それに対応して、幾つかのケースを設定していただいたので非常にありがたいと思います。先ほど西沢委員がTFP1.8%にする再生ケースは次の検証に残しておいたらどうですかというような提案をされました。私も、それは1つのアイディアだと思いますが、前回の財政検証でもTFP1.0としたものがベースになっていたので、とりあえずほかの要因は現行の数字を用いて、いろいろな新しい情報を反映させる。例えば出生率はどうかとか、そういうものを反映させた上で、TFP1.0%にしておいて、とりあえず今の制度がどこまで維持できるのか、どういう状況にあるか。それを一応ベンチマークで見ておいてから、経済再生が成功してTFP1.8%になればどれだけ楽になるのかを見せるほうがいいのではないかと思います。

 というのは、年金の制度改革のオプションを提示するというのも今回の見直しの1つの目的だと思うからです。経済再生が、年金の将来見通しにどれだけのインパクトを持つのかは見ておいたほうがいいのではないかと思います。

以上です。

○吉野委員長 小野委員、どうぞ。

○小野委員 済みません、2点質問をさせていただきたいのですけれども、1つは、雇用政策研究会と内閣府との試算の連携という観点からお伺いしたいのですけれども、参考資料1-4を拝見しますと、10ページになりますけれども、その他として経済成長等々のシナリオを想定されていまして、ここでは3つ出ているのですね。そこで経済再生シナリオと参考シナリオのほかにゼロ成長シナリオというのがありまして、労働力率関係で言うと、その結果というか、労働参加が適切に進むケースと再生シナリオが重なる。参考シナリオは一定程度進むケースということになっておりまして、ゼロ成長シナリオですと労働参加が進まないという話になっているわけですね。

 一方で、内閣府は参考シナリオでは、労働参加が進まないということになっているということで2つのシナリオを出しているところがありまして、そことの関係が、平成21年度財政検証のときには、中心的なシナリオでもある一定程度の労働参加が進むという話になっていたわけで、もともと内閣府のシナリオが3つあったから、そういうことになっているということだろうと思うのですけれども、そこがやや平仄が合っていないのではないかということが少し疑問に思ったところです。

それから、もう一点は全然話が違ってしまって恐縮なのですが、資料1の25ページ、分散投資効果の話の中で、「賃金上昇率を上回る実質的な運用利回りの分散投資効果の試算」というところで、こちらでは、まだ計算は更新してないというお話でしたけれども、賃金上昇率として現金給与の総額の上昇率を用いまして、それを上回る部分という形で相関等々を計算しているのではないかと思いますけれども、今後のシミュレーションの中で分析を行うためには、こういった総給与というのは、結局労働力人口という人口の要素が入ってくるわけですね。それに対して年金の債務構造を考える場合には、基本的には1人当たりの賃金上昇率になるのではないかと思いますし、GPIFの分析も恐らく1人当たりの賃金上昇率に対してリターンがこれぐらい上回っているからというような話になってくるのではないかと思いますけれども、そのあたりはどう解釈したらいいのか、この2点でございます。

○吉野委員長 山崎数理課長、お願いいたします。

○山崎数理課長 まず、第1点でございますけれども、労働力推計のほうと内閣府の経済再生ケース、参考ケースとの間の対応関係ということでございまして、経済再生ケースと労働参加が進むケースというのは基本的には合っているということなのですけれども、それぞれが参考と掲げておりますものは、別に参考同士で合わせているということではないということでございまして、内閣府の参考ケースははっきり労働力については足下の水準で横ばいと書いてございますし、一方で、労働力需給推計でゼロ成長シナリオが労働市場への参加が進まないという意味で、そういう意味では労働力としては、数値的にぴったり合っているということではないのですが、考え方としては足下の労働力率がそのまま推移しているという意味では両方見合っているということで、労働力のほうの参考シナリオというのは、ここの経済再生シナリオとゼロ成長シナリオの中間というようなことでとってきた、一定程度進むということですので、これは対応する内閣府の試算はないと考えていただいたほうがいいかと思いますので、そういう意味では足下の2023まで期間を内閣府の試算を用いるということですと、労働の推計の2は対応するものがないので、1のケースと3のケースをそれぞれ対応させることになるのではないかと考えているところでございます。

それから、2点目の25ページの現金給与総額、これは「総額」と書いてあるので、頭数も関係してくるものと紛らわしくて恐縮なのですが、ここの総額という意味は、月々の給与だけではなくてボーナスも含めた総額という意味で、数値的には1人当たりでございますので御懸念のようなことはないかと存じます。

○吉野委員長 よろしいでしょうか。米澤委員、最後、武田委員。

○米澤委員 1点だけ、確認させていただきたいのですけれども、相当高いTFPもあって、比較的高い経済成長率のケースも出てくるのですけれども、年金財政からいくと、特に積立金運用などからいくと、例えば16ページあたりの数字では、被用者1人当たりの実質経済成長率=実質賃金上昇率でしょうか。

ということは、ここに関しては、何を言いたいかというと、TFPが高いときのほうが大変だという印象を受けますね。実質賃金上昇率が高くなるのに対し、利潤率はそんなに上がらないので、利子率はそんなに上がらないので大変だということなので、我々のシナリオの中でより再生ケースのほうが年金財政にとっていいかというと必ずしもそうではないというのは認識しておく必要があると思うのです。比較的よくなかったこれまでの経済で運用が何とか持てたというのは賃金上昇率が極めて悪かったので、少なくとも運用に関してはほどほどの評価をいただいているということなので、これが本当に賃金が上がりだしたら大変ですというか、必ずしもいいシナリオ書いたら、年金財政がよくなるということではないということの理解はよろしいでしょうか。

○山崎数理課長 基本的に年金財政、まさに所得代替率というような観点から見ますと、賃金が上がればそれに対応して年金の給付も上がるという状況でございますので、所得代替率に影響を与える運用の要素というのは賃金と運用利回りの差、いわゆる実質的な運用利回りということでございまして、そういう意味ではTFPが高いときには賃金上昇率も高くなってまいりまして、利潤率はそこまで高くならないので、間差はむしろ縮小するということが考えられますので、一方で名目値でかなり低いときにはマクロ経済スライドが効くとか、効かないという要素もあって、それが両方効いてくるのですが、比較的高いところ、そういう問題がないところでいきますと、教科書どおりと申しますか、賃金と運用利回りの差が縮まると、高成長であっても年金財政は、少なくとも所得代替率という意味では必ずしもよくなるわけではないというのはおっしゃるとおりだと思います。

○吉野委員長 最後に武田委員、どうぞ。

○武田委員 今まで出た意見とかなり重複しますので、手短に私の意見を申し上げますと、1つ目目は、シナリオの幅についてです。先ほど西沢委員と小塩委員からございましたとおり、前回と同じ条件のもとでどう変化しているかを確認することはあってよいと私も思いますが、一方で、今回は悲観的なシナリオも取り入れましょうということがこの委員会通じて1つのコンセンサスになっていたとも思いますので、年金制度の頑強性を確認するという意味では、あえて低めな数字でもやってみること。つまり今回ご提示いただいたような幅はあってよいのではないかというのが私の考えでございます。

2点目は、足下の数字についてです。内閣府が出される26年年初の試算を使うということなので、今、その試算があるわけではないですが、今年の試算を見ますと、先ほど御説明いただいたとおり、低めの参考ケースでも0.5%~1.0%までTFPが上がっていく。つまり、0.5%~1.0%へ上昇した後、悲観ケースでは0.5%にすとんと落ちるような形になると思います。その期間が短いといえども10年はあります。それは来年考えればよいのかもしれませんが、足下の参考ケースの慎重シナリオが必要かどうかという点も検討の余地があるかもしれません。

3点目としましては、先ほども多少意見がございましたけれども、労働需給推計を考えるときに、どうしても制度改革といいますか、オプションとの兼ね合いもある程度考えておかなければいけないといいますか、逆に言えば、そこは西沢委員の話に戻ってしまうのかもしれませんけれども、順番がやや逆になってしまう可能性があるといいますか、何もやらなければこうなるので、こういう改革が必要で、こういう改革が実現していけばいずれこういうふうになるというのが恐らく順番だとは思うのですね。なので、パターンとして成長戦略シナリオが置いてあるのはいいかもしれませんけれども、実際に恐らくオプションを考える上ではベースシナリオ的なものからオプションを考えて、そのオプションが実現するならば、こちらのシナリオも展望しうると、そういう考え方の整理ができるのではないかと感じましたので、意見として述べさせていただきます。

○吉野委員長 ありがとうございました。

 それでは、最後に森参事官から少し手短に年金積立金の運用のあり方に関する本委員会の議論について整理をお願いいたします。

○森大臣官房参事官 運用に関してでございます。資料2をごらんください。1枚めくっていただきまして「本専門委員会における年金積立金運用についての議論について」ということでございますけれども、年金積立金の運用に関しましては、平成2111月に「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運営の在り方に関する検討会」(以下「在り方検討会」)ということで報告が取りまとめられまして、その中でも年金積立金の運用につきましては、年金制度・財政と密接に関わるものということでございまして、この専門委員会がまさに立てられまして、2年以上経済前提と一緒に御議論いただいているところでございます。

また、この間、内閣官房でも、「公的・準公的資金の運用・リスク管理の高度化に関する有識者会議」(以下「有識者会議」)が設けられまして、今後、整理につきましては、この3つの意見につきまして対象にしつつ、一番下でございますけれども、主にポートフォリオの設定のための予見となります運用利回りの示し方、リスクの示し方、ポートフォリオの設定期間という問題群と、あとは運用手法の具体的な検討の在り方ということで整理をしております。

3ページは、年金積立金の運用に関する法律上の主な規定、予見でございますので、4ページからでございます。

左側が在り方検討会(報告書)でございまして、右側がこの専門委員会でいただいた主な意見、一番下に有識者会議の提言ということで(参考)に書いてございます。

「運用利回りの示し方」については、5ページを見ていただきたいのですけれども、年金積立金の運用、年金積立金の資金の性格に適合性ということでございまして、専門委員会でも名目賃金上昇率を基準として設定してはどうかという御意見いただいております。ただ、これは在り方検討会、専門委員会でも両方出たのですけれども、名目値4.1%というものがひとり歩きして議論が混乱したという話もございますので、今回、名目賃金上昇率+αという形で、αを設定するような運用利回りの示し方を変更してはどうかということでございます。

在り方検討会でも、市場を重視し、長期金利を基準にして運用利回りをとらえる考え方が言われていたところでございますので、先ほども御議論ございましたが、これまでも長期金利を基準として数値をつくっていただきますが、算定の根拠としましては今後ともこの考え方を維持すべきではないかということでございます。

長期金利を基準として分散投資効果を足すということはどうかということでございますけれども、年金部会で御議論いただいたときに、「国内債券並みのリスクの維持」等の御意見が強くございました。そう考えますと、全額国内債券による運用から分散投資によってどれだけとられるかという超過収益率につきまして、長期金利に加える現行の算定方式を維持すべきではないかということを書かせていただいております。他方、有識者会議では、収益最大化の努力を十分にせよという話がございまして、収益最大化の努力につきましては、年金財政の強化に貢献するという考え方に立てば、従来からの確たる根拠のある場合については、より高い収益を求めアクティブ運用を認めるという方針も立ててございますので、そのためのたゆまぬ検討を明示的に求めてはどうかということでございます。

先ほど来の分散投資効果について御議論ございました。分散投資効果につきましては、検討作業班では従来の名目値の方法等を加えまして、賃金上昇率を基準とする方法も算定いたしまして、今回、運用利回りの示し方につきまして、名目賃金上昇率を基準とするという考え方もございますので、分散投資効果につきましても、賃金上昇率を基準とする方式でやったらどうかというのが一番下の「○」でございます。ちなみにこの方式で検討作業班で見ていただきますと、後ろに(参考1)をつけてございますけれども、0.4%に収れんしております。

めくっていただきまして、「リスクの示し方等についての主な意見」でございます。

在り方検討会におきましても、リスクの示し方についても考える必要があるということをいただいております。従来より年金のリスク、これは被保険者にとっては将来の給付の引下げを招くことが一番の不安でございますけれども、これは予定された給付の減少につながる予定積立金額を下回る可能性の大きさということで、これはGPIF等におきまして確率論的に評価をしておりますけれども、専門的・技術的でわかりにくい面がございまして、専門委員会でも下振れ確率の目安の提示もできるのではないかという御意見いただきましたので、今回は運用目標等からの下振れ確率が一定程度超えないことを提示したらどうかということで、1つ目の「○」は書かせていただきました。

2つ目の「○」でございますけれども、どの程度の下振れリスクを考えるかという話でございますが、1つの考え方としまして、全額国内債券で運用した下振れリスクというのがございますので、国民の方々から見ても、全額国内債券運用よりも下振れリスクが小さいということはわかりやすい指標と考えておりますので、名目賃金上昇率を下振れする確率を超えないことをリスク許容度として示してはどうか。

ただ、こう設定しますと、リスク当たりリターンの効率性がいいもの、いわゆるシャープレシオがいいものが単純に選ばれてしまうこともございますが、この際には株式等のリスクにつきましては、ファットテールというか、割と下振れすることがあることを念頭に入れて選ばなければいけないということを「また」で書いてございます。

また、従前からやっているシミュレーションALM、年金積立金予定額からの下振れリスクにつきましても、従前、これは重要でございますので、これもやっていただく。

また、有識者会議におきましては、リスク管理の高度化ということから、今後の経済状況等を踏まえたリスク分析も必要ということでございますので、これも従来からGPIFでやっている方法につきまして、より踏み込んだ複数のシナリオ、1つのシナリオだけでは外れる可能性もあるという御意見がございますのでやっていただくということを書いてございます。

9ページでございますが、「基本ポートフォリオの設定期間」でございますが、基本ポートフォリオにつきましては、年金資金ということでございますので、長期ということ。ただし、5年に一度の財政検証による見直しや市場が構造的に変化した場合につきましては、機動的に行う。昨年6月も同様の判断で見直しがされたわけですが、同じような形でやったらどうか。

2番目でございますが、有識者会議の御提言にもございますが、経済環境や市場環境の変化が激しい昨今の傾向を踏まえれば、市場環境の適切な見通しを踏まえ、機動的な運用ができる旨明確にしてはどうか。

ただ、投機的に賭けをするようなものではおかしいので、そこは確度の高いものではなくてはならず、きちんとGPIFにおいて的確な判断ができるような調査能力を向上させるべきではないかということを書かせていただいています。

11ページ目でございますけれども、「運用手法の具体的な検討の在り方」でございますけれども、これは専門委員会におきまして、一番上の御意見でございますが、運用手法につきましては、基本的にGPIFに任せる問題。

また、有識者会議の御提言におきましても、各運用機関の自主性や創意工夫を十分に発揮し得る体制という話。

また、そもそも独法制度におきましては、大臣から与えられた明確なミッションの下で、法人の長のリーダーシップに基づく自主的・戦略的な運営を行うべきという話がございますので、資金運用に関して一般に認められた知見に基づき、基本的には運用の専門家であるGPIFに委ねるのが適当ではないかという形でございます。

ただ、年金積立金につきましては、年金財政・制度とも密接に関係しますので、本専門委員会のような場とか、労使の代表も参画する年金部会の場で引き続き審議することが適当ではないかというのが2つ目の「○」でございます。

また、国民に対する説明責任も重要でございまして、ただ、GPIFにつきましては、世界でもかなり透明性が確保されているということでございまして、運用に対する影響等も踏まえつつ、国民に対する説明を一層工夫・充実させるべきではないか。

このような運用の専門組織に判断を担わせるということでございますので、運用の専門組織としてふさわしく、高度な専門性を持った質の高い人材。今でも金融機関等の出身者が3分の1占めていまして、かなり人材確保されていると思いますけれども、新たな運用対象の追加等に応じ、確保・育成していく。またコンプライアンスの確保につきましては、幾ら口を酸っぱく言っても足りないほど重要な観点だと考えています。

13ページ、運用手法につきまして、「国債運用・国内債券中心の運用」についても御議論いただきましたが、今、申しましたように、基本的にはGPIFで検討されるべき話でございまして、有識者会議、もしくは専門委員会でも、今後のデフレ脱却のシナリオということも言われておりまして、デフレ脱却のシナリオにおきましては、あらかじめ国内債券中心を示す必要なく、GPIFのほうでフォワードルッキングな視点も踏まえて考えていただくということではないかということでございます。

15ページでございますが、「運用対象資産の多様化」につきましては、市場性が確保されたこれまでの運用対象資産が基本ということですが、これは年金部会でインフラ、REIT等のミドルリスク及びミドルリターンの資産も考えていくべきだという御意見も出ましたので、これはGPIFにおいて具体的には検討しておく。

ただ、非伝統的資産につきましては、いろいろと運用側の能力向上のみでは対応できないリスク等がございますので、これは市場環境の整備も十分踏まえた対応が必要でございますし、場合によっては、最近国際的な年金の協調投資みたいなものもございますので、スポンサーとして損失責任を負う他の運用機関との共同投資も考えられるのではないかという話でございます。

17ページで「アクティブ運用」でございますが、これは在り方検討会でございましたパッシブ運用はポートフォリオ理論から見ると合理的で低廉だという話もございますが、他方、アクティブ・パッシブを併用することが普通という専門委員会の御議論等もございますし、有識者会議では、逆にアクティブ比率を高めることについて検討という話がございますので、市場の歪み等も考えますと、アクティブと認めるという既存の方針を維持するとともに、たゆまぬ努力を明示的に求める。ただし、それはGPIFの御判断という形で考えていけばよろしいのではないか。

また、アクティブ比率の向上のためには、運用業界で超過収益率が獲得できる新たな手法や優れたソクレター、アクティブマネージャーの輩出等が必要だろうということが3つ目の「○」でございます。

また、ベンチマークについても御議論いただきまして、時価総額型インデックスのみならず、企業収益等に着目したファンダメンタル・インデックスの活用。

またインハウスの充実が有識者会議で言われていますが、GPIFは委託運用中心でございますが、インハウス運用の活用も検討すべきということを書いてございます。

「成長分野投資、社会的投資」、いわゆる年金資金につきまして、成長に資するために運用すべきではないかという御議論等につきましては、これは有識者会議も同じ考え方なのですけれども、「専ら被保険者のため」にという法規定や受託者責任という原則に則し、他事考慮しないで、専ら被用者のために行う運用が、結果的に日本経済等に貢献するという「好循環」を目指すべきではないかということでございまして、例えば成長に着目した投資で言いますと、今ではグロース運用とかございますし、企業収益等に着目したファンダメンタル・インデックスの活用、もしくはESG要素、これはヒアリングでは必ずしも今のところパフォーマンス上がっているというような話はございませんでしたが、このESG等を含めた非財務的情報に着目することの是非も、基本的にGPIFにおいて検討すべきではないかという話でございます。

また、昨年の1226日に金融庁で日本版スチュワードコードシップが発表されましたけれども、これは機関投資家一般の行動原則ということでございまして、これを踏まえた対応を考えておくべき。GPIFで労使推薦の委員も含め、構成される運用委員会がございますので、ここの場で検討されるべきではないかという話でございます。

一番最後の(参考)20ページでございますが、「GPIFの組織・ガバナンス論」につきましても、いろいろ専門委員会でも御議論いただきましたが、昨年の「独立行政法人改革等に関する基本方針」で、一応まとまったものを御紹介させていただいております。

駆け足ですが、以上でございます。

○吉野委員長 森参事官、どうもありがとうございました。

時間になりましたので、特別の御質問がなければと思いますが、いかがでしょうか。

○駒村委員 1カ所だけ。

○吉野委員長 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 1つひとつコメントできないのですけれども、11ページのところの国民に対する説明責任のところですけれども、上から3番目の「○」ですが、運用に対する影響等なのか、運用及び年金財政に与える影響なのかというところは、年金財政に与える影響などは関係ないというのか、運用だけでいいのか、ここのところが、国民に対する説明としてはそちらのほうが関心あるのではないかと思うのです。

内閣府が2年ぐらい前やった年金積立金に関する国民の世論調査でもほとんど伝わっていない。しかも皆さんの関心は年金財政に与える影響はどうなのかという関心がメーンなので、運用ではなくて、「財政」も入れるべきではないかと思いますけれども、これはコメントです。

○吉野委員長 森参事官。

○森大臣官房参事官 年金積立金の運用は年金財政のためにやっていますので、まさにそれは大命題でございます。ただ、ここに書かせていただいた話としましては、昨今GPIFがどうこうしたとかという情報が先回りして市場に与える影響等もございますので、そういうことにも配慮したほうがよろしいのではないかということでございまして、委員の言われた、年金積立金の運用は年金財政のためというのはまさにそもそも論だと考えております。

○駒村委員 影響の説明の対象に年金財政についても説明を入れたほうがいいという意味ですか。

○森大臣官房参事官 はい。

○吉野委員長 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、時間をオーバーしてしまいましたけれども、今日も活発な御議論ありがとうございました。

 それでは、次回の日程については改めて調整させていただきたいと思っております。

今日の審議はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。

 


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会)> 第15回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録(2014年2月13日)

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